脳内設定を語るスレ Mk2妄想型

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647名無し獣@リアルに歩行:2009/09/09(水) 22:15:36 ID:???
自分の設定って…
詳しくお願いします
648時の傷痕:2009/09/21(月) 12:05:07 ID:???
 電子戦ゾイドの持つ戦術的重要性と、裏腹の脆弱さの問題は、特にゼネバスにおいて強く認識されていた。
 その思想は、被発見と致命部への被弾を避ける、低姿勢の小型機体と快速で戦闘力劣勢を補ったゲーターからも
すでに見いだされ、ネオゼネバスに到って電子戦と自衛戦闘の両方をこなす戦闘電子戦ゾイド、ダークスパイナーや
キラードームを生み出した。
 しかしそのネオゼネバスが、ディメトロドンに限っては消極的姿勢に終始した。
 すでに旧時代にディメトロドンMk-II型という先例があるにも関わらず、何故?

 現代ゼネバス人がディメトロドンに対して抱く感情は複雑である。
 ゼネバスとガイロスの協同から産まれた、旧ゼネバス全盛期の立て役者にして、忌まわしき欺瞞に満ちた同盟の
象徴であるこのゾイドは、ゼネバス民族五十年の苦難のトラウマと直結している。
 かつて共和国がそうであったように、電子戦機にも十二分な護衛を割けるだけの絶対的戦力優位を得たという
理由もあるにせよ、「汚れた血筋のゾイド」に手をかけることを可としない空気が軍指導部から技術部まで蔓延
していたことも否定できない。
 そうした思惑とは裏腹に、戦術の必要性はディメトロドンの重要度を果てしなく押し上げ、ついには決戦兵器
ゼネバス砲システムの片輪として戦力の根幹を担うまでになった。

 ネオゼネバスのニクス脱出は、華やかな帝国最高の裏側で、故郷を喪失し血族が離散する傷を再び引き裂いた。
 黙然と、しかし消しえぬ傷痕のように、ディメトロドンはこんにちもネオゼネバスの戦列に立ち続けている。
649山は、ただ一歩のみを 1/2:2009/10/03(土) 20:29:53 ID:???
 何となれば、霊長類とは捕食者から樹上へと逃れた種族である。もとより戦闘力に優れた生物ではない。
 ゾイドと言えど、共通する身体構造の原理上の特性から逃れえない。

 腕が脚を兼ねることで、強大な格闘腕を備えつつ、走行装置の重量効率が高く機動性に優れるというのが
ゴリラ型の触れ込みであったが、一つで兼用ということは同時に二つのことには使えないということである。
 すなわち、格闘に腕を使おうとするとフットワークが死ぬ。コングがスペック上は優位に立つはずのゴジュラスに
対し、格闘戦では常に劣勢を強いられてきたのも、一つにこのためである。強力な足腰に加え、尾を第三の脚とする
ゴジュラスは、恐るべき踏み込みや飛びかかりの速さを備えた生粋のグラップラーであった。

 射撃戦ユニットとしてもゴリラ型には致命的欠陥がある。
 直立型と同様、頭部が高く突き出ているコングは大型の旋回砲塔を装備できない。主なハードポイントは肩・腕と
なるが、腕が歩脚を兼ねるコングは足を止めなければ上半身ひねりで射線を振ることもできない。
 さらに走行中の砲の動揺が著しく、行進間射撃がほとんど不可能である。
 結果、他機種に比して容易に発砲のタイミングを読まれ、容易に回避・反撃される。
 コングが他に例のない純ミサイル戦用ゾイドとなったのは、動揺するランチャーからあさっての方向へ発射される
弾を、後から誘導して補えるミサイルくらいしか装備できなかったというのが一つの理由である。
 主武装をビーム砲に換装したアイアンコングMk-II限定型は、敵が回避・反撃できないタイミングを読み切る
エコーの操縦能力があってこそ実用に耐えるものであった。そのエコーですら、大氷原の戦いでは操縦に手一杯に
なり不覚を取っている。
 後のアイアンコングPKの戦闘力は通常型の三倍とされていたが、これは乗り手が技量優秀者のみに限定されて
いたからである。平均レベルのパイロットを搭乗させての評価では、通常型と大差ないか、むしろ劣った。
 ガイロス正規軍はPKコングを配備できなかったのではなく、コストパフォーマンス的に見合わないから廃案にしたのである。
650山は、ただ一歩のみを 2/2:2009/10/03(土) 20:32:38 ID:???
 ゴリラ型ゾイドの真価は戦闘よりも工作用にあった。
 足を止めての力仕事なら、強大な腕力と器用な手、知能の高さは他を寄せ付けぬパフォーマンスを示した。
気性のおとなしさも非戦闘用としてこそ好ましかった。
 アタックコングは歩兵陣地の構築に威力を発揮したし、ゴーレムはドアの開閉や爆弾を隙間に押し込むことも
できる器用な手指により、最強の特殊工作用ゾイドとして君臨した。

 単体のゾイドとして、アイアンコングは非常に優秀ではある。
 特に、時速150キロで機動できるビ級ゾイドの戦術的価値は、長きに渡って比類なきものであった。
 機構設計の完成度の高さも賛辞に尽くせない。
 しかし、ともに活躍したレッドホーンやサーベルタイガーなど、他の幾多の名機が、そのコンセプトを継承する
機種系列を確立していったのと比べ、コングの霊長類大型・ミサイル戦用重ゾイドの血脈を受け継ぐゾイドは、
ついに現れることはなかった。おそらくこれからも無いであろう。

 アイアンコングは出現の時点において、すでにウェポンシステムとして完成しており、同時に自らの可能性の
限界に到達してしまっていた。
 究極、万能を求めた見果てぬ夢。
 山は動いた。
 偉大な一歩を。しかし、ただ一歩のみを。
651レッドホーンHMM:2009/10/09(金) 00:32:37 ID:???
 エキシビジョン方面の需要を重視し、敏捷性と獰猛さを前面に押し出したHMMと呼ばれる一連の旧機種
リニューアルモデル。
 これらに対し、レッドホーンHMMタイプは、未だ膨大な数が第三世界諸国を中心に現役配備されている同機の
アップデート需要を見越した、原型を可能な限り残す最小限の改修が特徴である。

 正面装甲をなす頭部と、装備火器と管制系および射撃安定に係わる後脚のみを新規設計としている。
 頭部には、大型機では例のない共通コクピットを採用。生産性に配慮するとともに、尾部銃手席も含めすべての
乗員席が緊急脱出ビークルとなり、生残性が向上した。
652名無し獣@リアルに歩行:2009/10/18(日) 18:48:33 ID:???
>>649-650
何気なくスレ開いたが見事な考察だ。GJ
653HMMコングについての思いつき:2009/12/13(日) 14:27:33 ID:???
 初期の小型ゾイドには、生産性を重視し機能上不要な口腔構造はオミットしたものが多かったが、
希少な大型ゾイドに関しては素体の能力を発揮させることを重んじ、機体構造を野生体に近づけ適合率を上げることだけを
目的にダミーの口腔構造を設ける設計が当然視されていた。
 例外的に、初めて全天候作戦能力と長距離捜索・火器管制機能を具備し、当時としては破格の電子装備を搭載した
アイアンコングは、口腔部をオミットし末広がりの頭部下側の大きなスペースをそっくり電子機器および冷却装置、APU等の搭載に充てた。
 その代償として、コングはコアの身体認識能のリミッター強度を引き上げざるを得ず、運動性能の点でハンデを負っている。

 ガイロス仕様では大幅に近接戦闘志向の改修がなされている。
 長距離火器管制機能を廃して電子装備をコンパクト化しバイトファング機構を追加。
 さらに腕部クリアランスの改善と脚部の強化による打撃能力の向上。
 近接火力の10連ロケットランチャーを左肩にも増設。中距離ミサイルランチャーを腕の動きを妨げないよう背部に格納可能と
した上、パイロットの利き腕に合わせて左右いずれにも装備可能とした。
654名無し獣@リアルに歩行:2010/03/07(日) 07:50:01 ID:???
>>649-650
うおおすげー
しっくり来すぎるぜ
シュバルツ機(だけ)がビームガトリング搭載できたのもそのためか
655名無し獣@リアルに歩行:2010/03/28(日) 19:54:37 ID:???
 元より反応は期待しないチラ裏。
 …そうであっても反応があると嬉しいものよ。

 粗ネタで保守。
「能ある爪」
 地球におけるチーターと他の猫科動物とは逆に、猫獣型ゾイドの中ではチーター型だけが他種に比して鋭利で
長い爪を出し入れすることができ、磨耗や破損から保護している。
 ライトニングサイクスも野生体に倣った足の構造をもつが、これは両軍通じて初採用であり信頼性に一抹の
不安があったストライクレーザークローを衝撃から保護する意味もあった。
 さらに、爪をフェアリング内に格納することにより、レーザークローのアイドリング及び余熱による赤外線
探知を防止する効果も考慮されている。
 闇夜や濃霧など視界が遮られる条件では、時としてサイクスは光学迷彩を持ち総合的な隠密性ではより優れる
機体よりも脅威となった。
 たとえ粗末な雑穀の雑炊であっても、絵に描いたどんな豪勢な献立よりも価値がある。
 ディバイソンとはそうしたゾイドであった。

 ディバイソンは中央大陸戦争時代、対デスザウラー用として開発された機体である。
 その目的においては力不足で、同じ運用思想で絶対の質的優勢を目指したマッドサンダーの開発につながったとしばしば言われるが、誤解である。
 マッドサンダーとディバイソンは同時期に開発が始まった兄弟機であった。最新技術を結集し総反抗の切り札、本命として開発された前者が完成するまで、
その時間稼ぎとして低リスクな設計で早急に実用化し、聖域たる中央山脈における戦線を維持することに要求を絞った「仮の対デスザウラー用ゾイド」がディバイソンだったのである。
 地形さえ変える荷電粒子砲だが、岩山もろとも敵を吹き飛ばすのは容易でなく、またデスザウラー自体の行動も阻まれる山岳地帯においてはその戦力は大きく減じられる。
ディバイソンの性能は、この天然の要害を盾にデスザウラーと渡り合えれば可として設定されたものであった。
 もとよりスーパーヘビーガードに通用しない105mm短砲身としたのも、疎開先の工廠の生産体制が万全でないことを踏まえ、製造に高い技術を要する大口径砲の搭載を避けた、戦時急造的な仕様である。
 また、対デスザウラーに限らず、総じて軽装な山岳戦部隊に稜線超えの弾雨を浴びせることを企図したものでもある。
 装甲材のグレードも生産性重視で低く抑えられており、そのぶん機体重量が嵩んでいる。

 そして戦場に送り出されたディバイソンは、予定通り地味に、小規模続発的な遅滞防御戦や陽動作戦に主用され、「かまどとツバメ作戦」を除くと目立ったエピソードは無い。
 しかし、マッドサンダーが完成し共和国が勝利した事実が、ディバイソンの戦果の証明である。開発目的は果たされたのである。
 ディバイソンは失敗作ではなかった。むしろ本命のマッドサンダーよりも広く長く愛用された、想定を大きく超えた成功作であった。
657続き1/2:2010/04/22(木) 02:14:17 ID:???
 マッドサンダーさえもが陳腐化するほどの強大な暗黒軍との戦いが幕を開け、役割を終えたディバイソンは一度表舞台を降りた。
 それから幾年月。太平の惰眠から叩き起こされ、十年の軍事力ギャップを一朝に埋めることを要求された共和国は、再びディバイソンを必要とした。
 戦時急造を前提とした設計は、超特急の量産にも応えた。
 開戦前から改修がなされてきた他機種に比べると、相対的な弱化は否めないが、当時の帝国軍主力ゾイドにはまだ優位を堅持しており、逼迫するエウロペ戦線をよく支えた。
 ニクス本土戦に入ると質的劣勢を強いられたが、本分である量の優位でもって互角を維持した。

 華々しい勝利をもたらしたゾイドではなかったが、そこへとつながる最も苦しい時期に、敗北を押しとどめたのがディバイソンである。
 いかに高性能なゾイドであっても、画餅には何の価値も無い。最良ではなかったが、必要とされる瞬間に十分な戦力として在ったという点において、ディバイソンには無限大の価値があり、将兵が絶大な支持を寄せた所以である。

 ディバイソンが有していた本質的な価値に対する理解が、共和国が崩壊へと向かった時代には失われてしまっていた。
 ライガーゼロやゴジュラスギガなどは、いずれもコストや生産性や運用性の面で大きな欠点を抱えている。
 そうした頭数や扱える人間が限られるゾイドを補い、軍隊の足腰を支えるべき、量的戦力を担いうるゾイドがなおざりにされたことが敗因であった。
 急造仕様であるディバイソンにはまだ改良・発展の余地があったが、それが顧みられることも無かった。新世代機であるエレファンダーはおろか、より旧式であるはずのレッドホーンにすら数を頼まねばならない状況に陥った。
(火力ではエウロペ仕様のレッドホーンに優位に立っていたが、それもBGタイプとなると射程の差で苦戦を強いられた。前線ではMk-IIタイプへの強化が叫ばれたが、大戦中にバスターキャノンの戦時量産体制への移行は
ついに間に合わず、消耗の激しい最前衛機種であるディバイソンにまでは行き渡らなかった)
 たとえ共和国の豊かさをもってしても、豪奢な宮廷料理で万民の胃袋を満たすことは叶わない。それを見誤った驕慢の末路であった。
658続き2/2:2010/04/22(木) 02:15:24 ID:???


 二度にわたり共和国の窮地を救ったディバイソンであるが、ニクスでの消耗に加え、ネオゼネバスの昇陽の勢いには抗し得ず、共和国はついに父祖の地を完全喪失する。
 BLOXが拓いた新時代にあっては、ディバイソンももはや他の数多の機種同様に時代の遺物であった。

 だが、その血脈は祖国奪還の先陣に立つ機体にも受け継がれた。
 ディスペロウ。同じ前方重火力突撃機かつ同じバッファロー型。その名称もディバイソンにあやかったものであることは言うまでもあるまい。
659>655:2010/04/24(土) 19:43:33 ID:???
 つか、サイクスには良い二つ名があったのね。
 というわけで最終行を補足。

 突撃体勢に入りレーザーやエレクトロン系の格闘兵器をドライブしたゾイドは、暗闇や砂嵐の条件下でも
暗視映像である程度の距離から視認することが可能であったが、サイクスは爪を攻撃の瞬間まで格納しておく
テクニックを使うため、襲撃を受ける側は対処が難しく、恐れられた。
 眼前で突如閃く最大出力のレーザークローは、暗視装置の自動補正が間に合わず視界のホワイトアウトを引き起こした。
「閃光の剣」と呼ばれる所以である。
660名無し獣@リアルに歩行:2010/04/24(土) 21:02:37 ID:???
>>655>>656両者ともに乙。
ゾイド板は死んだように沈黙してるかと思ってたら
たまにこういう謎の文章力持った人が出てくるんだよなぁ
661誰が不死鳥を殺したか:2010/06/19(土) 23:54:02 ID:???
 フェニックスシステム。コア共振効果による出力増幅やチャージミサイルという当時の最先端技術を実装しながらも、戦史における
ライガーゼロフェニックスの辿った末路は悲惨である。
 それは思想的・政治的動機が技術的合理性を歪め、必然として起こったプロジェクトの破綻であり、そしてゾイド乗りとその騎獣が
勝敗を決した時代が終わろうとする中で宿命的な、騎士=ゾイド乗りと、かれらが最も愛したゾイドの終焉の物語でもあった。

 凱龍輝。共和国の復活を祈念したこのゾイドは、三ヶ国共同により開発され対ネオゼネバス同盟の紐帯をアピールするものでも
あったが…、それは建前で実質的にはT-REX野生体および機体構造一体型荷電粒子砲のノウハウを持つガイロス技術陣が主導となっていた。
 同時期に競合する形で開発されていたライガーゼロフェニックスには、多分にガイロスに対する反発が、その影響を排した純系の
共和国高機動ゾイドという思想として現れている。
 ゼロフェニックスのコンセプトは、共和国の高速ゾイド運用理論の到達点である閃光師団ドクトリンを継承し、戦闘換装システムに
よる極限のフレキシビリティと、戦略から戦術レベルまで全領域における高速機動という二本柱を、B-CASにより昇華させコスト問題
の解決とさらなる発展をめざしたものである。
 原型のCASに優るフレキシビリティを実現しつつ、コストを暴騰させた専用換装母艦を不要とし、さらに単独飛行能力を有することで、
鈍重で目立つ輸送機の巻き添えになることを回避し、高脅威下への空挺突入を可能たらしめることを目標としていた。
 ファイヤーフェニックスは換装システム母機にしてゼロ本体の機動ユニットであり、これを基本としてさらなるCASバリエーション、
さらにはフェニックス単体の多用途航空BLOXとしての展開も企図されていた。
662誰が不死鳥を殺したか:2010/06/19(土) 23:54:44 ID:???
 そしてまた、集光パネルシステムと、一撃必殺のチャージミサイルを備え、セイスモサウルスに対抗可能な主戦大型ゾイドたることが企図されていた。
 デザインに不死鳥というモチーフが採用されたのは、集光パネルの輝きから見立てたものであり、共和国の復活を祈念したものでもある。
(※フェニックスに限らず、人工ゾイドであるBLOXには地球の生物・幻獣を象った、同様の野生ゾイドが元から存在しない機種も多かった)

 しかし、ライガーゼロそのものが帝国製ゾイドのデッドコピーに過ぎない事実を考えると、虚しいナショナリズムと言わざるを得ない。
(※当初は純国産機であるケーニッヒウルフがベースに想定されていたのだが、動力・冷却システムデザインの構造欠陥のため見送られた)
 幼児的なプライドを振り回した対価は、後に重く重くのしかかってくることとなる。

 致命的な躓きが、肝心要である集光パネルシステムの実装に失敗したことであった。
 凱龍輝はジェノザウラー以来の、高エネルギー伝達と制御についてのノウハウが確立したシステム設計を流用。機体全系でもって
ゼネバス砲に対抗することで所要の防御性能を実現している。
 逆に言えば、凱龍輝の集光パネルシステムは、本体側の大容量の電路系と蓄電器。エネルギー放出を担う粒子砲と一体であるため、
他機体が飛燕・月甲・雷電を装着しても集光パネルは機能しない。
 外装により機体機能を100%デザインするというCAS、B-CASの理念に反していることになる。
 もっとも、これは小型機互換のBLOX規格パーツのみで超収束荷電粒子砲に当たるという仕様そのものが根元的に破綻している。
 ライガーゼロフェニックスはその破綻した仕様のままに作られてしまったことで、まったく当然に無惨な失敗を迎えた。
 第一次試作機は、耐ビーム試験においてB-CASがメルトダウンを起こし失われた。
 第二次試作では集光パネルシステムだけで重量容積がゼロ本体に迫り、即時不採用という惨憺たる結果に終わった。
663誰が不死鳥を殺したか:2010/06/19(土) 23:55:56 ID:???

 この失態は主武装となる新兵器チャージミサイルの命脈をも絶った。
 エネルギーを圧縮注入するこの特殊弾頭は、ほぼ同サイズのTVM戦術ミサイルを上回る威力に加え、凱龍輝の荷電粒子砲と比べ
発射回数に大きな制約がある代わりに、システム重量容積が半分以下にできるのが利点であった。
 だが、元が集光パネルからのエネルギー吸収を前提としていたため、フェニックスシステムにより増強されたパワーをもってしても、
単体ではチャージに6分を要し、しかも安定状態を保持できるリミットは1分に満たなかった。
 飛翔時間そのものが制約されるため、これだけの巨弾ながら射程は中距離までが精一杯であった。
 すなわち、敵前で6分間の出力低下状態を堪え忍び、その後は即座に発射しなければならず、リトライのチャンスは無い一発勝負となる。
 運用上の制約はきわめて厳しく、通常弾頭に劣ると酷評された。実戦投入された機体の多くは、供与されたTVM戦術ミサイルその他の武器に換装していたという。
 凱龍輝の、まがりなりにもデスザウラー級の出力を実現した集光荷電粒子砲と比べると、お粗末の一言である。
 上述のケーニッヒ、ゴジュラスギガのゾイド核砲に続き、高エネルギー機関の実装と制御における共和国の決定的な技術劣勢を
露わにし、その身の丈を自覚できない指導部の知性と精神の問題をまざまざと見せ付けている。

 影響はチャージミサイルに留まらなかった。
 フェニックスシステムの助けを借りても、ゼロは飛行ゾイドとして用いるには出力不足が拭えず、かなりの部分を集光パネルからの
供給を当て込んだ設計になっていたのである。
 それが失われたことでシステムのバランスは取り返しようもなく崩れた。攻撃力は決定打を欠き、防御面でも無理な軽量化で
後半身はほぼ裸でEシールドも無かった。
 正面戦闘力において、同系旧式のそれも奇襲ゾイドであるライガーゼロイクスにすら劣るという屈辱的評価を甘受せざるを得なかった。
664誰が不死鳥を殺したか:2010/06/19(土) 23:56:49 ID:???
 ゼロフェニックスが当時の主戦ゾイドの器に非ず、ましてセイスモサウルスにはまったく対抗できるものではないことは明白であった。
 凱龍輝は要求に十分に応えた。エナジーライガーという想定外の脅威に直面したものの、それはお役御免かとも思われた
ゴジュラスギガとの連携により補われた。
 ネオゼネバスとの決戦において、管制のディメトロドン、砲撃のセイスモサウルス、近距離戦のエナジーライガーという無敵を誇った
三方陣を、ディメトロプテラと凱龍輝とギガの三位一体は見事に打ち砕いた。
 そこにゼロが加わる余地はどこにも無かった。

 さらに、素体供給の問題が追い打ちをかけた。
 当時、エウロペ戦線は両陣営にとってT-REX野生体の生息地が第一目標であり、そこを同盟側が死守の構えを見せたため、
ネオゼネバスはゼロ野生体の獲得を図ったのである。
 ゼロ野生体はエウロペの東側、T-REXは西側に分布していたが、元よりネオゼネバス本土に近いエウロペ東部を同盟が確保し続ける
ことは難しく、同盟軍統合司令部はゼロ生息地の守備に払う犠牲と、ゼロの有無による戦略上の損失を天秤にかけて判断を迷っていた
が、フェニックスの開発が失敗したことが決定打となり、ゼロの生息地は放棄されてしまったのである。
(ゼロ系の次世代機であるエナジーライガーの情報はZOITECからもたらされていたが、チャージャーの開発遅れから実戦投入は当面先と予想されていた)

 最終的に、ライガーゼロフェニックスは、ゼロの既存機のアップデートとしてのみの少数配備とされた。
 集光パネルをオミットしたファイヤーフェニックスの制式塗装は共和国伝統の青系とされたが、「偽りの不死鳥」との批判は免れ得なかった。
 コスト削減が優先され、ゼロ本体の改修は最小限度に留められ、B-CASへのハードウェア対応は全面的にフェニックスの側でまかなうこととされた。
 このことは、ファイヤーフェニックスをほぼ完全にライガーゼロとの連接に特化したものとし、汎用BLOXとしての普及の道が絶たれたことを意味した。
665誰が不死鳥を殺したか:2010/06/19(土) 23:57:43 ID:???
 ゼロフェニックスは全機が閃光師団の生き残りとともに懲罰部隊送りとなり、首都奪還作戦までにすべて戦没した。

 不死鳥は死んだ。
 愛国心の名を借りた、他国に対する幼児的嫉妬と反抗心が、その祖国の復活を託した翼をも殺したのである。

 ライガーゼロは数奇な運命に振り回されたゾイドであった。敵国の機体でありながら、その優秀さから主力と期待され、そして二度までも
無理な要求の押しつけにより可能性を潰された。
 その半生には、共和国ゾイド開発体制の諸々の欠陥と歪みが凝縮されている。

 完全野生体は搭乗者の気力と資質がそのまま戦闘力に反映されるきわめてセンシティブなゾイドであり、その特性をストレートに兵器化
したライガーゼロは腕に覚えのあるゾイド乗りたちに最も愛された機体であった。生産数は僅少でありながら、選りすぐりのエースに
与えられたライガーゼロは、数多くの珠玉のエピソードを残している。
 その悲劇的な終末は、近代戦という嵐の中でもがき、規格品の兵隊・兵器の枠に収まりきれず居場所を失っていく騎士=ゾイド乗りたちの姿として象徴的でもある。

 しかし、不死鳥は滅びてはいなかった。
 戦史上の伝説に語り継がれるライガーゼロの人気は高く、民間でのゾイドバトルが興隆する中、復活を果たすこととなった。
 B-CAS対応型に準じた競技用モデルが再生産され、同時にオプションとしてファイヤーフェニックスもリリースされた。
 集光パネルこそ持ちえなかったが、競技用モデルでは燃えるような赤とオレンジ系のカラーリングにより、不死鳥本来の姿も取り戻した。
 そのケレン味あふれるフォルム、空地一体・変幻自在のコンビネーションは、今も観客を魅了し続けている。

 不死鳥は今、自由なゾイド乗りたちの翼として天地を駆ける。
 かれらが国家に束縛され翻弄されることは、もう無い。
 ( 了 )
666誰が不死鳥を殺したか:2010/06/20(日) 00:04:45 ID:???
 以上。ハスブロ版ゼロフェニは翼がクリアパーツだったのを知ったことから、RZ版、FZ版までの開発経緯をデッチアップしてみた。
667名無し獣@リアルに歩行:2010/06/21(月) 12:52:14 ID:???
やべえレベル高すぎ違和感皆無すぎるwwwwwww
そうか・・・共和国はアホだったのだな・・・
668名無し獣@リアルに歩行:2010/06/25(金) 23:42:16 ID:???
これは久々に大ヒット
特にファンブック等で語られていない共和国反攻作戦の頃の諸事情を
その頃に発売された各ゾイドの装備や特徴から導き出してる辺りがすばらしいわ

でも…無粋とはわかってるけど言わせて。
フェニックスの翼がクリアなのは日本のFZ版で、
ただの黄色なのが、ハズブロ版。
669名無し獣@リアルに歩行:2010/06/28(月) 23:36:20 ID:???
 レスdクス
>667 あの悲しすぎる性能評価と末路を見ると、どうにもまともな開発がなされたとは思えなくてねw

>668
>フェニックスの翼がクリアなのは日本のFZ版で、ただの黄色なのが、ハズブロ版。
 なにィ!?(ググリング…
 ひでぶ!

 集光パネルに関しては最後だけ、ゾイドバトルのレギュレーションで制限された武装の出力になら
何とか対応可能になり、初期仕様における機能性能をほぼ実現したと修正させてもらお…。

 最近はネタも時間も枯渇気味だけど、読んでくれる人がいると頑張らねばという気になる。
670名無し獣@リアルに歩行:2010/06/30(水) 19:54:38 ID:???
T-REX野生体生息地西方大陸説多いねえ

元凶の電帆Bパートも草葉の陰で喜んでるね
671名無し獣@リアルに歩行:2010/07/18(日) 20:40:57 ID:I/jc/HGK
保守アゲ
672名無し獣@リアルに歩行:2010/07/24(土) 14:05:00 ID:???
 厳寒に覆われ、絶え間ない地震、火山災害に苛まれるニクスの大地は、有機生命体にとって苛酷な環境である。

 だが、金属生命体にとっては違う。
 ゾイドは寒冷や災害にも有機生命体よりはるかに強い。
 また、金属など重元素は惑星深奥に沈んでいるため、地表においては地殻変動により深部から持ち上げられた個所で産出する。
惑星Ziで最も地殻変動の激しい地域であるニクスは鉱産資源の宝庫でもある。
 すなわち、ゾイドにとって肉体を構成・維持する栄養分が無尽蔵に存在する楽園である。

 飢えと寒さ。武器となるゾイドと金属はいくらでも存在する世界。
 自ずと侵略的な民族・国家が成立する土壌である。
673シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:46:14 ID:???
 虎は死して皮を残し、人は死して名を留める。
 狐は、閃光が潰えた後も消えることのない影を焼き付けた。

 共和国軍の高速戦闘部隊は、帝国高速ゾイドに対する警戒と迎撃用の戦力として誕生し、その任務は現在まで引き継がれている。
 この面について、今次大戦の課題とされていたのが、エウロペ戦後期に出現したヘルキャット級の隠密性能とシールドライガーに勝る
戦闘力・機動力を兼ね備える新型機。ライトニングサイクスへの対処である。
 サイクスを狩り立てるハンター・キラーチームを、新主力高速機とのペアで編成する中型高速機の要求に基づいて開発されたのが
シャドーフォックスである。

 前任に当たるコマンドウルフの開発手法に倣い、設計は新主力機と予定されるライガーゼロを原型に、その軽量簡易型とされた。
 フレームは中型ながら、スラスターやOS等に頼らずして290km/hを叩き出す、高い基礎性能を実現している。
 隠密性に秀でたサイクスを捉える索敵能力に加え、共和国軍では初となる光学迷彩の採用など高いステルス性。マルチウェポンラックに
よりかなりの重武装にも対応しうる。かなり奢った機体であるが、ライガーゼロの設計思想を継承し、外装の構造は簡易CASともいえる
ユニット構造が採り入れられ、特殊装備を省いて低コスト化、あるいは重装化したバリエーションがコマンドウルフの後継としての量産化も
考慮されていた。
 キツネ型素体を採用したのは当時の主力であったコマンドウルフの生産に影響を与えないためとされているが、オオカミ型とキツネ型は
近縁種で、小改修でフォックスにコマンドウルフのコアを適合させることが可能なのは確認済みであった。
 だが、ここにすでにコマンドウルフ後継を巡る軋轢の芽が現れていた。

 戦局が共和国有利に傾くにつれ、それまで必要に駆られて進んできた帝国製ゾイドの台頭に、危機感を憶えた技術部重役陣と、国軍は
純国産ゾイドにて成るべしとする軍部内のナショナリストが結託した国粋派の声が強まる一方となっていた。
 背後には、急激な軍拡と帝国系ゾイドの採用のもたらすビジネスチャンスに対し、旧来からの軍需産業と、新たに参入する企業との
利権闘争が、浅薄な主義主張の向こうから透けて見えていた。
674シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:47:45 ID:???
 フォックスの開発責任者であるラオン博士は不遇の人であった。
 CASを含めたライガーゼロ計画の総責任者であるトロス博士とは、ガイロスのヴァシコヤード・アカデミーに同期で留学して以来の
ライバルと言われてきたが、常に後塵を拝し続けてきた。
 個人的嗜好からゼロをコスト的に破綻させた主犯であるトロス博士に比べ、ラオン博士ははるかに常識的な思考の持ち主であったが、
純粋な技術力と表面的な人当たりの良さではトロス博士に分があったのが悲劇であった。
 また、トロス博士が風族の有力氏族の出であったのに対し、ラオン博士が旧ゼネバス領からの叩き上げであった点も指摘される。
 そのラオン博士が初めて開発責任者を任されたのがフォックスであった。ライバルが手がけるゼロの簡易型ではあるが、博士はなみなみ
ならぬ情熱を注いだ。後年の問いにも、最高傑作はフォックスであると即言している。

 しかし、ゼロ計画の破綻による帝国派の失墜が決定打となり、コマンドウルフ後継はゼロ−フォックス系列の転用・発展ではなく、
コマンドウルフを原型とした純粋な共和国技術による新規開発とされたことが、ケーニッヒウルフの命運を決することとなった。
 順当に行けばケーニッヒの開発はゼロから優秀な派生型をものにした実績のあるラオン博士が当たるはずであったが、ライバルの失態の
とばっちりを食った形になる。
 そして国粋派の想像以上に共和国技術陣の力量は低く、ベースとなるコマンドウルフの設計も陳腐化していた。中型クラスを想定していた
ケーニッヒは泥縄の改修を繰り返し、ゼロと同程度にまで肥大化してしまった。
675シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:48:59 ID:???
 そのころ前線では、共和国の新鋭高速機の数々に腰が引けていた帝国軍も、実際には機種更新が停滞している事実に気付き、
閃光師団など有力部隊のいる箇所はともかく、他ではサイクスを核とした高速隊の小編成による同時多発襲撃で激しい攻勢をかけてくる
ようになっていた。シールドライガーを凌駕する戦闘力を得たセイバータイガーATの増備も無視できぬ脅威であった。
 エウロペにおいて共和国高速隊が戦力に優る帝国軍を翻弄したのを、そっくりやり返された形である。
 このままではかつてのサーベルタイガー出現時。陸軍戦力がマヒする危機の再現すらありえた。運用サイドからは一刻も早い新戦力の
嘆願が引きも切らぬ有様であった。
 それに押し切られた突貫作業で辛うじて形になったケーニッヒウルフは、完成にはほど遠い、伝達系と冷却システムに不治の病を抱えた
欠陥機となってしまった。
 ゼネバス独立派が手がけたゼロは、最新技術によるサーベルタイガーの再現と言えるもので、タイガーの複製に当たるシールドライガーを
扱ってきた共和国技術陣にも馴染みやすいものであった。
 対し、コマンドウルフは50年前に開発されたシールドライガーのダウングレード版である。
 本来ならどちらが次世代ゾイドの原型として適当かは明白であった。
 さらに、オリジナルのライガーゼロは補給の乏しい反乱部隊での運用を考慮し、メンテナンスの省力化、正規軍に潤沢にある部品との
互換性までもが確保されており、多少のスペックダウンを許容すれば維持は容易であった。
 実際に、主要生産拠点を喪失した共和国軍は、鹵獲したライガーゼロイクスをガイロスから供与されるパーツによって運用していた。
自国製ゼロよりも稼働率が高かったとさえいわれ、ZOITECの協力をとりつけるまで共和国高速隊がもっとも重用したのが鹵獲ゼロあるいは
供与されたサイクスであったというのは皮肉を通り越して哀れな話である。
 信頼性に乏しいケーニッヒは、その後の改修も沙汰されることもなく、姿を消していった。
676シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:50:26 ID:???
 サイクスは、質では主戦大型の任に耐えず、量を満たすには高価という中途半端な機体であった。既存のセイバータイガーATと性能の
レンジが重複する点も微妙であった。装甲師団に充当されたジェノザウラーにしても問題百出であり、その数も十分とは言えなかった。
 不完全な新型ゾイドが、エウロペを蹂躪した共和国高速隊の重大な脅威たりえたのは、度重なる主戦高速機の戦力化の躓きに加えて
フォックスという優秀な支援高速機の素体をみすみすドブに捨てた判断ミスに尽きる。
 高速ゾイドの優位性は、主導権の掌握、展開力、戦力の集中、攻撃の回避性能など様々言えるが、究極的には「速さ」の一点に帰する。
 フォックス単体の戦闘力は中型ゾイドの域を出るものではないが、高速隊の数的主力をなすユニットとして最高速度300km/hに迫る機動力
は200km/hのコマンドウルフとは別次元のパフォーマンスを部隊にもたらす。
 その本質を、共和国は理解できていなかった。新鋭大型に見合った支援高速機の不在に加えて、閃光師団は各機の極端な機能特化と、
大規模な支援部隊を帯同する必要から、高速部隊本来の自由自在な機動力を喪失してしまっていた。ゾイドの性能以前の部分で、共和国は
敗北していたのである。

 ゼロの国産化と、フォックスの開発により得られた新世代高速機のノウハウであるが、ケーニッヒの躓きと、共和国の崩壊による人員や
資料の散逸、研究開発の停滞により、その後に有意に活用されたとは言い難い。
 BLOX技術との融合によりCASのコスト問題が克服されたことで、結果はともかくゼロは復活の機会を与えられたが、中小型ゾイドは
ニッチ自体がBLOXに取って代わられ、フォックスの改修や再生産について顧みられることは無かった。

 共和国に愛想が尽きたラオン博士はネオゼネバスに恭順した。そこでセイスモサウルスやエナジーライガーの開発に貴重な提言を行った
業績が知られている。
 博士にとって、共和国はもはや平和を乱す守旧テロ勢力に過ぎなかった。
677シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:52:28 ID:???
 フォックスそのものは閃光師団の解体後、雑多な機種を押しつけられて補給に四苦八苦していた高速隊からも、これ以上の煩雑化を
嫌って厄介払いされてしまったが、機甲師団が拾い上げた。
 機甲師団で偵察機を務めていたゴルドスは、広域の捜索能力を持つが、鈍重で戦闘力も逃げ足も欠いており、平時の哨戒機的な運用には
適するが、有事に本隊から離れて前方を捜索する戦術偵察能力はまったく持っていなかった。
 この種の任務を高速部隊が担っていたのは両軍とも同じだが、帝国の装甲師団は快足の偵察機としてゲーターを大量に保有しており、
独自の情報収集能力をもって迅速な部隊行動を可能としていた。
 高レベルのステルス、索敵能力、機動力、十分な自衛力を具備するフォックスは、最速で、敵中深くの重要な情報をもたらし、対応の猶予を
与えぬ最大の打撃を放たらしめる、パーフェクトな強行偵察機であった。
 ラオン博士を欠いた共和国にも、兵器のノウハウの無いZOITECにも、フォックスに匹敵するバランスを実現した機体の開発は不可能であっ

た。
 部隊では、01年のネオゼネバス侵攻前にフォックスの生産は終了していたにも関わらず、他機種の部品を流用する独自改修や用廃機を
かき集めて共食い整備など、苦心して維持し続けた。
 実に、08年時点でもなお少なからぬ機数が現役にあり、特に打撃力の中核を担う精鋭師団に重点配備されていた。

 フォックスの血脈は後代に密かに受け継がれたともいわれる。
 後にZOITECが開発したワイツウルフは、本来の姿であるワイツタイガーの本能と力を封印したかりそめの形態とされているが、実は
ワイツウルフは古代虎型ゾイドとは無関係の、最初からオオカミ型として社内試作されていたフレームを、B-CASによる強化外骨格を
追加してトラ型としたものとする異説が存在する。
 実際、同時期に試作されたレイズタイガーと比べても、古代虎コアの膨大な出力に対するワイツの機体の容量不足は否めない。
 逆に言えば通常のコアの搭載時には良好なバランスが確保されている。
 社内試作機のベースとなったものこそシャドーフォックスであり、ワイツウルフはありえたかも知れない、もしくは本来あるべきだった、
もう一つのケーニッヒウルフの姿であるとも囁かれている。
678シャドーフォックス:2010/08/22(日) 18:53:46 ID:???
 ネオゼネバスとの終戦協定締結時、両軍による祝賀パレードが行われたが、参列したラオン博士はパレードに居並ぶ共和国ゾイドたちの
中に、驚くべきものを目撃した。
 精強の主戦ゾイドたちの中に、堂々とシャドーフォックスが加わっていたのである。
 愛機について問われたフォックスの操縦手は、相手がその開発者であるとは露知らず、惜しみない賛辞を滔々と述べた。
 生みの親ともども政争に翻弄され、流転していったフォックスであるが、実際に触れた者はその確かな価値を知っていた。
 博士は人目もはばからず感涙にむせび泣いたという。
(終)
679腕と脚の違い:2010/08/23(月) 22:48:13 ID:???

 ゴジュラスなどの腕は、一見して華奢な姿からは想像できない破壊力を秘める。
 それは一つに、恐竜型の前肢が純粋な武器であるのに対し、アイアンコングやライガーなどの四足ゾイドでは歩脚を兼ねることに起因する
設計上のハンディキャップによる。

 四足の場合、脚の一本を欠いても自走は可能というのは理屈上のことで、戦術的に機動力、なかんずく戦闘力は喪失する。
まして自身の走行や打撃にともなう衝撃で破損してしまうようでは論外である。
 さらに痛いことに、前肢を武器として多用する高速ゾイドほど、機動力の維持が死活的になる。
 そのため脚には高い耐久性が要求され、磨耗や金属疲労に対する強度上の余裕が非常に大きくとられている。
 また、概して瞬発力よりも長時間稼働に耐えることを重視したアクチュエータが選定されており、大型の冷却器でその動作をアシストしている。
 防護も厚くされ、可能な限りの予備系が内蔵されており、一見して太く見える脚でも、実際には着ぶくれしているに過ぎないのである。

 動物の場合、手も足も基本構造には大差ないが、兵器・メカとして設計する場合、その使用条件の違いから両者の作りは全く別物になる。
 歩行に関わらない純粋な腕。たとえば恐竜型だと、損壊してもとうぜん機動力への影響は無い。攻撃面においてもまだもう一本の腕、牙に、
尾も蹴爪もある。
 そのため腕は安全上の余裕をギリギリまで削り、一撃のインパクトを極限まで追求した設計を取ることができる。
 連続稼働のための補機類も、機能維持のための防護も予備系も切り捨てることができる。
 結果、同じサイズの腕は脚の倍近い膂力を発揮できるのである。
680名無し獣@リアルに歩行:2010/08/24(火) 02:15:40 ID:???
>>673
サイクスって数的にはZAC2100年9月時点で
ブレードライガー100機に対して70機しかいないしそれほど驚異だったとは思えんのだが
681名無し獣@リアルに歩行:2010/08/25(水) 18:20:17 ID:???
>680
 サイクスは奇襲兵器として理想的な能力を持ってる。確実な阻止撃滅には、それこそ閃光師団並みの戦力を要求する絶妙な線。
 重砲段列以後への浸透に使われると、ブレードでは対処は困難。索敵とステルスと速力の優位により、サイクスはブレードを
迂回してもっと弱い相手を狙う主導権を掌握できる。

 エウロペ戦末期での戦果が70機相応に過ぎなかったとしても、その内容について大いに警戒を要すると判断したからこそ狐を
開発したんだろう。
 FB3以後の編成表ではタイガーを抑えて筆頭に書かれてて、急速に増勢した可能性もある。

 また、次期主力高速機の本命というべきケニヒは対ステルスを意識した装備を付与されてるが、当時ステルスの脅威といえば
サイクスしかいない。
682名無し獣@リアルに歩行:2010/08/26(木) 20:35:03 ID:???
つーかこのスレ、妄想ゆえ突っ込み禁止じゃなかったか?
683黄昏色のキャノピー 1/2:2010/09/04(土) 09:57:09 ID:???
 防護性能を重視して最初期から装甲化コクピットを採用していた帝国に対し、共和国においては高解像度TVカメラやディスプレイ関連
技術の立ち遅れ、また特に近接戦闘時の視認性を重視する運用サイドの主張から、長く透明キャノピー式コクピットが主流であった。
 決定的な転換をもたらしたのは、デスザウラー。その荷電粒子砲の出現であった。
 制動放射と呼ばれる現象がある。ビーム兵器にも用いられる加速粒子の運動量が変化するとき、運動エネルギーが可視光帯も含む電磁波
として変化前のベクトル方向へ放出されるというものである。
 制動放射は粒子が高速になるほど指向性が増すため、光速の99.9999999%まで加速されたデスザウラーの荷電粒子ビームは、進行中に
大気分子との衝突および地磁気の干渉により減衰しつつ、そのエネルギーの一部はレーザー兵器に匹敵する高出力・高指向性を備える光波、
熱線。さらにX線やガンマ線として照射される。
 徐々に拡散していく粒子ビームの外縁の高温プラズマの雲に触れるだけでもゾイドは融解し生身の歩兵は瞬時に燃え尽きるが、さらに
その外側に広がる光と熱線、放射線の威力だけでも人体に致命的ダメージを与えて余りある。
 デスザウラーと行動を共にしたスケルトン部隊のトレードマークの、顔面までをカバーする防護服は、荷電粒子砲の余波から身を守る
ために必須の装備なのである。
 味方でさえこのレベルなのだから、直撃を浴びる側はたまったものではない。デスザウラーの投入された戦線では、広島・長崎さながらの
惨状が繰り広げられた。まさしく「死の竜」である。
684黄昏色のキャノピー 2/2:2010/09/04(土) 10:09:15 ID:???
 そしてまた厄介なことに、エネルギーシールドなど対ビームフィールドには、パイロット視界を確保するために可視波長帯を透過する
「窓」が存在する。
 シールドを過信して正面から粒子ビームを受けてしまうと、透過してくる放射光だけでもパイロットはよくて失明、悪ければ焼死する
こととなるのである。
 かくして、対デスザウラー用として開発されたディバイソンとマッドサンダーはいずれも装甲化コクピットを備えることとなった。

 キャノピー透過光のパイロットへの影響そのものは、荷電粒子砲以前からビーム、レーザー兵器の高出力化とともに大きくなってきた
問題であった。
 むろん共和国は十分な視界を確保しつつ有害光線を遮蔽するキャノピー材の組成やコーティング、フィルターの改良に試行錯誤し、対策を
講じてきた。過去の機体に見られるキャノピーの色の違いに、その足跡を見ることができる。
 それも超火力のビーム兵器を主用してくる暗黒軍との戦いになると限界に達し、共和国軍は透明キャノピーと訣別せざるを得なくなった
のであった。

 異変後の、小規模紛争や暴動の鎮定へシフトした共和国軍ではキャノピー型の旧式機が復活したが、ガイロスとの再戦も視野に入れて
開発されたドスゴドスなどでは、装甲型とコストを抑えたキャノピー型の二種類が用意されていた。
(装甲および、高精細・高速度と耐久性を両立する戦闘ゾイド用視界映像システムの重量・容積の大きさ(共和国の技術では同程度の
帝国製システムに比べ20〜40%は大型になった)によるバランス変動の問題から、シンプルなキャノピー型コクピットを前提に設計された
機体を後から装甲コクピット化するのは難しかった)
685黄昏色のキャノピー 3/2…:2010/09/04(土) 10:10:15 ID:???
 この頃に開発されたオレンジ色の、いわゆる統一型キャノピーは、防弾、有害光線の遮蔽性能とも決定版と言えるものであった。
 特にEシールドと組み合わせると、その可視光の「窓」をすり抜ける波長をほぼ完全ガードすることができた。これによりシールド
ライガーやブレードライガーは、キャノピー型最大の脅威であった荷電粒子砲の広汎な普及という状況にあっても優位性を保持したのである。
 しかし、シールドのないゾイドは当然その恩恵も半減した。重武装の帝国側新鋭ゾイドの脅威が恒常化したニクス戦では、キャノピー
型の旧式ゾイドが急速に戦力を喪失しつつあった一方で、新型機の配備は決定的に遅れていた。

 このままフェードアウトしていくかと思われたキャノピーコクピットであるが、歴史の激動は番狂わせを生んだ。
 惑星全球に及ぶ戦域の拡大に相違して、戦力はBLOXの出現とともに軽薄短小化が進んだためである。
 セイスモサウルスにしても、超長射程を実現するために、加速効率の悪さを飲んで電荷に比して質量が大きく、拡散率が小さく地磁気の
影響も受けにくい重イオンビームを採用していた。
 収束率が高くロスが少ないということは、放射光=殺人光線の発生も少なく、その加害半径も小さいということである。
 これが慈悲深さで知られたヴォルフ帝の、無用な破壊を嫌う意図によるものかは定かでない。
 ともあれ、ネオゼネバス軍が破壊力追求に走らなかったことで、コストと生産性に優るキャノピーコクピットは再び復権を果たすことと
なった。
686ガンスナLS:2010/09/19(日) 21:03:58 ID:???
 ブキヤが本気でガンスナLSを出すつもりらしい。ということでアンチトロス博士三部作最終章を投下してみるw

 西方大陸戦争前半。開戦前から度重なる戦略判断の誤りにより、共和国は明日にもエウロペを失陥し、本土へとガイロス軍がなだれ込まん
とする瀬戸際にあった。
 かかる事態に共和国軍は手段を選ばなかった。スリーパーゾイドの特攻運用、臆面もない帝国製ゾイドのコピーから、戦術核兵器
デストロイヤー砲の第三国での使用、装備劣弱な現地兵の最前線投入など、後々まで政治的問題として尾を引く行為も躊躇わなかった。
 ガンスナイパーLSもそうした時期に産まれた鬼子のひとつである。

 ガンスナイパーの目的は、優勢な敵に対し、その前方へと快足でもって小編成にて進出し、待ち伏せから一撃離脱する。機動防御、
遅滞戦闘である。そのために当初から過剰とも言える火力を備えていた。
 それを定点防御用として機動力を捨て極限まで攻撃力を追求したのがLSタイプである。帝国軍の予想進撃路上に築かれた陣地群で待ち
受け、全弾バラ撒いた後は火器を除装して離脱するという運用を想定していた。

 本機の開発責任者は、後にライガーゼロのCASプロジェクトを手がけた、かの悪名高きトロス博士である。
 LSという形式名も由来が不明だが、博士の娘の名前に因んだともいわれる。
 その姿を見れば、もはや説明の必要はあるまい。追加装備された火器の、弾薬込みの重量容積は、本体を余裕で上回る。
 いちおう脚機構を強化してあるとの建前だが、実質的に移動可能な砲台である。
 火器を装着するアウトリガーは、ワイルドヴィーゼルユニットの流用にも見えるが、実際には新造で精緻な設計により軽量ながら十分な
剛性を持っていた。
 人格や思考の欠陥は別として、トロス博士が天才的な設計技術の持ち主であったことは確かである。それこそ不可能を可能にしうるほどの…。
 なまじ破綻をどこまでも先送りにできる実力があったがゆえに、傷口はより深くなり、極大のカタストロフをもたらしたと言える。
687ガンスナLS:2010/09/19(日) 21:07:41 ID:???
 LSタイプの火力はスペック上、ダークホーン2機分にも匹敵するが、もちろん小型ゾイドごときがそれほどの威力を持ちうるなどと虫の
いい話のあるはずもなかった。
 最初の試作機は全砲門を斉射したところ、過大な反動で機体ごと転倒し、アウトリガーが接続部からちぎれ飛んで暴発した弾が周囲に
バラ撒かれ、危うく大惨事となりかけた。
 戦局が火急ということでお咎め無しとされたが、この時が後々の悲劇を止める最後のチャンスであった。
 以降も機体安定の根本的な不足から、発射速度を上げると照準のブレが酷く、弾の大部分は明後日の方向に飛び去り、弾量で圧倒する
というコンセプトは脆くも瓦解した。
 装甲に関しても何ら手当はなされていないため、爆発物を満載した機体の守りは陣地の防壁のみが頼りであったが、当時の共和国軍の
工兵能力からして満足な築城が可能であったかは甚だ疑問であった。
 援護を引き受ける戦力の当ても無い、特攻兵器に限りなく近いものであり、関係者は自嘲を込めて「カンシャク玉」と渾名した。

 積載力・耐反動力で劣る小型機のガンスナイパーを敢えてベースに選んだのは、当時は旧式機を除いて共和国が量産化できていた機種が
他になかったこと。
 比較的高級な火器管制システムを装備していたこと(同時多目標処理能力、モジュール構成による拡張性など、以後の新型機に採用
されたものの雛形ともなった)。
 そして逃げ足が速かったこと。あとは開発者の単なる好みであったともいわれる。
 もちろん博士とて問題には気付いており、狙撃の威力精度向上のために脚部を新造した改造タイプ「ハイスナイパー」をベースとする
ことを提案したが、そもそもの要求は量産体制が整っている現行ガンスナイパーと共通の重火力機であるのだから、仕様を公然と無視する
暴挙であり当然即刻却下された。

 まともな手段で仕様を満たすことを考えるなら、ガンスナイパーと共通性を確保した中型クラス以上の機体を新たに設計して充てるのが
筋であったろう。
 トロス博士にはそれができる実力があったし、またそれを実行するのに足る予算・時間・人員がLSタイプには費やされていた。
 博士がその点に気付いていなかったとも思えない。そのような正攻法では面白くないから口をつぐんだのであろう。
688ガンスナLS:2010/09/19(日) 21:09:21 ID:???
 結局、開発の遅れたLSタイプは制式化には到らなかった。
 すでに戦況は逆転しており、もはや特攻兵器の必要性など消滅したのだから当然である。
 だが、何を考えてかその後も十分でない開発リソースをわざわざ割いて、改修が共和国の最期まで続けられていた。武装を三分の二程度
までコンパクト化し、機動運用にも耐えるという触れ込みのLS-HMMとして、ロブ基地で試験が行われていたとされる。
 HMMとは、ハイマニューバ某の略であると言われるが、詳細不明である。
 呆れたことに兵装数は削減どころかむしろ増えており、完全な新規設計になる武装の数々でデコレートされた、およそ生産性や整備性など
というものは一顧だにしていない姿は、ライガーゼロのコスト面に関する疑義を「その方がカッコイイからだ!」と斬って捨てた暴言で
知られるトロス博士の独善性の面目躍如の感がある。
 本機の開発はライガーゼロ計画の破綻により閑職に追いやられた博士の手慰みで行われていたといわれ、もはや真面目に取り合う者も
なく、共和国崩壊の混乱を考慮しても資料の逸失が甚だしい有様である。

 LSタイプが実戦投入されたかについては確証がない。
 ニクシー基地の防衛戦で戦果を上げたとか、閃光師団の増援に急派され兄弟機ともいうべきゼロとともに戦ったといった話は、
まことしやかに流布しているが、いずれも風説の域を出ない。
689指導者になり損ねたもの:2010/12/13(月) 15:29:14 ID:???
スパゲティ食べながらスレ読んでたら
>呆れたことに兵装数は削減どころかむしろ増えており
↑この一文で噴いてしまった。どうしてくれる。

めっきりレスが付かなくなって寂しいので、>>688の人程の文章力はないけど、
HMMゼロの解説読んでて思いついたことを書いてみる。
一応ゾイド世界の後世における解説のつもり。


ライガーゼロ――これほど数奇な運命を辿ったゾイドもそうはいまい。
ヘリック共和国軍での華々しい運用、そしてその失敗が広く知られるゾイドだが、元はガイロス帝国により開発されていたということも皆の知る通りである。
次世代高速ゾイド開発が難航していた共和国にとって、ゼロは正に「たなぼた」かのように思われた。
しかし皮肉なことに、後のその盛大な失敗の原因は、「帝国が開発したライガー」という特異性故にゼロが元々抱えていた爆弾によるものだったのだ。

バーサークフューラー計画。
西方大陸戦争終盤、中央大陸進出を目論むゼネバス派「鉄竜騎兵団(アイゼンドラグーン)」は大量生産を目的としないエース専用機として、
コードネーム「バーサークフューラー」と呼ばれるゾイドを開発していた。
旧ゼネバス帝国から現ガイロスに受け継がれた、人為的に闘争本能を抑制する戦闘機獣ではなく、
ヘリック伝統の、闘争本能を最大限に活かしたゾイドである。
エウロペ大陸に分布する2種類の野生体、即ちティラノサウルス型野生体とライオン型野生体を元に、
2種類の試作機、「ザウラーゼロ」と「ライガーゼロ」を作り上げた。
このSZとLZは本体の機能を最小限に留めており、追加装備により機体特性を決定するように設計されていた。
本体の開発と並行して追加装備の設計も行われており、それらを装備したSZとLZの形態全てに形式番号「BF」が与えられていた。

BF-01 SZ軽装
BF-02 SZ重装
BF-03 LZ軽装
BF-04 LZ重装
BF-05 SZ特殊型1(※高機動タイプ)
BF-06 SZ特殊型2(※砲撃タイプ)
BF-07 LZ特殊型1(※詳細不明)
BF-08 LZ特殊型2(※詳細不明)
690名無し獣@リアルに歩行:2010/12/13(月) 15:31:02 ID:???
しかし、これらの開発中に、LZが本来満たすべき放熱性能を達成できないことが判明。
急遽追加装備で冷却を行うことが決定し、「BF-00」として冷却用の簡易装備が開発されることになった。
これが後に共和国でもコピー生産されることになる「タイプ0」である。

つまりLZは追加装備側に本体用冷却システムを設置せざるを得なくなったわけだが、
少なくとも、既に開発の進んでいたBF-03とBF-04については既に設計変更が可能な段階ではなく、
またニクシー基地での共和国によるLZ奪取も重なり、BF-03とBF-04は開発中止になった(BF-07とBF-08については不明)。

さて、共和国にゼロが渡るまでのあらましは以上の通りである。
次に共和国によって開発された所謂「CAS3種」について見ていこう。

思わぬところで次世代高速機の手本を手に入れた共和国は、早速ゼロをバラして徹底的に調査した。
再現できるところは再現し、できないところは既知の構造に置き換えた。
そして何とか量産が可能となるところまで漕ぎ着けたのである。
「帝国の5年遅れている」と言われた共和国の技術で、あれだけの短期間にも関わらずゼロのコピーに成功したのは、
ゼロが共和国の十八番であるライガータイプだったからこそに他ならない。
更には独自の追加装備「シュナイダー」「イェーガー」「パンツァー」までわずか3ヶ月程度で完成させているのだから驚きだ。
ニクス侵攻に間に合わせるためとは言え、当時共和国がいかに高速機に力を入れていたのかが窺える。
今では当たり前となっているこの「CAS3種」の欠陥っぷりだが、その原因が前述したゼロの冷却問題であることは意外と知られていない。
691指導者になり損ねたもの:2010/12/13(月) 15:32:07 ID:???
ゼロシュナイダーは、元になったブレードライガーを遥かに超える武装を搭載していたが、
それによる消耗も凄まじく、オーバーヒートする前に戦闘可能時間が終わるということで冷却システムは簡素なものだった。
逆に言えば、オーバーヒートする前に敵機を撃破することを追求した結果、極端にスタミナのないゾイドになった。

ゼロイェーガーは、ライトニングサイクスとの超高速戦闘に耐えられるだけの高性能な冷却システムを備えていたが、
軽量化のため武装は貧弱、装甲は極めて薄く、一度被弾すれば冷却系に異常をきたし性能は一気に低下した。

ゼロパンツァーは、重ゾイド並の装甲と重砲、大量のミサイルを搭載し、シールドライガーDCSとは比べ物にならない高火力を実現、
装甲内部に高性能冷却系を備えているためオーバーヒートすることなく高速移動が可能とされてはいたが、
ミサイルポッドと装甲と冷却システムを兼ねた各部のユニットは非常に複雑な構造で、
冷却系が故障して走ることができなくなる機体が続出したという。

このように、本体のみで冷却が不十分なことは当然共和国も理解していた。しかし結果的には、対策が不十分だったのである。
尤も、これは当時の技術力の限界や、前述した開発期間の短さも関係しているのだが。
共和国におけるゼロが失敗し、ライガーゼロの完成系として知られるゼロイクスがあれだけのパフォーマンスを発揮できたのは、
帝国と共和国の技術力の差によるところも大きかったのである。
692指導者になり損ねたもの:2010/12/13(月) 15:35:42 ID:???
さて、そのゼロイクスだが、完成は共和国のゼロの半年後、開発が始まったのはZAC2100年春だと推定される。
当時既に「ザウラーゼロ」に「バーサークフューラー」の名前が与えられており、
コンペティションに敗れた「ライガーゼロ」はそのまま「ライガーゼロ」が制式名称になっていたようだが、
ゼロイクスはバーサクフューラー計画の「BF-10」として開発された。
余談だが、「イクス(X)」というのは、「10」のことであり、要するに開発番号がそのまま制式名になっている。

ステルス機として開発が行われたBF-10にとって、発熱問題は共和国のゼロ以上にシビアだったはずである。
しかしゼロイクスの冷却性能はそれまでのステルス機と比較して遜色なく、高出力を生かした電波と音波のアクティブステルス機能によって、史上最高のステルス性を獲得するに至った。
それでいてこのクラスのゾイドとしては遠近共に破格の武装を備え、装甲もゼロイェーガー程薄くはなく、機動性に至っても最高クラスだと言うのだから、驚く他ない。

SZとLZ、バーサクフューラーとライガーゼロにはこんなエピソードがある。
ニクス大陸戦争緒戦で、レイ・グレッグが後のネオゼネバス皇帝ヴォルフ・ムーロアに敗れ、取り逃がしたというのだ。

内外共に竜鬼に敗れた獣は、後に「闇を支配する獣王」と呼ばれることになる。
指導者になり損ね、闇に生きる暗殺者となったゼロだが、歴史の中で語られるその数奇な軌跡と功績は、バーサークフューラーに劣るものではないはずだ。
693名無し獣@リアルに歩行:2010/12/15(水) 00:44:32 ID:???
 ゆわ〜い! 俺以外に人いたよ〜!(涙
 ゼロの不備が熱設計にあったという視点はケーニッヒなんかにも繋げるな。
 というわけで勝手に補遺してみるw

 ゼロが不備を残していた熱設計を、共和国の手で解決した完成形を目指したものが、その後継機とも位置付けられたケーニッヒウルフである。
 しかし成果は芳しくなく、ケーニッヒは動力部の根本設計に起因する不安定を抱えた日陰の存在として終わった。
 やはり両国の技術格差は厳としていた。

 いっぽう、本家における真の完成形とも言えるイクスは、共和国が考えもしなかった大胆なアプローチで排熱低減を達成している。

 ゾイドの発する熱量は、ゾイドのパワーそのものの大きさと直結している。ヘルキャットなどのステルス性能は、ゾイド自体の
持っているパワーが小さいことを逆手に取ったものでもある。
 熱と力、両方を切り捨てることによって、イクスは極限のステルス能力を獲得した。

 秘密はドラムコンデンサーである。
 イクスはここに蓄電したパワーにより、本体はアイドリング出力に抑え熱放射を最小限にしたまま、短時間に限定されるものの
全兵装を含む機体のフルドライブを可能としていたのである。
 その戦闘力は元のパワーが低い他のステルスゾイドの比ではなかった。
694名無し獣@リアルに歩行:2010/12/15(水) 00:45:39 ID:???
 ただ、コンデンサーの容量は限られるため、ステルスモードでの戦闘時はコアの出力を高めて再充電を頻繁に行う必要があり、
その際にはステルス性が損なわれるという欠点がある。
 よって、乗り手にはステルスモードの使い時を見極める高い判断力が要求された。
 そこで、ハーマン・シュバルツ会談襲撃時のように、派手に火災を巻き起こし、炎熱にまぎれて行動する戦法が多用されたが、
これはステルスモード再起動までの冷却時間を遅延させ、さらに不規則にゆらめく火映により光学迷彩の綻びが生じやすくなる
諸刃の剣でもあり、却って姿を露見してしまうことも少なくなかった。

 ゾイドにコア以外のパワーソースを備えるという発想は、後のエナジーライガーの原型ともなった。
 また、活性度の低い状態で行動するためのマニュアル操縦アシスト機能は、完成度の低いチャージャーに起因するコア周りの
トラブルへの対策として受け継がれた。

 また、ゲリラ抵抗を続けていた共和国軍は、イクスにヒントを得て、シャットダウン状態で熱放射をカットしたゼロを
待ち伏せさせ急起動する奇襲戦法を用いたが、ドラムコンデンサ無しでのパワーは半減状態で、非常にリスキーな作戦であった。
695689:2010/12/15(水) 16:11:56 ID:???
>>693
良かった…まだ人がいた…。

成程そこでドラムコンデンサーに繋げるわけか!
俺としてはイクスが優等生過ぎてどうしたもんかと思ってたw
相変わらず上手いなあ。
まあ俺としてはゾイドグラフィックスを始めとした一連のケーニッヒ欠陥問題は見なかったことになってるのでそこは受け入れ難いんだけどw

ゼロの放熱設定は久々に舌を巻いたHMM設定でしたわ。
多分パンツァーの布石なんだろうけどどうなるか楽しみ。
696名無し獣@リアルに歩行
俺も >>688 の人が楽しみでたまにゾイド板の下層まで降りてきてるよ

689から読ませてもらったけど、竜鬼 とか BF-02 とか、2001年頃だっけ?
「ゾイドでユーザーが忘れてしまっていること」なフレーズが出てきて
懐かしさで胸がいっぱいになった・・・

エルワチウム・ゼロについては一部微妙なので
まだ諸氏による補完が必要だと思う