小説練習用スレッド α

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158第5章

「ご苦労だった。」
「何か、飲みますか」
「ウン?いや、構わないでくれ」

中年男性は読み終えた書類をテーブルに置くと、短くな
った煙草を灰皿に押し付けた。男は、小さく息を吐くと
徐に立ち上がり窓際に近づいた。

遠くに見える東京タワーの灯かりをぼんやりと眺めなが
ら、物思いに耽るかのようにめを薄くしていた。

「実は君に、折り入って話があるんだが・・・」
「・・・何か報告書に不備がありましたか」
「いや、そうじゃない。完璧だよ、書類は。・・・まぁ君に
見て貰いたい物があるんだ」

そういうと男は、ソファーの片隅に置かれていた黒革の
カバンを手に取ると、その中から数枚の書類が入ったフ
ァイルを取り出すと若い男のデスクに置いた。
159第5章:02/04/16 03:25 ID:???

「高森君?」
「ハイ…。何でしょうか?」
「うん…。まぁいいか。取り敢えずこれを見て貰えるかね」
「これは?」
「まぁ、いいから。ちょっと読んでもらえるかな」

高森は訝しそうにその書類を手にとると、バインダーに
挟まれたそれをパラパラと捲って見た。乱雑な文字が踊
るその書類に書かれた文字列を漫然と眺めていた。

男は高森が読み終えるのを待ちながら、胸ポケットから
ショートホープを取り出すと火を灯すと煙を燻らせてい
た。

時が過ぎていく。

高森は読み終えた書類を何度か読み返すと、ふっと溜め
息をついた。少しばらけた書類をトントンとテーブルで
馴らすと、綺麗に整え、デスクの中央に置いた。


<続>