【2次】漫画SS総合スレへようこそpart60【創作】
335 :
人生に乾杯を:2008/12/04(木) 18:29:26 ID:0cGKG1wn0
「やれやれ、年はとりたくないものだ。
あちこち痛む。
お前、そうして座っていて痛くないのか?」
どっこいしょ、という言葉に、苦笑とも自嘲ともつかない笑いを含ませ、
シオンはごぷりと酒瓶を揺らして杯を満たし、童虎に渡す。
「なに、馴れじゃ。
しかしな、こうして禅を組んでいるとどうしても腰が曲がるのが難じゃ」
くっ、と一息で飲み干すと、童虎は酒をとぽとぽと杯に満たす。
シオンは杯を受け取り、くいと飲み干す。
「旨いな。
まぁ、萎びた爺が注いで旨いのだから、今年は当たり年かな」
憎まれ口も変わらない。
こうして酒を酌み交わすのも変わらない。
ただ、みな彼ら二人より先に逝く。
弟子も、戦友も、想い人も、敵も、味方も、主君も。
…そして、友も。
いくたびか杯を交わすうち、ぽつりと童虎が零した一言に、シオンは唸るようにして黙る。
「聖戦かね」
アテナの降臨があった事は童虎とて知っている。
336 :
人生に乾杯を:2008/12/04(木) 18:32:07 ID:0cGKG1wn0
「…私は無能な男だ。
先の聖戦においては師の露払いさえできず、冥王を前にして引かねばならなかった。
今でも思う。あの時倒せていれば、とな。
戦友たちは…、死なずにすんだ。」
友の告白に童虎はただ黙して聞くのみだ。
「…神の一手先を読んでこその、教皇。
先代セージ様の、わが師ハクレイの、遺志。
継ぐには、私という男は、あまりにも凡愚で…」
杯と共にそれから先を飲み込んで、シオンは天を睨む。
「あまりにも、無能だった…。
この二世紀と半、戦の絶えた事はなかった。
その戦に干渉することが禁忌である事は知っていた。
だが、干渉できるだけの力がありながら、あえて触れずにいるには私は若すぎだ」
シオンから受けた杯を童虎は何も言わずに干す。
「戦は、人の世の理。
故に、神の理を代行するアテナの聖闘士は干渉してはならない。
聖闘士の長たるこの私が、一番よくわかっているはずだったのになぁ…。
私利私欲のために、聖闘士の業を用いるものを暗黒というのなら、
この私は、どこまでも黒く澱んだ存在だろうよ…」
童虎の注いだ杯を受け取るシオンの手は、震えていた。
337 :
人生に乾杯を:2008/12/04(木) 18:36:51 ID:0cGKG1wn0
「…こんなはずじゃなかった。こうなるべきだ。
人は誰しもそう思う。
己ならば、巧くいくだろう。それが、巧くやれるはずだ、
そうなるには時間はかかるまいよ。
そして多くの者は己の理想しか見えず、信じず、揺るがない。
シオン、お前はそうはならなかった。
だれにもできることではないじゃろう。
人の世は虚しいと嘯いて無為に沈むことは、所詮はこんなものと諦める事は、
どうにもならないと切り捨てる事は、誰にだってできる。
だがシオン、お前はそうしなかった。
常に己の正義を問い続ける事、それこそが普遍の正義じゃ。
この世の誰もが、お前を恨もうとも、蔑もうとも、憎もうとも、わしはお前を赦そう。
無明の彼方、善悪の彼岸を越えて幾星霜。
もしお前を赦せるものがあるならば、それはアテナではない。お前の友たるこのわしじゃよ」
シオンの震える手が杯をうけ、童虎はとつとつと語る。
くっと杯を干し、童虎は最後に「それが、わしの知るシオンという男だ」と締める。
「買いかぶりすぎだ…。
酔ったか?」
シオンは杯を干すと、悪戯めいた声で応えた。
338 :
人生に乾杯を:2008/12/04(木) 18:41:31 ID:0cGKG1wn0
「ホッホッホ…。
このくらいで酔うほどわしは弱くはないぞ」
童虎もまた、笑って応えた。
「ならば老いたか?」
「老いもしよう。わしもお前もな」そう童虎は笑ってみせた。
シオンもまたつられたように笑ってみせた。
ことりと童虎の前に杯を置くと、シオンは、邪魔をしたなと立ち上がる。
「なに、冥闘士どもを監視せねばならんとはいえ、こうして禅を組んだままというのは暇での。
いい暇つぶしになったわい」
酔いも老いも感じさせぬ足取りで、シオンはまたなと一声かけて童虎に背を向け歩き出した。
童虎は、おうと一声かえすだけだ。
二人共に分かっているのだ。
339 :
人生に乾杯を:2008/12/04(木) 18:47:12 ID:0cGKG1wn0
「シオン!
次はワシから訪ねよう!
その時にはこの杯をもって行く、良い酒を用意して待っておれ!」
童虎はこらえきれずに叫ぶ。
シオンは振り返らない。
「さて、それは楽しみだ」
シオンの声色には、僅かばかりの湿りがあったが、それに触れるほど童虎は無粋ではなく、
それを指摘するほど付き合いの短い相手ではなかった。
「モイライの紡ぐ糸が如何様なものであれ、私は私だ。
クローソーが如何に過酷に編み上げようとも、
ラキシスが如何に奔放に定めようとも、
そして、アトロポスが如何に残酷に断ち切ろうとも、な。
お前のおかげで気づけた。
お前の信じる私ではなく、私の信じるお前でもなく、私の信じる私であればよいのだ…
童虎、ありがとう」
朝陽の中に溶けるようにして、シオンの姿が消えていく。
友が逝く。
ただ声だけが童虎の耳に残った。
皆様お久しぶりです。銀杏丸です。
前回投稿直後にウォーズマンがエライ目にあったり、
ネプチューンマンが酷い醜態晒していてすこし空しくなりました。
子供の時に好きだったキャラクターなりが後日談で醜態をさらすと、空しくなりますね
父親の背丈を追い越してしまったり、
たまに実家に帰ると父の髪に白髪が増えたのに驚いたり
初恋の女の子がいろいろな意味で酷い人間になっていたり、
連絡の途絶えていた友が亡くなっていたりするような
聖闘士星矢のシオンと童虎、バキスレに初投稿した時のネタでもあり、好きなコンビです
ロストキャンパスアニメ化(OVA?)の報に驚きつつも、次はもうちょっと明るいネタをと思う銀杏丸です
では、またお会いしましょう
>サマサさん
>>ソロルとフラーテル
…突っ込まないぞ! 突っ込まないからな!!
だがソロルは俺の嫁。反論は認める。
しかしジェラルミンケースでメッタメタにのした後にブルーアイズとは…社長暴れすぎwww
ブルーアイズがアトラクション化しとる…!海馬ランド IN 古代ギリシャ?
343 :
ふら〜り:2008/12/04(木) 20:22:40 ID:lq83DvXC0
>>スターダストさん
うむ。剛太はいずれ、原作へと帰る定めのかぐや姫。ならば「ご主人とあやちゃんと(中略)
サンマとイワシとアジと(中略)……の次くらいには好きじゃん、垂れ目!」ぐらいが幸せか。
しかし千歳根来といい、成就しないことが確定してるカプほど、やたら私にゃツボってて困る。
>>サマサさん(人身売買とくればソフトなのがセスタス、ハードなのがアンジュ・ガルディアン)
奴隷市場を完全スルーは作風上ダメ、しかし仰る通り主人公たちが暴れるのも良くない、そこ
で敵サイドが、と。その中で海馬の裏表がいろいろ見れて、先への重要な前フリでもありそうで。
物語として、必要なものと装飾との一体化。戦闘でも萌えでもない、地味なところでお見事!
>>銀杏丸さん(こういう空気を、女性(もちろん老婆)二人でも何とか演出できんものかと)
この雰囲気、モノが星矢、とくればやはり銀杏丸さん。作中人物のみならず、読んでる私まで
しみじみと「当時」を振り返ったり。この二人は文字通りケタの違う年季が入ってますし、星矢
や紫龍には想像もつかない思いがありましょう。この次の、二人の再会の時のことを思うと……
>サマサ氏
今回はいろいろとダークだなあ
前作のイメージを覆すようにわざと作っているのかな
海馬はもう一人の主役だなあ
>銀杏丸氏
原作とロスキャンをモチーフにしてますな
星矢フリークの銀杏丸氏らしくキャラを知り尽くして増すな
俺もこの生き残りコンビ好きです
345 :
作者の都合により名無しです:2008/12/05(金) 02:56:44 ID:bC5hSgcn0
銀杏丸さんお久しぶり
私生活では今年1年あまりよくなかったようですが
来年はいい事ありますよ
個人的にはネプチューンマンより車田御大の劣化が残念
リンかけ2の12神編とラストは酷すぎる
確かにロストキャンバス見ると先代は優秀な人が多かったですな
蟹さんですらめちゃくちゃかっこよかったし
このコンビは伝説の生き証人として価値がありますけど。
氏の星矢物は好きなのでまた書いてほしいです。
こんばんは。またレス返し&SS感想のみさせていただきます。
出張地獄と飲み会天国から帰ってきたばかりで投下されたSSを全て読めていないので、
スターダストさん・サマサさん・銀杏丸さんへの感想はまた次回に回させていただきます。
>>266さん
ご指摘ありがとうございます。そうですか、コンテナ2杯分の金塊はもっと凄い額ですか……
ビンボ人なのがモロバレ、恥ずかしいなあ。でも勉強になりました。
アイは基本的には怖い人だと思います。アヤ・ジェニュインと並んでネウロ界で最もおっかない女。
怖いけど、でもだからこそキレーな人。そんな彼女は一応本作におけるヒロインです。
>>267さん
うーん、本格的に加速するにはまだもうちょっと色々ゴタつくかも……
アイは原作では戦えるのかどうか不明でしたが、とりあえず何でもできる人みたいだったので
これくらい朝メシ前だろと銃を持たせてみました。
>>272さん
世間様じゃそんなに早坂ブラザーズはへたれ扱いなんですかw
戦闘は苦手です。というかアクション全般が不得意分野です。でも拙いなりにうまく書こうと四苦八苦
してるので、誉めていただけると安心するとともにますます精進する気力が湧いてきます。
葛西の背後の組織はあの人たちですね。さすがのアイも彼らの存在までは察知できなかったようですが、
葛西の危険性に気づいただけでも彼女は本当に凄い人だったと思います。
>ふら〜りさん
もともとネウロには全くの善人というのがほとんど出てきませんが、このSSではその中でも特に
ワル度の高い連中を選んで主要キャラに据えています(ただし警察勢以外)
ネウロ界の犯罪者は惚れ惚れするほど全員「芯」があります。このSSでこの先オリキャラ以外で
噛ませや引き立て役が出るとしたら、それはもともとのキャラではなく私の実力不足によるものと
お考えください。
>>275さん
惜しい人を亡くしましたよね……まあサイがあんなことになってる今、
アイが生きてたら色々と都合が悪いですし、将来的なサイの成長(絶対あると信じてる)のためにも
ああいう展開にするのがベストだったんでしょうけど。
アイは本作ヒロインですのでこのSSでは結構スポットが当たります。
>ハシさん(レス返し)
ああ、やはり連想されましたか『山月記』。中島敦が好きなんです。
ネウロはどこまで読まれたのでしょうか。アク強めではありますが、『山月記』風にいうなら
「第一流の作品」であることは間違いない漫画かと思います。ハシさんのお気に召すことを祈ります。
ネウロキャラはどいつもこいつも輝いていやがって眩しすぎるくらいです。その輝きの百分の一でも
伝えられたならこれ以上の喜びはありません。
>ハシさん(SS感想)
モントリヒトは読んだことがないためF08は初見だったりします(実はエンバーミングも事実上
初見……ジョン・ドゥが花嫁さん探してる読切だけどっかで一度読んだ記憶が)
彼女のキャラがものすごく狂っていて活き活きしていて、悪い女好きとしては惹きつけられずに
いられません。悪役はやられっぷりも含めて悪役だと思うので、こうなったら徹底的にやられて
涙目になって欲しい!
あとピーベリーもいいなあ。お前は私の復讐の道具だとか、本人に向かって言い切っちゃうあたりが。
それで火がついてしまうヒューリーはもしかしてドM……冗談です。それだけ深い闇を抱えてるんでしょうね。
>スターダストさん
早坂、投下した次の日に原作に登場してビックリしました。あれはかっこよかった。
個人的には、最近兄貴のおまけと化してたユキが一矢報いるというのも燃えたと思うんですが
そんなこと今更言ってもしょうがないですね。
ド汚いことも普通にやってるのに、ちゃんと「裏なりの流儀」は守るところが
彼の魅力かなと思っています。そういうのがきちんと出せてたら良いなあ。
心理描写は書いてて一番楽しいパートなので嬉しいです。ありがとうございます。
>サマサさん
そうなんですよね、まともなんですよね、この悪党兄弟……恐ろしいことに。
自信をもって断言しますが私アイさんのフトモモで原稿用紙100枚くらいSS書けます。
まあそれをやっちゃうとこのスレじゃなくキャ○スレかエ○パロスレ池って話になっちゃうんで
自重します。
349 :
作者の都合により名無しです:2008/12/05(金) 22:09:04 ID:AEFurf9/0
>私アイさんのフトモモで原稿用紙100枚くらいSS書けます
凄いですなwぜひ読んでみたい
でもネウロは大好きだけどあの絵ではぬけない
>スターダストさん(SS感想)
ブレミュほんと個性あるなー。小札が一番好きだったけど最近無銘も好きです。
年齢は確か10歳(犬ベースで7、8ヶ月)でしたよね。可愛やのう可愛やのう。
単体でもきちんと立っている二次のオリキャラというのは、確かにひとつ間違えると主人公勢を
食ってしまうものでもありますが、生半可な腕のSS書きでは得られない貴重な財産であることも確かです。すごく羨ましい。
パピヨンは実に変態だな。何が凄いって、あの容姿でもシリアスをやればちゃんと盛り上がるということです。
下手な作家だとギャグにしかならないだろうに。それだけキャラの芯がしっかりしてるんでしょうね。
ところで全然関係ないですが、スターダストさんのあとがきの『蜘蛛の糸』の記述がきっかけで、
筋少と親交のある好きなバンドのギタリストが別ジャンルのバンドの昔のアルバムでゲストしてたことを
知りました。こんなことで礼言われても困るだろうとは思いますが、ありがとうございます。
>サマサさん(SS感想)
作風が作風だけにサラッとしてるけど、なにげに重い題材扱ってますねえ……
なんだかんだで子供に優しい社長にすごく和みました。この人も可愛やのう可愛やのう。
なにげに一番和んだのはたくさんの子供に一度に乗っかられてるブルーアイズですが。
「三人まで」と言われたってことはもっとたくさんの子たちにワラワラたかられたんだろうなあw
「ルックスもイケメンだ」ってSBRですか懐かしいな。「見かけで人を判断するな」と
自称外見に隠された真実が見えるダニ氏は仰っていますが、悲しいかな確かにそれは現実。
エレフも社長も美形で良かったね。でもエレフはともかく社長がモテてるところは想像できそうにありません。
>銀杏丸さん
残念ながら聖闘士聖矢は現状私の守備範囲外ですが(てか私守備範囲外の少年漫画多すぎ)
二人のじいちゃんたちのかっこよさに痺れました。血気盛んな若人もいいけどこういうのもいいなあ。
私の勝手な連想だと思うのですが、雨月物語の『菊花の約』を思い出しました。
あれは信義を果たすために自刃して霊魂になって会いに行く話なので、内容的にはカスりもしてない
はずなのですが……二人の絆の強さからの連想かもしれません。
それに加えて、それぞれが辿ってきた濃い人生があるからこそのこの対話なのでしょうけど。
>>349 >でもネウロは大好きだけどあの絵ではぬけない
期待外れだ
>>349よ、貴様の日付はいつ変わるのだ?
最後のレスで吹いた
352 :
しけい荘戦記:2008/12/06(土) 23:41:19 ID:IGbFMhXt0
第三十話「MAX」
「貴様は我が拳を以って──全身全霊にて叩き潰す!」
烈の拳がさらに速さを増す。まるで無数の手が生えたような、残像を生じるほどのスピ
ード。体を丸めガードを固め、なすすべなく打たれまくるゲバル。止まる気配のない拳と
いう名の豪雨。手を出すどころではない。
待とうが祈ろうがてるてる坊主を吊るそうが、止みそうもない。ならば、立ち向かう。
ガードを外すゲバル。いいのを二、三発まともにもらいながら、強引すぎる胴タックル
を実行する。
執念は実った。ゲバルは烈の腰に組みつくことに成功する。
しかし、鍛え抜かれた足腰はビクともしない。打撃戦を嫌い、寝技に持ち込もうという
ゲバルの目論みは崩れた。
「無駄だ……」
鉄の肘がゲバルの脳天に落とされる。
頭蓋が割れてもおかしくない一撃だったが、しつこくしがみつくゲバル。ゲバルは両足
をぴたりと地面にくっつけ、垂直に力を込めた。
真上にリフティングされ、烈の足が宙に浮いた。
先ほどは投げ上げただけのゲバル、今度は本気であった。
狙いをアスファルトに定め、
「セイィッ!」
叩きつける。
道路が陥没した。小さなうめき声と大きなバウンドの後、烈の体は横たわったまま動か
なくなった。
「フィナーレだ」
冷徹な瞳で最後の一撃を加えんと、ゲバルが拳を振り下ろす。
しかし、烈はまだ死んではいなかった。
突如右足と左足が起動し、ゲバルの首と肩を挟みこむ。ちょうど三角締めのような体勢
となった。烈の脚力で頸動脈を締め上げられれば、ひとたまりもない。
353 :
しけい荘戦記:2008/12/06(土) 23:42:36 ID:IGbFMhXt0
「……さすがは海王!」充血した目で、挟まれたまま再度烈を持ち上げるゲバル。「だっ
たらもう一度叩きつけ──」
しかし、烈は両足でゲバルのロックしながら、背後に回っていた。
「こ、これは……ッ!?」
烈が座禅を組めば、あとは発動を残すのみである。
転蓮華。
名門白林寺の秘伝。烈の全身が傾くにつれ、ゲバルの首も曲がる。
「ほう……大した筋力だ」
首に全筋力と全神経を注ぎ、ゲバルはこらえた。頚骨をへし折り一回転するはずだった
烈はわずかに傾いただけ。
「こう見えて忍術をかじっていてね……縄抜けは得意分野だ」
次の瞬間、ゲバルは烈の両足からするりと脱出を果たした。顎関節を自ら外し、ぐにゃ
ぐにゃになった顔面を烈の拘束をすり抜けさせたのだ。
自由の身となったゲバルはさっそく烈に襲いかかるが──
「貴様ならば、転蓮華を破ると信じていたよ」
──最高の崩拳が待っていた。
転蓮華に移る時、烈の本能は通用しないと直感した。だからこそ秘伝を返されてなお、
もっとも正しい一撃を加えることができた。
「ぐえぇッ?!」
くの字に体を折り曲げ、ゲバルが飛んだ。
十数メートル先にあった「止まれ」の標識に激突し、ようやく止まった。標識が寝そべ
り、役に立たなくなったのはいうまでもない。
鳩尾を手で押さえ、よろよろとゲバルも立ち上がる。
「つ、強いなァ……ミスター海王……」
「……貴様もな」
流派も思想も全く異なる二人が、ここにきて互いを認め合った。
わずかに唇を綻ばせると──どちらともなく両者が駆け出した。
354 :
しけい荘戦記:2008/12/06(土) 23:43:23 ID:IGbFMhXt0
拳と拳。
二人の右拳は火花を伴って相手の面(おもて)に突き刺さった。烈の貫き手がゲバルの
喉仏を穿つと、ゲバルは血を吐き散らしながら親指で烈の人中を打つ。得意技のハイキッ
ク同士がぶつかり合い、烈が跳び上がって両足でゲバルに蹴り込むと、ゲバルはすかさず
足を掴んでジャイアントスイング。烈を投げつけられた電柱には赤い花が咲いた。むろん
烈はコンマ数秒で跳ね起きる。
一歩どころか一ミクロンたりとも退かぬ両雄。
これほどの好敵手、生涯に一度出会えるかどうか──。
なのに彼らはある種の物足りなさを抱いていた。なぜなら知っていたから。
「そろそろ本気を出したらどうだ」
ゲバルと烈は同時に、同じ台詞を吐き出していた。死闘の最中、奇跡的に滑稽なやり取
りに笑い合う両者。
「気が合うな、ミスター海王。いい加減、靴(グローブ)を外して欲しかったところだよ」
「貴様こそ水面下に潜ませている獰猛な本性を表わしたらどうだ」
「獰猛とは失敬な……もっとも次に戦う相手に手の内を晒すのもどうかと思ってね」
「うむ。ただし私が次に戦う相手だがな」
二人は戦場となった路地の先にある突き当たりに、視線を向けた。
すると、角から一歩足を踏み出す男が一人。しけい荘とコーポ海王を混乱の渦に巻き込
んだ張本人。
──マホメド・アライJr。
アライJrは緊張していた。
「気を悪くしないで欲しい。隠れていたわけではなく、邪魔したくなかっただけだ」
戦っていた二人にとって、そんなことはどうでもよかった。
過去、自由の国を熱狂させた偉大なるボクサーと瓜二つの、闇討ち犯。ゲバルと烈の体
内を大量のアドレナリンが駆けめぐる。
355 :
しけい荘戦記:2008/12/06(土) 23:44:12 ID:IGbFMhXt0
いかにも南米的な豪快な笑顔で、ゲバルが提案する。
「よし、こうしよう。俺かミスター海王か、勝った方が一週間後、君とファイトする」
烈も興奮冷めやらぬといった形で提案に乗る。
「面白い。コーポ海王としけい荘の代表者として立ち合いに臨む──完全決着だ」
巨大すぎる驚愕と歓喜で、どうしていいか分からずアライJrは震えていた。そんな彼
をよそに、猛獣二頭がついに全力(マックス)を開放する。
靴を脱ぎ素足となる烈。
土で自らに化粧を施すゲバル。
闘いは英雄の卵に見守られつつ、最終章へ。
次回決着予定です。
>>274 烈海王は最高です。
グルグルパンチした時はどうなるかと思いましたが。
>>275 ゲバルの髪の毛で耳の内部を破壊する技を初めて見た時は衝撃でした。
なんかゲバルが主役っぽいですな
列も魅力を十全に引き出されてますし。
なんかアライは張本人のくせに格落ちの感じw
358 :
テンプレ1:2008/12/07(日) 11:16:13 ID:YuVGVbqa0
359 :
テンプレ2:2008/12/07(日) 11:17:54 ID:YuVGVbqa0
360 :
テンプレ3:2008/12/07(日) 11:18:42 ID:YuVGVbqa0
361 :
ハイデッカ:2008/12/07(日) 11:21:56 ID:YuVGVbqa0
今月は1ヶ月で消化ですか。
サナダムシさんとサマサさん、スターダストさんたちレギュラーの方々は
勿論ですが、電車魚さんの更新が大きいですな。
本当言うとハロイさん邪神さんはちょっと間が空いているのですが
今まで書いて頂いた事を考えてテンプレに残します。ご連絡を。
ハイデッカさん乙!
ハロイさん邪心さん帰ってこないかな
364 :
作者の都合により名無しです:2008/12/07(日) 17:44:46 ID:0XSfUNX30
支援
支援
支援
支援
支援
なんで支援って書き込むと支援になるの?
支援
支援
支援
支援
俺も負けずに支援
ハロイさん復活があと2週間早ければ
SS大賞の結果は全然違うものになってただろうな
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