((((;´Д`))))
信じて・・・・いいのか?
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
この寸止めは・・・
バルツ国4
カンサイは砦内の自室で机に向かい書簡を読んでいた。バルツ国首都バルセルの近況
を知らせるものだ。彼女の部屋は質素だ。砦内ということもあり手狭だが、軍師という肩書
きを持つ身とするなら、不釣合いなほど装飾品がない。しかし、部屋に備え付けられた書棚
には沢山の書物と書簡などがぎっしりつまっている。
カンサイは情報を第一とする軍事戦略家であった。
書簡を読み終えると、カンサイは一息ついた。その時、微かにカンサイの耳に金属のこすれ
合う音が聞こえた。始めは小さかったガシャン、ガシャンという金属音は次第に大きくなっている。
音を発するものがこの部屋に近づいているのだ。
カンサイにはその音の主が誰であるかよく知っていた。
ガシャン、ガシャンという金属音がカンサイの部屋の前に止まると同時にドアが無遠慮に開け放たれた。
ノックもない。
「カンサイ、捕虜が口を割ったぞ」
そこに立つのは老将ボンゴウであった。やはり、彼は今日も歳に似合わぬ屈強な体を鉄の
鎧で覆っている。
「女性の部屋に入るときは、ノックをするのが礼儀ですよ」
カンサイは微笑むと、言葉を続けた。「しかし、ボンゴウ様、直々に私の部屋においでくだ
さるとは嬉しい限りです」
「すまないね。なにぶん、ワシは根っからの軍人でね」
ボンゴウは大きな口をあけて笑った。
おそらく、砦内でこの老練の戦士に部屋をノックせよ、などと云えるのはカンサイただ一人であろう。
直属の部下であるカンサイではあるが、他の軍人がボンゴウについたのであれば、こうはいくまい。
バルツ国5
「それで、捕虜はなんと云ってるんですか」
「大方、君の予想した通りだよ。捕虜はここらに住む郷人だった。やはり、金で買われて、
動いていたようだ。兵歴はないし、訓練を受けた様子もない。まあ、斥候に捕まるくらいだから
大した人間ではないな」
笑うボンゴウにカンサイは首を傾げた。
「しかし、郷人たった一人に簡単とは云え地形を探らせるとは思えませんね。まだ、他にも雇われた
人間がいるかもしれません」
「大方、たったひと月で建ち上がったこの砦を見て、あわてて間者を寄こしたんだろう。それだけ
マハンダが慌てているということさ」
「そうだといいのですが、安心はできません。以前も進言しましたが、未熟な私からみてもこの砦には
戦略的な『穴』があると思います」
「そんな穴なぞ、わが兵士の気合で埋めてしまうさ」
ボンゴウは鎧をガシャガシャと音を立てながら笑った。
笑うボンゴウをみて、カンサイはどうしてもボンゴウとの間に世代の隔たりを感じてしまう。「古い人間」
というレッテルをカンサイはこの老人に付けずにはいられない。
今、軍学校で学ぶことは体の訓練は勿論、戦術的な講義もある。ボンゴウが青年だった頃にも軍事戦略
の講義はあったが今とは全くレベルが違う。ボンゴウが軍学校で学んだ事柄は戦争における精神論が
主であり、完全なスパルタ教育が実施されていた。
「戦争は士気が一番重要であり、気合で勝れば数において不利でも勝てる」と本気で信じているボンゴウを
古い人間と見てしまうことはカンサイにとって仕方のないことであった。
しかし、この古い老錬な戦士をカンサイは尊敬していたし、慕っていた。
このスレはおぱんちゅ先生スレとはまた別なものだから、好きな事書いてもらえばいいし、レスのやりとりは必要ないかもね。
本物で元気ならなによりです。
まぁアレだ。
夜はしっかり寝てくれよ名無しタソ。
名無したん頑張れ!マジで
バルツ国6
カンサイの部屋を後にするボンゴウは苦笑した。軍師とはいえ部下
の部屋に直接赴くということをするのはカンサイがはじめての人間だ
ったからだ。
祖父と孫の年齢ほど歳が離れているのにも関わらずボンゴウは
カンサイを信頼していた。
カンサイの人間性がそうさせるのか、それとも、カンサイが軍には異色
の「女」という存在であるからなのか、ボンゴウには分からなかった。
ボンゴウはいまの軍学校がどいう教育をしているのか皆目知らなかった。
そもそも、女性が軍学校にいるというのも、カンサイの存在を知って初めて
わかったことなのだ。
ただ、ボンゴウが持っていないものをカンサイが持っているということは
ボンゴウ自信もわかっていた。それは、カンサイが最も重要とする情報
というものだ。ボンゴウは大量の資料や書簡を読んで一つの情報を
得るよりは肉体を鍛えていた方が有意義と考える人間であった。
(信頼できる人間なのだからそれでいい)
ボンゴウは深く考える人間ではない。思考より行動を第一とする。
まさに、軍人らしい軍人といえた。
つд^)゜・。 続きが読めて、マジ嬉しいっす!
ありがとう、名無しサン つC
バルツ国7
ボンゴウがカンサイの部屋を後にし、司令部に戻ろうとするとカンサイが後を追ってき
た。
「ボンゴウ様、やはりあの捕虜が気になります。今、ふと思ったのですがあの捕虜は郷人
ではないかもしれません」
まじめな顔でカンサイは云った。ボンゴウはまたも苦笑せざるを得なかった。
「おいおい、郷人だと判断したのは君だぞ。それに、捕虜本人が認めているんだ。間違い
ないだろう」
「ええ、私もやはりそう思うのですが、万が一、彼が郷人になりすました優秀な間者だと
したら、事です」
やはり、カンサイはにこりともせずに云った。
「考えすぎだと思うが」
「裏を取りたいのです。あれが本当に郷人なのか…」
「わかった。あの間者が住んでいたという村に兵をやって聞き込みをさせよう。それで、
満足するかい?」
「申し訳ありません。確証がないとどうにも落ち着かない質なもので…」
ボンゴウとしては一人でも砦から人員を離したくなかった。急ごしらえの砦にはまだ完
全に兵が揃っていない。一応、首都のバルセルから増援がくる予定ではあるが、なにがあ
るかわからない。来るはずの兵が来ない。そういう体験をボンゴウは何度かしてきた。援
軍が予定通り来ないと砦の兵士達の士気にも関わる。兵の増減が士気に影響を及ぼすとい
うこともボンゴウの経験に基づくものであった。
バルツ国8
司令室に戻ったボンゴウは早速、郷人が住んでいたと自供した村へ兵を派遣することに
した。ボンゴウはレディフ大佐を召喚した。レディフ大佐はボンゴウの直属の部下であり、
砦の全兵士の指揮権も持っている。砦の権力の構図をボンゴウが頂点とすれば、レディフ
大佐がナンバー2であると兵士からは見られていた。そして、レディフ自身もそうである
と確信していた。
「レディフ大佐、砦近くのイワレンという村に数名の兵を送って調べてもらいたいことが
あるのだが」
ボンゴウが命じるとレディフ大佐は恭しく頭を下げた。
「捕まった間者がそのイワレンという村に住んでいると自白した。どうも、マハンダに金
で雇われたそうなのだが、本人の自白のみで確たる証拠がない。それで、そのイワレンの
村へ行って裏を取ってきて欲しい」
ボンゴウの命令に対しレディフは頭を上げると口を開いた。
「お言葉ですが、私もその捕虜と面会しましたが、裏づけをするまでもなく、ここらに住
む郷人だと思われます。それでも、兵を派遣せよとおっしゃられますか。現在、わが砦は
…」
レディフの言葉をボンゴウがさえぎった。
「わかっておる。一人でも兵が欠けるのはこの砦にとってよいことではない。それでも、
行って欲しいのだ」
「カンサイ軍師…ですか」
「発案者がだれでもかまわん。判断し、命令を下すのはわしだ」
「失礼しました」
レディフは再び先ほどより低く頭を下げた。
ボンゴウの視線はレディフ大佐の顔を捉えることができなかった。
バルツ国9
レディフ大佐は一礼をすると司令部を後にした。これから、イワンレの村に兵を派遣し
なければならない。
レディフ大佐は自室へ戻った。彼の部屋はカンサイの部屋と全く対極にあるといってい
いだろう。部屋には絵画や壷、刀剣といったものが並べられている。しかも、どれも値
のはるものだということが一目でわかる。レディフ大佐は高級な物に囲まれることで、
自分も高級な存在になったと思うことができる人間であった。
レディフ大佐は部下を呼んだ。イワンレの村に兵を派遣するために人選をしなくてはな
らない。
「イワンレへ捕虜の証言が正しいかどうか証明するために兵をやる。誰か適切な人間を
選んで、裏を取って来い」
命じられた者はレディフ大佐の下で兵の管理を行う人間でデルバという名である。デル
バが兵の配置や人員の裁量をし、それらをレディフ大佐が最終決定する。そして、配置が
行われた後、ボンゴウに最終報告があがる。デルバは軍服こそ着ているがその性格は事務
官に近い。デルバはいつも片手にファイルを持っていた。そのファイルには細かい文字が
びっしりと書き込まれている。内容は兵士たちの経歴や配置図であった。デルバがこの砦
の人員配置を行っているといっても過言ではない。
「はい。わかりました。すぐに、イワンレへ人を送りましょう」
デルバは、上官に向かって口答えをしない。疑問形を滅多に使わない。ただ命じられる
ままに判断し行動する。
「これはボンゴウ様から直々に下った命令だ。失敗するなよ」
傲慢な態度でレディフ大佐は云った。ボンゴウと接していたときとは天と地ほどの隔た
りがある。上のものにはへつらい、下のものには突き放した態度で接する。こういう類の
人間は世の中に多い。レディフ大佐にとって、自分より階級が下の者は昇級のための駒に
しか見えないのであろう。
「はい」
デルバはただうなずいた。
バルツ国10
デルバは廊下を歩きながらファイルをめくった。ファイルに書き込まれた文字は驚くほ
ど小さい。文字の細かさがデルバの性格をよく表していた。
デルバは兵士達の勤務時間の表の項をめくると、くるくると目を動かし適当な人間を探
した。探し終えると、ファイルを閉じ、早足になって廊下を進んだ。これから、捕虜の証
言をまとめた資料を取りに行かなくてはならない。本来ならば、命令を下した時にレディ
フ大佐から受け取らなくてはならないのだが、レディフ大佐は何も彼に渡さなかった。レ
ディフ大佐のことだ、資料を取り寄せるのを忘れたのだろう。
デルバはため息をついた。
(確か、捕虜は要人を受け入れるほうの建物にいたな)
デルバは砦から間者が捕らえられている建物へ向かった。
バルツ国11
デルバは間者が捕らえられている建物の三階に着いた。
ドアの前には見張りが一人立ち、脇に置かれた簡易ベッドには兵士がトランピーで一人
遊びをしている。占いだろうか。
「捕虜の資料はどこにある?」
デルバは見張りの兵に聞いた。
「ここにはありません」
見張りの兵は答えた。自分より階級が上のデルバに対してだが、兵の言葉に尊敬の念は
感じられなかった。ベッドで待機中の兵もそのままトランピー遊びに興じている。本来、
自分より階級が上の人間がいるときは直立の姿勢をとらなければならないのがバルツ国軍
の慣例だ。
「では、どこに?」
デルバはベッドの上のトランピーに視線を落として聞いた。
「先ほど、カンサイ軍師殿がもっていかれました」
やはり、兵の応対はよそよそしかった。
「わかった」
デルバはそれだけ云うと、その場から去った。
次はカンサイ軍師の部屋に行かなくてはならない。
バルツ国12
デルバはカンサイの部屋の前にいた。デルバは兵の対応には慣れていた。デルバは
兵たちが自分をを見下していることを知っていた。それが、デルバに戦いの能力が皆無
であるという事実から由来していることも知っていた。
自分より上級であろうと下級の兵であろうとも、どう接すればいいのか心得ているデル
バであったがカンサイだけは別だった。彼女と接するときデルバが己の中に築いてきた法
則が狂う。だから、デルバはカンサイとどのように接すればいいのかわからなくなるのだ
った。
意を決し、目の前のドアをデルバはノックした。
「どうぞ」
ノックの直後カンサイの声がした。
デルバは顔を引きつらせながら、ドアを押した。
「失礼します」
装飾品がない質素な部屋にデルバは足を踏み入れた。カンサイは机に向かいペンを走ら
せていた。
「どうかなさいました?」
カンサイが紙から目線を上げ、デルバの顔を見ると微笑んで云った。緑がかった黒髪が
美しい。デルバは思わず視線をそらした。
「ほ、捕虜の資料がこちらにあると聞いたのですが」
「ああ、あれですか。ちょっと待ってくださいね」
そういうとカンサイは再びペンを走らせた。
しばしの沈黙が続く。聞こえる音はペンが紙と擦れあう音のみである。
バルツ国13
デルバは普段、沈黙になれていた。が、カンサイの前では違う。彼はなにかしゃべりた
くて仕方なかった。カンサイの前ではデルバは普段のデルバではいられなくなる。デルバ
はついに口を開いてしまった。
「カンサイ軍師、あなたは前日も捕虜が監禁されている部屋に行ってい
ますね。その時は今、警備している兵とは違う三人が捕虜を見張っていたようですが、軍師という
立場の人間が下っ端の兵と会うというのもどうかと思います。そうでなくても、あなたは
軍にとって女性という異色の存在ですからね。兵も困惑するのではないですか。そもそも、
その資料も誰か他の人間を使って取りに行かせればよかったのではないですか」
「……」
カンサイの耳にデルバの声は届いているのだろうか。書き物に集中して聞こえないのか、
あえて無視しているのかデルバにはわかなかったが、カンサイは沈黙を守った。
そのまま、互いに一言も発せずに三分が過ぎた。
「はい、お持ちください」
唐突にカンサイが資料を差し出した。
「すみません、今、それを書き写していたんです」
デルバが机を見ると、デルバの手元にある文章がそっくり、カンサイの机の上の紙に写さ
れていた。その文字は美しく、小さくもなく大きくもない読みやすい字で書かれていた。
「…ありがとうございます」
一言礼を述べるとデルバはカンサイの部屋から出て行った。
バルツ国14
再び砦に戻ったデルバはやはり早足で廊下を進んだ。
デルバは窓に目をやる。
(まだ、日は落ちていない。勤務から外れた奴らは食堂にいるな)
デルバは自ら任務を言い渡すべく、食堂へ向かった。
食堂では何人かの兵士が食事を摂っていた。今、彼らは非番なのだ。
デルバはあたりを見回し、目的の人間を探した。もし、ここにいなかったらそれぞれの
宿舎を回らなければならない。それは面倒だ。
(いた)
デルバは目的の兵を見つけた。運のいいことに対象の二人とも揃っている。二人は四人が
けのテーブルに向かい合って座ってトランピーで遊んでいた。兵のあいだでトランピーが
流行っているのだろうか。
デルバが彼らの座っている一番奥のテーブルへ向かうために足を進めたときトランピー
で遊んでいる片方の兵が突然叫んだ。
「いま何時!」
彼の名はラキア。
捕虜が監禁されている部屋にカンサイが訪れたとき、ギチギチと歯軋りをし、堂々と眠
っていた男である。
>>80 訂正
バルツ国4
翌日。
カンサイは砦内の自室で机に向かい書簡を読んでいた。バルツ国首都バルセルの近況
を知らせるものだ。彼女の部屋は質素だ。砦内ということもあり手狭だが、軍師という肩書
きを持つ身とするなら、不釣合いなほど装飾品がない。しかし、部屋に備え付けられた書棚
には沢山の書物と書簡などがぎっしりつまっている。
カンサイは情報を第一とする軍事戦略家であった。
(以下同じ)
バルツ国14
突然のラキアの叫びに向かい合っているもう一人の兵が驚きのあまり、トランピーのカ
ードを手から落とした。ハラハラとカードが床へ舞う。
「なんだよ、ラキアいきなり叫ぶなよ」
床のカードを一枚一枚広いながら彼は云った。
彼の名前はジーフという。
床に落ちてしまったトランピーは絵柄が見えてしまっているカードもある。これでは手
の内が丸見えだ。勝負にならない。
「もう一回最初からだな」
そういうとジーフは手札を山に戻した。
「それより、いま何時だよ」
相変わらずラキアは時間を聞く。何か約束でもあるのだろうか。
「知るかよ。日はまだ落ちてないから6時くらいじゃないか」
ジーフはラキアの手からカードを奪うと云った。ラキアのカードも山に加え、シャッフ
ルを始める。慣れた手つきだ。
「さあ、もう一勝負だ」
ジーフがカードを配ろうとしたときだ。彼らの机へ一人の男がやってきた。
デルバだ。
ラキアとジーフは緊張した。彼らにとってデルバはあまり好ましくない存在だ。できれ
ば砦の中でくつろげる唯一の場所、食堂には来て欲しくない人間だ。
ラキアとジーフは起立をすると、直立の姿勢をとった。食堂は上級の人間が来ても直立
の姿勢をとらなくても良い場所とされていた。公私を分けることを好むバルツ国の風潮が
よく表れている制度である。他国の軍ではこうはいくまい。
しかし、いくら私の場所である食堂で直立の姿勢をとらないことが許されていても、ジ
ーフとラキアは立ち上がらずにはいられなかった。デルバは明らかにジーフかラキアある
いは、双方に用事があるようだったからだ。
へんなもん書いてるんじゃねぇよ、ボケが。
ブログでやれや。
>>98 そういういい方ないでしょう
好意でやってくれてるんだから
●〜*°゜°。。ヾ(≧∇≦o) エイッ!!
バルツ国16
「ジーフ君とラキア君ですね」
そういうと、デルバはファイルをめくった。デルバの表情に変化はない。
(こいつバカにしてやがる)
ラキアが胸の中で悪態をついた。ラキアの変化を察したのか、ジーフはわざと声を大き
くして返事をした。
「はい、そうです」
少し声が大きかっただろうか。食堂にいる人間の注目を集めてしまった。しかし、その
まま、何事もなかったように食事を続けるものや、こっちを注視しているもの、明らかに
睨んでいるものなど、反応は様々だ。何故か、急に食堂から出て行ってしまうものもい
た。
「あなたがたに新たに任務があります。ここからほど近いところにイワンレという村があ
ります。そこで…」
デルバは言葉を切り、資料をジーフに渡した。
「この人物について調べてきて欲しいのです」
ジーフは渡された資料に目を落とした。調べる人間の姓名、簡単な経歴とともに、人相
書きが書かれている。顔に見覚えがあった。昨日、警備した捕虜だ。ラキアもジーフの手
元に視線をやると気がついたのか、声を出した。
「こいつ、昨日、俺たちが見張ってた野郎じゃねえか」
ラキアは上官に対する口の聞き方が全くなっていない。相手が普通の上官ならば張り手
が飛んでいることであろう。
デルバはラキアの声が聞こえなかった、とでもいうように説明を続けた。
「この人物について調べることはただ一点、本当にその村の出身者か否かということです。
期限は一日。明日の朝出発して、その日の夜には帰ってきてください」
デルバは云い終えると、さっさと食堂を出て行ってしまった。まるで、自分の任務以上
のことは受け付けない、という態度である。
「ちっ」
微かにラキアが舌を鳴らした。
ジーフ君=藤井君
ラキア君=アキラ君???
キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・*�!!!!!
バルツ国17
任務を言い渡されたジーフは一度、宿舎の部屋に戻ることにした。ラキアと一緒に食堂
から出たのだが、ラキアは宿舎の方向とは反対の廊下を進んでいってしまった。ジーフが
「どこへ行くんだ?」
と声を掛けたが、
「…ちょっと」
と、そっけのない返事をしてどこかへ行ってしまった。聞かれたくないのだろう、と判
断したジーフはそれ以上、追及せず食堂の前から離れた。
軍学校からの付き合いであるジーフとラキアであるが、時々何を考えているのかわから
ない面がラキアにはあった。
続きまだぁ?
バルツ国18
こうしてカンサイが発した捕虜の経歴を調べる、という案はボンゴウ、レディフ大佐、
デルバに流れ、実行するジーフとラキアに下った。
組織の中での命令はこうして上から下へ流れ、また、末端が拾った情報は、同じ経路を
辿り、下から上へ登る。
ジーフは砦内の宿舎の部屋へ戻った。兵の部屋は狭い。小さな部屋に二段ベッドが両端
に2つ置かれ、一つの部屋を四人で共有する。
兵のプライベートな空間はこの狭い部屋のベッドの上だけであるといっても過言ではな
い。
同室の兵は任務の最中か、食堂にいるのか、部屋にはいなかった。
ジーフは二段ベッドと床の間に作られた引き出しを開けた。兵の私用なものは全てここ
にしまうことになっている。二段ベッドは部屋に二つ。つまり、引き出しも二つで、引き
出しの半分の面積がジーフのものだ。
ジーフは部屋の隅に置かれた、リュックを引き出しの前に持ってきた。そして、引き出
しからものをつめようとしたとき、部屋のドアが開け放たれた。
「いくぞ」
ラキアだった。
ほっす
(σ´□`)σ・・・・…━━━━☆ズキューン!!
ふぉっしゅ
バルツ国19
突然、部屋に侵入したラキアに、ジーフは驚いた。
「なんだよ、突然」
「ちょっと、来て欲しいんだ」
ラキアは頭をかきながら云った。照れている。
(ラキアが照れる?)
ジーフは驚いた。ラキアが照れる、などという表情を見せるのは初めてかもしれない。
「行くって、どこへ?」
「ちょっと」
それだけ云うと、ラキアは部屋から出て行く。背中がついて来い、と云っている。
ジーフは黙ってついて行くことにした。
ラキアは部屋を出、廊下を進んでいく。その後をジーフがついて行く。
向かう方向は、食堂のほうだ。
ラキアは食堂を抜け廊下の突き当たりで止まった。ここは丁度、食堂の裏口に
あたるところだ。食堂の調理場と直接つながっており、食堂で働く人間は普段ここ
から出入りする。
「ちょっと、待ってろ」
ラキアはぶっきらぼうに云うと、裏口から調理場へ入ってしまった。
バルツ国20
ラキアが裏口から食堂の調理場に入って間もなく、ドア越しから男女の
声が聞こえてきた。
「嫌だ。恥ずかしい」
「頼むって、軍学校の頃からの友達なんだ、一分でいいから、付き合ってくれよ」
「恥ずかしい」
男の声はラキアだとわかる。「恥ずかしい」と云っているのは女の声であるが
誰だ?ジーフは食堂の調理場で働く女性を頭に思い浮かべたが、声と顔が一致
しなかった。
「ちょっと、だけだって、お願いだよ」
「恥ずかしい」
どうも、ラキアが女性の方に必死で何かを頼み込んでいるらしい。しかし、女性の
方は「恥ずかしい」と拒んでいる。
「頼むよ。どうせ、いつかはバレるんだから」
「・・・・・・」
しばらくして、声が聞こえなくなった。それから30秒ほどして、唐突に扉が開いた。
ラキアがドアから出てきた。
「紹介するよ、俺の彼女」
バルツ国21
扉からラキアができて信じられないことを云った。
(ラキアに恋人?何かの冗談だろ)
ジーフが信じられないと云った顔を、照れながらラキアが見返した。
(本気なのか)
もし、冗談だったら笑いながらラキア紹介するだろう。しかし、彼は照れている。
普段、照れという感情をあらわさないラキアである。真実なのだ。
「じゃあ、紹介するぞ。カユだ」
ラキアがいうと、ラキアの後ろからおずおずと一人の女が出てきた。女というよりは少女
と云ったほうが正しいだろうか。年齢は見た目、17歳くらいである。
(ラキアのやろう、こんなかわいい娘を・・・)
ジーフの心に一番最初に湧いたのは嫉妬と悔しさだった。勿論、祝福の気持ちが
ないではないが、やはり、羨ましい、という気持ちと、先を越された、という思いが先行して
しまう。ジーフは若い男だ。仕方のないことである。
しかし、かわいい人だな、とジーフは思った。
極度の恥ずかしがり屋なのか、伏せ目がちにして顔をはっきりとは見えないが
彼女が美貌の持ち主ということは、よく分かった。
黒髪に、二重の瞼。鼻は筋が通っていて、肌が綺麗だ。
調理場という職業だからだろうか、髪は頭のてっぺんで紐で縛られている。
縛られた髪の長さから察するに、紐を解けば、肩まで髪は届くだろう。
兎に角美人である。
「・・・はじめまして」
カユはお辞儀をした。慌てて、ジーフもお辞儀をする。
「こちら、こそはじめまして。ラキア君とは軍学校からの知り合いなんです」
「おい、なに言葉遣い変わってるんだよ」
ラキアがジーフを笑った。
人の恋人だというのに、ジーフは相手の器量のよさに戸惑ってしまっていた。
( ゚д゚)
ラ キ ア と カ ユ
(つд⊂)ゴシゴシ
(;゚д゚)
(つд⊂)ゴシゴシ
ユ カ と ア キ ラ
_, ._
(;゚ Д゚) …?!
業務連絡。
避難所くらいには顔出してみません?
バルツ国22
「もう、戻ってもいい?」
しばしの沈黙の後、カユが口を開いた。
ラキアはカユとジーフの顔をそれぞれ見た。ジーフは何も云えなかった。
「悪かったな。戻っていいぞ」
ラキアがそう云うと、カユは再びドアの向こうへ戻っていった。頭頂部で一つに
結ばれた、ゆれる髪が印象的だった。
「美人だろう」
ラキアがはじめて笑っていった。
「正直・・・ショックだ」
ジーフは素直に云った。
「それは酷いだろう。どういう意味だよ」
「俺のほうが先だと思ってた。恋人ができるのが・・・」
「なんだ、先を越されて悔しいのか?」
「ラキアには恋人ができないと思っていたから・・・」
「酷いな」
ラキアは豪快に笑った。なんだか、勝ち誇ったような笑いにジーフには聞こえた。
バルツ国23
結局、ジーフとカユが顔を合わせたのは2分ほどだった。しかも、
言葉は交わしていない。結局、宿舎のほうへ戻りながら、ラキアが
カユとの経緯を話すことになった。
ラキアはカユを紹介する前の照れの顔から、にやけた顔になっていた。
笑いながら口を開く。
「あいつ、臆病でさ。俺が好きな女のタイプと少し違うんだけど、
まあ、好きになってしまったものは仕方がないというか」
ジーフは歩きながらラキアを睨んだ。
「のろけ話は聞きたくない」
「すまん、すまん」
ラキアは笑いながら云った。幸せの真っ只中にいると笑いが止まらないのだろう。
「見てのとおりの恥ずかしがりやなんだよ、カユは。俺が何度、あいつに告白したことか。
告白するたびに、振られ、翌日また、告白してやった。それを何度も繰り返して、落とした」
ラキアのこういう度胸があるとことがジーフには羨ましかった。
「しかし、ラキアに好きな女性ができた、なんて話、一度も聞いたことないぞ。
ましてや、告白なんて・・・」
「彼女になってから紹介するつもりだったんだよ。絶対、俺の恋人にする自信があった。
俺があいつを一番好きだったからな」
ラキアは声を出して笑った。
(こいつ・・・)
ジーフはラキアの度胸のよさとその自信に改めて感服した。
バルツ国24
ラキアに恋人ができたという、ジーフにとってショッキングな事実を
知った後、二人はそれぞれの宿舎の部屋へ戻った。
明日の準備のために、ジーフは2段ベッドの引き出しからリュックに
荷物をつめていたが、なんだが急にやる気がなくなってしまった。中途
半端に荷物を突っ込んだリュックを隅へ追いやると、ジーフは自分のベッド
に潜り込んだ。ジーフのベッドは下の段になる。
ジーフは横になり、目を閉じた。
(かわいかったな、カユってこ)
暗闇に、カユの横顔が浮かんだ。
かわいらしい。どうして、こんなかわいい女の子が、ラキアなんかと・・・
とつい、考えてしまう。
しばらく、笑顔を見せると、ジーフの妄想のカユは頭頂部で結んだ髪を揺らしながら、どこかへ
去っていってしまった。
ジーフは眠くなってきてしまった。眠るにはまだ時間が早い。
しかし、睡魔に勝てずに、ジーフは眠りの泥沼にずぶずぶと沈んでいってしまった。
ほっしゅ
バルツ国25
どこか街のような場所でカユとラキアが二人で手を繋いで、歩いていた。
二人はまるで周りの人間に見せびらかすように寄り添って歩いている。二人とも
笑顔だ。
ジーフは二人を俯瞰図のように上から彼らを見ていた。
幸せそうな二人の笑顔はジーフの心を温かくした。
=====================================
>>73-
>>122 ここまでが「マハンダの興亡」 作 おぱんちゅ先生(下着男)◆3L4RhulvqUの
パラレルワールド若しくは同人誌です。
100%確証は得られないが、◆3L4RhulvqUが別鳥で活躍を
再開したので、このスレでの同人誌は終了します。
本編は
>>18の物語を最後にしており、そこから物語が再開すると予想されます。
先生が作成したまとめは
>>27にあります。
先生には許可もなく勝手にパレルワールドを構築してしまったことを深くお詫び申し上げます。
また、今回、現れた先生が本物であるならば、先生の活躍と健康をただただ祈るばかりです。
>>123 今まで乙かれでした♪
ほんとに、先生が戻ってくるといいですなぁ(;´Д`)ハァハァ
乙!
長い間お疲れ様でした。
展開にハラハラドキドキしてました。楽しかったです。
本心は続きが読みたいけれど...。
ところで先生って??