>>125のつづき
けっきょく、犯人はこなかったみたいでした。
犯人がけいかいして、これから二度と部室が荒らされないのなら、
いいことなのかもしれませんが、せっかくのわたしたち
(特に飯田さんと矢口さん)の苦労がむだになってしまったので、
わたしはとってもざんねんでした。
でも、その日の放課後のことです。わたしが部活のために
体育館に向かっているときに、さっき教室で別れたばかりの亜依ちゃんから
メールが届きました。
『きょうもやられてたよ』
(やられてたって、部室荒らしのこと?)
バレー部の練習開始まで少しだけ時間があったので、
わたしはいそいでソフトボール部の部室に行きました。
部室のまえには、飯田さんと矢口さんもいました。
「カオリね、矢口と一緒に鍵開けに来たんだよー。そしたらね、
ほら、こんなになってたの。」
部室の中では、カゴが床によこだおしになり、いちめんにボールが
ころがっていました。
「昼間のうちにやられたのれすね?」
「それなんだけどね、カオリね、朝部室を見たとき、
念のためにドアに小枝をはさんでおいたの。
でもね、さっき開けたときにも小枝はそのままだったの。
だからね、朝からいままでに、だれもドアを開けてないってことなの。」
「密室殺人や……。」
「誰も死んでねーっつーの!」
亜依ちゃんと矢口さんも、思いもかけないできごとに
どうようしているようでした。
「確かに簡単には信じられないことだけどね、
昔の有名な探偵の言葉に、
『ありえないことを排除して最後に残ったものは、
それがいくらありそうにないことでも真実だ』
っていうのがあるの。
だからね、この場合、
"今朝部室を見てから今までの間に"
"ドアを開けずに"
このカゴを床に落としたとしか考えられないの。」
たしかに飯田さんの言うとおりかもしれません。
でも、そんなこと、ほんとうにできるのでしょうか?
「きっと……タンポポ公園のたたりなんや……。」
「加護ぉ、そんなもんあるはずないだろー!」
「でもぉ、これはじまったんは、ちょうどタンポポ公園
ツブされた日やったんですよー?」
「偶然だよ偶然!」
わたしも、矢口さんとおなじで、そんなことあるはずがないと
おもっていました。
でも、飯田さんは言ったのです。
「カオリね、それって案外当たってるんじゃないかと思う。」
このとき飯田さんは、わたしたちがぜんぜん考えてもみなかったことに
気づいていたのでした。