自分でバトルストーリーを書いてみよう!!

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80赤羽広々
>>78の続き

「ガニメデ」(3)

後方からの砲撃支援を任務とする自走砲ゾイド。それが帝国軍のカノントータスに対す
る評価だった。帝国軍は戸惑った。砲兵が最前線に姿を現すことなど、ありえないから
だ。妙なのはそれだけではない。横に広がる帝国軍戦線に対し、共和国軍はカノントー
タスをいくつかの集団に分け、それを順番に並べたような縦陣形を取ったのだ。あれで
は戦線の一部にしか攻撃出来ない。それに後続のカノントータスは攻撃すら出来ないで
はないか。奴らは何を考えている?帝国軍の疑問に、カノントータス部隊は実力で答えた。
強力な砲撃支援を得ながらカノントータス部隊は帝国軍戦線の一点に攻撃を集中、これ
を突破し、更にその奥深くへと切り込んだのだ。

縦深突破。充実した重砲兵力と、装甲砲兵カノントータス、これらがあって始めて実現
出来る作戦だった。これまでの戦術概念を大きく塗り替えるこの作戦の前に、敵主力と
の決戦を前提とした帝国軍機甲部隊は反撃すら不可能だった。横に大きく広がった陣形
では、一点突破を図る敵に攻撃を集中することが出来なかったのだ。統制を失ったレッ
ドホーンが慌てて攻撃に駆け付けても、カノントータスの集中砲火を浴び、1機ずつ撃
破されていった。小型ゾイドに1機ずつ、なぶり殺しにされる。誇り高いレッドホーン
乗りにとって、これ以上の屈辱はなかった。

「ウィッテ大尉。いよいよですね」

背後から声が掛かる。まだ顔からあどけなさが抜け切っていない若い兵士が、ウィッテに
歩み寄ってくる。身のこなしが固い。大分、緊張しているようだな。ウィッテはその若い
兵士、愛機レッドホーンの砲手であるクラウス少尉に笑顔で応える。彼はまだ若いが、こ
の数ヶ月間の経験が彼を一人前の機甲兵に育て上げた。信頼出来る砲手。頼もしい愛機。
役者は揃った。

「今日の主役は俺達だ、少尉」

ウィッテは落ち着いた、力強い声を掛ける。そう、今日はあのドンガメ共の好きにはさせない。