リーゼにLOVE

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397既出かも知れないが、転載。
叔父は入院していたとき、同じ病棟に先天性の呼吸器不全で
病院からほとんど出たことのない、8歳の男の子と「友達」になりました。
男の子はTVの「ゾイド」が大好きで、特別室にいた叔父の大きなTVで
毎週楽しみにしていたそうです。

男の子はゾイドのおもちゃを一つだけ持っていました。
ご両親が立派な方で、「病気でも、決して甘やかさない」考えで
そうそう買い与えなかったのです。
そのため、彼のかっこいいゾイドはいつも枕と戦っていました。

「デパート行って、なんだか知らねえけどマンガのゾイドのおもちゃで
 一番強い、一番悪い奴買って来い、高くてもたかが知れてる。」

叔父は息子にそう言いました。
なんで悪い奴なんだ?と息子が訊くと

「正義の味方には、強くて悪い奴が必要だ。
 しつけも大事だけど、男の子にヒーローを枕と戦わせちゃなんねえ」

数日後、言いつけ通りジェノなんとかという悪いゾイドを
息子が買ってきたときには、もう叔父は昏睡に入っていたそうです。
孤独な晩年の締めくくりに、小さな子供の喜ぶ顔を見たかったろうに

「俺が子供のときそんなもんねだったら、ぶん殴られたけどね。」

と息子は葬式のとき話していました。