>>273の続き。盆休み明けの一発。
『誇りと刃と復讐と(23)』
それは絶望に近い。
ハイドは、シールドライガー『オードリー』を操ってジェノザウラーに追いすがっていた。
近づいても駄目。離れても駄目。絶妙なレンジで、ジェノザウラーにまとわり着く。これが彼の役目だった。
今、現在ジェノザウラーは中距離レンジでの攻撃スタイルを徹底していた。絶大な威力を持つ移動砲台というわけだ。基地に向けてあらゆる角度で砲撃をかましてくる。
操縦桿も握りながら、彼は人より鋭い危険に対する嗅覚と闘っていた。
ひしひしと感じる危険。何時死んでもおかしくない状況。
さっさと尻尾を巻いて、一目散にこの場所から居なくなりたい。
今の俺に、それはきっと許されるはずだ。この狂った状況下だから・・・!!
操縦桿に掛かる力が弱まり始まる。しかし、ある言葉がよぎる。
『彼女は、何故、俺などを救ったんだろうな。』
そんな答えは決まりきっている。
奥歯をぐっと噛んで、歯軋りを立てる。今までの俺なら、逃げていた。だが・・・
「くそ、卑怯だぜ。中尉。あんな話をされたんじゃ、逃げられねーじゃんかよぉぉぉ!!」
前を見て、操縦桿を再び押し込む。自分で、馬鹿だと思った。しかし、妙にそれが心地よかった。苦笑いと共に、周囲を探る。
ジェノザウラーは近い。守る様にしてセイバータイガーが1匹付いている。セイバーの砲撃をすべてシールドで受け止めて、流す。
「くそっ、くそっ、くそ!!」
相殺しきれない激震が襲い掛かるコクピットの中で最早、悪態もそれだけだった。
迫り来るジェノのニ連装パルスレーザー砲の砲撃を寸での所で避け切って、一応、反撃として、背中のニ連装加速ビーム砲をぶっ放す。当たらない。ハイドは逃げ足は一級品の腕前を持っていたが、如何せん攻撃のセンスは皆無だった。
そのまま振り切る様に、ジェノザウラーはバーニアを噴かして、長距離ジャンプを決める体勢を取った。セイバーがそれを援護するかの様に突っ込んでくる。
「逃すか、パチモンがぁぁぁ!!」
右腹側部の八連装ミサイルを展開し、全弾発射。だが、それはセイバーによって、叩き落とされる。
「邪魔くせぇ。」
そう言った矢先に警告音。背後からだ。状況確認。シールドライガーDCS『セラフ』。
同輩のミゼルフの援護射撃だった。DCSの脚は、余計な物を積んでいるだけ遅い。やっとハイドの『オードリー』に追いついたのだ。
ミゼルフは、的確な射撃で、ジェノザウラーに向けて砲撃した。
頑丈な装甲といえど、DCSの大型ビーム砲を受けて、無傷と言う訳には行かない。
ジェノザウラーは、長距離体勢を崩して、その一撃を避けた。
しかし、その代わりと言ってはないんだが、口内が光り始めた。
「く、荷電粒子砲か!」