家の中にはどこにも見当たらなくて、玄関を見に行った。
愛ちゃんにあげたわたしの靴。
やっぱりと思ったけど、それが消えていた。
何も言わずに出かけていくというのは、別に驚く事ではないけれど、なぜだか今
回は胸騒ぎがした。
どした?
――あたし、なんかした?
サンダルを突っかけて、わたしは玄関を飛び出した。
そんなに捜し回らないうちに、河川敷の草むら、腰ほどもある草の中に見なれた
後頭部をみつけた。
たしかあの頭――
やがてそのコはゆっくり立ち上がり、そのままじっとしていた。
なにか見つめる愛ちゃんの背中。
その背中は夕陽の逆光で黒いかたちにしかみえなかったけど、何を思っている最
中なのか、それを考えると、なんとなく声をかけられなかった。
帰れるようになったんだよ?
近寄っていくと、斜め後ろから見たほっぺたが膨らんで動いているのがわかっ
た。
「愛ちゃん」
途端に彼女は口の中のものを吹き出す。
「あ」
振り返った彼女の鼻からは、ごはんつぶの混じった鼻水が垂れていた。
>>225 いえいえ自分のミスです。こんなに早いとわ。
二度と羊では書かない事を決めた。
池上署でのマサノブとの共演よりも先に書いてるのが、偶然というか
恐怖を感じます今日この頃。
>>46
「取り付けるの手伝ってくれないの?」
「ごめんなさい」
鼻水をまっすぐ伸ばした愛ちゃんにハンカチを渡してから、わたしは草の生えて
ない適当な場所に腰をおろした。瞬間的だったけどもつかえてた胸の何かが消え
ていくのがわかって、大きく息を吐いた。
「取り付けたって無駄やって」
「なんで? あいつは――」鼻を拭いたハンカチを返そうとする愛ちゃんの手を
拒否する。「あの助手は付けるだけでいいって言ってたよ」
立ったまま、また何かをみつめてる。
「補習受けるんじゃないの? それとも何か帰れない理由でもあんの?」
「亜弥ちゃん、ほらほらあれ!」
無邪気に愛ちゃんが指さすのは、飛んでいく二羽の鳥。
それはやっぱり夕陽の逆光を受けていて。目が痛かった。
「補習なんてとっくに終わっちまったし、やっぱり課題をクリアせな帰れないん
です。向こうの方でそう設定してあんです」
「なんでそんな事がわかるのよ」
思いきり不機嫌に返すわたしの目の前に一枚の紙切れが差し出される。
差し出す愛ちゃんの手からそれを奪い取って目を通した。
それは、わたしのパソコンからプリントアウトしたと思われる、例の「あっち」
からの指令書。
MGのまっさつおよび キーカードのだっしゅ
もはや きげんにゆうよなく さっきゅうなにんむかんりょうをのぞむ
なお いじょうをみたさないばあいのきかんをみとめず
「やるんよ」
「殺すの」
「でないと他の人に先越されちゃうんで、他の人もまだ成功してないみたいなん
で、ここまできたらウチが」
「そう」
「ウチは……きっとこれ成功させて一等賞になるんです。で、アイドルにな
る!」
身上げると口一文字。拳握って。
もうわたしは力が抜けてしまい、返す言葉もなかった。
その勇ましい顔は、しだいに不安げにわたしを見る。
「おこらないの?」
「知らないよ」
いつまでたっても同じ事の繰り返し。もうわたしの手に負えない。
まじに勝手にやってください。
そんな投げやりな心境だった。
結局無駄。全部無駄。
わたしのいままでやってた事なんて、全部無駄なんだ。
悲しくはなかった。涙も出てこなかった。
まだ水辺を飛んでいた二羽の鳥を見つめた。
大きい鳥と小さい鳥。
小さい鳥はこころなしふらふら飛んでいた。
やっぱりあれは、あのときの親子なのかな――。
ふと愛ちゃんを見ると、こっちをじっと見ていてどきっとした。
その顔はなんていうか、何か乞うような、わたしに何かを求めているような、そ
の疑問にしばらく立てなかったけど、気まずさにわたしは腰を上げて草を払っ
た。
「どうしたの?」
目を伏せ、持っていたコンビニの袋を握りしめている愛ちゃん。
わたしはなぜだか一瞬、氷が溶けたようなかんじがした。そしてそれが溶けてし
まう前にわたしは口を開いていた。
「なんか……ほんとはこんなことしたくないんじゃないの?」
わたしの言葉に愛ちゃんは少し、視線を上げた。
そして何も返してこない。
やっぱり――そうなんだ、と思った。
「いやなんでしょ」
袋の握られる音だけが響く。
そうだったんだ。
じっとうつむくままの彼女の肩に触れようと手を伸ばすと、なぜか愛ちゃんはそ
の手をとって自分の顔を押し付ける。
わたしは愛ちゃんの意志を感じた。やっとわかった。
今までは理解できなくて、わかろうともしてなくて。
わたしはショックと、なぜだか少しの嬉しさとで動けなかった。
手の甲にあたたかいものを感じる。愛ちゃんは泣いていた。
どうしたらいいか、そんなのはさっぱりわからないけど、わたしはこのとき、こ
のコの為に何か力になりたいと、初めて思ったのかもしれない。
夕陽の映った水辺、その眩しさに目を細めたけど、鳥たちはいつのまにかいなく
なってた。
うわ、むっちゃドキドキした
愛ちゃんを寝かせたあとは、居間にノートパソコンを持ってきて、例の手順でダ
ルメシアンを待った。
画面には彼専用の青い椅子が置いてあるまま。いつまで経っても彼は現れる様子
もなく。
今日も夜の静けさが部屋中に満ちた。
パソコンなんてものはもともと好きじゃない。更に、ここのとこ夜の台所も苦手
になってきて、またへんな夢を見るんじゃないかとか、そういう不安もあって冷
蔵庫にはあまり近付かないようにしてた。
そんな不安が何かに伝わったのか、台所から物音が聞こえた。音のない居間にそ
れははっきり届いた。
パソコンを抱えおそるおそる台所に足を踏み入れて、そっと冷蔵庫を覗いてみ
た。
冷蔵庫の扉が開き、その中から何本もホースのようなものが伸びていて、それは
宇宙服のようなものを着た人の背中に、全部くっついている。
宇宙服。どでかいヘルメットをふらふらさせて、背丈が――わたしよりチビ。
それが不気味に台所にいた。
その人はしきりに背中のホースをはずそうともがいている最中で。
我ながら抱えていたパソコンをよく落とさなかったなと思う。
案外冷静にわたしはその人を見てた。
彼は邪魔くさそうにようやくホースを全部はずすと、冷蔵庫に叩きつけてから振
り向いた。
「ご苦労さまです。亜弥ちゃん」
ふらつきながらおじぎするその人の表情は、ヘルメットの真っ黒バイザーにさえ
ぎられて全くわからない。
「……先生? もしかして」
たぶんそう思って言った。
「はい」
「愛ちゃんの?」
「はい。ねえ、すでに直ってるじゃないですか。これ」
彼は冷蔵庫の中のジェネレーターを指しているようだったけど、わたしはそんな
もの見てもいなかった。無意識に彼に襲いかかってたから。
「わっ!」
「なにもかもあんたのせいだ!」
「待って下さい! ゲッ! やめて!」
ヘルメットを脱がそうとしたけど、固くて取れず、両手で掴んで思いきり振っ
た。
「亜弥ちゃん怒るのも当然ですし言い分も相当ある事でしょうから先生ちゃんと
聞きますんで落ち着いて下さい落ち着いて下さい!」
こもった訴えを聞いて、手を放したものの、振り疲れたわたしはその場に倒れ込
んだ。
同じく倒れて大の字になった彼と、しばらく台所に倒れたまま数分、しばらくそ
うしてた。
食卓に座った彼にお茶を出す。ヘルメットを取らないまま飲もうとして、バイ
ザーにお茶をぶちまける彼を見て、ばかだなと思った。
「言い分っていうか……」
彼はバイザーを拭くときちんと背筋を伸ばす。
わたしの文句を聞く為にそう落ち着かれると、いろいろあったはずなのに、か
えって出てこなくなるというもので。
息を吸い、ゆっくり言った。
「ただひとつだけ」
「はい」
「あの任務……あれだけは勘弁してあげて下さい」
「先生も同様、酷だと思っております。しかしブレーンウォッシュはそりゃあ強
力なものでありまして、あれに対抗するのは相当難しいのですよ」
「ブレーンウォッシュってなんですか」
「教育です」
「教育」
「そです。殺しの」
落ち着きすぎの彼を、わたしは睨んだ。
「こら」
「……こらとはなんですか」
「いいかっこしないでくれる。あなたがその教育とやらの担当者でしょ」
「ちがいます。先生は愛ちゃんの担任じゃないですよ。先生はたまたま転送を受
け持ったひとです」
「じゃあ、愛ちゃんの担任は別にいるって事?」
「そうですよ」
いよいよ夢と重なってきて、もうあれは現実なんじゃないか。そうだとしても慣
れてきたせいか驚きはあまりなかった。
「あとありますか」
「それだけよ」
「そうですか」
「いったい何しに来たの」
「えーとですね、修理の依頼という事で」
「ああ……」
「もう直ってるじゃないですか」
あの犬……ちゃんと伝えたんだ。
「あ、時間が迫ってますんで、これで」
宇宙服は冷蔵庫を開けて、飛び出てきたホースを慌てるように背中に装着しはじ
める。
「あなた酷だって言ったよね」
わたしの言葉に彼は手を止めて顔を上げた。
「かわいそうだと思わないの。みんな、ひどい事やらされてるのは小さいコばか
りじゃない。どうせ、あなたじゃどうしようもできないって事は、わたしにもわ
かるけどさ」
「こう言うんです」
「なんて」
「素晴らしきマリンよ永遠なれ」
「す……え?」
「素晴らしきマリンよ永遠なれです。愛ちゃんは後藤さんの前に行くと、おそら
く教え込まれた通りの行動をとると思われます。その前にこれを言わせれば、な
んとかなるかもしれませんけどもこれは可能性の問題でしょうねえ。実行しない
かもしれないし――」
「殺しちゃうかもしれない」
「はい」
「言わせるだけ?」
「そです」
「言わせればいいんでしょ。簡単じゃない」
「言う前に殺しちゃうかもしれないですよ」
「えぇ?」
「あ、先生時間がありませんので、これで」
扉を閉める彼を見送るよりも、教えられた妙な言葉――素晴らしきマリンよ永遠
なれ
それを反復するのでいっぱいいっぱいだった。
彼が冷蔵庫を閉めたはずみで、その上の冷凍庫の方が開いた。
そこからどかどかと溢れ出てきた黒い物体。音からして重くて鉄製のもの?
反復しながらそれをよく確認すると、無数の拳銃。
だった。
いっぱい落ちてくるのを止めようと、あわててそれらをかき集めながら
「ばかやろーーー!!」
愛ちゃんが起きようとも、わたしはかまわず冷蔵庫に向かって叫んだ。
「何故、殺さなきゃなんないの?」
う〜ん……でもですね、重要なのはキーカードなんです。
「キーカード?」
そりゃ当局は、その際に後藤さんを消せれば都合がいいですし、なにしろ殺しで
もしなきゃカードは奪えないです。
「だからって――」
空中(水中?)をゆっくりと泳ぐ彼に対し、わたしの方はどこか固い床に腹這い
に寝てる、そんな感じ。わたしは彼に言い返そうと息を吸った。
また台所で目をさました。
あの宇宙服から手を滑らせて倒れた場所で、床に顔をつけたまま。
また例の症状か出たのか……。これで何回目だろう。
もうどうでもいいや。うんざりしながらも、すぐに記憶をたどった。
あのあと大量の拳銃は、かき集めて袋に入れて冷凍庫に放り込んだ。そこまでは
覚えてたから、すぐに体を起こし、冷凍庫を開けた。そして目を見開いた。
そこには何も、氷ひとつもなくて(移したから)いつものまま。
ほっと胸をなでおろした。
いや、それはいいけど……。
どっち?
現実? わたしの夢?
馬鹿な事だけど、現実だと思ってた。
「なにそれ」
朝の水風呂に浸かる愛ちゃんにかまわず、わたしは浴室を占拠した。彼女は疑問
に顔をゆがめながら浮かぶ氷をいじっている。
「はやく。言ってみてよ。これはね、必ず覚えなきゃいけないんだから」
わたしは例の、彼に教えられた言葉をちゃんと覚えてた。それを目の前の解せな
い顔に教えて、うながした。またついお尻を床につけてしまい飛び上がる。
「それがなんやの」
「だから通して言ってみて。何回も。忘れないように」
「いや」
「なんでよう!」
「言いにくい」
「どこがだよ……いいから言いなさいってば!」
「いや!」
ああ、そうか。言う順番がいけなかったんだ失敬。
「先生きたんだから」
「え?」
愛ちゃんは目を丸くして振り向いた。
「昨日きた」
「でへへ」いやらしく笑ってまた氷遊びに戻る。「亜弥ちゃん寝ぼけてたんでね
えのか。来るわけない。第一、来たらだめな事になってんです」
「ちゃんと来たんだから。ちびで宇宙服着て、それでもってピストルなんかいっ
ぱい――」
「………」
そこまで言ってあわてて口をつぐんだ。
愛ちゃんはというと呆気に取られた顔でこっちをみつめてる。これはわたしが思
うに、驚いてる顔。容姿を言い当てたから驚いてる。わたしは愛ちゃんに、待っ
ててと制して台所に走った。
台所をゆっくり見回す。
昨日の夜がもし現実であれば、あの人の言った事が、策のないわたしたちにとっ
て唯一の希望になるんだと、いまさら気付いた。
で、自分にちょっと笑って。
みつけた。
テーブルの上。彼が使った湯呑みが無造作に置いてあって、わたしはそれを手に
とった。
「冷た」
テーブルからこぼれたお茶が床に伸びていて、それを踏んだ。濡れたままだっ
た。
昨日はやっぱり現実だ――!
確信を持ったわたしは自信満々に浴室に戻って、再度愛ちゃんに迫った。嫌がる
彼女に水をかけられる。
「長くて覚えらんないんです」
「どこが! 素晴らしいマリンよ永遠なり。はい。あれ? き…き、だっけな?
ちょっとまって」
「がちょーん」
にこにこと愛ちゃんはわたしの顔をみると、わたしが寄せた眉間のしわに青ざめ
て水に潜った。
「ふざけないでよ、大事な事なんだから」
愛ちゃんは水の中でがばがばと笑ってるんだかわたしを馬鹿にしてるんだか、し
ばらく上がってこなかった。
これは……わたしの事じゃないのに。
ウォークマンにカセットを入れ、蓋を閉めて、イヤホンを愛ちゃんの耳に装着す
る。
ボリュームを上げてわたしもイヤホンに耳を近付けた。「どう?」
「わっ!」
思わずイヤホンを投げ捨てる愛ちゃん。
ちゃんと録れてるのが聞こえた。カセットテープ両面に延々とあの言葉を吹き込
んだのだ。こんなの一日中聞いてたらおそらくノイローゼになってしまう。
「しばらく取っちゃだめだから。覚えるまで」
「鬼畜生っ!」
「なんとでもいえば」
これだけでは終わらない。
事務所の屋上のドアを開けると雲ひとつない空が強い風と一緒に飛び込んで来
た。
連れてきた彼女はすでにそこにいる。仁王立ちの愛ちゃんは風に髪をなびかれ、
邪魔くさそうに頭に押さえつけながら振り返った。
「お待たせ」
「なんでこんなとこに用事なん? ウチ帰りたい。ああそうか、亜弥ちゃんここ
からウチを突き落とす気なんや」
「かもね。イヤホンしてる?」
わたしが聞くと愛ちゃんは耳を見せて、装着している事を示した。
「言ってみて」
「素晴らしきマリンよ永遠なれ」
わたしが笑顔を見せると愛ちゃんもにいっと歯を見せた。
親指を立てると彼女も立てる。
「ほんで、なんやの?」
「要するに後藤さんの持ってるキーカードが必要なんでしょ」
「あい」
わたしは下から運んできた後藤さんの等身大パネルを出入口から引きずり出し
て、愛ちゃんに向けて立てた。発声練習の次は、本人を目の前にしてのシュミ
レーション。その為に。
「愛ちゃんのその言葉に後藤さんがどう反応するのか、愛ちゃん自身はどうなる
のか、そのへんは聞かされてないし知らない。どうやら先生が言うには、『殺さ
ない為の言葉』、そうわたしは受け取った。とにかく、前から言ってるように妙
な気起こしたらとんでもない事になるんだから、絶対」
話をさえぎるように耳をつんざく破裂音が二回して、すぐ横の後藤さんの顔に穴
が二つ開いた。
わたしの顔からパネルの顔まで距離にして30センチ。
紙の破片が勢い良く風に舞う。
腰を抜かしたわたしなんか目に入らないかのように、愛ちゃんは仁王立ちのま
ま、リボルバーからあっというまに全弾撃ち尽くして、後藤さんのパネルを倒し
た。
大急ぎで愛ちゃんを連れ、なぜか後藤さんのパネルも抱えてその場から逃げた。
必死に愛ちゃんの手からもぎ取ってお尻のポケットにねじこんだ拳銃から熱を感
じる。
人通りの多い街中を走る途中、交番を横切るはめになってしまい、そのときはな
ぜかとっさに走るのをやめた。余計不自然だったかもしれない。お尻の拳銃を隠
すように手で覆ったのも不自然だったけど、おもてに立っていた警官はこっちを
見るだけで特に何の興味も示さなかった。
人気のない橋の上。その冊につかまって目を閉じて、ひどい呼吸を整えようと必
死になった。
横に置いた後藤さんパネルがふと目に入った。顔を重点的にやられてる。――顔
がない。おもわず寒気に震えた。
ようやく落ち着いて愛ちゃんを見ると、隣で四つん這いになってるものの、別段
苦しそうでもなく、ただ地面をみつめているだけだった。
――やってしまった。
たぶん、心境はそんなとこだろうか。わたしは冊の向かったまま腰をおろした。
「やっぢまった」
「………」
怒る事も出来ない。慰めの言葉もみつからない。こんな時は、何を言えばいい
の?
「やっぱりやっちまうんだな。ウチは……あたしは」
「………」
「あたしはあかんのやろか」
ただ意志は、愛ちゃんの意志は確実にこっち側に来てる。そう、わたしの方へ。
味方だよ。
そう思うと嬉しかった。意志があっても身体が言う事をきかないだけ。
だけ、ってのは目の前でおろおろしてる彼女には、実に失礼な話だけども。
「帰ろう」
そう言ってわたしは腰を上げた。
「軽蔑してるんでしょ」
パネルを拾いあげると同時に言われた。
「え?」
「あたしの事」
「……どうして?」
「だって――」
わたしは、今はただ
「だって、亜弥ちゃんいつも何も言ってくれないし、あたしの事なんて無関心だ
もの」
「へえ?」
今は言ってあげられる言葉が思いつかなかっただけだ。なのに。
「今は……何言っていいかわかんなかったんだよ」
「今だけじゃなく、前から」
「前から?」
「なんでいっつも無関心な振りすんのかなって、だからそう思ってあたしへんな
事ばっかりやって、ほとんどわざとじゃないけど、それでも亜弥ちゃんあたしの
方向いてくんなかった」
わざと? 何がわざとで、何が事故? いろんな愛ちゃんのやってきた事思い出
して。
だけど、今となってはもう、ごっちゃごちゃ。記憶の整理がつくはずもなかっ
た。
――そんなにわたしは、愛ちゃんを見てなかったのかな。
言われてみれば、そうかもしれない。
「じゃあどう言ってほしい?」
しまったと思った。
ここはおそらく何も言い返さず、受け止めとくのが大人なんだろうなと思った。
でも、もう遅い。思わず口をついて出た言葉がこれだった。もう遅いよ。
「今の場合なんてどう言えばいい? 思い通りにいかなかったのは例の教育って
やつでしょ。それにはやっぱり逆らえないんだよ。あきらめよう。これでいい
の?」
愛ちゃんは、例によってうつむきはじめる。
「わたしだってわかんなかったもん。愛ちゃんが何考えてたか。わかったのなん
て、最近だよ?」
嘘。最近じゃなくて、たった今だ。
要するにお互い、全然わかってなかったってわけだ。
わたしの言葉に愛ちゃんは顔を上げた。
「軽蔑なんてしてないよ」
わたしは落とした後藤さんを拾い上げると、彼女を通り過ぎた。
前より鮮明な愛ちゃんの思い。
しかし愛ちゃん、思った事口に出してぶちまけたのなんて、今がはじめてで
しょ。
しばらく歩くうちに愛ちゃんのついてくる音が聞こえてきた。
ごめんね。
そう呟いた。
γ⌒"ヽ
ノノノノノハ)
ノノ*‘ .‘ノ<読者@
作者さんは亜弥日記を書いてた人?
保全
保全
狩に誘導したほうがいいのでしょうか
test
>264
ここでいいよ。
268 :
名無しちゃんいい子なのにね:02/11/19 18:04 ID:VOWiH2QX
269 :
Y@GU:02/11/19 20:14 ID:b1W2eeke
ヤホーイ
・名前欄を空欄にすると「名無しちゃんいい子なのにね」になります。
・IDを表示させたい場合はアドレス欄を空欄にしておいてください。アドレス欄に何か書き込むとIDは隠れます。
・アドレス欄に半角で「sage」と入れると、スレを上げずに書きこむ事が出来ます。
・アドレス欄に半角で「0」と書きこむと、名前が緑色のままIDを隠す事が出来ます。
自分の考えに自信のない方はIDを隠してください。
・またここは狼や羊ではないので、いかに書き込みが少なくてもそう簡単に逝く事はありません。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
Λ_Λ | 君さぁ こんなスレッド立てるから |
( ´∀`)< 厨房って言われちゃうんだよ |
( ΛΛ つ >―――――――――――――――――――‐<
( ゚Д゚) < おまえのことを必要としてる奴なんて |
/つつ | いないんだからさっさと回線切って首吊れ |
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(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)
(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)
(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)
272 :
山崎渉:03/01/10 00:48 ID:???
(^^)
て
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