自分でバトルストーリーを書いてみよう!!

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182弔い
>>178の続き
誇りと刃と復讐と(10)

 遅い夕飯の後、アドッサはまた昔、『ルーク』の居た3番格納庫に来ていた。
何もない格納庫を見上げる。
何も考えず・・・。時間に身を任せる。基地内の慌しい動きが、遠く感じられる。
撤退を含めた基地の対応は、ゾイドのパイロットを除いた総動員で今も行われている。
ゾイドも方も急ピッチで整備、基地防衛用に換装を受けている。
そして方面軍本部からの連絡もなく。
こちらからの呼びかけも「基地を死守せよ。援軍は送った。」との連絡のみを返してくるという。無論、援軍など影も形もない。
アドッサは手にした物を見やる。
ブランデーとグラスが二つ。ブランデーはそこそこな値ごろなもので、アドッサが持っている酒の中では、一番上等なものだった。
不意に後ろで足音がした。複数の音、恐らく二名。振り返って確認する。
「やっぱ、ここじゃん。言ったっしょ。」
「中尉・・・。またここですか。」
 聞きなれた声だった。暗がりの中から現れたのはアドッサの小隊の部下の生き残りハイドとミゼルフだった。
 二人ともアドッサとは違い、パイロットスーツ姿だ。
 彼らは敵がくれば、出撃をする。アドッサは後ろから指揮を執るのみだ。
「こんな時間にどうした、休息命令が出てるはずだが。」
「いえ、眠れないものでして、夜風に当たろうかと。」
 というミゼルフの隣で、ハイドは目ざとく、アドッサの手にした物を見つけた
「あー、隊長、酒なんか飲んでる。」
 一応飲酒は、いつ敵が攻めてくるかどうか分からない待機命令中は禁止だ。
 というか、アドッサ自らがその指示をミーティングで出している。
「正確には、まだ飲んでない。一杯だけだ。お前らもやるか?」
 ブランデーの瓶を掲げてみせる。
「飲みますよー。」などとハイドはいつもの通り答えたが、ミゼルフは、その顔を濁らせた。その誘いの意味を理解したようだ。
「・・・弔い酒ですか? ルークの廃棄処分が決まったんですね。」
「あぁ。奴とは長いからな。」
 アドッサはブランデーをグラス半分、注ぐとその場に置いた。
 そして残ったグラスにも半分、注ぐと天に掲げてから一気に飲み干した。
 喉を焼く液体が、アドッサに胃の中に押し込まれる。
「そーいや、隊長と『ルーク』の話ってあんまり聞いたことないっすよ。5年も付き合えば、何かいろいろ会ったんじゃないっすか?」
 グラスを受け取りながら、ハイドが尋ねた。
「話した事はなかったな。」
 アドッサは、空を見上げた。そこには満天の星空が広がっていた。
「弔いついでに特別に話してやろう。まぁ座れ。」
 そう言って、最後にミゼルフにグラスを渡すと、近くにあった岩に腰掛ける。ハイド、ミゼルフもそれに習う。
「そうだな、出会いからだ。それには『ライトニングクィーン』、この名を出さなければ話は始まらない。」