そら

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23夢見る名無しさん
うれしかった。でも話すことがなにかあったのだろうか。
ふとそう思った僕は
「あ、んじゃぁ」
小さく女の子に礼をして病室に背を向けて立ち去った。
「ちょっとまって!」
女の子の声が聞こえたが恥ずかしくなって廊下にでると走り出した。
「まってよ!」
後ろの遠くで廊下にでた女の子の声。僕はかまわず廊下をまがり階段を降りた。
2階さがると近くに見えたトイレに駆け込んだ。
大便の用でもないのに大便に入って、洋式便器にすわりこんだ。
心臓はバクバクいって、汗をかいてハァハァだった。
目を閉じていろんなことを考えた。
(お金もったいなかったな。この金があったら中古ゲームかえたな。)
(そうじゃない。あの子に会えた。よかったな。これでもう目的は達成されたな)
(友達っていってくれたし。もう満足だ。これで帰るか。まだ昼前だな)
(家にかえれば飯くえるな。あ、お母さんにはいらんっていったんだっけ)
(どうしようかな昼飯。そうだあいつんちでらーめんでもくうかな)

どれも現実逃避だった。わかっていた。女の子、そらと話したいことを。
でもはなすことが見つからなかった。世間話でもすればいいのだろうか。
今日はラケットだってもってない。ネタがない。
(あいつまだ俺のことさがしてるのかな。もう病室戻ったかな。)
僕は自分のふがいなさ、いくじのなさ、度胸のなさに涙が出てきた。
悔しかった。