2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子 /●中川圭一 /●大原大次郎
2/4【NARUTO】○うずまきナルト /○春野サクラ /●大蛇丸 /●奈良シカマル
3/4【DEATHNOTE】○夜神月 /○L(竜崎) /○弥海砂 /●火口卿介
3/4【BLEACH】●黒崎一護 /○藍染惣右介 /○更木剣八 /○朽木ルキア
3/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ /○ニコ・ロビン /○ウソップ /●道化のバギー
1/4【銀魂】●坂田銀時 /●神楽 /●沖田総悟 /○志村新八
2/4【いちご100%】●真中淳平 /○西野つかさ /○東城綾 /●北大路さつき
2/4【テニスの王子様】○越前リョーマ /●竜崎桜乃 /●跡部景吾 /○乾貞治
3/4【アイシールド21】○小早川瀬那 /○蛭魔妖一 /○姉崎まもり /●進清十郎
1/4【HUNTER×HUNTER 】●ゴン・フリークス /●ヒソカ /○キルア・ゾルディック /●クロロ・ルシルフル
3/5【武装錬金】○武藤カズキ /○津村斗貴子 /●防人衛(C・ブラボー) /●ルナール・ニコラエフ /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】●桜木花道 /●流川楓 /●赤木晴子 /●三井寿 /○仙道彰
3/4【北斗の拳】○ケンシロウ /○ラオウ /○アミバ /●リン
2/4【キャプテン翼】○大空翼 /●日向小次郎 /●石崎了 /○若島津健
3/4【キン肉マン】○キン肉スグル /○ウォーズマン /○ラーメンマン /●バッファローマン
4/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー /○エリザベス・ジョースター(リサリサ) /○ブローノ・ブチャラティ
2/4【幽遊白書】●浦飯幽助 /○飛影 /○桑原和馬 /●戸愚呂兄
2/4【遊戯王】○武藤遊戯 /●海馬瀬人 /●城之内克也 /○真崎杏子
1/4【CITY HUNTER】●冴羽リョウ /●伊集院隼人(海坊主) /○槇村香 /●野上冴子
4/4【ダイの大冒険】○ダイ /○ポップ /○マァム /○フレイザード
3/5【魁!!男塾】●剣桃太郎 /○伊達臣人 /●富樫源次 /○江田島平八 /○雷電
2/4【聖闘士星矢】○星矢 /●サガ /●一輝 /○デスマスク
2/4【るろうに剣心】○緋村剣心 /○志々雄真実 /●神谷薫 /●斎藤一
5/6【DRAGON BALL】○孫悟空 /○クリリン /●ブルマ /○桃白白 /○ピッコロ大魔王 /○ヤムチャ
4/4【封神演義】○太公望 /○蘇妲己 /○竜吉公主 /○趙公明
1/4【地獄先生ぬ〜べ〜】○鵺野鳴介 /●玉藻京介 /●ゆきめ /●稲葉郷子
4/4【BLACK CAT】○トレイン・ハートネット /○イヴ /○スヴェン・ボルフィード /○リンスレット・ウォーカー
2/4【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】●ダーク・シュナイダー /○アビゲイル /●ガラ /○ティア・ノート・ヨーコ
1/5【ジャングルの王者ターちゃん】○ターちゃん /●ヂェーン /●アナベベ /●ペドロ・カズマイヤー /●エテ吉
3/4【とっても!ラッキーマン】○ラッキーマン(追手内洋一) /●勝利マン /○友情マン /○世直しマン
3/4【世紀末リーダー伝たけし!】○たけし /○ボンチュー /●ゴン蔵 /○マミー
77/130 (○生存/●死亡)
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
開催場所は作られた「ミニ日本」であり現実世界ではない。海上に逃れようと閉鎖空間の壁にぶつかり脱出は不可。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
「地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。 (デスノートへの記入含む)
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。 (ただし写真なし。デスノート対策)
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。
※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。
必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
【「首輪」と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
開催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。
プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。
【放送について】
放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。
【能力の制限について】
超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。
・攻撃制限例(ドラゴンボール)
エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル
かめはめ波の威力→マグナムよりは強い。大木が1本倒れるくらい。
元気玉の威力→……使えるのか?使えたとして、半径50m位のクレーターが出来る。
・耐久度制限例
一般人の強さを1として
一般人→1
超人→3(普通の銃では致命傷にならない。ショットガンクラスが必要)
人外→5 (拳銃程度なら怯むだけ。マグナムクラスで気絶)
・超人的な再生、回復能力を持つキャラの制限(※一般人には適用されません)
軽度の銃創…安静にしていれば数十分で癒える。
骨折…安静にしていれば数時間で癒える。
重度(目や肺)の銃創…安静にしていれば1日で癒えるが体力消耗
切断(腕や脚)…切られた部分をくっつけて置いて、安静にして丸1日を要する。
再生…瞬時に再生できるが体力を相当消耗する。 体力回復は1日や2日では無理
切断(胴や首)、銃弾心臓or脳貫通…シボンヌ
・魔法や気などの威力制限案
エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル。連発も可能。
必殺技の威力→木が1本倒れるくらい。けっこう消耗する。
超必殺技の威力→一般家屋破壊。消費も凄まじい。1日1発が限度。
【舞台】
主催者3キャラの作った仮想空間が舞台で
面積は東京23区の半分程度(80u)
地形は日本列島(沖縄県、他島は除く)
季節は北海道 冬 日本海側 秋
太平洋側 秋 九州、四国 夏
乗り物は列島の端と端をつなぐ無人蒸気機関車が定期的に走っている。
都市部はあるが無人。主催者側が人間の世界を模して作成したものなので
実際に生活できるようには作られていない。人の痕跡なし。ガス、水道、電気
食料なし。建物が密集しており隠れるのに最適……かもしれない。
海は移動禁止区域。入ると脱出者とみなされて首輪爆発。
【作中での時間表記】
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【SSを本スレに投下する時の注意事項】
・書き手はあくまで『リレー小説』である事を考えてストーリーを書きましょう(整合性を考えて!)
・投下する際は他の人が考えてるSSと被らない様に、なるべくSSに出てくるキャラの予約をして下さい。
・予約の際、登場させるキャラは全て明記しましょう。他の人とのトラベルを避けるためです。
・予約の期限は3日まで。期間中に書ける自信がない人は無謀な予約は控え目に。
・SS投下後は修整を求められる事等があるため投下する時は『トリップ必須』です。
・基本的なルールは他のSS、まとめサイト、感想スレを一読して参考にして下さい。
「これが勝浦の那智の滝・日光の華厳の滝とともに日本三大瀑布の一つである、袋田の滝ね。
・・・綺麗だわ」
茨城県久慈郡大子町、日本三大瀑布の一つである袋田の滝。
その大胆な奔流と一様でない繊細な流れを下流から見上げ、
考古学者であるロビンは内なる思いを自分の言霊に乗せずにはいられなかった。
「やけに詳しいな」
「・・・これを読んだだけよ」
ロビンの吐露した言葉に驚嘆と賛美を重ねつつも、傍にいた男が肩を並べる。
するとロビンは一枚の紙切れを差し出した。
「なるほど。これなら一目散に逃げても各地の名所を頼りに場所が特定できるってわけか」
男がロビンから受け取った紙切れを開き、覗き込む。
「へえ。別名『四度の滝』とも呼ばれてるのか。
滝の流れが4段に落下するからそう呼ばれてるわけだな」
シルクハットにタキシードをエレガントに着込んだ男が、
“観光案内”と書かれた紙切れを下流で覗き込むという
なんとも混沌とした雰囲気を醸し出している間に、ロビンはさっさとその場を跡にした。
一拍おいて、男は顔を上げ、微笑みと共に木にもたれ掛かる。
いつものようにタバコをくわえようとして、タバコがないことにきずく。
バツの悪そうに頭をかきながらも、やはりその漢――スヴェンは笑っていた。
「待ってるぜ、相棒」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ロビンとスヴェンが袋田の滝に到着するまでの間に、二つの事が起こっていた。
ひとつは追跡途中に一度スヴェンがロビンを完全に見失ったこと。
(その間ロビンは駅前で観光案内×2get)
そしてもうひとつは・・・・・・・
「ねえ、トレイン君・・・」「ん?」
「何にも見えないよ」
所変わって、トレイン、杏子。杏子の調子もある程度まで回復し二人で昼食をとっている時
驚異的な視力を持つトレインは南方から駆けてくる女性を見つけた。
そのトレインが対象をはっきりと確認できない距離であるのに、
一般人の杏子には影も形も見えるはずがなかった
「おっかしいなあ。向こうから女の人っぽいのが走ってきてるように見えんだけど」
「トレイン君、視力は?」
「ん?確か・・・両方6.0だったと思うぜ♪」
「・・・どこの原住民よ」
二人が他愛もない会話をしているうちに、人影は二つになり、そのシルエットは大きく、
鮮明になっていった。
「ん?あの白い帽子は・・・・」
次第に杏子にも凝視できる距離まで二人は近ずいてくる。なんせ二人とも走っているのだ
「ん?あの女(ひと)は・・・・」
・
・
・
・
「「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!!!!!!!」」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ・・・」
ロビンは袋田の滝でスヴェンから逃げ切った。しかし神はロビンに休息を与えなかった。
見紛うはずがない。その完璧なフォルム。
それは将に神が創り出した、否 神其の者か。
「ウヌとは、以前遭った事がある」
ロビンは動けなかった。以前操っていた勝利マン、スヴェンをもってしてもその
進行すら止められなかった男が、今やたった一人の自分の目の前に立っているのだ
「この拳王、一度楯突いたとはいえ無抵抗の女を嬲る拳は持たぬ」
「あらそう、よかった」
「近くに戦う意思を持つものがいるなら我は戦うだけ。ちょうどこの先の滝に男が見えたのでな」
「え?」
次の瞬間、ロビンは恐怖から空回りした頭脳より先に、体が動いていた。
まるでラオウの行く手を阻むかのように。
「・・・私は、死にたくない」
――――紳士道のおじさん、危ないわね
「ならば早々に立ち去れ」
――――彼が死ねば私は・・・独り?
「死にたくないけど・・・立ち去らない」
――――マタ、ヒトリ?
「ならばこの拳王、身にかかる火の粉は完全に叩き潰す」
――――男が女を守る。これを守れないっていうのは、俺の紳士道に反するんでな
――――ヒトリはモウ、イヤダ
「あら残念ね、あなたと戦う気はないのよ」
ロビンは腰に巻いた千年ロッドを素早く取り出すと、前方にかざす
「ぬうっ!!!」
たちまち金縛りに遭ったかのように、ラオウはきおつけの姿勢になる
「これはある女の子からいただいた支給品でね、先端についた眼球の装飾を相手にかざすだけで
相手を意のままに操ることができるの。問題があるとすれば、強大な精神力を」
「ぬわあああああっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
憤怒にまかせたラオウの豪拳が、ロビンの腹部を貫いた。
一般人の眼にはそう写っただろう。しかし次の瞬間
ラオウの右拳には粉々に砕け散った千年ロッドが。
ロビンの腹部には彼女を抱えた男の腕が巻かれていた。
この状況を完全に把握した者は、この場には一人しかいない。
その全てを“予見”し、その総てを“支配”した漢。
その漢の名はスヴェン。スヴェン=ボルフィード。
「レディを傷つけるような真似は、関心しないな・・・
ま、悪く思わんでくれ。これを黙って見過ごすってのは、俺の紳士道に反するんでな」
【茨城県・袋田の滝下流/夕方】
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]:アタッシュ・ウエポン・ケース@BLACK CAT
[道具]荷物一式(二人分)
[思考]1:混乱
2:アイテム・食料の収集
3:死にたくない
(千年ロッド@遊戯王は破壊されました)
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]:胸元を負傷。出血は止まった。大きく傷跡が残る
右腕にダメージ /右手ただれ薬指小指喪失
[装備]:無し
[道具]:荷物一式 不明
[思考]:
1.新たな強者を求めていく
2.いずれ江田島平八と決着をつける
3.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]健康
[道具]荷物一式(支給品不明)
[思考]1:ラオウと戦う?
2:トレイン・イヴ・リンスと合流
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]重傷(左腕に軽い擦り傷、右腕肘から先を切断。行動に支障はなし)
[装備]:ディオスクロイ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾1)
[道具]荷物一式
[思考]1:スヴェンを追う
2:杏子を守る
3:主催者を倒す
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]健康
[道具]なし
[思考]1:ロビンを追う
2:遊戯と合流
>8‐13は掃除屋達の慕情【中篇】です
琵琶湖の湖畔にある小屋にて星矢と麗子は口論していた。
四国へ行き太公望に会うという麗子を引きとめようと、星矢は必死に説得しようとしていたのだ。
星矢が麗子について行ければ少しは安心なのだが、麗子は星矢には越前に付いていてほしいと
頼んだことから話がこじれ、現在に至る。
越前はその様子を焦れったそうに眺めていたが、一つ溜息をつくとドアを開け外へ出た。
「あ、リョーマちゃん、待って!」
「もう待てないスよ。こうしている間にも時間は過ぎてくんスから。
俺は一人で大丈夫。それじゃ」
そういって自転車に乗って去っていってしまった。
「くそ、勝手な奴!」
「もう、仕方ないわね。何とか無事を祈るしかないか……」
今ならまだ星矢の足なら追いつけるのだが、星矢は越前よりも麗子の安全を優先したかったので
そのことは黙っていた。
「じゃあ私たちも四国へ出発しましょうか」
「俺たちがいない間ここに来てしまった人はどうするんです?」
もう麗子の行動は止められないと思っていたが星矢は悪あがきしてみる。
「そうね……琵琶湖まで来たのなら湖畔にあるこの小屋にもきっと気が付く筈だわ。
そういう人たちの為に置手紙を残しておきましょう」
無難な選択である。
麗子を気遣った星矢は手紙が自分が書くといい、麗子も特に反対しなかった。
そして置手紙は完成し、二人は小屋を後にして四国へと向かう。
この時、麗子は星矢の書いた手紙を確認するべきだったかも知れない。
しかし麗子は知人が二人も死んだことによる心労とこれからどうするかを考えることに没頭して
そこまで気が回らなかった。
その星矢は幼少の頃にギリシアへと送られ、それから6年間ずっとそこで暮らしていた。
そのため漢字が使えず、日本の文化にも疎かった。信じてもらえるようなるべく丁寧な言葉を使った。
その結果……
/
これはちゅうこくのてがみです
このびわこにきたひとにはふこうがおとずれます
あいぜんというひとがびわこにひとをあつめているのです
あいぜんはあくにんでひとをころしたりものをうばったりします
これはうそではありません ほんとうです
ぼくのともだちのいしざきさんはあいぜんとであったためしにました
このてがみをみたひとはなかまやであったひとたちにつたえてください
/
……まるで不幸の手紙のようであったという。
一方、大阪から名古屋を目指し進んでいた妲己、遊戯、カズキの三人は滋賀、三重との県境付近の
小さな山に差し掛かっていた。
迂回するほど高い山ではなかったのでそのまま進むことにする。
そしてしばらく登ると山頂でログハウスを発見した。
ログハウスは二階建てになっていて庭にはガーデンテーブルが置かれ、チェアも二脚あった。
「へぇ、居心地のよさそうな家だなぁ」
「そうねぇん、でも誰かが中にいるかも知れないわぁん」
遊戯の上げた感嘆の声に妲己が不安を被せる。
そこにカズキが名乗りを上げた。
「よし。それじゃ俺が中を調べてきます!」
「一人で大丈夫ぅん?」
「じゃあ僕も行くよ。妲己さんに危ない目には合わせられないから」
「頼もしいわん、遊戯ちゃん。それじゃわらわはここで待ってるから気をつけてねん」
仲間を思って遊戯もログハウス探索に手を上げ、妲己は庭で待つことになった。
人一倍鼻の効く妲己はログハウスの中に誰もいないことは既に分かってはいたが
そのことについては沈黙を護った。
その理由は――
妲己は二人がログハウスの中に入るのを確認するとおもむろに振り返った。
キルアはラーメンマンと分かれた後、東へと向かっていた。
そしてその途中、大阪府の県境付近でで妲己たちを発見したのだ。
キルアは絶を使い、彼女達を観察することにする。
マーダーであったなら容赦なく武器を奪い、無力化するつもりであった。
(もう、相手が何でも躊躇はしねぇ。ゴンの為に、他の参加者の為にマーダーは潰す)
大蛇丸相手に引いたことを斉藤に指摘されてからずっとキルアの頭の中にはそのことがあった。
強い相手と見るやすぐに勝つ気をなくしてしまう自分。
しかしそれはイルミの針を抜いたことで克服しているはずだ。
ゴンの脅威となるような奴は無力化させる。殺しはしないが眠ってもらうことにはなるだろう。
そんな決意を胸にキルアは木の上から枝葉に身を隠し、妲己たちの観察を続ける。
(あの薄紅色ってーかどピンクの髪の女……肌に張り付いたレオタードのような衣装といい
もしかして太公望の言ってた妲己って奴じゃないのか?)
藍染を倒した後の情報交換でキルアはその名を太公望から聞いていた。
利己的かつ残酷な性格で、自身の為ならどのような非情な行動も辞さないという。
『あの者は仙界でも比類ない強力な妖怪仙人でのう。奸智に長け、人を誘惑し操ることに秀でている。
傾世元禳がないとはいえその誘惑の術は 侮ることはできぬであろう。
彼奴ならばまず脱出を考えるとは思うが、もしもそれが不可能と判断したならば……
いかなる手段を用いてでも最後の一人となるに違いない。そして妲己の力ならばそれは不可能事ではなかろうよ。
それほどに彼奴は恐ろしい……知略も力ものう』
キルアは太公望の言葉を思い出す。
(そんな危険な奴なら尚更ほっとくわけにはいかない。だがどうする?
あれは仲間もいるようだし少なくともゲームに乗っているようには見えない。
何も知らない振りして接触して情報を探ってみるか?)
見ているとその仲間は女を残してログハウスの中に入っていく。おそらく中を調べに行ったのだろう。
(接触するなら今がチャンスか? どうする!?)
その時、女はおもむろにこちらの方を振り返った。
(ヤバ!)
慌てて木の影へと自身を滑り込ませる。
(絶を使っていたのに気付かれた? いや、偶然……?)
数秒で鼓動を落ち着け、おそるおそるもう一度女の方を覗いてみる。
(いない!?)
そう、既にログハウスの前には女の姿は影も形もなかった。
慌てて木の影から周囲を見回す。サワサワと枝葉が風にそよぐ。
(オレが身を隠してから再び覗くまでに約5.8秒。その一瞬で奴は姿を隠した。
マズイ、完全にオレの存在に気付かれてる。ここは離脱がベスト……)
「あはん、可愛い坊やねぇん。何を探しているのかしらん?」
(何ぃーーーー!?)
なんとその女はキルアのいる枝よりも上部の枝に腰掛けてこちらを見つめていた。
その妖艶な微笑みにキルアの脳は過去最大級の警鐘を鳴らす。
(オレがこの女から目を離してから声を掛けられるまで約9.1秒。ここからログハウスまで約29.7m。
その間にオレに気付かれずにそこに移動したっていうのか!?)
「わらわは見せるのは好きだけど、勝手に見られるのは好きではないのぉん。
わらわたちを監視していた理由、教えてもらえるかしらぁん」
「……何で、オレがいるってわかったの?」
相手は敵意を見せていない。しかし、にもかかわらずキルアの頭の中の警鐘は鳴り止むことはなかった。
女はクスクスと笑うと鼻の頭を人差し指で触れた。
「匂い、よん。わらわは匂いに敏感なのぉん。
フィトンチッドに紛れて人の汗と血の臭気が流れてきたから吃驚したわぁん。
さぁ、それであなたはだぁれ?」
「……オレはキルア。今までずっと一人でさ。仲間にして貰いたかったんだけどあんたたちが殺人者かも知れないって
思って……しばらく様子みてたんだ。でもそうじゃないっぽくて安心したよ」
キルアも笑って頭を掻く。
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ、こいつは危険だ。ここは何とかして切り抜けないと……)
「あらん、そうだったのぉん。ならわらわは大歓迎よぉん、わらわの仲間もきっと喜ぶわん♪
わらわは蘇妲己。今ログハウスを調べているの可愛い男の子が二人、仲間にいるわん。さぁ」
そういうと妲己は飛び降りて、無造作にキルアに背を向けてログハウスへと歩き始めた。
キルアもそれに続いて飛び降りる。
(やっぱり、妲己だった。今アイツは無防備だ。そしてログハウスに仲間がいる。
ここから反対方向に全力で逃げ出せばおそらく奴は追ってこない。ここは……)
その時、キルアの脳裏に斉藤の言葉が甦る。
『貴様は臆病者だ』
『ゴンとやらが心配なのにもかかわらず大蛇丸には手を出さなかった。
それは勿論自分の身に危険が及ぶ可能性が高いから。
しかも俺達に何らかの奥の手があるとも考えていたのに、尋問をそれよりも優先させた。
そこから貴様が実力の違いだけで大蛇丸を通過したのではなく、奴の威圧感に押されたことが予想される。
要するに奴から尻尾をまいて逃げたわけだ、貴様は』
『自分の仲間が襲われていると考えたら居ても立ってもいられない、そんなお人好しばかりと出会ったが、
貴様はそうじゃない。見えないところのお友達よりこの場の自分と安全のほうが大切な人間だ。
このことから貴様の臆病さがよく分かる』
( 違 う ! )
キルアは大きく頭を振る。
(大蛇丸から逃げたのはイルミの針に呪縛されていたせいだ!
コイツを野放しにすればゴンが危険なことも良くわかってる! だったらオレが取る行動は一つ!)
命を懸けてでもコイツをこの場で仕留める! コイツは妖怪。人間とは相容れない別の生物だ!
キルアはザックからベンズナイフを取り出すと無防備に背を晒して歩く妲己に向けて斬りかかった。
しかしその一撃は一瞬で宙に飛び上がった妲己を捕らえきれずに空を切る。
「あらぁん、せっかくお友達になれると思っていたのに……残念だわぁん」
妲己もまた打神鞭を取り出した。
「遊戯は2階を調べてくれ。オレは一階を調べてみる」
「うん、わかったよカズキくん」
二手に別れてログハウスの探索を開始した武藤ズだったが、カズキはこのログハウスに人がいないだろうことには
もう感づいていた。だからこそ遊戯を一人にすることができたのだ。
人がいなくても何か役立つ物が残ってるかもしれない。だったら二手に別れて効率よく探した方がいいというのが
カズキの判断だった。
部屋を一つ一つ調べていくが、武器になりそうな物や水、食料などを見つけることはできなかった。
厨房にまで何もなく、カズキはがっくりと肩を落とした。
この分では2階を調べている遊戯の成果も期待できないだろう。
遊戯を呼んで妲己のところに戻ろうかと、窓から彼女の姿を確認しようとした。
(妲己さんがいない?)
窓を開け身を乗り出す。するとどこからか連続して金属音が響いてきた。
(戦ってる? 助けなきゃ!)
窓枠に足を掛け、ふと遊戯に知らせるかどうか迷う。
しかしもし妲己が殺人者に襲われているなら遊戯はここにいた方が安全だ。
カズキは迷いを振り切って、妲己を救いに窓から外へと飛び出した。
(くそ、コイツ戦う気がないのか!)
キルアは常人には捕らえきれない速さでナイフを振るうが、
妲己は余裕の表情を崩さずにその全てを回避し、あるいは打神鞭で受け止めていた。
しかし妲己は先ほどから防御一辺倒で全く攻撃に転じようとしない。
キルアは思う。妲己は強いが体術そのものに関してはそう自分と大差はない。
相手が余裕を見せているうちにカウンターで爆砕符を貼り付けるか、ベンズナイフの毒で勝負をつけるのが
キルアの戦術だった。しかし鉄壁の防御を崩さない妲己には未だ傷一つつけられないでいる。
(チ、時間を稼いで仲間が来るのを待つつもりか?)
仲間に来られれば自分の形勢は一気に不利になる。キルアは焦り始めていた。
魔弾銃は間合いを取らないと使えない上に普通に撃っても妲己に当てられるとは思い難い。
長剣クライストは自分の身長では最も扱いにくい武器だ。
ベンズナイフと爆砕符。そして自身の念能力のみが今使える全ての武器だった。
(くそ、どうすればコイツを崩せる? 考えろ!)
(あらあら、思ったよりも強いのねぇん。本当もったいないわぁん、カズキちゃんたちより役に立つと思うのに。
やっぱり太公望ちゃんあたりからわらわのことを聞いていたのかしらん。)
妲己も笑みは浮かべているものの決して余裕があるわけではなかった。
キルアの激しい攻撃に防御に徹することで何とか無傷を保っていたがそれがこれからも続く保証はない。
(この子の攻撃は急所を狙うことではなくわらわの手や足にかすり傷さえつければいいという攻撃ねぇん。
つまりあのナイフには毒が塗られている可能性が濃厚。絶対に受けるわけにはいかないわん)
そんじょそこらの毒ならば無力化する自信が妲己にはあったが妙に力を制限されているこの世界で
あまり自分の力を過信するわけにはいかない。
妲己は待っていた。時間を稼ぎながら状況に変化が訪れるのを。そしてその時は近い。
(この分ならあまり力を使わなくても済みそうねぇん)
妲己は薄く笑った。
今まで風を撃たなかったのは力を温存するためである。
幾度目かのナイフを打神鞭で受け止めたとき、妲己は大げさな動きで後ろへと自ら飛んだ。
「きゃあん、やられちゃったわぁんっ」
「んな?」
これにはキルアが驚いた。妲己は倒れ、無防備な姿を晒している。
罠か、と身構えた瞬間キルアはこちらに近付いてくる気配に気が付いた。
(マズイ、気付くのが遅れた!)
「妲己さん!」
木陰からカズキが現れ、ドラゴンキラーを振りかぶってキルアへと打ちかかった。
ギィンッ
それをベンズナイフで受け止め、キルアは瞬時に間合いを取る。
「妲己さん、大丈夫ですか!?」
「ええ、何とか大丈夫よぉん……ありがとうカズキちゃん」
「あいつは?」
「仲間になりたいって言うからカズキちゃんたちの所に連れて行こうとしたらいきなり斬りかかってきたのぉん。
怖かったわぁん……あの子、このゲームに乗っちゃったのねぇん……」
カズキはグッと歯を喰いしばるとキルアを睨んだ。
(もうブラボーのような思いは……妲己さんや斗貴子さんはオレが護る!)
「ゲームに乗っているなら容赦はしない! とッ捕まえてふん縛ってやる!!」
咆哮とともにカズキはキルアへと攻撃を仕掛けた。
先ほどの妲己との攻防とは逆に今度はキルアのほうが防御一辺倒になる。
カズキが手強いのではない。キルアは戸惑っていたのだ。
(なんだコイツ? 妲己の仲間だから強いのかと思ったけど……。
一般人にしては戦るほうだけど、これならまだあの沖田とか斉藤って奴らのほうがマシだ)
拍子抜けしたがこれならまだ充分勝算はある。この男も妲己に騙されているだけのようだから殺す必要はない。
キルアはカズキの攻撃を掻い潜り、懐に入るとカズキの鳩尾に掌底を撃った。
「イズツシ!」
バチィッ!
まるでスタンガンのようにカズキの身体に電流が奔る。
「くぁあ……」
カズキは全身の筋肉を収斂させ……成す術なく倒れていく。
(電撃……スタンガン? 駄目だ、ここで倒れたら妲己さんが……)
目に映る地面はスローモーションで近付いてくる。
(せめて核鉄があれば……武装錬金が使えれば……)
自分の心臓にはある。しかしこの世界では自分の核鉄を使って武装錬金を行うことはできなかった。
(駄目だ! そんなこと言ってる場合じゃない! 戦うんだ!
立ち上がって妲己さんを、斗貴子さんを護る為に!)
ドクン、と鼓動が鳴った気がした。
ドサッと音を立ててカズキの身体が地面へと落ちる。
キルアはもうカズキには目もくれずに妲己の方へと身構えていた。
「本当に何にもないね……これじゃ一階も似たようなものだろうなぁ」
(ああ、でもまだあそこのサロンは調べてないだろう、行こうぜ相棒)
「うん」
ログハウスの二階を調べていた遊戯は、全く成果を上げられず落胆していた。
「せめて僕にも使えるような武器があったらなぁ」
たいした期待も込めずにサロンの扉を開く。
花瓶、カーテン、ティーポット。やはり武器や役立ちそうなものは置いていない。
「テーブルの足でも折って棍棒にしてみようかな」
(止めたほうがいいな、生兵法は怪我の元だ。自分に出来ることをしっかりと考えることが大事だぜ、相棒)
「……うん、あれ?」
部屋の中央に置かれている円卓にトランプが置かれているのを見つけた。
「これ役に立つかな?」
(ああ、目印にもなるし合図や暗号なんかにも利用できるかもな。持っておいて損はないだろうぜ)
「そうだね、じゃあ持って行こう」
遊戯はトランプをポケットに入れると、妲己の元に戻るべく階段に向かった。
――それに……闇のゲームにも使えるかもな……
その裏の遊戯の呟きは遊戯に聞こえることはなかった。
妲己の思惑はキルアとカズキが打ち合っている間に打風刃でキルアをピンポイント攻撃することだった。
カズキの力ではキルアに抗しきれないのは解っていたが、しばらく撃ち合えばキルアの隙を突けると思っていた。
しかし、カズキはキルアの電撃によってあっさりと崩れ落ちる。
(あらあら、キルアちゃんがあんな技を持っていたのは驚いたけどカズキちゃんも随分と情けないわねぇん。
やっぱり武装錬金のない錬金の戦士というものは期待できないのねぇん……仕方ないわぁん)
妲己は打神鞭を構え、力を込める。多少の消耗は覚悟して全ての力を持ってキルアを屠ることに決めたのだ。
風が、渦巻き始め……そして止んだ。
(あらぁん?)
妲己は打神鞭を下げた。
カズキが再び立ち上がったのに気付いたのだ。しかしその姿は――
(電撃を見せたのは不味かったか? いや、格上相手に出し惜しみしてもしょうがねぇ!
ここは全力でいく!)
ナルカミ―落雷―で妲己の動きを止め、爆砕符で勝負を決める。
キルアは瞬時に戦術を組み立て、いざ飛び出そうとしたその時!
ドシュウゥウウッ!!!
キルアの全身から蒸気のようにオーラが溢れ出し、吸い取られていく。
「な、何だよコレ!?」
物凄い勢いで消耗していくのに驚愕するキルア。
(な、何だ? オーラを吸い取る能力者?)
振り向く、そこには一人の少年が立っていた。
淡く光る蛍火の髪、熱を帯びた赤銅の肌、先ほどまでのカズキとは全く違うカズキ。
黒い核鉄を命にしたことで人間とは全く別の存在へと武藤カズキが変化した姿。
最初にこの姿に変化したものの名をとってヴィクター化と呼ばれる状態であった。
この状態に変化したカズキはヴィクターIIIと呼ばれる。
強い意志の力と共にカズキはキルアを睨んだ。
「この力は……使いたくなかった。でも、こんな力まで制限されていて良かった。
そのおかげで妲己さんにまでエネルギードレインが及んでない」
本来のエネルギードレインは一般的な学校校舎全体に及ぶほどの広い効果範囲を持つ。
しかしこの世界ではカズキの周囲7〜8m程までに抑え込まれていた。
「う、うおおおおおお」
「エネルギードレインを君一人に集中する。死にはしないけどしばらくは身動きも取れなくなる……」
「こいつ、人間じゃ……ない!?」
急激に身体から力が抜けていき、がっくりとキルアは膝を突く。
ふと妲己を見ると薄っすらと笑みを浮かべて楽しそうにキルアを見つめていた。
(カズキちゃんがこんな隠し玉を持っていたなんて……黙っているなんて水臭いわぁん。
でもこれで面白くなってきたわねぇん♪)
その妲己の冷たい瞳を見てキルアは確信する。
(ヤバイ、コイツに殺す気がなくてもこんな所で倒れたら妲己に殺される!)
この期に及んで四の五言っていられない。
殺 ら な け れ ば 殺 ら れ る !
「悪いけどオレまだ死ぬわけにはいかないんだよねっ!」
キルアはオーラが空になる前に勝負を仕掛けた。
ナイフを鞘に収めると肉体操作で爪を伸ばし、硬化させた貫手でカズキの心臓を貫く!
電撃のダメージから回復しきれていなかったカズキはかろうじてキルアの腕を掴むが、
攻撃を止めることまでは出来なかった。
「ぐあぁっ!!」
カズキの胸に沈み込んだキルア手は心臓ではなく何か金属製の板片を掴み取る。
(心臓がない! コイツやっぱり人間じゃない!!)
それがキルアの最後の躊躇を払拭させた。
渾身の力を込めて金属片を引き摺りだす。
「ガッ、ハ……」
小さく喀血し、彼の命そのものである黒い核鉄を奪われたカズキは崩れ落ちる。
――キミと 私は 一心同体だ ―― …
(斗貴子さん……ゴメン、約束、守れな……)
倒れる勢いに任せてカズキは最後の力を振り絞りキルアにしがみつく。
(……妲己、さ……今のうち……逃げ……)
―――――――――
最期まで……他人の身を案じながら、武藤カズキはその短い生涯を終えた。
「く、そ……! 離れろ!」
エネルギードレインによって大半のオーラを吸収されていたキルアは力が思うように入らず
しがみ付いてきたカズキを振りほどくのに数瞬の時間を要する。
そして妲己にとってその数瞬は絶好の攻撃の機会だった。
「うう、立派だったわぁん、カズキちゃん。その死は無駄にはしないから安心してお休みなさぁい!」
「疾ッ!!」
妲己の振るう打神鞭から風の刃が撃ち出される。
完全回避不可能なタイミングで迫る風の刃をキルアは咄嗟に左手を翳して受け止めた。
ボギッ、メキッ ボリボキ……
残り少ないオーラを全て左手に収束させる「硬」を使って受け止めたものの
打風刃の威力を打ち消すには及ばずキルアの指から肘、肩までの骨が連鎖的に砕ける。
そしてその威力に足が踏ん張りきれずその場から10mほども飛ばされてしまった。
「ぎぃッ……」
激痛と叫び声を必死に堪えてキルアは起き上がる。
妲己は追い討ちをかけようとこちらに向かって駆け寄ってきていた。
(く、このままここにいても殺されるだけだ。ゴンを護るためにはオレはまだ死ねないんだ!
悔しいけど逃げるしかない!)
キルアは足元の石ころを拾うと片手で器用に爆砕符を巻きつけ、それを妲己に向かって投げつけた。
爆砕符は貼り付けてから時間経過で起爆するが、衝撃を受けた際はその瞬間に起爆する。
これで妲己が倒せるなどとは思っていないが何とか逃げる時間は稼げるはずだ、とキルアは判断する。
しかし妲己は向かってくる石礫に気付くと傍にあった「モノ」を拾い上げ、投げつけた。
それは……カズキの死体。
空中で石礫と接触した瞬間、爆発が起きる。
カズキの身体は砕け散り、爆発の衝撃から妲己を護った。
妲己は風を操作して爆風からも身を護り、一瞬の溜めの後もう一度打神鞭を振るう。
「疾ッ!」
風のリング、打風輪が爆煙の間を縫ってキルアへと襲い掛かった。
「ち、くしょぉお!」
ザ ン ッ
打風輪はキルアの右腕を二の腕から切断し、その地に落とす。
キルアは倒れ、懐から黒い核鉄が零れ落ちた。
しかしキルアは正真正銘最期の力を振り絞って立ち上がると今度こそ一目散に逃げ出す。
「逃さないわぁん!」
「妲己さん!」
追撃しようとした妲己だが、横合いから掛けられた声に動きを止め振り向いた。
声を掛けた相手は……。
「……遊戯ちゃん」
そこには信じられないといった表情で妲己を見つめる遊戯が立っていた。
キルアは走る。
生き延びる為に、生き延びてゴンを護る為に。
オーラを殆ど消耗してしまい体が鉛のように重い。
後ろも振り返らずにただ走る。
右腕から血が滴るが、左腕も使い物にならないため止血もできない。
魔弾銃のベホイミを使おうにも銃を撃つこともできない。
意識が朦朧とし、今にも倒れて気絶してしまいそうだが強靭な意志の力で彼は走る。
誰かを見つけて助けてもらうしかない。今の自分の状態では信用できるか等とは言っていられない。
(友達なんだ……やっとできたオレの友達なんだ! 護りたいんだ!!)
その為に生き延びるのだ。
そして森を抜けた所で彼は一人の少年を見つけた。
森から飛び出し、キルアは少年へと迫る。
キルアは口を開いたが、それは声にならずただ空気が漏れ出るだけだった。
「ちぇ、ついてないなぁ……」
越前リョーマはそう悪態を吐き、チェーンの外れた自転車を修理している。
滋賀県と大阪府の境でチェーンが外れてしまったのだ。
「結構時間食ってるし、早く直さないと」
いつ襲われるとも限らないし、と一人ごちようとした所で
森から「何か」が越前に向かって飛び出してきた!
「う、うわぁっ!」
反射的に立ち上がり、傍に置いてあったラケットを掴み取り構える。
森から飛び出してきたのは自分と同じくらいの少年。
しかしその鬼のような形相で大きく口を開き、自分に向かって駆けて来るその様は
越前に襲い掛かってきていると錯覚させるには充分だった。
ラケットを振るった。
ガツッ
越前は何かを叫び、恐怖に混乱しながらラケットを振るい続けた。
最初の一撃で鎖骨を折られた。
次の一撃で頬骨が砕けた。
全くオーラを出すことができないキルアは常人以下の防御力しか持たない。
鍛え上げられた身体といえども、ボロボロの身体では越前の攻撃をどうすることもできなかった。
――おい……ちょっと待ってよ……マジかよ……
オレはゴンをまもらなくちゃいけないんだよ……頼むよ……オレは……
頭蓋骨が陥没する。
額が割れた。
―― 待ってくれよ…… ――オレは……ゴンを……、光……光が見える……ゴン、おまえなのか……?
ゴン……オレも…… 一緒に ―――
「ハァ、ハァッ、ハッハァ、ハァ……」
呼吸を荒げ、越前はもう動かなくなった少年の死体を見下ろしていた。
(なんだ……これ?)
(この子、本当にオレに襲い掛かってきたの?)
呆然と血に濡れたラケットを手にしたままキルアの死体を見つめる。
(腕がない……この子、襲ってきたんじゃなくてホントは助けを求めてたんじゃないの?)
「……オレ、なんてことを……」
どうすればいいのか分からず越前はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
【滋賀県 琵琶湖畔の小屋→四国へ/午後】
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】食料8分の1消費した支給品一式
【思考】1、麗子と共に四国へ行き、太公望達と合流。 藍染の計画を阻止
2、藍染、ハーデス達を倒す。
【秋本・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】部長、中川の死による精神的ショック(中)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料8分の1消費した支給品一式
【思考】1、四国へいき、太公望達と合流
2、藍染の計画を阻止
3、主催者の打倒。
【滋賀県と大阪府の境(三重寄り) /午後〜夕方】
【越前リョーマ@テニスの王子様】
【状態】少々の疲労 空腹
【装備】血に濡れたテニスラケット、チェーンの外れた両さんの自転車@こち亀、線路で拾った石×4
【道具】荷物一式(半日分の水を消費)
サービスエリアで失敬した小物(手ぬぐい、マキ○ン、古いロープ
爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
【思考】1:茫然自失
2:大阪へ向かい新八を探す
3:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
4:仲間(乾、跡部)との合流。
【滋賀、三重の境にある小山/午後〜夕方】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]健康
[装備]打神鞭@封神演義 魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]荷物一式(一食分消費) 黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
[思考]1:キルアの追跡を諦め、遊戯と話す
2:仲間と武器を集める
3:本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
4:ゲームを脱出。可能なら仲間も脱出させるが不可能なら見捨てる
【武藤遊戯@遊戯王】
[状態]健康
[装備]無し
[道具]荷物一式(一食分消費)
[思考]1:妲己に事の次第を問いただす
2:ゲームを脱出するため仲間を探す(斗貴子・杏子を優先)
3:ゲームから脱出し元の世界へ帰る
[闇遊戯の思考]:妲己の警戒を続けるが、妲己が善人ならばと希望を抱いている。また『闇のゲーム』執行を考えている
【キルア@HUNTER×HUNTER死亡確認】
【武藤カズキ@武装練金死亡確認】
【残り75名】
キルアの道具とカズキの道具はその場に放置されています。
(爆砕符×2@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、
クライスト@BLACK CAT、魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×7 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1
焦げた首輪、荷物一式 (食料1/8消費))
(黒い核鉄III@武装錬金 ドラゴンキラー@ダイの大冒険 荷物一式(一食分消費))
状態表修正
【武藤遊戯@遊戯王】
[状態]健康
[装備]トランプ
[道具]荷物一式(一食分消費)
[思考]1:妲己に事の次第を問いただす
2:ゲームを脱出するため仲間を探す(斗貴子・杏子を優先)
3:ゲームから脱出し元の世界へ帰る
[闇遊戯の思考]:妲己の警戒を続けるが、妲己が善人ならばと希望を抱いている。また『闇のゲーム』執行を考えている
街道の真中には右拳を突き出した拳王が。
その右拳の数m先には女性を抱きかかえた紳士が。
互いにその存在を認め、睨み合っていた。
(さて、どうするかな・・・
正直ギャンザみたいなタイプはあまり得意じゃないんだが、
ロビンを連れて逃げ切れるとも思えない・・・仕方ない)
「ロビン、途中で通り過ぎた二人組がいただろ?一人が俺の相棒でな。
多分こっちに向かってるはずだから、とりあえずそこまで逃げな」
スヴェンは抱えていたロビンを下ろすと、今まで見せていた
スケコマシのような態度が一変、険しい表情になる
「え・・・!?紳士さんはどうするの?」
「アイツは俺が、引きつける」
「そんな・・・無理よ」
「早く行け!!」
怒号を放つスヴェンの背中が、ロビンには彼らの背中と重なる。
剣士と。砲撃手と。コックと。航海士と。医者と。・・・そして船長と。
――――ああ。そうだった。
私は死にたくない。私は誰にも裏切られたくない。
でも彼等は・・・そして目の前の男は・・・
「私を・・・守ってくれるの?」
「・・・ああ。」
次の瞬間。
ロビンはスヴェンと肩を並べた。スヴェンにケースを差し出しながら
「何してんだ」「・・・苛つくのよ。あなたも、前の男も」
スヴェンはケースを受け取りながら、訝しげな顔でロビンを見る。
「私はね、賞金首なの。皆して私を舐め過ぎよ」
「そりゃあ悪かったな。じゃあロビン。
・・・そういうことでいいんだな?」
「ええ。女だから手を出さないですって?絶対承知しない」
「ははは、威勢のいい事で」
危険な状況下で掃除屋と海賊は手を組んだ。たとえそれが
無謀な挑戦であっても。ただ自尊心を守るためだけに。
「ウヌには北斗七星の脇に輝く星が見えるか?」
均衡を破ったのはラオウだった。
ヨーコの治療があったとはいえ、胸元にはV字の傷跡に二つの弾痕。
そして右手は爛れ薬指、小指は激しい損傷。決して万全とはいえない。
しかし目の前には二つの壁。覚悟を決めた堅固な壁。
立ち向かわずして何が拳王か。
打ち砕かずして何が世紀末覇者か。
ラオウに撤退の二文字は無かった
「いってる意味が分からないな。そんなことより、
先に言うべきことがあるだろ?レディを傷つけた罪は重いぜ」
「フン、歯向かう者は倒すだけよ」
ラオウは両足に力を込めると、闘気を放ちながら突っ込んできた
「・・・屑が。行くぜロビン、サポート頼む」「・・・分かった」
ラオウはすぐさま間合いを詰めると、拳を唸らせスヴェンに打ち込む。
スヴェンは愛用のケース――アタッシュ・ウエポン・ケースを構え、
後方にジャンプ。完璧なタイミングでラオウの豪拳をかわした。
スヴェンは後方に飛び退きながらケースを右手で構える。
ガコン、という音と共にケースの側部からマシンガンの銃口が覗く
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
「ぬうっ」
予想外の攻撃に驚きながらも、ラオウは瞬時に側転で左に逸れる。
「六輪咲き(セイスフルール)!!」
二人が神速の攻防を行っている間に、
距離を取りチャンスを伺っていたロビンがラオウの四肢を絡めとる。
しかしラオウはそれをものともせず強引に払い退ける。
「フン、ぬるいわ!」
だが、六本の可憐な腕に気をとられたわずかな隙を、スヴェンは見逃さなかった。
ボシュッ!
ケースから射出された“ソレ”は、ラオウの元に飛んでいった
否、ラオウの目には“覆い被さった”ように見えただろう。
なぜなら飛んできたソレはロビンに気をとられている隙に上空まで飛んできて、
ラオウが見上げた時にはソレが鈍色の錘にかこまれた鉄製のネットに展開されたのだから。
「捕縛ネット・・・その網からは、簡単には逃げられないぜ」
「ぬるいと言うのが、分からぬかあぁぁっ!!!」
小細工無用、ラオウはその闘気のみで鉄製の捕縛網を引きちぎった。
「すごいなアンタ。でもこの電磁ムチを喰らっても、その余裕は保てるかい?」
スヴェンはそれを見越したかのように、ラオウの元へ一本のロープを射出する。
網を解くために両腕を大きく広げたラオウの胸元へそれは飛んでいく。
その到達点は勝利マンと浦飯幽助が作った傷跡。即ち胸部。
普段のラオウにはダメージすら与えられないかもしれないそれは、
能力制限を含めた様々な奇跡が重なり、ラオウの胸に届いた。
バチバチバチバチィッ!!!!!!!!
「ぐをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!」
「倒れろこの野郎ォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」
(頼むぜ、こっちはもう限界なんだ!)
ラオウの雄たけびが。スヴェンの怒号が。森じゅうに響き渡る。
「杏子、すぐそこみたいだぜ。そのロビンて娘も俺の相棒も。聞こえたろ?」
「今の叫び声・・・ねえ、二人とも何があったの?」
トレインと杏子は、ロビンとスヴェンを追って来ていたが、予期せぬ轟音に戸惑っていた
「敵が現れたと見て間違いないだろうな」
「そんな・・・どうすれば」
「いいか杏子、あそこにログハウスがある。
いまから杏子は一目散にあそこへ向かって走れ。これから俺が様子を見てくるから
すべて片付いたら迎えに行く」
「けど・・・」
躊躇する杏子に自分の荷物一式を預けると、
トレインはウルスラグナを左手に抱え、轟音の方角へ向かっていこうとした。
「荷物、頼んだぜ」「ま、待って。ログハウスにトレイン君以外が来たらどうするの?」
杏子の問いも最もである。もうすぐ日が沈むというのに、暗いログハウスでは
人の識別は難しく、戸を開けるにしても分厚い扉越しには声が伝わりにくい。
「う〜ん・・・じゃあこうしよう、この首にかかってる鈴の音を鳴ら・・」
リン――――――リン。
「?」
「どうしたの?」
「いや、なんでもねえ。ログハウスの前で鈴の音を鳴らした奴が
俺、あるいは俺の仲間だ」
「トレイン君以外?」
「ああ。もしもってこともあるしな」
「トレイン君、何を言ってるの?」
「じゃあな、杏子。戸締りはしっかりしとくんだぞ」
「待って、トレインく・・・」
次の瞬間、トレインは杏子の前から姿を消した。
黒猫が森の中を駆ける。信頼する相棒の下へ。未だ見ぬ強敵を感じながら。
(ちくしょう、俺が行くまで間に合えよスヴェン。お前がいなきゃ、
主催者に不吉を届けられねえ。首輪が唯の爆弾なら冷凍弾“フリーズブレット”さえ
見つければどうにかなると思ってたんだが、どうやらこいつはもっと精巧らしい。なんせ、
盗 聴 器 ま で つ い て る ん だ か ら よ ! )
黒猫は森の中を駆ける。信頼する相棒の下へ。未だ見ぬ危機を感じながら。
「嘘だろ・・・」
「フン、この拳王にはいかなる小細工も通用せぬ」
スヴェンは電磁ムチに電流を流しつづけた。
その行程を終えてなお、拳王は立っていた。驚愕する二人を尻目に、ラオウは
先ほどと全く劣らぬ動きで向かってきた。
(さっきまでの戦いで、俺とコイツのスピードはほぼ互角。
だから攻撃もなんとか見切って避けられたし、タイミングよく攻撃も当てられた。
当たり前だよな。支配眼“グラスパーアイ”を使ってたんだから)
支配眼とは、自身への体への負担が大きいが、
目に見えるすべての動きを支配してスロウにし、そして自分だけが
普段に近い感覚で動くことができるというスヴェンの切り札である。
その中で、スヴェンとラオウのスピードがほぼ互角だったなら、連続使用が不可能な
者に勝ち目など無い。
ラオウの神速、神域の豪拳が迫る。スヴェンはその拳に全く反応できず、庇う様に出した
ケースに拳が叩き込まれる。
「ぐおっ」「紳士さん!!」
その衝撃でスヴェンは数m吹き飛ばされる。転がりながらもスヴェンは必死で体制を整える。
「もう終わりか。さっきの勢いはどうした」
眼前にせまるラオウ。
「紳士さん大丈夫!?」
「へっ、俺はたいしたダメージを受けちゃいないし、
このケースがあるかぎりアイツの攻撃は何度でも防げる」
「ほう、そのケースでか?」
スヴェンが右手を見るとその先には、先ほどの攻撃で粉々に砕け、拉げた鉄の塊だけがあった
「う・・・」
「つまらぬ小細工ばかりであったが、その勝利への執念、敵ながら見事であった」
スヴェンに豪拳が振り下ろされる。
「三十輪咲き(トレインタ・フルール)!!」
ラオウの体中に生えた無数の腕が防害する
「ハング・・・」
「邪魔をするな!!」
しかしロビンの技は終焉を迎えることは無く、逆に彼女が終焉を迎えた。
ラオウの矛先はロビンに向かい、矛は彼女の体を貫いた。
防御する暇すら与えず、ロビンの肋骨は全て砕け、血を吐きながら、泥のように蹲った。
やがて、ピクリとも動かなくなった
「ロビン・・そんな、ロビーーーンッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「そう悲しむな。女もお前もよくぞ我に臆せず立ち向かった。
その心意気やよし!この拳王と拳を交えた事、あの世で誇るがいい」
膝をつき項垂れるスヴェンにさえ、容赦の無い鉄槌が迫る。
そしてラオウは全てを終わらせるべく、右手を高々と上げた。
「・・・この一発は、強力だぜ。」
ラオウのちょうど二の腕の辺りに、光速の鉄球が“撃ち放たれた”。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
ラオウと鉄球は一体となり、幾つもの木々を突き破り飛んでいった。
スヴェンには全てが理解できた。完璧な射撃。見たことのある光線弾道。
「・・・トレイン。」
「よっ」
付近の木の枝に乗っていたトレインは、スヴェンにいつもの笑みで手を上げた。
「遅ぇよ馬鹿」
「何ぃ?助けにきてやったのに馬鹿とはなんだ馬鹿とは」
「・・・そうだ、ロビン!!」
トレインの言葉を無視し、スヴェンはロビンの元へ駆け寄る。
木から降りたトレインは、物言わぬ女性を見て、取り乱し女性に近づく相棒の姿を見て悟る
「ロビン、ロビン!」
スヴェンはロビンを抱きかかえ、必死で揺さぶり呼びかけるが、彼女の体は
鈍く、重く、冷たくなっていく。
「スヴェン、もう、その娘・・・」
「俺が守るって言ったんだ!死なさねえって誓ったんだ!!」
彼女を抱え、何度も何度も揺さぶるスヴェン。駆け寄ってくるトレイン。
「スヴェン・・・!」
「お、俺が守るって・・」
「スヴェン!」
「守るって・・・うう・・・・」
「スヴェン避けろおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」「!?」
抱える女性もろとも、スヴェンの嘆きも悲しみも。全て拳王の拳に飲み込まれた。
「スヴェン!!畜生!!!!」
残段数0のウルスラグナをハンマー型に切り替え、トレインは拳王に飛び掛った
「うおおおおおお!!!!!!!!!」
拳王は疲労のせいか、トレインの怒りの一撃はまともにヒットする。
「なんでてめえが生きてやがる!!奪ったのか!?俺の右腕だけじゃ飽き足らず、
あの青年の命も!幽助の命も!あの娘の命も!スヴェンの命もおおおお!!!!!!!」
「五月蠅いいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!!」
拳王の闘気が、豪脚が、豪拳がトレインを襲う。
トレインの怒りが、眼光が、爪がラオウを襲う。
トレインはその闘気に吹き飛ばされた。電磁砲“レールキャノン”に加え、
怒涛のラッシュでついに拳王の右腕は千切れ飛んだ。
「ぐうう!!」「がああ!!」
そして吹き飛ばされ体制を大きく崩したトレインに、ラオウの左拳ストレートが。
「かああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
「あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「トレイン!!」
それは中心核に闇を抱く球。二人の間に投げられたそれが割れると同時に、
空間に穴を穿ち二角を持つ鬼面のような岩が出現した。
「こんなもの、もろともに砕いてくれる!!!!!!!!」
ラオウの拳は岩に止められる。しかし岩にひびが入り弾ける様に壊れる。
「こんなもので我を止められると思うな!!」
ラオウの進行は止まらない。しかしそれを投げたスヴェンは、勝利を確信した
現れたのは二振りの長剣。その名を星皇剣。
「トレイン!それを使え!!諸刃の剣だが、万物を切り裂く名刀だ!!」
「スヴェン・・生きてたのか。良かっ・・て諸刃の剣ぃ!?」
「かあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「早くしろおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
「畜生おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっッッッッッッ!!!!!!!!!」
トレインの左腕につかまれた星皇剣とラオウの左拳が激突した。
カッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「なぜ砕けぬ・・・・・なぜ砕けぬう!!」
「守るものがあるからだ・・・なんてキザなこと言うつもりはねえけどよ。
どうやら相打ちみてえだぜ」
ラオウの左腕から右胸にかけて、くっきりと斬痕が描かれ、トレインの左腕は音を立てて
砕け、拉げる。そして星皇剣も消滅していった。
「がはっ!」
拳王の一撃はトレインの胴までその衝撃を伝えていた。吐血と共に蹲るトレイン。
死期を悟ったラオウは、悔しさと虚しさ、そして清々しさを同時に感じていた。
「ウヌの名、聞いておこう」
「トレイン=ハートネットだ。アンタは?」
「世紀末覇者、ラオウ」
「強えな、アンタ」
「ウヌも以前遭った時より、若干迅かった」
「俺はもともと左利きだからな」
「フフフ」「ククク」「カカカ」「ヒヒヒ」
「「ははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」」
ズウン、という音を立ててラオウは大の字に倒れこんだ。
「トレイン!!」
「スヴ・・ェン」
駆け寄ってきたスヴェンに、トレインは力を振り絞って答える。
「トレイン!!」
「スヴェン・・・」
スヴェンはトレインを抱き起こす。
「大丈夫か」
「当たり前じゃねえか」
「そうだよな、お前は殺しても死なないくらい丈夫だよな」
「いやあ・・今回は相手が丈夫過ぎたぜ」
「ははは、ちげえねえ。」
「スヴェン、よく聞けよ。ここから西に進むとログハウスがある。
そこに杏子って娘がいるから助けにいってやれ。」
「トレイン?何を言って」
「この鈴を鳴らせば信用してくれる。」
そう言うとトレインは鈴をスヴェンに渡した。
「トレイン・・・」
「俺もう、ダメみたいだ・・・」
「トレイン!!」
「(コノクビワハ、トウチョウキガツイテル)」
「え?」
それは口唇術。口の動きだけで相手に言葉を伝える、闇に生きるものにとっては常識の技術
「じゃあな、スヴェン」
「トレイン?」
それっきり、トレインは動かなくなった。
そのとき丁度、夕日が沈んでいく。今日の太陽の仕事はおわった。
三人の燃える様な命も。紳士が募らせる感情とは裏腹に。
【茨城県・袋田の滝下流/夕方】
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:体中に裂傷、捻挫多数
左腕から肩にかけて複数の内出血
[装備]:無し
[道具]:星皇剣@ダイの大冒険(一振り)、荷物一式
[思考]:1.杏子を探す
2.イヴ・リンスと合流
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]健康
[道具]荷物一式(トレインのもの)
[思考]1:鈴の音を待つ
2:遊戯と合流
(ウルスラグナ@BLACKCATは破壊されました)
(アタッシュ・ウエポン・ケース@BLACK CATは破壊されました)
(ラオウの荷物はその場に放置されています)
【ニコ・ロビン@ONEPIECE 死亡確認】
【ラオウ@北斗の拳 死亡確認】
【トレイン・ハートネット@BLACKCAT 死亡確認】
【残り72人】
「おいおい、まるで都市ごと神隠しにでもあったみたいだな」
仙道彰のぼやきは、誰にも聞こえることはなく。
彼は今、日本の首都、東京にいた。
そう。確かに日本の首都。
首都といえば国の中心的都市であり、人の賑わう場所である。
しかし、仙道が歩くそこは――無人の東京。
仙道彰、デスマスク、槇村香の三名は、ここ東京で他の参加者の捜索に当たっていた。
参加者の一覧を見てもわかるように、このゲームに参加している者は、なぜか日本人が多いようである。
まだ生き残っているはずの香の仲間、伊集院隼人と野上冴子も日本人。
仲間との合流を目指すなら、こういった人の集まりそうな大都市に来る者が多いとふんだのだが……
「おーい! 誰かいないかー!?」
いくら仙道が呼びかけようが、返ってくる言葉はない。
無人、無人、無人。
そこには、仙道以外の人間は存在しなかった。
「仙道君、どうだった?」
「ああ、香さん、デスマスクさん。いえ、こっちは収穫なしです。そっちは?」
「駄目だ。上からも探してみたが、ひとっこ一人見つからねぇ」
デスマスクと香、二人は仙道のすぐ横に聳える建物――この都市のシンボルともいえる、東京タワーの中から出てきた。
この都市に着いたとき、あまりの人気のなさから、仙道は二手に分かれての捜索を提案した。
誰が潜んでいるかもわからない場所で、そんな危険なまねはできないと二人に反対されたのだが、
『大丈夫ですよ、俺にはこれがあります』と、あのダーク・シュナイダーをも押さえ込んだカードを片手に、早々に東京の街を走り去ってしまった。
取り残されたデスマスクと香は、仕方なく東京タワー内の捜索に当たったのだが、結局こちらも成果は仙道と同じ。
誰もいない東京タワーの前、三人は寂しげにたたずんでいた。
「しかしこれからどうする? 東京にこうも人がいないとなっちゃあ、おまえさんの仲間もどこにいるかわからないぜ」
「そうよね……考えられることいったら、他の大都市……たとえば大阪なんかに集まっていると思うの」
「そうですね。もし西日本に近いところにいたとなれば、そっちのほうに行く可能性が高い。しかし、やっぱりこの人気のなさは異常だ。まだ九十人近くは残っているはずなのに、東京を目指す参加者が誰もいないなんて」
考えられることは、三つ。
一つは、参加者が西日本に固まっている場合。
このゲームの開始地点は参加者ごとにランダムのようだし、必ずしも日本全体に均等に割り振られているとも言えない。
下手をしたら、東日本にいたのは仙道たちが出会った数名だけだったということも考えられなくはない。
二つ目は、日本を知る参加者が西日本に固まっている場合。
日本人が多いのはわかりきっているが、その日本人が全員、東京とはかけ離れた地点にいるとしたら。
東京よりもまず、目先の大都市へと向かうだろう。
それでなくてもまだ一日目。東京を目指していても、まだ着けていないという可能性もある。
そして、最悪なのは三つ目。
「ひょっとしたら、ここら一帯にいた奴らは、もう全員脱落しちまったのかもな」
山梨には、ダーク・シュナイダーという危険極まりない輩がいた。
ダーク・シュナイダーが、とは言わないが、彼のような強大な力を持った者が、東京を目指す者を片っ端から一掃してしまったとしたら。
ただでさえ人が集まりやすい大都市。狩人が待ち伏せをするには、絶好のポイントでもある。
「まさか……こうしてる今も誰かに狙われてるなんてことは……」
「いえ、それだったら俺が一人になったときに襲っていたでしょう。たぶん、純粋に今ここには人がいないんだ」
「ここに誰もいないとしても、この周辺に誰かいる可能性はある。いたとしても、マーダーの可能性が高いがな」
デスマスクの危惧が現実のものだとしたら、このままここに留まるのは危険である。
しかし、やはりここは日本の首都。待ち続ければ、そのうち人が集まってくる可能性も十分にある。
だが、忘れてはいけない。彼らには、今もどこかでしぶとく生き残っているであろう、もう一人の仲間がいることを。
「……洋一君のことも心配だし、一度山梨に戻ってみない?」
東京タワー捜索中も、香はずっとそのことが気がかりだった。
ダーク・シュナイダーに襲われたときに死んだと思われた、ついてない少年。
彼と別れてから数時間。彼の生存を知ってからさらに数時間。
これ以上放っておくのは、さすがに可哀想というもの。
ひょっとしたらもうすでに、新たな襲撃者に襲われて「ついてねぇー!」とか言っているかもしれない。
それでも、不思議とまだ死んでいない気がするのはなぜだろう。
「そうですね。このままここに留まっていても、当分は誰も来そうにありませんし。先にそっちと合流しましょう」
「だがもうすぐ放送だぞ? ひょっとしたら、そいつの名前も読み上げられたりしてな」
「もう、そういう冗談はやめてよね!」
これからの行動を決めた三人は、その場をあとにする。
目指すは山梨、香がダーク・シュナイダーに襲われた地点。
まだそこに洋一がいるかはわからないが、怪我で動けない状態だったりしたら大変である。
彼らの危惧どおり、東京周辺には何人かのゲームにのった参加者がいた。
そのうえ、香やデスマスクの仲間も関東にはいない。
それらのことを考えたら、その場を離れたのは正解といえるかもしれない。
誰とも会わないということは、なんのハプニングも起こらなかったということ。
おかげで、三人のチームワークは着実に高まっていった。
しかし……彼らは知らない。
探し人である洋一が、すでに彼らの予想を遥かに越える不運に巻き込まれていることを。山梨にはもういないということを。
ついてない少年に振り回されて向かう山梨には、なにが待っているのか。
凶悪なマーダーに襲われる可能性もあれば、誰にも会えず、日本中をたらい回しにされるという可能性もある。あくまで、可能性だが。
だがなんとなく……三人の紅一点である香には、世界一ついてない男、追手内洋一の振りまいた不幸の残り香がした――
【東京都/東京タワー周辺/夕方】
【仙道彰@スラムダンク】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード
「真紅眼の黒竜」「光の護封剣」「闇の護風壁」「ホーリーエルフの祝福」…未使用
「六芒星の呪縛」…翌日の午前まで使用不可能
[道具]:支給品一式
[思考]:1、山梨に戻り、追手内洋一を探す。
2、首輪を解除できる人を探す。
3、海坊主、冴子を探す。
4、ゲームから脱出。
【デスマスク@聖闘士星矢 】
[状態]:そこそこのダメージ(だいぶ回復、戦闘に支障なし)
[装備]:アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険
アイアンボール×2
[道具]:支給品一式
[思考]:1、仙道に付き合う。
2、山梨に戻り、追手内洋一を探す。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:ウソップパウンド@ONE PIECE
[道具]:荷物一式(食料二人分)
[思考]:1、山梨に戻り、追手内洋一を探す。
2、海坊主、冴子を探す。
やあ。こんにちは。
いや、そろそろ「こんばんは」かな。
俺の名は乾貞治。
青春学園中等部3年11組、テニス部所属の普通の中学生だ。
何の因果か突然、最後の一人になるまで殺し合うというゲーム――――まさしく「バトル・ロワイアル」だな――――に
巻き込まれている最中だ。
ただの中学生である自分がこのようなゲームに巻き込まれる確率は、開始から丸一日近く経とうとしている今でもまだ
計算しきれていない。
何せ答えを出すためのデータが足りなさすぎるのだ。
香川県――――ここが本当の日本でないため、香川県(仮)としておこうか――――瀬戸大橋のすぐ側。
古びたビルの入り口に、俺は腰掛けている。
支給された時計を見ると、もう夕方を過ぎる頃だ。
元いた東京都とは違い灯りに乏しいこの場所で、俺が何をしているのかというと。
「だ、大丈夫か?乾」
ビルの中、入り口付近に待機している鵺野先生がそっと顔を覗かせる。
「大丈夫ですから、鵺野先生は中にいてください。そうやって出てきてしまったら近づいてくる人間がいても警戒して
しまうかもしれないじゃないですか」
「だが……」
心配そうな顔で鵺野先生が言い淀む。
「やっぱり、子供にこんな危険な役をさせるのは……」
鵺野先生はさっきからこの調子で5分に1回は顔を覗かせる。
確かにこの状況下で、人と接触し仲間になってくれるように交渉するという役目は危険極まりないものだ。
だが、自分と鵺野先生と両津さんというグループの中でこの役に適役なのはどう考えても自分なのだ。
それについては再考の余地はない。
「それについては先程説明したとおりです。……大丈夫です。だからもうしばらく中にいて下さい」
説得力の欠片もないな、と自分でも思う。
どういったデータと確率を持って大丈夫と言えるのか、相手を納得させられるほどの根拠は全くない。
だが鵺野先生は心配そうな顔を保ちながらも大人しくビルの中に戻ってくれた。
それを見送り、乾はまた思考に耽る。
(まずは――――人との接触。可能ならば仲間となり共に脱出を目指す。脱出を目指すにあたり、問題点がいくつかあるな)
薄暗い中、眼を凝らし、乾は手帳に自分の考えを書き綴る。
脱出についての問題点、其の一。首輪。
首輪爆発の条件は、
@禁止エリアに踏み込む
A無理に外そうとする
B24時間1人の死者も出ない
「……ん?」
何かが引っかかる。
首輪爆発の条件。
この首輪の中に爆発物が仕掛けられているのは、あの大広間で大男が殺された事から判断しても間違いないだろう。
なぜ、あの大男の首輪は爆発したのか。
あの大男は禁止エリアに留まったわけでも、無理に外そうとしたわけでもない。
当然Bの条件は論外だ。
ならば――――答えは一つ。
辿り着いた推論に呼応するかのように乾のメガネがきらりと光る。
「爆発させた、ということか……」
主催者が、主催者の意志で。
それはつまり、主催者は彼らの意志でいつでもこの首輪を爆発させること出来る可能性が高いということだ。
もしそうならば……それは『いつ』だ。
考えられる状況は、参加者達が主催者の意に背いたとき――――例えば、脱出が可能になったときなどだろう。
ならば、主催者達はどうやってその事実を把握できるのか。
「首輪、か」
盗聴器や、そういった参加者の動向を主催者に伝える手段が首輪に搭載されている可能性は高い。
そっと自分の首にはめられている金属物を撫でるが、指先に伝わる感覚からは継ぎ目も凹凸も見つけられない。
どうやってこの小さな薄いモノの中に爆発物や盗聴器の類を組み込んでいるのだろう。
もしかして異世界の文明の産物なのだろうか。
そうだとしたら自分の持っている知識がどこまで通用するのか…………。
あくまでも推論に過ぎないが、とにもかくにも、これからは発言にも注意した方がいいのかもしれない。
(やっかいなことになったな……)
表面上は無表情に、乾はため息をついた。
わずかにひそめた眉はそのままに、更に乾は手を動かし続ける。
先程記した首輪爆発の条件の下に、とりあえず今わかる事実を書き連ねる。
@から、参加者達の居場所を主催者側が把握していることがわかる。
Aから、首輪にある程度以上の衝撃を与えると爆発する仕掛けになっていることがわかる。
Bから、参加者達の生死を主催者側が把握していることが解る……これは、「放送」からもわかることだが。
続けてそれらについての自分が感じた疑問を更に書き付けていく。
@について。
主催者側はどうやって参加者達の居場所を把握しているのか。
考えられるのは、首輪に発信器のようなモノが組み込まれているという事。
その発信器が参加者の生死を判断し、更には居場所も判断しているのだろう。
そのような働きをする機械とはどんなモノなのだろう。
そして……参加者の居場所を把握するメリットは何か。
Aについて。
首輪は、どの程度の衝撃を与えると爆発するのか。
無理に外そうとすれば爆発するというのなら、ただの中学生である自分の力でも爆発させることができるということか。
つまりは……自分にも、人を殺せる手段があるということか。
人を殺す気などさらさらないが、あらゆる可能性を考え対策を持っておくのは性格なのだ。
今更どうしようもない。
思考を元に戻そう。
首輪に衝撃を与えると爆発するとされているが――――衝撃以外の要因ではどうだろうか。
手っ取り早いところで、水。
自分の知る限りでは機械というモノは水に弱い。
「……それはないな」
何度か自分の首輪をそっと触って確かめてみたが、この首輪には継ぎ目や凹凸が感じ取れない。
継ぎ目がなければ水が中に入り込む余地はない。
ならば、氷ではどうだろうか。
人の首に巻かれた首輪を凍らせることができれば、壊すことは可能だろうか。
試してみる価値はあるかもしれない。
Bについて。
脱出を目指すにあたり、非常なやっかいな枷だ。
首輪を外そうにも、出口を探そうにも、24時間という制限時間の中で行わなければならない。
首輪を爆発させずに外せるのであれば、それをカモフラージュに使うことも出来るが……。
脳内で考え得る限りの状況と可能性を組み立て、それらを手帳に綴っていく。
少しずり下がったメガネの位置を直し、乾は思考を先へと進める。
脱出についての問題点、其の二。出口。
一言に「脱出」と言うが、『どこから』脱出するのか。
この奇妙な世界から出るための扉はあるのか。あるのならそれはどこに存在するのか。ないのならどうやってここから外に
出るのか。
そして――――この世界から出ると、どこに辿り着くのか。
あの大広間なのだろうか。
それとも主催者達の目前か。
少なくとも……元いた世界にすんなりと帰れる可能性は低いだろう。
高く見積もっても、5%くらいの確率か。
もし――――脱出が現実になり、主催者達と戦うようなことになったら自分はどうするべきか。
戦闘において役に立たないだろう事は明らかだ。
ならばせめて足手まといにならないように、なんらかの対策は立てておくべきだろう。
いや。その前に戦う力を持った人物を捜し出すのが先決だ。
そしてその人物と協力体制を作らなくてはならない。
一般人の自分には、主催者達と戦うにはどの程度の戦闘力が必要なのか想像も付かない。
ヤムチャは「俺には無理だ」と言っていた。
自分と比べれば遙かに力を持つヤムチャでもそう言うのであれば、戦える人物を1人ではなく何人か探し出さなくては
ならないだろう。
それも2,3人ではなく、できればもっと沢山の人を。
人海戦術というのは、使いどころさえ正確なら有効な策なはずのだ。
脱出についての問題点、其の三。越前。
人を集め、戦力が整い、脱出が可能となった時にその場に越前がいなければ、自分にとってはその状況もあまり有り難くない
ものになってしまう。
越前は必ず共に連れ帰らなくてはいけないのだ。
青学が全国制覇を為すためにも。
これからの青学テニス部のためにも。
一体……越前はどこにいるのだろう。
無事なのだろうか。…………生きているのだろうか。
昼の放送では、越前の名は――――ついでに跡部の名も――――呼ばれなかった。
だがもう後数十分後となった午後6時の放送で彼の名が呼ばれない保証はないのだ。
隠しきれない不安に、動き続けていた乾の手が止まる。
(やはり今すぐ越前を探しに行くべきか……?だが、むやみに動いてはすれ違いになる可能性もある。となるとやはり東京を
目指すべきか。しかし……)
――――――――――――ザッ
微かにした物音に、乾はハッと顔を上げた。
立ち上がり、周囲を見回す。
日が落ち、「薄暗い」から「暗い」へと移りつつある前方から、誰かが歩み寄ってくるのがわかる。
次第にはっきりとしてくるシルエットから、近づいてくる人物の背が低いことが視認できた。
(越前だとよかったんだが……)
どうやら違うらしい。
乾から3メートル程の距離を取って歩みを止めた少年は、しっかりとした声で乾に話しかけた。
「俺の名はダイ。あなたは?」
油断なく乾を見つめ、そう名乗る少年には見覚えがある。
確か、あの大広間でバーンという主催者の1人に飛びかかっていった少年。
これはどうやら。
「大当たり……ってことかな」
メガネを中指で持ち上げ位置を直し、乾はにこやかに――――本人はあくまで爽やかなつもりで、口を開いた。
「やあ。はじめまして、だね。ダイ君。俺の名は乾貞治。もちろんこのゲームには乗っていないよ」
「本当に?……後ろの建物にいる人たちは?」
隠れているはずの両津と鵺野の存在を察知されたことに驚きを感じつつ、乾は笑顔のまま言葉を続けた。
「ああ。あの人たちは俺の仲間なんだ。俺たちはここから脱出するために仲間を捜していたんだが、状況が状況だからね。
少し警戒させてもらっているんだ。もちろんゲームには乗っていない。君に会えたのは本当に幸運だったよ。もちろん君も
ゲームには乗っていないのだろう?」
「……どうしてそうわかる?」
「だって、君はあの大広間で主催者の1人に飛びかかっていったじゃないか。つまりはアイツらと敵対しているんだろう?」
「そうだけど……」
困惑した様子のダイに、乾は更に言葉を重ねる。
「しかも、君はあの時『皆はどうした?!』って叫んだだろう?そのことから、君が仲間を気にかける程度には優しさを
持ち合わせてると判断したんだ。だから俺は、君がこのゲームには乗らず主催者達を倒すために動くんじゃないかと思って
いるんだが……俺の判断は間違っているかい?」
淡々と、それでも熱を含む乾の言葉に心を動かされたのか、ダイはようやく肩の力を抜き笑顔を見せる。
互いに歩み寄り改めて自己紹介をしたところで、事の成り行きを見守っていた両津と鵺野がビルから走り出てきた。
「乾、その子は……!」
驚きの声を上げる両津も、目前の少年を思い出したのだろう。
隣に立つぬ〜べ〜も警戒心を解いたようだ。
「とりあえず情報交換をしないか?君は1人なのかい?」
「……ううん。他の人達は別の場所にいる。あなた達がここに来たのが見えたから俺が様子を見に来たんだ」
少しの戸惑いの後、ダイはそう3人に告げた。
恐らく、自分達に仲間の存在を教えることを迷ったのだ。
だがダイは迷いながらも教えてくれた。
自分達を信用することにしてくれたのだろう。
「君の仲間のところに案内してくれるかい?もし、俺達が信用できないのなら案内はせずにここで話し合っても
構わない。君に任せるよ」
「……信用するよ」
再び迷った後で、ダイはそう言い切った。
「実は俺達、あなた達があの橋を渡ってくるのをずっと見てたんだ。その時はまだ敵か味方かわからなかったから様子を見ることに
して……。太公望が味方を送ってくれたのかとも思ったんだけど何の連絡もなかったし。でもしばらくしてもあなた達が動く気配がな
かったから、思い切って俺がここに来たんだ。……行こう。みんなのところに案内するよ」
「ああ。……ありがとう。信じてくれて。両津さんも鵺野先生も異論はありませんか?」
「わしはない。多くの人と接触して仲間を増やすのがわし達の目的だからな。鵺野先生、あんたは?」
「俺もないです。……それに、一緒に行けばこの子を守ってやれる。俺は二度と子供を殺させはしない……!!」
手袋に覆われた右手を強く握りしめ、ぬ〜べ〜はギリギリと奥歯を噛みしめた。
ダイがバーンという主催者に一目置かれていることは知っている。
だが、この子はまだ子供だ。
俺が守れなかった郷子や、元の世界で心配しているだろう広や美樹や克也達と同じ子供なのだ。
「必ず、君を守って……主催者達を殺してやる……!!」
「鵺野先生……」
かける言葉が見つからず、乾も両津も視線だけをぬ〜べ〜に送る。
自分の最愛の妻を、大切な生徒を殺された彼の痛みは自分の想像を絶するものなのだろう。
3人の雰囲気に何かを感じ取ったのか、ダイも困惑しながらもぬ〜べ〜を見守っている。
気まずい沈黙が、いい加減暗くなってしまった辺りに立ちこめる。
「行きましょう」
それでも乾はあえて口を開いた。
「こういう状況になってしまった以上、俺は俺が出来ることをするだけです。それは両津さんも鵺野先生もダイ君も
同じでしょう?ならば先へ進みましょう」
「そうだな!行こう、鵺野先生!わし達は死んでいった者達の分までやるべき事をやらなきゃいかん。今わし達がやるべき
事は一刻も早くこのゲームを壊すことだろう」
乾の言葉に、両津も力強く賛同する。
悲しみも、怒りも、戸惑いも、恐怖もある。
だが自分のやるべき事を見失ってはならない。
今自分達がやるべき事は――――マイナスの感情をプラスに変えて『ゲーム破壊』へ向けて進むことなのだ。
「両津さん……乾……」
自分と両津の言葉を、鵺野先生がどう受け止めたのかはわからない。
だが先程よりは明らかに落ち着いた様子の鵺野先生は、ダイに歩み寄るとその頭をくしゃりと撫でた。
「君に一つ言っておく。俺はもう、子供を絶対に死なせはしない。だから俺は全力で君を守るよ」
突然のぬ〜べ〜の宣言に戸惑った様にダイが乾へ視線を向ける。
それに笑顔で頷いて見せた乾は、再度口を開いた。
「行きましょう。……もう誰も死なせないために」
その言葉を合図に、4人は歩き出す。
彼らの行く先は、彼らの求める希望かそれとも絶望か――――――――。
時刻はもう間もなく午後6時を迎えようとしている。
【初日香川県瀬戸大橋@夕方】
チーム【公務員+α】
【共通思考】1、ダイについて行く
2、仲間を増やす。
3、三日目の朝には兵庫県へ戻る。ダメなら琵琶湖へ。
【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式(一食分の水、食料を消費。)
【思考】1、ダイの仲間達に合い、これからのことを話し合う
2、伊達、玉藻と合流
3、主催者を倒す。
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準はメチャクチャ)(残弾30)
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳、
弾丸各種(マグナムリボルバーの分は両津に渡してある)
【思考】1、ダイの仲間達に合い、これからのことを話し合う
2、越前、跡部と合流し、脱出を目指す。
3、脱出、首輪について考察中
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【状態】健康
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】1、ダイを守る
2、武器を探し玉藻、伊達と合流。
3、戦闘になった場合、相手を殺す。
4、マーダーを全員殺す(主催者を含む)。
※(乾と両津の言葉により、今は落ち着いています)
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康・MP微消費
【装備】出刃包丁
【道具】トランシーバー
【思考】1、両津、乾、鵺野を公主とターちゃんのいる場所へ案内する
2、四国を死守
3、公主を守る
4、ポップ、マァムを探す
※ダイの荷物一式、公主の荷物一式、ペガサスの聖衣@聖闘士星矢は公主とターちゃんのいる場所へ置いてきています。
※太公望からの伝言は、ターちゃんには伝えました。
「なあ、桑原、さっきからそのパソコンで何をやっているんだ?」
プチャラティは先程からリンゴのマークのノートパソコンを
いじり続けている桑原に痺れを切らし、
邪魔しては悪いな、と思いつつもついに話し掛けた。
その半透明のリンゴのマークはi-Bookの証。プチャラティはパソコンやネットといった物には
疎かったが(せいぜいおねえちゃんのパンツをこっそり見る位)、
こればかりは趣味のウィンドウショッピングの最中、VAIOと共に幾度となくあちこちの電気屋で見かけている。
だから、これがかなり上等のパソコンであることぐらいはわかった。
そして、桑原がプチャラティより遥かにこのマシンやネットについて詳しいことも、何となくわかっていた。
桑原は一心不乱にキーボードを叩き続けるかと思えば、急に考え込んだり、
「なるほど、こうか」「くそ、そこまでは甘くはないか……」などと呟いたりする。
プチャラティは「変な奴が来ないか、見張っていてくれ」と桑原から渡されたベレッタを握ったまま放置プレイだ。
変な奴って何だよ、今の状況じゃお前が一番変な奴だよ――などとは言えなかったので黙っていたが。
さて、その桑原はプチャラティの問いに対し振り向きもせずに
「まあ、ちょっと待っていてくれ――もう――少しだ」と答える。
桑原がもう少しキーボードを叩き続けると、ウィンドゥの中に"%"だの"#"だのが混じった英文が流れ始め、
桑原もそれに呼応してキーボードを打ち返す。
「よし」
桑原はつぶやくと、最後にデータをダウンロードするように指示し、手を止めた。
後はダウンロード終了を待つだけだ(もっとも、終わったらログを書き換えて証拠を消さなければならない)。
その後は、手に入れたデータをもとに作戦を練ることになる。
単にデータを書き換えるか、それとも独自のプログラムを組んで相手をより巧妙に騙すか。
後者の場合ちょっと手間ではあるが、まあ半日もあればなんとかなるだろう。
さすが俺。電脳ヒーロー桑原様だ。
「桑原、説明してくれよ」
プチャラティがもう一度言うと、桑原はニヤリと笑って、iBookから身体を離し立木に身を預ける。
我ながら少し興奮しているな、と思えたので気を落ちつかせるために一つ息をついた。
無理もない。さっきプチャラティに「見張っていてくれ」と言った時点ではどう出るか確信が持てなかったのだが。
今は――勝ったも同然だ。
ゆっくり、口を開く。
「とにかく俺は、ここから逃げることを考えた」
桑原が頷く。
「それでな」桑原は自分の首を指差す。
桑原自身には見ることはできないが、プチャラティには、
プチャラティr自身も首に巻かれている同じ鈍い銀色の首輪が見えているはずだ。
それは皮肉にも、桑原自身かつて戦闘衣装と共にアクセサリとして付けていた
あの首輪と、デザインが酷似していた。
「本当はな、こいつを何とかして外したかった。
これのおかげでこちらの位置があのクソ野郎どもにばれているわけだ。
つまり、今俺が、お前と一緒に居ることも。
こいつのおかげで俺達は逃げようとしても簡単に捕捉されるし、
あるいは、中の爆弾に電波を送られて一発で殺されてしまう。……何とか外したかった」
桑原はそこで手を大きく開いた。肩を竦めて見せる
「だけど、諦めた。中がどうなっているかわからない以上、いじりようがない。
きっと分解したら爆発するような仕組みぐらいにはなっている筈。
多分、起爆用のコードが内側に張り巡らされているんだろう。そいつを切ったら」
「ドカンといく、のか?」
桑原は右手でプチャラティを指差す。
「ご名答。そんなところだろう。そうなれば危ない橋は渡れない。
あるいは、首と首輪の間に鉄板をはさんで……とも思ったけど、
まあ、多分、挟める程度の鉄板じゃ鉄板と一緒に首も身体と泣く泣くサヨナラだろうな」
プチャラティがまた頷く。
「そこで俺はまた考えた。ならいっそのこと、俺達の捕捉、
そして首輪の爆破用の電波を管轄する本部のコンピュータ、あれだ、あれに一働きしてもらおうと。
………言ってる意味わかる?」
そう、現代の社会は情報戦。そして桑原はマンガのヒーローであると共に電脳世界のヒーロー(自称)だ。
どのプレイヤーよりも情報を溜めこんでおかなければならない。
その情報を効率良く扱うにはやはりコンピュータは必須。
というわけで桑原はより良いプレイヤー
――いや、ここでは敢えて戦闘マニアと言おう――であろうとするために、
コンピュータの扱いには習熟していった。というより、元から単なるオタクであった。
最近ではクラッキングの技術もひとかどのものとなり、あの防衛庁のデータベースにも侵入し、
データを盗み取った事もある。
まあ、そんな努力は、飛影や蔵馬の見てくれだけでキャーキャー熱狂するファンにはサッパリ伝わらなかったようだが。
プチャラティは首を縦に振る。
「うん、まあハッキングをしかけようと思ったわけ。それで俺はパソコンを探した。
接続のために必要な携帯電話は持ってるしね。
このクソゲームは私物の持ち込みは許可しているようで何よりだった。
その辺の民家の電話回線が使えるとは思えないし。
まあ、こんなことなら俺の愛機を持ってくれば良かったんだけど、まあ仕方がない。
このiBookが見つかったから良いとする。後は電源だけど、そのバッテリはそこらの車から外した。
電圧の調整はまあ俺らもよく海外に飛んでるし、常にそれなりのコンバータは携帯している。簡単だ」
桑原の説明でプチャラティは漸く地面に直接置かれたiBookと携帯電話が
一体何をしているのか理解し始めたらしく、小さく何度も頷いていたが、急に何か思いついたように口を挟んだ。
「ちょっと待ってくれ、俺も携帯をかけてみたんだが繋がらなかったぞ?」
桑原はニヤリと笑って「ちょっとお前の携帯貸してみろ」と言った。
プチャラティが携帯を渡すと、桑原はまたニヤリと笑う。
「J-PHONE、しかも旧式の携帯!(爆ワラ)か、貧乏臭せぇ〜お前。まあそんなことはどうでも良いや。
あのな、J-PHONEはどの国の電話会社だ?ここが日本であるなんて、誰が言ったんだ?」
プチャラティは「えっ、……そ、そういえばそうだよな」と納得しかけたが、すぐに立ち直って
「じゃあ、ここはどこなんだよ?それに、どうしてお前の携帯は繋がるんだよ?質問に答えてないぞ?」
と切り返した。
「そりゃ、俺の携帯は特別だからな。あ、でも俺もここがどこかはわかんないよ。
……日本じゃないことは確かだと思うけど」
と桑原は言うと、iBookに繋がったままの携帯を持ち上げて示した。
その携帯には「Irdium」と刻まれている。
「イリジウムだ。聞いたことないか?
アメリカのイリジウム社がが1998年秋にスタートさせた衛星携帯電話サーヴィス。
66基のイリジウム衛星を利用して地球上のどこからでも通話が可能という夢のサービス」
プチャラティは目を見張った。
「凄いじゃないか!でもそんなのを良くあいつらは見逃してたね、普通警戒しそうなものだけど」
「それがさ」桑原は答える。「ラッキーだったんだよ、非常にラッキーだった」
桑原はイリジウムについて語りだした。
イリジウムのサービスは夢のようなものだったが、加入者数が伸び悩み、投資を回収することができなかった。
1999年8月に破産申請、2000年3月にはサービス終了。
日本では、旧DDIと京セラが資本参加し日本イリジウムを発足させ、日本におけるサービスの窓口となっていたが、
アメリカイリジウム社の破産により、こちらも会社清算を余儀なくされた。
アメリカイリジウム社の倒産後、66基の衛星の破棄さえも検討されたのだが、
新たに発足したイリジウムサテライト社がアメリカイリジウム社の資産を買い取り、
商業サービスの復活に向けて準備を進めていた。
そして今年、2001年3月には、世界各地の13社のサービスプロバイダーとの契約締結も済ませ、
サービス提供、販売、保守の窓口が用意された。
サービスプロバイダーは、アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、ロシアなどに点在しているのだ。
「イリジウムの復活は日本ではほとんど報道されなかった。何せこれは日本では電波法違反なんだからな」
桑原は手に持った携帯をブラブラさせながら話を続ける。
「日本の電波免許って言うのは携帯一個一個について出すんじゃなくて、携帯を扱う会社に一括して渡す。
キリがないから。ところが今日本にはイリジウムの窓口がない。
日本イリジウムは今は清算会社で、無線局免許については無線局廃止届が、
第一種電気通信事業者免許には事業廃止届けが出ていて、一切免許がない。だから、違法」
プチャラティはうんうんと頷く。
「だから日本ではイリジウムの復活を知っている人間はほとんど居ない。
あいつらが見逃していても何ら不思議はないって事。
そして復活してからはデータ通信サービスもやるようになったんだ、イリジウムは。まさに天佑ってやつだ」
「それで?」プチャラティは続きをうながす。
「あとは大した話じゃない。通常電話用、それもアメリカのモジュラ用のモデムと
携帯電話を繋ぐのはちょっと骨が折れたがな。何せ満足に道具があるわけでもないし。
しかし、それはまあ、俺の持ってる素晴らしい技術と経験で何とかやった。――それで、
とにかく電話回線に入った。それから一旦俺の家のマシンにアクセスした。
クラック――ハッキングってのは、普通のインターネットと違ってさ、特殊なツール――プログラムが、
まあ暗号解読のソフトとかが要るんだ。そいつをまず取り寄せた。
いや、俺が中学生であるが故にマッカーで良かったよ。
家にあるのがマックだったからこいつで全く同じように扱える。」
桑原はiBookを軽く叩く。
「俺はかなり直感で動いていたんだ。
この華麗なるプレイヤーを沢山抱える主催者の周りには金の亡者がいっぱいだからさ。
きっと俺達のこのゲームも賭けの対象になってる、そう読んだんだ。
ところでインターネットと言ったら相場は何だと思う?」
プチャラティは首を傾げて返事とした。
ていうか、もう、桑原の言ってることが大分訳が分からなくなっていた。
「リアルタイム更新だ。賭けの行方がどうなってるか皆知りたいだろ?
それを随時お知らせするにはインターネットは最適なんだ。
そこで随時インターネットでお知らせをするにはこちらからデータを送らなければならないだろ?
ということは本部の俺らを捕捉、もしくは生殺与奪の権を握っているコンピュータもまた
ネットに接続されてるってことだ。ネットに接続されてるってことは、
クラック――ハッキングを仕掛けるチャンスもまた、あるってことだ」
「ははあ、なるほど(…よく分かんねぇけど)」
プチャラティは感心して桑原の話に聞き入るばかりだ。
もちろんその間にも周囲ヘの警戒は怠ってはいないのだが。
「で、だ。まずはフリーザ、もしくはバーンの名が付くサーバを
webサーバだろうが何だろうが片っ端から当たった。
まあ普通の神経だったらそんな安易な名前はなあ、違法行為をやってるんだから避けるべきなんだろうが、
何せ華麗なる俺達の周りには戦闘バカばっかりだろ?
バカと言えば何でもそうだけど、特にコンピュータに弱いのが相場だ。
わかりやすい名前にしてるんじゃないかって読んだんだけど、これがビンゴ。
見事に俺らが賭けの対象になっていて随時リアルタイム更新!
何時何分にどこそこプレイヤー何々の誰々が死亡!死因は中川が射殺!だの何だの
書かれているwebページが見つかったさ。
今後の為にちょっとログを覗いておいたがアレだな、フレイザードか拳王が危険人物だな。
まあ拳王は死んだみたいだけど…」
プチャラティは不快感に顔を歪めたが、桑原は構わず話を続けた。
「そこがまあリアルタイム更新されていたってことは、そこへデータを送っているサーバがここの本部ってことさ。
そこへ突っ込んだ。こっちは多少面倒だったんだが、動ける範囲で色々調べてたら、
寝ぼけたことに作業用のバックアップファイルを残していやがったんだな。
で、こいつを頂いた。細かいところは省くが、その中に一つ意味ありげな暗号文字があった。
その解析をさっきお前に会うまでこいつにやってもらっていたって訳。答えはこうだ」
桑原はiBookに手を伸ばし、通信状態はそのまま、別のメモファイルを開いて24ポイントの特大表示でプチャラティに示した。
TAKUROは覗きこむ。
“SAMA FREEZA”
「サマ…フリーザ……?」
「そう。ナルシストもここまで来ると大したもんだよな。くだらねえ母音入れ替えで暗号にしてあったんだが。
まあとにかくこれがルートのパスワード。――あとはやり放題。今やってたんだけどな。
今、本部のコンピュータの中のデータをまるごと頂いているところだ。
俺はそいつをいじってお返しする。そうすれば俺達を縛り付けているこの首輪を無効にしておさらばさ。
やつらは本部の回りを禁止エリアで囲んで俺達がもう近づけないと安心しているようだが、
俺達はそこを急襲できるって寸法。
そして、一旦あの本部を押さえれば他の連中――まあマーダー組は考えものだけど――を助けることだって
できないわけじゃない。あるいはそれが無理でも、俺達がもう死んだことにして、
二人でとっととここをおさらばすることはできる」
そこまで一気に喋って一呼吸置き、桑原はまたニヤリと笑った。「どうだ?」
もはや、プチャラティは放心したような表情をしていた。「凄い」とだけ言った。
桑原もその素直な反応に満足してにこっと笑った。
ありがとう、プチャラティ。何にせよ、自分の能力を誰かに褒めてもらうのは嬉しいことだね。
「桑原――」
まだその放心したような顔のまま、プチャラティが口を開いたので、桑原は眉を持ち上げた。
「何だ?何かまだ聞きたいことでもあるか?」
「いや――」プチャラティは首を振った「あの――あのさ」
「何だよ?」
プチャラティは視線を落として、手にしている支給品(それは、彼には酷く不釣り合いの物だった)を
少し眺め、それからまた顔を上げた。
「あの、――何で、お前は俺と一緒に行動してくれるんだ?
俺、マジで戦闘以外何にもお前の役に立てないし、むしろ足手まといだし」
桑原はニヤリと笑った。
「お前を見張る。それだけさ」
桑原はそこで一旦言葉を切ると、真剣な目でプチャラティの目を覗きこんだ。
「俺はお前を信頼する。信頼したい。それで良いじゃないか。
このゲームは信頼できなくなったら負けだ、俺はそう思ってる」
「ありがとう」
その言葉にまた桑原の表情は柔和なものに変わる。
「水臭せぇ、俺ら、仲間じゃんか。
まあ、その仲間同志で殺しあっている奴らもいるんだから、まあ無理もないけど」
そして、ぴゅうと口笛を吹いた時に、その口笛以外にぶん、という音を桑原は聞いた。
桑原は眉根を寄せ、いささか慌てて腰を上げた。
なぜならその音はマッキントッシュ標準の警告音だったからだ。
桑原はまたiBookの前に膝を付き、その画面に見入った。そして目を見張った。
そこに出ているメッセージは、回線が切断され、ダウンロードが中断した旨を継げていた。
「――何でだ」
桑原の口から漏れた声は、うめきに近いものだったかもしれない。
慌てて、キーボードを操作する。しかし、回復は叶わなかった。電話回線自体は繋がっている。
そりゃそうだ、あいつらがイリジウムに手を出せる筈がない。
しかしもうプログラム関連ヘのサーバの接続は全く出来なくなっていた。
ご丁寧に公式サイトにまで接続できなくなっていた。
慌てて匿名プロクシをあさったが、それではプレイヤー達の個人データを見ることはできても、
肝心のプログラム関連のサーバには接続できなかった。
馬鹿な――。桑原は今は停止しているiBookの画面を呆然と眺めていた。
クラッキングを気付かれたわけがない、そもそも気付かれないようにやるからクラッキングなのだ。
そして、桑原には十分にその技術があった。
「桑原?どうしたんだ、桑原?」
プチャラティが方の後ろから声を掛けたが、桑原は答えることができなかった。
その時だった。
「皆さん〜!!!」という、耳障りな声が暮れゆく日本の中に響き渡ったのは。
>>69 勝手に無効にするな。
作者がどれだけ頑張ったと思ってるんだ?
あれだけの長文書いたことあるのか?
>>58-67気にせず続けてください
太陽は落ちていく。
世界は闇に飲み込まれ、光は失われ、長い夜が始まろうとしている。
岐阜県の南部、名古屋城が見える森の中で、斗貴子、月、友情マンは休息をとっていた。
名古屋は都市部だ。斗貴子が居なかった間に、人が集まって来ている可能性は高い。つまりそれだけマーダーが居る可能性も高い。
自分達が襲撃されたり、あるいは誰かが襲撃されているかもしれない。その時に歩き疲れていたのでは困るからだ。
特に一般人である月の疲労は大きかった。何せ普通の大学生と戦士と宇宙人、体力には大きな差がある。
既に情報交換を終えた彼らの間に会話は無い。
その情報交換すら形式的なもので、肝心なこと――例えばお互いにまだ見せていない武器のことや、自分たちの能力のこと、
もし名古屋が駄目なら東京でケンシロウと落ち合うこと、など――は殆ど隠している状態だ。
月と友情マンはお互いの腹の内を探りたかったのだが、
「休める時は無駄口を叩かず休むべき。それに声を聞かれてマーダーが来てはまずい」
という斗貴子の指摘により、名古屋城までは会話を禁じられていた。
傾いた陽光は視界全てを赤く染め上げる。
自身も真っ赤に染められながら、友情マンは目的地である名古屋城を眺めていた。
(もうすぐ放送か。なるべく沢山死んでくれているといいな。
ケンシロウ君は生きていてくれないと困るけど。友達になって守ってもらわないとね)
視線を斜めにずらすと、同じく名古屋城を眺めていた斗貴子が目に入った。
しかし友情マンの視線を感じるとすぐに視線を戻し、彼を睨み付ける。
友情マンはそれが何故だかわからないとでもいうように、いかにも不思議そうな表情をしてから、
再び名古屋城に視線を戻した。
(それにしても、斗貴子さんにはかなり警戒されてるみたいだ。
簡単に始末できそうにもないし、早めに信頼を得ておかないと、後々厄介なことになるかも…。
もしケンシロウ君のほうが簡単に攻略できそうなら、そちらから攻めた方がいいかもしれない)
月は心の中で舌打ちをした。
苛立ち、思わずポケットの中のものを握り締める。もちろん表情には出さないまま。
彼は福島からここに来る数時間の間、友情マンと接触を図ろうと試みた。しかし斗貴子の厳しい監視の目がそれを許さなかったのだ。
もっとも、監視は月ではなく友情マンに向けられたものだが、それは月の計画も阻んでいた。
何かメモを書いて渡すことくらいなら出来たかもしれない。
だが友情マンが何を考えているかわからない以上、下手なことを書いて証拠が残っては困る。
(仕方ない、交渉は名古屋城に付いてからだ。今は大人しく体力を回復するとしよう。
もうすぐ放送か。Lは…死んでくれていればありがたいんだが、きっと生きているな。
何せこのキラの最大の敵だ。そう簡単にくたばるわけがない)
木々の間から覗く名古屋城を仰ぎ見る。その瞳も夕陽によって染まり、赤く妖しい光を放っているかのようだった。
月の手がポケットの中で握り締められたのを、斗貴子の鍛えられた視力が捉えた。
もうすぐ放送だ。きっと彼も仲間の無事を願ってやきもきしているのだろう。
(しかしあのポケットには…………
…考えるな。それが彼のためだ。あれが彼の精神安定に役立つならば何も言うまい)
手にしたペットボトルを口に運んだ。中の水が跳ね、太陽の最後の輝きを反射する。
斗貴子は夕陽に半ば背を向けていた。
目を焼かれ、動きが鈍っては困るからだ。沈む日の光は強すぎる。
どこを見ても夕暮れの赤と影の黒ばかりが目立つ。何かの警告のような赤さだった。
(もうすぐ放送か。
ケンシロウ。桑原。…カズキ。
無事だろうか。いや、きっと無事なはずだ)
それは信じるというよりも願いだった。ただひたすらな、ただ一つの想い。
それはずっと前からの想いだった。彼と運命を共にするよりずっと前からの、ただ一つの願い。
それは―――日常。
騒ぐ岡倉。煽る六枡。慌てる大浜。呆れるちーちん。はしゃぐさーちゃん。そして、笑顔のまひろ。
あの日常に彼が帰ること。それが斗貴子のただ一つの祈り。
その中に自分が居ることを望まないわけはない。
(しかしあの暖かい日常から君を引き離したのは、他ならぬ私自身だ。そんな権利などあるはずがない。
あの化け物たちがカズキに目を付け、こんなところに連れてきたのも、全て私のせいだ。
私が、君を…巻き込んだ。
だから、必ず君を連れ帰る。冷徹な殺人者を、あの化け物どもを殺し、何としても連れ帰る。
そのためには私がどうなっても構わない。私は何でも償う。
だから…だから、君だけはどうか、あの日常に―――――)
手にした水の反射する光が弱まってきたのを見て、斗貴子はそれをデイパックにしまった。
「休憩はここまでにしてそろそろ向かおう。6時に間に合わなくなる」
彼女は立ち上がった。最後まで太陽を見ることはなく。
太陽光は沈み消え行く。押し寄せる闇に抗えずに。
夜が、始まる。
【岐阜県南部/夕方】
【Black stomachrs】
【友情マン@ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
[思考]:1.斗貴子達を利用する。
2.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
3.最後の一人になる。
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]健康
[装備]:ダイの剣@ダイの大冒険、ショットガン、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ワルサーP38
[思考]1.人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)
2.ゲームに乗った冷酷な者を倒す
3.友情マンを警戒
4.午後六時までには名古屋城に戻る
【夜神 月(ライト)@DEATH NOTE】
[状態]歩き疲れ
[装備]真空の斧@ダイの大冒険
[道具]荷物三式 (4食分を消費) 子供用の下着
[思考]1.斗貴子に同行。利用する。
2.弥海砂の探索 。南下。
3.斗貴子の目を盗んで友情マンと接触したい
4.使えそうな人物との接触
5.竜崎(L)を始末し、ゲームから生き残る
前スレ429-439の『たらい回しの不運』のLのセリフに違和感があったとのことでしたので、修正します。
430の25行目(さて、下り電車〜ありませんね)
↓
(さて、、下り電車は……あと十五分か。これを逃すと今日はもうあと一本しかない…)
432の5行目 「蒸気機関車〜」→「蒸気機関車だったとは……」
432の14行目(誰も乗って〜)→(誰も乗ってはいない、と……)
432の19行目(とりあえず〜)→(とりあえずは大丈夫そうだ。あとは彼だけだ)
433の8行目(予測してなかった〜)
↓
(予測してなかったわけではないが……仕方あるまい)
435の11行目「助かりましたね……」→「なんとか…助かった……」
435の22行目(申し訳ありません〜させてみせます)
↓
(本当に申し訳ない……。君が生き延びて、また出会うならば。その時までに必ず…このゲームを終わらせよう)
もう何がなにやら
「妲己さん! どうして? どうしてカズキくんを!?」
遊戯は妲己を問い詰める。
先の戦闘で妲己がカズキの死体を盾にしたところを目撃されていたのだ。
周囲には爆発によって細切れとなったカズキの肉片が散乱している。
妲己は遊戯の問いには答えずキルアの逃げ去った方向をチラリと見やった。
(ふ……ん、止めを刺せないのは残念だけれどあれだけの深手と消耗では恐らく生き残ることは無理ねぇん。
それなら、こちらを優先させるべきだわん)
妲己はキルアが倒れた際に取り落とした黒い核鉄を拾い上げると懐にしまい、遊戯へと振り向いた。
「妲己さん、答えて!」
「遊戯ちゃん、落ちついてぇん。少し誤解があると思うわん」
ニッコリと微笑む妲己のその言葉を聞いて遊戯は意表を突かれた顔になる。
「誤解?」
「そうよん。カズキちゃんはわらわを護るためにその命を犠牲にしてくれたのぉん。
だったらその気持ちを汲んで死体もわらわを護るために使ったほうがカズキちゃんは喜んでくれると思うわぁん」
酷薄な笑みと共に紡ぎだされるその言葉に遊戯は絶句する。
もはや妲己に自分の本性を隠すつもりはなかった。
見られてしまった以上は取り繕うことは無駄な行為。ならば自分の真意を明かし取り込むほうがいい。
それが妲己の判断。
「そんな……そんなコト!」
「納得できないようねぇん遊戯ちゃん。ウフフ、確かにわらわは遊戯ちゃんたちに隠し事をしていたわぁん。
でもそれは遊戯ちゃんもそうよねぇん? その逆錘形の首飾り……何か力があるのでしょう?」
遊戯は咄嗟に胸の千年パズルを庇うように押さえる。
「これは!」
「遊戯ちゃんがわらわを信用できなくなってしまったのはわかるわぁん。
だから取引をしましょう」
「? 取引だって?」
「わらわがこのゲームからの脱出を望んでいるというのは本当よぉん。
でもわらわだけではそれはどうやら難しいようなのん。協力者が必要だわん」
妲己は遊戯を打神鞭で指し示す。
「だから遊戯ちゃんのような無力な子供が仲間に居れば他の参加者の信用も得られやすいのぉん。
信用を得るということは仲間を集める上で重要なことよん」
淡々と妲己は自分の目的を話す。
遊戯はそれをまるで肉食獣でも見ているかのような瞳で見つめていた。
「わらわに協力しなさいな遊戯ちゃん。そうすればわらわが遊戯ちゃんを守ってあげるわぁん♪
この世界に居る他の殺人者たちからねん。そして一緒に脱出しましょう」
「嫌だ!」
遊戯は目に涙を浮かべ、ブルブルと震えながらも断固として妲己を拒絶した。
「冷静に考えて、遊戯ちゃん。
ここで断るとわらわはわらわの信用を護るために遊戯ちゃんを殺さなくてはいけないわぁん。
できればわらわもそうしたくはないのよぉん。ここで死ぬよりも脱出の可能性に賭けた方が懸命でしょん?」
妲己は聞き分けのない子供を窘めるかのように優しく諭す。
しかし遊戯は首を横に振り、それさえも拒絶する。
「カズキくんはいい人だった……本当にいい人だった。この世界に来て一番の友達……こ、こなごなにして……!
僕は怒ったぞ! 妲己!!」
遊戯は妲己を指差す。
「カズキくんはあなたを信じてた! それなのに……あなたは僕だけじゃない、カズキくんの信頼も裏切ったんだ!
絶対に許さない!」
妲己はフゥ、と一つ溜息をつく打神鞭を構えた。
周囲の気圧が変化し、風が唸り始める。
「残念ねぇん……ほんの少し利口になるだけで生き延びられたのに……。
わらわを許さないならどうしてくれるのぉん?」
妲己は獣を思わせる殺意の瞳で遊戯を睨みつけた。
(もう一人のボク!)
(ああ、後は任せな相棒!)
遊戯は首から下げる千年パズルに心をゆだね、その力を引き出す。
「何、これは?」
妲己は千年パズルから発せられる濃厚な闇の気配を感じ、警戒する。
千年パズルは金色の光を発したかと思うと遊戯の額にウジャト眼が浮かび上がり、その表情が一変した。
パズルに封印されていた闇の人格が目覚めたのだ。
「妲己! アンタは俺の心の領域を侵した! よって俺の遊び相手になってもらうぜ!!」
雰囲気が豹変した遊戯を見て妲己は震えていた。
(素晴らしい……凄いわぁん、遊戯ちゃん。どんな力を持っているのか……ますます興味が出てきたわん♪)
「妲己、アンタはその気になれば俺を一瞬で殺すことができるだろう。
だがゲームならばどうかな? 妲己、俺とゲームをしてみるつもりはないか?」
「ウフ、いいのよ遊戯ちゃん。駆け引きも、挑発も必要ないわぁん……そのゲーム受けてア・ゲ・ル♪
だってそうしないと遊戯ちゃんの力を見極めることができないでしょぉん?」
(チ、完全にこっちを舐めきっている……どんな勝負でも自分が上だと確信しているんだ。
だがその思い上がり、俺が打ち砕いてやるぜ!)
「ゲームを『受けた』な妲己!? ならばもう後戻りはできないぜ……この『闇のゲーム』からはな!」
遊戯と妲己の周囲を暗黒の気配が満たす。視界に変化はない、ただ心に直接重圧が圧し掛かってくる。
(これは……空間宝貝? それも自分の世界に引きずり込むのではなく王天君の紅水陣のように
現実に自分の世界を作り出すタイプかしらん?)
「闇のゲームでの敗北やルール破りには……妲己、罰ゲームが待ってるぜ」
「フフ、それは楽しみねぇん」
不敵に笑う妲己だが、その頬には一筋の汗が流れていた。
二人はログハウスへと移動するとガーデンテーブルに向かいあい座る。
この場を戦場と決めたのだ。
遊戯はポケットからトランプを取り出し、テーブルの上に置く。
「勝負はドローポーカー! 3戦行い、2戦先に取ったほうが勝ちだ。
カードチェンジは一度、ジョーカーは使用しない。
親は最初に強いカードを引いた方が先に行い、後は順に交代する。依存は?」
「いいわよん、でも遊戯ちゃん。遊戯ちゃんはわらわに3つの提案をしてわらわは全て受け入れたわん。
ゲームの方法、その種目、ルール、その3つをねぇん。
だからわらわも3つの提案をしたいわん、そのほうが公平でしょう?」
「……言ってみな」
遊戯は妲己を促す。
「一つ目。イカサマを認めること」
「何!?」
「普通に勝負していても面白くないわぁん、互いに全ての技術を使って戦いましょう。
それに、相手がイカサマを使っているかどうか疑うよりも使っていると分かっていた方が
より楽しめる勝負になるわん。もちろん、イカサマが見つかったらその場でアウト、どうかしらん」
遊戯は妲己を提案を考える。
(コイツ……イカサマをするならば黙ってやればいい。わざわざ相手に警戒を施す必要はない。
それなのに提案をしたということは……闇のゲームを警戒したな)
『闇のゲームでの敗北したりルールを破れば……妲己、罰ゲームが待ってるぜ』
(妲己は俺の言葉でイカサマを使用した瞬間に『闇のゲーム』にルール破りと判断されることを危惧した。
だから最初からそれをルールに組み込むことでそれを回避することが狙いだ。
……だがこの提案は俺にもメリットがある。ここは……)
相手がゲームにイカサマを使ってくるならばこちらもそれで返すのが遊戯の流儀。
「いいだろう、2つ目は?」
「互いにノーペア、また同じ役だった場合の取りきめよぉん。普通はカードの順位の合計が高い方が勝ちだけれど
今回は変則的に合計の低い方が勝ちということにしましょう」
「? その取り決めに何の意味がある!?」
「別に……単なる気まぐれよぉん。こうした方が面白いと思ったからねん」
(何を考えている妲己? 自分の手が相手よりも数値が低いかどうかなど判るはずがない。
カードを操作してそういう風に持っていくことも無意味だ。
そんな操作ができるなら普通に強い手役を作ればいい。意味がない……この提案には意味がない……)
ハッと遊戯は何かに気付く。
(意味がない、それこそが妲己の狙いか! 俺に提案を深読みさせて心に迷宮を作り出す精神攻撃。
提案の内容ではなく意味のない提案そのものに意味がある! 成る程、その手には乗らないぜ!)
「受けるぜ妲己。3つ目を言いな」
(あら、結構簡単に受け入れたわねぇん……まさか目的を読まれた?)
(2つ目の提案は俺に心の隙を生み出させ、本当の目的から目を逸らす為のフェイク。
妲己の本当の狙いはおそらく次の最後の提案!)
「わらわの最後の提案……それはもし勝負が3戦目にもつれ込んだ場合、3戦目はカードチェンジを無しにすること」
「!」
「その時点で1勝1敗ならば両者の力はほぼ互角。それならばイカサマをする機会を減らすことによって
より高度な勝負をすることができるわん。完全決着には相応しいでしょう?」
(この提案が受け入れられればわらわのキル・トラップは完成する。……さて、遊戯ちゃんはどうでるかしら?)
(まだ親の先行がどちらか決まっていない状態でこの提案。
もし自分が先に親になった場合、このルールは最終戦で自分の足を引っ張りかねない。
妲己の戦法ではカードチェンジを使わないのか、俺が親を取るという確信でもあるのか……。
前者ならばイカサマの機会を減らすことで見破られる危険を減らす。
後者ならばイカサマの機会を限定することで見破りやすくする目的。
恐らくは後者。前者は後者のメリットがそのままデメリットに変わる。
後者ならば例え見破れなくても相手のカードコントロールを減らすことは子にとって有利になる。
もしこういう考えならば……甘いぜ!)
「その提案、受けてたってやるぜ!」
「流石だわぁん遊戯ちゃん。これで楽しめそうねぇん」
「さぁゲームスタートだ」
すると妲己は手を上げてそれを遮った。
「その前に……わらわが負ければ罰ゲームを受ける。ならば遊戯ちゃんはわらわが勝ったら
何をくれるのかしらん?」
遊戯はニヤリと笑うとキッパリと言い切った。
「命をやるぜ!」
「詰まらないわん」
「何ッ!?」
妲己は肩を竦めて首を振り、遊戯のアンティをバッサリと切り捨てる。
「遊戯ちゃんの命を貰ってもただこの世界のカウントが一つ減るだけ。
それだけでは普通に殺せばいいだけだものぉん。メリットが低いわん」
「じゃあ妲己。アンタは何を望む?」
「遊戯ちゃんの魂」
「!」
「遊戯ちゃんは従えと言って素直に従う子じゃないのは良くわかったわぁん。
でもそれがゲームのルールなら? 誇りに賭けて……破ることはできないわよねぇん?
負けたらわらわの物になりなさい、遊戯ちゃん」
(もう一人のボク! 駄目だよ、この提案を受けちゃ!)
(戦う前に敗北を考えればその時点で勝利はない。大丈夫だ相棒、俺は絶対に勝ってみせる!)
「いいだろう妲己! 賭けよう、俺の魂を!」
「Good!」
「行くぜ!!」
―― G A M E S T A R T ――
遊戯はカードを切り混ぜると妲己の前に揃えて置いた。
「さぁ、カードを引きな妲己」
「えぇ」
ゆっくりと妲己は手を伸ばし、山札の半ばほどでカットする。
そして残った山の一番上のカードを捲った。
そのカードは……ハートのQ。
「あはぁん、わらわに相応しいカードねぇん。
数値は12、これに勝てるのはキングとエースだけよん。幸先悪いわねぇん遊戯ちゃん」
「悪運が強いな妲己。だがまだ勝負は決まってないぜ」
今度は妲己がカードをシャッフルし、遊戯の前に山札を置く。
遊戯はカードに手を伸ばし……山の2/3ほどの部分でカットし、カードを引く。
現れたカードは……スペードのA。
52のカードの最高位。これより強いカードは存在しない。
「!?」
「俺の勝ちだ、つまり1回戦と3回戦の親は俺が務める」
遊戯はカードを手に取るとシャッフルを始めた。
(今のは……トリックなの? 全く見切れなかった……これは、思ったよりも歯ごたえがありそうねぇん)
「フッ」
遊戯は笑い、カードを切り混ぜながらカードの端を弾き癖を直す。これでトリックの証拠は消えた。
遊戯はスペードのエースの端を少しだけ折り曲げ、僅かに癖をつけていたのだ。
熟達したギャンブラーならばその僅かな癖だけで山札からそのカードを100%引き当てることができるという。
「たいしたものねぇん、でも遊戯ちゃん。スペードのAは最も強いカードであるとともに不吉のカードでもあるわん。
象徴するは対立と裏切り……そして不運。ゲームに影響がないといいわねぇん」
「……妲己、揺さぶりは無駄だぜ」
「ウフフ」
―― F I R S T G A M E ――
遊戯はカードを手際よく切り混ぜていく。
その様子を妲己はじっと見つめていたがトリックの痕跡を見つけることはできない。
(シャッフルの段階で恐らく遊戯ちゃんは自分に有利なカードを集めている。
でもそれを見抜くのは困難ねぇん……子はカード操作の機会が殆どない。
つまり勝つには親のトリックを見破ることが早道。狙いは集めたカードを手札とすりかえる瞬間よぉん!)
遊戯は切り終えたカードを揃えるとテーブルの中央に置く。
「カットしな」
「ええ」
妲己はカードの上半分ほどを取り、テーブルの端に置く。この部分は捨て札となりゲームには使われない。
これはイカサマを防ぐ手段として有効な方法とされているもので、
ディーリングの前にこれを行うのは暗黙の了解とされている。
遊戯は残った山を取ると妲己、遊戯の順番で交互に上からカードを配っていく。
じっと見ていたが遊戯の配る手つきに怪しい動きは見られない。
5枚ずつが配られ終わり、妲己は自分のカードを見た。
スペードの9、ハートの3、ダイヤのJ、ハートのJ、スペードの7
配られた時点で役はJのワンペアが完成している。
(……これは遊戯ちゃんの操作かしらん?)
遊戯もまた自分の手札を見る。
クラブの2、クラブの10、スペードの2、ハートの6、クラブの6
遊戯もまた2と6のツーペアが完成していた。
(フッ、妲己。俺の仕込みは既に完了しているぜ。さぁ見切れるかな?)
妲己はワンペアの残し3枚のカードを捨てた。
「3枚チェンジよぉん」
「OK」
遊戯は自分の手札を伏せてテーブルに置くと、山札の上から順に3枚を妲己へと配る。
配られたカードは……スペードのJ、クラブのA、ハートの5
これで妲己はJのスリーカードが完成する。
(遊戯ちゃんは……?)
「さて、俺は……『4枚』チェンジする」
「え!?」
(一度にそこまで大量のチェンジを? しかもジョーカーがないこのゲームで1枚を残す意味は……ない!
ここでトリックを使う気ねぇん!)
妲己は遊戯の手元へと視線を集中する。
遊戯は山札に手を取ると……上から順に4枚を自分へと配った。
そして山札を元に戻すと自分の手札を手に取り眺める。
ニヤリ、と笑って遊戯は妲己を見た。
妲己の額から一筋の汗が流れる。
(見えない……今遊戯ちゃんは正々堂々と上から順にカードを配ったようにしか見えなかった。
わらわの視線でトリックが使えなかった? いいえ、とてもそうは思えないわぁん。
思ったよりも……手強い!)
「さぁ、行くぜ」
「ええ、ショウダウンよぉん」
二人は同時に手役を公開する。
妲己はJのスリーカード。そして遊戯の手役は……
「Kのフォーカード!」
「何ですって?」
場には間違いなくスペード、ハート、ダイヤ、クラブのKが揃い並べられている。端札はクラブの10。
「この勝負、俺の勝ちだな」
「……そのようねぇん」
ギシッ、と妲己は一度歯を噛むと後は何事も無かったかのように微笑みカードを回収する。
(この借りは二回戦で返させてもらうわぁん……)
(フゥ、妲己には見抜けなかったようだな。俺のトリックは)
遊戯は最初のシャッフルの段階で4枚のキングを山札の底に集まるように操作した。
これならばカットされても集めたカードに影響は出ない。
そして妲己のカードチェンジが終わり、妲己がカードを確認する為に視線を落とした瞬間、
山札の底にあるキング4枚を山札のトップへと移動させた。
これはパスと呼ばれる技法で、手品などではよく使われる技である。
妲己が目を戻した時には既に山札の上から4枚はキングに成り代わっている。
そして遊戯は何食わぬ顔で上からカードを自分に配り、フォーカードを完成させたのだ。
「さあ、次の勝負だ」
―― S E C O N D G A M E ――
妲己は回収し終えたカードをシャッフルしていく。その手つきは遊戯のそれと勝るとも劣らない。
そして妲己はカードをテーブルに置いた。
「さぁ、好きな部分で分けてぇん」
「フン」
遊戯は上から1/3ほどを掴むとそれを捨て札にする。
「じゃあ配るわねぇん」
互いに5枚のカードが配られる。
妲己の手札はスペードの8、ハートの2、ハートのQ、クラブの5、ダイヤのA
全く役を作れないノーペアだった。
一方、遊戯の手札はクラブの6、クラブの3、ハートの5、ダイヤの7、ダイヤのK
(見事にバラバラだ……いや、低確率でストレートを狙えるか?
ここは手札で勝負するよりも相手のトリックを見抜くことに全霊を懸けるべきだ)
遊戯は妲己を見つめる。そして手札からKを取り出すと場に捨てた。
「1枚チェンジだ」
「わかったわん♪」
妲己は手札を揃えてテーブルに伏せて置くと、山札から一枚カードを配る。
遊戯がカードを受け取り、開くとそれは――ハートの4。
(ストレートが完成だと?)
妲己を見ると手札を左手に持ち、山札をテーブルに置くところだった。
その瞬間、遊戯の中を違和感が走る。
(なんだ、今の感じは。何か……おかしい、俺がストレートを揃えられたことに対する違和感か?
そうだ、これは妲己のカードコントロールによるものなのか……くそ、判らない!)
その時、ふと遊戯はいつまでも妲己が動かないことに気付いた。
「妲己、アンタのカードチェンジだぜ」
「結構よぉん」
「何!」
「わらわはこのままで勝負するわぁん」
(もう奴のトリックは完成している!? 馬鹿な、いつやった!?)
「……ショウ……ダウン」
どうしようもなく遊戯は先に手役を公開する。
「ストレート!」
「あらあら、強い役ねぇん……でも、ショウ・ダウン」
妲己は手札を開く。
「ストレートフラッシュ」
「!」
そこにはスペードのAから5までが綺麗に揃えられていた。
(フフ……借りは返したわぁん)
(いつだ……いつすり替えを……くそっ)
遊戯は屈辱を感じながらもカードを回収する為、山札に手を伸ばす。
その山札の位置を見た瞬間、遊戯の身体を電撃が貫いた。
(やられた! カードコントロールではなくこんな大胆なすり替えを行ってくるとは!
心理的盲点を突かれた!)
遊戯は妲己の使ったテクニックに気付く。
山札が置いてあった位置は……妲己が遊戯のカードチェンジをする際に手札を置いた場所だった。
妲己は最初のシャッフルでストレートフラッシュをカードの底に集めた。
遊戯のカットが終わり、そしてその後のカードチェンジの段階で妲己は手札を揃えて自分の前に伏せ置いた。
そして遊戯にカードを配った後、妲己は左手で山札の底の5枚を抜き取りそのまま手に持ち、
右手で山札を机に伏せてある本来の妲己の手札に重ねたのだ。
> 妲己を見ると手札を左手に持ち、山札をテーブルに置くところだった。
この時に遊戯が感じた違和感は妲己が既に手札を左手に持っていることだったのだ。
一瞬でも動作の流れに淀みがあれば遊戯は見破れただろう。
単純すぎるが故にこの上なく実行が難しいトリック。それを見事に妲己は完遂した。
「…俺の、負けだ」
「あはん、さぁ最後の勝負ねぇん」
―― F A I N A L G A M E ――
「確認するけれどこの勝負ではカードチェンジはできないわぁん」
「承知しているぜ」
(俺の全ての力を使って妲己を倒す!
妲己には1%の可能性も残さない。俺が揃えるカードはロイヤルストレートフラッシュ!
見破られさえしなければ俺が勝つ!)
(さて、わらわも正念場ねぇん。もう認めましょう、遊戯ちゃんのカードコントロールはわらわよりも上。
わらわの動体視力でも遊戯ちゃんのトリックを見極めきれない。……恐らく妙な制限のせいねぇん。
でも、それだけで勝負が決まるわけではなくてよん、遊戯ちゃん)
遊戯はシャッフルを終えるとカードをテーブルの中央に置く。
「さぁ、最後のカットだ」
「ウフフ……」
妲己はカードへと手を伸ばす。そしてその時、視線を遊戯へと移した。
遊戯と妲己の視線が交差する。その全てを見透かそうとするかのような視線に遊戯は瞬時に心を閉ざした。
(俺を見透かそうとしても無駄だぜ妲己。ポーカーフェイスは基本中の基本。
俺からトリックのヒントを掴むのは不可能だ)
「遊戯ちゃん、自信たっぷりねぇん。でも、最初に遊戯ちゃんが引いたカードを覚えてる?」
「何?」
最初に遊戯が引いたカード。それは……スペードのA。
「裏切られないといいわねぇん」
「……動揺を誘おうとしても無駄だぜ、さっさとカットしな」
遊戯が妲己と目を合わせたのは一瞬だけ。後はずっと妲己の手元に集中していた。
妲己にカードを操作する機会はない。
(後は見破られなければ……俺の勝ちだ)
妲己はカードを1/5ほど取り、捨てる。
そして遊戯の手によって互いに5枚ずつのカードが配られた。
(やはり……見えない……)
妲己の背中を冷や汗が伝う。妲己はついに遊戯のトリックを見極めることができなかった。
配られたカードはお互いに確認しない。ルールにフォールド(勝負を降りる)は存在せず、
さらにカードチェンジができない以上無意味だからだ。後は互いのショウダウンを残すのみ。
妲己、遊戯、二人の視線が……闘志が交差する。
「「 SHOW DOWN !!」」
同時に宣言し、カードを開く。
妲己のカードは……ダイヤの2、ハートの7、ハートの3、クラブの4、ハートのQ
ノーペア(役なし)だった。
「あらぁん、残念」
「フッ、俺の手は……何ィッ!?」
遊戯のカード、それはスペードの10、スペードのJ、スペードのQ、スペードのK、そして……ハートの4。
「馬鹿な、ノーペアだと!?」
確かに揃え、自分へと配ったはずのロイヤルストレートフラッシュが崩れている。
信じられない思いで遊戯はそれを見つめた。
「うふぅん、互いにノーペアだった場合のルールは最初に決めたわねぇん」
「!」
> 「互いにノーペア、また同じ役だった場合の取りきめよぉん。普通はカードの順位の合計が高い方が勝ちだけれど
> 今回は変則的に合計の低い方が勝ちということにしましょう」
> 「受けるぜ妲己。3つ目を言いな」
カードの合計が低い方の勝利。妲己の合計は28、遊戯の合計は……50。
あの時、意味のない提案として遊戯が判断したルール。それが遊戯を切り裂いた。
「わらわの……勝利ねぇん」
「馬鹿な……妲己にはカード操作のチャンスは与えなかった。俺が……ミスを?」
「遊戯ちゃん、わらわには一度だけカードを操作するチャンスがあったわぁん」
「何!?」
遊戯はゲームを思い返す。
自分は最初のシャッフルでロイヤルストレートフラッシュを揃え、カードの底に集めた。
そして次にそれを妲己がカットするが、RSFには影響はない。
そして交互にカードディーリングする際、そこに遊戯はトリックを使った。
妲己へ配るカードは普通に上から配り、自分へのカードは山札の底から配るテクニック、
ボトム・ディールを使い底にあるRSFを自分に配ったのだ。
ボトム・ディールは高等テクニックであり、上級者が行うボトム・ディールはプロのギャンブラーでも見抜けないという。
この一連の流れの中で妲己がカードを操作するチャンスは……カットの時しかない。
「まさか!?」
遊戯はテーブルの端に置かれた捨て札を見る。その一番上のカードを開くとそれは……スペードのAだった。
「やっぱりその子に裏切られちゃったわねぇん、遊戯ちゃん♪」
キッと遊戯は妲己を睨みつける。
「だが、俺はカットの時アンタの手元に集中していた! こんな単純なすり替えを見逃す筈がない!」
「フフ、それは間違いねぇん。遊戯ちゃんはその時、一瞬だけど別の物を見たはずよぉん」
「何……!」
遊戯の心臓を氷柱が貫く。
> 妲己はカードへと手を伸ばす。そしてその時、視線を遊戯へと移した。
> 遊戯と妲己の視線が交差する。その全てを見透かそうとするかのような視線に遊戯は瞬時に心を閉ざした。
「あの時、わらわの目を見たわよねぇん。遊戯ちゃんは心を読まれない為にわらわの目を見返す必要があった。
その一瞬、ほんの一瞬があればわらわには十分だったわぁん」
それこそが妲己の誘惑の術。
妲己は遊戯と目が合ったその一瞬で山札を僅かに浮かせ、底の一枚を抜き取り山札の一番上に置いたのだ。
そして何食わぬ顔で山札をカットし、一番下に置かれていたスペードのAはそのまま死に札となった。
「最初に決めたルールも……」
「わらわは最後になれば遊戯ちゃんが確実に勝つためにロイヤルストレートフラッシュを揃えると思っていたわん。
カットがあるから集めた役は山札の底に集めなくてはならないことも最初からわかっていた。
でも分かっていても遊戯ちゃんの技を見抜くことはできなかったけどねぇん。流石だわん」
妲己は一つ溜息を吐いた。そして再び説明を続ける。
「ロイヤルストレートフラッシュは数値の合計も高い。一枚抜いてもおいそれとは負けないわぁん。
もしそれ以上の数値がわらわの手札に集まるならそれは何らかの役が出来てる可能性が高いしねん」
遊戯はガックリと机に手を突いた。
(俺は……カードを完全に支配したつもりでいた。だが妲己はゲームそのものを支配していた。
トリックに拘り、可能性を排除した時点で……ゲームの本質を忘れた時点で俺の敗北は
決まっていたのかも知れない……)
遊戯にゲームの本質を忘れさせた原因。
それはゲームの最中に常に妲己から発せられていた圧倒的なプレッシャー。
その強大な殺意を前に遊戯はパートナーを護るため、確実に勝つトリックに拘ったのだ。
だが妲己はその上を行った。
「素晴らしい勝負だったわん、遊戯ちゃん。本当に強かった。
でも、わらわは遊戯ちゃん以上の策士なのぉん♪」
(俺の……完全な負けだ。すまない、相棒)
妲己は席を立つ。
「さぁ、約束を覚えているかしらぁん……このゲームのアンティをねん」
遊戯は無念に目を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。
(諦めちゃ駄目だよ、もう一人のボク!)
(相棒、だが俺はゲームに負けた。アンティを払わないことは許されないぜ……)
(ボクに考えがあるんだ。ボクに変わって!)
(何?)
遊戯から闇の気配が消え、表の遊戯が浮かび上がってくる。
(何、遊戯ちゃんの雰囲気が変わった……元に、戻った?)
遊戯は千年パズルを首から外すと手に持った。
「妲己、あなたの望む魂はここにある。千年パズルに封印された闇の知恵と力。
それがもう一人のボクだ。負けたからにはボクはこの魂をあなたに渡さなくちゃいけない」
(相棒、何をするつもりだ! まさか!)
「渡すよ妲己。でも……」
遊戯は千年パズルからピースを外す。パズルはバラバラになり地に落ちた。
「このパズルはあなたには絶対に組むことはできない!」
「へぇ……そぉん。わらわの望む魂はそのパズルの中に……じゃあ遊戯ちゃんは、いらないわねぇん」
風が唸りを上げて二人の周囲を渦巻き始めた。
「ボクは信じる! 結束の力を持つ人が必ずボクの仇を討ってくれるって!」
「それが遊戯ちゃんの最期の言葉ねぇん……あはん、可哀相な遊戯ちゃん♪」
「 罰 ゲ ー ム ! 」
―― GAME OVER ――
夕陽を浴びて朱に染まるログハウス……2階のサロンにて『食事』を終えた妲己は上機嫌でくつろいでいた。
「ふふぅん、いろいろとあったけれど『美味しかった』から許してあげる遊戯ちゃん♪」
妲己はテーブルの上に置いてある千年パズルのピースと黒い核鉄を見やる。
そしてまず黒い核鉄を手に取った。
(多分これはカズキちゃんが言っていた核鉄ねぇん。黒いというのは聞いていないけれど。
カズキちゃんの心臓の部分からこれは出てきた。…つまりカズキちゃんは宝貝人間のようなものだったのかしらん。
これを誰かに埋め込めばカズキちゃんのような力が使えるのかしらねぇん……実験してみてもいいかも)
黒い核鉄を袋へと入れると次は千年パズルのピースを見る。ナプキンで全てのピースは包んであった。
(遊戯ちゃんはわらわには絶対に組めないといっていた。あの顔からしてあながち根拠のない話でもなさそうねん。
だったら誰か可能性のある子に組ませて見ましょうか……結束の力とやらを持つ子にねぇん)
妲己は千年パズルも袋の中に仕舞うと、ゆっくりとチェアにもたれた。
(闇のゲームは楽しかったけれど少し精神的に消耗してしまったわねぇん。
放送まで少し休むことにしましょう……それまでに方針を練り直しましょぉん♪)
(場合によっては……わらわ自らカウントを減らしていくのも……アリ、かもねぇん)
そしてゆっくりと時は過ぎていく……。
【滋賀、三重の境にある小山 ログハウス/夕方】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]少し精神的に消耗 満腹 上機嫌
[装備]打神鞭@封神演義 魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]荷物三式(一食分消費) 黒い核鉄III@武装錬金 ドラゴンキラー@ダイの大冒険
黒の章&霊界テレビ@幽遊白書 千年パズル(ピース状態)
[思考]1:これからの方針を練り直す
2:仲間と武器を集める
3:本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
4:ゲームを脱出。可能なら仲間も脱出させるが不可能なら見捨てる
【武藤遊戯@遊戯王 死亡確認】
【残り71名】
空中で石礫と接触した瞬間、爆発が起きる。
カズキの身体は砕け散り、爆発の衝撃から妲己を護った。
妲己は風を操作して爆風からも身を護り、一瞬の溜めの後もう一度打神鞭を振るう。
「疾ッ!」
風のリング、打風輪が爆煙の間を縫ってキルアへと襲い掛かった。
「ち、くしょぉお!」
ザ ン ッ
打風輪はキルアの右腕を二の腕から切断し、その地に落とす。
キルアは倒れ、懐から黒い核鉄が零れ落ちた。
しかしキルアは正真正銘最期の力を振り絞って立ち上がると今度こそ一目散に逃げ出す。
「逃さないわぁん!」
「妲己さん!」
追撃しようとした妲己だが、横合いから掛けられた声に動きを止め振り向いた。
声を掛けた相手は……。
「……遊戯ちゃん」
そこには信じられないといった表情で妲己を見つめる遊戯が立っていた。
キルアは走る。
生き延びる為に、生き延びてゴンを護る為に。
オーラを殆ど消耗してしまい体が鉛のように重い。
だがまだ足は動く。身体は前に進む。キルアは後ろも振り返らずにただ走る。
右腕から血が滴るが、左腕も使い物にならないため止血もできない。
魔弾銃のベホイミを使おうにも銃を撃つこともできない。
意識が朦朧とし、今にも倒れて気絶してしまいそうだが強靭な意志の力で彼は走る。
誰かを見つけて助けてもらうしかない。今の自分の状態では信用できるか等とは言っていられない。
(友達なんだ……やっとできたオレの友達なんだ! 護りたいんだ!!)
その為に生き延びるのだ。
そして森を抜けた所で彼は一人の少年を見つけた。
森から飛び出し、最後の力を振り絞ってキルアは少年へと迫る。
キルアは口を開いたが、それは声にならずただ空気が漏れ出るだけだった。
「ちぇ、ついてないなぁ……」
越前リョーマはそう悪態を吐き、チェーンの外れた自転車を修理している。
滋賀県と大阪府の境でチェーンが外れてしまったのだ。
越前は少し焦燥を感じながら上手く嵌らないチェーンにイライラしていた。
「結構時間食ってるし、早く直さないと」
いつ襲われるとも限らないし、と一人ごちようとした所で
森から「何か」が越前に向かって飛び出してきた!
「うわ!」
森から飛び出してきたのは自分と同じくらいの少年。
しかしその鬼のような形相で大きく口を開き、自分に向かって駆けて来るその様は
越前に襲い掛かってきていると錯覚させるには充分だった。
反射的に立ち上がり、傍に置いてあったラケットを掴み越前は渾身の力を込めて……
ラケットを振るった。
ゴギン
ラケットは偶然にも正確にキルアの首筋に入り、頚椎を打ちつけた。
湿った音を響かせて頚椎がズレる。それは脊髄神経を擦り千切り、キルアの全身を麻痺させた。
激痛が脳を焼き尽くし、キルアの身体の中で何かが決定的に切れる。
そしてキルアの意識は暗い闇の中へと引っ張られていった。
――おい……ちょっと待ってよ……マジかよ……
オレはゴンをまもらなくちゃいけないんだよ……頼むよ……オレは……
暗い暗い黒の世界の底へとキルアは急速に沈んでいく。
―― 待ってくれよ……オレ……ゴンを……、……光……が見える……ゴン、なのか……?
ゴン……オレも…… 一緒に ―――
早鐘を打つ鼓動を止めようと心臓の辺りを押さえ、越前は動かなくなった少年の死体を見下ろしていた。
(なんだ……これ?)
(この子、本当にオレに襲い掛かってきたの?)
呆然と衝撃で亀裂の入ったラケットを手にしたままキルアの死体を見つめる。
(腕がない……この子、襲ってきたんじゃなくてホントは助けを求めてたんじゃないの?)
「……オレ、なんてことを……」
どうすればいいのか分からず越前はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
【滋賀県 琵琶湖畔の小屋→四国へ/午後】
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】食料8分の1消費した支給品一式
【思考】1、麗子と共に四国へ行き、太公望達と合流。 藍染の計画を阻止
2、藍染、ハーデス達を倒す。
【秋本・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】部長、中川の死による精神的ショック(中)
【装備】サブマシンガン
【道具】食料8分の1消費した支給品一式
【思考】1、四国へいき、太公望達と合流
2、藍染の計画を阻止
3、主催者の打倒。
【滋賀県と大阪府の境(三重寄り) /午後〜夕方】
【越前リョーマ@テニスの王子様】
【状態】少々の疲労 空腹
【装備】亀裂の入ったテニスラケット、チェーンの外れた両さんの自転車@こち亀、線路で拾った石×4
【道具】荷物一式(半日分の水を消費)
サービスエリアで失敬した小物(手ぬぐい、マキ○ン、古いロープ
爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
【思考】1:茫然自失
2:大阪へ向かい新八を探す
3:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
4:仲間(乾、跡部)との合流。
【滋賀、三重の境にある小山/午後〜夕方】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]健康
[装備]打神鞭@封神演義 魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]荷物一式(一食分消費) 黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
[思考]1:キルアの追跡を諦め、遊戯と話す
2:仲間と武器を集める
3:本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
4:ゲームを脱出。可能なら仲間も脱出させるが不可能なら見捨てる
【武藤遊戯@遊戯王】
[状態]健康
[装備]トランプ
[道具]荷物一式(一食分消費)
[思考]1:妲己に事の次第を問いただす
2:ゲームを脱出するため仲間を探す(斗貴子・杏子を優先)
3:ゲームから脱出し元の世界へ帰る
[闇遊戯の思考]:妲己の警戒を続けるが、妲己が善人ならばと希望を抱いている。また『闇のゲーム』執行を考えている
【キルア@HUNTER×HUNTER死亡確認】
【武藤カズキ@武装練金死亡確認】
【残り75名】
キルアの道具とカズキの道具はその場に放置されています。
(爆砕符×2@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、
クライスト@BLACK CAT、魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×7 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1
焦げた首輪、荷物一式 (食料1/8消費))
(黒い核鉄III@武装錬金 ドラゴンキラー@ダイの大冒険 荷物一式(一食分消費))
幾多もの煌めく生と儚い死を見つめ続けた偉大な太陽は地平線へと沈み行き、舞台に夕闇が訪れるその刻限…三度参加者たちに届けられる支配者の高らかな声――
――いまだ生を謳歌しているという幸運に恵まれた者たちよ、それでは今から現在までに脱落した者の名と午後八時からの禁止エリアをこのバーンが発表する。
一度しか言わぬので聞き逃さぬようにするのだな。
――大蛇丸、奈良シカマル、黒崎一護、(ニコ・ロビン)、沖田総悟、真中淳平、北大路さつき、跡部景吾、ゴン・フリークス、ヒソカ、キルア・ゾルディック、武藤カズキ、
ルナール・ニコラエフ、(ラオウ)、バッファローマン、浦飯幽助、武藤遊戯、伊集院隼人、野上冴子、富樫源次、一輝、斉藤一、ブルマ、玉藻京介、(トレイン・ハートネット)、ダーク・シュナイダー、エテ吉――
以上、24(27)名が不運にも命を手放しこの舞台から退場した者たちである。
…いや…おそらくこれから更に激化するであろう過酷な戦いの運命から早々と逃れられたのであるから、そういう意味では幸運であったのかもしれぬがな?フフ…。
それでは続いて新しい禁止エリアを発表する。
午後八時から増える禁止エリアは『新潟県』と『高知県』だ。
これで今回皆に伝えることは終わりだが…一つだけ諸君に有意義な情報の報告と簡単な説明をしておこうか。
すでに気付いている者もいようが、この世界には鉄道が敷いてある。
北海道を除く北端…青森から、南端の鹿児島までを一本に繋ぐ移動手段だ。
途中に数カ所ある駅で乗り降りが可能、少し無理をすれば走行中の途中下車・途中乗車も可能ではある。
しかも特例として、完全乗車中は『禁止エリア』対象外となっている。
機関車に乗っている最中であれば禁止エリアを通過中でも首輪の爆発は起こらない。
ただしそこで一歩でも下車するともちろん駄目であるがな。
運行数は六時間ごとに往路と復路の一本ずつ…つまり一日に往路四本、復路四本の計八本だ。
青森・鹿児島に到着した機関車はそのまま逆方向へと進路を変えて再び運行を再開する仕組みになっている。
端から端までにかかる所要時間は約六時間。
つまり、走っている機関車の数は往路復路共に一車ずつ、計二車だけという事だ。理解できたかね?
そしてさらに朗報を伝えよう。
その二つの機関車の内の『どちらか一つ』に手付かずのままの参加者のデイパックを積んでおいた。
元の持ち主はゲーム開始前の説明時にフリーザ王に首輪を爆破された例の男の物だったのだが…せっかく用意した物なのだから、是非ともゲーム進行に役立ててもらいたいとのこちらからの善意のプレゼントだ。ククク…。
…以上だ。
順調にゲームが進行している現状、大変喜ばしい。
今回の放送が諸君の助けとならん事を余も切に願っておるぞ。
フ…それではまた六時間後。諸君たちの更なる幸運を祈る――
[現在一日目、18:10/夜/残り74(71)人]
上の『第三放送』での()表記は、掃除屋達の慕情【後編】がOKになるかNGになるかで後に内容が変化する可能性が有るためです。
ややこしくて申し訳ありません。
>>35 22行目あたり
>そのロビンて娘も
→その、杏子のバッグを盗った娘も
以後>38から改訂版
しかしラオウはその躰を僅かにも動かさず、その眼のみをロビンに向ける
「この拳王、如何なる窮地に於も女子供を殴る拳は持たぬ、と言ったはずだ」
眼光の鋭さだけが増してゆくラオウに、両手を重ねたロビンは一筋の汗を垂らす。
しかし彼女の決意は揺るがなかった
「馬鹿にしないで。私は…海賊よ!」
「……承知した。たとえ女であれその信念と我に立ち向かう牙を持つならば、ウヌもまた漢である」
その腹に戈を握り締めたロビン。その拳に矛を携えたラオウ。
両者が両者を称えるかの如く微笑を交すと、二人の影が交錯した。
ラオウの矛先はロビンに向かい、矛は彼女の体を貫いた。
防御する暇すら与えず、ロビンの肋骨は全て砕け、血を吐きながら、泥のように蹲った。
やがて、ピクリとも動かなくなった
「ロビン・・そんな、ロビーーーンッ!!」
物言わぬ亡骸を見、跪き哀愁の叫びを放つスヴェン。
ラオウもまた淀んだ眼差しを一瞥、しかしその歩は止まらなかった
「そう悲しむな。女もお前もよくぞ我に臆せず立ち向かった。
その心意気やよし!この拳王と拳を交えた事、あの世で誇るがいい」
膝をつき項垂れるスヴェンにさえ、容赦の無い鉄槌が迫る。
そしてラオウは全てを終わらせるべく、右手を高々と上げた。
「・・・この一発は、強力だぜ。」
ラオウのちょうど二の腕の辺りに、漆黒のボウリング玉程度の球体が光速で“撃ち放たれた”。
「ぐおおおおおッッッッッッ!!」
ラオウと球体は一体となった刹那、僅かな放電が起こったかと思うと
それは名付けるなら小型原子爆弾か。幾つもの木々とラオウを、爆音を奏でながら森の奥深くへと吹き飛ばした
スヴェンには全てが理解できた。完璧な射撃。見たことのある光線弾道。
「・・・トレイン。」
「よっ」
茂みから膝を抱え現われたトレインは、スヴェンにいつもの笑みで手を上げた。
「遅ぇよ馬鹿」
「何ぃ?助けにきてやったのに馬鹿とはなんだ馬鹿とは。
こっちは片手じゃ撃てないウルスラグナを軍隊よろしく茂みから伏せて射撃したんだぞ。さすが俺様と」
「・・・そうだ、ロビン!!」
トレインの言葉を無視し、スヴェンはロビンの元へ駆け寄る。
トレインは、物言わぬ女性を見、取り乱し女性に近づく相棒の姿を見て悟る
「ロビン、ロビン!」
スヴェンはロビンを抱きかかえ、必死で揺さぶり呼びかけるが、彼女の体は
鈍く、重く、冷たくなっていく。
「スヴェン、もう、その娘・・・」
「俺が守るって言ったんだ!死なさねえって誓ったんだ!!」
彼女を抱え、何度も何度も揺さぶるスヴェン。駆け寄ってくるトレイン。
「スヴェン・・・!」
「お、俺が守るって・・」
「スヴェン!」
「守るって・・・うう・・・・」
「スヴェン避けろおおお!!」「!?」
抱える女性もろとも、スヴェンの嘆きも悲しみも。全て拳王の拳に飲み込まれた。
「スヴェン!畜生!!」
残段数0のウルスラグナをハンマー型に切り替え、トレインは拳王に飛び掛った
「うおおお!!」
拳王は疲労のせいか、トレインの怒りの一撃はまともにヒットする。
「なんでてめえが生きてやがる!!奪ったのか!?俺の右腕だけじゃ飽き足らず、
あの青年の命も!幽助の命も!あの娘の命も!スヴェンの命もぉ!!」
「五月蠅いい!!」
拳王の闘気が、豪脚が、豪拳がトレインを襲う。
トレインの怒りが、眼光が、爪がラオウを襲う。
トレインはその闘気に吹き飛ばされた。電磁砲“レールキャノン”に加え、
怒涛のラッシュでついに拳王の右腕は千切れ飛んだ。
しかし拳王。まるでカウンターのように入った左ストレートがウルスラグナごとトレインの右膝を砕く
「ぐうう!!」「がああ!!」
そして吹き飛ばされ体制を大きく崩したトレインに、再びラオウの左拳ストレートが。
「かああああああ!!」
「くっ!」
「トレイン!!」
それは把手のついた、ただの鉄塊。トレインはがっしりとそれを掴んだ
そこでアビゲイル様ですよ
(なんだ…?これ)
一瞬怯むもラオウの進行は止まらない。しかしそれを投げたスヴェンは、勝利を確信した
「トレイン!それを使え! アタッシュウエポンケースだ!!」
「スヴェン・・生きてたのか。良かっ・・てええ!?
壊れてんじゃん!!」
「かああああああああああああ!!」
「早くしろ!一番奥のボタンだ!!」
ラオウの左拳がトレインの心の臓に激突した。
ジュッ!!!
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
その時、物陰からタオパイパイが現れた
「貴様・・・何をしたぁ!?」
「なるほどな。
ウォーターメス。圧縮した“ただの水”を撃っただけさ・・・
なんてキザなこと言うつもりはねえけどよ。
どうやら相打ちみてえだぜ」
ラオウの左腕から右胸にかけて、くっきりと斬痕が描かれ、打ち砕かれたトレインの肋骨は音を立てて砕ける。
「がはっ!」
拳王の一撃はトレインの胴までその衝撃を伝えていた。吐血と共に蹲るトレイン。
死期を悟ったラオウは、悔しさと虚しさ、そして清々しさを同時に感じていた。
「ウヌの名、聞いておこう」
「トレイン=ハートネットだ。アンタは?」
「世紀末覇者、ラオウ」
「強えな、アンタ」
「ウヌも以前遭った時より、若干迅かった」
「俺はもともと左利きだからな」
「フフフ」「ククク」「カカカ」「ヒヒヒ」
「「ははははははははははははははは!!!!!!!」」
しばらく笑った後に、ラオウは仁王立ちのままゆっくりと目を閉じた。
動かなくなった二人を見て、スヴェンは慌てて蹲たトレインに駆け寄る
「トレイン!!」
「スヴ・・ェン」
駆け寄ってきたスヴェンに、トレインは力を振り絞って答える。
「トレイン!!」
「スヴェン・・・ラオウは?」
スヴェンはトレインを抱き起こす。
「大丈夫だ。立ったまま死んでやがる」
「ははは…なんて奴だよ。 スヴェン……一つ、聞いていいか?」「何だ?」
「ウォーターメスは…スヴェンの得意技だろ…?
ケースが壊れてないと気付いたなら、その間に撃つ暇があっただろ…」
「そりゃあ、無理な話だ」
スヴェンはぶくぶくに腫れ上がった右腕を見せる
「さっきの一撃をまともに食らってな、利き腕イカれちまった」「?…悪ぃ、なんか目がぼやけて、よく見えねえ」
「だ、大丈夫か?」
「いやあ・・今回は相手が悪過ぎたぜ」
「ははは、ちげえねえ。」
「スヴェン、よく聞けよ。ここから西に進むとログハウスがある。
そこに杏子って娘がいるから助けにいってやれ。」
「トレイン?何を言って」
「この鈴を鳴らせば信用してくれる。」
そう言うとトレインは鈴をスヴェンに渡した。
「トレイン・・・」
「俺もう、ダメみたいだ・・・」
「トレイン!!」
「(コノクビワハ、トウチョウキガツイテル)」
「え?」
それは口唇術。口の動きだけで相手に言葉を伝える、闇に生きるものにとっては常識の技術
「じゃあな、スヴェン」
「トレイン?」
それっきり、トレインは動かなくなった。
そのとき丁度、夕日が沈んでいく。今日の太陽の仕事はおわった。
三人の燃える様な命も。紳士が募らせる感情とは裏腹に。
【茨城県・袋田の滝下流/夕方】
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:体中に裂傷、捻挫多数
右腕から肩にかけて複数の内出血
[装備]:アタッシュウエポンケース@BLACKCAT(ウォーターメスのみ使用可)
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]:1.杏子を探す
2.イヴ・リンスと合流
スヴェン死ぬな
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]健康
[道具]荷物一式(トレインのもの)
[思考]1:鈴の音を待つ
2:遊戯と合流
(ウルスラグナ@BLACKCATは破壊されました)
(ラオウの荷物はその場に放置されています)
【ニコ・ロビン@ONEPIECE 死亡確認】
【ラオウ@北斗の拳 死亡確認】
【トレイン・ハートネット@BLACKCAT 死亡確認】
【残り72人】
◆gnM9.np5nMこと!先生の作品はNGです。
つか、なんでNGか分からない人いる?
126 :
◆01BuaIZRLs :2006/03/13(月) 00:52:05 ID:iiqVT0nB0
>>114-124等の◆gnM9.np5nMこと!先生の作品はNGです。
つか、なんでNGか分からない人いる?
>36 21行目からの()の中を修正
(ちくしょう、俺が行くまで間に合えよスヴェン。お前がいなきゃ、
主催者に不吉を届けられねえ。
鈴を鳴らした時に何かが反響しやがった。間違いなく首輪の中で。だとしたら何が反響したんだ?
決まってる!集音マイクだ!
首輪が唯の爆弾なら冷凍弾“フリーズブレット”さえ見つければどうにかなると思ってたんだがな…
まさか盗聴器までついてるとはな)
「…………ぁ…………」
自分でも何を言おうとしたのかわからないけれど、発した声は言葉にはならなかった。
「あ……ぁ……」
――――――――――――真中淳平。
何度も何度も心の中で呟いては胸を高鳴らせた大切な人の名前。
その名前が、“ゲームの脱落者”として呼ばれている。
「ま……なか……くん……」
ようやく口に出来た彼の名を呼んでも、ここには答えてくれるあの人はいなくて。
――――――――ううん。
『ここ』だけじゃない。
『どこにも』いない。
真中くんはいない。――――――――もう、どこにも。
「……真中くん……真中くん……真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中く
ん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん」
初めて屋上で私の小説を読んでくれた日のこと。
一緒に高校受験の勉強をした日のこと。
高校に合格したあの日のこと。
高校に入って、映研を作って、それから色々なことがあって。
忘れた事なんてない。忘れられるわけない。
真中くんと仲良くなってからの日々は、私にとってかけがえのない大切な宝物のような日々だもの。
不意に感じた寒気に、座り込んだまま両腕で自分を抱きしめようとする。
けれど今の私はそれすらも叶わない。
痛みはないけれど、右腕がないという喪失感にはどうしても慣れることが出来ない。
“放送”で真中くんの名前を聞くまではとてもいい気分だったのに。
右腕の事なんて気にもならなくて、すごく体が軽くて、暗いところも1人なのも怖くなくて……何
でも出来そうな気がした。
きっと今なら自分でも満足できるお話が作れるって、そう思った。
真中くんに聞いてもらいたい。読んでもらいたい。
そして真中くんにもこの心地いい高揚を味あわせてあげたい。
だからこのゲームで優勝したいと思ったのに。
吸血鬼となってしまったこの体では昼間は外には出れないから、夜になったらがんばろうと思って
いたのに。
「……何のために……」
何のために人間を超えた存在になったのだろう。
昼間この右手が消えたとき、人間を超越した、と、そういう存在になったということが無性に嬉し
かった。
だって……私はいつもとろくてドジばかりで。
西野さんのように明るくもないし北大路さんのように強くもなくて、いつも暗くて思っていること
を上手く伝えることも出来なくて。
いつもいつもいつも自分を自己嫌悪していた。
そんな私が強くなれたのだと知って、嬉しかったの。
『これで真中くんの横に立てる』って。
今までの東城綾は真中くんの横に立てるような素敵な女の子じゃなかったけれど、この私は違うって。
生まれ変わったんだって、そう思ってたのに。
だから突然吸血鬼になってしまっても嬉しかったのに。
なのに。
「真中くん真中くん……真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん
真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん」
彼はいない。もういない。どこにもいない。
「……真中くん……真中くん……真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中く
ん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん真中くん」
あんな風に男の子に優しくされたのは初めてだった。
あんな風に男の子に笑いかけられたのは初めてだった。
こんな……想うだけでドキドキするなんて気持ちは初めてだった。
私に沢山の初めてをくれた彼が、どうして。
「……っ……」
気が付いたらポタポタと涙が流れ落ちていた。
片方だけしかない手で拭っても、涙が止まることはなくて。
――――――――――――死のう。
だって、生きていても仕方ないもの。
真中くんがいないのなら強くなった私も意味がないもの。
さっきの放送で真中くんの次に呼ばれていた北大路さんも、きっと真中くんを追っていったのね。
昼間に私と会ったときも様子がおかしかったし……。
あの時はまだ、自分が何でも出来るような気がしてすごく楽しかったのに。
北大路さんの血はどんな味なのかな、って考えてたらすごく楽しかったのに。
先に真中くんの所にいっているなんて北大路さんらしいね。
私もすぐに行くから。
待っててね。
真中くん。北大路さん。…………。
「…………西野さんは…………?」
――――――――――――西野さんはどうしたの?
私とは正反対。
いつも光の下にいた綺麗な人。
明るくて、しっかりしていて、気が利いて、優しくて。
西野さんの名前はまだ呼ばれていない。
ということは……まだ生きているのね、西野さん。
「どうして……?」
どうして生きているの?西野さん。
真中くんも北大路さんも死んじゃったのに、どうして西野さんは生きているの?
西野さんだって真中くんのことを想っているのでしょう?
だったら、真中くんがいなくなってしまって悲しいでしょう?
なのにどうして生きているの?
こんなに悲しいのに。
人間を超えた私でもこんなに悲しくて生きていられないのに。
――――――――――――ああ。そうね。そうなのね。1人では死ねないのね。
「一緒に死にましょう。西野さん」
そうしましょう。
二人で真中くんの所まで行きましょう。
そしてまた……中学生の頃のように笑い合いましょう。
西野さん。
私があなたの血を吸ってあげる。
きっと西野さんの血はお日様の様に温かいのでしょうね。
そしてあなたの血を吸い終わったら、私もきっと後を追うから。
今の私はドジばかりだった私じゃないの。
きっと何があっても転ばずにあなたを見つける。
だから。
ゆっくりと綾は腰を上げる。
深く息を吸って吐いた綾の頬には、もう涙は流れていない。
残っている左手で荷物を拾い上げ足を踏み出す。
「待っててね、西野さん。今あなたの所に行くから」
外にはもう、日は差していない。
暗い森は狂気に染まった少女の姿を完全に呑み込み――――――――――――静けさを保ったまま、ただそこに存在していた。
【岐阜県(の福井に近い)山中/1日目・夜】
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化。右腕の肘から先を消失。
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式
[思考]:西野と一緒に死ぬ
※綾は血を吸うこと以外の吸血鬼の能力をまだ知りません。
もう数十分は経っただろうか。
休憩を終え、津村斗貴子、夜神月、友情マンの三人は、再び名古屋城に向かうことにした。はずだった。
しかし、もうすぐ六時になろうというのに、いっこうにその距離は縮まらない。
森の木々の間に覗く名古屋城――その大きさは変わることなく、歩いても見える外観が変化していくのみだった。
それに加え、月は先頭を行く斗貴子の歩みが異様に遅いことも気になった。
ケンシロウとの約束の時間は次の放送、六時のはず。しかし、今のスピードではとても六時までには間に合わない。
いったいなにを考えているのか。不信感を抱かせながら歩き続けるのも、そろそろ限界だった。
「待ってください津村さん。いつまでこんなことを続けるつもりですか?」
痺れを切らした月は、先頭を歩く斗貴子を呼び止めた。
先ほどから変わらぬ名古屋城のとの距離。微かに変わるのはその外観。
まるで、名古屋城の周りをぐるぐる回っているように。
先頭の斗貴子には、名古屋城へ向かう気がないのだろうかと、疑いたくなってくる気持ちも当然といえた。
しかし、この疑問抱いていたのは月のみ。黙って歩いている友情マンには、斗貴子の行動の意図がちゃんとわかっていた。
「……そうだな。ここまでくればもはや決定的か」
月の制止で斗貴子もようやく立ち止まり、ため息を吐く。
と、次の瞬間、
突然自分たちが歩いてきた森の中、明後日の方向を睨みつけた。
「そこに隠れている者、おとなしく姿を見せろ」
(――!? バレた!?)
斗貴子が睨みつけた先の草むら。そこには、三人を追跡し息を潜めていた存在が一人。
本人は気配を殺し、完璧に尾行していたつもりでいた。が、傷つき疲弊した身体のせいだろうか、月はともかく戦士である斗貴子と友情マンの目は欺けなかったようである。
「戦う意思がないというのなら、静かに手を上げて出て来い」
斗貴子のドスの利いた声に急かされ、潜んでいた者は焦りだす。
相手は三人。普通なら見逃すところだが、そのメンバーは少女にひ弱そうな少年と、なんだかよくわからない格好の人(?)。
とても戦闘能力は持ち合わせていなそうな三人。それでも過去の経験を考え、慎重に機を窺っていたのだが、今回はそれが裏目に出たようである。
(――クソッ)
気配に気づくということは、あの少女も戦闘経験者である可能性がある。
その場合、ここで強攻策にでるのは不味いか――
「……戦う意思はないよ(うっ、すげー威圧感)」
ボロボロの身体が彼を気弱にしたのか、潜んでいた者は言われたとおり静かに手を上げながら、三人の前に姿を見せた。
それは、随分と小柄な坊主頭の青年。
その小さい身体には、確かな戦闘の跡があった――
「では、それでここまで逃げてきたと」
斗貴子は、いつからか自分たちを尾行していた存在――クリリンに尋問を始めていた。
彼の話はこうだ――
数時間前、福井県でゲームに乗った者に襲われた。
自分は、なんとかそれを自慢の拳法で撃退した。
しかし、それでも倒しきれず、荷物を奪われてしまった。
命からがら逃げ出してきたところで、斗貴子たちを見つけた。
荷物もなしの一人きりでは聊か不安であるため、ゲームに乗っていなそうな三人に声をかけようとした。
しかし、先ほどのことを考えると、簡単に声をかける気にはなれなかった。
だから、安全とわかるまで三人を尾行させてもらった。
――とここまでが、クリリンが三人についた「嘘」。
実際は単に新たな脱落者を作ろうと機を見計らっていたのに過ぎない。
だが、斗貴子が只者ではないということがわかり、疲弊している今は争いを避けようと判断して、咄嗟に思いついた嘘。
その点では、クリリンがブルマ殺害時に荷物を置き忘れたことが幸いした。
加えて自分の身体は傷だらけ。ついた嘘にもかなりの信憑性が持てる。
そうクリリンは自負していたのだが、生憎と二人の腹黒は騙せていなかった。
(下手な嘘だな。話自体は信憑性がもてるが、この見るからにおかしな態度、これでこの僕を欺こうとは)
(クリリン君か。残念だけど、彼も月君と同じでなにか企んでいるようだ。まあ、おそらくは僕らの命か)
「嘘つき」という点では、月と友情マンはクリリンの遥か上段をいっていた。
そんな二人には、明らかに挙動不審な態度で語る、クリリンの継ぎ接ぎのような嘘などは通用しない。
もちろん、斗貴子も簡単に騙されるような人間ではない。
クリリンの態度がおかしいのにはちゃんと気づいていた――が、
タイミングが悪く、クリリンへの尋問が終わらぬ内に、放送が流れた。
「…………そん、な」
放送で告げられたのは、斗貴子のよく知る名。
「……そんな……馬鹿、な……」
放送で告げられたのは、斗貴子が捜し求めていた人物の名。
「どうして……どうして君が……」
放送で告げられたのは、武藤カズキという少年の名。
「………………カズキ!!」
放送は、カズキの死を宣告した。
(よかった……悟空とピッコロもまだ生きてる。ブルマさんは……やっぱり俺が殺しちゃったんだよな)
(……ちっ、Lはまだ生きているか。さすがにしぶといな。そろそろ死んでくれるとありがたいんだが。それにしても……機関車に残された手付かずのデイパックか。利用できるような中身なら魅力的だが……)
(うんうん。またたくさん死んだようだね。なるべく強くて友達になれそうな人が残ってくれているとありがたいんだけど。機関車の中のデイパックというのも気になるな。今のままじゃ手に入れる機会はないか……)
三者三様、斗貴子以外の三人は、放送で悲しみを得ることはなかった。
それぞれなにを思い、なにを企んでいるのか。この時点では、互いの腹のうちは自分自身にしかわからない。
「ぅ……ぁ……ぁぁ……」
その瞬間、三人は信じられないものを見た。
「……あ、ぁ、あ…………カズ、キ……カズキッ、カズキィィィー!!!」
「――津村さん!?」
斗貴子が、泣いた。
大切な者の死に、気丈な女戦士が涙を流したのだ。さすがの月と友情マンも、これには動揺した。
女性でありながらこの殺人ゲームに正面から立ち向かい、決して弱音を吐かなかった戦士・斗貴子が、初めて見せる弱さ。
なんということはない、それは至って普通の少女が流す涙と同じもの。
大音量で流す悲痛な叫びは、もしかしたら近くにいる者に自分たちの存在を教えてしまうかもしれない。
そんなことはわかっていたが、斗貴子はこみ上げてくる「悲しみ」の感情が抑えきれず、涙を流すことを止められなかった。
しかし、斗貴子の悲しみも、月と友情マンにとってはいい迷惑。
こんなに盛大に泣き叫ばれては、今まで無言で移動してきた苦労が水の泡だ。
もしマーダーでも呼び出されることになればかなわない。
「津村さん、悲しいのはわかるが、ここで泣いていても始まらない。今は一刻も速く名古屋城へ……」
「君になにがわかる!!」
指し伸ばされた月の手を、斗貴子は乱暴に振り払った。
「……違う……カズキは違うんだ! 本来なら彼は……こんなところに呼ばれるべき人間ではなかった!!」
斗貴子と出会う前、武藤カズキは普通の高校生だった。
それを、斗貴子が巻き込んでしまった。
錬金の戦士とホムンクルスという、戦いの場に。
「カズキは……本当なら戦いなど知らない、普通の高校生であるはずだったんだ! それを……それなのにっ!!」
巻き込んでしまったのは、自分。こんなところに引き込まれてしまったのも、自分が巻き込んでしまったから。
こんな、殺人ゲームの中で、こんな、ふざけた人殺しの舞台で、
誰が――――――カズキを殺したっ!?
「……みんな、誰かこっちに来る!」
斗貴子の叫びで他の参加者に居場所が知れることを恐れた友情マンは、周囲を警戒していた。
そうしたら案の定、こちらへ向かってうごめく影が。
「津村さん、もしゲームに乗った者だったら危ない。今は堪えて移動するんだ」
斗貴子に構って襲われでもしたら、たまったもんじゃない。
月は、へたれこむ斗貴子を無理やり立ち上がらせ、森の草陰に連れて行く。
「クリリン君も、今は隠れるんだ」
「あ、ああ……」
クリリンを加えた一同は、森の中へと身を隠す――
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記1〜
――時が来たようだ。
「……まさか……ダーク・シュナイダーが……いや……まさか……しかしお嬢さんが……」
耳に、聞きなれたおっさんの声が入ってくる。間違いない。アビゲイルの声だ。
私は、ブルマの死とクリリンに襲われたショックで気絶した。
うん、ちゃんと覚えてる。どうやってブルマが死んだのかも、なにを思って死んでいったのかも。
私も、いい加減目を覚ますことにしよう。いつまでも悲しんでいられない。
私には、私の目覚めを待つ仲間がいるのだから――
ぬ〜〜〜〜〜〜〜〜ん……
「うっっっっっひゃああぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!?」
目覚めると、眼前には汗ばんだアビゲイルの顔があった。
そのいつも以上にむさくるしい面に、私は思わずベッドから跳ね上がって驚いてしまった。
「おお、お目覚めになられましたか。外傷がない割に結構な時間眠っていたので、心配しましたよ」
紛れもない、アビゲイル。
私の目覚めを待ってくれていた仲間――なのだが、やはりこのおっさんに慣れることは、なかなかにして難しいようだ。
と、あたりを見渡してみると、そこは見知らぬ室内だった。
クリリンを寝かせていた民家ではない。ここはいったいどこだろう?
「ああ、この部屋ですか。失礼ながら、他の民家に移動させてもらいました。なにぶん前の部屋は酷い有様だったのでね……」
……なるほど、そういうことか。
考えればわかる。前の部屋は、ブルマが殺された部屋だ。
おそらく血が飛び散っていたりで大変だったのだろう。私もその惨状を見るのは好ましくない。
このおっさんも、そういうところは気が利く。
「それじゃあ……ブルマの死体は?」
「……私が先に埋葬しておきました。それより、私からも訊かせていただきたい。なぜ、あのような惨劇がおきたのか」
「……うん」
私は、包み隠さずアビゲイルに事の次第を話した。
「……なるほど、そんなことが」
その話に、アビゲイルは納得したようだった。
クリリンはブルマの仲間で、クリリンは仲間のブルマを殺した。これが、どういうことか。
「決まりですな。あの坊主頭の青年、クリリンはゲームに乗ってしまったマーダー。それも、かつての仲間を平気で殺せるような……」
アビゲイルは難しい顔で黙り込む。
ブルマの死、それによるこれからの行動、振り出しに戻った首輪の件、クリリンという危険人物への対応、いろいろ考えることがあるのだろう。
と、そこで私は、ここにいるであろうもう一人の男性が不在なことに気づく。
「あれ? そういえば……伊達君は?」
「ああ、彼ならクリリンを追いかけていきましたよ。我々に同行してくれるようお願いしたのですがね。彼にもやらねばならないことがあるようです」
「そうなんだ……って、ええぇ!?」
ク、クリリンを追いかけていったぁ!?
「もっとも、お嬢さんをここまで運んだり、ブルマさんを埋葬するのを手伝ってもらったあとからですから、追いつけているかはわかりませんが」
「ちょっと待ってよ! いくらなんでも、彼一人じゃ危険だわ!!」
「そうは言いましてもねぇ……彼はもう言ってしまいましたし。まあ、彼なら大丈夫でしょう」
だからその根拠はなに!? 本気で男同士でしかわかり得ないものがあるの!?
「そうそう、彼も気絶したお嬢さんを見捨てて行くのは忍びなかったようでしてね。お嬢さんにプレゼントを置いていきましたよ」
「プレゼント?」
そう言ってアビゲイルが取り出したのは、三枚のカードだった。
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記1 完〜
森の奥深く、木の陰から一人の男を覗く視線が四つ。
「あれは……」
友情マンが見つけた人影に、クリリンは覚えがあった。
暑そう長袖の黒服、一昔前の学生風といった感じの男は、福井県で見かけた姿に間違いない。
(たしか……ブルマさんの仲間!? もしかして、俺を追ってきたのかよ)
追っ手がいるとは思わなかった。
男が何者かはわからないが、彼がブルマの仲間であるなら、考えられる用は復讐しか思いつかない。
「クリリン君、彼が何者なのか知っているのかい?」
クリリンのが微かに見せたおかしな反応を、友情マンは見逃さなかった。
「え!? あ、いや、えーと……」
急に話を振られて、焦りだすクリリン。
どう話せばいいのか、まさか正直に仲間を殺して追われているとも言えず、出てきた言葉は、
「そう、あいつ……俺はあいつに襲われたんだ」
また、嘘だった。
「なるほど。怪我をして満足に動けないクリリンさんにとどめを刺そうと、ここまで追ってきたわけですか(また下手な嘘を。おそらくは、こいつが殺した参加者の仲間といったところか)」
「なんと! この期に及んでまだクリリン君を傷つけようとするのか!!(クリリン君も嘘が下手だねぇ。彼は、クリリン君が仕留めそこなった参加者かなにかか。うまくいけば、彼とも友達になれるかな……?)」
やはり、月と友情マンの二人は欺けない。
この二人はクリリンなどよりも卓越した演技力、判断力を持ち合わせており、自分が騙す側であるため、人の嘘にも敏感である。
クリリンの話は、話の内容だけで判断すればなんとか信じられるものの、クリリンの挙動が全てを台無しにしてしまっている。
しかしクリリンは、
「そうなんだよ。これが手のつけられないような悪党でさ。完全にゲームに乗っちゃってるんだよ」
二人が自分を信用してくれていると思い込み、調子のいい嘘をつき通した。
その本心を、いたたまれない気持ちでいっぱいにしながら。
(……ごめん、ブルマさんの仲間の人。勝手に悪者にしちまって。でも……俺はこんなところで殺されるわけにはいかないんだ)
クリリンには、やらねばならぬことがある。
参加者を減らし、ピッコロを優勝させ、ドラゴンボールでゲームをなかったことにする。
そのためには、どんな悪事も働こう。たとえ仲間を欺き陥れてでも、今は生き残る。
クリリンは、非情になると決めたのだ。ブルマを殺した、あのときから。
今はこうして並んでいる三人も、チャンスがくれば殺さなければならない。
でも今くらいは、ここで隠れながら身を休めることも――
「……それは、本当か?」
クリリンの嘘の汚点は、彼女の存在。
(……え?)
静かに、しっかりと発言したのは、未だ瞳に涙を浮かべた斗貴子。
悪を――ゲームに乗った者を――カズキを殺した者を――決して許さない、錬金の戦士。
その斗貴子が、そっと立ち上がる。
(……おい)(まさか……)(……な、なんだ? どうしたってんだ?)
立ち上がって、どうするつもりなのか。
クリリン以外の二人にはわかっていた。彼女の意思が、どれだけ馬鹿げたことをやろうとしているのかが。
ここでことを荒げられても困る――月が率先して斗貴子を踏みとどまらせようとした、そのとき、
「うああああああああああああああああああああああああああ!!!」
――!!?
あたりに響き渡ったのは、森を揺るがすほどの音量の叫び。
そこにいた誰のものでもなく、クリリンを追ってきた男のものでもなく、
だが、クリリンにとっては確かに聞き覚えのある声。
「これは……まさか」
一瞬、耳を疑う。
しかし間違いない。これは、この耳に馴染んだ声は――
「…………悟空!?」
雄叫びが、潜む四人と一人の追撃者に迫っていた。
【岐阜県南部/森の中/夜】
【Black stomachrs+1&追撃者】
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
[思考]:1.新たな叫び声に警戒。
2.斗貴子達を利用する。
3.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
4.最後の一人になる。
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]カズキの死による精神的ショック大。殺人者に対する激しい怒り
[装備]:ダイの剣@ダイの大冒険、ショットガン、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ワルサーP38
[思考]1.クリリンへの追撃者(伊達)に対処。
2.人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)。
3.ゲームに乗った冷酷な者を倒す。
4.友情マンを警戒。
5.午後六時までには名古屋城に戻る。
【夜神 月(ライト)@DEATH NOTE】
[状態]歩き疲れ
[装備]真空の斧@ダイの大冒険
[道具]荷物三式 (4食分を消費) 子供用の下着
[思考]1.斗貴子を止める。新たな叫び声に警戒。
2.斗貴子に同行。利用する。
3.弥海砂の探索 。南下。
4.斗貴子の目を盗んで友情マンと接触したい。
5.使えそうな人物との接触。
6.竜崎(L)を始末し、ゲームから生き残る。
【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]:疲労困ぱい、気は空
:わき腹、右手中央、左腕、右足全体に重傷 、
:精神不安定
[装備]悟飯の道着@ドラゴンボール
[道具]:なし
[思考]1:叫び声の主を確かめる。
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
3:ピッコロを優勝させる 。
【伊達臣人@魁!!男塾】
[状態]:軽度の火傷、行動に支障無し
[装備]:首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜
[道具]:荷物一式
[思考]:1、新たな叫び声に警戒。
2、クリリンを追い、剣桃太郎、富樫の情報を聞き出す。
3、剣桃太郎を倒した者との決闘。
4、男塾の仲間と合流。
5、ゲームに乗る気は無いが邪魔をするヤツとは躊躇なく戦う。
【岐阜県/場所不明/夜】
【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]疲労中 顎骨を負傷(ヒビは入っていない) 出血多量 各部位裂傷(以上応急処置済)
精神的に衰弱(危険度大)
[装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本
翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]走り続ける
【カカロットの思考】時が来る、もう間も無くだ…
【福井県・民家の中/夜】
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]精神的疲労
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]荷物一式 、
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】(伊達から譲渡)
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
[思考]1、休息。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
【アビゲイル@BASTAD!!】
[状態]健康
[装備]雷神剣@BASTAD!!
[道具]荷物一式
[思考]1、リンスを介抱。
2、ヨーコ達、協力者を探す。
3、首輪を入手して分析したい。
4、ゲームを脱出。
※ブルマの荷物[荷物一式 、ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪]、
クリリンの荷物[荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT]、
排撃貝(リジェクトダイアル)@ワンピース、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)、
その他の海坊主の荷物[荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@ドラゴンボール]は民家の中に置かれています。まだ誰が持つかは決まっていません。
※ブルマの死体は埋葬しました。
「なんだ、オレがオナニーしている間に27人しか進んでいないのか」
山小屋で放送を聴いていたDIOはそう呟いた。
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:当分動かない?
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
第三放送で、また新たなる仲間の死が告げられた。
その者の名は富樫源次 。剣桃太郎と同じく、男塾の出身の戦友だった。
また一人……仲間が死んだという事実。
どうしようもない憤りが、伊達臣人の足を加速させた。
彼が目指すのは、福井で見つけた殺人者。ブルマを殺し、リンスレットまでもを襲った、凶悪な殺人者。
その小柄な体格からは想像できなかったが、ブルマの死体を見て確信した。
手刀で胸部を一突き。武器も使わず、己の手だけで人を殺めるその技術。
あんな常人離れした殺し方は、素人に真似できるものではない。
暗殺拳かなにかだろうか……とにかく、ブルマを殺したクリリンは、相当な実力者だ。
ならば、桃や富樫を相手にした可能性も出てくる。クリリンが彼らを殺したのかどうかはわからないが、手がかりには違いない。
アビゲイルの下を離れ、クリリンを追っていた伊達は、いつの間にか岐阜県まで来ていた。
地面に滴る微かな血の跡を頼りにここまで来たが、標的は未だに見つからない。
そんな矢先、突然男の叫び声が木霊した。
悲鳴には聞こえなかったが、なにが理由であんな叫び声を上げたのか。
伊達はクリリンの捜索を一時中断し、その叫び声のほうへ向かった。
叫び声を上げたのは、孫悟空。
力の限り足を動かし、邪魔になるような障害物は蹴散らし、ここ岐阜まで爆走してきた。
彼には、他の参加者に自分の位置がばれてしまうかもしれない、という心配は一切していない。というよりも、考えられるような状態ではなかった。
彼の頭の中は、誰にも覗けない。今はただ、走る。走る走る走る。
「止まれ!」
止ま……る?
走り続けていた悟空が、やっとその足を止める。
彼を止めたのは、伊達臣人。
なんのために自分を止めたのか。なんのために目の前に立ちはだかるのか。
なぜ、なぜ、なぜ???
「う……わぁあああぁああぁあぁぁぁあ!!」
「――! なに!?」
気がつくと、悟空は伊達に襲い掛かっていた。
自分の進行を止めようとする障害物に、ただそれを壊そうと、拳を振るう。
(……ちぃ、いきなりか。これはわざわざ訊く必要もねぇな)
目の前の男は、ゲームに乗っている!
そう判断した伊達は、持っていた『首さすまた』で悟空の拳を受け止める。
その攻撃は直線的だったため、簡単に防御することができたのだが、
「うぐ!?」
予想以上に、重い。
悟空の拳が生む衝撃は、防御を関係なしに伊達の身体を揺さぶる。
その一撃だけで、伊達は悟空の実力がかなりのものであることを悟った。
こいつは骨が折れそうだ……と、伊達が首さすまたを構えなおした、次の瞬間、
「――うおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉおおお!!!」
伊達の真横、木の陰から、新たな叫び声が。
「な!?」
突然現れたそれは、手に斧を持ちながらこちらに向かってくる。
その周囲に、誤魔化しようのない殺意のオーラを纏って。
「――死ね!!」
「――クソ!?」
咄嗟の攻撃に、伊達はなんとか反応してこれを防ぐ。
斧の一撃は首さすまたで払いのけ、新たな襲撃者との距離が取れたところで気づいた。
「……女?」
横から現れた襲撃者の正体は、セーラー服を着た女性だった。
見た目は学生。手に持った斧と、殺気の漲る瞳に目を瞑ればの話だが。
「……ちっ、なんだおまえは。こいつの仲間か?」
見事なタイミングで現れた、二人の襲撃者。
二人とも自分を襲ってきたとあれば、考えるまでもなく協力関係であることが窺える。
だが、セーラー服の少女から発せられた言葉は、伊達の予想とは違ったものだった。
「そんなことはどうでもいい……私は、今ここで貴様を殺す!!」
そう言うと、再び少女は伊達に襲い掛かった。
「うわわぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
同じタイミングで、悟空も。
二方向からの同時攻撃。
少女は斧を振りかぶり、悟空は拳を振るう。
伊達は熟練した槍の技でそれに対処するが、相手は二人。全ての攻撃を捌くことはできなかった。
首さすまたの間に入った悟空の拳に吹き飛ばされ、伊達が宙を舞う。
一対二。二人の狂乱戦士に挟まれるというこの戦局図。
こんな状況になるのだったらと――伊達の頭に三枚のカードがよぎった。
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記2〜
伊達から託された、三枚のカード。
衝突(コリジョン)、使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす。
漂流(ドリフト)、使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす。
左遷(レルゲイト)、対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす。
……なにこれ、めちゃくちゃ便利じゃない。
このカードがあれば、たとえマーダーに襲われたとしても簡単に逃げることができる。
まあ、衝突や漂流のカードは別のマーダーと対面してしまうって危険性もあるけど。
左遷は、相手の名前さえわかれば比較的安全に使える。
考えようによっては、どんな強力な武器よりも使える代物かもしれない。
こんな便利なものを他人に渡すなんて、伊達は頭が悪いんじゃないだろうか。
「彼としては、そういう小細工じみたものはあまり好かないのでしょう。だからこそ、非力なお嬢さんのためを思ってここに置いていった。自分はお嬢さんを傍で守ることができないからと! まさに『男』じゃあありませんか!」
……熱弁するアビゲイルには、正直ついていけない。
つまり、これは彼なりの優しさということなのだろうか。
だとしたら素直に嬉しい。無愛想だったけど、ちょっと格好良かった気もするし。まあ好みじゃないけど。
「とにかく、お嬢さんはしばらくここでお休みください。もうすぐ夜もふける。今は行動を控えたほうがいいでしょう」
「ええ。そうさせてもらうわ。あなたは?」
「私は、隣の部屋でこれを調べてみます」
アビゲイルが取り出したのは、ブルマが持っていた首輪。
クリリンを発見する前、両断された男の死体から入手したものだ……うっ、思い出したら気分が。
「道具がなにもないので、あまり大したことはできませんが……まあ他にやることもないので、気楽にやりますよ」
「……そう。がんばってね」
「ふむ? やはりまだ調子が優れないようですな。なんでしたら、私が付きっ切りで看病して差し上げても……」
「い、いい! けっっっっっっっっこうです!!!」
私は、全力を持ってお断りした。
そうなのだ……冷静になって考えてみれば、ブルマが死に、伊達が去った今、私の仲間は……アビゲイル一人。
これから当分、この優しいんだけど気味の悪いおっさんと二人きりだということを考えると……憂鬱だ。
ああ! 早くトレインたちの見慣れた顔が見たい。
……うん? そういえば、私が眠っている間に放送が流れたみたいだけど……彼らは無事なのだろうか?
まああいつらが簡単に死ぬとも思えないし、アビゲイルもなにも言ってこなかったから、たぶん無事なのだろう。
とりあえず今は、このフカフカのベッドで休むことにする。
じゃ、お休み……
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記2 完〜
伊達を襲った少女の名前は、津村斗貴子。
人間を喰らうホムンクルスを憎み……それと同等の悪も許せぬ錬金の戦士。
彼女が伊達を襲った理由は、まさにそれ。
クリリンを襲い、ゲームに乗せられて殺人を犯すこの男を、斗貴子は黙って見過ごすわけにはいかなかった。
それが、勘違いであるとも知らずに。
「貴様を殺す前に一つ訊いておく……カズキ、武藤カズキという名の少年を殺したのはおまえか?」
「武藤……カズキ?」
知らない名だった。そして同時に、その質問でいくつかの疑問が浮かぶ。
カズキというのは、先ほどの放送で呼ばれた名。彼女は、カズキという参加者の知り合いなのだろう。
となると、彼女の目的は復讐か? だとしたら、なぜ自分を襲う?
一番納得のいく答えは……勘違い。
この少女は、自分を殺人者と勘違いしているのではないか。
そういう結論に達した伊達は、斗貴子と一度話をしようとするのだが、
「うありゃあああぁぁぁぁあぁ!!」
もう一人の敵対者、悟空がそうさせてくれない。
一方の攻撃を防げば、また一方から攻撃が飛んでくる。
予断を許さぬこの一対二の戦いに、伊達は四苦八苦していた。
(このままじゃ拉致があかねぇ! ここは……一人に集中してかかる!!)
決断すると伊達は防戦をやめ、悟空を標的に首さすまたを構える。
まずは、この叫び散らす狂戦士を黙らせなければ。
「覇極流槍術奥義……」
「唸れ、真空の斧!!」
伊達が技を仕掛けるより、斗貴子のその言葉のほうが先だった。
「――!?」
突如巻き起こる突風。
ダメージを受けるほどの衝撃ではなかったが、伊達はよろめき、体制を崩してしまう。
そして、隙が生まれたその瞬間。
伊達に、斗貴子が襲い掛かる――
その光景を見ていた悟空は、攻撃に移ろうとした手を止める。
(ひゃぁぁ〜あいつら強えなぁ。オラもあいつらと……)
――戦いたい?
(オラ強え奴らと戦うのは大好きだ)
――じゃあ戦えばいい。
(ああ。だけどよ……これは人殺しのゲームだぞ。そんな中で戦うわけにはいかなぇだろ)
――気にするな。あいつらは『強え奴ら』なんだろ? 簡単には死なないさ……
(おお、それもそうだな! でもよ……じゃあなんであの二人は死んじまったんだ?)
――あの二人? ああ、あの赤毛と色黒の奴か。そんなもん簡単さ。奴らは弱かった。だから死んだんだ。
(オラが、殺したんだよな?)
――そうだ。
(オラは……強くもねぇ奴らと戦って、そいつら殺しちまったのか?)
――そうだ。
(なんで……なんでオラは強くもねぇ、簡単に死んじまうような奴らと戦ったりしたんだ!?)
――それはな、おまえが戦いに飢えた戦闘民族……
サ イ ヤ 人 だ か ら さ !
「……か、め……」
次の瞬間には、悟空は腕を構えていた。
それは、明らかな戦闘参加への意思表示。
悟空からは距離を取り、伊達には隙が生まれた。
今なら邪魔する者は誰もいない。
斗貴子は、再度伊達に襲い掛かる。
構えるのは、月から借りた真空の斧。
本来、斗貴子の戦闘スタイルの持ち味は、彼女の持つ武装錬金『バルキリースカート』を使った四本の可動肢による高速移動にある。
だが、核金を持たぬ現状では、本来のスピードで相手を圧倒するような戦い方はできない。
それでも、斗貴子は熟練された戦士。手持ちの武器だけでも、十分に渡り合える。
一撃目。
斗貴子が次に構えたのは、ポケットにしまっていた一丁の銃。
道中で見つけた少年の死体から拝借した、ワルサーP38である。
風の衝撃で隙のできた伊達に、問答無用でその弾丸を撃ち込む。
狙いは脚部。まずはその足を潰そうと、膝のあたりを集中砲火。
突風に銃撃という、予想外の連続コンボに、伊達はこれを避けることができなかった。
「ぐっ!!」
その足は折れ、地に膝が着く。そうしている間にも、斗貴子の狂気は続く。
二撃目。
真空の斧を構えての、突撃。
体勢の崩れた伊達に回避の選択はなく、足を動かせぬ状態で首さすまたを振るう。
真空の斧、首さすまたの刃の部分が交錯し、金属音が響き渡った。
力で言えば斗貴子よりも伊達のほうが上。このまま押し切れば、伊達の勝利。
もちろん、斗貴子もそんなことは承知している。
両者の武器が交錯するやいなや、斗貴子は真空の斧を手放し、瞬時に伊達の横合いに回り込む。
伊達の振るった首さすまたは空を切り、真空の斧は宙を待った――
「ひっ!」
伊達に吹き飛ばされた真空の斧は、月たちの潜んでいる木陰の、真横に位置する木に突き刺さった。
斗貴子と伊達と悟空。三者の戦いを傍観するのも、また三者。
それぞれ思うは、自分の身と――
(クソッ、なんなんだあいつは! とんだじゃじゃ馬じゃないか! ああいう感情で動く奴は、最も扱いづらいタイプだ!)
月は、己の感情のままに戦う斗貴子に怒りを覚えた。
(すごいな彼女は! 戦えるとは聞いていたが、予想以上の使い手のようだ。そしてなにより、クリリン君の知り合いらしいあの青年……)
友情マンは、斗貴子の実力、そして悟空の存在にほくそ笑む。
(悟空の様子がおかしい……第一、なんで悟空はブルマさんの仲間を襲ってるんだ?)
伊達がいるところに姿を見せるわけにもいかず、悟空と接触できないでいたクリリンは、様子の変な悟空に疑問を抱いていた。
彼の思考は、全て一秒にも満たない一瞬の内のこと。
その思考が終わる頃にはすでに……斗貴子と伊達を取り巻く状況は変わっていた。
三撃目。
完全に隙だらけとなった伊達の横、斗貴子が繰り出すは二本の指。
反応して振り向いたのが命取り、斗貴子の槍のように伸ばされた指は、伊達の眼前に――
「――――っぐあああああああああああああああああああああああ!!?」
目潰し。これが斗貴子の放った三撃目。
深く沈みこんだ斗貴子の指は、引き抜かれる際に余計なものも一緒に排出した。
それは……伊達の眼球。
右と左、黒と白。紛れもない、人間の目玉が、斗貴子の指に突き刺さっていた。
視界を失い、痛みに悶える伊達は、斗貴子の居場所がつかめない。
この絶好の機会に、斗貴子は再びワルサーP38の銃口を向ける。
伊達の――腹部に。
「臓物を――」
とどめの一撃――
「……は……め……」
「――!?」
撃ち込もうとした、その矢先。
斗貴子は確かに感じた。背後から感じる、異様な殺気。
それと同時に溢れる、絶大な力の波動を。
反射的に身体が動き、回避行動に移る。
間に合うかどうかは、まだわからない。
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!」
放たれたのは、悟空の『かめはめ波』。
その衝撃で、あたり一帯が吹き飛んだ。
莫大な破壊エネルギーの放射は、傍観していた三人をも巻き込み、木を、草を、森を破壊し、塵にする。
「っごほ、ごほっ、く、クソッ!?」
土煙の舞う中で、月はその身を起こした。
その胸中には、怒りしかこみ上げてこない。
(くそぉぉぉ!! なんだっていうんだ、どいつもこいつも!)
常識離れした超常能力のオンパレード。歩く生体兵器とでもいったところだろうか。
このゲームには、そういった危険人物か、行動を予測できないほどの馬鹿しかいないのか。
ゲーム開始から数時間、月の憤りは、そろそろ限界を超えようとしていた。
(Lは死なず、ミサはいっこうに現れない! そのうえ僕の周りは馬鹿ばかり! なんなんだこの世界は!!)
まるで月の思いどおりならない世界。
月の怒りは、今まで関わってきた全ての参加者、主催者に。そして、この世界自体に。
……そう、この世界は、まるで月の思い通りにならない。
あまりにも月の住む世界とかけ離れ、異常な参加者が集っている。
そんな中、真に生き残れるのは誰か。
それは、頭脳を駆使し、他者を利用し、うまく立ち回れる知恵を持つ者。
ドシュッ
「…………は?」
違った。頭脳を駆使し、他者を利用し、うまく立ち回れる知恵を持っていて、それでいて自分自身も力を持つ者。
そう、たとえば彼のような。
「友……情、マン……?」
「悪いね月君。あまりにもがら空きな背中だったんで、今は減らせるうちに減らしておくべきだろうと判断したんだよ」
見ると、月の胸に鋭く尖った木片が刺さっていた。
どうやらそれは背中から……友情マンの手に持たれた状態で突き刺さっているらしい。
「馬鹿な……なぜおまえが……ここで僕を殺す?」
友情マンがなにかを企んでいたのには気づいていた。
自分か斗貴子、もしくはその両方を利用しようとしていたことも。
ではなぜ今殺すのか。考えられる理由は二つ。
『チャンスが訪れたから』『理由する必要がなくなったから』
おそらく、どちらの理由も当てはまるのだろう。
「君たちと一緒にいる必要は、もうなくなったんだよ。なんせ……」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
友情マンが喋り終わる前に、その真横を悟空が叫びながら通過していった。
「僕は、彼と友達にならなくちゃいけないからね」
(友達に……なる!?)
月には意味が分からない。次第に考える力もなくなっていく。
「もうそろそろお休み。君は、爆風で吹き飛んだ木片が運悪く背中に刺さって死亡って風に偽装しておくから」
最後の手向けとして、友情マンは優しい言葉で月を送る。
(く……そぉぉぉ!! 僕が、この新世界の神となる僕が……こんな、こんなふざけた格好の奴に……!?)
最後まで怒りが収まることはなく、呪いでもかけかねない形相で友情マンを睨み、
新世界の神となるはずだった男は、そこで息絶えた。
「さて、悟空君だっけ。早く彼を追わないとね」
飛び散った血をふき取り、友情マンは走り去っていた悟空を追跡する。
彼の計画は、ひとつ。悟空と友達になること。
あの底知れぬパワー。必殺技の威力。おそらくは、勝利マンや世直しマンと同じクラスかそれ以上。
加えて彼の精神状態。錯乱したように喚き散らし、目の前に立ちはだかる者に襲い掛かる。
(なんてことはない……彼は、怯えているのさ)
突然つれてこられた、殺人ゲームという現実に。自分の持つ絶大な力に、怯えながら。
そんな彼の心に必要なものはなにか。簡単だ。『友情』である。
彼は単に不器用なだけ……かつて友情マンの傍に付いていた友達、一匹狼マンと似た境遇にあるのかもしれない。
いや、彼と友達になるのは、一匹狼マンのときよりもずっと容易いだろう。
怯えた心は、隙間だらけ。その隙間に、ちょっと『友情』を持って入り込むだけのこと。
友達作りを得意とする友情マンにとって、悟空ほど友達になるのが簡単な者いないかもしれない。
(彼と友達になりさえすれば……他の奴らは必要ない。彼がいれば、本当の意味で百人力だ)
悟空の見せた力は、友情マンを魅了した。
彼は、これまでのちゃちな友情に見切りをつけ、新たな友達に惹かれて走り去ってしまったのだ。
なんと、薄情な『友情』だろう――
「ごほっ、クソ、悟空ぅー! おい悟空ぅぅ!!」
未だ土煙の止まぬ森の中、クリリンは悟空を求めて叫んだ。
彼の足元には、倒れこんだ一人の人間が。
悟空のかめはめ波を受け、その命を落とした――伊達臣人。
悟空と斗貴子、二人の狂気に挟まれた彼は、最後になにを思い、なにを残して死んでいったのか。
それは、誰にもわからない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「――!? 悟空!?」
もう何度目になるかわからない叫び声は、クリリンの存在に気づくことなく遠くなっていく。
「ちくしょうっ! どうしちまったんだよ悟空!?」
悟空がなぜあんなに錯乱していたのか、クリリンにはそれを知るすべがなかった。
と、視界に新たな死体が映る。
大の字に転がるその土まみれの姿は……
「……斗貴子さん」
自分のせいで伊達を殺人者と勘違いし、その結果悟空のかめはめ波に巻き込まれて死んだ、戦士・斗貴子の姿。
クリリンはその死体にそっと近づいていく。
ピッコロを優勝させるため、参加者は全員殺さなければならない。
そう頭では理解していても、やっぱり人が死ぬのを見るのは辛い。
ただただ、クリリンは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「私は、負けたのか」
「!?」
――喋った!?
てっきり死んだかと思っていた斗貴子は、生きていた。
よく見ると、目立つ外傷もない。瞬時に回避することができたのだろうか……?
「弱いな、私は」
「……」
弱々しく口を開く斗貴子に、クリリンは黙って耳を傾けた。
「こんなことだから……カズキも守れない。こんなことだから……私が、弱いから……」
斗貴子の声は、悲しみで震えていた。
(……同じだ)
クリリンは、斗貴子にそんな感想を抱き始めていた。
一人で使命を背負い、一人で悩み、一人で苦しんでいる。
たった一人、孤独な人数減らしを続けるクリリン。たった一人、弱き者を守ることを誓う斗貴子。
たった一人、死んでいく参加者の悲痛に悩まされるクリリン。たった一人、カズキを死なせてしまったことに悩む斗貴子。
たった一人、背負った罪悪感に苦しむクリリン。たった一人、なにも守れない自分に苦しむ斗貴子。
「あのさ……」
クリリンは斗貴子がなにを背負って苦しんでいるのかを知らない。だが、直感で自分と斗貴子は同じ境遇だと、感じ取っていた。
「一つだけ、あるんだ。このゲームを、全部なかったことにできる方法が」
だからかもしれない。クリリンが斗貴子にドラゴンボールのことを伝えようと――この苦しみを共有しようと思ったのは。
(オラは、オラは、オラは!)
森の中を疾走する悟空。
今、彼の心を支配しているのは誰なのか。
風に揺れる森のざわめきが、まるで彼の内に潜む者の嘲笑のように聞こえた――
【岐阜県南部/森/夜】
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]カズキの死による精神的ショック大。殺人者に対する激しい怒り。
戦闘による中程度の疲労。全身軽傷。
[装備]:ダイの剣@ダイの大冒険、ワルサーP38、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ショットガン
[思考]1.クリリンの話を聞く。
2.人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)。
3.ゲームに乗った冷酷な者を倒す。
4.友情マンを警戒。
5.午後六時までには名古屋城に戻る。
【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]:疲労困ぱい、気は空
:わき腹、右手中央、左腕、右足全体に重傷 、
:精神不安定
[装備]悟飯の道着@ドラゴンボール
[道具]:なし
[思考]1:斗貴子にドラゴンボールを使った計画のことを話す。
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
3:ピッコロを優勝させる 。
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
[思考]:1.悟空を追い、友達になる。
2.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
3.最後の一人になる。
【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]疲労中 顎骨を負傷(ヒビは入っていない) 出血多量 各部位裂傷(以上応急処置済・戦闘に支障なし)
精神的に衰弱(危険度大)
[装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本
翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]走り続ける
【カカロットの思考】時が来る、もう間も無くだ…
【福井県・民家の中/夜】
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]精神的疲労
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]荷物一式 、
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】(伊達から譲渡)
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
[思考]1、休息。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
【アビゲイル@BASTAD!!】
[状態]健康
[装備]雷神剣@BASTAD!!
[道具]荷物一式、ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪
ブルマの荷物一式、クリリンの荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT
海坊主の荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@ドラゴンボール、排撃貝(リジェクトダイアル)@ワンピース、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)
[思考]1、首輪を調べる。
2、ヨーコ達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
※真空の斧@ダイの大冒険 は、近くの木に刺さっています。
※月の荷物は、友情マンが事故に見せかけるためにその場に放置してあります。
【夜神月@DEATHNOTE 死亡確認】
【伊達臣人@魁!!男塾 死亡確認】
【残り72(69)人】
>>158の11行目を修正
視界を失い、痛みに悶える伊達は、斗貴子の居場所がつかめない。
→視界を失い、斗貴子の居場所がつかめない。
>>160の18行目を修正
『チャンスが訪れたから』『理由する必要がなくなったから』
→『チャンスが訪れたから』『利用する必要がなくなったから』
>>165友情マンの状態表を修正
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
[思考]:1.悟空を追い、友達になる。
2.最後の一人になる。
『―――それではまた六時間後。諸君たちの更なる幸運を祈る――』
岐阜県中域。
三度目の放送を聞いていた者が三人。
「そんな―――そんな、ブルマが!」
(シカマル・・・!)
(武藤カズキ・・・か。防人衛に続いて二人目。彼女は・・・大丈夫だろうか?)
それぞれ、知人の死を告げる声に足を止められ、そして心を乱されていた。
彼らが出会ったのは10分ほど前。
西に向かっていたケンシロウと、長野に向かっていたヤムチャとサクラはばったりはちあわせた。
ヤムチャとサクラはスカウターで先にケンシロウの存在に気づいており、ゲームに乗っていないと判断してから一応偶然を装って彼の前に現れたので、厳密には【ばったり】ではないのだが。
それからほとんど情報交換する間もなく、放送が開始された。
「ヤムチャさん・・・」
サクラが地面に突っ伏して落ち込んでいるヤムチャに声を掛ける。
「ブルマは、ブルマは俺の恋人だった・・・喧嘩をすることもあったが、お互い愛し合っていたはずだ!」
「・・・・・・」
ケンシロウはその言葉を聴き、自分と、そして兄が愛した女のことを思い出す。
(ラオウ・・・お前と一度話がしたい。俺とお前は分かり合えるのかもしれない。何故なら俺たちは―――)
そこで思考を止め、黙祷のように目を瞑り、ヤムチャに向かう。
「お前がそうやって落ち込んでいて、彼女は満足するのか?」
あえてきつい言葉を掛けることで奮起させようとする。
「このゲームを破壊することで、彼女の仇をとれ!心を砕かれるな!闇に呑まれるな!」
ヤムチャは顔をあげて、ケンシロウを睨み付ける。「あんたに何がわかる!」とでも言おうとしたのだろうが、ケンシロウの強い瞳を見て、その言葉は止められた。
(そうだ・・・俺は悟空のように強くない・・・それでも!)
「ブルマ!お前の仇を討つ!」
ヤムチャの中で、何かが吹っ切れた。ヘタレも今日で御仕舞だ!
「そして、必ずもとの世界に戻り、生き返らせてやる!」
(・・・死者反魂?確か禁術にあったような・・・止めたほうがいいのかしら?)
(・・・死した者は生き返らない。錯乱しているのか・・・哀れだ)
・・・・・・まあ、吹っ切れは二人には気づいてもらえなかったが。
「これからどうします?」
サクラはスカウターをチェックしてから、ヤムチャとケンシロウに問い掛ける。
「追っていた者ももう死んだ。名古屋城に向かう。仲間と約束をしてるんでな」
そう言って愛知の方向に歩き去っていくケンシロウを、慌ててヤムチャが引き止める。
「おいおい、待ってくれよ。俺たちは仲間を探してるんだ。出来れば一緒にいかないか?」
「・・・付いてきたければ好きにしろ」
サクラは二人に駆け寄ってスカウターを見ながらチェックの結果を知らせる。
「長野にはもう反応はありませんね。いちばん反応が多いのは愛知・・・かなり大きな戦闘力も二、三つ。一つはかなりのスピードで移動してます」
ヤムチャはしばし考える。
「その大きな戦闘力のどれかは悟空じゃないだろうか?」
何の根拠もない発言だが、否定する材料も特にないので、二人はケンシロウと共に名古屋城に向かってみて、その後その戦闘力の正体を探る事にした。
が。
「三つの小さな反応にそこそこ大きい反応が迫っています―――あっ、ぶつかりました!」
「なにっ!小さな反応ってのはもしや女性か!?」
「え?いやわかりませんけど・・・戦ってるようです」
「くっ・・・放ってはおけん!」
ヤムチャはそういうとすごいスピードで反応があった場所へ走っていった。
「・・・どうします?」
サクラは唖然としてケンシロウに尋ねる。
「その小さい反応というのは俺の仲間かもしれん。彼を追う」
ケンシロウも走り出す。
「あ、待ってください!」
サクラも走り出した。
幸か不幸か、同じ県にいる小さく、だが邪悪な戦闘力には気づかないままで。
「ま―――なか君?」
放送を聞き終えた後、西野つかさは崩れ落ちた。
目を覚ましたマァムは知り合いがいなかったので安心していたが、倒れた彼女を見て言葉をかけようとする。
だがそのとき――――!!!
「アァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
二人は咄嗟に声のした方向を見遣る。
黒いメタリックボディ。
狂気の権化と呼ぶにふさわしい貌。
そして、背負うは炎を生むバズーカ。
「アイツは――――!」
リサリサがその姿を凝視しながら叫ぶ。
マァムはその表情と男の武器を見て悟る。
(流川くんを―――殺した男?)
マァムは拳を構えて、砲撃に備えてつかさの体を抱き寄せる。
つかさは、ただぼんやりと眼を開き、しかしその眼は何も見ていなかった。
「・・・マァム、下がってなさい」
リサリサはマァムに言い放つ。
「いやよ!私も闘うわ!」
リサリサは厳しい瞳をマァムに向け、
「いけません。――――貴女は、つかさを守ってあげなさい」
その言葉にハッとなって、脇に抱えているつかさをみるマァム。
「でも、リサリサさんだけじゃ・・・」
リサリサはその言葉を聞いて魅惑的に笑い、そして言った。
「―――二十歳前の小娘に心配される程、私は甘い人生を送ってはいない!」
(・・・妙ね)
リサリサはつかさの荷物から拝借した三節棍のような武器で黒い男の拳打を受け流しながら、黒い男の行動に違和感を覚える。
(動きがワンパターンすぎる)
黒い男は、まるで機械のように単一的な動作しかしない。
三節根を振り下ろせば避けられるタイミングでも必ず右手で防ぎ、突き通せば体を右によじって避ける。
戦闘のプロフェッショナルから見れば余りに稚拙。
(たとえ機械が動かしていてももっとマシな動きをするだろう・・・何かに操られている?)
リサリサが一瞬逡巡した隙を逃さず、黒い男は三節棍の付け根を殴り、上2本の節棍が分離してそれぞれ宙に舞う。
(しまった!)
やられる、と思った瞬間、くるくると回転していた2本の節棍から気泡のような物質が放出される。
そのうち一つは拳を振り上げていた黒い男に当たって――――――。
ピリッ
「ギャアアァアアアアアアアァアアアアアァッ!」
黒い男は、悶絶した。
「やはり、機械か・・・」
にわかには信じがたいが、今見つけた三節棍に巻きつく形で貼り付けられていた説明書をみるに、この節棍はそれぞれ『熱気』『冷気』『電気』を振ったり吹いたりすることで生み出せるらしい。今敵に当たったのは『電気』の気泡。
更に組み合わせによって多彩な攻撃が可能らしい。節棍を拾って組み方と技名の欄に目を通し、怒りに任せて突進してくる黒い男をいなしながら、効果的そうな技を探す。
(ファイン・テンポ、クラウディ・テンポ、サンダー・テンポ、レイン・テンポ、サイクロン・テンポ。裏には・・・何も書いていない)
本当に相手が機械なら、一番効果的なのは・・・。
「サンダー・テンポ!」
(恐らく電気系の攻撃だろう・・・!?)
しかしダウジングの木の棒を逆に持ったような形から飛び出したのは電撃ではなくボクシングのグローブ。
バイーーンなどと間抜けな音を立てながら飛び出したが、黒い男はうっとおしそうにそれを手で払い、バズーカを構えた。
(く・・・!)
だが、黒い男は構えたままで立ち尽くし、何故かバズーカを下ろす。
そしてリサリサにとっては多大な意味を持つ言葉を漏らす。
「コロス・・・ダメ・・・ニンゲ・・・ツレ・・・DIOノタメニ!」
(人間―――連れて行く!?―――DIO!?)
DIO"。その名には聞き覚えがある、どころではない。まさか、流川を殺した相手が――――!
「―――DIOの下僕とはね!」
リサリサは【波紋】を取り出した三味線糸に通して硬質化し、それで貫くことで敵の体内に波紋を流し込もうとする。相手がDIOの下僕、吸血鬼と化しているなら殺す手はそれしかない。
「鉄クズにしてあげる・・・!」
黒い男が迫り、二人が交錯する瞬間―――!
「狼牙風風拳!」
突如飛び出してきた男が黒い男に猛烈なラッシュを加える。その速度はリサリサでさえ目で追うことしか出来ないほど。
「はい!はい!はい!はい!、アオオーッ!!!」
「グギィ・・・ッ!」
黒い男は吹き飛んで、同時にバズーカもあらぬ方向へ飛んでいく。
乱入してきた男は振り向き、リサリサ、マァム、つかさをみてニカッ!と笑い、そして言った。
「俺の名はヤムチャ、誇り高き盗賊だ!御嬢さん方、俺が来たからにはもう安心だぜ!もうすぐ仲間も来る!」
(き、決まった・・・三人とも凄くこっちを見ている。い、いかん!ブルマ!浮気じゃないぞ!)
「危ない!」
「え?わっ!」
ヤムチャは後ろから迫ってきた黒い男に気付かず足を払われた。みっともなく腰から崩れ落ちる。
「い、いてっ!この野郎!」
「・・・アシモトガ、オルスダ・・・!」
恐ろしい笑顔で言う黒い男。
「ならばもう一度っ!狼牙風ブッ」
立ち上がろうとしたところに顔面を蹴り飛ばされる。
「歯・・・歯がっ!鼻血がっ!」
どうやら歯を折ったらしい。え?のた打ち回るヤムチャを見てリサリサがどう思ったかって?
(・・・ヘタレね)
「鼻血がぁぁぁぁぁぁ!」
かくして、ヤムチャはヘタレという彼のレーゾンデートル・・・もとい、汚名を挽回した。
私は西野つかさ。桜海学園に通う、普通の女の子でした。
今は、殺し合いをやらされています。漫画やゲームでよくあるアレです。
私は割と気の強いほうだし、いままで親切な人に助けられて生き延びてこれました。
死んだ人の名前を呼び上げる放送のときは、ずっと友達の名前が呼ばれないかどうか不安でした。
一度目の放送。大丈夫。
二度目の放送。大丈夫。
たまたま出会ったサラサラな髪の男の子が死にました。全身を焼かれて、死にました。
私はその犯人を憎みました。殺してやると、生まれて初めて思いました。
同時に、真中くんがもしあんな奴に殺されたらと、不安で不安で堪りませんでした。
リサリサさんに慰めてもらいました。少し落ち着きました。
三度目の放送。
―――――真中淳平、北――――
真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。
淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。
淳平くんが、死にました。私にはもう何も聞こえません。
リサリサさんが何か叫んでいます。武道着?みたいなものを着た人が笑っています。キモイです。
キモイ人の後ろに誰かが立ちました。
黒い、笑っている、悪魔、流川君、殺、黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺
殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺ころ――。
すぐ近くにあの火を噴く大砲があります。これを使えばきっと流川君の仇も討てるでしょう。
私はそれを拾い、引鉄を曳きます。狙うは黒い殺人鬼。目標だけしか見えません。
隣でマァムさんが何か言った様な気がしました。
しゅううううううう、ちっ。ぼおおおおう。反動で標準がずれて、狙いを外したかもしれません。
綺麗だな、と想いました。
ごつん、と首に衝撃が―――。
サクラとケンシロウがその場にたどり着いた時の状況はこうだ。
まず目に入ったのは黒い男が女性を抱えて去っていく姿。女性が紙切れを落としたのが見えた。
次に鼻に感じたのはガスのきつい匂い。
一直線上に地面が焦げていて、その先で背中を焦がしたヤムチャが倒れている。
一直線上の始点と思われる場所には二人の少女。一人は気絶していると思われる。
サクラはヤムチャの治療を開始し、ケンシロウは紙を拾ってから少女に事情を聞き始めた。
「・・・そんな、無茶よ!」
マァムの声が響く。リサリサが残した紙の内容を見て。内容は。
マァムとつかさ、そしてヤムチャとその仲間さん達へ。
私にしかあの男とあの男を操る者は殺せない。奴等は吸血鬼。放っておけば大元の吸血鬼は次々と仲間を増やすでしょう。
ヤムチャさん達、身勝手な頼みだとは分かっています。しかし、どうかお願いです。マァムとつかさを守ってやって下さい。
マァム、つかさ。すぐ帰ってきます、必ずそこで待っていてください
「―――吸血鬼?迷信だ」
ケンシロウが言う。
「私も・・・聞いたことないですね」
ヤムチャの治療を終えたサクラも同意する。
「――――信じてくれないんですか?」
マァムは絶望的な表情で言う。確かに、吸血鬼なんて聞いたこともない。だが―――。
「だが」
ケンシロウは言う。
「あの女の眼は、死地に赴く戦士のそれだった。その眼に常に偽りはない」
マァムはそう話す男の眼に、一人の戦士を思い出す。
「そして、俺は女三人を躊躇いもなく襲うような外道を生かしておく気もない!」
自分が守れなかった二人の少女を想い、ケンシロウは吼える。
「サクラ、その機械で奴が向かった方向を教えてくれ。その後彼女等を連れて名古屋城に向かい、俺の仲間に会うといい。もちろんお前の自由だが」
「もう調べてます・・・まっすぐ長野に向かっていますね。あっちの方向。って、一人で追いかけるんですか?」
その言葉を聞き終える前に、ケンシロウは示された方向へと走っていく。
「私も・・・!」
続いてマァムも駆け出した。しかし、すぐに倒れる。彼女はまだ体のあちこちにダメージを残していた。
「こんなときに―――!」
地面を殴りつけ、唇をかむマァム。
スカウターで周囲をチェックするサクラ。
気絶した西野とヤムチャ。
夜は、耽る――――。
森林。
闇夜に光るはメタリックボディ。妙齢の女性を担いでいる。
「DIO、DIO、DIO、DIO!」
「UUURRRRRRRYYYY!!」
吸血鬼特有の叫びを、唯の機械が吼えたてる。
それは、ご主人様"、否、母親" への忠誠の証にも似て。
脇に抱えられた女性は考える。
(DIO・・・見つけたからにはもう生かしてはおかない)
波紋使いとして、そして夫を奪われた妻として。
(だが――――このエリザベス・ジョースター、絶対に負ける訳にはいかない。たとえ、【波紋使い】という名誉を今日永久に返上することになっても!)
そして、別れてしまった二人の少女に意識を遣る。
つかさのことは心配だったが、DIOに確実に接触できるチャンスはそうないだろう。
(あのヤムチャという男・・・どこか、JOJO・・・ジョセフ・ジョースターに似ていた。彼の仲間ならきっと・・・)
自分に都合のいい解釈に、自己嫌悪の念がよぎる。だが、恨みは消せず。
女性は、DIOに対する暗い炎を燃やしながら、対峙の時を待っている。
そして機械超人、ウォーズマンは、【DIOに褒めてもらえる】という歓喜に、その身を震わせて。
夜は、耽る――――。
【愛知県、川辺/夜】
【ヤムチャハーレム】
【マァム@ダイの大冒険】
[状態]:全身各所に火傷(応急処置した)、やや疲労
[装備]アバンのしるし@ダイの大冒険
[道具]荷物一式 ・クリマ・タクトの説明書(裏にリサリサの手紙)
[思考]1:できればリサリサを追いたい
2:名古屋へ向かう
3:協力者との合流(ダイ・ポップを優先)
【西野つかさ@いちご100%】
[状態]:気絶・重度の精神不安定
:移動による疲労
[装備]燃焼砲(バーンバズーカ)@ワンピース
[道具]荷物一式/(核鉄ナンバーは不明・流川の支給品)
[思考]1:気絶中
2:絶望、真中の仇をとる?
【春野サクラ@ナルト】
状態:若干の疲労
装備:スカウター@ドラゴンボール
道具:荷物一式(一食分の食料を消費、半日分をヤムチャに譲る)
思考:1.スカウターを使って隠密行動をしながら、ヤムチャと共に悟空を探し仲間を増やす。(名古屋城へ向かう)
2.ナルトと合流して脱出を目指す。
3.3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷・背中に火傷(全て治療済み)、 気絶
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:悟空を探す。若干気が緩んでいる。
【愛知県/夜】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、フェニックスの聖衣@聖闘士星矢
[思考]:1.ウォーズマンを追う
2.斗貴子の仲間、核鉄を探し出し、名古屋城へ戻る。
3.2を達成できなくとも午後6時までにいったん名古屋城へ戻る。
4.ダイという少年の情報を得る。
5.名古屋城で合流不能の場合、東京タワー南東にある芝公園の寺へ行く。
【愛知県と長野県の境に近い森林/夜】
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]精神不安定 歓喜
[装備]無し
[道具]無し(荷物一式はトイレ内に放置)
[思考]1、DIOのため、人間を捕獲したのでつれていく。
2、DIOに対する恐怖/氷の精神
3、DIOに従う。
【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]三味線糸、天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[道具]荷物一式
[思考]1:DIOを倒し、出来るだけ早くつかさたちと合流する
2:ヤムチャとその仲間達に対して罪悪感を覚えている
DIOは、再び興奮しながら自分の『息子』を掴む。
「あ、あと一回・・・」
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
ヤムチャは、おもむろに起き上がった。
そして冷徹で冷酷な言葉を発した。
「とりあえず、みなさん!!死んでもらいますよ」
そういうや否や、まず側にいた西野を手刀で分解し―一人目
少し、離れた所にいたマァムを頭突きで、脳みそを抉り出し―二人目
驚いて膠着したケンシロウ、サクラの2人を眼力で精神、肉体共昇天させた―三,四人目
さらに猛スピードでリサリサ達に追いつき、右足で一蹴り。それだけでウォーズマン、リサリサは
全神経が暴発した―五、六人目
全てが終わった後、ヤムチャは空ろげな瞳で空に問いかける。
「始まるよ、DIO」
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷・背中に火傷(全て治療済み)、
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:DIOを探す。若干気が緩んでいる。
【ウォーズマン,リサリサ,春野サクラ,ケンシロウ,マァム,西野つかさ@死亡確認】
残り63人
妲己「♪」遊戯を倒した妲己はルンルン気分で道を歩いていた。その時!
十代「遊戯さんの仇は俺がとるぜ!」突如後ろから結城十代が現れ妲己を瞬殺した。
妲己「うぎゃー!」
十代「俺は生き残る!」
妲己、死亡確認
「お、お主は?」
大公望の見つけた先には、下半身を露出したDIOがいた。
「み、見たな・・・」
DIOは激昂し、大公望の首をちょん切った。
切られた首は小屋を出て、山を転がっていった。
ヤムチャは、DIOの元へ向かっていた。
すると、足元に何かがぶつかった。
ヤムチャはそれをマジマジと見つめていると、
「こ っ ち を 見 る ん じ ゃ な い」
大公望の生首(以下、首公望)は物凄い形相で睨んだ。
その頃、大公望の体(以下、体公望)は、DIOに食されていた。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷・背中に火傷(全て治療済み)、 気絶
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:悟空を探す。若干気が緩んでいる。
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
【首公望@生存確認】
【体公望@死亡確認】
残り61、5人
ここ、秋田県の北部に一人の男が立っている。
「やれやれ、死んだふりも大変だったな」
その男は、死んだはずの大原部長。
!!
ふと前方に、青年の生首を持った狼のような風貌の男が現れた。
「おっさん、オレと手を組まない?」
【ヤムチャ、大公望の生首@ドラゴンボール、放心演技】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷・背中に火傷(全て治療済み)、 気絶
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:悟空を探す。若干気が緩んでいる。
【大原大二郎@蘇生確認】
残り62,5人
『桃白白の場合』
歩いていた。歩きながら放送を聞いた。だがそこまでが限界だった。桃白白は倒れ意識を失った。
次に目が覚めた時、蜜柑色の長髪の女の顔が目の前にあった。
一瞬の沈黙が流れ、反射的に桃白白は背後に飛び退いた。飛び退いて直後、自分が重症を負っていたことを思い出す。
しかし、襲って来た痛みは予想より遥かに少ないものだった。
「ダメだよっ!じっとしてないと傷が開いちゃうよっ!!」
「なにい?」
「もう少しで死んじゃうところだったんだよ!」
直っている。塞がりかけた腹部の傷口を見て桃白白は驚く。殴られた顔の痛みもほとんどない。
改めて桃白白はまじまじと女の顔を見た。この女が自分を助けたというのか。女は桃白白の前で荒い息をついている。周囲を覗うが他に人間の気配はない。
喜びがこみ上げてくる。助けてもらったというなら『礼』をしなければなるまい。
「フッフハハハハッ。よーしこうしよう。わたしは殺し屋だ。礼のかわりにどいつかを殺してやろう。貴様も運がいいぞ。
私の殺し代はおまえら一般庶民が一生働いても払えぬほどの額だ。さあ言え、どいつを殺してほしい」
「――!?そんなッ。こっ、殺して欲しい人なんて居るワケないじゃないかっ!」
「・・・なら、お前が死ぬか?」
「なっ・・・」
驚いた表情のまま女の顔が凍りついた。桃白白の指が、女の眉間を貫いていたのだ。
「釣りはいらんぞくれてやる」
指を抜いて歩き出す桃白白。背後で女が倒れる音がした。
『マミーの場合』
――――何だ、この気持ちは。
こんなことが前にもあった。オレのせいでバーバリアンの『儀式』の犠牲になった屋台の親父。
微かに、遠く男が走り去っていくのが見えた。服に『殺』の文字が入っている髭面の男。
ヨーコが死んだ。駆けつけた時にはすでに事切れていたのだ。
もともと瀕死の重傷を負い道端に倒れていた男だった。それを目敏くヨーコが見つけ、例によって治療してやるかどうかで揉めた。
前の大男を治療したのもどうかと思ったが、さすがに服に『殺』の字を入れてるようなヤツを助けることには納得できなかった。
今でも後悔している。ヨーコを突き飛ばしてでも、倒れている男に止めを刺しておけばよかったと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こいつを助けてもオレらが殺されるかもしれねーんだぞ!!ああっ!!」
「―――!」
切れていた。あくまでも治療すると言って聞かないヨーコに、これ以上自分を抑えることが出来なかった。
自分は今、鬼のような形相になってヨーコを睨み付けているのだろう。ヨーコは完全に怯えて言葉を失っている。
放送直後、ヨーコの様子は一変していた。例の知り合いの名前が呼ばれたという。
最初は泣き叫んで悲劇のヒロインでも気取り始めるのかとゲンナリしたが、意外と立ち直りの早い女で、
(なんでもそいつは一度死んで自力で生き返ったことがあるらしい。・・・ありえねぇ)少し見直す気持ちになっていた矢先のことだった。
そんなヨーコに対してキレるのも大人気ないとも思ったが、これでも良く堪えた方だ。
本心を言えば、ヨーコをぶん殴ってでも瀕死の男に止めを刺してやりたかったくらいなのだ。
虫の鳴く声。二人の間に沈黙が流れている。先に口を開いたのはヨーコの方だった。
「・・・て、天は・・・」
「ああ!?」
「て、天は・・・自らがそうする様に、人が人を許す事を望んでいるのよ・・・」
「・・・な、なに?(ゆる、す・・・?許すだと?)」
「そ、それより今は、ボクらができる事を探して、最善を尽くす事を考えなきゃ・・・」
「・・・(な、なんだ・・・?いきなり何を云っているんだこの女は?)」
「正しい事のために最後まであきらめずに戦う者を、神様は決して捨てたりはしないわ。」
「・・・(正しいこと・・・?神だと・・・)」
ヨーコはしどろもどろになりながら懸命に話していた。
今更ながらマミーは理解した。理解するのが遅すぎたと思った。
「フン、あーわかったよ。ったく、オマエには敵わねぇよ・・・」
「わ、解ってくれたんだね!?ありがとう!」
「おう、後は勝手にしてくれ。じゃあな」
「えっ、マミークン!?どこに行くのっ!」
『とても付き合ってられない』それがマミーが出した結論だった。
それ以上何も言わずマミーは足早に歩き出した。
「あっ、待ってよ!マミークンッ!?」
「放せコラッ!」
「あっ!」
ヨーコが倒れていた。思わず突き飛ばしていたのだ。直も立ち上がろうとするヨーコに言ってやった。
「バカじゃねェの、神だかなんだかしらねぇがクソ食らえだぜ。偉そうに説教垂れやがって・・・!」
「−−−!」
ヨーコの目が衝撃に開かれる。マミーは目を逸らし吐き捨てるように呟いた。
「オレぁひねくれてんだよ・・・」
そう言ってマミーは全力で走り出していた。
マミー・・・
クン・・・
小さく、自分の名を呼ぶ声が背中に突き刺さった。
『ティア・ノート・ヨーコの場合』
「―――マミークン・・・」
追えなかった。後ろ姿を見送りながらヨーコは暫し呆然としていた。
倒れた自分を見下したマミーの、信じられない程の冷たい視線が足を凍らせた。
胸の前で右手を握り締めた。ボクは、ボクは非力だ。ヨーコの心を自己嫌悪の波が襲う。
ずっと一緒にここまで来たくせに、全て一人で決め付けて、彼のことなど何もわかっていなかった。わかろうともしなかった。
(・・・ゴメンねマミークン。後で必ず、謝りに行くから。だからどこかで待ってて欲しい。この人を治したら必ず・・・)
ヨーコは立ち上がって、瀕死の男の方へ歩き出した。
男は重症だった。顔面は無残に潰れ、大小の傷を全身に負い、特に腹部の傷はもう少し発見が遅かったら手遅れになっていたかもしれない。
しゃがみこんで顔に手を触れた。
青ざめて冷たい肌。弱弱しい呼吸。点々と続く血痕。助けを求めてここまで歩いてきたのだろう。
ふいに涙が込み上げてきた。
自分は間違っているのだろうか。またたくさんの人が死んだ。読み上げられた犠牲者達の中に<あの人>の名前があった。
「結局返してくれなかったね。500円、ダメだぞ・・・」
誰か教えて欲しい。
なぜボクたちはこうまでして戦わなければならないのか。
ヨーコの脳裏にカル=スや魔戦将軍たちとの戦いが蘇る。
何度も命を賭けて戦った彼らも、選んだ道が違っただけで、目指すところは一緒だった。
「慈悲深き方」
―――欺(だま)される事も
「癒しの神よ」
―――飢えて死ぬ事も
「聖し御手を」
―――憎みあう事も
「似ち示したまえ」
―――殺しあう事も
「人の血は血に」
―――もうボクは欲しくはない
「肉は肉」
―――ボクが欲しかったのはただ
「骨は骨に」
―――誰もが幸せに暮らせる優しい世界だけ。
「『白 銀 の 癒 し 手』」
癒しの光が倒れた男の体を包み込む。
右脚がほのかに熱い。膝を擦りむいていたことに、ヨーコは気が付いた。
『マミーの場合2』
日も暮れて闇の中、埋葬が終わってマミーは立ち上がった。
土の中が彼女の寝床。死のその瞬間、彼女はどんな気持ちだったのか。
今となっては知る由も無いが、現実は慈愛心に溢れていた彼女を殺し、そんなものとは程遠いひねくれ者がこうして生きていたりする。
なぜ自分はこの場所に戻って来たのか。彼女の気持ちを裏切ってしまったことを、
ほとんど殺されると分かっていながら彼女を見捨ててしまったことを、悔やんでいるから戻ってきたのでのではないのか。
青臭い理想論に心が動くことは無かった。ただ死が、罪悪感が自分を打ちのめしている。
全て『あの時』と同じ。また自分は繰り返してしまったというのか。
それでも『あの時』と違い、涙は出なかった。最後に決断をしたのはヨーコ自身なのだ。
(これがオマエの信じた道なんだろ。だからオレもオレの道を行くぜ・・・。)
また小さく、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
もう振り返るな。そう自分に言い聞かせマミーは歩き出した。
【茨城県/夜】
【マミー@世紀末リーダー伝たけし】
状態:健康
装備:フリーザ軍戦闘スーツ@ドラゴンボール
道具:荷物一式(食料と水、一食分消費)
思考:1 現実を悟る。誰が相手でも殺られる前に殺る。
2 とりあえずヨーコを殺したヤツは優先で殺す・・・?(複雑)
3 消えない傷が心に出来た。
【桃白白@ドラゴンボール】
状態:疲労、気の消費ともに半分ほど・血が足りない、傷は白銀の癒し手によりふさがりかけている。
が、当分安静にしてないと開く、放送はいちおう覚えている。
道具:支給品一式(食料二人分、一食消費)・ジャギのショットガン(残弾20)@北斗の拳・脇差し
思考:1 参加者や孫悟空を殺して優勝し、主催者から褒美をもらう
2 でもヨーコの分はサービスでいいかと思っている。
【ティア・ノート・ヨーコ@BASTARD!! 死亡確認】
【残り71(68)名】
注記を書こうとしてすっかり忘れていました。すいません。
>>76の状態表の最後に以下を追記します。
※趙公明によって壊された名古屋城の破損部分は、3人の方向からは見えていません。
>>149-
>>167は無効にし、修正版を再投下します。
「この声は……間違いない、悟空だ!」
突如聞こえてきたその叫び声に、クリリンは歓喜した。
それは、かつて同じ師の下で修行した盟友。それでいて、もっとも信頼できる仲間。
絶対的な力を持つ……クリリンの計画の要。
「悟空? この声の主はクリリンさんの知り合いですか?」
「え? あ、ああ。孫悟空っていうんだ。あいつが……あいつがこの近くにいる!」
あの声は間違いなく悟空。
耳に馴染んだ大声は、今置かれた状況を忘れさせるほどクリリンを興奮させた。
「しかし、だとしたら心配ですね。あの叫び声は尋常ではなかった。もしかしたら他の参加者に襲われているのかもしれない」
「へ?」
「それもそうだ。しかもクリリン君を追ってきたあの彼、叫び声のしたほうに走っていったみたいだけど」
「うそ!?」
木陰の脇から見てみると、そこに伊達の姿はなかった。
その瞬間、クリリンの脳内で様々な考察が展開する。
一、悟空はなぜ叫び声を上げていたのか?
月の言うとおり襲撃者に襲われている可能性もあるが、悟空ならまず返り討ちだろう。
しかし、この殺人ゲームの舞台では、それも絶対ではないかもしれない。
気円斬でも斬れなかったトンファー、ことごとく攻撃を吸収した不思議な貝などの、役立つ支給品の存在。
もしかしたら、それらを駆使した参加者十人くらいに袋叩きにされている可能性もあるかもしれない。
そういう状況なら、あの悟空でも叫び声くらい上げるだろう。
二、このまま悟空と伊達が対面したらどうなるか?
伊達はブルマの仲間、ゲームに乗ったマーダーである可能性はまずないので、同じくゲームに乗っている可能性が皆無な悟空と対面しても、戦闘になることはないだろう。
その上で、もし二人が情報交換でもしてしまったら……間違いなく悟空にクリリンの名前が伝わる。ブルマを殺した『ゲームに乗った者』として。
そうなっては、事情を説明するのが面倒だ。勘違いして一発殴られでもしたらたまらない。
計画を円滑に進めるためにも、悟空に自分の計画がバレるのは、もう少し数が減るまで避けたい。
一については、実際にこの目で確かめてみなければわからない。
二については、簡単な解決方法がある。それは、自分の情報が漏れる前に伊達を殺すこと。
しかし、傷ついた今の身体ではそれも難しい。誰か、代わりに伊達を始末してくれる協力者でもいればいいのだが……
「……奴を追おう」
汗を垂らしながら思案するクリリンにそう提案したのは、セーラー服に身を包んだ少女。
いや……少女と呼べるのは、その外見のみ。彼女の本性は、悪を憎み正義を貫く、錬金の戦士。
「君を追っていた奴が本当にマーダーというのなら……君の仲間が危ない」
カズキの死による怒りを沸々と滾らせ、斗貴子は歩みだした。
クリリンの話がまだ本当かはわからないが、疑っている内に手遅れになってしまっては困る。
もう、カズキのような犠牲を出してはいけない。
まだ素性が怪しいとはいえ、自分のように、仲間を失う悲しみを味あわせてはいけない。
弱気を守り悪を挫く――それは、錬金の戦士として当然の決断だった。
第三放送で、また新たなる仲間の死が告げられた。
その者の名は富樫源次 。剣桃太郎と同じく、男塾の出身の戦友だった。
また一人……仲間が死んだという事実。
どうしようもない憤りが、伊達臣人の足を加速させた。
彼が目指すのは、福井で見つけた殺人者。ブルマを殺し、リンスレットまでもを襲った、凶悪な殺人者。
その小柄な体格からは想像できなかったが、ブルマの死体を見て確信した。
手刀で胸部を一突き。武器も使わず、己の手だけで人を殺めるその技術。
あんな常人離れした殺し方は、素人に真似できるものではない。
暗殺拳かなにかだろうか……とにかく、ブルマを殺したクリリンは、相当な実力者だ。
ならば、桃や富樫を相手にした可能性も出てくる。クリリンが彼らを殺したのかどうかはわからないが、手がかりには違いない。
アビゲイルの下を離れ、クリリンを追っていた伊達は、いつの間にか岐阜県まで来ていた。
地面に滴る微かな血の跡を頼りにここまで来たが、標的は未だに見つからない。
そんな矢先、突然男の叫び声が木霊した。
悲鳴には聞こえなかったが、なにが理由であんな叫び声を上げたのか。
伊達はクリリンの捜索を一時中断し、その叫び声のほうへ向かった。
叫び声を上げたのは、孫悟空。
力の限り足を動かし、邪魔になるような障害物は蹴散らし、ここ岐阜まで爆走してきた。
彼には、他の参加者に自分の位置がばれてしまうかもしれない、という心配は一切していない。というよりも、考えられるような状態ではなかった。
彼の頭の中は、誰にも覗けない。今はただ、走る。走る走る走る。
「止まれ!」
止ま……る?
走り続けていた悟空が、やっとその足を止める。
彼を止めたのは、伊達臣人。
なんのために自分を止めたのか。なんのために目の前に立ちはだかるのか。
なぜ、なぜ、なぜ???
「う……わぁあああぁああぁあぁぁぁあ!!」
「――! なに!?」
気がつくと、悟空は伊達に襲い掛かっていた。
自分の進行を止めようとする障害物に、ただそれを壊そうと、拳を振るう。
(……ちぃ、いきなりか。これはわざわざ訊く必要もねぇな)
目の前の男は、ゲームに乗っている!
そう判断した伊達は、持っていた『首さすまた』で悟空の拳を受け止める。
その攻撃は直線的だったため、簡単に防御することができたのだが、
「うぐ!?」
予想以上に、重い。
悟空の拳が生む衝撃は、防御を関係なしに伊達の身体を揺さぶる。
その一撃だけで、伊達は悟空の実力がかなりのものであることを悟った。
こいつは骨が折れそうだ……と、伊達は首さすまたを構えなおす。
「う……あああああああああああああああああ!!!」
悟空の雄叫びと共に、拳のラッシュが伊達に降り注ぐ。
今回は初撃のような失態はしない。相手の力を考慮し、受け止めるのではなく受け流す。
そして、生まれた隙を首さすまたで突く。
「――ガッ!?」
あまりに無茶で強引な攻撃方法をとっていた悟空には、これを避けることができなかった。
首さすまたの刃が脇腹の辺りを掠め、悟空を吹き飛ばす。
生まれる一定感覚の距離。
槍の技を繰り出すには絶好の間合い。
「――覇極流奥義千峰塵!」
伊達の持つ覇極流槍術の中でも、随一の連撃速度を持つ槍の猛襲。
その全てが、悟空の正面へと伸びる。
「……うあ……!」
その攻撃に対し、野生的な反応速度を見せる悟空は――なにもしなかった。
「――!?」
攻撃を正面から受けるも、悟空はなんとか後ろに後退することでその衝撃を和らげる。
が、その身体は吹き飛ばされ、地面を滑った。
(なんだ……こいつは?)
そのおかしな一瞬を、伊達は見逃さなかった。
攻撃を放つ一瞬、悟空の身体にはそれを防ごうとした動作が見られた。
しかし、悟空はその手を不自然に止め、攻撃をまともに受け止めたのだ。
しようと思えば、もっとまともな防御ができたはずなのに。
……伊達には知るよしもない。
このとき悟空が戦っていたのは、伊達ではなく『もう一人の存在』だということを
「――うおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉぉおおお!!!」
悟空に違和感を覚える伊達の真横、木の陰から、新たな叫び声が。
「な!?」
突然現れたそれは、手に斧を持ちながらこちらに向かってくる。
その周囲に、誤魔化しようのない殺意のオーラを纏って。
「――喰らえ!!」
「――クソ!?」
咄嗟の攻撃に、伊達はなんとか反応してこれを防ぐ。
斧の一撃は首さすまたで払いのけ、新たな襲撃者との距離が取れたところで気づいた。
「……女?」
横から現れた襲撃者の正体は、セーラー服を着た女性だった。
見た目は学生。手に持った斧と、殺気の漲る瞳に目を瞑ればの話だが。
「……ちっ、なんだおまえは。こいつの仲間か?」
見事なタイミングで現れた、二人の襲撃者。
二人とも自分を襲ってきたとあれば、考えるまでもなく協力関係であることが窺える。
だが、セーラー服の少女から発せられた言葉は、伊達の予想とは違ったものだった。
「そんなことはどうでもいい……私は、今ここで貴様を殺す!!」
その少女――津村斗貴子は、既に確信していた。
抵抗しない悟空を、一方的に斬りつけた伊達の姿。そして、地面に転がる悟空。
見間違いのしようがない。斗貴子は、伊達が悟空を襲っていた場面を目撃したのだ。
それ即ち、クリリンの言葉が真実であるということ。
目の前の殺人者……ホムンクルスとなんら変わりない悪は、斗貴子の怒りを掻き立てた。
一対二。二人の狂乱戦士に挟まれるというこの戦局図。
こんな状況になるのだったらと――伊達の頭に三枚のカードがよぎった。
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記2〜
伊達から託された、三枚のカード。
衝突(コリジョン)、使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす。
漂流(ドリフト)、使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす。
左遷(レルゲイト)、対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす。
……なにこれ、めちゃくちゃ便利じゃない。
このカードがあれば、たとえマーダーに襲われたとしても簡単に逃げることができる。
まあ、衝突や漂流のカードは別のマーダーと対面してしまうって危険性もあるけど。
左遷は、相手の名前さえわかれば比較的安全に使える。
考えようによっては、どんな強力な武器よりも使える代物かもしれない。
こんな便利なものを他人に渡すなんて、伊達は頭が悪いんじゃないだろうか。
「彼としては、そういう小細工じみたものはあまり好かないのでしょう。だからこそ、非力なお嬢さんのためを思ってここに置いていった。自分はお嬢さんを傍で守ることができないからと! まさに『男』じゃあありませんか!」
……熱弁するアビゲイルには、正直ついていけない。
つまり、これは彼なりの優しさということなのだろうか。
だとしたら素直に嬉しい。無愛想だったけど、ちょっと格好良かった気もするし。まあ好みじゃないけど。
「とにかく、お嬢さんはしばらくここでお休みください。もうすぐ夜もふける。今は行動を控えたほうがいいでしょう」
「ええ。そうさせてもらうわ。あなたは?」
「私は、隣の部屋でこれを調べてみます」
アビゲイルが取り出したのは、ブルマが持っていた首輪。
クリリンを発見する前、両断された男の死体から入手したものだ……うっ、思い出したら気分が。
「道具がなにもないので、あまり大したことはできませんが……まあ他にやることもないので、気楽にやりますよ」
「……そう。がんばってね」
「ふむ? やはりまだ調子が優れないようですな。なんでしたら、私が付きっ切りで看病して差し上げても……」
「い、いい! けっっっっっっっっこうです!!!」
私は、全力を持ってお断りした。
そうなのだ……冷静になって考えてみれば、ブルマが死に、伊達が去った今、私の仲間は……アビゲイル一人。
これから当分、この優しいんだけど気味の悪いおっさんと二人きりだということを考えると……憂鬱だ。
ああ! 早くトレインたちの見慣れた顔が見たい。
……うん? そういえば、私が眠っている間に放送が流れたみたいだけど……彼らは無事なのだろうか?
まああいつらが簡単に死ぬとも思えないし、アビゲイルもなにも言ってこなかったから、たぶん無事なのだろう。
とりあえず今は、このフカフカのベッドで休むことにする。
じゃ、お休み……
〜リンスレット・ウォーカーの(プチ)脳内手記2 完〜
斗貴子は知らない。伊達が、襲われた側であることを。
しかし、目は口ほどにものを言う。
タイミング悪く、悟空が伊達を襲った場面を見なかったこと。
タイミング悪く、伊達が悟空を襲った場面を見たこと。
それに加えて、カズキの死による混乱がもたらした判断力の低下。
同時に発生した殺人者への怒りと、再度自覚した、錬金の戦士としての使命。
これらが重なった状況で、誰が斗貴子を止められようか。
「貴様を殺す前に一つ訊いておく……カズキ、武藤カズキという名の少年を殺したのはおまえか?」
「武藤……カズキ?」
知らない名だった。そして同時に、その質問でいくつかの疑問が浮かぶ。
カズキというのは、先ほどの放送で呼ばれた名。彼女は、カズキという参加者の知り合いなのだろう。
となると、彼女の目的は復讐か? だとしたら、なぜ自分を襲う?
一番納得のいく答えは……勘違い。
この少女は、自分を殺人者と勘違いしているのではないか。
そういう結論に達した伊達は、斗貴子と一度話をしようとするのだが、
「うありゃあああぁぁぁぁあぁ!!」
いつの間にか立ち上がった悟空が、再び襲い掛かってきた。
「――なに!? くっ!」
斗貴子に気を取られていた隙を突き、悟空が拳を打ち込む――
(――な!? また……!?)
――と思われたが、その動きがまたもや制止。攻撃は中断される。
振り払おうと振るった首さすまたになぎ払われ、止まっていた悟空は宙を舞う。
再度確認された悟空の不自然な動き。
戦う気があるのかないのか。
悟空の存在に、伊達は困惑していた。
「君はそこで大人しくしていろ! こいつは私が倒す!!」
その、一瞬の隙。
「唸れ、真空の斧!!」
「――!?」
突如巻き起こる突風。
ダメージを受けるほどの衝撃ではなかったが、伊達はよろめき、体制を崩してしまう。
そして、隙が生まれたその瞬間。
伊達に、斗貴子が襲い掛かる――
その光景を見ていた悟空は、攻撃に移ろうとした手を止める。
(ひゃぁぁ〜あいつら強えなぁ。オラもあいつらと……)
――戦いたい?
(オラ強え奴らと戦うのは大好きだ)
――じゃあ戦えばいい。
(ああ。だけどよ……これは人殺しのゲームだぞ。そんな中で戦うわけにはいかなぇだろ)
――気にするな。あいつらは『強え奴ら』なんだろ? 簡単には死なないさ……
(おお、それもそうだな! でもよ……じゃあなんであの二人は死んじまったんだ?)
――あの二人? ああ、あの赤毛と色黒の奴か。そんなもん簡単さ。奴らは弱かった。だから死んだんだ。
(オラが、殺したんだよな?)
――そうだ。
(オラは……強くもねぇ奴らと戦って、そいつらを殺しちまったのか?)
――そうだ。
(なんで……なんでオラは強くもねぇ、簡単に死んじまうような奴らと戦ったりしたんだ!?)
――それはな、おまえが戦いに飢えた戦闘民族……
サ イ ヤ 人 だ か ら さ !
「……か、め……」
次の瞬間には、悟空は腕を構えていた。
それは、明らかな戦闘参加への意思表示。
悟空の心の葛藤は、決して外野に聞こえることはなく、この瞬間決定付けられた。
悟空からは距離を取り、伊達には隙が生まれた。
今なら邪魔する者は誰もいない。
斗貴子は、再度伊達に襲い掛かる。
構えるのは、月から借りた真空の斧。
本来、斗貴子の戦闘スタイルの持ち味は、彼女の持つ武装錬金『バルキリースカート』を使った四本の可動肢による高速移動にある。
だが、核金を持たぬ現状では、本来のスピードで相手を圧倒するような戦い方はできない。
それでも、斗貴子は熟練された戦士。手持ちの武器だけでも、十分に渡り合える。
一撃目。
斗貴子が次に構えたのは、ポケットにしまっていた一丁の銃。
道中で見つけた少年の死体から拝借した、ワルサーP38である。
風の衝撃で隙のできた伊達に、問答無用でその弾丸を撃ち込む。
狙いは脚部。まずはその足を潰そうと、膝のあたりを集中砲火。
突風に銃撃という、予想外の連続コンボに、伊達はこれを避けることができなかった。
「ぐっ!!」
その足は折れ、地に膝が着く。そうしている間にも、斗貴子の狂気は続く。
二撃目。
真空の斧を構えての、突撃。
体勢の崩れた伊達に回避の選択はなく、足を動かせぬ状態で首さすまたを振るう。
真空の斧、首さすまたの刃の部分が交錯し、金属音が響き渡った。
力で言えば斗貴子よりも伊達のほうが上。このまま押し切れば、伊達の勝利。
もちろん、斗貴子もそんなことは承知している。
両者の武器が交錯するやいなや、斗貴子は真空の斧を手放し、瞬時に伊達の横合いに回り込む。
伊達の振るった首さすまたは空を切り、真空の斧は宙を待った――
「ひっ!」
伊達に吹き飛ばされた真空の斧は、月たちの潜んでいる木陰の、真横に位置する木に突き刺さった。
斗貴子と伊達と悟空。三者の戦いを傍観するのも、また三者。
それぞれ思うは、自分の身と――
(クソッ、なんなんだあいつは! とんだじゃじゃ馬じゃないか! ああいう感情で動く奴は、最も扱いづらいタイプだ!)
月は、己の感情のままに戦う斗貴子に怒りを覚えた。
(すごいな彼女は! 戦えるとは聞いていたが、予想以上の使い手のようだ。そしてなにより、クリリン君の知り合いらしいあの青年……)
友情マンは、斗貴子の実力、そして悟空の存在にほくそ笑む。
(悟空の様子がおかしい……第一、なんで悟空はブルマさんの仲間を襲ってるんだ?)
伊達がいるところに姿を見せるわけにもいかず、悟空と接触できないでいたクリリンは、様子の変な悟空に疑問を抱いていた。
彼の思考は、全て一秒にも満たない一瞬の内のこと。
その思考が終わる頃にはすでに……斗貴子と伊達を取り巻く状況は変わっていた。
三撃目。
完全に隙だらけとなった伊達の横、斗貴子が繰り出すは二本の指。
反応して振り向いたのが命取り、斗貴子の槍のように伸ばされた指は、伊達の眼前に――
「――――っぐあああああああああああああああああああああああ!!?」
目潰し。これが斗貴子の放った三撃目。
深く沈みこんだ斗貴子の指は、引き抜かれる際に余計なものも一緒に排出した。
それは……伊達の眼球。
右と左、黒と白。紛れもない、人間の目玉が、斗貴子の指に突き刺さっていた。
一対二という逆境。方や悩むように攻撃を中断する男、方や勘違いで襲ってくる女。
ぶっきら棒だが確かな優しさを持つ男――男塾の新一号生筆頭、伊達臣人。
このおかしな襲撃者二人を敵として認め切れなかったのが、伊達本来の力を発揮できなかった理由か。
視界を失い、斗貴子の居場所がつかめない。
この絶好の機会に、斗貴子は再びワルサーP38の銃口を向ける。
伊達の――腹部に。
「臓物を――」
とどめの一撃――
「……うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
伊達臣人は……男塾塾生は、これしきの逆境に屈する人間ではない!
「な――」
視力を失ったことが、逆に伊達の闘争本能を活性化させたのだ。
横薙ぎに繰り出された首さすまたの一撃は、風を切る音とともに、斗貴子が引き金を引くより早く、
「――!?」
少女の小柄な身体を、吹き飛ばした。
「がはっ!」
横からの打撃は、斗貴子を大きく吹き飛ばし、地に転がす。
刃が交錯しなかったため切り傷はつかなかったが、その衝撃は斗貴子の左脇腹の骨を砕き、とどめを刺すのを困難にさせた。
そして、それが斗貴子にとっては幸い、伊達にとっては不運な結果となる。
「……は……め……」
その男のか細い声は、伊達にも斗貴子にも聞こえることはなく。
ただ伊達が感じることができたのは、大きな殺気。
そしてそれと同時に溢れる、絶大な力の波動。
視力をなくした身だが、その殺気に反応して防御の体制をとった伊達は、動きを止めた。
回避ではなく、防御を選択したこと。
斗貴子をその殺気の範囲外に吹き飛ばしたこと。
それは、彼らの未来にどういう影響をもたらすのか。
結果は、いかに――
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああっ!!!」
放たれたのは、悟空の『かめはめ波』。
その衝撃で、あたり一帯が吹き飛んだ。
莫大な破壊エネルギーの放射は、傍観していた三人をも巻き込み、木を、草を、森を破壊し、塵にする。
「っごほ、ごほっ、く、クソッ!?」
土煙の舞う中で、月はその身を起こした。
その胸中には、怒りしかこみ上げてこない。
(くそぉぉぉ!! なんだっていうんだ、どいつもこいつも!)
常識離れした超常能力のオンパレード。歩く生体兵器とでもいったところだろうか。
このゲームには、そういった危険人物か、行動を予測できないほどの馬鹿しかいないのか。
ゲーム開始から数時間、月の憤りは、そろそろ限界を超えようとしていた。
(Lは死なず、ミサはいっこうに現れない! そのうえ僕の周りは馬鹿ばかり! なんなんだこの世界は!!)
まるで月の思いどおりならない世界。
月の怒りは、今まで関わってきた全ての参加者、主催者に。そして、この世界自体に。
しかし、土煙でお互いの姿が見えなくなった今、あるいはその今こそがチャンスなのかもしれない。
イヴのときと同じような結果が訪れる前に、馬鹿な仲間に見切りをつけるチャンスが、今。
(だが……あのじゃじゃ馬はともかく、友情マンは別だ。奴は僕と同じように何かを企んでいる)
こういった世界では、危なっかしい戦闘能力を持つ馬鹿よりも、友情マンのような『他者を利用する輩』のほうが扱いやすいかもしれない。
人心掌握に関しては、この世界で月の右に出るものはいない。万が一、いや億が一にも出し抜ける可能性を持つ者といえば、Lくらいだろうか。
(とにかく、友情マンとはまだ協力する価値がある。この混乱に乗じて彼と接触を……)
……本当に、この世界はまるで月の思い通りにならない。
あまりにも月の住む世界とかけ離れ、異常な参加者が集っている。
そんな中、真に生き残れるのは誰か。
それは、頭脳を駆使し、他者を利用し、うまく立ち回れる知恵を持つ者。
ドシュッ
「…………は?」
違った。頭脳を駆使し、他者を利用し、うまく立ち回れる知恵を持っていて、それでいて自分自身も力を持つ者。
そう、たとえば彼のような。
「友……情、マン……?」
「悪いね月君。あまりにもがら空きな背中だったんで、今は減らせるうちに減らしておくべきだろうと判断したんだよ」
見ると、月の胸に鋭く尖った木片が刺さっていた。
どうやらそれは背中から……友情マンの手に持たれた状態で突き刺さっているらしい。
「馬鹿な……なぜおまえが……ここで僕を殺す?」
友情マンがなにかを企んでいたのには気づいていた。
自分か斗貴子、もしくはその両方を利用しようとしていたことも。
ではなぜ今殺すのか。考えられる理由は二つ。
『チャンスが訪れたから』『利用する必要がなくなったから』
おそらく、どちらの理由も当てはまるのだろう。
「君たちと一緒にいる必要は、もうなくなったんだよ。なんせ……」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
友情マンが喋り終わる前に、その真横を悟空が叫びながら通過していった。
「僕は、彼と友達にならなくちゃいけないからね」
(友達に……なる!?)
月には意味が分からない。次第に考える力もなくなっていく。
「もうそろそろお休み。君は、爆風で吹き飛んだ木片が運悪く背中に刺さって死亡って風に偽装しておくから」
最後の手向けとして、友情マンは優しい言葉で月を送る。
(く……そぉぉぉ!! 僕が、この新世界の神となる僕が……こんな、こんなふざけた格好の奴に……!?)
最後まで怒りが収まることはなく、呪いでもかけかねない形相で友情マンを睨み、
新世界の神となるはずだった男は、そこで息絶えた。
「さて、悟空君だっけ。早く彼を追わないとね」
飛び散った血をふき取り、友情マンは走り去っていた悟空を追跡する。
彼の計画は、ひとつ。悟空と友達になること。
あの底知れぬパワー。必殺技の威力。おそらくは、勝利マンや世直しマンと同じクラスかそれ以上。
加えて彼の精神状態。錯乱したように喚き散らし、目の前に立ちはだかる者に襲い掛かる。
(なんてことはない……彼は、怯えているのさ)
突然つれてこられた、殺人ゲームという現実に。自分の持つ絶大な力に、怯えながら。
そんな彼の心に必要なものはなにか。簡単だ。『友情』である。
彼は単に不器用なだけ……かつて友情マンの傍に付いていた友達、一匹狼マンと似た境遇にあるのかもしれない。
いや、彼と友達になるのは、一匹狼マンのときよりもずっと容易いだろう。
怯えた心は、隙間だらけ。その隙間に、ちょっと『友情』を持って入り込むだけのこと。
友達作りを得意とする友情マンにとって、悟空ほど友達になるのが簡単な者いないかもしれない。
(彼と友達になりさえすれば……他の奴らは必要ない。彼がいれば、本当の意味で百人力だ)
悟空の見せた力は、友情マンを魅了した。
彼は、これまでのちゃちな友情に見切りをつけ、新たな友達に惹かれて走り去ってしまったのだ。
なんと、薄情な『友情』だろう――
「ごほっ、クソ、悟空ぅー! おい悟空ぅぅ!!」
未だ土煙の止まぬ森の中、クリリンは悟空を求めて叫んだ。
彼の足元には、倒れこんだ一人の人間が。
悟空のかめはめ波を受け、その命を落とした――伊達臣人。
悟空と斗貴子、二人の狂気に挟まれた彼は、最後になにを思い、なにを残して死んでいったのか。
それは、誰にもわからない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「――!? 悟空!?」
もう何度目になるかわからない叫び声は、クリリンの存在に気づくことなく遠くなっていく。
「ちくしょうっ! どうしちまったんだよ悟空!?」
悟空がなぜあんなに錯乱していたのか、クリリンにはそれを知るすべがなかった。
と、視界に新たな死体が映る。
大の字に転がるその土まみれの姿は……
「……斗貴子さん」
自分のせいで伊達を殺人者と勘違いし、その結果悟空のかめはめ波に巻き込まれて死んだ、戦士・斗貴子の姿。
クリリンはその死体にそっと近づいていく。
ピッコロを優勝させるため、参加者は全員殺さなければならない。
そう頭では理解していても、やっぱり人が死ぬのを見るのは辛い。
ただただ、クリリンは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「奴は、どうなった」
「!?」
――喋った!?
てっきり死んだかと思っていた斗貴子は、生きていた。
よく見ると、目立つ外傷もない。運よくかめはめ波が直撃しなかったのだろうか……?
「あ……悟空が倒したよ」
「……そうか、強いんだな君の仲間は。結局、私は役には立たなかったかな……」
弱々しく口を開く斗貴子に、クリリンは黙って耳を傾けた。
「こんなことだから……カズキも守れない。こんなことだから……私が、弱いから……」
斗貴子の声は、悲しみで震えていた。
違う。斗貴子がいたからこそ、斗貴子が善戦したからこそ、伊達を始末することができたのだ。
そんなことも口に出せず、思うは、
(……同じだ)
クリリンは、斗貴子にそんな感想を抱き始めていた。
一人で使命を背負い、一人で悩み、一人で苦しんでいる。
たった一人、孤独な人数減らしを続けるクリリン。たった一人、弱き者を守ることを誓う斗貴子。
たった一人、死んでいく参加者の悲痛に悩まされるクリリン。たった一人、カズキを死なせてしまったことに悩む斗貴子。
たった一人、背負った罪悪感に苦しむクリリン。たった一人、なにも守れない自分に苦しむ斗貴子。
「あのさ……」
クリリンは斗貴子がなにを背負って苦しんでいるのかを知らない。だが、直感で自分と斗貴子は同じ境遇だと、感じ取っていた。
「一つだけ、あるんだ。このゲームを、全部なかったことにできる方法が」
だからかもしれない。クリリンが斗貴子にドラゴンボールのことを伝えようと――この苦しみを共有しようと思ったのは。
(オラは、オラは、オラは!)
森の中を疾走する悟空。
今、彼の心を支配しているのは誰なのか。
風に揺れる森のざわめきが、まるで彼の内に潜む者の嘲笑のように聞こえた――
【岐阜県南部/森/夜】
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]カズキの死による精神的ショック大。殺人者に対する激しい怒り。
戦闘による中程度の疲労。全身軽傷。左肋骨二本破砕。
[装備]:ダイの剣@ダイの大冒険、ワルサーP38、リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料と水を四人分、一食分消費)、ショットガン
[思考]1.クリリンの話を聞く。
2.人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)。
3.ゲームに乗った冷酷な者を倒す。
4.友情マンを警戒。
5.午後六時までには名古屋城に戻る。
【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]:疲労困ぱい、気は空
:わき腹、右手中央、左腕、右足全体に重傷 、
:精神不安定
[装備]悟飯の道着@ドラゴンボール
[道具]:なし
[思考]1:斗貴子にドラゴンボールを使った計画のことを話す。
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
3:ピッコロを優勝させる 。
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:健康
[装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
[道具]:荷物一式(一食分消費)、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
[思考]:1.悟空を追い、友達になる。
2.最後の一人になる。
【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]疲労中 顎骨を負傷(ヒビは入っていない) 出血多量 各部位裂傷(以上応急処置済・戦闘に支障なし)
全身に軽度の裂傷。精神的に衰弱(危険度大)
[装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本
翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]走り続ける
【カカロットの思考】時が来る、もう間も無くだ…
【福井県・民家の中/夜】
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]精神的疲労
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]荷物一式 、
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】(伊達から譲渡)
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
[思考]1、休息。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
【アビゲイル@BASTAD!!】
[状態]健康
[装備]雷神剣@BASTAD!!
[道具]荷物一式、ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪
ブルマの荷物一式、クリリンの荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT
海坊主の荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@ドラゴンボール、排撃貝(リジェクトダイアル)@ワンピース、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)
[思考]1、首輪を調べる。
2、ヨーコ達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
※真空の斧@ダイの大冒険 は、近くの木に刺さっています。
※月の荷物は、友情マンが事故に見せかけるためにその場に放置してあります。
【夜神月@DEATHNOTE 死亡確認】
【伊達臣人@魁!!男塾 死亡確認】
【残り72(69)人】
>>225 修正。ヨーコ死んだ後なので、
【残り72(69)人】→【残り71人】
「ま―――なか君?」
放送を聞き終えた後、西野つかさは崩れ落ちた。
目を覚ましたマァムは知り合いがいなかったので安心していたが、倒れた彼女を見て言葉をかけようとする。
だがそのとき――――!!!
「アァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
二人は咄嗟に声のした方向を見遣る。
黒いメタリックボディ。
狂気の権化と呼ぶにふさわしい貌。
そして、背負うは炎を生むバズーカ。
「アイツは――――!」
リサリサがその姿を凝視しながら叫ぶ。
マァムはその表情と男の武器を見て悟る。
(流川くんを―――殺した男?)
マァムは拳を構えて、砲撃に備えてつかさの体を抱き寄せる。
つかさは、ただぼんやりと眼を開き、しかしその眼は何も見ていなかった。
「・・・マァム、下がってなさい」
リサリサはマァムに言い放つ。
「いやよ!私も闘うわ!」
リサリサは厳しい瞳をマァムに向け、
「いけません。――――貴女は、つかさを守ってあげなさい」
その言葉にハッとなって、脇に抱えているつかさをみるマァム。
「でも、リサリサさんだけじゃ・・・」
リサリサはその言葉を聞いて魅惑的に笑い、そして言った。
「―――二十歳前の小娘に心配される程、私は甘い人生を送ってはいない!」
流れるような動作でリサリサは、黒い男の顔面を――――。
――――――キシッ
戦闘が、開始された。
黒い男が振り下ろす腕をリサリサが掻い潜る。4度目の動作。
刹那、二歩半程後ずさる。これも4度目。
(・・・妙ね)
リサリサはつかさの荷物から拝借した三節棍のような武器で黒い男の拳打を受け流しながら、黒い男の行動に違和感を覚える。
(動きがワンパターンすぎる)
黒い男は、まるで機械のように単一的な動作しかしない。
三節根を振り下ろせば避けられるタイミングでも必ず右手で防ぎ、突き通せば体を右によじって避ける。
戦闘のプロフェッショナルから見れば余りに稚拙。この程度なら楽に勝てる。
(たとえ機械が動かしていてももっとマシな動きをするだろう・・・何かに操られている?)
リサリサが一瞬逡巡した隙を逃さず、黒い男は三節棍の付け根を殴り、上2本の節棍が分離してそれぞれ宙に舞う。
(しまった!)
やられる、と思った瞬間、くるくると回転していた2本の節棍から気泡のような物質が放出される。
そのうち一つは拳を振り上げていた黒い男に当たって――――――。
ピリッ
「ギャアアァアアアアアアアァアアアアアァッ!」
黒い男は、悶絶した。
「やはり、機械か・・・」
にわかには信じがたいが、最初の攻撃で敵の顔面を突いたときに感じた妙な違和感もそれで納得できる。ナチスの軍人、シュトロハイムのような【改造人間】か、それともSFまがいの本物の【人型ロボット】か。まあ、どちらでも勝てる相手に違いはない。
今見つけた三節棍に巻きつく形で貼り付けられていた説明書をみるに、この節棍はそれぞれ『熱気』『冷気』『電気』を振ったり吹いたりすることで生み出せるらしい。今敵に当たったのは『電気』の気泡。
更に組み合わせによって多彩な攻撃が可能らしい。節棍を拾って組み方と技名の欄に目を通す。
(ファイン・テンポ、クラウディ・テンポ、サンダー・テンポ、レイン・テンポ、サイクロン・テンポ。裏には・・・何も書いていない)
技の効果すら書いていないが、各節棍の機能を鑑みるに、大体の予想はつく。
これらの動作を10秒ほどで済ませ、敵に向き直る。
普段の彼女ならダメージを与えた敵にそのような時間は与えなかっただろう。
だが、男の単一的な動作に、リサリサはほんの少し、油断していた。
そして男は立ち上がり――――。
「――――――オオオオオオオオオオッ!」
「!」
今までとは打って変わって、滑らかな、一流の武人の動きで、リサリサに迫ってきた。
先程とはまるで別人のようなその猛攻に、リサリサは圧される。
(手加減――――されていた!?この私が!)
この状況を打開するには―――波紋か、この三節棍の組み合わせ技か。
相手が機械なら、一番効果的なのは・・・。
「サンダー・テンポ!」
(恐らく電気系の攻撃だろう・・・!?)
しかしダウジングの木の棒を逆に持ったような形から飛び出したのは電撃ではなくボクシングのグローブ。
バイーーンなどと間抜けな音を立てながら飛び出したが、黒い男はうっとおしそうにそれを手で払い、バズーカを構えた。
(く・・・!)
だが、黒い男は構えたままで立ち尽くし、何故かバズーカを下ろす。
そしてリサリサにとっては多大な意味を持つ言葉を漏らす。
「コロス・・・ダメ・・・ニンゲ・・・ツレ・・・DIOノタメニ!」
(人間―――連れて行く!?―――DIO!?)
DIO"。その名には聞き覚えがある、どころではない。まさか、流川を殺した相手が――――!
「―――DIOの下僕とはね!」
リサリサは【波紋】を取り出した三味線糸に通して硬質化し、それで貫くことで敵の体内に波紋を流し込もうとする。相手がDIOの下僕、吸血鬼と化しているなら殺す手はそれしかない。
「鉄クズにしてあげる・・・!」
リサリサも別人のように殺気を放出し、一撃必殺の構えに移る。
そして、黒い男が迫り、二人が交錯する瞬間―――!
「狼牙風風拳!」
突如飛び出してきた男が黒い男に猛烈なラッシュを加える。その速度はリサリサでさえ目で追うことしか出来ないほど。
「はい!はい!はい!はい!、アオオーッ!!!」
「グギィ・・・ッ!」
黒い男は吹き飛んで、同時にバズーカもあらぬ方向へ飛んでいく。
乱入してきた男は振り向き、リサリサ、マァム、つかさをみてニカッ!と笑い、そして言った。
「俺の名はヤムチャ、誇り高き盗賊だ!御嬢さん方、俺が来たからにはもう安心だぜ!もうすぐ仲間も来る!」
(き、決まった・・・三人とも凄くこっちを見ている。い、いかん!ブルマ!浮気じゃないぞ!)
「危ない!」
「え?わっ!」
ヤムチャは後ろから迫ってきた黒い男に気付かず足を払われた。みっともなく腰から崩れ落ちる。
「い、いてっ!この野郎!」
「・・・アシモトガ、オルスダ・・・!」
恐ろしい笑顔で言う黒い男。
「ならばもう一度っ!狼牙風ブッ」
立ち上がろうとしたところに顔面を蹴り飛ばされる。
「歯・・・歯がっ!鼻血がっ!」
どうやら歯を折ったらしい。え?のた打ち回るヤムチャを見てリサリサがどう思ったかって?
(・・・シリアスなムードが・・・こいつ、ヘタレね)
「鼻血がぁぁぁぁぁぁ!」
かくして、ヤムチャはヘタレという彼のレーゾンデートル・・・もとい、汚名を挽回した。
―――――真中淳平、北――――
真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。真中淳平。
淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。淳平くん。
淳平くんが、死にました。私は言いようのない感情に襲われて。
そして、ふらっと、目が霞み――。
目が開き。
リサリサさんが何か叫んでいます。武道着?みたいなものを着た人が笑っています。キモイです。
キモイ人の後ろに誰かが立ちました。
その"誰か"を見て、急に私の中に言い知れない怒りが込みあげます。
何故でしょう?
黒い、笑っている、悪魔、流川君、殺、し、焦げた臭い、炎、炎、炎!
すぐ近くにあの火を噴く大砲があります。これを使えばきっと流川君の仇も討てるでしょう。
私はそれを拾い、引鉄を曳きます。狙うは黒い殺人鬼。目標だけしか見えません。
隣でマァムさんが何か言った様な気がしました。
しゅううううううう、ちっ。ぼおおおおう。反動で標準がずれて狙いを外したかもしれません。ほら、キモイ人を――。あれ?私は――。
誰を。
ごつん、と首に衝撃が―――。
マァムさんが悲しそうな顔で。
ああ、御免なさい、御免なさい。私はもっと、強く―――――。
優しくなれるよう、強くなりたい。
【愛知県、川辺/夜】
【ヤムチャハーレム】
【マァム@ダイの大冒険】
[状態]:全身各所に火傷(応急処置した)、やや疲労
[装備]アバンのしるし@ダイの大冒険
[道具]荷物一式 ・クリマ・タクトの説明書(裏にリサリサの手紙)
[思考]1:できればリサリサを追いたい
2:名古屋へ向かう
3:協力者との合流(ダイ・ポップを優先)
4:サクラたちと接触
【西野つかさ@いちご100%】
[状態]:気絶・重度の精神不安定(回復可能なレベル)
:移動による疲労
[装備]燃焼砲(バーンバズーカ)@ワンピース
[道具]荷物一式/(核鉄ナンバーは不明・流川の支給品)
[思考]1:気絶中
2:絶望?
【春野サクラ@ナルト】
状態:若干の疲労
装備:スカウター@ドラゴンボール
道具:荷物一式(一食分の食料を消費、半日分をヤムチャに譲る)
思考:1.スカウターを使って隠密行動をしながら、ヤムチャと共に悟空を探し仲間を増やす。(名古屋城へ向かう)
2.ナルトと合流して脱出を目指す。
3.3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷・背中に火傷(全て治療済み)、 気絶
超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:悟空を探す。若干気が緩んでいる。
【愛知県/夜】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、フェニックスの聖衣@聖闘士星矢
[思考]:1.ウォーズマンを追う
2.斗貴子の仲間、核鉄を探し出し、名古屋城へ戻る。
3.2を達成できなくとも午後6時までにいったん名古屋城へ戻る。
4.ダイという少年の情報を得る。
5.名古屋城で合流不能の場合、東京タワー南東にある芝公園の寺へ行く。
【愛知県と長野県の境に近い森林/夜】
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]精神不安定 歓喜、少々のダメージ
[装備]無し
[道具]無し(荷物一式はトイレ内に放置)
[思考]1、DIOのため、人間を捕獲したのでつれていく。
2、DIOに対する恐怖/氷の精神
3、DIOに従う。
【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]三味線糸、天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[道具]荷物一式
[思考]1:DIOを倒し、出来るだけ早くつかさたちと合流する
2:ヤムチャとその仲間達に対して罪悪感を覚えている
236 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 01:00:18 ID:Q4TotfAvO
もう書き手だけで議論しろよ
汚名挽回、名誉返上は無効です。
あぼーん
あぼーん
教室のような空間。
全忍者が既に席についていた。
そして、一番前に立っているのは。サクラ、そして…
イルカだった。
「これでほぼ全員か。
では今から諸君に集合してもらった理由を説明しよう。」
イルカがサクラの方を向くと、サクラが立ち上がった。
サクラは一旦資料に目を落としたあと、すぐに前を向いて、信じられない言葉を発した。
「今日は、お前等に、殺し合いをしてもらうから。 そのつもりで頼むわ。」
サクラの言葉に、周囲がざわめきだした。
「静かにせい!」
イルカが周りを一喝する。
「最後まで聞け!」
静かになったところで、サクラが再度話し出した。
「うちのマンガは、マガジンに売却されることが決まってん。」
独特の口調で、しかしとんでもないことを口に出す。
「…で、今の忍者ん中から1人に新連載の登場権をあげるんや。」
「殺し合いって…今の話を聞く限り、最後の一人になるまでですか?」
忍者会長のテンテンが尋ねる。
「最後の一人になるまで?そら、そうよ。」
次に、大蛇丸が手を挙げる。
「なぜ殺し合いをする必要があるのですか?」
その言葉にサクラはどもりだす。
「殺し合いの理由?そんなもん、オマエ…」
「理由は先にサクラが言ったとおりだ。また、今回の『ゲーム』もジャンプとマガジン
との間で取り交わされた契約によるものだ。そして日本の国として、今回の『ゲーム』について
一切犯罪は問わないと明言している。
理由は以上だ。
まだわからない人間がいたらこの場で『ゲームオーバー』にするぞ。」
誰も何も言わなくなった。
…今逆らえば自分の命が危ない。
全員が同じことを感じていた。
イルカが最後にこう付け加えた。
「単純なゲームだ。最後まで生き残った者が合併後の新連載の実質的な主人公になれる。
それ以外の敗者には死あるのみだ。常に勝つか負けるかの世界に生きて来た諸君は分かるだろう。
もう後はない。私も何もすることは出来ない。
…生き残れ。」
イルカが退場する。
サクラも退場…
できなかった。
サクラが座っていた場所の床が突如落とし穴となったのだ。
「おぁっ!?」
一瞬にしてサクラの姿が見えなくなる。
悲鳴が聞こえたが、徐々に聞こえなくなり…
床は元通りに閉まっていった。
「それでは、もう一度これからのルールについて説明いたします。」
カカシとサソリを案内した女性スタッフが説明をはじめた。
「ぶぼぉっばぁぁっ」
DIOが(下半身をびっしょりと塗らして)目を覚ました。
「夢か・・・」
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
越前リョーマは走っていた。
つい数十分前までとは違い、今は自分の足で走っていた。
ウェイバーを盗まれてから愛用していた自転車は今は手元にはない。
さすがにあのままあの場で修理を続ける気にはなれなかったので置いてきてしまったのだ。
呼吸が乱れる。
汗が額を流れる。
それでも一心不乱にリョーマは足を動かし続けていた。
――――――――『ラケットは、人を傷つける道具じゃない!』
そう言っていたあの無表情な部長はどう思うだろう。
――――――――『リョーマくん、がんばってね』
そう言っていた長い三つ編みの同級生はどう思うだろう。
自分がラケットで人を殴って殺したと知ったら、どう思うだろう。
「……ハッ……ハッ……」
上昇する体温とは逆に、少しずつ頭が冷えてくる。
ゆっくりと呼吸を整えながら走る速度を緩める。
「まだまだだね……俺も……」
そう呟き、リョーマは走っている間中も握りしめたままだったラケットを見やる。
ラケットはどうにか原型は留めているもののフレーム部分には亀裂が入っており、すでに使い
物にはならなくなっていた。
(……ごめん……竜崎……)
このラケットの持ち主でもある、長い三つ編みの少女の姿が脳裏をよぎる。
彼女は死んだ。この腐ったゲームのせいで。殺された。
恐らくはあのサービスエリアで自分達を襲って来たあのおっさんに。
それでももし……こんな事考えるガラじゃないけど、奇跡とか起きて竜崎に再会出来た時のため
に、と持ち歩いていた彼女のラケットを壊してしまった。
よりによって、人を殺したせいで。
「……防衛、だし。仕方ないじゃん……」
そうは言ってみても罪悪感と人を殺した事への後悔は少しも減らない。
それは必ずしも「防衛」とは言い切れないと自分でもわかっているからだ。
あの子が何をしてああなって、何を考えて自分の前に現れたのかは今となってはわからない。
だけどあの子のあの怪我の状態から考えると、自分を襲おうとした可能性はかなり低いだろう。
それはつまり、自分は助けを求めてきた子供――――あの子は明らかに自分と同じ年くらいか
それよりも下だった――――を殺したのだ。
不可抗力だったとは言え、これはもうどうしようもない事実。
緩やかながらも動かしていた足を止め、リョーマはきつく唇を噛みしめた。
――――――――――いまだ生を謳歌しているという幸運に恵まれた者たちよ――――…………
突然頭の中に響く声にリョーマは顔を上げる。
…………“放送”だ。
淡々と……いや、むしろ楽しげに読み上げられていく脱落者の名。
『沖田総悟』、『一輝』、と聞いたことのある名が読み上げられるのと同じように呼ばれた『跡部
景吾』の名に、リョーマは小さく息をのんだ。
この異常な世界において元から知っている数少ない知人。
あまり他人に興味を持たないリョーマにすら強烈な印象を残している、あのサル山の大将が……死
んだ?
「……まさか」
あまりにも信じられなくてつい口元が笑ってしまう。
正直なところ、竜崎が死んだことよりも乾先輩が死んだと聞かされるよりも信じがたい。
いや、乾先輩が死ぬところも十分想像できないけどさ。
ともかく、それくらいあの偉そうな他校の部長は生命力に溢れているように見えたのに。
動揺する自分の心を落ち着かせるために、一つ深呼吸をして帽子をかぶり直す。
(乾先輩はまだ生きてる。新八さん、だよね?あのメガネの人もまだ生きてる)
まだ全員が全員死んだ訳じゃない。
何の慰めにもならない事実で無理矢理冷静さを呼び戻し、リョーマはとりあえず現状を把握すること
にする。
「……禁止エリアは新潟と高知って……どこ?てゆーかここどこ?」
今年の4月に日本に来るまでほとんどアメリカで暮らしていたのだ。
日本の地理はまったくと言っていいほどわからない。
近くの街灯の下で地図を広げ、とりあえず禁止エリアの場所を確認する。
次いで周囲を見回し標識を発見したリョーマは、現在地が目的地とは違ってしまっていることを知り
眉をひそめた。
標識に記されていた地名は『和歌山』。
再度地図を広げ確認すると、どうやら自分は奈良県の北部を突っ切りここまで一直線に全力疾走して
来てしまったらしい。
あの時は……あまり認めたくないけど頭が真っ白って感じだったし。
ただひたすら――――あの場から離れたかった。一時でも早く。
だから方向を確認する余裕なんてなかったし、当然と言えば当然なのかもしれないけど。
「……とりあえず、方向は合ってたって事で」
やれやれ、と肩をすくめ改めて自分の余裕のなさに苦笑いする。
流れ落ちてきた汗を乱暴に袖口で拭い、リョーマはひとまず近くの茂みの影に座り込んだ。
新八を早く探しに行かなくてはいけない。
だけど――――非道く、今までにないくらい疲れた気がする。
ってゆーか……ほんとに疲れた。
これくらいの持久走、いつもの“負けたら乾汁持久走”とかに比べれば全然楽なはずなのに。
やっぱりこんな自分でもこの状況に緊張してるのだろうか。
「まだまだだね……」
何となくこんな状況でさえ動揺しなさそうな化け物じみた先輩を思い出し、自嘲する。
こんなことじゃ勝てやしない。部長にも、親父にも。
そんな事を思い再度自嘲する。
ペットボトルの水を喉に流し、支給品の中に入っていたジャムパンを口に入れる。
簡素な食事を終え一息つくと、真っ先に思い出されるのはあの子の死んでいく表情。
「……ごめんって言ってもどうしようもないよね……」
罪悪感はあるし反省も後悔もしている。
謝りたいとも思う。
だけど……誰に?あの子の知り合いに?あの子の名前すら知らないのに?
「ちょっと待ってよ」
もしかして、と思いついてしまった事実に心臓がドキリとする。
俺は、あの子の名前を知ってるかもしれない。
琵琶湖で出会った星矢と麗子。
彼らから聞いたアイゼンの話。
そこに出てきた登場人物の中に、1人、子供がいなかった?
「もしかして……あの子がキルア……?」
聞いた話と見た人物の人相がダブる。
もしも、もしもそうなのだとしたら。俺は。
「マジで……?」
いい加減暗くなった空を見上げ大きなため息をつく。
もしそうなのだとしたら、自分は脱出を考えていた人を殺したばかりか、あの二人の知り合
いを殺したことになる。
きっとあの煩い星矢は自分を責めるだろう。殴られるかもしれない。
麗子もきっとさっきみたいには接してくれないだろう。
「……マジかよ……」
何の運命のいたずから、よりによって数少ない知り合いの知り合いを殺してしまうとは。
めったに落ち込んだりすることのないリョーマにとってもこの事実はかなりの衝撃である。
今だったら、自分を助けるためにあのおっさんを殺した新八さんの気持ちがわかる。
不可抗力だけど……どうしようもない罪悪感。
――――どうすればいいわけ?俺はこれから。
あの子を殺したことを麗子さん達に報告して責められて謝って、それでも泣いて許しを請え
ばいいわけ?
それとも俺も殺したお詫びに死ねばいいわけ?
そうしたら許されるの?
てゆーか、人殺しって許されることなわけ?
許されないなら俺はどうすればいいわけ?
「…………めんどくさ」
思わず口から出たのはそんな言葉だった。
かなり不謹慎な発言なのだろうが紛れもない本心。
謝るのとかがめんどくさいんじゃない。
今、この状況で先のことを考えるのがめんどくさくなってしまったのだ。
だって――――――――俺がここでお詫びに死んでもあの子が生き返る訳じゃない。
だから今、俺のやるべき事はそんな事じゃない。
「……生き残れたら、謝るよ。ちゃんと」
幸か不幸か生まれ付きか、罪の意識に我を忘れて取り乱すことなどできやしない。
冷静に自分のしたことを受け止めて、冷静に自分がすべきことをやるだけだ。
今、自分のすべき事は新八を探すこと。
アイゼンの計画を阻止すること。
そして――――――――。
「俺はこんな所で死ぬ気はないよ」
生き残ること。
自分の犯した罪を償うためにも。
帰りを待っている人たちのためにも。
デイバッグに壊れかけたラケットをつっこみ、リョーマは立ち上がった。
休みたい……できれば一眠りしたいところだけど時間はなさそうだ。
「……そうだ」
茂みから出たリョーマは、ふと思いついて足を止めた。
『アイゼンにだまされるな』
支給されたメモにそう書き、街灯にてぬぐいで縛り付ける。
誰にも発見されないかもしれない。
だけど、もし、新八に話を聞いて信じてしまった人が見つけて少しでも疑問を持ってくれれば
…………。
時計を見ると午後6時を少し過ぎている。
思ったより時間が経ってしまっているが……新八はどこにいるのだろう。
先程の放送でまた新八の知り合いの名が呼ばれていたが……大丈夫だろうか。
知り合いが全員死んで、更には自分も人を殺してしまったあの人の心は大丈夫だろうか。
「…………どうしようもないか」
今、ここでこうして新八を心配していてもどうしようもない。
とにかく今は行動あるのみ、だ。
あの人はもう琵琶湖に着いてしまっただろうか。
少しの時間だけ悩み、リョーマは進路を東に取ることにする。
新八の妙な悪運を信じて琵琶湖に戻ろうと決めたのだ。
悲しみも怒りも罪悪感も全て胸の内に収め――――それでもなお折れない心を支えにリョーマ
はまた走り出す。
「……テニスしたい……」
今、最も叶えて欲しい願いを呟きながら。
【和歌山県(高野山付近)/1日目・夜】
【越前リョーマ@テニスの王子様】
【状態】中度の疲労
【装備】亀裂の入ったテニスラケット、線路で拾った石×4
【道具】荷物一式(1日分の水、食料を消費)
サービスエリアで失敬した小物(マキ○ン、古いロープ
爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
【思考】1:琵琶湖に戻り新八を待つ。アイゼンの計画を阻止。
2:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
3:乾との合流。
4:生き残って罪を償う
【備考】両さんの自転車@こち亀(チェーンが外れている)はキルアの死体の側に放置されています。
【和歌山県(高野山付近)/1日目・夜】
【越前リョーマ@テニスの王子様】
【状態】中度の疲労
【装備】線路で拾った石×4
【道具】荷物一式(1日分の水、食料を消費)
サービスエリアで失敬した小物(マキ○ン、古いロープ爪きり、ペンケース、ペンライト、変なTシャツ )
テニスラケット@テニスの王子様(亀裂が入っている)
【思考】1:琵琶湖に戻り新八を待つ。アイゼンの計画を阻止。
2:情報を集めながらとりあえず地元である東京へ向かう。
3:乾との合流。
4:生き残って罪を償う
【備考】1:両さんの自転車@こち亀(チェーンが外れている)はキルアの死体の側に放置されています。
2:キルアの荷物(荷物一式(1/8の食料を消費)、爆砕符×2@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、
魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×7 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1、中期型ベンズナイフ@
HUNTER×HUNTER、クライスト@BLACK CAT、焦げた首輪)には気付きませんでした。
これらはキルアの死体の側に放置されています。
ガサッ――木々の隙間を縫って影が飛ぶ。
枝から枝。一つの枝が揺れたかと思えば、影は既に次の枝に移っている。
制服に身を包んだ少女。一見、普通の女子高生。
けれど、彼女は人間には在らず。人間を超越した存在――血を吸う悪鬼。吸血鬼なのだ。
真中淳平の死。変わる事のない現実。暗闇の中を往く少女の瞳は、何も見てはいなかった。
喉から漏れるのは人の物とは思えぬ声。獣の咆哮。人獣(ケモノ)の彷徨。
---------------------------------------------------------------------------------
名古屋市街。
煌びやかな灯に照らされている筈の都市は、今はただ閑散とした暗闇に包まれている。
無人の森に取り残されるのは寂しいだろう。大昔の人間はそうだった。故に火を生み出した。
人間の文明は炎の歴史だ。或いは、光の歴史だろうか。
闇を光で薙ぎ払い、追い払っていくことで人間は今の隆盛を勝ち取ることが出来た。
――人が暗闇を怖がるのは、当然だ。西野つかさは思った。
獣のも、寒さも、飢えも、恐ろしいものを全部、暗闇の中に押し退けてきたのだから。
怖いものを放り込んだ「ゴミ箱」の中をわざわざ好き好んで覗き込もうという人間は居ないだろう。
炎の暖かさ。光のまばゆさ。やがて育まれた、人の温かさ。闇を取り払った人間が、求めたもの全て。
――この世界には、失われてるのかな。
立ち並ぶビルは、電気の失われたガランドウのオブジェ。
自分達の他には、人の息遣いも、獣の息遣いも、何も聞こえることのない静寂。
人の名残を残す都会は、森での獣とはまた違った、生理的な恐怖を感じさせ――
「……動くな」
突然、後ろから羽交い絞めにされる。足音さえも、感じなかった。
耳元に注がれる荒く乱れた息遣い。襲撃者の腕は、首元からやがて胸元へと降り……
「……もうっ!冗談は止めて下さいよ、マァムさん。
リサリサさんに言いつけますよ!」
「あはは。ばれちゃった?」
怒鳴りたい衝動を抑えながら振り向いた先に居たのは、長い髪をうなじで結った一人の女性。
中華服と言うか、チャイナ服と言うか、酷く動き易そうな服を身に着けている。
女性――マァムは小さく舌を出しながら、西野の前にそそっと移動した。
「ぼぅっとしていたように見えたから。まだ元気ないのかなあ、って思っちゃった。
……真中君のこと」
「…………何とも思わないって言ったら、嘘になりますけれど」
静かな問い掛けに、長い息を吐きながら西野は応じる。
先程の放送で呼ばれた死亡者には、真中淳平の名が含まれていた。
真実、真中の死を知った瞬間の西野の取り乱し方は尋常ではなかった。
もう二度と、彼女の笑顔は見ることが出来ないと感じるぐらいに――。
リサリサもマァムも、誰かの死を覚悟している人間だ。
倒すべき強大な敵が存在し、常に死と隣りあわせで生きている。
けれど、西野は違う。一日前までは、極普通の女子高生。現実の死など、テレビの中の話だけだと思っていた。
真中と西野の関係がどのようなものであったかを、マァムは知らない。
だが、唯の友達と呼ぶには親密過ぎる関係――自分とポップのように――であるような予感はあった。
女の直感と言うヤツである。そして今回に限り、その直感は正解だったようだ。
依然、晴れない表情の西野を気遣いながら、マァムは言葉を選ぶ。直ぐには良い言葉は、浮かんでこない。
意外にも、先に口を開いたのは西野だった。
「ははっ、気にしないでくださいね。
確かに、真中君のこと、北大路さんのことは……その……っ……哀しいことだけれど。
私…………泣いてばっかりじゃあ、駄目だって思いましたから。
もっともっと、強くならないと…………駄目……、だからっ」
途切れ途切れに紡がれる気丈な言葉。後半は、掠れ消えそうになりながらも少女は涙を見せなかった。
俯いたままで、頬を濡らすものを拭い去る。マァムに見せた顔は、可哀想なまでの、笑顔だった。
「つかさ……」
「私は、大丈夫。マァムさんも、リサリサさんも頑張ってくれてるんです。
私だけ、泣いてるわけにもいかないじゃないですか」
西野は知っている。マァムの顔に残った火傷のことを。
回復魔法(ベホイミ)で身体の火傷は、ある程度治療出来た。けれど、完全ではなかった。
今後の戦いに支障がない程度の回復――、マァム自身の魔法力の温存。
女としての命である顔より、今後の皆の負傷をと考えてくれたことを、西野は知っている。
リサリサも自分らのために、今も危険な巡回を引き受けてくれている。
闘ってるのは、西野だけではなかった。寧ろ護られてばかりいるのは、西野だけだった。だから――
「……無理しなくていいのに、ね?
大丈夫、貴方の事は私達が、きっと守るから……」
少女の嗚咽を隠すように、マァムは西野を両腕で包み込んだ。
母のように。愛し子を抱きしめるように。
―――其の時。
「……誰!!?」
抱きしめた西野を背後に回し、マァムが声を上げる。
鬼気迫る眼差しは、ビルの谷間、都会の暗がりに容赦なく注がれ、闇に潜む何者かの姿を射抜かんとする。
身が震える程の邪悪な気配だ。避けられぬ戦闘の予感に、握り締めた拳に力が篭る。
――だが。
「…………西野、さん……?」
「…………東城……、綾さん? 綾さんなの!?」
暗闇からの襲撃者が漏らした言葉は。
守るべき少女が発した言葉は。
離れ離れにされた友人同士が出合った時の、驚きと喜びの混じりあう響き。
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「彼女が……綾さん、なの?」
張り詰めた緊張はそのままに、マァムは背後の少女に問い掛ける。
なるほど、闇に浮かぶ綾と言う少女は一見、西野と同じ年頃の普通の女の子に見える。
長く伸ばした黒髪。華奢でいてふくよかな肢体。
何よりも見たところ武器も持たない徒手空拳だ。恐れることは何もないように思える。
――けれど。
「西野さん、生きていてくれて、私、嬉しい。
真中君も北大路さんも、皆……ねえ、西野さん、私、不安で……」
「綾さん……」
「……行っちゃ駄目、つかさ!」
友人の元へ向かい掛ける西野の腕を掴み、強引に引き止める。
「どうして!見て、綾さん……、怪我してる!
きっと悪いやつにやられたのよ。マァムさんの魔法で治してあげて……くれないの」
西野の言うように、東城の片腕は削り取られたように失われていた。
けれど、東城の片腕を見てマァムが思ったのは西野とは全く別のことだ。
「私のベホイミでは、千切れた腕までは治せない。
それに、……不自然なの。右腕が切れてるって言うのに、あの子、」
腕を掴んだ少女を、無理にでも後ろに回せば、腰を落とし戦闘の構えを取る――流派・武神流。
「……止血もせずに、どうして生きているのかしら。血まみれの服を着たままで!」
言葉と同時に勢いよく武道家は地面を蹴る。西野が何か喚いているけれど、気にする暇はない。
――アレは間違いなく、人ではないものだ。邪悪。異質。元僧侶であったマァムには、疑う理由がある。
「であああああああああっ!!!」
一呼吸で距離を詰め、次の一呼吸で拳を叩き込む。
万が一、自分の勘違いだった場合を考慮して多少の手加減はしていた。
それでも本当に彼女が普通の人間の女の子だったら、気を失わずには居られぬ一撃――!
「……危ない!」
――本当に、小さな虫でも払うかのような静かな仕草。
全力ではないとは言え、岩をも砕くマァムの拳を受け止めるのに綾が行った動作は、実に静かなものだ。
否、受け止めただけではない。少女が枝のような腕をそっと振り払っただけで、攻撃を仕掛けたマァムの方が吹き飛ばされている!
西野から聞いたままの東城綾ならば、マァムの拳を受け止める事など、ましてやそのまま吹き飛ばすなど、不可能な筈。
疑惑は確信に変わった。
「やっぱり……貴方、人間を!!」
「やめてしまったようね。彼女は」
ビルに衝突する寸前、マァムの身体は柔らかな何者かによって受け止められる。
闇夜に映える黒髪の女性。切れ長の眼差しは、何時如何なるときも冷静さを失うこともなく――
「「リサリサさん!」」
重なる西野とマァムの声に、長身の女性――リサリサは小さく頷いた。
マァムを抱えたまま、トッ、重力を感じさせぬ軽やかさで地面に着地する。
「"DIO"の他にも"仮面"を被った人間が、このゲームに参加しているとは思わなかったわ」
シューッ。両側に開いたリサリサの拳と拳の間に、極細の光が伸びる。支給された三味線糸。
其れも唯の三味線糸ではない。最高級品の絹製。生体組織である絹がリサリサの波紋を良く通すことは、昼の間に確かめてある。
くるり、リサリサが自身の身を潜らせるように躍らせれば、糸に走る生命のエネルギーは仄かな光を放ち、夜の闇を晴らすようにさえ思われた。
ビンッ。剣を抜くように三味線糸を張り巡らせ、射抜くような視線は、一直線に少女を睨み据える。
マァムの拳を受け止めた反応、吹き飛ばしたパワー。
リサリサの知る限りにおいて、唯の人間だった筈の東城綾を、斯様な化け物に変化させる方法は"一つしか"なかった。
「"吸血鬼"を生かしたままにしておくことは出来ないわ。残念ね、貴方はもう、終わり」
養豚場の豚を見るような冷たい眼差し。殺意を隠すつもりもないリサリサの瞳に、東城はおろか、他の二人さえ息を呑む。
「違うの……、私は、何も……、い、今のだって少し、腕を払おうとしたら、急に……」
「言い訳は必要ないの。貴方に必要なのは、安らかで、静かな眠りだけ。さようなら」
シュンッ!
弁解を試みる東城に、リサリサは一片の慈悲も見せなかった。
風を裂いて唸る三味線糸は、狙いを違えず吸血姫の右腕に辿り着く。左腕を狙った筈なのに。咄嗟に庇われた。
けれど、戸惑いも躊躇もなかった。瞬間、三味線糸を光の波が駆け抜ける!
「あ、あああああああああああああああああああああ!!!!」
――生命のエネルギー、波紋!
人間の呼吸が生み出した太陽のエネルギー。人類を超越した吸血鬼に唯一、対抗出来る技術。
迸る輝きに抵抗するように東城は暴れ、叫び声を上げ、けれど逃れられなくて、身体を焦がしていく。
少女が踊る激痛のダンスは、見るに絶えぬ光景だった。先程拳を交わしたばかりのマァムでさえも、思わず目を逸らしかける。
ならば、友人であった西野つかさは――
「止めて……、もう止めて!東城さんを、虐めないで!」
ドンッ。
東城の惨状を直視し続けることも出来ずに、抱きつくようにリサリサへと身体をぶつける。
西野には理解出来なかった。綾が人間を超越したことも。吸血鬼と言う存在も。リサリサが吸血鬼を根絶する使命を帯びていることも。
唯、東城の、漸く出会えた、唯一残された旧知の友人の苦しみ悶える姿に耐えられなくて――
「……つかさ! ……くッ」
波紋の達人であるリサリサは、本来、この程度のことで集中を乱したりはしない。
けれど――練り上げた強力な波紋が、万が一にも波紋の取り扱いを知らぬつかさに流れてしまったら。
リサリサが「人間」であるからこそ生じた「優しさ」は、吸血鬼である綾にとって最後のチャンスだった。
ざバンッ!
響き渡ったのは、三味線糸の巻きついた右腕を自ら切り落とした音。
何故そんなことをしてしまったのかは判らなかったけれど、東城はその方法こそがベストであると感じた。
「待って、東城さん……!」
「行けない、止まりなさい、つかさ!」
黒焦げの腕を残し、暗闇へと消えていく東城綾。咄嗟に、西野つかさは走り出していた。
傷ついた友人を追うために。マァムの制止の声も振り切って。我武者羅に走り出した西野はそのまま直ぐに、闇の中に消えてしまう。
「くッ……追わなきゃ!」
東城綾の皮を纏った怪物は、未だ生きている。
幾ら旧友とは言え、あそこまで邪悪なオーラを纏った者が、無防備な西野つかさに手を出さないとは考えられなかった。
マァムの脳裏に最悪の光景が浮かび上がる。東城綾の手刀によって腹部を貫かれた西野つかさ――即座に、悪いイメージを振り払う。
追いかけなきゃ。追いかけなきゃ。――つかさは、私が護ると決めたんだもの!
「待ちなさい」
つかさの身を案じ、走り出しかけたマァムを、引き止める腕がある。リサリサ、何て、冷たい掌――。
「リサリサさん……、でもっっ! 追わせて下さい!」
事態は一刻を争っている。自分達が少しでも遅れれば、西野の命はないだろう。
焦燥の余り唾を飛ばしながら、其れでも自分の腕を握り締めて離さないリサリサを睨みつける。
「つかさを追わなき……ッ……あっ!!!」
ゴ ウ ウウウウウウ!!!!
非難に声を荒げ、腕を振り切って走り出そうとしたマァムの目の前を、凄まじい炎が埋め尽くす。
忘れる筈のない、忘れる事の出来る筈のない炎の光景――、昼間の、流川楓を、マァム自身を焼き払った、炎!
「マァム……勘違いしないで。
『追わせない』んじゃなくて『追えない』の。……襲撃者は『一人』じゃなかった」
冷静を装った言葉にも混じる、緊張の色。
指摘されて初めて、自分が冷静さを失っていた事をマァムは悟る。"吸血鬼"に意識を囚われ過ぎていたことを。
リサリサの視線の先――、月夜に浮かび上がる黒のメタルボディ。マァムもリサリサも、彼の姿には見覚えがあった。
「貴方……昼間の……!」
コーホー。コーホー。
黒いヘルメットに、悪魔の笑みを浮かべたマスク。屈強な肉体。――流川楓を殺害した殺人鬼。
戦闘機械(ファイティング・コンピュータ)ウォーズマン。
半壊したスピーカーはまともに音を拾わず、カメラに移る生き物の姿は、全て「獲物」として判断される。
最早彼は、人を愛し、人を護ろうとした正義超人ウォーズマンではなかった。
人類から生まれ、人類を超越し、何れは人類を支配する真の悪魔に、「氷の精神」を植え込まれた殺人機械。
「……説得は不可能ね。援護を頼むわ。ヤツを倒さない限り、つかさ達を追う事は出来ない!」
第二の刺客の状態を分析し、リサリサは即座に排除の決断を下す。既に手繰り寄せられた三味線糸は、今も彼女の頼るべき武器。
けれど、マァムは静かに首を横に振った。
「……なら、アイツは私が相手をします。リサリサさんは、つかさ達を」
「マァム……、けれど」
「いいえ。つかさの友達……の事は、リサリサさんの方が詳しいんでしょう。だから……お願いします。
それに私には、返さなくちゃいけない借りもありますから……!」
昼間、目前の相手にに刻まれた顔の火傷が、ちくりと、疼く。
マァムの瞳に宿った固い覚悟。
「そう。けれど、約束して、マァム。
きっとまたこの場所で、生きて再会するって」
無言で頷きながら、マァムは静かに手袋を外した。それを見届ければ、リサリサは風のように闇の中に、走る。
戦闘を長引かせるわけにはいかない。早く西野を追わねば、最悪――、愛しい者の死体が一つ、増えることになる。
「手加減は出来ないからね……ッ、覚悟なさい!!!」
ダッ!
そうして戦闘の火蓋は、切って落とされたのだ。
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「綾さん……、綾さん!」
友人の名を叫びながら、西野つかさは走り続ける。
『東城綾は人間をやめてしまった』リサリサは確かにそう言った。
短い間の付き合いだけれど、西野には確信がある。彼女は嘘をつく人間ではないこと。
実際に、東城綾が腕を振るえば、人間一人が宙を舞った。普通の女子高生ならば在り得ないことだ。
「……違う、何か、違うの!」
理性が認めざる得ない事実を、感情が否定する。首を振り回し、腕を振り回し、西野は駆け続ける。
真中も死んだ。北大路も死んだ。流川も、他の沢山の人達も。
リサリサも、マァムも、自分に良くしてくれる。とても、優しい人達だ。
けれど、自分とは――違う。
殺人鬼とも闘えるすべを持ったひと。悪夢のゲームに放り込まれても、希望を失わずにいられるひと。
――私だけが弱い。弱くて弱くて弱くて弱くて、情けなくなるぐらいに弱くて、弱い。
「はあ、はあ、綾さん……、綾さん!!!」
――私と同じなのは、多分、彼女だけなの。
同じ女子高生。同じ学校に通ってた。何より、同じ――真中淳平の死を、分け合う事の出来る、最後のひと。
東城綾がリサリサたちの言う"化け物"でも構わなかった。唯、話したかった。彼女と、自分と同じ、彼女と!
「……綾さん!」
西野つかさは、けれど知らなかった。
彼女の友人東城綾は、変わり果ててしまったことを。
マァムに、リサリサに、そして西野に見せた健気な表情の全てが、偽りであったことを――。
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ゴウ ゴオオオオ!
立ち込める熱気の渦。
襲撃者の武器――燃焼砲から放たれる火炎の渦に巻き込まれないように、マァムは走る。
「てあああああああ!」
裂帛の気合を、張り上げた声と共に放ち、右に、左に、ジグザグに襲撃者へと迫る!
縦横無尽にアスファルトの上を駆け巡るマァムを目掛け、炎は辺り一面を焼き尽くしていく。
罪を焼き尽くすかのような煉獄の業火、傍らに佇むは悪魔の面、其れは真の地獄絵図。
ビルも標識も、全てが焔に飲み込まれていく。
――唯一人、羽のように舞う、武道家を除いては。
走る走る、駆ける駆ける、迫り来る炎の追撃を振り切っては、遂には壁に辿り着き、
「たりゃああっ!」
「……ッ!」
だガッ、壁を大地に見立て、反動を利用した鋭い蹴りの一撃が、流星の如く降る。
正確無比に放たれた武道家の爪先が狙ったのは、襲撃者の腕、武器を握る腕。
「…………ッァア!!」
突然の衝撃に緩む握り手。クルクルと道路の上を回転しながら遠ざかる燃焼砲。
格闘に優れたマァムから見れば、値千金の一撃。けれど一撃では終わらない!
「はぁあああああっ!」
拳、拳、拳。立て続けにウォーズマンのボディに拳を叩き込み、
「りゃぁっ!」
一瞬身を低く屈めれば、襲撃者の視界からマァムの姿が一瞬失われ、
次の瞬間、瞳のカメラが捕らえたのは、闇夜に映える長く白い脚――襲撃者のこめかみに回し蹴りが炸裂する!
――――筈だった。
「な……ッ……きゃッ!」
グ ガアアアアア ン!!
速度、タイミング、全てが完璧だった筈の必殺の一撃を。
正確に、堅固に。キックの勢いを殺された挙句、蹴りつけた脚を握られ、投げ飛ばされていた。
反射的に受身を取り、壁に叩きつけられたダメージを最小限に抑えはしたが、それもマァムの卓越した格闘センスがあってこそ。
並の人間ならば、反応する間も与えられずに頭を割られても可笑しくはない……!
(この男……、ただの殺人鬼じゃない!)
身を起こしながら、炎の中に佇む無表情な仮面の男を改めて見据えれば、確信出来る。
無骨なヘルメットや、悪魔の笑みを浮かべた仮面に思わず目を奪われてしまったが、
真に警戒すべきだったのは、その鍛え上げられた鋼の肉体、大きな拳。紛れもない『格闘家』の身体。
「私の拳も、蹴も……、咄嗟に急所を逸らしたってわけね。
でもそれでこそ……倒し甲斐があるってものよ!」
「コーホー… コーホー……」
女は立ち上がり、派手に啖呵を切る。襲撃者の身のこなし、容易に倒させてくれる相手ではないことは、理解した。
耳触りな呼吸音をマスクの下から響かせる襲撃者の表情は、全く窺うことさえ出来ない。
だが、厄介な武器――火炎砲を手放させた今、勝負は五分と五分――
「コーホー…… コーホー…… ィィィィィィィィ!!!」
「……!!!」
女には構えを取る間も与えられぬ。金切り声を上げて漆黒の襲撃者が跳躍する。
定石ならば、武器を失った相手は距離を詰めてくる筈――、然し、ウォーズマンが飛んだのは、逆側!
―――――ダンッ
後方のビルの壁が蹴られる音、刹那、
――――ギュルルルルルルルルルルルルルルルッッッ!
削岩機の音だ、と其れを知ってる者は思っただろう。
残虐なる貫通力!慈悲なき破壊力!圧倒的な粉砕力!必殺スクリュードライバー!
空気さえも巻き込みながら突き進む悪夢の螺旋が、実は唯一名の超人によって生み出された『技』であることに、
流石のマァムも即座には思い至ることは出来なかった。
今、あるのは恐怖――、『あれ』を『受けること』は避けなければならない!
ド ぐしゃああアアアッッッッ!
「あ ああ……あああッッ!!」
命からがら横に転がったマァムの瞳が見たのは、立っていた場所の壁が粉々に粉砕される光景。
そして、コンクリートの瓦礫の山に佇む、悪魔の仮面を持つ男――
「う……らぁっ!」
恐怖と焦燥を振り払うように、男の脚に狙いをつけて蹴りを放つ。
立ちっ放しの襲撃者は、武道家に脚を払われればバランスを崩し、地面に倒れ――
が ごっ
全体重の乗った肘が屈んだままのマァムのうなじに落とされる。強引に絞り出される呼気。
意識ごと刈り取られそうな一撃の中――、武道家としての本能が、中心線への追撃を防御する為に腕を交差させる。
けれど、慈悲は、微塵も与えられない。凍てつく氷の、優しさを忘れた、機械の精神。
がッ
がッ
がスッ
グ ガアアアアア ン!!
拳を、肘を、膝を。
容赦なく武道家の身体に打ち込んだ後、顔面を掴み、再度壁に向かって投げつける。
衝突の衝撃で皹の走るコンクリートブロック。寄りかかったまま伸びきった手足、項垂れたマァムの姿。
燃え広がる炎が。ボロボロの街並みが。戦闘の終焉を、告げていた。
――――けれど。
「……まだ、終わりじゃあ、ない、わ」
襤褸雑巾のごとく痛めつけれた身体を引きずりながらも、マァムは立ち上がる。
女の身体から飛散する柔らかく暖かな、ベホイミの輝きは、煌々と立ち上る炎の眩さに掻き消された。
恐らくは最後のベホイミ。悪魔を粉砕する一撃分の力を、与えてくれればそれでいいと、マァムは思った。
――――残る全ての魔法力を、次の一撃に、込める。
死体同然であった武道家が立ち上がってくるのを予測していたかのように、襲撃者も立ち向かう。
――――拳を固めたファイティング・ポーズ。
或いは、狂気に犯されたウォーズマンがに残された、戦士の誇りだったのかも知れぬ。
対するは流派・武神流。二人の格闘家は、今、炎の舞台に、巡り合わされたのだった。
視線と視線。拳と拳。最早、言葉は必要とされぬ世界。精神だけが、唯、研ぎ澄まされていく。
「あああアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「はああああああああああああああああ!!!」
呼応し高めあう二つの気と気。
仮面の悪魔は、再度跳躍し、二倍の力で壁を蹴る。
煉獄を舞う蝶は、来るべき一瞬を待ち構え、両の拳に必殺の余力を蓄える。
互いに一撃必殺の拳を持つ同士。決着は瞬く程の間。
――――ギュルルルルルルルルルルルルルルルッッッ!
暗闇を裂きながら突き進む閃光。回転、回転、回転、回転、回転、回転!
近寄るごとに回転を増せば、彼こそが必殺の螺旋、今、ウォーズマンの身体は一つの光となった。
突き出した拳が幾度も旋回を繰り返しながら、絶対の殺意を秘めて、マァムの身体を打ち貫く!
――――だが、二人が交差するこの刹那こそが、武道家が待ち望んだ、逆転の瞬間。
「武神流奥義!
閃 華 裂 光 拳 !!!!」
マァムの頬を掠って走るウォーズマンの拳先。一筋の血液が、鮮やかに舞い散る。
身体を捻ると同時に放たれた武道家の拳は、生命の輝きを伴って、襲撃者の悪魔の仮面に叩き込まれる。
衝撃、衝撃、衝撃――ぴき ぴき ぴき と仮面に縦に走る亀裂。
武神流奥義・閃華裂光拳。
マァムの師ブロキーナが回復魔法の過剰回復を応用して開発したこの奥義の真髄は、破壊による破壊に在らず。
生命を内部から破壊し、自滅させる。僧侶戦士であったマァムのみ伝授を許された、最終奥義!
如何な超生物であろうと屠ってきたこの一撃を、受けて五体満足でいられる者は存在しない――
――――相手が生物ならば。
「な……、そん」
一度は完全に動きを止め、地に落ちたウォーズマンの身体が、腕が、マァムの身体に伸びる。
不意を撃たれたマァムは、ワケの分からぬままに、背後を取られ、気がつけば――"固め"られていた。
背中側に大きく引き絞られた腕。絡められた足によって封じられた脚。超高度な関節技(サブミッション)。
或いは天使のように。或いは羽をもがれる寸前の蝶のように。
捕獲した獲物が足掻けば足掻くほどに苦しみを与える、悪魔のフェイバリット・ホールド、
――――パロ・スペシャル。
「あ、ああ、あああああああああああああ!!!!」
引き絞られる腕に走る痛みは、マァムの喉を、其の意思とは別に掻き鳴らした。
響き渡る絶叫に、掻き消されるように小さな音。――割れた仮面が落ちる音。
生物相手には絶対の威力を誇る閃華裂光拳が、利かなかった理由。
ギリギリの勝利を拾う筈だったマァムが、死神の鎌から逃れることが出来なかった理由。
――――仮面の奥に覗く闇を、女は、見た。
悪魔が仮面の中に隠し続けた、機械の素顔を。
ご きゃり
―――――――――――――――最後にマァムが見たのは、醜い笑顔。
--------------------------------------------------------------------------
コーホー。コーホー。
割れた仮面を拾い上げ、燃焼砲を回収する。
悪魔の仮面に走る斜めの亀裂。武道家だった彼女が残した傷痕。
――――カラン。
「……ッ」
確りと握り締めた筈の燃焼砲が、手の中から零れ落ちる。
武道家の一撃一撃は、確実にウォーズマンから体力を奪っていた。
勝敗を分けたのは、紙一重の差。それほどに実力は拮抗していた。
――――生贄だったな。そう言えば。
目的は果たした。DIOと約束した場所に、帰らなければ。
空虚な気持ちを抱えたまま、ウォーズマンは静かに、炎の中を歩き出した。
ずり ずり ずり ずり
腕を失った女の身体を、ひきずりながら。
【愛知県の外れ/1日目・夜】
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化。右腕なし。波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた。
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式
[思考]:西野と一緒に死ぬ
※綾は血を吸うこと以外の吸血鬼の能力をまだ知りません。
【西野つかさ@いちご100%】
[状態]:ショック状態
:移動による疲労
[装備]天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[道具]荷物一式/(核鉄ナンバーは不明・流川の支給品)
[思考]
1:ショック状態
2:綾を探す
【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]三味線糸
[道具]荷物一式
[思考]
1:西野を探す
2:吸血鬼を根絶する
3:協力者との合流
※三人は近くに居ますが、それぞれ別の場所に居ます。
【愛知県名古屋/夜】
【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]精神不安定/体力消耗
[装備]燃焼砲(バーンバズーカ)@ワンピース
[道具]荷物一式(マァムのもの)、マァム
[思考]1、DIOのため、人間を捕獲したのでDIOの元へ。
2、DIOに対する恐怖/氷の精神
3、DIOに従う。
【マァム@ダイの大冒険】
[状態]:顔半分に残る火傷、MP使い果たした、両腕を根元から折られ、意識不明。
[装備]アバンのしるし@ダイの大冒険
[道具]なし
[思考]
1:気絶中
2:リサリサ、西野と合流
3:協力者との合流(ダイ・ポップを優先)
第三放送、その内容に静かに耳を傾ける男が一人。
「…………」
場所は大阪、たこ焼き屋の倉庫。傍らには安らかに寝息を立てる少女が一人。
「…………」
無言。
その放送の中に、呼ばれるであろうと予想していた名前が出てこなくても、彼は無言だった。
(死んだのはキルア君に……あの旅禍の少年か)
放送から数分経って、頭の中を整理しだす。
新たに死んだ者の中には、彼が知る名前もあった。だが、それによる悲しみを感じることはない。
もとより、誰が死のうと彼には関係ないことなのだから。
しかし、あまり有能――彼の考える意味では、役立つ能力を持つ者――な参加者が死なれては困る。
彼がまだこんなゲームに参加している意味がなくなってしまうからだ。
ルーラの使い手はまだ生き残っているだろうか?
キメラの翼やデスノートはまだ健在だろうか?
どれも確実に存在しているとは言い切れないが、ないと決め付けてしまえば、それこそこのゲームの魅力が薄れてしまう。
と、ここまでは今考えるべきことではない。
他の参加者の生死など、今の彼にとってはさして重要ではない。
機関車と残されたデイパックに関する情報も、今はどうでもいい。
今問題なのは、放送で告げられた名前の中に『藍染惣右介』の名前がなかったこと。
(なぜ……私の名前が呼ばれなかった?)
考察してみる。
なぜ、彼の名前が呼ばれなかったのか。
彼は生きているが、第三放送では彼の名前が呼ばれるはずだった。
『鏡花水月』の完全催眠を発動したはずなのだから。
放送が告げた現実に心を動揺させることなく、冷静に考えうる答えをまとめる。
<問>なぜ『藍染惣右介』の名前は呼ばれなかったのか?
《仮説1》『鏡花水月』の完全催眠が主催者に効かなかった。
《仮説2》主催者による監視はされておらず、『鏡花水月』の効果が及ばなかった。
《仮説3》『鏡花水月』の完全催眠は効いたが、放送の時には既に効果が切れていた。
《仮説1》について。
(これは最もありえない回答だ……東仙君のように盲目であるならともかく、あの部屋で見た主催者たちの眼は皆開いていた。
あの者たちにより監視が行われていたというのなら、確実に僕の『鏡花水月』を目にしたはず。
そうなれば完全催眠にかかるのは逃れられない。何者であろうと、決して)
《仮説2》について。
(この回答が正解だというのならそれはそれでいいのだが……この結論に至るには聊かデータ不足だ。
それにまだ盗聴の有無も確かめていない。この回答は保留だな)
《仮説3》について。
(最も厄介なのが、これか。この世界ではちょっとした鬼道を使うだけでも、多量の力を消費する。
『鏡花水月』発動にもかなりの力を使った。だが太公望に完全催眠が効いたのは確実だ。そこからわかるのは、
『鏡花水月』の完全催眠は参加者に対しては通常の効果を発揮しているということ)
彼が次に考えるのは、この世界にかせられた能力の制限について。
(この世界における制限が、力の消費量の増大の他にもあるというのなら……それは間違いなく能力の劣化だ。
例えば私の『鏡花水月』――これがもし、この世界の制限により、効力が劣化しているとすれば?)
・『鏡花水月』の効力低下におけるいくつかのパターン。
《A》能力発動における消費する力の増加。
《B》一定以上の力量を持つ参加者、もしくは主催者には完全催眠が効かない。
《C》本来なら半永久的に持続されるはずの完全催眠に、効果持続の時間制限がつけられている。
《D》効果範囲の縮小。
これらについて考えてみよう。
(《A》はほぼ間違いないとして、問題は《B》だ。仮に主催者が僕以上の力を持つ者として、その力関係により完全催眠が効かなくなっているように細工されていたとしたら?
本来の『鏡花水月』ならば、そんなものは関係なしに誰にでも効果は等しく発揮される。
まあ中には卯ノ花君みたいな例外もいるが……彼女とて死体検査のために『鏡花水月』に触れて、初めて違和感を感じた程度だ。
いくらこの世界に制限がかけられているとはいえ、僕の『鏡花水月』にそのような制限をかけることが可能だろうか?)
《B》の可能性、限りなく低し。
(《C》も考え難いが……《B》に比べればよっぽど可能性がある。
もし効果が一時的なものに縮小されているのだとしたら、太公望も既に僕の生存には気づいているだろう。
これについては余裕があれば検証してみることが可能だが……力が回復するまでは無理だな)
《C》の可能性、考えられなくもなし。
(《D》は……ある条件を考えれば、考えられなくもない。主催者がどんな形で監視を行っている――と仮定して――
かはわからないが、たとえカメラ越しであっても、完全催眠の効果は顕在だ。どこか遠くから監視していたとしても、
距離で完全催眠から逃れられるとは思えない。それに、もし制限をつけるなら《C》のほうがよっぽど効果的だ)
《D》の可能性、限りなく低し。ただし……
(もし主催者がカメラのようなもので監視をしていたとして、そのカメラが特殊なものだとしたら?
例えば、『映した映像から送られてくる完全催眠の効果を遮断するような能力』を持ったレンズが組まれたカメラなら、それも可能だろう。
そんなものが本当にあるかどうかわからないが……この世界の支給品の数々を考えれば、存在していてもおかしくはない。
どこへでも自由に移動できるキメラの翼……名前を書いただけで人を殺せるデスノート……『鏡花水月』の効果を無効化する代物など、一部の世界ではありふれているのかもしれないな)
・『藍染惣右介』の名前が呼ばれなかった理由として考えられる答えを、まとめてみよう。
《解1》『鏡花水月』の効力劣化により、強大な力を持つ主催者には効かなかった。
《解2》『鏡花水月』の効力劣化により、一度は効いた完全催眠が、放送の時には効果が切れていた。
《解3》自分の知らない監視方法、または監視道具で、完全催眠の効果を遮断した。
《解4》端から監視などされていなかった。
・確率を計算してみよう。
《解1》…………10パーセント
《解2》…………30パーセント
《解3》…………40パーセント
《解4》…………20パーセント
(見立てではこんなところか……《解4》が正解ならば一気に問題が片付くのだが、やはり主催者が監視しているという可能性は捨てきれないな)
・《解3》が一番可能性が高いと考えられることについて。
(彼女…弥君といったか。彼女の持つ『死神の眼』は、『対象の名前』と『対象の寿命』が一見しただけでわかる代物だ。
だが、この世界では『対象の名前』のみが見え、『対象の寿命』は見えなかったという。それはなぜだ?
この世界の制限によるものなのは間違いないとして、なぜ『対象の寿命』を見えなくする必要がある? 寿命はあくまで寿命であって、
このいつ死んでもおかしくない殺し合いの舞台では、まるで意味を成さないもの。そんなものを制限してなんの意味がある?)
制限するならむしろ名前の方……彼の考察は夜と共に深くなっていく。
(これもあくまで仮定だが……主催者は意図して能力制限をかけているわけではないのかもしれない。
単に能力制限がかかる舞台を作っただけで、そこでかせられる制限の内容までは深く決められないのだとしたら?
もしそうでないのだとしたら、自分たちに完全催眠の効力が及ぶことを考え、『鏡花水月』の効力を《解1》や《解2》の
ように制限したかもしれない。だが彼女の『死神の眼』のことを考えれば、どうしても満足に制限をかけられているとは思えない。)
そもそも能力に制限をかける理由とはなんなのか。
それには、自分たちに被害が及ぶことを抑える意味と、実力を限りなく均衡させ殺し合いをスムーズに進めるという意味が読み取れる。
(ならば、寿命判別の能力など制限にかけるに値しない能力だ。主催者が能力を思うように制限できていないことにも繋がる。僕の『鏡花水月』が主催者の望むように制限されている可能性も薄れる。
だったら、何か僕の知らないような別世界の技術で完全催眠を防いでいるという《解3》が一番答えとして妥当だ。もっとも、それだと『鏡花水月』で主催者に対処できなくなってしまうのだが)
本当は、たとえ別世界の技術であったとしても『鏡花水月』の完全催眠を防ぐなど考えにくい。
しかし『名前を書いただけで人を殺せるノート』のように、別世界には彼が考えもつかないような代物が存在すのもまた事実。
それを踏まえたうえで、慎重にはじき出したのが《解3》の答えだ。
だがそれでも、可能性としては40パーセント。《解2》や《解4》の答えも十分に考えられる。
確実な答えに至るには、まだデータが不足しているのだ。
そして、そのデータを入手するため、彼が思い浮かべるのは一人の少年。
(そう……例えばあの少年。ゲームの初めに主催者に飛び掛っていった様子を見ると、彼と主催者は敵対していると考えられる。
即ち、住む世界が同じということだ。彼のような存在なら、あるいは知っているかもしれない。《解3》を立証できるような方法や道具が、その世界に存在しているのかを)
また、先に述べたとおり《解2》については簡単に検証する方法がある。
(もし時間制限がついているのだとしたら……試しに誰かに完全催眠をかけ、効果がどれほどまで持続するか観察してみればいい。
簡単なところで、弥君でもいいな。彼女なら簡単に協力してくれそうだ。だが、この実験をするにはまず力を回復させてからだ)
答えが《解1》の場合、彼に対処法はなくなる。『鏡花水月』の効力の高さ、『死神の眼』にかせられたおかしな制限を考えれば、かなりこの可能性は低くなるので、まず考える必要はないだろう。
答えが《解4》の場合、問題は何一つなくなる。彼の計画も容易に進められるが、やはりこれも可能性が低い。《解2》と《解3》の可能性が両方とも潰れれば、この可能性も出てくるが。
以上二つは、今は考えなくてもいいだろう。
彼が今やるべきことは二つ。
・『鏡花水月』の効果持続時間に制限がかかっているかを検証するため、回復に努める。(《解2のため》)
・完全催眠を無効化できるような監視方法、監視道具があるかを確かめる。(《解3のため》)
「……やるべきことは、決まったな」
今は、休む。
体力回復に努め、満足に『鏡花水月』が使える状態にするため。
主催者を知る少年との接触は、それからだ。
場合によっては、計画を遅らせることも視野に入れるべきかもしれない。
ちょうど夜も更けていく。
徹底休息をとることに決めた彼は、たこ焼き屋の倉庫の内から、厳重に鍵をかける。
彼女のような迷い猫が入り込まないように。
(放送を聞き逃すわけにもいかないからな……睡眠をとれて四時間程度か)
目覚まし時計などなかったが、深い眠りに落ちなければ寝過ごすようなことはしないだろう。
なんせ、そのときになれば放送は自然と頭に響いてくるのだから。
決して気を緩めず、彼――藍染惣右介は瞼を閉じる。
死神と死神の眼を持つ者。
二人の参加者は、たこ焼き屋の倉庫の中というおおよそ休息を取るには相応しくない場所で、静かに眠りに落ちていった。
【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・夜】
【藍染惣右介@BLEACH】
状態:仮眠中。骨のダメージはほぼ完治・中度の疲労、MP5%程度。(戦闘ほぼ不能・盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ 核鉄XLIV(44)@武装練金
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2
思考:1、しばらく体力回復に努める。
2、主催者と同じ世界に存在する者から、完全催眠を防げるような監視方法または監視道具があるか聞きだす。
(現在確認できている参加者はダイのみ)
3、『鏡花水月』の効果持続時間に制限がかけられているか、他の参加者を使って実験してみる。
(対象候補として弥海砂を考えている)
4、琵琶湖へ向かう。
5、出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手、デスノートを求めている。
6、計画の実行。
備考:大蛇丸が持っていた荷物のうち2つは、二人が同士討ちになった、と後できた参加者に思わせるために現場に残してあります。
ミサには雪走り、斬魄刀以外の道具(特に首輪)は秘密。
脱出方法における人数の限界をミサに騙ったのは、自分の真意を知るものに接触させず確実にモルモットにするためです。
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労、睡眠中
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考] 1:藍染と別れた後夜神月と合流し、藍染の事を伝え、共に脱出する。
2:夜神月の望むように行動
3:遊戯を探してダッキの元へ連れていく(ほぼ自分の中で無かったことに)
???「目覚めよ、わが僕よ」
その声で、トレインは目を覚ました。
「あ、あんた誰だ?」
???「わたしの名はN星人。この世の全てをパクリ尽くす男だ」
遠く離れた山小屋にて
男は不気味に微笑んだ。
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
【トレイン・ハートネット@蘇生確認】
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
DIOには一つ不愉快なことがあった。
それは先ほどの放送にて、
なんとアイシールド21のキャラクターが、まだ3人も残っていたのだ。
DIOは自称アイシルアンチだった。
「生かしてはおけんな」
そして数時間後・・・
日本列島各地で、3人の無残な死体が発見されることになった。
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
【小早川セナ@死亡確認】
【妖魔洋一@死亡確認】
【柿崎まもり@死亡確認】
残り70人(60.5人)
闇はいつでも眼に見える。
明るい昼間の繁華街でも、人は知らず知らずそこに在る【影】という闇を視ているのだ。
前途に拡がる希望を掴んだときでさえ、人は知らず知らず【不安】という闇を視ているのだ。
だから"どう"というわけではない。
常に闇を観ていたとしても、明るいものは明るい。
暗いものは暗いように。
物事の本質は変わらない。
替わらない。
代わらない。
カワラナイ―――――――
名古屋の街。その一角にしゃがみこむ影、一つ。
周囲は暗く、照らす光は無く。
喘ぐ声は小さい。
「痛い痛い痛い、痛い痛い痛い、痛―――」
―――い、と痛みを訴えるその影は。
まず特筆するべきなのは彼女の半身。
彼女の右半身は、"ドロドロ"だ。
【右半身】といったが、奇麗にぴったり体の中点を通って真っ直ぐ分けられているわけではない。
顔は右頬の部分が僅かに溶けているだけだし、露わになった右胸部は四分の一程無事。
酷いのは、右胸部と同じく露わになった右腹部から下。
右腹部は皮が全て剥がれ落ち、ビクビクと血管らしき筋と肉が痙攣しているのが見て取れる。
右腰も同じく皮が剥がれ落ち、血管の一部が飛び出して血を垂らしている。
右足は、皮どころか所々肉も削げ落ちており、骨が見える部分すらある。
だが、影にとっては大した事はあるまい。現にここまで走ってきたのだ。
影の感じている痛みの原因は―――。
(あの女の人―――リサリサさん、だったけ)
東城綾は思考する。激痛も徐々に和らいできた。
彼女は何故自分が吸血鬼だと知っていたのか?
彼女は何故人間を超越し、マシンガンの攻撃ですら無効化した自分にこれほどのダメージを与えられたのか?
現在優先すべきなのは後者の疑問、と判断し、東城綾は先の戦闘を思い出す。
太陽のような光の波。あれが原因なのは分かっているが、詳細などいくら考えても無駄だ。
問題は、その光の波が自分を滅ぼせるということ。加えてあの異常なまでの殺意を孕んだ眼と、躊躇の無さ。
「彼女にまた会うのは危険ね」
誰にとも無く言った後、思考を再開する。
(吸血鬼の存在を知り、そしてそれに対する能力を持っている。つまり―――)
電話をするときにペンを回すかのような動作で飛び出した血管を弄りながら、考える。血がグジュグジュと滴り落ちる。
(お話の中でなら皆吸血鬼ぐらい知ってる。ドラキュラとか、いつか読んだ小説にも【我輩】が一人称の・・・あれは主人公も吸血鬼だっ
け?)
趣味である読書の事に気をそらしてしまい、暫く横道にそれていたが、それも束の間。
(―――つまり、吸血鬼ハンター?そんな仕事聞いたこと無いけど。裏の世界には私みたいな吸血鬼は珍しくないのかもしれない)
マフィアだのヤクザだの、いろんな人がいるんだし、と如何にも読書好きの少女のように空想を膨らませる。血管を弄くりながら。
(仮面のことも知ってたっけ……)
"―――他にも"仮面"を被った人間が、このゲームに参加しているとは思わなかったわ―――"
彼女の言葉を思い出し、あれ?と首を傾げる。
(そういえば、誰かの名前を言ってたような・・・ッ!?)
がさり、と隠れている路地裏の向こう側、道路から音が聞こえた。
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……
緊張が走る。
(リサリサさん?それとももう一人の女の人?或いは―――)
西野つかさ、か?
そして音は徐々に近づき………………。
「にゃ〜お」
「猫……黒猫……ちっ、ちっ。」
安堵の表情で猫を呼び寄せる綾。
「にゃー」
誘き寄せられて寄って来た猫は、綾の爛れた足に飛びのり、ごろごろ喉を鳴らし始めた。綾は喉をなでる。
(……西野さん、か)
自分の脳裏に今最も色濃く映っている女性。
(やっぱり、私みたいに弱くなかったわ、西野さんは)
思い出すのは、自分を逃がそうとしたこと、自分を追ってきたこと。
(―――あれ?その後、なんで私は逃げたんだろう。リサリサさんも追ってきてたけど、西野さんを殺して、それから殺されればよかった
のに)
まだ生きることに未練があった?――――― 違う。
(私は、もう生きたくなんてない。皆で、皆で中学生の頃のように過ごしたい)
では、何故逃げたのか?
(ああ―――簡単だ。西野さんは強いからだ。吸血鬼ハンター(仮称)のリサリサさんにも臆せず、私を庇った)
強い光を浴びれば、脇に追いやられた闇は際立つ。
私の中の闇と、西野の中の光。
彼女は強い。
私は弱い。
それを無意識に理解して、私は、彼女を正面から見る事を忌避したのだ。
(人間を超越した、だなんて。私は何を思い上がっていたんだろう?真中くん一人の死にすら耐えられず、自分も死を選んだ。西野さんは
きっと、私より強い)
「西野さんに会おう」
血を吸う前に、少し話をしよう。
何であんなに強いのか、知りたくなった。
自然に手に力が入る。
「ぐにゃっ……」
ブチッ
ブシュッ
シャアアアア
「あ・・・ごめんね、大丈夫?」
黒猫は喉を裂かれて血を噴出し、虚ろな眼で綾を見つめている。
「お墓―――はいいか、消えてなくなるから」
猫の体に異変が発生する。
喉に手を添える綾が快感に悶えると同時に、猫の体は干からびていく。そして、塵芥へ。
「URRYY…………ふう、御馳走様」
殆ど潤わなかったが、まあいい。
食物への感謝の気持ちは大事だ。食物連鎖が下の者がいてこそ成り立つのだから。
「西野さんを探そうかな」
まだリサリサさんがうろついているかもしれないから、慎重に。
吸血鬼は動き始めた。
「どこなの……?綾さん!」
夜の名古屋の街を、ひたすら走っている少女の名は西野つかさ。
「綾さん!」
彼女は東城綾が吸血鬼だということにもはや疑問を抱いていなかった。
たとえ彼女が吸血鬼でも、望んでいるのは、きっと安らぎの時間。
彼女は苦しんでいるだろう。私も苦しい。
せめて、この苦しみを共有したい。
真中淳平を奪われた痛みを。
「―――綾さんっ!!!」
そう叫んで五分程走った時、轟音が耳に響いた。
「あっち!?」
西野つかさは、走る方向を変える。
運命の、別れ道を通ってしまったことにも気付かず。
(真中くん……もうすぐ私達、二人でそっちにいくよ。待っててね……)
東城綾は走りながら尚、思考を続ける。
(そうしたら私とあなた二人で……二人?違う。皆で……皆?)
立ち止まる。
(何……これ……?)
心に綻びがあることに気付く。
思い浮かべるは、真中とつかさとさつきと自分が楽しく話す様子。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「淳平くんっ!死んでまでエッチなこと考えてるんじゃないでしょうね?」
「な、何言ってんだよ西野……そんな訳……」
「わからないわよ〜?なんせ真中は血のお風呂で私の」
「さ、さつき!あれは事故だ!事故!」
「淳平くん?」
「―――すいませんでした」
「…………あの……」
「ところで―――」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「わたしは……暗くて、優柔不断で、気が利かなくて―――そして卑怯」
彼女の心に常に在り、口には決して出さなかった嫉妬。
あのときも。あのときも。あのときも。
(こんな私が、みんなと仲良くできるの?吸血鬼になっても、悲しみを振り切れない私が)
西野さんとは正反対、と小さく呟いて、そして彼女の―――。
彼女の、吸血鬼になってようやく得れた自分に対する自信は崩れ去る。
「私は駄目。強くなっても駄目。強くなっても弱いから駄目。駄目で、駄目で、駄目だから駄目だ」
こんな自分を好きになってくれるかもしれない人は―――真中くんだけ。
西野さんには。北大路さんには。
建物の壁を殴りつける。
―――――――ごおおおおん
拳を基点に、半径10メートル程のクレーターが壁に刻まれる。
西野と一緒にいた人達の自分を見る目を思い出す。
信じられないほど汚らわしいモノを視ている様な、あの眼を。そういえば、北大路さんも―――。
(………………私は、化物になったのね)
再確認し、そして、『想い』が芽生える。
その想いが傲慢なことはわかっている。
だが、それでも―――!
(わたしは、わたしをきっと好きになってくれる真中くんを、北大路さんにも、西野さんにも渡したくない!)
がさり、と音が聞こえた。
また猫か、と振り返る。
そこには西野つかさがいた。
「綾さん…………?」
目の前には捜し求めた少女。そして半壊した建物。
「西野、さん」
彼女は。
「私…」
「何も言わなくていい!」
駆け寄って、ドロドロに溶けた体のことなど気にせず抱きしめる。
彼女はきっと自分の身に起こったことに混乱しているんだ。私が勇気付けてあげないと。
「西野さん………」
「辛かったでしょう?苦しかったでしょう?わた」
「西野さん、私が怖くないの?」
言葉を途中で遮られ、一旦離れて、一拍おいて私は言う。
「ええ、もし本当に綾さんが『人間をやめてしまった』としても、綾さんは綾さんだもの」
「私は、私………。本当に?」
眼を潤ませ、尋ねてくる彼女に、私はもう一度、彼女を力づけようと、意識して力強く言った。
「あなたは、あなたよ。今までも、これからも」
「私は私………私は弱い………弱いは私………弱いは弱い………今までも、これからも………変わらない………変われない」
小さな声で呟く彼女。私には聞き取れない。
「西野さん………真中くんが」
「………死んだ」
やはり、彼女も私と同じだ。真中淳平の死に苦しんでいる。
そればかりか。
吸血鬼、欠損した片腕、溶けた体。
私よりずっと過酷な思いをしてきたことは容易に想像出来る。
「でも、西野さんは何でまだ生きてるの?」
不意に彼女が私の顔をまじまじと見て言う。
「え………?」
「ううん、もうわかってるの。私は弱いから、西野さんまで私と一緒で、一人で死ねないんだと思ってた」
突如変わった彼女の雰囲気に、私の背中に汗が走る。なにか………彼女は勘違いしている。
「でも、西野さんは強かった。私が化物だって分かっても、ここまで来てくれた」
一歩一歩近づいてくる。
「西野さんは真中くんに似てると思うの。きっと、二人が付き合ったらお似合いだと思う」
目の前で立ち止まり、私の後ろに回る。言葉が上手く出せず、体を動かすことが出来ない。
「でもね」
首に手が回される。ひんやりと冷たい。
「私も真中くんのことが好きなの。渡したくないのっ!」
「………痛ッ!」
首に彼女の爪が食い込み、血が流れる。まずい、彼女は!
「だからね?西野さん。あなたには生き残ってもらわないと困るの」
「―――え?」
私の肩に彼女の顔がのせられる。強い酸性の匂い。
「私を好きになってくれるのは真中くんだけ。だから、あなたは真中くんのところにいっちゃ駄目なの。同じ土俵じゃ――きっと勝てないから」
私は彼女の眼を視た。視てしまった。彼女が勘違いしていると、本当は私も弱いのだということを伝えようとして。
肩にのせられている彼女の眼を視た。視てしまった。
そこにあったのは、
「死なないでね?絶対に死なないでね?絶対に最後まで生き残って、元の生活に戻ってね?大丈夫、あなたは強いから、きっと大丈夫」
どうしようもなく、人間をやめてしまっていて、そして、既に終わってしまった眼。生きる意味を失い、死に臨む眼。
「私もあなたのそばにいて最後まで守ってあげたいけど………リサリサさんが許さないだろうから、もういくね。さよなら、西野さん」
首から手を放され、私は力無く後ろに顔をまわす。
彼女はもう見えないほど小さくなっていた。
「………綾さん」
伝えられなかった。分け合えなかった。
彼女は、行き着いてしまっていたのだ。もう私が入る余地など無い、深い深い処へ。
「でもね………綾さん」
彼女に伝えられなかった言葉。
「私も………弱いのよ」
言葉は誰にも届かず。
唯、自身の心に、『死』への恐怖………いや、『彼女』と同じところに行ってしまう恐怖が届き。
(―――呪いをかけられた)
そう思った。
遠くから足音が聞こえてくる。誰だろう?まあ、誰でもいいか。
私は生き残らなくてはいけない。
晴れ晴れとしたいい気分だ。実に晴れ晴れとした、最高にハイな気分だ。
頬に当たる風は心地よく冷たく、自分に快感を与えてくれる。火照る、火照る!体が火照る!
(ふふふ、自分の本音を吐き出すと、こんなにいい気分になれるんだ)
東城綾は、至高の喜びを隠し切れず、顔をほころばせた。
(西野さん………頑張ってね)
彼女には悪いことをした、と自分でも思う。だがそれが何だ。私は化物だ。前までとは違う。弱いなりに、前に向かってやる。たとえそれで他者を傷つけても。
さてこれからどうするか?西の野に向かうか、東に見える城に向かうか。
―――"DIO"の他にも"仮面"を被った人間が、このゲームに参加しているとは思わなかったわ―――
(ああ………思い出した。私と同じ境遇の人、"DIO"。探して利用してもいいかもしれない)
だが、最期には殺す。西野さんを生き残らせるために。そしてひいては私の為に。
さあ―――始めよう。私のために、殺戮を。
「待っててね、真中くん………ああ、気持ちいい。こういうときにはなんて言えばいいのかしら」
答えは一つ。私は私を真に解き放つように、こう叫んだ。
「UUUURRRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」
【愛知県の外れ/道路/1日目・夜】
【東城綾@いちご100%】
[状態]:吸血鬼化。右腕なし。波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた。最高にハイな気分。
[装備]:特になし
[道具]:荷物一式
[思考]:1.西野以外の全ての参加者の殺害
2.DIOに興味
3.真中くんと二人で………。
※綾は血を吸うこと以外の吸血鬼の能力をまだ知りません。
【愛知県の外れ/街/1日目・夜】
【西野つかさ@いちご100%】
[状態]:ショック状態
:移動による疲労
[装備]天候棒(クリマタクト)@ワンピース
[道具]荷物一式/(核鉄ナンバーは不明・流川の支給品)
[思考]
1: 呪い(恐慌。生き残る。)
2: 足音に対処。どんな行動をとるかは相手次第。
スヴェンは微動だにしなかった。いや、できなかった。
目の前の男が放つ威圧感は、スヴェンが今まで出会った誰とも比べ物にならない。今まで出会った誰よりも強い。
おそらく――勝てない。
(支配眼を使って逃げるとしても、体力の消費が大きすぎるし、走りながらじゃ短時間しか持たないだろう。
せめてトレインが間に合ってくれればいいんだが…)
そこまで考えたところで、ラオウはスヴェンにとって意外な言葉を投げかけてきた。
「この拳王と二度も相対するとは、ウヌは余程運が無いと見える」
「二度?」
スヴェンの記憶の中では初対面である。こちらを動揺させるための策かといぶかしむが、そんな小細工をするようには見えない。
しかしその疑問を言葉にする前に、ロビンの言葉が届いた。
「彼と貴方が会うのは確かに二度目よ。一度目は、貴方の記憶が無い頃。
その時は勝利マンも一緒だった。貴方よりずっと強かったわ。それでも…勝てなかった」
少しだけ顔を伏せる。瞳によぎった悲しみを、スヴェンは見逃さない。
「紳士さん一人じゃ絶対に勝てない。早く逃げるべきよ」
押し隠そうとしても、ロビンの声から必死さが滲み出ていた。
「勝利マンっていうのは、あんたの仲間か?」
「…ええ、『仲間』だったわ」
「だったら、余計に退くわけにはいかないな」
ロビンが驚いて顔を上げると、そこにあったのはスヴェンの優しげな微笑み。彼女を安心させるための表情。
「女性を悲しませるような奴を、野放しにしてはおけない。
…下がっていてくれ」
ロビンの持っていたアタッシュ・ウエポン・ケースを手に取ると、スヴェンはラオウの前に対峙する。
「羽虫風情が、この拳王に勝てると思うてか」
「何としてでも勝つさ。レディとレディの心を守るのが、俺のポリシーなもんでね」
その言葉と共にケースを構えると、側面から銃口が飛び出し、銃声が鳴り響く。
それが戦いの始まりだった。
夜が近づく森の中を、二つの人影が走る。
トレインと杏子はようやく見つけた探し人を追っていた。
二人とも疲労し、トレインにいたっては片腕を失っている。当然その走りはロビンとスヴェンに比べて遅く、かなりの距離を引き離されてしまった。
それでも二人はひたすらに走り続ける。今を逃せばもう二度と会えないかもしれない。そんな焦燥感が二人を突き動かしていた。
夜が来ないで欲しいとこんなに強く願うのは、生まれて初めてかもしれない。
杏子は何も考えないようにしていた。ただがむしゃらに、トレインの背中を見ながら走っていた。
次の放送がもうすぐだと夕暮れが告げている。怖くて怖くてたまらなかった。
最初の放送では城之内の名が呼ばれた。二回目の放送では海馬の名が呼ばれた。
だとしたら、次の放送で呼ばれるのは―――。
杏子は何も考えないようにしていた。考えれば、不安に押しつぶされて、動けなくなってしまうから。
ただひたすらトレインの背中を見つめ、杏子は走り続ける。
ケースから放たれた弾丸の雨がラオウを襲う。
ラオウは銃口から軌道を読み、僅かな移動のみでそれを全て避けながら、スヴェンとの距離を一気に縮める。
避けられない距離から繰り出される、全てを砕く拳。
しかしスヴェンは支配眼でスピードを上げ、バックステップでラオウとの距離を広げる。
そんな攻防がさっきから何度も繰り返されていた。
単純だが凄まじいスピードの攻防。
ロビンも援護しようとするものの、その速度のためタイミングが掴めずにいた。
もっとも援護できたところで、ラオウに対しては、殆ど効果が無いだろう。
ラオウは違和感を感じていた。それは数時間前に、ある青年、クロロと戦った時と似た違和感。
この普通では考えられないほどの急加速は興味深い。
結局あの時は謎を明かすことが出来なかったが、今度は見極めてみせよう。そう考え、しばらくは手を抜き戦っていた。
だがやがて、単調な攻防に痺れを切らす。
ただ時間稼ぎをするだけが目的の技なら、拳王には必要無い。ラオウの目的は唯一つ。全てを撃破することのみ。
幾度目か、またしても放たれた拳をかわし、スヴェンは後ろに飛びのく。
「無駄だ、いくら撃ったところで当たらぬわ!」
ラオウも今までと同じく僅かに移動しながら、今度こそスヴェンとの間合いを詰めて行く。
だがそれこそがスヴェンの本当の狙い。
次の瞬間放たれたのは、銃弾ではなく大きな網。鋼鉄で出来た捕縛ネット。
銃弾を当てる気が無かったわけではないが、当たらないだろうという予想もしていた。
これ程の男なら、余計な動きはせず、紙一重で避けるだろう。ならば、余計な動きでもなければ避けられない弾を撃てばいい。
予想の通り、銃弾の分しか移動をしていなかったラオウには、範囲の広い捕縛ネットから避ける余裕はない。
(これで動きを止められ…なっ!?)
スヴェンは自分の考えが甘かったことを思い知らされた。
ラオウは背中のマントを剥ぎ取ると、捕縛ネットに投げつける。それにより捕縛ネットは勢いを殺され、ラオウは易々と捕縛ネットの範囲から抜け出した。
世紀末覇者たるラオウは、こんなもので冷静さを乱されるような男ではないのだ。
スヴェンは舌打ちをし、再び間合いを取ろうと支配眼を発動――しようとして気付く。避けられたネットを受け止め、背後から再びラオウへと投げつけた、木々から生えた無数の腕に。
「ムゥッ!」
そして二本の腕がラオウの視界を覆う。
確かにロビンの力では、ラオウ本人に対しては効果が薄い。だが間接的な援護であれば別だ。視界が開放された時、もはやラオウにネットを避ける術は無かった。
「不覚を取ったわ。だがこれしき…温すぎる!」
まるで布のように、鉄で出来た捕縛ネットは引きちぎられていく。
その隙で十分だった。確実に仕留める一撃を入れるため、スヴェンはケースを構える。
放たれるは水。ただの水ではない。鋼鉄のロボットをも真っ二つにする水圧、ウォーターカッター。いくらあの男でも、この攻撃には耐えられないはずだ。
(こういう残虐なのは女性に見せたくなかったんだが…仕方ない)
スヴェンはウォーターカッターのボタンを押す。研ぎ澄まされ刃と化した水により、拳王を名乗る男は真っ二つになる。
――はずだった。
(……作動しない!?)
スヴェンは知らなかった。アタッシュ・ウエポン・ケースと水が別々に支給されていたことを。そしてその水はヨーコが持っていることを。
スヴェンが我に返り、ラオウにマシンガンを撃つまで、ほんの数秒。だがそれは決定的な数秒。
ラオウはあっという間に網を引きちぎり、今までとは比べ物にならない速さで迫っていた。
慌てて支配眼を使うも、連続使用のため疲弊した体で、圧倒的速度のラオウの攻撃は避けられなかった。出来たのは、とっさにケースを盾にすることのみ。
「紳士さんっ!!」
スヴェンの体が吹き飛ばされる。とっさに受身を取り、地面に叩きつけられることだけは避けられた。起き上がろうとして、胸部から腹部にかけて激痛が走る。
(何本かいったな…くそっ!)
なんとか立ち上がるが、スヴェンはもやは死に体だった。頼りのケースはひしゃげ、こちらも使い物にならない。
スヴェンは笑った。敗北を悟ったからだ。結局彼女の心を守れなかった、自分に対する自嘲だった。
ロビンの前でこいつを倒し、悲しみを減らしたいと思った。だがそれはもう叶わないこと。
スヴェンは声の限り叫んだ。
「ロビン!逃げろ!」
「…紳士さん!」
ロビンは必死でラオウを妨害しようとする。しかし彼女の細腕が何本あったところで、拳王を止めることは叶わない。
もはや勝利を確実なものとしているラオウは、ゆっくりと、しかし確実に、スヴェンに死を与えるために近づいていく。
「心意気のみで、この拳王には勝てぬ」
豪腕が打ち下ろされた。
「「うあああっ!!」」
重なる声。吹き飛ばされたのはスヴェンだけではなかった。
「いってー!」
「トレイン!?」
「よぉスヴェン!間一髪だったな!」
咄嗟にラオウとスヴェンの間に入ったのは、脇から飛び出してきたトレインだった。ウルスラグナを盾にして拳を受けたのだ。
いつものように軽い口調。しかしラオウに視線を移すと、その表情は一転した。怒りと殺気を押し込めた声。
「…なんで、てめぇが生きてやがる」
「泥棒さん!」
「あなたは…!」
駆け寄ってきた少女を見て、ロビンは驚く。まさか追いついてくるとは思わなかった。
「大丈夫? 怪我とかない?」
「…ええ、平気よ」
戸惑い、思わずそう答えた。
(どうしてこの子は私の心配をしているの? 自分の荷物を奪った相手なのに)
息を切らせ、真っ青な顔をした杏子は、ロビンよりよっぽど大丈夫じゃなさそうに見えた。身体は小さく震えている。
怯えた瞳で見つめる先は、山のような体躯の男。
そんな彼女を見て、ロビンの口から言葉が零れ落ちた。
「…ごめんなさいね」
「え?」
「荷物を取り返しに来たのね。
でもあなたの支給品、壊れちゃったのよ」
千年ロッドの欠片はすぐ近くに落ちていた。鞘と柄を失い剥き出しになった仕込み刃が、もはや闇に覆われかけた世界の中で、一際鈍く輝いていた。
「違います! 私、もう一度泥棒さんと話したかったから…」
ロビンにはわからなかった。どうして彼女が自分と話したがっているのか。どうして自分を、そんなに優しく悲しげな瞳で見るのか。それは誰かの瞳に似ていた。
それに、と杏子は続ける。
「壊れたなら壊れたでいいんです。あんな酷いアイテム、持つのは抵抗があったし」
「…あれがあれば簡単に『仲間』が出来るのに?」
今度は杏子が驚く番だった。眉間に皺を寄せ、怒ったような、泣き出す前のような、そんな表情で。
「そんなの仲間じゃないよ! 道具によって強制的に支配するなんて!
悲しいよ、そんなの……」
『…悲しい人だね、あなた』
ロビンは思い出した。杏子のあの瞳が誰に似ていたのか。
憐れみでも同情でもない、優しく悲しい瞳。
「あなたも仲間がいるならわかるでしょ?」
「仲間…?」
「あの人なんだよね? あなたの『口先だけじゃない仲間』って」
杏子の視線を追えば、そこにいたのはスヴェンだった。
仲間なんかじゃない。心から信じるなんてことはできない。
でも、自分を命がけで守ろうとしてくれた人。死んで欲しくないと思った人。
何と答えたら良いのかわからなくなって、ロビンは口を噤む。
どうしたのかと、杏子が口を開いたその時―――。
<<――いまだ生を謳歌しているという幸運に恵まれた者たちよ>>
武藤遊戯。
最も聞きたくなかった人物の名が、告げられた。
浦飯幽助。
呼ばれた名に、トレインは歯軋りした。
「てめぇが…幽助を殺したんだな」
疑問ではなく断定。この男が生きていて、幽助は死んだ。答えは決まりきっている。きっともう一人の青年も同じ運命を迎えたのだろう。
「この拳王と拳を交えて死んだのだ。誇りに思うがいい」
「てめぇだけは――殺す!」
押さえていた殺気が溢れ出す。ハンマーと化したウルスラグナを持ち、目の前の男に飛びかかった。
しかし慣れていない武器、しかも片腕だ。ラオウに片腕だけで簡単に受け止められ、投げ飛ばされてしまう。
トレインはバランスを崩しつつも着地した。
(くそっ!せめて両手があれば、電磁銃をこいつに食らわしてやれるのに!
スヴェンに後ろから支えてもらえば…駄目だ、モーションがバレバレすぎて避けられるに決まってる!
こいつだけは何が何でも倒さなきゃならないのに、何も手が思いつかねぇ…!!)
迫る拳を防ぎ、また吹き飛ばされる。衝撃で左手が痺れる。無力感がトレインを蝕んでいく。
「うおおおおおっ!!」
それを振り払いたくて、トレインはがむしゃらに飛び掛っていく。
無駄なことはわかりきっていた。勝てないことはわかっていた。けれど認めたくない。
幽助や、あの青年や、こいつに殺された人たちの無念。それを思うと認めたくなかった。死んでも負けたくなかった。
「足掻くのも良かろう。だが、何時までも癇癪に付き合うほど暇ではない」
「ぐあっ!!」
ウルスラグナ越しに強烈な突きを食らい、トレインの身体は成す術もなく飛ばされ、今度こそ地面に激突する。
「トレイン!」
スヴェンが覚束ない足取りで近づく。手を貸しても、トレインは起き上がるのがやっとだった。
(…もう俺達は駄目だな。ロビンは上手く逃げてくれてるといいんだが)
(ちくしょう!こいつだけは、こいつだけは…俺が…!)
絶望に打ちひしがれた二人が、自分達に死を与えんとする大男に目を向ける。
けれどそこに居たのは、あまりにも意外な人物で。
「……杏子っ!?」
この場で最も脆弱な少女が、震えながら、二人をラオウから守ろうと立っていた。
「あなた…何をする気!?」
杏子は剥き出しの刃を手にしていた。千年ロッドの仕込み刃だ。
少女の柔らかな皮膚は簡単に傷つけられ、血が刃を伝い流れ出す。けれどそんなことはどうでも良かった。
「守らなきゃ…トレインくんを、二人を守らなきゃ…!」
「あの人は、無抵抗の女性に手は出さないと言ったわ。
あなたは大人しくしてれば助かるのよ!あなただって、死にたくはないでしょう!?」
杏子の腕を引く。振り返った瞳は悲しみに満ちていた。
「…怖いよ。死にたくないよ…でも……」
けれど、その奥に確かな意志があることに、ロビンは気付いてしまった。
杏子はロビンの手を振り払う。
「…これ以上、奪われちゃうよりはずっといい!」
杏子は駆け出した。この場で最も強き者の前へと。
「な、に…してんだ! 杏子、早く逃げろ!!」
首を横に振る。その手は震えても、今にも落としそうな刃を握り締め続ける。
「お嬢さん、逃げろ! そいつには絶対敵わない!」
首を横に振る。その足は震えても、今にも崩れそうな身体を支え続ける。
そして震える唇から、精一杯に言葉を紡ぐ。瞳は強く、真っ直ぐに拳王を見据えて。
「…この二人は、殺させない!」
何の力も持たない少女だが、その言葉だけは力強く響いた。
ラオウは動かない。ただ、ラオウもまた少女を見据えていた。
トレインとスヴェンは杏子を守ろうと、前に出ようとして――失敗した。無数に生えた腕が、彼らを転ばせ拘束したからだ。
「これは…!?」
「…ロビンっ!!」
ロビンが杏子の横に立つ。押し潰されそうな恐怖を感じ、額からは汗が流れる。
それでもその瞳はラオウを見据える。歪ではない瞳だった。
「ウヌも我が前に立ち塞がる気か?」
「…気に入らないのよ、私も。これ以上勝手に奪われるのは」
ロビンも杏子も、ラオウの前では等しく無力だ。ラオウが腕を一振りすれば、命はあっけなく消え去るだろう。
見詰め合ったまま沈黙が続く。心臓の音だけが煩く喚く。
おそらく数十秒のことだったが、弱き四人には何時間にも感じられた。
そして―――動いたのはラオウだった。
「この拳王、女を殺す拳は持たぬ」
四人がやっと反応した時には、もはやラオウは悠然と背を向け歩き出していた。
トレインは叫び止めようとしたが、喉が引きつったように声が出ない。唇を噛み締め、ラオウの後姿を見送ることしかできなかった。
やがてラオウの姿が見えなくなる。
まるで糸が切れたように、杏子は崩れ落ちた。
ロビンは杏子を支えようとするが、やはり足に力が入らず、二人揃って地面に倒れ込む。
「杏子!」
「ロビン!」
開放された二人が駆け寄る。
杏子はロビンの腕の中で意識を失っていた。頼りない刃を握り締めたまま。
二人を無視してトレインとスヴェンを殺すことなど、ラオウの力と速さを持ってすれば簡単だった。
それでもあえて殺さなかったのは、あの二人の瞳にあったものが、ラオウを癒した少女のものと似ていたからかもしれなかった。
そして、ユリアのあの瞳に―――。
馬鹿馬鹿しい。ラオウは一蹴した。
たかが羽虫。何匹残ろうと、ラオウには大した問題ではない。死のうが生きようが構わない。
もし次に歯向かってくることがあれば、今度こそ殺せば良いだけの話。
次なる強敵を求め、ラオウは威風堂々と歩いて行く。
【茨城県・袋田の滝下流/夕方〜夜】
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:疲労、肋骨数本を骨折、胸部から腹部にかけて内出血
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]1:ロビンを守る
2:イヴ・リンスと合流
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]:疲労、重傷(左腕に内出血、左半身に打撲、右腕肘から先を切断。行動に支障あり)
[装備]:ディオスクロイ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾1)
[道具]:荷物一式
[思考]1:杏子を守る
2:ラオウを倒す
3:主催者を倒す
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]精神的疲労、手の平に創傷(応急処置すれば問題ない深さ)
[装備]千年ロッドの仕込み刃
[思考]1:気絶
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:精神的疲労
[道具]:荷物一式(二人分)
[思考]:1:どうすべきか迷っている
2:アイテム・食料の収集
3:死にたくない
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]:胸元を負傷。出血は止まった。大きく傷跡が残る。右腕にダメージ。右手ただれ薬指小指喪失
[道具]:荷物一式 不明
[思考]: 1.新たな強者を求めていく
2.いずれ江田島平八と決着をつける
3.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)
>>319のトレインの荷物が間違っていたので修正します。
【茨城県・袋田の滝下流/夕方〜夜】
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:疲労、肋骨数本を骨折、胸部から腹部にかけて内出血
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]1:ロビンを守る
2:イヴ・リンスと合流
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]:疲労、重傷(左腕に内出血、左半身に打撲、右腕肘から先を切断。行動に支障あり)
[装備]:ウルスラグナ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾1)
[道具]:荷物一式
[思考]1:杏子を守る
2:ラオウを倒す
3:主催者を倒す
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]精神的疲労、手の平に創傷(応急処置すれば問題ない深さ)
[装備]千年ロッドの仕込み刃
[思考]1:気絶
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:精神的疲労
[道具]:荷物一式(二人分)
[思考]:1:どうすべきか迷っている
2:アイテム・食料の収集
3:死にたくない
322 :
ラオウvs原子力:2006/03/22(水) 19:38:00 ID:luvhH26p0
「原子力発電パーーーーーンチ!!!!!!!」
「うぐぁぁぁぁぁ!!」
巨星、乙
きもっ
ロワスレもしばらく中止だな
あらしマジで消えれ
すいませんでした
保守
ついに再会を果たした男塾塾長・江田島平八と、男塾塾生・雷電。
二人はこの殺し合いの舞台での再会を大いに喜び合い、そして同時に互いがこれまでに得た情報を共有しあうこととなった。
その中で最も重要といえる点は、江田島、雷電の両者がそれぞれの仲間の身を案じているということ。
江田島平八は真中淳平と黒崎一護と言う名の二人、雷電は奈良シカマルという名の仲間の下へ向かう最中だったのだ。
その行き先で得た、偶然の再会。この日本列島を模した広いステージの中、知り合い同士の再会を果たした者がどれだけ少ないことか。
『男』という強い絆で結ばれた二人は、幸運だったのだ。
だが……男とは、波乱万丈な人生を歩んでこそ真の『男』となる。
そうそういいことばかりが起こるはずはないのだ。
――いまだ生を謳歌しているという幸運に恵まれた者たちよ、
それは、二人がまだ再会の喜びを分かち合っている最中、流れた。
無常な放送で告げられた名前の中には、二人が確かに知る名があった。
『奈良シカマル』『黒崎一護』『真中淳平』そして……『富樫源次』
殺人ゲームの中で知り合った仲間、そして男塾の仲間、総勢して四名もの知り合いが命を落とした。
「むぅ……なんとシカマル殿が……不吉な予感は真だったか」
仲間の死を聞き、不吉を感じていながらも間に合うことのできなかった自分を不甲斐なく思う雷電。
江田島との再会は幸であったが、代償に得た不幸はあまりにも大きい。
「…………!」
と、放送が終わったあたりで突然、江田島が走り出した。
「じゅ、塾長!? どちらへ!?」
「止めてくれるな雷電! わしには行かねばならぬ所がある!」
せっかく再会できた雷電に碌な説明もせず、江田島は走り去ってしまった。
その速度といえば疾風――いや、彼に相応しい言葉を借りるならば『猛虎』の如し。
雄雄しく、荒々しく、徐々に小さくなっていく背中は正に男。
やはり我らの塾長はこうでなければ。とは思うが、
このままぼーっとしているわけにもいかない。
雷電もまた、江田島のあとを追跡する。
大空翼は、孫悟空を追っていたはずだった。
だがリングワンデルンクという現象にはまってしまった翼が、悟空に追いつけるわけもなく。
ちょうど放送が終了した直後だっただろうか。
翼が代わりに見つけたのは、四人の死体。
「あ……あ……」
その光景は、いくら『クレイジー』の称号を持つ翼でも、衝撃を受けざるを得ないものだった。
凶悪な襲撃者にでもあったのだろうか?
それともこの四人で殺し合いをしたのだろうか?
目に映る血でできた水溜りは、何も語ってくれない。
懸命な読者の方ならお気づきかと思うが、この四人の死体とは『クロロ・ルシルフル』『浦飯幽介』『真中淳平』『黒崎一護』のことである。
現段階では悟空は岐阜あたりにいるはずなのに、翼は真逆の方向に位置する栃木でこの四人の死体を見つけたのだ。
物言わぬ不気味な人間の死骸に、翼の思考は一瞬麻痺する。
この四人は、なんでこんな無残な死に方をしているのか―
石崎君や日向君も、こんな死に方をしたのだろうか――
この四人の中に、一人くらいは名プレイヤーになれる素質を持った者がいたのではないだろうか―――
ひょっとしたら、自分と同じようにサッカーを愛する人がいたのではないか――――
みんないい体つきをしている。きっと日ごろの練習を欠かさないんだろうなぁ―――――
こんな、こんなにいい選手達が殺されるなんて―――――――
翼の思考は、『いろんな意味で』麻痺していた。
「翼!」
何分そこにいただろうか。
その場で座り込んでいた翼に声をかけたのは、運よくも離れ離れになっていた仲間の承太郎。
「あれ? JOJO君……どうしてここに?」
「馬鹿やろうっ、おまえが荷物を間違えていったんで、慌ててで探してたんだぞ。六時になったら東京で落ち合うってのも、聞こえてなかったのか?」
翼は「あっ」といった感じで口を開く。
そういえばそうだったかも。荷物も悟空を追うことで頭がいっぱいで、全く気にも留めなかった。
承太郎がここ栃木で翼を発見したのは、まったくの偶然。
北東付近で発見できなかったので、仕方なく合流地点の東京へ向かっていた最中に見つけた幸運だった。
「……って、おい翼。これは……」
やがて、承太郎も気づく。目の前の惨状に。
四体の死体に吹き飛ぶ血。一般人の翼に大ショックを与えたその光景は、承太郎の目からしても酷い有様だった。
「……ひょっとして、誰か知り合いでもいたのか?」
「ううん」
「……そうか」
確認する。どれも知らない顔ばかりだ。
だが周囲には血に汚れた刀があり、それが戦闘の惨状であることを物語っている。
誰かはしらないが、間違いなくこの四人は誰か、あるいは四人同士で、『殺し合い』をしていたのだ。
そして、二人がショックで動けぬそこに、その者は現れた。
ド ン !!!
「!?」
いや、別に効果音も何もなかったわけだが。
あえて言うなら『存在感』のせいだろうか。
その者の到来には大きな物音もなかったが、翼と承太郎はその人物のでかすぎる存在感を感じて到来を悟ったのである。
目の前に、大男が現れた。
敵か? 味方か? 何者か?
その人物が名乗り上げる間までに思考が巡る。そのコンマ数秒の間にわかったのは、その人物が『男』であるということ。
それだけわかれば、その人物に説明はいらない。
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
――そう名乗ったのは、もう何度目か。
【栃木県/夜】
【大空翼@キャプテン翼】
[状態]疲労中〜大 精神的にやはりやや壊れ気味
[装備]拾った石ころ一つ
[道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本
翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
[思考]1:目の前の人物は……?
2:悟空に追いつき、日向の情報を得る。そしてチームに迎える
3:仲間を11人集める
4:主催者を倒す
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労 肩、胸部に打撲、左腕骨折(以上応急処置済み)
[装備]無し
[道具]荷物一式(食料二食分 水少量消費) 双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢
らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
[思考]1:目の前の人物は……?
2:バーンの情報を得るべくダイを捜す
3:主催者を倒す
【江田島平八@魁!!男塾】
状態:健康
装備:無し
道具:荷物一式・支給品不明
思考:1、「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
(真中淳平と黒崎一護を探す)
2、「日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり」
【栃木県・江田島のやや後方/夜】
【雷電@魁!!男塾】
状態:健康
装備:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
思考:1、江田島平八塾長を追う。
2、知り合いとの合流
備考:シャハルの鏡@ダイの大冒険、斬魄刀@BLEACH (一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている。斬月は解除)、荷物一式3つが放置されています。
「調子はどうだい?ディオ・ブランドーさん」
「まあまあだ。そっちはどうだ?」
「ああ、遂にギニュー特戦隊が動き出した。5人それぞれが各地方に攻め入るらしい」
「そうか。とにかく奴らにばれないように気をつけろよ、花京院」
DIOはそう言い交信を遮断した。
【DIO@ジョジョ3部】
[状態]: 興奮状態
:精神不安定
[装備]不明
[道具]:なし
[思考]1:???
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
「・・・・・・よかった・・・」
一言一句を聞き漏らすまいと強張らせていた身が軽い。
まもりは夕闇の濃くなった山間の―――まばらに民家が並ぶ寂しい場所にいた。
陽が翳り、自分の影が薄まっていく。
(セナ・・・無事だった・・・!)
安堵するのも、つかの間である。
今回の犠牲者は27人。前回の倍近い数に昇り、熾烈も極まった状況にまもりは身震いした。
(怖い・・・)
こうしている間にもどこかで見知らぬ強敵が徘徊し、セナに襲いかかろうとしている。
(セナ・・・セナ・・・)
彼は無事なのか?どこでどうしているんだろう。
心細く震えていないだろうか?どれだけ思考を重ねても会えない限り、彼の現状はわからない。
先ほど見た不吉な夢は何かの暗示だろうか。いや、そんなはずはない。絶対に!
振り払っても影のように纏わりつく不安に、まもりは苛立っていた。
どれだけ人を殺そうと彼が無事でいなければ、まるっきり無意味だから。
(会いたいよ、セナ・・・)
彼を守るためなら命を捨てる、悪魔になろうと構わないと、強く心に決めたはずなのに。
放送を聞いた途端にまた心細くなる自分がいる。
(気弱になっちゃダメ!まだ敵はたくさん残ってるんだから・・・!夜が来る前に作戦を考えなきゃ)
まもりは先ほどの男(子供?)から奪った武器を考える。
装飾銃に高性能時限爆弾。アロアノの杖。
(奪ったり、奪われたり、ね。どう使おうかしら)
(いくらなんでも、この銃は重すぎるわ。弾も入っていないし、カプセルに戻しておこう)
(アロアノの杖に時限爆弾か・・・杖は使えそうだけど・・・)
例えばニュースでよく流れるテロなんかでは人の多い銀行や広場、ショッピングモールに仕掛けられる。
とはいえ、人の集合する場所など、このゲームでは望めない。
徒党を組む者たちがいたとしても他者からの攻撃や
禁止エリアを避けるため、絶えず移動を繰り返していることだろう。
ならば集団を見つけて、なんとか入り込み、誰かのデイパックかポケットにでも忍び込ませてみてはどうだろうか。
『場所』がダメなら『人』に直接仕掛けるしかない。上手くいくだろうか?
(でも、どうやって集団に入り込むにしても今までとは勝手が違うわ。
多人数を相手にどこまで騙し通せるかしら)
絶対にボロは出せない。死者の数が半数を超えた今となっては警戒も厳しくなっているはず。
失敗すれば、武器を奪われリンチの末に殺されるだろう。逃げられる確率は低い。
無駄死にが一番嫌だ。死を免れない状況なら、できるだけ多人数を巻き添えにしたい。
でないとセナが家に帰れなくなってしまう。
(・・・なんにせよ、この杖を使いこなす練習が先ね。爆弾はチャンスを待つしかないわ)
まもりは辺りを警戒しながら、適当な小屋に身を潜めた。
一方、その頃。
「L・O・V・E・お・つ・う!!」
「声が小ざぁいィ!! もっど大ぎぐゥゥ!!」
「L! O! V! E! お! つ! う!!はい!」
L O V E ラ ブ リ ー お つ う
L O V E ラ ブ リ ー お つ う
お前それでも人間かぁ〜〜
お前の母ちゃん何人だァァ!!
バ キ ィ ッ
「ナンバー2ゥゥゥ!!声が聞ごえんぞォォ!!腑抜げだ音出じでんじゃねえェェ!」
怒鳴り散らすは小柄な眼鏡の少年。和装、ハート印のハチマキ(手製)を額に巻いている
「痛ってえ〜〜!!何すんだお前ェ!歌詞なんかわからねーよっ!」
答えるのは不満丸出しの表情をした青年。背は高く長髪、スポーツマンらしい服装である。
「返事は『ハイ』だ!!わがっだが!?わがっだらもう一度俺の後に続げェェ!!」
眼鏡の少年は両腕を振り上げ、リピートアフターミーと叫んだ。
ゴ ォ ン ッ
長髪少年の回し蹴りが眼鏡少年の後頭部にヒットする。
「い゛ったあああっ!お前ソレ、隊長に向かって蹴りはないんじゃないの!?
しかも神聖なデビュー曲の途中でさぁ!」
「うるっせーよ!!さっきから同じ曲ばっかり・・・じゃなくてェェ、さっきから言おう言おうと思ってたけどよォ!
こんな時に歌なんか歌うな!!危険なんだよっ!!」
「君は空手をやっていた割りにコブシがきいてないな」
「全然上手くねーよ!お前こそ声枯らしてまで歌ってんじゃねえよ!ジャ○アンの母ちゃんそっくりじゃねえか!」
「むッ、NO.2静かに・・・」
つっこみを制し、新八は若島津に黙るよう指示を出した。
なにやら、周りが焦げ臭い。
歌まで歌っていて今の今まで気付かなかったというのも妙な話だが
アレは歌うというより歌詞を絶叫しているという表現の方が正しく、嗅覚より肺の方に神経を集中させて
いたため起こってしまった珍事である。そんな前置きは別にどうでもいい、とにかく彼らは異変に気付いた。
火事か?新手の攻撃?若島津は警戒し、迎撃体勢(つまり逃亡に適した姿勢)をとった。
だって災害に正拳や突きは通用しない。辺りの空気は色を帯び、灰と有毒ガスの嫌な臭いが2人を包む。
とにかく開けた場所に逃げようと若島津は新八の腕を掴む。
しかし突如、新八若島津の手を振り払い、あさっての方角に向けて素っ頓狂な声を上げた。
まさか、ついにイカレ・・・
「後ろォ!NO.2、後ろォ!!」
新八の指差す方に若島津が振り向くと、近くの木造の小屋が黒煙を吐き出していた。
その入り口から1人の少女が咳き込みながら転がり出てくる。
少女は声に気付き、こちらを見る。ところが若島津と目が合った途端、身を翻して逃げた。
「ご・・・誤解だーー!!俺たちは怪しい者じゃない!!(ちょっと歌ってただけじゃないか)」
若島津の叫びに耳も貸さず、少女の足は止まらない。
そんな、全力で逃げなくても・・・少女の態度に多少のショックを受けつつも
サッカーで鍛えた抜群の瞬発力で、あっという間に若島津は少女のすぐ隣りまで接近した。
しかし一体全体どこを掴んだらいいのやら。相手が男なら話は簡単、足を引っ掛けスッ転ばせて
「ゴメン」の一言で済ませればいい。若島津はたった数mを走る短い時間に大いに迷う。
ボロボロの制服から伸びた華奢な――――白く細い手足は、強く握れば折れてしまいそうだ。
若島津は仕方なく少女が失速するのを待つことにする。
一方、煙を吸ってしまい気分が悪くなったまもりは、突然の敵の出現に戸惑っていた。
敵―――のはずである。セナ意外は皆敵だ。なのに、彼は心配そうに見るばかりで手を出してこない。
(何、この人、敵意がないの?だったら・・・)
中途半端に両手を構えた状態で並走し若島津は説得する。
「俺たちは君の敵じゃない!何もしないから止まってくれ!」
「コホッ、コホッケホッ・・」
「ご、ごめん、でも本当に何もしないから・・・」
まもりは痛む喉を押さえる。苦しい、でも、杖を使うなら相手が油断している今しかない。
(焼く・・・!)アロアノの杖を握り締め、至近距離にいる若島津に向けて突き出した。
その瞬間、杖は予期せぬ方向にぐいと引っ張られ
放射された火炎は若島津の腹の横を轟音を立てて素通りした。
「!?」
「な、何だンゴッ!!」
同時に、新八隊長のツッコミかかと落としが若島津の脳天に直撃した。
「ごの大馬鹿者ォ!!婦女子を怖がらせるとは恥を知れい!貴様それでも親衛隊かァ!」
(無実だ・・・)と心の中で突っ込みを入れながら地に伏す若島津。
新八はまもりの手から奪った杖を返し、
「君も、脅えなくていいから。ごんなもの仕舞いなさい」
と、濁声で言った。
まもりは痛む喉を押さえる。苦しい、でも、杖を使うなら相手が油断している今しかない。
(焼く・・・!)アロアノの杖を握り締め、至近距離にいる若島津に向けて突き出した。
その瞬間、杖は予期せぬ方向にぐいと引っ張られ
放射された火炎は若島津の腹の横を轟音を立てて素通りした。
「!?」
「な、何だンゴッ!!」
同時に、新八隊長のツッコミかかと落としが若島津の脳天に直撃した。
「ごの大馬鹿者ォ!!婦女子を怖がらせるとは恥を知れい!貴様それでも親衛隊かァ!」
(無実だ・・・)と心の中で突っ込みを入れながら地に伏す若島津。
新八はまもりの手から奪った杖を返し、
「君も、脅えなくていいから。ごんなもの仕舞いなさい」
と、濁声で言った。
ゴメンsage忘れた
「・・・・・・で、君あぞの杖で火を起ごぞうといで失敗じた、ろ。災難らったね」
「い、いえ・・・私が迂闊だったんです」
「志村、お前もう喋らない方がいいんじゃないか?」
その後、ボヤをくい止めるために消火活動を行った親衛隊。
先陣を切った隊長は煙を吸い込んで虫の息である。
そして休憩を兼ねて民家に入り、現在に到った。
畳敷きの和室の中央に瀕死の隊長が仰向けに寝転がり、それを挟んで若島津とまもりが座っている。
「驚かせちまって悪かったな。俺は若島津。こっちは志村・・・隊長だ」
「私は姉崎まもりです。こちらこそ本当にごめんなさい」
「済だごどべす。気じじだい゛でぐだじい(済んだ事です。気にしないで下さい)」
「でも・・・」
新八は寝転んだまま親衛隊必須アイテムの『通』と書かれたハチマキを懐から取り出した。
袴を破って作った手製のものらしい。
「ごべおぎびじ(これを君に)」
「え?・・・あ、ありがとうございます・・・」
「馬鹿ァァ!そんなもん渡すなよ!って、君もしなくていいからっ!こんなん入らなくていいって!」
閑話休題。
まもりが杖の実験に失敗したのは事実である。
説明書を読み、大きさからアウトドア用の大型ライターのような物だろうと解釈したまもりは
火力を確かめるべく近くの小屋で拾った廃材のひとつに向けて発射してみた。
ところが発射された火炎は思いの外威力が強く、そして運の悪い事に廃材には燃えやすい薬品が
染みこんでいた。燃え上がる火を消すために慌ててペットボトルの水をかけたが逆効果
粗末な小屋に瞬く間に有害な煙が充満し命からがら飛び出した、というわけだ。そこは正直に話した。
杖の機能を見られた以上、隠しても仕方がないし、相手方の情報を引き出すにはある程度自分を曝した方がやりやすい。
なにより、まもりには気になる事があった。
(この志村って人、京都で冴子が殺し損ねた男の子よね・・・ちゃんと生き残ってたんだわ)
眼鏡が曇り、顔は腫れて煤で真っ黒。まもりから杖を奪った一瞬の勇姿は幻のごとく。
よく見れば全身所々に怪我を負い、大分疲れている様子である。
(冴子にやられたのかしら、それとも、別の敵?大阪にいた子供?京都の紳士さん?)
(帽子の子はどこに・・・?)
「どーじらど?ぼぐどがおじらじがづい゛でるろ」
じっと見つめるまもりの視線に気付き、新八は起きようとする。
「いえ、あまりにも酷い顔の傷だったから・・・一体どこで襲われたんですか?」
「ぐぼぼばばぼ(いや、話すと長くなるんだけどね。そこの空手男がさぁ)」
「志村ァ!話は俺がするから、お前はうがいと休憩してこい!」
たしかに自分が誤解から新八を何度も殴打したのは事実だ。
ゲームに対する憤りを、仲間の死に対しての怒りを、激情のままに少年にぶつけてしまった。
そのことは充分悔いているし殴った数だけ(むしろ倍の)ツッコミを受けた。
女性を死なせてしまった件にしても正当防衛であるし新八が責められる云われはない。
しかし、それは今この場で少女に言うことだろうか。
一見して平静を装っているが、緊張で動作はぎこちなく、常にこちらの表情を伺っている。
見知らぬ男2人に対し過度に脅えているのが手に取る様にわかった。
まだ話すのは控えた方がいい。それに新八を静かな所で休ませないといちいちツッコミをいれて
(本人の)休息にならない。
若島津は風邪をひいたカバのような唸りで抗議する新八に水と毛布を押し付けて
部屋の外に追い出した。観念するまで、襖を抑え足音が遠ざかるのを確認すると
若島津は改めて、まもりと向き合った。
「正直に言うとアイツを殴ったのは俺だ。ちょっと誤解があってな、ケンカになった」
「・・・ケンカ、ですか」
「さすがにやりすぎたと反省はしてるよ。言っとくが俺も殴られたんだぜ?」
若島津は欠けた前歯を指差して笑う。
しかし、少女は笑うどころかいきなり2人きりの状況になったことで体の緊張を一層強めた。
女の子の扱いは難しい。若島津はケンカの原因を突っ込まれても困るから話題を変えた。
「君のほうこそ怪我は大丈夫か?」
「え?」
青年が自分のこめかみを指差している。
(ああ、冴子に殴られたんだっけ・・・)
「大丈夫です。たいした傷じゃありません・・・(どうしようかな、どうやって殺そう)」
まもりは突然青年と2人きりの状況に落ちた。でも、どうすることもできない。
アロアノの杖の能力は見られてしまったし、青年との体格差を覆し素手で戦うのは無理がある。
杖はカプセルの中にある。志村という少年の眼力に押されて片付けてしまった。
(たった2人きり相手に爆弾は勿体ないわ。これは切り札。まだ使えない。
この人たち、何か武器は持っているかしら)
手持ちの武器では殺せない。もっと、もっと情報を聞き出さなければ。
「大丈夫じゃないだろ、服なんかボロボロじゃないか」
身体を焼かれかけたというのに、すっかり同情している。とんでもないお人好しだ。
「あ、これは・・・ごめんなさい、自分の身体にまで気が周らなくて」
無我夢中で行動するうちに衣服のあちこちに付着した血や埃。傷。
いつの間にか怪しまれても言い訳の仕様がない格好になっていたが着替えなどない。
洗わなきゃと思う反面、まったくと言っていいほど自分に対する警戒をしないこの青年と少年には
呆れていた。
自分が殺さずともいずれ他の参加者に殺されるのではないかとまもりは思う。
「・・・大変だったんだな、女1人で。俺も志村も仲間亡くしたばっかでさ、
さっきの歌もなんつーか、弔いだーっ!てアイツは言ってたけど。
まあ、声出して動いてたほうが沈まないで行動できるしな。
でもいい加減、休息が必要だったところだ。君のおかげで、上手く休めたよ」
若島津は羽織っていたジャージを脱ぎ、まもりの小さな背にかけた。
まもりは思わず若島津の顔を見る。照れくさそうに「それ、やるよ」と笑った。
――――貰えない。まもりはそう言おうとしたが、顔が歪んでしまうのを恐れて、目を逸らした。
自分は殺意のないお人好しばかりと出会う。いっそ冴子のように憎しみに囚われた人間ばかりだったら
良心も痛まないのに。
若島津は特に気分を悪くした様子もなく話を続けた。
まもりは食糧事情に支給品、出身地や仲間の情報を聞く。同時に、自分の情報も行動に触らない程度に
小出ししていく。そして、話題は『脱出』に移った。
「俺たちと行動しないか?琵琶湖に行けば、この糞ゲームから脱出できるかもしれないんだ」
まもりの心臓が、大きく、跳ねた。
「本当かどうかはわからない。胡散臭い話だと俺は思う。でも万が一ってこともあるし
集まった人たちで協力すれば助かる可能性は広がると思う」
若島津は新八から聞いた藍染の脱出計画を語りだした――――。
(損ねた男の子よね・・・ちゃんと生き残ってたんだわ)
眼鏡が曇り、顔は腫れて煤で真っ黒。まもりから杖を奪った一瞬の勇姿は幻のごとく。
よく見れば全身所々に怪我を負い、大分疲れている様子である。
(冴子にやられたのかしら、それとも、別の敵?大阪にいた子供?京都の紳士さん?)
(帽子の子はどこに・・・?)
「どーじらど?ぼぐどがおじらじがづい゛でるろ」
じっと見つめるまもりの視線に気付き、新八は起きようとする。
「いえ、あまりにも酷い顔の傷だったから・・・一体どこで襲われたんですか?」
「ぐぼぼばばぼ(いや、話すと長くなるんだけどね。そこの空手男がさぁ)」
「志村ァ!話は俺がするから、お前はうがいと休憩してこい!」
たしかに自分が誤解から新八を何度も殴打したのは事実だ。
ゲームに対する憤りを、仲間の死に対しての怒りを、激情のままに少年にぶつけてしまった。
そのことは充分悔いているし殴った数だけ(むしろ倍の)ツッコミを受けた。
女性を死なせてしまった件にしても正当防衛であるし新八が責められる云われはない。
しかし、それは今この場で少女に言うことだろうか。
一見して平静を装っているが、緊張で動作はぎこちなく、常にこちらの表情を伺っている。
見知らぬ男2人に対し過度に脅えているのが手に取る様にわかった。
まだ話すのは控えた方がいい。それに新八を静かな所で休ませないといちいちツッコミをいれて
(本人の)休息にならない。
【三重県、山中/1日目・夜】
【新! 寺門お通ちゃん親衛隊】
【志村新八@銀魂】
[状態]:重度の疲労。全身所々に擦過傷。特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折。
顔面にダメージ。歯数本破損。キレた。 うがいして別室で休息中。
[装備]:拾った棒切れ
[道具]:荷物一式、 火口の荷物(半分の食料)
毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器)
[思考]:1、越前と琵琶湖で合流する。
2、藍染の「脱出手段」に疑問を抱きながらもそれを他の参加者に伝え戦闘を止めさせる。
(新八本人は、主催者打倒まで脱出する気はない)
3、まもりを守る。
4、銀時、神楽、沖田、冴子の分も生きる(絶対に死なない)。
5、主催者につっこむ(主催者の打倒)。
【若島津健@キャプテン翼】
[状態]:中度の疲労。拳に軽傷。顔面にダメージ。前歯破損。寺門お通ちゃん親衛隊ナンバー2。
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(食料一日分消費)、ベアークロー(片方)@キン肉マン
[思考]:1.まもりに藍染の話をする。琵琶湖に連れて行く。
2.翼と合流。
3.主催者の打倒。
【姉崎まもり@アイシールド21】
[状態]:殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)
以前よりも強い決意。
[装備]:
[道具]:高性能時限爆弾 装飾銃ハーディス@BLACK CAT アノアロの杖@キン肉マン
荷物一式×3、食料四人分(それぞれ食料、水は二日分消費)
[思考]:1、若島津の話を聞く。 『脱出』に心が惹かれている?
2、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
3、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
丁度その頃ヤムチャ達は、栃木で談笑中の塾長達を発見した。
「早速、殺っちゃいますか!!!」
まず、右腕の一指し指を軽く動かす。
それだけで、大空翼は醜く四散した。
続いて中指を動かす、江田島の顔が破砕した。
そして親指を立てる。承太郎の体があっという間に木っ端微塵に。
最後に手のひらをグーにする。雷電の全ての器官が破裂した。
「掃除終了!!!」
【ジョジョ@死亡確認】
【大空翼@死亡確認】
【江田島平八@死亡確認】
【雷電@死亡確認】
残り56.5人
351 :
カカロット:2006/03/27(月) 03:07:10 ID:5qkXqUJi0
お前がナンバーワンターレン
353 :
作者の都合により名無しです:2006/03/27(月) 17:11:21 ID:mD50JOwjO
むむむ
労いの言葉をかけてやると、ウォーズマンは有頂天になって報告を始めた。
既にDIOの『食事』は終わっていた。その結果、腹部の大穴は塞がり、失われていた右腕も復旧した。なにより気分がいい。
だが、ウォーズマンの報告が進むに従い、徐々にDIOは眉を顰める様な心境になっていった。
この機械男の証言は錯綜していたが、人間離れした身のこなしをするという少女。そして糸のような物を操りその少女の身体を溶解させたという別の女。
少なくともこの二人の存在は確かなのだろう、とDIOは思った。
偶然にしても出来すぎていた。このDIO以外にも吸血鬼がおり、またその天敵たる波紋使いまでも同時に参加している可能性があるということか。思い当たる人物は誰も居なかった。
気が付けば口唇が三日月型に歪んでいた。久々に思い出した“波紋使い”に“吸血鬼”という言葉。百年の想い出が甦る。
「フフフ・・・確かめなければならんな・・・このDIOの正体を知るモノがいるのなら・・・」
「―――ディッ!、DIOサマッ!?」
廃屋を出て歩き出すDIO。慌ててウォーズマンが追いかけてくる。
かつて友と認めた男がいた。奇妙な因縁の下で“ふたり”はやがて永遠を生きる“ひとり”となった。
風化して色褪せた過去。おもむろにDIOは首筋に刻まれた星型の痣に指を触れた。
【愛知県と長野県の境・山中の廃屋の外/1日目・夜中】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
状態:体力90%
装備:忍具セット(手裏剣×9)@ナルト
道具:荷物一式(食料の果物を少し消費)
思考:1.吸血鬼と波紋使いの真相を確かめに向かう
2.悪のカリスマ。ウォーズマンを利用する。
3.(・・・・・・・・。)
【ウォーズマン@キン肉マン】
状態:精神不安定・体力微消耗
装備:燃焼砲@ワンピース
道具:荷物一式(マァムのもの)
思考1.DIOについていく(有頂天)
2.DIOに対する恐怖/氷の精神
3.DIOに従う。
備考:廃屋の周囲の血痕は消してある。マァムの死体(ミイラ状態)は土に隠した。
【マァム@ダイの大冒険 死亡確認】
【残り70人】
356 :
作者の都合により名無しです:2006/03/30(木) 14:45:31 ID:XVLagrK+0
「―――ディッ!、DIOサマッ!?」→「―――ディッ!、DIOッ!?」
に修正お願いします
クレマチス
360 :
作者の都合により名無しです:2006/05/08(月) 02:59:49 ID:f+sfOj+NO
梅
361 :
作者の都合により名無しです:2006/05/08(月) 03:07:15 ID:f+sfOj+NO
埋め
362 :
作者の都合により名無しです:2006/06/03(土) 11:00:36 ID:e4N8ORIh0 BE:880948297-#
あ
1〜356は無効です。
364 :
ミスター7:2006/08/09(水) 18:14:06 ID:GVv4IUOj0
いまさら書きますが今はパート10まで行っています、残り43人です。
∩∩ パパノカオ
( ・x・) アヌス
ノ ̄ヽ
∪∪
ハッハッハ ∩∩
ウンコスルゾ(・*・ )
L ̄」
∪∪
366 :
作者の都合により名無しです:2006/09/13(水) 14:22:36 ID:cF63yGWJO
はーんしーんタイガーース
梅
a
369 :
作者の都合により名無しです:2007/01/11(木) 08:04:16 ID:5Q7CHAHo0
もう意味わからんな、このスレ
終盤は伏線をまとめる能力が要求されるからな
結局、大ブロシキを広げる書き手はいてもたたみきれる書き手がいなかったということだ。
一般的に後者の方が難易度が高く、該当人数もはるかに少ないから
こうなるのは必然。
最初期に広げられた無茶な大風呂敷
たたもうとすると叩かれる環境
離れる書き手
しゃーないよ
2ちゃんねる閉鎖でついに未完、か
切ねー
373 :
作者の都合により名無しです:2007/01/14(日) 05:00:14 ID:b+Mm+bR1O
ぬーべー!
叩かれて書く気をなくすようじゃ元々無理だったということだろう。
後半に適正のある書き手がいなかっただけで
中盤まではロワならではの見せ場や構成を十分堪能させてもらったよ。
元々ストーリーそのものには期待してなかったから完結の必要は感じないしね。
「自分の好きなところだけ書いていい」
「自分の書けるところだけ書いていい」
「自分が思いついた時だけ書いていい」
「自分の書けないところは書かなくていい」
上記の理由で自由度の高い序中盤は盛り上がるが、
ある程度の能力を要求される終盤は
ダメになるいつものロワのパターンだな。
それ+実力が要求されるからな。
>>374 馬鹿なこと言う前に、ここは投下スレだって事に気付け
>>377 馬鹿なこととは安い煽りだが
何かカンにさわったのかな
的外れな指摘の前に現状を理解しような。
>>378 内容以前にここはSS投下スレであって、今後の指針を話す場所じゃないってことじゃないの?
>>379 SSが投下されないスレでそんなこと言ってもなぁ
今後の指針を話てる人間がどこにいるのか知らんがw
感想議論スレがあるんだから、そっちで話せばいいじゃん。
要するにスレ違いって事。
まあそもそも、ここは埋めそこなったスレで、現行の投下スレですらないんだが…
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