パソコンの画面の中のダルメシアンに向けてジェネレーターを見せた。
「手に入ったよ」
ぶるぶる震わせると彼の首も振られる。
前回の愛ちゃんのやってた手順で彼を呼び出すと、案外簡単に現れた。
「こないだのちゃんと伝えた?」
わたしの質問に彼はそっぽを向いて無視。
いいですよ別に。所詮動物なんかに守れるわけない。
「これ、取り付けるだけでいいんだね?」
__Y
舌を出したままの彼の顔に少し軽蔑の視線をくれてやりながら、わたしは部屋か
ら出て台所に向かった。
冷蔵庫の中、焼けこげた部分にそれをあてがう。
「こんなの防水加工とかしてないと、また同じ事が起きるんじゃないの」
そのへんにあるはずのドライバーを手探りするもなかなかみつからず。
「ねえ」
冷蔵庫から顔を出してドライバーを取るついでに、そこにいるはずの愛ちゃんを
見た。
だけど、いつのまにか彼女は消えていて。
「愛ちゃん?」
家の中にはどこにも見当たらなくて、玄関を見に行った。
愛ちゃんにあげたわたしの靴。
やっぱりと思ったけど、それが消えていた。
何も言わずに出かけていくというのは、別に驚く事ではないけれど、なぜだか今
回は胸騒ぎがした。
どした?
――あたし、なんかした?
サンダルを突っかけて、わたしは玄関を飛び出した。
そんなに捜し回らないうちに、河川敷の草むら、腰ほどもある草の中に見なれた
後頭部をみつけた。
たしかあの頭――
やがてそのコはゆっくり立ち上がり、そのままじっとしていた。
なにか見つめる愛ちゃんの背中。
その背中は夕陽の逆光で黒いかたちにしかみえなかったけど、何を思っている最
中なのか、それを考えると、なんとなく声をかけられなかった。
帰れるようになったんだよ?
近寄っていくと、斜め後ろから見たほっぺたが膨らんで動いているのがわかっ
た。
「愛ちゃん」
途端に彼女は口の中のものを吹き出す。
「あ」
振り返った彼女の鼻からは、ごはんつぶの混じった鼻水が垂れていた。