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国内インターネット掲示板で最大規模を誇る「2ちゃんねる」において、
その掲示板の削除作業を担当する運営ボランティア‥‥それが
「削除人」と呼ばれる人達です。そしてその中でも、
俗に「管理側」と称される削除人が「最上級削除人」と言われる‥‥
2chにおけるほとんどの削除、その他の管理権限を有する人々です。
しかし最上級削除人と言っても、そのほとんどは普通の社会人か、
留年を何度も経験してそろそろ卒業がやばくなってる
ええトシした大学生か、自営業か、ブー太郎か‥‥と、
ごく一般的な人々です(ただし皆、削除人の看板を
背負っているだけあって年齢はそこそこ逝ったオトナです)。
そんな彼らが今夜、削除権の中でも最強の部類に入る「魔法」、
アクセス規制を発動させるために集合します‥‥。
集合場所は都内某所の空き地。そこへ某中小企業に
お勤めの最上級削除人「A助さん」が真っ先に現れました。
しかし真っ先に、といっても集合予定時刻のチョイ過ぎ。
つまり、まだ来ていない他のメンバーは全員遅刻というわけです。
A助さんはそれを見て「また全員遅刻かよ‥‥」とぶつくさ言いながら、
その空き地に転がっていた‥‥「のび太」の昼寝姿が似合いそうな
大きな土管に腰掛け、煙草に火を付けました。そして夜空に向かって
フウッと紫煙を吐きながら、他のメンバーの到着を待ちました。
すると10分後、コンビニの袋を手にしたチーマー風のデブが
この空き地にやってきました。最上級削除人の「B吉」さんです。
B吉さんは「ども」とA助さんに軽く会釈しました。A助さんは正直、
彼のその風貌、雰囲気に対して微かな嫌悪感を抱いていますが‥‥
同じ削除組合の仲間として、そういう気持ちを面に出すことは
いけないと思い「やっ」と作り笑いを浮かべて軽く手を挙げました。
しかしこのB吉さん‥‥カッコはチーマー風味ですがカッコだけで、
根はかなりイイ人なんです。ルックスはこんな感じでもう‥‥
全力で他人に嫌悪感を与えることをモットーとしているような
感じの人ですが、とりあえず深く付き合えばこれほど信頼できる
人は居ないと、身近な関係にいる人々は口を揃えて
そう彼を褒め称えます(職業はプー太郎ですが)。
そして2chにおける彼も、物知らずな教えて君に対して
懇切丁寧にアドバイスしたり、エロ画像クレクレ君に対して
とびっきりのエロサイト(ポッブバナー無し)を紹介したり、
アッタマの悪そうな厨女の恋愛相談に夜明けまで付き合ったりと、
とにかく優しい、暖かみのある固定HNとして非常に
人望があります。そして削除人としても、誰もやりたがらない
面倒な削除を一手に引き受けたり、とにかく叩かれがちな
たもん君をかばったりと‥‥その面倒見の良い「人間味溢れる
削除活動」に対し、もうPCの前でパンツびっちょびちょに
濡らしまくる女も多いとか多くないとか言われております。
しかしそんなB吉さんですが、来ていきなり‥‥コンビニ袋に
入っていたアツアツの肉まんを食べ始めました。夕食か、
夜食か知りませんけど‥‥とにかくA助さんがB吉さんを見るときは、
必ず彼、なんか喰ってます。
性格はとてもいいB吉さん。削除組合でも随一の良心派として
知られています。そして実際のB吉さんも優しい人です。
しかしこういった‥‥目の前でナンの断りもなく食事を始める
このデリカシーの無さが、風貌も併せてA助さんの、
彼に対する嫌悪感を誘う部分なんです。
しかも独身会社員のA助さんは今夜、会社の同僚の飲みの誘いを蹴って
ここに馳せ参じているので、彼も腹が減ってるんです。
が、そんなA助さんの腹の具合になどマッタク気が回っていないB吉さんは、
「大阪って‥‥肉まんのことを『豚まん』って言うんスよね」
などとどうでもいいことを言いながら、四個目の「ピザまん」を
頬張っている始末。腹が減ってイライラしているA助さんは、
「(そのカレーまんでイイから一つ、オレにくれよ!!)」という心の叫びを
押さえつつも、そんな気持ちを押し殺して、
「大阪ではマクドナルドのことを『マクド』って言うんだって!?」
とかいって、逆に嫌いな彼の話に併せてしまう始末。ここらへんが
A助さんのオトナ的な部分であり、また人の顔色を伺う習性の
ついてしまった「企業人」としての悲しさなのでした‥‥。
〜 第弐話へ続く 〜