1 :
どらみ/_・):
神様の娘のお話なのです。
3 :
(^O^)/ :2006/08/05(土) 10:39:01 0
記念おまんこ♪
もう一つの世界では自分が神様の子供になってて、ある程度なんだけど下界をいじくれるんです。
お父さんは「まだお前は破壊と創造をしてはならん。めちゃくちゃになっちゃうからな。あいつらはおもちゃじゃないんだ」とか、毎日毎日口をすっぱくするほど言ってる。
そんなお父さんにKISUしてみたら、梅干の味がした。
さて今日は下界の生物の観察レポートを出さなくてはっ!
このレポート次第で、下界の生物のコントロールレベル1を任されるかもしれないんだ。
おにーちゃんはもうすでにレベル3まで逝ってる。すごい。
あたしはまだ見てるだけ。
そもそも意味がわかんない。
この小さな球の中に、宇宙があって、その宇宙の中には、銀河系があって、その銀河系の中には太陽系があって、その太陽系の中には地球があるんだけど、地球のためだけなら、地球には大きすぎる、この宇宙は必要ないのになーって。
そう思うんだけど。
同級生のひろし君は、ただ見てるのがつまんないから地球をいじくりまわして壊しちゃった。
人間もただ死ぬのはいやだから、精一杯抵抗してきたんだって。
でもぶっこわしちゃった。
ひろし君のお父さんは激怒して、ひろし君を押入れの中に5兆年閉じ込めた。
可哀想に。
あたしのお父さんが作った宇宙では、お父さんが考えた「物理」って言うプログラムで宇宙を動かしているらしい。
でも物理だけじゃ不具合が出まくってしょうがないから、管理人であるお父さんやお兄ちゃんがときどきメンテナンスするんだけど、それが地球の人間からは「奇跡」とか言うのに見えたりするんだって。
まぁ奇跡って言って人間達は自分でごまかすからあたしたちのしわざって気づかないんだよね。
5 :
どらみ/_・) :2006/08/05(土) 10:42:35 0
お父さんに聞いてみた。
「なんでどの家にも、この球あるの?これなんのためなの?」
お父さんは言った。
「お前はまだ知らなくていい。いいからレポートを書きなさい」
何も教えてくれない。ケチだ。
だからおにいちゃんに聞いてみた。
「ねーおにーちゃん。なんでどの家にもこの球あるの?どうすんのこれ」
お兄ちゃんはせせら笑って言う。
「はっはー、お前子供が生まれてくるの見た事ねーのな。ヒヒヒヒヒッ」
後ろからお父さんが怒鳴る。
「ゆうき!余計な事言うんじゃない!!」
「へーい了解」
まだあたしが子供だからって教えてくれない秘密があるらしい。
あたしもあたしで、なんとなく理解してきたんだけど、なんか恥ずかしくなってきたからこれ以上聞くのをやめたのだ。
この宇宙の球は、102383回目の球。
やっと地球が出来た。
何度も何度も失敗して、やっと偶然地球が出来た。
宇宙を作る時に、最初に爆発させるんだけど、その爆発で時間の流れも始まる。
爆発が起きても時間が止まったままなんて言うのはたくさんあった。
改良に改良を重ねて、やっと今出来た宇宙がVer2006.8。
今じゃフリーズしようとしてもする方が難しくなった。
初めて生物が出来た時、これが本当に人間になるのか不安だった。
でもお父さんは言う。
「お父さんが作った物理は完璧だ。その中でも水と言う一見ただの物質に、意思をもたせておいたからな」
水は良い物と悪い物を本質で理解する。
そもそも生物が出来たのも、水が意思を持っているかららしい。
あんなに小さかった生物が、今じゃ人間にまで進化して、地球のいたる所で生活するようになった。
でもまだ太陽系はおろか、銀河系をも人間が掌握するのは遠い未来だ。
もしかしたら今回の宇宙も失敗するかもしれない。
そしたらお父さん、また新しく宇宙作るのかなぁ。
お父さんにレポートを出した。
その結果、次から生物のコントロールレベル1をしてもいいと言う事になったのだ!
コントロールレベル1と言うのは、下界の生物から自分が好きな生物を選び、その生物になって下界を探索する事が出来る権利なのだ!
上から見てるだけで暇でしょうがなかったあたしにとって、このコントロールレベル1はとても意義のあるものになりそうなのだ!ふふふっ。
でもこれは遊びでやるなとお父さんは言う。
「下界の生物に憑依するのは確かに楽しい。だが、これは遊びのためではない。下界の生物の視点で、この地球がどのように見えるかをその身でもって知る事に意味があるのだ」
なんだか難しい事を言うが、要するに体験学習の一環なのだな。
でも長年見てるだけだったあたしは、ウキウキしすぎてそんな言葉は半分聞いてなかったのだ。
そして、メンテナンスの日。
前からなりたかったものに憑依したのだ。
黒くて小さい六本足。すごいかっこいい。
危険を感じるとはばたいて逃げる粋な奴。
人間はゴキブリと呼んでる。
今回はこいつに憑依する事に決めたぞ!
「じゃ行ってきまーす」
そう言って、ある場所に棲息していた、一番大きくて一番黒く輝いているかっこいい奴に憑依したのだ。
憑依すると、そのゴキブリの友達らしい奴が話しかけてきた。
「よう、調子はどうだ」
「え?すごい調子いいよ!ちょっと残飯漁ってくるね!」
そう言って残飯を漁りに行こうとしたあたしを、その友達ゴキブリは止める。
「馬鹿、今あいつら飯食ってる最中だろ。今行ったらスリッパで叩き殺されて終了だぞ。命は大事にしろ」
この友達ゴキブリはいい奴だった。
んー、じゃあいつ食いにいけばいいんだろう?と考えていたら、友達ゴキブリが言う。
「暗くなってからが勝負だ。今はじっと我慢だ」
あたしはこれで一つ、ゴキブリの生態について学習したのだった。
夜になり、すっかり暗くなった。
どうやらここは、ある人間の家族が住む家らしい。
あたしは冷蔵庫の下に隠れて住んでいた。
「よし、そろそろ行動するぞ」
友達ゴキブリはそういうと、台所のテーブルの上に置いてあった夕食の食べ残しに向かって走っていった。
「おい、今大丈夫だぞ。お前も来い」
あたしもそそくさとテーブルに走った。
サランラップで覆われている皿の、サランラップがかかっていなかった端の部分から皿の中に潜り込んでいき、人間の食べた食べ残しを漁る。
「うめー!!やっぱ人間ってイイ物食ってるよな!食事の時ほど最高な時間はねえぜ」
そう言ってうれしそうに人間の食べ残しをほおばる友達ゴキブリ。
その瞬間、いきなり明るくなった。
人間が来たのだ。
「・・・ん?あ・・・ゴキブリ・・・。明日食べようと思って残しといたのに、もう食えねーじゃねーか!!」
そう言って人間は、スリッパをふりかぶってきた。
「あぶない!」
そう言って、友達ゴキブリは人間の顔に猛然ととびかかった!」
「うわああああああ!!!!」
人間はダメージも無いのに悲鳴を上げる。
そしてバシッと自分の顔を叩き、友達ゴキブリを叩き落した。
「ちきしょう!!とびつきやがってこの野郎!!」
そう言って、手にもったスリッパで友達ゴキブリを叩き潰してしまった・・・。
あたしはその恐怖の光景を見て、腰が立たなくなっていた。
友達ゴキブリを叩きつぶした人間がこっちを振り返って言う。
「もう一匹いやがるな…。バルサンたかなきゃダメかこの家はよお!!」
意味の分からない事をブツブツ言いながら、あたしに向かって来る。
友達ゴキブリが文字通り虫の息で言ってくる。
「に、逃げろ…俺の分も…生きて・・・くれ・・・バタッ」
あたしは泣いた。泣いて逃げた。
泣いて逃げてはばたいた。あえて人間の顔に向かって。
「うおわああああああ!!!」
人間はダメージも無いのに、また悲鳴を上げる。
良スレ^^
次の瞬間、あたしの体を衝撃が襲った。
なにかにはたかれて、あたしの体は床に叩きつけられた。
「こんちくしょーがー!!」
人間がそう言った。するとあたしは、スリッパで叩き潰された。
とても苦しい。
痛い。
死にたくない。
隣に友達ゴキブリがいる。
ごめんなさい。
あなたの死を無駄にしてしまった。
友達ゴキブリはもう何も言わない。
動かない。
段々意識が遠くなるあたしが最後に聞いた言葉。
「ちょっとおかーさーん!!ゴキブリ二匹もいたよー!!すげーでかい奴。バルサンたかなきゃダメだよこの家…」
そして、あたしの意識は下界の地球から、球の外へと戻った。
あたしは泣いていた。涙を流していた。
お兄ちゃんが暖かいミルクティーをもってきてくれた。
「最初から衝撃的なレベル1だな。次は恵まれてる環境の奴に憑依しろよ」
そんな言葉、耳に入らない。
友達ゴキブリさんは?どうなったの?それだけが気になる。
さっきまで一緒だった友達ゴキブリさんは?
あたしはここに戻ってきたのに、友達ゴキブリさんは?
「お兄ちゃん、友達ゴキブリさんはどこにいるの?」
「・・・お前、レポート出してそれかよ。分かってんだろ本当は」
そう、分かっていた。
分かっていても、頭が納得できない。
「お父さん!!友達ゴキブリさんはどうなったの!?どこに行っちゃうの!?」
お父さんはゆっくり口を開いた。
「どこにもいかないし、どこにもいない。この世界のどこからもいなくなった」
そしてもう一言。
「これがお前が球の外から見ていた、「死」と言うものだ。身近に感じてみて、初めてその大きさが分かるのだ。」
そして、あたしはもう一度泣いた。
死と言うものと無縁のあたしたちは、死と言う物がよく分からなかった。
なんで生物は死ぬんだろう。
そもそも生物ってなんで生まれてくるの?
死ぬために?
生まれてきても、必ず死ぬのに、なんで生まれてくる必要があるの?
あたし達は生まれてきても、死ぬ事が無いのに。
なんの為に生きるんだろう。
なんの為に死ぬんだろう。
子供を産む為?
でもその子供も死ぬんだよ?
意味がわかんない。
「ねえおにいちゃん、どうして?」
お兄ちゃんは、面倒くさそうに言う。
「・・・そりゃ生まれてきたら死にたくないだろ。死にたくないから生きてるんだよ」
「でも子供までそんな思いさせるなら産まなきゃいいのに!」
そう言ったらヤレヤレと言った風に、球のメンテナンスに戻ってしまった。
あたしは決意した。
地球の中で一番頭のイイ生物に憑依して、彼らの死を身近に感じてみようと。
憑依しようとしたら、お兄ちゃんがあたしを止めた。
「一つのメンテナンスにつき、一度だけのレベル1だ。今回はもう終わりな。次回のメンテナンスで人間に憑依しろよ」
そういうので、あたしは今回の憑依を我慢するのだった。
そして、ベッドで横になりながら、友達ゴキブリさんの事を思った。
気づいたら、あたしは夢の中にいた。
「よう、元気そうだな」
夢の中で友達ゴキブリさんが話しかけてきた。
気づいたらあたしもゴキブリの姿だった。
やっぱりゴキブリはかっこいい。
「あれ?生きてたの?心配してたんだよ!」
友達ゴキブリさんは笑いながら答えた。
「まぁ生きてたと言えば生きてたんだろうな。死ぬ事は死んだけどよ。」
「死んだけど生き返ったんだ!すごいね!」
友達ゴキブリさんは、また笑いながら答える。
「そうだな、生き返ったっつーか、そんな感じだけど。でもお前が俺を覚えててくれるから、俺はここで生きる事が出来るんだよな」
「え、ここって?そういえばここってどこなの?」
友達ゴキブリさんは、また更に笑いながら答える。
「ここか?ここはなー、お前が一番良く知ってる場所さ」
友達ゴキブリさんがそう言った瞬間、あたしはベッドの中で目が覚めた。
とても心地よい目覚めだった。
「そうだったんだ」
私は飛び起きて、お父さんにこの事を報告しにいった。
「お父さんお父さん!!友達ゴキブリさんがね!あたしの夢の中に出てきたんだよ!友達ゴキブリさんはあたしの中で生きてるんだよ!!」
お父さんはにっこり微笑んで言った。
「お前は友達ゴキブリさんの魂の分、魂の密度が上がったのだ。生物は他の生物と関われば関わるほど、魂の密度が上がっていくのだよ」
あたしは一つだけ成長した気がした。
でもまだ子供のあたしには、分からない事がたくさんある。
生物が他の生物と関わって、魂の密度が上がるのはとてもイイ事であるとは思うけれども。
今日は友達のひろし君と遊ぶ日。
5兆年もの間押入れの中にいたから、暇で暇でしょうがなかっただろうな。
ひろし君はとてもいたずら好きで、学校で育てている大きな球にもいたずらした事がある。
好奇心旺盛なひろし君は、球をいじってるお父さんや先生のやり方を観察しているから、レベルを持っていないのに色んな事が出来るのだった。
なんとひろし君は、学校で育てている球の時間を、10倍にしてしまうと言ういたずらをした事があった。
結局そのいたずらがひろし君がやったと言うのはばれなかったのだけれど、当時学校では学校中の先生と言う先生が集まって、その球の復旧作業をしていた。
もしバレたら退学処分になっていたかもしれない。
なぜそんな事をしたのかと言うと、ひろし君はこういう。
「あんなでかい球の成長した姿を見たいって思うのは普通じゃん?」だって。
大事になりすぎて、さすがの本人もちょっとびびってたとは思うけど。
見てるこっちが怖いから、二度目は勘弁して欲しい。
そんなひろし君に、今日ひさびさに会ってみるのだ。
ひろし君の家に行くと、ひろし君のお父さんが出てきた。
「あー、ひろしに用かね。今呼んでくるから待っといで」
そう言うと、ひろし君を連れてきてくれた。
「おーひっさしぶりー、ちょっと部屋汚いけどあがれよ」
そう言って部屋に案内してもらったけど、ちょっと汚いなんてもんじゃなかった。
まぁ毎回だから慣れてるんだけどね。
ひろし君の「ちょっと」は、「超」の勘違いだから。
直木賞目指してみたらどうですか?
面白い。
>>8 ありがとうございます^^
>>13 お褒めいただいているのだと思いますが、わたくしの稚拙な文章力では、彼らの力には到底及ばないのです。
でもなんかうれしいです。
どうもありがとうございます^^
>>14 ありがとうございます。
これからも浮かんだことをツラツラと書き込んでいきますね^^
17 :
どらみ/_・) :2006/08/05(土) 12:56:40 0
ひさしぶりに会ったひろし君は、なんだかまた一段と成長してる様な気がした。
男らしくなってるって言うか。
こういうのが男の子って言うのかな。
いたずらをやればやるほど、男の子としての価値が上がるって言うか。
ひろし君は、いつもまわりにたくさんの友達がいた。
やっぱりそういうのも、男の子としての地位?みたいなのが高いからなのかなぁ。
そんなひろし君は、女の子のあたしから見ていても、やっぱりほっとけないって言うか、なんて言うか。
だからあたしもなんだかんだ言ってひろし君に会いにきちゃうもんな。面白いし。
「そういやよ、押入れでこんなもん見つけたぜ。これなんだと思う?」
そう言って銀色の四角い金属の様なものを見せてきた。
「んー?何これー?綺麗だねー」
そう言うとひろし君は得意げな顔をして答えた。
「これはなー、宇宙球を作る時に使う部品の一つだ。俺んちもお前んちも球が安定した状態が続いているから、当分使わないって事で押入れの中に入れっぱなしになってんだろうな」
そう言って銀色の四角を見つめるひろし君は、またなにかを企んでそうだ。
「ちょっと、もうなんかするのやめなよ。また怒られちゃうよ?ひろし君が押入れに入ってる間、友達とか遊べないからすごい寂しそうにしてたんだよ」
そう言ってひろし君を諭そうとしたんだけど、また小憎らしい事を言ってくるんだ。
「へー、その中にはお前も入ってんだろー?って言うかそれお前の事だろ?」
なんかすごい頭に来た。
「あたしじゃなくて、ひろし君の友達達だよ!のぶ君とかしんじ君とかだよ!」
大きな声で言い返した後、言い過ぎちゃったかなって思って、こうつけたした。
「…そりゃあたしもちょっとはつまんなかったけど…。ちょっとだけ」
「ほらやっぱそうじゃん!!」
やっぱり図に乗らせるような事言わなきゃよかった。
「そんな事ばかり言ってると、またなんか企んでるっておじちゃんに言っちゃうよ。いいの?」
からかう事ばかり言ってくるから、少し意地悪な事を言ってやった。
「分かったもう言わない。うそうそうそ。何もしないからこの銀色の四角の事言うなよな、頼むぞオイ」
そう言って少し焦っているひろし君の顔が見れたから、こっちも少し気が晴れたのだ。
そうしていたら、そこにのぶ君としんじ君の「おじゃましまーす」と言う声が聞こえた。
のぶ君としんじ君が部屋に入ってきた。
「ひろしやっと出してもらえたのかよー、お前いないからしんじと二人で遊んでたんだぜ。俺にしんじの世話させんなよなー」
のぶ君がそう言うと、しんじ君が後ろの方でえへへと笑った。
「世話ってお前、ペットじゃねーんだからよ。しんじもそこでえへへとか言ってんなよな。」
そしてまたえへへと笑うしんじ君。
ひさびさの再開をはたした四人は、子供らしく外に飛び出していくのだった。
公園に行くと、ひろし君が「あれやろうぜ」と言って、公園中に落ちている植物の種を集めだした。
そしてじゃんけんをして、勝ったのぶ君がその種の中から一つを選ぶ。
そしてその種を地面に埋めると、今度は順番を決めるじゃんけんだ。
順番はあたし→ひろし君→しんじ君→のぶ君になった。
「これ負けた奴どーするー?」
と、のぶ君が言った。
「そうだな…じゃあ負けた奴はー、金色の三角を持ってこなきゃならないってのどうだ?」
金色の三角とは?
これも宇宙球を作る時の部品の一つで、銀の四角と金の三角の二つによって、宇宙球を作るらしい。
あたしはまったく懲りてないひろし君の言葉に、あきれ返ってしまった。
「ちょっとひろし君、そんなのあたしやだよ。そんなの持ってきたのばれたら、あたしも押入れの中に入れられちゃうよ。」
ひろし君はちょっと考えた後こう言った。
「じゃあー、どうしても持ってこれない奴は、またそのとき考えるとして、とりあえずやってみようぜ」
口のうまいひろし君の、いつものペースにはまっている気がした。
植えてある種の時間の速度を速くする。
そして順番が来た人の所で植物が枯れたら、その人の負け。
枯らしっ木って言う遊び。
子供のあたし達は、どの種がどういう植物なのかを分かっていないから、いきなり勝負がついたりする。
それが一年草だったら一瞬で終わっちゃうし、木だったら少し時間かかるし。
あたしはとりあえず、一瞬で一ヶ月の時間を流れさせた。
すると植物はあたしの膝のあたりまで伸びてきた。
「あー、これなんだろなー、一年草かな?見た事ない葉っぱだからわかんねーなー」
そう言ってひろし君は半年の時間を流れさせた。
植物は青くて細長い綺麗な花を咲かせた。
「あ、これ分かった、冬まで咲き続けるあの花だ。」
ひろし君はそれ以上言わない。
自分が物知りだって事を自慢するために、ちょっとだけうんちく語るんだけど、それが一年草なのか木なのかは、勝負だから教えてくれない。
しんじ君の番だ。
あたしはしんじ君がこの植物を枯らしてしまいそうで、見てて怖かった。
いつも損な役回りをするしんじ君が、今日もまたその役割を担ってくれそうで。
しんじ君はちょっと緊張したような顔をして、植物の時間を速くした。
「むぅ〜…まだかなぁ…」
ぶつぶつ言いながら、しんじ君は時間を速めた。
「あっ」
しんじ君がそう言うと、花は枯れてしまっていた。
のぶ君が笑いながらしんじ君に話しかける」
「おいおいー、俺の番までまわってきてねーじゃんかよー。はははっ」
しんじ君は、ちょっと悔しそうにした後、またえへへと笑ってごまかしていた。
あたしはしんじ君が本当に金色の三角を持ってくるんじゃないかと思って、心配になった。
「じゃーしんじ、金色の三角よろしくなー」
そう言ってひろし君とのぶ君はイェーイって言いながら手を叩きあった。
しんじ君はちょっと困っているようだった。
「しんじ君どうするの?持ってこれそうにないんだったら持ってこなくてもいいんだよ?最初に持ってこれそうにない人は、また違うの考えるって言ってたんだから」
あたしがそう言うと、しんじ君は「大丈夫だよ〜」と言って、またえへへと笑った。
しんじ君も、いつもヘラヘラしてるけれども、こういう時はちゃんと約束を守る。
男の子としてのプライドなのかなぁ。そのプライドで後々大変な事になりそうで怖いんだけどね。
「それでこそ男だしんじ。まぁでも今日じゃなくてもいいよ。出来るだけ早いほうがいいけど、持ってこれそうな時に持ってこいよな」
ひろし君がそういうと、しんじ君は「分かったよ〜」と言って、えへへと笑った。
「まぁでもな、もしバレたとしても大人なんてちょっとしか怒らないからさ。余裕だよ」
ひろし君のちょっとは超の勘違いだ。
「ちょっとあたし本当に知らないからね〜」
男の子同士で決めた約束だから、これ以上つっこむのもなんか嫌だった。
毎回ハラハラさせる様な事を考えて、男の子って言うのは本当に厄介だよ。
この金の三角と銀の四角は、大人になった男性が金の三角、女性が四角を持っている。
どこで買ってくるのか知らないけど。
なんで男の人と女の人で、三角と四角で別々なんだろう。
それもお父さんやおにいちゃんは教えてくれないんだろうけどね。
まだあたし達は子供だからさ。
久しぶりに四人で遊んだ後、あたしは家に帰ってお父さんに聞いた。
「ねーお父さん、今日さ、銀色の四角の話聞いたんだけど」
そう聞くと、お父さんは困ったなと言う顔をして言った。
「銀の四角かい?あれがどうしたんだ?」
「あの銀の四角なんだけど、なんでいつも女の人が持ってるの?金の三角は男の人だし。」
そう聞くと、お父さんはこう答えた。
「まだお前は知らなくていいんだよ。大人になれば自然と分かる事だから」
また子供扱いだ。どうせこうなるだろうとは思ったけどね。
でもお父さんが言うように、いつか大人になれば、ちゃんと分かるのかなぁ。
何日かたった後、またメンテナンスの日が来た。
今日は待望の人間に憑依するレベル1。
人間は下界で一番頭のイイ生物だ。
でも、固体によって環境が全然違う。
他の動物よりもはっきりとそれが分かるほどだ。
奴隷に生まれる子供もいれば、すごい贅沢な家に生まれる子供もいる。
地球の人間は、人種と言うものによって、肌の色が全然違ったりする。
他にも宗教とか言うものがあって、あたし達の事を崇拝しているらしい。
あと、よく分からないのが国って奴。
なんか地球の表面に見えない境界線がひいてあって、その境界線からこっちはわたしの国。ここからあっちはあなたたちの国。と分けてあるらしい。
肌の色も宗教も国もだけど、それが違うために大きなケンカに発展したりする。
あたしにはまったく意味が分からないのだけれど。
今回のレベル1は、お父さんが立ち会ってくれる。
前回のレベル1がひどかったから、もう少し余裕のある固体を選んでくれるらしい。
あたしとお父さんで、適当な人間を選んでいると、そこにお母さんがやってきた。
「ただいま〜」
お母さんは、球の研究のために、家を空ける事が多かった。
今日は球の研究に一段落ついたから、帰ってこれたのかな?
「おかあさんおかえり!研究お疲れ様でした。電話でレベル1とったって言ったよね、でね、今から人間に憑依する所なんだよ〜」
「あらあらそうなの。人間は複雑だから気をつけなさいね。前回のゴキブリみたいに単純じゃないからね。嫌な事もイイ事もあると思うけど、一度体験してみなさい。」
それを聞いていたお父さんは、お母さんにおかえりと言ったあとキスをしていた。
なんか見てる方が恥ずかしい。
「あ〜お父さん達キスしてる〜」
あたしがそう言うとお兄ちゃんは、「大人の挨拶だから恥ずかしい事じゃない」とか言う。
あたしよりちょっと年上だからって、おにいちゃんはすぐに大人ぶった事を言うんだ。
「で、今日はどの固体に憑依するのかしら?」
お母さんがそう言うと、お父さんが日本と言う国の10歳の女の子を指さした。
お母さんはそれを見ると、こう言った。
「可愛い女の子ね。頭もよさそうだし。私はてっきり、産まれた瞬間の子供に憑依するとばかり思っていたけれど」
お母さんはそう言うと、あたしの前に来て頭をなでてくれた。
「がんばりなさいね。あなたが分からない事があったら、この女の子に聞きなさい。分かる事なら教えてくれると思うから」
「うん、分かったお母さん。がんばるよ」
そう言うと、お父さんが横からこう教えてくれた。
「人間の意思は強い。だからゴキブリの時の様に完全にお前の意思で体を動かす事は難しい。だから人間の女の子と相談しながらやっていきなさい。」
なんだか少し難しいらしい。
でも、すごいウキウキする。
地球で一番頭のイイ生物、人間に憑依する事が出来るんだから。
「じゃ、行ってくるね」
あたしはそう言って、下界に降り立った。
女の子は、ピアノを弾いていた。
あたしは女の子に憑依しているのにも関わらず、女の子のピアノに聴き入ってしまっていた。
なんか、話しかけるのも恥ずかしいし、もし女の子があたしの声にびっくりして怖がってしまったらどうしようとか思っちゃって。
女の子はとてもピアノが上手かった。
となりにいる女の人が、女の子に教えてるようだった。
あたしは、女の子が一人になるまで待つことにした。
一時間くらいした時、その女の人は帰ってしまった。
あたしはそこで、女の子に話しかける事にした。
「こんにちは」
最初女の子は、何かに気づいたような感じであたりを見回していた。
出来るだけやさしい声で話しかける。
「はじめまして、怖がらないでね。あたしは外の世界からきた女の子だよ。」
女の子はあたしの声に完全に気が付いて、今度はあたしに話しかけてきた。
「あなたは誰なの?」
あたしは正直に答えた。
「あたしは神様の娘だよ。人間の事を勉強しに、下界におりてきたの」
女の子はまた答えた。
「なんで神様の娘さんが、まみに話しかけてるの?」
女の子の名前はまみと言うらしい。
「まみちゃんて言うんだ。あたしの名前はね…」
言おうとした時に気がついた。
この子達には、あたしの名前は発音出来ない。
だからその時適当に名前を考えて答えた。
「あたしの名前はゆみだよ。ゆみって呼んでね」
「なんであたしがまみちゃんに話しかけてるかって言うと、あたし一人だとこの世界にいる事が出来ないの」
まみちゃんは黙って聞いている。
「だから、まみちゃんの体をちょっとだけ借りたいの。」
まみちゃんが聞いてきた。
「貸している間、まみはどうなってるの?」
「まみちゃんの意識はちゃんとあるよ。だから安心して。まみちゃんがいやになったらすぐ返すから」
まみちゃんはちょっと考えた後、こう言った
「じゃあ貸してもいいよ。でも、まみが貸したい時だけでいいならいいよ。」
「本当に!ありがとうねまみちゃん。絶対迷惑かけないからね。本当にありがとうね!」
あたしがそう言うと、まみちゃんはまたピアノを弾き始めた。
「ねぇ、その曲なんて言うの?とても元気が出てくる曲だね」
「これは、トルコ行進曲って言う曲だよ。」
まみちゃんはそれだけ言って、ピアノを弾き続けていた。
今はあんまりしゃべりたくないのかな。
まみちゃんともっと仲良くなりたいけど、まみちゃんが一人でいたい時を邪魔したくないし。
かと言って話しかけなきゃ仲良くならないし。
人間に憑依しても、仲良くやっていくのは難しいのかな。
いや!そんな事はない!
あたしの自信がゆらぎそうだったよ。
そりゃゴキブリさんよりは難しいかもしれないけど。
あたしはそう思いながら、まみちゃんの弾くトルコ行進曲に聴き入るのでした。
あたしもいつかこんな風に、ピアノを弾いてみたいな。
球の外にいる時は、あんまり体を使って何かをする事が無いから、体を使ってピアノを弾くなんて事は、あたしにとってすごく新鮮なものなのだ。
球の外にもピアノはあったけど、ほとんどの人が手では弾かない。
だって、手で弾けば「なんで手で弾いてんの?」って言われちゃうし。
逆に不器用な子だと思われちゃう。
友達ゴキさんが私の中に生きてた!と喜ぶ主人公…。
ホロリと来そうでした…。
マターリと続きを期待しております。
電波にのって推参。
やはり・∀・イイ!
続きを激キボン
でももちろんどらみさんのペースで!
何日かまみちゃんと暮らしてみたけれど、まみちゃんはあたしの事をそんなに気にしていないようだった。
それはそれで助かるんだけど、なんか少し拍子抜けと言うか、寂しいと言うか。
たぶんお父さんが、あんまり動揺しない子を選んでくれたんだと思うんだけど。
まみちゃんと暮らしていて分かった事は、まみちゃんは週に四日ピアノのお稽古をする。
その時ピアノの家庭教師の女の人が、まみちゃんの家に来てくれる。
まみちゃんは、その女の人が嫌いなようだった。
それはまみちゃんのお父さんに、何か関係があるようではあったのだけど、あたしもまだよく分からない。
ある日、まみちゃんがいつもの様にピアノのお稽古をしてる時、まみちゃんのお父さんが紅茶を持ってきてくれた。
その女の人とまみちゃんの分と、自分の分だ。
「今日もご苦労さん、ちょっと一休みしたらどうだい?」
まみちゃんのお父さんは、女の人にそう言うと、紅茶を差し出した。
「あらすいませんね、まみちゃんの吸収力がすごいから、私もつい力が入っちゃって。本当に頭のイイ子ですわ」
「まみ、先生が褒めてくれてるぞ。良かったなー、頭がイイって」
まみちゃんは黙っていた。
「まみちゃんはこれからもドンドン伸びていきますね。教えてる私も張り合いが持てます」
まみちゃんのお父さんと女の人は、紅茶を飲みながら少し話をした後、またピアノのお稽古に戻った。
そしてピアノのお稽古が終わり、女の人がまみちゃんの部屋から出ていくと、まみちゃんはこんな事を漏らした。
「私あの女の人、嫌い」
あたしに話しかけてるんだ。
ほとんど喋りかけてこないまみちゃんの行動に、あたしの方がびっくりした。
「え、なんで嫌いなの?まみちゃん」
「わかんない。なんとなく。だけど大嫌い。」
その女の人はまみちゃんにも優しくて、イイ人に見えるのだけど、まみちゃんはこんな事を言う。
なんとなく大嫌いって、言われた方はすごく可哀想だけど、まみちゃんには、まだあたしに言えない何か理由があって、あの女の人を嫌っているのかもしれない。
だからあたしはそれ以上聞かなかった。
そう言えば、まみちゃんの家にはお母さんがいない。
あたしの家みたいに、家を空ける事が多いだけなのかもしれないけど。
でももうこれだけまみちゃんと一緒にいるのに、一度もお母さんと言う存在が出てこない。
ある日、まみちゃんが一人で部屋にいる時、まみちゃんがこんな事聞いてきた。
「ゆみちゃん、あなたはお母さんいるの?」
まみちゃんはいつも唐突に質問してくる。
急に話しかけられて、こっちがビックリする。
「お母さんいるよ。でもなんでそんな事聞いてくるの?」
あたしが聞くと、まみちゃんは教えてくれた。
「まみのお母さんはね、三年前に死んじゃったの。その時お父さんの仕事がうまく行ってなくて、お母さんもお父さんの仕事を手伝ったの」
「まみも心配だったから、何か手伝う事無いの?って聞いたんだけど、まみは何も心配しなくていいんだよ。ってお母さんが言って」
「でもまみは心配だった。でもお母さんは何も心配するなって言って、全部自分で背負ったの」
「お父さんもお父さんで必死だったんだけどね。」
あたしは相槌を打つくらいしかないので、それ以外は黙って聞いていた。
「でね、お父さんの仕事がやっと軌道に乗れた時、お母さんが交通事故にあって死んじゃった」
「その交通事故も、お父さんの仕事を手伝うために、取引先に行こうとしてた時の出来事なんだけどね」
まみちゃんのお父さんは、ある製薬会社の社長さんをしていた。
「ねぇゆみちゃん。あなたのお母さんはどんな人なの?」
「あたしのお母さん…。すごい優しくて、家族の為にがんばってくれてる人だよ。とても感謝してるよ」
それを聞いたまみちゃんは、こう聞いてきた。
「あたしのお母さんもそんな人だったよ。もしそのお母さんが死んじゃって、代わりの人が来たら、ゆみちゃんはその代わりの人をお母さんって呼べる?」
まみちゃんがあの女の人を嫌いな理由が、なんとなく分かった気がしてきた。
本当のお母さんの事を忘れて、違う女の人をお母さんって呼ぶ自分が嫌なんだ。
あたしはそこで、ゴキブリさんの事を思い出した。
「まみちゃん、あたしがまみちゃんの立場の事をちゃんと分かってあげる事は出来ないかもしれないよ。でもね、まみちゃんのお母さんはちゃんと生きてるよ」
そう言うとまみちゃんは顔を上げて言ってきた。
「ゆみちゃんは神様だから、まみのお母さんが生きてるって分かるの?もしいるのなら今会いたい」
「まみちゃん、まみちゃんの心の中にね、お母さんがちゃんと生きてるよ。お母さんの事を思って悲しくなったり、うれしくなったり、色んな事を思うって事が、
まみちゃんのお母さんが生きてるって言う証になるんだよ」
まみちゃんは答えた。
「じゃあまみはどうすればいいの?お母さんの事思っているだけでいいの?」
あたしは答えた。
「まみちゃんの魂は、もうまみちゃんだけの物じゃない。お母さんの魂も混じってる。だからまみちゃんは一人でも一人じゃないんだよ」
あたしがそう言うと、まみちゃんは目をつぶった。
自分の中のお母さんを感じようとしてるのかもしれない。
そして、その日以来、まみちゃんは女の人の悪口を言わなくなった。
何日かたったある日の事、突然まみちゃんが「ギャー」と叫んだ。
台所でご飯を食べていた時の事だった。
その日お父さんは仕事で出かけており、家にはまみちゃん一人だけだった。
何に驚いているのかなと思って見てみると、そこには大きくてカッコイイゴキブリがいた。
「変わって!変わって!」とまみちゃんが言うので、そこで初めてまみちゃんの体を動かす事になった。
「変わったけど、どうすんの?」と聞くと、まみちゃんが頭の中で「ゴキブリなんとかして!」と言う。
あたしはゴキブリさんに愛着がある。
だから叩き潰す事なんて出来ない。
でもゴキブリが家の中で縦横無尽に走り回るのは、あまりよくない事だと言う事も知っている。
そしてあたしは、走り回るゴキブリを手づかみした。
「キャアアアアア、あんた何してんのよー!!!」
頭の中でまみちゃんが悲鳴を上げる。
最初ゴキブリを見事キャッチしたので、声援を送ってくれているのかと思ったら、ただの悲鳴だったのでガッカリした。
「早く捨ててよ!!!何考えてんのよ!!!!!」
まみちゃんが騒いでうるさいので、あたしは窓の外にゴキブリさんを放り投げた。
ゴキブリさんは元気そうにカサカサと茂みの中に隠れた。
それをみていたまみちゃんが、頭の中であたしに怒った。
「早く手洗ってよ!!しんじらんない。やっぱり体貸さなきゃ良かった」
あたしは手を洗った後、まみちゃんの体をまみちゃんに返した。
「まみの体を使ってゴキブリ手づかみするなんて、ひどすぎるよ」
あたしはまみちゃんがなんでそんなに怒っているのか分からなかった。
「まみちゃん、なんでゴキブリつかんだだけで、そんなに怒ってるの?」
「だって汚いでしょ!!!それに気持ち悪い!!」
まみちゃんは、どうやらゴキブリさんが苦手らしい。
そういえば、あたしがゴキブリに憑依した時も、人間は顔に飛びつかれただけで悲鳴をあげていたな。
「ねぇまみちゃん、ゴキブリって人間に嫌われてるの?」
「当たり前でしょ。本当勘弁してよ」
まみちゃんは少しだけ落ち着いてきたようだった。
そこであたしは、まみちゃんに謝った。
「ごめんねまみちゃん、実はね、あたしが一番最初に下界に来た時、憑依した生物がゴキブリさんだったの」
そしてあたしはゴキブリさんとの事を話した。
まみちゃんはあたしの話を聞いた後、こう話してくれた。
「そんな事があったんだ。まみもそんな事知らなかったから、大声出してごめんね」
そして、まみちゃんはこの日以来、時々だけど体を貸してくれる様になった。
何年かたち、あたしはまみちゃんにピアノを教わったおかげで、指先でピアノが弾けるようになっていた。
それでも、まみちゃんの体を使っている訳だから、まみちゃんの体の癖が助けてくれて、上手く弾けるようになっているかもしれないんだけど。
今あたしが弾いている曲は、ボッケリーニって人のメヌエットって言う曲。
なんか安らぐ感じの曲で、あたしはとても気に入ってる。
そしてまみちゃんの嫌いだった女の人は、まみちゃんと仲良くなり、まみちゃんのお父さんと再婚した。
そこからまた何年かたち、まみちゃんに彼氏が出来た。
まみちゃんは、ケンカした時だけ、面倒臭いのかあたしに「変わって」と言う。
ケンカ中に変わられても、あたしはどうしていいのか分からないから、とりあえず穏便に済まそうとするんだけど、それがまた後でおかしくなる。
結局その彼氏とまみちゃんは別れてしまい、まみちゃんはその後三人くらいの人とお付き合いし、三人目の男の人のけいすけさんと言う人と結婚した。
その頃になると、あたしとまみちゃんの意思は、半分溶け合っていて、意思の疎通が前よりも断然楽になっていた。
時々、勘の鋭い人間がこんな事を言う。
「まみちゃんて絶対ただもんじゃないよ」
それはまみちゃんの中に生きているあたしの事に感ずいているからなのか分かんないんだけど。
それか、神様の娘に憑依されても、全然ビクつかないでケロッとしてる元々のまみちゃん自身の事を指してるのかどうなのか。
わかんないけどね。
それからまた何年かたって、まみちゃんは二人の子供を授かりました。
この子供は、あたしの子供でもあるんだ。
もう、まみちゃんとあたしの意思は、完全に溶け合って二人で一人になっているから。
だから、旦那さんであるけいすけさんの事は、あたしも愛している。
そしてこの子供達だって、まみちゃんも愛してるし、あたしも愛している。
この二人の子供には、絶対に幸せになって欲しいと願っているんだ。
それからまた何年かたって、まみちゃんはピアノの先生になっていた。
まみちゃんが弾いていたトルコ行進曲も、最初は難しくて弾けなかったけど、今じゃ練習の成果なのか意思が溶け合ったからなのか、どっちか分からないけど、弾けるようになったのだ!
あたしとまみちゃんは、今日は「エリーゼの為に」を生徒の子達に教えるのでした。
いつかこの子達もピアノが上手くなって、あたしが最初まみちゃんの曲に聴き入ってしまったように、色んな人を音楽で魅了してほしいな。
それはもう、うっとりとするように。
また何年かたった。
二人の子供は大きくなり、長男のかず君は大学を出た後、貿易会社を勤める事になった。
次女のかなちゃんは、音楽大学に行き、ピアノの先生を目指している最中だ。
あたしとまみちゃん。そして旦那さんのけいすけさん、かず君とまみちゃんで、幸せな時を過ごしていった。
そして何十年かたった時、まみちゃんのお父さんがお亡くなりになった。
まみちゃんは静かに涙を流した。
あの女の人も、まみちゃんのお父さんのために泣いた。
その女の人も、何年かたった後、まみちゃんのお父さんに続くように亡くなった。
まみちゃんは、あの女の人の為にも涙を流していた。
それから何十年かたち、まみちゃんとけいすけさんはすっかり年寄りになっていた。
ある朝起きると、けいすけさんが起きてこない。
けいすけさんを見てみると、静かな表情で眠っていた。
そして、それが永遠の眠りについたと気づいたのは、けいすけさんの顔に血の気が無いと言う事に気づいてからだった。
まみちゃんはそっとけいすけさんの隣に寄り添い、冷たくなったけいすけさんと一緒に二度寝した。
二度寝したまみちゃんの瞳からは、うっすらと涙がこぼれていた。
そして、その涙の半分は、あたしの物だったのだと思う。
それから何年かしたある夜の晩、ベッドで横になっているまみちゃんが夢の中で話しかけてきた。
夢の中であたしに話しかけてくるなんて事は、初めての事だった。
「まみちゃん、どうしたの?夢の中で話しかけてくるなんて初めてだよ」
まみちゃんはニコリと笑って答えた。
「いやー、なんかこういうのもいいなって思ってね!」
まみちゃんの素敵な笑顔につられて、あたしも微笑んでしまう。
「夢の中で誰かとしゃべるなんて、あのゴキブリさん以来だなー。」
「そういえばゆみちゃんはゴキブリが好きだったよね。ちょっと私からしてみたら信じられないけどね」
ゴキブリを否定されて、ちょっとカチンときたあたしは、あたしがまみちゃんの体を使ってゴキブリを手づかみした時の事を話した。
「そういえばまみちゃんに初めて体借りた時、あたしが素手でゴキブリ掴んだら、まみちゃんすごい騒いでたよねー。何考えてのあんたー!!とか言って」
まみちゃんは苦笑しながら言った。
「だってあんな事されれば、誰だってああなるよ!感触がこっちまで伝わってくるから、すごい気持ち悪かったんだから!」
そして二人で大笑いした。
「さてと、ゆみちゃん、今までありがとうね。あなたがいたから、私の人生は退屈する事が無かった。とても充実した人生だったよ。本当にありがとうね」
まみちゃんが、もうこれで最後みたいな事を言ってくる。
まみちゃんは、分かっているんだ。自分の寿命が近いと言う事を。
「まみちゃん、もう最後みたいな事言わないでよ。なんでいきなりこんな事言うの?」
まみちゃんは静かに答えた。
「ゆみちゃん、あなたが言ってくれた言葉、覚えてる。あたしが覚えている限り、お母さんは私の中で生きるんだって。ゆみちゃん、あたしの中では、
おかあさんも、お父さんも、お母さんとは呼べなかったけど、あの女の人も、けいすけさんも生きているよ。
このままみんなと生きていきたいから、ゆみちゃん、私の事を忘れないでね」
まみちゃんはそう言うと、じゃあもう行くねと言って白い光の中に消えていく。
まみちゃんはあたしの中で生きている。
絶対にまみちゃんの事は忘れない。
あたしは、白い光に消えていくまみちゃんに向かって、涙をこぼしながらも精一杯の笑顔を作って、手を振った。
「まみちゃん、最高の友達だったよ!あたしの方こそありがとうね!!」
そしてまみちゃんは、光に包まれていった。
気づいたら私は、球の外にいた。
やっぱりあたしは涙を流していた。
お兄ちゃんが前回の様にミルクティーを持ってきてくれた。
「おつかれさん。面白かっただろ、人間」
お兄ちゃんの言葉が耳に入らない。
でももううろたえない。
まみちゃん、憑依させてくれて、本当にありがとう。
まみちゃんが教えてくれたピアノ、こっちの世界でも弾いてみるよ。
そのピアノだって、まみちゃんの一部だから。
>>25 ありがとうございます。
これからも続き読んでくださいね^^
>>26 狩魔さんこっち来てくれたんだニャー。
これからも神様の娘スレをよろしくなんだニャン♪
電波を辿ってやって来たぜ
才能あるよな
着想やアイディアがスゲーよ
下手なプロよかよっぽど面白いな
作家目指してる俺としては羨ましい限りだぜ
37 :
どらみ/_・) :2006/08/07(月) 02:52:43 0
>>36 ありがとうねー。
たぶん電波板の力だよ。色々浮かんできたの。
あそこいるとなぜか色々浮かんでくる。
なんかあっちにいる時とこっちにいる時の書き方変わってきちゃったし(笑
なんだろ、テンションが違うんだよね〜、あの板。
そろそろ大風呂敷広げすぎたから、収集つかなくなってきそうだニャ。
と、おもったどらみは、自分で訳が分からなくなる前に設定を書いたんだニャー。
でも設定はここに書くものじゃないから、どらみの胸の内にしまっておくんだニャ。と心に決めながら、このスレがdat落ちしないようにageるどらみなのでした。
どらみはビビり屋さんなんだニャー♪
かなり真剣になって読んでたよ
面白いね
昔読んで大好きだった降っても晴れてもっていう漫画に雰囲気が似てて
よかったです、これからも頑張って
まみちゃんと一緒に人生を生きても、こっちの世界では一瞬の出来事。
だからこの事を誰かに話しても、まるで夢の事を熱く語っている様な感じになってしまう。
だから、こっちの世界で下界の事を語る人は少ない。
まだあたしは二度しかレベル1を経験していない。
その二度の経験でも、すごいたくさんの事を学んだと自分では思っているんだけど、どうなんだろう。
お父さんに聞いてみた。
「まだお前にはレベル2を許す訳にはいかん。
お前が生きた二つの人生は、下界のなかの氷山の一角の一角の一角の一角程度だ。
まだまだレベル2で的確な判断が出来るとは思えん。」
まみちゃんと一緒に生きた人生を、軽く見られているようで、少し悔しかった。
「あたしだって成長したんだよ!魂の密度が上がっていく大切さだって、身をもって体験したのに!」
お父さんは諭すように言った。
「それが自己の過大評価と言う物だ。お前はまみちゃんと言う、恵まれた環境でしか生きていない。
だからお前の人間に対する評価は、まだ全然偏っているのだ。
レベル2を許されるのは、平均的に考えて10のレベル1をこなさなければならん。
お前にはまだまだレベル2を任す事はできん」
あたしはまだひよっこらしい。
とても悔しいけど、経験豊富なお父さんに言うのだから、あたしの考えはまだまだ子供なのかもしれない。
そしてあたしは、お父さんに言われたように、レベル1をこなしていくのだった。
三回目のレベル1。
今回はあたしが下界の生物を選ぶ事になった。
アメリカと言う国に住んでいる、32歳の男の人。
肌が白くて、とてもハンサム。
あたしは一目でこの人に決めた。
「あたしこの人にする!いいかな?お父さん」
お父さんは押し黙った後、よりによってこいつかとでも言いかねない様な顔をした後、「今回は全部自分で決めなさい」と言って、あたしに任せた。
「決めたこの人にする!じゃあ行ってくるね!」
あたしはそう言うと、下界に降り立った。
あたしが憑依した時、この人は注射器で何かを腕に打っていた。
注射をすると、この男の人はソファーに横になって、緩んだ様な笑顔をしていた。
あたしは機嫌がよさそうなこの人に話しかけた。
「こんにちは」
すると男の人は答えた。
「あははぁ、こんにちは神様よ。」
いきなり一発であたしが神様と言う事がバレた。
「なんであたしが神様だって分かるの?」
そう聞くと男の人は答えた。
「俺が神の存在に近くなってるからさぁ〜ベイビィ〜。」
そう言って男の人は、誰もいない部屋で高らかに笑った。
なんか、あたしと喋っているのに、独り言を言ってる様な変な感じ。
そして笑いが収まったあと、男の人はまたブツブツと喋る。
「神もへったくれもあるかってんだ。くだらねえ幻聴だ。ヒヒヒッ」
なんだか変な人だ。
まともに会話が出来ない人だったので、あたしはこの人に話しかけないで、何日か観察した。
この人の名前はアレックス。
ブロンクスと言う街に住んでいて、仕事らしい仕事をしていなかった。
起きる時間も不定期で、起きたと思ったらあの注射をしてまた寝てしまう。
ある日、注射器の中に入れるお薬が切れた。
アレックスはお薬を買うお金が無くて、困っている様だった。
アレックスはやせ細った体で、あたしが憑依してから始めての外出をした。
なんか尋常な顔をしていなかったので、心配になって話しかけた。
「ねぇあなた、大丈夫?」
「うるせぇ、俺の頭の中に直接話しかけるんじゃねぇ、黙ってろ」
この言葉も、あたしに言ってるのか独り言なのか、よく分からない感じだった。
「やかましいんだよ、何もかも。全部ノイズに聞こえてくるんだよ、薬が切れるとよぉ」
何を言ってるのか分からない。
アレックスは、あるアパートの一室の扉の前に来た。
おもむろにドアをたたき、大声で叫ぶ。
「おいジェシー、俺だ。開けてくれ。お前の顔が見たくなったんだ」
扉の向こうから返事は来ない。
「おいジェシー、いるのは分かってる。お前に会いに来たんだ、開けてくれるだろ」
そう言ってまたドアを叩く。
すると扉の向こうから女の人の声がした。
「また金をせびりに来たんだろ。さっさと帰って。もうあんたとは終わったんだよ!」
追い返すような事を女の人は言う。
「ジェシー、俺はお前に会いに来たんだ。わかんねえか。俺がそんな小さい人間に見えるのか」
「あんたの御託はさんざん聞き飽きたよ。もういいから早く帰って。」
「おい、俺を怒らせていいのか?最後にもう一度言うぞ。ここを開けろジェシー!!」
アレックスは、そう言ってバンバンドアを叩いた。
中から別の男の人の声がする。
「もう我慢できねえ」
そう聞こえたと思った瞬間、ドアが開いた。
そして、中から出てきたもう一人の男の人に、アレックスは殴りとばされてしまった。
殴り飛ばされてうずくまっているアレックスを、男の人は追い討ちをかける様に何度も蹴った。
「ヤク中の負け犬が、さっさと尻尾丸めて帰りやがれ、次来たら殺すぞ」
男の人は、そう言うとアレックスを蹴るのをやめた。
あたしが憑依している男の人は、泣きながら立ち上がってこう言った。
「ジェシー、てめえ誰だこの男は、俺を捨てるのか、お前は、俺の恩を忘れたのかジェシー!!」
「くたばりやがれ」
そう言って、女の人は男の人と部屋の中に入って行ってしまった。
アレックスは、うめき声をあげながら、自分の部屋に帰って行った。
そして、自分の部屋の中で大声で叫んだ。
それは、悲鳴とも怒鳴り声とも思えるような、恐ろしい声だった。
あたしが「大丈夫?」と声をかけても「うるせぇ、うるせぇ」としか言わない。
夜になると、アレックスは銃を持って外に出た。
悪い事が起こる。
とても悪い事が。
アレックスは、ある店に入った。
そして、次の瞬間、店員の人に銃を突きつけた。
「おい、てめえ金を出せ!!早くしやがれ殺すぞ」
店員さんは、とても驚いて恐怖に顔をひきつらせていた。
店員さんは、泣きそうになりながら、お金を買い物袋の中に入れた。
その瞬間、あたしはアレックスから殺意の波動が伝わってきた。
あたしはアレックスの頭の中で「やめて!!」と叫んだ。
アレックスに、あたしの言葉は届かなかった。
銃から放たれた弾丸と言う金属の塊が、店員さんの頭にめり込み、そして反対側から出ていった。
店員さんは動かなくなった。
アレックスは、買い物袋に詰め込まれたお金を持って、店から逃げ出した。
「ハハハァ、これでヘロインが買えるぜ。これで糞いまいましい幻聴ともお別れ出来るぜ」
あたしは、ただ泣いていた。
アレックスは、ノイズがうぜえと言っていた。
アレックスは、そのお金で注射器に入れるお薬を買った。
そして、注射をするアレックスはとても幸せそうだった。
あたしはそんなアレックスと仲良くなれないまま、時間が過ぎて行った。
ある日、アレックスはお薬の量を間違えて、コロッと死んでしまった。
拍子抜けするような、あっけない最期だった。
球の外に出ると、あたしは暗い顔をして立っていた。
お兄ちゃんがいつもの様にミルクティーを持ってくる。
「お前ってすごいのに憑依するよな。とりあえずおつかれ」
アレックスが死んで、ほっとしたあたしがいる。
憑依はいつでも解除出来たけど、途中で投げ出したら諦めた様で嫌だった。
でも、解除してもしなくても同じ事だった。
だってあたしは、アレックスがあのお金でお薬を買って注射をした時点で、諦めていたのだから。
人間に憑依しても、まみちゃんの様に良い思い出ばかりが出来る訳じゃないんだ。
お父さんが、球の外に戻ったあたしに話しかけてきた。
「どうだった、あの人間は?人間もさまざまだろう。」
あたしは正直に答えた。
「一緒にいて具合が悪くなりそうだったよ…。ちょっと今は休みたい…」
あたしはそう言うと、ベッドに横になった。
お父さんはそんなあたしを見て、少し心配そうだった。
お父さん、心配しなくていいよ。
たぶん明日になれば元気になってるからね。
>>38 へー、そんな漫画あるんだ!
一度見てみたい気がするんだニャ…。
これからもがんばりますね。応援ありがとう^^
それはそうと、暗い物語を書くのは、リアルに疲れるニャ…。
次の日、ひろし君たちが遊びに来た。
まだ気分の晴れないあたしは、ひろし君達が遊びに来てくれた事によって、気がまぎれたかもしれない。
ひろし君は少し興奮気味だった。
「なぁ、今日実験するからさ、早く公園行こうぜ」
ひろし君の口から実験とか言う言葉は聞きたくないのだ。
どうせ大人に怒られるようないたずらをしようとしているんだから。
あたしはすぐにピンと来たけどね。
たぶん、金の三角と銀の四角だ。
たぶん、しんじ君が金の三角を持ってきたんだよ。
絶対やる気だよこの人。
あたしは、後ろにいるお父さんに聞こえないように、小声で言った。
「ひろし君、今日作る気なんでしょ。あれ。絶対やめた方がいいよ。なんか取り返しがつかない気がするもん」
「大丈夫だって、誰も来ない空き家があるからさ、そこでやれば絶対バレない」
なんだろう。なんか言葉で言い表せないけど、そういう問題じゃない気がする。
バレるとかバレないとか。
「ここで話してると怪しまれるから、とりあえずついてこいよ」
そう言われて、またあたしはひろし君の口車に乗ってしまったのかもしれない。
空き家に行くと、のぶ君としんじ君がいた。
のぶ君はひろし君に聞いた。
「で、どうすればいいんだ?」
「だから、四角と三角をくっつけるだけでいいんだ。父ちゃんと母ちゃんはそうやって作ってたからな」
「本当にそれだけでいいのか?」
のぶ君は半信半疑のようだった。
「とにかく、やってみれば分かる」
そう言ってひろし君は、しんじ君が持つ金の三角と銀の四角を合わせた。
でも何も起こらない。
「…あれ、何も起きないな」
のぶ君が後ろから野次を入れる。
「おーい、ここまできてこれかよ〜、ちょっと寒いんじゃないの〜?」
「おっかしいな。なんでだろ…。もしかしたら、作る時も男が三角、女が四角を持たなきゃダメかもしれん」
そう言って、ひろし君はあたしの方を見る。
「やだよ、あたしやらないからね。」
そう言ってあたしは後ずさりした。
「ここまで来て何もしないで終わってしまったら、俺は一度決めた事を諦めてしまった男として、自分の歴史に泥を塗ってしまう。俺がそんな男になるのを、お前は黙って見てるのか」
ひろし君はなんかの映画で見た様な事を、自分の言葉の様に使って言ってきた。
「なにそれ、どこから持ってきたセリフ?どう言われても絶対やらないよ」
そもそもあたしがこんなに嫌がるのは、バレるとかバレないとかそういう問題で言ってるんじゃない。
なぜかよく分からないけど、ただやりたくない。
なぜか悪い事だと思ってしまう。
気がまぎれるかと思ってここまで来たけど、あたしがいなきゃ作れないようだし、ここにいて頼まれ続けるのも嫌だったから、帰る事にした。
「ごめん、あたしそう言えば用事思い出したから帰るね」
「このタイミングでそりゃねえだろ!」
そう言うひろし君を背に、あたしは家に帰るのだった。
49 :
トリ無くした狩魔 ◆.wz5LgQYto :2006/08/08(火) 16:41:35 O
ワクワクドキドキ…(・∀・)
なんでひろし君は、いつもいたずらばかりする事ばかり考えているんだろう。
あたしは自分のレベルの事で精一杯なのに。
あたしの同級生で、レベルを経験してる人は少ない。
ほとんどの子が宇宙球を見てるだけ。
触る事も許されない子だっている。
だからあたしは、子供の中では特別な方なのかもしれない。
あたしはもっと小さい頃から宇宙球に触れながら育ってきたけど、宇宙球に触れない子達にとってみれば、触れない物ほど触りたくなってくるのかもしれないんだけど。
そう考えてみれば、ひろし君が毎回いたずらするのはしょうがない事なのかも。
そもそも、なぜあたしが他の同級生が触れない様な宇宙球を触れるのかって言うと、たぶんそれはうちが特別だからだと思う。
お父さんが物理を作った事は言ったと思うけど、最初お父さんが物理を発表した時、お父さんが作った物理宇宙はすごい話題を集めた。
天才博士とか言われて、もうそりゃすごかったんだから。
あたしは何がすごいのかよく分からなかったけど、とにかくそれは今までの宇宙プログラムを見直させるような革新的な物だったらしい。
お父さんの物理宇宙のおかげで、たくさんの人が物理式の宇宙球を作るようになったんだけど、時がたつにつれて物理プログラムで動く宇宙は古くなっていき、今では物理宇宙は古い世代の物となってしまった。
だけど、物理宇宙は扱いやすいらしくて、時代は変わっても物理宇宙を愛する人は、まだけっこういるらしい。
なんだか、マニアとか言われて馬鹿にされてるみたいだけど。
先日もお父さんの後輩がうちに来て、なんか熱く語ってた。
なんだかすごい難しい事言っててよく覚えてないんだけど、螺旋的な運命の階段がどーとかこーとか言って、要するに物理宇宙は素晴らしいって。
新しい物好きのミーハーですよ、彼らは。とか。
お父さんはそれ聞いて笑ってるだけだったけど。
お父さんは、時代の流れに押されて、一線を退いた。
で、今じゃ家だけで細々とやってんだけど、お父さんに代わってお母さんが、物理プログラムを一から見直して、もっと使いやすくした物を開発しようと研究してる。
だからたまにお母さんが家に帰ってくると、お父さんと仕事の話して、また研究室に行っちゃう。
お母さんはお父さんの助手だった人で、最初はお父さんの作った物理プログラムの素晴らしさに感動してたらしい。
で、一緒に研究する内に好き同士になっちゃって、結婚しちゃったんだけど。
それで、研究の情熱から冷めたお父さんの代わりに、いまだに物理プログラムの可能性を信じるお母さんが、がんばるようになっちゃった。
それもお父さんの事を愛してるから出来る事なんだと思うんだけどね。
もう一度物理プログラムに、世間を振り向かせられれば、お父さんに振り向いてもらったのと同じ事だから。
話がちょっとずれちゃったけど、あたしはそういう家に生まれちゃったから、自然と宇宙球に触る機会が多かったし、やっぱり物理プログラムを作った親としては、子供にも早い内から覚えて欲しいって言うのがあったのかも。
あたしは面白いからいいんだけど。
でも他の家の大人達は、博士じゃないただの一般人。
だから子供の内から宇宙球に触れさせるのは、ちょっと難しいのかも。
そう考えてみると、あたしは恵まれているほうなのかもしれない。
家に帰ると、お父さんとお母さんが研究の話をしていた。
「ただいまー」
「おかえり、ひろし君達と遊びに行ったんじゃなかったの?」
ひろし君達が今何をしようとしていたか言いたかったけど、あたしが悪者になるのが嫌だったから、金の三角と銀の四角の事は言わない事にした。
でも、いたずらをしたくなるひろし君達の気持ちも分かるから、あたしはお母さんにこう言った。
「ひろし君は男の子同士で遊んでるよ。お母さん、研究がんばってね」
そう言うと、お母さんはニッコリ笑って「ありがとう」と言ってくれた。
いつか、他の家庭でも、子供の内から宇宙球に触れさせられるような時代が来るといいな。
それから何週間かが過ぎた。
あたしはレベル1を何度か行った。
まみちゃんの様な幸せな人生も、アレックスの様な悲しい人生も、鳥の様な自由な人生も、奴隷の様な苦しい人生も、色々経験した。
最後のレベル1が終わった後、お父さんがレポートを出せと言ってきた。
もしかすると、レベル2に行く為のレポートなのかもしれない。
「お父さん!これもしかしてレベル2に行けるようになるかもしれないレポートなの!?」
お父さんはうなずいた。
「お前ももうすでに12回のレベル1を行った。そろそろ下界の生物の事も、理解してきただろう。知性と言う物の、良い部分や悪い部分も分かってこそ、初めて下界を管理出切るのだ」
とうとうあたしがレベル2に行けるかもしれない。
レベル1を何度も行うのは、一つの人生だけだと考えが偏るかららしい。
生物は、状況が変われば精神的な論理も変わってくる。
その状況の中で、一貫とした物を確立する事が神の使命らしい。
それがないと、レベル2に行った時に、ただ暴れてヒャッホーイ!な神様になっちゃうんだって。
時々、人間の中にもすごい固体がいて、一度の人生で一貫した論理を確立するらしいんだけど、本当に稀らしい。
それを悟りって言うらしいんだけど、一部をのぞいたほとんどの人が勘違いしてるらしい。
あたしの中にある、確立した論理が悟りって言うのかよく分からないけど、とにかくあたしはレベル2に行けるかもしれないんだ!
すごいワクワクする。
その日あたしは、自分の中にある確立した論理を、レポートに書き綴ったのだった。
お父さんにレポートを出した。
お父さんは満足そうな顔をして言った。
「もうお前は下界に降り立って、神の力を使ってもいいだろう。よく頑張ったなおめでとう」
そういうお父さんに、あたしはうれしくて抱きついた。
「ありがとうお父さん!これで次からレベル2に行ってもいいんだね!」
お父さんはうなずいた。
あたしはうれしくて、この喜びをひろし君達に教えたくなった。
そして、あたしはひろし君の家に遊びに行った。
インターホンを押すと、ひろし君のお母さんが出てきた。
「あらこんにちは、ひろしはでかけてるわよ。あたしもひろしに用があったんだけど、もしひろしを見つけたら家に帰ってくるように言ってくれないかしら?」
「わかりましたー、ひろし君見つけたら言っておきますね〜」
せっかくあたしがイイ気分なのに、ひろし君はどこかにでかけているらしい。
あたしはその後、のぶ君の家としんじ君の家にも訪ねたけど、やっぱりみんないなかった。
あたしをさしおいて何をしているのやら。
みんなでかけているので、あたしはしょうがなく家に戻った。
家に戻ると、お父さんが宇宙球のメンテナンスをしていた。
丁度今日メンテナンスの日だったらしい。
「お父さん、メンテナンスしてるって事は、あたしもう中に入れるの?」
「入れるさ。その為に今日に合わせてレポートを出すように言ったのだからね」
あたしはもう下界に降りたくてウズウズしていた。
ひろし君達に言ってから入ろうかと思ってたけど、よく考えたら自慢にしか聞こえないだろうしね。
やっぱりひろし君達には言わないでおこう。
さっきまで嬉しすぎたから、うかれてたよ。
うかれていると、我を忘れるのがあたしのダメな所だな、うん。
レベル2と言うのは、下界の生物に憑依するまではレベル1と同じなんだけど、レベル1と大きく違う所は、レベル2は神の力を持ったまま下界の生物に憑依すると言う事だ。
この力を使う者の事を、人間は神の子とか言ったりする。そのままなんだけど。
他にも色々な呼ばれかたする。
救世主だとか超人だとか、悪魔だとか。
悪魔とかって、ひどい事言わないでよって感じなんだけどね。
レベル2をする事によって、神の力がどれだけ下界に影響を及ぼすか、それを身をもって体験しなければならない。
この段階を無視してレベル3に行ってしまうと、ろくにメンテナンスも出来ない神になってしまうのだ。
ただ、神の力は下界の生物にとって別次元の物だ。
使う神の力が強大であればあるほど、憑依されている固体の体は耐える事が出来ないらしい。
審判級の力を使えば、たぶんもう下界にいる事は出来ないと思う。
今回は、初めてのレベル2と言う事もあって、お父さんが全部設定してくれる。
あたしはお父さんに任せて、ある時代のある場所に降り立つのだった。
age
56 :
夢見る名無しさん:2006/08/13(日) 08:22:39 O
age
期待age
ある時代のある国の話です。
ナンダと言う男の子がいました。
旅芸団に身をおくナンダは、親も兄弟もいない男の子です。
家族のいないナンダにとって、旅芸団は家族も同然でした。
体の弱かったナンダの母は、ナンダを産むと死んでしまいました。
夫を先に亡くしたナンダの母は、ナンダを旅芸団の仲間達に託したのでした。
ナンダの旅芸団は、一つの街に数週間滞在し、毎晩踊りや曲芸を町の人々に見せて、食べ物やお金をもらいます。
そして、次の街へ行き、また街の人々に芸を見せて、食べ物やお金をもらいました。
ナンダの旅芸団は、そうやって生活していました。
ナンダの旅芸団が、次の町へ行く旅の途中の事でした。
ナンダの旅芸団は、ある大きな菩提樹の近くで夜を過ごす事に決めました。
強い日差しから守ってくれるこの菩提樹には、いつもたくさんお動物達で賑わっていました。
赤ちゃんの鳴き声がします。
気になったナンダは、その泣き声を追っていきました。
旅芸団の親方のマドラスがナンダに言います。
「木の下に行ってもいいが、蛇に気をつけろ」
「分かってるよ」
木の下に行くと、蛇が木の上から落ちてきて、咬まれる事があるからです。
泣き声を追って、菩提樹の下に行くと、そこには白い蛇に抱かれるようにして、赤ちゃんが泣いていました。
ナンダは驚きました。
「蛇はいたけど、赤ちゃんを抱いているなんて」
そして赤ちゃんは、ナンダと目を合わせると、泣くのをやめて嬉しそうな笑顔になりました。
赤ちゃんは、抱っこしてとでも言いたげに、ナンダに両手を向けました。
ナンダが近づくと、白い蛇は去っていきました。
ナンダは赤ちゃんを抱き上げると、嬉しくなって親方の元に持って行きました。
「マドラス、赤ちゃんが落ちてた」
マドラスはギョっとして、その赤ん坊どうするんだ、とナンダに訪ねました。
そうしていると、旅芸団の仲間達が集まってきて、嬉しそうに赤ん坊を抱き合っていました。
「えらくベッピンな娘だ、この娘はいい踊り子になるぞ」
芸団の一人がこう言いました。
ナンダはそれに合わせて、親方に言いました。
「ねえ親方いいだろ、俺が世話するから、この赤ん坊育ててもいいよな」
親方は言いました。
「…しょうがねえ、この菩提樹のそばで休憩するって決めた時点で、この娘は俺達が育てるカルマだったんだろう」
マドラスはそう言うと、任せたぞと言ってナンダの肩を叩きました。
ナンダは妹が出来て、とても嬉しそうでした。
嬉しそうにしているナンダに、旅芸団の女が聞きました。
「ねぇナンダ、この子名前どうするんだい?女の子なんだから、美しい名前にしなきゃもったいないよ」
ナンダには、良い名前が思い浮かびません。
「なんか良い名前あるかな?良い名前って言うのがどういう物なのか分からない」
ナンダがそう言うと、アグリーチャと言う旅芸団の青年が言いました。
「この子は、白くてとても綺麗な肌をしている。同じように、白い肌の美しい女神の名前をつけたらどうだ?」
ナンダは聞きました。
「その女神の名前はなんて言うんだ?」
「サラスヴァティ。芸術と学問の女神さ」
アグリーチャがそう言うと、ナンダはその名前が気に入ったようでした。
「よし、お前の名前はサラスヴァティだ。大事に育ててやるからな」
ナンダがそう言うと、サラスヴァティはキャッキャッと言って喜びました。
そして、サラスヴァティは旅芸団の一員になったのでした。
本当の家族のいないナンダにとって、旅芸団の者達は家族同然でしたが、ナンダは本当の妹が出来たように思えて、とても嬉しかったようでした。
サラスヴァティはとても頭の良い子でした。
まだ乳飲み子だったサラスヴァティでしたが、旅芸団で育てられる様になって、一ヶ月もしない内に、「ミルク」とか「おしっこ」とか言う単語を言う様になったのです。
サラスヴァティの言葉を覚えるスピードは、とても早いものでした。
三歳で会話出来るようになってしまったのです。
それを見て大人は、「この子は特別な子だ、とても頭が良い」と言って褒めました。
ナンダは大人がそう言うのでとても気分が良かったようです。
「なんたって俺の妹だからな」
ナンダがそう言うたびに、サラスヴァティは喜びました。
サラスヴァティは、よく世話をしてくれるナンダに、とてもなついていました。
ナンダはまだ子供でしたが、自分でサラスヴァティを育てる為に、芸を覚えるのでした。
ナンダは笛の演奏者になりました。
ナンダは琴と太鼓のリズムに合わせ、笛を吹きます。
そして、楽器の演奏に歌が入ります。
歌が入ったのと同時に、中央にいる踊り子が踊りはじめます。
これがナンダ達が行う主な見世物でした。
まだ子供だったナンダも、サラスヴァティを拾った以上、自分で育てなければいけないと思い、笛を覚えるのでした。
そして、サラスヴァティは成長していきます。
サラスヴァティが五歳になった時、ナンダは12歳でした。
五歳年の離れた兄弟です。
サラスヴァティは、踊り子のミンディラの踊りを見るのが好きでした。
そして、ミンディラの踊りを真似して踊っていました。
サラスヴァティは、いつか自分が踊りたいと思っていました。
サラスヴァティは聞きました。
「ねぇナンダ、私もミンディラの様に踊りたい」
ナンダは言います。
「いつか踊れるさ。そのためにも、ミンディラの踊りを今から見て覚えるんだ。」
サラスヴァティは、ミンディラに踊りを教わりながら、旅芸団の雑用をしていったのです。
水を汲み、草をやり、ヤギと馬の世話をします。
料理の為に、市場まで行き、食材を買ってきます。
団のみんなの服が汚れたら、洗濯をして、服を乾かします。
サラスヴァティは、大変でしたが、そうやって大人達の手伝いをしていました。
ある日、サラスヴァティが水を汲みに川へ行くと、サラスヴァティと同じくらいの年の頃の女の子が、大人の女の人と水遊びをしていました。
女の子は、女の人をお母さんと呼んでいました。
サラスヴァティは、その女の子が「お母さん」と呼ぶその姿を見て、なぜかうらやましくなりました。
サラスヴァティは水を汲み終えると、ナンダの所に行って聞きました。
「ねぇお兄ちゃん、私と同じくらいの女の子が、一緒に遊んでいた女の人をお母さんと呼んでいたの、私と同じくらいの女の子は、いつだって一緒にいる女の人をお母さんと呼んでいるけど、
お母さんってどういう人の事を言うの?」
ナンダは言いました。
「お母さんって言うのは、自分達を産んでくれた人の事を言うのさ。俺のお母さんは俺を産んで死んだ。
サラのお母さんは…」
ナンダは口ごもりました。
正直に話して、サラスヴァティが傷ついたら可哀想だと思ったのです。
だからナンダは、嘘をつきました。
「サラのお母さんも、サラを産んで死んだ。だからその代わりに、芸団のみんなが家族になってくれたのさ」
サラスヴァティはそう聞いて、寂しくなりました。
お母さんと呼べる存在が欲しかったのです。
サラスヴァティがお母さんと呼べる存在は、芸団の中にはいなかったからです。
ナンダは言いました。
「でも俺達が家族だ。寂しがる必要なんか無い。」
そう言ってサラスヴァティを慰めました。
サラスヴァティはそう言われて、笑顔で返しました。
その後、ナンダは考えました。
「そういえば、サラの親はなんであそこにサラを捨てたんだろう。あの白い蛇は一体なんだったのだろう?」
ナンダは、サラスヴァティが白い蛇に抱かれて菩提樹の下にいたと言う話を、芸団のみんなに言いました。
でも、みんなは笑って信じてくれませんでした。
白蛇がなぜ赤ちゃんを抱いている必要があるんだと言って。
ホントだって!とムキになるナンダでしたが、全然信用してくれませんでした。
ナンダはその後、その事を人に言うのをやめました。
自分が嘘つき扱いされてしまうからです。
サラスヴァティは、ナンダにとっては妹も同然でした。
ですが、ナンダはその一方で、サラスヴァティは特別な人間かもしれないと感じていました。
美しい白い肌、そして頭の良いサラスヴァティ。
それだけでもすごいと思われがちですが、そのサラスヴァティは最初、白い蛇に抱かれていたのです。
ナンダは、何か運命の様な物を感じてなりませんでした。
ですが、それを知るのは、ナンダ一人だけ。
あとの人間は、ナンダの話を作り話と思って信用してくれません。
いつか一人で真実を知るナンダは、サラスヴァティがもう少し大人になったら、この事を言おうと心の中で決めたのでした。
設定がおもろい!
伏線の張り方もドキドキ(*’д`)
期待上げさせてください。
65 :
夢見る名無しさん:2006/08/19(土) 20:09:52 O
あげ
66 :
夢見る名無しさん:2006/08/20(日) 14:32:33 O
あげ
67 :
夢見る名無しさん:2006/08/22(火) 12:22:05 O
保守
68 :
夢見る名無しさん:2006/08/23(水) 01:21:17 0
hoshu
69 :
どらみ/_・) :2006/08/25(金) 22:19:00 0
あげておいてくれてありがとうございます!
70 :
静養男:2006/08/25(金) 22:28:10 0
全部ウソ
サラスヴァティが14歳になった時、踊り子のミンディラが踊っている最中に足をひねって怪我をしてしまいました。
見世物の主役である、踊り子のミンディラがいなくては困ります。
どうしようかとマドラス達が困っていた時、ナンダが言いました。
「サラは、ミンディラに踊りを教わってた。サラを出したらどうだろう」
ナンダがそう言うと、マドラスは何をバカな事言ってんだこのガキとばかりに、ちょっとお前大人同士の話してるから引っ込んでてくんないかなと、ナンダに言いました。
ナンダはちょっと怒りました。
「ガキ扱いしてもいいけどさ!サラの踊りを一度でも見てから引っ込めとか言えよな!」
ナンダが真っ赤な顔をしてそう言うと、アグリーチャは大笑いしていました。
「お前、顔が真っ赤で猿みたいだ」
「なんだとこの」
ナンダはここで口をつぐみました。
「ハゲ!」と言いそうになりましたが、団員みんながいる前でそんな事を言ってしまったら、さすがに恥をかかせすぎだと思ったので、ナンダは抑えました。
アグリーチャが、マドラスに言いました。
「でもまぁ、見てから決めてもいいんじゃない?」
「バカ野郎お前、そういう問題じゃ…」
マドラスがアグリーチャにそう言い返そうとした時、他の団員達もサラの踊りを一度見てからでもいいだろと言いました。
マドラスは、みんなの意見に押されて、しぶしぶサラの踊りを一度見てから決めてやるよ、と言いました。
マドラスはアグリーチャを連れて、二人きりの場所に行きました。
「おい、ミンディラの足が治った時どうすんだよ?」
アグリーチャは言いました。
「またミンディラに戻せばいいだろ?駄目なのかい?」
マドラスは続けます。
「もしサラの踊りがミンディラよりも上手かったら、ミンディラは自分から踊り子の座をサラに渡すだろう」
もしミンディラが踊り子の座をサラスヴァティに渡したら、今まで踊っていたミンディラはどうなるのでしょうか?
どうなるか先の見えない事が、マドラスを困惑させていました。
その時、サラスヴァティは、馬の世話をしていました。
ナンダがサラスヴァティを呼びにいきます。
「サラ、お前今日一度みんなの前で踊ってみろ」
サラスヴァティが驚きます。
「え、なんで私が?」
「ミンディラが足をひねったんだ、もしお前の踊りが客に見せれるものだったら、お前が出る事になるかもしれない」
ナンダがそう言うと、サラスヴァティはちょっと困ったなと言う顔をして言いました。
「ミンディラの代わりなんて出来ないよ!自信ない!」
サラスヴァティはそう言いましたが、ナンダは聞きません。
「いいから踊ってみろよ!お前が決めるんじゃない、みんなが決めるんだ!」
そう言って、ナンダはサラスヴァティの手を引っ張って、みんなの元に連れていきました。
「連れてきたぞ!」
みんなサラスヴァティを見て、ワクワクしていました。
「音楽に合わせて踊ってみればいいんだ。いつも横から見てただろ」
ナンダはそう言いました。
「でも実際に踊った事ないのに」
マドラスは言いました。
「一度お前が踊れ。衣装はミンディラに借りろ」
サラスヴァティはミンディラに衣装を借りにいきました。
「ミンディラ、今日は私に踊ってくれって言うの。だからミンディラに衣装を借りろって」
ミンディラは快く了承してくれ、衣装をサラスヴァティに貸しました。
「ありがとう、ミンディラ。でも緊張するわ、どうしよう」
サラスヴァティがそう言うと、ミンディラは言いました。
「大丈夫よ、音楽にだけ耳を傾けていればいいの。余計な事は考えちゃ駄目。いつも練習してたんだから、そうすれば絶対に上手くいくわ」
「ありがとう、でも怖いわ」
「大丈夫、あなたならね」
ミンディラはそう言いながら、サラスヴァティに衣装を着付けました。
「すごくお似合いよ、サラ。とても綺麗ね」
「どうしよう、恥ずかしい」
外からナンダの声がします。
「おーいまだかよぉ」
「行かなきゃ、ミンディラにも見ててもらいたかったけど、足痛いものね。じゃあ行ってくるわ」
「頑張ってねサラ」
そして、サラスヴァティはみんなの場所に戻りました。
踊り子の衣装を着たサラスヴァティを見て、みんなはその姿に目を奪われました。
「なんだか恥ずかしいわ」
そう言うサラスヴァティに、みんなは「綺麗だ」と言っていました。
みんながサラスヴァティを囲んでいると、アグリーチャが言いました。
「よし、じゃあそろそろ始めよう」
なぜかデレデレしていた男達も離れ、演奏者達は自分の楽器の持ち場につきました。
サラスヴァティを中心に、楽器の演奏者達が囲み、演奏を始めました。
サラスヴァティは、演奏が始まると少し緊張した面持ちをした後、目を瞑って音楽に耳を傾けました。
演奏が始まっても、まだサラは動きません。
みんなは黙ってそれを見ています。
いつのまにか後ろで見ていたマドラスが、演奏に合わせて歌い始めました。
すると、サラスヴァティもその歌に合わせて踊りを始めました。
サラスヴァティの踊りは、とても素晴らしい物でした。
しなやかで張りのある動きが、サラスヴァティの白い肌をより一層際立たせて、とても美しく見せていました。
サラの踊りを見ていたナンダは、いつの間にか宇宙にいました。
ナンダの体は、ある方向に加速していきます。
たくさんの星を越え、とてつもないスピードで加速していった先に、ある星がありました。
その星の中に入っても、ナンダのスピードは衰える事が無く、ナンダの体はどんどん地表に近づいていきました。
そして、ある町の上空である事に気がつきました。
そして、もっと近づいていくと、何人かが一人の少女を囲んで、楽器を演奏している姿が見えました。
ナンダはもっと近づいていきます。
ある少年の頭上にまで近づいた時、ナンダは気がつきました。
「あれは俺だった」
ふと気がつくと、ナンダはサラスヴァティの踊りを見ていました。
74 :
夢見る名無しさん:2006/08/28(月) 04:34:30 0
あげ
お、いつの間にか再開してる
のんびり頑張れ
「今のは一体?」
ナンダは、今自分に起こった事が、現実とも夢の様にも思え、空を仰ぎました。
どんなに手を伸ばしても、届く事の無い空の上の上にいたおかしな感覚。
ですが、さっき見た光景がただの幻覚だとは思えませんでした。
周りを見ても、別段変わった様子はありません。
とりあえずナンダは、サラスヴァティの踊りが終わるまで、演奏を続けました。
そして、サラスヴァティの踊りが終わると、みんなの歓声に包まれました。
「サラ、お前すごいじゃないか!これなら踊りを任せられるぞ」
みんな口々にそう言いました。
いつのまにか、ミンディラもサラスヴァティの踊りを見にきていました。
サラスヴァティはミンディラの所に行き、ちょっとだけ戸惑った様子でミンディラに聞きました。
「ミンディラの言う通りにやってみたんだよ。ありがとうミンディラ。とても気持ちよく踊れた」
ミンディラはニコリと笑って、もう一人前だよ。とサラスヴァティに言いました。
そして、その夜からはサラスヴァティが踊るようになりました。
それでもミンディラは笑っていました。
そしてある日、マドラスは言いました。
「みんなには黙っていたが、ミンディラとアグリーチャが結婚する、式は明日、団員だけで行う。その後ミンディラ達は、故郷に帰る事になるから、盛大な結婚式にしてやれ」
団員達は驚きました。
なかでも一番驚いたのは、サラスヴァティでした。
「なんで急に!」
サラスヴァティがそう言うと、アグリーチャが言いました。
「ちょうどいいタイミングだったのさ」
そしてミンディラも言います。
「ごめんねサラ。踊りはあなたに任せたから、頑張るのよ」
ミンディラとアグリーチャは、いつか二人で暮らしたいと思っていました。
でも、踊りの主役であるミンディラがいなくなっては、団の存続に関わってしまいます。
マドラスとアグリーチャは、ミンディラが足を怪我したとき、相談しました。
サラスヴァティに踊ってもらって、もしそれがミンディラよりも上手かったら、その後どうするのかと。
「もしサラの踊りがミンディラよりも上手かったら、ミンディラは自分から踊り子の座をサラに渡すだろう」
マドラスがそう言った後、アグリーチャは言いました。
「ミンディラがもしそう言うなら、俺がミンディラの面倒を見る」
アグリーチャとミンディラは、団員達には秘密でしたが、恋人同士なのでした。
そして、アグリーチャはその事を初めてマドラスに告白しました。
「そうか、こうなるのも神様の思し召しだったのかもしれないな」
マドラスはそう言うと、サラスヴァティの踊りを確かめに行ったのでした。
ミンディラはサラスヴァティに言いました。
「ありがとう、あなたのおかげで、私達は結婚出来るわ。旅芸団続けるなら、いつか私達の町にも来てちょうだいね」
結婚式は旅芸団の中だけで行われたので、盛大とは言えないものでしたが、いつもよりもたくさんのおいしいご馳走が振舞われました。
「今日だけはジャンジャン食え。二人の大事な門出だ。派手に祝え」
マドラスはそう言いながら、酒を飲みます。
他の団員達も、酒を飲みます。
いつも賑やかな旅芸団が、いつもより増して賑やかになっていました。
そしてサラスヴァティも、少しだけお酒をいただきました。
最後の踊りだと言って、みんなで踊りました。
いつもは見ているだけの者も、踊りに加わって踊りました。
その晩は、みんなで踊り明かしました。
そして次の日の昼、ミンディラとアグリーチャは、マドラスに馬と服と食料をもらって、団と別れを告げていきました。
サラスヴァティは、ミンディラとアグリーチャが見えなくなるまで手を振っていました。
手を振るサラスヴァティは、最後まで笑顔でした。
やがてお互いの姿が見えなくなると、ミンディラとアグリーチャは話し始めました。
「とうとうお別れしちゃったな。もうあいつらとも会えないんだな」
「そんな事は無いわ、いつか私達の町にも来てくれるって言ってたわよ。だからいつか来るわ」
「いつの事だろうな。それにしても、サラの踊りはどうだ?」
「最高よ。私の踊りなんかより、全然上手いわ。それに…」
「それに…なんだ?」
「あの子の踊り、普通じゃない」
「普通じゃない…。どんな風に?」
「時々見ていると、現実か夢なのか分からなくなってしまう事がある」
「…」
「ごめんなさいね、忘れてちょうだい。あなたには分からないわよね」
「…いや、分かるさ。あいつはもしかしたら特別な奴なのかもな」
「特別…そうね。特別な子なのかもね」
二人はそんな風に話しながら、故郷に向かったのでした。
続き期待hο∫hμ..._〆(・ω・` )
面白いのであげさせてもらいます
81 :
どらみ/_・) :2006/09/04(月) 03:33:11 0
あげてくれててありがとう!
ある日、ナンダとサラスヴァティは二人で散歩をしていました。
サラスヴァティは言います。
「あの菩提樹の下に行って休もうよ」
ナンダは言いました。
「木の下は蛇が落ちてくるから危ないぞ」
ナンダはそう言った時、ある記憶が思い起こされました。
ナンダが菩提樹の下で、サラスヴァティを見つけた時の事でした。
ナンダは今までその事を、サラスヴァティに言い出せずにいたのです。
ナンダは、もう今言えなかったら一生言えなくなると思いました。
「サラ。お前にまだ言ってない事があるんだ。」
ナンダとサラスヴァティは、菩提樹に歩いて近づきながら話しました。
「え、何を言ってないの?」
サラスヴァティがそう聞くと、ナンダは言いました。
「これは、俺だけしか知らない事なんだ。他の奴に言ったけど、みんな俺がホラを吹いてると思って、信用してくれなかった。
そしてそれは、サラ、お前の事なんだ」
サラは黙って聞いていました。
「なぁサラ。俺はお前に嘘をついていた。もっと前にこの事を言おうと思っていたけど、子供のお前がショック受けるんじゃないかって思って、今まで言えなかったんだ」
「分かったわお兄ちゃん。いいからもう教えてよ」
サラスヴァティは、一体それが何の話なのか、聞かずにはいられませんでした。
「じゃあ分かった。言う。お前の母親も父親も、お前の親族と名のつくもの達は、俺たちは誰も知らない。」
サラスヴァティは押し黙って聞いています。
「つまり、お前は捨て子だった。今菩提樹の下にいるが、これよりも大きな菩提樹の下に、お前はいた」
サラスヴァティは、押し黙りながら、下を向いていました。
「お前は、白い蛇に抱かれていた。俺が近づくと蛇はどこかに行ってしまった。そしてお前を抱きかかえて、みんなの元に戻ったけど、白い蛇の事は誰も信じてくれなかったと言う事さ」
サラスヴァティは下を向いていました。
「…俺の話は以上だ。もっと前に喋れば良かったかもしれんが、タイミングが無かったんだ。今まで黙っててごめんな」
するとサラスヴァティは顔を上げて笑いました。
「なーんだ、そんな事だったの?すごい深刻に言うから、なにかと思ったよ。
別にもう誰がお母さんだとか、気にならないよ。私には団のみんなが家族みたいなものだし。
白い蛇?はよく分からないけど、覚えておくよ。本人の私が聞いても信じられないけどね」
ナンダはあっけにとられていました。
サラスヴァティに本当の事を今まで黙っていたので、サラスヴァティが悲しみに包まれてしまうのではないかと思っていたのです。
サラスヴァティは言いました。
「でも、これから隠し事はしないでよね、兄弟なんだから」
ナンダはうなづきました。
そして、ナンダの事を責めなかったサラスヴァティに、ナンダは心から感謝していました。
84 :
どらみ/_・) :2006/09/05(火) 13:23:40 0
ある町の、老人の僧侶は、座禅を組んで、静かに佇んでいた。
サラスヴァティが水を汲みにいく度に、その老人の僧侶は必ずその場所で座禅を組んでいました。
一週間ほどたちました。
サラスヴァティは夕方になり水を汲みに行きました。
またあの老人の僧侶がいます。
サラスヴァティは、座禅に集中している老人に悪いと思って話しかけられませんでしたが、明日には次の町に行ってしまうサラスヴァティは、この時しか話す時がありませんでした。
サラスヴァティは、老人に話しかけました。
「こんにちは…もう日が暮れてきたから、こんばんはかしら」
老人は静かに目を開けて、サラスヴァティの方を見ました。
「何か用かね」
老人がそう聞くと、サラスヴァティは答えました。
「いつもここで座禅を組んでいるから、気になって…」
老人はニコリと笑いました。
「優しい子じゃ」
老人はそうつぶやきました。
「え、なんでですか?」
サラスヴァティがそう聞くと、老人は答えます。
「他人に話しかけるのは、優しさが無いと出来ない事だからじゃよ」
そう言われたサラスヴァティは、とても嬉しくなりました。
「ありがとう僧侶様」
サラスヴァティが礼を言うと、老人はゆっくりとうなづき、また目をつぶりました。
サラスヴァティは、老人の前に座りました。
その老人は、まるで時が止まったかの様にじっとしていました。
また話しかけても、本当に動き出すのか不安になるほど、じっとしています。
それはまるで、彫刻の様でした。
「あ、あの」
動かなくなってしまったのかと思い、もう一度サラスヴァティが話しかけます。
すると何事もなかったかのように、老人は動き始めます。
「なんだね」
「い、いえ…ごめんなさい」
「なにか聞きたい事があると言った顔をしとるが」
サラスヴァティは、この老人がなぜこんな事をしているのか気になっていました。
「僧侶様は、なぜ座禅をしているのですか?」
サラスヴァティは思い切って聞きました。
老人は答えました。
「座禅は、心を無にする為に行う。心が無になれば、宇宙と一体になる。宇宙と一体になれば、自ずと自分の目的が分かるのじゃ」
サラスヴァティは老人の言った言葉を聞いて、さっき老人が彫刻の様に固まっていた理由が分かりました。
あれは、宇宙と一体になっていたのだと。
だから見てて変な感じがしたのでした。
人間の様で、人間じゃないような。
まるで大地とそのまま繋がっているかのように見えたからです。
「僧侶様は、目的が見つかったのですか?」
老人は答えました。
「わしの目的は、生きている限りは見つからんよ」
サラスヴァティは不思議に思いましたが、これ以上聞くのは失礼だと思い、聞くのをやめました。
「お嬢さんや、カルマを知っておるかね」
サラスヴァティは答えました。
「運命…の事ですか?」
「運命よりも、より数学的な根拠のある物じゃ。原因があり、結果がある。カルマとは、その数式の事を指すのじゃ」
サラスヴァティは不思議そうに聞いています。
「器の小さな容器に、たくさんの水を汲んだらどうなる?こぼれるだろう。力の弱い人間が、力の強い人間と腕相撲をしたら、負けるだろう。
わしもじゃ。わしの器は小さかったのじゃ。それなのに、大きな物を求めたから、永遠に目的は見つからないのじゃ。
こうやって、何も見つけられないまま死んでいくのが、わしのカルマなのじゃ」
この老人は、悲しいカルマを背負っていたのです。
目的を見つける事すら出来ずに、死んでいくのです。
「僧侶様は、一体何を求めたのですか?」
サラスヴァティが聞くと、老人は答えました。
「大いなる物じゃ。わしの手では扱えない様な物じゃ。一度はそれを手にしたが、それに振り回されてしまっての。
今ではこうして落ちぶれてしまったと言う事じゃよ」
そして老人は、また座禅に入りました。
サラスヴァティは、老人に手を合わせてから、みんなの元に戻りました。
その晩、サラスヴァティはカルマについて考えながら、枕につきました。
「私がこうやって、この団にいる事が出来るのも、やはりカルマのおかげなのだろうか。
ナンダやマドラスや、団のみんながいて、私が存在している。
みんなは優しいから、私を拾ってくれた。そして、私も団のみんなが好きだから、ここにいる事が出来るんだ。
お互いに惹きあっているから、今こうしている事が出来る。
だから、これは必然的な事だったんだ。
やっと意味が分かった。
全て当たり前の事なんだと。
それさえ分かれば、喜びも悲しみも、全て同じ様に受け入れる事が出来るのだと」
そしてその夜、サラスヴァティの夢の中に、白い蛇が出てきました。
白い蛇は言いました。
「やっと分かった様だね。これならお前に、全てを託す事が出来る」
87 :
どらみ/_・) :2006/09/05(火) 13:25:55 0
サラスヴァティは聞きました。
「なんの事ですか?あなたは私を抱いていた白い蛇?」
白い蛇は言いました。
「そうだよ。私はお前の親の化身。お前が今いる世界では、私達の姿を表す事が出来ないから、こうやって白い蛇の姿でお前の前に現れているのだよ」
サラスヴァティは聞きました。
「私の親?化身?姿を表す事が出来ない?一体どういう事なの?」
白い蛇は言いました。
「もしお前が起きて、この事をまだ覚えているのだったら、明日菩提樹の下に来るのだ。そうすれば、全てが分かるだろう」
そして白い蛇は消えていきました。
そしてサラスヴァティだけが、夢の中に取り残されたのでした。
「ナンダが言った事、本当だったのかな…」
そんな風に夢の中で思いながら、サラスヴァティの精神はまた夢のまどろみに消えていきました。
次の日、朝になり目が覚めたサラスヴァティは、いつもの様にみんなと食事を取りました。
マドラスが言います。
「今日は出発の日だからな。飯を食い終わったら準備しろよ。みんな忘れ物のないようにな」
そして、旅芸団は、次の町へと出発して行きました。
「毎回毎回、この繰り返しなんだよな。旅は楽しいけど、慣れた頃には出発しなきゃならないから、寂しいよな。いつかどこかで、落ち着いた場所を探してそこで暮らしたいもんだな」
ナンダがサラスヴァティに言いました。
「そうね、旅をする事には慣れたけど、別れだけは今でも慣れないわ」
そして、サラスヴァティはあの老人の僧侶の事を思い出していました。
カルマの事について教えてくれたあの老人とは、もしかしたらもう一生会えないのかもしれない。
あの老人のおかげで、大事な事に気付く事の出来たサラスヴァティは、心の中で老人にお礼を言いました。
ナンダがキョロキョロしています。
サラスヴァティが聞きました。
「お兄ちゃん、なにキョロキョロしているの?」
「いや、見た事ある様な道なんだよな、ここ」
ナンダがそう言うと、マドラスが言いました。
「ナンダ、覚えてないのかお前。ホラあの菩提樹。分からんか」
そう言って、マドラスはある大きな菩提樹を指しました。
「あぁっあれは」
ナンダはサラスヴァティの顔を見ます。
「サラ、あそこにいたんだお前。あの菩提樹の下にいたんだよ!」
ナンダがそう言うと、サラスヴァティはその菩提樹の下に行ってみたいと思いました。
「ねぇマドラス、ここで休憩しようよ!」
サラスヴァティがそう言うと、マドラスはそのつもりだったよと言って、団全員で休憩に入りました。
サラスヴァティとナンダは、菩提樹の下に走って行きました。
マドラスが後ろから大声で叫びます。
「おい!菩提樹の下に行ってもいいけどな…」
「蛇に気をつけろって言うんでしょ!」
ナンダとサラスヴァティは、同時に同じ事をマドラスに言い返しました。
そして、ナンダとサラスヴァティは、二人で顔を合わせて笑いあいました。
そして、二人は菩提樹の下に着きました。
菩提樹の下には、何もいませんでした。
ナンダが言います。
「ここにお前がいたんだよ」
サラスヴァティは、何かを思い出しそうでした。
「白い蛇に抱かれて」
ナンダがそう言うと、サラスヴァティは昨日の夢の中の出来事を思い出しました。
そして、サラスヴァティは、昨日の夢の中で白い蛇が言った事を思い浮かべました。
あれは一体どういう事だったのでしょうか。
サラスヴァティの心臓の鼓動が早くなっています。
普通じゃない事が起こる前兆が、サラスヴァティに肌で感じ取られたのです。
そして、サラスヴァティは言いました。
「来たわよ。夢の中の約束どおり」
すると、菩提樹の下のある場所が、光り輝きました。
その輝きは、とてもまぶしいものでした。
サラスヴァティは、その輝きをじっと見つめていました。
ナンダは、まぶし過ぎて目が眩んでいました。
そして、その光の中に、あの白い蛇が現れていたのです。
白い蛇はサラスヴァティの心の中に問いかけました。
「よく来たね。この世の名前でサラスヴァティ。お前は、私の子。この宇宙を創造した神の子供。お前は、修行のために下界に降りた。
今までは、お前が神の力を使うにあたり、最低の倫理観を確立するまで、神である自覚をさせないでいた。
神の時の記憶も、全て封じておいたのだ。
お前が神の子であるなら、その倫理観に自発的に目覚めなければならない。
例え、人間の子として0からスタートしたとしても、お前の魂と言う核に刻まれている物は、どこに行っても発現しなければならないからだ。
それは、お前が神として生きていく為に必要な試練だった。
おめでとう、この世の名前でサラスヴァティ。神である私の子。今、全ての制限を取り払う」
そして、サラスヴァティは神の子としての自覚に目覚めたのでした。
って言うか、それってあたしの事だったんだって思った。
なんかどこかの空に浮いていたあたしの意識は、ずっとサラスヴァティであるあたしの動向を見ていたんだ。
それがやっと今分かった。
ナンダはまだ眩しそうにしてる。
たぶん、あたしが白い蛇のお父さんと喋っていたのも、見れなかったかもしれない。
ナンダの言った事本当だったね。
あたし本人なのに、半分信用してなかったけど。ごめんねナンダ。
やっと全部分かったよ。
91 :
夢見る名無しさん:2006/09/08(金) 04:15:20 O
アゲの時間です
92 :
夢見る名無しさん:2006/09/11(月) 11:48:13 0
あげ
更に続き期待hο∫hμ..._〆(・ω・` )
期待age
95 :
夢見る名無しさん:2006/09/17(日) 07:47:33 O
あげです
待ってる
ほしゅあげ
98 :
夢見る名無しさん:2006/09/18(月) 16:34:34 O
間違えてsageた・・・orz
つ【100】 どうぞ!!
ありがと!
100!
101 :
どらみ/_・):2006/09/19(火) 21:01:54 0
みなさん、保守してもらって本当にありがとうございます!
定期age
103 :
夢見る名無しさん:2006/09/22(金) 14:35:12 O
ほしゅでござる
104 :
夢見る名無しさん:2006/09/22(金) 16:03:23 O
105 :
夢見る名無しさん:2006/09/25(月) 01:27:58 O
絶対に落とさん
106 :
夢見る名無しさん:2006/09/25(月) 02:35:02 0
神様なんていない。
いても悪魔。
もしいるなら人間をこの世に存在させてないから。
107 :
夢見る名無しさん:2006/09/27(水) 16:21:18 O
落ちないでおくれやす
108 :
夢見る名無しさん:2006/09/28(木) 07:19:31 0
その謎は、その内明らかにするのです。
109 :
夢見る名無しさん:2006/09/28(木) 07:28:38 O
落とさせるわけにはいかない!
110 :
夢見る名無しさん:2006/09/29(金) 20:30:21 O
オッチルナ
111 :
夢見る名無しさん:2006/09/29(金) 21:41:40 O
下手な小説どころか上手い小説よりも面白いなコレ・・・
超期待age
△
( ・ω・)
(U. U
)ノ
<⌒/ヽ-、___ ・・・おやすみ
/<_/____/
113 :
夢見る名無しさん:2006/09/30(土) 02:24:17 O
たしかにおもしろい age
114 :
どらみ/_・) :2006/09/30(土) 03:24:32 0
この頃更新してなくてごめんなさい。
書きたいのだけれど、今書くとお話がつまらなくなってしまうので、ひらめいた時に書きますね。
期待してくださってるみなさま、ご迷惑をおかけします・・・。
保守してくださってるみなさま、ありがとうございます。
115 :
夢見る名無しさん:2006/09/30(土) 17:54:30 O
保守じゃ保守じゃ!
保守しとく
117 :
夢見る名無しさん:2006/09/30(土) 22:13:28 O
AGE
118 :
夢見る名無しさん:2006/10/01(日) 22:52:06 O
age
119 :
夢見る名無しさん:2006/10/02(月) 21:13:15 0
あげ
120 :
夢見る名無しさん:2006/10/03(火) 07:58:19 O
age
121 :
夢見る名無しさん:2006/10/03(火) 20:23:42 O
とにかく保守!
122 :
夢見る名無しさん:2006/10/04(水) 21:21:44 O
あがれ!
123 :
夢見る名無しさん:2006/10/05(木) 02:43:59 0
おもしろい。あげ
124 :
夢見る名無しさん:2006/10/05(木) 02:44:41 0
手塚治虫を思い出した。
125 :
どらみ/_・) :2006/10/06(金) 13:25:15 0
この世の中は、物理法則によって動かされている。
お父さんが作った物理プログラムによって。
人間の行動も、物理プログラムの産物であって、それをカルマと名付けているだけなんだと思う。
この菩提樹の下で起きた、不思議な感覚。
物理宇宙の管理者であるお父さんが、擬似的に作った運命の糸によって、あたしはここにたどり着いた。
ときどき、ある出来事をきっかけに、突然自分の使命に気付いた人間は、それを神の啓示だと思って別人のように生まれ変わる事があるけど、
たぶんその感覚の最たるものがこれだと思った。
心の中の不純物が、全て取り払われたような、そんな感覚。
光が消えると、ナンダはこっちを向いて言ってきた。
「なんだったんだ今のは?」
あたしは正直に言うんだ。
兄弟であるナンダに、隠し事をしないように言ったのは、あたしなんだから。
「今ね、白い蛇のお父さんが出たんだよ。ナンダの言ってる事が本当の事だったって、やっと今分かったよ」
ナンダはビックリして言ってきた。
「お父さん!?なんだお父さんって…。白い蛇が出てきて、それがお父さん?どういう事なんだ」
「ナンダにだけ言うけどね…、あたしのお父さんって、人間じゃないらしいの。白い蛇なんだけど、それも仮の姿。
信じられないかもしれないけど、あたしの親って神様らしいんだ。」
ナンダはポカンとしてる。
「神様?」
「うん、神様」
ナンダは黙ってる。
そして、ちょっと考えた後、こう言ってきた。
「お前、こんな変な冗談言う奴じゃなかったよな…。でももし冗談だとしたら、付き合いきれないから今白状しろよ」
あたしはちょっと頭に来て言い返した。
「兄弟で隠し事しないって決めたじゃない!だから本当の事言ってるのに、なんで信用してくれないの!」
ナンダはちょっとたじろいだ。
「じゃあ分かった!信用する!お前が本気って言う事は信用する。でも、証拠を見せてくれてもいいだろ。神様の娘って言う証拠を見せてくれよ!」
たぶん、ナンダはあたしが本気で言ってるから、頭がおかしくなったんじゃないかって思ってるんだ。
126 :
どらみ/_・) :2006/10/06(金) 13:26:58 0
あの変な光をまともに見て、それであたしの頭がどうにかなっちゃったんじゃないかって思っているんだと思う!
すごい失礼!
でも、あたしは大人だから、ちゃんと言われるように証拠を見せてやるんだ。
「じゃーねー、どういう風に見せてほしい?ナンダの注文どおりにやるから、どうしてほしいか言ってみてよ」
ナンダは少し考えた後、何かを探し始めた。
そして、なにかをつまんで拾い上げると、それを私に渡してこう言ってきた。
「その種の芽を、今すぐ出してみろ。もし出来たら信じてやるよ」
「そんな簡単なのでいいの?こんなのあたし、しょっちゅうやってたよ」
そう言って、ひろし君達と枯らしっ木の遊びをやってた頃の事を思い出した。
今頃何してるんだろーなー、ひろし君たち。
下界に降りる前にひろし君達に会いに行ったけど、どっかでかけちゃってたんだよね。
あたしは、種を地面に植えつつ、そんな事を思い出していた。
ひろし君いなかったけど、もしかしてまたなんか変ないたずらしてるのかな。
金の三角と銀の四角をすでに持っているひろし君達が次にやる事と言ったら、誰か女の子を連れてくるくらいだよね…。
そんで宇宙球を作り出そうとしてたりして…。
すると突然、後ろの方で叫び声がした。
「うわあああああああっ」
なにかと思って後ろを振り返ると、ナンダが驚いた顔で叫んでた。
気がつくと、自然とあたしは種を大きな菩提樹にまで成長させていたのだった。
これはやりすぎた、と思って、菩提樹の中で起きている時間の流れを逆行させる。
そして、大きく成長しすぎた菩提樹は、またさっきの種にまで戻った。
ナンダは菩提樹が小さくなって行くのをみて、目をこすって見ていた。
そして、種にまで戻った菩提樹を、地面から掘り出して、ナンダに手渡した。
「どう?これで信じてくれた?」
ナンダはまたおかしな事を言ってくる。
「今のどういう手品なんだ?すごいぞサラ、この手品を見世物にすれば、客がたくさんくるぞ!」
あたしはまだ手品とか言ってるナンダに、ちょっとカチンと来てしまった。
「だから手品じゃないよ!神様の力だよ!まだ信じてくれないの?じゃあ絶対に信じる事するから、見てて」
あたしはそう言ってナンダの手を取り、ナンダを連れて、宇宙に飛んでいった。
127 :
どらみ/_・) :2006/10/06(金) 13:28:01 0
まず、ナンダは人間なので、宇宙の真空や熱圏の熱に耐えられない。
だから一時的にナンダを物理法則からの枠外に設定した。
こうすればあたしが飛んで行く時の加速度にも耐えられるし、呼吸なんかの事も考えないで済む。
ただ、物理法則の枠外での移動方法などに慣れていないナンダは、あたしが手をとってひっぱってあげないとどっかに飛んでっちゃうだろうから、
しっかり手を繋いであげた。
「ちゃんと握っててねー。どっか飛んでっちゃうと、探すの面倒くさいから」
この世の終わりの様な顔をしたナンダを連れて、大気圏を抜ける。
「うわあああああああ」
今日のナンダはよく叫ぶ。
「別に平気だよ。今のナンダは無敵だから。何があっても死なないから平気!」
と、言ってナンダを落ち着かせた。
それでもちょっとの間は、なんか体がおかしい!って言ってパニクってた。
そして、月と太陽と地球が見えるその場所で、ナンダは落ち着きを取り戻してきた。
「…ここは一体どこなんだ?」
あたしは説明する。
「ここはね…なんて言ったらわかりやすいかな。最初から説明するけど、ちゃんと聞いてね」
そう言うと、ナンダはまだ少し落ち着かない様子で、キョロキョロしながらうなづいた。
「えーと、まず左に見える青い星が、地球でございま〜す」
ガイドさん風に説明するあたし。
「そして、あの小さな小さな三角の茶色い大地が分かりますか〜?あれがさっきまでいた場所でございま〜す」
ナンダは聞いてきた。
「そりゃ分かったよ。分かったけどな、なんなんだこれは一体!?」
こっちから言わせてみれば、何がなんなんだって話なのね。
「なんで俺はここにいるんだ?お、お前が神?あの丸くて大きいのはなんだ!?今は夜なのか!?あと、地面が無いのに、なぜ落ちないんだ!」
…あたしは、全てを細かく説明した。
何も分からないナンダに説明するのは、とても骨が折れる作業だった。
そして、長い説明の後、やっとナンダは全てを理解してくれた。
「…そうか。分かったよ。でもなんだって俺を宇宙に連れてきたんだ?お前が神様って言うのは分かったけど、他にも神様って分からせる方法なんて、他にもあっただろ」
128 :
どらみ/_・) :2006/10/06(金) 13:29:09 0
あたしがまだ神の娘である自覚がない時、踊りを踊ると周囲の人間におかしな幻覚の様な物を見せる事があった。
それは、踊る事によって、あたしのテンションが上がって、あたしの魂の核に眠っていた神の意思が、無意識に漏れていたからだと思う。
そしてその神の意思が周囲の人間に感化し、感化された人間は、無意識に神の存在に近くなろうとして、宇宙に精神が転移したんだと思う。
神の存在は、宇宙の外側にあるのだから。
でも、今の人間に感じ取れるのはそれが限界。
そして、あたしがナンダをここに連れてきたのは、より近く神の存在を感じてほしいからだった。
とは言っても、まだ太陽系の中だから、まだまだ全然遠いんだけど。
そもそも、三次元の移動方法では、球の外側に行ける訳ないし。
あたしはナンダに聞いた。
「んーとね、ナンダ。今何が見える?」
「なにって、星屑達しか見えないけど」
「その星屑の向こうに見えるものを聞いてるの」
「…よく分からないけど、たぶんただの暗闇か?」
「そう、その暗闇が、この宇宙の壁。絶対に越える事の出来ない宇宙の壁。その壁の向こうに、あたしのお父さん達がいるんだよ。それを感じて欲しかったから、ここに連れてきたんだよ」
あたしはそう説明した。
でもナンダはよく分かっていないかんじ。
無理して分かってもらってもしょうがないから、あたしはこれで説明を終えるのだった。
「さて、これであたしが神様の娘って分かってくれたところで、地球に戻ろう」
そう言ってナンダの手をとりながら、さっきまでいた地球の、ある国の、ある場所に生えてある、菩提樹の下に戻ったのだった。
宇宙ではすでに数時間の時が流れていたから、太陽系内の時間を止めておいた。
これはこれで、あとでなんらかのバグになって障害が発生しそうだけど、その時はお兄ちゃんにメンテナンスしてもらうからいいやっ。
129 :
どらみ/_・) :2006/10/06(金) 13:30:54 0
だって、そうでもしないとマドラス達が心配しちゃう。
あの二人が菩提樹の下に行ったきり、戻ってこないぞ!なんて事になったりしたら大変。
だからあたしは太陽系の中の時間を止めたのだけれど、もしマドラス達だけ時間を止めていたら、他の人間たちとの時間のズレになっちゃうし、だったらと言って地球全体の時間を止めると自転と公転が数時間ずれてしまう。
地球から見える月の位置もズレてくる!
だから、太陽系の時間を止めたの。
星空の位置が、本当に若干ずれたけど、そんなのに気づく人なんて本当に極稀だろうしね。
だからあんまり気にしない事にしたのだ。
130 :
夢見る名無しさん:2006/10/07(土) 03:15:12 O
復活age
131 :
夢見る名無しさん:2006/10/07(土) 18:20:13 0
あげあげ
132 :
狩魔:2006/10/07(土) 23:05:01 0
久しぶりにネットあげぃ!
133 :
夢見る名無しさん:2006/10/08(日) 23:24:07 O
ageてみた。
134 :
夢見る名無しさん:2006/10/09(月) 17:31:37 O
暇を見つけてはアゲ
135 :
夢見る名無しさん:2006/10/09(月) 21:20:27 O
さてとあげ!!
136 :
夢見る名無しさん:2006/10/10(火) 22:37:27 O
上がれぇい!!
137 :
夢見る名無しさん:2006/10/11(水) 13:57:21 O
面白い。続き期待してます
138 :
夢見る名無しさん:2006/10/12(木) 08:18:54 O
期待アゲ
139 :
夢見る名無しさん:2006/10/13(金) 10:10:39 O
あげ〜☆
140 :
夢見る名無しさん:2006/10/14(土) 15:06:54 0
おい幸平!
もうこれからは 酔っ払って裸で寝てんじゃね〜どぉ!
141 :
夢見る名無しさん:2006/10/15(日) 17:40:34 O
アゲアゲ
142 :
夢見る名無しさん:2006/10/17(火) 08:06:01 O
あがれぃ!!
143 :
夢見る名無しさん:2006/10/19(木) 01:48:03 O
あがれあがれあがれ〜!!
144 :
夢見る名無しさん:2006/10/19(木) 19:08:48 O
あがりやがれー!!
145 :
どらみ/_・):2006/10/20(金) 23:03:31 0
地球に戻ると、あたしは自分とナンダを物理法則の枠内に設定しなおした。
それと同時に、太陽系の時間の流れを、再スタートさせた。
それと同時に、激しい疲労感が襲ってきた。
「あー、なんかすごい眠い・・・」
そうして、横にいるナンダによりかかると、あたしの意識は段々遠くなっていった。
あぁ、口の中、雷の味がする…。
...。
146 :
どらみ/_・):2006/10/20(金) 23:04:17 0
はっとして起きるあたし。
寝ている間の記憶がない。
神の能力を持っているあたしは、人間のあたしが寝ていても、神の意識まで寝る事はない。
神の意識とは、こうやって全ての事を把握していなければならない。
例えば、ここから数百km西に行った所にある、ビスポポと言う村の、スジャラジーと言うおじさんは、自分の家の田んぼからとれた米をおかゆにして、今まさに口に運ぶ所だ。
とか。知ったところでどうにもならない事まで分かって普通なのに。
なのに!ここ数時間の記憶が無い!
神の意識は、その人間の生涯が終わるまで閉じる事なんて無いのに!
人間の五十年なんか、あたし達にとっては一夜の夢くらいのもの。
そのくらいの事なんか、まばたきを一度もしないくらいの感覚で、五十年なんて終わってる。
なのに。なのになのに!
途中であたしの意識が無い!
宇宙から帰ってきて、そのまま疲れて寝てしまった。
そっか、神の力を使ったからだ。
だから、魂の核に代償が帰ってきたんだ。
しょうがないので、この数時間の記憶を取り戻す事にした。
現在地点から、あたしの意識が無くなったあたりの場所まで、その空間が記録した情報を読ませてもらう。
どうやらあたしは、ナンダに寄りかかった後、そのまま意識をなくしてる。
ナンダがみんなを呼んできて、ちょっとだけ騒ぎになったけど、マドラスがあたしの呼吸と脈に気づいて、ただ寝てるだけって気づいてくれて、眠いなら馬車に乗せてやれ、ってなって、数時間馬車にゆられていた、らしい。
神の力はあんまり使うのやめよう…。
そう思ったあたしは、馬車からマドラスに話しかけた。
147 :
どらみ/_・):2006/10/20(金) 23:04:50 0
「マドラス!おはよう!」
マドラスが前から返事する。
「もう夕方になるぞ、おはようなんて言ってるのお前だけだ」
そういえば、もう日も暮れてきて、外壁に囲まれた大きな新しい町も見えてきた。
次の町だ。
ナンダがこっちの馬車に飛び移ってきた。
「起きたか」
「うん、起きたよー」
軽い挨拶のあと、ナンダが言った。
「なぁ、神様の力で曲芸見せてやれよ!」
ナンダは神様の力を軽く考えてるんだ。
だからこんな事平気で言える。
こっちは意識がとんだりして、大変だってのに!
「あれは遊びじゃできないの!だから駄目っ」
「遊びじゃねーよ!生活かけてんだろ!だからやれって!」
「そういう問題じゃないの〜。使うと意識が無くなるからいやなの〜」
ナンダは納得した様な顔して聞いてきた。
「あぁ、だからお前倒れちゃったのか。最初びっくりしたよ。ただ寝てるだけって分かったから、安心したけど」
「そうだよ、だから危ないから、あんまり使うものじゃないんだよー」
そっか。と言った様な顔してるナンダ。
148 :
どらみ/_・):2006/10/20(金) 23:05:55 0
マドラスが言う。
「やっと到着したぞ。夜の太陽、ヴァーヤスーダリだ」
ナンダに説明していたら、遠くに見えたあの外壁の町が、すぐ真正面にまで来ていた。
巨大で頼りがいのある外壁をくぐる。
すると、そこには、沢山の灯がともされていて、まるで昼間の様に町を照らしていた。
たくさんの人が、町を行き来して、昼間の様に働いている。
その町は、夜なのに夜と思わせないような、昼の活気に満ち溢れていた。
町の広場の中心には、巨大な灯篭が燃え盛る炎を踊らせていた。
灯篭の下に書いてある。
「真昼の様な夜のランチキ騒ぎの後の朝は混沌としている」
なんともサイケデリックな広告でよく分からないけど、たぶん馬鹿騒ぎして飲んだ次の日は、起きてみれば部屋の中がめちゃくちゃだから。って言いたいんでしょー?
だからなんなんだろ。
ともかくこの町は、夜遊びのための街。
酒、女、ギャンブル、身を滅ぼす為の街。
でも、本人達は気づかないんだ。
いつのまにかにこの街の虜になってるって事に。
この街から出られなくなってるって事に。
そうして、身なりのよく、たくさんの使用人をしたがえて、マハラジャの様な姿をしたご主人様たちも、一年もいれば、ホラこの通り。
やせこけて犬の様に路上で食べ物をねだる生活になってしまう。
そして、となりで寝転がってる、ある人だった、もぬけの殻、みたいになってしまう。
そうなるしかないのに、この街に来る。
ある意味挑戦なのかな。
この街で名をはせれば、この国中にその名が広がるから。
最高の売名行為だから。
だから、この街で一位になりたいのかなー。
でもその分、あぶない街なんだよ。この街は。
149 :
どらみ/_・):2006/10/20(金) 23:08:13 0
ナンダが言う。
「そういやこの街、結構治安悪かったな…」
まわりをよく見てみると、人相の悪い人達が、こっちを良からぬ様な熱いまなざしで見ていた。
なんか悪い事考えてそうで怖い。
そしてその日、わたし達は町外れの一角で、テントを建てた。
こんな街とは、早くおさらばしたいな。
あたしは、たぶん都会の喧騒よりも、田舎のそよ風の方が似合ってる。
似合ってるって言うか、好きなの。
ざわざわして、負の感情が渦巻いてる、汚い空気のこの都会より、みんなニコニコして、作りすぎたお料理をとなりにおすそわけするような、そんなほのぼのとした空気の方が好き。
大好きなのだ。
でもこのヴァーヤスーダリはすごい喧騒。もう、嵐。
嵐は、一夜だから楽しいんだ。
嵐が来るまでに、ワクワクしてすごして、嵐の最中は戦うつもりで耐え抜くの。
それがすっごい楽しいのは、その一夜で終わりだからなの。
たまにある一日だから楽しいのにー。
これが毎晩になるんだったら、最悪だよ!
あーあ、これからどうなるんだろなー。
150 :
どらみ/_・):2006/10/21(土) 19:08:50 0
次の日の夜、あたしは踊っていた。
この街に来てから、初めての踊り。
カンサーシャのドラムの音に合わせて、勝手に体が反応する。
手は表現し、足は自由を求める。
あたしの顔は、たぶん嬉しさと楽しさを足して二で割って、そこに悲しみを足して、怒りで割った様な顔をしてたんだと思う。
数式で言えばこんな感じ。
踊ってる時のあたしの表情=((嬉しさ+楽しさ)÷2)+悲しみ)÷怒り
なんか意味分かんないけど、こんな感じ。うん。
一言で言えば、言葉で言い表せないような、素晴らしい顔をしてたと思う。自分で素晴らしい顔なんて言って、変だけど。
踊りは好きだったけど、こんなに好きだったっけ?
生きてるだけで奇跡だってのに、そのあたしが神だったなんて、すごい確率。
なんか、そんな事を思ったんだ、その時は。
で、そう思ってたら、生きてる事が素晴らしく思えて、そしてその中であたしが神の娘であると言う事が、素晴らしい運命の様に思えたの。
そしたら、嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、この嬉しさを発散するには、思い切り踊るしかなくて。
そして、嬉しさを発散している自分が楽しくて。
楽しくて楽しくて、楽しすぎてしょうがなくて、嬉しいんだか楽しいんだかわかんなくなったの。
そしたら、たぶんあたしの顔混ざってたんだねー。
嬉しさと楽しさが。
嬉し楽しいと、頭が冴えてくんだ。段々。
ものすごく冴えていって、自分を一歩上の段から見れるようになるんだ。
第三者的に見れるって奴ね。
で、冷静になってみると、こんな瞬間は長く続かないって言う現実が見えてきて、少し悲しくなるんだ。
で、それならもうどうでもいいやって言う怒りが出てきて、頭の中の事全部ひきずって暴れまわる。
その時、何も考えてないんだ。
たぶん、人間の体が宇宙と繋がった瞬間なんだ。
あまりにも運命的な事が起こると、人間の脳はそうやって様々な感情を爆発させる。
その時に、焼き付けられるの。その瞬間の事が。
151 :
どらみ/_・):2006/10/21(土) 19:10:51 0
人間って、そういう日を運命の日って名づけて、変わっちゃうんだ。
あたしは、球の外側ではこんな感情にならないけれど、人間の体を借りてて、人間の脳も借りてる訳だから、人間の脳と神の魂の核の脳とで共有して考えなきゃならなくなる。
そうなると、人間の脳による脳内物質の影響を、いちいち受けるんだー。
だから、たぶん毎日こんなテンション。
ずーっとエンドルフィンって言う物質が出続けてる状態。
だから、神の子って呼ばれる人は、脳内物質の影響が強すぎて、人よりも短命。
脳が耐えられないんだ。
だからあたしも、この時代のこの地域の平均寿命よりも、相当短くなりそう。
そして、あたしは、踊っていた。
一番波長の良い視線を感じる。
あたしが感じる、とても良い波長。
自然と目が合う。
目が合ったその人は、とても優しそうな顔。
多少のわがままも聞いてくれそうな。
一目ぼれと言うものなのかしら。
あたしはその人が、気になってしょうがなくて、その人の事を気にしながら踊る事になってしまった。
152 :
どらみ/_・):2006/10/21(土) 19:46:19 0
愛や恋の前に、人間か神であるかなんて関係ない。
いつもいたずらばかり考えてて、でも絶対女の子には大きな声で怒鳴らなくて、いつもお調子者みたいな人が、人にいるならあたしはたぶん、その人の事を好きになるかもしれない。
神の時にそんな神が好きな様に、人間がそんな事をすれば、普通にその人間を好きになると思う。
相手が猿でも人でも神でも、愛や恋の前にそんな建前は邪魔なだけ。
突然おとずれた恋の前に、理由なんて分からないし、分かりたくもない。
人は酔うのが好きだから。
恋でも酒でも雰囲気でも、酔うものならなんでも好きだから。
あぁ、でも乗り物酔い系は嫌いかもね。
とにかく、あたしは酔いたい。
恋に!
そして踊りは終わって、あたしは自分のテントに着替えに行くんだ。
すぐに出かけたその先は、さっきの彼のいる近く。
あたしはそんなに積極的じゃないから、声をかける事なんて出来ない。
見つめて待つくらいしか出来ない。
本当に運命の人なら、今あたしの視線に気づいて欲しいな。
今すぐに!
でも良かった。本当に。
その人はあたしの視線に気付いた。
するとその人は、数歩だけ近づいた。
目だけが合ってる。
あたしも一歩だけ足を前に進めてみる。
これ以上無理。
でもこれで分かって欲しい。
あたしがそっちに行きたいって事を。
その人は、あたしを見つめながら、こっちへ歩き始めた。
あたしの心臓の鼓動も早くなる。
恋って、神の世界でも夢の世界でも人間界でも、いつでも幸せになれる。
幸せが無いと生きていけない。
それは人でも神でもそうだと思う。
だからあたしは、この人が好きになった。
153 :
どらみ/_・):2006/10/21(土) 19:48:33 0
あたしの目の前まで近づいたこの人は言う。
「こんばんは」
「こんばんは」
ゆっくりと挨拶する。
この人は少し照れながら言う。
「さっき踊り見てたよ、すごい踊りするよね。まだ鳥肌が立ってるよ」
「ありがとう…」
こう返すしか思いつかない!
あたしって結構、パニックになっちゃう方なのかも。
で、ちょっと間が開くんだ。
で、彼が言った言葉。
「あ、そうだ、名前言ってなかったよね、俺プューディ。君の名前は?」
「サラスヴァティ…。」
返す返事が少ないのは、パニックになってるからで、本当はもっとお話をしたいって言う、やりきれない気持ち。
あたしってこういうの多いよ。
これだから、たまに男の子逃しちゃったりするんだよね〜。
乙女が逃した!とか言っちゃいけないよね。
気をつけよう。
「サラスヴァティ…。いい名前だね。まるで学問と芸術の女神の名前の様だよ」
そんな事言いながら、ニヤニヤしてんの。
で、あたしは言ってやるんだー。
「学問と芸術の女神の名前から取ってるから!」
そう言うと彼は、笑いながら言う。
「はははー、そのまんまだったんだ。俺の名前は、まるでこの近所で大工をしてる青年の名前の様に見えないかい?」
あたしは馬鹿じゃないの!って思って言うの。
「プューディがこの近所で大工してる青年なんでしょ!」
そう言い返すと、ゲラゲラ笑っててー。
「はははー、これもそのまんま!はっはっは」
とか言っててー、どっかの誰かさんにそっくりな感じ。
やっぱり、どの世界でも好きになるタイプは同じなんだなー。
154 :
どらみ/_・):2006/10/21(土) 20:09:10 0
みなさん、ご愛読ありがとうござます。
なんか今日は冴えてます。
この神様の娘が進む時は、わたしの頭も冴えている感じです。
やっぱり楽しい事があると頭の回転が良くなって、色々出てきますね。
ここで、少し休憩をはさみたいと思います。
あまり語られなかった事を、今ここで語ろうと思います。
時々時空関係が交差したり、縮んだり伸びたりしていますが、これは人の世界と神の世界とでは、時空間の構造自体が違う為、多少分かりづらくなっていると思われます。
これはご愛読なされている、読者様達の、豊かな発想力でどうにか解釈して欲しいなと思っています。
この物語は、最初電波・お花畑板の電波文スレで始まったものでした。
その日テンションの高かった私は、そのテンションに合わせて適当に書いてみました。
それが、
>>4〜
>>11くらいまで。
でもそのスレにあのペースで書き込んでしまったら、ものすごい長くなってしまう。
それはとても迷惑な事だと思い、ここにスレをたてる事になりました。
それがこんなに長くなるとは。
オチまでは浮かんでいるので、絶対にそこまでは書き続けたいです。
今まで応援してくれたみなさんありがとうござます。これからも、この神様の娘が完結するまで、どうか応援してもらいたいです。
いつも保守してくださっているみなさま、本当にありがとうございます。
とりあえず今日はこれで終了しときますね!
じゃ、またねっ!
こうやっていつのまにか打ち解けて喋れている自分に、はっとする。
それで気付くんだ。これって、プューディがそういう風にしたんだって。
こういうエスコートをしてくれる男の子が好きなのかもしれない。って、今気付いた。
「で、何してたの?」
って聞いてくる。
ちょっとなんて言おうか迷ったけど、
「散歩してるだけだよ」って返事した。
なんでここで素直になれないのか、すごい不思議。自分でそう思う。
「じゃ、俺も散歩付き合っていい?」
って自然に言ってくる。
「いいよ」って返すしかないじゃん。
手なんか?がないけど。
恥ずかしくて出来る訳ないし。
それに、この人の事まだよく知らないし!
「散歩って、散って歩くと書いて散歩って言うけど、別に散ってねえよって思わない?」
何言ってんだろこの人。
「気が散るんじゃない?嫌な気が溜まってるから、散らすために歩くの。だから散歩」
「何それ、そういうもの?」
「えーわかんないけど、今そう思っただけだよ」
「あぁ、俺の話のフリで?」
「そうだよ、話フラれたから、そう考えただけだよ」
「すごいな!一瞬でそれ浮かんだんだ!」
なんか褒められてしまった。
で、続けて言うんだ。
「俺、訳わかんない事言うのね。でさぁ、大体がは?とかへ?とかはひふへほみたいな事言うんだ。
それじゃつまんないんだよな…。
なんでもいいから考えてくれて、適当に返事してくれた言葉で、俺がまた話広げればいいじゃん?
そうやって、話出来る相手が、あんまりいなかったんだ」
「へ〜、じゃあ、あたしはまともに返事してる方なの?」
「そうだね、まともに返事してる方。だからいい子だなって思った」
「え〜なんで〜?じゃあさ、あたしがいい子って言うのは分かったから、あたしの話の続きを広げてみてよ」
男の子のナンパな手口は、人を褒める事。
それは別にいいんだけど、それが適当な事だったら嫌だよね。
それが適当かどうか試させてもらった。
だったらあなたは、ここからどうやって話を広げるの?と。
「嫌な気を散らすために歩く、の所からだったよね。…じゃいいよ、そこからはじめよう」
そう言って、プューディは少し考えた後、喋り始めた。
「でもさ、嫌な気を散らすって言うけどさ、要するに嫌な気がどっか行けばいい訳でしょ?
だったら、「発散」って文字あるけど、わざわざそれの後ろの方の文字取らなくてもいいと思う。
だって、後ろの方を採用したら、「気が散る」になるし。
気が散る、って言うのは、集中している時に、集中力を欠かせる事を言う。
一歩間違えば、全然関係無い意味になってしまうと思わないか?
だから俺は、「散歩」じゃなくて「発歩」にした方がいいと思うんだ」
こんな事言ってきたの!
この人は嘘言ってたんじゃない。
本当に広げてくれるんだ。
こういう事されると、好き度が上がっちゃうから困る。
「えーじゃあさ、それどうやって読むの〜?」
「はっぽでいいじゃん。散歩の三歩に対抗して、八歩で。どーよ?」
この人ホントそっくり、どっかの誰かさんに。
「じゃあさぁ、発歩しなおす?」
「えーいいじゃん、ここまでは三歩で、後は八歩で。今までが三割の道のりで、残りが八割って事さ!
」
「ちょっとまって!それ一割多いよ!」
「いいんだって、時代は110%がデフォルトの時代に突入したんだぜ」
この人、すごい面白い人かも。
そして、その晩は、ある星空の下、一晩中下らない話して発歩した。
話すのが好きなんだから、止まってどこかに座って喋ればいいのに、ずっと歩き続けた。
でも、すごい楽しかった。
プューディは太陽の陽が昇ると、やばいと言って、走って帰ってしまった。
「明日また来る!じゃあな!」
そう言い残して。
157 :
夢見る名無しさん:2006/10/23(月) 23:44:12 O
誰もアゲてないのでアゲ
158 :
どらみ/_・):2006/10/23(月) 23:58:46 0
次の日、彼はまたあたしの踊りを見に来た。
あたしは、昨日以上に思い切り踊った。
幸せを表現する蝶の舞いの様に、夜の街にゆらめいた。
とっても幸せ。
この踊りの後、彼と一緒にどこかに行ける。
そう思うと、嬉しくなって、勝手に踊りに力が入ってしまう。
いつもより幸せな分、あたしの踊りは黄色く見えたかもしれない。
なぜなら、黄色は幸せな色だから。
そして、色を表現するのは芸術家の仕事だから。
あたしが幸せを表現すれば、自然と黄色に見えるはずだから。
踊りが終わって、黄色い余韻を残したまま、プューディの所に行く。
プューディは、たぶんあたしが黄色く見えてる。
あたしに気付くプューディ。
なんだ?あれ?あれ?みたいな顔してこっちを見るプューディ。
「こんばんは」
あたしが声をかけると、やっとプューディも挨拶するの。
「ぁあこんばんは、あれ?今日はどうしたの?」
何言ってんだろ。
「なに言ってるのー?」
そう聞いてみた。
すると
「あ〜、なんか今日雰囲気違うと思ってさ。さっき一瞬人違いかと思っちゃったよ」
と言う。
「へ〜、別に何もないよー」
「そっかなぁ…なんか違うんだよね…」
「んーじゃあ何が違うか言って見てよ」
「…言ったって変だって思うだけだよ」
「いいって!言ってみて!」
「ああ…じゃあ言うけどさ…。今日のサラスヴァティって、なんか黄色く見えるんだよ」
159 :
どらみ/_・):2006/10/24(火) 00:00:26 0
今のあたしが黄色く見える人は、お客様になれるんだ。
あたしのお客様に。
芸術家の絵を買う人は、その芸術家の絵を良いと思って買うの。
でも、その芸術家の絵を良いと思わない人は、ただの絵だと思ってる。
そう言った人たちには、今日のあたしの黄色は見えない。
要するに、感性が違うから。
お客様は、あたしの様に表現する事は出来無くても、あたしと感性が同じなの。
だからあたしの絵…って言うか踊りで、感動してくれるんだ。
感動するから、あたしの踊りが、黄色く見えるんだ。
芸術ってそういう物だよね。
「全然変じゃないよ!見る人が見たら黄色く見えるのは普通の事だよ!」
わたしはプューディにそう言って、手をとった。
手を繋いで、街の夜の明かりの灯の中を、二人でお話しながら歩いた。
どんな瞬間か、全然分からない。
ただ、銀色の月を背景に、プューディがこっちを向いて見つめてきたのは分かった。
顔と顔が近づいて、わたしのすぐ直前で止まる。
目を瞑る彼。
彼の手は、私の手をやさしく握っていてくれている。
そして、ふっと力が抜けたと思ったその時、わたしはいつのまにか彼にキスしてた。
優しく握っていてくれたいた手は、わたしの腰に回されて、強く抱擁してくれた。
彼の心臓の鼓動がこっちに伝わる。
同時にわたしの心臓の鼓動があっちに伝わってるかも。
ならおあいこでいっか。
160 :
どらみ/_・):2006/10/24(火) 00:42:44 0
心臓の鼓動を気にしてると、胸と胸でもキスしてる感じがしてくるよ。
口と口でキスをしていて、その最中でも胸と胸でキスするの。
だからダブルキスしてる様な、変な感覚。
わたしがプューディを好きだから出来るんだー。
プューディがわたしを好きだから出来るんだー。
二人でドキドキしてないと、胸と胸ではキス出来ないんだよ。
本当に愛し合える時は、必ず胸と胸でキスしてる。
逆に言えば、胸と胸でキス出来ないような相手なら、恋人にしない方がいい。って。
ある時思った事があったよ!
まぁそんな事どうでもいいんだけどね。
161 :
夢見る名無しさん:2006/10/27(金) 18:15:56 O
アゲ
162 :
夢見る名無しさん:2006/10/29(日) 17:16:27 O
アゲアゲ
キモスレだが良スレだな^^
165 :
夢見る名無しさん:2006/10/29(日) 21:36:06 0
ナンダは嫉妬しないのか?
166 :
夢見る名無しさん:2006/10/30(月) 23:02:59 O
嫉妬アゲ
167 :
夢見る名無しさん:2006/10/31(火) 23:03:03 O
応援アゲ
168 :
相田:2006/11/01(水) 00:36:38 0
おお、すごい。
自作ストーリーなんですね?
169 :
夢見る名無しさん:2006/11/03(金) 07:54:26 O
アゲ
170 :
夢見る名無しさん:2006/11/05(日) 23:36:09 O
あげ
171 :
夢見る名無しさん:2006/11/07(火) 14:34:36 O
age
hossyu
173 :
夢見る名無しさん:2006/11/12(日) 22:07:35 O
揚げ
174 :
夢見る名無しさん:2006/11/12(日) 22:41:00 O
まげ
175 :
夢見る名無しさん:2006/11/14(火) 23:16:38 O
もげ
176 :
夢見る名無しさん:2006/11/15(水) 08:06:30 O
からあげ
177 :
どらみ:2006/11/15(水) 16:57:52 O
みなさん保守ありがとうです…
そろそろインド編終わらせなくちゃね。
178 :
夢見る名無しさん:2006/11/19(日) 07:52:04 O
あげ
179 :
夢見る名無しさん:2006/11/19(日) 07:54:02 0
あ?
180 :
夢見る名無しさん:2006/11/19(日) 10:07:35 O
どらみさん、楽しく読ませて頂いてます。
ファンタジーで夢がある作品ですね。私も続けて三十年余りたちます。
否定をするわけでは無いですが、キャラの個性をもう少し強調し、またスマートに描ければ内容の濃いものとなるでしょう。
181 :
フルフル ◆Er5nDf/LiU :2006/11/19(日) 13:23:54 0
よけいなお世話
182 :
夢見る名無しさん:2006/11/19(日) 13:29:41 0
h
183 :
夢見る名無しさん:2006/11/19(日) 22:13:14 O
とにかくアゲ
この話は最後まで読みとどけたい
記念パピコage
185 :
晴れ ◆xu2VpOlD.6 :2006/11/20(月) 15:05:42 0
ageてなかったort,
186 :
夢見る名無しさん:2006/11/20(月) 15:09:12 0
神様などいない
187 :
fusianansan@:2006/11/20(月) 15:36:40 0
精神分裂病で再入院
188 :
夢見る名無しさん:2006/11/20(月) 19:56:44 O
ハゲが激しくage
189 :
夢見る名無しさん:2006/11/24(金) 07:37:09 O
アーゲー
190 :
夢見る名無しさん:2006/11/26(日) 07:50:54 O
アンゲ
191 :
夢見る名無しさん:2006/11/29(水) 13:29:22 O
アンゲロ
192 :
狩魔:2006/12/01(金) 08:02:09 O
主人公かわいいなあЖ´`Ж
続きを楽しみに読ませていただいております。
193 :
夢見る名無しさん:2006/12/01(金) 19:54:00 0
酋長の娘?
194 :
夢見る名無しさん:2006/12/03(日) 19:15:14 O
あげます
195 :
夢見る名無しさん:2006/12/04(月) 11:03:25 O
あげ〜♪
196 :
夢見る名無しさん:2006/12/05(火) 20:10:09 0
じょうすい
197 :
夢見る名無しさん:2006/12/05(火) 20:17:42 0
198 :
夢見る名無しさん:2006/12/08(金) 18:22:48 O
あげ
つ【200】 200もどうぞ!
200get
age
どらみちゃん続き楽しみにしてますよー
201 :
夢見る名無しさん:2006/12/11(月) 18:35:54 O
期待アゲ
続きは
203 :
どらみ:2006/12/15(金) 12:49:44 O
今日書くよ!
色んな漫画読んで、勉強したよ。
でも、ラストまでもってくのが難しいよ。
がんばります。
204 :
夢見る名無しさん:2006/12/19(火) 04:54:49 O
あげ〜★
トムとジェリーの話をしようか?
207 :
どらみ:2006/12/19(火) 12:21:58 O
すいません、急用で書けなくて…。
208 :
夢見る名無しさん:2006/12/19(火) 22:53:49 O
保守
210 :
夢見る名無しさん:2006/12/24(日) 15:12:41 O
age
211 :
夢見る名無しさん:2006/12/27(水) 17:51:02 O
保ア守ゲ
212 :
夢見る名無しさん:2006/12/27(水) 18:10:56 0
213 :
夢見る名無しさん:2006/12/29(金) 01:13:22 0
それから、この街を出るまで、あたしは何度もプーディと夜を明かした。
もちろん、踊りが終わった後、だけど。
キスの後どうなったって?
それは、これを読んでるあなたたちのご想像におまかせします。
はい、この話おしまいね。
この街に、ずっといる訳にはいかないの。
だって、次の街にいかなきゃならないもの。
規模の大きなこの街では、たぶん一ヶ月。
そのくらいは滞在すると思うのね。
だから、わたしはそれまでにこの状況をなんとかしなければならないわ。
そして、これがこの状況を抜ける方法のいくつかなのね。
一つ 団を抜けて、プーディと一緒に残る。
二つ プーディと別れて、団と旅を続ける。
三つ プーディを団に加えて、一緒に旅をする。
普通に考えて、この三つだよね。
ここでは、変な力に頼りたくないの。
だって、それってプーディの意思じゃないもん。
もしあたしが、プーディの心を操って、一緒に来るようにしても、それはプーディが決めた事じゃない。
だからいや。
私のドッペルゲンガーを作って、団の方に一緒に旅をさせるようにしても、みんなを裏切ってるみたいだから、そんな事したくない。
だから、神の力がどーこーじゃなくて、二人の愛の引力が問題なの。
それが今から、神の娘であるこのあたしに、試練としてやってくる訳なの。
もし、あたしが神の力を使ってどーにかしちゃったら、自分に負けた気分になりそう…。
怖い。
プーディにこの話を切り出した時、どう返事されるのか。
AB型のプーディがどう返事するんだろうか。
A型の緻密さと、B型の本能に順ずる物を併せ持つAB型のプーディは、あたしの話にどう答えるのかな〜。
勝手に血液型探ってごめんねプーディ。この時代は、まだそういうの調べるもの無いからしょうがないよね。
ちなみに、サラスヴァティはB型でした。
214 :
どらみん。:2006/12/29(金) 02:02:04 0
血液型って面白いよね。
理性の元に、緻密さと計算力を兼ね備えたA型。
きちんと並べるのが好きで、パズルがいつも当てはまってないと気がすまない人が多い。
自分がパズルの一部になると、きちんとパズルの自分が行くべき場所にいって、きちんと正座してる感じ。
どーせ俺がパズルの一部でも、俺が困る訳じゃねーもん。パズル作ってる奴が困るだけだから関係ねーだろ。
って言うのはB型で、パズルの一部になるのが苦手な人。
いつも変な場所にいて、なんでこんな所いるの?って聞くと、一人になりたいから。とか言って。
たまに猫の様な一面を見せる、気分屋のB型。
パズルの一部になれないからこそ、逆にパズルを作る人になったりすると、結構うまく行ったりするらしい。
とにかく好きな事をしていたい、B型はとても怠け者なので、自己中なの。
だから他の血液型の人たちと一緒にいると、結構むかつかれるらしい。
B型はB型で固まってると、結構うまく行く。
でも、いったんひねくれたB型ほどたちの悪いものはないから、ひねくれたB型同士を一緒にさせておくと、ケンカになるから注意が必要。
まーまー、やめよーぜ〜。ケンカはよくない。
そう言って入ってくるのは、大体O型。
すごく穏やかに見えるその反面、内面にものすごい炎を秘めてるの。
それが、すごい一途なものだったりするのね。
O型は、物に対して執着心が無いから。
物よりも、気持ちにすごい依存するの。
お母さんの前では、全然何も出来ない子を演出したりして、実は学校ではリーダー格のお子様だったりする。
それもこれも、お母さんの愛情が欲しいからだけって理由で。
テストで100点取って、お母さんが「テストの点どうだった〜?」って聞いても、「言いたくない」って言ったりするの。
それが、Oの甘える形。
でも、すごい純粋。
時間がゆるやかに流れているから、人生がすごい長いの。
それは、他の血液型の人間からは、想像出来ない世界。
だって、Oにとっては、その時間の遅さが普通なんだから。
だから、いつも余裕があるの。
だからマイペースになるの。
O型だけなんだよね、AB型と肩を並べるの。
ABってすごい血液型なんだよ。
215 :
どらみん。:2006/12/29(金) 02:25:02 0
ABだけは、敵にまわしちゃいけない血液型。
単純に敵に回したならまだ救いがあるけど、裏切って敵に回したら、もんのすごいから。
もうね、フルパワーって感じ。
この世の終わり。みたいな。
そのくらい怒る…って言うか、怒りがすごすぎて、怒りに見えない。
あそこまでいくと、こういう芸術作品なのかな。って思えちゃう。
そのくらい激しい。
計算が速くて、それをすぐに行動に移す瞬発力。
計算して、理屈を理解した上で、本能のスイッチに切り替えて、脳の自動モードでテキパキとやっちゃう感じ。
両方の考え方持ってるから、色んな頭の良さがあるの。
A型の記憶力や計算力、B型の発想力や想像力、そのどちらも持ってるからすごいの。
逆に、どちらの悪い部分ももってくるんだけど。
たとえば、キチンと整頓する心が強く働きすぎて、目立つ存在になれなくて。
その上に、B型の独りになりたい症候群が出たりすると、友達が出来づらくなったりするし。
まぁ、結局は基準にしかならなくて、最終的には本人の遺伝子そのものと、育った環境と運命の産物が、その人の性格だし。
血液型の話はこれでおしまい。
レベル1を卒業するために、人間の一生涯を、5000人くらい観察したしね。
そのつど血液型を見ていたから、上記の様に思っちゃったりするんだよね。
そう、そしてAB型はね、すごい人生を歩むんだよ。
信念と言う一本道から、絶対外れないの。
外される時も、たまにあるけど。でもすぐ戻る。
歴史には残りづらいけど、すごい人生。
なぜかって、生き方がまっすぐすぎて、妥協出来ないから、頂点がとりづらい。
色んな歴史には、載っていないAB型がいるけど、その時代、その場所では、そのAB型の人間は、ものすごい人数に信頼されていた。
そして、その人に信頼されると言う事は、もう奇跡なの。
滅多にある事じゃないの。
だから、ABと付き合えてる人は、すごい運の良い人。
だけど、そのABを裏切ったら、マジでやばいから。
216 :
どらみん。:2006/12/29(金) 02:30:11 0
それは、あたしとプーディの事でした。
プーディと付き合えてるあたしは、すごい運がいい。
プーディは、まだ若いけど、大工さんの棟梁をやってた。
親方って呼ばれてた。
親方って呼び方じじくせーからやめろよ!って言ってるプーディが面白かった。
道を行き交う人、みんなプーディに挨拶する。
この危険な夜の街を、平和に散歩出来ていたのは、実はプーディのおかげだった。
プーディは、この街の住民に、心から好かれていたのだった。
そのプーディに、今日話を切り出す事にしたよ。
217 :
どらみん。:2006/12/29(金) 04:06:58 O
Bの文句ばかり言ってごめんね
自分がBだから、悪い所ばかり言っちゃう。
フォロー入れとくと、経営者とか芸術家が向いてるらしいよ。
218 :
夢見る名無しさん:2006/12/29(金) 14:37:23 O
お、書いてる書いてる!
今回なんか血液型診断でしたね。
私がABだから学ぶこと多かったです
そうかー妥協もしなきゃいけないよなー
執筆頑張ってください。
220 :
どれみ。:2007/01/05(金) 02:37:37 0
朝が来た。今日の夜に、プューディに伝える予定なの。
この朝は、とても乾いた光の太陽。
なぜか潤いが足りない気がする。
緊張が、そう感じさせているのか、それとも、緊張が、太陽をそうさせているのか。
あたしは、緊張が大嫌い。
好きな人なんていないと思うけど、あたしはその中でも嫌いな方だと思う。
自分が駄目になる気がするんだよね。
緊張って言うものが、あたしを駄目にするって言う気がするの。
なんでって、あたしはいつも、その緊張に耐えられないから、その緊張の元となる物から、逃げ出しちゃうから。
よくやってたよ、人間の人生を五千人くらい監視するの。
他人の人生で、自分にどういう影響も及ぼさないから、軽く考えていたの。
でも、その五千人分の人生が、こうやって影響してきたね。
自分の人生のつもりで見ていたのではないから、ほぼ無意味だったって。
そういう風に影響してきたよ。
だから、つまりは。
あたしが見た五千人くらいの、人間の監視は、この、サラスヴァティの人生に、この恋愛の駆け引きに、まったく力にならない。
自分の人生のつもりで見ていればよかった。
そうすれば、自分の人生の様に、力になったはずなのに。
でもそれは過去の事。
次のレベル2のために、この人生を終えたらもう一度人間の人生の監視をやり直す必要があるわ。
もう、こんな過ちはしたくないもの。
夜、あたしはダンスを踊る。
いつものように。
ナンダが、あたしに注意をはらっているのがわかる。
今までは、放し飼いにした飼い猫みたいに扱っていたくせに、この頃はまるで、首輪が抜けた犬みたいな目で見てる。
何を感づいているのよ。ナンダったら。
あーもう、ほっといてほしーなぁ…。
気乗りしないダンスは終わり、お客さんもどこか不満気な感じでお帰りになります。
ナンダがあんな目でこっちを見てるからだよ。
思い切り踊れないじゃん。
自分のテントに戻る時、ナンダがあたしに声をかけた。
221 :
どれみ。:2007/01/05(金) 02:39:08 0
「お疲れ、サラ」
「ナンダ、お疲れさま」
ナンダは改まってる。改まってる時の言い方はいつもこうなの!
何を言い出すんだろ。何かの前フリなんだよ、これ。
「あーサラ…。お前今日何してる?」
「今日?今日はねー、この町で知り合った友達と遊ぶ予定だよ。どうかしたの?」
「友達?…そうか、友達か…。 …それならしょうがないな…。」
ナンダは引き下がってしまった。
「ごめんねー、ナンダ。また違う日にしてよー」
あたしはそう言ってテントに戻った。
ナンダは、その場に立ち尽くして、ずっとこっちを見てた。
あー何なのもー!
気づいてないとでも思ってんの!?
神様じゃなくても気づくよ!
本当にナンダって言うのは、困ったお兄さんだよ。
あたしは、テントの中で、踊りの衣装から私服のサーリーに着替えていた。
すると、突然テントの入り口掛かっていた幕がまくりあがった。
まくりあげたのは、ナンダだった。
「サラ!じゃあいいよ、今日は友達に会いに行け!」
人が着替えているのに、そんな事を言いにわざわざやってきたらしい。
「会いに行くよ!そんなのさっきの話で言ったじゃない!分かってるのに、なんでわざわざ言いに来たのよ!着替えてるでしょ!」
あたしは、着替えようとしていたサーリーで、自分の体を隠しながらそう言った。
「あぁ…ごめん、そういうつもりじゃなかったんだけど…、とにかく聞いてくれ!お前、会いに行けばいいけど、その前に時間取れるだろ!お前…アレなんだからよ!」
ナンダは、とにかくあたしと今話がしたいらしい。
「その前に時間とれる?なんで取れると思うの?」
念のために、ナンダがどういうつもりなのか聞いてみる。
「お前、好きなだけ時間とれるだろ。俺とお前で菩提樹の下で起きた出来事。あれが夢じゃなかったら、お前はいくらでも時間が取れるはずだ」
ナンダは、確認しようとしてた。
あたしの全てについて。
あたしが神の娘であるか、そして、その神の娘であるあたしが、今何をしているか?誰かに好意を抱いているのではないか、などと。
人間であろうと、あたしの兄であるナンダは、心配なんだろうね。
222 :
どれみ。:2007/01/05(金) 02:43:44 0
そして、今少しだけ、あたしはこう思った。
この、素晴らしい兄と、あたしの事を心配してくれるこの兄とは、このサラスヴァティの人生の中でしか、一緒に過ごす事は出来ない。
一瞬で過ぎてしまう、この人間の人生の中でしか、ナンダと一緒に過ごす事は出来ない。
そう思うと、洪水の様な悲しみがあたしを襲う。
だから、いつも人間の世界…つまり下界の中での事象については、あまり深く考えないようにしてる。
そうしないと、あたしの心が、つぶされちゃうから。
人間は、神を憎む時がある。
それも、悪魔を憎むかの様に憎む時がある。
それは、その思いを向けられている神にとっても、すごく恐ろしい事。
なぜなら、神は人間…いや、生物全てに愛されたいと思って、生命体を作ったのだから。
生命体はいつか、「考える」と言う独特の知性と言う物を持った、「人間」と言う生物にまで進化した。
その人間になった途端、「神」を「憎む」と言う、反逆心を芽生えさせる。
神を憎む瞬間は、人によって様々だけど、大体は相場が決まってる。
宝くじが当たるのを、普通の奇跡だとすると、逆の奇跡を憎む。
そうだね、例えば…。
貧乏な家に生まれたその人は、自分をここまで育ててくれたお母さんに感謝するの。
で、お母さんはその人に色々な習い事を教えるために、海外に留学させるの。
貧乏だから、ギリギリで生活するんだけど、お母さんはがんばる。
で、いつの日か、博士号をとったその人は、お母さんに会いに自分の国に、飛行機で戻ろうとするのね。
その、飛行機が、墜落するの。
そして、墜落した飛行機から、死体が出るの。
その死体は、その、お母さんの、その人なの。
そういう時、人は、神を憎む。
悪い奇跡の瞬間も、良い奇跡の瞬間も、人間は神の存在を感じる。
「宝くじが当たった!神様ありがとう!」
「飛行機が落ちるなんて…神よ、呪ってやるぞ!」
どちらの奇跡の瞬間にも、神と言う言葉を出している。
つまり、人間は、無意識の上で、神の存在に気づいているのね。
でなかったら、神なんて単語はこの世にないよね。
もう一つ言えば、人間の脳はすごいのね。
223 :
どれみ。:2007/01/05(金) 02:45:45 0
意識上よりも、無意識上の方がすごいよ。
なんでって、意識上では物事のうわっつらしか感じられないけど、無意識上では、細部まで感じちゃうから。
その無意識上で感じた事は、嘘がないの。
意識上では、色々な物が邪魔をして、自分で自分に嘘をつくような感じで、感じ取られた物が何かの勘違いって事にされちゃったりするし。
でも、無意識上は本物。
その無意識上で、神の存在を人間は理解してる。
だから、神様って言葉を出す。
でも、誰も神様を見た事ないんだから、不思議な話だよね。
さて、ナンダ。
いつでも時間取れるだろ!ってそれはつまり、あの日のあの出来事を確認するとともに、あたしが今何をどう思ってるか聞きたいんでしょ?
あたしがこの頃、様子がおかしいって感づいたから!
「じゃあ、二度目のあたしとのお話だね。力使ってる時のあたしと」
「…俺は、よく分からないが、お前にこの力をあんまり使ってほしくない。だから俺がこういう事をお前に頼む時は、すごく追い込まれている時なんだ」
ナンダはすぐにこういう事を言う。
「俺がお前の小遣いを借りるのは、すごく追い込まれている時だ」
ナンダは昔、そういってあたしからお金を借りた。
そして、そのお金ですぐに仲間の所に行って、なんかギャンブルしてた。
勝負が終わって、みんながその場からいなくなっても、ナンダは一人だけその場から動かなかった。
動かないのではなく、ナンダは気を失っていた。
よほどショックな事があったんだろう。
あたしはそういうナンダを見てる。
そしておそらく、あれはあたしの貸したお金を、一瞬ですったショックによるものなのかもしれない。
そんな事があった訳で、あたしはナンダの「すごく追い込まれている時」と言うのを信用出来ない。
でもまぁ、信用出来なくても、説明するんだけどね。
説明しなかったら、ナンダが病んじゃうから。
224 :
どれみ。:2007/01/05(金) 03:11:12 0
さっき、人間が神を憎む話したけど、あれはあたしがなぜ人間の事を深く考えないかって話だったね。
途中でナンダの話に戻っちゃったけど。言い忘れてた事があったよ。
なぜ、人間の事を深く考えないか。たぶん、管理者であるお父さんも同じだと思う。
と言うか、たぶんお父さんの方が、人間に感情移入しないと思う。
感情移入して、お父さんのお得意のレベル3で全部上手くいく様にメンテナンスしちゃっても、それはこの宇宙の自分の力じゃない。
宇宙自身の力で、自分の中に起きている出来事をなんとかしなくちゃいけない。
それが、自立だから。
ただ、病気は治す。
病気は治すし、観察もする。
定期健診だってする。
それがレベル1であり、2や3である訳。
だから必要以上に感情移入しない訳なんだけど、それがさっきの話に繋がってくるのね。
最悪の奇跡が起きた生物には悪いけど、その運命を直す事は出来ない。
最高の奇跡も、最悪の奇跡も、どちらの奇跡も運命と言う川の流れを良くさせるための物だから。
世界の運命は、たくさんの川の様なもの。
いつか、川は大きな流れだけになっていく。
小さな小川は、やがて隣を流れている大きな川に飲み込まれる。
そんな事が、いつの時代も起きている。
そして、大きな川に飲み込まれた小川を、助けるためにはいかない。
助けてしまったら、時間が無意味に流れた事になる。
その小川が、飲み込まれた事は、この宇宙にとって、すごく大事な事だったのだ。
だから、助ける事は出来ない。
助ける事は出来ないから、神は憎まれる。
そんな説明をしようとしてたんだけど、忘れちゃってたよ。てへへ。
さて、ナンダに説明しなきゃね。
225 :
どれみ。:2007/01/05(金) 03:49:11 0
みなさん語愛読ありがとうございます〜。
インド編がなかなか終わらなくて困ってるよ。
終わる時はすぱっと終わっちゃいそうだけどね。インド編。
人間のキャラ…個性を伸ばした方がいい、みたいな書き込みがずっと上の方にあったけど、
やっぱり私には無理だねー。
これ職業じゃないし、時間もないし、発想もないや。
それに固執すると、絶対この作品は壊れる。
だから、やっぱり自分の持ち味だけ出す事にしました。
一度作品を書き出したら、自分を信じる。
側にいてくれる、編集さんもいないのだから。
だから頑固にいきます。
たぶん、私の人生の中で、片手の指だけで数えられるくらいの、作品の一つなのだから。
応援してくださっているみなさん、本当にありがとう。
そして、おそらくこれからも応援してくれる事に、心から感謝いたします。
P・S
あけましておめでとうございます。
226 :
どれみ。:2007/01/05(金) 04:07:47 0
宇宙人が、大船団で地球に来る話、があった。
でも、ただのお決まりの、地球侵略じゃないのね。
地球に来て、一年だけその宇宙人達は、地球人と共存するのね。
で、一年たつと、その宇宙人達は自分達の住むコロニーに戻るのね。
その時、地球人達も9割くらいその宇宙人についていってしまうって話なんだけど。
そしてコロニーについた地球人は、コロニーに入るための儀式をするのね。
その儀式が、遺伝子を根本から治す手術。
年を取らなくなる。
そして、脳を電波でコロニーブレインと呼ばれる、このコロニー全ての情報を管理するコンピュータとつなげる。
このコロニーブレインは、中継役でもあるので、自分の送りたい情報を、ブレインづたいに誰かに送る事も出来る。
だから、携帯で言うとムービーや写真をメールで送る様なもの。
そして、そういう機能の他に、目で送信受信したりする機能も追加される。
これらの手術をする時、自分の外観は自分でデザインしなければならない。
だから、ほとんどの人は20代くらいの時の自分を外観に設定する。
で、このコロニーの中で起きて行く、一人の旅人の物語を書こうとしていた。
たぶん、この話が終わったら、それを書くかもしれない。
227 :
どらみ。:2007/01/07(日) 05:07:35 0
>>224からの続き。
最近のあたしの行動がおかしいって思ってるのかな。
だから話したがってるんだと思うけど。
「じゃあいいよ、今話そうよ」
そう言って、あたしは時間を止めた。
キョロキョロするナンダ。
「何キョロキョロしてんの?何か話があるんでしょ?」
テントの外を見て、何かいつもと違う光景に違和感を覚えている様な顔をしながら、ナンダはこっちを向いて言った。
「もうなんかしたのか?」
「したよ、時間止めた。だってあたし、この後予定あるもん。普通ならこんな事しないけどね」
「なんで普通ならこんな事しないんだ?」
「だって、この事知ってるの、ナンダだけだし。みんなに言いふらしてたら、めちゃくちゃになりそうじゃん」
ナンダはあたしの兄だから、こういう特等席がある。
神の力を見せれるのは、ナンダだけ。今のところは。
「はい、いいよ話して」
あたしがそう言うと、ナンダは話を始めた。
「最近、踊りが終わるとお前は必ずどこかに行く。着いて行って調べても良かったが、面倒だったから行かなかった。
だから結局お前が何をしていたのかわからない。最近、何をしているんだ?」
ナンダは心配しているらしい。
だけど、あたしから言わせてもらうと、ほっといてほしい感じ。
でも、嘘はつかない。
本当の事を言って、納得してもらいたい。
「好きな人が出来たから、その人に会ってるだけだよ」
「な、なに!!?だ、誰なんだそいつは!唐突にどういう事だ!」
唐突も何も、予定を組んでから好きになる方がおかしいでしょ。
恋は唐突にやってくるものなんだから。
「大工さんだよ。まだ若いけど、親方さんなんだって。」
「お前、今日もそいつに会いに行くのか?」
「そうだよ」
「じゃあ、今日俺にも会わせろ!」
228 :
どらみ。:2007/01/07(日) 05:10:00 0
いきなり何を言い出すんだろう、この人は。
これこそ唐突でしょ。
「なんでいきなり今日なのよ。こういうのを唐突って言うんでしょ〜。違う日に紹介するから、今日は勘弁してよ」
「いや駄目だ!こういうのは早い方がいいんだ。傷が深くなる前に対処した方がいいだろ」
「ちょっと変な事言わないでよ!あーもーいい。もーわかった。はい、面会終わり。じゃ、行ってきま〜す」
あたしはそう言って、時間の流れを戻した。
再びキョロキョロし始めるナンダ。
「おい!戻したのか!まだ話終わってないぞ、さっきみたいにしろよ!」
「あんまり使うと、眠くなるからいやなの!出かける時に眠いのいやでしょ〜?分かってよ!」
「だったら今日会わせろって言ってるだろ!」
一体今日のナンダはどうしたんだろう。
でもあたしだって突き通すよ。
絶対会わせない。
今日は来てほしくない。くんな!言っちゃ悪いけど邪魔だから!!!
「今日は絶対無理。でも違う日だったらいいよ」
そう言うと、またおかしくなるのね。
「なんで今日じゃ駄目なんだよ!今日何があるんだ?やましくなかったら今日でもいいだろ!」
大声で叫ぶから、団のみんなも集まってくる。
兄弟ゲンカか、珍しいな〜。みたいな目をして見てんの。
恥ずかしい。恥ずかしさと面倒くささの相乗効果で、だんだんイライラしてきた。
「だから、二人で遊ぶ約束してるのに、一人増えたら余計な気を使わないとならないでしょ?そうなるのが嫌だから言ってるの」
「ほ〜、そうか、俺は邪魔者か。お前にとって俺は邪魔な奴だったんだな。よ〜く分かったよ、そ〜かそ〜か〜」
あたしは、それを言われてキレてしまった。
「邪魔なんて言ってないでしょ!?一人で被害妄想して、馬鹿じゃないの?そういう事言われると、本当に邪魔っぽくなってくる」
ナンダは、それを言われて固まってしまった。
あたしは、言い過ぎたと思いつつも、その場にいるのがつらくなったので、その場から立ち去ってプューディとの待ち合わせ場所に向かった。
☆ゅ
230 :
夢見る名無しさん:2007/01/11(木) 18:57:16 O
あけおめ
今年も頑張れよ
231 :
夢見る名無しさん:2007/01/14(日) 01:02:56 O
ホントに閉鎖するかはわからないけど
ちゃんと文章保存しといてくれよ
232 :
どらみ:2007/01/15(月) 00:16:30 O
閉鎖…。
どこかにブログ作らなきゃ。
233 :
夢見る名無しさん:2007/01/17(水) 06:57:49 O
あげ
234 :
夢見る名無しさん:2007/01/24(水) 02:15:07 0
ほしゅ
235 :
夢見る名無しさん:
ほしゅ