自分でバトルストーリーを書いてみよう!!

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84赤羽広々
>>80の続き

「ガニメデ」(4)

闇の中に、機械獣達の足音が木霊する。地響きのような低い音。耳鳴りのような音。
ウィッテは顔をしかめる。またこの音か。もう、聞き飽きた。その音は、共和国軍の2月
大攻勢以来数ヶ月聞き続けた音、ゾイド壕の中でただ息を潜めるしかなかったウィッテの
頭上に、いつまでも降り注いだ砲弾の炸裂音にそっくりだった。コクピット前面のモニ
ターは暗視モードに切り替えられている。大型赤外線レーザーサーチライトが前を行く小
隊長機を見えない光で照らし出す。その更に前にも何台ものゾイドが列を成して、暗闇の
中を行進していた。

「工兵の連中、よくもここまで掘ったものだな」

ウィッテは砲手席にマイクを通して話し掛ける。砲手席は主砲の根元、レッドホーンの背
中にある。頭部にある操縦席とのコミュニケーションには、このマイクだけが頼りだ。ク
ラウスは、ええ、とだけ答える。ウィッテは苦笑した。あいつ、まだあがってやがる。

帝国軍工兵部隊が数十台のモルガを動員して掘り進んだこのトンネルこそ、ガニメデ要塞
に陣取る帝国軍の切り札だった。ガニメデ要塞は、東はガニメデ湖と大湿原、西はゼネバ
ス山地の険しい山々に挟まれた天然の要衝だ。ここを攻め取るには、ガニメデから南へ走
るたった1本の街道に布陣せざるを得ない。東西を自然の障害に阻まれたこの狭隘な街道
では、どんな大軍も縦に細長い陣形を取るはずだ。側面が、ガラ空きになる。ウィッテ達、
帝国軍機甲部隊が今進んでいるこのトンネルは、街道西側の山麓、敵の側面へ続いていた。
共和国軍は撤退し続ける俺達を得意になって追撃してきたのだろう。罠とも知らずに。

頭の芯に響くような耳鳴りは、まだ続いている。散々ぶっ放してくれたよな。操縦桿を握
る手が強張る。百倍にして、返してやるよ。