【2次】漫画SS総合スレへようこそpart42【創作】
ハドラーとバーンの体が一筋の光に覆われて空中へと移動しバーンパレスから高速で離脱し始めた。
「逃がすかッ!」
ミストバーンも同様に一筋の光となってハドラー達を追う。
「糞ッ…速度が違い過ぎるッ!」
ハドラーは悪態をついた。魔力なら大魔王バーンの方が自分より遥かに上である。
今こうしている間にも距離はどんどん縮まっていく。
主君を逃がす為に自分は足止めになった方がいいのかもしれない。
「ハドラーよ…命を無駄に散らすな。このまま地上に逃げるぞ。」
バーンクラスともなれば次元移動などお手の物である。
バーンが呪文を唱えると空間に穴が開いた。
穴の向こうは地上世界である。
既にミストバーンは目と鼻の先程の距離まで迫っている。
二人が逃げ切れる時間は・・・無い。
「策を弄するつもりか。無駄だッ!」
「バーン様ッ!ここは私のお任せをッ!」
ハドラーがミストバーンに接近し爪を奮う。
だが爪は空を切りハドラーの腹にミストバーンのイオ系呪文が零距離で炸裂した。
「ハドラーッ!」
「ごふッ・・・。」
「次は貴様だ!大魔王バーン!」
又してもミストバーンのイオ系呪文がバーンを襲う。
「させるか・・・。」
ハドラーが激痛に耐え最後の力を振り絞りミストバーンの呪文に体をぶつけた。
爆音が辺りに鳴り響きハドラーがいた空間の周囲は煙に覆われた。
煙が晴れた後にはハドラーの体もバーンの姿も残っていなかった。
「逃げたか・・・。まあいい。今の魔王軍を取り仕切るのはこの俺だ。フフフ・・・人間共よ・・・支配してやるぞ。フハハハ!」
ミストバーンはそう1人ごちるとバーンパレスへと帰っていった。
第1話 謎の男 ハドラー現る!
ここは南海の島。デルムリン島と呼ばれている。
魔王ハドラーの死後、モンスター達はこの島に流れ着き結界の中で暮らしていた。
ある日、1人の赤ん坊が島に流れ着いた。
ブラスと呼ばれる鬼面導師に育てられたその赤ん坊は「ダイ」と名づけられすくすくと育った。
今、その子は12歳である。
そして育ての親であるブラスが言う「勇者」になる為島を何週もしている最中であった。
何週かしたので一休みしようと砂浜を歩いていた時、彼の目に入ったモノがあった。
砂浜に流れ着いた人、いや魔族の姿であった。
長身で筋肉が盛り上がっており魔族特有に耳が尖っている。
この島で育ちモンスターという生物に慣れている彼であっても目の前にいる魔族は珍しい存在であった。
「グェーッ!」
彼の友人でもある巨大カモメが上空を舞っていた。
が、様子がおかしい。まるで獲物を見るかの様にダイを見下ろしている。
ダイは気付いた。目が赤い。凶暴なモンスターの目をしている。
「グェーッ!」
突如、巨大カモメが急降下してダイに襲い掛かった。
「うわッ!」
咄嗟に体を動かして直撃は避けたもののダイの腕の皮が裂けた。
今のダイに砂浜に倒れている魔族に構っている暇は無かった。
相手の動きを見て構える。防具も得物も持っていない。
どうすればいいのか。
「グエーッ!」
カモメが再度急降下し今度は倒れている魔族に攻撃を仕掛けた。
どうやらカモメは自分の獲物を横取りするなとダイに言うつもりだったらしい。
「やめろ!やめろよ!この人は流れ着いたんだ!手当てしなきゃいけないじゃないか!」
だがカモメにダイの言葉が届いていない。
何度も急降下攻撃を繰り返している。
「うう・・・。」
魔族が呻いた。どうやら目を覚ましたらしい。
立ち上がり周囲を見回す。
「グェーッ!」
急降下して来たカモメを裏拳で弾き飛ばす。
「グ・・・」
カモメは動かなくなった。どうやら気絶したらしい。
魔族はふらりと歩いて砂浜に座りこんだ。
ぼんやりと水平線を沈め何も言わない。
「何も殴る事は無いじゃないですか!」
ダイは抗議した。
先に仕掛けたのはカモメの方だ。だが殴って気絶させたのは魔族の方だ。
「気絶させただけだ。問題ない。」
「そういう問題じゃないですよ!」
ダイは口笛を吹いた。仲間を呼ぶ合図である。
だが・・・一向に仲間は集まらなかった。
(そんな・・・なんで・・・)
「騒がしいな。ケンカでもしているのか。」
魔族の言う通り先程からモンスターの遠吠えがする。
「こうなったら僕だけでも!」
ドン。
ダイの足元で小さな爆発が起こった。
動揺したダイが後ろを見るとそこには育ての親であるブラスが立っていた。
ダイは驚愕した。ブラスの目も先程のカモメと同じ凶暴な目になっていたからだ。
「少年よ。どうやらこの島のモンスター達は凶暴になったようだ。更に・・・アレを見ろ。」
魔族が指差した先には一隻のボートがあった。段々島に近づいてきている。
やがて砂浜に上陸し、二人の人間が降りて来た。
「どうも!アバン=デ=ジニュアール3世です!」
「俺は一番弟子のポップ!」
意気揚々と挨拶した二人の人間など意にも介さぬかの様にダイはその場に立っていた。
恐らくこの島の全てのモンスターは凶暴化している。下手に動けばやられる
正気に戻す手段があるのか?
「ん・・・ポップ君 下がっていなさい。」
「はい先生。」
アバンと名乗った者が魔族に向かって歩いていく。
おもむろに鞘から剣を抜き切っ先を魔族に向けた。
「死んだと思っていましたが・・・しぶとく生き残っていたのですね。魔王ハドラー。」
「私の名は確かにハドラーだ。だが魔王とは呼ばれていない。唯の魔族だ。」
「とぼけても無駄ですよッ!」
アバンが腰を落とし剣を構える。“溜め”の動作だ。
「何をするつもりだ。」
座ったままの姿勢でハドラーがアバンに聞いた。
「アバンストラーッシュ!」
アバンが剣を横に薙ぎ払った。
衝撃波がハドラーの方に飛んでいく。
「ムゥゥ!」
両腕でガードをするもハドラーはそのまま森へと弾き飛ばされた。
「すっ、スッゲー・・・。」
ダイは目の前で起こった光景に呆気に取られていた。
「後はこの島に結界を貼らなければいけませんね。」
アバンが腕を一度クロスさせ広げた。
「破 邪 呪 文 マ ホ カ ト ー ルッ !」
アバンを中心に昼間だというのに眩い程の光が発生し、デルムリン島全土を覆った。
「グェッ!グー・・うう・・・?」
ブラスの目も騒がしかったモンスター達の遠吠えも納まった。
「あの・・・アナタは一体・・・」
ダイが目の前にいる男に尋ねた。
「改めて自己紹介させていただきます。私の名はアバン=デ=ジニュアール3世。勇者の専属教師であります。」
「はぁ・・・。」
これが後の勇者と師匠との衝撃的な出会いであるとこの時は誰も予想していなかった・・・