銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
そこはうち続く戦乱と荒ぶる自然の世界。
人々は、この星に棲む巨大な機械生命体-ZOIDS-を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと赴く。
この戦いに勝利することが、永遠なる平和を勝ち取るための唯一つの方法と信じて…。
空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリー。
しかし、そこには語られる事のなかった多くの物語がある。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語であるならば、アニメ、漫画、バトストなど何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などは、特に制約はありません。
ゾイド板ならではの自由で柔軟な作品をお待ちしております。
ただし、例外として18禁はご遠慮下さい。
鯖負担になるので、
>>250に書き込んだ方に次スレのスレ立てをお願いします。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
スレ立て初めてなんだが見事にやってしまった・・・
>>4 次スレおつかれさま。
多くの人がよくやるミスですな。
今後、他の機会に繰り返さなければいいかと思います。
「何で私がカンウに乗ってるかって?」
格納庫内で、拘束具に固定されたゴジュラスギガ=カンウの右足に寄りかかって座っている私。
つまりマオ=スタンティレル少尉(18)はそう言った。
事の始まりは私の直接的な部下に当たるライン=バイス軍曹(20)がそのような質問をしてきた事による。
「だってそうでしょ?ゴジュラスギガは人を選ぶって言うじゃないですか。じゃあ、少尉とカンウに関しても何かしらのドラマがあるのかと思って。」
「いいわよ…話してあげる…。」
私はそう言って少し微笑みながら上を向いた。
「カンウは…私の実家の地下室の中にあった。そしておじいちゃんが私にこう言ったの。
ゴジュラスギガさえあればお前は神にも悪魔にもなれるってね。」
「ウソでしょ?」
「…。」
速攻でつっこまれて私はグウの音も出なかった。
「だってそうでしょ?少尉は孤児だったって言ってたじゃないですか。」
「わーったわーった。本当の事を言うわよ。言っとくけど、少し長い話になるから途中で寝たりするんじゃないわよ。」
それは、私が士官学校を卒業して、ある部隊に配属されたときの事だった。
当然私は前述延べた通り士官学校を卒業してるワケだから、少尉スタートなのである。
とはいえ、実技はともかくも、学科の成績はあまりいい方ではなかったのだが…。
そして、私にあてがわれたゾイドは何と一体のゴドスだった。
小型ゴジュラスと呼ばれ、かつては最強小型ゾイドと呼ばれた機体だが、今や完全に旧式化。
近頃は民間にも払いさっげられて土木工事をやってる機体も少なくない。
そんなゴドスに私は乗ることになってしまった。
確かに今の共和国軍は余裕もないし、私自身新入りなワケだから、そうそう良いゾイドに乗せてくれる
ワケは無いのだが、いくら何でもゴドスは酷い。せめてウネンラギアに乗せて欲しいと思った物だ。
私はその辺に転がってる二等兵かっての!!
グチを言っても仕方がないので私はゴドスに乗る。操縦系に関しては士官学校時代に操縦した練習機と
ほぼ同じだったので、操縦そのものに問題は無かったが、問題はこのゴドスが何処まで動くかである。
ゾイドはロボットではない。れっきとした生物である。故に操縦通りに動いてくれない時もあるし、
ゾイドそのもののにも経験や学習をさせる必要がある。
格納庫から出て、私の乗ったゴドスは演習場に入る。
とりあえず歩いたり、走ったり、跳んだり跳ねたり等、基本的な動作を行う。ゴドス自身人型に近い
形状をしている事もあり、ラジオ体操なんて事も一応やったりも出来る。
反復横飛びとか腕立て伏せなど、操縦になれる為に基本動作を一通り通してやってみる。
結構色々出来る物である。
そんなこんなで、基本動作の次は上級技をやってみたりする。
バク転。逆立ちしてもカポエラキック。高くジャンプして空中ウルトラC等々の上級技の数々。
結局全部出来なかった。私自身は全部出来るんだが…。
特に空中ウルトラCに関しては危うく頭から落ちかけて正直危なかった。とっさに背中から落ちて
受け身を取ったからどうにか助かった物の。もし頭から落ちていたら私は死んでかも知れない。
まあ、流石にこれらの上級技はこのゴドスには無理だと分かっただけでも良しとしよう。
そう思って私は少しずつ慣れさせていくことにした。
一通りゴドスの性能や操縦に関して把握した後、いったん私は格納庫に戻った。そして、ゴドスから降りるわけだが、その時…。
ぐぅおおぉぉぉぉぉ
「!!」
まるで地の底から響いてくるようなうめき声に私は思わず凍り付いた。いきなりなのだから驚いても不思議はない。
「な…何?今の…。」
あの時の私は正直驚いた。思わず声に出してしまうほどに。
「開かずの第五倉庫からですよ。」
「え?」
あたしのゴドスの隣でガンスナイパーの整備をしていた若い下士官が私にそう言った。若いと言っても私よりは随分と年上だが…。
「あの…下士官さん…開かず第五倉庫って?」
とりあえず初対面の相手に対して敬意を表するつもりでさん付けで言う。そして、若い下士官は作業を続けながら言った。
「開かずの第五倉庫…。あそこにはゴジュラスギガが封印されてあるんですよ。」
ゴジュラスギガ。士官学校時代に名前位は聞いたことがある。共和国軍が長年の研究の集大成として
作り上げた最新型ゾイド。その性能はゴジュラスの比では無いという。でも…そんな強いゾイドなら
何で封印する必要があるのだろうか…。
「うちの隊に配備されたゴジュラスギガがですね。ゴジュラス同様気の難しいゾイドみたいで
誰もろくに動かせないんですよ。その上たまに暴走して基地に被害を与えるし…。
で、結局第五倉庫に厳重に封印したんですよ。だから開かずの第五倉庫と呼ばれてるワケです。
ですが、たまにああしてゴジュラスギガのうめき声が聞こえるって事ですよ。我々はもう慣れましたが…。」
「ありがとね。」
とりあえず私は下士官に礼を言ってその場を立ち去った。その間にも第五倉庫からのうめき声がした。
あれから数日。私は訓練が終わった後の暇を利用してゴドスの操縦自主訓練を行っていた。
突き、蹴り、回し蹴り、裏拳、政拳等々、とりあえず性能の差を技術で補おうと格闘技術を磨いていた。
私はこれでも士官学校に入る前も色んな格闘道場に入門したりして技を磨いていたりして、
そこで培った技をゴドスに乗った状態でも使えるようにしたいのだが、いかんせんゴドスの性能や
反応速度の問題で難しい。空手など、一般的人にも覚えやすく、割とどこにも普及している拳法なら
ともかくも、あえて名前はまだ出さないが、高レベルの高等拳法になるとゴドスの性能限界を超えた
技も多い故、とりあえず空手、柔道やプロレスなど、簡単な技を覚えさせることにした。
一通り自主訓練を終えた後、私は基地内の食堂に行った。
相変わらず食堂は騒がしい。軍隊と言うヤツは血の気の多いヤツが沢山いるのだから仕方がない。
「オレと一回千ガネーで腕相撲勝負するヤツはいねーか?買ったら一万ガネーをやるぜ!!」
などという筋肉モリモリのいかにも力だけが取り柄の大男がそう叫びながら己の筋肉をアピールする。
こういうヤツがたまにいるのだ。軍隊というヤツは。
とはいえ、その大男に何人が挑戦するが、誰も勝てない。口だけのハッタリではないようだ。
「あたしもやらせてよ。」
まあ、特にやることもないので私もやってみようかなって事で大男に千ガネーを手渡す。
その瞬間、誰もが私を見て黙り込む。
「お嬢ちゃん…いいのかい?腕が折れても知らないよ…。」
などと煽る者も出てくる。
確かに、私は体もそう大きい方ではない。極端に小さいわけでもないが、平均的な身長ってヤツ。
「いいからやらせてよ。これでも一応鍛えてるんだから。」
私はそう言って右腕の肘をテーブルに付けた。
「あ〜あ〜。やりにくいな〜。本当に骨が折れても知らんよ。」
大男はしぶしぶテーブルに肘を下ろし私の手をつかむ。私の細腕と大男の極太の腕のギャップが凄い。
「少しは手加減してやれよー!!」
なんて、周りのギャラリーが騒ぎ立てる。なぜかいつの間に人が集まってきた。
「はじめ!!」
くるんっ
勝負は一瞬だった。
私が普通に右腕を左に下ろすと同時に100キロ以上はゆうにある大男の巨体がくるんと一回転したのだった。
「え?え?何が起こったの?」
何が起こったのかワケが分からず唖然とする全員。特に一番驚いているのは大男では無いだろうか。
「だから言ったでしょ?一応鍛えてるって。」
私はその場に倒れている大男に対してニッコリと微笑みながらそう言った。
確かに私はこれでも一応鍛えているので力でも相当の自身があるつもりだ。
しかし、この程度で驚くのははっきり言って素人。私のお姉ちゃんなど私とほぼ同じ程の細腕をしていながらゴーレムと腕相撲しても笑って勝ってしまうほど強い。
「ハイ、一万ガネーちょうだい?」
私はニコニコ微笑んで大男に手を出す。
「もう一回やらせてくれ!!!」
大男は起きあがってまたも私の右手をつかんだ。何度やっても同じなのに。
>>1さん、6を5と書き間違えてるとは言え乙カレさまです。
さて、早速最初に書いた話としてはタイトル通り、
自分のストーリーの主人公がなぜギガに乗っているのかというのを
描いた話となっています。
下山してきたマッケナ大尉を迎えに着たのは軍団司令部で情報収集を命じていたミュラー軍曹だった。
律儀に敬礼をするミュラー軍曹に頷くとマッケナ大尉は説明を求めた。
「山岳民族との間に戦闘が起こったのは20時間ほど前のことです。場所はお伝えした通りに山脈を抜ける街道地点です。
現在までに分かっている状況ですが、イグアン十機による哨戒中に対物ミサイルによる攻撃を受け、付近にいた山岳民族と思われる武装集団を掃討したそうです」
マッケナ大尉は連隊本部の天幕に向かって歩きながら話を続けた。
「対物ミサイル?・・・では先制されたのはこちらなのだな」
不機嫌そうな顔でマッケナ大尉は言った。山岳民族の方から手を出してきたというのがやや不自然に思えるからだ。
非装甲の車両程度ならともかく、イグアン完全装備の一個小隊に対して対物ミサイル程度しか持たない山岳民族が対抗できるはずも無いからだ。
「最初の攻撃が対物ミサイルだというのは間違い無いようです。それと戦闘中にイグアン二機が被弾、搭乗員一人が戦死しています。
それと・・・」
そこから小声になると、ミュラー軍曹は周囲を見回してからマッケナ大尉の耳元でささやいた。
「第六軍団の情報参謀が動いています。それと派遣軍司令部の一部も」
眉をしかめるとマッケナ大尉はミュラー軍曹を見つめた。
「情報参謀?ベガード中佐か、それに派遣軍司令部だと、こんな短時間でか?動きが速すぎるな」
だがミュラー軍曹は首を大きく振るといった。
「勘違いをしないでください。派遣軍司令部と軍団参謀は戦闘の前から不自然な接触が見られました」
しばし呆然としてマッケナ大尉は空を見つめた。結論はすぐに出ていた。だがそれを口にするのはあまりにも馬鹿馬鹿しかった。
「謀略なのか・・・それにしてはあまりにも稚拙である気もするがな」
首をすくめるとミュラー軍曹も馬鹿馬鹿しそうにいった。
「結論はまだ出すことはできないでしょう。ですがそれが正しいとしても一概に稚拙であるとも言えないのではないですか。
これで山岳民族を大義名分のうえで制圧することができるでしょうし・・・」
マッケナ大尉は面倒くさそうにいった。
「馬鹿馬鹿しい。山岳民族をひとつ制圧するのにどれだけの戦力が食われるかな。そんな無駄をできるほど楽な戦いではないと思うがな
それにこのあたりの集落すべてを吹き飛ばすつもりなのか?
それよりもは外交によって彼らを懐柔した方がはるかにましだ」
「そんな考えができるのは大尉くらいではないですか。今の軍では外交などは軟弱な手段だと考えられているようですから」
マッケナ大尉は不機嫌さを隠そうともせずに続けた。
「今はそんな事はどうでも言い。それよりも戦闘を行った小隊員に聞きたいことがある」
「ベガード中佐が彼らの身柄を押さえていますが面会くらいなら問題無いと思います。こちらです」
そう言うとミュラー軍曹は天幕のひとつを指差していた。
スレ立て乙です
もう6スレなんですよねぇ、意外に早かったな
>>13 4スレ目から急激に投稿ペースが上がった。
3スレはレスが250に達するまで1年以上掛かったのに…。
「ふんぬぅぅぅぅぅぅ!!」
大男は相当に気合いを込めて叫びながら己の右手を左に倒そうとする。その腕はピクピクと痙攣している。しかし動かない。ちなみに私は何もしてない。
「俺達が全然敵わなかったのに…何なんだあの女は…。」
周りからそんな声が聞こえる。
大男はなおも必死に倒そうとする。いい加減弱い者いじめは良くないのでそろそろ終わらせようか。
そう思ったときだった。突然基地中にサイレンが鳴ったのだ。
「敵襲!!敵襲!!帝国軍接近!!」
「な!!」
誰もがその場に立ち上がって緊張する。
「とにかく格納庫に!!」
私はその場から格納庫に走った。ゴドスに乗るためだ。初めての実戦でさらに愛機はゴドス。
どこまでやれるか分からないが、生き残るためには何だってやるしかない。
「お嬢ちゃん…ちょっと…ちょっと…まっておくれ…。」
突然うしろから聞こえる男の声。あ、しまった、大男の手をつかんだままだった…。
とりあえず大男の手を離してゴドスに乗り込む。一々梯子を使うのが面倒なのでその場から跳び乗る。
ゴドスを起動させて格納庫から出た時、既に戦闘は始まっていた。
基地に直接的な被害は無いが、基地から遠く、丁度地平線の当たりではいくつもの光がピカピカと
光っている。既に激しい戦闘が行われている証拠だ。
そして、基地から離れて直接戦うグループと基地に残って防衛するグループに分かれるワケだが、
私は後者の方だった。まあ、私が乗ってるのはゴドスだから戦っても戦力にならないと判断されたのだろうが…。
その時だった、レーダーに突然機影の反応があったのだ。それも、戦闘が起きている所の逆方向から。
「しまった!!陽動か!!」
私を含め、みな前方の敵にうつつを抜かし過ぎて後方の敵に気付かなかった。
敵は既に基地の敷地内に進入している。私同様に敵に気付いたのか、他のゾイド。ガンスナイパーやスナイプマスターなどが基地後方に走る。私のゴドスも後方の敵に対して走るわけだが、いかんせん
2機の新型ゾイドと旧型のゴドスの機動力差は大きい。どんどん離されていく。
こちらがまだ向かっている途中、すでに戦闘は始まっていた。既に激しい爆音などが聞こえる。
やっと到着したとき、私は愕然とした。何しろ敵の数は多い。その上、今まで見たこともない異形のゾイドばかりだったのだ。
後にキメラブロックスと知った異形のゾイドの戦闘力は高かった。先行していたガンスナイパーや
スナイプマスター隊が苦戦しているのだ。戦闘力が高いだけではない。数も半端な物ではない。
「!!」
そんな時だった。戦闘のどさくさに紛れて、数体のキメラが友軍部隊を突破。何処かへ走っていくのが私には見えた。
私はその事を友軍機に報告し、すぐさまにそのキメラを追跡した。
「あ…あれが開かずの第五倉庫…。ヤツらの狙いはこれ!!?」
数体のキメラは数字で5と書かれた倉庫の扉に攻撃していた。ヤツらの狙いは中のゴジュラスギガ。
機動前に叩きつぶそうという魂胆か。そんな事はさせない。私は思った。
ゴドス腹部に装備された小口径荷電粒子砲を放つ。旧式とは言え中型機も大破させる武器だ。相手が新型でもそこそこ通用するはず。当たった。
カメとゴリラのキメラ、いわゆるシェルカーンの左肩に直撃した。しかし、相手は全くひるまない。人間が乗っているなら直撃すれば少しはひるむはずだが…。
来た!!キメラの一体が私のゴドスめがけて走る。格闘戦。ゴドスでどこまでやれるか?
シェルカーンのパンチが来た。私は素早く操縦桿を倒してとっさにかわす。
その時に思った私の印象はこうだった。
「戦い方に関しては素人。」
相手のパワーは凄い。しかし、戦い方に関してはてんでダメだった。つまり、力押ししか能がないという事だ。
これならば私でも何とかなるかも知れない。
攻撃を外されて体勢を崩したシェルカーンの両肩をつかみ、ゴドスの足でキメラの片足を弾いて倒す。
柔道の技である。やはり相手は力だけの素人。受け身の取り方も分からないようだ。
ひっくり返ったシェルカーンの体を見たとき、そこにはむき出しのブロックがあった。
そして、その時に私はこいつらもブロックスだと初めて分かったわけだ。
そして、むき出しのブロックスは弱点も同然ブロック部分に荷電粒子砲を一発撃ち込んだだけでシェルカーンは動かなくなった。
「まずは一機。」
その時だった、一瞬の隙をつかれて別のキメラのパンチが私のゴドスを直撃した。
とっさに後ろに跳んでダメージを和らげたとはいえ、後ろに大きく飛ぶ。
そして、飛んだ先は何故かそこにあったスクラップ置き場だった。
「いたたた…。」
スクラップ置き場に叩きつけられた私のゴドスは起きあがろうとした時、とっさにつかんだ物は、
そのスクラップ置き場に捨ててあったレオブレイズのザンスマッシャーだった。
「これは使えるかも!!」
私はとっさにザンスマッシャーをゴドスの右手に持たせて構える。
何も考えずに向かってくるシェルカーン。私のゴドスがザンスマッシャーを頭上に振り上げた。
「破!!」
気合い一閃。次の瞬間キメラは真っ二つになった。
「これで二機。」
レオブレイズのザンスマッシャーは洋剣の様に重量にまかせて叩き斬る武器ではない。
地球で「日本刀」と呼ばれていた物の様に、斬る武器なのだ。
日本刀は洋剣に比べ薄いために折れやすいが、切れ味ならば日本刀の方が高い。
対象に対して垂直に正確に振り下ろすことが出来れば例え金属の固まりのゾイドでも斬れる。
と言っても、これは剣術に関しての心得も持った…というか剣術もしっかり身につけた私だから
出来る技であって、素人が同じ事をすればたちまちポキンと折れていると思う。
それにしても、友軍の応援はまだ来ない。確かにこちらに来ているキメラの数も決して多くはないが、
少しくらい来てくれたって良いと思うのだが…。
とかなんとかやってる内に先ほど斬ったシェルカーンの後方から別のキメラが来た。
今度はティラノサウルスっぽい顔に小さな足がちょこんと付いて、さらに頭部側面に長い槍の
ような角がついたキメラ。いわゆるデモンズヘッドと言うヤツなのだが、当時は思わず笑った記憶がある。
そして、その短い足でヨタヨタとこちらに向かってくるのだ。流石に笑ってしまったが、油断するわけには行かない。
と思っていたらやはり頭部側面の角を振り上げて襲いかかってきた。これを食らうわけにはいかない。
私のゴドスは跳ぶ。丁度デモンズヘッドの頭の後ろにのっかかた。そして、ゴドスの両腕で
デモンズヘッドのデカ頭の顎の部分をつかみ、それをエンジン全開で持ち上げる。
「キャメルクラッチ!!」
思わず技の名前を叫んでしまった。地球の格闘技。プロレスの技の一つ。
早い話が相手の背骨を折る技である。とはいえ、ブロックス相手に通用するかは疑問だが…。
とりあえず相手を折ったが、これで死ぬブロックスじゃあ無い。ブロックスはパーツの取り外しが
自在のゾイドだからだ。コアブロックスが無事ならほぼ不死身だと言って言い。
しかし、先ほどのキャメルクラッチで頭部が外れた部分に丁度銀色に輝くコアブロックスがあったり
するからブロックスというのも案外不死身じゃないかも知れない。
早速むき出しになったコアブロックスにザンスマッシャーを突き刺す。
「三機。さあ!!サクサク行こうか!!でもほどほどにしないと逆にやられちゃうかも…。」
と、残るキメラがこちらに攻撃を仕掛けるどころか一方向に集まり始めた。
「!!…冗談でしょ…。」
キメラが数機一塊りになり、合成機獣のキメラがさらに合成し、いわゆるキメラドラゴンになったのだ。
「うっひゃぁぁぁぁぁ!!冗談はよし子さんやでぇぇぇぇぇぇ!!友軍はまだ来ないの!?うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
当時の私は初めてキメラの融合というヤツを目の当たりにしたわけで、恐怖の余り意味不明の言葉を
叫びながら思わず泣いてしまった。
とりあえず戦術的撤退。と…思ったその時、間髪入れずにキメラドラゴンが来た。
速い。巨大化したらその分動きが鈍くなるのが普通だが、キメラドラゴンはむしろ速くなっていた。
とっさに左に逃げるものの、ザンスマッシャーを握っていた右腕部分をやられた。
パワーも半端な物では無い。そしてそのままその場に倒れ込む。私はゴドスを必死に起きあがらせようとするが遅かった。既にキメラドラゴンの右腕がゴドスの腹部に叩き込まれていた。
装甲の薄いゴドスなど一溜まりもない。たちまちコアごと潰されて動かなくなる。
このままでは確実に殺られる。とっさにキャノピーを開けてコックピットを脱出する。
と、脱出した直後にコックピットにキメラドラゴンの角が突き刺さった。それだけで血の気が引く私。
やばい!!マジで殺られる!!と、そう思ったときだった。
ゴウン!! ゴウン!!
と、鈍い金属音が聞こえてきたのだ。キメラドラゴンもそれに気付き、私への攻撃を中断して
私共々音のあった方向に向いた。
「開かずの第五倉庫…。」
>>14 ゴメソナサイ。それは自分の仕業です・・・(w
>17
>洋剣に比べ薄いために折れやすい
待った!刃幅では西洋剣の方が広いが、刃厚は日本刀の方が厚いぞ!
横からブッ叩かれる事に関しては西洋剣は薄くてたわみやすいから強いんだぞ。
と言っても、材質や構造的な理由で日本刀の方が強いんだけど。
ちなみに、日本刀の刃厚は大体1cm前後、西洋の大型片手剣で5mm前後。
マッケナ大尉が天幕の中に入ると、連隊本部中隊の将兵が数人いた。
ほとんどの人員は何かの計器を監視していたり、地図を確認しているのだが、一人だけ居心地悪そうにしている将校がいた。
襟章などから考えると、どうやらその将校が戦闘を行った小隊長らしかった。
マッケナ大尉は本部中隊の兵に声をかけるとその将校の前に腰を下ろした。
さりげない動作でミュラー軍曹は天幕の中にあるカーテンを引いていた。
将校は下ろしていた目線を上げると、緩慢な動作で仕切られたカーテンを見て、マッケナ大尉の顔を見つめた。
「だいぶ疲れておるようだな。貴公がシュタイナー少尉だな。私は参謀本部情報部二課のマッケナ大尉だ」
シュタイナー少尉は困惑した顔でマッケナ大尉を見た。
「今度は参謀本部ですか。いったい自分たちが何をしたというのですか。これで何度目です?」
眉をひそめてマッケナ大尉とミュラー軍曹は顔を見合わせた。
「貴公は今まで説明をしているのかもしれんが、すまんのだがそれとは私は別口だ。
だから戦闘についてもう一度最初から話してもらう」
シュタイナー少尉は面倒くさそうな顔になっていった。
「それはかまいませんが、一体何が起こったのですか。我々は襲撃してきた山賊を撃退しただけです。
この騒ぎは何なのですか」
軽く頷くとマッケナ大尉はいった。
「貴公が戦ったのはとある山岳民族の偵察だと思われる。私はその山岳民族を宣撫するはずだった」
それを聞いてシュタイナー少尉は呆気にとられた顔をしていた。そしてすぐに言った。
「しかし、自分らを最初に攻撃してきたのはあちらですよ。そんな連中を宣撫することなどできるとは思えません」
「それを判断するのは我々情報部か外務省の職務だ。それよりも貴公に聞きたいのだが本当に相手から攻撃してきたのか」
シュタイナー少尉は嫌そうな顔をしていった。
「それは間違いありませんよ。最初に自分に向けてミサイルが発射されたのですが、慌ててそれをよけて、あとは戦闘詳細のとおりです」
だがそれを聞いてもマッケナ大尉は食い下がらなかった。
「そのことについて聞きたいのだが、本当にミサイルは山岳民族達が撃ったのか」
「・・・それはどう言う意味ですか」
「どうもこうも無い、貴公は山岳民族達がミサイルを持っているところを確認しているのか」
シュタイナー少尉は首をひねると考え込んだ。だが少尉が答える前にカーテンが勢いよく開けられていた。
慌ててマッケナ大尉とミュラー軍曹が振り向くと、そこには怒気もあらわにしたベガード中佐が立っていた。
>>20 鍛造、というよりもは焼き入れを行うことによるマルテンサイトの形成ですな<材質
西洋の剣は鋳造ではなかったかしらん?この辺曖昧だが、西洋剣は刃よりも装飾品に注目されることの方が多いですからね
日本刀も江戸時代になって太刀から刀へと主流が移っていった頃は鍔などが注目されたのでしょうが、やはり本筋は刃ですからねぇ
博物館等で展示されていても刃だけというのが多いし・・・
ああ、鍛造やりたいなぁ
>22
日本刀はただの鍛造や焼入れだけでは語れません。
鍛錬による不純物の排除、自由鍛造積層による結晶の微細化、軟鉄と高炭素鋼の複合、
木炭中での不完全燃焼による浸炭処理、そして焼入れによるマルテンサイトの形成。
現代材料学で学ぶほぼ全ての材料強化処理が施されていたりします。
西洋の剣は鋳造で大体の形をしたバルクを作って、叩いて整形します。
日本刀のような鍛錬もなければ折り重ねもなし、本当にただ形を出すための鍛造ですが。
刃だけで美術的な観賞に耐えるほどの価値は日本刀ならではのものですね。
焼入れ土の乗った跡を示す刃紋、優美なカーブと鎬に施された溝、切っ先の3角形。
場所と展示品によっては折り重ねによる積層が見やすいような処理をしてるものもありますね。
・・・日本刀ホスィ。
その音は開かずの第五倉庫からだった。中のゴジュラスギガが外に出ようとしているのだ。
そして固く閉じられた第五倉庫の扉から爪の様な物が突き出てきた。
ぐぎゃおぉぉぉぉぉぉん!!
「こ…これがゴジュラスギガ…。」
遂に竜王の封印は解かれた。巨大な体に背中の背鰭。間違いなくそれはゴジュラスタイプの物だった。
扉を強引にこじ開けたギガはもの凄い大音量の咆哮を上げたのだった。
私も思わず耳をふさいだ。
その時だった。キメラドラゴンがゴジュラスギガに飛びかかったのだ。しかし、事は一瞬で終わった。
ギガは左腕をただ振っただけでキメラドラゴンの体を二つに切り裂いたのだ。
ギガは構えて大きく振りかぶったとか、声を上げて振ったとか大げさな前置き動作は一切行っていない。
ただ左腕を振っただけである。それだけでキメラドラゴンを二つに切り裂いたギガのパワーはとんでもない物だった。
キメラドラゴンはたちまち動かなくなった。
「は…はは…。」
あまりの強さに私は愕然とした。
ギガがこちらを向いた。ギガと目が合う。そして、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
やばい…今度は私が殺られる。数日前に下士官が暴走すると言っていたのを思い出した。
友軍のゾイドとは言えど、味方では無いはず。あちらにとっては私も敵。殺すべき対象なのだ。
逃げても逃げ切れないだろう。物崖に隠れても隠れた物ごと破壊してくるだろう。
ああ…目をつぶるとお花畑が見える…。私は死を覚悟した。
しかし…何も起こらなかった。
「え…?」
恐る恐る目を開く私が見た物は私に対し頭を下げてコックピットのキャノビーを開いたギガの姿だった。
「……。」
当時の私は今起きた状況がワケ分からず私は一時沈黙した物だった。
「あの…私に乗れってことですか?」
私は恐る恐るそう言いながら自分を指さした。ギガはゆっくりとうなずいた。
「そう言って安心させといて後でガブッじゃないでしょうねー…。」
私は恐る恐るギガのコックピットに乗り込んだ。
操縦系に関しては、細かい所は少し違うももの、基本的にはゴドスとそう変わりなかった。
まあ、両方とも二足歩行タイプの恐竜型だし、自動車も新旧操縦系の違いは無いのと同じ事であるが…。
しかし、操縦系そのものは同じでも何かが違った。ただこちらの言うことを聞くだけの通常ゾイドとは
違う何かがギガにはあった。詳しく口で説明するのは難しい。とにかく何かが違うのだ。
とりあえず外に出る。外は相変わらず戦闘中。
その時だ。キメラが数機こちらに飛びかかって来た。
「尾で…。」
そう思った直後、ギガの尾がキメラを数機をまとめて吹き飛ばしていた。ギガの尾を食らったキメラは
一瞬にして粉々になった。
そうか…そう言う機体か…。私は思った。士官学校時代に聞いた話だが、ライガーゼロなど、完全なる
野生体を使用し、さらにその野生を引き出す改造をされたゾイドは、パイロットの精神とリンクし、
そのリンク次第では想像を絶する力を発揮する物だと言う。きっとこのゴジュラスギガも同じように
完全なる野生体を使用したゾイドなのだろう。故に、私の精神とリンクし、瞬時に尾でキメラを弾き跳ばしたのだ。
「わー!!何でゴジュラスギガが動いてるんだー!!?」
「また暴走かー!!?」
「みんなで押さえ込めー!!」
やはり、封印されていたはずのギガが動いているのに驚いたのか、友軍機がこちらに向かって攻撃を
仕掛けてきた。いくらなんでも味方に撃たれるのはいい気持ちがしない。敵からもだが…。
「わー!!ちょっと待って下さいよ!!暴走なんてしてませんよ!!」
私はとにかくそう叫んだ。それにも驚いたのか、友軍機にざわめきが起きる。
「ひ…人が乗っている?そんな馬鹿な。今まで誰の言うことも聞かなかったヤツがか?」
「おい、ゴジュラスギガに乗っているのは誰だ。」
一機のゴジュラスガナーが恐る恐る近づきながらそう言うのに対し、私は敬礼をしながら応える。
「ハイ、つい数分前までゴドスに乗っていたマオ=スタンティレル少尉であります!!」
さらに友軍にざわめきが起きる。
「何だと!!?マオって言えば士官学校出たてのガキじゃねーか!!ギガはそんなヤツを選んだのか!!?」
私に聞こえるように言っているのか、モロに聞こえるのでちょっと腹が立ったが我慢する。
「ええい。とにかく状況が状況だ。お前頼むぞ。」
そんなこんなで私はギガで敵の攻撃に移ることにした。
それにしても速い。巨大ゾイドというヤツは足が遅いのが普通だが、ゴジュラスギガは速かった。
敵をたちまち追いつめる。敵の攻撃が来る。とっさに横に跳ぶ。これも速い。
私の腕なのか、ギガの性能なのか、敵の攻撃をヒョイヒョイかわせる。
たまに直撃を食らうが、少し衝撃が来るだけでダメージなど少しも感じられない。
パワーや機動性が高いだけではなく、防御力も最高級の物だった。
唯一の不安は武装面。ギガには武装が無かった。と言っても武装されたまま封印されるワケが無いのだが…。
大量のキメラが飛びかかってくる。しかし、ことごとく尾で弾き返す。
と、その時、私とギガの眼前にダークスパイナーが現れた。
「やばい!!」
ダークスパイナー。その背鰭から発せられる強電磁波ジャミングウェーブはゾイドを狂わせ、
さらにはその操縦をも掌握してしまうと言う文字通り最強の武器。
このジャミングウェーブに掛かってしまえばマッドサンダーすらも無力だ。
「ギガもやられる。」
そう思った時、既にジャミングウェーブが発射されていた。
が…それだけだった。ギガの体には何の異常も無かった。今でこそギガにはジャミングウェーブに
対する処理が施されていると分かっているが、ギガについて何の予備知識もなかった当時の私は
驚きに耐えなかった。
しかし、驚いたのはダークスパイナーの方も同じだった。おどおどとしながら後ろに退こうとしている。
「何かよく分からんけど逃がすか!!」
私は叫んだ。その直後に目にも留まらぬ速さでギガがダークスパイナーとすれ違い、
そしてすれ違いざまに右腕の爪で真っ二つに切断していた。
その途端に、周りのキメラの動きが変になった。恐らく先ほどのダークスパイナーがキメラの指揮も
行っていたのだろう。指揮を失ったキメラは何をして良いのかさっぱり分からず、簡単に友軍機に
撃破されていった。
「これでいっちょう上がりね。」
私はそう言って一息ついた。と、その時だった。背後から突然のミサイル攻撃。
思わずギガは倒れ込んだ。
「イタタタタ…。今度は何よー…。」
起きあがりながら私は後ろを見た。山の向こうの空遠くからミサイルが次々に飛んでくるのが見えた。
カメラを望遠モードにして見ると向こうの山の頂上から数機のコングがミサイルを連射している。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!あんな遠くの敵を武装無しのギガでどうやってやれば言いっつうんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず私は叫んでいた。ミサイルはなおも飛んでくる。どうにも出来ない。ミサイルを避けるのが精一杯だ。
「そこのゴジュラスギガ!!その場から動くな!!今いい物をプレゼントしてやるよ!!」
何者からの突然の通信。
「!!」
その時、私の乗るギガの背後の上空に巨大な大砲を背負ったワシ型ゾイド。いわゆるバスターイーグルが現れた。
バスターイーグルはギガの背中に対しレーザーを発射した。と言っても攻撃用レーザーではない。
そして、その背中に背負った大砲。バスターキャノンを投下した。
バスターキャノンはバスターイーグルの発したレーザー誘導によってギガの背中めがけて正確に落下する。
そして、ガチンという音と軽い衝撃と共にバスターキャノンはギガの背中に装着された。
それを確認するやいなや、バスターイーグルは何処へ飛び去った。
「誰だか知らないけどありがとね!!」
私はバスターイーグルに礼を言うと、山の向こうの空遠くのコングめがけてバスターキャノンを発射した。
バスターキャノンから放たれた二条の光が山の向こうの空遠くめがけて飛んでいき、その直後、
アイアンコングのどてっ腹に二つの大穴が開いた。
>>20 これはどうもすみませんでした・・・。
自分の中では日本刀は切れ味は良いが、カッターナイフのように薄いので折れやすいという
イメージがあった物で・・・・。
逆に洋剣(レイピアじゃなくてブレードとか言う方)は重くて厚くて
切れ味よりも重量を生かして叩き斬るという形で頑丈に出来ているという
イメージがあったりしたんですよ。
ロボットアニメに例えると、前者はガンダムアストレイレッドフレームのガーベラストレート。
後者はグレートマジンガーのマジンガーブレードとかそう言う感じで見ていたんですよ。
激しくゴメソナサイ
戦闘が終わるやいなや、私は会議室に呼び出されて部屋の真ん中のイスに座らせられた。
そして、私の前でお偉いさん数人がなにやら色々話し込んでいる。
早い話が私の処分というヤツである。まあ、分からんでもない。封印されていたゴジュラスギガに
勝手に乗り込んだのだ。処分されない方がおかしい。
で、色々と話が続く。難しい話がやたらと多く、詳しく説明するのは難しい。
ギガを動かせるのが私しかいない以上私に任せるべきと言う人もいれば、共和国軍の新たな象徴で
あるギガにこんなガキが乗ったのでは他の部隊の物笑いの種になるという腹の立つ言い方を
している人もいる。口には出さないがガキというのはやめて欲しい。確かに私は体も小さいし、
顔もまだ子供っぽいと分かってるけど、れっきとした18歳の少尉。炊事洗濯も出来るし…。
なんて思ったりするのが子供なんだろうな…と今更ながら思ったりする。
で、結局処分はどうなったかと言うと。結局OKだった。
今のところあのギガを動かせる人間が私だけという事もあるだろうし、ゴドスでキメラに善戦した
という点も評価されたそうだ。まあ、破壊されたゴドスに関して始末書を書かされたりしたのだが…。
とりあえず、部屋から出た後、戦闘前に腕相撲した大男を探して一万ガネーをしっかりといただいた。
そして、その一万ガネーは全部メタリックグリーンのペンキに使った。
そのペンキでギガの青い部分を緑に塗り替えたというわけである。
「私とお揃い。そうだ。名前を付けて上げよう。カンウってどう?地球の中国って国に昔いた豪傑の名前。いいと思わない?」
「そして、今の私とカンウがあるわけで今にいたるワケで…。ってぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
話に夢中になって今まで気付かなかったが、いつの間にかに私の周りを取り囲むように色んな人が
集まって正座して聞いていたのだ。
「もしかして…聞いてた?」
「うん。」
全員が一斉に応える。しかも声がハモっている。
「どの辺から?」
「結構最初あたりから。」
「……………。」
私は恥ずかしかった…。まさかこんな大勢に聞かれていたなんて…。とか何とか思っていたら
肝心のラインが寝てる。しかも思い切り私に寄りかかって…。しかも私の服によだれまで付けて…。
「くぉら貴様!!何寝とか!!服が汚れちゃったじゃないの!!」
私は思わずラインを蹴り飛ばしていた。今までラインに寄りかかられていたのにも気付かない私も
どうかと思うが…。
「おー。今度は夫婦漫才が始まったぞー。」
「誰が夫婦漫才じゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
誰かがそう煽り立てるので、私はまたも叫んでしまった。
「アハハハハハハハハ!!」
「笑うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ったく腹が立ってきた…。肝心のラインは寝てて全然話聞いてなかったし。
「ところで少尉。一つ聞いて言いっすか?」
さっき私が蹴り飛ばしたラインがスっと私の前に出てきて言った。
「ハア?人の話聞かなかったアンタが悪いのよ。」
「いや、そうじゃないんっすよ。」
「え?」
「結局そのバスターイーグルのパイロットは誰だったんですか?」
ずげげげげげげ!!
私は思わずすっころんでしまった。コイツ…。しっかり話聞いてやがんの…。寝てたのはわざとか?
「は…ハア…。バスターイーグルのパイロット…。ゴメン。あれは私も分からないよ。突然現れて突然去っていったからね…。」
「それ私。」
「へ?」
突然名乗り出たのは私の双子のお姉ちゃんのミオ=スタンティレル大佐だった…。
「もっとも、あの頃は中佐だったけどね。ハハハハハハハハ!!」
私を含め、誰もが開いた口がふさがらなかった。お姉ちゃんはずっと笑っていた。
終わり
ベガード中佐が入ってきたことで天幕の温度が急に上がったような気がしていた。
もちろんそれはマッケナ大尉の錯覚なのだが、不機嫌そうな顔で怒気を隠そうともしていないベガード中佐の気迫はそう思わせる何かがあった。
しかし、だからといってマッケナ大尉が気後れすることにはならなかった。
マッケナ大尉の予想通りならベガード中佐が何故起こっているのかも予想できるから、すぐに現れることは予想していたからだ。
「貴様は何をしておるのだ」
ベガード中佐はマッケナ大尉とミュラー軍曹をにらみつけながらいった。慌ててミュラー軍曹が前に出ようとしたが、マッケナ大尉の手がそれを遮った。
「情報部の権限において連隊戦区で発生した戦闘についての聞き取りを行っている最中です」
「何だと・・・戦闘詳細ならどうせ参謀本部にも提出するのだから後からでもすむのではないか」
マッケナ大尉は首をすくめた。
どうやらベガード中佐にとっては情報部、というよりもはマッケナ大尉がシュタイナー少尉と話すのはまずいらしい。
それは逆にいえば、シュタイナー少尉への聞き取りによって謀略を暴露できるということでもある。
ここで引き下がるわけには行かなかった。
「ですがこの戦闘は外交問題に発展する可能性があります。その場合、参謀本部、もしくは軍政部が取り扱うべき問題であると考えますが」
冷淡ともいえるマッケナ大尉の態度に、ベガード中佐は眉をしかめるといった。
「大尉、頭を冷やせ。いいか、山岳民族のひとつくらいが外交問題にまでなるものか。
それよりもこれを期に奴らを一掃してしまうのだ。このまま奴らを放置したまま進軍を続けてはい連れは腹背を突かれることにもなりかねない」
マッケナ大尉は一度ため息をつくと、冷ややかな目をしながら言った。
「自分はそうは思いません。現在、山岳や砂漠地帯の民族が帝國に抗しているのはただ単にこの地方での影響力を示したいがために過ぎません。
このまま帝國が戦線を押し切れば共和国の後ろ盾を失った彼らは戦闘力を大きく減じるでしょう。
情報参謀は腹背をつかれるとおっしゃられるが、その時点ではそんな余力は彼らに無くなっているでしょう。
それよりも今から山岳民族とは関係を結んでいた方が良いでしょう。
いずれ帝國がこの大陸を統治する時に備えて、いくつかの民族を味方にしておくのです。
そうすれば統治もやりやすくなるでしょうから」
ベガード中佐はそれでも引くつもりは無さそうだった。マッケナ大尉と中佐は睨み合ったまま動かなかった。
その緊張を突然シュタイナー少尉が破った。
「そういえば・・・彼らはランチャーを持っていなかったような気がします」
ベガード中佐が慌てて振り返っていった。
「何を言っておるのだ少尉。先に攻撃をしてきたのは奴らなのだろう」
「そのときの状況を詳しく聞かせてほしい」
対照的に淡々とマッケナ大尉が言った。
だが大尉が言い終わる前に当番兵が天幕の中に倒れこむようにして入ってきた。
その兵が敵襲と叫ぶのとほぼ同時に爆発音が間近から聞こえてきていた。
マッケナ大尉とミュラー軍曹は思わず顔を見合わせていた。戦力の劣勢な共和国軍が何故今になって攻勢に出てきたのかよく分からなかった。
今、森林の中で4体のゾイドが対峙している。
一機はゴジュラスガナー。
幼い頃より聞かされた物語に憧れ軍に志願した彼は
グック要塞進行作戦で戦果を挙げ、最近この機体を与えられた。
進撃を急ぎすぎ味方とはかなり離れたこの場所にいる。
残りの三機は二機のカスタムイグアンとヘルキャット。
イグアンは背中にスラスターを増設し、手にはパイルバンカーを装備している。
三機ともボディが黒を基調とした色で塗られたいた。
「旧式三機か、この機体なら楽勝だな。」
ゴジュラスのパイロットは前方にいる三機を見て笑みを浮かべた。
当然だろう。
いくら改造されてると言ってもゴジュラスに致命的な打撃を
与えることが出来るのはイグアンのパイルバンカーのみ。
小型のイグアンでは満足に動くこともできないだろう、と。
だがその予想はすぐに覆された。
早い。
ヘルキャットは霧のように消えていき、
イグアンはスキーをするかの如く密林を移動する。
慌てて彼はマシンガンやビームライフルを乱射した。
だが当たらない。
焦れば焦るほど狙いは外れていく。
必死でイグアンを目で追う。
その時もう一機のイグアンの攻撃が当たった。
だが致命傷には程遠い、腕を掠めた程度だ。
再びイグアンが横滑りしながら目の前を通り過ぎていく。
その攻撃を受けた直後、彼は気づいた。
ヘルキャットがいないことに。
工学迷彩で姿を消したことは分かっている。
だがどこからも攻撃を仕掛けていない。
そう考えた時、一発の攻撃。それはゴジュラスの腹に突き刺さった。
当然、これも致命傷どころかダメージにすらほとんどなっていない。
「一体やつらは何をしようとしてるんだ・・?」
そう考えていると一機のイグアンが目の前で止まった。
腕のビームライフルを撃ち込もうとした。
その時、彼は初めて気がついた。
今までの攻撃で腕と腹にある武器は全て破壊されていたことに。
グシャ
ゴジュラスはバランスを崩した。
左足はパイルバンカーで貫かれていた。
前方にいたイグアンが加速し、次は右足に杭を打ちつける。
大地に釘で打たれたかのようにゴジュラスは大地に伏した。
この絶望的な状況でもゴジュラスのパイロットはまだ諦めていなかった。
彼が憧れた物語の主人公のように。
・・・・コクピットへの最後の一撃が加えられるその時まで。
間近から聞こえた爆発音は、本格的な突撃を支援するための迫撃砲弾のようだった。
つまりはすぐに共和国軍の突撃が始まるということになる。
阻止砲撃の割には砲撃が長時間続いたためだ。本格的な防御陣地を築いていなかった帝國軍は右往左往することになった。
もともと攻勢拠点でしかない野営地だから砲撃から逃れる為の壕は簡易なものだった。
ただし撃ちこまれているのは簡易な迫撃砲弾だけのようだ。少なくとも師団砲兵などが装備する重砲が撃ちこまれた形跡は無かった。
だから帝國軍は混乱こそしているものの、実質的な被害は小さかった。
やはり共和国軍の前線では物資や支援火器が不足しているようだ。
「これは撤退を支援する為の一時的な攻勢だと考えるべきでしょうか」
天幕から出て近くの壕に入ったマッケナ大尉に、同じように壕に入っていたミュラー軍曹が訪ねた。
マッケナ大尉はわずかに首を傾げるといった。
「どうだろうな。最近は帝國軍は攻勢をかけていない。情報が正しければこのあたりに布陣している共和国軍の戦力は連隊規模ではないかな。
ようするにこのあたりに限って言えば帝國軍と共和国軍の戦力は拮抗している。
だから十分に共和国軍は帝國軍を押さえられるだろう。これは帝國軍にとっても同じことだ。
撤退支援というのが考えられないことは無いが、不自然であることに間違いは無いな。
むしろ陽動と考えるべきなのではないかな」
そこまで言ったところで砲撃が止んだ気配があった。
マッケナ大尉とミュラー軍曹が壕から顔を出して周囲をうかがうと、早くも連隊の兵たちが持ち場についていた。
対ゾイド砲や支援の重砲は勿論、ゾイド戦力も定数以上が確保されているから、このあたりの共和国がすべて押し寄せてきても撃退するのはそう難しくは無いはずだった。
二人は連隊の兵たちに邪魔にならないように後方に下がろうとした。
そこに声がかけられた。二人が振り返ると、仁王立ちになったベガード中佐がいた。
「貴様らは何をしておる。早く軍団司令部に帰るぞ。こんな所に参謀がいては迷惑なだけだ。
それよりも早く軍団から支援の戦力を出すように命じるのだ。ここで攻勢が途切れた共和国軍を負えば一掃できるだろう」
敵から逃げるようで情けなくはあったが、いずれにせよここで大尉ができることは無い。だから後退するのが正解かもしれない。
マッケナ大尉も頷くとミュラー軍曹に運転を命じて軍用車両に飛び乗った。
ベガード中佐は別に車を用意していたようだが、マッケナ大尉が見たところその車両は迫撃砲弾の破片で破壊されていた。
要するにベガード中佐は後方へ戻る足がほしくて声をかけたらしい。マッケナ大尉は苦笑しながら、急発進する軍用車両のシートに背を預けていた。
>>34 良いですなぁ、大型機に知恵で立ち向かう小型機というのは燃えますね
ある日、ゴジュラスギガのパイロットとして選ばれたある男が技術部から説明を受けていた。
「ゴジュラスギガの背中の背びれには32連ゾイド核砲が装備されており、これは広範囲かつ
デスザウラーの大口径荷電粒子砲をはるかに凌駕する破壊力を持っている。」
「ほー、それは凄いな。」
「しかし、これを使うとギガの命は失われてしまう。つまり死ぬということだ。故に真の最終兵器と言えるだろう。」
その後、そのパイロットとギガに最大のピンチが訪れていた。
数機のBFとデスザウラーを倒した後の油断から、帝国軍の新型機セイスモサウルスの
ゼネバス砲の一撃を食らい、足を破壊されてしまったのだ。このままでは格闘でもやられてしまうだろう。
そしてギガに迫るセイスモとその他帝国ゾイドの大部隊。
その時だった。ギガの背中がまばゆい光を放つ。ギガの最終兵器32連ゾイド核砲を放つ前兆であった。
「やめろ!!そんなことをしたらお前の命が・・・・・・」
パイロットが叫ぶのも空しく、核砲は放たれた。その破壊力はすざましく、
セイスモ以下帝国の大部隊が一瞬にして消滅した。
しかし、驚くことに、ギガは死んではいなかった。パイロットは帰還するとすぐに技術部に駆け込んだ。
「よくも大ボラ吹いてくれたなこの糞技術屋!!核砲発射してもギガは死ななかったぞ!!」
「私は嘘など言ってはいないよ。現に核砲を発射したギガは全部死んだよ。」
「嘘をつけ!!ならなぜ俺のギガは死ななかったんだ!!?」
「話を最後まで聞け、核砲を発射したギガはみんな死んだは死んだが、みんな寿命だったんだ。」
「寿命!!?」
終劇
>>37 寿命ばっかりのギガたんハァハァ
ゾイドの寿命は短くても50年くらいだったかな?
つまりはギガの中の人は少なくとも第一次の大陸間戦争の頃にはもう誕生していたのか(笑)
>>38 単なるギャグなので深く考えなくても良いです・・・
ゴメソナサイ
その日ネオゼネバス帝国所属のアルティメットセイスモとキメラブロックス小隊は放棄された共和国軍施設の調査に向かっていた…。
「全く何で俺達がこんな事を…?」
彼等の部隊は本来湾岸警備でありこんな山中の施設に調査に来る事…、その事態がおかしいのだ。
山の中腹にこの基地は地下に向かって拡張されている為、山のサイズに似つかわぬ規模を誇っていると言う話だが彼等は大して気にしてい無かった。
それがこれから起こる恐怖の先触れに過ぎない事に…。
「なんだって!?」施設に到着した彼等は合流する筈の部隊の無残な姿に息を飲んだ…。
到着した彼らの部隊編制はアルティメットセイスモ1機にロードゲイル3機、それを隊長機にしたスティルアーマー、シザーストーム、レーザーストームの3小隊13機。
ここに駐留していた先行調査隊はデススティンガー4機にサックスティンガー40機、ディメトロドン3機そしてディメトロドンを守る為のデスザウラー1機。
ほぼ確実にこの規模の施設を調査制圧が苦も無く可能と言われる戦力の筈だ。
しかし今ここに存在するのはかなりの数のサックスティンガーの残骸と頭部の存在しないデススティンガー2機、
まだ生きてはいるがほぼ戦闘不能状態で両腕が肘の部分から消滅しているデスザウラー…。
余りの無残な光景にあっけに取られる彼等に通信が入る。
「助かった…取り敢えず生きている機体を施設の外に出したいので手を貸してくれ。」
作業は到着した真昼から日没まで掛かった…何故施設から20km以上も離れた位置まで後退したのか?
増援として派遣された彼等は状況が全く理解できなかった…。
ひとごこち付いた調査部隊長は重い口を開く「これから説明する事を良く聞いてくれ。後ここで起こった事、これから起こるかもしれない事は絶対に他言は無用だ。」
そこで彼等を待ち受ける恐怖を事前に知る事の出来た事を後に彼等は感謝したことだろう…。
「何故だ、何故俺の部隊がこうなるんだ・・・」
朝もやに覆われた湿地の中を一体のヘルキャットが走っていた。
いや、歩いていると言ったほうが正しいかもしれない。
この状況ではステルスを使っても深い足跡で居場所はすぐにわかってしまう。
彼のいた部隊はライトニングサイクスとヘルキャット、セイバータイガーで構成される舞台だった。
今回の任務は掃討戦。いや、そのはずだった。
実際最初のうちは簡単に倒せた。だが状況は変わった。
彼らは深追いをしすぎたのだ。
地面は次第にぬかるみ、それは高速戦闘ゾイドで構成されるこの舞台にとって致命的だった。
脚は泥に沈み本来の速度の半分も出せなくなっていた。
そして、敵は最悪の状況で襲ってきた。
まずライトニングサイクスが、そしてセイバータイガーが、次々に倒れていった
ついに生き残ったのは彼と彼のヘルキャットのみとなった。
ベテランに囲まれる形で戦闘を行ってきた彼にとってこれは始めての体験だった。
彼は呪った。油断をして判断を誤った隊長と自分の無力さに。
「援軍を、援軍を急いで送ってくれ」
彼は震える声でマイクに向かって叫んだ。
レバーを握る手も、マイクを握る手も震えている。
「今近くの部隊がそっちに向かっている。もう少しだ、もう少し頑張ってくれ。」
スピーカーの向こうで通信兵が言った。
この湿地で行動できるゾイドは制限される。
すぐに増援を送れる状態ではなかった。
気がつくとヘルキャットの脚は今まで以上に深く沈み始めていた。
「くそぉ、どうして俺ばっかこんな目に・・・・」
今にも泣き出しそうな顔で彼はモニターを叩いた。
長く続く極限状態に彼はすっかりまいっていた。
彼だけになってから約30分、だが彼にとってそれは何年もの時間に思えた。
空も明るくなり始めていた。西の空に何かが見える。
シュトルヒだ。
「助かった・・・」
彼は今すぐにハッチを開けて踊りだしたい気分だった。
そのシュトルヒは近くの枝にとまった。
「ヘルキャット、聞こえるか? 他の奴らはどうしたんだ?」
「俺だけ何とか逃げれた。皆どんどんやられてしまって・・・」
「わかった、今から救出するからこっちまで来てくれ。
残念だが機体は破棄するしかない。」
ヘルキャットはシュトルヒの方向に向かっていった。
だが、その願いはかなえられなかった。
視界が変わる、今までシュトルヒの方向を向いていた目は今は地面とも水とも言える下を見ている。
目の前に大きな口が開かれた。
次の瞬間には彼の視界は無くなった。コクピットはその口によって潰された。
ヘルキャットが地表から消えていく。
ヘルキャットが沈んで行く様子をシュトルヒはただ見ることしか出来なかった。
最後まで浮いていた脚が沈むとシュトルヒはとまっていた枝から飛び立った。
その直後に水の中からバリゲーターが水中から姿を現した。
こちらシュトルヒ、生存者は無し。援軍の必要は無いと判断する。
繰り返す。生存者は無し・・・・
その話によるとこう言う事らしい…「壁の亀裂から正確に強力な火器で狙撃」されたり、
「床や天井の亀裂から突然格闘戦を挑まれ一方的に引き裂かれる」等の奇襲により部隊はほぼ壊滅してしまったと言うのだ。
更にその敵勢力は共和国軍では無い物も含まれている様だ。
少なくともデスザウラーの両腕を消滅させる砲撃、デススティンガーをやすやす引き裂く格闘兵器二つの奇襲から身を守らなければならないと言う事だ。
取り敢えず彼等は調査をするに当たり任務に不適当なアルティメットセイスモ、スティルアーマー、よりパーツをロードゲイルに託す。
シザーストームとレーザーストームは無人機として運用する事となった。
早くも戦力を縮小せざるを得ない状況に不安が募る…。
「気をつけろ…他にもこの施設にはゴジュラスギガが居る。確か彼からの通信によると自らをレクス=アームズと名乗っていた。」
追い打ちとしか言い様の無かった言葉、その男はたった一機でセイスモサウルスに突撃を掛け3機を2分程でバラバラにしたと言う。
かすり傷一つ無く…。何故その男が見捨てられたこの施設に居るのかは解らないが確実に任務達成への巨大な壁になる事だけは想像に難しくなかった。
そろそろ出発の準備も整う…彼等は調査へ向かうための身支度を始めた。
レクス=アームズの存在も気に掛かるが先行部隊から得た情報に有る謎の敵に集中せざるを得ない。
既に沈んだ日も昇りかけて来ていたが期日が一週間しかない為二人乗りにチェンジマイズされたロードゲイル3機とストーム部隊6機が施設に向かっていく。
しかしこの日彼等は施設に行く事は出来無かった…。
「敵襲!?」けたたましく鳴り響く警報、爆発音も近くなっている。この着弾音と砲撃間隔から相手はロングレンジバスターキャノンを使用している事も解る。
急いで調査隊を呼び戻しセイスモサウルスを起動させ迎撃する。
迎撃に出たセイスモサウルスのパイロット達は現れた敵に愕然とするしかなかった…。
あり得ない…そうとしか言い様のない光景だった。
敵戦力はゴルドスのみ5機…しかし砲撃の威力はゴジュラスを上回り生き残ったサックスティンガーの攻撃を易々と回避する。
タイプは旧戦役時「シャイアン」と呼ばれていたMk-Uタイプだがどう考えても中身は別物としか思えなかった。
時速300kmはある機動性…二回り以上大型化したチタンスパイクでサックスティンガーを蹴散らしていく様は悪夢としか言い様の無い状況だった。
最も奇怪な物は彼等の胴体亀裂の奥に怪しく煌めく臓器のような物。明らかにサイバーパーツではなく野生体等に存在する内蔵機関でも無い。
異形のゴルドスの襲撃を受け早くも部隊は壊滅の危機に瀕していた…。
セイスモサウルスのゼネバス砲が発射される。しかしこの中間距離で放たれた荷電粒子砲でさえ彼等を捕らえることは出来ない。
ゴルドスのロングレンジバスターキャノンが火を吹きセイスモサウルス直撃する。
ゴジュラスギガの攻撃を想定した重装甲は傷一つ付かない、だが機体全体に強力な衝撃が襲いかかってくる。
衝撃に耐えながらパイロット達は気づき始めていた…「あの動きはおかしい!」
本来どんな生き物であれ先ずは自分の体重を支える必要が有る。しかしあのゴルドス達は自分の体重が1/10以下に成る特殊な状況にいるかの様だった。
まるで水面を小石が跳ねるように飛びロングレンジバスターキャノンの衝撃で100メートル以上後ずさる。
「もう少しだ!もう少し近づいてくれば…。」彼等は祈るような思いでゴルドスの接近を待った…。
その頃の同施設内ではレクス=アームズのゴジュラスギガと謎の敵が交戦中だった。
「くそっ!次から次へと沸いてきやがる!」
機体を反復横飛びの要領で右へ移動してかつて味方であった機体の攻撃を避ける。
ゴドスは目標を失い多重層振動ブレード付きのキックを壁に向かって炸裂させる…。
この機体もまた謎の内蔵機関を持っておりそれは怪しく蠢いている。
ゴドスを踏み潰す…まだまだ敵の数は多くきりが無い事は承知しているがここで彼等を外に出す訳にはいかなかった。
そもそもこの施設は旧式となった機体の戦力底上げ及び機動性上昇の為の研究を旧戦役の中期頃から薦められていた場所である。
ここで生み出された技術…機体の関節への負担を極端に軽減し断続的な高速機動を可能にする「マグネッサートリートメントシステム(MTS)」
コアからのエネルギーを振動エネルギーとして増幅する「シェイクブースター」。
そのエネルギーを更に電気エネルギーに変換増幅する「トランスブースター」…画期的で暴力的なパワーアップを測れる装備として共和国首脳陣に期待されていた物である。
この施設で実験されていた機能はゆくゆくは共和国の反抗作戦の切り札にもなる予定でもあった…。
何とかゴドスの群れを排除しレクス=アームズは取り敢えず第3層の武器庫を占拠する事に成功した…。
武器庫は唯一壁と床に亀裂の入っていない区画でここを拠点にすれば先へ進むのに非常に楽になる事だろう。
お誂え向きに4連ショックカノンやバスターキャノン、AZ5連ミサイル等の武器も有る。
この機体も簡易MTSが搭載されており機動力には不満は無い。今度こそ忌まわしい敵の喉元に食らい付けると思っていた…。
しかし彼の居ない場所で彼等と帝国軍が戦闘をしているとは気付く事も考える事も出来なかったのである。
さしものセイスモサウルスとは言え徹底的に強化された5体のゴルドスが相手では分が悪い。
機体性能でいくら水を開けていようと乗り手の負担は軽減されることは無い。
しかも相手は無人機と来たものだ…焦りが募る。
痺れを切らしたゴルドスの1体がチタンスパイクを構えて突撃してくる、通り抜けざまに胴体にチタンスパイクを叩きつける気らしい。
しかしその行為はセイスモサウルスのパイロット達に取っては願っても無いチャンスであった。
荷重力衝撃テイルが舞う…それだけではなく尾の小口径2連レーザー機銃を叩き込む。
如何に機動性やパワーを強化されていても装甲には手を付けられていないゴルドスを仕留めるのには十分過ぎる威力だった。
吹き飛ばされ四散するゴルドス…蛍光塗料の様な液体を吹き出しながらゴルドス骸から何かが出てくる。
それこそが施設を占拠した寄生型野生ゾイドの一種で有る事は彼等は知るよしも無い。
それは苦しそうにのたうちながら施設に向かって逃げていく…しかしそれは施設に帰ることは無かった。
やっとの事で戻ってきたロードゲイルに串刺しにされ生き絶える。
その後は合流したロードゲイル達とアルティメットセイスモに喚装したセイスモサウルスとの連携で1機ずつ確実に排除していく事にした。
やはり相手は無人機時間こそ掛かったが動きのパターンさえ掴めればどうという物でもなかった…。
「なんてこった…。」
彼等がそういうのも無理は無い。あのゴルドス達の狙いは初めからディメトロドンだったのだ。
2機が大破、残った1機も背鰭のレーダーが破損。大破した機体からレーダーを付け直すが結局日暮れを迎え調査は延期することとなった。
損害はサックスティンガー12機、ディメトロドン2機。
端から戦闘不能のデスザウラー1機そしてデススティンガーはこの野営地に来る前に既に姿は無く施設内で連絡を絶ったと言う。
後続の部隊である彼等もセイスモサウルス小破、パーツ取りに回っていたスティルアーマーは無事であったが今回の戦闘でストーム部隊は全滅していた。
「司令部に増援を要請しよう…」自分たちの無力さに打ちひしがれながら連絡を取る。
司令部は今日の戦闘の報告と実戦の映像を受け困惑した。「なんてこったい!」
特徴のある言い回しで叫ぶと湾岸警備隊指令グレッグ=スクイードは手に持った焼きイカを噛み千切った。
「解った今から大掛かりな増援は出せんが趣味で許可を取って隠匿していたリビングデッドバタリオンを回す。
ディアントラー3機と部隊を組ませ3小隊12機を出すからその場所から更に10km後退しろ!」
彼は思った、役に立つ時なんて来なければ良かったのに…連絡を終えると肩を落としながら別の場所に連絡をする。
「グレッグ=スクイードだ。ズィグナー殿に連絡を取ってくれ…。陛下に気付かれぬ様にな。」
初めから約束された事だった。
約束…それは危険な兵器を個人の所有物として登録する裏工作の際に「それを動かす必要に駆られた時その旨を必ず報告する事」である。
それを守ることによりグレッグ=スクイードは幾つかの戦闘で陥った危機を回避してきた。
「ズィグナーだ…またか?」呆れたような返事が帰ってくる。
しかし彼の表情を確認した途端ズィグナーの表情にの変化が起こる「貴公がその様な顔をしているとはな。」
事情を説明し終わると…「解った。貴公の基地に海上警備の部隊を送る。その施設に近い基地からも増援を出す。」
事務的に答えてはいたがこれから起こるかもしれない事態が帝国のましてやこの星の危機に発展し兼ねない状況であることを悟った様だった。
リビングデッドバタリオンが出撃しこの基地から更なる増援として送られる。
見た目こそキメラ頭のジェノザウラーだが内部機関は趣味にかまけてフューラー以上の機能を持っている、
これを持ってして事態が終息する事を願う事しかグレッグ=スクイードにはのこされてい無かった…。
「さ〜て行くでありますかねぇ〜。」
本来無人の筈であるリビングデッドバタリオンのコクピットに座っている者が居た…。
オカルト好きの彼もまたこれから体験する恐怖に巻き込まれる事になる。
それを楽しみにしていたらしいが…。
これから話す物語は今から未来の物語。
しかし、あくまで可能性と言う名の一つの未来に過ぎないことを付け加えておく。
後に第二次中央大陸戦争と呼ばれる戦争が終わって十数年の時が流れた。
中央大陸は再びヘリック共和国によって統合され、おおむね平和なときが流れていた。
とはいえ、いつの時代も犯罪というのは無くならない物で、仕事を失った軍人やらネオゼネバス帝国軍の残党やらが野党化したりしていたりするのである。
そして、それらを捕まえたりして日々の糧を得る賞金稼ぎと呼ばれる者もその一方でいたのである。
これは、その1人の賞金稼ぎの物語である。
とある山道をひた走る二機のゾイドの姿があった。二機はともにレッドカラーのウネンラギア。
二機は何かに追われているかのようにひたすら走っている。そして大きな岩の陰に隠れた。
「フー…ここまで来れば大丈夫だろう。」
「それにしてもアイツ何てヤツなんだ?」
ウネンラギアにそれぞれ乗る二人は岩陰でそうヒソヒソと話す。
「ああ…仲間も全員やられちまった…。」
「しかし…ここで隠れていれば俺達だけでも助かりそうだ。」
「いや、あながちそうでもないよ。」
「!!」
いきなり聞こえてきた別の人間の声。思わず二人は声のあった方向を向いた。
そこには一体のシールドライガーの姿があった。
シールドライガー。高速ゾイドの代名詞の一つと呼ばれるゾイドである。
とはいえ、戦争が進むに連れより強力な新型機の登場により旧式化し、さらに大戦によって
数も激減し、今や珍しいゾイドになってしまった。と、言うより、今は人工のゾイドコアを使った
ブロックスや人工コアで代用したゾイドが殆どになってしまい、このような通常のゾイドは
めっきり数が少なくなってしまったのだ。
「でででで出たぁぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず二機のウネンラギアはお互いに抱きつく。
「人をお化けみたいに言うな!!」
シールドライガーに乗る男はそう叫んだ。そして、叫んだ直後に、シールドライガーの前足が
ウネンラギアを叩き壊す。可能な限りコックピットを傷つけずに。
「てててて…。」
ウネンラギアにそれぞれ乗っていた男二人がそれぞれのコックピットから這い出てくる。
二人とも所々が破けた服を着ており、ムキムキの筋肉にゴツイ顔。ボサボサの頭といった
如何にも悪そうな印象の男だった。それもそうである。二人は盗賊なのである。
そして、シールドライガーに乗る男はその二人を狙った賞金稼ぎであった。
必死に逃げようとする盗賊二人。その二人の前にシールドライガーが立ちふさがる。
「いい加減に観念しなよ。大人しく一緒に警察に行けば悪いようにはしないって。」
そう言ってシールドライガーのコックピットが開き、パイロットが出てきた。
シールドライガーに乗っていた男はまだ少年だった。金髪で、顔は恐らく美少年と言っても
いいのかもしれないが、左の頬と右目にある傷のせいでむしろ凄みのある少年だった。
「なんだよ…ガキじゃねえか。こんなの怖くも何ともないぜ。」
男の1人が急に強気になる。
「ちょっと待て!!あいつは噂に聞くあのマイン=バイスじゃねえか!!?」
もう1人の男はおどおどしながら言う。
「ハア!!?マイン=バイス?機雷かよ!!というか何でこんなガキにおどおどしてるんだよ。
体も小さいし腕も細い。あんなモヤシ君にオレが負けると思うか?」
「モヤシを馬鹿にするなぁ!!モヤシは栄養満点なんだぞ!!」
ずげげげげ
男がマインと呼ぶ少年がそう叫ぶと共に男二人はすっころんだ。
「畜生ふざけやがって!!ぶっ殺してやる!!」
男は一斉に少年に向かって駆けだした。そして、腕を大きく振り上げて殴りかかる。
…が、次の瞬間信じられない事が起きた。少年はムキムキの筋肉を持つ男のパンチを軽々と左手で受け止めたのだ。
「ウソ…。」
男は思わず青ざめた。少年は男の手をつかんだまま言った。
「オレさあ…機雷って呼ばれるのが一番嫌いなんだよね。」
ドゴッ!!
これまた信じられない事であるが、少年はパンチ一発で自分より一回りも二周りも大きな男を簡単に吹っ飛ばした。それを見たもう1人の音は思わず座り込んでガタガタと震える。
「ヒィィィィ!!噂は本当だった!!さわったら爆発する!!人間機雷マイン=バイス!!
…若干16歳ながら超凄腕の賞金稼ぎ!!体も小さいのにやたらと馬鹿力でめちゃくちゃ強い。
しかも今時めっきり珍しくなったシールドライガーを愛機とし、その強さはたった1人で
何十人もの敵を倒すという。さらにヤツの親は大戦中に名をはせた…ムグゥ!!」
少年は男に蹴りを入れた。
「それ以上言うんじゃない。とにかく大人しくしろ。それに、賞金稼ぎなんてオレにとっちゃ
旅のついでに過ぎないんだよ。」
少年の名は男が言うようにマイン=バイスと言った。
「外の世界を見てみたい。」
その一言で愛機のシールドライガー「マジガン」と共に旅に出た16歳の少年。
さり気なくケンカもゾイドの操縦もプロ顔負けで、旅の路銀調達に片手間で賞金稼ぎをしていたら
いつの間にかにちょっとした有名人になってしまったという口である。
「いやね、大人しく一緒に警察にきてくれればさあ。別に悪いようにはしなかったんだよね。」
「ハヒ…ソウシマフ…。」
倒れた男二人に木の枝でつつきながら言うマインに対し男二人はそう言った。
「ちょおっと待ったぁぁぁぁ!!これは私の獲物だぁぁぁぁぁ!!」
突然聞こえる女の声。そして声と共に現れたのは一体のアイアンコングだった。
いや、正確にはマニューバスラスター装備型と言った方がいいかも知れない。
アイアンコング。前の大戦のそのまた前の俗に第一次中央大陸戦争と呼ばれる戦争で
旧ゼネバス帝国軍が打倒ゴジュラスの為に開発したゴリラ型ゾイド。
マインのシールドライガー同様今や旧式化しているが、そのバランスの良い性能と扱い安さにより
今なお傑作機と呼ばれ続けている。
「ハーッハッハッハー!!この獲物はこの私がもらいましたよ。」
そう言ってアイアンコングの中から現れたのは中華風っぽい服装に、後頭部側面の髪を
団子状に結んだ髪をした少女だった。身長はマインより少し低く、年もマインよりもさらに少し年下のようである。
「おい!!ふざけんじゃねえぞ!!こいつらはオレが仕留めたんだぞ!!」
その場に倒れてる盗賊の男二人を指さしてマインは叫んだ。
「何よ!!私だってこいつらを狙ってのよ!!…!!?」
「でも仕留めたのはオレだ!!…ってん!?」
少女は突然マインの顔をじろじろと眺める。
「かぁぁぁぁわいぃぃぃぃ!!」
ずげげげげげ
マインは思わずその場にすっ転んだ。
「何だと…人の顔をじろじろ眺めて何をするかと思えば…か…かわいいだと!!?」
「だって本当に可愛いんだもん!その顔の傷さえ無ければ100点満点。」
「顔の傷を馬鹿にするな!!これは数々の修羅場を切り抜けた漢の勲章だぞ!!
ったく…お袋…、お袋似に産んだことを心底恨むぜ…オレは親父似に生まれたかったぁぁぁぁ!!」
「へー…あなたお母さん似なんだ。そのお母さんもきっと相当の美人なんだろうね。」
「お袋の話はするなぁぁぁぁぁ!!」
思わずマインは少女に殴りかかった。しかし、少女はマインのパンチを軽々と後ろに跳んでかわした。まるで重量すらも感じさせない身の軽さ。
「ちょっと、危ないじゃないの。」
「お前…思ったよりやるな…。…ん?」
そこに男二人の姿は無かった。マインと少女が何かやってる内に盗賊二人は何処かに逃げ出していたのである。
「逃げてるぅぅぅぅ!!」
「お前!また乗っているのか!?さっさと自分の機体に乗り込め!」
また…らしい?彼の名はファイン=アセンブレイス、味方からは自爆王とか特攻馬鹿等と呼ばれている。
間違いなくエースなのだが「根性と気合と機転さえあればどんな困難な作戦でもやり遂げることが出来る。」と言う信念の旗印の元機体を壊しまくっていた…。
今はパーツ代の安いキメラブロックスに乗ってはいるがそれでも彼が1回の出撃で消費するパーツは他の兵員の3倍は下らない。
「はいはい解ったでありますよ。」
渋々とコクピットから降りようとしたが合流地点付近からの爆音に気付き取りやめる。
「先に行きますんで宜しくお願いするであります。」
そういうとそのままデモンズヘッド顔にディアントラーのプラズマホーンを接続したリビングデッドバタリオンを出撃させる。
0,8km/sceの加速度に顔を歪ませながら笑う。
「俺の出番だ!」そう叫ぶと森の中を木々を押し退けながら真っ直ぐ爆音のした方向に機体を走らせていた…。
「また壊れたな…。精々頑張れよ!」彼の部隊の隊長は呆れた顔で見送るしかなかった…。
割りと木々の間隔が大きい場所が続いていたので予想より早く現場へ着きそうだった…。
「なっ!」
突然砲撃が来る!しかもこれは味方の攻撃よりにもよってセイスモサウルスのゼネバス砲だ。
慌てて躱すが右のプラズマホーンが消滅する。「味方だって言うの!」慌てて通信を入れる。
「なんだ自爆王か。ヒヤヒヤさせるな!」と通信が帰ってくる…何とか間に合ったようだ。
状況は多少好転したが撤退している味方に襲い掛かっているのは味方である筈のキメラだった。
やはりコアブロックに気味の悪い臓器のような物が付いて蠢いている。
「なんですかあれ!?」余りの気持ち悪さに目を逸らす。「解らんがあれが先行部隊と我々の部隊を半壊させた敵だ!」
ファイン=アセンブレイスは理解出来無かった…開発初期なら兎も角、今やロードゲイルで彼等をコントロールすることは容易く、
暴走を避ける為安定した運用をする為の連絡機であるディアントラーまで開発したのだ。
しかし目の前でそれを受け付けず味方機に襲い掛かる彼らが居るのは紛れもない事実だった。
「悪いが壊すぜ。」機体を先行させキメラ達を薙ぎ払う。思ったよりも素早い彼等に回避される。
手ごたえが無かったため機体が2回転する、相手の方向に向かって砲撃も仕掛けて見たが小気味の良いフットワークに阻まれこれも当たらない。
さしもの彼も焦っていた…味方の最前線に居てもこのままでは砲撃の邪魔でしか無い。
自分の腕には自信が有った。奇襲と物量作戦ではあったがゴジュラスギガを1機で足止めし、
それを偶然も相舞ったて中破までさせている。その自分が何も出来ていないのだ。
「それならこれでどうだ!」
彼の機体の胸部、本来ならコクピットのある場所から光を放ちながらせり出す物が有った…。
キメラ達はそれを回避できると踏んだかその場から動かず構えていた…。
しかし彼等は甘かったのだ…闘争本能の旺盛さと作戦実行プログラムが単純であった為判断を誤ったのである。
「終わりだ!拡散荷電粒子メーザー発射!」
薄い荷電粒子の光を纏った衝撃波がキメラ達を吹き飛ばす。分離回避も間に合わず全パーツが破損して機能を停止する…。
拡散荷電粒子メーザー砲…消費を押さえて広範囲の敵を攻撃する兵器である。
本来は湾岸防衛用で陸戦では大して効果は無いが近距離なら十分なダメージを与えることが出来る兵器だ。
気味の悪い臓器城の物体もブスブスと焦げて光を失っている。
「これが切り札だ。」格好を付けて気分を良くしていると、「次が来る!前を頼む!」と通信が入る。
緊急時なのか調査部隊の隊長は命令口調では無く依頼口調になっていた…。
「了解!」彼は気分を切り替え他のキメラ達に攻撃を仕掛ける、
作戦実行プログラム通りの動きしか出来無い彼等はその動きを知っている物にとっては動く的で有る事には変わりない。
動きは素早くなったがそれに慣れれば後は面白い様に攻撃が当たる、がそれも長くは続かなかった。
「!」突然夜空を裂いてフライシザースが姿を現す、それに呼応する様に何時の間にかディプロガンズに囲まれていた。
「来るでありますねぇ〜。」ようやく平常時の状態に戻ったファイン=アセンブレイスはこれから起こる事を理解していた。
キメラドラゴン…遂に彼等が本機を出したのである。その数3機、大量に余ったレールガンやミサイルポッドをゴテゴテに装備している。
「さ〜てこっちも本機を出すでありますか…。」彼もそう呟きながらコントロールパネルを動かしていた…。
包囲された機体に向かってディプロガンズからの砲撃が始まる。
空からはキメラドラゴンのミサイルが雨の様に降り注ぐ…リビングデッドバタリオンとは言えすべてを躱し撃ち落とすのは不可能だった。
爆発が起こる「あ〜あまたやった…。」機体を爆発させられている事よりもまたやったと言う事の方が味方部隊からの感想と言った所だった…。
「だから”本機”を出すと言ったでありますよ…。」
爆発は機体のサイズから考えても小さ過ぎる、爆炎とそれに伴う黒煙に紛れて彼の機体は攻撃を再開する。
目隠しされている状況からの砲撃は元の機体からは考えられない数の砲撃音とミサイルを放つ…、
その爆炎と黒煙から現れた機体は元のサイズより一回り小さい。
フレームはキメラブロックスで構成されて各四肢の胴体の付け根にコアブロックが有る。
フレームを覆っている装甲の裏に針鼠の様に火器が満載され背部にマグネイズスピアを装着した小型版フューラーと言った感じの機体だった。
周りには冗談の様な数の砲撃をまともに喰らい戦闘不能になったディプロガンズの群れが横倒しになっていた。
更にはリビングデッドバタリオンの装甲の破片…キメラドラゴンは本来不要な装備を排除することで難を逃れていたがレールガンとミサイルポッドを失っていた。
キメラドラゴンがフューラー型キメラに襲い掛かる、しかしここで高性能化のつけが回って来た。
高速機動に絶えられず機体がバラバラになる…元々バラバラになれる物なので直接の被害は無いがキメラドラゴンの形態を維持でき無い状況はキメラコアに莫大な負担を掛ける。
程なくしてコアブロックから火を吹き回路が焼き切れる。
キメラブロックスの運用で一番気を付けなければならない事それは「パーツの少なすぎる状況でのコアブロックの直列配置を避ける」と言う鉄則。
それを怠ってはさしものキメラブロックスと言えど命の保証は無い。
ファイン=アセンブレイスの戦闘はほぼ終わりを告げていたが本体の戦闘はまだ続いている。
先行し過ぎた彼が味方に合流するのに3分はゆうに掛かった…。
その頃本体を支えているセイスモサウルスとロードゲイルは苦戦を強いられていた。
「奴が大半を押さえてくれているのにこれか!」キメラブロックスの攻撃は無くなったが本体と思われるディバイソンとダブルソーダーの混成部隊に少しづつ押されていく…。
ダブルソーダーの機銃の雨はセイスモサウスルスの重装甲の隙間を突いて本体フレームにダメージを与える。
31門小口径2連レーザー機銃で応戦するも数が尋常でない墜としても墜としても次から次へと後続の機体が現れる。
ディバイソンは数こそ少ないが17連突撃砲が断続的に火を吹き迎撃に向かったロードゲイルを近付けさせない。
連戦に依る疲労と焦りが彼等を確実に追い詰める…その時だった。
一条の閃光が夜の闇と敵部隊を切り裂く。その先には…満身創痍のデスザウラーが立っていた。
オーガノイドシステムを使用しているとは言え両腕は再生途中でまだ回復していないし装甲も腕の再生を優先しているらしく完全に回復していない。どちらかと言うとズタボロだ。
直にダブルソーダーが群がっていくが帝国軍の象徴とも言うべきデスザウラーの前では雑魚でしかない。
ミサイルと大口径荷電粒子砲で次々とダブルソーダーを撃墜していく…。
しかしデスザウラーから激しい火花が散る。内部機関に負担が掛かりショートしたのだ。
力を失い倒れるデスザウラー…ロードゲイルの隙を突いてディバイソンの1機がツインクラッシャーホーンを構え迫る。
その時ようやく戦場に増援部隊が到着した。「全機攻撃開始!」その号令の元11機のリビングデッドバタリオンがディバイソンに襲い掛かる。
1対11、数の差はそのままの結果としてディバイソンは10秒も持たず破壊された。
一辺に相手にする敵の数が減れば根本的な性能の差でじっくりと敵を排除していく…。
ファイン=アセンブレイスの機体も合流しあれ程空を覆い尽くしていたダブルソーダーも何時の間にか消えていた。
今回も何とか敵を排除する事に成功したのである…。
それから翌日、とある町の通りをマインは歩いていた。小さな町ではあるが、それなりに人はいてにぎわっている。
「ハア…あの女のせいで散々な目にあったよ…。結局盗賊には逃げられるし…。」
ため息を付きながらマインはそう言った。
「ちょっと失礼ですが…貴方がマイン=バイスさんですか?」
突然現れたこれと言って特徴の無い感じの男がマインに対しそう言った。
「そうだけど…何でオレの名前知ってんだよ。」
「そりゃあもう有名ですよ。さわったら爆発する。人間機雷マイン=バイスって…フゴ!!」
男はマインに殴り飛ばされた。
「その言葉、二度と言うなよ。オレは機雷と呼ばれるのが一番嫌いなんだ…。」
「わかりまひは…。」
「あ…そうだ。オレに何の用だったんだ?」
とはいえ、マインに殴られたダメージは大きかったようなので、一時置いて、男が起きあがってから話を聞くことになった。
「単刀直入に申し上げます。詳しくは町長から聞いて下さい。」
「ほんとに単刀直入すぎるな…。というか町長さんが一賞金稼ぎに過ぎないオレに何の用だよ。」
「貴方だけじゃありませんよ。もう1人います。」
とりあえず、マインは男に連れられて町長の家へと行った。そして、とりあえずとある一室に入る。
「やっほー!!また会ったわねー!昨日の可愛い人!」
ずげげげげげげ
そこにいたのは昨日出会ったアイアンコングの少女だった。マインも思わずすっころぶ。
「だぁぁぁぁぁぁぁ!!貴様!!何でこんな所に!!」
「そりゃあもう。私もそこの人に呼ばれたのよ。まあ良いわ。私の名前はミン=チュウラン。
これでも少しは名の知れた賞金稼ぎなんだから。」
「知らん。」
すってん
マインの速攻のつっこみにミンは思わずすっ転んだ。
「ま…いいわ…。で可愛い人、貴方の名前は?」
「一々可愛いを付けるな。俺の名はマイン=バイスだよ…。」
「マイン?機雷かよ…。ってキャア!!何するのよ!!」
ミンが機雷と言った瞬間に反射的にマインは殴りかかっていた。当然避けられたが…。
「貴様まで機雷と言うか!!ったくどいつもコイツもどうして機雷機雷と言うんだ。」
「貴方の両親に聞いてみたら?」
「それなら既に聞いたよ。で、何でかと言うと、二人の名前を足して2で割ってこうなったらしい。」
こんな名前を付けられたせいで小さい頃から随分といじめられたぜ。もっとも、全員ぶちのめしてやったけどな。」
「何か凄いような凄くないような…。」
「お待たせしましたなお二人とも。」
そう言って町長が二人の前に現れる。
「俺達に一体何の用ですかい?」
用意されたイスに座り、マインはそう言った。
「実はですね、この先のアルマ山の向こうに実は怪しい宗教団体がありましてね。」
そう言って、町長は窓の向こうの山を指さした。
「で、その宗教団体が何とプロイツェン信仰をしてまして…。」
「はあ?何でプロイツェン。」
ギュンター=プロイツェン=ムーロア。今は無きネオゼネバス帝国の初代皇帝にして、
ガイロス帝国で摂政をしていた男である。ゼネバス系市民の間では今なお英雄と慕われている。
「今時プロイツェンを崇拝するなんて…怪しさ核爆発ね…。」
「いや、それだけなら別にいいんですよ。別に何か悪いことをやってる訳じゃありませんし。」
「プロイツェンを神とあがめて崇拝するだけでも悪い事だと思うが…。」
町長はさらに話を進めた。
「しかし、何でも裏で良からぬ事をたくらんでいるという噂が手に入りましてな。困っていた所に
ちょうどお二人方がこの町に来ていたという訳ですよ。」
「別にどうでもいいんだけど、この町にも警察はあるんじゃないですか?」
「確かにありますが、何しろこんな小さな町の警察ではやはり高が知れますし、証拠をつかめない事には…。とりあえずお二人方にお願いします。とにかく噂が本当かどうか調べてくるだけで
良いんですよ。噂の名高いミン=シュウランさんと人間機雷マイン=バイスさんが協力すれば
楽な仕事でしょう?…ってわあ!!」
「わぁぁぁぁ!!マイン君、この人殴っちゃダメだよぉぉぉぉぉ!!」
そう、町長が機雷と言った時に反射的にマインは殴ろうとしていたのである。ミンはそれを必死に
押さえていた。
「と…とりあえずそれなりの報酬さえもらえれば別にいいや。とにかく行ってくるよ。」
そう言ってマインとミンは町長の家を出た。
「とにかく改めてよろしくね。私の名前はミン=チュウラン。」
ニコニコ顔でマインに言うミン。
「あんま気に入らねーが…これも仕事だ。オレはマイン=バイス。とりあえずよろしくな。」
マインは渋々と返事をする。
「じゃあ行くか…。」
12の表記間違い:11機じゃなくて8機でした…(TT リビングデッドバタリオンの数。
申し訳ありません。m(__)m
合流した部隊は再編作業を急いでいた…。ファイン=アセンブレイスは機体を破損した責任でこれまでのデータ、画像を情報として最適化する作業を一人でやらされていた。
「うう…一人はきついでありますよ〜。」そう言いながら焼きイカを咥えながら映像を解析していたが、
「あっ!?」思わず声を出してしまい焼きイカを皿の上に落とす。
その映像にはデスザウラーに高速で襲い掛かるゴドス、しかも体中に鋭利な刃物状の武器を派手に振りかざしている。
刃物の形状や刃物の周辺の薄い光から振動装置で刃を加速させ攻撃する振動ブレード特有の構造、
刃物を動かす際の刃同士がぶつかっていないか確認する為のライトの漏れた光を発見した。
「あの装甲強化型デスザウラーの腕を落せたのはこの武器でありましたか。」
振動を切断力に使用する武器は多少なまくらでも振動回数が多ければ幾らでも切れ味を増すことが出来る構造だ、
まあ素材の限界という壁は有るがそれでもただ鋭いだけの刃物の数倍は切れ味が良い。
切る力に振動とそれによる運動エネルギーが接触の際に高温の摩擦熱を発生させる…とこの組み合わせで素材硬度を超えた切削力を得るのが振動ブレードの類の兵器だ。
しかしこれも機体のサイズからは考えられない威力でついさっきまで戦闘をしていた敵同様常識外れの力を持った無人機と同じ臓器状の物が寄生していた。
「この気味の悪いのが”敵”でありますね。」解りきった事を口に出しもう一度納得する。
それはこれからの戦闘が更に厳しいものになる事を物語っていた…。
恐怖の亀裂 の作者さんにはなにか熱いものを感じる。
まだ全部読んで無いけどがんばってください
レクス=アームズは浅い眠りから覚める…。
「この音は…」聞き覚えのある音この施設にある大型エレベーターの起動している音。
その音は彼の下から上に向かって大きくなり小さくなっていった…。
「まさか…?」奴等が大型エレベーターを使用できる?だとしたら…狙いは俺の追っ払った帝国軍?
急いで機体を止めている場所に急ぐ。しかしそれを阻む者が居た…。
人員用の出入り口が打ち破られている…そこから何かが侵入していたのだ。
レクス=アームズは身構える…しかし彼は機体に乗っている時とは違い生身での白兵戦はお世辞と言えど上手いとは言えない。
冷や汗を流しながら愛機に向かってじりじりと後ずさる。その時「何かが」姿を現した。
白衣を纏った何か?人の形?こそしているが気配は全く無く、息も吐いていない。
体は白衣と同じく真っ白で顔のある位置に青い大きな眼球状の物がある。
はっきり言って化け物…当たり前の表現ではあるがそれ以外の認証は彼には考えれなかった…。
「俺はこう言うのは苦手なんだ!」そう叫ぶと同時に「目」から光線が発射される。
何とか避けることに成功し慌ててギガのコクピットに逃げ込む。
「喰らえ!」ギガの巨大な顎が「化け物」を噛み砕く。情けないと言われそうだが下手に生身で相手にしても時間の無駄であり、
現にその化け物は部屋に30対以上侵入していた。何方にしろギガに乗ってしまえばもう恐れることは無い。
蟻を踏み潰す要領で程なくしてそれ等を退治する…。
「酷いことをしやがる…。」彼はそれ等が着ていた衣服に見覚えがあった。
共和国軍に所属する者が着る服だ。本来味方である筈の存在が変り果てた姿で襲ってくる。
その現実が彼の胸に突き刺さる。最早彼はこの場所から離れる事しか出来無かった。
デスザウラーを襲った物は「ゴドスリッパー」と適当に命名した物だけでは無い。
壁からの狙撃者も居る。
ファイン=アセンブレイスはその砲撃を行なった物を探していた…。
「ん?」ふと目に止まる物が有る、それはブロックス?しかもキメラと共和国のブロックスを合体させた彼にして見れば「豪勢」な機体だった。
それの外見は彼の父親達が教えてくれた地球の伝説、神話等に出てくる「マンティコア」や「キマイラ」といった物だった。
映像に一瞬写っていたそれは尾にテイルライフルの束を持っておりそれから荷電粒子砲を放っている。
今では荷電粒子砲は大小多々両軍に配備されておりかなり一般的に為って来ている。
「これだけの数を一斉に打ち込まれれば流石にああ為るでありますね。」
他にも臓器状の物がゾイドコアとほぼ同じ構造である事、それが寄生しているだけでは機体が高性能にならない事もおおよそ解ってきた。
そして…問題の高性能化である。こればかりは内部機関のサンプルが無い限り説明が出来ない。
どうしようも無くなり皿にある焼きイカをほうばる。冷めていた…。
「あのサイズであの高性能…共和国は凄い技術を隠し持っていた見たいでありますね。」
焼きイカを食べ終わると作業を再開する。が何かがおかしい…さっきまであれだけ騒がしかった外の音が聞こえないのだ。
「!」
直にその場から離れる。ついさっきまで彼のいた場所に巨大な手が有った。
生白く生気の無い手その指には穴!?
「遂に来ました!?オカルト体験!!!」そう叫ぶとテントの柱に立て掛けて置いた直方体の箱を担いで逃げる。
案の定穴からはお約束と言わんばかりに発光する玉が打ち出された。
ファイン=アセンブレイスは攻撃を完全に回避する。
不意打ちは不意である事に意義が有る。今回の「手」はタイミングを外してしまった…それは致命的な隙を生む。
「見敵撃砕!」箱を構える…箱は分離再構成し重火器へと姿を変える…。
この箱はブロックスの構造を小型化利用したフレキシブルウェポンドライバー…彼が次の帝国武器品評会に出展を目指して開発した物で、
サイズからは考えられない量の弾薬と形態を持つ。
砲口から10mmグレネード弾が射出される。「手」は直撃を喰らい吹き飛ぶ、テントの機材と一緒に…。
この際四の五の言っては居られ無い。彼はテントから逃げ出すと辺りを見回す。
「また…一人きりでありますか?」他の人員は既にゾイドに避難し彼のみが一人取り残された形となる。
外には人を醜く歪めた様な外見の化け物が多数いる。それ等の視線は彼一人を注目していた…。
テントの柱が焼け朽ち倒れる。それを合図に化け物達が一斉に襲い掛かって来る。
武器を構えるとそれは姿を変え別々の武器になる…ショットガンと大型拳銃になったフレキシブルウェポンドライバーを使い近づく化け物へ攻撃を掛ける。
前方に気を取られ銃を撃ちながら後退するがそこには「手」の持ち主が居た。
「手」に掴まれて空中へ放り投げられる…が彼には好都合だった。
ゾイドに乗っての戦闘は自分のサイズとかけ離れた大きさでの戦闘となるので、
ゾイド乗り達には「空間戦闘」の認識が必要になる。何処から攻撃されるかが解らないので自然と覚えていく物だ。
空中から辺りを伺うと化け物達は統制とか連携とかそう言った物は存在していない様で、
目標が居たらそれを襲うと言うキメラ達と全く同じ行動パターンの者らしい。
見た目も千差万別で「手」の持ち主の様に砲撃を行なえる物は少なくその砲撃も射程は短く目の前に届くこと無く力を失い落ち彼等を襲う。
同士討ちに助勢する様にショットガンと大型拳銃を撃ちまくる。
狙いは砲撃を行なえる者と大型の者。少なくとも地面へ落ちるまでは数十秒はある…100メートル以上も放り投げられるとは考えもしていなかった。
「良くもまあ気を失わなかったでありますねぇ〜…流石自分。」流石に地面にぶつかれば即死なのでパイロットスーツのスイッチを押す。
まもなくパラシュートが広がる筈なのだが開きが遅い…最低でも130mは無いとパラシュートは開かない。
「!!!」焦ってフレキシブルウェポンドライバーを団扇代わりにパラシュートに必死に風を送る…。
…なんとかパラシュートは開き即死は免れた様だ。しかしショットガンや大型拳銃では今一威力が無い。
少し考えれば解っていた事なのだが生身での100mオーバーの飛翔?に軽いパニックを起こしていた様だった…。
彼はフレキシブルウェポンドライバーの形態を変えることにした。
ネタにネタを被せるようにして書いていた為に自分でも解らなくなって来たので少し整理を兼ねて捏造物の整理を…。
【人名】
レクス=アームズ:共和国軍ゴジュラスギガのパイロット、ゾイドでの戦闘はお手の物だが生身での白兵戦は苦手
グレッグ=スクイード:帝国軍湾岸警備隊指令
ファイン=アセンブレイス:帝国軍強襲部隊所属、自爆王、特攻馬鹿の異名を持つ、オカルト好き
【技術】
多重層振動ブレード:振動ブレード系の兵器の一つ、ブレードの振動、物体と接触時の摩擦熱、ブレードを振る力で相手を切断する兵器
MTS:マグネッサートリートメントシステムの略、この装備をしたゾイドは関節にかかるあらゆる負担が著しく軽減され、高機動戦闘が出来る様になるが弱点として機体が軽過ぎる様な動きになる事
シェイクブースター:ゾイドコアからのエネルギーを振動エネルギーに変換、増幅する装置でトランスブースターと対で無いと使用できない
トランスブースター:シェイクブースターからの振動エネルギーを電気エネルギーの再変換、増幅する装置シェイクブースターが無いとただの重り
拡散荷電粒子メーザー砲:海上防衛用の新型荷電粒子兵器、メーザー砲の機構を利用して使用する荷電粒子の節約とメーザー砲の衝撃波発生機構を使用して広範囲に弱荷電粒子衝撃波を発射する兵器
フレキシブルウェポンドライバー:ブロックスの機構を小型化して人間用の兵器として運用する多重可変兵器
【ネタ】
焼きイカ:これの為にグレッグ=スクイードはスクイード「RPG等でイカの化け物等を差す名前」と言う名前が付きましたネタ元はそこを書き込んでいる時にたまたま焼きイカを自分が食べていた為です
追加補足としてこの話の時期に近海で大量にイカが捕れるため投げ売りされる事から兵員の食料に多用されると言い訳、隙あらば再登場するかも?
【お詫び】
本機:本当は”本気”と書いたつもりだったのですがあのとうり書いてしまったので1回分戦闘が長引きました。
リビングデッドバタリオン:始めに機体の配備数を明確にしなかった為間違えました。
【リクエスト募集】
18に登場するフレキシブルウェポンドライバーの形態の希望がある方は書き込みをお願いします。
ショットガンと大型拳銃以外でお願いします。
>>69 対物ライフルとかグレネードから煙幕弾とか・・・
ところで10ミリグレネードは威力低くないですか?
最近ではアメちゃんが20ミリグレネードとか開発してるらしいですが
本編も面白げなので期待!
M16にひっつけるM203グレネードランチャーって40mm位なかったっけ?
あれはわざとです…近距離で40mmとかぶっ放したら即死か重症がほぼ確定ですし…。
物が小さければ炸裂方向もコントロールし易いのではないか?と思いまして。
小さすぎると駄目みたいですけど…。もっと状況説明する文を書いておくべきだったのでしょうか?
10mmの本当の意味合いは「連射」出来るのではないか?と言う意味合いが多いです。
今の所2099 開戦の作者さんより「対物ライフル」とグレネードから「煙幕弾」のアイデアを頂きました。
ありがとうございます。
「ちょっと待てよお二人さん。」
突然あちらこちらから悪そうな男達が大勢現れて瞬く間に二人を取り囲んだ。
「何だよおっさんたち…。」
「さっき、町長から受けた仕事から手を引け。さもなくば命はない。」
リーダー格の男がそう言うと、後ろにいた子分っぽい男がナイフやらピストルやらを取り出す。
「おーおー。チャカや光物取りだしたかー。」
何事にも動ぜずにマインはシャーシャーと言う。ちなみに、チャカとは拳銃の事を言い、光物とは
刃物の事を言う。
「あなた達!!さては何処ぞのマフィアね!!町にいて悪いことをするヤツは大抵マフィアよ!!そうに決まってる!!」
男達を指さしてミンが叫ぶ。
「いや、どっちかと言うと極道だろこいつら!!」
横からマインがツッコミを入れる。
「マフィアでも極道でもどっちでも良い!!とにかく返答はいかに!!」
「と言ってもねー…久しぶりの仕事だし…。」
ミンは首を傾げながらそう言う。
「よしわかった。オレの返事を言う。」
マインはそう言って前に出る。
「オレの返事はこうだ!!逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「わぁぁぁぁぁ!!マイン君待ってよぉぉぉぉぉぉ!!」
わずかな隙間をぬって、マインとミンは男達の包囲網を脱出し、走り去る。
「ええい!!追え!!」
男達も後から追いかけてくる。
マインとミンはひたすら逃げる。二人とも結構足は速い。
「ちょっとマイン君、どうして逃げるのよ。」
「決まってるだろ。あのままだったらカタギの衆にも迷惑がかかってちまう。賞金稼ぎと言えど、品行方正じゃなけりゃあいけねえからな。」
「へー、マイン君も色々考えてるんだー。」
町の外へ出た二人は立ち止まり、男達が来るのを待っている。
「さーて、ここならカタギの迷惑も掛からない。話の続きと行こうか?…ってアレ?」
後ろから追いかけているはずの男達はいなかった。というか、マインとミンの足が速すぎて、
男達がどんどん放されていったと言った方がいいのかも知れない。
「あ、いたよ、マイン君。何か慌て顔でこちらに走ってくるよ。」
数分後、男達はようやくマイン達二人の元に走ってきた。全員息を切らしてハアハア言っている。
「ハア…ハア…。こいつら足速すぎだぜ…。まあいい…とにかくさっき逃げたのは仕事から
退かないと見てもいいのか…な?」
「ああ、退かない。それが賞金稼ぎだから。」
「なら死ねぇぇぇぇ!!」
男数人がナイフを振りかざし、マインに向かって突撃した。
「それがどうしたよ!!その程度でビビる根性で賞金稼ぎなんてやってないぜ!!」
マインはただ一発先頭の男の顔面を殴りつけた。マインよりも一回りも二回りも大きな男の体が
軽々と吹っ飛んだ。そしてその男が後ろの男のぶつかり、さらに後ろの男にぶつかりと
さながらドミノ倒しのように数人がまとめて倒された。
「何だこのガキ…強えぇ…。」
男達は一斉に下がる。
「ならこっちの小娘を先に殺れぇぇぇぇ!!」
今度どはミンに突撃する。しかし、ミンの表情は余裕そのものだった。
「何も考えずに突っ込んでいいのかな〜?私も強いよ〜。」
しかし、男達はなおもナイフをかざして突撃してくる。ミンは自分の右手を自分の服の
大きな袖口の中に引っ込めたと思うと中からトゲ付きの鉄球を取りだした。
「チュウラン家流!!鋼球撃!!」
そう言ってミンは右手の鉄球で男達を次々に殴り倒していく。しかも自らの体は一切触れられずに。
ミン自身の体術も並ならぬ物がある証拠であった。
「へ〜。お前も結構強いじゃねーか。ただうるさいだけの女じゃないんだな。」
それを端から見物しながらマインはそう呟いた。と、その直後、マインは何かに気付いた。
「ん?今一瞬かすかに機械音が聞こえたような…。空耳か?」
「お前らこんなガキ共相手に何を手こずっている!!」
リーダー格の男が前に出た。右手には拳銃が握られている。
「流石のお前もこれでバーンとやられればお終いだな。」
「た…たしかにそうだな…。」
先ほどまでの余裕がどこへ行ったか、マインはうろたえていた。
「死ねえ!!」
「ひぃぃぃぃ!!撃たないでぇぇぇぇぇ!!」
バーン!!
男の持つ拳銃から銃弾が放たれた。その場から全く動いていなかったマインは撃ち殺された…
かに見えた。
「なーんちゃって!」
ニコニコと笑顔で笑いながら左手の人差し指と中指で銃弾を挟み込む形で受け止めたマインがそこにいた。
「う…そ…。」
男は青ざめた。マインは男にゆっくりと近づいてくる。
「危ないな〜。こんな物を持っちゃあ…。」
そう言って男の持つ拳銃を手に取ったと思うと瞬く間に握りつぶした。男はさらに青ざめた。
「ヒィィィ!!こいつら人間じゃねぇぇぇぇ!!」
ゴン
男の背後からミンが鉄球で男を殴り倒した。
「失礼ね。人をバケモノ扱いしないでよ。」
とりあえず、謎の男達はこうして全滅した。
「しかし…これではっきりしたな。」
「うん。この事件の陰にはマフィアの存在があるわね。」
「いや!!だからどう見てもこいつら極道だろ!!?」
マインは倒れている男達を指さしてそう言った。
>恐怖の亀裂作者さん
何かイイですね・・・・
自分も何か負けてらんねーって気分にさせてくれますよ・・・
あと、今度自分も
>>69みたいな設定の整理とかやってもいいですか?
両手でフレキシブルウェポンドライバーを抱えるとそれは長い砲身の対物ライフルの形状をとる。
2連装になっており更にその下には太く短めの砲身…先ほど「手」に使用した小口径グレネードランチャーが装備されている。
すべての砲身は大きさが全て違う物で最上段の砲身から高硬度鉄鋼弾、中段からは通常のライフル弾が発射される。
多少の距離はあったがさっきまでとは打って変わって確実なダメージを目標達に与えている様だった…。
ライフルの射撃モードをバーストに変更する。連射から一転して3連バーストとなり、
弾の消費を押さえる。大型のサイズの者や砲撃が出来る者を排除したので後は各個撃破で迎撃する。
が素早い者もいて中々上手く命中しない。
「それくらいの知性と本能は有るみたいでありますね。」しょうがないとグレネードを発射する。
それは適当に放たれた物だったが空中で炸裂し地面に届くと激しい勢いで煙を発生させる。
薬品反応で黒煙を上げる特殊煙幕弾、かつてはそれに伴う悪臭や大気汚染の問題が有ったが今は催涙効果を求めない物にはただの煙を発生させる弾を使用することが多い。
煙の種類も37色もバリエーションが有り黒煙や白煙のみならず群青色、藍色、カーキグリーンと一般の者には何に使うか解らない様な色まである。
2〜3発打ち出し様子を伺う。
パラシュートを開いたことで一度空へ浮き上がりゆっくりと落下していく彼に向かい無謀にも跳躍して攻撃を仕掛けようという者まで居る。
しかしそれが狙いであり標的が近づく度に撃ち落とせば良い。着地までに彼等の頭数を3分の1に減らしたかった。
銃撃の一撃一撃が重要性を増す…弾薬は見る見る減っていきこのままではしたくも無い白兵戦を強いられる事になる。
どんなに格闘技の才能が有ったりそれに見合った格闘兵器が有っても基本的には白兵戦に於いて格闘戦まで縺れ込むことは避けなければいけない。
「そろそろ潮時見たいでありますね…。」諦めて彼はフレキシブルウェポンドライバーを肩に担ぐ。
それはロケットランチャーに姿を変えていった…。
流石に短時間で複数の形態に変形させた為フレキシブルウェポンドライバーは節々が高温になっていた。
火傷の心配こそ無いが暑がりの彼にとっては集中力が削がれる。
変形にも時間が掛かる…ロケットランチャーの形態は他にもある超小型ミサイルランチャーや、
格闘用のプラズマグレイブの形態と並び機構が複雑に絡み合う部分が有りその接続合成に手間が掛かるのだ。
その上ロケットランチャーと言っても砲弾がそれで有るだけで実際砲身や射出機構は電磁レールガンだったりする。
「喰らうでありますね!クラッシュレイブ!」適当なネーミングを叫び辺り一面に全弾発射する。
多少の間隔は有るがそれでもおおよその位置に着弾し化け物達を吹き飛ばす。
12発のロケット弾が全て爆裂しその少し後に彼は地面に降り立った。
フレキシブルウェポンドライバーは着地前にプラズマグレイブに変形させて置く事が出来たので多少安心出来るが、
結局近接格闘を強いられることになった…。
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可能性という名の一つの未来の作者さんへ。
間違った書き込みを多数して読んでいる方に迷惑を掛ける可能性が有るなら、
整理をする方が良いと思います。謎設定ばかりになって電波作品が出来ても「不思議だ…?」となってしまう事も有りそうなので。
自分の撃った煙幕弾がこの時は流石に恨めしくなる。
全滅はあり得ない…銃弾一発で仕留められない。まずこの事から彼等の身体能力、耐久力は格別である事が解る。
一番始めの「手」の持ち主に至っては10mmとは言えグレネード弾を喰らって尚健在だった。
気配が無い事がかえって不気味さを増す。「…」さっきまでの軽口は影を潜め目の色が変わる…。
精神を集中し直す。プラズマグレイブの音は意外と大きいので気付いた者から襲ってくるだろう…。
まず1体目が襲ってくる…一瞬の後その化け物は焼け焦げた悪匂を放ちながら2つに分断される。
これらの兵器は熱で切断力を増す物なので切り口は焼け焦げた後が残る。治療も難しく傷の跡が残るのも特徴だ。
彼は練習によりこれを一定の範囲に限定して振り回すことが出来るので近づく者を随時迎撃する事に専念すれば反応速度で遅れを取ることは無い。
「破っ!」続いてくる2体目3体目の後続も2つから4つぐらいのブロックに切断される。
しかしプラズマグレイブのバッテリーは決して多いとは言えない。小型化の漬けと言う者だ。
何体居るか解らない敵に対しては非常に厳しい状況だ。
危険な選択肢しかない状況だが動くしか無い…覚悟を決めて煙幕の中に突撃する。
何とか包囲網を突破する。その際に12体ほど切り捨てる事に成功した。
流石にもう一桁台になっている筈だがと後ろを見るとそこには…。
…悪臭漂うそれは一言で言えば「レギオン(軍隊もしくは蟻等の群体を差す。これもRPG等でモンスター等に使われる言葉)」と呼ぶに相応しい化け物の融合体だった。
レギオンは周りの撃破された仲間を体の周りに付着させて神経を再結合させたらしく巨大な体躯を誇っている。
2体分の体を付け合わせた腕が舞う…それを苦も無く薙ぎ払うファイン=アセンブレイス。
プラズマブレードのバッテリーは少しづつ限界に近づいている。
「厳しいな…。」そろそろ機体に逃げたいのだが砲撃を後ろから受ける可能性も十分有る。
せめてバッテリーの補充が出来る機材があれば再構成を行なう前にバラバラに出来るのだが…。
相手は無秩序にパーツを集めている為に何処が本体かは全く検討も付かない。本体を狙うことは不可能に近い。
呼吸をしていない事が最大の壁となっていた。
疲労も濃くなっている…。フレキシブルウェポンドライバーを変形させる余裕も無い。
機体も無い…。この感覚には覚えがある…死の予感。手が無くなり最早隙を見せない事で身の安全を保っている状態。
死を覚悟する…「なら!」構えを取り突撃を仕掛けようとしたその時…。
「待たせたな!」と目の前にゾイドの足が現れた。レギオンは踏み潰されグチャグチャになる。
あっけに取られる中化け物達はゾイドの攻撃の前に沈黙する。サイズの差で避けることもままならないようだった。
「!?」彼の右手の甲に激しい歪みが起こる…「やっと巣立ちでありますか?」と何気なく手の甲に出来た亀裂を見つめる。
この症状はこの地域特有の寄生昆虫「付き浮き虫」が羽化して体から出ていく…その前触れだった。
手の甲の亀裂を破って「付き浮き虫」が羽化するが…「嘘〜!?」本来1匹づつ卵を産むので同じ所からは1匹しか居ないはずなのだが、
彼等はゆうに1ダース居たのだ。
手から這い出してきた彼等は直に羽を広げ異常な速度で乾燥させる、程なくして彼等は羽を広げ空に舞い上がっていく…。
グロテスクな登場のわりに月明かりを浴びて美しい輝きを放って飛んでいく彼等。
「!」その時ファイン=アセンブレイスは気付く。あのゾイドに寄生していた物…、
あれは付き浮き虫系のゾイドだったのではないかと?確認を取れるのは明日以降になりそうだが希望も出てくる。
痛みが全く無いので気付いていなかったが彼の手の甲は完全に皮がめくれ上がっていた。
出血によりやっとその事に目を向けるが…そこにはさっきまで交戦していた化け物の持っていた青い眼球状の物が有った…。
「何ですとぉ〜!?」思わずすっとんきょうな声を上げる。
「医療班と分析班と研究班〜!」と叫びながらファイン=アセンブレイスは手首を押さえて彼等が居る筈のテントに走っていった…。
が疲労によって当然テントに着く前に倒れてしまったのは当然と言えば当然である。
ソウイエバキンキョリデグレネードハアブナイネ
反省
M203・・というか西側諸国共通は40ミリですな
我らが陸上自衛隊でも40ミリグレネードを使用しています
他には37ミリとかもあったような・・・ロシアだったかな?
米軍が新規開発中のOICWに採用予定の新グレネード弾が20ミリ
威力の低下は命中精度でカバーするとか
「ったく思った通りだ。あいつらマジガンに爆弾仕掛けていやがった…。」
「あたしのガダーラにもあったよ!」
町の外れにある駐機獣場でマインとミンがそんな会話をしていた。
ちなみに駐機獣場とはゾイド用の駐車場を意味し、ガダーラとはミンの乗るアイアンコングの名前である。
とにかく、先ほどの男達が、マインとミンのゾイドに爆弾を仕掛けていたのだった。
しかし、さり気なくマインは爆弾を全部解除していたりする。
「へー、マイン君ってこんな事もできるんだー。」
ミンは感心する。
「まあな…この手の技術はガキの頃から親父から叩き込まれたからな。こんな安物の爆弾なら簡単に解除できるぜ。」
「技術って…マイン君のお父さんは何かの職人さんなの?」
「ああ…ゾイドの修理工だよ。」
「じゃあ、お母さんは何をしているの?」
「お袋の話はするな!!」
マインはそう言ってミンをにらみつけた。
「マイン君…昨日も同じ事言ってなかった?何かトラウマか何かあるの?」
「う…。」
まるで可哀想な物を見るような目で見つめられ、マインは一瞬退いた。そして頭をうつむける。
「すまなかったな…。今はとりあえず話したくはない…。」
「わかった。じゃあマイン君の方から教えてくれるまで待ってるから。」
ミンはそう言って微笑んだ。
とりあえず、二人はそれぞれのゾイドに乗り込み、目的の場所に向かった。
「俺たちの仲間が世話になったようだな!!」
二人の目の前に突如として謎のゾイド部隊が現れた。
「されはあの時のマフィアの仲間ね!!?それにしても応援が来るのが早いわね。」
「いや!!だからこいつらは極道だろ!!?」
「どっちでもいいワイ!!とにかくおまえらには死んでもらうぞ!!」
謎のゾイド部隊のリーダー機と思われるゴジュラスのパイロットがそう叫んだ。
「ゴジュラス!!今時珍しい!!」
ゴジュラス。アイアンコング同様第一次中央大陸戦争時代に登場したゾイドであるが、
その数はアイアンコングに比べて遥かに少ない。ミンが珍しがったのはそのためである。
「いや、あれは人工のコアで代用したレプリカ品だな。」
そう、何か前にも似たような事を言った気もしないでもないが、前の大戦によって、
天然のゾイドはめっきり数が少なくなり、全体的に保護政策が行われた。
その代わりに人工のコアを使用したブロックスやコアのみを人工の物で代用した通常ゾイドが現在主に使用されている。
「なーんだ。ただのレプリカか…でもマイン君、どうしてアレが人工のコアだってわかるの!?」
「口で説明するのは難しいな。しいて言うなら殺気かな?」
「殺気!!?」
「ああ・・・とにかく天然のコアと人工のコアじゃあ発する気が違うんだよ。」
「あなた・・・何でそんな事がわか・・・。」
その直後、マジガンとガダーラのいた地点に砲弾の雨が降り注いだ。
「ハーハッハッハ!!馬鹿め!!何をゴチャゴチャダベっておるか!!」
ゴジュラスパイロットは叫ぶ。
「いやいや、確かにに戦闘中に私語はつつしんだ方がいいよな。反省反省。」
砲弾の雨の降り注いだ地点から数百メートル離れた場所にマインのマジガンはいた。
「い!!いつのまに!!」
「こっちも無事でぇぇぇぇす!!」
マジガンとは逆方向からミンの声。そこにはガダーラの姿。
マジガンとガラーラ。ともに無傷であった。
「おのれ!!やってしまえ!!」
ゴジュラスのパイロットが叫ぶと同時にゾイド部隊はいっせいに攻撃をしかけた。
ウネンラギアやコックピットを搭載したシェルカーンなどをはじめとする混成部隊。
「シールドライガーを狙え!!」
マジガンがまずはじめに狙われた。
「おおっと。危ない危ない。」
しかし、攻撃は一発も当たらない。マインの操縦テクは並ならぬものがあった。
それだけではない、マジガンの動きもシールドライガーとはとても思えぬほどのスピードであり、
なおかつ運動性能なども半端な物ではなかった。
「何だ!!?たかが旧式のシールドライガーなのに・・・うわぁ!!」
一機のシェルカーンが叩き壊された。
「撃て!!撃て!!」
シェルカーンの近くにいた別のゾイドがマジガンに攻撃をしかける。至近距離。
しかし、ジャンプしてかわされる。急加速に急停止というとんでもない動きだった。
「何だぁぁぁ!!?本当に人間がのっているのか!!普通の人間ならあんな動き、
パイロット自身が耐えられないというのに・・・。うあぁぁぁぁぁ!!」
「私を忘れちゃ困るよ!!」
次の瞬間、シェルカーンの一機をガダーラが殴り飛ばす。さらに何かを取り出す。
「アイアンクラッシャーヌンシャク!!ホァタタタタタァァァァ!!」
ガダーラがどこからかヌンチャクを取りだし、それにより敵を殴り壊していく。
ただ殴るだけではなく、巧みなヌンチャクさばきによって敵弾をはじき飛ばしたりもしていた。
何か端から見てるとさながら漫画のような光景が展開されているわけだが、敵の数は多かった。
「数が多い。こうなったら敵の頭をたたく!!ミン!援護してくれ!!」
マインがそう言うとマジガンはリーダー機のゴジュラスめがけて突進した。
と、次の瞬間マジガンは空高くジャンプした。そして、突然空中で回転しだした。
「何だ?何をする気だ!!?」
誰もが意表を付かれて困惑する。
「食らえ!!真空超転撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マジガン自身がさながらドリルの様に高速回転し、そのままゴジュラスの胸板を思い切りぶち抜いたのだった。
「退け!!退けぇぇぇぇぇぇ!!」
リーダーがやられたと思うと、たちまち統率が乱れ、全機撤退していった。
「ほら思ったとおり、この手の大軍は頭を抑えれば何とかなるっての。」
「・・・今の技・・・。」
ミンは小声でそうつぶやいた。
それを見て気を失ったファイン=アセンブレイス、そこから光線を発射する化け物を見たレクス=アームズ。
だが実際の所その眼球状の物正確には水晶体みたいな物は地球人とZi人との混血児に発生する「甲殻病」と言う物の一種である。
甲殻病はグローバリーの不時着以降の民族の混血化に伴い深刻な問題になった病気で、
今の所治療法は中和剤で甲殻化する範囲を押さえその後本人の希望でその部分を残すか切除するかを決める。
実際ある研究者が中和剤を打たないとどうなるか?を試したらしいが全身が野生ゾイドの様になってしまう事以外は生命に危険が無い事が確認され、
今日に於いては地球人の混血の兵員がそれに掛かると除隊までその甲殻皮膚を切除しない事が入隊時の条件に為っていたりする。
兵員の少ない帝国ならではの配慮?である。
実際にその甲殻皮膚は硬度検証に於いて戦闘用ソイドの兵装以外では滅多なことでは壊れない事も解っている為、
その甲殻皮膚が発症者の命を救う事も有ったそうだ。
彼のレンズ状の物も硬度自体は非常に固く切除の必要が全く無いためそのままにされたが症状が彼の手の甲から最高で肩までが発症の範囲になると予測される。
これまでの戦闘により薬品の類が足りずその状態に為るという事だったが…、
思ったより進行が速くやばいんじゃない?と衛生兵は何処かに中和剤が無いかを探していた…。
そんな時「新型の中和剤入らんかね?」と何処からともなく共和国の研究員の装束をした男がテントに入ってきた…。
突然共和国軍の研究員が入ってきたので勿論辺りは騒然とする「何ぃ〜!?」と後ずさる衛生兵達。
「まあまあ気にすることは無い…患者がいるからいるから来たまでだ。」
まるで気にして無い様に患者に近寄る。
「ほうほう…珍しい症状だね。」冷静にそして焦ること無く容体を診る。診られているのはファイン=アセンブレイス。
ようやく冷静さを取り戻した衛生兵達が男を取り囲み追求する「珍しい?新型?何の事だ?返答如何では…」と喋りかけた口を男に塞がれる。
「急げよ。この症状は甲殻病と併発して【死人兵士化】も起こしているぞ。」さっぱり訳の解らない事を言っているが今日一日の出来事で彼等は思い当たる物についさっき襲われたばかりだった。
「治るのか?」「当たり前だ!治せない患者を見に来る程残酷ではない。」お互いの表情が厳しくなる。
「それでは助勢を頼む!こう見えてもこいつは今日のMVPだ。ついでに今この隊では間違いなく最強のゾイド乗りだ。」
治療が始まる…が3分程で全ての処置が終わり衛生兵達は目を白黒させる。
「なっ何という事だ…。」普通なら30分は掛かる作業をここまでの速さでミスも無く済ませる常識外れの腕だ。
しかし…彼の右肩口からまるで何処かで見たようなアルマジロの背中のような?古代の亀の甲羅?の様な皮膚が…。
「取り敢えず操縦の邪魔にならん様に症状の場所を移動させた。レンズばかりは如何にもならなかったがな。」と平然と言うが…?
勿論普通の医療技術では「考えられない」非常識なものだった。
「何ですと〜っ!?」何方にしろ助かったのではあるが衛生兵達は納得出来る筈が無かった…。
「死人兵士化は?」と聞くと?「ああ、あれは嘘だよ。」と平然と言う。どうやら新しい治療法を試したかっただけらしい。
「症状は全く別物だからね。」とその男は舌をペロッと出す、年に似合わない悪戯っぽい表情だった…。
それが終わると男は取り囲まれる「何様のつもりだ!」完全に小馬鹿にされた衛生兵達は問い詰める。
「だから新型と言ったじゃないか?」と当たり前に切り返される。
「それはそうだが、どうやってここに?」と質問を変える衛生兵。
「ああそれはね…こうやったんだよ。」といきなり化け物の死体を持ち上げる。
それは服のようにスカスカで中身に酸素ボンベや排気を圧縮するボンベなど色々な物とスイッチ一つで膨らむ肉襦袢…要するに偽装道具の一覧。
最近ネオゼネバス帝国の建国による共和国の反撃…それ等が白熱した結果旧ゼネバス領は医療機関が攻撃により壊滅状態で共和国軍が撤退した今でも復旧は終わっていない。
そこでこの地域には極力こう言った症状に掛かる可能性のある兵員の派遣を控えているのだが、
ファイン=アセンブレイスの様な休暇等でこの地に迷い込む者には対応出来無い。
たまたま元の所属の部隊の者に会いそして緊急出撃。そんな感じでここに居る訳だが…どうやら「面倒に巻き込まれた」と言う事になる。
「取り敢えずは大丈夫だから寝かせて置けばいい。」そう言うとそそくさと退場しようとするが…勿論捕まる。
「ねえ?見逃してくれない?」「駄目!」緊急時の後とは言えなんとも微妙な空気が流れていた…。
…排除された化け物達が1箇所に集められ焼却処分されることになったが彼は「急いで焼いてしまった方が良い。」とすぐにも火を付けようとして走り出すがやっぱり捕まる。
「理由は?」と聞かれると少し低い声で「出るんだよ…。」と一言呟くだけだった。
マッケナ大尉にとっては腹立たしいことに、ベガード中佐は車内でも自説を強弁に唱えていた。
帝國の威信だの腹背の敵だのといってはいるものの、要するにベガード中佐の論説は暗黒大陸の帝政を前提にしていた。
地底族が多くを占める暗黒大陸の民族であればベガード中佐が唱える武断政治であってもそれほど問題は無かった。
彼らのメンタリティに強者に従うという部分があるからだ。そうでなければ暗黒大陸の厳しい自然を生きぬく為の強力な統治体制が取れないのだ。
しかしこの西方大陸でそのような武断政治が通じるとは思えなかった。
西方大陸には風族や地底族といった主要民族やそこから分派したらしい民族がモザイクのように点在していた。
だから地底族のように強者に従うものばかりではない。
というよりも西方大陸全体に通じるメンタリティの部分が存在しなかった。各民族ごとに主観すらもが違うのだ。
それにあわせて警備にあたっても暗黒大陸とは違った警備方法があるはずだった。
なのに帝國軍にそのことを認識しているものは少なかった。
ベガード中佐は極端であるが、武力を持って警備活動とする姿勢は多かれ少なかれ帝國軍に存在していた。
共和国軍に対して勝利している今はまだ良いが、西方大陸から中央大陸へと軍を進めれば、武断政治を行えば自然と警備の部隊は肥大化するだろう。
武断政治とは圧倒的な戦力を有して初めて有効となる方法だからだ。
そんなことに戦力を割いていれば前線で兵力不足に陥るのは間違い無かった。
これを解決するのは簡単だった。現在の武力で各部族を制圧するように恭順させるのではなく、宣撫活動を行って帝國と結びつくことの優位を知らしめるのだ。
ようは相互防衛や物資の支援などの条約を部族との間に結ぶのだ。もちろんそれは公正なもので無ければならない。
それによって自然と西方大陸の民心は帝國になびくはずだった。
マッケナ大尉はため息をつくと窓の外を眺めた。
いずれにせよこれは帝國にとって大きな方針転換になるだろう。一介の参謀将校ごときが論じても意味は無かった。
己の無力さをかみ締めながらも、マッケナ大尉はまだあきらめてはいなかった。
まだ最悪の状態ではなかった。これからでも帝國を正しい方向へと導くことは不可能ではないはずだった。
まずは目の前のベガード中佐を説得して山岳民族への攻撃を中止させなければならない。
その困難さにマッケナ大尉が頭を痛めていると、突然軍用車両の車体を衝撃が貫いた。
どうやら大口径のライフル弾による攻撃を食らったようだった。
軍用車輛は車体を傾けて、近くの露岩に乗りかかっていた。
このままでは横転する。そう思ってマッケナ大尉が慌てて運転席のミュラー軍曹を見ると、わずかに赤い筋が飛翔するのが見えた。
――負傷しているのか
そこまで考えたところで露岩に乗り上げて車輛は横転した。それと同時に別の衝撃が車体を襲った。
予期しない方向からの衝撃にマッケナ大尉は気を失っていた。
「ハラ減ってきたな。」
「たしかにお腹すいたね。」
先ほどの戦闘から数時間後、川の近くを歩いているときの事だった。既に日も暮れてきていた。
「さてと、メシでも・・・。」
マインはそう言ってマジガンの足を止めた。
「ちょっと待ってよ、近くに料理屋なんて無いよ。」
「俺が作るんだよ。」
「へ?」
マインはシートの裏に用意してあったケースから食材と調理具、食器を取り出してマジガンを降り、
さらに川の水をくんで料理を作り始めた。
「マイン君・・・お料理作れるの?」
ミンは感心しながらそう言う。
「ハア?旅するからにはこのくらいできて当然だろ?まさか、お前できねえのか!!?」
「ごめんなさい・・・。デキマシェン・・・。」
ミンは少しうつむきながらそう言った。
「おぉぉぉぉいしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
マインの作った味噌汁を飲んだミンが思わずそう叫んだ。
「ねー・・・ちょっと貴方どうしてこんなおいしい料理を作れるのよ!!こんなおいしいの食べたこと無いわよ!!」
「ああ、お袋が定食屋やってるからな。ガキのころから料理の腕を叩きこま・・・は!!」
思わずマインは両手で自分の口をふさいだ。
「へ〜、マイン君のお母さんって定食屋やってるんだ〜。でもホントおいしいよ。このご飯と焼き魚もね。」
そう言いながらミンは料理にパクついている。
「なあ・・・。」
マインの口が開いた。
「お前、メシ食うときくらい手袋を取ったらどうだ?」
「へ?」
>>92 すみません、タイトル入れ忘れました。これで2度目だ・・・
すみませんがもう一度改めて書かせてもらいます。
ご迷惑おかけしてすみません。
「ハラ減ってきたな。」
「たしかにお腹すいたね。」
先ほどの戦闘から数時間後、川の近くを歩いているときの事だった。既に日も暮れてきていた。
「さてと、メシでも・・・。」
マインはそう言ってマジガンの足を止めた。
「ちょっと待ってよ、近くに料理屋なんて無いよ。」
「俺が作るんだよ。」
「へ?」
マインはシートの裏に用意してあったケースから食材と調理具、食器を取り出してマジガンを降り、
さらに川の水をくんで料理を作り始めた。
「マイン君・・・お料理作れるの?」
ミンは感心しながらそう言う。
「ハア?旅するからにはこのくらいできて当然だろ?まさか、お前できねえのか!!?」
「ごめんなさい・・・。デキマシェン・・・。」
ミンは少しうつむきながらそう言った。
「おぉぉぉぉいしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
マインの作った味噌汁を飲んだミンが思わずそう叫んだ。
「ねー・・・ちょっと貴方どうしてこんなおいしい料理を作れるのよ!!こんなおいしいの食べたこと無いわよ!!」
「ああ、お袋が定食屋やってるからな。ガキのころから料理の腕を叩きこま・・・は!!」
思わずマインは両手で自分の口をふさいだ。
「へ〜、マイン君のお母さんって定食屋やってるんだ〜。でもホントおいしいよ。このご飯と焼き魚もね。」
そう言いながらミンは料理にパクついている。
「なあ・・・。」
マインの口が開いた。
「お前、メシ食うときくらい手袋を取ったらどうだ?」
「へ?」
>>94 今度はタイトルを間違えてしまった・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ミンの両手には常に手袋がつけられていた。
「別にいいじゃない。」
ミンは両手を袖の中に入れながら笑ってごまかす。
「外せよ!!」
「いいじゃないの!!」
「外せって!!」
マインはミンの手をつかむ!!」
「ダメ!!」
「何でダメなんだ!!?手袋を取るくらい・・・・・!!!」
ミンの手袋の中には白銀に輝く金属製の手があった。
「お前・・・。」
ミンの手をつかんだままマインが恐る恐る言う。ミンは顔をうつむけている。
「ロボットだったのか!!」
ずげげげげげげ!!
ミンは思い切りすっころんだ。
「ちがーう!!これは義手よ!!私はちゃんとした人間です!!」
開き直ったミンはそう叫ぶ。
「いやぁ、スマンスマン、お袋の知り合いにそういうのがいたそうだから・・・ってまたお袋の話しちまったよ!!」
「貴方のお母さんの知り合いって何者よ・・・。まあいいわ。」
ミンはそう言って、今度は自分の靴を脱ぎだした。そこにも金属製の足があった。
「足も・・・義足なのか・・・?」
「うん。あと・・・。」
今度は自分の顔を指差す。
「この両目も義眼なんだよ。」
「へー・・・外見上は普通の目と変わらんがなー・・・。お前・・・なんでこんな体に?」
「不幸な事故・・・。今はこれだけ言わせてもらうわ・・・。」
「軽い女だと思ってたら、お前もハードな人生送ってるんだなー。」
腕を組んでマインは感心しながら言う。
「ちょっと!!あなた私が気持ち悪いとは思わないの!!?このサイボーグの体が!!
まあ、サイボーグっつっても義手、義足、義眼だけだけどさ。」
「別に?」
ずげげげげげげ
ミンはまたもすっ転んだ。
「確かにはじめてみたときは驚いたけどさ、今は別にどうって事無いよ。あ、そうか、あの時
聞こえた機械音はこの義手と義足の音だったんだな。」
マインは笑いながらそう言った。と、突然緊迫した表情になる。
「あのさ、お前…まさか…その胸…。」
「な…何よ…。」
ミンは思わず自分の胸を両手で覆い隠す。
「ミサイルじゃ無えだろうな…。」
すげげげげ!!
ミンはすっ転ぶ。
「そんな訳無いでしょ!!は・・・ははは・・・。何か貴方と話してると悲しさがふっとんじゃったよ・・・。」
ミンはニッコリと微笑んだ。そしてさらに言った。
「そう言えばさ、貴方のシールドライガー。マジガンって言うの?凄いね。どうして
あんな動きが出来るの?何か特別な改造でもしてるとか?と言うか、シールドライガーなんて
今時なかなか手に入る物じゃないんだけど…。」
「まあな、マジガンはオレが10歳の誕生日の時におばさんがくれた物なんだ。
何でもおばさんいわく「中身は最新技術のオンパレード」だと。たしかに、マジガンは
外見とコアこそシールドライガーの物だが、さっき言ったように中身は最新技術のオンパレード。
各部機構も小型化、高精度化されてて、さらに空いたスペースを利用して人工コアを数個搭載。
これによってシールドライガーそのもののコアに負担を掛けずにライガーゼロにも負けない
高出力を発揮することが出来る。さらに爪や牙は超硬チタニウム合金製になってるから、
攻撃力も格段に上がっている。と言ってもね、やはりその反面操縦性は滅茶苦茶悪くてね、
さらに加速性能とかも半端じゃないからパイロットにかける負担も馬鹿にならない。
乗りこなすのに相当苦労したね。現にコイツとほぼ同じコンセプトの機体が大戦時代にあった
そうだが、結局操縦性の関係で1機しか存在しなかったそうだ。まあ、親父は簡単に乗りこなしてたけど。」
マインはマジガンを見上げてそう言った。
常連でありながらとんでもないミスの連続でまことに申し訳ありません・・・
大変なご迷惑をおかけしてすみませんした。
皆様も私のようなミスをしないように気をつけてください・・・
全然とんでもなくないって。
このくらいのミスなら皆さんもどんどんしましょう。
…その頃…
共和国施設の最下層より更に下に存在するある場所…。
そこに多数のゾイドの残骸の山その奥に非常に大きいゾイドコアが一つ。
それを見ている者は唇に薄笑いを浮かべる…「もうすぐだ…これさえ完成すればネオゼネバス等恐るるに足らん。」
それは幾つかの破片を吐き出す…その破片は地面に落ちるとあのゾイド達に寄生していたコア状の物に姿を変える。
「それどころかガイロス、我がヘリックすらお前の元に膝間づくだろう…。」
そのいでたちは共和国軍特別機甲兵団のパイロットスーツに異常に巨大化し自らを包む様な甲殻皮膚を背負った男。
「お前こそが王なのだ!」そう叫ぶとそれから目をそらし後ろに居る者に顔を見せる…。
気付かれた!?急いでその場を離れようとする帝国兵…その肩には第1次調査に派遣された部隊の部隊証。
先に行方知れずになったデススティンガーのパイロットの一人だった…。
銃を構える「貴様!何をしようとしている!?そのゾイドコアは…」全てを言い終わる前にその男がその口を塞ぐ。
「まあここで黙って見ている事だ…貴様如きが如何こう出来る訳でもあるまい。」
悪戯っぽい笑顔を見せその男は言う…「貴様は証人となるのだ。我らが踏み潰してきた大地の底にまだこれだけの存在…我らではどうしようも無い巨大な存在が居ることを。」
その男を人はザクサル=ベイナードと呼ぶ。単独潜入作戦のエキスパート…「死を運ぶ紅き狂風」の名で知られる者だった。
しかし彼のその肌は色を失ったように白く、瞳の色は以前とは別物の青く済んだ色をしていた。
「どういうことだ!?」必死に食い下がる帝国兵…しかし彼は平然と言う「俺がやっても駄目だったんだよ…。」
そう言うと時限信管の遠隔操作リモコンとプラスチック爆弾を取り出す。
そして…何食わぬ顔でそのゾイドコアに設置、帝国兵の目の前に戻ってくる。
「さあ!ボタンを押してみることだ…俺の言葉に意味が解るよ。」と言ってリモコンを差し出す。
ボタンを押す…その瞬間爆発が起こる。この威力と爆風は小型のビルなら1発で吹き飛ぶ程の物だ。
しかし煙が納まるとそれはさっきまでと同じ場所に在り何事も無かった様に蠢いている…。
多少の損傷は在った様だがそれももうすぐ修復が終わる様だった…。
「…」言葉を失う帝国兵「安心しろ最下層より深いこの場所にいる限り餓死以外はあり得ない。ゆっくりとして行け。」
そう言うとザクサル=ベイナードは異常な跳躍力と脚力でこの場を去っていった…。
彼は走る…「待っていろ…レクス!直にケリを付けてやるぞ!」さっきまでの彼とは打って変わりその表情には狂気が宿っていた…。
自らの計画…と言っても自分で立てた物ではなく偶然であったがそうであっても邪魔をする者は排除するのみ。
彼は愛機となったマトリクスケンタウロスに飛び乗る。それは常識外れのスピードで壁にぶつかる事無く施設を駆け抜けていった…。
「あなたのおばさんとお父さんって一体…。というかよくあんな無茶な動きして平気で
いられるわね。普通なら強烈なGがかかって潰れちゃうよ。」
「まあな、鍛えてるし。あと親父は今でこそゾイドの修理工をやってるが、大戦中は共和国軍で
高速ゾイド乗りをしてたそうだからな、何しろその道のプロだったのだから乗りこなせても
不思議はないだろう。で、さらにそれをオレなりに出力調整したり、若干のカスタマイズを行ったのがこのマジガンさ。」
「大体は分かったけどGに耐える理由が鍛えてるってだけなのは何か納得いかない・・・。まあそれはさておいて、今度は私が何でガダーラ。つまりアイアンコングを持っているか教えて上げる。」
「いや、気で人工コアを使用したレプリカ品だとわかったからいいよ。」
「酷いよ!!少しは聞いてくれたっていいじゃない!!…でもまあガダーラはレプリカ品と
言ってもコング自体大人しい機体だから人工コアでも再現度は高いし、カスタマイズもしてるから
性能はむしろ上がってるよ。あ、そうだ。さっきマフィアと戦ったときに見せた技、真空超転撃。何で貴方がこれを使えるの?」
「へ?」
「だってアレは西方大陸拳法の総本山「神聖寺」の奥義の一つなのよ!!」
「ハア?シンセイジ?そんな物は知らん。これはお袋が教えてくれ…ってまた言っちまったよ!!」
「貴方のお母さんって一体何者なの?」
「もう良いよ…。とにかくお袋は料理が上手いだけじゃなく格闘技も上手くてさ、ガキの頃から
色々教えてくれたんだ。親父からはゾイドの整備や修理と操縦の技術を、お袋からは料理と
格闘技の技術をそれぞれ教わったんだ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
>>98 本当にすみませんでした。同じ失敗を繰り返さないよう気を付けます。
「マイン君はお母さんが嫌いなの?」
「そんなんじゃねえよ…。お袋は親馬鹿のレベルくらいに優しくしてくれたし。まあ、
格闘技教える時は相当に厳しかったがね。さらにめっぽう強いというのに泣き虫でさ、
オレが旅に出ると言った時なんかオレに抱きついてワンワン泣いてたぜ。
と言っても、お袋は孤児だったそうだからその反動でそうなったらしいんだが…。
とにかくさ、あんなお袋も大戦中は共和国のエースと呼ばれたほどの人らしくてさ、
息子のオレも回りから相当な期待をされた訳なんだよ。立派な人を親に持つと苦労するぜ。
お袋と親父はそんなことは全く気にしてなかったけどさ、その回りがオレを無理に期待するからな、
そのせいでトラウマのような物が出来ちまった…。けどお前に話したら何か楽になったよ。」
そう言うとマインは笑った。
「まあとにかく、オレはお袋から色んな技を教えられたけど、お袋ほど強くはなれなかったよ。
それどころか妹にすら勝てない。」
「あなた、妹がいるの?」
「ああ、3つ下のな。何でかわからないが、オレの家はとにかく女が強いんだ。お袋と親父も
大戦中は上官と部下の関係だったそうだし。と言っても、別に親父が弱い訳じゃない。
お袋が強すぎるんだ。親父も若い頃は暴走族のリーダーとかやったりして、当時は相当に
有名な存在だったって話をよく聞く。今でも暴走族連中の中では伝説となっているほどだ。」
この話を聞いたミンは唖然としていた。
「貴方のご両親って一体何者なの・・・?・・まあいいわ。じゃあ貴方はどうして旅に出たの?」
「外の世界をこの目で見てみたい。これかな。所でお前はどうなんだよ。」
「私は・・・まあ修行をかねて・・・って所かな。後、可能ならこの腕と足と目を何とかする方法も探してみたりとか・・・。」
「お互い大変だな・・・。」
「今日はここで野宿かな。明日はもっと大変だぞ。」
そして、一時して二人はそれぞれのゾイドに乗り込み、コックピット内部で寝たのだった。
「うっわ〜、悪趣味な銅像。」
「建物は意外と立派ね。」
ようやくたどり着いた目的の場所。プロイツェンを崇拝する宗教団体。
とりあえずはじめにゾイドから降りて遠くから観察から始めた二人。
そこにはこのような山奥には勿体無いほど立派な教会もどきがあり、プロイツェンの銅像やら
肖像画やらが並んでいる。しかも、全身に黒い布を被った信者らしき人大勢がその銅像や
肖像画やらを拝みながら今は無きネオゼネバス帝国の国歌を歌っていた。
「まあ、不気味ではあるが、それだけって感じだな。別に悪いこと企んでいるようには見えない。
と、とりあえずここから見た印象はこんな感じかな?」
双眼鏡を片手にマインはそう言った。
「確かにそうね。特に怪しい反応は見当たらないし・・・。」
「ん?お前双眼鏡も無いのに見えるのかよ。」
ミンは双眼鏡を使っていなかった。というか肉眼で見ていたのだ。
「いや、あたしの両目の義眼はハイテク満載だからね。ズームアップ・ダウンも自在だし、
赤外線も見ることができるのよ。」
「何かそれを笑顔で言われても・・・。まあいい、とりあえず今度は裏に回ってみよう。」
そうして教会の裏に回る二人、もちろん見つからないように木々や茂みの陰に隠れながらゆっくりと移動した。
「さて、ここからどうするか。」
裏に回った二人は茂みの陰から顔を出して教会の各部を眺める。
「どこかに進入できそうな所は・・・と。ん?」
教会の裏で黒い布を被った男数人が何かをしていた。茂みの陰に隠れ、息を潜めて観察する二人。
そこにはグスタフがあった。さらに男達は教会の裏口から大きな木の箱を運び。グスタフの
後ろのプラットホームに載せていく。つみ終るとグスタフでそれを何処かへ運んで言った。
「何だ?あの木の箱は・・・。」
男達がいなくなったことを確認すると、二人は恐る恐る茂みから出て先ほどのグスタフに
積み込みきれず、その場におかれていたあまった木箱を調べる事にした。
マインは恐る恐る木の箱を開けてみる。中には白い粉のようなものが入っていた。
「何だこりゃあ・・・小麦粉か?」
「違うよマイン君。これは麻薬だよ。」
「麻薬!!?」
麻薬、少量なら薬として機能するが、大量になると人の体を冒す危険なものである。
「麻薬とは・・・悪の王道を突き進んでるなー・・・。というかミン、どうして麻薬とわかったんだ?」
「ハイテク義眼で分析したから。」
「・・・・・・・・・。」
マインは沈黙した。
「とりあえずこれで、ここが実は悪い事してるって事が実証されたね。証拠も押さえたし、
さっさとぶっ潰しましょうよ。」
「いや、できれば内部に侵入してもっと調べたほうがいいのかもしれん。あと、先ほどの
極道とも関わりがありそうだからな。
「お前達!!ここで何をしている!!」
「やべ!!見つかった。」
全身を黒い布で覆った男二人がそこにいた。右手には互いに銃が握られている。
そして、男二人はマインとミンに銃口を向ける。と同時に二人とも殴り倒された。
「弱い・・・。」
倒れた男を見下ろしてミンはそう言った。
「ん?この黒い布。使えるぞ。これを被れば怪しまれずに中に入れるぞ。」
「ええ!!?これを被るの!!?」
なぜかミンはうろたえる。
「だってこれ凄く汗臭そうだもん・・・。」
「うるさい黙れ!」
マインはそう言って黒い布を被った。
「…やっぱり遅かったね…。」と化け物の姿を見て言うこの共和国軍研究員フェイ=ル=セイフはため息をついた。
化け物の死体は潰されたりプラズマグレイブで切断されていた物以外の胴体の無事な物から表皮を破ろうとしている何かが居た。
一生懸命化け物から出てこようとする物…やはり蛍光色の体液を流しながら必死に化け物の皮膚を破ろうとしている。
…やがて表皮に亀裂を走らせながらそれが現れる。「あちゃ〜…このままじゃやばいね。」そう言うと彼は何処からくすねて来たか帝国標準配備の手榴弾を持ち出しピンを抜いて投げる。
「はいっ!?」自分の手榴弾を投げられた兵士が居るが一人だけでは無いようで衛生兵の詰めていたテントに置いて在った物を全部くすねていたようだ…。
しかし彼は本来こう言った事をする人間ではないので目標まで届かずに爆発する。
それは元のそれとは違い人の特徴を継承しながらも全く違う外見を持っている。
腕が4本在ったり、昆虫の羽を持っていたり、尻尾を生やしていたりと統一性が以前に増して無い。
「急いで仕留めるんだ!」とフェイ=ル=セイフが言うが早いか彼から手榴弾を奪い取って目標に帝国兵が投げる…。
流石に今回は爆発に巻き込まれ気持ちの悪い色の体液をまき散らしながら爆散するが、生命力が以前に増してしぶとくまだ生きている物も居る。
パニックを起こしながらも必死にそれ等を駆逐する帝国軍、駆逐し終わるのに朝まで掛かってしまった…。
ベットで寝ているファイン=アセンブレイスはこの貴重なオカルト体験?を逃してしまう事になり後で悔やんだという…。
他人の苦労は解らないと言う様な表情で、恨めしそうな顔で必死にその体験を部隊中に聞いて回ったのは次の日のことだった。
そのパニック最中に増援が到着していたことも在り全ての化け物とその中身を殲滅する事に成功する調査部隊。
「まあこんな感じだ…。」と近隣の基地からの増援による封鎖が完了した報告を受ける。
この部隊にも増援が送られたが数はあまりたいした規模ではない。殆どがキメラだったりするのもその要因だったりする。
セイスモサウルスは度重なる内部フレームへの攻撃で損傷こそ小破だが最早動くことが出来ない。
動けるのはリビングデッドバタリオンとロードゲイル、ディアントラーのみ。
増援もキメラ…となると手は限られて来る。ロードゲイルは最近こそエース以外で動かせるような工夫がなされて来たがそれは単なる劣化コピー見たいな物でで戦力としては当てにならない。
今回の作戦地域と敵戦力を考えるとエースの乗るロードゲイルとバーサークフューラー以外は役に立たない可能性が高い。
デススティンガーですらどうしようも無い状態はそれほど切迫していると言う答えに繋がる。
…その頃医療用のテントではフェイ=ル=セイフと衛生兵が話しをしていた…。
「ほう…こいつが悪名高い【ネクロドラグーン】だったのか…。」とフェイ=ル=セイフは言う。
「ネクロドラグーン?」と聞き返すと「ああ…巧妙に破損パーツの山に交換用パーツを隠し持っていくら壊しても数分もすればまた戻ってくる。」と言い更に、
「その上その時の相性が悪ければ自分が優位に立てるような構成をしてくるから始末が悪いと部隊の奴等は怖がっていたよ。」
「へぇ〜…そう言われていたのでありますか?」と声がベットから聞こえてくる。
ベットからファイン=アセンブレイスは起き上がろうとするが「わっ!?たっ!?」と情けない声を上げながらベットから転がり落ちる…。
バランスが取れる訳が無いのだ。昨日の戦闘の影響で発症した甲殻病、その位置を「邪魔」にならないような場所に移された為左右の体重バランスがずれてしまっているのが原因だった。
上体を起こそうとするが体の右側が重く感じる…取り敢えず右手を見てみるとその甲にはやはり付き浮き虫が残していった傷とレンズがある。
「…?」そこまでは覚えているがレンズ事態はさほどの重量は無い。もう少し調べてみると…右肩辺りに見慣れない物が有る…。
「これは何でしょうかねぇ?」触ってみると…感覚が在る!?
「なるほど…って!?」そこで思考が止まる…完全に事実と体験の差異が埋まらず頭の中で必死に整理を付けようとしていると…「やあお目覚めかい?」と声を掛けられる。
「私の名はフェイ=ル=セイフ見てのとうり共和国の研究員だ。」と何食わぬ顔で手を差し伸べる。
取り敢えずベットに座らせてもらうが右肩の物が気になる。「これは?」ともう一度触ってみるとそれの感覚はしっかりしておりベットの毛布に触れている事が感じ取れる。
「ああそれは甲殻病の皮膚さ。」「甲殻病に掛かったのでありますか自分は…。」と聞き返すと「そうそう…あんまりへんな場所が固くなったら困るだろうってそこに症状を写したんだ。」
「はい?」やはり聞き返す「だから治療の一環で右肩口に症状を移したの!」語気を強める。
ぽんっ!と手を叩き「だからバランスが取れないのでありますか?」と聞き返す「そう!」やっと終わった…と安心するが、
「なんでこんな所に居るのでありますか?」と…結局洗いざらいフェイ=ル=セイフは事情を説明する羽目になったのである…。
「見事にやられたよ…それがゼネバス流かい?」誘導尋問に引っ掛かったフェイ=ル=セイフは言う。
「ブロックサインでありますよ。」と指を指す…この方法はその場所に場違いな物が有るときそのものがどんな場違いなものかで質問攻めにしたり、
聞いてない振りをしたりとする初歩的かつ広域的に応用が利くものだった…。頭の良い者ほど引っ掛かり易いが先に見つかると完全にばれる物なので複数の協力者が必要な方法である。
取り敢えずこれまでの相手の高性能化の秘密を聞き出す事に成功したがそれが何の解決方法にも成らない事は周知の事実だ。
だからと言って手をこまねいている時間も無い事も事実だった。取り敢えずファイン=アセンブレイスはバランスが変わった事に慣れるためにランニングを始めるがころころと転んでしまう。
体を慣らすのには優に2時間ほど掛かったがそこは軍人として慣らしただけあってそれ以降の行動による訓練は一度で成功する。
体全体を使った走るという行動は意外と効果があったりすると言う事で、後は新しい部分の使用方法の訓練に入った…。
が何かと初めての事なので上手くいかない…。
「まあまあ…焦らないでそれを腕見たいな感じで…。」と言われ試してみると…?
とても奇妙な感じで動くので動かしている本人が気持ち悪くなってしまったようだ…。
周りの兵員と言えば…余計に気分が悪くなった様で顔を青くして何処かに駆けていく者まで居る始末だった。
「人目に付く所でやるのは止めよう…。」とファイン=アセンブレイスは思った…。
谷底の街道を通りすぎる風が体に寒かった。その寒気でマッケナ大尉はゆっくりと目を開けていた。
気を失う前にライフルを構えた山岳民族の男達を見たような気がしていた。
それに集落で見たマニの姿もあったような気がする。
どちらにせよ彼らはマッケナ大尉に止めを刺さずに去っていったことになる。
まだ痛みの残る体をどうにかして起こすと、すぐ先にベガード中佐とミュラー軍曹が同じようにして倒れていた。
不思議なことに二人とも怪我の手当てが簡単にしてあった。
その時になって気がついたが、マッケナ大尉にも包帯が巻かれていた。
――これで痛み分けだとでも言うつもりなのか
何故かマッケナ大尉は笑みを浮かべると立ち上がった。山岳民族ならではの律儀さとでもいうものが好ましかったからだ。
恐らく彼らは報復のつもりで軍用車輛を攻撃した。だがマッケナ大尉が乗っていたことで手当てをして去っていったのだろう。
マッケナ大尉が彼らのしきたりを守る男だったからだ。
しかし彼らの示した律儀さも帝國や共和国にかかれば幼稚さの表れとしか見えないのかもしれない。
ため息をつくとマッケナ大尉は二人に近づいていった。
ベガード中佐もミュラー軍曹も気絶しているだけだった。決して浅い傷ではないが、命に支障は無いはずだ。
マッケナ大尉は二人の傍らに座ると、山岳民族や他の部族の宣撫工作について考え出した。
どうすれば彼らを恭順させることができるのか。
結論はすぐに出た。というよりも現状ではそれしかとりうる方法は無かった。
やり方さえ間違わなければ帝國軍と山岳民族の衝突は避けられるだろう。
気がつけば簡単だった。別に山岳民族と接触することなど必要無かった。
計算高い所もある彼らならこのまま帝國が共和国軍を押し切ればわざわざ帝國と先端を開くようなことはしないだろう。
こちらから攻撃を仕掛けない限りは。
攻撃を中止させる手段はあった。だがそれはマッケナ大尉にとって苦汁の選択だった。
ゆっくりと立ちあがるとマッケナ大尉は拳銃を引き抜いていた。
スライドを引いて初弾を装填する。操作には慣れ親しんでいたはずだったが、まるで新兵の訓練のようにぎこちない動作だった。
マッケナ大尉は銃口をベガード中佐に向けると目をつぶって引き金を引いた。
至近距離での発砲にもかかわらずミュラー軍曹が覚醒する様子は無かった。
まるで動きの見えないミュラー軍曹を背負うとマッケナ大尉は負傷した足を引きずるようにして歩き出した。
最後までベガード中佐の死体は見ないようにしていた。
「思った通り楽に潜入できたゼ。」
「ええ〜ん…汗くさいよ〜…シクシク。」
「うるさいよ。いちいち泣くな。」
先ほど倒した男達から奪った黒い布を被った二人は教会の中を歩き回っていた。
やはり黒い布が汗くさかったようでミンはずっと泣いている。
回りにも黒い布を被った男達は大勢いるのだが、二人も黒い布を被っているので全然怪しまれない。
しかし、怪しい宗教の割には内部はやはり立派な物があった。その辺の村の教会より立派である。
「しかしいつまでもウロウロしていられんな…。ん?あんな所に扉があるぞ。入ってみるか…。」
「え?でも何か関係者以外立入禁止って書いてあるよ。」
「馬鹿野郎。それだからこそ怪しいんじゃないか。」
そんなこんなで扉の中へ入ることにする二人。しかし、その扉には鍵がかけられていた。
「しまった…どうするか…。こじ開ける事も出来ない事もないが、そんな事をしたら他の物に
見つかるだろうし…。」
「私に任せて!」
そう言ってミンが前に出た。ミンは自分の右腕の手袋を外し、人差し指を鍵穴に近づける。
すると、人差し指の先端から針金が出てくる。そして、鍵穴の中に針金を差し込みカチャカチャと
動かす。そしてカチンという音がし、扉は開いた。
「お前の義手ってそんな機能が有るのか…。」
「義手もハイテクだからね。」
「この分だと義足もハイテクだって言うんだろ…?まあ良い。入るぞ。」
そうして二人は扉の中へ入っていった。扉の向こうにはいるとすぐに階段があった。
階段を恐る恐る下りていく二人。
「ん?何だ?この機械音は…。」
階段を下りていくにしたがって、謎の機械音が聞こえてくるのだった。教会とはまったく
釣り合わない機械音。まるで何かの工場のようである。
「!!これは!!」
地下室全体に何かの機械が置かれており、完全自動によって稼働していた。
「何かを作っている様だな…。」
「見てよマイン君!アレ!!」
ミンは一つの方向を指さした。
「は!!白い粉…麻薬だ!!やはりここは宗教団体を装って麻薬の生産、密売を行っていたのか…。」
「動くな!」
突然に後ろから聞こえてきた謎の声。そして二人の後頭部に銃口の様な物が当てられる。
「何!!見つかった!!?」
「ウソ!!気配を全く感じさせなかった…。」
二人は心の中でそう叫んでいた。
「こうなったら!!」
マインとミンは、二人一斉に後ろの何者かに裏拳を叩き込んだ。しかし、後ろの何者かは
それぞれの手で楽々と受け止める。
「な!!」
「静かにしろ。ここで騒ぎを起こすとここの連中に見つかるぞ。」
「?」
予想外のセリフがその後ろの何者かの口から放たれた。
「お前…一体何者なんだ?」
「とりあえずお前達の敵ではない事は確かだ。」
「お前達!!そこで何をしている!!」
「!!」
そしてさらに現れたのはやはり前日マインとミンを襲った謎の男達だった。
「あー!!やっぱりこことマフィアはつるんでたのね!!」
「だからこいつらは極道だろ!どう見ても。」
「お前ら何を言っとる…。」
二人の敵ではないと言う謎の存在が横からそう突っ込んだ。
「とにかくここを知られたからにはお前らには死んでもらう!!撃て!!」
男達は一斉に発砲し出した。
「やべ!!とりあえず逃げるぞ!!」
「うん!!こっちは証拠写真撮っといたよ!!」
3人は一斉に階段を上がって逃げる。後ろから男達が追いかけてくるが、二人と、後なぜか
謎の存在も妙に足が速く、どんどん男達は放されていった。
「どうにかまいたな…。」
教会を出て大急ぎで近くの森の中の茂みの奥に隠れた3人は一息ついた。
「フフフ…大きくなったね。マイン…。」
そう言ったのは謎の存在だった。
「なぜ俺の名前を!!?」
「昔、貴方に会ったことがあるからさ、もっとも、その時の貴方はまだ生まれたばかりの赤ん坊だったけどね…。」
謎の存在はそう言って被っていた黒い布を取った。
「!!」
そこにいたのはピンク色の髪をした美しい女性だった。
「アルバムで見たことがある…まさかあんたの名前は…。」
「そう、私は、元帝国軍人造人間“SBHI−03−ハガネ”さ。」
SBHI−03−ハガネ、余りその名は知られていないが、今は無きネオゼネバス帝国軍が
その技術の粋を集めて作り出した人造人間。平たく言うとロボットである。元々ゾイド用
人工知能を発展させた物であるが、単体での戦闘力も並の中型クラスを凌駕するというから
たまらないよね。あと、女性型なのは敵を油断させるためである。
「え?何?この人知り合い?」
ミンはワケが分からずオロオロするばかりだった。
「あーもー!!あの時はあんなに小さかったのにこんなに大きくなっちゃってー!!」
ハガネは思わずマインに抱きついた来た。
「うわ!!抱きつくな!!く…苦しい…。」
ハガネはロボットであり、前述延べた通り並の中型ゾイドを凌駕する力を持っている。
その力で抱かれたらいくら鍛えてるマインでも苦しいのは当然である。いや、この場合
そんな力で抱かれて無事でいるマインの方が凄いと言うべきか…。
「……あなた…一体何者なのですか?」」
ハガネがマインを抱いている光景を見ていてミンはいい気持ちがしなかった。例えハガネが
ロボットでも。ハガネはマインから手を離して応えた。今度はマインを指さす。
「私は大戦時代にマインのお母さんの自称ライバルだった者でーっす!」
ハガネはニッコリ笑いながらそう応えた。
「マイン君…貴方のお母さんって本当に何者なの?」
「マインのお母さんは元共和国のエースだよ。生身の人間のクセして私をも素手で圧倒する程
強かったよ。本当なら出世できたのに、戦争終了後、パッタリ軍をやめて定食屋を始めたと言う
少し変わり者っぽい所もあるね。でもまあ、今は料理人として有名になったけどね。いやもう
本当、あの人の料理の美味いのなんのって、私思わず機能停止しかけたからね。」
ハガネは笑いながらそう言った。
「それは良いとして、ハガネさんよう。アンタ一体何やってたんだ?あいつらについて何か
知っているのか?」
マインが話を真面目な方に持っていく。
「ああ、ヤツらは表向きはちょっぴり危なそうだけどやってる事自体は人畜無害な宗教団体だけど、
その実態は「是根婆酢組」という今は無きネオゼネバス帝国軍の残党で構成される犯罪組織の中の末端組織のひとつさ。で、私はある人物からここの潜入調査、可能なら破壊を依頼されていた。」
「是根婆酢組!!?ミンよ、やっぱりヤツら極道じゃねーか!!」
「何よ!!このロボ犯罪組織って言ってたじゃない!!」
何故かここでマインとミンで言い争いになる。
「ハッハッハ、マインもついに春が来たってか?今度お母さんに連絡しておいてあげるよ!」
「そんな関係じゃない!!」
マインは思いっきり叫ぶ。
「そんな〜、マイン君ひど〜い・・・昨日の夜、あんなに愛し合った中じゃない・・・。」
「わ!!こら!!事実を捏造するな!!あとくっ付くんじゃない!!」
「ハッハッハ、ほら見ろー。あんたらの様なのをバカップルって言うんだろうねー。」
「ふざけんな!!」
その光景を見て笑うハガネに対してマインは激怒しながら叫ぶ。
「まあ、とにかくだ。誰かの依頼って事はハガネさん?あんたも賞金稼ぎか何かをやってるのか?
それに、あんたも元ネオゼネバスだろ?なのに何で…。」
「確かに私はネオゼネバスだけどね、ヤツラとは違うよ。ネオゼネバスの誇りを失って
ただの犯罪組織に成り下がったヤツらと一緒にしてもらっちゃあ困るわね。
それに、元帝国兵士ってのは共和国でも結構多いよ。そう言う人達の多くは真面目に働いて
第二の人生を歩んでいるよ。私の知り合いなんか裸一貫から一気に大成功して大富豪になった奴
までいるからね。あと、私は確かに賞金稼ぎとかやってるわね。何なら名刺をあげようか?」
そう言ってハガネは一枚の紙を取りだしてマインに渡す。
「超常現象研究家・葉芽音=機田?」
名刺に書かれた文字を読んだマインは唖然とした。
「ああ、葉芽音=機田ってのは私のペンネームね。」
「いや、ペンネーム以前に超状現象研究家って何だよ…。」
「はあ?超常現象研究家は超状現象研究家よ。とにかく、今なお科学では解明できない現象を
研究したりしてるのよ。未確認生物や幽霊、超能力とかをね。あと、本も何冊か出してるのよ。」
「ロボットのクセに?」
マインの軽蔑するような一言にハガネはカチンと来た。
「あんた今あたしを馬鹿にしたでしょ!!?それが差別につながるのよ!!」
と、一触即発の状態。しかしミンが二人の間に割り込んでくる。
「あの…ちょっといいですか?葉芽音=機田ってまさか「ゴゴゴの機太郎」の…。」
「ああ、昔そういう漫画も書いていたね。」
「描いたのは貴女だったんですか!!?私、この漫画昔好きだったんです!!サインをくださ…。」
その時だった。突然の発砲音。
「いたぞ!!あんな所にいやがった!!」
補足:
>>115でハガネが賞金稼ぎでありながら超常現象研究家と名乗ったのは
賞金稼ぎ兼超常現象研究家という意味です。
書き込んだ後にそれを説明する文章の書き忘れに気付いて急遽書きました。
どうもすみません。
2099 開戦 本編にて不意に答えに行き着いてベガード中佐を暗殺してしまうマッケナ大尉…。
震えながらも引き金を引く事の出来る勇気と決意は職業軍人的な部分が極端に現れている様でイイ!と思います。
可能性という名の一つの未来 遂に本拠地に潜入…何処かで白い粉と言えば?
「シラナイヨボク?コムギコカナニカ…」と言うギャグを連想してしまいます。(駄目人間)
やっとの事でこちらは事態終息に向けてベクトル修正をしつつありますが…、
予想外のキャラ追加…しかも下手な方向に伸びるとまた増えてしまいそうでガクガクブルブル。
取り敢えず…追加ネタの整理。
【人名】
フェイ=ル=セイフ:共和国軍所属の研究員、医学関係の研究をしているらしく無理っぽい治療を平然とやってのける手品師見たいな男
ザクサル=ベイナード:共和国軍特別機甲兵団所属の潜入工作のプロで「死を運ぶ紅き狂風」の通り名を持つ
【技術】
新型の中和剤:フェイ=ル=セイフ作、疾患した部位を別の場所に誘導出来る謎の成分を持つ。
その他甲殻化した皮膚にある程度の神経を通す事も出来て奇妙で珍妙、気持ち悪いぐらいに操作可能にする事が出来る。
【その他】
甲殻病:地球人とZi人との混血児に発症する病気。皮膚が硬くなる以外には特に命に別状はないが生活面等に弊害が出る。
甲殻化した皮膚の硬度はゾイドの攻撃以外では損傷が無いほどの物。
死人兵士化:症状には段階が在り最終段階はザクサル=ベイナードの様な常識外れの身体能力を得る代わりにしっかりとした脳の保護処理を行なわないと何処ぞの「ゾンビ」みたいに成ってしまう。
付き浮き虫:古代に古代ゾイド人によって生態を調整された寄生虫型ゾイドで本来は死の直前にコアを産み落とすが、
調整により寄生した生物から羽化した直後にコアを生む。「巣立ち」と言われたのはその顔が鳥に見えるからで、
正式名称「鳥顔付き浮き虫」と言われ成体は3m程の大きさになる不思議生物。
取り敢えず人目の付かないところでもう一度練習を始める…。
今度は人目を気にせず動かして見ると意外に器用な様で物を掴んだり拾ったりも出来るし、
体を覆うように盾にする事も出来る…「これは使えそうでありますね。」と気分を良くしていたがフレキシブルウェポンドライバーの事をすっかり忘れていた事に気付き昨夜の戦闘跡地に足を運ぶ。
「これの持ち主はお前か?」と声を掛けられるが気配が全く無い…。後ろをゆっくりと振り返るが誰も居ない?
「聞き慣れない声でありますね?誰でありますか?」ファイン=アセンブレイスは誰かに問うともう一度正面を向く…。
目の前にどアップでその蒼白の顔が目に飛び込んで来る「!!!」と思わず手が出るが簡単にその手を掴まれる。
「その意気は良し。だが甘い。」と腹部目掛けて相手の蹴りが飛ぶ。
避けられる筈が無いので後ろに少しステップをしながらそれを受けるが威力が凄まじく吹っ飛ばされる…。
吹き飛ばされながらその相手を見ると共和国軍特別機甲兵団の装束をした男が居た。
「共和国特別機甲兵団っ!?ザクサル=ベイナードでありますか!?」
一方蹴りを入れたザクサル=ベイナードも不信に思っていた。「こいつ…蹴りの威力を殺したか?」
フレキシブルウェポンドライバーを担ぎながら自分の知りうる将兵に該当者が居るかを調べるが該当者は全く居ない。
「どうやら”掘り出し物”と言う訳か!」そう叫ぶとその表情は一瞬で獲物を見つけた肉食獣の様に舌なめずりをし始める。
互いに同じなのは肩から甲殻皮膚を生やしている事のみでそれ以外は似ても似つかない。
「お前も俺の邪魔をするのか?」そう言うとフレキシブルウェポンドライバーを構える。
信じ難い事に今しがた手に入れた玩具を弄ぶかの様にそれをグレネードランチャーの変える・
「面白い物を作ったものだ!」引き金が引かれる…。
砲身より10mmグレネードが発射される。勿論着弾点にはファイン=アセンブレイスは居ないが回避をする事で彼は後手に回る。
「中々のものだ…しかし!」引き金を断続的に引きながらザクサル=ベイナードは笑う。
避ける以外の手立ての無いファイン=アセンブレイスは距離を取ろうとしていたがその度に距離を詰められ付かず離れずで一定の距離で射撃を受ける。
「どうやら…同類らしいなお前?」嬉しそうに舌なめずりをしながらフレキシブルウェポンドライバーをショットガンと大型拳銃に変える。
グレネードを打ち尽くしたからだがその内の大半が特殊煙幕弾だった事に可笑しさを隠せないようだった。
射撃の感覚がどんどん短くなる。遂に避けられなくなり彼は致命傷を受けないように腕を盾にして体を丸めて構える。
しかしその射撃はファイン=アセンブレイスを打ち抜くことは無かった…。
本能的に甲殻皮膚がシールドとして構えの更に前来る。それは大型拳銃もショットガンも通じず流線型の流れに沿って弾は食い込むことも無く流れていく。
やがて弾切れになり彼はフレキシブルウェポンドライバーを投げ捨てる。
「邪魔をする気なら受けて立つぞ!貴様如きに遅れを取ること等あり得ないからな!」そう吐き捨てるとザクサル=ベイナードは信じられないスピードで姿を消した。
「厄介なことになったでありますね…。」彼は手元に戻ってきたフレキシブルウェポンドライバーを抱えると部隊に合流する為にその場を後にした。
重い足取りでファイン=アセンブレイスは調査隊本営に戻るとフレキシブルウェポンドライバーのバッテリー充電と弾薬の補充をする。
「酷い目に遭ったであります。」そう言いながら作業をしていると出頭を命じられる。
出頭するとやはりついさっきの戦闘の事を聞かれる「…と言う訳であります。」事務的に状況の説明を済ませると「ううむ…。」と部隊長は黙り込んでしまった。
厄介なことになったと思っているのは彼だけでは無い。レクス=アームズだけでは無くザクサル=ベイナードとこれまでに襲撃された敵と3つの障害が出来たのである。
施設の調査と制圧は更に困難になったと言える。
ファイン=アセンブレイスは機体のセッティングを始めようと思っていたが不意に呼び止められる。
「ファイン見つけたぁ!」と緊張感の無い間の伸びた声が聞こえてくる「探したんですよぉ〜」
聞き間違いのない声…同じ部隊に所属しているルディア=カミルとシュミット=エーアストが何故か合流しに来ていたのであった…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
増えた…_| ̄|○
またキャラが増えた…増える予定は無かった筈なのに…。
後半戦はタイトルを変えて仕切り直しをした方が良いのでしょうか?
もう少しで折り返せそうです。
結局、山岳民族への攻撃が実施されることは無かった。
強引に攻撃を主張していたベガード中佐の行方不明ということもあったが、それよりも共和国軍の追撃を急遽命じられたためだった。
共和国軍は不自然な攻勢に出てから、潮を引くようにして後退していった。
詳しい情勢は不明だったが、あの攻勢はオリンパス山に建設されていた帝国の研究所を襲撃した高速部隊の陽動だったという情報もあった。
何故オリンパス山に研究所があったのか、不自然な点は多数見られたが、少なくとも無理な攻勢に出た共和国軍がこれ以上の防衛に無理が出ていると考えるのは難しくなかった。
これを気に帝國軍は一気に戦線を動かすつもりらしかった。
前線への攻撃命令は方面軍から出ていたが、どうやら西方大陸に派遣された部隊を束ねる総司令部からの命令らしかった。
あれから一日以上かけて軍団司令部にたどり着いたマッケナ大尉にチェンバレン大尉がこれまでの経緯を説明してくれていた。
淡々と状況だけを説明したチェンバレン大尉は、すぐに野戦応急所で手当てされていたマッケナ大尉に別れの挨拶をした。
「どうやら私達の輸送隊も忙しくなりそうね。早くも軍団司令部を前進させようという動きもあるそうよ。前線では追撃がもう始まっている。
すくなくとも二日の間にミューズ森林地帯まで共和国軍を押し込むらしいわね。
もちろんそれには迅速な補給が欠かせないから輸送体制の補強が開始されるという噂もあるわ。
具体的には補給物資を積んだホエールキングをここまで持ってくるらしいけど、後方も混乱ているらしいから詳細は不明。
そんなわけだから後方へ向かう便に便乗するなら早いうちにね」
そう言うとチェンバレン大尉はデータパッドをマッケナ大尉に手渡した。戸惑った顔でマッケナ大尉が受け取ると、チェンバレン大尉はいった。
「連隊に随行していた野戦憲兵隊からの報告、一応貴方にも見せるように先方が言っていたから渡しておく」
それだけいうとチェンバレン大尉はさっさと帰っていった。
マッケナ大尉はデータパッドにタベ特務少尉から送られた報告を表示した。
タベ少尉達憲兵隊は山岳民族の逮捕を命じられて集落に向かっていた。もちろん憲兵隊だけの戦力では集落を制圧することはできない。
逮捕といっても形だけなのではないか。要するに帝國の面子を立てようとしただけだ。
だがたどり着いたタベ少尉らは無人の集落を見ることになった。攻撃を予期して何処かへと去っていたようだった。
報告はそこで終わっていたが、最後にタベ少尉の所感が添えられていた。
山岳民族は集落を一時的に捨てただけであり、先頭が下火になれば集落へと戻ってくる。それに集落を離れた現在でも戦闘力は維持しているだろう。
帝國軍としてはこれを刺激することなく、不干渉の態度をとるべきである。
マッケナ大尉はしばらく呆気に取られてそれを見ていた。あの無感情に見えるタベ少尉がこんな文章を書くとはしばらくの間信じられなかった。
それから堰を切ったようにして笑い出していた。周囲の兵たちが怪訝そうに見るのも気にすることは無かった。
しかめっ面をして無感情に見せているタベ少尉と山岳民族の集落で見たマニや長老たちの姿が何故か重なり合って感じられるからだった。
案外、この大陸を帝國が完全に制圧することに成功しても、山岳民族は巧みに生き残ってそのぞんざいを示すのかもしれない。
マッケナ大尉の考えは半分あたっていて、そして半分は外れていた。
>>117 ありがたくあります。
マッケナ大尉は組織の人でありながら何処か外れているのでこういう対応となったわけです
しかしながら中佐のほうが正しい認識をしている可能性は捨てられないのかも知れないとは思うものの
現状での最悪の状況を回避するために撃つのです
ちなみに私は鬱です。112スレの「ぞんざい」→「存在」・・・書き込んだ先からこれだものなぁ・・・
取り敢えず開戦はこれで終了
今度は共和国側から開戦を書いてみようかなとか思ってみたり、戦闘シーンを増やそうかなとか思ってみたり
また地味になるだろうけど(苦笑)
「やべ!!見つかった!!ってゴーレムじゃねーか!!」
そこにはゴリラ型超小型ゾイド、ゴーレムが3機もいたのだ。
「ヒャーハッハッハ!!秘密を知った者は皆殺しだ!!死ねえ!!」
ゴーレムは右肩のガトリング砲を発射した。並の人間ならそれで終わっているだろう。
しかし、3人はその3機のゴーレムによるガトリング砲の一斉射撃すらも楽々とかわしていた。
ハガネは元よりロボットだし、ミンはサイボーグ。と言っても生身でも相当に鍛えてあるようだが。そしてマインは人間ではあるがその運動能力は超人の域に到達している。3人はそれぞれゴーレムに突っ込んだ。
「そんな馬鹿な!!何故当たらない!!」
ゴーレムにパイロットの1人が叫ぶ。マインが突っ込んむ先のゴーレムはマインに対して
ガトリング砲を放ち続ける。しかし、まるで弾が見えているかのように当たらない。
次の瞬間、マインの右手がかすかに光を放った。
「はぁぁぁぁぁぁ!!気撃拳!!」
マインがそう叫ぶと思うとかすかに光を放つマインの右拳がゴーレムの胸部装甲をたちまち粉砕した。
「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ゴーレムに乗っていた男は思わず叫ばずにはおられなかった。
「マイン君やるねー。私も負けてられないわね。チェーンアーム!!」
ミンがそう叫ぶと同時にミンの右義手の手首から先が飛び出した。なお、手と腕は鎖によって
つながっている。それがミンと戦っていたゴーレムの右肩のガトリング砲の接続部分を貫いた。
と思うと、ミンは自分の腕を振って発射していた手の軌道を変え、今度はゴーレムの背中の
エンジンを貫いた。たちまち倒れ込むゴーレム。
「どんなもんだい!!」
マインとミンはそう叫んだ。
「まだまだ甘いね。」
突然ハガネが横やりを入れる。ちなみにゴーレムは既に倒しており、その倒したゴーレムに座り込んでいる。
「貴方のお母さんならこの程度の敵もっと短時間でかつ多くの敵を倒しているよ。」
「確かに、お袋ならやりかねんな。」
「だからマイン君のお母さんって一体…。」
その時だった、さらに爆発音。
「うわ!!今度は大型ゾイドやらなにやら沢山引き連れてきやがった!!」
敵は本気でマイン達を潰そうと全力を出してきた。レプリカ品とは言えゴジュラスが数機もおり、
キメラドラゴンなど、ブロックスゾイドも多く確認された。
「こうなったらこちらも…マジガン!!」
「来て!!ガダーラ!!」
マインとミンがそれぞれ自分のゾイドの名を叫ぶとどこからともなく現れるマジガンとガダーラ。
そして、二人はそれぞれのゾイドのコックピットに飛び乗る。
「ようし!!行くぞぉぉぉぉ!!」
「あれ?ハガネさんは?」
ハガネはゾイドに乗るような様子はなくそこに立っているだけだった。
「ああ、私については気にしなくて良いから、二人とも存分に戦ってよね。」
などと言ってゾイド無しに敵に攻撃を仕掛けていた。とまあ、前述延べた通りそのままでも
中型ゾイドを凌駕する力を持っているので余り気にすることでもないだろう。
「じゃあ…俺達もいっちょやるか!!」
「うん!!」
マインのマジガンとミンのガダーラ、共に敵のゾイドに向けて駆けだした。
「うおぉぉぉぉぉ!!こいつ等強いぞぉぉぉぉぉ!!」
マジガンとガダーラがそれぞれ一体のレプリカゴジュラスを倒した際に敵兵士がそう叫んだ。
確かにいくら人工コアを使ったレプリカと言えど、ゴジュラスの戦闘力は高い、強化された
シールドライガーやアイアンコングでもそう簡単に勝てる代物ではないのである。
それが勝てたのはひとえにパイロットの問題である。マインとミンに比べ、敵のパイロットは
素人この上無かった。例えばゴジュラスの戦い方も闇雲に腕や尾を振り回しているだけなのである。
確かにゴジュラスなどパワー系ゾイドの戦い方は力押しというイメージが強いが、実際は違う。
たとえゴジュラスに乗っていようががなんだろうが、本当に上手いパイロットは的確な動作で的確に敵を倒すのである。
「確かにアイツはゴジュラスギガに乗りながら高速ゾイド顔負けの的確な戦い方をしていたな・・・。
アイツを100点満点とするなら・・・あの二人はさしずめ65点って所か・・・。」
一機のシェルカーンを殴り飛ばしながらハガネはそうつぶやくのだった。
「こうなったら各個撃破だ!!シールドライガーに攻撃を集中しろ!!」
その言葉に合わせて全機がマジガンに攻撃を仕掛けてくる。
「わーったったった!!幾らなんでも冗談キツイぜ!!ミン!!お前のミサイルで何とかしてくれ!!」
マインはそう言ってミンのガダーラの隣に隠れる用に回り込む。
「ならご注文通り・・・ミサイル発射!!」
ガダーラの右肩のミサイルランチャーから大型のミサイルが、左肩からは小型ロケット弾が発射される。
その爆発は次々に敵を飲み込み、また直撃を受けなかった機体も誘爆によってやられていく。
「こう言う時にアイアンコングを味方につけると頼もしいよな〜。俺のマジガンじゃあ大勢を相手に
するのはつらいからね〜。」
ミサイルの雨あられという阿鼻叫喚の地獄絵図を眺めながらマインは言った。
いくらパイロットの実力に雲泥の差があるとはいえ、マインとミンは圧倒的だった。
もうね、まっとうな人が見たら確実に馬鹿らしいと思えるほどに。
「そこまでだ!!」
逆方向から突然謎の声が響き渡った。
マインとマジガン、ミンとガダーラはそれぞれ後ろを向く。そこには太陽に背を向けた状態で
大岩の上に謎の5人組が変なポーズを取って立っていた。で、なぜか5人ともそれぞれが
赤、青、黒、黄、ピンクの色の全身タイツの上に変なマスクをかぶっているというとても
近づきがたい、いや近づきたくない存在だった。
「ゼネバスレッド!!」
真中にいた赤い色の全身タイツが叫ぶ。
「ゼネバスーブルー!!」
今度はその青い全身タイツが叫ぶ。
「ゼネバスブラック!!」
今度は黒い(以下略)
「ゼネバスイエロー!!」
今度は黄色い色(以下略)、しかし、前述の3人と比べると割と体格の大きな男だった。
「ゼネバスピンク!!」
最後にピンク色の(以下略)、声と体格からこいつのみ女性のようである。
「5人そろって!!帝国戦隊ゼネバスレンジャー!!」
すって〜ん
マインとミンはそれぞれ乗っているゾイドごとすっころんだ。
「ぜぜぜゼネバスレンジャー?」
「今時戦隊もののパクリですか?」
さすがの二人でもにこれには驚かざる得なかった。
「しかし、最近は村おこしの為にやってるところもあるからなー。戦隊もののパクリ・・・。」
その光景を見ていたハガネが腕を組んだ状態で真面目にそうつぶやいた。
「今度は私たちが相手だ!!」
ゼネバスレッドがマジガンとガダーラを指差して叫ぶ。
「行くぞ!!レッドゲイル!!ブルーゲイル!!ブラックゲイル!!イエローゲイル!!ピンクゲイル!!」
そう叫ぶとともに、赤、青、黒、黄色、ピンクの色のロードゲイルがどこからとも無く出現。
ゼネバスレンジャーはそれぞれの機体に乗り込む。
「いくぞ!!」
>開戦作者さん、
とりあえず完結おめでとうございます。今までご苦労さまでした。
次回作を期待していますよ。
>恐怖の亀裂作者さん、
怪生物に関する点に焦点を当てたストーリーは今までに無いものがありますね。
続きを楽しみにしています。
とりあえず予告。可能性という名の一つの未来はもうすぐ完結します。
あと、今後は自分が書いた話の設定や謎、人物に付いて色々まとめた物も
書こうかと思っています。
「どうしたんですか?それ?」と必死になって甲殻皮膚にお触りをしようとしている彼がシュミット=エーアスト。
彼はと言うか彼女ルディア=カミル両名は実際に戦闘をするわけでは無く指揮用ゾイドで情報を整理して連絡を取ったり、
通信のサポートを任務とする情報士官である。
「それは食べられるのですかぁ〜.」と間の脱けた声でルディア=カミルもそれを助長しているので始末が悪い。
最も彼女の方はその喋り方によりおっとりとした感覚を受けるが実際にはネオゼネバス帝国建国期に於いて、
ライガーゼロイクスを駆り共和国北東部の情報中継基地を4ヶ所叩き潰した功績もある立派な隊長?でもある。見た目よりは確実な実力を持っている様だ。
シュミット=エーアストも共和国出身であるがアイアンコングに憧れてガイロス帝国に仕官した者で、
結局アイアンコングには搭乗出来無かったがハンマーロックを経て今はオーガノイドシステムの所為で大口径荷電粒子砲が撃て無くなったデスザウラーの改造機、
デスアナライザーFFに搭乗している。
今回の増援の中のキメラ以外の機体とはデスアナライザーFFとデスザウラーSTの2機だったようだ。
「これはまた一段とゴテゴテしたものでありますねぇ…。」とファイン=アセンブレイスは呟く…。
両機とも大口径荷電粒子砲が撃て無い機体でその撃て無い原因とは「出力の増大に対して内部機関を強化してい無かった」という本末転倒な初期の開発経緯で、
その強大な出力を別の方向に振り向ける事でリサイクルを測った機体である。
デスアナライザーFFはつい最近までFが一つだったのだがファイン=アセンブレイスの旅行中に追加装備をされていた様だった…。
デスザウラーSTも前に見た時にはフリーラウンドシールドが二つだけだった筈だが更にバスタークローが4つ追加されていたのだ。
「魔改造でありますか?」と正直な感想を述べると当然の如く二人に「あんたよりはましでしょ!」と強力な突っ込みを受けたのである…。
書いていて書き間違いの訂正と気付いてはならないちょっぴりとした恐怖…。
32の「それをグレネードランチャーの変える・」と言う訳の解らない書き方。
実際は「それをグレネードランチャーの形に変える。」が本来書こうとした文です申し訳ありません。
気付いてはいけないこととは…
ファイン=アセンブレイスは休暇の旅行中なのに【フレキシブルウェポンドライバー】を携帯していた事。
危ない奴だ…。何時の間にか香ばしい匂いを自分の中で立て始めた彼の今後はどうなるのか?
自分にも解りません….
元々先に書いたように「ネタにネタを被せる要領」で書いているので意図的に引き伸ばしが出来そうなので…。
でも切り上げが出来無いので少しづつ考えながら書いています(TT
必要のない物を必死に削りながら…。
「今度の施設強襲はぁ〜私たちが先行して雑魚を呼び寄せている間にぃ〜…」長いので何時になったら終わるのか解らないルディア=カミルの説明。
「要するに陽動を僕達が行なっている間に中尉に側面から奇襲を掛けて貰うんです。」とシュミット=エーアストが要約する。
このコンビで無いと話が全く進まない。その上総合的な戦力不足によりファイン=アセンブレイスはこの部隊から基本的に離れる事が出来無いのが現状である。
実際の戦果は非常に芳しくないが実験部隊としての意味合いが強い様で今まで首を切られる様な事は無かったが、
今回の兵力で成果が出ないようなら厳しいと彼は思っている「そろそろ別の就職口を探した方が良いでありますかねぇ。」と本気で思っていたりするのだ。
「そろそろぉ〜ファインさんの機体を組み立てないと日が暮れますぅ〜。」そう言うとコンテナからバラバラのパーツの山が出てくるが、
異常に数が多い「何でありますか?これは?」と聞くと「これでぇ〜極地戦用のろーど…」「解りましたであります。」途中で言葉を切って作業に取り掛かる。
正直この人の所為で夜襲になる事だけは間違いなかった…。
機体を組んでいると「よお!自爆王!相変わらずだな…。」とデスザウラーに乗っていた調査隊隊長から声を掛けられる。
「何でありますか?」と作業を中断して振り向くとデスザウラーの脚部の装甲と装甲と連動しているプラズマフィールドジェネレーターを持って来ている。
「選別だ!抜かるなよ!」そう言うと何も言わずに機体に取り付け始めさせる。
「そんな…勿体ないでありますよ。」そう言って作業を止めさせようとするがそれを阻まれる。
「すまんな…俺達の機体の受けたカリを帰してくれ…。」そう言うと作業を進めさせる。
昨夜の戦闘でデスザウラーは完全に戦闘不能に成り第1次調査隊の機体は全て全滅した事に気付いていなかったのだ。
その言葉を受けた彼は作業を中段させる事が出来無かった…。そして状況に流されるままの自分に珍しく腹を立てるファイン=アセンブレイス。
デスザウラーの装甲にアナイアレイターと雑にペイントをする。それが彼の決意…初めて軍人として誰かの役に立ちたいと本気で思う自分を喜ばしく感じているのだった…。
速攻で攻撃を仕掛けてくる。その攻撃は素早く、そして的確なものであった。さらには
本来扱いにくいロードゲイルをここまで操るゼネバスレンジャーは、ふざけたノリをしていながら
かなりの実力を持つのは確実だった。
「ちっ!!さっきの雑魚どもとはさすがにケタが違うぜ!!」
「マイン君、ちょっとこれヤバイんじゃない?」
二人はロードゲイルの攻撃を避けるのが精一杯だった。
「一気に片付けるぞ!!ゼネバスコンビネーション!!」
ロードゲイルはマジガンとガラーラを中心として5方向に展開し、それぞれマジガンとガダーラを
囲みこんだ。
「トドメだ!!ゼネバスアタァァァァック!!」
なんと2機を取り囲んだ5機が一気に突っ込んできたのだ。
「わわ!!ミン!!俺のマジガンをつかんでブースト全開大ジャンプだ!!」
「ええ!?」
「とにかく急げ!!」
大急ぎでガダーラがマジガンを両腕でガッシリとつかむ。そしてマニューバスラスター全開で
一気に上空へ跳びあがった。
「わぁぁぁぁぁ!!」
マジガンとガダーラが上空へ逃げたため、まっすぐに突っ込んでいたロードゲイルはそのまま
頭と頭がごっつんこしてしまった。
「こいつらやっぱアホだ・・・。」
地上に着地した際にマインがそうつぶやいた。
その後、警察にも連絡し、宗教団体は警察の手入れを食らった。
そしてそこにいた連中は全員逮捕。麻薬と工場機械も全部没収。
マインとミンは本来の以来であった町長からの報酬だけでなく、警察からも恩賞をもらえたという
都合のいい展開となった。
ハガネは・・・いつのまにかに姿を消していた。
「さーて、金も入ったし、次は何処へ行こうかなーっと。」
マインは道をトコトコと歩いていた。と、そのとき後ろから何者かの気配。
その気配の正体はミンだった。なぜかマインの後をトコトコとついて来る。
「貴様・・・なぜついて来る。」
その場に立ち止まり、振り向かずにミンに対してマインは言う。
「いや、何となく・・・旅は道連れって言うでしょ?それに、マイン君のお料理とっても美味しいし。」
ミンは笑いながらそう言う。
「それにね、今度の事で私たち、確実に例のなんとか組って組織に目をつけられたと思うの。
なら別々に行くよりも、いっしょにいて協力した方がお互い生き残りやすいんじゃないかしら。」
「・・・・・・。」
マインは頭をかきながら一時沈黙。
「っ勝手にしろ。」
「わーい!!やったー!!マイン君ありがとう!!」
ミンはマインに抱きついた。
「わー!!やめろ!!重い!!」
「ひっど〜い!!女の子に重いなんて言うなんてー!!」
「お前の体の3分の1は何でできているのか忘れたのか?」
とにかくどうやら初めて会った時からマインに気があるとしか見えないミンはなぜかそのまま
マインについて行ってしまった。
その後、二人にどんな運命が待ち構えているのか、それは今は誰にもわからない。
ただ言える事は、可能性という未来は星の数ほどにもあるという事である。
最初に言ったように、この物語すらも一つの可能性に過ぎないのである。
しかし、人は生き続ける。
終わり
程無くしてプラズマフィールドジェネレーターを付け終えたらしく、形成した脚部と上腕部にデスザウラーの装甲が取り付けようとするが…。
「おい!こんなペイント誰がした!」と整備班長が怒鳴る。「ああ…それは自爆王がついさっきしていましたよ。」と鬱陶しそうに答える整備員。
「ほ〜う?あの特攻馬鹿かね?随分と威勢の良いペイントだな…おい!こいつをマーキングしろ!いや装甲自体直接に彫り込んじまえ!」と言うが早いかさっさと作業を始める。
その頃ファイン=アセンブレイスは武装のチェックをしていた…。何とか回収できたレーザーストームのクレセントレーザーとストームガトリング2機に、スティルアーマーのソードレールキャノン。
後はロードゲイルに本来装備されている武装に最近実験用にゴルヘックスのクリスタルレーダーを参考にして作られたクリスタルレーダー採用式のディアントラーのプラズマホーンそれにシェルカーンのミサイルポッド2機。
それぞれを左右の腕と背中に設置する。背中にプラズマホーン、片腕に一つずつストームガトリングとゴテゴテにパーツを接続する。
それ等を可能にするのは両肩に2対4個の空戦用ブロックの牽引力と一つのコアブロックの要求を完全に答える為にゾイドとしての本能をプログラムしていない代わりに出力が1,5倍に調整したスレイブコアブロックを4個分散して配置されているためである。
コアブロック7個分の瞬間最大出力はデススティンガーの最大瞬間出力にも匹敵する能力を持つ。
「久々のじゃじゃ馬慣らしになりそうでありますね…。」と気合いを入れていると…、
「よう!特攻馬鹿!粋なことをしやがってこっちも気合い入れちまったじゃねえか!」とどつかれる。
「何でありますか?って?あれは何でありますか?」と完成した機体の肩を見上げて言うと「何言ってんだ!お前のペイントが威勢が良かったからなついついな…ハハハハ。」と笑い出す。
機体の左肩の装甲には…英語で「アナイアレイター」と気合いの入った彫刻のエンブレムが在った…。
中央大陸南の海上において、共和国軍と帝国軍の壮絶な海戦が行われていた。
海軍力で優る帝国軍と空軍力で優る共和国軍。両者の実力はほぼ互角。一進一退の戦いが繰り広げられていた。
しかし、その戦いも一瞬にして幕を閉じた。謎の怪魚の出現によって。
突如現れた正体不明の怪魚は帝国と共和国両軍の部隊を瞬く間に壊滅させたのだった。
「でだ、上からの決定で今度お前達にそこの調査と怪魚の討伐が命じられた。」
マオ=スタンティレル少尉(18)が双子の姉であり上官であるミオ=スタンティレル大佐(18)そう言われたのはそれから数日後の事だった。
「でも、私のカンウ(ゴジュラスギガの名前)は水中戦はあまり得意じゃあ…。」
「大丈夫。そのための準備はしてある。これを見たまえ!!」
そう言ってミオは有る方向を指さす。そこには巨大な棒状の何かがあった。
「釣り竿?」
「釣り竿っすね…。」
マオの隣に立っていた、マオの直接的な部下にあたるライン=バイス軍曹(20)がそう言った。
「そうだ!!この対ゾイド釣り竿で怪魚をつり上げるのだ。健闘を祈る!!」
「む…ムチャだぁぁぁぁぁぁ!!」
「結局やることになってしまった…。」
中央大陸南の海岸にて、マオのゴジュラスギガ「カンウ」が対ゾイド釣り竿を掴んだ状態で座り込んでいた。
その隣は護衛でラインのスーパーシールドライガー「ジェネラル」が座り込んでいる。
さらに、マオのとばっちりを受けてこの任務にかりだされた他のゴジュラスギガ、凱龍輝、アロザウラー、
マトリクスドラゴン、ゴジュラス、その他モロモロも各々のサイズに合った釣り竿を掴んで海岸にて座り込んでいた。
「ったくこんな物で釣れる分けないじゃないの…。」
あまりのアホらしさにマオも思わずそうグチをこぼしたのだった。
「スタンティレル少尉。そうグチをこぼすな。こっちだって本当は馬鹿らしいのにガマンしているんだ…。」
白いゴジュラス「キオウ」に乗るサクラ=ハナザワ少佐(22)がそう言った。
なお、サクラ=ハナザワについては「白竜と黒獅子」を参照のこと。
その時、海の方から飛行ゾイド隊が戻ってきた。空中から怪魚を探すために飛行ゾイド部隊もかり出されたのだ。
「アルミちゃーん。怪魚いたー?」
「別に、いませんでしたわよ。」
飛行ゾイド部隊にて、サラマンダー「ブロンズゥ」のパイロットをやっているアルミ=マテリアル少尉
(17)がマオの問いかけに対してそう言った。なお、アルミ=マテリアルについては「がんばれアルミお嬢様」を参照のこと。
「とにかく…こんなので釣れるのかしら…。と言うか怪魚って何処にいるのよ…。」
マオは相変わらずため息を付きながらグチをこぼしていた。
「皆の衆!!大変でござる!!」
突然黒ずくめの男がカンウのキャノピーの頭の上に現れた。いきなりそこにフっと現れた物だから
マオは思わず驚いた。
「わあ!!…なんだ…ハットリ中尉か…。」
黒ずくめの男の名はハンゾウ=ハットリ中尉(年齢不詳)。地球の日本忍者の末裔にして共和国諜報部の凄腕諜報員である。なお、ハンゾウ=ハットリに付いては「忍者ハットリ中尉」を参照のこと。
「ハットリ中尉、一体どうした?」
サクラがハンゾウに対してそう言う。
「そうでござる。帝国軍部隊がこちらに近づいているでござる!!」
「何?」
皆が思わず身構えた。
「そう言えば…デスザウラーSTには一体誰が乗るのでありますか?」疑問を隠せないファイン=アセンブレイス。
「それはぁ〜秘密ですぅ〜。」とあっさり答える自分の上官ルディア=カミル少佐。
「実は僕にも分からないんですよ中尉。」シュミット=エーアスト少尉。(面倒なので今後は階級を付けて名前を省略!)
それでもデスザウラーSTは何の問題も無く行動している…一体誰なんだろう?と両名は最後まで悩むことになった。
デスアナライザーFFにルディア少佐とシュミット少尉は二人乗りで搭乗している。シュミット少尉がメインのパイロットを勤め、
ルディア少佐は情報の整理、通信連絡を務めているが緊急時にはFFのFの一つフォートレスの火器の運用を務める。
要するにデスアナライザーFFは一人で操縦するには難があり上から数えた方が遥かに早い操縦技術を持っているシュミット少尉ですら一人では扱えない化け物機体と言う事である。
もう一つのFはフライヤーで大口径荷電粒子砲に本来消費されるエネルギーを機体をホバリングさせるのに利用する物でフォートレス込で最大3000mの高さまで上昇する事が出来る「仰天兵器」の一つである。
総評としては「偵察機に在るまじき超高性能兵器」としてこの実験部隊に正式配属されたとの事らしい。
「そろそろ二手に別れないと行けませんねぇ。」と言うと「了解ですぅ〜。」と連絡が帰ってくる。
もうすぐ戦闘が始まる…。今回も相手がどんな機体で来るかは解らない。警戒するべき相手は今の所ゴドス、ゴルドス、ディバイソン、ブロックスキマイラと4種類だが最悪の敵としてレクス=アームズの駆るゴジュラスギガも居る。
「厄介事ばかりでありますね…でもやるからには殲滅させない事には話に成らないでありますね。」
二手に別れてからは嫌な事態ばかりが頭をよぎるファイン=アセンブレイスだった…。
「敵を発見しましたよぉ〜。」と緊張感の無い声でシュミット少尉にルディア少佐から連絡が入る。
「了解。これより状況を開始します。」と機体のフライヤーユニットに力が漲る…。
敵戦力は…また予想と反して別の機体が多数居た。今回はガンスナイパーとスナイプマスターの混成部隊に指揮官機と言わんばかりにそれは居た…。
「ケーニッヒウルフ!?しかもカスタムタイプ!?」シュミット少尉は焦る。焦るのも無理は無くかつて運良く生き延びることが出来たヴァルハラでの戦闘、
その時彼のハンマーロックは善戦するも面倒臭いと言わんばかりのケーニッヒウルフの軽い体当たりで機体をあっさりと失った事が在るのだ。
しかも今度の機体は情け容赦の無い高性能化された無人機。ケルベロス使用だが従来のコマンドウルフとは違う。
背中のファンの部分に接続された大型のウェポンベイの左右に同タイプの格闘用のギミックヘッドを持つ物で、その頭部には大型の多重層振動ブレードの輝きが灯っている。
全身を激しく放電させるその姿は悪夢が雷を纏った様にシュミット少尉には見えた…。
魔犬が吠える…それに呼応するかの様にスナイパー部隊が迫ってくる。数の差は今回も圧倒的であるが逆に言えば味方が殆ど居ないこの状況は全域破壊を目的の一つとしているデスザウラータイプには丁度良い戦場とも言える。
デスアナライザーFFから荷電粒子バルカン砲が発射される…大口径荷電粒子砲は使用出来無くてもそのエネルギー事態の利用は追加火器で十分賄える。
バルカン砲とは名ばかりの荷電粒子弾がスナイパー部隊に降り注ぎ密集隊形の彼等は成す術も無く消滅していく…。
「!」突然後方や側面から衝撃が走る。伏兵がまだ居たのだ…。正面に展開されている兵力に気を取られた自分を情けないとシュミット少尉は唇を噛みしめた。
またやった。「エネルギー自体」が正解ですね。
「焦らず落ち着いてくださいねぇ〜。」とルディア少佐からフォロー?と思われる言葉を貰うが、シュミット少尉にはプレッシャーにしか感じない程に気負いがあった。
突然目の前に躍り出たケルベロスタイプに反応しきれないシュミット少尉だがその目の前を2本のバスタークローが横切る。
突撃を見越していたらしいデスザウラーSTの援護によってシュミット少尉は我に返る。
目の前にはもうケルベロスタイプは居ないが周りの木々の間に黒い影が見え隠れする…。
「コマンドウルフか…。」ヘルキャットと並び小型〜中型タイプの名機。ステルス機能を持ち探索力に優れる旧式ながらも油断は絶対に出来無い敵。
かつてはデスザウラーによって崩壊した共和国に止めを刺せなかった理由が「コマンドウルフが居たから」と言われる程の性能で今日に於いても武装強化型や極地戦用に改装され現役として存在し続ける機体。
砲撃をバラバラにして様子を見るが当たった形跡は無く四方八方からミサイルが飛んで来る…。
どうやら全方位ミサイルを装備しているらしく高速で木々の間を擦り抜けながらミサイルを乱射するのが彼等の戦闘プログラムの様だ。
仕切り直してケルベロスタイプを探すが既にその姿は無い上にデスザウラーSTまで居ないのだ。
「STは何処に?」とシュミット少尉「STはぁ〜あのワンちゃんを追って先に行きましたぁ〜。」
陽動作戦は始まったばかりだ…ST達のことは気になるが今はコマンドウルフを全滅させる事が今は最優先事項だ。あまり時間は掛けられないのでフライヤーユニットで空中に飛び上がった…。
やはりファイン=アセンブレイスも敵に遭遇していた…。
相手は…マッドサンダー「何と!?洒落にならないにも程が有るでありますよ…。」正直面食らう。
1機だけなのがせめてもの救いとしか言い様も無い強敵。ご丁寧にハイパーローリングチャージャーをブロックスの装甲で覆っている完全装甲強化タイプだ。
しかし如何わしい…幼体をコピーしたにしても急速培養ではガタが来る筈なのだがそれらしき兆候が見られない。
デスザウラーのOS培養ではデスザウラーSTやデスアナライザーFFの様に出力の大き過ぎる物から全く足りない物まで結構失敗が在る。
「”隠し子”でありますか!?」そう言うが早いか突撃を掛ける。
マッドサンダーの方はと言うとまだ彼の機体に気付いていない様子でのしのしと尋常でない速度で「歩いて」いる。
その背中には針鼠の様な機銃やレーザー砲、ビームキャノンが付いていて自動防衛システムらしく彼が気付いていないのに発砲する。
そして…ようやく気付いたらしい。その時には攻撃により背中の砲台は沈黙していた。
マグネーザーが機体の横を通っていく…機動性の強化は分け隔て無くされているようでこの機体が部隊のデスザウラー達に遭遇すると間違いなく撃破されるだろう…。
擦れ違いざまに拡散荷電粒子メーザー砲を背部に叩き込む。しかし機体のサイズの差でさほどダメージを与えてい無い。
張り付く様に背中に攻撃を集中させる…この距離ならミサイルは来ない。それが唯一の勝機と見た彼はストームガトリングとソードレールキャノンを断続的に叩き込む。
装甲が弾けハイパーローリングチャージャーが剥き出しになる。そこを逃す訳が無かった…。
たった数分の出来事だったが彼には数時間経った様な感覚がした。
「出てくるゾイドに脈絡が無い…危ないでありますね。」奇襲予定地点に機体を急がせる。
このままでは各個撃破されるのは時間の問題かもしれない…それが現実に成らない様に…。
37から先に一つづつずれていました申し訳ありません。また増えてしまった物を整理。
【人名】
ルディア=カミル:帝国軍強襲部隊所属ファイン=アセンブレイスとシュミット=エーアストの直接の上官であり少佐勿論女性、
間の脱けた喋り方でブリーフィング等を遅延させる事が多いので同部隊は緊急の任務に就く事はまず無く今回は例外中の例外
シュミット=エーアスト:帝国軍強襲部隊所属天才の呼び名を欲しいままにする優男で少尉、その割りには不幸な目に遇う事が意外と多く、
ファイン=アセンブレイスに付き添って彼共々機体を失った事もある苦労人
【技術】
プラズマフィールドジェネレーター:装甲にプラズマをコーティングさせる事が出来る装置、
出力が大きい機体で使用される対エネルギー兵器用の物でレーザーブレード等はブレードのみのダメージしか受けなくなる意外と役に立つ事がある
スレイブコアブロック:コアブロックからゾイドとしての本能を取り除く事でエネルギー伝達等の最適化を測り本体出力を1,5倍に調整した物、
これ単体ではブロックスは動かない
その時だった。ハンゾウの言った通り、帝国軍部隊が現れたのである。それはアルティメットセイスモを
隊長機とし、デスザウラー、BF、ジェノザウラー、アイアンコング、有人型キメラドラゴン、ロードゲイル、
など、すざましいメンバーであった。
マオのカンウ以下共和国軍は一斉に砲門を帝国軍部隊に向ける。
「ちょぉぉぉぉっと待ったぁぁぁぁぁぁ!!」
アルティメットセイスモのコックピットが開き、中から1人の女性が現れた。
「あんたはハガネ!!」
マオが思わず叫んだ。ハガネ。本名を「SBHI−03−ハガネ」と言う。帝国軍が技術の粋を集めて
作り上げた人造人間である。そして、彼女の乗るセイスモサウルスの名をゼノンと言う。
まあ例によって詳しくは「ガイア山の魔物」を参照のこと。
「私はネオゼネバス帝国軍「超常現象研究隊」隊長のハガネである!!」
「超常現象研究隊!!?」
科学では解明できない事、つまり超常現象は今なお数多く存在する。そして、
その超常現象を研究するために結成された、真面目に考えると酔狂この上ない部隊が超常現象研究隊である。
そして、実戦に置いても多くの功を上げ、ロボットでありながら幽霊との遭遇経験もあるハガネが隊長を
努めていた。(詳しくはガイア山の魔物を以下略)
「とにかく、我々は貴軍と戦うつもりはない。どうせそちらも怪魚が目的であろう?」
「そ…そうだけど…。」
マオはそう言いながらカンウの背中の砲を下げる。
「なら話は早い。双方共に怪魚の討伐が任務なのだ。ならばここは一時休戦と行こうじゃないか。」
「まあ、しょうがないな…。」
サクラはそう言った。
「じゃあね、お互い頑張ろうね。マオちゃん!」
「ちゃん付けすんな!!」
ハガネの煽りにマオは思わずカっとなるが、ハガネ達はその場を少し離れて、共和国部隊から割と距離を
取った場所に陣を置いたのだった。
「こらぁぁぁぁぁぁ!!お前達何をしとるかぁぁぁぁ!!」
突然の叫び声。そこにはボロボロの服を着た1人の老婆の姿があった。
「いや、あの…おばあちゃん…私たちは怪魚を捕獲する為にいるのであって、別に何か悪いことを
しようとしているワケじゃあ…。」
マオはその老婆に対して丁重にお相手する。しかし、老婆は右手に持つ杖を振り回しながら叫ぶ。
「何が怪魚な物か!!あれはこの海の神様じゃあ!!ここは神様の住む聖なる海なのじゃ!!
それをこんな怪物どもで荒そうとして…お前達バチが当たるぞ!!地獄に堕ちるぞ!!」
マオのカンウやその他のゾイドを指さして老婆はそう何度も叫んでいた。
それにはマオや他の皆も困り果てていた。
「誰か…連れていって…。」
マオはそのへんの下士官に命令して老婆を何処かへ連れて行かせた。
「こら!!何をするか!!ここは聖なる海なのじゃ!!こら!!」
老婆はなおも叫び、そして必死に抵抗していた。老婆を連れていく下士官も心底困り果てていた。
「結局なんだったんでしょうね…。」
ラインがマオの隣に出て言う。
「さあね…。」
マオはため息を付いてそう言った。
一方帝国軍はというと、類は友を呼ぶとはよく言ったもので、帝国軍も釣り竿で吊り上げる作戦をやっていた。で、さら帝国軍に対してにもさきほどの老婆が同じように叫び、そして帝国兵士によって追い出された。
共和国軍と帝国軍。なおも共に釣りを続けていた。
遠くから老婆は一人それを眺めていた。
「フン、馬鹿どもめ・・・海の神様のたたりにあって死ぬがいいさ。」
そう言って老婆はどこかへ消えた。
デスザウラーSTのパイロットは三つ首のケーニッヒウルフを追っていた…。
部隊の者は無人機と思っていた様だが間違いなく有人機でしかもデスザウラーを倒せると完全に自覚が在る者の動きだった事も見逃さなかった。
「デスザウラーは倒せるかもしれないが私を倒せるなどと思わない事だ。」STは脚部に改造調整が集中している機体で、
装甲を後ろに対して2回り大型化して内部にジェットホバーが内蔵されている。
ジェットホバーの浮力で前傾姿勢を取り脚部の裏に2対4機のサークルクローラーを使いゴジュラスギガを超える210km/hの速度で移動できる。
武装は背中のウェポンバインダーにフリーラウンドシールド2機バスタークロー4機でバスタークローの185mmビームキャノンは20mm荷電粒子砲を内蔵した185mm荷電粒子ビームキャノンに改装されている。
格闘戦に重点を置いた機体で手数の多さで格闘能力の差を埋めると言う対ゴジュラスギガ用の兵器試験機の一つに当たる物だ。
「ちっ…付かず離れず微妙な距離で付いてきやがる。」ケーニッヒウルフケルベロスブレイドを駆る男はSTの動きに苛立ちを隠せなかった…。
この男もザクサル=ベイナードや人型の化け物同様血の気のない肌をしているが彼とは違い常に血の気の多い性格だった…。
何をされる事無く付いてくるSTに痺れを切らしたらしく機体を反転させ攻撃体制を取った。
「さっさと終わらせてやるよっ!」そう言うが早いかエレクトリックファンガーと二つの頭部のブレードで必殺の一撃を放つべく突撃する。
しかし次の瞬間に彼が見た物はケーニッヒウルフのコクピットに迫るエクスブレイカーの刃だった…。
コクピットを真っ二つにされそれと同時に4機のバスタークローに各部を貫かれ彼のケーニッヒウルフケルベロスブレイドはたった一回の出撃で彼と共にこの地に眠る事になった…。
「気配を消せても我慢が出来無い様ではな…。」そう呟くとSTをデスアナライザーFFに合流させる為先を急ぐ事にした。
ファイン=アセンブレイスは気が気でならなかった…さっきのマッドサンダーが大人しすぎた事が気に掛かっていたのだ。
案の定…後ろから聞き覚えのある重たい足音がする。「やっぱりまだ動けたでありますか…。」しかし振り向くことは出来ない。
マッドサンダーから超電磁竜巻を伴ったビーム攻撃が向かってくる。「タンダークラッシュ」と言われる攻撃方法の一種でかつてはその一撃で敵の部隊が丸ごと消滅したと言う話を聞く伝説の必殺技と言われている。
しかし少し軸を逸らすだけで威力は弱まりプラズマコートで容易に防げる…。
「おかしいでありますね?」自動操縦ならこんな間抜けな攻撃はしない。闘争本能に任せたとしてもこの場合はマグネーザーで突進する事だろう…。
「まさか!?」昼間の事を思い起こす。ザクサル=ベイナードは気配が全く無かった…昨夜の化け物達も…結論が出る。
「可哀想な事をする人でありますね!」語尾に怒気が篭もる。次の瞬間機体を翻しマッドサンダーに襲い掛かる。どんなに機能を強化されようと肝心のハイパーローリングチャージャーが機能していないのなら彼の機体の機動力に付いてこられる筈が無い。
1回目の交差で背中の司令部を2回目の交差でコクピットに軽くマグネイズスピアを刺す。コクピットから確かな手応えを感じる…。
操り糸から解放される様にゆっくりとマッドサンダーが腹を大地に着け沈黙する…。コクピットには蛍光色の血を流して倒れている人影が写る。
それは化け物では無く普通の「人」であったがやはり血の気の無い蒼白の肌をしていた。
「B級ホラー滋味て来たでありますね。」もう少しで施設入り口に到着する…。作戦が予定道理実行される可能性は低いと彼の勘は告げている。
事実この勘は当たることとなる…。
コマンドウルフからのミサイル攻撃を全て撃ち落とすデスアナライザーFF。この戦闘は10分以上もこの繰り返しを延々と行なわれていた…。
前方からは追加でガンスナイパーとスナイプマスターのスナイパーライフルの攻撃が来る。
「この程度の攻撃を喰らう訳には!」シュミット=エーアストは機体の軸を射線から逸らし回避する…天才と言われる腕は確かなものだった。
「あまり激しく動かさないで下さい〜。」間の脱けた声でルディア=カミルから催促が来る。とは言え彼女はこの10分間一つも逃すことなくミサイルを撃墜していた…。かつての戦果は運だけでは無い事の証明でもある。
コマンドウルフの足止めは秀逸で何機か撃墜こそしているが包囲網は一向に薄く成らない。
「えっとぉ〜可哀想ですがぁ〜森を少し焼きましょうねぇ〜」10分間も考えていたがやはり答えは其処にしか辿り着かなかったのだ。
そう言うとミサイルポッドからマイクロナパームミサイルが発射される。それはコマンドウルフが包囲網を展開している更に外側から内側に向けて引火させる。
無風だった事が幸いして燃焼範囲を最低限に納める事が出来たようだ…。
コマンドウルフは木々の援護を受けられなくなり作戦行動を起こせなくなる。
「これでぇ〜もう隠れんぼは出来ませんよぉ〜。」更に大型ミサイルポッドから射出型マイクロミサイルポッドを発射する。
「うわっ!危ないですよ!」そう言ってシュミット少尉はフライヤーユニットで機体を急速上昇させる。
デスザウラータイプが飛行する…そんな行動の対処法をプログラムする程余裕は無かったのであろう。
何をして良いのか解らず右往左往するコマンドウルフ達はミサイルの雨を受け倒れていく。
スナイパー部隊も何時の間にか合流していたデスザウラーSTに葬られていた。
「さあ〜先に行きますよぉ〜。」強襲予定地の施設入り口に向けて移動を再開し始める2機。
しかし作戦の実行手順は逆転してしまうのであった…。
「釣れないね・・・。」
「釣れないっすねー・・・。」
マオとラインはそんな会話をしていた。他の人はと言うと、陸戦ゾイドはカンウ同様に釣り竿を持って
海岸に座り込んでおり、飛行ゾイドは空から怪魚を探し、マトリクスドラゴンは水中に潜って怪魚を探していた。
「そうだ・・・少尉って士官学校に入る前は一体何をしていたんっすか?」
あまりに退屈なので、ラインは退屈しのぎにマオにそう問い掛けた。
「いいわよ。どうせこちらにしても退屈だし。話してあげる。」
その時だった、なぜか他の者たちも集まってくる。
「何であんたらまで集まるのよ・・・。」
マオは目を細めて言う。
「いや、俺たちもマオちゃんの面白い話を聞きたいから・・・。」
マオは少し顔を赤面させて下を向くが、頭をポリポリとかきながら言った。
「わーったわよ。みんなにも聞かせてあげる。ただし、手は休めるんじゃないわよ。」
「りょーかい!!」
「みんなも既に知ってるとお思いだけどさ、私は昔、つまり12年前の6歳だった頃の私は弱虫泣き虫な
いじめられっ子だった。けど強くなろう、皆を見返してやろうって思ってから色々やったわねー。
そうして私は少しずつ少しずつ強くなっていった。で、13歳の頃に中央大陸拳法の総本山と呼ばれる
「竜王流」に入門したわね。」
一方その頃、帝国陣地においても何かしらの一騒ぎ起きていた。
「おい、グリーンデビルが何かやってるぞ。そいつが今何か話をしているようだ。」
マオの話を帝国軍もディメトロドンによって傍受し、なぜか帝国軍も聞いていた。
ちなみにグリーンデビルとは帝国軍側が付けたマオのあだ名である。
「しかし…あのグリーンデビルが昔は泣き虫弱虫ないじめられっ子だったとは…衝撃の事実発覚だな。」
「しかし13歳で竜王流に入門するってのは無理がある気がするぞ。」
「ああ…だって一流の格闘家ですら免許皆伝に数十年の修行を要するそうだからな。」
などなど、色々な反響があった。ちなみに竜王流については格闘対格闘を参照のこと。
「で、その竜王流を1年で免許皆伝してね。他の人が普通なら数十年掛かるのに…って言ってたんだけど
今だに信じられないんだよね。私は。」
「ウソォォォォォォォォォォ!!いくらなんでも強くなりすぎだろー!!?」
話を盗聴していた帝国兵士達は一斉に叫んだ。
しかし、帝国軍に盗聴されている事など知るよしもないマオはなおも話を続ける。
「で、竜王流の門を出た私は今度は西方大陸に渡って、そこのオリンポス山にある西方大陸拳法の
総本山である神聖寺で修行したわねー。」
「今度は神聖寺かよ!!」
「神聖寺・・・ウワサには聞いていたが実在したのか・・・。」
「神聖寺」
西方大陸拳法の総本山にして最も歴史の古い流派である。その修行は軍隊の海兵隊の訓練をも遥かに
しのぐほどすざましく、最強を目指すためにそこの門を叩く格闘家は数あれど、無事に修行を終えて
出ることのできた物は1万人に1人、いるかいないかだと言われている。さらには、
その全てを極める為には、超一流の格闘家をもってしても数十年の修行が必要とされる。
さらに、西方大陸戦争当時、オリンポス山をガイロス帝国軍が制圧した際、唯一神聖寺の敷地だけは
制圧できず、さらには攻撃部隊すらも壊滅させられたという逸話が残っている。
とはいえ、少し笑わせてくれるエピソードもあったりする。寺での修行と言えば頭を剃って丸坊主に
すると言うのが普通だが、神聖寺ではそれが当てはまらないのである。
なにせ大僧正自らロンゲだったりするのだから…。
オリンポス書林刊「脅威の拳」より
「で、それもやはり1年で極めたわね。やはり普通なら何十年も掛かるのに・・・ってお師匠さんや
他の兄弟子たちもみんな驚いてたよ。何でこんな簡単なことが何十年も掛かるのかいまだに分からないんだけどね・・・。」
「オイこら無茶すなや!!」
帝国兵士達は一斉に叫んだ。
「ん?今何か声がしなかったか?」
「いや、聞こえなかったな・・・。」
さりげなくその声は共和国陣地までとどいていた。しかし、マオの話はなおも続く。
「で、今度は東方大陸に渡って東方大陸拳法総本山のカランの塔で修行したわね。いやはや、
これが凄いの何のって・・・何しろその塔は地上からじゃ頂上が見えない程高いんですもの。
上るだけでも数日掛かっちゃってね・・・いやー参った参った。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
誰もが沈黙した。まっとうな人間にとっては非常識かつアホらしく、とても信じられない話を
マオは世間話でもするかのようなノリでシャーシャーと話していたのだ。
カランの塔
今だ多くの謎を残している東方大陸において、もっとも謎な存在がカランの塔である。
カランの塔は格闘家の聖地とされ、最強を目指す者以外が上ることを許されてはいない。
そのため、カランの塔がどのような物であり、中にどのような物があるかは未だに謎が多い。
一説にはサラマンダーの最大上昇高度以上の高さがあるとされているが、真相は定かではない。
もはや伝説とも言えるものだが、その存在自体は確認されているため、謎であって謎でない。
そのような不思議な存在ということは確かである。
ゾイテック出版刊「謎多き東方大陸」より
南海の怪魚…いいなあ〜そう言う話。「神聖寺」の説明を見ていると…〇ンダラ拳の親父を思い出しました(笑)。
「カランの塔」は〇Bですね。でも頂上が名前みたいに何も無かったり、誰も居なかったりを想像したりして…。
当方の書いている物の設定や人物等は貸出自由となっております。
何かに困った。考えるのが面倒くさい。他人の持ちネタや人物を使いたい。等のおりにはお使いください。
世界は星の数ほど在れどそこに居る者は余り変わらず居たりすると言う話もあるので…。
ファイン=アセンブレイスは唖然とする…「と…到着が…早すぎたであります…。」目の前の施設入り口の左側にはカノントータスとカノンダイバーの陸海亀部隊が展開されていたのである。
「…」見た目は正直悪質なギャグであるが戦力と言えば相当厄介な配備状況だった。
更に後ろには主力と思われるアロザウラーとDAリザード、入り口付近にはゴジュラスガナー3機と先の戦闘に出現したゴルドスが10機と豪華な顔ぶれであった。
「サービスし過ぎでありますよ…。」そう言いながらもここで引く訳にはいかない。ここに来ることが出来なかった味方機の借りやこの先に居るであろう者を排除する必要が在るのだ。
一斉に彼の機体に向けて砲撃が始まる…戦闘開始の合図を受けて機体を横滑りさせて初弾を回避する。その動きに合わせてストームガトリングとソードレールキャノンで砲撃する。
的が多いだけ面白い様に当たるが先頭に居る陸海亀の部隊は装甲が厚く思ったよりもダメージを受けている様子は無い。
そうこうしている内にアロザウラーが迫って来ていた…ご丁寧にアクティブシールドユニットを搭載して砲撃を巧みに防御して格闘戦を挑んで来るがかまっていられる訳が無い。
すぐその場所に砲撃が来る…味方の被害も気にし無い無人機らしい行動だ。アロザウラーは味方の砲撃に打ち抜かれ倒れる。
地獄絵図を見ているかの様だった…。
敵の数が異常に少なくなっている…不信に思うがその答えは目の前で展開されているチェンジマイズが原因だった。
何の脈絡も無くアロザウラーやDAリザードにカノンダイバーが合体しているのだ。「注意1秒怪我一生でありますよ!」
そう言うが早いかチェンジマイズ中の機体を狙い撃つ。有人機なら中止をして退避するのだが無人機なので避けること無く直撃を受けて爆発する。
爆発を免れて残ったキャノン砲等を再利用されるのはまっぴら御免と言うように拾い上げて接続するが…?
「ビームキャノンでありましたね…。」すっかり基本である「敵の戦力や武装を覚える」事を忘れ去ってしまう程戦場は混乱を極めていた…。
「と・・・とにかくそれがマオ少尉の強さの秘密と言う事でありますか?」
直に話を聞いていた共和国兵士の一人、ざっと下士官クラスの人間が沈黙を破ってそう言った。
すると、マオは突然笑い出した。
「ハッハッハ、私が強いですって?私なんてまだまだだって。あれだけの修行を積んですらお姉ちゃん、
つまりミオ大佐の足元にも及ばないし。」
「じゃあ、やはり大佐も何かしらの凄い修行をしたのでありますか?」
と、また下士官が言う。
「いや、お姉ちゃんは私なんかと違って生まれつき強いよ。双子の妹の私が言うんだから間違いない。」
「・・・・・・・・・。」
再び全員が沈黙した。しかし、それ以上に盗聴していた帝国軍は衝撃を受けていた。
「うそ・・・、グリーンデビル以上に強い奴がいるとは・・・。」
「しかもそれが双子の姉?」
「一体どれほどの強さなんだ・・・・?」
帝国軍兵士達はガクガクブルブルと恐怖に震えていた。
「でもね、やっぱり上には上がいる物でね、そのお姉ちゃん以上に強い人がいる訳よ。」
「もっと強い奴がいるのか!!!?」
話を聞いていた共和国、帝国両軍の兵士達は一斉にそう叫んだ。
「無敵塾って私塾の塾長さんなんかマジでそんな感じだったよ。デスザウラーの荷電粒子砲に生身で
耐えるし・・・。」
「ハッハッハ、いくらなんでもこればかりはウソでしょ?」
笑って言う共和国兵士達。するとマオも笑い出す。
「ハッハッハ、私だってウソだと信じたいわよ。しかしそれは紛れもない現実だったのよね。いやはや
参った参ったハッハッハ!」
「え?マジ?」
「・・・・・・・・・・・・。」
共和国も帝国も人知をはるかに超えたレベルの高い話の衝撃の大きさに開いた口がふさがらなくなり、
しばらくの間沈黙が続いた。
「うわぁぁぁぁ!!ウソだぁぁぁぁ!!私はずっとアイツを目標にしてきたのに
もっと強い奴がいるなんてえぇぇぇぇぇ!!」
開いた口がふさがらずに沈黙を続ける帝国兵士の中に頭を抱えて叫んでいるハガネの姿があった。
「さーて次は何の話をしようかな?」
最初はあまり乗り気ではなかったマオもいつの間にかにのってきていた。
「いや…もういいです。勘弁して下さい…。」
「ええ〜?もっと話したいこと有るのに〜…。神聖寺の修行を終えた数日後、格闘技好きな西方大陸の
とある小国の王様が開催した格闘技大会に出場した話とかはどう?」
「あぁぁぁぁ!!聞こえないぃぃぃぃぃ!!何も聞こえないぃぃぃぃぃ!!」
誰もが両手で耳をふさいでそう叫んでいた。
「酷い!!酷いわぁぁぁぁぁ!!話を聞きたいって言ったのはあなた達でしょ!!?ウワァァァン!!」
今度はマオが逆ギレし、さらには泣き出してしまった。どうも弱虫は完治しても泣き虫はなおらなかった様である。
しかしまあ、とりあえずマオの昔話はこれで切り上げて、再び仕事に集中することになった。
「釣れないね…。」
「釣れないっすねー。」
相も変わらず怪魚どころか何も釣れなかった。聞こえてくるのはただ波の音とゾイドの駆動音、そして
怪魚を探して飛び回っている飛行ゾイドの飛行音だけである。
そして先ほどとは打って代わって誰も喋らなくなっていた。長い沈黙が続くかに思えた。
しかしその沈黙を破ったのはやはりマオだった。
「そろそろ昼ねー。」
マオはそう言ってカンウに持たせていた釣り竿を下げた。そしてコックピットを降りる。そしてこう言った。
「みんなー!カレーでいい?」
先天的には特に大した特技も無く生まれてきた様に思えるマオもただ一つ、料理だけは別だったりする。
その実力は天才を超え、神童とすら呼ばれるほどである。余談だが生まれつき天才の姉であるミオは
対照的にバケモノ級に料理がまずい。
とにかくマオはカレーを作り始めた。
その時、海岸で一体の凱龍輝がカンウの隣で座っているジェネラルに近づいて中に凱龍輝パイロットが
ラインに話しかけげきた。
「おいおい、マオ少尉の料理は美味いと聞いたがそれはマジか?」
「ああ、美味いよ。」
「うっひょぉぉぉぉぉ!!何かよう分からんが楽しみぃぃぃぃ!!」
沈黙し、殺伐とした府陰気の中に再び活気がもどったのだった。
一方帝国軍、
「何か共和国陣地から凄い良い匂いがするであります!!」
などと言っていた。
そんなこんなで、とりあえず食事中に怪魚が出ても良いように、何グループかに分けて交代で食事をすることになった。
「さーて、カレー出来たよー!!」
エプロン姿のマオがそう叫ぶ。そして、食事隊第一陣がゾイドから降りて食事に入る。
「さーて、いただきまー……う!!」
彼らの目の前にあったカレーは壮絶な物だった。ライスは米の代わりに麦が使われ、肉の代わりに魚、
しかもシャケが入っており、極めつけはモヤシがたっぷりと入れられた前代未聞のカレーだった。
「さあ!お上がり!」
マオは笑顔でそう言う。
「スタンティレル少尉!!ちょっと待っていてほしいであります!!」
1人が敬礼をしながらそう叫ぶ。そしてジェネラルの方へ走っていく。
「おいコラライン!!貴様本当にアレが美味いというのか!!?」
男は何故か怒りをラインにぶつける。しかし、それも一瞬の出来事だった。
「ほー…私の料理は食えないってか?」
男の背後に右手に木刀を握ったマオが立っていた。男は思わず青ざめた。
「あ…あの…。」
男は思った。殺されると。しかし…そう思った持つか野間、突然マオはその場に座り込みうずくまった。
「酷い!!酷いわ!!私は皆のことを考えて栄養のあるカレーを作ったのに…ウワァァァァン!!」
またもや泣き出してしまった。ウソ泣きに見えなくもないが、マジ泣きである。
「なーかしたーなーかしたー、たーいさーにいってやろー!」
何故か他の共和国兵士達が男を取り囲んでそんな歌を歌い出した。殆ど子供の世界である。
「スタンティレル少尉!!オレが悪うございましたぁぁぁぁ!!」
ヤケクソになったか、男は号泣しながらそう叫んだ。すると、マオも涙を脱ぐみ、ニッコリ微笑んだ。
「なら、食べてね。軍人は体が資本なんだから…。」
「押忍!!いただきます!!」
男達は一斉にスプーンでカレーをすくって口に運んだ。
「!!!!!!」
男達がそのカレーを食べた瞬間、何かの衝撃が襲った。
「う…美味いぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「何でこんなに美味いんだよぉぉぉぉぉぉ!!」
そう、マオのカレーは美味かった。とんでもなく美味かった。その後、交代で次々に食べて行くわけだが、
誰もが美味いと号泣していたのである。
「マオ少尉、いっその事ウチの隊の専属コックになってくれないかなー。」
「ばーか、少尉がコックになったら誰がゴジュラスギガを動かすんだよ。」
などという会話も飛び交う。さらには、
「少尉!!弟子にして下さい!!」
などと言ってくる料理人志望の下士官までもがいたりするのである。
そして、それを見ていた帝国兵士は、
「俺達も食べたいな…。」
などと口からよだれを垂らしながらそう言っていたのだった。
>>150 ご感想ありがとうございます。
カランの塔に関しては貴方の言う通りですが、神聖寺については
○塾の神○寺+ガン○ーラに影響を受けて考えたネタです。
それはそうと、貴方の作品も面白いですねー。
自分はちとアクション重視(?)な感じなんですが、
貴方の作品の戦闘におけるリアルな描写などとても面白く、そして参考になります。
うぬぬ…男〇の方でしたか…ラスト前の塾同士の対抗戦のロボット暴走が記憶に残っています。
だって…あれだけの化け物塾生達が逃げ回るしかない!そのインパクトが強すぎでした。
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カノンダイバーのキャノン砲はビームランチャー…武器の種類まで間違える始末のファイン=アセンブレイス。
「ならば!」機体後方腰から伸びているプラズマホーンとウイングの展開方向を左右逆向きにしてマグネッサーの出力を全開にする…。
回転をしながら上昇を始める機体クレセントレーザーにエネルギーが流れ発射される。
回転しながら周りに向かって乱射する。何時の間にか空中に退避していたカノンダイバーを含めて直撃を受けた機体から白煙を上げて機能停止していく…。
300m程上昇して下を確認すると施設の入り口付近からはまだまだ代わりは居るぞとばかり敵が施設から出てこようとしている。
「…デススティンガー!?」中には第1次調査隊のデススティンガーが居るのだ。「これはこれは…昨日の友は今日の敵と言った所でありますか?」
センサーでコクピットを調べる…「!!!」パイロットが乗っている!?コントロールを完全に奪われるなんて事は暴走以外では考えられない状況だ。
デススティンガーの暴走と言えば西方大陸での悪夢がよぎる…その時ジェノザウラーに乗っていた彼は命こそ助かったがその時のデススティンガーは今見ているように大人しくはなかった筈だ。
その後共和国軍に回収されネオゼネバス帝国建国まで緩すぎる監視の中捕虜としては破格の待遇で中央大陸を観光した情けない思い出がよぎる…。
「取り敢えずは味方の救出を優先した方が良さそうでありますね。」空中から地上のカノントータスを攻撃しながら彼は作戦を練ることにした。
「また敵襲ですぅ〜。」ルディア=カミルの報告が届く…最近は情報処理ばかりしていたシュミット=エーアストは錆抜きの最中といった状況だった。
さっきの戦闘ではルディア少佐に駄目出しを貰っている。以前の彼ならあり得ない大雑把な行動だったと自覚がある。
「どんどん来い!!!全部やっつけますから。」鼻息を荒くした天才が叫ぶ、気合いが空回りしないかとルディア=カミルは渋い顔をするがその変化は一般的な者には全く解らない物凄く微妙な変化だった。
「何かぁ〜ファインさんとぉ〜似てきましたねぇ〜?」悪い所が移らない事を願うルディア=カミルであった。
デスアナライザーFFとデスザウラーSTは並んで戦場を北上している…。
これまでに4回戦闘をしているが元の機体の能力差とSTの暴力的な活躍により苦も無く侵攻している。
今回の戦力はヘルディガンナー20機程とレオストライカー40機程…それとライガーゼロパンツァー。
どうやら今回も指揮官機のライガーゼロパンツァーには誰かが乗っている様だったがやはりセンサーには全く反応が無い。
「どういうことなんでしょう?」サーモグラフィーや生態センサーに引っ掛からない人間…目の前の現実が理解出来無い事もありシュミット少尉は不気味に思う。
「気にするな。それが奴等の手だ真に喰らうと調査隊の者の様に遅れを取る。」落ち着いた声でSTのパイロットから通信が入る。
不思議な気分だった…シュミット=エーアストは何故か落ち着くこの声の主が誰だか検討が付かない。
しかし何か聞き覚えのある声…何故覚えていないのか?しかし考えない事にした。
そのうち解る…そんな確信があった訳でも無いが気にする事も無いし目の前の敵に彼は用が在るのだ。
「付き合ってもらいます!」そう言うとデスアナライザーFFを突進させる…。
…その戦闘はシュミット=エーアスト一人で全ての敵が全滅と言う形で幕を閉じる…。
本来の実力を出せさえすれば最初の戦闘の様な無様な醜態を晒す程弱くは無い。機体の性能差が在れば尚更の事だった。
それから数時間、特にこれといった事は起こらずに時が流れていった。聞こえてくるのはただただ波の音と
ゾイドの駆動音、そして飛行ゾイドの飛行音、それだけだった。
それが延々と続くと思われた。しかし、その静けさは瞬く間に終わりを告げた。
突然カンウの掴んでいた竿が何かを引いたのだ。
「う・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ!!な・・・何何ぃぃぃぃ!!?」
カンウの竿を引いている何かのパワーはとてつもない物だった。カンウが物凄い勢いで引きずられているのだ。
マオ自身も戸惑いを隠せずにほぼ混乱状態である。カンウはなおも引きずられる。
「きゃぁぁぁぁぁ!!まさかこれが怪魚!!!?誰か助けてぇぇぇぇ!!」
「何ぃぃぃぃ!!!怪魚だとぉぉぉぉ!!?」
「わぁぁぁぁ!!何かスタンティレル少尉のギガが大変なことになってるぞぉぉぉぉ!!」
「うおぉぉぉ!!俺たちも加勢するんじゃぁぁぁぁぁ!!」
その場にいた全員が手に持っていた釣竿をその場に捨て、カンウの元に駆け寄った。そして、
ある物はカンウを掴み、またある物はカンウの掴んでいる竿を掴んだ。
そうして怪魚かもしれない何かを一生懸命引っ張ったのだった。
その光景、端から見ればギャグかもしれないが、やってる当人からすれば真剣そのものなのだ。
全員で力を合わせても強烈な引きはとまらない。このままでは確実に全員海に投げ出される。
一方、この大騒ぎも帝国軍陣地まで伝わっていた。
「おーい!!何か怪魚が共和国の奴らの方にかかったらしいぞ!!」
「なんだと!!?今すぐ現地に向かうぞ!!」
ハガネの号令の元、全機一斉に共和国陣地へ走った。
「うあ!!」
その場にたどり着いた帝国軍は誰もが思わず唖然とした。
共和国ゾイド全着が一塊になって一つの竿を引いているのだ。しかしそれでもズルズルと引かれている。
先頭のカンウなどほとんど下半身が水に使っている。中のマオも涙が止まらない。
なお、これだけの引きに対してどうして釣り糸が切れないのか?という突っ込みはご遠慮いただく。
ハガネはその光景を眺め、頭を書きながら言った。
「しゃーない・・・手伝ってやるか・・・。」
「しかし!!あちらは敵ですよ!!」
反論するハガネの乗るゼノンの隣にいたデスザウラーに乗っている帝国兵士が反論する。
「しかしねー、怪魚を釣り上げるのはこちらとしても重要な任務だ。それは共和国軍にとっても同じ事、
なら手伝うしかあるまい・・・それにこのまま見過ごして怪魚を逃がしても上から何を言われるか分かった物ではないぞ。」
「しょ・・・しょうがないですね・・・怪魚の餌食となった仲間達の為にもここは我々がゼネバスの誇りを
捨てる必要があるようですな・・・。」
そう言って帝国軍が共和国軍に加勢していくのであった。
「ハガネ、あんた・・・。」
「勘違いするんじゃないよ!!あくまで今の敵は両軍共通して怪魚だから一時休戦してるだけの事なんだからね!!」
とにかく、両軍は一時協力して引く、帝国軍の協力を得た共和国軍は少しずつ引き始めていた。
そのたびに波が起きる。
「うぉぉぉぉぉ!!いけいけぇぇぇぇ!!」
全員が力をこめて引く、そして、ついに・・・
「釣れたぁぁぁぁぁぁぁ!!ってデカァァァァァァ!!」
釣れた、それは紛れも無い怪魚だった。その大きさはホエールキングすらも遥かに超えるものだった。
その上そのような巨大な物が釣れた際に起きる津波はすざましい。皆がその大波にさらわれてしまった。
とりあえず死傷者は0だったが、全機水をかぶってずぶ濡れ状態だった。
「でっかぁ〜・・・。」
カンウのキャノピーを開いて直にその怪魚を眺めたマオがその大きさに驚きそう言った。
「ホホジロザメ型のゾイドね・・・。」
カンウのすぐ隣で立っていたゼノンの中でハガネは真顔でそう言った。
帝国も共和国も互いに敵同士な事を忘れて陸に釣り上げられた怪魚を見て唖然としていた。
「お前達!!とんでもない事をしでかしてくれたな!!海の神様を釣り上げるなどと・・・。」
「うわ!!また出たさっきの婆ちゃん・・・。」
数時間前に両軍の前に現れた老婆がまたも両軍の前に現れたのだ。
「海の神様を釣り上げるなどと・・・このバチ当たりもの共がぁぁぁぁぁぁ!!」
老婆は手に持つ杖を振り回しながらそう叫ぶ。
誰もがこの老婆の処置に困り、沈黙が続いた。老婆はなおも叫びつづけていた。さらには手直にあったゾイドの装甲を杖で叩いたりしている。
「あああ〜もう!しょうがないな〜・・・。」
しぶしぶマオがカンウを降りて、説得のために老婆に近づいていった。
「あのね・・・お婆ちゃん・・・。」
可能な限り笑顔で老婆に話し掛けるマオ。
「また出おったかこのバチ当たり娘めがぁぁぁ!!」
老婆は振り回していた杖でマオに対して殴りかかる。しかし、マオには当たらない。体をそらしたり、
横に傾けたりと、最低限の動きで老婆の振り回す杖をかわしていく。
「お婆ちゃん・・・私の話を聞いてくれないかしら・・・。」
「誰がお前みたいな罰当たりの話を聞く物か!!」
老婆はそう言ってなおも杖を振り回す。しかし、相も変わらずマオには当たらない。
「ハア・・・しょうがないなー・・・手荒な真似はしたくないんだけど・・・。」
マオはそう言うと右腕を軽く振り始めた。老婆は少し驚いた感じで後ろに下がる。
「わ・・・な・・・何をするんじゃ・・・老人を大切にせい!!これだから最近の若いもんは・・・。」
老婆の言うことも耳にせず、マオは思い切り腕を振り上げる。老婆は青ざめた。
「ぎゃぁぁぁ!!やめろぉぉぉぉぉ!!」
バキン!!
マオが殴ったのは老婆ではなく、その近くにあった巨大な岩であった。岩はたちまち真っ二つに
殴り割られた。その光景に、老婆だけでなく、その場にいた誰もが驚いた。
「・・・・・・・・・。」
老婆は声も出なかった。
「だからね・・・私の話を聞いてよ。ね?」
「ハヒ・・・。」
ニッコリと微笑みながら優しく言うマオに対して老婆はガクガクと振るえながら小声でそう言った。
マオはとりあえず老婆が話を聞いてくれるというので本題に入ることにした。マオは海岸にそのままに
なっている怪魚を指差して言う。
「あのね・・・あれは海の神様なんかじゃあないよ。どうみても戦闘用に改造されたゾイドだよ。」
確かにその怪魚は野生のゾイドでは無かった。帝国の物とも共和国の物とも違う設計思想であったが、
紛れも無くそれは改造されたゾイドだった。
「だからさ・・・。ん?」
「カーッカッカッカッカ!!」
突然先ほどとは打って変わって老婆が笑い出した。それには思わずマオも退いてしまう。
「バレちゃあしょうがない!!そうさ!!あれは海の神様なんかじゃない!!」
老婆はそう言うと怪魚の上に跳び乗った。驚異的な跳躍力。これにはマオも唖然とする。
「貴様!!何物だ!!」
久々の出番のサクラ少佐がキオウのコックピット内部で叫ぶ。
「ならばお見せしよう。」
老婆がそう叫ぶと自らのボロボロの服を破り捨てた。そこに現れたのは「Z」と書かれた覆面を被ったいかにも変な男だった。
「私の名はドクターズィー!!」
「そのまんまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マオは愕然としながら思わず叫んでしまった。
完全に手をこまねいているファイン=アセンブレイスのロードゲイルにデススティンガーから荷電粒子砲が発射される。
「危ないでありますね…。」距離が開いている事と暴走時のスペックで予測回避をしている為完全に回避をしてはいるものの反撃の糸口を掴めずにいた…。
状況は悪化の一途を辿っていく…。これまでの戦力は装甲等には一切手を付けられていなかったがカノントータスは例外な様でビーム系の砲撃が機体に沿って流されて行くのだ。
「【電磁誘導シールド】の類でありましょうか?」一般に粒子兵器は何かの粒子を高速で発射する物でありそれが何か?何の力で打ち出されているかで名称が変わる。
ロードゲイルに取り付けられていたのは電磁加速粒子砲の種類で粒子に液体金属が多量に含まれている為磁力線の流れに流されてしまったのだ。
この手のシールドシステムは最大の物でマッドサンダーの反荷電粒子シールドの様に完全に最大出力以下の全ての粒子兵器が流されてしまう物まで存在する。
「こうなったら!」ロードゲイルを地上に向けて突入させる…地面すれすれでマグネッサーの最大出力でブレーキを掛けると同時にそれ以前にソードレールキャノンの左右にマグネイズスピアをセットしたリニアマグネイズソードでカノントータスを薙ぎ払う。
マグネイズスピアのサポートで振動回数を数倍にされたソードレールキャノンが磁力線の出力を上回り磁力線ごとカノントータスを二つに切り裂く。
直にその場を高速機動で離れると案の定今まで砲撃出来無かったゴルドスとゴジュラスガナーからのロングレンジバスターキャノンが戦闘地点に着弾し派手な火柱を上げていた。
各個撃破を続けながら敵の間を縫って逃げ回る…。後ろ向きな戦術だが数の差において圧倒的不利な彼にはこれが最善の行動と信じるしかなかった。
思惑道理に無人機の遠慮の無さ配慮の無さが幸いして程無くして敵の数は半数以下に激減していた…。
他人の心配よりも自分の心配をしなければならない状況が延々と続く施設入り口前の戦闘。
雑魚は取り敢えず同士討ちにさせる事に成功したが中核のゴジュラスガナー3機ゴルドス10機デススティンガー1機と戦力差の根本はまだまだ覆せない。
デススティンガーに至っては「人質」付きの出血大サービス的な苦境だった…。
デススティンガーの背中の隙間から例の寄生体が見え隠れする。「あれを何とか出来れば…。」そう言いながら荷電粒子砲やロングレンジバスターキャノンの攻撃を避ける。
そろそろ限界が近付いて来ているが本来なら先に到着している筈の味方が居ない事で順序が真逆になった為の弊害とと言った所だ。
ブロックスはバッテリー許容量を同サイズの通常ゾイドより増やすことは出来たが必要とされるパワーに対する発電量が全く折り合っていない為「スタミナ切れ」が良く起こる。キメラブロックスなら尚更の事である。
「もう少し遅く来た方が良かったでありますね。」無駄な動きを極力押さえながらも逃げる事しか出来無い…。
「真打ち登場ですよぉ〜。」間の脱けた通信が入る…。やっと本来ここに居る筈の味方が到着したので。
「随分と派手に暴れた事だな。」デスザウラーSTから通信が入ったかと思うと目の前を黒い巨体が横切る。STは迷うことなくゴルドスに狙いを定めて荷電粒子ビームキャノンを放つ。
それはその方向に避ける事を予め解っているかの様にゴルドスに吸い込まれその後ゆっくりと倒れる。鮮やかな手並みだった。
「中尉!退いてください後は任せて…」とシュミット少尉の通信を遮って彼は「デススティンガーに味方が乗ってる可能性があるから退けない…。」と通信を入れる。
「ならば止めて見せる事だ。」STより通信が入る。「やってみせるでありますよ。」砲撃の目標がSTとデスアナライザーFFに向いた事で出来た隙は事を起こすのには好都合だった…。
「では、そのゾイドは貴様が作ったのか?」
「ちょっと違いますね・・・。」
ハガネの問いに対してドクターズィーはそう言った。
「あなた方はハードス島の巨獣伝説をご存知ですか?」
「ハードス島の巨獣伝説?」
「何か超常現象研究隊の出番の予感・・・。」
それなりの反響があったようだが、ドクターズィーはなおも話を続ける。
「今から数千年、数万年という遠い昔、南の海に浮かぶハードス島に住むハードス人達は、
山のように巨大な鋼鉄の巨獣を操り外敵の侵略を防いだと言う。私はその山のように巨大な鋼鉄の巨獣を
ゾイドだと考え、発掘に全力を尽くした。そして私はそれを発見した!!
数万年という時が流れているのにも関わらず、少しも朽ちもせずにうじゃうじゃと並ぶ鋼鉄の巨獣達。
そして私は思った!!私は最強の力を手に入れたと。そしてこの力があれば我は世界の王になれると!!
中央大陸の怪物ゼネバス=ムーロアが!!暗黒大陸の覇者ガイロス!!が
ゼネバスの遺児ギュンター=プロイツェン=ムーロアが!!そしてドクターエーマがこころざし!!
目指し!!果たせなかった人類最高の夢!!世界征服!!しかし!!
この巨獣達を従えたこのドクターズィーは!!世界で初めて世界を征服した者として名を残すのだ!!」
「うっわぁぁぁぁぁぁぁ!!こいつ本当の馬鹿だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
マオは思いっきりそう叫んでいた。
しかしドクターズィーは顔色一つ変えない。というか覆面してるので顔色などわかるはずもないのだが。
「フフフ・・・馬鹿ねえ・・・。しかし、私が馬鹿かどうかは後の世の人が決めることだ。
今の人々に天才と呼ばれている故人達も初めから天才と呼ばれた分けではない。
むしろ当時は変人扱いされた人々がほとんどだ。マオ=スタンティレル君、君とて初めから強かった訳では無いように・・・。」
「どーでもいいけど、何で老婆の変装してたの?」
横からハガネが割り込んで言う。
「いや、あれはただのお遊び。海の神の祟りがあると言ってお前たちに恐怖を植え付けるためのな。
もっとも、こんな子戯にも等しい事など通用しなかったがな・・・。」
そう言うとドクターズィーは怪魚の中へと入っていく。
「さーて、これから君たちに私から「ダンテ神曲の世界・永遠の旅」へご招待して差し上げよう。
行け!!デビルジョーズ!!」
ドクターズィーが叫ぶと怪魚=デビルジョーズの目が光り、咆哮した。
この巨大なゾイドの咆哮音は半端なものではなく、皆が耳を塞ぐ。中には吹き飛ばされた者もいる。
そして、今度はなんと飛び上がったのである。
「何と!!空を飛べるのか!!!」
ロボットなだけに大音量に対するダメージも少なかったハガネがそう言った。
「デビルジョーズよ!!お前の力を見せつけてやるが良い!!」
デビルジョーズの頭部の丁度目の部分にあるコックピット内部でドクターズィーがそう叫ぶと
デビルジョーズの腹部の装甲が開き、中から大量の爆弾が投下された。
爆弾の雨あられが帝国、共和国のゾイド部隊に降り注がれていく。
爆弾を投下した後、デビルジョーズは一時的に距離を取り、再び両軍部隊へ向けて飛んでくる。
また爆弾を投下するつもりである。
「ひるむな!!攻撃しろ!!」
サクラはそう叫び、キオウの背中のバスターキャノンをデビルジョーズへ向けて発射した。
それに続いてカンウがバスターキャノンを、凱龍輝が集光荷電粒子砲を、マトリクスドラゴンと
飛行ゾイド部隊が空からデビルジョーズにミサイルを発射する。
南海の怪魚の作者さんへ:何と?ドクター〇〇ですか?何方かというと何たら男爵とかかんたら伯爵も微妙に混ざっている気がします。
長い強の世界がキターーーー!な感じですね。
ネタを誘導して貰おうとまたアイデアを募集してみたり…。
1,忘れ去られたレクス=アームズのギガの次の対戦相手?
2,最終戦闘を生身でやるかゾイドでやるか?
3,巨大なコアは何型ゾイド?
こう言う所で書いているので最大限活用?してみたいと思っています。ものがものだけに独り善がりの気が強く成り過ぎるとつまらなくなる可能性があるので宜しくお願いします。
エネルギーのチャージを少し待ってファイン=アセンブレイスは機体を動かす…。
寄生の仕方が巧妙かつ狡猾になってきている気がする。時間が経てば経つ程ゾイドに馴染むと言った所だろうか?
デススティンガーが節足動物型で在った為に寄生部分が見える状況だった。
ストームガトリングでデススティンガーに攻撃を仕掛ける。デススティンガーはEシールドで攻撃を防ぐがそこがまず狙い目だった。
「これでシールドは使えませんよ!」リニアマグネイズソードでEシールドジェネレーターを破壊する。レーザーシザースの反撃が来るがプラズマフィールドで威力を殺す。
それと同時に機体を横に回転させてダメージを防ぐがエネルギーの残量が見る見る減っていく…。
しかしそこは丁度デススティンガーのコアの辺りに移動が出来たので素早くリニアマグネイズソードを最大出力で突き刺す。
装甲を跳ね飛ばし寄生体を焼くがそこまでで左腕の機能が停止し左腕がバラバラになる。強力なショックを受けてデススティンガーは動きを止めるが止めは刺せなかった…。
残りの戦力はゴジュラスガナーのみに成っていたが高機動力に阻まれ中々排除出来無い。
「退いてください!あれを使います!」シュミット=エーアストがデスアナライザーFFに攻撃体制を取らせる。
背中のレーダーシステムが機体前に移動し急速展開されて行き最終兵器の使用の準備は整った…。
デスアナライザーFFは失敗作のリサイクル機体である。大口径荷電粒子砲の使用が出来無い為失敗と言われるが実質の出力は一般配備されたデスザウラーの中で最高の出力を誇っていた。
その為強行偵察機としての装備を取り付けられているがそれを応用する事でこの機体最強の攻撃兵器「ハイパープレスパルスショックブラスト」を発射する事が可能となった。
この衝撃波は高収束されていても展開したパラボラレーダーの幅の分…大口径荷電粒子砲の約12倍の幅と範囲に圧縮パルス振動を照射し相手を丸焼きにする兵器で音速で発射される為回避はほぼ不能の偶然から生まれた最終兵器である。
流石にキングゴジュラスのスーパーサウンドブラスターには敵わないが今の状況なら十分の威力を持っていることは確かだった…。
一瞬で施設の壁面に打ち付けられ丸焼きになるゴジュラスガナー。直撃を免れた機体もその衝撃波の余波で吹き飛ばされる。ロードゲイルやデススティンガーも例外では無く2〜3km後ずさる。
そして施設内から増援として出てくる筈であったキマイラ型ブロックスも完全にバラバラになり破損パーツの山に成っていた。
更に後ろの大型エレベーターをも破壊しておりこれ以上の増援は到達出来無くなり結果として施設入り口付近を完全に制圧する事に成功したのである。
ファイン=アセンブレイスは結局飛んでいったパーツの回収やキマイラ型のブロックスの再生を防ぐために生きているコアブロックの破壊を一人でする事になった…。
一人だけ苦労をしている…納得のいかない状況であったがデススティンガーのパイロットの治療等他の者には手伝う余裕など無かったのであった。
「こちらも攻撃開始!!共和国ごときに後れをとるな!!」
共和国に負けじとハガネが叫び、ゼノンのゼネバス砲、背中のセイスモ八連砲、ストームガトリングを
発射する。それに続いてデスザウラーが大口径荷電粒子砲を、アイアンコングがミサイルを発射する。
帝国、共和国両軍のトップクラスゾイドがそろった大火力。たちまちデビルジョーズを飲み込んでいく。
ホエールキングも一瞬にして消滅出来る程の威力だった。
「やったか!!」
誰かがそう叫んだ。しかし…爆風が晴れるとそこにはデビルジョーズが何事も無かったかのように存在した。
「ハッハッハ!!そのような豆鉄砲がこのデビルジョーズに通じるとでも思ったか!!」
ドクターズィーが両軍をあざ笑うかのようにそう叫ぶ。そして再びばらまかれる大量の爆弾。
両軍ゾイドはになす統べなく次々に破壊されていく。
「わぁぁぁぁぁっと!!どうすりゃあいいのよウワァァァァァァン!!」
「また少尉が泣き出したよ…。まあいつもの事だけど…。」
こんな緊迫した状況下でもギャグの心は忘れなかった。とはいえ、大ピンチには変わりなかった。
誰もが全滅を覚悟した。と、その時だった。
「ん?何だどこからか流れてくるこの音楽は…。」
1人の帝国兵士がそう呟いた。そう、なぜかどこからか不思議な音楽が聞こえてくるのだ。
「こ!!これは!!」
マオがそう叫び、カンウごと海の方へと向いた。
「何だ何だ!!?」
帝国兵士達はワケが分からず困惑する。
「大空魔亀ジャイアントトータスのテーマ!!」
「何じゃそりゃあぁぁぁぁぁ!!」
真剣な表情でさらに一筋の汗を流した状態で叫ぶマオに帝国兵士達が一斉に突っ込んだ。
そして、音楽と共に海の方から共和国軍超巨大移動要塞「ジャイアントトータス」が現れたのだった。
「ほう…。面白い物がやって来たな。」
ジャイアントトータスの姿を目の当たりにしたドクターズィーはそう呟いた。
「ハッハッハ!!苦戦してるようだね皆の衆!!どれ、ここは私とジャイアントトータスに任せてよ!」
ジャイアントトータス内のブリッジでミオはそう叫んだ。
そして叫び終わると同時にミオはジャイアントトータスを直接コントロールし、ジャイアントトータスを
デビルシャークへ向けて突進させた。
「あの人がマオちゃんのお姉さんね…。」
余りいい気持ちのしない表情でハガネが小声で呟いた。
「お姉ちゃ…じゃなかった大佐!!いくらジャイアントトータスでも…。」
「安心しろ妹よ!!巨大な対象との格闘戦にあってこそジャイアントトータスの真髄が発揮されるのだ!!
もっとも、それが使える相手はホエールキングやドラグーンネストくらいしか無かったから
今まで役立たす呼ばわりされ続けていたんだけどようやくその性能を発揮できそうだわ!!
行け行けGO!!GO!!ジャイアントマグネーザー!!」
ミオがハイテンションでそう叫ぶと、ジャイアントトータスの背中の甲羅部分の装甲が開き、中から
超巨大ドリル、ジャイアントマグネーザーが現れた。その直径だけでもデスザウラーの身長以上の太さが
ある。そしてそれを高速で回転させ、デビルジョーズへと突進させる。
「おぉぉぉ!!何かようわからんが行け行けぇぇぇー!!」
海岸で皆がそう叫ぶ。しかし、皆の期待を裏切り、デビルジョーズは軽々とジャイアントマグネーザーを
回避する。
「確かに食らえば一溜まりも有りませんが、どんな強力な攻撃も当たらなければ意味はありませんね。」
「やってくれんじゃないのさー。面白くなってきたわ。」
余裕たっぷりに言うドクターズィーに対してミオもそう応え、そして軽く微笑んだ。
なおも戦うジャイアントトータスとデビルジョーズ。
「まさに怪獣大戦争だな…。」
「ああ…。」
2体の巨獣の戦いを浜辺から見ながら唖然とした状態で誰かがそんな話をしていた。
「しかし…大丈夫かなー…。このままジャイアントトータスがやられたら帰る所が無くなっちまう…。
ん?あれ?少尉は?」
「あれ?確かにスタンティレル少尉がいなくなってる…。」
「帝国のアルティメットセイスモもいねーぞ。」
いつの間にかにマオとカンウそしてハガネのゼノンが共にいなくなっていた。皆は辺りを探し回るがやはり
見つからない。
>>恐怖の亀裂作者さん
貴方のバトストは色々と面白い兵器が出てきて参考になりますね。
>1,忘れ去られたレクス=アームズのギガの次の対戦相手?
>2,最終戦闘を生身でやるかゾイドでやるか?
>3,巨大なコアは何型ゾイド?
1に関してはとにかくパワーで迫る相手、もしくはテクニックで迫る相手、
とにかく両極端な感じの相手がいいのではないかと思います。
2に関しては・・・敵に寄生ゾイドを操る人間がいるというのなら
その人間との生身戦闘。そうでないなら直接ゾイドで戦闘という形がいいと思います。
最後に3は、やはりとにかくゴッツイゾイドがいいと思います。
何か変な言い方ですんませんね・・・
あ・・・書き終わった後に気づいたのですが・・・
>>171の最後の行がデビルシャークになってる・・・
正しくはデビルジョーズなのに・・・
スンマセン
今回の戦闘の成果は多大だったようで一般出入り口付近から敵戦力の出てくる気配は無い。
人員用の出入り口から何かが出てきた形跡が在ったのでデスアナライザーFFにその情報を送るファイン=アセンブレイスのロードゲイル。
本来彼の機体自体もそう言った物の情報処理の能力は高いが流石にスケールと出力と搭載装備に勝るデスアナライザーFFの足元にも及ばない上に自動解析能力も有るのでそっちの方が遥かに時間短縮になる。
「…これは昨夜の化け物の体液でありますね。」結果が予想道理で在った為にがっくりと肩を落す。
「…と言う事で警戒を怠らない様にして欲しいであります。」デスザウラーSTから一向に降りて来ないパイロットに連絡を入れると「了解した。今の内に貴公は仮眠を取っておくと良い。」と返信が届く。
ルディア=カミルから許可を取って一番最初の仮眠を取ることにした…。
「まだ目が覚めませんねぇ〜?」とデススティンガーのパイロットの容体を観ているルディア=カミル。
「少佐!デススティンガーの状況が解りました!」とシュミット=エーアストより報告が入る。「後で聞きますからぁ〜整理をお願いしますぅ〜。」
「了解しました。」こちらの方も処理を終えようとしていた…。
「!?」シュミット少尉はデススティンガーの情報を整理していたが明らかな異変を発見した為再度連絡を取る。
「デススティンガーをここに置いておくのは危険なようです。もっと離れた場所に移動させて置きます。」「了解しましたぁ〜。」
投げやりなやり取りにも聞こえるが、デススティンガーのパイロットを観ていたルディア=カミルは借り受けていたフレキシブルウェポンドライバーの安全装置を外していたままだった。
昨夜の状況を考えると…多分出ると思っていたからである。
テントに侵入者が居る…起きる筈のない空気の流れでルディア=カミルは既に3連サブマシンガンに変形させていたフレキシブルウェポンドライバーを抱き寄せる。
「おやおや?それは君たちの部隊の基本配備品かね?」気配が無い上に余裕たっぷりの態度と声…ザクサル=ベイナードが侵入していたのだ。
「勝手に入ってはいけませんよぉ〜。面会はぁ〜明日にして欲しいですぅ〜。」とあっさり切り返す。
「やれやれ…お目当ては機体の方か、では君の部下に伝言を伝えておいてくれ。最下層で待っているとな。」その声がしたかと思うと風が流れる…返事も聞かずに退散した様だ。
「それではぁ〜また明日ぁ〜。」ホッとしながらもテントの外に向けて3連サブマシンガンを掃射する…。
外に居た化け物は攻撃を受けて倒れる。砲身が密集している為に威力はただ3連なだけの数倍はある。
しかし後続が全く来ない…不思議に思っていると「不用心でありますよ。残りは入り口で潰して来ましたよ。」とファイン=アセンブレイスから通信が入る。
どうやら予め人員用入り口にトラップとしてプラズマネットを被せていたらしい。
「もう少し休んで置いて下さいねぇ〜。」「は〜いであります。」
部隊内では周りから見ると明らかに弛んだ風潮に支配されている様に聞き取れるがこれがこの部隊の基本であり最早彼等の指揮を取っている者も放任状態だった。
【あいつ等に何を言っても無駄】と言う認識が成立していたらしい…。
「デススティンガーを移動させて来ました。」「ご苦労様ですぅ〜。シュミット君も少し休んで下さいねぇ〜。
こうして3日目は過ぎて行く…。外円は精鋭部隊で事態の拡散を防いでいるが可能な限り迅速に事態の収拾を済ませる必要が在る。
ルディア=カミルはデススティンガーのパイロットを観ながらぼんやりと考えを巡らせていた…。
「一体何処に行ったんだ?まさか逃げ出したとは思えないし…。」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何かを発見したのか、ラインは思い切りそう叫んだ。
「どうした!!?誰もがラインの元に駆け込み言う。もう帝国も共和国も無かった。お互い敵同士な事など
すでに忘れてしまっていた。
「あれを…。」
ラインはジェネラルの右前足でデビルジョーズを指す。
「あぁぁぁぁぁぁ!!いつの間にあんな所に!!!」
誰もが一斉にそう叫んだ。何と、カンウとゼノンがデビルジョーズの背中にへばりついていたのだ。
ピッタリとくっついていればレーダーにも引っかからないのでドクターズィーもデビルジョーズも
全然気付いていないようである。
「さーて…、マオちゃん?何とか怪魚の背中に取り付けたけどこれからどうするの?」
ゼノンの隣でへばりついているカンウの中のマオに対してハガネは言う。
「さて…どうしよう…。」
「ちょっと待ってよ!!あんた…まさか何も考えてなかったの!!!?この作戦を考えたのは貴女なのよ!!」
真剣にへばりついた後のことを一切考えていなかったマオに対し戸惑い顔でハガネが突っ込んだ。
「じゃあ…このまま怪魚の頭まで走って直接コックピット狙いで行こうか…。」
「まあ、それしかないかもね…。」
デビルジョーズの背中にへばりつく形で伏せていたカンウとゼノンは一斉に立ち上がり、一斉に走り始めた。
しかし、突然デビルジョーズの背中の装甲の一部から対空砲の様な物がせり出てくる。
そしてカンウとゼノンに狙いを付け、砲撃してきた。
「やば!!もう見つかったよ!!」
とっさに横に跳んで回避するカンウとゼノン。デビルジョーズの背中からせり出てきたそれは、
対空砲とはいえど、ゴジュラスキャノンをも遥かに超える巨大な大砲だったのだ。
「わーっとっとっと!!まだまだ出てきたよー!!」
ハガネが慌て顔で叫ぶ。デビルジョーズの背中からせり出てきた対空砲は一つだけではなく、
あちらこちらから腐るほど出てきた。それには二人も思わず青ざめた。
「キャーキャーキャー!!」
二人ともキャンキャンわめきながら砲撃の雨から逃げ惑う。マオなどまたもやマジ泣きしている。
「ハッハッハ、もっと踊れ踊れ!!両軍最強ゾイドの舞だからな。なかなか見れる物ではない。」
デビルジョーズのコックピット内部、というかブリッジ内部のテレビ画面から映されるカンウとゼノンが
砲弾の雨の中を逃げ回る映像を見ながらドクターズィーは笑ってそう言っていた。
「ったくコイツどうしてこうも好き勝手撃ちまくれるのよ?自分の体も傷つくでしょうが…。」
「それをやっても大丈夫な自信があるからだろう?お前だってさっき見ただろうが。コイツの防御力を。」
砲弾の雨から逃げ回るカンウの中でグチるマオに対してハガネが冷静に言う。
「でもさ、いつまでも逃げ回ってるワケにもいかないよね。」
「右に同じ。」
二人はそう言うと逃げるのをやめ、自機の角度を90度反転、砲台の一つに砲撃した。
バスターキャノンとストームガトリング、セイスモ八連砲が叩き込まれ、砲台はあっという間に破壊された。
どうやら砲台そのものは装甲と違い、それほど強固な物ではないようである。
しかし、砲台はそれだけでは無い。数十にもなる大量かつ大型の砲台はまだいくつもあり、
カンウとゼノンに砲撃を続ける。で、結局逃げ回る二人。
「こうなったら作戦変更。コックピットの前にまずヒレを破壊する。ヒレを破壊すればバランスが崩れるはずよ…。」
確かに水中生物型ゾイドを飛行可能にしたゾイドはヒレがウィングとして機能する場合が多い。
それを破壊すれば勝機はあるとマオは考えたのだ。
「しかし、ヒレまでどうやっていく?この砲台群の突破は容易じゃないよ。」
「大丈夫。私にまかせてよ。」
マオはそう言うと息を大きく吸い込んだ。
「竜王咆哮破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
マオが叫んだ。もの凄い大音量。さらにそれがマオとシンクロしているカンウの口からこれまた超大音量の
咆哮音が放たれた。そして砲台の一群が粉々に粉砕されたのはその直後の事だった。
「ま…まるで…失われし伝説の武器…スーパー…サウンド…ブラスターだ…。」
ハガネは唖然としながらそう呟いた。
竜王咆哮破
竜王流格闘術奥義の一つ。己の叫び声を極超音波へ変換し、それによって対象を粉砕する技である。
この技の恐ろしい所は、音による物であるため、目で見ることは出来ず、回避が難しいと言う点である。
しかし、この技を実現させるには超人的な肺活量や体力が必要なため、超一流と呼ばれる者ですら
会得する者は100人に1人いるかいないかである。しかし、会得できた者も、この技の特性上、
喉を痛めてしまう可能性があるため、よほどの事がない限り使うことはない。
また、この技を科学的に解明し、兵器化した物がゾイドの武装として実用化されたソニックブラスターや
スーパーサウンドブラスターである。
鋼獣書房刊「世界の秘拳」より
「道が空いた!!行くよ!!」
「あ…。ああ…。」
マオの竜王咆哮破によって出来た道を大急ぎで走っていくカンウとゼノン。そして、それをテレビ画面から
見ていたドクターズィーは興味深く観察していた。
「ほう…あの小娘…あの竜王流をわずか1年で免許皆伝したと聞いてはいたが、幻の秘技とすら言われた
竜王咆哮破まで使うか…。これは研究してみる価値があるな…。奴の遺伝子を入手して研究すれば
最強の超人兵士軍団を作ることが出来る。この私の世界征服のために戦うな…。」
などと言いながらドクターズィーは不気味な笑いを浮かべるのであった。
南海の怪魚の作者さんへ。どうもありがとうございます。
日時的には中盤。まるで最近の〇イオハザードシリーズみたいに成ってしまいましたが、
これから施設内中心の話になります。その前に…ネタ整理をまた。
【技術】
フォートレスユニット:大量の火器が満載されたデスアナライザーFFのFの一文字目のユニットで要塞の名に恥じない攻撃力と防御力を誇る
荷電粒子バルカン砲:専用に調整された砲身を持つ荷電粒子兵器、非常に高い圧縮率の荷電粒子弾をばらまく
フライヤーユニット:デスアナライザーに装備されている飛行用ユニットでホバリングの要領で屈指の重量を誇るデスアナライザーFFを3000mの高さまで飛行させることが出来る
サークルクローラー:デスザウラーSTの脚部に装備されている移動用装備で円柱状に丸まったキャタピラなので不整地でも速度の低下が少ない、実はこの装備自体には推進能力を持たせておらずジェットホバーの推力を純粋に移動速度に還元する為の物
185mm荷電粒子ビームキャノン:デスザウラーSTに装備されている武装でバスタークローに装備されている185mmビームキャノンに20mm荷電粒子砲を内蔵した強化兵器
超電磁誘導シールド:機体表面より少し離れた場所に強力な磁界を発生させて粒子兵器の機動を逸らす装備
リニアマグネイズソード:ソードレールキャノンの左右にマグネイズスピアを設置する事で超振動ブレード同様の機構を持たせた兵器でマグネイズスピアからの磁力でソード部分が浮游→加速→振動して敵を切り裂く
ハイパープレスパルスショックブラスト:デスアナライザーFFのパラボラレーダーを介して高圧縮パルス振動波を照射する兵器で音速で照射されるので飛行ゾイド以外の者は発射を確認してからの回避は不可能で衝撃波と電子レンジの様な加熱効果でダメージを与える兵器
プラズマネット:潜入作戦や侵入者の排除用トラップで格子状に展開されるプラズマワイヤーで対象を焼いたり切ったりする、近付かなければ全くの無害
ここではこのコテハンに統一することに決めた開戦前夜の中の人です。
「硝煙の果てに」 しばしの間続いていた砂嵐がいつのまにか止んでいた。
フィル・ライアー一等兵は急造の壕から鏡を出して、敵陣の様子を見てすぐに眉をしかめた。
砂嵐が去ったというのに帝國軍が布陣している辺りには砂塵が舞っている様子が見えていた。
おそらく今日中にも帝國は宣戦布告を行うつもりだろう。そしてそれは直ちに共和国軍への攻撃となって前線に伝えられる。
帝國軍の総攻撃の前には、ライアー一等兵が陣取るちっぽけな監視壕など簡単に粉砕されてしまうだろう。
不安そうな表情が出ていたのか、周りにいる兵たちがライアー一等兵を不安そうな顔で見つめてきた。
ただでさえ高いとは言えない士気をこれ以上下げるわけには行かない。ライアー一等兵は慌てていった。
「大丈夫だ。帝國軍は今にも攻撃を始めるかもしれないが、こんなちっぽけな壕なんて無視して行くさ。ほとぼりがさめたら後方に下がれば良いよ」
自分でもあまりにも都合の良すぎる考えだと思ったが、周りの兵たちは安堵したように息をついていた。
兵たちの大半は一年兵でまだ十代だった。ライアー一等兵もこの壕の班を指揮しているものの、まだ十代の半ばを過ぎただけなのだ。
―――この壕も急造なら、この部隊も急造もいいところだ
都合の良すぎる話を疑いもせずに信じている兵たちの様子を見ながらライアー一等兵はやるせなさを感じていた。
90年代の半ばになって共和国軍は、急速に高まりつつある帝國との緊張から軍備拡張計画を開始していた。
だが戦後の復興期の中で削減されていた防衛予算を増大させることは難しかった。
予算の大半をゾイドの開発と整備にまわさざるを得なかった共和国軍が、人員の充実の為に苦肉の策として取ったのが下士官の増員だった。
下士官を増やしておけば、将来いざ有事になった時にも徴兵された兵を指揮する人員を確保することが出来る。
それは現有の人員数を変えること無しに実質上の軍拡が可能となることだった。平時こそバランスが悪い部隊が急造することになるが、戦時態勢への移行はスムーズに行えるはずだった。
しかし間の悪いことにライアー一等兵の所属する部隊での肝心の下士官の増員が行われる前に西方大陸に送られてしまっていた。
それどころかベテランの下士官の多くが再教育の為に訓練部隊に出向していた。
これでは何の為の下士官教育なのかわからなかった。
そして、それが二年兵にすぎないライアー一等兵が小規模とは言え歩兵一個班を率いなければならない理由だった。
一年兵:入隊して一年目の兵隊、二年兵:同じく二年目の兵隊
一方、カンウとゼノンはデビルジョーズの左ヒレの丁度付け根近くの部分に到達していた。
「ようし!!この関節部分を撃ちまくれぇぇぇぇ!!」
マオが叫ぶ。何故か今度は妙にハイテンション。
「よくも今まで好き勝手してくれたな!!ゼネバス砲発射ぁぁぁぁ!!」
ハガネが叫ぶとゼノンの口から極細のビーム。超集束荷電粒子砲、通称ゼネバス砲が放たれた。
超長距離からでもゴジュラスギガの古代チタニウム合金すらも撃ち抜くゼネバス砲。
それを超至近距離から、さらには関節部分に撃ち込まれたのだ。いくらデビルジョーズとて一溜まりもない。
ハガネはそう思った。
「ウソ…。」
ゼネバス砲を関節部分に撃ち込まれたにも関わらず、決定的なダメージが確認できなかったのだ。
冗談のような頑丈さである。
「なんなのよコイツは!!」
ハガネはコックピット内のディスプレイを叩きながらそう叫ぶ。ハガネのAIは半ば絶望しかけていた。
いや、至近距離からのゼネバス砲ですらビクともしなかったのを目の当たりにすれば誰だって絶望しないはずはない。
「絶望するのはまだ早いよ!!」
ハガネにそう言い聞かせたのは誰でも無い、マオ自身だった。
ハガネが後ろを向くとマオのカンウが高く跳び上がっていた。次の瞬間カンウの右足がかすかな光を放った。
「はぁぁぁぁ!!神聖寺気功爆砕脚ぅぅぅぅぅぅ!!!」
マオがそう叫ぶと同時にカンウの跳び蹴りが先ほどゼノンがゼネバス砲を撃ち込んだ部分に寸分の狂い無く
叩き込まれ、そしてデビルジョーズの左ヒレ関節が文字通り爆砕された。
神聖寺気功爆砕脚
神聖寺の奥義の一つであるが、これは割と基本的な技とも言える物である。
要は人体の神秘の力である「気」を己の足へと集中させ、蹴りの破壊力を倍増させる技である。
無論この技の会得には体力はもちろん、気を具現化させる強い精神力が必要なのは言うまでも無い。
オリンポス書林刊「気の不思議」より
「おおおお!!ここまでやるか!!ますますアイツの研究がしたくなったぞ!!」
左ヒレがやられた事によりバランスを崩し、揺れるデビルジョーズ内部でドクターズィーはとまどいながらも笑ってそう言った。
「うわわわわ!!落ちるぅぅぅぅぅ!!」
デビルジョーズの左ヒレの付け根部分が破壊され、左ヒレが本体から分断されたのはよかったが、
それに巻き込まれてカンウとゼノンは左ヒレと一緒に落下してしまった。
このままでは二機とも海に叩きつけられる。しかしその時だった。突然カンウの落下が止まったのだ。
「本当に貴女は無茶苦茶すぎですわね。」
落下するカンウをギリギリで救ったのはアルミのサラマンダー「ブロンズゥ」だった。
ブロンズゥの両足がカンウの両肩をガッチリと掴んでいる。
「アルミちゃんありがとう…。あ!!ハガネは!!?」
アルミに礼を言うとマオは落下するゼノンの方を向いた。ゼノンの方には誰も助けに来ていない。
ゼノンはこのまま海に叩きつけられるかに思えた。しかし、ゼノンは自らに装備されている
ブロックスパーツに搭載されたマグネッサーシステムを発動させ、その揚力によって落下速度を減速させて
無事に着水していた。
ハガネとゼノンの無事を確認するとマオは上を、ブロンズゥに乗るアルミの方を向いた。
「アルミちゃん!!お願いがあるの!!カンウを上へ運んでくれないかな?」
「え?どうして上へ運ぶんですの?」
「いいから!!私に考えがあるのよ!!」
「でも…いくらブロンズゥでも単機でゴジュラスギガを運ぶだけでも奇跡だと言うのに…ましてそれを上へ運ぶなどと…。」
「いいから黙ってやれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
マオの怒りのこもった叫びにアルミは思わずビクっとした。アルミは黙ってマオの指示に従ってカンウを
掴んだまま上昇していく。とはいえ、200トンを超えるカンウを単機で運ぶのはいくらサらマンダーとて
つらい。その上昇速度はもの凄くゆっくりしている。
「一体…何を始める気なんだ?」
だれもがその光景を見て唖然としていた。
「何を考えているかは知りませんが、そうはさせませんよ。」
ドクターズィーはそう言うとデビルジョーズの背中の対空砲をカンウとブロンズゥへと向けた。
「おっと!!そうはさせないよ!!」
その直後にジャイアントトータスが体当たりをかけてきた。デビルジョーズは体勢を崩す。
「妹が何を考えているかは知らないが、とにかく邪魔はさせない!!」
ミオはそう叫んだ。
ブロンズゥはカンウを掴んだままなおも上昇していく。少しずつ少しずつ、上昇していく。そして、
巨大なデビルジョーズとジャイアントトータスすらも豆粒ほどの大きさにしか見えなくなるほどにはまで
二機は上昇していた。
「アルミちゃん、この辺で良いよ。今まで私の無理につき合ってくれてありがとうね。」
マオはニッコリと微笑んだ。
「え?貴女一体何をする気なんですの!!?」
アルミは思わず焦り顔になる。その直後にカンウは自分からブロンズゥを振り払って落下し始めた。
「あああ!!」
アルミは思わず叫び、再びカンウを捕まえに行く。
「来ないで!!」
落下中のカンウの中でマオは叫んだ。
「で…ですが…。」
「いいから黙って見てて!!」
心配そうな表情で言うアルミに対してマオはそう叫んだ。そしてなおもカンウは落下していった。
電撃ホビーマガジンの〇〇〇〇オリジナルユニット募集のイラストを落した気分がブルーなまま再開。
ーーーーーーーーーーーーーーー
帝国軍警備部隊はレーダーに空を飛ぶデススティンガーを発見する。それは一直線に東方大陸の方角へ飛び去ったという…。
---抹消された事後報告より---
ファイン=アセンブレイス中尉、シュミット=エーアスト少尉は共に仮眠と言うより惰眠を貪っていた様で突然目を覚まし辺りを見回す。
「寝過ごしたでありますか?」「寝過ごしたぁ!!!」共に通信チャンネルを開けたまま叫んだのでテントの中は大音量の目覚ましコールが流れる結果となった…。
「…なんですかぁ〜騒々しいですよぉ〜。」ルディア=カミル少佐ほ不満そうに呟く。どうやら寝過ごした彼らを起こさずにずっとデススティンガーのパイロットを観ていたらしくすねてしまった様だった。
「すぐには動けないようでありますので人員用入り口から施設の端末を探して来るであります。」そう言うとフレキシブルウェポンドライバーと潜入用装備一式と予備の大型ニードルガン2丁を身に付けるとテントを出て行こうとする。
「その前にぃ〜人員用入り口を一つを残して壊して置いて下さい〜。」とルディア少佐に命令される。
「それは手の開いているシュミット少尉…。」「命令ですぅ〜。はいっ!復唱〜。」「了解であります…。」流石に命令系統は正常な部隊だった…。嫌がらせにも聞こえたのだがファイン中尉は諦めることにした。
「…爆破。」爆風と共に周辺が瓦礫に成り一つを残し人員用入り口を塞ぐ。これなら緊急時にゾイドで瓦礫を排除すれば脱出も容易なのでこう言う場合はこれに限る。
そう自分を納得させると彼は入り口のプラズマネットを侵入後に再設置した…。
大電力を喰う設備の類は停止しているが基本的な電力は在るようで施設内は証明がしっかり付いていた。
「!」角を曲がると直に凄惨な光景が広がっていた。夥しい共和国軍の人員の遺体…しかもそれは内側から何かに喰い破られた様な後が在る。
「ここが彼等の生まれた場所でありますか。」彼等とは夜中に現れた化け物の事である。
累々と横たわる死体の中を注意して通り抜けると後ろから物音がした…。嫌な予感はするが振り返らない事には事態を把握することが出来ないので振り向くとそこには何も居なかった。
実際には天井を何者かが蹴り破ろうとしているらしくガンガンとうるさい音を立てている。私設に入って5分も経たない内に「何か」と遭遇したファイン=アセンブレイスだった。
やっとの事で天井を突き破り降りてきたそれは昨日調査部隊に聞いた物全てと全く似つかわない姿をしていた。
「やっと助けが来た〜って帝国軍!?」こんな場所に似合わない少女…しかし体の大半が甲殻皮膚に覆われ顔は見えない。少女と断定したのは声の高さと衣服の残骸からでその体躯は年齢の1,5倍から1,8倍と言った所だろう。
「そうでありますよ。あなたは?階級と所属部隊は?」と直に戦闘に成らなくて済んだと安心して質問をする。「私は…って何で帝国兵に答えなくちゃいけないのっ!」肩透かしを喰らって敵兵の目の前に出てきてしまった事にイライラしているようだ。
「まあまあ…落ち着くでありますよ。これでもどうですか?」と形態食料を差し出して「餌付け」を試みる。
「!」食料を目にして気配が大きくなる…正に飢えた獣の様に彼の手から食料を奪い取ると10m程離れて食料を食べ始める。
「…信用が足りないようでありますね。」こう見えても情報処理機能及びスコープ機能付き伊達眼鏡を掛けているし表情は緊急時以外常に笑顔を絶やさない自分が警戒されている。所属の違いだけでここまで警戒されたのは初めてらしく彼は壁に指を付けてくるくる回し始めた。
食料を食べ終わった彼女はその状況を見て…「あれぇ〜何をしてん…のっ!?」彼女の放った言葉は半分はファイン=アセンブレイスに対してで在ったが途中から別の者に向けられていた。
「はい?」不信に思い後ろを振り向くと…やっぱり遇いたくも無い来客が目の前に居た…。
あ…また番号変え忘れた。ついでに42でサンダークラッシュをタンダークラッシュて書き間違えてました。申し訳ないです。
ーーーーーーーーーーーー
「…」何も言わずに目の前の化け物を殴り倒す…。「こっ怖い…。」どうやら折角質問攻めにしようとしていた相手に新たな恐怖心を植え付けてしまった様だった。
起き上がろうとする化け物に八つ当たりと言わんばかりの蹴りの応酬を彼は見舞う…彼女の目の前には人間の限界を超えた化け物を超える「仰天人間」が居た様にしか見えなかった。
「…あの〜もしかして…嫌われたでありますか?」そう言いながら中から本体が出てこない様に中心部に大型ニードルガンを打ち込む。
これは簡単に言えば「釘打ち銃」の一種でこの銃は5寸釘を100km/h以上のスピードで打ち出す物で長距離では無く近距離で使用するものだ。
「えげつない…。」どうやら少女は何かの理由で仕官か徴兵されていたのだろう…普通ならこの惨状を見れば気持ちも悪くなるものだがそう言った感じは無い。
「え〜っともう一度聞くでありますよ。」と彼が言うと「共和国特別機甲兵団所属…ミズホ=浅葱特別中尉…。」「特別中尉殿でありますか!?」突然上官に対する態度に切り替わるファイン=アセンブレイスを見てミズホは笑い転げる。
「あはははっ面白い面白い〜。」そう言うとミズホは頭部に在る甲殻皮膚をどかして顔を見せる…やはり十代前半から丁度後半と言った少女の顔が出てくる。
「おおっ!?自分好みでっ…。」そう言い終わる前に鋭い突っ込みが来たのは言うまでもない。「良いパンチを持っているであります…。」これで掴みは完璧か?どうやら不信感と警戒心は少しは晴れたようだった。
明後日の方向に向いた話の方向を元に戻して彼は質問をする事にしたが…「いっぱい出てきたよ…。」ミズホの指を指す方向から天井を這ってくる化け物が大挙押し寄せて来ていた…。
「何処かに身を隠せる場所は?」「こっち!」天井の穴を指さす。天井に登り穴にプラズマネットを仕掛ける。
プラズマネットに阻まれ天井を伝ってきた化け物は下に落ちる…。確認すると最早「人」の特徴すら持っていない。
「あれは…?」と聞くと「セカンドよ。」と答えが直に返ってくる。どうやらまだ別の種類が居るらしい事だけは解ったファイン=アセンブレイスだった。
シュミット=エーアストは仮眠を取っているルディア=カミルを後目にデススティンガーのパイロットの容体を観ながら昨日の情報を報告書にしていた…。
本部からの報告によるとデススティンガーは背中から羽根を生やして東方大陸の方角へ飛んで行ったと言う…。
「世も末ですね…。」そう言いながらも顔は笑っていた。デスザウラーSTのパイロットは結局コクピットから降りては来ない様で今は少佐同様休んでいる。
色々と調べて見ると寄生しているゾイドは特定の姿を最終段階としているらしいがそれの予測情報はどれも荒唐無稽と言って良い物だった。
「龍型、グリフォン型、ヒドラ型…舐めているのか?」其処に映し出された物はそう言った幻獣型ばかりだった…。
解析が間違っていそうな者ばかりで彼は途中で解析を諦めた。
彼はファイン=アセンブレイスが負傷して返ってきても良い様に医薬品の確認をし始めたが通信機に突然通信が入り慌てて通信を取る。
「どうしたんですか!?」と問いかけると「こちら…一次調…部隊…だ。…施設…下に…巨…なコア…。」そこで通信が途切れる。
「中尉の言ったB級ホラーってもしかしてこの事か!?」単なる冗談だと思っていたが彼の脳裏にやばい光景がちらつく。
デスアナライザーFFに乗り込み通信機を起動させる。「中尉!?大丈夫ですか?」「一応でありますよ。状況は厳しいでありますがね。」と通信が返ってくる。
「まだ30分も経ってないじゃないですか!?」パニック状態になり正確な判断力が失われていたシュミット少尉だった…。
落下していくカンウは徐々に加速していく。そして、今度は頭を下に向け、腕を頭の上に向けて
回転し始めた。その回転は徐々に加速していく。
「こ!!この技は!!」
その様子をジェネラルのコックピットから望遠モードで見ていたラインは思わず叫んだ。
なおもカンウは回転しながらデビルジョーズに向けて落下する。
――――奴を一気に倒すにはコアを正確に破壊するしか無い!!奴のコアの場所は分かっている!!
奴の体からもっとも強い気の発せられている場所!!そこが奴のゾイドコア!!
しかし、問題は奴の固く分厚い装甲を破れるか否か!!
破れなかったら即死は確実!!しかしやるしかない!!奴の装甲と!!私の技!!
どっちが勝つか!!勝負!!!―――――
「食らえ!!神聖寺真空超転撃改!!その名もギガクラッシャァァァスピィィィィィン!!!」
マオの叫び声が広大な大空に響き渡ると同時にカンウが竜巻と化した。
神聖寺真空超転撃
西方大陸拳法総本山「神聖寺」の奥義の一つ。自らの体そのものを超高速で回転させることで、対象を
貫くという技である。無論超高速回転を可能にする体術と、回転中でもバランスを失わないバランス感覚、
そして強靱な精神力が必要なのは言うまでもない。また、この技を科学的に解明した物がマグネーザーと
されるのが現在の通説である。
オリンポス書林刊「もう人間技じゃねえ!!」より
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
その場にいた全員が驚愕の叫び声を上げた。カンウの巻き起こす竜巻はさらに巨大化していく。
もはやトルネードとも言える物だった。相当に距離をとっている両軍ゾイド部隊すら風で押される程の
強風がまき起こる。マオの言ったギガクラッシャースピンとはその名の通り、前述の説明にあった
真空超転撃をさらに改良した技なのだ。もう既に人間技ではない。
「す…スゲエ…、前に見たときとは段違いだ…。」
強風に煽られる機体をどうにかその場に踏ん張らせながらラインがそう呟いた。
「おおおおおおお!!凄い凄い!!凄いぞおぉぉぉぉぉ!!」
トルネードと化したカンウの姿を目の当たりにしたドクターズィーは感激の表情で叫ぶ。
「アレが…マオちゃんの力…?人間はあれほどの高みまで行ける物なのか…。」
ゼノンのコックピットから投影される映像越しにトルネードと化したカンウを見ながらハガネは驚きの表情で呟く。
「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
マオはさらに叫んだ。それと同時にトルネードと化したカンウの体が光を放った。
―――――回転させるだけではダメだ…私の持つ気をありったけ使って奴を貫く―――――――――
「やばい!!アイツ死ぬ気だ!!」
カンウの起こすトルネードに伴う大波に煽られるジャイアントトータスの中でミオが叫んだ。
やはり外見以外全然似ていないとはいえど、やはり一卵性の双子、そう言う事が分かるのだろうか…。
「大丈夫っす!!少尉は死にません!!」
そう叫んだはライン自身だった。
「今までも様々な修羅場をくぐってきましたが…少尉は生きて帰ってきました!!
セイスモサウルスの大群に囲まれたあの時だって…、だから…オレは少尉を信じます!!」
ラインの目に涙が浮かんでいた。そもそも直接的な部下としてマオと共にいることが多かったのはライン自身なのだ。そして、ラインは誰よりもマオを信じていた。
「そうだな…私も妹を信じてみるとするか…。」
ラインにさとされ、ミオもそう呟きながら笑った。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
マオの叫び声が再び広大な大空に響き渡った。そして、カンウが超高速でデビルジョーズの背中に
直撃した時、マオの意識はそこで途切れた。
「何かインチキ臭くない?」プラズマネットに引っ掛かり床に落ちていく「セカンド」に大型ニードルガンを正確に打ち込んでいるファイン=アセンブレイスを見ているミズホ=浅葱は正直な感想を漏らす。
天井から床までは約3mばかりで次々と彼等の体が積み上がっていく…。そろそろプラズマネットに直接当たる所まで来そうな勢いだった。
「ここから別の所には行けませんでありますか?」とファイン中尉の問いに「無い。」と一言で答えるミズホ特別中尉。
この先は行き止まりで先に追ってから逃れる為にパイプの類や建材を破壊して足止めをしたらしく少し先に進むと行き止まりとなっている。
プラズマネットの電力はそろそろ限界に近い。フレキシブルウェポンドライバーをプラズマグレイブ形態に変えて構える…。
そのすぐ後にプラズマネットを越えてセカンドが迫ってくる。「しょうがないでありますね…浅葱特別中尉一番奥まで下がるであります!」
直に彼の脇を通り抜けて一番奥まで後退するミズホを確認するとその姿、行動パターンどうりに飛び掛かってくる彼らを切り裂き始める。
「…こんな事って!?」そう言うのも無理は無く彼の動きは以前の戦闘よりも隙は無くただ振り回しているだけに見えるが巧みにスナップや振り抜きをコントロールして確実に相手にプラズマグレイブの刃の部分が当たる様に体を動かしていた…。
「どうでありますか?」偶然に難を逃れたセカンドの攻撃を甲殻皮膚で受け流し隙だらけになった彼に胴薙を決めて真っ二つにしながら言う。
パチパチパチ…ミズホ=浅葱から拍手を貰いながらバッテリーを入れ替えるファイン=アセンブレイスはシュミット=エーアストに連絡を取る。
「取り敢えずは何とか成ったでありますよ。」しかしまだ施設に入って30分も経っていない。まだまだ本番はまだまだこれからと言った所だろうとファイン=アセンブレイスはもう一度彼女に質問をする事にした。
「…って所ね。」取り敢えず答えてくれる事を聴けるだけ聴く事に成功したファイン=アセンブレイス。
どうやら先の戦闘でかなりの信用を得る事ができた様で移動を再開すると何をするでも無く後を付いてくる。
今やこの施設には敵しか存在していない現実はほんの少しでも信用できる者と一緒に行動した方が良いと判断したのだろう。ミズホ=浅葱が付いてくるのを気にする必要は余り無い様だった…。
レクス=アームズは迷っていた…。施設の防衛機構の一つスライドフロアの中に迷い込んでしまい右往左往している。
どうやら敵対戦力が近くに居ない様でゴジュラスギガの本能をもってしても中途半端に動き止まったシステムの迷路は複雑過ぎて施設を隈なく歩き回った彼らでさえ何処に行ったら良いか解らない始末だった。
「迷ったな…。」さっきから同じ所をぐるぐる回っている事に気づいて立ち止まっていた。
彼のギガは背中の左側に中折れ式のロングレンジバスターライフルを持ち右側には拡散加速粒子ビーム砲を装備し、右手に4連ショックカノン左手にジェットアンカーを装備した長期戦用の装備をしている。
弾薬も豊富に持てる装備に限定しているので経戦能力も高い。そうそう敵に遅れを取るような事は無い筈だった…。
このスライドフロアにはフロアマスターが居たのだ。防衛システムの強化のため無人操縦のゾイドに警備システムを搭載し侵入者に攻撃を仕掛けるスリーパー技術の応用システムだった。
それはギガを発見すると少しづつその距離を埋めていく…接触は時間の問題だった。
「………はっ!!」
マオが気付いたとき、彼女はとある一室のベッドの上に寝ていた。体の各部に包帯が巻かれている。
「ここは…。」
「ジャイアントトータスの病室っすよ…。」
マオの寝ていたベッドのすぐとなりのイスに座っていたラインが小声でそう言った。
「あ…確か…私は敵の怪魚につっこんで…。そこから思い出せないんだけど…どうなったの?」
マオはそう言いながら自分の頭を触った。
「ったくあんたもムチャするねー。あんな事したら普通は死んでるわよ…。おかげであんたの
ゴジュラスギガもズタボロ。修理とオーバーホールで当分出撃出来ないわね。」
ラインのすぐ隣に立っていたミオが腕を組んだ状態でそう言う。
あの時、マオとカンウはデビルジョーズの装甲をコアごと正確に貫いていた。その後、デビルジョーズは
ジャイアントトータスの主砲、ジャイアントバスターキャノンによって破壊された。
しかし、そのままカンウは海中に落下、カンウの体も各部が損壊し、マオ共々生きていたのが不思議なほどであった。
その後、すぐさまマトリクスドラゴン隊によって回収され、ジャイアントトータスに運び込まれたのである。
帝国軍はどうなったかというと、双方戦わずにそのまま撤退した。と言っても、闘えるだけの戦力など
ほとんど残っていなかったというのがそもそもの理由なのだが…。
「とにかく、あんたのギガの修理は相当に時間が掛かるだろうよ。新しく一から作り直した方が早い程だよ。」
「大佐…すみません…。」
マオは肩を落としてミオに誤った。しかし、ミオはマオの頭を優しく添えるように乗せた。
「しかし、アンタも強くなったね。昔はちょくちょく虐められては泣いて帰ってきたというのに…。
見直したよ本当に。ようやく私の妹らしくなったじゃない。あと、ゴジュラスギガの修理に関しても
責任を持って修理するよ。あと修理ついでに機体各部のレスポンス等色々な強化もしといてあげるよ。」
ミオはニッコリと微笑んでそう言った。
マオは少し唖然とした表情で開いた口がふさがらなかった。
ミオがマオを誉めたのはこれが初めてのことだったからである。
「とにかくこの怪我です。少尉は当分出撃できませんね。」
「私は怪我で済んだという点が凄いと思うが…。ん?」
その時、部屋の外が騒がしかった。何か強い力に押されているのか、ドアがギシギシと音を立てる。
そしてドアがバンと音を立てて壊れ、床に叩きつけられると同時に大勢の男達が雪崩のように
なだれこんできた。イケメンからゴツイ系まで様々な者がいた。
「おい…お前ら何してる…。」
ミオは目を細めてそう呟く。
「い…いや…マオちゃんの見舞いに…。」
男達は青ざめた表情でそう言った。
「見舞いなどせんでいい!!全員持ち場の戻れぇぇぇぇ!!」
ミオがそう叫ぶと同時に男達は一目散に逃げていった。
「じゃあ…オレもそろそろ持ち場に戻ることにしますよ。」
男達が一目散に逃げた後、ラインはミオとマオにそう言いながら敬礼して歩いて部屋の外に出た。
「アンタも本当にいい部下を持ったねー。肝心の上官が馬鹿上司なのに…。」
ミオは笑いながらそう呟き、マオは苦笑した。
「とにかくアンタは当分出撃不可だね。養生しな。」
一方帝国軍はというと、ドラグーンネストに乗り込んで帰還中であった。
ハガネは自室にこもって色々と考え事をしていた。
「私はアイツに…マオちゃんに勝てるのか…?それだけじゃない。
ドクターズィーが言っていたハードス島の巨獣。巨獣はあれだけではないはずだ…。私は…勝てるのか…?」
デビルジョーズが撃破された際、ドクターズィーの遺体は発見されなかった。
ドクターズィーがあの後どうなったかはドクターズィー本人にしか分からない。
これは帝国と共和国、中央大陸を舞台に戦う二大勢力にとって共通の驚異となる第三勢力の登場のプレリュードだった…。
終わり
っつーわけでこの話は完結です。
ですが、自分の新作登場はまだ先になりそうです。
とりあえず設定整理とかそう言う事もやりたいですし・・・
それではまた・・・
197 :
赤い雪:03/10/26 01:16 ID:???
雪で白く覆われたヴァルハラにで銃声の後にアイアンコングが地にふした。
真っ白い吹雪の中で鮮やかな赤が浮かび上がる。アイアンコングPKだ。
グシャ という音と共にアイアンコングのコクピットを踏み潰す。
「これで終わりか?」
銜えていた煙草を落とし、セインが聞いた。
「どうやらそのようだな。辺りに敵はいない。」
その傍らに座っているケントが答えた。
二人とも髪は半分以上白髪で顔にはシワが目立つ老人だ。
だが何十年にもわたりゾイドに乗り続けた歴戦の勇士である。
吹雪はますます強くなっていく。
まるでこれから始まる激戦を演出するかのように。
既にヴァルハラはほぼ包囲され、ガイロス・ヘリック連合軍の総攻撃も間近だ。
「雪か・・・・。俺達の最後の活躍を飾るにはちょうど良い演出だな。」
セインが煙草に火をつけながら言った。
「そういえば俺達の初陣もこんな雪だったな。」
顎の髭をさすりながらケントは昔を思い出した。
まだ15歳程度の時にガイロスに渡った事。
吹雪の中二人で最前線に立たされた時の事を。
「そうだな。全部昨日の事のようだ。」
そう言いながらセインは年をとったな、と思った。
198 :
赤い雪:03/10/26 01:18 ID:???
不気味なまでの静寂が十数分続いた。
一発の砲弾が横にいたハンマーロックを直撃し轟音が響く。
建物の合間から何体ものゾイドの影が見える。
「始まったか。行くぞ。」
セインが操縦桿を強く握った。
ケントが敵の正確な位置を指示し、そこに背中の大型ミサイルを撃ちこむ。
すぐに爆発が起き、炎が上がった。
炎の中に尚もビームランチャーを撃ち続ける。
その炎の中にまた炎が生まれ、火の壁となっていく。
だがゴジュラスを中心にディバイソンやレッドホーンが向かってくる。
その攻撃を素早くかわしながら敵に攻撃を加える。
倒れたレッドホーンを踏みながらその後ろにいたゴジュラスの頭部を叩き割った。
それと同時に小型ゾイドを何体も撃つ。
目の前にジェノザウラーが迫る。
すかさずビームランチャーがジェノザウラーの頭部を打ち抜いた。
その一瞬の隙に背後にいた白いアイアンコングの拳が振り向きざまに胸部に直撃した。
胸部装甲が砕けゾイドコアも傷ついたようだ。
力がみるみる抜け落ちていき、PKは倒れこんだ。
199 :
赤い雪:03/10/26 01:20 ID:???
「そろそろ終わりか。」
セインがそう言いながら火の消えた吸殻を投げ捨てる。
「待ってろよ、すぐに俺達も逝くからな。」
そう言うと二人は小銃と手榴弾を持ってPKのコクピットから這い出して物陰に隠れた。
その直後にPKは砲弾を撃ち込まれ爆発、炎上した。
ポケットを弄ると煙草の箱には最後の一本が残っていた。
それを取り出し火をつける。
(美味い、今までこんなに美味い煙草は吸ったことが無い。)
セインの目から一筋の涙が落ちた。その外見からは明らかに不似合いな涙だ。
死への恐怖はない。
未練と言えば中央大陸に翻るゼネバスの旗と子供達を見れないことだけだ。
だが自分達の死がその為の礎になるならむしろ満足することだった。
「愉快な人生だったな。」
「あぁ、あとは息子達がゼネバスを復活させるのを祈るばかりだな。」
最後の会話を交わした後、手榴弾のピンを外し迫ってくるガンスナイパーに投げつけた。
爆発すると同時に物陰から飛び出す。
そして生身で敵に向かって行き二人は炎の中に消えていった。
鉄竜騎兵団の成功を祈りながら。
プロイツェンの反逆を読んでると思いついたので久しぶりに書き込み。
まさかコロコロのあの話があそこまで化けるとは。
親父の哀愁漂う背中・・・何でも無いです。おっさんキャラ良いなぁ(本音
祖国兄弟の為に死ぬとかって最近では流行らないですからね(苦笑
【第一章】
エステルは困惑を隠し切れずにいた。この女教師の美貌を台無しにしてしまう程の
悩み。…今日の対戦相手「チーム・シュピーゲル」の氏素性がさっぱりわからない。
ゾイドバトル連盟は様々な理由で対戦相手に恵まれないチームを救済すべく「対戦
相手公募ネットワーク」を運営している。不本意ながらこのネットの常連客であるエ
ステルが、日課で最新の情報をチェックした時見つけたのは破格の懸賞金とチーム名
のみが記載された告知だった。…こういう場ではより妥当且つスムーズなマッチメイ
クを実現させるため、チームの陣容はある程度公開するのが慣例だ。それだけに、こ
の不自然な告知はやけに目立った。
小考の後、エステルはこの告知の主「チーム・シュピーゲル」に対戦を申し込んだ。
懸賞金もさることながら相手の陣容がわからぬことが寧ろ興味を引いた。彼女率いる
「チーム・ギルガメス」のパイロット・ギルはまだ十六才にもならぬ少年。きっと良
い経験になる筈だ。…申し込みは僅かな入力処理により、機械的且ついとも簡単に受
理された。
さてエステルは、ギルを脅かしつつ裏では対戦相手のことをしっかり調べておく予
定だった。だがゾイドバトル連盟のデータベースに目を通した彼女は大変な結果に驚
くこととなる。チーム・シュピーゲルは名称以外の情報が一切記録されていなかった。
…陣容は愚か過去の戦績すらも一切記録されていなかったのだ。すぐさま異常を感じ
て連盟に問い合わせたが「目下データ修復中」の一点張りと来た。困った彼女は方々
を駆け回って情報収集にあたったが、芳しい結果は得られないまま時間だけが経過し
ていった。
そして、二週間後の今日。
「…先生?…エステル先生?」
サングラス越しに、しかめっ面でビークルのコントロールパネルを見つめる女教師
の顔を、ギルが覗き込む。額には玉のような汗を浮かべ、大きめのTシャツはグッシ
ョリ濡れている。バトル開始一時間前の走り込みをいつも通り行なった後だ。
「えっ、あ…ど、どうしたの、ギル?」
「走り込み、終わったんですが…」
上の空の彼女の様子が流石に気になるのか、折角首に引っ掛けたタオルで顔を拭お
うともせず心配そうに見つめる。
「あ…ああ、お疲れさま。休んでて、良いわよ?」
微笑みを返しつつ平静を装おう彼女。ギルは少々訝しんだが(まあエステル先生が
大丈夫って言うんだから…)と考え思考を中断した。彼女の豊富な経験と知識に日頃
から圧倒されている彼からすれば、当然と言えば当然の判断ではある。
背伸びをして周囲を見渡すギル。丘の上に立つ彼。背後には広葉樹の森が生い茂っ
ている。一方その崖下まで百メートル程もあろうか。そこからは一転して荒野が広が
るばかり。見渡す限りの青空には所々雲が浮かぶ、絶好のバトル日和。…だが、それ
以上に彼が気に入ったのは周囲の何とも静かなことだ。人の気配は一切感じられない。
実はここはゾイドバトル用のスタジアムでも何でもない、未開拓の土地に過ぎなかっ
た。謎のゾイドバトルチーム・シュピーゲルがチーム・ギルガメスの対戦申し込みを
受理した時メールで指定してきた場所がここなのだが、ギルは思いもかけず気に入っ
てしまった。今日の対戦がエステルに知らされた時、理不尽さに結構面喰らったもの
だがそういったモヤモヤはここに到着した時一切吹き飛んだのである。
「ブレイカー…野次も雑音も聞こえないって、いいよね?」
同意を求められた彼の相棒はすぐ後ろで伏せている。真紅に彩られ、二枚の翼と六
本の鶏冠を背負った鋼の竜は、ギルの言葉に軽く嘶き返して意思表示すると、首をも
たげ胸のハッチを開けて彼を招き入れた。…只、ブレイカーもエステルの様子が気に
なる様子で、じっと彼女を見つめている。エステルは目配せしてブレイカーに視線を
反らすことを促したのである。
「…いい、ギル?ここから飛び降りたら凡そ20キロ四方の平地が広がっているわ。
ブレイカーが本気で突っ走ったらそれこそ二分も要らない。
相手を甘く見て言うわけじゃないけれど、先手必勝!一気に近付いて出端を挫きな
さい!」
「はいっ、先生!」
ブレイカーの胸部コクピット内・全方位スクリーンの右手にはエステル、左手には
試合場の鳥瞰図を映し出したウインドウが開かれている。それを見つめながら頷くギ
ル。彼の額には既に刻印が眩く光り輝いている。一方のエステルは背広の襟を正す位
で、表向き平静を装ってはいる。
午後2時。定刻となった。
「ブレイカー、行くよ!」
ギルの合図と共に、真紅のゾイド・ブレイカーの全身に取り付けられたリミッター
が唸り明滅し火花を零し始める。大きく広げられた翼と鶏冠。地を蹴って飛翔、重力
に逆らわず落下していくが、地表すれすれで背後に蒼炎を纏うとたちまち勢い良く試
合場を滑るように駆けていった。…エステルも遅れまいとビークルで後を追う。
でたらめな勢いで加算されるスピードメーター。ギルの身体にも一気に重力の負担
が掛かるが、彼もそこは慣れたもの。歯を食いしばり、両手の操縦桿を握り締めて応
じる。
「さあ、相手は!?」
ブレイカーに情報を求める。すぐさま左手に開かれるウインドウ。光点が一個、ギ
ル達が待機していた辺りと丁度正反対の位置から彼らに向かって前進しているのを確
認。その速度、凡そ時速二百キロ。
「中々速い!けれど、ブレイカー程じゃ…あ、あれ!?」
たった一つの光点が、二つに割れた。うち一方は、ブレイカーを遥かに凌駕する勢
いでこちらに向かっている!
「ちいっ!」
舌打ちはウインドウを閉じる合図になった。すぐさま前方に注意を凝らす。
そこに映し出されたもの。
地表すれすれを駆ける黒い影。土煙を津波か竜巻きかのごとく高々と巻き上げてい
る。…いや、そんなことより!
「ギル、足元!」
「…はっ!?ブレイカー、跳ねて!」
慌て気味に跳躍するブレイカー。影を飛び越えてやり過ごす。だがこの赤いゾイド
が着地するよりも速く、影は背後で旋回してみせる。
「後ろから来るわ!」
「は、はいっ!」
大地を削って着地。すぐさま振り向き、その方向に展開される翼。
澄んだ金属音が響き渡る。
火花に彩られながらブレイカーの翼に突き立った、影の正体。
鋼の、鳥。この空よりも透き通った青い羽根はブレイカーの翼程もある。だが本体
はブレイカーの顔より少し大きい位で、ちょっとコクピットが搭載されているとは思
えない。この青き鋼の鳥は、ブレイカー同様自らの翼を刃代わりにして、果敢にも斬
り付けてきたのだ。
それにしても、恐ろしいまでの圧力。レバーを握りしめるギルは、空いたままにな
っているブレイカーの両腕で捉えようとするが。
じろりと向いた、鳥。力比べの最中にも関わらず橙色の目を明滅させたその表情は、
ギル達コンビを嘲笑うかのようだ。思わずカチンときたギル。
「な!?馬鹿に…!!」
「ギル、四時方向より熱源よ!避けて!」
エステルが声を張り上げ、熱くなりそうなギルに水を差す。思わず肩をすくめたギ
ル。同時に全方位スクリーンの左に展開されたウインドウに視線を移す。四時…即ち
右後方より急激な勢いで近付く熱の塊に、思わず目を見張った。
左右のレバーを一気に倒す。ブレイカー、すかさず翼につき立った鋼の鳥を弾き飛
ばすと地面にへばりついた。
青き鋼の鳥は、赤き魔装竜の圧力に何ら動じることなく悠然と体勢を整える。両者
の間を割って入ったもの。…ダイヤモンドをちりばめた、眩い、光の槍。
光の槍は数秒、駆け抜けるとその先の丘に突き刺さり、消滅した。…さっきまでギ
ル達がいた丘と共に!
「か…か…!」
「荷電、粒子砲…!?」
尻尾と翼を地面に叩き付けて立ち上がるブレイカー。長い首を後方に傾ける。コク
ピット内のギルはレバーを握りしめたままの両腕をワナワナと震わせる。怒りの余り、
紅潮した頬。相棒と共に振り向いた先に見えたもの。
光の槍の持ち主は、ブレイカーの風貌に少し似ていた。長い首と尻尾を地面に水平
に伸ばした竜。鋼の肉体は黒く、ところどころ青色の装甲で固めている。但し、ブレ
イカーの顔は目を透明な水晶で覆った所謂「DSフェイス(デスザウラーフェイス)」
であるのに対し、あちらは目から額の辺りまでを橙色の水晶で覆った所謂「ゴジュラ
スフェイス」だ。又、ブレイカーの両腕はそこそこ長く大きい爪を持つが、あちらの
両腕は短く小さい。
黒い竜のもとに、青き鋼の鳥が舞い戻ってくる。…この時起こった異変にチーム・
ギルガメスの面々は仰天する。まさか、鋼の鳥がたちまち全身を細かく分解し、その
パーツ一つ一つが黒い竜の鎧に変貌を遂げようとは!
紺碧の鎧を纏った龍、推参。ところどころ見受けられる橙色の水晶の意匠が一層艶
やかに引き立てる。
「こいつ、まさか伝説のガイリュウ…」
「シュピーゲルフューラー!まさかこんなところでお目にかかるとはね!」
「え…?せ、先生、こいつがあの凱龍輝なんじゃあ…」
「私の故郷ではこう呼ぶのッ!」
凱龍輝。かつてヘリック共和国が圧倒的な軍事力を以てネオゼネバス帝国に侵攻す
る際、「平和協力」の名のもとガイロス帝国(当時)からフューラー野生体を、東方
大陸を拠点とする軍事産業ゾイテック社からブロックス技術を半強制的に提供させて
生み出されたゾイドだ。…このゾイドは実に沢山の名前を持つ。それと言うのも当時
のガイロス宰相がヘリック側の命名に対しかなりの不快感を示したからだ。「凱龍輝」
の「凱」に「凱旋」の字を当てたことに対し宰相は「ヘリ公共は…ゴホン、ヘリック
の盟友はどうして自国の我が儘までゾイドの名前に折り込もうとする!」と憤り、こ
の紺碧の竜型ゾイド独特の特性に由来する「シュピーゲルフューラー」で呼ぶのを推
奨。これに同調した諸民族がそれぞれの国の言葉で自由に命名してしまったという経
緯がある。
「ええい、どちらでもいいや。そんなことより…!」
ガリッ。奥歯を一瞬噛み締めたギルが直後、吠えた。
「荷電粒子砲、太いし強すぎる!思いっ切りルール違反でしょうッ!?」
怒りに震えたその両腕でレバーを強く傾ける。すかさず翼を水平に広げたブレイカ
ー。地を蹴って紺碧の竜型ゾイド目掛けて突っ込んでいく。相手は…動かない!?
「ギル!ちょっと待ちなさいっ!!」
「翼のぉッ、刃よぉッ!」
ブレイカーの右の翼の内側から展開される双剣。全身を大きく回転させて斬り付け
たその時、又もチーム・ギルガメスの面々は面喰らった。
激しい金属音と共にギルの視界に入ったのもの。紺碧の竜型ゾイドが纏う鎧のパー
ツ数点がいきなり弾けた。
瞬時に新たな形を構成するパーツ群。…青く、巨大な丸盾!
ブレイカーの前に立ち塞がった丸盾は、翼の刃をものの見事に受け止めていた。
神出鬼没の戦法に思わず呆気に取られるコンビ。エステルはすかさず指示を出す。
「ギル!一旦離れて!」
その言葉に慌てて反応するギル。決して遅いものではなかったが、動きが完成する
より前に。
紺碧の…いや、紺碧と黒の入り乱れた竜型ゾイドが瞬時に低い姿勢を更に低くし、
勢いよく体当たりを決める。その肩で、ブレイカーの胸板目掛けて。
懐に飛び込んできた紺碧の竜型ゾイドの圧力は…!?
「うわっ!しまっ…あ、あれ?」
思ったよりも大したことがない。先程までとは明らかにレベルの低い攻撃に一瞬目
を丸くしたギルだったが、攻撃の真意は数秒も経ずして知ることとなる。
「こいつ、殴り合いはそれ程でも…んぐっ!っっっはぁっ!?」
ザーーーーーーーーッ。全方位スクリーンの映像が激しく乱れる。
それと共に、肺に受けた、押し潰されそうな衝撃。不意に襲った未経験の痛みに溜
まらず仰け反ったギル。
異変と、痛みの正体は彼と同調するブレイカーのダメージに見れば一目瞭然だ。…
この真紅の魔装竜の胸部コクピットのハッチと本体との接合部分。紺碧の竜型ゾイド
の小さな爪が突き立てられ、今にも食い込もうとしている!
「な…何よ、このゾイド!?馬鹿強い荷電粒子砲!狙いすました急所攻撃!彼奴、ど
うして反則負けにならないの!?」
ブレイカー達の後を追って今まさに到着したビークル。エステルは目前の惨劇一歩
手前の光景に目を剥きながらも、早速動いた。左手で備え付けの端末をいじるとゾイ
ドバトル連盟の審判部へとアクセスする。…ゾイドバトルは競技の体裁をとってはい
るものの、死と隣り合わせである点で実戦と何ら代わりがない。そのため参加ゾイド
は武装などに審判部のチェックが入るし、使用即パイロットの生死に関わりかねない
危険な攻撃は予め封印プログラムのインストールで厳しく制限される。更にそれでも
目に余る攻撃が確認された場合には、審判部の権限でバトルに介入することが可能だ。
「大体ねぇ!あんなに危険な攻撃をしてくること自体がおかしいじゃない!
審判部、リゼリアC−446地点で午後二時から開始のバトル、管理はどうなって
んの!」
怒鳴りながらも速やかに情報は入力され、結果がモニターに表示されたが。
「…っっ!?」
絶句したエステル。その内容への反応は、一瞬の躊躇も見せず残る右手の動きの素
早さに上乗せされる。
一方、悶えるギルは依然レバーを握ってはいるものの、激しい痛みで手に力が入ら
ない。大きく見開かれた瞳は焦点も定まらず、開いた口からは涎が流れ出る。もう少
し、力が加わったら彼が失神するか、それともブレイカーのコクピットが潰されるか
…!?
だがその時。ギルとブレイカーのコンビにまとわりつく悪魔の手を、振りほどいた
数発の光弾。光弾は一発、そして又一発と紺碧の竜型ゾイドの鎧の隙間目掛けて、驚
く程正確に狙い撃たれた。油が血飛沫のごとく迸り、たまらず竜型ゾイドはブレイカ
ーのコクピットに突き立てた指を離す。又も弾けた竜型ゾイドの鎧パーツ。瞬時に丸
盾となって光弾を遮る。
光弾はエステルのビークル備え付けの銃より放たれていた。彼女の後方から伸びた
銃身は大人の身長を遥かに上回る長さと腿回り程の太さを備えた、対ゾイド用に迫力
十分な代物だ。…丸盾、すかさず突進して反撃!だがそれを軽やかに躱すビークル。
その機上、天地逆転の状態ながらもエステルは何ら慌てることなく彼女の生徒に指示
を出す。
「ギル!離れなさいッ!」
我に返ったギル。正常に戻った彼の息吹に応えたブレイカー。地を蹴って一気に間
合いを離す。
はあっ、はあっ、はあっ。
暫し俯き涎を右手で拭いながら、上目遣いで全方位スクリーンに目をやる。展開さ
れたウインドウは彼を休ませなどしない。
「ギル、ギル、聞こえて!?ひとまず撤退よ!」
「て…撤退?…って!?」
ゾイドバトルでは考えられないその言葉に、思わずスクリーンに顔を近付けること
で驚きを体現する。
「いい?このバトル、審判部のデータ上は午後2時開始と同時に無効試合になってる!
私達、はめられたわ!」
チーム・ギルガメスを襲う動揺。その傍らで、紺碧の竜型ゾイドの残った鎧パーツ
が一切弾けた。それはたちまち鋼の鳥となって丸盾と共に空をゆったり泳いでみせる
中、竜型ゾイドを彩る橙色の水晶は妖しく明滅を繰り返したのである。
【第二章】
撤退!?無効試合!?
少なくともギルにとって、矢継ぎ早に耳元へぶちまけられたこれらの言葉は辞書や
教科書の上でしかお目にかかったことのない代物だ。肩で息し、何度も瞬きすること
で、混乱する思考を何とか落ち着かせようとするのだが。
一方の竜型ゾイド。自身の鎧から生み出された鳥と丸盾に向かい、それ程甲高くも
ない鳴き声でひと吠えして他へ注意を向けさせる。この二体は目とおぼしき橙色の水
晶の輝きを、エステルの駆るビークルの方に投げかけていたからだ。かくしてこの三
体が睨み付けた先は…!
「ギル!逃げてッ!!」
エステルが叫ぶよりも早く、非常識な速度で空を突っ切る鳥と丸盾。
「は?…はぃ!?」
如何にブレイカーの運動能力が他のゾイドを段違いに上回っていようと、パイロッ
トが反応できなければ何の意味もない。…ギルがレバーに力を込めた頃には鳥と丸盾
は標的に接近していた。ブレイカーの右足を刈る鳥!首の左側を殴打する丸盾!
二体の絶妙な連携攻撃は、ブレイカーをよりにもよって頭から大地に転ばせた。瞬
時に襲われる無重力感に、ギルは為すすべもない。…しかもこの真紅のゾイドが巨体
を宙に踊らせる頃には、竜型ゾイドが全身の橙色の水晶を輝かせつつ、その長い首を
身体ごと振りかざしているのが見て取れる。大きく開かれた口から零れる光!
「又荷電粒子砲!?」
させるかとばかりにトリガーを引くエステル。完璧な命中精度を誇るその光弾は、
だが又しても丸盾の前に防がれる。
その間に首を振り降ろした竜型ゾイド。横倒しになったブレイカー目掛けて放たれ
た光の槍。
ギルは無我夢中でレバーを引くより他ない。ゴロリ、転がるブレイカー。すんでの
ところで槍の穂先を躱す。
「な、何とか立ち上がらないことには…!」
ブレイカーの身体を起こさせようとするギルであったが、何もかも相手が一歩速い。
両足に鳥が!首に丸盾が!まさにギロチンのごとくブレイカー目掛けて、叩き込まれ
る。
動きを封じ込まれたブレイカー。そこへ走って突っ込んでくる竜型ゾイド!
二発、三発とトリガーを引くエステルの援護も虚しく空を切る。依然、横転したま
まのブレイカーのもとに一気に近付いた竜型ゾイドの攻撃は。
「…ぐっくうぅっっ!?」
一方的な展開になった。ブレイカーの胸部コクピットハッチ目掛けて、叩き込まれ
る竜型ゾイドの容赦ない爪先蹴り。寸前で両腕を翳しつつ防ぐブレイカー。だが衝撃
は十分に貫通する。…そしてダメージはオーガノイドシステムの副作用でパイロット
にも反映される!
「んうぅっ!かはぁっ!?」
身体をくの時に曲げ、痙攣するギル。堪え切れず、コクピット内で胃液をまき散ら
す。無様な相手の姿に勝利を確信し、続けざまに蹴りを放つ竜型ゾイド。…二発!三
発!四発!五発!
「ギル!脱出するには鶏冠を使わないと!ギル、ギル、聞こえて!?」
今にも飛びそうな意識。それ以前に戦意喪失寸前の精神状態でありながら、尚指を
震わせレバーに手を掛けようとするギルだったが。
突如真っ青に輝いた、真紅の魔装竜の瞳。
ギルの手がレバーに掛かる寸前、独りでに動いたレバー。
ブレイカーの背に生える六本の鶏冠。その先端に蒼炎が灯されるや否や、一気に大
きく広がる!…今度は蹴り続けていた竜型ゾイドがバランスを崩してひっくり返る。
轟音が谺する中、気がつけばブレイカーは、怒濤の勢いで大地を滑り抜けていた。
「いいわ、ギル!すぐに立ち上がって撤退…」
言いかけたエステルが気付いた、ギルの相棒に起こった異変。
「ブレイカー?貴方なのね!」
よろよろと立ち上がる。その瞳の真っ青な輝き。…ブレイカーが、自らの意思で動
いている証。
「仕方ないわね、さっさと撤退を…ブレイカー?貴方、何のつもり!?」
空を仰いで甲高く吠えると、遅れて立ち上がろうとしていた竜型ゾイドと二体の下
僕の方角へ振り向き睨み付ける。
地面に突き刺さった踵の爪。大きく開かれた口。六本の背の鶏冠と二枚の翼を身体
を中心に扇型に広げるや否や、いつもは鶏冠によって隠された背中がぱっくりと口を
開けた。
どこから引き寄せられたのか、無数の光の粒が背中の口に吸い込まれていく。…神
秘的ですらあるその光景は、実は凶悪なる反撃の前触れに過ぎなかった。光の粒が背
中の口に吸い込まれると同時に、本来の口の奥から禍々しい輝きが零れ始める。
「だ…駄目…だよ…ブレイ…カ…」
「ブレイカー、よしなさい!今は撤退が先よ!」
女教師が声を枯らして叫ぶも、最早魔装竜の耳には届かない。その胸に抱いた少年
が心身共に深く傷付いた今、発動する過剰な母性。
振り降ろされた首。その口から放たれた光の槍。竜型ゾイドのそれより太く眩い!
瞬く間に大地をも削り、襲い掛っていく。
目を背けるギル、唇を歪めるエステル。両者とも、ブレイカーが解き放ったこの非
道な攻撃の結末を瞬時に想像せざるを得ない。
しかし、現実の展開は彼らの想像を上回った。
立ち上がった竜型ゾイド。光の槍の突進にも動じず身構える。素早く鎧に変化する
鳥と丸盾。危機が目前に迫ったその時起こった奇怪な現象。…竜型ゾイドの皮膚や鎧
を飾る橙色の水晶が、突如うっすらと光を帯び始めた!
鼻先にまで達していた光の槍の穂先が、流水のごとく拡散していく。一転、空にち
りばめられた光の粒が溶け込む先は、竜型ゾイドの全身を飾る橙色の水晶の中。
ギルもエステルも呆気に取られる中、ブレイカーが放った光の槍は、十数秒の後全
て竜型ゾイドが身に付けた橙色の水晶群によって吸収された。…では、吸収された光
の槍の行方は?
突如、再び頭を振り上げた紺碧の竜型ゾイド。その口から徐々に光が溢れ始める。
「そういう仕組みなの!?ブレイカー、今度こそ…!」
方向転換するエステルのビークル。向いた先にはさっきまでチームが待機していた
丘の跡が見える。ブレイカーも素早く踵の爪を引き抜き地を蹴った。
紺碧の竜型ゾイドが放った余りにもきつい返礼。首を振りおろし放たれた光の槍の
太さは、ブレイカーのそれに匹敵する。
ブレイカー、跳躍。光の槍を飛び越えると翼を水平に広げ、滑空を始める。放物線
を描いて光の槍を左へ跨ぐと、エステル駆るビークルの真上にまで一気に近付き、両
手を伸ばし胸の辺りに抱えた。この瞬間、六本の背の鶏冠が大きく広がる。高速回転
する全身のリミッターはマグネッサー発動の合図。青白く光る鶏冠の先端。
紺碧の竜型ゾイド、首を、次いで身体を左へ動かし光の槍で薙いでみせた結果は如
何に。
パイのピース状に抉られた岩肌。
辺りが静寂に包まれる中、遥か遠方に、キラリと輝く青白い光。
吠えることもなくその方角を睨む竜型ゾイド。身に纏う鎧が瞬く間に鳥と丸盾に変
化して追撃に向かうと、遅れて走り始めたのである。
ゾイドの能力に関するデータは、実は大して当てにならない。パイロットとの結び
つきは、そういうものをいとも簡単に無意味な数字の羅列に置き換えてしまうからで
ある。ましてやオーガノイドシステム搭載ゾイドなら尚更の事。
今にも音速を越えようかという勢いで地面を滑空するブレイカー。最早両足は地を
蹴ることもなく、奇麗に後方へ伸ばしたままだ。
さっき紺碧の竜型ゾイドが作った丘の跡を抜けていく。その先に広がっているのは
辺り一面の広葉樹の森、そしてその先には又荒野が広がっている。…ブレイカー、徐
々に減速。森を抜けると荒野に向かって両足を突き立てる。ガリガリと地面が削られ
ていき、長い減速の末この真紅の魔装竜は停止した。
胸に抱えたビークルを降ろすブレイカー。…エステルは蹲っていたが友の丁重なも
てなしを確認すると頭をもたげ、ビークルから降り立つ。髪を軽く撫で、襟を整える
とおもむろにサングラスを外し、意外にもこの優しい友を睨み付けた。…切れ長の、
透き通る程蒼い瞳から放たれる眼光は鋭く、常人では身も凍えてしまうに違いない。
それはゾイドに対しても例外ではなく、あれ程凶暴に立ち回ったブレイカーが今や首
をすくめ、縮こまるばかりだ。
「お仕置きは、生きて帰れたらタップリしてあげるわ。今はそれより…」
彼女の言葉に応じ、ブレイカーは首を持ち上げ胸のハッチを開放してみせる。…コ
クピット内のギル。額の刻印は既に消え去っていた。依然、レバーに手を掛けてはい
るものの顔は俯いたまま、何やらブツブツ呟いている。
一瞬愕然としたエステルだったが、それもものの数秒。…意を決すると、右の平手
がギルの顔目掛けて一発、二発。
「…痛っ!?あ、せ、先生?」
「大丈夫、ギル?余り脅かさないでね…」
正気に戻った愛弟子を確認するとホッと胸を撫で下ろす。だが鳩が豆鉄砲を喰らっ
たような彼の表情も束の間だった。
「僕はブレイカーを…止められなかった…」
再び俯き、唇を噛み締める。
「そうね、荷電粒子砲、使わせてしまったわね」
視線を外しつつ応える。その言葉にピクリと反応した生徒。勢いよく頭をもたげ、
驚き、次いで悔恨の表情。…あの時、この生徒が完全に意識を失っていたことを女教
師は理解した。
「ブレイカーに『ジェノ』の称号、折角捨てさせたのに僕は…」
ガックリ肩を落とす。そして漏れる嗚咽。…ブレイカーの本来の名は「ジェノブレ
イカー」。「ジェノ」とは古代ゾイド語で「殺戮」の意味だという。ジェノブレイカ
ーが「ジェノ」の称号を捨て荷電粒子砲を禁じ手としたのは、もともと無益な殺生を
止めたことの証なのだ。しかし、それ程の攻撃を使った結果は。
「でも、その荷電粒子砲でさえ凱龍輝…シュピーゲルフューラーには全く通用しなか
った…」
女教師の一言にハッとなった生徒。突きつけられた現実は今や彼の悲しみを遥かに
上回っている。
近付けば急所攻撃の嵐。
離れれば小型ゾイド二匹の体当たり+荷電粒子砲。
こちらも荷電粒子砲を使ったら摩訶不思議な技で倍返し。
最早誓いを破ろうが守ろうが関係なく、ギルとブレイカーのコンビはあの紺碧の竜
型ゾイドに勝ち目が見当たらない。…そして、そんな絶体絶命の危機を連れた彼奴は、
今まさに近付いてきている筈だ。
「畜生、一体どうすればいいんだ!こんなにも死角が無いなんて…。
大体あいつは…あの凱龍輝とパイロットの正体は一体何者なんですか!?先生、知
ってるんでしょ!?そろそろ教えて下さい!」
思い至り狼狽えの表情を見せたギル。溜まらず女教師に詰め寄る。…だが彼女は、
ハアと溜め息をつくと一転、凄まじい眼光で睨み返した。氷の剣を突きつけられたか
のような衝撃に、動揺する生徒は思わずたじろぎ黙り込む。
「落ち着きなさい。そんなことを知ったところでどうするの?ウォリアーが凶悪な犯
罪者だったら殺す?崇高な宗教家だったら跪いて許しを乞う?
そういうことは、最善を尽くしてから気にしなさい。貴方がすべきことは?」
「僕が…すべき、こと…」
流れる静寂。
エステルはふと、ゆっくりその手をギルの目前に翳す。
がくっ。
膝から崩れ落ちたギル。その円らな瞳は閉じられていた。
意識を失ったギルを座り直させたエステルの表情は寂しそうだ。
「ごめんね、ギル。私も人の事なんて言えやしないのにね。
でも、もう少し男の子らしい答えが聞きたかったな…」
コクピットから離れたエステル。ハッチが閉じられるのを確認すると、ブレイカー
にまばたきで合図する。この異形の友、ピィとらしからぬ悲しい鳴き声を上げたが女
教師の決意をその鋭い瞳の奥に感じたのか、ゆっくりと踵を返した。
リミッターを高速回転させるブレイカーを尻目に、額に指を当てるエステル。ゆっ
くり浮かび上がった刻印。やがて後方でリミッターから零れ落ちている火花にも優る
光芒を放ち始める!
「私のすべきことは…」
颯爽とビークルに乗り込む。
ブレイカーは今朝歩いてきた道を、エステルのビークルはさっき突っ走ってきた道
を、今、再び走り始めたのである。
さっきのブレイカー程ではないが、十分な速度であの鋼の鳥と丸盾が飛んで来た。
二匹は彼らの主が吹き飛ばした丘の跡を越え、広葉樹の森の上を進んでいたところだ。
やがてその視界に入ってきたビークル。空中に浮遊しつつ単騎で立ち塞がるは美貌
の女教師。
「鳥型の方はヘリック名『飛燕』。鳥は古代ゾイド文明では死の象徴。
丸っこい方はヘリック名『月光』。月は多産の象徴、か。
生死を司る『審判者』を気取るとは、ヘリ公にしてはセンスがいいわよね…
(※「月光」は「月甲」とも表記したという。あの鉄壁の防御なら頷ける話しだ)」
額の刻印を眩く輝かせながら浮かべる不敵な微笑み。
二匹は互いの持つ橙色の水晶を明滅させて何事か打ち合わせた様子だ。エステルは
臆することなく二匹の動きを見守る。
…左右に、分かれた。その間を抜けると大きく弧を描きつつ、後方に向きを変える
ビークル。だが如何せん相手二匹の方が断然素早い。ビークルが向きを変え終えた時
には二匹ともエステルの視界から消えている。そして突如。
左から鳥が。右から丸盾が。回転しつつ、空気をねじ切るような音を立てて仕掛け
てきた体当たり。エステルはビークルの速度を上げ、直進して躱すより他ない。一方
の二匹は際どい間隔で交差すると再び分かれていく。ビークルが後方に向き直した頃
には又しても視界から消え去り、今度は上下から仕掛けてくる。これもエステル、何
とか直進して躱す。
「ふふ、中々呼吸の合った連携攻撃ね。ギル達にも見習わせてやりたいわ」
圧倒的な形勢にも関わらず、女教師は余裕綽々だ。ビークルを再度加速させる。二
匹も又左右に分かれていくが、今度はビークル、二匹の間を抜けると今度は弧を描か
ず、ひたすら真直ぐ突っ走り始めた。…二匹も加速し、疾風の勢いでビークルの真横
につけ狙いを定める。
だが、この二匹がビークル目掛けて三たび空中交差を試みようとした時、勝負は既
に終わっていた。機体を前方に大きく反らし、一気に減速するビークル。既に左右か
らの挟撃を試みていた二匹だったが、その予定位置は女教師の格好の標的に成り変わ
った。
「古代ゾイド人を、なめるなぁっ!」
ズドン。光弾が一発。まず手前、左から来た鳥に命中すると、次いでその奥側・際
どい間隔で交差していた右からの丸盾に対し、鳥の身体がぶつかっていく。…まさに
曲芸。たった一発の光弾に、大きくバランスを崩す二匹。墜落の危機を脱するため慌
てて体勢を戻そうと試みたが。
許すまじとすかさず身を乗り出すエステル。
「かぁーーーーーーーーっっ!」
絶叫。二匹を両手で指差しつつ、額の刻印を極限まで輝かせる。…静止した、二匹。
但し自らの意志によらずしてだ!
不肖の教え子の前では中々見せそうにない、凄まじい形相。裂帛の気合いが滲み出
る。額を、頬を、不意に流れ落ちる汗。
「さぁ、身に纏う鎧を脱ぎ捨てなさい」
努めて低く、ゆっくりした口調で囁く。…ポロリ、ポロリ。どうしたことか、エス
テルの脅しの前に、この二匹を構成するパーツが一つ、又一つと外れ落ちていく。
それぞれの最後のパーツが落ちた時、二匹の正体は明らかになった。…立方体型の
ゾイドコア。各面に開いた穴から零れる青白い光。紛れもない、人工ゾイド「ブロッ
クス」だ。
十分すぎる成果に満足し、悪鬼も裸足で帰る程不気味な笑みを浮かべたエステル。
今度は額の刻印が激しく明滅を始める中、行なわれた次の手。
「ゾイドもブロックスも関係なく、人の手が加えられていたら『証』が残っているも
の。
貴方達の正体、見切らせてもらうわ。『証』がわかれば貴方達の正体も一目瞭然だ
からね。
…それが終わったら、さっさと捻り潰す!」
言いつつ目を閉じ、透視に集中する。…数秒の後、あれ程恐ろしい雰囲気を携えて
いたエステルの表情が一変した。
「そうだったの…。でも、だとしたら貴方達の真の目的は…!」
そう、問い掛けとも独り言とも取れない言葉を口走った時。…突如コントロールパ
ネルがアラームを鳴り響かせ、危機をアピールする。慌てて操縦桿を握り、ビークル
を飛ばすエステル。
やはり。飛んできたのは光の槍。エステルが後方を睨む中、必殺の超能力から逃れ
た二匹のブロックスはパーツを徐々に取り戻していく。
一方、光の槍が飛んできた方角からは、あの竜型ゾイドが広葉樹の森をかき分けな
がら近付いてくる。
前方に竜。後方に鳥と丸盾。三対一。挟撃。美貌の女教師に迫る絶体絶命の危機…!?
硝煙の果てに
ライアー一等兵たちが陣取っている壕のすぐ後ろには、その体躯の半分を砂漠に埋め込んだガイサックが配置されていた。
そのガイサックは各部にロケット砲や対人機銃を増設していた。
この監視壕周辺に配置されている中では最も高い火力をもっていた。
しかしこのガイサックは共和国軍に所属しているものではなかった。
西方大陸の都市国家で使用されていたのを徴用したものだった。
ガイサックの特徴である尾部のビーム砲は取り除かれ、代わりにショベルとクレーンのアタッチメントが装備されていた。
監視壕の火力を向上させるためにガイサックが配属されてきたのは、わずか数日前のことだった。
それから整備隊が急いで余っていたロケット砲をくくりつけてライアー一等兵が所属する小隊に送り付けてきたのだ。
小隊にしてみれば迷惑なことだった。整備班がくくりつけたロケット砲は実射テストもしていないし、配線は剥き出しというおそろしいものだった。
小隊長のヘラルド少尉もこのガイサックを持て余していたらしく、ライアー一等兵に与えた指示もぞんざいなものだった。
ライアー一等兵にしてもあまり見てくれのよくないガイサックにはたいした機体はしていなかった。
ガイサックには小隊に配属された時点で、簡易なリモートコントロ−ル装置が設置されていた。
だから、ライアー一等兵は戦闘が始まったらすぐに壕から発進させてロケット弾で派手に陽動をかけさせようとしていた。
民間使用のけばけばしい塗装のままのガイサックなら目立つ囮になってくれるはずだった。
そのあいだに班は壕の中にひそんでいればよかった。
リモコンを持った兵は念入りに機材を点検していた。いつのまにか他のものも突撃銃を点検している。
おそらく攻勢の予感を感じているのだろう。ライアー一等兵もすばやく突撃銃の残弾を確かめた。
歩兵相手でもなければあまり役に立たなさそうな銃だったが、銃身下に備え付けられたグレネードランチャーなら急所を狙えば小型ゾイドでもやれるかもしれなかった。
ライアー一等兵が予備のグレネード弾の信管を確かめ終わる前に監視用双眼鏡に取り付いていた兵が緊張した声で言った。
「帝國軍がくるぞ。イグアンが九機、急速接近中」
「全員頭を出すなよ。小隊に連絡」
取り付いていた兵から奪うようにして双眼鏡を取るとライアー一等兵は壕の周囲を見渡したた。そしてすぐに眉をしかませた。
どうやら小隊への連絡は無駄に終わりそうだった。
この壕だけではなく戦線全体で砂塵が巻き上げられていた。よく見れば砂塵の下には帝國軍の姿がある。
帝國軍の全面攻勢が始まろうとしていた。
HJ誌で触れられていましたがやはり「飛燕」「月甲(月光)」「雷電」って旧軍機・・・
じゃ「震電」とかもあり?
【第三章】
日が傾くにはまだ早い。…だが、着々と時間が経過しているのは雲の流れでよくわ
かった。
荒野をスケートで滑るように進む赤いゾイド。…ブレイカー、只一匹。後方に爆音
が谺するごとにその長い首で振り向きはするが、決して歩を止めることはない。ひた
すら土煙を上げて疾駆する、それがこのゾイドの使命。
胸部コクピット内の座席、目を閉じたままのギル。…微かな吐息。彼が師事する女
教師の手によって意識を失った後、ずっとこの状態だ。
だがこの不肖の生徒、ここに来てようやく眉を潜め始めた。悪夢でうなされるよう
に顔をしかめながら、何度も身をよじらせ寝返りを打つ。
「…まれ…とま…れ…」
寝言を呟く。だが突如、両手を振り上げたギル。ドンッ、と左右のレバー周辺の計
器類を両の平手で叩くと、刮目して重そうな身体を強い勢いで持ち上げる。
「ブレイカー、止まれって言ってるじゃないか!それに無理矢理寝かそうとするなよ!
…あ、あれ…?」
不肖の生徒はようやく目を覚ました。だが、彼を取り巻く全方位スクリーンに映し
出されているもの。今朝この相棒に乗って歩いてきた道。
敗走。逃亡。しかも、己が師匠を置き去りにしたまま。突如怒りに打ち震えたギル
が叫ぶ。
「ブレイカーッ!何で逃げてるの!?いくら先生の命令だからってあんまりじゃない
か!」
対してスクリーン前方に開かれたウインドウ。…パイロット・ギルの健康状態が映
し出されている。脈拍…正常、脳波…正常、体温…正常、…、…。ひたすら無機質な
数値の羅列。
「!…あーそうだね、確かに僕はこうして一命を取り留めてるよ!
でも、代わりにエステル先生が!幾ら何でもたった一人じゃあんな奴らに勝てるわ
けが…うぅっ、うっ…」
不意に泣き崩れる。…そうするより他ない。
座席で方を震わせ蹲る中、スクリーンには依然としてギルの健康状態が映し出され
続けている。そうしてそのまま、歩を進めているこの赤いゾイド。
「いいよ、もう…。消してよ。
幾ら五体満足でも、こうやって逃げてる僕には何の意味も…」
そう、言い掛けた時。突如、少年の刮目。
「え…五体、満足?…ブレイカー、ちょっと待った!?」
慌てて身を乗り出し、ウインドウの数値を食い入るように見直す。そうして先程の
戦闘でブレイカーとの同調の結果ダメージを受けた辺りを方々、撫で回す。
「さっき受けたダメージが、消えてる…!?ブレイカー、君は!」
求めに応じ、又別のウインドウが開かれる。…現在のブレイカーの速度。時速約二
百キロ程度。その気になれば音速をも十分に叩き出すこのゾイドからすれば十分に、
遅い。
ギルはブレイカーの意図を全て理解した。この忠誠心旺盛なゾイドは、本来その自
慢の脚力に回す筈のエネルギーをパイロットの健康保全を目指す「ゆりかご機能」に
使うことで、ギルのダメージを完治させた。…だがその結果、現在位置はさっきの戦
場から大して離れていない。さっさと全力疾走して撤退してから「ゆりかご機能」を
フルに使っても問題なかったかも知れないのに、だ。
「戦えって、言うんだね?」
だからあの美貌の女教師の命令を聞きはしたが、一方でギルの体力を回復させもし
たのだ。
「…勿論さ!僕らがやらなきゃ誰が先生を守れるんだ!ブレイカーッ!」
今再び主の命を受けて、赤いゾイドは爪先から土煙を上げ一気に減速する。そして
大きく弧を描いて旋回を始めたのである。
鳥が上から左から。丸盾が下から右から。
そして、竜型ゾイドの荷電粒子砲が下方から。
何度も繰り返されるコンビネーション。
エステルが駆るビークルはギリギリくぐり抜け、躱す。…さっきまでならあの二匹
のブロックスの攻撃を躱しながら反撃の機を伺うこともできたが、今は駄目押しの飛
び道具が加わり、どうにか追撃から逃れるのがやっとだ。
それでも、依然として弱気を見せないエステル。…いや、この勇敢なる女教師は弱
気を見せたら一巻の終わりだと確信している。だから、微笑みを絶やさない。絶やす
わけには…いかない!
再三再四、二匹のブロックスの挟撃。
「必死ね。女一人に荷電粒子砲の乱れ撃ちなんて。…おっと!危ない危ない。
とにかく、間合いを離さなければね」
呟くと更にビークルを加速させる。そして、旋回。…どうにか振り切る。だがすぐ
その後荷電粒子砲を撃たれると読んでいたエステルの読みは外れた。
発射音の代わりに聞こえてきたのは、鉄の塊が大地を疾駆して谺させる地響きの音!
慌ててレーダーを見、直後すぐに下後方に振り向いたエステルは見てしまった。
「鎧を脱ぎ捨てたらこんなに素早くなるなんて!」
旋回するビークルに追い縋り、一気に距離を縮めた竜型ゾイド。そしてそのまま…。
竜型ゾイド、飛翔。死に神の鎌のごとく、振り上げられた右手。
狙うは女教師の首!
(ーーーーっっ!?)
思わず顔を伏せる女教師だったが。
耳にしたのは、鼓膜が破れんばかりの衝撃音。空気が伝える荒波は彼女の五体も、
ビークルさえも震わす。
それと共に襲い掛かる風圧。
体勢が崩れたビークルを直しつつ、エステルが見たのは。
鎌を振り上げた死に神に向かい、翼を前方に展開しつつ体当たりする真紅の竜。
真紅の竜はそのまま数十メートルも突っ切り、そして翼を羽ばたいてみせる。堪ら
ず吹き飛ばされ、落下していく竜型ゾイド。…へし折れる木々をクッションにして転
がり、どうにか着地する。
空中を浮遊したまま一瞥し、大事な人を顧みる真紅の竜の姿がそこにはあった。
「ブレイカー!?…ギル!」
一転、少女のような笑顔を見せた女教師。…だがふと我に返ると何度か咳払いして
険しい顔を作る。その上で、ビークルのモニター越しに不肖の生徒を呼び出すのだが。
「貴方、何故戻ってきた…のってちょ、ちょっとギル、大丈夫?」
映し出されたブレイカーのコクピット内。激しい嘔吐感に襲われた様子で思わず口
を押さえているギルが見える。無理もない、パイロットに刻印のない状態では同調は
おぼつかないため、ゆりかご機能の恩恵は前述のようにブレイカーが能力の大半をつ
ぎ込みでもしない限り受けられないことになる。…ましてや今さっき竜型ゾイドに決
めた体当たりにかなりの力が割かれているのは明らかだ。ギルの状態、推して知るべ
し。
「せ、せんせ、こ…刻…い…」
「あぁわかってるから我慢しなさいね。たとえ…」
「…その行く先、が…うぅっぷ」
投げかける女教師の視線に、慌てて生徒が合わせる。…二人の額に宿る刻印!
「『いばらの道であっても、私は、戦う!』」
不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステル
の「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカ
ーと限り無く同調できるようになるのだ!
相棒との同調を肌で感じ、天を衝いて吠えるブレイカー、吐き気が一気に収まり、
深く深呼吸するギル!
一方の竜型ゾイド。ゆっくり立ち上がると、尻尾を振り回して周囲の木々をなぎ倒
し、足場を確保し始めた。…その周囲にあの二匹のブロックスが舞い戻ってくる。
凱龍輝、或いはシュピーゲルフューラー。そして飛燕、月光。
魔装竜ブレイカー。そして古代ゾイド人エステルが駆るビークル。
締めて、三対二。
「さぁギル、貴方のすべきことは?」
「彼奴らを倒して、必ず生きて帰ります!…明日もこのチームで、僕は戦いたいんだ!」
主が吠えるとブレイカー、歓喜の雄叫びを上げ蒼炎を背に纏い、空高くから突っ込
んでいく。水平に広がる翼。展開される双剣。
「翼のぉッ、刃よぉッ!」
竜型ゾイドの首元目掛けて唸る右の双剣。すかさず立ち塞がる丸盾。…ガキッ!剛
剣と鉄壁のせめぎ合い。
「邪魔だぁーーーーッ!」
間を置かず、今度は左の双剣を叩き込む。エステルも加勢して後方からトリガーを
引く。
だが不意に、分解する丸盾。空振りする双剣、姿勢を崩すブレイカー。コクピット
内のギルも身体を揺さぶられる中、その向こうから突っ込んできたのは鋼の鳥!
脇腹に体当たりされ、ブレイカー、落下。バキバキと、木々を降り頭を地面に叩き
付ける。…脳天に杭を打たれたような衝撃!頭を何度も揺さぶって我に返ろうとする
ギル。
「ギル、来るわ!」
エステルの声に反応。すぐさま立ち、飛び跳ねて光の槍を躱す。
だが着地しようと足を伸ばした時には既に鋼の鳥が足を払いに突っ込んできた。又
しても横倒しになったところに真上から首を刈りに落ちてくる丸盾。…だが辛うじて
翼を展開、弾き返すとすぐに起き上がるブレイカー、強く地を蹴り、反撃の翼の刃を
丸盾目掛けて浴びせに掛かる。
「何度も同じ手を喰うかよ!」
翼の刃を右、左。圧力で押し込んだところに体全体を回転させて尻尾の一撃。だが
丸盾は角度を自在に変えて確実に威力を殺していく。
「まだまだぁっ!」
尚も追い縋ろうとするギルだったが横から光弾が数発、丸盾に叩き込まれると共に
コクピット内に響く怒声。
「馬鹿!危ないわよギル!左!」
女教師の不意の叫びの指す方向を見れば、迫り繰る光の槍。もう一度、今度は高く
遠く跳ねて仕切り直しを計る。
「ヒヤヒヤさせないでよ、もう…」
「ご、ごめんなさい…。でも、彼奴らを倒さないと凱龍輝は倒せそうにないです」
「気を取られて荷電粒子砲でやられたら何の意味も…」
ないわよと言い掛けたエステルの唇が一瞬、止まった。
「何故…何故なの…?」
「え…あ!」
「ギル、貴方も気がついた?」
「はい、彼奴ら大胆に動き過ぎる!荷電粒子砲が危険なのは同じ筈なのに…」
女教師、額に指を当ててこれまでのバトルを振り返った時、閃いた作戦。
「ギル、ブレイカー、良く聞いて!…、…、……!」
頷く生徒。ブレイカーとビークルの周囲を依然二匹のブロックスが取り囲み、その
更に外で竜型ゾイドが機を伺う中、チーム・ギルガメスが今まさに選んだ策とは!?
ブレイカー、滑走再び。今度は大きく弧を描いて。その動きに視線を、次いで首を、
身体を合わせる竜型ゾイド。二匹のブロックスは標的以上の速度で包囲網を維持し、
そして。
動き出した丸盾。今度は標的の右の脇腹が狙い目か。鋼の鳥も又、こちらは左から
弧を描いて急速接近!…そして竜型ゾイド、口から禍々しい光が零れ始める。
だが、ギルは反応しない。
丸盾が、左の後方から。鶏冠が吹き出す蒼炎をくぐり。ゾイドコアに最も近い脇腹
目掛けて、今。
「させるかよッッ!」
唸るブレイカーの翼!…刃では無い。盾でも、打撃武器でもある翼で、丸盾を振り
向きざまにぶん殴った!
すかさずブレイカー、跳躍。目指すは、丸盾!カウンターを喰らってふらつくとこ
ろ目掛けて両手を、翼を伸ばして掴み掛かる。
事態、急変。驚いたように橙色の目を明滅させた鋼の鳥。一気に加速、標的の左の
足元に斬り掛かるが…!
「やっぱり足元をすくいに来たわね!」
ビークルから光弾が二発、三発!…連射は相手の動きが読めていた証。続けざまに
光弾を受けた鳥、失速して地面に身体を叩き付けた頃。
丸盾を捉えたブレイカー、すかさず立ち上がると反対方向に跳ね、鳥の方に覆い被
さる。バタバタともがき脱出を試みる鋼の鳥を今…捉えた!
右の爪には丸盾、左には鋼の鳥。
「ここから先が本番よ!ギル!十時の方向から熱源!」
既に放たれた光の槍が、コンビ目掛けて襲い掛かっていく。
「はい先生!ブレイカー、十時だぁぁっ!」
すかさず今捉えた二匹のブロックスを左前方に翳す。
「お前達の動きがあんなに大胆だったのは、勇敢なだけじゃ無い!
荷電粒子砲を吸収する橙色の水晶を全身に付けているからだ、そうだろ!?」
遂に光の槍を、捉えた二匹で受け止めたブレイカー。想像を絶する圧力!一気に数
十メートルも押されていくが予想通り、二匹に埋め込まれた橙色の水晶はうっすら光
を帯びると、瞬く間に光の槍を粒単位で吸収していく。
遂に…完全に吸収された光の槍。もがく鳥も丸盾も、全身に埋め込まれた橙色の水
晶が眩く輝いている。
「よーしもういいわ!ギル、離してやりなさい!」
両手を離したブレイカー。…だが一見至近距離の好機であるにも関わらず、この二
匹は慌てて主の元へ逃げ帰っていく。
「やはりね。シュピーゲル…もとい、凱龍輝のあの水晶は、荷電粒子を反射する装置
じゃ無い。荷電粒子を溜め込む装置なのよ。溜め込んだ荷電粒子は放出してやらない
とあの二匹はいずれ自爆する!
二匹が戻り、荷電粒子を受け渡し、そして発射するまで!凱龍輝は何もできない!
反撃には十分すぎる時間よ、ギル!」
「勿論です、先生!ブレイカー、行くよ!」
竜型ゾイド、数歩進むと天を仰ぐ。口を大きく開いたその姿勢が荷電粒子砲発射体
勢であるのは言わずもがな!二匹のブロックスはそんな主の元へ舞い戻り、身体を分
解させていく。たちまち鎧の姿に戻ると共に、口内に光が満たされていく。光の大き
さが溢れる程極限にまで達したその時。
「おおおおっ!」
ブレイカー、頭から足元目掛けての体当たり。仰向けに倒される竜型ゾイド。木の
葉が、枝が、土が舞い散る。ひっくり返りながら発射される光の槍によって、森の間
を黒焦げの道が作り上げられる中。
すかさず竜型ゾイドに覆い被さったブレイカー。今まさに光の槍を放出する敵の首
には、左の翼の刃がハサミのごとく押さえに掛かる。序盤、ブレイカーのコクピット
を潰そうとした両腕を何度も伸ばして掴み掛かるが、これもブレイカーの両腕によっ
て弾かれ、捌かれ返される。右足の膝元にはまさにブレイカーが右足で踏みつけ反撃
を許さない格好。尻尾をばたつかせて立ち上がろうとするもブレイカーが鶏冠を大き
く広げて蒼炎の推力諸共のしかかって封じ込める。…そして、残る竜型ゾイドの左足
は。
「よーし、いい体勢よ!左の刃は暴発が怖いから力を強めすぎないように。右の刃で
そいつの左膝を壊しにいきなさい!」
左足を必死で蹴り上げ応戦する竜型ゾイド。だがブレイカーは右の盾で払い除ける
と遂に双剣を…展開!がっちり掴むとそのまま押さえ付け、力を振り絞っていく。激
しい金属音が鳴り響く中、徐々に…火花が!
「このまま膝を壊せる!?それとも、魔装剣まで決められる!?」
一気に紅潮するギルだったが、女教師がたしなめる。
「ギル、油断は禁物よ!そろそろ荷電粒子砲の発射が終わる。ブロックスの反撃、来
るわ!」
その声に慌てて敵の鎧を睨めば、確かにあの橙色の水晶からは光が失われつつある。
そして、竜型ゾイドの口から吐き出される光の槍も瞬く間に細くなっているのがわか
る。それは二匹のブロックスが溜め込んだ荷電粒子を受け渡すのが終わる証。光の槍
が、棒になり、糸になり、そして…。
「離れて!」
エステルの声と同時に地を蹴って離れるブレイカー。瞬間、竜型ゾイドの全身の鎧
が放射状に吹き飛ぶ。…ブロックスの合体・分離能力を生かした捨て身の反撃。だが
間一髪早く始動していたブレイカー。紙一重で鎧は空を切る。鎧の破片がブロックス
に合体していく一方、竜型ゾイドが立ち上がるところを。
「『いっけぇぇぇぇっっ!』」
エステルが、ギルが叫び、ブレイカーが吠える。再び地を蹴り懐に飛び込むと全身
を独楽のように回転。翼の刃が!右!左!右!左!連撃に次ぐ連撃!…しかしその間
に警報!正体は、ようやく合体を完成した二匹のブロックスの体当たり。背筋が凍り
付くギル。だが彼が後方に振り返ってスクリーンを見つめる前に、響いた銃声と、怒
号。ビークルから放たれた光弾にバランスを崩す二匹、そしてエステルの檄!
「止めるだけならビークルでもできるから!そいつを倒しなさい、ギル!」
「はい、先生!刃よ、唸れぇッ!!」
翼の刃が右!右!もう一度右!
ぐらり。ぐら…り。遂に、竜型ゾイドが膝をついた。そのまま前のめりになってゆ
っくり崩れる。辛うじて両腕で庇おうとするが。
「ブレイカー、魔装剣!」
ギルの叫びに応じて頭上の鶏冠が前方に展開、鋭い短剣と化すと、強く踏み込むブ
レイカー。上半身で大きく円を描き、遂に竜型ゾイドの脇腹に魔装剣を突き刺した。
竜型ゾイドコアに叩き込まれるエネルギー!
「1っ!2っ!さ…んぐぅっ!?」
だが、寸前で止められたとどめの一撃。さっきも受けた、肺を潰されるような感覚
に一瞬声を失うギル。…竜型ゾイドの反撃は、又してもあの鋭い爪を使った急所攻撃
「コクピット潰し」!
魔装剣が先か、コクピット潰しが先か。
「っっ、かはぁっあっあっあっ…」
たまらず胸を掻きむしるギル。だがその時、コクピット内を谺した二種類の叫び。
「ギル、根性見せなさい!」
一つは女教師の。そしてもう一つは、あの甲高い雄叫びは。
「…はっ!?ごめん、ブレイカー、エステル先生!僕らは、必ず生きて帰る!」
再びレバーを握り直す。額の刻印が眩く輝く!パイロットとの同調が極限にまで達
した時、本来のスペックを遥かに越えた能力を発揮する…それがオーガノイドシステ
ム搭載ゾイドの神髄!
「1ぃっ!2ぃっ!3ぃっ!4ぃっ!5ぃっ!これでどうだぁっ!」
エネルギーの放出、完了。それでもブレイカーのコクピットの軋みは止まない。渾
身の力を振り絞る竜型ゾイドだったが。
上体が、崩れ落ちた。次いで膝、最後に決死の反撃を試みた爪が外れると共に、二
匹のブロックスも又体勢を崩して地に落ち、バラバラに砕け散った。
竜型ゾイド…凱龍輝、沈黙。乱れる息を深呼吸して整えるギル。チーム・ギルガメ
スの勝利が、ここにようやく確定したのである。
【第四章】
焦げ臭い匂いが依然周囲を漂う中、沈黙した竜型ゾイド「凱龍輝」の近くに到着し
たビークル。その脇ではブレイカーがうつ伏せになって女教師の到着を待っていた。
もっとも長い首はピンと伸ばし、竜型ゾイドの方へ厳しい眼差しを浴びせている。
ギルも又、コクピット内で着席していた。…ブレイカーの「ゆりかご機能」により、
同調の副作用で負った傷・疲労などの回復が行なわれている真っ最中だ。だが彼の心
は晴れない。この勝負、勝つには勝った。それに対して充実感が全くないと言ったら
嘘になる。しかし、それを獲得するまでのプロセスには納得のいかないことがあり過ぎた。
「ギル、お疲れさま」
全方位スクリーンに展開されるウインドウ。座席上とは言え安静の状態が強いられ
る中、穏やかな笑みをたたえたエステルの表情を見ることができ、ギルは安堵した。
…だが、続く彼女の言葉。
「落ち着いたら、すぐに帰るわよ。良いわね?」
「な…!」
ギル、激昂。たまらず立ち上がるとハッチを開けて声を張り上げる。
「何故ですか先生!?あれだけ卑怯な手を使いまくったこいつら…『チーム・シュピ
ーゲル』の正体もわからないで、どうしてこのまま帰ることが…うわったったっ!」
不意に飛び出したギルをたしなめるかのように、ブレイカーが両手を使い自力でハ
ッチを塞ぐ。まだ体力回復には至っていないギル、当然バランスを崩し、座席上に倒
れ込んだ。それでも、抗議の姿勢は変わらない。
「とにかく!僕はパイロットの顔が見たい!どうしてあんな卑怯な手ばかり使ったの
かもそうだし、どうして無効試合になったのかとか、それから…」
しかし生徒の抗議に女教師は、怒声を返すどころかひどく難しい顔をして黙り込ん
だ。急変した彼女の様子に(あれ?)とギルも訝しむ。
そして、衝いて出た言葉。
「…あのね、ギル。お互いのために、知らない方が良いこともあるのよ」
「…は?先生、な、何言ってるんですか?」
意外だが、余りにも消極的な返事に熱くなりかけたギルだったが。
「構わぬよ、御婦人。ギルガメス君、我が正体をお教えしよう」
嗄れた声が突如鳴り響く。それは他ならぬ竜型ゾイドから発せられたものだった。
スクリーン越しにその方角を見遣るギル。
竜型ゾイドのコクピットが、開いた。
真っ青のパイロットスーツにヘルメット・マスクを装着した姿。故に表情は一切伺
えないのだが。
ギルは驚きの、エステルは一層難しい表情を浮かべる。
両手を上げたパイロットは、そのまま語り始めた。
「ヘルメットを外さぬままで失礼するよ。もっともこれでマイクが使えるから、あん
た達には都合が良かろうて。
ギルガメス君、儂のこの格好を見れば溜飲も下がるだろう?」
どうやら初老の男性と思われるパイロットに言われるよりも早く、ギルは彼の衣装
の重大すぎる特徴に気が付き絶句していた。…円形の、惑星Ziの地図を横切るよう
に描かれた稲妻。紛れも無い、ヘリック共和国軍のエンブレム!
「儂と相棒シュピーゲルは、これでもれっきとした共和国軍所属兵士なんだ」
辺りを静寂が包み込む中、男性の声が響き渡る。
暫し呆気に取られていたギルだったが、我に返ると慌てて問いかけた。…無論、今
聞ける質問は只一つ。
「な、何故…何故、軍人さんがバトルに参加するんですか?」
その質問に代わって応えたエステル。
「実戦テスト、でしょう?パイロットさん」
割って入った彼女の言葉に、ギルは驚きっ放しだ。
「左様。凱龍輝はな、我が国の切り札だよ。先程の実戦を思い出して頂ければおわか
りの通り、下手に荷電粒子砲を使われても一切無効化する。数さえ揃えば伝説の魔竜・
デスザウラーの荷電粒子砲も恐れるに足りない。
しかし、鞘にしまいっ放しの刀はいつか錆びてくるものだ」
「だからゾイドバトルチームに成り済まして実戦テストをした…って、何故そんな手
の込んだことをしなけりゃいけないんですか!?軍人だったら軍人らしく、演習すれ
ばいいじゃないですか!」
「姿を晒してしまったら切り札じゃ無くなってしまうだろう?ギルガメス君、お主は
凱龍輝、初めて見たのではないかな?」
「…!」
「年に一度、正体不明、されど破格の懸賞金がついたゾイドバトルチームとして我ら
が『チーム・シュピーゲル』は世に現れる。
腕試しに挑戦してくる荒くれ者も当然出てくる。そういう愚か者を完膚なきまでに
叩きのめす。運良く逃げおおせて真実を世間に訴えたとしても、記録上は無効試合…
何もなかったことになっているから誰も気にはしない。もっとも、そんな者など三十
数年の間誰一人として出さなかったがな。
…生き延びたどころか儂らに勝った者などお主らが初めてだよ、チーム・ギルガメ
スの諸君」
パイロットの語りに聞き入るより他ないギル。彼にとって、この男性の話しは想像
を絶するものだ。無類の強さを誇りながら誰にも認知されないなんて!…勝ち上がっ
ていけば嫌でも世間に名が知れ渡るゾイドバトルの世界とは大違いである。あれだけ
卑劣な戦い方を平然と行なう理由もよくわかった。秘密を守るためには何としてでも
勝たねばいけないのだから。
だが、それでも彼には理解できないことが一つ。
「…しい、です…か…」
「ん?」
「そんな、誰にも知ってもらえない、理解してもらえないバトルを三十年以上続けて
何が楽しいんですか!?」
「はっはっはっ、言わずもがな。平和のために戦い続けてきたんだよ、儂は?
長い間戦乱の渦中にあったこの惑星Ziも、ここ何十年かはようやく落ち着いてき
た。…だがしかし!諸国を見渡してみれば北のガイロスは依然としてシュバルツセイ
バーを抱えたまま。ゼネバス残党や諸民族は何度でも決起し、ゾイテック社は彼らに
援助を惜しまないと来た。依然、火種は残ったままだ。
そんな奴らに睨みを効かせ、沈黙させるのが、私が所属するヘリック共和国特殊部
隊『ガーディアンフォース』の使命さ。儂達がいつでも戦えるように牙を研いでおく
ことが、彼らを暴挙に走らせない抑止力となるのだからね。
だが、流石に儂もシュピーゲルも、疲れた」
不意に、だがゆっくりと着席したパイロット。
「ギルガメス君、バトルを終えての私の感想はこうだ。…やはりガイロス、ジェノブ
レイカー、侮り難し」
「な…!?そりゃあ確かにブレイカーはガイロス出身かも知れないけれど、今はごく
普通のバトル参加ゾイドですよ!ゾイドバトル連盟にだって正式に登録されてる…!」
「儂達を倒しておいて良く言う」
「…くっ!」
「幸いにして、シュピーゲル最強の反撃技『集光荷電粒子砲』は十分な威力を発揮で
きた。…だが、それだけだ。パイロットが多少未熟であっても、ゾイドとの同調がし
っかりでき、且つ優れたサポートがついていれば凱龍輝単騎では所詮為す術もない。
…こういうゾイドが世間に流出しておるのだからな、あの国はもっと抱えていること
が容易に推測できる。
それがわかっただけでも儂達が敗れた意義は大きい」
凱龍輝のコクピットハッチが閉まり始める。
「ギルガメス君、覚えておくがいい。戦いは、呪いだ。自分の意志で止めることなど
到底できないのだ。深入りするなよ!そこの御婦人も、彼の前途をよく見守ってやっ
て下さい」
パイロットの言葉に対し、突如ビークルのレバーに飛びついたエステル。やはりと
いう表情!
「ブレイカー、離れて!」
「ヘリック共和国、万歳!」
方向転換するビークル。後方へ向けて地を蹴り跳ね避けるブレイカー。何が起ころ
うとしているのかわけがわからないギルだったが、数秒も経ずして理解した。
降り注いだ火柱。竜型ゾイド…凱龍輝は、逃げようともせず業火を受け止める。
凱龍輝。爆発、四散。
ビークル前方を上方に反らして破片を避けるエステル。ブレイカーは即座に翼を前
方に展開して防ぐ。だが、ギルだけは呆然とするばかり。一瞬の間の後、慌ててレー
ダーウインドウを呼び出して翼の先の様子を認識しようとするが…。さっきまで映し
出されていたあの竜型ゾイドの反応が、うっすらと消えていく。見る間に青ざめてい
くギル。
「ブレイカー!翼をどけてよ!あの凱龍輝、助けないと!ブレイカー!ブレイカーッ!」
「それは私が認めないわ!」
突如全方位スクリーンに映し出された厳しい面持ちのエステル。
「先生!エステル先生!い、一体、何が起こったんですか!?」
「チーム・シュピーゲルは処刑されたわ」
「な…!?」
「敗れた挙げ句、氏素性を語ってしまったのだからね」
だから彼女は、バトルが決着してからすぐに引き上げるよう促したのだ。パイロッ
トと語り合うのは彼を殺すことに等しいと既に気がついていた。…ギル達の逃走を庇
うべく単騎で二匹のブロックスに立ち向かい翻弄した直後、彼女が二匹について人の
手が加えられていた『証』を調べたのは御存じの通りだ。そして、その時点で彼女は
全て理解していた…相手の素性も、勝てばこうなることも!
「もっとも語り合わずに引き返したとしても、彼らに命の保証などなかったでしょう。
だからギル、貴方は悔やむ必要などないわ。…ギル?」
肩を落とし、顔を覆うばかりのギル。嗚咽が止まらない…止められるわけが、ない。
だが、再度に渡る状況の急変はそんなギルの顔を無理にでも上げさせる。爆心地は
未だ赤々と燃え盛り、その音だけが周囲を包み込んでいたが、突如レーダーウインド
ウが彼らの上方を指し示した!
音につられたギル、慌ててスクリーン上方を見つめる。…雲の間に潜む、影。
「拡大して!」
声に応じて拡大され、映し出されたもの。…真っ青な、翼の大きな竜のシルエット。
鮮明ではないが、ギルも、ビークルのモニターに転送された映像を見たエステルも、
何者か理解した。…青天飛竜・サラマンダー。ヘリック共和国が「世界平和の維持」
のお題目の元、諸外国に派遣し上空から監視するのが本来の使命だ。
その姿を確認した時。何事か呟いたギルは自らの腿に拳を打ちつけて、突如!
「ブレイカー、いくよ!」
友の怒りに応じ、喜々として叫ぶ魔装竜がそこにはいた。
「ギル?ブレイカー?お止めなさい!大体貴方達、まだ完全には回復していないのよ
!?」
「関係ない!今日のバトル、嫌な内容だったけれどあの人の話しを聞いて少しは納得
できた。軍人なんて嫌いだけどあの人は立派だなって思えた。もう少しでも、話しを
聞きたかった!…あんなのって、あんなのってないです!」
再び回転を始める全身のリミッター。背中の翼二枚、鶏冠六本を大きく広げると、
宿る蒼炎!
ブレイカー、飛翔。エステルの制止も聞かずに。呆然と見つめるばかりの彼女だっ
たがビークルのコントロールパネルを殴ると仕方なく発進させる。
一方のギル。凄まじい重力が瞬く間に全身に掛かる。額の刻印の輝きが消え掛かっ
ているからだ。急がねば!
視界には依然鮮明に映らぬが、それでも近付いていることは良くわかる。
「ブレイカー、荷電粒子砲、使うよ!」
思いも掛けないギルの一言に大きく口を開けて驚くブレイカー。
「後悔したくないよ!彼奴の羽根を焼いて、不時着させる!そうしたらパイロットを
コクピットから引きずり出してぶん殴る!どうしてあんなひどいことをしたのか聞い
てやるんだ!…今使うしか、ないだろう!?」
エステルは聞こえてくるギルの言葉に怒り心頭に達していたが、そんなことはつゆ
知らないこのコンビ。
両の瞳を紅に青に、又紅にと目まぐるしく変えていくブレイカー。このゾイドが本
気を出せば、ゾイドバトル用武装封印プログラムなど問題にならない。
スクリーン上に、表示される照準。
サラマンダーは追っ手に気付いたのか、ふらふらとぶれながらも速度を増していく。
ブレイカーの背中の口から光の粒が集められ、そして。
「荷電!粒子砲!発射ぁっ!」
放たれた光の槍。落雷が逆流するように迫っていくが。
それをあっさりと避けたサラマンダー。
「ブレイカー、首!」
光の槍を放出したまま首を徐々に振っていく。だが懸命の追撃を、サラマンダーは
嘲笑うかのように軽やかに避けてみせると更に速度を増し始める。
光の槍が、途絶えた。
「…消えた!?速いよ、彼奴!ブレイカー、もう一度…!」
「いい加減にしなさい!」
暴走するこのコンビの耳をつんざいた怒鳴り声。
ウインドウが開かれ、映し出されたエステルはワナワナと震えている。
「先生!?止めないでよ、もう少しなんだ!」
「この馬鹿ァッ!あんなに距離が離れていて、当たるわけがないでしょう!さっさと
戻ってきなさい!」
「そ、そんな…!」
言い争っている内にも、サラマンダーは一気に加速していく。これが青天飛竜の真
の姿。
サラマンダーが全方位スクリーンから消え去るのに、十秒も要らなかった。
ギルは慌てて手を伸ばす。だがそれが余りにも意味のない行為であることは、スク
リーンに手が触れるまで理解できなかった。
「畜生!畜生!畜生ーーーーっ!」
叫び声が虚しく響いた。
着地したブレイカー。遅れて続いたビークル。ブレイカー、降りてきたエステルが
怒りのオーラを漂わせているのに気付くと慌ててうつ伏せになり、縮こまって様子を
伺う。
つかつかと歩いてきたエステル。鋭い瞳でこのやんちゃな魔装竜をじろりと睨む。
ブレイカーはうなだれるばかりだ。
胸のハッチが、開いた。
降りてきたギル。目を真っ赤に泣き腫らしながら。
だが彼がエステルに視線を合わせるより早く、飛んできた彼女の右の拳。
吹っ飛んだ不肖の生徒。…予想を遥かに上回った彼女の動作に目を見張るギルだっ
たが、その真意はようやく合わせた視線の先を見て、理解できた。
怒りで顔を真っ赤にさせながらも、彼女の鋭い瞳は潤んでいた。
「…貴方ねぇ、いい加減にしてよ?
救われたのよ、私達は。助けてもらったし、見逃してもらえたの。
こんなに自分の命を粗末にする人なんて、そうそうお目にかかれないわ。今度先走
ってああいう行動に出たら、二度とブレイカーには乗せないわよ!」
厳しく説教しながら、顔がくしゃくしゃになりそうなのを必死で唇を噛み締め、堪
える女教師。…ギルは視線を反らすと、首を、肩を落として彼女よりも早く泣き崩れ
た。…その様子を見て溜め息をつくエステル。半ば呆れつつも、込み上げてくるもの
に阻まれてようやく絞り出した一言。
「全く、貴方『必ず生きて帰る』って自分で言ったんだからね…」
それだけは、この不肖の生徒に忘れて欲しくなかった。
ようやく、辺りを包み込もうとする静寂。
ブレイカーが軽く鳴いて、二人に注目を促す。…傍らにはさっきまで凱龍輝だった
ものの残骸が散らばっていた。
「お墓…作りたいです、先生。せめて埋めてやりたい」
ふと、漏らしたギルの言葉にエステルも頷いた。
「急ぎましょう。さあ、ブレイカー?」
ギルをコクピットに招き入れると立ち上がったブレイカー。その自慢の爪で、土を
掘り起こし始める。
陽は、既に傾きつつあった。 (了)
【後書き】
…の、前に。先任伍長さん、遅ればせながら「2099 開戦」完結、お疲れ様です。
前回発表分にお話し上かなりまずい不備がありました。そこで補足。
ブレイカーにゾイドバトル用の封印プログラムは無意味です。こいつは効いてるふりしてます。
今日の仕事帰りに気がついたもので(←馬鹿)慌てて四章でフォローの描写を入れてます。
いずれ過去ログ保管庫にいく際には修正加えさせて下さい…。
もうちょっと早く書き上げたかった…。無駄に時間が掛かり過ぎました。
(実際に書き始めたのは10月1日から)
正直、コロコロバトストにぶつけてみたかったのですが…。最近読んでないけど、
あっちはどうなったのやら。
今回はここまで。…ああもう一言。シュピーゲルフューラーって命名、かなり自信あるんですが!
>>235 お疲れ様です
今回も面白かったですよ、シュピーゲルは影だったかな?
影の恐竜、虐殺竜とかジェノが言われているから影の竜かな
魔装竜 対 “シュピーゲルフューラー” ◆.X9.4WzziA の作者さん、
お疲れさまです。
先任伍長さん「シュピーゲル」は鏡の意味も在った様な無かった様な…?
鏡だとしたら凱龍輝の特性と名前が見事に一致しているような感じがします。
南海の怪魚の作者さん、赤い雪さん遅れましたがお疲れさまでした。
気付いたら書き込み失敗で3日以上書いてない…しかも
>>250も近い。
書き終わりません…_| ̄|○
大型エレベーターに移動をしようとしているレクス=アームズだが昨夜の戦闘で地上入り口付近で破壊されていることは知るよしも無い。
この施設はゾイドの戦闘テスト等も行なわれているので天井も高いので飛行ゾイドも戦力に存在する。天井からの敵からも相手にしなければならない。
しかしスライドフロアは中途半端に起動した状態でその構造は極端に複雑化しており一向に抜け出せる気配は無かった…。
突然レーダーに反応が有りアラームがけたたましく鳴り頭上と右側から同時に砲撃が来る。その攻撃自体の威力は非常に低く装甲に着弾するが次の瞬間レクス=アームズは驚愕する。
「!反射しただと!?」そのエネルギー弾は彼のギガの装甲に衝突した後反射して壁に当たりまた反射を繰り返しながら何度もギガに打つかって来るのだった。
幾ら威力が低くても装甲の隙間に入ってしまえばダメージは免れない。更に別々の方向からも砲撃される…溜まらず細い通路上に為った区画に逃げ込むがそれが罠で有る事は薄々気付いていた。
目の前に大型ゾイドが身を構えている…見た目は出来の悪いゴジュラスギガ。内部にはブロックスが多数入っているのだろう…ガシャガシャとチェンジマイズをしている音が聞こえてくる。
更に通路の外からブロックがレクス=アームズのギガを通り抜けて背中に合体する。
「こいつがフロアマスター”ワームブレイカー”か!」彼が目にしている物は背中からブロックスがミミズの様に多数生えている気味の悪いギガだった。
そのワーム部分の先端は先ほどの攻撃に使われた高収束エネルギーボール発生装置とザンブレイカーが装備されていた。
「長距離格闘戦使用って事か!?」挨拶代わりにジェットアンカーを射出する…広大な施設の極限られた特に狭い空間で2体のゾイドの戦闘が始まろうとしていた。
>先任伍長さん、恐怖の亀裂の作者さん
レス、ありがとうございます。
「シュピーゲル」の由来は恐怖の亀裂の作者さんの御指摘通りです。
折角「フューラー野生体を用いたヘリックゾイド」という設定が出てきたんだから、
こういう遊びがあってもいいんじゃないの?と個人的には思っています。
今回の原稿はかなり苦労しました。凱龍輝、中々の難敵だったもので。
それだけに、レスがあるのは本当に有り難いです。励みになります。
そっちか・・・<鏡
今にして思うとGガンダムの覆面兄ぃの名前ってそのまんまですよね
「影ガンダム」に名前が「黒い兄弟」・・・あれ?元のファイターの名前も・・・
深く考えないことにしよう
フューラーは日本語にするとそれこそいろいろな意味が出てきますね
指導者とか誰かがバーサークするから馬鹿殿って愛称もありましたな
あと総統・・・
ジェットアンカーがワームブレイカーに激突する…しかしボディの外装は金属音を立てて弾ける。
内部がブロックスな為装甲ががたついただけだった様で古代チタニウムの外装は全くダメージを受けていない様だった。
突然背中のブロックが分離し伸びてザンブレイカーが迫る。「おっと。」軽いサイドステップで避けるが狭い空間での戦闘なのですぐに壁際に追い詰められてしまう。
そこに目掛けて本体からの噛みつきが来る。バックステップで躱すがその勢いは止まらず体当たりを喰らう。
「!」その威力はギガの突撃と寸分変わらずそれ所か全重量の差で逃げ込んだ通路から元の位置まで戻される始末だった…。
「ブロックスのくせに何てパワーだ!?」頭上からのザンブレイカーの攻撃をハイパープレスマニピュレーターで受け止め砕く。
「所詮スリーパーって所か。」計算ずくで無駄の無い攻撃…理想ではあるが戦闘経験の多いパイロットにとっては十分予測範囲の事なので機体の性能差が無ければ賊に言う「蟷螂の斧」状態だった。
「おいおい…今度はそれか?」急いでギガを追撃モードでその場から離れさせるとその場所には上から落ちてきたワームブレイカーが立っていた…。
そうそう逃げてばかりでは居られないので4連ショックカノンをブロックスの部分を狙って攻撃するがあっさり分離されて回避される。
「うぐっ何か小馬鹿にされている様でむかつくな…。」相手の戦闘プログラムは回避重視の長期戦用だったようだ。
「いい加減に当たってくれよ!」そう言うとロングレンジバスターライフルを砲撃体制に移行させるレクス=アームズ。
彼にはこんな所で時間を喰っている暇は全く無かった…。
硝煙の果てに
ライアー一等兵たちが陣取る壕に接近してきているのは目の前にいる九機のイグアンだけのようだった。
通常はゾイド小隊は十機で編成されるからこれはやや不自然なことだった。
だが、イグアン九機の戦力はライアー一等兵たちの比ではない。
まともに正面から戦えば、こんな監視壕など一捻りで潰されてしまうだろう。この場はおとなしく隠れつづけるしかない。
ライアー一等兵は後ろを振り返るとリモコンを操作する兵に頷いて見せた。
その兵も頷き返すとガイサックを操作し始めた。それを確認するとライアー一等兵はイグアンの監視に戻った。
ガイサックは、予定通りにある程度壕から離してから派手に攻撃させるつもりでいた。囮になれば良いわけだから別に命中させる必要は無い。
そもそもスリーパー仕様でもない機体がパイロットもいない状態でろくに戦えるはずも無かった。
だがいつまでたってもガイサックが走り出す気配は無かった。
不思議に思ってライアー一等兵が振りかえると、リモコン担当の兵が困惑した顔で何度もリモコンを叩いていた。
状況は明白だった。いそいで改造されたガイサックのリモートコントロール機能が砂漠の険しい気候で故障したのだ。
ライアー一等兵は気を落とすとリモコンを操作する兵にガイサックは諦めるように言おうとした。
その時、壕の中に声にならない悲鳴が走った。
慌てて振りかえると、イグアンが短距離の跳躍を始めながら接近していた。
このままなら予想よりも早くこの壕のあたりに来てしまうだろう。ライアー一等兵は全員に伏せるように言った。
運がよければ監視壕に気がつかないままイグアンが去っていくことも考えられた。
それを祈るようにして壕に伏せていると、急に壕の背後に騒音が発生した。
ライアー一等兵は冷水を浴びせかけられたような気がしていた。
振りかえるとリモコンを操作していた兵が青ざめた表情でこちらを見ていた。
その表情を見るまでもなく状況は明らかだった。兵が操作しようとしていたガイサックは暴走しているようだった。
最初にガイサックは被せられていた偽装網を剥ぎ取りながら立ち上がった。そしてロケット砲弾を一斉に発射した。
どうやらきちんと照準を付けていたわけではないらしく、大半のロケット砲弾は彼方へと飛んでいった。
だがその内の一発は運悪く監視壕の中に飛び込んでいた。ライアー一等兵がそれを確認した次の瞬間には壕の内部で爆発が起こっていた。
幸いなことに飛翔距離が短かった為かロケット砲弾は信管が働かずに不発弾となった。それでも不運な兵が一名、頭部にロケット砲弾が命中して、脳髄を撒き散らしながら吹き飛ばされていた。
その悲惨な光景に目を奪われた兵たちは、慌てて壕から飛び出して逃げようとしていた。
ライアー一等兵は兵の死骸に気を取られてその動きを静止するのが一瞬遅れていた。
そして最初に壕から飛び出そうとしていた兵がレーザ砲撃を受けた。
監視壕の遠くを跳躍していたイグアンがガイサックが暴走している間に接近していた。
先頭を跳躍していたイグアンが狙い澄ました小口径荷電粒子砲を撃った。その一発で迷走していたガイサックは動きを止めていた。
ガイサックを撃破した後は、イグアンは闇雲な跳躍を避けてゆっくりと監視壕に近づいていた。
レーザ砲撃はその間も続いていた。壕から逃げ出そうとしていた兵は頭部をレーザで撃ちぬかれて躯をさらしていた。
すでに兵から戦意は失われていた。ただ逃げ出すこともできないから大半の兵は怯えて壕の底で縮こまっていた。
ライアー一等兵はため息をつくと白旗を揚げようとした。だがライアー一等兵が動き出す前に監視壕に近づく足音が聞こえた。
イグアンよりも重厚なその足音にライアー一等兵が気がつく前に監視壕の近くに榴弾が撃ちこまれた。
その榴弾の爆発が起こしたショックでライアー一等兵は気絶していた。気絶する直前に監視壕の死角から近づくレッドホーンの姿を見ていた。
次スレはVol7だよね
そろそろ250ですな。踏んだ人スレ立てよろ
「狙うはコアブロックのみ!」立て続けに砲撃音がこだまする…。
ライフルではあるがその機構と口径そのものがロングレンジバスターキャノンと同一なので強力な衝撃波を纏いながら弾丸は一直線に飛んでいく。
衝撃波に巻かれその外のブロックを跳ね飛ばしながら胴体へ直撃する。その後ワームブレイカーを構成していたブロックスとギガの外装は床の上に山となって積み上げられた。
「全く世話の掛かる相手だよ。」そう捨て台詞を残してその場を後にするレクス=アームズと彼のギガだった…。
「やはりがらくたはがらくたか…。」何時のまにか戦場跡にザクサル=ベイナードは来ておりその様を一部始終見ていたようだった。
やはりレクス=アームズを仕留めることが出来るのは自分だけだと確信しながら戦闘データを記録しているレコーダーをがらくたの山から必死になって探しているザクサル=ベイナード。
誰かに見られていたら滑稽な情景が露見してしまうだろう…しかし戦闘記録は積み重なればそれは一つの価値となって収拾した者に与えられる。
何としても彼の癖や行動パターンを手に入れたいザクサル=ベイナードであった…。
…その後少ししてザクサル=ベイナードは予期せぬ敵に襲われることになる。
事を起こそうとしている者さえ命の危険が常に背中に忍び寄る場所となり果てた共和国特別装備試験施設はまた静けさに支配されていた。
硝煙の果てに
体にのしかかって来る重みでライアー一等兵は覚醒していた。同時に全身を鈍い痛みが貫いた。
意識があるということはどうやら戦死は免れたということだ。
しかし榴弾の爆風を受けたことで相当の負傷をしてしまったようだ。
体が思うように動けなかった。それに何故か普段よりも体が重く感じられた。
だが目を動かしたライアー一等兵はようやく誰かの死体が自分にのしかかっている事に気がついていた。
死体は顔をこちらに向けて倒れている。だが、慣れ親しんだ顔だというのにそれが誰なのかわからなかった。
戦意はとうに失せていた。このまま自分は死ぬのではないか。そうライアー一等兵はおぼろげな意識で考えていた。
倒れこんだまま空を見上げていたライアー一等兵の耳に唐突に騒音が響いてきた。
騒音の先に顔を向けるのも億劫だった。顔を向けるとイグアンが壕に近づいてくる所だった。
――何故こんな距離でいきなりイグアンの足音がするのだ
爆風で鼓膜がやられていたのだが、今のライアー一等兵はそんな事さえ気がついていなかった。
視界の隅を何かがうごめいていた。それが生き残りの兵たちだということはすぐにはわからなかった。
兵たちは顔を見合わせるとゆっくりと手を上げて監視壕の壁を乗り越えた。
全員の顔に諦めの色が見えていた。そのまま彼らはイグアンの方へとぼとぼと歩いていく。
ライアー一等兵も彼らを追いかけようとしたが、死体をどけようとしたところで気力が萎えてしまった。
面倒くさくなったライアー一等兵は彼らの背中を見つめた。
判断力がおちているライアー一等兵の目から見ても彼らが落ち込んでいることはわかった。
緒戦でいきなり捕虜となることが悔しいのかもしれない。しかし目の前で僚友がしんでいくのを見ればこの戦力差では交戦が無意味であることも気がつくだろう。
――そうだ、それで良い。生き残れば良いんだ
ライアー一等兵は諦観したように目を閉じようとしていた。彼らさえ生き残ればそれで良い、そう考えていた。
だが次の瞬間イグアンが爆発した。攻撃を食らったのだということに気がついた時には二機目のイグアンにビームの光束が突き刺さっていた。
そのイグアンも同じように爆発した。ビーム砲はイグアンの弱点を正確に撃ちぬいているようだった。
イグアンの数が半減した時、ようやくライアー一等兵はビーム砲を撃ってきたゾイドを発見した。
白一色に塗装されたシールドライガーがこちらに駆けてきていた。シールドライガーは駆けてくる速度もそのままにイグアンの一機にストライククローで殴り掛かっていた。
イグアンはクローによって半身をもがれて鈍い音と共に地面に転がった。
シールドライガーは、それを確認することもなく頭部のレーザークローを突然の攻撃から立ち直り始めたイグアンへと突き立てる。
だがレーザークローを突きたてながらも、イグアンは冷静にクラッシャーバイスで殴りつけようとしていた。
シールドライガーは、キャノピーを狙ったその攻撃をかわそうともせずに顎に力を入れる。
それだけでイグアンは上半身と下半身が泣き別れてばらばらに散った。その間にもシールドライガーは尾に装備したビーム砲で別のイグアンを屠っていた。
結局、最後のイグアンが衝撃砲で飛ばされるまでほんの数分とかかっていなかった。
すべての敵機を排除したシールドライガーはゆっくりと壕の方に歩き出していた。
壕から出ていた兵たちはその光景を呆気に取られて見ていたが、すぐに歓声が上がった。兵たちは狂喜のあまり泣き出しているものもいた。
しかしライアー一等兵は唐突に現れたシールドライガーに不気味なものを感じていた。
施設第1層地上施設人員用通路…立て続けの戦闘や事件発生時の経緯から構造が変り果てた通路を付き添い兼ガイドにミズホ=浅葱を連れたファイン=アセンブレイスはやはり迷っていた…。
「如何しようも無いでありますね…。」彼が言うのも無理は無く施設勤務のミズホさえ道が解らないのでしょうがない事だ。
ブロック毎に区切りが在るらしいのでその都度何処のエリアに居るか聴くが目的の物にはかすりもしない場所が多く無駄に調べることは出来無かった。
「ここは食堂の辺りよ。」その声に足が止まる…「調べて見るでありますか。」そう言いながら部屋に入ろうとする。
「お腹でも空いた?」「そうであります…。昨日辺りから空腹になるのが早い気がするでありますので。」その理由が直に解ったらしくミズホより答えが返ってくる。
「はあ。そうなのでありますか…。」どうやらフェイ=ル=セイフの治療法は初期患者の患部移転だけで無く、再発時の患部の発生場所までコントロール出来る様でその場合は空腹等の副作用があると言う事だった。
「そうそう。また反対側辺りに出てくるかもね?」笑いながら言うミズホ。彼にとってはまた服を変えなければならない…と財布の心配をしなければならない事に為ってしまったようだ。
「…」何故か二人して壁に耳をつけ物音がしないか確認する…。
「誰も居ない見たいね。」そういって無造作に扉の鍵を壊すミズホ「さがるであります!」突然彼女を突き飛ばして扉と彼女の間に割って入るファイン=アセンブレイス。
扉の向こうから食料の入ったダンボールの群れが雪崩となって二人を襲う。
数秒後ミズホは無事だったが彼はごく当たり前のように食料の下敷きになっていた…。
やっとの事で食料の山から這い出すファイン=アセンブレイス。「うう…食べ物の重みは命の重みと言った所でありましょうか…。」
山の内部にあるこの施設は食料貯蔵等に適しているのだろう倉庫の壁は地が剥き出しな上少し寒い。
「ここには彼等は居ないみたいでありますね。」化け物が居ないか確認するが「食料が詰まってたから居る訳無いじゃん。」とあっさりミズホ=浅葱に突っ込まれる。
「これは手厳しいであります。」緊張感もへったくれも無い空気に包まれつつある二人だった…。
「なかなか見つからんな…。」ザクサル=ベイナードは未だワームブレイカーのパーツの山でレコーダーを探していた…。
彼此10分は経つ。確かにパーツは多いがコアブロックさえ見付ければ後は自分のブロックス「マトリクスケンタウロス」に接続し解析に掛ければ良いのだがかなり下の方に埋まっているのだろうか?一向にコアブロックは見付からない。
いい加減にパーツの山を吹き飛ばそうか迷っている内に何かに忍び寄られているのに気付かなかったのであろう。
…それは何の前触れも無く彼の機体に襲い掛かってきた…。
「何!奇襲を受けただと!?」突然機体が吹き飛ばされ壁が目の前に迫ってくる。彼は機体のマグネッサーを最大出力で起動させ何とか壁への激突を避ける。
振り向いた先に見えたのは何処の所属でもない上ブロックスと通常の機体でも無いゾイドが目の前に居るのを確認する。
「帝国の新型でも無い。なるほど貴様か!」目の前に居るのは紛れもない完全野生体のゾイド。
しかもたった1体で軍事基地や大都市を崩壊させる戦力を持つゾイドハザードを起こし兼ねない超大型の恐竜型?ゾイドだった…。
硝煙の果てに
イグアンを撃破したシールドライガーは監視壕に近づいてきた。
兵たちも歓声を上げながらシールドライガーに近づいていく。
ライアー一等兵も、それを見るとのしかかっていた死体をのろのろとどけようとした。
だがふとライアー一等兵は違和感にとらわれた。何となくシールドライガーの装備が不自然な気がする。
しばらく考えてからようやく気がついた。そのシールドライガーは各部に火器を増設していた。
だが増設されたらしい火器はすべて帝國軍で使用されているものだった。
頭部には小口径のレーザ砲が搭載されているが、それはイグアンが装備するものと同じものだった。
しかもシールドライガーは今の戦闘では増設された火器を一度も使わなかった。
ライアー一等兵は戸惑いながらシールドライガーを見つめた。
そういえば高速機動部隊が装備するシールドライガーは全て青で塗装されていたはずだ。
なのにこのシールドライガーはフレームの一部を含めて白く塗装されている。
かつてのMk‐II部隊配備機のシールドライガーMk‐IIにも似た塗装だが、Mk‐IIが艶消しの白で塗装されていたのに対して、このシールドライガーは輝かんばかりの艶のある白で塗装されている。
ひょっとすると名のあるエースパイロットの乗る機体なのかもしれない。
ライアー一等兵はその時になって唐突に気がついたのだが、シールドライガーが単機で何故こんな所をうろついているのか。
考えてみれば不自然なことだった。ライアー一等兵は立ち上がって兵たちを呼び戻そうとした。
だがそれは一足遅かった。ライアー一等兵が立ちあがる前にシールドライガーが再び発砲した。
シールドライガーが照射した小口径レーザ機銃は、正確に兵の一人を撃ちぬいていた。
胴体の中心を照射された兵は、一瞬膨れ上がったように見えたが、すぐに上半身が吹き飛んだ。
炭化した上半身はそのまま監視壕の中に転がり落ちた。残った下半身はそのまま立ち尽くしたが、すぐに倒れこんだ。
それを切っ掛けにするようにして兵たちが慌てて逃げ出そうとした。
だがシールドライガーは冷静にレーザの照射を続けた。照射が行われるたびに兵たちが一人ずつ減っていった。
あるものは無防備な背中から頭部を、またあるものは呆然と立ち尽くしていたところを撃ち抜かれていった。
ライアー一等兵は、その間何もできなかった。ただ減っていく兵たちのあげる悲鳴を聞きながら震えるだけだった。
気がつくと攻撃は終了していた。ライアー一等兵は壕の中で隠れて、振るえながらも兵たちの無残な死体と銃口から煙を上げるシールドライガーを見つめていた。
シールドライガーは立ち止まったまま小口径レーザを照射していた。しかも攻撃に使用したのは一門のレーザ砲だけだった。
レーザ砲は連続照射によって高熱を発しているようだった。銃身の放熱フィンから上がった熱がまるで煙のような陽炎をつくっていた。
その時、ライアー一等兵が見つめるなかでシールドライガーのキャノピーが持ちあがっていた。
ライアー一等兵はコクピットから顔を出した男を見た。男は間違いなく共和国軍の搭乗員服を着ていた。
男は高熱を発する小口径レーザを確認するように見てから、地面に転がる兵たちを一瞥した。
ライアー一等兵は男の目を見て背筋が凍るような気がしていた。男の目には何の感情も浮かんでいなかった。
ついさっき生身の、しかも無防備な兵たちを虐殺したというのに男には感情が見えなかった。
喜ぶわけでも、罪悪感を感じているわけでもない。ただ男には何らかの信念だけが感じられた。
兵たちはその信念を遂行する為の手段でしかない。冷徹そのものの男の顔がそう物語っていた。
ライアー一等兵は男の顔を見るうちに次第に感情が高まるのを感じた。ただの怒りではない、悲しみでもない。
男と自分は再び出会う。それもここではない何処かの戦場で。そう感じた時、男が監視壕に目を向けた。
ライアー一等兵は死体で被われ、自分の姿が見えていないにもかかわらず男と目が合っているような気がしていた。男が壕の方を見ていたのは、ほんの数秒だった。
男がコクピットに戻り、キャノピーが閉まるとシールドライガーは再び駆け出していった。
ライアー一等兵が監視壕から這い出たのはそれから数分後だった。
第三小隊第五監視壕に関する報告
開戦から三時間後小隊本隊が現地に到着。監視壕にいたほぼ全員の戦死体を確認
戦線を支えるには帝國軍の圧力が大きかった為、第三小隊は捜索を短時間で打ち切り後退。
数名の遺体が識別できなかった為、識別不能だった死体の分はMIA(戦闘中行方不明)扱いとする
師団情報参謀付記(黙読限定)
監視壕の遺体の全てから認識票が紛失していた。その様子は明らかに持ち去られていたらしい。
それが事実であればMIAの内一名以上が生存していたことになる。
しかし監視壕の全滅及び帝國軍による虐殺はすでに共和国本土にまで報告されている。
師団参謀部はこの事実を未公開とするのが的確と判断する。
ごめん、新スレ立てられなかったです
誰かスレ立てお願いします
執筆されている皆様&名無し獣弐氏、いつもお疲れ様です。
熱いオレストで6スレ目もあっという間に埋まってしまいましたね。
特に最近はどの作品もキタ──wwwヘ√レvv──(゚∀゚)──wwwヘ√レvv─ !!
・・・という感じの展開で、続きが楽しみです。
ということで次スレを立ててみます。