燃え盛る炎の中に立つ殺し屋。
(ち・・・余計な足止めを喰らったせいで仙豆を見失ったわ・・・。仕方ないあの小僧のことは諦めるか。)
内臓の痛みが桃白白の怒りを増幅させる。
(ぐぬぅ。今誰かと戦闘になるのは不味いな・・・。この炎を見て集まってくる輩も多かろう・・・。早めに立ち去るか)
逃げるならできるだけ広い所、人気の無いところだな・・・。
痛む身体に鞭を打ち殺し屋は走る。人の気配が少なそうな北へ北へと。
森の中をひたすら走る桃白白。
彼は既に福島県中部までやって来ていた。
「ここまで来れば・・・」
もう炎は見えない所まできていた。
逃げる最中に誰とも鉢合わせなかったのは不幸中の幸であろうか。
(くそ・・・ますます痛みが・・・。内臓のダメージが思ったよりひどいな・・・このままでは動かなければならないときに動けなくなってしまう恐れがあるな・・・)
そう考えた桃白白はひとまず己の身体を最低限戦闘が行えるまで回復させようと考え、
近くの洞窟に隠れ身体を休めることにした。
このような何もない洞窟に人が来る可能性は少ない。彼はそう踏んでいた。
(くっくっく・・・既に30億・・・無理をせずともよいわ。いくら殺しても生き残らねば仕方ないからな・・・)
北の大地から一つの影がかけぬけていった。
彼の邪眼は全てを見通す魔性の目。
己の能力を捨て去ってまで手に入れた力。
己の不幸の元凶に復讐をするために手に入れた力。
己の不甲斐なさに対する罰として手に入れた力。
その魔性の目は、この特異な空間の為全てを見通すことは不可能となっていた。
彼は氷女から生まれし異端の炎妖。
今やその邪眼は己が最も馴染みのある炎・・・すなわち高熱量体を補足するだけの能力となっていた。
その目は森で戦う殺し屋と二人の子供を捉えた。
一人の少年は命を散らせ、もう一人が西へ
そして殺し屋、桃白白が自分の居る方向の北へと向かっていることを知った。
彼はすぐにでも誰かを殺したい衝動に駆られていた。
それはこのゲームが始まって初めて与えられた屈辱・・・ピッコロ大魔王との戦いでの敗戦が原因ではなかった。
彼の頭に声が響く。
その声が彼を抑えがたい殺人衝動を駆り立てる。
彼はすぐさま誰かを殺したかった。
それには自分の方に向かってきているこの男が好都合・・・正に絶好の『餌』であった。
──ズキン
(くっ・・・)
──ズキン、ズキン
彼にはいつしか頭痛が起きるようになっていた。
その痛みは次第にその大きさを強めていた。
一体いつから?
このゲームに乗って初めて敗北したときから?
いや、違う。
かつて忌み嫌った里の者の同族であるあの娘を殺した時からか・・・。
───生きて戻ってきて・・・最初に私を殺してね
(黙れ・・・)
それは里から忌み子として捨てられたときの記憶
───それが氷菜へのせめてもの償いになる
(なんであの時の記憶が今頃・・・)
そしてまた頭痛が酷くなってきた。
頭の中で誰かが問いかける。
「なぜあの雪女を殺した?」
(俺を捨てた里の同族だ・・・)
「じゃあ何故お前は後悔している?」
(後悔などしてない)
「嘘だ」
(・・・黙れ)
「お前はもう里のものに復讐する気なんてなくなっていたんだろ?」
(・・・)
「何故殺した?」
(・・・・・・・・・)
「お前が弱いからだ」
(俺が・・・弱い?)
「そうだ。弱いからお前はコロス」
(だまれ・・・)
「弱いんだよ・・・お前は」
(だまれぇぇぇぇぇぇっぇぇ!!!)
それがなんだったかはわからない。
後悔から生まれたものか、それとも何か・・・別の何かだったのかもしれない。
昔は、よくこういうものを聞いていた気がする。
だが、思わぬ出会い、妙な人間との戦いを経ていくうちにいつしか声は聞こえなくなっていた。
しかし、再び聞こえるようになった声はより大きく、
それは更に飛影の感情を逆撫でした。
魔界に落とされた忌み後、負の感情で生き抜いた時代。
飛影の心は嘗ての闇に再び覆われようとしはじめていた。
洞窟の中で身体を休める桃白白。
外から強大な殺気、怒気、闘気を隠すことなく放って近づいてくる少年を彼は見とめた。
(ちっ・・・まずいな)
なぜこの洞窟に近づいてくるのかはわからないが
敵の力量がわからぬ今、大怪我を負っている自分は不利だと考えた。
今は無駄な体力を消耗したくないというのが本音であった。
近づいてくる少年の目はどこか虚ろであった。
(まだ、俺を発見できていないのか・・・?ならば好都合・・・物陰からやつをショットガンで蜂の巣にしてくれるわ)
そう考え、洞窟の陰に身を潜める。
少年は無作為に洞窟に入ってくる。
(あと5歩だ・・・あと4歩、あと3歩・・・いまだ!)
勢いよく陰から飛び出しショットガンを放つ。
パララララララ
小気味よい音とともに、無数の弾丸が少年の身体を貫いていく。
「はっはっは!!これで更に10億とは。笑いが止まらんわ!っはっはっはっは!!!」
洞窟に笑い声がこだまする。
「黙れ・・・」
その静かな声は高笑いする男の横から聞こえた。
男がそちらの方向に目を向けたときに、既にその刃は男の二の腕に迫っていた。
「くぅっ・・・馬鹿な!」
咄嗟に身を翻して、腕がなくなるのは避けた。
が、その腕からは夥しいほどの出血をしていた。
「く・・・わかった・・・許してくれ!わしはもう闘えん・・・許してくれ!」
それはもちろん桃白白がついた嘘だった。
「ほら、銃ももう棄てる・・・。頼む!助けてくれ!!」
ガチャンと不気味な金属音を立て彼の持っていた銃器が洞窟の床に落ちる。
(ふっ・・・さぁ銃をとって立ち去れ・・・お前が背を向けたときに後ろからとっておきのドドン波をおみまいしてくれるわ)
104 :
惑う影<:2006/02/12(日) 22:47:13 ID:0Xmw4bTv0
少年は近づいてゆく。
(くっくっく・・・騙まし討ちとて実戦じゃ。文句はあるまいな)
笑みがこぼれそうになるのは桃白白は必死にこらえていた。
しかし彼の考えとは裏腹に飛影は何も聞いていないかのように、いや桃白白が銃を置いたことすら気づいていないのか?
銃に目を移らせることもなくただただ桃白白に忍び寄っていく。
「黙れ・・・」それは桃白白に放った言葉ではなかった。
今も少年の頭に反響しつづける声。
それが彼を余計にイライラさせた。
「どいつもこいつも・・・イラツくぜ」
少年は足元の銃を無視してなおも桃白白に近づいてゆく。
(くっ・・・バレたか!?・・・仕方ない)
「死ね!!ドドン波!!!!!!!!!!!!!!」
そう言い放つと少年のほうに光線が放たれていった。
しかしその光線が捉えたのは少年の陰。
洞窟の壁に当たったその光線は暗がりの洞窟を一瞬明るく染めた。
そこに移ったのは正に狂気ととれる少年の表情。
少年は最早、己の手の届く位置にいる。
(くっ!!!ヤバイ!!!)
殺人による報酬に意味を持って取り組む桃白白とは違い、殺人という行為に意味を求める凶気の表情。
その凶気は修羅場をくぐってきた桃白白をも呑みこんでいく。
そして禍々しい妖気が少年の刃に集まっていく。
「どうりゃぁぁぁ!」
咄嗟に放ったケリは少年の持っていた刃を弾き飛ばした。
しかし追撃はできなかった。
内臓にかかる負担に桃白白は歯を食いしばった・・・。
(くっ・・・しかし刀は飛ばした・・・。見たところ奴は剣士・・・剣をとりに行かねばなるまい・・・)
しかし少年はその場に立ち尽くしていた。
そして小動物を見るかのように、冷たい目で見下ろし続けていた。
「邪王・・・」
(な、なにかくる!ガードを・・・)
「炎殺煉獄衝!!!」
炎で覆われた少年の拳は、桃白白をガードの上から焼き尽くした。
「ぐおぉぉぉぉ!!!こ、こんなところで!!!おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
その炎は茨城の森で赤く赤く燃え盛る炎とは対照的な、
黒く、そして禍々しい炎であった。
凶器の炎は狂気の男を呑み込み更に大きく、更に禍々しく燃え盛る。
その炎の前に立ち尽くす少年の目には
この炎と同じように凶気が宿っていた。
燃え盛る炎に一瞥をくれることなく少年はその場を立ち去っていく。
──ズキン
少年の頭痛は今も治まらない。
「くっ・・・いらいらするぜ」
飛影が次のターゲットを探しに行こうとする時だった。
彼はとてつもなく大きな妖気が生まれるのを感じた。
邪眼を使わずとも、魔界に住んだことがある妖怪ならば肌で感じることができる、それほどに大きい。
こんな妖気を放つ妖怪とはあったことがないはずだ・・・しかし彼はその妖気をどこか懐かしいような感じを感じていた。
そしてその妖気に身をゆだねている間、彼の頭痛は確かに収まっていた。
「幽・・・助・・・?」
そんなはずはないと思いながら、彼はその正体を確かめずにはいられなかった。
影はまた飛んでいく。
【山縣県 洞窟/午後】
【飛影@幽遊白書】
[状態]頭痛、中程度の疲労
[装備]マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
[道具]荷物一式、燐火円レキ刀@幽遊白書
[思考]1、巨大な妖気のもとを確かめにいく
2、幽助と決着を付ける
3、強い奴を倒す
4、氷泪石を見つけだす
【桃白白@ドラゴンボール 死亡確認】
【残り8?人】
備考:桃白白の持っていたものは全て洞窟に残してあります