X とにかくこの事件は取材がやりづらかった。 ひとつには犯行現場である家の両親が一部でも報道されたように、 共産党員だったせいか、これまでと違って警察が、ぜんぜん取材に協力してくれなかったからね。 Y そうですね。本当に警察は、ピリピリしていましたからね。 家宅捜索なんかも異例の弁護士立会いですからね。 Z まあ、共産党員と未成年者の、いわゆる少年法とのからみという二重のシバリで、 確かに普通の事件取材のようには、いかなかったことは確かだった。 X この間、ニューヨークのセントラルパークで、ジョギング中の白人女性が、 五、六名の黒人少年にレイプされた事件があったね。すぐさま逮捕された事件で、 十三歳から十八歳までの少年なのに実名はおろか、写真まで発表され、 ニューヨーク・タイムスなんかにも堂々と報道されているのなんかを見ていると、 ずいぶん日本との違いを感じるね。 Y とにかく日本では、いい面もあるんだろうが、 プライバシーや人権がカべとなって取材がやりにくすぎるよね。
Z 今度の事件でも東綾瀬中学校の山田という教頭なんかは、責任回避で逃げの一手だった。 Y 僕もあの教頭に取材でコメントをもらおうと思ってアポの電話を入れ合う約束をして、中学校へ行ったが、職員会議中でダメ。終る時間を待って、電話をしてみると、とにかく忙しいの一点張り。 あげくのはて本当は主犯格の少年が、卒業する時もその中学校にいたにもかかわらず、 「私は、この四月からここへ来ましてね。少年のことは何も知らないんですよ」 こういって嘘を平気でつく始末でね。こっちは当時の卒業者名簿を入手しているのに、 その事を言うと、「いやいや、そんな……」なんて誤魔化す始末だからね。 そのあげく「将来ある少年だから何も言えません。プライバシーもありますからね」こう言って結果的には、 責任のがれで終りと言うわけですよ。別にその教頭にとやかく言いたいわけではないが、 責任ある立場にいるのだから、キチンとコメントなりで対応して欲しい気がしましたね。 X まあとにかく、今度の事件の関係者、つまり加害者の五人の両親なんか、 終始逃げの一点張りだったからね。 Z 主犯格のM少年の親なんか、父親は証券会社の中堅社員、母親はピアノ教師なんですが、 父親は外に愛人をつくり、家にはほとんど帰らなかったそうですからね。 母親にしてもピアノとはいえ一応教師≠ナすからね。子供たちの教育がどうあるべきかは分っていたはずですよ。 X まあ、このM少年の母親なんかは、よく警察の防犯課なんかにこの少年のことを、 「もう親には、手に負えない。なんとか警察で相談に乗って欲しい」と、 何度も何度も相談したらしいけど、警察の方では、取り合わなかったらしいですよ。 まあ、警察は、事件が起こってから捜査に乗り出すのが建前だからね。しかし、 今度の事件はこうした母親等の意見を聞いて、 素早い対応をしていれば未然に防げた事件だったかも知れないという気はする。
Z 僕もいろんな事件を取材しているけど、被害者の家族とか親兄弟、 それに加害者の関係者なんか、逃げの一点張りだからね。 自分たちが犯罪をおかしたわけではないし、答えようはないかも知れないけどね。これは、 日本人の習性なのかな。リクルート事件の関係者を見ても同じだしね。 中曽根・竹下・安倍・藤波(以上・自民党)・池田(公明党)みんな逃げてばかりいるしね。 こんな事が連日報道されているのを見ている国民まで見習ってしまう(笑)。 Y 本当にそうだよ。そして、誰も責任を取らない。 これが、戦後の無責任・ニッポン国と日本人かもしれないよ。 X 被害者のF・Jさんの方には、新聞・テレビ・週刊誌にずいぶん詳しく報道されていたけど、 あの通りなの? Y この際だからいうけど、あの子や家庭にも何かと問題があったらしいですよ。 X 新聞の方は、警察発表をそのまま記事にするというのが、メインだから詳しくは知らないけど、 そんな問題があったの。そうそう、行方不明になった時、被害者の親は、 家出人捜索願いを、埼玉県三郷警察署に出したらしいけど……。
Z なんでもあの被害者の家は、殺された順子さんの他に、 二人の弟がいるんですけど父親の家庭内暴力が、すごかったらしいと言う話らしいですよ。 Y そうそう、あの捜索願いにしても一応出したという事だけで、警察は何も動かなかったということだし。 父親と母親が、順子さんの同級生五、六人に休みの日に聞いてまわるぐらいで、 その他は・何もしなかったらしいよ。これも結果論だけど、もし公開捜査をしていれば、 あんな酷い形で殺される事もなかったと思うんですよ。だってそうでしょう、 犯行現場だった家の両親は、共産党員だし、一応、社会の動向を知らなくてはならないし、 その為、新聞は当然読まなくちゃならないしね。 Z それは、考えられる事ですね。十七歳で、あの有名なタレントの倉田まり子に似た大型美人だし、 もちろん写真うつりもいいし、テレビやうちの写真誌なんか恰好のネタですよ。 そしたらあのワルの少年達も驚いて解放≠ト事も考えられるでしょう。 それに、一階にいる親達も警察に駆け込むことも考えられますからね。いずれにしろ、 あの少年達の親達を始め、近所の親達一人でも、何らかのアクションをしていれば、 未然に防げた事件ですよ。 X 被害者の家庭内暴力って、どんなものだったの。 Z そうですね。一番の被害者は、Jさんらしくて、Jさんは、 夕食なんか父親と一緒に食べた事もないと、いうことらしいですからね。 まあ、逆に言えば、Jさん自身が、父親に度々、殴られる程、非行少女だったかも知れないしね。
X まあ、日本の諺にあるように死者にムチを打つな℃ョで、被害者の悪い点は、 どこも書かないから真相にたどりつけない。 Z 事件の当初、M少年等は、計画的に被害者をら致しようとしたけどあんな簡単に犯行の行われた家についていくのは、一般的に言って、ちょっと不自然だしね。 余程、Jさんが、男女交際やナンパに慣れていたから、 好奇心でアバンチュールでも楽しみたいという軽い気持ちがあったから、家に帰って、 父親の顔を見るより、こっちの方がいいとなったのかもしれない。 取材してみて、僕自身は、そう思えてならないんですよ。 Y 僕もJさんの周辺を取材したけど、あまりJさんのいい事は、出てこなかったですよ。 今時、女子高校生でも、常識らしいけど、恋人もいたしね。(注・『女性自身』に F・Jさんの恋人の手記が出ていた)そんな事で、非行・普通・純情とランク別にすると、 どうもJさんは、非行の部類に入る程だったと親友の母親が、コメントしているぐらいですからね。 X そう言えば、警察発表の時も被害者の人となりを公表する時も何か奥歯に物がはさまったような調子 だったからなあ。 じゃあ、被害者が、悪い言葉で言えば、ズべ公で加害者の少年等は、 不良少年ということになるんじゃないの。そうなれば警察→新聞報道の何も知らない女子高生を 未成年の不良たちが一方的にという構図が崩れる。 Y まあ、そういう事も言えるかも知れませんね。とにかくJさんは、 家に帰りたがらない女の子だったらしいですからね。 よく家から近くの親友の家に行っては、夕食を食べていたというような証言もありますからね。 これもJさんの父親の家庭内暴力が、原因と考えていいんじゃないんですか。
Z それは、僕も聞いています。顔の事はもちろんだけど、下半身、つまり性器だけど、 こっちの方も顔以上にひどいものだったと警察の刑事が漏らしていましたね。 なんでも性器に部屋にあった鉄の棒を突っ込んだり出したりして弄んだりしていたらしいですよ。 もちろん、被害者は、大声を上げたり、うなり声を上げたらしいけど、四人の少年等は、 せせら笑っていた事だしね。こんな話は、聞かされるとこれが十六、七歳の少年のする事とは、 とても思えないことですよね。 Y その話は、聞いているけど、もっとひどい事をしたという話もありますよ。 X へえ、そんな話は、聞いた事はないね。もっとひどい話って、どんな事なの。 公式の警察発表では、そんな話は何も出ないしね。 Y そうですか。警察発表って、そんなにいいかげんなものなんですか。 僕は、新聞発表が、一番詳しいと思っていましたがね。 X いや、いや、発表モノは、そんな詳しくはないよ。ところで、その話を聞かせてくれない。 僕自身も知らないし少年法改正もいわれていることだし、参考になると思う。 Y 一言で言えば、被害者の性器を灰皿がわりにしたという事なんですよ。 これなど、話してしまえば、簡単なんですけど、実際は、ひどい話ですよ。常識をもつ普通の人なら、 ちょっとそんな発想は、できませんからね。想像しても誰もが、ひどいと思いますよ。そう思いませんか。 X そんな事、四十日間のいつごろの時期にしたんだろうね。そっちの方が、僕には興味があるね。 逃げだせなかったかどうかで。
Z まあ、まあ、僕にも興味がありますが、そんな事より『週刊文春』が、 この四人の少年を実名報道したという事があったんですが、こっちの方が、僕には興味があるんですよ。 その辺の事が、問題じゃないんですか。 X 新聞等は、いっさい実名報道は、しない事になっていますが、 僕は、少年法の建前から当然だと思うよ。 Y しかし、ちょっとおかしいですよ。別にXさんとケンカするつもりはないけど、 建前ばかりじゃちょっと問題じゃないんですか。まあ、古い話ですけれど、 歌手の美空ひばりが、三十年か四十年前に十八歳の少女に硫酸をかけられた事件があったんだけど、 その少女の地元の(この少女は山形県米沢市出身)新聞は、 その少女の写真・住所・名前を報道したんですよ。この時は、全国紙は、実名報道はしなかったんだけど、 このケースなどどう思いますか。もちろん、地方紙と言ってしまえば、それまでだが、 日本新聞協会の新聞綱領は、全国統一だと思うんですがね。 X 確かに過去には、横山やすしの長男の暴行事件では、タレントだったということもあり、 実名を出したところが多かった。それで別段、マスコミ研究家たちから批判が出ることもなかったしね。 Z 古くは社会党の浅沼稲次郎刺殺事件があった。 当時十七歳にかかわらず山口二矢の実名は戦後史に残ったわけだ。 X 少年法は第六十一条で「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等により、 その者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を 新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と規定しているが別に罰則は設けていない。 Y メディア側の自主規制にまかされているわけだが、『週刊文春』以外はオキテ破りはやらなかったね。 X この少年法に基づいて新聞協会も同様の申しあわせをしたのが昭和三十三年ということだから、 すでに三十年以上たってるわけだしね。 Y 僕の個人的な意見を言えば、少年の実名報道もさることながら、 加害者の親達は、何の社会的制裁を受けていないんですからね。どうにもひっかかってしようがない。
Z それは、僕も聞いています。顔の事はもちろんだけど、下半身、つまり性器だけど、 こっちの方も顔以上にひどいものだったと警察の刑事が漏らしていましたね。 なんでも性器に部屋にあった鉄の棒を突っ込んだり出したりして弄んだりしていたらしいですよ。 もちろん、被害者は、大声を上げたり、うなり声を上げたらしいけど、四人の少年等は、 せせら笑っていた事だしね。こんな話は、聞かされるとこれが十六、七歳の少年のする事とは、 とても思えないことですよね。 Y その話は、聞いているけど、もっとひどい事をしたという話もありますよ。 X へえ、そんな話は、聞いた事はないね。もっとひどい話って、どんな事なの。 公式の警察発表では、そんな話は何も出ないしね。 Y そうですか。警察発表って、そんなにいいかげんなものなんですか。 僕は、新聞発表が、一番詳しいと思っていましたがね。 X いや、いや、発表モノは、そんな詳しくはないよ。ところで、その話を聞かせてくれない。 僕自身も知らないし少年法改正もいわれていることだし、参考になると思う。 Y 一言で言えば、被害者の性器を灰皿がわりにしたという事なんですよ。 これなど、話してしまえば、簡単なんですけど、実際は、ひどい話ですよ。常識をもつ普通の人なら、 ちょっとそんな発想は、できませんからね。想像しても誰もが、ひどいと思いますよ。そう思いませんか。 X そんな事、四十日間のいつごろの時期にしたんだろうね。そっちの方が、僕には興味があるね。 逃げだせなかったかどうかで。