>>51 「心理学」というやつが実は大嫌いだ。もちろん学としてのまともな心理学があることは否定
しないし、心理学的なものになにがしかの価値や意義を認めることも吝かではない。しか
し、テレビでしたり顔した人間が心理学の衣を借りて荒唐無稽な出鱈目の限りを言い放っ
ていることに代表される、いわゆる「心理学」的なるものには単なる腹立たしさを超える
ものを感じる。
何故か。その深く重たい理由を敢えて言葉少なに言い切るなら、こうした「心理学」は総
じて心理学と言う権威を利用して、単なる処世術や言い尽くされた常識をさももっともら
しく高みから言い捨てるからだ。私はそう思う。私はそう考える。こういう前提ならば極
論すれば誰が何を言おうが一向に構わないのだが、「心理学」という権威を身につけたと
たんそれは暴力になり、時には恫喝にすらなる。
人間が例えば簡単なテスト(例えば、あなたは森にいます・・・そこで出会った動物は何
ですか?・・・という手のやつだ)程度で「深層心理」とやらを引き出すことができるほど
単純ではないことは、精神医学をちょっとばかり勉強すれば誰にでも判ることだ。いや、
わざわざ精神医学なども持ち出さずとも、単なる処世術に過ぎぬ「心理学」ならぬ心理学
をちゃんと勉強した人間なら、単純なテストや素朴な言い切りが如何に暴力的であるかは
理解できるはずだ。
ちょっと気になる文句で聞くものの関心を引き、時には突き刺すように、時には撫でるよ
うに言葉を放って相手の心を弄ぶ。こうした人の心を操る技こそがまさに「心理学」の真
骨頂なのだが、そこから出される結論は、目の前の一人一人の人間の経験や、人生や、そ
こから来る考え方や感じ方を見据えた上での一人一人のための解決策ではなく、結局は誰
にでもそれなりに言えてしまう、常識をちょっと斜に構えて言ったものに過ぎない。