そのとき冷蔵庫が開いて愛ちゃんがのそのそ出てくるのが見えて
「わあーーーーーーー!!」
と大声を出して加護ちゃん押して台所を飛び出た。そのまま押していって、彼女
をトイレに閉じ込めてすばやくドアノブにヒモを巻き付ける。
「何すんねん! いやや! 開けてえぇ!」
ドアを叩く加護ちゃんにかまわず、ADみたいに腕を回して愛ちゃんを浴室へ誘
導。えへへとのんきに歩いてくる愛ちゃんをたまらず押して「熱っ! 早く入っ
てよ!」と浴槽に入れて、扉を閉めた。
一回息を整えてから、トイレから加護ちゃんを解放。怯えた顔で飛び出してき
た。
「こ、こ、怖かったです。というか亜弥ちゃんが…」
「悪いけど加護ちゃん帰って」
「なんでやねんな。来たばっかりやん」
「ごめんね。急な用事が入ったの。お願いだから帰って」
わたしの理不尽さに眉をしかめる加護ちゃんにさっさと服を着せて、家から追い
出してしまった。
お風呂から上がってきた愛ちゃんは、不機嫌なわたしの顔をちらとみただけで、
特に気にする様子もみせず、たたんである服を着始める。
「今日はな、来ただけちゃうよ。亜弥ちゃんに質問いっぱい持ってきたから、
じゃあ、さっそくいくよ」
「愛ちゃん、その前にさ」
「あと亜弥ちゃんについていく。愛の密着体験取材いうて」
「えっ? ついて行くってどこに?」
「亜弥ちゃんのお仕事してるとこ」
「ダ、ダメだよ!」
「ゲンコくらう?」
「ゲンコ?」
「コラァ! 言われる?」
「うん」
「コラァ! みゃとぅうりゃぁ! 言うて」
「言われるよ」
「言われる…」とメモを取る愛ちゃん。とっさにわたしはテーブルを叩いて立ち
上がった。
「いい加減にしてよ! 愛ちゃんわたしをバカにしてるんでしょ!」
わたしが大声を出すと、とりあえず愛ちゃんはたじろいでくれる。けど、そうい
うつもりで叫んだわけじゃないんだけど。単純に声がお腹から上ってきたので。
「そんなにおもしろい? ひとの事からかって」
「そんなつもりじゃあ…。ウチは先生に教わってこい言われて」
「じゃあ、わたしを怒らせないって勉強をまずしてきて。わたしだってなんとか
愛ちゃんを理解したつもりなんだから。でも教えるなんて言ってないよ。いい?
はなしはそれから!」
そこまで言うと彼女はうつむいてしまった。言い過ぎちゃった? わたしが悪い
の? なんで。わたしじゃない。