川o・-・)ノ<はい〜、時間を少し巻き戻しますよ〜。
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「おまたせ〜」と言いながら後藤は楽屋に入ってきたが、そこには誰もいなかった。
お?よっすぃ〜まだ?と思ったものの、まいっか、先に着替えとこう、と
ゴマキペンギンの着ぐるみに着替え始めた。
ソロになりたいってつんく♂さんに言ってから、もうすぐ一年になろうとしている。
つんく♂さんからはまだ何にも聞いてない。ちゃんと考えてくれてるのかなー。
当然メンバーの誰もこのことは知らないし、だから誰にも相談できない。
ただ私はつんく♂さんからいつゴーサインが出るかを待っているだけだ。
ソロになったら・・・
春は娘。系(モーニング、カントリー、ココナッツ)と非娘。系(松浦、メロン、平家)
で別れてツアー回る予定だけど、私はどーゆー風になってくんだろう?
松浦と一緒にツアー回ることになるのか?まさか?
それとも第3部隊として新たに編成されるのかな?
となると、藤本(ふじもっ)ちゃん?んー、藤本ちゃん松浦と仲いいけど私とはどーなんだろ?
やっぱり、松浦、メロン、藤本ちゃんってアイさが系っていうか、妹オーディション系で
仲いいんだろうな。あ、藤本ちゃんは違うか。むしろ4期メンバーに近いのか。
っということは、よっすぃ〜や梨華ちゃんみたいな感じでいいのかな。
感情とか考えてることが表に出にくいタイプだったから、一人でモー娘。入ったときから
人付き合いというか人間関係には苦労したなー。いろいろ考えてるうちに考え過ぎちゃって
体が動かなくて、それがクールとか冷たいって思われちゃって、それが辛かった。
気の利いたことをポンポン言えればいいんだろーけど、アドリブなんて上手くできないし。
でも完全にソロになるんだから、今までみたくチームワークとかバランスとか気にしないで
自分を出していかないといけないんだよね、んー・・・
そんなことを考えつつ後藤は、ゴマキペンギンの窮屈な着ぐるみを着替え終わった。
よっすぃ〜遅いなー。
「失礼しまーす」と楽屋にはいると、そこには後藤さんと紺野ちゃんが
何だかモメていた。
「私、アイスクリーム買ってって言ったじゃん」
「だからコレ買ってきたんですけど」
「ここちょっと見てみ?ラクトアイスって書いてあるじゃん、ラ・ク・ト・ア・イ・ス」
「で、でも、ラクトアイスの方が脂肪分が少ないので年頃の女の子にも安心、ですよ」
「そんなことはどーでも良いの。だったら最初からアイス食べないって」
「・・・」
「・・・」
気まずい雰囲気。こうちゃく状態だ。
「あの、二人ともどうしたの?」
「あ、松浦。ここからどー落とせばいい?」
「は?」
「そうですよ、オチはどうすればいいですか?」
「オチ?何かの練習?」
「そ、ミュージカルの」
「ミュージカル?・・・じゃあですねぇ〜
わたしだったら、氷菓でひょうか。
・・・・・・・・・・だめ?」
凍てつくような寒い空気が楽屋内に発生した。
「ダジャレかよー、ボツだね」
「ボツですね、最悪です」
「じゃ、紺野、よっすぃ〜ドコいるか探しといて」
「はい、じゃあ、失礼します」と紺野ちゃんはわたしを一にらみしてから出ていった。
そんな目でわたしを見ないで〜。
ブリザードが吹きすさぶ楽屋の中、わたしと後藤さんは二人してただ立っていた。
「後藤さん、なんでわたしを呼んだんですか?」頭を雪で白くさせながらわたしは言った。
「あ、そーそー、今度松浦ん家行っても良い?」と答えた後藤の膝下は雪に埋もれていた。
「も、もちろん、ぜひ、来てください」頭にどんどん雪が積もっていった。
「私、料理してあげるよ。ハンバーグで良い?」下半身まで埋もれていった。
「良いです良いですわたしに料理教えて下さいよ〜」雪であ、頭が重くなってきた。
「うん良いよ。いつが良い?」ついに胸元まで埋もれてしまった。
「えと、こんど○日に美貴スケ来るんですけど、この日じゃだめですか?」重て〜。
「藤本?んー、ちょっと、その日より前の、×日に、この日にしようよ」く、苦し〜。
「はい、わかりました。×日ですね」もはや肩にまでも雪が降り積もって肩も重い。
「材料とかはさ、私買っていくから、楽しみにしててねー」完全に埋もれて雪山の中。
「は〜い、よろしくおねがいしま〜す」肩も重いってのは片想いと掛かってるの?
「後藤さーーん、吉澤さん、いましたよーー」
紺野ちゃんが雪をかき分け楽屋に戻ってきた。
「ごっつぁ〜ん、何やってんの〜、もうペンギン録り始まるよ〜」
猛吹雪の向こう側から、吉澤さんの声だけが聞こえた。
「はいはい行く行く今行くよーー。じゃね、松浦」
雪山から飛び出し、後藤さんは楽屋を出ていった。
わたしはたくさんの雪を頭やら肩やらに乗せたまま、楽屋に一人残された。
今行くよーってゆわれたら、くるよーってゆわなアカンやろ、と思いながら。