88 :
第3章:
「イヤ!止めてください!!離して!!」
「いいから大人しくしろ!」
「やめて…お願い…、やめて…」
「お前そっち持て、俺はこっち持つから…。ほら暴れんなよ、
静かにしないと、ぶん殴るぞ!」
若い男らの恫喝に梨華は全身が硬直した。その瞬間だっ
た。いとも簡単に梨華の身体は、男二人に抱えられると、
車内から出されてしまった。
梨華は屈強な若い男たちに抱えられたまま、地下駐車場
の片隅にある専用エレベーターに連れて行かれる。その
入り口には、いつものようにニヤけた笑いを見せるあの
男が立っていた。
89 :
第3章:02/02/12 03:36 ID:???
「おっ!ご苦労。そのまま部屋まで運んでくれ」
「わかりました」
「止めてください」
「ダメダヨ梨華ちゃん。我儘なんだから、ハッハッハッ」
中年男のふざけきった笑い声が地下駐車場に響き渡る。
すると梨華の脚を抱えていた若い男が、その男に話し掛
けた。
「我々もいいんですか?これから」
「ウン?今日はダメだな。まぁいつかな。」
「いいじゃないですか。一回で良いですから。じゃあ見
るだけでも…」
「何言ってんだ、見世物じゃあねえぞ。ダメだ。まぁ、
今日はこれで勘弁しろ」
そういうとニヤけた中年男は、財布から大量の札束を無
造作に取り出すと梨華の脚を掴んでいる男のズボンのポ
ケットに突っ込んだ。
90 :
第3章:02/02/12 03:38 ID:???
「あとで二人で分けろ。な?」
「こんなにッスカ…有難うございます」
現金を見て男たちの態度は豹変した。そして抱えている
梨華の脚を舌先でペロリと舐めると厭らしい声で囁いた。
「今日はこれだけで勘弁してやるよ!」
最悪の光景が梨華の前で繰り広げられている。これから
始まるであろう悪夢が梨華の頭の中でリプレイが始まる。
梨華は自身の意識が次第に遠のいていくのを感じていた。
エレベーターの到着を告げるチャイムが駐車場内に鳴り
響いた。梨華の眼にまるでスローモーションのようにユ
ックリとそのドアが開くのが入る。まるでコマ送りのよ
うにユックリとユックリとエレベーターのドアが開いて
いく。
梨華は心の中でいる筈もない、いやくる筈もない「彼」
の事を思い出し、声にならない声で叫んでいた。
「お願い、助けて。お願い…」
届かない梨華の叫びが悲しくこだまする。剥き出しの
コンクリートに囲まれた地下駐車場にニヤけた男の乾
いた笑い声を残し、屈強の若い男二人に抱えられ、梨
華の悲しげな姿がエレベーターの中に消えていった。
<続>