少し強い風が吹いていた。
平家と亜弥はある距離をおいて対峙していた。
それは互いの表情がハッキリとは認識できない程度の距離だった。
しばらくは双方とも動きはなかった。いや、動けなかった。
風が止んだ。音が消えた。
その時、一人は銃を撃つ体勢、もう一人はナイフを投げる体勢になった。
ぱん
あたりに乾いた音が響き渡った。
一人が後ろに倒れた。
恐る恐る目を開けると亜弥は、自分の投げたナイフが左胸に刺さって仰向けに
倒れている平家が目に入った。
平家さん!と言って亜弥は平家に駆け寄り、体を抱きかかえた。
もしかしてワザと外し…
やっぱり泣いてると銃て当たらんもんやなぁ。
どうして、どうしてこんな………
亜弥は泣いていた、と言うより亜弥はこのシーンの最初から泣き続けていたのだった。
なんや、松浦、あんたやっぱり泣けるんやなぁ、と平家は小さく呟いた。
あたりまえじゃあないですか、平家さん、平家さん……
そやったらウチも指令を、クリアでけてたかもなぁ。
あ、平家さん、さっきは教えてもらえなかったけど、平家さんはなんでこんな
罰ゲームになったんですか?指令って何だったんですか?