なんでそう思ったのかは、よくわからない。なんとなくそんな気がした。このコ
は幼少期の愛ちゃん。この支離滅裂な世界の中で、わたしの頭の中もちょっとお
かしくなってる可能性は充分考えられるけど。
「で、どういう事」
「何がやの」
廊下を愛ちゃんのあとについていく。ちなみに廊下はさっきの宇宙船の中だった
のに、今度は乳白色の洞くつに変わってた。触るとつるつるしてて気持ちいい。
どうでもいい。もうそんな事には驚かなかった。
「ここにはそういう制度というか、授業みたいなものがあるわけ? ひとの迷惑
も考えない授業がさ」
「知らん」
「今、知ってるようなかんじだったじゃない」
「忘れた」
「なめてんの」
愛ちゃんの頭を軽く小突く。
特に詳しく聞きだしたいとも思ってなかった。どんなに筋の通った説明でも(チ
ビ愛ちゃんができるわけないけど)この意味不明ワールドでされたって、わたし
の方が信用できないし。
愛ちゃんがこれからどういう教育を受けるのか知らないけど、わたしにはとうて
い面倒みきれないおかしなコに変化していくのは事実なわけで。
かといってこの世界でわたしがしてやれる事なんて、何もない。
「それはね、あせってるんだよ」愛ちゃんがつぶやく。
「誰が?」
「その人。だって、そっちに行くの大変ちゃうの」
「大変そうだね」
「そこまでして行くかなあ。よっぽど好かれてるんちゃう」
「え?」
「ここで待っとって」
いつのまにか南国の宮殿風な空間にわたしたちは居て、愛ちゃんが立ち止まる。
先生のところへわたしは連れて行けないらしく、手で制された。
「愛ちゃんの部屋で待ってるよ」
戻ろうとするわたしの腕をけっこうな力で引き寄せる愛ちゃんに少しびっくり。
わたしに顔を近付けようとするので、耳を傾けた。
「近付きたいの」
そうささやいて愛ちゃんは駆けていった。わたしは耳をさすった。