1 :
名無し獣:
誕生の秘密もまだほとんどがベールにおおわれていて未知な部分が多い。
生物学上の進化などは近世になって解明が大幅に進んだが、歴史学的には、ほとんど解明するには至っていない。
それは、この星が幾度となく体験した大地震、火山爆発、地殻変動によるところが大きい。
すなわち、大自然や宇宙のきままな営みに、阻まれて歴史は語り継がれることなく、溶岩の下に埋もれ、地底にのみこまれてきたのだ。
いま、ここにあかされる歴史は、だから、わずか300年から400年にすぎない。
そして、その歴史は、血ぬられた戦いの歴史である。
約50ほどの部族がゾイド星の中央大陸に広く散らばり生活していた。
それぞれの部族は、環境にあわせて自分たちのメカ能力を生かし狩をし、作物を育てていた。
その代表的な部族が、山岳地帯を中心に暮らす鳥族、海に住む海族、砂漠に生きる砂族、深い地底にかくれ住む地底族などであった。
かれらが自給自足し孤立して暮らしてきた理由は、何回となくくりかえされてきた天変地異にあった。
また、それぞれのテリトリーに食物や水が十分にあったため自分たちの領域から外へ出ることもなかったのである。
むしろ、それが身を守る方法でもあったのだ。
しかし、ZAC(ゾイド星暦)1600年いらいゾイド星は不気味な静寂を保ち、小規模の火山爆発は見られたが、それも1700年代に入ると鳴りをひそめた。その結果、ひとつのテリトリーにとどまっていたのでは生活できなくなってきた。
〔領国の時代〕
1850年頃、部族間でお互いに不足している能力を補いあい食料の増産をはかる共同体が生まれはじめた。
この星人たちが「自然は敵」「星人と動物たちは仲間」という長く苦しい自然との戦いでいつの間にか身につけた教訓を実行に移したのであった。
やがて、部族間の平和的な統合や合併が進められ、領地が広がり、小さな国(領国)が誕生した。
しかし、平和な時期は長く続かなかった。
優れた能力を持つ領国が、他の国を吸収し強大になってゆくに従って、弱小の領国がそれに抵抗したり、内輪もめからひとつの国が分裂するなどの悲劇が頻発しはじめた。
1900年に入るやいなや、優れた星人の奪い合いやメカの盗み合いが領国間で日常的になった。
そこで、領国の主たちは、狩猟や輸送のためにのみ使っていたメカたちを改造し兵器へと転換しはじめた。こうなるともう歯止めがきかなくなる。改造競争が激化し改造すればそれを使いたくなるのが常で、国境でのこぜりあいは絶え間なくなり、やがて始まる大規模戦の伏線となっていった。
いつの間にか、ゾイド中央大陸は二大勢力に色分けされた。一方はへリック(風族の族長)を主にいただき、政治的に平和解決を望む平和連合軍であり、もう一方は、地底から大陸征服の野心を抱く戦闘派ガイロス(地底族の家系)をリーダーとする連邦軍であった。ゾイド大陸は、一進一退の攻防に明け暮れ、女、子供たちは戦火で傷つき、領国間の裏切り、寝返り、クーデターの発生、密告がとびかい星人の心は乱れ、かつて平和と愛に満たされた星は、疑いと裏切りの星へとその姿を変えようとしていた。
へリックは、星人の心がすさみ、大陸の緑が焼かれ、逃げまどう罪なき子どもたちの姿に心を痛め、自らに課した平和のための戦いにしだいに疑問を抱くようになった。
わずか100年昔、この星は緑がおいしげり、花が咲き乱れ、愛がすべてを支配し強い憎しみも、すばらしい愛によって治めてきた。この愛すべき星が、火薬と血の匂いに満たされている…。詩人でもあったへリックはある日、部下にも告げずに小型メカ(トリ型)を操りゾイド大陸をあとにした。時、1955年のことであった。へリックが不在になった平和連合軍は、影武者をたてへリックの不在によく耐えた。1年半の月日が去り、ゾイド大陸が夏に入ろうとしたある日、大陸の空は見たことのない戦闘メカによっておおわれた。未知のメカに乗った未知の生物は、ゾイド大陸を予告もなしに攻撃しはじめた。長い戦乱に疲れ果てていた星人は、なすすべもなく逃げまどうばかりであった。外敵と戦う力など残されていなかったのである。ただ、ガイロスとその一派だけが星人たちをはげまし外敵とよく戦ったのである。一気に崩れるかと思われた大陸軍は、激しい攻撃に耐え、しだいにひとつにまとまって反撃すらしはじめた。こうして30日がたとうとしていたある日傷ついた一機のトリ型メカが大陸軍の基地に降りたった。機のコクピットからあらわれたのはへリックであった。
「ガイロスよ、我々の戦うべき相手は、この豊かな大陸をねらう異国人たちだ。私は長い旅をしてきた。ゾイド星は大きい、この星をとりまく宇宙も壮大だ。我々はほんの小さな大陸にすむ小さな生きものにすぎない。みにくい争いをしているうちに我々はすべてを失うことになるだろう。目を開け!ガイロス」
みにくい争いに明け暮れていた星人は祖先ののこした教訓「星人と動物たちは仲間」を思い出し、ヘリックの下にひとつに集まった。各部族はひとつにまとまり、外敵にたちむかっていった。ヘリックは全軍の先頭に立ち、「聞け星人、我らを襲うこの外敵は寒い国からきた。奴らの弱点は、暑さだ。もうすぐ、奴らがもっとも恐れる夏がくる。それまでなんとしてでも耐えぬくのだ」。
ガイロスは決して征服を見るだけの野心家ではなかった。いまなにをなすべきかをさとりヘリックの指揮をサポートし、よく部族をまとめ、兵士を励ましヘリックとともに先頭に立って一気に大陸の空を外敵から奪回していった。
ゾイド暦7月25日(夏始)。この日から、大陸の気温は性格に10度上昇する。
その日の朝がきた。真っ赤な夏空に敵のメカの姿はなかった。外敵は一朝にして滅亡したのである。ゾイド大陸に平和が帰ってきた。
ガイロスはヘリックに忠誠を誓い、自らの持つ能力を荒れはてた大陸の再建と平和にのみ役立てることを約束した。星人は、大陸を救った恩人ヘリックを父と敬い国王としてむかえた。ここにヘリック共和国が誕生したのである。国王は民主政治体制をしき、議会を開きすべてを話し合いで決め、すべての部族を平等にあつかい、ゾイド大陸はかつての平和な日々を取り戻していった。ヘリック王は結婚をし、子どもをさずかった。その子はヘリック二世であった(後のヘリック大統領)。そして王はもう一人の嫁をむかえた。その女性とのあいだに生まれた子はゼネバスと名付けられた(後のゼネバス皇帝である)。
ヘリック二世の母は、平和を愛する風族の名門ジェナス家の出身で政治力にたけた血をひいていた。父ヘリック王は、かつてこの大陸が直面したみにくい争いの時代の再来と外敵の攻撃にそなえ、もう一人の子ゼネバスをもうけたのである。ゼネバスの母は勇猛な戦士の血をひくガイロスの妹であった。ヘリック王は自らの血を二つに分け、文武(政治と武力)両道の国家体制を兄弟の力を一つに合わせて守らせようと考えたのである
父はヘリックに武力の必要を説き、弟ゼネバスには政治の大切さを教えた。ヘリック王は、78歳でこの世を去った。
ヘリック二世18歳、ゼネバス16歳の時であった。王は、二人の子供に一通の手紙をのこした。
我が息子ヘリックとゼネバスに記す
父、ヘリックは次のことをお前たち二人に伝えておく。ここで知り得たことは、生涯二人だけの秘密とし、いかなることがあろうとも、他人に話してはならない。たとえ、最愛の母であろうとも。
お前たちが生まれるはるか昔、この大陸は部族同士がみにくい争いをくりかえしていた。私は、そのような争いに疲れ、トリ型のメカで旅に出た。しかし、私は決して星人を見すてたわけではない。ある計画を実行するためであった。それは、自分たちの利益ばかりを考える身勝手な部族をひとつにまとめるための危険な賭けだった。私は、その昔冒険の旅に出たことのある長老から聞いた話をたよりに、北をめざした。「熱の海」「燃える空」「鉄砂の原」いくつもの危険をくぐりぬけて、たどりついたのは、この星のもうひとつの大陸、暗黒大陸であった。すべてが、厚い鉄の氷にとざされた大陸には、憎しみと戦うことにのみ炎を燃やす軍団がいた。私はその軍の団長とひそかにコンタクトし、豊かな大陸が南にあり、そこでは今、長い間争いが続いている。いま攻撃すれば赤子の手をひねるようなものだとしかけたのだ。奴らは私の策略に乗った。
あとは、お前たちが歴史で学んだとおりだ。もちろん、奴らが夏の暑さにもろいことを知ったうえでの策略であったことは言うまでもない。結果、この大陸はひとつにまとまり、平和が訪れた。しかし、その為に罪もない星人の命がたくさん失われた。平和のための犠牲というよりは、その死は私の悪魔の策略による犠牲であるとずっと心をいためてきた。私の行為は卑怯であり、私は決して星人に尊敬される資格のある人間ではないと。わが息子たちよ、この大陸の平和はお前たちふたりの心ひとつにかかっている。
父が犯したあやまちを二度と繰り返してはならない。
ヘリックよ、策略のみをもって世を治めようとしてはならない。
ゼネバスよ、武力のみをもって世を治めようとしてはならない。
父より
最愛の息子、ヘリック、ゼネバスへ
7 :
別れ:2001/07/16(月) 12:25
ZAC 1978年
父、偉大な王ヘリックの死後、共和国議会はヘリック二世の希望により王位を空位にし兄ヘリックを第一代の共和国大統領に、弟ゼネバスを共和国軍最高司令官に任命した。
父の時代からそうであったが、議会は武力よりも文を、すなわち軍事力よりも政治力を重んじ大陸は争いもなく平穏な日々が続いた。しかし、ゼネバスのように戦うことを運命づけられて生まれてきた若者にとっては決して満足できることではなかった。
ありあまる力をもてあまし、戦いの演習をしたり狩りをしてはうさを晴らしていた。ときに、星人をまきこみ傷をおわせたり、狩猟を禁じられている動物を殺したり、たいせつな作物を踏み荒らしたりと、その乱暴ぶりが目立ちはじめた。議会は、おもいあまってヘリック大統領に進言、大統領はいく度となく弟ゼネバスをたしなめたものだった。
「兄ヘリック。ならば我軍に外の国を攻撃させてくれ。ありあまる力を有益に使えるのだから一石二鳥であろう。」
「おろかな。お前の手なぐさみに、大切な星人を理由もなく危険にさらすことができるはずもなかろう。」兄弟の意見はいつも正反対であった。
しだいに、兄は弟に不信を抱き、弟は兄に不満の炎を燃やし始めた。
そして、兄弟にとって、星人にとって不幸で最悪の時がきた。
弟ゼネバスが、議会と大統領の許可をえずに勝手に軍を動かし、大陸を発ち他国への侵略をはかろうとしたのだ。ことは事前にもれ、大統領の親衛隊がかろうじて阻止し、兄弟は議会で対立した。
「兄ヘリック。私はなんのために生きているのだ。この燃えたぎる戦いの血をだれにも消すことはできない。」
「弟ゼネバス、平和の尊さは、失ってはじめてわかるものだ。平和ないまこそ耐えることが最も勇気ある戦いなのだ。」
「私は政治は苦手だ。心やさしき議員のみなさま、自分たちの国をなぜもっと大きく豊かにすることが悪なのだ。星人たちも、それを望んでいるのではないのか。私はゆく、すばらしい土産を持って帰ってきてやろうではないか。」
「まて、弟ゼネバス。キミの軍はキミのものではない。この星人のものだ。」
「ほう、しかしこの議会は兄ヘリックの思うままではないか。私はゆく。」
「ならば、その前に私を倒してからゆけ。」
「望むところだ。決闘の申し出をたしかに受けたぞ。」
兄弟による1対1の決闘は、ヘリック王メモリアルコロシアムで行われた。戦いのプロであるゼネバスにとってヘリックは相手ではなかった。勝負は一瞬であった。しかし勝ったのはヘリックだった。立ち会った議員と親衛隊員が大統領につき、コロシアムからゼネバスとその一派を追放したのである。議員たちの行為は大統領の全く感知しないことであった。
が…「兄ヘリック。戦わずして策略で勝つか?やはり父の血は争えないな。」ゼネバスの無念の叫びはコロシアム全体にこだました。…弟ゼネバス。これは私の望んだことではない。私は今日、お前に倒されるつもりできたのだ。兄弟のみにくい争いで、この平和な星を危険にさらしたくはないのだ。私が倒れればお前もきっと悪夢から目覚めることだろう。私は逃げも隠れもしない。いつでもお前との決闘をうけて立とう。ヘリックの心の叫びはゼネバスにとどくはずもなかった。
ゼネバスは去った。ガイロス家の一部を引き連れ、大陸の中央山脈を超えたのだ。ゼネバスの母は、自らの命を断ち息子と行動を共にしなかった。
父ヘリック王の描いた理想郷はその死後からわずか3年で崩れ去ったのである。ゼネバスは大陸の西の険しい山地に巨大な山城を築き、自ら王位につきゼネバス帝国となずけた。そして、ガイロス家の勇猛な兵士たちはゲリラ戦を展開し、他の部族を遅い略奪し戦闘メカと兵士を増やし、戦力を着実にたくわえていった。
レッドリバー(赤い河)の川岸にたち、なつかしいセシリア山の頂きを見た時、ガンビーノは、故郷が手の届くところにあるのを知った。偉大な王ヘリックの時代、ガンビーノは若い士官として大陸の平和に尽くした。ガイロスの信任が厚く、いかなるときも敵に背を向けたことがなく、猛将の異名で呼ばれていた。ガイロスの死後はヘリック王の希望により、ゼネバスとゼネバスの母を守る親衛隊の隊長としてその任についた。兄弟の不幸な別れに際しては、幼少のころから我が子のようにみてきたゼネバスと運命をともにすることを決意した。それは、決してヘリック大統領に逆らうものではなかった。地底族は、生涯をその支配者に捧げることが運命づけられていたガンビーノが率いる特殊中隊はゼネバス帝国から陸路を通り、レッドリバーにたどりつき川を逆のぼりヘリック共和国に奇襲をかける作戦行動中であった。真っ赤な血のような色をした川(金属イオンのとけた色。川の名前の由来にになっている。)は静まりかえっている。向こう岸にある共和国守備隊が駐屯する砦は、ガンビーノたちの行動に全く気づいてはいなかった。
未明、中隊は二手にわかれ、ガンビーノの隊は渡河し、別の隊はグレイ湖を迂回しさらに上流へむかった。ガンビーノ隊が川を渡りきった時、まだ砦は深い眠りについていた。
「ワレ キシュウニ セイコウ セリ」
ガンビーノから帝国ゼネバスのもとに無電がうたれたのは攻撃の開始された直後だった。
ガンビーノが自ら操縦する司令機レッドホーンの砲が火を吹いた。
深い眠りについていた砦は、蜂の巣をつついたような大混乱におちいった。
レッドリバーという自然の要さいに囲まれて敵襲など予想もしていなかった油断をつかれたのだ。指揮系統の乱れから、共和国の精鋭も新兵の集団にすぎなかった。その中でターナー突撃隊長は冷静に部下をまとめ、戦況の把握を急いだ。砦の司令塔からながめ、攻撃は帝国軍の特攻隊であること、そしてその指揮官が猛将ガンビーノであることをす早く判断した。ガンビーノはターナー中尉のかつての上官であり師でもあったのだ。「奇襲はち密な作戦と大たんな決断によって勝負が決まる。」…かつての師の教えをターナーは司令塔の上でかみしめていた。苦戦におちいり、混乱の極にたっしていた砦はターナー中尉の的確な指示により体制を整え、ハイドッカー、ゴルドスなど共和国メカの火力により反撃に転じた。ターナーは突撃隊を再編成するやいなや、砦の門を開きうって出た。ガンビーノはその勇敢なかつての部下を認め、ここで戦火をまじえねばならない宿命に涙した。そして勇猛な活躍に敬意すらおぼえた。
激戦はその日の夜まで続いた。陽がしずむとともに、消耗しきった両軍は…帝国軍は川を渡り、共和国軍は砦にひきあげた。
砦はついにおちなかった。しかし奇襲は成功であった。帝国軍はこの作戦で共和国のメカをより多く破壊することに目標を置いていたのだ。その目標は充分に達成できた。
砦で激戦がくりひろげられていた頃、帝国軍の分隊はメツラ中佐の指揮のもとヘリック共和国の首都をめざしていた。ゼネバス皇帝はいった。「この作戦は共和国に少しでも多くのダメージを与えることにある。我が兵の血を流すことなく敵兵の血を一滴でも多く流すのだ。そして、決して帝国は勝利の日まで戦いをやめることがないという我々の決意をヘリックと共和国のこしぬけどもに知らしめるのだ。」
メツラーのカミソリのような目は首都にけむられていた。しかし、メツラー隊は首都のはるか手前で行く手を阻まれた。レッドリバー砦からの「メーデー」(SOS)発信を受けた首都防衛軍がはなった偵察メカ・クライドラーが空からメツラー隊の動きをキャッチ、攻撃にでたのである。空からの攻撃に対抗できる装備が未熟な帝国軍はあっけないほど敗走、メツラーはジャングル地帯をたくみに逃げ、レッドリバーの本隊と合流した。これはメツラーにとって屈辱的な敗北であった。彼の共和国に対する憎しみはますます燃えあがった。
レッドリバー作戦は、帝国、共和国の両軍が正面から力と力で激突した初めての合戦であった。戦いは約4カ月続いたが、共和国軍が沿岸警備隊を投入することによって形勢を逆転させ、ついにガンビーノに作戦の中止を決意させた。この作戦は共和国のヘリック大統領にゼネバスのかたい決意と帝国軍のメカがあなどりがたいものになっていることを感じさせた。
ガンビーノは遠く故郷の山なみをながめ、再びこの地を踏めるのはいつの日か…反撃の日のおとずれることを誓いつつ戦場をあとにした。
ヘリック大統領は、ゼネバスのいうような政治だけの人物ではなかった。偉大な父より帝王学を学び、勇気と愛そして知恵を備えた情熱あふれる青年大統領だった。弟との決闘のときに、議員たちが味方したのも、そのすぐれた人格によるものであって断じて策略によるものではなかった。父が彼におしえた帝王学のひとつに「戦わずして勝つ」があった。それは、敵を知りつくし先手をうち、敵の行動を封じることであった。
弟ゼネバスが共和国の武力強化をすすめていた時にも、兄ヘリックは、一方で敵をさぐるための偵察部隊を編成し、隊員を育てるとともに、メカの開発にも力をそそいだ。皮肉なことに、兄と弟が戦ういま、共和国の偵察部隊はその能力を大いに発揮しはじめたのである。偵察部隊司揮官ブラントンは虫族(インセクト)の出身で、クモ型メカグランチュラを操り敵陣に深く潜入、地味な活動ながら重要な任務をこなしてきた。闇でも目がきき、独特の触覚を持ち、風の向き、匂い、温度、波長(生きものが発する電波)を感知し、どの方向に、距離はどれくらいで、部隊の規模は、メカの種類は…まで瞬時に読みとるスーパーパワーをもっていた。それは生きたレーダーであった。帝国軍にとってブラントン偵察部隊ほどやっ
かいな相手はいなかった。
戦闘意欲ではひけはとらないが、装備ではまだまだ劣り、苦戦を強いられている帝国軍のなかにあって、つねに笑いがたえずどんな厳しい任務でも愚痴ひとつこぼさない部隊があった。ひと呼んで陽気なガラモス率いる特殊工作隊であった。火族(ファイヤー)出身であるガラモスは爆発物のプロフェッショナルである。地をはうように赤くのびる炎は、敵陣に音もなく迫りあっという間に焼きつくす。その早業は火族がもっとも得意とする攻撃テクニックであった。初期のころはメカももたず、兵のテクニックのみで戦ってきたが、モルガを設計(発案者はガラモス自身)、完成してからは、敵陣への接近・潜入・破壊がさらに活発となった。とくに緊張が求められる任務であったが、ガラモスの勇気と陽気さは隊員たちをリラックスさせ作戦の遂行は多くの成功をみた。共和国兵士は幾度となく戦場に響くガラモスの豪快な笑い声を聞いたことだろう。しかし、おしいことは、工作活動がまだゲリラ的な効果しか発揮できなかったことだ。大きな作戦の成功を握るような重要な存在になるまでには、まだ年月が必要であった。
ガラモス隊は一度出撃すると何カ月も戻らない。しかし、帝国の星人は風の便りに彼らの活動を耳にし、小さな部隊でありながら巨人のような力を発揮するガラモスたちに賛辞を送るのであった。
13 :
帰還:2001/07/16(月) 12:28
傷つき、疲れ果てた共和国軍の兵士が故郷へ帰ってきた。父は、息子は、兄は、弟は、友は、迎える家族たちの視線は傷ついた隊列にそそがれる。兵士たちばかりではない、戦闘メカも被弾し、焼かれ、ボロボロに傷ついている。そして、愛機に乗る戦士もまた同じだ。戦いの初期のころはまだ小ぜりあい程度であったが、レッドリバー戦役いらい戦かは拡大する一方で、共和国も帝国も日に日に消耗は激しさを増していった。
勝利に歓喜していた星人も、次第に深刻化する被害に家族や友の無事を祈る静かな出迎えにかわっていった。しかし、傷ついたメカはただちに修理して最前線に復帰させなければならない。共和国の工場では次々に運びこまれてくるメカの修理に24時間体制を敷いていた。メカニックたちは使い物にならなくなった装甲をとりかえ、破壊されたり、火力で焼けただれた砲身をクレーンでとりはずしつけかえる作業を必死ですすめている。工場をフルに操業にしても間に合わず、未修理のまま出撃するメカも少なくない。戦っているのは前線の兵士だけではない。工場で働くメカニック、家を守る家族も平和と愛のために戦っているのだ。静かにのぼる朝日を浴びて、誰に見送られることもなく修理の終わったメカが出陣する。彼らが無事に帰還する日はいつくるのだろうか。
発信:ブラントン偵察中隊「ワレ 帝国軍ノ大規模ナ作戦行動ヲ キャッチセリ タダチニ出撃ノ準備ヲ サレタシ」
敵の特殊工作隊の動きが活発になり、帝国軍の作戦行動の前兆と読んだヘリック大統領はブラントンに命じゼネバス軍の動静をひそかに探らせていたのだが、ブラントンの報告は大統領の読みの正しさを証明した。ゼネバス皇帝は、レッドリバー戦役いらい最大規模の作戦行動に出ようとしていた。されは、砂漠を横断し、中央山脈を越え、どとうのように共和国に攻め込もうという一大作戦であった。ヘリックはすでにそれに備え、中央山脈一帯に共和国軍の主力を終結し迎え撃つ陣を敷いていた。ブラントンからの電信にヘリックは「全軍に告ぐ。中央山脈を越え帝国領内へ突入せよ。」の総攻撃の命令を発した。
いままでは、迎え撃つ受け身の作戦に終始していたヘリックは、ここで一気に勝負をかけたのだった。中央山脈を越え侵略する共和国軍、その多くの兵士は初めて目にする帝国軍の領地である。自分たちの作戦をさかてに取られたゼネバスは、首都決戦をさけ急きょ砂漠地帯に陣を敷いた。ここに、ゾイド史上最大の作戦「砂漠の戦い」が開始された。投入されたメカ、主力メカ100機、その他約5000機。両軍兵士合わせて5万人。砂漠はこうして血に染まっていった。
15 :
祈り:2001/07/16(月) 12:29
流砂に埋もれてゆく両軍のメカ。砂漠の戦いは、ヘリックの計算どおりにはゆかず、長期戦になった。帝国軍はよくふんばり押されてはかえす一進一退のこうちゃく状態であった。長い補給路を確保しなければならない共和国軍も長期化する戦いにあせりの色を隠せない。
血なまぐさい戦場にも静かな夕暮れ訪れる。両軍の砲火がやみしばし休息の時がきた。神族の祈り師たちのもとに兵士がひざまずき、今日一日の無事を感謝する。彼らがひとしく祈るのは、朝まで元気に語り合っていた戦友の冥福であり、遠い故郷にいる家族のことであった。戦いに疲れ果てた兵士は戦闘メカの陰で眠りについている。夕日をたよりに故郷への手紙を書いているものも少なくない。ヘリック大統領は危険を犯して最前線に司令本部を設営して全軍の指揮にあたっていた。時には、先頭に立ち突撃することすらあった。共和国軍の戦意は依然として高かったが、消耗は目に見えて深刻になっていった。大統領の信任厚いアイザック戦闘大隊のアイザック大尉も愛機ゴドスのコクピットで敵陣をにらみながら長引く砂漠戦に疲れを隠せなかった。砂漠に適している軽量で強力なメカの開発が必要だ…。大尉はどうしても攻め切れない砂漠という自然の要さいに恐れすらいだきはじめたいたのだ。激戦に明け暮れる、この大陸に向かって、はるか未知の宇宙空間から一隻の宇宙船が音もなく接近しつつあることを、まだ誰も知らなかった。
16 :
不時着:2001/07/16(月) 12:30
ゾイド中央大陸を南北に走る中央山脈。星人たちはその山脈を誰いうこともなく恐竜の背骨とよんでいた。険しく、天候が変わりやすいため、めったに人の入ることもなく、鳥族と神族が支配をしていた。砂漠の戦いも長期化し、共和国、帝国の両軍は何か打開策がないかと互いに探りあいはじめていた。そんなある日、グランドバロス山脈のほぼ中央で、両軍偵察部隊の白兵戦が発生した。小さい戦いであったが深い密林だったため朝から夕方まで攻防がつづいた。
両軍の兵士が、ものすごい音をきいたのは、夕日が西の空を染めはじめたときだった。兵士たちは、戦いを忘れ音のする空をみあげた。それは火を吹いて落ちてくる巨大な鳥だった。爆音は兵士の耳を破り、巨大な鳥はグランドバロス山脈の平地にぶつかるように不時着した。両軍の兵士は、それまでの攻防を忘れ未知なる飛行物体へ走り寄った。爆発した飛行物体からは、星人と同じ体形をした生物が傷つきおりてきた。その生物こそ、はるか6万光年のかなたにある惑星、地球から飛来した地球人であった。兵士は、その生物たちを奪うように捕虜にした。その捕虜たちこそが、ゾイド大陸の戦いの鍵を握る存在になろうとは、だれも考えもしなかった。未知の飛行物体の不時着はゼネバス皇帝、ヘリック大統領につたえられた。二人の頭に浮かんできたのは、かつてこの大陸が争っていたときに来襲してきたと父からきいた敵のことであった。両軍はどちらからともなく兵を引き、長かった「砂漠の戦い」は休戦状態になった。
17 :
接触:2001/07/16(月) 12:31
ZAC2029年
不時着した宇宙船は、ゾイド星とは太陽をはさんで正反対に位置する銀河系の惑星「地球」からきた「グローバリーV号」で、船内で発生した内乱によって墜落したことを報告したのは、最初に彼らと接触(コンタクト)したブラントン偵察隊長であった。そして、捕らえた地球人のなかにすぐれた科学者で武器開発のエキスパートであるクローネンブルグ博士の存在をつきとめた。大統領はさっそく博士を官邸に招いた。クローネンブルグ博士がグローバリーVに乗船したのは単純に学者としての興味からであった。不幸にして内乱がおき、不時着した未知の星が戦時下にあり、いまその一方の大統領に会見しようとは・・・博士はなにか運命めいたものを感じた。
この星で驚いたことは、地球では何億年も昔に滅亡した恐竜のフォルムをしたメカ生体が活躍していることと、その武器の粗末さであった。
「大統領閣下」博士はいった。「我々地球人は宇宙開発のためにさまざまな形で科学技術を進歩させました。
武器も例外ではありません。いま、お手元にあるレーザー銃もほんの一例です。お望みとあらば、レーザー銃もビーム砲も製造いたしましょう。私たちはレーザー砲にかかせないルビーがこの星に存在していることはすでに調査済みです。」地球人の一博士の一言は、ゾイド星の戦いを変えた。ヘリック大統領は博士の意見をとりいれて首都の北東に巨大な軍需工業地帯をつくった。それは、星人のなかから選出された優秀な研究員や技術者で構成された組織的なもので、工場の研究、開発、そして生産は時を待たず軌道に乗った。一方、ゼネバス帝国に捕らえられた地球人ランドバリーも皇帝に対して悪魔の囁きをしていた。
18 :
再開:2001/07/16(月) 12:32
共和国軍がクローネンブルグ博士たちの力をかりて戦闘機械獣の改造をすすめていた時ゼネバスもランドバリーの助言に従って密かにメカの改造を急いでいた。ある日、ゼネバスはミサイルという武器のテストをするために砂漠へでた。そこは、かつての戦いの残骸がさらされ絶好の試射場になっていた。地球人のつくったミサイルとはどんな武器なのか、ゼネバスはその時を待った。地球人の指導者ランドリーはレッドホーンに装着したミサイルに発射の合図を送った。目標ははるか2kmかなたの共和国メカの残骸である。白煙をのこして発射されたミサイルは一瞬にして正確に標的をとらえ完璧に破壊した。「スバラシイ」ゼネバスは思わず心のなかでつぶやいた。共和国軍の敗走する姿さえ目にうかんだ。その時である。逆の方向から、ピカッと光が感じられたと思った瞬間、ミサイルを発射したレッドホーンのコクピットが吹き飛んだ。ゼネバスは光の方向に双眼鏡をむけた。そこには、同じように双眼鏡でこちらを見ている兄ヘリックの姿があった。ヘリックは、地球人のつくったレーザー砲の試射を見るためにここ砂漠の戦場へときていたのである。はからずも弟ゼネバスのミサイルを目にすることになったが、それ以上に弟の姿を別れていらいはじめて双眼鏡にとらえ、懐かしさがこみあげてきた。
しかし、10年ぶりに見る弟の目は憎しみに燃えていた。そして、共和国同様、帝国も地球人の指導によって、武装の強化をすすめていることを知り、事態はいっそう悪化していることを認めざるをえなかった。兄弟の再開は新たなる戦いのはじまりであった。
19 :
参謀:2001/07/16(月) 12:33
ゼネバスはあせっていた。せっかく完成したミサイルという新型の地球武器もそれをうわまわる共和国軍のメカによって色あせてしまった。兄ヘリックはさぞかし自分を笑っていることだろう。そう考えるだけで、むしょうに腹がたってくる。そこへ、共和国の部隊がレッドリバーを越えて移動中という情報が飛び込んできた。
ゼネバスは、これぞ千載一遇のチャンスとばかりに全軍を移動しグランドバロス山脈の北端に待ち伏せの陣を敷いた。さあ来いヘリック、帝国軍の威信をかけて全軍でお前の軍をたたき潰してやろう・・・ゼネバスはあせる気持ちから冷静な判断力を失っていた。
帝国軍が迎撃の陣を敷いていた頃、中央山脈を越えて共和国の軍が最新装備のPBOZ(ゾイドゴジュラス)を先頭に雪崩をうつように帝国の首都を目指していた。レッドリバーにまわっているはずの共和国軍の大軍が砂漠を横切り一気に首都に迫ってきた。主力部隊がかけている首都防衛軍はあっというまに蹴散らされてしまった。ゼネバス皇帝に、緊急通信がうたれたのはもちろんである。ゼネバスの首都は険しい山城である。切り立った岩や崖が自然の城壁となって、共和国軍の激しい波状攻撃をくいとめてくれる。地上からの攻撃でも、空からの攻撃でもやすやすと落とされることはない。ゼネバスは、首都からの電信で初めてレッドリバーの敵はおとりであり、ヘリックにまんまとはめられたことを知った。首都は激しい砲撃をうけ、城壁は崩れ城も大きなダメージをうけたが、主力部隊の戻るまでは耐えた。共和国軍は帝国軍が戻るやいなや深入りせずに軍をひいた。
ヘリック大統領は、地球人の進言によって、作戦参謀としてブラッドリー将軍をむかえていた。おとり作戦をすすめたのは将軍であった。「大統領閣下、これは陽動作戦といいまして、敵のうらをかくのに効果があります。」将軍の作戦は、見事に成功した。ヘリックは、将軍の作戦能力を高く評価し、将軍にアドバイスを求め、軍の編成についても近代化をおしすすめる決心をした。
共和国軍の陽動作戦にまんまとひっかかり首都は壊滅的な被害を受け、帝国の星人は皇帝以上にあせりと不安をいだきはじめていた。軍部の一部に不穏な動きが出はじめたのはそんな時だった。ゼネバスは苦しい財政のなかから、復讐の炎を燃やしつづけるために、星人の暮らしをかえりみず機械獣改造のための秘密工場をつくるなど、資金を湯水のごとく注いだ。地球人ランドバリーの口車にのせられ、大陸征服の意欲はいやがうえにも高まった。とりわけ、憎むべきヘリックはぜがひでもこの手で倒さなければならない。ゼネバスの頭のなかには、すでに帝国の星人のことはかけらもなかった。ゼネバスが秘密工場に入り浸りになり首都を留守にしていたある日、ガンビーノの部下の中隊がクーデターを起こし皇帝の館を占拠したてこもる事件がおきた。烈火のごとく怒ったゼネバスは急ぎ首都にたちかえり、ガンビーノを討伐隊長に任じ、自ら部下の始末を付けるよう命じた。ガンビーノは、ゼネバスの命に背くことはできなかった。しかし、部下たちがやむにやまれぬ気持ちから反乱をおこしたこともわからないではなかった。皇帝の館に入ったガンビーノは、部下を説得しひそかにあらかじめ手はずを整えておいた脱出路から彼らを逃がした。そして、自らは館内で命をたった。
「星人は、戦いに疲れております。皇帝閣下におかせられましては、この無益な戦いをはやくおさめ、兄上との和解の途を開かれ、昔の平和な大陸に戻されんことを、老兵の一命にかえてお願いいたします。なお、我が部下のご処置は、私の命にかえて寛大に取りはかりくださいますよう重ねておねがいいたします。」ガンビーノの遺書をゼネバスは破り捨てるや、逃げた反乱兵に賞金をかけ「一人残らず、捕まえてわしのまえに連れてこい!」と命じたのだった。ゼネバスの改造熱は部下の内乱とガンビーノの死いらいさらに高まった。星人を狩りだし工場で強制労働につけさせ24時間体制で機械獣の強化を急いだのだった。帝国は暗くそして狂気の国へと変わっていった。
21 :
危機:2001/07/16(月) 12:34
中央山脈の最高峰ターボット山の頂きに銀色をした巨大な皿が帝国の首都にむけて建設された。レーダーであった。共和国軍の電子探査師団は師団長にブラントンを任じ、このレーダーサイト(基地)の指揮官には、同じ虫族のモーリス少尉があたっていた。少尉はブラントン同様、独特の探査能力を持ち、地球人の開発したレーダーを活用することでその能力は一層みがきがかかった。いつものように任務についていたモーリスは、レーダースクリーンに不思議な影をとらえた。モーリスのそれからの行動はすばやかった。RMZ-12ガイサックに飛び乗るや影に向かって発進していた。予感、不吉な予感が働いたのだ。果して彼の予感は的中していた。
砂漠用に迷彩を施したガイサックは、真っ赤な大軍を認めた。「EPZ-01(レッドホーン)だ、それも重装備に身を固め、見たこともない大軍だ。」モーリスの暗号通信は、ヘリックのもとに飛んだ。帝国のレッドホーンは、旧式の火器を外し、レーザー砲、ミサイル、ビーム銃など共和国メカと同様のいやそれ以上の装備をフルに装着しているではないか。「いつの間にこんな装備を・・・」敵の情報に明るいモーリスですら、あまりのショックにしばし、呆然としてしまったくらいだった。
ヘリック大統領にとっても驚きであった。ゼネバス帝国の首都攻撃の成功と内乱のぼっ発、ガンビーノの死、などでゼネバス皇帝は当分たちなおれまいと読んだ大統領の誤算であったといえる。ヘリックはただちに共和国議会を召集し国家緊急法(コードネームX-day)の発令をした。(ZAC2033年)X-dayとは共和国メカを緊急時パワーアップする特別指令の暗号である。共和国の主力メカ・ゴジュラス、RBOZ-002(ゾイドマンモス)RBOZ-004(ゴルドス)の装備は最新のレーザー砲につけかえられ装甲も、地球人のアドバイスにより、軽くて、強度の高い超合金に変えられていた。
その一方で、設計段階にあった、超空のメカRBOZ-005(サラマンダー)の生産指令も同時にだされた。
共和国は、いま最大の危機を迎えている。
地球人ジョーの話をしよう。
彼は、「グローバリーV」の乗客のなかで最年少であった。両親と一緒に旅に出たのだが、不時着時にはぐれ生死さえさだかではない。落ち込んでいた彼を励ましたのは、ゴジュラスの操縦にかけては第一人者であるターナー少佐であった。勇敢でメカに精通した少年ジョーはゴジュラスのとりこになり、ゴジュラスの戦闘員の資格を得た。所属は、第二師団であった。改造され強化されたゴジュラスは、全身をレーザー砲やミサイルで包み、軽量化されたことで動きも俊敏になり、戦闘能力は数段ましていた。コクピットは地上から20メートルもあり、目もくらむような高さであった。ジョーはミサイルなどによる砲撃戦よりも、ゴジュラスの両腕を生かした、格闘戦が得意であった。X-day計画発令後、改造第一号のゴジュラスに搭乗し戦場に出たときにも、編隊攻撃の最中に編隊を離れ、レッドホーンの猛攻撃を恐れることなく突撃し両腕で握り潰し、敵陣を大混乱におとしいれる大活躍をした。しかし、ターナー少佐からは編隊を無視し味方を危険にさらしたことから、大きなカミナリを落とされた。カミナリを落とした少佐ですら、ジョーの勇気とすばらしい戦闘能力に舌をまいていたのだが・・・。この時から、少年ジョーは「神風ジョー」というあだなを仲間から頂戴した。仲間たちは彼の勇気をたたえたのである。しかし、ジョーの心のなかには、行方の知れない父と母のことが、そして地球のことがいつもうかんでいた。父と母は無事なのだろうか、遠い地球には帰れるのだろうか。この星ゾイドからは地球は見えない、コクピットから空をあおいでも、飛びかう戦闘メカが見えるばかりだ、目を地上に向ければそこは荒れ果てた戦場が広がるばかりである。
帝国軍の師団編成も着実に進んでいた。
地球人の忠告に従い、ゼネバス皇帝は陸海空の三軍制を敷き兵員も装備も各軍に合わせて充実した。
ゼネバスが共和国軍の最高司令官であった当時、海族の出身でけんか屋ゴートンといわれた兵士がいた。
彼の愛機はエイ型メカであった。
しかし、武装はいっさいなく、陸海空を自由に移動できることから、輸送や伝令業務専門に使われていた。
ゴートンはけんか早いのがたまにきずではあったが、操縦テクニックに優れしかも勇気があった。
ゼネバスとヘリックが別れた時にも「俺にはこっちが性に合いそうだ。」と、気軽に帝国軍に参加した。
それぐらい、戦うことが(…彼の場合はけんかをすることであったが。)すきだった。その、ゴートンがいま乗っているのは最新のメカをフル装備した、戦闘メカEMZ-19(シンカー)であった。
そしてカレはいつの間にか、帝国空軍のエースになっていた。(エイ型メカは本来は、海軍に所属しているが、ゴートン機は空軍に席をおいていた。)
共和国軍のRMZ-08ペガサロスを相手に回してけんか戦法を展開、帝国軍をひっぱる勇士であった。ゴートンはゼネバス(ゴートンは皇帝も自分同様けんかずきなのだと単純に思いこんでいた。)に忠誠を誓い、あたかも共和国メカを狩るハンターのように獲物を攻撃した。鋭い勘と天性の運動神経、とっさの判断力で敵の背後にまわりこみ撃墜する(彼の戦友はこの攻撃テクニックをゴートンターンと名付けた)さまはまさに神技であり、勇敢な共和国兵士もゴートンのシンカーをみると逃げまどうほどであった。ブラッドロックの初戦において、ゴートンはペガサロスを10機以上撃墜大破した。この空戦は、ゾイド史上最大のものであった。しかし、傷つき墜落する自軍の兵士をコクピットのフードを開けてみつめるゴートンの目はハンターのそれではなかった。
そして海族である自分自身がなぜか滑稽でむなしく思えてくるのだった。
シンカーもきっち海に帰りたいだろう…ゴートンは愛機のボディを軽くたたくとフードをしめつぎの獲物にむかっていた。
共和国軍の第一師団の師団長はアイザック少将であった。
そして、この第一師団は第一から第十二大隊に分かれ戦闘師団としては最大規模であった。各大隊の主力メカは勿論ゴジュラスであったが、マンモスやゴルドスも装備を近代化し所属していた。
中央山脈のほぼ真ん中に、一年中雪のとけることのない白い山があり、星人はホワイトロック(白い岩)とよんでいた。アイザック少将は、このホワイトロックが帝国軍との決戦場になることを知った時、ホワイトロックは真っ赤な血で染まりブラッドロック(血ぞめの岩)になるだろう、と部下たちを気づかった。
(ブラッドロックの戦いはここから命名された。)
そして、第七大隊を指揮する、息子のアイザックジュニア、ケンドール(ヘリック大統領が名づけ親)中尉の身をあんじた。若いケンドールは、共和国に士官学校ができて第一期の卒業生であり、いままでに武勲も少なくなく優秀な指揮官として部下の尊敬をあつめていた。しかし、今度の戦いは、天下分目の激戦が予想される。
ケンドールの若い血が騒いでいるぶんアイザックの心は父親としておだやかではなかった。不幸にして父の予想はあたった。
ブラッドロックの戦役のなかでも激戦中の激戦といわれた作戦「血の6月」(ZAC.2036.6)の行動中、ケンドールはレッドホーンを5機撃破。本人もゴジュラスのコクピットで敵のレーザー砲を浴び重傷を負った。
しかし、帝国軍の指揮官機を発見するや、重傷の身をかえりみず、一騎打ちにでたのだ。
ケンドールは勝った、がその凄惨なケンドール機の姿に敵も味方も一瞬言葉を失った。そして、つぎの瞬間どちらからともなく勇者をたたえる歓声があがった。
ケンドールはコクピットで眠るように24歳の生涯を閉じていた。
師団本部で悲報を聞いたとき、アイザックは息子は最後まで勇敢であったか?とのみ部下にたずねた。戦いは、いつも悲しみだけしかのこさないものだ。歴戦の勇士アイザックも愛児を失った一人の年老いた父親にすぎなかった。
ゾイド大陸は5つの海に囲まれている。魚影が濃く資源が豊富なのはアクア海であった。マルガリータ暖流に運ばれてくる魚と暖かい空気はヘリック共和国を潤してくれる。海族出身のアルファーは、その頭脳をかわれて海洋学者として共和国で活躍していたが、戦火がきびしさをましてくるにつれて、学者といえども徴兵をまぬがれなくなった。しかしアルファーの場合はむしろ志願した方であった。
仲間が戦地で戦っているのに、後方で魚の研究をしているのもつまらない、いっそ海の知識を戦いに役だてて見ようと思ったのだ。アルファーはRMZ-10(フロレシオス)を高速艇に改造し、武装を強化して地味ではあるが海からの支援活動に力をそそいだ。沿岸警備隊として高く評価されたのはレッドリバー戦役のときの活動だった。いらい、砂漠の戦いにおいても、そのほかの小規模の作戦においても海からの支援はつづけられ、友軍からは頼りにされる存在になっていた。それも、これも学者アルファーの冷静な判断が生みだした成果だった。
帝国軍に海と空の戦力がない間は我がもの顔で行動できたが、シンカーの出現以来、目に見えてアルファー隊の被害は大きくなっていった。しかも、シンカーのパイロット゛けんか屋ゴートン゛は子どものころからの友だちで、水上メカをいたずらしてはスピード競争に明け暮れた仲間だった。
その友人といまは敵と味方にわかれている。ヘリック湾の警戒任務についていたある日、シンカーの大軍が攻撃を仕掛けてきた。敵の指揮官はゴートンであった。
アルファーは必死の攻防戦を展開しシンカーの首都進攻はくいとめた。戦いのさなかアルファーはシンカーで指揮する友人の横顔を見た。それは、冗談のすきな友の顔ではなく戦う兵士のきびしい顔であった。
ヘリック大統領の国家緊急法(X-day)が発令され、半年ほどたった冬のある朝。鳥族出身で第一空軍師団第三攻撃隊軍曹フォンブラウンは大隊長リヒトホーヘンの本部に呼び出されヘリックの首都から北東へ約200キロのところにある共和国軍の工場へ行くよう命じられた。超極秘の指令であった。フォンブラウンはリヒトホーヘンが最も信頼する部下の一人であり、ペガサロスの操縦をまかせたら右にでる者はまずいなかった。
ペガサロスで急ぎ工場に飛んだフォンブラウン軍曹の見たものは?巨大の翼を持つ戦闘メカであった。
「X-day計画によって完成された空のメカ・サラマンダーだ。」軍曹を案内してくれたのは、大統領その人だった。「このメカを君に預けよう、リヒトホーヘンが推薦した共和国空軍の最も信頼できるパイロットである君に、このサラマンダーを主力メカにした第一攻撃隊の指揮官になってもらいたいのだ。」
その日から、フォンブラウン軍曹の血を吐くようなテストフライトがくりかえされた。その上昇力、その旋回力、その装備どれをとってもいままでのメカにはない性能であった。それだけに高度なテクニックを要求された、そして冷静な判断力も。乗員の訓練も終わりついに出撃の時がきた。
サラマンダーの初陣は、激戦の地ブラッドロックであった。帝国軍のレーダーにその姿がうつった時、帝国軍兵士は恐れおののいた。怪鳥出現の知らせは帝国軍陣地にひろまり、ゼネバスは共和国軍が本格的な反攻作戦に出たことを知った。シンカーの集中攻撃も巨大な翼に阻まれて歯がたたない。赤外線追跡タイプの強力なミサイルも対ミサイル用ミサイルによって着弾前にことごとく落とされてしまう始末であった。
共和国軍はブラッドロックの戦いに勝利の兆しをみて取っていた。帝国軍は逆に長い戦いの歴史のなかで、いまほど危機を感じたことはなかった。しかし、ゼネバスは、決して戦いを放棄したわけではなかった。
共和国軍の新メカPMZ-003、バリゲーターに乗った共和国スパイが、帝国領ウラニスク湾に上陸したのは、サラマンダーの出撃によって戦況が大きく変わりはじめた頃であった。訓練されたスパイは帝国の星人になりすまし、首都に、軍事工場に潜んだ。スパイの一人アンドレはある日工場の作業員から妙なはなしをこみみにはさんだ。それは、工場の技術者がいつの間にかすくなくなっているというのであった。
アンドレはただちに仲間に指示を出し調査に当たらせた。技術者達が送られていたのはオベリア平原の地下工場であることがまもなく判明した。
警戒の厳しくなった所を疑え、それがスパイの原則であった。果たして、その工場は厳重な警戒下にあったが、アンドレは工場へ忍びこみに成功、そこで彼の見たものは、「発信・コードNo.XXX。ワレ、帝国秘密工場ヘノ潜入ニ、成功セリ、工場ニオイテ、組ミ立テ中ノ巨大メカヲ確認。今マデ見タコトノナイ巨大メカ…」
アンドレの通信はそこで途だえ、以来だれも彼の生存は確認していない。
ヘリック大統領は、この通信にただならないものを感じ、急きょ臨時議会を召集するとともに、確かな情報を掴むように重ねて指示をだした。臨時議会における大統領の発言はいままでになく強硬であった。
「議員諸君、重要な決断をする時がきた。帝国は、我々の想像を越えたメカの開発をしたらしい。これ以上、戦いを引き延ばし無益な犠牲をだすわけにはいかない。私は、共和国の全軍を投入した決戦を決意した、どうか議員諸君の承認をいただきたい。」
共和国軍の全軍が、中央山脈のふもとにあるウィルソン湖に集結したのは、ZAC:2038.9であった。
一方、帝国軍もゼネバスの指揮下全軍が西側のふもとに集結、決戦の時をまった。共和国軍の偵察部隊が山脈の尾根づたいに索敵行動中、一人の兵士が「山が動いた!」と絶叫した。確かに山が動いていた、しかしそれこそ帝国軍の巨大メカEPZ-02(アイアンコング)であった。これを機に両軍の戦いは壮烈なものになった。
主力メカ同士の激突10数回、小規模の戦いは数知れず文字どおりホワイトロックは両軍兵士の血で真っ赤にそまった。戦いは10日間つづいた。そして、装備にまさる共和国軍は帝国軍を山脈のゴルゴダスに追いつめていった。ゼネバス皇帝は、敗走してきた山脈の峰々にるいるいと横たわる帝国メカを見つめ初めて、深い敗北感にとらわれていた。
生き残った部下たちを集め彼はいった。
「わしはこの大陸を捨てる、そして新たなる軍を編成し再びこの地に戻る。おまえ達もわしに従うもよし、共和国軍の軍門に下るもよし自由にするがよい。」
最後の日がきた。
ゼネバスは脱出用に用意したシンカーにのっていた。地上では、帝国軍最後の巨大メカ・アイアンコングが皇帝の脱出を支援するために共和国軍の猛攻撃に耐えている。しかしそれも、ミサイルの集中攻撃にとどめを差され、大爆発とともに終わった。ゼネバスは、右手を敬礼の位置にアイアンコングの乗員に敬意をあらわし、シンカーのパイロット、ゴートンに命令した。
「針路、北。目標、暗黒大陸」
ゼネバス帝国の残党は、北にむけて飛びさった。
以上
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彡| | |ミ彡
彡| ´-し`) /|ミ|ミ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゞ| 、,! |ソ < 煽りに耐えてよく頑張った!感動した!
ヽ '´ ̄ ̄ ̄`ノ / \________
,.|\、 ' /|、
 ̄ ̄| `\.`──'´/ | ̄ ̄`
\ ~\,,/~ /
\/▽\/
ゾイドのデータを記載したスレってどれだっけ?
ごめん。あげちゃった。
1985年にTOMYから出版された奴の「HISTORY OF ZOIDS」だよな、これ。
小学館に汚染される前の唯一のゾイド本の...
ところでこれ、全文?一部抜粋?
34 :
名無し獣:2001/07/17(火) 00:51
ファミコンのゾイドやればいい。
投稿時間的に見て某所のコピペだな。
実際のせてるHPはある。自分で探せ。
37 :
名無し獣:2001/07/17(火) 23:30
優良スレage