5 :
パクリ:
私って結構度胸があるって思われてるかもしれませんけど、案外ちぢこまりやすいんです。
だから、祭シャッフルで「うたばん」に出た時も、一番新人だったせいか、
雰囲気に溶け込めてないような気がして全然自分を出し切れずに終わろうとしていたんです。
それであっという間に収録も終わりの時間になり、大人数で上のカメラにバイバイをしてたんですが、
ノリきれてない私にアヤカさんが近づいてきて抱き寄せてくれました。
「あやちゃん、一緒に手を振ろう!」って。
その時は「ほえ?」って感じだったんですけど、楽屋に戻るなり悦びが沸いてきました。
私は1人じゃないんだ!って。私のことを心配してくれてる先輩がいるんだ!って。
それでついつい舞い上がっちゃったんでしょうか。
いくぶんセクシーな私服に着替えたアヤカさんに向かって、
「うわぁセクシーですねぇ。アヤカさんのような優しくて奇麗な方と付き合える男性は幸せですね」
って言っちゃったんです。ウソだったって?そんな事は思ってませんよ。
でも正直、私服の飯田さんや平家さんのほうがもっとセクシーかなぁとは思ってました、ここだけの話。
その時のアヤカさんですか?言葉では「恥ずかしい〜」とか言ってましたけど、
右手に突撃英会話用のマイク、左手にマイクのような形の棒?を持ちながら、私を見てたんですね。
物凄い目でした。全身舐めまわすような視線で。
昔、電車の中で中年のおじさんから同じ視線を受けた事があるんです。
その日は遅くなったのですぐに楽屋を出て帰らなければならなかったんですが、
まさかその時にはこんなことになるとは思ってなかったんですよね。
ハロープロジェクト夏コンサートのリハーサルが始まってからですか?
最初の日に皆さんに挨拶をしてからすぐ、アヤカさんが私のところに来て、
「HELLO!会いたかったよ〜あやちゃ〜ん! それで、どこがSEXYなのかしら?」
って話しかけてきたんです。真っ赤な口紅を塗りながら。
私もウソだって言えるわけありませんから、
「目とか・・・」
って言ったら、アヤカさん本当に嬉しかったらしくて、
「あやちゃんもこの口紅塗ってごら〜ん」
って勧めてくれたんです。断るわけにはいきませんから、
「ちょっとだけ薄くぅ・・・」
って言って塗ってもらったんですけど、アヤカさんの私の唇を見る真剣な目が
怖く見えてきちゃって、下唇だけで遠慮したんです。
リハーサルが終わってからもアヤカさんの視線が気になったので、
どうもその場にいるとマズイなって直感的に思ってトイレに逃げたんです。
戻ってみるとアヤカさんは帰る準備をしてて、内心ホッとしました。
そしたら最後にアヤカさん、私達若手に「それじゃあね」って言いながら手を振ったんですね。
コードがついたピンク色のマユみたいな物をブラブラさせながら。
私も振らないわけにいけませんから手を振ったんです。
そのときアヤカさん、私の方を見てニタァ〜って笑いました。
今でもその顔は忘れられませんね。あれが始まりでしたから。
そして、そのときに自分のバッグが違う位置に置かれてたのが
そんなに気にならなかったことが間違いでした。
気づいた事ですか?
バッグの上に、暖まった小さな電池が置いてあったことですかね。
次の日からが始まりでした。
会場でリハーサルがあって、開始を待ってる間、楽屋でハロプロの人達とお話してたんです。
始めは三人祭で一緒の石川さんとお話してたんですけど、吉澤さんが来ると石川さんは、
吉澤さんと一緒に着替えのためのしきりのされた空間に入っていったんです。
入った後、石川さんの声が聞こえて分かりました。
多分「抱いてHOID ON ME」の喘ぎ声の練習をしてたんだと思います。
その後、私は平家さんといろんなお話をしました。
話の内容ですか?ずっと平家さんを見てたんで覚えてません。
そしたら、携帯電話の話になったんです。そしたら平家さん
「みんなも携帯持ってる?」
って私や辻さん加護さんたち若いメンバーに聞いてきてくれて、内心ガッツポーズでした。
だって、こういう話をした後は絶対に携帯の番号交換するじゃないですか。
平家さんと私のホットラインが完成すると思うと嬉しかったんです。
もちろん、そんなことは顔に出しませんでしたよ。
「みんなの電話番号まだ知らへんからなぁ」
って平家さん言ってくれて、私もつい
「そう言えば、私まだ先輩方の電話番号知りませ〜ん」
って言ったんですよ。そしたら突然、楽屋に“トロピカ〜ル恋して〜る” が流れたんです。
当然すぐに私の着メロだって気付いて携帯電話に出ると、
楽屋内に凄い大きな声がこだましたんです。
「HELLO あやちゃ〜ん。イッツ・ミー、ディス・イズ・アヤ〜カ」って。
楽屋の向かいのテーブルからアヤカさんが手を振ってるんです。
トロ恋CDをうちわ代わりにしながら。その時は正直言って驚きましたよ。
どうしてアヤカさんが私の電話番号知ってるんだろうって。
それ聞こうとした瞬間にアヤカさんが私達のほうに携帯持ちながらやってきたんです。
左手に口紅のついた“トロ恋”歌詞カードを持って。そしたら急に、
「いや〜昨日教えてもらったあやちゃんの電話番号が合ってるかどうか心配だったのー。
本当にあってて安心したわ〜」
ってアヤカさん言ってきたんです。返す言葉が出ませんでしたよ。
「教えてません」なんて言ったところで、電話番号知ってるんですから説得力ないですよね。
だから、私も頷くしかありませんでした。「そうですね」って。
そしたら、平家さんが
「あらあらどないやの?なんでアヤカがまつーらの携帯番号知ってんの?」
ってアヤカさんに聞いたんです。そしたらアヤカさん、
「そう。昨日のリハーサル後にあやちゃんが“アヤカさん電話番号教えてください”
って言うから教えたの。平家さんまだ知らなかったの?」
ってビックリしたように聞くんです。そしたら平家さん、
「まつーらも別に“誰も電話番号知らない”ってウソ言わんでもええやないの〜」
って笑いながら言ってきて・・・。反論したかったんですけど。
えっ?仲のいい加護さんに証明してもらえば良かったって?
もちろんそう思いましたよ。でも加護さんの顔を見たんですけど顔を横に向けるんです。
そして手には、簡単には手に入りにくそうな高級養毛剤みたいな物を持ってたんです・・・。
あっ、そういうわけなんだって、納得しました。
そしたらアヤカさんが、
「あやちゃんそう言えば私の番号NO1に登録するって言ってたよね。あれはウソよね?」
って言うんです。聞いた瞬間、携帯のメモリに目をやりました。
・・・その後の事はあんまり覚えてません。
ただ、平家さんの
「まつーら、アヤカの事が好きなんちゃうの?」
って言うのが頭の中でリフレインしてたのと、アヤカさんが頬張ってた姫路城せんべいの
甘く香ばしい匂いだけは覚えていています。