自分でバトルストーリーを書いてみよう!!

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123赤羽広々
>>115の続き 遅くなりました……。

「ガニメデ」(12)

大質量の鋼鉄同士がぶつかり合う轟音。突き破られ、引き裂かれていく装甲が上げる金切
り声。戦場に満ちるあらゆる騒音を圧倒する、雷鳴のような響き。それは単なる鉄の衝突
音ではない。鉄の生き物が命を削り合う音、互いに殺し合う機械獣達の叫びだ。ウィッテ
は全身を砕かれるような衝撃と大音響に打ちのめされながらも、目を見開き続ける。ウィッ
テの眼前でレッドホーンの角がゴジュラスの腹部を押し破り、突き刺さっていった。奴は?
すぐに真上を見上げる。ゴジュラスはあっけに取られたのか、微動だにしない。だがその
目に点る赤い光は、消えなかった。見る見るうちにその光は溢れ出そうなほどに増幅し、
ゴジュラスは両腕を高く掲げる。叩き潰す気だ。ウィッテはマイクに怒鳴った。

「撃てえっ」

零距離射撃。レッドホーンの主砲弾では貫くことが出来ないゴジュラスを倒すには、刺突
攻撃後の密着した位置から砲弾を撃ち込むしかない。76ミリ連射砲がばら撒く砲弾をかわ
し、繰り出される両腕と尻尾をくぐり抜け、やっと掴める勝機。角を突き立てられたゴジュ
ラスが、怒り狂って振り上げた腕をレッドホーンに叩き込むまでの、ほんのわずかな間の
勝機。その勝機に、全てを賭けた。閃光。破砕音。眩い光の中で、何かが飛び散る。

巨大な機械獣の命が、鋼鉄の体から消えていく。ただの鉄の塊になっていく。赤く焼けた
鉄が冷めて固まるように硬直してしまうと、体をゆっくりと傾けた。そのゾイドは地響き
と土煙を残して大地に倒れると、二度と起き上がることはなかった。胸にぽっかりと開い
た大きな穴が、壮絶な最期を物語っていた。ウィッテはその最期を、しっかりと見届けた。
戦場での死はごく当たり前の事だ。だが、死にゆく命に敬意を表する者は必要だ。自分が
殺した者なら、尚更。

闇の中に砲火がきらめく。まだ数機のゴジュラスがレッドホーン達を相手に奮戦している。
味方を援護するため走り出すレッドホーンのコクピットから、ウィッテは何気なく自分が
倒したゴジュラスを見た。何かが、引っ掛かる。駆け出そうとするレッドホーンを止め、
目を凝らした。地面に寝そべるゴジュラスの全身をよく確かめる。長くて太い尻尾、穴の
開いた胴体、鋭い爪、そして大きな頭。おかしい。キャノピーは閉じたままで脱出した様
子はないのに、パイロットが見当たらない。これではまるで……。ウィッテは息をのんだ。
なぜゴジュラスは76ミリ連射砲を全く撃たなかったのか。なぜわざわざ敵の真正面に姿を
現したのか。俺達が戦っているゴジュラスは、無人ゾイドだ。そして恐らく……。

青白い太陽が突然昇ったようだった。ウィッテは空を仰ぐ。ウルトラザウルスから撃ち出
されたいくつもの星弾が、数機のゴジュラスと、それに群がる20機近いレッドホーンを、
青白い光でくっきりと照らし出した。もう間違いない。だが、信じられなかった。ゴジュ
ラスを捨て駒にするなんて。

「散開!」

もう、遅かった。