【2次】漫画SS総合スレへようこそpart43【創作】
「大丈夫、小狼くん!?」
「ああ、なんとか……な……」
辺りがもうすでに暗闇に包まれている、夜。
そこに、茶色い髪を短く切った、緑色の瞳の、少女。茶色い髪に、同じく茶色
い瞳の、少年がいた。
木にもたれかかって苦しそうに顔をゆがめる少年を、少女が心配そうな顔で
見つめる。
少年の服、特に腹のあたりが赤く染まっている……血だ。
少年が、痛みをなんとかこらえながら、立ち上がった。
「さくら……はやく、この場から……逃げ……ろ……」
「ダメだよ、小狼くんを置いて、逃げるなんて……」
「いいから、早く!」
言い争う、二人。
その二人に、声をかける者が、いた。
「おや、こんなところにいたのかい?」
「!?」
声がした方を振り向くと、そこにいたのは黒装束を着た、黒い髪に、黒い目の
少年が、いた。少女たちと年齢はさほど変わらないだろう……しかし、その目に
はその歳特有の明るさなどが微塵も感じられない……それどころか、いかなる
感情も感じる事が、できない。
そして、その口から、口調だけは軽く、しかしやはり感情を感じる事のできない、
声が紡がれる。
「さて、もうそろそろ殺しちゃおうかな……」
「だめですよ、フォルテ。」
突然聞こえる、平坦な、少女の声。
今度の声の主は、2人よりも3,4歳くらい歳は下くらいの少女であった。全身
を緑色の装束で包み、さらに髪の毛と目の色も、緑色である。
「私たちの目的は、この二人を<組織>に取り込むこと。殺すことではありませ
ん。」
しかし、先程の黒装束の少年と同様、その顔や声から、感情を感じ取ること
ができない。
「別に、殺してから力だけをもらえばいいだろ。昨日の二人だってそうしたんだ
からな。」
「だめです。昨日の二人とは違い、この二人はかなりの力を有しているらしいで
すから、もし殺せば、その力が暴走する恐れも……」
と、平坦な声で続ける二人の会話に少女……木之本桜は、恐怖していた。
こんなにあっさりと、『殺す』などという人間…今までに見たことなどなかった。
本当に殺されるかもしれない……そのことへの、恐怖。
そんな彼女に、黒装束の少年の視線が向けられた。
「………まあ、そういうことだ。殺しはしないよ。……まあ、抵抗するようだった
らそれなりに痛い目にはあってもらうけどね……」
と言いながら、どこからともなく現れた日本刀を握る。そして、それを構えて、さく
らのもとにじりじりと歩み寄る。
さくらは、恐怖のために、動けなかった。
「ふふふ……その脅えた顔が、またいいよな……」
「貴様……」
じりじりと歩いてくる黒装束の少年とさくらの間に、少年……李小狼(りしゃおら
ん)が割って入った。
「へえ、その怪我でまだ戦おうっていうのかい?」
黒装束の少年は、小狼の負っている傷を、じっくりと観察する。無論、戦える
ような状態では、決してない。
「まあ、いいや。軽く片付けて……」
と、少年が言い終わると同時に、
ズガアアァァン!!
という爆発音と共に、
「!?誰だ!」
光の柱が、彼の足元に、着弾し、あたりに爆風と、砂煙を撒き散らした。
緑色の髪の少女が、その光の柱が発射された方を向いた。
「どうやら、私たちがここにいることが、知られたみたいですね。」
「ちっ、時間切れってことか!」
舌打ちしながら、少年はさくら達のほうを再び向く。
「ふん、その力、いつか俺たちのものだからな!」
と言い残して、少年と少女は、ここから消え去った。まるで、空気に溶け込む
ように。緑と、黒の光を残して。
ようやく危機が去ったのに気がゆるんだのか、小狼は崩れるように、その場に
倒れこんだ。
「小狼くん!?」
さくらは急いで彼の元へすぐ駆け寄った。
「大丈夫?」
「あ、ああ……」
とりあえず小狼はそう答えるが、息は荒く、表情も苦痛に歪んでいる。
────ザッ
という、砂がこすれる音が、突然あたりに響き渡った。
「!?」
それを聞きつけたさくらは、脅えたようにびくっ、と体を跳ね上げて、恐る恐るそ
の音源の方を向く。
そこには、白い服を着た、茶髪の、手にはまるで魔法使いの杖のようなものを
持った、少女がいた。歳は、自分たちとそうは変わらないだろう。その茶色い
髪の毛を、サイドポニーにしている。
その少女は、さくらと小狼に向けて、こう言った。
「私は、時空管理局に所属している、高町なのはです。貴方たちを保護しに
来ました。」
「時空……管理局?」
さくらが、聞き覚えのない言葉を、そのまま返した。
それに対して、どうやら小狼はその単語について少なからず知っている様子
である。
「時空管理局か……わかった。」
小狼は、そういい終わるとゆっくりと立ち上がる。そして、さくらの方を向いて、
言った。
「あいつについて行こう……少なくとも、俺たちの敵ではない。」
それが、『この世界』で起きた事。
そして─────
「どうやら、侵入者のようだな。」
金髪の少女が、高級そうなソファから飛び降りた。
夜は暗闇に包まれて、唯一の明かりは月の光のみである。もうそろそろ寝よう
かと思ったときに、気配を感じ取った。
さまざまな因果により、吸血鬼の真祖でありながらも、ごく普通の女子中学生
として、500年以上も生きているのにも関わらず13、14くらいの生徒に囲ま
れ、んでもってこの学園の警備員までさせられてしまっている。最初はよくサボ
っても居たが、いまでは学園に侵入者が出るたびに、習慣のようにこうして、一
応は見に行くようになっていた。
どこからか現れた黒いマントを纏い、そして傍らに立つ、ロボットっぽい……と
いうよりロボットにしか見えない少女に声をかける。
「いくぞ、茶々丸。」
「了解しました、マスター。」
ロボット少女の返事を聞いて、上機嫌そうにその金髪の少女……エヴァンジ
ェリンは笑みを浮かべる。
どうやら、今回の侵入者は大物だ。
それが、『この世界』で起きた事。
そして────
「あ、はい。解りました。気をつけます。はい、ごくろうさまです。」
とある家の寝室───勉強机や、漫画の収まった棚があることから、おそらく
子供部屋だろう───で、通信機のようなものを耳(があるようにはとても見え
ないが)に当て、青いだるまか、はたして狸か、奇妙な物体が話をしていた。
彼(と言い表すのは適切だろうか)の名はドラえもん。この部屋の持ち主である
野比のび太をなんとかして優等生に仕立て上げ、未来を変えようとしている、
22世紀のネコ型(には見えないが)ロボットである。
彼は、通信機の電源を切ると、ため息をついた。
と同時に、ドタバタと足音が聞こえる。これはいつもどおりのことなので、特にドラ
えもんは気にしない。
「ドラえもん!」
と、自分の名前を呼びながら、一人の少年が部屋に入ってきた。これもいつも
のことなので、特に驚きはしない。
ドラえもんは、「やれやれ」と、いつもと同じ口調で、少年に聞く。
「どうしたんだい、のび太くん?」
どうせいじめられたんだろうとあたりをつける。案の定、当たっていた。
「聞いてよ、またジャイアンが〜!」
のび太は、美少年……というよりも美少女に近い整った顔の少年である。い
まだに変声期も迎えておらず、声も女っぽい。それに性格も優しいが、反面
臆病であり、運動も勉強もいまいち冴えないので、いじめの対象によくなってい
る。(あくまで俺の偏見です。今度、俺バージョンののび太をお絵かき掲示板
で描いてみようかな)
ドラえもんは、のび太の愚痴を、半ばどうでもいいように聞いていた。
問題は、さきほど通信機で話していた、内容である。
それをいつのび太に話すか、それが目下の悩みであった。
それが、『この世界』で起きた事。
そして────
さまざまな『世界』は、交わり……
会うはずのない人物が、出会って……
それでも、世界は変わらず動く。未来へと。
『絶対、大丈夫』────開幕。