勘弁してくれや

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1夢見る名無しさん
まったく。。。
29 ◆Jxu266exoc :2007/06/22(金) 10:16:29 O
な、何があったんでぃ!?>>1
3夢見る名無しさん:2007/06/22(金) 15:14:08 O
予想
↓↓
ギャルゲーばりにモテモテ
4むざ ◆3e/tUkyB3U :2007/06/22(金) 20:18:52 O
予想
↓↓
ギャルゲーでモテモテ
5夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 22:24:23 0
朝か・・・。
時計を見ると6時だった。
まだ夜は明けていないが、
ドイツではこれが普通の起床時刻だ。
体が覚えているのか、朝はそれほど弱くない。
朝特有の気だるさは残っているものの、頭の中は冴えていた。
今日の日程を確認しつつ、昨晩終わらなかった仕事の残りを片付ける。
しばらくして、
数回のノックの後、自室のドアが開かれる。
がちゃ・・・。
@ 佳奈
「お兄ちゃん、おはよう」
寝ぼけまなこな妹の佳奈が、ドアの隙間からひょっこり首を出す。
うちの朝はいつもこんな感じだ。
7時を過ぎても部屋から出ない時、俺は大抵自室で書類を作っている。
そんな朝、 佳奈美は自分が出かける前に、必ず一杯のコーヒーを入れてきてくれる。
机のわきにそっとおき、
@ 佳奈
「それじゃ、いってくるね」とだけ言い残し、そっとドアを閉め、とことこと玄関の方に向かっていく。
6夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 22:37:58 0
いつもどおりの日常の時間を過ごし今日もオフィスに出勤するはず・・・だったのだが。
電話が鳴った。
一瞬嫌な予感がしたが、そういう予感は得てして当たるものだ。
受話器を耳に当てるとあの声が聞こえた。
「グーテン モルゲン。調子はどうだい。」
ククと笑いながら言うそのセリフに不快感がこみ上げた。
「仕事だよ。と言っても今回はアンタ自身に降りかかる火の粉を自分で払うんだけどね。
 もちろん報酬は出る。詳しい内容はアンタのオフィスに届けさせる。」
チィと心の中で舌打ちをしながら受話器を置いた。
@佳奈の入れてくれた美味いコーヒーを飲み干し身支度を整えた。
7夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 22:49:51 0
オフィスで秘書のマリア嬢から受け取った書類にはふざけた内容が記されていた。
ターゲットの名前はカタリナ・モレンツ。年齢23歳。女。
東側の腕利きの殺し屋で西側のスパイや要人を何人も殺してる。
古いライフル銃でたった1発の銃弾で殺すのがポリシーらしい。
とんだハードボイルド女だ。ふざけやがって。
そのハードボイルド女が俺をエーゲ海の小さな孤島のホテルのご招待だとさ。
そこで殺るとご丁寧にチケットまでご用意してくれたらしい。
腕利きの殺し屋とは何度もやりあってきたがこいう変わったポリシーの持ち主は少なくない。
@佳奈には少し寂しい思いをさせるだろうが、まあ2日もあれば片付く仕事だ。
マリア嬢に@佳奈への伝言を頼みオフィスから直接そのエーゲ海の孤島のホテルに向かう事にした。
8夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 23:03:12 0
上空のセスナから見た青く輝くエーゲ海に浮かぶその島は美しかった。
東西に長いひし形のような格好をした島で南側には白く美しい砂浜が広がっている。
北側から東側にかけて山林が広がり、その中腹に今回ご招待いただいたホテルが建っている。
これが仕事ではなく@佳奈とクルージングにでも来てるなら最高なんだが。
西側の平地にある飛行場に着陸したセスナのタラップから降りた俺をホテルのリムジンが迎えに来ていた。
至れり尽くせりだな。
白い外壁が美しいそのホテルはベルリンのホテル・アドロンほど大きくはないが、高級感があり快適だった。
ますますこれが仕事じゃなく休暇だったらという思いが強くなったが、もちろん仕事は忘れていない。
研ぎ澄ました俺の神経には今のところ殺気は感じられない。
まあいい。勝負は今夜かな。
9夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 23:22:47 0
快適なベットルームでH&KMark23Socomの手入れをしながら時間を潰していると日も暮れてきた。
窓から見えるエーゲ海に沈む夕陽を見ながらナイフをポケットに納め部屋に鍵をかけレストランへ向かった。
「いらっしゃいませ。お連れの方がお待ちでございます。」
ウェイターに促され案内されたテーブルには若い女が座っていた。
黒いシックなドレスに身を包み窓の向こうに広がる夜の海を眺めている。
「フラウ・カタリナ・モレンツ。お招き頂き光栄です。」
こちらから声をかけてやった。
視線を窓の外から俺の方に向けたその女は予想以上に美しかった。
ブロンドの髪を後ろに束ね、端正な顔立ちの中に光る冷たく青い眼。
口元に微笑みを浮かべながら女は言った。
「きっと来てくださると思ってましたわ。お会いできて光栄です。」
料理はエーゲ海ならではのシーフードをメインにしたギリシャ料理だった。
料理も美味いしワインもいけるが、なにより美しい女との食事がさらに味を引き立てるようだった。
会話はごく普通、と言っても西側と東側の現状についてアレコレしゃべっただけだが殺し合う仲とは思えないほど打ち解けたものになった。
10夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 23:35:39 0
美女との楽しいディナーをいつまでも満喫してるわけにもいかないので俺のほうから切り出した。
「それで?いつから始めるんだ?」
ワインを美味そうに一口飲んだ女は微笑みながら言った。
「私は夜に仕事をしない主義なの。」
「ふん。主義が多いんだな。殺る時も1発で仕留めるんだって?」
「そうよ。でも夜に仕事をしないのは別。ポリシーじゃなくて主義なの。」
そう言いながら女はナプキンで口を拭った。
「夜はね、特別なの。好きな音楽を聴きながら好きな読書をする。そうしてゆったりと時間を過ごすの。
 それ以外考えられないわ。だから開始時刻は明日の日の出からにしましょう。ね。」
ウインクをして立ち上がった女は、楽しかったわと言い残してレストランを後にした。
俺はウェイターを呼びワインを注文した。
11夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 23:50:58 0
部屋に戻りH&KMark23Socomの手入れの続きを始めた俺はもう飽きはじめていた。
とんだ勘違い女だぜ。今までの仕事だって運が良かったんだろ。
さっさと済ませて帰るか。@佳奈も寂しいだろうしな。
時計の針を確認した俺は手入れの終わったH&KMark23Socomを手に部屋を出た。
ホテルの屋上に上りロープを下に投げた。
女の部屋は確認してある。
一応警戒して窓から行くか。
皮のグローブをはめ、ロープを掴み屋上から飛んだ。
女の部屋のワンフロア上階あたりでロープを握り締め下降スピードを殺し、壁に戻ろうとする物理的力を利用してクラシックの曲が流れる明かりの点った女の部屋の窓を蹴破った。
ガラスの割れる音と共に部屋に転がり込んだ俺は瞬時に女の座るリクライニングチェアの背もたれ目掛けてH&KMark23Socomを発射した。
空気を切り裂く弾丸の音が続いたあと静寂が戻った。
リクライニングチェアの背もたれには5箇所の穴が開きそれぞれ細い煙の筋をあげている。
「チィ!」
思わず舌打ちをしてしまった。
リクライニングチェアをこちらにもどすと女は居ない。
背もたれにはメモが貼り付けてあった。
『せっかちな人ね。私の夜の時間を邪魔しないで。』と書かれている。
(おかしい。確かに女の気配はあった。なぜだ。どこに消えた。)
かけっぱなしになったレコードからクラシックの優雅な曲が流れ続けていた。
12夢見る名無しさん:2007/06/28(木) 23:59:53 0
日が昇った。
朝焼けの海を見ながら俺は砂浜に立っていた。
昨夜の失敗から女の技量を見誤っていた自分自身を殴りたい気分だった。
(どう仕掛けてくるか。まずはそれを見極めよう。)
女はその男のたたずむ砂浜を見下ろす山林の中にいた。
ライフルの照準器の中に男の後頭部を納めた。
「残念ね。同じ東側の人間なら良い関係になれてたのに。」
そう呟き女は引き金を引いた。
乾いた銃声が響いた。
照準器の中の男の頭は脳漿をぶちまけ潰れたトマトのようになっているはずだったが・・・。
女の網膜に映るその照準器の中の光景は引き金を引く以前と何も変わっていなかった。
(なぜ?なぜ外したの?そんなはずは・・・。)
もう一度引き金を引いた。
だが何も変わらなかった。
女の心の中で動揺が広がったその時、照準器の中の男がこちらに振り向いた。
(位置がばれた!)
女はライフルを下ろし山林の中を駆け出した。
13夢見る名無しさん:2007/06/29(金) 00:18:18 0
「あそこか・・・。」
山林の中に目をやったがもうその位置には女は居ないだろう。
(なかなかやるじゃねーか。)
俺の中で退屈が吹っ飛んだ。
あの距離から性格に俺の頭を狙ってきやがった。
腕が良いのは認めよう。
だが追いかけっこなら俺の方が上だと思うぜ。
2日で片付ける仕事だと思っていたが今日で終わりそうだな。
そう思った俺の判断はまた甘いものだと思い知らされた。
山林の中での追いかけっこは勝負がつかなかった。
古いライフルの弾丸が正確に俺の頭を狙ってくる。
俺は位置を瞬時に把握し女を捕捉しようとするがどうやっても捕捉できない。
(確かに気配はある。だが掴めない。なぜだ?ただのスナイパーじゃない。それがあの女の能力か。)
エーゲ海に日が沈む頃には女の気配は山林から完全に消えた。
「わからねぇ。」
赤く夕陽にそまった海を眺めながら思わず一人ごちた。
14夢見る名無しさん:2007/06/29(金) 00:46:25 0
俺はシャワーを浴び身支度を整えてレストランに向かった。
はたして女は昨夜と同じ席に座っていた。
女の前の席に無言で座った俺を女は微笑みながら黙って見つめていた。
昨夜と違って今夜のディナーは会話もなく静かなものだった。
お互いに視線を交わすものの微笑むだけで言葉はなかった。
だが料理は相変わらず美味い。
不思議な事に心地よい時間が流れデザートが運ばれてきた後に女の手がテーブルの向こうから伸び、俺の手に触れた。
その手を俺は握り返した。
「ねえ、あなたの部屋にお邪魔してもいいかしら?」
女は俺の部屋でシャワーを浴びている。
今なら殺れる。
だが本当にシャワーを浴びているのか?
昨夜の失敗が頭をよぎり俺は動けなかった。
浴室からバスローブをまとい出てきた女が俺の前に立った。
俺は女を抱き寄せ唇を重ね舌を絡ませた。
俺の腕の中で女は何度も背中を反らせ絶頂に達した。
抱き心地の良い女でここまでイイ女は西側でも滅多に居ないだろうと思えた。
あれだけ山林を駆け回り疲労がたまっているはずなのだがお互いに激しく求め合い何度も果てた。
互いに満足し体が離れた時、女は呼吸を整えながら尋ねた。
「ねえ、どうして私の弾が当たらないの?」
やはりそうきたか。
思わずニヤリと笑ってしまった。
「そっちもどうして捕まらないんだ?」
女もフフフと笑った。
「そうね。互いにタネ明かししない?」
ベットの上で体を起こした女は自分の目に指を入れた。
15夢見る名無しさん:2007/06/29(金) 00:56:53 0
青いコンタクトレンズを外した女の眼球は白く濁っていた。
いや、明るいところで見ると眼球そのものが無いのかもしれない。
「私はね、生まれた時から視力がほとんどないの。キンダーハイムから特殊な訓練を受けてね。
 視力以外のすべての感覚が常人離れしたものになったの。
 だからこのコンタクトレンズが無くても普通に振舞えるし、あなたの気配だって離れたところから察知できるのよ。
 ギリギリの連続だったけどすべて回避できたわ。どう?次はあなたの番よ。」
俺は脱ぎ捨てたズボンのポケットに手を入れそれを取り出した。
「何それ?」
女は尋ねた。
「これは特殊な補聴器みたいなものさ。
 このコードの先のイヤホンを耳に装着していれば飛来する弾丸の音が拾える。
 音さえ聞こえれば俺の反射神経は並じゃねーから避ける事はたやすい。」
ヒューと女は口笛を吹いた。
さすがは西のテクノロジーねと呟きながら枕の下に手を滑り込ませた。
16夢見る名無しさん:2007/06/29(金) 01:07:51 0
女の顔が引きつった。
枕の下に仕込んでおいた銃が無い。
「これか?」
俺はベットの下からコルトを取り出した。
「夜は仕事をしないんじゃなかったのかよ。」
死を悟った女の唇は歪んで目は引きつっていた。
「同じ西側の人間だったら良い関係になれたのに残念だな。」
そう言いながら銃口を女の頭に向け俺は引き金を引いた。
タネ明かしをされてみればなんの事はない。
明日ここを発てばちょうど2日の仕事だな。
部屋の電話を取ってダイヤルを回した。
「俺だ。仕事は終わった。後始末を頼む。報酬はいつもの口座に入金してくれ。」
帰ったら@佳奈に土産を催促されるだろう。
だがこんな孤島のホテルに何か土産になるものがあったかな?
そんな事を考えながら女暗殺者の死体にシーツをかけた。
17夢見る名無しさん
Fin