【2次】漫画SS総合スレへようこそpart37【創作】
1 :
作者の都合により名無しです:
2 :
作者の都合により名無しです:2006/04/12(水) 19:01:04 ID:5Pgpi55v0
3 :
作者の都合により名無しです:2006/04/12(水) 19:03:13 ID:5Pgpi55v0
4 :
作者の都合により名無しです:2006/04/12(水) 19:06:14 ID:5Pgpi55v0
新スレ立てました。
また、沢山の作品が集まるのを願ってます。
ゲロさんが魔女を書きたいと仰ってたので
とりあえず魔女だけテンプレに復活。
茄子も好きなんだけどなあ
5 :
二十五話「漢の拳VSヘタレ」:2006/04/12(水) 20:07:21 ID:hjSlFIMR0
ピクリとも動かないスペック、当然だ。
貫かれたのは腹部、内臓を引き裂かれ大量の出血を起こしている。
「フ・・・殺すには惜しい漢だったが、やはりレイに及ぶ筈は無いか。」
強敵を失った悲しさか、闘い足りないのかユダは悲痛な表情を浮かべる。
そして突き刺した己の手をスペックから引き抜こうとする。
「ぬ・・・抜けん!?」
死後硬直だけでここまで腕が締め付けられる事は無い。
そう、これはスペックの意思で機能してる力。
「ヘッ・・・最初ッカラコウシテレバ良カッタゼ・・・・・・。」
ユダを見つめるスペック、口からも大量に吐血している。
呼吸器が血で満たされていても不思議では無い。
「護ッタリ逃ゲタリハ・・苦手デナ・・・・。」
だから受けたというのか、無類の殺傷力を持つ南斗聖拳に?
死の淵にいるスペックの姿がレイと重なって見えるユダ。
己の命を削ってでも闘志を絶やさず立ち向かうその姿は、
スペックの凶悪な形相を気にさせない程美しく見えた。
「出血ノ影響カナ・・・・・無呼吸ガ続カネェ、
コイツデ終ワリニスルゼッッ・・・!」
構えを取るスペック、貫かれた腹筋を総動員してユダの腕を止めながら。
仁王の如く構えを取るスペック、そしてその構えから必殺の乱打が放たれる。
ユダは静かに目を瞑り、打たれるのを待った。
心地よき痛みが体中へ広がる。
次の一撃で倒れる事を感じたユダ、目を開き自分を倒した漢の顔を見る。
そして、その光景を心に刻みつけてユダの意識は薄れていった。
(レイ、もう一度お前の胸の中へ・・・。)
6 :
二十五話「漢の拳VSヘタレ」:2006/04/12(水) 20:08:04 ID:hjSlFIMR0
「んっ・・・ここは・・?」
目が覚めるユダ、どうやら死んだ訳では無い様だ。
体中の痛みに耐えながら部屋中を見回すと、倒れこんだスペックが居た。
「くっ・・・貴様、何故寝ている!」
答えが無い、無論自分の放った血粧嘴が原因なのは明らかだ。
共に死闘を繰り広げたスペックに話しかける。
「冗談では無い・・・・・この俺に勝った漢が先に逝く気か!
認めんぞ・・・ぬぅおお!」
立ち上がろうとして裂傷箇所から血が吹き出る、だがこの痛みは一瞬。
強敵を、友を失う悲しみは心に刻まれる。
よろよろと頼りない足つきでスペックの元へと辿り着くユダ。
治療用の技など不要と己の美と鍛錬のみに時を費やしたのが災いしたが、
すぐさま治療に使えそうな技を思い出す。
「南斗虎破龍!」
外部破壊を主とする南斗聖拳にも幾つかの秘孔は伝えられている。
南斗虎破龍、相手との相打ちを装って両者を仮死状態にするために用いられるが、
これを利用してスペックの血管の動き等を止め、延命を試みるユダ。
「あ、後は従者を呼べば・・・。」
再び左右へとよろめきながら壁へと歩き出す。
そして壁の一部が蓋になっており、蓋を外し中にあるボタンを押す。
「これでいい・・・これで・・。」
その場に倒れこむユダ、歩く力も尽き果てた様だ。
再び意識を閉ざし、一時の安息へと向かう。
7 :
二十五話「漢の拳VSヘタレ」:2006/04/12(水) 20:09:38 ID:hjSlFIMR0
〜アサシンギルド・十字路〜
スペックにその場を任せて扉の奥へと進んだカイル達。
かなり長い廊下だったがようやく分かれ道が見えた。
「道が分かれてるな。」
ロニが左の通路へ目を向ける、するとそこに。
「・・・。」
物言わぬ巨漢が一人立っていた、花山薫である。
上等なスーツを着こなした巨大な漢。
漢は拳をボキボキ鳴らしながら近づいて来る。
「ここは通行止めだぜ、坊主・・・。」
咄嗟に剣を抜くカイル、だがロニは余裕の表情で笑っている。
気でも違ったのだろうか、無表情にロニを見つめる花山。
「フッフッフ、残念だがお前と戦ってる暇なんてないんでな。
スペックから預かったこれを早速使わせてもらうぜ!」
ヤバイ奴と当たったら使えと言われていた袋を取り出す。
ヤバイ奴と当たったら、と言う事は即ち逃げろと言う事だ。
煙幕か何かであろう、早速中のものを引きずり出すと。
「ダヴァイッッ!」
中からは奇声を上げるロシア人が出てきた。
何故こんな小さな袋に?
そう思って困惑する一同に説明するシコルスキー。
「フッ、それは四次元ポケットといってな。ドイル・・・じゃなくって、
ドイル様が召喚師のコスプレで機械の魔物を召喚したらそのパーツだけ出てきたんだ。」
後ろでは巨漢が拳を振りかざしている。
それに気付きもせずに説明を続けるシコルスキー。
「スペックがどうしてもって言うから入っててやったのさ。
取って置きの切り札としっ・・・あべし!」
言い終わる前に巨漢の拳が炸裂する、
納得する一同、ナルホド身代わりだったのか。
8 :
二十五話「漢の拳VSヘタレ」:2006/04/12(水) 20:11:26 ID:hjSlFIMR0
シコルスキーを見捨てて奥へと走るカイル一行。
助けを呼ぼうと手を伸ばすが、またも巨漢の一撃を喰らう。
「うげぇっ!」
嘔吐しながら涙目になるシコルスキー。
だがやられっぱなしでは無かった。
強く握られた拳、だが中指だけが突出している。
得意の切り裂きパンチの握り、ベアナックル。
一流の格闘士でも容易くは防げ無い連撃を、花山へと浴びせる。
意外な実力に少し驚いたのか後ろへ下がる花山、傷だらけの顔に更に傷を増やす。
改めて敵として認識し、花山薫、本気の構えを取る。
両腕を顔の真横にくる位置まで上げる。
脇を空け急所をさらけ出す、防御を捨てた花山ならの構え。
只ならぬ威圧感を感じるが更に攻撃を仕掛けるシコルスキー。
花山の上等なスーツも、厳格な顔も切り刻む。
だがそんな攻撃は意に介さずパンチの体勢へと移る、
しかし、それも素人の様な構え。
「ハッタリは効かないぜッッ!」
パンチが放たれる、だが別段速い訳では無い。
後ろへ下がりながら両腕でしっかりとガードする。
直後、味わった事の無い衝撃が腕を襲う。
バックステップで衝撃を和らげながら両腕でガード。
重症を負うのが間違い、そう間違っている。
このパンチの威力は間違っていたのだ。
後ろへ飛び完全な威力を発揮できない筈のパンチは、
容易くシコルスキーの両腕をへし折った。
咄嗟の出来事に痛みが薄れていたのか、夢を見ていると思った。
余りの可笑しさに冷や汗と共に笑いまで込み上げてくる。
「ハハ・・・嘘だろ?」
己の折れた両腕を見ながら唖然としているシコルスキーを余所に、
漢、花山薫が追撃に出るため前へ進む。
嘘でも間違いでも無い究極の拳が、直撃した。
9 :
邪神?:2006/04/12(水) 20:12:36 ID:hjSlFIMR0
祝、新スレ!1さん乙!邪神です。モンハン内でユダという友人がいます。
下ネタと北斗ネタを連呼する面白い奴ですがネタ装備に身を固めていて美しくは無いですw
まぁいつも通りこの手の会話には誰も触れてくれないので置いとき、
ユダ様は結構好きなので飛翔白麗を喰らった時の如く熱い漢に仕立て上げました。
〜サガ講座尚且つ質問箱と前スレの方々への礼等〜
しぇき氏 おお、「?」にまで気を配っていただいてどうもですw
そういえば書き始めの頃にスレ住民が名前の由来を聞いてたような・・・そのうち書くかも?
ふら〜り氏 相変わらずの作品ラッシュの中、みんなを奮い起こす言動。
俺なんか御礼の一言にも詰まります。やはりシンプルに一言、「ア・リ・ガ・ト・・・・」
ドリアンは掲示板で使用済みなんでドイルで御勘弁を・・・。
北斗の正体不明技の質問(?)があったので乗せますがどれもゲームから取った物ですw
ちなみにユダ様の「切れろ切れろぉ!」は伝衝烈波(でんしょうれっぱ)と言う技らしい。
ちなみに修羅の国編は無いので、白羅滅精(はくらめっせい)は正体不明のままです。
北斗八悶九断 (ほくとはちもんくだん) 八つの苦しみを与え、体を九つの破片に爆発させ
相手の息の根を止める秘拳。ケンシロウらしい残虐な技だったようだ。
ちなみにこれは格ゲーじゃなくてファミコン版横スクロールアクションの北斗の拳2から引用。
南斗究極奥義 断己相殺拳 (なんときゅうきょくおうぎ だんこそうさいけん)
書いて字の如く、相手を己の命と引き換えにしてでも討ち取る奥義。
その覚悟に裏づけされた威力は素人同然のバットの目でも分かる程。
某アーケードの格ゲーでは空中に飛び上がり無数の衝撃波を放つ。
これを見た時は「あれ?突撃技じゃないの?」とか思いましたが、
レイが拳王様にマントを投げ付けられた時、
マントの中で手を交差させている様に見えない事も無いです。
これは衝撃波を出そうとしてるポーズだったのでしょう。
しかし遠距離技なので自分が危険になるって事は無い気がする。
ちなみに無数とは書いたが正確な数を言うと夢が壊れるので伏せておく。
用語解説追加
ドラサイドのキャラ
ディアッカ・エルスマン
ガンダムSEED、SEEDデスティニーに登場。恐らくこの作品で最も愛された男(ネタキャラとして)。
炒飯作りが得意らしいが、定かではない。
脇役でありながらもその存在感はキラやアスランにも劣らない侮れない男である。
彼の仲間、ニコルとイザークも登場している。
敵対 <十三階段>
五段目―――手塚国光
「テニスの王子様」に登場。左手から凄まじいオーラを発し、あらゆる技を二倍の威力に高めて
相手に返すことが可能。
映画版では究極魔法メテオで恐竜を滅ぼした(マジ)。
味方ロボット
ダイザンダー―(ドラ、のび太、リルル)
ザンダクロスの後継機。バカ王子によって改造されたザンダクロス。
ボディは宇宙最高硬度の金属に、動力源は次元連結システム(永久的に超出力を供給)、
強力な追加武装と、大幅なパワーアップを果たしている。
Sフリーダム―(キラ・ヤマト)
フリーダム後継機。超火力で敵を薙ぎ払うのが基本戦術なのは変わっていないが、
全てにおいてフリーダムを遥かに上回る性能を誇る。
追加武装に8つのスーパードラグーン・システム(超簡単に言えば扱いやすいドラグーン・システム)がある。
G(ガンバレル搭載型)フリーダム―(ムウ・ラ・フラガ)
文字通りガンバレルを搭載したフリーダム。ガンバレル搭載ストライクをヒントに捏造した機体。
筆者は種デスにこれが出ると信じて疑わなかった。
ドムトルーパー×3―(ジャイアン、スネ夫、しずか)
三機での運用が基本の機体。個々の能力はそれほどでもないが、上手く連携できれば
十分な強さを発揮できる。
敵ロボット
グランゾン―(シュウ=シラカワ、アザミ)
スーパーロボット大戦シリーズに登場。シュウが造った最強のスーパーロボット。
シュウが扱えば一日で世界を滅ぼせるらしい。巨大ロボがゴロゴロいる世界でこの評価である。
作品によって全ての事件の元凶だったり同レベルの相手と戦えば銀河が消滅するとか言われる。
作中ではオリジナルキャラのアザミが乗っているが、本家パイロットのシュウが乗った時よりも性能は
かなり落ちる。
ちなみに原作ではグランゾンとネオグランゾンは同じものである(グランゾンからネオグラに変形する)
が、このSSでは別物として扱っているので悪しからず。
果たして敵となるのか、味方となるのか?
量産型グランゾン―(人工知能)
読んで字の如く、量産型のグランゾンである。
量産型の宿命として、本物よりもかなり性能は低い。
番外編
ユーゼス=ゴッツォ
スーパーロボット大戦αに登場。
原作では全ての事件を影で操る凄い奴だったが、このSSにおいては怪しい宗教をやってたり、
怪しい遊園地のオーナーをやって怪しい連中を率いる怪しい仮面を被った全体的に怪しい男である。
ウルトラマンになりたいらしい。
ちなみに彼の名言<それも私だ>はロボゲ版では<それも名無しだ>としてデフォの名無しさんに
なっているほどの知名度を誇る。
ジュデッカ―(ユーゼス)
アスランに追い詰められたユーゼスが乗り込んだ最終兵器。
原作ではラスボスを務めた偉大なロボットだが、このSSでは・・・
まあ見れば分かるアホなロボになってしまった。
>邪神さん
新スレ一番乗りですね。お疲れ様です。
スペックがどんどん男前になっていくのに比べ、シコルは本当に報われないなあ
花山さん相手では仕方ないけど、同じバキキャラで死刑囚なのに扱いの差がありすぎw
対してスペック、これは勝ちですね、どうみても。
>1さん
お疲れ様です。なんか、今年中にパート50まで行きそうな雰囲気ですねw
>ゲロさん
ま、そんな事おっしゃらずに、気軽に思いついたら書いて下さい。
3ヶ月とか半年に1回とかでも、ゲロさんの作品は読み切りタイプですから
十分に楽しめますし。
サマサさん、用語解説と設定お疲れ様です。
わかりやすいです…けど、もうちょっと邪神さんと間隔あけるべきかと。
手塚のあの場面、もう一度見たいねえ。
勿論映画は見てないが、リンクして見た時に大笑いしたw
投下完了。そして邪神?さん、すいません・・・
ギコナビでレスエディタに直接書き込んでて、リロードしなかったせいで
直後の投下になってしまいました。お詫び申し上げます。
ところで僕はテイルズではエターニアが一番好きなんですが、出る予定ないですかね?
八悶九断ってジャギに使おうとして寸止めした技でしたっけ。あそこでマジで叩きこんでれば
よかったのに・・・(待て)
レス番は前スレのもの
>>397 SSは僕にとって娯楽です。だから苦痛にはまずなりません。少なくとも今のところは。
>>398 それをやったらやばすぎます、色んな意味で。
>>399 まあ身体を壊さない程度にw
>>400 いや、実は本文は既に書いてたので、後は投下して後書きだけでしたから。
>>しぇきさん
すげえ文量・・・読むのに苦労しましたw勇次郎ならオカルト展開だろうが腕力で捻じ伏せる・・・はず。
スパロボなら、全60話とすると大体そのくらいですかね。種シナリオ終了間際といった感じです。
量産型グランゾンは見た目だけなら完全にグランゾンです。あれが数十機一斉に並び立つ光景が
見れたら死んでもいいかもしれない。
>>全力さん
キラの過去が明かされる回で、戯言シリーズを知ってる人にはニヤリとできるネタを入れるつもりです。
アーチャーは確かに似てる・・・というか、そのネタはかなりありますよねw
声優ネタなら亜沙が下級生をマリア様の下で呼び止めて「タイが曲がって(略
Kanonは・・・戦闘には持ち込みにくいですね、確かに。でもネット上では祐一が大活躍してるSSばっかですがw
舞は分かります、ドラえもんを見たら絶対にあのセリフを言うね。しかしアニメのKanonは顎しか印象にないです。
>>1さん乙を忘れてたw
本当に乙です。しかし37スレ目・・・ついこないだまで新人だった僕が、現連載陣の中では
古参兵の部類だw
もちろんパオさんやふら〜りさん、バレさんといった創始時代の方々にはかないませんが・・・
うーん、バキスレの歴史は深い。
18 :
作者の都合により名無しです:2006/04/12(水) 23:17:13 ID:19SUcG5e0
>1さん スレ立てお疲れ様です
>邪神さん(じゃしん、と入れるといつも写真と最初に変換されるなあ)
お疲れ様です。現スレでも前スレ同様、好調な更新をお願いします。
スペックとシコルスキーの対比があれですね。個人的にはシコの方が好きなんですけど、
どうしても役回り的に・・このスペックなら花山にも勝てそうですね。
>サマサさん
設定まとめはありがたいです。機神は楽しみにしてますが、スパロボや種は未見なんで。
サマサさんもバキスレの大切な歴史の一員、これからも頑張って下さい。
でも、なんだかんだで更新回数頑張ってくれてますね。おしごとも頑張ってください。
19 :
ふら〜り:2006/04/13(木) 00:09:36 ID:fEVYcUn10
>>テンプラ屋さん&1さん
おつ華麗様です! ご無沙汰な職人さんの早期復活を待ち望みつつ、現連載作品の
続きも楽しみに待ち望み、新しい職人さんの登場も待ち望む。いつでも待望、いつでも
望みをもって待てる、そんなこのスレの新たな一歩。また楽しくいきましょうっ!
>>サマサさん
久しぶりに、しずかちゃんがヒロインしてますな。ライバルが質量共に凄いから彼女も
大変だ。で、前回から一番注目のアザミ話は次回ですかぃ。今の雰囲気から考えると、
しずかちゃんがソフト面、バカ王子がハード面を……でまたまたドラチームパワーUP?
>>しぇきさん(内定おめでとうございますっ!)
勇次郎が出てる作品なのに、勇次郎がいない部分の方がより一層非日常という珍しい話。
見下ろすような視点からの緻密グロ描写に加え、自分の居場所が物理的にも精神的にも
あやふやになってくるような怖さ……これぞサイコホラー。勇次郎との衝突が楽しみです。
>>見てた人さん
おぉ。頭脳戦だけでなく、肉弾戦も強いカイジ。この状況でこれだけ冷静に知恵を働かせ、
動き、見事に敵をハメるとは。「銀と金」の森田を思い出します。でもこのアイスピック、
ニコチンの話が本当なら峰打ちというか急所外しとかできない……このまま刺すと……
20 :
ふら〜り:2006/04/13(木) 00:10:25 ID:fEVYcUn10
>>一真さん
退氏のリキ入った突っ込みが心地よい。んがそれよりも、やはり本作で注目すべきは全蔵
ですなぁ。描写はないけど最後のセリフの辺り、一筋の涙が私には見える。本っ当に一途
にジャンプだけが好きなんだなぁと。で銀時に戻ってきてほしいんだなぁと。叶うのか?
>>邪神? さん(ファミコン版北斗の拳2なら覚えてます! ボス戦は画面端に行くと×)
レ、レイとスペックを重ねますかユダの旦那っ。場所が場所なら北斗腐ファンに刺される
所業ですぞ。スペック好きの私は嬉しいけど。以前のケンシロウVSホークと同じく、双方
のメンツを潰さない決着が見事でしたね。単純に考えると仲間組みフラグですが、さて?
>>ゲロさん
ゲロさんほどの方ならきっとまた、書きたくて書きたくてしょうがないって時がきますよ。
書き手も読み手も楽しんでこそバキスレ、書きたい時に書いて下さい。お待ちしてますっ。
>>前スレ391さん
光栄の言ったり来たり、されど今のところ未定也。申し訳ござらぬ。
流行に乗って(?)私も漫画と某ギャルゲのコラボをちょっとだけ書いたりもしたんです
が、あまりにもゲーム側に傾き過ぎてしまい没……最古参なのに未熟、それが私。
・
>>1さん
新スレおめでとうございます。しかし最近は1スレ消費一ヶ月切るのが珍しくないね。
・邪神?氏
スペック男前ですね!ユダと友情コンビ結成かな?シコルは相変わらずだが・・w
・サマサ氏
サマサさんの愛を感じる設定集だな。こういうのは助かる。バレさん大変そうだけどw
・ふらーりさん
>私も漫画と某ギャルゲのコラボをちょっとだけ書いたりもしたんです
>が、あまりにもゲーム側に傾き過ぎてしまい没
勿体無い。途中から修正なんていくらでも出来るでしょ?
もったいないな。
どこまで書いたのか知れないけど、短編にして上梓してみては?
23 :
作者の都合により名無しです:2006/04/13(木) 23:23:42 ID:wyHDVcH50
うみにんさんはまだでござるか?
24 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 00:56:17 ID:HckJ5us00
俺はムカついているんだ。同時に悲しくもある。何故かなんて、俺に教えて欲しいくらいだ。レ
ミアは俺と一緒にいたあの時まで、俺に様々なものを与えようと試みていたように思えた。俺は、
そんな高慢ちきなレミアに無性に腹が立った。なのに、なんで俺は泣いているのだろう?
レミアは、黒髪の美しい女だった。今思えば、初めて見た時、その髪にとり付かれていたのかも。
あいつは、俺の部屋の呼び鈴を押して、図々しくも入り込んで来た。俺は怒りを覚えながらも、茶
を用意し、座布団を出してやった。なんでかなんて分からない――これも髪のせいかも――。多分、
理由なんて存在しないんだろうが。
レミアの目はこれ以上なく澄んでいた。澄んでいたが、それは怖かった。あの目は、美しいし、
素晴らしいと思うが、この世に存在してはいけない類のものだと、俺はあの時思っていた。
それは、人を狂わせる――
――そう、そうだ、俺は狂わされてしまっていたんだ。あの魔女の目によって!
レミアはそのまま俺の部屋に寄生した。あいつの一日は、きちがい染みた奇声を発することから
始まった。それは、同時に俺の目覚ましにもなっていた。この上なく不愉快な……だけど、今はあ
の奇声が、どこか愛おしい……
しかし、これは不思議なことだが、あれほど大きな、それこそ騒音と変わらない煩さの声を発し
ていたのに、近くの住人が誰も乗り込んでこなかったのだ。
「欠かしてはならない儀式なの」――そうレミアは言っていた。それが終わると、あいつ外へ出て
行った。そして夜まで戻っては来なかった。俺はあいつが出てから帰ってくるまで間に、再度深い
眠りに入る。レミアが来てから、俺の睡眠時間は倍以上に増えた。本当に、ほとんど一日中眠って
いた。俺にとっては悪いことではなかった。眠るのは好きだったし、腹も減らなかったからだ。今
も、全く空いていない。呼吸だけで満たされるような感覚があった。これもレミアが来てからで―
―
レミアは、いつも夜の八時過ぎくらいに、傷だらけで帰って来た。最初は驚いたな。「“善なる
ものを穢す者”との戦いで――」俺は、それをはいはい、と流していた。もっとちゃんと聴いてお
けば――いや、それでどうにかなるものではなかっただろう……
25 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 00:58:15 ID:HckJ5us00
今もよく分かっていないが、とにかくレミアは、なにかと戦っていた。善なるものを、穢すもの
……俺は今、ある番号が書かれた紙を手にしているが、それはレミア曰く「私達の世界と、この世
界との境界線上であぐらを掻いているモモじぃ」の電話番号らしかった。このクセ字、紛れもない、
レミアの書いたもの。
俺には、いつも一定の態度で臨んでいたあいつが、唯一弱気な声や、怒気を孕んだ声を受話器に
向けて発していた相手の番号だ。
俺は、発信した。一回、二回、三回……六回目で、しわがれた声が聞こえだした。
「どなたか?」
「あの、ももじぃってのは、あんたか?」
「…五人目か」
「五人目?」
「いや、いい。気にせんでくれ。で、何の用かね?」
訊きたいことは、それはそれは山ほどあったさ。
レミアはどこから来たのか。もしも、もしそうなら、この上もなく信じ難いことだが、人間だと
したら、本当の名前は、出身地は、仕事は――正体は。
善なるものを穢すものとは?
レミアが帰って来ない。
どこに行ったのか?
生きているのか?
生きているなら、なぜ帰って来ないのか?
帰って来れないのか?
「レミアが帰って来ない! 教えてくれ!」
大きな声を出す気はなかった。感情的になるなんて、思ってもみなかった。
しかし、現実として、俺は必死になって、レミアの状況を知ろうとしていたのだ。
「…あの女は、居なくなる前に、なんと言っていた?」
「え」
「通例通りなら、“豊潤の魔女”は、去り際に言霊を残して行くはず」
26 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 01:00:21 ID:HckJ5us00
豊潤の魔女とは、レミアのことか。
「…俺は……」
『行かないで』
――俺は――
飲み込んだ。
「…いや、いい。俺のは、いい。あいつは……泣かな……『泣かないで』と」
「それだけか?」
「いや、違う。それに続けて『いつでもここにいる』と――」
「…ふん、中々気に入られてるな。坊主、それはな、言葉通りの意味だよ」
「どういう……」
「言葉通りだ。感じないかね、気配を」
「気配?」
「鈍いな。気配が感じ取れないなら、匂いでも分かるだろう。芳しい、果実のような香りが部屋に
充満しているだろう? まあ、部屋だけでなく、“お前以外の全てから”それは発せられているん
だがの。それに気付けるのも、この世界では坊主だけ」
「匂いなんて、いつもと――そうだ、いつもと変わらない。変わらないんだ。あいつが最初に入っ
て来た時と、なんにも変わらない匂いだ!」
「そうだ、坊主。豊潤の魔女は、“お前以外の全て”に今、存在している。だから匂いもするし、
腹も減らん。その香りは眠りを誘う。今までと何も変わっておらんだろう?」
「…善なるものを、穢すもの、って」
「それも、言葉から想像してくれ、としか言えんな。まあ、物騒なものだよ。それは確かだ。ただ、
豊潤の魔女である彼女が対峙するべき敵というわけでもない」
「戦う必要はなかった?」
「そうだが、豊潤の魔女は、とても奴らを憎んでいてね。いつも最前線に立とうとする。昔、一人
目が奴らに――」
一人目――ももじぃはそう言った。
俺は、五人目と言われた。
27 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 01:01:23 ID:HckJ5us00
「一人目?」
「――気にするでない。その方が幸せだろう」
「覚悟は、多分ある。教えて」
「…………」
ももじぃは、ふうと一つ大きく息をつき、語りだした。
「…豊潤の魔女は、己の肉体の中に、人間が何百人分も詰め込まれているような女だった。即ち、
生命力の泉なのだ。泉は尽きることなく、今でも命を体外に放出している。坊主が今嗅いで、包ま
れているのは、命の霧のようなものと思えば、そう間違いではないだろう。そこには実体はなく、
ただ目に見えない影のみが残されているというのに、それからも命が吹き出してきている……それ
ほどまでに、だ」
「俺は、レミアの命に包まれて?」
「そう。ただ、何事も全てうまく回っていくわけではない。分かるか? 豊潤の魔女は、単独で存
在するには過ぎたるものだったのだよ。余りにも命が強大過ぎたのだ。それ故、肉体が耐え切れず、
悲鳴を上げていた。何度も聞いたものだ、豊潤の魔女の金切れ声を」
「レミアは毎朝、気が狂ったような声を上げていた……」
「豊潤の魔女の性質として、単独でない場合――ほんの少し前までは、そういう状態だっただろう。
単独でいるより多くの命が体外に放出されるからか、多少は激痛が和らげられたそうだ」
それでも、痛かったのだろう。
ああ、あれは、悲鳴だったのか。
ああ、可哀想なレミア。憐れな全能……
28 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 01:02:27 ID:HckJ5us00
「しかし、それは所詮多少でしかなかった。豊潤の魔女だって、痛覚は普通なのだ。坊主ならどう
か? 独りでいようと思うかね?」
「………・・・」
俺は、首を振った。それをどこかから見ているように、ももじぃが続けた。
「そうだろう。そうなんだ。だから、お前が五人目だと言ったんだ。豊潤の魔女は、我々より遥か
に寿命の短い人間に命を分け与えることを望んだ。だが、一人目は、こちらの者だったのだ。善な
るものを穢す者に殺された、一人目がいたのだ。豊潤の魔女は、泣き、叫び、喚き散らし、口汚い
言葉を何度も吐いた。あれほどまでに怒り狂う豊潤の魔女は、後にも先にも、見たことがなかった
よ」
「こっちの世界の者なら、寿命は短いけど、誰かに殺されるなんて心配は少ない……」
「察しがいいな。そうさ、だから、豊潤の魔女はそちらの世界の者と共に暮らすことを考えた。寿
命なら諦めもつく。だが、殺されるのは……全うできない大事な命を見るのは、それとは比較にな
らないほどにつらく、苦しいものだと、豊潤の魔女は思い知ったのだろうよ……二人目は、商人だ
った。三人目は車引き、四人目は会社員、そして、五人目は」
「職にもつかず、一日の大半を部屋で過ごす、この国の癌だ」
「そうだ」
ずっと考えていた。それこそ、初めてあの美しい黒髪を、深い色の目を見、芳しい香りを嗅いだ
時から、ずっと。
なんで、俺なのだろうか? なんで俺なんかを選んだのだろうか?
「そこは、豊潤の魔女の心の内側。ももじぃでも、分からんことだ」
「女の気持ちなんて、全然分からない……自分の気持ちでさえ、分からないのだもの」
「豊潤の魔女を、愛していたかさえ、分からんか」
「分からない……ただ、一つ、分かるのは……匂い」
レミアの匂いが残るこの部屋が――世界が――俺にはたまらなく居心地がいい。
「坊主、そのうち分かるだろう。いや、もう本当は分かっているのではないか? もっとも、それ
について訊く気はない。そこまで、お前に興味を持っているわけではないのだから……」
「分かってる。ももじぃさん、有難う」
「構わんよ。また、知りたいことがあれば、かけなさい。実は、電話が少なくて、退屈していたと
ころなのだよ」
29 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 01:08:45 ID:HckJ5us00
『行かないで』
レミアは、応えてくれたんだ。
俺以外が、みんなレミアになっている。
俺以外の全てから、あいつの匂いがするからだ。
ふと、俺は前の空間に手を伸ばした。
レミアがいる。
レミアがいる。
レミアが――ほら。
「やっぱり、いた」
なんにもない空間だけど、ここにレミアがいる気がしたんだ。本当にいてくれて、涙が出そうな
ほど嬉しかった。さっきまで、イライラしたりしてたけど、どこかに消えちまった。ただただ、嬉
しくて仕方がなかった。
ああ、なんと魅力的な目だろう。魔女の目、それは忌むべきものではなくて、歓迎すべきものだ
ったんだよ。
30 :
魔女旅に出る:2006/04/14(金) 01:09:21 ID:HckJ5us00
「ここにいる私は、私を三分の一に分けたもの。三分の一では、姿が見えないのだけど、あなたの
思いが、足りない分を埋めてくれたのかしらね」
「残りの三分の二のレミアは、今、どこにいるんだい?」
「善なるものを穢す者を、いよいよ完全に潰せるところまで来ているの。最後、奴等は必死の抵抗
をしてくるわ。三分の二の私で、生きて帰れるかは、正直言って、分からない……」
「…………」
「…でも、もし生き残ったなら、必ず、あなたの元へ戻るわ」
「考えたくもない――ないが、もし、君が死んだとしたら、三分の一の君も消えてしまうのか?」
「それは、ないわ。三分の二の私と三分の一の私とでは、同じであり、異なるの。私自身が、そう
定めたのよ。すごいでしょう」
「ああ」
俺はすっかり笑っていた。うっすら見えるレミアも笑っていたから、釣られてやっているんだ。
「この際だから訊いちゃうけど――本当に、君にこれを訊くのは怖くて仕方がないのだけれど――
なんで、俺なんだ? 俺は最初、君にあまり良く当たらなかったし、社会的地位も低いのに」
うっすらレミアは、考えるポーズをとっていた。だが、俺には分かる。あれは考えちゃいないん
だ。俺を焦らそうとする、ただのポーズなんだ。目を見れば分かる。目が言っている。そんなこと
は、考えるまでもない、と――
「好きになるのに、理由が要って?」
確かに。
俺は今、レミアが好きだが、それに理由をつけたとしても、きっと今のレミアみたく薄ぼんやり
になっちまうだろう。
だから、これでいいんだ。
俺は、強く手を握って、ハッキリと言った。
「君と、君の匂いがあれば、あとは何も要らないよ」
ラララ ララララ 泣かないで
ラララ ララララ 行かなくちゃ
いつでもここにいるからね
スピッツ「魔女旅に出る」より。このフレーズから、今回のお話が出来ました。
前スレ
>>471 そうですね、そんな感じで。ゆっくり生きます。いや行きます。
>>472 二ヶ月に一本くらい、今回みたいに書くのもいいかもしれません。
二次創作らしさが皆無な作品(スピッツの二次創作で通るだろうか?
いや漫画だし……)ですが、もし許されるなら。
>>4 スレ立て乙です。茄子好きな人いたんですねw嬉しいです。
>>14 そうですね、ペース遅くなりますが、まあゆっくりと……
>>20 物語を作る行為自体は、楽しくなくなるどころか、その楽しさを増していく
ばかりです。ただ、二次創作というカテゴリーと、自分がズレてきているよ
うな気がしています。バランスが崩れているというか。たとえば、今回なん
て漫画の二次創作というには苦しいでしょう。ほとんど、俺のオリジナルと
なっているんですよね。今までのもそうですけれど。これは二次創作とはい
えないのに、ここで書いていいのだろうか、と。
32 :
作者の都合により名無しです:2006/04/14(金) 09:57:42 ID:oK5ztgv80
ゲロさんお久しぶりです!&さん、でこれからいいのかな?
まあ、オリジナル要素が高くなってきている作品は他にも多いですし、
ゲロさんファンとしては(コテを出来ればゲロさんにして戻して欲しい)
ゲロさん節を読めれば幸せですので、またたまに書いてくれれば嬉しいです。
>魔女旅に出る
豊潤の魔女の設定、この設定だけで何本も書けそうな秀逸な設定ですね。
魔眼に魅入られた普通の男が、魔女の苦しみを知って
愛にたどり着くところが良いです。ほぼオリジナルという事ですが、
自分でこんな作品を思いつくなんて凄いなあ。どうやってネタ出ししてるんでしょ?
気長〜〜に待ってますので、ゲロさんも数ヶ月に1回、毒出しするようにw
書いてくだされば嬉しいです
一真さん
銀魂は見たり見なかったりでしたが、これを機会に読み始めようかと思っています
1さん
お疲れ様です。まだまだ新参ものですが、こんなのでよかったら
邪神?さん
邪神像を思い出したのは私だけでしょうか。
サマサさん
首を長めにして待ってます。ところで、これは次回作がつくれるんでしょうか。あまりに強いと、USDマンばりに敵がいなくなってしまいそうですが
&さん
まだ日の浅い私が言うのもなんですが、いいんじゃないでしょうか。ようは心の問題だと思うのですよ
一話はだいたいは出来上がってるのにPCないから書き込めないorz
とはいえ、携帯からだとまた前回のようになるだろうし…
一週間が遠いです…
>魔女旅に出る
これは、平均値の高い&氏の短編の中でも三指に入るできですね
レミアの理不尽な行動、胡散臭いけど頼りになるももじぃ、
さして最後に全てを暖かく受け入れる主人公。相変らず短編の達人ですね。
短編だから出演人数は少ないけど、短編なのにキャラの書き込みが深いという
嬉しいパラドクスだ。
まあ、力量のある人は原作から外れがちになるかも。
(原作準拠しながらその魅力を引き出す、というのも大変力量がいるが)
俺は特に気にしないから、これからもたまに書いてほしい。
というか、俺は魔女の単行本読んだ事ないから(探してもないんだよ)
元々オリジナルとして読んでたし
36 :
作者の都合により名無しです:2006/04/14(金) 16:34:41 ID:pkIEb6es0
第十六話 歴史の転換点
(
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/15.htmより)
物語の前に、参考としてオルレアン解放の歴史的な数日間の流れを書いておく。
この話は歴史を題材にした荒唐無稽な物語ではあるが、ある程度は史実に基づいている。
が、それを踏まえた上で、物語性を優先している為に史実と異なる点も多々ある。
特にこのオルレアンの戦いはこの物語の核となる部分である為、事実の改変が激しい。
史実と物語の差異をも楽しんで頂ければ、作者としてこれに勝る喜びは無い。
☆ 〜5月3日(火)
・ジャンヌはオルレアン入城以来、数日間イギリス兵に降伏を交渉していた。
☆ 5月4日(水)
・サン・ルウ砦の奪取。このオルレアンの戦いの初勝利。
☆ 5月5日(木)
・キリスト昇天の祝日により、戦闘休止。
☆ 5月6日(金)
・ジャンヌ、オーギュスタン砦を陥落させる。イギリス軍トゥーレル砦に退却。
☆ 5月7日(土)
・オルレアン最強のトゥーレル砦を攻略。だがその際、ジャンヌ、矢により負傷。
☆5月8日(日)
・イギリス軍、オルレアンより撤退。ジャンヌ、オルレアン解放に成功。
※参考にさせて頂いたサイト
ttp://www4.airnet.ne.jp/yusis/jeanne_o.htm 歴史の大まかな流れは以上であるが、この作品はあくまで娯楽である。
史実や時系列に囚われず、自由に筆を走らせて頂く。ご了承頂きたい。
37 :
聖少女風流記:2006/04/14(金) 16:36:00 ID:pkIEb6es0
ジヤンによる奇襲が見事に成功した、という報にラ・イールは顔色を変えた。
報によると、ジヤンの陽動奇襲はおおまかにはこうである。
ジヤンは数百の兵を率い、わざと怒号と気勢を上げつつサン・ルウ砦の詰め所を襲う。
イギリス軍はその奇襲に慌てつつも、弓や投石機に応戦し迎撃しようとする。
兵に損傷が無いよう適当に戦闘しつつ、頃合を見て退却の合図をするジヤン。
イギリス軍はそれを敗走と捉え、部隊を繰り出して背後から殲滅しようとする。
が、それが罠である。
予めジヤンは第二部隊として後方に弓兵隊を配置しており、実はこれが本隊であった。
突如、林の中の暗闇から幾百の矢がイギリス軍へと降り注ぐ。
背後を突いたはずのイギリス軍は突然の矢雨に慌てふためき、兵が次々と死傷していく。
先程とは逆に、イギリス兵は退却を始める。そしてそれを背後から殲滅するジヤン隊……。
奇襲・陽動としては完璧ともいえる戦果である。
一回の戦闘でサン・ルウ砦の戦力を2割以上削ぎ落としてしまったのである。
そして砦の中のイギリス兵に対する精神的圧迫は、失った兵の数以上であろう。
ラ・イールはジャンヌに対する評価を改めざるを得なかった。
あの小娘が、これほどの兵繰をするのだと? 緒戦でこれだけの戦略を?
いや、流石にそれはあるまい。この策略は、誰かの書いた絵図に違いない。
おそらくは、あの奇妙な大男(慶次)か。あの恐るべき男が小娘に入れ知恵を……!?
しかし真に恐るべきはあの大男ではない。やはりジャンヌなのだ。
あの小娘の下に、多くの兵と様々な逸材、そして信じられない強運が集まってくる。
まるで、何かに守護されているかのように。天に愛されているかのように。
風が吹いている。いまだ、感じた事の無い風が、このオルレアンに。そしてフランスに。
口惜しいが認めざるを得まい。少なくとも、その天与の器だけは。
ラ・イールは視線をまっすぐ前に向けた。
巨大な黒馬に跨った威風堂々の騎士と、その半分以下の体躯の華奢な騎士が並走している。
が、どうしてだろう。不思議と華奢な騎士の背中は、大柄の騎士よりも大きく感じた。
フランスをも優しく包み込んでしまいそうなほどに、大きく。そして温かく。
38 :
聖少女風流記:2006/04/14(金) 16:37:19 ID:pkIEb6es0
慶次はジヤンの奇襲成功の報にただ頷いた。
この男は一介のいくさ人である。軍師ではない。が、誰よりもいくさに精通している。
策をジャンヌとジヤンに授けたのも慶次である。
慶次はここ数週間のこの世界の滞在により、見切っていた事がある。
この世界のいくさは、戦国の日本に比べて随分甘い、と。
100年戦争と歴史では呼ばれているが、実際には年中戦争が行われていた訳ではない。
どちらかと言えば平穏時の方が多かった。無論、その平穏はかりそめのものではあるが。
慶次が生きてきた戦場は激しいものである。ほんの一瞬の油断が生と死を別つ。
が、この世界の戦争はどこか牧歌的で漫然としていた。
朝に戦い、昼に休んで、午後にまた再開し、日没とともに終戦する。そんなリズムである。
そんな中で、際立った戦術や戦略などが発展する訳が無い。
慶次にとっては軽い助言に過ぎなかった策が、彼らにとっては驚嘆の策であったのである。
そもそも、慶次は策に頼る事をしない男だ。ただ戦場に身を委ねるだけの男である。
戦場をただ駆ける事が好きな男だ。そもそも戦場に策を持ち込む事自体、好きではない。
しかし、今はジャンヌの副官である。好むと好まざるに関わらず、そうなっている。
生来「上ナシ」を貫いてきた男が、この異国の地で初めてそれを破った。
(結局、惚れているのかね)
慶次にとって大事なのはその一点である。男であれ、女であれそれだけである。
が、その為なら慶次は笑って死んでやる事が出来る男である。
ならば、死なせる訳にはいかないではないか。
これからこの娘に、敗戦をさせる訳にはいかない。それはジャンヌの死に繋がる。
負け戦の好きな男が、敢えて勝ちを誓う。フランスの為ではない、ジャンヌの為に。
慶次が向日葵のような笑顔でジャンヌに言った。
「ジャンヌ殿。いくさは派手な方がいい。さあ」
前方にサン・ルウ砦がはっきりと確認できる距離まで近付いた。
ジャンヌは透き通るような大きな声で叫んだ。
「オルレアン解放へ向けて、サン・ルウ砦へ突撃です!」
39 :
聖少女風流記:2006/04/14(金) 16:38:38 ID:pkIEb6es0
ジャンヌがその小さな体で、精一杯の声を上げてそう叫んだ。
が、長状に伸びた数千の陣である。彼女の声は、後方へは届かなかった。
そもそも、この兵は専門兵士だけの軍ではない。
ジャンヌの為、鍬を槍に持ち替えた、戦いに不慣れな農民や市井の民も大勢いる。
彼らの中には進軍中に逃げだした者もいる。
体が震え、一切の物音が耳に入らなくなった者は数え切れない程いる。
ジャンヌは振り返った。すぐに彼女の顔に不安が差す。その不安は戦いの事ではない。
(私は、この人たちを家族たちの元へ、無事なまま帰せるだろうか?)
そんなジャンヌを見て、慶次にも不安が差す。
本当に、戦場に連れ出していい人なのだろうか? …と。余りにも優し過ぎる。
おそらく、遠からずこの人は自らの優しさに潰れそうになる時が必ず来る。
外敵ならば俺は、たとえ百万の敵相手でも守り抜いてみせる。
だが、心の内の敵だけはどうしようもない。それを破れるのはジャンヌだけなのだ。
内なる優しさが最大の敵になるとは、なんと皮肉なのだろう。
慶次も、ベルトラン達も、名も知らぬ多くの傭兵や、騎士や、農兵たちも。
彼女の優しさに導かれてこのオルレアンの地にやって来たのに。
慶次は不安を振り払った。今は、今後の憂いに捉えられる時ではない。
出来るだけ陽気な笑顔で、ジャンヌにこう言った。
「フフ。ジャンヌ殿。では開戦の合図は、この私にお任せ下さい」
スウ、と慶次は大きく深呼吸した。空気を喰った、という表現が妥当かもしれない。
そして、慶次の口から獣のような咆哮が溢れ出した。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
劈くような慶次の怒号が、兵たちの耳をビリビリと震わせた。
いや、震わせられたのは耳ではない。魂である。
慶次の勇壮な咆哮が、兵たちの原始の本能を強烈に呼び覚ましていく。
咆哮が伝播していく。兵たちの口から、次々と慶次と同じ獣の咆哮が溢れ出していく。
ジャンヌは目をパチクリさせながら、兵たちのこの変節に少しうろたえていた。
聖女とはいえ、女には理解できぬ領域であるからだ。
40 :
聖少女風流記:2006/04/14(金) 16:40:12 ID:pkIEb6es0
地響きのような男たちの雄叫びが響き渡った。騎士の、傭兵の、農兵の雄叫びである。
数キロ四方まで届く音の洪水となる。そしてその声はサン・ルウ砦まで達していた。
砦内のイギリス兵が恐怖を感じるほどの声量である。
兵集の中から数人が飛び出した。なんと、最も怯えていた農兵の一人である。
その目に怯えは無く輝いている。込み上げる衝動に悦びすら感じているように。
慶次がニヤッと笑ってジャンヌの目を見る。ジャンヌはコクンと頷く。
もう余計な言葉はいらない。肉体的な関係は無くとも、この2人はその仲まで達している。
「全軍、突撃!!」
(いいコンビだな、この2人は)
傍らのベルトランが、ほんの少しの嫉妬を感じながらそう思った。
今度のジャンヌの声は、今度は闘志に沸く兵たちの耳に届いた。
兵たちは口々に救いの神子を讃える歌を唄いながら、砦へ向け馬の速度を上げていく。
無論、もっとも速いのは慶次の駆る松風である。
あっという間に馬軍から抜け出すと、サン・ルウ砦の直前まで姿を現した。
サン・ルウ砦の見張り兵は驚愕する。前日、信じられない武勇を誇った、あの男だ。
「チッ、呂布殿はオーギュスタン砦か。リシャール提督はどうした?」
砦兵長が伝達兵に叫んだ。が、返ってくる言葉に唖然とした。
「何…? 提督は、トゥーレル砦だと……?」
砦の中でも最も遠くに位置し、最強の防御力を誇る最後のトゥーレル砦。
そこに提督はいる。奇襲攻撃された時点で、彼は秘密裏に最も安全な場所へと移った。
つまりこの砦を、実質見捨ててである。
41 :
聖少女風流記:2006/04/14(金) 16:50:21 ID:pkIEb6es0
当時のイギリスもまた、フランスと同じく敬虔なキリスト教信者の多い国である。
彼らイギリス兵の胸の中には疑念があった。
もしかしたら、あの女は本当に神の使わせた聖女なのでは? ……と。
だが砦の責任者である、提督リシャールは事ある毎にそれを否定してきた。
「最近、謀りの言葉を吐く田舎娘を、愚かなるフランスは聖女と祭り上げている。
笑わせてくれる。かの女は魔女である。しかも、戦いも知らぬ三流の魔女である。
次の戦いにおいて、この私がそれを証明しよう」
そう言った本人が、真っ先に逃げている。イギリス兵の士気が上がろうはずは無い。
逆にフランス兵の士気は最高である。投石や矢を物ともせず、我先にと切り込んでいく。
ジャンヌの聖性と慶次の豪胆が、彼らの士気と能力を限界まで引き上げている。
鬼神のような強さを誇る異国の騎士が、口々に聖女を讃える歌を口ずさみながら
突進してくる数千の兵を率いながら砦を攻め立てている。
更に、遠くで神々しい光を纏う聖女がいる。凛としてラ・ピュセルの旗を揚げながら。
勝負になる訳は無い。
砦を捨てて脱走するならまだしも、敵であるジャンヌに心酔する兵すら出て来ているのだ。
結果、僅か1日でサン・ルウ砦は陥落する。
それまで数年間不落を誇った砦が、たった1日で、である。
歴史が変わる時には、必ず転換点が訪れる。それが正しくここであった。
数十年にわたり劣勢だったフランス軍が、たった1日で猛烈な反撃に転じていくのだ。
聖少女、ジャンヌ・ダルクによって。
42 :
サー・ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/04/14(金) 16:55:11 ID:pkIEb6es0
後書き欄を利用して、切ないラブストーリーを連載しようと思う。
実話である。俺自身の事実談である。で、警告。ちょっとキモいかも。警告はしたぞ。
だから読んだ後、「気分悪くなったぞコラ」と言われても一切受け付けない。
そんな奴は例えるなら、看板に「ぽっちゃり系のお店」としっかり書かれているのに
「この店にはデブしかいねーのかバカヤロー!」と叫ぶ基地外のようなモンである。
お店の方、あの時は失礼しました。俺が悪いんじゃなくて、酒が悪いんですぅ。
でも「ぽっちゃり」とかいうレベルじゃねえだろおい。半濁点じゃなくて濁点にしろ。
ではスタートだ。5回くらいの連載になる。実話が持つ力を思い知るがいい。
タイトルは……。「僕の彼女はチンコ付き」!!
26歳後半。経験人数、120人+1人。付き合った女の数、16人+1人。
これが俺の恋愛ステイタスである。経験人数は前後10人ほどズレるかも知れない。
が、これからの後書き連載は、この+1人の方が主役である。
男を愛した訳じゃない。愛した女が、たまたま男だっただけだ。
小学生の頃から友達は男より女の方が多く、昔から女の子に良く間違えられたそうだ。
そして、本人はそれが嬉しくて堪らなかったらしい。
でも、なんの因果か男子高校に入ってしまった。学力的な問題だったそうだが。
そして入学して3ヶ月ほど経った頃、部活の3年の先輩に「許して」しまったそうだ。
ほとんど強姦気味だったらしいが、抵抗は一切しなかったそうな。
「3年の先輩には逆らえない」という刷り込みがあったらしい。恐るべき調教テクである。
更には「好みのタイプだった」そうだ。どの道でも天才とは存在するものだ。
貫通した後、彼は「完全に女に目覚めた」そうだ。
元々、華奢でキュートな外見は黙っていれば女の子としか見えない。しかも美少女の部類。
めでたく貫通した後、彼女(もうここから彼女と書く)は魔性の女ぶりを発揮し、
次々と関係を持っていったらしい。校内だけで4人。外だと20人以上。俺もその一人。
そして、俺たちは出遭ってしまう。運命って奴だな…。続く!(と思う)
あ、後これから「サー・ハイデッカ」を名乗る事にした。気軽に「サー」と呼んでね。
後書きは華麗にスルーして(ぉぃ
今回は状況説明が中心のようで、呂布との戦いは次回になるようですねぇ。
楽しみです。
そういえば、ハイデッカさんのPNの元ネタって、エストポリス伝記2のハイデッカですか?
>魔女
このセンスがバキスレから去るのは惜しいです。暇な時でいいんで書いてほしいなー
重い感じの作品経過ですけど、最後はハッピーエンドですね。ももじいが何気にいい。
ちなみに歌詞
ttp://www1.linkclub.or.jp/~kouya/html/spitz/kasi/single/spitzmajo.html >全力全開氏
焦らなくていいですよー。バキスレは逃げませんので。うぷを待ってます。
>聖少女風流記
おお、慶次とジャンヌのコンビいいですね。お互いを信じあってる感じで。
まだ砦は2つありますか。呂不との戦い楽しみですねー。信長はラスボス確定?
>後書き
かなり続きが楽しみかも・・怖いもの見た差で。ボーイズラブって感じですか?w
実体験かよ。どんな人生歩んできたんだwミドリさんに嫌われますよw
サー、お疲れ様ですw
相変わらず後書きはぶっ飛んでますが、SSの方は真面目ですね。
後書きが普通なら絶対に知性溢れる方だと思うんだけどw
案外あっさり第一の城を攻略しましたけど、次はどうやら
呂布との戦いみたいですね。ある意味戦国無双みたいな感じだ。
後書きも楽しみですが、ほどほどにねw
第四話「新社会人だからってチヤホヤされるのは今の内」
漫画雑誌の編集現場といえば、それはもう常時修羅場御礼なわけで。
世の辛さ知る勤労者の方々なら想像するくらいは簡単だろうが、それはもう凄いわけで。
いくらバイトといえど、社会は仕事の出来ない人間に甘くはないわけで。
まあそれは現代における話であるわけで。
天人が蔓延る架空の江戸時代がそうであったかは、定かではないわけで。
しかもこいつらに今さら社会の厳しさを説いたところで、そんなの話の内容が著しく劣化(おもしろくなくなる)するだけなわけで。
「銀ちゃ〜ん! これこれ! 銀ちゃんの好きな『アイシールド21』の原稿アルヨ〜!」
「ぎゃあァァァ! やめてそれ写植貼ってる最中なんだからァァァ!! しかもそれはアイシルじゃなくて『あひるの空』だァァ!」
ここは講談社ならぬ講談屋マガジン編集部。
そこで半ば無理やりバイトとして採用してもらった銀時一行+痔忍者+真選組監察は、ここで仕事という名の邪魔、つまりは遊んでいた。
神楽はまだ製本されていない漫画原稿に湧き、編集部中を駆け回る。傍から見ているのは共にツッコミという役割を担う二人、志村新八と山崎退。今は二人とも静観していたが。
「おつかれさまでーす。コーヒーお持ちしましたー。……あ!やべっ、こぼしちゃったよ〜」
「ぎゃあああァァァ!!? ちょっと何やってんのォ!? これ今週号の巻頭だよ!!?」
ジャンプ信者の服部全蔵はというと、ここぞとばかりに妨害工作を取り捲っていた。
全蔵は別にジャンプの回し者というわけではないが、よほどジャンプと対極に位置するこの雑誌が目障りなのだろう。バイトと称してここに潜り込んだのも敵情視察、もとい内部崩壊が目的だった。
そして、暴走する二人とは打って変わってここに一人キャラを間違えている男が一人。
「坂田くーん! これシュレッダーかけといてぇー!」
「はい、ただいま!」
坂田銀時は、いつものだらけた態度が偽りであるかのように働きまくっていた。
トレードマークの死んだ魚の目は面影をなくし、キリリと光っている。
これもマガジン愛がなせる業だろうか。銀時は、『できる男』になっていたのだ。
(なんだよこれ……もう任務めちゃくちゃだよ……)
前回の予感どおり、ここに潜入操作を目的にやって来た山崎は、それを完遂できずにいた。
もちろんこの万事屋メンバー(新八除く)+痔忍者のせいである。
ただでさえドラマの再放送が終わるまでにやり遂げなければならぬ任務。
こんな状況でできるわけねーだろあの鬼副長が、と山崎はツッコミたい気持ちを抑えてストレスを溜めていた。
「なにィィ!? 西本先生が失踪しただとォォォ!?」
慌しいを超越して台風の実況中継現場のような編集部は、お騒がせなバイトたちに構っている暇などなく突き進む。
そして、漫画編集としては最悪のケースともいえる事件が発生した。
「西本? 誰アルかそれ?」
「なんだ知らねーのか神楽。ほらあれだ、『もうしま』で作者自ら出てくる漫画家の人だ」
「作者自ら…………ああ、しまぶーのことか」
「ちげーよ痔忍者。いい加減ジャンプに帰れおまえ」
ちなみに、ここで言われる西本という人物は今度マガジンで新連載を予定していた新人作家の名前であり、断じて『もう、しませんから。』の作者、西本英雄氏とは関係ないのであしからず。
さらに言えば、新連載というのもフィクションなのであしからず。
重要なのは、新連載を予定していた一人の漫画家が締め切り直前にぶっちしたという一点のみなのであしからず。
「おいおいどうすんだよ! 連載初っ端から休載なんて洒落んなんねーぞ! だからあんな若造使うのは嫌だったんだよォ!」
激荒れする編集長の横で、主要メンバー達は傍観していた。
「なんか大変なことになってきたね」
「マガジン休刊アルか?」
「いい気味じゃねーか」
(至って普通の編集部だよな……攘夷浪士らしき人物の影も見当たらないし)
編集部の一大事に対し、各々勝手な感想を吐く。まぁバイトなんてせいぜいこのくらいの責任意識しかないのが普通である。
しかしただ一人、単なるバイト一日目の分際でこの問題を重く見た男がいた。
「俺が西本先生を探し出しましょう」
もちろん坂田銀時である。
この仕事熱心モードの銀さんは、社員とかバイトとかそんなことは重要視しない。
彼にとって大事なのは、「マガジンに危機が訪れた」ということ。
『できる男は』はマガジンのため、講談屋のため、自分の愛読書を守ろうと行動を起こしたのだ。
「助かるよ坂田さん! 締め切りは印刷所が閉まる今日の零時までだから、それまでに奴を見つけて入稿させてくれ!」
「おまかせください編集長! この不肖坂田銀時、思いは一つ、週刊少年マガジンのために!」
ホントにこの人だれ? とかいうツッコミは脳内だけでご遠慮いただきたい。
とにかく、銀時は西本先生捜索のため、脱兎のごとくマガジン編集部を飛び出していったということで。
「ちょ、銀さん!? 僕たちの目的を忘れてるんじゃ――」
新八が声を掛けた時にはもう既に姿はなく。
取り残された面々は、この地獄のような編集部で仕事をせねばならぬという事態に陥った。
一人を除いて。
「ヤロウ……完全にマガジン信者と成り下がりやがったか。おもしれぇ……なら俺が思い出させてやるぜェ! みっともない大人の少年魂をよォォォ!!!」
銀時が去ってすぐ、よくわからないことを言い捨てて、全蔵もダッシュで退室していってしまった。
「ちょっ、服部さんまで! なんだよもう、知らねーよ! 勝手にしろよ! 帰ろう神楽ちゃ……」
やってられねーといった態度で自分も出口へと向かう新八だったが、
「こおおらあァァァ! サボってんじゃねーぞバイトォォォ!!」
「えぇ!? あ、はい、すいません!」
理由はどうあれ、新八は今や講談屋のバイトなのである。この忙しい中、勝手に戦線離脱することは許されない。
「って、なんで僕だけェェ!?」
いつの間にか、そこにいるのは新八だけ。神楽も山崎も姿を消していた。
新八はあのメンバーの中でも比較的まともであるが故、さらに言えば全蔵や山崎のような忍のスキルも持ち合わせておらぬ故、ツッコミという名のボヤキを吐きつつも仕事に負われる羽目になった。
「チクショー!!! また僕だけ貧乏くじかよォォォ!!?」
影に溶け込む黒ずくめの、いかにも『忍者』という服装を纏った山崎は、新八の魂(ツッコミ)を聞くことなく講談屋ビル内部を移動していた。
(考えてみればあんな忙しい現場に攘夷浪士が出入りしているはずないよな……どこかそれっぽい場所があるはずなんだけど、っと)
ちょうど山崎が階層の中腹あたりに差し掛かったところだった。
そこは、先程のの編集部が蜃気楼だったんではないかと錯覚するほどの静寂に満ちていた。
その静寂の中に、不可解な話し声が。
(なんだ……?)
周囲に他の人間がいないことを確認しながら廊下を移動する。
問題の声が聞こえていたのは、『会議室』のプレートが掛けられた一室だった。
(中に……誰かいるのか?)
見たところ会議室は完全な密室のようで、ドア一つだけしか入り口が見当たらない。さらに部屋のロックも厳重のようだ。
立派なコンクリートの壁には覗き穴も作れず、山崎は仕方なく聞き耳を立てて中の会話を確認する。
そして、耳にした言葉は。
『……ここで彼らにこの武器が渡ったら……』『……ええ、江戸は火の海になりますよ……くっくっ』
「――!?」
案の定、攘夷浪士と思わしき密談だった。
把握できる限りではおそらく二人。この中に不審な輩がいる。
やはり山崎自身が仕入れた情報は正しかったようだ。
「副長……ドラマのクライマックスは見れないかもしれませんよ……!」
影の如く現れ影の如く消えていく。
山崎退は、最悪の情報を土産に真選組屯所へと足を向ける。
一真です。第四話をお送りします。
とりあえずは折り返し地点に来たのかな? 予定が狂わなければ。
そしてここで一つ注意をば。
※この作品はフィクションです。
実在の人物・団体・事件・歴史などには一切関係ありません。
……いや、まあマガジン編集部はこんなんじゃないと思いますよ。実際。
あくまでもフィクションなんでね。妄想なんでね。
……関係者の方ごめんなさい。
第六十七話「アザミ・2」
神界の奥地に、その牢獄はあった。神界の罪人の中でも、特に罪の重い者ばかりが集まった牢獄―――その更に奥の奥。
アザミは神界史上でも類を見ない反乱の首謀者として監禁されていた。
厳戒な見張りと幾重にも張り巡らされた堅固な魔術的セキュリティ。そこから脱獄などできないし、侵入者などがいれば
一瞬にして練磨された警備兵によって駆逐されるだろう。
ある意味では最も安全にして不可侵の場所―――
アザミが投獄されたのは、そんなとてつもない空間だった。
陽の光も射さぬ牢獄で、彼女はじっとうずくまっていた。既にボロボロだった彼女の身体は、劣悪な環境下でますます
悪化している。もはや死期も近い―――彼女は自分でそう分かっていた。
それも仕方なかろう。自分のしたことは、そういうことだ。そもそも自分は、あの最終局面で死ぬべきだった。それを
今まで生き永らえたのは、あの少女のおかげだ。
<生き残りなさいよ!生きて―――もっと別な道を進めばいいじゃない!>
彼女の声は今でも覚えている。空虚な牢獄での日々で全ての記憶が色褪せていく中、それだけは未だに鮮明だった。
「とりあえず・・・今はまだ生きていますよ。道など見つかってはいませんが・・・ね」
一人呟いたその時だった。
コツ・・・コツ・・・コツ・・・
足音が響く。聞き慣れた看守の足音ではない。もっと別の、何者か・・・。
「あなたが神界最大の反逆者―――アザミですね?」
足音が止まり、硬質の声がアザミの名を呼ぶ。そこに立っていたのは、恐ろしい程に美しい男だった。彫像のような端正な
容貌に、酷薄な笑みを浮かべている。
全く知らない顔だ。間違いなく部外者だろう。
「どうやってここに・・・という顔ですね。簡単なものでしたよ。素人に毛が生えた程度の警備兵に、子供の工作にも等しい
チャチなセキュリティ。もう少してこずるかと思ったのですが、拍子抜けです」
男はあっけらかんと言い放ったが、本当ならば恐るべき事実だ。
あの厳重な警備を単身で突破するなど―――考えられない。
アザミの驚愕など素知らぬ顔で、男は牢獄の扉に手をかける。
「ククク・・・魔術による施錠か。少々無作法ですが、失礼」
彼は扉に手を翳して、魔力を集中する。瞬時に扉が硝子のように砕け散った。
「な・・・!」
アザミは戦慄した。この牢獄は、大罪人を閉じ込めるためのもの。その扉の開閉は、本来ならば大魔術師と称されるレベル
の使い手が数人がかりで行うのだ。
それをこの男は、たった一人で、それもただ手を翳した程度で―――
その魔力の質量は、かの人工生命体たちをも大幅に上回っているかもしれない。
なんて―――圧倒的な存在。
「あなたは・・・一体・・・」
愕然とするアザミの元に、シュウが歩み寄る。
「私の名はシュウ=シラカワ。グランゾンを造りし者にして、そのパイロットを務めた者です」
「グ・・・グランゾン・・・」
どういうことだ?あれは・・・あれは古代世界の遺物。その製造者にしてパイロット?
何故?何故?何故?
疑問符だけが頭をよぎる。そんなアザミに近づき、その細い首に手をかけた。
「くっ・・・!」
「私の物を勝手に使われて、それを許すほど私は優しくはない・・・このまま、縊り殺して差し上げましょう」
シュウが冷徹な笑みを浮かべる。アザミにはもはや、それに抗う術はない―――だが彼女は、彼から目を逸らさなかった。
それだけが、彼女に残された最後の矜持だ。目に映る全てのことから逃げることなく、彼女は今まで生きてきた。
ならば最後の最後まで、せめてそうやって生きよう。それが、己に残された最後の道―――
だがシュウは、その手から力を緩めた。
「―――そう思っていましたが・・・しかし、あなたを実際に見て気が変わりましたよ」
「なんですって・・・?」
「グランゾンを勝手に使ったこと―――それは確かに許しがたい。しかしあなたの行動力、そして能力そのものは、実に
大したものです。それをここで失わせるのは、惜しい」
「・・・・・・」
「私と共に来ては如何です?それならば過去の全ては水に流して歓迎しましょう。それが嫌なら―――もう選択の余地は
ない。残念ですが、死んでもらいましょう」
シュウはその言葉を最後に黙り込む。アザミの返答を待っているのだ。
言うまでもない、死を選べ。アザミの心はそう告げていた。誰かの言いなりになって生きるのならば、潔く死ぬべきだ。
それがアザミがアザミである証明そのものだ。
だがそんな内なる声とは全く別の、もう一つの声も彼女は自覚した。
<生き残りなさいよ!生きて―――もっと別な道を進めばいいじゃない!>
それは、あの最終局面―――おさげの少女の言葉。彼女の面影が、鮮明に蘇った。
「・・・生きろ・・・か・・・」
アザミは小さく呟き、シュウに向き直った。そして―――
「そして―――私は誇りに従い死ぬ道ではなく、シュウの下僕になって生きる道を選びました」
アザミは話しながら、すっと身を起こした。
「シュウはご丁寧に偽の死体を用意して、私が死んだように見せかけた。そして私に修復したグランゾンと―――
この身体を与えました」
アザミが服を肌蹴させる。しずかはそれから、反射的に目を背けてしまう。アザミの身体は、もはや生身ではなかった。
機械と生物を融合させたような、おぞましい姿だった。
「・・・グランゾンを操るほどの膨大な魔力を振るうことに耐えうる身体・・・。それがこれです。おかげでもう私は、
身体を心配することなどない。素晴らしいでしょう?」
くすくすと、アザミは笑う―――あまりにも乾いた笑いだった。
「嘲笑いなさい。惨めだと、哀れだと。そう思っているのでしょう?」
しずかはそれに答えなかった。ただ、アザミをまっすぐに見つめていた。
それを居心地悪く感じたのか、アザミは顔を背けた。
「―――さあ、話は終わりました。これ以上、話すことはありませんよ」
それきり沈黙を決め込む。しずかも今はこれ以上話すのは無理だと感じて、ゆっくりと席を立った。
「アザミ」
それでも最後に、しずかは口を開く。
「あたし、信じてるから」
「・・・?」
「あなたとあたしたちは、きっと分かり合えるって・・・信じてるから」
そして―――しずかは出ていった。再び一人になったアザミはベッドに仰向けに転がる。
心の中を、激しい感情が渦巻いている。それが何なのか、彼女には分からなかった。
投下完了。前回は前スレ395より。
>>15 投下前にはリロード。これ、結構忘れちゃうんですよね・・・
>>18 設定集も結構適当なんで・・・(汗)あくまで、<超機神>における設定です。
原作とは違う部分もかなりあります。
>>ふら〜りさん
アザミに関しては、まあその通りになるかと。がんがんドラチームはパワーアップしてますが、
ラスボスは更にやばいことになりますので・・・
漫画と某ギャルゲのコラボは、是非読んでみたいです。
>>21 とにかく文章力不足は愛で補うということで・・・
>>全力さん
次回作は想定していません。今回でインフレも行くところまで行く予定ですので。
>>サー・ハイデッカさん
あんたみたいな人、嫌いじゃないぜ・・・どうです、や ら な い か
>>46 感動しました・・・作者は誰?
57 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 08:18:55 ID:TPdz/e/c0
一先ず逃げたものの、物陰に隠れていた一茶にはその鬼はヒーローに見えた。
恐るべき強さで怪物を倒す、強くて優しいヒーロー。
それは少年の頃、彼が憧れた姿でもある。
男に生まれたものならば誰しも一度はヒーローになることを夢見るものだ。
一茶もその一人である。
彼の目には、鮮やかに化け物を葬り去った赤い鬼はそのように写った。
だが刃牙の目にはそうは映らなかったらしい。
「あんたは?」
不機嫌そうに刃牙が尋ねる。背中の昂ぶりはまだ静まっていない。
体は臨戦態勢に入ったばかりだったのだ。
目の前にあったご馳走をいきなり取り上げられたような気分である。
それが形の上では助けられたの刃牙の態度を不遜にしている。
一瞬、目の前の男に重ねた不倶戴天の父・範馬勇次郎のイメージがそれに拍車をかけていた。
「響鬼です。」
短く、明るい声で男が答える。
「そうか、響鬼さん、あんた、ここで何してるんだ?」
58 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 08:19:34 ID:TPdz/e/c0
それは響鬼の台詞である。
響鬼は刃牙の剣呑な態度に少し戸惑った。
助けたはずなのになにかこう敵意に満ちている。
それに刃牙には恐怖していた様子がまったく見られない。
化け物に出会えば普通は恐れるものなのだ。
近くの物陰に隠れている一茶のように。
たとえ自暴自棄の自殺者といえども恐怖は抱く。
それが人の本能だ。
ところがこの少年は恐怖するどころか、響鬼が彼から何かを奪ったような態度だ。
何よりこの少年の歳にそぐわぬ迫力、いや殺気は何なのだろうか。
服越しに見える鍛え上げられた筋骨を見ても合点の行くものではない。
「答えろよ。」
有無を言わさぬ刃牙の威勢に響鬼はため息をついた。
「ああ、答えるけど、あそこの人にも一緒に話していいかな?」
一茶の隠れる物陰を指し示す。刃牙は不承不承うなずいた。
59 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 08:21:29 ID:TPdz/e/c0
響鬼の語るところによるとこうだ。
響鬼は猛士と呼ばれる集団の一員だ。
猛士とは魔化魍と呼ばれる生き物から住民を守るために組織された集団で、国からの援助も受けているという。
平たく言えば猛獣駆除係の特殊公務員だそうだ。
もっとも数百年以上の歴史を持ち、本質的には国からは独立して存在してきた。
魔化魍とは平たく言えば妖怪変化の類のことで、なぜか猛士ではそう呼ぶらしい。
今回はこの巨大カマキリ、名称は「オオカマキリ」と図鑑にもありそうだが、魔化魍であるのは間違いないであろうとのこと。
「でも、なぜ太鼓なんです?」と一茶が尋ねる。
響鬼は止めを刺すとき、カマキリの体に太鼓を取り付け、叩いていた。
闘いにはあまり関係のなさそうな行為である。
「魔化魍は自然の穢れの集まりなんだ、だから倒すには清めの音で持って穢れを祓ってやる必要があるんだ。」
そうしないと何度でも蘇ってくるのだそうだ。
――― そういうことか。
ぽつりと刃牙がつぶやく。
「えっ?」
「いえ、それより、その格好は一体何なんですか?」
60 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 08:24:58 ID:TPdz/e/c0
刃牙は数多くの、一般的には異常としか思えない程の達人達を見てきている。
強さを追い求め、己を磨き上げた人々をである。
そういう人には独特の臭気があるのだ。獣臭と呼んでもよい。
響鬼にはそれがない。
刃牙には響鬼が普通の人間にしか見えないのだ。
だが四百キロは確実に超えていたであろうカマキリを軽々ひっくり返し、硬い鎧を拳の一撃で砕いたのを刃牙は見ている。
それは達人達にも難しい業だ。
何より刃牙自身がどんな達人たちよりも達人なのだ。
だが響鬼と名乗るこの男はそれを易々とやってのけた。
刃牙はその理由が、響鬼の着ている服にあると考えたのだ。
初めは殆ど黒と言える紫であった。
闘っていたときはは目も覚めるような真紅となった。
こうして話を始めてから、その色は再び黒紫へと戻っている。
筋肉の線が浮き出て無骨な、しかし躍動感のある美しさのあるデザインである。
――― どこかの軍が造った戦闘服みたいなものか。
そんなものもあるんだろうな。と思っただけである。それ以上の感慨はなかった。
武器が強いだけなら、闘いようはあるのである。
つい自分が闘うところを考えてしまうのは自分の性なのだろう。
61 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 08:26:04 ID:TPdz/e/c0
「その…、そのスーツを着ればあんな風に、まか、えーと、魔化魍と闘えるんですか?」
どうやら同じことを一茶も考えていたらしいらしい。
響鬼はかぶりを振る。
「これは――― 俺達は鬼なんだ。」
「鬼?」
「おに?」
鬼というと日本の昔話では大抵悪役である。
退治される側だ。
そうでなければ改心して坊さんに仕えているといった役回りだ。
妖怪退治のヒーローではない。
響鬼は説明する。
「俺達は鍛えて鬼になるんだ。だからこの格好は何かを着ているんじゃなくて、鍛えた結果だよ。」
鍛えなければ、魔化魍とは闘えない。響鬼はそういっているのだ。と一茶も刃牙も思った。
それはそうだ、トレーニングをしない特殊部隊などあるものか。
刃牙と一茶が納得したらしいのを見て、響鬼は帰るそぶりを見せた。
二人もそれに従う。
一茶は響鬼に盛んに話しかけている。何故、鬼になったのか、闘うのはどういう気分か。などなど。
よほど惚れこんでしまったらしい。
連投規制かな・・・
63 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 10:26:13 ID:TPdz/e/c0
途中、樹海内の公衆電話で響鬼はどこかに連絡を取った。
「ええ、片付きました。一般の人を二人保護しました。大きな怪我はありません。それではまた後で。」
――― 一般の人か。
刃牙と一茶は二人して呟いた。
刃牙は自分の暮らしの異常性を知っているからであり、一茶の呟きは「一般」であることへのため息だ。
電話を終えた響鬼に刃牙が謝る。
「さっきは、すみませんでした、興奮していたとは言ってもあんな態度をとってしまって。」
「いや、ああいうことは初めてだったんだし、仕方がないよ。」
初めてだと、言われると、少し考えあぐねてしまう刃牙だったが、とりあえず頷いておくことにした。
無駄に反論する必要もないし、ここで響鬼と闘って、怪我をさせたら魔化魍退治に支障をきたすだろう。
親子喧嘩の練習に、無関係な他人を巻き込むわけにもいくまい。
「さて、ここでお別れかな、もうすぐ後続の人が来て君達を家まで送ってくれるから。」
64 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 10:28:01 ID:TPdz/e/c0
それを聞いて俯く一茶。
何かを言おうと顔を上げるが、口をパクパク動かしただけで何もいえない。
「ん、どうしたんだ、青年?」
「い、いや、その、その格好のまま帰るのかなと思って、脱がないんですか、そのスーツ。」
取り繕うように尋ねる。
迎えが来るというのだから、脱ぐ必要はないのは明らかなのは自分でもわかっていた。
「脱ぐも何も、これは俺の体だしね、変身を解除したら素っ裸なんだ」
照れるように響鬼が答える。
へぇ、一茶は会話を続けたが、刃牙にはこの答えは衝撃だった。
――― 自分の体、鍛え上げる、鬼。
三つの言葉が刃牙の頭の中でつながっていた。
響鬼は、スーツの力ではなく己の肉体を鍛えてあの力を手に入れたというのだ。
そうこうするうちに迎えの車が到着した。
65 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 10:29:11 ID:TPdz/e/c0
「それでは、猛士や鬼のことは内緒でよろしく。」
シュッ と三本指の敬礼のようなポーズをとって、響鬼は去っていった。
その後、猛士のスタッフが家の前まで送ってくれたが。
途中何を話したのかはまったく覚えていなかった。
ふと気がつくと家についていて、手元にはスタッフの名刺が残っていた。
落書きだらけの刃牙の家を見てスタッフは衝撃を受けていたようだが、いつものことなので特に気にも留めなかった。
ただ何かを忘れているような気がする。
――― しまった、長老への挨拶。
このことである。
66 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 11:24:03 ID:TPdz/e/c0
連投規制うっとおしいですね。
それはさておき、ちょっと間が空いてしまいましたが、とりあえず刃牙を帰宅させることが出来ました。
ありきたりなオチ付きですいません。
どれくらい響鬼の人を出していけるか、もっと考えないとまずいですね。
響鬼のさわやかさが旨いこと出せてない気がします。
次までまた今回と同じくらいの間が空くかと思いますが、それでは
>オーガの鳴く頃にさま
>一つの戦闘が心に残るのが刃牙の持ち味
肝に命じておきます。
それにしても現実が壊れていくさまが怖いです。
勇次郎が輝かんばかりに現実的に見えてきます。
>テンプレ氏さま
乙です
>スレたてさま
乙です
>邪神さま
シコルは相変わらずですね。いつまでもシコルはシコルでいて欲しいw
スペックとユダの組み合わせは格好いいですね。
修羅さながらって感じです。
>一真さま
理不尽だwww
67 :
鬼と人のワルツ:2006/04/15(土) 11:24:37 ID:TPdz/e/c0
>サマサさま
サイボーグとなったアザミの描写が痛々しくてよいですね(変な意味ではなく)
>&さま
三行のフレーズからって、それもほとんどラララではないですか。
どうやって思いついているのですか!
>サー・ハイデッガー(さま)
貴兄の過去は一体何に彩られているのでしょうか?
慶次並みの経験がおありになりそうですねw
68 :
ふら〜り:2006/04/15(土) 11:49:36 ID:K7fjr5Rv0
>>ゲロさん
読んでる間……レミアは一貫して美しく、そして不思議な印象でしたが、でもその方向性
はくるくる変わりました。サッキュバスだったり、鶴の恩返しだったり、八百万の神かと
思えば妖精にもなって。リアルでも、顔や声や性格と共に、結構心に残りますよね。匂い。
>>ハイデッカさん
>負け戦の好きな男が、敢えて勝ちを誓う。フランスの為ではない、ジャンヌの為に。
どんっどん惚れ込んでいきますねぇ慶次。こういう描写がまた、ジャンヌを一層魅力的に
しています。男と女、父性と母性、勇気と優しさ、ウルトラマンAの理論で兵士たちを
奮い立たせた二人。読んでて、自分も参加して吼えたくなりました。そろそろ呂布来る?
>>一真さん(雑誌編集部はリアル仕事で何度か行きましたが……雑然、でしたねアレは)
>みっともない大人の少年魂をよォォォ!!!
いやぁ……ジャンプに限らず、ヲタならば誰しも心に抱く漢の叫びですこれ。つーかもう、
読み進めるごとに全蔵の素直さが可愛く思えてくる。純粋というか子供らしいというか。
ようは単純バカ。だがそこがいい。マジメに働く退氏には悪いが、私は全蔵に大注目っす。
>>サマサさん
なるほど。確かにドラ側にひけをとることなく、充分エゲツなさそうですね敵方も。強さ
と能力と思想、底はまだまだ見えず、か。でもドラ側もDB的単純パワーだけでなく各種
取り揃えてますしね。戦隊的に言うとメカニック&ファンタジー。両軍の総力戦、凄そう。
69 :
ふら〜り:2006/04/15(土) 11:50:23 ID:K7fjr5Rv0
>>ワルツさん
いつもながら、ワルツさんの刃牙は刃牙らしさと大人しさを両立してて好感が持てるなぁ。
>どれくらい響鬼の人を出していけるか
弦師弟を超絶希望。あと笛弟子も。しかし猛士の人々が出るとすると魔化魍も出てくる?
で刃牙側の、独歩やオリバなんかが魔化魍と……とか? 広がる展開予想が楽しいですっ。
>>46 これはまた、重くいい話ですな。ドラ最終回って、公式にはてんとう虫コミックス六巻
の、ジャイアンを引っ掻いて勝つ話なんですかね。七巻でウソ800で帰ってくるの。
>>没にしたアレ(私にしては、ゲームも漫画もメジャーネタではあります)
>>21さん、
>>22さん、サマサさん……御言葉、五臓六腑に染み渡りましてございまする。
どうなるかは解りませんが、こねくりまわしてみることにします。アニメ版の出来も
非常に良かったし、書きたい気持ちはありますので。
70 :
作者の都合により名無しです:2006/04/15(土) 20:29:46 ID:JUUYPU6M0
>シルバーソウルって〜
意外と銀ちゃんは有能そうですな。流石万屋だけの事はある。服部は破壊工作みたいですけど。
折り返し地点を過ぎて、どうやら大事件が動き出しそうな気配ですねえ。これぞ銀玉。
長編カテゴリに達した頃に連載完結という、ある意味理想的なフィニッシュかもw
>超機神大戦
アザミ、やっぱり仲間になりそうな感じですね。しずかちゃんの寛容さによって。
しずかは正しく理想の女の子だな。神界といえばあの豪胆でおっちょこちょいの
神王を思い出すけど、もう出ないのかな? 出てももうインフレに置いていかれてそうw
>鬼と人とのワルツ
俺、以前の感想で響鬼とスト2の豪鬼と勘違いしてた…orz おかしいとは思ったけど。
仮面ライダーって一杯いるんだなあw でも、今回の話を読んでタイトルの意図がわかりました。
そうか、鬼とは勇次郎だけではなかったのか! 響鬼はいい奴っぽいなあ。原作知らんけど。
ふらーりさん(見落としてました、すみません)
シャッフルではないだろうし、DCSSは論外。ラムネあたりですか?
一真さん
これが真実なのか、早計な誤認なのか。
雰囲気がなんとなくいいですね
サー=ハイデッカさん
どっかのエロマンガ(島にあらず)でそんなのがあったような気が…
鬼と人のワルツさん
ライダーシリーズは時間がなくてみられません。評判はよく聞いていますが
どうしても書きたくなったので、知人に頼んでパソコンを貸してもらったのですが時間切れ。保存しておいてもらいました。明日午前中に投下する予定です
72 :
sage:2006/04/15(土) 22:41:05 ID:s8j5ww140
>一真様
ここ最近で一番二時創作小説らしい作品ですね。何より、キャラクタの性格が
本当に原作者並みにちゃんと模写してます。マジで会話とか生き写しだ。
これから大きく動くみたいですが、原作見たくマジバトルに突入するのかな?
>サマサさま
アザミは前作も美味しい役回りでしたけど、今回もやはりキーマンに
なるみたいな感じですね。敵のままだとしても、味方になるとしても、
彼女を中心として話が回るのかな?シュウはラスボス確定かな?
>鬼と人のワルツ様
まさか響鬼までバキスレに絡んでくると思わなかったなーw
どうやら、バキとは同盟を組みそうな感じですね。好意的だ。
ライダーとバキ、最強のコンビですなw
>全力全快さん
頑張って下さい。応援してますよ
銀魂、最初にあのトークのやり取りを再現できるかと思ったけど
予想以上に再現できてる。勿論、あの疾走感も。期待してので頑張って下さい
7/15(土)10:00 時空管理局内 練習場
広い空間の中に5人の魔導師と1体の使い魔がいる。
一人は純白の衣装の少女、高町なのは。魔導師になって一年余りながら、既に一流の砲撃魔導師である。
一人はマントを羽織った少年、ユーノ・スクライア。なのはが魔導師となるきっかけを作った結界魔導師である。
一人は着物に袴で眼鏡の少女、エラントラ・鄭・グレンジャー。武装局員にしては珍しく使い魔を持っている、実直な魔導師である。
その使い魔はブリーサ。オウム素体で体格は主とほぼ同じ。
一人は深緑色の忍者装束のようなものを纏った少年、フェリツィア・ファボリット。ある大財閥の御曹司である。
そして、もう一人は胸元が大きく開いた衣装の少女、ティアナ・ユリシーズ。かなりの魔力を持っているが制御が下手なため、『味方潰し』の不名誉な称号を得ている。
この日が、『高町小隊』の始動日となった。
初日という事で、実力の把握も兼ねて、実戦練習である。
「仕事があるっていうのに、呼んでごめんね、ユーノ君」
「いや、無限書庫の整理もひと段落ついたし、僕も気になってたから…」
そして、ユーノが結界を張ったところで、
「戦闘前に、武器の確認でも。私のレイジングハートはもう知っていると思うけど」
「私の杖はデネボラ。親戚筋の方からいただいたインテリジェントデバイスです」
「俺のはアンタレス。インテリジェントは邪道だ。ストレージでなきゃ」
「私のはヴェガとアルタイルです。デルカーノさんから頂きました」
ティアナのデバイスは管理局内でも珍しい、ベルカ式銃型であった。
「そんだけいいもん使ってるんだから、もうちょっと活躍してくれよな」
「うぅ…」
「それじゃあそっちは四人で来ていいよ」
「これに勝ったら、俺は辞めさせてもらうぞ」
「師匠に向かって、そんな言い方はないと思うんですけど…」
と、ティアナ。
「なんだよ、確かにおまえは戦闘タイプが似てるからいいけど、俺は速攻派だからあんま意味ないじゃん。本当はクロノさんに見てもらいたかったんだけどなぁ…」
「執務官に頼むのは無理があるでしょう。大体、遠距離からの砲撃があれば攻撃のバリエーションが広がるし、あながち無意味とはいえないでしょう?」
と、こちらはエラントラ。
「うるせえな。とにかく俺は決めたんだからな!」
「……。これから大丈夫かなあ…」
「なのはなら大丈夫だよ」
「ありがとう。ユーノ君」
「ブリーサ、結界を手伝ってあげて」
「了解です」
部下チームは接近戦型のフェリツィア、万能型のエラントラ、遠隔型のティアナとバランスが取れている。
まずは相手を遠ざける必要があった。
「ディバイン!」
《Divine shooter》
円い小型魔方陣が展開されると、桜色の光から射撃魔法の発射体が形作られる。
この誘導操作弾は、なのはの戦術に欠かせないものである。
それに対抗して、
「ランサー、準備」
《Framelancer》
エラントラが炎の誘導弾、フレイムランサーを展開させる。
「フェリツィアはいったん後ろへ、ティアナは砲撃の準備を」
「おう」「わかりました」
「シュート!」
「発射!」
射撃魔法が発動する。
なのはのディバインシューターは、並みの魔導師なら一撃で昏倒させる威力を持つ。いきなりの撃墜は避けたいところであった。部下側全員が回避に入る。
「おまえは鈍いんだから、気をつけろよ」
「わかっていますよー」
しかし技術のあるエラントラや機動のあるフェリツィアはともかく、ティアナは何度かかすってしまった。出力が高い分防御も堅く、ダメージは少なく済んだが。
ある程度相手が遠ざかったところでレイジングハートがモードチェンジ。中長距離用のシューティングモードである。
「皆さん、防御を!」
エラントラとフェリツィアは防御魔法を発動させたが、
「ようし、私も!」
何を思ったかティアナはカートリッジを装填した。
「お、おい!何やってるんだ!」
「折角だから相殺させてみたくて。エンカウンターバスター!」
《Encounter buster》
エンカウンターバスターは、彼女の必殺魔法だ。だが…
「あ゛」
「!! うわぁぁぁ…」
いつも通り、と言うか何と言うか、狙いが外れてフェリツィアに当たってしまった。
「またやっちゃった…」
「いいところをみせたいのはわかるけど、先に言って…」
「ごめんなさい…」
エラントラも呆れ気味である。
「…えぇと、なんか自爆しちゃってるようだから悪いけど、ディバインバスター・フルパワー!」
ディバインバスターのバリエーション、威力はそのままに放射域を拡大させたものである。
もはや壁のようですらあるそれが、襲いかかってきた。
「ぐ…あぁぁぁッ!」
「!! うっ…」
武装局員の中でも守りに覚えのあるはずのエラントラもあえなく撃墜。出力の高いティアナはどうにか耐えたが、かなり魔力を削られた。
「やっぱりこれは無理だったか…」
「えげつない…」
ユーノがボソッと言った。
同日14:00
ところ変わってここは医務室。砲撃で消耗していた三人も、ある程度は魔力が回復した。
「俺は負けたわけじゃないからな!」
「でも、私のより師匠のが威力が上でしたよ」
「おまえは黙ってろ!」フェリツィアはもともと防御は不得手なのである。
「次からはもうちょっと加減するから…」
そのとき、通信が入った。アースラからだ。
「なのはちゃん。今大変なのよ」
「どうしたんですか、エイミィさん」
「植物が魔力を持って動いてるの。まだ理由はわからないけど…とりあえず戦力が必要そうだから、来て」
「わかりました。みんなは来れる?」
「もちろんです!」
「このくらいなんともねえ!」
「観戦だけになるでしょうが、行きます」
「場所はどこですか?」
「北緯35.7度、東経139.7度。練馬区と言われているところね」
「わかりました。すぐ行きます」
同時刻 巡航L級8番艦・アースラ
「提督、なのはちゃんたちに連絡しましたよ」
「そう。そろそろ結界の準備をしないとね。フェイトちゃん、準備はいい?」
「OKです。すぐに出られます」
「これは…別の次元世界からの攻撃の余波か?それにしてはかなり大きいな」
「クロノ君大変!調べてみたけど、次元を超えてこれだけの影響を及ぼすには、S+クラス以上の実力がいるみたい!」
「何!いざとなったら僕も出る必要がありそうだな。なのはを呼んでおいて正解か。」
「はやてちゃんたちも呼んでおく?」
「そうしてくれ」
同日 13:45 練馬区月見台すすきが原 野比家
「ドラえもーん、すごい虫が捕まえられる道具出してよー」
「まったく、虫ぐらい自分で捕まえなよ」
「そんなこと言ったって、もうみんなに約束しちゃったんだよ。タイムマシンで虫が多い時代に行けない?」
「しょうがないなあ…」
と、引出しを開けると、
バチバチバチ!
「うわっ!」
「どうしたの、ドラえもん?」
「なぜか分からないけど、時空間の様子がおかしい。これは使わないほうがいいよ」
「そんなぁ」
「まぁ、とりあえず裏山に行こう。あれだけ広ければきっと捕まえられるよ」
同日 14:10 小学校の裏山
「ん?」
「どうしたの?」
「どうもおかしい。これ以上進めないようになっているみたいだ」
と、見えない壁を叩きながら言う。
「中に入ってみようぜ!」
「何が起こってるのか、気になるわ」
「行ってみようよ!」
「よし【通り抜けフープ】!」
「えぇ…やめようよ」
「なんだよ、じゃおまえは残ってろよ」
「えっ…わかったよ、僕も行くよ!」
「サンダーレイジッ!」
中に入ると、目の前には、
「なにこれ…」
金髪で黒い服の少女と茜色の髪で獣のような耳をもつ女性が不気味に蠢く植物と戦っていた。
到底信じられる光景ではなかった。
そうこうしているうちにツルのようなものがドラえもんたちの方へと迫ってきた。
「いけない!【植物あやつり機】!」
そしてマイクで
『止まれ!』
すると、動いていた植物の動きがピタリと止まった。
「なんなんだあいつらは!この時代の科学技術では結界を通過する事など不可能なはずだ!」
「クロノ君、これ見て!」
「ん!?なんだ、この青狸は!?」
「私は青いダルマに見えたんだけどなぁ…。まぁそれはともかく、この子と結界を通れたのと関係がありそうよ」
「なんにせよ、まずいことになったな…」
「どうしたんですか?」
「なのはちゃん!」「なのは!もう着いたのか」
「なんか非常にまずい事になってるようですけど…まさかそんなことはありませんよね?」
「…そのまさかだ。どういうわけか知らないが、一般市民が結界内に入ってきてしまった。今のところ、自分達の身の安全は身は守れているようだが。しかしなんだ、あの道具は…」
「見た所、私と同年代のようですし、話を聞いて見ます!」
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「しょ、将軍!マレンシャーがナロルカ島から来た何者かによって襲撃されています!」
「なんだと!それで何千人だ?」
「それが…4人です」
「バカな事を言うな!マレンシャーはこの国で五指に入る都市だぞ!8000人の軍勢を配置していたというのに!」
「しかし、真実なのです…」
「場合によっては、こことドラガナの手勢を回すことになるかも知れんな…」
結界を通ってきちゃった人たちは、何と私と同学年だそうで。友達になれそうでまずは一安心。
そして次元を超えた災害の理由は?
次回「ドラえもんのび太と魔法少女リリカルなのは〜黄昏の戦乙女編〜」第2話「その名は黄昏の戦乙女なの?」
リリカルマジカル、頑張ります!
また題名長くなってしまいました。すいません…
全力さん、乙です。
会話だけで話を進めるとごちゃごちゃしてよく分からないかも・・・
例えば、
「くそっ!なんて数だ・・・!」
○○が焦る。それを諌めるように××が叫んだ。
「落ち着け、○○!すぐに味方がくる、それまで持ちこたえるんだ!」
だが状況はそれを許してくれない。魔物の牙がそこまで迫っていた。
ぐらいに、会話文の合間に地の分を挟むくらいがいいんじゃないでしょうか?
「くそっ!なんて数だ・・・!」
○○が焦る。それを諌めるように××が叫んだ。
「落ち着け、○○!すぐに味方がくる、それまで持ちこたえるんだ!」
だが状況はそれを許してくれない。魔物の牙がそこまで迫っていた。
この程度で作品にけち付けなさんな。屑。
いや、ケチをつけたつもりではないのですが・・・
気に障ったのならすいません。
ただ、会話ばっかりはやっぱり読みにくいと思います。
リリなの側で時空に干渉するとタイムマシンに影響が出るようで
上手い設定ですね。やっぱりタイムマシンは反則すぎるから封印しといたほうがいいです
・・・反則。激しく今更な言葉ですけどね
ご感想ありがとうございます
手元にパソコンがないので、知人に頼んで貸してもらったのですが、あまり長い間使うのも悪いと思ったので、後で手直ししようかとも思っています
ひみつ道具については次回、ある重要キャラを出す予定です
全力全開さんお疲れ様です。
なのはは知りませんが、長編ドラらしい大きな物語の出だしで
期待しております。
ただ、俺もちょっと状況説明に比べて会話が多いと思ったかな?
ま、その辺は書いてるうちに慣れてくると思いますので、
気楽にのんびり頑張って下さい。先は長そうですからね。
88 :
二十六話「薄っぺらな信頼」:2006/04/16(日) 14:10:45 ID:lMb/ct0E0
折れた両腕を呆けた顔で見つめるシコルスキー。
もう戦意など残っては居ない。
余りの衝撃に痛覚神経は麻痺し一瞬痛みを忘れたために、
夢を見ている様にしか思っていないであろう。
だが、花山はそんなシコルスキーを見逃しはしなかった。
防御技術の一切を無効とするほど強烈な拳が、
無防備なシコルスキーの顔面を捉えた。
数メートル吹き飛んでから無様に転がるシコルスキー。
転がったシコルを無視し、カイルを追おうとする花山。
「ま・・・て・・・・・・・・よっ・・!」
極悪な破壊力を持つ拳に殴られて陥没しかけた顔から、
大量に血を流しながら立ち上がるシコルスキー。
「まだ・・・・敗北じゃ・・ネェッッ・・・・・・。」
弱々しく立ち上がるシコルスキー。
だが、闘気の炎は激しく燃え上がっている。
それを見た花山は再び構える。
あらぬ方向へ胴体をぐら付かせながら歩くシコルスキー。
その赤子よりも頼りない足つきで近づいてくる男に、
三度、究極の拳が炸裂する。
今度はボディにストレート一閃。
体中の骨が砕け散っていても可笑しくは無いだろう。
先程よりも大きく吹っ飛ぶ。
今度こそカイル達を追うため背を向ける花山。
「ま・・・・・・・・・・だ・・。」
振り返る花山が見たのは、血反吐で汚れた床を這いながら近づいてくる男。
同じ上位アサシンとはいってもこの男は最も弱い上位アサシンのはず。
89 :
二十六話「薄っぺらな信頼」:2006/04/16(日) 14:11:26 ID:lMb/ct0E0
まだ損傷の少ない足を使い地面を這うシコルスキー。
その姿は無様には違いない、だが闘気は膨れ上がるばかりだ。
「何が・・・そうさせる?」
この男が敵に寝返ってから日は浅い。
自分も組を率いて信頼できる上司に忠義を尽くしたが、
たった数日の間にここまでの信頼を築けるのか。
さっきの奴等がシコルスキーを見捨てて逃げたのにも関わらず。
「・・・・・・・。」
燃え盛る闘気の炎が止む事は無かった。
だが、もう返事をする事も無かった。
消えない闘気をその場に残して気絶してしまった。
地べたにひれ伏すシコルスキーに近づく花山。
懐からビンを取り出し中身を口に含み、シコルスキーに吹きかける。
ラベルには[ワイルドターキー]と英語で記されていた。
霧状のワイルドターキーは優しくシコルスキーを包み込む。
倒れこんだまま闘気を燃やす男に語りかける。
「次に会った時に、聞かせてもらうぜ・・・・。」
カイル達の向かった先とは別の方向へと歩を進める花山。
完全に意識を閉じたのか薄くなる闘気。
それは陽炎のように儚く、消えた。
信頼も築けていない仲間の為に燃えた魂は、
巨漢の心に何を刻み付けたのか。
90 :
二十六話「薄っぺらな信頼」:2006/04/16(日) 14:12:44 ID:lMb/ct0E0
〜十字路・奥〜
曲がり角を無視して真っ直ぐ来てしまったが大丈夫だろうか?
少し不安になりながらも突き進むカイル一行。
扉の前へと辿り着き、決意を固める。
何か途轍もないプレッシャーを感じ、
扉の取っ手を握る手が止まり、震える。
一端のアサシンに手こずっていた自分が、
スペックの様な化け物達を相手に戦う事に恐怖を抱く。
「ロニ・・・俺・・。」
不安に震える手をそっと包み込む。
暖かい温もりを感じて、震えが止まる。
「心配すんなよ、俺達は勝つ。」
そこにはいつもと同じ笑顔のロニが居た。
その後ろでリアラも見ていてくれている。
今なすべき事はこの扉の先に居るアサシンを討ち破る事。
そして、大事な仲間を守る事。
力強く開かれた扉の先には、
禍々しい負の空気が漂っていた。
負の空気の中心には、3つの陰があった。
その内の一人が前に出て口を開いた。
「グゥーッドゥイーブニング!」
鎧等の防具も、剣や斧等の武器も持っていない。
だが確かに感じる凶器の存在、それは彼らの力か、
隠し持った武具の存在か。
「我等が盟友、スペックが居たとは言え良くここまで来れたね。
さぁ歓迎だ、日も暮れてしまった所でパーティを始めよう。」
91 :
二十六話「薄っぺらな信頼」:2006/04/16(日) 14:13:18 ID:lMb/ct0E0
男がそう言うとそれに不満を持ったのか、後ろにいた2人も前へ出ると、
口を開いた、先に背の低い男が落ち着いた口調で話しかける。
「ドリアンさん・・・私達を差し置いてパーティ、なんて言わせませんぞ?」
もう一人の真っ赤な頭髪をした男が、
それに続けて気さくに話を持ちかける。
「そう、彼等がチームならこちらもチームで行くのが、
礼儀だと思うがね・・・丁度3人づつだし。」
不敵な笑いを口元に浮かべたアサシン達。
3人ともスペックに引けを取らない気を放っている。
だが、負ける訳にはいかない。
「いくぞ!」
技、体共に完璧なタイミングで剣を抜き、剣圧を相手に放つ。
狙いを背の低い男に捕らえ、一瞬で行われる一連の動作は、
とても少年剣士とは思えない程に俊敏で力強かった。
距離もカイルの剣撃は2、3mは威力が落ちない。
「い〜い太刀筋だね、君の見た目以上には。」
一瞬で背後を取られる、すかさず後ろを振り向くと、
男の手には日本刀が握られていた。
「柳龍光、空道という武術を嗜んでいる、君の相手は私がしようか。」
そう言うと鞘から刀を引き抜き、斬りかかって来た。
間一髪受け止めるが、両刃剣を遥かに上回る切れ味が、
剣に傷跡を残した。
「カイル伏せろ!」
晶術の詠唱を始めていたロニとリアラ。
ロニの生み出す暗黒の刃とリアラの真空の刃が、
柳へと襲い掛かる。
92 :
邪神?:2006/04/16(日) 14:13:55 ID:lMb/ct0E0
邪神です、なんだか最近モンハンで思うように素材がでんとです・・・。
え?ヒロシネタ古い?いやいやいやいやノーノーノーノー。
なんかお昼の番組で見かけましたよ、ええ。
さて、スルーされるのが暗黙の了解になった俺の小ネタはさておき、
ロマサガ講座にでも移りますかね。
〜ロマサガ講習会or質問箱〜
サマサ氏 エターニアですかぁ〜、実を言うとそのうちテイルズキャラ
総出演な場面を作ろうかと思ってたり・・・余り期待しないで待ってくださいw
ふら〜り氏 北斗腐ファンを恐れていては、ユダは出せぬ!使えぬ!・・・
後1個思い浮かばない・・・orz
ゲロ氏 気にしなくていいんじゃないでしょうか?
自分の出してる漫画キャラってバキと北斗しかまだ無いですし・・・。
全力全開氏 そう・・・あの忌わしい像こそ名前の由来・・・。
ゼノサーガもってませんがw
鬼と人のワルツ氏 原作の様にウホッ!いい男、その胸の中で・・・
とか言わせたかったんですがね・・・w
この後の展開でウホッ(ry
>全力全開さん
最初は色々とあるものですけど、ゆっくりと頑張って下さい。
会話メインの話も俺は好きですよ。
これから時空を巻き込んだお話になるみたいですね…
>邪神さん
このシコルじゃ100回挑んでも花山さんに勝てそうもないなあ。
原作初期シコルなら、互角以上に戦えると思うんだけど。
彼の奮起と再起に期待します。
94 :
作者の都合により名無しです:2006/04/16(日) 19:16:11 ID:+m1hETtF0
邪神さん乙です。
死刑囚が他のレギュラーキャラ喰ってるなあ。
スペックはかっこいいし、シコルは愛らしいし。
とうとう柳も前線に出てきたしね。
95 :
邪神?no:2006/04/16(日) 20:39:48 ID:lMb/ct0E0
初めてのSS投下、しかも初心者なのに長編の予定で。
スタートとラストの構成は頭の中では一応形作られている。
だが早速2話目に取り組む、ぐだぐだしても始まらないからだ。
リロードして感想を見る、「コテハンお願いします」とあった。
固定ハンドルネーム、通称コテハン。
2chに置いて荒らし、職人が他人と区別しやすいようにするため、
ネームをつける習性がある。
俺は迷った、しゃにむに迷った。
1分程迷ってから、
「サルーインから取って邪神だな。」
そう思った直後、俺の頭に電流が走りぬける。
邪神・・・邪神像・・・モッコス?
そう、不覚にも100円以下の出来の悪い、
福沢諭吉も吹っ飛ぶフィギュアを思い出してしまった。
なんということだ!俺はなんて罪なことを・・・。
スーファミから時代を越えてPS2に赴いてくれたサルーインを、
あのブサイクで醜悪な人形と間違えてしまうなんて。
俺は自分を呪った、しゃにむに呪った。
30秒程己の行いを悔いたらコテハンが決った。
「邪神?」
うむ、これだ。
このコテハンはサルーインとモッコスを混同してしまった俺への十字架。
サルーインとモッコスの狭間で、永久に呪われ続ける。
SSを完結させるその日まで・・・
〜「邪神?の系譜」 THE END〜
96 :
邪神?の系譜:2006/04/16(日) 20:41:05 ID:lMb/ct0E0
うっかりタイトルをミス、もう初心者って訳でもないのに・・・。
10分程度で作り上げた自分を題材にしたSS。
これこそが名前の由来、そして俺の魂の叫び。
あれ?SS完結ってサルーイン討伐しちゃうよね。
残ったのは・・・モッコス?俺はモッコスなのか?
なんということだ!俺は邪神の魔の手から逃れる事は出来ないのか!
だが俺は逃げよう、逃げ続けよう。
いつか報われるその日まで・・・・・・。
お疲れ様です邪神さん。
本編は死刑囚軍団大暴れで好調ですね。
一人だけ負け犬になってますけど。
ただ、自分ネタでSSはちょっと・・w
せめて後書きで書いてくれw
バレです。
幸い今年の異動もなく、仕事量は若干少なくなりましたので、今年度も更新は続けていけそうです。
邪神?さま
>キャプテン…
おおっと、シコルがカッコいい。てっきり前話で花山戦は終ったと思っていただけに予想外でした。
柳やドリアンなどの死刑囚もいよいよ戦闘モード突入ですね。柳はシコル共々原作での没落振りが
酷かったものですが、この戦闘ではどのような姿を見せてくれるのか?
(もう一人の赤毛はドイルでしょうか? 炎のシュレンとかなら笑いますが)
ところで、19話が「七英雄」と「天の極星」との2つあるのですが、
これは勘違いでしょうか。
(ひとまず「天の極星」を20話としています。私の勘違いなら、ご連絡ください)
>邪神の系譜
SSというよりも自己紹介的な話ですね。「?」の由来はそこでしたか。
呪われないように……というか、私も楽しみにしていますので、ぜひとも頑張って完結させて下さい。
>全力全開さま
見えない壁なんて明らかに怪しいでしょうに、無視して突っ込む辺りが、相変わらず好奇心全開の
ドラ達一行らしさですね。
なのはの原作を知りませんが(魔法バトルアニメ、という解釈でいいのでしょうか)、彼女等の闘いが
ドラ達をどう巻き込んでいくのか!? 次回予告も含めて楽しみにしています。
>「ん!?なんだ、この青狸は!?」 「私は青いダルマに見えたんだけどなぁ
本人が聞いたら何と言うやら。確かに猫型には見えませんけれど。
>鬼と人とのワルツ作者さま
バキのふてぶてしさが良いですね。てっきりこのまま響鬼に戦いを挑むかと思いましたが、
相手の状況を配慮するだけの分別は、まだ持ってたみたいですね。
(親父なら絶対闘いになってただろうな)
今回は何事もなく分かれた三人ですが、バキは響鬼にかなり関心をもったようですし、今後の
話の流れによっては、バキが響鬼に弟子入り、という展開もあったりするかも?
誰?
>幸い今年の異動もなく、仕事量は若干少なくなりましたので、
>今年度も更新は続けていけそうです
うわあ、何よりです。
しかし、バレさん本当にお疲れ様です。頭が上がらないよ
102 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:02:27 ID:qgilT0TS0
ごきげんよう、皆様。
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/33.htm からの続きです。
緩い春の風が微かに髪を揺らす。
夕方から降り続いている雨がまだ止まぬ中、祐巳は一人の下級生と向き合っている。
お聖堂の入り口前。
目の前に立つ赤い傘の少女の指定した場所がここだった。
それに何の意味があるのか祐巳にはわからない。
けれど瞳子の身の安全を引き合いに出されては、祐巳はどこにだって行く。それこそ南極だって宇宙だって。
「ごきげんよう。紅薔薇さま」
いつかのようにはにかんだ笑顔を見せながら、彼女…………上原萌奈美さんが口を開いた。
「ずっと……紅薔薇さまともう一度お話ししたいと思っていたんです」
そう言って白い頬を染める彼女は初々しくて。
本当に……彼女はホムンクルスなのだろうかと疑問に思ってしまう。
「……ありがとう」
自分に好意を持ってくれているだろう事がわかり、祐巳はまずお礼の言葉を口にした。相手が誰だろうと、最低限の礼儀だけは通したい。
お姉様が帰られた後にかかってきたあの電話。
祐巳の勘は大当たりで、それは目の前に立つ彼女、萌奈美さんからのものだった。
『紅薔薇さまにお願いしたいことがあるのです』
瞳子の無事を尋ねる祐巳に萌奈美さんはそう返した。
『今からお一人でお聖堂まで来てください』と一方的にそう言って電話を切ってしまった彼女の要求通り、祐巳は一人で誰にも行き先を告げずにここまで来ている。
沙織ちゃんには「何かあったら……」と言われていたことだし連絡した方がいいのかもしれなかったけれど、何だかそれは卑怯な気がしたから、迷ったけれど結局連絡はしなかった。
それに……祐巳も、一度彼女とこうして一対一で向かい合って話をしてみたかった。
「どうして……こんなことをするの?」
ずっと聞いてみたかった。
どうして聖様を襲ったのか。
どうして瞳子を攫ったのか。
どうして……彼女が人間ではなくなってしまったのか。
「……ずっと、紅薔薇さまに憧れていたんです。ずっと、ずっと前から」
「えっ……」
「紅薔薇さまはご存じないでしょうけれど……私一度、二年前に紅薔薇さまにお会いしているんです」
103 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:03:49 ID:qgilT0TS0
萌奈美さんの意外な言葉。
二年前に祐巳と彼女が会っている?
そういえばさっき「もう一度お話したかった」って言ってたよね。いつ、どこで彼女と会ったのだろう?
必死に記憶を辿る祐巳を少し寂しそうに見つめ、萌奈美さんが口を開いた。
「私の家は隣の市で病院を経営しているんです。上原総合病院はご存じですよね?」
「上原総合病院って……」
聞いたことがある。ううん。行ったこともある。
上原総合病院は、二年前に心臓病の手術のために由乃が入院していた病院だ。
「もしかして二年前って……」
「後からあの時うちの病院に黄薔薇さまが入院されていたことを知りました。お見舞いにいらしていたのですよね?その時……中庭でお会いした私のことを思い出してはいただけませんか?」
「病院の中庭でって……。……あっ!あの時の……!」
――――思い出した。
由乃が入院したのは祐巳達が一年生の頃。学園祭が終わった後。十月の終わり。
学園祭で由乃は令様と『ベストスール賞』を受賞したのに、その直後に黄薔薇革命を起こして学園を騒ぎに巻き込んだ最中のこと。
祥子様の妹になり由乃と親しくなったばかりだった祐巳は、頻繁に由乃のお見舞いへと行っていた。
そんな何度目かのお見舞いの帰り道。
日が落ちた病院の中庭で、パジャマ姿の女の子が一人でシャボン玉を吹いているのを見かけたのだ。
『綺麗だね』
一人きりな彼女がやけに寂しそうに見えて、思わず祐巳はそう話しかけていた。
『……うん』
驚いたらしい少女が、戸惑いがちに頷く。
『でも、すぐ消えちゃう』
『そうだね。でも、だからすごく綺麗なんだよ、きっと。一瞬でも人の心に残ればそれでいいと思うの。すぐ消えちゃっても綺麗だって誰かに思ってもらえれば』
うなだれた少女があまりにも儚くて……それこそ彼女の方がすぐに消えてしまいそうで、何か明るいことを言わなくちゃって大慌てで祐巳は喋り続けた。
『ほら、虹とかもそうでしょう?すぐ消えちゃうけどでもみんな綺麗だって見上げるでしょう?それはすごい事だと思うんだ』
『虹……』
そこで虹という単語を出したのは、ただ単にその日に受けた国語の授業で“初虹”という季語を知ったからだ。
読みは“はつにじ”。初めての虹。
虹だけだと夏の季語なのだけど初虹となると春の季語。
俳句の世界の季節は旧暦だから春は立春(二月四日頃)から立夏(五月四日頃)まで。
つまりはその年に初めて見た虹を“初虹”と言うのだそうだ。
104 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:08:14 ID:qgilT0TS0
耳慣れない“初虹”という言葉が妙に印象的だったため頭に残っていて、そのせいでつい口から出てしまったのだけど、
その少女が虹という言葉に反応を返してくれたことに安心してしまって祐巳はまた一気に喋り続けた。
『虹って綺麗でしょう?みんなの心にずっと残るでしょう?見た人を幸せにしてくれるでしょう?すぐ消えちゃうけどでも
心の中からは消えないでしょう?』
祐巳も最後には自分が何を言っているのかよくわからなくなってきちゃったけど、元気を出して、って、つまりはそうい
うことが言いたかった。
パジャマ姿なところを見ると多分この子は入院患者で。一人でこんな所にいるところを見るときっと寂しいんじゃないの
かなっって思ってしまったから。だからちょっとでも元気づけてあげたかった。
余計なお世話だったかもしれないけど、その少女は祐巳の言葉ににっこりと笑ってくれた。
くしゅん、と小さくくしゃみをしたその子を院内まで送って……それからその子には二度と会うことがなかったのだけど。
あの時の女の子が……この子、上原萌奈美さんだったなんて。
「思い出して頂けましたか?」
あの時の儚げな女の子と目の前の女の子がダブる。
亜麻色の髪。くっきりとした黒目がちの瞳。言われてみれば確かにあの時の女の子だ。
「うん、思い出した。ごめんね……忘れてて。あれから会うことがなかったから……」
「……あの日に大きな発作を起こして……死んだんです。私」
「えっ」
「苦しくて辛くて……でも死にたくなかった。死んだ方が楽なのにってずっとそう思っていたのに。どうしてももう一度あな
たにお会いしたかったから……だから……!」
「萌奈美さん……?」
「あの日……もう私が助からないと悟った父は私に何かを移植しました。その何かは私の体をあっというまに回復させて
くれたけど……私は人間ではなくなってしまったんです。でもそんなこと、私はどうでもよかったんです。もう一度あなた
に会いたかったから。もう一度あなたとお話ししたかったから。それが叶うなら何でも良かったんです。あなたがリリアン
の生徒だということは制服でわかっていたから、だから高等部にいくのをずっと楽しみにしていたのに……」
一気に捲したてた萌奈美さんはそこでギリ……と唇を噛んだ。
「高等部にきたら、あなたの隣にはあの人がいた…………!!」
……萌奈美さんの言うあの人って。
「……瞳子のこと……?」
祐巳の声に、萌奈美さんは唇を噛みしめたまま俯いた。
でもすぐに顔を上げてキッと祐巳を見つめる。
「私が先だったのに!紅薔薇さまにお会いしたのは私の方が先だったのに!!」
105 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:10:10 ID:qgilT0TS0
「そんなこと関係ない!!」
叫ばれた言葉に反射的に叫び返していた。
「どっちが先とか、そんなこと関係ない。私は瞳子が瞳子だから……だから……」
「きっと紅薔薇さまは少しお間違えになっているだけなんですよね?そうとしか思えませんわ」
「間違えてるって……私が瞳子と姉妹になったことが?」
驚く祐巳にこくりと萌奈美さんが頷く。
間違ってる、だなんて……そんな、そんなわけない。
どう言ったらいいのだろう。どんな言葉なら伝わるんだろう。
どっちが先に会ったとか、そんな事は関係ないんだって。仮に萌奈美さんと瞳子の学年が逆だったとしても祐巳は必ず瞳
子を見つけていて、瞳子に会えなかったらきっと妹は迎えていなかったってどう言えばわかってくれるんだろう。
「……でもあの人がこの世からいなくなれば、きっと紅薔薇さまも気付かれますわね」
クスクスと笑いながら萌奈美さんが言う。
つい数時間前までの祐巳だったら、きっと彼女のこの言葉に動揺して何も考えられなくなっていたと思う。
だけど今は。
「それは違うよ」
きっぱりとした祐巳の言葉が意外だったのか、萌奈美さんは少しびっくりした顔をこちらに向けた。
「他の誰も、私以外の誰も瞳子のお姉様にはなれないし……私の妹にはなれないの」
「もうすでにあの人が生きてはいないとしても、ですか?」
「当たり前だよ。それに……瞳子は生きているでしょう?」
これは確信。
瞳子は生きている。死んでなんかいない。だって。
「どうしてそんな事が言えますの?もうすでにあの人はこの世にはいませんのよ」
クスクスと笑う萌奈美さんを真っ直ぐに見つめる。
「嘘でしょう。瞳子は生きてるもの」
そう。祐巳には瞳子が生きているという確信がある。
だって。
「だって……もし、瞳子に何かあったらわかるもの」
106 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:11:12 ID:qgilT0TS0
今ならわかる。はっきりと。自信を持って。
「……どうしてですの?」
「私は瞳子のお姉様だから。だから……瞳子に何かあったらわかるんだ」
単純明快な理由。でも胸を張ってそう言える。
瞳子に何かあったら、きっと祐巳の心が無事ではないから。
だからわかる。
瞳子は死んでなんかいない。瞳子は生きてる。絶対に、無事でいる――――!!
『志摩子に何かあったらわかるから』――――――――そう仰っていた聖様の様に。
『何となく祐巳が呼んでいるような気がしたからなのよ』――――――――そう仰ってくださったお姉様の様に。今の祐巳なら。
祐巳の言葉に萌奈美さんは非道く傷ついた表情をした。
そんな顔をさせてしまった罪悪感はあるけど、でもここで退くわけにはいかない。
「瞳子はどこ?」
「……ロザリオをください」
「えっ」
ロザリオって……これ……?
思わず制服の上から胸元のロザリオを握りしめる。
ロザリオをあげる、その意味は。
もしかしてあの電話で萌奈美さんの言っていた「お願いしたいこと」って……。
「あの人からロザリオを取り返して、私に下さい」
昼間に蔦子さんから聞いた、“紅薔薇革命”という単語がちらりと浮かんだ。
祐巳が瞳子との姉妹関係を解消して新しく妹を迎えるのではないかという件の噂が、脅迫に近い形で現実に押し寄せている。
「瞳子を返してくれるならロザリオくらいいくらでもあげるよ。でもね」
そこで言葉を句切り、ゆっくりと息を吸う。
声が通るように背筋を伸ばす。まっすぐに萌奈美さんを見つめる。
「ロザリオはただの象徴で、それで人の心を繋ぎ止める事なんてできないよ」
うぬぼれなのかもしれないけれど、きっと彼女は祐巳に好意を持ってくれているのだと思う。
だから祐巳の一番近くに……妹になりたいと思ってくれたのだろう。
でも、それは間違いだ。
こんな風なやり方で祐巳と無理矢理姉妹になっても彼女の望んだものはきっと手に入らない。
「どういう事です?!ロザリオは姉妹の証なはずなのに……!!」
107 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:21:03 ID:qgilT0TS0
萌奈美さんが叫ぶ。
はらはらと白い頬を伝うその涙にはとても胸が痛むけど。でも。
「証だけど、大切な物だけど、でも姉妹の絆は二人の心にあるものだから。だからロザリオがなくても私の妹は
瞳子だけなの。瞳子に嫌われてもロザリオを返されてももう私にとっての妹は瞳子だから。……きっと永遠に」
退けない。
譲れない。
ここだけは。
これだけは。
「私のたった一人の妹は瞳子なの」
「…………」
きっぱりとした祐巳の言葉に、萌奈美さんは俯いたまま肩を震わせている。
音もなく落ちた滴はきっと雨粒ではなくて…………。
「……ごめんね」
好意を持ってくれたのは嬉しかった。だけどそれに応えることはできない。
「でしたらなぜ……あの時、あんな風に優しくしてくださったのですか……?」
なぜと聞かれても……目の前で困っている人がいたら助けるのは当たり前、ということと同じで。
あまりにも寂しそうだったあの少女を少しでも元気づけてあげたかっただけで。
「――――――――偽善者」
そう言い、顔をあげた萌奈美さんはあのはにかんだ笑顔をすっかり消していた。
「……ふふ……うふふふふふ……」
「も、萌奈美さん……?」
萌奈美さんに投げられた『偽善者』という言葉に非道く胸が痛むけれど。
それよりも、先程までとはまったく違う冷たい笑顔で笑い続ける萌奈美さんの尋常ではない様子に祐巳の視線は釘付けになっていた。
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
萌奈美さんが、たかが外れた様に笑い出す。
108 :
虹のかなた:2006/04/17(月) 19:21:38 ID:qgilT0TS0
「紅薔薇さまっ!!」
その声は萌奈美さんの物ではなかった。
突風のように祐巳と萌奈美さんの間に現れたのは。
「……斗貴子さん」
黒髪の、顔に傷を持つ……“練金の戦士”の下級生。
「貴様……っ!攫った松平瞳子をどこへやった?!」
斗貴子さんが叫ぶ。
だけど萌奈美さんは斗貴子さんが突然現れたことに一瞬驚いただけで、すぐにその視線を祐巳に戻す。
その視線にあるのは憎しみと――――――――。
「……嘘つき」
「ちがっ……!」
「嘘つき!!」
絶叫した萌奈美さんが赤い傘を投げ捨て、くるりと背を向ける。
「待て!!」
そのまま走り出した萌奈美さんを追おうとした斗貴子さんに続いて祐巳も走り出そうとして……斗貴子さんの足が止まる。
雨の中、傘をさしていないリリアン生が行く手にいる。
人数は四人。
でもその四人は…………全員、萌奈美さんだった。
今回はここまでです。
このお話を作ったときから祐巳とカズキは似ているなと思っていたので『偽善者』の言葉はいつか使おうと思っていました。
>ハイデッカ様
スレ内結婚とはどういうものなのでしょう?
私と同級生の様で、そのことに驚きました。
でもきっと社会経験はハイデッカ様の方が豊富なのでしょうけど。
>バレ様
いつもお疲れ様です。
これだけの量の作品の保管は大変でしょうに、いつも感謝しております。
どうかお体だけにはお気を付けください。
バレ様とは逆に私は異動で仕事量が増えてしまいましたがこれからもマイペースで頑張ります。
この春に新社会人になられた職人様、読者の皆様。
これから色々と大変でしょうけれど一緒に頑張っていきましょう。
ごきげんよう。
110 :
作者の都合により名無しです:2006/04/17(月) 20:59:23 ID:u8AgUDEp0
気の違った野良犬にも優しく手を差し伸べるミドリさん萌え!
>バレ様
いつも本当に大変な更新量をお疲れ様です。
お体に気をつけお仕事頑張って下さい。いつも感謝してます。
>ミドリ様
前回といい今回といい、ミドリさん博学ですね。初虹って始めて知った。
虹が夏の季語というのは知ってたんですけど。
しかし、その美しく穏やかな思い出が萌奈美が壊れるきっかけだったとは。
しかも死んで祐巳の前に立ち塞がる…。
初期のほのぼの感とは同一小説とは思えない暗転ですね。
お仕事、大変そうだけど頑張って下さい。
ミドリ様ごきげんよう。お仕事大変そうですね。
今回、祐巳視点の話ですけど、祐巳は逃げませんね。意外と芯が強いというか。
その芯の強さは優しさから来ているんでしょうけど。妹思いというか。
こういうのがうまく書けるのは、やはりミドリさんに妹さんがいるからかな?
颯爽と現れた斗貴子ですけど、最後不気味な現象ですね。少し血生臭くなるのかな?
>バレさん
もう、バレさんがサイトを担当されてから3年程経つんですね。本当にお疲れ様です。
これだけの量の更新なんて、半年でも俺は出来ないな。その前にサイト作れないけどw
112 :
作者の都合により名無しです:2006/04/17(月) 22:27:46 ID:V4miueiL0
>バレさま
この一年お世話になりました、バレさまの頻繁な更新のおかげで連載のモチベーションを維持することができました。
今年度もご迷惑をおかけする事になると思います。
>バキスレの皆様方
次回にお会いする時は、新連載開始なる、なれるかな、なれたら良いなと思います
どうか忘れないで下さいませw
>ミドリさま
僕も貴方のファンです
後輩職人としては、おいそれとがんばって下さい等とは言えないのですが
応援しております。
近況報告といたしましては、何故か嫌いな水産品、って言うか魚・干物を店頭販売する事になりまして
馴れるのにマジ時間掛かりそうですw
Navigation02「ピクニック日和」
水無灯里の親友・藍華。
水先案内人店の老舗、姫屋所属の水先案内人。階級・片手袋(半人前)。
これは彼女が見習いだったころのお話―――
「藍華、今日はいい天気だからピクニックに行こう」
背後にドーーーン!という効果音をしょって、彼女は言い放った。
彼女の名は晃(あきら)。藍華の先輩にして、<水の三大妖精>の一人である。水先案内人としての実力のみならず、
容姿においても正に妖精の如き麗しき女性―――少なくとも、見た目は。
だがその中身は怪獣に近いということを、藍華はよく知っていた。
「晃さんったら、何でいつもそんな強引なんですか?ピクニックって突然言われても、用意も何もしてないのに・・・」
「口答え禁止〜〜〜〜〜っ!」
くわっ!と威嚇されて、哀れ藍華は縮こまった。後輩は先輩には逆らえないのだ。まして相手は三大妖精が一人。両手袋の
見習いがどうこうできる相手ではない。
「とにかく、今日お前と私がピクニックに行くのは既に決定事項!分かったならさっさと用意すること!返事は!?」
「はーい・・・」
気のない声で答える藍華。思わず本音が口をついた。
「あーあ、アリシアさんが私の先輩だったらよかったのにぃ・・・」
「ア・リ・シ・ア・だあ〜〜〜〜!?」
耳ざとく藍華のぼやきを聞きつけた晃が地獄から湧き出すような声を上げる。
「あんな奴のどこがいいんだ。ちょっと私より色白美人で、ちょっと私より愛想がよくて、ちょっと私より人気あって、
ちょっと私より酒が強くて、ちょっと私より全体的にスペックが上なだけじゃないか!」
「だからです」
「ほほお・・・言うようになったなあ、藍華」
晃がにっこり笑った。あ、やばい。目が全然笑ってない。藍華の背筋を冷たい汗が流れ落ち、同時にぐわしっと万力の
ような力で頭を握られた。
「大人しくピクニックに出かけるか、このまま脳漿ぶち撒けるか、どっちだ?」
選択の余地はない。晃は殺ると言ったら殺っちゃう女だ。
「・・・・・・是非とも、ピクニックに御一緒させて下さいませ」
「オッケー。では早速ゴンドラを出せ」
―――こんな晃ではあったが、藍華は決して彼女のことが嫌いではなかった。むしろ、アリシアを除けば誰よりも敬愛
している。ガサツで乱暴で偉そうではあったが、それも深い愛情の裏返しだとちゃんと分かっているのだ。
「おらおら、何ボケっとしてやがんだ。40秒で支度しないと、コンクリに詰めてネオ・アドリア海の藻屑にするぞ」
―――そう、愛情の裏返しである。多分。恐らく。そうなんじゃないかな・・・。
お弁当を乗っけて。暖かい日差しの中、藍華が黒いゴンドラを漕ぎ出す。
「で、何処へ行くんです?」
「うむ、まずこっちへ出て・・・そう、次はこっちに・・・あ、そこを曲がって・・・」
晃の指示に従って漕いでいくと、開けた場所に出た。
「いい景色・・・けど、何だか水路が狭いんじゃ・・・」
「うむ。しかもこの先は観光地として有名だから船の行き来も多いし、かなりの難関だ。さあ、藍華のお手並み拝見
といこう」
「なんでそんな難しいコースを・・・」
「シャーラップ!お前はとにかくしっかりと馬車馬の如く漕げばよろしい!ほら、前方から同業者の船が来たぞ。この
狭い路でぶつからずにちゃんとすれ違えるかな〜?ん〜?」
にやにやと笑っている晃。完全に藍華を玩具にして楽しんでいる。
「ぬうううう・・・なんて酷い先輩なんでしょう!」
「おや、こんな優しい先輩を捕まえてよく言うものだ」
あんたが優しいっていうならこの世にゃあ悪人なんて誰一人いねえよこのド外道め、と思いつつ、前方の船とぶつからぬ
よう気をつけてゴンドラを進めていく。
その船に乗っていたのは手袋なし(一人前)の水先案内人だった。彼女は藍華の姿を見て、くすりと微笑む。
「ふふ、頑張ってね」
「?はあ、頑張ります・・・」
何故か励まされてしまった。訳も分からず返事してしまったが、藍華は?マークを頭一杯に浮かべてしまう。
「ほらほら、ぼーっとするなよ。次だ」
晃の声に促されて前を見ると、何の用途なのか大きな木製の門が立ちふさがっていた。隣にはその管理者らしいおじさん
がのんびり新聞を読んでいる。
「おーい、おっちゃん。門を開けてくれ」
「はいよー」
新聞から顔を上げたおじさんが機械を操作すると、門はゆっくり開いていく。ゴンドラをその中へと進めると、門はまた
ゆっくりと閉じていった。ゴンドラごと閉じ込められた形だ。
「あのー、晃さん。ここは・・・」
「説明するより見たほうが早い。ほら」
くいっと顎で指し示されてそちらを見ると、水が上から流し込まれている。それに伴い、ゆっくり水位が上がっていった。
「水をせき止めたり逆に流したりで水位を調節してるんだ。水のエレベーターだよ」
「はあ・・・」
言われてみたら納得だ。しかし閉ざされた空間で上から水が流し込まれたら、ちょっとびっくりする。
そう、藍華の親友である水無灯里ならば<水責めですー!>なんて言って大慌てするのではないだろうか。
「なんだ、にやけたりして。随分楽しそうじゃないか」
「いえいえ、何でもありません・・・それにしても、ゆっくりですね」
「上がりきるまで30分はかかるからなー。まあ、こうしてのんびりと待つのも風流だろう?」
それは否定しきれなかった。藍華もゴンドラに腰を下ろして、ゆっくりと上がっていく水のエレベーターに身を任せた。
―――その後も船とぶつからずすれ違うのに苦労したり、またエレベーターに乗ったりと、随分と進んだ。
「晃さーん。まだ目的地に着かないんですか?」
エレベーターの中で、藍華がぼやく。
「ここを降りたらすぐだ・・・ほら」
エレベーターが止まり、視界が大きく広がった。
「わあ・・・」
そこは、大きな丘の上だった。視界一杯に広がる風車と、柔らかな草の匂い。
素晴らしい光景に、胸が一杯になる。
「綺麗・・・」
「そうだろ?ここは<希望の丘>って言われててな。とある理由から、水先案内人の間では名所になっている」
「とある理由?」
首を傾げる藍華。そんな彼女に、晃は珍しく―――本当に珍しくにっこりと笑って、藍華の左手をそっと握り締める。
そして藍華の左手に嵌められていた手袋をゆっくりと外して、一言。
「試験合格、おめでとう。今日からお前も見習いから半人前に昇格だ」
「え―――!?」
いきなりの展開に、目をパチクリさせる藍華。
「今日辿ってきた道筋・・・そこをトラブルなくきちんとこの場所まで行けるかどうかが、半人前への昇格試験なんだ。
お前はそれを見事クリアした。おめでとう。ぱちぱちぱちー」
屈託なく笑いながら、手を叩く晃。
「ちょっと・・・それなら、最初から言ってくれれば・・・」
「仕方ないだろ。水先案内人の伝統で、この試験は見習いには内緒で行われてるんだ。知らぬは見習いばかりなり。
まあいきなりだから動揺するのも分かるが、とにかく喜べ。お前もついに片手袋だ」
ようやく納得言った。すれ違った水先案内人に励まされたのは、そういうことだったのだ。
「私が・・・片手袋・・・」
じっと手袋が外れた左手を見る藍華。そんな彼女を見守りながら、晃が語り始めた。
「厳しい試験を突破してめでたく半人前になった水先案内人の卵が見る風景・・・それがこの丘なんだ。未来への希望を
抱いた水先案内人を、この丘は何人も迎え入れた。だから―――希望の丘なんて言われてるのかもな」
「・・・分かります」
藍華はもう一度、希望の丘の風景を目に焼き付けた。
「晃さん」
「ん?」
「私、この景色を一生忘れません・・・この景色の中に、晃さんがいたことも、絶対に忘れません」
「・・・恥ずかしいセリフ、禁止!」
晃はそう言ってそっぽを向いた。多分、照れているのだろう。だけどそっぽを向いてくれて助かった。藍華本人だって、
柄にもないことを言ってしまったせいで顔が真っ赤になっている。
全く、こんな青臭いのは私のキャラじゃないのに。こういうのは、灯里の役回りだ。
そうだ。明日にでもあいつに片手袋となった私の勇姿を見せてくれよう。
悔しがるだろうか―――いや、あいつのことだ。能天気にはしゃいで、自分のことのように喜んでくれるだろう。
そんなことを思いながら、藍華は晃と並んで、いつまでも希望の丘に佇んでいた。
投下完了。待ってる人がいたのかどうか、第二話です。
第一話
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/05.htm 第一話がわりとイレギュラーな話(ヤムチャ)だったのに対して、この話はかなり原作寄りです。
つうか、「AQUA」第一巻の話を藍華バージョンで書いただけだったり。
原作知ってりゃ楽しめるけど、知らなきゃきついかも・・・まあ気にせず行きましょう。
>>鬼と人さん
痛々しさ・・・出てたかな?実は仮面ライダーはあまり知らないけど、バキと結構溶け込んでますね。
>>ふら〜りさん
どうなるでしょうか。こんだけインフレしてて最後尻すぼみに終わらせちゃったら、思いっきり叩かれそうで・・・
>>70 神王&魔王・・・最終章に登場します。さすがにもう戦闘には参加しないけど。
>>72 アザミに関してはぶっちゃけ「前シリーズラスボスが仲間に!」の黄金パターンがやりたかったので。
シュウは<戦闘におけるラスボス>です。
>>全力さん
三部作・・・凄いインフレしそうですねw僕の場合、超機神から繋げられないこともないのですが、
話が滅茶苦茶になってしまいそうで・・・
>>邪神さん
はい、ではwktkしながら待ってます。
120 :
ふら〜り:2006/04/17(月) 23:56:59 ID:shvKLnLA0
>>全力全開さん
ん〜。なのは側、もう少し物の外見や術の説明、今誰が喋ってるのかとか入れて頂けると
有り難い。原作知らず派にはちと難しいです。でドラ側、ドラらしく裏山からのどかに
開幕……と思いきやひみつ道具の強さを見せつけて一本。開戦後もこの調子でいけるか?
>>邪神? さん(俺は迷った、しゃにむに迷った。←シン?)
シコル、カッコいいっぽくはあるがやはりシコルだったかという感じだなぁ。赤毛の男は、
>隠し持った武具の存在か。
とあるからやっぱりドイルかな。バレさんの予想通り、シュレンだったら大笑いですが。
ならヒューイも出さなきゃ可哀想ですぜ。今回は出なかったユダとスペックは今頃……
>>ミドリさん
>何だかそれは卑怯な気がしたから、迷ったけれど結局連絡はしなかった
さんざんいろいろあったのに、この期に及んでそんな……でもこういうとこが彼女の美点。
>他の誰も、私以外の誰も瞳子のお姉様にはなれないし……私の妹にはなれないの
で、この言葉。後半部だけなら非常にありふれたものですが、前半部が目を引きます。愛、
だけではなく強さと自信。お上品でお優しいだけのお嬢様ではない、意志の力を感じます。
>>サマサさん
妖精の如き麗しき……体育会系センパイキャラですねぇ晃。強引おでかけに頭ぐりぐり、
で当人に内緒の試験。あんたら、どっかの応援団か光画部かっ? 以前、原作の画像は
見に行きましたが、あの絵でこのノリとはなかなか。いろんな作品があるものですねぇ。
>>バレさん
ありがたき御言葉! 大黒柱たるバレさんが頑張って下さる限り、書く人読む人みんなに
とって大切な場所である当スレはきっと不滅。またよろしくお願いしますっっ。
>銀杏丸さん
お久しぶり…ってほどでもないか。仕事大変そうですねえ。
新連載、お仕事に慣れたら期待してますよ。
>サマサ氏
うわ、前回の話すっかり忘れてしまいましたw
だって超機神ばかり力入れてるんだもんw
しかしこちらはインフレの超機神と違って
ほのぼのしてますねえ。前回と毛色が違いますね。
scene41 チェックメイト
……同時だった。
ホールと調理場を隔てる引き戸の敷居を挟むように、二人は向かい合っていた。
カイジの持つ、アイスピックが只野の首筋に。
只野の構える、トカレフがカイジの眉間に。それぞれ突きつけられる。
お互い、必殺の間合いだった。
カイジのアイスピックが只野の首に突き刺さり、頚動脈を貫いたならば……
次の瞬間、カイジの額に穴が開くだろう。
只野のトカレフが火を噴き、カイジの頭を打ち抜いたならば……
次の瞬間、アイスピックが只野の首に突き刺さるだろう。
瞬きすら憚られるような、極限の緊張状態だった。両者睨みあったまま、一歩も動けない……!
そんな状況の中。只野は――頬を緩める。それはまるで、勝利を確信したかのよう……!
「どうやら、私の勝ちのようですね……」
「何……!?」
「私が……近距離と遠距離、二種類の武器を持っている意味が理解できますか?
そして……自らの武器の特性を饒舌に語ってみせた理由が理解できますか……?
わからないでしょうねぇ? 冥土の土産に教えてあげましょう。そのアイスピックは、囮なんですよ」
「囮……だと!?」
「はい。今、手にしているアイスピック……実際には『毒など塗っていない』のです」
「何を言うかと思えば……こんな鉄火場で安いブラフか……! あんたの狙いはお見通しだ……!
ブラフでこちらの動揺を誘い、戦意を喪失させ……相打ちにすら持ち込めなくする……そうだろ……!?」
只野はカイジの言葉を無視して、一方的に話を続ける。
「毒が塗ってあると、一撃が致命傷になり得ると脅されれば……
通常よりも大きな動きで攻撃を回避しようとしますし、必然、間合いを取り、遠距離で戦おうともします。
一撃必殺の近接武器に飛び込んで来るような命知らずは、そうそういようはずもありません。
それこそが……まさに罠。
私は相手が得物を警戒して距離を取ったところを、悠々と拳銃を取り出し仕留めればいい。
まさか、その布石を打っている最中に、リスクを覚悟で囮用の武器を奪いにくる――」
刹那。閃光のような速さで、只野の腕がうねり、アイスピックを持つカイジの右手を薙ぎ払った。
アイスピックはカイジの手から離れ、宙を舞い……からん、と乾いた音を立てて調理場に転がった。
「とは、思っていませんでしたが。やられっぱなしは癪なのでね……私も同じ手を使わせてもらいました」
右手に拳銃を構えたまま、只野は左手に負った掠り傷をぺろりと舐めた。
その掠り傷が。表皮にぷくりと浮かび上がった血液が。
何よりも雄弁に、真実を証明していた。只野の言葉は――ブラフなどではなかったのだ、と。
窮地に立たされて尚、カイジが希望を持てたのは、アイスピックが一撃必殺の切り札であると信じていたから。
だからこそ、死に物狂いで、降り注ぐ銃弾の雨を回避した。
だからこそ、策を練って一芝居打ち、マガジン装填の隙を突いた。
それが……蓋を開けてみれば、勝ちの目など始めから存在しなかったとは。
深い絶望感と徒労感がカイジを苛む。だがしかし、カイジはそれでも諦めなかった。
ニューロンを電気信号が駆け巡る。限られた時間の中で、ありとあらゆる可能性を模索する。
そしてついにカイジの頭脳は、結論を導き出した。到底、認めたくはない結論を。
もう、どう転んでも――それこそ、奇跡でも起きない限りは――勝てない。
毒は塗られていなかったとはいえ、唯一の武器であるアイスピックも失った。
そして眼前には、全弾装填済みのトカレフが、ホールの明かりに照らされて凶悪な輝きを放っている。
窮状を打開する妙案も、一発逆転を狙う奇策も、もうなかった。
ぴくりとでも動いたならば、その瞬間に鉛玉が頭蓋を貫く。それだけだ。
ホールに立ち尽くす残りの探偵たちは、と言えば。
対峙するカイジと只野を見つめたまま、揃って石像のように硬直してしまっていた。
カイジ、只野と残る探偵たちの距離は、そう離れてはいないが、かと言って近くもない……そんな微妙な間合いだった。
仮に、今この中の誰か一人が、只野を『確保』せんとして飛び込んだならば……
只野の手にしたトカレフの照準が揺らぎ……カイジはその隙に、トカレフを奪えるかもしれない。
もし、カイジがトカレフを奪えなかったとしても……全員でかかれば、只野の身柄は拘束できるだろう。
しかし、先陣を切って、最初に飛び込んだ一人はどうなるだろうか……?
結果は明白だった。優先的に銃弾の的になり、確実に死ぬ。
単純な理屈故に、誰もがそれを了解していた。
だから。誰一人としてその場から動かない……動けない……!
真っ先に動いて生贄の羊にはなりたくない。そんな集団心理が生んだ、命を賭けた牽制だった。
只野はカイジの殺害を終えた後、直ちに残る探偵たちに矛を向けるだろう。
そうなってしまえば、探偵たちにとっても、生存の望みは極めて薄い。
つまり、牽制という選択は……最終的に、残る全員の死に繋がってしまう。
その事実を踏まえたとしても、現在の状況は必然だった。ここに居る『誰もが』死にたくはないのだから。
「チェックメイトです。逃げ場は、もうありません。なかなか歯応えがありましたよ……
束の間とはいえ、私を相手に武器の優位を覆した事……せいぜいあの世で誇ってください。
それでは……名残惜しいですが、さよなら」
引鉄にかかった指に、力が込められ――
毎度ありがとうございます。前回投稿は前スレ459です。
今回の後半部分は、ほんの少しscene32と繋がっています。
・デコイ
狩猟で、おとりに用いる鳥の模型。置物としても用いる。広辞苑より……だそうです。
鳥を模したものだと言う事は、私も調べてみて初めて知りました。
台詞中では純粋に『囮』と言う意味で使っています。
・ニコチン
嘘でした。人殺しにはならないで済みそうですが、そのせいで絶体絶命に。
>decoy
おおまかに囮って意味でいいと思う。
囮とかサクラとか、動詞だとおびき寄せるという意味だから。
それが狩猟の分野の用語になればおとり用の鳥模型を指すし
軍事の分野だとレーダーを欺く囮という意味になる
軍事のやつは沈黙の艦隊で何度か見かけた。
127 :
作者の都合により名無しです:2006/04/18(火) 09:05:42 ID:QYINkh+Z0
>銀杏丸さん
魚嫌いですか。魚好きの俺としては残念だ。でも販売は面白いと思いますけどね。
仕事頑張って、一段落着いたらまたお願いします。
>サマサさん
超機神とかバトルやギャグ主体のもの書いてると、こういうのも書きたくなるのかな?
原作まったく知りませんが、藍華とかのやり取りにまったりしました。
「就職であんまり書けなくなる」とか言いつつペースの落ちないサマサ氏に敬礼。
>見てた人さん
うおお、クライマックスですね。楽しいけどもうすぐ終了は確定みたいで残念だ。
カイジ、追い詰められてますが只野の「冥土の土産」の台詞に一縷の望み。
この言葉吐いて饒舌になる悪党は必ずやられるお約束wしかし周りの探偵デクだなあ。
なんとしても夕凪たんや香坂さん達の仇を討って欲しい所・・・!
・・・そういえば、只野の殺した奴って殆ど女性ばかりなんだよな、なお許せん。
後、一つ疑問に思ったんですが、只野ってやっぱり偽名?
夕凪たんのスタンドがカイジを守護してくれるかもよw
うーん、でも後3回くらいで終わりそうな気がするな。残念
邪神?さん
当てちゃってなんだか悪いような気がします
ミドリさん
銀杏丸さん
うちの実家は乾物屋です。干物系も売ってます
サマサさん
ARIAはラムネとかぶって見られませんでしたが、二期にして面白さを発見した次第です。インフレは主に杖によるものになると思います
見てた人さん
トカレフに弾が入ってないとなればまだわかりませんが…
バレさん・ふらーりさん
植物あやつり機の描写を間違えました。週末あたりに書き直しますので、よろしくお願いします
しまった、ミドリさんのを書き損ねました
錬金打ち切りに納得のいかないものです。こちらの植田さん声の人は次回からです
132 :
聖少女風流記:2006/04/18(火) 16:12:12 ID:FjMvZiYO0
第十七話 飛将狂雷
5月5日。キリスト昇天の祝日により、城砦攻めは一時中断されている。
ジャンヌも白銀の鎧を脱ぎ、体を清めた後に主に祈りを捧げていた。
朝からずっと、である。その姿は敬虔さよりも、どこか物悲しさが漂っていた。
ジル・ドレが歴史的な戦勝にはしゃぎ回り、兵や将軍たちに酒を振舞っている。
まるで子供のような姿に、ジヤンは苦笑をした。
「フフ、あんな苦虫を噛み潰したような顔の御仁が大げさなものだ」
ベルトランはやれやれ、と首を振っただけだ。
確かに、大きな勝利ではある。快挙と言っていい。だがまだ主要な砦は2つも残っている。
「この緩みが、慢心にならねばいいが」
ポツリと呟いた彼の顔に笑顔は無い。不安が隠し切れないのだ。
ジャンヌは確かに奇跡の神子である。彼女無くしてこの勝利は無かったろう。
だが結局、彼女はサン・ルウでの戦いで、自ら剣を振る事は無かった。
自分たちがそうさせなかった、というのはある。戦地から遠ざけていた、というのはある。
それでもやはり、最後に自分を守るのは自分自身なのだ。
敵が殺到した時、いずれ自分の身を守る為に斬らねば成らない時が来る。それは必ず来る。
たとえ、慶次や自分が命懸けで彼女を護っていたとしても、だ。
その時、彼女は剣を振ってくれるだろうか。そして敵を貫いてくれるだろうか。
恐れている。彼女は人を殺めるのをこの戦場においても怖れている。
その畏れはある意味ジャンヌの美徳である。優しさの裏返しであるのだから。
こんな立場でなければ、敵を殺すよりも自分が殺されるのを選ぶ人だろう。
133 :
聖少女風流記:2006/04/18(火) 16:13:12 ID:FjMvZiYO0
だが、それは戦場においてそのまま悪徳である。戦場では生き残りが全てである。
どんな卑怯な手を使っても、他人を犠牲にしても、味方を盾にしても。
生き延びねばばらない。まして、彼女はいまやフランスの希望である。
自分以外の全ての兵を、自分を護る盾や鎧と考える位でちょうどいいのだ。
だが、彼女にそんな考えは持てまい。
それが一個人のジャンヌの愛すべき点であり、フランスのシンボルとしての
ジャンヌ・ダルクとしていけない点である。
彼女を守り抜く覚悟はある。己の命より優先されるべきもの、それがジャンヌである。
ベルトランはそう誓いつつも、不安は増大するばかりである。
純白に輝くものは人を惹きつける。が、純白とは汚れやすい。
清廉なるものは人に安らぎを与える。が、清廉とは濁りやすい。
元が美しいものであるほど、黒くすす汚れていけば元の姿を無くすものである。
ジャンヌ殿は、このままジャンヌ殿であり続けられるだろうか。
俺たちは、彼女をフランスの生贄に捧げているだけなのではないか?
ベルトランは悩む。が、時代は彼の悩みなど関心なくジャンヌを求めている。
(俺は、聖女の盾としての役割を果たすだけだ。その為に、俺は生まれてきた)
そう再度誓った。誓う事しか出来なかった。
134 :
聖少女風流記:2006/04/18(火) 16:13:56 ID:FjMvZiYO0
「まだ、ここは危ないよ。残党が居るかも知れない」
少女の柔らかな背中の曲線へ向けて、風流な大柄な男が声を掛けた。少女が振り返る。
頬に伝った後がある。先程まで、泣いていたのだろう。
サン・ルウ砦の決戦の地。昨日、フランス軍が落とした場所である。
その決戦跡地に、ジャンヌは町娘の格好で立ち尽くしていた。ただの美しい娘の姿で。
「慶次さん。これが、戦争なのですね」
死体があちらこちらに転がっている。ほとんどはイギリス兵の死体である。
が、ジャンヌは一人のイギリス兵の死体の近くで屈み込むと、静かに祈り始めた。
祈りが終わった後、慶次が微笑んだ。何も慶次は言わなかったが、ジャンヌは応える。
「主の前では、フランスもイギリスも無いはずです。どうか安らかに主の下へ」
慶次はキリスト教での祈り方を知らない。が、彼なりのやり方で死者の霊を弔い始めた。
摘んできた花を一輪遺体に乗せ、目を閉じて祈る。勿論、敵も味方も関係無くである。
慶次も、ベルトランと同じ不安を抱えながら。
そして、オーギュスタン砦攻略の朝を迎えた。
135 :
聖少女風流記:2006/04/18(火) 16:15:06 ID:FjMvZiYO0
ラ・ピュセルの旗がひらめいている。
サン・ルウ砦よりも更に数キロ先のオーギュスタン砦へ向け、聖少女が行く。
数千の兵を従える姿は、もう歴戦の将軍の威厳すら漂っている。
「もう堂に入ったものですな」
ジヤンが言った。ラ・イール将軍も不承不承ながら同意した。ジャンヌが応える。
「ええ、もう、初めてではありませんもの」
チロリ、と可愛い舌を出して笑った。その笑みを受けてジヤンが楽しげに笑った。
が、慶次とベルトランは笑わない。少しずつ、ジャンヌがジャンヌから離れていっている。
破裂寸前の風船のように、何かの切っ掛けで吹き飛んでしそうな危うさを感じるのだ。
不安を他所に、進軍は敵の攻撃を受ける事も無く、容易くオーギュスタン砦へ辿り着いた。
ジャンヌが剣を掲げ、兵に戦いのエールを送ると、我先にと兵たちが砦へ雪崩れ込んだ。
元々、士気が余りにも違い過ぎる。あっという間に形勢はフランスへと傾いた。
砦の上からの投石や矢も物ともせず、フランス軍は快進撃を続ける。
梯子が城壁にかかると、数十の兵が素早く駆け上がり本陣へと斬り込んで行く。
最前兵が砦の橋の乗降機を奪い取ると、ロープを叩き切り橋を下ろした。
この時点で勝負ありである。兵の数が元々違い過ぎる上、士気も違う。
もう、梯子を危険を犯してよじ登る必要は無い。行く手を遮っていた門は開いたのだ。
後はもう、時間の問題であるはずだった。
数千のフランス軍が数と勢いに任せて砦内へ侵入し、制圧する。30分とかかるまい。
だが、人智を超えた存在というのは確実に存在する。
人外の強者というのは、歴史上に点在するのだ。戦いの神に愛された存在が、幾人も。
ベルトランの目の前にも一人いた。無論、前田 慶次である。
真っ先に切り込み、あっという間に敵を叩き伏せるその姿は鬼神と呼ぶに相応しい。
そして速い。天下の愛馬 松風が、慶次の強さを倍化させている。
瞬く間に距離が離れていく。先程まで隣にいたのに、今は遥か先で槍を振るっている。
136 :
聖少女風流記:2006/04/18(火) 16:16:09 ID:FjMvZiYO0
が、どうもおかしい。
鬼神の強さではあるのだが、その鬼神振りがいつかのようにかけ離れた存在に感じない。
その証拠に、慶次に叩き伏せられたイギリス兵は、全員生きている。
頭の中に3日前の記憶が黄泉返る。ロウで、刃引きをしていた姿である。
ジャンヌが、敵の死も出来る限り避けたいと言っていたのを、ベルトランは知っている。
お前、そこまでジャンヌ殿の言葉に……。
そう思った数秒後、稲妻が閃いた。その稲妻は怒声である。
「飛将軍、出陣!!」
あるイギリス兵がそう叫んだ。すると、それを聞いたイギリス兵達の目の色が変化した。
先程まで、逃げ腰で戦っていたイギリス兵に闘志が戻ったのである。
ジヤンは飛将軍、という意味は分からなかった。
だが予感がある。恐ろしい悪寒が。 ……とてつもないものが、出る。
その瞬間、目の前が弾けた。真黒い物が立ち塞がり、ジヤンを馬ごと吹き飛ばした。
地に転がり落ちながら、それを見上げた。ハッキリとは分からない。
だが、脳裏に閃いた言葉がある。悪魔、と。
それは砦内のフランス兵を簡単に蹴散らし、門から外界へ出た。
巨大な馬に跨り、魔物が笑っている。スウ、と息を呑み込み、そして吐き出した。
「ジ、ジャンヌゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
血走ったその瞳は、遠くで旗を掲げる聖少女を捕らえ、そして放さなかった。
フランス軍とイギリス軍、双方合わせて1万を超える軍勢が、たった一人の魔人の
たった一声によって硬直している。完全に、戦場はこの男の手の内に収まった。
ベルトランから血の気が引いた。
(たった一人で、たった一声で、戦争の情勢を一変させるのか、あの男は)
そして魔人が巨馬を駆って走り出した。一直線に、ジャンヌ・ダルクへ向けて。
あの世界一の女を、この呂布 奉先の花嫁とするために。
ミドリ様、重ね重ねの不埒な狼藉三昧、大変申し訳ありませんでした。
お見せ出来ないのが誠に残念ですが、今、ワタクシめはディスプレイに向かって
土下座をしております。しかも全裸で。
全裸土下座という男として一番の謝罪を、ミドリ様に受け止めて頂きたぁああい!!
……いい加減に止めとこう。マジ嫌われかねん。
ミドリ様公認ファンクラブ会長として、ミドリ様に嫌われる訳にゃあいかねェ。
しかし、ミドリ様に比べ俺は本当にガキだなあ。これではいかんな。大人にならねば。
よし。心機一転、妹の結婚式が終わったら、髪の毛をオレンジに染めよう。
さて大人の男、そして全裸といえばやはり「チョンマゲ」であろう。
男なら誰でもやった事があるだろうが、一応説明しておく。
座っている相手の頭の上に自分の一物を乗せて、「チョンマゲ」と渋く呟く。
背筋を伸ばし、腕組みをし、一番いい顔をするのが美学である。照れてはいけない。
この美学は俺以外になかなか理解されないようだが、まだまだこの日本には
真のジェントリーが育っていない証拠だろう。やはり紳士はチョンマゲである。
大学三年の時、新歓コンパでベロベロに酔っ払った俺は、
新一年生の俺好みの女の子にこの紳士のたしなみを披露した。しかも顔の前から。
一瞬、ざわめいていた空間が静止したね。ワールドの能力使ったみたいに。
その後、いきなりその女が泣き出しやがった。
しかも訴えてやるとまで言い出しやがった。大人の粋なジョークのわからねえ女だ。
やはり女性はミドリ様みたいな麗しい方で無いと。犬と呼んで下さいまし。ワン!
>>43 フッ、俺は剣の次に得意なのが下ネタなんだ!
138 :
作者の都合により名無しです:2006/04/18(火) 17:31:23 ID:PUuJxTqV0
相変わらず凄いなあサーはw
相手にするミドリさんも大変だけど。
いよいよ、呂不との決戦ですね。
人外同士の戦い、楽しみにしてます。
慶次にハンデ付きなのに、慶次より強そうな感じ>呂布
139 :
二十八話「絆」:2006/04/18(火) 19:07:18 ID:V9+IyzVi0
「シャドウエッジ!」
「スラストファング!」
ロニとリアラの放った闇と風の晶術が柳へと襲い掛かる。
地面から突き出る漆黒の刃をかわすと周囲に巻き起こる風が襲い掛かる、
風に耐性の無い者への瞬殺コースだが今回の獲物は柳龍光。
極限まで引き付けてロニのシャドウエッジを回避する柳。
だが周囲には風が絶え間なく刃を作っている。
柳の死を確信すると、残り二人へと目を移す、その時。
「無事では済まないよ・・・その娘。」
もう少しで刃に突撃するという所だと言うのに柳の笑みは変わらない。
コロン・・・音がした方に目をやるとリアラとロニの足元に、
不思議な筒が転がりこんでいたのが見えた。
生死を潜り抜けてきた肉体が危険というシグナルを上げる。
「逃げろリアラぁー!」
叫ぶカイル、それと同時に地面の筒が爆発を起こす。
噴きあがる爆炎が視界を遮る。
響き渡る笑い声に怒りを滾らせるカイル。
「まさか、卑怯とは言うまいね?」
術者への攻撃で晶術を塞いだ柳は優々と窮地を脱出した。
後ろにいるドリアンと呼ばれていた男が先程、
床に転がっていた筒と同じ物を口から吐き出す。
「手榴弾、簡単に言えば爆弾だ。君たちの世界にはないだろう?」
怒りを無理矢理静めて周囲に気を配る。
すると3人だったアサシンが2人に減っている。
赤毛の男はどこへ?
140 :
二十八話「絆」:2006/04/18(火) 19:08:01 ID:V9+IyzVi0
すると後ろを振り向くドリアン、その瞳の先には妙なステージがあった。
「さぁ、そろそろ出番だよドイル君。時間を稼いであげたんだからね。」
すると奥からさっきまで全身タイツだった男が魔導師の姿をして出てきた。
それを見た時は驚愕の余り一瞬怒りを忘れてしまった。
魔導師には違いない、ただそれは女用の導服だったのだ。
「サルーイン様から授かったこの力、体にパイプを通すだけでは得られない物だ。」
そういうと目の前に火球を生み出し、大きく膨らませる。
「私は衣服に込められた呪力を引き出し、その力を使う事が出来る。
格闘士になればより卓越した体術を、魔導師ならば魔法を、といった具合に。」
その様子を見て大笑いするドリアンと柳、3対1の絶望的な戦力差。
仲間を失って心の支えを失いかけたカイルの後ろから声が掛かる。
「おいカイル・・・俺の心配は無しかよ。」
少し煙が撒き上がったままだが、ロニが中から出てくる。
直後、周囲の石が浮き上がりドイルの火球へと飛んでいく。
詠唱を止め、火を消し素早くサイドステップで石を避けるドイル。
ステージの先にある壁に、只の石ころがめり込んでいる。
「ちっ、見破られたか。」
ロニの後ろでリアラが詠唱していたのだ。
地属性の初歩的な晶術、ストーンザッパー。
少量の魔力を周囲の石へと込め、相手へと飛ばす晶術。
熟練した者が使えば石ころと言えども威力は侮れない。
「おや、ダメージも回復してるね・・・回復系の術の心得もあるのか。」
冷静に分析する柳、笑いは消えうせ段々と本気になっている。
残りの二人も同様に、闘志が溢れている。
ドリアンへと新品のハルバードを振り下ろすロニ。
ゆるゆると流れるような動きで確実にかわし、反撃の一撃。
シュボッ、と空気を斬る音が聞こえると掌打一閃、ロニの体が大きく浮き上がる。
「ぐうっ、爆灰鐘!」
空中で体勢を立て直し、地面へとハルバードを突き立て急停止する。
追撃に出ようとしていたドリアンも爆灰鐘によって巻き上がった粉塵に、
気を取られて後ろへ下がる。
141 :
二十八話「絆」:2006/04/18(火) 19:09:15 ID:V9+IyzVi0
ロニへと標準を合わせて巨大な氷塊を作り上げるドイル。
だがその顔面へと小型の真空の刃が襲う。
とっさに身を引き、詠唱を中断したため氷塊が崩れる。
「術を唱える時は相手の術師の事を考えて、素早く詠唱出来る術を使うのよ?」
杖を構えるリアラの口から発せられた挑発の言葉に、ドイルの体が震え上がる。
口元を引きつらせ、怒りを抑えた歪んだ笑いを見せる。
「ふ・・フフ、女性だというのにやってくれるじゃないかッッ・・・!」
素早い詠唱で小型の火球を飛ばし続けるリアラ、だがそれに構わず魔力を練り、
一撃必殺を狙うドイル、詠唱に完全に集中はせずに集中力の半分を防御へ向ける。
徐々に溜まって行く魔力が、ついに解き放たれた。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
地面から強力なマグマを噴き出す強力な術を放つドイル。
だが、強力な分その範囲は狭く、呆気無くかわされてしまった。
「術の性質も理解出来ないのかしら?」
薄っすらと笑みを浮かべるリアラ、理性の吹き飛ぶドイル。
雄叫びを上げながら突っ込んでくる。
「セェェェイッッ!」
突然、体から刃物が飛び出す。
咄嗟に杖で受け流すが衝撃を塞ぎきれずガードが解ける。
勝利を確信したドイルに、油断が出来た。
「護法蓮っ!」
目の前に光の壁を作り出し、ドイルを弾き飛ばす。
追撃に出ようとするリアラに柳が迫っていた。
直ぐに気がついたリアラは真横に居る柳が、
刀を振りかざしているのを見てしまった。
助かる望みは一つ、英雄になってくれると信じた人。
「カイル・・・・!」
リアラに向かって振り下ろされた刀が直前でストップする。
英雄を目指す少年、カイルによって。
「もう・・・さっきみたいな真似はさせない!」
142 :
二十八話「絆」:2006/04/18(火) 19:10:53 ID:V9+IyzVi0
柳とカイルは互角、ドイルは慣れない術師で戦っているため不利。
援護に回ろうとライターを取り出し、ワイヤーを引き出す。
その刹那、戦闘を繰り広げていたロニが猛攻へと出る。
「俺をほっといて行けると思ったかよぉ!」
下段への突き、そこから上へと引き上げる。
ロニの常人離れした力に軽々と上空へと上げられるドリアン。
「放墜鐘ッ、まだまだいくぜぇ!」
そこからさらにレンズの力を武器に伝わらせ水弾を放つ。
放墜砲鎚、脅威的な水圧を打ち上げた敵に3発連続で叩き付ける。
地上へ降り立ったドリアンへと更なる攻撃を仕掛けようと前へ出る。
パンッ、という音がドリアンの両手から響き渡る。
「猫だまし・・・か?」
思わず止まってしまったがすぐさま攻撃に移る。
逃げ惑うドリアン、思うように攻撃が当たる。
さっきまでのドリアンの脅威は消えうせ、
目の前には動くサンドバッグが一つ。
「待ってろカイル、今こいつ倒して・・・。」
柳の猛攻を防ぎながら叫ぶカイル。
ロニの様子が可笑しいからだ。
「何やってんだよロニ!後ろに敵が立って・・・。」
柳の連撃は止まらない、言葉を無理矢理止められる。
声に耳を傾ける事無く、あらぬ方向に斧を振り続けるロニ。
「ふぅ・・・これを使う事になるとはね。」
こちらに向かって歩くドリアン、ゆっくりと、だが確実にカイルへ向かって。
ライターからワイヤーを引き出しながら狂気の笑みを浮かべて。
「催眠術、彼は思うように打たれ、斬られる私を夢の中でいたぶっている。」
ワイヤーが音も立てずに、カイルの首へと伸びた。
143 :
邪神?:2006/04/18(火) 19:12:01 ID:V9+IyzVi0
またモンハンネタ、レウスタソがペットになってくれません・・・、邪神です。
チームプレイだと間が空いちゃってその間の攻防が分かりづらいですね。
ちなみにD2を知ってる人はロニとリアラの晶術は別に伏せる必要ないだろ。
と言う事に気付くでしょうが柳と密接してたと脳内補完で。
それだったらスラストファングはしゃがめば大丈夫っぽいです。
テイルズにしゃがみなんて無いですけどSSなんでここは見逃して・・・。
さぁ、スルーが常識なつまんねーネタ飛ばして質問箱いっきまーす!
〜最近、質問箱でもロマサガ講座でもなくなってきた質問&講座〜
97氏 ぬ、駄目でござるか。しかし後書きには感謝やら質問への返答(最近皆無ですが・・・)
に使いたいのでござる。「だったら書かないでいいよ。」とか言わんといて!虚しいわ自分・・・。
全力全開氏 いいのさ、誰か気づいてもスルーしてたんだろうから・・・。
沈黙を破るいい機会だったのやもしれぬ。
バレ氏 おお、本スレ登場は久しぶりですな。しかしシュレンとは深いですなww
そして二十話が十九話に・・・過去スレで確かにそうなってました、訂正ありがとうございます。
1つずらす訳ですから今回は二十八話ですね、自分のSSの話数も分かんないとか終わってますね俺。
そしてこの先のサイト運営、引き続き愛と勇気で乗り越えてください。
サマサ氏 わ、ワクワクするのは緊張感によって身体の老化を防いだりうんぬんかんぬん・・・
ですがテカテカすると言われたら発光生命体、となれば極光術師な彼を出すしか・・・。
なんだこの意味不明なコメントorz
ふら〜り氏 分かり辛い(?)シンネタへのツッコミ感謝。
ヒューイ・・・風のように現れそよ風の如く消えてった男。
あんなユダより技の少ない奴をどうやって使えとw
そして<今回は出なかったユダとスペックは今頃……
な、何を考えていらっしゃるのかさっぱりわかりませぬ!
どっちが攻めでどっちが受けかなんて(ry
144 :
作者の都合により名無しです:2006/04/18(火) 22:13:38 ID:As3RGDn40
<前回までのあらすじ>
世の中は金と権力で出来ていて、それを維持するには汚い事をいっぱいしなければいけないということ。
ようは、漫画やアニメの話には裏とお金が動いているという話です。
――――――――――――――――――――――――――――
○月×日 曇り
修行を始めて、ちょうど二ヶ月目。
今日の修行は戦闘中に敵に囲まれていても、カッコいい口上を言いながら必殺技を放てば、
敵は無防備で食らってくれるという内容の実戦でした。
師匠の修行仲間であるドリルやジェットさんが敵役になってくれましたが、
いいところは全く無く、今日の修行は終了。
ジース以外は一度も成功しませんでした。
せっかくの貴重な時間を割いてしまったのに申し訳ないです。
明日もまた、『師匠の名声を維持するために無抵抗な市民をイジメ』に行きます。
あ〜あ。なんでこんな事になっちゃったのかなあ〜。
今日の日記担当:バータ
―――――――――――――――――――――――――――
「さて・・・。日記も付け終わったし・・。寝るか。」
「ん?ああ。今日の担当はバータか。どれどれ・・・・。げっ!つまらねえ〜!!相変わらず『無個性』だな〜〜!!」
「うるさいわ!!!この緑が!!」
145 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:14:30 ID:As3RGDn40
<ギニュー編・前編:第ニ話 『ポケットアルターマスター。略してポケアルマスター登場!!』の巻き―(1)>
〜惑星クロノス・とある街のスーパーマーケット〜
ここは惑星クロノスにある、とある街の、とあるスーパーマーケット。
一応はこの街最大のスーパーマーケットだけあって、一日中満員御礼のこの場所は、
人々の心のオアシスであり、生活の根底を支える重要な拠点であった。
しかし今!!
そんな街のオアシスに重大な危機が迫りつつあった!!
四人のパンツ男達の手という巨大な悪―――もといアホが!!
―――ガッシャ〜ン!!!
「きゃあああああ〜〜!!変態〜〜〜!!」
昼下がりのスーパーマーケットにマダムの甲高い悲鳴が響き渡る!!
いつもは鬱陶しい中年ババアの声も、この時ばかりは仕方が無い。
何しろ『マシンガンを持っているパンツを被った四人十色の影』が窓ガラスが割れるのと同時に飛び込んで来たのだから。
「エ〜・・ゴホン!!この店は、違いのわかるパンツ愛好会―――略してチノパン愛好会が占拠した!!
無駄な抵抗は止めて、素直におとなしくしていた方が身の為だぞ!!・・・・・これを見ろ!!」
買い物途中の客たちがこの状況を理解するよりも早く、紫パンツを被った男――チノパンパープルは、
山積みになっているセール品のトマトボールの缶詰の上に立って、声高らかにマーケットジャックの宣言をする。
そして、紫パンツの男は徐(おもむろ)に足元に大量にあるトマトボールの缶詰を一つ空中に放り投げると、
手に持っていたマシンガンを『それ』に向かって撃ち始めた!!
ドドドドドドドドドド!!!
撃ちだされた弾丸が、今さっきまで円形を保っていた缶詰を一瞬で無に返す。
一般人の素手では、中々形を変えることすらままならない『それ』を一瞬でだ。
そんな普段の光景ではない現実に、やっと買い物客達は自分たちの置かれた状況を理解し恐怖する。
――――店内を支配する恐怖の感情。
平和だった街が一瞬でスラム街になった瞬間だった。
146 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:16:12 ID:As3RGDn40
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方、ここのスーパーマーケットの奥の方にある喫茶店では・・・・。
「ねえ〜。カズくん?なんだか辺りが騒がしいけど何かあったのかなあ〜。」
一人は恐怖に支配された店内で、どっしりと落ち着いた雰囲気でお茶をすすっている
ポニーテールが良く似合っている愛らしい少女。
「さ・・、さあ・・・。あんまり関わらない方が良い様な気がするけど・・・。うん・・。絶対・・。」
そしてもう一人は、ガラスが割れる音を聞いて完全に怯えきっている右手が機械仕掛けの青年がいた。
一見、年の差カップルにも見えない事もない二人だが、明らかにこの二人の間には主従関係が存在しているようにも見える。
もちろんポニーテールの少女が主(あるじ)のようだが・・・。
「なんか面白そうだよね!!ねえ、カズくん。ちょっと行ってみない?」
「えっ!!いや、ほら・・・。その・・・・。」
露骨に嫌な顔をしながら、少女の言葉を否定しようとする青年。
しかし、彼女は青年の露骨な否定的意見を元から聞くつもりは無いらしく・・、
「いいじゃん!!ほら!!いこ!!」
「うわ!!ちょっと!腕引っ張らないで!抜ける!!腕が〜〜!!」
強盗現場まで無理やり引っ張っていくのだった・・・。
147 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:18:01 ID:As3RGDn40
<ギニュー編・前編:第ニ話 『ポケットアルターマスター。略してポケアルマスター登場!!』の巻き―(2)>
店がチノパン愛好会に占拠されてから五分後・・・・。
恐怖に支配された店内は、まさにチノパン愛好会にとって都合の良い展開に事が進んでいた。
「ほら!!さっさと、売上金をその袋に入れるんだ!!」
「あっ、ジャンプも一冊お願いね。」
「俺はメンズヤング〜。」
「じゃあ、俺はコアラのマーチで。」
店の商品や売上金が、次々とチノパン愛好会があらかじめ用意していた巨大袋に詰め込まれていく。
あとはチノパン愛好会がこの店から逃げてしまえば、事件は迷宮入りになってしまうところまで来ていた。
「よし・・・。ふう・・・。ジース・・・。いや、チノパンレッド。今、何時だ?」
チノパン愛好会のリーダーらしき人物である紫パンツを被った男は、部下の一人であるチノパンレッドに時間を尋ねる。
強盗たるもの、時間は一秒でも欲しいという表れなのだろうか?
それとも他の何かを待っているのだろうか?
それは解らないが、チノパンパープルの問いにチノパンレッドはベテランの補佐らしく瞬時に答えた。
「え〜と・・。もうすぐ13:00ですね。突入から約六分。そろそろだと思います。」
「そうか・・・。まあ、今回は楽勝だな。」
チノパンレッドの素早い返答に安堵の声で答えたチノパンパープルは、やはり何かを待っているらしく、
早く”それ”が来ないかと言わんばかりに小刻みに体を揺らし始める。
まさに”後は待つばかり”を地で行っている状態だ。
もう、この強盗たちを捕まえる手立ては残されていないのだろうか?
―――しかし!!
世の中というモノは、それほどまでに事が上手く行くように作られてはいない。
ここまではルパンもビックリの手際の良さだが、やはり最後の最後まで障害というものはついて回るモノ。
こんな『ひじょう』で『きょうふ』に満ち溢れた状況にも、必ずどんでん返しという名の『正義の味方』が登場するものなのだ!!
だから・・・。
148 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:20:40 ID:As3RGDn40
「そこのカラフルパンツズ!!今すぐ強奪行為をやめなさい!!」
チノパン愛好会の予定していた時間よりも早く、店内中に響いた彼らの行いを否定する声は、
なんと少女のような可愛らしい声。
(あ、あれ?誰だ?この声は?師匠(ロム兄さん)ではないみたいだし・・・。)
(どうすんの?)
(どうしましょうか?)
(ジャンプまだ〜?)
予想だにしなかったいきなりのアクシデントに動揺を隠し切れない愛好家の面々。
しかし、ここで少女の声を無視をするのはあまりにも不自然なので、とりあえずは当初の台本どおり、
聞こえてきた声に対してカラフルレッドが掛け合いを始めた。
「な、何者だ!!どこにいる!!」
押尾大先生もビックリな演技力でそう言うと、カラフルレッドは聞こえてきた声の元を探す様な
素振りを見せながら辺りをキョロキョロと見回す。―――それに追従する他の三人。
すると四人は、先程カラフルパープルが立っていたセール品のトマトボールの缶詰の上に、
ポニーテールが可愛らしい少女がいることに気付く。
「ガキ・・・?」
女性の心がまるで分からない『体だけ大人』のカラフルパープルは、彼女を見つけるや否や、
いきなり失礼な言葉を口走ってしまう。
これだからI’sや苺がバイブルの大人は性質が悪い。
勿論、この言葉を聞いたポニーテールの髪形をした少女は、本当に不機嫌な表情になって・・・、
「ムキ〜〜!!何よ!!アンタみたいな頭からパンツを被っている男なんかに、私のことをガキという資格は無いわよ!!」
少女らしく不機嫌さを前面に押し出しながら、『体だけ大人のカラフルパープル』に猛抗議をし始める。
こういう場合、普通ならば大人の対応して彼女をなだめるモノなのだが、いかんせんパープル君は脳味噌の色もとってもパープル。
とうとう、売り言葉に買い言葉を地で行くような醜いやり取りを始めてしまう。
「ふん!!子供にガキといって何が悪い!!あいにく俺達は強盗中なんだ。お前に構っている暇は無いな。」
「な、なんですってえ〜〜!!大体、このプリティーで美しい私のどこがガキだというのよ!!!」
そんな少女の言葉にカラフルパープルは珍しく一考すると、頭に浮かんだ言葉をそのままサラリと口から発した。
「・・・。特に胸。」
―――男は正直な生き物である。
149 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:22:38 ID:As3RGDn40
「てめえら・・。私は・・・。あたいは怒ったぞ〜〜!!!このポケットアルターマスター『由詑かなみ』が成敗してくるわ〜〜!!
さあ、行きなさい!!カズくん!!!シェルブリットのカズマの力を見せてやるのよ!!」
遂に怒りの頂点に達した子供―――少女。もとい、由詑かなみはチノパン愛好会に宣戦布告をする。
そして彼女の言葉どおり、右手が機械仕掛けの青年―――カズマが、トマトボールの缶詰の山の陰から・・・その姿を現した!!!
「あ・・。どうも・・。只今、ご紹介に預かりましたカズマです・・・。いや、その・・・。」
―――まるで生まれたての小鹿の様に全身をプルプル震わせながら。
「はは。僕は無関係の方向で・・・。」
「へ〜。シェルブリッドのカズマか。強そうだな・・・。って!!ただのヘタレかよ!!」
いきなり目の前に現れたヘタレの前に、思わず本能的に突っ込んでしまうカラフルレッドなのであった。
一方、カラフルレッドが本能で突っ込んでいる間に、事の成り行きを静観していたカラフルブルーは、
この話の究極の主題を思わず口にして一人思い悩んでいた。
「そういえば、『ポケットアルターマスター』ってなんなんだろう?」
最もである。
150 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:31:59 ID:As3RGDn40
どうも、しぇきです。
今回の題目が登場というだけあって、本当に登場だけです。
次からバトル?になります。
新キャラの元ネタはスクライドです。反逆で全て方がつくアレです。
>前スレで感想くれた皆様。
いつもありがとうございます。
オーガは野球でいうと2回裏といったところですが、
お暇な方は流し読みでもしてやってください。
>邪神?さん
?の意味から、ほぼ毎日の更新お疲れ様です。
テイルズの戦闘は新鮮で、やはりゲームのような高レベルな魔法は唱えにくそうですね。
周囲への被害も物凄いだろうし。
ゲームのように、SP分与秘奥義はないでしょうが、ここらでカイルの秘奥義が炸裂する予感・・・?
>サマサさん
仕事をしているというのに、すさまじい頻度の更新には頭が下がります。
久しぶり?のネオ・ヴェネツィアの日々やドラえもんと、ジャンルも違うSSを楽しませてもらっています。
それにしても、「〜禁止〜〜〜っ!!」という言葉は、ある意味ロム兄さん張りの強制力がありますね。
151 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 22:52:48 ID:As3RGDn40
>ゲロさん
歌の二次創作には魅力を感じます。
ただ、ある意味内容的なジャンルが一定に陥りやすそうなのが気になりますが・・。
歌の二次創作に漫画のキャラを乗っけて見るのも面白いかもしれませんね。
愛しのエリーなんかは、恋愛漫画モノとくっつけやすいかも。
>ハイデッカさん
遂に呂布との決戦ですね。ハイデッカさんのSSは史実とは違うオリジナルだそうなので、
呂布とはベルトランが相打ちになる予感・・。
>何かの切っ掛けで吹き飛んでしそうな危うさ
それでも、ここら辺がジャンヌの最後を予言しているような印象を受けます。
やはり、最後まで聖戦と叫び、誰からも助けてもらえず死んでしまうのでしょうか?
>全力全開さん
青いダルマとは・・・。
ドラえもんがネコ型ロボットと聞いたときのなのは達のリアクションが楽しみです。
ある意味、ドラえもんの命題の1つでもありますね。
映画では大体狸だし・・・。
後、三部作だそうですが、これはパオさんの最大トーナメント&魔界編を超す
長さになるのでしょうか?自分が書いたら、間違いなく無駄に長くなりそうですがw
>鬼のワルツさん
ワルツ・・・でも、タップのようなテンポのよさで飽きさせないストーリ展開は凄いと思います。
それにしても、バキを捕まえておいて一般人とは・・・。
自分のライダーはRXで止まっているのですが、いまのライダーは鬼なんですね。
バッタだったあの頃と比べれば、流石のバキも一般人呼ばわりも仕方が無いのかな?
そして、長老はライダーシリーズお約束のおやっさんの予感。響は見ていないので違うっぽいですが・・。
152 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 23:03:31 ID:As3RGDn40
>見てた人さん
カイジって、格闘系もいけるんですね。
地下で鍛えた筋力が、覚醒して100%扱えるような状態になったといってもいいのでしょうか?
それ以上に、心理戦に強いというのが、人を殺した事のないカイジが只野と戦えている理由になっているみたいですが。
ただ、只野が銃を簡単に扱えているのが気になりますが。
実際に撃った事がありますが、近くに人がいても狙ったところには当たりそうにないです。自分の場合は。
>ミドリさん
ホムンクルスのクローンというのは、よく考えたら錬金でも最終回だけでしたね。
計四体の萌奈美も、最後には無限増殖・・。
そして偽善者との台詞が、ここで出てくるのが惚れました。
スールという制度は人をかく恐ろしい思考まで持っていくのか?
表は美しそうですけど、それに漏れた方々の思いは逆ベクトルに恐ろしいと感じます。
平等って難しいものだと、本当に考えさせられました。
では失礼・・・。
153 :
作者の都合により名無しです:2006/04/18(火) 23:14:41 ID:QYINkh+Z0
また、一日見ないうちにいっぱい来たなあw
>ハイデッカさん
とうとう、頂点決戦ですね!慶次対呂布、夢のカードですねえ。
実際の歴史は良く知りませんけど、ジャンヌが主役で今まで慶次が
ちょっと隠れていた分、いくさで見せてくれそうですね。
>後書き
いや、本当に凄いですねw無駄に凄い。
でもやっぱり名前はエストポリス2からでしたね。名台詞ですね、それ
>邪神さん
この作中での死刑囚の強さはどんな感じのバランスでしょう?
どうもスペックは別格で、シコルはやはり末端ですけどw
でも柳はカイルと互角かあ。微妙な感じだなあ。
>しぇきさん
おお、これは久しぶりのギニュー編ですね。相変わらずのドタバタ劇だ。
でも、読んだけど特戦隊がチノパン部隊になったのか?w
でも、今回一番ビビッタのはこれ→>オーガは野球でいうと2回裏 あれでまだっすか?
154 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/04/18(火) 23:25:43 ID:aBbU2zmp0
>153さん
ありがとうございます。まだ一日目なので。
っていうか、重大ミスです。すいません。
カラフルレッドとかは、すべてチノパンレッドです。
一度書いたあと、すべて没にして書きなおしたので、
ごっちゃに書いていました。
後半に出現しているカラフルレッドやカラフルパープル、
カラフルブルーは全てチノパンレッド、チノパンパープル、
チノパンブルーです。読んでくださった方は脳内変換お願いします。m(__)m
乙です。
しかし、
いつ野球再開するんでしょうか……来年かな?
ハイデッカさん
いつもながら、あとがきでは凄いはっちゃけ具合いですね…
邪神?さん
私はああいうSSもいいと思うのですが…
しぇきさん
そういえば、なのは一期の頃は、「声が同じ」「私服似すぎ」などの理由でかなみの話題が結構ありました。兄は劉鳳だし
長くなるかは分かりませんが、ただ長いだけにはしたくないと思っています
>>しぇきさん
お疲れさんです。今回は
>押尾大先生もビックリな演技力
で盛大に吹きましたwwwwwwお塩様は正に凄い漢ですよね。
何せその圧倒的なカリスマぶりに、彼女の矢田亜紀子の高感度が、何故か大山のぶよより下になるくらいですから。
>ハイデッカ氏
SSは俺の中では3本の指に入るんだけど・・w ミドリさんにいい加減に怒られるよ。
>邪神さん
柳には活躍してほしいなあ。死刑囚の中で一番好き。シコルはそのままでいいですw
>しぇきさん
もう、野球なしでいいですよw こういうコミカルなドタバタ劇見てるのが好きです。
>全力全開さん
作品期待してますけど、感想のみの時はコテをはずした方が宜しいかと
159 :
作者の都合により名無しです:2006/04/19(水) 16:34:35 ID:/FoGYptr0
ハイデッカは後書きの方が本編より面白いというある意味突然変異
それがいいんだか悪いんだかは別にして
・邪神氏
モンハンやりながらの健筆、お疲れ様です。
死刑囚揃い踏みですね。彼らがこの作品の真の主役かも。
・しぇき氏
超メジャーなドラゴンボールの題材の中に
俺の知らない漫画がまたwおかしな連中の活躍に期待。
>>159 俺は本編のがずっと好きだけどな。
これからそういうレスは語ろうぜスレでどうぞ。
161 :
二十九話「意思の力」:2006/04/19(水) 23:58:19 ID:YXO+xfCZ0
首にワイヤーが掛かるのが鍛え抜かれた眼に移る。
文字通り毛ほどの感覚を与えないワイヤーが引き絞られていく。
徐々に首にのめり込むワイヤーへ剣を振ろうとする、駄目だ間に合わない。
完全な死が目前に迫っていても、臆する事は無かった。
今まで一緒に戦ってきた、自分の全てを賭けれる仲間がいる。
ワイヤーへの攻撃が間に合わないと判断したカイルは攻撃を試みる。
「蒼破刃!」
残撃が飛ぶ前に、ワイヤーを握る手に力が籠もる。
飛ぶと同時にかわし、そして力いっぱい引く、だがカイルの首が飛ぶ事は無かった。
宙を舞うハルバードが先端の最高の切れ味を持つ部分でワイヤーを切断する。
「ホワイ?(何故)」
驚愕で硬直するドリアン、未だに破る者のなかった催眠術を破られた。
しかし幻影相手に大技を連発していたため疲労が激しいロニ。
肩で息をしながらドリアンの問いに答える。
「俺たちの絆は・・・こんなチンケな催眠術じゃ斬れねぇんだよ!」
瞬時にドリアンへと突っ込むロニ、その速度は疲弊した人間の取る速度ではなかった。
自分の術を破られた事に対するショックと予想外のロニのスピードに翻弄される。
だが落ち着いてカウンターを取れば、そう思いつくと同時に放たれる掌打。
ガッチリと両腕で受け止めるロニ、今度は吹き飛ばされない。
ハルバードの様な重い物を装備していても軽々吹っ飛ばせたロニの体が、
とてつもなく重く、硬く、そして何よりも強く感じる。
「くらええええ!」
ロニ、唯一の体術特技[双打鐘]が炸裂する。
間一髪受け止めるが、強力な拳の2連撃に地面に根付いていた足が浮き上がる。
そして更に追い討ちを浴びせるロニ。
「もういっちょ!双打連蹴!」
162 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:00:18 ID:gA+gSIEu0
首にワイヤーが掛かるのが鍛え抜かれた眼に移る。
文字通り毛ほどの感覚を与えないワイヤーが引き絞られていく。
徐々に首にのめり込むワイヤーへ剣を振ろうとする、駄目だ間に合わない。
完全な死が目前に迫っていても、臆する事は無かった。
今まで一緒に戦ってきた、自分の全てを賭けれる仲間がいる。
ワイヤーへの攻撃が間に合わないと判断したカイルは攻撃を試みる。
「蒼破刃!」
残撃が飛ぶ前に、ワイヤーを握る手に力が籠もる。
飛ぶと同時にかわし、そして力いっぱい引く、だがカイルの首が飛ぶ事は無かった。
宙を舞うハルバードが先端の最高の切れ味を持つ部分でワイヤーを切断する。
「ホワイ?(何故)」
驚愕で硬直するドリアン、未だに破る者のなかった催眠術を破られた。
しかし幻影相手に大技を連発していたため疲労が激しいロニ。
肩で息をしながらドリアンの問いに答える。
「俺たちの絆は・・・こんなチンケな催眠術じゃ斬れねぇんだよ!」
瞬時にドリアンへと突っ込むロニ、その速度は疲弊した人間の取る速度ではなかった。
自分の術を破られた事に対するショックと予想外のロニのスピードに翻弄される。
だが落ち着いてカウンターを取れば、そう思いつくと同時に放たれる掌打。
ガッチリと両腕で受け止めるロニ、今度は吹き飛ばされない。
ハルバードの様な重い物を装備していても軽々吹っ飛ばせたロニの体が、
とてつもなく重く、硬く、そして何よりも強く感じる。
「くらええええ!」
ロニ、唯一の体術特技[双打鐘]が炸裂する。
間一髪受け止めるが、強力な拳の2連撃に地面に根付いていた足が浮き上がる。
そして更に追い討ちを浴びせるロニ。
「もういっちょ!双打連蹴!」
163 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:01:05 ID:gA+gSIEu0
空中で受けた衝撃によって姿勢制御が出来なくなり、大きく吹き飛ぶ。
それは大きな隙が出来た事を意味してる、当然それを見逃すロニではない。
斧を振り下ろし下段に構えたまま突撃していきドリアンの着地とタイミングを合わせる、
そして特上の体当たりが、ガードもままならないドリアンへと直撃する。
「奥義・割破爆走撃!」
体当たりによって骨を折られながら地面へと転がるドリアン。
疲れの溜まった体で、この隙を逃したらチャンスは無い。
崩れそうな体を動かす意思「カイルを守る」その想いに反応し、ロニの体中にレンズの力が沁み渡る。
人体の内側に秘められた力を爆発させ、その闘気と威圧で相手の動きを封じる。
吹き飛んだドリアンの真上にハルバードを投げつけ、そこに向かって飛び上がる。
「貴様を屠る!」
空中で乱暴にハルバードを取り上げると、ドリアンに向かって落下する。
「この俺の一撃!」
空気の流れが速すぎるロニの落下速度で暴風へと変わる。
そして絶対的な威力を誇るロニの秘奥義が放たれる。
「クリティカルブレード!」
今まで敗北を知らなかった男に、蘇る記憶。
そう、自分は過去に一人の男に負けた事のある敗北者である。
記憶を消された挙句、利用されている飼い犬だ。
ドリアンの変化に気付いたロニは攻撃を止める。
地べたに仰向けになりながら、一人何かを呟いている。
「キャンディ・・・パパ、キャンディ。」
何かの策かと思ったが、ドリアンの目はまるで自分の弟達の様だった。
もはや邪心は消えうせ、闘気を微塵も感じないほどに変わり果ててしまった。
死力を尽くした相手でも、こうも惨めな姿になっては手は出せない。
疲れ果てたロニ、今戦いに出れば足手まといになってしまう。
口にアップルグミを含み、噛み締めながらドリアンを見つめる。
「・・・キャンディは無ぇけどグミならあるぜ。」
ドリアンに歩み寄り、道具入れからグミを差し出す。
満面の笑みでグミを受け取るドリアン。
その顔は本当に子供の様な笑みを浮かべていた。
164 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:02:24 ID:gA+gSIEu0
空中で受けた衝撃によって姿勢制御が出来なくなり、大きく吹き飛ぶ。
それは大きな隙が出来た事を意味してる、当然それを見逃すロニではない。
斧を振り下ろし下段に構えたまま突撃していきドリアンの着地とタイミングを合わせる、
そして特上の体当たりが、ガードもままならないドリアンへと直撃する。
「奥義・割破爆走撃!」
体当たりによって骨を折られながら地面へと転がるドリアン。
疲れの溜まった体で、この隙を逃したらチャンスは無い。
崩れそうな体を動かす意思「カイルを守る」その想いに反応し、ロニの体中にレンズの力が沁み渡る。
人体の内側に秘められた力を爆発させ、その闘気と威圧で相手の動きを封じる。
吹き飛んだドリアンの真上にハルバードを投げつけ、そこに向かって飛び上がる。
「貴様を屠る!」
空中で乱暴にハルバードを取り上げると、ドリアンに向かって落下する。
「この俺の一撃!」
空気の流れが速すぎるロニの落下速度で暴風へと変わる。
そして絶対的な威力を誇るロニの秘奥義が放たれる。
「クリティカルブレード!」
今まで敗北を知らなかった男に、蘇る記憶。
そう、自分は過去に一人の男に負けた事のある敗北者である。
記憶を消された挙句、利用されている飼い犬だ。
ドリアンの変化に気付いたロニは攻撃を止める。
地べたに仰向けになりながら、一人何かを呟いている。
「キャンディ・・・パパ、キャンディ。」
何かの策かと思ったが、ドリアンの目はまるで自分の弟達の様だった。
もはや邪心は消えうせ、闘気を微塵も感じないほどに変わり果ててしまった。
死力を尽くした相手でも、こうも惨めな姿になっては手は出せない。
疲れ果てたロニ、今戦いに出れば足手まといになってしまう。
口にアップルグミを含み、噛み締めながらドリアンを見つめる。
「・・・キャンディは無ぇけどグミならあるぜ。」
ドリアンに歩み寄り、道具入れからグミを差し出す。
満面の笑みでグミを受け取るドリアン。
その顔は本当に子供の様な笑みを浮かべていた。
165 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:03:35 ID:gA+gSIEu0
ドイルと向かい合うリアラ、少女の目とはとても思えない輝きを放つ。
「フゥ・・・小細工は無しだ、最高の術で挑む。」
心を落ち着かせると紫色の導師のローブが黒い光に包まれながら魔力を発散する。
発散された魔力がドイルの上空へと集まり一つになる。
「黒・点・波。」
黒い塊となったそれは漆黒に染まった燃え盛る龍へと姿を変えた。
そしてリアラの攻撃を待ち構える様にドイルの周囲でとぐろを巻く。
ドイルの全力に答えるため、まだ使いこなせていない術の詠唱を試みる。
「氷結は終焉・・・。」
まるでブリザードの中に居るかの様な感覚を覚えるドイル。
最大級の冷気が、自分の上空で究極の氷塊へと姿を変えて行く。
「せめて刹那にて砕けよ!」
その言葉と共に一気に氷塊が出来上がり、ついに完成する。
そして落とされる氷塊、だがこの勝負ドイルは勝ちを確信した。
「インブレイスエンド!」
落とされた氷塊を黒龍が受け止める、解け始める氷。
地獄の炎を龍と為す黒点波、温度は計り知れない。
だがインブレイスエンドは氷を落とす術、冷気には絶対零度という限界がある。
しかも完全では無い、すぐに亀裂が氷に浮かぶ。
意識を集中するリアラ、ここで負ける訳にはいかない。
まだ見ない人々を救う英雄を探し出すまでは、
その想いがリアラの力となる、レンズの力がリアラの周囲を取り巻いていく。
「我が呼び掛けに答えよ! 静かなる意思,粛正の力に代えて!」
氷のヒビが繋がっていく、そして巨大に膨れ上がる。
溶かしても溶かしても修復を続ける氷塊、ついに溶けることが無くなる。
黒龍の炎が弱くなったのではない、絶対零度を超えてしまったのだ。
物質的限界を意思の力で。
「正義の心,我らに!」
具現化するレンズに宿る精霊神、アクアリムス。
その優しい微笑みと共に氷塊へとその身を閉じるドイル。
敗北が訪れた彼は、何故か笑顔に満ちていた。
166 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:06:59 ID:gA+gSIEu0
柳と互角の攻防を繰り広げるカイル、だが長期戦になって剣技の差が現れ始める。
拳法、武器術、暗殺術、どれも達人級の柳だが一つのジャンルを極めてはいない。
だがカイルは父を目指し、英雄を目指していつも剣を振るってきた。
力はロニより無くても、術がリアラより下手糞でも。
情熱、熱意、そして憧れが眠っていた少年の力を目覚めさせる。
ロニと同じ様にレンズの力が体中に広がり、闘気が必殺の間合いを作る。
「させんっ!」
いざという時の非常用に取っておいた切り札、毒手。
その魔の手がカイルに向かって伸びる。
剣での闘いにおいて素手での攻撃に移る機会は限られているため、
今まで使用を控えてきたが出し惜しみが出来る相手では無くなってしまった。
刀でカイルの初弾を弾き飛ばし、そのまま刀を投げ捨てる。
そして体中のどこに当たっても相手に死を決定付ける毒手が、
神がかり的な速さでカイルに向かって突き進む、柳の最高の一撃。
剣が弾かれても再び体勢を立て直し斬りかかろうとするカイル。
だがそれよりも速く毒手がカイルの心臓を貫こうと伸びる。
「もらっ・・・」
レンズの力で硬質化したカイルの肉体に、貫き手で放たれた毒手は頼りなかった。
指という人体で最も使用する脆いパーツを高速で叩き込んだためへし折れてしまった。
「爆炎剣ッ!燃えろぉぉぉ!」
爆炎剣から連続で繰り出される爆炎連焼、レンズの力で生み出された炎の剣を叩き付ける爆炎剣に退く相手に、
振り下ろした剣から地面へと炎の力を伝え遠距離に一瞬で離れたとしても相手を燃やし尽くす。
見事にこの技の特性にハマった柳は連撃の全てを喰らい大ダメージを負う。
そこへ止めと言わんばかりにカイルの奥義が発動する。
「空破、絶風撃!」
思いっきり相手を吹き飛ばす、一見ここから技は繋がらないが、
カイルが全身全霊を込めた秘奥義が存在する。
空を吹き飛ぶ相手に空圧波を飛ばし動きを止める。
「空を絶つ・・・・喰らえ!」
そして柳もまた、自分が敗者である事を悟った。
167 :
二十九話「意思の力」:2006/04/20(木) 00:09:45 ID:gA+gSIEu0
ぬおおお!初投稿時の如くネタが湧き上がってくるわぁ!邪神です。
「投稿しました」とでたのに幾らリロードしても自分の書き込みがでなかったんです・・・。
それで一枚目と二枚目が2つづつになっちゃいました・・・すいません。
サイト管理をしているバレ様に申し訳が立たん・・・腹を割るか。
それでは気分を変えて↓
いやー、ネタを忘れないうちに書こうとすっかりモンハンは深夜限定です。
さぁさぁ秘奥義バトル!んんー、さっさとカイル編終わらせてアミバ武勇伝に移ろう!
あ、スタン達の事忘れてた。全国1000億人のアミバファンの皆様申し訳ない。
スタンやったらアミバ様の「レウスタソ育成日記」とかそんなんに移ろうと思います。
〜もはやタイトルネタの尽きてきた質問&講座〜
153氏 うほっ、久しぶりの質問。俺の中ではですが。
柳=ドイル=ドリアン=スペック>>>>>>越えられない壁>>>>>シコル
みたいな感じですがもしかしたら越えられない壁も越えてくれるかもしれません。
つーかこれ図使わないでシコル以外互角ですって書いた方が速いか・・・。
158氏 活躍では無いですが柳氏にはページ数の問題で次回でもカイルの秘奥義の引き立て役をw
160氏 実はラストシーン近くでの活躍を考えて生かしておきました。
シリアスかギャグかはご想像に。最終回・・・遠いなぁorz
しぇき氏 味方に術が当たらないので「自分の視界に入っており、尚且つ敵と認識」していないと
当たらないのでしょう。周囲の被害も極光術とかジアベシ(ジアビス)の超震動とか異様な力ぐらいでしょう。
ジアベシだとマーキングがないと味方や民衆にも当たる設定のようですが。
全力全開氏 こ、この邪神に敬老精神をッッ!老いたな、俺よ・・・。
168 :
作者の都合により名無しです:2006/04/20(木) 18:38:01 ID:d2of0iQm0
邪神さん乙。
あっという間にヘタレて敗北した柳、ドリアン、ドイルに原作を見るようでした。
希望はシコルとスペックか。スペックはともかくなあw
邪神?さん好調ですね。湯水のごとくアイデアが湧いてきますか。
ちょっと死刑囚トリオは残念だったけど、こんなもんかな。
死刑囚だもんな、強いとおかしいよな・・。
ま、必殺技の試し斬りになったから役には立ったよな
第12話 ウバメガ氏
鞍馬達が居間で戦っていた時と同時刻ーーー
二人の男が立っていた。相良宗介と葵飛丸である。両者とも微動だにしない。唯静かに佇んでいる。
時が止まったかと思える程に周囲は物音一つしない。あれ程聞こえていた銃声さえも今は全くしない。
飛丸が一歩前へ踏み出した。ジリジリと間合いをつめていく。まるで距離を測っているかのように。
「ひょ」
飛丸の右下段回し蹴りが風を切る。ヒュッという音を立てて宗介の膝に迫る。
「遅い。」
宗介は踏み込んだ。踏み込めば下段の攻撃は当たらない。つまり相手の足の甲が自分の身体に
触れる事は無い。カウンターとしてパンチを放とうした瞬間宗介は異変を感じ取った。
戦士しか持たない嗅覚の様なモノ。それが自分の左から来る何かに反応した。
「ケーッ!」
飛丸が叫ぶと同時に先程の蹴りが膝蹴りに変化した。上段膝蹴りである。
「グッ!?」
宗介は左腕で受けたが蹴りの衝撃から来る腕の痺れに呻き声を漏らした。パンチに対するカウンターの
膝蹴りを受けたのだ。先程の下段蹴りは力寄りの攻撃だった。だから遅かった。しかし今回のは素早い。
にもかかわらず硬い。
「む」
一瞬動きが止まった宗介に飛丸がフックと左前蹴りを叩き込む。
「うッ!」
宗介が吹き飛ばされた。ダメージを減らす為に飛んだのではない。吹っ飛ばされたのだ。
「へぇ・・あの連撃食らってまだ立つのかい。まだやりたい所だが・・・残念ながら
それは無理の様だ。」
「何だと!?」
突如、ゴウンという音がした。そしてズシン、ズシンと地響きが鳴る。
「ボスからの命令でな。又どこかで会ったら続きをやるぜ。」
飛丸はそう言うと踵を返して走り去っていった。
「待て・・・クソッ。」
一人ごちると宗介は無線を取り出しスイッチを入れた。外にいる仲間達と連絡を取る為である。
「こちら カーボン1。状況を報告せよ。」
「こちら リトル=カーボン1 作戦成功!」
リトル=カーボン1(ちくタン)が応答した。中にいる敵をあぶり出し捕獲するのが作戦だったので
結果オーライである。
「セイコウ!」
リトル=カーボン2(ちくリン)が回線に割り込んだ。ちくリンは4歳児で姉の言動を真似する癖がある。
「ご苦労であった。一度オーク屋敷前に集合せよ。点呼をとった後解散する!」
「了解!」
とある春の夜であった。
オーク屋敷襲撃事件の翌日ーー
鞍馬達は泉宗一郎の道場に集まっていた。ASに乗っていた敵の身柄はミスリルが確保している。
「あの屋敷の主は助かったわけだ。娘の方はどうなんよ。」
鞍馬が話題を切り出した。屋敷の主の姿は見たが“クヌギたん”という名前の女の子は見ていないのだ。
10歳にも満たぬ年齢でありながら誰でも恐怖を覚えるような戦場から生還した子というのは少なくとも
日本にはそうはいない。
「問題ない。ミスリルがカウンセリングを施した結果彼女に何らかのトラウマの兆候は見受けられなかった。」
宗介が応答した。
ガラリと戸が開いた。
「お茶をお持ちしました。」
泉宗一郎の娘、泉冴子が道場の中へと入って来た。年齢は20代前半である。
「それと・・・丹波さんに会いたい人がいるようですよ。」
「俺に?誰が?」
「丹波のおっさん!置いていかないでくれよぅ、寂しいじゃないかよ。」
「お前は・・・涼二。そんなに来たかったのなら来れば良かったじゃないか。」
「少し目離したらどっか行っちまうんだもんよ。北辰館の連中に人探しして貰ったんだよ。」
久保涼二が嬉しそうに笑みを浮かべた。数年前梶原に破れた後丹波は子分の前から唐突に姿を消した。
そして再び再会するまで涼二は北辰館に身を寄せていたのである。
「丹波君の弟子だね。君は。」
「お久しぶりです。泉さん。お元気そうで何より。」
涼二が軽く会釈した。見た目は不良少年っぽいが根は優しいらしい。
「皆、今回の協力は感謝する。皆のお陰で任務を遂行できた。俺一人では困難だっただろう。
特にびんちょうタン、子供でありながら突入部隊へ参加した勇気は賞賛に値する。
これを受け取るがいい。」
宗介は膝を付きびんと目線を合わせた。懐から銀色のバッジを取り出す。
「ありがとうございます。コレは・・・。」
びんが不思議そうな顔をした。彼女は生まれてから今までこういう物を見たことが無い。
「ミスリルのバッジだ。君は俺達の仲間だ。短い間だが作戦行動を共にしたじゃないか。」
びんは珍しそうにそのバッジを見ると自分の着物の襟付近につけた。白い和服に銀色の
バッジが付いている。一人暮らしで貧しいびんの姿がその時は普通の子供の姿に見えた。
「サガラー、そろそろ出かけるぜ。」
“ボン太君”を回収し箱に詰めたクルツ=ウィーバーが道場の戸から外に出ようとしていた。
「了解。ここから撤収する。・・・・びん、俺は“ウバメガ氏”を必ず助け出す。そして・・・
必ず君と再会させる。」
「え・・・。」
いきなり言われてぽかんとした表情を浮かべたびんを残して宗介はそそくさと車に乗り込んで
去っていった。
「礼儀正しい青年じゃったな。世の中の未来は彼の世代にかかっているんじゃろうな。」
「泉さん・・・・お願いがあるのですが。」
鞍馬が泉宗一郎の前に正座をした。彼の見た目とは違い媚びを売ったり卑屈な態度は微塵も無い。真面目な顔と口調で
話している。
「何だね。鞍馬君。」
「竹宮流の技を学ばせてください。悪用は致しません。」
しっかりと相手の目を見て鞍馬は頼み込んだ。鞍馬は思った。
今の俺にはこれしか無いんだ。奴と、船村弓彦と再戦し勝つ為には。一つの技だけでもいい。
新しいモノ。それを自分の中に取り入れ進化させる。新竹宮流でも名乗るか。
「無論私もそのつもりだ。そのままでいい。稽古を始めようか。」
顔に優しそうな笑みを浮かべ泉宗一郎は頷いた。
「アリガトウございます!」
鞍馬は立ち上がると泉宗一郎に礼をした。
「泉さんって・・・いい人なんだな。冴子さんの性格は泉さんに似たんだな。」
「あら・・・まあ。」
久保涼二の言葉に泉冴子が赤面していた。
とある春の日の昼であった。
すみませんでした。12話と13話間違えましたorz 何卒修正をお願いします。
この後鞍馬達は暫くフェードアウトして宗介の視点から見た物語を描く予定です。
今考えているびんちょうタン編の最後は肩透かし的なモノになってしまうかも知れません。
一応現在自分の頭の中でこの物語の最後は大物となった船村に鞍馬が挑むという
展開なのですが・・・それまでに色々じっくりと描きたいので・・・皆様何卒
よろしくお願いします。話数を言うならば・・・50話ぐらいでしょうか?
びん編→中盤→終盤と描いていきたいので。
中盤頃には「こちら亀有公園前派出所」と「スクーランブル」という作品も混ぜたいと
思います。「こち亀」の面白さを文字だけで表せるほど自分に力量があるかどうかは
わかりませんが・・・・トライして見ます。
長文すみませんでした。ではでは。
フルメタさんお疲れです。全50話ですか!頑張るなあw
鞍馬と冴子が原作に比べてやたらいい人の感じですね。
実質、鞍馬は餓狼サイドの主役扱いかな?いい青年って感じだし。
あれだけの作戦を成功しておいてあっさり解散するのにちょっと笑ったw
176 :
魔法とは:2006/04/20(木) 22:08:08 ID:3MrLDINHO
時空管理局の管理下にあるほぼ全ての世界に存在する「魔力素」を決まった技法において操作することにより、作用を生じさせる技術体系のこと。現在の主流は時空管理局発祥の地でもあるミッドチルダ由来の「ミッドチルダ式」(ミッド式)で、一般的に魔法と言えばこれを指す。
ミッド式以外にも魔法体系はあまたあり、少数派となりながらも伝統ある魔法を残そうとする団体もあるが、管理局法に触れない程危険度が低ければ、魔法体系の保護・運用継続は推奨されている。
中でもミッド式と覇権を争った「ベルカ式」は、今なお根強い使用者が存在する。
177 :
デバイスとは:2006/04/20(木) 22:23:27 ID:3MrLDINHO
魔法運用を助けるための器具を指す。ほぼ全ての魔法体系で使われていて、ミッド式では杖状が主流。
魔法黎明期では高い魔力素を持つ木や魔力石を先端に取りつけるのみの棒であった。
しかし現在は魔法使用のための演算補助装置、魔法データの記憶装置、予備魔力蓄積石、暴発防止用の各種安全装置を組み込んだ電子機器が一般的に使われている。
ミッド式では、演算装置と記憶装置を主としたデバイス「ストレージデバイス」が主流。管理局の正式採用デバイスもストレージ型。
ストレージ型に自立思考と自己機能調整の機能を加えた「インテリジェントデバイス」の使用者もいることはいる。
とはいえ、高価であり自立意志があるゆえ扱いづらいのでそれほど一般的でない。
しかしながら、インテリジェントデバイスと使用者がうまく合えば、本来のスペックを上回る能力を発揮する。
高性能にして高価なデバイスの多くは、戦闘状況に合わせて変形したり、待機状態で小型化したりできる。
ベルカ式では使用者の使う武器の形の武装型デバイス(アームドデバイス)が一般的。
まず第一に武器としての強度・形状・性能が重要視され、加えて使用者の求める魔法の強化・補助機能を付与される。
ベルカの騎士は単一のデバイスに2〜4種の変形を持たせるのが一般的。
最大の特徴はデバイス内蔵の「カートリッジシステム」で、ベルカ民族は保有魔力が少な目なので、魔力を弾丸型ケースに圧縮内包して、デバイス内で炸裂させ魔力を一時的に高める。
但し、デバイス強度と炸裂時の反動などの問題で、使いこなせる魔導師は少なく、そのためベルカ式は衰退した。
ベルカで開発されていたデバイス。ミッド式インテリジェントデバイスを更に一歩進めたもの。
意志を持つデバイスに人の姿を与え、戦況に応じて使用者と「融合」することにより魔法管制・補助を行う。
他形式とは段違いの感応速度と魔力量が得られる。
しかし、適正のある魔導師が少なく手間がかかるうえ、デバイスが使用者を乗っ取る「融合事故」を誘発するため、製品化は中止された。
融合型デバイスの特徴に「使用者の外見変化」がある。正常な状態でも髪や瞳の色が変わるが、融合後の姿は主導権を握れている方に近くなる。
魔法の使用に欠かせない体内の器官。その機能は以下の通り。
・大気中の魔力素を体内に溜め込む
魔導師は魔力素のある空間で生活することで魔力素を体内に取り込む。最大蓄積可能量が「総魔力量」と呼ばれる。
使用した魔力は、体力と魔力を使わず休息すれば回復する。
・体内の魔力を本人の意志のもと、体外に放出する
リンカーコアは魔導師の命であるが、その生成にはいまだ謎が多い。先天資質であり、後天的に生じることはまずないこと、遺伝すること、希に資質のないところから突然変異的に強力な魔導師が発生することが統計によって知られている。
とりあえず魔法についての公式設定です。もっと詳しく知りたい人はこちら↓をどうぞ(ネタバレ注意)
ttp://nanoha.julynet.jp/ 158さん
すみませんでした。なのはの話にはいるので、あった方がいいかと思いまして…
まだ出てきていませんが、ヴィータのデバイス・グラーフアイゼンのラケーテンフォルム(ハンマー型)をシェルブリットバーストかと思いました(実際に同人誌にそのネタがありました)
邪神?さん
敬老精神じゃないですよ…
フルメタさん
スクランということは、イタリアンマフィアも出てくるのでしょうか。生天目さんは今大変ですが…
>全力全開さん
メモ帳などに書く内容をまとめてから書き込んだほうがいいですよ。
短時間でUPできますし、推敲する時間も取れます。
あと、出来れば少し改行して欲しいです。
最初は馴れない部分もあると思いますが、頑張って下さい。週末楽しみにしています。
うちのメモ帳100文字しか入らないんで…
改行は入りきらなさそうだったので削りました
パソコンは週末あたりに来るんですが、引っ越したのでネット環境整備のためアップは少し遅くなると思います
このSSは『伊集院光深夜のバカ力』という深夜ラジオ番組の、
98年頃の名作コーナーをインスパイアしたものです。
このコーナー自体は、20文字×三行=計60文字で『珍妙な』文章を作るものですが、
このSSは漫画(たまにアニメ)で縛った『珍妙な』文章を作るもです。
後、ギャグとかでもありませんし、人によっては全く面白くはないです。
まあ、実験的なモノですので・・。
では↓から投稿させてもらいます。
「ずっと好きだったの」しかし答えはNO。
怒り狂った彼女は自分の糞尿を投げつける。
それが青年真中淳平の映画監督デビュー作。
元ネタ:いちご100%
「オホホホホホ。綺麗な花火ですねえ〜。」
今日も惑星を破壊してご機嫌なフリーザ君。
しかし、帝王でも器物破損罪でプリズンヘ。
元ネタ:ドラゴンボール
必殺の螺旋丸で一瞬で敵を蹴散らすナルト。
しかしそんな彼も食品界では具にすぎない。
だからこの勝負はマンモス西のTKO勝ち。
元ネタ:NARUTO・明日のジョー
子供が遊ぶのは、こどものおもちゃですが、
それでは新橋に良くある店の看板には何て?
大人のおもちゃ?ブー。正解は松屋の看板。
元ネタ:こどものおもちゃ
「リボンがあれば魔法が出るんだってば。」
そんな言葉を真に受けて、試しにSMAPの
木村君の首をギュ〜〜!!TOKIO革命。
元ネタ:姫ちゃんのリボン
思うよ。彼と私はどこかで繋がっていると。
何処かで失くしたあいつのアイツだってね。
そんなことを言っている女の顔はムカデ顔。
元ネタ:DNA〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜
ジャイロボールは漫画クラスのレアボール。
そんな吾郎君に騙されて、やってみました。
一人反逆児。だから今日は私の退学記念日。
元ネタ:メジャー
世の中はエロで動いている!!男の煩悩で!
だから自然と玉が出ると。言ってみたいな。
爆笑問題の小さい方の人の目の前に行って。
元ネタ:GS美神・極楽大作戦!!
秘密道具を使用して酷い目に会うのび太君。
それでも懲りない彼は石ころ帽子を使用中。
ふと気づいたら、いつもとなんの変わりが。
元ネタ:ドラえもん
スネ夫とジャイアンの家の家計が大ピンチ!
そこでスネ夫、ジャイアンの歌を防衛庁に。
すると一年後には目黒や世田谷区に豪邸が。
元ネタ:ドラえもん
地上最強の生物。でも所詮は戯画のキャラ。
だから相手は火に弱い。いちげきひっさつ!
勇次郎燃ゆ。ついでに自分と我が家も・・。
元ネタ:グラップラーバキシリーズ
どうもしぇきです。
まあ、実験的なものです。
漫画縛りはキツイな〜。でも、書いている方は面白いので、思いついたら投稿させてもらいます。
>153さん
すいません。2回裏です。
ギニュー編も前後編なので長くなります。
まあ、あらすじは全て作ってあるので投げ出す事はないです。
>155さん
今年中・・。に終わると思いますが・・。GWと夏休みをフル活用で。
>157
そうですね。押尾先生は偉大です。
それでも窪塚にかないませんが・・。
>158さん
このキャラごとのシリーズは、最初の練習試合で、ドラゴンボール的試合は、
単調でつまらなくなる事に気づいたことから派生したものです。
本来は実力がある方が書けば、そんなことにはならないのでしょうが、
自分にはその実力がないのでキャラごとの『付加価値』とちょっとした性格付けを目的としたSSにしています。
おかげでドドリアには熱血漢と『ラムネドライバ』が、ザーボンには友情補正がつきました。
>160
すいません。
スクライドはチャンピョンでもやっていたので、漫画版の方なら知っているかな?と思い使用しました。
登場人物紹介は、次の投稿で付録的に付けておきますので興味がありましたら読んでみてください。
まあ、原作と違う風にしていますが。
う〜ん……
>邪神?さん
おお!!湯水のようにあふれ出てくるとは!!
ますます期待しています。
そして死刑囚とも決着。秘奥義あり、具現晶霊あり。
一レスずつで見所満載の文章。素晴らしいです。
個人的もテイルズのSSを書こうとしていましたが、よく考えたら長編
になる事に気づいたので断念しました。
>フルメタルウルフズさん
未決着!!続きが気になります。
とりあえずは、びんたちが無事で何より・・。
そして宗介がミスリルのバッチを渡したところに、彼本来の熱くて優しい性格を垣間見た気がします。
ガウルンが出てくるのかは解りませんが、出てきた時は非常に熱い戦いになりそうです。
後、全50話だそうなので終盤になる頃には今の宗助や鞍馬が弱いくらいに見えてしまうのでしょうね。
>全力全開さん
解説お疲れ様です。
携帯から投稿するのは難しいでしょうが、次の投稿も楽しみしています。
それにしても、魔法という概念は漫画やゲームで大きく違ったり、全く違わなかったり。
色々合って面白いですね。本当に人間に生まれて良かったと思う一瞬です。
では失礼・・・。
忘れてた。
20×3行は、ワードで確認したものです。
「 で、若干少なく文字数が見えるのも数えれば20文字×3行になっています。
>190
まあ、そういう反応でしょうねw
やっぱり万人向けじゃないのかなあ〜。
>>192 変化があっていいと思うよ。
近年のここはレベルは高いんだけど
どうも変わりばえがせんのよね。
無個性というか、きわめて狭い範囲内におさまる個性
ん?なんだか〜さんが所々抜けてる。(汗・・。)
すいません。敬省略になってしまって。
>193さん
そう言っていただいて幸いです。
変なSSはたくさん書きたいと思っているので、たまに変なのを書いたら
鼻で笑っていただければ嬉しいです。
長々としてしまいスイマセン。失礼します・・。
>フルメタルウルブス
いや、結構なチームワークで蹴散らしましたな、カーボンズ。
鞍馬を中心としてこれからもびんちゃんを守っていくのかな?
色っぽい冴子が出たのはびんちゃんとの対比のためかな?
>全力全快さん
設定はわかり易いですねー。これからの作品の参考になります。
パソ環境が整ったら大活躍、期待してますよ。
>三行革命
おお、深夜のバカ力は覚えてますよー。好きでした。
新機軸のSS?ですね。というか、一発ネタの集合体かな?
これからも野球以外にも、こういう実験作も読んでみたいな。
196 :
作者の都合により名無しです:2006/04/21(金) 16:38:12 ID:4B11QCg30
「三行革命」はどう反応したら良いんだろう。あれはラジオのノリだから笑えるんだけど。
ただ、敢えて新しい事に挑戦するしぇきさんの姿勢には敬服します。応援してますよ。
「フルメタルウルブス」、鞍馬が物語作ってますね。フルメタルパニック(でしたっけ?)は
原作知らないんで、出来ればこのまま鞍馬主役が良いな、と個人的には思います。
全力全快さん、設定と解説お疲れ様です。今度は本編でお会い出来れば。
197 :
ふら〜り:2006/04/21(金) 21:09:58 ID:nOJ/93Iy0
>>見てた人さん
今までの「じわじわ迫ってくる恐怖」ではなく「眼前につきつけられた危険」の中での
謎解き、じゃない謎罠。ゾッときましたよ〜。敵ながら見事。流石。やっぱりタダ者じゃ
なかったですな。観客(?)の心理も、感情移入すれば理解できてしまう。突破口はっ?
>>ハイデッカさん
遂に出たか呂布。単騎で戦場を引っくり返すぐらいは慶次もやってきましたが、さすがに
一声でってのはなかったような。しかもロウ槍のハンデ戦。加えて、ジャンヌの変化ぶり
を気に掛けてたし、戦いの最中に彼女の悲鳴とか聴いて雑念入ってそれが隙に……心配だ。
>>邪神? さん
>君たちの世界にはないだろう?
あ〜好きですよこういうの。クロスオーバーの醍醐味の一つ。バトルは豪快に気持ちよく
三連着、短いけど呆気なくはなかったです。三人ともヘタレず、こういうところ邪神さん
は本当に巧い。つーか、これでスペック大活躍の下地が整ったと解釈して宜しいかっっ!?
>>しぇきさん
フリーザ野球軍
かなみを捕え、バニーの衣装で身代金要求するかチノパン愛好会? 『体だけ大人』って
女の子だと実にアレですが、こやつらに被せるとタチの悪さが跳ね上がるフレーズですな。
三行革命
ちょっと解りにくいですが、私も漫画を絡めつつ漫画以外を取り込むというのは歓迎です
(つーか私が一番遠距離から引っ張ってますし……)ので。こういう試み、広げて下さい。
>>ウルフズさん
バッジをプレゼントして仲間宣言か……宗介なら、びんみたいな年格好で真剣に殺し合い
してる女の子ってのも見慣れてるんでしょうけど、でもびん自身みたいな女の子ってのは
新鮮だったのかも。で私は
>>196さんと正反対なのですが、果たして今後の路線や如何に。
>>全力全開さん
過酷な環境の中、お疲れ様です。アップが遅れるということは、それだけ作品を練れる
ということ。であるならば、こちらの期待も高まるというもの。待ってますぞっ。
198 :
今回、ちょっと長いよ:2006/04/21(金) 21:41:16 ID:AaG3MRgP0
第十八話 花束を捧げるように
傑出した能力を持つ人間が、その力を極限まで発揮した時に、人と神の狭間は消える。
人が神の域に踏み込み、神と人とが同一化する境地。それを天と呼ぶ。
人はそもそも地を這うものである。
どんな英雄天才とはいえ、人は羽を持ち得ない。空を翔る事は不可能である。
が、限りなくそれに近付くことは可能である。
人として地を這いながらも、人外として精神は空を、宇宙を駆けていく。
人はその境地に達する事が出来る。歴史上でも、ほんの一握りのものだけだろうが。
だが、そこに辿り着くには才だけでは足りない。
天与の才だけでは、人と神の間に横たわる大河を渡り切ることは不可能である。
ならば何が大河を超えさせるのか? 多分それは情念であろう。
稀有なる才のものが、情念を燃やし尽しその一瞬に己の全てを捧げた時、大河は消える。
人が神となる瞬間。情念が人を超えさせる瞬間。
戦神。飛将軍・呂布 奉先。
救世の神子、ジャンヌ・ダルクを手に入れんと渇望するもの。
オルレアン決戦の数日前。場所、日時ともに詳細不明。
ただ灰暗い場所に、魔人が3人蠢いている。
常人がその場所に踏み込めば、立ち込める瘴気のみで卒倒してしまうような魔窟である。
その場所に、魔人が3人。
玉座に身を沈め、倣岸の冷笑を浮かべワインを嗜むは、魔王・織田 信長。
その傍らに付き従うように剣鬼・宮本 武蔵。
そしてその2人と微妙な距離を置き、差し向かうは戦神・呂布 奉先。
人外の怪物たちの密談である。
199 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 21:42:20 ID:AaG3MRgP0
呂布が信長に向かい、吐き捨てるように言葉を吐いた。
武蔵がその言葉に、殺気染みながら身を乗り出す。が、信長は笑みを浮かべたまま。
「……で、あるか」
彼の口癖である。動揺は微塵も無い。たった今、呂布は信長を拒絶したというのに。
信長は呂布にこう申し出た。命令と言っていい。 ……俺の、家臣になれ、と。
呂布は信長に背中を向け歩き出した。オルレアンの地に向かう為である。信長が言った。
「もう一度聞く。俺の下に付く気は無いのだな? 天下を、手に入れられるぞ」
呂布は立ち止まる。が、振り返らない。信長は余裕の微笑みのまま。呂布は呻いた。
「お、お前は、つ、強い。お、おそらく、董卓以上に、よ、世を握るだろう」
「フム」
「だ、だが、今の俺は、て、天下には、興味が無い。も、もっと欲しいものが、ある」
「ホウ。天下以上にか。聞きたいものだな。それは何だ、呂布」
「は、花嫁。て、天下一の、女。 ……ジ、ジャンヌ・ダルク」
「フフ。花嫁か。 …たかが女一人と天下を天秤に掛け、女を取るか」
呂布は信長へ振り返る。目には殺気がある。が、頬には赤みが差している。
「ワハハハハハ。天下の武人とまで後世に呼ばれた怪物が、顔を赤らめておるわ」
信長の爆笑を受け止め、呂布は微動だにしない。ただ彼はどもること無く言った。
「俺にとって、世界一の女を手に入れるのは、天を握るのに等しいのだ」
呂布はそう言い残し、信長たちの前から姿を消した。
「あれに勝てるか、武蔵」 信長の問いに、武蔵は黙ったまま答えない。
「フフ。俺を前にしてあの情念、大したものよ。本当に手に入れるかも知れぬな。
あの男なら、ジャンヌ・ダルクを己が腕の中に」
「信長公、あの男、いずれ我々の敵に」 武蔵の言葉を、笑い飛ばす魔王。
「フフ。それはそれで面白い。この時代の天下布武、今のままでは退屈でならん」
魔王に屈せぬ情念を纏ったまま、怪物は立ち塞がる。フランス軍の前に。
200 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 21:43:04 ID:AaG3MRgP0
「ジ、ジャンヌゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
オルレアンの地に、言霊の落雷が起きる。
戦神の一声に、全軍の動きが止まる。まるで蝶が蜘蛛の糸に掛かったように。
その主の気合と呼応するように、千年の名馬・赤兎が大地を跳ねた。
疾走というよりも跳躍というほどの速度である。
目の前の全ては、この怪人怪馬にとって小石にすら値しない。
フランス兵が、そしてイギリス兵すら、赤兎の前に埃のように払われていく。
無人の野を行くが如く。燎原の火のように。
そんな陳腐な喩えが意味を成さぬほど、圧倒的な進軍である。
「ジ、ジャンヌゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
戦況は一変した。
先程までオーギュスタン砦の崩城まで数呼吸、といった勝勢が、敗勢へと激変する。
一人の魔人の存在は、数千の凡兵を遥かに凌駕する。
所詮、子犬の群れに竜を止める事は出来はしまい。
止められるとしたら、それは虎である。この魔人と対峙出来るのは、たった一人である。
その男が、美しい馬を駆りながら戦線へと参加した。一騎討ちのために。
前田 慶次と松風が、呂布 奉先と赤兎の前に立ち塞がった。
「の、退けい、も、もう貴様に、よ、用は無い!」
呂布の方天画戟が慶次の首目掛け奔った。が、慶次の朱槍がそれを受け止める。
「お、俺を、と、止められると思うか、ま、前田 慶次!」
「試してみるさ」
お互いの武器が軋み合う。肉と肉、骨と骨、魂と魂、命と命が火花を散らし合う。
が、ジヤンは直感する。その男には勝てぬ。人では、勝てぬ。
ジヤンは呂布の顔を思い出した。目が血走り、血管が浮き上がっている。鬼の面相。
おそらく、呂布も慶次も武人として史上最強の域であろう。
が、今の呂布はそれすらも超えている。
おそらく、呂布すら今まで達した事の無い域に今あの男は居る。
己の全てを引き換えにして、ジャンヌを手に入れる為に。
201 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 21:43:40 ID:AaG3MRgP0
戦場の彩りが変わっている。
確かに、先程までは合わせて1万以上の兵が群がる総力戦であった。だが今は違う。
喩えるなら、それは演劇である。極上の、命懸けの芝居である。たった2人の。
いくさが止んでいるのだ。敵味方関係なく、中央での戦いに魅入っている。
怪物2人の一騎討ちが、兵たちの目と魂を捉えて放さない。
慶次の朱槍が風を裂く。呂布の方天画戟が大地を震わせる。
戦法としてはお互い単純極まりない。最強の打撃を、最高の速度で繰り出すだけである。
が、何故かそれだけの攻防が、たまらなく美しい。
何度、方天画戟が慶次の急所を狙っただろう。
幾度、朱槍が呂布の命を削らんと閃いただろう。
数百回もの打突音が戦場に鳴り響いた。
それは粗野なれど美しいメロディーを奏で、戦士たちの心に哀しく鳴り響いた。
ベルトランは既に、ジャンヌの前に奔り込んでいた。彼は2人の戦いに目を細める。
(なんと、羨ましい奴らよ)
戦士として究極の域に達した自分に、応えてくれる相手がある。どれほど幸せだろうか。
(そして奴らは何処から来て、何処へ帰るのか)
しばし、哲学的な問いがベルトランの脳裏を掠める。その時、互角の均衡が破れた。
「き、貴様、お、俺を、だ、誰だと思っている!!」
突然、呂布が激興する。それと同時、全身全霊を込めた横殴りの一撃が唸りを上げた。
完全なる速度と、高密度の膂力を詰めた最強の一撃である。
慶次は朱槍を盾に、その一撃を受け止めた。が、呂布は更に大きく一歩踏み込んだ。
「慶次。き、貴様には、さ、殺気が無さ過ぎる。お、俺には勝てん」
朱槍が悲鳴を上げる。鉄条を幾束に纏めて編み上げた、慶次専用の特注の槍が、である。
慶次が受け止めたのに構わず、呂布は更に踏み込み、力を込める。
朱槍に亀裂が入った。呂布が誇るように、だが何処か寂しげに叫んだ。
「こ、殺す気で戦場に立たない奴に、お、俺が負ける訳が無い」
202 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 21:44:17 ID:AaG3MRgP0
ベルトランの不安が最悪の形で的中した。慶次のジャンヌへの想いが仇となっている。
決戦前に槍に染み込ませたロウ。敵兵に殺さぬように加減していた打撃。
戦場に立ちながら、殺気を何処かに置き忘れている。
ジャンヌが、慶次になるべく敵を殺さないで欲しいと言った。たったそれだけの理由で。
それでも並の相手なら慶次ならどうとでもなる。が、今の相手はあの呂布である。
魔人。超常の強者。慶次ですら、互角に戦う事も難しい相手である。
そんな相手に対しても、ジャンヌの言葉を守ろうとするのか、慶次よ?
ベルトランの思いも虚しく、勝負は付こうとしている。
呂布の方天画戟が、ついに慶次の朱槍を弾いた。
そしてその隙間に、呂布の力任せの追撃が滑り込む。横薙ぎのそれは脇腹へと激突する。
「くはあっ」
慶次が喀血した。おそらくは地上最強の一打を受けたのだ。常人なら即死であろう。
いや、慶次でもまともに食らえば死んでいたに違いない。息があるのは松風の功である。
呂布の剣戟が慶次の腹に当たる瞬間、この神馬は僅かに、しかし信じられない速度で
後方に跳ねていた。人馬一心の慶次と松風だからこその呼吸である。
最強の打撃を、最小限の傷に抑えたのは不幸中の幸いであろう。
が、この一撃で体勢が崩れた。松風は地に臥し、慶次と体が離れた。
呂布はもう、慶次と松風に一顧だにしない。
彼に見えているのは、もう目鼻立ちがはっきり見える距離に捕えたジャンヌだけである。
「ジ、ジャンヌゥウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
魔獣がまた吼えた。そして赤兎は主人の意を受け、再度駆け出した。
一直線に。この世で一番美しい花嫁の下へと。
203 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:00:05 ID:AaG3MRgP0
まるで海を2つに拓いたモーゼのように、呂布の目の前の兵が割れていく。
数千の兵はただ逃げ惑った。神子を護るはずの近衛兵すら、蜘蛛の子を散らすように。
呂布の前に空間が拓け、道が出来上がる。その先にいるのは、ジャンヌだけである。
もう誰も彼の進撃を止められぬ者はいない。戦場の誰もがそう思った。
その時、たった一人の騎士が飛び出した。鬼神・呂布に向かい、真っ正面から。
ベルトランである。
「大丈夫だよ、松風。いつもすまないね」
倒れた慶次を敵から護るように立ち塞がっていた松風に、慶次が言った。
ほんの少しだけ脇腹を抑えた。折れてはいない。が、ヒビは入っているかも知れない。
「あいつ強いなあ。楽しくてたまらんよ」
涼やかにそう笑った。強がりではない。本当に楽しいからそう言ったのである。
「だが、ジャンヌ殿をやる訳にはいかんな。さ、行くか松風」
戦場を凝視すると、すぐ呂布の姿を確認する。同時、友の姿も見た。哀しげに呟く慶次。
「ベルトラン、まさかお前」
松風に跨り、再度戦場に参戦した。慶次と松風は全力で駆ける。友を死なせぬ為に。
俺は今、絶望的な死の壁に戦いを挑もうとしている。
馬が馬蹄を一踏みする度に、信じられないほどの圧力が加速度的に増していく。
生きては帰れまい。が、俺は僅かに時間を稼ぐだけでいい。
俺は剣ではない。この怪物を斬る力は俺には無い。俺は盾だ。ただ護ればいい。
俺の肉も、俺の骨も、俺の命も、俺の人生も。全てはこの瞬間、この時の為に。
フランスを救う聖女、ジャンヌ・ダルクを護る盾となる為に存在したのだ。
満足だ。ランスロット卿にはなれなかったが、俺は騎士として死ぬ事が出来る。
いや、死をもって初めて俺は騎士になれる。そんな気がする。
204 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:00:57 ID:AaG3MRgP0
呂布が猛る。もう、ジャンヌは手を伸ばせば届きそうなところにいる。
歓喜が背中を駆け巡る。地上、いや歴史上にただ一人、俺に相応しい女が、もうすぐ。
俺の手の中に、俺の花嫁として。赤兎がますます加速した。
慶次が呂布を追う。が、慶次の松風と呂布の赤兎は互角の脚力の至上の馬である。
既に遥かに先にいる赤兎との距離が縮まる事は、無い。
ジャンヌは動けない。呂布の圧倒的な気に撃たれ、その場から動けない。
こうなるとただの18歳の乙女である。魔人に抗う術は無い。
ジヤンが、ラ・イールが目を疑った。呂布の前に飛び出す影が、ひとつ。
呂布が哂った。目の前にたった一人飛び出してきた騎士を見て。障害物にもならぬ。
道端の小石を蹴飛ばすのに、なんの苦労があろう。方天画戟の柄を握った。
ベルトランと呂布が瞬間対峙した。ベルトランが剣に手を添えながら叫ぶ。
「怪物め、ここから先は一歩も通さん。我が名は…」
その口上が最後まで告げられる事は無かった。呂布は彼を無造作に袈裟斬りにした。
速過ぎて反応が出来ない。ベルトランの胸から大量の血が噴き出した。
構わずベルトランを押しのけ、通り過ぎようとする呂布。
だが、ベルトランにも呂布以上の情念があった。
その情念は彼を死なせない。情念が体を動かしていた。魂が突き動かしていた。
ベルトランは斬られざま、そのまま飛び移っていた。赤兎の馬上へ。
呂布が不意を突かれる。斬ったはずの相手に、後ろからしがみ付かれたのだ。
205 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:02:24 ID:AaG3MRgP0
血だらけのベルトランが、赤兎の馬上で呂布に組み付いている。
呂布の中にほんの一瞬だけ、生まれてから味わった事の無い感情が湧き上がった。
「き、貴様、今、俺が、き、斬った…」
しがみ付いたベルトランが、鬼の表情で呂布の首筋に爪を立てる。頚動脈に指が食い込む。
呂布の首筋から血が滴り落ちた。力任せに剥がそうとする呂布。が、剥がせない。
呂布の中で未知の感情が増大していく。何故、この男を払えない?
「き、貴様、な、何者だ」
「我が名、ベルトラン・ド・プーランジ。聖女の盾の栄に浴し者なり」
「く、下らんゴミ風情が、り、龍にまとわりつくなっ」
「フ、フフフフ」
「な、何がおかしいっ」
「力はお前の方が上かも知れん。だがやはりお前は前田 慶次に遥かに劣る。
あの男は、たとえ敵でも命懸けの男を見下したりはしない」
慶次は駆けている。まだ、呂布とベルトランには追い付けない。
だが、ベルトランの顔は見える。そして感じだ。あれは、しびとの顔だ。
しびと、即ち死人。生きながら死の境地にいるいくさ人。
如何な呂布が強靭な男でも、死人は殺せない。しびとは倒せない。
「呂布。騎士と傭兵の違い、教えてやる」
既にベルトランの声は掠れ始めている。目の焦点がぼやけ始めてもいる。
だが、呂布の首に食い込ませた指の力だけは衰えない。呂布すら振りきれない程に。
「傭兵は逃げる事が許される。が、騎士は己以外のものの為に死ぬからこそ騎士」
赤兎が2人を乗せながら、まっすぐ駆けていく。もう、ジャンヌは目の前である。
「ただ自分の為に生きる怪物、騎士の生き様をとくと見いっ!!」
206 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:05:21 ID:AaG3MRgP0
血だらけのベルトランが、赤兎の馬上で呂布に組み付いている。
呂布の中にほんの一瞬だけ、生まれてから味わった事の無い感情が湧き上がった。
「き、貴様、今、俺が、き、斬った…」
しがみ付いたベルトランが、鬼の表情で呂布の首筋に爪を立てる。頚動脈に指が食い込む。
呂布の首筋から血が滴り落ちた。力任せに剥がそうとする呂布。が、剥がせない。
呂布の中で未知の感情が増大していく。何故、この男を払えない?
「き、貴様、な、何者だ」
「我、ベルトラン・ド・プーランジ。聖女の盾の栄に浴し者なり」
「く、下らんゴミ風情が、り、龍にまとわりつくなっ」
「フ、フフフフ」
「な、何がおかしいっ」
「力はお前の方が上かも知れん。だがやはりお前は前田 慶次に遥かに劣る。
あの男は、たとえ敵でも命懸けの男を見下したりはしない」
慶次は駆けている。まだ、呂布とベルトランには追い付けない。
だが、ベルトランの顔は見える。そして感じだ。あれは、しびとの顔だ。
しびと、即ち死人。生きながら死の境地にいるいくさ人。
如何な呂布が強靭な男でも、死人は殺せない。しびとは倒せない。
「呂布。騎士と傭兵の違い、教えてやる」
既にベルトランの声は掠れ始めている。目の焦点がぼやけ始めてもいる。
だが、呂布の首に食い込ませた指の力だけは衰えない。呂布すら振りきれない程に。
「傭兵は逃げる事が許される。が、騎士は己以外のものの為に死ぬからこそ騎士」
赤兎が2人を乗せながら、まっすぐ駆けていく。もう、ジャンヌは目の前である。
「ただ自分の為に生きる怪物、騎士の生き様をとくと見いっ!!」
207 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:06:59 ID:AaG3MRgP0
ジャンヌはいまだ動けない。
もう、呂布は息が掛かりそうな場所まで来ているというのに。
ベルトランの情念が尽きようとしている。命の炎が消えようとしているのだ。
(頼む、もう少しだけ、我が命よ)
指先から力が抜けていく。体が、呂布の剛力に抗えなくなってきた。
泥のように体が重くなる。先程まで、空気ほどにも重さを感じなかったのに。
ズルリ、と体が落ち始めた。呂布の顔に邪悪が戻る。力任せに引き剥がした。
赤兎の足元に、ベルトランが転がった。彼の情念は、尽きたかに思えた。
呂布が虚空に向かって吼えた。獣のように、王者のように。
あと少しで、望んでいた全てが手に入る。もう、そこ。手を伸ばせば届くところに。
ベルトランは動けない。結局、俺は聖女の盾とはなれなかったのか?
騎士として、やはり俺は中途半端だったのか?
いや、俺などどうでもいい。ただ、聖女よ。俺を、俺の好きなフランスを……。
ジャンヌは動けない。震えたまま、呂布の抱擁を待っている。
その時、ジャンヌは見た。ジャンヌの目に飛び込んできた。
ベルトランの瞳を。哀しいほどの激情を。そして騎士の誇りを。
そこには、ただフランスを愛する男がいた。祖国の為に命を賭けた男がいた。
ジャンヌは撃たれた。その瞳に。ベルトランの情念に。
熱く、哀しく、自分を護る為に盾となった男から、ジャンヌは何かを受け取った。
そして彼女の呪縛が解ける。
「ジ、ジャンヌ、やっとだ、やっと、お、お前を」
ジャンヌを抱き寄せようと呂布が手を伸ばした。ジャンヌはまっすぐ呂布を見ている。
頬すら赤らめているように見える。ジャンヌが穏やかに微笑んだ。
そしてゆっくりと、静かに、優しく。ジャンヌは呂布の心臓に白銀の剣を刺した。
そのジャンヌの仕草はまるで、愛する者へ、花束を捧げるように。
208 :
聖少女風流記:2006/04/21(金) 22:19:20 ID:AaG3MRgP0
呂布が一瞬、信じられないといった顔をする。
胸が赤く染まっていく。心臓へと、ずぶりと深くジャンヌの白銀の剣が沈んでいく。
ジャンヌの目に涙が溜まった。生まれて初めて犯した禁忌である。
それが、まさか史上最強の武人、呂布 奉先。
慶次が到着した。ジャンヌが呂布を刺している。その場面に、慶次は眉を顰めた。
だが、呂布の顔、先程までの狂気と情念は去っている。まるで少年のような顔である。
呂布が、ジャンヌに言った。優しく、まるで恋人に愛を語るように。
「は、初めてか」
「え…?」
「お、俺が、は、初めての男か」
――――――――お前が、初めて殺した男は、俺なのか?――――――――
ジャンヌは少しだけ言い淀んだ。が、まっすぐ呂布の顔を見ると、微笑んでいった。
まるで恋人に花束を捧げるような、最高の笑顔で。
「はい。あなたが、私の、初めての人です」
呂布。満足げな微笑を浮かべている。体が少しずつ透き通っていく。
光の粒子に包まれていく。慶次の方に振り返ると、素晴らしい笑顔で勝ち誇った。
「け、慶次。俺がジャンヌの、は、初めての男だ。俺の、か、勝ちだな」
慶次。その笑顔に、涼しげな笑顔で返した。戦場らしからぬ清涼な風が吹く。
「ああ、俺の完敗だ」
生まれたままのような純粋な史上最強の男が、最強のまま天へ帰っていく。
光の粒が弾けた。まるで蛍の群れのように、一斉に天へ昇っていく。
「おお、快なり…」 そう言い残して。
5月6日。オーギュスタン砦をフランス軍、制圧。
209 :
ハイデッカ:2006/04/21(金) 22:22:57 ID:AaG3MRgP0
疲れたわ。後書きもめんどくせーわ。
しかも、1レス消えてどっか言っちゃった。(206と207の間)
まあ意味通るからいいか。
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。
210 :
ハイデッカ:2006/04/21(金) 22:35:15 ID:AaG3MRgP0
あ、今見たら205と206同じ内容のが2つあるな。
まあサービスだ。
しかしグダグダだなこりゃw
前半のクライマックスシーンのつもりだったのに。
思うように書けないわ、1レス無くすは、DVDは返し忘れるわ。
どうしようもないな。
2話分けるべきだった。その点は反省。
ハイデッカ。
お前をけなしてやる。
お前のSSで久しぶりに感動したよ。ありがとう。
うん、俺もちょっと感動した。
慶次がすっかり影薄いけど(負けてるじゃんw)
呂不、ジャンヌ、ベルトランが凄くよかった。
3人の死に様が最高だった。
それだけに今回の後書きは心底ウザかった。
いつものエロの方がずっとマシ。あれは笑えるし。
213 :
三十話「4対の闘神」:2006/04/21(金) 23:56:24 ID:lt67Ik050
薄れ行く意識の中で悟る、サルーインによって記憶を奪われ飼い馴らされたという事を。
この手に仕込んだ卑劣な毒手、これが自分の技を曇らせてしまった。
目を閉じれば安息へと旅立つのであろう、永遠の安らぎへと。
「絶破!」
レンズに宿る炎の力が剣へと注ぎ込まれていく。
今出せる全ての力をこの一撃に、空を裂く炎が柳を包む。
「滅焼撃!」
また敗北してしまったと言うのに、何故か心地よい。
サルーインの支配から逃れた事へか、これが望んでいた真の敗北なのか。
炎に焦がされた身体がドサリと地面に落ちる。
だが感じる違和感、死に繋がる傷を負ったなら何故意識が飛ばない?
「貴様、加減しおったな・・・・」
もう指一本動かす力も残ってはいない、地面の冷たさが心地よい。
こんな感覚は、あの時の敗北では味わえなかった。
だが、やはり手加減されたのは不服であった。
相応の理由も無く加減したならば今すぐ立ち上がり、殺す。
そんな想いを秘めながらカイルに問いかける柳。
「初弾を当てた時の貴方の表情は、とても殺人者の物に見えませんでした。」
無言で耳を傾ける、倒れこむ柳へ勝者だと言うのに頭を下げながら、
話を続けるカイル。
「貴方は、武人です。」
武人、久しく聞かなかった言葉だった。
サルーインの手足としてターゲットを殺し続けてきた。
悪党、外道、そんな言葉をこの背に浴び続けてきた。
そんな汚れ果てた自分に、闘いに生きる者の姿を見てくれたとは。
「負けだ・・・私の。」
214 :
三十話「4対の闘神」:2006/04/21(金) 23:57:58 ID:lt67Ik050
「ここへ来る前の十字路で花山と出合った筈だ、奴の居た道の反対が聖堂となっている。
そこへ行けばアサシンギルドを動かしている奴が居る。」
花山、あの巨漢の事だろう、もう戦う力は残り少ない。
どうするか考え込んでいると、氷を破ってドイルが出てきた。
一瞬、剣を構えたがその必要は無かった。柳と同様に戦う力はもう無い。
「これを・・・。」
そう言うとドイルは札の貼られた奇妙な石を取り出した。
純白な不思議な輝きを放つその石はとても神聖な物に見えた。
「結界石、周囲に居る人間の治癒能力を極限まで高め、傷を完治させる。
札を剥せば結界が発動するから魔物に邪魔される事は無い。」
罠かと思ったがドイルの目が警戒する必要は無い事を告げていた。
早速、結界を引き剥がして結界を発動させる。
それと同時に体が燃える様に熱くなり、傷口が塞がっていく。
柳も、ドイルやドリアンも同様に傷口が塞がる。
だがドリアンの崩壊した精神までは治せなかった。
「すまなかった・・・。」
謝るロニ、原因を作った自分に罪悪感を感じる。
しかし、下げられた頭に掛かったのは慰めの言葉では無く、柳の鉄拳であった。
「バカヤロォ・・・敗者に頭下げる奴がいるか。」
相当痛かったのか、頭を抱えてその場にしゃがみこむロニ。
大笑いする一同、ドリアンも年に似合わぬ幼子の様な笑みを浮かべていた。
少し休むとすっかり傷口は塞がり、準備が整う。
余りにも体の調子がいいので寝てしまったカイルをロニが起こす。
「カイルぅ〜、おーい起きろー。」
揺さぶっても耳元で大声で呼んでも起きない。
最終手段を取るしか無い、おたまとフライパンを持ち出すリアラ。
「秘技、死者の目覚め!」
どんなに強く、逞しくなっても親から譲り受けた、
カイルの寝起きの悪さだけは変わらなかった様だ。
215 :
三十話「4対の闘神」:2006/04/21(金) 23:59:22 ID:lt67Ik050
寝ぼけ眼で周囲を見渡すカイル、完全な目覚めでは無い様だ。
「あれぇ・・・ここどこ?」
後頭部へとロニの張り手が飛ぶ、前のめりに倒れるカイル。
少しは目が覚めたのか目を擦りながら周囲を見渡す。
「ん・・・柳さん達は?」
理性が戻ったのか辺りを見回し上位アサシンの3人が居ない事に気付く。
疑問に思いながらも体の調子を確認するため立ち上がり、背筋を伸ばす。
「やる事がある、とか言ってさっさと行っちまったよ、
俺たちもグダグダしてらんないぜ。」
地面へと叩き付け、攻撃を防ぐ、それを繰り返して刃こぼれした槍斧を磨くロニ。
慣れた手つきで砥石を巧みに使い刃を磨いて行く。
「ほら、お前の剣も磨いておいたぞ。」
そういって寝る前までは背中に背負っていた鞘と剣を渡してくれた。
鞘から引き抜いてみると自分でやるよりずっと丁寧に磨かれていた。
まだ癒えていない体で武器の手入れをさせてしまった事に反省するカイル。
「ありがとう、ロニ。」
そう言うとロニの小麦色に焼けた健康的な顔が笑顔に包まれる。
リアラも十分休めた様だ、彼女の雪の様に真っ白な肌がいつもより健康的な白に見える。
石の力でみんな完全に体力を取り戻し、武器も新品同様に戻った。
迷う事は何一つ無い、扉へと歩を進めるカイル。
最初に部屋の扉を開け放った時よりも更に力強く、
十字路への道を開く。
216 :
三十話「4対の闘神」:2006/04/22(土) 00:00:00 ID:1CZbtBdR0
〜ユダ専用治療室〜
高級感溢れる装飾に彩られた美しい部屋。
一見ホテルか何かのように見えるが至って普通の治療室だ。
そのベッドに横たわる大男が一人、寝言を呟いていた。
「マンジュウ・・・。」
よだれを垂らしながらベッドに横になるスペック。
やはりその姿は美しくない、そう思いつつもスペックを見つめるユダ。
だがその血は熱く、義に生きた漢、レイを彷彿とさせる。
裏切りの星、今まで自分を美と知略の星と呼んで来たがやはり裏切る事が宿命なのか。
「俺もレイの様に義に生きてみせよう・・・この体砕けても。」
血の様に赤いマントを身に纏い、部屋を後にするユダ。
目指すは十字路の入り口、カイル達の存在に気付くであろう、
アサシン集団の通り道へと一歩一歩進んで行く。
「フッ・・・死の神デスよ、支配されたこの体にチャンスをくれるというのか。」
サルーインへの裏切りをしようというのに今だ朽ち果てぬ己の身。
デスは死を司る者、命を玩具として使う事はしない。
「チャンスをくれたのは感謝するが、仕事が増えても知らんぞ・・・!」
闘気が充実していく、傷を負った鶴は返り血だけではなく己の血で赤く染まっていた。
すると、入り口付近に闘気を感じる、アサシンが侵入者に気付いたのだろうか。
急ぐユダ、そこには3人の漢達が仁王の如く立ちはだかっていた。
「やぁ、ユダ君。以前の様な殺気が消えてるという事は・・・」
何時の間にか正気を取り戻したドリアンがユダに話しかける。
ユダも気付いた、3人の目の美しい輝きに。
「俺は決めた、返り血で染まった鶴が己の血で染まるまで戦い続けると。
だがただでは死なぬ・・・奴等を全員、道連れにしてからだ!」
4人の闘気が交じり合い、絡み合い、より膨れ上がって行く。
それと共に正面の扉から大量の暗殺者が沸いてでてくる。
「ゆくぞ!南斗六聖拳、妖星のユダと最強の死刑囚がここから先を一匹たりとも通さん!」
217 :
三十話「4対の闘神」:2006/04/22(土) 00:01:19 ID:1CZbtBdR0
はい、初期の如く勢いづいたと思ったら間が空いちゃいました。邪神です。
でもネタが尽きた訳ではない!・・・きっと。
しかし講座はネタ切れだ、という事でゲーム自体の紹介をそのうち入れようと思う。
やはり攻略っぽい小ネタが挟まれるかもしれんが知らぬ内にタイピングしてしまうのだ。
まぁ許してチョンマゲ。
(チョンマゲって言ってもハイデッカ氏の言うチョンマゲでは無い。)
〜講座・・・そしてネタ切れへ〜
全力全開氏 ぬ、違ったでござるか、拙者思い上がりすぎたようだ。すまぬ、やはり一回切腹しとこう。
しぇき氏 湧き出る石油は無限でないように、勢いは途絶える物・・・。
え?ヘタな言い訳すんじゃない?ゴメリンコ。
ふら〜り氏 当然、活躍の予定ですがボス中にどんな場面で乱入させるか模索中・・・。
またスペックがいい所全部もってくかもw
邪神さん、ほぼ2日に一度のペースじゃないですかw
スペックがまた大暴れしそうで楽しみです。やはり死刑囚に感情移入してしまうな。
第六十八話「葛藤」
夜―――キラは中々寝付けなかった。身体は疲れているのだが、今までのことやこれからのことを考えていると眠気が逃げて
いってしまう。更に言えばこの部屋は相部屋なのだが、ルームメイトに問題があった。
「ぐうぐう・・・うう・・・お・・・俺の身体が卵熊に・・・!?むにゃむにゃ・・・」
二段ベッドの上に寝ているアスランが盛大にいびきをかきながら寝言をほざく。どうやら夢の中で何らかのの試練を受けている
ようだった。
「・・・・・・」
ため息をつきながら、キラは起き上がった。どうせ眠れないのなら、散歩でもしてこようと思ったのだ。アスランを起こさない
ようにそっとドアを開けて出て行く。アスランはというと―――
「うーん・・・俺は猟師だ・・・生きてくためには、仕方ないんだ・・・ぐう・・・」
―――試練もいよいよ大詰めのようだった。
基地の中を当てもなくぶらぶらと練り歩く。この時間ではみんな眠っているのか、静かなものだ―――そんな風に思いながら
ぼんやり歩いていると、曲がり角で危うく誰かとぶつかりそうになった。
「おっと!」
「うわ!ご、ごめん・・・あれ、稟じゃないか」
「キラ。お前も眠れないのか?」
「うん。ちょっとね、夜中の散歩してたんだよ」
俺とおんなじだ、と稟は笑った。
「じゃあ眠れない者同士、ぶらぶら歩くとするか?」
「そうしようか」
そして二人並んで、ぶらぶら歩きを再開する。
「ところでマサキは?」
「ああ、あいつなら眠ったよ。精神存在でも眠気はあるらしくてな。<でかい耳クソが取れたとか馬鹿な理由で起こすんじゃ
ねえぞ>なんて言われちまったよ。今時そのネタを知ってる奴なんてほとんどいないっつーの」
「はは、何それ・・・あれ?」
「どうした」
「誰かいるのかな、話し声が・・・ほら、そこ。休憩室だよ」
そっと休憩室を覗き込む。そこでは柄の悪そうな二人組みの男が、酒を煽りながらだらだらと喋っていた。
「・・・ああ、あの連中だろ?」
「やだよなあ、余所者がでかい顔してよお」
キラは顔を強張らせる。のび太たちのことを話していると気付いた―――しかも、決して気分のいい内容ではない―――
からだ。キラと稟が聞いていることに気付かない彼らは、好き勝手なことを言い合う。
「何がすげえって、ただ乗ってる機体がすげえだけじゃねえか。あんなモンに乗ってりゃ戦果が挙げれて当たり前だろ」
「そうそう、本人は別に凄くも何もねえくせにな」
ぎゃはははは、と下品な声が上がる。キラは肩を震わせるが、それを稟がなだめた。
「キラ、気にするなよ」
「だけど、稟・・・あいつらは、君たちのことを!」
「ああいう手合いはどこにでもいるよ。いちいち相手にしてたらきりがない。無視するに限るって」
「・・・そうだけど・・・!」
その声が聞こえたのか、二人組みがキラたちに気付いた。
「あん?なんだ、余所者がいるぜ」
「へえ、他人の話を盗み聞きか。さっすがスーパーエース様だ、いい趣味してるなあ、ひゃははっ!」
酔っ払っていることを差し引いても目に余る言動だ。キラは拳を握り締めた。
「―――おい、キラ!やめろ・・・うっ!」
キラを静止しようとした稟が頭を押さえて呻く。酒瓶を投げつけられたのだ。
「稟!」
「だ・・・大丈夫だよ。ちょっと掠めただけだ」
稟の言うとおり、少し額の皮膚が切れたくらいで大したことはなさそうだった。だが―――
「おいおい、エース様。こんなもんも避けられないのか?しっかりしろよ」
「やっぱあのロボットに乗ってねえと何もできないんだろうよ」
また下品な声で笑う。その瞬間、キラの頭に一気に血が昇った。口元を引き結んで、二人組みに詰め寄る。
「ん?なんだよ、怖い顔しちまっ・・・」
「―――稟に謝ってください」
キラは相手の言葉を遮り、それだけ言った。
「そうすれば―――僕も、手荒なことはしません」
キラの言葉に、二人組みは顔を見合わせる。そして、キラに向かって凄んだ。
「お?なんだ、余所者の肩を持つのかよ、えっ?」
「手荒なこと?手荒なことって、どうやるんだよ、ん?こんな風にか!?」
キラの顔面目掛けてフック気味に拳が突き出される。だがそれは、キラに届かない。
軽やかに身をかわしたキラは、逆に手首を捻り上げる。
「やめてよね。本気で喧嘩したらあんたらみたいな奴が僕に敵うわけないだろ」
「ぐっ・・・!?て、てめえ!」
もう一方が蹴りを放つが、キラは拘束した男を盾にしてそれを防ぐ。仲間に蹴られた男は、胃の内容物を盛大に吐き出す。
キラが手を離すと、彼は自分の吐瀉物の中に顔を埋めて悶絶した。キラはそいつの脇腹に一発蹴りを入れて、残る一人に
向き直る。
「う・・・うわああああ!」
彼は恐慌状態に陥りながら、手を振り回してキラに襲い掛かる。それは愚かしい行動だった。彼は、逃げるべきだった。
隙だらけで繰り出された一撃に対して、カウンターで顔面に一撃。動きが止まったところを、更に殴りつける。
どれだけ殴っても気が晴れない。こいつらは、僕の友達を馬鹿にした。傷つけた。こんなもんじゃ済まさない―――!
「やめろ、キラ!もうやめてくれ!」
背後からの声に、キラはようやく我に帰った。どれだけ殴ったのか目の前の男は、顔面の形が変わってしまっている。
「やめろ、キラ!」
もう一度同じ声で制止する声。振り向くと、そこにいたのは稟だった。
「もういいだろ。ここまですることはない」
「・・・・・・」
言葉を返せない。確かに、これはいくらなんでもやり過ぎだった。ふと見ると、二人組みは苦痛に呻きつつ自分を凝視して
いる。その恐れに満ちた目に、キラは凍りついた。
「―――なんで・・・」
キラは一気に頭が冷えた。全身から力が抜けていく。
「なんで僕を、そんな目で見るんだ・・・?」
その目は、まるで―――怪物を見る目だ。
そりゃあ―――仕返しにしても、自分のしたことは酷いことかもしれない。だけど、それでも―――どうして、そんな目で
見るんだ―――!
騒ぎを聞きつけたのか、人が集まってきた。
「―――おい、お前ら!何をしてるんだ!話を―――」
「―――早く手当てしないと―――」
「―――事情を説明―――」
その声はキラには届かない。キラはただ、呆然と立ち竦んでいた。
騒ぎが収まった後、キラはそこにいなかった。一緒にいた稟の証言もあって情状は酌量されたが、それにしてもやり過ぎ
だと見なされ、三日間の営倉入りを命じられたのだ。
「イザーク!何でキラがそんなところに入れられなくちゃいけないのさ!」
のび太たちがイザークに食ってかかる。キラの処遇に不満を訴えているのだ。
「仕方ないだろう。相手が酔っ払って先に手を出したとはいえ、二人とも重体だ。こんなことをやってお咎めなしでは、
規律が乱れる。仕返しにしてもやり過ぎだ!」
「だけど、キラは―――!」
「そんなことは分かってる!だが、あいつばかり特別扱いはできないんだ。そんなことをしたら、規律が乱れるし他の連中
にも示しがつかない。そうなったら組織が成り立たなくなる!」
荒い声で怒鳴りつけるイザーク。
彼だって本当は、キラをお咎め無しで済ませたかった。しかし、イザークはレジスタンスのリーダー格なのだ。その彼が
個人的な贔屓などできなかった。
「そりゃそうだけど―――アスランも何か言ってよ!・・・あれ、アスランは?」
「最初からいなかったけど・・・」
「もう、まだ寝てるの!?頼りにならないんだから!」
のび太が自分の寝坊癖を棚に上げて憤る。その時、警報が鳴り響いた。
「敵襲!?もう、今忙しいってのに・・・」
「ごちゃごちゃ言っても仕方ないだろうが。ほら、行くぞ!」
イザークはさっさと駆け出す。のび太たちも釈然としないまま、格納庫に走っていった。
―――その少し前のこと。
キラは営倉の中で膝を抱え込んでいた。思い出すのは、あの二人の目。まるで、理解不能の怪物を見るかのような目―――
「くっ・・・!」
キラはぶるぶると身を震わせる。と―――ドアの前に誰かが立っているのに気付いた。
「はっはっは、キラ!頼れる親友、アスラン兄さんが来たぞ!」
―――アスランであった。こんな時だというのに、いつものノリまんまであった。
「・・・・・・」
「おいおい、せっかく場を明るくしてやろうと張り切ってるのに反応してくれないのは寂しいじゃないか!・・・まあ、そんな
気分でないのは分かるが」
ふう、と苦笑しつつ、アスランは続けた。
「大体のことは聞いた。やり過ぎはよくないが―――俺は、お前は間違ってないと思う」
「え・・・?」
顔を上げたキラに、アスランはにやっと笑う。
「確かに暴力を振るうのはよくなかった。けど、お前は友達が傷つけられたから怒ってくれたんだろう?俺はお前が、友達の
ために本気で怒ってくれる奴で嬉しいぞ」
「アスラン・・・」
キラは憔悴した顔に、少しだけ笑顔を浮かべた。アスランが自分を肯定してくれたのが、嬉しかったのだ。
「・・・ありがとう」
「なに、お前がこうして悩み苦しんでるなんて似合わないと思っただけだ。お前は無辜の人間を大量虐殺した直後に、こんな
ことはダメだ、終わらせなくちゃとか平然と言い出すトンデモ野郎のはずだろ?」
「ちょっと、やめてよ。人を勝手に人格破綻者にしないでよね」
「ははは、悪い悪い」
二人は顔を見合わせて笑う―――その時だった。
基地中にけたたましい警報が響き渡る。敵襲の合図だ。
「―――アスラン!」
「分かってる!キラ、お前も来るんだ!」
そう言いながら、アスランが営倉のドアを開け放つ。
「お前がいないと戦力的に不安だ。なに、イザークたちは後で言い包めとくし、いざとなったら俺が責任を取る。早く!」
「う、うん!」
キラは立ち上がり、アスランと共に駆け出した。
―――その先に待ち受けるものを、彼はまだ知らない。
投下完了。前回は
>>55より。
でかい耳クソのネタが分かった人は、是非サマサにご連絡を。スーファミ時代のスパロボについて、
熱く語り合いましょう。
>>ふら〜りさん
晃は・・・確かに原作でもバリバリの体育会系ですねw
>>121 超機神の方に力を入れないと、いつ終わるか分かりませんから。
>>127 たまにはこういうのを書くと、気分が変わっていい感じになります。
>>全力さん
ARIAはアニメは放送地域が違って見てないですwしかしなのはの魔法って、かなり細かいですね。
SHUFFLE!の魔法なんて、神族と魔族が使う不思議な力、くらいの説明なのに・・・とにかく新人のうちは
色々大変ですが頑張ってください、と、ベテランっぽいことを言ってみたりw
>>邪神?さん
エターニアネタ、先にやっちゃいました・・・何故アスランなのかというと、単に声優ネタですw
しかしスペック以外の死刑囚って、何か扱いが悪いような・・・でも、原作でも負けるまでは安定した
強さを見せ付けたのはスペックだけだしなあ・・・となると、これでいいのかw
>>しぇきさん
オーガはあれで2回裏ですかwどんだけ長い話になるんだ・・・スクライドは見てないけど、ノリがよさそうですね。
「〜〜〜禁止」は、実は威圧感はあっても強制力はイマイチなんですよねw禁止できた試しがろくにないという・・・
据え置きOGが発売しましたが、PS2でサイバスターは初めてなのでwktaです。サルファには結局出なかったものなあ。
>>サマサさん
>据え置きOGが発売しましたが、PS2でサイバスターは初めてなのでwktaです。
揚げ足を取るようなのですが・・・・・まだ発売してないはずですが。
完成度50%らしいですし。
正確には「発売決定」ですね。すいません。
>ハイデッカさん
そう、最強な主人公はこれくらい影薄くてもヘたれても良い!
刺身のツマくらいの活躍範囲でちょうど良いのかもしれませんね
呂布の「初めてか?」がまた良い
>邪神?さん
カッコイイユダとカッコイイスペックってのは違和感があるようで無い、凄い
敵の前で名乗りをあげるときってのはこうでないと!というような名調子ですね
>サマサさん
こんなカッコイイ「やめてよね〜」は初めて見たw
サマサさんはキャラクターの動かし方がピカイチだな
絶妙の間で親友を肯定するアスランもまた由
228 :
作者の都合により名無しです:2006/04/22(土) 15:13:12 ID:/148nESL0
>ハイデッカさん
とにかく熱い回で、ドラマが盛り沢山でしたね。感動しました。
呂布とベルトランのそれぞれの生き様と死に様がとにかく熱い。
でも結局、ジャンヌが美味しい所を持っていきましたがw
>邪神さん
まだまだ死刑囚もユダもこれから絡んで来るみたいで安心しました。
テイルズやサガが良くわかんないんで、どうしても彼らの活躍に
期待してしまいます。頑張れシコル。これ以上ヘタレんなよ・・
>サマサさん
戦い前の日常風景ですか。こういうアップダウンが魅力ですね。
キラ強いなあ。種知らないんだけど、ストリートファイトでも強いんだ。
キラとアスランはいいコンビですね。
scene42 旗元太【二】
俺は歯を食い縛りながら、事の成り行きを――
息つく間もなく繰り広げられる、伊藤開司と只野文男の死闘を見守っていた。
蚊帳の外で、傍観者に徹しているしかない自分自身が、どうしようもなくもどかしく、情けなかった。
今となってはいくら嘆いても、仕方の無い事ではある。もう、ゲームは決着してしまったのだから。
伊藤開司は見事、犯人を告発してみせた。あとは犯人の身柄を確保し、生き残る事が出来れば……
晴れてゲームの勝者となり、賞金を手にする。
俺はと言えばどうだ。伊藤開司か、残る探偵全員が犯人確保に成功したとして……
生き残る事は出来るかもしれない。しかし、絶対に賞金は得られない。
俺に残された可能性は、生きるか死ぬかの二者択一。
もう……梓を助けることは出来なくなってしまった。
本当に、そうだろうか……? 俺は一縷の望みに縋るように、一人自問自答する。
安易に諦めすぎてはいないだろうか……? まだ何か、手段があるのではないか……?
からん、という乾いた音が響き、意識が現実へと引き戻される。
先程から、互いに急所に凶器を突きつけあい、膠着状態にあった二人。
どうやら伊藤開司のアイスピックが跳ね飛ばされて転がり、その拮抗が崩れたらしかった。
勝負あった。元々、素人対玄人、刃物対拳銃、という不利な戦いだったのだ。
ここまで健闘しただけでも、十分賞賛に値するだろう。
そこまで考えて。俺は、まだ完全に望みが断たれた訳ではないのだと気付いた。
賞金の行方として、考えられるパターンは三パターンほどあった。
一、伊藤開司が生き残り、犯人は確保される。賞金は伊藤開司の手に。
二、伊藤開司が死に、残る探偵も全滅。賞金は犯人の手に。
三、伊藤開司が死に、残る探偵の誰かが犯人を確保。賞金は宙に浮く。
二のケースは賞金の受け渡し前に俺が死ぬ事が前提条件なので論外。三のケースは賞金が出て来ない。
一のケース……伊藤開司が生き残り、賞金を手にするケースに限り、望みがある。
そうと決まれば俺の取るべき行動は一つしかなかった。伊藤開司を助け、協力して犯人を確保する。
絶体絶命の状況を助けた……となれば、恩を売るくらいは出来るかもしれないし……
それが無理でも、賞金がどんな形で支払われるのかは定かではないが、後日賞金を奪う事は出来るだろう。
命を賭けるならせめて――尤もらしい大義名分が欲しい所ではあった。
しかし、幼い命を救う為だ……梓の為だ……そんな、見苦しい自己正当化をしたくはない。
すべては俺のエゴだ。俺は、梓に生きていてほしい。その為ならば、どんな犠牲を払う事も厭わない。
「こっちだ……!!」
俺は大きく声を張り上げ、只野の注意をこちらに引き付けようと試みた。
左腕で額を、右腕で心臓をそれぞれガードしながら、極力姿勢を低くして、特攻を仕掛ける。
二、三歩、走るか走らないかといった内に、ダンッ、という音がホールに響いた。
額に腕をかざしている事と極端な前傾姿勢が災いし、状況が把握できなかった。
視界に入っているのは、ホールの床と只野の足だけだ。只野が彼に向かって発砲したのか!?
どちらにしても、飛び出した以上、もう後には引けなかった。
只野の姿が近付く。足だけでなく、脇腹も視界に入る。
俺はそのまま只野の懐へ飛び込もうと、急所を守っていた両腕を広げ――
直後、視界から只野の姿が消え失せた。そして至近距離で、耳を劈く発砲音。
衝撃で、身体が撥ねた。網膜に薄紅色のフィルタがかかり、ホールの床が、拉げたようにぐにゃりと歪んだ。
scene43 伊藤開司【十四】
カイジが観念して、目を瞑ったその時だった。
「こっちだ……!!」
旗元の声がホールに響き、全員の視線がそちらに集中する。
旗元は、そのまま身を低くしたかと思うと――只野へと、一直線に突撃した。
無手で拳銃に挑もうとするばかりか、正面からの強行突破。
それは、あまりにも無謀な行動。しかし、その無謀さ故に、誰もの意表を突いた行動でもあった。
無論、只野も例外ではない。どちらを狙うべきか決めかねているのか、構えたトカレフの照準が揺らぎ、乱れる。
それと同時に、カイジも判断に迷った。
トカレフを奪いに動くべきか……?
それとも、その射程範囲内から逃れてチャンスを待つべきか……?
カイジの中で明確な答えが出ぬ内に、目の前で、ダンッ、と鋭い音が響いた。
ともすれば、発砲音と勘違いしてしまいそうなそれは――
カイジと只野の間に位置する、調理場の引き戸が勢い良く閉まった音だった。
(触れてもいないのに、勝手に閉まった……!?)
その不可解極まりない現象を目の当たりにして――カイジは思い出す。
大型冷蔵庫の中から、ハネダユカリの死体が発見された一件を。
調理場で不審な音がした時、生存者は全員ホールに集まっていた。
誰一人として、冷蔵庫には指一本触れられなかった。それにも関わらず、冷蔵庫の扉は開いたのだ。
冷蔵庫の扉は見るからに重々しく、外部から何らかの力を加えられない限りは、大きく開くとは考え難い。
犯人が冷蔵庫に死体を詰めた時に、扉が中途半端な閉まり方をしており、寄りかかった死体の重みで開いた。
多少腑に落ちない点がない訳ではないが、カイジは今まで、そう解釈していた。
それが一番、現実的且つ妥当な解答と思われたからだ。
しかし、今回ばかりは説明のつけようもない。
何しろ、種も仕掛けもないであろう状況で、引き戸が勝手に閉まるのを見せ付けられたのだから。
カイジはこのペンションに、人智を超えた何者かの意思が介在しているように思えてならなかった。
まるで、シュプールに潜む亡霊が見えざる手で冷蔵庫を開け放ち、引き戸を閉めたようではないか……
引き戸の向こう側――ホールから発砲音が聞こえ、カイジは我に返る。
そうだ、今は悠長に怪奇現象の原因を考えている場合ではない。
人間の仕業か亡霊の仕業かなど、この緊急事態においては些細な問題に過ぎない。
今、カイジは自分自身が亡霊の仲間入りをするかどうかの瀬戸際に立たされているのだから。
カイジは調理場中央に走ると、丸テーブルの中心部分を抱えるようにして構え、引き戸の正面に陣取った。
scene44 『犯人』
「こっちだ……!!」
探偵連中は、我が身可愛さに動かない。そう確信していた私にとっては、想定外の出来事だった。
奴に――伊藤開司に引導を渡そうとした正にその時、旗元が捨て身の突撃を仕掛けてきたのだ。
(どちらを優先する……!?)
一時の迷いが手元を狂わせ照準を乱したが、すぐに考えは固まる。
(先に、伊藤開司を殺す……!)
脅威となり得るのがどちらなのかは、調理場を舞台にした小競り合いで十分に理解していた。
奴に少しでも思考する時間を、反撃の機会を与えてしまえば、どんな策を弄してくるか知れたものではない。
が、そう判断すると同時に、荒々しい音を立てて、調理場の引き戸が閉められた。
旗元に気を取られていたせいで確認してはいないが、奴が先手を打って閉めたのだろう。まったくもって、油断も隙もない男である。
仕方なく私は向き直り、標的を旗元へと変更した。旗元は、丁度両手をかざし、私の懐に飛び込まんとする所だった。
反復横飛びの要領で体当たりを回避し、側頭部に鉛玉をプレゼントする。
旗元は血飛沫を周囲に飛び散らせながら、フィギュアスケート選手のようにくるりと一回転し、その場に崩れ落ちた。
「あ……ず……」
旗元はうわ言のように何事か呻きながら、未だ前に進もうとしているのか、両足をばたつかせる。
こめかみの辺りには、ぽっかりと綺麗な丸い穴が空いていた。
身体がびくん、びくんと痙攣する度に、そこから間欠泉のように血液が噴出する。
その滑稽で無様な姿は、叩き潰されたゴキブリの断末魔にも似ていた。
みるみるうちに床一面が、血に染まってゆく。
不意に、どさっ、と何かが倒れるような音がした。
振り向いて見れば、双葉が床に倒れ伏していた。失神したのだろうか。
どうやら、お子様には少々刺激が強い見世物だったらしい。
「うぐ……ぐぇっ……うぇ」
その隣では、黒川が蹲り、喉から搾り出すような異音を発しながら、吐瀉物を撒き散らしていた。
小此木と玉崎も、動きを見せる気配は無い。彫像のように表情を凍りつかせたまま、直立不動の姿勢を崩さない。
旗元の公開処刑が功を奏したのか、他の探偵も概ね戦意を喪失したようだ。
私は引き戸の前に転がるボロクズを蹴飛ばして退かす。
そして、伊藤開司を始末するべく、引き戸を開け放った。
その瞬間、ドンッ、と全身に衝撃が走る。一瞬何が起こったのか、理解できなかった。
奴は引き戸の前で矛と盾の役目を兼ねる丸テーブルを構え、私が引き戸を開き、調理場に踏み込むのを待ち構えていたのだ。
刺突武器と化したテーブルの直撃を受け、私は吹き飛ばされるようにして、強制的にホールへと戻る羽目になった。
よろめきながらも、体勢を立て直そうとする……が。床に広がる血液が、悪魔の沼のように足元を掬った。
ぐるん、と視界が回転した。ホールの天井が目に入り――私はしたたかに、床に後頭部を打ち付ける。
受難はそれだけに止まらなかった。狙い澄ましたような絶妙のタイミングで、奴の足が私のトカレフを払い飛ばす。
カランカランと軽薄な音を立てて、トカレフはホールの隅へと転がっていった。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>124です。
カイジVS犯人は、次回で決着予定。
・只野文男
作者設定的には、偽名となっております。苗字も名前も単純にして微妙ですし。
かまいたちの夜における○○さん(一応伏せ字)のような感じですね。
・冥土の土産
まさに悪役の敗北フラグですね。
冥土の土産に教えてやろう……と言って、勝った悪役を見た試しがありません。
・只野が銃を簡単に扱えている
トカレフは反動が強いですからね。
片手持ちで、背筋をぴんと伸ばしたまま連射などしようものなら
拳銃を扱い馴れている人間でも、多少銃身がブレてしまうのは避けられないでしょう。
そもそも、トカレフそのものの命中精度が低めです。
かまいたちの夜でも真理が犯人から拳銃(種類は不明)を奪い
犯人に向かって構える一幕がありましたが
発砲の反動に翻弄され、銃弾が明後日の方向に飛んで行っていました。
勿論、そこまで細かい部分を考えて書いていた訳でもないですが
調理場で全弾発砲して肩を抉るに留まったのは、そんな理由もあるのかもしれません。
ちなみに、私は銃器についての知識はほぼ皆無なので、突っ込み所等あったら失礼。
236 :
作者の都合により名無しです:2006/04/22(土) 17:18:50 ID:/148nESL0
見てた人さんお疲れです!
まあ打算ですけど、大切な人を守るため旗元が
参戦して流れ変わりましたね。まあ、無駄死にでしたけど。
しかし、ギリギリの所でも引き戸に気づくカイジは凄いな。
決着シーンを期待しております。
でも旗元太って旗元 太だったのか。今まで旗 元太と思ってたw
第五話「仕事するなら責任感を持ってやれって上司も言ってたんじゃねーの?」
初めてペンを握ったのはいつのことだったろうか。
幼き日の記憶を辿るのは得意ではないが、確か三歳かそこらくらいか。
まぁその頃握っていたのはペンなんて呼べるたいそうなものじゃなく、そこらへんに転がっていたえんぴつやクレヨンなんだろうが。
俺はそれらの道具を「書く」ことではなく、もっぱら「描く」ことに使っていた。これは間違いない。
字よりも絵。論文よりも物語。いつの頃からか、俺の中でそんな定義が確立し始めていた。
きっかけ? そんなもんは覚えちゃいねーよ。
よくある答えだと、「子供の頃に読んだあの作品に感動して」とかなんだろうが、俺の場合はどうだったろうか。どうにも違ったような気がするんだが。
駄目だな。やっぱりガキの頃の記憶なんて早々覚えちゃいねぇ。
人間誰しも大人になれば仕事に追われ、遊んでばかりいた幼少の日々なんて忘れちまうもんなのさ。
おっと、早まるなよ。こんなジジくさいこと言ってるが、俺はまだバリバリの二十代だ。
でもな、歳なんて関係ねぇんだよ。大人の階段ってのは急に目の前に現れて、子供ってのは知らぬ内に上り出していっちまう。
俺の場合、それが「仕事」を始めた時に現れたんだな。
要するに何が言いたいかってぇと、俺は仕事を始めて子供をやめたんだ。
引き返せねぇ大人の階段を上って、子供の心を綺麗さっぱり忘れたんだ。
夢中になってペンを動かしていたあの頃を思い出せないのが、その証拠じゃねぇか……。
「やっぱ大人だったら自分の仕事に責任を持たなくちゃいけねぇよな」
そう言ったのは、銀髪天然パーマが目印、坂田の銀ちゃんだった。
言葉の送り先は、前方に佇む見知らぬ男。銀時との面識はない。
しかし、銀時はこの男を知っていた。手に握り締めた顔写真……その中の人相と目の前の男のそれは、完全に一致している。
この男こそ――銀時の捜し人。
「へっ……もう追っ手がきちまったのか」
男は、空に向けて空虚な言葉を吐く。
普通なら「あんた誰?」と返すところだろうが、男は面識がないはずの銀時の正体に、なんとなく気づいているようだった。
「……何があったか、なんて聞かねーぞ。俺はさっさとあんたを連れ戻さなくちゃならねぇんだ。なにしろ……」
銀時は、いつになく真面目な雰囲気を纏っている。
剣を抜いた時ならともかく、常時死んだ魚の目をトレードマークとしている彼が、なぜこうも違って見えるのか。
第四話までを読み進めていただいた方ならお分かりだろう。全ては……
「おめぇが描かねーと、マガジンが休刊になっちまうんだよォォォ!!!」
週刊少年マガジンのため。
「やっぱマガジンの回し者かい……だったら、捕まる訳にはいかねぇんでね!」
途端、男は一瞬の内に踵を返すと、脱兎の如く走り去っていった。
逃走。男が銀時に対して取った行動である。
「逃がさねぇぞォォ! 西本せんせェェい!!」
銀時はこれを追跡。
理由は彼が叫んだ西本という名前にある。この名前の人物こそあの男であり、銀時が追う人物。
あろうことか週間連載(しかも新連載)の締め切りをブッチし、マガジンを休刊の危機に晒している罪悪人。
銀時はマガジン編集部の一員として(バイトだけど)、西本に期限までに入稿させるという使命がある。
講談屋のため、マガジンのためだと思えばなんのその。
銀時は普段のやる気のなさの欠片も見せず、江戸中を探し回った。
そして、ようやく見つけた。ターゲット、新人作家西本。
彼を取り逃がすこと、これ即ち「マガジン休刊」に直結することと思え。
そう心に言い聞かせ、銀時は江戸の町をひた走る。
「待ちやがれェェェ!!!」
「生憎、俺はまだ捕まる訳にはいかねぇんだよォ!」
追う銀時、逃げる西本。
途中、障害物となる通行人を華麗に避け(時には突き飛ばし)、江戸を舞台に壮大な鬼ごっこを繰り広げる。
本気になった銀時の走力は、愛用のスクーターの手を借りる必要がないくらいのものだったが、それでも西本は逃げ続けた。
それを何分間続けただろうか。追う執念と逃げる執念、どちらも見事だったが、やはり侍と漫画家、体力では銀時に分があった。
「ハァ、ハァ、ハァ……クソッ!」
「年貢の納め時だぜ、西本先生!」
いつしか西本は、人気のない裏路地に追い込まれ、行き止まりとなった壁を背に銀時と相対していた。
「さぁ! さっさと原稿を描いてもらいましょうかァァ!!」
絶体絶命逃げ場なし。
もはやこれまでか――と観念しかけた漫画家西本の前に、救いの神が訪れる。
「待ちな!」
銀時が西本の肩を掴もうとしたそのとき、待ったをかけた者こそが、西本にとっての救いの神。
真っ黒な忍者装束に身を固めたこの男――服部全蔵だった。
「ちっ、こりもせずにまーた邪魔しにきたのかお前は」
「生憎俺はジャンプのこととなると執念深くてな。ジャンプの利益になるようなことならそれが悪事だろうと喜んで手を貸すぜ俺ぁ……くくく」
「腐ってる。腐ってるよお前。だから痔になるんだよ。肛門の神様が見放すのも分かるよ」
西本先生休載→マガジン休刊→読者の信用ガタ落ち→ジャンプウハウハ。
という方程式を脳内でくみ上げている全蔵の目的は、西本先生の入稿を何がなんでも阻止しすること。
そのためには、西本先生を連れ戻そうとしている銀時が邪魔だ。
完全に互いの目的が食い違っている銀時、全蔵の二人が対立するのは、もはや必然といえた。
「西本先生、このマガジン信者は俺が食い止めといてやる。だからあんたは今の内に好きなところへ逃げな」
「勝手なこと言ってんじゃねーぞ。西本先生がやらなきゃ誰が今週号の目玉飾るんだよ。新連載だぞ? 何事もスタートが肝心だって母ちゃんに教わらなかったのか?」
銀時の言うことも分かる。
だが、西本には逃げなければいけないワケがある。
そのせいでマガジンが休刊になるのは心苦しいが、これだけは引くことが出来ない。
西本は、仕事人としての使命より――漫画家として魂を取る。
「……すまねぇ。誰だか知らねぇが、恩にきる」
そう言い残すと、西本は二人の横を過ぎ去っていった。
「……あーあ、西本先生逃げちゃったよ。どうしてくれるんだお前?」
「へっ、なんなら俺が代原描いてやろうか? 少年誌ではとても扱えないようなネタ満載でPTAから苦情殺到間違いなしの力作をよぉ」
「馬鹿やろう、マガジンの評判を落とそうってのがみえみえなんだよ。てめーが描くくらいなら俺が描くね。その名も『甘党くん』」
「今時新聞の4コマでもなさそうなタイトルセンスだな。まぁでもマガジンにはお似合いだぜ」
「『甘党くん』なめんなよお前。読者一万人感動の嵐、ハンカチ必須、マガジン涙でボロボロになること請け合いだぞ」
「どう解釈してもギャグ漫画としか受け取れないタイトルでそりゃねーだろおい。もうお前いっそマガジンよりコロコロの方が合ってるよ」
「この野郎、あくまでも『甘党くん』を受け入れないつもりか……これだから『ボーボボ』を趣向のギャグ漫画と思ってるジャンプ読者は」
「あ、てめー今またジャンプの悪口言ったろ。言ったよな。もういいよ。お前なんて知らないよ。マガジンと一緒に滅びればいいんだ」
「それは違うな。俺が滅びてもマガジンは永久に不滅だ。なんてったって全国のおっさんが支えてるからな。ジャンプこそ今迷走しててやばいんじゃない?」
「ジャンプなら安泰だ。なんてったってジャンプは少年のみならず、少女諸君にも大人気だからな。女性読者獲得なんてマガジンにはマネできねーだろ」
「あれ、お前知らないの? ジャンプ好きな女子は大抵コミックス派なんだよ。本誌は買わないんだよ」
「本誌買わなかろうが読者には変わりねーさ。マガジンみたいに通勤途中に買って、読んだらポイッのおっさんとは違うんだよ」
「……あ、お前今『日本全国の通勤途中に電車でマガジン読んでるおっさん』を敵に回したわ」
長い前口上だが、やはり二人の激突は避けられなかった。
片やマガジンのため、片やジャンプのため、それぞれ木刀とクナイを構える。
銀時が全蔵を下し西本を追うのか、全蔵が銀時を下しマガジンを休刊に追い込むのか。
全ては、この戦いにかかっている。
第五話をお送りします。第四話は
>>47より。
さてこの作品、ぶっちゃけるとノリで書いているところが多々あります。
それ故に時折文章が読みにくかったり稚拙になったりしても成立しているのは、ひとえに題材となってる「銀魂」の個性のおかげです。
今回は話の転機というか、ギャグ濃度が薄めになってまいりました。
原作だったらこれから銀魂特有のいい話になってくるんだろうけど、これはどうかなぁ……。
最後はギャグで終えるか、真面目に終えるか、一応決めてるけどノリで変わるところもあるかもしれない。
ちなみに作中の西本先生はまったくのオリジナルキャラです。
いくら銀魂読み漁ってもこんなのは出てこないので注意。
……あと今さらながら、こんなに『マガジン』だの『ジャンプ』だの言ってるのは明らかに浮いてるよなぁ。
>カマイタチ
今までの謎解きから、急にアクション満載ですね。
アクションでも筆の立つ人の描写は凄いな。
旗元の狂気と計算が飲み込まれて行く様子が最高。
>シルバーソウルって英訳するとちょっとかっこいい
現場のカオスが、更にひどく妙な侵入者たちに
メチャクチャにされてますねえw銀玉らしい。
最初の1レス、ここの職人にも通ずるようなw
またいつも固まってきますねw
・聖少女風流記
呂布の最後も良かったけど、ベルトランの騎士道に感動しました。
慶次もジャンヌも、今回は出演キャラが全員輝いてましたね。
・キャプテン
死刑囚たちはこれからレギュラー化していくみたいですね。
柳は一番好きな死刑囚なので、彼とシコルに活躍させて欲しい。
・超機神大戦
耳クソのネタは分かりませんでしたけど、相変わらず小ネタに
凝ってますねwそれぞれの友情関係が分かる回でしたね。
・カマイタチ
まだ脱落者が出てしまうとは。見てた人氏容赦ないなw
しかし、尊い犠牲者のおかげで突破口が開けましたか。犬死ではないな。
・シルバーソウル
さり気に、会話の中で現代の漫画情勢がわかりますな。
コロコロの響きに笑いました。そろそろシリアスにチェンジもいいかも。
244 :
作者の都合により名無しです:2006/04/23(日) 00:03:01 ID:5tsYenpQ0
>見てた人氏
今までが推理&ホラー小説でしたが、急にアクション&サバリバル小説になりましたね。
カイジのサバイバー能力がどうこの事態を切り開いていくか、燃えますね。
>一真氏
なんか、日常的な風景なんだろうけど銀ちゃんたちがそこに加わると一気に非日常的な
修羅場と化しますね。ちなみに俺はマガジン派だけど、おっさんだったか俺w
【霧】 きり
昼休みが終わった。
すでに事務所の自席に戻った根来、午前と変わらぬ調子でデータ入力をやっている。
姿勢よく左手で伝票をめくり、右手でテンキーをカタカタカタ。
あたかもその作業のために生まれた機械のごとく精密且つ迅速に、同じ作業を繰り返す。
入力が終われば次はめくった伝票を元に戻し、今度は赤ペンを手にした。
確認である。
根来は伝票と先ほどEXCELに入力した数字を交互に見やり、淡々とチェックマークをつけ
ていく。
間違いはなかったが、吊りあがった無愛想な目にはさほどの感嘆も浮かばない。
左手薬指と人差し指が、CtrlキーとSキーを同時に押した。上書き保存のショートカットである。
EXCELを閉じ、今度はメールの下書きファイルを起動。
ともすれば多くなりがちな『宛先』はともかくとして、件名や本文の、日付に関わる部分以外は
あらかじめ入力し、使いまわせるようにしてある。
不精というなかれ。省ける手間を省くのは企業の命題なのである。
もっとも根来の場合は、企業の命題うんぬんよりは生来の合理性がさせているのだろうが。
今度は左手薬指と人差し指、AltキーとSキーを同時に押した。
こちらはメール送信のショートカットである。
昼休み終了から10分も経たないうちに一連の作業を終わらせれたのは、入力のスピードも
あるが、無駄なき工夫が大いに関係しているのだろう。
さて、根来の周りが若干やかましくなったのは、彼が使用済みの伝票を、今は不在の千歳の
机に置いた頃である。
「黒澤工場長、あかん、やっぱりネジがないわ。でもニビイロヘビのシールはあったわ」
「天倉くん、ほんまか!? だってわし昨日一日中探し取ったけど見つからんかったぞ」
「カニさんの部材の段ボールが二階の机の近くにあったやろ。その後ろに隠れとった。
分からんはずや。俺もゴキブリをブチ殺そうとしてぐうぜん見つけたからな」
工場を見回ってきた副部長が汗を拭き拭き報告した。
「そうか。お疲れやったな。しかしネジがあらへんと困るな」
工場長は冷たい麦茶を注ぎ、副部長に差し出した。
「え、ネジだったら朝納入されてましたよ。伝票もここに」
女性事務員が伝票を取り出し、一生懸命見せた。
「雛咲くん、そりゃNJ-AX2091YZいうて小さいヤツや。ルリオオカミくんの腰を止めとるヤツ。
無いのはな、アカネタカちゃんの羽とかリョクオオザルくんの関節とか止めとる大きなヤツや」
「ああ、NJ-CX2083VPとかいう」
副部長は麦茶から口を離し、大きく頷いた。
「それや。その2083があらへん。貸し倉庫も見てきたけどやっぱなかった」
「マズイの。そや、街にドンキあったやろドンキ。そこでネジ買うてくるか?」
「いやいや工場長、それはあかへん。むかしそれやったらバンダイさんにえらい怒られた。
純正品じゃないネジつこたせいで割れて子どもがケガしたら責任取ってくれるんかァァッ!
って電話かかってきてあとは平謝りやわ」
「しゃあない。バンダイさんは楽しい時を作る企業やからな。血が流れたら元も子もあらへん。
第一、今日の生産計画だと……ざっと1万本以上いる。お店やさんで買うのは無理や」
「そやな」
「副部長!」
「おお、ヤスくん」
「久世屋です。久世屋 秀」
やや幼い顔立ちを除けば、これといって特徴のない顔立ちの青年だ。
彼を先日の部長殺害の容疑者としてみなしている根来だが、なんら一瞥もくれず淡々と仕事
を続ける。
「ゴメンな。でもヤスくんのが呼びよい。で、いつものように吉報があるんか」
「ええ。ネジ納入されました! エレベーターに乗せといたので、もうすぐラインに乗ります」
「おお、いつもありがとな。やっぱあんたは気が利くコや。よし、じゃあみんなに頑張って作っ
てもらうか!」
まさか目の前にいる部下がホムンクルスなどとは知るべくもなく、副部長はのん気な調子だ。
「でも段ボールがありませんよ。段ボール乗せるパレットもちょっと少ないですし」
久世屋も物腰は柔らかく、凶暴無比なるホムンクルスには思えないが……
「うーん。回らんなぁ… しゃあない。とりあえず作っとこう。その間にわしが段ボールやパレットを
どうにかしとく。副部長はあれや、仕損じ(壊れて使えなくなった部品の事)の処理しといてくれ。
書類に金額をまとめてくれたら、すぐ捨てるように現場へいっとくわ。もうすぐ棚卸やからな
仕損じがあると数えるのが面倒や。もうポーイと捨てようや」
工場長の提案に、副部長も大いに頷く。
「ポーイと。しかしパソコンは便利やな。部品の名前入れるだけで部品の名前とか単価とか
一気にでよる。前までは単価表見ながらでえらく疲れたけど、楽になったわ」
「どういう仕組みなんでしょうねぇ。…怖くて聞けないけど」
雛咲という事務員が、そろぉっと根来を見た。彼は黙々と入力作業に没頭している。
副部長のいうフォーマットは、実は根来の作なのだ。
彼は午前中、伝票を1時間で片付けた後に「部品の単価表」を雛咲に要求し、それを受領
した20分後にはもうできていたというから、彼のEXCELに対する精通ぶりが伺える。
ただし技術はあれど愛想がないのが根来だ。
誰に対しても、刺すような目線を投げかけて、話し声も陰々滅々。
雛咲が根来を恐れるのもむべなるかな。
うら若き女性から見れば、根来は手馴れた強盗か殺人者のように見えるのだろう。
そんな人間は得てして企業の中で大成しないのが定めだ。
一応新入社員なので、いずれ歓迎会を企画されるのだろうが、
「わざわざ金を払ってまで拘束されるいわれはない」
と真っ向きって言い放ち、他の社員を敵に回すのだろう。
ちなみに、根来作のフォーマットに用いられている関数(数式みたいなもの)は以下の通り。
=IF(ISERROR(VLOOKUP(B3, 価格表!$B$6:$C$10, 2, FALSE)),"",VLOOKUP(B3, 価格表!$B
$6:$C$10, 2, FALSE))
ちなみに
=IF(B3="","",VLOOKUP(B3, 価格表!$B$6:$C$10, 2, FALSE))
てした方が多分、ファイルの容量は軽くなる。もっというなら、
=SUMIF(価格表!$B$6:$B$10,B3, 価格表!$C$6:$C$10)
でもよし。なお、Ctrl+;で今日の日付が出るし、Ctrl+Dなら上のセルをコピーできるし、Alt+S
hift+= ならSUMが出て、イルカを消したきゃ、236+Pの波動拳で殺れる。EXCELは便利だ。
駅前では霧が立ち込めていた。
さながら大瀑布のふもとで轟々とけぶる水滴のごとく、空気を薄暗く冷やしていた。
ほんの1時間前まで太陽が照り付けていたのが嘘のよう。
そして、奇妙な現象が起こっている。
駅舎備え付けの大きなデジタル時計は故障中。赤い文字がアトランダムに明滅している。
駅前ロータリーの向こうにある大通りも渋滞している。信号がおかしいらしい。
タクシー乗り場でも、運転手達が首をかしげている。備え付けのカーナビがことごとく映らない。
携帯電話すらつながらない。どころか、駅前から街へ行けないと訴える人までいる。
『え〜 毎度ご乗車いただきありがとうございます。ただ今、列車ぁ〜信号の故障の為、し
ばらく発進を見合わせております。お急ぎのところ誠に申し訳ございませんが、今しばらく、
お待ちください〜』
電車の中にいた千歳が「仕方ない」という顔で視線を落としたのは、警察より入手した麻生
部長殺害の番における久世屋の行動記録。彼のアリバイを雄弁に物語っている。
されど千歳たちの調査では、彼はホムンクルスでほぼ確定。犯人にもっとも近い男だ。
とすれば、久世屋のアリバイ工作には電車が使われた公算が大きい。
考える千歳の横を、車掌が通り過ぎた。せわしない足取りには焦りが見える。
それは信号機の故障のせいだろうと分析しつつ、横目で見やった濃紺の制服に千歳は別な
感想を抱いた。
「アレを着てみたい」、と。
密やかなる情動は、けして趣味ではなく、あくまで使命感に基づいたものだ。
今は電車を使ったアリバイの調査中。
電車といえば駅ではないか。駅員の制服をまとい鉄道事業に従事すれば、電車のおもわぬ
活用法が分かり、アリバイ崩しの手がかりになるやも知れんし、可愛い帽子もかぶれる。
千歳は断じて、コスプレなどはしないのだ。
ただ、潜入する以上は──根来曰くの始計術よろしく──周りの環境に服装を合わせるべ
きだとは思っている。
遊園地に潜入するなら、うさぎのぬいぐるみに入って風船配る。
モスバーガーに潜入するのなら、青と白の縞模様の上着と、膝くらいまである薄茶色のズボン
を履き、黄色いサロン(注・エプロン。空を飛ばないものだけを指す)を着用してからバンダナ
をして、厨房の奥でサラダを作る。そんな決意を胸(85)に秘めている。
それがちょいと漏れ出しているだけなのだ。
ちなみにモスでの帽子は、店長もしくはそれ並みの責任者ぐらいしかかぶれないので、千歳
が潜入する場合はかぶせて貰えないだろう。
嘘だと思うのなら一度、モスにいけばよろしい。さりげなく厨房を覗けば、帽子の奴は
「へぇ。責任が取れるのなら小指だって詰めますぜゲヘゲヘ」
と世慣れた顔をしてて、小指もないのがお分かりになるはずだ。
分かったら何か買って食べなさい。
玄米フレークシェイク・グァバアロエとか食べなさい。アロエがぶよぶよしてておいしいよっ!
さてここより、「野菜の原産地を農民の笑顔の写真付きで明記しておきながら、切羽詰るとス
ーパーで野菜を調達する詐欺まがいのモス商法」もしくは「グランダー武蔵で立木文彦演ず
るドクターカネリのイカレたテンションの素晴らしさ」について言及したくもあるが、千歳の話に
戻ろう。
実は根来より身長が1cm高い千歳の話に、戻ろう。
ニュートンアップル女学院に潜入する時だって、苦渋の思いで女教師ルックを諦めて、セー
ラー服を着用したのだ。スカーフのひらひら具合が決め手となったというから、純然たる使命
感がひしひしと伺えよう。
駅前に視点は戻る。騒ぎを、バス亭備え付けのベンチで楽しそうに見る男が一人。
胸から下げた2枚の認識票をジャラジャラと弄んでいるその男は、形容するなら、欧州的な美形──
肩まで垂らした金色の髪や、切れ長の目と女性のように白い肌。年のころは17〜8。
身に着けた水色のジャケットとGパンは、いかにも大量生産品という趣だが、不思議と安っ
ぽく見えないのは、すらりとした長身のせいだろう。
彼はくつくつと笑いながら、パールグレーの認識票を力強く握り締めた。
霧が濃くなり、駅前の異変は更にひどくなった。まるで男の動きに呼応するかのごとく。
デジタル時計の文字はつぶれ、黒い画面が真っ赤に滲む。
完全に停止した携帯にパニクる人間が多数。
霧の向こうからはクラクションの音がこだまする。
男は満足そうに認識票から手を離し、代わりに懐から何かを取り出して弄び始めた。
その形は六角形。手に収まるほどの金属片である。
お久しぶりです。総集編的な代物が一段落したので、やってきた次第であります。
詳しくはまとめサイトのBBSにて。大手を振って紹介するのももったいぶるのもアレでして……
本編の美形さんはいわゆるオリキャラ。二次創作においては嫌われかねん存在なので、微
調整はしてきます。立ち位置はネウロでいうなら、サイより春川に近いかも。そしてゆくゆくは秋水と。
先日、食い物の描写の参考にすべく剣客商売1巻を買いに行ったところ、売り切れだったので
鬼平犯科帳を購入したのです。で、これは短編なのですが微妙な繋がりがありまして、ちょっ
と顔を見せたキャラが、後の話でメインになったりしてて面白い。ので、自分もちょいと真似たのです。
part35スレ
>>7さん
同僚についてはしっかり説明してなかった自分の手落ちなのです。本当にすみません。
おわびに土下座最中をネウロ5巻おまけの作法に乗っ取って、差し上げたいぐらいです。
冗談は抜きにして、千歳が山に行く前にどうして同僚の紹介をしなかったのかと悔やまれます。
part35スレ
>>8さん
実はミートソースの温め方とかも描きたかったのですが、長引きそうだったので省略してます。
やっぱモスは大好きです。詰め込みは幕間だからこそ。話が動かない以上、面白いネタを描かねば!
照星は、今作とは別の所で、大暴れするかも。相手はなんと○○車。筆力、磨かねばなるめぇぜ。
part35スレ
>>9さん
掛け合いが好きと言っていただけると、自信と希望を持てます。
どうでもいいコトですが、今描いてるオリジナル作品のヒロインは、根来と千歳を足して二で
割ったようなキャラで、行きつけの本屋のおばちゃんは、細木数子と魔人ブウを足して二
で割ったような人で、自分はその人のお乳を飲んで育ったため、あと二年で死にます。
ふら〜りさん
>昔やらされた「監査対策・過去の予定表書きを思い出したりしてたら、
どこも泥縄なんですねぇ…… あ、千歳の直訴は終盤に大きな繋がりがありますよ。ただ襲
われるのではなく、一山二山越えた後に。ただ、いつになるかが唯一のネック。
>マジカルインベーダー
完結おめでとうございます。愛一直線ド根性なアーネのキャラが痛快でした。
ヒューイットはですね、かの荒木飛呂彦は、変人貴人列伝を描くに当り「ある種貫いてる人」
を選んだとそうですが、正にそんな感じでして。常識はずれですが真摯な態度は良いです。
各者を無駄なく無理なく扱ったカーズの攻略法も、お見事!
ハイデッカさん
完結については、やはり成し遂げたいですね。次の作品も描きたいですし。
根来は本当、周りに喰われてます。ああ、今の自分なにが足りないだろう。
でも、何が足らなかろうと、動くのは楽しく充実している行為でありましょう。
>聖少女風流記
ベルトランは盾としてまっとうしましたね。力及ばずともするべき事をするてなシチュは元々
大好きなので、その後の、呂布の「初めてか」のくだりともども良かったです。
さてさて、呂布のせいで禁忌を犯したジャンヌの動向、いかなるものや。
しぇきさん
おお、照星物語を覚えていて下さったとは! そうですね。あれをかなり引きずってますね。
当初案では彼、前立腺ガンの手術が一切の医療ミスなく成功し、胃腸が全て摘出されて
鼻から胆汁吹けるようになったりしてましたが、エロ過ぎるのでやめました。
>それゆけフリーザ野球軍
水ぶくれの少年と勇次郎の邂逅からは作中にもあるとおり。
加速度的にほとばしってく狂気と、その静かな幕切れは映像がぐんるぐんると
浮かびますね。イメージ的な部分はかなり練られているのでは。
>オーガの鳴く頃に
>まさに、狂気とアホと中二病が合わさったアルマゲドン
愛すべき連中です。その上一人は巨乳ときたらもう。
されど、一人欠けてしまってはファイティングポーズも決まらぬとは誰かの弁。
リクームもおいしい所で復帰できたらいいんですが、はてさて。
252 :
ふら〜り:2006/04/23(日) 01:05:34 ID:Z1nuJR8V0
>>ハイデッカさん
今までで最高でしたよ今回……。ジャンヌ自身のみならず慶次まで縛っていた、ある意味
本作で一番重く大きな存在だった「優しすぎて戦士に向かないジャンヌ」。それが、最強
最悪の敵を倒す鍵になるなんて。天晴れベルトラン、呂布を討った手柄は貴方のものです。
>>邪神? さん(思いつつ、ではなくて↓思いつつも、なんですよねぇ)
>やはりその姿は美しくない、そう思いつつもスペックを見つめるユダ。
ま、また強烈なフラグ立ててる。それぞれ原作ではあまり地位の高くない二人がこんな……
スペックに引きずられる形でユダにまで好意が湧いて、いや沸いてきてしまぅ。柳たちも
何だか随分素直だし、熱血少年漫画的&私好み特殊方面的両路線で、楽しくなってきたっ。
>>サマサさん
久しぶりの、稟のお兄ちゃんっぷりも良かったですが……アスラァァン! ずっと待って
た、本当に待ってたぞこういう展開! 普段の君らしくない言動にほんわかと感動して頬を
緩ませてたら、すかさず吹き出せてくれてやっぱり君らしくて。不吉なヒキだけど頑張れ!
>>見てた人さん
こういう状況で「賞金が〜」なんて打算が始まると、小悪党なことをして結局殺されるって
よくあるパターンですが、少し違いましたね。カイジに比べ自分は勇気がないと悩んだりは
せず、ただ愛する娘の為に命を賭け、だが奇跡は起こらなかった。いろいろリアルです……
>>一真さん(漫画誌の趨勢には疎いんですが、このスレの名前作品の連載誌はいかほど?)
ジャンプの為なら、マガジン信者と化した銀時はもう完全に敵か。もう少しその辺の葛藤
は見たかったかも。今のジャンプは腐女誌だ、って話は聞いたことありますけどマガジン
の読者層がおっさんとは。「!?」なヤンキーってイメージが……あ、彼らが長じて、か?
>>スターダストさん(お久しぶりですっっ! まとめサイトの方はまた後日に)
凄いぞ根来(&スターダストさん)。ロゴと画像でチラシ作成ばかりやってた私は何者だ。
……気を取り直して、千歳が可愛いなぁ。なんだかんだで、結構ちらちらと女の子らしさ
を覗かせてますよね彼女。なので身長の件は意外。胸はあと2〜3cmありそな印象でした。
じりじりと加藤が後退する。埋まっていた貝がらが足に浅く刺さり、
「つっ」と顔をしかめる。
「──けぇっ!」
これを隙と見なし、『黄』が鋭く踏み込む。技は、またも眼突き。
指はブレもなく両眼にまっすぐ向かう。だが、同じ技を立て続けに許すほど、加藤も甘
くはない。即座に手刀を作る。
「きえぇいッ!」
手刀は『黄』の人差し指と中指とのつけ根を、的確に捉えた。並の相手ならば手相まで
裂かれるであろう、えげつない技術(テクニック)。
ところが、手刀はつけ根で止まってしまった。
「くくく、効かねぇな」
「マ、マジかよ……」
体が固まった加藤へ、寡黙な『青』から拳が放り込まれる。強烈な右フック。体ごと飛
ばされる。
まだコンビネーションは終わらない。いつの間にか空中にいた『赤』が、落下の勢いを
利用して脳天に掌底を叩きつけた。凶悪な圧力はほぼストレートに頭蓋骨を突き抜け、脳
を揺さぶらせた。
「ガハァッ」首がうずまるような一撃だった。たまらず加藤が逃げる。
三人は、目を白黒させる加藤に呆れた表情を浮かべる。
「おうおう、ずいぶん苦しそうだな」と『黄』が笑う。
「うむ」と『青』が頷く。
そして、『赤』がゆるりと舌を動かす。
「さぁ、狩りを終わらせましょう」
井上ははらはらしながら見守っていた。
彼女が加藤と試練との戦いを目の当たりにするのは、まだこれが二度目。しかも、昨日
は甲冑に苦戦しながらも、無傷で倒している。つまり、加藤が傷を負うような場面は初め
て経験する。
「──先輩ッ!」
ガチガチと、歯が根に収まらない。
神心会は強い。まちがいなく強い。なおかつ、今戦っている男は神心会で五本の指に入
る兵(つわもの)だ。なのに、いいところなく攻め込まれている。
「これが……」
半開きになった口から、おぼろげな嘆息が吐き出される。
「先輩たちがいる……世界なのね」
『青』が固めた拳で、多彩なラッシュを披露する。
ジャブで軽く牽制し、右ストレート、ノックアウト率が高い左フック、さらに密着状態
から虚を突くショートアッパー。
加藤も正拳と逆正拳で対抗するが、歯が立たない。いくら拳を打っても、『青』は平然
と向かってくる。
「だりゃッ!」
何度も放った金的蹴り。たしかにヒットしているのだが、彼らにダメージはない。
四苦八苦しながら、加藤は心中で冷静に打開策を探っていた。これまでも非現実的な敵
と幾度も戦ってきたのだ。普通ではない状況に対する免疫はとうに完成されている。また、
反復稽古により大幅にスタミナが向上させたことも、脳のオーバーヒートを防止していた。
「さて……」
どうする。“速さ”と“重さ”は確実に伝わっている。が、肝心の“ダメージ”が通ら
ない。なんらかの法則性を見出さぬ限り、ずるずると敗北に導かれてしまう。
加藤は相手を見据える。派手なカラーリングを施された三体。そして、とある連想を生
み出す。
──こいつら、信号と同じだ。
『青』と『黄』と『赤』。
交通整理を目的とした、点灯によるサイン。あながち無関係だとも思えない。
ならば──試すしかない。
考えられるのは順序。青、黄、赤と、テンポよく攻撃してみる。
「けいっ」正拳突きを『青』にぶつけ、
「どりゃっ」肘を『黄』に浴びせ、
「シャッ」ローからハイへ派生する回し蹴りを『赤』へとみまう。
だが、わずかに抱いた期待も空しく、三撃はいずれも通用しない。
「無駄だ!」
『黄』が軽く放った眼突きが甘く刺さる。身をのけぞらせる加藤。
「決めてしまいますよ」
「うむ」
これ以上ないチャンス。『赤』と『青』が一斉に間合いを詰める。
『赤』が顎を掌底で打ち抜き、加藤を宙へ舞わせる。『青』が矢のように上半身を引き
絞り、反動を使ってナックルをぶつける。
「うむ」と眼を大きく開き、『青』は右拳をがっちりと固めた。
──まずい。
高速を帯びた撞木(しゅもく)のような右ストレート。
──殺られる。
咄嗟に、開いた左手を前に出す。鈍い音が響いた。ちょうど左手の掌底部分が、拳の小
指と衝突した。拳は止まった。
「ぐっ……!」
拳を引っ込め、『青』が顔をしかめる。いくら固い拳とはいえ、指をピンポイントに攻
撃されれば弱い。防衛本能が生んだまぐれ当たりといったところか。──などと、加藤が
締めくくるはずがない。
重要なのは結果ではなく、なぜ効いたかということ。
加藤は違和感を覚えた。それと同時に、勝利への糸口を掴もうとしていた。
次回へ続く。
258 :
作者の都合により名無しです:2006/04/23(日) 08:31:54 ID:su+yEZ2g0
>スターダストさん
お久しぶりです!BBSも見ましたよ。いい感じですね!
根来のエクセルの使い方、神業ですね。
ワードすらまともに使えない俺には難し過ぎますが・・
機械的な根来に対して、千歳はどこか感情的だなあ。
それにしても、根来より背が高かったのか。意外。
>サナダムシさん
これはまたお久しぶりです。以前の更新回数に戻られるといいな・・
信号トリオ、以外に強者でしたね。加藤が最初てんてこ舞いだったし。
でも、全ての試練には必ず鍵がありますね。しかし意外と頭いいな加藤。
それにしても井上さん、こんなにかっこいい先輩に惚れないのかな?
スターダストさん、サナダムシさんお久しぶりです。お2人の作品読めて嬉しいです。
>ネゴロ(フラッシュ見ました。楽しかったです)
根来、事務処理能力高すぎますね。でも、こんな「自分より実力が高い新参者」がいたら
俺もうざいかも。無愛想にも程がありますしねwその分、千歳が可愛いですけど。
>やさぐれ獅子
もう、異界へ入って2週間経つんですね加藤。本当に強く、逞しくなりましたな。
今なら死刑囚に負けないな。信号トリオへの反撃を井上さんと同じく期待してます。
260 :
三十一話「凶暴を極めた竜」:2006/04/23(日) 17:05:33 ID:Q5jJ3ToC0
次々と押し寄せるアサシンの群れ、4人で押し切れる数では無い。
だが、この闘神達は怯む事無く果敢に戦う。
前衛の死刑囚との戦いを避けようとするアサシン達。
アサシン伝統の武器、爪を使い壁を這って行くが逃げる者にも容赦をしないユダ。
「伝衝烈破!」
スペック戦で見せた地を這う衝撃波を無数に放ち、壁を伝って切り刻んでいく。
壁が無理だと判断すれば無理に突破するしか無い、3人の死刑囚へと襲い掛かる。
柳へと襲い掛かるアサシン達、爪での攻撃で複数箇所に多量の出血を狙うが、
「この技はね・・・痛いよ。」
極限まで力を抜き、リラックスさせた体を鞭の様にしならせ、振りぬく。
女性、子供、老人でも扱える護身術の一つだが達人の使うこれは最早、護身術では無い。
皮膚への打撃は衣類の上からで無い限り、軽減出来ないからだ。
この技、「鞭打」は柳クラスの達人ならば衣類の上からでも容赦無く打撃を与えられるが。
そして手に仕込まれた毒手が細くなっていく、強烈な打撃と猛毒を身に浴びた者は、
一夜と待たず絶命していくであろう、柳を無理と判断するとドイルへと奇襲を掛ける。
一気に襲い掛かるアサシン達だが、ドイルに正面から挑んだ事を後悔する。
「ファイア・・・。」
突如、ドイルの胸から炎が吹き上がりアサシン達を包んだ。
燃え尽きた仲間の死体を踏みつけながら奥から新しいアサシンが湧き出る。
すると手から刃物を出し、待ち受けるドイル。
刃物を恐れ、低い姿勢で足を狙うがそれを見通していたドイルは、
足からも刃物を出し頚動脈を深く斬り付けた。
残るはドリアン、こんな状況下だと言うのに演舞を始める。
そして襲い掛かるアサシン達、それが罠だとも知らずに。
最初に飛び掛ったアサシンは爪を真っ直ぐにドリアンへと伸ばした。
そして当たるのを確認した、確かに当たった様に見えた。
だが爪の刃先が綺麗に消えてしまった。
「探し物はこれかな?」
そう言って手を差し出すドリアン、その手には砂鉄が握られていた。
未熟とはいえアサシンという職業ならば自分の武器は分かる。
その砂鉄は、消え去った己の爪の先端であるという事を。
261 :
三十一話「凶暴を極めた竜」:2006/04/23(日) 17:06:57 ID:Q5jJ3ToC0
〜アサシンギルド十字路・交差点〜
「なんでこんな長い廊下作りやがったんだぁ・・・?」
長々と続く廊下をこう何度も歩かされては気が滅入る。
精神的な疲労がひどいロニ、傷の塞がらないままカイルの武器を、
新品同様に磨き上げていたのだ、無理もない。
だが百戦錬磨のロニ・デュナミスはそれしきではへこたれない。
精神が疲れているのなら安らぎを与える・・・脳内妄想でだが。
〜ロニ・デュナミスの精神医療法〜
格好良くこの先にいる親玉を叩きのめして町へ帰る。
すると噂は風の如く広まり俺はカイルより一足速く英雄になる。
すると町の美しい美女達が俺を取り囲んで口々に俺を称える。
「ロニ様〜素敵〜。」
だがそんな彼女達へ笑顔を見せられない悲しみを堪える俺。
旅はまだまだ続くのだ、この町に留まる訳にはいかな・・・
「ロニ、大丈夫?」
リアラが心配して転がっているロニに声を掛ける、
どうやら脳内麻薬が分泌してる間に着いた様だ。
扉に顔面からぶつかり鼻血が出る。
「いってぇ〜・・・。」
自業自得とはこの事だがイマイチ釈然としないロニ。
こうなったら溜まったストレスを全部吐き出してやろうと意気込む。
3人で一緒に扉を握り締める、鼓動が高ぶり闘志が湧き上がる。
そしてついに開かれる聖堂への扉、真っ暗な部屋で影が一つ、
蠢いていた。
262 :
三十一話「凶暴を極めた竜」:2006/04/23(日) 17:09:00 ID:Q5jJ3ToC0
「役立たずのクズ達では頼りなかったか。」
影がゆっくりと歩いてくると共に、徐々にその姿を現す。
赤い、血の様に赤い衣服を身に纏った男が現れた。
「俺の名はミニオン・ストライフ。
サルーイン様に刃向かう虫ケラには死んでもらうぞ!」
各自、武器を構えいつ攻められてもいい様に防御の型を取る。
顔まで覆い尽くされた赤衣が大きく揺れるほどに男は笑った。
「貴様等の様な脆弱なウジ虫に興味は無い・・・相手をするのはこいつだ。」
地面が揺れ、大地が割れるとようやく気付いた。
この部屋の地面が砂で覆われている事に。
「砂漠が広がる理由はなんだと思う?こいつが暴れまわっているからだ、いけディアブロス!」
割れた地面から巨大な砂色の竜が現れる、その頭部からは雄雄しくねじれた2本の角が突き出していた。
砂漠に生息する飛竜、ディアブロス。砂漠を移動する際、このディアブロスの縄張りには決して近づいてはいけない。
砂漠という砂地を最も速く移動できる生物こそ、この2本の角を持つ悪魔なのだ。
性格は非常に凶暴、例えるなら何時、如何なる時も産卵期のドラゴンと同等と言える。
声帯が発達しており、その雄叫びで鼓膜を破られるハンターも珍しくは無い。
己の力を過信した者には容赦なく、鉄の塊の様な尾をその身に受け、鋭い牙に傷つき、
巨大な体に似合わぬ、とてつもない速さで駆け抜けるディアブロスの角に身を晒す事となる。
「ウゴォォォォォ!」
砂色の悪魔が先手を取る、咆哮を上げ耳を守る獲物を仕留める悪魔。
案の定、いきなり現れた巨大な竜の姿に驚いたカイル達には効果的であった。
渦巻く双角の標的は、カイルであった。
痛みの引かない耳から手を離し、剣を構える。
自分の身軽さを利用して背中へと上り背後を取ろうとジャンプする。
角を突きたてながらこちらに走ってくるディアブロス。
下げられた頭にある角の間を踏み台に一気に背中へ飛び乗る、筈だった。
カイルの目の前で突然踏みとどまるディアブロス。
ジャンプしたカイルを見つめる凶暴な瞳が光る。
見つめた先にある獲物へと、角を振り上げた。
263 :
三十一話「凶暴を極めた竜」:2006/04/23(日) 17:11:36 ID:Q5jJ3ToC0
空中での姿勢制御も完璧にこなすカイル、抜群のバランス感覚。
角をがっちりと剣で受け止め、その力を利用して天井へと飛ぶ。
そして天井へ剣を突き刺しぶら下がる。
忌々しそうにそれを見つめるディアブロス、目は更に輝きを増す。
突然、ディアブロスが後ろに感じた衝撃、ロニが尻尾の先端へ斧を振り下ろしていた。
「か、硬ってぇぇぇ〜。」
硬い岩盤に向かって鉄パイプを振り下ろす、破壊できないほど硬い物質だった場合、
鉄パイプの震動が手から体へと伝わって行き、痺れを起こす。
今のロニがまさにそれだった、唯一の武器を手放せないと言う精神のみで、
ハルバードを握ってはいるがいつ手放しても可笑しくは無い。
バックステップで距離を取ろうとするロニへと、ハンマーの様な尻尾が襲い掛かる。
咄嗟にハルバードで防ぐが、手がしびれていて力が出せない。
当然、足の力のみで防げるような衝撃では無く壁へと叩きつけられてしまう。
二人に目がいっている間にリアラの詠唱していた晶術が発動する。
「フレイムドライブ!」
3つの火球が超スピードでディアブロスへと飛んで行く。
だが驚異的に硬い甲殻で阻まれる炎は周囲に散ってしまった。
「フォトンブレイズ!」
だが周囲に散った炎を再び収束し、小型の爆弾に近い炎を形成する。
集めた炎はディアブロスの角で爆発を起こし、爆煙を広げる。
手ごたえがあった、ダメージを確信したリアラだったが、頭部を守る甲殻も、
角に近い硬度を誇っているため全くダメージが無かった。
それどころか炎によって起きた爆音によって目の輝きが臨界点に到達する。
最初の咆哮を更に上回る鳴き声を上げる双角の悪魔、口からは黒煙を吐き出している。
怒り、そんな感情を大気に放出しているかの様な衝撃を覚える。
再び耳を塞いでしまうリアラに、2本の角が襲い掛かる。
264 :
邪神?:2006/04/23(日) 17:12:26 ID:Q5jJ3ToC0
デスティニーの名台詞とかすっかり忘れちゃった。邪神です。
でも弟が小説もってたのでそっちからそれっぽいのを引き抜いたりしとくか・・・。
しかし最近モンハンやってないから後書きに書く事が無い。
モンハンネタで埋めないと後書きがスカスカな物になってしまう・・・。
ま、いっか。
〜ネタネタ・・・ねーよwww〜
227氏 DLした格ゲーの動画で部下を操るユダ様が
めちゃめちゃ素敵だったので美化されてしまったw
しかし逆に動画みてたらトキのイメージが悪化する事は間違いないだろう・・・w
247氏 レギュラーはきついからサブレギュラーくらいを予定。
死刑囚を平等に活躍させられるか分かりませんがスペック優先かも・・・
一応ホークと繋がってたりするし。
サマサ氏 そういえばアスランがリッドでキラがキールだったかw
死刑囚はまだまだ利用していきますので活躍はあるかもしれないし噛ませかもしれない・・・。
ふら〜り氏 <熱血少年漫画的&私好み特殊方面的両路線
こ、これは期待に答えて「うほっ、いい男」「やらないか?」
を用意するしかない!D2腐女子に向けてカイルも・・・。
あれ?何か自分が人生においての間違いを起こそうと(ry
お疲れ様です。すごい更新回数ですね。
多数場面で奮戦する登場人物たちが頼もしいです。
死刑囚はこういう場面で頼りになりますね。
ドイルのブレストファイアは確かに一網打尽に最適だ。
第六話「月見酒で酔っ払える奴は幸せもんだよ」
坂田銀時は、『白夜叉』と呼ばれていた。
天人襲来の折、攘夷戦争において鬼神の如き強さを見せた銀髪の侍。
敵はおろか味方かも恐れられ、その姿は双方から武神と称された。
服部全蔵は、元お庭播衆の忍者である。
歴代のお庭播衆の中でも随一とされる忍術の使い手で、その実力は闇に隠されている。
掲げし称号は『摩利支天』。その名がどんな意味を持つかは、誰も知らない。
そんな二人の激突。
片や卓越された実戦用の剣術、片や忍特有の体術と忍術を武器に、江戸の町を戦場に変えていった。
伝わる熱気からは、二人が本気と書いてマジであることが十分に窺えるのだが、あまりにも白熱しすぎていて「オイオイ誰だよこいつら」とツッコミたくなるほどの別人ぶりを見せていた。
この戦闘をあんまり詳しく描写すると、これまでのイメージが著しく狂ってしまう恐れがあるためにそれは控えさてもらう。
では、早送り……
「ぐあっ!」
「ハァ……ハァ……いい加減諦めついたか、この忍者ヤロウ」
お互いが息切れをしながら、ついに全蔵が地に膝をつけた(ここにいたるまでの激戦の内容は、読者の想像にお任せしたい)。
「ハァッ……あ、諦めるだと……何言ってやっがる……」
全身をボロボロにしながらも立ち上がる全蔵。銀時の武器が木刀だったからいいものを、もしも真剣だったら全蔵は今頃この世にはいないだろう。
「足ガクガクのクセしてよく喋れるなお前。生憎だけど、俺はこんなところで油売ってる暇ねーんだよ……」
自分には、マガジンのためにやらねばならぬことがある――
銀時は与えられた使命を全うするため、再び歩みだす。
彼自身、人のことをいえないくらいの重傷を負っていたのだが、それでも身体を動かすことは出来た。「執念」という原動力が働いているから。
「行か……せるかァァァッ!!!」
立ち去ろうとする銀時に、全蔵が必死に喰らいつく。
渾身の体当たりによって相手を押さえ込み、しがみ付いて離さない。
「なっ!? しつっこいんだよ、このジャンプ忍者がァァ!」
「うるせェェ!! てめーこそ目を覚ましやがれ、このマガジン侍がァァァ!!!」
天下の往来で大人二人が何をじゃれ合っているのだろうか、と何も知らない通行人は思うであろう。だが彼らは人目も気にせず、地べたを転がり続ける。
銀時が突き放せば全蔵が喰らいつき、全蔵がしがみ付けば銀時はそれを引き剥がそうとする。
これが子供だったらケンカと見て取れるのだが、二人とも外見的年齢はいい大人だ。本当に変な趣味でじゃれ合っているようにしか見えない。
何時間その激闘を続けただろうか。
江戸の町はすっかり暗くなり、月明かりと電灯が支配する夜の町へと変わり果てていた。
その間も、マガジン休刊へのタイムリミットは刻々と過ぎてゆく。
「もう……入稿には間に合わねぇか」
名もなき江戸の片隅で、逃亡者西本はワンカップ片手に月見をしていた。
思うことは、週刊少年マガジンの行く末。
時刻はもはや深夜に迫ろうとしている。たとえ今から原稿の執筆に取り掛かったとしても、とても午前零時までには間に合わないだろう。
つまり、マガジン来週号の休刊は決まったようなもの。
そしてその責任は、全て自分にある。
「……終わりかな、俺の漫画家人生」
一人の新人作家が有名漫画雑誌を休刊に追い込んだなど、業界にとってはどれだけの重大ニュースになることか。
マガジンを出版している講談屋はもちろん、その悪名は他の出版社にも届き、「西本は連載一回目から締め切りを破る漫画家」としてブラックリストに載ることは間違いない。
「悔いはねぇ……これは俺が決めた人生だ」
嘘だった。
悔いならある。
漫画家人生を棒に振るうということは、生きがいを失うということだ。
それがどんなに辛いことか。
西本の目尻から溢れる水の滝が、それを物語っている。
「ちくしょう……なんで……」
空になったワンカップには、既に酒以外の液体が溜まっている。全て西本の眼から流れ落ちたものだった。
「――オイオイ、人生まだこれからの二十代ともあろう若者が、ワンカップ片手にうな垂れてんじゃねーよ」
そんな西本に、一人の男が声をかけた。
「……来たのか。もう無駄だってぇのに」
それは、マガジンからの追っ手だった。
天然パーマの銀髪は土埃に塗れ輝きを失っていたが、昼間出合ったあの男に間違いないだろう。
執念深いことだ、と西本はため息をつく。
それがスイッチになったのか、銀髪の追っ手、坂田銀時は西本の胸ぐらを掴み取る。
「無駄? ふざけたこと言ってんじゃねーぞ。まだ期限までには時間があるだろ。てめーも新人とはいえプロの看板しょってるなら、お世話になった出版社のために一死報いてみろってんだ」
銀時の言葉は一見穏やかなように聞こえるが、その内心は表しようのない憤慨に満ちていた。
彼が描かなければマガジンが迷惑を蒙る。それも理由だったが、銀時はこの仕事から逃げ続ける西本の態度が何より気に入らなかった。
「漫画を知らねぇ奴がほざくんじゃねぇ。プロが1ページ仕上げるのにどんだけ時間を使うか知ってるか? 1コマ描くだけにどんだけ体力使うか知ってるか? 漫画ってのは、即興で描けるようなあまい作りはしてねぇんだよ」
銀時には、漫画作りのノウハウなど分からない。
だが、人間やる気があればなんでもできるもんだ。
江戸に暮らす銀時は、それをよく知っている。
空から天人みたいな侵略者が訪れても、侍達は持ち前の雑草魂で必死に今を生き抜いてきた。
侍でないにしても、江戸に暮らす人間なら誰もがその魂を受け継いでいるはずだ。
西本にもそれはあるはず。この若さにして人気漫画雑誌の連載を獲得するほどの努力は並大抵ではないのだから。
それだけは、銀時も分かっていた。
「おめーはやらなくちゃいけねぇんだよ。先週のマガジンの次回予告読んで楽しみにしている読者が何人いると思う? 今もお前の原稿を待って今週号の準備してる編集者が何人いると思う?」
ここまで言ってわからないなら、いっそ殴り飛ばしてやろうか。
銀時が熱弁をふるいながらそう考え始めてきたところに、もう一人の追撃者は訪れた。
「そいつの言うことは……聞いちゃいけねーぞ西本先生……」
月夜の街道、暗闇の中から木の枝を杖代わりにやって来たのは、忍者装束をボロボロにした状態の服部全蔵だった。
そのヨロヨロとした歩みは、見ているだけで危なっかしい。それでも彼はここまでやって来た。
「痔忍者……てめーも相当ネチっこいな」
「うるせぇ……俺は全国の漫画家の味方だからな。作家の人権を尊重しようとしないてめーら糞編集者には屈しねぇんだよ」
銀時に全蔵、二人とも本当にしつこい。
事情は知らないが二人とも相当な漫画バカなのだろう、と悟る西本は、力ない笑みをこぼしながら「やれやれ」と呟く。
そして、
「――やっぱり俺は捕まるわけにはいかねェェ!!!」
再び逃亡した。
「あっ!? ちくしょう! 待ちやがれってんだァァァ!!」
「それでいい! それでいいんだよ西本先生!!」
それに釣られて追走する銀時と、逃亡をアシストする全蔵。
もう時間は残されていない。体力も尽きようとしている。それなのにこの大人たちは子供のように元気だ。
やはり漫画が関わっているからだろうか――無自覚なまま、三人は走り続ける。
だが、失念していた。
今の時間帯が夜であるということ。
月が出ているとはいえ、非常に暗いということ。
足元は影に覆われ、落ちている石の個数は数えられない。
そのせいで、三人の先頭を行く西本は躓き、転んでしまった。
「――ッ痛! ……っつつ」
すぐさま身体を起こすが、もう遅い。
そこは既に車道のど真ん中であり、横合いからは大型トラックが迫っていた。
――ブゥゥゥゥゥゥゥ!!!
クラクション。
「――西本先せぇぇぇぇぇい!!!」
絶叫。
――ドゴォォォォォン!!!
……そして、衝撃音。
休日を生かして二日連投、一真です。
今回で第六話。佳境に入ってまいりました。
と、今回ついにギャグ分が抜けてしまった……。
今までの売りが一気に消えてしまったんで、かなり不安なんですがどうでしょう?
次回への引きの展開もえらく抽象的になってしまい、内心ドキドキしております。
予定ではあと二話。
でもあくまで予定。
今月中にはこの話が終えられるかは微妙なところ。
あと作中のジャンプやらマガジンに対する表現はとても極端なものとなっております。
ですのであんまり鵜呑みにしないように。
271 :
作者の都合により名無しです:2006/04/23(日) 21:43:46 ID:DeHh44Tu0
>サナダムシさん
加藤、最初と比べてどれほど強くなったんだろう?
とりあえず克己以上にはなってそうですね。
神心会として、信号機トリオを蹴散らす所が見たいです。
>邪神さん
バキ死刑囚軍団の肉弾戦と、テイルズ軍団の魔法戦が
苛烈ですね。今、敵味方何人くらいいるんだろう?
キャラが多くて話が複雑になりそうですが頑張って下さい。
>一真さん
文面はギャグっぽいですけど、シリアス風になってきた。
トークは相変わらず軽妙だけど、話は重くなって来てますね。
後2話ですか。うーん、長編カテゴリ行くかな?
しばらく来ない内に、感想が追いつかないくらい更新されてゐる!!
いやぁ、この賑わいっぷりは実に素敵ですね。
あまり時間がないので後日ゆっくり感想を書くとして、今日はひとつだけ…
>サマサさん
せっかくもらったエーテル通信機を、甲児が私用で使用した為に、マサキの参戦が遅れたんですよねw
アレは確か第4次ごろの話だったっけ…嗚呼懐かしい懐かしい。
第4次といえばENの上限255、強いよブラッドテンプル、ズワウスかっこいいよズワウス等、今となっては良い思い出ばかりです。
ということで、ネオ・グランゾンには期待してますwww
後にも先にも、第3次αのイデオンガンを超える攻撃力×3なんて悪夢は他にないよなぁ……
勝利の鍵:アムロに核弾頭!
スーファミ時代のスパロボで一番強いのはエリート兵、これだけはガチ
ファンネルだろーとハイパーオーラ斬りだろーと「踏み込みが足りん!」の一言で切り払う奴らは鬼という他ない
274 :
作者の都合により名無しです:2006/04/24(月) 17:37:11 ID:Y7vFxerQ0
シルバーソウルは銀魂好きの俺にとっては
いい意味で手軽にほっと楽しめる作品です。
ただ、流石に今回からシリアスモードはいりましたね。
ギャグを絡めながらこの連中の真剣さを見せて下さい。
でも、後2回っすかw
7/15(土)10:00 時空管理局 本局内 練習場
広い空間の中に五人の魔導師と一体の使い魔がいる。
一人は純白の衣装の少女、高町なのは(10)。魔導師になって一年余りながら、『管理局の白い悪魔』の異名を持つ一流の砲撃魔導師である。現在は武装隊の士官候補生。
一人はマントを羽織った少年、ユーノ・スクライア(10)。なのはの師であり魔導師となるきっかけも作った、現在は時空管理局のデータベース『無限書庫』の司書をしている結界魔導師である。
一人は着物に袴で眼鏡の少女、エラントラ・鄭・グレンジャー(15)。武装局員では珍しく使い魔を持っている実直な魔導師である。
その使い魔はブリーサ(17、オウム素体)。人の形態の今は体格が主人とほぼ同じ、白装束の女性である。
一人は口元が隠れるような深緑色の忍者装束のようなものを纏った少年、フェリツィア・ファボリット(13)。ある大財閥の御曹司である。
そして、もう一人は胸元が大きく開いた衣装の少女、ティアナ・ユリシーズ(11)。かなりの魔力を持っているが制御が下手なため、『武装隊の歩く火薬庫』『味方潰し』などの不名誉な称号を甘受している。
この日が『高町小隊』の始動日となった。ちょうど小学校が夏休みに入り、なのはに時間ができたためである。
初日ということで、実力の把握も兼ねて実践練習である。
「仕事があるっていうのに、呼んでごめんね、ユーノ君」
と、すまなそうになのは。
「いや、書庫の整理もちょうど一区画終わったところだったし、僕も気になってたから…」
そして、ユーノが結界を張ったところで、
「戦闘前に、デバイスの確認でも。私のレイジングハートはもう知っているかも知れないけど」
レイジングハート。固い絆で結ばれたなのはのパートナーである。昨年末の『闇の書事件』で破損したが、カートリッジを搭載できる『レイジングハート・エクセリオン』として生まれ変わった。
まずエラントラが、
「私の杖はデネボラ。親戚筋の方から譲ってもらったインテリジェントデバイスです」
『獅子の尾』の名の通り持ち手は黄色く、先端の魔力石は白い。
次にフェリツィアが、
「俺のはアンタレス。インテリジェントは邪道だ。ストレージは処理速度が速いし」
こちらは濃淡の差こそあるものの、蠍の如き赤い色で統一されている。
最後にティアナが、
「私のはヴェガとアルタイルっす。デルカーノさんからいただいたっす!」
ティアナのデバイスは管理局でも珍しい、カートリッジ搭載の銃型であった。
「そんだけいいもん使ってるんだから、もうちょっと役には立てよな」
「うぅ…」
フェリツィアの言葉に何も言い返せないティアナだった。
「それじゃ、そっちは全員で来ていいよ。こっちはカートリッジなしで。もちろん両方非殺傷設定でね」
「これに勝ったら、俺は辞めさせてもらうぞ」
いまだ納得のいかないフェリツィア。
「師匠に向かって、そんな言い方はないと思うんっすけど…」
と、諌め気味にティアナ。
「なんだよ、お前はあっちの味方かよ。確かにお前は戦闘タイプが似てて参考になるだろうからいいけど俺みたいな高速戦闘派じゃあんま無いじゃん。俺はクロノさんに見てもらいたかったんだよ…」
「執務官もご多忙ですし、無理があるでしょう。だいたい、攻撃のバリエーションを増やすと思えばあながち無意味とはいえませんよ」
と、エラントラが正論で返す。
「うるせえな、お前ら両方あいつ側なのか!とにかく俺は決めたんだから、口出しすんな!」
一連のやり取りを傍観しいたなのはとユーノ。
「……。これから不安だなぁ…」
「なのはなら大丈夫だよ」
「ありがとう、ユーノ君。じゃ、そろそろ始めるよ」
「ブリーサ、結界維持を手伝ってあげて」
「わかりました」
部下チームは前衛フェリツィア、中堅エラントラ、後衛ティアナとバランスが取れている。
なのはとしては、まずは距離をとる必要があった。
「レイジングハート、いくよ」《All right. My master》
「ディバイン!」《Divine shooter》
円い小型魔方陣が展開されると、桜色の光から射撃魔法の発射体が形成される。
この誘導操作弾で相手に隙を作り、威力抜群の砲撃で打ち抜くのがなのはの戦術である。
もちろん部下側も手をこまねいて見ているはずはない。
「ランサー、準備」
《Frame lancer》
エラントラが炎の誘導弾、フレイムランサーを展開させる。
「フェリツィアはいったん後ろへ、ティアナは砲撃の準備を」
「おう!」
「了解っす!」
そして、
「シュートっ!」
「発射!」
射撃魔法が発動する。
最大出力の大きいなのはのディバインシューターは、凡百の魔導師なら一撃で昏倒させる威力を持つ。いきなりの撃墜は避けたいところであった。
しかし、制御に優れたなのはは、誘導弾を変幻自在に動かせる。回避はそれほど容易でない。
部下側全員が回避に入る。
「お前は鈍いんだから、気をつけろよ」
「わかってるっすよー」
とはいえ、技術秀でたエラントラや機動のあるフェリツィアはともかく、ティアナは何度か掠ってしまった。出力が高い分防御も堅く、ダメージは少なく済んだが。
対するなのはのほうも、炎の槍を一つずつ確実に回避していく。
ある程度相手が遠ざかったところでレイジングハートがモードチェンジ。中長距離用のシューティングモードである。
《Square shield》《Standard baria》
「皆さん、防御を!」
エラントラとフェリツィアは前面に防御を展開させたが、
「よぅし、私も!」
何を思ったかティアナはカートリッジを装填した。
「お、おい!何やってんだ!」
驚くフェリツィア。
「折角だから一発撃っちゃうっす。エンカウンターバスターっ!」
《Encounter buster》
エンカウンターバスター。自らの魔力をそのままぶつける彼女の必殺魔法だ。が…
「あ゛」
「!! うわあぁぁ…」
いつも通り、と言うかなんと言うか、狙いが外れて味方両方に中ってしまった。
しかも、防御を前面に集中させていたので…フェリツィア、御愁傷様。
「またやっちゃったっす…」
「いいところを見せたいのはわかるけど、先に言って…」
エラントラも少なからず魔力を削られ、やや呆れ気味である。
「ごめんなさぃ…」
278 :
作者の都合により名無しです:2006/04/24(月) 18:11:57 ID:Y7vFxerQ0
あれ?リアルタイムで読んでたけど止まっちゃったかな?
今から出ないといけないんで、途中ですみませんが感想書きます。
全力全開さん、いよいよ始動ですね。パソは手に入りましたか?
これって、魔法少女にして戦隊物っぽいですね。
両方ともツボなので期待しておりますよ。
「…えぇと、なんか自爆しちゃってるところ悪いけど、いくよ!ディバインバスター・フルパワー!」
《Divine buster fullpower》
なのはの主力魔法ディバインバスターのバリエーション、威力はそのままに放射域を拡大させたものである。
もはや壁のようですらあるそれが、二人に襲いかかってきた。
「ぐ・・・ああぁぁッ!」
「!!! うっ…」
容赦なく魔力を削られる。さきほどのダメージもあったのか、局員のなかでも守りに覚えあるはずのエラントラもあえなく撃墜。魔力豊富なティアナはどうにか耐えたが、エンカウンターバスターの消耗分が大きかったらしく、飛翔するだけで精一杯のようだ。
「やっぱりこれは無理だったかな…」
「えげつない…」
ユーノがボソッと言った。
同日14:00 局内医務室
昼食をとり、休息し、砲撃で消耗していた三人もある程度は魔力が回復した。
「俺は負けたわけじゃないからな!」
まだ言っている。
「でも、私の砲撃より師匠のほうが強力っすよ」
「お前は黙ってろ!大体お前が勝手に撃つからだろ!!」
フェリツィアはもともと防御は不得手なのである。これ以前にもティアナの見当外れの砲撃を何度か食らって、そのたびに撃墜している。
「次からはもうちょっと加減するから…」
そのとき通信が入った。アースラからだ。
「なのはちゃん。今大変なのよ」
執務官補佐でオペレーターのエイミィ・リミエッタ(17)。普段は結構ノリのいいタイプだが、今は少々深刻そうだ。
「どうしたんですか、エイミィさん?」
「植物が魔力を持って動いてるの。まだ理由はわからないけど・・・とりあえず戦力が必要そうだから、来て」
「わかりました。みんなは来れる?まだ完全に回復してるわけじゃないようだけど…」
と、問いかけると、
「もちろんっす!」
「はっ?このくらいなんともねえ!」
「観戦だけになるかもしれませんが、行きます」
「だそうです。場所はどこですか?」
「えと、だいたい北緯35.7度、東経139.7度。こっちでは練馬区って呼ばれてるところね」
「わかりました。すぐいきます」
同時刻 巡航L級8番艦・アースラ
「艦長、なのはちゃんたちに連絡しましたよ」
「そう。そろそろ結界の準備をしないとね。フェイトたち、準備はいい?」
リンディ・ハラオウン。アースラの艦長である。ちょっととぼけたところがあるが、実力は折り紙つき。
「OKです。すぐ出られます」
執務官候補生のフェイト・T・ハラオウン(10)。紆余曲折を経てリンディの養子になった、なのはの親友である。
「あたしももういいよ」
その使い魔のアルフ(3:外見年齢は16、狼素体)。瀕死のところをフェイトに助けられた。
「これは…別の次元世界からの余波か?にしてはかなり大きい。しかもツルなんか生えないような木からも生えてるな・・・」
そしてこちらは執務官のクロノ・ハラオウン(15)。まじめをそのまま人間にしたような感じ。だったが、なのは達とかかわって少しずつ変わってきている。エイミィとは幼馴染。身長はかなり低く、なのはやフェイトと大差ない。
「クロノ君大変!今調べてみたんだけど、次元を超えてこれだけの影響を及ぼすには、S+クラス以上の実力が要るみたい!」
なのは・フェイトはAAAクラス、ユーノはAクラス、クロノでもAAA+クラスである。
「何!いざとなったら僕も出る必要がありそうだな。なのはを呼んでおいて正解か」
「はやてちゃんたちも呼んでおく?」
「そうしてくれ」
いまちょっと手元にマウスがないので操作に手間取っています。
長くなりそうなのでAパートとBパートに分けることにしました。
実はもう3話目を書き始めています。
なので、ストックを一話分設けることにしました。
ほかの作家さんへの感想などは後で携帯から。
ではBパートをどうぞ。
同日 13:45 東京都練馬区月見台すすきが原 野比家
ふすまが開くと、
「ドラえもーん、すごい虫が捕まえられる道具出してよー」
「まったく、虫ぐらい自分で捕まえなよ」
「そんな子といったって、もうみんなに約束しちゃったんだよ。タイムマシンで虫の多かった時代に行けない?」
「しょうがないなあ…」
もはや様式美ですらある一連のやり取りの後、引き出しを開けると、
バチバチバチ!!
「うわっ!」
「どうしたの、ドラえもん?」
「なぜか分からないけど、時空間の様子がおかしい。これは使わないほうがいいよ」
「そんなぁ」
「まぁ、とりあえず裏山に行こう。僕がどうにかするから」
同日 14:10 小学校裏手の山
しずか、ジャイアン、スネ夫を呼んで、裏山に到着したが…
「ん?」
先頭のドラえもんが急に立ち止まった。
「どうしたの?」
「どうも妙だ。これ以上進めないようになってるみたいだ。しかもご丁寧に、目立たなくなるように精神操作までしてある」
と、不可視の壁を叩きつつ言う。
「中に入ってみようぜ!」
これはジャイアン。
「何が起こってるのか気になるわ」
これはしずか。
「行ってみようよ!」
これはのび太。
「よし【通り抜けフープ】!」
「えぇ…やめようよ」
一人だけ否定的なスネ夫。
「なんだよ、おいてくぞ」
「えっ…わかったよ、僕も行くよ!」
「撃ち抜け、轟霆(ごうてき)!プラズマスマッシャー!」《Plasma smasher》
中に入ると、目の前には、
「なにこれ…」
金髪で黒い服、黒い杖のようなものを持った少女と茜色の髪で獣のような耳を持つ女性が飛び回りつつ不気味に蠢く植物のツルと戦っていた。
ドラえもん一行が呆然としているうちに、ツルのようなものが迫ってきた。
「いけない!【植物あやつり機】!」
まず受信機をばらまく。ツルにくっついた。そしてマイクで
『止まれ!』
すると、動いていたツルがピタリと止まった。
アースラ艦内は騒然としていた。民間人が侵入してしまった。リンディも、
「あら、大変」
一番深刻そうなのはクロノ。
「なんなんだあいつらは!この時代の科学技術ではあの結界を通過することなんて不可能なはずだ!」
「クロノ君、これ見て!」
モニターに三人の少年と一人の少女、そして青い奇妙な物体が映った。
「ん!?何だこの青狸は!?」
「あたしには青いダルマに見えたんだけどなぁ…。まぁそれはともかく、この子と結界を通ってきたのと何か関係がありそうよ」
「なんにせよ、まずいことになったな…」
その時、
「どうしたんですか?」
「なのはちゃん!」「なのは!もう着いたのか」
「なんかいやな予感がするんですが…まさかそんなことはありませんよね?」
クロノは憮然としつつ、
「…そのまさかだ。どういうわけか知らないが、現地市民が結界内に入ってきてしまった。いまのところ、自分たちの身の安全は守れているようだが。しかしなんだ、あの妙な青狸とその道具は…」
「見たところ、私と同年代のようですし、話を聞いてきます!」
「私たちはどうすれば?」
ついてきたエラントラが言う。
「あんまり大勢でいくとややこしくなるから、悪いけど待ってて」
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「しょ、将軍!マレンシャーがナロルカ島方面から来た何者かによって襲撃されています!」
「なんだと!それで、敵は何千人だ?」
すると、部下は少し口ごもり、なにやら迷っているようだった。
「どうした?早く言わんか!」
「それが…3人です」
「馬鹿なことを言うな!マレンシャーはこの国で五指にいる都市だぞ!8000人の軍勢を配置していたというのに!」
「しかし、真実なのです…」
「信じられん…場合によっては、こことドラガナの軍勢を回すことになるかも知れんな…」
結界を通ってきちゃった人たちは、なんと私たちと同学年だそうで。自己紹介するんですが、いろいろと大変なことに…
次回「ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは〜黄昏の戦乙女編〜」第2話「何はともあれ、自己紹介なの」
リリカルマジカル、がんばります!
加筆訂正版の3が2つありますが、後のが4です。
加筆訂正しているうちにいろいろ変わってしまいました。
では、後ほど携帯から…
リリなのの魔法とドラえもんの道具。どっちも魔法じみているけどちらも科学だというのがすごいですよね
全力さん、いきなり気合入ってますね。
宇宙からのシーンから、急にのびた達のシーンに移行したけど、
次回辺りからいよいよ遭遇するのかな?
なのは達と出会ってどうのびたたちが大冒険に旅立つか楽しみ。
第六十九話「戦士たち」
「ああもう、アスランはまだこねえのかよ!」
ジャイアンが苛立つ。既に出撃の準備はできているのに、アスランだけ姿を見せていない。
「仕方ない。ぼくらだけで先に出よう」
ドラえもんがそう言った時だった。
「おーい、ちょっと待て!置いてくな!」
「あの声・・・アスラン!遅いよ、何やって・・・」
言いかけてのび太は目を丸くする。アスランの隣に、営倉に入っているはずのキラがいたからだ。
「悪かった。警報が鳴った時、ちょうどキラのところに行っててな。そのまま連れてきた」
「連れてきた、だと!?アスラン、貴様・・・」
「小言は後で聞く。それより今は目の前の敵を片付けるしかないじゃないか!」
イザークの抗議を平然と受け流すアスラン。まだイザークは何か言いたそうだったが、ディアッカとニコルが宥めた。
「まあまあ、イザーク。キラがいれば随分助かるんだから、細かいことは言いっこなしにしとこうぜ」
「そうですよ。規律も大事だけど、戦いで受ける被害を最小限に抑えるほうがもっと大事ですよ」
「・・・分かったよ。大目に見るのは今回だけだ。さっさと準備しろ!」
ぷいっとそっぽを向いてさっさと<デュエル>に乗り込んでしまうイザーク。ディアッカとニコルも肩を竦めてそれぞれの
愛機に乗り込んだ。
残る一同は、キラとアスランに駆け寄る。
「キラ、無事に出られてよかったね」
「うん・・・アスランのおかげだよ」
「そっか。アスラン、ごめんね。てっきりグースカ寝てるとばっかり思ってたよ」
「ははは・・・そんな風に思われてたとは、ちょっとショックじゃないか・・・」
ちょっと顔を引きつらせるアスラン。結構傷ついているようだった。
「あのさ・・・」
キラがおずおずと喋りだす。
「その・・・ごめん。色々心配かけちゃって・・・」
気まずそうに顔を伏せるキラ。そんな彼に、のび太が笑いかけた。
「何言ってんのさ。そんなの、全然謝ることじゃないよ。ねっ、みんな」
おう、と全員から声が上がる。
「みんな・・・」
「キラ、そんなに気にするなって」
稟がキラの肩をぽん、と叩いた。
「お前が気にしてるほど、みんなお前のことを悪くなんて思っていないんだ。そんくらい分かれって」
「・・・うん!」
「よし、これでメンバーが揃ったね。みんな、行こう!」
ドラえもんの号令を合図にして、全員がそれぞれの機体に乗り込む。
「―――キラ・ヤマト。<Sフリーダム>行きます!」
「―――アスラン・ザラ。<∞ジャスティス>出る!」
キラとアスランが先頭に立ち、それに続いて全機が一斉に出撃する。
激しい戦いが、また始まろうとしていた。
―――その頃、医務室にて。
アザミはベッドから起き出して、廊下に出る。横になっていたおかげで、体力は既に回復していた。
「さて―――これから、どう動くか・・・」
呟いても答えは出ない―――いや、違う。
自分の中では、とっくに答えは出ている。だが、それに踏み出すことができないだけだ。
「やれやれ・・・私はいつから、こんなに無様になったのか・・・」
「一人でぶつぶつ言ってると、変な奴だと思われるぞ?」
背後から言葉が返ってくる。内心驚いていたが、それを気取られるのが癪でゆっくりと振り向いた。
「―――あなたは?」
「僕はドグラ星の王子、バカ=キ=エル・ドグラ・・・まあ、みんなバカ王子と呼んでるよ。で、君は何をしてる?
外は今戦いの真っ最中だから危険だぞ?」
「・・・あなたの知ったことではないでしょう」
「うん、その通り。僕の知ったことじゃないが―――まあ、ついといで。見せたいものがあるんだ」
言うだけ言って、さっさと歩いていくバカ王子。アザミは仕方なく、後を付いていった。
バカ王子はだだっ広い空間に入っていく。それに続いたアザミが見たものは、彼女にとって既に馴染み深いものであった。
「―――グランゾン・・・!」
「そう。吹っ飛ばされた両腕部と両脚部はどうにもならなかったが、それ以外はほぼ無傷だったからね。僕が回収して、
両腕部と両脚部だけ新しく作った別のパーツに挿げ替えたのさ」
「・・・それで?私にこんなものを見せて、どうしようと?」
「別に。どうもしないよ」
バカ王子はあっさりと言い放つ。
「これを使って君が何をしようと構わない。ただ、できれば事態を面白い方向に進めてくれればと思ってね。それ以外に
理由はない。面白ければOKが僕の信条だよ」
「なるほど・・・あなたはあの子供たちの仲間とはいえ、相当な変り種のようですね」
「まあね。ぶっちゃけ僕、自分がかなりろくでもない奴だって自覚あるし」
爽やかさすら漂わせて平然とぶち上げるバカ王子。そして言った。
「だから、君がどうしようと僕は気にしない。乗るも乗らないも君の自由だよ」
そしてバカ王子は去っていった。まるで人騒がせな突風のようだ―――そう思った時だった。
「ん〜〜〜〜〜〜何だかなあ・・・妙な場面に出くわしちまったなあ・・・」
バカ王子とは別の声が響く。そして、物陰から奇妙な男が姿を現した。
モジャモジャのパンチパーマ、眼鏡、何かヒーローでもイメージしているような服装に、マント代わりに風呂敷を
付けていた。 そして―――ラーメンを啜っていた。
見た目はあまりにも風采が上がらないただの男―――だが、アザミには分かった。
この男は―――凄まじく強い。
「あいつらを追っかけて、こんな星に着いたと思ったらよお・・・随分めんどくさそうな話じゃねーの?」
「・・・あなたは?」
「あ、俺様かい?俺様はUSDマンってんだ―――で、あんたは?人様に名前を聞くときゃ自分からって、母ちゃん
に教わらなかったのかい?」
「・・・私はアザミ。ただの死に損ないですよ」
アザミは、そっと天を仰ぐ。
「そう―――死に損ないです」
「死に損ない、ねえ・・・」
ぼりぼりと頭を掻きながら、その言葉を反芻するUSDマン。
「あー・・・そりゃあきっついなあ。他人事じゃねえし、きつい話題だぜ。けどよあんた、別にそこまで悲観しなくても
いいんじゃねーか?」
USDマンの言葉に、アザミは目を見開いて彼を見やる。USDマンはにかっと笑みを浮かべた。
「死に損なったんならウダウダ言わずに開き直って自分の好きなように生きなよ。少なくとも俺様はそうするぜ」
「・・・好きなように」
「そ、好きなように。んじゃ、俺様はそろそろ行くか。また会おうぜ、美人なねーちゃんよ!」
USDマンは天高く飛び上がり、一瞬にして見えなくなった。それを見送りながら、アザミは呟く。
「全く―――誰も彼も、私に何をしろというのか―――」
これだけお膳立てされては―――好きなようにやるしかないではないか。
アザミはグランゾンのコクピットに飛び乗り、起動させる。そしてUSDマンの後を追うように、大空へ飛び去った。
投下完了。前回は
>>223より。
久々に登場したUSDマン。彼はまだまだ活躍します。
>>227 「やめてよね」って、実は原作では一回しか言ってないんですよね。何故キラの代名詞のように
言われてるのか・・・
>>228 身体能力で言えば人類としては最上級だそうな。
>>243 凝ってはいますが、超機神で使った小ネタが全部分かる人は・・・多分いないでしょうね。
>>ふら〜りさん
おちゃらけた男が見せるシリアスな顔って、すげえ好みのシチュエーションです。このためだけに
アスランをギャグキャラに設定したと言っても過言ではありません。いや、それは嘘ですがw
>>邪神?さん
声優ネタは無限の広がりです。他にもスネ夫がゴッドフィンガーやったりとか考えましたが、
アホらしいのでボツにしました。死刑囚の活躍、楽しみにしています。
>>272 一回目でプレシアが、二回目でテュッティが、三回目でマサキが・・・って、マ○マ大使か!
スーファミではこういうノリのギャグが多いのが好きでしたね。
シュウ&ネオグラには期待してください。更にトンデモなパワーアップをしますから・・・
>>273 どう考えても踏み込み関係ないものまで「踏み込みが足りん!」で無効化するエリート兵。
バルマー帝国やバッフ・クランは兵器開発よりエリート兵の育成に力を注ぐべきだったと思います。
僕的に最強はEXで裏技によって自軍で使えるネオグラ。まさに最強。それ以外言うことはありません。
293 :
三十二話「新世紀救世主伝説」:2006/04/25(火) 01:01:38 ID:QUiIu2cz0
「ハァ・・・ハァ・・・。」
体中から汗が吹き出る、伝衝烈破を放った手からは血が留めなく溢れる。
連続して超スピードで手を動かす事によって自らの手もカマイタチの餌食になる。
普段ならば気を張り巡らされた肉体がカマイタチを防いでくれるのだが、
疲弊したユダの気は通常の様に上手く体を駆け巡ってはくれなかった。
「チッ、予備の火薬も刃物に使う幻覚剤も今ので最後だ・・・。」
ドイルがアサシン達との攻防で刃こぼれした体内の刃物を見せながら呟く。
「ふ・・・猛毒柳もこうなってしまってはな。」
右手に仕込んだ毒手の毒を使い果たしてしまった柳、
もはや武器となるのは己の四肢のみとなってしまった。
「私はまだ、切り札を残しているがね。」
手榴弾等の体内に締まっていた武器を使い果たしたドリアンが、汗を流しながら呟く、
強がりにしか見えない。横たわる死体の上で闘志を燃やす4人の武人達。
扉の入り口で止まっている暗殺者達、弱ってはいても上位アサシンである、
下手に攻めると殺されるのは目に見えている、前に出れば地面に転がるのは判りきっている。
突如、背後に感じる凶悪な威圧感が暗殺者の集団を恐怖させる。
「貴様等ぁ〜〜〜、何をモタモタしてやがるぅ〜。」
ヘルメットを被った男がショットガンを片手に、奥から現れる。
胸だけを露出させた服装をしており、その胸部には七つの傷があった。
「俺が外で仕事してる間にどいつもこいつも腑抜けやがって!
どけクズが!この俺様が片付けてやるわぁ!」
そう叫ぶと男はポリタンクをユダ達に向けて投げる。
そして手にしていたショットガンでそれを撃ち抜く。
中の液体によって周囲に異様な臭いが漂う、間違いなく灯油の臭いだ。
ポケットからマッチを取り出し
「勝てばいい!それが全てだぁ!」
薄汚い笑いを浮かべながら撒き散らした灯油へと向かってマッチを放り投げる。
瞬時に広がる炎を見ながら男は大笑いする。
「フハハハ!俺様の名を言ってみろぉ〜!俺は北斗神拳伝承者ジャギ様だぁ〜!」
294 :
三十二話「新世紀救世主伝説」:2006/04/25(火) 01:02:20 ID:QUiIu2cz0
燃え盛る炎を振り払う死刑囚達、だがユダは一人、精神を集中させていた。
「ふおおお!」
呼気と共に放たれる衝撃波が炎を切り裂いていく。
だがジャギに慌てる様子は無い、むしろ楽しんでいる。
「ほぉ、流石だなぁ〜南斗六聖拳、妖星のユダ。
だが腑抜けた貴様などに負ける俺様ではないわぁ〜!」
飛び上がるジャギ、ドイルがそれを食い止めようとジャンプする。
そして体内に仕込まれた刃をジャギへと向ける。
「愚か者が〜!北斗千手殺!」
ジャギが手が無数に見えるほどの高速で拳を放つ。
正面から突っ込むドイルの目に一瞬、激痛が走る。
目から血が噴き出す、ジャギの口から放たれた含み針によって。
痛みに気を捕らわれたドイルへとジャギの拳が容赦なく襲い掛かる。
だが餌食になったのはドイルではなかった、千手の拳をその身で受けるドリアン。
含み針を飛ばすのを見たドリアンが、ドイルを庇うため飛び上がっていた。
「へっ、まだまだヒヨッ子だぁ〜。」
倒れこむドイルとドリアンを見下しながら冷たく言い放つ。
だが手をこまねいて見ているだけではなかった。
「ジャギ・・・貴様ぁ!」
ジャギの暴挙に怒りを爆発させるユダ、放たれる伝衝烈破。
身を翻し衝撃波をかわすジャギ、柳がそこを狙う。
「ひゅっ!」
独特の呼吸法から空中での手刀がジャギに突き刺さる。
だが突き刺さったのは肉体では無くジャギの衣服だった。
柳を蹴りで地面へと叩き落し、自分も着地する。
叩きつけられた柳と自ら地上に降りたジャギでは、
どちらの状況が優位かなど聞くまでも無かった。
「南斗邪狼撃!」
バックステップし、助走をつけたジャギが突進しながら拳を打ち出す。
ジャギの繰り出す南斗聖拳に切り刻まれる柳、その血飛沫が床に転がる死体を更に赤く染めていった。
295 :
三十二話「新世紀救世主伝説」:2006/04/25(火) 01:02:55 ID:QUiIu2cz0
「まだまだ読みが甘いわ雑魚め〜。」
切り刻んだ柳を踏みつけながら、ジャギが吼える。
ジャギの噂はユダの耳にも入っていたが、ここまで強いとの噂は聞かなかった。
思い当たる節は一つ、世を混乱に陥れている破壊神、サルーインであろう。
「ジャギ・・・貴様、完全に魂を売ったか。」
満身創痍の体で構えを取るユダを見るジャギ、そのメットに顔を隠していても、
その下の顔では嘲笑っているのが奴の目で判る。
「フフ・・・ユダぁ〜今は悪魔が微笑む時代なんだぁ!」
闘気が正体を現し、抑えていた闇に染まった気が噴き出す。
そして標的をユダへと変え、同じ流派の南斗聖拳の構えを取る。
「今の俺ならば南斗108派の内、最強に数えられる南斗紅鶴拳、
その伝承者ユダを持ってしても!決して敗れる事はねぇんだぁ〜〜!」
指先へと集まっていた気が腕全体を覆っていく、ユダへの挑発。
疲弊した体に鞭を打ち、闘気を己の四肢へと纏っていく。
「愚か者め・・・俺はこの世で最も強く、そして美しいのだ!
ジャギよ、貴様の腕では俺は殺せん。死ね!虫ケラの様に!」
互いに激しい攻防を繰り広げる、南斗聖拳中、最高のスピードを誇る、
南斗紅鶴拳に対して、ジャギの使う南斗聖拳は至って普通の物。
拳に置いてはランクが違うが問題はジャギがどれほどパワーアップしてるかだ。
「無駄な事を・・・どう足掻こうと貴様は助からんわ!」
様子を見ている事に気付いたジャギはショットガンを使い出す。
だがこれは返って好機、達人ともなればショットガン以上の速度で、
拳を打ち出せるからだ、一気に攻勢へと出るユダ、しかし、
「北斗羅漢撃〜ッ!」
腕に集まっていた筈の闘気が一瞬にして指先へと集まっていく。
ジャギ如きではこんな速度での闘気の集中は出来ないはず。
そう、見事に引っ掛かってしまった、ジャギは南斗聖拳同士の戦いでは、
勝ち目が無い事は判っていたのだ。挑発に乗り既に見切っていた、
自分の流派である南斗聖拳での勝負だと思わされたのがまずかった。
「ウェーッハッハッハッハァ!やはり俺の速い突きはかわせんかったか!
どうだ?俺の南斗聖拳は見切れても、北斗神拳までは見切れまい!」
296 :
三十二話「新世紀救世主伝説」:2006/04/25(火) 01:04:51 ID:QUiIu2cz0
ヘルメットを外すジャギ、勝利を確信している。
「冥土の土産に、俺の顔を見せてくれるわぁ〜。」
メットの下には毛は抜け落ち、金属で顔面を固定された醜悪な面があった。
周囲のアサシン達もその余りにも無残な顔に悲鳴を上げ、酷い者は嘔吐までしている。
その醜悪な顔と笑みを見てユダは思った、心と共にこいつは誰よりも醜い男だと。
「フ・・・もう勝った気でいるのか。」
起き上がるドイル、そしてドリアンも続けて立ち上がる。
皆、肩で息をしながら立ち上がってくる、そして柳も。
「オ トワ ラヴィ〜。」
よろめく足でジャギへと近づくドリアン、死に掛けの男が刃向かうのが気に入らないのか、
手にしたショットガンをドリアンへと向けるジャギ。
「へっ、死にやがぁれ〜。」
引き金に指を掛けた途端、ドリアンが目にも止まらぬスピードで動く。
北斗千手殺を喰らってここまで動けるとは予想もつかなかったジャギ、
ドリアンの渾身の掌打を喰らう、いや、それは掌打では無く手首を当てるかの様な攻撃。
手首の中でカチッと音がするのを、ジャギは至近距離で聞いてしまった。
ドリアンの手首が爆発を起こす、切り札とはこの事だったのだ。
「うぎゃあああぁ〜!」
頭部を固定する金属が何本か外れる、怒り狂うジャギ。
「ぶっ殺してやる!」
後ろへと走り出し、アサシン達を盾にしながら自分の車を中に突っ込ませる。
その車は大型の燃料タンクを積んでいた、今度は拳圧で吹き飛ばせないだろう。
「この俺の顔より醜く焼けただれろ!」
タンクに穴を開け、中からは大量のガソリンが溢れ出す。
周囲のアサシン達も次々とガソリンを浴びて行く。
だがジャギは、またもポケットからマッチを取り出し、そして投げ込んだ。
燃え盛る炎、ユダも、柳も、ドリアンやドイルもこの炎を消す力は残っていない。
「ひゃ〜はっはっは! どうだくやしいかぁ〜あ〜はははははは!」
ジャギの叫びが木霊するがその時、地面を這って救世主が現れた。
「み、水・・・。」
花山に叩きのめされたシコルスキーだった。
297 :
邪神?:2006/04/25(火) 01:06:32 ID:QUiIu2cz0
なんかシコルがケンシロウ初登場を気取ってますが気にしないで下さい。邪神です。
なんか続けての投稿になっちゃいましたがやはり一つ空けるべきでしたかね?
いまだにそんな事すら判らない俺、リアルシコルスキーだな。
ネタが余りにもないのでゲーム紹介しちゃいます。
〜作品登場ゲーム紹介〜
Romancing SaGa Minstrel Song (ロマンシング サガ ミンストレル ソング)
名作ゲーム、初代ロマンシングサガのリメイク作品、PSPのリメイク品如きとは違い変更点多し。
PS2であのまま出されたら失望するしかないが。ストーリーは創世神マルダーが造った世界、
マルディアスの世界を舞台とした作品。この世界には神が存在しており、
主人公達の生まれる1000年前には神の間で戦争が起きていた。神の力は大地を、海を割り、
世界を混乱に陥れ人々の住む世界を破壊していった。このままでは全てが破壊されてしまう、
そんな時に遂に神の戦争根源であった、三邪神の長兄デスが破れ、光の神エロールへと降伏する。
だが降伏を認めない次兄サルーイン。闘いの果て三女のシェラハまでもが降伏してしまうが、
それでもサルーインは抵抗を続けた。これ以上、神同士で闘いを続けたら本当に世界が滅びてしまう。
そう考えたエロールは人間へと試練を与え、歴史に名を残す英雄を選んだ。
それが銀の戦士ミルザ、数々の試練を乗り越えエロールの作り出した宝石。
ディスティニーストーンを手にしたミルザは4人の仲間と共にサルーインを封印する。
だが犠牲は大きかった・・・ミルザ達は自らの身を犠牲にしてサルーインを封印したのだ。
その功績を称えたエロールは彼等を天空に輝く星へと変え、人々を見守る神とした。
そして今、封印が破られサルーインが復活しようとしている。
8人の主人公の内、一人を選び、サルーインの復活を防ぐのがプレイヤーの使命。
どんな手段を持ってしてもサルーインを止めなければならない、そのためなら、
人々を助け続けるも、悪に身を染めるも自由である。
〜ネタ切れ講座と質問箱〜
サマサ氏 続けての投稿させてもらいました。なんと!スネ夫ってドモンだったのか・・・知らなかったなw
声優情報にはうといもんで、桜木とクレス・アルベインが同じとかも最近知りましたよ。
アミバと同格の伝説的キャラがついに登場しましたね。
なんか強いジャギっていうのはムカツクんで、ヘタレシコルにサクっと殺られるような展開を希望しますw
でもこの物語だと、アミバですら覚醒したんで、ジャギも化けるかも?
299 :
作者の都合により名無しです:2006/04/25(火) 09:42:22 ID:b0CWlHaG0
>サマサ氏
USDマンはレギュラー化か。人気キャラだから消えてしまうのは勿体無いですね。
バカ王子と同じく、どことなく華のあるキャラだし。
>邪神氏
北斗随一のネタキャラ、ジャギ登場ですか。バキのネタキャラのシコルとの邂逅は
楽しみです。意外とまともな対決になるのかな?
結局感想はPCからになりました…
しぇきさん
他の魔法系とのコラボも考えていなくはありません。ただ、整合性の問題が…
ハイデッカさん
かっこいいです。感動しました。この二言で十分伝わったと思います。
邪神?さん
切腹禁止っ!
サマサさん
ありがとうございます。声優ネタは次やっちゃいます。
見てた人さん
他人の思惑も絡み、道が開ける。こういうのやってみたいんですが…
一真さん
私は少数派のガンガン派です…
スターダストさん
情報系専攻の身としては、そのくらい使えるようになりたいところです。
サナダムシさん
攻略法と色にどんなかかわりがあるのか、楽しみです。
訂正の訂正です。
訂正版5の【なのはの親友である。】の後に【また、戦闘スタイルより『電光石火』の二つ名を持つ。】
を。あと、0話の
【そして、赤銅色の髪でおさげの元気そうな女の子が、
「ティアナ・ユリシーズ、11歳。Bランクです。よろしくお願いしますっ!」】
を
【そして、赤銅色の髪でツインテールの元気そうな女の子が、
「ティアナ・ユリシーズ、11歳。Bランクっす。よろしくお願いしますっ!」 】
に。面倒でしょうが、よろしくお願いします。
>全力さん
いよいよ本格連載ですね。なのは達、魔法使いたちが
どうのび太と冒険を繰り広げるか楽しみです。
>サマサさん
なんだかんだ言っても、チームの士気は上がってますな。
USDマンとアザミは今後絡むのかな?
>邪神さん
アミバ様に続いて、ある意味北斗の顔とも言えるジャギ様がw
シコルスキーとの雑魚対決が見たいな。
追記
286さん
いや、なのは側のは魔法です。資質がない人には使えませんし。
287さん
いや、宇宙ではありません。今のところ宇宙へ行く予定もありません。行くのは『別の次元世界』です。
サマサさん(追加です)
パソコンが来るまでの間、暇なので携帯からwikipediaドラえもんの道具を見てました。
その中に『強力ウルトラスーパーデラックス錠』(三分間だけUSDマンと同じ強さになる)なるものが。
これを使っていたらどうなってただろう…
303 :
三十三話「水のながれ」:2006/04/25(火) 16:04:19 ID:gnThC5w10
花山に殴り倒され数時間ほど眠っていたシコルスキー。
起きた時には骨折、打撲で体中が痛みに支配されていた。
そんなボロボロの体を引きずって行き先も無く彷徨い、辿り着いた。
「そ、そうだ・・・ポケットに海水を詰め込んであった筈。」
そう、あれはスペックと一緒に部屋でポーカーをしていた時だ。
俺が折角2ペアを引き当てたのに突然、話を持ちかけてきやがった。
「ナァ・・・チョット頼マレテクレネェカ?」
そういって話し始めたのが今回のポケット作戦。
俺が取って置きの切り札として、この四次元ポケットとやらの中に入っているという物だ。
その間の水分補給用に大量の水をポケットへと流し込んだ筈・・・。
地面にひれ伏しながら震える手で純白のポケットを開く。
「あれ、スペックの奴、何時間ポケット沈めてたっけ?」
ポケットを全開にして真下に向けてから気付く、溢れ出す大量の水。
せめて立ってからやるべきだった、水が自分の方にも流れてくる。
燃え盛る炎の全てを飲み込んで行く、周囲に広がるガソリンごと激流が全てを包んで行く。
「しょっぱっ!しょおおおっぱ!」
大量の海水を吐き出すシコルスキー、傷口に塩水が沁みる。
どうやらスペックは海にポケットを沈めてきたらしい。
だがその痛みがきっかけで立ち上がる力が沸いた。
自分の体を触ってみると、あばらから肋骨まで折れかかっている。
花山のパンチが余りにも強力で折れたかの様に思ったが大丈夫な様だ。
しかし余り大丈夫とは言えなかった、疲弊した柳達とユダは水に流され、
ジャギが一人、鬼神の如く表情で仁王立ちしていた。
「あ〜ん?何だてめぇは?もう少しで皆殺しに出来たってのによぉ〜。」
明らかに不機嫌な男が殺意を放ちながらこちらに近づいてくる。
意外と情報通なシコルスキー、瞬時にその男が海外遠征中の最強アサシン、
ジャギだということに気付く、謎に包まれた二極の暗殺拳の使い手。
と、アサシンギルド入会時のパンフレットに書いてあった気が・・・
「いい所で邪魔しやがって・・・これから貴様に生き地獄を味あわせてやろう!」
304 :
三十三話「水のながれ」:2006/04/25(火) 16:05:14 ID:gnThC5w10
飛び掛ってくるジャギ、手で防御しようと考えたが、
良く考えると折れているので防ぎようが無い。
「貴様も俺の速い突きの餌食になぁれ〜!北斗羅漢撃〜ッ!」
高速で拳が打ち出される、だがシコルスキーの危機回避能力が、
ここに来て最大出力を発揮する、正面からこの技に挑む事は出来ない。
自分の正面のみに無数の突きを繰り出し続ける技、横に回れば。
思考を続けるより速くシコルスキーの体が動く、横に向かって転がり込む。
「ちっ、かわしたか。」
ジャギとシコルスキーの目が合ったその時、ジャギの脳裏にあの男が。
兄である自分の顔を潰し、北斗神拳伝承者の座まで手にしたあの男に。
「貴様・・・目が弟に似ている!」
シコルスキーの希望が込められた目の輝きが更にジャギの怒りを誘う。
憤怒を爆発させ更に高速化した拳がシコルスキーに襲い掛かる。
それでも横ローリングでかわし続けるシコルスキーにジャギが戦法を変える。
「ふざけた真似しやがって・・・くらえ〜!」
ダッシュで一気に距離を詰め、強烈な蹴りをお見舞いする。
いつもの癖で腕でガードしてしまうシコルスキー折れた腕はぐしゃぐしゃに・・・
「痛ってぇ・・・あれ?」
何故か折れた両腕がくっついている、体中から淡い光が浮き出す。
そして頭の中に声が響き渡る、厳格で、それでいて穏やかな声が。
「我が名は水竜、過去の闘いでサルーインの作った四天王の内、水を司る者。
どうだ?サルーインに反旗を翻すなら私の力を貸してやろう。」
頭の中の声はサルーインの僕と名乗ったくせにサルーインを倒せと言っている。
全く状況を理解出来ないシコルスキーに水竜は語り続けた。
「何故、私がサルーインを憎むか分かるまい。奴は我等四天王を道具としか見ていない。
我等は神にすら匹敵する力を持っていたのに創造主である奴にだけは敵わなかった。」
305 :
三十三話「水のながれ」:2006/04/25(火) 16:06:36 ID:gnThC5w10
ジャギの攻撃を受け止め、かわしながら話を聞く余裕は無いのだが、
シコルスキーに尚も話を続ける水竜、恐らく余り頭に入っていないだろう。
「我等にも誇りがある、奴の道具として生を受けた事など認めなかった。
だから1000年前の戦いでも、我等はミルザの力となった。」
こんな状況では断片的にしか覚えられないが、
とにかくサルーインを倒すなら力をくれるらしい。
だが、どうして俺に語りかけたのかさっぱり分からない。
その問いに答えるかの様に水竜は話を続ける。
「お前が飲んだ水はマラル湖の水、最近は海に生息する筈の魔物の増殖で、
塩分が多くなり海水の様に感じただろうが、それは私の湖の水だ。
先程流されていった奴等も飲んだのだが、この力が一番合うのがお前だったのだ。」
俺に見合う力?だったらどうせ大した物じゃ無いと悲観的になるシコルスキー。
だが水竜は構わず説明を続けた、自分の力を見くびられた事への怒りも表しながら。
「ほぉ、神に匹敵する我が力を大した物じゃ無いと人間風情が称するか。
ならば今見せてやる、返事は後でマラル湖まで来てよこせ!」
突然、自分の体の中から水の流れる音が聞こえると、傷が全て綺麗さっぱり無くなってしまった。
湧き上がる力、脳内麻薬の分泌を上回る高揚感が体を支配する。
しかもそれでいて流れる清水の様に冷静に、穏やかになる。
「す、すげぇ・・・これが俺?」
今、完全に水の流れの一部となったシコルスキーにジャギが襲撃する。
まるで本物の水の様に緩やかにかわす、間接の一つ一つが柔らかく機能する。
そして岩に道を閉ざされた流水の様に、流れるようなカウンターを放つ。
醜く歪んだ顔がシコルのベアナックルで更にズタズタに切り刻まれていく。
「や・・・やめてくれぇ!た・・・たのむ! 」
後ろに下がりながら見栄も捨てて懇願するジャギ。
だが元は死刑囚、悪党の考えなどお見通しである。
口から噴出された含み針を全て叩き落すシコルスキー。
驚愕するジャギへと言い放たれた一言、
「ジャギ・・・俺の名をいってみろ。」
ジャギの中でシコルスキーに重なる影。
北斗の歴史上、最強の男、北斗神拳伝承者ケンシロウ。
306 :
三十三話「水のながれ」:2006/04/25(火) 16:07:12 ID:gnThC5w10
心の中で優越感に浸るシコルスキー、アサシンギルド最強の男を、
今や赤子のように扱えるようになった己の力への過信をジャギは見逃さなかった。
「た、助けてくれぇ!」
再び命乞いしながら後退するジャギ、だが調子に乗ったシコルスキーは構わず追撃に出る。
じっくりと距離を詰め、相手の恐怖を募らせているつもりだった。
だがジャギは待っていたのだ、反撃に出るチャンスを。
「南斗邪狼撃!」
助走をつけた南斗聖拳、だが今のシコルにはスローすぎる物だった。
すぐにかわして反撃にでる、するとまたも含み針が飛ばされる。
体を捻ってそれを回避して反撃にでようとするシコルの耳に、銃声が響いた。
「ふははは!馬鹿めが〜。」
右肩を撃ち抜かれてしまった、南斗聖拳や含み針は囮。
スローだった南斗聖拳は銃を拾うのに意識を集中していたからだ。
水竜の力で常に体中に癒しの水が駆け回り、傷口を治癒しようとしている。
だがジャギの手の中にあるショットガンの引き金が引かれ様としていた。
「深く・・・切り裂く!」
放たれた衝撃波、飛んできた方向を見るとユダが立っていた。
ユダだけでは無い、ドリアンも、柳もドイルも立ち上がり構えを取る。
「シコルス君、我々も大分休めたので参戦させてもらうよ。」
ドリアンがにっこりと微笑みながら優しく言ってのける。
柳も腕を伸ばしながら余裕の表情を浮かべている。
「毒手に頼らずとも、毒はもう一つあるからね。」
ドイルも目から針を引き抜き布を巻きつけて処置している。
痛々しい姿だが他の3人と同様、晴れやかな姿で話す。
「さて・・・決着、つけようか。」
疲れは完全に癒えて居ない筈の4人がそれぞれ、
一人でもジャギに匹敵する闘気を放っていた。
「どいつも俺の邪魔ばかりしやがってぇ〜!来い、おのれの無力さを思い知らせてやろう!」
307 :
三十三話「水のながれ」:2006/04/25(火) 16:08:19 ID:gnThC5w10
ぬうううう!速く家庭ゲーム機で北斗の拳が出ないだろうか。
使うとしたらやはりジャギ様かシン様でいきたいなー。
トキの金髪か黒髪を選んでアミバ様な感じにしてもいいけどトキ使いは嫌われるらしい。
ゲーム動画を見れば素人でもトキのコンボが可笑しいのが分かります。
つーか自分素人ですし・・・2D格ゲーはスト2しかやった事無いw
必殺技ゲージなんて物もあの頃は無かった・・・ただひたすら波動拳。
〜作品登場ゲーム紹介
北斗の拳(アーケード格闘ゲーム版)
「北斗はゲームの紹介する必要ねーだろ。」とか言ったらあかん。
ユダ様の血粧嘴の元ネタもこのゲームだしジャギ様の台詞も本読んで調べるの面倒だったから
このゲームの台詞を流用したりしてたのだ。「死兆星システム」「世紀末体力ゲージ」
と、聞いただけでは用途の分からないシステムが燃える対戦を演出してくれるらしい。
実際にやった事はないけどね・・・だって近くにゲーセンないんだもん。
使えるキャラクターはラオウを倒すまでをストーリーにしているので、
ケンシロウ、ラオウ、トキ、シン、レイ、ユダ、サウザー、ジャギ、ハート様、マミヤ。
と中々なメンバー、個人的にアミバとファルコが欲しかったがまさかユダ様を採用とは・・・。
しかし動画で見たユダ様の大活躍を見て今回のSSで見事、今のところ主役級。
だがゲーム中に出てくる技なんて血粧嘴とアニメでも名前は出てた伝衝烈破のみ、
理由はユダ自身には3つしか技が無いから。他にあったら伝衝烈破を連発し続ける駄キャラにしないよ・・・。
上にも書いたがトキの強さは「死の灰を浴びてない」「正体発覚前のアミバ様」等といわる程に凶悪。
動画を見るだけな人には単調な闘いしか見せてくれない退屈な奴なので思わず相手キャラを応援してしまう。
〜講座&質問&etc〜
301氏 シコルス君は不思議パワーで強化しちゃいました、だって前回腕折れちゃったし。
ジャギ様もモッコス・・・ゲフ、ゴフ、邪神パワーで良く分からない程度に強く。
しかし次回、驚愕の展開へと・・・なったらいいなぁ。
全力全開氏 切腹こそ最高のスポーツ!とか言って飛び降りる人もSFCに居たな・・・。
よし、そのうちシン様出して、これで飛び降りでいくかな。
308 :
ヘルス馬鹿一代 2:2006/04/25(火) 16:51:06 ID:ibDQdyxn0
第十九話 地上を救うもの
史上最強の男が光の粒となって、武の極みのまま天へと昇っていく。
慶次はその光景を美しいと感じた。その人生の正悪は問うところではない。
ただ一個の武人が己の道を貫き通し、敗北を知らぬまま散ったのである。
己の生き様を美しゅうするのが義であるならば、呂布は己の義を最後まで貫いた。
光の粒となった呂布が天へ召されるのか、煉獄へ堕ちるのか、
それとも己がいた時代へと帰っていくのかは分からない。
が、あの男は確かにこの時代の己の生を全うした。それは見事な程までに。
違った形で逢ったならば、酒を酌み交わす仲であったかも知れない。
そして、慶次の中にほんの少しの恐怖も芽生えていた。
いつか、俺も光となって天へ昇るのだろうか。この時代から消える時が来るのだろうか。
死が怖い訳ではない。慶次にとって死は恐れる物ではない。
駆けるだけ駆け、疲れて体を休めた時に訪れる安息のようなものだ。
だから死は怖くは無い。いつでも笑って死ねるのだろう。
たったひとつ怖いのは、ジャンヌを守り切る前にこの世から消え去ってしまう事だけだ。
「ベルトランさんっ」
ジャンヌの声で慶次の感傷が霧散する。そうだ、今は俺の事などどうでも良い。
呂布の方天画戟の一閃により、友が血まみれで地に伏しているのだ。
慶次とジャンヌがベルトランの下へと駆け寄った。ジヤンとラ・イールも到着する。
「ベルトランッ、お前、無茶しやがって…」
刎頚の友であるジヤンが、流れる涙を隠そうともせず叫んだ。ラ・イールの顔も暗い。
慶次はベルトランの刀傷を優しく撫ぜ、その具合を確認した。
助かるまい。
傷は内臓に達し、流れる血量は限界を超えている。
いや、そもそも斬られた瞬間に即死でもおかしくは無い傷である。
309 :
聖少女風流記 :2006/04/25(火) 16:54:03 ID:ibDQdyxn0
(こんな傷で、あの男に挑んだのか)
慶次は眼から流れる熱いものを禁じえない。この男は最後まで敗れなかった。
不敗にして史上最強の武神のあの呂布ですら、この男を敗る事は出来なかったのだ。
ベルトランの血が熱い。まるで溶岩のような熱い血が止め処なく流れている。
ジヤンは泣きながら必死に血止めを試みている。ラ・イールは唇を噛み締めて呟いた。
「下級騎士などと見下していた自分が恥ずかしい。貴殿こそ騎士の模範たる男よ」
ずるる、とベルトランの体が動いた。ジヤンが驚き、手を貸そうとした。
だが、ベルトランはそれを拒絶した。震えながらも、己の足で大地を踏みしめようとする。
ジャンヌが、慶次が、ジヤンが、ラ・イールがその姿に驚き、そして魅入られる。
動けるような傷ではない。立てるような傷ではないはずだ。
だがこの男は立った。しっかりと、己の両足の力のみで。そしてジャンヌに言った。
「何をしておられる、ジャンヌ殿」
「え…?」
ジャンヌは急に自分の名を呼ばれ、戸惑っている。
ベルトランは震える手を必死に持ち上げると、遠くに見える砦を指差した。
呂布が消えた事により、実質この戦場の勝負は付いている。
イギリス軍は完全に意気消沈し、多くの兵が砦を捨て逃走を始めていた。
逆にフランス軍は一気呵成に城門から砦内部へと攻め寄せている。
聖女を讃える歌を口ずさむフランス兵の快進撃は止まらない。
落城は時間の問題である。ベルトランはその状況を見て、静かにジャンヌに告げた。
「もう、この砦の戦いも終わろうとしています。我々フランス軍の勝ちだ。
あなたが先頭に立ち、兵の前で堂々と勝利宣言をしなくては」
310 :
聖少女風流記 :2006/04/25(火) 16:55:25 ID:ibDQdyxn0
ジャンヌは躊躇っている。ベルトランが心配で堪らないのだ。
戦争の素人の自分でも分かる。このまま、自分が行かなくとも勝利は間違いないだろう。
でも、ここにいるベルトランさんは……。苦吟するジャンヌにベルトランは言った。
「私なら大丈夫です。死ぬような人間がこのように笑えますか?」
そしてベルトランはにっこりと笑った。
爽やかで、透明で、どこか切ない。傍で見ている慶次が、思わず見惚れる男の微笑である。
「わかりました。私は、私の役目を果たします。
ですからベルトランさん、あなたもこれからもずっと、私を助けて下さいね」
可愛らしくベルトランへ一礼すると、不慣れな操馬でジャンヌは戦場を駆けていく。
ジャンヌが橋を渡り、砦へ入るのを確認すると、ベルトランの力がふっと抜け、倒れた。
「本当に大した男だ、お前は」
慶次が倒れるベルトランをしっかりと抱き受けた。ベルトランはその言葉に微笑んだ。
だが、先程ジャンヌに見せた笑顔とは違っている。その笑みに力は無い。
慶次は胸が締め付けられた。先程まで熱くて堪らなかった血が、今はひんやりと冷たい。
ベルトランの声から張りが消える。呼吸すら怪しい。が、彼は必死に言葉を吐いた。
「連れて、行って、くれ、慶次。聖女の、姿が、見える所まで」
フランス軍が砦の内部に再侵入してから落城まで、20分も掛からなかった。
呂布という切り札を失くした時に、実質的にこの戦いは終わっていたのである。
フランス軍の勝ち鬨の声が、オーギュスタン砦に絶え間なく響き渡っている。
兵たちは勝利の掛け声と、聖女を讃える歌を力の限りに叫んでいた。
その様子を、ベルトランは慶次の肩を借りながら、穏やかな眼差しで眺めていた。
幼馴染であるジヤンも、少し前までは彼を軽んじていたラ・イールも、である。
311 :
聖少女風流記 :2006/04/25(火) 16:59:09 ID:ibDQdyxn0
「オーギュスタン砦の戦い、我がフランス軍の勝利を、ここに宣言します!」
ジャンヌの美しいソプラノが砦に響き渡った。次の瞬間、男たちの歓声が沸き上がる。
兵たちは涙を流しながら、誰彼構わず抱き合って喜び合っている。
その男たちの中心にいるジャンヌは、多くの歓声と喝采を一身に浴びていた。
ベルトランたち4人はしばらく何も言えなかった。が、もう誰しもが分かっていた。
あのジャンヌこそが神の御使いであり、フランスを、地上を救うものである。
ベルトランの視界がぼやける。もう、ハッキリとジャンヌの姿を捉える事が出来ない。
光が瞳の中にチカチカと入り込み、ジャンヌの輪郭が崩れる。
ジャンヌの体が輝いて見えた。背中の形が、羽のように柔らかな曲線を描いて見える。
(天使……?)
312 :
聖少女風流記 :2006/04/25(火) 16:59:58 ID:ibDQdyxn0
「眩しいなぁ。ジャンヌ殿は」
その言葉に、慶次は頷いた。ジヤンも、ラ・イールも。
兵のジャンヌへの歓声は終わる事無く、ますます大きくなっていく。ベルトランは呟く。
「歓声が、聴こえる。ずっと終わる事の無い、歓声が」
ジヤンは涙を流しながら同意する。
「ああ、この歓声は凄い。お前が、ジャンヌ殿を守り抜いたお陰だ」
「フフ。その言葉ありがたい。 ……だが、もっと遠くから、鳴り止まない喝采が聴こえる」
慶次も、ジヤンも、ラ・イールもその言葉の真意が分からない。ベルトランが続けた。
「未来から…。何百年も未来から、終わらない歓声が、ジャンヌ殿へと……」
肉体から、最後の生気が抜けていくのを慶次は感じた。瞼が静かに塞がっていく。
が、その顔に憂いは無い。暖かい春のような晴々とした顔である。
(俺は、間違ってはいなかった)
そして微笑んだ。その笑顔は、己の責務を成し遂げた充実感に満ちていた。
(我、ベルトラン・ド・プーランジ。聖女の盾の栄に浴し者なり……)
ジヤンがベルトランの体にしがみ付いた。慶次が涙を流しながらも笑顔でジヤンに言った。
「この男の今の顔を覚えておけ、ジヤン。懸命に駆け抜けた男の、見事な顔だ」
その者の名。騎士の中の騎士、ベルトラン・ド・プーランジ。
オーグスタン砦の戦いにて、戦死す。
313 :
フンコロガシ:2006/04/25(火) 17:12:34 ID:ibDQdyxn0
蛇足だったかねえ、今回は。
前回のラストでオーギュスタン砦は終わらせるつもりだったけど、
切った3レスが勿体無くて今回書いてみたんだけどさ。
ま、最後がオーグスタン砦になっているのはタイプミスです。
でもバレ様、こんなのお手数ですから別に直さなくて結構です。
タイプミスといえば最初のレスで作品タイトル間違ったな。しまった!
314 :
作者の都合により名無しです:2006/04/25(火) 18:44:29 ID:fe9Vo1Pu0
>俺はキャプテン
驚異的な更新回数ですね。ほぼ毎日じゃないですか・・
シコルスキーは相変わらず自分の役割に徹してますがw
どこがケンシロウとジャギの中で重なるんだろう・・w
>聖少女風流記
前回と今回、本当に感動しました。呂不の死に様に続き、
ベルトランの死に様が悲しい。だけどどこか爽やかですね。
エストポリス好きな俺としては、タイトルも嬉しかった。
だからこそフンコロガシだのヘルス馬鹿だの、作者自ら
感動に水を差すのは止めてくれ。あなたのSS好きだけど。
315 :
邪神?:2006/04/25(火) 18:49:30 ID:gnThC5w10
ハイデッカ氏の後書きに続けての投稿で申し訳ない。
三十三話の後書きにて
<だがゲーム中に出てくる技なんて血粧嘴とアニメでも名前は出てた伝衝烈破のみ、
理由はユダ自身には3つしか技が無いから。他にあったら伝衝烈破を連発し続ける駄キャラにしないよ・・・。
の所を
今のところSS内に出てくる技なんて血粧嘴とアニメでも名前は出てた伝衝烈破のみ、
理由はゲーム内のユダ自身には3つしか技が無いから。他にあったら伝衝烈破を連発し続ける駄キャラにしないよ・・・。
後々から自分が何言ってるのか訳わかんねぇ・・・って事に気付きました。
SS内では今のところ伝衝烈破を連発してる駄目ユダですから・・・。
ゲームで出てる3つ目の技も速ければ次の回で出ます。
ちなみに「ユダ自身」とありますが格ゲーのユダは部下を召喚して戦います。
だから「ユダ」の必殺技は3つしかありません、他の技は全部部下の物。
必殺技の「死ね、虫ケラのように!」は数えてないので正確には4つありますが。
長々と駄文を書いてしまって申し訳ない。
316 :
作者の都合により名無しです:2006/04/25(火) 19:16:00 ID:fe9Vo1Pu0
SSの訂正はともかく、後書きの訂正は
流石にこれからは辞めた方が宜しいかと思いますが
scene45 確保成功
只野がカイジからテーブルによる一撃を受け、トカレフを手放したのを見て、探偵たちは一斉に動いた。
この機を逃せば、もうチャンスはない――そんな漠然とした共通認識が、彼等の間にはあった。
蟻が零れた砂糖に群がるように、只野に向かって走り、取り押さえようと組み付く。
小此木が首を、玉崎が胴体と腕を、それぞれ押さえる。カイジも丸テーブルを放り投げるようにして手放し、足を押さえた。
只野は、お世辞にも体格がいいと言える方ではない。
いかに荒事の経験が豊富とはいえ、武器を手放し、男三人に組み敷かれては抗う術はなかった。
それでも流石に、心は折れていないらしい。忌々しげに目を細め、首根っこを掴んでいる小此木を睨む。
「よくも今まで、散々好き放題やってくれたな……殺人狂!」
小此木は憤怒の表情で、只野の頭を力任せに床に叩き付けた。つうっと、額から一筋の血が滴る。
「黒川さん! 吐くのは後にして、二号室からロープを持ってきてほしいっす!」
玉崎が、未だ床に四肢を着いたままの黒川に向かって叫ぶ。
黒川は胃の内容物をすべて吐き出してしまってもなお、惰性で胃液をだらだらと垂れ流していた。
顔を上げ、虚ろな目でカイジたちの方を見る。少し間を置いて、よろよろとおぼつかない足取りで中央廊下へと消えた。
scene46 すべてが終わったその後で
只野はこれでもか、と言うほど身体中にロープを巻きつけられ
蓑虫のような格好で縦置きにしたキャスターテーブルに縛り付けられていた。
身柄を拘束されてしばらくは、ガタガタとテーブルごと身体を揺らしたりなどして
申し訳程度に、抵抗する素振りを見せていた只野だったが……
縄抜けは不可能と悟ったのか、或いは探偵たちの隙を待っているのか。
確保から十分も経たない内にだらしなく項垂れ、今までの凶行が嘘のようにおとなしくなった。
カイジはそんな只野の様子を横目で見ながら、考えを巡らせる。
犯人は本当の意味では、真剣に行動していなかったのではないか……と。
それは、証拠から犯人の尻尾を掴み、告発に踏み切ろうと考えた時から薄々感付いていた事だった。
犯人を連続殺人に駆り立てた動機は、復讐でもなければ保身でもない。
平穏な日常を生きる人間からすれば理解困難な、何の私情も差し挟まない殺人。
犯人はゲームのルールと与えられたロールに則って、己に課せられた任務――殺人を遂行したに過ぎない。
先程の推理劇を振り返ってみても、ゲーム性重視の傾向は顕著だ。
物的証拠は、三号室ラッチボルトの傷と掛け金に残された細工の痕跡のみ。
状況証拠である胸ポケットの鍵も、とても決定的証拠と呼べるものではなかった。
本人も口にしていたが、これが実際の犯罪捜査であれば、只野はいくらでも言い逃れが可能だった。
しかし、只野はそれをしなかった。あくまで主催者が仕掛けたゲームに忠実に、フェアプレイを貫き通した。
ゲームの敗北条件である『告発』と『確保』の両方を満たしてしまった以上
犯人役である只野にはもう、殺人を行う義務も、義理もありはしない……
抵抗の意志が希薄なのも、つまるところはロールに従った結果なのだろう。
アイヒマンテストの教師役よりも冷淡に。スタンフォード監獄実験の看守役よりも精緻に。
只野文男は、最後まで自らに割り振られたロールを演じ切ったのだ。
告発されるまでは、犯人の影に怯える、臆病な探偵を。
告発されてからは、探偵を皆殺しにしようと目論む、残酷な犯人を。
「あとは――このまま時間が過ぎるのを待つだけ、ですね」
緊張で強張った身体を解すように、黒川は両手を上げ伸びをする。
犯人の確保により、ゲームは完全に決着。探偵同士の争いの火種となりかねなかった賞金の行く末も決まった。
そのせいもあってか、ホールにいる面々の緊張も幾らか和らいだようだった。
「なななっ、何を……!?」
と、不意に。玉崎が、小此木を指差して引っくり返った声をあげる。
小此木はホールの隅に転がったままになっていたトカレフを拾い上げていた。
「実物触ったのは始めてだけど、やっぱりモデルガンとは重量感が違うな……って、おいおい、そんなびくびくするなよ」
珍しい玩具を前にした子供のように、銃身を指先でなぞり、弄ぶ。
「別に害意がある訳じゃない。こんなもん、残しておいてもいいコトないだろうから」
そう言って、小此木はホールの窓を思い切り開け放った。
身を切るような冷たい風と共に、数多の雪粒が渦を巻き、ホールを飛び回る。
「知ってるだろ? 自殺したシュプールの従業員……確か、久保田とか言ったっけ……
そいつは、犯人が捕まり、すべてが終わったその後で、コイツで頭を撃ち抜いたんだ」
言いながら、トカレフを自分の頭に突き付けておどける。
そして――野球の投球フォームのような大仰なモーションで、外へとトカレフを放り投げた。
トカレフは綺麗な放物線を描いて飛び、あっと言う間に吹雪と夜闇に紛れて見えなくなった。
「災いの芽は、摘んどかないとな」
はぁ、と真っ白い溜め息を吐き出して、小此木は窓を閉める。
「まったく……心臓に悪いっすよ。まだ、疑心暗鬼ムードが抜けきってないんすから……」
玉崎はそう言って、精根尽き果てたと言わんばかりに、どさりとその場に倒れこんだ。
それを真似たわけではないだろうが、カイジもまた、大の字で床に寝転がった。
頭の中に霧がかかったように、意識がぼんやりとしてくるのを感じていた。
カイジは、このまま眠ってしまいたい、と心底そう思った。しばらくは、何も考えたくない。
冷え切った床も、微かに漂う血と吐瀉物が混ざり合った嫌な匂いも、今は気にならなかった。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>234です。
ゲーム完全決着。そして……
・打算的
純粋に、今奪われようとしている命を救う為に犯人に立ち向かった……だと
素直に納得できない私。その方がロマンティックな展開なのですけど。
・決着
確保成功、はもう少し長くなる予定だったのですが
駆け引きのネタが切れてしまったせいか、意外とあっさり終わってしまいました。
322 :
作者の都合により名無しです:2006/04/25(火) 19:59:40 ID:fe9Vo1Pu0
>殺人黙示録カマイタチ
只野は、ある意味快楽殺人者より恐ろしいですね。
自分に与えられた役割を淡々とこなして・・
終わっちゃいましたか。でも、「そして……」が気になります!
>邪神氏
水竜って四天王の一角でしたね。懐かしい。サルーイン軍団も一枚岩では無いのかな。
最凶w死刑囚にジャギにアミバと、俺の好きなネタキャラが大活躍でうれしい。
>フンコロガシ氏(笑えるからこのコテはもう止めて)
未来から歓声、に少しジンときました。呂布といいベルトランといい、ハイデッカ氏の
描く男の死に様は見事ですね。主役のジャンヌと計次が霞むほどのベルトランの男っぷりですな。
>見てた人氏
戦いが済んで、やや空しさの残りそうな終局ですね。一億はカイジのものになるのかな?
しかし夕凪を始め犠牲者続出だから、決してこの物語でハッピーエンドにはならないでしょうね。
326 :
ふら〜り:2006/04/25(火) 23:27:13 ID:+2NawBx50
こんなに大勢の職人さんたちが、こんなにたくさんの萌え&燃え作品を書いて下さって。
それらをバレさんが丁寧に保管して下さり、イラストやFLASHもあって。『みんなが
作ってきた場所』がここまで大きく楽しく賑やかになったこと、嬉しく誇らしい気分です。
>>サナダムシさん(サナダさん、『青』並に寡黙だから状況も掴めず心配しましたぞっ)
井上、今回は捕らわれもせず助言もせず応援もせず解説もせず、か? 何かやって欲しい。
信号トリオの謎解きのヒント、とか。しかし一対三で忙しく戦いながら、攻撃や防御とは
別に謎解きに思考を巡らせねばならんとは。つーか純粋な戦闘力だけならもう充分かも?
>>一真さん
冒頭での二人の紹介。原作未読の私は、一応本作でも前フリはあったとはいえ、それでも
結構ビックリでした。へー、あのヲタコンビが、そんな大層な……って。今はその能力を
フルに使ってマガジン休刊賭けバトルをしてるわけですか。しかし最強の死亡フラグが!
>>サマサさん
>「ははは・・・そんな風に思われてたとは、ちょっとショックじゃないか・・・」
ぅおぅ。邪神? さんに引き続き、サマサさんまで。↑これ、シャレにならぬ可愛過ぎっ。
キラのことは本当に好きで、案外普段の性格は飾ってたりするかもで。いやぁ萌えてきた。
バカ王子は正義の内海さん(パトレイバー)・善側の左京(幽白)ですな。で、遂に彼が!
327 :
ふら〜り:2006/04/25(火) 23:28:08 ID:+2NawBx50
>>邪神? さん
>俺に見合う力?だったらどうせ大した物じゃ無いと悲観的になるシコルスキー。
いいなぁこれ。バキスレでのシコルらしさが良く出てる。神の力の適合者、って思いっきり
主人公要素なのに。で実際に強くて燃え。ジャギは強さ議論では割と持ち上げられますが、
本作でも立派にボスキャラしてますね。ボロボロのみんなが立ち上がり、力を合わせて……
>>ハイデッカさん
お世辞でもなんでもなく、十二分に現実的に、今回の戦に勝てたのはベルトランのおかげ
ですよね。彼がその命をギリギリまで懸けて、呂布を止められたから。ジャンヌを護れた
から。強力な敵を止め、大切な主を護る。これぞ正しく聖女の盾、ジャンヌの騎士でした。
>>見てた人さん
これにて決着、か。カイジたちに倣い、はぁ〜と息をつく思いです。確かに、ドラマでも
小説でも「まだあがけるだろ、犯人?」って多いですよね。状況証拠とかだけで観念して。
でも本作のゲームはあくまでゲーム、ゲームオーバーをもって決着。で、『そして……』?
>>全力全開さん
おお、だいぶ解り易くなりましたよ。知識が偏ってる私にとって原作知らずはもはや日常。
でもずっと楽しませてくれてるこのスレ。全力さんも諸作品を参考に、頑張って下さい。
第七話「『やりたい仕事が見つかりません』と言う前にハローワークに行け」
音が聞こえた。
やかましい車のクラクションと、何か相当重たい物がぶつかったような衝突音。
それが止んだと思ったら、次は間髪いれずに通行人の悲鳴が聞こえてきた。
無理もないか。人一人が車に撥ねられたんだ。騒ぎもするさ。
しかしうるせぇな。これじゃあ安心して気絶もできねぇ。しかもなんか重いし……車の下敷きにでもなってるのか俺は?
「…………な!?」
違った。
倒れこむ西本の上に乗っていたのは……男二人。
坂田銀時と服部全蔵。この二人が、車に轢かれそうになった西本の命を救ったのだ。
「へっ……どうしたよ痔忍者。額から血ぃ出てるぞ」
「うっせぇ。てめぇこそ頭流血してんじゃねぇか」
この状況で何を笑い合っているのか。というよりも、何しているのか。
「おめぇら…………どうして俺なんか……俺なんかのためにこんな……」
「命をかけるのか――か? さっきも言ったがよ、俺は全国の漫画家さんの味方なんだよ。どこの連載作家かなんて関係ねぇ。目の前で積まれようとしていた若い芽を見過ごせなかった。ただそれだけのことさ」
「痔忍者……」
「もっとも、こいつはやっぱマガジンのためなんだろうがな……」
その言葉を最後に、全蔵は力尽きた。
昼夜に渡る銀時との激闘と追いかけっこにより、彼の体力はとっくのとうに底をついていたのだ。それでも動けていたのは、ひとえに「漫画バカ」であるが故だろう。
それも西本先生を助けるため、最後の爆発を見せて限界に達したようだ。あとのに残されたは銀時と西本。銀時自身も体力の限界が近づいている中、
「俺は……本当はラブコメが描きたかったんだよ……」
「…………は?」
西本が、呟くように言った。涙を流しながら。
「最初にマガジンで連載が決まった時も……俺はもちろんラブコメでいくつもりだった。なのに……なのに講談屋の奴等ときたら『ラブコメはもう足りてるからいらん、お前には建築業を題材にした漫画を描いてもらう』とかぬかしやがる」
「…………」
それは、新人作家の内はよくあることなのだろう。
雑誌の毛色に合わず、描きたいものを描かせてもらえない。描きたくもないものを描かせられる。雑誌によってはよくあることなのかもしれない。
「俺だって一応はプロだ。初めの内は黙ってペンを進めたさ。でもよ……原稿が完成に近づくにつれて思い始めたんだ。これが、俺のやりたいことだったのかってな」
新人の内は、まだ仕事を貰っている立場。編集に対しての拒否権などはないだろう。だが、だからといって「描きたくない」というのは、単なる我侭だ。
描きたいものが描けない。
西本は、その苦痛と必死に戦っていたのだ。
そしてその結果、西本は逃げ出した。仕事人としての使命より、漫画家としての譲れないものを取った。
「俺は夢を捨てきれなかった……社会の負け犬なんだよ。人様に迷惑かけて……とうとう怪我人まで出しちまった」
全蔵のことを言っているのだろう。西本は今、激しい後悔に苛まれていた。
銀時はただ静かに、その哀れな漫画家の嘆きを聞き続ける。
時刻はもはや、零時に迫ろうとしていた。
「……帰るか。そういや新八たち残してきたまんまだったし」
西本が一頻り話し終えると、銀時はそれだけ言って立ち去ろうとした。
「おい、俺をつれてかねーのか……?」
邪魔者だった全蔵は気絶中だ。今なら苦もなく西本をマガジン編集部に連行できるだろう。しかし、
「俺が追っていた西本先生は、交通事故にあって漫画なんて描ける状態じゃなくなったよ」
銀時は振り向こうともせず、それだけ言い残した。
西本は涙眼でその男の背中を見ながら、最後にもう一言。
「…………すまねぇ!」
その言葉が耳に届いた瞬間、銀時は微かに笑った。
そして、餞別代りにもう一言。
「そうそう、ラブコメが描きたいんだったら『週刊少年ジャンプ』って雑誌に駆け寄ってみるといいぜ。何しろあそこは『いちご100%』が終わってからラブコメ不足だから」
原因は何だったのだろうか。
大型トラックが齎した交通事故による衝撃か、それとも全蔵の熱論が届いたのか、それとも西本の譲れない思いか。
理由は定かではないが、その一瞬、銀時は確かにジャンプを語った。
「御用改めである! 神妙にしろテロリストども!!」
その夜、講談屋に黒服の一団が押し入った。
江戸を取り締まる武装警察『真選組』である。
副長の土方を筆頭に、講談屋ビル内を駆け上る。
目的地は階層中腹、山崎からの知らせがあった、攘夷浪士どもの根城となっている会議室。
「ここかぁ!!!」
物凄い勢いで土方がドアを蹴破る。
手には刀を握り、いつでも戦える臨戦態勢。中に何人の攘夷浪士がいようが、真っ向から切り伏せるのみ。
しかし、中にいた人数は土方の予想と期待を大いに裏切るものだった。
その人数とは――二人。
「……はい?」
「……ん?」
お互いが視線を見合す。
それというのも、中にいた二人は攘夷浪士と呼ぶにはあまりに貧相な肉体で、刀はおろか、何の武装もしていない。
ただ、机に向かい合わせになって紙――漫画の原稿を広げているだけだった。
「ちょ、ちょっとォォォ! あんたらなに!? ここ立ち入り禁止なんだけど!? 今真島先生の復活大型新連載『最後の侍』の打ち合わせ中なんだけどォォォ!!」
叫んだのは、講談屋の編集と思わしき眼鏡の男だった。
ここで何が行われていたのか、その男の一言で全てが窺える。
「えーと、山崎」
「はい」
土方が、山崎を呼び寄せる。
山崎の身体は少し震えていた。
「お前、ミントン好きだったよな?」
「はぁ」
「ラケットになるのと羽になるの、どっちがいい?」
「え゛?」
その翌日、真選組屯所では恐怖の『人間バドミントン大会』が開かれたという。
ちなみにその頃マガジン編集部。
「素晴らしいィィ!! これは傑作だ!」
編集長が、一つの原稿を絶賛していた。
「決めたぞ! 西本はもう間に合いそうにないし、これを代原に使おう! 君、この漫画のタイトルは!?」
「んー……『酢昆布ちゃん』アルネ」
「『酢昆布ちゃん』! ネーミングセンスからして天才じゃないかァァァ!!!」
「いや、どう見てもその感性おかしいですよ編集長」
新八が冷静にツッコんでも、編集長の耳には届かない。
編集長が絶賛しているこの漫画、タイトルを『酢昆布ちゃん』。何を隠そう神楽がおふざけで描いた作品で、お世辞にもうまいと賞賛できる代物ではなかった。
コマ割なんかも滅茶苦茶だし、画力なんてものは子供の落書きレベルだ。それでも一つだけ秀でた部分がある。
それは、シュールさ。
物語の内容をかいつまんで説明すると、
城下町に遊びに出た実は姫である酢昆布ちゃんがヤクザたちの麻薬取引現場を発見。そのまま追跡するも、敵のサイボーグによって重傷の傷を負わされたまま改造人間にされて暴走、城下町を滅茶苦茶にした挙句怪獣と戦い命を落とすという意味不明な31ページ超大作。
こんなもの載せた日には全国の漫画家志望者が乱を起こしてもおかしくないデキだったが、編集長もよほど切羽詰っていたのだろう。これをおもしろいと感じ、掲載すると言いいだした。
新八はそんな編集長を不憫に思いながらも、マガジンの明日はどっちだ! と本気で心配しだしていた。
まぁ何はともあれ、この神楽の作品と編集長の機転により、マガジンは休刊だけは免れたという。
第八話「ポジション的にはエピローグ」
講談屋と攘夷浪士がつるんでいるという噂も、結局はデマと判明した。
この事実に対してはあのK氏も、「人間誰しも間違いはある」とコメント。
そのコメントを聞いた万事屋を営むS氏は、「ざけんなヅラァァァ!!!」と発狂したという。
ちなみに、同じ情報をキャッチしていた某武装警察のY氏は、仲間内から手痛い制裁を受けたという。
主な実行犯は鬼の副長と呼ばれるH氏と、サドの王子様と呼ばれるO氏であるとのこと。
そして問題となった講談屋の看板雑誌『週刊少年マガジン』だが、新連載を予定していた作品が突如休載、連載中止。
代わりに掲載された『酢昆布ちゃん』なる漫画は、あまりのレベルの低さに苦情の電話が殺到、評判を激しく下げる結果となった。
この異例の事態に編集の一人は、
「いや、あの時は魔がさしたんですよ……だって編集長があれ載せるっていうから従っただけで、いや、もうホント反省してます」
とコメント。よほど苦渋の決断だったのだと推測できる。
ところ変わって、ここは万事屋銀ちゃん。
そこで新八が何週間か前のマガジンを広げていた。
「本当に載っちゃったんだねぇ、神楽ちゃんの漫画」
「印税ガッポガッポで酢昆布食べ放題と思ったのに……漫画家の原稿料って安すぎるアルヨ」
「いや、あれで原稿料を貰おうってほうが無理でしょ……」
万事屋では、一躍有名となった漫画、『酢昆布ちゃん』の作者がいた。
が、その事実を知る者は数少なく、現在も先生に新作の予定は入っていない。
「あれ? そういえば銀ちゃんどこいってるアルか?」
「ああ、銀さんならまたいつもの雑誌を買いにコンビニに行ってるよ」
ここは銀時行きつけのコンビニ、大江戸マート。
そこの雑誌コーナーにて、一つの漫画雑誌に手を伸ばす男が二人。
「ん?」
「んん?」
互いに視線を交わす。
お互い頭部に包帯を巻いたその男は、二人とも大人と見て取れる人相だった。
しかし、手に取ろうとしている雑誌は少年の代名詞、週刊少年ジャンプ。
「なに? おたくもジャンプ?」
「え? え? なに? ジャンプ?」
いつかの時のように、ジャンプは一冊だけということはなかった。
争う原因もなくそれぞれジャンプを一冊ずつ取ると、それ以上喋ることはなくレジへと運んでいく。
だが何が可笑しいのか、男二人は店を出るまで顔をニヤつかせていた。
男達が買っていった今週号のジャンプ。
表紙には、可愛らしい女の子の絵と「ありそうでなかった非日常ラブコメストーリー新連載!」の煽り文字が書かれたいた。
これにて第一部「少年の心を捨てきれない男達の奮闘編」は終了です。
今まで好き勝手やって来たこの作品も、とりあえあずは区切りの良いところまで持ってこれました。
今後ですが、「シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい」題材はそのままに、新シリーズというか第二部を考察中です。
最終回と思わせて続きがある、なんてのもふざけてますが、どうせならもっと長編らしい話数になるまで頑張ってみることにします。
と、意気込んでみるものの、一真は私情で二週間ほどここに来れなくなるため、新シリーズのスタートはかなり先になりそうです。
第七話と第八話をいっぺんに書いて終わりまで駆け抜けたのもそのため。
気長に待って頂けるとありがたいなと、思いながらも今回はこの辺で。
追伸代わりに裏話。
このお話、当初の予定では「コミックマスターJ」という作品を交える予定でした。
分かる人には分かると思いますが、そうなると銀さんたちの存在感がめちゃ薄れてしまうから断念したんですけどね。
それは、私が部下を迎え、教導官への道を一歩進んだその日に起こった、小さな事件。
出会ったのは、同年代の子達。
その手に使うは、不思議な道具。
友達になれるかな…
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは〜黄昏の戦乙女編〜、始まります。
336 :
第2話−1:2006/04/26(水) 11:05:53 ID:mU/4FKHR0
7/15(土) 14:20 小学校裏手の山
『締め付けろ!』
受信機のついたツルがほかのツルに絡みつき、締め付けている。
それを少し離れたところから見ていたフェイトは、
「そこの人たち、どいて!」
「どうする?」
「うかつに歩いて逃げても邪魔になる!ここはタケコプターで上にどこう!」
「フェイト、あいつら空飛んでるよ!」
驚くアルフ。
「あの頭につけてるやつで飛んでるみたいだね。こっちも決めないと。いくよ、バルディッシュ」
《Yes sir》フェイトの愛杖、バルディッシュ・アサルトがそれに答える。
「サンダーレイジッ!」《Thunder rage》
フェイトの周りにいくつもの円形の魔方陣が形作られ、左手から電光がツルめがけて飛んでいく。
威力は先ほどのなのはの『ディバインバスター・フルパワー』とほぼ同じだが、相手が身動きの取れない状態でないと使えないのである。
まさに臨機応変な攻撃である。
「ふぅ」
と、フェイトが一息ついて、
「フェイトちゃん、危ない!ディバインバスターっ!」《Divine buster》
なのはの一撃がフェイトのすぐ後ろにいた残りのツルを一掃した。自分の制御技術に自信がなければこんなことはできないだろう。
フェイトは若干守備が苦手で、そのためか速攻で片付けようとするきらいがある。他には欠点らしい欠点などないのだが。
「ありがとう、なのは」
フェイト、顔が真っ赤である。
「このくらいなんでもないよ、フェイトちゃん」
「あのー…もしかして僕たち、忘れられてます?」
「あ…すみません」
第2話 何はともあれ、自己紹介なの
337 :
第2話−2:2006/04/26(水) 11:09:40 ID:mU/4FKHR0
同日 14:30 アースラ艦内
その後、一行はアースラ艦内に入り、(「うわぁ、すごい!」「タイムパトロールとは違うんだね」)
まずは自己紹介からということになった。
「この艦、アースラの艦長をしているリンディ・ハラオウンよ」
「クロノ・ハラオウン。執務官だ」
「あたしはエイミィ・リミエッタ。クロノ君の補佐とオペレーターやってます」
「武装隊第2中隊隊員、ティアナ・ユリシーズっす!」
「武装隊第2中隊副隊長、フェリツィア・ファボリットだ」
「武装隊第2中隊隊長、エラントラ・鄭・グレンジャーです」
「私はブリーサ。エラントラの使い魔です」
「あたしはアルフ。フェイトの使い魔だ」
「私立聖祥大学付属小学校4年、時空管理局武装隊士官候補生の高町なのはです」
「同じく、聖祥小学校4年、時空管理局捜査官候補生のフェイト・T・ハラオウンです」
「えっ!?聖祥!」
聖祥といえば大学までエスカレーター式で、相当の学力と学費が必須の名門である。
「すごい…」
羨望のまなざしである。
なのはとフェイトは顔を赤らめ、
「そ、そんなにすごいわけじゃないけど…。それで、そっちは?」
「都立円筏小学校4年、野比のび太です」
「私、源静香です」
「俺は剛田武」
「僕は骨川スネ夫」
「僕ドラえもんです」
「やっぱり同学年だったんだ…。えーと…ドラえもんさんはロボットさんですか?」
とのなのはの疑問にドラえもんは、
「ええ、猫型ロボットです」
すると、なのはとフェイトは急にすまなそうな表情になって、
「すみません、電球みたいだと思ってました…」
「私も…」
「……」
気分は悪くなったが、先に謝られて怒りをぶつけられないドラえもんであった。
338 :
第2話−3:2006/04/26(水) 11:13:56 ID:mU/4FKHR0
年齢が近いこともあり、なのはとフェイトがいろいろと説明することになった。
「うーん、どこからはなせばいいかな…。この世界が、いくつもの次元世界で構成されていることはわかる?」
と、なのは。
「…よくわかんない」
呆れつつドラえもんが、
「まったくのび太君は…メカトピアと戦ったときの鏡面世界とか、鳥人間のバードピアとか、何回か行ったことあるでしょう!一番わかりやすいのは、もしもボックスでいった魔法のある世界かな。
あれは『魔法が使われている、こことほぼ同じ世界』だから、他に魔法のある世界があっても不思議じゃない」
「ああ、あれか。でも学校で勉強しなくちゃいけなかったんだよねえ」
「そういうところはあまり違わないかも。だいたいの魔導師は魔法学院とかの教育機関を出ているはずだよ。私となのはは違うけど」
こちらはフェイト。
「皆さん、すでにそんなに別次元世界へ行ってるんですか」
感心しているのはエラントラ。
「そういえば、あの鏡面世界は管理下に入ってないんですか?」
ドラえもんの素朴な疑問にリンディが答える。
「うーん、それらしいところは知らないから、まだ時空間航行技術が開発されてないんじゃないかしら。例外がない限り、その次元世界がある程度の技術を使いこなせるようになってから、ってことになってるのよ」
「おい、何の話だよ」「どういうこと?」そう、デマオンを退治したしずか・ジャイアン・スネ夫は魔法世界側の住人なので、わからないのは当然である。
「いや…なんでもない」
「なんだよ、隠してないで教えろよ!」
339 :
第2話−5:2006/04/26(水) 11:16:17 ID:mU/4FKHR0
険悪になってきたムードに困惑しつつなのはが、
「…あの…先に進めていい?」
「あ…ええ。」
収まったようだ。
「そういえば同年代なのになんで働いてるんですか?」
のび太が尋ねる。
「それは、時空管理局のあるミッドチルダが実力重視だから。年が一桁なのに働いてる人もいるよ」
「クロノ君は11歳で執務官になったんだって。」
「私、その年なんだけどなあ…」
と、ティアナ。
「お前とクロノさんを比べるな!ものすごい努力をしたからこそだなあ…」
「また始まったわね…」
いい加減慣れっこになったエラントラ。いつもこの調子らしい。そしてクロノは照れていた。
「ピリカ星(宇宙小戦争の舞台)みたいだね」
こちらはのび太たちの感想。
余談だが、スモールライトが盗まれたならビックライトを使えばいいのにと思った人はどれだけいるだろうか。
まあ、それはそれとして…
「とにかく、その次元世界の保安が時空管理局の主な仕事なんです」
「他に、災害救助とか、文化の管理とかも」
なのはの言葉にフェイトが補足する。
「で、私はその中の武装隊に所属してるんです」
なのは。
「私はこの艦に」
そしてフェイト。
「…このくらいで十分かな、フェイトちゃん?」
「いいとおもうよ、なのは」
340 :
第2話−6:2006/04/26(水) 11:27:28 ID:mU/4FKHR0
すると、リンディが近づいてきて、
「じゃあ、ここからは私が説明するわね。本来なら現地市民を巻き込むのは避けたいんだけど、さっきの様子だと、もしかしてこういうことに慣れてる?」
「ええ、こんなことは何十回も経験してます。多少なりとも腕に覚えはあります。ぜひ手伝わせてください」
と、言葉はそれぞれ微妙に違うが大体このようなことを言った。
「じゃあ、民間協力者ということで…」
「ちょ、ちょっと待ってください、母さん!」
といったのはクロノ。仕事の時は『艦長』と呼ぶのだが、ひどく驚いた時にときたま呼んでしまうことがある。
「それはまずいとおもいます。できるだけこういうことは伏せるように…」
「でももうこういう状態になっちゃってるからねぇ…」
「そうよクロノ君、それにこの子たちはすごい機械を持ってるんだから。あ、艦長お茶が入りました」
エイミィが加勢する。
「あら、ありがとう」
リンディは緑茶を受け取ると、そこへなんと角砂糖をいくつも投入した。
「!!…………」
唖然。
「…えぇと、リンディ提督は甘党だから…」
とはなのはの説明。
しかし普通、甘党だって緑茶に砂糖は入れないものだが…
「うわぁ、美味しそうっす〜」
……ここにもいた。
「…わかりました」
と、ここでクロノが。今まで舌戦でリンディとエイミィを向こうにまわして勝ったためしがないのである。
「クロノさん……」
フェリツィアには涙を禁じえない場面であった。
341 :
全力全開:2006/04/26(水) 11:27:28 ID:B3VHI7oLO
規制食らいました
335はアバンタイトルです。次からはそこでageます
訂正
第1話訂正版6の五行目『子と』→『事』
第2話-3の後半の方の『鏡面世界』→『魔法世界』
342 :
第2話−7:2006/04/26(水) 11:30:03 ID:mU/4FKHR0
「じゃ、決まりね」
と、その時、
「遅うなりましたー」
ほんわかした関西弁で茶髪、少々歩きが危なっかしい少女と、赤紫色の髪でまじめそうな女性、金髪で緑色の服の優しそうな女性、赤髪で少々目つきの悪い赤い衣装の少女、白い髪に青い服で獣の耳を持つ燻し銀な男性が入ってきた。
「はやてちゃん!あ、この子は八神はやてちゃん」
「ごめんなー。ちょ遅くなってしもた。もう終わったんか?」
「それが、ちょっと大変なことになっちゃって」
なのはの説明をクロノが引き継ぎ、
「民間人が結界内に入ってきてしまったんだ。よくわからんが高い技術力を持っているらしい」
「そういえば、ドラえもんっていったいなんなの?」
フェイトが訊くと、
「えーと、僕は22世紀、つまり100年くらい未来から来たんです」
「えっ!?」
今度はなのはたちが驚く番だった。
「道理で通れるわけだ。100年かければこの世界でも可能だ」
と、顎に手を当てつつ納得のクロノ。
「すごいんだなーお前ら」
アルフも感心している。
そしてドラえもんが照れる番でもあった。
「いやぁ、それほどでも…」
「あのぉ…私のこと忘れてへん?」
と、小さな声ではやて。
「あ、ごめん…あんまりびっくりしたもんだから」
「ええんやええんや、私はどうせ地味なんや。そんで『地味オブ・ジ・イヤー』とか言われるんや。どうせ私は…ららる〜ららる〜…」
「主(あるじ)はやて、それはキャラが違います」
赤紫髪の女性がたしなめる。
343 :
第2話−8:2006/04/26(水) 11:32:56 ID:mU/4FKHR0
赤紫髪の女性がたしなめる。
「あ、あぁすまんかったシグナム。私は八神はやて(10)、聖祥小学校4年、時空管理局捜査官候補生や」
赤紫髪の女性が、
「私は主はやての守護騎士ヴォルケンリッター『剣の騎士』シグナム(19相当)」
次に金髪の女性、
「ヴォルケンリッター『泉の騎士』シャマル(22相当)です」
赤髪の少女、
「ヴォルケンリッター『鉄槌の騎士』ヴィータ(8相当)だ」
そして白い髪の男性、
「ヴォルケンリッター『盾の守護獣』ザフィーラ(25相当)」
そして、のび太たちも再度自己紹介した。
ちなみに、はやてのドラえもん第一印象は、『爪楊枝の持ち手側の先っぽのほうのアレ』、ヴォルケンリッターはと言えば、『海坊主』『起き上がりこぼし』『こけし』『青入道』と様々であった。
こうして、ドラえもんのストレスはまたたまるのであった。
344 :
第2話−9:2006/04/26(水) 11:35:25 ID:mU/4FKHR0
さっき聞いた名前を、ヴィータが指をさしながら確認している。
「ごうだたけし…どらえもん…ほにぇかわすねお…みにゃもとしずか…にょびにゅ、ぬびにぇ、にゃびにょ…えぇい、言いづれぇ!!」
キレた。
「何でそんなに言いづれぇ名前なんだよ!!」
「そんなぁ。名前ぐらいちゃんと言ってよ」
「うるせー!!」
「まぁまぁ、落ち着いてヴィータちゃん」
と、シャマルが宥める。
「えと、ヴィータちゃんはナ行の発音が苦手らしくて。私の名前も時々言えてないし」
「なんだと、やっぱりお前もこいつの味方か、高町なぬは!!」
「また言えてない…」
「いいじゃないかよ、ここいらの奴らの名前は確かに呼びにくいし」
とは、フェリツィアである。
日本人にしてみれば、『フェリツィア・ファボリット』のほうがよほど言いづらいものだが…
「お、あんたもそう思うのか!」
気が合ったようである。『反なのは同盟』結成。
「ししょーにそんなこと言っちゃだめっすよー」
ティアナまで会話に割り込んできた。
この先は、不毛なうえ収拾がつかなくなるので割愛させていただく。
まぁ、そのおかげでうちとけたと見ることもできるが。
また食らった…
また訂正
第1話訂正版2
『傍観しいた』→『傍観していた』
342からがBパートです
邪神?さん
『切腹禁止っ!』はサマサさんも書いてらっしゃる『ARIA』の藍華のセリフを真似ただけだったんですが…
フンコロガシ(?)さん
めっちゃカッコよかったです。コテはさておき
見てた人さん
このまま終わる話ではない、はずです
ふらーりさん
描写もやりすぎると冗長になるので、そこに気を付けないと…
一真さん
いい話になりましたね。やっぱり銀魂はこうでないと
346 :
第2話−10:2006/04/26(水) 11:50:50 ID:mU/4FKHR0
3時を過ぎたころ、
「目標地点付近に変化は見られません。もう大丈夫みたいです」
とのエイミィの報告によってとりあえずは解散ということになった。
「紹介したい友達がいるんだけど…よかったら一緒に来ない?もちろん魔法のことは知ってるよ」
と、なのは。
「私たちは休息に充てることにしましょう。これ以上の大人数でいくのもなんですし、また今度と言うことで」
と、エラントラの提案。
「しかたねぇ、今回は勝ちを譲ってやる」
まだ言っていた。
「えー、私はついて行きたいっす!」
「じゃあ来ればいいよ。それで、ドラえもんさんたちは?」
「行こうよ」「そうだな」「じゃあ、お邪魔します。場所は?」
「ええと、確か今日はすずかのお屋敷だって聞いたから、茨城県の隆宮市だよ」
と、思い出しつつフェイト。
「よし、【どこでもドア】!」
「これで行けるんですか!?」
「うん。それじゃ、隆宮市へ!」
347 :
第2話−11:2006/04/26(水) 11:51:38 ID:mU/4FKHR0
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「将軍!マレンシャー、陥落しました…」
「ぬう、そうか…して何人死んだ?」
「それが…0人です」
「いい加減にしろ!どうしたら死人なしで陥落するんだ!」
「非殺傷設定だったようです。ただ、兵は全員リンカーコアを抜かれているうえ、敵の茜色の魔力光を恐れて戦意を完全に失くしています…一部では『黄昏の戦乙女』とも呼ばれ始めました…」
「なんと!敵は女か!…まあ、最近は女のレジスタンスも多いとは聞いていたが…これは厄介だ…」
すずかちゃんのお屋敷でもいろいろと…。それからうちの家族を紹介したり。そして次元を超えた災害の理由は?
次回「ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは〜黄昏の戦乙女編〜」第3話「その名は黄昏の戦乙女なの?」
リリカルマジカル、頑張ります!
ドラえもんって何考えてあのデザインなんでしょうね。絶対ネコ型じゃない
ドラえもんたちがいった他の異次元といえば、ロボの国に創世日記の虫の世界
あと太陽の王国ってとこですか
ところで、はやてが地味ってはじめて聞きました
むしろなのはたちが食われてるくらいキャラがたってるとばかり思ってましたが
>>349さん
それ、予告してた声優ネタ(八神はやて=植田佳奈=桃瀬くるみ《ぱにぽにだっしゅ!》)です…
わかりづらかったか…一応この先も声優ネタは用意しているんですが、あまりにもわかりづらければやめます…
>一真さん
少年の心を捨てきれないというよりも、いい年こいたちょっとDQNみたいなw
ま、原作でもそうですか。ジャンプキャラなのにマガジンの為に一肌脱ぐ神楽がいい。
第二部突入ですか。では次は、ちょっと熱い侍の銀魂をお願いします。
>全力全快さん
なんか普通に自己紹介してますね、のび太となのはたち。以外に早い出会いだったな。
もう少し、一回分のうぷに詰め込む内容を抑えたほうがいいんじゃないかな。
登場人物が多いのに台詞が多いから、誰の台詞かちょっと読み辛い。先は長いですからね。
352 :
作者の都合により名無しです:2006/04/26(水) 22:22:27 ID:B9SPRrTM0
一真さん、銀魂好きなんで続いてくれるみたいで嬉しいです。
今回のギャグも良かったですけど、次回はアクションを見たいですね。
勿論、今回みたいな軽妙なトークも入れてくれればより銀魂らしい。
1ヶ月ほど先になるのかな?期待して待ってます。
第七十話「明かされる秘密・1」
仮面の男―――ラウ・ル・クルーゼ。
彼は写真をぼんやりと見つめていた。
「―――キラ・ヤマト・・・」
それが写真に写っている人物の名だった。彼の秘密を狐から聞かされた時、クルーゼはまず呆気に取られ―――そして、
笑った。力の限り、笑い狂った。
これを運命というなら、何というろくでもない運命だ。まさか<あんな形>で、自分と彼が繋がっていたとは。
「君は、そちら側にいるべき者ではない―――」
すくっと立ち上がる。
「―――今迎えに行ってやろう・・・何せ・・・君は・・・」
その口元に、凶笑を浮かべて。
「君は、ある意味では・・・私の弟なのだからな」
襲い掛かるモビルスーツ。その真に驚異的なのは、数の暴力だ。一機の戦闘力はそこまで大したことはないが、物量戦術で
来られては非常に厄介なものになる。
そして量産型グランゾン。こちらは質の方も厄介だ。並の機体やパイロットでは、はっきり言って相手にならない。まとも
に戦えるのは、一部のエース級だけだ。
昨日の戦いでは圧勝したが、それでも次から次に来られてはたまったものではない。
のび太たちは、苦しい戦いを強いられていた―――
ダイザンダーが手にしたデモンベインで、目の前に迫っていた量産型グランゾンを横薙ぎにする。一息入れる暇もなく、
モビルスーツから攻撃を受けた。襲い掛かる衝撃に、舌を噛みそうになる。
苦戦しているのはダイザンダーだけではない。仲間たちも、この数の敵を相手に四苦八苦している。
「くそっ・・・」
ペコが呻く。次から次に襲い来る攻撃は、精神を容赦なく磨耗させる。集中が途切れたところで、一斉に攻撃を受ける。
「うああっ!」
<ぐうっ・・・!>
「―――ペコ!」
ペコの窮地に気付いたのび太は慌ててダイザンダーをそちらに向かわせようとするが、敵に阻まれ動けない。仲間たち
も同様だ。余りにも敵の数が多すぎる。
「どけよ!どけったら!ペコが―――アヌビスが―――やられちゃうじゃないか!」
一心不乱にデモンベインを振るい、活路を開く。だが―――どう考えても間に合わない。アヌビスを取り囲む量産型
グランゾンが、止めを刺そうと蠢く。
―――その瞬間、量産型グランゾンが消し飛んだ。
「え!?」
ペコは何が起きたのか分からず、周囲を見回す。果たしてそこに、その男がいた。
「おいおい王様、しっかりしろよ―――俺様に勝っといて、こんな雑魚にやられてんじゃねえっての」
それは、ラーメンを啜る怪物―――
<お前は・・・馬鹿な・・・!>
アヌビスは信じられない、とばかりに呟く。ペコも同じ思いだった。その男が生きているなど、露とも思っていなかった。
「生きていたのか・・・USDマン!」
ペコは残る集中力を総動員させてUSDマンに向き直る。彼がまた戦いを挑むというなら―――やるしかない。
だがUSDマンは、ひらひらと手を振った。
「おいおい、やめろって。俺様はただ、あんたらを助けに来てやっただけだっつーの」
「なん・・・だと・・・?」
思わぬ言葉に、ペコは絶句した。
「ま、なんつーの?上手くは言えねーけどよ―――あんたらと一緒に戦うってのも、悪かねえなって思ったわけよ。実際、
あんたらのことを結構気に入っちまったしな」
「・・・・・・」
言葉が見つからないペコに、USDマンはにやっと笑った。
「ま、そういうわけだからよ。これから宜しく頼まあ」
「ええっと・・・よく分からないんだけど・・・」
その様子を見ていたのび太が、おずおずと言った。
「要するに、ぼくらの友達になりにきたってこと?」
USDマンはその言葉に目をキョトンとさせて、そしてまた笑い出した。
「友達か!いいねえ、いい言葉だ。友達ってのは最高にいい言葉だ!いい言葉は、決してなくならねえ―――って、どっか
で言ってたなあ・・・ま、簡単に言うならそういうことだ。友達になりに来た―――これでいいだろ?」
あっけらかんと言い放つUSDマン。そして、思い出したように言った。
「そうそう―――友達になりたいって奴が、もう一人いるみたいだけどな」
くいっと上空を指差すUSDマン。釣られて空を見上げたのび太たちの目に、何かが飛び込んできた。それは地響きを伴い、
勢いよく地上に着地する。
<・・・グランゾン!>
マサキが声を上げる。
「じゃあ・・・乗ってるのは・・・アザミ!?」
「―――だとしたら、どうだというのですか?」
返ってきた言葉は、確かにアザミのものだった。
「アザミ・・・」
「しずかさん―――でしたね。勘違いしないでください。別にあなたたちを助けようというのではありませんよ。友達になりに
来たわけでもない―――ただ、私は私の好きなように生きる・・・そう決めただけです」
素っ気無い態度―――だがその中に、以前は感じることのなかった温かみが混じっているようにしずかには思えた。
「へん。おれはまだ納得してないからな!」
「そう言うなって。折角来てくれたんだから」
稟がジャイアンを宥めつつ、サイバスターをグランゾンの隣に陣取らせる。
「アザミ―――色々あったけど、これからよろしくな」
「・・・こちらこそ」
<ちぇっ、愛想のねえ女。しかし、まあ―――パイロットがシュウじゃないとはいえ、グランゾンと肩を並べて戦う時が
来るとは思わなかったぜ>
感慨深げなマサキ。
<アザミ!曲がりなりにも本物に乗ってるあんたが量産型にやられたりするなよ?>
「分かっていますよ―――それでは行きましょうか」
サイバスターとグランゾンがそれぞれ剣を構えて、敵陣に突っ込む。繰り出される剣戟が、敵機を斬り裂いていく。
「よしみんな、俺たちも行くぞ!」
アスランの号令に、キラやジャイアンたちも続く。強力な助っ人を得た一同は、次々に敵を屠る。
「おーおー、あっちが先にやり始めたかよ。さーて、それじゃあこっちもいくとするか―――らあああああっ!」
雄叫びを上げながら量産型グランゾンの群れへと飛び込むUSDマン。攻撃を軽く掻い潜りながら放つ拳が、あっさりと
量産型グランゾンを破壊した。周囲から放たれる光弾。それを避けようともせずに突っ込み、素手で弾きながら懐に入る。
そのまま頭から勢いよく突っ込み、直線上にいた十数機を一気に突き破った。
「話には聞いてたけどさ・・・実際に見ると、とんでもないね。ペコもアヌビスも、よくあんなのに勝てたよね・・・」
常識を遥かに超えたUSDマンの強さに、初めて彼を見るのび太は感心するやら呆れ果てるやら。
<確かにな。正直、もう一度やって勝てるかと聞かれれば―――即答はできない>
「全くですよ・・・これが今は味方と言うんだから、頼もしい限りですね」
そう言っている間に、もはや目の前にほとんど敵はいなくなった。どうやらUSDマンがあらかた片付けてしまったようだ。
「これで終わりか?あーあ、呆気ねえな」
USDマンがうーん、と伸びをした時だった。
「まだだ!まだ来る!」
ムウが大声で警告した。
「あん?何であんたに分かるんだよ、んなこと」
「―――説明はできないけどな・・・分かるんだ。あいつが近づくと、俺には―――っ!」
ムウは言葉を切り、回避行動を取る。そこに降り注ぐビームの雨―――
「メカトピアへようこそ、諸君」
怨念を凝縮したような暗い声。そして、その暗闇を具現化したような漆黒の機体―――
「あれは・・・<プロヴィデンス>!クルーゼか!」
「君たちとも暫くぶりだな―――そしてUSDマンにアザミ。残念だよ、君たちが裏切るとは・・・」
「ああ、悪かったなそりゃ。まあ許してくれとは言わねえけど」
悪びれもせずに言い放つUSDマン。
「気に入らないのなら、殺しなさい。私もただでは殺されませんがね」
挑戦的なアザミ。
二人の言葉を聞いたクルーゼは、薄く笑った。
「裏切りに対し、下らない言い訳など口にしないか―――実に潔いな、君たちは」
余裕を見せるクルーゼに、ムウは挑発的に言葉を返す。
「しかし一機で来るとは―――まさか、お前一人で勝てると思ってるんじゃないだろうな?」
「ふ・・・残念だが、そうではない。この戦力差では私に勝ち目がないことくらいは分かっているさ」
「なら、何故来た!?」
「何故来た、か・・・キラ・ヤマト!」
「!?」
その呼びかけに、キラの動きが止まる。それを見計らったかのように、クルーゼは続けた。
「私を追ってくるがいい―――そこで君の秘密を教えよう!」
「なん・・・だって・・・!?」
キラは呆然と呟く。僕の―――秘密・・・?
プロヴィデンスが去っていく。キラは思わずその後を追っていった。
「キラ―――くそっ!」
ムウがそれに続き、SフリーダムとGフリーダムが並んでプロヴィデンスを追う形になった。
「ドラえもん、ぼくたちも・・・」
のび太がそう言いかけた時、周囲の空間が歪む。そこからモビルスーツ、そして量産型グランゾンの大軍が現れた。
358 :
作者の都合により名無しです:2006/04/26(水) 22:51:46 ID:B9SPRrTM0
む?規制かな?
「悪いな。部外者はしばらく雑魚と遊んでいてもらおう」
その声を最後に、三機の姿が見えなくなった。そして、一斉に攻撃が始まる。
「くそっ!これじゃあこいつらをやっつけるまで、ここを動けないよ」
「仕方ない―――あっちはキラとムウさんに任せるしかないよ!」
ドラえもんの声に頷きながらも、のび太は不安だった。
「キラの秘密とか言ってたけど―――あいつ、何を知ってるんだろう・・・」
「大丈夫よ、のび太くん・・・あんなの、ハッタリに決まってるわ」
リルルはそう言うが、とてもそんな風には思えない。リルルだって、あれがハッタリだなんて信じていないだろう。
考えることは山ほどあるが、状況はそれを許してくれない。
(キラ―――無事でいてね・・・)
そう願いながら、のび太は目の前の敵へと向き直った―――
投下完了。前回は
>>291より。
割とあっさり仲間入りしたUSDマンとアザミ。それはともかく、次回からキラの過去話。
元からあんまりない人気が余計心配です。
>>邪神?さん
シコルスキーが神の加護を・・・うわ、似合わねえw
切腹って・・・頑張れゴエモン?
>>299 彼は消えません。
>>全力さん
賑やかしいメンバーとストレスがたまっていくドラえもん・・・哀れなり。
ぱにぽに・・・コミックスは持ってますが、アニメは見てない・・・第一印象はあずまんがっぽいのかな?
と思ってましたが、割と電波系の話でした。
宇宙小戦争で「ビッグライトを使えば・・・」は、そりゃそう思いますよねw
>>301 物語に大きく絡むことはないですが、きっちり脇を固めてくれる存在になってくれるといいなあ・・・
>>ふら〜りさん
しかしバカ王子はただ単に己の退屈しのぎに一生懸命なだけで・・・善側とは言えない訳で・・・
>>358 規制でした。レスしてくれたおかげで解除されました。ありがとうございます!
お疲れ様ですサマサさん。
ある意味インフレの象徴であるUSDマン、ついにドラチームへ加入ですね。
強力すぎるメンバーが更に最強の域まで。アザミまで仲間になったし。
でも、敵も更にランクアップしてくんでしょうねw
362 :
三十四話「握力×体重×スピード」:2006/04/26(水) 23:48:24 ID:24aen+4x0
四方から襲撃するユダと3人の死刑囚、先手を取るのは柳だった。
ダッシュした柳にカウンターで掌打を放つジャギだが、
「拳じゃなきゃ駄目だよ・・・。」
にやりと笑う柳、ピッタリと手がくっついて離れない、空道の真骨頂。
空掌と呼ばれる技術、掌に真空を作り出し手に物体を吸い付ける。
手品師はこの技術を用いて手に物を隠し、そして突然現れたかの様に演出する。
ピンポン玉の様な球体なら普通の手品師でも十分にこの空掌を用いる事が出来る。
だが柳の空掌はそんな領域を遥かに凌駕している、何せ和紙の様に柔らかな物体まで、
吸い付けてしまうのだ、対象が人体であってもそれが損なわれる事は無かった。
「ちぇいっ!」
掌にジャギをくっ付けたまま投げ飛ばす、完璧に受身を取るジャギ。
立ち上がるジャギの口元へと、そっと手を伸ばす。
指先を完全に閉じた掌に違和感を覚え即座にその手から逃げる。
不意に後ろから声が聞こえた、殺意の混じった凶悪な声が。
「配線っと・・・生きてるな。」
カキンと音がした直後、後頭部に感じる強烈な衝撃、ドイルが指の操作で発動した、
腕に仕込まれた強化スプリングによる高速、高威力のパンチが炸裂する。
「うぎゃあ〜!」
絶叫しながら吹き飛ぶジャギ、地面に手を突き刺し勢いを止める。
だが背後にはドリアンが立っていた、気配に感づいたジャギが裏拳を放つ。
完璧なタイミング、完璧なスピード、だからこそ完璧に読める。
「北斗神拳・・・ルーツは私の得意とする中国拳法なのだが知ってたかね?」
今度はドリアンがカウンターの突きを決める、しかも秘孔を狙った物を。
中国で拳法を学んだドリアンには、最強の拳法家である称号、海王の名が冠せられた。
微笑を浮かべているドリアンだがドイルと同じ様に体から発せられる殺気が周囲を歪める。
「胸椎の秘孔、龍頷を突かせてもらった・・・今、君の体は痛覚神経の塊だ。」
ドリアンが北斗神拳の奥義にも示されている秘孔をジャギにレクチャーする。
全身から汗が噴き出すジャギ、弟のケンシロウに殺される前に使われた秘孔。
経絡秘孔の一つ、龍頷を突く北斗神拳奥義、醒鋭孔だ。
363 :
三十四話「握力×体重×スピード」:2006/04/26(水) 23:49:14 ID:24aen+4x0
あの時の恐怖が蘇る、ほんの少し触れられただけで体中に激痛が走る恐怖の秘孔。
いそいで醒鋭孔を解除する秘孔へと手を伸ばすが、自分の事に手一杯のジャギを、
見過ごす訳は無かった、眼前に迫るユダに気付いたジャギだったが、既に遅かった。
数ミリ程の間隔を開け、ユダの人差し指がジャギの額に止まる。
「俺が心から美しいと認めてしまった者、その前で俺は無力になる。
だが、俺は貴様の様な醜い下衆の前では無敵だ!南斗紅鶴拳奥義、南斗鷹爪破斬!」
超高速で下ろされた人差し指、その余りのスピードに衝撃は背中に突き抜ける。
触れられていない背中から、激しく血が噴き出す音がした。
「うぎゃあ!ひ、ひえ〜〜〜〜〜!」
怪我で完全な力は出せず、正面までも真っ二つとはいかなかった。
慌てふためきながら逃げるジャギ、だが既に取り囲まれ道は塞がっている。
優雅に散歩でもするようにジャギへと歩くシコルスキー。
「はああ!う、あああ・・・!」
錯乱して周囲をキョロキョロと見回し、後ずさる事しか出来ない。
そんなジャギを見てため息を漏らすシコルスキー。
「仲間をガソリンで皆殺しにしておいて自分のことばっかり・・・、
仲間のために戦うなんて気はさらさらない・・・。」
距離が縮んでいく、だが懲りずに悪あがきを続けるジャギ。
むき出しの痛覚神経に空気との摩擦によって激痛が走る。
「うわあああ、南斗邪狼撃ぃぃぃ!」
それでもスローな南斗聖拳で一撃必殺を狙う。
拳を引っ込め力を溜め込むシコルスキー、素人の様な構え。
ジャギの南斗聖拳がシコルスキーを切り裂いて行くが防御すらしない。
「まだ・・・アイツには届かねぇかな。」
体重と溜め続けた全ての力を拳へと注ぎ込む。
先程シコルが敗れた花山の全力の拳を真似た物だ。
握力×体重×スピード=破壊力、これがパンチの威力の単純な計算式。
だがシコルスキーはこれにアレンジを加え、それによって出る結果を変化させた。
364 :
三十四話「握力×体重×スピード」:2006/04/26(水) 23:50:25 ID:24aen+4x0
体重が完全に拳に乗った、踏み込みも完璧。
体重で及ばない点を踏み込みの速度で補うシコルスキー。
残る要素は握力、鍛え抜かれた指の力を今こそ見せる時、高速で拳が振り下ろされる。
防御しようと両腕を前に出すジャギ、醒鋭孔によって防御は意味を成さないというのに。
その場にいる誰もがそう思った、だが醒鋭孔が無くても結果は同じだっただろう。
唖然とするジャギ、驚愕する死刑囚一同、ゆるやかな清水の様な軌跡を描いたシコルの拳。
その美しい軌跡に見惚れながらもユダが冷静にシコルの起こした異常を分析する。
「型が違うが・・・南斗聖拳か?」
ボタリ、と地面に何かが落ちる音がした、目を開くジャギ。
防御の為に前方へ突き出していた両腕が・・・無い。
両腕から鮮血が噴き出す、まるで水を出したホースの先端を握った時の様に、
圧縮された血が一気に外へと飛び出して行く、更にもう一つの出血箇所。
手を失った今のジャギには鏡が無い限りは確認出来ない場所から血が噴出している。
「握力×体重×スピード=切れ味・・・・ってのはダメかな?」
握られた拳から飛び出す中指、闘争の最中に閃いたシコルスキー最大の切り札であった。
普段の自分の得意技を、別の技へと取り込み昇華させたシコルスキー。
倒れこむジャギ、意識があるのか無いのかは分からないが、もう戦える体では無いのは確かだ。
その場に倒れこむシコルスキー、心配して駆けつける死刑囚達とユダ。
とても安らかで、どこまでも晴れやかな、最高の笑顔で救世主が一時の安息へと赴いた。
「これはこれは・・・まるで子供の様じゃないか。」
ドリアンのその一言で場の空気が緩み、肩の力が抜けてしまう一同。
ジャギが炎で焦がした石床が、冷めてとても気持ちいいベッドとなった。
全員その場に転がり込み、まるで年端もいかない赤子の様に寝てしまった。
泥のように地面に一体化する英雄達の中、シコルが寝返りをうちながら寝言を呟く。
「自分だって・・・ガキみたいじゃねぇか・・・よ・・。」
ドリアンの言葉は寝ているシコルスキーの耳にもしっかりと届いていた。
死体の山のすぐ側で、眠りに落ちた勇者達、
傷だらけの無様な姿だが彼等こそが本物の勇者だと断言出来るであろう。
だが、勇者に敗れた愚者の死体は灰となって所持者の下へと戻るのだった。
365 :
三十四話「握力×体重×スピード」:2006/04/26(水) 23:52:54 ID:24aen+4x0
鋭い双角が目の前に迫る、本当にこの生き物は竜なのだろうか?
本に残る竜の資料はいずれも「鈍重だが力は強い」と言う物ばかりだった。
しかしこの動きのどこが鈍重なのか、大地を力強く蹴り上げこちらへ向かっている。
巨体を支えている2本の足は確かに強靭な外見をしている、術を詠唱する時間も無い。
これだけの巨体を支えているという事は生半可な武器では通用しないだろう。
壁を背にその場に佇むリアラ、柳達に襲われた時・・・いや、それ以上の絶望が襲い掛かる。
「ヴォルテックヒート!」
広範囲へ攻撃力よろ上昇力を重視した小型の竜巻を発生させる。
敵を浮かし隙を作る風の晶術、ロニは風晶術は習得していない。
声の主はリアラの信じた、そして同時にリアラを信じた男、カイル・デュナミスの物だった。
さすがに砂漠の支配者を巻き上げる程の暴風は起こせなかったが、
それでもリアラに向けられていた角が浮き上がりそのまま壁へと突き刺さる。
「リアラ下がって!」
突撃するカイル、強靭な足と無敵の装甲の両立など出来ない筈。
鋭すぎる自分の角を、壁から抜く事に必死なディアブロスを観察する。
見るからに硬そうな外殻に身を包んでいるが翼には飛ぶために柔軟な翼膜が。
そして甲殻は腹部までは及んでいない、尻尾も全部が甲殻で包まれてる訳では無い。
ハンターが数多くの犠牲者の下に見つけ出した無敵の悪魔ディアブロスの弱点を、
誰に聞いた訳でもなく初見で見抜いたカイル、狩りを生業とする者が聞い時、
きっと彼等はカイルを英雄と称えたに違いない、本人も気付かぬ素質が芽生え始めていた。
「ロニ!足の膝から下には甲殻が無いからそこを!」
的確な指示をロニへ伝える、この間までは不甲斐無いカイルをロニが補う、
そんな図式を覆して自ら先導するカイル、その雄雄しい姿はまさしく「英雄」だった。
更に続けてリアラにも指示を出す、聞こえる様に大声でハッキリと、それでいて冷静に。
「リアラは別の属性を試して!何も効かなくても諦めるな!」
見たことの無いカイルの新たな一面、もしかしたら本当に英雄に・・・。
だが今はカイルの成長を喜ぶ時では無い、カイルの風も浮き上がる程度。
砂漠をテリトリーとしている者へ地属性は通用しないであろう。
ならばリアラの使える火、風、地、水の術で残るのは一つ。
「スプラッシュ!」
砂色の悪魔の殻に水が染み込んでいくのが見える。
そこに、一筋の希望の光が見えた。
366 :
邪神?:2006/04/26(水) 23:53:43 ID:24aen+4x0
コントローラー片手にモンハンしながら頑張ってます。邪神です。
オンラインだとキーボードも引っこ抜くので何も出来ませんが、
最近はオフなので結構サクサクとモンハンもSSも進んでいきます。
ロード時間が長い所が幾つかあるのでそこを利用してやってます。
はい、誰も興味がありませんのでお話はここまででござる。
〜講座だったり質問だったり〜
314氏 ジャギ様の目からは誰も逃れられません、道を通りかかる一般人の耳の形まで識別出来ますw
316氏 そうですね・・・確かに容量の無駄使いな感じがしますが、
間違った情報を流してしまったので一応訂正を入れておきました。
今後はミス自体をなくす様に心掛けねば・・・。
323氏 死刑囚やジャギはともかく、アミバ様は本物の天才。
ただちょっと電波なだけで・・・・。
324氏 おお、ロマンシングガイルwこれの作者のフラッシュは大好きです。マイケルとかw
下のは・・・・妹英雄?wwwww思えば昔は電波少女、千影タソ萌えだったな・・・・哀れ俺。
ふら〜り氏 <ボロボロのみんなが立ち上がり、力を合わせて・・・
地べたでお寝んねです、ドリアンで子供の様な顔、となればやはりキャンディフェイスでしょうなw
全力全開氏 な、ぬぁんだとぉ〜!ARIAはたまにやってるアニメを見るけど分かんないから仕方がないのさ。
罰ゲームで南斗人間砲弾やるから許して・・・。
サマサ氏 見破られたwゴエモンで一番好きな作品がアレという変わった趣味の俺、人間として終わってるな。
後、しこるタンは神に匹敵する化け物の力を借りただけで神の加護では無いのです。
四天王は神に匹敵するっていっても最強クラスの雑魚敵に遥かに劣る駄目モンスターです。
まさにロマサガ界の死刑囚w
邪神さんハイペースの更新乙。
>まさにロマサガ界の死刑囚w
的確な表現だけに非道ェwwあと四天王はスーファミ版でも微妙な強さだった。
まぁ、あのゲームの場合、鍛えたパーティーの前ではデスですら雑魚な訳だけど。
368 :
作者の都合により名無しです:2006/04/27(木) 12:21:05 ID:EDBqVLKP0
>サマサさん
USDマンにアザミですか。いきなり戦力が底上げされましたね。
相手も強くなるんでしょうけど、まだまだ隠し玉はいるのかな?
特に敵の方に。確か以前、まだクライマックスは先と仰ってたし
>邪神さん
ほぼ毎日、驚異のハイペースですね。お疲れ様です、本当に。
意外と死刑囚がナイスコンビネーションでいいですね。
テイルズチームも頑張ってるけどゲーム知らないんだよねw
scene47 伊藤開司【十五】
ブツッ、と籠ったような重低音と同時に、ホールにしわがれた男の声が響き渡った。
「優勝おめでとう……伊藤、カイジくん……!」
それはカイジにとって、忘れようとしても忘れられない忌まわしい声。
帝愛グループ会長、兵藤和尊の声だった。
カイジは、疲労しきった身体に鞭打って起き上がる。
「ゲームは決着したが、まだ、時間が丸一日余り残ってしまっておる……
時は金なりと言う諺もある……このままだらだらと時間を浪費するのも、面白くあるまい?」
面白いとか、面白くないとか、そんな問題ではないだろう……
カイジは心中で悪態をつきつつも、反論を返す気力も湧かなかった。
「そこで、追加ルールを加えることにした……
終了時刻までに、カイジくんの命を奪った者には
改めて、賞金を獲得する権利を与えよう……!」
その一言で、ホールの空気が凍りつく。
「つまり、現在カイジくんが保有しておる賞金獲得の権利が
そっくりそのまま殺害者へと移動する……そういう寸法……!
これでカイジくんは、最後の最後まで気が抜けぬ……ククク!
どうだ……? なかなかに、面白かろう?」
「な……! 馬鹿を言うなよっ……!
犯人は捕まった……! もうこの中にはいないんだ……
人を殺してまで、賞金を奪ってやろうなんて、そんな奴――」
言い終わる前に、カイジの首が後ろから掴まれた。そのまま、床に押し倒される。
カイジは顔を床に押し付けられたまま首を捻り、後方を確認する。……玉崎だった。
「おとなしくするっすよ……?」
唇を三日月のように歪め、玉崎は笑う。
「おいっ……! 冗談はやめろよっ……離せ……!」
親に玩具を強請る幼児のように、手足をばたつかせる。
気付けば、カイジは残る参加者全員に取り囲まれていた。
「いやいや、賞金首を離す訳には行きませんよね」
頭上から声が落ちてくる。黒川が、虫けらを見下ろすような目でカイジを見ていた。
「くすくす……死刑執行を目前に控えて、今の心境は如何ですか?」
言いながら、双葉がカイジの頭を撫でる。
その手が離れると同時に、頭皮に冷たい金属の感触。
小此木の握るトカレフの銃口が、カイジの頭に押し当てられていた。
「何だ、それっ……!? さっき、窓の外に投げ捨てたはず……!」
「バーカ。まだ何があるかわかんねぇって言うのに、そんな短慮な真似するかよ。
俺が投げたのは、空になったマガジンだけ……投げる直前に摩り替えたの、気付かなかった?」
小此木がそう言うと、探偵たちは揃って肩を震わせ、押し殺した声で笑う。
「くそ……! こんなの……こんなのありかっ……!」
カイジがそう吐き捨てると同時に、笑い声はぴたりと止まった。
「往生際が悪いっすねえ。まったく」
玉崎が。
「大丈夫。苦しんでいる暇も無く絶命しますから、ね?」
黒川が。
「はい。注射と同じで、痛いのは一瞬だけですよ」
双葉が。
「ま、そう言うことなんで……おとなしく、死んでくれ」
小此木が。
四人が順番に、言葉を紡いでいく。それは、予め決められていた台詞のようだった。
感情の籠らない声で、カイジに死が宣告される。
直後――破裂音が、ホールに響いた。
* * * * * *
「うわっ……!」
がばっと勢いよくシーツを跳ね飛ばし、カイジはベッドから上半身を起こした。
漠然とした恐怖感が心を蝕む。心臓は早鐘のように鳴り響いていた。
(ここは、どこだ?)
記憶喪失患者の常套句のような言葉が頭を過ぎった。
首をぐるりと回しながら、周囲に目を向ける。
(四号室……か)
全室同じ内装ではあるが、小物の配置と窓から見える中庭の景色でわかった。
どのくらいの間、気を失っていたのだろうか? 三十分? 一時間? それとも――
寝起き特有の緩慢な動作で腕を上げ、腕時計を確認する。時刻は、二時四十五分。
最後に時間を確認したのは、告発の直前だった。
告発と、その後の大立ち回りに要した時間を除外して考えたとしても、一時間近くは眠っていた計算になる。
見れば、左肩には赤く染まった包帯が巻かれていた。
カイジは銃弾を受けた肩口からの急激な出血が元で、貧血を起こして倒れたらしい。
それを見た誰かが、四号室までカイジを運び、止血と応急処置を施してくれたのだろう。
一通り、状況を把握して。先程ホールで四人に『殺された』のは、夢だったのだと確信する。
無意識に、カイジの口から安堵の溜め息が漏れた。
と、その時。バタンと大きな音を立てて、唐突にドアが開かれた。
思わず、緊張に身体を強張らせてしまう。
姿を見せたのは、黒川だった。
滑り込むようにして部屋に入り、乱暴にドアを閉める。
続いて、カチャリという金属音。おそらくは、後手で鍵を閉めたのだろう。
顔色は青く、身体全体が、痙攣するように激しく震えていた。
一目見ただけで、異常事態を察する。
「な……何かあったのか……!?」
鬼気迫る形相。どう見ても、吉報を届けに来たとは思えない。
黒川は、いつ倒れてもおかしくないような足取りで、カイジがいるベッドに近付く。
カイジの頭の中では、最悪の予想が渦を巻いていた。
(まさか……犯人が、只野文男が、逃げたのか……!? そしてまた、誰かを……)
今の状況から連想される『最悪』はそれ以外に思い当たらなかった。
だが、黒川が発した言葉は、色々な意味で、カイジの予想を遥かに超越していた。
「人間じゃ、ない……人間じゃ……」
(何……? 今、何て言った……!?)
あまりにも意味不明な内容に、直ぐには言葉を返す事ができない。
発言の真意を理解できずに、ぽかんと口を開けていると、黒川がカイジの袖口を掴んだ。
「人間……じゃ……ない……」
うわ言のように、そう繰り返す。瞳は闇色に染まり、焦点が合っていなかった。
人間じゃない? どういうことだ?
空白の一時間に何があった? 黒川は、一体何を見た?
大量のクエスチョンマークが、浮かんでは消える。
聞きたいことは山ほどあった。が、先ずは黒川に冷静さを取り戻してもらわなければどうしようもない。
「落ち着いてくれ……! 何があったんだ? 順を追って説明してくれないと、わからないだろう……!」
正気を失いかけている黒川の肩を掴んで、大きく揺さぶる。
「助けて……たす……け……」
それが、黒川の最期の言葉になった。
ずるずると、ベッドにもたれかかるようにして崩れ落ちる。
「ちょっ、おい! どうしたって言うんだ……!」
ベッドから降りて、黒川の身体を抱き起こそうとして……気付いた。
その、呼吸も……鼓動も……止まってしまっていることに。
「嘘だろ……? 死ん、だ……!?」
死因は何だ……? 心臓麻痺……? それとも、別の何か……?
わからないことが多過ぎて、こちらまで狂ってしまいそうになる。
その場で喚き散らしたくなる衝動を理性で捻じ伏せて、カイジは立ち上がった。
黒川の遺体を、カイジが今まで寝ていたベッドに寝かせてやる。
今何が起こっているのか、残る三人の探偵は無事なのか、確かめなければならない。
ドアの前に立つ。手を伸ばし、ドアノブを握り締めて、暫しカイジは逡巡する。
黒川は、突然四号室に飛び込んできて。それからすぐに、ドアに鍵をかけていた。
黒川の怯える『誰か』或いは、誰かですらない『何か』がドアの向こうにいるのかもしれない。
そんな恐れが、ドアノブを回すのを躊躇わせたのだった。
それでも、ドアを開けない訳にはいかなかった。
このままじっとしているのも、賢明な判断とは思えない。
部屋に鍵を掛けて閉じこもったくらいでは、身の安全は確保出来ないのだから。
与えられた各個室には例外なく、中庭に面している窓が存在する。
その気になれば、窓を割って侵入する事など容易いだろう。
(攻撃は最大の防御、だよな……)
カイジは、極力音を立てないように鍵を開け、そうっとドアを開いた。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>320です。
予想の斜め上行く展開であれば、嬉しい限り。
375 :
作者の都合により名無しです:2006/04/27(木) 19:27:11 ID:RaIDjJ8x0
おお!今回は神回ですな。
突然の会長の降臨、そして人間の醜さが具現化したと思ったら夢オチw
しかし、その悪夢すら可愛く思えるような急展開…。こりゃ凄いわ。
とにかく、もう終わりだと思ってたから嬉しい不意打ちですね。
俺ももう終わりかと思ってたので嬉しい。
前半の複雑さに比べ、解決はややあっさりだなと思ってたので
嬉しい不意打ちってやつだ。更に不気味さが増してますね。
見てた人さん、まだまだ楽しませて下さい。
かまいたちはやったこと無いのでそっち側の伏線はさっぱりだけど、
本編中で何度か出てきた双葉の不審な描写について何も語られて
いなかったので気にはなっていたのですがいよいよ・・・?
それにしても黒川まで死ぬとは・・・合掌。
今回、急に仲間?だと思っていた奴らが襲い掛かってくるのは
確かゲーム版かまいたちにもあったような?
やったのスーファミ版だけなんで詳しくは覚えていないけど。
なんにしても見てた人氏GJです。二段構えの展開とは騙されましたw
第14話 スキルとアート
一台のジープが荒野を走っていた。人っ子一人いない地域を砂煙を上げながら走行している。
車には相良宗介とクルツ・ウィーバー、そして新たに合流した黒人が乗っていた。
彼の名はベルファガン=クルーゾー。宗介達の上司にあたる人物である。
「して犯人側からの要求は?」
クルーゾーが事務的な口調で宗介に質問した。
「今の所何もありません。逃走してからあまり時間は経っていませんし恐らく
何らかの作戦を練っていると思われます。」
宗介は思った。自分が知る限りウバメガ氏がミスリルに護衛を依頼した事は無い。
念の為この任務に付く前に過去の記録等を漁ってみたがウバメガ氏のウの字すら
出てこなかった。今回同時期に敵がオーク氏の屋敷とウバメガ氏の屋敷を襲撃した。
「クルーゾー中尉、中尉は“マルス”という組織について何か知っていますか?」
「知らんな。恐らく小規模の組織なのではないか?ゲリラか何かの。アマルガムとの繋がりがある
組織なら我々は大体は把握している。メンバー一人ひとりの顔と名前もな。だが今回は違う。」
「あのう・・・・俺は接近戦は無理だから外にいる護衛やら何やらをスナイプするぜ。」
クルツが割り込んだ。彼の専門分野はスナイプである。ニタァと笑う優しそうなマスクの裏に
何十人もの人間を続けて狙撃できる冷酷な顔を持つ男、それがクルツ=ウィーバーである。
「助かる。正面突破はリスクが高いからな。」
宗介達を乗せたジープが敵の本拠地へ着くまで後少しであった。
ウバメガ氏の屋敷から数百キロメートル程離れた地にてーーー
おんぼろの小屋だった。木造であり所々に破損箇所がある。ガラスは何枚か割れており
釘と木材で補強した跡がある。まるで西部劇に出てくるような小屋であった。
「とりあえずあいつらの追っ手を吹っ切って隠れる事は出来たな。」
サングラスをかけた中年太りの男が呟いた。椅子に腰掛け、右手でコーヒーカップを持っている。
「このおっさん・・・ウバメガっていう名前だっけか?こいつを人質にして身代金を貰うっワケか。ベタだな。」
中年太りに痩せた男が話しかけた。頬に傷跡があり狡猾そうな顔をしている。
「それだけじゃねぇ・・・・身代金を受け取った後コイツを奴等の目の前で撃ち殺す。」
醜悪な顔にニタリと笑みを浮かべながら中年が銃を確認した。弾は10発。弾詰まりが起こらないように
掃除を始めた。
「もう一人の・・・・オークって奴だっけか。あいつも富豪だからたんまりカネが入りそうだったがな。
クラマの奴がヘマをしたらしいな。結局人質は一人だけか。」
二人が話していると扉を叩く音が聞こえた。彼らの仲間が何かを話に来たらしい。
「あいよ・・・合言葉は?」
「%$&@=」
外国語らしき言葉が扉の向こうから返ってきた。どうやら彼らの間でしか通用しない言葉らしい。
「よし入れ。」
細身の男が扉を開けた。扉の向こうには上半身裸に下は空手着を来た男が立っていた。
「トビマル=アオイ、どうした。何か見つけたのか?」
「何も。唯お前達に聞きたい事がある。なぜ普通にやろうとしない?」
「どういう意味だ?」
「人質やら何やら取らなくてもいいだろう。“ミスリル”だったか。あいつらに恨みがあるのなら
あいつらの兵隊を倒せばいいだろう。」
「何が言いたい?」
「意外と臆病だな。」
「てめぇ、嘗めんなッ!」
中年太りの男が逆上して拳銃を飛丸に向ける。
「へぇ・・・」
飛丸は何気ない顔をして近くにいた細面の男を羽交い絞めにした。
「人質はアレだと言っておきながらそれか・・・実に汚い。」
「コイツは人質じゃない。唯の盾さ。」
「誰か来てくれーー!裏切り者がいるぞ!」
中年太りの男は叫んだ。そして一発窓に向けて銃を撃つ。これで仲間は気付くはずである。
中年太りの男は数秒待った。しかし誰も来ない。おかしい。さっきからやけに静かだと思っていた。
「気付いたかい?」
「お前まさか・・・仲間を・・・・。」
「ああ。ちょっと因縁付けて来た奴がいたからボコったんだ。そしたら新手が来てさぁ・・・まぁいい準備運動だったけどね。」
中年太りの男がわなわなと震えていた。硬くグリップを握り締め綿密に狙いを付ける。相手は素手の専門家である。銃が当たれば勝てる。
だがその前に当てられるのだろうか。素早く動かれたらどうしようもない。
「お前さっき俺を臆病と言ったよな?俺は違うぜ。」
「どう違うんだ?」
「こういう事だよ。」
中年太りは銃を外に投げ捨てた。上着を脱ぎシャツにズボンという姿になる。
「少しはやってるのかい。」
飛丸が言葉と同時に構えた。口元にはニヒルな笑みが浮かんでいる。
「おらぁッ!」
中年太りが飛び蹴りを放った。太った体にもかかわらず身軽な動きである。
飛丸はそれを避けずに先程から羽交い絞めにしている男の体でガードした。
「ゴフォッ。」
ボキリという音がして細身の男が血を吐いた。そしてガクリとうなだれる。
「あらあら、仲間なのに。」
「うるせぇっ!」
中年太りの男が飛丸の後に回り込もうとする。それに対して飛丸も動く。
不意に飛丸が細身の男の体を中年太りに向かって投げつけた。
今度は飛丸が飛び蹴りを放つ番だった。中年男がひるむのと飛丸の蹴りが
男の顔に当たるのは同時だった。
「うう・・・。」
尻餅をついて男は呻いた。軽い脳震盪を起したらしく眼の焦点が定まっていない。彼の視界はドロドロだろう。
「やってたんじゃないのか。あんたのそれはスキルであってアートじゃなかったようだ。唯の力任せに過ぎなかったようだな。」
飛丸は嘲りの笑みを浮かべると中年男の顔を素早く蹴った。
「ガフッ。」
そして中年男は動かなくなった。どうやら気絶したらしい。
飛丸は伸びをした。ふあぁとあくびをする。飛丸は思った。
何かが・・・何かが足りない。あのガキとやりあった時は不思議な高揚感を覚えた。だが今回はそういうのが全く無かった。
(張り合いないな。あのガキと闘った時の方がマシだった。)
「おい!変な着ぐるみ着た奴がここに来なかったか!?」
小屋のドアが開き兵隊が中に入って来た。どうやら飛丸が反乱を起した事にまだ気付いていないらしい。
「見て無いな。どんな奴だ?」
「まるでアメリカのコミックスに出てくるヒーローみたいな格好なんだよ。角ばっててゴツイ感じのな。ところでこいつらは・・・。」
「ソイツにやられたんじゃないのか?俺もさっきの銃声を聞いてここに来たんだ。」
「そうか・・。まぁ気をつけてくれ。俺はしばらく探してみる。まだそう遠くへは言って無いはずだ。」
兵隊は小屋から駆け出した。見る見る内にその姿が小さくなっていく。
(着ぐるみ・・・?あの屋敷で見た奴か?でもアレはそんなにゴツくは無かったな。)
タン。タン。タタタ。
飛丸の思案を銃声が遮った。
「ッ!?」
小屋の入り口からそっと顔を出すと彼の視界に先程小屋から駆け出した兵隊が腕から血を流しながら駆け戻って来るのが映った。
「逃げろ!敵襲だ!うう・・・。」
兵隊は倒れた。死んではいない。だが彼をこのまま外に放置しておけば危険だ。
「俺は正義の味方って柄じゃないけどな。まぁこのぐらいしてもいいかな。」
飛丸は兵隊の体を小屋へと引き込んだ。ドアを閉め、しゃがむ。耳の神経を集中する。
銃を撃っている相手は一人。しかも一定の間隔を空けている。距離は遠い。よしいいだろう。
建物を壁にしてここから逃げてやる。
飛丸はゆっくりと小屋の扉を開けた。
「ウルズ1、あの小屋です!」
「うむ ウルズ7。突入するぞ!」
宗介達の敵は思ったより少なかった。というより宗介達が突入するから敵は地面に倒れていた。
偽装ではなく本当に気絶していた。誰がやったのかは知らない。仲間割れかも知れない。
先に偵察部隊からの情報で人質がいる場所の詳細情報はもう得ている。今はクルツが陽動役についてくれている。
宗介は小屋の前まで来るとドアを蹴飛ばした。古い木材で作られたドアはいとも簡単に蹴破られた。内部からの射撃を
避ける為数秒間宗介は背を壁に預けた。
「行け。」
「ラジャー。」
宗介は前転しながら突入した。素早く周囲を確認する。敵は立っていなかった。現実に言えば敵はいたのだが
ここでも相手は気絶していたのだ。
「こちらウルズ6 敵の掃討に完了。外したかな?」
「こちらウルズ7、いや正解だ。ウバメガ氏はここにいる。」
ウバメガ氏の縄と猿轡を解くと宗介は気絶している中年を叩き起こした。
「ウッ・・。」
「答えろ!お前達の目的は何だ!?」
「へへ・・俺達は皆“ミスリル”という組織に恨みを抱いている連中さ。仕事として“傭兵”をしていたらお前達にやられて飯が食いにくくなった。
おまけに国を変えたりしても何度もお前達にやられちまった・・・。」
「それで?」
「俺達は何としてもお前達の自慢の鼻をへし折ってやりたかった!その為にウバメガ氏という男を誘拐した。ミスリルは人質救出については
定評があるからな。下手な警察よりも強いからな。」
「ウバメガ氏の娘を誘拐するという声明を公表したのもお前達か!?」
「ああそうさ。お前達の事だから乗ってくると思ってね。案の定陽動のオーク屋敷襲撃に引っかかってくれたな。これでウバメガをお前達の
目の前で撃てば完璧だったんだが・・・。」
「ミスリルに対する世間の信用を失わせる事が目的だったのか。」
「ケッ・・・それももう終わりだがな。」
「こちらウルズ7、びんちょうタン 応答せよ。作戦は成功した。」
宗介は無線で遠くにいる誰かと交信を始めた。傍らにいるクルーゾー中尉には宗介と誰が交信しているかわからない。
「こちら・・びんちょうタン・・・ありがとうございます・・。」
「これより帰還する。待っていてくれ。」
この日、オーク屋敷襲撃事件及びウバメガ氏誘拐事件は完全に幕を閉じた。
だが宗介はこの事件の裏にもっと黒い何かが絡んでいる可能性を拭いきれる事が出来なかった。
今回はセリフが多すぎました。すいません。状況描写の腕がまだまだのようです。
次の回は危険な賭けをしてみたいと思います。非常にわかりにくい手法だと思うのですが
昔読んだ和訳された小説(タイトルはY2K)で使われていたので・・・。このSSのイメージが少しでも
皆様に伝わればいいと思っています。
長文失礼しました。ではでは。
フルメタさんお疲れ様です。
葵飛丸もこれから大活躍しそうで嬉しい。
なんせ、原作は完全にストップしてるからw
意外と敵組織は大きいみたいですね。
次回の危険な賭け、期待して待っております。
こ
387 :
作者の都合により名無しです:2006/04/28(金) 23:26:53 ID:fdMqcjfv0
びんちゃんは結局、マスコットキャラではなく
重要キャラとしてレギュラー化するのか。
好きなキャラだけど、餓狼伝の筋肉モリモリキャラの中に
備長炭を頭にのっけた女の子がいるのを想像すると笑えるw
388 :
ふら〜り:2006/04/29(土) 00:06:46 ID:quw3clBp0
>>一真さん
どうなるかと思ってましたが、見事にハッピーエンドでしたっっ! 全蔵と銀時、二人とも
男、いや漢! 特に全蔵、マガジンは憎めど漫画は憎まずって姿勢が潔く美しい。編集部は
ギャグで、二人の関係はふんわりで纏めたEDも後味美味。二部での二人、待ってますよ!
>>全力全開さん
>こんなことは何十回も経験してます。多少なりとも腕に覚えはあります
サマサさんやうみにんさんのSSでも思いましたが、本っっ当にドラチームは歴戦の勇士
ですからねぇ。魔法も科学も全部通過済みだッ。にしても、これだけ華やかに女の子たち
が大勢いると……苦戦が予想されます静香ちゃん。考えてみれば、特に属性もないしなぁ。
>>サマサさん
><確かにな。正直、もう一度やって勝てるかと聞かれれば―――即答はできない>
>「全くですよ・・・これが今は味方と言うんだから、頼もしい限りですね」
少年漫画の王道中の王道! 人気ある敵キャラにのみ許される復活劇、寝返り、大活躍っ!
みんなが待ってたUSDマン、強さはともかく爽やかさが予想以上でした。対称的なアザミ
ともども……って次はどうやら、せっかくの大幅UPした戦闘力が役に立たなさそな気配?
>>邪神? さん
おお、死刑囚チーム圧勝でしたな。ジャギが可哀想に見えるほど。シメがシコルだったの
は、前回のことも含めて今後のキーマンってことなんですかね? テイルズチームは反対に
苦戦してますが、一応逆転の気配が見えるヒキ。あるいはそろそろ、颯爽と「彼」が来る?
>>見てた人さん
部分だけ夢オチとは、また珍しい足払い。きっちり転倒させられました。ゲームオーバー
かと思いきや、一波乱きましたね。雰囲気から察するに、元祖かまいたちのように探偵編
が終わって次はオカルト編とか? とはいえ会長やジンたちも見てるはずだし……一体?
>>ウルフズさん
中年太り氏と仲間たち、ミスリルにケンカ売るにしては貧弱でしたね。それとも飛丸が
強すぎるのか。マルスがアマルガムに比するぐらいの規模や戦力を備えているか、構成員
の顔ぶれはどうか、まだまだ謎は多い。で次回は何やら一捻りありそうですね? 楽しみ。
389 :
作者の都合により名無しです:2006/04/29(土) 11:22:08 ID:Taal4oAl0
ウルフズさん乙。
敵の背後が大きな組織みたいですね。さすが全50話だ。
出来れば、主要キャラのまとめもしてくれると有難い。
知らないキャラ多いから…
現スレ物凄い勢いだな
GW中に次スレ行きそうだ
390 :
作者の都合により名無しです:2006/04/29(土) 11:37:11 ID:Dlve2gTo0
本編ですが、ゴルゴVSビスケ&男塾雑魚塾生以外の全人類の番外編をどなたか
お作りください。
痛がる『青』へ、『赤』が一度退くように促す。
「少し休んでいなさい。私一人で充分です」
「う、うむ」
加藤と『赤』が直線上に向かい合い、睨み合う。彼らに挟まれた空間が、燃え盛る炎の
ように揺らめく。
「へっ、ここにきてタイマンか」
「えぇ……あなたの戦力はもう見切りました」
「ふん、ちがうだろ? あまり三人で戦ってると、てめぇらの秘密がバレちまうのが怖く
なったんだろうが」
これに、『赤』がぴくりと眉をひそめる。すかさず、加藤が飛び出す。
「キャオラァッ!」
左ハイが、『赤』を捉えた。一般人ならば首を折られているであろう威力。が、『赤』
には微塵も伝わらない。
ほっ、と『赤』が一息つく。我らにダメージを与える方法を見破られたと思ったが、ど
うやら取り越し苦労だったらしい。我々には手技しか通用せぬというのに。こうした思案
を一瞬のうちに仕上げ、『赤』が貫き手に移る。
しかし、ハイキックは単なる布石に過ぎなかった。
ざくっ。
人差し指と中指。二本貫き手が、『赤』の喉にめり込んでいた。
「げふっ」
さらに、眼突きが『赤』を狙い撃つ。人差し指は外れたが、中指は入った。加藤は眼窩
に中指を引っ掛け、スナップをきかせて眼球をくり抜いた。
「ヒッ……ぐわあぁぁぁっ!」血に染まった左目蓋を手で覆い、『赤』が悲鳴を上げる。
「てめぇっ!」
激情を身に宿す『黄』が、黙っていられるはずもない。報復とばかりに眼突きを繰り出
す。が、それは正拳によって的確に防御された。
ぐしゃぐしゃに折れ曲がった二本の指に、呆然とする『黄』。
「下らねぇゲームはこれまでだ。てめぇらまとめてぶっ倒してやるッ!」
加藤が吼えた。
「やはり気づかれていましたか……」
潰れた左眼が痛々しい面相から、意外にも穏やかな声を出す『赤』。
「よくよくてめぇらの攻撃を振り返ったら、てめぇは開手、青いやつは拳、黄色いのは眼
突きしかしてなかった。んで、さっきのまぐれで確信した。これはジャンケンなんだって
な」
「さすがに、今日まで生き延びられてきただけありますね」
「あァ? タネが分かった以上、こっからは俺の時間だ」
「あなたも分かってないようですね。これまでの戦いは、あなたのおっしゃる通り“ゲー
ム”に過ぎなかったことを」
『赤』が右手を上げる。すると、『青』と『黄』が加藤を囲むように位置を取った。
加藤は三方に警戒を払いながら、思考をまとめる。これまで、彼らが手を抜いていたと
は考えにくい。せいぜいコンビネーションの精度が上がるくらいで、強敵に豹変すること
はまずないだろう。
『青』に対しては、開手。
『黄』に対しては、正拳。
『赤』に対しては、二本指。
この法則にさえ気を配れば、絶対に勝てる。
加藤が構えた。
「来いやァッ!」
『黄』から攻撃が始まる。先ほど右手を破壊されたので、左手から眼突きを放つ。
「ケッ、てめぇにゃこれだッ!」
突っ込んでくる『黄』に、カウンターを狙った正拳突き。
──が、拳の軌道に『青』が割り込んできた。
拳が『青』にぶつかる。むろん通用しない。加藤も分かっている。
「くそがっ!」慌しく、加藤が拳を手刀へと可変させる。すると、すでに『黄』と『青』
の位置は入れ替わっていた。手刀は『黄』には効かない。
しかも、この攻防の間に側面へと移動していた『赤』に痛烈な一撃を許してしまう。掌
底が、耳たぶを強打した。鼓膜を半壊され、さらには三半規管をも揺さぶられる。
「がっ……!」よろける加藤。
真正面からストレートパンチが入る。鼻血を撒き散らし、加藤がのけぞる。なおも『青』
によるラッシュは続く。がら空きになったボディへ、面白いように打撃が入る。
「なめんなァッ!」
貫き手を返すが、ひょいとかわされる。アウトボクシングもできるらしい。
そして、『青』が間合いを空けたかと思えば、『赤』が攻め込んできた。
「これが、我々の本来の戦い方ですよ」
『赤』が手の甲で弾くように、加藤の顔面を強打する。当てやすく、なおかつ効果的な
視力強奪法。
「弱点となる攻撃には近寄らず、仲間に任せます」
両貫き手が、左右から肋骨を刺した。加藤もうめきながら二本貫き手を出すが、『黄』
が体で邪魔をして『赤』には届かない。
『赤』が冷笑を投げかける。
「グーか、チョキか、パーか。どれを出すか、せいぜい悩みなさい。我々はそれに敗けぬ
手を出すだけです」
十四日目。
「あの……色の意味は?」
「特にありません」
次回は黄金明けくらいとなります。
396 :
作者の都合により名無しです:2006/04/29(土) 15:08:09 ID:lZJH7+qm0
サナダムシさんお疲れ様でした。
信号機トリオ、一人だと雑魚っぽいけど
三位一体の攻撃は試練に相応しいレベルですね。
3対1なら勝って当然だともおもいますがw
しかし井上さんは見てるだけかw
397 :
テンプレ1:2006/04/29(土) 15:33:35 ID:lZJH7+qm0
398 :
テンプレ2:2006/04/29(土) 15:34:20 ID:lZJH7+qm0
399 :
テンプレ3:2006/04/29(土) 15:35:01 ID:lZJH7+qm0
400 :
テンプラ屋:2006/04/29(土) 15:38:52 ID:lZJH7+qm0
今スレは特にハイペースでしたね。特に邪神さんとサマサさんの更新が凄い。
フルメタルウルブスが短編から長編へと移動。
シルバーソウルに関しては一応完結ですが、一真氏が二部の構想がある、と
仰っていたのでそのまま残しました。
パオ氏が2月19日からいらしてないのでテンプレから外れました。
まさかバキスレからパオ氏の名前が消える時が来るとは……。
至急連絡お待ちしてます。
今回、ちょっと急いでいたのでチェックが甘いかも?
多分大丈夫だとおもいますが、もし訂正がありましたらお願いします。
401 :
作者の都合により名無しです:2006/04/29(土) 18:11:41 ID:SJ1IZU5H0
テンプレの
>>1でも話題の本編ですが、ゴルゴVSビスケ&男塾雑魚塾生以外の全人類の番外編をどなたか
お作りください。
>サナダムシさん
赤青黄に対する対応はじゃんけんですか。
加藤、頭脳プレイ?も冴えてきましたね。
試練を乗り越えて、出来ればラスボスは
独歩か克己がいいなあ。
>テンプレ屋さん
乙です。しかし、パオさんは心配ですね。
>>401 意味わからん。
403 :
作者の都合により名無しです:2006/04/29(土) 20:58:22 ID:qrs88eHT0
バキ魔界編の番外編を読めばわかります。まとめサイトにありますよ。
本編のパオ氏すら最近来ないのにw
サナダさんお疲れ様です。今度はGW明けですか。
かつてのペースを知るものとしてはちょっと寂しいっすw
加藤、だんだんと空手が完成の域に達してますね。
三色トリオには、最後には勘?w
第七十一話「明かされる秘密・2」
ムウとキラは、不気味な廃墟へと辿り着いた。クルーゼはどうやらこの中へと入っていったらしい。足跡が入り口へと
続いている。ショックガンを構えたムウが先頭を歩き、キラが続く。
「ここは・・・何かの研究所だったのか・・・?」
そこかしこに散らばった壊れた試験管や、奇怪な骨が残るケージを気味悪げに眺めつつ、ムウが呟く。
「そんなところでしょうね」
キラは返事をしながら、奇妙な感覚に襲われていた。初めて見る場所のはず―――なのに、まるで―――
まるで、ずっと以前、ここにいたかのような―――
「僕は・・・ここを知ってる・・・」
「何だと?」
「あ、いえ・・・そんな気がしただけです」
「ふーん・・・しかし大丈夫か、キラ。顔色が悪いぞ」
「・・・・・・」
黙りこくるキラ。そんな彼を気遣い、ムウは無理して明るく笑った。
「そんなに気にすることじゃないだろ。ほら、デジャヴってやつだよ。初めて見るのに以前も見たような気がするっての。
そんなのをいちいち気に病んでたら、生きてけないぜ」
「はい・・・」
そうは言ったが、廃墟の中を進むたびにキラの中でそれは確信に変わっていく。
―――僕は―――この場所を知ってる―――
「ん?行き止まりか」
ムウが壁を前にして立ち止まるが、キラは首を振った。
「いや、これは・・・」
キラは壁に近づき、迷いもせずにそれを押した―――鈍い音とともに壁が開き、地下へ続く階段が現れた。壁ではなく、
壁に見せかけた隠し扉だったのだ。
「おいおい、キラ。よく分かったな」
感心するムウだったが、キラの表情は優れない。
「とにかく行ってみようぜ―――おい、キラ?」
「は、はい・・・」
しばし無言で長い階段を降りる―――と、ムウが顔を険しくして歩を止めた。
「―――クルーゼだ。この先にいる」
それを聞いてキラも口元を引き締めて、突然の事態に対処できるように用心しながら歩く。そして階段を降りきった先に、
広い部屋の中央に佇む仮面の男の姿があった。
「来たか、ムウ。そして―――キラ・ヤマト」
「クルーゼ―――!」
キラとムウは構えを取るが、クルーゼは飄々とした態度を崩さない。
「そういきり立つな。言っただろう?キラ・ヤマト。君の秘密を教えると―――」
「僕の秘密―――」
「キラ、惑わされるな!そんなのはハッタリだ!」
「ハッタリ?ふふ・・・どうかな?キラ・ヤマト。この研究所の中を歩いて、君は何も思い出さなかったのかな?」
「・・・っ!」
キラは絶句する。その様子を図星と見て取って、クルーゼは自分の背後を指し示す。
そこにあったのは、巨大なカプセル。人間が一人、すっぽり入ってしまいそうな代物だった。
「なんだ、そりゃ。そんなもんが何だってんだ?」
ムウは訳が分からず首を捻る。だがキラの様子を見て、顔色を変えた。
「おい、キラ!どうした!?しっかりしろ!」
ムウが心配するのも無理はない。キラの全身は汗にまみれ、顔色はペンキで塗ったかのように白い。
「そんな・・・あれは―――あれは!」
「思い出したかな、キラ・ヤマト―――あれが、君の生まれた場所だ」
からかうようなクルーゼの声も届かない。頭が痛い。割れそうだ。
「あ・・・ああ・・・」
キラの脳裏にまたしても蘇る光景。
カプセルの中の胎児。
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎たいじ児胎児胎児胎児胎児胎児たいじたいじたいじ胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児たいじ
たいじ胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児たいじたいじ胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児!
人工の命。
命命いのち命命命命命命命いのちイノチいのち命命命命命命命命命命命命いのち命命命命命命イノチ命命命命命命命命命命命
いのち命命命命命命命命いのち命命命命命命イノチ命命命命命いのち命命命命命!!
無機質な部屋。
部屋部屋部屋へやヘヤへや部屋部屋部屋部屋部屋部屋部へやヘヤヘヤへやへやへや屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋
部屋へや部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋へやへやヘヤへやヘヤへやへや部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋!!!
無表情の研究者。
研究者研究者けんきゅうしゃケンキュウシャ研究者研究者研究者ケンキュウシャ研究者研究者研究者研究者けんきゅうしゃ研究者
研究者研究者ケンキュウシャ研究者研究者研究者けんきゅうしゃ研究者研究者研究者研究者!!!!
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
胎児胎児胎児胎児胎児胎児胎児命命命命命命命屋部屋部屋部屋部屋部屋部屋部研究者研究者研究者研究者研究者研究者研究者
たいじいのちへやけんきゅうしゃ!!!!!
「うわああああああああーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!」
キラは絶叫し、頭を抱えて蹲る。もはや全てを思い出した。
自分のルーツを。自分の正体を。自分が何者だったのかを。
「僕は・・・僕は・・・!」
「キラ・ヤマト―――君は人間ではない・・・」
冷たい声が、非情な事実を告げる。
「君は人類最強を目指して造られた存在にして・・・その失敗作・・・」
クルーゼは大仰に手を広げ、宣告する。
「人工生命体―――<コーディネイター>―――!」
投下完了。前回は
>>359より。
今明かされるキラの過去と秘密。次回へ。
>>361 最後の最後で敵もとんでもないことになります。それを考えると今でもまだインフレし足りないくらいです。
>>邪神?さん
活躍するシコルスキーに違和感wそして苦戦するテイルズチームにも光明が。次回の逆転劇を楽しみにしています。
ゴエモンは僕は64が好きです。あのEDの報われなさが・・・
しかし四天王とか大層な肩書きなのに終盤の雑魚より弱いって、大概のRPGでお約束ですよね。
同じ四天王とかでも、最初の奴と最後の奴ではもはや別物なくらいに強さが違ったりw
>>368 まあ、何でしょう。グランゾンの力を持ってすればこのインフレをひっくり返すことも造作もないわけで・・・
>>ふら〜りさん
やっぱり使い古しの展開と分かってても、強敵が味方にってシチュエーションはいいですよね。
それをきっちり作中で書ければいいんですが・・・
種知らないですけど、キラってこういうキャラなんですかw
暗い過去なんだろうけど狂ってしまったみたいで笑ってしまうw
でもまだインフレしたりないんですか。ラスボスはなんだろう?
俺でも知ってるキャラだといいな…
俺もシード知らないけど、ヤマトは研究室で生まれたのかぁ
これはサマサ氏の設定でなくてアニメオリジナル設定ですよね?
ありがちといえばありがちだけど、王道ですな
ドラえもんも研究室で生まれたんだろうし
それを言ったらプリムラも同じですよね。キラにはぜひそのことを教えてやらねば
それに、のび太は人工的に生み出したペガ、ドラコ、グリを本当に大切に思ってることも
ただ原作だと本人にほとんど葛藤が無かったり、周囲の人間は許容どころか完全にスルーしていたり、
さらに外伝のアストレイや、続編の種死ではそれよりも遥かに悲惨な境遇の者が多かったせいで、視聴者には全然苦悩が伝わらなくて台無しだったけどね
使い方によっては美味しい設定だったのに非常に勿体ないと思った
PC kowareta.
NIPPONGO utenai.
Osokunaru.
Gomen
第15話 音楽を君に
ゲリラによるオーク屋敷襲撃事件が解決して数日後鞍馬とびんとクルツはオーク邸に
訪れた。クヌギが父オークに頼んで鞍馬達を招待したのだ。居間は広く
中心にピアノが置いてあった。久しぶりの再会を喜びびんに
抱きつくクヌギを見た後、鞍馬は持って来たギターを手に取った。
「会いたかったわ。私あなたと一緒にいた時の事を忘れられないの。」
「私も・・楽しかった・・」
友情を確かめ合うように会話するクヌギとびんの横でクルツは楽譜を
取り出した。どうやらこれからデュエットをするらしい。
「こういう形で俺の音楽家としての腕を見せられるとはね。」
「アンタがいなきゃこのライブは実現しなかったんだぜ。」
クルツと鞍馬がニヤリと笑いながら準備をする。二人はピアノの脇に
スタンバイしている。
「びんちょうタン。私あなたに聞いてもらいたい曲があるの。」
クヌギはいそいそとピアノに走りより椅子に座った。
「ボーカル鞍馬彦一、ベース クルツ=ウィーバー、ピアノ クヌギたん、“ボクノート”唄います」
♪耳を澄ますと微かに聞こえる雨の音 思いを綴ろうとここに座って言葉探している。
東京都内 陣代高校。 生徒達はいつも通り登校している。生徒達が全員教室に入り
いつもの授業が始まる。どこにでもある日常的な光景。
千鳥かなめが後ろの席に座って早弁を始めた。
友人が目で促すも気にせずに飯を食い続ける。
その隣では相良宗介がカロリーメイトを食っている。宗介とかなめの目が合った。
フフッと含み笑いをするかなめと少し顔を赤らめる宗介を小野寺はジトーッと見ていた。
♪考えてつまづいて消したら元通り 12時間経って並べたもんは紙クズだった
某国・・某市街地にて。そこには白いペンキで塗り固められたビルがあった。壁面に大きく
“ハンプレスト”と書いてある。今、通路を一人の男がファイルを持って歩いていた。
男はある部屋の前まで行くとインターホンらしきものを押した。ドアがプシュッと空気音を立てて開く。
部屋の中にいた上司に敬礼をした後男はレポートを提出した。
上司はレポートをチラ見した後懐から小さな箱を取り出し、男に渡した。
男が箱を開けると中には勲章が入っていた。
♪君に伝えたくて 巧くは行かなくて 募り積もる感情は膨れてゆくだけ 吐き出す事も出来ずに
奈良県 ○○市。泉宗一郎の家で泉冴子と久保涼二は向かい合っていた。泉冴子は和服、
久保涼二はジャケットにジーンズを着ている。二人はお茶を飲み、食事をしていた。
ちゃぶ台の上には何個かの茶碗等がある。久保涼二が手を伸ばした際偶然にも泉冴子の手に涼二の手が触れた。
顔を赤らめる冴子に対して悪かったとでも言うかのように涼二は軽く頭を下げた。
♪今僕の中にある言葉のカケラ 喉の奥 鋭く光って突き刺さる キレイじゃなくったって 少しずつでいいんだ
この痛みをただカタチにするんだ
奈良県 ○○市 その市には神社があった。近所の人達が今そこに集まっていた。夏祭りの際の場所決めの為である。
一人の着物を着た女の子がくじ引きの機会の前に立った。取っ手が付いていて右回りに回転させれば側面にある
小さい穴から玉が出てくる仕掛けである。彼女が引き当てたのは金色の玉だった。一等賞。少女は近くにあった棒で希望の場所
を指差し、筆で名前を書いた。「れんタン」と。
♪何をしても続かない子供の頃の僕は 「これぞってモノ」って聞かれても答えに困っていた。
そんな僕にも与えられたものがあると言うんなら 迷い立ち止まった自分自身も信じていたいな
太平洋 トゥ=アハー=デ・ダナン号内にて。兵士達が一つの部屋に集まっていた。これから行う
訓練や作戦の詳細説明を行う部屋である。つまり座学の時間である。メリッサ=マオが教壇に立ち
黒板を指差しながら作戦を説明している。質問の手が挙った。メリッサは質問を聞くと滑らかな
解答をした。そして座学は終了し全員が同時に敬礼をした。
♪僕がいるこの場所は少し窮屈だけど 愛に満ちた表情でぬくもり溢れて 少し君の声がする
奈良県 ○○市。郊外にある薬局屋“マダケ”から一人の老紳士と二人の女の子が出てきた。
女の子は姉妹らしく髪の色が同じで手を繋いでいる。出かけるのは姉だけの方らしいが
何故か妹も真似をして歩いていこうとしていた。
老紳士がそれを引き止め、小さい子の方に火打ち石を渡した。嬉しそうに火打石を叩こうとする妹だがそもそもそれ自体が間違いだった。
ゲジッという音がして石と石の間に自分の指を挟んでしまったのだ。
大声で泣き出した妹を見て姉は困っていたが何かを考え付いたらしく懐から竹の筒を取り出した。
それに口を付け息を吹いた。結果、竹筒の先から赤い風船が出てきた。それにはコミカルに目と口と舌が書いてあった。
結果彼女の妹はそれにぼんやりと見とれて泣き止むのをやめた。
♪足元に投げ捨てたあがいた跡も もがいてる自分も全部僕だから抱えてる思いをひたすらに叫ぶんだ
その声の先に君がいるんだ
東京都 陣代高校 生徒会室にて
美樹原蓮は生徒会長の隣に座って食事をしていた。早弁である。
彼女は箸でおかずをつまむと横に持っていった。生徒会長が口を開けるのと同時に
蓮はオカズを放り込んだ。生徒会長は顔に笑みを浮かべ蓮の右手に自分の手を添えた。
♪今僕が紡いでいく希望のカケラ 一つずつ折り重なって詩(うた)になる
キレイじゃなくったって 少しずつだっていいんだ 光が差し込む
東京都 FAWジムーー
日焼けした抜け目の無さそうな男がパートナーとスパーリングをしていた。打ち合い、組み合い、投げ合う。
パートナーの男の顔はワイルドだった。二人交互に技を出し、そして防ぐ。
十数分後男達は休憩を入れた。コップにいれた水をゴクリと飲み干す。
日焼け顔の男がパートナーにストレッチを頼んだ。
パートナーの男がグイと相手の背中を押した。
日焼け顔の男の胸が地面に付いた。
♪この声が枯れるまで歌い続けて 君に降る悲しみなんか晴らせればいい
ありのままの僕を君に届けたいんだ 探していた物は目の前にあった
丹波は道を走っていた。いつものジョギングである。
普通のスピードで数キロを走る。ぼんやりと何かを考えながら走る。
以前走った時は堤と出会った。会話しながら「今すぐこいつに拳を打ち込みたい」と思った事を覚えている。
格闘家達にのみわかる不思議な闘争心の様なモノであった。
今、丹波の目の前の風景は光に包まれていたーーーー
パチパチパチパチ。部屋の中にびんの拍手が響き渡った。祭りの音頭ならびんも聞いた事がある。
だがこういうピアノやら何やらを用いた演奏はびんには初めての事だった。
「楽しかったです。」
「喜んで貰えて嬉しいよ。」
鞍馬が照れたように笑った。彼にもガールフレンドはいるのだが最近会っていない。何より携帯を船村弓彦に折られた為連絡の仕様が無い。
「おばあちゃんが言ってました。人間にとって一番大切なのは愛だって。」
びんが笑顔のまま述べた。彼女を育てた人間、つまりおばあちゃんは既に亡くなっているのだがびんにとっては忘れられない思い出なのだ。
「そう・・・人に優しく自分に厳しくっていうのが大事なんだ。」
鞍馬は思った。後暫くはここにいられる。穏やかな日々の中自分を鍛える事が出来る。
よしやってやるぞ。船村弓彦を倒し自分は強さを手に入れる。今までは調子がいい事ばかり主張してきた。
でも今は違う。普通の生活を送る為に強くなる。贅沢は言わない。手に入れるモノは一つでいい。
鞍馬はそっとマイクを元の場所に戻した。
「皆さん、お昼ですわ。」
クヌギたんがにこやかに言った。
「「待ってました!」」
ある穏やかな春の日であった。
皆さん いかがでしたでしょうか。アニメの最終回のEDをイメージしていただければ
結構です。歌詞にあわせて登場人物の日常生活が描かれるという手法を
昔見た事があるのでトライしてみました。
第15話終了です。
421 :
作者の都合により名無しです:2006/04/30(日) 12:35:00 ID:F2SIqifk0
>鬼と人のワルツさん
パソ壊れましたか。災難ですねえ。のんびり復帰を待ってます。
最近、パソ壊れる人多いような
>フルメタルさん
鞍馬がどんどん好青年になっていく。
餓狼伝スレでの嫌われぶりを考えると嘘のようだw
歌詞に合わせて皆の情景が移るというのは良いアイデアですね。
本当にびんの騎士役になってるな、鞍馬w
ボクノートって映画のドラのテーマだったっけ?
この歌詞はどんなアニメや漫画にもあいそうだ。
すっかり鞍馬が主役、びんがヒロインぽくなってる。
どこへいっても丹波は主役になれんのかw
423 :
作者の都合により名無しです:2006/04/30(日) 20:26:31 ID:TXUgcM2A0
>鬼と人作者氏
がんがれ。そういえば俺も年末PCぶっ壊れて凄く困ったなw
>フルメタルウルブス作者氏
鞍馬がスキマスイッチを歌うとは。
原作では絶対に似合わないけどこのSSならぴったりかな?
今回はえらくほんわかしてますね。びんちゃんのおかげか。
あと、そろそろ名前(コテ)を付けたらどうですか?
この世界じゃあ日本はもちろんのこと、地球に侵略しに来る奴らの気が知れないぜ。
侵略しに来た宇宙人とか異世界の化物とかは、どいつもこいつも自殺願望でもあるのか?
すいません、誤爆しました。
フルメタさんのコテはいっそ「びんちょうタン」でいいのではないだろうか
427 :
作者の都合により名無しです:2006/05/01(月) 18:04:31 ID:vkB2jMOq0
あと1、2本で次スレ立てようとしたら微妙にとまったw
428 :
作者の都合により名無しです:2006/05/01(月) 22:37:50 ID:6eaAa7tz0
429 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 02:55:56 ID:Drbb83bK0
<前回のあらすじ>
平和な街に強盗団がやってきた!!
その強盗団の名は、違いのわかるパンツ愛好会―――通称:チノパン愛好会。
全員が色付きパンツを被っているという、とってもファンキーな集団だ。
しかし見かけがダメなほど仕事が良く出来るというのも、よくある話。
一流の強盗団の如く、スムーズに事を進めた彼らの残された仕事は、この店から逃げ出すだけという
彼らにしてみれば実にたやすい事を残すのみとなっていた。
しかし、世の中そうそうう上手くは行かない。
なぜなら、どこからともなく可愛らしい少女が、この地へ降臨したのだから。
そう、ポケットアルターマスター『由詑かなみ』が!!
でも・・・。
「はは。僕は無関係の方向で・・・。」
彼女が最初に投入した戦力は、ヤムチャもビックリなほどへタレなのだった。
430 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 02:56:53 ID:Drbb83bK0
<ギニュー編・前編:第三話 『薬で作ろう破壊神!!(良い子は真似しちゃダメだよ♪ヴァージョン)』の巻き―(1)>
〜惑星クロノス・とある街のスーパー内〜
「だあ〜!もう!カズくん!!!何やってんのよ!やる気あるの!やる気!」
「無いです。」
怒り心頭のかなみの言葉に、即答で否定の言葉を返すカズマ。
全く見ているこっちが情けなくなるほどのヘタレである。
当然、先ほどの口論と比べてのあんまりの温度差に・・・、
「ああ・・。まだやるの?こっちも色々あるんだけど。」
完全に毒気を抜かれているチノパンパープル達。
しかし、ここからがポケットアルターマスターの真骨頂。
こんな空気も一蹴した上に、ついでに緊迫した空気をお釣りとしてくれるほどの出来事を引き起こす!!
「当たり前でしょ!売った喧嘩は最後までやりきるのが信条!そっちが嫌イヤでも、最後までつきあって貰うわ!
それに、こっちにはこれがあるんだから!」
かなみは物凄くはた迷惑な台詞を言うと、懐から一本の注射器を取り出す。
そして自信満々に天高く『それ』を掲げると、本日最大級の危険発言を笑顔で某青ダヌキ口調叫んだ!
「気が大きくなって、強くなる薬〜〜!」
「あからさまにキケン〜〜〜!」
かなみの発言に思わずツッコんでしまう、その場にいる全員。
恐怖におびえていたはずの買い物客達も、思わず総出でツッコんでしまうほどの発言であった。
431 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 02:58:17 ID:Drbb83bK0
「え〜、わさわざツッコんでいただき有り難うございます。でも〜、大丈夫で〜あります。な〜ぜ〜な〜ら〜。」
しかし、そんなスーパーにいる人間全員からツッコミを受けながらも、かなみは全く意に解することなく勝手に話を進め・・・・、
「そこにいるヘタレ君に打つだけなので、他の皆様には全く無害なのですから。ねぇ〜♪カズくん〜♪」
生け贄先に向かって天高く跳躍する!!!
「うわあああ〜!そんなモノを体内に注入されるために生まれてきたんじゃな〜〜〜い!」
かなみが自分自身の元へ飛んでくるのを目認するや否や、ヘタレにしては至極まともな意見を言いながら脱兎の如くその場から逃げ出す!
しかも、その逃げ足といったらバータよりも10倍は速い。
どうやら、ダメ眼鏡が人間怪音波から逃げられる原理と同じ原理であるようだ。
これでは普通の人間に捕まえる事は・・・・。
「ちぃ!足だけは速い奴め!しかし!こう見えても私は、ポケットアルターマスター!
ペットが敵前逃亡したり、言うことを聞かなかったりしたときの対処法もばっちりよ!」
だが、カズマが神速で逃げたのにもかかわらず、普通の少女であるはずのかなみは全く動揺した様子はない。
―――なぜなら・・・。
「よっと!」
一瞬で、カズマの背後に回っちゃったり出来るからだ。
「ゲゲゲ!は、はやい!?」
その光景を見て驚愕の声をあげたのは、以外にもチノパン愛好会の面々。
それもそのはず、只の子供と思っていた相手がバータ以上のスピードで逃げ回る相手の背後をあっさり捕ってしまったのだから。
「こいつは・・。」
もしかしたら、自分達以上の実力者かもしれない。
チノパン愛好会は少女の取った、たった一つの行動だけで久しぶりの恐怖と興奮を存分に味わっていた・・・。
432 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 02:59:00 ID:Drbb83bK0
「ああっ!やっぱり逃げられなかった!お手柔らかにお願いします。」
一方、逃げても逃げても背後を捕られ続けられた事に逃げきれないと判断したカズマは、何の抵抗も見せずに
あっさりと降伏のポーズをとっていた。
そう、自分のお腹を無防備に相手に見せて、服従の意を示すというあれである。
「まあ・・・。いいわ。これを刺しちゃえば、全部丸く収まるんだから。」
流石のかなみも一瞬呆れかえるが、捕まえる手間が省けたことに全てを水に流し・・・・、
「あのう・・・。本当に・・・。」
「はあい。問答無用♪」
―――プスッ!チュルチュルチュル!
カズマの懇願する声を無視して、容赦無く彼の首筋に『気が大きくなって、強くなる薬』を注射した!!
そして注射をしたときにありがちな『ブスッ』という音が辺りに響くと共に、カズマの体はいきなりの変調をきたす。
そう、世に言う薬でマッスル化である。
そんな野球選手も羨む薬の効果で、ゆっくりと巨大化していくカズマの体。
彼の右手についている機械仕掛けの物体も、何故か彼の体のサイズに応じて変化していく。
どうやら『それ』は、ただの機械ではないようだ。
「お・・・・、オ・・・。」
「カズくん!オクレ兄さんは無しだよ!」
ゆっくりと体が大きくなっていくカズマが苦悶の声をあげようとすると、かなみは何の躊躇も無く、
いきなり彼の台詞に制限を付随する。――どこまでもSな少女である。
しかし、当のカズマも薬のおかげでヘタレの部分を見せずに、無理矢理大きくなっていく体に苦しみながらも
見事なアドリブでかなみの無理難題に答えた!
433 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 02:59:45 ID:Drbb83bK0
「お・・・、え・・・・、エイドリア〜〜〜ン!!」
「は〜はははは!!へタレを克服して、お前は遂に人間を超越したぞ!!”カズマよ〜〜!!」
そして今、薬で作られた最強の破壊神が誕生した!
まあ――――
「さあ!今度こそ行きなさい。シェルブリッドのカズマよ!パンツを被った、変態強盗犯をやっつけるのよ!」
完全に出来上がった最強の破壊神カズマを見て、かなみは上機嫌にチノパン愛好会への攻撃命令を出す。
――――が、
「グヲヲヲヲッオオオオオ!!!」
彼女の指示とは全く関係のないところを吹き飛ばすカズマ。
「うぎゃあ〜〜〜!」
全く関係ないスーパーマーケットの買い物客達も一緒に・・・。
「ん〜。調子に乗って、薬の濃度を間違えたのかな・・?テヘッ♪」
「「「「テヘッ♪じゃねえ!」」」」
―――――暴走してるけど!!
434 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 03:00:24 ID:jFvm1xYc0
<ギニュー編・前編:第三話 『薬で作ろう破壊神!!(良い子は真似しちゃダメだよ♪ヴァージョン)』の巻き―(2)>
〜惑星クロノス・とある街にある空き地〜
危険な薬で誕生した、右手が機械じかけの身長10mはあるであろう破壊神―――シェルブリッドのカズマ。
彼はすでにスーパーをあっという間に破壊し尽くし、街に躍り出ていた。
そう、この数分でカズマは惑星クロノスを脅かすに十分な存在となっていたのだ。
恐るべし!!『気が多きなって、強くなる薬』!!
「こらー!カズくん!それ以上壊したら、私達が悪人みたいじゃない!」
普段の数倍の濃度の薬を注射した為に、知性が奪われてしまったカズマの暴走を止めるべく、
ポケットアルターマスター ――かなみは、街の空き地からカズマに向かって大声で制止の言葉を叫ぶ。
一見、この光景は無関係の人が見ると、大魔人とそれを止めようとする少女との美談に見えてしまうが、
この大魔人を作ったのが当の彼女なのだから質が悪い。
まあ、正に身から出た錆なのだが、その錆が他の人々に多大なる迷惑を与えているのが一番の問題なのであった。
「おら〜!カズくん!やるならあのパンツ共を叩き潰しなさいよ!」
この状況を作り出した張本人であるかなみは、薬のせいで暴走した彼を止めようと何度も何度も叫び続ける。
だが、彼女の声は中々届く気配を見せない。
おそらく彼の鼓膜は、薬で体を無理矢理大きくした時の筋収縮に対応し切れず、肉の中に埋もれてしまったのだろう。
それでも・・・。それでも彼女は、巨大化した暴走カズマに向かって叫び続けた。
――――なぜなら・・・。
「こら〜〜!!これ以上壊したら、私が実行犯として器物破損罪でムショ行きになっちゃうよー!!!
アンタ!!私のような可憐な少女があんな所で臭い飯を食わせたいわけ!!こら〜〜!!」
事件終息後の自分の為だからである。
435 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 03:00:59 ID:jFvm1xYc0
―――数分後。
さらに暫くかなみが叫び続けると、やっと埋もれた肉を通して自身の鼓膜に彼女の声が届いたのか、
暴走したカズマは彼女の方へ体を向ける。
「グゴゴゴゴ・・・。」
「おっ!やっと気付いたのね!そうよ!あっちにいるパンチを被った変質者達を叩き潰すのよ!」
しかし彼女の声が彼の鼓膜を揺らしたという事実は、あくまで正弦波としての音波の振動のみ。
その証として、薬のせいで理性の欠片も残っていないカズマは、かなみの言葉に対して全力のパンチを持って返答してきた!!
「グゴゴゴゴ!グゴゴゴゴ!(信念の!シェルブリッド!)」
「ありゃ?こりゃあ、やばいわ。あははは・・。」
直径2mほどの大きさの右拳が、叫ぶ事に熱中していて全くの無防備だったかなみの元に打ち出される。
しかも、街を無造作に壊している時とは全く違い、彼の右腕についている機械は突然生き物のように動き始めると、
太陽よりも美しい輝きを放ちながら右拳の威力をさらに増大させているようであった。
「あっ、あぶな〜い!」
かなみに向かって打ち下ろされる右拳を見て、なにも知らない街の人が悲痛な悲鳴をあげる。
もう誰もが間に合わないと思った――――その時。
「さっと、登場のニューヒーローだ!!」
なんと、かなみをその場から救い出す青い影が!
そして青い影がかなみを助けると同時に、カズマの拳が先程まで彼女が居た空き地に着弾する。
その威力はすさまじく、半径数百メートルの生きとし生ける者を一瞬で無に返す。
幸い、かなみの居た場所が只の空き地ということだけあって、人命が犠牲になることは無かったが・・・。
436 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 03:01:48 ID:jFvm1xYc0
「ふい〜。あ〜ぶなかった〜!!」
青き影に助けられたかなみは、一瞬で空き地をクレーターにしてしまったカズマの拳の威力を見て冷や汗を垂らす。
「むう。このかなみさんとあろう者が、反応すらさせて貰えなかったとは・・・。
これでヘタレじゃなかったら、薬なんて使うこともなかったのに。」
「そうか〜、って!お前が俺らに喧嘩を売らなければ済むことじゃないか!」
そして、かなみがカズマの攻撃力に感心していると、彼女を助けた青い影が彼女の言葉に対して二流の乗りツッコミを入れる。
しかも圧倒的なNOT存在感を醸し出しながら。
当然、先程からかなみもその存在感の無さと無個性さに気付いてはいたが、何しろ状況が状況。
本来はそんな奴に構ってもいられなかったが、一応助けて貰った恩もあるので、かなみは仕方無く青い影に話しかけた。
「ん?ああ。助けてくれてありがと。ところで・・・・。
パンツを被ってるから強盗どもの仲間なんだろうけど・・・・、あんた誰だっけ?」
「がーん!!俺は、平成の青いイナズマこと・・・!!!チノパンブルホウッ!!イテテ・・。噛んだ・・。」
そう、ピンチのかなみを助けたのは、チノパン愛好会の無個性ことチノパンブルーだった!!!!
437 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/05/02(火) 03:04:28 ID:jFvm1xYc0
どうも、しぇきです。
次の回で、ポケットアルターマスターやら、チノパン愛好会の正体が明らかになります。
ついでにあの人も・・。
後、次の投稿時にまとめて感想は書きます。
では失礼・・・。
438 :
作者の都合により名無しです:2006/05/02(火) 07:23:55 ID:vCmrnNWV0
しぇきさんお疲れ様です。
どんどんしぇきさんの趣味に突入していくなあw
カズマとか、最後には運命に反逆する姿は見られるんだろうか…
「オーガが鳴く頃に」と違って、こちらは愛らしいキャラ全快ですね。
こっちが本来のしぇきさんの持ち味かな?
オーガは途中からホラーっぽくなりましたが、フリーザ野球軍は最後まで
良い意味でアホっぽい作品に仕上げてほしい。
カズマは2ch情報でのみ知っている。確か反逆するキャラですよね?
どんどんドラゴンボールの世界と思えなくなっていくなあw
バキスレの住民と書き手の皆様へ
ロワスレの住民ですが、出来れば次スレから他板へ移動して頂けないでしょうか?
このままではお互いに良い結果にはならないと思います。
ロワスレの方が新しく立ったので、バキスレさんが移動してもらうのが筋だと思います。
バキスレさんが他板、例えば漫画キャラ板やラウンジ板とかに移動してもらうのが
お互いにとって最良と思います。
自分だけの事を考えず、板全体の事を考えて決断していただければと思います。
ちょうどもうすぐ次スレ以降。なんでしたら、私が他板へ立てても構いませんが。
ご英断をお待ちしております。
ロワスレ一同より
一足遅かったか。
この池沼の言うことはスルーで頼む
443 :
作者の都合により名無しです:2006/05/03(水) 16:40:07 ID:gmP04EZQ0
しぇき氏乙です。
野球SSなのかと思ったら、ありきたり(というか独りよがりな)SSで笑えました。
誤字多いし。
ラノベ臭い文体だが、いかんせん読みづらい。
修飾語がやたら多くて、比喩もイマイチ。完全に自分に酔ってる。
句読点のつけ方から出直してきた方がいい。
444 :
青竜刀伝説:2006/05/03(水) 19:27:03 ID:QBRCWXWZ0
第二十話 プリフィアの花
オルレアンの街が熱と活気、そして興奮に包まれている。
大通りから、路地裏から、家の窓から。
老若男女問わず、街の人間全てが凱旋したフランス軍へと歓声を上げている。
その歓声の殆どは、数千の騎士や傭兵の先頭に立つ、美しい騎士へと向けられていた。
ジャンヌは白銀の鎧を凛々しく纏い、ラ・ピュセルの御旗を雄々しく揚げながら
歓声に向かって手を振り返している。
その戦果にそぐわないほど、可愛らしい仕草である。街人は更に熱狂していく。
いつしか歓声は聖女を称える歌となり、故国・フランスを慈しむ詩となっていた。
街の人々の中には、涙を流している人さえいる。傭兵たちからも嗚咽が聞こえる。
圧倒的なイギリスの武力の前に、故国の誇りを踏み躙られていた日々。
信じていたフランス王家に見捨てられ、イギリス支配下にあった日々。
戦線となるのを耐えがたくも甘受し、戦火の中で逃げ惑っていた日々。
そんな屈辱と絶望の日々が、たった一人の聖女の出現により覆されたのである。
それもほんの一週間も経たない、僅かな期間で。
「残った砦はたった一つだ。頼んだぞ、聖女様!」
民家の窓から、男の声がジャンヌに向かって飛んだ。感極まった涙声である。
その声に反応し、街全体がどっと盛り上がった。聖女への声援に大地が揺れる。
だが、ジャンヌはただその声に向かって手を振っているだけである。
大地を揺るがすような絶唱も、心からの声援も、彼女には届かない。
まるで蝋人形のような微笑を浮かべ、ひらひらと手を泳がしているだけである。
それでも、オルレアンの民は彼女に対して絶大な信頼と声援を贈り続ける。
畢竟、民にとっては彼女が聖女であろうが悪魔であろうが興味は無い。
ただ、この苦境を救い出してくれればそれで良いのであるから。
445 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:28:36 ID:QBRCWXWZ0
「ジャンヌ殿は、作戦会議には出られないのか」
ラ・イールがジヤンに聞いた。位が上のラ・イールに対し、ジヤンは素っ気無く応えた。
「部屋に篭りきりです。私がいても戦術はわからない、と」
将軍のラ・イールに対して、規律違反とも取られかねない不躾なジヤンの反応である。
が、ラ・イールはもう気にしない。戦場では能力が全てである。
ジヤンに、慶次に、そして戦死したベルトランに、ラ・イールは敬意を払い始めている。
貴族育ちの自分とは違う、在野で育った逞しさを感じている。
ラ・イールは首を縮め、ぽつりと呟いた。
「ジャンヌ殿は、私たちとは違う発想をするのだがな。しかし、今は仕方あるまい」
当時の戦場は騎士道に沿った戦いを理想とし、そして実践されていた。
が、農民出身のジャンヌはその慣例に縛られる事無く、自由奔放な作戦を決起した。
サン・ルウ砦での奇襲陽動作戦など、作中その最たる例である。
更に歴史上では、真夜中の奇襲攻撃などもジャンヌは頻繁に画策したとされている。
当時、戦争は日中に始まり、日没前に終わるのが暗黙の通例であった。
就寝時の攻撃など常識外であり、また戦場倫理に反する事でもあったのである。
当時の騎士道からすれば、ジャンヌのその戦略は外法であったと言える。
作品内では割愛してあるが、フランス軍内部でも彼女の戦略に対する反発は当然あった。
まして敵方であるイギリス軍からは、痴れ犬とこき下ろされ、魔女と罵られている。
そしてこの時のオルレアンの戦い方が、後のジャンヌの悲劇を生む。
「あの奇襲作戦は、ほぼ慶次が考えたものですよ」
瞳孔の焦点が合わぬまま、ぼんやりとジヤンは応えた。ラ・イールは反問する。
「そうか。では、慶次殿は?」
ジヤンはさあ、と言ったきり沈黙してしまう。ラ・イールはその様子に気が沈んだ。
(こんな様で、トゥーレル砦を陥せるのか)
ベルトランの死が重く肩に圧し掛かる。そして、聖女が人を殺めた、という事実も。
446 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:29:29 ID:QBRCWXWZ0
累々たる死骸が横たわる草原に、大男がどっかりと胡坐を掻いていた。
男の傍らには黒毛の、見事な体躯の巨馬が彼を守るように付き従っている。
前田 慶次と松風は黄昏ていた。
彼らの目の前に土が盛り上がっている。その土嚢に対し、慶次は詫びるように言った。
「すまないね、ベルトラン。お前程の男を、こんな弔い方しか出来なくて」
そこには、騎士の中の騎士が眠っていた。慶次のこの時代の最大の友であった男である。
ぐい、と瓢箪を煽った。中身は地場の蒸留酒である。
この世界に到着した時にあった酒は、淘に尽きている。息を吐きながら慶次は言った。
「美味いな。こっちの世界の酒も、なかなかのものだ。
…お前と酌み交わせていたら、もっと美味かっただろうに」
慶次は自分の掌を椀にして、酒を注いだ。松風が慶次の掌を美味そうに舐める。
「時代が変わるよ、ベルトラン。解るんだ。俺のいた時代もそうだったからね。
武人が駆けた時代は終わり、政治(まつりごと)で解決する時代になる」
ぐい、とまた酒を呑んだ。そして寂しげに呟いた。
「お前は最後までいくさ人だったな。 ……戦場で死ねたお前が、少し羨ましい」
残った酒を、ベルトランが眠る土へ全部振りかけ、立ち上がった。
「すまないがもう少しそこで我慢してくれ。きっとまた、俺はここに来る」
その時、慶次は気付いた。ベルトランの墓の近くに、真白く小さな花が咲いている。
先程までは無かった。いや、まったく気付かなかった。
が、今はそこにまるで慶次を励ますように、健気に咲き誇っている。
(お前か、ベルトラン)
慶次はそっとその花を摘んだ。愛しそうに懐にしまうと、ベルトランへにっこり微笑んだ。
「心配するな、ベルトラン。ジャンヌ殿はきっと守り抜いてみせる」
この花はきっとジャンヌに似合うだろう。そして守ってくれる気がする。
慶次はベルトランの眠る場所に深々と一礼すると、松風に跨り街へと駆け出した。
447 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:30:06 ID:QBRCWXWZ0
気配が無い。人としての気配が、今のジャンヌには失せている。
戦場の、カリスマ性に包まれた彼女を知る人間が見れば、別人と思うだろう。
まるで幽鬼のようにベッドに座り込み、呆然と呆けている。
涙を流していた。先程から繰り返し繰り返し自問していたが、一向に答えは出ない。
ベルトランが死んだ。慶次を除けば、最も自分が信頼していた男である。
呂布をこの手で殺した。戦場とはいえ、ただの娘である自分が人を殺した。
死と殺。戦場における必然である。覚悟は出来ているつもりでいた。
でも、だけど……。
キリキリと頭が痛む。吐き気が絶え間なく襲ってくる。視界はぐるぐると変転する。
神に祈りを捧げてみた。いつもの、ありふれた日課のように。
お許し下さい。主よ、この罪深き子羊を。そして導いて下さい、主のおわす場所へ……。
必死に祈りを捧げてみた。が、しばらく経ち、自分の姿に気付き愕然とした。
違う。いつもの祈りとは違う。いつもはただ祈っていた。
フランスの未来を、家族の安泰を、子供たちの将来を、人々の素晴らしい明日を。
だが今は違う。今は自分の為だけに祈っている、自身の魂の救済の為だけに。
フランスも、家族も、子供たちも、そして死んだベルトランの事ですら。
頭から消えていた。ただ、自分が救われる為だけに祈っていた。神に縋っていた。
私のどこが聖女だというのだろう! 結局、自分の事しか考えていない。
ベルトランさんは私を守る為に死んだのに、私は自分の罪の事ばかり嘆いている。
なんて冷酷で、許しがたい女なのだろう! イギリス兵の云う通り、魔女ではないか!
心の中で自分を罵った。だが、それ以上に恐怖は彼女を包み込む。
私の場所はもう、天国にはきっと無い。死ぬまで戦って、そして死ねば地獄へ堕ちる。
怖い、恐い。
だが、もっと恐ろしい事がある。そう。ざわりと、肌が粟立つようなあの快感……。
448 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:30:49 ID:QBRCWXWZ0
呂布の心臓に白銀の剣を刺した後、私は確かに彼に微笑んだ。
それは、敵ながら一生懸命生き抜いた彼に、私への想いを貫いた彼に、
敬意を表したというのはある。彼への明確な感情は何であるかは分からないが。
でも、あの彼の肉に剣を突き刺す瞬間。
私は薄暗い快楽に溺れていた。
背中を這い回る甘美な快感に、脳天を突き刺すような性的な衝命に、私は歓んでいた。
私は確かに濡れていた。
乳房が張り、下腹部が熱くなり、言い知れぬ背徳の悦びに心は酔っていた。
彼を刺した瞬間に震えていたのは、快感に痺れたからだ。人を殺めた恐怖だけではない。
私が微笑んだのは、彼の死に対する弔いだけではない。
むしろ大部分は、新しい快楽を知った歓びからだ。
こんな女がどうして聖女なのだろう?
自分が恐ろしい。その内、自分は戦場を自ら求めるようになる。血を求めて。
怖い。恐ろしい……。
「そんな顔は、ジャンヌ殿には似合わないな」
不意を突かれジャンヌはびくん、と顔を上げた、優しく涼やかな微笑が彼女を迎えた。
慶次が穏やかな顔で立っている。大柄だが、威圧感は無い。むしろ優しく包み込むようだ。
「け、慶次さん、し、失礼ですよ、急に女性の部屋に入るなんて」
ジャンヌはあたふたと涙を拭い、身繕いをし、少しだけ拗ねて見せた。慶次は笑う。
「いや、何度も外で声を掛けたのですが。この世界に来てしばらく経ちますが、
しかしまあ、俺にはのっく≠ニいうのがどうしても出来ないな」
そうして、部屋に響き渡るような声で大きく笑った。
その慶次の陽気さに釣られ、ジャンヌの心から少しだけ暗雲が晴れていく。
449 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:55:17 ID:QBRCWXWZ0
本当にこの人は、自分が一番辛い時にやってきて励ましてくれる。本当に…。
少しだけ安心すると、堰を切ったようにジャンヌの激情が迸った。
「見えないんです、大天使様が。いくら祈っても、どれほど願っても。
以前は祈りを捧げれば必ずお応えしてくれました。でも、今は何も聞こえない。
私が汚れてしまったから? 天国にはもう相応しくない魔女だから?
もう嫌、自分自身が嫌、フランスなんてどうでもいい、もう村へ帰して……」
ジャンヌは慶次の胸板にしがみ付いてすすり泣いていた。そこに聖女の面影は無い。
捨てられた子犬のように、親に叱られた子供のように、ただ泣きじゃくる姿があった。
慶次は何も言わずに、ただジャンヌをそのまま泣かせ続けている。
泣き声は次第にやみ、しゃくりあげるような嗚咽に変わった。それもやがて終わる。
ジャンヌは慶次から離れると、俯きながら寂しげに言った。
「申し訳ありませんでした、見苦しい姿をお見せして。明日は最後の砦です。
慶次さんも今日は早くお休みになって、英気を養って下さい」
その言葉に慶次は胸が締め付けられた。この少女の人生は、もう少女自身のものではない。
国に、時代に、その身も命も捧げているのだ。
それを、誰よりもこの少女は分かっているのだ。 ……自分は、時代への貢物だと。
そして彼女は苦しむのだろう。
誰よりも優しいその心と、人の生死を分かつ戦場での使命の板ばさみに。
そして彼女は死ぬのだろう。
いつか必ず来るその日に、きっと笑えぬまま、罪の深さに苦しみながら。
慶次はすっと胸元から花を取り出した。ベルトランが呉れたあの白い花である。
「これは…?」
ジャンヌが思わず反応した。今の場にそぐわぬ美しい花だからである。
「ベルトラン殿が呉れた花です。きっと、あなたに良く似合う」
450 :
魁! 聖少女風流記:2006/05/03(水) 19:57:43 ID:QBRCWXWZ0
慶次から手渡された花を、ジャンヌはじっと見詰める。掠れるような声で言った。
「本当に、綺麗で可愛らしい、純白の花。 ……私には、もう似合いませんね」
ジャンヌの悲しみと絶望は深い。花束のようなあの笑顔が、完全に失せている。
が、慶次という男。悲しみすらも空のように包み込んでしまう大きさを持っている。
「私がいた国には、蓮という花があります」
「……蓮、ですか」
ジャンヌは慶次の言葉の意図が分からない。慶次はにこやかに語った。
「蓮は泥の中から生まれ、見事に白く美しい花を咲かせる。ちょうどその花のように」
泥。泥の中。泥の中から生まれる。泥の中から生まれる、白く美しい花。
泥という意味。そしてその花の意味。そして慶次さんの、笑顔……。
「ジャンヌ殿。あなたが地獄へ堕ちたら、俺は地獄でも供をするよ」
ジャンヌの目から大粒の涙が零れた。先程までの涙ではない。微笑も浮かんでいる。
「……月を守る雲のように、護って頂けるのですか。たとえ、私が地獄へ堕ちても」
「ああ。いいよ。地獄までお供いたす」
ジャンヌが十八の娘の顔に戻っている。輝くような、手元の花にも負けない笑顔である。
「この綺麗な花は、なんと言う名前ですか」
何の気なしにジャンヌが聞いた。慶次がばつが悪そうに応える。
「ううむ。ラ・イール殿やジヤンや、他の兵に聞いても分からんのだ」
「じゃあ、私が名前をつけてもいいですね? ……プリフィア、はどうでしょうか?」
「プリフィアか。いい名だ」
今度は、2人一度に大きく笑った。ジャンヌの心から暗雲は完全に消え去っていた。
明けて5月7日。フランス軍は最後の砦へ進軍する。
ジャンヌは兵の先頭に立ち、まっすぐに背筋を伸ばしてトゥーレル砦を目指す。
白銀の鎧のうちに、そっとプリフィアの花を忍ばせながら。
451 :
ザク:2006/05/03(水) 20:11:10 ID:QBRCWXWZ0
まあ、あれだ。大変だなあっちのスレもいろいろと。
たまにしか見ないから状況は良くわからんが。
俺やバレさんのような冷静で物のわかる大人というのは
漫画板では本当に貴重なんだなあと思う今日この頃。
とりあえず、次かその次の話でジャンヌ編は終わりです。
次からは慶次編になるんだけど、完全に歴史から離れるから。
魔界転生みたいな感じになります。
今まで多少人気あったみたいだけど、完全にお客さん離れそうだなw
452 :
ハイデッカ:2006/05/03(水) 20:24:02 ID:QBRCWXWZ0
453 :
作者の都合により名無しです:2006/05/03(水) 20:34:20 ID:qAKavvjEO
そんな言うほど人気なんか無いよ
お世辞って知ってる?
仮にお世辞だとしてもお前がそれを言う理由はないだろ
構って君を相手にしてはいけないよ。
「多少」の意味もわからん文盲みたいだし
感想は新スレに書きます。
456 :
作者の都合により名無しです:2006/05/04(木) 22:41:58 ID:to6FnGOY0
バラダッド・ナイブスの8億人斬りみたいな感じになるかな。
勇次郎も60億と戦っても云々と言ってたし。
ありかもよ、こういうの。
401 :作者の都合により名無しです :2006/04/29(土) 18:11:41 ID:SJ1IZU5H0
テンプレの
>>1でも話題の本編ですが、ゴルゴVSビスケ&男塾雑魚塾生以外の全人類の番外編をどなたか
お作りください。
402 :作者の都合により名無しです :2006/04/29(土) 18:43:15 ID:eLFuwATh0
>サナダムシさん
赤青黄に対する対応はじゃんけんですか。
加藤、頭脳プレイ?も冴えてきましたね。
試練を乗り越えて、出来ればラスボスは
独歩か克己がいいなあ。
>テンプレ屋さん
乙です。しかし、パオさんは心配ですね。
>>401 意味わからん。
403 :作者の都合により名無しです :2006/04/29(土) 20:58:22 ID:qrs88eHT0
バキ魔界編の番外編を読めばわかります。まとめサイトにありますよ。
うむ、よくわからんw
r:]l;]tl]r
e;:]wqe];qw:]e;wq
re:rl;ew;ewrwe]r
ew;wq]e:;wq]:e
test
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