自分でバトルストーリーを書いてみようVol.4

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 銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
 そこはうち続く戦乱と荒ぶる自然の世界。
 人々は、この星に棲む巨大な機械生命体-ZOIDS-を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと赴く。
 この戦いに勝利することが、永遠なる平和を勝ち取るための唯一つの方法と信じて…。

 空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリー。
 しかし、そこには語られる事のなかった多くの物語がある。
 歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
 されど語り部達はただ語るのみ。
 故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。

 過去に埋没した物語達や、ルールは>>2-5辺りに記される。
過去ログ
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.3
http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1008860930/
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.2
http://salad.2ch.net/zoid/kako/998/998659963.html
自分でバトルストーリーを書いてみよう!!
http://salad.2ch.net/zoid/kako/976/976898587.html

名無し獣弐氏の過去ログ保管場所
http://members.tripod.co.jp/zBS2/index-4.html
ルール

ゾイドに関係する物語であるならば、アニメ、漫画、バトストなど何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などは、特に制約はありません。
ゾイド板ならではの自由で柔軟な作品をお待ちしております。
ただし、例外として18禁はご遠慮下さい。

鯖負担になるので、>>250に書き込んだ方に次スレのスレ立てをお願いします。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
4_:03/05/30 06:35 ID:???
5名無し獣:03/05/30 11:07 ID:???
ガンブラスター(旧)の大砲が金色な理由。

これは昔昔のお話。
ガンブラスターが散歩していたとき、思わずつまずいて、
背中の大切なハイパーローリングキャノンを池に落としてしまいました。
途方にくれるガンブラスターですが、
突然池の中から池の神様が現れたのです。
そして神様はこういいました。
「あなたが落としたのはこの普通のハイパーローリングキャノン?
それともこの金のハイパーローリングキャノン?」
と。
ガンブラスターは正直に普通のハイパーローリングキャノンと答えました。
すると神様は
「おおなんと正直な者でしょう。この金のハイパーローリングキャノンをあげましょう。」

これがガンブラスターが黄金に光輝くハイパーローリングキャノンを持っている理由なのです。
6開戦前夜作者:03/05/30 11:57 ID:???
じゃぁ・・・今のガンブラスターは?

「黄金砲?そんなものただの飾りです」
といった技術者がいるとかいないとか
7名無し獣:03/06/02 02:58 ID:???
保守!
8名無し獣:03/06/03 10:20 ID:???
即死判定は大丈夫かな?
9名無し獣:03/06/04 05:29 ID:???
むう・・・廃れる一方か?
近いうちに何か書こう
10魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:11 ID:???
初めて張り付けます。
自分のは非常にスーパーロボットライクなんで、
そういうのがお気に召さない方は飛ばしてやって下さい。

【第一章】

 双児の月に照らされる荒野。
 勇者が一匹、膝から崩れ落ちる。
 民家二軒分はある巨体。二枚の翼と六本のとさか、そして長い尻尾を持った二足竜。
禍々しい姿形も去ることながら、最も印象深いのは果実のように鮮烈な赤い皮膚。人
は彼を、魔装竜ジェノブレイカーと呼ぶ。金属生命体ゾイドの一種にして、幾多の伝
説に語り継がれる真紅の勇者。しかし今や肩で息し、必死の思いで立ち上がろうとし
ている。
 向こうに見えるのは街の灯。
 彼の行く先に、立ちはだかった者。
 月明かりを背に、四足竜が一匹。
 緑色の足に黒い体色はごくごく平凡だ。その上目前の勇者に二回りも劣る体格。
 しかし彼が背負うものは、それらを覆い隠して余りあった。…何本も屹立する、水
晶のごとく透き通った橙色の剣。体色とのバランスはお世辞にも誉められるものでは
ないが、剣は月明かりを浴びて妖しく輝き、彼に勇者を呑み込む程の不気味な威容を
与えている。晶剣竜ゴルヘックスと、人は呼ぶ。
 立ち上がる赤いゾイド。月夜に咆哮を投げかけたかと思うといきなり右の翼を水平
に構える。その下から勢い良く展開される双剣。身を低く屈めるとすぐさまバネのよ
うに全身を押し出す。
 だが、何ら動じる様子も見せないゴルヘックス。
 全身を大きく、反時計回りに捻る赤いゾイド。双剣が風を斬る!
 しかし双剣がゴルヘックスの目前に届く前に、赤いゾイドは体勢を崩し、地面に滑
り転がった。何ら動じることなく避けるゴルヘックス。
 その後方で、仰向けに倒れる赤いゾイド。力を振り絞って腕と、左の翼で胸を覆い
隠すとそのまま動かなくなった。死んだのか、それとも気を失ったのか。
11魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:13 ID:???
 ゴルヘックスはおもむろに近付くと首をキョロキョロと動かし、様子を伺う。やが
て彼の背後から現れ、赤いゾイドの周囲に群がるもの。体格はゴルヘックスより更に
小さく、彼の頭部より大きい程度だ。二本足で直立し、両手にはその手に余る程の大
きさを誇るビームガトリングガンが抱えられている。全身をくすんだ白い装甲で固め
た、鎧を纏った巨人とも形容できる体つき。頭部には大きなキャノピーで覆われた沢
山の複眼があり、いずれも青白く輝いている。
 白い巨人は何十匹も現れ、赤いゾイドの身体によじ登るとビームガトリングガンを
突きつけていく。…赤いゾイドが動く様子は全く伺えなかったのである。

「ここは…。
 ここは、どこ…?」
 ギルの意識が戻った時、彼は自分の相棒とは違うゾイドのコクピットに乗っている
ことに気が付いた。橙色のキャノピーはヘリック共和国純正のものだとはわかる。だ
がこの妙にゆったりした室内は一体…。
「…なんて、そんなこと考えてる場合じゃない!ブレイカ…んっっ!?」
 身を起こそうとしたギルは愕然となった。…拘束されている!一般的な少年少女と
比べれば比較的小さく又痩せた体躯。ボサボサの黒髪、大きめのTシャツに半ズボン、
素足に運動靴といういでたち。その彼を正面からから見てみれば、両手両足・胴そし
て首に輪っかをはめられ座席に括り付けられていることがわかる。大きめで円らな瞳
と通常真一文字に結ばれている口は、自らを取り巻く理解し難い状況故に大きく開か
れたままだ。
 四肢を揺さぶっても拘束がそう簡単に緩みはしないことに気が付いたギル。…肩を
落とし、項垂れ、だがそれでも現実を理解しようと、恐る恐る顔を上げ、キャノピー
の外の世界を観察してみる。
12魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:14 ID:???
 大型ゾイドが何体か収納できそうな位広い部屋だ。壁はコンクリートで覆われ、高
い天井には何本もの鉄骨が張り巡らされている。幾つもの電灯が確認できるがそれで
も十分に薄暗く、キャノピー内部にまで届く光は実にぼんやりとしている。ここが格
納庫であることに間違いはないのだろうが…。
 外に人影が見える。と、同時に開くキャノピー。
「お目覚めかね、ギルガメス君?」
 白衣を着た男。背は高いが見た目にも痩せこけている。黒縁の眼鏡、後ろで束ねた
長い黒髪。…所々、白髪が混じっている。しかしながら顔の造作はどう見ても若く、
この白髪と噛み合わない印象がある。
 男はコクピットの中にまで乗り込んできた。こちらを覗き込むように見る顔は不気
味な位無表情だ。強まるギルの警戒心。
「怖がらなくてもいい。君は貴重なサンプルだ、丁重に扱わなくてはね」
 低い声で呟く男の二言目を聞き、ぎょっとなった。
「…サンプル?僕が?」
「そうだ。ジェノブレイカーはオーガノイドシステムが極限まで解放されたゾイド。
あれを苦もなく操る君は実に貴重だ。
 これから君には実験台として人の役に立ってもらう」
 想像を超える男の言動に、俄に色めき立つギル。
「な…何をわけのわからないこと言ってるんですか?サンプル?実験台!?
 僕を一体どうしようと…」
 白衣の男は抗議するギルをまじまじと見つめていたが、ふと、視線を横に反らした。
 眼鏡を右の人差し指で押し上げ、ぶつぶつと何か呟いたかと思ったその刹那!
「んっぐぅっっ!?」
 ギルの首にいきなり両手で掴み掛かる男。拘束具の隙間から指を立てて締め上げて
いく。突然振りかざされた暴力にギルは為すすべもない。
 さっきまで無表情だった男の眼差しに宿った、暗い炎のような怒気!
13魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:16 ID:???
「この星に生きる少年が、人権を主張するか!
 今の君には野良ゾイド程の権利もない。わかるか?わかるかっ!?わかるならおと
なしくしろ!」
 その時、男の右腕に付けた時計から鳴り響いた電子音。急に表情を消し、呼び出し
に応対する。
「…どうした?」
「クリソス様、来客です」
 相手の声は抑揚が感じられない。
 首から手を離す男。咳き込み、涙を潤ませざるを得ないギル。
「苦しむ権利すらも、数時間後にははく奪される。そのつもりでいなさい」
 白衣の男はギルを指差して言い放つと、コクピットから出ていったのである。

 外は雲一つない青空であった。
 荒野の真ん中に、管制塔のような建物が一軒。後方には、格納庫とおぼしき建物が
数棟立ち並んでいる。
 その正門の前に、横付けされているビークル。そして、その横に降り立つ一人の女
性。紺色の背広で身を固め、ピンと張った背筋が遠目にも美しい。並みの青年男子を
十分に上回る、すらりとした肢体。やや面長で端正な顔立ちに、肩にも届かない位さ
っぱりとした黒い短髪。「男装の麗人」という形容がピッタリの彼女はサングラスを
掛けて表情を隠し、どこか浮き世離れした雰囲気を醸し出している。
 門のすぐ上に取り付けられたカメラが動いた。
「…どちらさまですか?」
 門のチャイムから聞こえた男の声。
「すいません、少々お尋ねしたいのですが…」
 女性の返事。程なくして、現れたのは白衣の男。女性は早速一礼すると、懐から二
枚の写真を取り出す。
「このゾイドと、少年がこの近辺に現れませんでしたでしょうか?」
 見ればそこに映っているのは、赤い異形のゾイドと、さっきまで白衣の男が嬲って
いた少年の姿だ。
14魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:17 ID:???
 白衣の男は差し出された写真をまじまじと見つめながら答える。
「いやぁ、見ませんね…。この少年はともかく、ゾイドの方は実に珍しい形だ。見掛
けたら私も、ウルフェンも必ず覚えていますよ」
 言いながら男は彼女の肩ごしに遠くを見つめる。男の視線に気付き、不審げに後ろ
を向く彼女。
 巻き上がる土煙。やがて大地を揺らす地響き。
 土煙の中から現れたのは、白い装甲を纏った巨人の集団。十本の指では数え切れな
い大群が、理路整然とした二列縦隊を組みながら怒濤の勢いで近付いてくる。
「あれは…ヘリックゴーレム?」
「ほお、彼らを御存じですか!左様、彼らはヘリックゴーレム。何しろ余りに気性が
激しい上に改造も難しいので一般には馴染みが薄いゾイドですが、私は彼らを遠隔コ
ントロールして様々な労働に活用する研究を行なっているのですよ。そして彼らを指
揮するのが…」
 二人の横を通り過ぎていくヘリックゴーレムの行列。それからやや遅れて走ってき
たのは。
「ゴルヘックスですか…」
「はい。あの子…ウルフェンの『クリスタルレーダー』は複数のヘリックゴーレムを
統率できる程研ぎ澄まされています。ですがあの子でさえ、不審なものは特に感じ取
っていないのですよ…」
 ウルフェンと呼ばれたゴルヘックスが駆け抜けていく。なびく風に揺れる二人の髪。
 サングラスに手を掛ける女性。だが数秒の後その手を離すに至った。
15魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:28 ID:???
どの位連貼りしていいのか、加減がわかりません。
取り敢えず、続けてみます。

【第二章】

 ギルガメスは先程首を絞められたおかげでまだ呼吸が荒い。その上流した涙を拭う
こともできず、ひどく充血した両目。
 しかしいつまでも嘆いているわけにはいかない。何とか拘束を外そうと色々試み始
めた。何度も四肢に力を入れてみる。引っ張ってみたり、左右に強く揺らしてみたり。
或いは両手をすぼめて輪っかから引き抜こうとする。…だがいずれも成果は上がらな
い。思わず溜め息を漏らす。
「えーい、何とかしてここから抜け出さないと!
 大体、ここはどんなゾイドのコクピットなんだよ!?」
 突然、うっすらと光を帯びるキャノピーの正面。描かれていく、幾つかの図面が表
すものは。
 …長い胴体と尻尾、それに馬鹿でかい頭部を持ったゾイドが腹這いになっている。
「この頭の部分が今の僕の居場所…って、まさか!」
 拘束された首を、無理矢理右の後方に向けてみる。見れば自分の身体を超える大き
さの水晶体が埋め込まれているではないか。…間違いない、これはゾイドの「目」に
当たる部分だ。
「君はゴジュラスなのか…。名前は?」
 キャノピーに映った映像も、水晶体も何ら変化を示さない。
「システムは生きている、けれどゾイドコアは活動していない?君は一体…?」
 ギルの呼び掛けに応じるかのように、映像は腹這いになったゾイドの胴体を拡大し
てみせる。
 胴体を構成しているのは、ぎっしりとひしめき合う賽の目。
「起動していないブロックスゾイドなのか…。でも、コアブロックがこんなに密集し
ていたら、
 生半可なエネルギーでは起動しな…い…えぇっ!?」
 ギルの言葉に合わせて、映像は腹這いになったゾイドの左側面に赤い、矢印のよう
なものを描き出した。
「ぶ…ブレイカー!?」
16魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:31 ID:???
 今度は左の後方に、無理矢理首を向けてみる。喉元がぐいぐい締め付けられるのを
堪えつつ、目を凝らして見つめたキャノピーの向こうにいるのはギルの相棒ではない
か。だがその格好はあまりに無様だ。ギルの乗せられているゾイドの隣で腹這いに
「させられている」。…よく見れば、手足の関節の隙間には人間程の太さもある金属
の棒が何本も差し込まれているのがわかる。もし無理に動いたり引き抜こうとしたり
すれば、関節を壊して自滅する仕掛けだ。そして所々、妙に太い無数の管が、ギルの
拘束されているゾイドに向かって伸びている。いずれブレイカーの生命力はこれらを
通じて奪われてしまうのかも知れない。悪寒を禁じ得ないギル。
 一方、俯いていたブレイカー。ギルの視線に気付くと顔を持ち上げ、口を大きく開
けつつ視線を返した。当然鳴き声などあげられるわけもなく、これが今の両者にでき
る精一杯の意思疎通である。
 大事な友の無事と屈辱的な格好を確認し、顔をくしゃくしゃにさせるギル。
 だがそれも束の間。ブレイカーの周囲に群がってきたのは数体のヘリックゴーレム。
ギルの相棒の不審な態度に気がついた彼ら。途端に手持ちのビームガトリングガンで
頭部を殴打し始める。さしもの伝説の魔装竜も、これにはたまらず顔を臥せるしかな
い。
 ギルは充血した眼を再び熱くさせるしかなかった。
「ブレイカー!ごめん、ごめんっ!イブよ、エステル先生、僕に力を…」
「残念ながら、君の先生は来ない」
 再び開いたキャノピーから乗り込んできた白衣の男。その物静かな声に慌てて正面
を振り返るギル。
「な…!?」
「おっと、これでも感謝して欲しいものだよ。何しろ大事な生徒がこれから文字通り
生け贄とされ、無惨な姿に変貌を遂げるのだからね。御婦人には余りに刺激が強すぎ
る」
 男の静かだがどことなく勝ち誇ったような態度。睨み返すギル。僅かな希望はそれ
によってでしかつなぎ止めることはできないのだから。
17魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:33 ID:???
「RO計画…事件?」
 ビークルに備え付けられたテレビ電話で会話している男装の麗人。モニターの向こ
うに映るのは、眼鏡を掛け、背広を着た優男だ。優雅に紅茶をすすりながら応対して
いる。
「はい、正式には『ゴジュラス・ジ・オーガ復活計画事件』です。…これって今時の
一般常識って奴ですから覚えておいて下さいよ、ね?」
 言われた彼女は微妙に口を曲げたかと思われたが、すぐに平静を装った。上目遣い
で反応に期待しているかのような視線を投げかける優男。だが相手の意外に面白くな
い動作に軽く溜め息をつくと話を続けた。
「えーRO計画事件っていうのはですね、ゾイドアカデミーの最大派閥に『マ・ジィ
タ派』っていう連中がいまして、彼らがオーガノイドシステム発見千周年を記念して
ゴジュラス・ジ・オーガ復活計画をでっち上げた…ていうのがことの始まりなんです。
 RO計画はお偉いさんには何しろ受けが良かったものですから、沢山の資金をかき
集めて順調に進みました。でも、途中で大きな問題に直面したんです」
「起動…しなかった?」
「その通り。いくら忠実にゴジュラス・ジ・オーガのゾイドコアやメインフレームを
再現してもさっぱり起動しなかった。考え倦ねた連中は『オーガノイドシステムが極
限まで解放されたゾイドは優れたゾイド操縦技術を備えた少年少女にのみなつく』と
いう仮説に基づいて、一人の少女に白羽の矢を立てます。
 この少女の実力は相当なもので、ゾイドバトルのジュニアタイトルを総なめにした
上にエキジビションながらAクラスのゾイドウォリアーとも互角に渡り合う程でした
から、有力ゾイドバトルチームから幾つもスカウトが掛かっていました。それ程の実
力者なら、起動もするし十分に乗りこなすだろうと連中は判断したんですね」
「…そこから先は、大体想像がつくわ。起動はしたけれど、暴走してデタラメな形に
増殖した…ってところかしら?」
「ええ。少女の肉体を生体ユニットと認識したゾイドコアは本能の赴くままに自己増
殖を開始しました。その激しさを押さえることは流石の彼女でも不可能だったのです。
18魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:35 ID:???
 暴走した『ゴジュラス・ジ・オーガになる予定だったもの』は共和国軍が木っ端み
じんに粉砕するまで三日三晩暴れ続け、大小五十匹を超えるゾイドと千人近い人の命
を奪いました。一方、少女は奇跡的に一命を取り留めましたが暴走の影響で植物状態
になってしまいました。
 これがRO計画事件の顛末です。…まあ裁判は依然係争中、少女は意識が戻らない
ままで顛末もないのですがね」
「…で、RO計画事件とこの施設の住人・クリソス氏との関係は?」
 さっき訪ねた管制塔のような建物を左肩越しに見せながら問い質す彼女。
「例の少女は、クリソス氏の妹さんです」
 彼女のサングラスに隠された瞳が大きく見開かれたことは、優男にも十分確認でき
た。
「クリソス氏は反マ・ジィタ派の一つ『メナー派』の若手有望株ですが、お偉いさん
には彼らは受けが悪いんです。クリソス氏も相当研究費に事欠いていたようで、だか
ら妹さんが研究費を稼ぐために兄の反対を押し切って連中の要請に乗った、というの
が巷の噂です」
 合点がいったのか、二度、三度と頷いた男装の麗人。
「…ありがとう、アルテさん。知りたいのはそれだけよ」
 彼女がテレビ電話のスイッチを切ろうとした矢先。
「ああ、エステルさんちょっと待った!」
 指が止まる。小首をかしげる彼女。
「よろしかったら今度お茶でも…」
 エステルと呼ばれた彼女はまじまじとアルテという名の優男の顔を覗き込んだが、
ふと、サングラスに右手を掛けた。
「…え?わ、わぁっ!そ、それだけは、それだけは勘弁!」
 男装の麗人は口元を緩めた。
「冗談よ。本当に、ありがとう。それでは明日のバトルが終わったらお食事しましょ
う。但し教え子同伴でね。よろしくて?」
19魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 01:36 ID:???
 彼女の返事を聞いてがっくり肩を落としたが、ものの数秒もせず立ち直るアルテ。
「は…はい!わかりました!それでは明日、スタジアムでお会いしましょう!」
 今度こそテレビ電話のスイッチを切るエステル。意を決するとビークルを起動させ、
それごと背後に向き直す。…例の管制塔のすぐ横には、さっきまでデモンストレーシ
ョンを行なっていたゴルヘックス「ウルフェン」がうずくまって身体を休めている。
その周囲には何十匹ものヘリックゴーレムがじゃれ合い、戯れている。いずれも遠く
から見た限りではまるでぬいぐるみのような愛くるしさだ。
 右の人差し指と中指を揃え、額に当てるエステル。…輝き、浮かび上がってきた得
体の知れない模様!まさしく古代ゾイド人特有の「刻印」である。
 目を閉じ、集中する彼女。と同時に、輝きを増し、明滅を始める刻印。
「…ギル、ギル、聞こえて?」
 心の奥底に語りかける程低い声で呟く。
「反応は…ない、か。結構地中深くにいるみたいね。それなら…」
 刻印が先程までとはテンポの違う明滅を始める。しばらく集中し続けていたエステ
ルだったが、ハッとした様子で急に指を額から離した。
 常人にもゾイドにも見えぬ地の底の様子。刻印の力で垣間見た彼女の目に映ったの
は、ゴジュラスに似た大型ゾイドの影。
「…正気の沙汰じゃないわ」
 呟き、ハアと溜め息をつくと、おもむろにビークルのレバーを握る。
 勢いよく空中に飛び上がったビークル。機体をゆっくり、そして大きく前方に傾け
る。
 ウルフェンとヘリックゴーレム達もそれに気が付いた。だが彼女が何をするのか想
像も付かず、只じっと見つめているばかりだ。
 空中から施設を見おろすエステル。何かしら見当を付けたかと思うと、コントロー
ルパネルを叩く。
 後方から伸びてきたのは、大人の身長を遥かに上回る長さと腿回り程の太さを備え
た、人が使うとはちょっと思えないスケールの銃身だ。
 エステルは軽く深呼吸すると、トリガーに手を掛けた。

****

残りは明日…。
20名無し獣:03/06/07 03:09 ID:???
読みました。
これ、なんかの続編とか、いちエピソードなんですか??
21開戦前夜作者:03/06/07 07:20 ID:???
同じく読みました。
これはゾイドバトルってことは/0時代なんでしょうかね?
スパロボスレ(ぇ)があるくらいですからスーパー系でも構わないんじゃないでしょうか

222099 開戦(1):03/06/07 07:23 ID:???
 帝國軍が共和国軍と開戦したという事実をシュタイナー少尉に教えたのは、愛機のモニターに表示させていた時計の表示よりも直上を飛び去っていく長距離ロケット砲弾だった。
 開戦の時刻にあわせていた時計の表示はいつのまにかカウントダウンではなくカウントアップに変化していた。それと間髪をいれずに中隊長からの通信が入った。
「我が中隊は第六軍団の最先鋒として戦う。ゾイド前へ(ゾイド、フォー)!」
 各小隊の指揮官からの復唱が聞こえた。シュタイナー少尉も緊張した声で返事をした。
 小隊長は勿論、中隊長も実戦に参加した事は無かった。それどころか現在の帝國軍において実戦経験のあるものはほんの一握りでしかなかった。
 暗黒大陸が内乱に明け暮れていた時代はシュタイナー少尉が生まれた頃には既に終わりかけていた。
 だが彼らは軍に入隊してからずっと続けられていた厳しい訓練の成果を信じていた。

 大陸内での内乱鎮圧を目的として再建された帝國軍ではあったが、80年代半ば頃から外征型の軍隊として組織改変が行われるようになっていた。
 それは先の大戦でかなわなかった中央大陸への進出を皇帝ガイロスが決定した為である。その第一段階として西方大陸に進出し、これを中央大陸への足がかりとすることが参謀本部によって企画された。
 そしてその目的のために帝國軍は組織構造を変化させ、装備を更新していった。
 80年代から始められていた計画は90年代後半には急速に軍備を充実させていく事になった。
 ゾイドの量産態勢は勿論、帝國のほとんどの余剰人口は軍人となっていた。共和国との戦力差はまさに圧倒的であるはずだった。
 実戦を想定した訓練を何度も経てきた兵員の質も無視できる要因ではなかった。
 シュタイナー少尉は知る由も無かったが新型ゾイドの開発も着々と進行しつつあった。
232099 開戦(2):03/06/07 07:24 ID:???

 ゾイド部隊が前進するまえに念入りに行われる予定だった準備砲撃はいつの間にか長距離ロケット砲撃から間接砲による支援に切り替わっていた。
 間接砲は段々と射程を延ばして共和国の後方部隊を攻撃する手はずだった。
 長距離ロケット砲兵部隊は反撃を避けて撤収しているか再装填しているかのどちらかだった。
 そんな中で共和国軍は開戦の衝撃から立ち直りつつあるようだった。シュタイナー少尉たちを飛び越えて砲弾が飛んできていた。
 共和国軍の砲兵部隊が反撃に出ているようだった。だが帝國軍の砲兵部隊はその反撃を対砲レーダーで正確に掴んで反撃を加えていた。
 そして共和国軍にさらに混乱をあたえるべく中距離ロケット砲兵部隊の近接支援砲撃が開始された。
 熱い砲火に支援されながらシュタイナー少尉達は急速に共和国軍部隊との距離を狭めていた。
読ませていただきました。

>魔装竜 対 晶剣竜
ゴルヘックス好きなんで、まず「晶剣竜」っつうネーミングに燃えました。
クリスタルレーダーの描写が(・∀・) イイ!!ですね。
そんなことまでしてゴジュラスジオーガを復活させる理由とは。気になります。
はっきりした設定上の制約がない未来世界が舞台だと、
自由度があるだけに逆に難しい部分もありそう…ですね。
がんがってください。

>2099 開戦
帝國軍にとって、数で(かなり)劣る共和国軍をエウロペから追い出すのは
当初楽勝のように考えられてたんでは?と思いますがどうなんでしょうね。
開戦初期の話は、公式ファンブックでも共和国軍側からの描写がほとんどのように思います。
てな訳で、やや視点の違うところからまた骨太の内容が読めそうで、期待してます。
シュタイナー少尉の愛機が何かを予想しながら待ってます。
25名無し獣:03/06/07 16:52 ID:i82P766m
期待age
26名無し獣:03/06/07 16:57 ID:UwTgfJ5S
キレイな娘集めました。。。
http://endou.kir.jp/moe/linkvp.html
>>20
>>21
>>24
読んで下さいましてありがとうこざいます。

>>20
自分の持ちキャラをネタに一本書いた…只それだけのことです。
不親切なやり方かも知れませんが、こういう場でキャラや舞台設定の紹介に
貴重なレスを消費する位なら、取り敢えず一本貼って反応を伺いたいと思いました。
>>21
時代としては/0です。只、自分なりに色々手を加えてはいます。
何しろ既に「ヘリック」とか言っちゃってますし。
スーパー系が問題ないならガシガシ、貼っていきます。
>>24
ネーミングに関してはかなり狙ってますんで、ええ。
他のゾイドに関しても色々ストックがあります。
クリスタルレーダーはこのあと悪ノリしますが、その辺はどうか御勘弁を。

取り敢えず、これから残りを貼ってからすぐログ落ちします。明日も仕事なものですから。
すみませんが、貼り付け後のレスは明日の晩ということで。よろしくお願いします。
28魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 23:51 ID:???
【第三章】

「何を…」
 白衣の男を睨み付けながら声を漏らすギル。
「ん?」
「一体、何を考えているんですか…?」
「フフ…クックッ…」
 急に笑いはじめる男。
「ま、真面目に答えろ!」
「…RO計画『事件』の、再現だよ。もう薄々気が付いているだろう?このブロック
スゾイドがゴジュラス系ゾイドのフレームに酷似していることに。コアは残念ながら
ブロックスのものだが、コアデータは事件で使われたのと同じものだ。
 そして今日、『生体ユニット』に認識される可能性の極めて高い子供として、かの
伝説の魔装竜を操る君…ギルガメス君を加えることができた。これで『暴走』の必要
条件は整ったことになる。ククク…」
 徐々に狂気を孕みはじめる男の眼。雰囲気に呑み込まれないよう必死のギルだが、
釈然としないことがある。
「ちょ…ちょっと待ってよ!何でわざわざ暴走させるのさ?ジ・オーガを復活させる
のが目的じゃあ…うわっっ!?」
 ギルの頬を左、そして右へと力任せに殴る男。
「…ゾイドの能力を数値でしか見ることのできないマ・ジィタ派の連中と一緒にしな
いで欲しいな。
 いいか、大事な人がある日突然植物状態になって帰ってきた。原因は皆目見当が付
かないのだと。そのくせ生き長らえさせるための金だけは援助してやると言う。…納
得できるわけないだろう!?
 だから僕は、原因を突き止めてやる!廃人と化していく過程をつぶさに観察すれば、
きっと妹を…ベリルを蘇らせる手掛かりは見つかる筈だ!」
「そのために、僕が犠牲になれって言うのかよ!そりゃあんたには同情するよ、でも
やり方は無茶苦茶だ!」
29魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 23:53 ID:???
 今の一言で、もう一発拳を叩き込まれるギル。
「名誉や栄光は、日々精進した者にだけ与えられるべきだ。魔装竜だかなんだか知ら
ないがゾイドの力に頼るような奴には相応しくない。…さて、そろそろ時間だ」
 白衣の男が右腕に付けた時計のスイッチをいじろうとした、その時。
 ドーン。
 この地下に、こだまする落雷。
「どうした!?」
 慌ててコクピットから出る男。その先に伸びる鼻先に立って辺りを見回す。
 天井をぶち抜き、急降下して侵入したのはエステルが登場するビークルだ。地面す
れすれで体勢を水平に整える。その周囲では居合わせたヘリックゴーレム達が落下し
てきたコンクリートと鉄屑に翻弄され、散り散りになったりひっくり返ったりしてい
る。
 助けが来たのを直感したギル。無我夢中で怒鳴る!
「うわーーーーーーーーっ!」
「…ギル!?」
 その声にすぐ気が付いたエステル。ビークルの向きを直す。一方の白衣の男も又怒
鳴り散らす。
「ええいヘリックゴーレム隊!こいつを殺せぇーーーーっ!」
 その声にすぐさま反応してビームガトリングガンを構え、一斉に撃ちはじめる白い
巨人達。
 だがビークルの方が一足早く、コクピット目掛けて突っ込んでくる。慌てて懐の銃
を構えようとする男だったが…。
 右腕を伸ばし高速のままビークルを傾けるエステル。男が銃を構え切るよりも速く
真横を突っ切り、その首をがっちりと引っ掛ける。
 Uターンし、コクピットの鼻先に戻って体勢を戻し、急停止するビークル。一方、
ギルが拘束される大型ゾイドの周囲に群がるヘリックゴーレム達。
30魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 23:55 ID:???
 男の首を締め上げつつ、残った左腕で素早く男の右腕を捻る。実に、実に慣れた手
つきはいとも簡単に男から凶器を奪うことに成功した。そしてすぐさま天井に向けて
片腕を伸ばすと銃を撃ち始める。…数発の銃声の後、弾を撃ち尽くされた銃を遠くま
で投げ捨てるエステル。
 ヘリックゴーレム達が二人を取り囲んだ。ビームガトリングガンを構えたり、口を
大きく開けたりして威嚇する。
 何ら動じることなくおもむろにサングラスを外し、周囲を一睨みするエステル。…
切れ長の、蒼い瞳。だがそこから迸るのは、凍てつく程に鋭い眼光!
 魔女の「眼圧」に、凶暴なヘリックゴーレム達でさえもが怯んだ。大きく後ずさり
し、転んだりしている。
 額の刻印を明滅させながら、努めて低い声で切り出すエステル。
「眷属共よ、武器を捨てなさい」
 怖ず怖ずとビームガトリングガンを地に置くヘリックゴーレム達。
「我らが友の戒めを解きなさい」
 あれだけ威丈高だった白い巨人達が、散り散りになってブレイカーの拘束を解きは
じめる。
「…さぁて、教え子の戒めも解いて頂きましょうか、クリソスさん?」
 言いつつ首を絞めたまま、男の顔を横から覗き込むエステル。だがクリソスと呼ば
れた男は魔女の眼光を承知しているのかそっぽを向いたままだ。
 魔女の刻印が先程までとは異なった光芒を帯びる。クリソスの額に左の人差し指を
当てるエステル。…急に、両手を前に伸ばすクリソス。驚愕の表情は自らの意志とは
無関係に身体が動いていることの証明。抵抗しようと試みる彼だったが、その両腕は
震えながらもゆっくり、だが確実に自らの意志とは関係なく動き始めていく。
 右の腕時計型の端末を操作「させられた」クリソス。
 教え子の戒めが、遂に解かれた。勢いよくコクピットから飛び出すギル。鼻先から
降りてビークルの前に立つと、途端に涙ぐんだ。
31魔装竜 対 晶剣竜:03/06/07 23:57 ID:???
「せ…先生…すい…ま…」
 すっ…と彼の眼前に手を掲げ、謝罪の中断を促すエステル。心持ち、口元が綻んだ
かのように見える。ギルも真意を理解した。今やらなければいけないのは…!
「『たとえ、その行く先が』」
 視線を合わせ、何事か唱える二人。輝きを帯びはじめるギルの額!
「『いばらの道であっても』」
 驚愕するクリソスを無視したまま、続く詠唱。
「『私は、戦う!』」
 不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステル
の「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカ
ーと限り無く同調できるようになるのだ!
 大きく深呼吸するギル。
「ブレイカー!」
 相棒の方を向いて叫ぶ。丁度拘束を解かれたところのブレイカーは、囲まれた周り
を睨むとその目前でガツン、と一噛みした。驚いて転倒するヘリックゴーレム達。…
千年の時を経て少しは丸くなったらしいギルの相棒は、現在あの忌わしい「ジェノ」
の称号を冠することはない。
 ヘリックゴーレム達が道を開ける。駆け足で近付くギル。頬をひとしきり寄せあう
と、ブレイカーの胸の装甲が開き、ギルをコクピットへ招き入れた。それを確認する
とクリソスにすぐさま当て身を決めるエステル。崩れ落ちる彼の右腕を掴むと腕時計
をむしり取り足で踏み付けると、彼をビークルから降ろして一人と一匹に対して頷い
た。…コクピット内のギルが叫ぶ。
「ブレイカー、行くよ!マグネッサー!」
 ぐっと低く身構え、翼を展開させるブレイカー。高速回転する全身のリミッター。
激しい金属音と共に蓋の隙間から白い光が漏れ、火花が零れ出す。同時に蒼炎を吹き
出す背のとさか。満を持して大地を蹴る。帚星は滑るように助走をつけた後、一気に
天井から差し込む光目掛けて飛び立った。エステルの乗るビークルもそれに続く。
32魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:00 ID:???
 二人と一匹が立ち去ってすぐ、ヘリックゴーレム達が主を心配そうに取り囲む。
 うつ伏せになっていたクリソス。だがやがて、両手に握りこぶしを作ると地面に振
り降ろし、叩き付けて立ち上がった。
「お前達、何をしている!さっさと後を追え!」
 彼の怒声に我に帰った兵士達は、武器を取り直し何処かに立ち去った。一方のクリ
ソスは、自らの靴のかかとをいじり始めた。…かかとには蓋が付いている。開けて取
り出した物は…小型の通信機だ!
「ウルフェン、施設を完全に封鎖しろ!彼奴らを逃がすな!」

【第四章】

 今や、ヘリック共和国の完全統一なった惑星Zi。だが決して一枚岩ではない。キ
ャムフォード家という事実上の皇族を擁した中央政府と、統一を成し遂げた軍部の二
大勢力を筆頭に、様々な派閥が入り乱れているのが現状である。
 ゾイドアカデミーもその一つだ。…グローバリー三世号がこの星に不時着して以来
十世紀を数えるが、その間に大規模な開拓は愚か、真っ当な交通網の整備すら行なわ
ずに今日まで来た。Zi人にとって科学技術は必ずしも自らの生活向上に益するもの
ではなく、ゾイドをひたすらあがめ奉るための道具に過ぎないからだ。故に科学技術
を一手に取り仕切るゾイドアカデミーは、単なる学び舎では収まらずZi人のゾイド
信仰の総本山的性格を備えた、宗教的戦闘集団とも言える存在にまでのし上がってい
るのである。
 そのゾイドアカデミーの施設から今まさに脱出しようとするギルガメスとエステル、
そしてブレイカー。だが簡単に逃げ切れるわけがない。
 地上に飛び出した二人と一匹。一気に施設の敷地外に出ようと加速する。
 だが彼らの行く先に、急激に立ち塞がるものがある。…虹の、壁だ。
「Eシールド!?」
33魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:03 ID:???
 先行するブレイカーが慌ててその巨体を捻り、両足を前に出す。エステルの乗るビ
ークルも横にそれる。パリン、と乾いた音が鳴り響き、大きく弾かれるブレイカー。
翼を大きく広げ、宙返りして着地する。ズシンッ、と泥を飛ばし、地にめり込む巨体。
 クリソスから奪い、破壊した筈の通信機にスペアがあったことを悟り、舌打ちする
エステル。ところで、彼女の生徒の安否は?
「ギル、大丈夫!?」
 全方位スクリーンで囲まれたブレイカーのコクピット内。肩で大きく息をするギル。
エステルの通信に応えようとするがそれも束の間。背後に感じる大量の殺気!
 振り向けばこの敷地内の地面に幾つも穴が開き、そこから何匹ものヘリックゴーレ
ム達が飛び出し群がってきている。そしてその遥か後方に一匹のゾイドが。背負った
橙色の水晶の剣を妖しく輝かせ、逆立てているのは晶剣竜ゴルヘックス「ウルフェン」
だ。…昨晩、不覚をとった相手!
「彼奴を倒さないとここからは出れられないのか…」
 Eシールドを展開させた張本人を直感したギル。そうこうしている内にもヘリック
ゴーレム達は隊列を整え、次々にビームガトリングガンを構えはじめている。
 そして、地上に出てきた最後の一匹。両腕に抱えているのは白衣の男・クリソスだ。
地上に立った彼は、不敵に笑うと大胆不敵にもブレイカーを指差し、怒鳴る。
「ゾイドアカデミーを、僕をなめるなよ!『もう一度』倒してやる!
 ウルフェン!ヘリックゴーレム隊!ベリルを助けたい、力を貸してくれ!」
 天を仰いで吠えるウルフェン。甲高い咆哮は一流のソプラノ歌手の美声をも彷佛と
させる。次いでヘリックゴーレム達が大きな口を開けて吠える。こちらは野太い、野
人の咆哮そのもの。
「そうはいくかぁっ!」
 負けじと叫ぶギル、そしてブレイカー。低く身構え、両の翼を水平に伸ばす。と同
時にエステルのビークルが離れ、この集団の外周に飛び出ていく。
「ギル、目指すはウルフェン只一匹よ!」
「了解です先生!翼のぉっ、刃よぉっ!!」
34魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:05 ID:???
 大地を蹴り、マグネッサーの力で地面を滑るように走りはじめるブレイカー。翼の
裏側から双剣を展開しつつ、ウルフェン目掛けて一目散に掛けていく。
 ウルフェンの前方で隊列を組み、一斉に射撃するヘリックゴーレム達。これを避け、
回り込もうとするブレイカーだが早くも別の一隊が群がり、一気に間合いを詰めてい
く。
 全身を大きく回転させ、刃で斬り付けるブレイカー。一撃でたちまち四、五体のヘ
リックゴーレム達が叩き込まれ、大きく吹っ飛んでいく。二撃、そして三撃、四撃!
瞬く間に築き上げられていく屍の山。
 決して好むところではない行為に唇を噛み締めながらも、彼らの上を飛び越え、ウ
ルフェン目掛けて突っ走っていこうとする一人と一匹。しかし、ギルの予期せぬこと
が起こった。いざ飛び越えんとする寸前で、むっくり起き上がりはじめるヘリックゴ
ーレム達!そしてそのままブレイカーの足目掛けて掴み掛かっていく。
 小型ゾイドも大量にのしかかれば結構な重さだ。足を引っ張られ、たまらず前のめ
りに倒れるブレイカー。慌てて後方を振り向くギル。足を揺さぶり、何とかして振り
解こうとする。だがヘリックゴーレム達も決して怯まない。我先に吠え、大きく開け
る巨大な口。ブレイカーの身体の中では比較的柔らかい膝や足首の関節部分に噛み付
く狙いだ!
 と、そこに撃ち込まれる銃弾。…エステルの乗るビークルから放たれたものだ。銃
弾は一発一発正確に、ヘリックゴーレム達に命中していく。
「せ…先生、すいません!」
「礼を言うより急ぎなさい!相手は桁外れにタフなんだから!」
「は、はい!」
 どうにか彼らを振り解いて立ち上がるブレイカー。だが既にその前方では、他のヘ
リックゴーレム達が一斉に立ちはだかる。開始される一斉射撃!咄嗟に翼を前方に展
開して防ぐが圧力は凄まじく、一気に押し返されていく。
「『ええい、これでは埒が開かない!』」
 口々に怒鳴るギルとエステル。ブレイカーも苛立ち低く唸る。
 一方、クリソスはこの攻防の間にウルフェンに近付くことに成功した。口を開き、
彼をコクピット内に招き入れるウルフェン。
35魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:08 ID:???
「よし、いくぞウルフェン!一度は勝った相手だ!」
 眼鏡を掛け直し、不敵な笑みを浮かべるクリソス。
「ギルガメス君よ、ゴルヘックスの背中に生えた鰭を軍人共は『クリスタルレーダー
フィン』と呼ぶが、かの東方では敬意を込めて『晶剣』と呼ぶのだ!無論刃など付い
ては折らぬ一見只の飾り物に、彼らは仰々しい徒名をつけた。…さあて、何故だと思
う!?」
 いきなり妙な質問を振られるが、目前の攻撃を防ぐのが手一杯で答えるどころでは
ないギル。しかしこのやりとりを聞いたエステルは、これから起こり得るだろう危機
を察知した。素早くウルフェンに銃口を向ける。だがそこに群がるヘリックゴーレム
の別の一隊。圧倒的多数が放つ光弾の波に、さしものエステルも容易にウルフェンを
狙い撃つことはできず右往左往するばかりだ。
 翻弄される二人と一匹を尻目に、満を持して放たれるウルフェンの攻撃。
「…この剣は心を斬る!
 いくぞウルフェン、幻魔晶剣っっ!!」
 その声に一斉に銃撃を中断するヘリックゴーレム達。一方橙色の鰭を逆立て、背中
をブレイカーに向けて全身を弓なりに反らすウルフェン。と同時に、鰭は鈴の音のよ
うなか細い音を立てながら、左右に激しく震えはじめた。
「…な、何だぁ?」
 ウルフェンの不審な行動にようやく気付くギル。と、その時。
 全方位スクリーンの右の一角にウインドウが開かれる。新たにヘリックゴーレム達
が現れたことを示すものだ。右の翼で薙ぐブレイカー。たちまち消えるウインドウ。
 だが、今度は左の一角にウインドウが開かれた。次いで、正面上方。次いで右下。
次いで左後方。次いで、次いで、次いで…。
 瞬く間に、敵の増援を伝えるウインドウで全方位スクリーンが埋め尽くされていく。
そしてそれは留まるところを知らない!
 現れたウインドウ目掛けて薙ぎ、突き、払うブレイカー。だが何度繰り返しても、
ウインドウは無数に開かれ続けていく。おかしい!何かがおかしいっ!
「畜生、どうなっているんだ!?先生、エステル先生っ!」
36魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:10 ID:???
 エステルに向けて通信を送ろうとするが、回線に割り込んできたのは電気信号にも
似た凄まじい金属音だ。
「ギル、ギル、聞こえて!?」
 エステルも同じ行動に出たが、同じ結果が返ってくる。
 一方、情報という名の幻に文字通り踊らされているブレイカーの様子を見てほくそ
笑むクリソス。
「クククク、クハァッハッハッハッハッ!クリスタルレーダーは『あらゆる周波数帯
域の電波を素早くサーチできる』これ即ち『あらゆる帯域にも容易に偽の情報を流す
ことができる』ことでもあるのだ!
 さあウルフェン、ヘリックゴーレム隊!お膳立ては整った!」
 我先にと疾走を開始したヘリックゴーレム達。…決して、五十匹もいたりはしない。
だが今のギルとブレイカーには千を超える大群の来襲に映っている!
 白い大波が、全方位スクリーンに覆い被さった。
「うわああああっ!?」
 いる筈のない大群に怯え、慌てるギル。仰向けに転倒するブレイカー。そこに飛び
込んでいくヘリックゴーレム達。思い思いに口を開き、膝や肘、肩や首、腹や股関節
へと歯を立て噛み付いていく。
「え!?嫌だ、止め…ぐあぁぁぁぁっっ!」
 全方位スクリーンに鮮血が飛び散る。ブレイカーを支配するオーガノイドシステム
はパイロットとの限り無い同調によって成り立つ。その副作用でブレイカーが負傷す
ればギルも負傷する事態に陥るのだ。
 手足や首を始め、様々な箇所に歯形が浮き上がる。おびただしく出血するギル。だ
がそれ以上に危険なのは、ブレイカーを通じて彼の目に映る「幻覚」だ。今や彼は、
全身を無数のヘリックゴーレムに這いずり回られ、弄ばれているかのように感じてい
る。幻覚は彼を屈辱に塗れさせ、その心を折ろうとしているのだ。コクピット内での
たうちまわるギル。恐怖に否応もなく見開かれる目。大きく口を開け呼吸せねばなら
ぬ程息荒い。…そして何より、額に輝く刻印が光を弱まりはじめている!
37魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:12 ID:???
「ゾイドの高い能力が仇となっているなぁ、ギルガメス君よ!
 さあウルフェン、コアの辺りに狙いをしぼれ!」
 クリソスの指示により、晶剣を震わせながら、首の上に取り付けられたビーム砲の
照準を合わせるウルフェン。一発、そしてもう一発。破壊力自体は大したことないが、
今のブレイカーは只の標的に過ぎない。どんなに装甲が硬かろうが時間の問題である!
「不味い、不味すぎるわ!何とかギルを正気に戻さなければいけないというのに通信
もできないというのでは…!」
 悔しさの余りコントロールパネルを叩くエステル。しかし、ヘリックゴーレム達の
妨害は厳しく、未だウルフェン目掛けて一発も狙撃できない有り様だ。…どうすれば
いい?焦りながらも改めてこの施設全体を見渡し、ヒントを探すエステル。
 と、その時。
 起こったのは「彼女にしか理解し得ない異変」。
 仰向けになって悶えたままのブレイカー。だがかろうじて左の翼を広げ、双剣の一
本を懸命に伸ばしている。
「フ…フフ…世話の焼ける…。でも、これしかなさそうね」
 半ば呆れた表情を見せながらも、閃いた彼女の作戦とは。
 ヘリックゴーレム達の追撃を躱しつつ、戦いの輪から一端大きく外れる。一旦機体
を止め、見つめた先にいるのは愛弟子の駆る相棒の姿。
「いっけぇぇぇぇっ!」
 ビークルのエンジンを吹かし、一目散に突っ込んでいく。
 異変に気が付いたヘリックゴーレム達が追い掛け、銃撃する。それらを鮮やかにす
り抜けるエステル。
「…まさか、まさかあの女、あれをやるつもりか!?
 いかん!ヘリックゴーレム隊よ、あの女とゾイドとの接触を許すな!」
 エステルの真意を理解し、これを阻止すべく怒鳴るクリソス。ブレイカーにまとわ
りついていたヘリックゴーレムの一部がそれを聞きつけ、立ち塞がる。額の刻印に一
層強い光を宿し、鋭い瞳の輝きで斬り付けるエステル!
「眷属共よ退けーーーーっ!」
38魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:14 ID:???
 よもや想像だにしない大喝と、そして眼光!思わず怯むヘリックゴーレム達。…睨
みを効かせるエステル。ブレイカーの左の剣の先端に触れ、そのまま突き抜け、離れ
ていく。
「接触テレパスしか意思を伝える方法はないわ。それも一瞬しかチャンスはないから、
大したことも伝えられない。
 でも、ブレイカーに同調しているギルにはそれで十分の筈!」
 旋回し、コンビの様子を伺うエステル。苦虫を噛み潰したような顔のクリソス。
「ええいあの女、一体何を伝えた!?」
 クリソスが視線をブレイカーに移した刹那。
 鳴り響く、激しい金属音。
 ヘリックゴーレム達の山に埋もれていたブレイカーは、全身のリミッターを再び回
転させ、二度、三度と翼を地面に打ちつける。僅かながら浮かび上がりはじめるその
巨体。紛れもない、マグネッサーの力だ。
「いかん!ウルフェン、狙いを彼奴の背中の辺りに変え…」
 クリソスが作戦を伝え終える前に、ブレイカーの背に宿る光芒。
 魔装竜が、珍客を載せたまま仰向けの状態でゆっくりと進みはじめた。珍客は驚き、
飛び跳ね身体ごと叩き付けて止めようとする。だがもてなす方はそんなことになど目
も暮れず少しずつ加速していく。進行方向にある管制塔や格納庫を一つ、又一つぶち
壊しながらエスカレートしていく加速!そしてその先にあるのは…!
 施設内にこだまする雷。その音に身を縮めるウルフェンやヘリックゴーレム達。
 Eシールド目掛けて、ブレイカーは体当たりしていた。衝撃で、さしものヘリック
ゴーレム達は殆ど振り払われている。だが残る屈強な数匹が尚も噛み付いて離れない。
再び、身体を叩き付けるブレイカー!再び…再び!
 幾度もの衝撃を受け、最後の一匹がようやく振り払われた。
 それを見たエステルは、何故か頭を抱えている。
 額からツーッ、と血の筋が流れる。二本、三本…。どうにか我に返ったギル。全方
位スクリーンを見れば、少しずつウインドウが閉じられ、視界が広がっていくのがわ
かる。
39魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:18 ID:???
「せ…先生…?何とか助か…」
「この馬鹿ぁっ!一体何やってるのよ!」
 意外な怒声に慌てて耳を塞ぐ。
「あなたねぇ、私は『飛べ』って伝えたのよ?飛んで回りを薙ぎ払えばいいだけでし
ょう!ヘリックゴーレムは飛べないんだから…」
 空中に戦車が飛びでもしたら、流石に誰でも幻覚に気が付くものだ。当たり前のこ
とに気が付かずしゅんとなるギル。
「くそっ!ウルフェン、怯むな音に!もう一度幻魔晶剣だ!」
 我に返ると再び晶剣を振動させるウルフェン。
「ギル、幻魔晶剣を仕掛けている間、相手は動けないわ!幻覚に惑わされる前に…!」
 エステルの声を遮るかのように再び金属音が流れ、ウインドウに埋め尽くされはじ
めるスクリーン。だが、既に大きなヒントを得ていたギル。翼の刃を一度大きく薙い
でみせると大きく刮目する。
「ブレイカーっ!彼奴はどこ!?」
 ウインドウとウインドウとの隙間。薙ぎ払われた領域に指される矢印。
「そこか!ブレイカー、魔装剣!」
 低く身構え、十分な姿勢を作る。頭上のとさかが展開し、前方に伸びて剣となった。
「せりゃああああっ!」
 大きく跳躍。全身を弓なりに反らし、ウルフェン目掛けて飛び降りていく。
「させるかぁっ!ヘリックゴーレム隊、狙い撃てぃっ!ウルフェンっ、幻魔晶剣っっ!」
 ブレイカーの影を追い、ヘリックゴーレム達が群がっていく。一方これでもかと言
わんばかりに晶剣を振動させるウルフェン。ギルを取り囲む全方位スクリーンに何百
枚ものウインドウが立て続けに開かれていく。しかし最早迷うことはない!
 着地するブレイカー。同時に、ウルフェンの首の辺りに突き刺さる魔装剣。途端に
大量のエネルギーが放出される。
「1っ、2っ、3っ、4っ、5ぉっ!これでどうだぁっ!」
40魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:20 ID:???
 五秒目をカウントしたと同時に剣を引き抜く。魔装剣を五秒間受けたゾイドは大概
気絶するものだが…!
 それでも、ゆっくり、ゆっくりと前進するウルフェン。首の上のビーム砲をブレイ
カーに密着させようとする。晶剣の振動も止まらず、最早ブレイカーの全方位スクリ
ーンは完全に埋め尽くされた。…まさか、倒せなかったのか!?背筋が凍り付いてい
くギル!
「そうだ!ウルフェン、相手は目の前だぁっ!」
 クリソスの激に応え、甲高く吠える。…だが、ここまでだった。ブレイカーにもた
れ掛かるようにして、崩れ落ちるウルフェン。と同時に、彼らの周囲を取り囲みはじ
めたヘリックゴーレム達も一斉に倒れ、沈黙した。
 全方位スクリーンのウインドウが次々と閉じていく。ギルがその先に垣間見たのは、
施設全体を取り囲むEシールドが消滅していく様子だった。
 果敢に戦った勇者を前に、ブレイカーが勝利の雄叫びをあげることはなかった。ギ
ルは独り、大きく溜め息をついた。

 施設の敷地外に、ブレイカーは佇んでいた。腹部のコクピット内では、ギルが微睡
んでいる。ゆりかご機能。オーガノイドシステム搭載ゾイドの中でも高位のものは、
パイロットの心身の異常を確認するとしばしばこれに介入する。ちょっとした外傷は
治癒し、精神的疲労には睡眠などの休息をも強制することで、その高い能力を維持す
るのだ。
 ウルフェンのコクピット内からクリソスを引きずり出すエステル。気絶していた彼
に喝を入れ目覚めさせる。
 地べたに座ったまま視線を反らし続けるクリソスの前に、エステルが置いたのは一
枚の名刺だった。
「こんな極端な方法でなければ、いつでも協力します。それでは、先を急ぎますので…」
「…待ちなさい」
 踵を返そうとしたエステルだったが、クリソスが呼び止めた。
41魔装竜 対 晶剣竜:03/06/08 00:25 ID:???
「マ・ジィタ派のビヨーという男がRO計画事件に使われたシステムを色々な者に配
っている。気をつけるがいい、悪鬼暴君と魔装竜が相容れることはない…」
「…ありがとう」
 一礼して、エステルはその場を立ち去った。
 クリソスは再び仰向けになった。その頭の先。ゆっくりと顔をもたげたウルフェン。
ヘリックゴーレム達もようやく動き始めた。
 若き科学者は目頭を熱くしていた。

「ギル!ほら、さっさと起きなさい!」
 目を開ければエステルが立っている。サングラスを頭上に乗せて厳しい眼光を飛ば
す彼女。慌てて立ち上がり、背筋を正すギル。
「さぁて、準備はいい?」
 微笑しつつも目は笑っていない。ギルは観念したのか、目を閉じ歯を食いしばった。
 パンッ。軽く頬を張られる。
 いつもだったら鉄拳制裁の筈が軽すぎる結末に、恐る恐る目を開け師匠の様子を伺
うギル。
「勘違いしないでね?残りは、あ、と、で!
 今から発進しないと明日の試合会場には到着できないから。試合にケリをつけたら
ゆっくり、ゆーっくり、帰宅が遅れた理由を聞かせてもらうわ。いいわね?」
 がっくり、肩を落とすギル。コクピットから降りるエステルは独り呟いた。
「…でも、よく我慢したわ」(了)

****

ログ落ち前に…。グローバーリー三世号のくだりがちと怪しいです。
本編には大して影響ないだろうけれど…。現在、公式ファンブック一巻が
手元にないので、おかしかったらレス下さい。
42開戦前夜作者:03/06/08 07:26 ID:???
いい加減このHNがうざくなってきた開戦前夜作者です。

>>41
グローバリーIII世号のことでありますが、開拓船グローバリー(何だかななネーミング)は
ZAC2029年に不時着します。翌年にはゴジュラスがロールアウトです。
正確な年代は失念しましたが大陸間戦争の頃に修理を終えて地球に発進していたはずです
ようするに将来のZナイトを積んでいたわけですが(笑)
電ホビの記事を信用するならグローバリーの名を冠した軍事企業があるような・・・

>>24
ごめん、シュタイナー少尉は主役にする気ナッシングでした
愛機はイグアンだと思います。モルガでも可
やっぱり後方好きとしてはゾイドパイロットは主人公にはしないのデス
>>28-41
晶剣竜、なんというスタミナ!
物語はさわやかな幕切れが心地よかったです。
千年の歳月が流れ、ゾイドはオーガノイドシステムを自身のものとしたわけですね。

>>42
帰還した年代についてはハッキリ書いてないのですが、
電ホビ゙誌1999年1月の創刊号163pから抜粋です。

>主要機間を破壊されたグローバリーIIIも、戦争のまっただ中である惑星ゾイドへの不時着を
>余儀なくされる。ゾイド星にもたらされた地球人の技術力により、メカ生体は戦闘兵器として
>大幅に強化され、戦いは新たな局面を迎える。それから24年後……。グローバリーIIIが、6個の
>金属生命体と共に地球から帰還した時、もうひとつのZの伝説が始まる。

不時着は公式ファンブック1巻以外の資料でもZAC2029年ですよね。
これに+24年していいとしたら、グローバリーIIIが地球へ出発したのは
ギル・ベイダーがロールアウトしたZAC2053年になりますが
手もとの電ホビ゙誌の同じページに不時着がZAC2032年と書いてあり、ちょっと混乱。
44魔装竜 対 晶剣竜 作者:03/06/09 00:47 ID:???
>>42
>>43
レス、どうもありがとうございます。

>>グローバリー三世号不時着に関して
電ホか…全くノーチェックでした。お恥ずかしい。
2029年ですか…。キット付録のカタログVol.2だとヘリックとガイロスの再戦が2099年。
つまり70年の月日が流れた…ということになりますね。
/0時代をここから千年後としたら、1070年経過していたことになります。
「…グローバリー三世号がこの星に不時着して以来十世紀を数えるが」
という本編中の文章はまあ間違ってはいない…ですかね?
それ以前にアニメシリーズをバトストの延長上に置くことには問題があるわけですが。
まあ俺設定ということで御容赦の程を。

>>42
そうですか、あちらでは軍事企業がネタになっているのですか。日を改めてチェック入れてみます。
電ホ、購入していないからまずは古本屋に行かないと…。

>>43
結局、戦争だろうがバトルだろうが負けるためにやる奴などいない筈ですから、
決着はああいう描写になりました。あのスタミナも全て気迫のなせる技ということで。

今日はこれでログ落ちです。明日も仕事なもので…。貧乏暇無し。
明日、又来ます。
45開戦前夜作者:03/06/09 05:38 ID:???
>>44
いざとなったら十数世紀で誤魔化しましょう(笑)
実際千年も経っていれば割りといい加減になるんではあるまいか・・・
いや文化、風俗をうかがわせる描写が/0は極端に少ないので何ともいえないと思いますが
それに千年というのも怪しいですし(苦笑)
勿論こんな些事は「俺設定」で問題無いですけどね
46グラン=ティーガーの憂鬱:03/06/09 13:13 ID:???
共和国軍のとある部隊にグラン=ティーガーという男がいた。
この男、「欠点らしい欠点が無いところが欠点」と言われるほど非の打ち所も無い
すごい男。いや、漢なのである。
格闘技も射撃もゾイドの操縦も頭脳も超一流。クールでルックスもカッコイイ。
その上人望も厚く、人間的な魅力もある。というとんでも人間である。
そして25の若さで中佐にまで登りつめ、マッドサンダーのパイロットを任された凄い漢なのである。
当然女性兵士にもモテモテなのだが、本人自身は自分が持てる点や、自分の能力の高さ自体を
あまり自覚していなかったりする。そこがまたカッコイイと言われよけいに持てるのである。
そんな彼が恋をした。
相手は彼の部隊に新しく配属されてきた一人の女性将校であった。
名は「ソフィア=フライン」
驚く無かれ、なんと14歳で大尉という凄い人。
いや、10代の仕官なんて地球ならともかくも、惑星Ziではいたって普通である。
何しろここ惑星Ziでは12歳で元服なのだから。
しかし、この若さでこの階級は正直珍しい部類に入る。
人づての噂の一つに軍のお偉いさんの一人娘という噂があるが、
どうやら過去の経歴を調べる限り実力で大尉にまで登りつめたらしい。
しかし、それよりも驚くべき事実は、グランが年下好みという事実が発覚したことであろう。
「ソフィア=フライン大尉です。どうかよろしくお願いします。」
「うむ、君の上官となる。グラン=ティーガー中佐だ。よろしく頼む。」
しかも、思いっきりグランの隊に配属されたりしていた。
グランはクールで冷静な上官を装いながらも心の中では、
「か・・・・かわいい・・・・。」
と、そんなことを思っていたりする。
しかし、そんな外見的にはそんなそぶりは全然見えない。
ただ、冷静な指揮官のようにピシッと立っているのだ。
自分の思っていることを回りに悟らせないグランはやはり凄い漢であった。
47グラン=ティーガーの憂鬱:03/06/09 13:28 ID:???
「か・・・かわいい・・かわいすぎ・・・。だが、俺は25だ・・・。彼女は14歳・・・
ロリコンとか周りに言われないだろうか・・・・。落ち着けグラン、あのヘリック2世と結婚した
ローザという人はヘリック2世よりずっと年下だったという話じゃないか。
自分に自信を持つんだグラン!!だが・・・・」
と平静を装いながらも、グランの心の中では心の葛藤が続いているのであった。
しかし、そんな心の葛藤も、外見から見ればそんなことしてるのかすら誰も気づかない。
それほど、グランはやはり凄い男だった。
そんな時・・・・
「敵襲!!敵襲!!ゾイド部隊出動準備!!」
まるで漫画のように突然敵が攻撃してきたのだった。
グランの目が変わった。心の葛藤も一時中断。
「お前達何をしている!!出動だ!!」
誰よりも先に格納庫に走る。その後をソフィアが走る。名の無い脇役が走る。
マッドサンダーの頭に飛び乗り、コックピットに入りむグラン。
その後から来たやはり名の無い脇役がマッドサンダーの背中の管制室に乗り込む。
「いくぞ雷剛!!」
雷剛とはグランのマッドサンダーの名であるが、今はそんなことをしている場合ではない。
敵がすぐそこまで来ていたのだ。格納庫の扉が開き、マッドサンダー(これからは雷剛と表記する)が
出撃する。その後を他のゾイドが出撃していく。
「グラン中佐!私、がんばります!。」
突然ソフィアの声が聞こえた。声は隣のケーニッヒウルフから聞こえた。
「まあ、がんばるのはいいが、死ぬなよ。あと、私語はできるだけつつしめ。」
平静を装いながらもソフィアに返事をする。しかし、心の中では
「ソフィアちゃんに声かけられちゃったよ!!ラッキー!!。」
などと思っていたりする。やはり外見からはまったく気づかれない。
48グラン=ティーガーの憂鬱:03/06/09 13:51 ID:???
さて、戦闘が始まったわけだが、まだ肉眼では敵の姿は点でしか見えない。
機動力の高いゾイドが切り込み隊長として雷剛を追い抜いて走っていく。
雷剛はその後をノシノシと走っていくわけだが、
走っている合間にも、グランはコクピットレバーの引き金を引く。
雷剛の背中のビームキャノンからビームが発射される。
シールドライガーのビームキャノンと同型のビームキャノン砲だが、
ハイパーローリングチャージャーから生み出される出力により、
その威力はシールドのそれをはるかに上回る。貫通力だけなら
ジェノザウラーの収束荷電粒子砲も上回ると思う。多分。
敵陣からもミサイルが、ビームが、砲弾が、飛んでくる。
だが、雷剛にひるみは無い。たとえ直撃でもびくともしない装甲を雷剛は持っているからだ。
そうして、第1陣の高速ゾイド部隊に遅れること10数分。雷剛は敵陣に到着した。
そして背中のビーム、衝撃砲を撃ちまくる。
そんな中、ソフィアのケーニッヒが妙に活躍していた。14の若さで大尉になっただけのことはある、
的確に敵を1機1機落としていく。
その時、またもグランの中で変な妄想が始まった。あんなことやこんなことを妄想していく。
「あーったくもーっ!!可愛いなーソフィアちゃんはー!!」
と心の中でグランは叫ぶ。やはり外見的には(以下略)
そして、その勢いからグランは雷剛の頭部を振りまわす。
たまたまマッドに攻撃を仕掛けようとしていたBFやらジェノザウラーやらが
その雷剛の角に叩き落とされていく。阿鼻叫喚の地獄絵図。
「すごい、あれほどの数のBFやジェノザウラーを簡単に・・。さすがは中佐ですね。」
と感心するソフィアであった。
49名無し獣:03/06/09 23:28 ID:???
>>46-48
いったいどこが憂鬱なんだろう・・・とツッコミたくなる気持ちを抑えつつ
作者の方、がんがってくださいね。
自分も「ゾイドの名前に漢字使用賛成派」です。
主人公のグランは完璧っぽいのでがんがる必要はなさそうですね。
50魔装竜 対 晶剣竜 作者:03/06/10 00:59 ID:???
>>45
了解!

今日は是非アピールしたいことがあって来ました。
自分のようなノリの原稿でも十分楽しめるという方、
うちの「チーム・ギルガメス」と対決させたいゾイドをリクエストしてくれたら嬉しいです。
「機獣新世紀」以降の再販・新作で、あとガンブラスター、ゲーター、ゴドス以外なら
なるべく対応してみたいと思います(上の三体はちょっと前に作った本でネタにしてしまったので…)。
無論、自分が書くからには公式設定の誇張・曲解&俺設定のオンパレードになりますが、
主役が簡単に勝つような代物を書くつもりはまったくありませんので、
その辺は微妙に期待しておいて下さい。
>>49
レスサンクス。
後で考えたら本当に憂鬱じゃありませんね。お恥ずかしい。
そのときふっと浮かんだタイトルを書いたもので・・・

自分は次はアロ主役で一本やりたいと思います。
52味方陣地まで何マイル?:03/06/10 10:44 ID:???
今、私サリーナ=カラオス軍曹(19)は逃げていた。
おびただしい数のキメラブロックスから・・・。味方の姿は見えない。多分やられたのだと思う。
今ここにいるのは、私と、私の乗るアロザウラー「アロガイガー」とおびただしい数のキメラだけ。
アロガイガーの性能と私の腕を持ってすればキメラくらい、2〜4機くらいなら何とかなるかもしれない。
けど、いかんせん数が多すぎる。とても相手にできるものではない。だから逃げる。
追ってくるキメラがカメゴリラと角付きの頭でっかちの2種類だけというのがまだ幸いだが、
それでも油断はできない。つかまったら即死亡だ。ひたすら逃げるしかない。
それにしても、意外に統率が取れている。おそらくどこかに指揮機がいるのだろう。
だが、どこにもそれらしい姿はない。私をあざ笑っているのだ。だから、火器も何も使わず、
ただキメラで追いかけているのだろう。今私にできることは味方陣地まで逃げることしかない。
アロガイガーの背中にカノンダイバーのビームランチャーとミサイルポッドを装備した変わりに、
尾に装備したアロのデフォルト装備のビーム砲を逃げながら後ろに撃つ。
これでキメラが2〜3機倒せたと思う。けど、こんなのスズメの涙。
敵の数は半端なものではないのだ。レーダーに目をやる。時機の後ろにある点滅は全部敵だ。
黒が3で、白が7という恐ろしいほどの大群だ。たかが1機にここまでやるかと思うくらいの大群。
だが、あちらさんにとってはどうでもないのだろう。ブロックスというヤツ、とくに無人機は
通常ゾイドの10分の1に近いコストだと聞く。だから、あれほどの数を出してきても
コスト的には問題ないのだろう。しかも、あちらさんは恐怖心というのがまったく無いのだから
余計に性質が悪い。
53味方陣地まで何マイル?:03/06/10 11:01 ID:???
とにかく、今私の乗るアロガイガーは森の中を走っていた。もちろん後ろにはキメラの大群。
とにかく足場が悪い。スピードが落ちる。だが、それはあちらも同じだと思う。
特にカメゴリラと角付き頭でっかちは足が短いからこれは致命的だろう。
これを機にとにかく逃げる。ひたすら逃げる。あと、救難信号も出しておく。
それにしてもこの森は木が生い茂っている。走りにくい。かといって、
火器で破壊したりしても、自然保護団体から変な注意を受けるかもしれない。
そして後ろからはキメラの大群。私はひたすら逃げるしかなかった・・・

話は変わるが、今私が乗っているアロガイガー。地球人ならば何かピンとくる名前だと思う。
実は私のヒイじいちゃんは地球って所から来たらしくて、その地球って所の娯楽の一つの、
「アニメーション」というのにこってて、小さいころよく見せられたりしたものだった。
地球にはゾイドはいないけど、「ロボット」っていう機械人がいるらしくて、
自分がアロザウラーを貰い受けて、名前を付けようと思ったときにふと思い浮かんだ
地球のロボットの名前を少しもじって付けたのがこのアロガイガーなのである。

それにしても、何度同じ事を言ってるがキメラの数が多すぎる。
おそらくあの噂の「竜王の姫君」ならばあの大群でも楽勝だと思うけど、私には無理な話。
ちなみに「竜王の姫君」っていうのは、現在30人前後いると言われる竜王戦士の一人。
竜王とはゴジュラスギガのことを指す。パイロットを選ぶギガの選ばれた人間は竜王戦士と呼ばれている。
そして、その中でも唯一の女性パイロットの異名が「竜王の姫君」と呼ばれている。
54味方陣地まで何マイル?:03/06/10 11:24 ID:???
噂だが、その「竜王の姫君」はものすごく強いらしい。竜王戦士唯一の女性にして
最強の噂が名高い。小柄でやたらか細い腕や足をしているというのに、
歩兵用アタックゾイドを素手で殴り割るわゴーレムを一本背負いするわで
本当に人間なのか怪しいくらい強いらしい。しかも、それでいてとても美しいとの噂である。
ほかのギガとその「竜王の姫君」のギガを見分ける方法は2つある。
まずは色。通常機で青になっている所が、緑色になっているという。
そしてもう一つはその戦闘スタイル。普通のギガは普通に噛み付いたり尾を振り回したりするけど、
「竜王の姫君」の操るギガはそのギガの戦闘スタイルに加え、格闘技も付加されているという。
噂ではデスザウラーの頭部にカカト落としして倒したとか、後頭部に回し蹴りして倒したとか・・・
まあ、とにかく、まだ、私は見たことが無いのだけど、見てみたい。この状況を生き残ることができたら・・・

とか何とか回想に浸っていたら、ふと周りが明るくなってきた。森を抜けたのだ。
これで走りやすくなる。だが、それはキメラどもも同じこと。だからまだ気を抜けない。
とその時、ガクンと落ちる感覚がした。というか落ちているのだ。なんと森を抜けた先は崖だった。
「わわわわわわ!!」
思わず叫ぶ私。上を見るとやはり私らと同じように落ちていくキメラども。
そして、ドブンと音を立てて下にあった川に落下した。これは正直ラッキーだった。
川があったおかげで何歩か落下の衝撃が緩和されたし、川が深いおかげで底に叩き付けられることも無かった。
あとは、川の流れに沿って泳いで下流まで行こうと思う。水中戦の訓練をしてて本当によかったと思う。
しかも、キメラは水中戦になれていないのか、うまく泳げていない。ただ流されているだけである。
それもそうだ、今追ってくるキメラに水中用のヤツはいないのだから。
アロガイガーも水中用ではないが、何度か水中行動の訓練は積んでいる。あいつ等よりかは何ぼもマシである。
とにかく今はこの機をうまく利用して泳いで逃げるしかない。
55味方陣地まで何マイル?:03/06/10 14:34 ID:???
それにしても流れが速い。泳いでいると言っても岩などにぶつからないように泳ぐのが精一杯だ。
後部カメラを除く。キメラがバタバタともがきながら流されている。
はたから見れば笑えるだろうが、今はそんなことをしている場合ではない。
もしも、キメラ側に水中用のヤツがいなかったらこれではすまなかっただろう。
と、流れが少しずつ緩やかになってきた。下流に出たのか、川幅も大きくなっている。
とりあえず岸に上がる。だが、まだ敵は追ってくる。私は再びレバーを前に倒す。
そしてアロガイガーはそれに合わせ走り出す。
と、再び後部カメラを除くと、少しキメラどもの動きが鈍ってる感がした。
おそらく川のところで機体をぶつけて消耗したのだろう。だが、まだ安心はできない。

走っていると、岩山が壁のように立ちふさがっていた。後ろからはキメラの大群。
私は急いでナビを見る。と、岩山に一本谷底ができていて、ゾイド何体かが進める道が
一本あった。とにかくわらをもつかむ思いでそこへ向かう。
キメラは馬鹿の一つ覚えのようになおも追いかけてくる。正直うざったい。
「ようし、いいこと考えた。」
私はこう一言言ってニヤリと微笑んだ。そして機体を反転させ、自機の後ろにある谷の上に
ある岩にビームランチャーを何発か撃ち込む。岩は崩れてキメラの行く手を塞ぐ壁の出来上がりである。
とにかくこれで時間稼ぎができた。とにかく逃げる。
56味方陣地まで何マイル?:03/06/10 15:11 ID:???
あれから何時間たっただろうか。意識がモウロウとしてくる・・・
コックピットに携帯している栄養ドリンクで何とかがんばってはいるが、
正直きつい・・・・・。アロガイガーのエンジンも焼け付きかけてる。
キメラはまだ追いかけてくる。本当にタフなやつらだ・・・・
ナビを見る。味方の基地は近い。とにかく救難信号を発する。
がんばってアロガイガー・・あと少し・・・。
その時、ガンという物凄い音と衝撃が走った。気が付くと横に倒れている。
つまずいてこけた訳じゃない。何か物体が物凄い勢いでぶつかったような感じ・・・
私はキャノピーごしに周りを見渡す。その時、ヤツがいた・・・・
こいつは確か情報部が持ち帰ったデータに載っていたのを見たことがある。
キメラの指揮機のロードゲイルってヤツ・・・・。周りには数機のキメラが合体したような、
異形の怪物が何機も並んでいる。
「いや〜、君がここまでがんばれるとはおじさん正直驚いたよ。見てて面白かったし。」
こいつ・・・・今まで遊んでたの?
「でも、これでお遊びはお終い。これ以上進まれると困るんでね。というわけで・・・死ね。」
そういうとキメラ融合怪物がアロガイガーを蹴り上げる。物凄いパワー。何十メートルも飛ばされる。
衝撃と疲労によって本格的に目が霞んできた・・・・・・私は死ぬのか・・・・?・・・
・・・・・ん・・・・・白に緑の・・・・・・・・・・・
57味方陣地まで何マイル?:03/06/10 15:41 ID:???
ふと気づくと、私はベットの上に寝ていた・・・どうやら軍病院らしい。
体の各部に包帯が巻かれている。体が所々痛い。
あの状況でなぜ私は助かったのだろうか・・・
アロガイガーも機体そのものは大破したけど、コア自身は無事だったらしい。
と、私を救助したと思われる友軍兵士が病室に入ってきた。
その人の話によると緑色のゴジュラスギガが物凄い数のキメラに戦いを挑んでいたらしい。
信じられないことに、キメラ軍団は瞬く間に全滅したとのことである。
そのことを教えてくれた人も、遠くで見た事でよく分からないらしい。
とにかくその後私を軍病院に運んでくれたのだが・・・
その緑色のゴジュラスギガは他に任務があったのだろう、キメラを倒すとその場を立ち去ったという。
・・・・・・・・・・え!!!?緑色のゴジュラスギガ!!!?・・・・・・・
緑色のゴジュラスギガは1体しかいない・・・・間違いない。あの「竜王の姫君」だ・・・。

とにかく、今私は傷を治すことに専念している。いつか戦線に復帰して、
「竜王の姫君」に出会う機会があったら、私は礼を言うつもりである。
外は、雲一つ無い晴天だった・・・・

                    完
58名無し獣:03/06/10 22:48 ID:???
ひさしぶりに立ち寄ってみたが、このスレがまだ続いているとは、ゾイド板もまだ安泰やね。
その昔、この板、このスレから出て行った者しては、嬉しい限りだ。
頑張ってくれ。
59開戦前夜作者:03/06/11 05:26 ID:???
>>58
帰ってきてください(笑)

>>52
戦場まで何マイル?思えば昔になったものだなぁ・・・
60忍者ハットリ中尉:03/06/11 11:39 ID:???
暗闇の森の中、拙者は相棒のシャドーフォックス「鉄影丸」と共に駆けていたでゴザル。
申し送れた、拙者、共和国軍諜報部所属のハンゾウ=ハットリ中尉でゴザル。

自慢ではないが、拙者は地球は日本国でその昔名をはせた伊賀忍者の末裔でゴザル。
今しがた任務を終え、帰還している最中でゴザル。
その任務とは、敵軍基地に忍び込んで、敵の兵器「キメラブロックス」についてのデータを
収集することでゴザル。その基地は相当に厳重なセキュリティーシステムを完備していたでゴザルが、
拙者に腕にしてみれば、まだまだ子供だましでゴザル。あ、勘違いはしてほしくない。
敵基地のセキュリティーシステムは万全でゴザった。おそらく平均レベルの諜報員では
攻略するのは難しいほどにまで。これを攻略できたのは拙者の腕が優れていたからでゴザル。

ん?レーダーに反応があり申す。恐らく敵の哨戒部隊が近くにいるのでござろう。
見つかると厄介でゴザル。ということで、「忍法風景隠れの術」を使うでゴザル。
恥ずかしながらかっこいいことを言ってはいるでゴザルが、早い話が光学迷彩でござる。
とにかくこれでやり過ごすでゴザル。

姿を消したまま、深い闇の深い森の風景に溶け込み、すばやく駆ける拙者の乗る鉄影丸。
敵の哨戒部隊なども全然気づかない。
今回もいたって簡単な任務でござった。
ここまでは・・・・・
61忍者ハットリ中尉:03/06/11 12:23 ID:???
「へへへ、おっちゃん、そこにいるのはわかってるよ。」
「!!」
突然少年のものと思しき声が聞こえたのでゴザル。
拙者はすばやくその場に止まって周りを見渡したでゴザル。
しかし、どこにもそれらしい姿はない。レーダーにも反応していない。
そのとき、拙者は殺気を感じたでゴザル。
そして素早くその場を離れたのでゴザッタ。そのときでゴザル。今まで拙者がいた場所に砲弾が
降り注いだのは・・・・・・・。
「上か!!!」
拙者は上を見たでゴザル。何とハンマーロックが宙に浮かんでいるのだ。
いや、飛んでいると言ったほうが正しいかもしれない。背中に飛行用キメラの羽を装備していたでゴザル。
通常ゾイドの武装にもなるブロックスがなせる技でゴザル。
その時、はっと拙者は気づいたでゴザル。そう、そのハンマーロックは拙者らの真上にいたのでゴザル。
だからレーダーにも時機反応とダブって見えない。
「光学迷彩はわずかな風景の乱れや光の加減で見破ることは可能だよ。」
再び少年のものと思しき声がそのハンマーロックから聞こえたでゴザル。
「お主!!忍びだな!!?。」
拙者は言う。するとすぐにハンマーロックに乗る者の返事が返ってきた。
「へへ、俺の名はサスケ=サルトビってんだ。何だ、おっちゃんも忍者なのかい?」
拙者をおっちゃん呼ばわりするな!!拙者はまだ若いんだ!!
と叫ぼうと思ったが、それはさすがに拙者の品性にかかわるのでやめておいたでゴザル。
そのサスケと名乗る少年の乗るハンマーロックは空中に静止しながらなおも拙者に言う。
「あの基地からキメラのデータ盗るなんて、おっちゃん結構やるようだけどさ、所詮俺の敵じゃないわけ。」
まだ言うか!!正直ムカツクガキでゴザル。
そして、そのハンマーロックは攻撃を仕掛けてきたのでござった・・・
62忍者ハットリ中尉:03/06/11 12:38 ID:???
しかし、拙者は諜報員であって戦闘員では無いでゴザル。
任務もこのデータを持ち帰るのが優先でゴザル。
今はとにかく逃げるしかないでゴザル・・・・・
が!!飛行ブロックスの羽を装備したあちらの方が速かったでゴザル。
高々最高時速290キロの鉄影丸では到底逃げられないでゴザル。恥ずかしながら・・・
とにかく、こうなったら敵を倒していくしか無いでゴザル。
マゴマゴしていたらあやつ、味方を呼んでくる可能性もあるでゴザル。
とにかく素早く倒していく必要があるでゴザル。
拙者はレバーを前に倒し、敵から逃げながら鉄影丸の背中のレーザーバルカンを
上空のハンマーロックに向け、発射したでゴザル。が、速い!!
こちらの攻撃があたらないでゴザル。これでも射撃には少々自身があるほうなのだが・・・
流石は余裕ぶっこくだけのことはあるでゴザル。今度は敵が攻撃してきたでゴザル。
ビームがバルカンが雨のように降り注いでくるでゴザル。しかし、拙者もバカでは無いでゴザル。
その砲弾の雨も素早く回避するでござる。
「へー、おっちゃん意外にやるじゃん。けど、これはどうかな。」
後部カメラからの映像を見る。するとハンマーロックの両腕に槍とハサミが付いているでゴザル。
恐らく背中のはねと同様にキメラのパーツを装備したのでござろう。
そして上空から急降下してきて、こちらを狙ってきたでゴザル。
速い!!避けられない!!ええい!!ならばこちらも攻撃するでゴザル!!
鉄影丸必殺の光斬爪(ストライクレーザークロー)をお見舞いしてやるでゴザル!!
63忍者ハットリ中尉:03/06/11 12:53 ID:???
勝負は一瞬でござった・・・・
拙者の鉄影丸の爪がハンマーロックを切り裂いたでゴザル。
しかし、あと一瞬でも切り裂くのが遅かったら確実に敵の槍かハサミの餌食になっていたでござろう。
そのまま鮮やかに着地する鉄影丸。
若干送れて切り裂かれたハンマーロックが・・・・!!!!
よく見ると落ちてきてのは岩でござった・・・・
「変わり身の術か・・・・・・」
その時、突如通信が来た。サスケのものでござった。
「おっちゃん結構やるじゃん。今回は俺の負けにしといてやるよ。でも、次は負けんからな。」
そのあと、通信は切れた。敵ながらあっぱれ。鮮やかな引き方でゴザル。
「次も負けんでゴザル。伊賀忍者の末裔の名にかけて・・・。」
恐らく次もまたサスケと出会う機会があると思うでゴザル。そのときは決着をつけてやるでゴザル。

とにかく、キメラのデータなどは無傷。任務に支障は無し。
そのまま味方基地に帰るだけでゴザル。
だが、恐らくこの先にもまだ他の敵哨戒部隊はいくつもあると思われるでゴザル。
まだ、気は抜けないでゴザル・・・
伊賀忍者の名にかけて、この任務は絶対成功させて見せるでゴザル・・・

                 終わり
64忍者ハットリ中尉作者:03/06/11 12:56 ID:???
後書きです・・・・

とりあえず、ゴザルゴザルと連発してしまってすいません・・・・
こんなのもいいかな?と思って書いたんですがゾイドの世界観には合いませんかね?
65開戦前夜作者:03/06/12 05:47 ID:???
ある意味で最高だと思います(笑)
確かにシャドーフォックスは光学迷彩や黒に銀のメッシュ部分が忍者を連想させるんですよね・・
個人的にはくのいちの方が・・・いやなんでもないでつ
個人的には「ゴザル」は「ござる」でも良かったのではないかと思います
66白竜と黒獅子:03/06/12 12:53 ID:???
とある戦場を駆ける一体のゾイド。
雄々しく巨大なその姿はまさしくゴジュラスの物であった。
しかし、その動きはゴジュラスの物とはとても思えぬほど機敏であった。
もしかしたらゴジュラスギガにも匹敵できるかもしれない。多分。
そしてその動きに加え、白いボディーカラーは美しささえ感じる物であった。
ゴジュラスのパワーに機敏な動きが加わり、豪快にかつ鮮やかに敵を倒していく。
それがまた美しい。

「こちらハナザワ少佐、これより帰還します…。」
その声は女性の物であった。
とある基地のにたどり着く白いゴジュラス。
基地防衛のガードゾイドの出迎えを受けた後、格納庫に入る。
格納庫にて固定された後、そのゴジュラスの目の明かりが少しずつ暗くなる。
しばしの休息である。
ゴジュラスのキャノピーが開き、パイロットが出てくる。そしてヘルメットを取る。
そして背中まで届くだろう長い黒髪が現れる。
そして、身を包んでいる服装はゴジュラス同様に白い物であった。
「ご苦労様です。ハナザワ少佐。」
「ああ…。」
ゴジュラスから出てきたそのパイロットに整備兵の一人が声を掛ける。
そして返事をするパイロット。
67白竜と黒獅子:03/06/12 12:54 ID:???
彼女の名はサクラ=ハナザワ少佐(22)。
大和撫子を思わせる長い黒髪が特徴の美人である。
クールな性格と生まれつきタカのように鋭い目つきのせいで怖い人と思われがちだが、
実はとても気の優しい人物である。それ故か、女性兵士の間ではカリスマ的な人気を誇る。
あのレオマスター、故アーサー=ボーグマンのような渋い漢が男性兵士に人気が高いのと
同じ要領である。

そして、彼女の愛機のゴジュラス。名は「キオウ」と言う。
前述述べた通り、白いカラーリングが特徴である。
そして、武装は一般的にガナー装備と言われるゴジュラスキャノンと4連衝撃砲。
だが、キオウにはノーマルのゴジュラスと違い、かなりのカスタマイズがされている。
まず頭部に3本のレーダーアンテナが増設されている。これにより、索敵性能や、
単独での遠距離砲撃における命中制度を上げている。
その他、胸部腹部に追加装甲が装備されていたり、出力等の強化がなされている。
等々、様々な改造がなされているが、所々に桜の花びらのマークと、
「SAKURA」と書かれた文字も目立つ。意外と乙女チックな奴である。
「ほっとけ……。」
「は?何か言いましたかハナザワ少佐?」
「いや…こっちの話だ…。」
それ以上に凄いのが、サクラの操縦テクである。精神的なコンビネーションと、
絶妙な操縦テクニックがキオウの性能を120%以上に引き出し、
まだ、キオウがノーマル機だったころにPKコングを1度の戦闘で3体倒したという
記録が残っている事実は半ば伝説と化している。
あと、あまり知られていない事実であるが、
キオウにはもう一つ知られざる秘密が有るらしい…。
68白竜と黒獅子:03/06/12 12:57 ID:???
「ん?」
キオウから降りる途中、サクラは1体のゾイドに目をやった。
「ライガーゼロシュナイダーか…。閃光師団のゾイドが何でここに…。」
そう、キオウのすぐ近くにそのゾイドはいた。
ライガーゼロシュナイダー。現存する高速ゾイドでは最強の部類に入る
ライガーゼロの格闘能力特化タイプである。
しかし、ライガーゼロシュナイダーが一般的にオレンジの
鮮やかなカラーリングをしているのに対し、
このシュナイダーは本体ごと暗い漆黒のカラーリングをしている。
「黒か…あの傭兵を思い出すよ。」
そう一言言うと、サクラはその場を後にした。

「サクラ=ハナザワ少佐。ただいま戻りました。」
帰還報告をするため、隊長室に入るサクラ。
「ご苦労。」
隊長はそう一言言った。
「ん…?」
その時、サクラは隊長の近くに立つ一人の人物に目をやった。
サクラより少し身長が高い男であった。
「紹介しよう。彼は諸事情により、閃光師団から当基地に配属されることになった、
ソード=サーバル少佐(23)だ。丁度良い。彼を君に預けよう。先輩として
面倒見てやってくれ。」
「了解。命令なら従います…。」
「……。」
ソードと呼ばれる男はサクラを見てあまりいい気のしない顔をした…。
69白竜と黒獅子:03/06/12 13:00 ID:???
「私はサクラ=ハナザワ少佐だ。」
「ああ…先ほど隊長が言った通り俺はソードだ…。」
ソードは素っ気ない態度で渋々答える。
再びサクラは言う。
「もしやと思ったが、あのライガーゼロシュナイダーはお前のか?」
「ああ…。シュテイルってんだ。言っとくが、俺のシュテイルは他のロートルども
とはひと味もふた味も違うぜ…。」
強気で言うソード。
「フフ…ライガーゼロは只でさえブレードライガー3体分のコストなんだ。
その分功をあげてくれんと国民の税金が勿体ない。」
皮肉を込めて言うサクラ。
「所でよ、あの花びらみたいなマークの付いた趣味の悪いゴジュラスはあんたのか?」
ソードの一言にサクラは一瞬ピキッとなるが、どうにか押さえる。
「お宅もよくあんなロートルで戦えるな。足は遅いし。動きは鈍いし。
堅さとバカ力だけが取り柄みたいなもんじゃないか。今時流行らないっての。
今はやっぱ俺のシュテイルみたいに蝶のように舞、蜂の様に刺す戦い方じゃないと。
まあ、カタブツそうなあんたにはお似合いのゾイドだと思うけど。
大体ゴジュラスなんて俺に言わせりゃ鈍足で敵のいい標的もいいとこだぜ。
最近はゴジュラスギガなんてのもらしいが、一瞬俺はお偉いさんを疑ったよ。ハハ。」
まるで高速ゾイドが至上だと言っているかのように好き勝手言い放つ。ソードに対し、
サクラはヒクヒクとふるえ出す。顔は下を向き、今にも殴りつけんばかりに怒っていた。
だが、自分の理性で何とか押さえる。
70白竜と黒獅子:03/06/12 13:01 ID:???
「フフフ…。弱い奴ほど良く吠えるとは昔の人もよく言った物だ。
あんたのライガーゼロだって、只の金食い虫じゃないか。
性能はブレードライガー+α程度の物しかないくせに、コストは
アーマーを除く素体だけでブレードライガーの3倍。
アーマー4種を含めれば一体何体分のコストになるんだろうねー。」
「んだと〜!!」
冷静に返すサクラの皮肉に怒り出すソード。
「おお?ケンカか!!?。」
この喧噪に人が集まってくる。
「キャア!!サクラ少佐が危ない。」
勝手に物事をオーバーに考えるサクラファンの女性兵士が叫ぶ。


ということで、今日はここまで。続きはまた今度。
71名無し獣@リアルに歩行:03/06/12 14:35 ID:???
>>白竜と黒獅子
なかなか見れない「ゴジュラスXライガー」の一騎打ちを見せてくれるんですか?
続き楽しみにしてますよ。
72名無し獣@リアルに歩行:03/06/12 15:04 ID:???
>>64
>ゾイドの世界観には合いませんかね?
ワカッテテヤッテルクセニー w ( ´∀`)σ)゚Д゚)

>>70
花沢さんには勝てません!いいキャラっぽいですね。
な、中島ー!
73白竜と黒獅子:03/06/13 11:20 ID:???
「……………チッ…。」
回りの状況を把握するなり、ソードは舌打ちをする。
「今度はこうじゃすまんからな…。」
そう言い、ソードはその場を立ち去る。
「何だ…ケンカしねーのか…。」
勝手に集まってきた野次馬も元いた場所に戻る。
「少佐…大丈夫ですか。」
「大丈夫だ…気にするな…。」
心配して声を掛けてきた女性兵士にサクラは小声で答える。

それから数日後、サクラは部隊を率いて哨戒パトロール任務に就いていた。
サクラのキオウを隊長機とし、ゴルドスやゴドス、ガンスナイパー、スナイプマスター、
その他もろもろで進行していた。ちなみにアロザウラーがいないのは
アロザウラーはゴジュラスギガ部隊に優先して配備されているからに他ならない。
「おい…。」
サクラのキオウに突然通信が入る。男の声。
「何で俺までいなきゃならんのだ?。」
通信元はキオウのすぐ隣を歩く黒いゾイド。
ライガーゼロシュナイダー「シュテイル」であった。
そして声の主は他ならぬシュテイルパイロットのソード=サーバル。
「何って?私は隊長からあんたの世話を頼まれた。それが不服か?」
74白竜と黒獅子:03/06/13 11:21 ID:???
冷静にサクラは言葉を返す。
「不服だね。第一、階級は同じなんだ。それに俺がお前のような女に従う筋合いはない。」
「あんた…そんなこと言ってると女性に嫌われるよ…。」
サクラの曾祖母は惑星Ziより何万光年も離れた地球という星の
日本と呼ばれる小さな島国に住んでいたそうだ。
その曾祖母の話では、日本という国ではその昔、「男尊女卑」という思想があったそうだ。
つまり、男性が女性よりも上の立場にいるという意味である。
ここ、惑星Ziではとても考えられないことである。
「ソードよ…あんたの言ってることはな、地球じゃ男尊女卑って言うのよ…。」
「ダンソンジョヒ…?何だそりゃ…。」
「つまり、あんたは女を見下してるって意味よ。」
「いつ俺が見下した。」
「さっき…。」
「オイッ!!。」
二人は一触即発の状態にあった。

そのまま、サクラは部隊を率いて進軍を続けていた。
後からソードのシュテイルも渋々付いてくる。
「このまま何事もなければ良いのだがな。」
サクラは小声で呟いた。
75白竜と黒獅子:03/06/13 11:22 ID:???
暗黒大陸戦争最終決戦の際、プロイツェンが共和国軍の主力部隊を
巻き添えにヴァルハラで自爆したせいで、
現在共和国軍とネオゼネバス帝国軍の戦力差は1:20もの絶望的な物となっている。
この原因はプロイツェンの自爆だけではない。
ネオゼネバス帝国はオーガノイドシステムを完全に解析し、
デスザウラーを完全に復活させ、さらにデススティンガーの量産。
果てには低コストで量産可能な新技術「ブロックス」を利用した
無人機の開発によって、軍備を拡張していたのである。
恐らく個々で敵に発見されてしまえば、自部隊の倍の数で攻め込まれてしまうだろう。
たかが哨戒パトロール部隊の戦力では対抗できない。
「少佐!!敵の反応が…。」
突然ゴルドスのパイロットが叫んだ。
サクラは素早くゴルドスからキオウに送られたデータを見る。
「コングタイプ3機にエレファンダー4機、それとキメラタイプが数十機か…。
圧倒的だな…。」
サクラとキオウのコンビネーションならば戦えぬ相手ではない、
だが後続のゴルドスなどをかばっては戦えない。
敵はまだ遠くにいるとはいえ、見つかってしまえばやられてしまう。
部下の命は無駄には出来ない。
とりあえずここは本隊に連絡を取って撤退することをサクラは選択した。
しかし…
76白竜と黒獅子:03/06/13 11:24 ID:???
「あの程度の数。俺とシュテイルならどうってこと無いぜ!!」
そう叫ぶなりソードのシュテイルは敵部隊に突進していった。
「あの馬鹿…。奴は私が呼び戻す!!皆は先に基地に戻って欲しい!!」
「了解!!」
サクラの命令に従って他の隊員は後退を始める。 
そして、サクラはその後退を見届けると、再び前を向きレバーを前に倒し、
キオウを発進させソードの後を追った。
「ったく…あいつは…。」

あれから何分経っただろうか、キオウの足とシュテイルの足とでは
亀と兎ほどの差がある。なかなか追いつける物ではない。
サクラはレーダーを見る。機体を意味する点滅する点がちょこちょこと動き回っている。
もう戦闘が起こっているのだ。
「あいつは…勝手なことして…。」
サクラは小言でそう言うとキオウは再びダッシュを駆けた。
案の定来てみればシュテイルが帝国軍部隊に孤軍奮闘していた。
それにしても上手い物である。敵の攻撃を上手く回避してブレードで斬り返している。
すでにキメラタイプ10機近くを倒していた。
77白竜と黒獅子:03/06/13 11:25 ID:???
「おや…誰かと思えば鈍足のロートルちゃんじゃあーりませんか。
俺の華麗な戦いに見とれてるのかな?。」
ソードの皮肉たっぷりの一言がサクラを再びピキンとさせる。
「バカ!!勝手なことして!!下手をすれば何人もの部下を
道連れにするとこだったのよ!!」
ソードの問題児ぶりにクールなサクラも思わず熱くなる。
その後サクラははっと思った。ソードが閃光師団を外されてこの部隊に着たのは
これが理由なのではないかと…
「おおっと痴話喧嘩はそこまでだ!!お死になさい!!」
コングパイロットの一人が叫び、キオウの顔面にハンマーナックルを叩き込む…
…叩き込む…叩き込まれたはずだった…
しかし、コングのハンマーナックルはキオウに当たらず、むなしく空を斬っていた。
「そんな馬鹿な…この!!この!!」
コングのパイロットは戸惑いながらも再びハンマーナックルを連発する。
が、当たらない。避けているのだキオウが。ハンマーナックル全てを。
高速ゾイドがやるようなちょこまか走り回っての回避じゃない。
まるでボクサーが敵のパンチを避ける時のように、
素早く体を前に後ろに横に反らしたりと、最低限の動きで敵の攻撃を避けまくっていた。
78白竜と黒獅子:03/06/13 11:27 ID:???
「そんな馬鹿な!!」
錯乱するコングパイロット
「落ち着け!!下がってミサイル攻撃に切り替えるんだ!!」
恐らくコングに乗っているもう一人の男らしき声が聞こえる。
素早く下がろうとするコング。だが、突然ガクンと止まった。
キオウが目にも留まらぬスピードでコングにつかみかかっていたのだ。
「悪いね、そうはさせないよ。あと、痴話喧嘩なんてやってないから…。」
サクラがそう呟くと、キオウに力を入れる。キオウの爪がコングの装甲に
メリメリと食い込んでいく。
「そんな馬鹿な…いくらゴジュラスとてこれほどのパワーは…」
たちまち生命力を失ってその場に倒れ込むコング。
「お前…意外にやるじゃん…。」
「どう?これがあんたの言うロートルの実力よ。」

「馬鹿が!!まだ終わってないぞ!!」
そう言う叫び声と共に、エレファンダーがキオウに突進してくる。
エレファンダーの鼻がキオウに叩きつけようとする
が、キオウ、やはりギリギリで回避する。
79白竜と黒獅子:03/06/13 11:31 ID:???
「ウ…。」
「どうした!!」
敵の攻撃を避けたはずのサクラから一瞬うめき声が聞こえた。
それに対し声を掛けるソード。
よく見るとキオウの横腹が深く斬られていた。
キオウと同調するサクラにもその感覚が痛みとしてくるのだ。もちろん痛みだけだが。
サクラはエレファンダーを見る。さっきは突然の出来事で確認できなかったが、
エレファンダーの鼻はエスクスユニットになっていた。
そこから放たれるビーム状のブレードによって斬り裂かれたのだ。
これにはいくら特殊チタニウム製の重装甲も一溜まりもない。
「ハッハッハ!!そのまま切り刻んでくれる!!」
エレファンダーのパイロットは悪役そのままのセリフを吐く。
「ここは俺に任せてお前は下がれ…」
ソードのシュテイルがキオウの前に出るなり、ソードはそうサクラに言う。
「あら?意外に優しいところも有るのね。けど、もう大丈夫だから。」
「大丈夫って…あれほどの傷だぞ……ってあああ!!。」
ソードは我が目を疑った。
何とキオウの先ほど斬られた部分がウネウネとモーフィングに近い現象が起きるなり、
たちまち新品同様に再生してしまったのだ。
「お……お前…これって…まさか…。」
ソードは以前にこれと同じ現象を見たことがあった。
それはまだ西方大陸戦争時代。ソードは当時ブレードライガーで頑張っていた。
そしてそこで彼は見た。誰にも扱えぬと絶望視されていた獣鬼と
その運命のパイロットとの運命的な出会い。
80白竜と黒獅子:03/06/13 11:32 ID:???
そしてその獣鬼と帝国軍の摂政親衛隊の特殊カスタムコングが激突したとき、
今のキオウと同じ現象が起きたのだ。
そう、キオウには、その獣鬼「ゴジュラス・ジ・オーガ」と同様の
再生能力があったのだ。
「そ…それは一体どういうことなんだ!!?」
思わず叫ぶソード。
サクラはやはり冷静に答えた。
「あんたも聞いたことあるだろ?暗黒大陸戦争最終決戦の時、
プロイツェンがヴァルハラで主力部隊を巻き添えにして自爆したって。」
「ああ、らしいな。俺は閃光師団と共に別の場所にいたからよくは知らんが・・。」
そしてサクラは右腕を左手で押さえ、
「あたしとキオウもそん中にいてさ、そしてあたしは右腕を失った。
私はゾイドの技術を応用した義手を付けるだけですんだけど、
キオウは本当に致命的なダメージを受けてたんだ。
そして、助かるにはこうするしかないと言われ…キオウに
オーガノイドシステムを搭載したのよ。
といっても、ガンスナイパーレベルの限定的な物なんだけどさ、
それでもキオウは見る見るうちに回復した。けど、それと引き替えに
只でさえ凶暴なのがよけいに凶暴になって、右腕のリハビリと
操縦の板挟みになってあの時期は本当に大変だったよ。
ガンスナイパーレベルのOSを搭載してもこんなに大変なんだ。
あの傭兵が乗った本家オーガは一体どんなバケモノなんだか…。」
「お前も…苦労してるんだな…。」
ソードは今までサクラを馬鹿にしてた自分が恥ずかしくなった。

またもや続く
812099 開戦2−1:03/06/14 07:56 ID:???
 遥か彼方から殷々と聞こえてくる砲声にふとマッケナ大尉は顔を上げた。
 いつの間にか前線に近づいてはいるらしい。だが砲声の音量や発砲間隔はそれほど大ききものではない。おそらく前線支援の為に軍団砲兵の大型間接砲が発砲を続けているのだろう。
 まだ目的地の軍団司令部までは距離があった。
 こんな砂漠の真ん中でわざわざ便乗した補給部隊のグスタフを止めてまでマッケナ大尉は調査をしていた。
 そこにあったのは撃破されたレッドホーンだった。
 そのレッドホーンは開戦と同時に行われた戦闘のさいに共和国軍の反撃によって脚部を破壊され撃破されたものだった。
 撃破されたとはいってもゾイドコアや機載コンピュータなどに大きな損害は無かった。
 師団補給所程度では完全な修理は困難かもしれなかったが、軍か方面軍レベルの修理工場ならば再び戦線に戻せるだけの整備能力はあるはずだった。
 だが撃破されたレッドホーンはそのまま放置されていた。周囲を見渡すと戦闘の跡はあちこちに見られる。
 おそらく撃破されたのはレッドホーンだけではなかったはずだ。
 レッドホーンは帝國軍のなかでは比較的重装甲の大型ゾイドだった。そのレッドホーンが撃破されるだけの激戦であれば随伴機の損害も大きかったはずだ。
 だがここに転がっているのは共和国のゴドスを除けばこのレッドホーンだけだった。
 マッケナ大尉はレッドホーンの周囲を回りながら考え事をしていた。
822099 開戦2−2:03/06/14 07:57 ID:???
 レッドホーンの周囲を回り終えたところでマッケナ大尉の思考は急にやぶられた。
 便乗しているグスタフの指揮官が声をかけてきたのだ。
 まだ若い軍曹は不思議そうな目でマッケナ大尉を見ていた。
 こんな撃破されたゾイドなど珍しいものではない。そんなものを一々調査しようとしているマッケナ大尉の行動が不思議でならないようだった。
 マッケナ大尉は首をすくめると先を急ぐグスタフに戻った。グスタフは大尉が席に付くか着かないかのうちに発進した。
 大尉が便乗しているグスタフは軍団段列所属のものだった。後方の軍物資集積所から軍団補給所に物資を輸送するというので軍団司令部に用があったマッケナ大尉が頼み込んで便乗させてもらったのだ。
 最初のうちは軽い気持ちで引き受けた段列の軍曹もあちらこちらで調査の為に停車させるのであきれ果てていた。
 だがマッケナ大尉には暗い予感があった。
 ――このままではこの方面の帝國軍は甚大な被害を受けるのではないか

というわけであいかわらず主役は暗い事ばかり考えるこの人なのです・・・
83開戦前夜作者:03/06/14 08:04 ID:???
用語解説(ぇ
段列:要するに補給部隊なのだが、日本軍においては機甲部隊に所属する支援部隊
   という位置づけでありました。ようするに回収部隊や整備も兼ねていたわけ
   ですな。本来であれば師団以下の補給部隊段列と呼称するのが正しいのであ
   るが・・・以下本編に続く
84白竜と黒獅子:03/06/16 11:14 ID:???
などと、戦闘中でも有るのにも関わらず、のんきにお話をしているが、
二人はきちんと戦っていた。
話ながら敵の攻撃をかわしたり、反撃したりと、並のパイロットでは
とうてい出来ない事を二人は普通にやってのけていたのだ。
端から見ていると正直ギャグマンガの世界である。
殺伐のさの字もない。
とか何とかやっている間に敵を全滅させていた。

「とにかく、本隊に帰るよ。後でしっかりしぼってあげるから…。」
「ヘイヘイ。」
サクラの一言にのんきに答えるソード。
そしてふとレーダーを見るサクラ…
「あ…。」
「どうしたんだ?」
サクラの突然の一言にソードが答える。
「あっち…見てみ…。」
「あ…。」

なんと、地平線の彼方からもの凄い数のキメラブロックスが雪崩のように
こちらに突撃してきたのだ。
恐らく先ほど倒した部隊が呼んだのであろう。
二人と二体の血の気が一斉にサーッとひく。
「逃げようか…。」
「おう…。」
いつも冷静なサクラも今回ばかりは焦っていた。
85白竜と黒獅子:03/06/16 11:15 ID:???
二人は一斉にレバーを引き、すたこらさっさと逃げ出す。
「いくらブロックスが安いといってもあれはやりすぎだあ!!なあ!!」
顔を真っ青にさせながらソードが言う。
「とにかく逃げるんだよ。あんな数には流石にかなわん。」
キメラから逃げている時、サクラは以前聞いたある話を思い出していた。
キメラに自分を除いて部隊を全滅させられ、そしてそのもの凄い数のキメラの
追撃に対し、味方陣地までの何十キロという長距離を逃げきり
生き残ったアロザウラーパイロットの話である。
「あの時のアロザウラーパイロットも今の私たちと同じ気持ちだったのだろうか。」
サクラは心の中でそう呟く。
後ろからもの凄い数のキメラが追ってくる。仲間はいない。
頼れるのは自分と自分のゾイドのみという絶望的な状況で
そのアロザウラーパイロットは相当な恐怖を味わったに違いない。
奇跡的にそのアロザウラーパイロットはゾイドもろとも生還したが、
自分達が同じように生き残れる保証はない。
とにかく逃げるしかない。

「ハア…ハア…。どうにかやり過ごしたな。」
巨大な岩山の影に隠れ、もの凄い数のキメラ部隊が通過していくのを確認した後、
ソードが言った。
「それにしてもホントに凄い数だったな…。」
そう、なにせ全部通過していくのに何十分もかかったのだ。
86白竜と黒獅子:03/06/16 11:17 ID:???
なにせ恐らく一個大隊。いや、二個隊に匹敵。もしくはそれ以上のもの凄い数だったのだ。
「たかが2人にやりすぎだよ…ハアハア…。」
ソードは恐る恐る言う。
「いや、聞くところによると無人仕様のブロックスは通常機の
10分の1に近いコストらしい。
あれほどの数を出しても大したコストにはならないのだろう。
他の部隊の人の話によると、連中はキメラを使い捨ての
特攻機としか使ってないらしいし。」
何とかキメラをやり過ごして冷静さを取り戻したサクラが言った。
「とにかく、再びあのキメラに見つからないように基地に帰るよ。
先に帰らせたあいつらも見つかってないと良いけど…。…!!?。」
サクラは突然の異変に気が付いた。キオウが緊張ているのだ。
「ああ…お前も何かに気づいたようだな。実はシュテイルもビリビリ緊張してるんだ。」
キリッと顔を引き締めてソードが言う。
その時、地面を割って巨大な蠍が現れた。

「デススティンガーか…。」
サクラは冷静に言う。だが、その顔からは一筋の汗が流れている。
「ゴジュラスにライガーか…共和国軍の代表格がそろってるとはな。
デススティンガー出力強化タイプの環境適応能力テスト中だったが…こりゃ面白い。
ちょっと遊んであげようか…。」
デススティンガーの中でパイロットらしき男がそう呟いた。
「シュテイルが緊張してる。やばいぜこいつは…。」
87白竜と黒獅子:03/06/16 11:20 ID:???
ソードは数年前、閃光師団の初陣の時にデススティンガーと戦ったことがあった。
しかし、彼には分かっていた。目の前にいるデススティンガーは
数年前に戦った奴とは全くの異質だと言うことを。
シュテイルの緊張が何よりの証拠であった。
「のようだな…。私も以前ハットリとか言う諜報員が持ち帰ったデータを見たことがある。
デススティンガーはとんでもないバケモノだよ。しかし、それは2年前のデータ。
今、目の前にいるこいつはさらに改良された怪物なんだろう…。」
冷静に分析をするサクラ。しかしその手は間違いなく震えていた。
帝国軍はオーガノイドシステムを完全に自分の物とし、
死に絶えたゾイドコアの復活。そしてゾイドコアの増殖が可能な技術をもっているという。
つまり、理論上はデスザウラーを大量に生産することもできるのである。
その技術は共和国軍としてものどから手の出るほど欲しい物である。
しかし、その技術はトップシークレット扱いであり、
今だに諜報員がその技術のデータを持ち帰ったという話は聞かない。
荷電粒子砲に関しては、現在同盟関係にあるガイロスから譲渡された
ジェノザウラーの現物が有るゆえに何とかなるかもしれない。
しかし、この技術だけは何にもならないのである。
その分共和国は野生体生息区域を持っているが、数で言えば
帝国軍の方が遙かに上であろう。
88白竜と黒獅子:03/06/16 11:25 ID:???
とにかく、二人はデススティンガーと戦うしかなかった。
頭の悪いキメラと違ってこいつからは逃げられない。
そう直感していたのだ。それだけデススティンガーの実力を知っていたのだ。
「とにかくブレードでぶった斬ってやる!!」
ソードのかけ声と共にシュテイルが突っ込む。
しかし…速い。シュテイル=ライガーゼロシュナイダーの突撃を
軽々とかわしたのだ。とても300トン以上の重ゾイドの動きではなかった。
反撃のレーザーシザースがくる。
これも速い。ソードの腕とシュテイルの反応速度を持ってしても避けられない。
とっさにシールドを張る。
シールドとシザースのレーザーの反発によってシュテイルが吹っ飛ぶ。
もの凄いパワー。
その直後、キオウはデススティンガーの尾から発せられる強烈な熱反応を探知していた。
「荷電粒子砲!!?」
案の定デススティンガーの尾から荷電粒子砲が放たれる。
もの凄い出力そして太いビームがキオウめがけて飛んでくる。
「うわ!!」
キオウはその荷電粒子砲を何とかかわす。紙一重。
「ハア…ハア…発射される前から回避行動に移っていたから何とかかわせたものの、
まともに食らってたらお花畑が見えてたわ…。」
ゴジュラスの装甲に使用されている特殊チタニウムは超重装甲や古代チタニウムに
次ぎ、現存する装甲材でも屈指の防御力を持ったマテリアルである。
だが、デススティンガーの荷電粒子砲には一溜まりもない。
直撃を食らえば、OSで強化されたキオウの再生力もくそもない。完全に消滅する。
89白竜と黒獅子:03/06/16 11:27 ID:???
サクラはすぐに引き金を引く。反撃のバスターキャノン。
しかしデススティンガーの超重装甲にはビクともしない。
「くそ…とにかく荷電粒子砲を封じるのよ!!。」
「わかったぜ!!」
サクラは叫び、ソードがそれに応える。
そしてシュテイルは再びデススティンガーに突っ込む。
今度は側面に装備した大型ブレードでデススティンガーの尾を切り裂こうとする。
デススティンガーの尾からはレーザーが放たれる。
シュテイルはEシールドで防ぐ。
関節部分に当てることができれば切り裂ける。しかし、またも避けられた。
反撃を防ぐためすぐにその場から離れるシュテイル。
「ならこれならどうだ!!?」
サクラはキオウの腕のビームガン、4連衝撃砲、腹部の4連マシンキャノンを
デススティンガーの尾に向けて撃ちまくる。
しかし、まともに食らえば恐らく大抵の大型ゾイドも一溜まりもない連撃も
デススティンガーの超重装甲にはビクともしない。
「バケモノか…。」
サクラはそう呟く。なおも撃ちまくる。
「ハハハ、そんな攻撃じゃ倒せないよ。」
デススティンガーのパイロットは笑いながらそう言う。
デススティンガーの尾からレーザーが、背中から衝撃砲が放たれる。
キオウの装甲が次々に打ち抜かれる。
90白竜と黒獅子:03/06/16 11:29 ID:???
「うう!!」
キオウと精神リンクしているサクラにもそのダメージが痛みとして伝わってくる。
しかし、その痛みも一瞬。
キオウが瞬時に傷を再生させるのだ。
致命傷にはならない。なおも撃ちまくる。
「面白いね。ならこれはどうかな?」
デススティンガーはまたも荷電粒子砲を撃とうとする。
デススティンガーの尾に膨大なエネルギーが集まってくる。
「死ね!!」
デススティンガーのパイロットはそう叫び、引き金を引いた。

しかし、荷電粒子砲は発射されなかった。
それどころかデススティンガーの尾が爆発を起こしたのだ。
「よし!!」
指をパチンと鳴らすサクラ。
「なんだと!!?そんな馬鹿な!!」
サクラは何の考えも無しに撃ちまくっていたわけではない。
これをねらっていたのだ。そう、サクラはデススティンガーの尾の
荷電粒子砲の砲門に撃ち込んだのだ。
そしてそれが荷電粒子砲のエネルギーに引火し、
尾の中で内部爆発を起こしたというわけである。
91白竜と黒獅子:03/06/16 11:30 ID:???
「こおの野郎!!!」
今まで余裕こいて笑っていたデススティンガーパイロットがついに怒った。
デススティンガーの腕のレーザーシザースがキオウを襲う。
「うあああ!!」
次の瞬間、キオウの右腕が切り落とされたのだ。
「う…うあああ!!」
自分の右腕が切り落とされたような感覚がサクラを襲う。
サクラの右腕は義手である。が、義手といってもゾイド技術を応用した
サイバネティックパーツで作られている。そのため、感覚というものがあるのだ。
そして感覚があるからこそ義手であるにもかかわらず、
普通な生活が可能になるのだ。
そして、サクラは同時にあの悪夢を思い出していたのだ。
数年前のヴァルハラで、自分の右腕を失ったときのことを。
プロイツェンが起こした大爆発。それに巻き込まれたキオウは
大きく吹っ飛んだ。そしてその時に飛んできた何かの破片が
キオウのキャノピーを突き抜け、コックピットにまで届いていたのだ。
そしてその時にサクラは右腕を失った。その破片によって切断されたのだ。
その時の激痛が、再びサクラを襲っているのである。
「うあああ!!」
痛みだけではない。右腕を失った精神的なダメージも蘇り、
戦意喪失直前であった。
92白竜と黒獅子:03/06/16 11:40 ID:???
「これで終わりだ。死ね!!」
デススティンガーは再度前足を振る。今度はキオウの顔面を狙っていた。
「わ!!」
とっさに気づいたサクラだったが、もう遅い。それだけデススティンガーの
攻撃は素早かった。
が…
途中でデススティンガーの腕が止まったのである。
キオウがデススティンガーの腕を口食わえることでで受け止めていたのだ。
「キオウ…。」
サクラは我に帰った。
「そうだ…いまは戦闘中だったんだ。こんなことをしている場合じゃない。」
サクラは再びレバーを握った。
その時、もの凄いスピードで突っ込んでくる物体があった。シュテイルである。
「こうなったら一発勝負!!ファイブレードストームだあ!!」
まともに食らえば超重装甲も切り裂かれるライガーゼロシュナイダーの最強技である。
突然の出来事に驚くデススティンガーパイロット。
今度は避けられない。が、とっさに両腕で受け止めた。
デススティンガーの両腕が吹っ飛ぶ。だが、本体は無傷だった。
しかしデススティンガー自身のダメージは大きかったようで、大きくのけぞる。
93白竜と黒獅子:03/06/16 11:41 ID:???
「いまだ!!!」
大きくのけぞり、腹を見せたデススティンガーの腹部にキオウが左腕を入れたのだ。
デススティンガーの腹部の装甲はとてつもなく薄い。
キオウの爪がメリメリと食い込んでいく。そして…
「うっりゃああ!!」
サクラが気合いを入れた直後、デススティンガーはひっくり返されたのだ。
その直後、ひっくり返されたデススティンガーの腹部に
ゼロ距離からバスターキャノンが撃ち込まれた。

「ばっかもん!!サクラ!お前がいながら何という様だ!!」
基地に戻ったとき、二人は隊長にたっぷり怒られた。
デススティンガーを倒したのは良かったが、
いかんせん勝手なことをしすぎたのが原因である。
「さっきはロートルって馬鹿にしてすまんな。」
ソードはサクラにそう一言言った。
「あたしこそ、あんたに対しちょっとカッとなりすぎたかも…。」
サクラはニッコリと微笑んだ。
「わ!!笑うな!!俺はそう言うのに弱いんだ!!」
顔を赤くさせながら照れくさそうにソードが言う。
「フフフフフ…。」

サクラはなおも笑っていた…
                            終わり
94がんばれアルミお嬢様:03/06/16 12:56 ID:???
えー、本日は晴天なり、ただいまマイクのテスト中。
私、名はアルミ=マテリアルと言いますわ。年齢は17歳。
階級は少尉でございます。チャームポイントは赤い髪頭の両側面に結ばれた髪。
ルックスならあのサクラ=ハナザワ少佐にも負けてないつもりですわよ。
あ、このお嬢様言葉が気になります?ごめんなさいな。
何せ私の実家、「マテリアル家」は100年以上昔からの名門でありまして、
そういう言葉遣いに関して小さい頃から徹底されてきたのでありますわ。
まあ、私はそう言うお嬢様暮らしが嫌で家を出て軍に入ったのですけどね。
今でもスチールお父様がちょくちょく帰ってこいって言ってくるし。
あ、そこの暮らしの良いボンボンに軍人がつとまるものかと思ってるそこの貴方!
見くびってもらっては困りますわね。これでも小さい頃からスチールお父様や
使用人達の目を盗んで体を鍛えてたりしてたんですのよ。
まあ、そんなこんなで私は少尉。
「どうせすぐに音を上げて帰ってくるだろう。」
と言ってたスチールお父様も流石に驚いてましたわ。
95がんばれアルミお嬢様:03/06/16 12:57 ID:???
現在私はサラマンダー「ブロンズゥ」に乗っていますわ。
まあ、個人的にはストームソーダーやレイノスの方が良かったという気持ちも
有ったんですがね、実際何度か乗ってみるとサラマンダーもなかなかの物ですわよ。
ちなみに現在偵察飛行中だったりしますわ。
航続距離の長いサラマンダーは偵察機としても使用されたりするのですのよ。
でも、私のブロンズゥは偵察機とは思えない武装が施されてたりするんですわ。
ブロックスのミサイルポッドやマルチプルランチャー、
果てには小型Eシールドなどなど、
本当に偵察が目的なの?ってくらい武装がたくさん施されてたりするのですわ。
確かにサラマンダーは武装の積載能力も高いですし、
ブロックスにしても、低コストなのが多いですが、
それ以外に索敵能力向上のためのレドームとかも付いてますが、
武装に関しては流石にやりすぎですわね。
なんでも敵機と遭遇したら危ないからなんですって…。
確かにサラマンダーは数が少ないですから、数を減らさない為の工夫なんでしょうが…。
96がんばれアルミお嬢様:03/06/16 12:58 ID:???
それにしても平和ですわ。とても戦争中とは思えないくらい…。
レーダーを見ても敵機の反応は無し。
できればこのまま敵とは遭遇しないで任務を終えたいですわね。
再びレーダーを見ますがやはり反応は無いですわね。
いや、一つありますわね、でもまあこの反応は味方機ですわね。
私は早速下を見る事にしましたわ。
シャドーフォックスが一体走っているのが見えましたわ。
このカラーリングはハットリ中尉のシャドーフォックスですわね。
また何処かにでも忍び込んだのでしょうか…。

とりあえず目的地まで到達したのですが、まあとりあえず敵の行動は特になし。
そのまま帰ると致しましょうか…
ってきゃあ!!いつの間にかに敵の反応があるじゃありませんか!!
もはやこの手の展開はこのストーリーのパターンと化してますわね。
敵はフライシザースとキメラドラゴン…あとシュトルヒとかがちらほらといますわね。
正直こんな数とやり合う自身なんてありませんわ。
あと私、キメラって正直嫌いなんですわ。だってどいつもこいつも
神風戦法を取ってくるんですから。ちなみに神風って言うのは
その昔、地球の日本っていう国がやったいわゆる特攻ですわ。
私って博学でしょ。
正直こういう神風を命令してくる帝国の人も嫌い。
キメラにも命はあるんですのよ。
97がんばれアルミお嬢様:03/06/16 12:59 ID:???
とりあえず超高空に逃げますわ。
サラマンダーにドッグファイトは不向きですからね。
それを補ってあまりある高い高々度飛行能力に物を言わせて敵を振り切るつもりです。
あ、でも帝国軍がまだ飛行ゾイドはシンカーやサイカーチスしか持ってなかった時は
サラマンダーも立派にドッグファイトをしていたらしいですわね。
なにせ、シンカーとサイカーチスはマッハ1も出せないですから、
現在は遅い部類に入るサラマンダーのマッハ2でも十分通用しますからね。
それにその2機は高々度飛行には対応できなかったそうですし。
まあ、聞くところによると昔あったとされるサラマンダーのF2タイプは
ストームソーダーはおろかレイノス以上のスピードで飛べたらしいですわね。
まあ、当時は敵にもっと凄い飛行ゾイドがいて対して活躍できなかったらしいですが…。
それにしても私って博学ですわね。
まあ、現在25000メートル前後の上空を飛んでいるわけですが、
案の定敵さんはこちらほど高く飛べないみたいですわね。
ずーっと下の所から付いてくるだけですわ。
あ、ミサイルを発射しました。
でもこちらの高度まで届かなくて途中で落ちしてしまいましたわ。
見てて本当に面白いですわ。
でも、流石にこのままってワケにも行きませんわね。
このまま敵がこちらについて来られたら味方が攻撃される可能性がありますから。
ということで、爆弾を投下してみることにしますわ。
98がんばれアルミお嬢様:03/06/16 13:00 ID:???
まず敵をロックオンして、私は爆弾投下スイッチを押しましたわ。
ブロンズゥの腹部。ちょうどバルカンファランクスを装備している部分にある
二つのシャッターが開き、爆弾がヒュルルルーって音を立てて
落ちていきましたわ。
でもですね、この爆弾はただの爆弾じゃないんですわよ。
ほら、今火を噴きましたわ。そしてその爆弾が敵に向かって飛んでいきますわ。
まるでミサイルみたい。まあ、正確には誘導爆弾って言うのですが…
こんなのこの際どうでも良いですわね。
でも面白いですわ。だってぽこぽこ落ちていくんですもの。
それにしても脆いですわね。
まあ、所詮ブロックスなんて鋼鉄ジーグのパクリみたいに
バラバラババンバンで、組み替えが簡単な分脆くて当然ですわね。
あ、鋼鉄ジーグっていうのは地球の物語に登場する機械人の名前ですわ。
磁石の力で体がバラバラになったりくっついたりすることが特徴で、
それを利用して戦闘中に武装を自在に換装したりしていたらしいですわ。
ライガーゼロのCASやゾイドブロックスはこのアイディアを元に考案されたのでは?
という噂もちらほらと…あったりするんですわよ。
やっぱり私って博学でしょ。
99がんばれアルミお嬢様:03/06/16 13:01 ID:???
まあ…とりあえず帰りましょうか…。
あ、まだ一機生きてますわ。あれはシュトルヒですわね。
まだ付いてきますわ。はっきり言ってウザイですわね。
え!!?シュトルヒ!!?あれは正直怖いですわ。
いやね、シュトルヒというゾイド自体は対して怖くないんですが
シュトルヒに搭載されたミサイルが意外に痛いんですわ。
それにあのシュトルヒ。帝国が最近開発した鹿モドキの角とか
付けてたりするじゃありませんか。
諜報部の話によればあの角はキメラをコントロールすると同時に
格闘兵器にもなったりするそうで…
ドッグファイトにでもなろう物ならちょっと不利かな?なんて思ったりするんすが…。
まあ、超高空を飛ぶ私のブロンズゥには何処吹く風ですわね。
まあ、このままゆったりと帰りましょうか…。

「こらー!!待てー!!降りてこーい!!卑怯者―!!
この○×△□―!!(放送禁止用語)」
さっきから通信使ってまで叫んでるのって、やっぱりあのシュトルヒの人かしら?
それにしてもうるさい人ですわね。それに下品ですし。
○○とか、××とかあんな大声でよく平気で言えますわね。
あ、落ちましたわ。
多分エネルギー切れですわね。
あちらさんサラマンダーと違ってそれほど航続距離長く無さそうですし…。
まあ、とにかく帰りましょうか…。

           何か釈然としませんが、終わり
100名無し獣@リアルに歩行:03/06/16 14:37 ID:???
下がりすぎているので上げまふ。
皆さんも書き込んでください。
何か自作自演してるみたいでお父さん悲しい・・・
101名無し獣@リアルに歩行:03/06/16 15:46 ID:8AJ9pO/w
102名無し獣@リアルに歩行:03/06/16 19:03 ID:???
>>100
コテハンとか、そこまでいかなくても作者の署名みたいなものが作品のどっかにが欲しいかも。
103開戦前夜作者:03/06/17 06:03 ID:???
前スレの過疎化がまるで夢のようだ・・・
>>100
自分も同じ立場にあったのでいたいほど分かるのですが、試験やら実験が多いものでしてご勘弁
104名無し獣@リアルに歩行:03/06/17 07:02 ID:???
ここって、途中までHP上でうp済みのものも掲載していいんでしょうか?
ラストはここで初めて載せるんですが・・・
105名無し獣@リアルに歩行:03/06/17 09:35 ID:???
>>104
どうせなら初めからバンバン乗せれ。
106ハングリー精神バンザイ:03/06/17 10:16 ID:???
オッス!!俺の名はスカッシュ=スプライト。年齢は16歳だぜ!!
今の俺は正直テンションが高い。
実は昨日、とても良いことが二つあったからだ。
まず一つ目は上等兵から伍長に昇進できたこと。
そして二つ目は何と念願のシールドライガーのパイロットになれたことだ。
特に二つ目は正直うれしい。シールドライガーはガキの頃からの憧れだったからだ。
今までレオブレイズで地道に頑張ってきたかいがあったものだ。
たしかに現在、ブレードライガーだのライガーゼロだの、シールド以上の
高速ゾイドがいるのは分かってる。まあ、後者の方は実際見たことがないので
本当に実在するのか知らんが…。だが、今でもシールドライガーに対する思い入れは
ガキの頃からかわっていない!!
とにかく、早速「サイダー」と名を付けたこのシールドライガーと共に功を上げて
出世街道を駆け上がってやるぜ!!
そしていつかはレオマスターになってやる!!
とにかく偉くなって昔貧乏人と俺を馬鹿にしてた奴らを見返してやるんだ!!
はっきり言ってこのご時世。俺のような貧乏人が偉くなるには
軍人になって出世するしかない。出世するには功を上げるしかないんだ。
貧乏な俺は士官学校なんてたいそうな代物は出てない。
だから二等兵スタートだ。少々きついのは分かってる。
だが、頑張って出世してみせる。せめて将校クラスにはなりてえ!!
ハングリー精神バンザイ!!
しかし、聞いた話では空軍の方に実家がものすごい金持ちで、
金持ちの道楽同然で軍人やってるような奴もいるらしい。
俺は断言する!!こんな軟派な奴にだけは負けたくない!!
107ハングリー精神バンザイ:03/06/17 10:17 ID:???
と意気込んではいたが、現在ちょっとピンチだったりする。
なにせ敵にダークスパイナーがいたりするからだ。
とはいえ背鰭が無いから、ジャミングウェーブとかいう
変な電波を垂れ流さないだけまだマシだが、
その分背中に変なカニを背負ってて、そのカニからビームだのを撃ちまくってくる。
これはこれで正直コワイ。
頭部あたりに思いっきり爪を叩き込むこんだり、首もと当たりに噛みついたり出来れば
もしかしたら勝てるかもしれない。
けど、正直相手の砲撃をかわして敵に接近できるか自身がない。
何せ相手は新鋭機だ。動きも脚も意外に速い。
と言うことで、ちとコワイのでとりあえず俺は敵の回りを走りながら背中のビームガンを
発射してみることにした。
って…速!!何か妙に速すぎる!!コワイ!!攻撃が当たらん!!
高速ゾイドの立場無しってくらいに速い!!
あ!!当たった。けど対して効いてない…。装甲も厚いのか?
わ!!砲撃が来た!!コワ!!
とにかく逃げ回る。怖すぎる!!何とか回避できたけど、避けられたのが奇跡なくらいだ。
とか何とかやってる間に味方が次々にやられていく。
味方の士気も落ちてる。このままじゃやばい。
こうなったらやるしかない。敵の砲撃は装甲では耐えられないがEシールドなら
耐えられる…と思う。多分。
とにかくシールド張った状態で突っ込めば何とかなるかもしれん…
と思ったがやはり怖い…
108ハングリー精神バンザイ:03/06/17 10:19 ID:???
ん?しめた!ヤッコさん別のゾイドを狙い始めた。こちらはノーマーク。
その狙われた別の味方機には可哀想だが、今の内に近づかせてもらう。
でもやはり怖いのでシールドを張る。
全速疾走。後少し…今だ!!…ってわあ!!気づかれた!!
敵が背中のカニからビームやらなんやらを撃ちまくってくる。
サイダー前方の地面にビームが連続で突き刺さってくる。
次は当たる…避けてくれサイダー!!
「わ!!」
思わず叫ぶ俺。次の瞬間なにかガクンと音がして一瞬意識が飛んだ。
敵の砲撃でできた穴にサイダーの前足が引っかかったのだ。
最高速での突進中にそんな事になったからもの凄い衝撃で意識が飛ぶ。
機体が何度か回転する。
次の瞬間、ガツンというもの凄い音がしたような気がした。
気が付くと、俺が横になっている。
というか俺の乗っているサイダー自身が横になっているのだ。爆音は聞こえない。
戦闘は終わったのか?
俺は恐る恐るコックピットから這い出る。
するとサイダーのすぐ隣で何かゾイドっぽいのが倒れてる。
って!!ダークスパイナーじゃん!!誰が倒したんだ!!?
「お前だお前!!」
近くにいたコマンドウルフのパイロットが叫ぶ。
え?どういうこと?ちょっとワケがわかんないんだけど…
109ハングリー精神バンザイ:03/06/17 10:19 ID:???
聞いた話によるとあの時何回か回転したときに、その勢いのまま
サイダーの前足の爪がダークスパイナーの頭部に叩き込まれたらしい。
よく見ると確かにダークスパイナーの頭部が潰れてる。
良くはわからんがラッキーだった。運も実力の内ってな。
ダークスパイナー以外の他のゾイドも味方がやっつけてくれたし…
とにかく俺は今日の戦いを生き残ることが出来た。
このまま勝ち抜いて偉くなってやる!!

                終わり
1102099 開戦3−1:03/06/19 05:37 ID:???
 目的地である軍団司令部にグスタフが到着したのは、もう日が暮れようとしている頃だった。
 予定よりも数時間遅れていた。だからグスタフは司令部にマッケナ大尉を下ろすとさっさと補給所に向っていった。
 軍団司令部は通信隊の一部などを除くと全てちいさな窪地の底に設営されていた。それは直接監視を逃れる為だった。
 長距離通信のクオリティを確保する為に野戦通信隊の送受信機だけは窪地からやや離れた丘の上に設置されていた。
 周囲には他に軍団補給所と野戦修理工場、それに軍団の予備戦力として後方に置かれた一個旅団が布陣しているはずだった。
 だが窪地を降りつつあるマッケナ大尉にはそのどれもが見当たらなかった。
1112099 開戦3−2:03/06/19 05:39 ID:???
 さすがに軍団司令部の警備は厳重だった。マッケナ大尉は司令部の幕僚部天幕に辿り着くまでに数度の誰何を受けていた。
 参謀飾緒(縄)を付けた大尉に気を使ってくれた警務司令の曹長が付けてくれた案内の兵がいなければ司令部に近づくにつれてさらに誰何を受けていたかも知れなかった。
 それほどマッケナ大尉の格好は奇妙だった。
 まず大尉という階級の士官が単独でうろついているという事が奇妙だった。普通なら副官の下士官などを連れているはずだった。
 それに大尉の軍装自体がさらに奇妙なものだった。陸軍参謀本部の所属を示す参謀飾緒を付けているにもかかわらず、士官用の野戦服を着用して護身用の拳銃を腰に吊っていた。
 腰の拳銃嚢には大型の拳銃が入っていた。将校以上は護身用の拳銃を官給品ではなく自費で購入する場合が多かった。
 特に貴族出身の士官が多い帝國ではその傾向は強かった。
 その分、軍用の官給品とは違って貴族達が買い揃える拳銃は各部に瀟洒な彫刻などが彫られたものが多かった。
 それらは実用品とは言いがたいものだったが、どのみち士官が拳銃を発砲するケースは少なかったからそれでも問題視はされていなかった。
 だがマッケナ大尉が所持しているのはそれらとは全く異質なものだった。
 官給品の拳銃があくまでも護身用として小口径で反動の少ないものであるのに対して、マッケナ大尉の持っているものは特殊部隊用に開発されたものだった。
 その拳銃は室内での戦闘に用いられる事を前提として開発されていた。
 要するに狭い室内では取り回しのし辛い小銃や機関短銃の代替として開発されていたのだ。
 代替火器として十分な威力を求められたその拳銃は反動も大きくなり、なれないものが発砲すれば怪我を起こす事もあった。
 だが、何故かマッケナ大尉がその拳銃を吊るしているとまるで体の一部のように見えていた。
 何にせよ、そんな拳銃を吊るしているマッケナ大尉は周囲の風景から浮いて見えていた。
112共和国の魔装竜:03/06/20 11:58 ID:???
「じぇ…ジェノブレイカーじゃないすか…。」
俺、ライン=バイス軍曹(20)は思わず言った。
多分この時の俺は世界一まぬけな表情をしてたと思う。
「何で帝国のゾイドがここに?」
俺は隣にいる俺の直接的な上官に当たる少尉殿に質問した。
上官と言っても、俺の首までの高さしかないほど小柄だし、
年齢的にも俺より2歳年下の彼女、マオ=スタンティレル少尉(18)は
俺を見上げながら言った。
「よくは知んないけどさ、ガイロス帝国んとこが送ってきたんですって。
なんでも戦力の底上げのためとか…。まあ、早い話がやっかいばらいね。
誰も乗りこなせないらしいし。」
俺はジェノブレイカーを見上げる。レッドホーンのような鮮やかな赤というより、
敵の返り血あびたような血塗られた赤いカラーリングをしている。
背中のブースターや巨大な盾があまりにも無骨だ。
「で?誰が乗るんですかい?」
俺は再度言う。
「お前乗れ。」
「ええ!!?」
少尉殿の突然の一言に俺は思わず叫ぶ。
「これを操るには高速ゾイドに乗りなれたヤツが適任だろ?
ならあんたの出番じゃないか。それに隊長もあんたを指名してたよ。」
少尉殿はスラスラと言う。
確かに俺は軍に入る前は暴走族のリーダーとかしてて、
高速ゾイドの操縦には相当な自信を持っている。
しかし、さすがにこれには戸惑う俺。
113共和国の魔装竜:03/06/20 12:00 ID:???
「あとさ、諸事情であたしは何日か基地を離れるけど、帰ってくるまでに
ジェノブレイカーの操縦をマスターしとくのよ。じゃないと…
修正してやるから…。フフフフ…。」
「りょ…了解であります!!」
少尉の最後の一言で俺は青ざめた。
少尉殿は小柄で細身でカワイイ顔してるわりに意外に強い。
いや、強すぎると言ったほうがいいかもしれん。
本当に人間なのかと問い詰めたくなるほど強い。
なにせ素手でアタックゾイドを殴り割るわ、ゴーレムを一本背負いで投げ飛ばすわ、
腰に下げた木刀でイグアンの首をぶった斬ったりするわで、
はっきり言って化け物である。
一時期ロボットかサイボーグか遺伝子操作人間なんじゃないのか?という
噂も流れたが、4分の1程度地球人入ってるだけのただの人間らしい。
とにかく彼女は強すぎる。超人だ!!超人強度1000万パワーくらいは強い。
そんな彼女の修正を受けようものなら俺は五体満足でおれるか知れん。
とにかく彼女が帰ってくるまでの数日間。
必死こいて特訓するしかない。

ということでジェノブレイカーに乗ってみる俺。
というか、操縦系自体違うじゃねーか。鹵獲セイバータイガーなんかに
乗ってたこともある俺だが、それでも操縦系が違いすぎる。
まあ、タイプが違うということもあるんだろうが・・・
とにかくまずはマニュアルを理解することから始める必要がありそうだ…。
マニュアルはとりあえず必要最低限理解した。
早速動かしてみる…って操縦桿が重過ぎる!!
こりゃまともに動かすだけでも一苦労かもしれん…。
114共和国の魔装竜:03/06/20 12:02 ID:???
うおおおお!!速い!!速すぎる!!その上曲がりにくいぃー!!
ブースターを使用するからその出力加減は半端じゃなく難しい。
ホバーリングだから減速も難しい。エアブレーキとかは付いてないのか?
とりあえず両側についてるシールドを広げることで即席のエアブレーキにする。
「へへ…こりゃたいそうなじゃじゃ馬だ…。」
少尉殿も面倒なもの押し付けてくれたものだ。」
汗をだらだらと流しながら俺は言った。もう息も荒い。
とりあえず一旦基地に帰って一休みすることにする。
「おい、ライン。」
「何すか?アイザックさん。」
早速「ジェノラル」と命名したジェノブレイカーから降りた俺は
アイザックさんから一声かけられた。
彼はアイザック=バウロン軍曹(25)
右目に黒い眼帯をかけていることが特徴で、結構ムキムキの人である。
典型的な叩き上げ軍人って感じ。
だが、片目の割に妙に目がいい上に射撃の腕がよくて、
ガンブラスター「キャリング」に乗っている。
現代のヤギュウジュウベイみたいな人である。ちなみにそのヤギュウジュウベイってのは
俺もマオ少尉に聞いただけだからよくは知らんのだが、
何でも地球にその昔いた片目で有名だった剣士らしい。
まあ、今の時代ゾイドの技術を応用した義眼とかも可能なんだがね。
けど、アイザックさんはそれをしない。
「残る左眼がそうなったらそうするさ。」
それが彼の口癖だ。
115共和国の魔装竜:03/06/20 12:03 ID:???
それはそうと、アイザックさんは再び俺に言ってきた。
「お前、そのゾイドに乗った時、何か感じなかったか?頭が痛くなるとか、
妙な破壊衝動に駆られるとか…。いやね、オーガノイド搭載機というのは
よからぬ噂とかあったりするんだよ。ガンスナイパーとかみたいな
限定的なOSなら別だが、それは未完成OSをそのまま使ってるだろ?
だからと思ったんだが…。」
「いや…そんな感じはしなかったっすよ。」
俺の返答にアイザックさんは少し驚いていた。
「そんなはずは無いはずだと思うが…。」
アイザックさんはやはり少し戸惑っていた。
いや、何も俺は冗談を言ってるわけじゃない。
本当にそれらしいことは何も感じなかったのだ。
少し気難しいとかには感じたが、破壊衝動という感情は特にこなかった。
一体どういうことなんだろうな・・・。

「ラインさん!面会の人が来てますよ。」
突然女性の声がした。この声は…
「ミルト少尉!!」
突然アイザックさんが叫ぶ。これにはちと驚いた。
とにかく、彼女の名はミルト=キルティーヌ少尉(19)
いつも掛けているゴーグルがトレードマーク。体力とかに関しては特に無いのだが、
頭の回転の速さがそれを補って余りあるほどである。
ちなみにゴルヘックス「ミルーン」に乗っている。
あと、アイザックさんは彼女にベタ惚れしている。
「あの…少尉…階級は少尉の方が上なんですから普通に呼び捨てでかまわんすよ。」
「ごめんなさい。私あまり人を呼び捨てにできない性質で…。」
結構礼儀正しいのも彼女の特徴…。
まあ、とりあえず俺は面会の人がいるってところに行くことにした。
116魔装竜 対 晶剣竜 作者:03/06/21 19:19 ID:???
>共和国の魔装竜
おおっと、ジェノブレイカーネタですか!
このネタで他の執筆者が書いた作品を読んだことがないので、
これからどう料理するのか期待しています。
117共和国の魔装竜作者:03/06/23 11:21 ID:???
>>114で、主人公の乗るジェノブレイカーの名前をジェノラルと書いてしまいましたが、
間違いです。

本当は「ジェネラル」です。
すんません。
118共和国の魔装竜:03/06/23 11:40 ID:???
「何だ、お前達か…。」
そこにいたのは顔見知りの連中だった。
俺が昔暴走族のリーダーをしていた時の暴走族仲間である。
とりあえず今ここにいるのはその中の内の3人。
「お前達とは手厳しい。昔一緒に暴れた中じゃないですか?」
さらにその隣が、
「ラインさんがリーダーやめてから色々大変だったんですぜ。
他のグループとの抗争とかもあったりして。」
こいつら、俺を連れ戻しに来たのか?とりあえず俺は拒否する。
「悪いが、俺は昔の俺じゃない。帰ってくれ。」
「え…。」
俺の返答に3人は余りよく無い顔をした。すると一人が。
「あの女のせいですか?」
「何!!?」
思わず反応する俺。
「あのガキさえいなければラインさんは軍に入らずに済んだのに…。」
こいつら…少尉の事を言っているのか!?
「帰れ!!少尉殿を馬鹿にするやつはお前らでも許さんぞ!!」
思わずかっとなって。俺は4人を追い返してしまった。
119共和国の魔装竜:03/06/23 11:40 ID:???
たしかに少尉がいなかったら俺は軍にいなかったかもしれない。
まだ俺が暴走族のリーダーをしていた時、何時ものように夜を駆けていた。
その時に少尉と出会った。何でも俺らが騒ぐせいで寝られないとかで、
俺らは全員ボコボコにされてしまった。正直ショックだった。
なにせ、それまで俺はケンカでも負け無しで、暴走族グループとしても、
他のグループに負けたことはなかった。
それがたった一人の女の子に全滅させられたのだ。
相当にショックだったのを今でも覚えている。
その後、彼女が軍人だと知って、俺は軍に入った。
そういえば、俺がこの部隊に配属されてきた時、驚いてたっけ、少尉。
そんなこんなで、俺は少尉の下で働いている。ボコボコにされた恨みなんてない。
むしろ尊敬してるくらいだ。

「うおおおおー!!」
あれから何日も、俺はジェネラルを乗りこなすための特訓をやっていた。
今度はアイザックさんとミルト少尉も立ち会っている。
ミルト少尉はミルーンでこちらのデータを収集してるし、
アイザックさんも、キャリングでミルト少尉の護衛をやっている。
それにしても相変わらず俺はジェネラルを乗りこなせない。
何度もバランスを崩して地面と接触している。
「くっそー…。このままじゃ少尉に殺されちまう…。
ジェネラルよー。お願いだー。せめて人助けすると思って、言うこと聞いてくれんかね?」
しかし無反応。この薄情者―!!
120共和国の魔装竜:03/06/23 11:41 ID:???
その時だった。
「ラインさん!!訓練を中止して下さい!!敵機の反応が…。」
ミルト少尉の声。
レーダーを見る。しかしジェネラル=ジェノブレイカーのレーダーでは確認できない。
恐らくミルーン=ゴルヘックスのレーダー性能でかろうじて確認できるレベルの
距離にあるのだろう。
「このスピードは…陸戦ゾイドじゃありません!!」
さらにミルト少尉は叫ぶ。
ん?ジェネラルのレーダーでも確認できた。って速!!
このスピードはジェネラルより速いじゃねーか!!
飛行ゾイドか?
その時、敵機の反応のあった方角からいくつもの機影が見える。
遂に有視界距離からでも確認できるほどにまで接近したのだ。速い。
って…こいつらは…。
諜報員が持ち帰ったデータにあった、キメラブロックスの融合機獣…「キメラドラゴン」
こいつは飛行性能もある。なるほど、ならこのスピードは納得できる。
しかし、こいつはデータによると単純な戦闘力なら大型ゾイドに匹敵するとされている。
しかも数は4機。こちらはまともに操縦出来ないジェノブレイカー。
砲撃機のガンブラスター。電子戦用機のゴルヘックス。
勝ち目はあるか?正直キツイ。
121共和国の魔装竜:03/06/23 11:45 ID:???
その時、突然通信が来た。
「ヘッヘッヘ、戸惑ってますねラインさん。」
ミルト少尉でもアイザックさんの物でもない。
しかし聞き覚えのある声。この声は…。
「お前ら…!!まさか…!!」
「ヘッヘッヘ、そのまさかですよラインさん。このキメラドラゴンを操っているのは
俺達なんすから…。」
そうだ、こいつらは俺がリーダーをやっていた暴走族の仲間達だったのだ。
「お前ら…、何で帝国軍なんかに…。」
俺はさらにその通信に対し返信する。
「ラインさんが悪いんですよ。あんな女一人のために仲間を裏切った貴方がね。」
「何だと!!?また少尉を馬鹿にするのか!!?」
俺は怒る。しかし、奴らはまだ言葉を続ける。
「いやね、俺達も鬼じゃないですよ。だってラインさんとまた走りたいんですから。
帝国に来ませんか?今なら俺達の推薦ってことで寝返りも可能ですぜ。」
「こいつら…ラインを誘惑してるのか?ライン!!引っかかるな!!」
アイザックさんが叫ぶ。
「言うまでもありませんよアイザックさん…。やいお前ら!!答えはノーだ!!
帝国に魂を売ったお前らなどもう仲間じゃない!!」
いっとき間が空いた後、一人が言う。
「そうですか…。なら、死んでもらいます!!4機のキメラドラゴンに勝てますか?」
そう言った後、通信が切られる。その直後、4機のキメラドラゴンが
突っ込んできた。速い。
122共和国の魔装竜:03/06/23 11:47 ID:???
ジェノブレイカーは共和国軍陸戦ゾイドの中で最速を誇るライガーゼロイェーガーの
時速330キロを上回る時速345キロである。
しかし、キメラドラゴンはそれよりも速く動いていたのだ。
無理もない。データによるとキメラドラゴンはマッハの速度が出せるのだ。
さらに相手は4機。やれるか?
「ラインさん、気を付けて下さい!!
このキメラドラゴン…。ただのキメラドラゴンじゃありませんよ。
まるで人間が乗っているように統率が取れてます。」
ミルト少尉がこちらに通信を送る。
確かに、この動きは普通のキメラドラゴンの動きじゃなかった。
普通のキメラドラゴンは何も考え無しに突っ込んでくるだけである。
しかし、目の前にいるキメラドラゴンは人間が乗ったように細かい動きを見せている。
キメラは基本的に無人機だったはずだ。
有人機もあるにはあるが、ロードゲイルっつー人型モドキだけのはずだ。
いや、あった。あのディアントラーとかいう鹿角キメラだ。
あのキメラもロードゲイル同様に有人キメラである。
恐らくそのコックピットを搭載したのだ。そしてそのコックピットには
あいつらが乗っている。そうとしか思えない。
なぜなら指揮機の類は見あたらない。あのキメラドラゴン4機だけで来たのだ。
しかし中型サイズにしか無いこいつらだが、意外に強い。
というか、飛行しているという点が大きいと思う。
何せあちらさんは前述延べた通りジェネラルよりも速い。
右往左往とこちらを飛び回ってミサイルやらビームやらを連射してくる。
しかも、ジェネラルはまともに言うこと聞いてくれない。
相も変わらず操縦桿は糞重いし。
敵の攻撃を避けるのはおろか、両側のフリーラウンドシールドで受け流して
ダメージを最小限にとどめるのが精一杯だ。
123共和国の魔装竜:03/06/23 11:48 ID:???
アイザックさんも応戦してくれてるけど攻撃が全然当たらない。
しかし、やつら標的を俺にしぼっているのか…俺にしか攻撃していない。
アイザックさんとミルト少尉には全く攻撃をくわえていない。
これはこれでムカツク…。
とにかく攻撃をしなければ…。脚部のウェポンバインダーや、
フリーラウンドシールド先端部分の裏側のウェポンラックに装着したマシンキャノンを
連射する。しかし当たらない。いくら何でも酷すぎる…。
くっそー!!せめてもっと良く動いてくれんかー!!
そう言っている間に、徐々にダメージが蓄積していきジェネラルの動きがさらに悪くなる。
「クッソオォォォォォォ!!」
おれはそう叫ぶ。その時さらに大きな衝撃が飛び込んできた。
キメラドラゴンが2機体当たりをしてきたのだ。
2機がかりとはいえ、中型サイズとは思えんなんちゅーパワー…
そのまま倒れ込むジェネラル。
その時キメラドラゴンのうちの1機が倒れ込んだジェネラルに近づく。
とどめを刺す気か?面白い。もしそうなら奴らを巻き込んで自爆してやる。
その時、またも通信が来た。
「これが最終通告です。大人しく来てくれれば許して上げますが?」
こいつら、まだ俺を帝国に連れていく気なのか?
「フッフッフ…。」
俺は親指を上に立てる。
「そうですか。やっとくる気になったんですね?…んん!!」
親指を上に上げた直後に手を反転させて下に下げた。ノーの意思表示である。
「何度言わせれば気が済むんだ!!俺は帝国なんぞには行かん!!
帝国に魂を売ったお前らの元になど行かん!!」
124共和国の魔装竜:03/06/23 11:50 ID:???
その時だ。
            ギャオオオオオオン!!!
ジェネラルが吠えたのだ。その時、俺にジェネラルの意識が流れ込んでくるような
感じがした。アイザックさんの言っていた破壊衝動というヤツではない。
もっとこう、別の…。
何というか、今までのジェネラルが、俺に対しそっぽ向いていた感じなのに対し、
今のジェネラルは俺を受け入れてくれた。そんな感じがした。
そう思ったとき、突然操縦桿が軽くなった。動く。
ジェネラルが俺の思い通りに動いてくれた。
速い。今まで以上に速い。これならもしかしたら…
俺はそう思った。
「帝国に魂を売ったなど人聞きの悪い…。たかが一人の女のために
仲間を裏切った貴方の言える立場なのですか?」
そう言ってキメラドラゴンが1機突っ込んでくる。
しかしかわせた。さっきまでのが嘘のような反応の良さだ。
ジェネラルは本当に俺を受け入れてくれたのか?
俺は早速エクスブレイカーを開く。その時、またもや1機突っ込んでくる。
しかし俺はもう動揺していなかった。頭部のレーザーチャージングブレードを出す。
「伊達や酔狂でこんな頭をしてるわけじゃないぞ!!」
俺は何処かで聞いたことが有るようなセリフを吐き、ジェネラルの頭部を振り回す。
レーザーチャージングブレードによって突っ込んできた1機が細切れになる。
125共和国の魔装竜:03/06/23 11:53 ID:???
もの凄い切れ味だ。いや、キメラドラゴンの防御力が低いという点もあると思う。
所詮小型機の集合体だからな。
「さっきとは違うぞ!!」
一人が叫ぶ。すると残る3機のキメラドラゴンが下がる。
そして距離を取って撃ちまくってきた。
キメラドラゴンがいくら飛行ゾイドの中では遅い部類に入ると言っても、
トップスピードではジェノブレイカーを遙かに上回る。
距離を取られては太刀打ちできない。
「こうなったらあれを使うしかない。」
そうつぶやいた俺はジェネラルの安全装置を解除した。
ジェノブレイカーの最終兵器。収束荷電粒子砲を使うのである。
しかし、当てられるか?相手はこちらを遙かに上回るスピードで空中を飛び回っている。
ほとんど一発ネタに近い(と言ってもそれなりの連射が可能だが…)
この武器であちらに当てることが出来るのか?
その時、ふと思いついた。荷電粒子砲の反動をブースターで相殺することで、
ホバーリングしながらの発射を行うのである。
あのリッツ=ルンシュテッド少佐(行方不明となっているが、紛らわしいのだろう。
ガイロス帝国の公式記録では死亡扱いとなっており、それによって
現在2階級特進扱いとなっている)も同様の方法で荷電粒子砲の空中発射を
やってのけたという。これなら途中からの照準変更も出来る。
しかし、口で言うほど簡単な物ではない。荷電粒子砲とブースターの推力を
釣り合わせなければ機体は吹っ飛んでしまう。俺に出来るか?
126共和国の魔装竜:03/06/23 11:59 ID:???
いいや、やるしかない。今日を生き延びるために。
「ナムサン!!うおおおおお!!」
俺は自分自身に気合いを入れる意味をこめて叫ぶ。
そして荷電粒子砲のエネルギーチャージが完了したことを確認すると
荷電粒子砲の引き金を引くと同時にブースターを吹かした。
「うおおおおおおおお!!」
もの凄い勢いで極太のビームがジェネラルの口から発射される。
同時に背中のブースターももの凄い勢いで推進剤が噴射される。
成功だ。見事釣り合っている。
「荷電粒子砲!!?逃げるんだ!!」
あわてて射線から対比するキメラドラゴン。
「逃がすものか!!?」
荷電粒子砲を発射しながら方向を転換する。
勿論口で言うほど簡単ではない。実際に出来たのが奇跡なくらいだ。
「うわ!!」
荷電粒子砲を避けきれず、キメラドラゴンは荷電粒子砲に飲み込まれていく。
いや、1機逃げ延びている。
その時だ、後方からもの凄い数のビームが帯を引いてそのキメラドラゴンを
次々と打ち抜いていく。あっという間にガラクタと化した。
「へっへ、最後のとどめは俺が刺してやったぜ。」
「アイザックさん…。」
そう、そのビームの主はアイザックさんのキャリングだった。
「とりあえず終わりましたね。」
ほっとした感じでミルト少尉が言う。
「俺もジェネラルを乗りこなせるようになりましたしね。
これでノルマを無事果たしましたよ。」
127名無し獣@リアルに歩行:03/06/24 06:37 ID:???
古い鉄に乗っている博打好き?<伊達や酔狂でこんな頭をしてる
128共和国の魔装竜:03/06/24 09:53 ID:???
その時だった。突然空が暗くなった。
驚いて一斉に暗くなった方向を向く俺達。
そこには、黒く巨大な影がたたずんでいた。
「デ…デスザウラー!!」
そこには帝国軍最強のゾイド、デスザウラーがいたのだ。
いつの間に接近したのか?
キメラドラゴンとの戦いに夢中で気が付かなかった…。
「ごめんなさい…私も気づかなかった…電子戦要員失格だわ…。」
突然現れたデスザウラーにいつも冷静なミルト少尉の少し戸惑っていた。
「そんなことやってる場合じゃないっすよ!!」
そう言ってデスザウラーの顔面にジェネラルの収束荷電粒子砲とキャリングの
ハイパーローリングキャノンが撃ち込まれる。もの凄い爆炎。しかし…
「い…意にも介してやがらねえ…。」
そこには何事もなかったかのようにたたずむデスザウラーの姿だった。
「そんなことしてて、いいのかな?」
聞いたこと無い男の声がした。デスザウラーのパイロットからの通信か?
「キメラドラゴンは全滅か…まあ、こんなやつらでもこいつらの注意を引かせる
エサにはなれたんだ。それだけでも誉めてやろうじゃないか…。」
こ…こいつ、あの4人を利用したのか!!?さらに男の声が続く。
「今頃別動部隊がお前らの基地を攻撃してるだろうよ。まあ、そのとどめと言うか、
引導を渡すために俺がデスザウラーでやって来てるんだがね。あと、
お前らも奴らと一緒に死んでもらうから。」
「とっ、とにかく逃げましょう!!」
一斉に逃げる俺達。しかし逃げ切れるか?
129共和国の魔装竜:03/06/24 09:55 ID:???
「おっと、逃がさないよ。」
デスザウラーに乗る男の抑揚の無いがなおも聞こえた。
その時、ジェネラル搭載のセンサーが後方からのもの凄い熱源を探知した。
「荷電粒子砲!!?」
やばい!!非常にやばい!!話によればマッドサンダーの反荷電粒子シールドですら
防げなかったと言うじゃないか。横に逃げても向きを変えられればお終いだ。
「あはは〜、お花畑が見えてきた〜。」
「ミルト少尉!!しっかりして下さい!!って俺にも見えるー!!」
恐怖の余り、ミルト少尉とアイザックさんは完璧にあっちの世界に行ってしまった…。
その直後、荷電粒子砲がきた!!うわぁ!!この年でまだ死にたかねぇよ!!
思わず目をつぶった俺達。

「?」
しかし、俺達はまだ生きていた。荷電粒子砲が発射されているのにも関わらずにだ。
前を見る俺達。そこに見覚えのある1体のゾイドが俺達を守るように立ちふさがっていた。
「相変わらず無茶してるわね。それはそうと、
あんたジェノブレイカーの操縦マスターしたの?」
「マオ少尉!!?帰ってきたんすか!!?」
その時の俺はうれしさの余り涙が出てたと思う。
マオ少尉の乗るゴジュラスギガ「カンウ」がハイパーEシールドで
荷電粒子砲の魔の手から俺達を守ってくれたのだ。
ギガのシールドこそ現在に置いてデスザウラーの荷電粒子砲を防げる唯一の手段である。
ちなみに少尉のギガの名前「カンウ」というのは、俺も少尉から聞いた話で
よくは知らんのだが、地球にその昔いたもの凄く強い武将の名前を
そのまま取って付けた名前らしい。あと、その武将は緑色の服を着ていたということで、
ギガ本体のカラーリングも青の部分を緑色に塗り替えている。
それが幸いして、会戦とかで多数のギガが入り乱れて戦ってるような混戦になってても
どのギガが少尉のギガかという見分けが付く。
余談だが、少尉自身も緑色が結構好きっぽい。
服とかも緑が多いし、目の色もなぜか緑。あ、でも髪の毛は金髪だったりする。
緑色に染めようとか言ってたこともあったが、面倒くさいとかで結局やめたらしい。
130共和国の魔装竜:03/06/24 09:56 ID:???
「な!!?ゴジュラスギガだと!!?別動部隊はどうしたのだ!!?」
デスザウラーのパイロットは予想外の事態に戸惑っていた。
「おい!!応答しろ!!おい!!」
「ザ――――――――」
よほど慌てているのだろう。恐らくこちらに対する通信をまだ切っていないのか、
彼方の慌てようがこちらにも聞こえてくる。
「ああ、あんたが言ってる別動部隊ってさっきのバーサークフューラーだの
ロードゲイルだののアレ?あれなら私がやっといたけど?
まあ、私が帰ってくるのがあと10分でも遅かったらやばかったけどさ。
今頃他の人たちが残りカスのお掃除をしてると思うよ。」
もの凄い事をシャーシャーと何気なく言う少尉。しかしもう慣れた。
少尉はそんな事すらも普通に感じてしまうほど強いのだ。
少尉の下で働き始めたころは正直驚きの連続だったがもう慣れた。
「畜生!!ゴジュラスギガのパイロットが基地を留守にするから攻めるのは今だと
思って部隊を動かしてみればこんなオチが待っていたのか!!
もういい、こうなったらオレだけでもてめえらを皆殺しにしてやる。
こっちはデスザウラーだぞ!!荷電粒子砲で全部焼き払ってくれるわ!!」
何かあちらさん妙にヤケクソ気味になって叫んでいる。
「ここはあたしに任せてよ。」
そう言って少尉のカンウがヤケクソ気味のデスザウラーに突進していく。
Lサイズ級の物とは思えんスピード。
とりあえずこの場は少尉に任せることにした。
ゴジュラスギガやマッドサンダー以外のゾイドで
デスザウラーを相手にすること自体違う意味で馬鹿馬鹿しいからだ。
デスザウラーの砲撃をかわし、弾き、もの凄い速度で接近する。
131共和国の魔装竜:03/06/24 10:03 ID:???
「馬鹿め!!デスザウラーのパワーを思い知らせてやる!!」
デスザウラーが右腕を振り上げ、思い切りカンウに向けて振り下ろされる。
ゴジュラスすらも真っ二つにしたと言われる強力な武器だ。
「少尉!!」
思わず叫ぶ俺。
しかし、次の瞬間カンウが視界から消えた。当然デスザウラーの右腕もむなしく空を切る。
カンウは上に跳んでいた。デスザウラーすらも見下ろすほどの高さ。
巨大ゾイドの常識を越える高さ。いや、下手をすれば中型サイズをも越えてるかもしれん。
「はああああ!!」
次の瞬間、カンウのかかと落としがデスザウラーの顔面に思い切り蹴り込まれた。
収束荷電粒子砲とハイパーローリングキャノンにもビクともしなかった。
デスザウラーが頭部が思い切りひしゃげ、カメラアイが大きく割れ、大きく仰け反る。
想像を絶する威力。しかしカンウの攻撃は終わらない。
ギガの足が、爪がデスザウラーの全身の装甲に打ち込まれる。
デスザウラーの装甲すらもたちまちベコベコになっていく。
デスザウラーの尾、加重力衝撃テイルがカンウに向けて振られる。
それも軽々とかわしてカウンターで蹴りをお見舞いする。
カンウは完全にデスザウラーを圧倒していた。
しかし、俺は驚いていなかった。
132共和国の魔装竜:03/06/24 10:22 ID:???
たしかにゴジュラスギガを持ってしてもデスザウラー相手はつらいと言われている。
2倍近いウェイト差と根本的に違う武装がその要因である。
しかし、現にカンウがデスザウラーを圧倒的に圧倒している。
その理由は俺には分かっている。マオ少尉が強いのだ。これに尽きる。
マオ少尉は小柄で細身なのに妙に頑丈だし、パワーも凄い上、格闘技に関しても
天才的な物がある。つまりパワーとテクのバランスのとれたトータルファイターである。
そして、その技術をゾイド戦にも応用している。それがカンウの格闘性能を
120%以上に引き出しているのだ。パワーとテクニックの融合である。
しかしそれだけではない。
ゴジュラスギガ自信も、完全野生ゾイドベース故に
格闘経験値が高いレベルで備わっている。
それがあるからこそ、マオ少尉の高度なテクに付いていけるのだ。
それに対しデスザウラーは…。
諜報部のハンゾウ中尉の話によると、デスザウラーはOSを使用し、培養液で
短時間で急速に成長させた物を使用しているという。
当然格闘やその他の経験値の欠片もない。
経験値の点で劣る部分をOSでカバーしてるらしいが、所詮付け焼き刃の
感は否めない。単なるパワー馬鹿と言った方がいい。
その上、実戦では格闘はほとんど行わず、荷電粒子砲ばかり撃っているという。
これではゾイドもパイロットも格闘経験値は全然上がらない。
百戦錬磨の少尉とカンウに勝てるはずがない。
現にデスザウラーの格闘攻撃は、俺が見ても素人と分かるほど下手だ。
133共和国の魔装竜:03/06/24 10:31 ID:???
「うおおお!!こうなったらパワーでねじ伏せてくれる!!」
本当にヤケクソになったか?デスザウラーがマジでカンウに突っ込む。
や…やばい!!捕まった…。デスザウラーの両腕がカンウをガッチリつかんでいる。
逃げられない。いくらゴジュラスギガでもパワーではデスザウラーにかなわない。
このままではやられる。例えゾイドコア砲を発射しても、デスザウラーと密着している
カンウもたちまち消滅してしまうだろう。
「少尉!!」
オレは思い切り叫ぶ。このままでは少尉は死んでしまう。そう思った。
人使い荒くて乱暴な所があるけど、一方でとても優しい所もあった少尉。
オレが前乗っていた機体。鹵獲セイバータイガーを失って落ち込んでいたオレを
励ましてくれたのは誰でもない少尉殿だった。
その時に一緒にくれたおにぎりが、妙に美味かったのを今も覚えている。
それにとても可愛いし。今時あんないい娘はいないと思う。
だからこそここで死んでしくない。オレは差し違えても少尉を助ける。
そうしてジェネラルのブースターのスイッチを入れようとしたとき。
信じられないことが起きた。
「はああああああああ!!」
マオ少尉が気合いを入れるかけ声を挙げたと思うと、何とカンウがデスザウラーを
逆に押しているのである。
「そんな馬鹿な!!デスザウラーが押し負けるだと!!?」
デスザウラーパイロットの慌てた声が響き渡る。
その直後に何とカンウがデスザウラーを投げ飛ばしたのである。
宙を舞い、そして地面に叩きつけられるデスザウラー。地響きがこちらにも届いてくる。
こればかりは流石に驚いた。しかし、その直後はっとなった。
完全野生仕様のゾイドはパイロットとの精神リンクの度合いによって
性能が著しく上下するというのを聞いたことがある。
だから同じ機体でもパイロット次第で機体のポテンシャルに差が出来たりすると言う。
もしかしたら、カンウはマオ少尉と高いレベルで精神リンクしており、それにより
デスザウラーをも押し負かすほどの超パワーを発揮したのではないだろうか。
134共和国の魔装竜:03/06/24 10:40 ID:???
「これで止め!!」
俺が解説してる間に、ものすごい速度でデスザウラーの背後に回り込んだカンウが
その両腕をデスザウラーの背中の荷電粒子吸入ファンに突っ込み、
デスザウラーのコアを砕いたのだ。
デスザウラーは瞬く間に生命力を失ってその場に倒れ込んだ。

基地に帰った俺たちは基地の破壊された部分の後片づけにかり出されていた。
「そう言えばさ、あんたジェノブレイカーの操縦できるようになったの?」
基地中に転がっている撃破した敵の残骸をカンウで片づけながら俺に言った。
「いや、見ればわかるじゃないすか。現に今動かしてますし。」
同じく片づけ中のジェネラルのコックピットの中で俺が言った。
「まあ、それもそうね…。」
少尉は言った。
その時の少尉の顔がいつにもまして可愛かった。
オレは少し赤くなった…。

空も夕日で赤くなっていた。
                          終わり
135名無し獣@リアルに歩行:03/06/24 12:49 ID:NOPeJNKi
さみしいよ誰かメールしませんか?
[email protected]
136名無し獣@リアルに歩行:03/06/25 11:28 ID:???
>>127
男塾の卍丸も同じことを言ってるよ。
モヒカンの中に仕込んだカッターを飛ばすときに
「伊達や酔狂で(以下略)。」って
1372099 開戦4−1:03/06/26 06:24 ID:???
 マッケナ大尉と案内の兵は司令部天幕の方に歩いていた。
 だが天幕が視界に入ったところでマッケナ大尉に声がかかった。
「貴様が参謀本部から来た情報参謀だな。何をしにここまで来た」
 いきなり怒鳴られるような声で話しかけられたので、マッケナ大尉は困惑して声をかけた男を見返した。
 男はマッケナ大尉と同じように参謀飾緒をつっていたがそのデザインは微妙に異なっていた。それは参謀本部ではなく軍団司令部付き参謀の印だった。
 参謀飾緒や階級章などから判断すると男はどうやら軍団参謀部の情報部長のようだった。
 とりあえずマッケナ大尉は男に敬礼しながらいった。
「帝国陸軍参謀本部二部二課所属、ユリウス・マッケナ大尉であります」
「第六軍団参謀部情報部長、ベガード中佐だ」
 憮然とした顔のままその男、ベガード中佐は答礼した。
「それで、貴様は何をしに来たのかと聞いておるのだ。どうせ下らぬ督戦にでも来たのではないか?
 あらかじめ貴様に言っておくが我が軍団の兵達はみな練度も高く、士気も旺盛だ。
 我々参謀部も作戦計画に忠実に従っており、一週間もすれば山脈を超える事も出来るだろう」
 そこでようやく立ち直ったマッケナ大尉が口を挟んだ。
1382099 開戦4−2:03/06/26 06:26 ID:???
「どうやら中佐は誤解しておられるようだが、小官は別に督戦に来たわけではありません。
 今回の出張は西方大陸派遣軍司令部が近々予定している前線視察の打ち合わせに来ただけです」
 ベガード中佐はそれを聞くと眉を吊り上げていった。
「嘘をつけ。そんな子供でも出来るような事を何故情報参謀の、しかも参謀本部付きの士官がやらなければならないのだ?
 本当のことを言えばどうなのだ。貴様は参謀本部が送ってよこしたスパイなのだろう。
 いつから参謀本部は前線部隊の足を引っ張るどころか、番犬まで送ってよこすようになったのだ」
 そういってベガード中佐は敵意をむき出しにした視線をマッケナ大尉に向けた。
 マッケナ大尉は対照的に感情を表に出さないようにして突っ立っていた。
 だが内心ではかなり焦っていた。
 ベガード中佐の様子から見て軍団には無視する事が出来ないほどの上級司令部不信があるようだった。
 こんな状態では参謀本部付きのマッケナ大尉が何を言ってもベガード中佐は納得する事は無いだろう。
 しかしマッケナ大尉の計画を実行する為には軍団情報参謀の協力が必要不可欠だった。
 眉をしかめてマッケナ大尉はベガード中佐を見返した。
 二人は唖然としている案内の兵を脇に置いたまましばらくにらみ合っていた。
 その均衡を破ったのはマッケナ大尉にかけられた女性の声だった。
「ユリウス・マッケナ?アンタこんなところで何をしているの」
 マッケナ大尉とベガード中佐が振り返るとそこに輸送科大尉の階級章を付けた女性が不思議そうな目をこちらに向けて立っていた。

>>136
それはスルーだった・・・まぁあの手の漫画は見ないだけですが
1392099 開戦5-1:03/07/02 06:03 ID:???
 突然話しかけられたマッケナ大尉とベガード中佐は気まずそうな顔で声をかけた女を見た。
 女は不思議そうな表情を二人に向けていた。
「何?私の顔に何か付いてるんですか中佐」
「いや・・・彼女、チェンバレン大尉とは知り合いか」
 ベガード中佐が気まずそうな顔をしたままマッケナ大尉に向き直った。マッケナ大尉は頷くといった。
「士官学校の同期です。軍団勤務とは聞いていませんでしたが。
 ところで中佐。小官は任務がありますので失礼させてもらいますが宜しいか」
 話が飲み込めない様子のチェンバレン大尉の視線を感じたのか、ベガード中佐はわざとらしくせきをすると頷いた。
「よろしい。呼び止めてすまなかったな。後で軍団長には挨拶しておくように」
 マッケナ大尉にだけ見えるように睨み付けるとベガード中佐は天幕の一つに入っていった。
1402099 開戦5-2:03/07/02 06:05 ID:???

「貸し一つね」
 ベガード中佐が十分離れたのを確認してから輸送科の女性士官、チェンバレン大尉がいった。
 彼女はマッケナ大尉と士官学校が同期だった。その頃から彼女はトラブルメーカーとして知られていた。
 すでに不思議そうな表情は消えうせ、それに変わって何が面白いのか満面の笑みを浮かべていた。
 それも可愛らしげに微笑んでいるのではない、まるで肉食獣が獲物を見つけたときのような笑みだった。
 それとは対照的にマッケナ大尉はこれ以上ないというくらいに苦々しい顔になっていた。
「馬鹿なことを言うな。貴様は士官学校で俺とラルフにどれだけ迷惑をかけたか忘れたのではないだろうな。
 そんな借りは貴様の迷惑で帳消しだ」
「馬鹿ねぇ、そんな昔の事なんて時効に決まっているでしょう。だいたいあの頃だって別に後始末をあんた達に頼んだ記憶はないわよ」
 平然と答えるチェンバレン大尉を呆れた目で見ながらどうにかマッケナ大尉は反論しようとした。
「ほう、それは年をとったと認めるのだな。そうだな、俺も貴様も士官学校時代が昔の事になったのだな」
 漠然と反論を予感していたマッケナ大尉はあらかじめ身構えていた。だがチェンバレン大尉は押し黙っていた。
1412099 開戦5-3:03/07/02 06:08 ID:???
「そうね、私やあんた達の士官教育は昔の事かもしれないわね」
 マッケナ大尉は怪訝そうな顔で先をうながした。
「今の士官学校の話は聞いている?随分カリキュラムが変化してるわ。より実戦向き・・・とは口ばかりね
 正確にはこの戦争向けなんじゃないかしら。戦術、戦略共にそうね」
「それは当たり前だろう。仮想的との戦争を考えた教育になるのは当然だ。俺達だってそれに変わりはあるまい」
「問題はそれだけではないわ。この圧倒的な戦力での包囲戦。ほとんどそれだけなのよ今の士官が習っている戦術なんて
 勝っている今は無類の強さを誇るでしょうね。幾度も机上演習をおこなっているのだから。
 でももし後退するようになったらろくな後退戦の戦術を出せる少尉はいないでしょうね。
 それに今の士官学校生はかなりの促成栽培で戦場に出てくる事になるでしょうね。
 教育機関の著しい短縮。もう現実のものになろうとしてるのよ」
 マッケナ大尉は黙って聞いていた。参謀本部に勤務するものとしてはチェンバレン大尉とは違った見解があったが口にはしなかった。
 広範囲な戦術の研究の必要性は誰もが感じていた。だがそれに時間を費やしていたのならば現在おこなわれているような快進撃は不可能だっただろう。
 全てをおこなうには時間が足りていなかった。
142格闘対格闘:03/07/08 10:15 ID:???
「おのれおのれ!!あの緑の新型ゴジュラスめ!!」
帝国首都にて一人の帝国将官が叫んでいた。
「しかし、その緑色新型ゴジュラスとやらの同型機も色違いとはいえたくさんいますし。
それ一機に何も固執する必要はないのではないですかな?」
隣にいた別の将官がその将官をなだめる為に言う。
「馬鹿者!!その「緑色新型ゴジュラス」に今まで何体のデスザウラーが
やられたと思ってるんだ!?これ以上やつを野放しにしていたら
我が軍の士気が落ちるのは目に見えているぞ!!」
デスザウラーは帝国軍の最強ゾイドにして決戦機にしてシンボルゾイドである。
強大な力を持つ代わりにやられたときの損害は莫大であり、
なおかつその敗北が兵士の士気を大きく下げる結果となってしまうのである。
共和国軍の新型ゴジュラス「ゴジュラスギガ」はどれも帝国軍を恐れさせる
活躍をしている。しかし、その中でもひときわ恐れられているのが
その「緑色の新型ゴジュラス」なのである。因みに他のゴジュラスギガと
どう違うのかというと、その名の通り、本来ブルーの部分が
グリーンになっているという点である。
実際その緑色のゴジュラスギガの活躍はゴジュラスギガの中でもひときわ目覚ましく、
既に10機以上のデススティンガー。5機以上のデスザウラーが
その緑色のゴジュラスギガに撃破されていた。
143格闘対格闘:03/07/08 10:17 ID:???
「しかも、強いのはヤツだけじゃない!!そのサポートに回っている
何故か共和国軍が持ってるジェノブレイカーは我が軍のBFやSFをも圧倒する
強さを持っているというじゃないか!!さらに同部隊のガンブラスターは
飛行ゾイドも打ち落とすほどの命中精度も持っているそうだし、
どんな大部隊を差し向けても奴らのゴルヘックスにすぐ察知されて逃げられてしまう。
一体どうすれば良いのか…。」
「お困りのようですな…。」
その時、さらにもう一人の将官がやって来た。
「お前はルーガス=バッハード少将…。」
そのルーガスと呼ばれる将官はいわゆる美形悪役っぽい要望をしていた。
「私にいいアイディアがありますがどうですかな?」
ルーガスの一言に先ほどまで騒いでいた将官が静かになる。
「そのアイディアとは何だ?」
「貴方は我が軍のデスザウラーが共和国軍のゾイドごときに劣るとお思いですか?」
「知れたこと。劣るわけがないであろう。」
ルーガスの一言にその将官は言う。
「しかし、我が軍のデスザウラーはその緑色の新型ゴジュラスに何度も敗北している。
それについて、私はパイロットの腕の差であると考えたのです。」
「腕の差?馬鹿言え。我が軍のパイロットの訓練は徹底させている。
なぜそれが共和国のパイロットごときに劣るというのだ?」
ルーガスの一言に将官は鼻で笑うように応えた。
「確かにそうでしょうね。ですが、今までのデータを元に考えると、
その緑色の新型ゴジュラスは我が軍のパイロット以上に鍛えられたパイロットのようです。
そしてあの新型ゴジュラスの動きは格闘技のプロの動きです。
最低限の動作で最大限の効果を出す。
力任せに腕を振り回すデスザウラーとは偉い違いですね。」
144格闘対格闘:03/07/08 10:19 ID:???
「貴様!!我が軍のデスザウラーを愚弄するというのか!!?」
その将官は怒り出す。しかしルーガスは顔色一つ替えずに、
「まあ落ち着いて下さい。あちらが格闘技のプロならば、こちらも同様に
格闘技のプロをぶつけるのですよ。」
「なるほど、毒を盛って毒を制すというワケか。」
とりあえず落ち着いた将官が言う。
「というわけで、入ってきて下さい。」
そう言ってルーガスは手を叩く。
そしてそこに入ってきたのは無精ひげのさえない小太りの中年の男だった。
服はあちらこちらがボロボロに破けている。
「何だこの汚らしい男は…。」
「私が用意した格闘技のプロですよ。」
ルーガスがそう言うとその中年の男が自己紹介をする。
「ウォン=サーバンドです。」
「はっはっは、馬鹿にするんじゃないよ。そんなのが勝てるわけ無いじゃないか。」
将官は鼻で笑う。確かにウォンは外見からしてとても強そうには見えない。
「疑り深いですね。ならば証拠をお見せしましょう。」
そして場所は演習場。
ウォンの前には歩兵隊からつれてきたと思われる巨漢の大男が何人も立っている。
「オッサン正気か?本気で俺達に勝てるとでも?」
「まあ、それなりに。」
ウォンは微笑みながら応える。
「はっはっは、このオッサン狂ってるぜ。はっはっは…はっ!!」
勝負は一瞬で付いた。
ウォンがその小太りな体型からは想像も付かぬほどの目にも留まらぬ素早い動きで
大男達を翻弄し、あっという間に全員片付けてしまったのだ。
全員倒したのを確認すると、ウォンは手を合わせお辞儀をする。
145名無し獣@リアルに歩行:03/07/08 10:24 ID:???
「………。」
将官は声が出なかった。
「どうですかな?彼はね、ああ見えて「竜王流格闘術」の免許皆伝者なんですよ。」
「なんですと!!?数ある拳法の中でもあの最強と言われた流派の!!?」

竜王流格闘術
世界中に数ある拳法の中でも最も長い歴史を誇り、なおかつ最強と名高い流派である。
その修行の厳しさは壮絶な物であり、格闘技のプロと呼ばれる者でも
その会得には何十年もの歳月を要し、なおかつその競争率は1000人に1人と言われる。
しかし、その修行に耐え、見事免許皆伝した者は
素手で戦闘ゾイドをも倒す強さを持つほどにまで強き者となっていると言われる。
                          鋼獣書房刊「世界の秘拳」より

一方こちらは共和国軍。
「ックシュン!!誰かが噂してんのかな?。」
緑色のゴジュラスギガ「カンウ」のコックピット内で空を眺めながら
のんきに昼寝をしていたマオ=スタンティレル少尉(18)は鼻をすすりながら言った。
「まあいい、昼寝の続きっと…。」
と、マオが寝入ろうとしたとき…。
「少尉!!大変ッス!!」
カンウのキャノピーの外側でマオの部下である、ライン=バイス軍曹(20)が叫んだ。
突然の大声に驚いて飛び起きるマオ。そして顔を下げた状態かつ無言でキャノピーを開く。
「少尉とにかく大変…。」
「昼寝の邪魔すな!!」
アタックゾイドの装甲も粉砕するマオの鉄拳がラインの顔面にヒット。
そのまま10メートル近くまで吹っ飛び、地面に叩きつける。
ライン、そのままピクピクと痙攣している。
そのシーンがギャグで良かった。シリアスならば確実に死んでいた。
146格闘対格闘:03/07/08 10:28 ID:???
>>145はタイトル入れ忘れ。スマソ


「ったく起こすんじゃないわよ…。」
と、再び寝入ろうとしたとき、
「ん?大変なこと…?」
はっと、再び飛び起きるマオ。
「一体何があったの!!?ライン!!」
下に降りてラインを問いつめるマオ。
「いきなり殴りつけるなんて酷いッス…。」
「ごめんなさい!!今度何かおごって挙げるから許してよ。」
何の理由もなく殴られたことを根に持つラインにマオがとりあえずの弁解をする。
「まあ、とにかく何があったのさ?」
「あ!!そうッス!!友軍から救援信号が来て、出撃命令が出てるんスよ!!」
「それを速く言え!!」
「速く言おうとしたのにいきなり殴りつけたのは誰ですか?」
「う…。」

マオの部隊を乗せたホバーカーゴは救難信号が出たと思われる地点に進行していた。
ホバーカーゴと言えば閃光師団であるが、こちらのホバーカーゴは一般部隊用である。
ライガーゼロ用の換装設備が無い代わりに、積載重量や武装などが若干強化されている。
「で、救難信号を出してきたのは何処の隊?」
マオはラインに問う。
「はい、何でも閃光師団の第3部隊らしいです。」
マオは上を見ながら
「閃光師団ねー。あの共和国軍のエリートぶってる連中ね。あたしゃあ嫌いよあいつら。
だって高速ゾイドが至上とかボロクソ言ってんじゃん。
まあ、仕事だからしっかり助けるけどさ。」
147格闘対格闘:03/07/08 10:33 ID:???
閃光師団。最高の高速ゾイドと高速戦闘のエリートばかりで構成された特殊師団であるが
その目覚ましい活躍とはうわはらに評判が悪い。
「ライガーゼロはライガー系のくせにゴジュラス以上の金食い虫。」
「スピードだけで勝てるほど戦争は甘くねーぞ。」
「そんな物に金を掛けるくらいなら我ら強襲戦闘隊にも新型の重大型機を作れよ。」
「またパクリかよ。高速隊は猿真似しかできんのか?」
「ライガーゼロって何?」
等など、もう、ボロクソ言われまくりである。

「あ、でもさ、閃光師団ってそれなりに強いんでしょ?
そんなやつらが救難信号出すほどの相手って…。」

「目標地点にたどり着きました。とりあえずホバーカーゴはここに固定します。
あとは頑張って下さい。」
ホバーカーゴの操舵手が言う。
とりあえずマオその他パイロット連中は一斉に格納庫へ走る。
そしてホバーカーゴから次々とゾイドが出撃してゆく。
マオのゴジュラスギガ「カンウ」
ラインのジェノブレイカー共和国仕様「ジェネラル」
&その他もろもろ。
「とりあえずアイザックその他はホバーカーゴの護衛よろしく。」
「了解。」
ガンブラスター「キャリング」に乗るアイザック=バウロン軍曹(25)に
マオは命令し、目標地点へ移動する。
「マオさん、目標地点に敵機と思われる反応があります。気を付けて下さいね。」
ゴルヘックス「ミルーン」に乗るマオの部隊の頭脳と呼ばれる
ミルト=キルティーヌ少尉(19)がそう言ってマオを見送る。
「とりあえず頑張ってみるわ。」
マオはそう一言応えた。
148格闘対格闘:03/07/08 11:10 ID:???
カンウを中心にジェネラル、そしてアロザウラー隊が反応のあった地点へ走る。
まさしく閃光師団とは相反をなす恐竜部隊だ。
目標地点の近くにまで来たとき、やたらと機体の残骸が目に付くようになった。
ライガーゼロやコマンドウルフAC、シャドーフォックスの残骸が
あちらこちらに転がってる。
「いくら閃光師団が最強を名乗っててもハッタリじゃないんだ。
それなりに強いはず。そんな奴らをも圧倒できるヤツと言えばヤツしかいない…。」
マオはそう思い、さらに部隊を進める。
前方から爆発音が聞こえる。戦闘が起こってるのだ。
一人でも多くの人名を助けるため急ぐ。その時、
「デ…デスザウラー!!」
アロザウラー隊の一人がそう叫んだ。
そこにいたのは禍々しく巨大なゾイド。
帝国軍最強のゾイドにしてゼネバスのシンボルである、デスザウラーであった。
マオの部隊が来たのに気づいたデスザウラーがマオ達の方向に向く。
その時、デスザウラーの背後から何かが光を放ちながらもの凄いスピードで
デスザウラーに突進してきたのだ。
ライガーゼロシュナイダーのファイブレードストームだ。
しかし、デスザウラーはそれを難なくかわす。速い。デスザウラーとは
とても思えぬ反射神経。そしてカウンターで裏拳を叩き込む。
もの凄いパワー。ゼロシュナイダーはそのまま数百メートルにわたって、吹っ飛ぶ
149格闘対格闘:03/07/08 11:17 ID:???
「ふ…思った通り…。」
他の人間に比べ、マオは慌てていなかった。相手がデスザウラーと言うこと自体、
予想範囲内だったからである。

「お?よく見ればアレがルーガスさんの言っていた「緑色の新型ゴジュラス」ですな?
適当に暴れていればいつかは会えると思ってましたが、こんなに早く会えるとは…。
手間が省けましたな。」
デスザウラーに乗っている男こそ、ウォン=サーバンドであった。
ウォンの乗るデスザウラーはマオの乗るカンウの正面を向き、
ファイティングポーズを取る。
それに反応し、カンウも体勢を取る。
「あんたら手を出すんじゃないよ!!」
「いや、デスザウラーの相手なんてやれって言われてもやりたくありませんよ。」
ジェネラルとアロザウラー隊は一斉に下がる。
「友軍を下げますか…まあいいでしょう。私の目的はあなたですからね。」
デスザウラーの中でウォンはにこやかに言った。
一方カンウの中のマオは緊張していた。
「こいつ、今までのデスザウラーと違うね。」
マオとカンウはデスザウラーから発せられる気に若干押されていた。
マオとカンウは今まで数多くのデスザウラーを下してきたのだが、
こんな感じは初めてであった。とにかく今までのデスザウラーと違うと
本能的に察知していたのだった。
1502099 開戦6-1:03/07/11 06:20 ID:???
 まるで暴風雨の時のような風を切る音が聞こえたような気がしていた。
 風は止まることなく、力強い音を響かせていた。
 だが、不意に風を切る音に混じって異音が響いた。
 マッケナ大尉はゆっくりと目を開けると異音を聞き分けた。
 それは殷々と響く砲声だった。砲声の大きさからしてさほど遠くない場所に砲撃陣地があるのは間違いなかった。
 独特の重々しい砲声から察すると師団砲兵の野砲ではなく、軍団直属の砲兵連隊が保有する野戦重砲のようだった。
 ゾイドに直に搭載するかモルガなどで牽引する野砲とは違って、野戦重砲はグスタフが牽引するトレーラーを丸ごと使ってようやく運用できる巨大なものだった。
 重量は砲身と機関部の砲部分だけで並みの中型ゾイドに匹敵する重さがある。それに弾薬や人員も含めるとグスタフではなければ牽引できないのだ。
 さらに砲兵連隊は前進観測班からの通信を中継するゲーターや砲兵管制用に改造されたレッドホーンも所属する大所帯だった。
 だからその射程の長さもあって軍団砲兵はめったに移動をしないことで知られていた。
 移動する時はあらかじめルートの偵察をおこなって通行が可能かどうかを確認しなければならなかった。
 特別に改造されたトレーラーでさえ重砲と弾薬を満載した状態では接地圧が過大となる危険性があったのだ。
1512099 開戦6-2:03/07/11 06:22 ID:???
 すっかり目が覚めたマッケナ大尉は宿として案内された天幕を出ると砲声のする方向に向って歩いていった。
 周りを忙しそうに歩く兵たちの様子からすると軍団砲兵は随分長い間ここにいるようだった。
 兵たちは誰も砲声を気にしてはいなかったからだ。
 軍団砲兵の陣地まではやはりさほどの距離は無かった。
 少しばかり窪んだところに重砲を積んだトレーラーがとめてあった。牽引用のグスタフは見えなかった。
 少し意外な気がしてマッケナ大尉は周囲を見渡した。
 普通なら重砲が移動するケースはあまり無いが、それでもグスタフの姿が見えないのは異常だった。
 ひょっとすると整備中なのかもしれなかった。それ以上考えるのをやめてマッケナ大尉は窪地の重砲をみた。
 マッケナ大尉はふと眉をしかめた。周囲はぬかるんでいたからグスタフが移動すれば当然出来るはずの轍が確認できなかった。
 だとすればこの陣地に移動したあと長い間グスタフはどこにいるのか。マッケナ大尉は手直にいた丙を掴まえて話を聞こうとした。
 だが、砲兵陣地の周囲には兵はいなかった。陣地にわざわざ聞きに行くのも間が抜けているような気がした。
 マッケナ大尉はあきらめると事情を聞きに参謀部に向おうとした。
 だがそこでこちらに向ってにこやかに笑いながら近づいてくるチェンバレン大尉を発見してしまった。
 大きなため息をつきながらマッケナ大尉も近づいていった。
152格闘対格闘:03/07/13 18:12 ID:???
デスザウラーが来た!速い!
例えライガーゼロ等でも避けきれないもの凄い腕のスイング速度。
素早く後ろに跳んでかわすカンウ。しかし左肩の装甲がたちまちえぐられる。
もの凄い破壊力。
「わたしの名はウォン=サーハンド。どうですかな?私の実力は。」
カンウに通信を送るウォン。ここでもその言葉遣いは妙に礼儀正しい。
それだけ余裕がある証拠なのだ。
「フン!殺る時は一撃でやりなさいよ。」
顔から一筋の汗を流しながらマオが返答する。
「これは驚いた。女の子が乗ってらっしゃったんですねー。でも、手加減はしませんよ。」

一方この戦いをウォンのデスザウラーから送られてくる映像で
見ていた帝国将官連中は愕然とした。
「うそ…あんな子供に…。」
「結構可愛いですな…。」
「時代が変わったようだ…嬢ちゃんみたいなのがパイロットだとはな…
だが…今まで我が軍のゾイドに勝利できたのはそのゾイドの性能の
おかげだと言うことをわすれるな!!」
などなど、こちらはこちらでかなりの騒ぎになっていた。
「では…行きますよ。」
ウォンのデスザウラーが構える。
「この構えは…。なるほど…。」
カンウのコックピット内でマオが呟く。
その時。デスザウラーの右爪が光り出した。レーザークローとは違う。何か別の…。
「はあぁぁ!!気斬剣!!」

気斬剣とは、竜王流格闘術の秘技の一つであり、武器に気を込めることで
その武器の破壊力を何倍にも高める技である。
その技の開発者「リク=オーハイ」は竹ひごで鉄をも切り裂いたとされる。
                          鋼獣書房刊「世界の秘拳」より
153格闘対格闘:03/07/13 18:13 ID:???
デスザウラーがもの凄い速度で跳ぶ。そしてその光を放つ右爪を
カンウに対し振りかざす。
素の爪でもゴジュラスギガの装甲をえぐる力を持っているのだ、
この技を食らえば一溜まりも無い。
しかしカンウは避けようとしない。
「少尉!!」
その戦いを見守るラインが叫んだ!!
次の瞬間、信じられないことが起きた。
ガキン!!というもの凄い金属音と共に、止められたのだ。気斬剣が・・
たちまち光を失うデスザウラーの右腕。そこにはデスザウラーの右腕を
同じく右腕で受け止めるカンウの姿があった。
「な…何ですと…?私の気斬剣が…?」
「あなた…最初の構えの所で何となく思ったんだけど…
やはり竜王流格闘術の使い手みたいね。」
マオが先ほどまでの焦りが嘘のように冷静に言う。
「な!!なぜその事を…く!!」
再度デスザウラーが腕を振る。しかしカンウは素早く追撃モードに変形することで回避。
むなしく空を斬り、スキが出来たデスザウラーの軸足である左足に
カンウがクラッシャーテイルを叩き込んだ。
「うおわああ!!」
デスザウラーの左足がひしゃげ、そのまま倒れ込んだ。

その映像を見ていた帝国将官ズも驚く。
「なに!!?あのウォンが!!?」
「ウォンめ…小娘だと思って油断したな?」
「あの娘。見かけ以上の実力だぞ…。」
154格闘対格闘:03/07/13 18:14 ID:???
「どうしたの?さっきまでの冷静さは何処に行ったのかな?」
「お…おのれええ…。」
倒れているデスザウラーに対しマオが言う。
完璧に立場が逆転していた。
ウォンはデスザウラーを素早く起きあがらせ、また技を出す。
「うおおお!!千手観音拳!!」
「うわぁぁぁ!!デスザウラーの腕が八本になったー!!」
マオとウォンの戦いを見守る兵士の一人が叫んだ。
そう、その兵士のデスザウラーの腕が八本になっているのだ。

千手観音拳とは、竜王流格闘術の技の一つであり、もの凄いスピードで腕を動かすことで、
千手観音のように腕が増えたように敵に錯覚させる技である。
                          鋼獣書房刊「世界の秘拳」より

「どうだ!!食らええ!!」
そのまま突撃するデスザウラー。しかしマオに動揺は無かった。
「フン、その位の数までしか増やせないの?」
「うおお!!少尉のカンウの腕も増えたぞー!!こっちの方が数が多いぞ。」
「何!!?」
敵も味方も驚きまくっていた。
何とマオのカンウまで千手観音拳をやっていたのだから。
しかもウォンの千手観音剣拳よりも数の多い十六本。
「そんな馬鹿な!!こんな小娘に竜王流格闘術の技が出来るわけ…うおおお!!」
互いにすれ違うカンウとデスザウラー。
勝ったのは無論カンウであった。デスザウラーは所々の装甲がベコベコになっている。

一方その戦いを見ていた帝国将官ズはもう愕然としまくっていた。
「非科学的だ…。」
「もうドラ○ン○ールの世界だな…。」
「筆者はゾイド世界に硬派を求める連中に叩かれるな。確実に…。」
「ていうかあんなのが本当にできるんか?」
155格闘対格闘:03/07/13 18:15 ID:???
「何でなんだ…この技一つを会得するのにも私は何年も修行したのだぞ。
何でこんな小娘が…。」
コックピット内のディスプレイを叩きながら叫ぶウォン。
「ん…小娘…?ハッ…ま…さ…か…。」
その時、ウォンははっとなった。

それは数年前、ウォンが十年以上の長きに渡る修行の末、
竜王流格闘術の免許皆伝を受けた後のことであった。
山を下りようとするウォンに師匠が言った。
「ウォンよ…世の中上には上がいる。免許皆伝を受けても、
その事をキモに命じて精進するのだぞ。
現にお前が何十年も賭けた修行を一年足らずでクリアしたヤツもいたのだからな。」
師匠の突然の一言に驚くウォン。
「ここの修行をたった一年で!!?一体誰が…。」
師匠が応える。
「信じられん話だろうが…というかワシも今だに信じられん…。
何年か前…丁度お前が別の山で修行していたときだった。
一人の娘がここの門を叩いたのだ。まだ十三歳くらいの少女だった。
しかし、その少女はワシらの常識すらも越えて強かった。
何とこのワシですらも何十年もかけた修行を
たったの一年足らずで突破し、そのまま山を下りていったのだ。
そして…その娘の名は……。」

「お前の名は何という…。」
「ヘ?」
ウォンがマオに言う。
「名前なんて聞いて何か良いことあるの?」
「お願いだ!!とにかく教えてくれ!!」
「マオ=スタンティレルだけど…。」
「な……………。」
156格闘対格闘:03/07/13 18:16 ID:???
沈黙が続く。
「やはりお前だったか。竜王流格闘術での修行をわずか一年でこなした娘というのは…。」
「まあ、そんなこともあったかな。もう昔の話よ。」
マオは顔をぽりぽりとかきながら言う。

「……………。」
またも沈黙が続く。
「すっげー!!よくは分からんが少尉ってすげー!!」
回りからざわめきの声が挙がる。

一方帝国将官ズも
「おい…てーことは…あの娘はウォンよりすげえって事じゃないか…?」
「だとしたら勝ち目無いじゃん…。」
「うひょー!!」
もう大騒ぎであった。

「そうか…お前が…。だが、こちらも竜王流格闘術を免許皆伝した男だ。
負けるわけにはいかん!!竜王流格闘術最終奥義…。」
ウォンのデスザウラーが全身に力を入れ始める。
まるでド○ゴ○ボ○ルの要に全身からオーラが出ている。
「はあ…また猿真似?」
マオはため息をしながら言う。
そう言うとカンウの姿がシュンと消えた。
またも敵も味方も大騒ぎ。
「少尉が消えた!!」
「どこだ!!?どこに行った!!?」
「○と○尋の神隠しか!!?」
敵も味方もキョロキョロと探し回る。
157格闘対格闘:03/07/13 18:17 ID:???
次の瞬間、突然ウォンのデスザウラーの眼前にカンウが現れた。
「な!!いつの間に!!」
突然の出来事に驚いたウォンはとっさにカンウにつかみかかる。
しかし、つかめなかった。突然カンウかき消えたのだ。そのまますりぬけるデスザウラー。
「ハハハ!こっちよこっち。」
マオの声が聞こえる。
声の来た方向に大急ぎで向くデスザウラー。
「うおおおおお!!」
信じられないことが起きた。なんとカンウがたくさんいるのだ。
一,二,三,四,五,六…締めて十体いる。
しかし本当に増えたのではない。目にも留まらぬもの凄い速度で移動することで
相手にあたかも自分が分身しているように見せているのだ。
先ほどあった千手観音拳と同じ理屈である。
「これぞ!!必殺分身分身殺法!!」
マオが叫ぶ。十人に分身してるので妙に声がハモって聞こえる。
「すげーや、少尉…もう完璧作品かわっちまったー。」
「もう完璧○ラゴ○ボー○の世界やね。」
「もうどうなってもいいやー。」
ライン以下、友軍パイロットその他たくさんは
完璧に開き直り、さわやかな笑顔を振りまきながら
そんなこと呟いていた。
が、ウォンは相当にビビリまくっていた。
「うおおお!!こんな技!!竜王流格闘術にも無いぞぉ!!」
初めて見る技にとまどいを隠せないウォン。最初の頃の冷静さは何処へ行ったのか。
「だってこの技あたしが考えたあたしのオリジナルホールドだもの。」
分身しながらマオが言う。
158格闘対格闘:03/07/13 18:18 ID:???
「あなたとあたしの決定的な違いは教えられた技を昇華させて
新たな技を作り出したか作らなかったかよ!!単なる教えられた技を猿真似するだけの
あなたはあたしには勝てないよ!!」
そしてそのまま十体に分身した状態でカンウがデスザウラーに跳び蹴りをかます。
蹴り回数は一回だが、十体に分身しているので合計十回撃ち込んだことになる。
しかも他の皆様にはそれらを同時に撃ち込んだように見える。
全身の装甲がベコベコになり、デスザウラーはその場にゆっくりと倒れ込む。
既にカメラアイも点灯していなかった。
デスザウラーを蹴り終わった後、空中で分身を解き、一体に戻り、着地するカンウ。
「おー!!すっげー!!何かよくわからんが少尉が勝ったー!!」
一斉に歓喜の声が挙がる。

一方帝国将官ズは
「ハハハ…始末書が…一枚…二枚…三枚…。」
「あいつは人間じゃない…人間の皮を被った悪魔だ…。」
「いや…ヤツはサ○ヤ人だ…。」
もう凄いことになっていた。
159格闘対格闘:03/07/13 18:20 ID:???
その時、またもカンウにデスザウラーから通信が来た。
虫の息のウォンはマオに言う。
「私の負けだ…。確かに私は…嬢ちゃんの言うとおり…精進を…
怠っていたかも…知れないな…。
負けるなよ…嬢ちゃんこそ最強だ…………。」
そう言い残し、ウォンのデスザウラーは爆発四散した。

「悪いけど…私より強いヤツは…いるよ…。」

マオは帰り際にそう一言だけ言うのであった。

                終わり

              
               次回予告!!

帝国軍の新たな刺客!!超最新型セイスモサウルス軍団出現!!
セイスモサウルス軍団の超パワーに苦戦を強いられるマオとカンウ。
その時意外な味方増援が…?

次回「超最新型の恐怖」に戦闘開始!!
160山崎 渉:03/07/15 12:07 ID:???

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
161名無し獣@リアルに歩行:03/07/15 12:28 ID:FT0+10RK
密かに良スレなんだよね
急な山肌を駆け上るゴジュラス・ギガのコクピットでツァラ=ルクレット少佐、その若い将校は考えていた。
あれが一体何だったか。
目の前の岩肌から突然桃色の光が伸び、随伴していたゴルドスを丸々一機ともう一機の半身をコクピットごと。
それとついでに古代チタニウム装甲付きの左腕を一つ。
ほんとうについでと言わんばかりに、あっさり気体に変えてくれたのだ。

(荷電粒子砲か)

しかしあんな出力の物は聞いた事もない。
全くもって、
聞いた事も無いような出力の荷電粒子砲など見たくも無かった。
恐らくあれを放った機体こそ、この任務の目標なのだろう。
帝国の新型。そうとしか告げられてはいないが間違いない。
あんな事をやってのける機体が目標でなくて、ギガをこんな辺境に回す筈が無い。

じきに頂上という所で麓に向かって共和国式の敬礼を一つ。
「諸君等の死を無駄にしない」という意味と、パイロットごと頭部を亡くしたゴルドスの最後の頑張りに感謝の気持ち。
桃色の光に殺される直前に作動したジャミングを、未だ続ける背鰭の機械獣に感謝の気持ち。

(お陰であたしは生きてるわ)。

次に、あの憎たらしい桃色の来たおおよその方向に共和国式の「地獄へ堕ちろ」のゼスチャー。

(すぐに殺すわ)。

頂上に着き、キャノピーを開く。
コクピット内の、沢山のレバーやボタンからも手を放す。
両目をまん丸に見開いて視界全部を同時に睨む。(射ってきなさい)。
カメラからモニターまでのケーブルだとか、脳から筋肉に送る電気信号じゃ遅すぎる。
光の速さと精神リンク。コンソールに突いた手のひら一枚。それだけが頼り。
桃色が閃いて、怒りと憎しみと恐怖と、あと復讐できる喜びをツァラによこす。
今だけツァラの物になった、200tの体を支える脚が曲がって危ないところで光をかわす。
斜面を落ちる200t。ツァラは駆けているつもりなんだろうけど歩幅が大きすぎて落ちてるようにしか見えない。

光の方へまっしぐらに駆ける。シールド防御も忘れて駆ける。
目の前が淡く光る。
空気が焦げるのを感じて鉄塊になった自分の体を傾けると、一瞬前の、ギガの頭が蒸発する。
自分のギガの反応に驚きながら駆ける。吐きたい程の恐怖を感じてそれでも駆けて、
「帰ったら、オマエのスペック丸ごと塗り替える報告が出来るわ」
そう言って駆ける。少し笑って、また駆ける。

少し大きめの岩山を迂回して、大きめの窪みを跳び越えて、赤いディメトロドンの頭を踏み潰して、腰くらいの高さの岩を跳び越えた所で、
二つ前に意識した物が敵だと気付く。
次に意識に入ったのは長い首と長い尻尾と長い竜。敵。恐らく目標。多分仇。

その竜は一瞬ひるんだような素振りを見せ、しかしギガの損傷に気付いて笑った。
勿論機械獣にそんな表情など有るわけは無いが、ツァラとギガにはそう見えた。
どっちにしろ中のパイロットは笑っているに違いない。
視界の外からの一撃。
吹っ飛ばされたのが左だから、多分右からの攻撃。多分尻尾。
次の攻撃は見えた。その竜、セイスモサウルスの牙がギガの肩に食い込む。
しかしこれは油断が過ぎた。そんなかわいい顎じゃ古代チタニウムは貫けない。
ギガが思い切り腕を振るとセイスモは堪らず首を引き上げ、後ずさりする。下顎は砕けて地面に落ちた。
セイスモのパイロットも目が覚めたらしい。格闘戦でギガに敵う筈が無いと。
気が付いたらしい。超収束荷電粒子砲、ゼネバス砲なら殺せると。
しかしギガの方が速い。
この距離ならギガの方がずっと速い。
荷電粒子のチャージが終わる前に二歩、踏み出して頭を噛み潰して終わりだ。
精神リンク、最速の操縦で、ツァラはギガにそう命じる。
が、遅い。脚に力が入らない。
踏みつぶしたディメトロドンの頭には濃硫酸砲が付いていた。その所為だ。内部が酸で溶けている。
・・・憎たらしい閃光が、今度は目の前で閃いた。

(糞。また笑ってる。顎も無いくせに。)

閃光は胸部装甲を貫き、内部回路を貫き、ゾイドコアを貫き、背部装甲を貫き、最後に背鰭を溶かして抜けていった。
ギガは吠えなかった。断末魔をやらなかった。
その代わり、一つ激しく頭を振った。
でも吹っ飛ばされたツァラが怪我をしないようになるべく優しく、激しく頭を振った。

ツァラが次に目を覚ましたのはふかふかのベッド。
仲間と、安息と、粉っぽいココアが有って、左腕の感覚が無い。
完全な精神リンクはギガの失った左腕の感覚をツァラにも手放すことを強要したのだ。
ツァラはそれを嬉しく思った。ギガと繋がった証拠が嬉しかった。

・・・この後、彼女は二機のセイスモサウルスを墜とす。
そして最後に使用したゾイド核砲に巻き込まれ、帰らぬ者となる。
165名無し獣@リアルに歩行:03/07/20 17:15 ID:???
>>162-164
感動しますた・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

オレにそれほどいい話は書けそうにない・・・
でもガンバリまつ・・・
166 ◆.X9.4WzziA :03/07/20 23:45 ID:???
>>162-164
自分も、いいものが読めて感動。

>その竜は一瞬ひるんだような素振りを見せ、しかしギガの損傷に気付いて笑った。

このくだり!会心ではありませんか?
それにしても購入数日以内でこういうのが書ける人って羨ましいです。
自分も、久々に投下します。どうぞよろしく。

【第一章】

 谷の入り口を封鎖しているのは、人の十何倍もある鋼鉄の門。だが遠ざける対象は
もっと別のものらしく、その両脇には何分の一も小さい「人専用」の通用門が開放さ
れており、時折行き来が見受けられる。
 左側の通用門から出てきたギルガメス。ボサボサの黒髪、大きめのTシャツに半ズ
ボン、素足に運動靴というありふれた格好。同じ年頃の少年少女と比べれば背は低く
痩せた体躯の持ち主たる彼の、大きめで円らな瞳は心無しか澱み、真一文字に結んだ
口も今にも歪みそうなのを辛うじて堪えているように見えてならない。そして何より、
左の頬に赤々と広がる張り手の跡が今尚鮮明で実に痛々しい。
 とぼとぼと一人、俯き加減で歩いてゆく。彼の前方は、巨大な鋼鉄の門から続く太
い道を中心に大きく開かれ、その両脇には金属生命体ゾイドの群れが地面に描かれた
白線に従い、しゃがんだり寝そべったりして待機している。
 門の奥の方から鳴り響く砲声。音に釣られて、若いゾイドがキョロキョロと周囲を
見渡したり、白線内をうろつき始めたりする。そうかと思えば、傷付いて横たわり、
今まさに治療中のゾイドもいる。…ここはゾイドバトルのスタジアムの外れにある、
試合出場ゾイドが控える「ゾイド溜まり」だ。
 やがて見えてきた、ギルの相棒。白線内で伏せたまま大あくびをする、人を包み込
む程に大きな竜。長い尻尾、爪の鋭い手足は平凡ですらあるが、背中には二枚の翼、
それに六本の長い鶏冠が生えており禍々しいことこの上ない。そして彼を染め上げる
果実の赤色。かつて「魔装竜ジェノブレイカー」と徒名されたが今は殺戮を象徴する
「ジェノ」の称号を捨てたゾイド。この星に数多の伝説を作り出した無双の勇者は、
これからゾイドバトルを目前に控えているにも関わらずのほほんとしており何とも気
楽なものだ。
 ギルが戻ってきたことに気付いたブレイカー。背を反らして伸びをすると、ギルに
頭を近付ける。
 顔を上げたギルは相棒を見つめると、両手を広げて受け入れ、頬を寄せ合った。…
心無しか、妙に長く感じられる。
 やがて挨拶を終え、ブレイカーの足元にしゃがみ込み、膝を抱えたギル。
 そのまま、数秒。地面を見つめている内に。
 発作のように、震え始める肩。
 歪んでいく表情を隠すように顔を臥せる。
 それでも、零れてしまう嗚咽。
 相棒が心配そうに顔を近付け、覗き込む。
 道行く人も、又彼らの周囲で待機している人やゾイドも怪訝そうに光景を眺めてい
た。…彼の挙動は不自然極まりない。ゾイドバトルに敗北して泣くウォリアーなど珍
しくもないが、彼の相棒には傷一つついていなかったのだから。

 鋼鉄の門がゆっくりと開く。その奥見えるのはグスタフ一匹。三日月型の胴体を幾
つも列ねた身体を持ち、背中を丸める姿が半月のようにも、満月のようにも見えるこ
とから「月相虫」との徒名がついている。グスタフは体力自慢のゾイドゆえ、当然な
がらその後ろには自分自身(或いは、ブレイカー程の大きさのゾイドだ)が乗る程巨
大な貨車を引いている。
 貨車の上には例によってゾイドが一匹乗せられていた。…竜、それも蛟(みずち)
の姿をしたゾイドだ。…鈍い赤色の皮膚の上、纏うは鋼と銀色に塗られた甲冑。背と
胸にポッカリ開いた穴の中から何丁もの銃口が見える。体格は魔装竜より一回り小さ
いが、代わりに首は三倍程も長く、表情は鋼鉄の仮面で隠されていた。人呼んで鉄面
蛟(てつめんこう)ブラキオス、元々は水辺や海辺に生息することから漁師や水師、
果ては海冦(かいこう)達が愛して止まない仮面の騎士だ。
 ブラキオスは四肢を畳み、首を丸めて寝そべっていた。胴の辺りには男が一人、腕
を組み寄り掛かって座っている。褐色に彩られ、鍛え抜かれた筋肉。その上を固める
のは袖の無いシャツとジーパン。首には東方の原始宗教の神を模したお守りをぶら下
げている。髪型は五分刈りで一見清々しい印象を与えるが、顔には少々皺が目立つ。
 男に顔を近付けるブラキオス。
「…ああ、俺も気が付いたよ」
 相棒らしいこのゾイドの呼び掛けに応じた男。すっくと立ち上がるとグスタフの頭
部コクピットに向かって呼び掛けた。
「お〜い運ちゃん、『溜まり』から出たところで待っててくれ!」
 近付いてきた男を目に止めたブレイカー。すかさず低く身構える。天を衝く程逆立
つ鶏冠。大きく広げた翼。そして顎を外れんばかりに大きく開き、唸り声を上げる。
 だが、男は意に介さない。それどころかブレイカーの真正面に立つと涼しげに微笑
んでみせる。
 程なくして、威嚇を止めたギルの相棒。そのまま地面に伏せ、但し首だけは持ち上
げ男の行動を見守ることと相成った。
 ゾイドの了解を得たことに満足した男。そのままギルの右隣に座り、軽く肩を叩く。
「君、どうした…?」
 顔を伏せ、嗚咽を漏らしたままのギル。
 男はじっとギルを見つめていたが、やがて彼とは正反対の方向に視線を移した。
「見ず知らずの人が相手だから言えることもあると思うよ?」
 それでもギルの嗚咽が止まることはない。だが、一瞬肩の震えだけは止まった。
「逃げ…られ…たんです…」
 絞り出すように呟く。
「…『逃げられた』?ガールフレンドに、かな?」
 嗚咽がぴたりと止む。すぐさま顔を上げ怒鳴り散らすギル!
「今日の対戦相手に、ですよ!今日で三ヶ月と半月、どこのチームに試合を持ちかけ
ても断られっぱなしだ!こんなんじゃあ僕もブレイカーや先生も暮らしていけない!
…だから、だから久し振りに試合が決まった時は本当に助かったと思ったのに、今日
になってキャンセルするなんて…畜生、畜生…」
 最後の方は言葉にならず、又顔を伏せて慟哭する。
「…う〜ん、君達の対戦成績は?」
「十五回…戦って…十五回、勝った…」
「負けなしか。成る程ね…」
 大体理解した男。…この少年と相棒は、勝ち過ぎて「干された」のだ。因みにC級
(最下級)ゾイドバトルチームもランクの更に下の方になると、一試合の賞金でチー
ムの維持費数日分が精々。それ故大抵が都市警護や開墾、ゾイド猟などといったアル
バイトの傍ら、三日〜一週間に一回のペースで試合をこなす生活を強いられるのであ
る。こういうレベルで干されたギル達の困窮の度合いたるや相当ひどいものだと伺い
知れる。
 こんなどうしようもない時、一番良いのは「黙って愚痴を聞いてやる」ことかも知
れない。
 だが、やがて男が口走った一言は寧ろ「火に油を注ぐ」類いだった。
「…でも、さ。たった三ヶ月半で良かったよ」
 すかさず顔を持ち上げるギル。泣き腫らし充血し切った瞳で男を睨み付けると、溜
まっていたものを一気に吐き出す。
「何…?今、なんて言った?
 『たった三ヶ月半?』どうして人の泣き言を長々と聞いているのかと思ったら、何
だよ金持ちの冷やかしかよ!ふざけんな!」
 だが男は動じることなくギルの怒りを穏やかな表情で受け止めると、ふと、視線を
外して呟いた。
「…俺さ、もう三年も試合してないよ」
 ギルの口から衝いて出る罵声が、止んだ。
 ジーパンを捲ってみせる男。臑から腿に掛けて、手術の後がくっきり刻まれている。
生々しいものを目にしてギルは声も出ない。
「治療やらリハビリやらでそれだけ掛かっちまったのさ。
 それでも、ようやく試合に耐えられる身体にまで復調したから、今日は久し振りに
俺が所属してるファームの試合に『控え』でエントリーされたよ。だけど結局出番は
回ってこなかったから、こうして引き上げてきたってわけ」
 ファームとはゾイドバトルチームと契約して興行を取り仕切るプロダクション的組
織のことだ。大規模なゾイドの放牧場を持ち、所属チームに試合を提供して賞金・興
行収入などの一部を売上とする。尚、ゾイドバトルは個人戦かそれに近い規模で展開
されるのが一般的だが、それとは別にファーム同士の対抗戦も存在する。殆ど軍事演
習に近い規模で行なわれるもので、こちらも人気が高い。
 ギルは男の話を聞いている内に、氏素性が大体理解できた。男は相当な実力者であ
る。それがファームに所属できる条件でもあるのだから。
 しかし、だとすれば…だ。
「…あの…」
「ん?」
「三年、試合してないってことは、ファームとの契約の方は…」
「オーナーには言われてるよ。復帰戦で負けたらクビだってね」
 ゾイドバトルチームは所詮零細企業だ。中でもファームと契約するチームは相当な
ものを依存するため、契約が途切れた場合は解散、ウォリアーは大抵の場合引退の憂
き目にあう。
 それにしても、クビか。クビなのか。ギルは幸い、この言葉をリアルなものとして
突きつけられる年齢でも立場でもない。試合がないならアルバイトに精を出すという
ずるい抜け道もある。だが男は、下手をすれば数日後に否応もなく自らの命運を掛け
て戦う羽目になる。二人に突きつけられた状況の何と大きな違いであろうか。
「…怖く…ないですか?」
「ああ、怖いね」
 遠くを眺めながら微笑して答える男。
 そしておもむろに、ギルに視線を合わせる。
 男の年格好からすれば、ちょっと想像つかない位美しい要素が垣間見える。
「でも、気持ちが負けたら何もかもおしまいだろ?」
 息を呑むギル。何と澄んだ瞳の輝きだろう。
 眩しすぎた男の視線にギルは目を反らさざるを得なかった。慌てて腫れた両目を右
手で拭う。
 二度、そして三度。
(…あれ?)
 厳しくも激しくもないが実に直視し辛いこの視線、どこででも見られるような代物
ではない。…そんなものによって脳の片隅がくすぐられるような感覚を受けるのは、
何故だ!?
 ギルの、まだ何分の一も埋まっていない記憶の日記帳が瞬時にめくられていく。…
そして。
 ついて出た言葉。
「五回目のランバート賞をとった試合…テレビで見てました。
 次の日、貴方は僕の通ってた学校で講演してくれた…」
 年間の最長時間試合の勝者を表彰するのがランバート賞だ。ギルの言葉に男は目を
丸くした。一瞬の呆気の後、ややトーンの高い返事。
「ああ…懐かしいな、それ。あの時の生徒だったんだ。因果なものだね」
 おもむろに、ギルの前に拳を伸ばしてみせる。
「まあ頑張ろうよ。俺は全く諦めてないんだ。
 五年位あと、世界王者の俺達に君のチームが挑戦するってのはどうだい?」
 初めて笑みを浮かべたギル。実に突拍子もない男の言葉ではあるが、しかし何故だ
ろうか?少し、いい気分だ。
 無言で、頼り無げな位ゆっくりだが、ギルも拳を伸ばし、男の腕と交差させる。
「よ〜し、五年後のタイトルマッチ、契約成立だな!
 それじゃあ、相棒を待たせてるからさ。こんなことで泣いてちゃダメだぞ!」
 男はすっくと立ち上がり、先程グスタフが行った道を走っていった。
 その姿を目で負い続けるギル。やがて消えると伸びをして仰向けになった。先程と
はうって変わって実ににこやかだ。急な変貌に気付いたブレイカーは、ゆっくり顔を
近付け、不思議そうに覗き込む。ギルは相棒の顎を撫でてそれに応えた。
 …と、そこへ。早歩きで近付いてくる音。顔を持ち上げる何者かを確認するブレイ
カー。
 音の主は、ギルのすぐ近くで立ち止まるとさっきまでのブレイカーと同じようにギ
ルの頭上に覆い被さり、その顔を覗き込んだ。
「ギル?さっきは、ごめん…」
 紺色の背広に身を固めた男装の麗人。すらりとした肢体、やや面長で端正な顔立ち
に、肩にも届かない位さっぱりとした黒い短髪。頭上にはサングラスを乗せている。
いつもなら恐ろしく鋭い眼光を放つ切れ長の蒼い瞳は、この場では妙に嫋やかだ。
 彼女の視線に驚いたギル。慌てて身を起こす。目前の女性が投げかける視線はいつ
だって彼を動揺させる。元々それ位表情豊かな彼女ではあるが、彼は大いに尊敬して
いるからいつもこう呼んでいる。
「エステル…先生…」
【第二章】

 双児の月と、無数の星々が照らす晩。
 小高い丘の凡そ半分近くを占拠しているのはブレイカーだ。首をゆっくりと、気持
ち良さそうに回している。…この勇者は主人に「油」を交換してもらったばかりだ。
ゾイドにとって油は「潤滑油」であり、人間における水分に相当する。これを巨体で
も速やか且つ効率良く吸収するために、ゾイドの全身には油を注すための穴が隠され
ている。野生ゾイドなら油の海に身体を漬かり、主人のいるゾイドなら主人に専用の
カートリッジを交換してもらって油を「飲む」のだ。
 そのすぐ近く、四方を狭く衝立で囲った場所からは湯気が上がっている。内側には
馬鹿でかく錆びた鋼鉄の筒が立っており、中には湯が、下部には火が焚かれている。
この筒に首まで沈め、相棒同様気持ち良さそうな表情をしているのがギルガメスだ。
…太古の昔から戦乱が繰り返され、その度無茶苦茶な武器が使用された惑星Ziでは、
このような「風呂桶に丁度いい空薬莢」がそこかしこに転がっていたり埋まっていた
りするものである。
 風呂場の反対方向にはテントが二つ、中央には折り畳み式のテーブルが一つ、椅子
が二つ。そのすぐ近くには薪が燃やされ、エステルが夕食を作っている。既に背広は
着替え、ベージュ色で袖が長く襟のないブラウス、紺のロングスカートにサンダル履
きという地味な格好ながら、背が高く足の長い彼女が着ると洒落て見えるから不思議
なものだ。…彼女のいる辺りから離れ、ブレイカーと反対の位置にはビークルと、そ
こそこの資材が大きな布に被され、置いてある。惑星Ziの典型的なキャンプの風景。
…注意しなければいけないのはZi人は少人数では平地でキャンプなどしないことと、
もしゾイドを伴わないキャンプであるなら大型ゾイドの心音を発する「ゾイド除け」
を必ず用意しているということだ。
 夜空を見上げ、沁み入るギル。…ここ数カ月、自身のバトルのことしか頭にない日
々がずっと続いていたのが、今日の出来事で少し我に返ることができた。そう、彼だ
って他の少年少女同様、優れたウォリアーに憧れてこの道を志したのだ。昔のことを
思い出し、ギルは神妙な面持ちだ。
 あの人は今、どこで何をしているんだろう。
 男も又、同じ月を眺めていた。
 依然、ブラキオスが寝そべったままのグスタフの荷台の上。見渡す限りの荒野に吹
く夜風は流石に冷たく、男は相棒の背部・コクピットに乗っている。只ハッチは開け
た状態で、彼は夜空を見上げながら1リットルは入るだろうペットボトルを時折口に
運んでいる。…気になるのは中身だが、男は酔った雰囲気を少しも見せはしない。
 ふと、首を少し持ち上げたブラキオス。仮面の奥から眩い光が零れ出す。
「旦那!大変だ!か…囲まれちまったみてぇだ!」
 コクピットに飛び込んできた通信はグスタフのパイロットからのものだ。
「…成る程。シールドライガーが一匹、コマンドウルフがひい、ふう、みい…四匹か。
全く面倒くさいな」
 相棒がモニターに映し出してくれた情報を確認する男。
「運ちゃん、こういう時の心得はわかっているな?」
「勿論でさぁ、旦那。この場合は『多勢に無勢』一人でトンズラしても、二手に分か
れて襲われるのがオチってもんです」
 グスタフのパイロットの一言に男はにっこり微笑んだ。
「よーし、わかっているなら話は早い」
 徐々に速度を落とし、やがて停止するグスタフ。月相虫は月明かりに照らされなが
ら半月の形でじっと留まる。
 荷台から降りてきたブラキオス。
 やがて一行に近付いてきた、五匹のゾイドの影。
 一匹はブラキオスより一回り程大きい。四足を地につけるものの四肢は長い。つま
り「竜」ではなく「獣」の類いだ。全身の至る所が鉄の肌むき出しだが、只一ケ所首
の周りだけは錣(しころ。兜の首部分を覆うもの)のような装甲で守られている。か
つてヘリック共和国は自国の主力だったこの系譜のゾイドをひたすら「獣王」と触れ
回ったが、東方では寧ろ地球人が伝承した動物の姿に例え「鬣獣」(りょうじゅう)
と呼んでいる。このゾイドは錣を盾に見立てられ、「盾をかざす鬣獣」即ち「盾鬣獣」
と名付けられた。…又の名を、シールドライガー。
 残る四匹も四足獣だ。こちらはブラキオス並みの体格で、ところどころ鉄の肌が見
えるが盾鬣獣程ではない。精悍な顔立ちながら耳は大きく、腹部から尻の方に掛けて
二本の管が伸びている。ここから瞬時に煙幕を放ち、相手の目を眩ませるのがZi人
なら誰もが知っているこのゾイドの秘技の一つだ。神出鬼没の戦いぶりとやはり地球
人伝承の動物に姿と鳴き声が似ていることから「神機狼」と東方では呼ばれている。
又の名を、コマンドウルフ。
「どいつもこいつもガワ(皮)が白いときたか…」
 白はヘリック共和国軍のシンボルカラーだが、勿論こんな荒野に軍の部隊がウロウ
ロしているわけがない。
「よーぅ兄ちゃん、今すぐ金目のものとゾイドをこちらによこしな!」
 下卑た怒鳴り声。シールドライガーのパイロットが送ってきたものだ。
 だが、男は動じる様子を少しも見せない。背部ハッチを開き、周囲をぐるりと見渡
すと飛び出る一喝。
「ふん、そんなに欲しけりゃ実力で奪え!」
 その一言に、五匹のパイロット達が失笑した。
「おいおい、たかがブラキオス一匹で何ができるってんだぁ?構うこたぁねぇ、お前
ら、やっちまえ!」
 子分に指令を下すシールドライガーのパイロット。同時に、地面を二度、三度と蹴
り始めるコマンドウルフ達。
 男も再びハッチの中に戻る。座席に固定される身体。握りしめられるレバー。
 一斉に、大地を疾駆する四匹のコマンドウルフ。ブラキオスの目前で、いずれも宙
に舞った。
 直後。コマンドウルフのパイロット達が見たもの。
 ごく自然な体勢を維持していたブラキオスが、突如だらりと、首を下げる。…と、
その瞬間。
 左の前足を大きく開く。巻き上がる砂塵。
 夜空に弧を描く、ブラキオスの頭部。ハンマー投げのごとき勢い。
 一瞬の遠心力により重い…重い鉄球と化した鉄仮面は、四匹のコマンドウルフを残
さず捉えてはじき飛ばす。
 不自然な姿勢で落下していく白いゾイド達。それでも、相手パイロットの一人は何
とかしてコマンドウルフに受け身を取らせようと試みる。
 だが…彼は見せつけられた。ブラキオスの背中から突如蠢いたもの。棒状のその先
端から放たれる光の矢。今まさに落下していく四匹の腹部へ、次々と、正確に突き刺
さっていく。
 ド、ド、ド、ドスン。揺れる地面。
 頭を、或いは胴体を地面に叩き付けたコマンドウルフ達。各パイロットは慌てて起
き上がらせようとするが、どれもこれも、うんともすんとも言わない。
「な、なななな何だぁ!?」
「…これが『たかがブラキオス一匹』の実力だよ」
「ええい畜生っ!」
 残されたシールドライガーが単騎で突っ込んでくる。前方にかざす虹の盾。ブラキ
オスの目前で…跳躍!
「フン、シールドライガーにしてみれば最高の形だな。鉄壁のエネルギーシールドで
突っ込み、左右いずれかの爪の一撃で勝負を決める、か」
 男の声を聞いての判断か、今度は首を持ち上げるブラキオス。
 その頭上より十数メートル離れた辺りで、シールドライガーが右腕を水平に構える
が…!
「けどなぁ、一流は激突寸前まで手の内を明かさないぞ!」
 両前足を勢い良く蹴るブラキオス。首が伸びる!
 虹の盾の隙間を縫って繰り出される盾鬣獣の右腕の付け根目掛けて、叩き込まれる
鉄仮面の騎士の槍の一撃。
 盾鬣獣が、天高く吹っ飛んだ。やがて、地面に激突。一度、二度…いや!
 瞬時に止む衝撃。だが、それ以上の異変。…シールドライガーのキャノピーの外に
広がる、天地の逆転した風景!
 ブラキオスにくわえられたシールドライガーの後ろ足。…逆さ吊りの状態。ブラキ
オスは相手を吹っ飛ばした直後、それが落下するまでに着地点へ一目散に駆け、近付
いていたのだ。
 シールドライガーの胸の辺りがブラキオスのそれに重なる。
「スペックの違いがゾイドの違いなどと勘違いしている素人には、教えてやるよ!」
 引かれるトリガー。その胸に取り付けられた様々な火器が、一斉に火を噴く!
 鉄塊に鉄塊を打ち付ける程の激しい音が、五秒…十秒…。
 やがて止む銃声。ブラキオスがシールドライガーを放り投げる。地面に叩き付けら
れた相手は痙攣し、四肢をひくつかせている。
「ゾイドに罪はない。殺さないでおいてやる」
 五対一の対決に難なく勝利したブラキオスは、雄叫びをあげることもなく只々周囲
を見渡し、睨み付けるのみであった。

 ギルとエステルの夕食は、いつも通りのパンとシチューだった。…只、明らかに具
が少ない。肉は見当たらないし、肉の不足と共に増える筈のジャガイモも昨日より減
っている。それにエステルの分はギルの半分程もない。パンに至っては四分の一だ。
困窮に喘ぐゾイドバトルチームが節約する場合、ゾイド以上にまず人間の消費物が対
象となる。
「あ…あの、せ…」
 着席していたギルはテーブルに並ぶメニューの格差に驚いたが。
「イブに祈りを…」
 エステルはいきなり食前の祈りを捧げ始め、ギルの声を遮る。言い出したら聞かな
いのはこの師弟のそっくりなところだ。渋々祈りに追随するギル。
 一方のブレイカーは二人のやり取りに一瞬首をもたげるが、無事収束したことに満
足すると地に伏せた。…今日、このゾイドに夕食はない。これはチームの困窮とは関
係なく、ゾイドの多くは荒野が広がる惑星Ziに生息する以上、大抵が数日〜一ヶ月
程度の「食い溜め」をするからだ。因みにブレイカーは気が向けば、夜中、一匹で小
型ゾイドを狩りに出かける。…しかし、「食い溜め」によってではチーム・ギルガメ
スの経済事情は少しも好転しない。何故なら「油」の不足が解決しないからだ。各ゾ
イドに適合した油はある程度決まっている上に、毎日消費するため大金をはたいて購
入しないといけないのである。結局このゾイドもチームの困窮の蚊屋の外ではない。
 黙々とパンをかじる二人。申し訳ないと思うギル。だが結局食が進んでしまうのは
年頃故だ。
(又、公式戦が決まるまでは「野試合」の相手を探すしかないのか…)
 チーム・ギルガメスに試合の申し込みがない場合、エステルは敢えてギルに野試合
をさせる(※非公式の賭け試合。ゾイドバトル自体が賭けの対象なので非公式・或い
は違法なものはこう呼んで区別する)。少しでも、ギルの実力向上にプラスになるア
ルバイトをと考えたエステルのアイディアだ。但し共和国やゾイドバトル連盟の監視
下では、そう簡単に野試合は成立しない。
 それでも、今のギルに不安はない。あの男の声が聞こえる。
「でも、気持ちが負けたら何もかもおしまいだろ?」
(そうだ…そうなんだ!僕も頑張らないと…)
 段々頬が弛んでくるのが傍目にも良くわかる。…それを不思議そうに眺めているの
がエステルだ。
 やがて食事を終えた二人。いつもならこの後エステルの講義が行なわれるところだ
が、試合の日は省略され、すぐに自由時間となる。…テーブルの上の、ごく小さな液
晶テレビのスイッチを入れるギル。たまたま映った番組ではゾイドバトルの「珍プレ
イ・好プレイ特集」が放送中だ。時に笑い、時に唸る。そして何度目かの表情の変化
の時に。
「…ねえ、ギル?」
 思わずテーブルの正面を向き直すギル。…エステルが頬杖をついてこちらを見つめ
ている。あの普段は恐ろしく鋭い蒼き瞳が、穏やかではあるが旺盛な好奇心を投げ掛
けるこの瞬間。
「は、ははははい!?」
「何が、あったの?」
 合ってしまった…目と目が。たまらず反らす。彼も所詮、美女の好奇の眼差しすら
受け止め切れない初心な少年に過ぎない。
「…ウォリアーに、会いました。小さい頃からファンだった人です」
 目を反らしたまま淡々と語り始める。
「乗ってるゾイドとかは地味だけど、とにかくしぶとくて、粘りに粘って最後には絶
対勝つっていう人でした。あの頃も僕は泣き虫だったから、この人みたいに強くなり
たかった。
 まさか、今になって間近で会えるなんて…」
「ふーん、貴方にとってのヒーローってわけね?」
 無言で頷く。
「貴方がファンになるなんて、一体どんな人なのかしら?…名前は?」
「名前は…」
 突如、ビークルから呼び出し音が鳴り響いた。

 グスタフの荷台の上。ブラキオスが伏せる。脇に胡座をかいているのはあの男だ。
 男は相棒のブラキオスの首の辺りに油のカートリッジを挿してやる。気持ち良さそ
うに首を振るブラキオス。
「悪いな、ヴァルナ。身体に挿してやるのは帰ってからだ」
 相棒のブラキオスの名前を呼ぶと、脇にあるペットボトルを取り出す。口に含むの
かと思いきや。
 双児の月に向けて掲げる。蓋を開け、頭上に持っていき、そして…。
「ふふ…くっくっ…はーっはっはっはっ!」
 大笑いしながら、中身を己が頭上に注ぐ男。声こそ笑っているが、表情は本当にそ
うか。くしゃくしゃに歪み、その産物を水で隠しているかのようにも見える。
「三年…三年だ!酒も女も我慢した挙げ句の復帰戦がチンピラとの喧嘩とはな!最高
の冗談だ!
 でも、動いた!ランキング相応かも知れないがそれでも動いたっ!」
 ヴァルナという名のブラキオスは、目を合わせることができず夜空を仰ぐばかりだ。
 コクピットから、呼び出し音が鳴り響いた。…笑うのを止め、戻る男。
「…サムリット君、対戦相手が決まったよ」
「ふん、ようやく決まったかクソオーナー。ドタキャンするようなチームじゃないだ
ろうな?」
 モニターに映る紳士然とした男が咳払いする。
「全く、これだから東方人は下品でならん。安心し給え、君に相応しい実力者で且つ
契約不履行などできそうにない位切羽詰まったチームを見つけてきた」
 映し出されたデータ。
 目を丸くした男。
「おい…マジかよ…」
「…はい、はい、よろしくお願いします。…いえ、本当にありがとうございました」
 エステルがビークルのモニターを介して会話し、メモを取る様子を、ギルは目を輝
かせながら見つめていた。間違いない、次の試合が組まれた。今度は直前で逃げ出す
ようなチームではありませんように。
 ビークルの回線を切るエステル。
「…ギル、おめでとう。試合を組んでもらえたわ」
「よーしっ!」
 思わず立ち上がり、軽くガッツポーズを取るギル。
「…で、先生!対戦相手は?」
「ふふっ、慌てないで…」
 表情のコロコロ変わるこの少年を見続けていると時々おかしくて仕方なくなる。テ
ーブルに戻って着席するエステル。ゆっくり決定事項を読み上げる。
「まず、試合は三日後。場所はソイウォンスタジアム。
 対戦相手は…チーム・グンビーラ。ファーム『ヴェッダ』のベテランチームね。
 ウォリアーは、サムリット。ゾイドはブラキオス『ヴァルナ』…」
 …バタン。
 メモから目を離し、音の先を見つめるエステル。
 テーブルに手をつき、目を伏せながらゆっくり着席する音の主。やがて笑い声とも
泣き声ともつかぬ奇妙な声を上げながら肩を、手を振るわせ始めた。
「…ギル?」
「先生…知ってたんでしょ…?知ってて組んだんだよね…」
「知ってた…って!?」
「僕のヒーロー!次の試合で負けたら引退するしかない、その人の名前はサムリット!
相棒はブラキオス『ヴァルナ』!ランバート賞を5回取ったそのチーム名はグンビー
ラ!
 どうして…どうして…ううっ…」
 最後の方は声にもならぬまま、何度も何度もテーブルを叩き続ける。…遅れて、頭
をもたげたブレイカーの目前に広がる光景だった。
181 ◆.X9.4WzziA :03/07/21 00:29 ID:???
続きは明日、又貼ります。
ブラキオスは扱われ方が不憫なゾイドなので、何とかネタにしたいと思っていました。
ジェノザウラーにも負けない精悍な面構えと潜水艦を思わせるコクピットがかなり好きです。
ガイロスがジェノ開発時にこいつを参考にした…なんていう俺設定を考えていたりもするのですよ。
182162-164:03/07/21 07:29 ID:???
リアクション有り難うございますた
セイスモ自体は好きなんです
でもトミーの野郎の身も蓋もねーギガの扱いは嫌いです
鬱憤全部端からブチ込んでった割りに、まとめられて良かった
また何かタマったら書きます
183格闘対格闘作者:03/07/21 10:54 ID:???
>>162ー164
拝見させていただきました。
>>159の予告に書いたとおり、
自分もギガ対セイスモのバトストを制作する予定なのですが、
最初は実際にキットを購入してから取りかかろうと思っていました。
しかし、貴方のバトストに誘発されて、現在予定より早く製作中だったりします。
続き、行きます…。

【第三章】

 雲一つない空になった。この海原に比しても青く。
 その色相を確認できる高さの崖から見れば、一目では納まり切れない位大きな円形
の影が広がっていることがわかる。そして、深い青と薄い青との境目に見えるのは幾
つものブイ。影をぐるりと囲むもの。
 ソイウォン・スタジアム。…スタジアムとは言うが、生命の、ゾイドの故郷に広が
る「珊瑚型ゾイド」の群生地帯をZi人が勝手にゾイドバトルに使っているに過ぎな
い。幸い、所謂「珊瑚型ゾイド」は我々地球人の知っている珊瑚とは違い、思ったよ
りも頑丈且つ獰猛だ。何しろゾイドの幼生を捕食するのだから…。
 崖の上ではブレイカーが佇んでいる。但しいつもなら大あくびを掻いているところ
だが、今日はそんな余裕も見せずキョロキョロ、ソワソワ。無理もない、今日の試合
が決まるまでの成り行きを、当のブレイカー自身がしっかり見せつけられたのだから。
 そのブレイカーの相棒であり、友人であり、そして主人である少年が、このゾイド
の脇を走り込み往復している。更にその脇のビークルの側に立ち、厳しい視線を注ぐ
のが、少年を日々指導する美貌の女教師だ。
 やがて終える、最後の一往復。伏せるブレイカーの頭部の先まで勢いで走り抜けた
ギル。汗を掻き、両膝に手を当て肩で息している。
「…はい、お疲れさま」
 エステルがいつものようにタオルを渡す。…だがいつもなら馬鹿丁寧に返事をする
ギルも、今日は一瞥するとやや乱暴にそれを受け取り、そのままブレイカーの懐に向
かっていった。
 サングラスに隠した表情を曇らせるエステル。…二人は三日前からずっと、この調
子だ。彼女としては申し訳ないという気持ちがある。無理もない、試合の決まり方は
余りに「絶妙」だった。結果的にギルの言い分を一切聞かず目の前で受諾してしまっ
たのだから。
 三日前のあの夜は、それが原因で口論になった。
「…いい、ギル?うちが経済的に苦しいことは今日の食事を見ればわかるでしょう?」
「じゃあ、僕の食費を抜いて下さい。一週間位どうってことないです」
「あのねぇ…。このチームの中心は貴方なのよ?どうして貴方をそんな目に合わせな
ければ…」
「ほんとに中心だと思うなら勝手に試合を決めるな!」
 パチン。思わず口より先に手が出た女教師。
「現実逃避も大概になさい!こういう局面は、ゾイドバトルをやり続ける限り何度で
も直面するわよ?」
 頬を張られた生徒は涙を浮かべながらも女教師を睨み付けた。
「…僕らは負けても次があるのに、あの人は負けたらそれで終わりだ。こんな理不尽
なの、あってたまるかよ!」

 …もし、人生は理不尽なものだともっと昔に説いていれば、少しは彼も納得してく
れただろうか。
 一方のギル。薄暗い、ブレイカーの胸部・コクピット内。素っ裸になると汗を拭き、
すぐに着替える。濡れた衣服をビニール袋に詰め、足元の戸棚にしまうと大きく溜め
息をついた。…足を組み、顔を埋める。ふと、漏れる勇者の嘆き。
「どうすればいいんだよ…」
 ギルが一応の準備を整えたことを確認したブレイカー。コクピット内の電灯が光り、
モニターが映し出される。…だがこういう些細な気配りが今日に限ってはギルの癇に
触る。
「電気消してよ…」
 変わらぬ室内。
「…ブレイカーッ!電気消してって言ってるだろ!」
 両腕を乗せる手すりを思い切り叩くギル。一瞬、微弱な振動。…落ちる電気。
「あ…」
 一変する室内に思わず上げる顔。…だが、簡単な言葉ですら今日のギルはすぐには
口に出せない。
「何やってんだ、僕は…」
 所詮は偽りの夜の帳に、ギルは微睡んで救いを求めることもできなかったのである。
「五分前よ、ギル」
 開いたハッチに首を突っ込んできた女教師。悩む生徒の憮然とした表情は相変わら
ずだが、しかしもうそんなことは言っていられない。
「そろそろ、刻印を…」
 発動させましょうと彼女が言いかけたところでそっぽを向くギル。
「…この試合の取り分は?」
 彼はギャラの配分について尋ねている。
「貴方達が勝てば6:4、グンビーラが勝てば7:3よ。
 …でもね、わざと負けようなんて思わないでね!?」
 言いながらサングラスを頭上に乗せるとギルの頬を両手で掴み、視線を合わせるこ
とを強制する。
 やがて彼女の額に輝く「刻印」を目にして、ひとまずギルは観念したのである。

 海面に身体を浮かべるブラキオス「ヴァルナ」。頭上を、沢山の「鳥型ゾイド」が
舞う。
 ヴァルナは何を思ったのか、ゆっくり…ゆっくりと首を持ち上げ始めた。止めた状
態はやや中途半端な角度だ。
 聞こえるのは、さざ波と鳥型ゾイドの声のみ。
 潮風は、穏やかだ。
 ヴァルナの頭上に、ふわりと近付いてきたもの。…鳥型ゾイドが、一匹。様子を見
ながらゆっくりと着地する。しかし、一切動じない仮面の騎士。それが当たり前であ
るかのように。何しろ、仮面の奥底の光は暖かく穏やかですらある。
 両者が風景となって溶け込み始めた時。一匹、もう一匹と、仮面の頭上に着地し始
める鳥型ゾイド。…その内に、十羽やそこらでは効かない数が、足場と、しばし憩い
のひとときを求めていた。
 この現場を知らずにぶち壊した張本人達も、知っていればもう少し別の方法を考え
ていたかも知れない。
 ヴァルナの左側の向こう・海岸側。
 太く、長い水柱が一本。海面に叩き付けられる雷音。
 折角の賓客が驚き、散っていく。…情緒なき挑戦者の入場に対し、不愉快そうに投
げ掛けられたヴァルナの視線。
 両の翼を大きく広げ着地したブレイカー。その姿がヴァルナの視界に入るまでには、
波紋が足元に到達していた。
 やがて修復されていく海面。膝の下にしか達していないブレイカーに対し、それよ
り体格の小さいヴァルナは肩の辺りまで海に浸かっている。少なくともスタジアム内
の海底は場所によって水深が違うことが伺える。
 試合開始までには、まだ二分程あった。
 額の刻印は眩く光るものの、依然として憂鬱そうな表情のギル。…ふと、彼の目前
に広がる全方位スクリーンに展開されたウインドウ。
「よう、こんなに早く再会できるなんて思わなかったよ!」
 五分刈りの逞しい男・サムリットだ。ギルは声も出ない。
「まさか、君達がチーム・ギルガメスだなんてね…。試合が決まってから驚いたさ」
 わけがわからなかった。何故、対戦相手にこんな親しく話ができる。
「なーんて、思ってるだろ?」
 …図星だ。
「一言、言っておきたかったんだ。
 今日で最後かも知れないし、最初かも知れない。
 どちらにしても、君が相手で、良かった!」
 …だから何故?何故そんな嬉しそうな、楽しそうな表情でそんなことが言えるの!?
 そう問いかけようとしたところで、スタジアム全体に鳴り響くサイレン。境界線に
浮かぶブイから鳴り響いたものだ。
 閉じられるウインドウ。一瞬下を向くギルだったが、意を決して顔を持ち上げた。
額の刻印が激しく明滅する。
「ブレイカー…行くよ!」
 ゆっくり、右に向かって歩いていくブレイカー。だがチーム・グンビーラのブラキ
オス『ヴァルナ』は視線を投げ掛けようともしない。
「…マグネッサー」
 全身のリミッターが高速回転。零れ落ちる火花。背の鶏冠が帚星を纏うブレイカー。
 それでも、依然として動かぬままのヴァルナ。
 右の翼を広げるブレイカー。双剣が展開されると左足を強く蹴り込む。一瞬、海面
ギリギリまで浮かび上がるとそのまま付加していく加速。一気に詰まっていく間合い。
飛沫が舞う。
「翼のぉっ、刃よーーーーっ!」
 叫びながら込める、裂帛の気合いが届きかけたところで。
 ブラキオス『ヴァルナ』が首を大きく回転させる。
 一閃、魔装竜の襲撃を弾き飛ばすヴァルナが放つ横殴りの頭突きは、鉄槌のごとき
破壊力だ。
 滞空時間の長い一撃。…そして水面に身を打ち付ける間にどんな目にあうのかギル
は「昔から」承知していた。ブレイカーに翼で胴体を隠させる。ヴァルナの背から放
たれる何本もの光の矢。襲い掛かるそれらを辛うじて受け止めるが、結果、ブレイカ
ーは頭から着水した。どうだとばかりに相手を睨むヴァルナ。今日、初めて見せるゾ
イドらしい素顔。
 ヴァルナの背部・コクピット内を囲む、全方位ではないがかなり視界の広いスクリ
ーンに、先程相手が放った一撃の詳細なデータが表示される。…我々ならばその数字
を見て驚愕するだろう。時速700キロ。かつて「黒い髪のレイヴン」が叩き出した
音速の領域には到底及ばないが、それでも異常であることに違いはない。
 だが、サムリットはこの非常識な数値にも涼しい顔だ。
「気を抜くなよ、ギルガメス君!ブラキオスのスパーリングパートナーは海空両用ゾ
イド『シンカー』だ!」
「同じ動きは無理でも対応なら十分可能ってわけですか…」
 主人の声と共に姿勢を立て直すブレイカー。不意打ちを恐れすぐに視線を投げ掛け
る。…だがこの隙に仕掛けてくる様子はない。
「それでいいわ、ギル。貴方達も相手もリーチが長いから、間合いすれすれで斬り合
うことになるわね。
 だったら、多少強引でもいいから隙を見つけたら一発、一発斬り付けていきなさい。
但し相手も同じことを狙ってくるから注意してね?」
 スタジアムを囲むブイよりやや離れた辺りで浮かぶビークル。勿論操縦者はエステ
ルだ。ゾイドバトルの試合中、スタジアム内には予め登録された選手とゾイド以外の
入場は許されない。
 それにしても、思ったより動きが良いコンビにエステルは安堵した。最初の一撃こ
そ外れたものの、あれ位の荒削りさがあの子には必要なのだ。もっと、元気を出して。
「さあ、ギル、一旦間合いを離して…」
「ギルガメス君、仕切り直しといこうか…」
 女教師と、五分刈りの対戦相手は奇しくも同じことを考えていた。
 だが、全く別のことを考えていた者がここに。
 間合いを離すべく泳ぐように移動し始めたヴァルナ。だが…ブレイカーの方は。
 すぐさま鳴り響く、リミッターの擦れる音。
「…ギ、ギル?ちょ、ちょっと待ちなさい!そんなに近くから一体何を…」
 跳ね上がる、魔装竜。
 慌てたのはエステルだけではない。
「お…おいギルガメス君、正気か!?」
 飛沫と共に、竜が舞った。
「うおおおおっっ!」
 右の翼の刃を、今度は頭上高く振り上げて。
 重力と共にヴァルナ目掛けて叩き付けるが。
 紙一重の差で切っ先を躱すヴァルナ。
「せりゃああああっっ!」
 続けざまに、今度は左の翼の刃で薙ぎ払いに掛かるブレイカー。
 だが、この一撃もヴァルナは後ろに下がって躱し切る。
 更に、更に刃を振り上げ、薙ぎ払い、突き刺し掴みにいくこと十数合。その一撃一
撃はいずれも寸前で躱されている。素人目には、実に際どいが…!
「そんなデタラメな攻撃、通じるわけがないでしょう!?離れなさい、ギル!」
 ブレイカーのコクピット内・全方位スクリーンの右上にエステルの顔が映し出され
るが、ギルは一瞥すらもせず怒鳴り散らしてレバーを動かす。
 しかし、ここまで息継ぎもせず斬り掛かり、勝利することなど可能だろうか。
「できるわけっ、ねぇだろぅぅっ!」
 ブレイカーの何度目かの「薙ぎ払い」に、合わせられたヴァルナの一撃。…首を伸
ばし、ブレイカーの翼の付け根目掛けて叩き込まれた頭突き。まさしく、仮面の騎士
の槍の一撃!
 今度は低い滞空時間で、吹っ飛び、着水するブレイカー。そこへヴァルナが波飛沫
を上げ一気に近付く!
「連続技ってのはなぁっ、こうやるんだよっっ!」
 ヴァルナの牙が、ブレイカーの踝の辺りに突き立てられる。いつの間にか、逆さに
吊り上げられるブレイカー!
 だが、ブレイカーも即座に腰を捻り、遠心力で足首の拘束を解きに掛かる。しかし
それが達成される前に、ブレイカーを反時計回りに大きく振り回すヴァルナ。それと
同時に発生した攻撃、それは尻尾による薙ぎ払い!
 頭部に尻尾の打撃を受けたブレイカー。噛まれた足首を中心に、振り子のように吹
っ飛ばされた。
 仰向けに倒れるブレイカー。胴体の大半は海に浸かっている。…それを尻目に、ヴ
ァルナは間合いを離す。
 一方、コクピット内のギル。立て続けの攻撃に加え、相手の常軌を逸した反撃をも
らって息荒い。…ふと、額に感じた生暖かい感触。拭ってみた手の甲を見て、自らの
額が割られていたことに気付き思わず瞠目する。ブレイカーを支配するオーガノイド
システムはパイロットとの限り無い同調によって成り立つ。その副作用でブレイカー
が負傷すればギルも負傷する事態に陥るのだ。
 だがギルは、数秒すらも間を置かずモニターに視線を戻し、意を決しようとする。
するとその意識目掛けて。
『ギル、返事をなさい!』
 耳元で怒鳴られるよりも大きな声が鳴り響く。同時に明滅するギルの額の刻印。
「うわっっ!せ、先生っ!?」
 たまらず頭を押さえるギル。全方位スクリーンに展開されたウインドウに映る、エ
ステルの厳しい表情。彼女の額の刻印も明滅が激しい。テレパシーで怒鳴るのは、助
言を無視した生徒への容赦無い制裁だ。
「せ、先生っっ、止め…止めて…」
 悶えるギルだったが。
『いいえ、止めるわけにはいかないわ。この期に及んでもまだ戦うことをためらって
るようではね!』
「そ…そんな!先生、今の見てたでしょ!?」
『テクニカルそうで実はデタラメなだけの、あんな攻撃のどこが?』
 詰まる言葉。
『ブレイカーは「生きるため」に戦ってる!
 主人の貴方がそれを否定したら、この子は何を信じればいいの?』
「そ、それは…」
 ブレイカーの姿勢を戻す手は何とか動く。だが唇は凍り付いてしまっかに見える。
 一方、ヴァルナは間合いを離しながらも視線を敵に向けたままだ。
「流石、俺のファンだと言うだけあってヴァルナの技の受け方をよく知っている。感
心したよ。十五戦無敗ってのにも納得だ。
 …だけど、残念だな」
 嘆息する対戦相手の表情が全方位スクリーンの左上に映し出される。
「サ、サムリットさん…」
「ギルガメス君、俺はね、君達とぶつかることが決まった時、最初は驚いたけれどす
ぐに嬉しくなったよ。対戦相手に困っていた君達なら、全力で立ち向かってくれると
確信できたからな。
 でも、蓋を開けてみたらどうだ!
 同情、手加減されて得た勝利なんて嘘っぱちだ。メッキはすぐ剥がれる」
 首を高く伸ばしながら、左半身に構えるヴァルナ。…ちょっとゾイドらしからぬポ
ーズだが、いやが上にも高まる闘気にチーム・ギルガメスの二人と一匹が色めき立つ。
「『そ…その構えは!?』」
「さっさと終わらせよう、こんな下らない試合!
 ヴァルナよ、『瀑蓮華(ばくれんげ)』だ!」
 仮面の騎士の眼光が迸る。左足を大きく踏み込むと同時に、その長い槍のような首
を円の軌道で波間に激しく打ち付ける!
 空を喰い破る程に高い波の壁。瞬く間に出来上がったそれの標的はブレイカー!
「う、うわぁっ!?」
 思わずブレイカーの翼を前方に展開させてしまったギル。叩き付けられる圧力。そ
の上全方位スクリーンであるが故に恐ろしい程の迫力で波が襲っては来る。だが彼の
選んだ防御策は余りに杜撰だった。
 ぐらつきながらも受け切るブレイカー。翼を戻そうとしたその瞬間。
 波の穂先が既に足元にまで、舞い上がっている。飛沫の中から繰り出されたヴァル
ナの槍撃!ブレイカーの顎を正確に捉えた。
 あの伝説の魔装竜が、理不尽な重力によって仰向けに吹っ飛ばされ、次の瞬間には
首を軸に倒され俯せた。
 ギルの、脳が揺れている。頭のてっぺんから尻までに杭を打たれるような圧力。
 しかし追撃は終わらない。次の瞬間には既にブレイカーに近付き、その首をくわえ
ているヴァルナ。…自分より重い対戦相手をゆっくりと持ち上げる。丁度、背後から
締め上げるような格好になった。
「オーガノイドシステム搭載ゾイドにこの攻撃が決まれば、試合は終わる」
「…んんっ、くっ!?」
 首絞め。同調によってダメージを共用するギル達にとっては厳しい攻撃だ。ゾイド
にとって手足の一種でしかない筈の首への攻撃は、パイロットに対しては地獄の責め
苦となる。
「んっぐあぁぁぁぁっ!」
 鉄面蛟の牙は容赦無く魔装竜の首に突き立てられていった。

【第四章】

 初期のオーガノイドシステム搭載ゾイドは、その潜在能力を引き出すべくパイロッ
ト以外に「ユニット」と呼ばれる小型ゾイドが搭乗した。彼らは言わば「生け贄」で
あり、潜在能力発動時の超高度な演算を一手に引き受ける役目を持つ。…だがユニッ
トは長時間の使用には耐え切れなかったのである。
 この問題を克服を目指したアイディアの一つが、ユニットの役目をパイロットの頭
脳に直接割り当てる方法である。「ナチュラルな演算装置」を使用しゾイドとパイロ
ットとの同調を目指したこの方法は、OS搭載ゾイドの可能性を一気に広げたが反面
別の問題を生み出した。同調が高レベルになればなる程お互いの精神・肉体に生じた
異変を反映しあってしまう。即ちゾイドの受けたダメージをパイロットの肉体に「再
現」するような事態が生じてしまったのだ。
 本来はユニットに割り当てられた「生け贄」の役目がパイロットに割り当てられて
しまったこのシステム。それでも通常のゾイドでは味わえない一体感が得られるため、
支持者が依然少なくない。但し大型ゾイドでの使用ともなると高レベルの同調がパイ
ロットの心身を蝕むため、搭載は今日、中型以下のゾイドに限られている。
 さてギルガメス。相棒の首に食い込む鋼の牙が反映され、徐々に彼の肌にも赤い印
が浮かび上がってきている。このまま敵が一線を超えたら危険だ!
「ぐあぁぁぁぁぁぁっっっ!」
『ギル!?しっかりしなさい、ギルっ!』
 少年の、女教師の叫びは異なる悲痛に彩られている。
 だが、突如生じた異変。
 全方位スクリーンを、様々な言葉が埋め尽くしていく。至る所に、やがて…やがて
びっしりと。…ギルには読めない文字だらけだ。だが彼には少なくとも、ジュニア・
ハイスクールの最終学年で触りだけ習った「古代ゾイド文字」が数種に渡って映し出
されていることくらいはわかる。
 遂に文字が、モニターを埋め尽くした刹那。
「ぁぁぁぁぁぁ…ぁ、ぁ、あれ?」
 スクリーンが、光を落とす。と同時に、治まったのは今までギルの首を襲っていた
苦痛と…。
「額が…冷めて…まさか!?」
 慌てて異変の起きた箇所を撫でる。鏡はなくても、それで彼には理解できた。
「刻印が、消えた!…消されたのか。
 そうだね、ブレイカー。こんな意気地なしとはコンビ解消、当たり前か、はは…は
…うっぅっ…」
『いい加減にしなさいこの馬鹿!』
 涙ぐむギルの意識を再度襲う、エステルの一喝。彼女のテレパシーの強さはギルの
刻印が消滅しようが関係ない。
「せ、せせせせ先生!?」
『いい?本当にブレイカーが貴方を嫌ったらね、今頃コクピットからおっぽり出され
てるわ!
 ブレイカーは貴方を守るためにわざと同調を解除したのよ?』
「な、何故…」
『貴方が好きだからに決まってるでしょ!
 ギル、今は戦って!相手がたとえ大事な人であっても!
 貴方が戦うのをためらえば、傷付くのはブレイカーなのよ!』
 一方のヴァルナは圧力を緩めなどしない。食い込んだ牙は少しずつ、ブレイカーの
首を変形させ始めている。
 相棒の心音と、首が軋む音。暗い、コクピット内に微かだが響く。
 だん、だんだん。己が腿に二度、三度と拳を叩き付けるギル。顔を伏せ、唇を噛み
締め…目は閉じ、しかし決意の叫び。
「先生っ!先生ーっ!」
『…ギル? 』
「たとえ、その行く先が!」
 待っていた、その一言を。教え子から振ってきた「詠唱」に、女教師も額に指を当
て集中する。
『たとえ、その行く先が』
 再び、輝きを帯び始めたギルの額。
「『いばらの道であっても』」
「『私は、戦う!』」
 不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステル
の「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカ
ーと限り無く同調できるようになるのだ。

 サムリットはこの時、異変を感じ取っていた。相手ゾイドが失神してはいないが、
さっきよりは明らかに力が抜けているのが感じ取れたからだ。
「…諦めたのか?ならばこれで決着をつける!ヴァルナ!」
 主人の意思に応じ、圧力を増していく鉄面蛟の牙。
 …飛び散った、透明の液体。これが人ならば鮮血。ブレイカーの体内の油だ。
「このまま、首を食いちぎれぇぇぇぇっ!」
 しかしこの瞬間、もう一度生じた異変。
 ヴァルナの背部・コクピット内のスクリーンを、突如覆い隠した銀の物体。
「な…なんだ、これは?…ま、まさか!?」
 ついさっき、力が抜け落ちていた相手が行なうとは考えられない反撃。
 鉄面蛟の仮面を襲う、魔装竜の鉄の爪。がしっと組み付かれたそれは、仮面の隙間
に食い込み始める。
 スクリーンの左側に突如生じた乱れ。
 それを薮睨みするサムリット。彼の選んだ最善策は、ヴァルナに首を揺さぶらせる
こと。…相手の爪が、振り解かれる。だが、これは同時に相手の首を食いちぎること
を諦めることをも意味する。
 油をまき散らしながら、徐々に戒めが解かれていくブレイカー。そして。
 うつ伏せに倒れた魔装竜は、すかさず背中に帚星を纏うと鉄面蛟を蹴り込む。その
勢いで、一気に離れた両者の間合い。
 鉄仮面の左側は一部、格子を破られ、油が滴り落ち始めている。だがその隙間から
覗く瞳は寧ろぎらつき、見る者を圧倒しかねない。
 やがてスクリーンの乱れが回復すると、映し出された若き対戦相手の姿。
「さ…サムリット…さん…」
「よく決断したな」
 こちらも再び映像を映し出す全方位スクリーンの背後の方は、鮮血で彩られている。
その原因となった者の首に、くっきり浮かんだ傷から流れ出る血液。それを右手で無
造作に拭うギル。呼吸の乱れが著しいが、額の刻印と共に再び生気を宿し始めた瞳の
輝きが意外にも眩しい。
「こ…こんな理不尽な戦い…僕は嫌いです。でも…僕にも…」
 込み上げるものを押さえながら呟くギルの声を遮るサムリットの言葉。
「気にするな、些細なことだよ」
 そしてこのような状況下でも見ることのできる、男の微笑み。
「所詮、人もゾイドも平等じゃない。だから戦うんだろ?」
 彼の言葉に賛同するかのように、空を見上げて吠えるヴァルナ。
 再び立ち上がったブレイカーも身構え応じる。
 あいまみえる、翼の戦士と仮面の騎士。
「『男なら!本当に大事な者のために…』」
「戦え!」
『戦いなさい!』
「はいっ、先生!」
 はからずも、二人の大人が言った同じ言葉。
 だが思わず返事した相手が一人だけであることに気がつき、ギルは苦笑いした。

 翼の刃で斬り付けるブレイカー。刃の付け根や翼の生え際を自慢の頭突きで殴り返
すヴァルナ。ブレイカーは弾かれるが、怯むこと無く二の太刀を浴びせようとする。
だが時に、転んでしまいヴァルナの反撃を受ける羽目となる。…無理もない。足元は
海面で覆われているため、水深を見誤って足を取られてしまうからだ。又、たとえ水
深が浅くても、ヴァルナの横殴りの一撃に足元を刈られてしまったりもする。
 続くヴァルナの反撃こそが、先程見せた「瀑蓮華」だ。猛烈な圧力の水壁を防御で
もしようものならその間に近付かれ、厳しい打撃をもらってしまう。水壁を破ろうと
突っ込んだとしても、圧力に勢いを殺され、水壁を抜け切ったところでカウンターの
頭突きをもらうのがオチだ。
 だから、より正確な打撃を目指してブレイカーは慎重に、慎重に隙を伺う。ヴァル
ナも負けずに応戦する。延々と続く攻防の実態。
 しかし形勢は、徐々にヴァルナとそのパイロット・サムリットを擁するチーム・グ
ンビーラに傾きつつあった。ゾイドのダメージは五分でも、パイロットのダメージに
決定的な差がある。
 又、再び大きく吹っ飛ばされるブレイカー。大きな水柱、舞い上がる飛沫。近付こ
うとするヴァルナだったがブレイカーの足が大きく動いたのを見て追撃を断念する。
すぐに体勢の建て直しを命じるギル。…もう何度目になるかもわからない、間合いを
離しての仕切り直し。ギルも、サムリットも汗をかいているが前者は呼吸の乱れがひ
どい。
「…ギル?ブレイカーをゆっくり歩かせて、貴方は呼吸を整えなさい!」
 コクリと頷くギルの瞳と刻印の輝きは、決して失われたりなどしない。だが彼の肉
体は、それのみでは構成などされていないのだ。何とかしなければ…!
「先生、先生…」
 十分に限界を感じさせる、腹の底から絞り出すようなギルの声。
「…ギル?」
「二撃目を…二撃目を、何とかして当てたいんです!
 そうすれば、懐に入れるのに…」
 ヴァルナの多彩な打撃はあくまで長い首を使って行なわれる。つまり近付くことが
できれば、手足の爪や牙の一撃などを備えたブレイカーにも勝機が見出せるだろう。
 全方位スクリーンの、ウインドウ。ビークルのコントロールパネルに備え付けられ
たモニター。二人の視線がこの時とばかりは容赦無くぶつかりあう。
「わかったわ、ギル。…根性、見せてね?」
 精一杯の微笑とともにエステルが伝授した秘策とは。
「ぼ、僕なら大丈夫ですけど、これをやっちゃうとブレイカーにも…」
 そう言った途端、大きく揺れる足元。ブレイカーが踏み鳴らしているのだ。
「ご、ごめんよ、ブレイカー。君がその気なら…」
 主人が決断した。
 再び大きく広げられる、ブレイカーの右の翼。展開する刃。
「ほう…。伝わってくるよ、君らの覚悟が。なあ、ヴァルナ?」
 応じて吠えるサムリットの相棒。
「サムリットさん、これで!…これで、最後にします」
「わかった、受けて立ってやる。
 本当は六回目のランバート賞を狙っていたんだけど仕方がないな」
 相手の呟きに一瞬だがギルは和んでしまった。
「それは…無理ですよ。僕が死んじゃう」
 チーム・グンビーラ最長の試合時間は115時間23分だ。サムリットも微笑した。
「違いない…それじゃあとっとと来い!」
「はい!行きます!」
 ブレイカーの、ヴァルナのリミッターが奏でる回転音。
 背後に帚星を纏うブレイカー。
 左半身に構えるヴァルナ。
「翼のぉっ、刃よぉーーーーっ!」
 帚星が、弾けた。
 飛沫が海面に道を開く。
「ギリギリまで、引き付けるぞヴァルナ!」
 数秒も置かず、一気に間合いが詰まっていく両者。
 そして、相手の異変に気がついたサムリット。
「…どうした?翼がぴくりとも動かぬとは…まさか!?」
「おおおおおおっ!」
 両者の接触まであと数秒もない。警告音を発するヴァルナのコクピット内。瀑蓮華
を催促しているが。
「俺を信じろ!…今だぁっ!」
 渾身の大回転が放つ大渦。
 そこに突っ込んでいく帚星の鏃。最早城壁と化した荒波を削っていく。
「…馬鹿な!瀑蓮華が破られるのか!?」
「破れぬものなど、この世にあるかぁーっ!」
 遂に。遂に水壁を打ち砕いたブレイカー。分断された水の瓦礫が四散し、激しい金
属音が鳴り響く。
 しかしその音の正体は、斬り付けられた刃の音ではない。
 ブレイカーと、ヴァルナの右肩がぶつかりあう音。…ギルは、始めからタックルし
て突っ込む作戦だったのだ。刃で斬り付ける場合、そのために回転する動作がブレイ
カーの勢いを殺してしまう。それに、翼を構えることそれ自体が相手を「刃に対する
受け」にのみ集中させてしまう大きなフェイントでもあった。
 右肩を激しい痺れに襲われるギル。…だが、これも予定通り!
「痛ぅっ、おりゃぁぁぁぁっ!」
 ブレイカーの左手が弧を描いて突き立てられようとするが。
「十年、早いわぁっ!」
 サムリットの絶叫とともに見せつけられた反撃。
 今まさに、胸の辺りに突き立てられようとするブレイカーの左の爪を、斜め下から
蹴り上げるヴァルナの右前足!
「ーーーーっっ!?」
 モニターに釘付けになっていた視線を左手に移すギル。…あらぬ方向に折れ曲がっ
た五本の指。
 ブレイカーの指も又、付け根から異常な角度に折れ曲がっている。
「ヴァルナぁっ!もう一度だ!」
 首を捻るヴァルナ。
 足元から、再び盛り上がる水の城壁。勢いよく広がったそれはブレイカーを何十メ
ートルも浮き上がらせ…やがて、吹っ飛ばした。
 轟音と、水柱と、飛沫。チーム・ギルガメスの墓標が収まったその中から、出てき
たのは海面を仰向けに浮かんで動かないブレイカーだ。
 一方、ヴァルナも只では済まされなかった。がくっと右膝をつく。無理もない、ブ
レイカーは流石に並の格闘ゾイドではない。
 右足を負傷した状態で、それでもゆっくりと歩き近付いていくヴァルナ。
「ギル?ギルーーーーっ!?」
 想像を超えたチーム・グンビーラの反撃。谺する、エステルの涙混じりの叫び声。
「み…見事だ、ギルガメス君。やはり、君達と戦えてよかった…」
 ゆっくりと呟くサムリット。とどめを差しに、いざ歩み寄る。
「ギル!応えて!ギル!?ギル!?」
「…先生、やっぱりサムリットさんは、チーム・グンビーラは凄いや…」
 ビークルのモニターに映し出されたギルの顔。渾身の一撃は見事に打ち砕かれ、消
耗の色が濃い。それに左手の異変を見てしまったエステルは流石に慌ててしまった。
「…いけない、すぐに治療しないと!」
「せ、先生…。試合、まだ終わってないですよ…」
 モニター越しに微笑してみせるギルに、我に帰った彼女。…なんだ、よく見てみれ
ば刻印も、瞳の輝きもまだ衰え切ったわけではない。
「ふ…ふふ…そうね。彼らは凄いチームね。帰ったらよく反省しましょう。
 ところで、結局二撃目は決まったわね?」
 微笑みを返す女教師。生徒も、つられる。
「…はい。でも先生、レバーが握れなくて…」
「馬鹿ね、別にレバーは手で握らなくてもいいのよ?」
 さっきまでの慌てぶりから一転、しれっと言い放つ。
「きついな、エステル先生は…」
 ブレイカーの足元にまで歩み寄ってきたヴァルナ。
 一連の激しい攻防で、サムリットの表情にも疲労が隠せない。だがもうあと一息だ。
「それじゃあ、今度は俺達の最後の一撃だ」
 宿敵の足をくわえるヴァルナ。勢いよく持ち上げられてできた、ブレイカーの逆さ
吊り。ヴァルナの胸に備えられた銃口が相手の腹部・ゾイドコアの辺りに重なる。
 だが、この瞬間こそを二人と一匹は、待っていた。
「サムリットさん、僕達の最後の一撃も、まだ終わってないんです」
 突如スクリーンに映し出されたギルの顔。
「な、何ぃっ!?まさか…!」
「ブレイカーっっ、魔装剣っっ!」
 ギルの叫びとともにブレイカーの頭部・鶏冠が展開され、それは鋭い短剣となって
突き出される。刹那、右のレバーを握り締め、左は口でくわえて引っ張り上げる。
 身体をくの字に曲げ、今まさに魔装剣をヴァルナの脇腹に突き立てた。
「1っ、2っ、3っ、4っ、5っ、これでどうだぁっ!」
「馬鹿野郎っ、これで終われぇっ!」
 魔装剣から放たれる膨大なエネルギー。
 ヴァルナの銃口から放たれる無数の弾丸。
 両者の一撃が辺りを光芒に包み込み、そして。
 やがて止んだ光芒。硝煙とともに、崩れ去る二匹。スタジアム内を、サイレンとア
ナウンスが鳴り響く。
「審議!この試合、両チームパイロットの気絶を確認しました。先に気絶したパイロ
ットの所属チームが負けとなります。しばらくお待ち下さい!」

 二週間後。
 雲一つないとまではいかないが、それなりには晴れ、荒野を暖めてくれている。
 台地に作られた街の麓のゾイド溜まり。そこでは幾匹かのゾイドに混じって二人と
一匹が、何かを待っているようだ。
「ブゥレェイィカァァ、やぁめぇてぇよぉー」
 ギルを足元からくわえ逆さ吊りにして遊ぶブレイカー。上下左右にぶらぶら揺らす。
遊ばれている方のギルもこれで中々楽しんでいる様子だ。Tシャツが落ちてきてへそ
丸出しになるのを賢明に持ち上げ直す。但し左手は、今も包帯でしっかり巻かれてい
る。ブレイカーの方はどうやら完治した様子だ。
 傍らでビークルに乗り、微笑むエステル。
「せぇんぅせぇいぃ、まぁだぁでぇすぅかぁ?」
「そうね、まだ見えないわね」
 二人と一匹は、街から街へと繋ぐ定期便を待っている。今度の移動は長旅になるよ
うだ。
「…あっ!来たわよ」
 土煙を上げ、縦列で近付いてくる数匹のグスタフと十数台の車両。ギルとブレイカ
ーも遊ぶのを止めて乗車の準備を始める。
 と、その時。グスタフの左右を固める警護用ゾイドの中に見つけたその姿。…鈍い
赤色の皮膚の上、纏うは鋼と銀色に塗られた甲冑。背と胸にポッカリ開いた穴の中か
ら何丁もの銃口が見える。体格はブレイカーより一回り小さいが、代わりに首は三倍
程も長く、表情は鋼鉄の仮面で隠されている。
 驚く二人と一匹に、気がついたそのゾイドは親しげに近付いてきた。目の前に立つ
と、背部のコクピットが開く。
「よう、ギルガメス君、久し振り。怪我は大丈夫か?」
「さ…サムリットさん!?一体どうして…」
「おいおい、頼むよギルガメス君。食っていくために早速就職したのさ」
 にこやかに笑うサムリット。制服と制帽がごつい体つきにはどうにも似合ってない。
 おかしい筈の光景なのに、目を丸くしていたギルの目からたちまち溢れ出るもの。
止まらない、止められない。
 ギルの急変に慌ててヴァルナが首を背中に伸ばす。サムリットが乗ると、相棒の首
が二人と一匹の前に差し出された。
 先程までの笑顔が嘘のようにくしゃくしゃのギルの両肩に手を乗せる。
「ギルガメス君、勝者が泣くなんてみっともないぞ。俺も情けなくなっちまう。
 胸を張ってくれ。なあに、今度は運び屋の世界一を狙ってやるさ…」
 戯けるサムリットに頷くが、止められないものは仕方がなかった。
 これからも、この子が戦っていく限りこういう場面には何度も直面するに違いない。
或いは罵倒されるかも知れない。或いは報復されるかも知れない。…でも、この男が
そんな輩でなくてよかったとエステルは思う。
 徐々に晴れ渡ってきた。からりとした一陣の風が告げる初夏の到来。(了)
【後書き】

泣けるのを何とかして書きたかったのですが、正直、難しかった…。
文章が中々短くまとまらなかったし、書き込みの直前、相手側の設定で
「なくてもいいもの」が見つかってしまって脱力しました。
でも、そうは言っても発表しなければ前進はないので、勇気を振り絞って貼り。

実は今回から誰にもチェックを入れてもらってません。
文章作法上「ちょっと待て、これは幾ら何でもおかしくない?」
なんて箇所が見つかったらレス、お願いします。
感想も、どうぞよろしく。

セイスモ祭りになりそうな予感がするので、対抗して次回は後期ゾイドを
ネタにしちゃおうかな…などと検討中。
TFゾイドとか…だめ?
2032099 開戦7-1:03/07/26 06:45 ID:???
 チェンバレン大尉が何か言う前に先手を打つようにしてマッケナ大尉が尋ねた。
「砲兵隊のグスタフが見えんようだが、修理中ででもあるのか」
 砲撃を続行している砲兵隊を一瞥してからチェンバレン大尉は手招きをした。
 周囲は轟音で覆われているから話しやすい場所に行こうというのだろう。
 別に反対する理由も無いのでマッケナ大尉はチェンバレン大尉についていった。
「で何ですって?砲兵隊のグスタフ?」
「そうだ、たしか正規の砲兵隊マニュアルでは砲撃中でも牽引のグスタフは五分以内に牽引できるように準備をしておくものだと思ったのだが」
 マッケナ大尉がそういうのを鼻で笑うと、チェンバレン大尉は困ったような顔でいった。
「何から話せばいいものやら・・・ま、とりあえずそんなマニュアルなんて誰も守っちゃいないわね
 前線で砲撃中ならグスタフはそのまま付けておくし・・・
 ただここの砲兵隊のグスタフはねぇ、あたしらが借りてるのよね」
「軍団支援連隊がか、確か貴様の部隊のグスタフは定数に達しているはずだが」
「それじゃぜんぜん足りないのよ、後方にコマンドウルフとかの撹乱部隊が出没し始めたってのもあるんだけど、やっぱり問題は数ね」
「何だそれは、定数に足りているのにまだ補給が足りんのか」
 チェンバレン大尉は苦笑しながらいった。
「こっちの北部戦線は今はグラム山脈で進撃を停止しているのは知っているでしょ?
 でも南部の戦線はメルクリウス湖のあたりで共和国軍の抵抗にあっていてね。
 だから派遣軍直轄の輸送部隊が全部そっちにまわされてるの」
 そういいながらチェンバレン大尉は周囲を見渡した。
 どうやら話はこれで終わりというわけでは無さそうだった。
 しかもあまりマッケナ大尉に聞かせたいというわけでもないらしい。
 それに気が付いたマッケナ大尉は先手を打つようにいった。
2042099 開戦7-2:03/07/26 06:47 ID:???
「何か問題があるのならば聞かせてみろ。別に知らぬ仲というわけでもないのだからな」
 言外に参謀本部の人間として聞いているのではないという事を伝えていた。
 チェンバレン大尉もそれに気が付いたらしく、まっすぐにマッケナ大尉の顔を見つめるといった。
「はっきりいうけど派遣軍司令部の参謀部は馬鹿?」
「・・・要約しすぎだ。わかるように言え」
 頭を抱えながらマッケナ大尉は近くにあった弾薬ケースに座り込んだ。
「そうね、軍団の輸送隊が今どこまで物資を引き取りに行っているのか知っている?」
「いや、知らないな。距離から言えばレッドラスト砂漠のどこかが適当なのだろうが・・・」
「はずれね、いまあたしらはニクシー基地まで物資を取りに行ってるわ。だからいくらグスタフが会っても足りないのよ」
 マッケナ大尉は唖然としてチェンバレン大尉を見返した。どうみても軍団級の支援部隊が移動する距離ではなかった。
「ニクシー基地から補給部隊は前進していないのか?」
「向こうにもそんな余裕が無いのよ。数が足りない派遣軍所属のグスタフは全部南部戦線の支援に回されてるわ。
 だからあたしらは砲兵部隊に師団段列まで動員してどうにか補給物資を運んでるのよ。
 うちの軍団はまだマシね。補給物資の数自体はそれほど不足していないからね。
 ただ、前線まで輸送する暇が無くて、前線部隊に直接後方のデポまで弾や飯を取りに来てもらってるんだけどね」
2052099 開戦7-3:03/07/26 06:49 ID:???
 予想以上に深刻な問題にマッケナ大尉は眉をしかめた。そしてゆっくりといった。
「輸送部隊の不足はあらかじめ予想されていた。現行の師団数から考えれば今の1.5倍程度はグスタフが必要だった」
 独白じみた事を言い出したマッケナ大尉をチェンバレン隊は感情のこもっていない顔で見つめた。
「だが後方での輸送に関してはそれほど問題が生じるとは考えられていなかった。
 現地の輸送業者を積極的に使用する方針だったからだ。しかし派遣軍司令部による輸送業者の徴募は成功しているとは言いがたい」
「後方に出没するゲリラね。それで治安が悪化して輸送業者が帝國の荷を運ぶのを嫌がっている」
「そうだ。輸送業者に強制するのは簡単だ。だがそれでサボタージュがあるようでは困る。
 もっと根本的なところで解決しなければならない」
 チェンバレン大尉は先をうながした。
「後方のゲリラの大多数は現地の部族だ。彼らは共和国に雇われているか説得されたと考えられる。
 俺が派遣された本当の理由は彼らへの宣撫工作だ」

なんだかスレ違いのような気がしてきた(汗
206開戦前夜作者:03/07/26 06:51 ID:???
>>202
>TFゾイドとか…だめ?
愛さえあればなんでも良いのです(W
207 ◆.X9.4WzziA :03/07/28 00:53 ID:???
>>206
了解!愛ですな。愛…愛……。

T  F  ゾ  イ  ド  持  っ  て  ま  せ  ん  (泣

いや…サイト巡りしてみたりすると後期ってやたら不評ですよね。
画像とか実機とか見るとああ成る程とは思うのですが、彼らもいたからこそ現在までシリーズが続いたわけで。
ネタを書く側としては無視する位なら寧ろ積極的にネタにしたい、してやりたいよな、と。

例えばメッキ。
「当時、両軍共に疲弊し、塗料の確保さえ困難であった」
…とか、
「ガイロスでは愛獣を飾り立てる風習がある。又、飾り立てないゾイドと持ち主を激しく軽侮・憎悪する。
共和国軍は勇猛果敢なガイロス兵に手を焼き、対抗してゾイドを飾り立てざるを得なかった」
…とか。後者は、半分は今日でも当てはまりそうで。何しろ現在のガイロスは
高貴を象徴する色・紫がイメージカラーですから。

まあ、一見「何だこりゃ」と思うようなデザインやら設定やらも、工夫次第で面白くなるんじゃないかな、と。
折角だから丸ごと遊び倒してやろうよ、というわけです。
208開戦前夜作者:03/07/29 06:20 ID:???
あんちびーむ装甲とか・・・<メッキ
すると中の人もビームに耐えられる・・・駄目だキモイや
でも個人的には迷彩スキーな私
209名無し獣@リアルに歩行:03/07/29 13:36 ID:???
メッキは暗黒大陸に多く存在するディオハリコン(天然毒電波を出す鉱石)によるゾイドの行動阻害を軽減するためのものだよ。
210 ◆.X9.4WzziA :03/07/30 01:33 ID:???
>>208
アンチビーム…それを言われて思い出しました。「アイスメタル装甲」!
でも、この設定がつくのはアイスブレーザーだけっぽいっすね…。

>>209
それ…マジですか?良ければソースなど詳細希望します。
「ディオハリコン」でググってみたけど蓄光使用の三体絡みの話題ばかりだったもので。

スレ違いっぽいので自分なりに軌道修正。
メッキをディオハリコン対策として考えるのなら、この切り口でSS書けそうです。
「御禁制のディオハリコン」なんて言葉がまず思い浮かびますね。
211いきなり乱入スマソ:03/08/01 12:42 ID:???
―ZAC2102年、へリック共和国の首都、へリックシティは炎に包まれていた。
新生ゼネバス帝国を名乗る謎の軍団、鉄竜騎兵団による、共和国首都進攻作戦が始まったのだ。
巨大な背鰭を持つ大型ゾイド『ダークスパイナー』の電磁波攻撃により、成す術もなく倒されていく共和国軍。
ゴジュラスが、ブレードライガーが、ディバイソンが、次々と炎に包まれていく。
「司令部!応答せよ!司令部!こちら第5防衛大隊!現在我々は全滅の危機にあり!……ぐっ!」
戦いと言うにはあまりにも一方的過ぎる殺戮の中、辛うじて生き残ったゾイドを、バーサークフューラーのバスタークローが容赦なく貫く。
パイロットの断末魔は、爆発音の中に消えていった。
「!どうした!第5大隊!応答せよ!」
「第4大隊、沈黙!」「第3師団、応答ありません!!」
司令室には次々と全滅の知らせが届く。そして、遂に彼らが最も聞きたくない知らせが来てしまった。
「…駄目です、最終防衛ラインが突破されました!!敵機、いまだ多数!」
司令部は沈黙に包まれた。
「くそっ!!」
司令官は机を蹴った。その音が空しく響く。
「…やむを得ん。脱出だ。」


212いきなり乱入スマソ 2:03/08/01 12:59 ID:???
―わずかに残った共和国部隊も、次々と駆逐されていった。
「…やれやれ、退役間近だってのに、こんなことになるたぁな…」
ゴドスに乗る老兵が呟く。
あたりを見渡すと、残存機数は10機にも満たない。
「だが、このままゼネバス野郎どもに『ハイどうぞ』と俺達の故郷を渡すなんて、
出来ねえ相談さ。そうだろ、相棒…?」
パイロット同様、かなり老朽化したゴドスは、それでもその闘争心を失っていなかった。
彼の問いに『その通りだ』と答えるかのように。
「よし決まりだ。おまえら!しっかりついて来いよ!」
残った部隊は、彼のゴドスを先頭に、前方に群がるSSゾイドの群れの中に消えていった。

「大統領!ここにもそろそろ敵が迫っています!脱出のご用意を…!」
秘書官の言葉に、ルイーズ・エレナ・キャムフォードは答えなかった。
「大統領…?」
「分かっています。すぐに行きますから…」
ルイーズはため息をついた。自分がいままでしてきた事は、間違っていたのだろうか?
ゼネバスの怨念は、まだ消えてはいなかったのか。ゼネバスの生まれである、自分には
ゼネバスの人々の気持ちが分かっているつもりだった。いや、分からなければならなかったのだ。
それなのに…
自分の力が至らなかったばかりに、へリック、ガイロスの人々すら傷つけてしまった。
「シュテルマー…。私は、どうすればいいのですか……?」
ルイーズは、生き別れになった幼馴染の名をふと口にした。
213いきなり乱入スマソ 3:03/08/01 13:22 ID:???
ガイロス帝国首都、ヴァルハラでは、へリック・ガイロス連合軍によって、PK師団の反乱は失敗に終わろうとしていた。
ギュンター・プロイツェンは、宮殿内にたたずんでいた。
「そろそろ…潮時だな。」
プロイツェンは呟いた
「ついに我らが悲願が達成される。…中央大陸への帰還が。ヴォルフよ、お前なら必ずやり遂げてくれると
信じているぞ。…いや、お前がやり遂げねばならんのだ。」
「そのためなら、息子よ。我が命、ネオ・ゼネバス帝国建国の人柱として、お前に捧げよう。
頼んだぞ…息子よ。いや、ヴォルフよ…」
数秒後、ヴァルハラは巨大な爆炎に包まれた。

ヴォルフ・ムーロアは人気のない共和国首都へと降り立った。奪還作戦は成功したのだ。
父・プロイツェンが自爆したという話を聞いても、彼は表情を変えなかった。
―彼の心に、様々な感情が交錯した。
自分のため、ゼネバスのために、いくつの命が消えて行っただろう?
ニクシー基地で、自分を逃がすために命を張ったエレファンダーのパイロット、
ただ一人の友、アンナ・ターレス。そしてただ一人の肉親、父プロイツェン…。みんな、自分のために死んでいった。
そして、自分の前に立ちはだかった試練、レイ・グレック…。
「…ズィグナー。」
ヴォルフはそばに控える副官を呼んだ。
「はっ、殿下。」
「…私は、ネオ・ゼネバスの皇帝にふさわしい男だろうか?私のために死んでいった英霊達に
報いる事ができるだろうか…?」
悲しい目をした新皇帝に、ズィグナーは言った。
「殿下、いえ、皇帝陛下なら、必ずやできると信じております。」
「そうか。」
ヴォルフは空を見上げた。
『私、死ぬつもりなんてこれっぽっちも無いわ。貴方が、皇帝の座につく
姿を見るまではね。…でも、そしたらもう、ヴォルフなんて呼べないね…』
アンナの遺言を思い出し、ヴォルフは呟いた。
「俺はいつまでも、『ヴォルフ』でいいさ…。」
214いきなり乱入スマソ :03/08/01 13:24 ID:???
はい、スレ汚し失礼しました。それでは吊って来ます。

何事も無かったかのように再開して下さい。
215ガイア山の魔物:03/08/01 18:49 ID:???
「今度の演習の仮想敵は言われた通りシェルカーンにしたが、本当にいいのか?」
「うん…そうして…。」
帝国軍演習場のど真ん中には向かい合って立つ2つの姿があった。
一つはシェルカーン。キメラブロックスと呼ばれる無人ゾイドの一つであり、
カメとゴリラの融合ゾイドである。カメの堅さとゴリラの怪力を持ち、
単純な戦闘力は並の小型機を遙かに凌駕する。
もう一つは、人間で言う所の17〜19歳位の少女だった。
シェルカーンの右腕が少女に向かって振り下ろされる。並の小型機なら簡単に潰される破壊力である。
しかし、少女はその場から逃げようとしなかった。次の瞬間、シェルカーンの右腕を
左腕で受け止めた。まるで重量を感じさせないほどに軽々とだ。
端から見れば信じられないことである。その後その少女が驚くシェルカーンの右腕を掴み、
重量など感じさせることなく投げ飛ばすのであった。
「おお、流石は我がゼネバスの技術の結晶「SBHI−ハガネ03」だ。」
少女の元に研究者と思われる白衣の男達が詰め寄る。
「ダメだ…この程度じゃまだあの女には勝てない…。」
少女は白衣の男達を無視してその場を立ち去った。
彼女は人間ではなかった。地球人がロボットと呼ぶ機械人形である。
「SBHI−ハガネ03」それが彼女の名前であった。
SBHIとは「スーパー・バトル・ヒューマノイド・インターフェース」の略。
インターフェース技術が手には入る前のデススティンガーの様な、
並の人間では操作不可能なゾイドも操作可能にするために作られた、
本来左脳的な思考しかできないという欠点を解消し、右脳的思考も可能とした、
AIをさらに発展させ、人型として再構成した物が彼女である。
216ガイア山の魔物:03/08/01 18:49 ID:???
しかし、彼女はただゾイドを操作するだけのAIではなかった。
人型として再構成される際、、単独でも実戦に耐えることの出来るよう、様々な強化、
武装などを施されているのである。その強さは先ほどのシェルカーンとの演習で明らかである。
動力は左胸に搭載された人間の心臓並に小型化した人口ゾイドコア。
小柄でスマートなボディーからは想像もつかぬほどに全身に様々な装備が施され、
全身を覆う装甲は「D型特殊超鋼材」を主原料とした「スーパーサーメット」
D型特殊超鋼材とは、帝国軍決戦ゾイド「デスザウラー」の超重装甲に使用されている
超高強度の物質である。ちなみにこの名前は筆者が勝手に付けたの物である。
なお、サーメットとは金属とセラミックの複合材のことであり、金属のねばり強さと
セラミックの耐久性・耐熱性を併せ持つ素材である。
もちろんスーパーサーメットに使用されるセラミックもただのセラミックではなく、
「ハイセラミックス005」と呼ばれる超高強度の素材である。
D型特殊超鋼材とハイセラミックス005の複合材であるスーパーサーメットを纏う
ハガネの防御力は中型ゾイドをも遙かに上回る物である。
さらには、ロードゲイルの技術も使用され、無人キメラをコントロールするも可能。
そんな技術があるなら他のゾイドにも応用せいやとか問いつめたい人もいるだろうが、
それを肯定すると物語的に話が進まなくなるので無視させていただく。
217ガイア山の魔物:03/08/01 18:50 ID:???
最強の武装と防御力を与えられたハガネだが、その外見は少女をイメージして作られた。
ピンク色の髪の毛にミニスカート。顔はアイドル顔負けの美貌だったりと、
設計者の感性を疑いたくなるような外見だが、敵を油断させるために
あえて可愛らしい外見にしているのだと言う。
とはいえ、機械的な部分もかなり残っており、人間的な部分は顔面だけだったりする。
頭部には頭部と一体化したヘルメットが装備されており、そこが機械的な演出をしていた。
体の外皮は冷たいメタルボディーに覆われいる。しかし、そのカラーリングは白に
ピンクを微妙に混ぜたようなものであり、無骨さを和らげている。
とにかく機械的な無骨さを持ちながら同時に可愛らしさも併せ持つように
ハガネは作られたのであった。

しかし、そんな彼女も敵に負けたことがあった。相手も女だった。しかし、
ハガネと違い生身の人間である。「生身の人間ごとき」に敗北…・
ハガネにとってこれほどショックなことはなかった。
ゾイドでの戦闘でも生身での戦闘でも勝てなかった。
マオ=スタンティレル…それがハガネを負かした女の名前だった。
彼女もハガネ同様に強そうな外見ではなかった。
これがさらにハガネにとってショックであった。
しかし、その敗北がハガネを成長させたと言っていい。それ以前のハガネは
「自分が最強」とうぬぼれ、人間を見下していた。しかし、今は少し変わった。
ハガネは真面目にトレーニングを積むようになった。
全てはマオ=スタンティレルを倒すために…

「仕事?」
ハガネがそう言い渡されたのはそれから数日後のことであった。
「そうだ。何でもガイア山の付近で我が軍のゾイドが次々と行方不明になっている。
特に共和国ゲリラ掃討用に放った無人キメラブロックスなどはなおさらだ。
ゆえにその付近の調査と原因の究明をお願いしたい。」
「そんな大げさな。どうせ共和国のゲリラでしょ?」
鼻で笑いながらハガネは言う。
「その近辺は中立地帯であり、共和国軍はいないが?」
「!!」
218ガイア山の魔物:03/08/01 18:50 ID:???
そんな訳で、ガイア山へハガネは調査に行くことになった。
ガイア山付近は、帝国にも共和国にも属さない者達の集まる集落がぽつりぽつりと
存在する場所である。なぜ、そういう場所が今までほおって置かれていたかというと、
実はそこが両国の橋渡しとなって密輸入が密かに行われていたからである。
そのために、牽制の意味もあり、その地方は両軍共に手つかずの状態にあった。
その地方での謎の両軍ゾイド行方不明事件。この事件の解決は急務だった。
「ゼノン起きて!仕事よ仕事!」
大型機用格納庫にそびえ立つ巨大なゾイド。帝国軍最新鋭決戦ゾイド、
「セイスモサウルス」である。
「ゼノン」と名付けられたそのセイスモはハガネの専用機であった。
というか、ハガネはゼノンという名が気に入っているのか、
自分の愛機にゼノンという名前を付けるクセがあった。
かつてのハガネの愛機であったデスザウラーにもゼノンの名を付けていた。
しかし、そのデスザウラーの方のゼノンは前の戦いでゴジュラスギガによって破壊された。
そのため、ハガネは雪辱に燃えていた。そんな時に渡されたのがセイスモサウルスである。
帝国技術部の話によると、このゾイドは全身に強力な武装を装備し、
口腔内部に装備されたゼネバス砲はゴジュラスギガの装甲も撃ち抜く力があるという。
格闘能力も低くないという。しかしハガネはそれでも余り満足しなかった。
「ダメだ…これでもヤツには勝てるかわからない…。」
それがハガネの第一印象であった。しかし、それでも現在愛機として使用している。
何故かというと、ハガネもプロフェッショナルだからだ。
とりあえずゼノンに乗ったハガネは格納庫を出、あらかじめ用意されたナビの指示に従い、
一路ガイア山を目指すのであった。
219ガイア山の魔物:03/08/01 18:51 ID:???
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
突如こんな叫び声が聞こえたのはガイア山に向かう途中のことであった。
レーダーを見ると、いつの間にや多数のゾイドに囲まれていた。
帝国軍と共和国軍両軍のゾイドの混成部隊…と、リーダー機と思しきアイアンコングから
さらに大声がハガネの耳に入る。
「我らは泣く子も黙る大盗賊!!ロックス一家である!!命が惜しかったら…。」
地元の盗賊と思しき男が月並みなセリフを叫ぶが、突然黙り込む。
「おお!?よく見ればこのゾイド、初めて見るな。」
「お頭、きっと新型のゾイドですぜ!!」
「おおお!!こりゃいい!!命が惜しかったらその新型ゾイドを置い…。」
「大体この辺がガイア山だけど…いくら何でもセイスモにここはつらくない?」
「全レーザー砲…発射。」
勝手にエキサイトする盗賊達をハガネの乗るゼノンはその全身に装備されたレーザー砲を
シャワーの用に発射して一瞬の元に全滅させた。
「あたしはガイア山に行かなきゃならないの。邪魔しないでよね。」
コックピットから這い出てきた盗賊の頭に対し、わざわざゼノンから降りて
ハガネは言うのだった。
「ガイア山へ行く!!?嬢ちゃん!!あそこは魔界だぜ!!」
「魔界?」
「ああ…ガイア山へ行ったゾイドは全員帰ってこねーって話さ。だから魔界って呼ばれてるんだ!!」
と、何故かハガネと盗賊の頭の会話が始まるのだが、そのスキを見逃すほどこの盗賊は
甘くなかった。他の盗賊メンバーの一人、かなりの巨漢の大男が巨大なハンマーを持って
ハガネにこっそりと近づき、ハガネの後頭部に思い切りそのハンマーを打ちこんだのだ。
しかし、次の瞬間砕かれたのはハガネの頭ではなく、ハンマーの方だった。
その後、盗賊全員を死なない程度にボコったハガネはゼノンに乗り込み、
一路ガイア山を目指したのだった。
220ガイア山の魔物:03/08/01 18:53 ID:???
「ちょっと、お偉いさん人選謝ったんじゃない?どう考えてもセイスモにここでの
運用は向いてないわよ!!」
セイスモサウルスはそのタイプとしての関係上、山岳地帯での作戦行動は苦手であった。
それは共和国軍雷竜型ゾイドウルトラザウルスにも共通する欠点であった。
そんなゼノンでガイア山登山は難航を極めた。
まあ、とりあえず、頂上付近に登ることはできたが、、行方不明になるような原因と思え
るような物は見あたらなかった。
「さーて…外も暗くなってきたし…どうするものかな?」
ゼノンのカメラからの映像越しに回りを見回すハガネは明かりを発見した。
「あの明かり…もしかして集落かな?」
ハガネの乗るゼノンは少し下に降りる。そして山陰に隠し、ハガネはゼノンから降りた。
「あたしがいなくてもいい子にしてなさいよ。」
ハガネがそう言うとゼノンはコクリとうなづくのであった。
そして、ハガネは情報収集のため、単身集落を目指すことにした。
あらかじめゼノンを隠したのは、戦闘ゾイドと一緒に来たのでは、
現地住民に警戒されると思ったからである。
「何の変哲もない旅人としてふるまう…は無理か…この機械の体じゃ…。」
など、独りごとを言いながらハガネは集落を目指すのであった。
外はもう暗くなっていた。こんな所を一人で歩くのは正直怖いし、
例えライトを持っていても薄暗くて先が見えにくい。
しかし、ハガネはそんなこともお構いなしに進んでいく。
ハガネのカメラアイ。人間で言うと所の目に当たる部分に搭載された赤外線センサーに
より、暗闇も関係ないのである。万が一何かに襲われたとしても、返り討ちに出来る
実力も彼女は持っている。
「!」
と、ハガネは突然足を止めた。そして耳をすます彼女。
「エエ…ン…エグ…エグ…。」
221ガイア山の魔物:03/08/01 18:55 ID:???
「これは…誰かの泣き声?でもかなり遠いわね…。」
それは人間の耳では聞き取れないほど小さな音であったが、ロボットであるハガネに
そんな人間の常識は通用しない。とにかく、泣き声のあった方向へ向かう。
茂みや木々を抜けて彼女は進む。かなり遠い。
ある程度進んだ所で、彼女はカメラアイの赤外線センサーをオフにして、
頭部ヘルメットのV字型の模様から放たれるライトに切り替える。
相手を怖がらせないようにという配慮である。
「えええん……えええん…。」
そこには、一人の小さな少女が木の陰にしゃがんで泣きじゃくっていた。
ハガネのヘルメットから放たれるライトの光に気付き、ハガネの方を見る。
「一人でこんな所にいたら危ないよ。どうしてこんな所にいるの?」
相手を怖がらせないよう出来るだけ優しく語りかけるハガネ。
「あのね…あのね…迷子になっちゃったの…。そしたら外が暗くなって…。
とても怖くて…お化けが出そうで…。」
少女は泣きながらそう言う。
「ははは、大丈夫だってお化けなんていないよ。あたしだって夜の山道進んでたけど
何も出なかったし、私の各種レーダー&センサーにも何も反応もないし。
とにかく、近くの村まで送っていってあげるよ。それに、もし何か出たときは、
これでバーンよ。」
そう言うと、ハガネの右腕の手が引っ込み、中から銃口の様な物が出てくる。
とにかく外見からは想像もつかぬほど多数の内蔵兵器をハガネは搭載しているのである。
「ははは!お姉ちゃんの手品面白い!」
今まで泣いていた少女が先ほどのハガネの右腕の武装変化を手品と勘違いして
泣くのもわすれて笑っていた。
222名無し獣@リアルに歩行:03/08/01 19:46 ID:???
>>211-214
このへんは凄いドラマチックな展開なのに今までロクな読み物がないのが非常に勿体無いです。
(コアボックスに収録されるんだろうけど)
どうか吊らないでまた来て下さい
223The Fossil Of Deep Sea.?@:03/08/01 21:25 ID:???
外では、昨日からのひどい雨がまだ続いていた。
そしてそれとの間に置かれた窓ガラスが可哀相な位に、部屋の中の男の表情は険しい。

「そいつは、だ、大尉。クック要塞を襲ったもの、そして貴様の報告にあったものとも同型の機体であると俺は考えている。」

「自分に行かせて下さい。他の者では共和国の戦力を削る事にしかなりません。」
男は、ふん。と一つ鼻で笑ったが厳めしい顔のまま言って返した。

「そのつもりで俺は貴様を喚んだのだ。随伴はゴルドス一機で良いと言ったか。」
「は!すぐに向かいます。」
敬礼した自分の手が下りきるのも待たずに身を返し、司令室を後にする。
そうだ、直ぐに向かわねば。
この雨の止まぬ内、荷電粒子の槍穂から命を守る盾の好機が尽きる前に。
自然、早足になる。ハンガーへ近づく程靴音と鼓動は早まる。
一瞬で消滅せられた同僚二人と二機のゴルドスの仇。
動かなくなった左腕と、心を繋げたギガの仇。

討つ。ツァラの意識は高揚していた。
224The Fossil Of Deep Sea.?A:03/08/01 21:26 ID:???
「ええっ、もうですか?」
「二度言わせるな。ジャミングを開始だ、少尉。」
随伴させるゴルドスのパイロットにとレレウル中佐が推薦してくれた彼、ムカル=マッハ少尉。
無理に出力を上げたゴルドスに上手く乗るところを見ると確かに腕は良いようだが緊張感に欠ける。
技術は並でも気を張っていられる者の方が部下としてはツァラの好みだ。
もっとも、今のツァラにはどちらでも良いことだったが。

基地を出て五時間程が経ち、グレーの空は次第に黒を増す。晴れていれば太陽の消えるのが見える時刻。荒吹く風に任せ機体を叩く雨は尚激しい。
それら雨粒が天然のEシールドの役割を持ち、それが自分達を守ってくれているのだと思いはすれどやはり悪天候は人を陰鬱にさせる。
夜の色と相まってツァラは自分が黒い海流の中に居るような、深海へ巻き引く渦潮の中に居るような気分になってきた。
単純に深く暗く重く、暗い。

あのギガは自分を恨んだろうか。
未知の敵機よりの初撃から幸運にも命を拾ったあの時、
半壊した僚機の、ぎりぎりの余力で命を拾えたあの時、
無謀とも言える特攻になど駆けず、基地へ一目散、帰還していればあれは死なずに済んだ。
自分の機体をもう死なせない などと言えるものか。
誰も、自分のゾイドを死なせるつもりで乗る筈などあるものか。
救いのある結論など出ないと考えながらそれでも、後悔や哀悼は加速する。
今のツァラにとり、動かない左腕はそんな時の逃避の手段だった。
手指が血色を無くすくらい強く掴んでやっていると少しだけ許される気になれた。
225The Fossil Of Deep Sea.?B:03/08/01 21:27 ID:???
「反応、出ました!二時の方向に巨大な、」
その声で意識が直る。
「解ったご苦労。君はこの場で身を隠しジャミングを続けたまえ。一時間したら私が戻らずとも帰投せよ。」
「しかし大尉自分は」
「二度言わせるなムカル=マッハ。聞けぬというならそのゴルドスを動けなくしてやってもいい。」

ムカルのゴルドスが脚を止めるのを確認して通信。
「気に病むことはない。君は君の任務を完遂した。」
チャンネルを切る。

収束粒子砲の恐ろしいのは意識の外からの狙撃と、純粋にその威力だ。
ゴルドスの働きにより前者は封じた。
今の自分とギガなら視認後のシールド展開でも防御は可能だとおもう。多分。
もし展開が遅れてもこの雨、コクピットへでなければ直撃でも一撃は耐えられるだろう。祈る。
暫く駆けて一つの違和感に気付く。粒子砲が来ないのだ。
ブーステッドゴルドスの広いジャミング範囲からもとうに出てしまっている筈。
共和国基地からそれほど遠くないこの辺りでレーダー警戒を怠っているとも考えにくい。
・・・もし罠ならそれでも構わない。その場合も考え、基地の戦力を極力割かずに自分は一人でここへ来た。
さきへ、いく。
226The Fossil Of Deep Sea.?C:03/08/01 21:27 ID:???
勢いよく視界が開け、遠目に雷竜が見えた。全体が灰色に見える。雨粒越しで良かった。そう思った。
あの時と同じ下品な赤、ゼネバスレッドが目に入ればあの時の恐怖が甦っていたかもしれない。本当にこの雨は有り難い。
そいつの砲口が火を噴くのが見え、抜いた意識を引き戻し反応。
シールド・違う・身をかわす。後方で地表が爆ぜる。ひるる、と風を切る音が後から来た。実弾。
粒子砲を撃たない理由は知らないが好都合だ。例え直撃でもギガに応える威力では無い。
ギガの一歩ごと、ツァラの殺意は腫れ上がる。
合計で3度竜のブレスが風を切り地を裂いたところでツァラは敵の命を壊しにギガを跳ばせた。
懐かしい長い首目掛けギガは跳んだ。

金属のちぎれる音と生き物の終わる悲鳴を纏いながら肉食竜の巨体は、食らい付いた雷竜の首を中心に、跳躍で宙に輪をえがく。
ギガが地面に戻った時にはそいつの頭はすっかり上下が逆に捻られていて牙が引き抜かれるのと同時に、ぶきり。と嫌な音を立てて落ちる。
ツァラにはそれが、爛れた憎悪の膿がぼとぼと落ちる音に聞こえていた。
無様に死んだそのゾイドの顔を見てやろう。
あるいは、パイロットごとコクピットを踏み潰してやるのもいい。
227The Fossil Of Deep Sea.?D:03/08/01 21:28 ID:???
落ちた首の先端に付いていたのは、確かに一度見た顔だった。
だがそれは憎しみを伴い敵として戦場で。では無い。
むしろ誇らしい気持ちをもって、華やかな式典の場で一度だけ。このゾイドを眺めた記憶がある。
ウルトラザウルス。ツァラが憎悪を叩き付けギガが縊り殺したそれは、そういう名前のゾイドだった。
特徴的なキャノピーの中には確かにパイロットが居た。
いや正確には、パイロットだった者のカルシュームだけがシートベルトに縛りつけられていた。愛機とお揃いに頭がない。
絶命したゾイドの体の方を見てみると、その機体が如何に古い物か解った。
全身に設けられた大小様々な火器は胴部から伸びる巨大な一門を除いて悉くひしゃげ、途中で折れたり曲がったりしている。
後脚は二本とも破損しており痛々しく、不自然な形に地面にくずおれている。

・・・昔、惑星Ziには3つの月があった。
しかし50年程前、その内の一つが異常接近した彗星に衝突されZiに落ちた。
大地は割れ大陸の一部は水没し、多くのゾイドはその機能を停止した。
その一機。
突然の宙災に意識を奪われた化石が、何故だか迷い出てきたというのか。
自分が何であったかも解らず、共和国のスカウトプテラスに砲火を向けたというのか。
そして。
戦友となっていた筈の新鋭機の牙に、この未熟な軍人の誤解と憎悪に、再び命を絶たれたというのか。

左の指先が青くなっていた。
意識せず右手でまた、動かぬ腕を強く掴み締めていたらしい。
キャノピーの隙間からしぶきが入ったのか、塩水が頬を伝う。
時計を見る。ムカル少尉と別れてより47分が経過していた。

帰路につくのはもう20分、待ってからにしよう。
この情けない嗚咽は当分収まりそうにないから。
228ガイア山の魔物:03/08/01 22:36 ID:???
「手品じゃないんだけど…まあ、泣きやんだからいいか…。とにかく、行きましょ。」
「うん、私の名前はアリスって言うの。よろしくね。」
「私は…ハガネでいいよ。」
そう言うと、少女、アリスはハガネの左手をつかむ。アリスは何か違和感を感じたのか
ハガネを見る。
「ハガネお姉ちゃん…手が冷たいよ…。それに石みたいに堅い…。まさかお化け…。」
「ははは、キツイなーアリスは。お化けなんていないって。
それにあたしの体が冷たくて堅いのは、あたしがロボットだからだよ。」
「ろぼっと…?ろぼっとってなーに?」
アリスは興味深そうに言う。
「話せば長くなるから…とにかくそう言う者なのよあたしは。
間違ってもお化けじゃないから安心して!」
「うん。」
結構素直な子だった。

それから、二人は何事もなく集落にたどり着いた。集落と言っても小さな町程度の
規模があったりするのだが、まあこんなことはどうでも良いだろう。
「お姉ちゃん、ありがとう。後は一人で十分だよ。」
「でも、気を付けなよ。」
そう言った後、アリスはどこへと立ち去った。そしてハガネは町の方に顔を向けて、
「され、情報収集と行こうかな…。」
まあ、手近な手段として酒場等があるわけで、早速酒場に行くことにした。
「おや、お嬢ちゃん見かけない顔だね。旅人かな?」
早速店のオヤジに声をかけられるハガネ。
229ガイア山の魔物:03/08/01 22:36 ID:???
「まあ、そんなもんだよ…とりあえずコーラ一つ。」
コーラを注文してイスに座る。酒場でコーラというのもちとアレだが、
そんなことはこの際どうだっていい。ロボットに人間の常識は通用しないのだから。
ちょっと違うか…。
「嬢ちゃん、旅人なら気を付けた方がいいよ。この辺の山道には、出るらしいよ。」
そう言って店のオヤジは両腕をあげると手だけをぶらんと下げる。
「出るって…ウ○コが出るのか?」
突然の下ネタに店のオヤジや他のキャクが騒然とすっころぶ。
前述延べた通り、ハガネはロボットだから人間の常識は通用しない。
それ以前にまだ彼女のAIに「下ネタ」という概念は無かったりする。
「と…とにかくだな…幽霊だよ幽霊。幽霊が出るって話なんだよ。」
「ハハハハハハ!!ユーレイ?そんなもんいるわけ無いじゃない!!」
人類の英知の結晶。ニューマノイドロボットであるハガネが言うと妙に説得力がある。
「いや、嬢ちゃん。本当に出るらしいよ。それに、出るのは幽霊だけじゃない。
あの山には怪物が出るって話だよ。」
「怪物?」
さっきまで笑っていたハガネの目の色が変わった。それには店のオヤジもビクッとくる。
「その話…詳しく聞かせてもらいましょうか?」
その時の彼女の目がまともな人間の物ではないことに店のオヤジは気付いていた。
普通の人間の物ではない。この目は既に何人も人を殺している目…
まあ、ハガネはロボットなんだがから人間の常識など通用しないのだが…
230ガイア山の魔物:03/08/01 22:38 ID:???
「ああ、あの向こうにある山に何でも怪物が出るってんだ。
それがよ、ワシャまだ見たことはないんだが…まるでこの世の物とは思えないバケモノだって話なんだよ。でも、不思議なことに戦闘ゾイドを持ってるヤツ以外は襲わないんだと。ありゃきっと山の神様じゃないのかな?人間が戦争ばっかしてるから怒って出てきたとかさ。」

「ふ〜ん…。調べてみる価値はありそうね…。」
その晩は、近くの宿で休み、ハガネは再び山に登ることにした。
酒場のオヤジが言っていた話。幽霊の話はともかくとして、怪物の話は無視できなかった。
もしかしたら、謎のゾイド行方不明事件の原因かも知れないと思ったからだ。
というか、山に一体残してきたゼノンがその怪物とやらに襲われていないとも限らない。
そう思うと自然とハガネの足が速くなる。
「あいや待ちなされ…。」
突然声をかけられたハガネは足を止めて、声の主ほ方向を向く。
そこには僧と思しき老人の姿があった。
「まさか、あの山に行くつもりかな?お嬢さん。やめたほうがええ…。怪物に食われてしまうぞ。」
「あら?戦闘ゾイド以外は襲わないんじゃないのかな?」
ハガネの返事に老僧は空を見上げながら言う。
「いや…今まで襲われなかっただけで今度は襲われる可能性はある…。お嬢さん…
そもそも…どうして怪物が現れるようになったか分かるか?」
「さあ…そんなのデータに無いことだし。わかんないよ。」
「た〜た〜り〜じゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ギャァァァァァ!!」
老僧の突然の一言に流石にハガネも今度は驚いたようだ。
「人間達の愚かな行為に神様が怒っておられるのじゃぁぁぁぁぁぁ!!
これは山の神のたたりなのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
231ガイア山の魔物:03/08/01 22:39 ID:???
「うるさぁぁぁぁい!!たたりなんてそんな非科学的な物あるわけ無いでしょうが!!
あーもービックリした…ゾイドコアとAIが機能停止するかと思ったじゃない!!」
今度ばかりはハガネも怒ったようだ。そして、老僧の静止も聞かず、ハガネは
足の裏や背中のブーストを全開にして山へ飛んでいった。
それを見ていた老僧は呆然とその場に立ちつくすしかなかった。
「なんなんじゃ?あの嬢ちゃんは…。」

「あーよかった!ゼノン無事ね。」
ゼノンの所にやってきたハガネはゼノンが無事だったことを確認するとほっと一息入れた。
ゼノンもハガネが帰ってきたのでうれしそうにしていた。
「早速怪物探しと行きましょうか…。」
と、ハガネはゼノンの頭部に跳び乗ろうとした時、
「ハガネお姉ちゃん!!」
そこにいたのは、昨日出会った、アリスという名の少女であった。
「お姉ちゃんまたあったね。」
アリスは嬉しそうにハガネに近づく。
「アリス…ってあなたまた迷子になったの?」
心配そうにアリスに声をかけるハガネ。しかし、アリスは首を横に振り、
「ううん…今日は大丈夫。向こうにいる大きなゾイド、お姉ちゃんの?」
アリスはゼノンを指さして言った。
「うん、そうだよ。」
ハガネは普通にそう応える。
「これがびがざうろ?ってゾイド?ってアレ?どうしたのお姉ちゃん、突然転んだりして。」
アリスの一言に思わず転ぶハガネ。
「あのね…ゼノンはセイスモサウルスってゾイドなんだよ…。って随分古いの知ってるね…。」
顔を引きつらせながらも何とか優しく応えるハガネ。
232ガイア山の魔物:03/08/01 22:40 ID:???
ビガザウロ…。ヘリック、ゼネバス両軍において、史上初の大型ゾイド。
しかし、戦闘力は高くないために、旧大戦の早い段階で戦線から引いた幻のゾイド。
現にハガネ自身博物館に安置された物しか見たことはない。
「でも、こんな凄そうなゾイド持ってるなんて…お姉ちゃんもしかして兵隊さん?
この大きなゾイドで戦争するの?」
アリスの何気ない一言に、ハガネの目つきが一瞬細くなる。
「あっ、ごめんなさい…。」
自分の言ったことが悪いことだと思ったアリスはすぐに謝ろうとする。しかし、ハガネは
微笑みながらアリスの頭をなでてこう言った。
「別に謝らなくても良いよ。」
戦闘ロボットとして作られたハガネは、今まで何人何十という人間を殺してきた。
戦争と言う名の生活は殺伐そのものだった。
しかし、アリスとの会話は、その殺伐さも忘れさせるほどハガネを和ませるものだった。
「じゃあ、ハガネお姉ちゃん。戦争が終わったら一体何をするの?」
アリスの何気ない一言にハガネは一瞬硬直した。
―――――――そう言えば…考えたこと無かった…戦争終了後のことなんて――――
「その昔の地球って星の物語に最強と呼ばれた戦闘ロボットが、全ての戦いが終わった後。
メイドに転向するってのがあったけど、それにあやかってメイドになるってのもいいかなーなんちて…。」
一時の沈黙後、ハガネは右手で後頭部を掴み、笑いながらこう言うのであった。
233ガイア山の魔物:03/08/01 22:42 ID:???
「!!」
ハガネが何かに反応し、あたりを見回したのはその直後のことだった。
「どうしたの?お姉ちゃん・・・。」
「ちょっと待って!」
心配そうに声をかけるアリスに待ったをかけてさらにあたりを見回す。
「何か来る・・・何か・・・巨大な・・・・エネルギー反応が・・・・。」
自身のセンサー&レーダーをフル稼働させながらハガネが言う。
「アリス!!しっかりつかまってて!!」
そういってハガネはアリスをつかみゼノンの頭の上まで跳ぶ。
「ねえ!!何がどうしたの?」
突然のことに今にも泣き出しそうにアリスが言う。
「とにかくゼノンの中に!!あたしの予想が正しければ・・・」
大急ぎでゼノンのコックピットに入り、シートベルトを締める。
ちょうどアリスはハガネの上に乗る形で座る。
「ねえ!!いったい何が・・・・。」
「シィ!静かに・・・・。」
ハガネはアリスを静かにさせると操縦桿を握り締める。
ゼノンが山を背にして戦闘態勢を取る。
その時、突然ズシンという音とともに地響きが聞こえてきた。
何か巨大なものが近づいている証拠である。そしてその音はどんどん近くなる。
「私の予想が正しければ、今近づいているのは・・地元の人間が言っていた怪物・・・。」
「ハガネお姉ちゃん・・・アリス・・怖い・・・。」
アリスはそういってハガネに抱きつく。ハガネはそんなアリスにやさしく手を添え、
「大丈夫。私たちはセイスモサウルス「ゼノン」の中にいるんだよ。
そしてセイスモサウルスは帝国の誇る最新鋭ゾイド。どんな怪物が現れたってちょちょいのちょいよ!」
そう言ってハガネは今にも泣きそうなアリスを元気付ける。
234ガイア山の魔物作者:03/08/02 00:46 ID:???
>>219

11行目の「大体この辺がガイア山だけど…いくら何でもセイスモにここはつらくない?」
は書き間違えです・・・というか正しくは消し忘れ・・・
スマソ
235ぼるじょあ ◆yBEncckFOU :03/08/02 04:12 ID:???
     ∧_∧  ∧_∧
ピュ.ー (  ・3・) (  ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
  = ◎――――――◎                      山崎渉&ぼるじょあ
236ガイア山の魔物:03/08/02 10:07 ID:???
足音はなおも近づいくる。
「近い・・・。」
そう言い、ハガネは操縦桿を強く握り締めた。
「来た!!!・・・・・ってええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
ゼノンの正面に位置する山の向こうから現れた怪物にハガネは驚愕の声をあげた。
なぜならその怪物の大きさたるや、セイスモサウルスの数倍の大きさがあったからだ。
「あちらこちらにキメラのパーツが・・・キメラだけじゃない・・・・。色んなゾイドの
パーツがある・・・・。あっちにはデススティンガーのパーツまで・・・。」
その怪物は今まで襲ったゾイドのパーツを取り込んだのだろう。
キメラも真オーガノイドもクソもない。目の前の怪物は、
ブロックス・通常ゾイド関係なく様々なパーツが滅茶苦茶に融合していた。
ゼノンも思わず後ずさりする。
「それにこの怪物・・・何かに似てる・・・・。そうだ!!ヤマタノオロチだ!!。」
ヤマタノオロチとは、地球の神話に登場する頭と尾が8個ある怪物のことである。
その怪物はまさにそのヤマタノオロチに酷似した形状をしていたのだ。
その上、機械と有機質の混じり合ったような外皮の質感はグロテスクとさえ感じられる。
まっとうな人間が見たら、吐き気をもよおすであろう。
怪物に向けてゼノンはゼネバス砲を発射する。怪物の体は瞬く間に撃ち抜かれる。
「やった!!ってええええええ?。」
次の瞬間、怪物の撃ち抜かれた傷口が瞬時に再生していた。
ゴジュラス・ジ・オーガをも超えると思われるもの凄い再生力。
しかも、その再生のシーン…もの凄くグロイ。まっとうな人間が見たら絶対吐く。
「ならこれならどうよ!!」
ゼノンの全身の武装が火を噴いた。全身のレーザー砲、背中に装備した大型ガトリング砲、
等々、全身の火器がシャワーのように怪物に降り注ぐ。
しかし、無意味だった。またもや瞬時に再生された。
237ガイア山の魔物:03/08/02 10:08 ID:???
「うわああぁぁぁぁぁー!!めっちゃこえぇぇぇぇ!!」
思わず叫ぶハガネ。しかし、怪物はその8個ある内の1つの頭をゼノンに叩きつけた。
信じられない程のパワー。セイスモの巨体がたちまち吹っ飛ぶ。
「何なのこの強さ!!セイスモがおもちゃ扱いじゃない!!」
ハガネも思わず錯乱し、叫ぶ。
「アリス…ゴメン…もしかしたら助からないかも…。」
ハガネは右手で震えるアリスを抱きかかえる。
「ごめんなさい!」
「え!!?」
アリスの突然の一言にハガネが驚いた。
「あの怪物…もともとは私のお友達のエレファンタスのエっちゃんなの!」
「え!!?それってどういう…。」
「ある日突然エっちゃんになんだか良くわからないのがくっついて…それでエっちゃんが
変になっちゃったの…その後、なんだか怪物みたいなゾイドをたくさん体にくっつけて
ああなっちゃったの!!ごめなさい!!」
泣きながら突然のことを言うアリスにハガネもどう対応すれば分からなかった。
しかし、怪物はゼノンに対する攻撃の手をゆるめなかった。
8つの首が伸び、ゼノンの全身に噛みついたのだ。
「うあ!!好き勝手やってくれちゃって!!」
ふりほどこうと必死にもがくが全然びくともしない。ゼノンの超重装甲もきしむ。
「こぉぉぉぉのぉぉぉぉ!!バケモノめえぇぇぇぇ!!……!!?」
それは突然起きた。何かの映像がハガネのコンピューターに入り込んできたのだ。
「何…これ…。」
ハガネも何が起きたかさっぱり分からなかった。
238ガイア山の魔物:03/08/02 10:09 ID:???
その映像は戦争の映像だった。戦う兵士。戦災に巻き込まれる一般市民。
捕虜となり拷問を受ける兵士。敵に対する憎しみ。憎悪。
見ているだけで気持ち悪くなるような騒然たる映像がハガネのコンピューターに
映し出されいた。
戦争によって命を落とした兵士や一般市民の残留思念。怒りや憎悪。憎しみ。
それが一体のゾイドを乗っ取り、さらに他のゾイドを取り込み、怪物を作り出した。
ゼノンの目の前にいた怪物はそうやって誕生した。
そして今、ゼノンをも取り込もうとしていた。
その時、さらに別の映像が映り込まれてきた。
「こ…これは…アリス?」
アリスが草むらで小さな野生のエレファンタスと戯れていた。
その映像は、先ほどの映像とは打って代わって和やかな映像であった。
「そうか…なら助けなきゃね…エっちゃんを…。」
ハガネはそうつぶやくと。全レーダー&センサーをフル稼働させた。
怪物のコアを探しているのである。
「あった!!ここだああぁぁぁぁ!!」
そこは丁度怪物の腹部に当たる部分であった。そして、その中心部分にむかって
ゼノンの頭部をそのまま突っ込んだのである。
そこにはどす黒く変色したエレファンタスの姿があった。
「これね!!」
次の瞬間、ゼノンの口でそのエレファンタスを掴み、そのまま引き抜いた。
コアを失い、うめき、もがく怪物。ゼノンに噛みついていた8つの口もたちまち
ゼノンから離れる。
「いまだ!!くらえええええ!!」
ゼノンの全身の武器が火を噴いた。ゼネバス砲。全レーザー砲。大型ガトリング砲。
それらの猛攻が怪物を飲み込んでいった。コアを失った怪物はもう再生することは無かった…。
「ふう…。」
怪物の撃破を確認するなり、ゼノンはその場に倒れ込み、ハガネも全身から煙を吹き出した。
「お姉ちゃん、エっちゃんを助けてくれてありがとう!!」
そう言ってアリスはハガネに抱きつく。
239ガイア山の魔物:03/08/02 10:10 ID:???
あのねお姉ちゃん、お願いがあるの。このハンカチ、もらってくれない?」
そういって、白いハンカチをハガネに差し出す。
「これは…?」
「お友達の印。もらってくれるよね?」
「う…うん…。」

「じゃあ、あたし達はもう行くね、お姉ちゃんありがとう。」
そう言ってアリスはエレファンタスと共にその場を立ち去った。
ゼノンから降りたハガネは二人を見送ると、ゼノンを見る。
「あー…全身傷だらけ…こりゃ始末書何枚書かされるかわかんないなー…。」
と、首を抱えていたときにまた何かの声が聞こえてきた。
声の来た方を見るとそれは地元の人間だった。
「昨日の嬢ちゃんじゃないか?突然大きな音がしたと思って来たんだが…
一体何があったんだ?」
そう言ったのは昨日の酒場のオヤジだった。
ハガネは後ろを指さす。指さす対象は怪物の残骸。
「怪物を倒した。」
「…………………………………………………………………。」
全員一気に沈黙。
「ん!!?お嬢ちゃん!!このハンカチ…どこで手に入れた?」
突然ハガネに詰め寄ってきたのは、山に登る前に出会った老僧であった。
「ああ、アリスって名の女の子にもらったんだよ。」
何事もなく普通に答えるハガネ。
「アリスって名の子はワシらの集落にはいないよ…。」
240ガイア山の魔物:03/08/02 10:11 ID:???
「え…?」
老僧の突然の返事にとまどいを隠せないハガネ。老僧はさらに言葉を続ける。
「なぜならアリスは…何十年前以上の戦争に巻き込まれて死んでしまったのじゃから…。」
老僧の言葉に一瞬硬直するハガネ。
「え!?え!?でも普通に何事もなく出会ったよ。ちゃんと生命反応もあったし。
ちゃんと………。ってどうして妙に詳しいの…?」
「何って、アリスはワシの娘だからだよ。」
「なーんだ、お爺さんがアリスちゃんのお父さんだったのねー…。でもウソはよくないよー…。」
「ウソだと思うならくるがいい…。」
老僧につれて行かれた先にあったのは一つの墓標。墓標にはアリスと書かれていた。
「え?え?」
ハガネは全く意味が分からずに混乱する。
「見た通りじゃ、アリスはもう何十年も前に死んでしまっておるのじゃ。」
「じゃ…じゃあ…私が出会ったアリスは…。」
「多分、それが噂の幽霊だな。」
どこから現れたのか、酒場のオヤジがそうつぶやいた。
「そうか…お嬢ちゃんが出会ったのは…ってお嬢ちゃん?」
その時、ハガネの身に異変が起こっていた。
「幽霊…ユウレイ…ユーレイ…非科学的…ヒカガクテキ…理解不能…リカイフノウ…
リカイフノウ…リカイ…リカイ…リカイ…リカイ…リカ…リカ…リカ…リカ…リカ…
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ…。」
「うわあああー!!お嬢ちゃんの頭から煙がー!!」
ハガネのコンピューターは幽霊という非科学的な存在を理解できず、
ショートしたのであった。

世の中には科学では解明できない物もあるっていうお話。

あ、ハガネはあの後一時したら回復したからご安心を。     おしまい
241名無し獣@リアルに歩行:03/08/02 22:00 ID:???
そろそろ次スレ用意した方がよくね?
2422099 開戦8−1:03/08/03 07:21 ID:???
 移動する軍用車輌の窓枠に肘をのせてマッケナ大尉はずっと荒々しい風景を見ていた。
 レッドラスト砂漠地帯とミューズ森林地帯を隔てるグラム山脈は標高よりもその険しさで知られていた。
 砂漠地帯の暑い風と森林地帯を越えた海側から吹いてくる風とに両側から削られてそうなったのだといわれていた。
 その山頂近くは大きな温度差をもった2方向からの風によって複雑な気流が渦を巻いていた。
 その気流はグラム山脈を越える航路を取る航空ゾイドにとっての難所となっていた。

 マッケナ大尉を乗せた軍用車輌はグラム山脈のなかで、この辺りでは最低鞍部となる場所を通過するところだった。
 全体的に険しい地形が続くグラム山脈だが、まれに天然の回廊となる鞍部が存在していた。
 その様な場所はたいてい地元の交易商人たちの手によって街道に整備されていた。
 勿論、街道といっても舗装されているわけではない。ただ幾度も商人達が通過するうちに踏み跡が出来て道路となっているだけだ。
 だが道そのものがどこにあるのかしばしばわからなくなるようなグラム山脈では街道は貴重な存在だった。
 軍用車輌は前線に張り付いている連隊の連絡車輌だった。
 マッケナ大尉は補給についての打ち合わせに軍団司令部に来ていた車輌が帰還するのに同乗していたのだった。
 その連隊は山脈の中ほどの場所に展開していた。いまだ山脈の麓に展開している共和国軍に圧力を加え続けるためだ。
 軍団のなかでも突出した位置に連隊は布陣していた。他の連隊は地形の関係上それ以上の前進には相当の被害が予想されるからだった。
 もちろん連隊は軍団予備などで十分に増強されていたから戦力的にはそれほど問題は無いはずだった。
 だがそれも正規軍同士の戦闘であればだった。
2432099 開戦8−2:03/08/03 07:22 ID:???
 突出部である連隊の陣地には連日のようにゲリラ攻勢が仕掛けられているらしかった。
 攻勢は共和国軍の特殊部隊が主力となっているようだが、小数だが山岳民族系ゲリラも混じっているという情報があった。
 マッケナ大尉はその調査のために前線に向うところだった。
 軍団参謀部にはそのことは伝えずに、単に前線視察であるとだけ伝えておいてあった。
 だからそれほど派手に動けるわけではなかった。

 いきなり車輌が止まったのでマッケナ大尉は窓枠に頭を打ち付けるところだった。
 あわてて運転手の特技兵を見ると、マッケナ大尉に軽口をついていた軽い感じを受けた特技兵が別人のように鋭い目つきですぐ先をにらんでいた。
 後席に座っていた補給担当の先任曹長がいった。
「いつでも発進できるようにしておけ」
 曹長が言い終わらないうちに最初の発砲があった。それはすぐに弾幕となって軍用車輌を包み込んでいった。
244名無し獣@リアルに歩行:03/08/03 07:29 ID:???
>>241
今見たら前スレは240KBで止まってるんだよね
このスレは今283KB(汗
前スレは一年半かかったのにこのスレ作成してから二ヶ月ちょいしかたってないんだよな
一応Vol.2の頃に250踏んだ人が新スレ立てるとルールがあるが・・・
次スレ立てたほうがいいよなぁ、この調子だと
245名無し獣@リアルに歩行:03/08/03 19:43 ID:???
ギガ対セイスモのバトスト執筆中の男ですが、
なにゆえそのボリュームたるやマイバトストスレ史上かつて無い物になりそうなので
できれば新スレになってから書き込もうかなと思ったり・・・

(実は単にまだ未完成なだけなのであった・・・・)
246名無し獣@リアルに歩行:03/08/04 01:51 ID:???
(゚Д゚≡゚Д゚)<このスレもお終いみたいで、結局何もできなかった奴のたわごとなわけだが

皆さんそれぞれ得意分野が異なってて非常に面白いです。
「2099 開戦」は、もう作品世界に安心して身を委ねられるって感じでいいですね。
情景描写が秀逸だと思います。

「カンウ」が出てくるバトスト書かれてる方は同じ方だと思うのですが、
作品同士クロスオーバーしてるのが面白いので、
それを利用した帝国側部隊の視点でも見てみたいっす。

セイスモのバトストが納得行かない方は、メンタルな表現がとても上手くて見習いたいなと。

魔装竜の活躍する作者さんのは超強いブラキオスに感動すら覚えましたし。

>>245氏も超がんがってください。
247名無し獣@リアルに歩行:03/08/04 07:09 ID:???
>>246
感想有難うございます。これで帝國はあと十年は戦え・・るかも
では次スレ立てる方向で一致でしょうか?
このスレの1〜5までのコピペで問題ないと思います
248開戦前夜作者:03/08/04 07:26 ID:???
早いかもしれませんが次スレたてました
http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1059948751
249山崎 渉:03/08/15 20:30 ID:???
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
250名無し獣@リアルに歩行:03/10/18 11:22 ID:???
250
251名無し獣@リアルに歩行:03/11/01 18:54 ID:???
252名無し獣@リアルに歩行:03/11/02 01:24 ID:???
       
253名無し獣@リアルに歩行:03/11/02 19:24 ID:???
254名無し獣@リアルに歩行:03/11/03 23:06 ID:???
       
255名無し獣@リアルに歩行:03/11/04 01:06 ID:???
       
256名無し獣@リアルに歩行:03/11/04 19:48 ID:???
       
257名無し獣@リアルに歩行:03/11/04 20:38 ID:???
       
258名無し獣@リアルに歩行:03/11/05 05:38 ID:???
       
259名無し獣@リアルに歩行:03/11/05 05:39 ID:???
       
260名無し獣@リアルに歩行:03/11/05 05:40 ID:???
       
261名無し獣@リアルに歩行:03/11/05 19:00 ID:???
       
262名無し獣@リアルに歩行