「ハッハッハッハッハッ!!お前何やってるんだ!?子供のだだっ子の
つもりかよ!!ってえええええ!?」
その時誰もが唖然とした。カンウへ突き進んでいたはずのミサイルが途中で何か
見えない刃に斬られたかのように真っ二つとなり、爆発四散したのだ。
『おおっとぉ!!これはどうした事かぁ!?ミサイルが空中分解を
起こしたぁぁ!!』
『これは竜王真空横一文字の応用ですよフルタチさん。』
『竜王真空横一文字とは一体何ですかヤマモトさん!』
『マリン選手が中央大陸拳法総本山である竜王流の技も使える事は良くご存じですが、
その中の技の一つです。簡単に言うなれば、カマイタチ現象を起こす事によって
離れた対象を切り裂く技なのです。』
古武術にも精通したヤマモトは冷静に解説をしていたが、マリン等を除く皆は全く
ワケが分からなかった。
「ふざけるなぁ!!まるで漫画みてぇなワケわからん事しやがって!!俺ぁ!!
そう言うネット用語で言う所の“厨”っぽいのは大っ嫌いなんじゃぁ!!」
エレファンダーはミサイルに加え、今度はノーズ部分に装備したAZ60ミリハイパー
レーザーガンをも撃ちまくった。が、やはりマリンとカンウは全く動じている様子は
無かった。
「ワケが分からないなら普通に格闘で潰してあげようか!!?」
カンウはバスターロケット全開で急降下を開始した。己そのものをミサイルと化し、
エレファンダー目がけて突っ込んだのだ。しかし、エレファンダーは慌ててその場から
逃げ出した為、その体当たりは不発に終わり、それどころかカンウは思い切り地面に
頭から突っ込み、大穴を開けていたのだ。
『ななななんとぉぉぉ!!カンウが自滅したぁぁぁ!!死なないでくれ
死なないでくれマリン選手と叫びたぁぁぁい!!』
「は・・・はは・・・。バカだコイツ・・・。勝手に自滅しやがった・・・。」
と、胸を撫で下ろしながらニノクスが笑い出そうとした時だった。
突如として闘技場に原因不明の地震が発生し、エレファンダーが体勢を崩したのだ。
「…と言う事で取り敢えずは終わったが。どうしようもない状況だ…。」
視界よりレドリックが消えミサイルの爆風でシートから投げ出されてはいるが、
彼にとってはどうでも良い事だ。アホ魔族が勝手に弄り回しできた翼。
これに磁力反発性質を術式で付加すればマグネッサーウイングの出来上がり。
これなら幾ら海面まで数千mの距離が有ってもグライダーの滑降の様に降りる事が可能。
彼自身の保身なら万全だ。
遠くで小さな点が突然現れる。多分レドリックのパラシュートだろう。
彼の過去の仕事の関係上あれぐらいの装備なら確実に保有しているだろうし、
その犯罪履歴を何処かで消して元老院の筆頭にまでなった男なら準備は怠る筈が無い。
だが少なくとも今の内はレドリックを戦線から排除できた事が重要で、
残る残存の元老院筆頭は2人。
銃士カサンドラ=エロール議員と無効術士サーレント=エロール議員。
先天的な素養を持った姉弟の魔術師。本質的には議員として必要でない力。
それを持て余したまま元老院の半分を一つの血縁で支配した彼女たち…
若くしてそれを上り詰めた事が今回のクーデターの直接の原因だった。
こんな事が誰に理解できるのであろうか?だからこその今の状況なのであろう。
「こんな素性に深い者しか解らない事が原因ではPG7でも察知は無理ですね…。
調べてくれたゲンジクさんにはフライドチキンの詰め合わせでも持っていきましょう。」
RG7(Republik Guardian 7)の情報網にも掛からない事は家族間の問題…
その様な個人のプライベートを根幹にする近況の情報ぐらいしかない。
そこにクーデターの計画があれば調べようも無い話である。
それも日々の暮らしや社会的な地位に問題無い人間からの発言はスルーされがち。
見事に裏を掻かれた結果と言えるだろう。
「正に誰も本気で言っているとは思わなかった…と言った所でしょうね。」
滑降に疲れたのかファインはパラシュートを展開させそれに身を任せる事にした。
雲を抜け眼下に朝焼けに煌めく海原が美しい情景を見せる。
そこに有る黒い点はベルゼンラーヴェ。既にマグネイズアンカーユニットは転送され、
機体本体のみが波間に揺れて浮き沈みしている…。
突如海面に現れる巨大な艦影。
どうやら事の起こったのを見て引き返してきたらしいトライアングルマンタレイ…
今回は目的は達成したが作戦自体は失敗と言うのが結果だろう。
ベルゼンラーヴェに降り立ったファインは巨大なエイの様子を伺う。
「お待たせしました。ゲンジク議員の命によりお迎えに上りました。
昨日は敵同士でしたが今回はゆっくりしていてください。」
メリーの声が聞える。それと同時にトライアングルマンタレイの上部ハッチが開き、
中から牽引用のクレーン等が顔を出してくる。
「まあ…お疲れでしょうから御茶でも如何ですか?」
メリーに勧められて士官用の個室で4人で茶を啜る。
その4人は艦長のメリー、副官のクリウス、客その1ベルウッド、客その2ファイン。
不思議な取り合わせだ。メリーやベルウッド達はごく自然に茶を啜っているが、
クリウスだけは緊張でガチガチに固まっている状況。
「かっ…かっ…かか艦長?何故そんなにまったりとしていられるので?」
その言葉に、
「そう?軍人なんて職業よ。こう言うふうな事は良くある事、
特に海軍なら捕虜の収容やら難民の救助は当り前の仕事よ?
何度でも有り得ることなのだから…今の内に慣れて置くと良いわ。」
「こ…答えになっていないですよ!艦長!」
どうやら聞きたい事が違ったらしい…。
「はあ…そう言う事でしたか。」
クリウスはほっとして胸をなで下ろす。彼女の話では元々面識が有ったらしい…。
しかも縁は深いようだ。後でこっそりクリウスはファインに聞いたらしいが、
家出をして彼等の家に転がり込んだ事も在ったらしい。
しかしならばそれでメリーがどれだけ軍属として優秀であるかも伺い知れる事にもなる。
知人や家族相手に平気な顔をして作戦行動を執れる指揮官。
それで海軍最高の作戦立案能力と実行能力…数年以上も艦長席を譲らない、
それはもう当たり前の事。メリー以外にはその席は預けられないという事だ。
目を開けるとそこは場内に設置された医務室のベッドの上であった。そして傍らには大柄
の女性の姿。その女性はロンが目を覚ました事に気付くと顔をしかめて見下ろすように目線を向けた。
「ようやく、起きたみたいね。」
「教官?…そうか、俺あの戦いで気絶したんだっけ。」
「そうよ。一回戦目から気絶したのよ、アンタ。全く未熟にも程って物があるでしょ。次の試
合までは一日しか間が無いのにゾイドもパイロットもボロボロじゃない。…修理は急がせ
てるけど間に合う保証は無いって話だよ。」
「仕方ないだろ?相手が強敵中の強敵だったんだから。」
「アレが強敵中の強敵?そんな事言っていたら次の相手には絶対に勝てそうに無いわね。」
「次の相手?」
ロンは時計に慌てて目をやった。
「11時43分…二回戦開始時刻からまだ13分しか経ってないみたいだが、もう勝負がつい
たのか?よっぽど実力に差があったんだな…。で、どういう対戦カードだったんだ?」
「カードくらい普通チェックしておくモンなんだけど…まあ、そう言っても仕方ないわね。組み
合わせはゴジュラスとゴジュラスギガ。同系列の新旧対決だったわ。」
「ゴジュとギガ?どうりで瞬殺なわけだ。」
「あら、どうしてゾイドの名前を聞いただけで瞬殺に繋がるのかしら?」
「そりゃあ、ゴジュラスギガとゴジュラスの性能差はゴジュラスとゴドスのそれに匹敵するほ
ど大きく開いたもんだからな。狭いリングで一対一じゃゴジュラスに勝ち目は無いだろ。」
「それじゃ、まるでギガが勝ったみたいな言い方ね。」
「はぁ?だからギガがゴジュを瞬殺したんじゃないの?」
「ふぅ、それなら次の対戦相手を絶対に勝てないなんて持ち上げたりしないわよ。ギガ対策
に高機動の小型ゾイドってのは有効だしね。」
「じゃあ、本当にゴジュラスが勝ったのか?しかも瞬殺で?」
「そうよ。その通りよ。だから私も不機嫌なのよ。そんな化け物を次に控えて居るにも関わら
ず、アンタ等はこんなだらしない状態だし。」
「…弱ったなぁ。で、どうやって勝ったんだよそのゴジュラス。戦術が見えれば何とかなるかもしれない。」
「首を吹っ飛ばしたのよ。」
「へ?どうやって?」
「ギガの攻撃を全て受け流して喉笛に腕を突っ込んで内部から首を引き千切ったの。」
「受け流しただって?デスザウラーの装甲をも裂く爪を?不可能だ。」
「そう、そこが彼の凄い所なの。攻撃は確かに致命傷に成りえるクラスの破壊力を持っていた
…急所に当たればね。だけど彼は相手にその急所を狙わせなった。いわゆる急所外しって奴
をやったわけね。しかも、ただ急所からずらすわけじゃなく爪の食い込みやすい場所…つまり
一度攻撃したら中々抜け難い所に攻撃を誘導して相手の身動きを封じたのよ。」
「ふ〜ん。要するにその手の荒っぽい戦術には慣れてるって事か。だけど、そこまで接近したん
なら当然アレを避けては通れないはずだが、どうやってクリアしたんだ?」
「アレ…牙の事ね。確かに接近してアレを喰らったら急所も何も関係無く一発でアウトになるわね。
だけど、ここでも彼は機転を効かせて…とは言え無いかもしれないけど、とにかく凄い方法で顎を封じたのよ。」
「凄い方法って?」
「…んーと、先に言っておくけど凄いには凄いけど真似は絶対にしちゃ駄目よ。さっきの続きから話
すわね、当然ギガのパイロットも腕を封じられたんで大顎を開いてゴジュラスの首を狙ったの。そこ
から噛み付けば上半身を丸ごと噛み砕く事も可能だからね。それに対してなんとゴジュラスのパイ
ロットは、頭をギガの口の中に突っ込んで対抗したのよ。」
「頭を突っ込んだ?確かゴジュラスのコクピットは頭…しかもキャノピー式だよな。」
「そう、だから絶対に真似しちゃいけないって言ったの。彼の場合はその迷いの無い強い意思のおか
げで頭を奥まで捻じ込めたから良かったものの、少しでも躊躇すれば牙の餌食になってしまうからね。
で、後は最初の通り。おそらく彼はギガに勝つためには一発で機能を停止させられるこの方法が1番
だと思ったのね。私ならもうちょっとスマートに行くんだけど。」
「技術・精神・閃き、全てにおいて完璧…相当の熟練者ってことか。で、そのゴジュラスのパイロットの
名前は?そんなスゲェZiファイターの名だ。覚えておきたいんだ!」
「あら、そういえばまだ名前言ってなかったっけ?彼の名はグラント…そう、グラント・アベールよ。」
『おおおっとぉぉぉ!!いきなり地震が発生だぁぁぁぁ!!
これは一体どうなっているのかぁぁぁぁ!!』
「うわぁぁぁ!!何故いきなり地震がぁぁぁ!?」
と、その時だった。体勢を崩したエレファンダーの足下の地面から何かの腕の
様な物が現れ、エレファンダーの足を掴んでいたのだ。
「うわぁぁぁ!!何だぁ!!地震の次はゾンビかぁぁぁ!!」
いきなり地中から現れた腕に皆は戸惑っていたが、その腕はゾンビの物では無く、
カンウの物だった。そもそもカンウが地面に突っ込んだのは初めから計算に
入れていた事なのである。そして今カンウは地中にいる。そしてそれこそが
ハーデスから学んだ地中戦特訓の成果だったのだ。
「うああ!!気味が悪いぃぃぃ!!放せ放せぇ!!」
ニノクスは操縦桿をやたら滅多等に動かし、その場から逃げようとするが
エレファンダーの足を掴んだカンウの手は全く放れず、逆にその腕をエレファンダーの
足に引っかけてきたのだ。
「テコの原理を上手く利用すれば小さい力で大きな威力を・・・。」
バキン!!
その瞬間エレファンダーの足がたやすく折れた。ちなみに言わせてもらうと、
カンウが力任せ折ったのでは無い。父マイルから学んだテコの原理に基づいて磨きを
かけた関節技によって、ほとんど力を掛ける事無くその足を折ったのだ。
「うああああ!!何だこりゃぁぁぁ!!」
金属の折れる音が闘技場中に響き渡り、4つの足全てを折られたエレファンダーは
その場に倒れ込み、リタイヤとなった。
『おおおお!!どうやら地中に潜ったらしいカンウがエレファンダーを
いともたやすく倒した様子ですよぉぉぉ!!!そして残るステルガ選手と
ソーダル選手の渋い顔ぉぉぉぉぉ!!』
「くそぉ!!だが地中戦ならこっちの方が上手である事を教えてやる!!」
デススティンガーが物凄い速度で地面に飛び込み、そのまま土煙を周囲に
撒き散らしながら地中へ潜って行った。もちろん目指すはカンウである。
「この地中を貴様の墓標にしてやる!!」
そしてその直後だった。地中から重金属のぶつかり合う様な鈍い音が何度も響き渡った。
『おおっとぉぉぉ!!地中から凄い音が響き渡っております!!
激戦を予想させます!!』
『一体どちらが勝つのでしょうかね〜・・・。』
地上にまで強く鳴り響く轟音に、皆が緊張していたその直後だった。
突如として地面を吹き飛ばしながら地中から何かが飛び出してきたのだ。
『おおおっとぉぉ!!突然地中から何かが飛び出してきましたよぉ!!
これはカンウか!?デススティンガーかぁ!?』
「い・・・一体どうなっている?」
激しい地中戦を見守る事しか出来なかったソーダルは唖然としていたが、土煙が晴れた後、
皆の目に飛び込んできたのは全身の装甲がメタメタにひしゃげられた
デススティンガーの姿だった。
『おおおっとぉぉぉ!!負けたのはデススティンガーだぁ!!凄いぞカンウ!!』
「そ・・・そんなバカな・・・。」
ステルガとソーダルは愕然としていたが、その後で先程デススティンガーが
飛び出してきた穴からカンウがゆっくり這い出て来たのだった。
「一応手加減してあげたから感謝してね!」
「何が手加減だぁ!!」
穴から這い出ようとしていたカンウに出来たスキを突き、ライガーゼロシュナイダーが
飛び出した。そして各部レーザーブレードをきらめかせたのだ。
『今度はゼロシュナイダーが突撃だぁぁぁ!!しかし今のカンウはまだ穴から
出られないぃぃぃ!!』
「その状態でこの一撃をかわせるかぁ!?」
「かわす必要は無いよ。」
「え?」
ゼロシュナイダーのブレードがカンウの首を切り落とすと思われたその時だった。
カンウの右腕がブレードの平らな面を下から上へすくい上げるように叩き上げ、
ブレードの軌道を変えたのだ。
「それだけ一方向に力が集中していれば別方向からの影響をモロに
受けやすいでしょう?」
「何ぃぃぃぃ!!」
『おおおお!!カンウがまたも凄い事をやったぁぁ!!』
『ブレードを寸前で払うとはやりますな。』
ブレード攻撃を払われたシュナイダーはそのままカンウの背後へ素通りして行く形となり、
慌てて反転するもその時にはカンウは地中から完全に這い出ていた。
「くそ!!ならばもう一度だ!!」
ゼロシュナイダーはまたも突撃を加えた。しかも今度のそれは頭部のブレードを
一点に集中して敵を切り裂き貫く最強の武器“ファイブレードストーム”である。
しかし、並みの者にとっては猛烈な速度に見えるそれも、マリンにはスローモーションに
見えていた。そして案の定ファイブレードストームを体を反らすだけの動作でかわすと、
ステルガとソーダルへ向けて言ったのだ。
「そうだ!貴方達に面白い物を見せてあげましょう。」
「面白い物だとぉ!?」
するとカンウは背中から円盤状の物体が二つくっ付いた様な物を取り出した。
『おおおっとぉぉぉ!!!カンウが背中から何かを取り出しましたよぉぉぉ!!』
『あれは一体何なのでしょうかね・・・。私にも検討が付きませんよ。』
「ほぉ・・・。マリンの奴もうあれを使うのか・・・?」
「しかし、あれを実戦で何処まで使えるのか気になりますね。」
カンウが取り出した正体不明の物体に皆は困惑していたが、ルナリス等関係者は別であり、
3人は笑みを浮かべていた。
必殺技を出すことを決めたアトル。ブレードを展開して空中でなんと超スピードで縦回転し、
そのまま地面を歯車のように突っ走り、更にはリニアキャノンの砲弾までも切り裂き、
ウルトラザウルスを切り裂いたのだ!一撃でウルトラザウルスは崩れ落ち、勝った。
決勝戦までついにきた。だがそのチームの内容はなんと!デスザウラー(!!!!!!)&キメラドラゴン
だったのだ!
その時、アルベルト大佐が、
「またしてもおまえか!ベルクテッド!」
ベルクテッドはゼネバス帝国の摂政である。
試合が始まったその時、
「合体!デスザウラーキメラフォルム!!!」
なんとデスザウラーとキメラドラゴンが合体した!
合体しただけではない!速度が90Kmから300kmになった
交わしたいが交わせない!苦戦し、さらには全くこちらの攻撃に動じない。
そして、
「死ねえええええ!小僧おおぉぉぉ」
なんと目の前に荷電粒子砲が来た!
だがその時、一つの青きゾイドが荷電粒子砲を貫いたのだ
それはマトリクスドラゴンだった。
そのパイロットはライバルのキールだった!
デスザウラーCF(キメラフォルム)を前にして苦戦するも、キールのマトリクスドラゴンが現れ、命拾いした。
「なぜ俺を助けた!?」
そう聞くとキールはこう返した
「お前はおれのライバルであり、また、お前は俺の最大の仲間だ・・・・」
どうゆう意味か分からなかったが、とにかく二人で戦うこととなった。
連続で攻撃を繰り出すものの、全く効かない。絶望の淵に立たされついには
荷電粒子砲の雨と化した。ゾイドコアのダメージが非常に大きく、
もうすでに崩壊寸前だった。その状態で荷電粒子砲を撃たれたら・・・・
最悪の事態は免れない。とにかく逃げ切るしかなかった。
だがついに恐れた事態が来た!デスザウラーの口が輝き周辺を襲った。
ワイツタイガーとマトリクスはもはや反撃する力も無くなっていた。
「貴様らは所詮デスザウラーの前ではウジムシ同然なのだよ」
そうベルクテッドが言った。だが
「ウジムシはお前のほうだ!」
と二人は返した。
「負け惜し・・・・・」
その言葉を言い終わるまでも無くなんとワイツタイガーとマトリクスが輝き出した。
その光に包まれた。そしてベルクテッドは目を疑った。
なんとワイツタイガーとマトリクスが合体したのだ!
「zIユニゾン!ワイツタイガーマトリクス!」
そしてアトルは言った。
「さあ!勝負だ!死竜デスザウラー!」
と言い放った・・・・・
「楽しそうだな、ラインハルト」
キャットウォークの上で、珍しく機体の整備などしていたラインハルトは、背後から掛
けられた声に振り向いた。
すぐ後ろにアーサーが立ち、暗い空間に並んだ13機のゾイドを眺めている。
「ジークフリートの敵討ちか、それとも――私的な理由か?」
やはり、この男は何を考えているのかわからない。ラインハルトは鼻を鳴らし、自機の
整備に戻る。
「…負け犬の敵討ちなんざ、興味ねーな。俺はやっと、戦うに値する敵を見つけた…それ
だけだ」
話はこれで終わり、と彼はコックピットに飛び込み、『基地』のハッチを開ける。市街
では見られない星空が、彼の頭上に瞬いている。
「じゃ、久々に『仕事』してくるぜ」
足のブースターを全開、ラインハルトの機体は夜の闇へ飛び出していく。アーサーはそ
の姿を見上げながら、自らも愛機へと向かった。
――時間は、そう多く残されていない。能力者がいる限り、『危機』は去らないのだ。
さすがに13人の騎士だけで、全世界の能力者を滅ぼすことは難しい。だが彼には策があ
った。そのために必要な工作を、これから行う。
「マキシミン=ブラッドベイン。機体の再生が終わったら、すぐに出撃だ」
昨日の政府本部襲撃事件は、政府の方でもみ消すだろう。たった2機のゾイドと一体の
アーティファクト・クリーチャーに守備隊を壊滅させられたとなれば、物笑いの種だ。
そしてこのことは彼にとって都合が良かった。つまりは、マキシミンはまだ死んだこと
になっており、彼が生きていることも、騎士の一員となったことも、知っているものは数
えるほどに過ぎない。そして、その『数えるほど』の厄介な連中の言うことを信じる者は
皆無に近いだろう。大衆の流れの中では、小さな真実の叫びなど無力だ。
アーサーはもう一度自分の考えた戦略を練り直し、やがて満足したのか笑みを浮かべる。
――来たるべき“大選抜”のとき、人々は本性を表すだろう。そのためのお膳立てこそ
が、我ら騎士の仕事…。
街の外なので実質土地代も不要なパーツショップ『TASHIRO』。しばらく前までは、リ
ニアが一人で店番をする寂しい店だった。しかし今は、かつてないほど人が多い。
客で賑わっている訳ではない。同じ目的のために集まった仲間たちにとって、この店が
拠点となっているためだ。
「で…何で全員がこの店に居座っている!?」
少しばかりキレ気味のリニアが誰にともなく突っ込む。返ってくるのは、それぞれの勝
手な言い分ばかり。
「僕は…しばらくバトルもありませんし、ねぇ?」
「そうじゃな。ワシらは格納庫で寝泊りしとるから、別に構わんじゃろう?」
「わ、私は……昨日はお母さんの所に帰ったけど、今日は…」
「素直に言いなさいよねー、『オリバーと一緒に居たいんですぅ』って! ま、私は追わ
れる身だから、こんなに潜伏場所として適したところは見逃せないわね」
とどめを刺すのはやはり、空気を読まないオリバー=ハートネット。
「…ま、賑やかな方が楽しいっしょ? 師匠もさ」
ゴッ
鈍い音がする。次の瞬間、椅子に座って朝食の炒り卵を口に運んでいたはずのオリバー
が部屋の向こう側まで吹っ飛び、頭からソファーに突っ込んでいた(横の本棚に突っ込ま
なかったのは、恐らくリニアなりの配慮なのだろう)。
「あ…ありのままを話します! 僕の理解を全く超えていたのですが……『オリバーさん
が卵を食べたと思ったら、いつの間にか部屋の向こうまで吹っ飛んでいた』」
「こ…光学迷彩とか マグネッサーなんて、チャチなモンじゃあ断じてない! もっと恐
ろしいものの片鱗を、ワシも見たぞ…」
こらえ切れずにエルフリーデが吹き出し、続いてレティシアとオリバーも笑い出す。リ
ニア以外の全員を巻き込んだ爆笑の渦の中、とうとうリニア自身もニヤリと笑った。
――きっと、親とか兄弟とか……ふつうの家族がいれば、こんな感じなんだろうな。
リニアはひとときの間、幼い頃の兄と共有した『家族』の温かさを楽しんだ。
市街の一角にある、豪華な邸宅。その一室でノートパソコンを開き、ディスプレイに流
れる情報を目で追っている男が一人。
「う〜ん……つかめませんねぇ、彼らの足取り」
眼鏡をかけた顔は若く、『何歳か?』と指差されれば思わず首を捻りたくなるような微
妙さだ。――彼の名はアレックス・ハル=スミス。世界で最初に生まれた能力者である。
2年にして成功を収めた彼の『会社』とは、表向きは郊外の荒野に関する開拓事業の会
社だ。しかし、そんな地味な仕事でこれほどの豪邸が建つには、2年ではすまないだろう。
彼のもう一つの仕事。それは、大企業の重役や政府の要人を護衛するボディーガードの
派遣だった。
「答えがわかってるのに、その答えに導く『式』が出てこない…こんなにもどかしい事は
そうないですね」
彼が追っている『彼ら』とは、アレックスの依頼主を彼の目の前で殺害した謎の集団の
ことだ。殺された依頼主の立場から、それを差し向けたのが誰であるかは容易に想像がつ
くのだが…。
「…アルフレッド=フォイアーシュタイン。政敵の粛清は結構ですが、私の仕事を妨害す
るというのは実にいただけない」
やっと20歳になったばかりだというのに、彼の瞳には老練な戦術家のごとき眼光が宿っ
ている。
「やることもありませんし…調べさせてもらいますよ、“死者の槌鉾”についてね」
昼間、市街が最も活気づく時間。夜でも眠る事を知らないこの街だが、やはり人通りは
昼間の方が多い。
人々が行き交う大通りの下、地中に『彼』は潜んでいた。ただ一声の命令を待ちながら。
――やがて、待ち望んだ指令が下る。通信機越しに聞こえたアーサーの声は、笑みを押
し隠した響きを含んでいる。
<時間になった。できるだけ大きな被害を出せ――ただし、死人は減らして…だ>
アーサーは何も、慈悲の心から最後の言葉を付け加えたのではない。被害をこうむった
当事者が多ければ多いほど、憎しみの伝染も速まる。ただそれだけのことだ。
様子見のため地上に設置したカメラの映像が、モニターに映っている。その中で、群衆
の歩く大地を割って現れるデススティンガーの姿が映しだされた。
一瞬でパニックに陥る群衆。バルカン砲が通りに並んだ店舗を破壊し、流れ弾に粉砕さ
れた人体が飛沫となって飛ぶ。
適度な数の犠牲者を出し、なおかつ怒りの燃え上がる余地を残しておく。難しい任務で
はあったが、今のマキシミンにできない事ではなかった。
一足先に二回戦進出を決めたグラントはゴジュラスの最終調整を行っているフランカ、ル
ドブの居るゾイド控え室へと向かった。長年共に戦ってきた最強のパートナーだ。何も心
配は要らない…だが、今度のバトルは今までよりも面倒なことに関わってる。それも自分
達の弟分、カルロを深くに巻き込みつつ。念には念を押そう…そう思っていた。グラントが
控え室へと到着するとゴジュラスの最終調整を終了した2人は相手のデータを元に作戦会議を行っていた。
「調子はどうだ?」
グラントが声を掛けると二人は眉に皺を寄せて彼のほうへ振り向いた。
「調子?調子は完璧に狂っちゃってるわよ。」
「こっちもだ。こんな奴で出てくるからには何か策が有るんだろうがさっぱり分からん。」
「…え?こんな奴ってどんな奴だよ。」
「驚かないで聞いてね。…グスタフよ、グ・ス・タ・フ!輸送用の団子蟲。それが私の相手よ。」
「ぐ、グスタフ〜?戦闘用ゾイドじゃねぇぞ、それ。」
「ええ、今言った通り物資輸送用ゾイドね。」
「足も遅せぇ〜し、大体どうやって戦うんだ?」
「…そう、そこなのよ。相手は技術力では世界一のZOITEC所属ファイター。どうせ普通じゃ
ないグスタフだからこうやってバトルにも出てこれるとは思うんだけど、見た目的には目立
った武装は何も無いの。内臓式の武器を積んでるって可能性も否めないし、色々と読めないのよね〜。」
「こっちでデータを調べたけど、一般のバトルには出場して無い。いわば、ZOITEC専属の
運び屋というところだ。とにかく謎が多くて、作戦も見た目からしか立てられない状況ってわけだ。」
「ふ〜ん。まあでも、いつも通りで行きゃあ勝てるだろ。情報が無くたって、たくさん勝って
来れたわけだし。ようは気持ち次第!何も怖がる事は無いだろ!」
「う〜、結果的にそうなっちゃうのがどうもねぇ。シングルは初めてだし。」
「大丈夫、大丈夫!俺だって初めてでも楽勝だったんだから。しかも、相手はギガだぜ?
それに対してお前はグスタフ、しっかり行けば大丈夫だって!」
「う、う〜。まあ、やるだけやってみるわ。あのコの事は他人事じゃないしね。」
「おうよ!」
「ふふ、ようやく気持ちがまとまったようだな…あと十分で入場時刻だ、急ごう。」
「…そうね!」
…この時、フランカは今までに無い何か、嫌な予感を感じていた。戦士の血が反応してい
たのだ。だが、それは長年の戦いの日々を通してきても、まだ未熟であった。そう、この後
に控える戦い、その相手の恐ろしさを完璧に伝えきる事が出来なかったのだから…。
ワァァァァっと歓声が響いた。ゴジュラスの入場だ。瞬殺劇をやってのけた先程のゴジュラ
スと同じで火器を全く積んでいない格闘能力に特化されたカスタマイズ。見た目で違う所は
青いラインが赤に変わっているところぐらいだ。対して反対側の門から入場してきたのはグ
スタフ。青と白の装甲を重ねた爽やかなイメージの機体。とてもバトルに参加するような気の
しない静かな印象だ。そのコクピットに収まるパイロットも好戦的…そんな言葉がとても似合
わない幼い青年だ。
バトル開始の鐘、観客は再度歓声をあげる。第一回戦目はレオストライカー、二回戦目はゴ
ジュラス。共に先に攻撃を仕掛けた方が勝利を掴んでいる。今度はどっちが先に出る…?観
客の注目はまず、そこだった。だが、観客の期待など気にせず両者は一斉に動いた。距離を
詰めて直ぐに格闘戦に発展した。ゴジュラスの強靭な爪がグスタフのアンテナを掴み、それを
押し出すようにグスタフが体を捻じ込む。グスタフのアンテナに力をこめつつフランカは今まで
に無い感覚に襲われていた。まさか…グスタフとはこんなにも…。アンテナを圧し折るとゴジュ
ラスは斜め横に跳んだ。勢いに流れて前進するグスタフ。横をとったゴジュラスは滑り込んで
グスタフの側面に思いっきり蹴りを入れる。力の法則に従い、当然のごとく吹っ飛ぶグスタフ。
…何だ?フランカは先程感じた違和感と同じ物を感じた。自分が攻撃しているにも関わらず押
されつつあるような感覚。しかもコチラの余裕を喰らい尽くすほど大きいもの…だが、漠然としている。
ガクン。さっき蹴りを入れた左足の膝が急に大きく曲がった。力を入れたわけでもないのに体制
が崩れ、体重が掛かった瞬間左足首が砕けた。バランスを取るに取れない状況。しかも仕掛けたのはこちらだ。
「い、一体何なのよ!」
金属の欠片を零して崩壊するゴジュラスの足元に砲弾が迫った。直撃。完全にゴジュラスが横
倒しになった。くぅ!衝撃がフランカの全身を貫く。…調整は完璧だったのに何故こんな事が?
左腕をついてなんとか体を起こそうとするゴジュラスにグスタフが近寄ってきた。
「やあ?ご機嫌はどうだい。」
キーンは笑顔だった。そう、恐ろしいくらいのあどけない笑顔だった。
「最悪よ。貴方のせいでね。」
それを鋭い眼で見返すフランカ。余裕は無い。
「僕のせい?ああ、さっきの砲撃か。それは悪かったよ…でも、もともとは君が悪いんだ。僕のグ
スタフに格闘攻撃を仕掛けたりしちゃったんだからね。」
「何言ってるの?ゴジュラスが格闘攻撃を仕掛けることの何が可笑しいっての?」
「別にゴジュラスがって事じゃない。僕のグスタフに対してって事がいけなかったんだ。」
「やっぱり特別なシステムを積んでたって事ね…。」
「特別なシステム?誤解してもらっちゃいけないなぁ…。僕のグスタフはマグネッサーもグラビティ
ーホイールも積んでない、いたって普通のグスタフさ。まあローラー型の可変キャタピラで機動力
は多少良くなっているけどね。」
「じゃあ何が特別なのよ。まさか、パイロットの貴方自身が特別とでも?」
「まあ、それも無きにしも非ずだけど1番大きいのはこのグスタフの性格だね。」
「性格?」
「そう、性格さ。一般のグスタフは非常におとなしい性格ゆえ過剰な攻撃には拒絶反応を起こし、
まともな射撃すら出来なくなるという欠点がある。まあ、その分輸送用としてはコレ以上無い分厚く、
硬い皮膚を授かったんだけどね。…だけど僕のグスタフは違った。気性はゴジュラス並に荒く、戦
闘を好むという極めて稀な個体だったんだ。つまり、拒絶が無い分連続攻撃を可能としその上、格闘
攻撃については自ら本能的にカウンター攻撃を繰り出す。そして、その攻撃を受けた物はさっきの
君のようになる…。さて、そのポーズも見飽きてきたな。そろそろトドメを刺すよ?」
「まだよ!この距離なら…。」
ゴジュラスは身体を引きずりつつ右腕をグスタフに振り上げた。グシャ。金属の拉げる音が鳴った。
その音と共に金属の棒が宙を舞う。悲鳴。悲鳴。悲鳴。ゴジュラスの肉体を構成していた細かいパーツ
の数々が、止まない悲鳴を纏い、金属の塊と化した。押しつぶし、砕き、吹き飛ばす。ゲシャリ、グシャリ、
ギリギリと。グスタフの攻撃は止まらなかった。まさに本能のまま、ゴジュラスの身を削り尽くしたのだ。
数分後、闘技場に残ったのは不気味な咆哮を発する青い生き物の姿だけだった。ゴジュラスの銀色の
身体にアクセントのようにあった赤色のラインは、バラバラになった黒い機械の破片の上に血のように
覆い被さり、その惨劇を強調した。コアを覆う最構殻にはヒビが入り、神経系統が火花を散らし、一部で
はその銀色の球体が顔を覗かせていた。今、ゴジュラスは生死の境をさ迷いこれまでに無い苦しみを
味わっている事だろう。そして、その傍らにはそれを低い声で笑うように見つめる残虐な悪魔の姿が1つ
…人々はこの青いグスタフにその姿を見た。そして、その魔獣の中から出てきたのは幼い青年。青く透き
通った目の奥に悪魔を飼う青年だ。人々はその戦いの後、数時間の間キーンが片腕を振り上げて放った
笑顔を忘れる事が出来なかった。そう、悪魔のようにとても明るく、とても酷い笑顔を。
「だから言ったのに…格闘は駄目だって。話はちゃんと聞かなくちゃ…フフフ。」
「あんな事を言ったわりには…。」
クリウスはメリーと談笑しながら茶を啜っているベルウッドを見てそう思う。
とは言え自身も情報欲しさにファインと居るので余り彼女達の事を言える立場に居ない。
「まあまあ…人生は長いですから。その内多少の矛盾なら容認できるようになります。
所で…?かなり前から覗いていましたね?アレをどう思いますか?」
ファインは唐突にクリウスにレドリックの行動について質問をしてみる。
「バーデン議員の行動は…焦りが見える気がします。良くは知りませんが…
確かお話頂いた月読の壺の限定期間を気にしているのではないでしょうか?」
間違いは無い。今年中が最大の力を発現する数年に一度の年。
「しかし、少々手違いが有ったみたいですね。正確な情報を持っていなかった事が。」
クリウスは言葉を止める。
「そのとおりです…ルナフレアの存在まではある程度知っていたようです。
でも、問題はまさかルナフレア側からの干渉が数十年前から彼に行われていた…
この事でしょうね。降神融合とまあとんでもない事をやってのけましたし。問題です。」
ファインはぼやく。本質的には戦力ダウンなのだがそれでも神憑きの人間は厳しい。
「まあ…それでも最低一ヶ月程は彼も無理な行動は起こせないでしょうね。」
そんな話がトライアングルマンタレイの艦内で話されていた頃…
日も高く上り始めた大海原ではレドリックが独り波間を漂っている。
「この…宇宙皇帝と成るべき私がこの様な所で波と戯れているとは。
おのれ!ナイト・フリューゲル!許すまじ!!!ん?お主等は?」
波間を必死に泳ぐ不思議な獣。それは…2本の首を持つ者で大小多数寄ってくる。
「くくく…そう言う事か!ルナフレアは砕けただけと言う事か!何だ?」
中の1体は途中で放棄されたゾイドに寄生し蘇生と変異をさせている…。
「これからが本当のお楽しみと言う事か…ふあ〜っはっはっはっは…。」
どうやら宇宙皇帝(自称及び予定)はご満悦の様である。
ー 暁月の狂獣 黒の魔導士 終 ー 首都脱出編 完 ー
ユニゾンしたワイツタイガーがついに牙をむく!
「面白い・・・屑どもおぉぉぉ!!!!」
なんと目の前に荷電粒子砲が!
「ドオオオオ!!!」
命中した!だがワイツタイガーマトリクスは傷一つ付かない!
逆にワイツタイガーのほうが有利であった
これまで効かなかった攻撃も効くようになっていた。
いくら一対一、ユニゾンゾイド同士でもありえないことだった
「なぜだ!?デスザウラーキメラフォームは全能力が全てのゾイドを上回っているはずだ!」
だがそれはゾイドのちがいではない。パイロットの違いだった
ベルクテッドに無く、アトルにあるものこそゾイドに対する心だったのだ。
その心がゾイド自身の心と共鳴し、無限の力を生み出すものとなったのだ!
猛攻撃にデスザウラーは耐え切れなくなり、ついには崩れ落ちた!
そして二度とデスザウラーを復活させない為、最後の攻撃で
デスザウラーを切り裂き、復活不可能なほどにダメージを与え、デスザウラーのゾイドコアもろとも
破壊した!
横からアルベルトが
「これで全てが終わったんだ。」
といっただけどまだ全てが終わった訳ではない、そう思ったから
「ちげ―よ!これから始まるんだよ!俺達の旅がよ!」
そう言った
そして上を見上げれば青い空が輝いていた・・・・・・
ー荒野の少年第一部完ー
時は一週間くらい前にさかのぼる。そんなある日の朝の事である。ルナリスが何気無く
起きると、マリンの姿が見えなかったので庭に出て見ると、庭でヨーヨーで遊んでいる
マリンの姿があったのだ。
「おい!お前何朝っぱらからヨーヨーで遊んでるんだ?」
「違うよルナリスちゃん!これ遊んでるんじゃないよ!」
「これの何処が遊びじゃないんだよ。つーかちゃん付けするな!」
ルナリスは例によってマリンの頭を小突くワケだが、その後でマイルが出て来て言った。
「マリンにヨーヨーをやらせたのは俺だ。」
「マイルさん・・・。しかし何故ヨーヨーを?」
「私もわからないよ。お父さん何でいきなりヨーヨーなんて・・・。しかもこんな重たい
ヨーヨーを?」
どうやらマリンもマイルの意向が分からない様子である。ちなみにやはりマイルが
マリンにやらせたヨーヨーはただのヨーヨーでは無いらしく、これまたかなりの重量の
ある特別製のようである。
「ようし!知りたいならばこっちに来い!」
と、マイルが二人を連れて移動した先にあったのは修理工場の裏にある物置であった。
「物置?この物置に何かあるの?」
「ああ・・・あるぜ・・・。凄い物がなぁ・・・。」
マイルが笑みを浮かべ出ながら物置の戸を開いた時だった。そこにはなんと巨大な
ヨーヨーが置かれていたのだ。
「きょ・・・巨大ヨーヨー!?」
「確かにその通りだ。だがただデカイだけのヨーヨーじゃねぇぞ。ヨーヨー本体、
そしてワイヤー共に古代チタニウム合金が使用された戦闘用のヨーヨーだ。」
「せ・・・戦闘用の・・・ヨーヨー?」
「ああ!名付けてギガクラッシャーヨーヨーとはこの事だ!」
「え!?ギガクラッシャーって・・・。まさか・・・。」
マリンとルナリスは唖然と口を空け、マイルはさらに笑った。
「おう!そのまさかだ!コイツはな!祖母ちゃんがカンウを使っていた時に
使われていた武器の一つなんだよ!まあ当時は二つあったらしいが、今はこの通り
一つしか残ってはいないがな・・・。」
「なんと・・・。ヨーヨーまで武器にするとは・・・。マリンの曾祖母さんはやはりある
意味凄い人だったのか・・・。」
「何かその言われ方引っかかるな〜・・・。」
ルナリスの言葉にマイルは眉を細めていたが、その後でゆっくりと物置の戸を閉めた。
「お父さんが私にヨーヨーをやらせたのはもしかしてこれをカンウに装備させる為・・・?」
「もちろんだろう!?今のアイツにゃあ小銃すら付いてないからなぁ!まあ気功飛砕拳や、
竜王真空横一文字みたいに技として遠くの敵を攻撃する手段が無いワケじゃないが、あれ
を多用するのは流石に体にきついだろう・・・。ならばこれ位あっても良いと思ってな!」
マイルは自身ありげに胸を張っていたが、マリンは半信半疑な顔をしていた。
「しかし・・・。いくら何でもこんなヨーヨーが実戦で使えるのかな〜・・・。」
「何だとぉ!?ならば見せてやる!!証拠映像を見せてやるぞ!!」
その後、マリンとルナリスはマイルの自室に連れてこられ、テレビの前に
座らせられていた。
「見てろよお前達!!これが証拠映像だ!!」
マイルは部屋の奥から一枚のディスクを取り出すと、それをテレビに繋がれた
ビデオ機材に差し込み、ある映像を映したのだ。
「やけに古臭い映像ね・・・。お父さん・・・。」
「そりゃそうだ!コイツは死んだ祖父ちゃんと祖母ちゃんが残していた大戦時代の
記録映像だからな!」
「ええ!!曾お祖父ちゃんと曾お祖母ちゃんの!?」
その時マリンの目の色が変わった。先程までとは打って変わって食い入る様にテレビを
見始めたのだ。現在流されていた映像は戦闘が行なわれてない時の兵士達の一時の
休息を映した物だった。
「やけにのどかね・・・。とても大戦時代の映像とは思えない・・・。」
「そりゃそうだろう。いくら戦争と言っても24時間常に戦ってたワケじゃねーんだから
よ!と言ってもオレもお前達同様戦争を知らない世代だから本当の事言うと
良く分からないんだがな・・・。」
マイルが頭を掻きながら笑っていたそんな時だった。目の前の映像では戦闘が
行われていない時の兵士達がサッカーや野球をやったり、チェスや将棋、碁をやったり
など、色々と遊んでいる所を映した映像が続いていたのだが、その中にマリンに
良く似た若い女性がヨーヨーをしている場面が映されたのだ。そしてその映像が出た
直後にマイルが一時停止ボタンを押した。
「これだ!これを見ろ!これが当時の祖母ちゃんだ!」
「ヨーヨーやってる・・・。」
「って言うかマジでマリンにそっくりだな・・・。顔の傷は無いけど・・・。」
「とりあえず曾お祖母ちゃんもヨーヨーをやっていたと言う事は分かったけど・・・。」
「まあまあ黙って見ていろ。」
マイルは一度機材からディスクを取り出すと、別のディスクを差込み、
映像を再生したのだ。
『大戦好プレー珍プレー大集合!!』
「・・・・。」
映像を再生した早々、何処かのバラエティー特番みたいな番組が始まった為にマリンと
ルナリスは唖然と黙り込んでしまった。
「お父さん・・・。これは・・・?」
「まあ何というかな!戦後に大戦を振り返る番組がいくつか放送されたワケなんだが、
その中の一つとして、殺伐とした戦争の中にあった好プレー、珍プレーを編集した
番組なんだ。」
「でも何か凄い不謹慎な番組じゃありません?」
「まあ今考えればそうなるだろうな。しかし、長い大戦にすっかり慣れていて、
むしろそれが普通になっていた当時の人間にとっては特に問題が無かったのだろう・・・。」
「・・・・・・。」
マイルの説明に、突っ込みたい所はあった物の、その気持ちを胸の内に閉まった二人は
番組を見始めるワケなのだが、好珍プレー番組なだけに、番組中にながれる
面白ナレーションも相まって、とても戦争しているとは思えない大爆笑なシーンの
連続に二人は思いの他笑っていたりする。
「アッハッハッハッハッ!!なんだこりゃ・・・。」
「お腹が痛いお腹が・・・。」
デスザウラーを倒し、3年後・・・・・・
「次!ゴジュラスギガ10体!」
共和国練習場で地獄のような特訓をしているアトルの姿があった。
それには訳がある、それはネオゼネバス帝国が再び襲って来るんだとか。
だがそれ以上に恐れていたのがネオゼネバス帝国が惑星zI全土を支配下におくことであった。
とのことで軍によばれた訳だ。
「次!ブレードライガー23体!」
こんなことは簡単にできるほど実力がついたのだ!
「最後だ!対戦相手は凱龍輝だ!」
最後の練習が来た。凱龍輝のパイロットはかつてのライバル、キール・ブラッドレイだ。
彼もこの事に備えて軍に呼ばれたのだ!
「さあ!キール!最後の勝負だ!」
「ふ・・・・・こっちも楽しみにしていたぞ!アトル!」
ワイツタイガーと凱龍輝、ほぼ同等の実力で戦っている。
それほどお互いこんなににも成長したのだ。
まるでお互い絆と言うものができてきている。
それは何回もライバル同士で戦っていたからだろう。
そして、再びアトルは戦うことになる・・・。
全ての根は何処から伸びているのだろうか?
今では誰にも知る術は無い。ただ言えるのは…
人は自身の生きた時間にしか根が無いと思い込んでいることである。
やがてそこに根が無いことを知る時が来て初めてどうして生きているのか?
何のために生きるのか?と言う疑問が胸に刻まれる。
ー 根の在処 進むべき道 ー
「…っとこれでいいですか?」
男は原稿用紙を広報担当の軍人に手渡す。
「申し訳ない!私が駄目広報だから…。」
涙目でヤマザキをみる顔中傷だらけの男。人は見かけに寄らないとはこの事だ。
「大丈夫ですよ!今回は私も出演予定ですから…
しかしよく彼等が私の出演を拒否しませんでしたね?」
「ああ…今回は新共和国の公正性を示そうと必死なのでしょう…
しかしこれが予定通り進めば少なくとも何方に転がっても軍が追及される事が減る。
それが軍の狙いでしょう。そろそろ本番ですよ!頑張りましょう!」
「そうですね!初めてのパネラーの仕事確り勤めさせてもらいますよ!」
今回行われるのはこれまで共和国と帝国がデルポイ内で起きた秘匿事項の公開。
言わば闇の歴史へ光を当てることである。
これにより非公開事項を非公開にしていた罪を一気に前政権に擦り付ける寸法だ。
「先ずは…Bone’z(ボーンズ)関する問題です。これをどうぞ…。」
進行を務める顔中傷だらけの広報担当ガレリス=アイアンサイドがモニターをさす。
巨大なモニターには異形のゾイドが多数映し出される。
全てのゾイドは共通点として恐竜型である事と戦闘ゾイドらしきフレームに…
奇怪な流体金属の表皮を持ち何故かフレームから剥き出しの赤いコア。
その映像は恐るべきスピードでゴジュラスギガに襲い掛かる様が映し出されている。
一回り小柄なヴェロキラプトル型のそれは終始ギガを圧倒し止めを刺す瞬間…
別の方角からの精密射撃の前にコアを砕かれ絶命していた。
「これがBone’zと呼ばれる正体不明の戦闘ゾイドです。」
周囲の観客からどよめきが沸き起こる。確り用意されたエキストラ。
公正な部分を強調している光景。捏造された公正…
しかしこれを見た視聴者の反応はそうでも無い。
隠されていた事実。それを受け止めるのに脳をフル回転させている。
ショッキングな内容の前には偽りの公正でも充分目隠しできるものである。
その後の映像は更に恐ろしい事になっていた…。
その赤いコアの破片。その後廃材置き場に破棄されたそれは驚異の変化を遂げる。
周囲の物を取り込み更なる異形のヴェロキラプトル型構造体へ姿を変えた。
天を突くほどの姿と錯覚させる巨体。
その後の映像は市街地に踏み入ろうとしたそれの目の前の頭上より突然落ちる異形。
ベルゼンラーヴェの術式攻撃の応酬10分の後に完全に消滅するそれの姿だった。
「…ゼネバスの破壊神の力を以てしても10分。恐ろしい存在です!」
ヤマザキも一度だけ子供の頃これを見た事が有るが…
その時周囲に居た者しかそれを知らなかった事もこれで理解できる。
「これをヘテロリジェネレート現象と名付け最重要秘匿事項とされてきました。」
ガレリスは3ヶ月の月日で確りと広報としての基礎を手に入れていたようだ。
初めてのときの冷や汗垂れ流しのたどたどしい姿はそこには無い。
次に映し出された物は…18もの地域の写真。
「これが通称エウレカ施設の有った場所です。
悪名高きエウレカ事件が発生したエウレカ施設もこの中に有ります。
他にもまだ調べられていない箇所がまだ10箇所も有るのです!」
おおっとまたどよめきが一段と大きくなる。実際建造中に破棄された施設ばかり。
それでもはしりだけとは言え建設しようとした跡が有るのが問題なのだ。
この後長らく続いたゼネバス自治領問題へと話題がシフトしていく…
今回のクーデターの目的の隠れ蓑として扱われた問題。
その内容は恐ろしくシンプルな経済的な不公平。それと税収の問題。
それを是正できなかった理由を共和国側のみの視点から見た一方的な見解だった。
まず上げられたのが戦闘ゾイドの払い下げの問題。
帝国は占領下の都市等の自警用等として大量のゾイド払い下げを行っている。
殆ど捨て値で荷電粒子砲が使用できないデスザウラー等が大量に出回る状況。
実際にこれにより共和国軍残党やそれを語る野盗の被害が激減。
その為に税収が一時的にでは有るが飛躍的に上昇した。
ここまでは良いのであるが…問題はその後である。
共和国軍が凱龍輝などを従え再上陸した際に恐るべき悲劇が起きているのだ。
情報収集がずさんな共和国軍は都市や集落に払い下げされたゾイドを殲滅。
結果として国民を限定的にではあるが虐殺してしまっているのである。
その為反攻作戦が自領地の焦土化を促し結局の所ゼネバスと言う存在…
帝国の屋台骨が残ったままヘリック共和国と言う形に収まってしまった事だ。
これを気に長きに渡る経済の不公平が今までまかり通ってしまう結果となった。
帝国の屋台骨が残ったところは自治領と名前を変え税金は6割を政府に納入。
残り4割を自治領が手にする形に行われていた。
しかし自治領では経済活動に対する規制が共和国純正の領土より緩い。
その為その6割が何と共和国政府の年間歳入の5割を占める物と為っていたのである。
残りの4割と言う額面は共和国からすれば甚大な損害なのだ。
その上物価が安い帝国自治領。名目上は同じ国の中であるので行き来は自由。
実質は共和国本土が自治領を中心に回るおかしな状況に陥ってしまう始末。
確かにこれは非難されて当然の事だ。
ここで更にスパイスを効かせたネタを持ってくる。
それは失敗した以前のクーデターの首謀者議員…スケープゴートにされた者達。
彼等の政治活動資金がそっちから流れている為証拠隠滅を計ったと糾弾したのだ。
これで不公平が見逃されてきた原因が前政府に有ると擦り付けたのである。
これで…一応の彼等の正義が完成する。
そして…次からが遂に本番ということになる。
「まず最初の任務だ!赤いゾイドを倒せ!」
アルベルトが言う。赤いゾイド?セイバータイガーとか?アトルが聞き返す。
「違う!名前はよく知らないがその手がかりはライオン型、角が付いてて、何よりも
目にも止まらないスピードだった!」
その証言を聞いてあるゾイドを思い出した。それこそエナジーライガ−だった。
さっさと任務に取り掛かった。すると何かが超スピードで目の前を通ったのだ!
そして共和国軍基地を破壊したのだ!そのゾイドは赤く、角が付いていた!
共和国軍基地を破壊しているゾイドがあのエナジーライガ−だった!
エナジーライガーに襲い掛かろうとするとそれにきずいたらしく反撃した!
キールが乗る凱龍輝が支援に来る。
だがその時、なんと周りが訳のわからない水色の壁に覆われたのだ!
「フッフッフ・・・・・これこそ帝国の最新技術・・・・・プリズムフィールドだ!」
何者かが言った。だがその人物はもう立ち去っていた。
「へ!いくぜ!エレクトロンキャノン!」
射撃武器を使った瞬間なんと水色の壁にぶつかり跳ね返ってきた!
だがそれをみていいことを思いついたのだ!
ワイツを走り出した!それにつられてエナジーライガ−が追ってくる!
射撃武器を水色の壁に目掛けて打ったその跳ね返った弾がエナジーライガ−を襲った。
だがその時はとっくにプリズムフィールドは解除されエナジーライガ−は去っていた・・・・・・・
何しろその映像は高速走行中の高速ゾイドが地面のデコボコに躓いて転んで岩山に
激突したり、大活躍していたエナジーライガーが戦場のど真ん中でガス欠を起こして
袋叩きにされたりなど、マリンとルナリスも思わず腹を抱えて笑い出す程の数多くの
面白映像が目白意思だったのだが、その一方で体一つで戦場を駆け回り、兵達に弁当を
売り続けた弁当屋や、ラーメンやおでんの屋台の親父を特集した映像など、心温まる
部分もあったりして、二人は感動の渦に巻き込まれていた。
「うう・・・。」
「いい話よね・・・。」
「そうだろそうだろ。」
マリンとルナリスが手に持つハンカチはすっかり涙でびしょぬれになっていたが、
その直後、ハット何かを思い出した顔になったマリンがマイルの方を向いた。
「そうだ!!お父さん!!これとヨーヨーとどう関係あるの!?」
「あ!!すっかり忘れてた!!とにかくそう言うのはあるのですかマイルさん!?」
二人は一斉にマイルを問い詰めたが、マイルは笑っていた。
「分かってる分かってる。とりあえず落ち着いて映像を見てろよ。いずれ出てくる。」
「そうですか・・・?」
半信半疑のまま、二人が映像を再度見ていた時だった、映像内の番組テロップに
デカデカとある文字が表示されたのだ。
『怪奇!!ヨーヨーを使うゴジュラスギガ!!』
ずげげげげ!!
二人は思わずすっ転んだ。
「そ・・・そのまんますぎでしょこれ!!」
二人は思い切り取り乱していたが映像は進み、ある戦場での映像に切り替わっていた。
「お前達よく見ろ!これが祖母ちゃんが使ってた頃のカンウだ。」
「え・・・?」
マイルの言った通り、そこに映されていたのはカンウの映像だった。映像の中の
カンウは360度、あらゆる角度から降り注ぐゼネバス砲を巧みにかわしたりと、
マリンはますます関心せざる得ない程の衝撃映像が続くワケなのだが、ついにその問題の
シーンはやって来た。ゼネバス砲やエナジーの突撃をかわしつつ、敵部隊本陣に接近した
カンウがあのヨーヨーユニット“ギガクラッシャーヨーヨー”を取り出し、敵本陣へ
向けて投げつけたのだ。そしてそれは一瞬の出来事だった。超高速で回転しながら
空を切るギガクラッシャーヨーヨーはなんと、装甲を強化していると思しき改造デス
ザウラーを、後方にいたセイスモサウルスごと真っ二つに両断していたのだ。
「うそぉ・・・。」
その時二人は衝撃の余りムンクの叫びとなっていた。
「ねえ・・・、お父さん?って事は・・・、あのヨーヨーは凄い威力って事なの?」
「いや、確かに強力な事には変わりないと思うが、理論上の威力はあんなに凄くは
無いはずだぞ。」
「じゃあその理論上の威力を超えた力を出せるのは・・・。」
「それこそ祖母ちゃんの力による物に決まっているだろう!あの祖母ちゃんの事だ。
大方ヨーヨーにも“気”を注入したりとかが出来たと思うしな!」
二人はまたも唖然としたが、カンウがヨーヨーを使った戦闘の映像は他にも存在し、
高速でヨーヨーを振り回す事で敵高速ゾイドを薙ぎ飛ばしたり、俗に言う“犬の散歩”で
小型機の群れを弾き飛ばしたり等を行っていた。その一方でカンウとは別のギガが
ギガクラッシャーヨーヨーに興味を持ち、少し借りて使って見たが、全くと言って良い
程使えなかったと言う映像もあり、やはりあれはマリンの曾祖母の技による物であると
考えざる得なかった。
「分かったか?」
「う・・・うん・・・。なんと・・・なく・・・。」
映像を切ったマイルはマリンの肩をポンと叩いた。
「と言うことで、お前には通常の特訓とは別にヨーヨー特訓を言い渡したワケだ。
分かるよな?」
「・・・。」
それから、マリンはマイルに言われる通り、全身に重量装備をした上から、これまた
かなりの重量のある特別製ヨーヨーをそれぞれ両手に持ってヨーヨーの様々な技を
使いなす特訓が始まった。ちなみに、現存するギガクラッシャーヨーヨーは一つなのに
マリンは両手にヨーヨーを持っているのは片方の手に力が偏るのを防ぐのと、どちらの
手でも仕えるようにする為である。さらにその後で、動く標的を打ち落とす練習等、
ヨーヨーを戦闘に使う為の特訓など、様々な事が行われ、現在に至るのである。
ZAC2180年3月28日
クーデター発生し同日夜間戦闘にてマクレガー大統領ヘリックシティ脱出
ZAC2180年4月1日
シード海で追撃戦が行われるも空軍の突出で敗北
空軍はネオタートルシップとホエールキング数隻を強奪される
ZAC2180年4月2日
夜半から早朝にかけてバーデン議員と初代RG7所属マスターファインが戦闘
激戦を繰り広げるも自力で勝るマスターファインが辛勝
その後バーデン議員は1ヶ月もの間洋上を遭難
同日
海軍がマスターファインの身柄を拘束
しかし当人は傭兵の仕事を受けただけなので即釈放
実際には無理に拘束しようとして旗艦を失うのを恐れたためと思われる
結構客観的に経過が書かれているが…RG7と言う単語に詰まるパネラーが居る。
ここでそれの説明を行う事になる。
元々は軍事に直接係わらない民間人が揉事の仲裁等を有る人物を中心に仲裁に入る…
それを助ける7人の人間が居た事が始まりらしい。
人種は一切関係無くとにかく相手を口と力で黙らせる事が出来る者が彼等だった。
全員が共和国よりの民族融和主義共同体(要するにマフィア)を母体とする組織に所属。
そこから揉事が?武装するようになり彼等も武装するようになったという…。
最終的には略便利屋と化し共和国領内の凡ゆる裏事を秘密裏に処理する存在となった。
それが公式に政府下の組織に編入されてその名が与えられたそうだ。
これで共和国政府は混乱期の事態の収拾に貢献したことになり、
ついでにそれ以降の表沙汰にできない事を効率よく始末できる力を得た事になる。
表に名前が出ているのはファインとゲンジクの2人のみ。
しかもその組織名が与えられる頃にはとっくにその7人全員がドロップアウトしている。
まあ…手柄の横取りする代わりにある種の免罪符を交付されたことになるそうだ。
物は言い様とは良く言うもので結局前政府に不利な内容の晒し上げだった…。
ZAC2180年4月5日
公式に新共和国政府が樹立
同時に周囲の国家に戦線を布告し東方大陸のZOITECに協力を正式に依頼
ZAC2180年4月6日
ZOITECは公式発言で協力を拒否
それと同時にマクレガー前大統領に協力すると正式に表明
新政府はそれに対する講義として空軍と海軍4師団を東方大陸に派遣
ZAC2180年4月10日
ZOITECは軍の派遣を非難
東方大陸北端の海岸線にて自警団と共和国軍が激突
共和国軍は自警団を一蹴し橋頭堡を確保
ZAC2180年5月2日
ZOITECは新型ゾイドのゴジュラスmk−V凱鬼を4機を旗艦とする奪還部隊を派遣
2日に渡る戦闘の後ZOITECが勝利
勝因は4機のゴジュラスmk−V凱鬼の汎用性に共和国軍の対応が遅れたのが原因との事
このゴジュラスmk−V凱鬼はゴジュラスに凱鬼と言うブロックスを装着しただけの機体。
そして凱鬼はこれまで開発された全てのブロックスとの連携を考慮された接続機体。
ボルドガルド系列発展型の大型機体で集光パネルを持った汎用アダプター的な役割を持つ。
ゴジュラスの方はBーCASに対応する処置と微調整をしただけで…
皮肉にもゴジュラスの高性能を改めて再確認すると言う結果になった。
ZAC2180年5月14日
ZOITECはゴジュラスmk−V凱鬼2機を含む部隊をシード海の或る島に派遣
マクレガー前大統領にそれ等の機体と部隊を譲渡
その見返りに新政府の打倒を依頼しその為には戦力の供給を惜しまないと発言
更に複数のブロックスや通常ゾイドを同時に供給
これは…またデルポイで戦争が始まると言う事を意味している。
規模こそ嘗ての戦争に比べれば限定的ではあるがその場は恐ろしい惨状になるだろう。
「ここまでやるか…う〜む…。」
偶々テレビを見ようとマクレガーがスイッチを入れたところにこんな番組。
因みに今は…ZAC2180年5月17日。
まだその増援は到着していないしZOITECからの表明も見も聞きもした事は無い。
そんな時…
「大統領!ZOITECからの使者が来ました!」
ジェスターの声が聞こえて来る。
「何だってええええええ!? 」
本当の事だったようだ。
その他にも一応クーデターを起こした新政府には一応目を止める事が幾つか有る。
先ずは情報制限の方法。混乱した際に情報源を一元化を行うと共に…
他の情報源を制限。唯制限するだけでは無くテレビでは他の情報源に、
情報を一切報道させずその代わりに別の番組を放送させる。
ネタが無いなら再放送と言う形で徹底的にニュース番組の枠を埋めるという形だ。
これは以外にも視聴者に好評だったようで不満は報道関係者以外には無い。
概ね子供に人気だったらしい…アニメやらお笑いやらバラエティ三昧。
大人に対しても情報源の制限は有るものの生活に直結するタイプの物は制限が無い。
天気予報や株式情報等は普通に放送された事が抜け目無さを物語る。
彼等の唯一の不満は最近人気が出て来たゾイドバトルが無くなった事ぐらいだろう。
「ははははははは…。やっぱり彼のジョークは一味違う!」
作戦会議も程々にマクレガー等の陣営は他のチャンネルでお笑いを見ていたという…。
一番の被害に遭った者がこれなのだから効果は抜群と言った所だろう。
しかし笑いながらもマクレガーは考える。
何故政府の失態の責任を自分に押し付けなかったのだろうかと?
本来なら彼をこき下ろすべき筈の番組が過去の清算を過去の者に言及する。
これの成す意味を知るのは後になってから身を以て知る事となるのだ。
全ての罪は全て根となる咎人と共に裁かれるべし…それが新政府の方針。
一般の者には略全く関係無い恐ろしい鋼の掟。手始めに根の処分が開始される。
エナジーライガ−は去った日から3日たった・・・・・
「今日は凱龍輝Σ(ガイリュウキシグマ)の出撃を行う!」
アルベルトが言った。
「凱龍輝Σって何!?」
とアトルが聞き返す。
「凱龍輝と「Σラプトル」と言う新型ブロックスのユニゾンのテストバトル、凱龍輝Σのパイロットはキール・ブラッドレイだ。
「!!!」
とアトルはあ然とした・・・
そうしてるうちに出撃してしまった。
と、次の瞬間!
「フッハハハハハ!ボーイ!一人だなんて無防備だっヒャッヒャッヒャ!!!」
と一人のおちゃらけたお祭り野郎がジェノブレイカーに乗って馬鹿なことを言っている」
「貴様・・・・・ゼネバス帝国の刺客だな・・・・・」
「さぁ?勝ったら教えてあげるわっヒャッヒャッヒャ!!!!」
とまた馬鹿なことを言ってバトルが始まった!
ジェノブレイカーは素早い動きで惑わす!
そして激しい肉弾戦がはじまった。
だが肉弾戦ではジェノブレイカーは凱龍輝の格闘能力を遥かに超えていた。
「いくら君でも虫の息だねぇぇぇぇ!!!」
とおちゃらけたお祭り野郎が調子に乗っている。
「そいつはどうかな?zIユニゾン!凱龍輝Σ!」
なんとΣラプトルの尾の砲塔が凱龍輝の手に付いたのだ
「ヒャッヒャッヒャ!!!!キザな真似を!いいわ!くらええぇぇぇ!!収束荷電粒子砲!」
「うおお!!!大口径プラズマ粒子砲!」
凱龍輝の手の砲塔が火を噴き、収束荷電粒子砲を押し切り、ジェノブレイカーを破壊したのだ!
「さあ!答えろ!」
「ヒャッヒャッヒャ!!!!負けたからには仕方ないわ!私の名はファンキー・アリカッハ!
ゼネバス帝国の三大幹部だッはっはっは!では坊や!またどこかで会いましょうッヒッヒッヒ!!!」
と笑いながらその男は去った・・・・
ZAC2180年6月2日…。
その放送より16日後。裁かれるべき者達の亡骸がデルポイを覆う事となる。
それ以前の尋常では無い高速処理の裁判。
横領者は最低限の財を残し資産を没収に始まり…思想犯の拘束。
人権及びゾイド養護法案の元に民間のZiファイター御用達のショップの業務停止。
完全に一般市民と高性能ゾイドを接触させない様に隔離。
養護法案に逆らう者の逮捕。抵抗するZiファイター勢力の摘発。
かなり酷く見える行為だがこれはまだ序章でしかなかった…。
ZAC2180年6月10日。
これまでデルポイで最大の規模を誇っていた極右組織の”風の朋友”。
これのこれまでの行為は民族浄化思想流布。風族以外への極端な迫害行為。
地球人の血を持つ物の排除行為等々多数。
これに対する新政府の方針は…無期限活動停止と実働構成員の拘束。
これを良しとしない風の朋友は隠し持っていた実働戦力を投入と言う暴挙に出る。
結果は…史上類を見ないデルポイ全土での戦闘勃発。
多大な被害を出しながらも新政府軍はこれを制圧。
強大な組織同士の戦闘ははデルポイ全土を血の海に沈める程の消耗戦となった。
しかし…これまで戦争の全ての裏に係わっていたと言う組織の消滅。
これは喩え自国民であっても極端な反意を持てばそう成るという強烈なアピール。
ZAC2180年6月17日を持ち新政府は略全ての実権を掌握することとなった。
「さあ…根っこの処理は済ませた。大統領?貴方はどうでるのかな?」
サーレントはワイングラスを傾けながら元通りとは程遠い町並みを眺め呟く。
これで獅子身中の虫は排除された…未来永劫に。
「まあこれからね。彼は直に動くわ。私達を潰す格好の事象を手に入れたから…。」
カサンドラは愛銃の手入れをしながら窓の外の空を見る。
血で染め上がられた大地とは打って変わって雲一つ無い美しい蒼一面の空。
そして…目を大地に戻すと大地に立て膝を付いて居る2機の巨影。
オイルと血に塗れた彼等の愛機は不気味なシルエットを見せつける…。
何方の機体も一般的なゾイドの姿をしていない。
異常に細長い足。それを守る様に着膨れした装甲代りの頭が6つ存在する
膝にはマッドサンダーの首が両足に存在する。
それは時折息をするようにマグネーザーを回転させる…獲物を求めるがごとく。
足首はデスザウラーの頭部を足首のカバーにしその下に巨大な鍵爪が見え隠れする。
太股の最上部にはセイスモサウルスの頭部がその狂気の口を開いている。
そのどれもが息をしており不気味でならない下半身。
上半身に到っては更に混迷を極める姿。
腕は無く本来肩のあるべき位置にゴジュラスギガの顔。
謎の生命体の石像を模した騎乗槍(ランス)状の頭部側面に更に鹿面が二つ。
その首からは巨大な角とも翼とも取れる構造物が一度天に向かい直に地へ垂れ下がる。
背中より生えた謎の金管楽器を思わせるパイプが機体前面に伸びている。
弟サーレントの操るアームレスプロヴィデンス(腕無き神帝)の姿である。
対して姉のカサンドラの機体は…確かに立て膝を突いてはいるがその場所が問題だ。
それは自身の無駄に巨大で長大な尾の上だったりする。
その尾の先端には鈍く輝く尾のサイズに見合うガトリングガンの砲身が5つ。
更におの付け根近くにはマグネッサーの飛行ユニットが複数背鰭の様に存在する。
上半身は胴体が二つに裂け胸部装甲で一つに繋げられている。
同じく騎乗槍状の頭部のその内部に如何にもな巨大砲身。
右肘より下には撃つ事すら困難そうな4門のロングレンジバスターキャノン。
左腕には見るからに危なそうなミサイルポッドやロケットランチャーの数々。
背には巨大質量を撃ち出すためのレールガンが有る。
カノンプロヴィデンス(巨砲の神帝)は物足りなそうに横たわるゾイドをつつく。
殺戮の果て血みどろの双子の神帝。
それを見る者にはそれが激しい闘争の幕開けを象徴するように見えたことだろう…。
ー 根の在処 進むべき道 終 ー
距離と挙動に索敵範囲。
風向き・気温に、湿度と幸運。
狙撃屋ってモンのデリケートを知らないマヌケと組んだ僕を泣いてくれよ、ママ!
「マァーカス!
マーカス!お前!手前!撃て!バカ!バカ撃てええええ!」
「だから無理ですって!外してつんのめってそれで終わりだ!」
いい加減限界らしく、スナイパーズシートの天蓋が吹き飛ぶ。
空が青い。サイクスは、黒い。
俺は、中尉だ。
どんな辺境で、ゴタゴタの受任だったって中尉だ。
正(まさ)しくの叩き上げで、勘当してやった親父より2ツも若く中尉になった。
「追撃にブチ込んだSMの話なんざゴマンとあるだろう!
撃たねぇんならパージしてでも逃げるぞ俺ぁ!」
「なッ!何言うんですかアンタッ!
並みのSMならともかくP2の反動じゃ無理なんだよ!」
・・・こんな小僧と組んだ所為でこんな所で死ぬなんてゴメンだ。
-つづく-
ジェネシスのOPがあんまり素晴らしいのでムラムラして書いた。反省はしていない。
今は続きを考えている。
「――なんだって!? そんなバカな、何のために!」
大戦前から失われなかった技術として、エネルギースクリーンに映像を映し出すシステ
ムがある。これは新聞やテレビなどの内容も投影でき、現在の市街では電子新聞が主流と
なっている(レトロな新聞紙を好む者も、少なからず存在した)。
リニアが持っているEスクリーン投影機は、亡き店主マサシ・T=ホワイトが遺したもの
の一つだ。そして毎朝、一日のニュースが放送局から送られてくる。
オリバーはその日の記事を見て驚愕の声を上げたのだった。
――深緑のデススティンガー、市場で大量虐殺――
それがニュースの内容であり、映し出された写真には見慣れた友の機体が――マキシミ
ンのデススティンガーが、はっきりと映し出されている。
衝撃に動くことすらできないオリバーに代わって、エメットが続きを読む。
「『…この機体は、“星光の鎖”に登録されている能力者のモノと一致し、その機体とパ
イロットは、ここ数週間にわたって行方不明となっていた…』 あれ、捜索届とか出して
ないんですか? 『…この件について、能力者否定派の一部が政府本部でデモを開始……
“能力者は人類の敵である”と書かれた旗を掲げ…』 うわ、なんて短絡的な思考……」
一文ずつ抜き出しては小言をはさむエメットだが、その表情にはありありと嫌悪が見て
取れる。
「クソ、あの野郎! マキシを使って、何か企んでるな!」
「おそらく、世間の感情をコントロールしようというのだろう。…同じ戦法を使ってくる
かもしれない。それも、複数で」
リニアは既に事件の先を見ていた。明らかにコレは、騎士が仕組んだ罠だ。
「ヤツはまた事件を繰り返すぞ。今回の殺人のあと、地中に消えている」
「なぜ……何が狙いだ?」
「あら〜? 意外と先の事は読めないのねぇ、オリバー。ま、そんなとこも可愛いけど」
レティシアの声には何というか、10歳とはとても思えない『色』がある。口調とあいま
って、それは彼女の毒舌を見事に中和しているのだ。
「彼らはただ能力者を殺しまわるだけじゃなく、洗脳した能力者を使って民衆をコントロ
ールするつもりよ。彼が騎士の仲間であることは、私達しか知らないものね」
ただ衝撃を受けるのみのオリバー。当然といえば当然の戦略だが、利用されているのが
自分の親友では無理もない。
重苦しい沈黙が、しばしのあいだ部屋を押し包んだ。
やがて、エルフリーデが口を開こうとする。が、その時――。
ガンッ
部屋の一角、柱に矢が突き刺さって揺れている。それが部屋の外から撃ち込まれたもの
であると理解するのに、リニアですら数泊の時間を要した。
「何だ…!?」
「待て。これは――矢文?」
矢には手紙が括りつけられている。ワンがそれを開く。
「…『次の襲撃は市街Fブロック、犯罪者収容所を標的に行われる』と、書いておる…」
「次の襲撃? まさか、マキシミンが襲う場所か? …差出人は?」
「書いておらん。が……怪しいといえば、怪しい」
まず疑ってかかるのが普通だ。政府の者がこんな情報でオリバーたちを釣ろうと画策し
ているのかもしれない。オリバーとマキシミンの関係も、調べればすぐに解ることだろう。
しかし同時に、現時点で唯一の行動を起こすきっかけともなりうる。
「いつ、とは書いていないか……ならば、適当な距離から待ち伏せして様子をみる」
リニアが街の地図を広げた。
「ここの収容所は巨大で、街の一ブロックがまるごと収容施設になっている。別のブロッ
クからでもここは見えるし、デススティンガーが荷電粒子砲のひとつでも撃とうものなら
すぐに見えるはずだ。……私がシャドーエッジで偵察に出る」
「んな、師匠! 決定速すぎ!」
「早すぎ、ということはないぞ。日時、時刻の指定がない以上、今すぐにでも襲撃が行わ
れる可能性はある」
あるいは、罠か――リニアは心の中で付け加えた。
「エメットはいつもの高台から見張っていてくれ。もし私がヤバイようなら、援護を頼む」
リニアが愛機のコックピットに飛び込むと、オリバーが続いてイクスに乗り込もうとし
た。だが、彼女はそれを制する。
「オリバー! お前の機体はまだ修理が終わっていない!」
自分のゾイドの状態も忘れているとは、これでは修行の意味がない。
しぶしぶといった様子で引き下がるオリバーの前で、シャドーエッジがブースターを開
き、曇り空へと飛び出していった。
エルフリーデはオリバーの横に並び、空を見上げる。
――雨が、降る。
何故かそんな気がした。それも、強い雨が。
「何だ、あの白いヤツは来ねえのか」
まだ雨は降っていないが、雲の中を雷が走っている。ときおり光る暗い空の下、どうや
って昇ったものかラインハルトのデスザウラーは居た。
「お前も、あいつと闘りたいよな? …スリンガー」
その機体の名は“スリンガー”――パイロットである彼にアーサーから与えられた称号、
“銃撃手(ガンスリンガー)”から取った名だ。
騎士の間では別に、ゾイドに名前を付けるなどといった決まりごとはない。ただなんと
なく、彼は愛機とより一体になれるような気がしていた。
リニアたちのいる部屋に、矢文をぶち込んだのはラインハルトである。危険を冒してで
も相手は来る、そう思っての行動だ。
しかし、やって来たのは彼が待ち望んだ敵ではなかった。
「…ま、アイツも結構な強敵だけどな」
覗きこむスコープには、飛来する黒いバーサークフューラーの姿が映っている。新入り
を瞬殺するほどの腕前だったが、どうもヤツの戦い方には『面白み』がない。
――まあ、いい。相手にとって不足はない。
剣を握る為に改造されたマニピュレータが、禍々しい深紅の刀身を鞘から抜き放つ。
「…コイツを追い込めば、案外白いヤツが出てくるかも知れねーしよ!」
真っ直ぐ、敵に向けられた切先。その先端から眩いエネルギーの奔流が放たれ、戦いを
始めるきっかけとなった。
――雨が、降り出した。
マキシミン=ブラッドベインは頭の中で任務を復唱する。『収容所を攻撃し、囚人を脱
走させよ』というモノだ。
それに何の意味があるのか、彼は深く考えはしなかった。――そもそも、今の彼の状態
では“深く考える”ことを思いつきもしないだろう。
「予定通り、降雨です。作戦開始準備、OK」
収容所には数々のセンサーがあるが、あまりアーティファクト資材には余裕がなかった
ため、半数ほどは前時代的な熱源センサーだ。そしてそれらのセンサーは、ひとたび雨が
降ればその間は無用の長物と化す。
収容所の警備がこれほどお粗末なのも、以前の“ギルド”本部や暫定政府の施設にばか
りアーティファクト資材が使われているせいである。マキシミンはぼんやりとそのことを
思い出したが、教えてくれた少年は何といったか? クールな態度と、電撃銃を構えた姿
は浮かぶのだが、顔と名前が思い出せない。
<――頃合だ。作戦を開始せよ>
命令は下った。それきり自己の記憶への追求は打ち切り、彼は操縦桿を傾けた。
破壊が始まる。地中から飛び出したデススティンガーは、混乱する収容所の警備システ
ムをいとも易々と突破していく。
「ここが収容区画か……」
バルカンが外壁を破壊し、怯える囚人達の前に逃げ道が開かれる。雨の中、紅い目を不
気味に光らせて収容所を破壊するデススティンガーは、彼らにとっては救済だ。
その時、遠くで鳴り響く音が聞こえてきた。
「……!?」
かなりの遠方より聞こえてきた音なのだろう。だが、降りしきる雨の音にもかき消され
ることはなく、低い地響きは曇り空に不気味な音を与えた。
太い光条が雨のカーテンを貫く。リニアは直前でそれを回避し、ビーム砲を射出した。
――騎士……か!?
廃ビルの上に立つ機体は見間違えようもない、改造されたデスザウラーである。その手
に握られた剣は血に染まるような深紅――政府で会ったヤツだ。
「あのビームは!? 荷電粒子砲では……ない!」
入場の時のような力強い足音は無く、何かが地面を転がる音だけが会場に響く。音は段々
遠くなり、数分の間、会場は冷たく静かな空気に覆われた。だが、その寒々しい雰囲気を物
ともせず、熱く燃え上がる1つの魂が観客席で鼓動していた。…まさか、アイツをやれるなんて。
グラントの眼は強い驚きと喜びに満たされ、独特の輝きを放っていた。モニターに映されたま
まになっていた青いゾイドの使い手の顔をじっと睨んだかと思えば隣に座っていた作業服の
男の方をガッと掴んだ。
「おい、今の見たか?フランカが負けた。あの坊主がフランカとゴジュラスの最強コンビを簡単
に破ったんだ。在り得ない!と思っていたことが実際に起こったんだ。…俺は今回まで最強の
一端を極めたつもりで居た。正直、シティーのチャンピオンにだって楽勝できるとさえ感じていた!
だが、違った。まだ強い奴は居た。少なくとも俺と同等以上の実力を持つフランカを破るような奴が
こんな所に隠れていやがった!なんて事だ!」
ルドブを大きく揺さぶり、大声でグラントは吼えた。
「よ〜し、そうとなったら行くぞ!」
グラントは頭をカクカクさせて、すっかり気分を悪くしていた男の襟を掴んで豪腕で軽く持ち上げる
ひょいっと肩に掛けた。
「…ど、どこへだ?」
抵抗する力も無くし、弱弱しい声でルドブが問うと大男は即答した。
「フランカのトコへに決まってんだろ?あの坊主の話をたっぷり聞かせてもらわねぇとな!」
身の心配をしないのか、仮にも女性…とルドブは思ったが、直ぐにこの男にとってそんなことは些細
な事以上の何者でもなかったのだという事を思い出した。そして、作業服の男は思考を止め、静かに
瞼を閉じて身をその広い背中に任せた。首元が少し窮屈だが少しの辛抱だ―。
フランカが病院に運ばれた事を知ったグラントとルドブが闘技場を後にした頃、リングには新しい戦士
達が姿を現していた。注目の第四回戦が始まったのだ。…客席から、TVモニターの前から視線が集
中した戦いは激しく展開した。後に戦いを控えている三人のファイターもその様子にモチベーションを
刺激され、ステージに上がりたいという気持ちを逸らせた。そう、全四人中から一人を除いた、
三人の選手…は、だ。
――彼の名はファイ・ライン。兄と共に駆るダブルアームリザードは一部の地域では白影の名で恐れら
れ、それなりの地位を築いていた。…だが、彼の今の愛機はリザードでは無くエヴォフライヤーだった。
操縦席も1人分のスペースしかない。…このエヴォは諸事情でZOITEC社で元の乗機であるリザードを
二体に分割した内の一体。単体での戦闘力よりもその適応地の豊富さを重視した機体で、今までリザー
ドの脳を担ってきたファイならその機能をフルに有効活用できる…はずだと思われた。…確かに彼の頭
から生みだされた戦術は決まれば絶大な効果を期待できる代物であった。そう、決まれば、だ。それはZ
OITECによる実戦トレーニングをした時に明らかとなった…。兄、ロンが戦術的な事が出来ず苦しんだよう
に、今まで激しくゾイドを動かした経験が少なかったファイの操縦技術は格段にレベルの低い物だったのだ。
飛行形態はもちろんの事、地上形態でも四足型よりも安定性の点で劣る二足型の操縦は彼には困難で、
厳しいバトルに耐えることは出来ないと見なされた。兄はあえて戦術を全く考えず、ゾイドと完全に一体化
することによって自分の戦闘スタイルを見出したが、ファイの場合は持ち味である戦術を実現する事が出来
ないのだから元々戦術力が無いのと同じ、…つまりバトルにおいては昇華性が全く無かったのだ。
トーナメントにエントリーしないと言う選択肢もあった。戦闘に出るだけが全てではない。長所を生かすことは
他の道でも出来る…社長とホワイトナイツ隊長の二人は後方指揮の道を彼に勧めた。だが、ファイはその勧め
に従おうという気は無かった。毎日毎日、狭苦しいコックピットの中で操縦桿を握り続けて寝る間も惜しんでトレ
ーニングに打ち込んだ。カルロも兄も戦っているのに自分だけがゾイドを降りるのは、逃げているようで、たまら
なく嫌だったのだ。…その結果、彼は倒れた。メインスイッチを付けたままモニターに顔を凭れて気絶していた
所を、休憩中の整備員に発見され、助け出されたのだ。目が覚めた後も直ぐには動く事は出来ず、暫くベッド
の上で生活する事になった。…ようやく動けるようになった時、大会は10日後までに迫っていた。エントリーは
既に済んでいる、逃げ道は無い。復活したファイは大量の水と栄養ドリンクを片手に、コックピットに篭った。
10日間、操縦桿を握りっぱなしで生活を送った。そして、ようやく満足な地上戦を可能にした所で、今日という日
を迎えた。当然、エヴォの特性を生かしきるためには航空戦のスキルが必要なのだがそれは間に合わなかった。
だが、なんとか戦うことは出来る。相手の機体も分かっているのだから、後は自分が戦える範囲内で考えられる
対抗策を編み出すしかない。ファイの考えはそこに落ち着いた。そして、彼は今、闘技場付近のゾイド用のトレー
ニング施設で実際にゾイドを動かしながら策を練り上げていた。耳にはドームから響く歓声も、ゾイドの放つ轟音
も届いていなかった。ただ、試合開始までのタイムカウントの音と、全身に響く振動だけが彼の頭を動かした。
焦りも有ったが、表情は晴れやかだった。ゾイドを自分の思い通りに動かせているという、ただそれだけの事に
軽い感動を覚えていた。ビームが的の真ん中を打ち抜いた時、アラーム音が鳴り響いた。同時に聞こえる第五
戦の終わりを告げる鐘。良いタイミングだ。闘技場直通のゾイドロードへエヴォを駆る。空はオレンジ色に輝き、
心地良い風を帯びていた。10日前に詰め込んだ水や栄養ドリンクは空き容器へと姿を変えていた。…やるべき
事はやった。絶対にこの努力を無駄にしはしない!誓いを胸に、ファイとエヴォは勢い良く入場門を潜った。
「さあ、バトルの開始だ!」
門を潜るとそこには青く雄雄しい翼を持った翼竜型ゾイドの姿があった。ディメトロフェ
ニックス。ディメトロプテラのレーダーウィングをゼロクラスの身体を持ち上げるほどの
強力なマグネッサー効果を発生させるフェニックスの羽に換装し、強力なレーザー砲を
多数装備した強化タイプ。変形機構を犠牲にしてまで力を得たこの機体の単純な戦闘
力はエヴォの倍に相当し、それに加えてパイロットの腕という点においても明らかな差が
あった。この状況を不利と呼ばずしてなんと呼ぶのか…そう思いながらもファイは自分の
考案した作戦を信じる事を腹に決めた。…観客を覚醒させるゴング音が響いた。初日の
ラストバトルが遂に始まった。畳んでいた羽を大きく広げてディメフェニは夕日が照らす
橙の空へと飛翔すると、エヴォはリングの壁に向かってブースター全開で移動を開始した。
その様子を見た観客達は首をかしげた。てっきり航空形態になり空中戦を展開すると
思っていたからだ。だが、今まで個性的な戦い方でしっかりと楽しませてくれたファイター達
に深い疑いは沸かなかった。きっと、なんか面白い事をやってくれるはず…皆自然にそう思
い始めていた。そんな勝手な考えが巡っている中、ファイは必死だった。空中で機動を整え
たディメがすぐさま狙ってくるはず。それまでに壁にどうしても到達しなくてはならなかったか
らだ。予想通り、足場の直ぐ側をレーザーが舐めた。足場が削れ、バランスを崩しそうになる
エヴォ。ファイは力ずくで操縦桿を捻り、安定した道に足を運んだ。突如、機動音が頭上を
通り過ぎ、猛風に進行方向へと大きく投げ飛ばされる。頭から着地し、鶏冠が砕け散る。
地を転がり、大きな衝撃が背を撃った。壁だ。全身に響く痺れを堪えながらファイは、分厚
くそそり立った金属を確認すると、その場にエヴォを前傾姿勢でしゃがみこませ、空を睨んだ。
…何のつもり?ディメのコックピットでイズナはその不可解な行動に眉を潜めた。だが、
相手が動かない事を確認すると降下し、レーザーを放った。鶏冠が砕け、へこみだらけに
なった頭部に容赦なく注がれる閃光。必殺効果は十分だ。…だが、それはエヴォの少し手前
で急速に減速し、挙句Vの字に屈折して散った。大会第一回戦でダムの見せた物と同じ、自機
を浮かせるほどの出力持つ、マグネッサー効果を利用した誘導磁場だ。ふーん、考えたわね。
確かに攻撃の範囲を限定すれば、その羽を前に展開するだけで十分な結界がはれる…しかも
後ろが壁なら通り抜けも出来ないから格闘戦はさらに無理と。だけど甘いわよ〜!再度ディメ
がレーザー砲を構えた。そして降り注ぐ光の雨。沸き立つ煙とともに壁が崩れた。貫通はせず
とも崩れ落ちた金属の瓦礫はその下に構えていたファイに牙をむいた。直ぐに脚力を増強させ
て横に逃げるエヴォ。だが、ディメはそれを許さず、横一線にレーザーを飛ばす。瓦礫が粉々
になり、灰色の装甲を捕える。だが、エヴォは慌てる事無く前方に転がり出て、背中に備え付け
られたキャノンを空中の標的目掛けて放つ。しかし、それを無駄だといわんばかりに上昇し、さら
りと交わすディメ。急降下し、中央部におびき出したエヴォ目掛けてアタックをかける。それに合
わせたかのように壁際に後退するエヴォ。ちっ!ちょこまかと〜。地面を正面に確認するとイズナ
は機体を捻り上げた。当然背後ではビームライフルが火を噴く。レバーを傾け、加速装置を一瞬
で調整してそれを何とか避ける。そして再度降下する――。このように何度かそのやり取りが続いた。
ファイの額には疲労の汗が浮かぶ。…効率的ではないが、空を飛べない以上、これを繰り返して
チャンスを狙うしかない。気力と体力は出来る限り鍛えてきた。大丈夫、勝利の瞬間は必ずやって
くるはずだ…。搭乗者同士が身を削りあう長期戦。あらかじめこの事態を想定していたファイとは
対照的に、一撃決着の空中戦を想定していたイズナの理性は限界にきていた。
「…もう、アイツ一体何考えてんのよ!空中戦の出来ない機体ならともかくエヴォで飛ばないなん
て反則もいいとこじゃない!しかも男らしくも無くちょこまか、ちょこまか動きやがって〜!きぃ!こ
うなったら、もうヤケよ!ヤケ!どうにでもなっちゃえ〜!!」
今までと同じようにディメが降下してきたかと思うと、翼に備え付けられた大量のレーザー砲を一斉
に乱射した。先ほどまでのやり取りで深い傷を負っていたリングは悲鳴をあげた。無差別も良い所で、
砲塔が焼き切れる心配等、全く感じられないような攻撃。勿論壁際もその射程内でファイは壁から急
いで離れる。だが、瓦礫の山は波のように押し寄せ、足場も砕けたため、片足を完全にすくわれて、
その場に倒れこんだ。くっ…なんて無茶を。エヴォの身動きを奪ったにも関わらずレーザーは継続し
て降り注ぎ、止まなかった。もはや本来の目的がイズナには見えていないらしい。…暫く閃光がリング
を飛び交い続けると、ディメの羽から次々と爆発と煙が上がった。同時にレーザーの雨が止む。
…いけない!それに伴い我に返るイズナ。慌てて周囲を見回すと瓦礫に片足を抑えつけられつつも、
六枚の羽でレーザーの雨を凌ぎきっていたエヴォの姿があった。ふん、ようやく大人しくなったじゃない!
ゆっくりと低空を飛び、ディメは倒れたエヴォの直ぐ側に着地した。くっ…。ファイはビームを撃とうと
トリガーを引くが砲塔が先ほどのレーザー熱で捻じ曲がり、反応が無い。その様子を笑っているのか、ディ
メはかすかに震えながらとショックキャノンをエヴォの頭部に乗せた。実弾でもレーザーでもないが、この距離
ならメインコンピューターを停止させるには十分…とは言っても、実際は先ほどの暴走でレーザーは
全て機能していなかったため、満足な武装はコレしか残っていなかった。バイバイ〜♪イズナがトリガ
ーに手を掛けた。しかし、それよりも早くファイは手元のレバーを倒した。次の瞬間…!空砲は砲身を
失い、内部破裂を起こした。キャノンが起こした爆発に、飛行を前提とされた薄い装甲は耐え切れず強
い衝撃となってコアシステムにダメージを与えた。ショック作用で機能が停止するディメ。コックピットの
明かりが次々と消える中でイズナは一瞬の出来事を理解できずに呆然とした。…停止した双翼の背後
では出来損ないの飛行形態で地にうずくまるエヴォフライヤーの姿があった。そう、先ほどファイが倒し
たレバーは飛行形態への変形システムを作動させるスイッチだったのだ。片足を封じられていたため
片方のウィングシステムと飛行用のジェットブースターだけが作動し、渦巻きのように回転してショック
キャノンを破壊したのだ。決着のゴングが鳴ると、ファイはコックピットから脱出して傷ついたエヴォの
姿に軽い笑みを見せた。
「…どうやら君は俺の意思に応えてくれたようだ、感謝するよ。」
――初めての個人戦での本当の意味での初めての勝利。そして、それに付き合ってくれた初めての
自分だけの愛機。先は長いが、取り合えずファームに戻ったら、急いで修理を頼もう。当然訓練も続け
なくてはならない。
「修理が終わったら今度は空を飛べるように訓練を積もう!エヴォフライヤー。」
…ふと見上げた空には薄っすらと大小二つの月が顔を覗かせていた。そう、まるで二人が空を飛ぶ
その日が近いことを祈っているかのように…。