亜弥　日記

あんな、あんたのコンサートのアンコールでな、ウチとMCやったやんか？
そん時な、ウチな、『松浦を泣かせろ』て指令を受けててん。
アンコールで盛り上がって感極まって松浦あんたが泣けばな、エエ画になるやんか？
DVDにも残るし。そんでウチもあんたを泣かそうと盛り上げたんやけど、盛り上げたんやけど、
あんたもうちょいのところで泣きひんやんか。もうちょいやったんやけどなー。
でも、もうアカン、この娘は絶対泣かへん、意地でも泣かんわ、て思てな、
諦めたんやけど、まさかその罰ゲームがこんなんやって、ウチもマジでビックリやで。
あ、あんたがこの件で責任を感じることはないからね。ただ単にウチが与えられた
指令に対し、現場で結果を出せなかっただけやからね。これはプロとして失格やから。
つんく♂さんもそこら辺かなり現場主義なとこあるしね。
ま、あんたにやったら負けても悔しくはないねん。あんたはウチとは違ぉて実力も運もあるし、
時代の波っちゅーの？それに上手いこと乗っとるしね。
それにあん時ウチの控え室の前であんたの頭噛んだってんから、もっと運気も上がるやろ。
え？ほら、獅子舞に頭噛まれると何やエエんやろ？そーゆーつもりで噛んだってんけどな。
だから松浦、もう泣かんでエエねん。もー、今泣くんやったらあん時泣いたってーな。
て嘘うそウソやって。もう泣くなて。
それにしても、ウチ死ぬ間際なんによー喋るわー。でも喋っとかんとな、喋っとかんと
喋り終わった途端、死にそうでメッチャ怖いねん。怖いわー。
松浦、これからウチの分まで頑張るんやで。絶対ウチの後追って無茶なことしたらアカンよ。
死んでもウチお前のこと松浦のこと応援しとるからね。
……アカン、喋ること、もうあらへん。
…

しゃべり終わったとたん平家は、口からごぼごぼごぼと血を吐き、息を引き取った。
亜弥は最期まで泣いていた。

平家さん、ごめんなさい。