メモ帳

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1土管子
 
2土管子:02/07/23 15:38
申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷い。酷い。
はい。厭な奴です。悪い人です。ああ。
我慢ならない。生かして置けねえ。
はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。
世の中の仇です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。
私は、あの人の居所を知っています。すぐに御案内申します。
ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。
主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。
私は、あの人よりたった二月おそく生れただけなのです。
たいした違いが無い筈だ。人と人との間に、そんなにひどい差別は無い筈だ。
それなのに私はきょう迄あの人に、どれほど意地悪くこき使われて来たことか。
どんなに嘲弄されて来たことか。ああ、もう、いやだ。
堪えられるところ迄は、堪えて来たのだ。怒る時に怒らなければ、
人間の甲斐がありません。私は今まであの人を、
どんなにこっそり庇ってあげたか。誰も、ご存じ無いのです。
あの人ご自身だって、それに気がついていないのだ。
いや、あの人は知っているのだ。ちゃんと知っています。
知っているからこそ、尚更あの人は私を意地悪く軽蔑するのだ。
あの人は傲慢だ。私から大きに世話を受けているので、
それがご自身に口惜しいのだ。あの人は、阿呆なくらいに自惚れ屋だ。
私などから世話を受けている、ということを、何かご自身の、
ひどい引目ででもあるかのように思い込んでいなさるのです。
あの人は、なんでもご自身で出来るかのように、ひとから見られたくてたまらないのだ。
ばかな話だ。世の中はそんなものじゃ無いんだ。
この世に暮して行くからには、どうしても誰かに、
ぺこぺこ頭を下げなければいけないのだし、そうして歩一歩、
苦労して人を抑えてゆくより他に仕様がないのだ。あの人に一体、
何が出来ましょう。なんにも出来やしないのです。私から見れば青二才だ。
私がもし居らなかったらあの人は、もう、とうの昔、あの無能でとんまの弟子たちと、
どこかの野原でのたれ死していたに違いない。
「狐には穴あり、鳥には塒、されども人の子には枕するところ無し。」
それ、それ、それだ。ちゃんと白状していやがるのだ。
ペテロに何が出来ますか。ヤコブ、ヨハネ、アンデレ、トマス、痴の集り、
ぞろぞろあの人について歩いて、背筋が寒くなるような、甘ったるいお世辞を申し、
天国だなんて馬鹿げたことを夢中で信じて熱狂し、その天国が近づいたなら、
あいつらみんな右大臣、左大臣にでもなるつもりなのか、馬鹿な奴らだ。
その日のパンにも困っていて、私がやりくりしてあげないことには、
みんな飢え死してしまうだけじゃないのか。
私はあの人に説教させ、群集からこっそり賓銭を巻き上げ、
また、村の物持ちから供物を取り立て、宿舎の世話から日常衣食の購求まで、
煩をいとわず、してあげていたのに、あの人はもとより弟子の馬鹿どもまで、
私に一言のお礼も言わない。お礼を言わぬどころか、あの人は、
私のこんな隠れた日々の苦労をも知らぬ振りして、いつでも大変な贅沢を言い、
五つのパンと魚が二つ在るきりの時でさえ、
目前の大群集みなに食物を与えよ、
などと無理難題を言いつけなさって、私は陰で実に苦しいやり繰りをして、
どうやら、その命じられた食いものを、まあ、買い調えることが出来るのです。
言わば、私はあの人の奇跡の手伝いを、危い手品の助手を、
これまで幾度となく勤めて来たのだ。
3夢見る名無しさん:02/07/23 15:42
3イタダキマン
4(−_−):02/07/23 15:47
すごいな。これ太宰治の小説でしょ。書き出し覚えてたよ。実はいろいろ読書する人だったんだね
5夢見る名無しさん:02/07/23 15:50
チン子も痛いし南極にも生きたいしどうすればいいとおもった。
6夢見る名無しさん:02/07/23 15:51
お前らどうせ木綿豆腐の素早さが羨ましいだけなんだろ?
違うというならちんこを3メートルに折り畳んでみろ!
7夢見る名無しさん
 おかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。

   かねた一郎さま 九月十九日
   あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
   あした、めんどなさいばんしますから、おいで
   んなさい。とびどぐもたないでくなさい。
                   山ねこ 拝