「鵺野先生は大丈夫なのか」
公主が心配そうに言う。
「大丈夫です」
乾は確信を持って答える。
「分身体が一点になだれ込んでいます。あれは攻撃をしている証拠です。
同時に、先生が無事である証拠でもあります」
なるほど、と公主は感心する。乾の分析力は凄まじい。
公主は知らないが、彼は分析力を主体として全国レベルの中学で第3位にまで上り詰めた天才テニスプレーヤーである。
その能力は常人の比ではなく、もはや人外の領域に達していると言っていい。
乾はある一体の九尾に注目する。
分身体の多くが、鵺野に突撃する中、その一体だけは動かない。
なるほど、と乾は微笑む。
一度目の影分身では本体も突撃したが、今回は鵺野の力に恐れを感じて本体だけは安全な場所にいる。
単純な策だ。
さらによく見れば、鵺野の背後にある分身体ほど減りが激しいのが分かる。
おそらく、九尾の分身体は主に鵺野の背後から攻撃しているのだろう。
単純に死角からの攻撃を繰り返しているだけ。
乾は戦闘を観察し、こう結論付ける。
九尾に高い知能はない。
攻撃も、作戦も単純なものが基本であり、決して複雑な行動は取らない。
「もう見るべきものはないな」
乾はそう言って、公主に一言告げる。
「今からが、反撃のチャンスです」
【香川県のダム/真夜中】
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:疲労進行中
[装備]:青雲剣@封神演義
[道具]:荷物一式(一食消費)、アバンの書@ダイの大冒険、お香(残り9回)
[思考]:1.四国を死守
2.ナルトと闘う。鵺野を守る。
3.呪文の取得(『フバーハ』か『マホカンタ』が候補)
[備考]:キアリーを習得
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、 弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトと闘う。鵺野を守る。
2、越前と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】全身に裂傷。戦闘に支障なし。
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】1、九尾を倒す
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 重度の疲労 全身に軽度の裂傷、左肩負傷 チャクラ消費大
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、鵺野を殺害後捕食。
2、戦闘後はしばらく休息。
3、剣心、セナとの接触は避けたい。
4、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
5、術者に能力制限を解かせる
6、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、
またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。
清里高原大炎上戦の修正です。
>>153>>154に加えてこれもお願いします。
>>78の五行目
正確には山梨県北杜市高根町。縦横に広がるこの大草原に立つ者がいれば、彼方に八ヶ岳連峰と呼ばれる日本国最高峰の山郡の壮大な連なりを臨むことが出来るだろう。
↓(改行)
正確には山梨県北杜市高根町。縦横に広がるこの大草原に立つ者がいれば、
彼方に八ヶ岳連峰と呼ばれる日本国最高峰の山郡の壮大な連なりを臨むことが出来るだろう。
>>85の五行目
「おぬしは」→カット
>>86の8行目(改行と微修正)
『セブンセンシズ【第七感】』それは小宇宙の真髄。人間の持つ五感(視覚・味覚・聴覚・触覚・嗅覚)+第六感(精神)を越えた第七感。いわば究極の小宇宙である。(第七感に目覚めているのは黄金聖闘士だけである)
↓
『セブンセンシズ【第七感】』それは小宇宙の真髄。人間の持つ五感(視覚・味覚・聴覚・触覚・嗅覚)+第六感(精神)を越えた第七感。
いわば究極の小宇宙である。(尚、第七感に目覚めているのは黄金聖闘士だけである)
>>90の12行目13行目
『フフフ、さすがの僕もこれで終わりかと思ったよ。だがね、忘れないで貰いたい。
本来、<僕らは一心同体>。全てを同時に滅ぼさなければ意味がない。それは太公望くんもよく分かっている筈だよ』
↓
『さすがの僕もこれで終わりかと思ったよ。だがね、忘れないで貰いたい。
本来、<僕らは一心同体>。全てを同時に滅ぼさなければ意味がない。かつて太公望くんが実践したようにね』
>>97の下から4行目
「うぐっ」→カット
>>98の五行目
―――――(寝てんじゃねえよ太公望!!)太公望さん!!
↓
―――――(まだ諦めるのは早いぜ、太公望)太公望さん!!
>>103の3行目
――――おまえは、それでいいのか。
↓
――――まだ手は残されている。後はお前次第だがな。
>>108の10行目
太公望は目を閉じた。略〜
↓
太公望はゆっくりと目を閉じた。略〜
以上です。個人的には結構悔いが残ってる作品なのでまた修正するかもです。
CGI氏すみません。そしてガンガレ!
今更ですが、『アビゲイルvs飛影』の『後編の一番最後の部分(状態表直前)』に修正を入れます。
〜〜〜〜修正前〜〜〜〜
「―――フッ、くだらんな」
笑わせるぜ、今更何を考える。最早あの場所に求める物など無かろうに。
過ぎ去りし日々、戦うことだけが残された。力尽くまで闘って、そして散るのもいいだろう。
心の空。どうせ死に逝く運命ならば、暗い夜空のままでいい、と飛影は思った。
『牀前月光を看る 疑うらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げては山月を望み 頭を低たれては故郷を思う』
― 李白 ―
〜〜〜〜修正後〜〜〜〜
「―――フッ、くだらんな」
笑わせるぜ、今更何を考える。最早あの場所に求める物など無かろうに。
かつて、ささやかな拠り所があった。だが、いつしか全てが離れ、戦うことが残された。
それだけの話だ、と呟いて飛影は木から飛び降り、歩き出した。もう休息は充分だろう。
夜露に濡れた草木を踏み越え、森の中を暫く進むと、やがて横手に小さな石碑が現れた。
刻み込まれた文字、舞い落ちる木葉に半ば埋もれ、深緑の苔に覆われた先人の遺文。
月明かり、朧気に浮かぶ書跡に束の間その目を止めたものの、飛影の歩みが止まる事はなかった。
『牀前月光を看る 疑うらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げては山月を望み 頭を低たれては故郷を思う』
― 李白 ―
以上ですCGI氏超スマソ
「公主さん、あそこに移動してください」
乾は鵺野の背後を指差して言う。
「分かった」
と、公主は青雲剣を片手にそこへ移動する。
公主の移動と同時に、放送が始まる。
けれど、その場にいる誰も動きを止めようとはしない。
――初日を生き残った皆さん、おめでとうございます。
主催者の1人、フリーザの声が脳内に響いても、闘いはとまらない。
公主が鵺野の背後に移動する、乾がコルトローマンを九尾本体に向けて発砲する。
威嚇射撃。 当たらずとも良い。
九尾は暗闇からの突然の発砲に驚き、咄嗟にその場所から逃げ出す。
逃げ方は鵺野を中心とした反時計回りの動き、そのまま安全な場所、鵺野の背後へと回りこむ。
けれど、そこには既に公主がいた。
青雲剣の斬撃が九尾に襲い掛かる。
九尾は体を捻って何とか斬撃をかわすも再び左腕に攻撃を受けてしまった。
(もう、この腕は使い物にならんか……)
ならば、逃げるしかない。
同族の予想を超えた力。
突然現れた不思議な剣を持つ女。
そして、遠方から威嚇射撃を行う少年。
全てが九尾にとって不利に働く。
(逃げる)
そう決意し、九尾は再び印を組み、3度目の影分身。
放送はまだ流れている。
──それでは現在までに脱落した者の名と午前二時からの禁止エリアを発表しますので、お聞き逃しの無いように。
九尾が影分身をすると同時に、多くの分身体が鵺野と公主に襲い掛かる。遠方の乾は無視。
そして、一体の九尾のみが分身体に隠れて、逃げ出そうとする。
(馬鹿の一つ覚えだな……)
「鵺野先生、奥にいる九尾を狙ってください」
「分かった」
乾の声を聞き、鵺野は周りにいる分身体を一通り蹴散らすと、ただ一体の逃げようとする九尾にのみ攻撃を集中させる。
『鬼の手』の触手が伸び、その九尾を背後から切りつける。
(逃げられん)
九尾は自分が追い詰められている事に気付く。
ここにいる3人を全滅させない限り、自分には生き延びる道が無い。
九尾は完全にぶち切れた。
人間ごときに追い詰められている。
無論、1人は人間と言うよりは仙人だが、それでも人間より非力と言っていい存在だ。
(この程度の奴らにワシが追い詰められるだと)
ありえない。自分は1つの郷を窮地に陥れた最強の妖狐だ。
そうとも、本気で戦えばこの程度の奴らなど問題ではないのだ。
九尾は両腕を前足に見立て、四本足で立つ。
もう人間の器に拘ってはいられない。必ず勝つ、九尾の誇りにかけて。人間どもを全滅させ全てを喰う。
九尾は、四足のまま唸り声を上げ3人を威嚇する。
(本気になった)
鵺野と公主はそう感じた。その威嚇には説得力がある。これからの九尾は、今までとは違うはず。
けれど、乾は驚かない。
威嚇したと言うことは、こちら側に恐れを感じたと言うこと。
逃げ出さないと言うことは、逃げることすら諦めたと言うこと。
勝負は8割方決した。
「公主さん、左斜め後ろ10歩移動してください。先生はそのまま右へ移動してください」
乾の掛け声と共に公主・鵺野が移動する。
同時に、九尾も動く。今度は司令塔の乾目掛けて突撃。
分身体も何も使わない単純な攻撃。
「終わりだ、九尾」
コルトローマンを両手に持ち、照準を合わせる。
二度目の射撃。当たれば終わり、外れても終わり。
放送はなおも続く。
――夜神月、蛭魔妖一、更木剣八、ラーメンマン……
コルトローマンの2撃目。
また外れた。
けれど構わない。九尾は射撃の音に驚き、そのまま体を旋回させる。
そしてそこには鵺野がいた。
また、読まれた。
『鬼の手』の一撃が九尾の体を貫く。腹部への一撃。放って置けば致命傷。
さらに、3人の攻撃は続く。背後から公主が迫って来る。
(殺される)
九尾は直感した。それは生物全てが持つ生存本能。
けれど、その予感は裏切られる。
公主の脳内に響く放送、その言葉はありえない『死』を伝えてくる。
─伊達臣人、デスマスク、クリリン、
そして
太公望
(馬鹿な、太公望が……死んだだと)
公主は放送に聞こえた言葉が信じられない。
一瞬、彼女の動きが止まる。
「公主さん、今は戦闘中です」
乾の声が響く。けれど、反応したのは九尾のみ。
体を反転させ、背後にいる公主の方へと向きを変える。
そして、なけなしのチャクラを乗せた攻撃。
公主も何とか反応して、剣を振るおうとするが遅い。
九尾の攻撃が先に命中し、彼女は弾き飛ばされた。
乾のデータが狂い始める。
テニスでは絶対に起こりえない外部からのノイズ。
呆然とする公主に九尾の追撃が迫る。
「先生、九尾を止めてください」
乾はそう叫びつつ、同時に自分もコルトローマンを構える。
今度は外さない。
3度目の射撃。しかし、乾の決意虚しく弾丸はあらぬ方向へと飛んでいく。
九尾は右拳を振り下ろし、公主へと迫る。
公主は剣を盾に使い、その攻撃をなんとか防ぐ、けれど、続く九尾の蹴りを避けきれずに再び弾き飛ばされた。
「今度は俺が相手だ」
なおも公主に襲いかかろうとする九尾の前に、鵺野が立ちふさがる。
「鬼の手90%」
『鬼の手』がさらに形状を変える。より巨大化し、本数を増やした触手。
もはや、逃げる事も、闘う事も九尾には不可能。
乾のデータは若干狂った。
けれど、この『鬼の手』から九尾が逃げられる確率は1%未満。
脳内に放送が続く中、乾と鵺野は勝利を確信した。
『鬼の手』の触手が九尾に襲い掛かる。
1撃、2撃……連撃だ。見る間に血塗られていく九尾。
人の形をした生き物が、死に行く瞬間。
誰もが勝利を確信した。
けれど、
「俺、俺、何も悪いことして無いってばよ」
九尾の表情が一変する。九尾の意識が気を失ったため、宿主のナルトが意識を取り戻したのだ。
「助けてくれ。俺が悪い事したなら、謝るから、許してくれってばよ」
そういいながら、ナルトは命乞いをする。
突然、放り出された死の直前と言う場面。15歳の少年は素直に命乞いという手段をとった。
そして、その行動は鵺野の中に僅かに残った人の心をくすぐる。
「君は……君は人間なのか」
九尾の体から妖気が消えた。信じがたいことに、先程まで化け物だったモノが、今ではただの少年になっている。
鵺野は目の前の現象が信じられない、と言った気持ちで攻撃をやめた。
「俺、怖かったんだってばよ。何もして無いのに、みんな死んでいくから、もう死んでいく人たちは見たくなかったんだ」
そう言って、ナルトは鵺野に近づいていく。
鵺野はその体を優しく抱きとめた。
「すまなかった」
鵺野はそう呟く。その時、ナルトが笑った。
瞬間、九尾の妖気が戻ってくる。ナルトから九尾へと意識を変える。
九尾の攻撃が鵺野の腹部を直撃した。
「っち」
乾は舌打ちし、咄嗟に銃を連射する。
拳銃は両手で構え、狙いは正確に定める。そして連射。
1、2、3……何発撃っても拳銃は当たらない。
どうなってるんだ、そう思いながらも乾には撃つ以外に手段が無い。
彼は気付かない、このコルトローマンの照準が完全に狂っていることを。
そして、九尾が乾のほうを振り向く。
走る。人を超えた動きで、乾に襲い掛かる。
乾も懸命に連射するが、全く当たる気配が無い。
彼の誤算は3つ。
1つは放送。
1つはナルトの意思。
1つはコルトローマンの照準。
天才テニスプレーヤーの計算は完全に狂った。
当たらない拳銃。
倒れた2人の仲間。
襲い掛かる化け物。
乾は自分の死を予感した。
駄目か……
そう思ったとき、どこからか、人の声が聞こえる。
「飛天御剣流……」
赤毛、赤服の剣客が突然、自分の頭上を乗り越えて現れる。
そして、そのまま、
「龍槌閃」
彼は上段に振りかぶった鞘を化け物に叩き付けた。
九尾はそのまま、地面に叩き伏せられる。
乾にとって4度目の誤算。けれど、今度は喜ぶべき誤算。
誰かは知らないが、突然の来客により自分の命は助かった。
「ありがとうございます。助かりました」
「まだ、終わっておらんでござるよ。油断するな」
赤毛の剣客はそう呟く。
九尾は起き上がり、後ろに大きく下がって間合いを取る。
「拙者の名前は緋村」
あえて名前は名乗らない。
「故あって、うずまきナルト殿を探していたのでござるが……
あの様子。ただ事では無いのでござるな」
「えぇ、彼は人ではなく、ただの化け物。オレも仲間達2人も彼に殺されそうになりました。
緋村さん、助けてください」
乾は今初めてあったばかりの剣客に協力を請う。
彼の助けがなければ、九尾を倒すことなどできない。
大丈夫。
誤算が続いたが、まだ修正できる。
緋村という男が助けてくれれば、自分達が勝つ。
「……」
緋村は少し考えているようだ。
だが、すぐに結論を出す。
「分かった。おぬし達を助けるでござるよ。
けれど、期待されては困る。拙者の武器は鞘1つ。それに、もうヒビが入っている」
よく見ると、緋村の手には鞘が一本。
そして、先程の一撃のせいだろうか、それにはヒビが入っており、もう武器としてはほとんど機能しない。
乾はそれを見て、緋村に指示を出す。
「緋村さん、俺の名前は乾と言います。
あそこにいる女性、今は気絶していますが彼女が持っている武器を使ってください」
乾が指差す先には倒れた公主がいる。
公主の持つ武器、青雲剣。剣客緋村にとっては、これ以上無い武器だ。
九尾と緋村が対峙する。
互いにまだ一歩も動かない。
緋村の鞘は壊れかけ、九尾はチャクラが尽きている。
お互いに決定打をなくしている状態。
緋村が青雲剣を取れるか、それとも九尾が阻止するか。
勝負はそこにかかっている。
一方、戦場の外れでは鵺野が仰向けに倒れている。
彼の意識はまだある。
けれど、彼の精神は既に破壊されたといっていい。
彼の中で、最後に残された優しさ。
それは、幼い子供達に対する愛情。
けれど、その愛情は最悪な形で裏切られた。
鵺野の左手の御鬼輪が割れる。
鬼の力が100%解放される。
そこには、もう人などいない。
鵺野鳴介という名の人間は既に死んだといっていいかも知れない。
彼は身も心も鬼に成り下がった。
闘いは最終局面を迎える。
放送はいつのまにか、終わっていた。
【香川県/深夜】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷、精神重度の不安定
【装備】刀の鞘(ヒビ入り)
【道具】荷物一式
【思考】1.ゲームに乗り薫を救うかどうか思案中。
2.目の前の敵、九尾を倒す。
3.小早川瀬那たちとの約束と薫の救出のどちらが優先か検討中。
(斎藤と薫の幻を見たことで精神がかなり不安定になっています)
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:気絶中
[装備]:青雲剣@封神演義
[道具]:荷物一式(一食消費)、アバンの書@ダイの大冒険、お香(残り9回)
[思考]:1.気絶中
[備考]:キアリーを習得
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、 弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ナルトと闘う。鵺野を守る。
2、越前と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:九尾の意思 重度の疲労 全身に軽度の裂傷、左腕は使用できません。チャクラ無し
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、鵺野を殺害後捕食。
2、戦闘後はしばらく休息。
3、セナとの接触は避けたい。
4、サクラを探し、可能なら利用。不可能なら殺害
5、術者に能力制限を解かせる
6、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、
またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)
*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】全身に裂傷。鬼の意思
【装備】無し
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】1、九尾を倒す
ニコ・ロビンはひたすらに前を見据えながら、襲い来る悲しみを憎しみで打ち消そうともがいていた。
しばし前に耳へと響いた第四放送、フリーザとやらの人を嘲るような声。
──そして、読み上げられた少女の名。
「杏子・・・」
走り通しの荒い息の中に微かな声が混じる。手に持つナイフがまだ明けぬ闇に鈍い光を放ち、ロビンの
頬を一瞬だけ明らめ、照らした。伝う一筋の涙を拭いもせずに、ただ駆けて。
(褒美に誰か一人を生き返させる?フッ、お気楽なものね)
一人の蘇生が可能ならば、二人でも百人でも同じじゃないの。そんな馬鹿げた話、あってたまるものか。
自身が数々の破滅と死をもたらして来たと影を背負うロビンだからこそ、失ったものはもう戻らないことを
胸に焼き付けている。歯痒かった。
髭面の男、あのような近くに来るまで気配を察させなかった、実力者。
おそらく気配を絶つことに長けた暗殺者か何かであろう。
しかし何故か、その男の残した痕跡が森の彼方此方に散らばっている。
罠だ、と一時間も追えばすぐに分かった。けれどロビンは追うことを止めはしない。
憎むべきあの男を殺すまで、この涙を拭い、悲しみに浸ることはせずにいようと、誓う。
桃白白は女に追いつかれぬよう不定の方向へ、そのお下げを振り乱しながら逃げ続けている。いや、罠
を仕掛けつつ撒いている、といった方が正しいか。
ロビンが杏子へ黙祷をし、スヴェンたちへの手紙を書くほんの少しの時間で、彼はかなりの距離をすでに
引き離していた。理解しがたい相手からの攻撃が、桃白白に焦りと恐るべきスピードをもたらしたのだ。
しかし焦りと緊張が抜ければ、桃白白の頭は着実に暗殺者としての冷静さを取り戻してゆく。
(要はあんな女、一撃で仕留めれば良いだけのこと)
体調が万全ではないからこそ、戦闘に持ち込むことは避け、不意打ちの攻撃で殺せば良い。
よって女を待ち伏せるに相応しい場所を見つけ出そうと、桃白白は目聡く景色を見渡しつつ走っていた。
(わたしを見つけられず追って来ぬなら、それはそれで良いがな)
森を抜け農村に辿り着くと、その僅かな家屋の一つ一つにまで跡を残し、相手の目を晦ます前準備を始
める。その場でほんの少し体を休め、禁止区域の新潟には足を踏み入れぬよう、日本海側へと直進して
いた動きを横へ方向転換した。
自分を追って来れる程度のわずかな痕跡だけを残し、餌をばら撒くように。
――初日を生き残った皆さん、おめでとうございます。
余裕を持ち始めた桃白白の耳に響くのは第四放送、フリーザの声だ。
(一日で五十億、悪くない計算だな。あの女の分は・・・それでも四十億か)
自分を癒し、そして自分に殺されたティア・ノート・ヨーコのことを思う。勿論彼女の名を桃白白が知ってい
るわけはなく、顔でさえもぼんやりとしか思い出せはしなかったが。
──今回新たに追加する優勝者への『ご褒美』は誰か御一人の『蘇生』です
(くだらん。どいつかを蘇生させて報酬を要求するか?)
金を求める彼に蘇生させて欲しい仲間や友がいるはずもなく、フリーザの言う褒美にもさしたる魅力を感
じない。だが利用できるものは利用せねばと、放送も終わらぬ内に優勝後の皮算用をし始めていた。
(だがそいつが金を持っているとは限らんしな。無駄なことをするくらいならあの女を蘇生させてやるか)
雇い主から『礼』を貰うことを生業とする桃白白だからこそ、自身も『礼』を返そうという気が少しはある。自分に損がない程度の『礼』なら、あの殺した女に与えてやってもいいような気がした。
放送から思考を逸らすと、足の動きが徐々に緩くなっていく。貧血気味の脳がぐらりと揺れたように感じ、
桃白白は木にもたれ掛かるようにして倒れこんだ。
「くっ」
休め、と体が訴えている。休むべきだ、と本能も言う。
(あの女をもう少し生かして治療させるべきだったか)
先ほど『礼』として蘇生させてやろうかと思った女を、今度はもう少し利用すれば良かったと後悔する桃白
白。矛盾するように思える二つの思考も、彼の内部では無理なく同居する一つのものである。
桃白白とは、そういう男であった。
(空が白むまでは、あの女も追いつけはしないだろう。少し、休むか)
真夜中を過ぎたばかりの月明かりの下で、一人の男が木の根元に座り込む。デイパックから出した水を
口に含むと、乾いた喉が冷たいと痛んだ。
農村には確かに多くの痕跡が残されている。
しかしここを一歩でも出れば闇のもと、それを見失う恐れも大きいとロビンは判断し、追跡の足を止めた。
(罠なら私をこのまま誘き寄せなさい。夜が明ければ、望みどおり捕まえて殺してあげる)
桃白白の荒らした民家の扉にもたれかかって、彼女はそっと瞳を閉じ眠る。夜の休戦、激情を抑えた冷静な判断をしなくては、あの男を殺すことなど出来ないだろう。
涙が乾いて張った頬には、最後まで触れることさえしなかった。
【群馬県の農村/深夜】
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:右腕に刀傷
[装備]:千年ロッドの仕込み刃
[道具]:荷物一式(二人分) 、ミクロバンド@ドラゴンボール
[思考]:1:夜が明けたら桃白白を追い、殺す
2:アイテム・食料の収集
3:死にたくない
【長野県(群馬県寄り)/深夜】
【桃白白@ドラゴンボール】
[状態]:気の消費は中程度・血が足りない。傷は白銀の癒し手によりふさがったが、安静にしてないと開く
[装備]:脇差し
[道具]:支給品一式(食料二人分、二食分消費)
[思考]:1:少し休み、夜が明けたらロビンを待ち伏せ殺す
2:参加者や孫悟空を殺して優勝し、主催者から褒美をもらう
すみません、改行しくじりました。
>>346 8行目
雇い主から『礼』を貰うことを生業とする桃白白だからこそ、自身も『礼』を返そうという気が少しはある。
自分に損がない程度の『礼』なら、あの殺した女に与えてやってもいいような気がした。
>>347 4行目
桃白白の荒らした民家の扉にもたれかかって、彼女はそっと瞳を閉じ眠る。夜の休戦、激情を抑えた冷
静な判断をしなくては、あの男を殺すことなど出来ないだろう。
金色の空から異形の者達が降りてくる。
「な、なんだ・・・あれは」
異形の物の一人が静かに語る。
「我々は12タカヤ、そしてわたしの名はタカヤ・ミカエル。
この世界の全てを浄化しに来た」
「まぁ、3時間くらいあれば全宇宙を無に帰すことができるんですよ」
タカヤ・ラファエルと呼ばれる者が言った。
「まずは、このじゃかあしいガキをどうにかせんとあかんなぁ!!」
タカヤ・メタトロンと呼ばれる者から激しいオーラがあふれ出し、ヤムチャを包んだ。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
[状態]:第2形態
右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
[装備]:フリーザ、ハーデス、バーンの死体
[道具]:荷物一式(伊達のもの)、一日分の食料
[思考]:1.タカヤをころす。
2.悟空が見つからなくても、零時までには名古屋城に向かう。
3.斗貴子達と合流後、四国で両津達と合流。協力を仰ぐ。
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
5.クリリンの計画に協力。人数を減らす。
6.友情マンを警戒(人相は斗貴子から伝えられている)。
【タカヤ@夜明けの炎刃王】
[状態]:十二タカヤ
右小指喪失・左耳喪失・顔面喪失・両足喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
[装備]:世直しマンの鎧
[道具]:荷物一式、一日分の食料
[思考]:1.奥義発動
2.ヤムチャをころす。
「緋村さん、あの女性の所まで何秒で行けますか」
「15……いや、10秒あれば」
10秒かきついな。と乾は思う。
自分を飛び越えた緋村の跳躍力は超人級だが、それでも九尾の運動能力には及ばない。
九尾なら恐らくあの距離まで5秒ほどで着く。
緋村が剣をとるまで10秒、往復だと20秒か。
その間、乾が九尾の相手をするしかない。
(怖い……)
この闘いで、乾は初めて恐怖を感じる。
自分が戦う。武器はあたらない拳銃と、テニスで培った運動能力のみ。
頭脳など、肉弾戦では役に立たないだろう。
元の世界にいた頃、乾はテニスをやっていた。
負ければ、敗退。中学テニスが終わる。
けれど、今度の勝負で負ければ『人生』が終わる。
正直言って怖い。
でも、今までと違って自分が闘うほかは無い。
深呼吸する、九尾を睨む。
「緋村さん、俺が九尾を引き付けます。その間に剣を取ってきてください」
そう言って、乾は九尾に特攻する。
乾の時代より50年ほど前、乾とほとんど年の変わらぬ若者達が勝てぬ闘いへと挑み散っていった。
人はそれを神風特攻隊と呼んだ。
乾の心中も同じ。
勝算など一つも無い。
緋村が剣を掴めば、九尾を倒すことが出来る。
けれど、その勝利は恐らく自分の命と引き換えの勝利。
乾が九尾に特攻する。
決死の、いや必死の特攻。
パンチを出す。 かわす。
パンチを出す。 かわす。
パンチを出す。 かわす。
攻撃の全てが空振り。慣れていない攻撃。乾は足を絡めて転んでしまう。
けれど、諦めない。20秒、たったそれだけ闘えば自分が勝つ。
少ないながらも、希望は確実にあるのだ。
そんな乾の思いを打ち砕くように、九尾の攻撃が炸裂する。
乾の左肩へ、強烈な一撃。
鎖骨が逝ったか……けれど、そんなことは構わない。
緋村のほうを見ると、既に剣を取って戻ってきている。
やった、勝てる。あと残り10秒を切った。
乾は勝利を確信した。
けれど、そんな彼を嘲笑うかのように、九尾の一撃が鳩尾に炸裂する。
「あと一歩で、あと一歩で勝てるのに……」
そんな事を呟きながら倒れていく乾を九尾の拳が弾き飛ばした。
「乾殿……」
青雲剣を片手に持った剣客の足元に、気を失った少年の体が転がる。
緋村は迷いを捨て、心に決める。
この少年を、いや、目に留まる全ての人々を守る。
自分の中の『真実』は守ると言うこと。
「拙者の名前は、緋村剣心。化け狐よ、今度は拙者が相手でござる」
そう言って、緋村は九尾に突撃する。
九尾も受けてたつ。もはや、逃げようなどとは微塵も思っていない。
チャクラの残っていない九尾にできることと言えば、肉弾戦以外に無い。
けれども、彼には最強妖怪としての誇りがある。
九尾は緋村に襲い掛かる。
「ワシは人間ごときには負けん、絶対にワシは負けんのだ!」
意地か。
「そんなしみったれた強さでは拙者は倒せんよ」
九尾と剣心の間合いが詰まる。
一方は忍の里を恐怖に陥れた人外の化け物。
一方は京の都で正義の剣を振るい、今も目に留まる人々を守ろうとする剣客。
化け物の攻撃が剣客を襲う。
けれど、剣客は持ち前の読みと神速の動きでそれをかわす。
剣客が剣を振るう。
化け物は同時に襲い掛かる3つの斬撃を避けきれない。
勝敗は明白であった。
今までの戦いの為、大きく疲弊した九尾では緋村剣心に勝つ手段など無かったのである。
一撃、一撃ごとに九尾の動きが悪くなる。
緋村剣心も、宝貝という武器に力を吸い取られているが、その消耗は九尾よりも遅い。
一分も経たぬうちに、九尾はその場に力尽きて倒れてしまった。
「はぁ、はぁ」
戦闘終了後、剣心は肩で息をしている。
どうやら、この剣は持ち主の力を吸い取ってしまうらしい。
その代わりに剣閃を複数に分割する能力を持っている異能の武器。
これは武器として使えるのかどうか、微妙なものだ。
そう考えながらも、この戦いに終止符を打たねばならない。
緋村剣心は動かなくなった九尾を足で押さえつけ、咽喉下に剣を当てる。
自分の持つ剣は人以外のものを容赦なく切り刻む。
剣心は九尾の喉を貫こうとした────
────が、突然、強い力により彼は弾き飛ばされてしまう。
ゆうに10メートルは飛ばされたであろう。
一体、何が起こったと言うのか。
突然の強い衝撃により、剣心の体は自由が利かなくなる。
何者かが戦闘に乱入してきた。
弾き飛ばされ、中空に投げ出されたとき、剣心は自分を殴ったモノの正体を見た。
それは『鬼』
巨大な鬼。比喩などではなく、本物の鬼。
鬼の攻撃が緋村剣心を襲う。
緋村は可能ならば、その場から逃げ出したいと思う。
けれど、自分の側にいる少年を見つめて、思い直す。
拙者が守らないで、誰が守ると言うのか。
鬼の追撃を何とか、剣で防ぐ剣心。
『読み』と『神速』で何とか防ぐ、そしてかわす。
けれど、持っているだけで消耗してしまう武器と、巨大な鬼を前にしては何時までも避け切れるわけではない。
そんな剣心を見つめる者が1人いる。
それは、かつて九尾と呼ばれた少年。今はナルトと言う。
九尾の意思は完全に眠ってしまった。
そして、何故だろうか。全身傷だらけで、チャクラも全く残っていない。
ナルトは起き上がる。
傷だらけの体を無理矢理起き上がらせる。
逃げたい。
荒れ狂う鬼と、闘う剣客。
自分は逃げる以外に道が無いではないか。
ナルトは懸命に動きながら、その場を去ろうとする。
その前に、1人の女性が立つ。
その女性は竜吉公主。ナルトの体から邪気が消えたことを悟った彼女は優しい言葉で
「お主はこの場から早く去るがいい。後は私たちが決着をつける。」
といった。
公主はお腹を痛そうに押さえながら、苦しそうに息をしている。
いかにも虫の息、と言った状態。
なのに、彼女は『鬼』と闘おうとしている。
「なぜ、戦いに行くんだってばよ」
公主は答える。
「あの鬼は私の仲間だった。
そして、赤毛の剣客は一時とは言え私達のために闘ってくれた者だ。
どちらも見捨てるわけにはいかんよ」
そんな公主は武器も持たない状態。
勝てるわけが無い、あの『鬼』に。
ナルトは止める。
「戦いに行っても勝ち目はないってばよ」
「勝つ、勝たないではないのだよ。私は彼らに命を救われたのだ。
だから今度は、私が彼らを救うために闘う」
そう言って公主は『鬼』の下へと進んでいく。
仲間を救うために。
かつて、3代目火影が大蛇丸と戦ったとき、年老いた火影に勝ち目は無かった。
なのに彼は闘った。里を救うために。
憧れていた火影とあの女性は同じではないか。
勝ち目の無い戦いに、傷ついた体で、武器1つ持たず向かっていこうとする。
その姿は火影と同じではないか。
ナルトは思い出す。自分の憧れていたものを。
そうだ、俺は火影に成りたかったんだ。
「お姉ちゃん、俺が守ってやるってばよ」
ナルトは決意した。
自分の憧れを取り戻してくれた女性のために、もう一度闘うことを。
たとえ、チャクラが無くとも。命を懸けて闘うことを彼は決意した。
剣客と鬼の戦いは、鬼が圧倒的に有利だった。
剣客は辛うじて鬼の攻撃を剣で防いでいた。
(たとえこの身が滅びようとも、この少年だけは守る)
剣心は乾を守る、その一心で闘っている。
それが自分の真実だから。剣心は引かない。
刹那、鬼の目玉に石が投げられる。
それは、ナルトが投げた石。
「おっちゃん、俺が代わりに闘うから、今すぐ逃げるってばよ」
鬼の視線がナルトに注がれる。
「その代わり、おっちゃんにはあの姉ちゃんを守って欲しいってばよ」
言いながら、ナルトは鬼に向かって突撃する。
チャクラの尽きた身では、影分身も変化の術も、螺旋丸も使えない。
肉弾のみ。
大丈夫、自分は体だけでも、闘える。忍びは体術も磨いているのだ。
ナルトの攻撃、鬼は蚊を振り払うようにして跳ね除ける。
剣心の攻撃、数多の刃も意に介さず鬼は軽く蹴飛ばすだけ。
「何やってるんだよ、おっちゃんは逃げてくれってばよ」
「断る。拙者が逃げれば、そこの少年が殺される。もう二度と、人は殺させん」
「なら、一緒に闘うか」
忍者と流浪人の即席パーティ。
チームワークなど無い、バラバラの攻撃。
けれどお互いの心は1つ。
『人を守る』という事。
荒れ狂う鬼を前に、全く歯が立たない2人。
けれど、同じ目的をもって闘う2人には奇妙な連帯感が生まれる。
「このまま、お主と死ぬまで闘うのもいいかも知れんな」
「同感だってばよ」
そんな2人に公主も加わる。
「私も一緒だ」
3人は揃って、鬼に立ち向かっていく。
けれど、鬼の力はあまりに強大で、絶望的で、3人の攻撃を全く感じていない。
まず、3人の中で最も力のある剣心が飛ばされた。
続いて、ナルト。そして、公主。
全員が鬼の力によって、叩き伏せられ、弾き飛ばされ、闘う力を無くしてしまった。
そして、鬼はその中にいる最も弱き者へと近づいていく。
それは意識をなくして、倒れている乾。
剣心が叫ぶ、「ヤメロ」と。けれど、その声は鬼には届かない。
鬼の手が乾に振り下ろされる。
誰も止められない。
乾が死ぬ。
全員がそう思ったとき、辺りに女性の声が響いた。
「鵺野くん、いい加減にしなさい」
その言葉を聴き、鬼の動きが止まる。
そして、
「うがぁあああ」
苦しそうに叫び声を上げる。
鬼の腹から女性の顔が現れる。
「鵺野くん、忘れたのですか。覇鬼の力は私とあなたで押さえているんです。
意識を取り戻しなさい。鬼に負けてはいけません」
鬼が苦しむ。
鵺野は僅かながら意識を取り戻す。
そして、意識を取り戻した彼が、見たものは気絶した少年。
身の内にある鬼は、その少年に止めを刺そうと拳を振り下ろす。
「やめろおぉ」 「やめなさい」
鵺野と恩師・美奈子の2人が内部から鬼の動きを止める。
本来の覇鬼であれば、2人の力でも完全に止めることはできないであろうが、この世界は覇鬼も制限している。
2人は協力して、覇鬼の動きを止めた。
「美奈子先生が生きてた……」
鵺野は先程まで、この世界で全てを失い、守るべき者からも裏切られたと考えていた。
けれど、違った。
失っていないものが只1つ。自分の体の中にあった。
それは、恩師の美奈子。
鵺野が小学校教師を志す切欠になった人物。
その人物が自分の体の中にいたのだ。
鬼と化した鵺野の体が人間に戻る。
鬼の体は元通り、鵺野の左手だけに納まる。
「俺は全てを失ってなどいなかった」
自らの左手を抱きしめる。
そこには、只1人生き残った鵺野の知人、恩師がいる。
「闘いは終わったのでござるか」
鵺野が人に戻ったのを見て剣心が言う。
「そのようじゃな」
鵺野から邪気が消えたことを確認して公主が言う。
「これで皆助かってばよ」
ナルトがまとめた。
九尾、鬼との闘いに参加した人間は5人。
気絶した者もいるが、奇跡的にも死者の数は0である。
(太公望よ、おぬしは死んでしまったが、ここにいる者は皆お主に負けぬほどの希望を抱かせてくれるものばかりだ)
この殺し合いの世界の中で、死者を一人も出さずに闘いぬいた者たちを見て公主は思う。
大丈夫だ。
私達は決して、主催者の企みに負けない。
【香川県/深夜】
【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷
【装備】青雲剣@封神演義
【道具】荷物一式
【思考】1.流浪人として、目に留まる人を助ける。
2.二日目の午前6〜7時を目安に、大阪市外にてセナ達と合流。
【竜吉公主@封神演義】
[状態]:疲労進行中、全身に軽度の裂傷
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(一食消費)、アバンの書@ダイの大冒険、お香(残り9回)
[思考]:1.四国を死守
[備考]:キアリーを習得
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】気絶中、全身に軽度の裂傷、左肩の鎖骨骨折
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾20)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、 弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、越前と合流し、脱出を目指す。
2、脱出、首輪について考察中
【うずまきナルト@NARUTO】
[状態]:重度の疲労 全身に軽度の裂傷、左腕は使用できません。チャクラ無し
[装備]:無し
[道具]:支給品一式×2(一つは食料と水を消費済み、ヒル魔から奪取) ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
:ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
[思考]1、しばらく休息
2、サクラを探す。
[備考]:九尾は肉体的に瀕死になったため、気絶しています。
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】全身に裂傷
【装備】無し
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】1.美奈子先生を守る。
2.参加者のうち、小さい子供達を守る。
「はっ………!?」
青年はその両の眼をしっかりと見開き、辺りを見回す。
そこは無機質な白い空間。自分はベッドの上に寝かされていた。
「つつ……」
足に走る激痛に吐き気を覚え、微睡んだ意識が嫌が追うにも次第に覚醒されていく。
今まで見た(体験した)のは夢?……
青年は先ほどまで意識していた死闘を思い起こす。
タカラ…?
名ははっきりと思い出せないが、全力を賭け戦った少年の名を呟く。
しかし、その少年の痕跡などあるはずもなく、
今まで感じた事のない恐怖と充実感。彼は現実の世界では出会えなかったライバルを見付け、戦った。
様々な世界から集められた人間。そこで殺し合いをさせられた。
まさか自分が少女に殺されそうになるとは。
我が夢ながら恐ろしい。
しかし意識が戻るにつれ、現実世界に思考が集中しだす
そうか、俺は天津飯に負け意識をお留守にしてたんだっけ………
「俺がベッドの上でうなされている間に、天下一武闘会はどうなった?」
ナースに詰め寄り、彼は今孫悟空と天津飯の決勝戦が始まった事を知る。
ヤムチャの長い夢は覚めた、ピッコロ大魔王というの悪夢が始まる事を
彼はまだ知らない……
バトロワ完
上手い
盛る炎を間にして、二つの影が座り込んでいた。
筋肉自慢の超人が掻き集めてきた薪に、無理矢理カンテラの炎を移しただけの薄暗い炎。
其れでも、兵庫に渦巻く暗闇から、照らし出してくれる。休息が必要だった。明かりが、会話が。
向かい合いながら、沈黙を保ったままの二人の横顔。放送後、ずっと。
――蛭魔の名前が呼ばれて以来、セナは、口を閉じてしまった。
引っ込み思案で虐められがちだった自分を、唯一光の下に連れ出してくれた存在。
悪魔的な、狡猾な、暴力的とさえ言える手段ではあったが、日陰のまま終わるはずだった少年の人生を、
輝かしい物語の世界――、アメリカンフットボールの世界に誘い込んでくれた、先輩。
蛭魔妖一は、最早、居ないのだ。わけのわからぬ殺人ゲームに巻き込まれ、死んでしまった。
栗田さんは、武蔵さんは。
共にクリスマスボールを目指し、地獄の特訓を潜り抜けてきた仲間達の、夢は。
そうだ、「彼」と言う主軸を失って、泥門デビルバッツは、――
――GAMEOVER
誰の者とも判らぬ声が脳の中に、響き渡る。
終わりだ。終わりなんだ。お前達は、終わりなんだと。
がち がち ッ
其れが恐怖なのか怒りなのか、或いは全く別の感情であるのか、
自らの打ち鳴らす歯の音が鳴り止まない理由を、少年自身にも理解する事は出来なかった。
-------------------------------------------------------------------------
炎の向こうにある、震える少年の姿を目に捉えていながら、掛ける言葉も思い浮かばなかった。
世界最高の頭脳――、賞賛である筈の言い回しも、今は一層皮肉げに思える。
一度出会い、そして分かれた友人の死。近しき者の死は、時に人をメランコリックにする。
只でさえ不安定だった筈の少年の心は、蛭魔妖一の死によって、耐え難い絶望の中に叩き込まれているのだろう。
他者の死を引き金にした鬱症の治療には、長期に渡る治療と、特殊な薬が有効だ。加えて、献身的な言葉も。
――只一つも、この場には、存在しない。小早川少年の心を、確実にケアする手段は。
人間である自分達を休息させ、今は歩哨に立ってくれているキン肉マンが戻れば、或いは、違うのだろうか。
一星の王であると自らを称するあの男には、なるほど、確かに、ひとを惹きつけるカリスマ――、あるように感じる。
理屈が通じる相手には思えなかったが、けれど彼の大らかさにこそ、人の痛みを癒す力があるのではないか。
(……言い訳、か)
数刻前に知り合っただけの自分に何が出来る、とまで思考が及び掛けた瞬間に、
Lはこの状況における自分の無力さを悟った。
笑顔を向ければ良いのだろか?
優しい言葉を、例えば、主催者の放送は嘘であり、蛭魔妖一は生存している、等の言葉を探し出せばいいのだろうか?
優勝者に与えられる褒美の話を利用するか?自らが信じても居ない事を。
尤もらしい嘘を語る事は不可能ではなかった。
世界規模の大犯罪者を相手にしたって、交渉ごとなら負ける気はしない。
如何なる場合も、真実を。正義を。突きつけるべき相手に突きつけるのがLの遣り方だ。
けれど、この場合(ケース)は。相手は悪の犯罪者ではなく、善良かつ無力な少年である。
最善の策が偽りの笑顔による、仮初の希望だとしても、不器用な自分には、其れを演じる事が出来ない。
自らの無力を感じながらも、Lは沈黙を保つ以外に術を知らなかった。
ふと、空を見上げれば、何時の間にか月が真円を描き出している。
曲げた膝に掌を重ねた日頃からの姿勢のまま、丸い月を見上げれば、考えるべき事を、思い出した。
死んだのは、蛭魔妖一だけではないのだ。太公望、趙公明、――夜神月。
生者と死者の綴られたリストを瞳の先に描きながら、思考の深い海に、沈んで行く。
或いは、幸運にも、静寂。与えられた可能性のパズルを組み合わせる邪魔をする輩は、誰も居ないのだから。
そう、思っていた。絹を引き裂くような、彼女の声を耳にするまでは。
「――Lッッッッ!!」
「……アマネ、ミサ」
暗闇に浮かび上がる少女の姿に、神の与えた過酷な運命に、呟くように、世界最高の頭脳は、長い息を、吐く。
----------------------------------------------------------------------------------------
「藍染さん!! 来て!! Lが、Lがいるの!」
瞳を血走らせながら、少女は大きく手を振り、"誰か"へと呼び掛ける。
突然の事態に、ビクッと身体を竦め、顔色を伺うように眺めてくるセナを手で制したLは、静かに、ミサの動向を見守る。
歓迎出来ない事態だ。『今』、アマネミサには会いたくはなかった。
――夜神月の死が放送で告げられた、直後には。
「聞いてください、アマネさん。声を、潜め……」
「煩い!」
事態を収める為に投げ掛けたLの言葉も、半狂乱に叫び続ける少女には届かずに、一蹴されてしまう。
美しかった瞳は血走り、髪も幾分乱れ、天使のような可憐さも、今は失われ掛けていた。
予想出来たことだ。彼女が唯一愛する絶対的な存在、夜神月の死亡は、告げられたのだから。
――彼女の叫び続ける名前、藍染と言ったか。
アマネミサは衝動的な感情を、咄嗟には制御出来ない少女だ……夜神月の言葉でもない限りは。
参加者の誰かに遭遇し、行動を共にしていたのだろうが、夜神月の死を知り、錯乱して飛び出してきたのだろう。
大声で叫びに叫んではいるが、錯乱して走ってきたミサが正確に『藍染』の位置を把握してるとは思い難い。
じゃじゃ馬の暴走に巻き込まれた不運な『藍染』とやらは、彼女を探していれば、直ぐにここを嗅ぎつけるに違いないが、
長ければ到着までに数分の余裕は得られる可能性は高いと感じた。
其の前に、少しでも情報を得ておかねば。Lは持ち前の無表情で、人差し指を口元に当てる。
「……聞いてください、アマネさん。夜神月君のことです」
騒ぎ立てるミサの声に比べれば、蚊の鳴くが如き小さな声あったが、彼女にとって"彼"の名は大きな力を持っていた。
只一言で子供のように叫び続けるのを止めた少女は、泣き腫らしたのか赤い瞳は、Lの言葉に興味を惹かれる。
「……月の、こと? 何……、生き返るって言う話なら、ミサは、信じないから……」
優勝商品として与えられる、死者の復活。
ミサが何も知らぬ只の少女ならば、或いは彼女の性格ならば、信じ切ったかもしれない。
けれど、ミサは普通の少女とは違うと同時に、"ある程度普通の"世界の住人だ。
"デスノート"なる幻想を可能とする特殊な世界であってさえ、彼女が会った死神たちの全てが、死からの復活を否定した。
"ならばそれは不可能な事なのだ"とミサは思う。
彼女の知る最大限の不可思議を以ってしても不可能な事象を可能にする事は、最早、現実ではない。
"デスノートがあるから、人を生き返らせる事の出来る事の出来るノートもあるかも"と楽観的に思えるほどには、
ミサと言う少女は愚かではなかった。"便利な魔法にも不便なルールがあることを知っていた"のだ。
――勿論、僅かな可能性は、若しかしたら、と言った望みのようなものは、心の奥でくすぶっていたけれど。
ミサの思惑を探りながら、Lと言えば淡々と、
「……其の通り。夜神月を生き返らせることは不可能です。
主催者の発言は、参加者を仲違いさせるための罠だと思った方が賢明だ。
ただ、貴方は勘違いをしています」
『不可能』の辺りで、力任せに掴みかかるミサの腕を感じながらも、一つの『可能性』を示した。
「勘違い……? まさか、L、貴方が、月を……」
「勿論、違います。私は、どんな世界であろうと人を殺したりはしない。相手が月君なら尚更ですが。
私が言いたいのは、夜神月の名前が放送で呼ばれたからと言って」
可能性は、可能性にしか過ぎない。けれど、甘い言葉の筈だ。少女にとっては。
「イコール、彼が死んだとは限らないと言う事です」
「どういう……話? L……頭、可笑しくなっちゃった?」
相変わらず何を考えているのか理解し難いLの顔を困惑気味に眺めながら、締める手を緩め、話の続きを促す。
Lは初めは無言で自らの首――首輪を指示し、
「首輪、ですよ。夜神月は、或いは、首輪の解除に成功したのかもしれない。
主催者は、恐らくは、この首輪で我々の生死を確認している。無論、他にも手段は用意されているでしょうが。
首輪の解除に成功し、尚且つ主催者達の目を欺く事が可能ならば、夜神月は、――記録上、死亡したことになるでしょうね」
可能性は5%ですが、と続く言葉を少女の前では飲み込む。
セナの前では滑らかに動く事はなかったLの舌は、今こそは淀みなく、ある種の『希望』について雄弁に語っていた。
1つには、L自身も考えていた方法である事。1つには、或いは、夜神月なら本当に可能だったのではないか――?
と言う、微かな可能性を完全には否定出来なかったからである。
故の5%であるが、少女の瞳の色を変えるには、十分過ぎたようだ。ミサは見る見ると頬を高潮させ、
「首輪の解除……、やっぱり、月ってすごい!
そんなの、ミサは考えもしなかった……!」
自分の騎士(ナイト)の活躍を瞳に描き、興奮を隠せないようだ。
ミサにとって月は万能の、神。主催者は信じずとも、夜神月の可能性は、直ぐに希望へと変換することが出来た。
たとえ、真実は時に残酷であろうとも。
「……本当の話なんですか、L、さん」
はしゃぎ回るミサをおずおずと眺めながら、セナは、小さく尋ねた。
首輪の話が本当なら。死を宣告された、自分の先輩も――、淀んだ瞳に、微かな希望が、宿るのを、Lは見る。
「……可能性は、ありますよ。君も、諦める事はない」
「……そうですか」
抑揚のない声だが、はっきりとLは、告げる。嘘は、言わなかった。可能性を信じろと、其れだけだ。
少年は俯くように、再び腰を下ろした。影は深く、表情は伺えない。
これが、自分の精一杯だ、とLは感じる。後は、少年に委ねるしか、出来ない。
絶望に囚われた心が、在りし日の輝かしさを取り戻すには、本当の、……希望が必要なのだ。
Lは決意すると、ミサに、告げる。
「藍染と言いましたか。貴方の遭遇した参加者に、会ってみたい。
……少なくとも、貴方から見て協力を仰げる人間なら、と言う前提でですが」
月は翳るとも、知恵者は踊り続ける。
希望を求め、正義を翳し、真実を突きつける青年の向かう先にある者が、
またも、死神の縁にあるものであることを、Lはこのとき、まだ知る由もなかった。
【兵庫県/真夜中】
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]:精神不安定
[装備]:特になし
[道具]:支給品一式 野営用具一式(支給品に含まれる食糧、2/3消費) 特記:ランタンを持っています
[思考]:1、Lと共にキン肉マンの志々雄打倒に協力する。
2、剣心、ナルトと合流(二日目午前6〜7時を目安に、大阪市街で待ち合わせ)
3、姉崎との合流。
4、これ以上、誰も欠けさせない。
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考]
0.夜神月の生存を信じる。
1:藍染と別れた後夜神月と合流し、藍染の事を伝え、共に脱出する。
2:夜神月の望むように行動
【L(竜崎)@デスノート】
[状態]:右肩銃創(止血済み)
[道具]:デスノートの切れ端@デスノート・GIスペルカード(『同行』・『初心』)@ハンターハンター
コンパス、地図、時計、水(ペットボトル一本)、名簿、筆記用具(ナッパのデイパックから抜いたもの)
[思考]:
0.ミサに従い、藍染と会う。
(藍染がミサを追ってこなければ、歩哨に出たキン肉マンを待ってから。
追ってくれば、どの道不可避な出会いであると考えている)
1・キン肉マンの志々雄打倒に協力。関西方面を重点的に捜索。
2・剣心、ナルトと合流(二日目午前6〜7時を目安に、大阪市街で待ち合わせ)
3・現在の仲間達と信頼関係を築く。
4・沖縄を目指し、途中で参加者のグループを探索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除
5・出来るだけ人材とアイテムを引き込む(九州に行ったことがある者優先)
6・沖縄の存在の確認
7・ゲームの出来るだけ早い中断
[備考]:『デスノートの切れ端』『同行』『交信』の存在と、鹿児島を目的地にしていることは、
仲間にはまだ打ち明けていません。仲間が集まり信頼関係が十分に築ければ、全て話すつもりです。
【兵庫県/深夜(歩哨中)】
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物一式
[思考]:1、志々雄を倒し、たけしを助け出す。
2、剣心、ナルトと合流(二日目午前6〜7時を目安に、大阪市街で待ち合わせ)
3、ゴン蔵の仇を取る。
4、仲間を探す(ウォーズ、ボンチュー、マミー、まもり)
※藍染がミサを追ってくるか、或いはL達が藍染のところに辿り着けるかは次の書き手さんにお任せします
早くも訂正
>>379の【兵庫県/真夜中】を【兵庫県/深夜】に訂正
>>381 乾の描写とか俺は好きだったぞ。
今回は残念だったけどめげずにがんばって欲しい。
(個人的には前中編まで無効にされてしまうのは非常に残念なんだが。)
無意味に煽ってる嵐もたくさんいるし、あんま気にするな!
五十パーセントといったところか。
六時間、体力の回復に努めたフレイザードのHPである。
あの忌々しいゴム人間――ルフィにやられた傷跡は決して消えることはないが、どうにか動けるまでには回復した。
砕けた岩石の肉片は、いつか果たす怨念の証。今度会った時こそ、あのゴム人間を殺す。
決意を胸に秘めたフレイザードは、なおも力を蓄える。
炎と氷、決して相容れぬこの二つの魔力を使いこなすために。
生きるためへの執念というのは凄いものである。この六時間、ひたすらに努力した結果は着々と実を結ぼうとしていた。
こちらの完成度はまだ三十パーセントといったところだろうか。
「基礎はできてるんだ……あとは安定さえすれば……あん?」
洞窟内で一人黙々と氷炎を繰るフレイザードの耳に、人の声が聞こえてきた。
近くに誰かいる。それを知らせるには、大きすぎる音量で騒いでいる輩が。
フレイザードは洞窟内から顔を出し、周囲を確認する。
洞窟の周りは深い木々で覆われていたためこちらから見つかることまずないだろうが、もしかしたら、声の主はカモになるかもしれない。
体力の半分は回復しているのだ。やってやれないことはない。
もちろんピッコロクラスの化け物を相手にするのは無理だが、もしも雑魚だったら、軽く殺して支給品を奪うくらいは……
「な!?」
その存在を視覚に入れたフレイザードは、驚愕した。
「だぁーかぁーらぁー! いつまでもウォンチューウォンチューうるせぇんだよ! 俺の名前はボンチューだと何度言やぁ……」
大声の主である三人組の一人目は、見知らぬ若造だった。
「ふん、ならばまた助平と呼んでやろうか? 私だけでなくイヴにまで働いた狼藉、忘れてはおるまいな?」
大声の主である三人組の二人目は、北海道で殺したはずの小娘だった。
(あの小娘……生きてやがったのか!?)
「二人ともよさないか。この近くには真崎杏子という少女を殺した輩がいる可能性がある。視界が悪い場所ではあまり騒ぐな」
大声の主である三人組の三人目は、鎧を身に纏った男だった。
(あいつぁたしか……ピッコロと戦ってた野郎じゃねぇか!? あいつまで生きてやがったのか!?)
ルキアと世直しマンが共にいることにも驚くべきだが、それよりもまず、死んだと完全に思い込んでいた二人が生きていたことに驚いた。
ルキアについては確かに生死は確認しなかったが、世直しマンのほうはピッコロが確かに倒したはずだ。
こちらも確認こそしなかったものの、ピッコロが自分以外の参加者に負けるとも思えない。
その証拠に、ピッコロはまだ生きている。第四放送でも、その名前は呼ばれていない。
ということは、
(ピッコロの奴はあいつと引き分けた……それも、あの鎧野郎のほうは見る限りピンピンしてやがる! あいつのほうが優勢だったってことか!?)
だとすれば、今のピッコロは満身創痍の疲弊状態である可能性が高い。
あれほどまでに自分に煮え湯を飲ませた、あのピッコロが。
(こりゃあチャンスだぜ……ピッコロは今でも合流地点で身を休めてるに違いねぇ……だとすれば、奴を出し抜くのは疲弊している今しかねぇ……いや、まてよ)
一瞬の間に、フレイザードは妙案を考え付く。
今は、自分とて負傷の身だ。ダメージを負っているとはいえ、『前世の実』を隠し持っているピッコロに自分が立ち向かうのは危険。ならば、
(あの野郎にピッコロの潜んでいる場所を教えて……野郎はヒーローとかぬかしてたからな。是が非でもピッコロに止めをさしたがってるはずだ)
悪者らしい思考は、さらに加速する。
(問題は交渉が成立するかだな……当然俺も見逃しちゃぁもらえねぇだろうし……いっそあの二人を人質に取るってのも手か……)
「楽しそうに何を考えているんだ? フレイザード」
「――!?」
ほくそ笑みながら悪知恵を働かせるフレイザードの名を、誰かが呼んだ。
その偉そうな口調から一瞬ピッコロの顔が浮かんだが、それはありえない。この場にいるのは、フレイザードと、
「そこに隠れているのは分かっている。隠れていないで出て来い」
世直しマン――!!
気づかれた。フレイザードは身を潜めていたことを気づかれた事実より、なぜ自分の考えていることがバレたのかに疑問を持った。
だがその疑問も一瞬、フレイザードは瞬く間に立たされた窮地を自覚し、その場を立ち去る。
本当ならこの場で全員八つ裂きにしてやりたいが、今は無茶は禁物だ。
「世直しマン、フレイザードとは……」
「ルキアを襲った、炎と氷のバケモンか!?」
「ああ、間違いなく草葉の陰から私たちを監視していた。読心マシーンで読み取った思考からしても、まず間違いないだろう」
宿敵の一人が、すぐ近くに。ルキアとボンチューは、この事実に身体と心を震わせる。
「見つけてしまっては、逃す理由もないだろう……奴とて満身創痍のはず。今度こそ、とどめを刺す!」
「おお!」「うむ!」
三人は、決意を改めフレイザードを追撃する。
ふははははは〜好調好調、絶好調!
――ついに宿敵、江田島平八を倒した。
――この手で倒せなかったのは残念だったが、あれはこの天才の策略により齎された死。言うならば、作戦勝ち。天才の知略が江田島に勝ったと考えれば完全勝利も同意!
江田島平八、そしては目の上のたんこぶのような存在であった拳王ラオウ。
アミバにとっての邪魔者を、二人まとめて始末することができた。
そして手に入れた新たな支給品、そしてのこのことアミバのあとを追ってきた江田島の仲間。
既に奴らを葬る新たな策は考えている。あとはそれを実行するだけ。
「恐るべきは天才の知能! 恐るべきは天才の戦略! 所詮凡人が天才に勝るなど、無理なことなんだよぉ〜!!」
笑いながら疾走するアミバは、どこか間抜けな姿だった。
だからだろうか。辺りが木の生い茂った森林地帯でも、簡単に見つけることが出来た。
「おい、そこのおまえ」
「――ん?」
突然、声をかけられた。
「んな!?」
振り返り、その姿を見て唖然とした。
そこにいたのは、ある意味拳王や江田島よりも威圧的な姿……身体を縦真っ二つに仕切り、炎と氷で構成された人型の化け物だった。
「な、ななななななんだ貴様はァァ!? こ、この天才になんのようだ!!?」
初めて見るモンスターの姿に戸惑いを隠せないアミバ。それもそのはず、アミバとフレイザードの住む世界では、あまりに環境が違いすぎる。
人間が覇権を争う世界に住むアミバにとって、魔物の存在など受け入れられるはずがない。
「おおっと、あんまりビビるんじゃねぇよ。見たところてめぇも誰かに追われているようだが、ちょっくら俺様に協力してくれねぇか?」
「きょ、協力だとぉ〜?」
あまりにも唐突だった。
突然現れた異形の怪物、何者かは知らないが、その形相からして只者ではあるまい。
天才とはいえ、少なからず身の危険を察知したアミバは、ある妙案を思いつく。
「……う、うむ。おもしろい。どうやらおまえも誰かに追われているようだな。この天才に力を借りたいというのなら、喜んで協力しようじゃないか」
天才たるもの、常に臨機応変に。
アミバはとりあえず、フレイザードの話を聞いてみることにした。
この化け物、戦闘能力は高そうだが、頭のほうは悪そうである。ならば、この天才が遅れをとることはない。
未だ笑みを浮かべながら、アミバはフレイザードと共に並走していく。
「ド畜生!! どこに行きやがったあの野郎ォ!?」
「撒かれちゃったのかなぁ……足はかなり早いみたいだね」
アミバを追っていた二人、桑原と翼は、標的の姿を見失ったことに怒り狂っていた。もっとも、翼の胸中はほのかな期待感が占めていたようだが。
「熱くなりすぎだ二人とも。もっと冷静になって対処しなければ、見えるはずの敵も見えなくなるぞ」
そして、もう一人。ほぼ二人のお守り役として同行してきた、空条承太郎である。
「奴がこの近くにいることは間違いない。だとすれば、どこかで俺たちを狙い撃とうと画策しているかもしれない」
「へっ、っつっても奴の持ってた銃は弾切れだぜ。俺たちから逃げたのも、もう打つ手がねぇからだろうが」
「忘れたのか和真? 奴は江田島平八塾長の荷物を持ち去った。あの中には、高性能爆弾であるジャスタウェイが入っているはずだ。それに弾切れの銃にしても、まだ予備の弾丸を隠し持っている可能性がある」
ホットな二人とは対照的に、唯一承太郎だけは、クールな立ち回りを見せていた。
あの手の謀略を廻らせるタイプには、冷静な対応が必要だ。この二人だけに任せては、そのうち怪我をしかねない。
いや、このゲームにおいての油断は怪我をお通り越して死を招く……二人が熱ければ熱いほど、承太郎は冷静でいる必要があった。
「しかしよぉ、この暗闇じゃあ奴がどこに潜んでいるかなんて分かったもんじゃねぇぜ。それとも、奴を追うのは諦めてここから尻尾巻いて逃げろとでも言うつもりかよ?」
三人の周囲は、現在多くの針葉樹によって覆われている。頭上あたりに位置する枝からは、梟らしき鳥類の鳴き声も聞こえる。
それに加え深夜という時間帯。深く高く聳える木々は月光を覆い隠し、視界を無力化させるほどの闇を形成していた。
正に闇討ちにはもってこいの環境といえる。そんな状況での深追いは危険だと感じつつも、桑原の気持ちは治まらなかった。
「止めても無駄だぜ、空条。俺ぁ、この手であの下衆ヤローをぶっ飛ばしてやらなきゃ気がすまねぇんだ。大空、てめぇもそうだろ?」
「うん、監督の荷物を泥棒したのはいけないことだけど……でも、彼ならきっといい選手になれると思うんだ! 健脚もさることながら、あの攻撃的なダッシュ力はフィジカル面からしてみても……」
「おめぇ……今がいったいどういう状況か分かってんのか?」
桑原と翼の会話は、微妙に噛み合っていなかった。
と、桑原が翼の言動に呆れかえっている間際。承太郎は、迫る三つの気配を察知した。
「そこにいる奴ら、俺らに用があるならとっとと出てきな」
承太郎のこの言葉で、残りの二人も一斉に顔を向ける。
集まった視線の先はやはり闇で覆い隠され、一瞥しただけでは何者なのかが判別できない。
が、今回は相手の方から積極的に接触してきたため、襲撃者であるかもしれないという心配は早々に晴らされた。
「警戒する必要はない。私たちは"ゲームに乗っていない者"だ。おまえもそうだろう?」
闇の草むらから姿を現したのは、鎧姿の男。その後方に、まだ若い男女二人が付き従うような形でこちらを警戒している。
世直しマン、ボンチュー、ルキア。承太郎、桑原、翼。
それぞれ異なった敵を追う三組は、深夜の森にて接触した。
余談だが、この時翼は警戒よりも先に、初めて見る鎧姿の男にピッタリなポジションを考えるのに悩んだという。
夜空に浮かぶ月と、それの眼下に佇む広大な植物地帯。すなわち、森である。
そこから一点、突出して盛り上がった丘が見える。周囲に聳える木の全長を微かに上回る丘の頂上は物陰に邪魔されることなく、月から放射される光を一身に受け止めていた。
そこに、立つ姿が二つ。
「あそこにいやがるだろう? あれが俺様を追い回しやがった連中さ」
炎と氷、二つの自然物質を司る魔人――フレイザードと、
「ほう。一緒にいる残り三人はこちらに見覚えがあるぞ。思惑通り、のこのことこの天才を追ってきたようだなぁ……ククク」
世紀末に生まれし天才――アミバだった。
数分前に接触を交わしたこの二人は、フレイザードから持ちかけた同盟の話を元に、互いの標的を付け狙っていた。
両者とも追われる身であり、両者共に相手を利用してやろうという思惑があったため、こういう形になったのである。
(ふふふ……この怪物、どうやらなにか企んでいるようだが……この天才を出し抜こうなど笑止! あの拳王すらを手駒とした我が知略に、狂いなどない!)
自ら天才を名乗るアミバは、追ってきた三人の凡才、さらにはフレイザードとその追撃者三名もを一片に葬り去ろうと思考をめぐらせていた。
武器ならある。策もある。だが、駒が足りない。だから、フレイザードの存在は実に都合がよかった。
この頭の悪そうな怪物を使い、皆殺しを敢行しよう。そう考え付いたアミバだからこそ、フレイザードの協力要請にも瞬時に答えを出したのだ。
決して、決してフレイザードの異形に圧倒されたからではない。
「おまえさんの気に入らねぇ奴と、俺の敵が一緒にいるってことか。そいつぁ都合がいい。アミバとか言ったな。ここは一つ、俺様の作戦に付き合わねぇか?」
「なに?」
二人が立つ高台の丘からは、世直しマンら六人が一同に集っている姿が確認できる。
闇を恐れたのだろう。周囲の木々を何本か切り倒し、月光を受け入れやすいよう環境を整えた場が形成されている。
その分、木よりも高地に位置するここからは丸見え。フレイザードが高台の丘に移動したのは、そういう狙いがあった。
「俺様の支給品を使えば、奴らを一網打尽にできるのよぉ……どうだ?俺に任せて協力してみねぇか?」
「……ふん、いいだろう。おまえの言う作戦とやらに乗ってやろうじゃないか」
怪物が浅知恵を……フレイザードが何かを企んでいるということは十分に感づいていたが、アミバはそれでも余裕を保っていた。
所詮、誰であろうと天才を出し抜くことは出来ないのだ。
「で、具体的にどうするというのだ?」
「こいつを使うのよぉ――」
両者共に己の内側は見せず、フレイザードは一枚のカードを取り出す。
元は大原大次郎に支給されたマジック&ウィザーズのカード、その最後の一枚である。
「――なるほど。全て合点がいった。確かにあんたらはゲームには乗っていないようだ」
世直しマンから借りた読心マシーンを返し、承太郎は一人納得した表情を浮かべる。
先刻、闇夜の森で接触を果たした三人二組。
世直しマン側は読心マシーンがあったため、相手が人畜無害な集団であるということがすぐに分かった。
しかし、承太郎側は違う。ただでさえ油断がならないこの状況、例え相手が友好的でも、警戒は必須。
その確認のためにも、承太郎は世直しマンの持つ読心マシーンを試させてもらった。結果として、承太郎の心配は杞憂に終わったようである。
双方、敵意がないことを確認した後、揃って情報交換が行われた。
世直しマン達が追う、フレイザードなる怪人。
承太郎達が追う、アミバなる外道。
ニコ・ロビンという名の探し人。
世直しマンが、桑原の知る友情マンの仲間であるということ。
数多のキーワードから、両サイドの情報を纏めにかかる。
「しっかし、フレイザードねぇ……ピッコロの野郎、友情マンの仲間を殺しただけでなく、そんな野郎ともつるんでやがったのか」
「だが桑原の話によれば、友情マンもピッコロを追っている可能性があるな。それだけでも希望が持てた」
桑原の齎した情報によると、友情マンはピッコロと一度接触したらしい。さしもの大魔王も、ヒーロー二人から目をつけられているとなれば、大っぴらな行動は控えるだろう。
「フレイザードもそうだが、承太郎達の話を加えると、この周囲には二人のゲームに乗った者がいることになるな」
マーダーがもう一人……この事実に、ルキアが難しい顔で唸る。
「アミバって野郎は大したことねぇさ。野郎は影からチマチマ狙ってくるような腰抜けだ。今度見つけたら俺が直々にぶっとばして……」
「忘れたのか和真?奴は塾長の爆弾を持っていったと言っているだろう。油断は禁物だ」
味方と呼べる人間に出合ったせいだろうか。未だ敵への認識を改めない桑原に、承太郎が諭すように言った。
「けっ、へぇへぇそりゃ分かってるよ。それでも、俺は野郎を放っとくような真似はしないぜ。もちろんそのフレイザードとかいう奴もだ」
承太郎がクールでいる一方、桑原の感情はまだまだホットだった。
ただでさえ情に厚く、気に入らない奴にはとことんまで喧嘩を売るような性格の桑原。その執念も頑なだった。
(やれやれ、ブチャラティといいこいつといい、どうにも熱い。なかなかクールな奴が揃わないな……)
心中で吐き捨てると共に、クールな仲間が欲しい承太郎は世直しマンの方に視線を向ける。
宇宙を舞台に、悪の手から人々を守るヒーロー。肩書きは妙だが、少なくとも承太郎が今までに出合ったどの人物よりも冷静な判断が出来そうな人間に見えた。
「ったく、そうなってくるとまだまだ身体は休めそうにねぇぜ。アミバにしてもフレイザードにしても、一体全体どこに逃げやがったんだ?」
ちょうど椅子くらいの長さに切られた切り株に腰を下ろし、桑原は愚痴をこぼす。
ちなみにこの切り株、桑原が自慢の『霊剣』で切断したもので、周囲にはその残骸と思わしき枝付きの丸太が錯乱していた。
情報を交換するなら、少しでも明るくしようと思っての配慮だった。が、これが原因でフレイザードたちに居場所を知らせるようになったことを、桑原は知らない。
だが承太郎は違う。木を切り倒した際に起こる轟音、不自然に明るくなった一部分、相手が馬鹿でもない限り、そこに人がいるであろうと思うのは道理。
そこが狙い。追うのではなく、今度はこちらが"誘き寄せる"。
このまま追いかけ逃げてのいたちごっこを繰り返していても埒が明かないし、なによりあのアミバという輩は、今までの行動パターンからして既になんらかの罠を張っている可能性ある。
もちろん、相手が誘いに乗ってこないのであればそれはそれでいい。ここにいる全員、体力的にも満足といえる状況ではないし、避けられる戦闘は避けるべきだ。
現に、休息を取りながら談笑しているように見える今でも、承太郎は警戒を解いたりなどはしていない。それは世直しマンも同様で、さりげなく周囲の気配を探っていた。
(ざっと周囲を見渡してみたが、やはり近くにそれらしき影はないな。俺の考えていることはちゃんと伝わっているか? 伝わっているなら、眼で合図してくれ)
声には出さず、心中で思う承太郎に対して、
(……そうか。私から見ても、なんら他者の気配は感じられない)
読心マシーンで承太郎の思考を読み取り、世直しマンはアイコンタクトを取る。
もし、近場で誰かがこの状況を見張っているとするなら、会話で作戦の打ち合わせをしては相手に警戒されてしまう。
それを危惧しての、世直しマンと承太郎だけによる読心マシーンを応用しての作戦だった。
しかし敵もこの大人数に臆したのか、なかなか気配を見せない。もしかしたら、既にこの場を離れたのだろうか。
ひとまずの安全を得た一行は、このまま情報を交換しつつしばしの休息を取ることにした。とはいっても、近くにマーダーが潜んでいる恐れがある以上、そう易々と緊張感を解けるものではない。
中でも一番ピリピリしていた桑原に翼が、
「桑原君」
「あん? なんだ大空」
「さっき木を切ったそれ、霊剣だっけ? すごいねそれ」
「お、分かるのか。この桑原様ご自慢の霊剣の凄さが……」
「でもさ」
「?」
「それ、サッカーじゃ使っちゃいけないよ。ルール違反になるから」
「…………あ、ああ」
そんなことを言いながら、翼は新たなメンバーのポジションに悩んでいた。
そういえば、これでメンバーの総数は8人。翼の目指す11人まで、いつの間にかあと3人となっていた。
(やったね。これで世直しマンたちの仲間も入れたらちょうど11人。悟空君やアミバ君が加わってくれたら控えも充実する)
膨れるドリームチームへの夢で、翼の胸は一杯になっていた。
「――――召喚」
その名を呼び、フレイザードは一枚のカードから一体のモンスターを呼び出す。
現れたのは、巨大な陸亀。身体の各所を機械で覆った、半機械の陸亀型モンスターだった。
特に背中の甲羅部分が印象的で、そこには何かを射出するための装置のようなものが備え付けられている。
「こいつの名前は大砲亀っていってよぉ」
出てきたモンスターについて、フレイザードがアミバに説明をする。
「背中の甲羅から炎の弾丸を打ち出すことができるのよぉ。その射程といったら相当のもんだ。これでここから狙い撃ちすりゃあ……」
「なるほど。これが貴様のいう作戦というやつか」
度重なる異形の出現に少々驚きながらも、アミバはフレイザードの説明を耳に入れる。
「だが一つ難点があってな。こいつを動かすには、高度な操縦技術と頭脳が必要なんだ。そこで、あんたの出番ってわけだ」
「このアミバ様に、こいつを操縦しろと?」
「天才、なんだろう?」
フレイザードとアミバ。互いが牽制するように笑い合う。
(――なるほど)
その胸中で、天才アミバはフレイザードの狙いを瞬時に解析していた。
(私を利用し、この亀を動かそうという魂胆か。だが、やはり詰めが甘いな)
フレイザードの狙い。それは、アミバを利用し多くの参加者を殺すこと。
(これが天才にしか動かせぬというのなら、俺様以外にこいつを動かせる奴はおらんだろうな。……おもしろい。ならば天才たる私が、存分に使ってやろうじゃないか)
もちろん、フレイザードの思い通りになるつもりなど微塵もない。
(とくれば、試し撃ちをする必要があるな……ふ、考えるまでもないか。すぐ近くに格好の標的がいるというのに)
天才にしか動かせない大砲亀――その最初の獲物は、既に決まっている。
(やはり、こいつは凡才を通り越してただの馬鹿だな。この天才が、手厚く葬ってやるから安心しろ)
胸中では、早くもフレイザードに向けて手向けの言葉を投げかけていた。
(ふふふ……ふははははははははははははははっはははははははははっはははははははは〜〜〜〜〜〜〜)
心の高笑いは、フレイザードには聞こえず。
「それで、こいつはどうやって操縦するんだ?」
「直接背中に乗ってくれ。そこから大砲亀に命令を下せば、とりあえずは反応してくれる」
アミバはフレイザードの言うがままに、大砲亀に跨る。すると
『オオオオオオオオオオオーン』
「うおっ!?」
大砲亀がわずかに首を上げ、静かに唸り声を上げた。
「おお、どうやら大砲亀がおめぇを主として認めたようだぜ。やっぱり天才は違うな」
「ふふふ……この天才の素晴らしさを瞬時に見抜くとは。亀のクセになかなかやるではないか」
ほくそ笑むアミバに、フレイザードがさらなる操作を促す。
「何か命令してみな。天才のおめぇなら、大砲亀はなんでも従うぜェ」
「ほう……なんでも、か。では……」
まずは、初期動作の確認から。
「大砲亀よ、あの連中を狙うのだ!」
試し撃ちの前に、大砲亀の動きを見るために承太郎たちのいる方向を促す。
しかし、大砲亀はアミバの命に反応せず、微動だにせぬまま欠伸をかくだけだった。
「う、うん? どうしたというのだ?」
単純にのろまというわけではなく、本当に1ミリも動かない。
話が違うじゃないか、と不審に思うアミバが顔を振り向けたそこに、
「――――セット」
極上の――気味が悪い――笑顔を浮かべたフレイザードがいた。
「な、な、なんだ!? か、身体が動かん!?」
その瞬間、アミバの身体が固定されたかのように動かなくなった。
否、本当に固定されたのである。アミバが跨る、大砲亀――これはフレイザードが適当に付けた名前で、真名は『カタパルトタートル』という――の甲羅の射出カタパルトに。
「おい、どういうことだこれは!?」
「あぁ?天才様はこんな簡単なこともわからねぇのか?」
焦るアミバに、フレイザードは不適な笑みを見せる。
何かが狂いだした。それがなんなのか、自分を『天才』と誇るアミバには理解できなかった。
「この『カタパルトタートル』は俺が召喚したモンスターだ。端から俺の言うことしか聞かねーよ。ヒャハハハ」
笑い声が、狂気に変わる。何かが、起ころうとしている。
それを感じ取ったアミバは、冷や汗を流しながらフレイザードの顔を睨みつける――未だ自分がはめられたことは理解せず。
「こいつの効果は今から教えてやるよぉ……実践って形でなぁ」
アミバは、未だ状況を理解できていない。
天才が、馬鹿と思いこんでいた異形の怪物に出し抜かれたということ。
それが原因で、今現在のピンチを生んでいるということ。
天才が、よりにもよってこんな形で。
「ふ、ふざけるなぁ〜! 貴様、今すぐ俺様を離せ!! 俺を誰だと思っている!? 俺は天才……」
「天才アミバ様だろ? そいつぁもう嫌ってほど聞いたんだよ。ただ、テメーが天才だってんなら俺様は……」
ニタァっと、フレイザードは口が裂けるほどの笑みを見せる。
「超天才ってところか」
「ちょ、超だって……!?」
不覚にも、アミバはその時劣等感を感じてしまった。
たかが『超』を付けただけだというのに、天才である自分が負けた気がしてしまった。
実際にはアミバの完全敗北なのだから、今さらとも言えるが。
「じゃぁな、アバヨ」
「ま、待て……」
「アミバを生け贄に……」
「お、俺は……」
「カタパルトタートルの効果を発動」
「……天才、アミバ様だ」
「――発射!」
「――ぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
アミバの最後の言葉は、カタパルトタートルの効果発動後、空中に身を投げ出されても途切れることはなかった。
その衝撃音で、六人十二の視線が一斉に同方向を向いた。
「――――!」
驚きの声を発している暇などなかった。
見えたのは、猛烈なスピードでこちらへ飛来してくる何か。
鳥か――――否!鳥よりももっと大きなもの。
銃弾か――――否!銃弾の大きさではない。
大砲か――――否!大砲の弾よりも巨大だ。
では何か――
(――――人!?)
それの正体に真っ先に気づいたのは、反射的に己のスタンド、『スタープラチナ』を発現させた承太郎だった。
(――アミバ――あの丘に立っている人影は――フレイザードとかいう奴か?)
その強靭な視力で敵の存在を確認、人がこちらに向かってくるという事実に驚いている暇はなく、考えるよりも先に身体を動かす。
「スタープラチ――――」
その場の何人が適切な対応を取れただろうか。
フレイザードがカタパルトタートルで打ち出したアミバという弾丸は、標的に向けて伸び、
そして、
「うわらば―――――――!?」
爆発した。
【カタパルトタートル】
[攻撃力 1200][守備力 2000]
自軍のモンスター一体を生け贄に捧げ、相手モンスターに打ち出す効果付きモンスター。
その攻撃力は生け贄に捧げたモンスターの二倍であり、同時に壁・砦破壊の効果も持つ。
これが、カタパルトタートルの基本能力。
仲間を犠牲にして他者を攻撃するという使いどころの難しいこのカードに、フレイザードはずっと頭を悩ませていた。
仲間といっても既に他のモンスターカードは使い果たし、自分よりも高い戦闘能力を持ったピッコロを弾にすることなど叶うはずもなく、かといって単に手駒として扱うには少々勿体無かった。
しかし今回、アミバと言う動かしやすい駒の登場により、このカードを有意義に活用することに成功した。だからこその一時的同盟。
今を思えば、アミバの敗因はフレイザードを甘く見たという一点に限る。
その戦闘向きな体躯と怪物のような面からは想像できないが、仮にも炎氷将軍の肩書きを持つフレイザード。その地位は、なにも戦闘能力だけを買われて手に入れたものではない。
他者を騙し利用する狡賢さと、それ相応の知略があったからこその話。
慢心した天才は、より高みを目指そうとする悪の将軍に完敗したのだった。
そしてこれはマジック&ウィザーズの基本知識になるのだが、ゲーム内で生け贄――破壊されたモンスターは、自軍の墓地へと置かれる。
その際モンスターに付けられた装備カードの類は手札に戻ることはなく、そのままモンスターと一緒に墓地に送られる。
つまりは、アミバの装備も一緒に。
ここで問題なのは、アミバの持っていた荷物。クリークの大盾はともかく、中にはとても衝撃に弱い代物が混じっている。
ジャスタウェイ――ちょっとの衝撃でも爆発は免れない、紛れもない"爆弾"である。
本来なら狙った標的一体に対し、生け贄にしたモンスターの攻撃力×2だけだが、今回はそれにジャスタウェイの爆発力が加算され……
「ヒャハハハハハハハハハハー!!! こいつぁスゲェ! 予想以上の威力だぜ!!」
結果、周囲を巻き込むほどの大爆発を巻き起こした。
あたり一面焼け野原とは、よく言ったものだった。
周囲には木々の残骸と燃え上がる炎、どす黒い硝煙に覆われ、数秒前までの森の形は見る影もなかった。
「ぐ……っくしょ……う」
倒れた木々の残骸から、立ち上がる人影が一つ。
「っ痛つ……ったく、一体何が起こったってんだ?」
荒っぽい動作で地表に立ち上がったのは、あの瞬間アミバの(フレイザードの)標的となっていた世直しマンから一番遠く離れていた人物、桑原和馬だった。
爆発の衝撃の際に身体を打ったのか、全身が軋むように痛む。あの一秒にも満たない一瞬の中で、桑原は動くことしか出来なかった。といっても、完全に逃げ通せたわけでもない。
助かったのは、運がよかったとしか言いようがない。桑原はチッと舌打ちをしながらも、周囲を見渡し被害の状況を確認する。
「あ……うう……」
幸運なことに、すぐ近くの足元には翼が転がっていた。
桑原と同様に木の下敷きになっているが、どうにか自力で抜け出せる程度だ。もしかしたら、この木がうまく爆発の衝撃を和らげてくれたのかもしれない。
「……無事か? 和真、翼」
桑原が翼を助け起こしている横から、三人目の生存者が姿を現した。
「JOJO君。よかった、君も無事で……」
「――空条!?」
空条承太郎は常の平然とした姿――とは言いがたかった。
もしかしなくても爆発による被害だろう。承太郎の左半身は焼け焦げ、むき出しになった左腕は見るに耐えない火傷で覆われていた。
「騒ぐな二人とも。少々しくじっちまったが、見た目ほど酷くはない」
「でもそれ……ひょっとしたらJOJO君、俺たちを守るために……?」
「な、そうなのかよ空条!?」
「JOJO君のスタンドなら、できるよね?」
珍しく、翼に感づかれた。
「……さすがにあれは俺としても予想外すぎたんでな。どうにか時を止めて、転がっていた大木を盾代わりにするくらいしかできなかった。それで自分をカバーしきれなかったってんだから、笑っちまう」
そう言いながら、承太郎は苦笑する。
あの一瞬、『スタープラチナ・ザ・ワールド』で時を止めた承太郎は、どうにか防御だけでもと思い、『スタープラチナ』のスピードを生かして身近にいた二人を大木で守った。
自分の左半身に当たるところまで防げなかったのが手痛いが、どうにか命は取り留めている。問題なのは、『スタープラチナ』でもカバーしきれなかったあちらの方。
「世直しマンは……世直しマンたちは無事なのか!?」
叫ぶ桑原に、反応は返ってこない。次第に黒煙が晴れていき、
「……くっそ」
「一体……何が……」
大事無い身体で静かに起き上がるボンチュー、ルキアと、
「………………」
その二人を覆うように仁王立ちした、世直しマンの姿があった。
「世直しマン……?」
その存在に気づいた者が、一人二人と声をかける。しかし、それらの返事は返ってこない。
よく見れば、世直しマンを覆っていた煌びやかな鎧は継ぎ接ぎのように剥がれ、半壊していた。
ピッコロとの戦闘においても損傷らしい損傷のなかった、あの世直しマンの鎧が。
「世直しマン……?」
鎧の半壊は、爆発による威力の大きさを物語っていた。
そして、鎧を半壊させるほどまでの衝撃を受けた中身――世直しマンは無事なのかどうか。
「世直しマン……!」
返らぬ返事が、一同を不安にさせた。
「………………がはっ」
静かに漏れた呻きと共に、宇宙をまたに駆けるヒーローの足は、折れた。
「世直しマァァァァァァンッ!!!」
絶叫が木霊した。
「……説明してくれ、空条。さっきの一瞬、一体何が起こったってんだ?」
状況の解析を求める桑原ら四名の視線が、『スタープラチナ』を通して全てを見ていた承太郎に向いた。
「あっちの方角に反りたった丘が見えるだろう? あそこから俺たちが追っていたアミバが飛んできた」
「飛んできたって……?」
「そのまま文字通り、"飛んできた"んだよ。その丘の上には、ぼんやりとだが人影も確認した。おそらくは」
「フレイザード!」
該当する人物は、もはや一人しかいない。
「おそらくは何か特殊な支給品を使ったはずだ。あの姑息な自称天才が、自分の身を捨ててまで俺たちを殺そうなんて思うはずもないからな」
「となると……全部そのフレイザードって奴がけし掛けたってわけか」
「………………許せん!」
結論は推測の域を出ないが、『スタープラチナ』の見た先に誰かがいたというのなら、そいつが黒幕である可能性が高い。
「……お? おいッ!? どこ行くんだボンチュー、朽木!?」
そして、そいつは紛れもなく。
「……フレイザードは」「俺たちの敵だ」
穏やかに、それでいて底知れぬ怒りを含めた声で、ボンチューとルキアが言う。
二人が足を向けた先は、アミバが発射された方角。まだそこにいるであろう、まだ殺しの余韻を味わっているであろう真の悪に、怒りをぶつけて。
「まさか……戦いにいくつもりか!?」
世直しマンを襲った突然の悲劇に、二人の感情は押さえが利かなくなっていた。
もちろん、この男も。
「……おもしれぇ! なら俺も行くぜ!! この桑原和馬様をコケにしたヤローだ、直々にぶっ飛ばしてやらなきゃ気が……」
「カズマ、おまえは駄目だ」
意気揚々と戦意を向上させる桑原に、承太郎の冷静な横槍が入った。
「っなんでだよ空条!?」
「今の爆発で他の誰かが寄ってくる可能性がある。ここからはさっさと離れた方がいい。おまえは世直しマンを運んでやってくれ」
「そんくらいテメー……!」
言いかけて、桑原は気づいた。
承太郎の焼け焦げた左半身。そうなのだ。彼とて重傷の身。今でこそ平然と話しているが、ダメージは確かに負っているはず。
重傷二人を翼に任せて放置など、危険極まりない。
だったらいっそ全員で、とも思ったが、ボンチューとルキアはもはや承太郎の言うことなど聞くつもりはなかった。
今、もっとも"ホット"なのはこの二人。桑原の方が、まだ微かに"クール"だった。
「ちっ、しゃあねぇな」
妥協した桑原は、気持ちを落ち着かせてボンチューの方を見やった。
「ならせめて、これを持っていきな。いくらなんでも丸腰じゃあつれぇだろ」
「……こ、これは――!?」
桑原はボンチューに向けて渡したかったのだが、その刀に驚嘆の声を漏らしたのは、死神を名乗るルキアだった。
斬魄刀。死神が虚を狩るために用いる専用の刀である。
「これを私に貸してくれ!」
ルキアはやや強引に斬魄刀を奪い取ると、すぐに刀との『対話』を始めた。
通常、死神の持つ斬魄刀は『始解』を行うまでは皆同じ形状で留まっている。故に、死神は刀と『対話』をし、名前を聞くことでその斬魄刀を誰のものか識別するのである。
「……やはり私の持つ『袖白雪』!」
その刀の正体は、ルキアが愛用する現在尸魂界で最も美しいとされる斬魄刀だった。
「なんだぁ? こいつは元々朽木の刀だったのか? だったら遠慮することはねぇ。持っていきな」
「すまない……だがこれがあればなんとも心強い。恩に着るぞ!」
そう言って、ルキアは斬魄刀を握り走り出していった。
あとに続こうとするボンチューが、
「…………世直しマンのこと、頼んだぜ」
「わぁってるよ。俺の名にかけて、死なせやしねぇ」
桑原にそれだけ言い残し、去っていった。
そんな光景を影から覗く男が一人。
「…………」
近場で起こった爆発に引かれ、様子を窺う男は、どうするかを思案していた。
(……相手は四人。しかも全員怪我人じゃないか)
これはさすがに有利すぎる……絶好のチャンスともいえる。
(どうする……やるか? 俺にやれるか?)
悩む男は、志半ばに散っていった友のことを思い出し、
(……いや、俺がやらなきゃいけないんだよ)
意を決して、影から飛び出した。
ボンチューとルキアが去って数分後。
「やいやいやいやいやい!」
世直しマンを担ごうとしていた桑原達の前に、新たな来訪者が現れた。
「あとで絶対に生き返らせてやるから、ここは黙って俺に殺されな!」
拳法着に身を包み、意気揚々とおかしな発言をする男に、皆は訝しげな視線を送る。
特に桑原は、ヤンキーらしい睨みを利かせた目つきで牽制する。
「……誰だテメー」
「俺様の名前はヤムチャ! 地球人の中で一番強い男だ!!」
電波かなにかなのか。それとも、翼と同じように『クレイジー』な人種なのだろうか。
心中で早くも「やれやれだぜ」と呟く承太郎の横で、押さえが聞かなくなった男はついにぶちギレた。
今回は承太郎が止める理由はない。というよりもむしろ、ここを満足にやり過ごすには桑原の力が不可欠だった。
「……俺は今最高にキテるからよ……あんまふざけたこと言ってると……」
ぷるぷる震える桑原の拳を見て、承太郎はまた呟いた。
「ぶっ飛ばすぞゴラアアアアアァァァァァァァァァァアァァ!!!」
「…………やれやれだぜ」
舞台は再び薄暗い森の中へと突入していた。
どこかに潜んでいるであろうフレイザードを探し、疾走するボンチューとルキア。
暗闇からの奇襲など恐れず、目指すは敵の影唯一つ。かならず見つけ出し、今すぐ倒す。
『オオオオオオオオオオオーン!!』
「――!」
けたたましい雄叫びと共に、併走する二人の横合いから、一体の巨大な陸亀が飛び出してきた。
重厚ながらも速度にはかける陸亀の突進をかわし、すぐさま臨戦態勢を取る二人。フレイザードの影は、未だなかった。
「ちっ、なんだコイツは!?」
「うろたえるな! こやつはおそらく、フレイザードの使役するモンスター! まだ海馬瀬人のカードが残っていたのか!」
事態の把握を迅速に済ませ、現れた陸亀を敵と認識して構えなおすボンチュー。拳を繰り出す。
「ボボンチュー!!」
のろまな陸亀相手に、ボンチューの連続パンチは一つも外れることはなかった。が、
「っぐ……硬ぇ!?」
その装甲に、ボンチューの拳は弾かれてしまった。
カタパルトタートル。攻撃役よりも防御に特化したモンスター。守備力2000は伊達ではない。
「馬鹿者! 甲羅といえば亀の身体を覆う一番硬い部分! 小学校の理化で習わなかったのか!?」
「るせぇ!! 俺はまだ7歳だっつーの!」
戦闘中ながらも、ボンチューに学がないことをいじるルキア。だがそれは余裕の表れでもある。
「君臨者よ!」
この手の敵、少し考えれば弱点など一目瞭然。
「血肉の仮面、万象、羽搏き、ヒトの名を冠する者よ!」
虚との戦いで培ってきた観察力は、ルキアの手を早める。
「焦熱と争乱、海隔てて逆巻き南へと歩を進めよ!」
両の掌を翳し、陸亀へと向けて放つ。
「破道の三十一、赤火砲!!」
ルキアが放った死神の攻撃手段、『鬼道』は陸亀の足元を狙い撃ち、その身体を衝撃で浮かせる。
一瞬、陸亀の身体が起き上がり、腹を見せた。甲羅に覆われていない、腹が。
「今だ!」
ルキアの掛け声と同時に、ボンチューが詰め寄る。
そして、相手の腹部目掛けて、
「ボーン!」
強烈なアッパーカット。陸亀の天地を完全に逆転させ、
「チュー!」
上空から、握り合わせた両拳をハンマーのように打ち下ろす。
それを無防備な腹部で受け止めた陸亀は成す術もなく、咆哮を最後に消滅した。
幻獣王ガゼルの時と一緒だった。召喚されたモンスターはその生を終えた時、カード共に消滅する。
そして、カードの弾ける音はすぐ近くで聞こえた。
「ヒャハハハー! やるじゃねぇか、だがこれで終わりだぜェ!!」
草葉の陰で、フレイザードがパンツァーファウストを構えて笑っていた。
撃ち出された100mm弾は、森を燃やし赤くする。
その場には、笑う炎氷将軍と、
「ヒャハ?」
周囲の炎以上に、怒りに身を滾らせる男女が一組。
「フレイザード……!」
因縁の戦いが始まろうとしていた。
「霊剣!」
桑原が突き出す刺突は、一直線に伸びながらヤムチャへと放たれる。
「な、な、な!?」
「もっとだ!もっと伸びやがれ霊剣!」
それをバックステップで後方に避けようとしたヤムチャだったが、霊剣は伸びることをやめず、しつこく迫ってくる。
(なんだコイツの武器は!? 悟空の持っていた如意棒みたいに、伸縮自在なのか!?)
ならば、回避方向は横しかない。ヤムチャは霊剣の刺突を左にかわし、すぐさま桑原へと駆け出す。
「ぬらぁっ!!」
だが、今度は横合いから霊剣の薙ぎ払いがきた。かわすのは雑作もないが、なかなか相手との距離を縮めることが出来ない。
(クソッ、ならここは一発、遠距離から特大のかめはめ波で……って、まだうまく気が引き出せなかったんだよな俺!)
攻めあぐねいているヤムチャを尻目に、桑原は霊剣による攻撃をやめない。
戦況は桑原の優勢に思えたが、傍観者である承太郎は一人難しい顔をしていた。
「……マズイな」
「なにがマズイの、JOJO君? 桑原君の方が優勢に見えるけど」
疑問に思う翼に、承太郎苦しそうな息を吐いて答える。
「表向きはそう見えるが、カズマの方はだいぶ疲労が溜まっている。このままじゃあいつか息切れをおこすぜ」
考えてみれば、桑原は一日目が始まってから碌に休息を取っていない。重傷を負うような戦闘はなかったが、体力は既に限界が近いはずだ。
「それにあのヤムチャという男、力の全部を出し切っているようには見えねぇ。まだいくつか、切り札を隠し持っている風だぜ」
霊剣を避けながら不恰好なダンスを踊るヤムチャにも、承太郎は眼を曇らせたりはしなかった。冷静に分析して、あの男は強い。ならば、打開策が必要だ。
そう考えている矢先、ついに均衡が破られた。
「狼牙風風拳!」
ヤムチャの狼を模した拳の連激は、懐から桑原を強打する。
いつの間に懐まで間合いを詰めたのか、やはりこの男、計り知れない。
だが、この攻撃の成功に一番驚いているのは、他ならぬヤムチャ本人だった。
(……今のスピード……)
一瞬だったが、足が不自然に軽くなったような気がした。
(……ひょっとして、大蛇丸の封印が解けたのか?)
立ったままダメージに耐える桑原を尻目に、ヤムチャの表情は徐々に緩み始めていた。
「……翼、突然だがサッカーでは、特にキャプテンの地位に立つ者には、フィールドの状況を正確に判断し、的確な指示を出すことが出来る観察力と判断力が必須だ。そうだろう?」
「え? う、うん。その通りだよ」
承太郎から急に振られるサッカーの話に戸惑いながらも、翼は無碍に聞き逃したりはしなかった。サッカーとなれば、翼が黙っているはずもない。
「おまえのその観察力を見込んで訊きたい。あの敵を見て、何か気づいたことはないか?」
「気づいたことって……体術はすごいけど、どこか危なっかしいって言うか……」
「そういうことだ。どんな些細なことでもいい。奴の動きから弱点を捜し当て、勝機を見つけるんだ。じゃなけりゃこの戦い、負けるぜ」
承太郎とて、なにも桑原に全てを任せるつもりはない。この場を凌ぐには、桑原、承太郎、翼、三人の力が必要だ。
普段サッカーで培われた観察力を生かし、翼はじっとヤムチャを注視する。
「おらおらおらぁ! どうしたどうした! 攻撃が止まりだしたぜ!」
「ちぃ、あんま調子乗んじゃねぇぞ!!!」
戦況は一転し、桑原は防御に徹していた。
それをいいことに怒涛のラッシュを仕掛けるヤムチャの手は、眼にも留まらぬ速さだった。確かに、この男は強い。先ほど承太郎が言った台詞も頷ける。
「あっ」
そこで、翼は気づいた。
ヤムチャの、弱点と呼べる一点に。
「足元がお留守だ」
翼の呟き元に、承太郎はヤムチャの足元へと視線をやる。
「なるほど……あのヤローは攻撃に集中する一方、妙にフットワークが悪い。そこをつけば、勝機はあるな」
分析を迅速に済ませ、承太郎は次なる策にでる。
「翼、おまえにこれを渡しておく」
「え?これって……!」
承太郎の差し出したそれに、翼は思わず眼を見開いた。
荒々しい木目の残る、凹凸塗れのかろうじて球と呼べる物体。大きさはちょうど、『翼の友達』と同程度。
「忘れたか翼? 俺の『スタープラチナ』は精密作業をも得意とする。これくらい朝飯前さ」
それは、爆発の際に破砕した木を利用して作った、承太郎お手製簡易サッカーボールだった。
「おまえにはこれを使ってあることをやってもらう……わかるな翼?」
「うん! 任せてよJOJO君!」
立ち上がり、翼はピッチに立つ。
戦場という名のフィールドに、一人のキャプテンが降り立った。
「ヒャダルコォ!!」
凍てつく氷の礫が、ボンチューとルキアを襲う。
「――なめんなよ!」
「貴様の手の内など、もはや完璧に把握しておるわ!」
繰り出される攻撃にも、ボンチューとルキアは焦らず対処した。フレイザードが炎と氷を扱うことは既に今までの戦闘で分かりきっている。ならば、幾分か避けやすい。
「ちぃ! テメーら、あんま調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
敵は雑魚二人――だからこそ、フレイザードはこうやって堂々と姿を現し、血祭りに挙げたやることを選択した。
疲弊を抑えるため、なるべく大技は使わないよう攻撃は中級呪文に限定し、宝具も使わないよう努力したが、
「ボボンチュー!!」
「赤火砲!!」
(こいつら――想像していたよりも強え!?)
まったくのイレギュラーな事態に、フレイザードは頭を困惑させていた。
このまま二人を相手にするのは、さすがに骨が折れる。追撃してこないところ見ると世直しマンは再起不能のようだし、ここは一度引くべきか。
(こんな奴ら、いつでも殺せる。こんなところで無駄な体力使っている暇は……)
思案中にも、相手は攻撃の手を休めない。
「ボボン!!」
高速でフレイザードの後方に回り込んだボンチューは、怒りという重さを乗せたパンチを叩き込む。
「チュラアアァアアァアァァァァアァァ!!!」
一撃、一撃、一撃、一撃、また一撃。
常人離れしたボンチューの拳は、フレイザードに確実なダメージを負わせていく。
「くそぉ!」
纏わりついたボンチューを腕で薙ぎ払い、フレイザードは体制を整えようとするが、
「舞え、『袖白雪』」
生憎――敵は一人ではない。
フレイザードの前方には、斬魄刀『袖白雪』を解放し、その白い刀身を振るっているルキアの姿があった。
その穢れのない白き一閃は、フレイザードを縦に一刀両断する。
もちろん避けた。が、中途半端に避けたためか、ルキアの一閃はフレイザードの身体を斜めに傷つける形となった。
「グギャアッ――!!?」
血こそ流れなかったが、その痛みと苦しみは、人間が感じるものとほぼ同種。フレイザードは、確かな深手を負った。
「皆の仇――今ここで取らせてもらう!」
ルキアの猛攻は、まだやまない。
刀の切っ先を地に向け、苦しむフレイザードを囲うように円形に斬激を与える。
これが、『袖白雪』の能力発動に於ける布石。
「初の舞・月白」
その声と共に、円形に覆われ天地を、フレイザードごと氷付けにしてしまった。
氷雪系斬魄刀『袖白雪』。その純白のイメージ通り、氷を操る能力を持つ。
一瞬の内に、その強大な冷気がフレイザードを閉じ込める。完全凍結とまではいかなかったが、十分なほどに自由は奪った。
そう、元より、氷を支配し炎の半身を持つフレイザードに、『袖白雪』の能力だけで勝てるとは思っていない。
相手の身動きを封じ、確実な打撃を与える一瞬を得る。それこそが、ルキアの真の狙いだった。
「フレイザード……」
氷で全身の八割を覆われ、身動きをとることができないフレイザードに、ルキアが幽鬼のように歩み寄る。
「あの天然パーマの男……海馬瀬人……エテ吉……そして、世直しマン」
彼女を支配する感情は、怒り唯一つ。
フレイザードはこの時、生命に死を齎す絶対的存在――『死神』を前にしたのである。
「皆の仇、今ここで取る!」
死神、朽木ルキアの刃が迫る。
悪行を重ねてきた絶対悪を打ち砕こうと、迫る。
――あ、あ、あ、
栄光が、遠ざかる音が聞こえた。
勝利が、崩れ去ろうとしていた。
バーン様の、蔑む顔が見えた。
――俺は、こんなところじゃ終われねぇ!
フレイザードの強さは、その残虐までな執念と、栄光への執着心にある。
――俺はまだ、強くなる!
どこぞの天才のように慢心し、愚直な行動を取ることなどなかった。
この戦いにも、勝算があったから臨んだはずだ。
――メラ!
迫る刃から眼を離さず、フレイザードは唱える。
――ヒャド!
練習どおり、今まで積み重ねてきた努力を重ねる。
――混ざって、弾けろ!
途端、
フレイザードを覆っていた氷が、爆散した。
その閃光と衝撃に、刃を振り下ろそうとしたルキアは吹き飛ばされた。
地べたに尻餅をつき、何が起こったかを確認するため、視線を前方に向けると、
「なっ…………!?」
驚愕と共に、フレイザードを包んでいた氷が、跡形も無く消え去っていたの見た。
「メラ! ヒャド!」
氷付けから解き放たれたフレイザードが、さらに唱える。
「メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド! メラ! ヒャド!」
何回も唱え続け、乱暴に魔力を繋ぎ合せる。炎と氷、二つの下級呪文を。
「ルキア、なんかヤベーぞアイツ! 早くそこから離れろ!!」
フレイザードすぐ傍にいるルキアに対し、ボンチューが忠告するが、
「何を言う! こやつにとどめを刺すのは、今しかない!!」
ルキアはあと一歩というところまで追い詰めた標的から、退こうとしない。
再び『袖白雪』を振り上げ、フレイザードに斬りかかろうとするその刹那、
フレイザードが、笑った。
「――完成だ」
「――ッ!?」
フレイザードの右手のと左手、そこに集まった炎と氷の魔力が合わさり、弾け、放出される。
ルキア目掛けて。
「ルキアァァァァァ!!!」
ボンチューの叫び声があがった頃には、ルキアはその身を地に転がしていた。
合成された魔力の波動を一身に受け、甚大なダメージを負って。
「……やった」
ボンチュー絶叫の最中、フレイザードは小さく呟く。
「……やりやがったぜ」
そして、笑う。
「やりやがったぜェェー!! さすがは俺様だァァァ!!!」
呵呵大笑しながら、はしゃぎ回る。
もう一人の敵など、歯牙にもかけず。
――……おい、嘘だろ?
ボンチューは、自分の眼が見た光景に信じられず、思わず問いかける。
――守るって、決めたんだよ。
――失わないって決めたんだよ。
――誰にも負けないって……。
悲しみと怒りが、人の死に対する当たり前の感情が、湧き上がる。
ボンチューの場合はそれに加えて、守れなかったことへの背徳感――否、『敗北感』をいっそう滾らせて。
再び、叫ぶ。
「…………フゥレイザァァァドォォォォォ!!!」
その怒声により、フレイザードはやっとボンチューを視界に入れる。
「ヒャハハハ、そういやもう一匹いたんだったな。いいぜ、こいつの試し撃ちに使ってやる!」
戦いは、第二ラウンドを迎えようとしていた。
「うおぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
けたたましい雄叫びと共に、翼が駆け出す。
足元には、承太郎が『スタープラチナ』を使って作り出した(削りだした)お手製サッカーボール。
サッカーボールと呼ぶにはあまりにも粗末で、重さ、強度、弾力性から見ても、とてもスポーツとして使うボールとは認められない。
だが、問題ない。これを叩き込む先は敵チームのゴールではなく、敵プレイヤーの足元――つまり、ヤムチャの。
翼の足元に火花が散ったような錯覚が見え、同時に懐かしくもどこか違った感触を思い出す。
大空翼必殺のドライブシュート。その鋭い弾道と回転力は、常人の眼に留まるものではない。
「ん、なんだ?」
常人と呼ぶにはあまりに逸脱しているヤムチャだったが、『足元がお留守』な彼は、地面擦れ擦れを飛ぶ木製サッカーボールに気づくことができなかった。
「おわっ!?」
ただでさえ夜の森は視界が悪い。加えて翼の正確無比なコントロールは、狂うことなくヤムチャの足を狙い、命中させた。
結果として、ヤムチャはすっ転んだわけである。
「ってて……いったいなんだっていうんだ?」
浮かれてはいたが、多少は戦闘中であるという緊張感があるのだろうか。すぐさま起き上がり、体制を整える。
そして気づいた。さっきの一瞬、攻撃を加えるには絶好のチャンスであったにも関わらず、対戦者の桑原は何もせず、自分から距離を取っていたことに。
「足元がお留守だぜ」
不意にした声は、すぐ後ろから聞こえた。
いつの間に――と思う刹那、
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「そして、後方不注意だ」
振り向くと、そこには学ランの男ともう一人――フリーザの仲間とも思える、宇宙人のような人物がいた。
「オラァ!」
その名を『スタープラチナ』。
本来、スタンド使いでなければ見ることも叶わない影の分身は、"敵"に向けて拳を叩き込む。
ただひたすらに、持てる全ての力を出し切り、この男を行動不能にするために!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!」
まだ、まだ足りない。ここは自分の生命をすり減らしてでも、黙らせる。この男を!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!
――叩き込まれる拳。その全ては、ヤムチャへと命中した。
『スタープラチナ(星の白銀)』。ずば抜けたパワーとスピード、そして正確さを誇る、空条承太郎のスタンド。
その真骨頂こそが、この連打(ラッシュ)なのだ。
しかし、反動で遠く吹き飛ばされるヤムチャを見て、承太郎は言う。
「なんてヤローだ……俺がこんな状態であるとはいえ、『スタープラチナ』の攻撃を六割も防御するとは……」
その不用意な発言に、翼は「えっ?」と声を漏らす。
だが、承太郎の言うことは嘘偽りなく真実。その証拠として、
「ぐ、ぐぐぐぐ……」
顔面を歪まされた状態に陥りながらも、ヤムチャは立ち上がった。
恐るべきは超神水の引き出すパワー。この男、単純な戦闘能力だけなら最早……
「"地球人最強"か。どうやら、その肩書きはあながち嘘でもないようだな……やれやれだぜ」
承太郎のぼやき、溜息を吐くが、決して慌ててはいない。
「しぶてぇヤローだ! なら今度は俺が……」
「そこを動くなカズマ。奴は既に負けている」
とどめを刺そうと勇みだす桑原を声で制し、承太郎はヤムチャへと目をやる。
「テメーの敗因は……まあ色々あるが、一番致命的だったのは"注意力"の欠如だ」
「な、なんだと!? ま、まだ俺の足元がお留守だって言うのか!?」
不細工顔で抗議するヤムチャは、見た目こそ酷いがそれほどのダメージを受けているわけではなかった。
『スタープラチナ』の攻撃をまともに受けて、ここまで平然としていられる"生身の人間"も珍しい。
「違う。"足元"の話をしているわけじゃあない。もっと、全体的な"場"を見る注意力が欠けていると言ったんだ」
「? どういう――」
首をかしげて、ヤムチャは嫌な予感を感じた。
漠然とした、嫌な予感。
承太郎の言う、注意力。
そして、本能的に感じたこの"気"。
「よ……な……」
今なら、承太郎の言葉の意味が全て分かる。
「おまえは初めから、敵を"一人"しか見ていなかった。だから翼のシュートも避けられなかったし、俺の『スタープラチナ』による攻撃が布石であることにも気づかなかった」
承太郎から八メートル右、そこには、両の指を突き立てた世直しマンが。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉしッッ!!!」
「…………この勝負、俺"達"の勝ちだ。"地球人最強"」
思えば、あの時もそうだった。
強大な敵に立ち向かう非力な俺に、アレは力を貸してくれた。
「なんだ? なんだ、テメーのその支給品はァ!?」
負けたくない。その思いに、コイツは答えてくれた。今回も。
でもな、今回はただ『負けたくない』だけじゃねぇ。守って、帰りてぇんだよ。
仲間の下に。
「――蟹座の黄金聖衣だ! よく覚えて、それから死にやがれクソヤロー!!!」
黄金の鎧を身に纏ったボンチューが、神速の動きでフレイザードに詰め寄る。
本来、黄金聖闘士だけが身に纏うことを許されたこの衣も、今のボンチューを確たる主として認めていた。
その気高き心に反応し、力を貸す。ピッコロ戦の時の様に。
「ボボンチュー!」
だが、今回はピッコロ戦の時に比べて『思い』が違う。
求めたのは単なる強さだけではなく、守る強さ。
生き残りたいという意思も、仲間を思えばこそ。
「ボボン」
その上昇し続けるスピードとパワーは、フレイザードを圧倒する。
抗う暇も与えず、『スタープラチナ』にも匹敵しそうなほどの連打を、
「チュラァアアァアァアアアアアァァァァアァアアアアアアァァァァァァアァ!!!」
――浴びせる。
今度こそ。
ルキアが果たせなかったとどめの代行を担ったボンチューは、最後の拳にありったけの力を込めた。
これで、フレイザードという悪に完全なとどめを刺す。ボンチューの小宇宙(コスモ)は、未だ滾ることをやめない。
「グッ!」
悶絶しながらぶっ飛ばされたフレイザードは、震える足腰で迫るボンチューに向き直る。
「…………今度こそ、仕舞いにしてやる」
短く言ったボンチューに、フレイザードは恐怖を覚えた。
もはやボンチューは、雑魚などではない。もちろんルキアも。自分の体力が全開であったら勝てただろうが、現状では敗北は免れない。
それでも、
「……俺は、俺様は……死なねぇ!!」
フレイザードは、再び呪文を唱える。
「メラミ! ヒャダルコ!」
今度は中級呪文で、魔力の合成を試みる。
「遅ぇ!!」
ダッシュでとどめを刺しにくるボンチュー。だが、問題ではない。
土壇場に陥った炎氷将軍の恐ろしさは、並大抵のものではないのだから。
「喰らいやがれェェェ!!」
フレイザードはボンチューの手よりも逸早く、魔力を放出した。
ただし、それはボンチューではなく、
(――――ルキア!?)
攻撃先には、ルキアがいた。
それも震える身体を起こし、今にも立ち上がろうとしている。
(――――生きてた!)
歓喜する暇もなく、ボンチューは駆け出した。
悪の魔の手が向けられた、大切な仲間を守るために。
(――――今度こそ、守るんだよぉぉぉ!!!)
「承太郎君……」
戦い終わりし後、翼はすっかり疲弊した承太郎を心配そうに見遣る。
思えば、彼も重傷の身でよく戦った。承太郎がいなかったら、今ここには誰も生存していなかっただろう。
「……少し、無理をしすぎたな。いいかげん休みてぇ気分だ……」
体を倒し、身を休める承太郎の意識は、今にも消えかかっていた。
「翼……カズマ……俺は少しばかり休ませてもらう。あとのことは、頼んだぜ……」
「うん……うん……」
「……無茶しやがって。大馬鹿野郎だよ、テメーは」
涙ながらに頷く翼と、ぶっきらぼうに返す桑原。
そして、一番の功労者であるヒーローに語りかける。
「あんたも……さすがは"ヒーロー"だな、世直しマン」
未だ立ったままのヒーローに、承太郎は言葉をかけるが、
「……世直しマン?」
声が、返ってこない。
一同が心配そうに見る中、数秒して、一言。
「ルキアとボンチューを……頼む」
その一言がどんな意味を持つのか、考えるのは難しくなかった。
「よ(4)、な(7)」
「……か……め」
世直しマン最大の攻撃『よなおし波』発動の合図と、
亀仙流最大の必殺技の掛け声が、重なる。
そこにいた三人、誰もが「まさか」と思っただろう。
だが、これが地球人最強の底力。
「お(押)ぉぉぉぉぉし!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ぶつかる衝撃と衝撃。相殺しあうエネルギーとエネルギー。
力の質量はほぼ互角。お互いが綺麗さっぱり打ち消しあって消えたのだから、間違いない。
かめはめ波とよなおし波のぶつかり合いは、相打ち。
だが、それを放った世直しマンは、
「世直しマン……」
「死んでる……監督みたいに、立ったまま」
「…………ド畜生ッ!!」
その攻撃が、限界だった。
宇宙をまたにかける正義のヒーローは、世を正す正義のヒーローは、
「…………やった」
自称、地球人最強に敗北した。
「やったぞぉぉぉ!! 俺は、俺は勝ったんだー! やったぜ、クリリィィィン!!」
今までにない最上級の功績に、ヤムチャは歓喜の咆哮をあげた。
ドラゴンボールを使い、皆を後から生き返らせるため、まずは人数を減らす。
クリリンの残したこの壮大な計画に、ヤムチャはこれ以上ない形で貢献したのだ。
浮かれるヤムチャの一方。どうしようもなく消沈する三方は、半ば絶望にも近い憤りを感じていた。
桑原も怒りに任せて飛びかかろうとしたが、あのかめはめ波の威力を考えれば、自分に勝ち目がないことを認めざる得なかった。
「おいおい、何しみったれた顔してるんだよ!? どうせあとでみんな生き返るんだから、そんなに落ち込まなくても……」
「『スティッキィ・フィンガーズ』!」
「――へ?」
浮かれるあまり、反応が遅れた。
ヤムチャの後方から迫った襲撃者に、後れを取った。
背後には、二つの影。おかっぱヘアの男と、宇宙人のような人間。まるで、先ほどの『スタープラチナ』の再現のような。
ヤムチャは、この存在が『スタンド』という名であることを知らない。
「うわっ、と!?」
後方からの奇襲をギリギリで避けるも、また転びそうになってしまうヤムチャ。だが、今回は足元がお留守とは言わせない。
「な、なんだおまえは!?」
「なかなかの反射神経だ。だが、『スティッキィ・フィンガーズ』の攻撃は確かに"当たった"。見えるか? おまえの"小指"に取り付けられた"ジッパー"が」
この突然の奇襲に、ヤムチャは困惑する。だが、自分の左小指を見た途端、その困惑はさらに加速することとなる。
「な、なんじゃこりゃあ!?」
そこには、紛れもなく"ジッパー"が取り付けられていた。あの、服についてる"ジッパー"だ。
「その"ジッパー"を引けばどうなるか……まさか分からなくはないだろう?」
おかっぱの男は、ヤムチャに歩み寄る。
「なんなら、もっと"ジッパー"を増やしてやろうか? 身体が"ジッパー"塗れになる様を……俺に見せてみるか?」
「ひっ……」
ヤムチャは、このおかっぱの男の今までにない異質な能力に、これ以上ない恐怖を覚えた。
「……きょ」
あと三人……あと三人だったが、もう少しと言うところで一人増えた。
その一人は、謎の力を秘めた能力者。冷静に考えて、浮かれている場合ではなかった。
「今日のところは見逃してやる! 次にあったら、このヤムチャ様があの世に送ってやるからな〜! 覚えてやがれ!」
限界を感じたのか、それとも『スティッキィ・フィンガーズ』の異能に恐怖したのか。
ヤムチャは、宇宙のヒーローを葬ったとは思えない逃げ足で去っていった。
「ブチャラティ……」
「JOJO――空条承太郎、だな? まさか俺の顔を、忘れてはいないだろうな」
ヤムチャが去り、おかっぱの襲撃者――ブローノ・ブチャラティは、承太郎と邂逅する。
この二人、数時間前までは些細な誤解から激闘を繰り広げた間柄である。しかも同じ『スタンド使い』。結果は承太郎の勝利に終わったが、今はあの時とは立場が逆転している。
「無様だな。"ボス"と同じような『スタンド』を持ってしてこれとは、情けない」
「仕方がねぇさ。なんたって相手は、"地球人最強"だ」
「ふん。あの時は後れを取ったが、今やったら"100%"俺が勝つな」
「おい、まさかブチャラティ……」
その攻撃的な言葉から、桑原は嫌な風を感じた。
あの時のいざこざ。まさか、今ここで『スタンド使い』同士のバトルを再現するつもりでは……。
「心配はござらん、カズマ殿。ブチャラティ殿にその気はない」
事が起こる前にブチャラティを止めようとした桑原を、遅れてやってきたもう一人の仲間、雷電が制した。
「雷電さん!」
「遅れて済まぬ、翼殿。もっと早く駆けつけるつもりだったが、ブチャラティ殿と『話』をしていたら遅くなってしまった」
「……事情は雷電から全て聞いた。おまえ達が俺と同じ思想を持っているということ、既にカズマはその仲間入りをしたということもな」
複雑そうな顔で語るブチャラティ。どこかしら後ろめたさがあるのだろうか。特に桑原とは眼を合わせようとはしなかった。
「カズマ殿、ブチャラティ殿はちゃんとこちらの話に賛同してくれたぞ」
「それじゃあブチャラティ……」
「おっと、再会を喜び合うのはまだ先だカズマ。生憎だが、"すぐにやらなければならないこと"ができた」
「やらなければならないこと?」
ブチャラティの加入に喜んだのもつかの間、彼は"また"突拍子もないことを言い出した。
「さっきの奴――ヤムチャだったか。俺は奴を追い、この手で倒す」
「なんだと!?」
そこ言葉に驚きの色を見せる桑原だったが、 ブチャラティは至って平然とした顔で、
「奴は危険だ。この先少なからず、俺たちの障害となる。倒すなら……疲弊し、"ジッパー"の能力を恐れた今が好機だ」
「じゃ、じゃあ俺も行くぜ!」
「言うと思ったよ、カズマ。だが、おまえは駄目だ。これは俺が一人で行く」