1 :
気軽な参加をお持ちしております。:
銀河のはるか彼方。地球から6万光年も距離にある惑星Zi。
そこには戦乱の世界である。
人々はこの星に棲む巨大な機械生命体「ZOIDS」を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと出撃する。
この戦いを勝利することこそが、永遠に平和を勝ち取る為の唯一の方法と信じて…。
本スレは、空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリーでも語られる事のなかった、民間のみに伝承される物語が記されている。
歴史の狭間に消えたこの物語達が、本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
だが、語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か、否かは、これを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
2 :
気軽な参加をお持ちしております。:01/12/21 00:09
3 :
気軽な参加をお持ちしております。:01/12/21 00:10
ルール
ゾイドに関係する物語であるならば、何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などは、特に制約はありません。
アニメ、漫画などを題材にしてもOK。
ただし、18禁はお断り。
鯖負担になるので、250で次スレに以降。
250に書き込んだ人が、次スレを立てること。
無理な場合は、すぐさま報告すること。
物語の感想等なども、ご自由にお書きください。
2001年 地球
この星ではいくたびもの核実験によりゴジラが生まれてしまった。
そのゴジラによりいくつもの命が失なわれていった。
だが人類はゴジラ対策のために人工的に作り出した金属生命体ZOIDS
を戦闘用に改造しゴジラにむかわせるのだった・・・・。
>4
各々のサイズをよく見て見ろ。
ゴジラのサイズはあんなもんじゃない…。
大きさを無理矢理変えます
アラン・ベルツ少佐は待機室で震えていた。VR訓練はもう数え切れないほどこなしてきたし、
最高の隊長に最高の相棒もいる。共和国最高の精神科医にカウンセリングも受けた。
最初こそこの任務を引き受けていいものか戸惑ったが、今はやる決心もついた...はずだった。
恐怖。圧倒的な恐怖。一度味わった者は一生忘れる事の無い荷電粒子砲という恐怖を、
アランは嫌と言うほど知っていた。彼が生還できたのは、まさに奇跡だった。
当時、アランはまだゾイドを乗りたての新米で、やっとゴドス小隊に配属されたばかりだった。
作戦開始後、後方のゴルドスから通信があった。ジェノザウラーらしき機影を確認したので注意せよ、と。
アランが所属していた第23機動小隊の隊員たちに緊張が走った。彼らが乗る機体は小型のゴドス。
ゴドスがジェノザウラーと互角に戦えるはずが無いのは共和国兵士全員が知っている事実だ。
再度確認のため隊長のジョン・スキップ曹長がゴルドスに連絡を入れようとした刹那、眼が眩まん
ばかりの閃光が小隊を襲った。アランが意識を失う前に覚えている唯一の光景は、拡散荷電粒子砲が
彼の所属する小隊めがけて襲ってくる恐ろしい光景だった。医療班に運ばれている時に目を覚ました
アレンが見たのは、下半身が無くなった彼のゴドスと、荷電粒子砲の膨大な熱量によって
溶解し、ただの鉄隗と化してしまった他の隊員たちのゴドスたちだった。
作戦の開始時間はあと10分後。戦闘に入る推定予測時間は約二時間半。もう、時間は無い。
もしこの作戦が失敗してしまったら、この戦争は圧倒的に帝国側が有利になって
しまうのは明白だった。共和国の敗戦もありうる。しかし、俺にできるのだろうか。
もし、失敗したら。もし、奴が技術班が割り出した推定戦闘能力以上だったら。
もし、戦闘中に、恐怖のあまり動けなくなってしまったら...あれこれ考えているうちに、
アレンは待機室のスピーカーから聴こえてくるアナウンスに気がついた。とうとうこの時が来たか。
アレンは恐怖の念を振り払えぬまま、彼が搭乗する事になるRZ−55、マッドサンダーが待機
している第三格納庫に、死刑台に向かう死刑囚のような気分で重い体を引きずっていくのだった。
共和国の運命を両肩に背負いながら。
おお、新連載ですなー。
マッドサンダーが主役ですかな。
当方は、帰省してますので、「風の吹き荒む戦場で」の連載再開は、休み明けになりそうです。
新スレ立てたのはいいけど、年末、特に最後の週は死にそうだったので・・・。
他の方も恐らく、そうなんでしょうか、と思ってみたり。
ええ、言い訳です。ごめんなさい。
今回もコミケで、考察本とか入手しましたので、知識量はパワーアップしましたので、来年もよろしう。
それでは、よいお年をー。
バトスト2の>>254を書いたやつ誰だ!?
まさか勝手に俺のストーリーを変な方向に続きを書いた>>235(バトスト2)と同じやつだったりして・・・
>名無し獣弐氏
今更なオハナシですが。
プロジェクトZのコングの話「倒せ〜」って私でしたっけ?
そーでもないような気がするのですが…。
ども、ここに来るのも久しぶり。
改造コンテストに出してみようかとスナイプマスター改造中なので。
>10
アイアソコソグPK氏ですよね?
あれ、コテハン以外の人は名前書いてないんですがまぎらわしかったみたいですね。
直しておきます。
>11
っと、これ僕ですね。
こっそりやってきました。
以前書き損じてお蔵入りになっていたお話ですけど、良かったらどうぞ。
肉付けする前の、話の素みたいなものです。言い回しが妙にバトストくさくて笑えます。
小さな丘で(1)
ZAC2038年
実に40日ぶりの静寂だった。40日間、100門を越す重砲の射撃音に震え続けた大地は静ま
り返り、巨大なゾイドの合間を吹き抜ける口笛のような風の音だけが響いた。1人の共和
国兵が耳を押える。沈黙が耳に染みて痛んだのだろうか。
「前進」
無数のゾイドの歩行音により静寂は破られた。共和国軍の進撃が始まったのだ。
「イリューションが降伏しただと?」
そう問われた薄汚れた兵士達は、何も答えなかった。共和国軍の大攻勢に、帝国軍イリュー
ション守備隊は40日もの間耐え続けていた。そのイリューション守備隊がついに降伏した
のだ。イリューション市の西にある小さな丘。彼らが今いるのは背後に大湿地帯が広がる
その丘に造られた、小さなトーチカだった。その場にいる全員が口をつぐんだ。イリュー
ション市の西の備えであるその丘に配備されたゾイドはゲーター、たった1機だけだった。
イリュ―ション市から共和国軍の包囲網を突破し、やっとの思いでこの丘にたどり着いた
兵士達は落胆した。今、ここにある戦力はゲーター1機と、彼らと共に逃れてきたゲルダー
1機だけなのだ。共和国軍は今夜にもここにやってくるだろう。戦うか、退くか。兵士達
は覚悟を決めた。ここが俺達の死に場所だ。その時、この丘を任された古参兵が口を開いた。
「ここは俺達の丘だ。俺とゲーターだけで戦わしてもらうぞ」
驚く兵士達に、古参兵はゲーターの装甲を軽く撫でながら続けて言った。
「なに、俺達はこの日のためにここを守り続けてきたんだ。お前達にも見せてやるよ。
俺達の戦い方をな」
小さな丘で(2)
西へと進撃する共和国軍に驚くべき情報がもたらされた。数十キロ先の小さな丘に帝国軍
の大軍が集結中だというのだ。帝国軍にまだそんな力が残されているのか?首を傾げる共
和国軍司令の元に、ゴルドス部隊が傍受した無線の内容が届けられた。「ゲルダー中隊、
配置完了」「マルダー砲兵隊、弾薬補給完了セリ」「レッドホーン機甲大隊、戦闘準備急
ゲ」司令の疑心は驚きに、そして恐怖に変わった。帝国軍はここで一気に我々を押し返し、
イリュ―ション市を奪回する気かもしれない。
「プテラスを斥候に出せ。敵が小規模ならばこのまま前進し踏み潰してやる」
プテラスがウルトラザウルスの甲板から飛び立ち、夕日が赤々と燃える西の空へ向かった。
日が落ち、漆黒の闇に塗り潰された空をプテラスは進む。あの丘の上空に達すると、プテ
ラスのパイロットは赤外線センサーとパッシブレーダーのスイッチを入れた。スクリーン
に数え切れないほどの輝点が点る。
「なんてこった……」
パイロットが呆気に取られていると、ロックオンされたことを知らせる警報音がコクピッ
トに鳴り響いた。慌てて回避行動に移るプテラス。操縦桿を強引に操作しながら、プテラ
スのパイロットは無線で司令部に報告した。
「敵部隊発見。その数不明。掃いて捨てるほどいやがる!」
共和国軍の歩みが止まった。これ以上接近すれば奇襲を受ける恐れがあるからだ。
「夜明けとともにウルトラキャノンの一斉砲撃で敵を全滅させるのだ」
共和国軍は慌しく砲撃準備を行い、夜が明けるのを待った。
小さな丘で(3)
闇に沈む湿地帯を息を潜めて進む者達がいた。フロート付きのゲルダーに乗った、あの兵
士達だった。彼らは全員ゲルダーの背中に立ち、東の方向を見つめていた。あの小さな丘
の影が水面の上に揺らめいて見えた。湿地帯を進むのは彼らだけではなかった。数え切れ
ないほどの帝国ゾイドと兵士達が闇の中を西へ西へと進んでいるのだ。あの古参兵が共和
国軍を足止めしたこの一晩で、数え切れない帝国兵の命が救われたのだ。ゲルダーの背中
に立っていた兵士の1人が、消えゆく丘の影に敬礼した。影が見えなくなるまで、敬礼は
続いた。
夜明けとともにウルトラキャノンの凄まじい一斉砲撃が開始された。
「この砲撃で敵を全滅させよ」
ウルトラ部隊は砲弾を全て撃ち尽くすまで砲撃を続けた。
砲撃は昼まで続いた。すっかり形が変わった丘を占領した共和国軍。しかしそこには大量
のデコイと、トーチカの瓦礫に埋もれた1機のゲーターの残骸があるだけだった。
「たった1人で、我々に立ち向かったのか、この男は」
共和国兵達はその敵兵の勇敢さを称え、残骸に敬礼した。
「1人だけではないさ」
兵士達は司令の方に振り向く。
「そのゾイドも、勇敢な戦士だ」
息絶えたゲーターを指差しそう言うと、司令は西の空を見つめた。帝国首都まで達するま
でに、我々の前には何人もの勇敢な戦士達が立ち塞がるだろう。果たして我々は彼らに打
ち勝つことが出来るだろうか。
「勇敢な戦士には、勇敢さをもって応えるのみだ」
司令はいつまでも西の空を見つめ続けた。青い青い空を。
……以上です。
このテキストファイルのタイムスタンプを見てみたら、奇しくも去年の9月11日でした。
ニュースで繰り返し放送されるテロ映像を見て鬱な気分になってしまったのでしょうか。
ずっと放置されていたままになっていました。
それではこれにて。こっそり消えます。
あげちまえ。
荒れ果てた基地の中で1人の賞金稼ぎがステルスバイパーを発見したことから
彼は共和国、帝国両方を敵にまわしてしまう・・・
ガニメデ・・・・ ボソ
年明けて、誰も居なくなったかと思ったら、なんと赤羽さんがやって来た。
しかし、もはやゾイド板には、それに対応するだけの力はないのですよ。
やっぱ赤羽さん最高!
おやじマンセー!
ゲーターマンセー!
つーかガニメデー!
自分でバトスト書いてみよう過去ログ保管場所に置いて貰っている「帝都攻防戦(仮)」の続編です。
未完成のままなのも忍びないので駄作ながら書かせて貰います、、、sageつつ書きます。
不敗の猛虎の続き〜
少年は両手に抱えきれないほどの新聞を抱いて叫んだ。「号外!号外!」
「帝国皇帝、北方に逃亡」「共和国軍追跡中」「戦争終結せず」「難民流入の可能性大」
新聞を立ち止まって読む共和国市民達は不安を隠せなかった。どこの新聞紙も一面の見出しは
帝都陥落ではなく皇帝の逃走であった。戦争は既に人々にとって生活の一部でさえあった。
平和への期待と、それへの諦めと、共和国軍に対する呆れと、これからの生活への不安が渦巻いた。
十月の寒空の下、太陽を久しく見ていない共和国首都には、暗雲が垂れ込めていた。
「来るぞ!準備しろ」「破片には気を付けろよ!」
また一機、北の空にシンカーが現れた。皇帝の勅命によって帝国軍残存航空兵力のすべてはバレンシア基地へ
向かっていた。常に波の高いダラス海にはシンカーも着水することができず次々と砂浜や丘に不時着した。
バレンシアへ向かう途中、共和国の襲撃を受け墜落した帝国軍機も多く、共和国空軍はバレンシアに終結した
帝国航空兵力を攻撃すれば完全に殲滅できると確信した。地上をゆくエリクソン大佐率いる共和国陸軍の長蛇の列を眼下に
12機のサラマンダーがバレンシアへと向かった。
バレンシア上空に到達した先遣掃討隊は高度をゆっくりと下げて、地上を見回した。猛烈な対空砲火の洗礼を浴びた。
雲が低く高度が維持できないサラマンダーにとっては不利だが、戦闘機の傘を欠いた地上防空隊はもっと悲惨な状況と言えた。
翼から小型噴進弾が放たれ高角砲が吹き飛ばされる。険しい地形を生かした防空砲台は地の利を生かしよく奮戦した。
時間が必要だ。軍を再編成し攻撃に備えるだけの時間が。
また名無しになってやがる、、、>25のタイトルは「時間」デス。
「第十二高角砲分隊より敵重爆来襲との報告!」
「皇帝!我々を邀撃に上がらせて下さい。閣下より授けていただいた機体には傷つけませぬから!」
「敵の襲撃を許しては収容が完了していない陸軍の連中がやられてしまいます!どうか閣下、ご英断を!」
親衛隊のシュトルヒ搭乗員が捲し立てた。航空服の搭乗員に囲まれている皇帝はダンガン将軍を見つめた。
ダンガンはおもむろに頷き、搭乗員に向かって叫んだ。
「サラマンダー共は俺が獲る!いいな!」
そう叫ぶとダンカンは部下の居る待機所へ走り去っていった。
「行くぞ貴様ら!目標は基地上空に襲来せるサラマンダー複数!」
ブンカーより次々と真紅の虎たちが駆けだしてゆく。咆吼が基地に響いた。厳しい地形を巧みに駆け下りてゆく
サーベルタイガーを陸兵達は涙目で見つめていた。帝国はまだ負けていない
「十一時方向に高角砲弾幕!」「大型機の機影十時!」
遠方に目標を発見すると切り立った岩をものともせずサーベルタイガーは駆け抜けていった。
サラマンダーの機銃員が地上のタイガーを確認したのはダンカン側がサラマンダーを発見してから間もなく
だった。一機のサラマンダーが翼を振り注意を促した。そして6機が緩やかに旋回、タイガー隊へ向かった。
高度をより低く下げると共に目を皿のようにして地上の施設を睨んだ。少しずつ真紅の機体がハッキリと
タイガーであることが確認できる様な大きさになった。3機がまずミサイルを撃ち込んだ。爆煙が吹きあがる。
機銃員が目を細めて効果を確認しようとする。何かが動いた。まだだ。
噴煙の中にレーザーを撃ち込みもしてみたが手応えがない。痺れを切らした1機が地上すれすれの高度で
噴煙に接近した。一瞬、ガンカメラに何かが写った。
サラマンダーの首が吹き飛び、機体は錐揉みしながら岸壁に激突、翼は四散した。
帝国の摂政として威張っているプロイツェン。
しかし、そんな彼にも下っ端の時代があったのだ。
プロイツェン 18歳
皇帝ガイロスの草履取りになる。
ガイロスがプロイツェンの差し出した草履をはくと、なにやら草履が生暖かい。
「愚か者め、草履を尻にしいておったな!。」
怒るガイロス。しかし、プロイツェンは、
「めっそうもございません。陛下が寒い思いをすると思い、懐で温めていたのです。」
「なんと、そんな心遣いを・・・・・お前、今日から昇進だ。」
これがプロイツェンの出世街道を駆け上がるきっかけとなったのだ。
この出来事がなかったら摂政の自分はなかったと、
プロイツェンは語る。
妄想これからのバトスト
プロイツェン率いるプロイツェンナイツやゼネバス残党兵そして鉄竜騎兵団は中央大陸に上陸し
ヘリック、ガイロス連合軍との全面対決に入った。そしてついに始まった全面会戦。
だがその戦いをよそに閃光のごとき速さで荒野を突き進む1体のゾイドがいた。
それは新CAS"ガンマ"を身にまとったライガーゼロであった。
「後少しか・・」
ライガーゼロのコクピットの中でレイ・グレックは呟いた。レイはネオゼネバス帝国司令部の後ろに回ろうとしていた。
何故だろうか。自分でもわからなかった。ただ運命と言うかそんな感じのものに引き寄せられているような気がした。
何せレイが操作しなくてもゼロが勝手にその方向に向かって走っていく。こうなったらどうしようもない。
ゼロの気がすむまで走らせるしかない。
レーダーに敵ゾイドが映った。ディロフォースが2機とディマンティスが1機だ。
ディマンティスから機銃が放たれる。が、ゼロはそれを易々と除けストライクレーザークローをディロフォースに食らわせ、
ショックガンをディマンティス2機に叩き込んだ。次のゾイドは出てこない。
レイは再びライガーに任せ走り出した。
山の向こうの空は少し明るくなっている。もう戦闘が始まったのだろう。
(グゥゥゥゥ)
急に唸り声がコクピットに響いた。それはライガーゼロの声だった。
レイは操縦桿を握り締めた。直後、暗闇に閃光が走る。荷電粒子砲だ。
間一髪だった。荷電粒子砲は装甲をわずかにかすれただけですんだ。
そして発射された方向に振り向くとそこにはバーサークフューラーが立っている。
「ヴォルフ・ムーロア・・」
ブースターを全開にふかしライガーは一気に飛びかかった。
*ガンマ、は出るという噂のあるライガーのCASの仮称って事でお願いします。
ファンブック3面白いわぁ。
続き
「ちぃ!」
ライガーゼロの爪とバスタークローがぶつかり合い、激しい火花が散る。
着地し、間をおかずにフューラーのほうに振り返った。だがそこには既に相手はいなかった。
直後、後ろからバスタークローの一撃が来る。前回戦ったときとは全く違う。無駄の全く無い動きだ。
直撃は免れた。だが右前脚の装甲をもっていかれた。少し距離をおきショックガンを撃つ。
それはフューラーの右肩の装甲を破壊し、レイに一瞬のチャンスを与えた。
その一瞬をレイは見逃さずに頭部にストライクレーザークローをぶち込んだ。
だが同時にフューラーはライガーの顎にブースターを全開にした蹴りを叩き込んだ。
ライガーゼロの口下部のパーツは粉砕し、フューラーの頭部装甲の左側を破壊した。
そして2機はピクリとも動かず静寂が訪れた。
フューラーのコクピットの中でヴォルフは恐怖と戦いながら必死に修理をしていた。
メインカメラも作動しない。いつレイが攻撃してくるかわからない。だが既に一分は経ってるだろうが攻撃は無い。
奴も何か不都合が起きたのだろうか。だがそれにしても向こうが早く修理を終えるかもしれない。
一刻も早く起動させねば、そう思えば思うほど手が震え作業がはかどらなくなる。額から一筋の血が流れ落ちる。さっきの衝撃で怪我をしたのだろうか。
眼前で光が灯った。それはモニターの光だった。
(外の状況は・・)
ヴォルフはモニターを睨みつけた。そこにはライガーゼロが横たわっていた。ヴォルフは胸をなでおろしたがそんな暇は無い。再び作業を開始した。
長い沈黙を破ったのはライガーゼロのほうだった。ゆっくりと立ち上がりフューラーに近づいていく。
まったく動かない。首を押さえつけた。ピクリとも動かない。
レイはとどめを刺そうとした。だが手が動かない。自分はこんな形の決着を望んでいないのだろうか。
しかしここで終わらせなければ次は無いかもしれない。操縦桿を握り締め、ゼロは爪を振り下ろした。コクピットを潰すために。
グシャ
機械がへしゃげる音が遠くで爆音が聞こえる中で響いた。
だがそれはフューラーのコクピットではなかっくゼロの右横腹だった。フューラーは直前で起動し、ゼロの横腹を尾で叩きつけた。
ゼロはよろめいたが戦闘態勢を崩さない。レイはヴォルフを倒す最大のチャンスを逃したのだ。
2体は再び距離を取りにらみ合った。
フューラーのコクピットに発信音が響く。発信先は目の前の―最大の敵である―ゼロだった。
「聞こえるか。ヴォルフ」
レイの声が聞こえた。
「何故貴様達は戦争を起こす。何故これ以上の戦乱を望むのだ」
ヴォルフは歯を食いしばり、そして答えた。
「貴様に我々ゼネバスの人間の気持ちがわかるのか?」
「わからないね。戦争を起こそうとする気持ちなんてな」
そういうと同時にゼロのショックカノンが火を吹いた。だが今度は当たらず、一気に距離を縮めバスタークローを回転させ貫こうとした。
レイはそれを避けずに、逆に懐に潜り込んで首に噛み付き、そして押さえ込んだ。
「降参したらどうだ。もう終わりにしようじゃないか。俺の勝ちだ」
そう言うとレイはバスタークローのアームを1本破壊した。
「貴様に・・」
ヴォルフは囁き、そして叫んだ。
「貴様に何がわかると言うのだ!?」
もう1本のバスタークローが唸りを上げ、ゼロの左前脚を貫こうとした。寸前で除けた。だが傷は深い。
「祖国を追われ、ガイロスに移り住まねばならず奴らに迫害され続け、今また貴様に愛するものを殺された俺の気持ちが!」
同時に荷電粒子砲が放たれる。ゼロはEシールドを展開した。顔の装甲の半分が吹き飛んだ。
ゼロは怯んだ。その瞬間にフューラーに突き飛ばされた。
「俺は負けない。いや、負けられない。祖国ゼネバスの為にも、アンナの為にも、幾千人の同志の為にもな!」
そしてよろめくゼロに向けてバスタークローを延ばした。それをゼロは避けて見せた。驚異的な速さで。
ゼロはCASを自ら脱ぎ捨て、横に回りこみ、ストライクレーザークローを展開し、飛び込んだ。
フューラーは転回し、バスタークローをゼロに向ける。
バスタークローとストライクレーザークローが交錯し、火花を散らす。
その時間が恐ろしく長く感じた。実際はまばたきよりもはるかに短い時間なのに。
ゼロの手には確かな手ごたえがあった。フューラーの顔が粉砕し、完全に破壊されていた。
ガクン
同時にゼロが力なく倒れた。コクピットの中も暗くなり、モニターがシステムフリーズを告げている。
外に出て損傷を確認した。ゼロの腹からバスタークローが生えている。それはコアを貫いている。既にゼロは全く動かず、その目から光は消えていた。
以上、妄想終わりです。書いてるのはちと恥ずかしかったですが。
「ウルトラザウルス、両足骨折!ウルトラキャノン
の砲身も溶けだしています。」
1200ミリウルトラキャノンを撃ち続けた
ウルトラザウルスは、今は戦える状態ではなかった。
「ニクシー基地攻略前線部隊より通信。帝国軍は
新型ゾイドを使用しており、味方軍は苦戦を強いられてるようです。」
今すぐ助けに行きたい
ハーマン少佐を含むウルトラザウルス全乗組員が
そう思った。
だが今のウルトラザウルスでは移動事すら出来ない。
ふと頭を抱えていたハーマンがいきなりなにか
思いついたような顔をしだした。
ハーマンが目にしたモニターの先には
しっかりと大地に立っていてまだ元気そうだった
デストロイドゴジュラス2号機が映っていた。
「ダイノ・サウリア。まだ2号機は動かせそうか?」
「はい。2号機異常有りません。いつでも行けます。」
ゴジュラスのパイロットが元気に返事をした。
年は地球人で言うと15〜16くらいだ。
ダイノはその若さで軍に入り、さらにゴジュラスの
操縦を得意としていることで共和国軍内では結構有名なのだ。
「ただちにニクシー基地に向かい、
味方軍の援護にまわってくれ。」
「了解しました。予備弾丸強制排除、
いくぞ ゴジュラス!」
グオオオオオオオオオオ
鋼鉄の恐竜王が咆哮した。
ゴジュラスは前傾姿勢になり
最初はゆっくりと徐々に足を速めていく
全長26メートルの巨体が荒野をはしる。
その時ダイノがある異変に気付いた。
楽しそうだなぁ。俺も書いていい?
「ある日のプロイツェン」
デスザウラー復活計画成功!!
この報告はプロイツェンを大いに喜ばせるものだった。
「よし!!早速デスザウラーを量産せよ!!。」
威勢良くプロイツェンはこう命令する。しかし・・・・
「すみません・・・・いま・・・われわれは資金不足なのです・・・・。」
「なんだと・・・・・。」
プロイツェンは唖然とした。
恐らく豊かな共和国なら平気でほいほいと量産できただろう。(デスザウラーを作る技術があれば)
しかし、帝国は国家予算を軍事費にばかりつぎ込んできたために資金が乏しかった。
「う・・・・資金を軍事費にばかりつぎ込んだつけが回ってきたのか・・・・。」
悩むプロイツェン。
「こうなったら・・・・・どこかで金を借りよう・・・・・。」
そしてプロイツェンは金を借りにいくことにする。しかし、その途中・・・・
「あっ!!プロイツェンだ!!捕まえたれー!!。」
なんとプロイツェンは共和国兵士につかまってしまった。
「わあああっ!!。」
気づくとプロイツェンはベッドの上にいた。
「何だ・・・・・夢オチかい・・・・・。」
ズィグナーの報告を受けたヴォルフは、ズィグナーを退出させて、一人になった。
ふと窓に寄る。
眼下には、夕日に染まる海がどこまでも広がっている。
それがヴォルフには、同胞が流す血の色に見えた。
そしてホエールキングは、問題なく撤退をしているようだった。
ひとつため息を付いて、左手で額を覆う。
この瞬間にも、我々を・・・この俺を逃そうと、死んでいく同胞が居る。
その事が頭から離れない。
ゼネバス。
その言葉が、頭に張り付いて離れない。
自分が、その運命から逃れなられないのは、分かっている。
後悔と懺悔が交錯する。
すべては強大な意思の中で動いている。その中で、自分は流されているだけだ。
何もかも押し流す濁流は、本当に最後には、穏やかな海にたどり着くのだろうか。
不意に、部屋のドアが開いた。部屋の中から開けるか、パスコードを知っていないと開かない筈のドアが開いた。
ヴォルフは、振り向きもしなかった。パスコードを知っている人間は、数える程しか居ない。どれも信用できる人間達だ。
と、気づいた。
副官のズィグナーならば、とりあえず確認を取ってから部屋に入る。
「誰だ?」
それでも振り返りもせず、いつも通りの抑揚のない声で問う。
「誰だ? じゃないわよ。私だよん。ヴォルフ。」
今、自分をその名で呼ぶ人間は、3人しか居ない。
父と母と、そして・・・
振り返ると、アンナ・ターレスがドアの縁に肘をついて、そこに居た。
「暇だし。来てみたけど。電気ぐらいつけなさいよー。暗いわよ。」
そう言って、ドアの隣のスイッチに手を滑らせる。確かに陽が落ちようとしているこの時間、部屋はいつの間にか薄暗くなっていた。
部屋の明かりが付いて、アンナは部屋の中に入って軽い足取りで、部屋のガラス棚に近づいた。慣れた手付きで中の物を物色する。
「飲み物作るけど、何かリクエストある?」
撤退中という艦全体が重い雰囲気にも関わらず、まったく変わらずにアンナは気楽に問う。それに多少狼狽しながら、ヴォルフは、抑揚のない声で答えた。
「いや、今はそんな気分じゃない。」
「んじゃ、紅茶にするね。」
聞く耳持たずで、アンナは、紅茶のセットをガラス棚から取り出した。
>続くかも。
・・・反応なし。
なので、続きません。
スレ汚しすまんー。
ちょっとまてー!
続きが気になるじゃないか。
感想ならそのうち付くさ。気長に待とうよ。
>40
アンナたん萌えな連中は、アンナたんスレにいっちゃったのでこっちを見てないのかな〜。
個人的には2人の過去の補完SSはすごく読みたいなー。
>>40 スマソ。下がりまくってたんで気づかなんだ。
続きキボンヌ。おながいしますm(__)m
つづきキボンヌ、age
反応が無いのではなく人が無い
マリエスたんハァハァスレから拾ってきたアイデアです。神よ!これをもとに
バトストを希望します!!神よ...死にそうなゾイド板に命を与えたもう。
317 :名無し獣 :02/03/09 22:02
煩悩バトスト
主人公は共和国空軍のパイロット。
サラマンダーで未完成のギルと相打ちになり、山中へ不時着。
そこでマリエスたんと出会う。
敵味方の立場を超えて二人っきりの生活を送るうちに、頑なだった
マリエスたんも次第に心を開いていく。
しかし二人のラブラブ生活も、帝国の捜索隊に見付かり終了。
マリエスたんの助けで脱走した主人公は、共和国に戻って
復活したオルディオスのパイロットとなる。
そしてマリエスたんは洗脳され、完全復活したギルベイダーで登場。
果たして主人公はマリエスたんを救えるか!?
324 名前:名無し獣 :02/03/10 01:10
>>317 初キスは捕虜収容所から主人公を逃がす時、別れ際に。
325 名前:名無し獣 :02/03/10 01:41
>>317 初Hは野宿中に火が絶えてしまったとき。
暗闇に脅えるマリエスを抱きとめる主人公。
月明かりのもと、寂しさを紛らわすために二人は…。
…ってムリあり過ぎか。
>>46 他人に頼るな。
どんな拙いもんでもいい。
自分で書け。
再開を楽しみにしてみるage
いつ始まって、いつ終わるのかなんて誰も知らない。
「夏祭りのように」(1)
ZAC2040年
太い腕に揺すられて目を覚ました。強化ガラス越しに射す日の光が、ほんの少しだけ眩し
くて、目を細める。その様子を見ていた隣りの男は何かを操作して、これで眩しくありませ
んよ、といかめしい顔に不器用な笑顔を作ってみせた。ガラスの向こうでグラリと左へ傾く
世界を見て、起こされたばかりの男は自分が今どこにいるのかを思い出した。
「あれが王宮址ですよ。綺麗なものでしょう?」
操縦桿から片手だけ離して、隣席のパイロットが地上の一点を指差した。そんなにごつい
腕をして、操縦の邪魔にならないのだろうか。話し掛けられた男はパイロットの日焼けした
太い腕を見てそう思いつつ、彼が指し示す先へ目を移した。眼下には茶褐色の山肌を剥き
出しにした山々が広がっている。荒涼とした、いかにもこの星らしい景色の中に、それは白く
きらめいていた。暗い坑道で一点だけ光る宝石の鉱脈のように美しく、そして今にもふっ、
と消えてしまいそうに危ういものに思えた。宝石か。あの帝国の、富と技を結集して作られ
たそれは、確かに一種の宝石と言えるかもな。男はその白い残骸、跡形もなく破壊された
ゼネバス帝都を空から見下ろしながらそう思った。今ではただの石ころだが。
男を乗せた飛行ゾイド、サラマンダーは徐々に高度を落としていく。王宮址に駐屯するヘリック
共和国軍の糧となる、大量の軍需物資を腹の格納庫に詰め込んだサラマンダーの動きは、
飛行ゾイドを操った経験がないその男にも分かるほど鈍かった。本当なら俺もこいつの
重い腹の中に押し込められるところだが。男はわずかに口元を歪める。たまには役に立つもの
だ。俺が地球人であることが。パイロットは喘ぐように飛ぶサラマンダーを旋回させようと
していた。どうやら男にもっと空中散歩を味あわせてやろうとしているらしい。男は時間が
ないので早く着陸するようにパイロットに伝えた。それほど急いでいる訳ではなかったが、
男には廃墟と化した街を空から眺めることが愉快には感じられなかった。パイロットは
一瞬、顔を曇らせたが、すぐに笑顔を作って男の言葉に従い、操縦桿をゆっくり押し倒して
いった。
sage忘れた。スマソ
赤羽さんの作品がまた見られるー(´∀`)
赤羽さんの新作ですね!
イヤッホゥ!
またこのスレにも熱い風が・・。
「夏祭りのように」(2)
戦史研究所。ほう。書類に目を通していた男はそう呟くと、彼の前に立つ新参者の顔をまじまじ
と見つめた。新参者は顔色一つ変えない。きっとこういう扱いに慣れきっているのだろうな。彼は
再び手にしていた書類に目を落とし、口を開いた。
「遠いところまでご苦労でしたな。えー、……タ?」
「タイチ・ミノワ特派員です。しばらくの間、こちらのご厄介になります」
それだけ言うと、新参者、タイチは口をつぐんだ。タイチがゼネバス帝都の土を踏んでからこの
中隊本部に辿り着くまで、すでに4時間もの時間を費やしていた。飛行場に降り立ったタイチは、
方面司令官から師団長、連隊長、果てには聞いたこともない部門の責任者やら誰それの友人だと名乗る者やら、
赤や黄色の派手なボロ布を纏った娼婦達まで総出の歓迎に答え、彼らを振り切ってやっとここまで
やって来ることが出来た。彼らは口々にこう言った。地球人に会ったのは初めてだ。故郷の皆に自慢出来るよ。
毎度のことながら、タイチは自分が珍獣か何かになってしまったような気がした。
「ええ、全て上から聞いとります。食事のことも心配なさらずに。いい写真が撮れると良いですな」
タイチと粗末な机を挟んで向かい合う中隊長が、タイチの肩から下げられた黒いバッグを見てそう
言った。タイチは答えない。中隊長の態度から、彼の腹の底にはその言葉とは全く逆の思いがあることが
分かっていたからだ。こんな僻地まで来て出歯亀とはご苦労なことだな。そう言いたいのだろう。彼らが、
ゾイド星人が地球人カメラマンを忌み嫌う理由はタイチも知っていたが、それについては深く考えないように
していた。タイチ個人には、どうしようもないことなのだから。中隊長はこの後の予定を簡単に説明すると、
タイチの背後にある扉を指し示した。軽く会釈をしてからタイチが部屋を退出しようとした時、彼の背中に向かって
中隊長が低い穏やかな声で語り掛けた。
「お望みのものがたくさん撮れるでしょうな。ここならね」
タイチは少しだけ立ち止まったが、そのまま振り向かずに部屋を後にした。
おぉ
次の話は1ヶ月後くらいだと思ってたけどはやかったな
「夏祭りのように」(3)
兵士達は、初めて見る地球人の黄色い肌と、その手に抱えられているカメラをちらりと見るだけで、
口を利こうとはしなかった。タイチを含めた10人の男達を乗せて、ガイサックは砂を巻き上げながら
朝焼けに染まる大地を駆けていく。夏季であるにもかかわらず、空気は鳥肌が立つほど冷たい。高地で
ある上に、砂漠が広がるこの辺りは昼夜の寒暖の差が大きいので、防寒具を用意しておいてください。
昨夜、中隊本部に準備されたタイチの部屋を訪れた小隊長が、固い面持ちでそう言った訳が分かった。
すっかりかじかんでヒリヒリ痛む耳を覆うため、タイチは小隊長が差し入れてくれたポンチョのフードを被る。
ガイサックの背に座る彼を冷気から守ってくれるものは、そのポンチョ以外に何もなかった。タイチと同じ
ように、ガイサックの背に設けられた吹き曝しのデッキに腰を下ろした兵士達は、もうタイチに関心を失って
しまったのか、彼から目を逸らして煙草を吸ったり、手にした突撃銃をいじったりしている。タイチは振り返って
朝の砂原を眺めた。地上を照らす日の光は、空一面に薄く広がる雲と舞い上がった砂塵のせいでひどくくすんでいた。
ガイサックが不意に速度を落とす。野郎共っ! ついさっきまで黙って煙草を吸っていた一人の兵士が突然そう
叫ぶと、デッキに座り込んでいた兵士達が一斉に立ち上がった。
「全員下車!」
兵士達はその合図と同時に、鮮やかな手際でガイサックの細長い足を伝い、地面へと降り立った。その様子を見て
呆気に取られていたタイチも慌てて彼らにならい、ガイサックの足に掴まって降りようとしたが、手を滑らせて腰から
落ちてしまった。タイチはカメラが無事であることを確認すると、小さく舌打ちをしながら立ち上がった。おい、
大丈夫か? 下車命令を出し、自ら真っ先に飛び降りてみせた兵士がタイチに声を掛ける。その兵士こそ、この分隊を
率いる分隊長だった。タイチが黙ったまま頷くと、分隊長は背後の砂漠を指差した。
「写真屋さん、あれを撮るといいぜ」
彼が指差す先で何かが動いた気がしたが、タイチにはそれが何であるか、すぐには分からなかった。たくさんテントが
乱立している。砂にまみれ、風になびいている。その周りには数え切れないほどの穴があって……。タイチは目を疑った。
あちこちの穴から人間が一人、また一人と這い出てきたのだ。タイチはカメラを構える。ファインダーの向こうに、
今日の目的地である地底族俘虜民収容キャンプが広がっていた。
話は淡淡と続く。
期待してます!
「夏祭りのように」(4)
首が千切れた人形を両手に抱いたまま立ち尽くし、鈍く光る大きな瞳でこちらを窺う痩せこけた子供。
砂と埃が積もって今にも潰れてしまいそうな天幕の下で、一欠けらのパンを更に小さく分け合って食べる親子。
薄っぺらい毛布にくるまって、何もせずただ宙を見つめる老婆の顔にたかる虫。タイチは黙々とシャッターを切る。
若い男がレンズに向かい人差し指で銃を撃つ真似をし、タイチは思わずファインダーから目を離した。白い歯を
出してニヤリと笑う男に、分隊長が突撃銃の銃口を向けて立ち去るように促すと、男はテントの中へと消えた。
風がテントの間を吹き抜けて、布がはためき錆びたスチールの骨組みが軋む音が響いた。
分隊長はタイチの耳元で、怒鳴るような大声でいろいろと教えた。まだ朝早いからな、こいつらも随分大人しいが、
飯が配られると途端にやかましくなるんだ。飯は共和国軍が配給してやっている。こんな何もないところじゃ、
ほっとけば飢えて干涸びちまうからな。最初のうちは数百人しかいなかったから管理も楽だったんだが、どこから
涌いて出たのか、今じゃ何万人いるか見当もつかん。こんな収容キャンプが、この辺りにはいくつもあるんだ。
おかげで軍はこの方面にかなりの兵を駐屯させなきゃならなくなった。もうそんなことは知っているか? ああそう。
おい、その穴ぼこにはあまり近寄るなよ。こいつらはキャンプの地下にトンネルを掘り巡らして、その中で寝起きして
いるんだ。地底族っていうくらいだからな、そういう癖があるんだろ。覗かない方がいいぜ。奴等はああ見えて
デリケートだ。前にそんな穴に小便しようとした奴がいたんだが、そいつは頭に血が昇った地底族の奴に危うく一物を
もぎり取られそうになったんだぜ。あんたも気を付けろよ。そうそう、俺はモスっていうんだ。皆は軍曹と呼ぶがな。
好きに呼べよ。分隊長、モスは手を差し出した幼い子供に飴玉をやりながら、道の真ん中でしゃがみ込んでいた男を
銃床で殴り付けながら、タイチに一方的にしゃべり続ける。そうしながらも辺りを睨回し警戒を怠らない。
彼に従う8人の兵士とガイサックも同様に俘虜民達を威嚇しつつ進む。タイチはモスの話にいちいち相槌は打たずに
キャンプの様子をカメラに収めていたが、ふと気になったことをモスに訪ねた。
「彼らは他所の土地からやって来たのか? なぜもともと旧帝都にいた住民はいないんだ?」
その言葉を聞いた瞬間、モスの顔に悪意めいた何かが浮かんだのをタイチは見逃さなかった。だがモスはすぐさま
陽気な軍曹の顔でそれを覆い隠し、タイチから視線を逸らして言った。
「この先に行けば、なぜだか分かると思うよ」
それだけ言うとモスは突撃銃を構え直し、黙って歩いていった。
何とかF-1が始まるまでに書き終わった。
「夏祭りのように」(5)
一気に喉に流し込んだ水が気管に入ってしまい、タイチは噎せ返った。もう水筒2本分の水分を飲み干していたが、
相変わらず口腔は乾き頭が痛んだ。何もせずにいると意識が遠のいて眠ってしまいそうだ。水筒を口元に運ぶだけ
でも辛い。目に映るもの全てがぼやけて、小刻みに揺れているように見えた。タイチは力を搾り出し、水筒を振って
3本目を催促した。だから言ったじゃないか。もっと水を飲めってな。モスが水筒をタイチに手渡しながら言う。
答える気力も残っていなかった。あんたが夢中になって写真ばかり撮っていたからいけないんだぜ。俺は何度も
言ったんだ。水を飲めとな。分かるか? 俺は悪くない。あんたが悪いんだ。分かるか?
砂漠と言ってもそれほど広くもなく、日中の気温も驚くほど高くはない。何も心配するな。戦史研究所の連中は
そう言っていた。冗談じゃない。朦朧としながらタイチは毒突いた。一日中テクストと睨めっこしているお前らに
何が分かるというんだ。老婆とパン屑と糞尿が一緒に干涸びていく傍らを歩く気分が想像出来るか。ほっといたら明日にも
死んでしまいそうな人間が放つ眼光がどんなものか知っているか。あんたはこいつに乗って休んでいるといい。
例の場所に着いたら起こしてやるよ。モスの声が遠くで響く。目の前が真っ暗になる。深い穴の底に身を横たえているような、
安心感と孤独感がタイチを飲み込む。意識が闇の中へと静かに溶けていく感覚が心地良かった。瞼の裏に赤と緑の光が
染み出てきて混ざり合い、何かの輪郭を形作り、やがて鮮明な像が浮かび上がる。男だ。男がこちらに突撃銃を突き付けて
ニヤリと笑う。分かるか? 男は子守唄でも唄うかのような小声で囁いた。あんたが悪いんだ。何もかもあんたが悪いんだ。
分かるか?
風がタイチの顔を撫でるように吹く。日に焼けて赤くなった肌から熱を奪っていく。タイチはゆっくり瞼を開いた。先ほど
まで全身を支配していた倦怠感はすっかり消え去っていた。仰向けに寝そべるタイチの目に映ったのは、青い空ではなく
黄土色の天井だった。それが分厚い布の天幕だと気付くまでに数秒を要した。
「俺のカメラはっ」
タイチは激しく咳き込む。声を上手く出すことが出来ない。手に持っているじゃないか。モスの声がはっきり聞こえた。
タイチはようやくストラップで右手に括り付けられたカメラと、横に座っているモスの存在に気付いた。軽い脱水症状だ。
もう良くなったろう。モスは立ち上がり、天幕の外へ出ていった。彼の背中を目で追っていたタイチは、天幕の向こうに
広がる光景に言葉を失った。一面に白い小石が敷き詰められた世界がそこにあった。
「ようこそ王宮へ。世界の高みに立った気分はどんなだい?」
意地悪く微笑むモスの顔など、タイチには見えていなかった。強い日差しの下で輝く、大理石と白骨の破片が山積した
白い大地。俺はまだ悪夢の中を彷徨っているんじゃないか。タイチはそう思った。
age
プロイツェンの反乱はガイロス、ヘリック同盟によって破られ、戦争は終結。発端となったプロイツェンが失脚したため帝国、共和国は休戦協定を結ぶ。
そして、帝国が内部から崩壊したため事実上戦勝国となったヘリック共和国は、占領した領土の一部を暫定的なゼネバス自治区として、ゼネバス人の希望者をそこへ住まわせることを約束した。
しかし、そのゼネバス自治区の土地はあまりいい土ではなく作物がなかなか育たない土地であった。つまりゼネバス人はその願いを利用され「押し込められ」てまとめて監視下におかれていたのだ。
「監視下」の事実はまだ知られてはいないが、作物が育たない土地であることには徐々に不満の声が挙がり始め、共和国政府はその早急な対応を求められた。
…が、硬直した共和国政府の対応は遅々として進まなく、不満の声は次第に大きくなる。
そんな中に事件は起きた。共和国内の過激な人種主義者(レイシスト)によるゼネバス人に対する放火事件(無差別テロ)だ。この事件により多くのゼネバス人の命が奪われ、住むところを失った。
この事件が発端となり、ついにゼネバス人のゲリラ活動が始まった。共和国軍は直ちにそれを鎮圧にかかるが、ゲリラはシールドライガーなどの高価なゾイドを少数だが所有しており思わぬ苦戦を強いられた。
鎮圧に出たある共和国軍人は捕虜として1人のゼネバス人を連行。そして尋問したところ、ゲリラの活動資金は共和国内に残ったゼネバス人によるアンダーグラウンドの組織が出所らしいという情報をつかんだ。
また、ゲリラのゾイドの大半は作業用に簡素な武装を取り付けた物であるが、一部は上記の通り高価なゾイドもあり、どうやら共和国軍内のゼネバス人が前大戦で中破した物を横流しし、それをレストアして使用しているという情報もつかんだ。
その結果共和国内ではゼネバス人に対する風当たりは一層強まっていき、泥沼の内乱状態へと突入していく…
登場人物
フィーグ=ノア(主人公)24才
ゲリラのいち兵士でレブラプター乗り。(前大戦ではヘルキャット乗りだった。)性格はやさしく熱血漢で家事全般を嬉々としてこなす。のんびりとした生活を望んでいる。
「俺は…負けられないっ!!」
カッツ=バルゲル 35才
フィーグの所属するゲリラ部隊のリーダーでシールドライガー乗り。(前大戦ではサイクス乗りだった。)性格は明るく、どんな苦境に立っても軽口を叩き、周囲に不安を与えない。帝国立大学を卒業しているため頭もいいがそうは見えない。ちなみに妻子持ち。
「シールドライガーか…反応も悪くないな…へへっ、気に入った!!」
アルト=グラッセル 21才
フィーグの親友で、ゲリラでは偵察担当のロードスキッパー乗り。前大戦時は歩兵として出兵。その悪運で小隊唯一の生き残りとなった。性格は明るくノーテンキだが、歩哨としての腕は立つ。
「今の振動爆薬の爆発見たかぁ?絶妙だろっ?」
リューネ=スコルツェニー(ヒロイン1) 26才
かつてのゼネバス名家、スコルツェニー家の長女でフィーグの知り合い。性格は極めておしとやか。(長女の定番)伊達にスコルツェニー家の長女じゃない。
「はい。おいしい料理を作って待っています。」
マール=スコルツェニー(ヒロイン2)22才
リューネの妹。性格は短気で人使いが荒い。また、家事全般のスキルに重度の問題がある。(次女の定番)姉とは仲良し。
「料理なんか出来なくたって死にはしないでしょっっ!!!」
マーガレット=ノルトハウゼン(ヒロイン3) 14才
戦災孤児の少女。萌え担当。性格はいたって普通の14才の少女。笑いもするし泣きもする。スコルツェニー姉妹と仲良し。
「あした…晴れるかなぁ?」
その他多数(今のところ設定無し。)
「…フィーグ、聞こえるか?今アルトから通信が入った。敵はガンスナ2体だ。スピードなら俺らのレブの方が上。油断しなけりゃ何とかなるだろ。トラップにかかった瞬間に出る。遅れるなよ!!」
操縦桿を握る手が汗ばんできた。
うっそうと茂る森林の中を2体のガンスナイパーは周囲に警戒を払いながらゆっくりと足を進める。
「…もう少し…もう少しだ…」
フィーグは焦る自分を落ち着かせるようにつぶやいた。その直後、静寂を切り裂くような轟音が森林の中に鳴り響いた。アルトの仕掛けた振動爆薬だ。
「今だっ!!」
フィーグのレブラプターは2足恐竜特有の前傾姿勢になり、ターゲットに向かって一気に加速し、飛び上がった。
トラップで足をやられていたガンスナイパーは倒れながらもビームマシンガンで応戦する。いや、「応戦」というよりは「乱射」と言った方がいいだろう。もはや死の恐怖で狙い澄ませる余裕など持ち合わせていない様子だ。
運悪くその中の1発がフィーグのレブラプターの右腕を吹き飛ばした。だが…
捉えたっ!!
レブラプターのハイパークローは倒れたガンスナイパーの首元を確実に捉えていた。
…確かな手応え。
レブラプターが着地すると同時にガンスナイパーの首が崩れ落ちた。
「…はぁ、はぁ、はぁ……やったか…。」
限定的とは言えOS搭載機だ。長時間の潜伏ともなるとかなりの疲労を伴う。フィーグはかなり滅入っていた。
…しばらくしてようやく落ち着いた頃に、レーダーを確認するとすでに両方のガンスナイパーの反応が消えていた。どうやら隊長の方も手早く済ませたらしい。
「こういう任務はヘルディガンナーの方が向いてるんだがなぁ…。」
ガンスナイパーを相手にレブラプターでは分が悪い上、長時間の潜伏にはOSがかなり厄介になる。しかし正規の軍ではないのでOS搭載機があるだけでも贅沢という物だ。
「レブでの初戦闘ながらなかなか出来るじゃねぇか。調子はどうだ?フィーグ。」
「…予想以上にOSの負担が大きいですね。イグアンとは大違いです。」
「はっはっは…まぁ最初はそんなモンだろ。少しづつ慣れていけばいいさ。とにかく疲れたろ?帰ってメシにしようぜ。」
そう言って隊長は通信を切り替える。
「アルト、聞こえるか?トラップのタイミング絶妙だったぞ。おかげでかなり楽になった。これからも頼むな。」
「はい、こんくらい余裕っスよ。トラップはまかしてください。どんなソイドも一発であぼ〜んしますよ。」
「うおっ頼もしいねぇ期待してるぞ。とりあえず帰ってメシにしような。メシ。」
「りょうか…隊長っっ!!敵増援捕捉しました!!シールドライガー1機です!!」
シールドライガー。旧式とは言え前大戦初期には共和国高速戦闘隊の主力だったゾイド。果たしてレブラプター2体で勝てるだろうか?
しかも俺のレブラプターは損傷している。これは相当に不利だ。
幸いどうやら相手はまだ気づいていない。だが気づかれるのも時間の問題だ。あとどのくらいもつのだろう。5分?3分?いや、1分ももつのだろうか?
「隊長!!ここはいったん退いて援軍を呼びましょう。」
「あぁ、そうしてくれ。フィーグっ、アルトっ、後退して援軍を呼べっ!」
そうしてく「れ」。援軍を呼「べ」。その言葉の意味するところは明確である。だが俺は聞かずにはいられなかった。
「隊長は…隊長はどうするんですかっ!?」
「隊長っ!!!」
通信のランプが煌々と光る。長い沈黙。いや、実際は1秒も無い空白なのだが、それが何倍にも長く感じられた。
そして…
「あぁん?決まってんだろ〜っ?ちょっくら大物退治してくるわ。」
隊長はいつもの口振りで答えた。
「…わかりました。至急援軍を呼んできます。」
さすがにアルトのスキッパーでは戦闘は無理だ。アルトもそれを解っていたため早々に退避した。
だが、俺はまだやれる。まだ戦えるんだ。
「隊長っ!!俺もたたk…」
そこまで言ったところで割り込まれる。
「…へへっ、昼メシおまえのオゴリな…。」
そこで通信が強制切断された。
そして隊長のレブラプターは踵を返し、再び森へと…戦場へと戻っていった。
…今の俺は足手まといだ。悔しいがそれは事実だ。ここはとにかく速く援軍を呼ぶしかない。俺は走った。前へ…ひたすら前へ!
気力があれば続く
俺のやっていることは、ひょっとして禿しく板違いなんじゃないか?
今夜は様子見。
最近活性化していて(・∀・)イイ!!皆さん、期待してます!
>>65 板違いではないので、まぁ、満足行くまでやるのが吉かと。
飽きたら、やめりゃいい。
感想欲しいだけなら、止めといた方がいい。
ろくな感想付かないよ、今のゾイド板じゃ。
ん????
なぜいきなり書きこみがなくなったん?
モスたんハァハァ、、、
赤羽サン続編期待age
最近カキコミないね。
非常に残念です。
実にもったいない。
ガーニメェデェガニメェデー
赤羽さん生きてるかい!?
ほめほめ撫で撫でしてあげないからさ!
赤羽さん来ないなあ・・・
今までのあらすじ
公式2巻の9月頃の話。
第二次全面抗争西方大陸で初めて敗北を喫した帝国軍。
軍の建て直しを図るために撤退した帝国軍は、拠点ニクシー基地にて、再編成を急ぐ。
共和国も手をこまねいて居たわけでなく、たたみをかける為に、ついにロブ基地から全兵力を持って出撃する。
その時にはすでに帝国軍も反撃の準備は整っていたのだが、ウルトラザウルス・ザ・デストロイヤーの登場で、帝国は反撃の糸口を失った。
遠距離からのウルトラキャノンの攻撃による、先遣部隊の全滅。5師団分の戦力がたった一発の砲弾で失せる狂気。
この脅威的な無差別大破壊兵器を所持する悪魔の様なゾイドを破壊せねば、帝国に明日はない。
帝国は、少数精鋭の部隊で、ウルトラザウルスを破壊する指令を出す。
その中にノイン・ノイエの所属する急遽編成されたLB部隊が居た。
ホエールキングで降下地点に向かうLB小隊。
だがしかし、降下地点には敵が待ち伏せしていた。
この窮地を切り抜けたのは、ノイン・ノイエの駆るプロトブレイカー タイプ3R『ドライファクト』。
オーガノイドシステム全開で襲い掛かる『ドライファクト』の強さは圧倒的だった。戦闘はLB小隊の勝利に終わる。
しかし、ホエールキングは、降下時にダメージを受け、帰還不能に陥っていた。
『風の吹き荒む戦場で(16)』
「何をするつもりだ。じいさん!!」
アインは空を仰いで叫んだ。すでに何をしようとするのか、理解した上で・・・
『アイン・ゲレゲーンハイト。無論、このまま、突っ込む。約8290tの質量は、膨大な破壊力を生むからのう。』
「マジか・・・よ。」と言ってから気づいた。ゲインが何故たった一人で艦橋に居る意味を。
「・・・最初から、そのつもりだったんだな・・・。」
今更だった。部下を持たないのは、撃墜されても死ぬのは、自分だけになるから。
違うのだ。撃墜されるのは、前提だった。
『そうでもない。ただ、お前等なら、何とかしてくれるかも、とな。』
ディスプレイ上でゲインは、いい顔で笑った。
アインの視線の先のホエールキングがメインスラスターを点火した。
尾を引く火で、それが最大出力である事がすぐに分かった。しかし、ホエールキングのパワーウェイトレシオは低い。加速力はない。
ゆっくりと月明かりに照らされた夜の闇の中を移動し始める。
「じいさん!」
もはや、ゲインは聞いていない。
『グラハム・ズィルバー・・・後はまかせたぞい。』
『えぇ。一足先に待っていてください。』
割と落ち着いた声でグラハムは答えた。この男も分かっていたくちなのだ、とアインには分かった。
『そして、ノイン・ノイエ。』
『・・・。』
答えはない。アインは、ノインの通信機を先ほどのパスワードでこじ開けて、ノインの顔を見る。
映し出される無表情。
『『奴』には、ワシも世話になった。・・・奴はお前さんにそんな事は望みはしないぞ。』
ゲインは、憐憫の表情で彼女を見る。
『・・・関係ないわ。私の意志よ。これは。』
真っ直ぐとゲインの顔が映るだろうディスプレイに方を向いて、ノインは答えた。
無表情。感情が・・・特に何も目が読めない。
『・・・止められぬか。』
『えぇ、誰にも、きっと。』
『ふん。まぁ、ええわい。さらばだ。』
通信が終わった。
徐々にスピードが乗り始めるホエールキング。
LB小隊の面々は、敬礼でそれを見送った。
しばらくして、大規模の衝撃音と突風が一面を襲った。
誰も口を開かなかった。
しかし、程なくして、回復した『ドライファクト』に乗っていたノインが恐ろしく落ち着いた声で
『行きましょう。』
とだけ言った。
LB小隊の面々は、返答も無く、それに従って動き始めた。
ウルトラザウルスへと向かって。
パワーウェイトレシオ
機体重量に対する出力(推力)の割合の事。重量(s)/馬力(PS)。加速や最高速度に関係してくる。無論、低ければ低いほどいい。
普段、飛行機や車などで使われる。これとCd値(空気抵抗係数)で、主に最高速度や加速力などでのその機体の性能がある程度分かる。
ゾイドなどはCd値は思いっきり悪そうですが、その分、パワーウェイトレシオが稼いでると考えるのが妥当かな、と。
『風の吹き荒む戦場で(17)』
ほとんど無言のまま、一日が過ぎた。
LB小隊は、編隊を組んで、ただひたすらにウルトラザウルスの居るだろう地点へと向かう。
あれから、戦闘は2回あったが、セイバーを一機失っただけで、難なくそれを切り抜けた。
現在、半分の者は、ゾイドをスリーパモード(自動操縦)にして、休息を取っている。
揺れる機体の中でゆっくりと休むわけには行かないが、それでも眠っている者も居る。
ノイン・ノイエもその一人だ。
「なぁ、隊長さんよ。」
先頭を行くライトニングサイクス・スナイパーカスタム『ゼクト』に乗るアインが個人回線を開いて問う。
相手は、一番後方で警戒に当たるジェノザウラー『アルキメデス』に搭乗するグラハム。
『何だ。』
ひどく落ち着いた声。
二人とも今の今まで、一睡もしてないのに何気に元気だ。
「『奴』を知っているってそいや言ってたよな。」
『あぁ、世話になったからな。』
「おせっかいだったからなぁ、あいつ。」
アインは、苦笑して答える。
それを聞いたグラハムも苦笑する。
世話になった。
つまり、軍で言うならば、何かしらの窮地を救われたか、何かしらの窮地に落とされたかのどっちかだ。
無論、グラハムの場合は、前者だった。
『おせっかいか。命救われた身としては、おせっかいと言う表現はちょっとな。』
「おせっかいだよ。とんでもなくな。いつ、命救われた?」
『大撤退時だよ。いい青年だったな。』
「まぁ、な。たまにぶん殴りたくなるぐらいにな。いい奴だったよ。」
『あの時はもう駄目だと思っていたよ。』
グラハムは懐かしむように、三ヶ月前の事を思い出していた。
時が目まぐるしく回る戦場では、それは本当に、昔の様に思えた。
ZAC2102年。
共和国首都は炎に包まれていた。
ガイロス帝国摂政ギュンター・プロイツェン・ムーロワの悲願である、
中央大陸デルポイにおけるゼネバス帝国の復活。
これを実現すべく、暗黒大陸ニクスから魔のトライアングル・ダラスを越え、
デルポイへ直接侵攻をかけてきた鉄竜騎兵団。
泥沼の戦いでガイロスとヘリックの共倒れを狙ったプロイツェンの策によって、
遥かニクスの地に主力部隊を留め置かれた共和国軍に、
彼らと対抗する事など到底出来るはずもなかった。
僅かに反撃に出た部隊も、指揮系統の混乱から各個撃破され、
電撃的な侵攻を行う鉄竜騎兵団の前に、有効な対抗策はほとんど皆無であった。
「これ以上いたずらに戦力を損耗させるわけには行かない。
戦線を縮小し、主力部隊が戻るまでに反撃態勢を整えよ」
主力部隊の帰還を待って反撃を開始する。
この極めて単純明快な作戦のもと、
共和国軍は首都の放棄を含む大規模な戦力の配置換え…つまり撤退を実行した。
前線部隊に、再び混乱が襲いかかった。
増強される敵。広がるデマ。二転三転する命令。
ニクスでの戦闘は、既にプロイツェンの死により終結していた。
にも関わらず、多くの旧ゼネバス系ガイロス部隊は武器を捨てることなく、
中央大陸に第2梯団となって上陸し、鉄竜騎兵団の後詰となっていた。
ヘリック・ガイロスとの戦闘を避け続けた為、全く無傷の部隊も少なくない。
敵の進軍を遅らせるべく展開されたゲリラ戦も、もはや限界であった。
敗走する三個師団がS市で包囲されるに至り、共和国軍は決断した。
「S市を解放し、北部方面軍はバレシアまで撤退させる」
疲弊しきった彼らでは、自力での包囲網突破は不可能。
故に彼らを救出し、その後退を援護する…つまり殿を務める部隊が必要だった。
生贄は、すぐに選ばれた。
設定引用・参考…「プロイツェンナイツ・将兵募集」スレッド
「第二次プロイツェンナイツ・将兵募集」スレッド
「ネオ・ゼネバス軍将兵募集」スレッド
「共和国軍将兵募集」スレッド
「構成員募集中!ヘリック共和国最強軍団其の二」スレッド
「ガイロス帝国将兵募集」スレッド
「惑星Zi戦記:中央大陸21XX」スレッド
「○○将兵募集」撃ち合せ用スレッド
砂漠の朝は早い。
地平線の向こうから太陽が上がったと思ったら、
すぐに辺り一面が暖かな日差しに包まれる。
まだ冷気が残っている為か、焼けるような熱気は襲ってこない。
普段は忌々しさしか感じない砂塵混じりの風にさえ、
この瞬間だけは清々しさを感じる。
シュミット上等兵が這い出たテントの向こうには、
既に整備を終えたゾイド達が整然と並べられていた。
だが彼はそちらに目をくれることなく、食事の配給を受けに行った。
起床・点呼の時間はとうに過ぎている。
何時もの今ごろなら鬼軍曹にとっ捕まって、「食事抜き」の宣告を受ける頃だが、
今日ばかりはゲンコツ一つで御咎め無し。
実に気分が良い。
石のような歯触りのパン、砂混じりのスープにすら舌鼓を打ちたくなる。
優雅な朝食とは到底言えないが、戦場の風景としては緊張感に欠けている。
それもこれも、彼らが自分達の「勝利」を確信しているからだろう。
鉄竜騎兵団。
プロイツェンの秘密兵器。
ネオ・ゼネバス建国の礎。
ヘリックの名を冠した忌まわしき国を断罪する、崇高なる剣。
“我々が今日行う攻撃によって、敵の貧弱な防衛線は打ち破られる。
そして市内に突入した我等は、ネズミの様に立てこもる共和国軍の三個師団を、
今度こそ完膚なきまでに叩きのめすだろう。
第二次上陸部隊のネオ・ゼネバス正規軍1個師団が協力してくれる。
彼我の戦力差はゼロ…いや、我等の方が優勢と言える。”
“第一次攻撃隊として、我が隊の他に、正規軍から1個連隊が攻撃を仕掛ける。
時間を置けば制空権の合間を縫って、共和国空軍の爆撃が始まるだろう。
そうなる前に、敵をS市から駆逐せねばならない。”
中隊長の何時もの訓示を、シュミット上等兵はこれまた何時もの様に聞き流した。
敵もそこまでヤワじゃない。
一週間包囲しつづけているにも関わらず、未だに戦意が衰えない部隊も少なくない。
敵を過少に見誤れば、死ぬのは敵じゃない。俺自身だ。
“諸君の奮闘に期待する。
以上、解散!各員ゾイドに搭乗せよ!!”
何時も通りの時間で訓示が終わり、
号令一下、シュミットは戦友達とともにゾイドに乗りこんだ。
ディロフォースが小さく唸り声を上げ、
砂塵の向こうに黒く広がるS市を睨みつける。
隊長はああ言うが、結局何も変わらない。
何時も通りに戦って、何時も通りの勝利を得るだけだ。
吹き寄せる風は、何時もの忌々しい熱風に変わっていた。
砂漠の朝は早い。
地平線の向こうから太陽が上がったと思ったら、
すぐに辺り一面が暖かな日差しに包まれる。
まだ冷気が残っている為か、焼けるような熱気は襲ってこない。
陰鬱な一日が、また始まる。
オーウェン伍長は、砂丘の向こう側に「敵」の気配を感じていた。
このクソったれな砂漠の街に押し込められて以来、
毎朝の恒例となっている敵の強襲だ。
クソッたれめ。
「伍長、ガイサックの調子はどうだ?」
静寂を破る小隊長の声に我に返った。
「間接に砂が入り込んで、ちょいと喧しいですね。
『砂漠はもう飽きた』って言ってますよ」
「砂漠はガイサックの専売特許だろう?出鱈目は止せよ、伍長。
もう暫く耐えていれば、きっと援軍がやってくるさ」
来る筈が無い。
オーウェンはそう思った。
共和国軍は混乱の極みを呈していると言っていい。
多くの部隊が本来の実力を発揮することなく、敗走していった。
今日にも、彼らの小隊はその一つとして数えられることになるだろう。
「S市を断固防衛すべし」
前線から後退してきた高速部隊の指揮官はそう息巻いたそうだ。
確かにS市は砂漠の真中に有り、重要な補給ポイントとなり得る。
西に広がる渓谷地帯には、たった一つしか橋が無い事を思えば、
その意見には益々説得力が生まれてくる。
だが、彼らが「高速ゾイド部隊による決戦」に拘った事で、
急ごしらえの防衛プランは瓦解した。
薄っぺらな防衛ラインは瞬く間に突破され、
肝心の高速部隊はろくに戦闘に参加しない内に市街地へ後退して行った。
僅かにシールドライガーDCSやコマンドウルフACが、侵入した敵を撃退したものの、
その殆どが未だに「決戦兵力」として温存されているそうだ。
エリート風ばかり吹かせる、無駄飯喰らいどもめ。
「偵察中のコマンドウルフより入電!敵部隊、前進を開始!」
前言訂正。
DCS、ウルフAC、そして偵察部隊のウルフ乗りは「無駄飯喰らい」じゃない。
少なくとも、彼らは仕事をこなしている。
「おいでなすったぞ。全機、戦闘準備せよ!」
小隊長のゴドスが塹壕から上半身を持ち上げ、砲撃態勢を取った。
オレのガイサックも尾部を持ち上げて、30mm対ゾイドビームライフルの狙撃体制に入り、
じっと「その時」を待つ。
彼方で砂塵が舞い上がった。
キャノピーからさしこむ日差しが、心なしか眩しく感じられた。
たまには虫干し
「ドカーん」
ゴジュラスが背中の大砲を撃った。
「うわー」
モルガはやられてしまったようだ。
「デスえもん」
共和国軍は帝国軍の陣地に向けて進撃していた。帝国軍は大騒ぎ。
プロイツェンも例外ではなかった。
「デスえもーん!。共和国軍が僕をいじめるよー!。何かいい道具出してー!!。」
「しょーがないなープロイツェン君。」
ちゃちゃちゃちゃーん
「バナナの皮地雷!!。」
「これを敵の進路上においてごらん。敵はバナナで滑ってころんでドカンだよ。」
プロイツェンは、早速デスザウラーバナナの皮地雷を搭載し前線へ、そして共和国軍の進路上にバナナの皮地雷を置いた。
共和国は、そのバナナの皮地雷に滑って転んでドカーンを繰り返した。
「やったー!勝ったー!!。」
プロイツェンは大喜び。早速帰ろうとしたとき・・・
つるーん ドカーン
プロイツェンまでバナナの皮地雷に滑って転んでドカンしてしまった。
「お前かー!こんなものを仕掛けたのはー!!。」
共和国軍に見つかったプロイツェンは袋叩きにされてしまった。
「デスえもーん!!助けてー!!。」
終劇
| \
|Д`) ダレモイナイ・・・
|⊂ モウソウ スルナラ イマノウチ・・・
|
ZAC2126年 南エウロペ大陸ガリル高原
大地を引き裂く鋼鉄の爪
巨大な電撃牙の破砕音
耳に残るのはビームが人造コアブロックを溶かす音
しばしの待機時間は、次の惨劇までの秒読みでしかない
たった今、武器商人たちにより新しい高速タイプの四肢が届けられた
どんな狂暴な連中も、ここから戦闘兵器・ゾイドBLOXを拝領する
奴ら「グローバリー」が惑星Ziを支配する
それでも、共和国軍も、帝国軍も、彼らには欠かすことができないらしい
エウロペから野生ゾイドが駆り出されていったあの時代
死を前にした獣王と魔装竜の勇壮も、味方の盾となって散った巨象の悲劇も、すべて聞かされて育った
そして俺達子供はゾイド乗りに憧れたよ
気がついてみれば、俺達の世代が駆っている「相棒」はもはや生命体ですらないという
ウルトラザウルスは砂漠にもう動かない
デスザウラーの眷属はわたしたちが滅ぼした
最後のマッドサンダーは死んだ
ギル・ベイダーが甦ることはなかった
戦闘が終わるたびに組替えられる手足、書きかえられる絆
こいつに自慢の愛称をつけるのを、長いこと後回しにしてきた
これから始まる地獄が終わった後で
俺とセンターブロックが無事なら、いい名前をつけてやろう
>>84 |
| ∧
|∀・) ミタヨー
|⊂
|
>>85 (((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
つーか、ブロックスって最悪じゃないですか。
>>85
人称が気になりましたが、スゲェ。
(((((;゜Д゜)))))ガクガクブルブル
>>85 いいね!
いいんだけど……すげーやだ(泣
「ねえ、クラーク、あれシールドライガーじゃない?」と隣の座席に座っている
ローレンが唐突に言った。ローレンが指を指す方向をみてみると、確かにシールドライガー
が一機鎮座している。最近は滅多に見かけない代物だ。ちょっとしたゾイド
マニアを自称するクラークが車体を方向転換するまでに時間はかからなかった。
「遅れるとまた隊長にどやされよ?いいの?」と心配性のローレンが問い掛けた
がもう既に彼の耳には届いていない。やれやれ、と言ったようにローレンは
首を振ると、隊長にする言い訳を考え始めた。
シールドライガーの元に辿り着くとクラークは嬉しそうに甘美の声を上げた。
「おい、ローレン、見てみろよ!こいつぁ前大戦以前の物だぜ!しかも初期ロットだ!
機体色は通常より薄いし、腹部の形状も違うぞ。おお、たまんねぇ〜!」ローレン
は何時もの事だと思いながら、彼をちょっと離れた距離で見守っていた。もう既に、
彼のこういった一種の興奮状態には慣れている。クラークがはしゃいでいると、
「お前さん達、俺の相棒を気に入ってくれたかな?」と物陰から一人の人物が
声をかけてきた。二人が同時に振り向くとそこには濡れたタオルで顔を拭きながら
のそのそ歩いてくる人物がいた。ローレンが事情を説明すると彼、フリッツ・ジンクストン、
は色々と語ってくれた。フリッツと彼の相棒、フックの戦功や、大統領から頂いた
勲章の事。まだ新米だった頃バン・フライハイトやアーサー・ボーグマンなどの
伝説的英雄と一緒に戦った時の事。そして、使用済みだと解体処理される時、
ゾイド達が上げる泣き声にも似た声の事...クラークは基地に帰艦する間、ずっと
彼の話、そして既に亡き父の話を思い巡らせていた。
ゾイドBloxシステムが市場に登場してから数十年。戦場から整備、換装、配備
などに時間とお金がかかる旧式ゾイド達が消えていくのはそう時間がかからなかった。
すべては軍の合理化の為に。クラークは幼少のころから共和国のゾイド乗りだった親父
の愚痴を聞いて育った。昔は良かった、あの頃は愛があったなどと嘆く父親
の事を疎ましく思った時期があったが、今はなんとなくその気持ちが分かる
気がしている。肢体を取り替えられ、経験の一切を消されるブロックス達の
換装作業を見ているとクラークはやるせない気持ちになった。愛着を持たれる
事も無く、自意識の一切を省かれた道具。工場で生産され、壊れるまで酷使
され、壊れたらただ取り替えるだけのモノ。
しかし、ゾイドの個体数は確実に増えているし新種の野生種も確認されている。
生殖機能を取り除かれ、戦場で死んでいく事も無い。だがしかし、昔の英雄達が
持った絆、そして愛すべき相棒と一緒に荒野を駆け巡る一体感はもう持たれる事
は無い。どっちが正しいかは彼はまだ分からない。ただ単に、クラークは嬉しそ
うに昔話を語るフリッツが羨ましかった...
>>91 (・∀・)イイ!! けど・゚・(ノД`)・゚・。
自分も泣きます・゚・(ノД`)・゚・。
傑作キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
>>85>>91 おまいらサイコー。でも・・・なんで涙が出そうになるんだろう・・・(w
ブロックススレに書き込もうとしたけどやめちゃったYO
97 :
撤退 ◆Husa3Z/6 :02/06/07 00:00
半年以上も放ったらかしで、もはや、誰も読むものなどいないだろうけど、一応、続けるつもり。近いうちにけりをつけます。それまで、スレ汚しスマソ。
『風の吹き荒む戦場で(18)』
大撤退。
7月の事だ。共和国最後の砦、ロブ基地で行われた第二次全面会戦にて敗北を喫した帝国軍は、態勢を立て直すために一路、自国の防衛線圏内に撤退を開始した。
当時、補給部隊をストームソーダー、プテラスボマーの混成部隊に、奇襲を受けていた帝国は、慢性的な物資不足に悩んでいた。
短期決戦でかたを付けねば帝国は、過度に消耗する一方だと判断した末の第二次全面会戦だった。
その会戦に敗北した帝国には、もはや戦争をする為の物資が尽きていた。
そう、もはや撤退する為に必要な物資すら尽きている部隊もあった。
グラハムの率いる部隊もそのうちの一つだった。グラハムの乗る角の折れたレッドホーンに、随伴の小型ゾイドが9機に歩兵を乗せたグスタフが2機。
疲弊しきったゾイドに鞭打ち、ただひたすらに西に。
作戦本部からの通信だけが頼みの綱だった。
追われているのは、分かっていた。
迫り来る共和国の高速部隊。
どのゾイドも一発も打てる弾はありはしなかった。
度々にしんがりを勤める為に部隊を抜けたゾイドは、誰一人、部隊に合流する事はなかった。
後はない。本当に後はない。
作戦本部に指定された場所で、大部隊と合流できる。
それを信じるしかなかった。
・・・まさか、自分達が主力部隊を逃すために、すでに捨て駒なっているなどと考えてもいなかった。
・・・ageてもーた。
すまん。
気にするな。これからも頑張っておくんなまし。
>>97 何日の強行軍だったろうか。
やっとの事で、指定された地点で、我々を待ち受けていたものは、静寂のみだった。
何も無かった。
風だけが吹いていた。
もはや本隊は動き始めてしまっているのだろうかとも思ったが、それらしき痕跡はなかった。
そう、最初からここに本隊など存在しなかった。通り過ぎてもいなかった。
何故だ? と思った。
いや、正直に言えば、薄々気付いていた。
部下が無線で、「これはどういう事か」と錯乱気味に聞いてきた。
無理もない。
気付いていたのだが、そんな筈はないと自分の心を誤魔化してきた。
もはや、誤魔化す事はできなかった。認めるしかなかった。
自分達が捨て駒にされたのだと。
理由は、一つ。自分がゼネバスの兵だから・・・。
ガイロス帝国に吸収された、今は亡きゼネバス帝国の血統を持つ兵だから。
元々、ガイロスの兵でないから・・・。
この自分が率いる部隊で、純粋にガイロス出身の者は少ない。ほとんど元ゼネバス出身のもので固めれている。
そういう格差が、やり方が帝国にはあった。
それを説明するのは、あまりに辛かった。
今度は索敵担当が騒ぎ出した。
パッシブソナーでの索敵。ついに共和国の高速部隊が索敵範囲内に入ってきた。
唯一、信じていたものが、信じていたかったものが崩れ去って、呆然としていた部下達は、一気に恐慌状態に陥った。
投降も考えた。
しかし、それはできなかった。
下位の貴族とは言え、ズィルバー一族の名を汚すにはいかなった。
残してきた家族に辛い思いをさせる訳にはいかなかった。
結局、そのほとんどが志願兵である歩兵が乗っているグスタフだけ取り合えず西に向かわせた。
ゾイド乗りは、全員残した。
これが最後の戦いだと、ここが自分の死に場所だと覚悟した。
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マンコス逮捕の余波で現在ゾイド板中でマンコス厨による八つ当たりが行われています
麻原AAで板中荒らされている模様
マンコス厨は徹底無視の方向で
age
>>104 ジェノザウラーとの決着寸前のシーンだね。
すげーカッコイイ!
ZAC2098年という年は、変革の年だということが出来るだろう。
もしくは、その後の戦争の予兆の年だということも出来るかもしれない。
最初の予兆は、前年に死亡したガイロス帝の崩御に伴う外向けの各種の式典、つまりは皇帝の葬式や新皇帝の帝国議会の承認などへの公式の参加を共和国が表明したときに始まっていた。
両国に対し中立をたもっていた西方大陸の国家を通して帝国に送られたこの外交文書は、共和国の和平案ともいえるおもみを持っていた。
共和国としては、90年代になって再発する勢いだった両国間の軍事衝突の懸念を払拭する最後の機会であったはずだ。
両国間の軍事衝突は、共和国側では軍事問題というよりもは経済問題であると考えられていた。
西方大陸に存在した国家郡のなかで厳正に中立を保っていた国家は極めてまれだった。
ほとんどの国家は、帝国か共和国のどちらかに程度の差こそあるものの国策として依存していた。
それは軍事面での相互防衛保障条約という形の時もあるし、通商条約という形の場合もあった。
ようするに、大国の力を借りて周囲の国家との各種の外交問題を有利に進めようとしていたのだ。
だが、帝国と共和国の勢力圏の外縁部の国家にとってはそれほどのんびりとした状況ではなかった。
そこには小規模な紛争の危険が常に存在していた。しかも、その小規模紛争が外縁部の国家を支援する帝国と共和国との全面戦争となる可能性も否定は出来なかった。
それを肯定するように、常に小規模紛争の危機があるときは、両国の駐屯地にかなりの動きが見られた。
両国とも西方大陸に派遣する戦力は小規模なものだったが、それが大きく増援される可能性は誰も否定できなかった。
しかし、共和国にとってはこれは容認できる現状ではなかった。
その国力を大異変からの復興にあてていた共和国は、国軍の戦力は帝国軍に大きく劣っていた。
共和国軍も無為無策であったわけではなく、下士官の比率の向上や士官教育の充実化などによって大規模な動員を可能とする体制を作り上げようとしていた。
共和国軍にとっては、少なくともこの体制が整うまでは帝国軍と開戦することは容認できる事態ではなかった。
それを理解していた帝国では、共和国の外交文書を実質上無視した。正確にいえば、外務大臣級の参列を表明した共和国に対し、帝国側では、外務当局の部課長クラスの参列を許したに過ぎなかった。
それに対し、帝国よりの西方大陸国家には、国家主席か、少なくとも大臣級の参列を要請していたから、共和国に対して悪感情を持っているのは明白だった。
共和国側では、これに対し公式な見解は表明しなかったものの、帝国の開戦への意志を感じ取ったのは間違いなかった。
だが、共和国では、いまだ開戦にいたるかどうかの確信は持ちあわせていなかった。
ZAC2098年の秋、両国は北西方大陸の都市国家において懸案となっている紛争地帯の問題を話し合う会議を行なう事となった。
共和国はこれに最後の和平交渉を期待し、帝国でも、西方大陸侵攻へ向けた軍の再編成への時間稼ぎを期待していた。
夢を見ていたようだ。ユリウス=フォン=マッケナ大尉は、自分が見ていた夢の内容が思い出せない
ことに少しいらだちながら目を開けた。周囲では、大尉と同じような制服を着た軍人やスーツを着た官
僚達が寝ているか、もしくは席に備え付けられている端末で何か作業をしている。
西方大陸にここまで大規模な使節団が派遣されるのは久しぶりだから、派遣される人員のほとんどが
西方大陸を訪れるのは初めてだった。それで端末で西方大陸の現況を再確認するものが多いのだろう
だが、使節団用に人員と各種レセプション機材を輸送するために改造されたホエールカイザーには、
あまり余剰スペースは無かった。
大尉のような比較的階級の低い士官から、大使級の人員まで同じ部屋で輸送されているのがその証拠
だ。
だから、席一つ一つには十分な余裕があるものの、全体としてはさほど余裕の無い部屋には、官僚達
が端末を操作する音が低く響いていた。
その音のせいでもう一度寝る気が失せた大尉は、寝る直前まで行なっていた作業を再開することにし
た。
その前に窓から外を見た。高度7000メートルを維持して飛ぶホエールカイザーの窓からは、霧が
ひどくて下に広がるアンダー海を見ることは出来なかった。
北方大陸から西方大陸に向かうにつれて透明度が増していく海を見たかったのだが、海自体を見るこ
とが出来ないのでは透明度の確認などできない。
軽く失望して大尉は端末に向き直った。
端末には西方大陸北部の都市国家の詳細なデータが表示されている。
ガイロス帝国陸軍参謀本部において、西方大陸の国家の情報評価を任務とする情報部三課に所属する
大尉には、共和国との開戦前に、都市国家内部につくられた情報網の組織化が命令されていた。
西方大陸に派遣される使節団に同行しているのは、その裏の任務を偽装するためだった。
もっとも派遣される官僚達の大半がこの事実を知っている。ようするに公然の秘密だった。
大尉の一族は著名な外交官一家であり、祖父の代には西方大陸の国家との長年の外交に従事した事を
称えて貴族の一員となっていた。
ガイロス帝国においては、これは名誉あることだった。古参の大貴族であっても、外交に長けたマッ
ケナ家には一目置いていた。
だが、家族全員がほぼ外交官というマッケナ家において、末弟であるユリウスのみは軍人を職業とし
て選んでいた。
彼にとってみれば、帝国においては外交官は、あくまでも主流にはなれない。それは帝国が軍事国家
として発展してきたからだった。
だから軍人としての道を歩んできたのだが、大尉に外交一族という、ある意味において閉鎖された一
族の関係から逃れたいという思いがあったことは否定できない。
そうだとすれば、今の大尉の状況は不本意なものであるはずだ。参謀本部内において、大尉を純粋な
軍人だとみなしている参謀は少ない。
大半の参謀達は、大尉を外交部門とのパイプ役だと認識していた。意思疎通が途絶えがちな外交部門
との連絡手段としては大尉は貴重な存在だった。
外交部門、すなわち大尉の一族の側でも、参謀本部との意思疎通手段としての大尉の存在は便利なも
のだった。
だが、そこに大尉の意思が入る余地は無かった。
大尉にとっては不本意なことに、軍人としての道を歩もうとしていたのにもかかわらず、純粋な軍人
として身を立てることは出来なかった。
大尉が隊付き士官であった時期はきわめて短かった。異例なことにすぐに情報部門にまわされていた
。そこでの仕事も、半ばお飾りのようなものであり、主要な仕事が外交部門との連絡役である事は明白
だった。
誰にも言うことは無かったが、大尉は心の内では戦闘部隊への配置を願っていた。
端末に向かっていた大尉がふと顔を上げると、周囲の官僚達が荷物をまとめようとしていた。
それと同時に下向きの加速度を感じる。いつの間にかホエールカイザーは目的地である中立都市国家
に到着したようだった。
大尉は素早く荷物をまとめると下船の用意をした。そこには大尉が戦うべき戦場が待っていた。
下げミス・・・
お、なんだかかっこいい。がんばってくだせい
ホエールカイザーから下船したマッケナ大尉は、まず西方大陸の暑さに圧倒されていた。
この中立都市は、海に近いところにあったから風が強く、まださほど暑さを感じる事は無いといわれているのだが、北方大陸から来た大尉たちにとっては、とても暑いことに変わりは無かった。
共和国との会議は数ヶ月かかることが予想されていた。両国の主張は平行線をたどっていたからだ。
ともに、会議の結果を本国に打電し、本国からの訓示をもとに相手国への主張を練り直す。この過程何度も繰り返されるものと予想されていた。
だから、帝国の使節団はこれから数ヶ月間はこの暑さに悩まされる事になる。その事に気が付いた団員たちはけだるそうな表情を浮かべていた。
そのなかで、マッケナ大尉だけがいつもと変わらない顔をしている。
大尉は、親の外交官という仕事上、帝国を離れる生活が長かった。そのなかには、西方大陸南部の都市国家での生活もあったから、当然他の団員たちよりも西方大陸の暑さに離れていた。
そんな大尉を、うらやましそうな表情で同僚の随行武官が見ていた。
それを尻目に、大尉はきょろきょろと周囲を観察していた。
ホエールカイザーが着陸したのは、都市国家の空港の外れだった。
この国家の軍所属のゾイド部隊が近づいているのが見えた。ゾイド部隊は、このあたりでは珍しくも無いゴドスで編成されていた。だが、ところどころにイグアンの部品が使用されているのが見えた。
ようするに、純粋な交換部品が手に入りづらいということなのだろう。
そのゾイド部隊と一緒に、政府高官らしい一団が近づいてくるのが見えた。背後には彼らを輸送してきたらしい中型の車輌が待機している。
一団は、使節団のところまで歩いてくると、丁重に使節団の団長達にあいさつをはじめた。
大尉はそれを見ると、一歩離れた位置に移動した。この都市にも子供時代住んでいた事があり、父親の仕事の関係で政府高官とも面識があった。
知人と会うと面倒くさいから、大尉は団員たちのかげに隠れた。それに、参謀本部からの情報網の組織化という命令を遂行するためには目立たない方がよかった。
だが、団員のかげに隠れた大尉に近づいてきた男がいた。男は、この都市国家の軍の士官用制服を着用していた。
それに、何が面白いのか満面の笑みを浮かべていた。大尉には、とても愛想笑いには見えなかった。
男は大尉に近づくと敬礼しながらいった。
「都市国家防衛軍、戦略情報局のラインハート准将です。ガイロス帝国陸軍参謀本部二部三課のマッケナ大尉ですな」
大尉は驚きながら返礼した。本来なら大尉の方が先に敬礼をするべきなのだが、大尉は気勢をそがれていた。
この都市国家の防衛軍は、将官クラスの層が薄かった。具体的に言えば、将官として数えられるのは准将と将軍のふたつしかない。
これは、防衛軍の規模自体が小さいためだった。つまり、将官が大量に必要になるほど組織が分化されていないのだ。
だが、これは西方大陸国家の軍隊としてはむしろ大きな部類に属していた。
西方大陸国家の大半が都市の防衛を傭兵部隊に委託しており、防衛軍は傭兵の雇用組織か小規模な治安維持戦力のみという国家が普通だった。
傭兵という職業そのものは、この惑星Ziにおいては西方大陸に多かった。
賞金稼ぎのような荒事を専門とするものはどの大陸にもいたが、組織として戦闘を生業とする傭兵部隊という存在は、軍隊がまだ曖昧な組織であり続ける西方大陸独自のものだった。
ひとくちに傭兵といっても、なかば特定の都市国家の軍隊化した大規模なものから、山賊と大して変わらないものまで千差万別だった。
そのなかで、この都市国家が独自の戦力を保有する事が出来たのは、この都市国家が帝国と共和国の勢力が均衡する場所に存在したからだ。
この国家は、表向き対立しあっているため貿易がしづらい帝国と共和国の間の貿易を行なうことで国家規模を拡大していった。
だが、いくら独自の戦力を保有するとはいっても、帝国軍の編成で一個師団あるかないかという規模の軍でしかない。
そのなかで准将の階級を得るのは並大抵の事ではなかった。
ラインハート准将はどう見ても40代だったから、これは相当なエリートであると考えてよかった。
だが准将は、それを感じさせないような穏やかな笑みを浮かべていた。
いや・・・馬鹿ですな、私(汗
114のタイトルは「開戦前夜3−2」です・・・
長いらしいので三分割です。
>112
あーこういうのがとっても有りがたいです、書いてるとそう思います
えっと、これからもだらだらと長い文章を書き連ねる事になりそうですがこれからもよろしゅうに
でもバトルないです・・・バトストじゃないかも
>でもバトルないです・・・バトストじゃないかも
そこがイイ! んだと思います。
他との差別化の意味でも。
ガイロス帝国とヘリック共和国の間で開かれている会議は、開始から一ヶ月近くたっているが進展は無かった。
マッケナ大尉は、数日前に開かれた何度目かの予備交渉のことを思い出していた。
その交渉は、予備とはいいつつも実際は本会議と何一つ変わる事は無かった。
参加者は双方とも軍部の代弁者だったからだ。建前ではこの会議は通商交渉ということになっているから、むしろ予備交渉である軍事会議の方が重要であるともいえる。
いってみれば、本会議である通商交渉そのものが世論へのダミーであり、実際に重要視されているのは、最近多発している紛争問題を話し合う予備交渉なのだった。
カモフラージュのために通商交渉の方にも大使級の文官をあてて使節団団長としているが、実際に指揮権を有しているのは予備交渉に出る参謀本部勤務の将官だった。
その予備交渉では、会議の開始から一ヶ月近くたった今でも両国の歩み寄りは見られなかった。
そもそも、実際に交渉に当たる使節団にそれだけの権限は無かった。両国ともに、会議の結果を本国に転送して指示が出される事になっているのだが、それが実際に会議にフィードバックされるのには時間がかかっていた。
本国から回答が戻ってくるのにおそろしく時間がかかったからだ。
マッケナ大尉は、本国である北方大陸と西方大陸との間の物理的、精神的距離を感じずにはいられなかった。
大尉たちが会議が行なわれている特設会場からホテルに戻ると、ロビーにラインハート准将が待っていた。
ラインハート准将は、あれから事あるごとに帝国軍の将校たちに会いに来ていた。
准将は、いつもくだらない話をして帰っていった。自分の武勇談を話す時もあるし、北方大陸と中央大陸や西方大陸の食事習慣の違いを話す時もあった。
若手の士官たちは、最初の頃こそ会議とは関係の無い話しかしない准将を敬遠していたが、しだいに博識で話し上手な准将に引かれていくようだった。
今日も、笑みを浮かべながら会釈をする准将の周りに若手の士官たちが近づいていく。
彼らの上官は、それを苦笑いしながら見ている。准将の人格は、彼らから見ても非常に魅力のあふれるものだった。
上官にしてみれば、若手の士官たちには自分達とは違う環境の軍人をみることがよい勉強にもなるだろうと考えているようだった。
だが、マッケナ大尉は准将にどこかきな臭さを感じていた。准将は情報畑の人間である。くだらない話の中からでも帝国の情報を入手するだろう。
もっとも、若手士官もそれぐらいは承知していることだろう。でなければ彼らの上官が止めている。
それに、都市国家の防衛軍に所属する准将にとって帝国軍士官をもてなし、彼らの安全を確保するのは任務でもある。
今も密かにこのホテルを防衛軍戦略情報局の部隊が守備しているのは間違いなかった。
しかし、マッケナ大尉は、准将の態度がその任務ゆえのものなのか計り兼ねていた。
その日、マッケナ大尉が部屋に戻ると、端末に通信が届いていた。時間指定の通信の内容を見た大尉は眉をしかめた。
そこには、共和国の軍事情報が記載されていた。
朝早くからご苦労様です。続きが楽しみだー。
マッケナ大尉は、最初にその通信の履歴を探り出そうとした。しかし、わかったのは通信を送った場所はこの都市内らしいという事だけだった。
都市国家としては規模の大きいこの都市では、通信を送れる場所は決して少なくない。だから、それだけの情報から送り先を特定する事は難しかった。
通信の本文は、単なる数字の羅列に等しかったから、文章の書き方から送り主を特定する事も出来ない。
マッケナ大尉は頭を抱えながら本文の内容を確認していった。
だが読み進めていくうちに、マッケナ大尉は次第に内容にのめり込んでいった。
その内容はそれだけ興味深いものだった。
そこには、共和国軍の動員体制が記してあった。それは、兵員の数だけではなく、現在の充足率と近い将来の推移や兵員が使用すべき兵器の量産体制にまで踏みこんだ詳細なものだった。
それを見ながらマッケナ大尉は首を傾げた。それは、単なる一時情報ではなく、かなり熟練した情報分析官によって加工された情報だった。
これだけの情報の加工が可能な組織は限られているはずだった。
最後まで見終わると、マッケナ大尉は何重にも暗号をかけて本国へ送った。一瞬迷ったが、マッケナ大尉自身の所感は追記せずに、情報を入手した経過だけを送った。
それが終わると、通信文の内容をもう一度確認した。
マッケナ大尉は、この通信の内容を疑っていた。この通信では、共和国軍が本格的な予備役動員に踏み切ってから、共和国全体の国家総動員体制が整うまでの時間がずいぶんと短かった。
もちろん、いままでの帝国陸軍参謀本部の見解と比べてであって、不自然なほどではない。
その理由としては、この通信では共和国軍の下士官の比率を挙げていた。現在の共和国軍は下士官の層を熱くしようと躍起になっていた。
これは、いざという時に兵員数を大幅に増やすためである。
つまり、教育に時間のかかる下士官を平時に十分な数確保しておき、いざという時は短時間で教育の完了する兵隊を大量に動員するというものだった。
参謀本部の見解と通信の違いは、下士官の増員が終わるまでの時間だった。通信の方は、参謀本部の見解と比べて数ヶ月早かった。
だが、これが帝国首脳陣に開戦を思いとどませる事は無いだろうとマッケナ大尉は考えていた。
むしろ、これは参謀本部の作戦を早まらせる結果にしかならないだろう。
このような動員体制が共和国軍で確立してしまえば、絶対的な国力で負けている帝国が戦争で勝利する確率が大幅に低下するからだ
だから、参謀本部はこの動員体制が整う前に共和国軍を撃破しようと考えるだろう。
そこまで考えてマッケナ大尉は冷や汗を感じた。
ひょっとするとこの通信の送り主は両国を戦わせたいのかもしれない。そう感じたからだった。
帝国と共和国との間で開かれていた予備交渉に大きな動きが現れたのは、マッケナ大尉が通信を受け取ってから二週間後の事だった。
その日の会議は、いつものように会場に入った帝国側代表団を、共和国側代表団が一方的に糾弾する形で始まった。
共和国は、帝国軍西方大陸駐留部隊への大規模な司令部スタッフの増員を問題視していた。
それは、近い将来に西方大陸駐留部隊が派遣軍へと改編されることを見越した上での人事だった。
すなわち、大幅に増員される部隊を統一指揮するために司令部機能を強化しようとしていたのだった。
軍クラスを指揮できる司令部は、それだけで一つの兵器だといってもいい。だが、それだけに司令部スタッフが任地の状況を把握するのに時間をかけることが必要だった。
だから帝国軍は、開戦予定を半年ほど前にして派遣軍司令部に着任予定の参謀を駐留部隊に派遣したのだった。
共和国は、この人員異動を帝国側の明確な戦争準備であると非難した。
たしかに、駐留部隊の司令部人員は、部隊規模に比べると不自然なほど大規模なものとなっていた。
だが、外部に公表されている程度の情報から司令部人員の増派を断定するのには、かなりの分析が必要のはずだった。
だから帝国軍では人員異動を偽装する事はしなかったのだが、共和国側はその人員異動を正確に把握しているようだった。
しかも、共和国のいう戦争準備というのは、帝国の意図している事に違いは無かったから、これを単純に否定するのは難しかった。
というよりもは、司令部の増員はこれが指揮すべき部隊の増員に他ならないから、司令部の増員がもれていた時点でこれを否定するのは不可能だった。
結局、帝国代表団は司令部の増員を完全否定することはできずに、事実内容を本国に照会する形で共和国を納得させていた。
そして代表団は会議の終了後、特設会場からすぐにホテルへと戻り、中核スタッフは今後の対策を協議することになった。
対策会議が始まってすぐに、情報部に所属するマッケナ大尉への非難が始まった。
「情報部は情報の漏洩に責任を持つべきだ。何らかの形で司令部人員異動の情報が共和国に漏れていたのではないか」
そういう団員の一人にマッケナ大尉は冷ややかな視線を向けながらいった。
「情報の漏洩は情報部の責任ではないのではないか。そもそも西方大陸駐留軍の司令部人員異動については情報は常に公開されているものであったと記憶していたが
責任をいうのならば、偽装も施さずに、杜撰な計画によって人員異動を行なった作戦部と実施部隊こそその責を負うべきではないのか」
マッケナ大尉の反論に、参謀本部作戦部から派遣されていた団員が蒼白な顔をして立ち上がった。
今にも大尉にその団員が掴みかかろうとしたところで団長が制止した。
「そもそもこの協議は今後の方針を話し合うために設けられたはずだ。もちろん先程の交渉の内容は本国に転送している。
この協議では本国への代表団としての意見をまとめるものとする。責任論を論ずるのはすべてが終わった後になるだろう」
団長の仲裁に、その団員は渋々席に戻った。
それからも、協議は遅々として進まなかった。全員が共和国のここに来ての強引な態度に戸惑っているのだった。何故共和国があれほどの自信を持っているのかがわからなかったといってもよかった。
だが、マッケナ大尉は何となくその理由を推察していた。
おそらく共和国側にも大尉に送られてきたのと同じような通信が届いたのだろう。そして、その情報の裏をとった共和国は確信をいだいたのではないだろうか。
つまりは、間違いなく通信の送り主は帝国と共和国の間に不信感を抱かせたいのだ。
そこまでを推察しながら、その後が大尉にもわからなかった。
一体誰がその通信で得をするのだろうか。開戦を避けたい共和国や中立都市国家ではありえない。常識的に考えてしまうと一番得をするのは帝国という事になってしまう。
それとも第三の組織が存在するのだろうか。
マッケナ大尉はため息をつきながら窓の外を見た。この小さな都市国家のなかには陰謀の蜘蛛の糸が張り巡らされているような気がしていた。
あらためてみると私の文章は読みづらいですね・・・
あと一人はさびしいです・・・こう私のお目汚しが連なるとうつです
>125
そんなことないよ。楽しみに読んでいます。
がんがってください。
マッケナ大尉は目の前に立っている男の顔をみつめていた。
男は不動のまま大尉の前にたち続けている。おそらく大尉が何か言うまでずっとその姿勢をとり続けるのだろう。
軽い頭痛を覚えながら大尉はいった。
「ミュラー軍曹、では君は部長の依頼で派遣されたと解していいのだな?」
その男、ミュラー軍曹が答えた。
「はい大尉、自分は情報部部長の命により本日付けで大尉殿の護衛任務に当たります」
ミュラー軍曹が大尉のもとに来たのは昨日のことだった。昨日、大尉が部屋に戻るとすでに室内には軍曹が待機していた。
軍曹は一応は無礼を詫びていたが、彼の態度はそれと正反対だった。
大尉は、軍曹の任務は自分の監視であると思っていた。
参謀本部に属しながら、外務部との交流も深い。そんな立場にいる大尉がこの微妙な状況下でどちらに付くのかがわからない。
だから、まだ外交部門と全面的に反目した状況下にあるわけではない今のうちから監視を強めていこうというのだろう。
そう大尉は軍曹の立場を考えていた。
「では君は私の指揮下に入ると解釈してよいのかな」
意地悪そうな顔で大尉はいった。
いずれ共和国との交渉方針の食い違いから参謀本部と外務部は対立姿勢を強めるはずだった。
外務部としては、中立国家の説得につかうための開戦にいたるまでの確固たる理由を求めていたし、参謀本部は、今までの戦時体制への移行を破綻させるような譲渡には応じられないはずだからだ。
だから、参謀本部は外務部と接触し情報を流しかねない大尉の存在を気にしているのだろう。
そう考えると、軍曹が大尉のいうことを素直に聞くとは思えなかった。
「自分に命令できるのは、情報部部長だけということになります。大尉の命令は要請というかたちで自分が判断します」
杓子定規ともいえる軍曹の回答に大尉は呆れながらいった。
「なるほど、参謀本部の部員以外との接触は禁止かな。君達は国が滅んでも任務に忠実なのだろうな」
さすがに、軍曹は顔を赤くしていった。
「大尉の身の安全を考えていっております。確かに監視という意味もあるでしょうが、部長から大尉の護衛を命令されたのは事実です」
それに、素直にうなずきながら大尉はいった。
「君の立場は理解している。その上で君に頼みたい事がある。座りたまえ」
軍曹をいすに座らせると続けた。
「参謀本部内部でも私を疎んじている勢力があるのは承知している。正直に言うが、私自身も立場を決めかねている」
驚いたような顔で軍曹が大尉をみつめた。この男は監視役だと認識している筈の自分に何を言っているのだろうか。
「そこでだ、しばらくの間私は任務を離れてこの都市の状況を探りたい」
軍曹は絶句した。いくらなんでもこれは任務の拡大解釈だ。
「それは・・・無茶です。そもそもこの都市の状況を調べてどうなさるのですか」
「すでに報告はいっているとと思うが、私宛の通信はこの都市内から来ていた。
さらに先の会議で共和国がわが軍の状況を急に知った直前には、特に本国からの通信量は増大していないと報告が来ている。
つまりは共和国も私と同じルートで情報を得た可能性が高い」
軍曹は大尉の護衛任務よりも自分の好奇心を抑えきれずに、首を傾げながらいった。
「しかしそんな事をして得をする集団があるとは思えませんが」
「そのとおりだ、だからこそ調べなければならないんだ。両国に開戦を迫る事でその組織、もしくは個人はどんな利益を得るのか。
それこそが情報部の仕事だ」
大尉の話を聞いた軍曹は明らかに迷っていた。おそらく彼の内面では任務と好奇心が戦っているのだろう。
だが、いずれ軍曹は大尉に従うはずだ。ミュラー軍曹も大尉と同じ性質を持っているからだ。
好奇心が強く、最終的な目的のためには手段を選ばず、何かを犠牲にすることもいとわない。
大尉は覚めた目で軍曹をみつめていた。
自分で書いててよく分からない罠
>129
最後でちょっとワラタ
いま、BLOXについての思いを反芻しながら書いてます。
ゾイドじゃないとか言われてますが、素晴らしいところもあると思うのですよ。
マッケナ大尉とミュラー軍曹は二人で街中を歩いていた。
独立都市国家のなかでもそこは中心街から離れ、中流階級が住むところだった。
それだけに夕方の今は活気があふれている。一日の仕事を終え帰宅する人々が夕食の買出しをしている露店市場の中で、大尉たち二人は完全に浮かび上がっていた。
何が楽しいのか笑みを浮かべながらあちらこちらの露店を覗き込みながら歩いているマッケナ大尉はともかく、周囲に厳しい目線を投げかけて警戒を怠らないミュラー軍曹は逆に周囲から警戒される存在になっていた。
この場ではマッケナ大尉は護衛するのには難しい存在だった。
露店で立ち止まって店主と話し込んでいたかと思えば、次の瞬間は素早くとおりを横切っていく。ミュラー軍曹は当惑しながら大尉を追いかけるしかなかった。
都市国家の調査をマッケナ大尉が宣言してからすでに二週間が過ぎていた。
最初の一週間は自室で端末をいじって何かを調べていた。その間部屋から一度も出る事は無く、食事も最低限しかとらなかった。
一週間がたち軍曹がいいかげん大尉の身体を心配し始めた頃にようやく部屋から出てきた大尉は、軍曹をつれてここと似たような市場へと繰り出した。
最初はミュラー軍曹も食事にでも来たのだろうと思ったのだが、それから一週間ものあいだ二人は市場を歩き通していた。
ミュラー軍曹は困惑したまま大尉についていく事になった。
マッケナ大尉は何をするでもなく食事をとり、露店の店主と話し込むだけなのだ。
その姿からは何かを探している雰囲気があったが、軍曹にはあまりまじめに取り組んでいるようには見えなかった。
ふとミュラー軍曹が気が付くと、マッケナ大尉はありふれた飯屋の前で軍曹の方を見ていた。
「今日はここで晩飯を食うとしよう」
ミュラー軍曹の返事を待つ前に、マッケナ大尉は一人でさっさと飯屋の中に入っていた。ミュラー軍曹の意向を聞くまでも無く店の親父に二人分の注文をしている。
「すまないがダワフリという男を知らないか?」
注文を終えたマッケナ大尉はそういった。すでに調理済みの料理を差し出しながら店の親父は首を振って答えた。
「さあねぇ、そんな名前この辺じゃありふれてるから特定するのはできないな。そういえばたしかあの露店の親父の名前もダワフリだったよ」
愛想のいい店主に礼を言うと、マッケナ大尉は素早く飯を食った。
ミュラー軍曹が食べ終わるのを待ってマッケナ大尉は店を出たが、飯屋の親父に教えてもらった露店へは行かずに通りを歩いていった。
さすがに疑問を覚えてミュラー軍曹はマッケナ大尉に質問した。
「大尉はダワフリという男を捜しているのではないのですか?」
「そうだが、それがどうかしたのか」
大尉は人気の少ない裏通りに入って、軍曹に向き直った。そして今までの愛想のいい表情を消した。
「なぜ店の親父が教えてくれた露店へ行かないのですか。人違いだったとしても、少なくとも話を聞いてみるだけの事はあると思いますが」
「勘違いするな軍曹。私が探しているのはダワフリという存在であって、特定の人物である可能性すら疑問だ」
ミュラー軍曹は混乱しながらいった。
「私には意味がつかめませんが・・・」
マッケナ大尉は話はこれまでというかのようにまた愛想のいい表情になって表通りを歩き出した。
「今にわかる」
もう日も暮れた頃になって、二人は広場のベンチに座っていた。周囲では、市場からあふれた露店が立ち並んでいたが、さすがにこの時間になると露店をたたんで店じまいをする店主が多かった。
行商人の格好をした男が二人に近づいてきたのはちょうど最後の露店がたたまれた頃だった。
その男は笑顔を見せながら二人に話しかけてきた。外から見れば、売れ残りを最後の客に売り込もうとしているように見えただろう。
「ダワフリを探しているのは旦那達か」
男は満面の笑みを顔に浮かべていたが、目だけは冷たい光を放っていた。
>130
コミケ帰りでラリった頭で書いていたのでよくわかんねぇとか・・・
BLOXネタは自分もいつかは書きたいですね
兵器としてみたときとか、意外に誰も書いていない気がします
パイロットとの触れ合いとかが難しそうではありますが・・・
冷ややかな視線を二人に投げかける男にただならぬものを感じて、ミュラー軍曹はマッケナ大尉の前に立とうとした。
それを手で制すると、マッケナ大尉は男にいった。
「君がダワフリかな?」
「質問に答えてほしい。旦那がダワフリを探しているのか」
マッケナ大尉がうなずくと、男は目を細くして大尉を見た。
「ダワフリに何の用があるんだ?」
「君こそ質問に答えて欲しいな、君がダワフリなのか」
男はため息をついて周囲を見渡した。広場からは次第に人が少なくなっていった。
「そうだ俺がダワフリだ。ああ、あんたは自己紹介しなくていいぜ。旦那がマッケナ大尉でそっちがミュラー軍曹だろ」
ミュラー軍曹は驚いて男をみつめた。いったいこの男は何者なのだろうか。
「そっちの旦那がどっからみても軍人さんだから旦那達の正体はすぐにわかったぜ。けど、逆に目立ちすぎて話しかけるタイミングを見つけるのに手間取ったよ」
「それはすまなかったね。さてと、仕事を頼みたい。勿論、時間外手当ぐらいは出す」
まるで旧知の友人かのように親しく話し合うマッケナ大尉と男に疑問を抱いて、ミュラー軍曹は二人に割ってはいった。
「ちょっと待ってください大尉。この男は何者なのですか」
男をミュラー軍曹がにらみつけていると、男は逆に不思議そうな顔で二人を見た。
「なんだ、大尉の旦那は俺の事を言わずにそっちの旦那を連れまわしていたのかい。やっぱりそっちのはただの目印だったんだな」
ミュラー軍曹は一瞬何を言われたのかわからなかったが、目印というのがどうやら自分の事らしい事に気が付いて顔を赤くした。
そのまま止めないと男を殴りかねない雰囲気だったが、男は平然とした顔をしていた。
マッケナ大尉はそれを見ながら、困惑したような顔をしていた。
「そういえば言わなかったか・・・ダワフリというのはこの都市国家内から帝国に情報を流している部外協力者だ」
「意外に共和国よりも帝国の方が情報料は高いんでな・・・おいおい、そんな顔をするなよ。別に俺は二重スパイじゃないんだぜ」
部外協力者と聞いた瞬間ミュラー軍曹の目に浮かんだ不信感を感じて男がいった。
「ところで旦那、もしこの都市国家の軍警察に俺の立場がばれたらかくまってもらえるんだろうね。その覚悟もなしに俺を探したわけじゃないよな」
「それは安心していい。いざとなれば帝国使節団のローカルスタッフとして採用するから最低でも身の安全は保障できる」
そうマッケナ大尉が言うと、男は満足そうにうなずいた。
「ついでに聞きたいんだが、なんで俺がこの辺りに住んでいるとわかったんだ」
「ああ、そのことか、半年前に君が送ってきたこの都市で起こった事故の報告がきっかけでね。君の報告は正しすぎたんだ」
「あの軍施設で起こった連絡機の墜落事故の報告か」
「そうだ、報告の詳細さから考えると、連絡機のペガサロスの墜落から少なくとも五分後には君は現場に到着して野次馬の仲にいなくてはならない。なのに、君は墜落の瞬間この場所にいたはずだ」
男は目を丸くしてマッケナ大尉を見つめた。
「なんでその事を知っているんだ」
「墜落地点と周囲の施設を考えると、墜落直前を確認できる場所はここしかない。ここは周囲から一回り高くなっているから建物の間に墜落したペガサロスを確認できる」
「なるほどな、旦那はずいぶん下調べをしたらしいな、たしかにこの辺に住んでるものでなきゃ五分くらいじゃあそこまでいけないからな」
「一週間も部屋に閉じこもって地図と格闘したよ」
大尉が大袈裟に困ったような顔をすると、男は笑みを見せた。
「旦那はよくわからんが面白そうな人だな。で、何を聞きたいんだ」
「この都市国家の現在の政情について詳しく知りたい。どんな派閥がどんな考えを持っているのか・・・」
男は顔をしかめながらいった。
「難しいな・・・一ヶ月はみておいてくれ。とりあえず情報を入手したら旦那に連絡するよ」
それだけいうともう男は二人から離れていった。その姿はもうスパイの印象は消えうせ、どこからみても売れ残りを抱えて困っている行商人にしか見えなかった。
話から取り残されていたミュラー軍曹は、男が通りから姿を消すまで厳しい目でみつめていた。
136 :
85:02/09/26 02:24 ID:???
長いのは初挑戦ですがちょっとやってみます。
主役機はBZ001レオブレイズ。
「ようこそ、ドラムフラー基地へ。わたしが一応の責任者です」
高速走行から解放されたバトルローバーの熱量が蒸気に変じて立ちこめる。
そのハンガーの中で、なんとか油を落としたつなぎの格好で挨拶をする男はカレル・リネ、階級は中尉。
後部シートから降りたもう一人の男が返礼をした。
「しばらくお世話になります。戦闘用に改造されてもやっぱりローバーの脚さばきは心地良い。我々の商品は半日後の到着になりますが、それまでにハンガーを拝見させていただいてもよろしいでしょうか」
そこまで一気に喋り終えると、男は顔いっぱいの汗を拭いた。茶褐色の肌だが、地底系とも違う。 彼が生粋のエウロペ南部生まれであることは、一度も大陸を出たことのないカレル中尉にもすぐに見てとれた。
ここ数日降り続いた長雨も、まるで太陽の国からやってきた彼を出迎えるかのように今朝方ぴたりと止んでいた。
「構いませんとも、丁度手が空いたところで。ええと・・・」
「おっと失礼。わたくし、ナカセインダストリー・ニューヘリックシティ支部第1営業部から参りました、ジョー・シャラーと申します」
2人は片隅に設けられた一応の応接室へと歩き出した。
「御社からは、当基地に見えるのがお一人とは伺っていませんでしたが」
NAKASE Industory。新興であるにも関わらず、共和国機動陸軍の次期主力機
──RZ−57スナイプマスター──の開発において大部分を任されたエウロペ系のメーカーである。
RZ−57と同時に開発された3種のCP兵装は、技術部に感嘆の声を挙げさせたに留まらず、ニクス大陸の前線でも高い評価を受けていた。
留守番部隊しかいないここデルポイ大陸にも数点が回ってきていたため、カレル中尉は挨拶がてら「全方位ミサイルユニット」に関する賛辞を述べようと考えていたのだが、それは遮られてしまった。
「ほかの人間は後ほど・・・と、少しいいですか!?」
彼が単独でやってきた説明を中断し、有無をいわさず整備区画へ駆け出していってしまったからである。
「ミ、Mr.シャラー?」
大自然のなかで育ったエウロペ人特有の俊足で突進していったシャラーは、綺麗に磨き上げられた高速戦闘ゾイド群の前で立ち止まった。
「彼らが、どうかなさいましたか?」
追いついたカレル中尉は思わず怪訝な顔をしてしまう。
見上げるシャラーの顔は、なにか共感のようなものに溢れていた。
「ああ、申し訳無い。喜んでいるゾイド達を見ると、いてもたってもいられなくなってしまうもので」
「喜んでいる?」
「たとえばこのライガーです。磨き上げられたこの蒼い装甲からは腐食斑点が全く見当たらない。取りつけハードポイントのゆがみも無い。しかも関節キャップと脚部フレームの隙間からはキレイに埃が取り除かれている上に潤滑グリスも適量」
「まあ、規定どおりに整備を行う自信はありますが」
「まさにカンペキだ。地元の技師連中に見せてやりたいッ!これがゾイドを愛しているという整備だ」
「Mr.シャラー、貴方はこのシールドの状態に特別感じ入るところでも」
「ええ」
「今は駐機して20分も過ぎる頃合いで、コアは自動的に睡眠モードに移行してるはずですが、こいつが喜んでいると仰るのですか?」
「もちろん。きっと良い夢を見てるはずだ。貴方はこのライガーを見て何も感じませんか?」
そうか。
納得がいった。
シャラーがメカ生体の精神波を素直に受けやすい、いわゆるゾイド乗りに適した人種であるとわかったカレル中尉は、エウロペから来た変人に答えた。
「私は生まれつき、ゾイドの意志というものを感じることができないのです」
140 :
85:02/09/26 02:58 ID:???
なんとか形になってきたBLOXネタです。
なんか意味もなく長くなってしまいそうで不安ですが。
8月なかばから「開戦前夜の方」と自分しかいない状況っぽいのは寂しいかも・・・
前回のカキコからまるまる一ヶ月以上経っている開戦前夜作者です(苦笑)
別に忘れていた訳じゃないんですよ?自分のHPの方を終らせたらちょうど試験期間と重なっただけで・・
近いうちに続きをあげるです
確かにさびしいですなぁ・・・一時期の賑わいはどこに行ったんでしょうね?
感想です。ナカセインダストリーが良いですな・・・
それとゾイドの意思を感じられるシャラーと感じられないカレル中尉の対比が面白いと思いました
誰か帰ってくるまで盛り上げて行きましょうね
「見ての通りがら空きですから、御社の小型ゾイドの起動試験に使う場所ならどこでも」
ヘリック共和国軍ドラムフラー基地より、オーガノイド・システムに由来する薬剤の臭いが消えて久しい。
ブレードライガーやシャドーフォックスを始めとするこの基地の主力部隊は<ニクス大陸電撃侵攻作戦>に参加している。駐機スペースには空きが目立ち、マーシャラーの負担も大幅に減っていた。
基地司令代理が待つ部屋へ続くキャットウォークで、シャラーは整備区画を見下ろしながら尋ねた。
「できれば、新型のRZ−053ケーニッヒウルフは見られませんか?ちょうど今なら来ているかな、と思ったのですが」
「今いる機種は、下に見えるものが全てですよ」
「そうですか・・・。高速戦闘ゾイドの新鋭機種一機種につき数台は、必ずドラムフラー基地に配属されると伺っていました。しばらく滞在してから、各々の勤務地へ運ばれるとか」
名残惜しそうにシャラーが言う。
「残念ですが、今は運ばれてきても対応できるスタッフが誰もいませんからね」
「誰もいない?」
「新型機が一旦この基地に配属されるのは、何のためだと思いますか」
カレル中尉は難しい問いを発した。
「操縦マニュアルの作成と調整・・・それともパイロットの慣熟訓練でしょうか」
トラクターで運ばれていく、灰色の磨耗した<M関節キャップ>を眺めながら歩いていた彼は、しばらく考え込んでから答えた。
「マニュアルは装備部で作られてますよ。完璧なものが。」
B/Oクラスが整備される様子が見渡せるコーナーまで来たところで、カレル中尉はふいに足を止めた。眼下では、ちょうど1時間ほど前にパトロールから帰投したシールドライガーが身体を休めている。
「作られるのは整備マニュアルなんですよ。」
「点検整備用の、ですか?」
「ええ、そうです。実を申しますと、この基地からニクスへ派遣されていった『主力部隊』は戦闘ゾイドではありません。
じゃじゃ馬高速機を長年扱ってきた整備士なのです。だから残っているのは新型完全野生体の面倒を見られない留守番です。二線級の高速ゾイドや整備士などね」
「え、いや、カレル中尉は全然そうは思えませんっ」
目の前にいる男はまだ若いんだな、と密かに苦笑をし、カレルは数ヶ月前に当時の基地司令から自分が聞かされた事情を説明する。
「誰かが責任者として残らなければいけないのですよ。ゾイド整備にもいくつか方法があります。
が、私のやり方では、傷ついて帰ってきた完全野生体をなだめすかしてハンガーに固定し、構造の奥に隠れた故障を見つける・・・というようなことができませんから」
「しかし、彼らはきちんと稼動しているではありませんか」
シャラーは納得がいかず、身を乗り出してシールドライガーを見下ろす。いま磨かれているのは兵装ハードポイントの電気接点。青みがかった綺麗な反射光。
そんな整備風景に背を向け、カレル中尉は答えた。
「シールドライガー、コマンドウルフ。残っているのが高度にシステム化され、長年CSのバージョンアップが重ねられてきた、信頼性の高い機体ばかりだからですよ。
それに、前線から離れたここでは重たい砲撃用CPでカスタマイズする必要も滅多に生じませんし」
「まぁ、なるほど」
シャラーはうなずいた。
「何でも屋的運用をされる高速機にありがちな関節系トラブルも少なくなる。フレームの歪みも自然回復に任せておけるのです」
「ああ、重量増加による関節疲労の問題はわかります。コアが想定していない荷重は、ゾイドのストレスになるんですよね」
ようやく肌で感じている事に思い当たった節で、シャラーは答えた。
「”柔軟な”運用が要求される高速部隊では必ずついて回る問題です」
カレル中尉はこんなセリフで授業をしめくくり、壁沿いの扉へとシャラーを促した。
「さ、行きましょう。」
「・・・ぜひお聞きしたいな、カレル中尉殿の感想」
手すりに腕を預けたまま、シャラーはつぶやくように答えた。
「感想?」
「あ、今回のわが社の製品なんです。皆さん見ると驚かれるんですよ。様々な意味で」
146 :
85:02/09/28 04:52 ID:???
>141
感想とか頂いて恐縮です・・・
いやぁ、ゾイド小説で戦闘以外の魅力が表現できるのは凄いと思うのですよ。
というわけで、今後のご活躍をお祈りしてまつ
公式ファンブック4発行も危ぶまれる今日この頃ですが、なんとか盛り上げて行きたいですね。
こんどトリップ付けようかな・・・
事態が急変したのはマッケナ大尉がダワフリという男と会ってから二週間後の事だった。
その間、帝國と共和国の間の交渉は全く進んでいなかった。共和国側が問題視していた帝國軍西方大陸駐留部隊司令部の増員は、人員派遣の中止と一部人員の帰還によって表向きは解決していた。
だが、司令部機能の強化は人員の極秘派遣や将来的に出向が予定されている人員の短期出向などにおよって偽装されながらも続けられていた。
共和国側はその証拠を掴むまでは交渉を進めるのは不利と判断していたようだった。
そして帝國側では本国との連絡がうまくいっていないためにそれ以上の判断が難しくなっていた。
むしろ本国における外交部と軍部との軋轢が西方大陸の使節団にまで波及してきたのだとも言える。
帝国内部における発言力は軍部の方が圧倒的に強いのだが、少なくとも諸外国との交渉に関しては外交部の政治力は無視できないものだった。
だから外交部所属の使節団団長の意見に軍から派遣されている副団長が逆らうのはいつもの事であり、使節団全体の意見調整には長い時間が必要だった。
その日も使節団はホテルの会議室で意見調整を行なっていた。すでに開始から数時間が経過しているものの会議は遅々として進んでいなかった。
マッケナ大尉はわざとらしく欠伸をしながら、できるだけ楽な姿勢で椅子に座りなおした。
周囲の士官達は一瞬大尉に視線を向けたものの、すぐに会議に夢中になっていた。
この会議の中では大尉の存在は浮いていた。参謀本部とも外交部ともとれる大尉の立場が逆に両者から味方ではないと認識されてしまったからだ。
だから大尉は迂闊な発言を避けて会議では誰かから意見を求められるまで押し黙っている事が多かった。
次第にそんな大尉の存在を誰もが無視するようになっていった。
どのみちダワフリに依頼した情報収集が終わるまで大尉は自分から動くつもりはなかったからこれは好都合でもあった。
だが、のんびりと構えていた大尉の耳に会議室のドアを慌てて開けたような音が聞こえてきた。
大尉は嫌な予感がしながら音のした方に振り向いた。大尉だけではなく会議室にいた全員が振り返っていた。
その音は使節団に随行していた護衛の一人が部屋に入ってきた音だった。
護衛の下士官は使節団団長と副団長の方に近づくと二人に小声で何かを伝えた。
二人は驚いて顔を見合わせていた。会議室の全員がその二人を凝視していた。しばらく呆然としていた副団長が全員に向き直ると立ち上がりながら説明を始めた。
「この都市の住民に共和国との会議の内容が不法に公開されてしまったらしい」
団員の誰かが副団長に問いかけた。
「そもそも共和国との通商交渉の内容は両国による検閲を経た上で大まかな経緯は公開される事になっていたはずですが。それとも検閲前の議事録が流れたという事ですか」
外交部に所属するその団員を副団長は冷ややかな目線で見ながらいった。
「どうも貴公は状況を正しく理解していないようだな。私がいった会議とは通商交渉ではなく、非公式に行なわれている予備交渉のことだ」
副団長がそういうと一気に会議室の中がざわめいた。基本的に本会議である通商交渉は公開式となっており、この都市国家の大臣級もオブザーバーとして参加している。
だが、予備交渉は存在そのものが極秘裏になっており、存在がリークされたとしても軍人同士の非公式な会談として処理されるはずだった。
「これは共和国による意図的な情報漏洩ではないのか」
参謀本部の士官の一人がそういうと同調する声があちこちから聞こえてきた。たしかに状況から考えて共和国による意図的な情報公開と考えるのが一番自然であるように思えた。
だが連絡が入ってからすぐに通信端末を使用していた団長が立ち上がっていった。
「諸君、共和国代表は共和国による情報漏洩を否定している。向こうの団長自らが発言している」
そう団長が言ったにもかかわらず、団員達は共和国への不信感を拭い去る事ができないようだった。
しかし、マッケナ大尉は共和国の関与を信じてはいなかった。共和国がここで情報を漏洩すれば国家としての威信そのものが低下するのは否めない。国家間同士の約束を反故にしたのだから。
それにマッケナ大尉には自分のところに送られてきた通信のことを思い出していた。ひょっとするとあの通信が誰かの元にまた送信されたのかもしれなかった。
だとすると、この情報漏洩は戦争を招こうとしているのかもしれなかった。
前回から一ヶ月以上経ってしまったのはまずいですな・・・
どうも85です。
「開戦前夜」は結構な長編みたいですね。掘り起こされていく戦争の発端に期待です。
マッケナ大尉は午後の陽光を浴びながら、街角にある茶屋の店先から通りを歩く人々を見つめていた。
そうしていると、とても帝國軍の将校には見えなかった。まるで大尉の存在そのものがその風景と溶け込んでいるかのようだった。
待ち合わせ場所としてダワフリが指定してきたこの茶屋には、大尉が一人で来た時は無愛想な親父が一人で店にいるだけだった。
大尉は親父に茶を注文すると、後は店先に並べられていた長椅子に腰掛け、今そうしているように通りを見る以外にすることが無くなってしまった。
その店の前の通りには人通りが絶えることは無かった。その通りは、この都市の中を縦横に走る幹線道路の一つだった。道幅は大型ゾイドさえ通れるほどの広さだった。
人々は、おもいおもいの格好でそれぞれの方向へと歩いていく。その平和な光景からはとても数日前の喧騒を思い起こす事はできなかった。
大尉はそのときのことを思い出して眉をしかめた。
その騒動が起こったのは、帝國の情報がリークされた次の日だった。前夜のうちに公開された情報に触れた住民が帝國使節団の泊まるホテルへと押しかけたのだ。
数千人規模のデモ集団というのは、この都市の人口が数万人に過ぎないことを考えればかなり大規模なものと考えてよかった。
デモ集団の大半は貿易関係者だった。彼らにとってこれは死活問題だった。
西方大陸での開戦は、中立都市国家としての両国間の貿易を主な産業とするこの都市国家の経済に致命的な損失を与えるからだった。
デモ集団に対して帝國使節団が打つ手は何も無かった。すでにデモ集団の一部は暴徒と化す危険性があったから説得に当たるのは論外だった。
結局そのデモ集団は都市国家の警察部隊が鎮圧に当たり、その日の夕方には沈静化していた。
だが、これは帝國使節団にとって危険極まりない状況だった。いつまでもこの都市の警察部隊が当てに出来るはずもなかった。
彼ら自身もまたこの都市の住民なのだから。だから使節団のうち何人かは帝國正規軍の派遣を口にしていた。
しかし大尉は正規軍部隊派遣に慎重な態度を示した。帝國軍の派遣は新たなるデモの引き金となりかねないからだ。
デモの理由が帝國と共和国との軍事的摩擦にあるのだから、その可能性は高いといえた。
最終的には団長の決断により部隊派遣は見送られた。
だが大尉はこれだけですむとは思っていなかった。このデモもまた開戦を望む勢力の引き金によって発生したと考えていたからだ。
デモの発生を追っていくと不自然な部分があったことがその判断を確固としたものにしていた。
そのことを誰かに伝えるつもりは無かった。大尉にとって使節団になかに完全に信用できる人物はいなかったからだ。
大尉が手足として使えるのはミュラー軍曹だけだった。
大尉が物思いにふけっていると、いつの間にか目の前にダワフリが突っ立っていた。
この前のように愛想のいい顔をしたダワフリは、顔見知りらしい店の親父に茶と軽食を注文した。
大尉もそれにつられて、いつの間にか冷めていた茶を飲み干すともう一杯を注文した。
「随分おもしろいことがわかったぜ」
前振りなしでダワフリは大尉に話しかけた。大尉は慌ててダワフリの顔を見た。
ダワフリはそれほど大きい声でしゃべっているわけではなかったから、通りを歩く人々に聞かれる心配は無いだろうが、店の親父には聞こえてしまうはずだった。
大尉は最初この茶屋からどこかへ移動するものだと思っていた。スパイが情報を伝達するにはあまりにもずさんな場所だった。
だが、大尉が気まずそうな顔で親父の顔を見ると、親父はわざとらしく顔を背けた。いささか迷惑そうな顔だったが、客の会話は聞かない振りをしていた。
「安心していい。この親父は信頼できる」
ダワフリは笑みを浮かべながらいった。だが、親父はそれを聞いてさらに仏頂面になった。
調子にのって続けてみる・・・長いんじゃない・・終らないんだ!(汗
当初の予定を超えて続いています、・・・まいいか
バトストスレ1の続き。なんと1年ぶりだ。覚えている者もおるまい。
「ガニメデ」(15)の1
スピーカーからは叫び、呻き、激しい息遣い、助けを求める弱々しい声、爆発音が数
限りなく響き、一つのうねりとなって鼓膜を失った耳に流れ込む。たった今死にゆく
者達の断末魔が、行き場を失いスピーカーから漏れ出してきたようだった。現状を知
らせる報告は何一つなかったが、作戦が、部隊が、仲間達が、どうなってしまったの
か、容易に想像出来た。作戦は失敗した。部隊は壊滅した。仲間達は死んだ。俺達は
負けた。また、負けたのだ。
「よそ見するな。前だけを見ていろ」
ウィッテの呼び掛けに、クラウスが微かな声で応じる。レッドホーンは二人を乗せ、
まっすぐ東へ走り続ける。砲弾が降り注ぐ後方へ逃れるわけにはいかない。かといっ
てガニメデ要塞まで、幾重にも張り巡らされた包囲網を突破して帰り着くことなど不
可能だ。ならば、残された道はただ一つだった。砲煙の向こうに陣取る敵軍を突破す
るしかない。前方の狭い街道上に展開する共和国軍の薄い陣地を突っ切ることは、不
可能ではないはずだ。しかし、その敵陣の向こうには敵も味方もいない。ただガニメ
デ湖があるだけだった。それが何を意味するのか、ウィッテにもクラウスにも分かっ
ていた。進むも死、退くも死、留まるも死、ならば突進あるのみ。最期まで勇敢なる
帝国軍機甲兵であるために、三人は走った。
「ガニメデ」(15)の2
共和国軍重砲兵隊が放つ巨弾の弾着音は、絶えることなく続いている。ウィッテは一
切の回避行動を取らず、愛機をまっすぐ走らせた。俺達に弾は当たらない。その何の
根拠もない確信だけが支えだった。聴覚を損ねたウィッテには、音もなく繰り広げら
れる目前の惨劇がまるで幻想のように思われた。赤い光と黒い煙に包まれた幻の中を
駆け抜けていく。
接触は突然のことだった。前触れもなく砲煙が晴れ、ウィッテの操るレッドホーンは
黒煙の渦から夜の闇へ飛び出した。闇の中に、何かがいる。赤い夢幻に魅入られそう
になっていたウィッテには、たった今眼前に現れたそれも幻ではないか、と思えた。
それはカメラのフラッシュのような砲火によって、ほんの一瞬だけ姿を照らし出され、
再び闇の中に消えた。だがその巨大な影は到底隠し切れずに、夜空にくっきりと浮か
び上がる。ウィッテは息を詰まらせた。山だ。山がそびえ立っている。全身から力が
抜けていく。これまでウィッテを支えてきた信念や誇りが、巨大な影に押し潰されて
いくのを感じた。
その巨大ゾイド、ウルトラザウルスの前では、何もかもがちっぽけで、無意味だった。
覚えてるに決まってるじゃないですか、貴方・・・。
「ガニメデ」(16)の1
戦局はほぼ共和国軍の思惑通りに推移していた。帝国軍が何らかの反抗作戦を企図し
ていることは、プテラスやサラマンダーが撮影した航空写真や、帝国軍内に少なから
ず存在する内通者がもたらした情報から推測出来た。彼らはそこまで知っていながら、
帝国軍の作戦準備を妨害しようとはしなかった。ガニメデ要塞は難攻不落と謳われる
堅城だ。攻め続ければいつかは落ちるだろうが、それでは時間が掛かり過ぎる。早期
にガニメデを攻略し、ゼネバスの王宮がある首都へ攻め込むには、どうしても要塞か
ら帝国軍を引っ張り出して叩く必要があった。敵軍を誘引するため、共和国軍司令部
があれこれと策を巡らしていたところに、帝国軍反抗作戦準備進行中の報が届いたの
だった。彼らは小躍りした。口を開いて待っているだけでいい、敵がご馳走を奢って
くれるのだから。恐らく、真っ赤な四つ足のご馳走を。彼らはご馳走を料理するカマ
ドにエサを撒き、その時を待った。
今夜、まんまと現れたご馳走、レッドホーン達を共和国軍は一つ残らず平らげた。平
らげたはずだった。しかし、少しだけ手違いが生じた。たった1機だけ、あの弾雨の
中を走り抜け、突撃してきたレッドホーンがいたのだ。大した問題ではない、わずか
1機だ。そのレッドホーンが飛び出してきた目の前に、共和国軍司令部が乗り込んだ
ウルトラザウルスがいたことを除いては。ウィッテもクラウスも知る由もなかったが、
彼らは舞い上がる煙と鉄片に身を隠し、たった1機で敵陣の最深部まで突破すること
に成功していたのだ。
「ガニメデ」(16)の2
どうする?ウィッテは迷った。目の前には、照明弾の残り火を反射し鈍く輝くガニメ
デ湖を背にして、小山のようなウルトラザウルスが立ち塞がっている。護衛もゾイド
1機や2機ではないはずだ。俺達の背後では火の海が煌々と燃え盛っている。敵からレ
ッドホーンの姿は丸見えだ。闇の中で、数百、数千の銃口が俺達を蜂の巣にしようと
待ち構えていることだろう。これも敵の張った罠だとしたら。俺達は奴等の掌で踊ら
されていただけなのか。その掌が今、閉じられようとしている。全てが、無駄だった
のか。敗北、徒労、絶望、死。ウィッテの脳裏にいくつかの言葉が浮かんでは消えた。
私も覚えてましたよぅ
つーかこのスレに住まう人全員覚えているでしょう
「ガニメデ」(17)
閃光があちこちで弾けるように煌めき、点滅する青白い光は、影絵のように兵士やゾ
イドの輪郭だけを浮かび上がらせた。今この場に存在する、全ての銃火器が火を吹い
たのだ。弾丸があちこちで炸裂し、その音に驚いたかのように更に多くの弾丸が撃ち
出された。狙いも何も、あったものではない。奴等、滅茶苦茶に撃っているじゃない
か。これは待ち伏せではないのか。もしそうだとしたら。ウィッテはそう考えながら、
敵弾を回避するため操縦桿を倒し込み、気付いた。レッドホーンのコントロールが利
かない。
ウィッテは操縦桿を前後左右、出鱈目に動かしてみた。何の反応もない。レッドホー
ンはただまっすぐ走り続けている。鼓膜が破れたウィッテの耳には届かなかったが、
コクピットにはずっとバトルコンピューターがフリーズしてしまったことを知らせる
アラームが鳴り響いていた。愛機は今、自らの本能だけで走っている。まっすぐ、あ
のウルトラザウルスを目掛けて。ウィッテは驚き、そして笑った。上等だ。お前はあ
の化け物を見ても身震い一つせず、脇目もふらずに突進するのか。お前は敗北も徒労
も絶望も死も知らない。戦うことしか知らないんだな。ウィッテは愛機の持つ、分厚
い装甲と統制装置の奥底に隠されていた剛胆な本性を垣間見、意を決して操縦桿から
手を放した。お前の最期の花道だ。俺達の命、お前にくれてやる。
age
うわ、かっこいー!
一目でファンになりましたーーー。
「ガニメデ」(18)の1
あらぬ方向へ撃ち放たれていた砲弾が、徐々にレッドホーンに集中してきた。大口径
砲弾から小銃弾まで、弾と名の付くもの全てがレッドホーンに命中する。脚部装甲が
砕かれ、中口径加速ビーム砲が根こそぎ弾き飛ばされる。3Dレーダーがもぎ取られ、
たてがみのような突撃ビーム砲がへし折られる。クラウスも負けじと、三連電磁突撃
砲を周囲の敵ゾイドに向けて手当たり次第に乱射する。しかし排気口付近に命中した
榴弾の破片が電磁突撃砲の基部で跳ね回り、砲塔は旋回不能に陥ってしまった。畜生っ!
クラウスの毒づく声がスピーカーから聞こえた。
「まぁ楽に行こうじゃないか、少尉」
ウィッテの声はあまりにも穏やかだった。クラウスは何も答えない。落ち着き払った
上官の態度に、驚き呆れているのかもしれない。俺だって驚いているんだ。ウィッテ
は顔を歪めて苦笑いした。どうしてこんなに冷静でいられるのか、自分でも分からな
い。愛機を叩き続ける砲弾の雨がほんの少しの間、途絶える。死なないよ。死なない
よ。耳元で誰かが囁いた気がした。
俺はゾイドを信じている、そう言って死んでいった者達が何十人もいた。ゾイドの声
が聞こえる、愛機が何を考えているのか分かる、そう言い出す者の目には力がなく、
濁っていた。死相だ。ゾイド乗り達は恐れた。砲弾が炸裂する轟音と、耳をつんざく
警報音が途切れる一瞬の静寂を。ゾイドの声を聞いてしまうかもしれないからだ。ひょっ
としたら、これがゾイドの声、なのだろうか。ウィッテはうつむき、引きつった笑顔
を浮かべながら、自分の頬を撫でた。巨体の割に、かわいい声じゃないか、お前。ウ
ィッテの表情は凍り付き、笑っているのか泣いているのか分からない顔になった。そ
れはまさしく、死相だった。
「ガニメデ」(18)の2
満身創痍になりながら、レッドホーンはウルトラザウルスに向かって突進した。距離
が近過ぎて、ウルトラザウルスは自慢のキャノン砲を放つことが出来ない。重い体を
引きずるようにして回避行動を取り、レッドホーンの突撃をかわそうとしていた。そ
の間にも共和国軍の砲口は絶え間なく火を吹き、赤い鉄片が夜空に舞い上がる。鋼鉄
のゾイドが、全身の傷口から血潮を噴き出しているようだった。レッドホーンは走り
続けながら頭を下げ、刺突攻撃姿勢を取る。数十発の砲弾が一斉に炸裂し、全身が炎
に包まれた。それでもレッドホーンは止まらない。闇の中を真っ赤に燃え上がりなが
ら駆けるその姿は、共和国軍を幾度となく粉砕した真紅の城壁そのものだった。たっ
た1機のゾイドに、数万の共和国軍兵士達が戦慄した。
赤い炎の光跡がウルトラザウルスの足元に達した瞬間、天地を鳴動させるほどの大音
響がガニメデ中に響き渡った。おびただしい量の鉄片が四方に飛び散る。その鉄片は、
燃えるような赤い色をしていた。粉々に砕けたのは、レッドホーンの角と前頭部だっ
た。
頭が潰れ、頚部も破損したレッドホーンは、ぐらつく首をだらしなく振りながらよろ
よろと歩き、目の前に広がるガニメデ湖に足を踏み入れた。水面で揺らめく星々に惹
かれるように数歩進むと、水中に没し姿を消した。
笑みを浮かべるダワフリを横目で見ながらマッケナ大尉は質問した。
「で、面白い事とは何なんだ」
親父が仏頂面のまま突き出した飯を食いながら、ダワフリはようやく真剣な顔になって説明を始めた。
「この国、というよりもはこの地帯にある主要な勢力は何かわかっているか?」
再確認するように言うダワフリに、通りに向き直った大尉が答えた。
「まずこの国家の主席や主要閣僚を輩出しているエウロペ人の豪族、次に最近勢力を伸ばしつつある帝國や共和国からの移民者」
「この移民者というのは、数は少なくともほとんどがゾイドの整備や運用などの特殊技能の持ち主だからその影響力は無視できないものだ」
大尉は軽く頷くと続けた。
「後は中流層以下を形成するエウロペ人の市民階層・・・残りはゼネバス系か」
最後は大尉は苦々しい顔でいった。
「そう忘れてはいけないのがゼネバス系だ。エウロペ人に比べれば少ないが、共和国や帝國からの最近の移民者よりもはずっと数は多い。
数よりもこの勢力は同胞同士の結び付きが強いのが特徴ではあるがな」
「ゼネバス系はこの大陸北方地方よりも南方地方が主な居住地であるはずだが」
ダワフリの説明に割り込んで大尉はたずねた。
先の大戦で消滅したゼネバス帝国の一般国民はヘリック共和国に吸収され、その軍隊はガイロス帝國に吸収されていたが、決して少ない数の民が他国の干渉を嫌って西方大陸に移住していた。
だが、その移住先は中央大陸と比較的環境が近い西方大陸の南方地方がほとんどだった。
南方地方への移住には共和国と帝國から遠く離れているため、両国の影響力が薄いという事も無視できない要因となっていた。
しかしダワフリはそんな大尉の考えをあっさりとくつがえした。
「そうでもない、最近になって南方地方に両国からの移民者が増えてきてるもんだからゼネバス人は段々と居住地を北に押し上げられているらしい。
気が早い奴は何十年も前からこの辺にも住み始めてるんじゃないかな」
大尉は眉をしかめながらそれを聞いていた。ゼネバス人の居住地の変化については情報部では十分な分析をしたことは無かった。
彼らにとっては、ゼネバス人はあくまでも国内の不穏分子の母体という認識しかなかった。
大尉は話を聞きながら西方大陸におけるゼネバス人の研究を進めなければならないと考え始めていた。
「それで、それが面白い事なのか。確かにゼネバス人のことは詳しく調査しなければならないだろうな」
大尉は話を一段落させ飯を食うのに専念しているダワフリにいった。
「いや、もっと重要な話だ」
ダワフリは食い終えた食器を親父に手渡しながら答えた。何となく大尉はダワフリが勿体をつけているように聞こえた。
「実はこの地方で最大規模の犯罪組織ってのはゼネバス系なんだよ」
今度は食後の茶をすすりながらダワフリがいった。大尉は黙ったまま先をうながした。
「こないだの騒動の時、その犯罪組織がずいぶん動いていたらしいぜ。それにそこのボスはガイロス人が個人的に嫌いらしいぜ」
大尉は苦笑しながらダワフリにいった。
「いくらなんでも個人的な感情で開戦を望むようなものはおらんだろう。
そもそも戦争になればそんな組織は真っ先に帝國の手によって摘発されてしまう可能性もあるのではないかな」
だが、ダワフリは自身ありげな顔でそれに答えた。
「それだけじゃないんだ。その犯罪組織と敵対している組織の財源はほとんどが緩衝地帯を通っての密貿易らしい。
だから戦争になって密貿易自体が難しくなれば敵対組織は財政的に破綻する。それだけでも十分利益があることだと思うがな」
いつの間にか周囲は薄暗くなっていた。通りを歩く人々も心なしか家路を急ごうと足早になっているようだ。
それに砂漠地帯ゆえに夜間の温度が極端に低いこの辺りでは、夕方のいまごろは急激に温度が下がる頃だった。
大尉は薄ら寒いものを感じていた。
167 :
名無し獣:02/10/08 23:10 ID:2N9MzfEg
>>164の続き
「ガニメデ」(19)の1
中天にかかる大小2つの青白い月が、鏡のような湖面を優しく照らしていた。温かい
風が吹き抜けて、星を瞬かせ湖面を乱す。焼け焦げた臭いを運んできた風は、水面に
波紋を残して暗闇の中に溶けて消えた。漣が月明かりの下をたゆたい、光の帯がガニ
メデ湖に静かに広がっていく。白波が立ち、波間に映る月をかき乱した。風ではない、
もっと巨大なものが、ガニメデ湖の静寂をほんの少しだけ破った。それはボロボロに
傷付き黒く変色していたが、こびり付いた煤の合間からは、鮮やかな赤い色をした地
肌が見えた。レッドホーンは月下に変わり果てた姿を晒し、94トンの巨体を漆黒の湖
上に浮かべていた。
「フロートがあるならあると、なぜ言ってくれなかったんですか!」
クラウスが半べそを掻きながらウィッテの耳元で怒鳴った。でかい声出すなよ。そう
言おうと思ったが、止めた。そういえば鼓膜をやられていたんだったな。ウィッテは
全身に走る痛みに耐えながら、答えた。
「俺だって、知らなかったんだよ。上の連中が言う、新型の増加装甲の中身が、ただ
の浮きだった、なんてな」
レッドホーンの両脇では、円柱を横倒しにした形状の2つの黒いフロートが、波のリ
ズムに合わせて上下動を繰り返している。上層部は気休めにはなると考え、ガニメデ
要塞の倉庫の奥底で埃を被っていたフロートキットを持ち出したのだろう。何が決戦
に備えて諸君に心強い手向けを贈ろう、だ。
「ガニメデ」(19)の2
ウィッテは狭い砲手コクピットで仰向けになり、星空を見上げていた。激突の衝撃で
意識を失いかけていたウィッテは、波に洗われるレッドホーンの背中を這い進んでき
たクラウスに助けられ、ほとんど水没した操縦席から逃げ出すことが出来たのだ。ウ
ィッテの顔が青白いのは、月明かりのせいばかりではないようだった。全身をしたた
かに打ち、手足が冷たくなり思うように動かせない。ただのショック症状だとクラウ
スは言ったが、その顔には不安の色が浮かんでいた。ただショック症状、が原因で死
んだ者は数え切れないほどいる。その上ウィッテの場合、操縦桿で腹部を打ち内臓を
傷付けてしまっている可能性が高かった。月がぼやけて、3つにも4つにも見える。ま
ずいかもしれない。ウィッテは冷え切った頭の芯で、そう思った。
「ではレッドホーン自らがフロートを展開して、我々を助けてくれたんですね。大尉
の愛機は帝国一忠実で、勇敢なゾイドですよ!」
こいつが忠実で勇敢だと?ふん。ウィッテは息を搾り出すようにして答えた。
「こいつはな、帝国一、身勝手な、イタズラ小僧さ。俺を、……びびらせやがって」
「ガニメデ」(19)の3 最終話
クラウスはウィッテの意識を失わせまいと耳元で叫び続けた。しかしウィッテにはも
う何も聞こえていなかった。身勝手なイタズラ小僧か。やっぱり俺に似たのかな。ウ
ィッテは薄れゆく意識の中で笑った。子供の頃、母親の指輪をこっそり持ち出して隠
し、必死になって探す母親の姿を影から覗き見したことを思い出した。あの後、母親
は俺を物置に閉じ込めて、俺は一晩中泣いたっけな。レッドホーンよ、お前にも大目
玉を喰らわせてやるからな。クラウスはウィッテの頬を叩き呼び掛けたが、浅い呼吸
を繰り返すばかりで何も答えない。ウィッテの名を呼ぶ声は、辺りを覆う静寂に呑み
込まれた。視界から星が1つ、また1つと消えていく。瞼がゆっくりと閉じられた時、
ウィッテは深い闇の向こうから響く、ひどくか細い囁きを聞いたような気がした。
「イタズラ小僧はあんたの方さ」
ははは!ウィッテは弾けたように笑い出した。クラウスは腰を抜かし、目を丸くして
いる。おい、俺が死んじまうと思ったか、少尉よ。ウィッテは笑いながらそう言うと、
クラウスに水を催促した。クラウスは心底呆れた顔をして彼の上官を睨んだが、大笑
いするウィッテの顔を見て口元を緩ませた。クラウスが蒸留水の入った水筒を取りに
立ち上がり傍らから離れると、ウィッテは笑うのを止めて再び夜空を仰いだ。これか
らどうなってしまうのか、皆目見当が付かない。ウィッテはあれこれ考えるのを止め
た。先のことは、後で考えればいいさ。それにしても。ウィッテは小さく笑った。あ
のクラウスの顔ったらなかったな。ふと思い付き、笑うのを止めて耳を澄ましてみた。
レッドホーンが一緒に笑っているのではないか、そう思ったからだ。一陣の風がコク
ピットに吹き込み、耳元で渦を巻く。聞こえるのは口笛のような風切り音だけだった。
終
マッケナ大尉はどこか不自然なものをダワフリの説明から感じていた。
いくら敵対組織が邪魔だからといってこんな手の込んだ謀略を使ってまで潰そうとするものだろうか。
それに大尉に通信を送ってきた相手の事も気になっていた。この騒乱を引き起こそうとしたものと通信相手は同一組織と考えるのが自然だった。
しかしただの犯罪組織にあれだけの情報処理能力がそなわっているとは考えづらかった。
いつのまにかまたすっかり冷めてしまった茶を一気に飲み干すと大尉はダワフリに向き直っていった。
「まだ確定できるほどの情報は無いな。もうすこし調べておいてくれないか。金は指定の口座に振り込ませる」
ダワフリは自分の情報がそれほど評価されていないと感じたのか、少し不満そうな顔でそれに頷いた。
大尉はそれを確認すると親父に勘定を支払って店を出て、すっかり暗くなった通りを宿泊先のホテルへと歩き出した。
その男は大尉が立ち去ってすぐにそれを追う様にして歩き出した。
ダワフリはその様子を不思議そうに見つめた。男はダワフリから目に付かないようなところを選んでいるような感じがした。
最初は大尉の護衛か監視を代表団の誰かが密かに行なっているのかと思ったが、そういう雰囲気ではなかった。
ダワフリは慎重にその男の尾行を開始した。ひょっとするとどこか他の組織が尾行しているのかもしれない。
たとえばこの国の情報局が代表団の動きに目を光らせているのかもしれない。
そのことを報告すれば大尉から追加の報酬でも出るかもしれない。ダワフリは現金な事を考えながら尾行を続けた。
大尉は飯屋を出てからすぐに尾行の存在に気が付いていた。だが、ダワフリとは違って大尉はその気配に剣呑なものを感じていた。
ただの尾行や監視以上の視線の鋭さを感じたのだ。
ということは尾行者は少なくとも帝國代表団の身内によるものではないだろう。どの派閥にとっても大尉の存在が邪魔になる事はあっても、積極的に抹殺するリスクは感じているだろう。
だということは尾行相手は例の通信相手なのかもしれない。ならばホテルまで尾行者を引き連れていくのはまずいだろうか。
どこかで尾行をまいていくか。大尉はそう考えていた。
だから狭い路地で前から近づいてくる男に注意が行き届かなかった。
気が付いたときはすでにその男の手に握られていたナイフが大尉に迫っていた。
あわてて体を倒すようにして避けた大尉の目前をナイフが一閃する。こういうことに慣れていない大尉はその拍子に後ろから転んでしまった。
それをみた男がさらにナイフを突き出そうとする。大尉はすんでの所で横へ回転してその攻撃をかわした。
しかし、その横回転でさらに大尉の姿勢は崩れてしまった。
ナイフの男は薄ら笑いを浮かべながらナイフを振りかざした。
大尉は慌てながら腰のホルスターから護身拳銃を抜き出そうとしていた。
その時後の方から男が駆けてきた。ナイフの男は一瞬驚愕したように後ろを振り返ったが、男達は仲間らしくお互いに笑みを浮かべた。
大尉はその隙に護身拳銃を抜いてナイフの男に向けて発砲した。
しかし拳銃弾は男の肩をかすっただけで、その後の壁に突き刺さった。
ナイフの男は自分の流血を見て逆上したようだった。
怒りに任せたような表情で、勢いよく大尉の肩口を蹴り倒した。その衝撃で護身拳銃は吹き飛ばされてしまった。
尾行していた方の男はそれを見て苦笑しながらいった。
「手早く済ませよう。ちゃんと止めをさせよ」
それで男達が大尉を殺害しようとしている事がわかったが、もう大尉には打つ手は残されていなかった。
じりじりとにじり寄ってくるナイフの男を大尉は睨み付けていた。
その時、路地に拳銃弾の発射音が再び鳴り響いた。
大尉とナイフの男が驚いて振り返ると、尾行していた男が倒れこむところだった。その頭部から血が流れている事に二人とも気が付いた。
倒れこむ男の向こうには蒼白な顔をして小型の拳銃を構えたダワフリが立っていた。
そこまで確認すると、大尉はさっき飛ばされた拳銃に手を伸ばした。ナイフの男がそれに気が付いて振り返る前に、発砲していた。
今度は確かな手ごたえを感じていた。至近距離で発砲した拳銃弾は男の腹部に命中していた。
大尉はそれに安心せずに撃ち続けた。弾倉が空になって遊底が開放位置で固定されてようやく男を観察する余裕ができた。
だが、ナイフの男はすでに倒れこんで微動もしなかった。確かめるまでも無く死んでいた。
マッケナ大尉はため息をつきながらホテルの部屋から階下を見下ろした。
そこでは毎日のように押し寄せてくる戦争反対デモが都市国家の警察部隊に阻止されているのが見えた。
大尉が正体不明の男を射殺してから3日が過ぎていた。
あれからすぐダワフリは姿を隠していた。大尉はそのせいで警察機構の厳しい尋問にさらされることになった。
結局、代表団による抗議によって大尉の行為は正当防衛ということとで決着がついた。
それが昨日のことだ。大尉は疲れきってそれから今日まで眠りこけていたのだ。
今も若干寝ぼけているのか階下の騒ぎがまるで別世界のように思えた。
だから、ミュラー軍曹が室内に入ってきた事にも気が付かなかった。
「大尉殿。都市国家防衛軍、戦略情報局局長ラインハート准将殿が大尉殿と面会したいと先程お見えになりました」
大尉はその声で慌てて振り返った。
「ラインハート准将が?代表団に何の用なのかな?」
ミュラー軍曹があきれたような顔でいった。
「そうではなくて、大尉殿個人への訪問であるとのことです」
それを聞いて大尉は首をかしげた。
「はて、私に何の用なのかな・・・」
「すでに下のロビーでお待ちですので直接准将殿に聞かれてはどうですか」
あきれながら言うミュラー軍曹を大尉は不思議そうな顔で見ていた。
大尉がロビーへ降りていくと、副官らしい若い士官を一人だけ連れたラインハート准将が長椅子に座っていた。
エレベータから大尉が降り立つと、それに気が付いた准将は立ち上がって大尉の方に近づいてきた。
「お久しぶりですな大尉。何でも殺人事件に巻き込まれたとか・・・」
いつものように愛想の良い笑顔で言う准将に、大尉は思わず口ごもった。
その件についてはすでに警察機構で何度も説明している。そう事務的に伝えると、准将はふとまじめな顔になっていった。
「別に我々はもう一度大尉に事情聴取を行なおうというのではありません・・・すこしばかりお時間をいただけますかな?大尉にお聞き願いたいことがありましてな」
別に断る理由も無いので大尉はうなずいた。
「ではここのレストランに行きましょう。ここで出す肉料理は旨いですぞ」
再び笑みを見せ冗談か何かを話すような口調に戻った准将はいった。それを聞きながら大尉は軽い頭痛を覚えていた。
レストランに入ると准将は慣れた様子で軽食を頼んだ。注文を取ったウェイターは大尉に視線を向けてきたが、大尉は眉をしかめてメニューを見た。
西方大陸暮らしが長い大尉ではあったが、食事はほとんど下町でとることにしている。
その方が費用が安上がりだし、量も豊富だ。それに大尉にとっては庶民の傾向を探る機会でもある。
だが、その分こういうレストランで出されるメニューを見ても何の料理なのかさっぱりわからなかった。
大尉はため息をつくと、あきらめて准将と同じものを頼んだ。准将の副官はレストランの入り口近くの席で客の様子をうかがっていた。
その向こう、入り口前の長椅子にはさりげない様子でミュラー軍曹が様子をうかがっている。
大尉はその様子に安心して料理を待っている准将にいった。
「それで、自分に何のようでありましょうか」
「ふむ、大尉殿はせっかちですな。苦労しますぞ、そんなようすでは」
軽く返しながら准将がいった。しかし准将も話す気になったのか大尉に向き直っていった。
「大尉を襲った襲撃犯ですが、警察はまだ特定していないそうですな」
「今のところはそうらしいですが。少なくとも自分は聞いておりませんな」
准将は周囲を見回してから顔を大尉の方に近づけてきた。
「これは他言無用に願いますが、戦略情報局では犯人をほぼ特定しております」
大尉はそれを聞いて意外そうな顔で見返した。いくらなんでも数日しかたっていないのに犯人の特定が出来るとは思っていなかったからだ。
首をかしげながら大尉はたずねた。
「失礼ですが特定したとはどういうことですかな。犯人は二人とも死亡していたはずだが・・・」
「ええ、実行犯は二人とも大尉が射殺しています。そうではなく、我々は以前から実行犯の二人をマークしていたのです」
眉をしかめながら准将がいった。大尉は呆気にとられてつぶやいた。
「事前からマークしていたのですか。では彼らは何者なのですか」
「彼らはおそらくこの一帯に影響力を持つゼネバス人系の犯罪組織の一員だったようです。それが何故大尉をねらったのかはわかりませんが・・・
とりあえず、死亡した犯人を検認した戦略情報局のスタッフが確認しております」
「なるほど・・・それで何故私にその話を?」
「ええ、大尉ならば狙われる理由を知っているのかと思いまして、彼らは戦略情報局にとっても要注意組織なので・・・」
「さて・・・警察にも話しましたが理由など思いつきませんな。その組織は帝國嫌いだとか聞きましたが」
何食わぬ顔をして大尉は二人分の料理を運んでくるウェイターを見つめた。料理からは湯気が上がっている。
大尉には実行犯が狙った理由が何となくわかっていた。この都市を調べまわる大尉の存在が邪魔なのだ。
その事は准将に言うつもりは無かった。話せば通信文を説明しなければならなくなるからだ。
――だが本当に犯罪組織が私を狙ったのだろうか
大尉は何食わぬ顔で食事を続けながら考え続けていた。
その男がマッケナ大尉の前に現れたのは都市国家市民によるデモが二週間目に入った日だった。
その日大尉が代表団の会議から帰って自室に戻ると、いつもと違う感覚に襲われた。
暗い部屋の中に人の気配があったのだ。
大尉は黙って懐から拳銃を抜き出して構えた。襲撃からずっと室内でも拳銃を携帯することにしていた。
それも、弾丸威力に劣る小型の護身拳銃ではなく、ミュラー軍曹から借りている大型の拳銃を用いている。
その銃はありふれているものではあったが、その分信頼性は高い。
部屋に潜んでいるものは、大尉が拳銃を抜いた事で動揺したのか急に気配を濃くした。
そして男の低い声が聞こえた。
「最初に伝えておく。我々にはマッケナ大尉に危害を加える意思は無い。部屋に忍び込むという強硬手段をとったのは、極秘に大尉と接触する必要があったからだと認識してもらいたい」
「すまないが、名無しの誰かにルームサービスを頼んだ事は無いな。どこの誰だか知らんが名乗った上で堂々と玄関から入ってきてはどうかな」
大尉は突き放すように男にいった。ここで男が正体を明かすまでは話を続けるつもりは無かった。
男の気配はしばらく迷っているように沈黙した。大尉が沈黙に耐えかねて口を開こうとした時に男が再びしゃべりだした。
「私はゼネバス人による共済組織に所属している。巷では犯罪組織として認識されているようだが、我々はもともと同胞を支援する目的で組織された」
大尉は驚きを隠せなかったが、頭のどこかでは納得もしていた。ゼネバス人犯罪組織が襲撃をおこなっていないとすれば、そのうち接触してくるだろうと思っていたからだ。
誤解を大尉が抱いたままだと、ゼネバス人犯罪組織そのものが帝國から敵視されてしまうからだ。
市井の民間人ならともかく、多少なりとも裏事情に通じたものにとってはガイロス帝國軍による西方大陸侵攻は周知の事実だった。
だからいまから保身のためにどの組織も帝國とは通じておきたいはずだ。
「それで、その組織が一軍人でしかない私に何の用かな」
「自分を卑下するのはやめたほうが良い。大尉は外交部門とも深いパイプを持っていると聞く。
それにこの都市国家と周辺地域を大局的な視線から観察する事が出来る帝國軍士官は大尉だけだといえる」
「それこそ買いかぶりというものだ。帝國にはわたしよりもよっぽど鑑識眼に優れているものがいる」
少し照れながら大尉は答えた。暗くてその男のしぐさが判るはずも無いのに、男が苦笑しているような気がしていた。
「なるほど、大尉よりも鑑識眼にすぐれているものがいるかもしれない。しかしこの地方に注目し、詳細を知っているのは大尉だけだ。その事には疑いの余地はあるまい。
そのうえで大尉に知らせておきたい事がある」
さらに続けようとした男に大尉はいった。
「その前に部屋の明かりをつけてもいいか。こう暗くては転びそうだ」
男の顔を確認するためにいったのだが、拒否される事も半ば予想していた。ただ、相手のペースに巻き込まれるのが嫌で牽制したというだけだ。
だが男は意外にもしばらく沈黙した後でいった。
「わかった、明かりだけならつけても良い」
驚きながら大尉は部屋の電灯のスイッチを入れた。
部屋の中が明るくなると、部屋の中央に置かれたいすに座ってまぶしそうに手で電灯を隠している初老の男がいた。
男はがっしりとした体格で頬に銃創があった。銃創は古いもので何十年も前につけられたもののようだった。
マッケナ大尉がその傷を見ていると、男は恥ずかしそうにいった。
「もう何年も前に受けた傷だ。人は歴戦の勇者だとかなんだとかいって持ち上げるが、私に言わせれば傷を受けるとは自分の失敗の証に他ならない」
そしてまじめな顔に戻って淡々とした口調になっていった。
「私はさっきもいったとおりにゼネバス人救済組織の一員だ。一応戦闘部門の幹部であると考えてもらいたい」
「救済組織なのに戦闘部門があるのか?」
大尉が口をはさんだ。
「救済とはいっても時には武力に訴えなければならない時もある。この西方大陸は中央大陸や北方大陸と比べれば治安が悪いからな
それにもともとは組織は戦闘意欲の強い地底族が中核だったゼネバス帝国臣民の末裔だからな」
「なるほどな、そこまでは理解した。その上でたずねるが貴公はどのような立場で私と話しているのかな?
犯罪組織の幹部としてか、それとも一個人としてか、それと貴公の発言は組織の意思であると考えてもいいのかな」
それを聞くと男は苦々しい顔になっていった。
「まずは順を追って話そう。私は組織のなかで「大佐」と呼ばれている。戦闘部門のなかではいわば実施部隊の長にあると考えてもらいたい。
戦闘部門の長は別に存在するが、その人物と私とは考えを同じにしている。組織のさらに上層部とも細かなところで食い違いはあるかもしれないが、私に全権を任すとしている。
つまりは私の発言は組織上層部の意思であると考えてもらっても差し支えない。
その上で言うのだが、組織全体の意思は決して一枚岩ではない。伝えたい事とはその事でもある」
マッケナ大尉は首をかしげた。わざわざ組織の内部情報を暴露する男の意思が見えなかったからだ。
「それは最近の騒動と関係があるのかな。それとも・・・」
男は大尉を遮っていった。
「誤解を恐れずにいえばこの騒動を起こしたのは組織だと言える」
呆気にとられて大尉は男を見つめた。あまりにも出来すぎた話のように思えたし、男がここにきてその事を伝えるメリットがわからなかったからだ。
「それで・・・損害賠償の示談にでもするのか」
マッケナ大尉が驚いた顔のままそう言うと、男は苦笑しながらいった。
「一枚岩ではないといったはずだ。現在我々の組織は二つの派閥が組織の主導権を争っている。
我々高年齢の指導者層を中核とする穏健派と若手達の過激派だ。
過激派の連中はゼネバス系住民の自治権獲得・・・というよりもはゼネバス帝国の再興をねらっていると考えてもらいたい」
「穏健派、つまりは貴公達はゼネバス人の自治権獲得が目的なのではないのか?」
「いささか誤解があるようだ。我々穏健派は自治権のような表向きの権利ではなく、実利的な権利を求めている。いわばゼネバス系住民がエウロペ人と変わらぬ市民権を持てればよいのだ
しかし過激派の行動はそのための組織の今までの努力を壊そうとするものだ。そこで外部者である大尉達に過激派の排除を依頼したい」
マッケナ大尉は困惑した表情でいった。
「急に言われても困るな・・・正直なところを言えば代表団は武力など保持していないから意味は無いと思うのだが・・・
それと過激派とはどのような組織で誰がリーダーなのかな?」
男は沈んだ顔でいった。
「過激派の指導者は大尉も知っている人物だ。そしてその人物が過激派だからこそ大尉に依頼しているのだ。
・・・過激派の指導者は防衛軍戦略情報局局長のラインハート准将だ」
マッケナ大尉は三度困惑して男の顔を黙って見つめていた。
「大佐」は困惑しているマッケナ大尉を見つめながらいった。
「その顔は信じられないといっているようだな・・・だがこの話は本当だ。ラインハートはそもそも我々の組織がバックアップすることで今の地位を手にしたのだ。
彼には組織の情報収集細胞として防衛軍の内部情報と戦略情報局が入手した情報を組織にもたらす事が期待されていた。
だが数年前から彼は組織上層部の管理下から離れて独自の行動をとり始めている。それもゼネバス人による祖国復興運動という思想を掲げてだ・・・
悪い事にその思想になびく者も多い」
「ラインハート准将が貴公の組織の細胞であった事はわかった。しかし理解できないところがあるのだが」
首をかしげるマッケナ大尉を大佐がうながした。
「貴公らの目的は何なのだ。少なくともガイロス帝國はゼネバス人の組織化を喜ぶ事はしない。それを承知の上でなぜ私に接触する。
失礼だが祖国復興運動とやらに従事するラインハート准将の方がよほど理にかなった行動をしているように思えるのだが」
大佐はそれを聞きながら次第に表情を硬化させていった。ほとんどにらみつけているのと変わりが無い。
しかしマッケナ大尉はその視線を正面から受けたまま表情を変えなかった。
しばらく二人の間にしらけた雰囲気があったが、大佐が沈黙に飽きたように話し出した。
「大尉は何か勘違いをしているようだ、我々の組織はあくまでもゼネバス人の地位をエウロペ人と同等、つまりは市民権の付与を目的としているのであり、ゼネバス帝国再興させることではない。
むしろゼネバス帝国復興を公然化する行為は危険でしかない。大尉が言うようにガイロス、ヘリック両国共にゼネバス帝国の復活を望まないからだ。
いずれこの大陸をめぐってガイロスとヘリックとの間に戦争が起こるだろう。その時、組織が両国に対して敵対することは避けなければならない。
それが今現在私が説明できる最大限のところだ。これで納得できたかな」
「了解した。・・・いずれにせよこれは出先の尉官ごときが把握できる範囲を超えているに思えるな。
課長の判断を仰ぎたいので貴公の組織への協力は少々時間がかかるかもしれない。
だが、個人的な意見を言わせてもらえばゼネバス人組織への協力は認められると思うがね」
大佐は不振そうな表情で、自身ありげに言うマッケナ大尉をみた。その表情に気が付いたマッケナ大尉はあっさりと自分の考えをいった。
「帝國もゼネバス人との衝突は望んではいない。何故なら帝國の内部にもゼネバス人が多く存在するからだ。
彼らのうち何割かは軍人であり、帝國とゼネバス人組織が衝突すれば彼らが離反する可能性も出てきてしまうだろう。
それが私が貴公に協力するであろう理由だ」
大佐は憮然としてそれを聞いていた。
「それならば何故さっき我々の目的などを聞いたのだ?」
「決まっている、私が知りたいからだ」
それだけをいうとマッケナ大尉は、もう端末に向き直って本国へ送る通信の草稿を打ち出し始めていた。
マッケナ大尉は憮然とした表情を浮かべて、目前で繰り広げられている騒ぎを見つめていた。隣に突っ立っているミュラー軍曹は呆然としていた。
マッケナ大尉と「大佐」が知り合ってからわずか一週間でこの都市国家における反ガイロス運動は今までの合法的なデモ活動から非公然かつ非合法な活動へと姿を変えていた。
いつのまにか反ガイロス活動家達が組織されていたという事もあるが、警察による急速な取締りが逆に組織の地下化を招いたともいえた。
反ガイロス組織の組織理念も、地下化するころから単純な戦争への反対から帝国主義への反発へとすりかわっていた。地下化することで先鋭化した組織を保つ為に、知識者階級を取り込むためだろうとマッケナ大尉は考えていた。
実際、周辺の都市国家の中からも知識者階級の活動家が組織に合流したらしいという噂もあった。
先鋭化した組織は、しかし民衆の強固な支援を受けていた。反帝国主義の実行が、民衆の目には不況へと追い込まれていく自分達の味方と認識されたからだ。
だがマッケナ大尉にはこの反ガイロス組織が近い将来には民衆の支持を失う事がわかっていた。必ずしも組織の理念が民意と同じ物ではないからだ。
いまのうちは反帝国主義が理念であっても、反ガイロス感情に流されている民衆の指示を受ける事は出来るだろう。しかし先鋭化した組織の行動はいつか非合法で無差別なテロへと繋がるだろう。
そしてこの都市にガイロス帝國の機関は小規模な領事館を除いては存在しない。自然とテロの矛先はガイロス帝國と結びついているとされる都市国家そのものになるだろう。
だがテロが頻発するようになれば貿易で成り立っている都市国家の経済は破綻するだろう。貿易活動で最も重要視される信用がなくなるからだ。そして貿易活動の停止は開戦を待つことなく不況をこの国家にもたらし、多くの労働者を路頭に迷わせる事になるだろう。
そうなった場合、失業者が先鋭化する組織に合流する恐れもあるが、組織のテロ活動と信用の低下について民衆に宣伝すればいいだけの話だった。それだけで組織の孤立化がおこり、それが更にテロの無差別化をおこすだろう。後は孤立化が更に進んでいくだけだ。
マッケナ大尉と本国の情報部ではそれを見越して、都市国家に対して輸送業者との大規模な取引を持ちかけていた。大陸西部のニクシー基地の拡張工事のための建築用物資と備蓄用食料の輸送をこの都市国家周辺の輸送業者に優先して契約する計画だった。
この計画がうまくいけば組織の孤立化を推し進めると同時に都市国家の宣撫活動にもなるはずだった。
輸送計画は開戦となった後でも継続されるはずだった。それはすなわち戦争になっても失業者の発生は最小に抑えられるということだった。戦争がすぐさま経済の崩壊へと繋がらないのであれば民衆の間に広がりつつある反ガイロス感情を確実に抑えることが出来る。
その間に都市国家の指導部は、国家の経済をより変動の少ない戦時型の経済に切り替えることが出来るはずだった。
そして反帝国主義を掲げる組織としてはこの輸送計画を襲撃しない手は無かった。その行動は民衆の支持を失わせる事になるとしてもだった。
計画はすでに実行へと移されつつあったが、計画の当初は極秘に信頼できる業者を選抜しておこなわれていた。計画が当初からテロによってつぶされてしまっては元も子もないからだ。
輸送中のテロ活動はあくまでも順調に開始され民衆にその事実が知られわたった後でなければ意味がないということだった。
だが、今マッケナ大尉たちの前で燃え盛っている倉庫は間違いなく極秘に選抜された輸送業者と契約している倉庫だった。その中には物資の集積地であるこの都市に一時的に保管されていたニクシー基地向けの物資だった。
間違いなく反帝国主義組織のテロ活動だった。そして、あきらかに組織に極秘の情報が流出していた。
ああ・・気が付けば一ヶ月ぶりなんだな
愛読してます。がんばってください。
>>186 ありがたやありがたや・・・お蔭で来年になっても続きそうです(笑)
目の前で繰り広がられている不毛な会議を、マッケナ大尉は黙って見つめていた。
すでにヘリック共和国との通商交渉はうむやむのまま中断され再開される予定は無かったが、都市国家にある領事館の支援要員として大部分の使節団員が残留していた。
彼らの本国機関での席次は領事館員たちのそれよりもはるかに高かったから、これは実質上の領事館の大使館への格上げといってもよかった。
軍参謀本部の人員の多数が本国に帰還しているのもそれを裏付けていた。彼らは残留していても実質上仕事は出来ないからだ。
今必要なのは微妙な外交関係の情報収集と分析を行なう事の出来る人員だった。
そして、すでに参謀である彼らは本国の参謀本部で西方大陸への侵攻作戦を立案しているのかもしれなかった。
すでに自体はそこまで進んでいた。
だが、マッケナ大尉とミュラー軍曹はこの都市国家に残留していた。
参謀本部の作戦部作戦課などは西方大陸の専門家であるマッケナ大尉をアドバイザーとして迎え入れたいという方針を示していたが、それは情報部長の判断で拒否されていた。
それに代わって、マッケナ大尉には都市国家に残って反帝国主義組織に対抗する事が任務として与えられていた。
情報部では、それほどこの反帝国主義組織を気にかけているようだった。今はさほどどの組織でもないが、帝國軍が西方大陸に侵攻した際の混乱に乗じて本格的な武力行使が出来るだけの集団になる可能性は決して低くは無かった。
実際に、確かなものではないが反帝国主義組織が共和国軍と接触を持とうとしているという噂もあった。そんな事になれば、もう反帝国主義が拡大するのを阻止するのは難しかった。
だから今のうちに徹底的に叩いておかなければならなかったのだ。
しかし、現状を理解しているものの数は少なかった。組織の規模が大きくは無いから気にしてもいないものが多いのだろう。
マッケナ大尉とミュラー軍曹は使節団員達のなかで孤立していった。
残留した使節団員を中心として開かれた会議は、マッケナ大尉が想像したように都市国家への支援を続いて行なう事で合意に達した。
ようするに現状維持ということなのだが、マッケナ大尉には別に指示が与えられる事は無かった。
会議が終わった後も談笑を続ける使節団員達を尻目にマッケナ大尉は席を立った。居心地が悪そうにしていたミュラー軍曹もそれに従う。
会議に使用した部屋を出ると、マッケナ大尉は前を向いて歩いたまま、後に従うミュラー軍曹にいった。
「ダワフリと接触して例の反帝国組織の内偵を進めてくれ。それと「大佐」にも連絡をつけろ。使節団員の中のスパイを捕まえたい」
ミュラー軍曹は疲れた様子で首を振りながら考えていた。どうにもこの二人だけの戦争は旗色が悪かった。
ダワフリは都市国家の郊外にある貧民街の一角に潜んでいた。
そこにはマッケナ大尉の命令で反帝国テロ組織を調査する過程で浮かび上がってき
た場所だった。
この都市国家の貧民街は周辺の国家と比べて大きなものだった。それはこの都市が
周辺の輸送業者にとって中継地点としての正確が強かったからだ。
多くの品物がここで荷降ろしされ新たに区分けされていく。そのなかで多くの貧民
が職を求めてこの都市に流入するのだった。
そうした貧民層は輸送業者から真っ先に解雇される存在だったからテロ組織には好
意的な感情を持っていた。
それがテロ組織が貧民街に巣くう温床となっていた。
貧民街はダワフリにとっても危険な場所だった。雑多な民族が混じり合う貧民層の
なかでは逆に生粋の砂漠民族であるダワフリの格好は逆に目立っていた。
しかたなくダワフリは目星をつけた家を監視できる廃屋にずっと潜んでいた。人の
出入りを監視していたのだが、人通りのあまり無い区画ということもあるのか、あか
らさまな出入りはなかった。
だが、テロ組織の出入り以上にダワフリはここ数日間で気になる事を見つけていた
。
ダワフリ以外にもその家を見張っている組織があった。
その男を見つけられたのは最初はただの偶然だった。夜になって僅かに近くの廃屋
から明かり漏れたのだ。不審に思ったダワフリがその廃屋を見つめていると、男が二
人その廃屋の前で短く話し合ったかと思うと、一人が立ち去っていった。
残された男は用心深く周囲を確認して、誰もいない事を確認してから廃屋に入って
いった。
その物腰は十分に訓練されたものだった。
ダワフリはその男達の正体を探りかねていた。
都市国家軍の情報局かとも思ったが、それにしては男たちの格好は貧民層に溶け込
んでいた。軍人ならばどこか制服の感じがするものだ。
ガイロス帝國が送り込んだスパイかとも思ったが、それにしては周囲に溶け込むの
が早すぎるような気がする。
それからも何度か男達が廃屋からの監視を後退するのを目撃した。
いつのまにかダワフリはテロ組織の家よりも廃屋の男達の方を気にしていた。
だからダワフリは男達の方を追いかけ始めていた。
交代のタイミングを見計らってダワフリは廃屋から幹線道路に向かう路地に潜んでいた。
しばらくそうしていると疲れた表情の男が歩いてきた。見た様子は周囲の貧民達と大差は無かったが、男の眼だけは鋭く周囲を警戒していた。
ダワフリは自然な様子でその男の後ろを歩き始めた。
男は幹線道路を都市の中心方向に向けて歩いていた。だが、男が都市中心まで行くことは無いだろうとダワフリは思っていた。
使節団が宿泊しているホテルや官庁街の辺りでは男の貧乏臭い格好は目立ちすぎるからだ。
案の定、男はある程度までいったところで倉庫街へと向きを変えた。そして倉庫街の中に立ち並ぶ大小の倉庫の一つで周囲を見回してから入っていった。
ダワフリも周囲を警戒しながら、その倉庫の僅かに開けられた扉の隙間から中を覗き込んだ。
なかでは先程の男が誰かに報告をしているようだった。
ダワフリはその光景に注目していたから後からそっと近づいてくる男には気がつかなかった。
「手を上げて中に入れ」
いきなり後からかけられた声に慌ててダワフリが振り向こうとすると、頭に硬い物が押し当てられ、数瞬後に背中をけられて倉庫の中に押し込まれた。
素早く背後にいた男が倉庫の扉の鍵を閉める。
ダワフリが呆然としていると、背後の男が報告をされていた上司らしい誰かにいった。
「大佐、ネズミが一匹いました。始末しますか」
「大佐」と呼ばれた男が返事をする前に横の方から聞きなれた声が聞こえた。
「ダワフリか?こんなところで何をしているのだ」
ダワフリだけでなく周囲の男たちの大半が振り返った。
そこには困惑した表情のミュラー軍曹と、落ち着き払った顔のマッケナ大尉がいた。
というわけで年内最後の発表です。
来年も続きますのでどうか宜しくお願いします
大晦日にご苦労様です。
今年も楽しみにしています。
194 :
山崎渉:03/01/08 02:32 ID:???
(^^)
195 :
山崎渉:03/01/22 05:22 ID:???
(^^;
「開戦前夜」相変わらず凄いですね。
これだけ書きつづけられるというのは尊敬です。
なんか1本書き逃げに近いことをしてる過去があるのですが、短編が出来たので勇気を出して晒します。
<ペガサスは空に>
エウロペの強い陽射しに焼け、色あせたポスターはとうとう掲示板から剥がれ落ちた。
『ZAC2102 ヘリック共和国戦略空軍 志願兵募集中』
澄ました顔で敬礼する少女の上に力強く踊っているのは、2年前の日付である。ここ、ニュー・ヘリック・ポートへと辿り着いた共和国の残存部隊は埃に舞う紙を気にも留めず、われがちにバスへと乗りこんで行く。
まず初めにフェリーで降ろされたのは傷病兵だ。
片腕を吊っている者。片脚を引きずっている者。濃硫酸でも浴びたのか、頭皮全体に傷を負っている者。
荷電粒子の閃光を直視したのか両目に包帯を巻かれ、戦友2人の肩を借りて歩く者。
汚れた病院服のままの者。アメンボ型の襟章をつけたアタックゾイド乗り。敗北の屈辱が背筋を伸ばし歩くパイロットスーツ姿の女性。その胸の箱状の装置は焼け焦げて機能しているとは思えない。
2度と赤い大地の土を踏むことはないと思っていた者だっている。あの時、ガイロス軍を叩き出した栄誉の時間とは全てが変わったのだ。
傷ついた兵士たちを満載したバスが過ぎてから、ポスターは整備中の港湾作業ゾイドの影から這い出てきた初老の男によってようやく拾い上げられた。
丁寧に透明なテープで四隅を貼りなおす彼は、ふとバス亭にたたずんでいた女性に気がついた。
簡素な稲妻の記号が貼りつけられた街灯が停留所の標識である。
臨時に作られた路線のニュー・ヘリック・シティ難民登録所行き。
先ほどの一団が乗りこんだもう片方の路線は、共和国軍駐屯地行き。そこではズタズタにされた部隊の再編成が行われているはずだ。
「お嬢さん、バスはしばらく来ないよ」
女性は答えず、ただ深くかぶったフードの奥からポスターを見つめるだけだ。
酷い大火傷を負っているのらしく、その顔を覗きこもうとしても彼には表情が読めなかった。
「よかったらそこに腰掛けて、しばらく休んでいきなさい」
彼女に縁台へ腰かけるようにすすめた男は事務所に一旦引っ込み、2人分の冷たい茶を持って出てきた。
笑顔で茶を手渡した男だが、依然何かを見出したようにポスターを見つめる女性に気がつくと彼の顔の皺は消えていた。
「貴方はどうやらそれに興味がおありのようだね。まだ時間もあるし。つまらない話でよかったら、暇つぶしに話でも聞いていくかね」
女性はこくん、と一礼した。
貼紙のあの娘は、私の命の恩人なのさ。
いや、そんなありふれた理由で尊敬だの、何だのしているわけじゃない。
私の半生に報いてくれたひとだ。
私がこの娘に初めて会ったのは、3年前の…とある戦線だ。
なにしろ奇跡だと聞かされていたからね。
その娘はいままで誰も動かせなかったゾイドをいきなり手なずけてしまったんだよ。
バックに写っているその高貴なゾイドこそ、オルディオスさ。
月の破片が降るなかで、私の師匠 ―メカ生体いじりの― が、その人生をかけて保存処理したコアが使われていた。
彼が病に倒れてからというもの、私はそのオルディのコアの解析と保存の継続に、ずいぶんな時間を費やしたっけ。
軍のオーダーは、空軍のエースが動かせるようになるまで…。
気がつけば数十年が経っていた。
そんなゾイドを。本当、わからないものだ。ともかく、ハイスクールに入学したてのその娘は偉いさんに頼みこまれて基地にやってきた。
今じゃ信じられないだろうが、そこでは旧大戦で勇名を馳せた珍しいゾイド達が稼動していてね。ゴッドカイザーだのキングライガーだの、それは賑やかだった。
敵さんも限定的に化け物みたいな機体を復活させていたから、良い勝負をするためにはコストを無視した部隊も必要だったんだろう。ゾイド乗りも正規の認識票こそ持たされていなかったが、各師団から集められた生えぬきのエースパイロット揃いだった。
そこは秘密基地だったんだが、どうもその娘を送ってきたハンマーヘッドが尾けられたようで、そのオルディオスが50年ぶりに主人を得たのは奇襲の真っ只中だった。
それは凄かった。まだコクピットに乗りこんでもいないのにその娘の言う事を聞いて、獅子奮迅の大活躍さ。しまいにはオルディの奴、基地内でグレートバスターを使うつもりになってたようだが、危なかったな。もしゴメスのバトルクーガーが止めなかったら…。
まぁともかくその娘に命を救われたのはその時だ。いや、その時だけじゃない。最期まで、幾度となくね。
そして私が軍で費やした40年間そのものが無意味な鉄くずに帰すことからも救ってくれた。オルディオスが神々しく嘶いて起動したあの時、私はどこかにいるというゾイドの始祖に全霊を捧げんばかりに感謝していたよ。
ただ、その時それ一度きりだったらこの話にどんなに救いがあることか。
最初は、なんだ、彼女は我々と行動するのを非常に嫌ってね。
無理もない。女学生から軍人だ。いきなり飛びこんだ環境が違いすぎる。家庭とは「進学校なので勉強に差し支えの無いように」との約束のようだったが、土台無理な話で、拘束される時間が長くなっていってね。
でも、オルディとは仲が良くて。一緒に駐機状態のときは良く話しかけては反応を読み取ろうとしていた。学校の教師のことだとか、学友の噂話だとか。私ら整備も他のパイロットも離れて眺めるだけだったが、とても絵になった。
そのポスターが作られたのはしばらく経ってからだな。最初はいやいやながらのようだったが、オルディと一緒に写るとなったら結局は乗り気になってたようだ。
その後エウロペにガイロス帝国がいなくなって、我々の部隊は解散・再編成ということになった。
正直危ういところだった。
宿敵ガン・ギャラドを始め、物凄い奴らと死線をくぐりぬけたオルディは何べんもダメージを受けて…旧大戦時の残存パーツは既に底を尽いていた。
今度のニクス上陸作戦の先陣をつとめるのは特別に用意された軍団がとのことだし、その娘も学業に戻ることになるはずだったんだが、彼女拒んでね。
どうしてもオルディと一緒にいたいと、志願年齢に達する誕生日を心待ちにしてた。
そんな姿を見て、誰だったっけか、私ら整備の中の奴がゾイドの医者になることをその娘に薦めたんだ。
このまま戦っていれば、オルディも君もどんどん傷つくからって。
結局彼女は折れて、卒業したらまた仲良くしよう、と話しかけていたのを覚えている。
そして、中央大陸に戻ったその日の夕刻のことだ。
新しい基地は正体不明の…今じゃ忌まわしい名前が付けられているが、無人ゾイドの大集団に襲われた。
おそらく地底にグランチャーが数機潜んでいたのだろう、発見が遅れたためにほとんどのゾイドは誰も乗りこまぬまま破壊され、食われていった。
…当たり前だ、あの娘とオルディは違った。一心同体だったからね。サンダーブレードとひづめでザコをあらかた片付けてしまった。ただ、脛の駆動系は手の付けようもない程破壊されてしまったが…。
ともかく我々は全滅を免れ、残存部隊と合流することになった。
しかし、脱出して首都方面に向かう我々のネオタートルシップも攻撃を受けた。
海中から現われた奴と、ハサミを持った飛行型に次々沈められていった。各艦が別ルートをとっても追っ手が必ず現われ、無人型だけじゃあなく指揮官がいるという見当がついた。どの道、そのままの状態じゃ指揮官機を撃墜することなど不可能だったが…
だが、艦にはそれをやってのけるコンビが乗っていた。
格納庫から飛び立とうとする挙動で赤いオイルが噴き出たり、そりゃ満身創痍だったが、オルディのマグネッサーウイングはカタログスペック以上の性能を発揮し、脚が十分に働かなくてもキメラの王を圧倒した。
あと一撃で奴をバラバラにできるという時だった。
後ろから飛行型のハサミに食いつかれ、一瞬の動きが止まったオルディはマグネイズスピアに捉えられてしまった。
右のウイングから前後の脚が全て持っていかれた。
が、ジョイントが外れかけていたグレートバスター自体をぶち当てられたロード・ゲイルは爆発四散。その隙をついて群がっていた無人キメラを振り切り、艦は離脱に成功した。
そうして私は生き延びたが、生涯忘れることはないだろう。
私の脳裏には、もう片方の翼ももがれてプラズマの炎に包まれながら落ちていくオルディオスが焼き付いているんだ。
元共和国軍整備士の彼の話は終わり、女性はまた一礼だけをしてコップを返した。
彼女は声帯も焼けてしまっているのかもしれなかった。
「お嬢さんがあまりに見つめているものだから、共和国軍に志願を考えているのか、お知り合いに軍の人間がいるのか、などと色々考えてしまったよ。」
コップを片付けに流しに立った彼は、今になって気まずそうにしていた。
「私も退役こそしたが、クニに残った人達のことは気になるからね。もっとも最近は軍関係者の消息はさっぱりだが」
女性は答えず、遠くの角を曲がってやってくるバスを目に留めると縁台から立ち上がった。
「それとも、ゾイドの方かね。…オルディオスなんだが、現在彼女が残したデータを元に再生計画が進められているらしい。昔の同僚の話では、こっちの企業との提携でもう実機の製造段階に移ったらしい」
その呟きが聞こえたのか、女性はふと振り返る。
「人工ゾイドコアの集積によって、オルディオス種は甦るかもしれない。だけど私の仕事はもう終わっているんだ。あの時に」
男はもう女性の方を見ていなかった。
けれども、もし女性が最後に工場の掲示板を振り返る姿を見ていたのならば、その顔にははっきりとした決意が表れていただろう。
『心ある若者よ、大空へ』
敬礼をする少女は、いつまでも力強くたなびく水蒸気雲を見上げ続けていた。
いいっすねオルディオスとの友情・・・
あとはさみ付きとか具体的に名前を出さないのがリアリティがあって良いですな(笑)
負傷兵の描写もええなあと思うのは駄目人間ですか?
<バトストの神
・・・俺にも降りてこないかな・・・
卒研とか試験とかの合間にPCを起動させると何故か続きが思い浮かびません
何故でしょう?PSとかに浮気するからですか?
なんというか、ありがとうございます!具体的な意見をいただきまして。
はぁ、そういえば自分はいま敵地(試験)の真っ只中でした
なんでこんな時に書きたくなったのでしょう。むしろこっちがダメ人間です。。。
続き、楽しみに待ってます。
開戦の陰にあったゼネバス人@エウロペの思惑が知りたいなと思いました。
ガイロス内部のゼネバス派とは繋がっているのかなぁ、などと気になったり。
ういむっしゅ(何
>>209 君達に最新情報を公開しよう(古いネタ?)
大佐周辺のみ繋がっています<ガイロス内部のゼネバス派とは繋がって
他は利用されているだけ
なんでかと言うとやはり「土着」してる人が多いんではないかなと思ったからです
いくらゾイド星人の寿命が長くとも50年の年月は世代交代その他によって民族への帰属意識もうすれるんではないかなと・・・
イスラエルとか見るとそうでも無い様な気がしないでもありませんが・・・
砂漠地帯特有の夜半の強風が貧民街を走っていった。マッケナ大尉は分厚い外套を着ているのにもかかわらず薄ら寒さを感じて首をすくめた。
隣にいたミュラー軍曹と大佐は、そんなマッケナ大尉の動きに気が付かないほど緊張しているようだった。
ふと気になってマッケナ大尉は後ろに控えている武装した大佐の部下達を一瞥した。
ダワフリが見つけた監視員はテロ組織の動きが激しくなった事を報告しに来ていたものだった。ダワフリがテロ組織の拠点となっている廃屋の存在に気が付いたのと同じ頃、使節団員のスパイを探っていた大佐の部下が同じ廃屋の存在に気が付いていた。
つまりは使節団の中に紛れ込んでいたスパイとテロ組織につながりがあることが証明されたといってもいい。
もっともスパイの特定自体は進んでいるとはいいがたかった。大佐達がかぎつけたのはあくまでの情報の伝達をおこなっているクーリエの存在に過ぎなかったからだ。
しかしマッケナ大尉はこの時点でテロ組織の拠点を襲撃することを考えていた。
使節団の派遣が決まったのはつい数ヶ月前の事である。それからクーリエの選定や訓練をおこなったと仮定するならばその数は極端に少ないものと考えられた。
それならばクーリエを抑えれば情報の伝達手段は失われる事になる。
マッケナ大尉はテロ組織がそれ以外の有効な情報収集手段を保有しているとは考えていなかった。それならば察知される危険性の高いクーリエなど使わないはずだ。
だから拠点の襲撃は十分に効果のある作戦だった。問題は確保できる兵員の数だった。
いつ拠点が移動するかわからなかったから作戦は早い段階で始動しなければならない。
情報ではラインハート准将もテロ組織と接触を続けているらしかった。
そのことも作戦を急がせる一因となっていた。
触発されたともいう
しかしマッケナ大尉が指揮している兵員は皆無だったし、大佐の部下達も銃撃戦が得意とは言いがたいところだった。
何とか大佐の部下の中から選抜して十数人の武装兵は確保できたものの、装備も練度も様々な集団であるに過ぎなかった。
もっとも相手のテロ組織のほうもさほど戦闘力があるとは思われなかったから十分な数であるとマッケナ大尉は自分に言い聞かせていた。
だが今マッケナ大尉は自分の判断に迷いを感じていた。武装した大佐の部下は、あるものは緊張し震えを隠せなかったし、いつまでも神経質に銃の点検を続けているものもいた。
彼らを落ち着かせようと何か声をかけようかとマッケナ大尉は考えたが、脇にいる大佐に遠慮して何も言う事が出来なかった。
大佐も後の部下達を一瞥すると不機嫌そうな表情になって一人一人に声をかけていった。
その様子を見て安堵するとマッケナ大尉は見張りを続けていたダワフリに合図した。それに気が付いたダワフリは素早くマッケナ大尉に近づいてきていった。
「旦那、今あの准将があの廃屋に入っていったぜ」
予想もしていなかったダワフリの言葉に一瞬マッケナ大尉は唖然とした。こうも早く准将が非公然組織と接触するとは思わなかったからだ。
考えようによってはこれはチャンスなのかもしれなかった。地下組織と准将の関係が明らかになれば後は大佐に任せればゼネバス人を敵に回す事はなくなるだろう。
だが失敗すればラインハート准将も地下に潜って活動を始めるだろう。
迷っていたのはほんの僅かな時間だった。
マッケナ大尉は大佐に短くいった。
「突入作戦決行」
大佐が頷くと武装した兵たちが廃屋へと駆けていった。その後姿にマッケナ大尉はまた不安を覚えていた。
初戦闘は歩兵戦(ぇ
どきどき(;゚∀゚)=3
兵たちが突入する時、マッケナ大尉たちはダワフリが廃屋を監視していた小屋で待機していた。
その廃屋からは目標の廃屋だけでなく、周囲の状況を監視する事が可能だったからだ。それに、大尉たち自身もいざという時は予備兵力となるように武装していた。
マッケナ大尉自身は護身用の大型拳銃を持っているだけだが、大佐やダワフリは機関短銃や突撃銃で武装している。
ミュラー軍曹は逃亡するテロ組織構成員がいたときに備えて狙撃銃を持ち込んでいた。
窓辺に立って監視するマッケナ大尉の脇で、ミュラー軍曹は膝立ちで狙撃銃のバイポットを窓枠にのせてスコープのなかを睨んでいた。
マッケナ大尉が見守るなかで兵たちが廃屋に辿り着いた。マッケナ大尉はその様子に少しばかり安堵した。兵たちの動きが訓練されたものだったからだ。これならば作戦の成功確立はかなりのものだろう。
そして、最初に辿り着いたものが入り口を突撃銃で狙いながら監視する間に、素早く二人目の兵が散弾銃を入り口のドアの蝶番に押し当てて無造作に発砲した。
静まり返った貧民街に散弾銃の銃声が二度響き渡る。
この作戦では当初から秘匿性に関しては考慮されていなかった。そこまで考慮する時間が無かったというのも事実だが、むしろ作戦を迅速に進めることでテロリスト達が反応する前に無力化する方が重要だった。
蝶番が吹き飛ばされたドアが素早く蹴り倒されると三番目の兵が無造作に手榴弾を中に投げ込んだ。
「軍曹、フラッシュ」
マッケナ大尉がミュラー軍曹に注意を促すと同時に廃屋の中で凄まじい閃光と爆音が発生した。
軍曹や突入する兵たちはその前に目を閉じていたから視力の低下は最低限ですむが、警告なしに閃光を浴びたものは一時的に視力を奪われるはずだ。
そうでなくとももう夜目は利かなくなっているだろう。それに対して日が降りる頃から監視小屋で明かり無しに待機していたマッケナ大尉たちは周囲の状況がわかるくらいには夜目がきいている。
それ以前に爆音を予告無しに近距離で聞いたものは一定時間無力化されてしまうものではあるが
いずれにせよ突入する兵たちを妨害するものはだいぶ減っている事だろう。
マッケナ大尉は廃屋の監視を止めて周囲の状況を探り出した。貧民街は閃光弾が爆発した後も静まり返っていた。住民の大半は今の爆発で起きだしているのだろうが、おそらく暴力沙汰と係わり合いになるのが嫌で家の中にこもっているのだろう。
一通り監視を終えたときに通信機から突入した兵からの連絡が入った。
「内部に突入、生活臭はあるが人は誰もいない。今放置されている物を調べさせている」
それを聞いたマッケナ大尉と大佐は顔を見合わせて、どちらとも無く廃屋を監視していたダワフリに向き直った。
「俺はちゃんと監視していたぜ。あの小屋からは誰も出てこなかった」
自身ありげに言うダワフリを戸惑った表情でマッケナ大尉は見つめた。そして通信機から再び声がした。
「隠してあった地下通路を発見した。これから入って調べる」
それを聴いて戸惑ったような顔をしていた大佐が素早く反応した。
「いかん!そこから撤退しろ」
大佐が言い終わるよりも早く廃屋がいきなり爆発した。呆然とそれを見ていたマッケナ大尉を大佐が倒れこませた。
それと同時に大尉がいた空間を大きな破片が通過した。爆発は廃屋と突入部隊を完全に消し去っていた。相当数の火薬が使用されたのは間違いなかった。
床に倒れこんだままマッケナ大尉は呆然としながらいった。
「作戦は失敗した。ここから撤退する」
保守のつもりです
開戦前夜作者さん、のんびりと期待しつつ続きを待ってます。
前回は動きがあって思わず息を飲みましたよー
マッケナ大尉はため息をつきながら、目の前で意気消沈している面々をみた。
廃屋への突入作戦失敗からまだ3日しか過ぎていないのに状況は驚くほど変化していた。
都市国家政府は貧民街での爆発に対して当初は静観の構えを見せていた。政府にとっては貧民街の存在はさほど重要なものではなかったからだ。
だが、貧民街での爆発が政府によるものであるとの風評がたち始めた頃からにわかに状況が変わっていった。
いつの間にか爆発は政府筋の対テロ機関による過剰な捜査によるものだとされていた。政府はこれを否定する事が出来なかった。
一部の層から積極的にテロ組織を取り締まるよう要請があったからだ。
その一部の層とは帝國や共和国と貿易をおこなう業者達だった。彼らにしてみればテロ組織とは自分たちの商売を危うくする存在に過ぎなかった。
そして貿易業者達は貿易国家であるこの都市ではかなりの発言力を持っていた。彼らは実際には存在しない政府の捜査を高く評価し、いっそうの取締りを要請した。
その要請に引きずられる形で政府当局の貧民街への捜査は強行された。
だが十分な経験も無い捜査機関が比較的反政府意識の存在する貧民街の捜査をおこなったところで十分な成果があげられるはずも無かった。
結局は捜査機関による捜査は強引なものとなり地域住民との軋轢を発生させるだけだった。
それはますます貧民層をテロ組織に結びつけるだけだった。
卒研の合間を縫って・・・担当教官が役に立たないのはいかんともしがたい
そして第二の事件が発生した。
それは当初はただのデモ行動に過ぎなかった。しかし貧民層を中心としたそのデモ行動を取り締まろうと捜査機関が強引に検挙を実施した事から事態は悪化し始めていた。
貧民層に属する住民たちは当然のことから政府機関による保護を受けづらい。そのことが検挙から逃れる為に強く抵抗する事になった。
自然と捜査機関の暴力もエスカレートしていった。
そして破局は突然に訪れた。デモ活動に巧妙に紛れ込んでいた一人のテロリストによる投擲爆弾は検挙を実施していた捜査機関の大半を負傷させた。
さらに紛れ込んでいたアジテーター達によって民衆が捜査機関に対して暴力を振るい始めた。
そして最後は防衛軍による治安出動をもってしてようやくそのデモ活動は鎮圧された。
最終的に捜査機関と民衆側合わせて三桁台が重軽傷を負っていた。
その事件の影響は都市国家内部に止まらなかった。軍の治安出動は都市国家全体の評価を押し下げていた。本当の衝撃は事件から一夜明けた朝にやってきた。
帝國軍を除くほぼ全ての契約業者が都市国家の輸送業者との契約を打ち切る事を通達してきた。
そもそも最初の戦争反対デモのころから都市国家の評価は下がり続けていた。
そして治安出動の事実は決定的なまでに評価を押し下げた。
だが帝國軍だけはこの地域の輸送業者をこの都市のものに集中させていた。
そのことがさらに都市国家の輸送業者を帝國と結びつける結果になっていた。
それだけならば良いのだが、マッケナ大尉は輸送業者の中で都市国家への帝國軍の駐留を希望する意見ができつつあるという噂を耳にしていた。
だがそんなことは本来なら許容できる自体ではないはずだった。業者はそれによって治安が保たれると考えているようだがマッケナ大尉はむしろ逆だと思っていた。
帝國軍の進駐はテロ組織に格好の標的を与え、都市国家内の亀裂を明確なものとするだろう。
だがその事を理解しているものはまだ少なかった。
話が進まない・・・
マッケナ大尉はふと飯茶碗のおかれたテーブルから通りのほうに目を映した。向かい側にいたミュラー軍曹は最初から通りのほうを見ていた。
そこでは意味不明なシュプレヒコールを叫びながら示威行動を続けるデモ隊の姿があった。いつのまにか反戦争デモは反体制デモへと変化していった。
デモ隊は小規模ながらも組織されたものであるようだった。随分長距離を歩き続けているはずなのに人数が減っている様子はなかった。
みたところそれはゼネバス系の貧民を中心としているようだった。ただ何割かはエウロペ人も含まれているようだった。彼らを結び付けているのは血族というよりもは同じ立場ということのほうが強いようだった。
いずれにせよ彼らはこの都市国家では反主流派に属する人間だった。
だが主流派である支配者層は彼らが同時に無視できない勢力である事を理解しているとは思えなかった。
茶屋の親父は迷惑そうな目をデモ隊に向けたが、一応は無視する事もできずに茶屋の軒先に立てかけてあった雨戸をかけていった。
自然となかに取り残される形になったマッケナ大尉とミュラー軍曹は親父を手伝って雨戸を閉めると黙々と飯を食い続けた。
すると雨戸の向こう側のデモ隊から流れてくる音に変化があった。デモ隊が叫んでいたシュプレヒコールは鳴りを潜め、それに変わって悲鳴と怒号が聞こえてきた。
マッケナ大尉はミュラー軍曹と顔を見合わせてから店の親父に目を向けた。親父はなんでもないかのようにたった二人の客にいった。
「別になんでもない。またいつものようにデモ隊が警察の治安維持部隊に鎮圧されているだけだ。毎日奴らはそんなことをしているんだ。まったくひまなことだ」
親父はそれだけ言うと店の奥で料理の仕込みに入った。ただ、口ではそういっても気になるのか雨戸のほうを何度も見ていた。
いつの間にか悲鳴も怒号も聞こえなくなっていた。すると雨戸が外から強引に開けられた。
店の親父と二人が身構えた時、開けられた隙間からダワフリがぬっと顔を突き出した。
「いやぁ外は大変だったぜ」
親父は呆れたような顔をしていった。
「馬鹿野郎、雨戸を無理やりこじ開ける奴がいるか。お前が責任を持って雨戸を仕舞えよ」
ダワフリはぶつくさ言いながら雨戸を一人で片付けていった。その間に親父がダワフリの分の飯を二人がいたテーブルに置いていった。
「デモ隊は検挙されたのか」
席に着いたダワフリにマッケナ大尉が尋ねた。
「どうかな、全体の三割にも満たないのではないかな。まあそれでも十分な数だがな。もう警察の拘置所は一杯なんじゃないかね」
興味のなさそうな声でダワフリが言ってから続けた。
「それよりも帝國軍が本格的に進駐してくるって噂は本当らしいな。旦那は知らんかもしれんがエウロペに派遣されてる総大将はかなり乗り気らしい。さっき市庁舎で聞き込んできたんだから間違いないね」
ミュラー軍曹が怪訝そうな顔でマッケナ大尉をみた。
「いくらなんでも我々よりも先に市庁舎などに話が行くものでしょうか」
「いや、おそらく憶測が飛び交っているだけだろう。だがそれが噂である分たちが悪い。帝國としても正面切ってそれを否定する事はできないし民衆にしてみれば噂も真実に見えるだろう」
「つまりは帝國はいずれここにくるしかないということかい。このままほっとけば間違いなくこの致死は崩壊してしまうからな」
話に割り込んできたダワフリにマッケナ大尉は頷いた。ダワフリは眉間にしわをよせて言った。
「困ったな。例のテロ組織はまだ温存されているんだろ。帝國軍が今来ても格好の餌食になるだけだぜ。兵隊さんがテロ狩りなんてすることはできないだろうからな」
マッケナ大尉はゆっくりとダワフリをみた。
「テロリスト狩りか・・・それならばなんとかなるかもしれん」
ミュラー軍曹とダワフリは顔を見合わせてマッケナ大尉を見つめた。
スレの数が圧縮されるそうです。
一応、保守書きこみ。
飯を食い続けるマッケナ大尉にミュラー軍曹が尋ねた。
「テロリスト狩りとはいいますが我々が現有している戦力はほぼゼロです。戦力の補充も考えづらい状況ですが・・・」
「それにこの国の警察や軍隊は役に立たないぜ。治安維持なんぞ武力だけで間に合うと考えているような単細胞が親玉なんだからあたりまえなんだが」
ミュラー軍曹に続けてダワフリまでそういってもマッケナ大尉は落ち着いて飯を食い続けた。
しびれをきらせたダワフリがまた何か言おうとした時、マッケナ大尉は覚めた目をダワフリにむけた。
「別に現有の戦力だけでどうにかするつもりは無いし、この国の勢力を借りる気もない。そんなことをすれば間違いなくテロ組織に、というよりもはラインハート准将に情報が漏れ伝わってしまうだろうからな」
「ではどうするのですか?失礼ですが大尉殿の権限では帝國の正規軍は動員できないと思いますが」
「正規軍ではない。情報部長に依頼してもらって情報局の部隊を借り受ける」
それを聞くとミュラー軍曹は顔をゆがませた。話についていけないダワフリは首をかしげている。
>>221 むう・・・最近(?)過疎化が進んでいるこのスレは危険?・・・
みなさんがんばりませう
情報局とは帝國情報省直轄の機関だった。もちろん軍部の統帥機関である参謀本部と組織上の接点は存在しない。
だが矛盾する事に情報省の一部局でしかない情報局と参謀本部の情報部はある種の接点が存在した。
一般に情報局の職務は情報の収集と分析とされている。しかしこの職務の大部分は情報部と重複していた。
もちろん分野の区分けはされている。それによれば情報局は主に民間や政府機関の情報を、情報部は軍部の情報を収集する事とされていた。
しかしその区分けに実質上の意味など存在しなかった。準戦時体制ともいえる現在の状況では情報収集という分野では軍部と民間の区別がつかないのだ。
軍部の兵器開発や生産の動きをたどっていくうちに民間企業を調査する場合もあるし逆に政府機関の不自然な動きを追っているうちに軍部に辿り着く事もあった。
そして当然のように情報局の現地機関と情報部の下部組織である特務機関が衝突することもあった。
だからミュラー軍曹にしてみれば情報局に頼るという事態はできることならば回避したいのだろう。
しかしマッケナ大尉の意思は変わらなかった。
「現在この地方には特務機関が存在しない。さらに東部には共和国の勢力圏を調査する為の機関が存在するがそこから兵を借りる事は不可能といっていいだろう。それならば現地に展開している情報局の部隊を借り受けたほうが圧倒的に早い」
「しかし・・・情報局は我々の要請などを聞くでしょうか?今までの経緯を見ればかなり難しいと思われるのですが」
「それは問題ない。これは帝國の危機なのだから情報局を説き伏せる手段はいくらでもある」
そういうとマッケナ大尉は不機嫌そうにそっぽを向いた。その時ミュラー軍曹はマッケナ大尉の実家のことを思い出した。
マッケナ大尉の実家の権力をもってすれば情報局どころか上部機関の情報省さえ動かす事も可能だった。しかし大尉自身は家の力を使う事は気に入らないはずだ。だから不機嫌になったのだろう。
ミュラー軍曹がふとそれに気が付いて笑みを見えると、ちょうどマッケナ大尉が不機嫌そうな目でにらみつけてきた。慌てて姿勢を正す軍曹にマッケナ大尉がいった。
「そういうことだから軍曹は情報部長宛の通信文を作成するように」
それだけをいうとマッケナ大尉はさっさと勘定を済ませて足早に飯屋を出て行った。
224 :
山崎渉:03/03/13 14:40 ID:???
(^^)
ミュラー軍曹は、戸惑いながら目の前に立っている黒色のアームドスーツ部隊を見ていた。
アームドスーツという兵器がこの惑星に流入してきたのはそう古い事ではない。もともとそれは地球人がもたらした技術だった。
かつて彼らが地球から外惑星へとフロンティアラインを進出していく際に最も問題となったのは、宇宙空間での作業員の確保だった。
それまでの職人芸を必要とされた技術者達の数は、火星以遠の宙域まで多数の航宙船を発進させるには到底足りないものだった。しかし技術者の数はむやみに増やせるようなものではない。
十分な訓練無しに技術者を粗製濫造したところで意味は無かった。そんな技術者では現場で足手まといになるだけだろう。しかし宇宙空間とは生存するというだけで特別な技能を必要とされる場所だった。
この問題を劇的に解決したのがアームドスーツの前身とも言える動力宇宙服だった。
それ以前の宇宙服が軟式をしていたのに対してその動力宇宙服は硬式を採用していた。つまりはただ一人のために製作されていた宇宙服が誰しもが扱えるようになったという事だった。
硬式宇宙服はそれ以前にも構想は存在していたが、実用化することは無かった。硬式宇宙服は宇宙服内部と外部との極端な気圧差から着用者を防護する為にかなりの強度が必要とされていた。それはもう装甲といってもいい強度だった。
こうした装甲は宇宙服の重量のかなりの部分を占めた。新たに開発された動力宇宙服は動力源と高出力でなおかつ小型のサーボモータを搭載してその重量を着用者に感じさせることは無かった。
だから従来の硬式宇宙服の概念を打ち破る軽快さと作業効率を持ち合わせることができた。さらに硬式宇宙服は着用者を選ばず、また気閘での気圧調整期間を極端に短縮化することができた。
この動力宇宙服の存在が無ければ地球人たちが外宇宙に進出する事は難しかっただろう。
そして外宇宙に進出した地球人たちの使用する宇宙服は二極化を示していた。
片方は硬式宇宙服の特徴を生かすべく小型、軽量化した軽作業用であり、そしてアームドスーツへと繋がる重作業用の大型宇宙服だった。
大型宇宙服はすでに宇宙服というよりも小型の宇宙船ともいえる能力を保有していた実際、ある程度の閉鎖空間を内部に提供するその宇宙服は短時間ではあるが航宙能力すら保有していたのだ。
その大型宇宙服を兵器に転用したのはある意味当然の事だった。
航宙能力をはじめとする不要部分を撤去し、開いたスペースに敵歩兵を圧倒するだけの武装と小火器から完全に着用者を防護する装甲を施されたアームドスーツはコストを除けば最強の歩兵兵装であるといえた。
しかしこの惑星Ziでは状況は少々異なっていた。わざわざ歩兵を強化するのにコストのかかるアームドスーツを着せるよりもコストの少ない小型のゾイドを使用した方が効率が良いのだ。
だからアームドスーツはその独自に進化した閉鎖系を用いた極地等の劣悪環境下での随伴歩兵などごく限られた場所でしか使用される事はなかった。
だが今マッケナ大尉とミュラー軍曹の前に整列しているアームドスーツ部隊はそんな事のために作られたのではなかった。
それはある意味において恐竜的な進化を遂げたアームドスーツの突然変異種とでも言うべき存在だった。
何かいてんだろ俺・・・
アーマードスーツキタ━*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*━!!!!!
まさかそう来るとは!
>226
何かいてもいいです(w
アームドスーツが歩兵を圧倒しうるのはその重装甲と重武装があってこそだった。しかしミュラー軍曹が見る限りそのアームドスーツに関してはさほど重装甲であるようには思えなかった。
装甲よりも機動性に重みを置いて設計されたようだったが、それにしては高機動型のアームドス−ツにしばし見られるような跳躍用のバーニアが装備されている気配はない。むしろそんな物を設置できるだけのスペースが存在しなかった。
一見しただけでは目前のアームドスーツは機動性を高めながらも軽量化によってそれを阻害されている中途半端な兵器としか思えなかった。
ミュラー軍曹は首をかしげながらマッケナ大尉を見た。どうしてもミュラー軍曹にはこの部隊が有効な戦力になるとは思えなかった。
ひょっとするとこの部隊は情報局の二線級部隊だからこんな中途半端な兵器を押し付けられたのかもしれない。
軍隊でもないのにアームドスーツを配備されているという点では優秀な部隊なのかもしれないが、情報収集を目的とする情報局の部隊としてはいかにも中途半端な印象があった。
>>227 昔のフィギュアなんて覚えているあなたは通ですな・・・あれ再販しませんかね?
ニ体三体とそろえたい所なのですが・・・そしてアームドスーツって何?
自分誤植してるし・・・
そのミュラー軍曹の不振な視線に気が付いたわけでもないのだろうが、情報局の部隊司令と談笑していたマッケナ大尉がふと振り返った。
「どうだ軍曹、素晴らしいアームドスーツだろう。これは私の友人が設計したものなのだがな」
珍しく笑みを浮かべるマッケナ大尉にミュラー軍曹は曖昧な笑みを返した。いかにもたたき上げの印象を与える中年の部隊司令に遠慮して言わなかったが、軍曹にはとても優秀な兵器とは思えなかった。
「一見しただけではこのアームドスーツの真価は分かりませんよ」
いかにも苦労人らしい笑みを浮かべながら部隊司令が困っているミュラー軍曹に助け舟をだした。
「おそらく軍曹さんはこれが中途半端なものにみえるのではないですかな。機動性を狙いながらもバーニアすらなくしかも武装は弱だときている。
ああ、いいんですよ。それ自体は真実ですからな。我々もこれを最初に支給された時は途方にくれましたよ。使い勝手は悪そうなのにいきなり部隊全員分送ってよこしたんですからね。
だから我々も、陸軍が身分不相応な物を要求した情報局に嫌がらせの為に渡したんじゃないかと思いましてね。
しかしこれを使い出したらもうそんな考えは吹き飛びましたがね。これは実戦を考えて作られたいい兵器です。いやアームドスーツとしては最高級の域にあるといってもいい」
ミュラー軍曹は改めてそのアームドスーツを見たが、どうみてもその司令がいうほど優秀な兵器とは思えなかった。
「装着しなければこれの良さはわからんでしょうがね。これは実戦的な兵器ですよ。装甲は薄いように見えて人体の重要部は漏れなく覆っていますから以外に頑丈です。
それに稼動部の安定性も十分に図られているからいくら無理に動かしても故障の心配はありません。
肝心の機動性だって室内戦が主となる我々の任務を考えれば十分な物なのです。むしろ室内ではバーニアなど無用の長物となりかねませんからね」
それを聞きながらミュラー軍曹は、本人達が納得しているのだから別にかまわないことにした。
問題なのはアームドスーツ自体ではなく部隊としての戦闘力と捜査力なのだから。
↑のタイトルは27−1・・・何してるんだろ俺・・・
吹きすさぶ風の冷たさにマッケナ大尉は思わず身震いして、おもむろにコートの襟を立てた。
市街地を僅か数キロ離れただけで寒気がだいぶ増しているように感じられた。ただ突っ立っているだけのマッケナ大尉はまだしも、万が一の事態の為に近くで待機しているミュラー軍曹は身動きもできないからかなり寒い思いをしているだろう。
このまま長時間待機させれば体がどうにかなってしまいそうだった。マッケナ大尉はこれ以上待っているくらいなら予定されていた大佐との会談をあきらめようとしていた。
この地点を指定したのは大佐だった。大佐はここ数週間は安全の為に地下にもぐっていた。
そして市街地では治安維持勢力に拘束される恐れがあるために数キロはなれたこの地点を指定してきたのだった。
すでにゼネバス系勢力の幹部というだけでそれだけの配慮が必要なほど事態は悪化していたのだ。
不意にマッケナ大尉の視界に光量を絞った前照灯の光束が飛び込んできた。
夜目が利かなくなるのを恐れて、マッケナ大尉は光束から目をそむけた。その間に裁く用のバギーカーが一台、マッケナ大尉のそばに停車した。
意外にも大佐自身が運転していた。大佐は助手席に座っていたただ一人の同乗者に声をかけると、一人でマッケナ大尉に歩み寄ってきた。
「久しぶりだな、大尉は相変わらずのようだな」
「貴公はやつれたな。やはりゼネバス人組織が反政府組織として弾圧されつつあるというのは本当なのか」
大佐は顔を曇らせていった。
「本当だ、最近では組織の末端構成員も検挙対象となっているようだ。だから組織から離れる構成員も多い。・・・誰も表立っては口にはしないが幹部の大部分も構成員が組織から離れる事に反対はしない。
彼らもまたゼネバスの民なのだから、彼らの身の安全が護られるのならば組織の弱体化も致し方あるまい」
「帝国正規軍があの都市に進駐するのはほぼ間違いないだろう」
大佐を遮ってマッケナ大尉がそういうと、大佐はゆっくりと視線を都市のある方向へと向けた。
「時期はいつなのだ・・・その、それと帝国軍はどんな大義名分で独立国家に進駐するつもりなのだ」
「正確な時期は軍機だ、教えられぬ。それと、おそらく近日中に国家主席の名で西方大陸駐留軍に対して治安維持への協力要請が出されるだろう。それが大儀となるかな」
大佐はマッケナ大尉を鋭い視線でにらみつけた。だが、マッケナ大尉はその視線にたじろく事も無しに無感情な視線を返した。
「大尉は・・・いや、帝国は我々ゼネバス人組織を切り捨てるのだな。それにちっぽけな都市国家とはいえあの国はれっきとした独立国家だ。
しかも国家主席は皇帝ではないのだ。国家を私物化し帝国に国を売る権利などない」
「どうも根本的なところで意見が食い違うようだな。貴公らの組織はいまだ帝国、というよりもは軍情報部のなかでは重要な組織と認識されている。だが組織の戦力、捜査力は既に期待されていない。
だから帝国に協力する組織とはみなされていない。これは組織の弱体化を座視している貴公らの責任だと思うが
それと国家主席は国を私物化などしていないよ。すでに国家警察では治安の維持が困難なのだ。だから暴徒鎮圧等のノウハウが豊富な帝国軍に協力を要請するのは当然のことだ」
それだけを言うと、マッケナ大尉は話は終わりだとでも言うかのように大佐に背を向けて歩き出した。大佐はそれを見守っていたが、耐え切れなくなったように一言だけつぶやいた。
「それこそがラインハートの思惑なのではないのか」
マッケナ大尉は相変わらずの無表情で、不毛な会議を続ける使節団の団員達を見つめていた。
使節団は帝國正規軍の派遣に伴う都市国家在住のガイロス人保護について話し合っていた。帝國軍が都市国家に到着すれば相変わらず続いている反帝国デモの矛先がガイロス人に及ぶのかもしれないのだ。
だが、いまだ都市国家に残留しているガイロス人はほとんどが政府機関の人員だった。すでに商取引は中止されていた。
意外なことに商取引の中止が都市国家の住民の多くに冷静さを呼び戻していた。
マッケナ大尉の見る限りでは、帝國軍の進駐には多くの住民は無関心か、ある種の安堵感を抱くだろう。
帝國によるものであれなんであれ、都市国家の政情安定が行われるということは
そしてその事を最も恐れるのは反帝国組織に他ならなかった。それは自身の存在価値を否定されるということに他ならないからだ。
組織はおそらく到着した帝國軍に対して大規模なテロを起こすだろう。その行為が支持層の更なる離反を生むとしてもやらざるを得ないのだ。
もはや存在理念を失いつつある組織はゆっくりと壊死へと向かっているのにほかならなかった。
そんなことを考えて皮肉な笑みを浮かべていたマッケナ大尉を会議の議長を務める領事が呼んだ。
「陸軍参謀本部代表として出席しているマッケナ大尉に次の二点をお聞きしたい。
まず派遣される部隊はテロリストを完全に掃討する事が可能なのかどうか
それが可能だったとして掃討にはどれぐらいの時間を予定しているのか
大尉の私見で構わないので答えて欲しい」
大儀そうに立ち上がるとマッケナ大尉はまず周囲に座る使節団員を鋭い視線で見回した。そしてゆっくりとした口調でいった。
「まず最初に申し上げるが、テロリストを完全に鎮圧する事など不可能だ」
「それは軍がテロリストに対して無力だということですか」
即座に一人の外交官がマッケナ大尉に揶揄するように言った。マッケナ大尉はその外交官に冷たい目を向けていった。
「貴公は勘違いをしているのではないか、テロリストに対して有効な正規軍など存在しない。不正規戦を仕掛けてくるテロリストに有効な手段は不正規戦でもって対応するしかない。
相手はゲリラの様に姿を見せる必要すらない。だから我々は奴らの位置を探り、これを殲滅するしかない。
これは正規軍では不可能だ」
相手は表情を変えて反論しようとした。外交官にしてみれば不正規戦そのものが許しがたい物なのではないか。
マッケナ大尉はそれを遮って続けた。
「現在、参謀本部二部三課及び情報省情報局の合同部隊が本都市国家周辺に展開中であります。
早ければ明朝0830時にも現在判明しているテロリストの拠点に対して攻撃を加えこれを殲滅します」
大尉が議長に向き直ると、議長はあっけにとっれて大尉を見ていた。そして先程の外交官が強い口調で反論した。
「それは軍の越権行為だ。そもそも他国民を殲滅するとは何事か。これがこの都市国家政府に知れでもしたら外交問題となるぞ」
「だから殲滅するのだが。目撃者は残さない。捕虜もとらない。それに万が一の為に都市国家警察の仕事に見せかける容易はできている。
なお本作戦を中止する権限を有するのは小官と情報部長、及び情報局担当者だけという事はお伝えしておきます」
後半は議長に向き直っていった。
「それでは小官は作戦の準備がありますのでこれで失礼させていただきます」
淡々とした口調で言うとマッケナ大尉は会議室を出た。最後に大尉は代表団団員達による怒号とざわめきを聞いたが、別に気にする様子も無く去っていった。
砂漠地帯特有の冷え込んだ夜の寒気が、マッケナ大尉が乗り込んでいる指揮車仕様のモルガを包んでいた。
この位置に停止して間もないから、装甲が冷却されるにつれて伸縮して激しいきしみを上げていた。
マッケナ大尉の耳にはそのきしみと、モニターやコンピュータ等の機材を冷却するファンの音が聞こえていた。
暗い室内の中で、本来のモルガの乗員である情報局の人員とミュラー軍曹の顔がモニターからの照り返しで薄ぼんやりと光っていた。
「反応、入りました」
モニターの前に座っていた情報局員が部隊司令に告げた。部隊司令は自分のモニターに情報を回して一瞬確認すると、マッケナ大尉の方に向き直って頷いた。
マッケナ大尉も自分のモニターにその情報を表示させた。そこには都市国家の市街地内で極端に電波やネットワークへの発信などによって情報量を増大させた地域が表示されていた。
「ここで間違いないでしょうな」
いつの間にかマッケナ大尉の後ろに立っていた部隊司令が声をかけた。
「私もそう思う。例の代表団員が電話を掛けてから何分経ったかな」
「五分です。テロリストどもの司令部が判断を下して連絡を入れる・・・まぁ微妙なところでしょう」
「一応この地点にも捜査員を配置してください。ただし誰が出てきても銃撃しないことは徹底して欲しい」
「了解しています。では市街地から出て来たところを一掃するという事で・・・」
妙な気配を感じてマッケナ大尉が振り向くと、部隊司令は困惑したような顔で大尉を見つめていた。
「まだ何かあるのかな」
「いえ、本当に奴らは市街地から出てくるのでしょうか」
ゆっくりとマッケナ大尉は部隊司令に向き直った。この事は作戦開始前に何度も説明していたのだが部隊司令が納得していなければ何の意味も無かった。
この部隊を掌握しているのはマッケナ大尉ではなく部隊司令だからだ。逆を言えば部隊司令さえ説得できれば部隊の全員を掌握しているのと同じ事だった。
「テロリスト、いや反帝国組織が抱える一番の弱点は広範な支持基盤を持たない事だ。つまりは市街地にいる限り密告や治安維持組織による取締りを恐れなければならない。
これは絶対的に信頼できる隠れ場所を確保できないという事だ。それと彼らは我々の情報収集能力を過大評価している。
まあこれはダワフリが何週間も前から情報局の事を過大に吹聴して回ったからなのだが」
部隊司令が完全に納得した様子は無かったが、指揮車に乗る全員が彼を注目していた。その事に気が付くと、部隊司令は一度大きく頷いた。
「それもそうですな。さて、それでは部隊の配置をもう一度確認する事に」
部隊司令が言い終わるよりも早く、先程と同じ局員がいった。
「市街地出入り口の監視員から連絡が入りました。テロリストの主力部隊らしき集団が移動中」
「ラインハート准将はいるか、照会を頼む」
即座にマッケナ大尉はいった。通信機を操作していた局員がしばらく待ってからこちらに向き直った。
「現地情報員が直接確認したそうです。ラインハート准将も同行しているそうです」
マッケナ大尉は最後まで聞いていなかった。部隊司令の方を向いてこういった。
「出撃だ。奴らを殲滅する」
暗がりの中を駆け抜ける影を見たような気がした。
今日は分厚い雲によって月が隠されていた。そのせいで肉眼では監視を続けるのは難しかった。
だからダワフリは支給されていたゴーグル状の赤外線監視装置を付けた。
すると砂漠の冷えた空間を熱源が通過するのが確認できた。熱源は大きさや温度分布からみて人間である事は間違いなかった。
ダワフリはのんびりとすぐ脇で通信機に取り付いていた情報局員にいった。
「奴ら出てきたぞ。マッケナの旦那が言ったとおりの方角に向かっているようだな」
情報局員は緊張した顔で反応した。
「間違いないのか、その・・・行商人とか民間人である可能性はないのか」
「そうさな、可能性がないとは言わないが、こんな夜中に十人以上で出かける行商なんざ聞いたことがないね。
そもそも俺達が判断をするんじゃないんだから、さっさと通信を送った方がいいと思うがね」
ダワフリが言い終わる前に局員の視線が一点で止まった。ダワフリもその方向に向き直った。
「ありゃ爆弾かな」
一団の中の何人かは随分と大きな荷物を抱えてきたようだった。
「そうかね?私には行商で売りさばくものにも見えないことはないんだがな」
二人が見ていると、一団のリーダーらしき人物が合図をした。すると荷物を抱えていたものが立ち止まって荷物を地面に下ろした。
一団もその大きな荷物に群がっていた。そして二人が見ている前で荷物が解かれていった。中から出てきたものを一団が分配している様子がうかがえた。
「どう見ても行商人の行動じゃないよな・・・」
ダワフリが言い終わる前に局員が黙って一点を指差した。
「あれは小銃だな、向こうは大きさから考えて機関短銃か騎兵銃といったところか」
「間違いないな。これがテロリストの本隊だな。さて、さっさと旦那達に連絡を入れようや」
ダワフリに答えて、局員は通信機を慎重に操作し始めた。だがダワフリは一団をじっと見つめていた。
一団の中に一人だけ妙な人物がいた。その男だけは荷物に群がって武器を取ろうとはしていなかった。それどころか一団に見張られているような気配すら感じていた。
ダワフリは首をかしげながら男を見ていた。どこかで男を見たような気がしたからだ。
その時、雲の隙間から月光が一団を照らした。急に周囲が明るくなった一団は困惑したように周囲を見渡していた。
だがダワフリが注目していた男だけは素早く地形の影に隠れていた。ダワフリは眉をひそめてそれを見ていた。
一瞬だけだったが男の顔が月光に照らされていた。
ダワフリはまだ連絡を続けている局員から通信機のレシーバーを引っ手繰った。驚いた局員がダワフリから取り返そうとしたが、ダワフリの真剣な表情に圧されて動きを止めていた。
「おい、そこにマッケナの旦那もいるんだろう」
相手は混乱したような声を返した。
「誰だ、いきなり何なんだ。確かにマッケナ大尉はここにいるが・・・それよりも早く代わってくれ」
ダワフリは相手を無視していった。
「旦那に伝えてくれ。テロリストの中にはラインハート准将がいる」
相手はまだ何か言っていたが、ダワフリはレシーバーを局員に押し付けてラインハート准将を見つめていた。
襲撃予定地点への部隊の進出は順調に進んでいた。もともと部隊主力のアーマードスーツはマッケナ大尉が予想していた地点に集中して配備されていたからだ。
残りのアーマードスーツ隊の大半は敵テロリスト集団の退路を絶つ位置に移動していた。
下手に主力と合流させるとテロリストに発見される恐れがあるのだ。だからあまり意味はないと思われる地点に投入するしかなかった。
しかし攻撃地点に集合している主力だけでも姿を明らかにしたテロリストを殲滅するのは容易だった。
相手は自動小銃や機関短銃で武装しているのに対して、こちらはテロリスト以上の数で軽機関銃で武装しているのだから正面から戦闘を行なえば一蹴できる戦力差だった。
マッケナ大尉は予定攻撃地点へ急行するモルガの中で自分の火器を点検していた。
懐の拳銃から弾倉を抜き出して装弾数を確かめた。弾倉は普段使用している15発装填の物ではなくロングモデルの20発装填の物を用意していた。
さらに薬室内に装填済みであることを確認する。これで計21発の拳銃弾を装填した事になる。
マッケナ大尉は安全装置を掛けてホルスターに収めた。同じ調子で一つだけ持った予備の弾倉も確認する。
それを見て部隊司令が騎兵銃を大尉に手渡した。大尉は礼を言うと同じように確認してスリングを肩に掛けた。
「本当にあなたも攻撃に参加するのですか。この指揮車から指揮をとられたほうがいいのではないですか」
「それは貴公に任せる。私は確かめたい事があるから行くだけだ。積極的な攻撃には参加しない」
それだけを言うと、マッケナ大尉は予定地点に到着して急停車したモルガから飛び降りて部隊主力に向けて駆け出していた。
慌てたミュラー軍曹もそれに続いていた。
マッケナ大尉が、部隊主力と同行していた通信兵の隣に駆け込んだ時、すでに全員が攻撃準備を整えていた。
アーマードスーツを横たわらせて予想敵位置からの曝露面積を最小にするとあとは敵が現れるまで装備している軽機関銃を敵が現れるであろう地点に指向するだけだった。
テロリスト集団の追跡はダワフリがしていたから敵を見逃す恐れは少なかった。
後は敵が現れて攻撃を命じるだけだった。待機は短時間ですむはずだったからアーマードスーツは臨戦態勢のまま断熱シートを被っていた。
もっとも部隊が使用しているアーマードスーツは発熱量と使用電力を抑えた人口筋肉を使用しているから長時間の待機でもそれほど問題が出るとは思われなかった。
むしろ最小限の防寒具だけで砂漠地帯にいるマッケナ大尉達の方が危なかった。
帝國軍に砂漠地帯での夜間戦闘の戦訓は皆無だったからこの攻撃が成功すれば貴重な戦訓となる可能性は高かった。
ぼんやりとした月明かりに照らされて最初の男がマッケナ大尉達の視界に入ったのは待機を始めてから十分後の事だった。
残りのテロリストもすぐに一団となって現れた。彼らは周囲を警戒している様子を見せているが、何故か密集して歩いていた。
「何故あいつらはわざわざ密集してるんです」
ミュラー軍曹が怪訝そうな表情でマッケナ大尉に聞いた。通常、歩兵部隊では敵からの一撃での全滅を避けるためにある程度分散して移動するのが普通だった。
それは地球人達がもたらした戦術だったが、惑星Ziの戦場でも一般に使用されていた。むしろ機動性と火力の高いゾイドが主戦力である惑星Ziの方が歩兵部隊の配置に対して慎重であるともいえた。
「勘違いをしてはいかんな。彼らは正規の教育を受けた軍人ではない。彼らは自分達が得意とする非正規戦から引きずり出された時点で敗北しているんだ」
マッケナ大尉がそういうのと同時に通信兵が肩を叩いた。
「一分後に攻撃開始です」
大尉は頷くとテロリスト達を見つめた。集団は全て攻撃範囲に入っていた。
その時集団から遅れて二人ほど歩いてくるのが見えた。しかも彼らは巧みに暗がりを縫うようにして歩いていた。
マッケナ大尉は愕然としてその二人を見ていた。その二人が歩いているのはちょうどアーマードスーツ隊から死角になるところだった。
だがマッケナ大尉がその事を告げる前に軽機関銃の連射が始まっていた。
テロリスト集団は反撃もできないまま次々と掃射されていったが、マッケナ大尉の見る限り二人は弾の当たらないところにいた。
その事に気が付いた時マッケナ大尉は立ち上がってその方向に向けて走っていた。
テロリスト集団を完全に殲滅するには、小さな砂丘を部隊主力からの遮蔽物としようとしている二人のテロリストを制圧する必要があった。
マッケナ大尉は彼らから死角になる位置を素早く移動していた。勿論マッケナ大尉からも一定時間は相手が見えなくなるから敵位置を正確に予想する必要があった。
走りこみながら大尉は素早く敵の予想移動ルートを考えていた。周辺の地形は既に把握しているから咄嗟の時でも敵位置を予想するのは決して難しくはなかった。
後ろを走るミュラー軍曹に素早く指示を出すと、マッケナ大尉は砂丘の後ろ側を狙撃できる地点に向かった。
このあたりは砂丘がある程度連続しているから、砂丘の裏側に陣取られた場合でも別の砂丘から見下ろせば銃撃は十分可能だった。
問題は火力が相手よりも勝っているかどうかだが、マッケナ大尉の騎兵銃とミュラー軍曹の狙撃銃を加えれば奇襲攻撃を加えれば十分に敵を制圧できるはずだった。
だが、移動中にマッケナ大尉は妙な感覚を感じてテロリストが遮蔽物に利用しようとしている砂丘を見た。
そしてマッケナ大尉は呆気にとられて思わず足を止めてしまった。
いつのまにか丘の上にはテロリストらしい人影がいた。
マッケナ大尉達を狙った銃撃が始まったのはその直後だった。
テロリストが戦場からの退避ではなく積極的な攻撃を掛けようとしているのは明白だった。
マッケナ大尉は銃撃が開始される直前にテロリストの一人が歩兵用のミサイルを準備しているのを見ていた。
その旧型のミサイルはシーカーの冷却に時間がかかるから後しばらくは攻撃の心配は薄いと思われた。
だが旧型とはいっても破壊力の点では遜色がないからアーマードスーツくらいなら簡単に破壊する事ができた。
部隊主力が彼らに気が付いている様子はないからテロリストがミサイルを複数発保有していればそれだけで部隊は混乱する恐れがあった。
その混乱に乗じればテロリストの本隊はともかく、テロリストの二人ぐらいならば逃走に成功されるかもしれない。
だから早いうちに砂丘の頂上に陣取る二人に対して効果的な反撃を加えなければならなかった。
しかしマッケナ大尉とミュラー軍曹は敵の制圧射撃にそれ以上前進する事ができなかった。
敵は少なくとも自動小銃以上の火器を装備していた。アームドスーツが装備している軽機関銃ほどではないが射程や威力はかなりのものである様だった。
弾丸も豊富らしくマッケナ大尉達が僅かでも動くとためらいなく銃弾が飛んできた。
――いかん、このままでは・・・
マッケナ大尉はあせってミュラー軍曹を見た。ミュラー軍曹は狙撃銃を持っていたからこの位置からでも銃撃してくるテロリストを狙撃できるかもしれないからだ。
だがミュラー軍曹は暗然たる表情で自分が持っている銃を見ていて、それを構える様子はなかった。
大尉は焦って狙撃銃を引っ手繰って構えたが、その時になって狙撃銃のボルトが破壊されているのに気が付いた。
唖然としてマッケナ大尉がミュラー軍曹に振り向くと、軍曹は情けない表情で大尉を見返してきた。
マッケナ大尉も泣きたい気分になってきた。大尉の持つ騎兵銃だけでは勝負にならないのは明白だった。
すでにシーカーの冷却も終わったらしくテロリストの一人がミサイルランチャーを構えだした。
ぼんやりとマッケナ大尉は起き上がってミサイルを銃撃すれば、制圧射撃に倒れる前にミサイルを叩けるかどうかを考えていた。
だがミサイルは発射される前にいきなり爆発した。
マッケナ大尉の目には爆発の直前に砂丘の後方から銃弾が放たれていたのが映っていた。
そろそろレスが250ですね・・・
ミサイルが爆発した後、今まで制圧射撃を繰り返していた男が後方に振り向いた。
男は上半身を起こして、手に持っていた短銃身型の軽機関銃を発砲した。
マッケナ大尉がその隙を見逃すはずもなかった。
素早く膝立ちになると、騎兵銃を掴んで肘と膝で固定した。セレクターを連射にして男に狙いをつけるとトリガーを引き絞った。
最初から近寄るつもりは無かった。騎兵銃で狙うにはかなり距離があったが、下手に近寄って時間を失うよりも、弾着のずれを発射弾数で補った方が良いと思ったからだ。
マッケナ大尉は引き金を引き絞ると、弾幕を張るように僅かずつ銃口をずらした。
熱い薬莢が続けざまに排出されていた。それが止まると、大尉は素早く予備の弾倉に交換して丘に向けて走っていた。
すぐにミュラー軍曹も使えない狙撃銃を捨てて予備の拳銃を抜いてマッケナ大尉を追いかけた。
まだ軽機関銃を持った敵がどうなったかはわからないが、まだ攻撃能力を保有していたとしても少なくとも何らかの傷は受けていると見て間違いなかった。
だから次に制圧射撃を受ける前に今度はこちらが先に攻撃できるはずだった。
だが攻撃の必要はもう無かった。
マッケナ大尉達が砂丘の頂上に走りこんだ時、軽機関銃を吹き飛ばされて負傷したラインハート准将を見つけた。
腹部に複数の弾丸が命中したらしく、生存の見込みは無かった。ミサイルを操作していた方のテロリストは即死だったらしく焼け焦げた肉片があるだけだった。
マッケナ大尉が目の前に立つとラインハート准将は僅かに目を開けた。
「おめでとう、君達の勝利のようだ。やはりテロリストは所詮テロリストだな、市街地から出れば簡単に壊滅される。
一応止めたのだが、やはり無駄だったようだ」
准将は砂丘の下側で行なわれていた戦闘を横目で見ながらいった。マッケナ大尉もその方向を見ると、アーマードスーツ部隊が残存するテロリストを排除しているところが見えた。
既に戦闘は残敵掃討に移っていた。
「都市国家にいたテロリストはあれで全部か」
「さてね、君に教える義理は無いな」
「・・・何故最初に私に声をかけた。貴様は最初からテロリストだったというのに」
ラインハートは一瞬考え込んでからいった。
「君は私の敵だからだ。戦う前に白手袋をなげるのさ」
ふざけた調子でいうラインハート准将を見やるとマッケナ大尉はため息をついてからいった。
「貴様を始めとするゼネバス人組織の一部が反ガイロス組織を編成した事は帝國もわかっている。
だから帝國軍の進出にともない憲兵隊か警察師団の手によってゼネバス人の有力者の何人かは拘束されるのではないかな
貴様のやっている事は自分達で自らの首を絞めようとしているようにしか見えないな
何がしたいのだ貴様達は」
「いずれ分かるのではないかな、最後に勝つのは我らゼネバス・・・」
砂丘の頂上に、ダワフリがまだ銃身が熱い自動小銃とラインハート准将の反撃で負傷した情報局員を抱えながら苦労してあがった時、マッケナ大尉は無言でラインハート准将の躯の前に立ち尽くしていた。
完結でありますか!しかもまとめてありますし。
では、これから一気に読み返してみようと思います。
ビシッ/(`・ω・´)おつかれさまでした!
ご苦労様でした。
やはりこのサイトの方でしたか。これからも頑張って下さい。
次スレには250で移行なんですね。
次も投稿させてもらおうかと思います。
現在深度329・・・この位置に慣れてしまってるので、上の方で晒す勇気を搾り出さなければ。
「ゾイドバトルストーリー」
まだ青い空に早くもひとつめの月が現われる午後。
日直当番を終わらせたぼくは、今日も社会科の教官室を訪れた。
お目当ては、戦争中の本がたくさん詰まっているドイター先生の本棚だ。
先生はこの学校で歴史を教えるかたわら、大戦中の兵隊さんの体験談を集めて研究しているらしい。顔が怖いからすごいあだ名がつけられてるけど、実はとても優しい人だってことをぼくは知っている。
最上級生じゃないからまだ先生の授業を取れないぼくにも、先生は親切にしてくれる。
「どれを読んでもかまわないよ。難しいかもしれないけれど、君ならちゃんと読めそうだ」
教室以外の掃除に回されたとき、雑巾がけの途中で本棚に惹きつけられ手がお留守だったぼくに、先生はそう言ってくれた。
ぼくが表紙に目を奪われていたその本は、「ゾイドバトルストーリー」。
「ゾイドバトルストーリー」2/2
もちろん、戦争はとっても悲惨な出来事だ。良くないことだってわかってる。
だけど、その中で戦っていた人達は、皆いつもそんなことを考えていたのだろうか?
自分の後ろを走る仲間たちのために、そして愛機であるゾイドのために。
時には敵味方を越えた、同じZi人の同胞すべてのために…自分ができることを精一杯やろうとしていたんじゃないか。
彼らが何を願って生き延びたのか。何を思って死んでいったのか。それを知りたくて、1週間前からこの部屋を訪れるのがぼくの日課になっていた。
すでに、刷られた当時の光るようなインクの臭いはページから失われている。けれど、あの時、命をかけて自分の仕事を戦った人達の物語は今なお輝き続けてるんだ。
いちばん上の本棚を左から眺めていく。そこで目に止まったのは、先生が収集している物語の全集。まだ見たことのない巻だ。
昨日は、このシリーズの3冊目をちょうど読み終えたところだった。
「これを読んでもいいですか」
「ああ、気の済むまで読みなさい。ただし、日が暮れる前には帰るんだよ」
そしてぼくは4冊目を手に取った。
自分のホストではスレッドが立てられませんでした。
申し訳ありませんが次スレはどなたかにお願いします。
↓テンプレ
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.4
1 名前:気軽な参加をお待ちしております
銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
そこはうち続く戦乱と荒ぶる自然の世界。
人々は、この星に棲む巨大な機械生命体-ZOIDS-を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと赴く。
この戦いに勝利することが、永遠なる平和を勝ち取るための唯一つの方法と信じて…。
空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリー。
しかし、そこには語られる事のなかった多くの物語がある。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
3 名前:気軽な参加をお待ちしております
ルール
ゾイドに関係する物語であるならば、アニメ、漫画、バトストなど何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などは、特に制約はありません。
ゾイド板ならではの自由で柔軟な作品をお待ちしております。
ただし、例外として18禁はご遠慮下さい。
鯖負担になるので、
>>250に書き込んだ方に次スレのスレ立てをお願いします。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
254 :
山崎渉:03/04/17 11:04 ID:???
(^^)
255 :
山崎渉:03/04/20 05:18 ID:???
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
256 :
名無し獣:03/05/11 13:43 ID:ofnBpfOZ
ここってまだ容量オーバーには程遠いようですが、
長文を連続して書くとやっぱり鯖負担になるんでしょうか?
次スレ立てたいんですけど立てられないんでこのスレに書きたいんですが・・・
「んじゃ俺が立ててやろう」と思ったが俺もダメだった。やっぱODNはダメか。
別にまだ容量はいけるんだから書いていいんじゃない?
258 :
256:03/05/11 16:15 ID:ofnBpfOZ
>>257 ありがとうございます。ってわけで書きます。
ゾイドバトルストーリーET(エトセトラw)「ライジャー」
〜昔々、ゼネバスがヘリックと戦っていた頃のお話です。ゼネバスはデスザウラーを使ってヘリックをあと一歩のところまで追い詰めました。
しかし、ヘリックのマッドサンダーにデスザウラーは負けてしまいました。ゼネバスにはマッドサンダーより強いゾイドはいません。
ゼネバスは負けたのです。でも、ゼネバス最後のゾイドはそんな事は知りませんでした。自分が頑張ればゼネバスは勝つ。
そう信じてそのゾイドは戦いました。戦い続けました。自分より大きなシールドライガーをたくさん倒しました。
でもいくらそのゾイドがヘリックのゾイドを倒しても誰も喜びませんでした。だって、ゼネバスはもう負けていたんですから・・・
(ネオゼネバス国立図書館所蔵「ゼネバスのホコリ」より一部抜粋)
259 :
256:03/05/11 16:15 ID:ofnBpfOZ
「フフッ」
ライジャーのコクピットの中で帝国陸軍少佐ヨハン・H・シュタウフィンは静かに笑った。
人間は恐怖や悲しみが極限にまで達した時、その思いが振り切れて逆に楽しみになると言うのを聞いたことがある。
それかも知れない。ライジャーの周りにはついさっきまでヘルキャットと呼ばれていた金属の塊。
そして前には共和国の最強高速ゾイド、ケーニッヒウルフ・・・
※ ※ ※
数日前、ヨハンはネオゼネバス帝国首都、武器開発局部に呼ばれていた。皇帝ヴォルフ・ムーロア直々にだ。
ヨハンは生粋のゼネバス人。そのためゼネバスがまだガイロスに吸収されていた三年前までは軍の中で好まれる存在では無かった。
その容貌からか女性兵士には絶大な人気があったらしいが。そんなゼネバス出身、一流の高速ゾイド乗り、
そして自分と同年代のヨハンをゼネバスの子孫、ヴォルフが放っておくわけがない。
ネオゼネバス帝国が建国された際、ガイロスでは軍曹であったヨハンを少佐に抜擢すると言う事実上の五階級特進をさせた程である。
共和国の反抗作戦がふた月後に予想されるこの時期にわざわざヴォルフがヨハンを呼んだのにはそれ相応のわけがあった。
ライトニングサイクスに乗っているヨハンを新型高速ゾイドのパイロットに任命するためだ。
新型ゾイドの名前は「ライジャー」。いや、正確に言えば新型ではない。
ライジャーは旧大戦時、ゼネバス帝国の首都が陥落し、ガイロス帝国に吸収合併される寸前にロールアウトされた機体である。
当時のゼネバス帝国の有りっ丈の技術を惜しみなく積み込まれたこのゾイドは、
それまでの高速ゾイドとは比較にもならない最高時速320km/hを叩き出し、中型ゾイドでありながら同じ帝国の高速ゾイド、
サーベルタイガーに格闘能力、防御力、火力の全ての面で勝るという驚異的な性能。ある意味デスザウラー以上のゾイドであった。
だが前述した通り、ライジャーがロールアウトされた時、ゼネバス帝国は既に負けていた。
そのため生産されたライジャーはたった数機に留まり、それらも全て共和国との戦いで破壊され、ライジャーは歴史の闇へと葬り去られた。
現在ではヘリック共和国、ガイロス帝国にはおろか、ネオゼネバス帝国内にもおとぎ話のようなものとして一部の者に語り継がれているだけである。
260 :
256:03/05/11 16:16 ID:ofnBpfOZ
ヨハンはそのおとぎ話を聞いてそのゾイド(おとぎ話の中に「ライジャー」という固有名詞は出てこない)
に憧れてゾイド乗りになった口である。子供の頃からゼネバス出身という事でガイロスの子供によく苛められいたヨハンにとって、
そのゾイドは自分がゼネバス国民であることを誇りに思うことができる唯一の存在であった。
さすがにヨハンが本当にゾイド乗りになる頃にはそのゾイドが今の帝国にいないということは理解していたが。
そしてヨハンはゼネバス帝国滅亡寸前にロールアウトされたというゾイドを目の前にしている。
このゾイドが本当に「そのゾイド」であるかは今は分からない。だがそんな事はライジャーに乗ってみればすぐわかる。
「・・・こいつだ。『そのゾイド』だ・・・」
ヨハンは操縦管を握った瞬間、ライジャーの奥底に眠る悲壮感さえ漂う闘争心を感じた。
ヨハンは帝国でも一、二を争うほどのエースパイロット。そう呼ばれるようになるには、ただ操縦テクニックが上手いだけでない。
ゾイドの気持ちも読み取ることが出来るという事も求められる。そしてこの二つを兼ね備えた時、
その者は「エースパイロット」と呼ばれ、ゾイドの全能力を引き出すことが可能になるのだ。そんなエースパイロットのヨハンにとって、
操縦管を握っただけでそのゾイドの気持ちを読み取ることなど容易なことであった。
だが今回の場合はちょっと違う。まるでライジャーの方からヨハンに気持ちを伝えてきたような感じだ。
こんなことはヨハンにとっても初めてである。「悲劇のゾイド」とおとぎ話の中で言い伝えられてきたライジャー。
エレファンダーもニクシー基地の一件でそう称されることがあるが、エレファンダーの場合はその後、
再生産された機体が通常軍に多数配備され多大な戦果をあげた。「悲劇のゾイド」であったのはほんの僅かな時間だ。
反面ライジャーはまともに活躍さえさせてもらえなかった。その悲しいライジャー達の遺志がこのライジャーに乗り移り、
そして同じように不遇な境遇のもと暮らしてきたヨハンにそれが伝わったのだろうか。 ヨハンはライジャー一号機のパイロットとなった。
261 :
256:03/05/11 16:17 ID:ofnBpfOZ
昨日未明、ヨハンはライジャーの操縦テストを兼ねたとある任務を遂行するため出撃した。
先日共和国の残存部隊と帝国部隊との間で戦闘が行われた森の探索だ。戦力的には有利であったはずの帝国部隊。
だが戦闘があってから数日が経っても部隊は帰ってこない。通信も来ない。こちらからの通信も繋がらない。理由は簡単。
この森には強力な磁気が流れており、中に入ってしまえばなんとも無いが、外部との連絡は全く取れなくなってしまうのだ。
日本で言うなら富士の樹海と言ったところである。ディメトロドンやレーダー装備のレドラーの空中からの探索も意味が無い。
そこでヨハンの出番だ。森林戦が得意なヨハン、そしてサイクス並の戦闘力をもつライジャーなら、
万が一共和国の残党が残っていても問題ないというのが上層部の考えだ。だがこの判断は間違っていた。
ライジャーとヘルキャット二機しか出撃させなかったのだ。せめてイクス、いやサイクス一機でも出していれば、
今現在ヨハンがおかれている危機的状況は無かっただろう・・・
出撃してから一日を隔て、今から数十分前、ヨハン達は戦闘があったと思われる森に辿り着いていた。
辺りにはどちらの国のゾイドであるかも分からない残骸が無数に転がっている。生存反応は無い。
「相打ちか?」
ヘルキャットのパイロットがそう言った瞬間、静寂に包まれていた森が一瞬にして血の海と化した。
何処からともなく現れた謎のゾイドが、油断していたヨハン達の部隊に襲い掛かってきたのだ。
この奇襲をかわせたのはヨハンのライジャーのみ。二機のヘルキャットは無惨にも謎のゾイドの牙の餌食となってしまった。
謎のゾイドの名はケーニッヒウルフ。だが何かが違う。このレーダーの利きにくい森とは言え、
ヨハン達の誰一人としてこの大型ゾイドの存在に気付かなかったと言うのはおかしい。色は暗闇のせいもあるのか黒。足音は聞こえない。
おそらくヘルキャットやシャドーフォックスに搭載されている消音システムを搭載しているステルス仕様のケーニッヒだろう。
先日の戦闘でもそのステルス性で帝国部隊を壊滅させたと思われる。
262 :
256:03/05/11 16:17 ID:ofnBpfOZ
不意にケーニッヒの足音が聞こえてきた。消音システムを解除したようだ。
「・・・余裕ってわけか」
おそらくヨハンの言う通りだろう。いくらライジャーがサイクス並の性能をもつとは言え、相手がケーニッヒでは分が悪すぎる。
状況に合わせて武装を変えるライガーゼロに比べると何か突出した能力があるとは言えないが、その分総合性能では上。
更にこのケーニッヒはスナイパーライフルやミサイルポッドを搭載した完全武装タイプである。
高速ゾイド乗りが充実している共和国のなかでもケーニッヒに乗ることが出来るパイロットだ。
帝国トップクラスの高速ゾイド乗りのヨハンには及ばないかも知れないがそれほど腕に差があるとも思えない。
だが逃げることは出来る。機動力だけはライジャーの方が上だ。むしろ逃げなければならない。
帝国にはライジャーがまだこの一機しかいない。まずヨハンに走行テストを行わせ、
その結果を見て出力機関の調整を行って大量生産に踏み切ろうとしていたのだ。
そのためこのライジャーにはライジャーに関する全てのデータが積み込まれている。設計図もだ。
もし今ケーニッヒと戦って破壊されたらもうライジャーを生産することは出来ない。ライジャーという存在がこの世から、
物理的に無くなってしまうのだ。ヨハンにもエースパイロットとしてのプライドがあるが、
それ以上に憧れのゾイドを再び歴史の闇に葬りさられたくはない。ヨハンは操縦管を180°曲げた。しかしライジャーは動かなかった。
「どうした!?動け!」
ヨハンがいくら怒鳴ろうとライジャーは聞く耳を持たなかった。さっきまでは自分の思い通り、
いや思った通りに動いてくれたライジャーが。今のライジャーを他の者が見れば「言うことを聞いてくれない」としか思わなかっただろう。
だがヨハンはその反抗の中に隠れるライジャーの思いが痛いほど伝わっていた。
263 :
256:03/05/11 16:18 ID:ofnBpfOZ
「・・・憎いか?あのケーニッヒが」
ライジャーが頷いたような気がした。そう、ライジャーは共和国の華、高速部隊の主力機、正に『光』のゾイドであるケーニッヒが憎かったのだ。
自分が活躍出来なかったからって八つ当たりか、と思うかも知れない。確かにその通りだ。
だが半世紀以上積み重なってきたライジャーの八つ当たりは母親に怒られたお兄ちゃんが弟に八つ当たりするのとは訳が違う。
『影』のゾイドにさせられたライジャーの列記とした歴史への報復だ。
そのライジャーの思いを理解したヨハンは曲げていた操縦管を元に戻した。あのケーニッヒと戦うことを選んだのだ。
ケーニッヒはまだ動かない。こちらが動くのを待っているようだった。
264 :
256:03/05/11 16:18 ID:ofnBpfOZ
「フフッ」
ヨハンは静かに笑った。
「・・・行くぜ!」
操縦管を思いっきり前に押した。今度はちゃんと動く。ちゃんとどころではない。速い。おそらく今いるゾイドの中で一番速い。
一気にケーニッヒとの距離が縮まる。その速さに驚いていたヨハンは攻撃するのも忘れ、ケーニッヒを通り越してしまった。
すぐに振り返る。ケーニッヒがこっちに来る。さすがは向こうもエースパイロット。ほんのちょっとの隙さえ見逃してはくれない。
ケーニッヒの爪が目の前に迫る。かわした。こっちも爪を立てる。当たった。カウンターだ。だがあまり効いていない。
不安定な体制からではこんなものか。ケーニッヒの第二波がきた。今度はかわしきれずに背中に少し当たってしまった。
背中の装甲が拉げた。火器も全部潰れた。これが大型ゾイドと中型ゾイドとの差か?だがまだやれる。
ライジャーは効いてないって言ってる。またケーニッヒが来る。このままじゃあいくら攻撃したって倒せない。
奴の脆い所、弱点を突かなければならない。どこだ?奴の弱点は何処にある?そんなことを考えいる暇は無い。辛うじて跳んでさけた。
ヨハンの目に冷却用ファンが映った。あれだ。あれが弱点だ。だが違ったらどうする?ファンはスナイパーライフルのすぐそばだ。
あそこを狙ってもし弱点じゃ無ければライフルの餌食となる。いや、あれが絶対弱点だ。デスザウラーだって、ファンが弱点じゃないか。
ライジャーの有りったけのパワーを右前足に集中させる。言っておくがこの技に名前は無い。爪がファンに食い込んだ。
そこから大量の煙と、火花と、轟音が噴出す。ビンゴ。ケーニッヒが暴れる。だがまだ死んでない。奴が最後の足掻きに出た。
ケーニッヒの牙が怪しく光る。「エレクトリックファンガー」と言う技らしい。名前は立派だ。だが威力はもっと立派だった。
ちょっとライジャーの足に触れただけで足がぶっ飛んだ。痛い。だがライジャーはあくまで効いて無いって言ってる。負けず嫌いな奴だ。
265 :
256:03/05/11 16:19 ID:ofnBpfOZ
そして実際に負けなかった。ただでさえファンを貫かれて瀕死状態のケーニッヒがあんな技を使ったのだ。
みるみる生命力が無くなっていく。鳴き声も、機械音も聞こえなくなった。ケーニッヒは死んだ。
パイロットは生きているだろうが、自分より小さく、弱い相手に、一対一(サシ)で負けたのだ。エースパイロットとしては死んだも同然だろう。
いや、ライジャーはケーニッヒよりも強かった。力では負けていたが、心では勝っていた。どちらも弱い奴が勝てるわけがない。
夜が明けていく、ライジャーが吼えた。今までで一番大きく、そして一番嬉しそうな声だった。
「よかったな。ライジャー・・・」
266 :
256:03/05/11 16:22 ID:ofnBpfOZ
※ ※ ※
「あ、あの、シュタウフィン少佐・・・」
「ん?」
「わ、わたしお弁当作ったんですけど、わたしあんまお腹空いてないっていうか、空いてないんですよ。だ、だから、これ食べてください!」
「ありがとう。向こうに行ってから食べるよ」
「は、はい!」
「よかったわねソフィー。憧れのシュタウフィン様にお弁当渡せて」
「そ、そんなんじゃないわよ!わたし本当にお腹空いてないんだから・・・」
とある高校の風景では無い。とある軍前線基地の風景だ。あの後ヨハンとライジャーは無い足を引きずりながら帰ってきた。
データの方は全て無事。更には実践データというおまけ付だ。このデータを以て帝国軍はライジャーの本格的な量産に着手した。
ライジャー一号機はそのままヨハンのものとなり、前と同じようにこの前線基地に配備された。だがライジャーとの出会い、
ケーニッヒとの戦闘を経験したヨハンは今までの彼とは少し違っていた。何かふっ切れたように性格が明るくなり、
人付き合いも良くなった。前からあった人気も更に上がってしまった。さっきのように食事には困らない。
しかしこれからはそんな平和なことはやっていられない。共和国軍の反抗作戦がすぐそこまで迫ってきているのだ。
戦力的には圧倒的には圧倒的に勝っているが、幾多の逆境にも打ち勝ってきた共和国軍。こちらも本気で戦わないと何が起こるか分からない。
ヨハンはライジャーと共に戦場へ赴く。軍人としてのプライドと、ライジャーを『光』のゾイドにするために―
267 :
256:03/05/11 16:28 ID:ofnBpfOZ
〜ネオゼネバス帝国軍資料部:機動陸軍、特殊工作師団、高速戦闘部隊所属「ライジャー」ノ頁〜
ライジャー(LIDIER)
全長:20.2m
全高:6.5m
全幅:5.8m
重量:40.t
最高速度:350km/h
ZAC2051年ロールアウト。
当時のゼネバス帝国の最新技術を搭載され、その活躍が期待されたが、ロールアウトされたのが遅すぎたため目立った戦歴は無い。
ZAC2056年の惑星Zi大異変の時も野生体に目立った被害は見当たらなかったが、
その時の混乱の影響でライジャーに関するデータが全て無くなっていたため、昨今までこの野生体を改造すると言う考えすら持ち出されなかった。
しかしZAC2105年、最強と言われる帝国陸軍の中で唯一共和国軍に劣る高速戦闘部隊を強化するため、
旧大戦でライジャーの開発に携わったという老人の記憶を基にライジャーは復活した。とはいえ、老人の記憶ほど曖昧なものは無く、
うろ覚えな点が幾つかあった。その部分はライトニングサイクスに代表される現在の高速戦闘技術を駆使することによって補われた。
そして結果的にこれが全陸戦ゾイド中最高の時速350km/hという形で成功する。
そしてZAC2106年再ロールアウト。旧大戦での戦歴が殆ど無いライジャーにとって事実上のロールアウト年である。
ライトニングサイクスに比べOSを搭載していない分生産性に優れているため、
帝国軍高速戦闘部隊の”中心的ゾイド”の地位を確固たるものにしている(後略)
268 :
256:03/05/11 16:30 ID:ofnBpfOZ
終わりました。無駄に文が長く、ご都合主義な点がいくつかありますが、
その辺は勘弁してください(汗
出来れば良くも悪くも感想とか書いてもらえれば嬉しいです。では。
269 :
山崎渉:03/05/22 01:02 ID:???
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
270 :
山崎渉:03/05/28 16:23 ID:???
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
二ヶ月ほどスルーしていたのは大学寮でネット難民だったからです(私事)
>>258 ライジャー燃え、むしろ弁当持参のソフィー嬢萌え〜(逝
読み進めるまで実はバトカキャラだって事を忘れていました
こんな感じでライジャーが再販されれば良いですねぇ
まるまるコピペで新スレ立てました
移動しますか・・・
>>258-268 新スレから辿って来て堪能させていただきました。
こんな燃える話ならもっと早く読んでおけば(気づけば)よかったです・・・
共和国派の自分もゼネバス帝国の最終兵器、こいつのファンだけはやめられません。
>だがライジャーはあくまで効いて無いって言ってる。
ライジャーカコ(・∀・) イイ!!そして可愛い奴ですね。
>>272 オツカレサマデシタ!!
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ ∧_∧
ピュ.ー ( ・3・) ( ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
= ◎――――――◎ 山崎渉&ぼるじょあ
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
真・スレッドストッパー。。。( ̄ー ̄)ニヤリッ