【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
開催場所は作られた「ミニ日本」であり現実世界ではない。海上に逃れようと閉鎖空間の壁にぶつかり脱出は不可。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
「地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。 (デスノートへの記入含む)
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。 (ただし写真なし。デスノート対策)
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。
必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
【「首輪」と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
開催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
【放送について】
放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。
【能力の制限について】
超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。
・攻撃制限例(ドラゴンボール)
エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル
かめはめ波の威力→マグナムよりは強い。大木が1本倒れるくらい。
元気玉の威力→……使えるのか?使えたとして、半径50m位のクレーターが出来る。
・耐久度制限例
一般人の強さを1として
一般人→1
超人→3(普通の銃では致命傷にならない。ショットガンクラスが必要)
人外→5 (拳銃程度なら怯むだけ。マグナムクラスで気絶)
・超人的な再生、回復能力を持つキャラの制限(※一般人には適用されません)
軽度の銃創…安静にしていれば数十分で癒える。
骨折…安静にしていれば数時間で癒える。
重度(目や肺)の銃創…安静にしていれば1日で癒えるが体力消耗
切断(腕や脚)…切られた部分をくっつけて置いて、安静にして丸1日を要する。
再生…瞬時に再生できるが体力を相当消耗する。 体力回復は1日や2日では無理
切断(胴や首)、銃弾心臓or脳貫通…シボンヌ
・魔法や気などの威力制限案
エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル。連発も可能。
必殺技の威力→木が1本倒れるくらい。けっこう消耗する。
超必殺技の威力→一般家屋破壊。消費も凄まじい。1日1発が限度。
【舞台】
主催者3キャラの作った仮想空間が舞台で
面積は東京23区の半分程度(80u)
地形は日本列島(沖縄県、他島は除く)
季節は北海道 冬 日本海側 秋
太平洋側 秋 九州、四国 夏
乗り物は列島の端と端をつなぐ無人蒸気機関車が定期的に走っている。
都市部はあるが無人。主催者側が人間の世界を模して作成したものなので
実際に生活できるようには作られていない。人の痕跡なし。ガス、水道、電気
食料なし。建物が密集しており隠れるのに最適……かもしれない。
海は移動禁止区域。入ると脱出者とみなされて首輪爆発。
【NGについて】
・ssが投下された後、
@48時間以内に正当な理由あるNG審議要請が出され、
Aその要請に基づいて皆で議論し、NGが妥当とされた場合、
作者は48時間以内に意思表明をする。
そして修正する意思があるならそこから48時間以内に修正ss投下。
規定時間内に意思表示がなされなかった場合、該当ssをNG認定する。
・ただしNG認定後、当該SS登場キャラに
新しい動きがないうちに修正SSを書き上げたなら自由に投下可能
・スレの意志の大半に支持されて修正要請がされて48時間以内なら何回でも修正は可
2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子 /●中川圭一 /●大原大次郎
2/4【NARUTO】○うずまきナルト /○春野サクラ /●大蛇丸 /●奈良シカマル
2/4【DEATHNOTE】●夜神月 /○L(竜崎) /○弥海砂 /●火口卿介
2/4【BLEACH】●黒崎一護 /○藍染惣右介 /●更木剣八 /○朽木ルキア
3/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ /○ニコ・ロビン /○ウソップ /●道化のバギー
1/4【銀魂】●坂田銀時 /●神楽 /●沖田総悟 /○志村新八
2/4【いちご100%】●真中淳平 /○西野つかさ /○東城綾 /●北大路さつき
2/4【テニスの王子様】○越前リョーマ /●竜崎桜乃 /●跡部景吾 /○乾貞治
2/4【アイシールド21】○小早川瀬那 /●蛭魔妖一 /○姉崎まもり /●進清十郎
0/4【HUNTER×HUNTER 】●ゴン・フリークス /●ヒソカ /●キルア・ゾルディック /●クロロ・ルシルフル
2/5【武装錬金】●武藤カズキ /○津村斗貴子 /●防人衛(C・ブラボー) /●ルナール・ニコラエフ /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】●桜木花道 /●流川楓 /●赤木晴子 /●三井寿 /○仙道彰
2/4【北斗の拳】○ケンシロウ /●ラオウ /○アミバ /●リン
2/4【キャプテン翼】○大空翼 /●日向小次郎 /●石崎了 /○若島津健
2/4【キン肉マン】○キン肉スグル /○ウォーズマン /●ラーメンマン /●バッファローマン
3/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー /●エリザベス・ジョースター(リサリサ) /○ブローノ・ブチャラティ
・超人的な再生、回復能力を持つキャラの制限(※一般人には適用されません)
軽度の銃創…安静にしていれば数十分で癒える。
骨折…安静にしていれば数時間で癒える。
重度(目や肺)の銃創…安静にしていれば1日で癒えるが体力消耗
切断(腕や脚)…切られた部分をくっつけて置いて、安静にして丸1日を要する。
再生…瞬時に再生できるが体力を相当消耗する。 体力回復は1日や2日では無理
切断(胴や首)、銃弾心臓or脳貫通…シボンヌ
・魔法や気などの威力制限案
エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル。連発も可能。
必殺技の威力→木が1本倒れるくらい。けっこう消耗する。
超必殺技の威力→一般家屋破壊。消費も凄まじい。1日1発が限度。
【舞台】
主催者3キャラの作った仮想空間が舞台で
面積は東京23区の半分程度(80u)
地形は日本列島(沖縄県、他島は除く)
季節は北海道 冬 日本海側 秋
太平洋側 秋 九州、四国 夏
乗り物は列島の端と端をつなぐ無人蒸気機関車が定期的に走っている。
都市部はあるが無人。主催者側が人間の世界を模して作成したものなので
実際に生活できるようには作られていない。人の痕跡なし。ガス、水道、電気
食料なし。建物が密集しており隠れるのに最適……かもしれない。
海は移動禁止区域。入ると脱出者とみなされて首輪爆発。
2/4【幽遊白書】●浦飯幽助 /○飛影 /○桑原和馬 /●戸愚呂兄
0/4【遊戯王】●武藤遊戯 /●海馬瀬人 /●城之内克也 /●真崎杏子
1/4【CITY HUNTER】●冴羽リョウ /●伊集院隼人(海坊主) /○槇村香 /●野上冴子
3/4【ダイの大冒険】○ダイ /○ポップ /●マァム /○フレイザード
1/5【魁!!男塾】●剣桃太郎 /●伊達臣人 /●富樫源次 /●江田島平八 /○雷電
1/4【聖闘士星矢】○星矢 /●サガ /●一輝 /●デスマスク
2/4【るろうに剣心】○緋村剣心 /○志々雄真実 /●神谷薫 /●斎藤一
4/6【DRAGON BALL】○孫悟空 /●クリリン /●ブルマ /○桃白白 /○ピッコロ大魔王 /○ヤムチャ
2/4【封神演義】●太公望 /○蘇妲己 /○竜吉公主 /●趙公明
1/4【地獄先生ぬ〜べ〜】○鵺野鳴介 /●玉藻京介 /●ゆきめ /●稲葉郷子
3/4【BLACK CAT】○トレイン・ハートネット /○イヴ /○スヴェン・ボルフィード /●リンスレット・ウォーカー
1/4【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】●ダーク・シュナイダー /○アビゲイル /●ガラ /●ティア・ノート・ヨーコ
0/5【ジャングルの王者ターちゃん】●ターちゃん /●ヂェーン /●アナベベ /●ペドロ・カズマイヤー /●エテ吉
3/4【とっても!ラッキーマン】○ラッキーマン(追手内洋一) /●勝利マン /○友情マン /○世直しマン
3/4【世紀末リーダー伝たけし!】○たけし /○ボンチュー /●ゴン蔵 /○マミー
57/130 (○生存/●死亡)
【NGについて】
・ssが投下された後、
@48時間以内に正当な理由あるNG審議要請が出され、
Aその要請に基づいて皆で議論し、NGが妥当とされた場合、
作者は48時間以内に意思表明をする。
そして修正する意思があるならそこから48時間以内に修正ss投下。
規定時間内に意思表示がなされなかった場合、該当ssをNG認定する。
・ただしNG認定後、当該SS登場キャラに
新しい動きがないうちに修正SSを書き上げたなら自由に投下可能
・スレの意志の大半に支持されて修正要請がされて48時間以内なら何回でも修正は可
2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子 /●中川圭一 /●大原大次郎
2/4【NARUTO】○うずまきナルト /○春野サクラ /●大蛇丸 /●奈良シカマル
2/4【DEATHNOTE】●夜神月 /○L(竜崎) /○弥海砂 /●火口卿介
2/4【BLEACH】●黒崎一護 /○藍染惣右介 /●更木剣八 /○朽木ルキア
3/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ /○ニコ・ロビン /○ウソップ /●道化のバギー
1/4【銀魂】●坂田銀時 /●神楽 /●沖田総悟 /○志村新八
2/4【いちご100%】●真中淳平 /○西野つかさ /○東城綾 /●北大路さつき
2/4【テニスの王子様】○越前リョーマ /●竜崎桜乃 /●跡部景吾 /○乾貞治
2/4【アイシールド21】○小早川瀬那 /●蛭魔妖一 /○姉崎まもり /●進清十郎
0/4【HUNTER×HUNTER 】●ゴン・フリークス /●ヒソカ /●キルア・ゾルディック /●クロロ・ルシルフル
2/5【武装錬金】●武藤カズキ /○津村斗貴子 /●防人衛(C・ブラボー) /●ルナール・ニコラエフ /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】●桜木花道 /●流川楓 /●赤木晴子 /●三井寿 /○仙道彰
2/4【北斗の拳】○ケンシロウ /●ラオウ /○アミバ /●リン
2/4【キャプテン翼】○大空翼 /●日向小次郎 /●石崎了 /○若島津健
2/4【キン肉マン】○キン肉スグル /○ウォーズマン /●ラーメンマン /●バッファローマン
3/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー /●エリザベス・ジョースター(リサリサ) /○ブローノ・ブチャラティ
「なんでだよ!? 仲間だろうが!?」
「"仲間"だからこそだ。言わせてもらうが、おまえ達三人は戦える状態じゃあない。下手に数で攻めるよりも、一人のほうが"確実性"がある」
「ぐっ……しかしよぉ」
なおも食い下がろうとする桑原に、承太郎は「やれやれ」と吐き捨てる。
「ブチャラティ、奴は強いぜ。いくらおまえの『スタンド』が特殊でも、一人じゃ荷が重い。だが……」
「最良の策であることは否定しないだろう? こうしているうちも、奴は遠ざかっていく。俺は行くぞ」
「やれやれ……」
「"無口"そうな割に、この手の話になると"饒舌"になる奴だ。雷電、あんたはカズマ達を頼む」
「承知」
踵を返し、ブチャラティはヤムチャが去っていた方角を見る。もはや、止めるものは誰もいなかった。
最後に、
「ブチャラティィィィィィィィ!!!」
桑原が、腹に力を溜めて大きく叫ぶ。
「テメーは俺たちの仲間だ! だから、だから絶対に戻って来いよォォォォ!!!」
――声は、届いただろうか。
既に姿の見えなくなったブチャラティに、確認する術はない。
「では、一刻も早く安全な場所へ」
「いや、その前にボンチューとルキアを迎えにいってやらねぇと。……負けてるとは思いたくはねぇが、無事でいてくれよ!」
「……」
「あん、翼?」
ブチャラティが去った後、気を失い身を休めることに専念した承太郎を見ながら、翼は一人考える。
これで、これでいいのかと。
「JOJO君は……」
静かに、翼が語りを始める。
「JOJO君は、僕がこの世界で初めて出合った『チームメイト』だったんだ」
思い出す――最初はサッカーをお遊びだって、貶してたっけ。
「僕は、この世界で石崎君っていう『チームメイト』を亡くした。さっきの戦い……承太郎君も石崎君みたいになっちゃうんじゃないかと思って……」
心配だった。初めて、クレイジーでいられなくなった。
たしかな生命の危機を感じてしまったんだ。
「――みんなが、みんなが楽しくサッカーをすることが出来れば、こんなことにはならないんだ」
何を思ったか、翼は承太郎が作った木製ボールを手に取り立ち上がる。
「僕は彼に――ヤムチャ君に、サッカーの楽しさを教えてあげるんだ!」
「……………………はぁ?」
呆れ顔になる桑原と雷電を無視して、翼は走り出す。
その方角は、ヤムチャやブチャラティが向かっていった方向と同方向。
止める間もなく、翼はサッカーの楽しさを知らしめるため、布教活動に出かけてしまった。
――やれやれ、まったく"クレイジー"だぜ……
気絶しているはずの承太郎が、わずかに呟いたような気がした。
炎と氷、溶けた水の散乱する大地に、二人の男女が仰向けに倒れこんでいた。
強敵との戦闘を終え、勝利を手に掴んだ二人は決して喜び合うこともせず、することもできなかった。
疲労感から、身体を一ミリも動かすことが出来なかったから。加えて、意識も夢の中である。
――ボンチュー、ルキア……
夢の中で誰かが語りかけてくる。
鎧に身を包んだ、正義のヒーローだ。
いつも自分達を守ってくれていた、正義のヒーローだ。
――後は、お前達二人に全てを託す
彼は、もういない。
最後まで、人間を守るために戦い、
そして散った。
――奴らを倒せとは言わん。だが、必ず生き延びろ
二人を残して、
ヒーローは行ってしまった。
――バッファローマンと共に、見守っているぞ
ボンチューと、ルキア。
二人は、夢の中で涙した。
【宮城県/黎明】
【フレイザード@ダイの大冒険】
[状態]腹部を中心に身体全体にダメージ大。重度の疲労。成長期。傷は核鉄で常時ヒーリング。
窮地に追いやられたことでどうにか氷炎魔法の両立を安定させることに成功。しかし実戦で使うにはまだ経験値不足。
[装備]霧露乾坤網@封神演義 火竜ヒョウ@封神演義 核鉄LXI@武装錬金、パンツァーファウスト(100mm弾×3)@ドラゴンボール
[道具]支給品一式
[思考]1、ひとまず逃げ延び、体力を回復させる。
2、氷炎同時攻撃を完全に自分の物にする。
3、その後にピッコロと集合場所にて合流
4、優勝してバーン様から勝利の栄光を
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:気絶、重傷、重度の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:斬魄刀(袖白雪)@BLEACH、コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式、バッファローマンの荷物一式、遊戯王カード(青眼の白龍・使用可能)@遊戯王
[思考]:1、ロビンを捜す。
2、ゲームから脱出。
3、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
4、いつか必ず、フレイザードとピッコロを倒す。
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]:ダメージ中、重度の疲労、軽度の火傷
[装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士星矢
[道具]:荷物一式(食料ゼロ)
[思考]:1、ルキアを守る。
2、ロビンを捜す。
3、もっと強くなる。
4、これ以上、誰にも負けない。
5、ゲームから脱出。
6、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
7、いつか必ず、フレイザードとピッコロを倒す。
【桑原和真@幽遊白書】
[状態]:全身各所に打撲、戦闘によるダメージ中、軽度の火傷
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)
[思考]1:ルキアとボンチューを迎えに行く。
2:ブチャラティのことが気になる。
3:ピッコロを倒す仲間を集める(飛影を優先)
4:ゲームの脱出
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左腕骨折、肩に貫通傷(以上応急処置済み)。全身各所に打撲、左半身に重度の火傷。気絶。
[装備]:シャハルの鏡@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料二食分・水少量消費)
:双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢
:らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
[思考]1:(やれやれだぜ……)
2:悟空・仲間にできるような人物(できればクールな奴がいい)・ダイを捜す
3:主催者を倒す
【雷電@魁!!男塾】
[状態]:健康
[装備]:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂、気絶した承太郎@ジョジョの奇妙な冒険
:斬魄刀@BLEACH(一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている)
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)
[思考]1:ルキアとボンチューを迎えに行く。
2:何があっても仲間を守る。
【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右腕喪失・全身に無数の裂傷(応急処置済み)
[道具]:荷物一式
:スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]1:ヤムチャを追い、倒す。
2:必ず仲間の下へ帰る。
3:首輪解除手段を探す。
4:主催者を倒す。
※ブチャラティの外れた間接は、中国拳法の達人である雷電が治しました。
【大空翼@キャプテン翼】
[状態]:精神的にやはり相当壊れ気味、全身各所に打撲、軽度の火傷
[装備]:拾った石ころ一つ、承太郎お手製木製サッカーボール
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)、クロロの荷物一式、ボールペン数本
[思考]1:ヤムチャを追い、サッカーの楽しさを叩き込む。
2:悟空を見つけ、日向の情報を得る。そしてチームに迎える。
3:仲間を11人集める。
4:主催者を倒す。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)左小指に"ジッパー"
超神水克服(力が限界まで引き出される)
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料、バスケットボール@スラムダンク
[思考]:1.一旦引いて、休憩。
2.参加者を減らして皆の役に立つ。
3.あわよくば優勝して汚名返上。
4.悟空・ピッコロを探す。
5.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
※世直しマンの荷物とアミバの荷物は大破しました。
【アミバ@北斗の拳 死亡確認】
【世直しマン@とっても!ラッキーマン 死亡確認】
【残り55人】
>>16 >>18 ボンチューとヤムチャの状態表を修正
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]:ダメージ中、重度の疲労、軽度の火傷、気絶
[装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士星矢
[道具]:荷物一式(食料ゼロ)
[思考]:1、ルキアを守る。
2、ロビンを捜す。
3、もっと強くなる。
4、これ以上、誰にも負けない。
5、ゲームから脱出。
6、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
7、いつか必ず、フレイザードとピッコロを倒す。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)ダメージ中、特に顔面が酷い。中程度の疲労。
左小指に"ジッパー" 超神水克服(力が限界まで引き出される)
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料、バスケットボール@スラムダンク
[思考]:1.一旦引いて、休憩。
2.参加者を減らして皆の役に立つ。
3.あわよくば優勝して汚名返上。
4.悟空・ピッコロを探す。
5.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
大型殱滅兵器「ジーニアス」による被害は無効です。
そうですか
超良作だったのに残念です
んなわけない
23決まったことだから仕方ない。
ヤムチャは、今混沌状態に陥っている。
タカヤ・メタトロンが放ったのは、幻術技『毒薬付け麻酔ヒマワリ』。
相手を昔に懐古させ、脳髄を破壊する効果を持つ。
ピシュ ピシュ ゴゴゴゴゴゴゴ・・・
ヤムチャの周りには巨大なヒマワリが絡み付いており、本人の顔は既に白骨状態。
更に体から変な緑色の汁が出ている。
「あとは、おれっちがトドメをさすってばよ!!」
十二タカヤの一人、タカヤ・ザフィケルが突っ込んでくる。
ズドッ!!!
タカヤ・ザフィケルの胸には何かか突き刺さっている。
それは、巨大化したヤムチャのイチモツだった。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:瀕死
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:十二タカヤ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす。
【タカヤ・ザフィケル@死亡確認】
食事をとった後、友情マンに休んだ方がいいと言われた孫悟空はひたすら体を休めていた。
他の参加者よりも一段強い彼は回復力もなかなかのものだった。
放送前にはもう全ての傷はふさがり顎骨も治っていた。
孫悟空は傷が治るにつれてはやく戦いたいという思いが強くなっていた。もはやかつての悟空はもういない。
この休憩の間に彼は精神面もかなり変わった。残虐で戦闘好きなサイヤ人へと確実に変わっていった。
悟空と向かい合って座っている友情マンはあることを考えていた。
(カカロット君は本当に地球人だけを殺すつもりなのだろうか。もしそうだとすれば、やはりやっかいだ。
たとえば相手が異星人の場合、おそらくカカロット君はむこうから攻撃されないかぎり手をださないだろう。
僕が攻撃させるように仕向けるというのも限界がある。やっぱりこのままじゃだめだ。
僕以外の参加者を殺さなければならない、という理由を彼の中に作らなければ。
何か手はないだろうか)
その時、四度目の放送が流れた。
友情マンはその時、『策』をひらめいた。
クリリンという名前が呼ばれた時、悟空はああ、死んだのか、という思いと共に、少しだけなつかしい思いがした。
悲しみや怒りなどは全く感じず、ほんのすこしだけ過去の思い出を感じた。
しかし、その感情もすぐに消え、次に、悟空を支配した感情は、
クリリンほどの強者を倒した奴と戦いたい、というサイヤ人独特の戦闘を求める本能だった。
「誰か知り合いはいたかい?」
友情マンが心配そうに聞いた。
「ああ。いた。いたけどもうどうでもいい。」
友情マンは予想に反して何も聞いてこなかった。そして静かに微笑んで言った。
「そう。なら良かったじゃないか・・・ところで」
友情マンはここからが本題という風に身を乗り出した。
「放送で言ってたけど、人を生き返らせるっていうのは本当かな?」
「できなくはねえと思う。おらがいた世界でも可能だったし」
だがそれが何なんだ。生き返らせてどうする。おらは今、戦いたいだけなんだ。なるべく強いやつと!
「そうか。だったらお願いがあるんだ。
もし君か僕が最後まで生き残ったならペドロという僕の友だちを生き返らせてほしいんだ。」
友情マンはすがるような声で頼んできた。悟空はあからさまに不審がっている。なぜそんなことを頼むんだ、という顔だ。
「なぜなんだ?理由は?」
「あいつは・・・・・・とてもいいやつだった。僕は彼に命を救われたことだってある。
なんとかしてあいつを生き返らせてやりたいんだ。だから・・・君には酷なことかもしれないが地球人以外も殺してほしいんだ!」
友情マンは必死だった。しかし今の悟空にはそんな感情は理解できない。
ほんの数時間前ならそんな感情も理解できたはずだろう。
「そいつ、強いのか?」
急に出てきた言葉である
友情マンはこれには少し驚いた。全く予想もしていない返答が返ってきたからである。
友情マン楽しき思い出を語るように言った。
「ああ。彼は強かったよ。僕の世界では間違いなく一番強かった」
友情マンが言い終わった後、カカロットは立ち上がった。
「わかった。友情マン。二人でがんばってそいつを生き返らせようぜ」
「本当かい。ありがとう。本当にありがとう。」
友情マンは飛び上がって喜んだがカカロットは聞いていない。そして足早に参加者を狩りに行っている。
友情マンに言われるまでのこともなかった。今は戦いたくて戦いたくてしかたがない。
今、思うとこんな世界に放り込まれたのは幸運だったかもしれない。この世界ははるか昔になくしてしまった本能を再び自分に与えてくれた。
後はただ強いやつと戦い続ければいいんだ。そして、もし優勝すれば最後の最後にはペドロという強者との戦いが待っている。
すごく気分がいい。とにかく早く戦いたい。
今の孫悟空には、否、カカロットには何のためらいもない。これから彼に会う者は確実に死んでいくだろう。
少しさきを行くカカロットを追いかけながら友情マンは考えた。
(やった!思ったよりうまくいった。でもさっきからカカロット君はどこかおかしいな。
『そいつは強いのか』という発言、早く戦いたくてうずうずしているのかな。もしそうだとしたら横にいる僕はかなり危ないぞ。
あらゆる手を使って彼とより親密にならなければ。気を引き締めて『演技』しないと、怒らせでもしたら大変だ。
カカロット君をどう扱うかが、このゲームの鍵だ。)
友情マンの考えはけっして間違ってはいない。
今後のカカロットとの関係が彼の生死につながるだろう。
【石川県・海岸沿いの公園/深夜】
【チーム名/異星人連合】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(千本ナイフ、光の封札剣) (ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、青酸カリ。(食料セットはなくなりました)
[思考]:1.悟空とより親密になる。
2.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
3.最後の一人になる。
【孫悟空(カカロット)@ドラゴンボール】
[状態]腹八分目 健康 カカロットの思考。
[装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具] 荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]1 出合った参加者を殺す(地球人・強者優先)
2 優勝してペドロと戦う
バタバタバタバタ…無機質なヘリの音が突如として上空に響いた。が、急にバランスを失ったのか、それは墜落するように不時着した。どうやら燃料に引火はしなかったらしい。恐らくは搭乗者も無事だろう。そのヘリは見る人が見たら即座に分かったに違いない。
自衛隊のヘリだと。 (会場に自衛隊が乱入しました。)
てなわけで保守
「メーデー、メーデー、こちら非常事態…駄目か。」そういいながら電話を置き、三沢は上官にすがりつく永井に近づく。「うっ…ううっ沖田さぁん…死なないでください」誰が見ても瀕死、そんな状態だった。「おい、そいつもう死んでるぞ」
37 :
保守:2006/07/14(金) 23:55:39 ID:IQBgzB/SO
そう話し掛けるが、耳に入っていないようだ。無理もない、親しくしていた上官が死にかけているのだ。だが、いつまでもここにいるわけにもいくまい。永井を抱き起こそうとした時、どこからか放送が流れた。
自衛官 三沢岳明 永井頼戸
―バトりたい、バトりたい、バトりたい、バトりたい・・・
ピッコロのような小物など話にならんわ・・・
最上な最高な最強な最凶な闘いを―
ヤムチャの一途な願いが、幻術を取り払い、アソコを覚醒させたのだ。
それは、鼻先までそり返っている。
「調子に乗るんじゃねえぇぇぇぇ!!!
わいがブチ殺してやらあぁぁぁぁぁ!!!」
怒りのタカヤ・ハニエルが突っ込んでくる。
ヤムチャは真剣なまなざしで、両手を重ねる。
「受け取れ!!!
か め は め 波 ― I N F I N I T Y!!!」
ヤムチャの一撃は、タカヤ・ハニエルを粉々に粉砕した。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:十二タカヤ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす。
【タカヤ・ハニエル@死亡確認】
かつて、『サムライ』と呼ばれたテニスプレイヤーがいた。
その男は日本人でありながら、世界の強豪を相手に37戦全勝。
世界を圧巻させた天衣無縫のプレイスタイルは、今でも知る人ぞ知る伝説となっている。
そんなサムライは、僅か2年で世界から去った。
そして、現在は何故か寺の住職をしている。
テニスは今でも続けているが、その腕前はもっぱら息子をいじめるためにしか振るっていない。
「……別に、いじめられてなんかない」
もとい、指南するためにしか振るっていない。
そんなこんなで、かつて世界を震撼させたサムライの魂は、現在は中学一年生の息子に継承された。
彼がサムライと呼ばれる日はまだまだ先のことだろうが、そう遠くはないはずだ。
今を、今さえ、生き延びれば――
かつて、『侍』と呼ばれた銀髪天然パーマの男がいた。
その男は空から降ってきた異人、天人が台頭する世の中でも決して侍魂を忘れず、己の信じるがままに生き続ける。
時には戦い、時にはふざけ、侍が廃れようが廃れまいが関係なしに、自由気ままに暮らしていた。
そんな男は、ビデオの延滞料を気にしながら死んでいった。
たった一人の少女を守るため、無謀な喧嘩を売ってしまったのが運のつきだった。
それでも悔いはない。あそこで己の侍魂に背いていたら、きっと生きながらに地獄を味わっていたに違いない。なにせ……
「ちょ、それ銀さんの紹介じゃん! 僕は!?」
失礼。その天然パーマの侍には、一人、弟のような相棒がいた。
誇り高い侍の家に生まれ、潰れかけの道場を背負いながら江戸を生きた少年。
時にはアイドルにうつつをぬかしたりと、決して誇れるほどの侍魂を持ち合わせてはいなかったが、それでもやる時にはやる男だった。
そんな彼は、もういない――
「って、最後に変なモノローグ付けんなよ!? 僕はまだ死んでねェェェ!!」
第四放送が流れて二十分ほど。
たびたび道に迷い、人に聞こうにも誰とも会わず、それでもなんとか記憶を辿って帰ってきた場所は、星矢と麗子に出合った琵琶湖の小屋だった。
「……中に、誰かいる?」
越前リョーマは、琵琶湖に帰ってきた。
藍染惣右介が企む計画、『脱出』の合流地点である琵琶湖。『脱出』という誰もが惹かれる餌を撒き、何かを目論む藍染は、既にここに来ているのだろうか。
ドアの前に立ち、聞き耳を立てる。室内からはドタバタと雑音が聞こえ、誰かが争っているかのような騒がしさが窺えた。
星矢と麗子ではない。彼らは今頃四国にいるはずだ。
ならば、藍染の『脱出』に惹かれた参加者か。それとも、藍染本人か……。
不気味なほどの静けさを放つ琵琶湖の水面が、リョーマを睨む。普段の彼なら、深い心配などせずに堂々とドアを開けるところだが、この場はさすがに躊躇った。
もし、中で死に掛けの少年がのた打ち回っていたら。
ありえない、とは思いつつも、どうしても気に掛かる。
リョーマの中では、キルアの死がまだ尾を引いているようだった。
「……よし」
意を決し、ドアに手をかける。
鬼が出るか蛇が出るか――リョーマは、ゴクリと息をのんだ。
「――わァァ、えらいこっちゃァァァ! どうしよ、どうしようかコレもおォォォ!?」
小屋の中では、見慣れた眼鏡の少年が一人で騒いでいた。
「…………なにやってんの、アンタ」
心配は溜息と共に吐き捨てられ、リョーマは少しだけ平静を取り戻した。
「いやぁ、それにしても越前君が無事でよかったよ。なかなか現れないから、どうしたんだろうって心配しちゃった」
「……どうも」
先ほどから一転して落ち着きを取り戻した新八は、帰還したリョーマを快く迎え入れた。
聞くと、あの目に余る動揺の原因は、この小屋に置かれていた一枚のメモ書きにあるらしい。
/
これはちゅうこくのてがみです
このびわこにきたひとにはふこうがおとずれます
あいぜんというひとがびわこにひとをあつめているのです
あいぜんはあくにんでひとをころしたりものをうばったりします
これはうそではありません ほんとうです
ぼくのともだちのいしざきさんはあいぜんとであったためしにました
このてがみをみたひとはなかまやであったひとたちにつたえてください
/
藍染に関する忠告の手紙。
おそらくは星矢か麗子が残したものだろうが、書式が全てひらがなのうえ、字自体が酷くヘタクソなことが気になった。
麗子はハーフのようだったが、仮にも警察官である彼女がここまで日本語ベタであるはずもない。だとすれば、コレを書いたのは星矢だろうか。
「…………まだまだだね」
心底そう思った。
あれほど偉そうなことを言っていた少年が、こんなしょうもない弱点を抱えていたとは。今度会ったらさりげなく皮肉でも言ってやろう。
文面に一通り目を通したリョーマは、それを机に置いてからハッとした。
「新八さん、脱出のこと、誰かに言った?」
「えっと……うん、二人ほど」
ハァ〜、とリョーマは即座に溜め息をつく。
「で、でも! その二人とは仲間になって、この琵琶湖にも一緒に来たんだ。一人は女性で姉崎まもりさんって言って、もう一人はナンバー2……若島津健って言うんだけど」
「その二人は今どこに?」
「あ、それはその、ついさっき姉崎さんが突然飛び出して行っちゃって、それを若島津が追いかけに行って……でも、戻ってきてから事情を説明すれば、きっと分かってもらえるから!」
弁解するように喋る新八の口は、やたらと饒舌だった。
おかしい。別れる前の彼は、なんというか人を殺してしまったことに対する後ろめたさや、背徳感みたいなものを背負っていた感じだったのに。
「あ、そうだ。大空翼っていう名前の人に出会わなかったかな? 若島津の知り合いみたいなんだけど、サッカー選手をやってるんだって」
今は、不自然なくらい明るい。ふっ切れたのだろうか。
「でもその若島津ってのも変な奴でさ。出会っていきなり殴りかかってきたんだよ。なんか空手をやってるとか」
その若島津という人物との出会いが、新八を変えたのだろうか。だったとしても、新八は人を殺したんだ。なんでこんなに明るく振舞える?
「空手がなんぼのモンだァァァ!! 僕だって剣術道場の跡取りだっつーのォォォ!!! 潰れかけだけど!」
同じように人を殺したリョーマとは、まるで正反対の振る舞いをする新八。
「って、僕のことばっかり話しても仕方がないよね。越前君は僕と別れてからどうだったの? なんかあった?」
明るくて――無神経で――虫唾が走る。
「…………」
「越前君?」
死んだ貝のように、リョーマは新八の問に堅く口を閉ざした。
ちょっとした反抗なのかもしれない。この、『自分と同じ境遇にいるはずの仲間』に対する。
「あんたってさ、ムカツクほど立ち直り早いよね」
「へ?」
惚けた表情を見せる新八が、異様に腹ただしかった。
沸々と巻き起こる負の感情を抑えられず、リョーマは語りだす。
「……俺もさ、人を殺したんだ。……あんたと同じように」
「……へ?」
多少の皮肉を込めて、リョーマは虚空を睨みつける。
「いきなりだった。自転車のチェーンが切れて、それを直してたら、いきなり人が飛び出して来たんだ。本当に、いきなり」
強調される言葉からは、決して故意ではなかったという弁解の意が窺えた。
「そいつ、片腕がなくって、血まみれでさ……反射的にラケット振ったら、当たっちゃって。そしたら、死んじゃった」
初めは虚空を見つめていたリョーマだったが、次第に視線を逸らし、顔を俯かせていた。
不可抗力だった。殺す必要なんてなかった。でも、殺してしまった。
どうしようもないやるせなさが、リョーマの声を震わせ、全身を蝕む。
「あとで冷静になって考えてみたら……そいつ、知り合いの知り合いでさ。名前は確認しなかったけど、俺、知り合いの知り合いを、殺しちゃったんだよ」
「…………」
途切れ途切れに言葉を発するリョーマの弱々しい口元を見つめながら、新八は沈黙を保ち続けた。
「元から重傷だったんだ。たぶん、冷静に対処しても俺じゃあ助けられなかったと思う。でも、とどめは俺が刺したんだ。俺が……」
そこで、リョーマの言葉は完全に途切れた。
一秒、二秒、カチカチと時計の針が時を刻む中、二人は黙ったまま、口を動すことはなかった。
リョーマはこんな話をして、どんな返答を望んでいるだろうか。
殺人を犯したことへの叱咤か、それとも罪を和らげるための慰めの言葉か。
新八がどちらの言葉をかけるかなんて分からない。ただ誰かに聞いて欲しくて、自然と口が動いただけかもしれない。
それでも、リョーマは耳を塞ごうとはしなかった。この話を聞いてくれた新八の、率直な言葉を待ち続けた。
ただ、ひたすら。
「…………僕もさ、人を、殺したんだ。もう一人」
「え……?」
新八から返ってきたのは、叱咤でも慰めでもなかった。
「ほら、僕たちを襲った婦警さんいたでしょ? 越前君と別れた後、あの人に追い詰められて……あの人を止めようと思ったら、弾みで」
それは、告白。自分は同じ過ちを犯したという、懺悔に近い告白。
「今度のは、正当防衛なんて言えない。止めようと思えば止められたんだ。僕が越前君くらい冷静に行動できてたら……あの人は死なずに済んだかもしれない」
新八の告白に、今度はリョーマが沈黙して耳を傾けた。
目を見開いて、新八の顔を見やる。清々しかった。
これが、人を二人も殺した人間の顔?
困惑の瞳を向けるリョーマの顔が、なんとも弱々しかった。
新八はそんなリョーマの表情を見てか見ないでか、柔和な笑みを浮かべた。
「どうして……笑っていられるのさ」
リョーマには分からなかった。新八が、笑顔でいられる訳が。
「……あの女性はさ、死ぬ間際に僕にこう言ったんだ。『生きて』って」
冴子が新八に残した最後の言葉。あの言葉には、人間としての、やさしい警察官としての冴子の意思があった。
黒の章による人間への憎悪は、あの一瞬で確かに洗い流されたのだ。結果的に死んではしまったものの、冴子は最後に救われたのである。
そして、その救いを齎したのは他でもない、彼女を殺害した新八だった。
「僕は気づいたんだ。銀さんや神楽ちゃんや姉上、それに父上……いろんな人に叱咤されて、いつまでもウジウジしてちゃいけないんだって」
「…………」
「僕は、彼女の分まで生きる。ううん、彼女だけじゃない。銀さんの分も、神楽ちゃんの分も、沖田さんの分も」
「…………」
新八の真っ直ぐな――侍の――瞳は、リョーマの視線を釘付けにした。
この人、こんなに強かったっけ?
リョーマは疑問に思いつつも、自分が感銘を受けていることに気づく。
この、志村新八という侍の生き様に――
「まだまだ……じゃないね」
まだまだなのは、自分の方だ。
知り合いが二人死に、自分自身も殺人を犯し、この殺し合いゲームに翻弄されていく。
そうであってはいけないのだ。誰かの思い通りになど、なってたまるか。
リョーマには、元の世界に帰ってやらねばならぬことが、まだまだある。
青学の全国制覇、親父の打倒、竜崎先生への謝罪。こんなところで殺し合いをしている暇なんてないのだ。
それになにより、ここじゃあテニスができない。
これは、幼少の頃からラケットを振ってきたリョーマにとっては由々しき問題である。
「新八さん……」
「なに、越前君?」
「俺さ…………」
それから、普段の落ち着きを取り戻したリョーマは、これまでに起こった全てを新八に話した。
新八と別れてから、この小屋で星矢と麗子という二人組みに出合ったこと。
それから新八を探しに出て、その道中にキルアという少年を殺してしまったこと。
その過ちから逃げ出すように、関西中を走り回ったこと。
リョーマが繰り広げてきた一日目午後の奮闘に、新八は静かに耳を傾けた。
リョーマの話が終わると、今度は新八が語りだした。
冴子から逃げ続けた末に起こってしまった悲劇。
そして、その事件が元で、若島津と本気で殴りあったこと。
立ち直って、主催者打倒を志したこと。
姉崎という女性を助け出して、滅茶苦茶咽こんだこと。
リョーマに比べるとなんだか笑える内容が多かったが、笑う者は誰もいなかった。
聞き手であるリョーマもまた、パートナーの奮闘ぶりにただ聞き惚れた。
そして、話題は先ほどの放送の話になった。
太公望という高名な仙人が死んだようだったが、顔も知らぬ人物に、大した感慨は湧かなかった。これを知った星矢と麗子の心情が気がかりではあるが。
それよりも気になったのは、『ご褒美の一人蘇生』。まったく馬鹿馬鹿しい、と思いつつも、完全に疑うことができなかったのは、やはり近しい人が死んでいるからだろうか。
「マジで!? なら、銀さんも神楽ちゃんも生き返らせられるじゃん!!」
「主催者の話、ちゃんと聞いてなかったんすか? 一人だけ、それも他の全員を殺して優勝しなきゃいけないんすよ」
「あ、そうか……チクショー主催者のヤロー共! 変な期待持たせやがってェェェェェ!!」
「勘違いしたのアンタじゃん……」
主催者へのツッコミを目指す新八は、この策略に怒りの咆哮をあげた。そして、リョーマは暴走気味の隊長にさらっとツッコミを入れる。
仮に蘇生の話が本当だとしても、他者を皆殺しにしてまで一人を生き返らせようとは思えない。思ってしまったら、主催者の思うつぼだ。
ようするに、この蘇生話は『釣り』なのだ。蘇生という『餌』を撒き、参加者が奇行に及ぶようコントロールするつもりに違いない。
「まだまだだね」
今度の言葉は、主催者に向けて。
放送が終わり、一日目が終了。既に二日目が始まっていた。
新八とリョーマは互いのことを話し終えると、これからの行動について話し合うことにした。
結局、藍染の言う脱出は期待できたものではない。藍染の企みの真意は分からないが、このまま琵琶湖にいてやる理由もないだろう。
なるべく早い内にここを離れたかったが、新八の仲間という若島津とまもりはまだ帰ってこない。
置き手紙をして逸早くここを離れるというのも手だったが、藍染もさすがに深夜に事は起こさないだろうという推測から、朝まではここで待機することに決定した。
「ところでさ、越前君」
疲れたからもう寝ようか、という間際、新八がリョーマに話を振った。
「なんすか?」
「越前君ってさ、アイドルとかに興味ない?」
その夜――ようやく床に就いた越前リョーマは、やっと再会できた相棒から、寝付くまで「寺門通」なるアイドルの魅力を語られたという。
「やっぱり――まだまだだね」
思ったが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
侍の血を引く二人の少年は、この殺し合いの世界で、様々な経験を果たした。
知り合いを亡くし、自分自身も死に掛け、殺人も犯し、それでもゲームに抗った。
『侍魂』は、こんなものでは屈しない。
異能者犇く日本列島でのバトルロワイヤル――なんの力も持たない少年二人は、これからも生き残るために奮闘する。
【滋賀県 琵琶湖畔の小屋/深夜】
【新! 寺門お通ちゃん親衛隊】
【志村新八@銀魂】
[状態]:重度の疲労。全身所々に擦過傷。特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折。
顔面にダメージ。歯数本破損。キレた。
[装備]:拾った棒切れ
[道具]:荷物一式、 火口の荷物(半分の食料)
毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器)
[思考]:1、朝まで休息。
2、若島津が戻るまで待機。朝になっても戻らないようなら探しに行く。
3、藍染の計画を阻止。
4、まもりを守る。
5、銀時、神楽、沖田、冴子の分も生きる(絶対に死なない)。
6、主催者につっこむ(主催者の打倒)。
【越前リョーマ@テニスの王子様】
[状態]:中度の疲労。非親衛隊員。
[装備]:線路で拾った石×4
[道具]:荷物一式(1日分の水、食料を消費)
サービスエリアで失敬した小物(マキ○ン、古いロープ爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
テニスラケット@テニスの王子様(亀裂が入っている)
[思考]:1、朝まで休息(アイドルに興味はない)。
2、藍染の計画を阻止。
3、情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
4、乾との合流。
5、生き残って罪を償う
【備考】1:両さんの自転車@こち亀(チェーンが外れている)はキルアの死体の側に放置されています。
2:キルアの荷物(荷物一式(1/8の食料を消費)、爆砕符×2@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、
魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×7 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1、中期型ベンズナイフ@
HUNTER×HUNTER、クライスト@BLACK CAT、焦げた首輪)には気付きませんでした。
これらはキルアの死体の側に放置されています。
(確かに見た目は幼い子供だが、やはりどこか引っかかるものがある・・・。ここは楔を打っておくべきか・・・)
公主はナルトと情報交換をしながらそのような結論に至った。
いや、初めからどこか違和感があった。邪悪なものをナルトから感じていた。
それは単なる予感ではなく、どこか確信に近いものがあった。
「ナルト、安心しなさい。私たちには心強い仲間がいます。最初に集められた部屋で主催者たちに向かっていった少年を覚えておるか?
ダイという少年だが、彼はすぐ近くで四国に異常が起きないか見張っていてくれてるわ。」
無論それは嘘であった。
しかしあながち的外れというわけではなかった。
太公望を探しに行った彼らも放送は聞いたはずだ。
それは辛い事実だが、彼らがあの放送を聞いて四国へ戻ってくる可能性は十分にあった。
しかし分かれてかなりの時間がたつ、随分遠くへと行っているに違いない。
すぐに帰ってくるというのはやはり的外れなのかもしれない。
そんなことは公主もわかっていた。
これは楔、こういっておくことでナルトもうかつに行動を起こすことはできないだろうという狙いがあった。
(そんな話で俺に楔を打ったつもりか?くっくっく、ターちゃんとか言ったか?もしダイとかいう小僧が近くにいたのなら何故加勢にこなかった?
あれだけの戦闘、さらにダイとかいう小僧はなかなかの手練らしい。そんなやつがもし近くに居たのならあの戦闘に気づかぬわけがない。そこからだけでもダイとかいうものが近くに居なかったということが推察できるわ)
「へ〜、それは心強いってばよ。・・・ふわ〜、安心したら俺眠くなっちまったってばよ。公主さんおやすみだってばよ。」
そういうとナルトは静かに目を閉じた。
無論意識は外に向けたままであるが・・・。
(寝顔はこんなにかわいらしいのに・・・)
ナルトのほほにそっと手を当て、そのまま静かに公主は外へ出て行った。
「乾・・・」
静かに声を発したのは公主であった。
「乾、鵺野先生の容態は?」
何も言わずにただ首を振る乾、その先には未だ眠りから覚めない男の姿があった。
言うか言うまいかためらった末に公主はナルトに対する疑心を打ち明けた。
「乾、すまんがナルトに注意しておいてくれ。何故か嫌な予感がするのだ。
ターちゃんが倒れた今、私たちのなかにまともに戦闘ができるものは皆無と言っていいだろう。凶悪なマーダーに襲われた場合、全滅は避けられがたいと思う・・・」
現実をつきつけられて少し乾は戸惑いながら
「では、ナルト君を僕たちが交代で常に監視する・・・と?」
「用心するに越したことはない」
そのとき、草を踏む足音が扉の前に聞こえた。
はっとそちらのほうに顔を向ける二人、そこにはナルトが立っていた。
(馬鹿な・・・仙女である私が気取ることもできないとわ・・・)
ナルトはこう見えても忍者であった。
チャクラを抑え気配を悟られずに近づくなど容易だった。
そしてそこに居たナルトは公主が感じていた悪い予感が的中したものだった。
邪悪なチャクラを隠そうともせず、そこに立ち尽くす少年は、
とても「普通」の少年には見えなかった。
(くくく、やはり思ったとおり戦力はなかったのか。公主とかいう女に何か力があっても先ほどの会話から戦闘向きではないことは明らか・・・ならば!
「公主さん、乾さん、交代で監視なんてしなくていいってばよ。だって・・・今ここであんたらには死んでもらうんだからよ!」
そういうと同時にナルトは二人との距離を一気につめる。
戦力になるであろう同族の鵺野とかいう男が目覚める前に喰らうのが得策と考えた九尾が本性を露にする。
最初に標的になったのは乾、
突然のことに乾はあわててコルトローマンを構えようとする。
しかし所詮は中学生、銃の扱いなど慣れているわけでもなくもたついている間にナルトは一気に距離を詰める。
ドン!!!
ナルトの勢いのついた肘が乾の腹部を襲う。
チャクラを抑えるために体術のみを用いたナルトであったが、
やはり鍛えられた忍者、乾の肋骨は折れたであろう。
血を吐き、そして地に平伏す乾。
その乾にとどめをささんと近づくナルトの頬が裂ける。
青雲剣、公主の持つ宝具である剣がナルトを襲った。
咄嗟に飛びのくナルト。
公主は乾の元に駆け寄る。
乾を守るために、鵺野先生を守るために、公主は闘う決意をする。
香に守られていないこの部屋で激しい戦闘を行うことが公主の命を縮める・・・いや公主を死に至らしめるだろうということは公主自身がよくわかっていた。
(それでも・・・私は、この方たちを守りたい!太公望・・・できることなら私に力を・・・)
公主の清純な願いは届くのか、それは分からない。
夜は暗く静かに、そして深くなっていく。闇が四国の空に浮かぶ月を覆い隠そうとしていた。
【香川県のダム/真夜中】
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:疲労進行中
[装備]:青雲剣@封神演義
[道具]:荷物一式(一食消費)、アバンの書@ダイの大冒険、お香(残り9回)
[思考]:1.鵺野、乾を守る
2.四国の死守
3.呪文の取得(『フバーハ』か『マホカンタ』が候補)
[備考]:キアリーを習得
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】腹部の骨折(意識はある)
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、 弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトと闘う。鵺野を守る。
2、越前と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】気絶
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 中度の疲労 全身に軽度の裂傷 チャクラ消費中
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、公主、乾の殺害
2、鵺野の捕食
3、休息をとる
4、剣心、セナとの接触は避けたい。
5、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
6、術者に能力制限を解かせる
7、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、
またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります
公主のキャラが変、見るに耐えない駄文、無責任な投げ。よって
>>51-55はNGです
57 :
クレクレマン:2006/07/17(月) 16:53:00 ID:bmHhaKNhO
56よく言ったwwwあんたは偉い。サインクレクレ
水面が月明りを反射して輝いている夜の湖畔。
逃げる女と、すれ違う思いを必死に繋ぎとめようと追いかける男。
静かな湖畔に二人の足跡だけが木霊する。
相手の姿が見えずとも、相手の逃げる方向は察しをつけることが出来る。
男――若島津は先を走るまもりに叫び思いを伝えようとしたが、言葉が喉に差し掛かった所で何とか堪えた。
今この世界に自分達二人しか存在しないといった保障は全く無く、何処にお邪魔虫が潜んでいるのか分かったものではないのだから。
「畜生、もどかしいぜ。俺は追いかけるよりどっしり待ち構えてる方が性に合ってるんだがな……」
空手キーパー若島津はそう呟きながら、見えぬ女の背を只管追いかけていった。
しかし疲れている上、暗闇の中で逃げる者と追う者というハンデがあったとしても、その二人の差は徐々に縮まっていた。
小さい頃から空手をしてサッカーをして下半身を鍛えてきた若島津にとって、逃げる女性を追いかけるのはさして難しい事ではない。
一メートル、また一メートルと距離は縮まり、闇の帳に隠されていた女の背が次第に炙り出されてきた。
真っ先にかける言葉はもう決まっている。
だが、そこから先の言葉が中々思い浮かばなかった。
伝えたい思いは溢れるほど存在する。
しかしそのどれもがあそこまで決意を固めた彼女に聞いて貰えるとは思えなかった。
「考えるだけ無駄だろうな……」
人殺しをするまで追い詰められた人を説得できる便利な言葉なんて思い浮かばない。
それも自己防衛の為に仕方なく殺すのではなく、守りたい人の為に自ら進んで人を殺そうと決意した人の気持ちを動かせる程の魔法の言葉なんて。
だからこそ言いたい事を言っても無理なら、力ずくでも引っ張って帰る事に決めた。
「――隊長にまた大目玉喰らうだろうがな」
女性に手を上げるなんて……と熱弁しだす隊長の姿が鮮明にイメージ出来る。
だけどその位なんだ。
目の前を走る女性は守りたい人の為に重たい咎を背負って戦っている。
そんな女性を止める為に、俺だって女性に手を上げるって軽い咎位背負ってやろうじゃないか。
目の前を走る女の熱い吐息が聞こえて来る距離に迄近づいていた。
その吐息は若島津のそれとは違い、全く整えられていないリズムが耳に入ってくる。
上下に揺らしながら息を切らしている華奢な肩が目の前にあった。
手を伸ばせば掴める位に。
「ば、バカやろう!」
走るまもりの肩を強引に掴み止めようとするが、逃げようとするまもりの抵抗にあい二人は暗く冷たい床の上に縺れ合いながら投げ出された。
「死ぬってなんだよ、死ぬって!自分で死ぬ事だけが償いか?そんなお前の勝手に殺された奴はどうなるんだよ!」
走りながら考えていた説得とはかけ離れた言葉が次々と口から飛びでて来る。
いつから自分はこんな積極的になってしまったのだろう。
しかしこのいつも以上に熱く積極的な自分も何処か嫌いにはなれなかった。
もう此処にはいない戦友日向が、自分のすぐそばにいてくれている様な気がして。
「お前も生き残って帰るんだよ!死んでいった奴の分まで生きて、それで帰って償いでもなんでもすれば良いじゃないか!」
「嫌っ!止めて!」
まもりは片手で耳を塞ぎ、喚きながら装飾銃ハーディスの銃口を若島津に向けた。
「良心を残しながら泣いて人殺しをしている間違った奴をほっとけやしないだろ!」
自分に向けて構えられた銃口は揺れていた。
そう目の前の女性はなにも好き好んで人を殺していた訳ではないのだ。
「それ以上言うと私、若島津さんを……」
「撃てるなら撃てよ。撃てるんだったらもうとっくのとうに撃ってるよな……」
彼女に銃口を向けられるのはこれで二度目。
火を噴く杖を勘定に入れれば三度目か。
「――帰ろうぜ、一緒に」
夜の人気の無い湖畔に倒れこんだ男女二人が見つめ合う光景は、第三者が見ればロマンティックであっただろう。
尤も本当は銃口を挟み膠着状態に陥っていただけであったのだが。
二人が見つめ合ってどの程度時が過ぎたであろうか。
銃口も引き金に添える指も先程より揺れが激しくなっていて、大分迷っているのが伺えた。
日向さんが力を貸してくれたのだ上手くいく、と若島津が思いかけた瞬間均衡が崩れた。
――忘れていた、第四回定時放送。
頭の中で次々と知らない名前が挙げられていく。
最後の知り合い翼はまだ生き残っているみたいだ。
姉崎まもりが言っていた小早川セナって奴もまだ死んでいないようだ。
良かったと、大きく肩で深呼吸をする。
ここでセナって奴が死んでいたら説得も何もなくなってしまう。
「――帰ろう。セナって奴も一緒に連れて。一人で戦うより皆で戦った方が勝機はある」
サッカーだってそうだ。
一人より十一人、十一人より補欠を含めた更に多数の方が強いに決まってる。
「取り合えず戻ろう。志村……隊長も待って……」
銃を下ろして、と言おうとして若島津の視線は其処固まった。
先程までとまもりの様子が明らかに違っていた。
泣いて震えていた守りたかった彼女はもう其処にはいない。
笑えばこんなにも可愛いのか、と思ってしまう程の笑顔で此方に笑いかけ、震えの止まった銃口を此方に向けていた。
「キェェェェッ!!」
異変を感じ取った若島津は咄嗟に銃を握り締めた手に向かって、空手仕込の手刀を振り下ろした。
だが静かな湖畔に響く一声の咆哮によって若島津の奇声はかき消され、自慢の手刀が振り下ろされる事はなく体ごとそのまま地面に倒れこんだ。
「ごめんなさい、若島津さん」
立ち上がったのは先程迄とは別人の明るい女性。
「若島津さんの申し出は本当に恐い位魅力的でした。そしてその誘惑に負けそうな自分がまたとても怖かった」
まもりは動く方の手で服に着いた土埃を払いながら、軽く脱臼した肩をゆっくりと擦る。
思ったいた通り華奢な自分には反動が大きい。
次、この銃を使う時は両手で撃つ方が良いのかも知れない。
「若島津さんを撃てなく利用しようとしたのも、本当は誘惑に負けそうになっていたからなのかもしれません」
もう物言わぬ彼に優しい視線を投げかけて彼女は言葉を続けた。
「みんなでクリスマスボウルを目指していたあの頃に戻れたらどんなに良いか……あぁヒル魔君ならこんな世界でも大丈夫だと思ったんだけどなぁ……」
今にも涙が零れそうだったので、天を仰ぎながらそう呟いた。
彼が死んだ時に始めて判った。
セナが弟の様に大切だったのとは別の意味で彼の事が自分の中でまた大切だったのだ。
もうあの糞マネという言葉が聞こえないのかと思っただけで、涙が溢れてくる気がした。だが、もう泣いてはいられない。
セナやみんなと元の世界に帰るという魅惑の選択肢はなくなったのだから。
主催者が言い残した褒美とやらが頭の中にこびりついていた。
――今回新たに追加する優勝者への『ご褒美』は誰か御一人の『蘇生』です。
そう、セナを優勝させてヒル魔君を蘇生させて貰えばいいのだ。
その為には甘い誘惑を振り切る必要があった。
脱出という名の甘い誘惑を。
「本当にごめんなさいね。私もうこれで戻れなくなってしまいました。最後までこんな私に優しくして下さってありがとうございました」
見開いたままの彼のまぶたをそっと綴じる。
脱臼した腕はそんなに痛まない。
今はもう戻れないと覚悟した心の方が唯々痛かった。
夜空と水面に浮かぶ月だけが見守っていた、湖畔での悲しいストーリー。
【滋賀県 琵琶湖畔の外れ/深夜】
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:中度の疲労。殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)。右肩の軽い脱臼。
不退転の決意。
[装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
[道具]:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
[思考]:1、殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない。
2、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
3、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
4、セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う。
【若島津健@キャプテン翼 死亡確認】
【残り54人】
「イノセンス発動!!! パンツァーファーストMKU」
ヤムチャの右腕が、大砲のようなものに変形していく。
ドグッ ドグッ ドグッ ドグッ
戦闘力、一人10億以上はあるだろう十二タカヤを次々と撃墜していく。
その光景を上空から見つめる者がいる。
「わたしが出向くしかないか。
貴方の体、鮮血のバラで彩ってあげましょう」
十二タカヤの首領、タカヤ・ルシフェルが地に降り立った。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:十二タカヤ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
線香から立ち上る薄い煙が部屋を巡る。
放送が流れた直後。
竜吉公主はその美しい瞳を見開いたまま呼吸さえも忘れていた。
「……太公望……まさか……」
言葉がこれ以上続かない。
まさか。あやつが。まさか。
意味のない単語と太公望という名前だけが公主の心を占め――――――――涙さえも流すことも出来ず、
公主はただ、呆然と虚空を見つめ。
「……っ?!」
突然首に感じた圧迫感。
気道が狭められる。
呼吸がままならない。
誰かが私の首を絞めている。
誰が?
この部屋にいるのは二人。
私と。
自分の考えた最悪の事態になってしまったことを悟り、公主は不自由な体勢のまま、背後を睨む。
目が合った金髪の少年が薄く笑う。
視界の端に映った彼の手にある物はロープ。
今、自分の首を絞めている物。
ナルトの内に封印され――――今や体の支配権を手に入れている九尾は、この建物に入ってから辛抱強く
機を待っていた。
焦りはろくな結果を生まない。
長い年月を生き、奸計に長けた九尾は慎重にナリを顰め、周囲を観察する。
“同族”と思える男は別の部屋で眠っている。
もう一人の男は唯の人間だ。何も出来はしない。
だがこの“仙人”という女はやっかいな感じがした。
戦闘能力は低そうに見えるが、何か特殊な力を持っているかもしれない。
放送が流れる直前にそれとなく探りを入れてみたが、さらりと流されてしまった。
恐らくは……、この女は自分を警戒しているのだろう。
だからこそあの乾とかいう小僧を、同族の男と共に別室にやった。
この女を何とかしない限り、あの男と接触することすら難しいだろう。
無邪気なナルトの仮面を被りながら九尾は静かに機を待ち――――そして得た。
女を屠る絶好の隙。
放送直後。
仲間の死に呆然となった女に生まれた隙。
幸いにして、宿主が手に入れていたロープは立派に凶器となる。
音を立てずにロープを取りだし、女の首に巻き付けるのに要した時間は3秒ほど。
首を絞めることにしたのは、仙女の声を奪うため。
万が一物音を聞きつけてあの同族の男が目を覚ましたらやっかいだからだ。
それに背後からならこの女がどのような力を持っていても対応はしやすい。
最悪の場合には、逃げやすいということだ。
ギリギリと力を込めるナルトを睨む仙女の表情は、苦悶に満ちていた。
一瞬でも気を抜いたら間違いなく死んでしまう。
細い指先で首に掛かる圧力を和らげようとするが、焼け石に水の状態だ。
視界が霞む。
苦しい。苦しい。苦しい。
このままでは本当に――――――――。
コンコン
ドアを外から叩く音に、九尾の力が一瞬緩んだ。
「すみません。公主さん。ちょっとお話が」
夜中だということを考慮しているのか、小さな乾の声に公主はどうにか意識を繋ぎ止める。
「……ぐっ……」
公主の伸ばした指先が青雲剣に触れるのと、ロープに再び力が加わるのは同時だった。
「……公主さん?」
答えない室内に、トーンを落とした乾の声が再度投げかけられる。
公主の指先が青雲剣を横に滑らせる。
力無く床を移動した剣は、そのような推進力でもその切れ味を遺憾なく発揮した。
音も立てずに、床に垂直に立つ椅子の脚を輪切りにしたのだ。
バランスを失った椅子は当然のように崩れ落ち、乾にドアを開かせるには十分な音を発する。
「公主さん?!失礼します!」
勢いよく扉が開く。
三者三様に最悪な状況に、一瞬、場の空気が止まる。
一番早く体を動かしたのは九尾だった。
公主を突き飛ばし、床に転がる青雲剣を拾い上げる。
咽せ返り、今にも倒れ伏しそうな公主よりも先に乾を始末することにしたのだ。
手にした剣を振りかぶり、呆然と立ったままの乾に突進する。
が――――――――。
「……っ!」
崩れ落ちそうになった膝をどうにか持ち直し、九尾は剣を放り投げた。
「チャクラを吸い取る剣か……。やっかいな物を……!」
忌々しげに公主を睨み付け、舌打ちをする。
「……乾!鵺野を連れて逃げよ!」
「で、ですが……」
「……早くっ!ここから離れるのだ……!」
口元を流れる鮮血を拭うこともせずに、公主は床を這いずりながらナルトと乾の間に移動する。
「……行け!!」
公主の声に、弾かれたように乾は走り出す。
「逃がすか!――――何っ?!」
すかさず追いかけようとした九尾の足首を、公主が掴んでいる。
公主の左手には青雲剣。
それを支えに立ち上がった公主は、九尾の前に立ちふさがる。
「おぬしを行かすわけにはいかん……!!」
「死に損ないがごちゃごちゃうるせーってばよ」
「斎藤も、沖田も、富樫も……ターちゃんも……太公望すら逝った……。これ以上は……!!」
争いを知らない、平和な日常を過ごしていた乾。
すでに3人もの仲間を失ってしまった鵺野。
何としてもこの場で死なすわけにはいかない。
それに四国を出た両津とダイがいる。
特にダイは、公主にとってこの世界における唯一の希望なのだ。
今ここでこの少年を行かせてしまえば……ダイにまで危機が及ぶかもしれない。
それだけは。それだけは――――――――!!
「殺生は好まぬ。だが……」
公主の瞳が九尾を射抜く。
その瞳に宿るのは希望。
ダイという光の中に見た、希望。
気圧された九尾が唇を噛む。
「おぬしを行かせる訳にはいかん――――――――!!」
残り僅かとなった命を全て賭けた公主の叫びが、線香の消えた部屋に響き渡った。
月に見られている。
たかが夜空に月が浮かんでいるだけでそんな風に思えてしまうことに、乾は改めて自分が現状を恐怖していることを自覚する。
未だ眠り続けたままの鵺野を背負い、走る乾は先程の出来事を何度も脳内で反芻していた。
(あの状況は……どう見てもナルトが公主さんを殺そうとしていた)
公主のあの言葉といい、それは間違いないだろう。
四国と本州を結ぶ橋にまで辿り着いた乾は、そこで足を止めた。
(俺はこれでいいのか。このまま逃げていいのか)
ナルトを連れ帰ったのは自分だ。
これは……自分が引き起こしたことだ。
「……この気持ちは、理屈じゃないな」
小さく自嘲し、乾は背負っていた鵺野を橋桁の影に降ろす。
ポケットから自前の手帳を出し、鵺野に当てた短い手紙を書き残す。
それらを鵺野の左手に握らせ、乾は今来た道を逆送し始める。
自分が戻った所で何ができるかわからない。
かえって足手まといになるかもしれない。
それに、自分が死んでしまうかもしれない。
だが、理屈じゃないのだ。
あの儚げな病を抱えた美しい人を、死ぬかもしれない状況で放ったままにしておくことはできない。
コルトローマンを手に、乾はひたすらに走る。
そして――――足を止めた。
目前には、半身を血で染めた少年が立っている。
「よお」
楽しげに手を挙げた九尾を、乾はじっと見つめる。
(あの血……彼自身には怪我をしている様子はない。だとすると……)
「……公主さんはどうしたんだ?」
「ああ。死んじまった」
楽しげに……むしろ無邪気とも言える笑顔で九尾が答える。
その答えが出る確率を87%と計算していた乾は、こんな時でもどこか冷静な自分に思わず自嘲した。
「念のため確認するが……君が殺したのか?」
「ああ。そうだってばよ」
「ターちゃんも……あの場で死んでいた人達も?」
「もっちろん、だってばよ!」
胸を張り、少年が誇らしげに笑う。
血に染まった顔半分が月に照らされ、乾の心に恐怖という感情を染み込ませていく。
震え始めた手を強く握りしめ、乾は銃口を九尾へ向けた。
乾の手にある物を、九尾はナルトの記憶から引っ張り出す。
今朝方右腕を傷つけられたやっかいな武器。
急所に当たれば、一発で死んでしまう。
「……残念だが、俺は君を殺すしかないようだ」
「……残念だけど、俺も同じだってばよ」
対峙する少年の歳は共に15。
運命に踊らされる二人の少年を、月だけが見ている。
【香川県/瀬戸大橋近く/深夜】
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】公主の死によるショック大。だが冷静。
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、
弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトを殺す。
2、越前と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中。
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 重度の疲労 全身に軽度の裂傷 チャクラ消費・中
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、乾を殺す 。
2、鵺野と接触し、可能なら利用。不可能なら殺害後捕食。
3、剣心、セナとの接触は避けたい。
4、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
5、術者に能力制限を解かせる
6、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、
またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。
※更木剣八、ターちゃんの荷物一式は愛媛県の市街地に放置されています。
【竜吉公主@封神演義 死亡確認】
【残り53人】
タカヤ・ルシフェルは冷酷な笑みを浮かべていた。
そして、パチンと指を鳴らす。
・・・・
「どっか、星が壊れたな。木星か?」
「いや、火星だ。あそこは闘いの際、死角になるんだ」
二人は、激しいオーラを噴出する。
「奇跡は0を拒絶し、絶望という名のレクイエムは、この地を包む。」
タカヤ・ルシフェルは、右手を空に掲げる。
「太陽『凍』 ―サン・フリーズ―」
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェル
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
ブルマが製作、アビゲイルが改造せし正規の大発明、オリハルコンレーダー!
アビゲイルが愛知県に入ってから数時間、そのオリハルコンレーダーに、動かぬ光点が一つ点在していた。
場所はすぐ近く、ここ、名古屋市街からそう離れていない地点。
斗貴子との邂逅を終え、就寝しようとしていたアビゲイルは、その光点が気になってなかなか寝付けなかった。
思えば、数時間前にも似たようなパターンに遭遇した。
まだリンスレットが生きていて、石川県に滞在していた頃。動かぬオリハルコンの光点を放置されたアイテムと認識し、回収しに行った。
だがそれは相手がただ休息を取っていただけにすぎず、しかもその所有者はマーダー。結果、リンスレットの死という最悪の結果を生んでしまった。
あのままあそこで大人しくしていれば、オリハルコンレーダーなんてものを作らなければ、リンスレットは死ななかったかもしれない。
後悔の念がまだ残っているからこそ、アビゲイルは動けなかった。
サクラという新たな仲間を得たことも理由の一つだが、もし今回も飛影の一件の時の様に罠だったら、今度は自分の身一つ守ることも叶わないかもしれない。
(私にはもう、決断を謝ることは許されない。死んでいったお嬢さん方の無念を晴らすためにも、私は死ぬわけにはいかない)
だからこそ、無理は禁物だ。
アビゲイルはオリハルコンレーダーの見せる輝きから眼を逸らし、床に向かった。
今は体力を回復させる時。少なくとも、戦闘を行えるまでには。
首輪の解析も、間近にあるオリハルコンの詳細も、全ては夜が明けてからだ。
二日目、午前二時頃。
アビゲイルは、そう決断した。
もしこの時、彼が違う選択をしていたら。
あの男は、あの少女は、あの少年は、
あるいは、違う運命を辿っていたのかもしれない……。
「…………すー…………すー…………」
安らかな寝息を立てる少女の横で、ケンシロウは怒りに震えていた。
思えば、この世界に来てからケンシロウの感情は怒りに支配されっ放しだったような気がする。
リンが死に、ダーク・シュナイダーが少女を殺し、くだらない幻想を抱く男にリサリサが殺され、そして気高い女戦士が蛇の道を行った。
被害者だらけのこの世界で、加害者と呼べる存在は誰なのだろうか。それは、ダーク・シュナイダーのようなゲームに乗った人間ではない。
このゲームを企画した大元、フリーザ、バーン、ハーデスら主催者三名である。
未知の力を持つ悪党三人に、ケンシロウの誇る北斗神拳の奥義は通用するのだろうか。もし仮に通用しないとしても、それでケンシロウの拳が屈するはずもない。
主催者は必ず倒す。時が来れば、必ず。
決意しながらもケンシロウが怒りを抑えられないでいるのは、偏に傍らの少女が原因である。
西野つかさ。これまでにたくさんの知り合いを亡くした彼女は、先の第四放送でまた泣く羽目になった。
聞けば、つかさにはリサリサの他にもう一人、マァムという武道家の少女が仲間にいたらしい。
だがそのマァムは東城綾との遭遇の際、突如現れた黒尽くめの男と交戦したまま――行方知らずになったらしい。
その時から、危険な香は漂っていた。それでも、きっと、と希望を持ちながら探し回っていたのに、結局マァムは発見できなかった。
そして、彼女はもういない。四回目の放送で、それが明らかになってしまった。
つかさは、全てをなくしてしまったのだ。この世界で知り合った二人の女性と、元の世界にいた友達二人。みんな死んでしまった。
唯一残っているのは――人間をやめてしまった――東城綾一人。
つかさの話によれば、彼女はつかさを優勝させるために、全ての存在を屠るつもりでいるらしい。
綾とてつかさと変わらぬ無力な女子高生だが、リサリサの見解によれば、彼女は既に人外の者――吸血鬼になってしまった。
吸血鬼なる存在がどれほどの脅威なのかは、ケンシロウの考えが及ぶところではないが、それでもつかさなら止められるかもしれない。
彼女と友達だった、西野つかさならば。
「う…………ん……」
魘されるように、つかさが寝返りを打つ。
今、彼女は眠りながらも戦いを続けている。夢の中で、悲しみという名の強敵に抗っている。
つかさは、リサリサから強さを教わった。もう一人でも歩ける、立派な娘に成長したのだ。
そんな少女を守らなければいけない。非道な暴力を振るう、悪の魔の手から。
ケンシロウは誓う。自らの拳にかけて。
「……むにゃ」
つかさの隣では、まだ名も知らぬ少年が依然眠ったままだった。
遭遇していきなり卒倒した訳のわからない少年。考えてみれば、この少年も辛い目にあってきたのかもしれない。
だからこそ、怒りに身を滾らせていた自分に恐怖したのだろう。この少年もまた、見捨てては置けない。
一人睡眠も取らず、寝室の窓から満月を眺めていたケンシロウは、徐に立ち上がるとドアを開けて外に出た。
辺りは住宅街だった。それほど大きな建物もなく、満月は何者にも邪魔されることなく映えている。
こんな美しい月夜に、無粋な感情は不必要。ケンシロウは一旦怒りを静め、満月から視線を外す。
そして、集中した。
襲ってくる、その『狂気』に反応するため。
「あたぁ!」
掛け声と共に腕を振り上げ、それを掴み取る。手裏剣だった。
つかさ達が寝静まる民家を出て数秒、ケンシロウは、何者かの放った手裏剣の標的にされた。
「北斗神拳の前ではボウガンの矢など止まった棒も同然……それが手裏剣であろうと銃弾であろうと、同じことだ」
自らの心臓目掛けて飛び込んできた手裏剣を投げ捨て、その発射元に闘気を送る。
返ってきたのは、紛れもない殺気。恐ろしいほどに冷酷で、禍々しい邪悪な気だった。
その者の正体は――考えるまでもない。
「ブラボー。素晴らしい反射神経だ。敬服するよ」
パチパチ、と気持ちのこもっていない拍手をしながら現れたのは、放っている殺気からは考えもつかないような容姿の男。
紳士的な立ち姿に、鮮やかなブロンドの髪。どこかの社交界にでもいそうな男だった。その、不適な笑みを除けば。
「何者だ」
「ああ、すまない。私は単に人探しをしていただけなんだが……君があまりにも"怖い顔"だったのでね。思わず攻撃を仕掛けてしまった」
「貴様の目的などどうでもいい。名を名乗れ」
紳士的な振る舞いを見せる男に対して、ケンシロウは厳格な態度を崩さない。
あたりまえだ。こんなに殺気を漲らせた紳士がいるはずがない。
「まぁそう言わないでくれ。私が探している人物の名は……"西野つかさ"。知らないか?」
「知らん。失せろ」
「おや……そこの"家"、中にまだ人がいるようだが……君の仲間か? よければ紹介してもらえないかな?」
「失せろと言ったはずだ」
大胆にも歩み寄ってくる男に対し、ケンシロウは構えを取る。戦闘をする構えを。
敵と見定め、殺気を放つ。ケンシロウと謎の訪問者、二人の殺気は相殺され、あたりはピリピリとした緊張感に包まれた。
(この男が何故つかさを探しているのかは知らないが……危険人物には違いない。ならば!)
「――あたぁッ!」
恐れ知らずなことに、拳の間合いまで近づいてきた男に対し、ケンシロウは問答無用の正拳を繰り出す。
しかし男もそれを予期していたのか、ケンシロウを嘲笑うかのように後退してかわした。
「クク……怖い怖い。当たればただでは済まぬ"剛拳"だな。それは何かの拳法か?」
「北斗神拳――貴様のような邪気に満ちた輩共を滅ぼす、正義の拳だ」
「正義か……言うものだな」
男が放つ気味の悪い笑みは、余裕の表れなのだろうか。
この世界では、様々な戦闘技術を持つ人間が存在する。ダーク・シュナイダーしかり、クリリンしかり。
その全てに北斗神拳が通用するかどうかは分からないが、前述で述べたとおり、やはり悪党に屈する拳は持ち合わせていない。
「そういえば先ほど、君は私の"名前"を訊いてきたな。君も名前を名乗るというのなら、私の名を教えてやってもいいが?」
「ケンシロウだ」
「ケンシロウ……か。私の名前は"DIO"。聞き覚えが、あるんじゃないか?」
「DIO――!」
やっと名前を露にした男、DIOに対し、気を引き締めなおすケンシロウ。やはりこの男、ただの訪問者などではなかった。
「聞き覚えがあるか? おそらく……リサリサという"波紋使い"からその名を聞いたんじゃないか? もしくは、"西野つかさ"を通して」
「……やはり貴様は、ここで倒さなければならぬようだ」
DIOという名には、確かに聞き覚えがあった。
今は亡きリサリサが吸血鬼と称し、つかさにその恐ろしさを伝えていた。ケンシロウは、その話をつかさから聞いていたのだ。
夜を生き、人間の生き血を吸う"人をやめた存在"。つかさの友人、東城綾も、どういう経緯かその吸血鬼に変貌してしまったらしい。
なんにしても、人間の生き血を吸う吸血鬼など、放置して置けるものではない。つかさの保身のためにも、ここで倒す。
「ほあたぁ!」
意を改めたケンシロウは、ダンッとコンクリートの大地を踏んで跳躍する。大きな跳躍の先には、吸血鬼という正体を見たDIOなる襲撃者。
繰り出す拳は、DIOを倒すため。ケンシロウは一片の躊躇もしなかった。
DIOが飛び、ケンシロウの拳を避ける。代わりに標的となった向かいの民家の壁が崩壊し、残骸が辺りに散らばる。
拳一振りでこの威力。敵に恐怖心を与えるには、十分すぎるほどの効果だった。
だが、悪の帝王はこの程度で恐れなど感じない。
「やるな。北斗神拳、か。どうやら、常軌を逸した体技のようだ」
冷静に分析するDIOの表情に笑みはなかったが、やはりどこか余裕が感じられる。
まだ何かを隠し持っている――ケンシロウがそう感じた矢先だった。
「……なんだ、それは?」
「ほう。やはり貴様にも見えるか。このDIOの『スタンド』が?」
「『スタンド』だと?」
なんだそれは、とケンシロウは訝しげに視線を送る。DIOの隣に出現した、"もう一人の人物"に対して。
DIOの仲間の参加者とは思えない。姿形からしてそうだが、『スタンド』なるDIOの隣人からは、生気が感じられない。
『スタンド』なるものの情報はつかさから聞いていなかったが、いったいどんな力を秘めているというのか。
(吸血鬼に、人型をした『スタンド』なる能力……秘孔は存在しないと考えた方がいいか?)
北斗神拳の真髄は、人体に708あると言われる経絡秘孔を突くことによる内部破壊にある。だが、経絡秘孔は人間にのみ存在するもの。いくら相手が人型とはいえ、吸血鬼に秘孔があるのかどうか。
(いや、考えるだけ無駄か。この男は、北斗神拳の"剛"の部分で潰す)
つまりは、力ずくで屈服させる。力を誇示する悪党には、それ以上の力でねじ伏せるのが一番効果的だ。
「俺はその『スタンド』ごと、貴様を潰す」
「言うな、ケンシロウよ。このDIOに……このDIOの『ザ・ワールド』に勝てるかな?」
もう何度目か分からないDIOの嘲笑に、ケンシロウの怒りが爆発した。
相手の力がなんのかは分からない。それでも、北斗神拳の威力と速度を信じ、勇猛果敢に立ち向かう。
「あぁたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたぁっ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
ぶつかり合うケンシロウの『北斗百烈拳』と、DIOのスタンド『ザ・ワールド』の拳撃。
その眼にも留まらぬ撃ち合いは、常人から見れば何が起こっているのか分からぬだろう。ましてや、高速で動いているのがたった計四本の腕だとは誰も思うまい。
それでも、伝説の北斗神拳を継承せしケンシロウからしてみれば、これくらいは雑作もない妙技。驚くべきは、そのスピードに対抗している『スタンド』の存在だった。
「――あっったァァ!!」
「グゥゥ!?」
最後は意地が勝ったのか、拳の撃ち合いはケンシロウが勝利を収めた。
衝撃で吹き飛ばされるDIOは即座に体制を立て直し、驚きに満ちた表情を見せる。そこにはもはや、余裕の色はなかった。
「驚いたな……『ザ・ワールド』の拳を防御するでもなく、同じ拳で撃ち返すとは。本気で敬服するぞ」
この世界に来て戦った道着の男――孫悟空は、『ザ・ワールド』の攻撃を「よく見ればかわせる」と言った。
このケンシロウも悟空と同等の体術と筋力を持っているに違いない。少なくとも、『スタンド』とやり合える程度には。
「弱肉強食……さて、私とケンシロウ。どっちが"強者"でどっちが"弱者"かな?」
突如、DIOの表情に、不快な余裕さが戻った。
「君はどちらだと思う――ウォーズマン?」
「DIO!」
DIOの問いかけに対し、どこからともなく現れた第三者は間髪いれず答えた。
そして、同時に赤い閃光が迸る。
「――!?」
ケンシロウが異変を感じた時には、既に轟音が響き渡っていた。
DIOの言葉に答えた謎の声。そして、後方から感じる強烈な熱気。振り返るとそこには、燃え上がる民家があった。
ケンシロウが守り、共に歩もうと誓った少女――西野つかさが眠る家が、燃えていた。
「――ディオォォ! 貴様、いったい何をした!?」
「我々の勝負は"ここまで"だ、ケンシロウ。私は彼女のためにお膳立てをしただけに過ぎない。もちろん、本当は狩りを楽しみたかったのだが……どうやら楽に倒せる相手でもなさそうなんでな」
急に殺気を収め、穏やかな表情を見せるDIO。その言動には、いったいどんな意味が込められているのか。
(いや、今はそんなことよりも――)
つかさを救わなければ。後方の民家は業火に包まれているが、生きている可能性はまだ十分にある。
駆け出すケンシロウはDIOに背中を見せ、そしてそこを狙われた。
「無駄ァッ!」
「くっ!?」
後方から、『ザ・ワールド』の一撃。難なく捌くケンシロウだったが、DIOは攻撃の手を休めない。
どうやら、このまま素直にいかせてはもらえないようである。
「慌てるなケンシロウ。ウォーズマンの燃焼砲は民家には直撃していない。中にいる住人も即死はしていないだろう。だから……」
『ザ・ワールド』の速度が速まる。
「もう少し付き合ってもらおうかァ!!」
「貴様に構っている暇はないっ!」
再び、ケンシロウとDIOの攻防が始まる。そしてその脇では、
「アアアァァアアアァァアアァァアアアアアァァアアアアアアアアアア!」
西野つかさを脇に抱えたウォーズマンが、燃える夜空を駆け抜けていった。
「う……」
全身が軋むような痛みに襲われ、西野つかさは眠りから覚醒した。
「ここ、は……?」
目覚めると、そこはどこかの集合住宅の屋上だった。
隣で眠っていたはずのたまねぎ頭が見当たらない。傍らにいてくれたケンシロウの姿が見当たらない。
ここはどこなのか。
「痛っ……!」
起き上がると、全身がさらに軋んだ。どうやら所々打っているようである。それに、火傷らしき箇所も見えた。
「いったい、私の眠っている間に何が……!?」
顔を上げて見つけたそれに、言葉を失った。
見覚えのある黒いボディ。見覚えのある不気味な微笑み。
忘れもしない、流川楓を殺したウォーズマンが――そこにいた。
「あ……あ……」
突如訪れた最悪の状況に、動くことが出来ないつかさ。必死にこうなった原因を究明するが、まったく真相が見えてこない。
ケンシロウやたまねぎ頭の少年はどうしたのか。ここはどこなのか。そして、なぜこの男が目の前にいるのか。
「――怯えなくてもいいわよ、西野さん。そのロボットさんは、あなたには何もしないから」
恐怖に連れ去られようとした直前に、懐かしい声を聞いた。
穏やかで、優しくて、友好的な、友達の声が聞こえる。
「東城……綾、さん」
「お久しぶり、西野さん」
ウォーズマンがつかさの視界から退き、その少女は眼前に躍り出た。
片腕をなくして、人をやめてしまった、それでも友達には変わりない――東城綾がそこにいた。
「ごめんなさいね、手荒な真似をしてしまって。近くになんだか怖い人がいたから、ロボットさんにあなたを攫ってきてもらったの」
「攫う……?」
つかさが疑問の瞳を浮かべても、綾はただ、微笑ましく笑い返してくるだけだった。
自分は、東城綾の差し金で攫われた。それは理解できた。いや、そんなことよりも。
何故、綾がこの男と一緒にいるのだろうか。流川を殺し、マァムを襲った、この黒尽くめの男と。
「大丈夫、心配しないで西野さん。私は、ただ単にあなたとお話がしたかっただけなの」
「綾さん……それは、私だって」
もう一度話がしたかったのは、つかさも同様のこと。
吸血鬼に変貌してしまい、人の心を失いかけている友達を救うために、つかさはもう一度綾と話をしなくてはならなかったのだ。
「ねぇ、西野さん。四回目の放送……主催者の人達が話していたこと、覚えてる?」
「ご褒美の、一人蘇生のこと? でも、あれは……!」
第四放送で説明された、優勝者へのご褒美。死者の蘇生。
そんなことは不可能だ。一度死んだ人間を生き返らせるなんて――そんな『素敵な御伽噺』、信じちゃいけない。
放送の直前、リサリサがドラゴンボールの力を否定したように、つかさもまた、死者の蘇生など信じてはいなかった。
だからこそ気づいたのだ。もし綾が、あの話を信じたのだとすれば。
「東城さん、あなた、もしかして真中くんのことを……」
生き返らせようとしているのでは。そのために、殺戮を行おうとしているのでは。
思って口に出そうとしたつかさを、綾は柔和な微笑で制した。
「いいえ。私には、真中くんを蘇らせることはできない。"人をやめてしまった"私には、もう現世で真中くんと再会する術はないのよ……」
その言葉を聞いてホッとするつかさ。だが、だとしたらこの嫌な予感はなんなのだろう。
綾は真中淳平のために奇行に及ぶことはしないと言っているのに、なのに、この負に満ちた禍々しさはなんなのか。
「東城……さん?」
「私はやっぱり、もう"あっちの世界"でしか真中くんと会えないのよ」
綾の言う"あっちの世界"というのがどこなのかは、考えるまでもなかった。
やはり、綾の考えは変わっていなかったのだ。自分を犠牲にし、"死後の世界"で真中に会おうとしている。
そんなの、
「駄目!」
つかさは声を張り上げ、キッと綾の顔を睨みつけた。
真っ直ぐな、目を逸らしたくなるような強い眼差し。この西野つかさという女の子は、こんなにも強い瞳を持っているのか。
(だから……真中くんは……)
その先は思わず、綾はつかさの瞳に視線を合わせる。
「綾さん、真中くんのために死ぬなんて思っちゃ駄目! そりゃあ、真中くんは大切な人だったけど……でも、私達は生きてるんだよ!? 死んだ人を追いかけて自分も死ぬなんて、馬鹿げてる!」
そうだ。馬鹿げてる。つかさに強さを教えたあの気高い女性なら――きっと、同じようなことを言ってくれたはずだ。
たとえ東城綾が人間をやめてしまったとしても、それでも真中淳平とは違う。れっきとした、生者なのだ。
愛の形が人それぞれだとしても、生きている者には死んだ者の分まで生きる義務がある。
(真中くんだってきっと、そんなこと望んでいない――)
「――なら、あなたの真中くんへの思いは、それっぽっちだったってことね」
「――え?」
声が、想いが、届かなかったのだろうか。
綾から返ってきたのは、人間とは思えぬ冷酷で無情な言葉。それでいて、中身はあまりにも"重い"言葉。
愛という重圧を、一挙に叩き込まれたような。
「私は、もう一度真中くんに会いたい。だから、"ここ"にはいられない――真中くんの待つ"あっち"に行くの」
「あ、や、さん……」
「あなたは来ちゃ駄目なのよ、西野さん。あなたは、ずっと生きていなければならない。私と真中くんの領域を、侵してはならない」
「そんな……」
綾は、次第に瞳を潤ませていくつかさの肩を掴む。
肩が壊れそうなくらい、凄い腕力だった。男の人よりも強くて、人間じゃないみたいで。
「私は死んで、真中くんに会うの。西野さんなんかには邪魔させない。真中くんといるのは、私だけでいい。あなたは……」
「……痛い、痛いよ綾さん」
「あなたは生きなくちゃ、いけないのよ! 絶対に死んじゃ、いけないの!! 真中くんに会っちゃ駄目……!!」
「痛い、痛い、痛いってばぁ!!」
つかさがどれだけ抗おうとしても、綾の腕を引き剥がすことはできなかった。
爪が食い込み、血が流れる。痛みを感じながらも、つかさは綾の顔に視線を奪われていた。
酷い顔だった。とても最近の女子高生とは思えない、醜い悪鬼のような表情。
でも、それはちゃんと東城綾の顔だ。たとえ人じゃなくなっても、ちゃんと生きている東城綾の顔なのだ。
「綾さん……生きて……生きてよ……」
「まだ言うの……そうまでして、私と真中くんを会わせたくないって言うの……!?」
「違う。そうじゃない。そうじゃないんだよ綾さん」
「何が違うのよ! あなたはそうやって、私から真中くんを奪ってゆくつもりなんでしょう!?」
「ちが、う……私は、ただ……あなたに」
生きて欲しい。その最後の一言が、痛みで出てこない。
「あなたは生きなくてはならないのよ、西野さん。……でも、人間であるあなたは弱い」
痛みと哀れみ、双方から来る涙で顔をグショグショにしたつかさの顔を一瞥し、綾の視線はつかさの首筋にいった。
「だから私は、 あ な た を 殺 す 」
そして、あとで蘇らせる――
「あっ……」
その痛みは、注射の比ではなかった。
見慣れた友人の歯が、牙が、首筋に食い込む。血が滲み、激痛を訴える。
(綾さん……牙……吸血鬼……!)
言葉には出せないスローペースな思考が、やっと現在おかれている状況を把握した。
綾は吸血鬼で、つかさは女性だ。吸血鬼は女性の血を好むという。だが、吸血鬼が女性の場合は?
そんなどうでもいいことを思いながら、つかさは死の危機に瀕していた。
血を吸われていることに、気づいたのだ。
「ちゅー、ちゅー」
まるでストローでジュースを飲むかのように、綾は恍惚な表情を浮かべながら喉を唸らせている。
血というものは、そんなにも美味しいものなのだろうか。人間であるつかさとしては、まるで想像できない。
「ちゅー、ちゅー」
見れば見るほど、綾の表情は幸せそうだった。
やっぱり、これが吸血鬼の本性なのだろうか。これが吸血鬼にとっての、当たり前なのだろうか。
「ちゅー、ちゅー、ゴクッ」
綾の喉が、可愛らしく鳴った。本当にジュースを飲む子供のようだ。
(綾、さん)
意識が遠くなる。
ああ、そうだ。
綾が飲んでいるのは、自分の血だったんだ。
再認識したつかさは、それでも自分が殺されようとしていることには気づかなかった。否、受け入れられなかったのだ。
綾は友達で、綾は人間で、綾は生きなくてはならないから。だから。
(こんなこと……しちゃ、駄目だよ、綾さん……)
意識はとうに薄れ、眩暈が襲ってきた。貧血なんて言葉じゃあ済まされないだろう。
もう言葉を発することもできない。友達、まだ言いたいことがあるのに。
(なに、言ってんのよ……)
つかさは心に一喝し、最後の力を振り絞る。本当に、最後の力だ。
スカートのポケットにしまってあった、護身用のワルサーP38。それを取り出し、しっかりと手に握る。
綾の背中に手を回し、互いに抱き合うような形になる。
(根性見せろ……西野つかさ。リサリサさんが……見てるぞ)
これで、最後にしよう。これで、頑張るのは最後にしよう。
リサリサさんが守ってくれた命、友達のために使うなら悪くないよね。
真中くん、綾さんは、私があっちに連れて行くから。
「一緒に…………真中くんのところに行こう……綾……」
引き金を、引いた。
綾の背中を貫通して、自分ごと。
飛び出した銃弾は二人の女性の腹部を貫き、闇に消える。
「――AYA!?」
銃声に驚いたウォーズマンが、綾に声を掛ける。
だが、返事は返ってこない。何もしないとは言ったが、これは一大事だ。
思わず駆け寄ったウォーズマンは、三歩ほどで足を止めた。
倒れた少女は、一人だけだったから。
「あ、れ……」
倒れゆくその身体を見て、綾は疑問符を浮かべる。
先ほどの銃声とつかさの手に握られた銃を見て、状況を受け入れる。
それは、あまりにも悲しい結末。
「はは……バカだな、西野さん……。私はもう……人じゃないから。こんなことじゃ……死なないのに」
つかさの放った銃弾は、綾の右脇腹を貫通していた。それでも、致命傷にはならない。吸血鬼にとってはこんなもの、かすり傷だった。
でも、つかさは違う。腹部から大量の血を流し、ピクリとも動かなくなってしまった。
「あ……血……まだ残ってる……」
つかさにまだ"飲み残し"が残っていることに気づくと、綾は再びつかさの首筋に牙を立てた。
「ちゅー、ちゅー」
さっきと同じように、ストローを吸うような覚束ない動作で、血を一滴たりとも残さず吸い尽くす。先ほど受けた傷も、見る見るうちに塞がっていく。
次第にズズズッという枯れた音が聞こえてきたが、綾はそれでも喉を動かし続けた。
まるで、いなくなってしまった友達を追い求めるように。
「にし、の、さん」
憧れだった。真中くんとあんな風に明るく接せられて、私にはできないことができて。私より数倍も魅力的で……勇気があって。
だから、真中くんはあなたの傍にいたんだよね。私なんかよりも、西野さんといることを選んだんだよね。
「つ、か、さ」
それが悔しくて、私も真中くんと一緒にいたくて、それで……それで……。
「うっ、うう……」
どうしてだろう。
失ったと思った涙がまた出てきた。
もちろん心の中の話だけど。人間をやめてしまったはずなのに、私は、
西野さんの死を、悲しんでる。
こんなことじゃあ、DIOに笑われてしまう。
ごめんね、西野さん。本当にごめん。あとでDIOが、必ず生き返らせてくれるから。
とりあえず、叫ぼう。
「――UUUURRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
少しだけ、気が紛れたような気がした。
どうも毎度おなじみ、宇宙一ついてない男、追手内洋一です。って、今日も初っ端からついてねー!
あの怖い顔のオジさんに会って気を失ってから何時間経ったのか分かんないけど、俺はいつのまにか火傷を負っていました。
しかも、今はなんか怖そうな金髪の男の人に襟を掴まれて宙ぶらりんにされています。目覚めて早々これかよ、ついてねー。
状況がうまく飲み込めないけど、あの怖そうなオジさんと俺を掴んでる金髪の人は敵対しているようです。
俺関係ないじゃん。なんでこんな目にあってんの? はぁ〜ホントついてねー。
「――どうだねケンシロウ? このDIOの軍門に下らないか?」
「断る。貴様のような悪党と揃える拳は持ち合わせておらん」
洋一の心情などお構いなしで話を進めるケンシロウとDIO。
ウォーズマンの燃焼砲による民家襲撃から既に数十分。つかさを救出に向かいたかったケンシロウだったが、不運にももう一人の関係者、たまねぎ頭の少年が人質に取られてしまった。
どうすることもできなくなったケンシロウは、DIOのつまらぬ勧誘などを断りながら、ただ無駄に時間を浪費していた。
打つ手なし。二人の人質の前に、ケンシロウはじっくりと機を窺う。
(つかさは攫われた。殺そうと思えばあの場で殺せたはずなのにだ。ならば、すぐに死ぬような心配はない。今最も危険なのは……あの少年か)
その少年、追手内洋一といえば、DIO相手に死んだフリなどをしている。既に気絶から覚醒していることは明白だったが、そこにツッコむ者は誰もいなかった。
だが、一つ気がかりなことがある。先ほど聞こえた銃声。もしあれが、つかさの持っていたワルサーP38のものだとしたら。
そう危惧していた矢先。
「――UUUURRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
女性の声質による、けたたましい雄叫びが聞こえてきた。
「なんだ!?」
その尋常ならぬ雄叫びに畏怖を覚えるケンシロウに、DIOが怪しい笑みを見せる。
「どうやら、"AYA"の食事が終わったようだ……もう時間を稼ぐ必要はなくなったな」
「食事、それに綾だと!? まさか……"吸血鬼になった東城綾"のことか!?」
「おや、ケンシロウも彼女と面識があったのか? いや、西野つかさから彼女のことを聞いたのか……どちらにしても、AYAは西野つかさの"殺害"に成功したようだ。残念だったな、ケンシロウ」
淡々と述べるDIOに、ケンシロウは我が耳を疑った。
綾がつかさを殺した?
「馬鹿な。彼女はつかさを優勝させようとしていたと聞いているぞ」
「事態や人の心情など、時間と共に移り変わっていくものなのだよ」
クククッ、と人を小馬鹿にするような態度を取るDIOに、ケンシロウの怒りは沸点を越えた。
「……さて、無駄話をしている時間はなくなったな。本来なら私も君と決着を付けたいところだが……朝日も近いのでね。今日のところはこれで失礼しよう」
「逃げられると思っているのか?」
「思っているさ。私は君から容易く"逃げられる"。これは揺ぎ無い事実だ……それとこの人間だが、君に返却しよう。血を吸うにしても不味そうだしな」
(ひ、ひでー! でもちょっとラッキー!)
「貴様は逃がさん……俺がこの場で屠る……!!」
熱く闘気を滾らせるケンシロウを嘲笑うかのように、DIOは『スタンド』を出現させた。
もはや人質などたいして意味を成さない。今のケンシロウを止めることなど誰にできようか。
もしも止められる人間がいるとするならば、それは"時間すらも支配できる存在"に違いない。
「残念だよ、ケンシロウ。決着はまた、夜に、な」
その言葉を最後に、ケンシロウが駆け出した。
その瞬間。
「 世 界 (ザ・ワールド)」
――時が、止まった。
月が姿を隠し、朝日が素顔を見せる時刻。
西野つかさの埋葬を終えたケンシロウは、木で使った粗末な墓前の前で、言葉を綴った。
「すまない、つかさ。俺は、君を守ることができなかった……」
つかさを殺したのは、東城綾というつかさの友達。
吸血鬼に変貌し、人の心を失い、それでもつかさが説得しようとした友達。
そんな友達に、つかさは殺された。
「東城綾は、俺が止める。君の代わりに、この俺が。そのためには」
彼女を先導し、誑かした存在。それを滅する必要がある。
「DIO……リサリサが敵対していた、"吸血鬼"。俺が、この北斗神拳の名に掛けて」
全ての元凶は、あの男にある。あの場では逃げられてしまったが、今度会った時には、必ず。
「倒そう」
墓前に誓いを立て、ケンシロウは立ち上がった。
「ケンシロウさん……」
そんなケンシロウの後ろから、たまねぎ頭の少年が顔を出した。
「洋一か……分かってくれ。俺は君を守ることができない。俺には、何よりも先に倒さねばならぬ敵ができた」
「うん……」
洋一が眠っている間に起こった出来事は、ケンシロウの口からあらかた聞いた。
酷い話だ。正義感に欠ける洋一でさえ、そう思った。
できることなら、自分がラッキーマンの状態であるなら、なんとか協力したい。
でも仕方がない。なんにもできないついてない少年のままでは、ケンシロウのお荷物になるだけだ。百パーセント死ぬ。
(死にたくはないよな〜……らっきょがあればな〜……)
頭を悩ませる洋一の肩を、ケンシロウが優しく叩いた。
「心配するな。君を一人で置いていったりはしない。DIOは吸血鬼……夜までは行動を起こさぬはず。それまでに、誰か信頼できる仲間を探そう」
「へ? あ、うん」
気のない返事を聞いて、ケンシロウは苦笑しながらも歩み始めた。
まずは、洋一を預けられるような信頼に値する人物を探そう。そして、
(DIO……貴様はこの俺が倒す)
ケンシロウの内に燃える"怒り"は、未だ収まらずにいた――
――ねぇ、リサリサさん。私、ちゃんとやれたかな?
――マァムさんも、見ててくれた? 私、友達を救えたんだよ。
――ケンシロウさんは、私を守れなかったって嘆いてないかな?
――あのたまねぎの男の子は無事かな? 無事でいて欲しいな……。
――北大路さん、真中くん、私も今そっちにいくね。大丈夫。綾さんも一緒だから。
――あれ? 綾さん? どこ……?
――先に行ったのかな? 焦らなくても、真中くんはどこかへ行ったりしないのに。
――まぁ、いいや。もう頭を悩ませる必要もないんだよね。
――あっちの世界なら、みんなが笑って暮らせるよ。
――私も、真中くんも、東城さんも。
――大丈夫、みんな一緒だよ…………。
この日、一人の少女が旅立った。
最後まで友達を思って、奮闘した強い少女が。
現世に残された吸血姫は、今日のことを決して忘れないだろう。
西野つかさという、大切な友達がいたことを――
【愛知県・民家/黎明】
【アビゲイル@バスタード】
[状態]:精神力体力疲労大、左肩貫通。全身、特に右半身に排撃貝の反動大。無数の裂傷(傷はサクラによって治療済み)、睡眠中
[装備]:雷神剣@バスタード、ディオスクロイ@ブラックキャット、排撃貝@ワンピース、ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]:荷物一式×4(食料・水、十七日分)、首輪、ドラゴンレーダー(オリハルコン探知可能)@ドラゴンボール、超神水@ドラゴンボール、
無限刃@るろうに剣心、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)、『漂流』@ハンター×ハンター
[思考]:1.朝まで休息。
2.起床後、近くのオリハルコン反応(フェニックスの聖衣)を調べに向かう。
3.サクラを護る。
4.なるべく早い内に斗貴子を止めたい。
5.レーダーを使ってアイテム回収。
6.首輪の解析を進める。
7.協力者を増やす。
8.ゲームを脱出。
【春野サクラ@ナルト】
[状態]:睡眠中
[装備]:マルス@ブラックキャット
[道具]:荷物一式(一食分の食料を消費、半日分をヤムチャに譲る)
[思考]:1.朝まで休息。
2.四国で両津達と合流。
3.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖
4.ナルトと合流する
5.ヤムチャは放っておこう。
【愛知県/黎明】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:忍具セット(手裏剣×7)@NARUTO−ナルト−
[道具]:荷物一式(食料の果物を少し消費)
[思考]:1.ひとまずマミーのいる小屋に帰還。
2.綾、ウォーズマン、マミーを利用する。
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]:精神不安定・体力微消耗
[装備]:燃焼砲@ワンピース
[道具]:荷物一式(マァムのもの)
[思考]:1.DIOに対する恐怖/氷の精神
2.DIOに従う。
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化。右腕なし。波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた。ちょっとブルー。
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式×3、ワルサーP38、天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[思考]:1.DIOを優勝させ、西野つかさを蘇生させてもらう。
2.DIOに協力する。
3.真中くんと二人で………。
【愛知県・西野つかさの墓前/早朝】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:マグナムスチール製のメリケンサック@魁!!男塾
[道具]:荷物一式×4(4食分を消費)、フェニックスの聖衣@聖闘士星矢、手裏剣×1@NARUTO−ナルト−
[思考]:1、洋一を預けられる人物を探す。
2、DIOを倒す(他人は巻き込みたくない)。
3、つかさの代わりに、綾を止める。
4、DIO討伐後、斗貴子を追い止める。
5、ダイという少年の情報を得る。
【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
[状態]:右腕骨折、全身数箇所に火傷、左ふくらはぎに銃創、背中打撲、疲労
[道具]:荷物一式×2(食料少し消費)、護送車(ガソリン無し、バッテリー切れ、ドアロック故障) @DEATH NOTE、双眼鏡
[思考]:1、できればケンシロウに協力したい。
2、でもやっぱり死にたくない。
【西野つかさ@いちご100% 死亡確認】
【残り52人】
静かだ・・・・。
何も存在しない、真っ暗な空間。音も大地の感触も無い、ただ自分だけははっきりと見え認識できる世界。
(ここが死後の世界とやらだろうか・・・・では彼らもここにいるのだろうか・・・・?)
鵺野鳴介はぼんやりと考える。
この気違いじみたゲームでかれは愛する妻を、生徒を、強敵(とも)を失った。
そして自分はこのよく分からない空間に一人ぼっちで存在している。
(ゆきめ、郷子、玉藻・・・・許してくれ)
涙が出てきた。その場に居合わせなかったとはいえ、親しかった人物に何の手助けをしてやる事もできず、死なせてしまった自分の無力さを呪って泣いた。
(少なくとも玉藻と別れなければ・・・・あいつは・・・・あいつは死なずにすんだかもしれないのに・・・・)
溢れる涙を拭おうと左手を顔にやるが触れられない。我に帰ると左手が消滅しているのに気がついた。
『ようやく気がついたウガか、0能者』
声のする方向を見るとそこには鬼がいた。昔話の通りに天を突く巨大で身につけているのは腰巻一丁の姿で仁王立ちしている。
(覇鬼!? 何故お前がここに!?)
『それはこっちのセリフだウガ。キサマいつまでこんな所でめそめそしているつもりだウガ?』
(待ってくれ、そもそもここは何処なんだ? 今までおまえとは全く会話できなかったのに何故今になって話せる!?)
『ここは夢の中だウガ。どうやらあの野郎共が強過ぎる力をおさえているようだウガ。俺にできるのはこうしてキサマが寝ている間を選んで接触する事くらいだウガ』
(そうだったのか・・・・)
この世界では能力の制限がかかっているらしいとは聞いていたが覇鬼にもそれが及んでいたと考えもしなかった。
『落ち込んでるヒマは無いウガ。キサマにはやらねばならん事があるだろうが』
(やることなんて、今の俺にやるべき事なことなど・・・・!?ッ)
突然覇鬼は鵺野の襟首を攫み上げた。巨体に攫み上げられ足が中に浮く。
『失望させるな0能者!! 仮にキサマは妹に、眠鬼に認められた男ウガ!! こんな処で倒れアイツを悲しませるマネは許さんウガ!!』
怒り狂う覇鬼は何度も見てきたが今回のような激しさは初めてだった。
不意に体中に衝撃が走った。覇鬼に地面へ叩きつけられたようだ。何も無い空間に叩きつけられるのは妙であるが。
(お、お前に何が分かる!? 今までダンマリ決め込んでいたお前に何が分かる!?)
すぐに立ち上がり覇鬼の腹部辺りを乱打する鵺野。鬼の手も使えず、只の人間の拳では覇鬼には肩叩きにもならない。
やがて無駄な打撃を止めた。崩れ落ち腰巻をしがみつき鵺野はすすり泣く。その様子を見て覇鬼は口元を歪めた。
『フン、まだ怒りをぶつける元気はあるようだウガ。もう少し様子を見てやってもいいだろうウガ』
しがみつく鵺野を振り払い覇鬼は踵を返す。そして滑るように空間はと消えていく。
『もし力を欲するなら封印を解け。今一度力を貸すウガ』
(待ってくれ! この俺に一体何をしろと云うんだ!)
『甘えるな0能者! そのくらい自分で考えろ! まぁ精々精進するウガ』
(待ってくれ覇鬼! 覇鬼――――!!!)
全力で鬼の後ろ姿を追いかけるが差は広がる一方だ。そして――――は暗黒へと消え去った。
「覇鬼! 待って・・・・ハッ!」
波の音が聞こえる。どうやら瀬戸大橋の橋桁にいるらしい。周りは既に漆黒に塗り替えられ今は深夜である。
「覇鬼・・・・お前は俺に活を入れてくれたんだな・・・・ありがとよ」
長年付き合ってきた鬼に感謝し、左手を確認すると紙片が握られている。内容は深刻だった。我を忘れた自分は両津に気絶させられ、その間に大変な事になったらしい。ことの発端を作った乾は責任を感じ殺戮者に一人で挑むつもりだ。
「・・・・クッ! このままでは公主さんと乾君が危ない、早く・・・・!?」
行かなければならない、だがそうもいってられないようだ。瀬戸大橋を本土側から渡ってくる者の気配を感じた。向こうもこっちに気がついたらく、歩みを止めた。
(どうする? 交渉するか? それともここで戦うか・・・・?)
「何と・・・・ヒル魔殿が!? 間に合わなかったか・・・・」
瀬戸大橋を大半を渡ったところで第四目の放送、淡々と発表される死者の中に蛭魔妖一の名を確認して剣心は落胆した。
今頃はセナは自分と同じ、いや付き合いが長い分深く悲しんでいるだろう。
心の中で死者への黙祷を捧げると剣心は考える。蛭魔の死が確認された以上、ここで引き返すべきだろうか。ナルトの名は呼ばれなかったが少なくとも四国には殺戮者が存在している。彼も無事とは限らない。
ナルトの回収と蛭魔の敵を討つべくこのまま四国へのり込むか? 目を閉じて時間にして約10秒思考する。
(きっかり一時間、ナルト殿を捜索する。可能ならヒル魔殿の亡骸を回収する!)
時間を限って四国へ乗り出す事を選択した。
とりあえず走った。たいした時間もかからず四国の地を踏む寸前、それを感じた。
(・・・・只ならぬ気配。かなり近い。橋の下でござるか・・・・?)
今の自分には折れた刀は既に廃棄していので武器になりそうな物は刀の鞘しか所有していないが、ハッタリくらいにはなりそうだ。
で、どうすか? ゲームに乗っているなら輩なら最悪回れ右する選択肢もある。自分の脚力なら逃走は可能だろう。だが相手に戦う気が無いならこちらも交戦の意思は無い事を伝えなければ今後よけいな誤解を生むかもしれない。
迷っている内に下から何か投げられてきた。確認すると石を紙で包んだ物である。紙にこう書いてあった。
“こちらに戦う意思は無い。願わくば交渉したい。返答されたし”
ホット胸を撫で下ろし剣心も返事を書き石を包んで橋の下に落とす。
しばらくして闇の中から男が一人現れた。構えは取らず自然体である。
「手紙にも書いた通り交戦の意思は無い。俺は鵺野鳴介、手を貸してほしい」
「拙者は緋村剣心と申す。こちらにも戦う意思は無いでござる。とりあえず四国の状況を教えてくださらんか」
【香川県/瀬戸大橋付近/深夜】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷、精神中度の不安定
【装備】刀の鞘
【道具】荷物一式
【思考】1、姉崎まもりを護る(神谷薫を殺害した存在を屠る)
2、小早川瀬那を護る(襲撃者は屠る)
3、力なき弱き人々を護る(殺人者は屠る)
4、人は斬らない(敵は屠る)
5、抜刀斎になったことでかなり自己嫌悪
6、早急に瀬那の元へ帰還
(括弧内は、抜刀斎としての思考ですが、今はそれほど強制力はありません)
備考:折れた日本刀の片割れは廃棄
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】やや疲労
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】乾、竜吉公主を助けに行く
富士樹海。香と仙道が出会った場所。二人は再び、この地点にたどり着いた。
「仙道君、さっきの放送は聞いた?」
「はい、聞きましたよ。洋一君はまだ生きているようですね。この辺りにはいないようですが。」
「ええ、それはよかったんだけど……。」
言葉に詰まる香。何やら言いづらそうにうつむく。
「『ご褒美』のことっすか?」
「え、ええ……あれって、本気……かしら?」
香の動揺を知ってか知らずか、仙道が答える。
「本気かどうかは分かりませんが、アイツらに人を生き返らせる能力があるのは本当でしょうね。
デスマスクさんも言ってたっす。ハーデスに一度生き返らせられたって。」
「そ、そう……。」
そう言うと、香は黙ってしまった。
「ご褒美」はあくまで優勝者に与えられるもの。そして、生き返らせることができるのは、たった1人。
(分かってる、これがアイツらの手なんだって……。ただ、殺し合いを煽りたいだけなのよ。
そして、あたし達の命はもはや、デスマスクさんや太公望さんの希望をも背負ってるんだって……。
でも……。)
香の目から、一筋の涙がこぼれる。
(でも、ほんの一縷の望みがあるなら……。また、リョウに会えるっていう可能性が、
わずかでもあるなら……、あたしはそれを信じていたい……。)
そんな香を見て、仙道は何一つ言葉をかけることができなかった。
大切な人を生き返らせたい。そんな気持ちを責めることはできない。
こんな人の気持ちを踏みにじるような「エサ」を用意してくるとは……仙道は主催者に対し怒りを燃やしつつ、
言葉を発するわけでも、手をかけるわけでもなく、ただ、香のそばで立ち尽くしていた。
何分経っただろうか。ふと、わきを見ると、何やら光るものが見えた。
「香さん、あれ、なんでしょうね?」
漆黒の森の中に、一筋の月の光が照らす「何か」は、
どこか幻想的な美しさをかもし出していた。
「……何かしら?綺麗ね。」
光るものに近寄り、拾ってみる仙道。
「…………これは、ビンのかけらっすね。」
思い出した。ここはダーク=シュナイダーに襲われた場所。
そして、このビンは、三井の持っていたもの。
香は何かに気づいたように、動き出すと、数メートル先の木の裏に回った。
そう、デスマスクと3人で、三井を埋葬した場所だった。
見ず知らずの自分達を助けるために、特別な力もないのに、
命をかけて守ってくれた三井。
ビンのかけらの"光"は、そんな三井から、ふがいない自分に
対する叱咤激励のメッセージのように思えた。
香はそこにしゃがみこみ、手を合わせ、目を閉じて誓った。
「……ごめんね、三井君。あたし、もう迷わない。
仙道君、洋一君、他の生存者と一緒に、必ずこの世界から、脱出してみせる。」
そう言った香の顔は、晴れやかだった。
仙道は、ビンのかけらのそばを調べている。
(……今まで暗くて分からなかったが、何か丸薬のようなものが転がっているな。
そういえば、香さんが、三井が薬らしきものを使って、あの銀髪の男から
手を打ち払ったと言ってたっけ。三井の支給品だったのか……?)
辺りを調べてみると、3つほど見つかった。
(デスマスクさんがいなくなって、香さんを守れるのは俺しかいない。
しかし、この世界で殺人者と渡り合える力は俺にはないし、
このトレーディングカードも使い果たしてしまった。
五光石も俺には使えこなせそうにないし……。
せめて「六芒星の呪縛」が使える午前まで、何とか今の装備で持ちこたえるしかない。)
「三井、これ借りるぜ。その代わり、香さんは俺が守るからな。」
決意を固める仙道の表情。もし三井が生きていたら、こう思っていただろう。
仙道ならきっと何とかしてくれる、と。
【山梨県(富士樹海)/深夜】
【仙道彰@スラムダンク】
[状態]:疲労大、負傷多数(致命傷ではない)。軽度の火傷。太公望からさまざまな情報を得ている。
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:支給品一式
遊戯王カード
「光の護封剣」「真紅眼の黒竜」「ホーリーエルフの祝福」「闇の護風壁」…二日目の真夜中まで使用不可能
「六芒星の呪縛」…二日目の午前まで使用不可能
五光石@封神演義、トランシーバー×3(故障のため使用不可)、兵糧丸(3粒)@NARUTO
[思考]:1.洋一を探す。
2.太公望の仲間に、太公望から教わったことを伝える。
3.首輪を解除できる人を探す
4.ゲームから脱出。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:右足捻挫。少し走れる程には回復した。太公望からさまざまな情報を得ている。
[道具]:ウソップパウンド@ONE PIECE。荷物一式(食料三人分、※太公望から貰った。)
アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険(弾切れ)
[思考]:1.洋一を探す。
2.太公望の仲間に、太公望から教わったことを伝える。
3.首輪を解除できる人を探す
4.ゲームから脱出。
「なぁー、友情マン」
「……な、なんだいカカロット君」
「だーれにも会わねーなぁ」
「そ、そうだね……」
人気のない夜道を、トボトボと歩く異星人二人。
片やヒーローの皮を被った外道。片や戦闘民族の本能に目覚めた戦士という異色コンビだった。
二人の関係を表すなら、『友達』という単語がもっとも相応しいだろう。
二人で地球人を皆殺しにするという盟約を交わし、手を取り合った二人は、それがたとえ偽りの『友情』だったとしても、『友達』に変わりはないのだ。
その二人の名は、友情マン&カカロット。
この殺人ゲーム内でも屈指の実力を誇る両名による、紛れもない最強最悪コンビだった。
数時間前、カカロットこと孫悟空と友達になった友情マンは、「クックック、しめしめ……カカロット君さえ味方に付いてくれれば、僕の優勝は決まったも同然だ!」と手に入れた強大な力にほくそ笑んでいたのだが。
今となっては、笑みも作れない。言葉も出ず、むしろ涙が出てくる。
挙句の果てには、「やっぱり彼と友達になるべきではなかった……」とまで思い始めていた。
その何よりの理由は、カカロット――いや、孫悟空という男の異常とも言える体質にあった。
「なぁー、友情マン」
「……な、なんだいカカロット君」
「腹、すかねぇか?」
(――き、きききキターーーーーーーー!!!)
――これこそが、カカロットという最強の戦士と友達になってしまった唯一のデメリット。
彼を仲間に引き入れて早々、友情マンは溜め込んでいた食料をほぼ全部カカロットに食べられてしまった。
お腹がすいたと言うから食料を分けてあげたのに、まさかそれを全部たいらげてしまうとは。
驚きにしばし呆然としてしまった友情マンは、このまま呆けていては仕方がない、とカカロットを引き連れて参加者狩りに出かけた。
だがしかし。
「なぁー、友情マン」
「……な、なんだいカカロット君」
「腹、すかねぇか?」
第四放送前、カカロットはまたも食料を要求してきた。
迷いが吹っ切れたことで食欲が倍増したのだろうか。そのあたりは友情マンの知るところではないが、これは由々しき問題だった。
なんとか自分の分の食料だけは死守したかった友情マンだが、カカロットは食べ物がないと知ると、
「オラ、食いもん食わねーととリキ出ねぇんだ」
と言ってその場にへたり込んでしまった。
いやいやそれはマズイ。カカロットには、まだなんの活躍もしてもらっていない。
やむを得ず自分の分の食料を渡した友情マンだったが、その瞳には若干の涙が浮かんでいた。
それから、友情マンの頭の中は食べ物のことでいっぱいである。
誰かカモになりそうな参加者を探しながら日本列島を歩き続けるが、ひとっこ一人いない。
途中第四放送が聞こえてきたが、現在陥っている事態の深刻さに、深く考察することができなかった。
(ご褒美に一人蘇生させてくれるだって!? 知るか! 今僕はそれどころじゃないんだ!!)
このまま誰にも会わず、食料を手に入れられなければ、飢え死にしてしまう。
宇宙を舞台に活躍するヒーローが、殺し合いの舞台で餓死などあってはならない。あまりにも惨めすぎる。
己の空腹も深刻だったが、カカロットが空腹で動けなくなるのはもっとマズイ。
こんな強力な戦力が、空腹のせいなんかで役立たずに成り下がってしまっては、計画が全て水の泡だ。
(どうにかしてカカロット君の食料を確保しなくては……このさい死体でもいい! 誰かいないか!? もしくは食べられそうな猪か豚かなんかは――!?)
「なぁー、友情マン。オラ腹減っちまったよ」
(クッ! これ以上はもう無理か……! どこか……どこかに食料は……!!)
冷や汗をダラダラ流しながら奔走する友情マンに、もはや余裕はなかった。
自分は何にも勝る戦力を手に入れたはずなのに。なのになんでこんなに苦労しなくてはならないのか。
と、そこに救いの女神が。
「! あ、あの人影は!?」
ついに見つけた。約8時間ぶりに出会う、カカロット以外のゲーム参加者。
これで食料が手に入る――そう思って近づいていった友情マンは、
「あ」
口を開いて、足を止めて、驚いた。
「――勝利兄さん!!?」
思わぬ場面、思わぬ場所で、兄の死体に遭遇してしまった。
「そ、そんな……勝利兄さんが……」
兄、勝利マンの死は、既に放送で知っているはずだった。
それでもいざ間近に死体を見てしまうと、ショックが抑えきれない。
勝負事には負け知らずで、勝つことに執念を燃やしていた、あの難攻不落のヒーローが。
「勝利兄さんが死ぬなんて……」
友情マンは、ここにきてやっと現実に直面したような気がした。
「そいつ……友情マンの兄貴か?」
「……ああ」
「じゃあ、そっちに転がってる奴は?」
「へ?」
カカロットに指摘されて、初めて気づいた。
勝利マンのすぐ傍に、地球人の少女の死体が転がっている。
まさか彼女が勝利マンを殺したわけではないだろう。兄がこんな非力そうな少女に負けるなんて、考えられない。
だとすれば、勝利マンは彼女を守ろうとして犠牲になったのか。もしそうだとしたら、あの勝利マンが負けたのにも納得がいく。
「友情マンの兄貴は、そこの地球人と相打ちになっちまったのか。弱いんだな」
「…………」
カカロットが勘違いをしても、友情マンは反論しなかった。
いや、カカロットの言っていることはあながち間違ってはいない。
勝利マンは弱い。だからこそ死んだ。そして、まだ生き残っている自分こそが強い。
「勝利兄さん……分かったよ。やっぱりこのゲームは、頭を使わなくちゃ勝てないんだ」
実力だけでは勝ち残れない。うまく立ち回ることのできる、『別の強さ』が必要だ。
(僕はあなたの分まで生きますよ、勝利兄さん。もし……主催者が本当に誰か一人を生き返らせてくれると言うのなら、その時は……)
密かに思い、友情マンは兄の死体に手をかけた。
もしかしたら、まだあれが残っているかもしれない。
「……あった。食料だ」
勝利マンのデイパックの中には、一食分の食料が残っていた。残念ながら少女の方はデイパックごと持ち去られてしまったようだったが、これは思わぬ収穫だ。
(ありがとう……勝利兄さん)
「おぉ〜! そいつ食いもん持ってたのか! さっそく食おうぜ!」
「な!? だ、駄目だカカロット君! これは勝利兄さんが残してくれた大切な食料! 大切に食べないと……」
「イチイチうるせぇな、おめぇ。いいからさっさとそれよこせよ」
ドンッと友情マンを突き飛ばし、無理やり勝利マンの食料を強奪する。
サイヤ人の本能が目覚めたことで乱暴になっているのか、そこに温厚だった頃の孫悟空の面影はなかった。
「この……!」
カカロットの横暴に思わず怒り出しそうになった友情マンだったが、寸でのところで思いとどまる。
(いや、ここで彼の機嫌を悪くしてはいけない。もっと友好的に)
「か、カカロット君? その食料、僕にもちょっと分けてくれないかなー。なんて……」
ムシャムシャ。バリバリ。
友情マンが控えめに懇願してみるも、カカロットは聞く耳持たず。
ものの数分で、勝利マンが残した食料はカカロットの胃袋に消えていった。
「ふわぁ〜、満腹だ」
(こ、このクソ猿がぁ〜!)
心の中でどす黒い嫌悪感を漲らせながらも、表情は以前スマイルを保っているのだから、さすがは『友情』マンと敬服すべきであろう。
とはいえ、結局全部カカロットに食べられてしまった。これはもう、さしもの友情マンでも我慢の限界か。
「う…………なんか、腹いっぱいになったら眠くなっちまったなー。わり、友情マン。オラちょっと寝るわ」
「な、なんだって!?」
「誰か地球人が来たら起こしてくれよ。オラがパパッと殺してやっから。そんじゃ」
「お、おい、カカロ――」
「グガー」
あっという間に、カカロットは食後の睡眠に入ってしまった。
なんということだ。
(こ、こいつ……この場で焼き殺してやろうか!?)
あまりに唯我独尊なカカロットの仕草に、友情マンは本気でそう思った。
だが、そういうわけにもいかない。友情マンは、まだ彼を失うわけにはいかない。
「そうだ。逆転の発想だ。これは逆にチャンスだと考えるんだ……カカロット君が眠っていると言うことは、その間食料の心配をする必要はないということ」
ならば、と友情マンは立ち上がる。
とりあえず、カカロットをこのまま放置しておくわけにもいかず、彼を担いで適当な民家の中に放り込むと、単身で駆け出した。
(まずは、食料の確保だ。カカロット君が満足できるほどの量を確保しなくては……彼が目覚めるまでに戻らないとまずいな。だいたい正午前くらいか)
カカロットが寝ている間に、食料を集める。他の参加者から奪うのが手っ取り早いが、それでは効率が悪い。
計画としては、誰か騙されやすそうな人物に接触し、仲間に引き込む。そしてカカロットに会わせて、死んでもらう。
そして食料ゲット。参加者も減って、一石二鳥。
(よし! これでいこう! そうと決まれば膳は急げだ。カカロット君が寝ている今の内に……)
そう計画立て、友情マンは走り出す。
しかし、思うように力が出ない。
(く……空腹がツライな。それに眠い……思えば、ここまでろくに休んでいなかったからな。カカロット君のせいで心労も溜まったし……)
心中で何度も愚痴を吐く友情マンは、かなり焦っていた。
サイヤ人の――いや、孫悟空という人間の本質を見抜けなかった友情マンに対する、思わぬ痛手だった。
【埼玉県・民家/黎明】
【チーム名/異星人連合】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労、空腹
[装備]:遊戯王カード(千本ナイフ、光の封札剣) (ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料なし)、ペドロの荷物一式(食料なし)、勝利マンの荷物一式(食料なし)、青酸カリ
[思考]:1.食料の確保。できれば力づくで奪うような手段は取りたくない。
2.正午を目安に、悟空の下に戻る。
3.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
4.最後の一人になる。
【孫悟空(カカロット)@ドラゴンボール】
[状態]食後の睡眠中 顎骨を負傷(ヒビは入っていない) 出血多量 各部位裂傷(以上応急処置済・戦闘に支障なし)
全身に軽度の裂傷 カカロットの思考。
[装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具] 荷物一式(水・半分消費、食料なし) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]1、しばらく寝る。
2、地球人を全滅させる。
仙道は、ビンのかけらのそばを調べている。
(……今まで暗くて分からなかったが、何か丸薬のようなものが転がっているな。
そういえば、香さんが、三井さんが薬らしきものを使って、あの銀髪の男から
手を打ち払ったと言ってたっけ。三井さんの支給品だったのか……?)
辺りを調べてみると、3つほど見つかった。
(デスマスクさんがいなくなって、香さんを守れるのは俺しかいない。
しかし、この世界で殺人者と渡り合える力は俺にはないし、
このトレーディングカードも使い果たしてしまった。
五光石も俺には使えこなせそうにないし……。
せめて「六芒星の呪縛」が使える午前まで、何とか今の装備で持ちこたえるしかない。)
「三井さん、これ借りますよ。その代わり、香さんは俺が命に変えても守ります。」
決意を固める仙道の表情。もし三井が生きていたら、こう思っていただろう。
仙道ならきっと何とかしてくれる、と。
「あらぁん、そういえば聞き忘れてたけど、色男ちゃんの名前って何なのかしらぁん?」くねくねした女の声にトレインの意識は引き戻される。
「――トレイン。トレイン・ハートネット」
名前を言うのも億劫だ。
脳を使う度に、先程見せられた人間の本性が脳の中でリピートされる。
どす黒く、醜く蠢く肉塊共の生態。
弱肉強食で強い蟲が弱い蟲を蹴落とし、生き延びようとする様はこの蟲毒の舞台その物なのである。
打算、裏切り、そういった黒い物が蠢く中に協力という言葉が発生する。
今までは尊く感じられていた『仲間』という単語はなんてことは無い、穢れた存在だったのだ。
「ああぁん、名前が無いじゃないのぉん」
地団太を踏んで悔しがる妲己。
その足音がコンクリートのゴーストタウンに響き渡る。
心臓を停止さえすれば首輪が無効になると思い込んでいた。
遊戯の時はそれで首輪の効力が無効になったのだ。
遊戯と今のトレインの違いは何か?
その問いから導かれる答えは二つであった。
「――つまり核鉄は心臓とみなされてしまうか、首輪とは別の方法でも監視をされているかの二通りねぇん。流石わらわ、名推理だわぁん」
前者はカズキという例がある。
恐らく核鉄を取られ、本当に死んでしまえば死亡扱いになるのだろう。
後者の場合更に可能性は二つに分けられる。
別の方法の監視によって生死を判断しているだけ場合と、その監視によって首輪の効力を操作している場合。
だがこのパターンの前者の可能性は限りなく低いといっても良いだろう。
生死が判断できているのに首輪の効力をオフにしておくメリットなんて何処にもないからである。
と、なると必然的に核鉄を心臓に用いても、首輪は無効にならないし、管理者から生きているとばれてしまっているという事になる。
つまりは完全に無駄な実験で終わってしまった訳である。
核鉄の効果か、早くもトレインの胸の傷が塞がり始めていた。
切断された手は戻らなくとも、その他の身体の傷跡も治癒スピードを速めていた。
残るは疼く胸の痛み。
果たしてその疼きは傷なのか、穿たれ欠落してしまったココロの幻影か。
トレインは残された手で少し前までココロが存在したと思われる場所に、無意識に手を伸ばしていた。
左指に触れるは、冷たい無機質な感触。
その冷たさと手触りで、自分がもう昔の熱いココロを持っていないのだという現実を再認識させられた。
尤も、裏では何を考えているか解らない穢れた人間のココロなんてもう願い下げだが。
だが俺はどうやって穢れたココロを捨てて生き返ったのであろうか……
無くした筈のココロが再びずきりずきりと痛み出す。
「それにしても、太公望ちゃんも趙公明ちゃんもあっけないわねぇん」
両者の力を良く知る妲己であったからそう思った。
この世界では強さなんでほんの少しのアドバンテージにしかならないという事は、遊戯との闇のゲームで妲己自身が体験して知っている。
だがそれ故に、太公望の狡賢さとしぶとさ、趙公明の非常識さが特に有利に働くと思っていた。
「それにしても困ったわぁん」
身体をくねらせながら顎に人差し指を添え、困ったポーズを取る。
死んでしまっていては『交信』のカードは使えない。
そして人間界最高の頭脳を持つと言われていたLとやらに交信を使おうとしたのだがやはり使えない。
「罠……だったのかしらねぇん」
妲己は知らない。
Lという名が偽名であった事も、呪文カードが「対象者の名前を指定しないと発動しない」という性質を持っていた事も。
そして、その性質をLもまた知らなかったという事も。
「交信、使用。対象、『竜吉公主』ちゃんよぉん」
そうだろうなとは思っていたが、やはり反応は無い。
声は空しくビルの谷間に木霊して、次第に消えていった。
これで利用できそうな知り合いは全て試したという訳だ。
このカードにどんな意図が込められているかは知らないが、ハイリターンがない限りリスクを犯してまで使わない方が良いのかもしれない。
全てのタイミングが悪かった。
放送まで待たなければLを除いた三人とまだ話せる機会はあったのだ。
そして、あと少しでも行動が早ければ、まだ竜吉公主は死んでいなかったのである。
「さて、どうしようかしらぁん」
楽しく侍らせていた男子二名ももういない。
黒の章を餌にして走らせた弥海砂も、遊戯が死んだ今となっては戻ってこない可能性が高い。
『交信』のカードで脱出派と協力しようと思っていたのだが、それも何かの罠の可能性が高かった。
そして首輪解除の為核鉄を手放してまで実験したのだが、それも無意味のまま終わってしまった。
もう自分に残ったのは核鉄を心臓代わりとした、ココロを失った青年のみであった。
「情報収集にでもいくとするわよぉん」
青年から核鉄でも返して貰おうかとも思ったが、一人で行動すると相手の警戒心を解けないという事に思い出し、当初通り二人で行動することにした。
しかしこれ以上玩具を失い一人になりたくない、と妲己自身が思い始めていたからでもあった。
「どうしたの、いくわよぉ……ん」
付いてこない玩具の方を振り返った妲己に向けられていたのは、ココロなき冷たき視線と同じく冷たく鈍い光を放っている銃口。
右腕を失い構えるだけでも精一杯だろう巨大なオリハリコン製バズーカを構えて。
「――トレインちゃん、わらわ冗談は嫌いよぉん」
ココロを壊した筈の玩具が自分に向かって殺意を向けていた。
誰が自分を生まれ変わらせたのであろうか?
誰が自分を殺したのであろうか?
誰が自分を……
その答えは全て目の前の雌狐であった。
「――俺は黒猫だ。何者にも気を許さない。穢い人間なんかには特にな」
それが彼なりに辿り付いた答え。
「あらぁん。わらわと穢らわしい人間を一緒にしないでくれないかしらぁん」
「確かに人間は穢らわしいかもな。だが、あんたも負けず劣らず穢らわしい匂いがぷんぷんするぜ」
目の前の雌狐からは嗅ぎ慣れた鉄と青草の雑ざった様な匂いがしてくる。
それも1人分ではなく、何人分もの匂いがこびり着いていた。
血と穢れ。
それは先程嫌という程見せ付けられた人間の内包する物である。
「――それに人間じゃない方が俺も遠慮なく撃てるぜ」
例え人間を心底嫌う様になってしまっていても、いや人間の穢さに愛想を尽かしたからこそ、自分の根底にある人間の女子供は撃つのに躊躇いがあった。
ウルスラグナの中に篭められた銃弾は一発限り。
だが目の前の穢れを掃除できるのなら一発限りの銃弾も惜しくはなかった。
妲己の最大の誤算はトレインの精神を計れなかった事であった。
精神さえ破壊すれば思うが侭の人形になると思っていた。
だが何で気が付かなかったのであろう?
自分を手にかけた存在が目の前にいるのに、反逆される可能性を考えていなかった。
傾世元禳がある元の世界では魅惑の術で従わせれば、反逆はされなかったであろう。
しかしこの世界にはそれがない。
つまりは数段階落ちた魅惑の術しか使えなかったのであるが、トレインが色気に人一倍鈍いタイプだったのは運が悪かったとしか言いようがない。
妲己程ではないにしろ裏の世界に耐性のあるトレインに対する不完全な精神破壊。
そして元の世界より数段効果の落ちる不完全な魅惑の術、これの相乗効果を忘れていた事が妲己の致命的ミスであった。
(ほんと、どうしようかしらぁん)
実際の所目の前の青年はさして恐怖に感じない。
あの大きな獲物では狙いがバレバレであるからである。
しかも相手は片腕なので、此方が動けばあの大きな獲物で照準を合わせることすら一苦労であろう。
殺すだけなら、問題はない。
照準にまごついている間に、核鉄を返して貰えばいいだけだ。
だがただそれだけをするのには少々勿体無かった。
これで殺してしまっては独りになって、周りから疑われてしまう。
殺すとしても唯殺すのではなく、何かに利用しなくてはくたびれ損である。
策を全て失った上に、折角の玩具も唯失うのは悔しかった。
核鉄が静かに鼓動を打ち、熱を帯びてくる気がした。
失われたココロの変わりに動き始めた第二のココロ。
そのココロは何処へ向かうのだろうか?
【東京都/二日目黎明】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]:少し精神的に消耗・満腹・上機嫌
[装備]:打神鞭@封神演義・魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式×4(一食分消費)、ドラゴンキラー@ダイの大冒険、黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
GIスペルカード『交信』@ハンターハンター、千年パズル(ピース状態)@遊戯王
[思考]:1.目の前のトレインをどうにか利用する。
2.次の行動を考える。
3.ゲームを脱出。
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]:左腕、左半身に打撲、右腕肘から先を切断。行動に支障あり(全て応急処置済み)
左胸に穴(中身の核鉄が覗いている)
[装備]:ウルスラグナ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾1)、黒い核鉄V(左胸で心臓の代わりになっている)@武装錬金
[道具]:荷物一式 (食料一食分消費)、黒の核晶(極小サイズ)@ダイの大冒険
[思考]:1.妲己を殺す。
2.人間に失望。穢れた人間を全て殺す。
タカヤ・ルシフェルの腕から凍てつく波動が放たれる。
それは太陽を凍らせ、ヤムチャの頭上に落下する。
熱と冷の2段攻撃!!
「へっ、楽勝〜っ」
しかし、ヤムチャはあっさりと凍った太陽をオーバーヘッドでけり返す。
「な、何ィっ!!
くっ、哀れな愚民よ。抵抗という行為は、『死』という終焉を生み出すのだ。
月『盾』―ルナティックシールド―!!!」
月がタカヤの前方に落ちていき、盾の形を形成する。
しかし・・・それは破られた。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェル
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
>>99 を以下にに修正
「何と・・・・ヒル魔殿が!? 間に合わなかったか・・・・」
瀬戸大橋を大半を渡ったところで第四目の放送、淡々と発表される死者の中に蛭魔妖一の名を確認して剣心は落胆した。
今頃はセナは自分と同じ、いや付き合いが長い分深く悲しんでいるだろう。
それにして主催者たちの悪辣ぶりには反吐が出る。死者一人の蘇生という“ご褒美”をチラつかせ殺し合いを激化させるとは。
(今まで頑なにゲームを拒否していた者でも友の蘇生にすがりくき、手を染めるかもしれぬ。そして拙者も・・・・)
今でこそ“志々雄の所業と同じ事”と切り捨てられるが、万が一完全に抜刀斎なってしまったら・・・・! 剣心は僅かに身震いする。
心の中で死者への黙祷を捧げると剣心は考える。蛭魔の死が確認された以上、ここで引き返すべきだろうか。
ナルトの名は呼ばれなかったが少なくとも四国には殺戮者が存在している。彼も無事とは限らない。
このままナルトの回収と蛭魔の敵を討つべく四国へのり込むか? 目を閉じて時間にして約10秒思考する。
(きっかり一時間、ナルト殿を捜索する。可能ならヒル魔殿の亡骸を回収する!)
時間を限って四国へ乗り出す事を選択した。
とりあえず走った。たいした時間もかからず四国の地を踏む寸前、それを感じた。
(・・・・只ならぬ気配。かなり近い。橋の下でござるか・・・・?)
今の自分には折れた刀は既に廃棄していので武器になりそうな物は刀の鞘しか所有していないが、ハッタリくらいにはなりそうだ。
で、どうすか? ゲームに乗っているなら輩なら最悪回れ右する選択肢もある。自分の脚力なら逃走は可能だろう。だが相手に戦う気が無いならこちらも交戦の意思は無い事を伝えなければ今後よけいな誤解を生むかもしれない。
迷っている内に下から何か投げられてきた。確認すると石を紙で包んだ物である。紙にこう書いてあった。
“こちらに戦う意思は無い。願わくば交渉したい。返答されたし”
ホット胸を撫で下ろし剣心も返事を書き石を包んで橋の下に落とす。
しばらくして闇の中から男が一人現れた。構えは取らず自然体である。
「手紙にも書いた通り交戦の意思は無い。俺は鵺野鳴介、手を貸してほしい」
「拙者は緋村剣心と申す。こちらにも戦う意思は無いでござる。とりあえず四国の状況を教えてくださらんか。」
線香から立ち上る薄い煙が部屋を巡る。
放送が流れた直後。
竜吉公主はその美しい瞳を見開いたまま呼吸さえも忘れていた。
「……太公望……まさか……」
言葉がこれ以上続かない。
まさか。あやつが。まさか。
意味のない単語と太公望という名前だけが公主の心を占め――――――――涙さえも流すことも出来ず、
公主はただ、呆然と虚空を見つめ。
「……っ?!」
突然首に感じた圧迫感。
気道が狭められる。
呼吸がままならない。
誰かが私の首を絞めている。
誰が?
この部屋にいるのは二人。
私と。
自分の考えた最悪の事態になってしまったことを悟り、公主は不自由な体勢のまま、背後を睨む。
目が合った金髪の少年が薄く笑う。
視界の端に映った彼の手にある物はロープ。
今、自分の首を絞めている物。
ナルトの内に封印され――――今や体の支配権を手に入れている九尾は、この建物に入ってから辛抱強く
機を待っていた。
焦りはろくな結果を生まない。
長い年月を生き、奸計に長けた九尾は慎重にナリを顰め、周囲を観察する。
“同族”と思える男は別の部屋で眠っている。
もう一人の男は唯の人間だ。何も出来はしない。
だがこの“仙人”という女はやっかいな感じがした。
戦闘能力は低そうに見えるが、何か特殊な力を持っているかもしれない。
放送が流れる直前にそれとなく探りを入れてみたが、さらりと流されてしまった。
恐らくは……、この女は自分を警戒しているのだろう。
だからこそあの乾とかいう小僧を、同族の男と共に別室にやった。
この女を何とかしない限り、あの男と接触することすら難しいだろう。
無邪気なナルトの仮面を被りながら九尾は静かに機を待ち――――そして得た。
女を屠る絶好の隙。
放送直後。
仲間の死に呆然となった女に生まれた隙。
幸いにして、宿主が手に入れていたロープは立派に凶器となる。
音を立てずにロープを取りだし、女の首に巻き付けるのに要した時間は3秒ほど。
首を絞めることにしたのは、仙女の声を奪うため。
万が一物音を聞きつけてあの同族の男が目を覚ましたらやっかいだからだ。
それに背後からならこの女がどのような力を持っていても対応はしやすい。
最悪の場合には、逃げやすいということだ。
ギリギリと力を込めるナルトを睨む仙女の表情は、苦悶に満ちていた。
一瞬でも気を抜いたら間違いなく死んでしまう。
細い指先で首に掛かる圧力を和らげようとするが、焼け石に水の状態だ。
視界が霞む。
苦しい。苦しい。苦しい。
このままでは本当に――――――――。
コンコン
ドアを外から叩く音に、九尾の力が一瞬緩んだ。
「すみません。公主さん。ちょっとお話が」
夜中だということを考慮しているのか、小さな乾の声に公主はどうにか意識を繋ぎ止める。
「……ぐっ……」
公主の伸ばした指先が青雲剣に触れるのと、ロープに再び力が加わるのは同時だった。
「……公主さん?」
答えない室内に、トーンを落とした乾の声が再度投げかけられる。
公主の指先が青雲剣を横に滑らせる。
力無く床を移動した剣は、そのような推進力でもその切れ味を遺憾なく発揮した。
音も立てずに、床に垂直に立つ椅子の脚を輪切りにしたのだ。
バランスを失った椅子は当然のように崩れ落ち、乾にドアを開かせるには十分な音を発する。
「公主さん?!失礼します!」
勢いよく扉が開く。
三者三様に最悪な状況に、一瞬、場の空気が止まる。
一番早く体を動かしたのは九尾だった。
公主を突き飛ばし、床に転がる青雲剣を拾い上げる。
咽せ返り、今にも倒れ伏しそうな公主よりも先に乾を始末することにしたのだ。
手にした剣を振りかぶり、呆然と立ったままの乾に突進する。
が――――――――。
「……っ!」
崩れ落ちそうになった膝をどうにか持ち直し、九尾は剣を放り投げた。
「チャクラを吸い取る剣か……。やっかいな物を……!」
忌々しげに公主を睨み付け、舌打ちをする。
「……乾!鵺野を連れて逃げよ!」
「で、ですが……」
「……早くっ!ここから離れるのだ……!」
口元を流れる鮮血を拭うこともせずに、公主は床を這いずりながらナルトと乾の間に移動する。
「……行け!!」
公主の声に、弾かれたように乾は走り出す。
「逃がすか!――――何っ?!」
すかさず追いかけようとした九尾の足首を、公主が掴んでいる。
公主の左手には青雲剣。
それを支えに立ち上がった公主は、九尾の前に立ちふさがる。
「おぬしを行かすわけにはいかん……!!」
「死に損ないがごちゃごちゃうるせーってばよ」
「斎藤も、沖田も、富樫も……ターちゃんも……太公望すら逝った……。これ以上は……!!」
争いを知らない、平和な日常を過ごしていた乾。
すでに3人もの仲間を失ってしまった鵺野。
何としてもこの場で死なすわけにはいかない。
それに四国を出た両津とダイがいる。
特にダイは、公主にとってこの世界における唯一の希望なのだ。
今ここでこの少年を行かせてしまえば……ダイにまで危機が及ぶかもしれない。
それだけは。それだけは――――――――!!
「殺生は好まぬ。だが……」
公主の瞳が九尾を射抜く。
その瞳に宿るのは希望。
ダイという光の中に見た、希望。
気圧された九尾が唇を噛む。
「おぬしを行かせる訳にはいかん――――――――!!」
残り僅かとなった命を全て賭けた公主の叫びが、線香の消えた部屋に響き渡った。
月に見られている。
たかが夜空に月が浮かんでいるだけでそんな風に思えてしまうことに、乾は改めて自分が現状を恐怖していることを自覚する。
ダム施設を飛び出した乾は、未だ眠り続ける鵺野を背負い走り続けていた。
大の大人と2人分の荷物は相当な重量となり乾にのし掛かるが、何があっても足を止めるわけにはいかない。
今、この足には鵺野と自分と、2人分の命がかかっているのだ。
重さと疲労に浅くなっていく呼吸を感じながらも乾の脳内は先程の出来事を何度も反芻する。
(あの状況は……どう見てもナルトが公主さんを殺そうとしていた)
公主のあの言葉といい、それは間違いないだろう。
(公主さんは……どうなったのだろうか)
自問の答えはかなり高い確率を持ってはじき出されている。
無事であるはずがない。
ただ腰掛けている状態でも線香の中でないと辛そうだったのに……戦うなんて出来るわけがない。
(だが……俺は)
鵺野先生がいる。
深い悲しみと怒りの果てに眠り続けるこの人を、少しでも安全な所へ連れて行くのが自分のすべき事だ。
だが――――――――。
「……考えろ!考えろ……!」
自分は今、何をすべきか。
最も望ましい事態は、公主さんも鵺野先生も自分も無事で、尚かつナルトを拘束できること。
最も避けたい事態は、3人全員がナルトに殺されること。
後者の事態を避けるためには、今、自分は何をすべきか。
めまぐるしく回転する思考はいくつもの答えを出し、答えを消し、さらに答えを重ねていく。
その時、わずかに鵺野が身じろきをした。
目が覚めたのか、と思い様子を窺うがやはり未だ眠っている様だ。
視線を前に戻した乾の視界に、数時間前に3人で人を待ち伏せたあのビルが入ってくる。
その後ろはもう瀬戸大橋だ。
あの橋を渡って本州へ行ければ、両津さんとダイに追いつくことが出来るかもしれない。
そうすれば……。
(俺は何を考えてるんだ!)
ナルトをダム施設まで連れて行ったのは自分だ。
このような事態を招いたのも自分の責任だ。
なのに事態の収拾を他人に押しつけるなど……。
「……こんな時」
手塚だったら。
不二だったら。
大石だったら。
英二だったら。
タカさんだったら。
桃だったら。
海堂だったら。
越前だったら。
――――――――――――自分だったら。
各々の個性が強すぎてまとまりのない青学テニス部だが……きっと、この答えは全員同じはずだ。
自分が戻った所で何ができるかわからない。
かえって足手まといになるかもしれない。
それに、自分が死んでしまうかもしれない。
それでも……、自分を助けてくれた人をこのまま見殺しにすることなど出来るはずがない。
辿り着いた瀬戸大橋の橋桁の影に鵺野を降ろし、その横に2人分の荷物を置く。
自分の手帳を1ページ破り、鵺野に宛てた手紙を綴る。
そしてその紙を手帳と共に鵺野の左手に握らせた乾は、今度は逆に道を走り始めた。
開け放たれたドアから湿った風が流れ込む。
剣を構え、ナルトと向かい合う竜吉公主の心には、自身の体のことなど考える余地はない。
『この少年を行かせるわけにはいかない』
この決意だけが公主の心を占め、真っ直ぐに立つ力を与えている。
「おぬし……名はなんという?」
「うずまきナルトってもう言ったってばよ」
「……私が聞いておるのは……おぬしの名、だ。その少年の名ではない」
仙女の瞳の強さに口先だけの誤魔化しは聞かぬ、と悟った九尾は、肩をすくめてみせた。
「……九尾、とでも名乗っておこうか」
口元だけで薄く笑った少年を更に睨み、公主は「九尾」という言葉から連想する人物を思い出す。
蘇妲己。
太公望と深い因縁を持ち、公主とも浅からぬ因縁を持つあの女と同じ系統の妖怪なのか。
「……狐か」
公主の確認の言葉に、九尾は口元の笑みを深くしただけだった。
それを肯定と受け取った公主は、この状況が考え得る限り最悪なものとなったことを知る。
この……うずまきナルトという少年は、すでに九尾という妖怪に乗っ取られている。
つい数十分前に自分が危惧したことが現実となり、公主は歯噛みをせずにはいられなかった。
「オマエが何らかの力を持っているやもと警戒していたが……どうやら取り越し苦労だったようだな」
何か特別な力を持っているのなら、先程自分に殺されかけた時に使って見せているだろう。
そう言外に指摘され、公主は九尾と同じく沈黙のみを返す。
こうなってしまっては誤魔化しはきかぬ。
太公望ならばこのような状況でも妙案を思いつくのであろうが、生憎と自分はそこまで機転はきかぬ。
自分に出来ることはただ一つ。
この少年を一秒でも長くここに留め、乾と鵺野が逃げる時間を稼ぐこと。
「……何が目的じゃ。優勝か?」
「今から死にゆく者にそのようなことを語るほど、儂はお人好しではないわ」
公主の意図を悟ったのか、九尾は会話には乗らない。
にぃ……っと口角をあげ、一歩足を踏み出す。
退かぬ公主との距離が少し縮まる。
「おぬしはどうやってその少年に取り憑いた?」
「取り憑いたわけではない。儂が望んだことではないわ」
また一歩、距離が縮まる。
「なぜ……人を殺す?」
「さぁ。何故だろうな」
薄く笑ったまま、九尾がまた一歩。
「…………そのような狐に負けるでない…………!!」
ナルトへと向けた公主の叫びを、九尾が鼻先で笑う。
「放っておいても死にそうだが……」
また、一歩。
「希望をなくさぬその瞳……。自分を善と信じる輩は揃ってそのような目をするな……」
最後の、一歩。
「――――――――胸糞悪いわ――――――――!!」
怒号と共に九尾が床を蹴る。
青雲剣が横なぎに空を切る。
現れた切っ先の一つが九尾の金髪を数本散らす。
床を跳ねた九尾が、拳を公主の腹に打ち込もうとする。
剣を振り下ろしそれを防いだ公主は、次の瞬間、九尾の姿を見失っていた。
「遅いわ」
にやりと笑った九尾が公主の右腕を掴み、そのまま後ろにねじ上げる。
「――――――――っ……あああああああああああああああああああああああああああああ!!」
皮膚が裂ける音。
肉が契れる音。
血が噴き出す音。
そして。
ねじ切られた腕から、血を啜る音。
「たいした補給にはならんな」
「…………」
痛みに絶叫しそうになる唇を噛みしめ、倒れ伏した公主は瞳だけで九尾を睨みあげる。
例え血にまみれようと、血に臥そうと、生粋の仙女としての誇りだけは失わぬ。
苦痛に顔を歪ませながらも、公主は真っ直ぐに九尾を睨み付ける。
半身を血で染め、ねじ切った公主の右腕を一舐めした少年は薄く笑ったままそれを見下ろしている。
潔癖である仙女の衣服は血で染まり、急速に命が流れ出していく。
「……諦めては、ならぬ……」
「……何?」
公主の口から零れた言葉は、九尾にとって予想外のものであった。
「そのような妖怪などに……負けてはならぬ……」
ぬちゃりとした血を吐きながらも、公主は言葉を紡ぐ。
それは九尾の内に眠る少年へと向けた言葉。
出来ることなら救ってやりたかった。
でももう、自分にはそれは叶わない。
だが、まだ。
「希望は……まだ……」
鵺野が生きてさえいれば、妖怪を少年から引き離すことが出来るかもしれない。
ダイが生きてさえいれば、このゲームを壊せるかもしれない。
だから。
だからどうか。
「希望を……捨て……る……な……」
それは、少年への、ダイへの、生き残っている善なる者達への遺言。
そして希望を見続けた仙女の頭に、十分な力を持った拳が振り下ろされ――――――――――――。
血溜まりの中心に立つ九尾は、苦々しげに唇を噛んだ。
女は死んだ。
メガネの小僧など取るに足りぬ。
後は同属の男と接触し、できれば利用してやるだけだ。
利用できぬなら殺すまで。
多少の誤差はあったのものの、目的は一つずつ達せられているはずだ。
なのに。
先程の、仙女が最期に吐いた戯れ言。
奥底で閉じこもっていたはずの宿主がそれにほんの少し……反応を示したのだ。
今はもう何の音沙汰もないが……。
「オマエはそのまま眠っておればよいのだ……!!」
舌打ちをし、自身の胸を強く叩く。
忌々しげに仙女の骸を蹴り付け、九尾は荷物を拾う。
そしてそのまま、九尾は音も立てずに宿直室を後にした。
その部屋からは、線香の香りはもうしない。
香るのは――――――――血の匂いのみ。
背負う物の何もない足は、疲労してはいるがだいぶ軽い。
薄い明かりを放つ月が、相も変わらず地上を見下ろしている。
ダム施設とビルの中間当たりまで戻った乾は、走る速度を徐々に落とす。
あまり視力がよくない乾の目にも、向こうから歩いてくる人物が視認できたのだ。
「よお」
「……やあ」
楽しげに手をあげ挨拶をよこした九尾に、乾はメガネの位置を直し、挨拶を返す。
乏しい光でもここまで近づけばわかる。
口元から左胸、太ももの辺りまで少年が血に染まっている。
(彼が怪我をしている様子はない……。だとするとこの血は……)
状況からはじき出された答えは、あまり考えたくないモノだ。
だが、窮地からの脱出も状況を変える策も、全ては現状を正しく把握することから始まる。
意を決し、乾は口を開いた。
「公主さんはどうしたんだい?」
「ああ。死んじまった」
あっさりと、楽しげに九尾が笑う。
87%という高い確率で予想していたはずの答えなのに、乾の心は衝撃に揺さぶられる。
(公主さん……間に合わなくてすみません……。でも、後悔するのは後回しにさせてもらいます)
「念のため確認するが……君が殺したのか?」
「もっちろん、だってばよ!」
誇らしげに胸を張り、また九尾が笑う。
公主を殺したことを肯定した。
それはつまり、自分を生かすつもりがないということか。
(……望むところだ)
決意と策を胸に、乾は無意識にまたメガネをズリあげる。
「確か……君の夢は火影になること、じゃなかったか?」
――――――――――――ドク……ン……
投げつけられた予想外の言葉が、九尾の奥をざわつかせる。
ほんのわずかに――――また、宿主が身動きをしたのがわかる。
「よく知ってんな」
宿主が再び動かなくなったことを確認し、笑みの種類を変えた九尾は乾を見上げた。
「春野さんから聞いたんだ。君はそのためにこのゲームに乗ったのか?」
今更だが、乾はただの中学生だ。
だから公主の様に、ナルトに潜むよからぬモノには気付くことができない。
彼なりにナルトの行動を推察した結果のこの言葉に、九尾はただ笑う。
あの同族の男と共に捜していた同里の娘の手がかりがこんなところに転がっていたとは。
捜していた二人の人物へと繋がる道を一気に見つけ、九尾は声を上げて笑いたい気分になった。
まずはこの小僧を捕獲。
そして娘と男の居場所を吐かせる。
行動方針を決めた九尾は、ゆるやかに足を引き、駆け出せる体勢を取る。
「そうだってばよ♪俺は優勝して火影になんなくちゃいけないんだってばよ!……だから」
無邪気な笑顔の仮面を被り、九尾が告げる。
「そのために死んでくれってばよ!」
ダンッ
足を踏み出そうとしたその瞬間、聞いたことのある音が足下に響いた。
乾の手の内には、コルトローマンがある。
「……俺にも夢があってね」
引き金を引いた反動で痺れた手を心中で笑い、乾は真っ直ぐに九尾を見つめる。
「……いや、夢という言葉があてはまるかどうかは微妙だな。だがどうしても成し遂げたいことがあるんだ」
回りくどい乾の言葉を聞きながら、九尾は目前の武器についてナルトの記憶から引っ張り出していた。
今朝方右腕に喰らった、急所に当たれば即死、というやっかいな武器。
忍者であるナルトにとって、ただの中学生である乾を素手で殺すことなどたやすい。
現にチャクラの温存のために、あの仙女もわざわざ素手で殺したのだ。
だが今回は、この小僧があの武器を持っている限りそう簡単にはいきそうもない。
口元だけで笑い黙す九尾には構わず、乾が再度口を開いた。
「俺は……6%の希望に命を賭けようと思う」
「わけわかんねぇってばよ」
「……俺を欠いた青学が全国制覇を成す確率は23%……。そして越前を欠いた青学が全国制覇を成す確率は29%……。6%というのはその差だ」
一瞬毎に張りつめていく空気とは裏腹に、二人の口元には笑みが浮かぶ。
緩やかな風が吹き、汗で滲んだ二人の額をやんわりと冷やす。
「……やっぱわけわかんねーってば」
「俺の“夢”の話だよ」
「ふーん……」
興味のなさそうな返事をする九尾の心は、徐々に苛立ち始めていた。
薄明かりに透けるメガネの奥からこちらを見つめる少年の目は、状況を諦めてはいない。
あの、最期まで戯れ言をはき続けた蛭魔の瞳。
あの、最期まで戯れ言をはき続けた仙女の瞳。
この少年はアイツらとよく似た瞳の色を宿している。
呆れるほどに諦めの悪い…………希望の光。
(最悪なのは、3人全員が彼に殺されること。しかもそのことを誰にも知られずに、だ)
走り続けている間考えていた“今、自分がすべき事”。
それは、彼に殺されることによって、彼が危険だと周囲に伝えること。
発砲音で鵺野が目覚める可能性が高いことも計算済みだ。
鵺野先生が生き残り、このことを周囲に伝えてくれればそれだけナルト絡みの危険は減るだろう。
戦う力のない、ただの中学生である自分に出来る最後の策。
もちろん、最期まで生き残る望みを捨てるつもりはない。
だが、覚悟はもう決めた。
「……残念だが、俺は君を殺そうと思う」
「やってみろ、ってばよ!」
対峙する少年の歳は共に15。
運命に踊らされる二人の少年を、月だけが見ている。
『鵺野先生へ
この手紙を読んだら、すぐに本州に渡り両津さんとダイと合流してください。
ターちゃんも、公主さんも殺されました。俺も殺されました。
俺を殺したのは“うずまきナルト”という少年です。
身長およそ160cm、金髪の、俺と同じ歳くらいの忍者です。
四国に留まってはいけません。
どんな音が聞こえても、何があってもすぐに出てください。
そして生き残ってください。
俺の手帳を先生に渡します。
中には俺なりの首輪に関する考察が書いてあります。
どうか脱出に役立ててください。
そして、できれば……この手帳の後ろ5ページを越前に届けてください。
俺が考えた青学テニス部レギュラーの練習メニューが書いてあります。
そして越前に会えたら、伝言をお願いします。
「オマエは青学全国制覇の希望の光だ」
「オマエはもう、立派に青学の柱だよ」 …………と。
乾貞治』
【香川県/瀬戸大橋の橋桁の影/深夜】
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】気絶
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式×2(一つの支給品は水を7分の1消費。もう一つの支給品は一食分の水、食料を消費 ) 、乾の手帳
【思考】1、気絶
【香川県/瀬戸大橋近く/深夜】
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】公主の死によるショック大。だが冷静。
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾29)
【道具】弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトを殺す。
2、ナルトを殺せなかった場合、彼に殺されることによって鵺野や周囲に危険を伝える。
3,ナルト殺害に成功した場合、先に本州に渡っているはずの鵺野を追いかけて両津、ダイ、越前と合流し脱出を目指す。
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 重度の疲労 全身に軽度の裂傷 チャクラ消費・中
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、乾から鵺野とサクラの情報を得る。得た後は殺す。
2、鵺野と接触し、可能なら利用。不可能なら殺害後捕食。
3、剣心、セナとの接触は避けたい。
4、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
5、術者に能力制限を解かせる
6、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、 またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。
※更木剣八、ターちゃんの荷物一式は愛媛県の市街地に放置されています。
【竜吉公主@封神演義 死亡確認】
【残り53人】
>>106と
>>107の間に以下の文を挿入
友情マンがカカロットの扱いに四苦八苦している傍ら、悩みの種であるサイヤ人は、放送で呼ばれたある一人の参加者について考えていた。
(クリリン……死んじ待ったのかぁ。まぁ、あいつは地球人だったしな。死んでも仕方ねぇか……)
サイヤ人の本能に目覚めたとはいえ、孫悟空としての記憶を失ったわけではない。
カカロットはかつて共に修行し、地球を守るために戦った戦友のことを思い出す。
だが、今となってはたいした感慨も浮かんでこない。
そもそも、地球人などと手を取り合っていたこと自体が間違いだったのだ。
昔の自分を思えば思うほど、なんと愚かだったのだろうと反吐が出る。
(ヤムチャもオラが殺す……地球人は皆殺しだ)
サイヤ人として覚醒したカカロットは、昔の仲間を手にかけることなど微塵の苦痛にも思わなかった。
それどころか、ヤムチャがそこそこの実力者であるということを知っているので、ワクワクさえしてくる。
(早く戦いてーなぁ……でもその前に)
カカロットは震える闘争本能を押さえ込み、ポツリと呟く。
「……腹へった」
今のカカロットにとっては、かつての兄弟弟子の死よりも、空腹の方が深刻だった。
(な、なにぃぃぃ〜!? もうだと!? 早すぎるだろ!!?)
その呟きを聞き逃さなかった友情マンが、途端に焦りだす。
中国地方を覆い潰すような暗闇に、規則正しく配置された街灯がわずかばかりの抵抗を示していた。
その街灯の光の下を進む人間が二人。
その内の一人が、まるで暗闇を突き破ろうとしているように一心不乱に前進している。
歯は固く食いしばられ、握りこんだ拳には血が滲む。
世紀末のリーダーは、怒っていたのだ。
たけしは、もう自分の怒りを抑えられないことを自覚していた。
何がリーダーだ。結局何も出来ていない自分に腹が立つ。
歩みは速く、目は既に涙に満たされていて前がよく見えない。
スーパーたけし化こそしていないものの、いつなってもおかしくない状態。
怒りと悲しみは生体のリズムを狂わせ、疲労を蓄積させる。
それでも歩く。
海岸沿いの砂利道を、小石を踏み砕きながら歩く。
もはや、自分が友の為に出来ることなど一つしかないのだから。
「キン肉マン、仇は取るさぁ」
暗闇の中を早足で歩くたけしに同伴しているのは全身包帯の男。
飛刀を腰にぶら下げた志々雄真実である。
たけしの様子を愉快そうに見ていた志々雄は、本日何度目かの一人言を呟いた。
いや、第三者から見れば独り言に見えるがそうではない。
ただ、話しかけているのが腰の刀だと言うだけのことだ。
「復讐者ってのはいいねぇ。全身で殺意を表しているところがいい。
尚且つ、それでいて自分の行動を全肯定しているところがいい。なぁ、お前もそう思うだろ?」
――・・・・・・・・・
飛刀は答えない。
ラーメンマンの手から志々雄の手に渡ってから、飛刀は一言も言葉を発していない。
無視されていても志々雄は特に気分を害することなく、むしろ楽しそうに独り言を続ける。
その殆どがくだらない雑談。
志々雄の言動はいちいち芝居じみていて劇的だ。
まるで舞台上の役者の如く、志々雄は話し続ける。
飛刀が遂に降参した。
――志々雄の旦那、俺の負けだ。ラーメンの旦那のことは・・・忘れる。
飛刀の言葉に、志々雄は口を引き攣らせる。
それは、『計算通り』と言う笑み。
志々雄が危惧していたのは、ラーメンマンを殺したことで飛刀が自分を恨むこと。
戦いの際に、相棒となる刀に反旗を翻されたのでは話にならない。
信頼関係を築いておくことに損はなし。
とはいえ、ブラフの可能性もある。
油断させておいて後ろからグサリ――ということも考えられるので、念の為に確認作業を行うことにした。
例え刀でも、嘘をつけば大体わかる。
「しかし手前も義理堅いな、あいつとはたった一日しか一緒にいなかったんだろ?」
探りの一投に飛刀が反論してくると思っていた志々雄だったが、飛刀は別の行動をとった。
沈黙。
それは意図して作り上げた沈黙ではなく、むしろ自分の今までの行動に自分で驚いているような沈黙。
『何故俺はこんなことを考えているのだろう』
そんなことを考えているような、逡巡と狼狽に塗れた沈黙だった。
(そういや俺は何でこんなにラーメンの旦那に拘っているんだ?)
よくよく思い返せば、持ち主の死など今までに何度もあった。
その度に飛刀は持ち主を替え、その持ち主が死ねばまた持ち主を替え、戦乱の世を移り渡って来たのである。
今回のことも今までと同じこと。
自分の記憶にある無数の『元』持ち主が一人増えただけだ。
予感はあった。
趙公明を見ても、恐れず立ち向かう勇敢さ。
見ず知らずの少女の死を悲しみ、墓まで作る優しさ。
仲間の死に怒り、自分の身体の限界まで走り続ける仲間を想う心。
『死に易い』のだ、そういう人間は。
特にこの世界では。
残念ながら、戦乱の世では悪のほうが強い。
民や兵を道具として扱わない国は、他の国に侵略されて御終いだ。
ただ、一人のお人好しが死んだだけ。
それなのにどうして自分は気にしているんだ?
少し考えて結論を出す。
それはとても簡単な結論。
それは、本来の持ち主である黄家の少年に対して抱いているのと同じ感情。
――俺は、ラーメンの旦那が気に入っていたんだな。
別れ際にラーメンの旦那が見せた表情。
『すまない』とでも言いたげな、あの表情。
それを見た時、飛刀は確信したのだ。
自分は本当にこのお人好しを気に入っていたのだと。
飛刀の発言を聞いても志々雄は特に言葉を発しなかった。
志々雄としては、自分を裏切らなければどうでもいいのだろう。
実際に飛刀に裏切る意志はなく、志々雄はそれ以上追求しようとはしなかった。
一応の和解。
気持ちを切り替えた飛刀は、早速自分の疑問を提示する。
この切り替えの早さは飛刀ならでは。
いちいち前のことをウジウジ考えていては精神崩壊を起こしてしまう。
今は志々雄が主人だ。
――志々雄の旦那ァ、もしキン肉マン本人と遭ったらどうするつもりなんだ?
志々雄は軽く笑うと、一言。
「そのときは、そのときだ」
大物だ、と飛刀は唸った。
話は放送直後に遡る。
放送を聞いた志々雄はまず一人蘇生ボーナスを鼻で笑い、次いで寝ているたけしを起こした。
そしてこう言った。
『剣八とキン肉マンが殺された』
このうち、剣八の死は本当だ。
剣八の死を聞いても、志々雄は特に何の感慨も湧かなかった。弱かったから死んだのだろう。
しかし、キン肉マンの死は志々雄がデッチ上げた嘘っぱちだ。
その話を聞いたたけしは、志々雄の思惑通り怒った。
怒って、泣いて、また怒った。感情をすぐに爆発させるのは、やはり7歳児だからか。
激怒と憤怒の感情に支配されたたけしに、更に志々雄は言った。
『その時、主催者が口を滑らしてな。キン肉マンを殺した相手が判明した。
下手人の名前は緋村剣心。俗に”人斬り抜刀斎”と呼ばれる殺人鬼だ』
勿論嘘だ。
だが、怒りに支配されたたけしは容易くその言葉を信じた。
そうして今、その剣心を探している最中というわけだ。
たけしと抜刀斎を戦わせて、弱った抜刀斎に止めを刺す。
このゲームで抜刀斎に付き合っている暇はない。
それに自分の素性を知っている人間は消しておきたいので、早々に決着をつける必要がある。
更に志々雄は、剣心を犯人に仕立て上げる行為に全く罪悪感を持っていなかった。
たけしに「抜刀斎は騙し討ちが得意だから、奴の言うことは絶対に聞くな」とまで言っているにも関わらず、だ。
どうせ今まで数え切れないくらい殺してきたんだ。
今更一人恨む奴が増えたところで痛くも痒くもねぇだろうよ。
俺達人斬りは復讐者に狙われるのが宿命。
復讐者達の言うことはいつも同じ。
『例え天が裁かなくとも、己れが必ず裁きを下す』いわゆる『人誅』というやつだ。
くだらねぇ。例え何を言ったところで、弱い奴の言葉は負け犬の遠吠え。
復讐者など俺は脅威に感じない。精々利用はさせてもらうがな。
例えたけしが真実に気付き自分に反旗を翻しても、返り討ちにする自信がある。
復讐者など、くだらねえことに心を使う弱者だ。
なあ抜刀斎、お前もそう思うだろ?
そして現在、志々雄とたけしは瀬戸大橋の前にいた。
足元には足跡が幾つも残されている。
その足跡の中で最も新しいものに、志々雄は見覚えがあった。
一度抜刀斎と遭遇した際に見つけたものと同一のものだ。
足跡はハッキリ残っており、ここを通ってから殆ど時間は経っていないものと思われる。
足跡が向かっている先は、四国。
隣には敵討ちに燃える7歳児。
腰には和解に成功した喋る刀。
腕には、第二の秘剣『紅蓮腕』に代わる切り札の篭手もある。
「さて、”四”国盗りとでも洒落込むか」
志々雄は一歩を踏み込む。
目の前には、夜闇に覆われた一本の橋。
四国へ繋がる暗黒回廊。
その先にあるのは、紛れもない地獄。
彼が進む先には、今も昔も灼熱の業火が吹き上げる地獄しかないのだ。
地獄の業火に焼かれながらも、彼ならばきっと哂うだろう。
なぜなら、それが志々雄真実という男なのだから。
【岡山県/瀬戸大橋付近/深夜】
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:全身に軽度の裂傷
[装備]:衝撃貝の仕込まれた篭手(右腕)@ワンピース、飛刀@封神演義
[道具]:荷物一式 三人分(食料、水一日分消費)
[思考]:1:四国に向かい、たけしを利用して剣心と決着をつける。
2:長時間戦える東北へ向かう。
3:無限刃を手に入れる。
4:少しでも多く参加者が減るように利用する。
5:全員殺し生き残る。
【たけし@世紀末リーダー伝たけし!!】
[状態]:激しい怒り
[装備]:パチンコ@ONE PIECE(鉛星、卵星)、キメラの翼@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料、水一日分消費)
[思考]:1:キン肉マンの仇を討つ(人斬り抜刀斎を倒す)
2:ゴン蔵の仇を殺した犯人を倒す(ただし大体の位置が分かるものの犯人はわかっていない)。
3:主催者を倒す。
4:志々雄について行く。
5:仲間を探す(ボンチュー、マミー、ウォーズ)。
>>146と
>>147の間に挿入します
既に、志々雄は抜刀斎の手掛かりを掴んでいた。
たけしが眠った後、志々雄は他に敵がいないか調べる為に周辺の捜索を開始していた。
念には念を、だ。
地形も把握しておく必要があったし、身体を動かす価値はあると判断したのだ。
そして見つけた交戦の跡。
明らかに誰かと誰かが戦った跡だ。
そして志々雄は、地面に打ち捨ててあるものを見たとき、片方が誰であるか即座にわかった。
打ち捨てられていたのは、折れた日本刀の片割れ。
自分との戦いで折れた、抜刀斎の刀だ。
これを見つけたとき、志々雄は思考を巡らせた。
抜刀斎は岡山にいる可能性が高い。
移動速度がそこまで速いとは思わないし、何より足手まといの餓鬼二人を連れている。
さて、どうするか。
抜刀斎の存在は、これから自分にどう影響を与えていくのか。
少なくとも良い影響はないだろう。
他の参加者に自分の情報を漏らされることだけは避けたい。
折れた日本刀など使って戦っているからには、まともな得物は持っていないのだろう。
仕留めるなら、今。
とはいえ、そう簡単に倒せる相手でもない。
策は打っておくべきだろう。
数分間考えた志々雄の結論は、たけしを戦わせるというものだった。
抜刀斎は甘い。7歳児に手は出せないだろう。
それに―――
たけしが宗次郎のように化けるかもしれねえからな。
そうして、志々雄はたけしを騙すことに決めた。
……ねばならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
まもりは若島津の荷物を奪うと、誰にも見つからないうちに逃げなきゃ、と走り出した。
……なぜ?
さっきの男の子、志村君が来るかもしれない。
……志村君?来たら、殺せばいいじゃない?
若島津さんも志村君も、こんな私に優しくしてくれた。若島津さんは残念ながら殺してしまったけど、できたら志村君は殺したくない。
……なぜ?殺したくなければ殺さなきゃいいじゃない?
私は出会った参加者を、セナを除く参加者を、殺し続けなければならない。
「まもりは手のかからない子で、お母さん助かるわ。」
「姉崎さんは品行方正、成績優秀で、クラスの人気者です。」
「姉崎先輩って、美人だし、頭もいいし、優しいし、素敵よね。」
「まも姉は頼りになるなぁ。」
「あの悪魔に対抗できるのは、風紀委員の姉崎まもりしかいねーよ!」
姉崎まもりは、いわゆる「優等生」であった。
勉強しなければならない。
規律を守らなければならない。
人のために尽くさなければならない。
手のかかる子の面倒を見なければならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
……ねばならない。
知らず知らずのうちに、まもりは、たくさんの重圧を自分に課していた。
そしてこの世界において、まもりが自分に課したものとは……。
殺さねばならない。セナを守るために。
殺さねばならない。ヒル魔を元の世界に返すために。
殺さねばならない。それがこの世界のルールだから。
誰かと出会ったら、私はその人を……
……殺さねばならない。
まもりは走り続け、京都市へ着いた。
もうここまで来れば、若島津の死体と無関係を装えるだろう。
走り続けたおかげで、息も絶え絶えだ。
膝に手をかけ、前かがみとなって休んでいると、
前からモデル風のブロンド美女が声をかけてきた。
手にマシンガンを持っているが、攻撃の意図はないようだ。
「まあ、どうしたの?何かあったのかしら?」
「はぁっ、はぁっ、は、はい・・・・・・。男に・・・襲われて・・・逃げてきたんです・・・。」
まもりは咄嗟に嘘をついた。自分が「被害者」でなければ、逃げていることが不自然であったから。
「まあ、かわいそうに・・・・・・もう大丈夫よ。」
ブロンドの女性は、まもりの頬に手を当てると、まもりの頭を抱き寄せ、自分の胸に寄せた。
「怖かったわね・・・・・・でももう大丈夫。」
そう言って、まもりの頭をなでる。
どうやら、彼女からしたら、私は単なる女子高生。警戒はされていないようだ。
まもりはブロンドの女性になでられながらも、右手にハーディスを握りつつ、
あの言葉を頭に思い浮かべる。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
・・・・・・誰かと出会ったら、私はその人を殺さねばならない。
右手に構えたハーディス。私をなでるブロンドの女性からは完全に死角。
警戒もされていない。チャンスだ。
銃口をブロンドの女性に向ける。そのとき――――
「おい!麗子!どうしたんだ!」
突然、怒鳴るような男の声が聞こえた。
ビクッ!思わず右手がブレる。
「もーう、両ちゃん、大きな声出さないでよ!びっくりさせちゃうじゃない!」
――――仲間がいたの?
すぐさまハーディスを後手に隠す。
「おう、誰かいたのか?」
「暴漢に追われていたらしいのよ。」
「こんなか弱い少女を・・・・・・許せんな!」
警察官の制服を着た中年男性が近づいてくる。
その後ろにも、2人の少年が。1人は見覚えがある。バーンに「竜の騎士」と呼ばれていた少年だ。
「わしの名は両津勘吉。警察官をしている。」
自己紹介が始まった。他の3人も口々に名前を告げる。
私に向かって色々と話しかけるが、どこか上の空で聞いていた。
ブロンドの女性は麗子さん、竜の騎士はダイ君、もう一人の少年は星矢君というようだ。
私も自己紹介をしたあと、まずセナについて聞いたが、誰も知らなかった。
次に私を襲った人物について尋ねられたが、ヤムチャさんの外見を告げておいた。
ヤムチャさんは私が殺人者であることを知る、唯一の生存者。何としても消さなければ。
それから、越前リョーマという人物について尋ねられた。
外見を聞く限り、冴子さんが殺すのに失敗した子供のことかもしれない。
しかし、知らないと答えておいた。
「心配いらん、市民を守るのが警察官の役目だ。どーんと大船に乗った気でいたまえ!」
「あーら、両ちゃん。若い女の子の前だとやけにかっこつけるのね。いやらしい!」
「おい!わしの好みは30代くらいの脂の乗ったいい女だ。女性高生には興味ないぞ!」
「へ〜え、その割には制服姿の日光ちゃん月光ちゃんのこと、いやらしーい顔で見てたわよね〜」
「何を言うんだ!変な言いがかりはよせ!・・・・・・ははーん、麗子、妬いてるな?」
「バカ言わないでよ!両ちゃんみたいな不潔なゴキブリ男、誰が妬くもんですか!」
「ゴキブリ男ぉぉぉ〜?麗子、てめえ・・・・・・言っていいことと悪いことがあるんじゃねぇか?」
両津さんと麗子さんがケンカを始めた。ダイ君はあわてて止めようとしている。
星矢君は、ケンカをする麗子さんを、少し嬉しそうな表情で見ている。
目の前の出来事なのに、なぜかその4人の姿をブラウン管を通して見ているような感じがした。
私と4人との間に、見えないヴェールがある。見えないけれども、間違いなく存在している。
この4人は、あと1時間ほど、リョーマ君を捜索したあと、香川県のアジトに戻るらしい。
香川県には他にも仲間がいるようだ。ようやく、この時限爆弾を使うチャンスがめぐってきた。
アジトにしかけてもいいし、四国が閉鎖になる頃を見計らって、瀬戸大橋を壊すのもいい。
そういえば星矢君が、ハーデスには何人でも生き返らせる力がある、と言っていた。
だから、ハーデスを倒して屈服させれば、今まで死んだ人たちを生き返らせることができる、という。
でも・・・・・・首輪はどうするの?こんな不思議な力を持つ人たちを相手に、戦いを挑んで勝てるの?
勝てるわけないじゃない。
広間に集められたこと、首輪をつけられたこと、この舞台にちりばめられたこと。
私達はコマに過ぎない。
ハーデス達が用意したゲーム舞台は、あくまで優勝者が1人。ご褒美も1人。
そのルールに乗るしかない。だから私は殺さねばならない。
……殺さねばならない。
……殺さねばならない。
……殺さねばならない。
私とセナ、2人きりになるまで。
【京都府 京都市南部/深夜】
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:中度の疲労。殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)。
右肩の軽い脱臼。不退転の決意。
[装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
[道具]:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
[思考]:1、両津達4人に着いていく。大量殺戮のチャンスを狙う。
2、殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない。
3、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
4、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
5、セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う
【リョーマ捜索隊】
共通思考1・仲間が死んでも泣かない。
2・出来る限り別行動はとらない。
3・リョーマを探す
4・ハーデスに死者全員を生き返らせさせる
【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康 額に軽い傷
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式(一食分の食料、水を消費)
【思考】1・鵺野先生が心配(一刻も早く四国に向かいたい)
2・仲間を増やす
3・三日目の朝には全員で兵庫に。だめなら琵琶湖に集合する。
4・主催者を倒す。
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】中度の疲労(若干行動に支障あり)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料、水を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・リョーマが心配
2・藍染の計画を阻止
3・主催者を倒す。
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】出刃包丁
【道具】荷物一式(2食分消費)、トランシーバー
【思考】1・四国の死守(一刻も早く四国へ向かいたい)
2・公主を守る
3・ポップを探す
4・主催者を倒す
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】ペガサスの聖衣@聖闘士星矢、食料を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・弱者を助ける
1・藍染の計画の阻止
2・藍染を倒す
3・主催者を倒す
・・・タカヤの前方に落ちていき、盾の形を形成する。
しかし・・・それは破られた。・・・ 」
(よし、こんなものか・・・)
「ふうっ、今日はここまでにしよう」
青年は手にしたフィギュアを置き、溜息をひとつ付く。
先ほどまで彼の手によって繰り広げられていた寸劇は、ふいに幕が降ろされた。
部屋中に散らばったマンガのキャラクターを模った
何体もの人形を片付け始める。
彼は知っていた。部屋中に仕掛けられた64個もの盗撮器、盗聴器を。
その上でわざと声を出し、『ヤムチャ対タカヤ』を演じていたのだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その盗撮器、盗聴器により彼の動向を見ていたのは
世界最高の探偵と呼ばれるLと
青年の実の父親である、夜神総一郎。
「ま、まさか真面目な息子があんな事を・・・」
さすがに動揺は隠せない。自分の息子が殺人犯だと疑われ、
部屋中に盗撮器、盗聴器の設置を承諾したがこんな事実が見られるとは。
「夜神さん、17歳ならこんなものです。
私もそうでしたから」
落ち込む夜神総一郎に、慰めの言葉をかける。
しかし心の中ではまったく違う事を考えていた。
(夜神月、お前は余りにも幼稚すぎる。派手なだけの必殺技名。
神を名乗るキャラクターの増殖。お互いが負けない決闘ごっこ。
私が描くキラ像、『幼稚で負けず嫌い』に近い。
キラである確立6%といったところか・・・)
独特な座り方をし、モニターを見つめながら世界最高の探偵は思考にふける。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・青年、夜神 月は、フィギュアを片付けながら
自分の策をより完璧なものへと組み立てていく。
(見ていたか?L。まさかキラがこんな遊びをしているとは思わないだろう)
(そして僕が人形ごっこをしている間に見つけた盗撮器の死角。
机の上なら僕自身がカメラの死角になる。
上からのカメラは何か筒状の物で隠せばいいだろう。
その筒状の中に小型テレビを仕掛ければ・・・!!)
ついに見つけた盗撮器の死角。
夜神月の『ヤムチャ対タカヤ』はこうして幕を閉じ、
キラ対L物語はさらに加速度を増していくのだった・・・
ヤムチャ対タカヤ・・・完
「はくしょん!!」
「ん?誰かオレの噂でもしてんのか。
まぁ、どうせおれ達の闘いに巻き込まれて死んだ参加者が、天国で妄想でもしてるのだろう」
ヤムチャはそう思いながら、頭を目の前の闘いに切り替えた。
一方タカヤ・ルシフェルは、凍った太陽と共に火星に叩きつけられていた。
「ががが・・・ごごごぇ・・・ごごばぁだじじじがががが・・・
(おのれ、高貴なる神と呼ばれたこの私が・・・こんな所でピリオドを迎えようとは・・・」
そんなタカヤ・ルシフェルの目の前に、他の十二タカヤの面々が現れた。
「お、お前達・・・」
タカヤ・ルシフェルは、仲間達を見つめる。
「そ、そうだ。我々の辞書に終幕という文字はない!!
あるのは、栄華なる輝きだけだぁ!!!」
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェル
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
前の作者のほうがよかったな
6行目、7行目、8行目
志村君→志村さん
前のSSではさん付けで呼んでました。
「私も自己紹介をしたあと、まずセナについて聞いたが、誰も知らなかった。
次に私を襲った人物について尋ねられたが、ヤムチャさんの外見を告げておいた。
ヤムチャさんは私が殺人者であることを知る、唯一の生存者。何としても消さなければ。
それから、越前リョーマという人物について尋ねられた。
恐らく、志村さんの探していた男の子のことだろう。
しかし、知らないと答えておいた。」
前SSで「越前君」という名前を新八から聞いていました。こちらもすみません。
CGI氏、お手数おかけします。
新しい仲間の加入に皆喜んではいたが、一人だけ浮かない顔をしていた男がいた。
他でもない、両津である。
彼が姉崎まもりの正体に気付き始めたのはまもりがマーダーの外見を告げた時だ。
「私を襲った男は顔にキズがあり、山吹色の胴着を着た背の高い人でした。」
このまもりの言葉を聞き、真っ先に思いついた男がヤムチャだった。全ての点が合致している。
それと同時に、乾と会ったとき、ヤムチャを襲った人物についてこう聞かされていたことを思い出した。
「ヤムチャさんは善人面をした人間に騙まし討ちを喰らい、毒を飲まされ、死に掛かっているところを俺とサクラさんが見つけました―――と。」
まず、乾の発言で引っかかるのは“善良面をした人間”と、言う所だ。
これを聞き、先入観からわしは男だとばかり思っていたが、人間。としか言っていない。
それに、あのヤムチャという男、最初に話した時はプライドの欠片も感じられなかったが、それには何か原因があるのではないか―――
例えば、わしがはじめてベーゴマでマトイに負けたときは生きてきた中でも1、2を争うほどの屈辱を感じた。
それは単に負けた。と、言うことよりも“女”に負けたことの方が大きかったのかもしれない。
ヤムチャが“人間”と、言ったのも、格闘技を極めた男が女に負けたのが恥ずかしかったからではないだろうか?
今となってはヤムチャは臆病で、器量の狭い人間に感じるが、人を殺すような男には見えない。もし、そうだとしたら、乾やサクラなど当の昔に殺されているだろう。
しかし、彼女を責めたところで本音を出すわけはないし、追い詰めたらどういう行動に出るかもわからん。そういえば、支給品が何かも聞いてなかったな…
と、そう思った両津はまもりが少し離れているのを確認すると、ダイを呼び出し、向こうを探してみる。と、星矢に告げ、近くの木造小屋の中に入った。
「さて、ダイよ。これはまだ誰にも言ってない事なんだがな…」
ふむふむと、ダイは真剣な目で聞いている。
「さっき仲間になったあのまもりとか言う女…わしは彼女がゲームに乗っている可能性のある人物だと思う。」
エェーーーッ。と、大声を出しそうになったが、両津が寸前で口を塞ぐ。
「黙ってろ。まだ可能性の域を出ん問題だ。そうと決まったわけじゃぁない」
その後、両津は出来るだけ早く、分かり易く自分の推理をダイに伝えた。流石の勇者も精悍な顔つきをしている。
「最後に一つだけ教えてよ。何でこのことをオレにだけ話すの?」
「麗子や星矢はフェミニストだ。もしもの時、頼りになるのはお前しかおらんのだ。」
そう言われ、少し得意になったダイだったが、次の一言で
「両津さん。フェミニストって何?」
と、答えたのにはまだ子供だな。と感じるところがある。
「フェミニストっていうのはだな。簡単に言えば、たとえ相手が悪い奴でも、それが女だったら戦えない奴のことだ。」
「そうなんだ。で、僕は何をすればいいの?」ぽん、と手を叩き、ダイは頷く。
「とりあえず、彼女の監視だ。
例えば、食糧を取ってきて、調理することになった時、毒を盛られる可能性がある。
みんなが寝ているところへ爆弾を放り込まれる危険がある。
しかし、何せここまで生き残ってきたくらいだからな。なかなか尻尾は出さんと思う。
わしが目を付けていれば彼女も警戒するだろうが、子供のお前がやるとなると、少しは油断するかもしれない。」
両津の本心は、本当は子供にこんなことをさせておける筈がない。と、思っているのだが、ダイを“男”として認めたからこその決断だった。
「両ちゃーん。ダイちゃーん。どこにいるの〜?」
麗子の声だ。そういえば小屋に入って結構時間が経ったな。心配してくれているのか、それともリョーマが見つかったのか?
「そろそろ行くか。頼んだぞ。勇者よ!」
「任せてよ!」
【京都府 京都市南部/深夜】
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:中度の疲労。殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)。 右肩の軽い脱臼。不退転の決意。
[装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
[道具]:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
[思考]:1、両津達4人に着いていく。大量殺戮のチャンスを狙う。
2、殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない。
3、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
4、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
5、セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う
【リョーマ捜索隊】
共通思考1・仲間が死んでも泣かない。
2・出来る限り別行動はとらない。
3・リョーマを探す
4・ハーデスに死者全員を生き返らせさせる
【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康 額に軽い傷
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式(一食分の食料、水を消費)
【思考】1・姉崎まもりを警戒
2・鵺野先生が心配(一刻も早く四国に向かいたい)
3・仲間を増やす
4・三日目の朝には全員で兵庫に。だめなら琵琶湖に集合する。
5・主催者を倒す。
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】中度の疲労(若干行動に支障あり)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料、水を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・リョーマが心配
2・藍染の計画を阻止
3・主催者を倒す。
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】出刃包丁
【道具】荷物一式(2食分消費)、トランシーバー
【思考】1・姉崎まもりの監視
2・四国の死守(一刻も早く四国へ向かいたい)
3・公主を守る
4・ポップを探す
5・主催者を倒す
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】ペガサスの聖衣@聖闘士星矢、食料を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・弱者を助ける
2・藍染の計画の阻止
3・藍染を倒す
4・主催者を倒す
十二タカヤ、それぞれの力がタカヤ・ルシフェルの元へと集まる。
それは、タカヤ・ルシフェルΩとして覚醒した。
神をも超越したタカヤが、地に降り立つ。
周りから溢れるオーラだけで、半径500メートルは宇宙空間と化す。
(ぐっ、なんて野郎だ…やばい、やばすぎる…)
驚愕するヤムチャを尻目にタカヤは言い放つ。
「はっきり言おう。
今の、オレのバトルフォースは、0の数が20をゆうに超えているだろう
だが安心しろ、その内の1%しか使わん」
しかし、ヤムチャは笑んだ。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
目の前に佇む同年代の少年を見据え、大きく吸い込んだ息を吐き出した。
高鳴る心臓とは裏腹に、頭の中は恐ろしいほどクールだ。
冷静に動く頭の中を、全力で稼動させ分析する。
先ほどの発砲を思い出し、自分の狙いと実際の着弾位置の誤差を修正。
その上で、自分の銃の腕を推定、この少年の動き全て差し引いて計算。
多く見積もって、当たる確立は3%といった所だろう。
残弾は29発。全弾撃ち尽くして一発当たる計算だ。
もちろん、生きている間に撃ち尽くせればの話だが。
とにかく動け。ジッとしていてはダメだ、
動き回れば鵺野先生のいる場所からコイツを遠ざけることができるし。
動き回ればより広い範囲に、危険を知らせる事が出来る。
何より動かなければ、死ぬ。
先手を取って、全力で乾は駆けだす。
目の前のナルトとは逆方向に。
「どうしたんだってばよッ! オレを殺すんじゃねぇのかよッ!」
追ってくる少年の動きは野生の獣のように早い。
自分と少年の機動力には雲泥の差がある。
いやそれは機動力に限った話ではない。
戦闘経験、格闘能力どれをとっても勝ち目などない。
懐に入り込まれたら、それで終わる。
走りながら、後方から迫り来る少年めがけ引き金を引く。
一発、二発。銃声が夜に響く。
少年は獣の機敏さでその狙撃を回避するが、それでいい。
詰められようとしていた間合いが、先ほどの回避行動により再度開いた。
勝機を見出すためにはこの距離を維持するほかない。
逃げる乾に追うナルト。少年二人、夜の追いかけっこが始まった。
「悪いが説明している時間はないんだ、これを読んでくれないか。大体の事情はわかる」
現れた鵺野と言う男は、そう言って手帳をコチラに手渡すと、こちらに脇目も振らず駆け出し始めた。
それを追い駆けながら片腕で手帳を開き、月明かりを頼りにその内容に目を通す。
「……………これは真実でござるか?」
「間違いない。とは言い切れないが。そのメモを書いた乾くんは信用にたる少年だ。
彼がわざわざ虚言を残すとは考えにくい、手帳も彼の物だ。少なくとも俺は事実だと思っている」
力強く彼はそう断言するが、その内容は、少なくとも自分にはにわかに信じがたいものだった。
手渡されたメモの中にはうずまきナルトは殺人者とある。
これが真実ならば、状況から蛭魔を殺した下手人もナルトである可能性が高い。
否。それだけではない、メモによればナルトは少なくとも数名は殺しているらしい。ともすれば………。
己の中で、ナルトを探す理由が変わり始めているのがわかった。
「メモを残せたという事は乾くんはまだ生きているはずだ、必ず助ける。必ず……!」
必死で駆ける彼の目は、それしか見えていない。
手帳を閉じ、青年に返す。
「状況は理解できたでござる。ならば手遅れにならぬよう急ぐでござるよ」
大切なものを守ろうとするその目に、僅かな羨望と嫉妬を抱きながら。
剣客は青年に続き、少年を捜し神速の速さで駆け抜けた。
「さて、追い詰めたってばよ」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………!」
何度付いて離れてを繰り返し、どれだけ走っただろう。
酷く荒れる大海を背に、追いかけっこは終焉を迎えようとしていた。
この少年の能力がコチラの推測を超えていたのか。
自分に最悪なまでに狙撃の才能が無かったのか。
走りながらの狙撃で手元がぶれたのか。
それとも他に原因でもあるのか。
原因はどうでもいい。
結局、銃弾は一発も少年を捕える事は出来なかった。
「鵺野先生を何処にやったんだってばよ?
それに、さくらちゃんはどこに向かったんだってばよ?
なあ。教えてくれよ、乾」
少年の笑みを顔面に張りつけ、敵がジリジリと距離を詰める。
後方には遠く海と闇が広がり、逃げ場は無い。
残弾はシリンダに込めた6発のみ。
撃ったところで銃弾はあたらない。
追い詰められる。
「黙れ。死んでもお前に話すつもりなんてない」
いや、そうじゃない。銃弾を当てる手段ならある。
だがその方法は勝率の悪い、酷く矛盾した手段だというだけだ。
「ふ〜ん。じゃあ――――――死ね」
少年の気配が変わる。
獲物をいたぶる残虐な気配は消え、冷徹に獲物を駆る獣の気配に変わる。
両手の爪を掲げるように広げ、重心を低く今にも弾けだしそう。
溜めに溜めた瞬発力を、バネのように弾かせ敵が駆ける。
それと同時に、乾も走り始めた。
これまでと違い、逃げるのではなく、敵に向かって。
「は。血迷ったのかってばよッ!」
その行動を愚考だと、少年の顔をした敵が笑う。
それは、全くもってその通りだ。
データテニスを信条とする自分がこんな勝率の悪い賭けにでるとは、自分でも笑ってしまう。
それは単純な方法だ。
距離が広がれば広がるほど、命中率は落ちるのは道理。
ならば、銃弾を確実に当てたいのならば、近づいて撃てばいいだけの話だ。
それこそ銃口の触れる距離で引き金を引けば、どんな素人だろうと、どれほど照準の壊れた銃でも、狙いを外すことなどありえないだろう。
だが、少年に近づけば死ぬ。
それは変えようもない事実だ。
酷い矛盾だ。相手を殺すためには、自分は死ななければならない。
そこまでしても、相手を仕留めれる確立は9%。
とても命を賭けるに見合わない選択肢だが、他の選択肢は残されていなかった。
「うおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
叫びを上げ夢中で引き金を引く。
同時に撃ち出せた銃弾は4発。
狙いに気付いた敵も弾丸を回避しようと身を翻す。
半分の弾丸は外れた。
だが、半分の弾丸は、今まで掠りもしなかった敵を捕えた。
一発は左脇腹を掠め。
一発は右肩に命中した。
だが致命傷ではない。
敵の疾走を止めるにも至らない。
このまま敵は自分を捕え、三秒後に自分は死ぬ。
それが乾貞治の結末だ。
だが、この結果はむしろ出来すぎだといえるだろう。
散々走り回ったし、戦闘音も響かせた。
ここいら一帯に危険を知らせる程度はできただろう。
それに、化物相手に手傷を負わせただけでも上出来すぎる結果だ。
乾貞治に出来るのはこれが限界。
――――それでも。
それでも、これ以上の成果を望むのならば。
「――――――――――鬼の手よ」
それは、乾貞治以外の力が介入するしかないのだろう。
「飛天御剣流―――――――」
「今こそその力を―――――」
響く声はナルトの後方から。
もう一つは二人の上空から。
広範囲に銃声と戦闘音を響かせた結果が彼等に位置を知らしめたのだ。
ならばこの結果は、彼が呼び込んだ奇跡なのだろう。
ナルトは響く声に構わず乾にトドメの一撃を放つ。
「―――――――――龍槌閃!!」
「――――――――――示せ!!」
夜の闇を切り裂きながら、異型の手が伸びる。
ナルトの放った一撃は、この異型の掌に受け止められた。
それと同時に上よりの襲撃。鉄槌が振り下ろされる。
ナルトは咄嗟に大きく後方に身を引き、その一撃をかわしきる。
着地した剣心はナルトに対峙する。
九尾は尋ね人と会いたくない人物が同時に現れた事に、面倒な事になったと内心で舌を打つ。
その内の会いたくない人物は鋭くコチラを睨み、一歩前に踏み出る。
「ナルト殿。蛭魔殿を殺したのはそなたでござるか?」
十字傷の剣客は単刀直入に核心に触れる。
「そんなわけねぇってばよ。俺が蛭魔の兄ちゃん殺す訳ねぇじゃんかさ」
「ならば蛭魔殿は誰に殺され、共にいたナルト殿は何故無事なのでござるか?
それに、今。乾殿を手にかけようとしたのは何故でござるか?」
はぐらかそうとするも、剣客は間も空けずに言葉を続ける。
既に半ば確信があるのか、その瞳は既に敵対者のそれだ。
どうやら、誤魔化しは通じそうにない。
「………あ〜あ。面倒くせぇなあもう。
ああそうだよ。俺が蛭魔の兄ちゃん殺したんだってばよ。
で、ならどうするんだってばよ?」
猫かぶりを止めた狐は本性の面を見せる。
その豹変に、剣客は慌てるでも動じるでもなく。
「どうもこうもござらんよ。ただここで退場願うのみでござる」
酷く冷徹な声で告げ。正眼に構えをとった。
「鵺野先生…………どうして」
立ち尽くす乾は、現れた人物を呆然と見つめ呟きを漏らした。
「バカヤロウ! 一人で無茶しやがって!!
子供を置いて逃げられるわけがないだろうが!」
怒声を上げ、鵺野は乾を責める。
本をただせばこの事態は、玉藻の死に自分が取り乱したのが原因だ。
そんな自分に彼を責める権利はない。
けれど、言わずにはいられない。
「どうして! どうして、こんな命を粗末にするような………」
これ以上、誰かを失うのはイヤだった。
不甲斐ない自分への怒り。
守れなかった誰かへの悲しみ。
自分のために命を賭けた乾のへの思い。
様々な思いが詰まり言葉にならない。
思わず涙が滲む。
「………すいませんでした」
その涙を見つめ、彼の思いを理解したのか、素直に乾は頭を下げた。
「これは返す。越前君には自分で渡せ」
少しばつが悪そうに涙を拭きながら、押し付けるように手帳を乾に返した。
乾はそれを受け取り、小さく、はい、とだけ答えた。
「では、ここは拙者が、二人とも下がっているでござるよ」
剣心は二人を護るように踏み出し鞘を構える。
「いや、そういう訳にはいかん。憑き物落としなら、俺の仕事だ」
一見し少年の状況を看破したのか。
譲らず鵺野も前に進み、鬼を封じし異形の左手を差し出す。
「俺も、戦います」
「ダメだ。君はどこかに非難していろ」
前に出ようとする乾を鵺野は片手で制す。
「……でも! オレも何か、」
力になりたいと、強い決意で少年は食い下がる。
「…………では乾殿、拙者の頼みを聞いてくださらんか」
その思いに答えたのは剣客の方だった。
「生憎と、拙者の今の武器はこの鞘のみ、これでは思うように戦えぬでござる。
出来るなら、刀を一振り探して来てくださらぬか?」
そう言って手に持った鞘を乾に見せるように傾ける。
「刀、ですね。わかりました。必ず用意します。………えっと」
「緋村剣心。ただの、流浪人でござるよ」
「わかりました、緋村さん。必ず刀を用意し戻ってきます」
そう強い決意をみせ、乾は走り出した。
剣心は走り去る乾を見つめ、心で詫びる。
乾の決意は引けと言われて引ける程、軽い物ではなかった。
だから、乾を戦場から遠ざけるための、詭弁をうった。
「あ〜あ行っちゃった。まぁいっか。オレが用事あんのはそっちの先生だし」
鵺野を、否。その中の鬼を指差し、ナルトはその顔に似合わない邪悪な笑みを貼り付ける。
「そんじゃま。オレと遊んでくれってばよ!」
青雲剣のあるダム施設を目指して、一目散に乾は駆ける。
先ほどのナルト追いかけっこで随分と走ったが、あの程度の走りこみでバテるほどやわな練習を積んではいない。
これまで走った道順も、現在位置も全て頭の中にデータはある。
そのデータを参照し最短距離を駆け抜ける。
そして、たいした時間もかからず、そこにたどり着いた。
だが、扉を目の前にして僅かに入室を躊躇われた。
その中に、何が待っているか知っているから。
それでも、意を決して重い扉に手をかける。
ドアノブを捻って押せば、思った以上に簡単に戸が開く。
予想もしていたし、直接ナルトから聞いた。
だが、その光景は予想を超える凄惨さだった。
この世の物とは思えぬほどの美しさを誇っていた顔は血に塗れ。
右腕のかけたその体は血溜まりの中に倒れこんでいた。
部屋は一面の朱。厳かな線香の香りは、むせ返るような血の香りに染まっていた。
込み上げる吐き気も涙も、歯を食い縛って飲み込んだ。
手厚く葬ってやりたいのは山々だが、今は他にやるべき事がある。
(すいません、公主さん…………)
心で一言侘びをいれ、部屋の詮索を開始した。
そして、それは程なく発見された。
赤い部屋の中で異彩を放つ青い剣。
宝貝『青雲剣』
一振りで幾重もの刃を生み出し、無数の斬撃で敵を切り裂く剣型宝貝。
これを届けることが出来れば、あの剣客の助けになるはずだ。
拾いあげようと、その剣の柄に触れる。
その瞬間。意識がグラリと歪んだ。
触れただけで、生気が吸い取られる。
まるで、命そのものが奪われているかのよう。
これまで走り通しの体は非常に重い。
その上に、数キロを全力疾走でもしたかのような疲労感が加わる。
意識が遠く退いて行く。
それも当然、本来宝貝は仙道以外には扱えぬ宝具。
全国級とは言え乾の能力は中学生のそれだ。
まして人外には程遠い。
いくらゲーム下においてその効果が軽減されようとも、それは彼が容易く扱える代物ではない。
だが、それがどうした。
離れた場所には、自分を待ち戦っている人がいる。
そこには、守らねばならない仲間がいる。
そして目の前には、自分を守ろうと命を賭した人がいる。
この程度の問題がなんだ。
気力を振り絞れ。
意識を奮い立たせろ。
気を失っている暇などないのだ。
遠退く意識を、気合一つで無理矢理引き戻す。
呼吸を整える。
少しは意識がハッキリとしてきた。
強くその柄を握りなおす。
「…………よし」
後は、これを届けるだけだ。
気合を入れなおし、その赤い部屋を後にする。
その前に、最後に横たわる彼女を一瞥し。
「弔いは必ず。それまで待っていてください」
小さな約束を残し、乾は仲間の下へと走り始めた。
「オラ、オラ、オラ、オラ! どうしたんだってばよ!」
ナルトを相手に、二人は苦戦を強いられていた。
下忍とは言え、ナルトは木ノ葉の忍び、その体術は一流のそれだ。
素早い動きに翻弄され、その実態を捕える事が出来ない。
だが。苦戦の理由はそれだけではない。
一方は弱きを守る不殺の流浪人。
一方は生徒を守る霊能力教師。
この二人にとって、まだ幼さの残るナルトは最も相手にしづらい難敵と言えた。
攻撃には無意識に躊躇いが掛かり、それ故に苦戦を強いられている。
「取り付いた妖怪よ。今すぐその子に体を返し成仏しろ!
これ以上、その子供の手を汚させるな!」
鵺野は鬼の手で直接、ナルトの内の九尾を狙う。
先ほどから行う攻撃は鬼の手による霊体攻撃のみ、ナルト自身を傷つける攻撃は一切行っていない。
彼は霊能力により九尾の存在を看破したからこそ、その犠牲者であるナルトを傷つけることが出来ずにいた。
彼は生徒を守る。彼は弱きを守る。彼は子供を守る。
その対象には、出合ったばかりのナルトも含まれていた。
「は。くだらねぇ、くだらねぇ、くだらねぇってばよ。
さっき殺した姉ちゃんも、アンタと同じような事を言って死んでったってばよ!」
鵺野の攻撃は左腕のみ。
それさえわかっていれば、避ける事など容易い。
ギリギリまで引き付けて攻撃を避け、空中で高速の回転蹴りを放つ。
一撃は胸部に命中し、鵺野の体が後方に弾かれる。
そのまま鵺野を蹴った勢いで剣心めがけ突撃する。
弾丸のような突撃を、剣心は鞘の腹で受ける。
受けた鞘が軋む。これまで酷使して来たツケがここにきで出始めた。
剣心が先ほど乾に告げた要求は、戦いの場から遠ざける詭弁ではあったが、本音でもあった。
この鞘は、もう長くは持ちそうにない。
それに、鉄拵えとは言え所詮は鞘。
刀身も無ければ握りも無い。
竹光でも竹刀でも、刀を手にしていれば遅れを取る事はない。
突撃して来たナルトを弾き返した剣心は鞘を振り地面を叩く。
その衝撃で飛礫が飛ぶ。
それを目くらましに、懐へと肉薄。
そのまま飛翔するように跳躍する。
「龍翔閃――――――!」
上体を反らし、紙一重で下方より飛翔する竜を牙をかわす。
掠めた牙が髪の毛数本を風に舞わせた。
体勢が僅かに崩れる、その後ろから先ほど吹き飛ばした鵺野が迫っていた。
鵺野は変わらず鬼の手での攻撃を繰り出す。
不意を突かれようとも、それさえわかっていれば問題はない。
ナルトはアッサリと、その左手をかわす。
だがそこで、かわしたはずの左手がありえない動きを見せた。
鬼の手は霊体、形など変幻自在に変えられる。
その姿はもはや手ではない、変幻自在の鞭のよう。
体勢の崩れているナルトはそれをかわせない。
鬼の手は伸びる蔦のように絡みつき、ナルトの体を拘束してゆく。
「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音」
拘束したナルトに向かい、そのまま鬼の手を触媒として、その中に干渉してゆく。
鵺野は自らの意識を少年の中に収縮させてゆく。
――――――そこにあったのは巨大な檻だった。
少年はその隅で、すべてから逃げるように耳を塞ぎ、小さく眠っていた。
「ほう。よくここまできたな」
視界から少年を遮るように、巨大な九つの尾を持つ狐が姿を現す。
圧倒的な威圧感。その妖力は自分の知る最強の妖狐、玉藻を大きく上回っている。
ともすれば、開放された覇鬼に匹敵するほどの妖力だ。
「九尾の妖狐よ。今すぐこの体より出て行け」
九尾を指差し、威圧に負けず告げる。
「ワシとて好き好んでこの身を使っておるわけではない。
出て行きたいのは山々だが、生憎囚われの身でな。
檻の外にはでられたが、この小僧の体より外にでるのはかなわん。
それに、この体もこの小僧が勝手に放棄したから、ワシが代わりに使ってやっておるだけだ。
そうだの、どうだ人間。貴様はなかなか使えるようだ。
そんなにこの小僧を救いたいのなら。このワシを外に出して見ぬか?」
ニィと笑い、狐は言う。
確かに自分と覇鬼が全力を尽くせば、この狐をこの体から追い出すことは不可能な話ではないだろう。
だが、この少年からコイツを追い出すということはどういうことか。
この狐を、表に出すとはどういうことか。
それは、表に出した瞬間、自由になったこの狐に皆殺しにされるということだ。
俺も、仲間も、この少年も。瞬時に抹殺される。
だから、できない。
「駄目だ。貴様のような邪悪な妖怪を、自由にするわけには行かない」
「ふん。ならば、貴様に用はない。早々に立ち去れ」
狐の面に笑顔が消えた。
そして前足を一凪。それだけで突風が吹いた。
その突風は入り込んできた干渉者を無理矢理追い出そうとしている。
けれど、まだここを去る訳には行かない。
この狐の支配を解く方法はまだある。
先ほど、この狐はこの少年が体を放棄したと言った。
なら、この少年が目覚め、破棄した意思を取り戻せば、この体の占有権は少年に返るはずだ。
「起きろ少年! 目を覚ますんだ!」
吹き飛ばされそうな強風の中、必死に喉を張り上げ少年に呼びかける。
「無駄だ。この小僧は起きぬさ」
九本の尾が生えた狐は言う。
だが、そんな言葉は受け入れられない。
「このままでいいのか! このままこんな妖怪に良い様にされて良いのか!」
突風に進めず、自分は叫ぶことしか出来ない。
それでも必死に、思いを叫ぶのを止めない。
少年はその声を拒むように身を竦ませ耳を塞ぎ込んだままだ。
「逃げるな! 目を閉じるな、耳を塞ぐな、戦うんだ!
そんな狐に負けるな、戦え。戦え!」
必死で呼びかける声に、少年がピクリと反応を見せた。
だが、
「――――――――無駄だ」
声を遮る様に狐が割り込み、その眼光がコチラを射抜く。
中てられる様な威圧感に、意識が無理矢理外にはじき出されて、
「…………グッ」
意識が現実に戻る。
少年を縛るものは想像以上の強大さだった。
自分では、少年を救うことはできなかった。
その落胆に、思わず鬼の手の拘束が緩む。
その隙を逃さずナルトは跳躍し、拘束より脱する。
そして落下の勢いのまま、降り注ぐ流星のような蹴りを見舞う。
不意をつかれた鵺野はその蹴りに反応することは出来ない。
「鵺野殿!」
駆けつけた剣客が流星の軌道に身をねじ込ませ、降り落ちる蹴りを防ぐ。
だが、その一撃により、ついに鞘が砕けた。
破片が宙を舞う。これで剣客は戦う力を失った。
着地した獣はこの機を逃さんと、剣客めがけ追撃に駆ける。
それとほぼ。タイミングを同じくして。
「緋村さん―――――!」
青い剣が空中を舞った。
剣心は身を引きながら、空中で身体を捻り刀を受け取る。
同時にその回転の遠心力を利用し、独楽のように回る体。
放つ一撃。
カウンター気味に放たれたその剣を、ナルトは凄まじいまでの反射神経で回避した、かに見えた。
だが迫り来る斬撃は一つでは無かった。
何の魔術か、剣一振りに現れた斬撃は三つ。
現れた斬撃を受け、ナルトの体が大きく吹き飛び地面に投げ出された。
対照的に地に着地した、剣心の足下が僅かにふらつく。
手元に握った、怪しく光る青雲剣を見つめる。
(……………妖刀の類か)
剣に力を奪われてゆく。
凄まじい剣だが、余り多用できる代物ではないようだ。
「痛ってえじゃねえか、テェメ―――――――!」
ナルトは跳ねるように起き上がった。
初めてまともな一撃を喰らい、ナルトは完全に頭に血を上らせている。
ナルトは真正面から剣心めがけ突撃する。
それに向けて、剣心は飛天御剣流、最大級の絶技を見舞う。
「―――――――――――九頭龍閃」
飛天御剣流の神速を最大に解放。
同時九つの斬撃を展開する。
壱―――――唐竹。
弐―――――袈裟。
参―――――右薙ぎ。
肆―――――右斬上げ。
伍―――――逆風。
陸―――――左斬上げ。
漆―――――左薙ぎ。
捌―――――逆袈裟。
玖―――――刺突。
―――――否。九つではない。
青雲剣の力が掛け合わさり、斬撃は三倍。
その斬撃の数――――――二十七。
究極とも言える乱撃術を防御し切る事など、いかな武士にも不可能。
さらに、神速の突撃術は忍びの速度を持ってしても、回避は不可能。
防御も回避も不可能な絶技を前に、ナルトは身をカメの様に縮め完全防御の体勢に入る。
だが、迫り来る斬撃の嵐に成す術など無い。
身を切り刻まれ、大きくその体を後方に吹き飛ばされた。
吹き飛ぶその様に反撃の余力は無い。
後は追撃を重ね、トドメの一撃を放つのみ。
それで終わり。
だが、自分は流浪人――――人斬りなどでは決してない。
たとえ相手が悪であろうと、不殺を貫くはずだ。
そんな、一瞬の迷いが脳裏をよぎった。
それが最後の一手に僅かな隙を生んだ。
吹き飛ぶ九尾の目が大きく見開かれる。
「頭に乗るな―――――小僧どもがッ!!」
その隙にクルリと空中で体勢を立て直し、両手両足四本の足で着地する。
咆えるその姿から少年の面影は消えた。
そこにいたのは少年の殻を被った獣だ。
錯覚か、その後方には陽炎のような尾が二本揺れている。
もはやチャクラ温存などとは言ってはいられない事を九尾はイヤというほど理解した。
もう手加減はなしだ。術を用いて叩き潰す。
高速で組まれる印はナルトの十八番。
「――――多重影分身の術」
ナルトの姿を模した影分身が埋め尽くす海のように現れる。
そして、ずらずらと隊列を組み、三人の周囲を取り囲んだ。
その中で、鵺野は乾を庇うように鬼の手を構える。
剣心は一人慌てるでもなく、ナルトとの出会いの場面を思い出す。
「なるほど、これが貴様の妖術でござるか。
ならば分身を作れる化物とは貴様の事でござったか」
もはや塵ほどだった疑う余地は、風に吹かれ完全に消え去った。
「ふん。それがどうした。そんな事を今さら知ったところでなんになる。
ここで死ぬ貴様がなぁ――――――――!!」
号令一下。
数え切れない程の敵が一斉に襲いかかる。
迫り来る同じ顔を見つめ、剣心は青雲剣を構え。
文字通り――――――――――、一閃。
「…………な、に?」
一振りで十を超える分身が煙と化した。
その一撃に、狐のみならず、乾も、それを庇っていた鵺野ですら驚愕の表情を浮かべる。
だが、元より飛天御剣流は一対多を前提とした神速剣。
この程度は驚くに値しない。
剣心からすれば迫り来る影分身など、ただ襲い掛かるだけの木偶に等しい。
幕末に経験した新撰組の集団戦術に遠く及ばない。
ならば、このような数だけの有象無象に、飛天御剣流が遅れを取ろう筈がない。
神速の剣技に、分身達は次々となぎ払われ煙と化して行く。
「妖術はこれで終わりでござるか?
ならば、早々に退場願うでござるよ」
神業とも言える剣撃に分身は全滅。
恐ろしいほど冷たい瞳で、残った本体に剣の切っ先を向ける。
その視線に射抜かれた九尾は悔しげに歯噛みする。
完全な計算違いだ。
剣を持った剣客とは、こまで強いものなのか?
否。剣を持ったことだけが原因ではない。
この身に対する躊躇いも、もはや薄れつつある。
この剣客の中で、何かが変わりつつある。
このままではマズい、これ以上調子に乗られる前に確実にしとめる。
九尾はナルトの持ちうる最強の技を繰り出そうと片腕を掲げる。
だがそこに、
「――――――随分と派手にやってるじゃねえか」
招かれざる客が登場した。
乾の奮闘に呼び込まれたのは鵺野と剣心だけではなかった。
新たに呼び込まれた客は二人。
老け顔の、心に強き正義を秘めた幼きリーダー。
全身に包帯を巻き付けた紅蓮の人斬り。
「志々雄……………!!」
「よう抜刀斎、また会ったな」
志々雄は楽しげに、宿敵との再会を口を歪ませ歓迎する。
対する剣心の心中に喜びなど当然無く、沸いてくるのは嫌悪のみ。
「…………………抜刀斎?」
その名に覚えがあるのか、志々雄の横にいた少年が呟きを上げた。
「そうだたけし。あの十字傷の男が、人斬り抜刀斎だ」
包帯の巻きの指が指した男を、目を見開いて見つめる。
「アレが、……………キン肉マンの」
呆然と、熱にうなされるようにたけしが呟く。
リーダー保育園91期生、たけし。
最もリーダー的だったものに贈呈されるリーダーバッジを持つ。正真正銘の正義のリーダーだ。
リーダーは悪を討つ。
彼が本当にキン肉マンを殺した殺人者ならば、ここで倒すのリーダーとして当然の勤めといえる。
それに、いくら正義のリーダーとはいえ、友を討たれた憎悪は心の中にたしかにある。
それと同時に疑念もある。
本当に彼は悪なのか?
なにか、やむおえない事情でもあったのではないか?
そもそも、彼は本当に人殺しなのか?
七歳児には余りにも重すぎる命題に、迷いを繰り返す脳は加熱する。
憎悪と疑念で心が揺れてる。
そこに唐突に、包帯巻きの手が少年の肩にかかる。
発汗作用を失った灼熱の腕は、過熱した脳に拍車をかけるようだ。
そのまま悪魔は少年の耳に顔を寄せ、他に聞こえない声で囁く。
「なあ、仇を討とうぜたけし。それが無念に死んだ友を弔う唯一の方法ってもんだ」
悪魔の囁きが少年に響く。
心が更に激しく揺れ動く。
加熱した脳は沸騰寸前だ。
焦点のぼやけた瞳は仇へとピントが合わない。
「志々雄。貴様この少年に何を吹き込んだ」
「なに。オマエが人斬りだっていう”真実”さ」
「貴様……………ッ!」
目の前の剣客は猛る。
だが人殺しであると言う、その”真実”を否定はしていない。
激しく揺れる心に。それが、最後の決め手となった。
たけしの揺れる心が、カチリと固定される。
「……………わかったさぁ志々雄、オレがキン肉マンの仇を討つさぁ!」
たけしの咆哮。
彼は剣心を討つべき悪と見なした。
怒りと敵意が剣心に向け注がれる。
誰もの視線が怒るたけしに集中していた。
その隙に、志々雄はナルトへと近づいてゆく。
それに気付き、ナルトは志々雄を訝しげに見つめる。
その視線も意に介さず、志々雄は悠々と口を開いた。
「よう。ここは一つ共闘といかねえか?」
「共闘だと?」
「ああ、目的は同じだろ。
だったら手を組んだほうが効率がいいってもんだろう?」
目の前の木乃伊が囁く。
このタイミングでその話を持ちかけるとは、この男なかなかにキレる。
この提案、断れば最悪、五対一。
それは流石にマズい。
逆に受ければ三対三。
そうなれば数の上では不利は無くなる。
ならば、断るという選択肢は用意されていない。
元より乗るしかない悪魔の提案。
「よかろう。こやつ等を殺すまで貴様等と手を組もう」
その答えに志々雄は包帯の隙間から見える口元を吊り上げる。
お膳立ては上手くいった。
勝機は逃すなと、休息を切り上げてまで来た甲斐があると言うものだ。
これで完全に抜刀斎抹殺の舞台は整った。
たけしは抜刀斎を狙う。
邪魔な二人はあのガキが相手をしてくれるだろう。
抜刀斎も子供相手では躊躇いもでよう。
躊躇いから、一瞬でも隙を見せたなら。その瞬間、瞬きの間もなく仕留める。
それが 出来る自信も実力も己にはある。
その後、残った二人を殺し。ガキを殺し。たけしを殺す。
まあ、たけしは宗次郎のように使えるようなら、生かしてやってもいいが。
この場の全員を殺し――――――俺が最強だ。
「これで三対三だ。おあつらえ向きに、数は揃ったじゃねえか」
並ぶは役者は三対。
年端も行かぬ少年が二人。
幕末を生きし剣客が二人。
内に魔を潜めし者が二人。
役者は揃い、舞台は整う。
舞台を整えた名優は唄うように開幕を告げる。
「さあ、殺し合いと――――――洒落込もうか」
【香川県/海沿い/黎明】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷、疲労、精神中度の不安定
【装備】青雲剣@封神演義
【道具】荷物一式
【思考】1、少年に対処。志々雄とナルトを倒す
2、姉崎まもりを護る(神谷薫を殺害した存在を屠る)
3、小早川瀬那を護る(襲撃者は屠る)
4、力なき弱き人々を護る(殺人者は屠る)
5、人は斬らない(敵は屠る)
6、抜刀斎になったことでかなり自己嫌悪
7、早急に瀬那の元へ帰還
(括弧内は、抜刀斎としての思考ですが、今はそれほど強制力はありません)
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】やや疲労 ダメージ小
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】目の前の三人に対処、ナルトを救う、乾を守る
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】重度の疲労
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾2)
【道具】弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】三人に対処
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:全身に軽度の裂傷
[装備]:衝撃貝の仕込まれた篭手(右腕)@ワンピース、飛刀@封神演義
[道具]:荷物一式 三人分(食料、水一日分消費)
[思考]:1:たけしを利用して抜刀斎を殺す。 その後全員殺害。たけしは使えるなら生かす。
2:長時間戦える東北へ向かう。
3:無限刃を手に入れる。
4:少しでも多く参加者が減るように利用する。
5:全員殺し生き残る。
【たけし@世紀末リーダー伝たけし!!】
[状態]:激しい怒り
[装備]:パチンコ@ONE PIECE(鉛星、卵星)、キメラの翼@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料、水一日分消費)
[思考]:1:キン肉マンの仇を討つ(人斬り抜刀斎を倒す)
2:ゴン蔵の仇を殺した犯人を倒す(ただし大体の位置が分かるものの犯人はわかっていない)。
3:主催者を倒す。
4:志々雄について行く。
5:仲間を探す(ボンチュー、マミー、ウォーズ)。
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 重度の疲労 全身に重度の裂傷 右肩負傷 チャクラ消費・中
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、目の前の三人を殺す、鵺野は可能なら利用。不可能なら殺害後捕食。
2、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
3、術者に能力制限を解かせる
4、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、 またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。が、ブチ切れ気味なので九尾の地の口調がでています。
――私の両親は一年前、私の目の前で強盗に殺されました。
その犯人はすぐ警察に捕まったけれど、裁判はどんどん長引いて…その内、冤罪の見解まで出始めてしまった。
憎かった。殺してやりたかった。
私は神様なんて信じない。
もしも神様がいたのなら、私に…私の両親に…あんな仕打ちをするはずがない!
憎しみと絶望感に心を塗り込められ、生きる希望さえ失いかけていた…。
でも、やっぱり神様はいたの。
…ううん、それはただの神様じゃない。私の…ミサにとっての神様。
その憎い犯人は死んだ。悪は裁かれたの。
犯人を裁いてくれたのは、キラ――夜神月。
“感謝”の一言では表せないほどの感情を抱いた。お礼の言葉を伝えたかった。あなたに感謝している人間がここにいるんだよって――ただ、伝えたかったの。
私は手段を選ばずにキラを探して…そして、会った。
それは…運命だったの。
あなたと同じ力を手に入れた事も、そのおかげであなたに出会えた事も。
あなたは私の神様。かっこよくって、私の百倍頭が良くって…こんなに素敵な人は今まで私の人生で一度も会った事なんて無かった!
だから……貴方を愛した。貴方だけに私の能力も心も体も全てを捧げる。
貴方を信じてる。そうよ!ライトは必ず生きてる!Lの推理が当たってるに決まってる!
ライトが…死ぬはずがないんだから。ライトなら、あんな主催者たちの裏をかくのはごく簡単な事――
Lの考察を聞かされて若干の落ち着きと笑みを取り戻したミサ。
『首輪解除の可能性』
普通に考えるなら可能性は限りなくゼロに近い推理である。何せどんな構造かも全くの謎、動力源も謎、主催者いわく『下手に触れば即爆発』。到底不可能に思われる。
しかし弥海砂が心酔し、愛し、絶対視している夜神月とその宿敵Lはおそらく共に世界で一・二を争うであろう頭脳の持ち主である事はよく知っていたし(ミサの中で月>Lは揺るがないが)そんなLの言葉ならば信じられる“重み”がある。
その彼の推理である上、『夜神月の生存』などという甘美な蜜が如き言葉、それはミサの心をとろかすには十分であった。
「あの方が、藍染さんというミサさんのお仲間ですか?」
ライトの生存説を聞くなり淀んで濁っていた瞳に光が戻り、止まっていた思考能力も戻りつつあるミサはこの舞台のどこかで繰り広げられているだろうライトの活躍ぶりに思いをはせ、心を踊らせ、顔をほんのり紅潮させた期待に満ちた表情で立ち尽くしていたが…
Lから掛けられたその問掛けを聞いて、ようやく我に帰ったように視線をLに返す。
「え?……あ…そういやミサ、藍染さんの事…」
「……忘れてしまっていたくらい、夜神君の件がショックだったんですね」
「………しょうがないじゃない…」
藍染の名を聞かされて初めてその仲間の事を思い出したのか、ばつが悪そうに声をか細くするミサ。
視線を向けたLの目が、そしてLの隣にいる高校生ほどの年らしき見知らぬ青年の目が、共にミサ自身の後方に向けられている事を見て、ミサ自身も振り返りそちらに目を向ける。
三人の視線の先、その人物らしき影は遠くからゆっくりとこちらに向かって近付いてくる。
共に行動していたはずのミサが己を置いて一人先を行ったのであろうというのに、その挙動に全く動じていないかのよう、月の光に照らし出されたその彼の顔・体はある種の余裕を感じさせるほど、悠然と歩を進めている。
「…ミサさん。あなたは今まで彼と行動を共にしていたのですか?」
「え?…ううん、藍染さんとは少し前に大阪で会ったばっかりだよ」
「…そうですか。いえ…後で今までの事、詳しく聴かせて下さい」
「…?うん、いいけど…」
突然のLの問いに小首を傾げるミサだが、目前までたどり着きつつある藍染にすぐに視線を戻す。
「やあ、海砂君の知り合いかな?初めまして」
「…初めまして、Lと言います。こっちが小早川君です」
「L?…そうか…君は確か、主催者に『人間界最高の頭脳』と言われていたあの時の…」
「はい」
Lたちの前に立つその初対面の謎の男は笑顔。優しい小学校の教師が似合いそうな、そんな印象の笑顔である。
Lは地面に座り込んだまま見上げるように軽く会釈を返し、紹介されたセナも目線を交して恐る恐るといったような控え目な会釈を返す。
「僕の名前は藍染惣右介。このゲームに抗がう者の一人だよ。二人でいる所を見るに…君達もそうなのだろう?」
「………はい。一刻も早く、ゲームを中断させるつもりです」
自己紹介しあう藍染と名乗る男とLを交互に見やるセナ。Lとミサがどうやら顔見知りであるようなので、その繋がりから来る安堵によるものなのか…
初対面であるにも関わらず、最初に大きな不信や疑いも生まれる無く平和的に仲間が増やせそうな会話の流れになるのを見て、セナは内心ホッとしていた。
…だけど、気のせいか。
セナは二人の会話の最中、ほんの小さな――違和感を感じた。
(…?なんだろう…この違和感。この藍染って人、とても良い人に見えるし…別に変な所も無いし…気のせいかな?)
その疑問は顔には出さず、藍染の方にまた視線を戻すセナ。
「あ、出会ってすぐこんな事頼むのもなんだが…良かったら君達の支給品を見せてくれないかい?」
「支給品…ですか?何故?」
「いや、僕はこのゲームの支給品に興味があってね。見たこともない不思議なアイテムの数々、大変興味深い。脱出や対主催者戦に役立ちそうな物も集めたいしね」
「…………」
相変わらずの一風変わったL独特の座り方。その格好を崩す事無く、藍染の方に顔を向け続ける。Lの第一印象――この藍染と名乗る人物、なにやらうさんくさい。いや、むしろある種の確信をLは抱いていた。
「……ミサさん」
「…ん?何?」
「もしかして藍染さんに……我々の世界の事、キラの事、話しましたか?」
「え?」
「ん?君達の世界の事?ああ、例のデスノートの事かな?」
「「!!!?」」
藍染の何気無い言葉に、Lとミサ、二人の時が止まる。
「あ…(ヤッ…ヤッバァ!確かLはノートの事なんて…)」
「……ミサさん。何故あなたが『デスノート』の事、知っているのですか?」
「あ…それは…その!(ほら来た!Lにノートの事バレちゃった!あ〜ん!なんで藍染さんに口止めしてなかったの私ぃ!)……って、…あれ?」
「……ミサさん?」
「なんで…?(なんで…Lがノートの事、知ってるのよ?あ…もしかしてミサが監禁生活させられてる間に、本部ではそこまで推理が進んでたの?)」
半ばパニック状態で視線をあちらこちらにさ迷わせるミサ。
Lから真っ直ぐに向けられている疑惑の眼差しを受け止める事も出来ず、冷や汗混じりに視線をそらし続ける。
…が、思いもよらなかったLの一言を聞いてその視線が固まる。
(※原作の補足‥Lがデスノートの存在を初めて知るのは火口を逮捕した時。その時までミサは捜査本部別室でずっと一人きりで軟禁状態にあったため、その頃の本部内部の状況や外の出来事をミサは知らない。
火口が逮捕されて軟禁が解かれて外に出てからL死亡までの間、ミサは捜査本部内には立ち入っていないのでデスノートの事を知っているのはライト・Lらの捜査本部の人間だけという事になっている)
「何故ですか?答えて下さい」
「え…と………ら…ライトに…聞いたの!そう!ミサ、ライトに面会に行った時に…ライトが教えてくれたの!」
「…………」
「……(う……少し無理があったかな?どうしよう……ミサの事バレたら、ライトが『キラ』だって事もバレちゃうよぉ…!うぅ…こうなったら………元の世界に帰る前に、ミサが直接Lの口を…)」
「……そうですか。なら知ってて当然ですね」
「……へ?」
ミサ自身、苦し紛れの言い訳だと自覚しつつも『チェックメイト』をひしひしと肌で感じ、もはや自らの手を汚すしかない…そう覚悟しかけた時、意外すぎるほどのあっさりとしたLの言葉。
「「…?」」
二人のやりとりを眺めているセナと藍染の二人は『何が何やら』といった様子で顔を見合わせ、互いに肩をすくめ合う。
「……あ、そうそう、今は藍染さんの話でしたね。藍染さん、こちらの支給品を見せるのは構いませんが…そちら側の物も見せて頂きたい」
「…ん?……ああ。それは構わないよ。後もし君達が何らかの能力の持ち主ならば、それも教えてくれないか?」
とんとん拍子に進む会話。
…だが、ここまで読んだ読者の方にはイマイチ理解出来ない点が他々あるだろう。それは今までは――あえてミサ以外の者の心理描写を極力省いてきたからだ。
では、少し振り返ってみて彼等の心の内部を少しだけ覗いてみよう――
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「…ミサさん。あなたは今まで彼と行動を共にしていたのですか?(だからこそ…今まで生き延びてこられた。いや、そうでなくとも…)」
「え?…ううん、藍染さんとは少し前に大阪で会ったばっかりだよ」
「…そうですか。いえ…後で今までの事、詳しく聴かせて下さい(…やはり。ならば弥はあの同行者にとって『利用価値』があるからか……もしくは、ゲームには乗っていないか。
弥の持つ『情報』…ノートに興味を持っている可能性もある)」
「…?うん、いいけど…」
「やあ、海砂君の知り合いかな?初めまして(彼は…もしや)」
「…初めまして、Lと言います。こっちが小早川君です」
「L?…そうか…君は確か、主催者に『人間界最高の頭脳』と言われていたあの時の(弥君の世界の者ならば、ノートの事を詳しく知っている可能性も高いな…これは思わぬ拾い物だ)」
「はい(……初対面にしては無警戒すぎる。こんな敵か味方か詳しく知る術も無い殺人ゲーム…一つ判断を誤れば、即『死』。
弥にこちらの事を前もって聞いていたのだとしても、少なくとも多少の警戒は無意識にするものだ。だからこそその違和感の無い自然な笑顔もおかしい。危険だ)」
「僕の名前は藍染惣右介。このゲームに抗がう者の一人だよ。二人でいる所を見るに…君達もそうなのだろう?(人間界最高の頭脳とやらも脱出派か。ならば…
あの琵琶湖の件をちらつかせれば、簡単に利用できる。私の計画の円滑な進行の為、せいぜい役に立ってもらおうか)」
「………はい。一刻も早く、ゲームを中断させるつもりです(…二人でいるからゲームに乗っていない?そんなわけ無いだろう。殺人者が手を組む可能性も高いのに。
やはり…藍染惣右介、高い確率で危険人物。…となると、やはり弥から『キラ』の不思議な力、聞き出している可能性は高い。だからこそ弥海砂を『生かして』いる)」
「あ、出会ってすぐこんな事頼むのもなんだが…良かったら君達の支給品を見せてくれないかい?(中断?ただの脱出が目的ではないのか…少しやっかいだな。
まあ、弥君の世界の人間であるなら特に役に立ちそうな能力もあるまい。せいぜいあの『死神の眼』くらいのものか。…もう一人の小早川君は分からないが…まぁ、一応後で聞いてはみよう。
それよりもまずは支給品。興味を引く者があるなら、仲間のふりをして手に入れるか…無理なら、奪う)」
「支給品…ですか?何故?(支給品……もしやデスノートを求めている?……いや、そうとも限らない。
ノート以外にもこの世界には不可思議なアイテムが多い。それらを集めて、優勝する。そして元の世界に持ち帰る。…狙いはそんなところか)
「いや、僕はこのゲームの支給品に興味があってね。見たこともない不思議なアイテムの数々、大変興味深い。脱出や対主催者戦に役立ちそうな物も集めたいしね
(…脱出ではなく中断が目的であるなら、琵琶湖の件は今はまだ出さない方が無難か…私の計画に下手に支障をきたされでもしたらやっかいだ。人間界最高の頭脳とあの主催者に呼ばれる程の人物、過小評価は出来まい。
幸い弥君の目的は『夜神月』なる人物とだけの脱出…だった。彼はもう脱落してしまったがな。しかしこの男の事は聞いていないし、頼まれてもいない。
ならば弥君の口から計画が漏れる事は無いと思うしな。まあ万一漏れても…その時はその時でどうにでもなる)」
「…………(支給品……見せて支障の無い物だけなら見せても構わない。いや、むしろ下手に断りでもして警戒されてもやっかいだ。………しかし、その前に一応念のために例の件を弥に聞いておくか?
万一、予想できる内の最悪のパターン……力づくの行動に移られてからではおそらく確認出来ない。確認はなるべく早めが良い)」
「……ミサさん」
「…ん?何?」
「もしかして藍染さんに……我々の世界の事、キラの事、話しましたか?」
「え?」
「ん?君達の世界の事?ああ、例のデスノートの事かな?」
「「!!!?」」
「あ…」
「……ミサさん。何故あなたが『デスノート』の事、知っているのですか?(なんて事だ………弥海砂は、これで確実に『第二のキラ』…!こんな形で決着が付くとは思わなかった…)」
「あ…それは…その!……って、…あれ?」
「……ミサさん?」
「なんで…?」
「何故ですか?答えて下さい」
「え…と………ら…ライトに…聞いたの!そう!ミサ、ライトに面会に行った時に…ライトが教えてくれたの!」
「…………(それはありえない。お前は『第二のキラ』だとたった今『自白』したんだ。…………だが………今となっては……夜神月は………『キラ』はもう……)」
「……そうですか。なら知ってて当然ですね」
「……へ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
――Lは、もうどうでもよくなってしまっていたのだ。
『夜神月=キラ』に勝つことが完全勝利。だが、その人物は……もう、どこにもいない。もう、一生勝つことは出来ない。
『首輪を解除し、主催者の目を欺いて生存している』
…確かに可能性はゼロではない。
……しかし、限りなくゼロに近い可能性なのだ。
自分の追っていたキラを負かし決着を付けるには…そのゼロに近い可能性に賭けるしかなく、その上まだこの『殺人ゲーム』にも勝たなければいけない。
今の状況、二つを掛け持つわけには行かない。そんな余裕もない。
共に生き残り、元の世界に帰ってから『決着』を付ける。それが理想。
ならば今『第二のキラ』が確定したところで、大した意味はない。
ゼロに近い可能性の『夜神月生存』がもし有り得るなら、自分が脱出出来れば向こうも脱出出来るだろう。それならば、その時に改めて今判明した事実を持ってキラを追い詰めよう。
だから……今は――
「…別に…問題ありません。全く…夜神君の口がこんなに軽いとは思いませんでした。今度会ったら注意しておかなければいけませんね」
「…へ?…あ…アハハッ……そ、そうね…(良かった…バレずに済んだみたい…)」
軽くため息を吐いてミサを見上げるL。
そう、これで良い。もし夜神月が生きているなら、この『ゲーム』に勝てれば、ゲームにもキラにも勝てる。
しかし、死んでいるなら……
もう、一生決着は着かないのだ。弥海砂を第二のキラとして裁いても、それは完全勝利ではない。今はもう、どうでもいい。
…それがLの結論だった。
「…海砂君、もしかしてノートの件、言わない方が良かったのかな?」
「え?あ、別にもういい…です。アハハ…」
藍染に乾いた笑いを返すしかないミサ。藍染もセナも頭にハテナマークを付けたまま、そんなミサを眺めるだけであった。
「…えっと…Lさん?藍染さんに支給品…見せていいんです…よね?」
しばらくずっと三人の様子を伺っていただけで口を開くこと無かったセナが自分のデイパックを開きながら、Lの方に戸惑いがちに言葉を掛ける。
「…あ、はい(…小早川君の支給品は見せても全く支障は無い。問題は…こちら。GIカードにノートの切れ端……見せるわけにはいかない)」
『初心(デパーチャー)』以外の物はセナにも存在はまだ教えていない。その『初心』にしろ、すでに危険だと判断した藍染に見せるのは得策ではない。
L自身の読みでは、藍染は『便利な支給品を集め、それを使って優勝を狙う危険人物』。今は無害を装ってはいるが、その本性は謎なのだ。
キン肉マンが周囲の偵察からまだ帰ってこない現状、もし強奪を狙われ戦いに持ち込まれたら勝ち目無し。
…だがしかし、このまま無警戒を装ったままで流されるままに彼にいろんな情報を与えてしまうのは…あまり好ましくない。
ステルスマーダー――隠れた殺人者は、速やかに排除しなければならない。ならば…!
「……ほう、君の支給品はランタンに簡易テントに…寝袋?他にもいろいろ入っているみたいだが…どうやら戦いには使えそうに無いものばかりのようだね。せいぜいこの小さな十得ナイフくらいか…(外れだな。下らない…)」
「うわ!いいなぁ〜…ミサ、キャンプ結構好きだし」
「……こちらの支給品は、それらだけです。私のは以前、全て奪われてしまいました」
「……え?」
Lのその言葉を聞いて、思わずそう漏らし眉を潜めるセナ。
『初心』の事を口にしなかったL。藍染に全く疑いを持っていないセナにしてみれば、Lの付いた『嘘』の理由が分からなかったのだ。
「…ん?」
「…Lさん、確か『初心(デパーチャー)』があったんじゃあ…」
「………『初心』…?(…隠そうと…した、だと?)」
『初心』なる謎の名を耳にして目を細める藍染。
セナのデイパックから目を離してLの方へ首を向ける。
「………やれやれ、小早川君には口止めしておくべきでしたね。…はい。こちらには後一つだけ、切札とも言えるアイテムがあります。しかし切札は隠していてこその切札。味方とはいえ、なるべくなら存在は隠しておきたかったんです。すみません」
「……そうか。確かに賢明な判断だよ(私を警戒している…?いや、嘘とも思えない。相手は『人間界最高の頭脳』らしいからな。
もし嘘ならば『切札』などとは言わない。大した価値が無いものだと言って、私にはその『初心』とやらを見せないはずだ。私を疑うのなら、狙われてしまう確率をわざわざ上げる発言はしないはず…)」
納得した、というように表情を緩めて笑顔を向ける藍染。
セナのデイパックを藍染の後に覗いていたミサも手を止めキョトンとしたまま二人を見つめている。
「…もし良かったら、見せてもらえないかな?…もう存在は知ってしまったのだし」
「………そうですね、構いませんが……」
「…『が』?」
「……そちらの支給品も、全て見せて頂けますか?それなら条件はおあいこになりますし、互いの『信頼』の証にもなる」
「……ああ、もちろんだよ。切札を見せてもらうんだ、当然の事だね…(…別に構わない。もし『初心』とやらが魅力的なアイテムならば…いずれ私の物とするのだから。私を信頼しきっているならどうとでもできるし、もし疑いを持つようなら…
…奪うだけだ。仮にも人間界最高の頭脳、私に疑いを持つようならば計画に支障をきたさぬよう始末するのみ。L君の私に対する疑いが海砂君や小早川君にも伝わってしまえば、まとめて排除すれば良い。
鏡花水月の実験台など、探せば他にいくらでもいる。私のアイテムを奪おうとしても…私に鏡花水月がある限り、どう相手が頑張っても私の勝ちは揺るがないしな…)」
穏やかな微笑みを浮かべて自身の腰の刀を外す藍染。三人が見守る中、一つ一つ自らの手で見せながらLに手渡していく。
雪走り。斬魄刀。核鉄。
盤古幡と首輪は見せなかった。ミサにも秘密にしている物、わざわざ教える必要は無いと判断したためである。
その後Lは核鉄を指先で摘んで顔付近まで持ち上げ、物珍しげに眺めている。
「……どうだい?信用してもらえたかな?」
「……はい。もちろんです」
核鉄を観察し終えて地面に置き、藍染に視線を戻すL。
「…では、こちらもお見せします。これが『初心』です」
懐に手を入れ、一枚のカードを取り出し藍染の眼前に据える。
「………カード?これがかい?」
「はい。あるキーワードを言うと使用できる、不思議な効果を持つカードです」
カードを指先でピラピラと揺らしながら、藍染を見据えるL。隣でそれを眺めているミサも興味津々といったようにそれを見つめている。
「キーワード?それはどんな言葉なのかな?」
「キーワードは、『初心(デパーチャー)使用(オン)、対象、藍染惣右介』です」
ぱひゅーん
「…………」
「…………」
「…………」
カードの消滅と共に、藍染惣右介は空の彼方へ。
「…………」
「…………」
「…………」
「………ちょ……ちょっとちょっとちょっとぉッ!!!?Lうぅぅッッ!!!?」
「…何でしょう?」
我に帰ったミサが隣のLの肩を掴みブンブン揺らす。地面に置きっぱなしの藍染の三つのアイテムを何事も無かったかのように拾い集めるL。
「ちょっ…Lさん!?どれだけ重大なミスをしちゃったか!分かってるんですか!!?」
セナもようやく我に帰り、Lに詰め寄らんばかりに声高に問い詰める。
「………正義は必ず勝つ、ですよ。小早川君、ミサさん」
「「…………は?」」
呆気に取られたままの二人を尻目に、立ち上がり服に付いた砂を手でパンパンと払っているL。
「…Lぅ〜ッ!!ただ今無事、キン肉スグル!大帰還〜〜〜っ!!!………って…どしたんだ?なんかあった?」
三十分ほどの周囲の探索を終えて帰還したキン肉マンが見たのは、一人増えた見知らぬ女性とセナの二人に挟まれて言葉の集中砲火を受けている真っ最中のLの姿であった。
【岡山県北西(藍染のスタート地点)/黎明】
【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]やや疲労(睡眠により回復。盤古幡使用可能)
[道具]:荷物一式×2(食料残り約5日分)
:盤古幡@封神演義
:首輪×2
[思考]1:……え?
2:興味を引くアイテムの収集(キメラの翼・デスノート優先。斬魄刀の再入手は最優先)
3:ルーラの使い手、バーンと同世界出身者を探す
4:能力制限や監視に関する調査
5:琵琶湖へ向かう(斬魄刀を手に入れてから?)
【兵庫県/黎明】
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労
[道具]荷物一式
[思考]1:茫然自失
2:月と合流し、藍染の能力で共に脱出
3:夜神月の望むように行動
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]精神不安定
[道具]:荷物一式(食料残り1/3)
:野営用具一式
[思考]1:茫然自失
2:まもりとの合流
3:これ以上誰も欠けさせない
【L@DEATHNOTE】
[状態]右肩銃創(止血済み)
[道具]:ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)
:デスノートの切れ端@DEATHNOTE
:GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER
:雪走り@ONEPIECE
:斬魄刀@BLEACH
:核鉄XLIV(44)@武装練金
[思考]1:現在の仲間たちと信頼関係を築く
2:沖縄の存在の確認
3:ゲームの出来るだけ早い中断
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]健康
[道具]荷物一式
[思考]1:何があった?
2:志々雄からたけしを助け出す
3:ウォーズ・ボンチュー・マミー・まもりを探す
4:ゴン蔵の仇を取る
【Lたちの共通思考】1:キン肉マンの志々雄打倒に協力するため、関西中心を捜索
2:午前6〜7時頃の大阪市街で剣心・ナルトと合流
軽やかな声が脳に流れ込む。
「あらん、本当に人間って弱いのねん。こんなモノで壊れちゃうなんて」
嘔吐物で汚れた地面には目もくれず、艶やかな指先でトレインの髪を撫で上げながら、妲己はくすく
すと笑みを零していた。子を包み込む母のような優しい手つき、――暗く緩い思考しか持てないトレ
インの脳がじんわりと温まってゆくようで。
「ねぇ、人間って汚い?」
長く伸びた爪で押し開けられていた瞼から、一滴の血が眼球へと落ちる。視界が赤に染まる。
…目の下に焼きつくおぞましい人間の『真実』、
黒色の世界は血の赤をもってしても、塗り替えることは出来そうにない。
縦に振られた頭が一瞬だけ、女の指先を離れて戻った。
「そう…。でも、あなたはもう人間じゃないわ」
左胸に埋め込まれた黒い塊を細目で見下ろし、妲己はトレインの首筋に手の甲を這わせる。くいっと
首の裏側を押して、一度鉄核から離れた目線を再びそこに戻させると、男の体が大きく震えた。
「だ・か・ら、あなたは汚くないってことねん」
画面に映っていた『汚らわしいモノたち』と自分とは、まったく異種の存在なのだ。そう思うだけで喉の
奥から笑いが生まれる。震えは恐怖でも絶望でもなく、何物にも代えがたい歓喜であった。
「おめでとう。これであなたもわらわの『仲間』よん」
ほら、わらわの目を見て。
震えを止められぬまま口元に笑みを張り付かせてトレインが振り向くと、そこには大きく見開かれた女
の瞳がある。
(これは何、だ…?)
到底人間のものとは思えない、鋭く、そして美しい瞳。けれどそこには何の感情も見えない。
(まるで)
───たった今見た画面の『汚らわしいモノたち』の瞳に似た、ソレ。
だが、その思考は一旦幕が閉じるように遮られる。想定外の出来事に弱りきった脳は、女の柔らかい
声に身を委ねることを選んだのだ。
「疲れたでしょぉん?少しお休みなさいん…」
そう、疲れた。今はこの心地よさに浸って眠りたい。胸に押し込まれた鉄の塊も、汚らしい人間の真実
も、今だけはそっと夜の闇に置いて。
女の冷めた瞳を無意識の理解から外し、トレインはただ求めるがまま大きく息を吐いて瞼を閉じた。
じくり、と傷が痛む。
いずれ黒猫は目覚めるだろう。内に持つ誇りは消え失せたのか、それは誰にも分からない。
今はまだ、誰にも。
疲れきって眠る子どものような男を微笑ましく思いながらも、妲己の思考はすでに他のところに向けら
れていた。手の甲に触れる冷たい金属、男にもそして自分にも巻き付いているこの首輪について。
(これは一体、『何』に絡みついているのかしらん?)
遊戯との一件を思い出す。
(所有者が死ねば首輪は機能をなくす。これはまず間違いないわねん)
それはキルアとカズキの戦いをその目で見、遊戯を『食した』妲己だからこそ分かる事実であった。
カズキが肉片となったとき首輪もともに崩壊したが爆発することはなく、彼女は遊戯の対応に追われ
る最中であっても、そこから上の説を導き出していたのだ。
(わらわが遊戯ちゃんを倒しちゃったあと、首輪はちゃーんと止まったものん)
さらに遊戯の死後、彼女は本当に首輪が機能を失っているかの確認をしている。すでにこれは仮説
ではない事実として、妲己の頭の中に収められていた。
(このコには悪いけどん…、わらわも受身でいるばかりじゃいけないと思わない?)
にっこりとトレインに天使のような笑顔を向け、妲己は黒の核鉄と首輪とを同時に視界に入れる。
頭の中でいくつもの仮説を組み立てて──
まずはカズキちゃん。
この鉄がもともと心臓の代わりだったみたいだから、これが奪われたり壊されるイコール死亡、として
首輪が認識するようセットされていた。…たぶん、こんなところねん。
次に遊戯ちゃん。
最後に面白い芸を見せてくれたけど、体はごくごく普通の人間だった。大半の参加者は何分以上の
心停止で首輪が死亡認識、ってところかしらん。
そして、目の前のこのコ。
とくに心臓以外の何かで生命を維持してる風でもないし、遊戯ちゃんと認識の仕方は同じなはず。そ
して死亡認識で重要な心臓はわらわが潰しちゃった、ってことは…
(この首輪は今、動いてない可能性もあるわん)
正直なところ、妲己はもう自らの素性を隠してまで仲間を作る気がほとんどない。
カズキはキルア戦においては役に立ったものの、それが仇となって遊戯との関係が崩れ、あのよう
な難戦に巻き込まれた。
太公望やLから信用を得るための仲間の存在は必要だが、あまりに自分の足を引っ張るような仲間
であれば不要だ。下手に力を持っていて、信念ゆえにメリットデメリットを考えず、自分の本性を知る
と牙を向けてくる、頭の固い仲間は特に。
そう考えると妲己はラオウに拒絶されて正解だったのかもしれない。
誰かの死を知って泣く。こんなつまらない映像で壊れる。そんな弱い仲間を自分が宥めてまで助ける
ような時期は既に過ぎていた。
脱出するにしろ優勝するにしろ、そろそろ自分の実となる仲間を見つけ出さねばなるまい。
(でもねん、わらわのためになるコなら『仲間』にしたいのん)
だから今目の前にいるこの男は、間違いなく『仲間』だ、と。
自分の素性を知りながらも、目的に賛同し協力してくれる『仲間』。
もしくは自分に何の疑いも持たず、無条件に従ってくれる『仲間』。
妲己が求めるものはこのどちらか、もしくは両方である。
そして弱い者を後者に仕立て上げることは、今の妲己にはあまりに容易なことのように思えた。
さあ、この動いているかいないか分からない首輪をどうしよう。妲己は笑う。
動いているのに無理矢理外せば、自身を巻き込んでの大爆発が起こってしまうだろう。
けれど動いていないのならば、色々と次に繋げることが出来そうだ。
(まだ時間はたっぷりあるわん。…役に立ってね、綺麗な人間さん)
眠る気高い黒猫に、小さな小さな微笑みを。
一歩先はどちらに転ぶか分からない闇の中、放送を待つ静寂のみが辺りを包み込んでいた。
【東京都/一日目真夜中】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]:少し精神的に消耗・満腹・上機嫌
[装備]:打神鞭@封神演義・魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式×4(一食分消費)、ドラゴンキラー@ダイの大冒険、黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
GIスペルカード『交信』@ハンターハンター、千年パズル(ピース状態)@遊戯王
[思考]:1.トレインを使って首輪を調べる、トレインを仲間として引き連れる
2.放送を聞いてから『交信』のカードをどう使うか考える
3.ゲームを脱出。可能なら太公望も脱出させるが不可能なら見捨てる
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]:左腕、左半身に打撲、右腕肘から先を切断。行動に支障あり(全て応急処置済み)
左胸に穴(中身の核鉄が覗いている)
[装備]:ウルスラグナ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾1)、黒い核鉄V(左胸で心臓の代わりになっている)@武装錬金
[道具]:荷物一式 (食料一食分消費)、黒の核晶(極小サイズ)@ダイの大冒険
[思考]:1.思考拒否(とりあえず休みたい)
2.人間に失望
以上、前スレ119-124『傾心の妖女』の修正版です。
CGI氏、お手数おかけしますが、よろしくお願いいたします。
ヤムチャは思った。
―こいつとなら、試せる。
オレの本当の力、今まで一度も見せたことがない最終形態へ―
タカヤ・ルシフェルΩは、そっと地面をなぞる。
地球上の全てのマグマが、ヤムチャの足元に集まった。
壱の絶技―サラマンダーの憂鬱―
マグマは天高く、見えなくなるど噴出する。
ヤムチャは死んだかに思われた…が
ジュパーン
火炎の中に人影が見えた。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
「キン肉マン殿の、仇?」
目の前の少年が叫びを聞き、剣心の混乱は極まる。
志々雄といる状況から見て、彼はキン肉マンの話にあった少年、たけしだろう。
そのたけしは、いったい何を言っているのか?
自分はキン肉マンを殺してなどいない。
いや、そもそも、キン肉マンは死んでなどいない。
数時間前に直接接触を持ったし、先ほどの放送でも呼ばれてはいない。
「たけし殿。拙者の話を聞いてくれ! キン肉マン殿は死んではおらぬでござるよ!」
「耳を貸すな、たけし。その男は嘘つきだからな」
剣心を全否定するように志々雄は言う。
少年の暴走の原因は間違いなくこの男だ。
まずは元凶を討つ。
そう判断し剣心は神速で志々雄めがけ駆け抜け、青雲剣を走らせた。
対する志々雄は腕組のまま動かず、余裕の笑みでその一撃を見送る。
肉を切り裂き、鮮血が舞う。
「……………な、ぜ?」
志々雄を狙った一撃は、庇うように身をねじ込ませた、たけしを右腕を切り裂いていた。
何とか直前で手を緩めたが、右腕の肉が抉られている。
「志々雄はオレの友達さぁ。友達を傷つけるヤツは絶対に許さねぇさぁ!!」
キン肉マンを殺された認識に、志々雄を攻撃した事実が加わる。
それにより彼の怒りが7万ボルトを越えた。
目つきは鋭く変化し、髪の毛が逆立ち始める。
「キン肉マンの仇をとらせてもらうぞ、抜刀斎!」
右腕の剣を抜き取り、スーパーたけしとなったたけしが、剣心を指差し告げる。
剣心は距離をとろうと身を引くが。
次の瞬間、消えたと錯覚するような速さでたけしが特攻していた。
次に剣心がたけしの姿を認識でいたのは、既に懐に入り込まれた後の話だった。
「リーダァーパンチ!」
矢のように放たれる一撃を、少年の手を傷付けぬよう青雲剣の腹で受ける。
だがその衝撃は想像をはるかに上回っていた。
剣を握る腕が痺れ、握力が奪われる。
これが、本当に子供の一撃だろうか?
「待ってくれ! 誰も殺してなどいないでござる!」
身を引き、防御に徹しながら少年を説得する。
「おいおい、嘘はいけねえぜ、抜刀斎。
お前ほど、多くの人を殺めた人間はいないだろう?」
志々雄は動かず、刀ではなく言葉で斬りつける。
その言葉は正確に心を抉る。
その間も少年の猛攻が襲う。
少年の攻撃は並ではない。
予想以上にその力は強く、確実に身が削られてゆく。
このまま防戦を続ければ、いつか必ずやられるだろう。
それでもこの少年を傷つけることは出来ない。
この少年が誤解から自分を襲っているのは明白。
ならば、その誤解を解かなければ。
「信じてくれ、たけし殿。拙者は人斬りなどでは―――――」
「――――――何を言う。お前は人斬りだろうが」
「――――――――――――」
―――――そうだ、自分は人斬りだ。
維新志士の人斬りとして、信念のため多くの命を殺めた。
その事実を否定することはできないし、してはいけない。
それを否定する行為は、これまで殺めた多くの命を、平和のための尊い犠牲を否定する行為だ。
その罪を償うため、自分は流浪人になった。
剣と心を賭して戦いの人生を完遂するために。
だが、自分は―――――まだその罪から逃げられないのか。
襲い来るこの少年誤解すら解くことが出来ない。
ならば、自分はこの少年に殺されるのではなく。
―――――――自分は、その罪に殺されるのだろう。
「ちゃりゃぁッ!」
生まれた一瞬の隙にたけしの一撃が顔面にめり込んだ。
細身の体は大きく吹き飛び地面を滑った。
吹き飛ぶその勢いよりも早く、少年は駆ける。
追いついた少年はトドメをさすつもりか、大きく拳を振り上げた。
「殺れ、たけし!」
志々雄の声に呼応するように、振り上げた拳が振り下ろされた。
正確に剣心の頭部を目指し、断罪が落ちる。
「違う! 拙者は…………ッ。信じてくれ、たけし殿!」
それでも呼びかける事を止めなかた。
確実に死を持った一撃は目前へと迫り、
「…………………やっぱりダメさぁ」
その直前でピタリと止まった。
「……………たけし殿?」
友の仇を討つため、目の前の男は悪だと、必死に自分自身に言い聞かせて戦ってきたが。
自分を騙すのはこれが限界のようだ。
この男は人殺し。
それはきっと本当なのだろう。
男自身もそれを否定していない。
リーダーは悪を討つ。
けれど、罪を許すのもリーダーだ。
それに、必死になって呼びかけ続けたその声は、たしかに本物だった。
そこに偽りは一片もなく、強い思いと決意があった。
それが確かな真実だった。
この男の話を聞いてみよう。
判断はそれからでも遅くはない。
そもそも、話も聞かずに悪だと決め付けるのは自分らしくない。
沸いてきた憎しみに、判断を誤ってしまっていた。
「話も聞かず殴って悪かったさぁ、オレはお前の話を聞く雰囲気さぁ」
たけしは素直に頭を下げ、その年に見合った屈託のない笑顔を浮かべる。
その顔つきは普段のたけしに戻っていた。
そして、倒れた剣心に手を差し伸べる。
剣心もその手を握り返し、たけしに引かれ剣心は立ち上がる。
だが、たけしは失念している。
そもそも、その憎しみを、植え付けたのは誰だったのか―――――――?
「…………………え?」
ゾブリと水音が響いた。
剣心はわき腹に灼熱を感じる。
気が付けば、
たけしの胸から刃が生え、その刃が剣心の内臓を深く深く抉っていた。
その後ろでは、血飛沫を浴びた志々雄が、狂ったような笑みを浮かべて――――――。
「それではワシ等も始めるとするか。のう、先生?」
ゆっくりと笑みを浮かべ近づいてくる敵に乾は銃口を向ける。
だが、その視界を差し出した片手に遮られる。
「だめだ乾くん。彼には手を出さないでくれ」
「……………先生?」
「彼は悪霊にとりかれているだけなんだ。
彼自身には何の罪もない。彼を傷つてはいけない」
「でも、先生!」
たとえ相手がとりつけれてるだけでも。
たとえ相手に、罪がなくとも。
そんな事は関係なくこの少年は襲いかかってくる。
抵抗しなければ、死ぬのはこっちだ。
「頼む乾くん。ここは俺に任せて下がってくれ」
強い決意の眼で懇願する。
それを受け取り、乾は黙って身を引く。
そしてその戦いを見守った。
戦いは一方的なものだった。
いや。それは戦いと呼べる物ではなかった。
無抵抗も同然に一方的に殴られ続ける音と。
ただ、届かない声だけがその場に響いていた。
鵺野が繰り出すのは左腕のみ。
その事を既に理解している九尾に攻撃が当たるはずもない。
既に鬼の手が自由自在に形を変えられることはネタが割れている。
先ほどのような奇襲は、もう通用しない。
いや、そもそも鵺野の目は敵など見てはいなかった。
ただ、その中にいる少年にむけて必死に声を張り上げ呼びかけ続ける。
その間も一方的な攻撃は続き、その体は面白いくらいにボロボロになってゆく。
「戦うんだ。そんな狐に負けるな!」
叫びを遮るように一撃が鳩尾にめり込んだ。
「がは……………っ」
血を吐いた。
何処かの骨が折れたようだ。
「…………負けるな……………立ち向かえ」
それでも、声を止めなかった。
届くと信じている。
目覚めると信じいる。
だから、この声を止める訳にはいかない。
「………まったくやかましいの。いい加減、黙らせてやろうか。
血肉はその後、ゆっくりと喰らってやろう」
言って舌をなめずり、九尾は片腕を掲げる。
その掲げた掌に、編みこまれるようにチャクラが練りこまれてゆく。
チャクラは螺旋を描き、球状に圧縮される。
習得ランクA。
ナルトの使用できる最強の術が完成する。
「――――――螺旋丸!」
蠢く螺旋球を片手にナルトが迫る。
―――――速い。
その速さは傷つき動かない体に反応できる速さではない。
その一撃が、避けれないものである悟った鵺野は、最後の手段に及んだ。
鵺野は動かず、螺旋丸がその胸に直撃する。
両腕を広げ真正面からその必殺の一撃を受け止める。
余りの圧力に胸が陥没し、胸骨が砕けた。
その衝撃をその身に受けながら、鵺野は引かず、そのまま前へと踏み込む。
そして広げた両腕を閉じ、鵺野はナルトを力強く抱きしめた。
「……………………何をッ!?」
九尾は何の策かと警戒するが、攻撃が来る気配はない。
それを理解した九尾は腕を止めず、そのまま螺旋丸をめり込ませる。
回転する超圧が骨を、肺を、心臓を壊す。
「戦うん、だ、自分に負け、る、な…………」
血を吐きながら、最後の力で耳下に囁く。
同時に、砕かれた胸骨が心臓へ達した。
血反吐を巻き散らし、力尽きた鵺野は崩れるようにその場に倒れこんだ。
九尾は倒れこんだ鵺野をゴミを見る目で見つめ。
「は、はははははははははははははははははははははははは。
本当に面白いな、人間は!
ドイツもコイツも笑わせてくれおるわ!
無駄な望みに命を賭けれるとは、まったく愚かとしか、」
――――――――ドクン。
高笑いを続ける九尾が動きを止め、その目を見開く。
九尾の内で、何かが跳ねた。
(……………う………めてくれ)
「なんだ…………。まさ、かッ!」
自らの内より泣き声が聞こえる。
そして永い眠りから目覚めた声が響く。
(もう、止めてくれってばよ!!)
「ぐッ。素直に眠っておればよいものを…………!」
内から響いた声に、九尾は頭を押さえる。
直接脳に叫びが響く。
(九尾、もう止めろってばよ!
もうオレは誰も傷つけたくないんだってばよッ!)
「黙れ小僧。これは貴様の望んだ事だろうが」
顔面を歪ませながら、九尾は内側の異物を押さえつける。
(……………そうだ、オレが、弱かったんだってば。
だから、お前みたいな野郎に逃げちまってよ。
けど、もうこの体はお前の自由になんかさせねぇってばよ!)
「な。ぐっ、や、やめろッ! あ、がぁあぁぁッ!!」
内から目覚める意識に九尾は抗う。
胸元を掻き毟りながら必死にその意識を押さえつける。
だが、意識はもの凄い勢いであるべき持ち主に還ってゆく。
「………こんなッ。事がッ…………!」
狐の雄たけび。
それを残し、その体は動きを止めた。
「はぁ。はぁ。はぁ。…………どうだ、クソ狐!」
今、少年は―――――少年に戻った。
(……………………思い上がるなよ、小僧が!!)
だがそれもつかの間、その内側で猛獣が暴れだす。
想像を絶する痛みが全身を襲う、
(貴様如きがこのワシを! この九尾の妖狐を押さえられるとでも思っているのかッ!)
すでに四代目火影の施した九尾を封じる結界は解けている。
この暴れる獣を押さえるには、ナルト自身の力で抗うしかない。
火の国を滅亡寸前にまで追い詰めた化物に対し、少年は一人立ち向かう。
少年は自らの胸倉を握り締め、その身を裂くような痛みに耐える。
でも今は、その痛みよりも、心の方が痛かった。
公主の姉ちゃんは言った。
希望を捨てるなと。
鵺野先生は言った。
逃げずに、戦えと。
それなのに、自分は何をしていたんだろう?
耳を塞ぎ、全てから逃げ出して。
あまつさえ、こんな狐に身を空けわたし。
多くの人を手にかけて。
「オレってば、オレってばよ。辛くて、痛くて、怖くてよぉ。
だから、逃げ出しちまって。とんでもねぇことしちまってよぉ」
慟哭を聞く。
そして彼は今、必死で戦っていた。
自分の中の獣と。
自分の中の罪と。
「だからさ、乾。
オレがコイツを押さえ込んでる間にオレを、殺してくれねぇか」
懇願する瞳が乾を見つめる。
それが、自らの罪に出した彼の答えだった。
「頼む。正直さ、あんま持ちそうにねぇんだ」
乾は悲痛な面持ちで告げる少年の覚悟を見つめる。
その思いに、自分は答えなければならない。
その額に静かに銃口を向ける。
「へへっ………。わりぃな。めんどくせぇこと任しちまって」
「いや、気にするな。君せいじゃないさ」
眼鏡を上げ、わざと感情のない声で言葉を発する。
冷たい引き金に指をかける。
さっきまで散々引いた、その引き金が今は驚くほど重い。
(やめろ、何を考えてる! 貴様は死にたくないのではなかったのか!?
今からでも遅くない、今すぐワシに体を戻せ! そうすればこの場も、)
少年の内では獣が最後の抵抗を続けていた。
「うるせぇ、クソ狐。オレはもう、オマエなんかにゃ負けねぇってばよッ!」
歯を食い縛り、痛みに耐えながらナルトは九尾を押し込めた。
「そうだナルト。君の、勝ちだ」
少年の声、答えるように少年は笑う。
――――――夜の浜辺に銃声が響いた。
凶刃が引き抜かれる。
大量の血液を垂れ流しながら二人の体が崩れ落ちた。
『………………ひでぇ』
己が身で起された惨劇を目の当たりにし、思わず飛刀は声を漏らした。
「し…………しお…………なん、で……さぁ………」
少年は地面をズリズリと這いながら、信じられないようなものを見る目で男を見上げる。
「たけし、お前はよく役に立ってくれた」
そう言い、志々雄は口元を歪ませ笑みを造る。
「これはその礼だ。苦しまずに、逝け」
その笑顔のまま志々雄は飛刀を振り下ろし、一突き。
ジワリと、地に赤い染みが広がる。
信じた友に裏切られた少年は逝った。
狂人は少年を手にかけた凶刃を引き抜く。
「さて、次はお前と行こうか、抜刀斎」
返り血に濡れた凶刃を片手に、志々雄が迫る。
だが、自分に立つ力は残されていない。
もはや指一本動かすことも叶わない。
体温が消えていき、全身の感覚が失われてゆく。
傷口から、命がこぼれ落ちてゆく。
この感覚には覚えがあった。
たしか、同じ相手、同じような傷だ。
――――あの時は、どうやって立ったんだっけ?
志々雄が振り下ろすため剣を掲げる。
「やめろぉおおお!!」
その横合いからナルトとの決着を付けた乾が駆けつける。
その凶行を阻止しようと、志々雄に向かい拳を振り上げ殴りかかった。
「ま。向かってくるのは自由だがよ」
志々雄はさらりとその突撃をいなし、同時に鉄拳をその額に見舞った。
「かかってくるなら、この如何ともし難い実力の差をちったぁ埋めてからかかってこい!」
ゴミ屑のように吹き飛んだ体は大木に叩き付けられる。
一撃を喰らった額が割れ、噴水のように勢いよく血が噴出した。
そんな物に興味はないのか、志々雄は剣心に向き直り飛刀を振り上げ。
「―――――――――死ね」
勢いよく心臓めがけ振り下ろした。
―――――生きるという意志は何よりも強い。
師の言葉を思いだした。
そうだ、その意思が、あの時自分を立ち上がらせたのだ。
だから立てない。
何故なら、今はもう、それが、ない。
守るべき者も、帰るべき場所もなくなった。
あの姿も。
あの声も。
あの笑顔も。
全て失われた。
あの懐かしい神谷道場に待つ人は、もういない。
もういい。
もう、疲れた。
もう、休もう。
静かに目を閉じる。
それだけで全身の力が抜けた。
「……………………薫殿…………今、逢いに」
目を閉じたその先には、可憐な少女が、花のような笑顔で手を振って――――――。
幕末よりの因縁は幕を閉じた。
振り下ろされた刃はあっけなくその心臓を抉った。
その結末をつまらなさげに見送り。
「は。あっけねえ、所詮流浪人に落ちた人斬りなんざこんなもんか。
ふん、結局、誰も俺の最強には付いてこれねえってことか。はっははははは」
そう言って、志々雄は飛刀を引き抜いた。
最強を証明した勝利者の高笑いが響く。
吹き飛ばされた乾は、木の根元でその声を聞いていた。
五体はボロボロで思うように動かない。
意識も朦朧としており、視界はぼやけてハッキリとしない。
だが、まだ確かに生きている。
何とか右腕を動かし、懐の拳銃を握る。
残った銃弾は一発。
勝利に酔う男はコチラには気付いていない。
油断している今なら、この弾丸をお見舞いする事も可能だろう。
ゆっくりと右腕を上げ、震える手で標準を合わせる。
霞む標準が男の後姿を捕えた。
弾は一発、外すことは出来ない。
祈りを込めて最後の力を振り絞る。
そして、引き金を引く指に力をいれた。
「小僧、俺が油断してるとでも思ったか?
覚えときな、これは油断じゃなくて、余裕って言うんだぜ」
銃声が上がることはなかった。
乾が引き金を引く一手前に、志々雄が投げつけた飛刀がその額に突き刺さっていた。
「っても。もう聞こえねえか」
ツカツカと乾に近づき、額に突き刺さった飛刀を抜き取る。
その勢いに乾の体は引かれ、そのまま地面へと身を倒した。
「これで四国は盗ったか。以外とあっけなかったな。
それじゃあ、今度こそ朝まで休もうかね。
食料は腐るほどあるんだ、精々豪勢にさせてもらおうぜ。なあ飛刀?」
戦利品を掲げ、勝利者は愛刀に声をかける。
『……………………』
「なんだ。不満そうだな、飛刀。
お前も血を吸えて満足したんじゃねえのか?」
そうだ、イヤと言うほど血を啜り、剣としての自分は満足してるはずだ。
だが、心が晴れないのは何故だろう。
どうやら、己は相当ラーメンの旦那に毒されちまったようだ。
『……いや、そんなこたぁねえさ。今の主人はアンタだ志々雄の旦那』
その心奥に仕舞い、飛刀は志々雄に従う。
それを知ってか知らずか、志々雄はフンと鼻で笑い剣を肩に担く。
そして、何の未練もなくなったその場を後にする。
開かれた劇の名は惨劇。
決意も涙も、その思いも。打ち付ける波にさらわれ名残もない。
物言わぬ骸を五つを残し、その舞台は幕を閉じた。
【香川県/海沿い/黎明】
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:全身に軽度の裂傷
[装備]:衝撃貝の仕込まれた篭手(右腕)@ワンピース、飛刀@封神演義
[道具]:荷物一式 八人分(食料、水二日分消費)
:青雲剣@封神演義、パチンコ@ONE PIECE(鉛星、卵星)
:ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険、キメラの翼@ダイの大冒険
:弾丸各種(マグナムリボルバーの弾なし) 、ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]:1:休息。
2:長時間戦える東北へ向かう。
3:無限刃を手に入れる。
4:少しでも多く参加者が減るように利用する。
5:全員殺し生き残る。
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜 死亡確認】
【うずまきナルト@NARUTO 死亡確認】
【たけし@世紀末リーダー伝たけし!! 死亡確認】
【緋村剣心@るろうに剣心 死亡確認】
【乾貞治@テニスの王子様 死亡確認】
【残り48人】
兵庫から大阪へ。
大阪から京都へ。
越前リョーマ捜索の為に近畿地方を回っていた両津達は、
今度は滋賀・三重の県境を掠め、奈良に足を踏み入れようとしていた。
無人の街を歩き、人がいるかどうか確かめる。
これほど大人数のチームに仕掛けてくる奴はそうそういないと思うが、油断はできない。
保護した少女も若干の不安分子ではあるが・・・・・・ダイと二人で見張っていれば問題はない筈。
だが、焦りは募る。
肝心のリョーマが見つからない上に、
時間を気にせずのんびりと捜索を続ける余裕がない。
第四放送前はそうではなかったのだが、今は状況が違ってきている。
ターちゃん。
ダイ達の仲間にして四国防衛の要。
その頼れる男の名前が第四放送で呼ばれてしまった。
一体四国で何があったのかわからないが、緊急事態であることは確実。
ダイにしてみれば一刻も早く四国に帰って公主を護りに行きたいところだろう。
”四国には鵺野先生がいる、先生がいるから大丈夫だ”
そのダイを、こう言って説得したのはわしだ。
四国で何か事件が起こったことは確実だろう。しかし、それが未だに続いているとは限らない。
何の事件があったのかは想像に任せるしかないが、おそらくゲームに乗った者が拠点を襲撃したのだ。
ターちゃんの任務は『防衛』
自分から他の場所に赴いた結果死ぬ、ということは考えにくい。
襲撃者によってターちゃんが命を落とした―――ならば、公主や乾や鵺野も殺されてしまうのか?
否。もし襲撃者を撃退していなければ、三人はもう殺されている筈である。
ということは、公主達はターちゃんを失いながらも危機を乗り越えた、ということ。
その為四国に戻るのは後回しにして、リョーマ捜索を続けることに皆で決めたのだ。
だが、襲撃者は一時的に撤退しただけでまだ危機が続いている可能性もある。
故に本来ならばすぐに四国に向かうところなのだが・・・・・・そうしないのは勿論リョーマの為。
わしはリョーマという少年のことを知らん。
この捜索活動も第四放送が流されるまでは、太公望を見つけることがメインの目的だった。
しかし、太公望は死んだ。
それなのに、見ず知らずの少年の為に捜索活動を続けているのは警察官としての使命と・・・麗子の為。
このゲームで初めて麗子と会ったとき、麗子はひどく憔悴していた。
キルアという少年を引き止め切れなかったことを後悔している麗子は見るに耐えない状態だった。
そして麗子が引き止め切れなかった少年がもう一人いる。
もし、その少年まで死んでしまったら、麗子はもう立ち直れない。
だから二時間だけでも、その少年を探す。
そうすれば――言い訳ができる。
私はこんなに頑張った。
これだけ探しても見つからなかったんだから仕方がない。
やれるだけのことはやった。
麗子も、そう自分の心に言い聞かせることができ、
そうすれば後悔も少しは和らぐだろう。
心の傷は決して消えないが、何もせずに放っておいて死なれるのとでは訳が違う。
わしは警察官だ。
人の死は何度も見てきた。
どんなにいい人でも、どれだけ罪が無くとも死ぬときは死ぬ。
刑事だったとき、助けようとした先輩が目の前で死んでいったこともあった。
どうしようもない現実もある。
そんな時、残された人間はどうすればいい?
後悔して懺悔すれば死者は喜ぶか?
違う。必要なことは前へ進むことだ。
反省は歩みを進めるが、後悔は歩みを止める。
歩みを止めることは、このゲーム上では死と同義。
酷なようだが、麗子は例えリョーマが死んでも進み続けなければならない。
そうしないと、生き残れないのだからな。
月の光が無人の街を照らし、
人を狂わせるといわれる光が場を支配する。
遠くで、何かの鳥がギャアギャアと啼く声が、聞こえた。
京都と滋賀の県境を南下する。
当初の考えでは、大阪の北部から時計回りに大阪付近を捜索することだったが、
都市部での捜索は予想以上に時間の浪費が激しく、タイムリミットである午前2時まであと20分程しかない。
大阪だけではなく京都のほうまで足を伸ばしたが、リョーマの足取りは未だ掴めない。
麗子が目に見えて焦りだし、皆も自然と早足になる。
そのときだ、『それ』を見つけたのは。
ギャアギャアと鳥が啼いている。
いくつも立ち並ぶ寺からは鐘の音すら聞こえず、
丑三つ時に、月が蔭る。
最初に見えたのは倒れた自転車。
見覚えがある。あれはわしの自転車だ。主催者め、こんなものまで・・・
そして、その自転車の脇に黒い塊が見えた。
『それ』はザワザワと蠢いていた。
「うっ・・・」
全員が、溢れる死臭に鼻を塞ぐ。
無数のカラスが何かを啄ばみ、クチャクチャと嫌な音を立てている。
啄ばんでいる物は・・・恐らく死体。
死臭にあてられたのか、麗子が嘔吐し出した。
嫌な臭いが一層増し、吐瀉物にも鳥が群がり始めた。
それは、まるで地獄絵図。
よほど食料がないのだろう、カラスだけではなく他の鳥も混じっている。
と、一羽の鳩が飛び上がりダイの肩にとまった。
普段なら微笑ましい光景だが、どう考えてもこの状況にはそぐわない。
「随分と懐かれてるなあ」
「ううん、多分こいつは・・・ターちゃんが『お願い』した鳩だと思う。
ターちゃんと一緒にいた俺をターちゃんの仲間だと思っているんだよ」
「ふむ、ならば太公望という奴が調べさせた『情報』とやらが集まったのか。よし、鳩語ならわしに任せろ!」
鳩を手に取り、対話を始める。
「クルックー、クル、クルル・・・・・・」
「クルルルルル・・・・・・」
「ふむふむ・・・」
「クル、クル・・・・・・」
「・・・何!?・・・うむ・・・うむ・・・」
「クル・・・・・・」
「・・・よし、よくやった!褒美にパンをひとつやろう」
「ポッポー!!」
鳩が大喜びでパンを啄ばみ始め、それに他の鳥が加わり大乱戦になる。
ギャアギャアカァカァクエエエエコケポッポー
喜んでいるようで何よりだ。
それはともかく・・・
「ダイ、太公望が求めていた情報がわかったぞ!このミニ日本には・・・」
「・・・ねえ両ちゃん、その前にこの人のお墓を作ってあげましょう。このままじゃ可哀相よ」
「む・・・それもそうか。しっしっ、お前らあっち行け!」
怒鳴られたことにより、鳥たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、死体がはっきり見えるようになる。
死体は少年のものだった。
右腕を喪失した矮小な体躯。薄水色の髪。血塗れの服。
麗子が絶叫する。
「キルアちゃん!!」
「俺に『死ぬなよ』なんて言っておいて、お前が死んでどうするんだよっ!」
放送で聞くのと、実際に死体を見るのとではやはり違うのだろう。
星矢も麗子も、かなり心が乱されている。
麗子達ほどではないにせよ、わしとダイにも動揺は少なからずあった。
「こいつは酷い・・・」
キルアの死体に縋り付いて泣き叫ぶ麗子を落ち着けた後、わしは死体を見て素直な感想を言った。
身体は血塗れで右腕はなく、首がおかしな方向に捩れている。
何故このような状態になったのかわからないが、麗子が錯乱するのも理解できるほどの死に様だ。
しかし不可解な点が一つ。
それは、キルアの荷物がそっくりそのまま残されていること。
何故キルアを殺した犯人は荷物を持っていかなかったのか。
食料にアイテム、これらは役には立っても邪魔になることは殆どない。
考えられる理由は・・・・・・自分を偽ってグループの中に混じっている殺人者が、
キルアを殺した後、自分が疑われないようにわざと残していった可能性。
しかし、ここは見通しのよい道路。隠れて殺すには広過ぎる。
それに、キルアを殺す理由がわからない。道具狙いでなければメリットが思いつかない。
では、傷ついたキルアが一人で力尽きたのか?
それもない。キルアの首の損傷は間違いなく即死の損傷。頚椎に致命傷を負った人間が動けるわけはない。
何故キルアを殺した犯人は・・・
そのとき、一人の少女が声をあげた。
まもりだった。
「わたし、この少年に襲われました」
その発言に空気が凍結した。
「キルアちゃんはそんなことしないわ!!」
涙も枯れ果てた麗子が気色ばむ。
まだ錯乱しているのか、鬼の形相でまもりを睨む麗子にまもりは静かに反論する。
「本当です。その・・・キルア君・・・ですか?キルア君はいきなり私の首を絞めて、私の支給品を奪い取ったんです」
「嘘よ!嘘だわ!」
「麗子!落ち着け!」
いきり立つ麗子を星矢とわしの二人で押さえ込む。
これ以上麗子を興奮させるわけにはいかない。
「悪いが、あんまり刺激的なことを言わないでくれ」
「ごめんなさい・・・でも、知っている情報は公開しておくべきだと思って。
襲われたのは本当です。ほら、この電撃痕は彼につけられたものですよ?」
電撃でついたような火傷を見せるまもり。
麗子の反論を許さず、まもりは次々と情報を提示していく。
「奪われた私の支給品は『魔弾銃』というもので、魔法の弾を撃ち出すという特殊な銃だったんですが・・・」
麗子が落ち着くまで待ち、キルアの荷物を確認することになった。
キルアのデイパックを開けると、まもりの言った通り魔弾銃が入っている。
「うん、マァムの魔弾銃だ、間違いない。これは俺の世界の物だからよく知ってるんだ。
魔弾銃をキルア君が持っていることを知っていたんだから、まもりさんの言っていることは嘘じゃないと思う」
ダイの言葉に麗子が何か反論しようとして、結局できずにうなだれる。
まもりは嘘をついていない?
だとすればキルアがまもりを襲ったのは本当のことなのか?
いや、まだ決め付けることはできない。安易な決め付けは避けるべきだ。
キルアの持ち物の中には、他にもいくつかのアイテムが入っていた。
星矢によるとキルアと別れた時、キルアが持っていたアイテムは『爆砕符』が三枚だけ。
まもりによると、キルアに奪われた時に残っていた『魔弾銃』の弾丸は、
『ヒャダルコ』が二つ、『キアリー』が一つ、『ベホイミ』が一つ、『ベギラマ』が一つ。
そして、今現在キルアの荷物の中に入っているアイテムは・・・
『爆砕符』が二枚、黒い剣(ダイによると驚くべきことにオリハルコン製の剣で、竜闘気にもある程度耐えられる代物らしい)
黒い刀身の三叉のナイフ、『魔弾銃』、弾丸は『ヒャダルコ』が二つと『ベホイミ』が一つに『空』が七つ。
そして・・・・・・『黒焦げの首輪』
「これは・・・!」
「首輪、ですね。しかも炎によって焦げたような跡があります。
魔弾銃の弾丸の中から『ベギラマ』がなくなっているから、それで焼き殺した人の首輪かも・・・」
「まもりちゃんやめて!キルアちゃんは・・・人殺しなんか・・・」
「・・・」
麗子には悪いが、わしはこう思っている。
『キルアが誰かを殺したことは間違いない』
その理由は服についた大量の『返り血』だ。
服にべっとりとついている血は明らかにキルアのものではない。
それも一目で相手の出血量が致命的なものであるとわかる程の量。
それに加えて、キルアの所有している支給品の数。
黒い剣や三叉のナイフなど、麗子達といた時には持っていなかった物が増えている。
この支給品が、まもりが言うように『参加者から奪った物』だとすれば、その過程で人を殺していたとしてもおかしくない。
ではキルアがゲームに乗ってしまったのかというと、それには疑問が残る。正当防衛の可能性もあるからだ。
結論に至るのはまだ早い。情報が圧倒的に不足している。
「あの・・・その『魔弾銃』返して貰えませんか?護身用の武器くらいは持っておきたいんです」
「いいんじゃないか?元々彼女の支給品なんだしさ」
「む・・・」
正直この少女に武器を持たせたくはないが、この状況では断る理由がない。
「剣と魔弾銃はダイとまもりに渡すとして、他のアイテムはわしが管理することにするぞ。
危険な代物の保管は警察官の仕事だからな。麗子は・・・そんなことが出来る状態じゃないか」
麗子は完全に憔悴しきっている。無理もない。
助けられなかった少年の惨殺死体を見た上に、その少年が人殺しだったかもしれないのだ。
果たしてキルアは正当防衛以外で力を振るい、ゲームに乗るような人間だったのか?
麗子には聞けそうにない。とすると残るは・・・
「キルアがどんな奴だったかって?」
ダイに麗子とまもりの護衛を任せ、星矢を木の陰に連れ込む。
ここなら話は聞こえないはずだ。
「そうだな・・・・・・小宇宙はちょっと禍々しい感じもしたけど、頼りになる良い奴だったぜ。
でも、ゴンとかいう『友達』の話になると目の色が変わっていたっけな・・・」
『友達』か。
その『友達』にキルアが拘っていたのだとしたら、ゲームに乗る可能性も・・・
いや、それはない。
『ゴン』という名前が呼ばれたのは、キルアの名前が呼ばれたのと同じ第三放送。
放送でゴンの死を知って暴走したということは考えられない。
それにキルアが死んだのは『一人蘇生ボーナス』が発表される第四放送の前だ。ゲームに乗る理由がない。
それともゴンの死を直接目撃して、その犯人と戦った可能性はあるか?
キルアの『右腕』も『戦闘痕』もここにはない。
どこか別の場所で戦い、ここまで移動して、疲労しているところを殺された・・・?
なくなっている『爆砕符』一枚と『ベギラマ』『キアリー』の弾丸はその戦いで使ったのだろうか。
『キアリー』か・・・解毒が何故必要だったんだ?
戦った相手が毒使いだったと考えるのが普通なのだろうが・・・
わしは毒と聞くと、どうしても乾の言葉を思い出してしまう。
『ヤムチャさんは善人面をした人間に騙まし討ちを喰らい、毒を飲まされ、死に掛かっているところを俺とサクラさんが見つけました』
状況からして、キルアとまもりが接触していることはおそらく間違いないのだろう。
もし、まもりがヤムチャを襲った犯人なのだとすれば、
キルアがまもりに毒を盛られながらも返り討ちにし、支給品を奪ったという仮説はどうだ?
・・・駄目だ。キルアの持ち物の中に『毒薬』はない。
『毒ナイフ』のようなものはあるが、それでは『毒を飲まされ』という乾の発言と矛盾が生じる。
本当にヤムチャは毒を飲まされただけなのだろうか?
『騙まし討ち』の中でナイフが使われた可能性は?
くそ、もっとよく話を聞いておけば・・・
『毒薬』だけが途中で失われた可能性もあるが・・・
いかん、頭がこんがらがってきた。
今日ほど自分の頭の悪さを悔しく思ったことはない。
思考を中断する。
三日目にはヤムチャ、サクラの二人と兵庫で待ち合わせをしている。
ヤムチャに聞けば全て明らかになるだろう。
サクラはスカウターを持っているから危険な目には遭わない。
こちらは強力な仲間が二人もいるし、二人とも実力を発揮できる武器を手に入れた。
合流できる可能性は大きい。
四国で鵺野先生達と合流し、ヤムチャ達も仲間に加えたら戦力は十分。
まもりが本当にヤムチャを襲ったのかどうかもわかるし、この人数なら藍染も倒せる。
あと少しだ、あと少しで対主催者グループの戦力が整う。
だから、もう少しの辛抱だ――――
「なあ、両津さん。今からキルアの墓を作ってやろうと思ってるんだけど・・・」
「ん?ああ、そうだな・・・」
男三人で墓を掘ることになり、死体が埋められそうな場所を探す。
まともな道具がないから、落ちている木の棒で穴を掘った。
時計を見ると、既に大きく2時を回っている。四国に着くのは早朝になりそうだ。
墓穴を掘りながらわしは考え続ける。
一体誰と戦って、誰を殺したんだ?
どこでアイテムを手に入れたんだ?
消えた爆砕符と魔弾銃の弾丸は何に使ったんだ?
そもそも、まもりが申告した魔弾銃の残弾情報は正しいのか?
まもりと遭遇したとき、何があったんだ?
誰に殺されたんだ?
まもりはゲームに乗っているのか?
教えてくれキルア、一体お前は何を見たんだ?
キルアは何も語らない。
死体は何も語らない。
【滋賀〜京都府・三重寄り/黎明】
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:中度の疲労。殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)
右肩の軽い脱臼。不退転の決意。
[装備]:魔弾銃@ダイの大冒険・魔弾銃専用の弾丸(空の魔弾×7、ヒャダルコ×2、ベホイミ×1)@ダイの大冒険
[道具]:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
装飾銃ハーディス@BLACK CAT、荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
[思考]:1、不明
2、両津達4人に着いていく。大量殺戮のチャンスを狙う
3、殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない
4、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)
5、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害
6、セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う
【リョーマ捜索隊】
共通思考1・四国に向かう(早朝に到着予定、麗子が足手まといになって遅れる可能性あり)
2・仲間が死んでも泣かない(麗子についてはこの思考の優先順位はあまり高くありません)
3・出来る限り別行動はとらない
4・リョーマを探す
5・ハーデスに死者全員を生き返らせさせる
【両津勘吉@こち亀】
【状態】睡眠不足による若干の疲労 額に軽い傷
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式×2(二食分の食料、水を消費)両さんの自転車@こち亀(チェーンが外れている)
爆砕符×2@NARUTO、中期型ベンズナイフ@ハンター×ハンター、焦げた首輪
【思考】1・姉崎まもりを警戒
2・鵺野先生が心配(一刻も早く四国に向かいたい)
3・仲間を増やす
4・三日目の朝には全員で兵庫に。だめなら琵琶湖に集合する。
5・主催者を倒す。
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】憔悴、中度の疲労(行動に支障あり)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料、水を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・リョーマが心配
2・キルアを止められなかった自分を再度責めている
2・藍染の計画を阻止
3・主催者を倒す
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】クライスト@ブラックキャット
【道具】荷物一式(2食分消費)、トランシーバー、出刃包丁
【思考】1・姉崎まもりの監視
2・四国の死守(一刻も早く四国へ向かいたい)
3・公主を守る
4・ポップを探す
5・主催者を倒す
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】ペガサスの聖衣@聖闘士星矢、食料を8分の1消費した支給品一式
【思考】1・弱者を助ける
2・藍染の計画の阻止
3・藍染を倒す
4・主催者を倒す
※まもりの虚言は以下の通りです
1・キルアが自分を一方的に襲った
2・自分の支給品は魔弾銃である(ベンズナイフにしなかったのはイメージ悪化を恐れてのこと)
3・魔弾銃の残弾の中に『ベギラマ』が入っていた
4・自分は魔弾銃以外に武器を持っていない(他のアイテムは全て隠している)
5・顔に傷がある山吹色の道着の男に襲われた
6・自分はゲームに乗っていない
※太公望が指示し、ターちゃんが動物達に頼んで集めさせた『情報』は両津が手に入れました。
鳥達は日本中を観察し、『あるもの』を発見しました。
※キルアの死体は埋葬されました
>>254の「クルックー、クル、クルル・・・・・・」 を「早速、お前が見てきたものを教えてくれ!」に変更
>>256下から五行目と
>>257上から三行目
>>258上から十五行目
>>263上から四行目の
『ベギラマ』を『メラミ』に変更します。
CGI氏、お手数かけます
最終形態 ―超ウルフ人SPARKING Neo―
それは、至ってシンプルなものだった。
ヤムチャの姿は普通の人間のようなものに見える。
タカヤは攻撃の手をやめない。
弐の絶技―ジ ャ ン プ 殿 堂 ネ ク ロ マ ン サ ー
タカヤの号令と共に、地獄からブウ、DIO、悟空といった猛者達が召還された。
しかし、体はゾンビと化している。
「堕ちたな…こいつらも」
ヤムチャは、そう言いながら静かに戦闘態勢に入った。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:興奮状態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
>>176 9行目
>そこまでしても、相手を仕留めれる確立は9%。
↓
そこまでしても、相手を仕留められる確立は9%。
>>180 9行目
>「ダメだ。君はどこかに非難していろ」
↓
「ダメだ。君はどこかに避難していろ」
>>195 下から2行目
>【道具】弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
↓
【道具】弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある) 手帳
>>231 下から8行目
>志々雄を狙った一撃は、庇うように身をねじ込ませた、たけしを右腕を切り裂いていた。
↓
志々雄を狙った一撃は、庇うように身をねじ込ませた、たけしの右腕を切り裂いていた。
>>242 下から5行目
>「いや、気にするな。君せいじゃないさ」
↓
「いや、気にするな。君のせいじゃないさ」
>>249 下から16行目
>[道具]:荷物一式 八人分(食料、水二日分消費)
↓
[道具]:荷物一式 八人分(食料、水二日分消費) 手帳、コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾1)
に修正。指摘してくださった方々に感謝。
修正箇所が多く、お手数かけて申し訳ない。
>>249 最下行
>【残り48人】
↓
【残り47人】
忘れてた、残り人数も修正。
だからよー確立じゃなくて確率だっつってんだろ。
せめて義務教育くらい終わってから書けよバカ。
↑はやく就職しろ、厨房
「猫……にゃん」
「にゃあ?」
「にゃあ」
「みゃー」
「みゃ、みゃー」
「みゃーみゃーみゃー」
「……にゃあ」
「にゃ?」
「にゃにゃにゃ」
「にゃ!」
「うにゃあ〜」
「にゃにゃっ」
「にゃっにゃ」
「にゃみゃ」
「みゃにゃ」
「みゃにゃ?!」
「――すっげぇ〜! イヴ、おまえ猫と話ができるのか!?」
「ううん。できない」
くろ、とら、しろ。
三匹の猫が並び、その正面に一人の少女が座っていた。脇では麦わらの青年が驚いた顔をしている。
「にゃあ」
「にゃあ」
イヴが猫に向かって「にゃあ」と話しかけると、三匹中のいずれかが決まって鳴き返した。
もちろんイヴに動物と会話をする能力はない。
成り立っているように思える会話(少なくともルフィはそう思った)も、実際のところは単なるお遊びに過ぎないのだ。
その光景を、イヴから若干離れて見つめる瞳が一つ。
(ああ……イヴぅ……おまえはやっぱりいつもどおりのイヴなんだな)
イヴの保護者ともいえる存在、スヴェン・ボルフィードである。
殺し合いのゲームに振り回されて一日。やっと再会することが出来た家族の普段どおりの姿に、スヴェンは影ながら涙する。
人がたくさん死んだ。
その中には、親しかった人間や嫌いだった人間、色々な人種がいることだろう。
そしてその死を知って、なんらかの変化を遂げてしまった人間もそう少なくはない。
例えば、奇行に走ってみたり。
例えば、絶望して自ら潰れてみたり。
例えば、自分も殺人者になってみたり。
弱い人間は死に、強い人間でも何かが変わってしまう。
そんな世界で、イヴはいつも通りの『無表情な笑顔』を見せてくれた。
スヴェンにとっては、それだけで満足だった。
馬鹿そうな表情のくろは、トレインに似ている。
渋めの雰囲気を漂わせるとらは、スヴェンに似ている。
高飛車そうなしろは、リンスに似ている。
三匹の猫たちと対峙するイヴは、密かにそう感じていた。
日本、という国にどんな種類の猫がいるのかは知らないが、これらの猫たちはイヴのいた世界でもありふれて存在していた種類である。
くろととらは雑種としても、高飛車そうなしろは、どこかの高級マダムが飼っていそうな品性を漂わせていた。毛並みも艶やかだ。
とても野良には見えない。だって首輪がついている。
どこかから逃げてきたのだろうか。だとしたら、しろは誰か他の参加者の飼い猫だろうか。
このゲームはペットの持込がOKだったのだろうか。そんなどうでもいいことを考えながら、イヴは三匹の野良猫たちと戯れていた。
――場所は東京の外れ。空を見れば、既に朝日が昇っていた。
探し人であるニコ・ロビンは見つからない。
だが収穫はあった。イヴとスヴェンの再会が正にそれだ。
他にも、ルフィや世直しマンら心強い仲間たちの加入。これによる捜査効率の向上。
こちら側で見つけることは出来なかったが、世直しマンたちは既にニコ・ロビンを発見しているかもしれない。
希望という光は捨てない。
常に希望を見つめろ。
そうすれば、おのずと道は開かれる。
もうすぐ集合時間である午前六時――第五放送が始まる。
スヴェンたちは集合場所である東京タワーを目指しながら、レストランで待機しているはずのトレインと合流することにした。
イヴとの再会は、トレインにとっても喜ばしいことであるはずだ。
トレインとスヴェンとイヴ。またこの三人で、掃除屋の仕事が出来る。
スヴェンは喜んだ。
歩き回っている間も、微笑みが絶えることはなかった。
でも、心の隅では小さな蟠りが残っている。
それは、"ニコ・ロビンのことではない"
「しっかし、この島にいる動物たちはなんかみんな普通だな。もっと珍しいのとかいねーのかなぁ」
「珍しいのって?」
三匹の猫相手に不満げな表情で睨めっこをするルフィに、イヴが尋ねた。
「そりゃあまだ誰も見たことのないようなヤツさ。船よりでけー魚とか、めちゃくちゃ足の速いカルガモとか」
「そんなの本当にいるの?」
「いるさ。"偉大なる航路"には、俺がまだ見たこともねぇような生き物がウジャウジャいやがるんだ」
「ぐらんどらいん……」
興味深げにルフィの吐いた単語をリピートしてみるイヴ。
そういえば、ルフィは世界をまたに駆ける海賊だったのだ。
「聞きたいか? "偉大なる航路"の話」
「うん」
ロビン捜索の道中、イヴはルフィの語りきれないほどの冒険譚を聞いた。
様々な海賊達との抗争、海軍との熱戦、時には一国を救ってみたり、時には空を上ってみたり。
〜〜〜〜〜
人間の言葉を喋るトナカイの話も聞いた。医者なんだそうだ。果たして人間の医者なのか、それとも獣医なのか。
お金が大好きな航海士の話も聞いた。その人の特徴を聞くごとに、なんだかリンスに似てるな、と思った。
世界最強を目指す剣士の話も聞いた。三刀流らしい。両腕に二本持って、もう一本は口に咥えるんだそうだ。あんまり強そうじゃない。
やたら女好きなコックの話も聞いた。コックなのにすごく強いらしい。それでいて料理もうまいらしい。でも煙草を吸いながら料理をするらしい。なんか嫌だ。
他にも、ルフィさんと一緒にこの世界に連れてこられたロビンさんにウソップさん。
海賊ってもっと人数が多いものって思ってたけど、意外と少ない。でも、ルフィさんの仲間たちは誰も彼も個性的な人たちのようだ。
「私も見てみたいな……"偉大なる航路"」
「なら、連れてってやるよ」
「本当?」
「ああ、本当だ。もちろんウソップやロビン、スベンと、トレインって奴も一緒だ。だから、早くこんなとこから出ようぜ。それで、みんなで海に出るんだ!」
「……うん」
道中、何気なくルフィさんとこんな約束を交わした。
私の知っている海よりも、もっと素敵な海。
…………いったいどんなところなんだろう?
〜〜〜〜〜
やがて、東京タワーに到着した。
さすがは日本を尊重する建物だけあり、その真っ赤な三角錐型の構造は、初めて見る者の声を唸らせる。
「おおぉぉぉ〜! でっけー!! イヴ、スベン、さっそく上ってみようぜ!!」
よく馬鹿は高い所に上りたがると言うが、ルフィもそうなのだろうか。
一目散に駆け出し、東京タワー内部を激走していく。
中に危険人物がいないという保証もないのに、なんと軽率なことか。
だがしかし、それがルフィの長所でもある。
「お〜い、イヴ〜スベン〜! おまえらもさっさと来いよぉー!」
中から、早くもルフィの声が反響して聞こえてきた。
スヴェンはルフィのアグレッシブすぎる行動に溜め息を吐きながらも、心の中で安堵していた。
ルフィと一緒なら、イヴは大丈夫。
不思議な安心感があった。だから、迷いはしなかった。
「イヴ、おまえはルフィと一緒にここで待ってろ。俺はトレインを迎えにいく」
「一人で? それなら私も……」
「……散々歩いて疲れただろ。なに、合流地点はそう遠いところじゃない。万が一にも危険なことなんて起きやしないさ」
スヴェンは優しく微笑むと、ポンとイヴの頭を撫でた。
子ども扱いされるのは尺だが、今は嫌な気分はしない。
やっと再会することが出来た仲間に、イヴは絶対の信頼を置いていたのだ。
だからこそ、心配で、不安で――この予感が拭いきれなくて。
「じゃあなイヴ。この建物から見下ろす景色はたぶん絶景だぜ。しっかり堪能しておきな」
「スヴェン……」
頭から手を放し、去ろうとするスヴェンを、イヴが呼び止めた。
行かないで、とも、私も一緒に行く、とも、言わない。
ただ一言。
「私たち……『仲間』、だからね?」
スヴェンの背中に向けたその言葉は、何を意味するのか。
発言者のイヴでさえ、よく分からない。
だだ、返答として一言。
「あたりまえだ」
と言い残して、スヴェンの背中は遠ざかっていった。
〜〜〜〜〜
これは、スヴェンがイヴと再会し、ルフィを絡めての三人一組でロビン捜索に躍り出た時のこと。
『喋るな』
「――!?」
スヴェンの耳に、妖艶な女の声が入ってきた。
瞬時に後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
「スヴェン? どうしたの?」
「い、いや。なんでもない」
並行して歩いていたイヴが、スヴェンの不審な行動に首を傾げた。
『あら、近くにお仲間がいるのかしらぁん? だとしても、わらわの声が聞こえていることは喋っちゃ駄目よぉん。これは、わらわとあなただけの秘密の会話なんだからぁん』
「……何者だアンタ。いったいどこから話しかけてる?」
声は聞こえど姿は見えず。
スヴェンはイヴとルフィに気づかれぬよう、極力声を抑えて謎の女との会話を続ける。
『わらわの名前は蘇妲己。今は東京って街から、ある便利な支給品を使ってあなたに話しかけているのぉん』
(……離れた参加者と交信することが可能な支給品? 超常的な技術が組み込まれた無線機かなんかか?)
突然の声に驚きは隠せないが、状況は受け入れた。
この直接頭に話しかけてくるような感覚は、『放送』に似ている。だとすれば、その支給品とやらは主催者に関係のあるものだろうか。
「……用件は?」
『あなたと二人きり……いいえ、"三人"でお話がしたいのぉん。今から会えないかしらぁん?』
「……俺は今埼玉にいる。アンタが東京にいるってんならすぐにでも会えるが……俺があんたに従う理由はなにもないぜ」
普段、女性に対しては紳士的なスヴェンでも、さすがにこの女は怪しすぎた。
声に警戒の色を織り交ぜ、女を牽制する。目的は分からないが、見ず知らずの女を疑わないほどスヴェンは馬鹿ではなかった。
『理由ならあるわよぉん。さっきも言ったでしょう? "三人"でお話がしたいって』
「三人……!」
改めて言われたその人数に、スヴェンは気づいた。
謎の女がスヴェンを知る理由、謎の女が今いる場所。それらを掛け合わせれば、答えは自ずと見えてくる。
『場所は、"東京ドーム前"。期限は"次の放送"まで。じゃあ、また後で会いましょぉん。"相棒"が待ってるわよぉん』
そこで、謎の女の声はプッツリ途絶えた。
(東京……それに相棒! あの女は、トレインのことを知っている!?)
トレインは東京都内のレストランで待機中のはず。だとしたら、妲己はいつトレインに接触したと言うのか。
いや、それ以前に。
(彼女が友好的だというなら、こんなまどろっこしい方法を取る理由がない。一人で来いと言ったのが、"罠"である証拠だ。しかも、"餌"はあのトレイン……こいつぁヤバそうだな)
掃除屋の本能とでも言おうか。スヴェンは姿も知らぬ妲己の危険性を会話だけで察知し、息を呑んだ。
罠と分かっていてそれに乗るのは、馬鹿のすることだ。それでも。
(行くしかねぇだろうが……畜生)
相棒の命を天秤にかけられて、黙っていられるはずもない。
せっかくイヴと再会できたのに。
せっかく掃除屋家業復活といけるはずだったのに。
「チッ……」
「?」
これが、東京タワー到着数時間前の出来事。
イヴはこの時、確かにスヴェンの舌打ちを聞いた。
〜〜〜〜〜
太公望が死んだ。
「困ったわぁん……太公望ちゃんの代わりを勤められる人物なんて、早々いないっていうのにぃん」
太公望が死んだことで、封神計画の行く末はどうなってしまうのか。
妲己の知る歴史は、既に闇の中へと消え去ってしまったのかもしれない。
「由々しき問題……ではあるけど、"わらわの"目的には支障ないかしらぁん? まぁ、やっぱり一番大事なのは自分の身よねぇん」
放送を聞いた妲己は、心底そう思った。
百人以上いた参加者は既に五十人あまりにまで減った。戦いはこれからも激化していくだろう。
そんな中で、か弱い女が生き残るすべと言えば何か。
「たくましいお仲間に守ってもらう……やっぱりこれが一番かしらぁん」
だが、そのお仲間を見つけるというのがまた難しい。
この世界で妲己より強い人物など希少だろうし、ラオウのようにそりの合わない人間も多いだろう。
「誰か、"戦力"になりそうな頼もしいお仲間はいないかしらぁん……よかったら、誰か紹介してくれなぁい? ね、『綺麗な人間さん』」
「…………」
妲己の傍らには、一匹の迷い黒猫がいた。
そこにかつての飄々とした笑顔はなく、またかつての鋭い殺気もない。
黒猫は、完全にどこかを彷徨っていた。
〜〜〜〜〜
リンスレット・ウォーカーが死んだ。
女だてらに泥棒家業を営み、トレインとは何度か仕事を共にしたこともある。
言うなれば、仲間であるはずの女性だった。なのに、感傷はなにもない。
トレイン・ハートネットはここまで冷たい男だったのだろうか。分からない。今は何も考えられない。
今は、ただ。
目の前の妖艶な女だけが、味方に思えた。
〜〜〜〜〜
妲己の当初の目的は、脱出。
しかし、今となってはそれも難しくなった。
首輪解除の方法も未だ掴めず、トレインの心臓を一度止め、核金を使って再度活動させると言う荒業も無に終わった。
主催者の裏を書くことは難易度A。首輪を解除し、脱出するともなれば、難易度はA+。
では、『脱出』と『優勝』を天秤にかけたら?
どう考えても、『優勝』の方が確実性があった。
もはや妲己には殺されて困るような参加者もいないし、生き残る自信もある。
それに、ご褒美の一人蘇生。十中八九嘘だろうが、もし本当なら太公望も蘇生できる。
メリット面から見ても、『脱出』より『優勝』の方がおいしい。そして簡単だ。
「どちらにしても必要なのは仲間……わらわの仲間になってくれる、素敵な騎士が必要だわぁん」
幸いなことに妲己の手元には、仲間を作るのに有効なアイテムがある。
『交信』のカード。L、もしくは太公望との接触を果たすためのキーカードとして温存してきたが、使うなら今が絶好の機会だった。
交信相手は妲己の仲間に相応しい強さ、使い勝手の良さ、そして目的を持った人物。
この時点で完璧脱出派のLは除外される。なら、他に候補は誰がいるだろうか。
そこで思いついたのが、トレインの仲間だった。
話を聞けば、彼の相棒というスヴェン・ボルフィードは東京近郊で人探しの最中、それに女性に優しい紳士的な性格の持ち主だという。
女性に優しく紳士的。パーフェクト。なんと魅力的な人物だろうか。
「まぁ……もしお話がうまくいかなくても、その時は参加者が一人減るだけだしぃ……トレインちゃんみたいに、このテレビを見せるっていうのもおもしろいかもねぇん」
脳内で計画を構築した妲己は、『交信』のカードを天に翳し、高らかに宣言する。
「交信(コンタクト)使〜用(オ〜ン)! 対象、『スヴェン・ボルフィード』ちゃんよぉん」
これが、妲己側の数時間前。
〜〜〜〜〜
「あんたがソダッキって人か?」
「そうよぉん。よく来てくれたわねぇん。スヴェンちゃん」
「参ったな……まさか相手がこんな美女だったとは」
巨大な半円形の建物、東京ドームをバックに、妲己とスヴェンは顔を合わせた。
一方は白のスーツを着込んだ紳士的な立ち振る舞いの男。
一方は露出の高い服で男を惑わそうと画策する女。
スヴェンの妲己への印象は決していいものとはいえなかったが、それでも美人には敬意を払いたい。
この女性がトレインを餌に自分をおびき出したなど――考えたくはなかった。
「単刀直入に聞こうか。見ず知らずのアンタが俺をここに呼んだ理由はなんだ?」
「そんな怒った顔をしないでぇん。わらわはただ、仲間が欲しかっただけなのよぉん」
「そりゃ脱出を目的とした仲間のことか? それとも、自分が優勝するために捨て駒になってくれる仲間のことか? それに……」
素性の知れない美女に対し、スヴェンはあくまで鋭く、厳しく言葉を紡ぐ。
「俺のことを――いったい誰から聞いた?」
「――あなたの"相棒"よぉん」
返答は、間髪いれずに返ってきた。
スヴェンにとっての"相棒"という存在と言えば、もはや一人しか当てはまらない。
「さぁ、出てきなさぁい――トレインちゃん」
妲己に呼ばれ、物陰から姿を現したのは――黒猫にして掃除屋、トレイン・ハートネット。
「なんてこった……」
どうやら黒猫は、えらく傲慢な飼い主に拾われてしまったらしい。
一目見れば分かる。相棒の、変わり果てた惨状に。
赤く充血した目と、何かに怯えた表情。
そして困惑。
焦点の合っていない目は、スヴェンを見つめ。
「あんた、トレインに何をした」
「おもしろいものを見せてあげただけよぉん。ね、トレインちゃん」
妲己が怪しい手つきで、トレインに身体にまとわりつく。
が、トレインはそれを何も思わず、されるがままに棒立ちしていた。
自由気ままな黒猫であるはずのトレインの心が、女狐に掌握されつつある。
「……何がトレインをそんな風にさせたのかは知らないが、あんたの狙いは分かったよ」
「あらぁん?」
「ようするに、俺もトレインと同じ風になれってことだろう? そんな操り人形みたいな状態にな」
「あら、それはちょっと酷いわねぇん。わらわの仲間と言っても、ちゃんと人権はあるわよぉん。そ、れ、にぃ、決めるのはわらわではなくてトレインちゃんよぉん」
「なに?」
妲己は微笑し、トレインから手を放す。
「…………」
解放された黒猫は、何も喋らない。
「…………」
ただ一点に、相棒の姿を見据える。
「…………」
自分のよく知る人間が、そこにいた。
「…………」
共に苦楽を歩んできた相棒。なのに。
「…………」
相棒からは、嫌な印象しか感じ取れない。
「…………」
汚いとしか思えない。いらないとしか思えない。
「…………」
だって。
「…………」
相棒は、
「…………」
人間だから。
トレイン・ハートネットがホイホイカプセルを放る。
トレイン・ハートネットがバズーカ砲を構える。
トレイン・ハートネットが引き金に指をかける。
相棒が――相棒を狙う。
「――マジなのか、トレイン」
トレイン・ハートネットが引き金を引く。
相棒が、相棒を消そうとした瞬間だった。
〜〜〜〜〜
俺は何をした?
たった一発残されたウルスラグナの弾丸。それを使った?
幽助の仇のラオウにでもなく、杏子を殺した野郎にでもなく――相棒であるはずのスヴェンに?
違う。仕方がなかったんだ。
だってあいつは人間だったんだ。相棒とはいえ、人間なんだ。
畜生、なんでだ。
殺し屋だった俺に、自由を教えてくれたサヤ――日常をくれたスヴェン――そいつらみんな人間なのに。
人間は汚い。
相棒も。友達も。恋人も。親戚も。同僚も。みんな、みんなきたねぇ。
みんな人間だから。
これは殺し屋としての本能なのか?
それとも掃除屋としての本能なのか?
俺は――ただ目障りな人間を排除しようと――いつもどおり掃除屋の仕事をしようとしただけだ。
そうだと言ってくれ――
〜〜〜〜〜
爆音と爆炎の火中から、困り果てた紳士が顔を出す。
「やれやれ……手元が鈍ってるぜトレイン。ま、オリハルコン製のバズーカを片腕でぶっ飛ばそうとしたんだ。さすがのブラックキャットも、狙いを外すくらいはするか」
飄々とした態度で炎の道を練り歩くスヴェン。
体中に火傷の痛みが走ったが、直撃はしなかった。まだ動ける。
もちろん、バズーカを放った相手もまだ動けるだろう。ならば、決着(ケリ)をつけなければならない。
敵として、相棒として。
「スヴェン……俺は……」
イメージが、重なる。
心強かった頼れる相棒と、黒の章で見た汚らしい人間の姿が。
どちらが本当の人間の姿なのか。
分からない――いや、トレインの本能は既に感じ、結論を出していた。
だからこそウルスラグナ最後の一発を放った。
もっとも、その本能が本当に――自由気ままな黒猫のトレインのものなのかは分からない。
「ウルスラグナ……残弾は一発だったな。ようするに、おまえお得意の重火器はもう打ち止めってわけだ。それでも俺に向かってくるのか?」
「…………」
トレインは何も喋らない。
困惑しきった表情で、今の自分と、今までの自分と決別を図っている最中だった。
「どうした? 天下のブラックキャット様は、銃がねぇと尻すぼみしちまうような臆病者だったのか?」
「…………」
「……仕方がねぇな。ほらよ、こいつを使いな」
何を思ったかスヴェンは、懐からホイホイカプセルを取り出し、中に収納してあったショットガンを放り投げた。
アスファルトに落下し、音を立てるショットガンは、滑るようにトレインの足元へと吸い込まれていく。
「残弾は19。おまえと別れてから一発も減ってないぜ」
「…………」
トレインは無言のままショットガンを拾い上げ、残弾を確認する。スヴェンは嘘を言っていない。
だが、行動の真意が読めない。銃を持ったブラックキャットがどれだけの脅威か、いつも身近にいたスヴェンが知らないはずはない。
まさかそれで自分を殺せとでも言うつもりだろうか。
「勘違いすんなよ? 俺は"相棒"相手に銃を向けるような男じゃない。ただそれだけのことだ。それによ……」
スヴェンは上着を脱ぎ、帽子を取る。
シャツ一枚となったスヴェンは袖をまくり、両拳を構えてトレインに向き直った。
「馬鹿の目覚まさせるにゃ、直接ぶん殴ってやるの一番だしな」
スヴェンは引き下がらない――真っ向から、おかしくなってしまった相棒と対決するつもりだった。
それに対しトレインは、なおも困惑の表情。
これまでの生活とその記憶。黒の章の映像。未だ両者が鬩ぎあっている。
〜〜〜〜〜
(ウフフ……さぁトレインちゃん。あなたは本当に弱い人間なのかどうか、わらわに見せてぇん)
傍観者である妲己は、ショーかなにかを楽しむように、影から二人の姿を見つめていた。
全ての元凶である女狐を止められる者はいないのだろうか。
「――あなた、血の臭いがするわ」
「あらぁん?」
妲己が振り向くと、そこには金髪の少女が一人。
明らかな敵意を滾らせた瞳で、妲己を睨みつけている。
妲己も知らなかった、三人目の掃除屋。
あの大魔王を谷底に落とし、一日目を切り抜けた立派な強者だった。
「あらあら……これ以上おもしろくなるっていうのぉん? わらわ困っちゃうわぁん」
〜〜〜〜〜
「おらぁ!」
乱暴な気合の一声と共に、スヴェンが拳を繰り出す。
愚直だがスピードのあるそれは、未だ何かを迷っているようなトレインの頬面に当たった。
反動でよろめくトレイン。スヴェンは相手が体制を整える間もなく連撃を叩き込む。
顔面、ボディ、ヒットがそのままダメージへと変換される箇所を狙って、スヴェンは確実にトレインを追い詰めていく。
そこには、相手が相棒だから、といった容赦の心はない。
相手を敵として。相手を相棒として。相手をトレインとして。
スヴェンは殴る。
ストレート、フック、アッパー。スヴェンは特別格闘技が得意というわけではなかったが、繰り出す攻撃はおもしろいように命中していた。
それはトレインも同様に格闘技が得意というわけではないからか。しかし、彼とて名うての掃除屋。殴られっぱなしでいるはずがない。
なのに、トレインは反撃をしようとはしなかった。地に放られたショットガンにも手をつけず、棒立ちのまま。
「どうしたァ! 本気で腑抜けちまったのかトレイン!!」
違う。
トレインが本当に腑抜けてしまったのだとしたら、あのウルスラグナの一撃でスヴェンは死んでいたはずだ。
トレインの中にまだ理性が残っているから、スヴェンは汚い人間だが、同時に大切な仲間でもあるから。
だからこそ、トレインは抗っているのだ。黒の章の呪縛から。
(痛ぇ……)
汚らわしい人間が、自分に暴行を加えている。
守らなければ。自分を。
消さなければ。人間を。
汚くて、醜くて、汚くて、醜い人間を。
「ス、ヴェン……」
頭では分かっているのに、手が出ない。
何かが邪魔をする。
これはいったいなんだ?
何が――
――トレインくん
記憶の片隅に残っていた声が蘇ってくる。
それは、トレインが殺し屋を辞めた原因でもあるミナツキ・サヤの声だった。
彼女との出会いがあったから、スヴェンに出会えた。
スヴェンとの出会いがあったから、イヴやリンスに出会えた。
サヤは、始まりだった。
みんながいたから、今の自分がいる。
(……違う)
トレインは、胸中で熱く叫ぶ。
決して表には出すことは出来ない、素の感情を。
(こんなのは、俺じゃねぇ)
人間が汚いって?
そんなものは、殺し屋時代に嫌と言うほど痛感してきた。
それでも今のトレインがあるのは、『汚くない人間たち』のおかげじゃないか。
(俺は……自由気ままな黒猫になったんだ……クロノスにも、あんな訳のわかんねーテレビなんかにも縛られたりはしねぇ!!!)
黒猫の目が、大きく開いた。
開眼。トレインは、いつの間にかスヴェンの頬面を思い切り殴り飛ばしていた。
「ッつ……このヤロー……! トレイン、テメーいい度胸じゃねーか!!」
「るせぇ……ガミガミやかましいんだよスヴェン。こちとら重傷人だぞバーロー」
トレインの態度は起きぬけの低血圧な女性のようで、それでいて殺気だけは鋭く尖っている。
見据える先は己の相棒、スヴェン。今まで殴られてきたツケを払おうと、自らも拳を繰り出す。
「片腕一本で俺様とやりあうつもりかよ、この馬鹿は!」
「うるせぇ! ハンデだハンデ!」
傍から見れば壮絶な殴り合いに思えるが、本人たちにとってはこれは些細な日常に過ぎない。
仕事がなくて、金がなくて、食うものがないとよくケンカした。
ただでさえ大食漢なトレインが、あれが食べたいこれが食べたいと贅沢を言うたびに、スヴェンは激怒した。
それでいてイヴには甘やかして本を買ってやったりするものだから、ケンカになるのも当然だった。
つまらないことで殴り合って。
つまらないことで罵り合って。
でも、
これが相棒なんだ。
これが繋がりなんだ。
こらが、人間なんだ。
殴りあう二人は笑顔で、
誰がどう見ても、
バカ、だった。
〜〜〜〜〜
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
いったい何分間、醜い死闘を繰り広げていただろうか。
互いに満足いくまで殴りあったトレインとスヴェンは、二人揃って大の字で横になっていた。
服は土ぼこりに塗れ、顔は歪み、歯もいくつか欠けている。殴り合いの壮絶さは伝わるだろうが、みっともないことこの上なかった。
「…………迷惑かけちまったな、スヴェン」
「…………おまえらしくもねぇ。いつものことだろうがよ」
「ちげぇねぇ」
全身から『やりきった感』を放つ男二人は、その汚れきった顔で笑っていた。
正しく、バカ二人。
「フッ、ハハハ……」
「ヘッ、ハハハ……」
次第に声に出して、笑う。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
本当に、馬鹿な二人だった。
馬鹿は馬鹿なりに、人を楽しませるものである。
「美しいわぁん。これぞ正しく、男同士の友情って感じぃん?」
二人以上に満面な――それでいて妖艶な――笑みを浮かべて、元凶である妲己が姿を見せた。
「てめぇ……!」
心臓を抉られた痛みと不快なものを見せられた怒りが、今になって蘇ってきた。
それは、黒の章による呪縛が解けたことを意味する。
もはや妲己からは、憎しみしか湧いてこない。
「お見事よぉん、トレインちゃん。あなたはあのテレビなんかには負けない、強い人間だったのねぇん。で・もぉ……」
妲己がまた怪しく微笑み、地を這い蹲る二人に激情を売る。
自分の後方に隠していた、それを見せ付けることで。
「残念だけど、わらわの仲間としては『失格』よぉん」
「――イヴ!?」
妲己の手には、ボロボロに傷つき、疲弊したイヴの姿があった。
綺麗だった金色の髪を乱暴に掴み上げ、二人の方へ放る。
地に叩きつけられ小さく喘いだイヴは、必死に声を絞り出して弁解する。
「バカヤロー! イヴ……おまえ、なんでこんなところに来ちまったんだよ!」
「だって……スヴェンが何か隠してるの、見え見えだったから……。でも私……結局なにもできなかった」
「その根性だけでも立派なもんさ、姫っち」
「トレイン……久しぶり。相変わらず……間抜けな顔」
「うっさい。こりゃあスヴェンのせいだ」
束の間の団欒。
やっとフルメンバーが揃った掃除屋は、この再会を大いに喜んだ。
この再会を齎してくれた妲己には、感謝すべきなのかもしれない。
だが、この関係を壊そうとしているのもまた妲己だ。
それを無視することはできない。
「どうだトレイン。あの美女に"不吉"は届けられそうか?」
「スヴェン……おまえブラックキャットを便利な死神かなんかと勘違いしてんじゃないか?」
今、トレインたちの手元に武器はない。愛銃のハーディスも、アタッシュウエポンケースも、なにも。
地には弾切れのウルスラグナと、残弾数十分のショットガンが転がっていたが、距離は妲己の方が近い。拾っている間にジ・エンドだ。
ただでさえ怪我と疲労でいっぱいいっぱいの三名。いくらトレインが"]V"の刻印を持つブラックキャットだとしても、この状況ばかりはどうにも――
(――いや)
あった。妲己に"不吉"を届ける方法が、たった一つだけ。
だがそれには、スヴェン、イヴとの連携が必須だ。悠長に作戦を説明している暇はない。
どうにか、二人にトレインの考えを伝えなくては。勝機は、
「スヴェン、イヴ」
追い詰められた三人の筆頭、トレインが、スヴェンとイヴに語りかけた。
「俺を信じろ。自分に出来ることをやれ」
――――!
ただそう二言。
その二言だけで、三人は一つに繋がった。
「妲己! 俺はおまえに――"不吉"を届けにきたぜ!!」
トレインが瞬時に起き上がり、妲己に詰め寄る。
その間一秒未満。背中を二人の仲間に預け、駆ける。
「あらん」
妲己はそれに慌てることなく、適切な処置を取る。
死に掛けの人間が、満身創痍でつっこんできた。
どうするべきか。簡単である。
妲己の振るった打神鞭が巻き起こす風は、いとも容易くトレインの首を刈り取った。
(トレイン……おまえってヤツは……どこまでも抜け目のないヤローだぜ)
トレインの犠牲をものともせず、スヴェンとイヴの両名も駆け出す。
武器もなしに丸腰で。むずむざ死ににいくようなものだった。
(連携して攻めれば勝機があるとでも思ったのかしらぁん……浅はかねぇん)
妲己はやはり怯まず、振るった打神鞭をさらに振りかぶる。
今度の標的はイヴ。その後ろにはスヴェンが控えている。
二人で一斉に来ようが、一人一人連続してこようが関係ない。
妲己の実力の前には、掃除屋の連携プレーなど足元にも及ばない。
「疾ッ!」
妲己が巻き起こす風はイヴの腹部を捉え、トレインの首のようにスパッと切断――
(変身(トランス)――『盾』!)
――されなかった。
風刃が直撃する瞬間、イヴの腕が西洋風の盾に変化し、攻撃を防いだ。
「いやん」
驚きから、妲己に一瞬の隙が生まれる。
その隙を狙い、イヴが仕掛けた。
自らの髪を流れるナノマシンが体内で変換、再構築され、刃へと変わる。
剣のように鋭く尖ったイヴの髪は、妲己の身体を貫かんと狙う。
結果から言って、攻撃は命中した。
しかし、貫いたのは妲己の右肩。決定打にはならない。
それでも――イヴの役目は果たされた。
(さらに――変身(トランス)――!)
イヴの長い髪が幾重にも伸び、鎖に変わる。それらは刃が突き刺さった箇所を中心に、妲己に纏わりつく。
あっという間に拘束された妲己は、それでも慌てない。
相手の髪が自分の身体を縛っていると言うことは、相手もまた自分の身体から離れられないと言うこと。
「ごめんなさいねぇん」
おどけた声と共に、至近距離から風刃を叩き込む。
避けようもなく、また避けようともしなかったイヴの身体は、容易く切り刻まれた。
肉片がバラバラと崩れ落ち、次第に妲己の身体に纏わりついていた髪も解けていく。
だがその間、掃除屋最後の一人が、妲己の眼前に躍り出ていた。
「――トレイン、イヴ! やっぱおまえらサイコーだッ!!!」
何かを握り締めたスヴェンが、妲己の間近に。
この時点で結末は決定した。妲己は死ぬ。未来を見る必要もない。
それを知らぬ妲己は、無駄な足掻きと言わんばかりに、面倒そうな仕草で打神鞭を振るう。
それは確かにスヴェンを捉えるはずだった。
だが、
(『支配眼(グラスパー・アイ)』!)
本来なら避ける必要のないこの攻撃も、スヴェンは『支配眼』できっちり避けた。
掃除屋三人が、一人の美女に全滅したと言う事実を残したくなかったためか。
男としてのプライドか、掃除屋としての意地か。
定かではない。だが、この瞬間。
トレイン・ハートネット。
スヴェン・ボルフィード。
イヴ。
誇り高き掃除屋三人は、妲己に勝った。
〜〜〜〜〜
「あらぁん?」
目覚めると、そこは白一色の何もない世界だった。
すぐ近くに聳えていた東京ドームも、首なしの黒猫も、肉片をそぎ落とされた姫も、死に掛けの紳士もいない。
ここはどこなのか。彷徨う妲己は、一台のテレビを発見した。
「これは……霊界テレビかしらぁん?」
それは紛れもなく、妲己の持っていた霊界テレビ。
白い世界にポツンと置かれた一台のテレビには、黒の章ではなく、極一般的な映像が映っていた。
一人の女性が死ぬ姿である。
女性は向かってきた男性を殺そうと、武器を振るった。
だがその攻撃は惜しくもはずれ、ならば次の手を、と腕を動かした次の瞬間。
男性の手の中から、光が一閃。
爆発、だった。
映像はそこで一旦途切れ、次に映ったのは、焼け焦げた大地。
そこに死体の影はない。生きている者もいない。爆発の惨状だけが残っていた。
「あらあらトレインちゃんったら……あんな切り札を持っていたなんて、隅に置けないわぁん」
あの時、トレインが妲己に突っ込むと同時にスヴェンにパスした謎の物質。
あまりにも小さかったため、正体は分からなかったが、まさかこれほどの威力を持つ爆弾だったとは。
「ああ、そうか。つまりぃん」
そこで、妲己はあることに気づいた。
「わらわはあの爆発に巻き込まれて、死んでしまったということねぇん」
「――そうみたいだね、妲己さん」
声の方を振り向くと、左方に遊戯がいた。
「あらぁん? 遊戯ちゃんじゃなぁい。久しぶりねぇん。こんなところでいったいどうしたのかしらぁん?」
武藤遊戯――妲己が喰らい、死んだはずの少年が、そこにいた。
彼がいるということは、この白い世界は既に"あちら"の領域なのだろうか。
深く考える必要はない。全ては終わったことだ。それでも、単純に好奇心で気になった。
「――アンタが持っていた千年パズルが、ちょっとした奇跡を見せてくれたのかもな」
また声がしたので振り向くと、右方にもう一人の遊戯がいた。
通称闇遊戯――崩れた千年パズルの中に封印されていた古代エジプトの王、アテムの魂だった。
「また会えたね、もう一人の僕」
「ああ。千年パズルが壊れたおかげで、どうやら俺もおまえと同じところへいけるらしい」
かつて二人で一つの身体を共有し、絶対に断たれることのない絆で結ばれていた『二人の遊戯』が、再会を果たした瞬間だった。
「なんだかよく分からないけど、これでわらわも遊戯ちゃんたちと同じ脱落者ってわけねぇん……ちょっと残念だわぁん」
死の瞬間を明確に感じ取れなかっただけに、まだ自分が死んだという実感が湧かない。
だが目の前の霊界テレビの映像や、横にいる二人の遊戯を見る限り、これは事実なのだろう。
仕方がないが、やはり悔しい。
まさか、あんなところ死んでしまうとは。
あんなちっぽけな三人組に、命を落とされるとは。
「納得がいかないって顔だな、妲己」
「なんなら僕たちが教えてあげようか? 妲己さんが負けた理由」
「わらわが……負けた理由?」
「それは」「それは」
二人の遊戯は、声を揃えて言う。
「「あの三人の"結束の力"さ」」
――ああ、なるほどぉん……
結束の力。
遊戯や闇遊戯、城之内や杏子が固く信じ、誇示していた力。
――人間の一人一人の力は弱い。でも、束ねれば無限大に強くなるってわけねぇん……
そういえば、太公望の周りにもいつも人がいた。
だからこそ、趙公明を倒せたのかもしれない。
――わらわはただの人間じゃなく、太公望ちゃんみたいなタイプを三人も相手にしていたってわけねぇん……
それは恐ろしい。それに、死んでしまってから気づいたのでは遅すぎる。
――まぁ、これも地球の歴史の一つってことよねぇん……あっちに着いたら、太公望ちゃんに挨拶しとかなきゃん……
いつの間にか、二人の遊戯は消えていた。
先にあっちに行ったのだろうか。まあいい。また後であったら、ゲームの続きをしよう。
それに、
あの三人組ともまた、いつか――
〜〜〜〜〜
「すっげぇ〜! なんだこりゃぁ!!?」
半壊した東京ドームをバックに、ルフィは一人驚きの声を漏らしていた。
イヴにスヴェンを探しに行くから待機しているように言われていたルフィだったが、先ほどの轟音を聞きつけて、いてもたってもいられなくなったのだ。
周囲の大地はクレーター状に変形し、硝煙の臭いが蔓延している。
本来そこにあるべきはずだった四つの死体は『黒の核晶』による大爆発によって粉々に粉砕してしまっていた。
血の臭いも掻き消え、そこに掃除屋たちが奮闘していた記録は何も残されていなかった。
事情を知らないルフィは、ただただこの大きな爆発に感嘆するしかない。
彼が仲間の死を知るのは、あと数分のこと。
「にゃー」
東京ドームで巻き起こった惨劇を見つめる瞳が六つ。
最初から最後まで、一部始終を観戦していた三匹は、この劇の終了を確認して去っていく。
「にゃぁ」
するとどこから現れたか、去っていく三匹に一匹が加わった。
くろとも、とらとも、しろとも、違う。
綺麗な艶のみけ、それもまだ子猫だった。
これで、猫は四匹。
全員揃った猫たちは、別れを告げて帰っていく。
「にゃあ」
〜〜〜〜〜
ねこたちが家に帰っていくよ♪
あてのない旅をしながら、家に帰っていくよ♪
いつ着くのかなんて、誰にも分からない♪
だってねこは自由だから♪
気まぐれで歩いて、気まぐれで生きて♪
それでも帰っていくよ♪
家に♪
家族が待っている、あの家に♪
さあ帰ろう♪
『グッバイ・ブラックキャット』
【東京都・東京タワー/早朝(放送直前)】
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:両腕を初め、全身数箇所に火傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(食料半日分・スヴェンに譲ってもらった)
[思考]1、東京タワーで待機。世直しマン、ルキア、ボンチュー、スヴェン、イヴと合流。
2、ロビンを捜す。
3、"仲間"とともに生き残る。
4、悟空・自分の仲間を探す。
5、悟空を一発ぶん殴る。
※二日目午前五時三十分頃、東京ドーム周辺で大きな爆発が起こりました。
※トレイン、イヴ、スヴェン、妲己の荷物と死体は『黒の核晶』の爆発により大破しました。
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT 死亡確認】
【イヴ@BLACK CAT 死亡確認】
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT 死亡確認】
【蘇妲己@封神演義 死亡確認】
【残り43人】
漆黒の闇に包まれた四国の地にハイエナが一匹…
志々雄は、既に物言わぬ屍となったナルトらの荷物から支給品、食糧を根こそぎ強奪していた。
この世は所詮、弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬ。弱者は強者の肉になる運命なんだよ。
と、明治の世なら強盗殺人で死刑に値する行動をとりながら、全く罪悪感を感じていない。それどころかこの状況を楽しんでいるようにも感じられた。
ふと、乾の手帳に目が止まる。そこには今の惨状を予期していたかのような文章が書かれていた。最も、現実の被害はそれを遥かに超えるものなのだが…
「文章から考えるに、乾という奴は最後に俺を射殺しようとした小僧のことだな。
鵺野という奴は以前、俺が見逃した小僧に殺された男だな。
全く。こいつほどの阿呆はいねぇな。弱者は弱者らしく尻尾を巻いて逃げてれば殺されずに済んだのによ。
キジも鳴かずば撃たれまい、か。まぁいい。こいつらには仲間がいるみたいだ。
そのうちここに来るかも知れねぇな。よし、この悲壮感溢れる文章を俺がもっと面白くしてやるよ」
―――残念だったな。鵺野とかいう男はもう、この世にはいない。俺が殺したんだ。
おっと、言っとくが、俺はナルトとか言う男じゃねぇ。
俺の名は志々雄真実。かつて薩摩長州にその人ありと言われた維新志士だ。
もし、この俺を殺す勇気があるのなら奥州まで来い。俺はそこにいる。―――
これでよし。こいつらの憎しみは深まるはずだ。まぁ、夜明け前にこいつらがここに来ればこの手帳を見ることなく逝けるんだがな。
手帳の2ページ目に支給されたペンで文字を書くなり、志々雄は近くの草むらに腰を下ろし、横になる。
「さてと。だいぶ動いちまったからな。体のためにも少し休むとするか。」
―――3時間後―――
結局、両津とダイは四国には到着しなかった。正確に言えば、いくつかのアクシデントがあって、到着できなかったのだが。
瀬戸内海に2度目の陽が昇る。眩しい朝日とともに、剣士は再び目覚める。行く先は、現在活動可能な範囲で最北端である奥州。
「やはり来てねぇか。主催者の宿敵と一戦交えたかったものだがな。」
残念そうに呟くなり、強奪した沢山の武器をカプセルに戻し、腰には愛刀となった飛刀をぶら下げ、左手には篭手を装備し、本来た瀬戸大橋を渡った。
ちょうどその頃、ボウボウと、山陽道を蒸気機関車が通っており、その姿が志々雄の目に止まった。
「あれが百数十年後の乗りものかぁ?まるで明治の世と変わっていねぇじゃねぇか。やっぱり泰平の世は進んだ技術を生みださねぇな。それでも、歩いていくよりはマシかな?
発汗機能がないこの体ではやたら走って移動するわけにはいかねぇ。イザという時に満足に戦えないからな。
だが、汽車に乗ってれば寝ていても勝手に進んでくれる。こいつを利用しない手は無いな。」
そう言うなり、既に自分を追い越して行った汽車に凄まじい速さで接近し、驚異的な跳躍力で屋根に飛び乗ると、再び横になった。
汽車とは言え、たいしたスピードが出ているわけではない。人が走っているのと変わらない速度だ。超人的な脚力を持つ志々雄なら追いつくのは容易いことだ。
「どこまで続いているのかは知らねぇが、東海道の終点までは線路があるだろう。
そこまではゆっくり休ませて貰うとするか。なにしろ、昨日は殆ど休んでねぇからな。」
対主催者との対決で基地として機能するはずだった四国。太公望が最重要地点として考えていたその地には最早誰一人いない。
数時間後、それに気付く人が現れるかもしれないが…
ある島に5人の漂流者が足を踏み入れた。
途中で2人増え、7人になった。
そのうち4人は偵察に行ったきり、戻ってこなかった。
夕方になり、新たに3人の旅人が現れた。
また2人が出て行き、4人になった。
夜、1匹の猛獣と2人の人間が無人島にやってきた。
3人が食べられ、島には3人と1匹が残った。
深夜―――猛獣が牙をむき、1人が食べられ、2人になった。
そこへ1人の騎士と1匹の悪魔、1人の子供がやってきた。
旅人と騎士は力を合わせ、猛獣を倒したが、子供と一緒に悪魔に殺された。
悪魔が去った後、島には誰もいなくなった。
【岡山県/早朝〜朝】
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:全身に軽度の裂傷
[装備]:衝撃貝の仕込まれた篭手(右腕)@ワンピース、飛刀@封神演義
[道具]:荷物一式 八人分(食料、水二日分消費)
:青雲剣@封神演義、パチンコ@ONE PIECE(鉛星、卵星)
:ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険、キメラの翼@ダイの大冒険
:弾丸各種(マグナムリボルバーの弾なし) 、ソーイングセット、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]:1:第5放送を聞いた後、関東に着くまで休息。
2:長時間戦える東北へ向かう。
3:無限刃を手に入れる。
4:少しでも多く参加者が減るように利用する。
5:全員殺し生き残る
(乾の手帳は鵺野の死体の側に置かれています。)
>>302 志々雄の道具の中にコルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾1)
を追加します。
>>301を修正します。
太陽が昇り、夜とは違った中国地方が目の前に広がっていた。
その中でも志々雄の目を引いたのは見えなくなるまで遠くに延々と続いている線路と、粗末な駅のプラットホームだった。
「へぇ。俺が生きてる時代じゃ関東の方でしかお目にかかれなかった汽車が、ここではこんな田舎にも通ってるのか。
面白れぇ。どうせ急いで奥州まで行くこたぁねえんだ。
のんびり日本の景色を眺め、弁当でも食いながら行くとするか。」
対主催者との対決で基地として機能するはずだった四国。太公望が最重要地点として考えていたその地には最早誰一人いない。
数時間後、それに気付く人が現れるかもしれないが…
ある島に5人の漂流者が足を踏み入れた。
途中で2人増え、7人になった。
そのうち4人は偵察に行ったきり、戻ってこなかった。
夕方になり、新たに3人の旅人が現れた。
また2人が出て行き、4人になった。
夜、1匹の猛獣と2人の人間が無人島にやってきた。
3人が食べられ、島には3人と1匹が残った。
深夜―――猛獣が牙をむき、1人が食べられ、2人になった。
そこへ1人の騎士と1匹の悪魔、1人の子供がやってきた。
旅人と騎士は力を合わせ、猛獣を倒したが、子供と一緒に悪魔に殺された。
悪魔が去った後、島には誰もいなくなった。
DIOゾンビ、バーンゾンビ、拳王ゾンビなどが次々とヤムチャに襲い掛かる。
(こいつら…戦闘力が生前の頃にくらべて20倍ほど上がっているな。
だが、慌てるようなことじゃない)
ヤムチャはそんなことを思いつつ、両手をポンと叩いた。
ボカン、ズカン、ドカン!!
まるで、スイカのように破裂して行くジャンプキャラ達。
その半数が地獄へと舞い戻ることになった。
「ひ、ひぃぃ…」
怖気づいた拳王ゾンビが、逃げ出そうと踵を返す。
しかし、途中でタカヤと目があった。
「拳王君、『逃亡』という行為は、己の死を持って中和されることを教えておいたよね」
タカヤの目はどこまでもクールだった。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
「ちょ、ちょ、ちょぉぉぉっとLぅぅぅぅぅ!」
「な、なにやってるんですか!」
突然の状況に呆気にとられた二人が掴みかかるがLは別段抵抗もせずに支給品を調べている。
「いえ、ミサさん、セナくん。誤解しないでください。あれでいいんです。」
「いいわけないでしょぉー!藍染さんとんでっちゃったのよ!!ばひゅーーんって!!」」
ミサが胸倉を掴んで押しかかる。
「ええと、ですね。どう説明したものか・・・」
それを御す風も無くセナに目をやった
「・・・セナ君」
「・・・・は、はい?」
唐突に名前を呼ばれたセナがハッとして返す。
「セナくんも私と同じく藍染さんとは初対面だったわけですが…先程の会話から受けた彼の印象はどうでしたか?」
「え・・・と、特に・・・紳士的で優しそうな人だな、と」
「怪しいとは思わなかった?」
「ええ、まぁ・・・」
「これっぽっちもですか?おかしくないですかね?殺し合いのゲームですよ?
いくら紳士的な態度だったとはいえ、見ず知らずの他人を信頼し難いこの状況にも関わらず不信感を抱かなかった。」
「・・・えーと・・・でもそれはLさんとミサさんが知り合いみたいなので安心してたっていうか。ただ・・・」
「ただ?」
「少し、違和感は感じましたケド・・・」
「その違和感とはなんでしょうか?」
まるで禅問答の様だ。考え込むがセナは答えを得られない。
解答を求めるように気弱な少年は独特の上目遣いでLに目を遣った。
「完璧すぎるんですよ。彼は」
その完璧さからくる疑惑はLが夜神月を監視していた時に得たものとよく似ている。
そして事実、その直感が正しかったことはつい先刻のミサの失言によって証明された。
「だからって、それだけじゃ藍染さんがマーダーだって決め付けられないでしょ!!」
しかしミサは納得がいかないという風に激昂する。
「はい。確かに、それだけではマーダーと断定するには根拠に乏しい。その時点では可能性の枠を出ませんでした」
「だったら・・!!」
「が・・・!」
反論しようとするミサを遮って続ける
「私の中で疑惑が確信に代わったのは彼の一言でした。」
「・・・『支給品を見せてくれないか』・・・・・・」
ふと、セナが口を開いた。
「・・・その通りです」
ようやく理解を示し始めた賛同者を見てニヤと笑う。
「な、なんでそうなるの!?ワケわかんない!!」
「極めつけは彼が所持していたこれらの支給品ですよ。
日本刀が2本と、鉄のオブジェが1つですが…セナくん、これらがどういう経緯を経たものか、分かりますか?」
「・・・誰かから奪い取った」
「どのように?」
あえて質問の形をとるのは誘導尋問を多用する探偵としての定石だった。
第三者の意見として自分の推論を提示することによって、自論に信憑性を持たせることができる。
「・・・殺して・・・ですか?」
殺す、という表現を口にすることにセナは抵抗を感じたが、Lは首を縦に振った。
「殺して、というのは可能性の一つに過ぎませんが、控えめに言っても強引に奪ったものでしょう。
これらは一見普通の刀に見えますが、何か不思議な力が宿っている可能性があります。彼が求めていたのはまさしくそういうものですから。」
「それは殺された仲間の支給品なの!!
集めた仲間がマーダーに殺されちゃって逃げてきたところでミサと会ったんだから!!ミサ殺された仲間の死体もちゃんとみたもん!!」
『逃げてきたところで会った』というのは多少誇張された表現だったが、
今まで行動を共にしていた紳士をマーダーと断定するのにはいささか納得がいかず、精一杯の擁護を続けるつもりで突っぱねた。
「ミサさん。藍染さんはやっとのことでマーダーから逃げだしたのに、支給品を回収する余裕だけはあったんですかね?」
「そ、それは・・・」
少し斜めに俯いて頭を働かせる。
藍染の話を頭の中で反芻すると、仲間が囮になってくれたおかげで辛うじてマーダーから逃れられ食材倉庫で休んでいた、とのことだった
それが本当であれば、どれだけ危機的な状況を脱してきたかはあの凄惨な死体を見ているミサには簡単に想像ができた。
にもかかわらず、なぜ囮になった仲間の武器を持って逃げることができたのだろう。
確かに、その点に関してはLの指摘通りだ。
でも、もしかしたら・・・
「私がマーダーでしたら・・・いえ、マーダーでなくとも武器になりそうなものはその場に残していきませんが・・・」
一つの可能性を言いかけたところで先手を打たれてしまった。
「んもう!ミサだってずっと一緒にいたわけじゃないんだから詳しいことはわかんないよ!でももしかしたらもっと複雑な状況で・・・」
頭の中を覗かれたのが癪に障ったのか、尚もまだ不服な様子で食い下がろうとするものの、ミサの話に一貫性は無い。
感情で物事を測るタイプの人間は特に女性に多いが、その多くは希望的観測に拠りがちだ。
しかし『人類最高の頭脳』にとってこの手合いの扱いはそう難しくはない。
「もし・・・月くんがこの場にいれば、間違いなく私と同じ推理をしていたでしょうね。」
その一言でミサは押し黙った。
「んむぅ〜、ライトがそう言うんだったら・・・」
実際に夜神月がそう言ったわけではないのだが、効果はてきめんのようだ。
たった半日とはいえこの異常な状況下で行動を共にした藍染に若干の情と信頼を感じていたが、
それは月に対する妄信的なまでの愛に勝ることはなかった。
「んまあ、とにかくだ!その藍染とかいうのがそんな危ないヤツなら早いトコここから離れた方がいいんじゃないかのー?」
話についてこれずにいたキンニクマンがようやく事態を収集しにかかる。
「そうですね。藍染さんのスタート地点がこの周辺であればすぐに大阪に戻ってくる可能性が高い。我々を探しに、です。どちらにしても次に会ったときは間違いなく敵ですから。なるべく距離を置いた方がいいでしょう。」
===========================================
探偵・アイドル・アメフト選手に正義超人、一見してなんの接点もない4人は西に向かって出発した。
特に目的地と呼べるものは無かったがゲーム脱出のために沖縄を確認したいというLの計画に沿う形になる。
「ねぇ竜崎ぃ・・・」
ミサが呼びかけるが、道中Lは「核鉄」を丹念に調べておりミサの声は届いていないようだ。
故人となってしまったが、ムーンフェイスの話にあった錬金術。
信じがたい話ではあったが、その技術の結晶とも言える存在「核鉄」の特徴が目の前の物質と一致する。
「ねぇ竜崎ってば!!」
「なんでしょう?」
「・・・ライトに会えるかな?」
細々とした問い掛けだった。
良く言えば天真爛漫という表現が似合うミサの辛辣な表情は珍しい。
悪く言えば能天気なミサも、さすがにこの状況下では精神的にかなり参っているようだ。
「もし、月くんが首輪の解除に成功していれば沖縄に向かうはずです。」
それが精一杯の解答だった。
「だいじょうぶじゃあ!お嬢ちゃん!そのライトクンとやらがLくらい頭がよいのなら首輪の解除なんぞ朝飯前じゃい!」
憔悴したミサを見かねてか、キン肉マンが割って入った。ミサの両肩を力一杯叩く。
「あ、あの竜崎さん?そういえばこちらの方は?」
丁寧な口調とは裏腹に少し顔をひきつらせている。
どうやらキン肉マンはミサが生理的に受け付けないタイプらしい
「すみません、キン肉マンさん。
紹介が遅れましたが、こちらの女性、弥海砂さんです。私が元いた世界で・・・・
・・・ミサさん、我々の関係はどう説明したらいいんでしょうか?」
「・・・オトモダチでいいんじゃないでしょうか?」
「そうですね、お友達です。」
厳密にはキラ事件の容疑者とそれを追う探偵の間柄なのだが・・・
「わしはキン肉スグル。第58代キン肉星大王じゃ!キン肉マンと呼んでくれい!!」
「よ、よろしくおねがいしまぁ〜す。
(うわぁ・・やばっ、そのウルトラマンみたいなトサカはなに?ううん、モッチーみたいなキモカワ系だと思えば大丈夫・・・かなぁ?)」
「・・・そうですね。」
不意にLが呟いた。
「え?」
「月くんですよ。きっと生きています。大丈夫です。」
絶対の論理性と直感を基に思考するLにしては珍しく、それは希望的観測だった。
「そ、そうよね。ライト凄いもんねっ!簡単に死ぬわけないよね!」
図らずともそれがミサを元気付ける形になったようだ。
「ええ、それに・・・」
できればキラ事件の決着をつけたいとも願っていた。
それは思いも寄らぬ形で終結することになったが
今ではそんなことすらどうでもいい
空を見上げると月が夜の闇を照らしている。
「友達ですから・・・」
【兵庫県/黎明】
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労
[道具]荷物一式
[思考]1:兵庫から移動する
2:月と合流し、藍染の能力で共に脱出
3:夜神月の望むように行動
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]精神不安定
[道具]:荷物一式(食料残り1/3)
:野営用具一式
[思考]1:兵庫から移動する
2:まもりとの合流
3:これ以上誰も欠けさせない
【L@DEATHNOTE】
[状態]右肩銃創(止血済み)
[道具]:ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)
:デスノートの切れ端@DEATHNOTE
:GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER
:雪走り@ONEPIECE
:斬魄刀@BLEACH
:核鉄XLIV(44)@武装練金
[思考]1:兵庫から離れる
2:現在の仲間たちと信頼関係を築く
3:沖縄の存在の確認
4:ゲームの出来るだけ早い中断
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]健康
[道具]荷物一式
[思考]1:兵庫から離れる
2:志々雄からたけしを助け出す
3:ウォーズ・ボンチュー・マミー・まもりを探す
4:ゴン蔵の仇を取る
【Lたちの共通思考】
1:とりあえず京都から離れる
2:キン肉マンの志々雄打倒に協力するため、関西中心を捜索
3:午前6〜7時頃の大阪市街で剣心・ナルトと合流
ゾンビ達は、がむしゃらに襲い掛かる。
アックマンゾンビがアークマイト光線を放つ。
ヤムチャの動きが、0.01秒止まる。
そのスキを尽いて、地力に自身のあるセルゾンビ、ブウゾンビがヤムチャを押さえつける。
「今だ!!!突っ込めえぃぃ!!!」
もう後がない拳王ゾンビ、ハオゾンビ、DIOゾンビなどが必死の形相でヤムチャに攻撃を仕掛ける。
「お、おのれぇ頭数だけはいるぅぅ!!!」
ヤムチャを倒れたかに思われたが…
ズドォォーン
ゾンビ達は粉々になった。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
【Lの論理的考察】
「ちょ、ちょ、ちょぉぉぉっとLぅぅぅぅぅ!」
「な、なにやってるんですか!」
突然の状況に呆気にとられた二人が掴みかかるがLは別段抵抗もせずに支給品を調べている。
「いえ、ミサさん、セナくん。誤解しないでください。あれでいいんです。」
「いいわけないでしょぉー!藍染さんとんでっちゃったのよ!!ばひゅーーんって!!」」
ミサが胸倉を掴んで押しかかる。
「ええと、ですね。どう説明したものか・・・」
それを御す風も無くセナに目をやった
「・・・セナ君」
唐突に名前を呼ばれハッとして返す。
「は、はい?」
「セナくんも私と同じく藍染さんとは初対面だったわけですが…先程の会話から受けた
彼の印象はどうでしたか?」
「え・・・と、特に・・・紳士的で優しそうな人だな、と」
「怪しいとは思わなかった?」
「ええ、まぁ・・・」
「これっぽっちもですか?おかしくないですかね?殺し合いのゲームですよ?
いくら紳士的な態度だったとはいえ、この状況で不信感を抱かなかった。」
「・・・えーと・・・でもそれはLさんとミサさんが知り合いみたいなので
安心してたっていうか。ただ・・・」
「ただ?」
「少し、違和感は感じましたケド・・・」
「その違和感とはなんでしょうか?」
まるで禅問答の様だ。考え込むがセナは答えを得られない。
解答を求めるように気弱な少年は独特の上目遣いでLに目を遣った。
「完璧すぎるんですよ。彼は」
その完璧さからくる疑惑は夜神月を監視していた時に得たものとよく似ている。
そして事実、その直感が正しかったことはつい先刻のミサの失言によって証明された。
「だからって、それだけじゃ藍染さんがマーダーだって決め付けられないでしょ!!」
しかしミサは納得がいかないという風に激昂する。
「はい。確かに、それだけではマーダーと断定するには根拠に乏しい。
その時点では可能性の枠を出ませんでした」
「だったら・・!!」
「が・・・!」
反論しようとするミサを遮って続ける
「私の中で疑惑が確信に代わったのは彼の一言でした。」
「・・・『支給品を見せてくれないか』・・・・・・」
ふと、セナが口をついた。
「・・・その通りです」
ようやく理解を示し始めた賛同者を見てニヤと笑う。
「な、なんでそうなるの!?ワケわかんない!!」
「極めつけは彼が所持していたこれらの支給品です。日本刀が2本ですが…セナくん、これらがどういう経緯を経たものか、分かりますか?」
「・・・誰かから奪い取った」
「どのように?」
あえて質問の形をとるのは誘導尋問を多用する探偵の定石だった。
第三者の意見として自分の推論を提示することによって、自論に信憑性を持たせることができる。
「・・・殺して・・・ですか?」
殺す、という表現を口にすることにセナは抵抗を感じたが、Lは首を縦に振った。
「殺して、というのは可能性の一つに過ぎませんが、控えめに言っても強引に奪ったものでしょう。
これらは一見普通の刀に見えますが、何か不思議な力が宿っている可能性があります。
彼が求めていたのはまさしくそういうものですから。」
「それは殺された仲間の支給品なの!!
集めた仲間がマーダーに殺されちゃって逃げてきたところでミサと会ったんだから!!
ミサ殺されちゃった仲間の死体もちゃんとみたもん!!」
『逃げてきたところで会った』というのは多少誇張された表現だったが、
今まで行動を共にしていた紳士をマーダーと断定するのにはいささか納得がいかず、
精一杯の擁護を続けるつもりで突っぱねた。
「ミサさん。藍染さんはやっとのことでマーダーから逃げだしたのに、支給品を回収する余裕だけはあったんですかね?」
「そ、それは・・・」
少し斜めに俯いて頭を働かせる。
藍染の話を頭の中で反芻すると、
仲間が囮になってくれたおかげで辛うじてマーダーから逃れられ食材倉庫で休んでいた、とのことだった
それが本当であれば、どれだけ危機的な状況を脱してきたかはあの凄惨な死体を見ているミサには簡単に想像ができる。
にもかかわらず、なぜ囮になった仲間の武器を持って逃げることができたのだろう。
確かに、その点に関してはLの指摘通りだ。
でも、もしかしたら・・・
「私がマーダーでしたら・・・いえ、マーダーでなくとも武器になりそうなものはその場に残していきませんが・・・」
一つの可能性を言いかけたところで先手を打たれてしまった。
「んもう!ミサだってずっと一緒にいたわけじゃないんだから詳しいことはわかんないよ!
でももしかしたらもっと複雑な状況で・・・」
頭の中を覗かれたのが癪に障ったのか、尚もまだ不服な様子で食い下がろうとするものの、ミサの話に一貫性は無い。
感情で物事を測るタイプの人間は特に女性に多いが、その多くは希望的観測に拠りがちだ。
しかし『人類最高の頭脳』にとってこの手合いの扱いはそう難しくはない。
「もし・・・月くんがこの場にいれば、間違いなく私と同じ推理をしていたでしょうね。」
その一言でミサは押し黙った。
「んむぅ〜、ライトがそう言うんだったら・・・」
実際に夜神月がそう言ったわけではないのだが、効果はてきめんのようだ。
たった半日とはいえこの異常な状況下で行動を共にした藍染に、若干の情と信頼を感じていたが、
それはライトに対する妄信的なまでの愛に勝ることはなかった。
「んまあ、とにかくだ!その藍染とかいうのがそんな危ないヤツなら早いトコここから離れた方がいいんじゃないかのう?」
会話についてこれずにいたキン肉マンがようやく事態を収集しにかかる。
「そうですね。彼のスタート地点がこの周辺であれば大阪に戻ってくる可能性が高い。
我々を探しに、です。
何れにしても次に会ったときは間違いなく敵ですから。なるべく距離を置きたいですね。」
「となると、どちらにしても大阪へ向かうべきかのう。」
「そうですね。たけすぃ君の捜索も急ぎたいところですが、
志々雄真実が凶悪なマーダーであると分かっている以上、追跡し、且つ人質を奪還するためには戦力不足が否めません。
よって、先ずは緋村さんとの合流を優先したいのですが・・・どうでしょう?」
「うむ、それに関しては私も同感だ。
刀を手にすれば彼もサムライの本領を十分に発揮できるじゃろうな!」
(あ、いけない・・・)
「緋村さん・・・」
セナは深刻な表情だった。虚ろな目の先が何を見ているかは分かっている。
(まずいぞ・・・)
藍染の排除に関して、セナが自分と同様の考察に至ったことは喜ばしいことだった。
が、同時に嫌な予感もしていた。
それは我々が手にしたこれらの支給品に起因するものなのだが・・・
「Lさん・・・今からでも緋村さんを追いかけませんか?いや、僕一人でも・・・」
(ほら来た・・・)
信頼を得かけているところだ。
頻繁な対立は望ましくない。
ただ、セナは丸腰で四国に向かった剣心の身を案じている。
それは分かっていたことだ。当然だろう。
ヒル魔捜索を押し切ったのはセナだが、自衛手段を持たない彼の代わりに四国入りしたのが剣心だ。
しかも、先の放送でヒル魔の死亡は確定してしまったのだ。
不幸中の幸いと言うべきか、同行していたナルトは少なくともまだ生存しているが
問題はそれよりも四国が想像以上の危険地帯であること。
途中で武器になりそうなものを手にしていれば、と淡い期待を抱いていたが、
都合よく武器になりそうなものが転がっているわけが無い、ということは
たった今この議論のうえで証明されたばかりだ。
そして今、皮肉にも剣客にとって最も必要とされる武器、日本刀がもたらされたのは
剣道に覚えの無い自分たちの方だった。
小さな体躯と一見して臆病そうな容姿からは想像できないが、
このセナという少年には内に秘めた強い意思と責任感が感じられる。
『この刀を届けたい』
それがどんな理不尽なことと分かっていても、セナの感情は爆発するだろう。
【Lの希望的観測】
兵庫県東部
探偵・アイドル・アメフト選手に正義超人、
一見してなんの接点もない4人の隊列が大阪に向かって出発した。
結論は事実上、次のようにLが譲歩する形で決着した。
==========================================================
<出発前10分の経緯>
「Lさん・・・その刀を一本渡してください」
「ちょ、ちょっとぉ」
「おい、セナ、早まるな。少し頭を冷やさんかい。」
セナの異様な雰囲気を察して二人が制止にかかる。
「セナくん・・・」
「渡してください」
有無を言わさぬ凄みがある。
最早言葉だけでは動かすことが出来ぬ覚悟をしているのだろう。
そう決心して『同行』のカードを取り出した。
「それって・・・さっきの、えーと、『初心』?」
反応を示さないセナの代わりにミサが問いかけた。
「いいえ、これは『同行』というカードです。今まで行ったことのある場所であれば
半径20m以内の仲間ごと、指定した地域に移動することが可能です」
「・・・・・・」
セナは尚も口を開こうとしない。
「セナくんの気持ちはよく分かります。
ですが、危険だと分かっている地域に力の無いものをむざむざ行かせる訳にはいきません。
それに緋村さんとすれ違いになるだけの可能性も否めない。」
Lの話にセナは瞬き一つしないが続ける
「そこで私から提案です。現在、概ね3時を回ったといったところですが…
これから大阪まで移動し、待機場所を中心に私とキン肉マンさんでたけすぃくんの捜索を行います。」
・・・セナは依然無言のまま
「6時の放送でナルトくんの無事が確認されれば緋村さんは引き続きナルトくんの捜索を続けている
ものとみなし・・・我々は『同行』を使い岡山から四国へ渡り緋村さんとの合流を試みます。
この方法なら今から徒歩で岡山へ向かうのと大差なく四国入りが出来るでしょう
緋村さんとすれ違いになった場合を考慮して、事の経緯を示した書置きを残していきますね。」
「そして仮にナルトくんが6時放送の時点で・・・死亡していた場合・・・」
「L!!」
不謹慎な発言にキン肉マンがいきりたつ。
そこでようやくセナが口を開いた
「・・・続けてください」
「・・・緋村さんはこちらへ既に引き返して来るものとし、引き続き大阪で緋村さんを待とうと思います。」
「・・・・・・・」
沈黙が続いた
ここでLは最悪の可能性について触れなかった。
『緋村剣心が死亡していた場合』
Lの推測ではこの可能性は少なくない。
『ナルトが死亡していた場合』もそう。
先の放送から現在の四国の様子を推察するに、状況は想像以上に芳しくないようだ。
そして非常に残酷な判断ではあるが、どちらかが実現されれば『同行』を使う必要は無い。
そして『たけしが死亡していた場合』関西周辺の捜索を打ち切ることができるため
沖縄へ近づくための『同行』に使用意義が出てくる。
この提案はLにとって分の良い譲歩であった。
それに対して沈黙を守り続けたセナが震えた声で返す。
「・・・分かりました・・・・・・」
アメフト選手とは思えぬほど小さな手がプルプルと震えている。
それが言葉よりも雄弁にセナの感じている無力感を物語っている。
「セナくん・・・力不足は私も感じています。
私もただの人間ですから。超人的な力や、不思議な能力があるわけではありません。
それでも我々は・・・我々でできることのベストを尽くしましょう。生き残るために。」
再度、沈黙が訪れる。
「出発、しようかね…」
荷物を抱えたキン肉マンが促した。L、ミサ、少し遅れてセナもそれに続く。
「Lさん・・・・」
最後尾から力なく声が響いて皆が足を止めた。
「すみません・・・ありがとうございます。」
そう、少年は力なく呟いた。
=======================================
=======================================
「ねぇLぅ・・・」
ミサが呼びかけるが、道中Lは「核鉄」を丹念に調べておりミサの声は届いていないようだ。
故人となってしまったが、ムーンフェイスの話にあった錬金術。
信じがたい話ではあったが、その技術の結晶とも言える存在「核鉄」の特徴が目の前の物質と一致する。
「ねぇ竜崎ってば!!」
ここ数ヶ月の間呼ばれ慣れていた方の名
「なんでしょう?」
反応してしまった。
ところが折角興味を移したのにミサはなかなか二の句を紡げずにいる。
ようやく絞り出したのは細々とした声だった。
「・・・ライトに会えるかな?」
良く言えば天真爛漫という表現が似合うミサの辛辣な表情は珍しい。
悪く言えば能天気なミサも、さすがにこの状況下では精神的にかなり参っているようだ。
「もし、月くんが首輪の解除に成功していれば沖縄に向かうはずです。」
・・・それが精一杯の解答だった。
「だいじょうぶじゃあ!お嬢ちゃん!そのライトクンとやらがLくらい頭がよいのなら首輪の解除なんぞ朝飯前じゃい!
そんで緋村もあれで戦国を生きた一流の剣客じゃからな!!簡単に死にはせんよ!がっはっはっはっ!!」
憔悴したセナとミサを見かねてか、キン肉マンが割って入った。二人の両肩を力一杯叩く。
「あ、あの竜崎さん?そういえばこちらの方は?」
丁寧な口調とは裏腹に少し顔をひきつらせている。
どうやらキン肉マンはミサが生理的に受け付けないタイプらしい
「すみません、キン肉マンさん。
紹介が遅れましたが、こちらの女性、弥海砂さんです。私が元いた世界で・・・・
・・・ミサさん、我々の関係はどう説明したらいいんでしょうか?」
「・・・オトモダチでいいんじゃないでしょうか?」
厳密にはキラ事件の容疑者とそれを追う探偵の間柄なのだが・・・
「そうですね、お友達です。」
「わしはキン肉スグル。第58代キン肉星大王じゃ!キン肉マンと呼んでくれい!!」
「よ、よろしくおねがいしまぁ〜す。
(うわぁ・・やばっ、そのウルトラマンみたいなトサカはなに?ううん、モッチーみたいなキモカワ系だと思えば大丈夫・・・かなぁ?)」
「・・・そうですね。」
不意にLが呟いた。
「え?」
「月くんですよ。きっと生きています。大丈夫です。」
絶対の論理性と直感を基に思考するLにしては珍しく、それは希望的観測だった。
「そ、そうよね。ライト凄いもんねっ!簡単に死ぬわけないよね!」
図らずともそれがミサを元気付ける形になったようだ。
「ええ、それに・・・」
できればキラ事件の決着をつけたいとも願っていた。
それは思いも寄らぬ形で終結することになったが
柄にも無いが感傷なのだろうか、
今はそんなことさえどうでもいいと思えていた。
空を見上げると月が夜の闇を照らしている。
「友達ですから・・・」
【兵庫県/黎明】
【L@DEATHNOTE】
[状態]右肩銃創(止血済み)
[道具]:ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)
:デスノートの切れ端@DEATHNOTE
:GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER
:雪走り@ONEPIECE
:斬魄刀@BLEACH
:核鉄XLIV(44)@武装練金
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする(なるべく『同行』は使いたくない)
3:現在の仲間たちと信頼関係を築く
4:沖縄の存在の確認
5:ゲームの出来るだけ早い中断
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労
[道具]荷物一式
[思考]1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
3:月と合流する
4:夜神月の望むように行動
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]精神不安定
[道具]:荷物一式(食料残り1/3)
:野営用具一式
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:無力感
3:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
4:まもりとの合流
5:これ以上誰も欠けさせない
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]健康
[道具]荷物一式
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
3:志々雄からたけしを助け出す
4:セナとミサを元気付けたい
5:ウォーズ・ボンチュー・マミー・まもりを探す
6:ゴン蔵の仇を取る
【Lたちの共通思考】1:とりあえず兵庫から離れて大阪へ移動する
2:午前6時の放送を待って剣心と合流するために放送に応じた行動をとる
3:キン肉マンの志々雄打倒に協力するため、関西中心を捜索
滋賀県湖南の森の中、女戦士の眠りを覚ましたのは僅かな光と雀のさえずりだった。
文字通り悪夢の一日目を生き残った津村斗貴子は時計を確認する。休息をとって数時間しか経過していない。
(昂ぶっているのか・・・・フッ、無理も無いか)
核鉄の治癒効果でわき腹の負傷も完治には至らないがもう痛みは無い。行動を起こすべき刻である。
これから関西方面に打って出るにあたりスカウターを起動される。アビゲイルの話では参加者の位置、戦闘力が把握できるはずである。
「近辺には反応は無い。少しづつ広げてみるか」
索敵範囲を広げていくと一つの反応がある。かなり大きな反応が北東から向かってくる。しかも速度と方向から遭遇は必須、戦闘力の数値は・・・・斗貴子を軽く凌駕する! 武器や武装錬金発動の有無を考慮に入れても勝てる見込みは少ない。
(やむを負えない、やり過ごす)
武装錬金を発動させ今までいた場所から樹上へと乗り移る。足跡が途中で消えるため勘のいい者なら樹上だと看破するだろう。だから偽装を施す。
適当に離れ頭上からは視認しにくい物陰へと飛び降りる。高機動戦闘を得意とするバルキリースカートあっての芸当だ。
物陰に隠れると万一発見された事態に備えバルキリースカートを待機状態にさせておく。ショットガンはかさばるので繁みに隠す。
だんだんと反応が接近してくる。200、150、100、50――――
草木を掻き分ける音を立てて反応の主の姿を現す。
ズバ抜けた長身と、そして何よりも全身が黒かった。ヘルメット、ボディスース、ショルダーガード、ブーツ・・・・恐らく下着も。
特徴のある息遣いを発し、黒尽くめは周辺を捜索する。しかしひび割れた仮面は何も語らない。
斗貴子は息を殺す。唾液を飲むことすら我慢する。可能なら心音さえ止めていただろう。
予想通り黒尽くめは足跡を見つけ樹上を向く。驚異的な跳躍力で樹上へ移るがしばらくして降りてきた。何も発見できず黒尽くめは南の方角へと消えていく。
スカウターの反応が100メートル離れても斗貴子は動かない。距離が500メートルを超えたのを確認して初めて深呼吸をした。
「あれ程の戦士が周辺には存在しているのか。やはり西を目指して正解だったかも知れないな」
だが気になることもあった。あの黒尽くめが去った方角は愛知県である。運が悪ければアビゲイルやサクラ達と遭遇するだろう。昨晩サーチした二人の戦闘力ではアビゲイルはともかく、サクラは黒尽くめの足元にも及ばない。ニアミスを祈る自分にハッとして自ら戒めに頬を張る。
「何を今更! それは大いに喜ばしい結果ではないか。」
気を取り直して斗貴子はスカウターで索敵しながら西部へと向かう。さっそく京都南部に5人、その内特に反応が強いのが3人。いずれも斗貴子と互角かやや上回る。
埋服の毒――――一瞬卑劣な考えが浮かんだが直ぐに打ち消した。腐っても錬金戦士としてのプライドは持ち合わせているのだ。
(しばらく様子見、といくか・・・・)
斗貴子が目を覚ます数時間前――――一
闇に生きる者共が山奥のアジトへ帰還したのはまだ朝日が顔を出す前、不快な時間へはまだ十分に時間があった。
東の空が明るかったのは日の出ではなく火事か何かの様である。
吸血鬼二人の帰還を待っていたのはDIO打倒を目指す少年マミーである。
「やあおはよう、よく眠れたかな?」
「・・・・おかげさんで」
DIOに向かってマミーは皮肉の一つもいってみる。実はロクに睡眠をとっていないのだ。DIOらが出かけてから数時間しか経過していないのに加え、山梨県の方で大規模な戦闘があったらしく火災の炎がこの場所からでも確認され気が気でなかったのである。
「ところであの黒尽くめ、ウォーズマンだったか? 見えないけどうしたんだ?」
「ああ、彼には別の任務を与えた。昼間活動できる部下は何かと便利なのでね」
“目的は既に果たした以上長居は無用、日の出までにアジトへと帰還する。”
吸血鬼二人とロボ超人は愛知県と長野県の県境へ到達した。時を止めるスタンド“ザ ワールド”に阻まれ追跡者はいない。よほど運が良くなければアジトまで辿り着けないだろう。
「ウォーズマン! AYA! ストップだ」
DIOは配下のロボ超人と吸血少女に声をかけ進行を止める。
「ここまで来れば問題なかろう。さて・・・・まずAYA」
「はい」
AYA――――一人間を止めた少女、東城綾は返事をする。友人の生血をすすり大分回復したものの、波紋によるものなのか失われた右腕の再生には覚束ない。
「君はこのDIOの勝利のために協力すると申し出た。その代償として私は君の友人、ツカサを蘇生させると約束した。しかし――――一今の君は弱体化しどう贔屓目に見てもケンシロウと戦えば十戦中一勝も無理だ」
綾は反論しようとしたが止めた。DIOの指摘は正鵠を得ている。
「そこで、だ。他人の腕を奪いたまえ。そして更なる贄を食らえば再生などどうということは無い。ウォーズマン!」
「ガガ!?」
「女性を招待して差し上げたまえ。15〜8歳くらいが望ましい。それと出来れば今後移すべき拠点の候補地もだ」
「・・・・了解シタ」
捜索対象は生きた女性と拠点、ウォーズマンは西の森へと消えていった。もはや正義超人としての面影は見る影も無い。
残された吸血鬼二人はアジトを目指す。来るべき北斗神拳との対決に期待を膨らませて。
日が射してきてからは人っ子ひとりにも出会わない。しかし足跡は続いているにだから誰かしらはこの森に進入しているはずだ。
正義超人であることを止めた黒い悪魔――――ウォーズマンは琵琶湖畔から南下して滋賀県南部の森を捜索していた。
湖のほとりなら水の補給のため人が集まるはず、だが期待は予想以上に汚染された湖と無人の小屋に裏切られた。
小屋の規模からアジト候補には頼りないが無いよりマシだ、一応場所を記憶しておくとする。
だが確かにかつて人がいた気配はあった。不特定者に当てた手紙がそうである。慣れない日本語と悪筆のため読みづらかったが、筆者が“アイゼン”なる参加者への注意を促す内容なのはおぼろげながら理解した。
引き続き滋賀県南部を捜索するものの、自分の存在を察してか幾重もの偽装を施して痕跡を散らしてある。とても短期間で行えるマネではなく、遠距離から視認されたとも思えないから相手は生体レーダーの類を所有していると考えるのが自然であろう。
(オンナ・・・・捜索・・・・腕・・・・・危険地帯・・・・ダヴァイ・・・・)
ファイティングコンピューターの電子頭脳内である場所が点滅した。
名古屋市街地、精強な女格闘家をフェイバリット・ホールドで破った地である。
あの時はDIOへの贄を優先して回収しなかった女の両腕が転がっている。時間からして腐敗は進んでいないはずだ。
しかし名古屋までの道中はあのケンシロウに遭遇する可能性が大きい。
戦っても負けることは無いだろうがこちらも大ダメージは避けられない。
その時は全力で走りぬけばいい。ムリに戦う必要な無い、今は任務が優先である。
目標は女格闘家の両腕の回収、ウォーズマンは一路名古屋を目指し駆けだした。
ウォーズマンの遥か後方、斗貴子は安堵の息をした。
主を失った両腕を得てもウォーズマンの心は躍らない。むしろ不可解な感情に戸惑いを隠せない。
(花・・・・氷ノ精神・・・・否ッッ矛盾ハシナイ!)
草葉の陰にある者に対する行為は戦士としてのそれである。氷の心とは十分両立する。
しかし胸の内のわだかまりは渦巻く。精神的不安定は更に進行する。
ケンシロウとの遭遇は杞憂だった。愛知県に入ってから誰とも遭遇せずに進む。
確認のため昨晩破壊した小屋に向かったが焦げた建物の残骸があるだけだった。彼らはとっくに移動していたのだ。
念を入れて辺りを捜索すると小屋から少し離れた所に粗末な墓があった。
墓標名は“西野つかさ”とある。昨晩東城綾が喰らった少女のことだと思い出した。
人間を止めた友人を必死に説得し、それが叶わぬと自らの命をも捨てて止めようとした――――結局無駄骨となってしまっとが。
ウォ−ズマンは西野つかさを、ある男と重ねた。
かつて正義超人と呼ばれていたころ、重症の身を省みず自分をかばって敵の手に落ちた友がいた。
彼の真摯な言葉に感動し、暴虐な行いを改め、そして敵に勝利した――――
気がつくと花を一輪摘み墓前に供えている自分がいる。
墓の主とは生前一度会っただけだ。言葉すら交わしていない。しかし――――やらずにはいられない。どうしてかは不明だが。
ただそれだけ、黙祷するわけでも無く花だけを供える。すぐに墓に背を向け名古屋市街地へ向かう。
氷の精神に僅かだが、亀裂の走る音が聞こえた。
【愛知県と長野県の境・山中の廃屋/早朝】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:忍具セット(手裏剣×7)@NARUTO−ナルト−
[道具]:荷物一式(食料の果物を少し消費)
[思考]:1.ひとまずマミーのいる小屋に帰還。
2.綾、ウォーズマン、マミーを利用する。
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化。右腕なし。波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた。ちょっとブルー。
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式×3、ワルサーP38、天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[思考]:1.DIOを優勝させ、西野つかさを蘇生させてもらう。
2.DIOに協力する。
3.真中くんと二人で………。
【マミー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]:精神重度の不安定、放心状態、弱肉強食の理を悟った
[装備]:フリーザ軍戦闘スーツ@ドラゴンボール、手裏剣@ナルト
[道具]:荷物一式(食料と水、一食分消費)
[思考]:1 DIOに対する恐怖。
2 DIOに従う……?
【滋賀県と京都府の境/早朝】
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労。左肋骨二本破砕(サクラの治療により、痛みは引きました) 核鉄により常時ヒーリング
[装備]:核鉄C@武装練金、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!、スカウター@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ダイの剣@ダイの大冒険、ショットガン、
真空の斧@ダイの大冒険、首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜、『衝突』@ハンター×ハンター、子供用の下着
[思考] 1:関西、中国地方を中心に人数減らし。
2:参加者を減らし、ピッコロを優勝させる。
3:友情マン、吸血鬼を警戒。
4:もう知り合いには会いたくない。
5:近くの5人組を警戒。
【愛知県/名古屋市街地/早朝】
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]:精神不安定・体力微消耗
[装備]:燃焼砲@ワンピース
[道具]:荷物一式(マァムのもの)、マァムの両腕
[思考]:1.DIOに対する恐怖/氷の精神 *
2.DIOに従う。
* 氷の精神には極小だが亀裂が入っています。
>>338のマミーの状態に手違いがりました
【愛知県と長野県の境・山中の廃屋/深夜】
【マミー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]:極度の怒り
[装備]:フリーザ軍戦闘スーツ@ドラゴンボール、手裏剣@ナルト
[道具]:荷物一式(食料と水、一食分消費)
[思考]:1 DIOを殺す。それまでは絶対に死なない。
2 強者に君臨するため、もっと強くなる。
3 誰が相手でも殺られる前に殺る。
4 誰が相手でももう絶対にビビらない。
「このオレに10パーセントの動力を使わせるとはな」
真の力をわずかに解放させたヤムチャは、生き残った最後の一人を見た。
「あとは、お前だけだぜ。悟空」
「ぬおおおおおおーっ!!!」
悟空は、超サイヤ人4になり全力でヤムチャに突っ込んだ。
「このままでもいいんだが、あんたの敬意に記して、20パーセントまで開放してやる」
ヤムチャの圧倒的な力に、超4悟空は手も足もでなかった。
そして、悟空は地に叩き伏せられた。
ヤムチャがとどめをさそうとした時―
「そ、そうだ手を組もう。二人でならタカヤにも勝てる。」
悟空が、ふいに口走った。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
食料を求めながら、慣れ親しんだ街、越谷市をさまよう友情マン。
彼は、カカロットの犠牲となるべき参加者と食料を探しながらも、今後のことを考えていた。
最も安全に、効率的にこのゲームで勝ち残るには、どうするべきか。
(僕の現在の切り札は、「光の封札剣」と青酸カリ。
理想的な作戦は、カカロット君に僕以外の参加者を殺してもらい、
2人残ったところで、カカロット君を毒殺すること。
しかし、食料は無い。仮に食料を手に入れたとしても、
このゲームで支給されている食料はパン類だ。
毒殺するためには、「調理」できる食材の方が好ましい。
青酸カリを染み込ませたパンなど不自然だし、アーモンド臭の言い訳もできない。)
あの大喰らいの馬鹿猿なら、そんなこと気にせず食べるかも知れない。
そんな考えもあったが、万が一のリスクを考えると・・・。
やはり、あのカカロットを敵に回すわけには行かない。そのためには、最善手を選ばなければ。
(光の封札剣。これは素晴らしいアイテムだけど、一度使うと24時間使えないのがネックだな・・・。
仮にカカロット君にこれを使ったとしても、動きを封じている間に仕留め切れなければ、反撃を食らってしまう。)
友情マンにも「友情の鬼」という能力があるが、カカロットの本気がどの程度か分からない以上、
やはり危険を冒したくはない。
「う〜ん、食材と、できればアーモンドが必要、か・・・・・・。」
冷蔵庫を手に入れた時点で、友情マンの作戦は完璧なはずだった。
しかし、彼の唯一の誤算は、悟空の前で冷蔵庫を開けてしまったこと。
せめて、一部の食料を隠しておけば、食料で苦労することはなかった。
まさか全部食べられてしまうとは、夢にも思わなかったのだが。
(・・・・・・それに、僕も何か食べないと・・・身が持たない・・・・・・。)
友情マンはこれまで通った地を思い返してみて、3つ気づいたことがあった。
ひとつ。主催者が支給した食料以外の食料は、全く用意されていないこと。
この世界には商店やレストランなどがあったが、どの店にも飲食物は一切置かれていなかった。
これは、生存に必要なものは全て支給品で賄え、ということなのだろう。
殺し合いに拍車をかけ、ゲーム見物を面白くするためか。
ふたつ。動植物は、実際に生息している量からすればずっと数少ないながらも存在していること。
これは何故連れてきたのか、よく分からない。
畑や果樹園、養鶏場などは見かけなかったが、鳥や犬猫、自然に生えた栗の木などは見かけた。
みっつ。この世界は日本列島を縮小したものだが、有名な観光スポットは省略されずに残されていること。
例えば、宮城県では青葉城を、石川県では兼六園を見た。これも、ゲーム見学を面白くするための演出か。
(・・・・・・となると、この近くで食材がありそうな場所は・・・千葉県の「マザー牧場」だ。)
友達の多い友情マンは、観光スポットにも詳しかった。
マザー牧場ならば牛や豚、羊がたくさんいるはずだ。
一瞬、春日部市の「東武動物公園」も思い浮かんだが、「厚井友情」として、
日本の常識の中で過ごしたことのある友情マンにとって、さすがに象やライオンを調理するのは抵抗があった。
それに、アーモンドの木も、もしかしたら千葉県に生えているかもしれない。
アーモンドはアメリカやスペインが主な生産地で、日本ではほとんど生産されていないが、
落花生農家の多い千葉県は、豆類の栽培研究が進んでいて、庭にアーモンドの木を植える人もいる。
実際に、友達の農家にも数人いた。
「よし、行ってみるかな。」
そう言うと、友情マンは東へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数時間後。友情マンは、東京ディズニーランド内のベンチに座り、頭を抱えていた。
「まさか・・・マザー牧場は用意していても、家畜は一匹もいないとは・・・。」
よく考えれば、当然のことかもしれない。
しかし、わずかな可能性に光明を見出していた友情マンにとって、その可能性を失った落胆は大きかった。
そして、結局アーモンドの木も見つからなかった。何も食べないよりはマシかと思い、
ナズナなどの野草を摘んで食べたが、大した腹の足しにはならなかった。
「雀でも捕まえて食べようかな・・・。」
そんなことを考えていると、突如、轟音が耳をつんざく。
「な、なんだ・・・?あれは、東京タワーの方向か・・・・・・。」
参加者同士の戦闘があったのだろうか。何か爆弾の類を使ったのか。
だとしたら、あの威力では使用者も生きてはいまい。
「うまく行けば、荷物が拾えるかも・・・。」
しかし、もしあれが参加者の「技」だとしたらどうか。
この不思議な制限のある世界で、あれほどの技を繰り出せる者は、そうはおるまい。
が、この世界にはカカロットや世直しマンの様なツワモノもいる。
もっと強い参加者がいてもおかしくないかもしれない。
347 :
作者の都合により名無しです:2006/08/15(火) 02:43:53 ID:BQQnR7siO
345:窮極のメニュー◆r4GvCZ7iKs :2006/08/15(火) 02:39:21 ID:1sggzkiD0 [sage]
友達の多い友情マンは、観光スポットにも詳しかった。
マザー牧場ならば牛や豚、羊がたくさんいるはずだ。
一瞬、春日部市の「東武動物公園」も思い浮かんだが、「厚井友情」として、
日本の常識の中で過ごしたことのある友情マンにとって、さすがに象やライオンを調理するのは抵抗があった。
それに、アーモンドの木も、もしかしたら千葉県に生えているかもしれない。
アーモンドはアメリカやスペインが主な生産地で、日本ではほとんど生産されていないが、
落花生農家の多い千葉県は、豆類の栽培研究が進んでいて、庭にアーモンドの木を植える人もいる。
実際に、友達の農家にも数人いた。
「よし、行ってみるかな。」
そう言うと、友情マンは東へと向かった。
「ふむ、ここはカカロット君をけしかけて、様子を見てみるかな。」
カカロットは単純だ。強い奴がいるといえば、相手が地球人でなくても喜んで戦いたがるだろう。
もし、あれほどの技の持ち主がいたとしたら、いずれ大きな障害となる。
カカロットとつぶしあってくれたら、それに越したことはない。
できれば、投資した分の見返りがほしいところだが・・・食料確保という悩みから開放されるメリットもある。
誰もいなかったらいなかったで、食料を得られる可能性が高いから、満足してくれるだろう。
「どちらに転んでも、損はない・・・。」
そう判断すると、友情マンはカカロットの元へと走り出した。
【千葉県・東京ディズニーランド/早朝(放送直前】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労、空腹(野草を食べてほんの少しは回復)
[装備]:遊戯王カード(千本ナイフ、光の封札剣) (ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料なし)、ペドロの荷物一式(食料なし)、勝利マンの荷物一式(食料なし)、青酸カリ
[思考]:1.悟空を東京タワーへとけしかける。
2.食料の確保。できれば力づくで奪うような手段は取りたくない。
3.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
4.最後の一人になる。
>>347 確かに「豆類」というのはちょっとおかしいですね。
豆類→ナッツ類
に訂正します。ご指摘ありがとうございます。
「ボウンッ」と衝撃が走る。
悟空は木っ端微塵になった。
「この闘いは、てめぇみたいなボロクズが着いてこれるレベルじゃねぇんだ。」
ヤムチャは悟空を見た後、視線をタカヤに戻す。
「はじめようぜ、最終決戦をな!!」
タカヤは間合いを取りながら、気を溜める。
「これが、わたしの最期の行為。
この演技を行なった後、わたしは自然に天国への階段を上るだろう。
わたしの全てを具現化した狂気の舞を魅せてあげよう!!」
”終 の 絶 技 を”
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
カカロットの犠牲となるべき参加者と食料を探しながら、慣れ親しんだ街、越谷市をさまよう友情マン。
その表情はどこか冴えない。右手で腹部を押さえ、肩を落とし、足取りも重い。
「・・・・・・まるで・・・・・・パシリ1号だな・・・。」
自嘲気味につぶやく。
しかし彼は、そんな境遇におかれながらも、今後のことを計算していた。
最も安全に、効率的にこのゲームで勝ち残るには、どうするべきか。
(僕の現在の切り札は、「光の封札剣」と青酸カリ。
理想的な作戦は、カカロット君に僕以外の参加者を殺してもらい、
2人残ったところで、カカロット君を毒殺すること。
しかし、食料は無い。仮に食料を手に入れたとしても、
このゲームで支給されている食料はパン類だ。
青酸カリを染み込ませたパンなど不自然だし、
毒殺するためには、「調理」できる食材の方が好ましい。)
あの大喰らいの馬鹿猿なら、そんなこと気にせず食べるかも知れない。
そんな考えもあったが、万が一のリスクを考えると・・・。
あのカカロットを敵に回すわけには行かない。そのためには、最善手を選ばなければ。
(光の封札剣。これは素晴らしいアイテムだけど、一度使うと24時間使えないのがネックだな・・・。
仮にカカロット君にこれを使ったとしても、動きを封じている間に仕留め切れなければ、反撃を食らってしまう。)
友情マンにも「友情の鬼」という能力があるが、カカロットの本気がどの程度か分からない以上、
やはり危険を冒したくはない。
「う〜ん、食材、か・・・・・・。」
冷蔵庫を手に入れた時点で、友情マンの作戦は完璧なはずだった。
しかし、彼の唯一の誤算は、悟空の前で冷蔵庫を開けてしまったこと。
せめて、一部の食料を隠しておけば、食料で苦労することはなかった。
まさか全部食べられてしまうとは、夢にも思わなかったのだが。
(・・・・・・それに、カカロット君の元に参加者を連れて行ったとしても、
さっきの様子では僕に食料を回してくれることはなさそうだ。
しかし・・・・・僕も何か食べないと・・・身が持たない・・・・・・。)
先ほどは幸運にも勝利マンの荷物を拾うことができたが、
死亡者の荷物が手つかずで残してあることは、ほとんどないだろう。
かといって、この段階まで残っている参加者は、よほどの強者か、
優れたアイテムを持っているか、徒党を組んでいるか・・・。
よほど条件が整った場合でない限り、自ら手を下すわけには行かない。
そのためのカカロットだ。
(・・・どこか、食材のありそうな場所はないかな。)
友情マンはこれまで通った地を思い返してみて、3つ気づいたことがあった。
ひとつ。主催者が支給した食料以外の食料は、全く用意されていないこと。
この世界には商店やレストランなどがあったが、どの店にも飲食物は一切置かれていなかった。
これは、生存に必要なものは全て支給品で賄え、ということなのだろう。
殺し合いに拍車をかけ、ゲーム見物を面白くするためか。
ふたつ。動植物は、実際に生息している量からすればずっと数少ないながらも存在していること。
これは何故用意したのか、よく分からない。サバイバルの要素でも加えたつもりか。
畑や果樹園、養鶏場などは見かけなかったが、鳥や犬猫、自然に生えた栗の木などは見かけた。
みっつ。この世界は日本列島を縮小したものだが、有名な観光スポットは省略されずに残されていること。
例えば、宮城県では青葉城を、石川県では兼六園を見た。これも、ゲーム見学を面白くするための演出か。
(・・・・・・となると、この近くで食材がありそうな場所は・・・千葉県の「マザー牧場」だ。)
友達の多い友情マンは、観光スポットにも詳しかった。
マザー牧場ならば牛や豚、羊がたくさんいるはずだ。
「よし、行ってみるかな。」
そう言うと、友情マンは東へと向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数時間後。友情マンは、東京ディズニーランド内のベンチに座り、頭を抱えていた。
「まさか・・・マザー牧場は用意していても、家畜は一匹もいないとは・・・。」
よく考えれば、当然のことかもしれない。
しかし、わずかな可能性に光明を見出していた友情マンにとって、その可能性を失った落胆は大きかった。
何も食べないよりはマシかと思い、ナズナなどの野草を摘んで食べたが、大した腹の足しにはならなかった。
「雀でも捕まえて食べようかな・・・。」
そんなことを考えていると、突如、轟音が耳をつんざく。
「な、なんだ・・・?あれは、東京ドームの方向か・・・・・・。」
参加者同士の戦闘があったのだろうか。何か爆弾の類を使ったのか。
だとしたら、あの威力では使用者も生きてはいまい。
「うまく行けば、荷物が拾えるかも・・・。」
しかし、もしあれが参加者の「技」だとしたらどうか。
この不思議な制限のある世界で、あれほどの技を繰り出せる者は、そうはおるまい。
が、この世界にはカカロットや世直しマンの様なツワモノもいる。
もっと強い参加者がいてもおかしくないかもしれない。
「ふむ、ここはカカロット君をけしかけて、様子を見てみるかな。」
カカロットは単純だ。強い奴がいるといえば、相手が地球人でなくても喜んで戦いたがるだろう。
もし、あれほどの技の持ち主がいたとしたら、いずれ大きな障害となる。
カカロットとつぶしあってくれたら、それに越したことはない。
できれば、投資した分の見返りがほしいところだが・・・食料確保という悩みから開放されるメリットもある。
誰もいなかったらいなかったで、食料を得られる可能性が高いから、満足してくれるだろう。
「どちらに転んでも、損はない・・・。」
そう判断すると、友情マンはカカロットの元へと走り出した。
【千葉県浦安市・東京ディズニーランド/早朝(放送直前)】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労、空腹(野草を食べてほんの少しは回復)
[装備]:遊戯王カード(千本ナイフ、光の封札剣) (ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料なし)、ペドロの荷物一式(食料なし)、勝利マンの荷物一式(食料なし)、青酸カリ
[思考]:1.悟空を東京タワーへとけしかける。
2.食材・食料の確保。できれば力づくで奪うような手段は取りたくない。
3.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
4.最後の一人になる。
待ってくれ。
もう少しだけ待ってくれよ。
叫びを無視して鎧を纏った後ろ姿が遠ざかる。
俺は、まだアンタから学びたいことがある。
強くなりたいんだ。
どこまでも強いスーパーヒーローに―――
「おい、起きやがれボンチュー!いつまで寝てんだコラ!」
「ぐ・・・」
野太い声が俺を夢から現実へと引き戻す。
ゆっくりと目を開けると、目の前には人相の悪い顔。
桑原だ。上から覗き込むアングルで老けた顔が瞳に映っている。
俺も人のことは言えないが・・・
ところで、何故俺はうつ伏せで倒れているんだ?
軽く頭を振るが、いまいち記憶がハッキリしない。
体中の痛みが酷く、疲労も圧し掛かってくる。気絶する前、俺は一体何を・・・
・・・そうだ、確かフレイザードの炎と氷の合成攻撃をまともに―――
「ルキアッ!」
思い出した!ルキアは無事かッ!
急いで飛び起きようとして地面に手を付くと、妙な弾力がある。
手の先を見ると、それは地面ではなくルキアの身体。
そのまま自分の肉体機能を一時停止していると、心臓の鼓動が手の平を伝わってくる。
よかった、何とか生きているようだ。
そしてどうやら今、俺はルキアに覆いかぶさっている状態らし・・・
・・・マズイ。非常にマズイ。
一瞬で体を起こし、急いでルキアから離れる。
手は「俺は無実だ!」を象徴するようにバンザイの姿勢。
「違うぞ誤解だ。これはフレイザードの攻撃からお前を守ろうとした結果であってだな。
決してやましいことをしようとしたわけじゃないぞやめろ俺を助平と呼ぶな」
俺の流れるような言い訳をルキアは完全無視。
相当怒ってるのだろうかと顔を覗いて見れば、まだ気絶中らしい。
桑原がニヤニヤ笑っている。くそ、チクんじゃねえぞ。
気持ちを落ち着けて周りに気を向けると、承太郎を背負った桑原しか見当たらない。
「フレイザードの野郎は・・・」
「あのクソ野郎はどうやら逃げやがったみてえだ・・・しぶてえ野郎だぜ」
桑原は舌打ちをしながら罵詈雑言を続ける。
「ヤムチャの奴とまとめてぶっ殺して、世直しマンの仇を討ってやらァ!」
ヤムチャ・・・誰だ?
そして今、桑原は何と言った?
「世直しマンの、仇だと?」
追求に言葉を濁す桑原。
「あ、悪ィ。世直しマンは、もう」
「・・・いや、大体わかる」
夢の中で・・・別れを告げられたからな。
フレイザードを倒さなくてもいいから必ず生き延びろ、か。
悪ィがその約束は守れそうにねえ。
フレイザードやピッコロから尻尾を巻いて逃げるなんて論外だ。
辺りを見渡すと地面全体が水浸し。
フレイザードの合成魔法が引き起こした惨状は、その威力をまざまざと見せつける。
しかも合成魔法は成長途中の代物らしく、放っておくと相当ヤバイことになりそうだ。
「・・・とにかく、ここから移動しないとな」
ルキアを安全な場所に移動させるべく、その身体を持ち上げる。
軽い。だが、その身体は傷だらけで痛々しい。
火傷だらけの肌は、どうしてもメグのことを思い出させる。
助けられなかった妹。俺が弱かったせいで助けられなかった妹。
ルキアに、焼け死んだメグの面影を見てしまう。
メグが死んだとき、強くなると誓ったはずだ。
俺は、強くなったんじゃなかったのか?
鬱屈とした気分で気絶中のルキアを背中に背負う。
それからルキアの荷物を持ち上げようとすると、一枚のカードが荷物から抜け落ちた。
拾い上げてみると、それは白い龍のイラストが描かれたカード。
ルキアが使用方法を探していたカードだ。海馬という男によると相当強力な切り札らしいが・・・
「くそ、せめてこのカードの使い方がわかれば・・・」
このカードの使い方がわかれば『フレイザードを倒しに行ける』のに。
だが、このカードの使い方がわかる遊戯という男は死んでしまった。
使い方がわからなければ唯の紙。
どうしようもない状況で、歯軋りをしながらカードを見つめる俺に声をかけたのは意外な男。
「ん?そのカード、俺の支給品と同じやつじゃないか?」
気絶している承太郎を背負った桑原だった。
「このカードの使い方を知ってるのか!?」
「ん、ああ。俺のは友情マンにくれてやったけど、説明書の内容くらいは覚えてらぁ。
確か・・・召喚獣の名前を叫べばいいはずだぜ」
「その方法では何も起こらなかったと言ってたぞ?」
「いや・・・ちょっと待て。確か他にも何かあったような・・・
そうだ、『二十四時間の間で一回しか使えない』って注意書きがあったような気がするなァ」
『二十四時間の間で一回しか使えない』・・・だと?
そんな限定条件が・・・だが、これで疑問が解けた。
フレイザードが、ルキア・海馬との戦闘の直前にカードを使っていたのだろう。
だからカードを使おうとしても発動しなかったのだ。
ルキアがこのカードを拾ったのが朝だから、少なくとも朝には使えるようになる筈。
あと少しでカードは使用可能になる、ということだ。
つまり――これで『フレイザードを倒しに行ける』状況が整った。
「桑原、頼みがある」
「なんだよ」
俺は『頼み』を口にする。
「俺の代わりにルキアを護ってくれ。俺はフレイザードを倒しに行く」
その『頼み』に、桑原が呆れたような声を出した。
「ハァ?何ほざいてんだテメエ。イカレたか?なんで俺に任せるんだよ。
護りたい奴は自分で護れ。じゃねえと、後悔するぜ」
正論だ。
だがな、そんなことはわかってんだよ。後悔なら腐る程したさ。
メグの救助を他人に任せた自分を恨まなかった日はない。
しかし、後手に回ることだけは避けなければ。
フレイザード退治を他人に任せて、何かが起こってから後悔することだけはしたくない。
ルキアを直接護ることはできなくなってしまうが、フレイザードを放置しておくことは危険すぎる。
ルキアも護りたい、フレイザードも倒したい。
さりとて俺の身体は一つ。
だから・・・・・・
「『青眼の白龍』のカードをお前に預ける。こいつでルキアを護ってくれ」
「おい、お前が持ってくんじゃねえのかよ!?」
違う。
俺は『青眼の白龍』をフレイザード対策に使う事など欠片も考えてねえ。
このカードはルキアを護る為に使う。
それが、ルキアの傍を離れる俺に出来るせめてものこと。
別れを言うつもりはない。
ルキアの性格上、絶対についてくるだろうからな。
フレイザードとの戦闘にルキアをこれ以上関わらせないことは唯の自己満足。
奴との決着は俺がつけるべきだという身勝手な判断。
これ以上、傷つくルキアは見たくない。
何故か桑原が激昂する。
「真性のバカかお前は!一人でフレイザードに勝てると思ってんのか!?」
「手ごたえはあった。奴は重傷だから攻めるなら今しかないんだよ!」
俺は反論するが、相手は全く退く気配を見せない。
「お前もボロボロだろ!」
「刺し違えてでも、倒す」
「こっちの体勢が整ってからでもいいじゃねえか!」
「奴の合成魔法が完成したらお終いだ。その前に決着をつけないとヤバイ。口を出すな!」
「あァ!?フザけんなよテメエ。死ぬこと前提の特攻なんて俺は認めねえぞ!」
「黙れっつってんだろ!お前に認めてもらう必要なんかねぇんだよ!」
「ざっけんな、やんのかコラァ!」
言い争いは熱を帯び、激突寸前。
そんな剣呑とした空気を打ち破ったのは、腹に響く大きな声。
「落ち着かれよ!」
突然目の前に現れた男が持つのは力強い闘気。
逞しい身体に、額には大往生の文字。
男塾三面拳筆頭。中国拳法の達人である雷電その人である。
「ここで争っても何の意味もない。頭を冷やされい!」
凄まじい肺活量で説教する乱入者。
いや、そんなことを言われても・・・
俺はあんたが誰かわからないんだが。
困惑する俺とは対照的に、男と知り合いであるらしい桑原は少し気持ちを落ち着けたようだ。
状況からしてこの男は、承太郎達との話で出てきた雷電という男か。
雷電は俺達に近づくと、いきなり頭を下げた。
「申し訳ない!翼殿を見失ってしまったでござる!」
翼、だと?
そういえばさっきから姿を見ていない。
桑原も不安な顔を隠していないが、こいつは感情を隠さないことなどないだろうな。
不動のまま頭を下げ続ける雷電と、翼の失踪に歯噛みする桑原。
ここで質問して場を動かすのは俺の役目だろう。
話を聞くと、翼はブチャラティという男を追っていったそうだ。
そのブチャラティは、ヤムチャを追っている。
もう、走り出している。
もう、敵を追っている。
それなのに、俺は何をボヤボヤしているんだ?
また、他人に任せるのか?
嫌だ。もう後悔はしたくない。
正直、フレイザードに勝てる見込みは少ない。よくても相打ちだろう。
現状は『どうしようもない状況』。
だが、『どうしようもない状況』を打開できる絶対的な存在がいる。
それは、スーパーマン。
世直しマンのようなスーパーヒーロー。
そんなスーパーマンに俺はなりたかった。
どんな状況でもたちどころに解決してしまうヒーローに。
その為にリーダーを目指したが、結局はなれなかった。
その代わりに強くなることはできた。
誰かを護れるくらいに強くなったという自負もある。
たけしのばあちゃんと比べるとまだまだ弱いが、それでも今ならメグを護りきれる。
メグが護れて、ルキアが護れない道理はない。
ただし、フレイザードの合成魔法は本気でヤバイ雰囲気が漂っている。
『守り』に入るわけにはいかない。
奴を倒せば、ルキアに降りかかる大きな火の粉の一つが排除できる。
例え俺が死ぬことになろうとも。
過ちを繰り返す気はない。
今こそ、スーパーマンに俺はなる。
桑原にルキアとカードを無理矢理押し付け、一歩を踏み出す。
「じゃあ、後は頼んだぜ」
「待てやァ!どうしても行くってんなら俺も行くぜ!」
「お前が来たら誰がルキアを護るんだよ!」
再び不毛な議論が巻き起ころうとしたとき、それを止めたのはやはりこの男。
「心配御無用、拙者にお任せあれ!」
雷電が承太郎とルキアをひょいと取り上げ、
その結果、抱えていた二人の人間を急に失った桑原がバランスを崩す。
倒れそうになった桑原を支えたのも、やはり雷電。
その身体で桑原の全体重を受け止める。
「す、すまねえ」
礼を言う桑原に軽く笑いかける雷電。
そのまま、自分の提案を口にする。
「問題を解決する手段は唯一つ。拙者がルキア殿と承太郎殿を護れば問題なし!
ボンチュー殿と和真殿は思う存分悪人退治をなされるがよい!」
つまり、俺と桑原がフレイザードを追い、
雷電とルキアと承太郎は東京タワーでルフィ達と合流する、ということか。
その提案は確かに魅力的だが・・・
「駄目だ。桑原もルキアについて、俺の仲間が待っている東京タワーに向かってくれ」
その発言で、桑原が、キレた。
虎をも射殺すような視線で凄む。
「ボンチューよぉ・・・いい加減にしとかねえと俺ァキレるぜ?気は長ェほうじゃねぇんだよ。
俺がここで放っておいたとして、もしお前が死んだら、俺はルキアにどのツラ下げて会えばいいんだよ?」
・・・そこをつかれると痛い。
黙っている俺に更に追い討ちをかける。
「それにどうやってフレイザードを探す気だ?俺みたいに霊感能力でも持ってんのかええコラ?」
「・・・」
「なんとか言えよオイ!」
「チッ・・・降参だ。ただし、一つだけ条件がある」
これだけは譲れない。
桑原ではなく雷電への条件。
「ルキアを、絶対に護りきってくれ。頼む」
「ご安心召されい。この雷電、身命にかえても」
「信頼、するぜ。裏切んなよ」
信頼、か。
昔の俺からは考えられない言葉だな。
そういえば、桑原に頼むときもあまり不安を感じなかった。
さっき出会ったばっかりの、他人であるのに。
それはこの男が持つ、他人から信用を得ることができる空気のおかげだろう。
愚鈍だが、真っ直ぐな心。
少し、羨ましい。
信頼という言葉は、俺がリーダーになれなかった原因でもある言葉。
たけし、今ならお前が言った『信頼』の大切さも少しわかる気がするぜ。
それでも、俺は力を求める。
俺にとっては、リーダーになることより強くなることのほうが重要なんだ。
強くなる。
俺は強い。
氷と炎の化け物なんかに負けてたまるか。
なあメグ、そうだろう?
『メグ、なにがおきても怖くないよ・・・
世界で一番強いお兄ちゃんが守ってくれるもん』
メグが望むなら宇宙一にだってなってやるさ。
だからメグ、見守っていてくれ。
俺がフレイザードを倒すところをな。
少年は決意する。
死神のために化物を倒すことを。
その気高き決意に応えるかのように、
黄金聖衣が輝きを増した。
【宮城県/早朝】
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]:ダメージ中、重度の疲労、軽度の火傷、強い決意
[装備]:蟹座の黄金聖衣@聖闘士星矢
[道具]:荷物一式(食料ゼロ)
[思考]:1:合成魔法が完成する前にフレイザードを倒す。
2:雷電に預けたルキアが心配。フレイザードとの戦いにルキアを関わらせるつもりはない。
3:戦いに備えて体力を回復させる。
4:もっと強くなる。
5:これ以上、誰にも負けない。
6:ゲームから脱出。
【桑原和真@幽遊白書】
[状態]:全身各所に打撲、戦闘によるダメージ中、軽度の火傷
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)
[思考]1:フレイザードを倒す。危なくなったらボンチューを連れて撤退しようと思っている。
2:ブチャラティ、翼のことが気になる。ブチャラティなら翼を護ってくれると思っている。
3:ピッコロを倒す仲間を集める(飛影を優先)
4:ゲームの脱出
【雷電@魁!!男塾】
[状態]:健康
[装備]:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
:気絶した承太郎@ジョジョの奇妙な冒険、気絶したルキア@BLEACH
:斬魄刀@BLEACH(一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている)
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)、遊戯王カード(青眼の白龍・使用可能)@遊戯王
[思考]1:ルキアと承太郎を守りつつ、東京タワーに移動。
2:何があっても仲間を守る。翼のことはブチャラティ殿に任せる。
3:ルキアが目覚めたら『青眼の白龍』を返し、使い方を説明する。
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:気絶、重傷、重度の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:斬魄刀(袖白雪)@BLEACH、コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式、バッファローマンの荷物一式
[思考]:1:気絶
2:ロビンを捜す。
3:ゲームから脱出。
4:第五放送が終わったら東京タワーに行く。
5:いつか必ず、フレイザードとピッコロを倒す。
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左腕骨折、肩に貫通傷(以上応急処置済み)。全身各所に打撲、左半身に重度の火傷。気絶。
[装備]:シャハルの鏡@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料二食分・水少量消費)
:双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢
:らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
[思考]1:気絶
2:悟空・仲間にできるような人物(できればクールな奴がいい)・ダイを捜す
3:主催者を倒す
悟空を東京タワーへとけしかける。
↓
悟空を東京ドームへとけしかける。
でした、たびたびすみません。
富士山。
日本が誇る美しき大山脈である。
その歴史は古く、道を辿れば富士山誕生は30〜40万年前まで遡ると言われている。
噴火の恐れがある活火山ではあったが、その外観の美しくさのせいだろうか。今でも登山客の数は衰えない。
資料によれば、富士山の噴火回数は17回前後。その度に山野を焼き払い、周囲の生ある者に恐怖を与えた。
近年、富士山に噴火の兆候は見られていない。が、下手に知識を蓄えているとやはり想像してしまうものである。
ここが本物の日本ではなく、本物の富士山ではないとしても。
ひょっとしたら、噴火の恐れがあるのではないだろうか。
登頂の真っ最中にそんなことを考えてしまうのは、心が弱くなっているからか。それとも、度重なる精神的試練で注意力が向上したからだろうか。
(ま、噴火したらその時はその時さ)
主催者もそこまで意地悪くはないだろう。たぶん。
と思いつつ、仙道は日本一の山を駆け上る。
ユニフォーム姿での登山者というのも珍しいが、荷物がデイパック一つと西遊記で知られる如意棒一本というのもおかしな話だ。
もしこの場に他の登山者がいたとしたら、間違いなく変な目で見られるに違いない。
しかし心配する必要はない。殺し合いのゲームの最中に、誰が好き好んで山登りなどしようか。
仙道自身も不本意な気分ではあった。だが、この山道を上った先に『脱出』への糸口があるのだとしたら。
そう考えれば、別段苦ではない。観光を兼ねたトレーニングだと思えば、おつりがくる。
仙道が富士山を上る理由は、ひとえに太公望が推理した監視の有無を確かめるためである。
主催者が参加者達の行動を把握する上で行われている可能性が高いとされる監視。
それを確かめる術として、太公望は雪原の広がる富士山頭頂部に目をつけた。
「上の方は結構肌寒いんだな。ユニフォーム一枚じゃあ厳しいか」
監視方法の一つの可能性として、『姿の見えぬ者による尾行』が考えられる。
人気がなく、大地を雪で覆った富士山頂なら、自分以外の足跡にもすぐ気づくことができる。
もし傍で見張っている者がいるとすれば、周囲の雪原に足跡が残るはずである。
(俺以外の足跡は……なし。この監視方法はないと考えていいのかな――太公望さん)
しかし周囲で見張っている輩がいるかどうか確認するだけなら、わざわざここまで来る必要はない。
富士山を登頂した真の狙いは、その天まで届かんとする標高にある。
(上を見渡しても……雲が見えるだけ)
太公望が考える監視方法その2。遥か頭上からの監視。
おそらく日本で一番高いところに位置する富士山頂なら、空に設置された監視機具を見つけられるかもしれない。
もちろん肉眼ではそれも不可能かもしれないが、何かヒントになるようなものでも掴めれば幸い。
太公望のその発案を信じてここまで歩き続けてきた仙道だったが、収穫はないに等しかった。
(うん。やっぱ雲しかないな……俺の目じゃあ何も見えないけど、デスマスクさんなら何か違ったものが見えたのかな……)
遠隔視という能力を持っていた仲間のことを思い出す。彼がいれば、仙道には見えないものが見えたかもしれない。
(いや、いやいやいや)
その顔を思い出そうとして、必死に頭を振り払う。
今は悲しんでいる暇はないのだ。収穫がないと分かった以上、ここで無駄な時間を浪費している訳にはいかない。
地上には、仙道の帰りを待つ仲間がいる。太公望とデスマスクが守ってくれた、大切な仲間が――
仙道が自慢の健脚で身体を走らせ、下山した頃には朝日が昇り始めていた。
富士山登頂から下山にかけた時間はわずか四時間程。いくら仙道の運動能力が高いとはいえ、装備なしの経験なしでは、このタイムは弾き出せないだろう。
これもやはり、ここが『縮小された日本』だからだろうか。富士山の標高も、随分と低くなっていたんじゃないかと思える。
「香さん、ただ今戻りました」
ふもとの山小屋を訪れ、待機していた槇村香と合流する。
本当なら別行動はしないほうがいいのだが、ここは禁止エリアである静岡県の間際。寄り付く人間もそうはいないはずである。
他よりも多少安全なこの場所を拠点とし、仙道は登山、香は休息と定めて進路を取ったのだったが、
「香さん……?」
狭い山小屋の一室。その隅っこに置かれたベッドに、横たわる女性が一人。
顔を枕に埋め、ぐったりと四肢を垂らしたその風貌は、仙道の不安を煽るのに十分な姿だった。
「香さん――ッ!?」
仙道は慌ててベッドに駆け寄り、無理やり香の身体を起こす。
覗いたその顔は、目を閉じ、口からは汁を垂らし、さらには、
「……すー……すー……」
「…………寝てる?」
とても幸せそうな表情をしていた。
安堵のため息と共に、仙道も崩れ落ちる。
それから数分後、香の表情は豹変していた。
幸せそうだった寝顔は次第に苦悶の色をおび、夥しい量の寝汗をかく。
ついには唸り声を上げるようになり、さすがに心配になった仙道は香を揺すって起こそうとするのだが、反応は薄い。
「――――ハッ!」
何度か語りかけるうちに、香はやっと目を覚ました。
荒い呼吸と高鳴る鼓動を落ち着かせようと深呼吸をしながら、傍らに仙道がいることに気づく。
「せ、仙道君。お、おかえり」
「だ、大丈夫ですか香さん? 随分と魘されていたみたいですけど……」
心配そうに尋ねる仙道の顔を見て、やっと我に返る。
額を拭うと、ぬめっとした感触とともに手が濡れた。気持ち悪い。
顔を洗いたい気分だったが、水は貴重品であると心に言い聞かせ、その場は我慢する。
呼吸が落ち着いた頃には、いつもの毅然とした表情に戻っていた。
鏡がないので確認することは出来ないが、仙道が安心した顔をしているので大丈夫だろう。
「あははは、なんか恥ずかしいところ見せちゃったね」
「とんでもない。それより本当に大丈夫ですか? 何か嫌な夢でも見たんなら、さっさと忘れちまったほうがいいですよ」
仙道のその言葉を聞いて、香はクスっ微笑を浮かべた。
やはり仙道の傍にいると安心する。どんな不安も消し飛んでしまうような気がした。
「うん……夢、ね。夢を……見たのよ。すごく、嫌な夢」
数秒間を置いて、香は語り出す。
己が見た、悪夢の内容を。
「すごく単純で、変な夢。真っ白い世界に、私とリョウと海坊主さんと冴子さんがいてさ。みんな元気な姿で笑ってるんだ」
リョウ――海坊主――冴子。
いずれも香がこのゲーム内で失った仲間だった。
「でもね、次第にリョウの身体が私から離れていって……遠ざかって……消えてしまったの」
リョウ――香の仲間の中で、もっとも早く死んでしまった人。
「それから海坊主さん、冴子さんも同じように――あとに残されたのは、私だけになって」
嫌な意味でリアルな夢だった。
仲間は消え、自分だけ残る。まるでこのゲームの惨状を物語っているかのようではないか。
「目覚めても……夢と一緒なんだよね。リョウも海坊主さんも、冴子さんもいない。残ったのは私だけ――」
「俺がいますよ」
今にも涙を浮かべそうな香の横顔に、仙道は短く呟いた。
「香さんの傍には、いつだって俺がいます。一人じゃありません」
笑いかける。
その笑顔が、誰かに似ていて。
「……仙道君ってさ、時々生意気なこと言うよね」
「恐縮です」
「……褒めてないってば」
自然と笑みがこぼれる。いつの間にか、普段の槇村香の顔に戻っていた。
仙道自身も頬を赤らめて恥ずかしそうにしているものだから、よけいにおかしかった。
日が完全に昇り、朝が顔を出す。
「そろそろおはようございますの時間ですね、香さん」
「一日中顔を合わせてたのに、今さらおはようはないんじゃない?」
「だからこそよけいにですよ。挨拶はスポーツマンの基本です」
山小屋を出発して、再び歩き出した仙道と香は、進路を西に取っていた。
追手内洋一との別離から既に約一日。このまま山梨付近を捜索していても、彼と再会できる可能性は低い。
ならば新たな地に捜索の足を伸ばし、情報を仕入れるべきと決断したのだった。
加えて、二人には太公望から受け継いだ情報を伝達するという使命も残っていた。
第四放送時点での太公望を知る生存者――星矢、秋本麗子、竜吉公主、ダイ。この四人との接触を最優先。
注意すべき人物は、蘇妲己、藍染惣右介。いずれもマーダー、またはステルスマーダーとして潜伏している可能性がある。
特に藍染は関西方面にいる確率が高く、注意が必要だった。
とりあえずの目的地は星矢、麗子のいる可能性がある琵琶湖。そして公主、ダイのいる可能性がある四国。どちらも西。
行き先を定めた仙道と香は、進む。希望を掴むために。
――香さんのこと、守ってやれよ仙道
「――え?」
「どうしたの、仙道君?」
「いえ、なんでもありません(空耳かな? 一瞬三井さんの声が聞こえたような……?)」
そうして、仙道彰と槇村香は去る。
三井寿、そして太公望にデスマスク。
数多の仲間達が死んでいった激戦の地、山梨を背後に。
二人はもう二度と、振り返らない。
【山梨県/早朝】
【仙道彰@スラムダンク】
[状態]:疲労大、負傷多数(致命傷ではない)。軽度の火傷。太公望から様々な情報を得ている。
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:支給品一式(食料一日分消費)
遊戯王カード
「真紅眼の黒竜」「光の護封剣」「闇の護風壁」「ホーリーエルフの祝福」…二日目の真夜中まで使用不可能
「六芒星の呪縛」…二日目の午前まで使用不可能
五光石@封神演義、トランシーバー×3(故障のため使用不可)、兵糧丸(3粒)@NARUTO
[思考]:1、琵琶湖、四国と巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
2、追手内洋一を探す。
3、首輪を解除できる人を探す。
4、ゲームから脱出。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:右足捻挫。少し走れるほどには回復した。太公望から様々な情報を得ている。
[装備]:ウソップパウンド@ONE PIECE
[道具]:荷物一式(食料三人分)、アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険 (弾切れ)
[思考]:1、琵琶湖、四国と巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
2、追手内洋一を探す。
3、首輪を解除できる人を探す。
4、ゲームから脱出。
380 :
作者の都合により名無しです:2006/08/17(木) 17:17:41 ID:JSEaX6Vs0
“終の絶技” 最期の攻撃―ファイナルアタック―
タカヤの腕に、全宇宙のエネルギーが集まってくる。
片翼はもがれ、髪は銀髪に、瞳は美しい灰色に染まる。
それは、この宇宙の創造主に相応しかった。
「な、なんて気だ…この動力じゃもたねぇーか」
ヤムチャは、動力を80パーセントまで上げる。
「堕天使よ!!わたしに勝者の祝福を与えよ!!!」
光球は放たれた。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
男は走る。摩訶不思議な能力を持つ男から。
男は待つ。自分を殺しに来る女を殺すため。
(ふん。罠とも知らずにのこのこと……あの女の能力は確かに厄介だが、わたしにはこの絶対的な暗殺術がある。一撃で仕留めればあのような手品になどは……)
空が白み、闇が晴れた時刻。
桃白白は己が痕跡を残した農村の、すぐ隣の森林にいた。
既にあの女は自分に追いついてきているはず。そう考え農村に痕跡を残し、近くの森に潜んだ。
あの女が馬鹿でなければ、闇夜に森林を探索するなどという愚かで危険な行為はするまい。
そうなれば、動きを見せるのは必然的に朝。明るくなった頃合を見計らい、再び桃白白を殺しに来るはず。
それが、世界一の殺し屋が仕掛けた罠とも知らず――。
(勝負は一瞬。素早く女の背後に回りこみ、首筋に刃を突き立てるだけで終わる。……いや、あの女にはより屈辱的な死を与えてやらねば。いつぞやの男の時のように、ベロで殺してやるというのもおもしろいな)
ほくそ笑みながら、近づく足音に気を集中させる。
足音から察するに、随分と大きな歩幅だった。まるで男性のもののようだ。
それほどまでに焦って走っているのだろうか。不審に思った桃白白は木陰から顔を覗かせ、追撃者の姿を確認する。
(あ、あれは……あの山吹色の道着は、亀仙流のもの!?)
追撃者は女とばかり思っていた桃白白は、驚き目を配らせる。
森に迷い込んだ男の衣服は、全体を山吹色に包み、背中に『亀』の一文字を刻んだ、拳法家の道着。
あの孫悟空と同じ――亀仙流の武道家である証だった。
(これは思わぬ誤算だ……だが相手があの亀仙流ともあれば、見逃す理由はない。それに奴を殺せば、孫悟空への見せしめにもなる)
桃白白の暗殺拳は、亀仙流総師父・亀仙人とはライバル関係に位置する鶴仙人の教えによるもの。
亀仙流は宿敵ともいえる武術。わざわざ見逃してやる理由もなかった。
桃白白は即座に男の背後に移動。瞬速の技で脇差しを振るう。
(貰ったぞ――――六十億目!!)
が、そこには誰もいなかった。
(なっ――!?)
桃白白が男の背後に回りこむその一瞬の間に、男は既に移動していたのだ。それこそ桃白白を遥かに上回るスピードで。
空を切る脇差しの先に見えたのは、警戒して身を構える亀仙流の男――ヤムチャだった。
「なんだおまえは!? いきなり襲い掛かってきやがるとは、おまえもゲームに乗った参加者ってことか?」
(ちィィィ! わたしとしたことが、こんなところでしくじるとは。やはりまだ体力が十分ではないか……?)
互いに構え、一触即発のムードが漂う。
ヤムチャと桃白白。流派は違えど、両者共に実力派の武道家であった。
だからこそ、桃白白は問う。相手がそれなりの実力を持っていればこそ、知らぬはずはないのだから。
「小僧、貴様亀仙流の者だな? ならば当然知っていよう。世界一の殺し屋、桃白白の名を」
「は? タオパイパイ? ……いや、そんな変な名前は聞いたこともないんだが」
「な、なんだと!!?」
名うての武道家でありながら、桃白白の名を知らない!?
信じられないといった表情で驚く桃白白だったが、ヤムチャにしてみればなんのことだかさっぱりわからない。
なにせヤムチャは、"この時点での"桃白白とはまったく面識がないのだから。
(いや、待てよ……タオパイパイタオパイパイ……どっかで聞いたような……?)
記憶に僅かな蟠りを感じ、必死に思い出そうとするヤムチャ。タオパイパイ。決して初めて聞く名ではなかったような……?
「……思い出した、天下一武道会の時だ! 予選で餃子を倒して、その後本戦で天津飯に秒殺されたサイボーグのおっさん!」
「な、なに? サイボーグ? しかもわたしが弟子の天津飯に秒殺されただと? なにを馬鹿な。そもそもわたしは天下一武道会などというままごとに出場したことはないわ!」
互いの認識に相違が見られる。
それもそのはず。ヤムチャが知る桃白白は、悟空にボコボコにされ、その後サイボーグ手術でパワーアップした姿。素顔の桃白白とは初対面だった。
対して桃白白は、ヤムチャなど知るよしもない。せいぜい天下一武道会で顔を合わせた程度。しかしそれも今の桃白白にとっては未来の出来事。預言者でもなければ、未来の出来事など知り得るはずもない。
「いや、待てよ。だとすると……」
混乱する桃白白を尻目に、ヤムチャは何かを考え始める。
(この桃白白は、あの天下一武道会の時の記憶がない? どういうことだ?)
不思議に思うも、ヤムチャの頭で答えが出てくるはずもなく、思考は桃白白の実力について考え出す。
(顔がサイボーグになってないってことは、この桃白白は天津飯と戦った時よりずっと弱いってことだよな。でも俺はサイヤ人と戦うために修行したから、あの時より全然強くて……)
加えて超神水を克服。サイボーグ状態の桃白白でさえ、当時の天津飯に秒殺だったのだ。ならば。
考える内に、なんてことはない結論が弾き出された。
「つまり…………ザコ?」
「き、貴様! この世界一の殺し屋桃白白に向かってザコだと!? ふざけるのも大概に……」
怒りで桃白白が飛びかかろうとした矢先、ヤムチャの方が先に動いた。
桃白白が気づくよりも前に懐に潜り込み、腹に向かって正拳を叩き込む。
「がっ……」
それだけで、桃白白は悶絶し気を失ってしまった。
「……ふっ、悪いな。どうやら俺はアンタが考えているより、ずっと強くなりすぎちまったみたいだ」
当時の天津飯の言葉を思い出しながら、勝利の宣言を口にするヤムチャ。
やはり自分は強い。相手が変な能力者や宇宙規模の実力者ならともかく、一介の武道家などではもはや話にならない。
クリリン亡き今、"地球人最強"は紛れもなくヤムチャのものだった。
「しかしどうするかなコイツ。まさか一撃で失神しちまうとは思わなかったしなー」
ヤムチャは倒れた桃白白の処遇について考えだす。
が、すぐに自分の使命を思い出し、そんな考えは不要だと首を振った。
「……そうだよ。俺は今人数減らしをやってるんだ。それにコイツは、ただでさえ下衆なヤローだし。生かしておく必要もないよな」
決断し、桃白白に手をかけようとするヤムチャ。だが、
その腕は、"腕"に絡め取られた。
「ななななんだぁぁぁッー!?」
ヤムチャの腕を取り、無理やり背中で縛り上げる"腕"。
腕だけではなく、足、首も同様に"腕"でロックされ、結果ヤムチャは海老反りのような姿勢で地に投げ出された。
"ジッパー"に続く、摩訶不思議な技。この手の技に免疫がないせいか困惑するヤムチャは、地面をのた打ち回りながら視線を促す。
その先に、一人の女性が立っていた。
「……その男を殺したのは、あなた?」
「は?」
美人だった。
突如現れた黒髪の美人は、両腕を胸の前で交差させ、鬼気迫る表情でヤムチャに尋ねる。
「その男を殺したのは、あなたかと聞いているの!!」
「え、えええええええ!?」
訳がわからず、質問に答えられないヤムチャ。
そもそも彼女の示す"その男"――桃白白は死んでなどいない。
ならばそう言えばいいのだが、混乱しすぎてうまく舌が回らない。首を締め上げられているせいか、呼吸もうまく出来なかった。
とにかく、この状況はまずい。もしこの美人がゲームに乗っているのだとしたら、ヤムチャの身が危ない。
なんとか"腕"から逃れようと暴れるヤムチャだったが、"腕"は各関節を無駄なく締め上げ、自由を奪う。
身動きのままならないヤムチャを前に、その美人――ニコ・ロビンは憤りを隠せずにいた。
朝になり、追撃した先にあった一つの死体。ずっと追い続けた復讐の対象が、あっけなく死んでいた。
桃白白の死は望むところ。だが、唐突すぎた。
いきなり死なれ、このやり場のない怒りはどこに向ければいい。杏子の無念を乗せた復讐心は、どこにいけばいい。
ロビンは自身と――杏子の――思いを、この道着の男に踏みにじられたような錯覚に陥り、気がつけば『ハナハナの実』の能力で彼を拘束していた。
返答次第によっては、この男も"ゲームに乗った殺人者"と見なし殺す。
この憤りを晴らすために、もう杏子のような被害者を出さぬために、そして何より、自分が生き残るために。
睨む女と、混乱する男。
その舞台に、さらなる出演者が足を踏み入れる。
「これはどういった"状況"だ? できれば、詳しい"説明"を求めたいんだが」
「ッ! 誰!?」
「ゲゲ!」
新たな来訪者にロビンは警戒、ヤムチャは焦り、その場の空気をさらに険悪にする。
オタマジャクシのような模様に、数々のジッパーが装飾された独特のファッション。そして、おかっぱ頭。
ヤムチャはその姿に見覚えがあった。そもそも、ヤムチャは彼から逃げてここまで来たのだ。
この、"ブチャラティ"という男に追われて。
「無粋ね。今私はこの男に質問をしている最中なの。誰だか知らないけど、邪魔しないでくれるかしら」
「それは失礼。だが俺もこの"ヤムチャ"という男に用があってね。"仲間"を傷付けられた"オトシマエ"を払って貰わなくちゃならない」
オトシマエ――イタリアン・ギャングであるブチャラティの口から出るには些か違和感のある言葉だったが、これはこの場にいない"友"の代弁でもある。
ジャパニーズ・ケリの付け方。仲間を傷つけた相手には、それなりの報いを。
これは日本に限らず、全世界でも共通の思考である。"仲間"を思う心がある者なら、誰もが持つ当然の思考。
「君は知っているのか? あの男は"ゲームに乗った参加者"。それも"かなりの実力者"だ。もし君がヤムチャと敵対しているというのなら、俺は手を貸すが?」
この状況を冷静に分析し、共闘を申し込むブチャラティ。対してロビンは、
「私の答えは……これよ!」
「!」
ブチャラティの申し出を、"ヤムチャと同じ形"で返した。
ブチャラティの四肢、首を絡め取るように"腕"が生える。ロビンお得意の能力により、ブチャラティはいとも簡単に拘束されてしまった。
しかし、その顔にヤムチャのような焦りや混乱の色はない。
「不思議な力だ……もしやおまえも"スタンド使い"か? ……いや、違うな。おまえの傍には"誰もいない"。カズマの霊剣のように、俺の知らない未知の力のようだ」
「……? なにを言っているの?」
ロビンには、ブチャラティの言っている内容も、余裕の意味も分からない。
同じ技をかけながら、この態度の違い。
ヤムチャとブチャラティには、今までの経験による確かな違いがあった。
ヤムチャは武術に秀で、今までの敵も透明人間や宇宙人など得意な人種こそいたが、そのほとんどは体術による戦いだった。
故に他人の身体に腕を生やすような異能の使い手には、免疫がない。
対してブチャラティの交戦経験といえば、そのほとんどがスタンド使い。戦闘は体術よりも、能力の優劣と扱い方で勝敗が決した。
故に他人の身体に腕を生やすような異能の使い手にも、免疫がある。
「『スティッキィ・フィンガーズ』!」
突如、身動きの出来ないブチャラティの傍に、謎の異邦人が出現した。
一見して宇宙人にも見えるその外観。いったい今までどこに潜んでいたのかとロビンが思案する内に、
『スティッキィ・フィンガーズ』が、ブチャラティの身体に生えた"腕"を殴る。
「なっ……これはっ!?」
ロビンが異変に――己の腕に取り付けられた"ジッパー"に気づいた時には、もう遅い。
『スティッキィ・フィンガーズ』がジッパーを引き、生えた"腕"の一つを分断する。それだけで十分だった。
ロビンが咲かせた"腕"は全てオリジナルの腕に連動している。
桃白白の脇差しのダメージが本体にいったように、ジッパーによる分断の効果もまた、本体に返る。
ブチャラティとヤムチャを拘束していた"腕"が消え失せ、代わりにロビン本体の左腕がジッパーにより分断された。
(くっ……まさかこの男、私と同じ"悪魔の実の能力者"? いえ、悪魔の実は通常"自分"に影響を及ぼすもの。自分をゴム人間にできても、相手をゴム人間にすることはできないように、相手の身体を分断するなどという芸当は不可能!)
己の身体を分断させる、"バラバラの実"というものなら聞いたことがある。だが、他人の身体を分断させる能力を秘めた悪魔の実など聞いたことがない。
この能力、悪魔の実の能力で括るには特異すぎた。
(ミクロバンドのような特殊な支給品による効果とも考えられる。とにかくこの切断面、血が噴き出さないところを見ても、なんらかの能力であることは間違いないわ)
冷静に分析し、ブチャラティに向き直るロビン。
片腕を失ったが、もう片方の腕が無事なら"ハナハナの実"の能力は有効。まだ勝機は薄れていない。
「身構える必要はない。さっきも言ったが、俺が用があるのはヤムチャだけだ」
しかし意外なことに、これ以上ブチャラティに交戦の意思はないようだった。
と思いきや、
「だが、君が"ゲームに乗っている"というのなら、その腕を繋げるわけにはいかない。俺もそれなりの対処を取らせてもらう」
ブチャラティはガラ、そして桑原との初遭遇の瞬間を思い出す。
全ての闘争は誤解で生じ、そのせいで死者も出た。
避けられる争いは避けねばならない――ブチャラティは、主催者の思惑に乗るつもりはないのだから。
(まずいぞ……どうにかこの腕を解かないと、俺の身体もあんな風にジッパーで分断されるっ)
悪い想像をしつつも、腕は絶妙なポイントにロックをかけ、力ずくでは外せないようになっている。
打つ手がない。このままブチャラティによって身体をバラバラにされるのを待つばかりなのか。
不安に押しつぶされそうなヤムチャの心境を知る由もなく、ロビンの腕は完璧に接合された。
そして、二人の異能者がヤムチャに向き直る――
「――痛ッ!?」
「へ?」
突如、ロビンが苦痛の声を漏らした。
それと同時に、ヤムチャを縛っていた腕が消える。
なにが起きたのかを把握するため、首を振るヤムチャ――そして見た。
真横には、血に濡れた脇差しを構える桃白白がいた。
(桃白白が、俺を助けた?)
理解不能な状況に、ヤムチャは度々混乱する。
桃白白にとっては、ここにいる全員が敵のはず。その桃白白がなぜ、自分を助けるのか。
「どうやら、君の宿敵は気絶していただけのようだ。それもどういうわけか、ヤムチャには敵意を向けていない」
「……そのようね。でも好都合だわ。これで、私の目的が果たせる」
血の滴る左腕を庇いながら、ロビンは恍惚な笑みを浮かべる。
杏子の仇は、まだ生きていた。この事実が、ロビンを奮い立たせる。
「おい、亀仙流の小僧。大体の事情は気絶したフリをしながら聞いていた。どうやらおまえも、あのブチャラティとかいう男に狙われているらしいな」
そう。ヤムチャの拳により気絶していた桃白白だったが、その意識は数分前には覚醒していた。
ちょうどブチャラティとロビンが一悶着起こしていた頃、桃白白は身近に自分の命を狙う者がいることに気づき、途中から様子を窺っていたのだった。
「だ、だったらどうだって言うんだ。おまえだって、あのロビンとかいう女に狙われてるんだろうが」
「そうだ。わたしとおまえは、共に命を狙われている。そこでだ、ここはお互い休戦し、手を組まないか?」
「な、なんだって?」
「契約は、"あの二人を殺すまで"だ。悪い話ではあるまい。世界一の殺し屋、桃白白が協力してやろうと言うんだ。本来なら一億ほどの報酬を貰うところだが、今は『殺し屋さん二十周年記念キャンペーン中』だから五千万、いや、この際無料にしてやってもいい」
あまりにも意外――そして急な、殺し屋桃白白の共闘の申し出だった。
このブチャラティとの接触で冷静さを取り戻したロビンは、改めて考える。
自分の目的、ヤムチャを拘束していた理由、おかっぱ男の目的。
総合して、ロビンはブチャラティを味方と――
「はん、俺を忘れてるな!? 隙だらけだぜェェ!!」
瞬間、ヤムチャがロビン目掛けて飛びかかってきた。
そうだった。『スティッキィ・フィンガーズ』により自由になったのは、ブチャラティだけではない。
この危険人物、ヤムチャもまた拘束を逃れたのだった。
「六輪咲き」
「ぐげっ!?」
しかし慌てることはない。冷静さを取り戻したロビンには、それも計算の内。
ヤムチャの身体から生えた無数の"右腕"が、再び身動きを奪う。
再度雁字搦めにされたヤムチャを尻目に、ロビンはブチャラティに言葉を投げかける。
「まず先に、あなたの名前と目的を尋ねようかしら? 私の名前はニコ・ロビン。あなたは?」
「俺はブローノ・ブチャラティ。目的は"首輪の解除"、"主催者の打倒"、そしてそれを脅かす危険人物、"ヤムチャの抹殺"だ」
「……その"ヤムチャの抹殺"というのは、先ほど言った"オトシマエ"……仲間の仇討ちも含まれているのかしら?」
「その通りだ。では、今度はこちらの番だ。君の目的を聞こうか、ニコ・ロビン」
「私の目的は、あそこに転がっている男の抹殺。もっとも、それは彼が成し遂げてくれたみたいだけど」
視線を移す。確かに、ヤムチャのすぐそばに男の身体が転がっていた。
「なるほど。君のさっきの鬼気迫る勢いから推測するに……君の目的も"仇討ち"。もしくは"復讐"というわけか」
「どうとってもらっても構わないわ。ただ、もう私にあなたと争う意思はない。可能と言うなら、この腕を治してくれないかしら?」
そう。桃白白は死んだ。改めてそれを認識すると、憤りはやるせない気持ちとなってロビンの心を蝕んだ。
「……いいだろう。"嘘"は言っていないようだ。だがヤムチャの拘束は解かないでくれ。奴を野放しにすると危険なんでな」
ブチャラティはロビンを認め、分断した腕を再び繋ぎ合せる。
その最中、拘束されたままのヤムチャは心中穏やかではなかった。
(まずいぞ……どうにかこの腕を解かないと、俺の身体もあんな風にジッパーで分断されるっ)
悪い想像をしつつも、腕は絶妙なポイントにロックをかけ、力ずくでは外せないようになっている。
打つ手がない。このままブチャラティによって身体をバラバラにされるのを待つばかりなのか。
不安に押しつぶされそうなヤムチャの心境を知る由もなく、ロビンの腕は完璧に接合された。
そして、二人の異能者がヤムチャに向き直る――
「――痛ッ!?」
「へ?」
突如、ロビンが苦痛の声を漏らした。
それと同時に、ヤムチャを縛っていた腕が消える。
なにが起きたのかを把握するため、首を振るヤムチャ――そして見た。
真横には、血に濡れた脇差しを構える桃白白がいた。
(桃白白が、俺を助けた?)
理解不能な状況に、ヤムチャは度々混乱する。
桃白白にとっては、ここにいる全員が敵のはず。その桃白白がなぜ、自分を助けるのか。
「どうやら、君の宿敵は気絶していただけのようだ。それもどういうわけか、ヤムチャには敵意を向けていない」
「……そのようね。でも好都合だわ。これで、私の目的が果たせる」
血の滴る左腕を庇いながら、ロビンは恍惚な笑みを浮かべる。
杏子の仇は、まだ生きていた。この事実が、ロビンを奮い立たせる。
「おい、亀仙流の小僧。大体の事情は気絶したフリをしながら聞いていた。どうやらおまえも、あのブチャラティとかいう男に狙われているらしいな」
そう。ヤムチャの拳により気絶していた桃白白だったが、その意識は数分前には覚醒していた。
ちょうどブチャラティとロビンが一悶着起こしていた頃、桃白白は身近に自分の命を狙う者がいることに気づき、途中から様子を窺っていたのだった。
「だ、だったらどうだって言うんだ。おまえだって、あのロビンとかいう女に狙われてるんだろうが」
「そうだ。わたしとおまえは、共に命を狙われている。そこでだ、ここはお互い休戦し、手を組まないか?」
「な、なんだって?」
「契約は、"あの二人を殺すまで"だ。悪い話ではあるまい。世界一の殺し屋、桃白白が協力してやろうと言うんだ。本来なら一億ほどの報酬を貰うところだが、今は『殺し屋さん二十周年記念キャンペーン中』だから五千万、いや、この際無料にしてやってもいい」
あまりにも意外――そして急な、殺し屋桃白白の共闘の申し出だった。
「か、金の問題じゃないだろ! なんで俺がおまえなんかと……!」
「ではこの状況をどう打破する? おまえ一人であのおかしな能力者二人を相手にできるのか?」
「ぐっ……」
グゥの音も出なかった。
確かにヤムチャは強くなった。それこそ桃白白など問題じゃないくらいに。しかし。
ずば抜けた体術を駆使しても、スタンドや悪魔の実の能力を攻略する術は見つからない。
ヤムチャはまだ死ぬわけにはいかない。確実に生を勝ち取るには、強さ以外の要因が必要だった。
その要員が、"協力者"という形で目の前にぶら下がっている。
「わかった。だがこんなことはこれっきりだぜ。殺し屋なんかと手を組んだとあっちゃぁ、武天老師様にあわせる顔がないからな」
「ふん、よかろう」
結果的にはヤムチャが了解し、桃白白との共闘が成立した。
「どうやら俺たちの互いの敵は、手を結んだようだ」
「ますます好都合ね。ならあなたと私が手を組んで戦うというのも、別におかしなことではないわ。……先ほどの共闘の申し出、受けるわブチャラティ」
「光栄だ、ニコ・ロビン。なら手を組むに当たって一つ聞きたい。あの桃白白とかいう男の武器はなんだ? 君の仲間は、どんな風に殺されたんだ」
「わからないわ。ただ、私の仲間――杏子は、戦う術を持たない弱い少女だった。杏子は、あの男に影から"狙撃"されたのよ。成す術もなく」
「狙撃、か。ある意味、こういった殺し合いの場では相応しい手法とも言える。相手は殺しのプロか? 見る限り銃を隠し持っているようには見えないが、その辺はどうなんだ?」
「それもわからないわ。ただ、杏子を殺した際に使った銃は奴の手元にはない。これは確実よ。他に武器を隠し持っている可能性がないとも言えないけれど」
「そうか。それだけわかれば十分だ。どうやら相手の体制も整ったようだし、会話はこの辺で終わりにしよう。……来るぞ!」
ブチャラティ、そしてロビンの即席タッグが構える。
各々の標的――ヤムチャと桃白白のコンビは、既に動き出していた。
二人の武道家が、同時に迫ってくる。
そのスピードは常人の目に余るもので、特別武道に浸透しているわけではないブチャラティとロビンにとっては、一瞬の出来事だった。
しかし、二人は幾多の戦闘経験を積んできたそれなりの戦士。武術の心得はなくとも、その動きを見切ることくらいはできる。
だから慌てず、自分たちに可能な"最善の手"で迎え撃つ。
「足元がお留守よ」
フッと微笑みロビンが手を交差させた直後、走るヤムチャと桃白白の足元に、足払いを狙った"腕"が生えた。
承太郎に"フットワークが悪い"とまで言われたヤムチャは、案の定その"腕"に足を取られ、転倒する。
対して桃白白は、ロビンの能力を念頭に頭に入れていたため、この奇襲にも怯むことなく対処した。
超人的な反射神経でロビンの"腕"を飛び越え、なおも直進する桃白白。転倒したヤムチャには目もくれず、一目散にロビンを狙う。
予想通り。さすがは、自ら世界一の殺し屋を名乗る男。即席の仲間を助ける心など持ち合わせてはいないようである。
ロビンが睨んだとおりの外道――だからこそ、ブチャラティは安心してヤムチャを狙える。ロビンは桃白白に対処できる。
「もらった!」
距離を詰め、脇差しの間合いまで迫った桃白白が仕掛ける。
桃白白には、ロビンの"ハナハナの実の能力"が完全にバレている。奇襲による拘束ならともかく、相手は一流の武道家。敵の身体に直接"腕"を咲かせても、その強靭な反射神経で脇差しを振るわれるのがオチだ。
――ならば、相手の手の届かない場所に"ハナ"を咲かせればいい。
「ぐへっ!?」
ロビンが選んだ場所は、桃白白の背中――それも、ちょうど背骨がある位置。
背中に生えた"腕"は、垂れ下がったお下げの髪を引っ張り、桃白白を転倒させる。
衝撃で脇差しを手放し、仰向けになる桃白白。ロビンはその一瞬を見逃さず、地から新たな"腕"を生やす。
即座に起き上がろうとした桃白白の身体はロビンの"腕"によって拘束され、地面に貼り付けにされた。
世界一の殺し屋といえど、これでは身動きが取れない。
「捕まえたわよ、桃白白」
ニコ・ロビンの"復讐"が始まる――
ロビンが桃白白を貼り付けにする数秒前。
ブチャラティはヤムチャの眼前にまで迫っていた。
「ぐっ、この腕、全然離れねぇ!」
ヤムチャの足首を掴んで離さぬ"腕"。身動きの取れぬヤムチャは、ブチャラティから逃げることができない。
(勝負は一瞬。奴の身体に"ジッパー"を取り付け、バラバラにする。それだけで、奴は無力化できる)
どんな実力者であろうと、五体をバラバラにされて動くことなど不可能。
"相手に手の内がバレていない"、もしくは、"相手が避けられない"状況であれば、最強ともいえる『スタンド』――『スティッキィ・フィンガーズ』。
ヤムチャのような特殊な力を持たない、体術自慢の武道家が相手なら、この最強の法則は揺ぎ無く適応される。
「もらった! 『スティッキィ・フィンガーズ』!」
ブチャラティの傍らの『スティッキィ・フィンガーズ』が、ヤムチャを襲う。
スタンドは発現したが、そこはまだ十分な距離ではない。拳がヤムチャに届くまでには、まだ間がある。
その間を狙い、ヤムチャが勝負に出る。眼前まで迫ったブチャラティに向け、掌を翳す。
「かかったなっ! くらえェェ!」
翳した掌が発光。次の瞬間、そこから気を練りだして作ったエネルギー弾が放たれた。
避けるのは不可能。そう思われた距離だが、ブチャラティはこの攻撃にも怯むことなく、冷静に動く。
「か、かわした!?」
「おまえが殺したあの"鎧の男"。加えて空条承太郎の火傷。あれは体術だけでどうにかなるものではない。なんらかの"爆発物"、もしくはそのような"技"を持っているとにらんでいた」
いつの間にか、ブチャラティがヤムチャの後ろに回り込んでいた。
「そ、そんな……」
エネルギー弾は予測されていた――その事実に愕然とし、項垂れるヤムチャ。
もはや彼に抗う術はない。このままブチャラティによって"ジッパー"塗れにされるのを待つばかりだった。
ブチャラティはロビンの方を一瞥する。そこには、地面に拘束した桃白白を見下ろすロビンの姿があった。
「どうやら、ロビンの方も片がついたようだ。では、こちらも決めさせてもらおう……」
「……おっとブチャラティ。そいつはまだ気が早いんじゃないか? なにか、"忘れてること"があるんじゃないか?」
「? この期に及んで時間稼ぎか? ならば無駄だ。既に勝敗は"決した"。おまえには"バラバラ"になってもらい、カズマたちの前で謝罪でもしてもらおうか」
そう。あとは『スティッキィ・フィンガーズ』の一撃を放り込むだけで終わる。だからこその余裕。
だが、
「じゃあ訊くけどよ、俺が放った攻撃は……いったいどこにいったと思う?」
言われて初めて気がついた。
先ほどヤムチャが放った閃光――球状のエネルギー体が、"消えている"。
どこかに当たって爆発した形跡はない。かといって自然消滅したとも思いがたい。
消失した攻撃の行方を考えるブチャラティ。その一秒にも満たない僅かな間。
それは、"地中から"姿を現した。
「ぐはっっ!!?」
地中から突然飛び出した、エネルギーの塊。ギリギリで避けたが、腹部を僅かに掠め取られたブチャラティは、衝撃と痛みで地を転がる。
地中から顔を出しブチャラティを襲ったエネルギー弾は、なおも健在。
「よっしゃぁぁぁ!! いけ、繰気弾!」
ヤムチャが指をクンッと動かすと、エネルギー弾は方向転換、ブチャラティ目掛けてスピードを上げた。
(くっ……迂闊だった! まさかあの攻撃が、"操作可能"だったとは!)
予想外の攻撃に戸惑い、避けきることができなかったブチャラティ。
だが己の失態を悔やんでいる暇はなく、繰気弾は執拗にブチャラティを追う。
(いつもより繰気弾が動かしやすい! これも超神水の効果か!?)
軽快に動き回る操気弾を見て、完全なる戦況の逆転を確信するヤムチャ。
逃げ回るブチャラティに、打開の術はない。洗練された武道家でもないブチャラティは、この超スピードで動き回る攻撃を避けるのが精一杯だった。
「滑稽ね、"世界一の殺し屋さん"。どうかしら? 狩られる側というのは」
「ぐぬぬぬ……」
四肢を"腕"で縛られ、地に貼り付け状態の桃白白。身動きが取れないのをいいことに、ロビンは拷問を始める。
「まずは……右腕」
脇差しを拾い構えたロビンが、桃白白の右腕に剣先を突き立てる。
「ぐっ!!」
グサッという生々しい音が鳴り、血が滲む。グリュグリュと剣先を微妙に動かし、桃白白に苦痛を与える。
「どうしたの? もっと無様に泣き叫んでもいいのよ」
(こ、この女……)
桃白白の目に映った、ロビンの瞳。それは、確かなる"殺人者の瞳"だった。
麦わらの海賊団の一員となり、暗い過去との決別を図ったニコ・ロビン。
殺し合いの世界に連れて来られ、一時は不安定になりながらも、スヴェンや杏子のおかげで己を取り戻しつつあったニコ・ロビン。
だが――もう駄目だ。
杏子の死と、彼女を殺した桃白白が、ロビンを暗闇に染まる"復讐鬼"に変えてしまった。
――この男にもっと苦痛を。
――この男に最も醜い最後を。
――この男に残酷な"死"を。
今は、そんなことしか考えられなくなってしまっている。
だからだろうか。
自分と桃白白のすぐ隣――共闘してくれていた仲間が、一転して窮地に立たされていることに気がつかなかったのは。
「ニコ・ロビン! 避けろォォォ!!!」
そんなブチャラティの叫びも、今のロビンを動かすのには遅かった。
桃白白の危機を知ってか知らずか、その標的をロビンに変えた繰気弾。
凶悪なエネルギー体が、今ロビンの眼前に――
爆発音が木霊した。ずっと宙を舞っていた繰気弾が、ついに爆ぜたのだ。
爆ぜた箇所は、地面。ロビンが立っていた地点――つまり、足元だった。
「うっ…………」
衝撃で投げ出されたロビンは、伏した身体を起こし、周囲を確認する。
土煙と焼けた木の葉が舞っていた。粉塵が舞うの森の中、視界は最悪だった。
だが愚痴は言っていられない。すぐ近くには殺し屋がいる。仕掛けてくるなら、視界を制限された今が最適――
「っ! "六輪咲き"!」
警戒していたロビンだからこそ、自らに襲い掛かってきた影にも対処できた。
即座に"ハナハナの実の能力"を発動。対象に"腕"を生やし、逸早く拘束に成功した。
かと思われた。
(――――手ごたえが、ない!!?)
確かに捉えた桃白白の身体――しかし、絡め取ろうとした四肢が見当たらない。
ロビンが困惑する内に、捉えた対象は土煙から姿を現す。
「――丸太!?」
ロビンが桃白白と"錯覚"したそれは、なんてことはない、ただの丸太だった。
囮――桃白白がかつて戦った敵、シカマルの変わり身の術から学んだ兵法だったのだ。
「惜し――」
気づいた時。桃白白は。
(敵は――既に背後に――)
手からこぼれた脇差しを取り戻し。それを構えて。
「――かったなァーーーーッ!!!」
ロビンに。斬りかかっていた。
「がっ……はっ」
口から鮮血が零れる。
腹部に深々と刺さった脇差しは、ロビンの意識を掠め取るように奪っていく。
その柄を握るのは、憎き仇敵――桃白白。
(私が…………こいつに殺、される……? それ……だけは…………!)
ロビンは最後の力を振り絞り、桃白白の身体に"ハナ"を咲かせる。
だがその"腕"に込められた力は弱々しく、桃白白の動きを奪うまでには至らない。
「ふんっ。このくたばりぞこないがァァァ!!」
突き刺さった脇差しを引き抜き、斜めに袈裟斬りを加える。
ロビンの身体に入る、新たな亀裂。吹き飛ぶ鮮血は、勝利を確信するには十分な量だった。
力尽き、倒れるロビン。
桃白白の身体に生えた"腕"もその姿を消し、完全に沈黙する。
「……ようやく死んだか。随分と手間を取らされたが、これで六十億。やはり世界一の殺し屋の名は揺るがんな」
自分の仕事内容に満足した桃白白は、ロビンの下を離れる。
敵はロビン一人ではない。もう一人いる。
ブチャラティなる異能者。そして叶うなら、ヤムチャも一緒に殺す。そうすれば一気に八十億。
目論む桃白白は、土煙から抜け出し、次なる獲物の位置を探す。
そんな殺し屋を出迎えたのは、"二人"の敵だった。
「『スティッキィ・フィンガーズ』!!!」
――おそらく桃白白が隙を見せるのを待っていたのだろう。
ロビンを助けるため、わざわざ標的であるヤムチャを放って駆けつけたブチャラティ。しかし僅かに遅かった。
入れ違うように土煙から出てきた桃白白。絶好の的だった。
『スティッキィ・フィンガーズ』の攻撃が命中する。
桃白白の首筋から右脇腹にかけて、"ジッパー"が走る。
「ぬおおおおおお!!!」
しかし、それを引くまでに至らなかった。
"ジッパー"の危険性を感じ取った桃白白は反撃の手も引っ込め、全精力を逃走につぎ込んだ。
おそらく、"ジッパー"は取り付けられただけでは無害。そう考え、ブチャラティを殺すことを後回しにしたのだった。
「おい、無事か桃白白!?」
「ここは一旦引くぞ、亀仙流の小僧!」
桃白白とヤムチャが合流し、逃走を図る。
超人的な身のこなしの武道家二人にブチャラティが追いつけるはずもなく、また追いかけようともしなかった。
こうなってしまっては、一時的とはいえ同盟を結んだ仲間の方が大事である。
「…………逃がさない」
しかし、もう一人は違った。
復讐に燃える女――ニコ・ロビンは、桃白白を逃しはしなかった。
最後の力を振り絞り、桃白白の身体に"腕"を生やす。そしてその手が掴んだものは、ブチャラティが仕掛けた"ジッパー"。
「な、なにぃ!?」
ニコ・ロビンの手により、桃白白の"ジッパー"が引かれる。分断されたのは、右腕だった。
取りに戻るわけにも行かず、桃白白はこぼれた右腕を名残惜しそうに見ながら駆けていく。
取り残された右腕は、ニコ・ロビンの執念の証だった。
十分な距離を稼ぎ、二人の武道家は木陰で身を休める。
「おのれぬかったわ! あの女、あんなところでイタチの最後っ屁をくらわせてくるとは……」
右腕を庇いながら憤怒する桃白白。相手が異能者とはいえ、世界一の殺し屋たる彼らしくない失態だった。
「そうカリカリすんなよ。どうせ痛みはないんだろ?」
「馬鹿め。確かに痛みはないが、これでは満足に戦えんではないか。このままでいるわけにはいかん。右腕は必ず取り戻す」
「おいおい! まさかもう一度あいつのところに行くって言うのか!? オレはやだね! もうあんな変な力使う奴とは係わり合いになりたくない!!」
ヤムチャの目的はあくまでも、『悟空に殺せないような弱い者の始末』。ブチャラティのような手にあまる輩は、他の誰かに任せておけばいい。
「ふん。今さら亀仙流の小僧に助力を求めたりはせん。あの場合は利害が一致したから協力したまでのこと」
「あ、そっか。そうだよな。別にオレとおまえがずっと組んでる必要はないんだよな」
亀仙流のヤムチャと、鶴仙流の桃白白。本来なら相容れぬ間柄であった二人が手を取り合ったのは、単なる偶然。
よくよく考えれば、桃白白は優勝を狙っているのだ。協力者を作ること自体を間違っている。
「……なら、今ここでオレがアンタを殺しても文句はないよな」
「――なに?」
嫌な風が吹いた。ヤムチャが桃白白に殺気を放っているのだ。
「ま、待て。正気か貴様?」
「もちろんマジさ。殺せる時には殺さないとな。オレの目的は人数減らしなんだし」
冷や汗が出てきた。この男、本気だ。
「よ、よせ、それはマズイ! もう少し考え直せ!」
「なんでだよ。この期に及んで、ちょっと往生際が悪いんじゃないか?」
ヤムチャの実力は、既に最初の接触時に判明している。
それでなくとも今の桃白白は片腕。まともにやり合って適うはずがなかった。
「心配すんな。おまえみたいな悪党でも、一応あとで生き返らせてやる。クリリンが考えた願いは、『このゲーム自体をなかったことにする』ことだからな」
「生き返らせる? それはまさか、優勝者へのご褒美のことを言っているのか?」
「ご褒美? フリーザたちの言ってた一人蘇生のことか? だったら違うぜ。オレが言っているのは、『ドラゴンボールを使って全部なかったことにしてもらう計画』さ」
「ドラゴンボールだと?」
「そうだ。おまえも噂くらいは聞いたことあるだろう? 七つ集めればなんでも願いが叶う玉。オレはあれを使って、このゲームをぶっ壊すつもりなのさ!」
ドラゴンボール――知らないはずがない。
かつての雇い主だったレッドリボン軍が探し求めていた玉だ。桃白白にとっては、孫悟空と出会うことになったきっかけの玉でもあった。
話によると、ヤムチャは一度このゲームを終わらせた後、元の世界でドラゴンボールに願い、このゲームをなかったものにしてもらうつもりらしい。
だがそれにはピッコロという人物の生存が絶対で、彼が死ぬとドラゴンボールはただの石ころになってしまうとのことだ。
(それを見越しての殺人。やはりこの男も孫悟空の仲間。満足に人も殺せんあまちゃんか)
だがそれならそれで、生き残る道はある。
「ならばなおさら、わたしは殺さない方がいい」
「なんでだよ?」
「わたしは世界一の殺し屋だ。この世界に来てからも、既に六人の参加者を葬ってきた。人数減らしにはもってこいの人材だと思うが?」
「それはつまり……オレの計画に協力してくれるってことか!?」
「うむ。例によってキャンペーン中のため、報酬は無料だ。おまえは運がいい」
「やっほう!」
ヤムチャは飛びあがって喜んだ。
これでまた一歩、計画成功への道が進む。クリリンは死んでしまったが、彼の計画に賛同してくれる人物はまだまだいるのだ。
手際よく人数減らしを行うため、二人の武道家は進路を別々に取ることにした。
「では、わたしは南、おまえは西だ。参加者を見つけたら即座に抹殺。いいな」
「おお! これで人数減らしもだいぶ楽になるぜ! じゃ、頼んだぞ桃白白!!」
「うむ。この世界一の殺し屋、桃白白に任せなさい」
桃白白の了解を受け取ると、ヤムチャは意気揚々と西に走り出して行った。
去っていくヤムチャの背中を見ながら、桃白白はフフフっと笑う。
「馬鹿な男だ。この桃白白様がそんなアホな計画に乗るはずがなかろうが。第一、全部なかったことにされては主催者からの報酬がパーになるではないか」
もちろん、桃白白にヤムチャを協力する意思などない。さっきのは単なるその場凌ぎの方便だ。
生き残るのはあくまで自分ひとり。その信念は揺るがなかった。
(まずは体力の回復だな。そして、なんとしてもあの男から右腕を取り返す)
次なる標的はブチャラティ――目標を持った殺し屋は、殺意を滾らせる。
「桃……白白は?」
「……逃げられた。君が切り離した、"右腕"を置いてな」
もはや虫の息となってしまったロビンと、桃白白の右腕を持ったブチャラティが語り合う。
「そう……わたしは、杏子の仇を討つことができなかったのね……悔しいわ」
「悔しがることはない。君は立派に"目的を果たした"。この"右腕"がなによりの証拠だ」
桃白白の右腕を示すブチャラティ。これで十分とでも言いたいのだろうか。
だがロビンにとっては、こんなもので復讐が完遂できたことにはならない。
「……気休めは止してちょうだい。わたしはあの男を殺すことができなかった。あの男は、きっとこれからも殺人を繰り返す。杏子の無念は……晴らせていない」
「いや、違う。君の"無念"も、その杏子という少女の"無念"も、すぐに"晴れる"」
「……? どういう……?」
疑問に思うロビンに向けて、ブチャラティはさらに強調させて、右腕を示した。
「桃白白が置いていったこの"右腕"。首筋から脇腹にかけて、斜めに"ジッパー"が入っている。
いや、"右腕"と呼ぶには少々面積が大きいな。なにせ右肩や右脇もこの"右腕"に含まれている。もはや"右半身"といっても過言じゃない」
「ブチャラティ……まさかあなた」
ブチャラティがしつこく翳す右腕を見て、ロビンも気づいた。彼がなにを言いたいのかを。
「これだけ大きな"切断面"だ……実際に切断されたものだとしたら、かなりの出血を及ぼすだろうな。それこそ"死を免れぬほどに"」
ブチャラティの言葉の意味を確信し、ロビンは安心した表情を浮かべた。
そして、優しく瞼を閉じ始める。
「……船長さんには迷惑をかけてしまうわね。勝手に船を下りることになってしまって……」
「なんだ? まだ心残りなことがあるのか?」
「いいえ。こちらの話よ」
「そうか」
これ以上ブチャラティに迷惑はかけられないと、ロビンは自らの口を閉ざした。
最後に願わくば――船長さんや狙撃手さん、紳士さんたちが生き残ってくれますように――
「これを、"ニコ・ロビン"への"弔い"にしよう」
ブチャラティは桃白白の右腕を頭上に放り投げ、己のスタンド、『スティッキィ・フィンガーズ』を出現させる。
そしてその拳を、空に舞った"右腕"に向けて――
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリィィィィィ!!!」
粉々に拉げる、桃白白の右腕。無残な姿に変わり、地に落ちる。
"ジッパー"の跡は、いつの間にか消えていた。
「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
この言葉を、右腕に――
そして、他ならぬニコ・ロビンに――
「おーい、ブチャラティく〜ん!」
ロビンを埋葬した森林を後にし、ブチャラティはすぐ傍の農村で見知った人物に発見された。
「色々探し回っちゃったよ。このまま見つからないかと思った」
「……大空翼か。おまえのことも雷電から聞いている。相当"クレイジー"な奴らしいが……まさかずっと俺を追ってきたのか?」
「うん! それはそうと、ヤムチャって人はどこに行ったの?」
「ああ、奴なら逃げられた。おそらく追跡はもう無理だろう。雷電やカズマたちのところに戻るぞ」
「そうなのか……せっかくサッカーの魅力について語ってあげようと思ったのに、ちょっと残念だな。あ、雷電さんたちと合流するなら東京タワーに行こう。放送が流れる頃には、みんなそこに向かうことになってるから」
翼はそう言うと、ブチャラティを先導するように走り出した。
ロビンやヤムチャのことに関しては、今は話すつもりはない。このクレイジーボーイ一人に事情を説明したところで、あまり意味はないからだ。
(彼女の悲しみを背負うのは、今は俺一人でいい。それにもうすぐ放送が流れる。読み上げられる名には、きっとあの男の名前も――)
「――ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
長野県の森に、男の断末魔が木霊する。
その男は、切り落とされた右半身の傷口から鮮血を吹き、悶え苦しんでいる。
――この男にもっと苦痛を。
鮮血の勢いは、途切れることを知らない。
まるで壊れた蛇口のように暴れ狂い、男から血を絞り出す。
――この男に最も醜い最後を。
清潔な拳法着、チャームポイントの髭とお下げ。全てが血に汚れていく。
止血がままなる規模ではない。内臓や骨が飛び出しているのだ。止血がどうのこうのという騒ぎではない。
――この男に残酷な"死"を。
(馬鹿なっ……なぜ今になって血が噴出す!? あの男の能力は、傷を作らず人体を分断することではなかったのかァ!?)
男は知らない。"ジッパー"により分断された人体。分断された状態で"ジッパー"が解除されれば、どうなるのか。
(こんな……ところ、で……)
地獄の苦しみを味わいながら、男は死に絶える。
森のざわめきが、復讐鬼の呪詛にも思えた。
――世界一の殺し屋桃白白、ここに散る。
――死因、出血多量によるショック死。
【群馬県・農村/早朝】
【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:右腕喪失・全身に無数の裂傷、腹部に軽傷(応急処置済み)
[道具]:荷物一式×3、千年ロッドの仕込み刃@遊戯王
:スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、ミクロバンド@ドラゴンボール
[思考]1:東京タワーに向かい、雷電たちと合流。
2:必ず仲間の下へ帰る。
3:首輪解除手段を探す。
4:主催者を倒す。
【大空翼@キャプテン翼】
[状態]:精神的にやはり相当壊れ気味、全身各所に打撲、軽度の火傷
[装備]:拾った石ころ一つ、承太郎お手製木製サッカーボール
[道具]:荷物一式(水・食料一日分消費)、クロロの荷物一式、ボールペン数本
[思考]1:東京タワーに向かい、雷電たちと合流。
2:悟空を見つけ、日向の情報を得る。そしてチームに迎える。
3:仲間を11人集める。
4:主催者を倒す。
【長野県・森林/早朝】
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)左小指に"ジッパー"
超神水克服(力が限界まで引き出される)
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料、バスケットボール@スラムダンク
[思考]:1.西に向かい、人数減らし。
2.参加者を減らして皆の役に立つ。
3.あわよくば優勝して汚名返上。
4.悟空・ピッコロを探す。
5.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【ニコ・ロビン@ONE PIECE 死亡確認】
【桃白白@ドラゴンボール 死亡確認】
【残り41人】
・投下順序を間違えたため、
>>389をカット。
・
>>384 桃白白の台詞を修正
「な、なに? サイボーグ? しかもわたしが弟子の天津飯に秒殺されただと? なにを馬鹿な。そもそもわたしは天下一武道会などというままごとに出場したことはないわ!」
↓
「な、なに? サイボーグ? しかもわたしが弟弟子の天津飯に秒殺されただと? なにを馬鹿な。そもそもわたしは天下一武道会などというままごとに出場したことはないわ!」
【Lの論理的考察】
「ちょ、ちょ、ちょぉぉぉっとLぅぅぅぅぅ!」
「な、なにやってるんですか!」
突然の状況に呆気にとられた二人が掴みかかるがLは別段抵抗もせずに支給品を調べている。
「いえ、ミサさん、セナくん。誤解しないでください。あれでいいんです。」
「いいわけないでしょぉー!藍染さんとんでっちゃったのよ!!ばひゅーーんって!!」」
ミサが胸倉を掴んで押しかかる。
「ええと、ですね。どう説明したものか・・・」
それを御す風も無くセナに目をやった
「・・・セナ君」
唐突に名前を呼ばれハッとして返す。
「は、はい?」
「セナくんも私と同じく藍染さんとは初対面だったわけですが…先程の会話から受けた
彼の印象はどうでしたか?」
「え・・・と、特に・・・紳士的で優しそうな人だな、と」
「怪しいとは思わなかった?」
「ええ、まぁ・・・」
「これっぽっちもですか?おかしくないですかね?殺し合いのゲームですよ?
いくら紳士的な態度だったとはいえ、この状況で不信感を抱かなかった。」
「・・・えーと・・・でもそれはLさんとミサさんが知り合いみたいなので
安心してたっていうか。ただ・・・」
「ただ?」
「少し、違和感は感じましたケド・・・」
「その違和感とはなんでしょうか?」
まるで禅問答の様だ。考え込むがセナは答えを得られない。
解答を求めるように気弱な少年は独特の上目遣いでLに目を遣った。
「完璧すぎるんですよ。彼は」
その完璧さからくる疑惑は夜神月を監視していた時に得たものとよく似ている。
そして事実、その直感が正しかったことはつい先刻のミサの失言によって証明された。
「だからって、それだけじゃ藍染さんがマーダーだって決め付けられないでしょ!!」
しかしミサは納得がいかないという風に激昂する。
「はい。確かに、それだけではマーダーと断定するには根拠に乏しい。
その時点では可能性の枠を出ませんでした」
「だったら・・!!」
「が・・・!」
反論しようとするミサを遮って続ける
「私の中で疑惑が確信に代わったのは彼の一言でした。」
「・・・『支給品を見せてくれないか』・・・・・・」
ふと、セナが口をついた。
「・・・その通りです」
ようやく理解を示し始めた賛同者を見てニヤと笑う。
「な、なんでそうなるの!?ワケわかんない!!」
「極めつけは彼が所持していたこれらの支給品です。日本刀が2本ですが…セナくん、これらがどういう経緯を経たものか、分かりますか?」
「・・・誰かから奪い取った」
「どのように?」
あえて質問の形をとるのは誘導尋問を多用する探偵の定石だった。
第三者の意見として自分の推論を提示することによって、自論に信憑性を持たせることができる。
「・・・殺して・・・ですか?」
殺す、という表現を口にすることにセナは抵抗を感じたが、Lは首を縦に振った。
「殺して、というのは可能性の一つに過ぎませんが、控えめに言っても強引に奪ったものでしょう。
これらは一見普通の刀に見えますが、何か不思議な力が宿っている可能性があります。
彼が求めていたのはまさしくそういうものですから。」
「それは殺された仲間の支給品なの!!
集めた仲間がマーダーに殺されちゃって逃げてきたところでミサと会ったんだから!!
ミサ殺されちゃった仲間の死体もちゃんとみたもん!!」
『逃げてきたところで会った』というのは多少誇張された表現だったが、
今まで行動を共にしていた紳士をマーダーと断定するのにはいささか納得がいかず、
精一杯の擁護を続けるつもりで突っぱねた。
「ミサさん。藍染さんはやっとのことでマーダーから逃げだしたのに、支給品を回収する余裕だけはあったんですかね?」
「そ、それは・・・」
少し斜めに俯いて頭を働かせる。
藍染の話を頭の中で反芻すると、
仲間が囮になってくれたおかげで辛うじてマーダーから逃れられ食材倉庫で休んでいた、とのことだった
それが本当であれば、どれだけ危機的な状況を脱してきたかはあの凄惨な死体を見ているミサには簡単に想像ができる。
にもかかわらず、なぜ囮になった仲間の武器を持って逃げることができたのだろう。
確かに、その点に関してはLの指摘通りだ。
でも、もしかしたら・・・
「私がマーダーでしたら・・・いえ、マーダーでなくとも武器になりそうなものはその場に残していきませんが・・・」
一つの可能性を言いかけたところで先手を打たれてしまった。
「んもう!ミサだってずっと一緒にいたわけじゃないんだから詳しいことはわかんないよ!
でももしかしたらもっと複雑な状況で・・・」
頭の中を覗かれたのが癪に障ったのか、尚もまだ不服な様子で食い下がろうとするものの、ミサの話に一貫性は無い。
感情で物事を測るタイプの人間は特に女性に多いが、その多くは希望的観測に拠りがちだ。
しかし『人類最高の頭脳』にとってこの手合いの扱いはそう難しくはない。
「もし・・・月くんがこの場にいれば、間違いなく私と同じ推理をしていたでしょうね。」
その一言でミサは押し黙った。
「んむぅ〜、ライトがそう言うんだったら・・・」
実際に夜神月がそう言ったわけではないのだが、効果はてきめんのようだ。
たった半日とはいえこの異常な状況下で行動を共にした藍染に、若干の情と信頼を感じていたが、
それはライトに対する妄信的なまでの愛に勝ることはなかった。
「んまあ、とにかくだ!その藍染とかいうのがそんな危ないヤツなら早いトコここから離れた方がいいんじゃないかのう?」
会話についてこれずにいたキン肉マンがようやく事態を収集しにかかる。
「そうですね。彼のスタート地点がこの周辺であれば大阪に戻ってくる可能性が高い。
我々を探しに、です。
何れにしても次に会ったときは間違いなく敵ですから。なるべく距離を置きたいですね。」
「となると、どちらにしてもこのまま大阪へ向かうべきかのう。」
「そうですね。たけすぃ君の捜索も急ぎたいところですが、
志々雄真実が凶悪なマーダーであると分かっている以上、追跡し、且つ人質を奪還するためには戦力不足が否めません。
よって、先ずは緋村さんとの合流を優先したいのですが・・・どうでしょう?」
「うむ、それに関しては私も同感だ。
刀を手にすれば彼もサムライの本領を十分に発揮できるじゃろうな!」
(あ、いけない・・・)
「緋村さん・・・」
セナは深刻な表情だった。虚ろな目の先が何を見ているかは分かっている。
(まずいぞ・・・)
藍染の排除に関して、セナが自分と同様の考察に至ったことは喜ばしいことだった。
が、同時に嫌な予感もしていた。
それは我々が手にしたこれらの支給品に起因するものなのだが・・・
「Lさん・・・今からでも緋村さんを追いかけませんか?いや、僕一人でも・・・」
(ほら来た・・・)
信頼を得かけているところだ。
頻繁な対立は望ましくない。
ただ、セナは丸腰で四国に向かった剣心の身を案じている。
それは分かっていたことだ。当然だろう。
ヒル魔捜索を押し切ったのはセナだが、自衛手段を持たない彼の代わりに四国入りしたのが剣心だ。
しかも、先の放送でヒル魔の死亡は確定してしまったのだ。
不幸中の幸いと言うべきか、同行していたナルトは少なくともまだ生存しているが
問題はそれよりも四国が想像以上の危険地帯であること。
途中で武器になりそうなものを手にしていれば、と淡い期待を抱いていたが、
都合よく武器になりそうなものが転がっているわけが無い、ということは
たった今この議論のうえで証明されたばかりだ。
そして今、皮肉にも剣客にとって最も必要とされる武器、日本刀がもたらされたのは
剣道に覚えの無い自分たちの方だった。
小さな体躯と一見して臆病そうな容姿からは想像できないが、
このセナという少年には内に秘めた強い意思と責任感が感じられる。
『この刀を届けたい』
それがどんな理不尽なことと分かっていても、セナの感情は爆発するだろう。
【Lの希望的観測】
兵庫県東部
探偵・アイドル・アメフト選手に正義超人、
一見してなんの接点もない4人の隊列が大阪に向かって出発した。
結論は事実上、次のようにLが譲歩する形で決着した。
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<出発前15分の経緯>
「Lさん・・・その刀を一本渡してください」
「ちょ、ちょっとぉ」
「おい、セナ、早まるな。少し頭を冷やさんかい。」
セナの異様な雰囲気を察して二人が制止にかかる。
「セナくん・・・」
「渡してください」
有無を言わさぬ凄みがある。
最早言葉だけでは動かすことが出来ぬ覚悟をしているのだろう。
そう決心して『同行』のカードを取り出した。
「それって・・・さっきの、えーと、『初心』?」
反応を示さないセナの代わりにミサが問いかけた。
「いいえ、これは『同行』というカードです。今まで行ったことのある場所であれば
半径20m以内の仲間ごと、指定した街に移動することが可能です」
「・・・・・・」
セナは尚も口を開こうとしない。
「セナくんの気持ちはよく分かります。
ですが、危険だと分かっている地域に力の無いものをむざむざ行かせる訳にはいきません。
それに緋村さんとすれ違いになるだけの可能性も否めない。」
Lの話にセナは瞬き一つしないが続ける
「そこで私から提案です。現在、概ね3時を回ったといったところですが…
これから大阪まで移動し、待機場所を中心に私とキン肉マンさんでたけすぃくんの捜索を行います。」
・・・セナは依然無言のまま
「6時の放送でナルトくんの無事が確認されれば緋村さんは引き続きナルトくんの捜索を続けている
ものとみなし・・・我々は『同行』を使い岡山から四国へ渡り緋村さんとの合流を試みます。
この方法なら今から徒歩で岡山へ向かうのと大差なく四国入りが出来るでしょう
緋村さんとすれ違いになった場合を考慮して、事の経緯を示した書置きを残していきますね。」
「そして仮にナルトくんが6時放送の時点で・・・死亡していた場合・・・」
「L!!」
不謹慎な発言にキン肉マンがいきりたつ。
そこでようやくセナが口を開いた
「・・・続けてください」
「・・・緋村さんはこちらへ既に引き返して来るものとし、引き続き大阪で緋村さんを待とうと思います。」
「・・・・・・・」
沈黙が続いた
ここでLは最悪の可能性について触れなかった。
『緋村剣心が死亡していた場合』
Lの推測ではこの可能性は少なくない。
『ナルトが死亡していた場合』もそう。
先の放送から現在の四国の様子を推察するに、状況は想像以上に芳しくないようだ。
そして非常に残酷な判断ではあるが、どちらかが実現されれば『同行』を使う必要は無い。
そして『たけしが死亡していた場合』関西周辺の捜索を打ち切ることができるため
沖縄へ近づくための『同行』に使用意義が出てくる。
この提案はLにとって分の良い譲歩であったが、セナは再び口を閉ざした。
「今から出発の準備ができるまで、5分だけ待ちます。
急かすわけではありませんが時間も惜しい。良く考えて決めてください。」
1時間ばかり前に広げたばかりの野営道具を片付けながら
遠巻きにセナを見つめる。
今までの話の中でLは一つだけ嘘を付いた。
『同行』の効果について
『使用したプレイヤーを含め、その半径20m以内にいるプレイヤー全てを指定した街に飛ばす』
という先程の話に偽りはない。
しかし、カードの説明にはもう一つの使用方法が記されていた。
『使用したプレイヤーを含め、その半径20m以内にいるプレイヤー全てを指定したプレイヤーのいる場所に飛ばす』
つまり、緋村剣心を指定して『同行』を使えば今すぐに合流することも可能である。
しかしゲーム脱出を模索しているLにとって、『同行』は沖縄確認への近道のみならず
脱出の切り札にも成り得る貴重なカードだ。
大局を見据えた上で、未だ使うべき時ではない。そう思い、あえて仲間にも伏せておいた切り札だったが
セナの離別を思い留まらせ自分達に「同行」させる為の交渉カードとして、
皮肉にもその名を冠したカードが十分な役割を果たした。
今度ばかりはLとしても少し心苦しい。
かといって、この手の用途で安易に使用できるものならば、
そもそもヒル魔らの捜索のため剣心と離別する必要もなかったのだ。
「セナのやつ、だいぶ参っているようじゃのう・・・」
「ええ、普通の高校生には酷な状況です。それに・・・少し心苦しいですね。
たけすぃくんの捜索もしなければいけないのでどちらにしても『同行』を使うわけにはいきません。」
たけしを利用するのは打算的かと思いながらも『同行』を使う可能性は少しでも減らしておきたい。
「なぁに、その気になればセナは私が引き摺ってでも連れて行くわい!」
冗談半分におどけたキン肉マンにLが真顔で返した。
「いいですね、それ。採用します。」
そうこうしているうちに5分もせず準備を終えてしまった。
「セナ・・・」
キン肉マンの呼びかけに対して沈黙を守り続けたセナが震えた声で返す。
「・・・分かりました・・・・・・」
アメフト選手とは思えぬほど小さな手がプルプルと震えている。
それが言葉よりも雄弁にセナの感じている無力感を物語っている。
「セナくん・・・力不足は私も感じています。
私もただの人間ですから。超人的な力や、不思議な能力があるわけではありません。
それでも我々は・・・我々でできることのベストを尽くしましょう。生き残るために。」
再度、沈黙が訪れる。
「出発、しようかね…」
荷物を抱えたキン肉マンが促した。L、ミサ、少し遅れてセナもそれに続く。
「Lさん・・・・」
最後尾から力なく声が響いて皆が足を止めた。
「すみません・・・ありがとうございます。」
そう、少年は力なく呟いた。
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「ねぇLぅ・・・」
ミサが呼びかけるが、道中Lは「核鉄」を丹念に調べておりミサの声は届いていないようだ。
故人となってしまったが、ムーンフェイスの話にあった錬金術。
信じがたい話ではあったが、その技術の結晶とも言える存在「核鉄」の特徴が目の前の物質と一致する。
「ねぇ竜崎ってば!!」
ここ数ヶ月の間呼ばれ慣れていた方の名
「なんでしょう?」
反応してしまった。
ところが折角興味を移したのにミサはなかなか二の句を紡げずにいる。
ようやく絞り出したのは細々とした声だった。
「・・・ライトに会えるかな?」
良く言えば天真爛漫という表現が似合うミサの辛辣な表情は珍しい。
悪く言えば能天気なミサも、さすがにこの状況下では精神的にかなり参っているようだ。
「もし、月くんが首輪の解除に成功していれば沖縄に向かうはずです。」
・・・それが精一杯の解答だった。
「だいじょうぶじゃあ!お嬢ちゃん!そのライトクンとやらがLくらい頭がよいのなら首輪の解除なんぞ朝飯前じゃい!
そんで緋村もあれで戦国を生きた一流の剣客じゃからな!!簡単に死にはせんよ!がっはっはっはっ!!」
憔悴したセナとミサを見かねてか、キン肉マンが割って入った。二人の両肩を力一杯叩く。
「あ、あの竜崎さん?そういえばこちらの方は?」
丁寧な口調とは裏腹に少し顔をひきつらせている。
どうやらキン肉マンはミサが生理的に受け付けないタイプらしい
「すみません、キン肉マンさん。
紹介が遅れましたが、こちらの女性、弥海砂さんです。私が元いた世界で・・・・
・・・ミサさん、我々の関係はどう説明したらいいんでしょうか?」
「・・・オトモダチでいいんじゃないでしょうか?」
厳密にはキラ事件の容疑者とそれを追う探偵の間柄なのだが・・・
「そうですね、お友達です。」
「わしはキン肉スグル。第58代キン肉星大王じゃ!キン肉マンと呼んでくれい!!」
「よ、よろしくおねがいしまぁ〜す。
(うわぁ・・やばっ、そのウルトラマンみたいなトサカはなに?ううん、モッチーみたいなキモカワ系だと思えば大丈夫・・・かなぁ?)」
「・・・そうですね。」
不意にLが呟いた。
「え?」
「月くんですよ。きっと生きています。大丈夫です。」
絶対の論理性と直感を基に思考するLにしては珍しく、それは希望的観測だった。
「そ、そうよね。ライト凄いもんねっ!簡単に死ぬわけないよね!」
図らずともそれがミサを元気付ける形になったようだ。
「ええ、それに・・・」
できればキラ事件の決着をつけたいとも願っていた。
それは思いも寄らぬ形で終結することになったが
柄にも無いが感傷なのだろうか、
今はそんなことさえどうでもいいと思えていた。
空を見上げると月が夜の闇を照らしている。
「友達ですから・・・」
【兵庫県/黎明】
【L@DEATHNOTE】
[状態]右肩銃創(止血済み)
[道具]:ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)
:デスノートの切れ端@DEATHNOTE
:GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER
:雪走り@ONEPIECE
:斬魄刀@BLEACH
:核鉄XLIV(44)@武装練金
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする(なるべく『同行』は使いたくない)
3:現在の仲間たちと信頼関係を築く
4:沖縄の存在の確認
5:ゲームの出来るだけ早い中断
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労
[道具]荷物一式
[思考]1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
3:月と合流する
4:夜神月の望むように行動
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]精神不安定
[道具]:荷物一式(食料残り1/3)
:野営用具一式
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:無力感
3:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
4:まもりとの合流
5:これ以上誰も欠けさせない
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]健康
[道具]荷物一式
[思考] 1:兵庫を離れ大阪へ移動する
2:6時の放送を待って、放送に応じた行動をする
3:志々雄からたけしを助け出す
4:セナとミサを元気付けたい
5:ウォーズ・ボンチュー・マミー・まもりを探す
6:ゴン蔵の仇を取る
【Lたちの共通思考】1:とりあえず兵庫から離れて大阪へ移動する
2:午前6時の放送を待って剣心と合流するために放送に応じた行動をとる
3:キン肉マンの志々雄打倒に協力するため、関西中心を捜索
バキ、バキ、バキ…ズズズ…
この世の物とは思えない、光のエネルギーが、宇宙を覆う。
ヤムチャはなんとか、タカヤの攻撃を耐えしのぐ。
そこへ―
ズズズズ ドーーーン
突然、特大の黒い渦―ブラックホールが出現した。
それは、あっという間に辺り一体の星々を吸い込んだ。
「ふははははは、見よ。ヤムチャ君!!
このブラックホール、3分後には我々を吸い込む程の大きさに達するだろう!!
つまり…!!
3分立つまでに、闘いに決着を着け、この宙域を離脱せねばならん!!」
それは、むろんこのわたし、タカヤ様だ!!」
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:超ウルフ人 SPARKING Neo
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.最終形態へ
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:タカヤ・ルシフェルΩ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす
見覚えのある風景だった。馴染みがあるという意味ではない、単に来たことがあるというだけだ。
しかし――忘れもしない場所だった。
岡山県、北西。あの主催者達の間から放り出されて、最初に降り立った地点。
ゲーム開始から丸一日が経過した今になって、再びこの景色を眺める羽目になるとは思っていなかった。
周囲に視線を配ってみたが、あの男に渡してやった支給品も見当たらない。手元にあるのは、存在を隠していた盤古幡と二つの首輪のみ。
振り出しに戻った。そういう訳だ、分かりやすい――
怒りのあまり食い縛った歯が、ギリ、と小さく音を立てた。
飛ばされてきた方向である、東の空へと視線を向ける。朝日が昇り始めていたが、そんな事は今どうだっていい。
藍染惣右介という男にとって、これは紛れもない屈辱だった。死神の自分が使うには妙な言葉かもしれないが、恐らく人生で最大の。
何の力も持たない人間。一度自分が刀を振るうだけで、その生涯に幕を閉じることが出来るような人間に――
――してやられたのだ。
ぱひゅーん
「…………」
……認めたくはない、が。
今回の事は、『人間界最高の頭脳』を侮っていた私の落ち度だ。
事実へと目を向けよう。支給品の大半という、実に高い授業料を払わされたのだから。
私はそこから、学ばなければならない。そして学んだ事は、次に活かさなければ。
藍染は視線を虚空から外して、近くにあった一本の大木へと背中を預けた。
冷静な思考は、一分もしない内に戻ってきていた。
現状を整理してみよう。
L達の手へと渡った支給品は、雪走り、核金、そして斬魄刀。
どれも手痛い損失だ。特に、斬魄刀を失ってしまったのは厳しい。『鏡花水月』の発動に、あれは必要不可欠なのだから。
手元に残った盤古幡は確かに強力な支給品だが、体力の消耗が激しいというデメリットが存在する。あまり多用はしたくない。
次に、計画の実行に当たって。岡山の地へと飛ばされたことで、琵琶湖への到着は更に遅れることになってしまった。
志村新八と越前リョーマ。あの二人はいい加減、琵琶湖に到着してしまっているだろう。
一向に現れない自分へと業を煮やして、既に計画を見限っている可能性もある。
琵琶湖における脱出の実験――破棄、とまではいかないが、彼ら以外の新たな人材を起用することも考えておいた方が良さそうだ。
肝心要の、今後の身の振り方。
今の自分が成すべき事は、斬魄刀の再入手と、あのダイという少年を始めとした、主催者達の能力を知る参加者の捜索。
早急に行わなければならないのは、居場所が知れている前者の方であろう。
当然向こうも、こちらの狙いを見越して移動を開始している筈だ。行動を起こすなら、早い方がいい。
今度の接触は、友好関係を築くためのものでも、相手を利用するためのものでもない。
Lは既に、己が看破したこちらの意図を仲間達へと話してしまっているだろう。小早川瀬那は当然のこと、弥海砂に対しても。
要するに、今の彼らは、藍染にとっての敵でしかないのだ。敵を野放しにしておく理由など、一つも存在はしない。
藍染惣右介は、L達を殺すためだけに、彼らを探すのだ。
弥海砂が『死神の眼』を持つだけの少女である事は既に知っているし、
残る二人の身体能力も、大蛇丸や趙公明といった常人離れの物ではないことは一目で理解出来た。始末するのは、容易い。
斬魄刀の奪還、そして邪魔者の排除を同時に行える、実に理に適った選択だ。何より――
――私自身、このままで済ます気など毛頭もないのだよ、L。
藍染惣右介は、己の心に忠実な人間だった。
殺し合いという舞台の上でも、彼は溢れる探究心に基づいて、様々な世界の能力を、存在を求め続けていた。
その彼が、己の中で渦巻いている最も大きな優先事項――"復讐"という名の目的意識に狩られ行動する事。
それは、当然の成り行きだったのかもしれない。