X月X日
今日はりんねさんのところに行った。
「こんにちわぁ〜、元気ぃ〜?」
「お〜、良く来たね〜。まぁ、そこ座って」
「調子はどう?」
「ん〜、まぁまぁ、かな?」
「そーぉ、良かった」
「そっちはどーなのよ」
「うん、こっちもまぁボチボチでんな」
「なにそれ」
「えへへへへへ」
元気そうで良かった。
「奈央、クロちゃん、ちゃんとエサ食べた?」
「ん〜、やっぱりわたしじゃダメみたい。やっぱり里佳さんじゃないと」
「あんた、また隠し事してんじゃないの?」
「そんなこと、そんなこと無いよ」
「ホントか〜?あと、あんた、ちゃんと両親説得したの?」
「え?あ、あぁ、えと・・・」
「まだやってないの!あんた、また瑞樹さんにウソつくの?」
「えと、瑞樹さんはアメリカに行っちゃってますよ」
「もー、うっさい!あんたなんか東京に帰んな」
そう、りんねさんは50歳を過ぎた頃からボケ始め、自分を「美・少女日記2」の
里佳、わたしを奈央だと思いこんでいた。
わたしは月に数回、ここの老人ホームに、りんねさんを見舞いに来ている。
わたしもあの頃のことを思い出しながら、りんねさんに合わせて演技する。
「絶対に帰らない。里佳さんはわたしのことが嫌いだから、そんなことゆうんだ」
「・・・・あたし嫌いじゃないよ。奈央のこと好きだよ。でも」
「でも?・・・何?」
「なんか素直に言えないっていうか・・・・」
「・・・・わたしも、里佳さんのこと・・・」
今日は上手くいきそうだ。
そこに何故か梨華ちゃんが部屋に入ってきた。
「はぁ〜い、リカと言えば、チャーミー石川、石川梨華でぇす」
あっちゃ〜。何しに来よんねん、この人。って、何ゆうてんねん。
あ、りんねさん、パニクっとる。
「梨華?里佳?リカ?りか?理科?・・・・・・あたしは誰?誰なのあたしは?」
興奮のあまり血圧が上がったのか、りんねさんは胸を押さえて、うずくまってしまった。
わたしはすぐに担当の先生を呼んで、りんねさんをベッドに運んでもらった。
「また興奮してしまいましたね。今日はこのへんでお帰り下さい。
今度来られた時、また話相手をしてやって下さい。この時しか感情が出てこないですから」
「はい・・・・・・また来ます」
わたしは老人ホームを後にした。今度はあさみちゃんと来よう。
って、梨華ちゃんどこ行きよった?・・・・・・あのアホ逃げよったな。