松浦、お前もこないだのハロプロ大変革のことは驚いたんだろうけど、
ごっちんや圭ちゃんの卒業もビックリだけど、オイラ自身もこの配置替えには
ビックリなんだよね。
なんで、ごっちんや圭ちゃんだけでなく、ミニモニやタンポポまでもオイラから
取り上げてしまうんだろう。
一番辛いのは、オイラが作ったとも言うべきミニモニを追い出されることだ。
それとミニモニ法でとも言うべき、身長制限を破ってまで高橋を追加したことが
オイラにとっては、もー、信じられないことだった。もー、なんでよ?って感じ。
ほら。ミニモニにミニじゃない奴がいたら、ミニモニじゃないじゃん、それ。
それはオイラの美学に反する。それは許し難いことだ。
それに、高橋は、あんにゃろ、あの時オイラを肘で押しのけやがった。
生放送で。人前で。みんなが見てる前で。きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ。
ミニモニもそーやってオイラを押しのけやがったんだよ。
それに………、まぁいーや。これだけのことがあれば、高橋殺したって
別にいーだろ?な?お前もそう思うだろ?
うんって言ってくれよ。頼むよ。松浦。
矢口さんはそう言ってわたしに少しずつ近づいてきた。
その右手にナイフを持って。
そのナイフでわたしを刺そうとしているのかな。
もう、刺されちゃっても良いかな、って思ってきた。もう疲れたよ。
「な?松浦。見逃してくれるよな?」
わたしは何も答えない。
矢口さんは半笑いの顔に汗をダラダラ流しながら言った。
「でないと、オイラ、お前を…」
腕を伸ばすとナイフが刺さる距離にまで近づいてきた。
矢口さんにだったら、もう、殺されたって良いです。
わたしはまったくの無防備だった。覚悟していた。
しかし矢口さんは、そこから近づいてこないし、ナイフを刺すわけでもなく、
わたしの前に立ってるだけだった。表情は半笑いで、汗ダラのまま。
でもよく見ると半泣きのようにも見えるし、流してる汗は涙かもしれない。
矢口さんは口を何かパクパク動かした。
オイラヲコロシテクレ
え?そんなことできない、と首を振ると、矢口さんはナイフを持ち替え
それを自分のみぞおちに「ぐぐる」と刺した。
「矢口さん!」
わたしは崩れ落ちる矢口さんの体を受け止めて、そう叫んだ。