1 :
まちこさん:
「…兄上はかの国との同盟関係を絶つおつもりなのですか?」
押し殺した声が、暗く閉じた空間を静かに震わせた。女の声だった。
「あぁ」
男の声は低く、そして揺るぎない肯定を示した。
「確かに、この計画に何の障害もないと仮定して、数年はかかる。が、必ずあの国の干渉など退けてやろう」
「ですが」
女は眉を寄せた。
「わが国の、兄上のそのような望みに、他国がたやすく従うとは思えません」
「そんなこと」
くつくつと男は笑った。
「各国の首脳どもが反発することなど、すでに計算済み。ただ群れるだけの無能な彼奴らに、わたしを押さえることができるとでも思うのか」
女は激しく頭かぶりを振った。