ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.6

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1作者の都合により名無しです
このスレは週刊少年ジャンプのキャラクターで所謂バトルロワイアルのパロディをしようという企画スレです。
これはあくまで二次創作企画であり、集英社や各作品の作者等とは一切関係ありません。
それを踏まえて、みんなで盛り上げていきましょう。

※ここはSS投下専用スレになります。感想、議論は下のスレでお願いします。
ジャンプキャラ・バトルロワイアル感想議論スレ PART.13
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1139374634/

前スレ
ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.5
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1137897651/

ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.4
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1132239130/
ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1123891185/
ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART.2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1121088002/
ジャンプキャラ主人公&ヒロインバトルロワイアル
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1115216913/
ジャンプキャラ・バトルロワイアルSS投下専用スレ PART.1
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1119971124/
ジャンプキャラ・バトルロワイアル準備スレ PART.2
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1116767239/
ジャンプキャラバトルロワイアル準備スレ PART.3
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/cchara/1117638620/
2作者の都合により名無しです:2006/02/10(金) 02:31:14 ID:yooEW2eM0
【注意事項】
なお、
4/4【封神演義】○太公望 /○蘇妲己 /○竜吉公主 /○趙公明
のキャラクターに関しては、

http://chat.mimora.com/common/chat.mpl?roomnum=245041

ここにいる長老会に全てを任せるか、
もしくは相談してから小説を書くことを推奨します。
3テンプレ:2006/02/10(金) 02:54:15 ID:8KqZRN2i0
2/4【こち亀】○両津勘吉 /○秋本麗子 /●中川圭一 /●大原大次郎
3/4【NARUTO】○うずまきナルト /○春野サクラ /○大蛇丸 /●奈良シカマル
3/4【DEATHNOTE】○夜神月 /○L(竜崎) /○弥海砂 /●火口卿介
4/4【BLEACH】○黒崎一護 /○藍染惣右介 /○更木剣八 /○朽木ルキア
3/4【ONE PIECE】○モンキー・D・ルフィ /○ニコ・ロビン /○ウソップ /●道化のバギー
1/4【銀魂】●坂田銀時 /●神楽 /●沖田総悟 /○志村新八
4/4【いちご100%】○真中淳平 /○西野つかさ /○東城綾 /○北大路さつき
2/4【テニスの王子様】○越前リョーマ /●竜崎桜乃 /●跡部景吾 /○乾貞治
3/4【アイシールド21】○小早川瀬那 /○蛭魔妖一 /○姉崎まもり /●進清十郎
2/4【HUNTER×HUNTER 】○ゴン・フリークス /●ヒソカ /○キルア・ゾルディック /●クロロ・ルシルフル
4/5【武装錬金】○武藤カズキ /○津村斗貴子 /●防人衛(C・ブラボー) /○ルナール・ニコラエフ /○蝶野攻爵(パピヨン)
1/5【SLAM DUNK】●桜木花道 /●流川楓 /●赤木晴子 /●三井寿 /○仙道彰
3/4【北斗の拳】○ケンシロウ /○ラオウ /○アミバ /●リン
2/4【キャプテン翼】○大空翼 /●日向小次郎 /●石崎了 /○若島津健
4/4【キン肉マン】○キン肉スグル /○ウォーズマン /○ラーメンマン /○バッファローマン
4/4【ジョジョの奇妙な冒険】○空条承太郎 /○ディオ・ブランドー /○エリザベス・ジョースター(リサリサ) /○ブローノ・ブチャラティ
3/4【幽遊白書】○浦飯幽助 /○飛影 /○桑原和馬 /●戸愚呂兄
4テンプレ:2006/02/10(金) 02:55:00 ID:8KqZRN2i0
2/4【遊戯王】○武藤遊戯 /●海馬瀬人 /●城之内克也 /○真崎杏子
1/4【CITY HUNTER】●冴羽リョウ /●伊集院隼人(海坊主) /●槇村香 /○野上冴子
4/4【ダイの大冒険】○ダイ /○ポップ /○マァム /○フレイザード
4/5【魁!!男塾】●剣桃太郎 /○伊達臣人 /○富樫源次 /○江田島平八 /○雷電
2/4【聖闘士星矢】○星矢 /●サガ /●一輝 /○デスマスク
2/4【るろうに剣心】○緋村剣心 /○志々雄真実 /●神谷薫 /●斎藤一
6/6【DRAGON BALL】○孫悟空 /○クリリン /○ブルマ /○桃白白 /○ピッコロ大魔王 /○ヤムチャ
4/4【封神演義】○太公望 /○蘇妲己 /○竜吉公主 /○趙公明
1/4【地獄先生ぬ〜べ〜】○鵺野鳴介 /●玉藻京介 /●ゆきめ /●稲葉郷子
4/4【BLACK CAT】○トレイン・ハートネット /○イヴ /○スヴェン・ボルフィード /○リンスレット・ウォーカー
3/4【BASTARD!! -暗黒の破壊神-】○ダーク・シュナイダー /○アビゲイル /●ガラ /○ティア・ノート・ヨーコ
2/5【ジャングルの王者ターちゃん】○ターちゃん /●ヂェーン /●アナベベ /●ペドロ・カズマイヤー /○エテ吉
3/4【とっても!ラッキーマン】○ラッキーマン(追手内洋一) /●勝利マン /○友情マン /○世直しマン
3/4【世紀末リーダー伝たけし!】○たけし /○ボンチュー /●ゴン蔵 /○マミー

89/130 (○生存/●死亡)
5テンプレ:2006/02/10(金) 02:55:35 ID:8KqZRN2i0
6作者の都合により名無しです:2006/02/10(金) 03:04:08 ID:KO1TxCfu0
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
 開催場所は作られた「ミニ日本」であり現実世界ではない。海上に逃れようと閉鎖空間の壁にぶつかり脱出は不可。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」

 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
 「地図」 → 白紙、禁止エリアを判別するための境界線と座標のみ記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。 (デスノートへの記入含む)
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。 (ただし写真なし。デスノート対策)
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。

※「ランダムアイテム」は作者が「エントリー作品中のアイテム」と「現実の日常品」の中から自由に選んでください。 
 必ずしもデイパックに入るサイズである必要はありません。
 また、イベントのバランスを著しく崩してしまうようなトンデモアイテムはやめましょう。
7作者の都合により名無しです:2006/02/10(金) 03:05:09 ID:KO1TxCfu0
【「首輪」と禁止エリアについて】
 ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている。
 首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ。(例外はない)
 開催者側はいつでも自由に首輪を爆発させることができる。
 この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている。
 24時間死者が出ない場合は全員の首輪が発動し、全員が死ぬ。
 「首輪」を外すことは専門的な知識がないと難しい。
 下手に無理やり取り去ろうとすると首輪が自動的に爆発し死ぬことになる。 
 プレイヤーには説明はされないが、実は盗聴機能があり音声は開催者側に筒抜けである。
 開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると首輪が自動的に爆発する。

【放送について】
 放送は6時間ごとに行われる。放送は魔法により頭に直接伝達される。
 放送内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」「過去6時間に死んだキャラ名」「残りの人数」
 「管理者(黒幕の場合も?)の気まぐれなお話」等となっています。

【能力の制限について】
 超人的なプレイヤーは能力を制限される。 また、超技術の武器についても同様である。

 ・攻撃制限例(ドラゴンボール)
  エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル
  かめはめ波の威力→マグナムよりは強い。大木が1本倒れるくらい。
  元気玉の威力→……使えるのか?使えたとして、半径50m位のクレーターが出来る。

 ・耐久度制限例
  一般人の強さを1として
  一般人→1
  超人→3(普通の銃では致命傷にならない。ショットガンクラスが必要)
  人外→5 (拳銃程度なら怯むだけ。マグナムクラスで気絶)
8作者の都合により名無しです:2006/02/10(金) 03:06:24 ID:KO1TxCfu0
・超人的な再生、回復能力を持つキャラの制限(※一般人には適用されません)
  軽度の銃創…安静にしていれば数十分で癒える。
  骨折…安静にしていれば数時間で癒える。
  重度(目や肺)の銃創…安静にしていれば1日で癒えるが体力消耗
  切断(腕や脚)…切られた部分をくっつけて置いて、安静にして丸1日を要する。
  再生…瞬時に再生できるが体力を相当消耗する。 体力回復は1日や2日では無理
  切断(胴や首)、銃弾心臓or脳貫通…シボンヌ
 
・魔法や気などの威力制限案
  エネルギー弾の威力→普通の拳銃レベル。連発も可能。
  必殺技の威力→木が1本倒れるくらい。けっこう消耗する。
  超必殺技の威力→一般家屋破壊。消費も凄まじい。1日1発が限度。

【舞台】
主催者3キャラの作った仮想空間が舞台で
面積は東京23区の半分程度(80u)
地形は日本列島(沖縄県、他島は除く)
   季節は北海道 冬   日本海側 秋
      太平洋側 秋  九州、四国 夏 

乗り物は列島の端と端をつなぐ無人蒸気機関車が定期的に走っている。

都市部はあるが無人。主催者側が人間の世界を模して作成したものなので
実際に生活できるようには作られていない。人の痕跡なし。ガス、水道、電気
食料なし。建物が密集しており隠れるのに最適……かもしれない。

海は移動禁止区域。入ると脱出者とみなされて首輪爆発。
9作者の都合により名無しです:2006/02/10(金) 03:08:25 ID:KO1TxCfu0
【作中での時間表記】
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【SSを本スレに投下する時の注意事項】
 ・書き手はあくまで『リレー小説』である事を考えてストーリーを書きましょう(整合性を考えて!)
 ・投下する際は他の人が考えてるSSと被らない様に、なるべくSSに出てくるキャラの予約をして下さい。
 ・予約の際、登場させるキャラは全て明記しましょう。他の人とのトラベルを避けるためです。
 ・予約の期限は3日まで。期間中に書ける自信がない人は無謀な予約は控え目に。
 ・SS投下後は修整を求められる事等があるため投下する時は『トリップ必須』です。
 ・基本的なルールは他のSS、まとめサイト、感想スレを一読して参考にして下さい。
私の名前はリンスレット・ウォーカー。
自分で言うのもなんだが、美しき女泥棒である。
さて、私がこんなわけのわからない殺人ゲームの舞台につれてこられて早半日。
私を取り巻く状況は、徐々に悪い方向へと変化してきていた。
今、私の横には深刻な顔で椅子に座るブルマ。そして、目の前のベッドには小柄な坊主頭の青年が寝ている。
問題なのがこの青年。
ブルマの知り合いで、名前をクリリンと言うらしいのだが、このクリリンが……どうやらゲームに乗ってしまった殺人者らしいのだ。
目の前に殺人者かもしれない人間。
なぜこんな状況になってしまったか説明するには、時間を少し遡る……
時刻は正午過ぎ。
新たな死者を告げる第二放送が流れ、また多くの参加者が死んだことを知った。
幸いにも、トレイン、スヴェン、イヴ、私の知り合いである三人はまだ健在のようだ。
行動を共にする彼女、ブルマの知り合いも無事。
しかし彼、アビゲイルは違った。
ガラ……と、放送でその名が呼ばれた瞬間、彼の難しそうな顔がより険しくなった。
私は、彼とガラという人間がどういう間柄かはよく知らない。
別段悲しそうな姿は見せなかったが、それは単に虚勢を張っているのか、それとも対した知り合いではなかったのか。
どちらにしろ、私が訊くべきことではないだろう。
彼がなにも喋らない以上、余計な気を回すのは野暮と言うものだ。
ただ、放送後のの空気がほんのちょっと重くなっただけ。
そして、問題はここから。

――ズドオオォーーーーンッッッ!!!!!!

突如鳴り響いたのは、轟音。

「な、なに!? なんなの今の音!?」
映画かなんかの撮影!?……いや、そんなものじゃないのはわかりきってる。
でも考えたくない。だって、この状況であんな大きな……爆発音としか思えない音が鳴るなんて!
「まさか……」
一言つぶやき、音のした方へ駆け出すブルマ。
まさか? まさかってなんなのよブルマ? なんか心当たりあるの!?
「ふむ。どうやら近くで戦闘が起きているようですね。私たちも追いましょう」
マジぃ!?
結果は案の定。
轟音の元に駆けつけてみれば、ボロボロな姿で倒れている男が二人。
一人は小柄な坊主頭。もう一人は大柄な坊主頭。
……ちょっと、どう見ても戦闘しましたよ、はい。ってな感じなんだけど!
「クリリン君!」
ブルマが叫んだ。
これが、さっきの「まさか」の意味? 倒れていたのはブルマの知り合いってことなの?
と、よく見るともう一人いる。倒れる二人の男のそばに、別の男が一人。
倒れる二人見下ろしながら、その視線を……こっちに。こっち!? こっち見たぁ!?

「二人とも、下がって」
男の視線がこちらに向けられると、駆け寄ろうとしたブルマを遮り、アビゲイルが私たちの前に出る。

……ねぇ、やばいんじゃない、これ。
倒れる二人のそばに、男が一人。しかもあの男、鎌か槍かよくわからないもの持ってるんですけど……どう見ても武器よね、あれ。
この状況をどんなに希望的に観測したとしても……
倒れている二人――死体。
男――二人を殺した殺人者。
よね、やっぱり!?
そして今度は私たちを見つめて……やばいやばいやばいって!
「我々は先ほどの轟音を聞いて駆けつけたのですが、そちらの二人は死んでいるのですかな?」
殺人者(仮)に話しかけたのは、アビゲイル。

「ちょ、こんな時になに悠長に質問してるのよ!?」
私はすぐにでも逃げたいのにぃ〜!

「こっちのデカイのは死んでいる。こっちのチビはどうやら気絶しているだけみたいだぜ」
その言葉を聞いて、ブルマの表情が和らいだ。どうやらあの小柄な方がブルマの知り合いで間違いないようだ。

「そうですか。……では、それはあなたが?」
「いや、違う。俺もあんたらと同じ、さっきの音を聞きつけて、今ここに来たばかりだ」
男は殺害容疑を否定。って、信じられるわけないでしょうが、普通。

「次は俺からも質問させてもらう。……あんたらはこのゲームに乗っているのか?」
「はい、と答えたら?」
アビゲイルが即答。……へ?

「ちょっと! 今は冗談言ってる場面じゃないでしょ!? 乗ってない、乗ってないわよこんなゲーム!」
私が男に必死に訴えかけるも、
「俺の前に立つようなら……こっちも容赦はしねぇ」
どうやら私の言葉は聴く耳持たず。男は武器を構えてやる気満々。
だぁぁ〜! なんてこと言うのよ、このおっさんはぁ!
「ふふふ……いや失礼。少しあなたを試させてもらいました」
「試しただと?」
「ええ。二人とも、安心してください。どうやら彼の言っていることは本当のようです」
アビゲイルが首をぐるんと回してにっこり笑う。な、なんなのよその気持ち悪い笑顔は。
「私たちに戦意はありませんよ。私の名前はアビゲイル。あなたは?」

「……男塾一号生筆頭、伊達臣人」
まったく! あのおっさんのおかげで寿命が縮んだわよ!
あの男――伊達臣人は、本当に殺人者ではなかったらしい。
なんでも、男塾ってところ(うわ、汗臭そうなところっ)の仲間を探して西から東に向かっていたところ、あの轟音を聞いて駆けつけてきたらしい。
ひょっとしたら、仲間が戦っているのかもしれない、と。
要するに、私たちと同じ理由であの場にいたらしいのだけれど、はっきりいってそれを照明できるものはなにもない。
けれどアビゲイルは「大丈夫、彼は嘘をついていません」と言う。
一体なにを根拠にそんなことを。男同士でしかわかり得ないものでもあるのだろうか?

お互いが戦う気がないと確認したところで、アビゲイルが伊達に情報交換を持ちかけた。
状況が状況。私たちが見つけた真っ二つ死体の殺害者が、もしかしたらまだ近隣にいるかもしれない。
情報と味方は大いに越したことはない。
が、彼の口から得られたのは、私にとってはいらない情報だった。
彼は、現在私たちがいる地区……福井県と言う場所で、私たちが見つけたものとは別にもう一体、死体を見つけたというのだ。
厳密に言えば、死体と呼ぶにも疑わしいような無残な姿だったらしいのだが……そばに支給品らしきカードが置いてあったらしいので、ほぼゲーム参加者と見て間違いないだろう。
私たちが見つけた死体。伊達が見つけた死体。そして先ほど発見した大坊主の死体。
この福井県だけで死体が三つ。
しかも、胴体真っ二つ、人体粉々、心臓一突きと、どれも尋常でない殺され方をしている。
もしこれが全て同一人物の仕業となると……その人間は果てしなく危険な存在。
そして現段階で最も疑わしい人間が……そこにいる。
私たちは、近くの適当な民家に、気絶中の坊主頭の青年を運ぶことにした。
今は、外ではアビゲイルと伊達が大柄坊主頭の死体を埋葬中。中で私とブルマが彼を看ている。
私としては、死体を見なくて助かるのだが……この役回りもいいとはいえない。
ブルマの話によると、やはり坊主頭は青年は彼女の知り合いで、名をクリリンと言うらしい。
クリリン――そう、私たちが出会った少女、北大路さつきを襲った相手と思わしき人物である。
ブルマは、彼がそんなことをするはずはない、と主張していたが、さすがに条件が一致しすぎている。
北大路さつきの証言――見た目は若く、背は低く、服に『魔』の一文字……加えてそばにあった死体。
これで疑うなと言うほうが無理である。
横で座ってるブルマも、なんだか深刻な顔してるし……

「ねぇ、リンス」
「な、なに」
「私ね、さっきは絶対違うって言っちゃたけど……」
「う、うん……(うわっ、なんか嫌な予感)」
「やっぱり、私たちが見つけた死体も、クリリン君のそばにあった死体も」
「…………(ちょ、ちょっと……なにを言い出す気なのよ)」



「彼が、犯人で間違いないと思ってる」
やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!?

「じゃあ、今この人が目覚めちゃったら、私たち危険じゃない!?」
「私はクリリン君のことをよく知ってる。少なくとも、こんな殺人ゲームに乗るような人間じゃない」
「でも間違いないんでしょ!?」
「きっと理由があるのよ。なにか……じゃなきゃ、彼がこんなことするはずないもの」
「……!」

ブルマの瞳から、涙が一滴、垂れた。
泣いているわけではないが、涙ぐんでいる。
それもそうか。
自分の知り合いがこんなくだらないゲームに乗って、殺人者成り下がってしまったのだ。
悲しみは、当たり前。

でも……でもでもでも!
やっぱこの状況はまずいって!
私は、このクリリンって人のことなんてこれっぽっちも知らないんだからぁ!
目覚めていきなり襲われるなんてことないでしょうね!?
「うっ……」突如聞こえた、聞きなれぬうめき声。

へ?

「クリリン君!」ベッドに駆け寄るブルマ。

へへ?

「こ、ここ、は……?」うっすら目を開くクリリン。

……ちょ、

――ベッドに横たわる青年が、ゆっくりと、その身を起こした。

ちょっと待ってよぉぉぉぉぉぉ!!?



【福井県・民家の中/午後〜夕方】

【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]:疲労困ぱい、気は空
:わき腹、右手中央、右足全体に重傷
:精神不安定
[装備]悟飯の道着@ドラゴンボール
[道具]:なし
[思考]1:状況確認。
2:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
3:ピッコロを優勝させる 。
【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め32発)
[道具]荷物一式
[思考]1、クリリンを警戒。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。

【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態]健康
[道具]:荷物一式
:ドラゴンレーダー@DRAGON BALL :首輪
[思考]1、クリリンに殺人を止めるよう説得。
2、大きな都市に行って、ドライバーのような物を入手し、首輪を解析・ドラゴンレーダーを改造する。
3、ゲームを脱出。
【福井県・民家の外/午後〜夕方】

【アビゲイル@BASTAD!!】
[状態]健康、海坊主を埋葬中
[装備]雷神剣@BASTAD!!
[道具]荷物一式
[思考]1、D・S達、協力者を探す。
2、首輪を入手して分析したい。
3、ゲームを脱出。

【伊達臣人@魁!!男塾】
[状態]:軽度の火傷、行動に支障無し、海坊主を埋葬中
[装備]:首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜
[道具]:荷物一式、
   【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】
    衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす       ×1
    漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
    左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす                ×1
[思考]:1、とりあえず、海坊主の埋葬につき合う。
2、剣桃太郎を倒した者との決闘。
3、男塾の仲間と合流。
4、ゲームに乗る気は無いが邪魔をするヤツとは躊躇なく戦う。

※戸愚呂兄の死体のそばにあったカードは伊達が回収しましたが、死体は放置してあります。
※クリリンの荷物[荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT]、
排撃貝(リジェクトダイアル)@ワンピース、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)、その他の海坊主の荷物[荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@ドラゴンボール]は民家の中に置かれています。
「苺君、大丈夫?」
「あぁ…ワガママ言ってすまねェな。…だから、苺じゃねぇって…」

 声の主は、オレンジ色の頭髪の青年と、黒髪の青年。二人が居たのは、東京と埼玉、千葉の県境の更地。
青年、黒崎一護。青年、真中淳平。彼らがいるのは埼玉と千葉、茨城の県境へと続く道の上。

 あの後、しばし。江田島は未だ戻らず。火勢が強くなったのが、おぼろげに匂いで感じられた頃。なんらかのアクションが必要となった頃。
二人は、避難するのではなく、逆に火元と思われるところへ向っていった。それは、一護のたっての希望。誰かを護りたいという、名に込められた、強い意志。

 護りたいものが、ある。それは、二人の共通の意思。護るだけの力が無い真中、護ることのできなかった一護。
護ることができなかった。それが、一護の悔恨の根底。護るだけの力がない。それが、真中のやるせなさの源泉。
共に抱くは、己の無力と不甲斐なさ。そして、今。また、誰かが、傷つけられているかもしれない。

 それは予感。確信は、遥か、遠くから、流れ来る、闘いの狼煙と共に。

 二人の考え。それは、どうにかして、護りたい、護るべき人と合流したい、ということ。
今の自分たちには、誰かを護る力が無い、というのは事実。情けない話だと解っているが、それは現実。

 ―――今の自分たちでは、誰も護れない―――

ならば、せめて。助けを待つ誰かを、江田島のもとへ送り届けられれば、というのが一護の希望。
その志を無碍には出来ないだけの時間は、既に築きあげられていた。

 分かっている。二人とも。それが、どれだけ無謀なことなのか。
 分かっている。二人とも。それが、どれだけ望みの薄いことなのか。

 それでも、二人は進む。護りたい人が居るから。共に、自分は護られてばかりだと痛感しているから。

「江田島のオッサン、大丈夫か…?!」
「なんでか俺たちより先にいて、名乗りを上げてても驚かない気がするなぁ」
「違ぇねェな…」
「書置きは残してきたし…というより、苺君の方が心配なんだけど…東城と西野とさつきの次ぐらいに…あと、こずえちゃんと、唯と…」
「多いよ!それはその他一般っつうんだよ!!」
「まぁ、冗談は置いといて…少しでもヤバイと思ったら引き返すぜ。流石に、苺君を担いだまま炎に巻かれちまったら逃げられそうに無いし」
「すまねェ…っていうか、何度いったら呼び名を改めんだ、テメェはッ!!!」
「まぁまぁ…悪いけど、俺、苺君と燃えるような関係になるのは、ちょっと…」
「おーい、話が繋がってねーぞー…ヤクでも決めてんのか?」
「でも、苺パンツと共に死ぬってのもロマンチックかもなあ」
「だから!!!俺のパンツは苺パンツじゃねぇ!第一、それはロマンチックとは言わねェ!!!」
「残念…御洒落…もとい、オサレなのはその包帯だけか…」
「人の話を聞けェッ!!つーか、何で言い直したァッ!!」
 二人は進む。真中は一護に肩を貸しつつ、頼りなくよろめきながら。一護は、痛々しい傷跡を、簡素な布(平八によって引き千切られた一護の上着)で
申し訳程度に隠しながら。二人は進む。その歩みは、まるで這っているようで。その眼差しは、心引き裂かれているようで。

 互いに軽口をたたきながら。折れそうな足を引き摺りながら。折れそうな心を支えながら。二人は進む。
進む先に、目指す人が…護りたい女(ヒト)が…救うことができる存在(ヒト)が。きっと居る、と。
確かに居る、と。そう思って。そう信じて。そう願って。

 二人は進む。確かに進む。這いずるように、喘ぐように。希望に縋り付くかのように。

 …未来に喰らいつくかのように。絶望に引き込まれるかのように。
「でも、苺ってラブコメに出てきそうな名前じゃん。俺はいいと思うけどなぁ」
「あ〜、分かった。分かった。…もう苺でいい…」
「うー、遅刻遅刻。今学校に向って全力疾走している俺は空座高校に通うごく一般的な…」
「って、なんで寸劇始めてんだよ!ていうか、なんかいやな予感がプンプンするよ!!」
「…突然、電信柱の陰から出てきた転校生と正面衝突!宙を舞う食パン!」
「って、無視して進めんな!あと、なんだそのありふれたパターンは!!」
「触れ合う指先!絡み合う視線!!熱い吐息…そこに煽りで大きな写植が!!」
「なんでそうなるんだよ!接近早すぎるだろ!!」
「なんと、転校生はヤンキーだった!!…写植は”!?”で決まりだな」
「写植?!って、メンチきってんのかよ!?ていうか、転校生って男かよ?!ていうか、斬新すぎんだろ!!?ラブコメはどこいったんだよ?!」
「お互いに胸倉を掴み合った姿勢で、ヤンキーは呟く…”YA RA NA I KA”」
「だからといってラブコメに戻すなァァァァァァッッッッ!!!!」
「…まさに新機軸!!次の文化祭はこれに決まりかな?」
(畜生ッ…!!突っ込みどころが多すぎる…!!!!)

 進む。進む。二人は進む。互いに軽口をたたきながら。
心に活をいれながら。自分たちはゲームには乗っていないということを、大声で辺りに触れ込みながら。
助けを待っている誰かが、自分たちに気付いてくれるように。
襲っている糞野郎の注意を、少しでも他の犠牲者から逸らしてやれるように。
「これでも俺は未来の大監督だぜ!アカデミー賞ものを撮ってやるよ!!」
「テメェはピンク映画がお似合いだろーが!」
「ピンク映画でアカデミー賞ってのも史上初じゃね?」
「て、否定しねーのかよ!!しろよ!!そんな初嫌だよ!!」
「まぁ、このゲームの出来の悪い脚本は、皆でコメディに書き直してやろうぜ。…あぁ、俺に東城みたいな脚本の才能が合ったらなぁ…」
「あぁ、ようやく繋がった。さっきから言ってた、苺パンツの女ってのはその東城って奴か」
「いや、他にも色々」
「ッ!!何でそんなに他人のパンツについて知ってんだよッ!!」
 
 進む。進む。二人は進む。

先に待つのは、底すらも見えない地獄の業火。それを知らずに、二人は進む。

 そして。もし、知っていたとしても。それでも、二人は進んで行くだろう。
その足を引き摺りながら。その胸に、消せない炎を纏いながら。底すら見えない、地獄の業火へと。

―――今の自分たちでは、誰も護れない―――

―――それでも―――

―――護りたいヒトは、確かに、在る―――
【埼玉県(県境)/午後】

【いちご100%@真中淳平】
【状態】手首捻挫 :中度の疲労
【装備】無し
【道具】無し
【思考】1.炎に対処。危険を感じた場合、一護を連れて避難。
    2.江田島が追ってくるのを待つ。
    3.知り合いとの合流
    4.東京を目指す

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】両膝破壊 :中度の疲労(名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック愛染かは知らない)
【装備】シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.炎に対処。助けを求めている人間が居たら、江田島の所まで連れて行く。
    2.目の前で襲われている奴らがいたら助けたい
    3.朽木ルキアとの合流
    4.東京を目指す
27 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 14:56:19 ID:jIwG+oe60
森の中をひたすら走る一人の殺し屋の姿があった。
既に山形県まで来たが、彼の標的の姿は一向に見えなかった。
「くっ・・・見失ったか・・・」
ゴン・フリークスと彼の持つ仙豆を追っていた殺し屋「桃白白」はゴンを追うことを諦めた。
(くそ・・・ますます痛みが・・・。内臓のダメージが思ったよりひどいな・・・このままでは動かなければならないときに動けなくなってしまう恐れがあるな・・・)
そう考えた桃白白はひとまず己の身体を最低限戦闘が行えるまで回復させようと考え、
近くの洞窟に隠れ身体を休めることにした。
(くっくっく・・・既に30億・・・無理をせずともよいわ。いくら殺しても生き残らねば仕方ないからな・・・)
28惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 14:57:36 ID:jIwG+oe60
森の中をひたすら走る一人の殺し屋の姿があった。
既に山形県まで来たが、彼の標的の姿は一向に見えなかった。
「くっ・・・見失ったか・・・」
ゴン・フリークスと彼の持つ仙豆を追っていた殺し屋「桃白白」はゴンを追うことを諦めた。
(くそ・・・ますます痛みが・・・。内臓のダメージが思ったよりひどいな・・・このままでは動かなければならないときに動けなくなってしまう恐れがあるな・・・)
そう考えた桃白白はひとまず己の身体を最低限戦闘が行えるまで回復させようと考え、
近くの洞窟に隠れ身体を休めることにした。
(くっくっく・・・既に30億・・・無理をせずともよいわ。いくら殺しても生き残らねば仕方ないからな・・・)
29惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 14:59:08 ID:jIwG+oe60
北の大地から一つの影がかけぬけていった。
彼の邪眼は全てを見通す魔性の目。
己の能力を捨て去ってまで手に入れた力。
己の不幸の元凶に復讐をするために手に入れた力。
己の不甲斐なさに対する罰として手に入れた力。
その魔性の目は、この特異な空間の為全てを見通すことは不可能となっていたが限られたごく小さい範囲であるなら遠目の力を使うことができた。
彼は茨城県での桃白白の闘いを確実に捉えていた。
そして己の『餌』として彼を見定め、その元に向かっていた。
30惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:00:54 ID:jIwG+oe60
──ズキン
(くっ・・・)
──ズキン、ズキン
彼にはいつしか頭痛が起きるようになっていた。
その痛みは次第にその大きさを強めていた。
一体いつから?
このゲームに乗って初めて敗北したときから?
いや、違う。
かつて忌み嫌った里の者の同族であるあの娘を殺した時からか・・・。

───生きて戻ってきて・・・最初に私を殺してね
(黙れ・・・)
それは里から忌み子として捨てられたときの記憶
───それが氷菜へのせめてもの償いになる
(なんであの時の記憶が今頃・・・)

そしてまた頭痛が酷くなってきた。
31惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:01:56 ID:jIwG+oe60
頭の中で誰かが問いかける。
  「なぜあの雪女を殺した?」
(俺を捨てた里の同族だ・・・)
  「じゃあ何故お前は後悔している?」
(後悔などしてない)
  「嘘だ」
(・・・黙れ)
  「お前はもう里のものに復讐する気なんてなくなっていたんだろ?」
(・・・)
  「何故殺した?」
(・・・・・・・・・)
  「お前が弱いからだ」
(俺が・・・弱い?)
  「そうだ。弱いからお前はコロス」
(だまれ・・・)
  「弱いんだよ・・・お前は」
(だまれぇぇぇぇぇぇっぇぇ!!!)
それがなんだったかはわからない。
後悔から生まれたものか、それとも何か・・・別の何かだったのかもしれない。
昔は、よくこういうものを聞いていた気がする。
だが、思わぬ出会い、妙な人間との戦いを経ていくうちにいつしか声は聞こえなくなっていた。

しかし、再び聞こえるようになった声はより大きく、
それは更に飛影の感情を逆撫でした。
32惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:03:14 ID:jIwG+oe60
洞窟の中で身体を休める桃白白。
外から強大な殺気、怒気、闘気を隠すことなく放って近づいてくる少年を彼は見とめた。
(ちっ・・・まずいな)
なぜこの洞窟に近づいてくるのかはわからないが
敵の力量がわからぬ今、大怪我を負っている自分は不利だと考えた。
今は無駄な体力を消耗したくないというのが本音であった。
近づいてくる少年の目はどこか虚ろであった。
(まだ、俺を発見できていないのか・・・?ならば好都合・・・物陰からやつをショットガンで蜂の巣にしてくれるわ)
そう考え、洞窟の陰に身を潜める。
少年は無作為に洞窟に入ってくる。
(あと5歩だ・・・あと4歩、あと3歩・・・いまだ!)
勢いよく陰から飛び出しショットガンを放つ。
パララララララ
小気味よい音とともに、無数の弾丸が少年の身体を貫いていく。
「はっはっは!!これで更に10億とは。笑いが止まらんわ!っはっはっはっは!!!」
洞窟に笑い声がこだまする。
33惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:04:04 ID:jIwG+oe60
「黙れ・・・」
その静かな声は高笑いする男の横から聞こえた。
男がそちらの方向に目を向けたときに、既にその刃は男の二の腕に迫っていた。
「くぅっ・・・馬鹿な!」
咄嗟に身を翻して、腕がなくなるのは避けた。
が、その腕からは夥しいほどの出血をしていた。
「く・・・わかった・・・許してくれ!わしはマーダーじゃない。今のだって恐怖のあまり、身を守るためにやったことなんじゃ・・・許してくれ!」
それはもちろん桃白白がついた嘘だった。
「ほら、銃ももう棄てる・・・。頼む!助けてくれ!!」
(ふっ・・・さぁ銃をとって立ち去れ・・・お前が背を向けたときに後ろからとっておきのドドン波をおみまいしてくれるわ)
少年は近づいてゆく。
「黙れ・・・」それは桃白白に放った言葉ではなかった。
今も少年の頭に反響しつづける声。
それが彼を余計にイライラさせた。
「どいつもこいつも・・・イラツくぜ」
少年は足元の銃を無視して桃白白に近づいてゆく。
(くっ・・・バレたか!?・・・仕方ない)
「死ね!!ドドン波!!!!!!!!!!!!!!」
そう言い放つと少年のほうに光線が放たれていった。
しかしその光線が捉えたのは少年の陰。
34惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:04:48 ID:jIwG+oe60
少年は最早、己の手の届く位置にいる。
(くっ!!!ヤバイ!!!)
妖気が少年の刃に集まっていく。
「どうりゃぁぁぁ!」
咄嗟に放ったケリは少年の持っていた刃を弾き飛ばした。
しかし追撃はできなかった。
内臓にかかる負担に桃白白は歯を食いしばった・・・。
(くっ・・・しかし刀は飛ばした・・・。見たところ奴は剣士・・・剣をとりに行かねばなるまい・・・)
しかし少年はその場に立ち尽くしていた。
そして小動物を見るかのように、冷たい目で見下ろし続けていた。
「邪王・・・」
(な、なにかくる!ガードを・・・)
「炎殺煉獄衝!!!」
炎で覆われた少年の拳は、桃白白をガードの上から焼き尽くした。
「ぐおぉぉぉぉ!!!こ、こんなところで!!!おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

洞窟に横たわる炭になった死体。
──ズキン
少年の頭痛は今も治まらない。
影はまた飛んでいく。
35惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:09:27 ID:jIwG+oe60
【山縣県 洞窟/午後】

【飛影@幽遊白書】
 [状態]頭痛、少し疲労
 [装備]マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
 [道具]荷物一式、燐火円レキ刀@幽遊白書
 [思考]1、強いやつを倒す
    2、幽助と決着を付ける
    3、氷泪石を見つけだす
36惑う影 ◆fwVkVAa8BE :2006/02/11(土) 15:14:21 ID:jIwG+oe60
【桃白白@ドラゴンボール 死亡確認】
【残り89人】
37作者の都合により名無しです:2006/02/11(土) 15:42:44 ID:TpH5T1Uk0
感じ良い人で良かった。
38:2006/02/11(土) 22:02:08 ID:uAGLfEi10
バトルロワイアルって映画のやつですか?それなら俺見ましたけど…

感想:とにかく面白すぎ!桐山がめっちゃカッコイイし、七原すげぇしw
中川は萌えたなwカワユス〜(≧ω≦)そんでバトロワ2も最高だった!なんか
感動しちゃったしwキタノシオリが撃たれて死んじゃうシーンとかさぁ!マジ
感動ものですよw必見です!
39その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:33:56 ID:Y26hIyS80
「富樫!どうするのだ!」
「畜生、今考えてんだよ!」

太公望と富樫は、非常に焦っている。何故か?
それは、順風満帆に進んでいた海の旅の途中に起こった出来事が原因だ。
〜〜数分前〜〜
「ううむ、潮の流れが速くなったのう、富樫」
「ああ、この辺の潮流は複雑だから、気合入れてかねえとすぐにどっか別の場所に流されちまう」
言って、オールを力強く漕ぐ富樫。
「すぐ着くかと思っていたが、以外に時間がかかるのう」
太公望は、元の世界で釣りをするために人間界の川に行ったことはあったが、海のような流れのあるものではなかった。
先ほど泳いだときは、自分達も動いていたから、あまり気にならなかったが。
ぼんやりと富樫を見つめる太公望。
「よっとぉ!」
富樫は力強くオールを漕ぐ!
その姿、正に漢の仲の漢!
「でぇい!」
富樫は逞しくオールを漕ぐ!
その姿、正に男塾の一角!
「ずおりゃああああああ!」
ボキッ
その姿―――――!?
「なっ!?オールが折れた!?」
―――――――間抜け。
〜〜〜そして時は動き出す〜〜〜
40その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:35:36 ID:Y26hIyS80
「富樫!どうするのだ!」
「畜生、今考えてんだよ!」
自分達が進むはずの方向から大きく外れ、どんどん船は流されていく。大陸が右手に見える事がかえって二人を焦らせる。
「くそ、仕方ねぇ!太公望、泳げるか・・・って、聞くだけ無駄だな。しがみ付いてろ!」
「お、おぬし、この流れの中泳ぎきれると思っておるのか!?」
「このままじゃどこまで流されるかわからねえだろ!潮に逆らったら無理だろうがよ、一瞬だけ全力を出して、なるべく近い大陸への潮流に乗れれば、和歌山の近くには辿り着くはずだ!」
「ま、待て、それなら―――――」
「行くぜっ!」
富樫は、なにやら喚き散らす太公望の首根っこをつかみ、海へとダイブした。
全力で、横から来る複合した潮に逆らい、進む。
五分ほどして、ようやく潮の抵抗がなくなった。富樫は前を見据える。進む方向には、陸。その先には高くそびえるビル。
どうやら、大都市に向かうという本来の目的は達せそうだ。
富樫は、安心して泳ぐ。太公望を背負って、強敵との戦いをシュミレーションしながら。
41その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:37:08 ID:Y26hIyS80
「・・・思ったよりダメージが深いわね」
大阪の町の外れの喫茶店で、大蛇丸はじっとチャクラを蓄えていた。先ほどの戦闘で貫通傷を負った腹部の応急手当もしなくてはならなかった。
「あの男、斉藤とかいったかしら。あれほどの気迫、もしもっと才能があれば依り代にしてもよかったんだけど」
しかし、あの男はダイや自分のように特殊な力を持っていなかった。
どうでもいい感慨を振り切り、民家で見つけた包帯を傷口に巻きつける。
その時、バーのカウンターが開く音がした。
「―――――あら。貴方は―――」
「藍染惣右介。やはり、この方向に向かっていたんだね、大蛇丸」
十数時間前、岡山で会った相手。自分と同じ雰囲気を持つ、利用しようと考えていた相手。
まさか、向こうから来てくれるとは―――――――。
「君と協力したくてね、大蛇丸」
「―――――どういう風の吹き回しかしら、藍染惣右介」
自分が前に会ったとき持った印象では、こうも簡単に協定を持ちかけてくるのではなく、回りくどいやり方を選ぶ人間だと思っていたが。
「少し考えが変わってね、【正義ぶった連中】を掃討しておきたいんだ、さっきも彼らに邪魔されて体力を消耗させられてね――――大蛇丸、君もそうじゃないのかい?」
巻きかけの包帯を指差す藍染。
なるほど。確かに生き残るにしても、そういった徒党を組む連中に邪魔されてはたまらない。藍染の言うとおり自分も幾度かそういった連中に手傷を負わされている。件の斉藤たちの事を思い出す。
「・・・・・・ふふ、殺し合いの世界で、協力?何を言ってるのかしら、私が拒んで殺されるとは考えてないの?」
「おや、それは盲点だったな。しかし、君も本当はそんなこと考えてもいないだろう?」
二人の間に緊迫した空気が流れる。
自分の考えを見透かされている。この余裕のある口ぶりからすると、恐らくは万全の状態――――。体力の消耗もブラフの可能性もある。
ならば、今戦えば負けるのは自分。それ以前に、自分自身、この男を利用したいと願っていたのだ。断る理はないが―――どうする?
「ええ、その通りよ。でも、その言葉が真実だと言う証拠がほしいわね」
「証拠、か。そんな物はないが、これならどうかな?【ホイミ】」
瞬間、藍染の指先が光る。
(――――不意打ち!?・・・いや、これは――)
42その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:38:29 ID:Y26hIyS80
細胞が超速で再生する感覚。これは、医療忍術――――いや、それとも違う。
「ホイミ。回復の魔法、と言うと俗っぽいがね、それそのものさ」
「―――――こんなことをして、私が戦闘を仕掛けたらどうするのかしら」
「先ほど君から感じた霊圧―――いや、力の源が減っている。これは、傷は治せるが、その力の源は治せないはずだ」
事実、チャクラ自体はほとんど戻っていない。
「これは僕が出来る君への最大限の誠意だ。もう一度訊こう――――手を組まないか、大蛇丸」
確信。この男はほとんど体力を消耗していない。余力にかなりの差が無ければ、回復などしまい。せいぜい食糧でも差し出すのが関の山だ。断り、戦闘になれば、チャクラがない今の自分では相打ちすら出来るかどうか。ならば―――――。
(利用してやるわ、藍染惣右介)
「ふふ、なるほど、考えてるわね。協力、してあげるわ」
「そうかい、そういってくれると信じていたよ」
「ただし、協力は残り人数が20人を切るまで、でいいかしら」
「ふむ、いいだろう。さて、今私は【正義ぶった連中】に、《脱出する方法を琵琶湖で行う》と噂を流してある。純粋そうな人間に言いふらさせているから、何人かは来るだろう」
藍染はそう言うと、一拍おいて大蛇丸に語りかける。
「そこに集まった者達を、私と君で皆殺しにする」
「・・・もし、三十人四十人集まってたらどうするの?それじゃあ流石に二人では―――」
「僕の能力を使う。斬魄刀、鏡花水月。複数の対象に絶対の幻覚を見せる能力だ」
「なるほど、其れで撹乱した相手を叩く、と」
面白い。本当は何を考えているのか知らないが、彼は予想以上に使えそうだ。
だが、その場にダイがいた場合だけは全力で止めなければ。彼の才覚は惜しい。まあ、それもダイ以上の才能を持つものがいたら別だが。
こうして、腹黒い二人は同盟を組んだ。お互いに自分の本性と、目的を隠したまま。
その時、外から声が聞こえた。
43その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:39:34 ID:Y26hIyS80
「――――悪かったよ」
「――――まあ、結局大きな町に着いたからよいが、次からはわしの話も聞いてくれ」
太公望と富樫が、大阪の町を歩いている。絆もどこへやら、かなりの険悪ムード。
何故こんなムードになっているか、参考までに説明しよう。

〜〜数分前〜〜

陸地に海からのりあげる影が二つ。
「うっし、着いたぞ太公望!さっきビルが見えたから、近くに町もあるはずだぜ」
「・・・・・・」
太公望は黙って地面に突っ伏している。
心配になって、富樫が話しかける。
「どうした、太公望」
太公望は顔を上げて口火を切った。
「この阿呆が!」
「阿呆だと!?」
「ああそうじゃとも!全く、何故わしの話を聞かずに飛び込んだのじゃ!」
言い返そうとして、太公望の荷物がなくなっていることに気づく。
「あのまま船に乗っていても、必ずどこかにはたどり着いたはずじゃ!そこで町を探せばよかったものを・・・」
太公望は頭を抱え込んで、嘆いている。
富樫は、自分の行為の短絡さに頭を抱えた。
その後、険悪なムードのまま大阪の町に向かったのだ。
〜〜〜そして時は動き出す〜〜〜
44その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:40:29 ID:Y26hIyS80
「――――まあ、済んだことは忘れて、気楽に行くかのう〜」
蛸のような姿でそう言う太公望。
それを見て、幾分富樫の心も落ち着く。
(全く、お前には助けられてばっかりだな)
人の心を惹きつける、カリスマ。富樫は自分達の師である漢を、太公望に重ねて見ていた。
(―――――って、それもまた違うか?)
富樫は交差点で歩道を渡ろうと、角に敵が潜んでいないか確かめようとする。太公望は何やら考え事をしているようだ。
――――――敵はいた。
直後に交差点の左側から、何かの乗り物に乗った一つの影が右側の確認を終え、左側を向いた富樫に迫る!
「富樫!避け・・・」太公望の声。
その声が耳に届く前に、富樫の肩に小振りの剣が刺さっていた。
45その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:41:24 ID:Y26hIyS80

「――――――っ!!」
とっさに剣を引き抜き、妙な乗り物に乗った男を目で追う。
そこには、自分達がこの世界で相対した中でも最悪の男―――藍染惣右介。
それに、自分に剣を突き刺した長髪の男。いや、待てよ、あいつの風貌は―――。
「いい腕だね、大蛇丸」藍染がそう言った。
大蛇丸!確かダイ達が出会った、マーダー!
(まずい・・・最悪のときに、最悪の二人に会っちまった!)
「心臓を狙ったんだけどね。なかなかいい反応してるわ。少しは楽しめるかしら」
「本当に君だけでやるのかい、大蛇丸?彼らはそこそこ手ごわいよ」
二人は楽しそうに会話している。
(太公望、聞こえるか)
(ああ、どうする?わしもお前も疲れておる、逃げても追いつかれるじゃろうな)
(やけくそで突っ込むか?)
(馬鹿を言え。わしらはここで死ぬわけにはいかん)
「ええ、さっきの魔法のお礼、ってところかしら。例の能力はどのくらい消耗するかわからないから、計画実行までなるべく使いたくないんでしょう?」
「ああ、助かる。では、僕は高みの見物と行くかな」
藍染は跳躍し、建築物(マンション)の2階のベランダに立った。まるでモルモットでも見るかのように見下ろしている。
46その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:41:54 ID:Y26hIyS80
そして、一方的な戦闘は始まった。
まず、大蛇丸は妙な乗り物から降りる。完全に不意打ちのためだけに使ったらしい。
「いくわよ」
言うが早いか、右手に巨大な剣を持ち、突進してくる大蛇丸。
「くっそぉ!」
自分の肩に刺さっていた剣を持ち、応戦する富樫。
まず、大蛇丸の初撃が振り下ろされる。
何とか回避する富樫。
そこに、さらに横薙ぎの追撃。
これを、刀の腹で受ける。
「ふふ、剣技は苦手かしら!?」
「ちいっ!」
力では富樫のほうが上回っているが、剣技では大蛇丸に一日の長がある。
(ドスなら慣れてんだが・・・くそっ!桃に習っとけばよかったか!)
「あら、隙だらけねぇ・・・やっぱり疲れてるのね、楽でいいわ」
瞬時に思考の隙をつかれ、剣を跳ね上げられる。
「最初は貴方からね。すぐ連れも送ってやるわ――――!?」
殺られる、と思った瞬間、大蛇丸の顔に石がぶつかり、大蛇丸の顔が濃くなる。―――五光石か!
吹き飛ばされた大蛇丸を尻目に、太公望を見る。ばしっ!と五光石をキャッチして、得意満面。
「お前、荷物は流されたはずじゃ・・・」
「わーはっはっは!このわしがそう簡単に武器を手放すわけないじゃろう!これだけはずっと懐に入れておいたのじゃ!」
爆笑する太公望を見ながら、富樫は苦笑する。
(こいつはこんなところで死んじゃならねぇ、必ず俺が守り通す!)
「ふ―――――ふふふふふ、やってくれるじゃない、貴方達。チャクラも無いただの人間の分際で」
大蛇丸が立ち上がり、大蛇のような目でこちらを見据えてくる。静かに怒りを燃やし、殺意を放出して。
「火遁―――――鳳仙花!」
大蛇丸は手で印を組み、叫ぶ。瞬間、二つの炎が富樫に迫る。
「なに!?」
剣を拾って構えなおし、大蛇丸が再び突進してくるものと思っていた富樫は、予想外の事態に驚く。
迫りくる炎。
剣ではどうしようもない。しかたなく転がって炎を回避しようとする。
一つ目は避けることに成功する。しかし、二つ目の炎は――――意思を持つかのように曲がり、富樫の右足に直撃した。
47その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:43:19 ID:Y26hIyS80
「―――――!!!」
何とか消そうとするが、足元はアスファルト。消えるはずもない。
「富樫!!」
太公望が富樫に駆け寄る。
「ふふふ、お別れの時間ぐらいはあげようかしら」
大蛇丸の嘲った声が富樫の耳に届く。
「富樫、大丈夫か!」
「へ、へ・・・太公望、俺は逃げるのは無理そうだ」
既に右足の表面はほとんど燃え尽きている。
(だからよ、俺があいつらに隙を作る。その隙を突いて、お前だけでも逃げろ!)
かすれて、聞き取りづらい声。
「な、なにを―――」
(お前が死んだらよ――――皆を纏める奴が、いなくなっちまうだろ)
(俺が合図したら、あの乗り物の所へ、全力で走れ。後は分かるな?)
富樫は自分のバックから何かを取り出し、バック自体は太公望に渡した。
「ま、待て!わしの話を―――」
「悪いが、きけねぇ」
言って、富樫はふらふらと立ち上がる。
「いくぜ、ヘビ野郎」
「あら、もう死にに来るの?つまらないわねぇ・・・」
大蛇丸は、大剣を振りかぶり、再び突進する。
それに合わせ、富樫も駆け出す。
「おおらぁぁぁぁっ!!」
全ての力をこめた渾身の一撃。剣を、力のみに任せて振り回す。遠心力を加えながら。
その常軌を逸した力にぶつかった大蛇丸の大剣は砕け、吹き飛ぶ。そして、富樫の魔槍の剣も真っ二つに折れる。
48その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:44:00 ID:Y26hIyS80
(肉弾戦なら―――――!)
富樫は両手を同時に突き出す。
―――――突き出した両手は、大蛇丸の顔には届かない。
一本の槍が、富樫の体を、腹部を、貫いていた。
「ふふふ、あなたといい、斉藤といい、本当に滑稽ねぇ。命を懸けて何かやろうなんて、流行じゃないわよ?」
嘲笑する大蛇丸。
「へ、べ、そうかもな」
口から血を流しながら、自嘲的な口調で言う富樫。
「でもよ、ごれがおれらの、やりがたなもんでよ!」
両手を開く富樫。そこには―――――!
「それは――――爆砕符!」
「へえ。知ってんのかい。じゃあ、おれがなにじようとじでんのが、わがんよなぁ!」
富樫は、逃げようとする大蛇丸の首をつかみ、ニヤリと笑う。
「貴――――様!ふざけるな!さっさと死ね!」
槍を心臓の方向へと横薙ぎにしようとする大蛇丸の行為は、しかし富樫の鋼の筋肉に妨害される。
「な――――!?貴様、人間か?」
「ああ、手前と違ってなァ!!太公望、行けぇぇぇぇ!」
言うと同時に、爆砕符を大蛇丸の頭にセットする。そして全力で大蛇丸の両腕をつかむ。
「う、動けない!?糞ぉぉぉぉぉ!こんな所でええええっ!」
「最後に教えてやる―――俺の名前は富樫源次!男塾一号生!―――――地獄にいっても、忘れんじゃねえぞ」
――――――3。
太公望は、ウェイバーに乗り込み、操作方法を確認する。
――――――2。
大蛇丸は、最後の足掻きといわんばかりになけなしのチャクラを頭に集める。
――――――1。
藍染は、静かに状況を見下ろし、何かを考えている。

――――――0。
49その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:46:49 ID:Y26hIyS80
爆砕符二枚分の爆発音が、大阪の町に鳴り響いた。
一瞬遅れて、ウェイバーの発進音。
(くそ――――富樫!おぬしはこれでよかったのか?)
仲間を失うという確信が太公望にはあった。それを知りながら自分は何もできない。
聞仲との戦いで死んでいった十二仙のことを思い出す。
(おのれ――――わしにもっと力があれば!)
(それは違うよ、望ちゃん)
「―――――普賢!?」
心の奥から聞こえる、友の声。
(望ちゃんは、優しいから、力がなくてもみんなが集まるんだ。だから、徒に力を望むべきじゃない)
「―――――そうじゃのう。わしらしくもない」
自分の目的は、ゲームを脱出することであって、主催者を倒すことではない。
――――――覚悟を新たに、前に進もう。それが、きっと富樫のためでもある。

その時、藍染がいきなり自分の進路に現れた。
「私が逃がすと思っているのかい、太公望」
太公望は構わずアクセルを踏む。
「どかぬと、ひき殺すぞ!藍染!」
「―――――【鏡花水月】」
藍染が何か言った、と思った瞬間、ウェイバーは最大速度まで加速し、藍染を跳ね飛ばしていた。
藍染の四肢が千切れ飛び、その表情が驚愕に変わるのが見えた。そしてその顔もウェイバーの前面に直撃し、砕けた。
(死んだ、じゃと?馬鹿な、簡単すぎる)
一瞬疑問に感じたが、飛び散る血、そしてなお宙を舞う四肢は、確かに目に見えている。
ゆえに、振り向かず走り続ける。
(これからどうする?公主達に合流するか、別のところを探索するか・・・)
太公望は、走行しながら考える。
50その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:47:55 ID:Y26hIyS80
富樫は、太公望が無事この修羅場から抜け出したのを見ていた。藍染が死んだところも見た。
大蛇丸はピクリとも動かない。当然だ、頭が無くなっているのだから。
「へ、へっ。生き残れよ、太公望」
富樫は、自分の死を確信していた。血が全く止まらない。
(塾長・・・。太公望に会ってください。あんたと太公望なら、この糞ゲームを何とかできる気がする)
富樫はふっと笑う。今から死ぬと言うのに、妙に落ち着いているからだ。
(ああ・・・桃、そっちに行ったらお前と決着・・・)
富樫の視界は、薄れていく。最後に見たものは―――――。

その場には、死体が三つ。
少なくとも、先の出来事を見ていたものにはそう見えている。
一つ、腹から槍を生やし、ほんの少し驚いたような表情の死体。
二つ、頭がなくなり、誰なのか判別すらできない死体。
三つ、粉々に千切れ飛び、原型すらない死体。
そしてそれらの死体からは、等しく首輪がなくなっている。
だが、もし今ここに何も知らない人間が通りかかれば、三つ目の死体を目にすることは叶わないだろう。
何故なら―――――――。
51その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:48:47 ID:Y26hIyS80
(・・・まさかここまで体力を使うとは。一歩間違えば本当に轢き殺されていた。)
大阪の町の、【大阪名物たこ焼き店!フリーザ様推奨!】と書かれた、店内いたるところに蛸の置物が点在する建物の奥、おそらくは食材倉庫。
そこに、息を荒げ、膝を折る男が一人。
(ホイミも―――――鬼道も使えない。今は休むしかないな)
【完成品】と書かれた箱を見て、中にあるたこ焼きを一つ摘む。
(首輪の解析も――――今は出来んな、頭が冴えない。放送と霊力の回復を待つしかない)
男が、危険を冒して能力を使った理由は二つ。
一つは、太公望に対して自分の死を誤認させるため。そうしておけば、最悪でも次の放送までは仲間をぞろぞろ連れてこられる恐れは無いだろう。
だが、それなら大阪から逃げればよかったのではないか?そうすれば、体力の消費も最大限に抑えられた。
二つ目の理由が、その考えを覆させた理由。
実験。主催者に対する、明らかなる造反。
大蛇丸が死んだ以上、男がここに来たことは完全な失敗となる。
だが、その失敗によって死者の首輪と、主催者に自己の能力が効くのか、そして監視しているかを楽に判別するための機会が目に前に転がってきたのだ、リスクを犯す価値はある。
(鏡花水月の能力は完全催眠。たとえどんな実力者でも―――――、一度目にすれば、逃れる術は無いはずだ)
男は、自分の能力に絶対の自信を持つ。それが、妄信かもしれないとは考えもせず。
(監視しているのなら、私の名が呼ばれるはず。していなければ、琵琶湖での計画実行が幾分楽になる―――いかん、今はただ休んだほうがいい)
男は、存外おいしいたこ焼きをとりあえず荷物袋に入れ、周囲を警戒しながらも、静かに眠り始めた。
52その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 22:49:55 ID:Y26hIyS80
【大阪市内交差点/1日目・午後】

【太公望@封神演義】
状態:やや疲労。 完全催眠(大阪の交差点に藍染の死体)
道具:荷物一式(食料1/8消費)・五光石@封神演義・鼻栓 ウェイバー@ワンピース
思考: 1.この場を離脱、その後公主たちと合流するか、別のところを探索するか・・・
    2.バギの取得を試みる
    3.新たな伝達手段を見つける

【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・午後・太公望の状態表より30分ほど後】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:周囲を警戒しつつ睡眠。わき腹に軽い負傷・骨一本にひび・重度の疲労、MP空。(戦闘不能・盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2 フリーザ様推奨極上たこ焼き三箱
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手を求めている。
   4 計画の実行
5 次の放送で実験の結果を検分、その後行動方針を決める。

備考:大蛇丸が持っていた荷物のうち2つは、二人が同士討ちになった、と後できた参加者に思わせるために現場に残してあります。
主催者に能力が通じたかどうかは不明。
【大蛇丸@NARUTO 死亡確認】
【富樫源次@魁!男塾 死亡確認】
【残り87人】
53その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 23:02:46 ID:Y26hIyS80
>>51>>52を修正します
54その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 23:39:09 ID:Y26hIyS80
(・・・まさかここまで体力を使うとは。一歩間違えば本当に轢き殺されていた。)
大阪の町の、【大阪名物たこ焼き店!フリーザ様推奨!】と書かれた、店内いたるところに蛸の置物が点在する建物の奥、おそらくは食材倉庫。
そこに、息を荒げ、膝を折る男が一人。
(ホイミも―――――鬼道も使えない。今は休むしかないな)
(首輪の解析も――――今は出来んな、頭が冴えない。放送と霊力の回復を待つしかない)
男が、危険を冒して能力を使った理由は二つ。
一つは、太公望に対して自分の死を誤認させるため。そうしておけば、最悪でも次の放送までは仲間をぞろぞろ連れてこられる恐れは無いだろう。
だが、それなら大阪から逃げればよかったのではないか?そうすれば、体力の消費も最大限に抑えられた。
二つ目の理由が、その考えを覆させた理由。
実験。主催者に対する、明らかなる造反。
大蛇丸が死んだ以上、男がここに来たことは完全な失敗となる。
だが、その失敗によって死者の首輪と、主催者に自己の能力が効くのか、そして監視しているかを楽に判別するための機会が目に前に転がってきたのだ、リスクを犯す価値はある。
(鏡花水月の能力は完全催眠。たとえどんな実力者でも―――――、一度目にすれば、逃れる術は無いはずだ)
男は、自分の能力に絶対の自信を持つ。それが、妄信かもしれないとは考えもせず。
(監視しているのなら、私の名が呼ばれるはず。していなければ、琵琶湖での計画実行が幾分楽になる―――いかん、今はただ休んだほうがいい)
男は、周囲を警戒しながらも、静かに眠り始めた。
55その鏡真実を映さず ◆2XEqsKa.CM :2006/02/11(土) 23:39:43 ID:Y26hIyS80
【大阪市内交差点/1日目・午後】

【太公望@封神演義】
状態:やや疲労。 完全催眠(大阪の交差点に藍染の死体)
道具:荷物一式(食料1/8消費)・五光石@封神演義・鼻栓 ウェイバー@ワンピース
思考: 1.この場を離脱、その後公主たちと合流するか、別のところを探索するか・・・
    2.バギの取得を試みる
    3.新たな伝達手段を見つける

【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・午後・太公望の状態表より30分ほど後】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:周囲を警戒しつつ睡眠。わき腹に軽い負傷・骨一本にひび・重度の疲労、MP空。(戦闘不能・盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手を求めている。
   4 計画の実行
5 次の放送で実験の結果を検分、その後行動方針を決める。

備考:大蛇丸が持っていた荷物のうち2つは、二人が同士討ちになった、と後できた参加者に思わせるために現場に残してあります。
主催者に能力が通じたかどうかは不明。
【大蛇丸@NARUTO 死亡確認】
【富樫源次@魁!男塾 死亡確認】
【残り87人】
56 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/12(日) 11:48:39 ID:L4knswaJ0
(ちょっと待ってよぉぉぉぉぉぉ!!?)

リンスレット・ウォーカーの心の叫びもむなしく、クリリンはベッドからその身を起こした。
背丈は子供と間違えてもおかしくない大きさ。
頭は坊主で、鼻がない顔は愛嬌がある。
見た目では、決して恐怖を与えられない姿。
そのクリリンに、リンスが恐怖する理由はただ一つ。

彼が、ゲームに乗った殺人者だから。

「お、俺は……」
クリリンは考える。
自分は今までなにをしていた?
ここはどこだ?
目の前にいるのは……?

(…………!)

それは、会いたかった人物。
でも、できればもうほんのちょっと、遅く会いたかった人物。

「……ブル、マ、さん……」
「クリリン君……」
ブルマとクリリン。
二人は、この殺人ゲームに連れてこられて、初めてそれぞれが知りえる人物に出会った。
だけど、その再会は決して嬉しいものではない。

ブルマは、殺人者かもしれないという疑惑を持ったままの、クリリンとの再会。
クリリンは、自分の行動を知られたくないという感情を持っての、ブルマとの再会。

クリリンがゲームに乗っているかもしれない。そんなことはわかってる。でも、
複雑な気持ちを押し殺して、ブルマは、人間的な感情に流されていく。
「クリリン君!」
溢れたのは、涙。
動いたのは、腕。
ただ、知り合いに出会えた嬉しさ、という人間として最もな感情に流されて、その腕でクリリンを包み込む。
そして、ただただ泣きついた。
「ブルマさん……」
やがて、クリリンの意識がハッキリしていく。
自分が海坊主と呼ばれる男との戦闘の末、倒れたこと。
その後、ここにいるブルマに助けられたのだろうということ。
理解して、悲しくなった。
(なんで……ここでブルマさんに出会っちゃうかな……)
もちろん、知り合いとの再会は嬉しい。
でも、たぶんブルマは、自分が他の参加者を殺して回っているということを、受け入れてはくれない。
自分がどれだけ非人道的なことをしているかは、十分にわかっている。
できれば、参加者が自分と悟空とヤムチャとピッコロとブルマだけになるまで、会いたくはなかった。
会えば……決心が揺らいでしまうから。

クリリンに泣きつくブルマ。
殺人ゲームという極限状態の中での、再会。
普通なら、はたから見ても感動的なシーンのはずなのだが、それを傍観するリンスには、感動などという感情は全く生まれない。
(だって……だってだってだって!)
目の前の男は殺人者。それは、ブルマも認めたこと。
目の前の青年、クリリンからは……はっきりとした危機感が生まれている!
それは、女泥棒と言う形で裏の世界を生きてきたリンスだからこそ、感じる危機感。
泣きつくブルマを見て困ったような顔を浮かべるクリリンを見ても、「なにか理由があるはず」というブルマの言葉を差し引いても、

クリリンは、危険。

自分の防衛本能が、そう呼びかけている。
「ねえ、クリリン君……」
やがて涙も枯れ、落ち着きを取り戻したブルマがクリリンに話しかける。
「あなたは……なんでこんなゲームに乗ってしまったの……?」
「……!」
その問いかけは、クリリンにとって衝撃の言葉。
「私たちが見つけた……胴体が分かれた死体」
ブルマは、既に気づいていた。
「倒れているあなたのすぐそばにあった死体」
自分が、このゲームで殺人を犯してしまったことを。
「二つとも……クリリン君がやったんでしょう?」

いつか知れてしまう。
そうわかっていても、覚悟もしていたはずだけど、つらかった。

つらかったが、ここで折れるわけにはいかない。
(いつかは知れること。それが今だって……割り切るんだ!)
頭のいいブルマなら、案外自分の計画を受け入れてくれるかもしれない。
そう思って、口を開いた。
「ブ……」
「もう、あんなことやめて!」
声を発しようとした口は、自然と閉じていった。
「あなたは……あんなことする人じゃなかったでしょう? 孫君と一緒に修行して、お互いの技を競い合って、地球を守るために戦った、立派な戦士だったじゃない!」
聴こえるのは、ブルマの必死の訴え。
聴き心地が悪くて、頭が痛くなる。
「こんなゲームにつれてこられて怖かったのはわかるわ。私もそうだったもの。でも、私は自分が生き残るために他の人を殺そうなんて考えない」
脳に響く、悲しげな呼びかけ。

(ちがう……違うんだよブルマさん。そうじゃない。そうじゃないんだ)

口にしようとした言葉が、ひたすら脳内でリフレインされる。
「もし、私にクリリン君と同じくらいの戦う力があったとしても、それは変わらない。足掻いて、足掻いて、最後まで足掻いて」

(違うって言ってるじゃないか……少し黙ってくれよ)

クリリンの顔が、徐々に苦悶の表情を浮かべる。
「絶対に、脱出する方法を探す」

(だから違うんだって……もっと確実な方法があるんだよ!)

「だから、もう――」

ブルマとクリリンの顔が向き合う。
涙を浮かべながら、強いまなざしを向ける女。歪み、辛そうに堪える男。

「――やめて」

(――――――黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)
ブルマの言葉を聞いていると、決心が揺らぐ。
今さらやめろだって?
そんなことしたら、どうなるんだよ。
今まで、俺が殺してきたみんなは。
必ず生き返らせるって、約束したみんなは。
すっごい、すごいめちゃくちゃ嫌な気分で殺した――俺の気持ちは!

――俺のしてきたことはぁ!!――

拒否。
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否
拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否拒否。

クリリンの本能は、ブルマの言葉を拒絶した。
いや、ブルマの存在すらも。
存在自体が、苦痛。
だからかもしれない。
クリリンの手刀が、ブルマの胸を貫いたのは――
「ひっ……」
聞こえてきたのは、傍観者であったリンスの声。

一秒の間。

クリリンの視覚が捕らえたのは、自分の腕が胸に突き刺さっている、ブルマの姿。

(割り切れ……)

クリリンは、言葉を発さず、静かに、顔をもう一人の住人へ――


リンスを突き動かしたのは、経験と本能。
仕事柄、自分が体験してきた、命の危機が迫る状況と、
人間として、恐怖を感じる今を照らし合わせて、

本能が――逃走――という選択を取らせた。
(クリ……リン……く、ん……なん……で、)
薄れゆく意識の中、目に映ったのはクリリンの苦悶の表情。
その目に確かな狂気を宿らせた、苦悶。

「ごめん……ブルマさん。絶対……絶対あとで生き返らせてあげるから!」
そう言い残し、クリリンは逃亡した獲物を追う。
自分が手をかけてしまった、死にゆく知人をその部屋に残して。

(生き……返らせる? ……ああ、そうか、ドラゴンボール)
命の灯火が消えようとするその刹那、ブルマは、やっとクリリンの非道の理由を理解したのだった。
(なんで……もっと早く気づかなかったのかな……)

その一瞬、自分でも驚くほど頭が冴えた。
きっとクリリンは、辛かったのだ。苦しかったのだ。
一人孤独な殺人劇を繰り広げていることが。
自分はそんな彼の苦しみを、なぜもっと早く気づいてあげられなかったのか?

(ごめんね……クリリン君………………)
福井県の森の中、海坊主の埋葬を終えたアビゲイルと伊達が、仲間が待つ民家へ戻ろうという頃だった。

「ふう、これで一段落ですね」
「……もういいか? 俺はそろそろ行きたいんだが」
「おや? 私たちと行動を共にしてくれるのでは?」
「そんな約束そした覚えはねぇ。悪いが、俺には俺のやるべきことがある」
「……ふむ。しかしそう焦らないでもいいでしょう。もしかしたら、あの坊主頭の方があなたの欲している情報を持っているかもしれませんよ」
伊達が求める情報。
それは、剣桃太郎を倒したヤツに関する情報。
最初に駆けつけたとき、あの坊主頭の青年が桃を倒したヤツでは、と言う可能性も考えたが、あの桃があんな弱そうなヤツに負けたとは考えにくい。
が、それゆえ油断したというのも考えられるし、あの坊主頭が男塾の仲間に出会っていないとも言い切れない。
桃が戦って死んだというのなら、戦闘経験者の情報は有力だ。
もう少し、行動を共にするメリットはある。
「私も、一人であのお嬢さん方を守りきるには、どうにも心もとなかったところです。あなたのようなたくましい男性がいてくれれば、お嬢さん方の身もより安全になるというもの」
「……言っておくが、俺はあんたらのお守りになるつもりは――」

二人が話しながら歩き出した、その時だった。
――ドォォォンッ……

あたりに、銃声が響き渡ったのは。

「今のは……いや、まさか」
「間違えようがねぇ……銃声、だな」

二人は、その音の意味を全く同じに捉えていた。
彼らの中で銃を持っていたのは、リンスレット・ウォーカーただ一人。
家の中で待っていたはずの彼女が、発砲せざるを得ない状況に陥った。
考えられのはその一つのみ。

「急ぎましょう」
「おお」

二人は、民家へ向けて駆け、そしてすぐに見つけた。
入り口付近に倒れる、一人の女性の姿を。
「まだ……仲間がいたんだ」
遠くの物陰から見えるのは、自分よりも体格のいい男性二人。
一人は剣で、一人は槍か鎌のようなもので武装している。
「くっ……やっぱり、今の状態じゃもう無理か……」
クリリンの体を襲う激痛。
キャプテン・ブラボー、海坊主との戦闘で負った怪我。
そしてたった今……リンスの放った弾丸で負った左腕の傷。
気もほとんど使いきった。
この状況では、そこそこの実力者とも、まともに戦うことはできない。
「俺が死んじまったら……全部無駄にしちまうもんな……」
今まで殺してしまった人間の思いも、ブルマの死も。

クリリンがやらなければいけないことは、参加者を減らすこと。
主に悟空が殺せないような、戦闘能力のないような一般人を殺すこと。
ピッコロを優勝させるためには……ブルマもいずれは殺さなければならなかった。
叶うなら、自分の手で殺したくはなかった。
でも、あの状況では仕方がなかった。
あのままブルマの言葉を聞いていたら……自分の決心は、崩れてしまうから。
(なんとしても……計画は成功させる。ピッコロを優勝させて、ドラゴンボールでこんなゲームなかったことにする)
今さらなかったことにはできない。無駄にはできない。
ブルマという知り合いまで殺してしまった。
もう、後戻りはできない。
「あっ……」
歩き出したところで、気づいた。
自分の荷物がないことに。
「やべー……あの家の中かな?」
一瞬取りにいくか迷ったが、すぐにあきらめた。
残りの二人に鉢合わせて戦闘になったら、現状では太刀打ちできないのは目に見えていたから。
そしてなにより、自分が殺したブルマの死体を、また見るのが嫌だったから。

「いいや……どうせ、まだたくさん殺さなきゃいけないんだ。荷物はそんときもらえば……って、まるで山賊だな、俺」
ははは……と、力なく笑いながら、クリリンは歩み続ける。
罪を一心に背負うことを決め、その罪を晴らすため、ゲームをはやく、終わらせようと。
その、ボロボロの心と身体で。
今回、私が記した脳内手記は、お見せすることはできない。
なぜなら、とても恥ずかしいから。
私はあのとき、クリリンがブルマの胸を貫いたとき、その死を確認するよりも早く、逃げ出してしまった。
もし、あのとき私が逃げ出さず、持っていた銃でクリリンの頭部を打ち抜いていたら……
少なくとも、あの殺人者を再び野に放つことはなかったかもしれない。
ブルマの、仇を討つことができたかもしれない。
でも実際私にそんな正義感はなく、ああいう状況では咄嗟に自分の身を第一に考えてしまう。
そんな私の心情を書き残すのは、ごめんだ。
私は、弱い人間だった。

加えて、私は運よくも生き延びてしまった。
あの後、私自身もクリリンに追われたのだが、私は殺されなかったのだ。
相手が怪我を負っていたこと。
そのおかげで、私が苦し紛れの体制で撃った銃が命中したこと。
銃声を聞きつけて、すぐにアビゲイルと伊達が駆けつけてくれたこと。
二人の存在を知って、クリリンがあっさり退いてくれたこと。
全て、幸運な出来事。
いくつもの幸運が重なって、私は生き延びてしまった。
ブルマは死んでしまったのに。

とりあえず、起きたらやるべきことは、もう決まっている。
目をそらさず、しっかりと、ブルマの死を受け止めよう――
【福井県/夕方】

【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]:疲労困ぱい、気は空
:わき腹、右手中央、左腕、右足全体に重傷 、
:精神不安定
[装備]悟飯の道着@ドラゴンボール
[道具]:なし
[思考]1:できるだけ人数を減らす(一般人を優先)。
2:ピッコロを優勝させる 。



【福井県・民家の中/夕方】

【リンスレット・ウォーカー@BLACK CAT】
[状態]気絶中
[装備]ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]荷物一式
[思考]1、起きたらブルマの死を受け止める。
2、トレイン達、協力者を探す。
3、ゲームを脱出。
【アビゲイル@BASTAD!!】
[状態]健康
[装備]雷神剣@BASTAD!!
[道具]荷物一式
[思考]1、リンスを介抱。
2、D・S達、協力者を探す。
3、首輪を入手して分析したい。
4、ゲームを脱出。

【伊達臣人@魁!!男塾】
[状態]:軽度の火傷、行動に支障無し
[装備]:首さすまた@地獄先生ぬ〜べ〜
[道具]:荷物一式、
   【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】
    衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす       ×1
    漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
    左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす                ×1
[思考]:1、とりあえず、リンスが目を覚ますまで待つ。
2、剣桃太郎を倒した者との決闘。
3、男塾の仲間と合流。
4、ゲームに乗る気は無いが邪魔をするヤツとは躊躇なく戦う。

※海坊主の死体は埋葬しました。
※ブルマの荷物[荷物一式 、ドラゴンレーダー@DRAGON BALL、首輪]、
クリリンの荷物[荷物一式(食料・水、四日分)、ディオスクロイ@BLACK CAT]、
排撃貝(リジェクトダイアル)@ワンピース、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数は不明)、その他の海坊主の荷物[荷物一式(食料・水、九日分)、超神水@ドラゴンボール]は民家の中に置かれています。

【ブルマ@DRAGON BALL 死亡確認】
【残り85人】
71作者の都合により名無しです:2006/02/12(日) 16:22:42 ID:nEA86Zc3O
>27-55は無効です
72作者の都合により名無しです:2006/02/12(日) 16:45:12 ID:PNCAZhSDO
>>71はアルジャ作者なので無効ですW
73作者の都合により名無しです:2006/02/12(日) 17:11:31 ID:bfegeaO00
>>72
無効と言うにしてもそんな言い方はないと思う
74作者の都合により名無しです:2006/02/12(日) 18:30:28 ID:nEA86Zc3O
>72は無効です。アルジャも無効です
75 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/12(日) 21:05:49 ID:k9bz4CL10
「何者だ?」
 怪人、蝶々覆面(パピヨンマスク)の男、こと蝶野攻爵は言葉を発する。

(オイ、ウソップ!!どうすんだ?)
(なんつーか、見るからに怪しい奴だな…少し様子を見たいところだが)

 視線を注ぐは、おしゃぶりの大魔道士、ポップと偉大なる嘘吐き、キャプテン・ウソップ。

「出てこないなら、敵とみなす」
 怪人、蝶々覆面の男(パピヨンマスク)、こと蝶野攻爵は言葉を発する。
何者かより注がれている、気配を朧ながらも感じ取って。
それは、何より、警戒心の表れ。先程、実力を認めていたほどの連れの死を見てから、拭えない緊張。
湧き上がるのは、疑念の影か。未来への覇気か。
それとも。久々に感じた、臨死の恍惚への果てない憧憬か。

(気付かれてるぜ。こっちから攻撃を仕掛けるか?)
(うーむ、アイツが乗ってるのかどうかが問題なんだよな〜)
 対する二人に欠けていたもの。それは、このゲームに対するリアリティ。
放送でしか、他人の死を実感したことが無いもの、放送ですら、仲間の死を聞いたことが無いものしか持ち得ない
幸福な、楽観。それは、絶望を知らないものか、絶望を乗り越えていける強さを持つものだけが携える希望の光。

 故に、相容れるはずも無く。この出会いと展開は、いわば必然。

「…行け、黒死の蝶…」
「チッ!!下がってろ、ウソップ!!」

湧き上がるのは、確実な死を告げる蝶の群れ。それが、彼らの開戦の狼煙。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「閃光呪文(ギラッ)!!」

呪文と共に閃光が奔る。閃光は過たずに漆黒の蝶を射抜き、蝶はその場で爆風と共に四散する。

「ギラッ!ギラッ!ギラッ!ギラッ!」

 迫るは、雲霞の如き蝶の群れ、暗雲と見紛うほどの黒い雲を、数条の白光が奔る、奔る。
だが。黒は白を呑み込まんと、覆いつくさんと、塵へと還さんと、迫る、迫る。

(クソッ!このままじゃ押し切られる!!)

「飛翔呪文(トベルーラ)!!」

 一拍。ポップの身体は見えない何かに弾き飛ばされたかのように。重力の枷から解き放たれたかのように。
物理法則を無視したかのごとく上昇し、黒く蠢く蝶の群れから離れる。と、同時。

「爆裂呪文(イオラァッ)!!!」

 その手に光球を生み出し、眼下に広がる黒のベールへと、その光球を投げ込む。

――爆発――

そして

―――誘爆―――

 一帯を、墨染めの煙が塗りつぶす。その様は、黒き蝶の断末魔にも似て―――

「重力呪文(ベタンッ!!)」

 爆炎と爆煙。それが晴れる間もなく、次の一手。それは、広範囲にわたって強力な重圧をかける呪文。
大地がきしむ。大地が叫ぶ。炎が、煙が。まるで、見えない何かに押しつぶされるかのように、悲痛に形を変えていく。
目標を、視覚では捉えられずとも。それが範囲攻撃であるなら、それこそ空でも飛ばない限り、この避けることは出来ない…ッ!!

―――ガッ!!!―――

 それは、一瞬。頭上から降り注いだのは、猛禽の爪の如き、手刀の一撃。
 防いだのは、刃。仲間、ウソップが作った仕込み杖に内包されていた、ナイフの刃。

頭上にいたのは、蝶々覆面の男。その踵に蝶の羽を生やして。

 ポップは理解する。先程の蝶の群れが、攻撃の一手であると同時に、目眩ましの一手でもあったことを。
同時に、相手の身体、手刀が刃物並みの切れ味を持っている、特異な身体であるということも。

(チッ!!フェンブレンの野郎ほどじゃねェけど、厄介な身体だな…シグマとフェンブレンを足して二で割ったような相手か?)

 目前に居るのは、不敵に笑う覆面の男。その様、まるで動じた様子も無く、泰然自若として。
だが、大魔道士の心を挫くには、些かの役を果たすことも出来ず―――


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(クソッ!!やはり総量制限が厳しい!!)

 パピヨンは、内心焦っている。その身を焦がすほどの痛痒と共に。この忌々しい制限さえなければ、あの男の妙な力ごと
爆破することが出来るのに、と。だが、それは今の自分の武器、ニアデス・ハピネスを全て使い切ることを意味している。
それは、自殺行為。臨死の恍惚を知る彼ではあるが、賭けと無謀との違いは理解している。

 それ故に、今の一撃で仕留められなかったのは大きい。これで、必要最低限の消費で相手を倒す、という方法は
とり辛くなった。相手に、自分の身体能力を知られてしまったために。

ただ、消費を厭わなければ、仕留めることができる。それは、揺ぎ無い確信。

「氷結呪文(ヒャダルコッ)!!」

 牽制に放った黒死の蝶は、謎の光線の迎撃を受け、凍結する。
凍結した蝶に対し、追加で黒死蝶を放ち、目前で爆破。凍結から開放された蝶を誘爆させ、爆風に乗った氷の破片で
簡易的な手榴弾のように攻撃を仕掛けるも。

「火炎呪文(メラゾーマッ)!!」

 相手が生み出した炎の壁に遮られ、道半ばで蒸気へと変貌、霧散していく。

「行け、黒死の蝶―――」

 ならば、次の一手。今回は、数ではなく、スピードを重視した攻撃。数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。

「火炎呪文(メラミッ)!!」

 だが。その攻撃も、相手が生み出した炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。

また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。
また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。
また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。

 ―――広がる、爆煙―――

………これも、全ては次への布石。
生死をかけた刃の上、パピヨンマスクは華麗な舞を踊り続ける―――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(うおーい、なんだあのバケモンじみた闘いは…?!)

 宙を覆う黒煙。それが晴れたときには、蝶々覆面の男の周りには、再び夥しい蝶の群れ。
相手の攻撃による誘爆を恐れているのか、男を中心として、少し離れた辺りにも、高速で舞う黒い塊が見える。
恐らく、あれは迎撃用の蝶。相手の攻撃を迎撃するのと同時に、今、男の周囲で待機している蝶の群れを叩きつける
心積もりだろう。先程の、爆煙による撹乱は、恐らくそれの準備を目的としたもの。それが、ウソップの推測。

「閃光呪文(ベギラマッ)!!!!」

先手を打ったのは、大魔道士。走らせるのは、熱量を帯びた閃光が一条。

「ニアデス・ハピネス!!!!」

迎え撃つのは蝶人パピヨン。周囲を衛星のように旋回していた黒死蝶を用いて、純白の閃光を掻き消す。
―――と、同時に。それまで纏っていた黒衣の如き蝶の大群を、叩き付けるかのように相手に放つ。それは、大魔道士の想定の範囲内。

―――煙の奥には、既にポップの姿は無かった。

「アンタの得意な目眩まし、こんどはコッチが利用させてもらうぜっ!!」

「爆裂呪文(イオッ)!!」

 ポップが放つ爆裂呪文。それは、何故か、自分の真横に。
そこにいたのは、パピヨンマスク。爆発音と共に、蝶人パピヨンは大きくよろめく。

「さっきの黒い蝶の群れも布石…アンタなら、さっきみたいに二段構えの目眩ましでくるってのが見え見えなんだよ!!
 イオッ!!イオッ!!イオッ!!イオッ!!」

 体勢を崩したパピヨンに連続して放たれる光球。迎撃も間に合わず、回避に専念せざるを得ないパピヨン。
これも、天才と呼ばれたパピヨンの想定の範囲内。

 ポップの死角、背後に小さな蝶が二匹。今までのコト、そして今の行動、すべてはこの必殺の一撃を隠すための布石。
避けようも無い「死」が大魔道士に忍び寄り―――

「必殺!!チクチク星!!」
第三者の介入により、その「死」もまた、虚空へ解けて消えた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 背後で起こった爆発は、一瞬、大魔道士の脳髄を揺さぶり。大魔道士は緩やかに落下していく。それを見送りつつ
闖入者へと視線を向けるはパピヨンマスク。未だ、その表情には不敵な笑みが張り付いたまま。

「待て待て待て待てぇ〜い!!それ以上やると、このキャプテン・ウソップの十万人の部下が黙っちゃいないぜッ!!」
 偉大なる嘘吐き、キャプテン・ウソップは虚勢を張る。震える足を押し隠して。震える心を噛み殺しつつ。
「何だ?貴様も混ざりたいのか?」
 対するは、体勢を整えなおしたパピヨンマスク。

「これ以上、俺の仲間に手を出すなら…アンタみたいな御洒落サンでも容赦はしねぇぞ!!」
構えるは、手製のパチンコ。あまりに頼りない、その武器を手に。抱いているのは、仲間への思い。何よりも頼るべき、その武器を胸に。
だが、自分の言葉への反応は、予想とあまりに異なって…

「ほう…貴様にもこのマスクの御洒落が分かるのか?」

それが、彼らの停戦の狼煙。
「あぁ、この偉大なるキャプテン・ウソップの目は誤魔化せなぁ〜い!!蝶は華麗なる変身の象徴!!ならば、何故
 その覆面が御洒落でないことがあろうか?!」(え、なんだ?マスクを褒めるのって効果大?)
「フム…こんな無粋なゲームで、この御洒落を理解できる人間に二人も会うとはな…」
「無粋なゲーム?アンタはこのゲームに乗ってるんじゃないのか」(上手くいけば戦闘回避できる?ドキドキ)
「いや、俺は少し別口の用件があってな…」
 言葉と同時に、残り少ない黒色火薬が、砂絵のように文字を描いていく。
(どうも、参加者は盗聴されているらしい。俺はこの首輪を分解・調査してみようと思っている)
「別口の用件?俺たちは、このゲームをどうにかしてやろうと思ってるんだけど…」(首輪を調査?!こりゃいい!!)
「フン…殺す気が失せた。元々、参加者を殺すために鹿児島に来たのではないし、この御洒落が分かるやつを殺すのは惜しいしな」
「って、アンタ!もしかしてこの舞台の元になった世界の出身者か?(ツイてるぞ!!これで、ポップを説得して首輪の調査を一緒にさせてもらえば!)
 なら、少し詳しく話を聞かせてくれ!!」(ますますココに留まる理由が出来るじゃねェか!!!)

 煌くは、ウソップの支給品。賢者のアクアマリン。

「ああ、だがNON!!俺ばかりが一方的に情報を与えるのも、一方的に縋られるのも真っ平ゴメンだね」
と、パピヨンは胸の前で十字を組む。それは拒絶の仕草。だが、
「おおっと!だれが一方的にといった?このキャプテン・ウソップが見抜いた、この世界の秘密の一端と交換でどうだ?」(ゲ。風向きが怪しいぞ…)
「…詳しく聞かせろ」
「いや、交換条件だね」(て、そうでもない?!)

―――賢者のアクアマリンを持つものは、知性溢れる友人を何人も持つことが出来るという。

 奇しくも、この場に揃ったのは。科学に精通した錬金術師。魔術に精通した、大魔道士。

そして、狙撃手にして、偉大なる嘘吐き。

 この出会いも、蒼の宝石に導かれたものか―――その答えは、未だ爆煙の中に―――
【鹿児島県南部/夕方】

【ウソップ@ワンピース】
[状態]健康
[装備]:賢者のアクアマリン@ハンター×ハンター
:いびつなパチンコ(特製チクチク星×5、石数個)
:大量の輪ゴム
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)
:死者への往復葉書@ハンター×ハンター
:手作りの作品や集めたガラクタなどの数々
[思考]1:できる限り鹿児島に滞在する。
2:アイテムを信じて仲間を探す
3:ルフィ・ロビン・ポップの仲間との合流

【ポップ@ダイの大冒険】
[状態]気絶(脳震盪):健康 (MP中量消費)
[装備]:魔封環@幽遊白書
:ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用)
[道具]荷物一式(食料・水、残り3/4)
[思考]1:脱出の鍵を探す。
2:ダイ・マァム・ウソップの仲間との合流
3:フレイザードを早めに倒す

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:中程度の疲労:胴体に軽い火傷(再生能力により、しばらくしたら回復)
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス大〜中量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費) ×2
 [思考]:1、首輪を調べる。
     2、知り合いとの合流
85少年に残されたものは:2006/02/12(日) 21:59:52 ID:GRis0yh90
「う〜ん、彼らももうあんなところまで行ってしまったか。そんな駆け足で逃げなくても。
 去るときはエレガントに、と相場は決まっているものなのね」

名古屋城、対となっている金鯱の中央に立ち尽くす男、趙公明
彼は今、如意棒を回収し、自分から逃げるように去っていったL一行を優雅に見送っていた。

「しかし…あの目の隈の酷い従者…どこかで見たような…?」
趙公明の頭を悩ます一つの疑問。それはLについてだった。
このゲーム内で己が見知っているのは同じ世界からの参加者である太公望、ダッキ、竜吉公主のみのはず。
それなのにあの従者、不思議なことにほんのかすかだが見覚えがあった。
不思議なことはそれだけには終わらない。

「あの男…確か世界最高の頭脳…L、エラルド・コイル・ドヌーブという名前だったか?」
そう、見覚えがあっただけではなかった。名前さえ知っていたのだ。
趙公明は熟考する。彼とは今が初対面のはず。なら、何故自分が彼の名前を知っているのかを。

――――――――――!

「そうか…あのときか」
あのとき、それは参加者達が一同に会し、主催者達と接触したときだった。
あの男は主催者達に世界最高の頭脳と呼ばれ、唯一主催側と言葉を交えた男。

「…なら、このまま逃がすわけにはいかないね」

あの男が主催者達と言葉を交わしたとき、趙公明は見たのだ。
その目に宿る、静かなる炎、正義という名の意思を。かつて見た太公望と同じ目をした男。
ならばあの男は必ずこのゲームには乗らず、この世界から脱出を図ろうとするはず。
世界最高の頭脳と呼ばれているのなら尚更である。
……見逃すわけにはいかない。
86少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:01:38 ID:GRis0yh90
「さてさて、しかしどうしたものか。追おうにも彼らはあんなに遠くに行ってしまったしね。
 あ、そうだ!あのビューティフルなやり方で追うとしよう!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ここまで来れば大丈夫でしょう」
「むーん、ならもうこれも下ろして良いだろう」
「いて!、も、もう少しゆっくり下ろしてよ…僕は怪我人なんだから…」
(僕を背負って逃げるときは楽できてラッキー!、と思ったけど結局ついてねー!)」

L一行、彼らは趙公明から急いで離れ、趙公明が追って来ていないことを確認するとそこに腰を下ろし、一時の休憩を始めた。
名古屋城からだいぶ離れ、仮に趙公明が走って追ってきたとしてもそれが分かるように街道が見通せる高台の公園に留まった。

「しかしラッキーだったね、あの強敵から五体満足に逃げ出せるとは。
 戦えるのは私だけ、残りは非戦闘員の上、一人は怪我をしていて容易に逃げることはできない。
 死者が一人も出なかったのは本当に幸運として言えないね」
「確かに、洋一君がいながら何も無かったのは運がよかったとしか。
 私達の一生分の運を使い果たしたと言われても過言じゃないですね」
「…」(そんな言い方しなくたって…やっぱりこの人たちについていくんじゃなかった…ついてねー…
「ここで五分ほど休憩して、その後もう少し離れるとしましょう。あの勘違い男があんな派手に登場したおかげで、
 誰に見られてもおかしくありませんから。せっかく助かった命、大事にするとしましょう」

Lの言葉にムーンフェイスはうなずくと、街道を見張りながら体を休め始め、洋一もそれに合わせるように
隅で丸くうずくまり、体を休めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

87少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:02:14 ID:GRis0yh90
「よぉ〜し、ストップだ如意棒君!それぐらいの長さでいい!」
趙公明は未だ名古屋城の天守閣。
その彼だが、如意棒を片手に携えると、恐ろしく伸びきった如意棒を振り下ろし、ズドンという音を周囲に響かせながら
少し前の地面に降ろし、そのまま天守閣の最後方まで下がった。
「アーハッハッハ!今すぐそっちにいくよエラルド・コイル・ドヌーブ君!」
片手に仕込み傘を持ち、名古屋城に寄りかかった如意棒目指して走りこみ、そして――――――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さて、そろそろ行きましょうか」
「むーん、洋一くん、今度は一人で歩けるかね?」
「う、うん…って、あれは何…?」

「君達!待ちたまえ!」

ズガガガガガガガ!

洋一が空を飛ぶ物体を発見したその瞬間、空から弾丸がまるで雨の如くL達に降りかかった。

「い、いってぇ〜〜〜〜!!!」
「ムーン!」「くっ!」

発砲音が聞こえたその刹那、ムーンフェイスはその人間を超えた瞬発力を持って三人の荷物を
空中に投げ、そして二人を掴み即座に回避した。
空中に投げた荷物は軟弱ながらも銃弾からL達を守る壁となり、ムーンフェイスが二人を助ける時間を稼いだのだ。
しかし、所詮は荷物。完全に弾丸を防ぎきれず、いくつか貫通し、結果洋一の左足とLの右肩に命中する。
そして…

ひゅーーーーーーーーーーーーーーズドン!

「やぁやぁ、また会ったね麗しき月の好敵手!それに世界最高の従者エラルド・コイル・ドヌーブ君!」
「「「…」」」
88少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:02:46 ID:GRis0yh90
二度目ながらなんとも非常識な登場に言葉を失くす三人。先程の奇襲すら忘れてしまうインパクトだ。

「…むーん、棒高跳びの要領でここまで飛んでくるとは恐れ入った」
「ムーンフェイスさん、感心しないでください。ああいうのは非現実的と言うんですよ」
「…」(そんな顔が三日月の怪物に言ったって説得力が…)

軽口を叩く三人であったが、趙公明が再び現れたことに正直疑問を抱かずにはいられなかった。
また、ムーンフェイスは即座に戦闘態勢をとり、Lを守るように前に出た。
趙公明は長くなった如意棒を縮め、元の大きさに戻ると三人の前に立ちはだかった。

「残念だけど、君達、特にそこのエラルド・コイル・ドヌーブ君を見逃すわけにはいかなくなったよ」
「むーん、どういった事情かは知らないが、最近の田舎貴族は約束も守れなくなったのかい?」
「フッフッフ、普通の紳士ならそうかもしれないが…僕は…」

趙公明は俯きながら不気味な声でフッフッフと呟くと、どこに隠し持ってのか、いきなりマントを取り出すと
自身をそれで包み込んだ。しかしそれも一瞬で、すぐにマントを脱ぐとそこには…

「僕は極悪非道の ブ ラ ッ ク 趙 公 明 だったのさ!」

「「「…」」」
そこにいたのは金髪だった髪が黒く変色していただけの趙公明だった。
趙公明のハイテンションについていけず本日二回目の沈黙があたりを支配した。趙公明以外。

「あれ?リアクションが薄いな。…正体をバラすタイミングを見誤ったかな?」
予想外の空気に非常に残念がりながら、そそくさと髪の色を黒から金に戻す趙公明。
彼とて貴族。場の空気をちゃんと重視する。外したときは言い訳せず元通りにするのが礼儀というもの。
しかし髪を元に戻す趙公明は何処か寂しそうで、シュールだった。

「…今のうちに逃げましょう皆さん」
「おっと、そうはいかないよ」
逃げ出そうとしたL達に一瞬で間合いを縮め、Lだけに標的を絞り如意棒を振りかざす趙公明
89少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:05:06 ID:GRis0yh90
「むーん!私を忘れては困る!」
Lの脳天が砕かれようとしたそのとき、ムーンフェイスが二人の間に割って入り如意棒を跳ね除け、Lの命を救った。
ムーンフェイスはLを離れたところに置くと、再び趙公明の前に立ちはだかった

「困るなムーンフェイス君、君とはまたあとで戦いたかったのに…邪魔をするなら君を殺るしかないじゃないか」
ムーンフェイスは見た。仕方なく戦うと言った趙公明の顔が、悪寒と恐怖さえ覚える笑顔をしていたのを。
そして改めて悟る。この男には勝てない、と。以前の直感、どうやらそれは思い過ごしではなかったようだ。

(さてさて、勝てないとなると、問題はどれぐらい時間を稼げるかということだね。
 洋一君は足を怪我してとてもじゃないが逃げ切れない、ならばLを優先して逃がすべき)

「全く、せっかちな田舎貴族だね君は。無粋という言葉は君にピッタシだよ」
「僕だって全力の君と戦いたいさ、でも邪魔するから仕方なしに戦うのさ」
ムーンフェイスは趙公明と言葉を交えながらLに背中を向け、片腕を後ろに回すとLに向けて空に字を書き始めた。
趙公明には見えないように、指を小さく動かしながら。

(…あれは…Lニゲロ、ジカンカセグ、ヨウイチのコトハマカセロ…)

Lは悟る。ムーンフェイスは自分の身を犠牲にして時間を稼ぐのだと。
自分と洋一を逃がすために。
出来ることなら彼を援護してやりたい、が荷物は全て趙公明の周りにあり、自身の体を持って援護すれば
返り討ちにあるのは目に見えている。悔しいがここは彼の言う通りに逃げるしかない。
彼の命を代償にして。Lはこれほど無力感に苛まれたことは無かった。
洋一のことに関してもそうだ。ムーンフェイスが時間を稼いだとしても、洋一はは今足に怪我を負っており、
彼を背負って逃げるとなれば…ムーンフェイスの命で稼いだ時間を計算しても…容易に追いつかれるだろう。
それにあの男の目的は自分であって洋一ではない。一緒に逃げるのは危険だ。洋一のことはムーンフェイスに任せたほうがいい。
一緒に逃げれば洋一の命も危ない。ならば自分は逃げたほうがいい…それも早い内に。自分が逃げれば洋一のことには目もくれず
追いかけてくるかもしれない。
が、それでも彼をここに留まらせたのは…デスノート。

(出来れば手元に置いておきたい…あれを持つことで主催者を罠に嵌めることも出来るかもしれない、必要な物。
 しかし現状ではあれを取り戻すのは不可能…ならば夜神月や敵に渡るより処分しておかないと…それも難しいが)
90少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:06:37 ID:GRis0yh90
この場を去ることに躊躇するL。
必死に考えるがあの趙公明を前にしてノートを処分する手段が一向に思い浮かばない。

(む…また…ノートモワタシニマカセロ…カンガエガアル)

確かに戦闘能力のないLがノートを処分しようとなると結果無駄死にするだろうが
ムーンフェイスなら戦いながらノートを処理することも出来るはず。

(ありがとうございますムーンフェイス…そしてすみません)

「ま、待ってよ!ぼ、僕も…!」
一人でその場から逃げ出そうとするLに狼狽し、助けを請う洋一だが、
Lは洋一に対して「彼を信じてください」とだけ残して、走り去っていった。

(むーん、これでいい。洋一とノートに対する心配を取り除いてやればLの不安な要素はなくなるはず、と読んだ通りだな。
 ノートに関しては策はあるが…洋一はどうでもいいんでね)

Lは気づかなかった。ムーンフェイスの嘘を。
ムーンフェイスにとって一番大事なもの、それは月を輝かす太陽。それだけ。
太陽は身を挺して守る価値はあるが、屑星は守るに値しない。
せいぜい太陽を守るために利用するしか価値がない、ムーンフェイスにとって洋一とはそれぐらいの価値以下であった。

「さぁ初めようじゃないか!貴族同士のデュエルを!」
「むーん、せっかちな男だ」
Lとの筆談のために雑談をして時間を稼いでいたムーンフェイスだが、趙公明の苛立ちは頂点に達したようだ。
これ以上の時間稼ぎは出来ないと判断したムーンフェイスは最後の手段、自分の命を時間を稼ぐ手段に出た。
91少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:08:06 ID:GRis0yh90
「むん!」
後手に回れば一瞬で殺られる、そう直感したムーンフェイスは自ら打って出た。
趙公明の周りを弧を描くように跳びはね、三回転半捻りやアクロバチックな動きで趙公明を翻弄しようとする。
柔軟な身からから繰り出される曲芸的な舞。そんな軽やかなイメージからは想像もつかない力で着実にダメージを
与え、防戦一方の趙公明に肉薄するムーンフェイス。何より特筆すべきは、見事なまでのムーンサルト。
攻防一体を兼ね備えたこの技に趙公明は手も足も出なかった。初めのうちは。

このままいけば趙公明に勝利することも夢ではない、そう洋一の目に映ったこの戦いだが、
突如いままでの劣勢を覆すように趙公明が反撃に転じた。

「全く、これの何処が貴族の振る舞いなのか僕にはさっぱり分からないね」
反撃に転じた当初こそ、ムーンフェイスのトリッキーな動きに翻弄されて攻撃が当たらなかった趙公明だが
攻撃を重ねるたびにその命中精度は上がっていき、徐々にムーンフェイスを追い込んでいく。

「僕が田舎貴族だとすると、君はさしづめ貴族の衣装を纏ったピエロ、というところかな?」
ムーンフェイスが跳躍すれば一歩後ろに下がって迎え撃ち、左右に体を揺さぶってフェイントかけようとすれば
自ら突進し、フェイントを潰す。
こうしてムーンフェイスが繰り出す曲芸のような攻撃に一つ一つ冷静に対処され、瞬く間に全ての攻撃を封じられた
ムーンフェイスに成す術もなく、いつのまにか攻守逆転していた。

「先刻、僕は超高速戦闘といえるゴージャスな戦いを経験してね、それも君以上の接近戦のスペシャリストさ。
 君のパワー、スピード、どれも申し分ないけど…今の僕には少し物足りないよ」

―――ラーメンマンとの戦い。あの戦いを経験した趙公明にとって、この戦いは少々退屈なものだった。
いくらトリッキーな動きで翻弄しようとも、超高速戦闘を経験した趙公明から見れば
その動きはとてもスローに見え、一度見た動きなら十分に対処できるレベルだったのだ。

(むーん、まさかここまでレベルが高かったとは。誤算だったね)
「さて、そろそろ終局とさせてもらうよ。良い戦いをありがとう。―――ピエロ君」
92少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:09:39 ID:GRis0yh90
ムーンフェイスが跳躍すると見せかけ、趙公明が一歩後ろに下がろうとした瞬間、
全身の力を込め、ムーンフェイスは一機に趙公明の懐に飛び込もうとした。…が。
趙公明はその動きを読んでおり、後ろには退かず、力を蓄えていた。

「最後に一つ聞かせておくれ。身を犠牲にして何故あの男を守るんだい?」
「やはり君は分かっていないね。太陽が輝きを失えば、月もまた輝きを失う。
 私が輝くには彼が必要なだけだよ。それだけで命がけで守る価値があるというものさ」

            ニ  カ  ッ

ムーンフェイスは常に微笑んでいたが、より一層笑顔になる。
その様はまるで太陽の光を一身に浴び、恩返しだと言わんばかりに太陽が不在の夜を照らす月のように。
 
「素晴らしい!君は情緒溢れる詩人のようだ。だが、そろそろお別れの時だよ。残念だけど。
 ……アディオス!良い曲芸をありがとうピエロ君!」



      エレガント斬!
             ×の字斬り!




―――――― 一閃
93少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:10:35 ID:GRis0yh90
洋一の目には何が起こったか理解できなかった。
先程まで激しい戦いを繰り広げていた。目の前にムーンフェイス、その対面に趙公明。
そういう位置関係だったはず。
しかし今、一瞬で位置が入れ替わったと思えば二人とも微動だにせず、ただ静止するのみだった。

「むうん…見事だ。恐れ入ったよ無粋な田舎貴族君」
「君も中々だったよ。良い戦いをありがとうピエロ君」

趙公明はムーンフェイスに振り返り、構えを解くと、如意棒で地面をトン、と叩く。
―――ムーンフェイスの身体は胴体を中心に×の字状の傷が広がり……体が四つに分かれた。

(時間は十分稼いだ。後は洋一があの行動を取れば…ノートは処分できる)
薄れゆく意識の中、ムーンフェイスは頭の中で今後の動きを予想する。
あの洋一ならする行動、それ対して趙公明がどう対応するのか。
ムーンフェイスの脳裏に浮かぶその光景。間違いなく取るであろう二人の行動が容易に目に浮かぶ。
そしてそのときこそ…最大のチャンス。

「さて、君のお仲間は逝ったよ。次は君の番だ…君はどのような麗しい戦いをしてくれるのだね?」
「た、助けて!し、死にたくないよぉ〜!!!」
趙公明が洋一に歩み寄り、すかさず逃げ出そうとするが腰が抜けていて逃げることが出来ない。
その様子に趙公明はやれやれ、といった感じで残念がり、さっさと止めを刺そうとする。

「ま、待って!良い物をあげるから…命だけは!」
「良い物…?」
「そこ、の鞄に入ってる、デスノートって言うんだよ!名前を書くだけでそいつを殺すこと出来る、んだよ!」

ほう、と首をかしげ、周囲に散乱している鞄を一つ一つ開け、黒のノート…デスノートを手にした。
94少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:12:57 ID:GRis0yh90
「ほう…これがそのノートか…」
趙公明の呟きにひたすら首を縦に振るしかない洋一。
これで助かると思っていた洋一だが、徐々に趙公明の顔が険しくなり、明らかに不愉快になっているようだった。
その理由が分からず、ただ自分の身に災いが降ってこぬように祈る洋一。

「命のやりとりというものはお互いが死力を尽くして戦うからこそ美しいのだよ。
 ……こんなものは無粋の極みというもの」

 ビリ

趙公明は不機嫌な顔付でノートを縦に破り裂いた。
その光景を口をあんぐり開けながら呆然と見つめる洋一と…ほくそえみ、勝ち誇った様子で眺めるムーンフェイス。

(やはり戦いに美学を見出しているあの田舎者にとって、あのノートの存在は許せない物だったようだ。
 そして、我を忘れてあのノートを消し去ろうとしている…今がチャンス!)

体から切り離され、機能を停止したはずの右腕がかすかに動き出す。
ムーンフェイスが狙っていたのは…完全に自分から意識が逸れ、何かに集中しているこのときだった。
そしてそのときが来た今こそ、狙うは趙公明の命。
ホムンクルスである自分が出来る一撃必殺の技。捕食。
先程の戦いでもそれを行おうとしたが、趙公明にいなされ、それが出来なかった。
が、今は違う。趙公明は私が死んだものと思い込み、完全に無防備で、今なら触れることが出来る。

(むう…しかし思ったより体の反応が遅い。まさかホムンクルスの超生命がここまで制限されているとは。
 もうすぐ私の命も尽きるだろう。だが…触れるには十分だ)

趙公明は未だ夢中になってノートを破り続けている。その間にもムーンフェイスの右腕少し、少しずつだが距離を縮めていく。
距離を縮め、あともう一歩…。
95少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:13:48 ID:GRis0yh90
「あ…え?…なんで?」
(…屑星が…黙っているがいい)

洋一は右腕が一人でに動いていることに驚き、声を漏らす。
その様子にムーンフェイスは激昂し、洋一を睨みつけるが彼の目はその右腕に釘付け。
ムーンフェイスの威嚇も意味を成さず、洋一はひたすら右腕の動向に目を向けていた。

(むーん、これは予想外だ。まさかここまで足手まといとはね。趙公明が意識を逸らしているこの一瞬こそ最大のチャンスなのに
 わざわざ意識をこちらに戻すようなマネをするとは…だが、もうここまで来れば…!)
「何をしているんだいムーンフェイス君?」

気付かれた。最後の力を振り絞って右腕を飛び掛らせるが如意棒で叩き落され、ムーンフェイスの顔のところまで弾き飛ばされた。

―――チャンスは無駄に終わった。太陽の周りを漂うしかない屑星のせいで。

「全く、世の中は広いものだね。名を記すだけで人を殺せるノートや五体を切り裂いても動くことが出来る怪物。
 念には念を入れておくか」

ズガガガガガガガガガ!

(むん…やはり始末しておくべきだったね。屑星が月や太陽の邪魔をしないうちに…)

趙公明は仕込み傘の一斉掃射でムーンフェイスのバラバラとなった五体に弾丸を叩き込み…
ホムンクルスのムーンフェイスは…太陽の光を受けることはなくなり、永遠に輝きを失った。
96少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:14:49 ID:GRis0yh90
「さて、このノートもさっさと廃棄するかな」
趙公明はばらばらとなったノートを手に集めると、それを天高高に掲げ、ノートは風に乗り紙吹雪となりながら
海に飛んでいき全て海に落ちていった。かくしてデスノートは消滅したのだ。

「さて…残るは君だけだが、どうする?」
「え、え?」
「僕と戦うかい?」
「め、めめめめめめっそうもない!」
趙公明の問いに身振り手振り全身を使い、正に命がけでNOの意思を表示する洋一。
その様子に趙公明はまるで最初から期待していなかったような反応で残念がり、無造作に落ちている鞄を拾い上げ、
そのうち二つを洋一へ手渡した。

「な、なんで?」
「弱者への救済の手を差し伸べるのも貴族の嗜みというものさ。それも仲間に見捨てられた哀れな男ならなおさらね」

―――見捨てられた?

―――俺が?

洋一は高鳴る鼓動と沈んでいく精神を必死に落ち着かせ、ゆっくり、自分なりにこの状況を考える。
Lはいの一番に逃げ出した。あの怪物を信じろとか言って。
けどその怪物は俺を守るどころか何も指示を出さずに死んだ。

洋一は元来疑い深い性格ではない。しかしLの言動を好意的に解釈しようにも
彼らと行動を共にしてからLの頭脳は凄いと思ったことはあったが心から信頼できることはなかった。
Lは洋一を見捨てる気はなかったのだが、状況がそれを許さず、ムーンフェイスの提案にのることが最善だと考え、
一人で逃亡したのだが、当のムーンフェイスはあくまでLを逃がすための方便で洋一のことは任せろ、と言っただけであった。
二人の真意を知らぬ洋一からすれば見捨てられたも同然であろう。
そのことも起因して、彼が導き出した答えは…
97少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:15:46 ID:GRis0yh90
「やっぱり俺…見捨てられたのかよ…ついてねー…」
「あぁ、まさかここまで不運な少年が存在するとは…そんな助けを請う子豚のような眼差しを向けないでおくれ」
勿論洋一はそんな眼差しを向けていない。むしろ失意のどん底にあり、
見捨てられたというショックで今にも涙を流さんばかりである。

「俺が何したっていうんだよ…俺だって俺なりに必死に頑張ってるんだよ…俺…どうすればいいんだよ」
彼の脳裏に過ぎる、今までの出来事。
いきなりこの世界に放り込まれた彼。唯一の力、ラッキーマンの力を奪われ、樹海を長時間彷徨い
ようやく仲間と巡り合えたと思ったらすぐに敵と遭遇、自分も怪我をし、仲間ともともすぐ死別(香は生きているが)。
幸運にも別のパーティーと組むことが出来たが、自分はほとんど蚊帳の外。
怪物顔には口に出さなかったけど邪険に扱われる始末。しかもその後またもや敵と遭遇。
更に怪我を負い、極めつけは仲間に見捨てられたという今回の出来事。
その名に恥じぬ、ついてない出来事のオンパレードである。

「誰か…俺を助けてよ…守ってよ…何でもするからさぁ…怖い…怖いよぉ」
「嗚呼、この少年を襲う悲劇、さながらロミオとジュリエットの悲劇より辛いだろう」

口から出任せ、洋一のことを何も知らない趙公明はひたすら適当なことを言って悦に浸っている。

「一人は嫌だ…死にたくない、死にたくないよ…」
「ふむ、一人は嫌で、死にたくないか。なら…」
ここまでお互いのことを省みず、ひたすら独り言繰り返していた二人だが、
ここにきて趙公明が洋一の言葉に耳を傾け、洋一にとって思いも寄らぬ発言をすることになった。

「僕の召使になるかい?」
98少年に残されたものは:2006/02/12(日) 22:16:29 ID:GRis0yh90
【愛知県/午後 名古屋駅】

【L(竜崎)@デスノート】
[状態]:右肩銃創
[道具]:無し
[思考]:1、名古屋駅で洋一を待つ。
    2、名古屋駅を目指し、参加者のグループを探索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除。
    3、出来るだけ人材とアイテムを引き込む
    4、沖縄の存在の確認
    5、ゲームの出来るだけ早い中断

【愛知県/午後 高台の公園】
   
【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
[状態]:右腕骨折 左ふくらはぎ火傷と銃創 疲労
[道具]:荷物一式×2(食料少し消費) 護送車(ガソリン無し、バッテリー切れ、ドアロック故障) @DEATHNOTE
    双眼鏡
[思考]:1、召使い?
    2、死にたくない
    3、Lへの不信感

【趙公明@封神演義】
[状態]:中度の疲労 全身各位に小ダメージ
[道具]:荷物一式×2(一食分消費)如意棒@DRAGON BALL 神楽の仕込み傘@銀魂
[思考]:1、召使いになるかい?
    2、ディズニーランドでラーメンマンを待って煌びやかに闘う。
    3、エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキ、ラーメンマンを優先。
    4、脱出派の抹殺

【ルナール・ニコラエフ(ムーンフェイス)@武装練金 死亡確認】
【残り8?人】
99惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:28:03 ID:0Xmw4bTv0
燃え盛る炎の中に立つ殺し屋。
(ち・・・余計な足止めを喰らったせいで仙豆を見失ったわ・・・。仕方ないあの小僧のことは諦めるか。)
内臓の痛みが桃白白の怒りを増幅させる。
(ぐぬぅ。今誰かと戦闘になるのは不味いな・・・。この炎を見て集まってくる輩も多かろう・・・。早めに立ち去るか)
逃げるならできるだけ広い所、人気の無いところだな・・・。
痛む身体に鞭を打ち殺し屋は走る。人の気配が少なそうな北へ北へと。
森の中をひたすら走る桃白白。
彼は既に福島県中部までやって来ていた。
「ここまで来れば・・・」
もう炎は見えない所まできていた。
逃げる最中に誰とも鉢合わせなかったのは不幸中の幸であろうか。
(くそ・・・ますます痛みが・・・。内臓のダメージが思ったよりひどいな・・・このままでは動かなければならないときに動けなくなってしまう恐れがあるな・・・)
そう考えた桃白白はひとまず己の身体を最低限戦闘が行えるまで回復させようと考え、
近くの洞窟に隠れ身体を休めることにした。
このような何もない洞窟に人が来る可能性は少ない。彼はそう踏んでいた。
(くっくっく・・・既に30億・・・無理をせずともよいわ。いくら殺しても生き残らねば仕方ないからな・・・)
100惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:33:23 ID:0Xmw4bTv0
北の大地から一つの影がかけぬけていった。
彼の邪眼は全てを見通す魔性の目。
己の能力を捨て去ってまで手に入れた力。
己の不幸の元凶に復讐をするために手に入れた力。
己の不甲斐なさに対する罰として手に入れた力。
その魔性の目は、この特異な空間の為全てを見通すことは不可能となっていた。
彼は氷女から生まれし異端の炎妖。
今やその邪眼は己が最も馴染みのある炎・・・すなわち高熱量体を補足するだけの能力となっていた。
その目は森で戦う殺し屋と二人の子供を捉えた。
一人の少年は命を散らせ、もう一人が西へ
そして殺し屋、桃白白が自分の居る方向の北へと向かっていることを知った。

彼はすぐにでも誰かを殺したい衝動に駆られていた。
それはこのゲームが始まって初めて与えられた屈辱・・・ピッコロ大魔王との戦いでの敗戦が原因ではなかった。
彼の頭に声が響く。
その声が彼を抑えがたい殺人衝動を駆り立てる。
彼はすぐさま誰かを殺したかった。
それには自分の方に向かってきているこの男が好都合・・・正に絶好の『餌』であった。
101惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:34:29 ID:0Xmw4bTv0
──ズキン
(くっ・・・)
──ズキン、ズキン
彼にはいつしか頭痛が起きるようになっていた。
その痛みは次第にその大きさを強めていた。
一体いつから?
このゲームに乗って初めて敗北したときから?
いや、違う。
かつて忌み嫌った里の者の同族であるあの娘を殺した時からか・・・。

───生きて戻ってきて・・・最初に私を殺してね
(黙れ・・・)
それは里から忌み子として捨てられたときの記憶
───それが氷菜へのせめてもの償いになる
(なんであの時の記憶が今頃・・・)
102惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:36:06 ID:0Xmw4bTv0
そしてまた頭痛が酷くなってきた。
頭の中で誰かが問いかける。
  「なぜあの雪女を殺した?」
(俺を捨てた里の同族だ・・・)
  「じゃあ何故お前は後悔している?」
(後悔などしてない)
  「嘘だ」
(・・・黙れ)
  「お前はもう里のものに復讐する気なんてなくなっていたんだろ?」
(・・・)
  「何故殺した?」
(・・・・・・・・・)
  「お前が弱いからだ」
(俺が・・・弱い?)
  「そうだ。弱いからお前はコロス」
(だまれ・・・)
  「弱いんだよ・・・お前は」
(だまれぇぇぇぇぇぇっぇぇ!!!)
それがなんだったかはわからない。
後悔から生まれたものか、それとも何か・・・別の何かだったのかもしれない。
昔は、よくこういうものを聞いていた気がする。
だが、思わぬ出会い、妙な人間との戦いを経ていくうちにいつしか声は聞こえなくなっていた。

しかし、再び聞こえるようになった声はより大きく、
それは更に飛影の感情を逆撫でした。

魔界に落とされた忌み後、負の感情で生き抜いた時代。
飛影の心は嘗ての闇に再び覆われようとしはじめていた。
103惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:39:17 ID:0Xmw4bTv0
洞窟の中で身体を休める桃白白。
外から強大な殺気、怒気、闘気を隠すことなく放って近づいてくる少年を彼は見とめた。
(ちっ・・・まずいな)
なぜこの洞窟に近づいてくるのかはわからないが
敵の力量がわからぬ今、大怪我を負っている自分は不利だと考えた。
今は無駄な体力を消耗したくないというのが本音であった。
近づいてくる少年の目はどこか虚ろであった。
(まだ、俺を発見できていないのか・・・?ならば好都合・・・物陰からやつをショットガンで蜂の巣にしてくれるわ)
そう考え、洞窟の陰に身を潜める。
少年は無作為に洞窟に入ってくる。
(あと5歩だ・・・あと4歩、あと3歩・・・いまだ!)
勢いよく陰から飛び出しショットガンを放つ。
パララララララ
小気味よい音とともに、無数の弾丸が少年の身体を貫いていく。
「はっはっは!!これで更に10億とは。笑いが止まらんわ!っはっはっはっは!!!」
洞窟に笑い声がこだまする。
「黙れ・・・」
その静かな声は高笑いする男の横から聞こえた。
男がそちらの方向に目を向けたときに、既にその刃は男の二の腕に迫っていた。
「くぅっ・・・馬鹿な!」
咄嗟に身を翻して、腕がなくなるのは避けた。
が、その腕からは夥しいほどの出血をしていた。
「く・・・わかった・・・許してくれ!わしはもう闘えん・・・許してくれ!」
それはもちろん桃白白がついた嘘だった。
「ほら、銃ももう棄てる・・・。頼む!助けてくれ!!」
ガチャンと不気味な金属音を立て彼の持っていた銃器が洞窟の床に落ちる。
(ふっ・・・さぁ銃をとって立ち去れ・・・お前が背を向けたときに後ろからとっておきのドドン波をおみまいしてくれるわ)
104惑う影<:2006/02/12(日) 22:47:13 ID:0Xmw4bTv0
少年は近づいてゆく。
(くっくっく・・・騙まし討ちとて実戦じゃ。文句はあるまいな)
笑みがこぼれそうになるのは桃白白は必死にこらえていた。
しかし彼の考えとは裏腹に飛影は何も聞いていないかのように、いや桃白白が銃を置いたことすら気づいていないのか?
銃に目を移らせることもなくただただ桃白白に忍び寄っていく。
「黙れ・・・」それは桃白白に放った言葉ではなかった。
今も少年の頭に反響しつづける声。
それが彼を余計にイライラさせた。
「どいつもこいつも・・・イラツくぜ」
少年は足元の銃を無視してなおも桃白白に近づいてゆく。
(くっ・・・バレたか!?・・・仕方ない)
「死ね!!ドドン波!!!!!!!!!!!!!!」
そう言い放つと少年のほうに光線が放たれていった。
しかしその光線が捉えたのは少年の陰。
洞窟の壁に当たったその光線は暗がりの洞窟を一瞬明るく染めた。
そこに移ったのは正に狂気ととれる少年の表情。
少年は最早、己の手の届く位置にいる。
(くっ!!!ヤバイ!!!)
殺人による報酬に意味を持って取り組む桃白白とは違い、殺人という行為に意味を求める凶気の表情。
その凶気は修羅場をくぐってきた桃白白をも呑みこんでいく。
そして禍々しい妖気が少年の刃に集まっていく。
「どうりゃぁぁぁ!」
咄嗟に放ったケリは少年の持っていた刃を弾き飛ばした。
しかし追撃はできなかった。
内臓にかかる負担に桃白白は歯を食いしばった・・・。
(くっ・・・しかし刀は飛ばした・・・。見たところ奴は剣士・・・剣をとりに行かねばなるまい・・・)
105惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:52:05 ID:0Xmw4bTv0
しかし少年はその場に立ち尽くしていた。
そして小動物を見るかのように、冷たい目で見下ろし続けていた。
「邪王・・・」
(な、なにかくる!ガードを・・・)
「炎殺煉獄衝!!!」
炎で覆われた少年の拳は、桃白白をガードの上から焼き尽くした。
「ぐおぉぉぉぉ!!!こ、こんなところで!!!おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
その炎は茨城の森で赤く赤く燃え盛る炎とは対照的な、
黒く、そして禍々しい炎であった。
凶器の炎は狂気の男を呑み込み更に大きく、更に禍々しく燃え盛る。
その炎の前に立ち尽くす少年の目には
この炎と同じように凶気が宿っていた。
燃え盛る炎に一瞥をくれることなく少年はその場を立ち去っていく。
106惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:52:56 ID:0Xmw4bTv0
──ズキン
少年の頭痛は今も治まらない。
「くっ・・・いらいらするぜ」
飛影が次のターゲットを探しに行こうとする時だった。
彼はとてつもなく大きな妖気が生まれるのを感じた。
邪眼を使わずとも、魔界に住んだことがある妖怪ならば肌で感じることができる、それほどに大きい。
こんな妖気を放つ妖怪とはあったことがないはずだ・・・しかし彼はその妖気をどこか懐かしいような感じを感じていた。
そしてその妖気に身をゆだねている間、彼の頭痛は確かに収まっていた。

「幽・・・助・・・?」

そんなはずはないと思いながら、彼はその正体を確かめずにはいられなかった。
影はまた飛んでいく。
107惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:56:47 ID:0Xmw4bTv0
【山縣県 洞窟/午後】

【飛影@幽遊白書】
 [状態]頭痛、中程度の疲労
 [装備]マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
 [道具]荷物一式、燐火円レキ刀@幽遊白書
 [思考]1、巨大な妖気のもとを確かめにいく
    2、幽助と決着を付ける
    3、強い奴を倒す
    4、氷泪石を見つけだす

【桃白白@ドラゴンボール 死亡確認】
【残り8?人】

備考:桃白白の持っていたものは全て洞窟に残してあります
108惑う影<<修正版>> ◆fwVkVAa8BE :2006/02/12(日) 22:58:51 ID:0Xmw4bTv0
修正
>>107
山形県→福島県中部

>>102
忌み後→忌み子
109作者の都合により名無しです:2006/02/13(月) 03:25:28 ID:uyP1fps6O
>99-108は無効です
110少年に残されたものは:2006/02/13(月) 19:04:39 ID:GniG6W7y0
>>96の三行目と四行目の間に以下を挿入します。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・デスノートを使用したものは13日以内に次の名前を書き込み、人を殺し続けなければ自分が死ぬ。
・このノートを刻む焼くなどして使えなくすればそれまでにノートに触れた全ての人間が死ぬ。

いわゆる裏表紙のHOW TO USE…。
この手にノートがあったころは13日ルールについて疑いの目を持ったこともある。
それは今も変わらない。表のHOW TO USEについては自分が検証した通りだったので疑う余地はない。
しかしこの13日ルールだけが腑に落ちない。これさえなければ夜神月のアリバイは崩れ、月=キラであると確証が持てるはずなのに。

だが、今はこの13日ルールに拘っている時間も猶予もない。
今、もっとも懸念すべきは…ノートを処分した者、接触した者全てに与えられる罰則。

このゲームに参加する前はあまり興味を持たなかったが、今ではこのルールが頭を支配して離れない。
もしかすれば、このルールも13日ルールと同様で虚偽のものかもしれない。確かめる術はないが。
問題は、今ここで裏のルールを検証することではなく、この後者のルールに備えておくこと。

「…本当に運がよかった」
Lがポケットから持ち出した物、それは一切れの紙だった。
勿論ただの紙ではない。死神の力が宿った、死のノートの一部。

「検証のため、ページの切れた部分と同じサイズの紙を破り取っていたのが幸運だった」
ノートに残っていた、不自然な切れ跡。Lは知る由も無いが、それは夜神月が火口を葬り去るために切り取った部分である。
人一人分しか書けない様な切れ端に本当にノートとしての能力があるのか検証するために
Lも同サイズの紙を破り取っていたのだ。勿論人の名を記して書き込もうという考えは全く無かったが。

「この切れ端にノートの能力があれば、いや、ある。…夜神月もこの切れ端で火口を殺害したはず。
 あの状況で火口を殺害するにはこの方法しかない。
 …今はそんなことはどうでもいいか。とにかくこれがあれば仮に裏ルールが本当であっても
 ノートを使うことは可能、本体のノートを処分しても皆死ぬことはないはず」
111少年に残されたものは:2006/02/13(月) 19:06:10 ID:GniG6W7y0
出来れば手放したくはなかった。あれさえあれば主催者たちを罠にかけることもできた。
しかし、今持っている紙切れでは、裏表使っても書き込めるのはせいぜい人二人分の名前。長文などは無理だ。
これではルールの書き換えを行うことは出来ない。
更に懸念することがある。それはもしも人二人分の名前を書いてしまった場合。
これ以上使うことが出来なくなれば、それは処分されたと見なされないだろうか?
確かめる術がない現状では、二人分の名前を書かないことぐらいしか対策は見つからない。
もっとも、極力このノートを使うつもりは毛頭無いが。
だが、今更愚痴を言っても仕方ない。あの状況ではノートを取り戻すのは不可能。
なら処分するしかない。ムーンフェイスに任せて。

「ムーンフェイス…」
口にするのは身代わりとなった彼の守護者の名。
おそらくもう会うことはないだろう。今ではもう彼の生死すら確かめることは出来ない。

「ムーンフェイス、見ててください。正義は必ず勝つということを」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
112小休止 ◆cCdWxdhReU :2006/02/15(水) 08:26:59 ID:zBtu3xc20
琵琶湖の北側の湖岸で、ヤムチャとサクラが水の補給がてら休息をとっていた。
道中、強い戦闘力の持ち主をいくつか探知したが、まずは長野に向かうのが先決だったので上手くやり過ごしてここまで来た。

「この分なら、夜には長野県まで行けそうですね」
「ああ、そうだな。…くそっ、全然釣れないじゃないか、やめだやめだ!」
湖に釣り糸を垂らしていたヤムチャは、木の枝で作った簡易釣竿を投げ捨てて寝転がった。
サクラはそれを拾うと、どうも魚の姿は無いように見える湖面に釣り糸を垂らす。
いや、魚だけではない。空にも鳥の姿がほとんど見えない。
「(動物が少ない…元々この島にはいないのか、それとも……)」
誰かが――誰かと言っても主催者くらいしか思いつかないが――意図的に動物の数を減らしているのか。
両津やぬ〜べ〜の話では、日本と言うらしいこの島は本来の大きさよりもかなり小さくなっているそうだ。
ということは、ここは主催者が殺し合いの場とするために、日本を模して作り上げた舞台とは考えられないだろうか。
そして動物の姿が少ないのは…
「……食料を補給させないため、かしら…」
「あん?なんか言ったか?」
サクラはなんでもないと言うように首を横に振る。
今はそんなことを考えても仕方ない。ここがどんな場所か判っても、この首輪がある限りどうしようもないのだから。
首輪を外せるような力を持った人物を見つけるまでは、主催者の掌の上で踊るしかないのだろう。
「お、引いてるぞ」
そんな力を持った人がいるのかは疑問だが、諦めたらそこで終わってしまう。
「おーい、当たりが来たぞ」
「…え?あ、引いてる!」
113小休止 ◆cCdWxdhReU :2006/02/15(水) 08:27:39 ID:zBtu3xc20
その後もう少し粘ってさらに1匹の魚をゲットした二人は、森の中でそれを焼魚にした。
森の中なら、焚き火程度の煙は木の枝の間を通るうちに拡散し目立たなくなる。
手際よく火をつけて魚を焼いていくサクラに、ヤムチャは感心して思わず声を上げた。
「へぇ、意外に手馴れてるんだな」
「忍者は任務で里を離れることが多いから、サバイバルの訓練もしてるんですよ」
焼き上がった魚は、前に食事をした時に食べた乾パンや菓子パンの袋に入れてヤムチャが持つことにした。
たった2匹だが、1食分くらいにはなるはずだ。
魚をヤムチャに渡し、火を消すと、サクラは立ち上がった。

「ヤムチャさん、そろそろ行きましょう」
「もう行くのか?もうちょっと休んでいこうぜ…」
「ダメですよ!長野県の強い反応が悟空さんだったとしても、探知してから半日くらい経ってるんですよ!
 早く行かないと、どこかに行っちゃうかもしれないじゃないですか!」
サクラはそう言いながら、仰向けに寝ているヤムチャの腕を引っ張って無理やり立たせる。
一方のヤムチャは、朝の大蛇丸以来敵に遭遇してないためか、或いは悟空さえ見つかればなんとかなる
という楽観的な考えからか、すっかり気が緩んでしまっている。
「わかったわかった、行けばいいんだろ…まったく、そんなに口うるさいとイイ嫁さんになれないぜ?」
「大きなお世話です!」
ピシャリとヤムチャの頭をはたくと、サクラはすたすたと歩き始める。
「おいおい待ってくれ」と、ヤムチャも慌てて後を追いかけ、ふたりは琵琶湖を後にした。
114小休止 ◆cCdWxdhReU :2006/02/15(水) 08:28:24 ID:zBtu3xc20
【滋賀県・琵琶湖北岸/1日目・午後】
【ヤムチャとお守り】
共通思考:3日目の朝には兵庫県に戻る。無理なら琵琶湖。
【春野サクラ@ナルト】
状態:若干の疲労
装備:スカウター@ドラゴンボール
道具:荷物一式(一食分の食料を消費、半日分をヤムチャに譲る)
思考:1.スカウターを使って隠密行動をしながら、ヤムチャと共に悟空を探し仲間を増やす。
     とりあえず強い反応があった長野県に向かってみる。(強い反応の正体は悟空の界王拳)
    2.ナルト、シカマルと合流して脱出を目指す。
    3.大蛇丸を見つける

【ヤムチャ@ドラゴンボール】
状態:右小指喪失・左耳喪失・左脇腹に創傷(全て治療済み)
    超神水克服(力が限界まで引き出される)・五行封印(気が上手く引き出せない)
装備:無し
道具:一日分の食料
思考:悟空を探す。若干気が緩んでいる。
115サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:07:02 ID:aHysForU0
「――ハッ、――ハッ」

青空に、暖色が混じり始めてきた。

「――ハッ、――ハッ」

新たな死者を告げる、悪魔の声が迫ろうとしていた。

「――ハッ、――ハッ」

男は走る。街を、山を、森を、関西を爆走する。

「――ハッ、――ハッ」

特に意味などない。こんな無茶な走りこみは、トレーニングにもならない。

「――ハッ、――ハッ」

ただ、走りたくて、この怒りを疲れで吹き飛ばしたくて、全力で疾走する。

「――――ハッ、――ハッ」

――疲れた。

「……ちくしょう」
116サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:07:52 ID:aHysForU0
その男、若島津健は、サッカーと言う分野で活躍するプロのスポーツマンである。
多少の運動で疲れを見せるようなやわな体力は持ち合わせていないが、
さすがに鳥取からここ、奈良まで全力疾走で走ってくれば、疲労の色は隠せない。
しかも、彼は知人二人の死という精神的ダメージも負っている。
もう、いいかげん休みたいところだった。

「うっ……」

足を止めた瞬間、猛烈な吐き気が込み上げてきた。
昼間からの無茶な全力疾走と、脳にしっかりと植えつけられてしまった、友の死体。
双方が重なって、急激に気分が悪くなった。
が、

「う……ぇ」

口からは、胃液しか出ない。
それもそのはず、若島津は、昼間からろくに食事も取っていない。
食事も取らず、今まで走り続けてきたのだ。
石崎の死体が脳内に残り続けている状態で、食べ物を口にする気などとても起こらなかった。
しかし、それもそろそろ限界。
身体と精神の疲労、加えて空腹。
脳が命の危機を感じ、自然と支給された食料に手を伸ばさせていた。


軽い休憩をかねた食事を済ませ、若島津は再び進みだす。
当てもなく、残ったただ一人の仲間、大空翼を捜して。

そして見つけたのは、二人の人影。
残念ながらそれは彼の探し人ではなく、それを知った若島津はまず、警戒した。
彼はこのゲームにつれてこられてから、おかしな警官に友の死体と、ろくな出会いをしていないのだから――
117サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:08:39 ID:aHysForU0
もう、何時間経っただろうか。
棒立ちの新八の目に映るのは、笑顔を浮かべたまま倒れ、決して起きることのない、冴子の死体。
誰が、彼女をこんな風に?

『誰だよ……いったい、誰がこんなことしたんだよ!』

新八の心の叫びは、誰に届くこともなく――

『なに言ってるの? あなたがやったんじゃない新ちゃん』
『――え?』

聞こえたのは――いや、目に映ったのは、自分が愛し、同時に恐れた――唯一の肉親である、姉の姿。

『え? え? 姉上……なんで!?』

自分は幻でも見ているのだろうか?
たしかこのゲームには、新八の姉、お妙は参加していないはず。
それがなぜ今、目の前に……?

『え? え? じゃないわよ。私、新ちゃんがこんなことする子だなんて思わなかった。こんな、人を殺して「うぇっへっへ、うぇっへっへ」なんて言いながら死体を観察する趣味が合ったなんて』
『ええ!? ちょ、違いますよ姉上!? たしかに僕は人を殺したかもしれなかったけど、あれは自分のみを守るためで――てかそんな、本気で危ない行為してねぇぇぇ!?』
『嘘つくんじゃないアルよ、このウソメガネ』
118サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:10:05 ID:aHysForU0
今度は後方から聞こえる、聴きなれたエセチャイナの口調。
振り向くとそこには、放送で死を宣告されたはずの、自分が捜し求めていた少女の姿が――
『か、神楽ちゃん! やっぱり……やっぱり無事だったんだね!?』
『よるな殺人メガネ!』
『ぶほぅっ!!?』

いきなり神楽にドロップキックをおみまいされた(ような気がした)。
『な、なにするんのいきなり!?』
『私、新八がそんなやつだとは思わなかったネ。女性ばかりを狙う快楽殺人者だったなんて、これだからメガネは』
『だからちげぇー!! てかメガネ攻めすぎじゃないぃ!?』

『『違わない』』

二人の声が、重なった。
『じゃあ、新ちゃんの足元にあるそれはなんなのかしら?』
『きっと大人の玩具ネ。新八は殺人と変体という二つの犯罪に手を染めてしまったに違いないヨ』
『ち、ちがう……』

『『それは、お前が殺したんだろう?』』

再び合わさる、二人の声。

『違う……ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう
 うううううううううううううううううううううううううううううううううう』

新八は、もう何時間も瞬きをしていない。
新八は、もう何時間も目を逸らしていない。
自分が殺してしまった、冴子の死体に、完全に意識を奪われて――

『僕は、この、人を、』

――――――救いたかったんだ――――――
119サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:18:16 ID:aHysForU0
若島津は、困惑していた。
視界に映るのは、倒れる女性と棒立ちの少年。
これはいったい、どんな図式なのか?
しばらく観察していたが、どちらも動きを見せない。
その観察の結果、誰もが考えるであろう、最悪の図式であることを理解した。
それを確かめるべく、若島津は少年に声をかける。

「おい……おまえ」

微かに反応を示したのは、少年のほう。
倒れている女性は……反応なし。
こうなれば、結果は明白。

「その女性……おまえが、殺したのか……?」

誰がどう見ても、そういう図式。
声をかけると同時に少年に近づく若島津。そして見た。
少年――志村新八の、異常なまでに虚ろな目を。

「……!」

その目で自分の憶測は真実であると確信し、同時に激怒した。
こんな……こんな見るからに普通そうな少年までもが、このゲームに乗っていると言う事実に。

「くそったれ……!」
「……ちがう……ちがう……ちがう……」

新八の力ない呟きは若島津に届くことなく、
また若島津は死体を前につっ立ったままの新八に激怒し、
その頬っ面を、思い切り殴り飛ばしていた――
120サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:18:53 ID:aHysForU0
突然、頬に激しい衝撃を感じた。

『え? え?』

理由もわからぬ痛みにうろたえる新八は、同時にさっきまでいたはずの姉と神楽が消えていることに気づいた。
そして、代わりに見たのは……

『あれ、は』

忘れることのできない、光景。
布団に横たわる男と、そのそばで悲しげな瞳を浮かべる男の子と女の子。
確かに知っている、その光景。

『侍の刀はなァ、鞘におさめるもんじゃねェ。てめーの魂におさめるもんだ』

――忘れるはずのない、あの言葉。

『時代はもう侍なんざ必要としてねェがよ、どんなに時代が変わろうと、人には忘れちゃならねーもんがあらぁ』

――それは、あの人が、死に際に放った言葉。

『たとえ剣を捨てるときが来ても、魂におさめた真っすぐな剣だけはなくすなっ――』

『――父上!!』

志村新八は、侍の子だ。
121サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:19:31 ID:aHysForU0
若島津はこの少年が許せなかった。
横たわる女性の死体。そばに放置された武器。この少年の異常な目。
その全てが、殺害現場であることを物語っている。

「おまえが、おまえみたいなヤツが、石崎を、キャプテンを……!!」

若島津は少年が危険であることわかった上で、それでも彼を追いやる。
少年がまったく抵抗しないからか、はたまたそれ以上に正義感が彼を動かすのか。

――いや、ただ単にやり場のない怒りをぶつけているだけかもしれない。

自分の拳で吹っ飛ばした少年の身体を無理やり起こし、胸ぐらを掴み、再び殴る。
殴る、殴る、殴る。

理不尽な怒りを込めた、その拳で――
122サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:20:05 ID:aHysForU0
『銀さん……』
『なんだ』

新八の隣には、いつの間にか銀髪天然パーマの男が座っていた。

『銀さんいつか言いましたよね。侍が動くのに理屈なんか要らない。そこに護りたいものがあるなら剣を抜けばいい。って』
『言ったかそんなこと?』
『言いましたよ。銀さんと初めてあって、姉上が連れ去られた時。具体的に言うとコミックス第1巻40ページの2コマ目で』
『細かいなおい。おま、漫画キャラとしてそういうこと言うのはご法度だろうが』
『ギャグ漫画だから問題ないですよ。てかこれ原作じゃないし』
『おぃぃぃぃぃ!? なにはっちゃけちゃってんのぉぉ!? おまえそんなキャラだっけ!?』
『それはそうと……もし、護りたいものが護れなかった場合は、どうすればいいんですかね?』
『……ああ、そりゃああれだな。反省すべきだな』
『反省?』
『ああ。例えばジャンプ買うのを発売日の三日後くらいまで我慢するとかだ』
『それあんただけだろうがァァ! いい加減捨てろよ少年の心ォォォ!?』

新八と銀時の会話は、誰にも邪魔されることはなかった。
現実で誰かが自分を殴っていようが関係ない。
今、新八はこの世界にいるのだから。
123サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:20:57 ID:aHysForU0
『てかよう、おまえが護りたかったヤツってのは最後なんて言ってた?』
『え……』
『最後の言葉だよ。なんか言ってただろうが』

冴子が最後に、自分に向けて言い残した言葉。
そんなものあったのだろうか。自分は、彼女を殺そうとしたのに。
そんな、わざわざ言葉を言い残すなんて――

『殺そうとした? 新八、おまえさっき護りたかったって言ってたじゃねぇか』
『いや、言いましたけど、僕は彼女を殺してしまって……あれ?』

どうにも辻褄が合わない。
自分は彼女を救おうとしたのに、彼女は死んでしまって。
殺そうとかそんなことは、決して思っていなかったわけで。

『新八よぉ、世の中には「勘違い」って言葉があるんだぜ』
『でも彼女は死んで、僕は生きてて――』
『それだよ』『それよ』『それネ』

三者の言葉が重なって――

『・・生き、て』

――答えは、出た。
124サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:31:09 ID:aHysForU0
「……いてぇ」

今までたこ殴りにされていた少年が、唐突に声を発した。
しかし、そのか細い声は、怒りの若島津の耳には届かず。
胸ぐらを掴まれたまま、空手経験者の拳を顔に浴びせられる新八。
その顔は膨れ上がり、歯は何本か折れ、眼鏡はとっくのとうに地に落ちている。

「こいつが、こんなヤツが……!」

なんで僕は殴られているんだろう?
なんで? ちょっと理不尽じゃないですかこれ?
痛っ! ちょ、痛いってば! 口んなか血の味だよこれ!?

「こんな――」
「いてぇっつってんだろうがァァァァァァァ!!!」

新八が、吼えた。
125サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:31:54 ID:aHysForU0
それは、空手とか格闘とかそんなもん全然意味がない世界。
漫画キャラであれば誰もが回避することができない、特定の人物のみに使用を許可された、一撃必殺の最大奥義。
その名を――ツッコミ。

「がっ……!?」
さっきまでたこ殴り状態だったはずの少年に、いきなり殴られた。
咄嗟に反応することができなかったのは、必然。むしろ、お約束。
豪快にぶっ飛ばされた若島津は、その一発で前歯を砕かれ、地面に転がった。
突然変異した少年に驚きを隠せないまま、それでもなんとか立ち上がって身構える。

「な、なんなんだおまえ!?」
「僕か? 僕はな……」

若島津の問いかけに、新八ははっきりとした意識で応える。
天人が江戸に襲来しても、なお侍の心を忘れなかった新八は、堂々と名乗りを――

「僕は――」

誇り高き侍の子、志村新八と――いや、否。
126サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:32:30 ID:aHysForU0
「――寺門お通ちゃん親衛隊隊長 志村新八だァァァァァァ!!!」

自分が一番誇れる肩書きで――名乗りを上げた。



新八ぃ、おまえ俺や神楽がボケてた時どうしたよ?

――ツッコんでました。

新八ぃ、おまえテロリストに間違われたり、えいりあんに襲われた時どうしてたよ?

――キレてました。

じゃあおまえよ、こんなわけわかんねーゲームに連れてこられて、いつものおまえならどうするよ?

――そりゃあキレるでしょうね。連れてきたやつらに。

じゃあいつもどおりキレろよ。そんでツッコんでやれ。俺や神楽や、その姉ちゃんの分も。

――当然ですよ。だって、
  
  僕がいなかったら、誰がツッコむっていうんですか?――
127サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:33:13 ID:aHysForU0
「L・O・V・E・お・つ・う!!」
「声が小さい!! もっと大きく!!」
「L! O! V! E! お! つ! う!!」

――俺はなにをやっているんだ!?

若島津の疑問はもっともだった。
彼は今、新八の指導の下、どこかのアイドルへ送る声援の練習をさせられている。

新八が意識を取り戻した後、若島津は得意の空手を生かし、果敢にも攻めにいったのだ、が、
自慢の空手で鍛えた拳も、新八が放つ『神速のツッコミ』のスピードを上回ることはできなかった。
新八はいったい何者なのか? 寺門お通親衛隊隊長とはこれほどまでに強いものなのか?
ひたすら意味不明な新八の言動に混乱し、果てはこんな意味不明な行動につき合わされ、いつの間にか若島津の怒りは消え去っていた。

少なくとも、新八の瞳が先ほどの異常で虚ろなものではなく、希望を感じる生気の満ちた瞳――だということだけはわかった。
128サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:33:56 ID:aHysForU0
「ようし! おまえなかなか筋がいいな! 今だけ親衛隊のナンバー2にしてやる!!」
その言動はいつもの弱々しいものと違い、彼が親衛隊の征服と鉢巻きに身を包んだ時にだけ見せる、活き活きとしたもの。
彼の指揮する親衛隊はいかなる時もお通ちゃん絶対。たとえ彼女が間違った方向性のアイドルになってしまっても、陰ながら見守り続ける。
そんな名誉ある親衛隊の、ナンバー2。若島津もさぞ光栄であろう――

「――って、なんじゃそらぁ!!」
キャラじゃないのはわかっていたが、さすがにつっこまずにはいられない。
若島津は新八が殺人者であると言うことも忘れ、危機感など全く持たずに言い寄った。

「おい、志村とか言ったな!?」
「隊長と呼べぇぇぇ!!」
「隊長ォォォォォ!! あなたはいったいなんなんですか!? この女性あんたが殺したんじゃないの!?」
若島津は、もうほとんどヤケだった。

「断じて違う! 彼女は僕を殺そうとした! だから僕は彼女を救おうとした! でもあやまって殺してしまった! 正当防衛だァァ!!」
「逆ギレェェ!!? 逆ギレだろそれェェェ!?」
「ナンバー2ぅぅぅ!」
「若島津健だァァァ!」
「僕達が一番やらなきゃいけないのは、彼女の分も生きることだ!」

また、新八の瞳を見た。
あの自分が尊敬して止まない、日向小次郎と同質の活力を秘めた――侍魂の込められた瞳を。

「隊長……」
「僕は、仇をとる! 死んでしまった銀さんや神楽ちゃんの分も、その人の分も! こんなゲームを企画したやつら全員に、必ずぶっ飛ばす!」

――新八がやらなければ、誰がこんな馬鹿げたゲームにツッコミを入れる?
父や銀時に教わった侍魂。
彼が持つ、天性のツッコミセンス。
双方が合わさり、新八は、覚醒したのだ。
129サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:44:56 ID:aHysForU0
「若島津ゥゥゥ! おまえはどうしたい!?」
「俺は……キャプテンを、石崎を殺した奴らを、許せない! この手で……仇をとる!」
「なら決まりだ! 一緒に行くぞ、ナンバー2!」
「はい、隊長!!」

若島津が新八に感銘を受けたのはなぜなのか。新八に人の心を動かすカリスマなど皆無であるというのに。
しかし、今の新八は新八にしてあらず。侍魂を忘れぬ、寺門お通ちゃん親衛隊隊長としての新八なのである。

歩き出そうとした新八は、倒れる冴子の死体に顔を向け、別れ際に一礼した。
(すいません、今はろくに弔うことができなくて。でも、約束します。あなたの分も生きるって)
次に顔を上げ、オレンジ色を帯びてきた空を見る。
(銀さん、神楽ちゃん、みんなの分も。ボケ二人がいないと僕が成り立たないんだから、こんなゲーム早く終わらせる)
新八はもう認めていたのだ。冴子の死を目の当たりにし、あの二人もまた、どこかで同じように――
それを理解したうえで、彼は進む。とりあえず、越前と合流するために琵琶湖へ。

主催者の打倒という、ヤケっぱちとしか思えない使命に目覚めてしまった新八と若島津。
彼らは、(結果などわかりきっている気もするが)今後このゲームにどのような影響をもたらすのか?
それは、(誰もが同じような予想をするかもしれないが)誰にもわからない――
130サムライスピリッツ、燃ゆ ◆kOZX7S8gY. :2006/02/15(水) 13:45:39 ID:aHysForU0
【新! 寺門お通ちゃん親衛隊】

【奈良県中部/1日目・夕方】

【志村新八@銀魂】
 [状態]:重度の疲労。全身所々に擦過傷。特に右腕が酷く、人差し指、中指、薬指が骨折。顔面にダメージ。歯数本破損。キレた。
 [装備]:拾った棒切れ
 [道具]:荷物一式、 火口の荷物(半分の食料と水を消費)、毒牙の鎖@ダイの大冒険(一かすりしただけでも死に至る猛毒が回るアクセサリー型武器)
 [思考]:1、越前と琵琶湖で合流する。
     2、藍染の「脱出手段」に疑問を抱きながらもそれを他の参加者に伝え戦闘を止めさせる。新八本人は、主催者打倒まで脱出する気はない。
     3、沖田総悟を探す。
     4、銀時、神楽、冴子の分も生きる(絶対に死なない)。
     5、主催者につっこむ(主催者の打倒)。

【若島津健@キャプテン翼】
[状態]:重度の疲労。拳に軽傷。顔面にダメージ。前歯破損。寺門お通ちゃん親衛隊ナンバー2。
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(食料一日分消費)、ベアークロー(片方)@キン肉マン
[思考]:1.新八についていく。
    2.翼と合流。
    3.主催者の打倒。
131日が暮れて1:2006/02/15(水) 18:45:34 ID:72kQObPWO
両津一行はヤムチャ達と別れた後、西へと進んでいた。
しかし、今までのようなハイペースで進むことなど出来はしない。
「うーむ。矢張りスカウターが無いと不安になるものだな。
香川まで行くのにこのスピードではな。」
両津はこれまでの移動の際、常にスカウターの加護を受けていた。
故に少し進んでは索敵、という行動はやり辛い。
「しかし、中国地方は山地が殆どですからね。
脇からズドン。なんてことも十分に考えられますよ。」
「あぁ。それにこういう所にマーダーは潜んでいるものだ。」
このチームの参謀である乾は答える。
鵺野もまた、この行動には賛成らしく、相槌をうった。
そうやって三時間ほど移動を続けて、ようやく四国への橋、瀬戸大橋が見えてきた。
時刻は17:00くらいになるだろうか。
太陽は沈みかけ、空にはカラスの鳴き声が聞こえてくるという不気味な雰囲気が醸し出される。
132日が暮れて2:2006/02/15(水) 18:47:17 ID:72kQObPWO
「なんとか日没までには辿り着けたな。」
「いえ、まだです。あの建物を見てください。
何かが狙っている気がしませんか?」
乾の指差した先にはぽつんと古びた小さなビルが一つ聳え建っている。
暗くて遠くは分からないが、建物はそれ一つのみだろう。
「確かに…しかし、こんな所でもたもたしていても仕方がない。
わしが突っ込む!!」
「えっ。ち、ちょっと。両津さん!」
乾の台詞の前に既に両津は駆け始めてていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
このゲームが始まり既に沢山の人が死んだ。
両津もまた、大原部長、中川という大事な仲間を失っている。
それら全てを吹き飛ばすかのような大声で両津は叫んだ。
右手に中川も愛用していたマグナムを握り締めて。
百メートル10秒4の俊足は、縮小された橋を瞬く間に駆け抜け、ビルの中へと突入していった。
しばらく茫然と見送っていた鵺野の心も熱くなってきた。
133日が暮れて3:2006/02/15(水) 18:49:29 ID:72kQObPWO
「ビルの中に敵がいたら両津さんが危ない。乾!俺たちも行くぞ!」
「え?鵺野先生まで…」
鵺野も叫び声をあげ走りだす。
乾も仕方なくそれに続く。(いくら暗いとはいえこれでは只の的に…)
しかし、乾の心配もすぐに安心に変わる。
「大丈夫だ。このビルにはだれもいない。安全だぞーーっ!!」
両津は屋上で手を振り、ビルの前ですぐに三人は合流した。
「危ないじゃないですか。両津さん!
もしマーダーがいたら殺されていたかも知れないんですよ?」
「いやぁ。すまんすまん。わしは咄嗟のとき考えるより先に手がでてしまうんだ。
それより、大体見当はつくがお前の策を教えてくれ。」
あまり悪怯れた様子もなく逆に乾に質問する。
134日が暮れて4:2006/02/15(水) 18:52:02 ID:72kQObPWO
「全く…今ので分かったかと思いますが、ここは守りやすく攻めにくい。
この広い日本列島、人一人探すのは不可能に近いでしょう。
ここは前方を海、左右後方は山で覆われています。
そこで、近づいてくる人に一人が接触し、もう二人がもしもに備え屋上で銃を構え待機する…
「ちょっと待った!!」
その時突然両津が声を張り上げ立ち上がった。
「その交渉の役は誰がやるんだ?」
「勿論俺がやりますよ。二人は上で…
「何を馬鹿なことを言っとるんだ?それは警察官であるわしの役目だ。」
「いや、この三人の中で一番戦闘力の高いのは俺だ。それは俺がやらせてもらおう。」
三人はそれぞれ自分こそが交渉にあたるに相応しいと主張する。
その議論を終わらせたのは乾の一言だった。
「ちょっと二人とも落ち着いてください。
俺が交渉に相応しいと言える理由は三つあります。
一つ。俺は銃を扱ったことがありません。
ですから両津さんにはスナイパーになってもらいます。
135日が暮れて5:2006/02/15(水) 18:53:11 ID:72kQObPWO
二つ。失礼ですが今鵺野先生は興奮されてます。
その状態で交渉は不可能だと思います。
ですから、先生には白兵戦になった時に役にたってもらいます。
三つ。参加者の中には疑心暗鬼になっている人もいるでしょう。
そんな時、大人のあなた達では警戒して心を開いてくれないかもしれません。
以上の三つが俺の言い分です。」
「しかし…一番危ないのがその役だ…矢張りお前に任すわけには…」
両津は先程とは違い、小さな声で尋ねた。
「危険は承知のうえです。恥ずかしいことですが、この中では俺が一番役に立ちそうにありません。
それに…もし死んだとしてもあなた達が仇をとって下されば…
この世界に一人でもマーダーがいなくなるのならば……
大勢の命が救われるのならば……
この俺一人の命などやすいものです。」
乾が喋り終わった後、両津と鵺野は泣いていた。
この殺し合いの中、幾度となく流し、
(特に鵺野等既に泣かないと天国の二人に誓ったはずだが)
枯れ果てたはずの涙が再び二人の頬を流れ落ちている。
136日が暮れて6:2006/02/15(水) 18:54:14 ID:72kQObPWO
「乾…お前に交渉を任せるには条件が二つある。
一つ。俺を配置するのは一階にしてくれ。
屋上では戦いになった時、間に合わないかもしれない。
二つ。お前を殺そうとする奴は俺が容赦無く殺す。
もう、これ以上悲しみは増やしたくないんだ。いいな?」
しゃっくりが混ざった声で彼は喋る。再び悲劇が繰り返されないためにも。
「勿論。俺だって簡単には死にたくありませんからね。では両津さん。この弾を。先生はこの銃を。」
「いや、俺には銃は不要だ。護身用にお前が持っておけ。」
「分かりました。」
乾は自分の選択が間違っていなかったことに満足し、喜んだ。
(よかった。この二人で。ヤムチャさんと組んでいたらこうにはならなったはずだから)
陽は沈み、月が昇る。秋の瀬戸内は既に真っ暗だ。
時刻はまもなく18:00を迎えようとしている……。
137日が暮れて:2006/02/15(水) 18:56:28 ID:72kQObPWO
【初日香川県瀬戸大橋@夕方】
チーム【公務員+α】
【共通思考】1、仲間を増やす。2、三日目の朝には兵庫県へ戻る。ダメなら琵琶湖へ。
【両津勘吉@こち亀】
【状態】健康
【装備】マグナムリボルバー残弾100
【道具】支給品一式(一食分の水、食料を消費。)
【思考】1、他の参加者の発見。
2、伊達、玉藻と合流
3、主催者を倒す。
【乾貞治@テニスの王子様】
【状態】健康
【装備】コルトローマンMKV@シティーハンター
(ただし照準はメチャクチャ】
【道具】支給品一式。(ただし一食分の水、食料を消費。半日分をヤムチャに譲る。)手帳
【思考】1、他の参加者への接触
2、越前、跡部と合流し、脱出を目指す。
【鵺野鳴介@地獄先生ぬ〜べ〜】
【装備】御鬼輪@地獄先生ぬ〜べ〜
【道具】支給品一式(水を7分の1消費。)
【思考】1、戦闘になった場合、相手を殺す。
2、武器を探し玉藻、伊達と合流。
3、マーダーを全員殺す(主催者を含む)。
※(乾の言葉により落ち着きを取り戻しました。)
138作者の都合により名無しです:2006/02/16(木) 01:33:42 ID:qODGRafaO
139そして彼女の行き着いた先:2006/02/16(木) 20:34:22 ID:Q+TNWwVQ0
放送でガラの名前が呼ばれD・Sは立ち止まった。
ボリボリと頭を掻くと、苛立ちを隠そうともせず傍の木を殴りつける。
「あのバカ、オメーみてぇな三枚目は俺様みたいな超絶美形主人公と違って
 生き返れねぇって言っといただろうが……。この俺様に無許可で逝くとはいい度胸だ。
 主催者どもをぶちのめした後地獄から首根っこ掴んで引っ張って来て
 ラーメン鼻から食わせながら土下座させてやるぁーーーーーーーーーーー!!」
ひとしきり叫ぶと彼は落ち着きを取り戻したのか、空を見上げた。
「ヨーコさん、どうしてっかなー。ハーレムもいいがヨーコさん見つけんのが先かなー……
 でもヨーコさんハーレム許してくんねぇだろうから隠れて作るしかねぇんだよな……」
彼にハーレムを作らないという思考はなかった。
などとブツブツ呟いている内に前方から駆けて来る少女の姿が見えた。
「おぉ、女はっけ〜ん!」
D・Sはヨーコのことは見つかるまで考えないことにし、そのしばらくの間は己の欲望に忠実に行動することにした。


「いやァああああーーーーーーーーーーー!!」
目の前にいるいやらしい笑みを浮かべた長躯の男から逃げ出そうとさつきは踵を返そうとする。
しかし今来た方向には筋骨隆々で凶悪そうな男がいたのを思い出し、たたらを踏んだ。
「くっくっく……どうした? 逃げようとしたんじゃなかったのか?
 まぁどっちみち逃がさなかったけどな」
「ひッ!」
振り向けばそこには既に間合いを詰めていたダーク・シュナイダーの姿が。
D・Sは逃げようとするさつきの腕を捕らえ、近くの木の幹にその身体を押し付けた。
「きゃあッ」
「おっと騒ぐなよ……安心しろ、傷つけたりはしねぇ。お前は大事な俺様の女だからな」
(力がこれ以上入れらんねえ……これ以上は攻撃と判断されるってことか……クソッ)
実際さつきの腕を掴んではいるものの力が入っていない為拘束力はなく、さつきはいつでも逃げ出すことは出来た。
しかし恐怖で身体がこわばり、既にさつきはまともに動くことすら出来なかった。
涙を流し、死にたくない一心で命乞いをする。
「お、お願い……殺さないで……死にたくない」
「おーーおー、随分と怖い思いをしてきたみてぇじゃねぇか。
 どれ、俺様の目を見な。このダーク・シュナイダー様が味方になってやろう」
140そして彼女の行き着いた先 2  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:35:06 ID:Q+TNWwVQ0
「え……」
言われるままにさつきはD・Sの瞳を覗く。
その瞬間、さつきは恐怖を忘れ胸が高鳴った。
先ほどまで悪鬼のように思っていたD・Sの素顔は良く見ると端整な顔立ちで自信に溢れている。
銀に流れる髪、凛々しい眉、その深く透き通った瞳はさつきの心の中に強く染み込んだ。
(なんて、綺麗な男の人……何であたしはこの人から逃げようとしたんだろう)
頬を赤らめ、瞳を潤ませて見つめてくるさつきにD・Sはほくそ笑む。
(クックック、どうやら上手くいったようだな。最初からこうすりゃ面倒がなかったんだ)
D・Sが行ったのはチャーム、魅了の魔法。相手の心に干渉し、自らの虜とする術である。
魅了の効果によってさつきは警戒心を解き、D・Sを受け入れるべき相手として心を開いたのだ。
ようやく信頼できる(と、思わされた)相手と巡りあい、さつきは安堵してその場に座り込んだ。
「怖かった……怖かったんです。防人さんが死んで……東城さんも変わってしまって……
 誰も、誰もあたしを助けてくれなかった。だから逃げて、何もかもから逃げ出してしまおうって……」
震えながら呟くさつきにD・Sは眉をしかめる。
(チ、よっぽど追い詰められてやがったようだな。
 そこに無理な精神干渉を行ったから大分不安定になってやがる。めんどくせぇが一度落ち着かせるか)
「俺様が敵じゃないことが判ったか?」
「はい、逃げ出したりしてすいませんでした……。でも、怖かったんです。
 防人さんがアビゲイルって人に殺されてしまって……あたしもうどうしたらいいかって」
「あん? アビゲイルだぁ!?」
思わず大きな声を出したD・Sにビクッと身体を震わせるさつき。
D・Sはさつきを落ち着かせることも忘れて問いただす。
「し、知ってるんですか?」
「やい、詳しく話しな。っと、そういやまだ名前も聞いてねぇな、名乗れ。
 俺様は魔導王ダーク・シュナイダー。お前のご主人様だ」
「あたし、さつき。北大路さつきです。でもあたし、あなたの召使とかじゃ……」
「いーからさつき。アビゲイルの話をしな」
「……はい」
傲慢なD・Sの物言いにさつきの心に再び警戒心が沸きあがって来る。
魔素の薄いこの世界ではD・Sの魔法は効きが悪い。
魅了の魔法も例外ではなくその効力は時間が経つに連れて弱まってきていた。
それでも弱ったさつきは目の前の男が味方だと思い込み、不信感を振り払ってことの顛末を話す。
141そして彼女の行き着いた先 3  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:35:39 ID:Q+TNWwVQ0
一通り話を聞き終わったD・Sは少し考え込んだ。
(闇の僧侶であるアビゲイルの野郎が戦闘で相手を殺したんなら首を切断したのは魔法の筈だ。
 だが剣を使って切断したってことはそりゃ戦闘の結果じゃなくアビゲイルが望んだことっつーわけだな。
 わざわざ野郎が首の切断を必要とすることっていやぁ……)
D・Sは自らの首に嵌っている冷たい鉄の感触を確かめる。
(首輪だ。旧世界の魔法や闇の僧侶魔法に通じている野郎なら(魔導に関しちゃ俺のほうが上だがな、ケッ)
 この首輪を研究することで外すことができやがるかも知れねぇ。
 それに攻撃できねぇなんてこのふざけた呪いも奴なら解ける、か?
 しかも俺様の為に献上用の女を二人も用意してる。アイツもわかってきたじゃねぇか、ククク……)
これからの行動方針は決まった。アビゲイルと合流することだ。
だがさつきがここに来る途中で遭遇したという傷だらけの男が気になる。
普段のD・Sならどんな相手が来ようと意に介さないが今は攻撃ができない。これは大きなハンディである。
(しょうがねえ、この女を使うか。魅了が効いている間は俺が攻撃されることはないしな)
「おい、これからアビゲイルの所へ向かう。案内しな」
「え? そんな!」
あんな殺人鬼の下へわざわざ向かうなんて何を考えているのか。
いや、目の前の男はアビゲイルのことを知っているようだった。
(も、もしかして仲間だったの? それじゃこの人も……)
この世界の中で唯一自分を護ってくれた防人を殺した人間の仲間。
さつきの中に再び湧き上がる恐怖はD・Sの魅了の魔法を打ち消した。
(に、逃げなきゃ……でも何処へ? どうしたらいいの、防人さん……!)
混乱しているその時、D・Sは懐から装飾銃を取り出しさつきの前に放った。
「俺様に歯向かう奴はお前がその銃でぶち殺せ。援護はしてやる」
しかしそんなD・Sにさつきは反応せず、目の前に放り出された銃をじっと見つめていた。
「? やい、聞いてんのか!?」

(逃げる……何処へ? あたしはきっとこの男の人からは逃げられない。
 あたしを護ってくれた防人さんはもういない。真中がここにいてくれてもどうにかできるとは思えない。
 でも逃げなきゃ。どうやって? 逃げて、逃げて……それでどうするの?
 逃げても、逃げても……きっと逃げ切れない。ここは殺し合いの場所だから。じゃあ、あたしは……)
142そして彼女の行き着いた先 4  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:36:19 ID:Q+TNWwVQ0
目の前には銃がある。

(なんだ、簡単なことだった)

さつきは銃を手に取り、銃口をこめかみに当てた。

(真中、ごめんね。先に防人さんの所にいくね……防人さん、あたしは――)

「オイ、コラ! ちょっと待てぇ!」



――――――――――――――――――ダァンッ……



そうして――北大路さつきは、この世界からの完全な逃避に成功した。



「クソ、イラつく……」
D・Sは突然自殺したさつきにしばらく呆然とした後、彼女の支給品を回収し、アビゲイルの下に向かうことにした。
「生きてりゃこの俺様が幸せの絶頂にしてやったのによ。もったいねぇ」
さつきの支給品は高性能時限爆弾だった。
見た目は大きな電卓っぽい機械にに爆弾本体であろう黒い箱がくっついている。
3秒から60分までタイマーをセットすることができ、解除するには設定されたPASSコードを打ち込むしかないようになっている。
しかし徹底して待ちの性格をしていないD・Sにとってはこの上なく使いづらいアイテムであった。
「チッ、どうも支給品のクジ運は悪いようだな」
かくいうD・Sの支給品はアロアノの杖という身に着けることで発火能力とそれに対する耐火能力を得られるアイテムだった。
これも爆炎の支配者たるD・Sには無用の長物である。
炎の威力も制限されているとはいえ自分の呪文の方が強い。
毒づきながら支給品の確認を終えるとD・Sはさつきの死体を見下ろした。
143そして彼女の行き着いた先 5  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:37:12 ID:Q+TNWwVQ0
「………」
特に何も言葉を発することなくD・Sはさつきに背を向け歩き出……そうとして立ち止まった。
目の前には胸に傷のある筋骨隆々の男が立っていたからである。
さつきを追いかけてきていたケンシロウであった。


「……その少女を殺したのはお前か」
「おい、オメーなんか勘違いしてねぇか。俺様はこの女をハーレムに加えようとしてやっただけだ。
 そしたら勝手にくたばりやがった。せっかく幸福絶頂になる機会だったってぇのに惜しいこったぜ」
ケンシロウはその言葉を聞くと拳を鳴らしながらゆっくりとD・Sに向かって近付き始めた。
拳銃でこめかみを撃ち抜かれた少女。D・Sの手には拳銃。そして二つのザック。
加えてD・Sの人が死んだこの場での不遜な態度。ケンシロウが最後に見た怯えた少女の表情。
既にケンシロウの中で答えは出ていた。
「貴様のハーレムに女はいらぬ。地獄の鬼どもこそが相応しい」
「ケッ、その第1号がテメーだってか!? 上等だ、このダーク・シュナイダー様に逃走の二文字はねえ!
 やってやるぁ!!」
D・Sにとって男を相手に弁解して誤解を解くつもりなど毛頭なかった。
売られた喧嘩は全額言い値で買い取るのが彼の流儀だ。
「喰らえ、ガンズン=ロウ!!」
D・Sとケンシロウの間に炎の壁が生まれ互いの視界を遮る。
D・Sは直接攻撃することができないため、間接的にしか攻撃することができない。
まずは視界を遮り、時間を稼ぐつもりだった。
「火炎招来! 不滅なる燃焼よ……」
しかし……ケンシロウは正面から炎の壁を突き破りD・Sに向かって突進してきた!
「おおおおおおおおおおおっ」
「何ィッ!?」
普段のD・Sのガンズン=ロウなら1000度もの高温を発することができる。
しかしこの世界の制限下ではその温度は500度近くまで下がっていた。
闘気をその身に纏うケンシロウならばその壁を突き破ることは可能である。
ケンシロウはそのままD・Sへと肉薄するが、間合いに入る直前にD・Sの呪文が完成した。
「……我が導きに従え! ダ・フォーラ!!」
D・Sの召喚に応じ、二体のサラマンダーが出現しケンシロウに攻撃を加える。
144そして彼女の行き着いた先 6  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:37:50 ID:Q+TNWwVQ0
精霊であるサラマンダーたちにはD・Sにかけられている呪いは関係なく直接ケンシロウを攻撃できるのだ。
しかし……。
(二体だけかよ!? しかもこの魔力の消耗、1分が限界か?)
本来十数体の精霊を呼び出せるはずが二体しか呼び出せず、かつ消耗の激しさにD・Sは焦る。
しかもその精霊も……。
「あたぁっ!」
手に持つ灼熱の槍でケンシロウを突き刺しにいったサラマンダーはカウンターの剛拳をその身に受け消滅した。
(霊体を素手で破壊したぁ!? どんなオーラの強さだ!?)
もう一体のサラマンダーはケンシロウから離れ、熱線を撃ち出す。
その熱線も簡単にケンシロウは回避し、掌底を翳す。
「北斗剛掌波!」
掌からほとばしる闘気の奔流がサラマンダーを直撃し、木っ端微塵にする。
「手品は終わりか。ならば幕を下ろすぞ」
(この野郎……だが、認めたくねぇが拳士としての格はあのジオよりも上か。
 俺様に逃走の二文字はねえ! ねぇが……)
その瞬間、一瞬にしてD・Sの懐に飛び込んできたケンシロウの蹴りが鳩尾にヒットした。
「ほあたっ」
「ぎゃぼっぉ!」
D・Sの身体は蹴りの衝撃により空に浮き、そのままケンシロウの追撃を喰らう。
「あたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた、あたぁっ!!!」
「ぐべらぼッ」
数十発もの連続蹴りにその身を貫かれ、D・Sの身体は無数の木片となって散った。
「むう!?」
そう、その場に散らばるのは肉片でなく木片。
ケンシロウがD・Sと思って攻撃していたのはD・Sの背後にあった木であったのだ。
幻術。D・Sの得意とする相手の目を眩ませ攻撃を回避する呪文だ。
「ぎゃーっははははは! ぶゎーかぁ!」
ケンシロウが声のするほうを振り向くとD・Sは西の方角に向かって走り去っていくところであった。
「逃げるのか」
「俺様に逃走の二文字はねぇが、戦略的後退の五文字はある! オメーも覚えとけ!
 次にあったその時はオメーの胸の傷にキャンドルおったてて生クリームでデコレーションした後
 ラーズに喰わせてやっからなぁ!」
145そして彼女の行き着いた先 7  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:38:29 ID:Q+TNWwVQ0
「逃さん!」
追おうとするケンシロウを阻む為にD・Sは呪文を唱える。
「ダムド!」
ケンシロウの前方の空間が爆烈し、ケンシロウは咄嗟に身を庇う。
そして爆煙が晴れたその視界にはD・Sの姿はどこにも見えなかった。
ケンシロウは一旦追跡を諦め、さつきの死体の傍へと寄る。
眼を見開いたまま死んでいるさつきの瞼をそっと閉じるとケンシロウは彼女を埋葬した。
墓標もない簡素な墓を目の前にケンシロウは拳を強く握り締める。
「おおお、ダーク・シュナイダーァアアア! 貴様の肉片一片たりともこの世には残さん!!」
これ以上犠牲を出すことは出来ない。
ケンシロウは強い決意を胸に秘め、D・Sの去った西へと向かって歩き始めた。
146そして彼女の行き着いた先 8  ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 20:41:49 ID:Q+TNWwVQ0
【岐阜県山のふもと/午後】
【ケンシロウ@北斗の拳】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式、フェニックスの聖衣@聖闘士星矢
 [思考]:1.D・Sを倒すため、西へ向かう。
     2.斗貴子の仲間、核鉄を探し出し、名古屋城へ戻る。
     3.2を達成できなくとも午後6時までにいったん名古屋城へ戻る。
     4.ダイという少年の情報を得る。
     5.名古屋城で合流不能の場合、東京タワー南東にある芝公園の寺へ行く。

【岐阜県山のふもと→西へ/午後】
【ダーク・シュナイダー@バスタード】
 [状態]:左腕に銃創、極度の魔力消耗(休息しない限り呪文は残り一、二回程度)、
     右腕打撲 六芒星の呪縛』による攻撃封印(翌日の午前まで)
 [装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
 [道具]:アロアノの杖 高性能時限爆弾 荷物一式(食料二人分、支給品未確認)
 [思考]:1.一旦西へ向かい、ケンシロウを撒いてからアビゲイルの下へ向かう。
     2.ヨーコさんのことは見つかるまで気にしないことにする。
     3.攻撃できないことに苛立っている。
     4.男は殺す、女はハーレムに加える。
     5.ゲームを脱出して主催者殺害。

【北大路さつき@いちご100% 死亡確認】
【残り8?人】
147 ◆izl8mjW2cA :2006/02/16(木) 22:38:03 ID:Q+TNWwVQ0
修正します。

そして彼女の行き着いた先 4

かくいうD・Sの支給品はアロアノの杖という身に着けることで発火能力とそれに対する耐火能力を得られるアイテムだった。

かくいうD・Sの支給品はアノアロの杖という身に着けることで発火能力とそれに対する耐火能力を得られるアイテムだった。

【岐阜県山のふもと→西へ/午後】
【ダーク・シュナイダー@バスタード】
 [状態]:左腕に銃創、極度の魔力消耗(休息しない限り呪文は残り一、二回程度)、
     右腕打撲 六芒星の呪縛』による攻撃封印(翌日の午前まで)
 [装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
 [道具]:アノアロの杖@キン肉マン 高性能時限爆弾 荷物一式(食料二人分)
 [思考]:1.一旦西へ向かい、ケンシロウを撒いてからアビゲイルの下へ向かう。
     2.ヨーコさんのことは見つかるまで気にしないことにする。
     3.攻撃できないことに苛立っている。
     4.男は殺す、女はハーレムに加える。
     5.ゲームを脱出して主催者殺害。
148天才の復活 ◆hGfwF1m5Ok :2006/02/16(木) 23:32:36 ID:dP1e8L5a0
「ぬ……」
自由に動かぬ身体。瞳に写る逆さまの光景。高く登る太陽。
覚醒から数秒、漸く自らが逆さに吊るされていることに思い至った。
本日、2度目の、屈辱。
「この天才……、凡人どもが、このアミバ様に一日に2度も、屈辱をっ!!!!」
怒りのままに叫び、力任せに絡まった蔦を引きちぎる。
支えるものを失ったアミバの身体はザザ、と木々の合間を転がりながら、地面に落ちた。
ガンッ☆ 日本列島と濃厚なキスを交わせば、途端に全身に激痛が走る。苦痛に表情を歪め

「江田島ァァァァァァ、ああああああっっ、許さん、許さんぞ!ああっ!ああっ!」

天才の自分に敗北の味を味合わせた漢(オトコ)。断じて許すわけにはいかん。即ち、死刑。
目に付く端から蔦と言う蔦、草と言う草に八つ当たりしながら、茂みを這った。目を焼くような眩い輝き。

「く……、眩しいな。暫く気を失っていたようだが……。ちっ」

ふと思いついたように時計を眺める。長針は既に、二時を回っていた。舌打ち。どうやら、放送を聴き損ねた。
伏せたまま用心深く辺りを見回し、誰もいないことを確認する。フッと安堵からか、鼻を鳴らし、

「誰が死んだか分からないが……まあいい。全員殺せば同じことよ」

聖者トキの顔を模した顔が、邪悪にほくそ笑む。
天才である自分の前に立ち塞がる輩は、全て凡夫たる敵。順に倒していけば自分だけが残る。簡単な話だ。


ちゃき。腰に吊るしたニューナンブの重たい感触を確かめる。
驚くべきことに、弾さえも抜かれてなかった。自分の荷物も放置してある。
――江田島は猛者ではあるが、甘過ぎる。この天才を唯の凡夫と決め付けたことを後悔するがいいわ。
ニタアと不気味に笑みながら、アミバは歩き出した。次の実験体を、木偶人形を求めて。
149天才の復活 ◆hGfwF1m5Ok :2006/02/16(木) 23:33:11 ID:dP1e8L5a0
【埼玉県(森)/午後】
【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:ダメージ中(多少回復しました)
 [装備]:ニューナンブ@こちら葛飾区亀有公園前派出所
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)
 [思考]: 
 1.皆殺し
 2.(可能なら)江田島にも復讐する




150天才の復活 ◆hGfwF1m5Ok :2006/02/16(木) 23:51:05 ID:dP1e8L5a0
細かい修正ですが

>>ふと思いついたように時計を眺める。長針は既に、二時を回っていた。

>>ふと思いついたように時計を眺める。短針は既に、二時を回っていた。
に修正。

状態を
【埼玉県(森)/午後】
【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:ダメージ中(多少回復しました)
 [装備]:ニューナンブ@こちら葛飾区亀有公園前派出所
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)
 [思考]: 
 1.皆殺し
 2.(可能なら)江田島にも復讐する
 [備考]
※アミバは第二回目の放送を聞き逃したため、死者、死者数等の情報を持ちません

に修正 orz
151日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:23:17 ID:2/x+TQut0
乾風の吹く街道を進む影がある。
彼の拳は山を砕き、彼の拳は海を割く。
男の闘気を前にして、天高く昇る日輪の温もりさえも陽炎へと薄められた。
男の名は世紀末覇者、ラオウ。既に三名の名立たる猛者を屠りながら、其れでも尚、心満たれずに居る。
闘争、闘争、闘争。ラオウの求めた真の最強を定めるための、真の闘争の日々が現実に此処に在る。
休む事もなく、連戦、連戦、連戦。未知の異能に直面しようと、全てにラオウは勝利してきた。
――然し、其の代償は、けして小さいものではない。
焼け爛れた皮膚、失った指、折れた肋骨、全身に走る激痛。

「……これしきの傷で音を上げる拳王ではない」

自嘲気味に呟きながら、一方では休息の必要性も感じていた。
拳と拳を突き合わせた結果敗北するならば、悔いも残らぬ。が、拳を交えずに敗北するのだけは我慢ならぬ。
無論、ラオウは常に勝者。然し、敗者に回ろうとて無様な姿は晒してはならぬ。
常に万全を期し、最高の状態で猛者と相対する。其れこそが拳王としての誇りであり、礼儀であるのだ。

ドサリ。スゥ、と息を吸うと徐に街道の中央に胡坐をかく。
瞳を閉じるラオウの意識は、徐々に眠りへと誘われた。

深い、深い眠り。拳王である彼でさえも予測だにせぬ程に、深く堕ちる眠り。
度重なる疲労がそうさせたのだろうか。ラオウは何か、夢を見ていた。
微笑むは美しき女性。――――ユリア。拳に生涯を捧げたラオウに、唯一、愛を教えてしまった女性。

---------------------------------------------------------------------------------
152日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:25:07 ID:2/x+TQut0

――…ェ
――…ねえ!

小鳥の囀るが如く騒ぐ声に、再び瞼を開く。
夢から醒めてもラオウを取り巻く世界は変わることはなく、日の光も吹く風も、心を満たす事は有り得なかった。
変わったものがあるとすれば、傍らに佇む一人の少女。ティア・ノート・ヨーコ。

「あ、目を醒ました!
 良かったあ、凄い怪我だったから、死んでるのかと思っちゃったあ……」

安堵に胸を撫で下ろし、ラオウの腕に纏わりつかんとする――其れを、問答無用に振り払えば

「拳王の身体に容易く触れるのは許さん。失せろ」

カッと睨み付け一喝する。拳王の威圧に、少女は怯んだような表情を覗かせた。けれど、其れも一瞬。

「何言ってるの!強がるのもいい加減にしなきゃ!
 ボク達が見つけたときは本当もう、ボロボロだったんだから!
 運良くボク達が通り掛ったから良かったものの、あのままだったら確実に死んでたよ!」

筋肉を積み上げて作られた岩石のような巨漢を前に、一向に臆すことなく、少女は捲くし立てる。
散弾銃の如く囀る小煩い声に、ラオウも静かに眉を顰めた。

「黙――」
「いい!?
 暫くは此処で大人しく待ってて。今、マミークン――安全な場所を探しに言ってくれてるんだけど、
 ボクの仲間を呼んでくるから! 動いちゃダメだよ! 約束だからね!」
153日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:26:48 ID:2/x+TQut0
言いたいことだけを告げて、少女は駆け出してしまった。
既に遠ざかる背を眺め、残された拳王は重苦しい息を吐く。追う必要は無い。女を殺す拳を、ラオウは持たぬ。

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高く遠く流れる雲。拳を極めし覇者は、深く呼吸を整えながら、束の間の思案に耽る。
最初に出会った少年(真中)もそうであるが、少女からは殺意が全くと言って言いほど感じられなかった。
連戦に次ぐ連戦で疲弊しているとは言え、瞑想中のラオウに少女がいとも容易く接近出来たのはそのせいもある。
ラオウと五分に渡り合える猛者を集えているかと思えば、年端も行かぬ少年少女をも参加させている。
会の意図、主催者の意図には、計り知れぬ何かがある。――無論、天を目指すラオウには、微々たる問題ではあるが。


「……入れ違いになっちまったか。生きてて良かったな、オッサン」


少女が立ち去ってから十分も経たぬ内に、再び掛かる声。少年の姿。少女がマミーと呼んでいた少年だろう。
幼くこそはあるが、奇妙な鎧の下に覗く鍛え上げられた筋肉は、彼もまた只者でない事を物語っていた。
ならば拳と拳。業と業。競い合い殺し合うのが天の定め。幸い、邪魔となるであろう少女は姿を消している――

然し。ラオウの口から漏れたのは、意外な言葉であった。

「傷の手当てをしたのは、ウヌらだな。余計なことを」
154日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:28:13 ID:2/x+TQut0
そう。如何なる秘術かは判らぬが、全身を覆っていた火傷の疼きは収まり、胸の痛みは失せていた。
切り裂かれた筈の胸の傷から溢れ続けていた鮮血も、表面上は、止まっている。この、たった数時間の間に。
マミーと呼ばれていた少年は、詰まらなそうに顔を顰めながら、遠くを見やる。目を逸らすように。

「俺は関係ねえよ。あの馬鹿女。ヨーコってんだけど……アイツが勝手にやったことだ。
 感謝するならアイツにすんだな。国民栄誉賞ばりの、お人好しによ」

満身創痍で座り込んでいたラオウを発見し、ヨーコが最初に呟いた言葉は「助けなきゃ」だった。
幾らマミーが「放っておこう」と諌めても、一度ヨーコが言い出した事を、止めることは不可能だった。
彼女が何者なのかは、マミーにも解からない。けれど、不思議な呪文に、不思議な光――、微かながら癒えていく傷。
魔法と言うものが存在するのなら、彼女が唱えた呪文が、魔法なのだろう。

「ま、何をしてそうなったかは聞かねえでくれや。俺にも良くはわからん。
 ただ、アイツの言葉を借りると、『全然治らなかった』らしいけど。無理すると傷口が開くぞ。心得とけ」

黙としたまま傷の具合を確かめるラオウを横目で眺めながらも、マミーは緊張を解くことは無かった。
ラオウを目にした瞬間に、感じざるを得なかった畏怖。この男は暴力の象徴。破壊の具現。
雄弁ならぬラオウに一方的に語り掛けながら、一言一言が、死に繋がっているようで生きた心地はしなかった。
ラオウの前にした男は、二つしか取るべき道を許されぬ。即ち、――平伏し従うか、闘って死ぬか。
唯、今は其のどちらも選択する必要は無い。今の二人は共に迷惑な女の基に擦れ違い、通り縋るだけの、雲のような旅客。
155日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:29:29 ID:2/x+TQut0
「で。目が醒めたんなら、アイツが戻ってくる前に行ってくれ。
 奴さん、アンタのこと仲間だか、友達だか――引き込むつもりらしいからな」
「……笑止」
「だろうな」

唇を歪め、立ち上がる。翻った黒のマントが拳王の巨大さを一層際立たせていた。
悠然と背を向け、或いは其れはマミーなど歯牙にも掛けぬと言った風に、威風堂々と佇む。
不覚にも立ち姿に見とれ、マミーは呆然さえとしていた。
唾をを飲み、続く沈黙を破るように少年の口からは、自然と言葉が漏れる。

「……人を殺してきたんだな。これからも、そうなのか?」
尋常ならぬ生傷。数時間以内に刻まれた筈の傷。其の上で、この男は生還している。
脳裏に浮かぶ生々しい戦闘のイメージ。これだけの傷を受け、生き残って、誰も殺しておらぬ筈が、なかった。
対する拳王はフッと息を漏らすだけの、無言の肯定。再び、辺りに沈黙が降りた。
理解っていたことだ。拳王を名乗る彼は、誰とも交わらぬ。巨星こそは孤高。彼の光の前では、他の星は輝きを失う。
其れ以上、語るべきことも無かった。語るとなれば、拳と、拳。然し少女の戻る矢も知れぬ今、聊か無粋過ぎた。

「フッ……。
 此度こそはあの女と傷の恩に免じて、この拳王、大人しく立ち去るとしよう。
 
 だが忘れるな。天は常に一つ。
 我ら再び合間見えれば、互いに一つの星と星。雌雄を決するのは、次に天が巡るとき。
 精精、拙い腕を磨いておけ。女一人、守れる程度にはな」

言葉を残し、拳の王は街道を歩む。去り行く姿を、マミーは止める事は、出来ぬ。掛ける言葉さえも。
ラオウはこれからも人を殺すだろう。粉砕し続けるだろう。けれど止める力は、マミーには無かった。
天高く昇る日輪は何れ夜の闇に沈む。夜空に煌く巨星は永久に堕ちぬ。
前者がヨーコであるなら、後者はあの男だ。どちらも自分に無い強さを持ち、どちらも手の届かぬ領域に在る。
156日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:30:09 ID:2/x+TQut0
垣間見た巨星の幻。全ての光を飲み込む死の星。今は目に焼きついた幻を、振り払った。

――遠くで自分の名を呼ぶ声がする。マミークン、と。騒がしい少女が、また戻ってきた。
日はじきに沈む。けれど残された温もりで、人は夜の闇を凌ぐ。
暗闇に抱かれた星を思い浮かべてみる。鋭く輝く星は、けれど何処か、哀しく思えた。
157日輪の如く、巨星の如く  ◆HDPVxzPQog :2006/02/18(土) 20:30:40 ID:2/x+TQut0
【茨城県/午後】
【ラオウ@北斗の拳】
 [状態]:胸元を負傷。出血は止まった。大きく傷跡が残る/右腕にダメージ /右手ただれ薬指小指喪失
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式 不明
 [思考]:
1.新たな強者を求めていく
2.いずれ江田島平八と決着をつける
3.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)

【マミー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]健康
[装備]フリーザ軍戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具]荷物一式(食料・水、一食分消費)
[思考]
1:ヨーコを信頼
2:たけし・ボンチューと合流

【ティア・ノート・ヨーコ@BASTARD!!】
[状態]移動による疲労・回復魔法使用による疲労
[道具]:荷物一式(食料・水、一食分消費)
:大量の水が入った容器
[思考]
1:マミーを護ってあげたい
2:るーしぇ(D・S)と合流

※ラオウに用いた回復魔法の効果を見て、
 魔法に制限が掛けられていることに気づきました。
158崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:52:02 ID:0Tnk6cTb0
麦わらの少年は、息を吸い込む。空気を蓄え、それを発するエネルギーとする。

「――どぉこだぁぁぁっ!! 悟ぉぉぉ空ぅぅぅぅ!!」

ルフィの雄叫びは、微かな山びことなって返るのみ。

「ウキ、ウキキキウキィ!(なんつー大声出してんだバカ! 近くにヤバイ奴がいたらどうすんだよ!)」
「ん? なんだ猿、腹減ったのか? あーそういや俺も腹減ったなぁ。なんか食いもんねぇかなぁ」
「ルフィさん、そのセリフもう三十回目」

ルフィ、エテ吉、イヴ。
それぞれの仲間を探す中、三人はどことも知れない山の中に迷い込んでいた。

とりあえずは、まだ近くにいるであろう悟空の名前を叫ぶも、反応が返ってくるわけもなく。
かといって無闇に歩き回ってみても、食べ物も探し人の姿もなく。
空腹のつらさも無視できない現状。エテ吉にいたっては、ルフィに自分の分まで食われ、かなり参っている。
完全に手詰まりになり、少し休憩を取ることにしたのだが、どうにもここは休憩所としては適していないようであった。
生い茂る木々、岩と石ころによる無法地帯。山道とは呼べない獣道の数々。平面など存在しない、立体空間。
まるでジャングルを思わせるような、それほどまでに険しい山林だった。

カサッ、

「ウキ?」
山林を行く中、生い茂る草むらが微かに揺れたのを感じた。
もっとも、気づいたのはエテ吉のみのようで、ルフィとそれに背負われたイヴは、まるで気にする素振りも見せなかった。
「ウキ……(ありゃあ……)」
159崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:52:41 ID:0Tnk6cTb0
「おおぉ! すんげえぇぇっ!!」
山林を抜け、ルフィの瞳に映ったのは、広大に広がる街々の光景。
そこは、山のふもとの町が一望できるほど絶景の――断崖絶壁。
「うおお! たっけぇぇぇー!?」
「ちょ、ちょっとルフィさん」
イヴが背にいることも忘れ、興奮しながら崖の下を覗き込むルフィ。
海賊であり、また「バカ」である彼は、こういった「眺めのいい高い場所」が大好きだった。
「ウキキ、ウキキウキキウキィ(おいルフィ、さっき食いもんっぽいやつ見かけたから、ちょっと探してくる)」
「ん? なんだ、食いもん探してくるのか? そうだよなー腹減ったもんなー」
森を指差すエテ吉のジェスチャーでその意図を理解したルフィは、途端に、へなっ、と座り込む。
「あーもうだめだ。猿ぅー俺の分もたのむよ」
「ウッキィ……(こんにゃろう……)」
なんとも傲慢なルフィの態度に、一瞬カチンときたエテ吉だが、それを押さえて再び山林へ向かった。
今は、ルフィもイヴもいないほうが都合がいい。
エテ吉は猿である自分の特長を生かし、高くそびえる木々の間を駆け抜けていく。
さっき、音がした場所へ――
160崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:53:28 ID:0Tnk6cTb0
「どうした助平! 歩みが遅いぞ! これしきで根を上げるつもりか!?」
「うるせー! 俺はおまえみたいにチビじゃねぇから、こういう道は苦手なんだよ!」

生い茂る草むらに足取られるボンチュー、それとは対照的に、軽々と山道を進むルキア。

「どうしたボンチュー? わざわざ気遣った私たちを制し、この道を進むと言い出したのはおまえだぞ?」
「おーいだからってルキア、おまえもあんまり行き過ぎるな!」

そして、二人の中間の距離であたりを警戒しながら進む、世直しマンとバッファローマン。
四人は今、密林と言っても言い過ぎではない、山林の中を歩いていた。

市街地ではなく山道を通っているのは、この山のどこかに、彼らの探し人がいる可能性があるから。
関東方面へ向かって南下してきた途中、一行が見つけたのは、山から立ちのぼる小さな煙。
駆けつけ調べてみれば、山の木々が数箇所、不自然に燃やされている部分があった。
同時に、焼け焦げた小動物らしきものの焼死体も。
一行には、進攻の邪魔だったから燃やされた、ように見えた。

本来なら、まだ本調子ではないルキアとボンチューをつれて、このような険しい山道を進むべきではないのだろうが、
この道を選択したのは他でもないボンチュー本人。
目の前の超人二人に対し、足手まといになりたくないという気持ちの表れだった。
161崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:54:09 ID:0Tnk6cTb0
「くそっ……こんなはずじゃ……」
しかし、自信を持って挑戦した山道は、ボンチューの予想を大きく超える厄介さだった。
しかも、自分より数倍はデカい、巨人の体格を持つバッファローマンが問題なく進めていると言うのに、
自分は無惨にも草などに足を取られている。加えてピッコロ戦のダメージの残り。
体力には自信があったボンチューだが、邪魔な草となれない山道、戦闘のダメージがたたり、かなりの疲労を強いられていた。

そして意外だったのは、ルキアの予想外の身体能力。
この山道でも苦しい顔を見せず、むしろ涼しい顔で、一行の先頭を行っている。
おそらく、身軽さではこの中でトップに違いない。これはボンチューだけではなく、二人の超人も同じことを思っていた。

(なんだよこれ……こんなんじゃ全然だめじゃねぇかよ)
心の中で、自分を不甲斐なく感じるボンチュー。
戦闘では世直しマンに足手まといと言われ、身体能力ではルキアにも置いていかれている。
こんな調子では、またピッコロ戦のようなピンチが訪れたとき……
(本当に、見ているだけしかできねぇじゃねーか!)
悔しさを心の奥でかみ締め、ボンチューは走り出す。

「おらぁ、あんまり調子にのんなよ!」
「むう、この私と張り合う気か貴様!?」
追い上げるボンチューに反応して、ルキアもスピードを上げる。

「あ、こら! まったくあいつら、今誰を追ってるかわかってんのか?」
「言ってもしょうがないだろう、バッファローマンよ。それより、もたもたしていると我々も遅れるぞ」
「マジかよ……」
ため息を吐き捨て、バッファローマン、世直しマンも走り出す。
皆、この山の中に危険人物がいることを承知の上で――
162崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:55:17 ID:0Tnk6cTb0
「ウキィ! ウキキキキィ!!(なんだよあれ! 期待はずれもいいところだぜ!!)」
山林を歩くエテ吉は、えらく不機嫌だった。
原因は、さっきの物音。
最初にあの音を聞いた瞬間、エテ吉にはその正体がわかっていた。
それは、自分たち以外の存在。
しかし、参加者ではない。参加者であれば、わざわざエテ吉一人で出向くはずもない。
では参加者ではないという絶対的な自信を与えたのはなにか?
それは、臭い。
物音がしたときに嗅ぎつけた臭いは、人間のものではなく、明らかな獣のもの。
もしかしたら……と、期待して行ってみたのだが……
「ウキキキ、ウッキィィ!!(メスでもいるのかと思ったら、狸かよ!!)」
この山林の情景がどことなくジャングルに似ていたところから、もしやメスのチンパンジーでもいるのでは、
という期待を生んだのだが、見事にはずれだった。
もちろん食べ物なんかも見つかるはずもなく、結局エテ吉は手ぶらで帰ってきた。

「ウキィ〜(おーい、ルフィ〜)」
手を振ると、崖の近くで座って休んでいる二人が、こちらに顔を向けた。
と、イヴの様子がなにかおかしい。
なにやら顔に緊迫感が浮かび、驚いた目でこちらを見ている。

「ウキ?」
不審に感じているエテ吉の上空が、突然暗くなった。
163崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:56:06 ID:0Tnk6cTb0
「――近いな」
大人気なくも本気を出し、先頭を独走した世直しマンが、急に足を止めた。

「はっ、近いって、はっ、なにが?」
息を切らしながらたずねるのは、根性で二番手をキープしたボンチュー。

「聞くまでもなかろう? 私たちが今追っているやつらを忘れたのか?」
三番手に現れたのは、たいして疲れたようにも見えないふうのルキア。

「炎と氷の化け物、だろうな。ほら……噂をすれば影だぜ」
最後に現れたのは、バッファローマン。

そして彼が示した先には、もうもうと立ちのぼる煙が。
「あの者が……あの先にいるのか」
ルキアが噛み締めるは、北海道で出あった異形の化け物の想像絵。
自分を二度も窮地に追いやり、銀時、海馬を惨殺した――炎氷将軍フレイザード。
あの煙は、フレイザードの放つ炎によるものか、それとも奪われた火竜ヒョウによるものか。

「あまり気負いするなよルキア。ボンチューも。戦闘は俺たちに任せてもらう。そういう約束だったな?」
バッファローマンの言葉は、あくまで最終確認。
足手まといにはならない。そういう約束で同行した。

だから、返事も決まっている。
「「ああ……」」
二人とも、心では納得しきっていないのが、見え見えの言葉だったが――
164崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:57:06 ID:0Tnk6cTb0
麦わらの少年が、問いかける。

「おい……なに、してんだよ」

炎と氷、そして緑肌の、異形者二人が、笑う。

「ヒャハハハハハハハハ! こいつぁよく燃えるぜ! おもしれぇ、おもしれぇなぁ!!」


麦わらの少年が、再度問いかける。

「おい……なにしてんだよ、おまえら」

炎に包まれたチンパンジーが一匹、叫ぶ。

「ウキャァアァァァアアァアァァァァ!!?」



麦わらの少年が、三度問いかける。



「 な に し て ん だ て め ぇ !!! 」
165崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:57:36 ID:0Tnk6cTb0
【山形県南部・山中の崖付近/夕方】

【モンキー・D・ルフィ@ONEPIECE】
[状態]:空腹
:わき腹に軽いダメージ
[装備]なし
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、目の前の二人をぶっ飛ばす。
2、悟空・自分と猿とイヴの仲間・食料を探す。
3、悟空を一発ぶん殴る。

【エテ吉@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]空腹、炎上。
[装備]パンツァーファウスト(100mm弾×4)@ドラゴンボール
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、熱い。
2、ルフィに同行。
3、ターちゃんとの合流。

【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:胸に刺し傷の重傷(応急処置済み。血は止まっている)
:貧血
[装備]いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]無し
[思考]1、目の前の二人に不信感。
2、トレイン・スヴェン・月との合流。
3、ゲームの破壊。
166崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:58:12 ID:0Tnk6cTb0
【フレイザード@ダイの大冒険】
 [状態]若干の疲労。成長期。傷は核鉄で常時ヒーリング。
 [装備]霧露乾坤網@封神演義 火竜ヒョウ@封神演義 核鉄LXI@武装錬金
 [道具]支給品一式 ・遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王 
 [思考]1、体力を回復させる。
    2、隙あらばピッコロを倒す
    3、優勝してバーン様から勝利の栄光を

【ピッコロ@ドラゴンボール】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:荷物一式 前世の実@幽遊白書
 [思考]:1、目の前のやつらを殺す。
     2、フレイザードを利用してゲームに乗る。とりあえず南下。
     3、残り人数が10人以下になったら同盟解除。バッファローマン、悟空を優先。
     4、最終的に主催者を殺す。(フレイザードには秘密)





【山形県南部・山林/夕方】

【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]ダメージ中、重度の疲労
[装備]なし
[道具]荷物一式、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
    2、ルキアを守る。
    3、もっと強くなる。
    4、これ以上、誰にも負けない。
    5、ゲームから脱出。
167崖っぷちの正義と悪 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 21:58:43 ID:0Tnk6cTb0
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:弱冠の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式 ・遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
    2、黒崎一護、武藤遊戯(カードの使用方法を知る者)を探す。
    3、とりあえず関東方面へ移動。
    4、ゲームから脱出。

【世直しマン@とってもラッキーマン】
[状態]健康
[装備]:世直しマンの鎧@ラッキーマン
    :読心マシーン@ラッキーマン
[道具]荷物一式
[思考]:1、煙の立ちのぼるほうへ移動。
    2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    3、関東方面へ移動。
    4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    5、ゲームから脱出し主催者を倒す。

【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考]:1、煙の立ちのぼるほうへ移動。
    2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    3、関東方面へ移動。
    4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    5、ゲームから脱出し主催者を倒す。


※夕方ごろ、山形県南部の山に小規模な煙が立ちのぼりました。
168崖っぷちの正義と悪〈前編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/18(土) 22:01:59 ID:0Tnk6cTb0
>>158>>167タイトル修正。
崖っぷちの正義と悪→崖っぷちの正義と悪<前編>
169魁!!一護白書100%〜護る力〜:2006/02/18(土) 22:38:12 ID:W0RDsR+B0
 遠く揺れるは戦火の狼煙。
 白く上がるその様は、足元の地獄を示す。
 その戦場を目指し、二人の少年は自ら火中に飛び込む。
 それを愚行と知りながら、胸に秘めたる強い思いが足を動かす。
 少年が一人、黒崎一護は同行者、真中淳平の肩を借りながら、傷つき動かない足を動かしていた。

 打ち抜かれた膝に力は入らず。
 支えが無ければ立つ事もままならない。
 その足を、無理矢理に前に踏み出す。
 そのたびに激痛が走った。
 それでも、止まってなんかはいられなかった。
 どこかでルキアが、他の誰かが危機に晒されているかも知れない。
 どこかで誰かが助けを待っているかも知れない。
 自分には戦う力がある筈だ。
 自分には誰かを護れる筈だ。
 その想いが足を止める事を許さない。

「あそこに誰か倒れてるぞ……!」
 まだ煙には程遠い森中に倒れる人影が一つ。
 横で自分を支える真中も、それに気付き視線を向ける。
 そして互いに見つめあい。無言のまま頷きを返す。
 すぐさまその下に向かい足を這わせた。

 そして、何とか倒れている誰かの下にたどり着けた。
 死んだように眠る長髪の男。
 いや、実際死んでる可能性もある。
 まず目を引いたのは足元まで届こうかと言う長髪。
 遠目からは女かと思ったが、近づいて見ればどう見ても男だ。
 そして接近して何より目を引く、全身に刻まれた呪術めいた刺青。
 その模様は、何か悪い予感を連想させる。
 はっきり言って、外見からは余り良い印象を受けない。
170魁!!一護白書100%〜護る力〜:2006/02/18(土) 22:41:55 ID:W0RDsR+B0
「おい、あんた大丈夫か」
 しかし、倒れている者をほっておく訳にもいかない。
 とりあえず声をかけ、その安否を確認する。

 その言葉に、死んだかのように眠っていた男がピクリと反応した。

 静かに瞳が開かれ、その瞳がこちらを見つめる。
 呆然とこちらを見詰める、その瞳は人ではない、獣の瞳だ。
『グッ……』
 男は突然、両腕で自分の二の腕を握り締めた。
 半端な力ではない、爪が食い込み血が滲み始めている。
「ちょ…おい、アンタ……!」
『グアアアアァァァッ!!』
 そして盛大に、苦しみの雄たけびを上げた。

「ちょっと! 大丈夫ですか!」
 尋常じゃない男の様子に、真中が声を上げる。
 そして、手を男に向け差し出した。
「待っ……」
 言い様の無い不安に駆られ、俺はその手を静止しようとするが。
 その声を上げる前に、渇いた音が辺りに響いた。

「……ッ!」
 差し伸べた手は勢いよく払れた。
 走る痛みに、真中は反射的に手を引いた。

『……ウウッゥゥゥッッッ』
 手を払いのけた男は、何かに耐えるように歯を噛み鳴らし、唸りを上げる。
 目を血走らせ喉を鳴らす、その様は人ではない、獣の様だ。
171魁!!一護白書100%〜護る力〜:2006/02/18(土) 22:44:01 ID:W0RDsR+B0
「ちょっと待て! 俺たちは……」
 説得の声をあげる前に、感じる殺気。
 刺青の獣の体が跳ねた。
 猛スピードでこちらに迫り、拳を突き出す。

「危ない、苺くん!」

 オレを支えていた真中が突然オレを突き飛ばした。
 踏ん張りの利かないこの足は、その程度の事であっさりと崩れ落ちる。
 地面に尻を付く音と同時に、別の鈍い音が聞こえた。
 見上げた空に真中の体が舞い踊る。
 見事に空を飛ぶその様は、映画のワンシーンのようだ。
 そして、受け身も何もなく地に落ちる体。
 意識も無く無様に倒れているが。
 ピクピクと痙攣を繰り返し、まだ確かに生きている事を伝えている。

「テメェ! 何しやがる!」
 身を起し襲い掛かってきた獣に対峙しようとするが。
 膝が動かず、立ち上がることができずにいた。
 
 そこに、稲妻の様なボディーブローが突き刺さった。

 腹を突き破る衝撃に内臓が口から飛び出そうになる。
 内臓の代わりに、せり上がった胃液を吐き出す。
172魁!!一護白書100%〜護る力〜:2006/02/18(土) 22:46:59 ID:W0RDsR+B0
 血の混じった反吐を吐きながら、地に伏せる。
 意識は泥がかかったかのように暗く沈む。
 それでも意識を手放さないように、必死に意識にしがみ付いた。

『グアアアアァァァアァアァ!』

 地に伏せ見上げる獣は雄たけびを上げる。
 勝利の歓喜か、はたまた別の苦しみか。
 その感情は推し量る事は出来ない。
 ただ、その声だけが静かな森に響き渡っていた。
173魁!!一護白書100%〜暴れる力〜:2006/02/18(土) 22:49:02 ID:W0RDsR+B0

 浦飯幽助は死んだ。

 拳の王の拳に打たれ、力足らず敗れ去り。
 浦飯幽助は死んだ。
 それは確かな事実。
 生命としての活動は停止し。
 心臓の音はもう聞こえない。
 だと言うのに、

 ―――トクン。

 鼓動する。
 その心臓は、確かに止まっていると言うのに。

 ―――トクン、トクン。

 心臓が止まっていると言うのならば、
 鼓動しているのは心臓ではない、別の何かだ。

 ―――トクン、トクン。

 浦飯幽助は蘇った。
 それは確かな事実。

 だが、死んだ人間は蘇らない。
 それも確かな事実。
 ならば、蘇ったそれは人間ではない、別の何かだ。
174魁!!一護白書100%〜暴れる力〜:2006/02/18(土) 22:51:09 ID:W0RDsR+B0
「…い……んた……夫か」

 声が聞こえた。
 外界からの声。
 自らを呼ぶ声。

 その声に呼応するように、死んでいた意識が目覚めた。
 ―――まだ目覚めるには早いと言うのに。

 ―――トクン、トクン、トクン。

 意識の目覚めと同時に、激しく鼓動が打った。

 霊気のイメージを青とするならば。
 流れる妖気のイメージは赤。
 鼓動と共に、血のように赤い妖気が全身に広がる。
 青が、赤に犯されていく。

 ―――トクン、トクン、トクン、トクン、トクン、トクン。

 鼓動する鼓動する。
 心臓ではない何かが、人間ではない何かを生かすために。

 ―――トクン、トクン、トクン、トクン、トクン、トクン。

 鼓動が暴走する。
 この身に収まりきらない程の妖気を生み出しながら。
 それでも止まる気配は無い。
175魁!!一護白書100%〜暴れる力〜:2006/02/18(土) 22:53:18 ID:W0RDsR+B0
 肉体は破裂寸前の風船のようだ。
 許容量を超えた力が体中を暴れ周り、破壊しようとしている。
 この感覚は、霊光波動拳を継承した時に似ている。
 だが、どこか神々しさのあった霊光玉の力と違い。
 この力はただ凶暴だ。暴れ方がその比ではない。

 全身を耐え難い激痛が襲う。

『グッ……』
 全身を痛みが裂く。
 破裂しないように自らの体を抱きしめる。
 強く握った腕から血が滲む。
 だがその痛みは、より強い痛みに掻き消される。

『グアアアアァァァッ!!』

 耐え切れず。叫びを上げ、痛みに、喘ぐ。
 
 弾け飛びそうなほどの痛みにジッとしなんかいられない。
 暴れ、のた打ち回りたい衝動に駆られる。
 目に映る全てを壊したくなる。
 溢れる力をぶつける捌け口が欲しい。

「……っと! 大……ですか!」

 声が響いた。
 だが激痛が聴覚にノイズをかけ、上手くその声は聞き取れない。
 ただ、大声が割れるほど頭に響いた。
 イラついて差し出された手を払った。
176魁!!一護白書100%〜暴れる力〜:2006/02/18(土) 22:55:28 ID:W0RDsR+B0
『……ウウッゥゥゥッッッ』

 激痛は止まない。

 血管の中を蟻が這う感覚。
 蟻達は血管を伝って全身を内から食い破らんと牙を立てる。
 内から食い破られるオレに成す術は無く。
 この痛みから逃れる事は出来ない。

「ち……と…ッ! お……ちは」

 コチラの痛みに関係なく。目の前でわめく声にイライラした。
 雑音を追い払うため、煙を払うように軽く手を振るった。

「……ない、苺……!」

 振るった腕は、身を突きだした男に当たる。
 軽い接触の感覚。
 それだけで、その男の体は大きく宙を舞った。

 力の加減が出来ていない。
 暴れ馬のような妖気をコントロールできない。
 これ以上コチラを刺激するな。
 このままでは、触れるものを全て壊してしまいそうだ。
177魁!!一護白書100%〜暴れる力〜:2006/02/18(土) 22:58:14 ID:W0RDsR+B0
 だと言うのに、
「――メェ!」

 だから―――。

 大声は止まない。
「何――がる!」

 ―――大声出すんじゃねぇ!

 声を止める。
 ただ、それだけのために一撃を繰り出す。
 手加減など出来ない。
 本よりこの力を制御する事は今の自分には出来ないのだ。
 一撃は見事なまでに腹に決まった。
 打たれた男は血反吐を吐いて地に伏せる。
 それを見つめ、気分はさらに悪くなり。

『グアアアアァァァアァアァ!』

 獣の様な叫びを上げた。
 それは苦しみからか。苛立ちからか。
 それとも別の感情からなのか。
 自分でもよく分からないまま叫んだ。
 ただ、その声だけが静かな森に響き渡っていた。
178魁!!一護白書100%〜虚な力〜:2006/02/18(土) 23:01:05 ID:W0RDsR+B0
 地に伏せた黒崎一護は霞む視界で、魔人の様な男の背を見つめる。
 散々叫び終えた魔人は、クルリと背を向けその場を立ち去ろうとしている。
 こんなあぶない男を、見逃すわけには行かない。
 何とか地面を這いずり追いすがろうとするが、意識の薄れる体は思うように動かない。
 だた暗い意識の幕が、徐々に降りてくるだけだ。
 閉じる意識は混沌の眠りへと向かう。

 チクショウ。
 俺なんて、斬魄刀の―――斬月のオッサンの力を借りなきゃこんなもんなのか?
 俺一人の力じゃ、誰も護れねぇのか?
 暴れまわる男一人止めらんねぇし。
 目の前で襲われた仲間一人助けらんねぇのかよ。

 力が欲しい。
 誰にも負けない、スゲエ力なんかじゃなくて良い。
 せめて、自分の目に映る人間を護れるだけの力が欲しい。

 願いも虚しく、昏睡に向かい意識が遠のく。 
 視界は霞み、睨む後姿は虚ろに映る。
 聴覚は遠退き、地を踏み鳴らす足音は遠くに聞こえる。
179魁!!一護白書100%〜虚な力〜:2006/02/18(土) 23:03:14 ID:W0RDsR+B0
 ――――………ゃいねぇ…ぁ。

 だが、遠ざかる世界の音に反比例して、近づいてくる一つの声があった。

 ――――なっちゃいねぇなぁ。一護。

 自分の奥底から、自分を嘲笑うかのような声が響く。

 ――――そんなだからオマエはダメなのさ。

 イヤ、実際嘲笑ってやがる。コイツはッ。

 ――――オマエは戦い方ってもんを知らな過ぎるんだよ。

 うるせぇ、俺はオマエなんて呼んじゃいねえ。

 ――――足が使えねぇなら、使えねぇなりの戦い方ってモンがあるだろうが。

 うるせぇ、オマエは引っ込んでろ!

 ――――教えてやるよ一護。この俺が本当の戦い方ってモンをよぉ。

 うるせえッ―――!!
180魁!!一護白書100%〜虚な力〜:2006/02/18(土) 23:05:29 ID:W0RDsR+B0
『ハァッハッハハハハッ!』

 地面にひれ伏した男が、突然甲高い笑い声を上げた。
 その笑い声が立ち去る魔人の足を止めた。
 耳障りだと、魔人は不愉快そうに顔を歪めた。

 五月蝿い。甲高い声はやたら頭に染みる。
 ただですら痛む頭の痛みが増幅する。
 ―――この音を、止めてやる。

 魔人の思考は固定された。
 風を超える速さで魔人が駆ける。
 五メートルほどの間合いは一瞬で消え去り。
 顔面目掛け流星の速さで踵が落ちる。

 その攻撃を、死神は倒立の動きでヒラリとかわした。

 顔面の代わりに踏み砕かれた地面が、瓦礫と化し辺りを舞い飛ぶ。
 瓦礫舞う中、死神と魔人の瞳が交錯する。
 いつの間に現れたのか、死神の顔端に小さな髑髏の面。

『ハッハッハッハッハッハァ!』

 何が楽しいのか、死神は声を上げ、白黒反転した瞳を歪ませ笑う。
 不快と痛みに顔を歪ます魔人は、舞い飛ぶ瓦礫を蹴散らしながら死神に迫る。
 倒立した死神はそのまま、両の腕で跳躍し迫撃をかわす。
 そして空中にて天地を反転。
 手を伸ばし頭上の木の枝にぶら下がる。
 飛びついた勢いは振り子の動きに変わり、その勢いを利用し死神が魔人に飛び掛る。
 一連のその動きは、もはや人の動きではない、獣のソレだ。
181魁!!一護白書100%〜虚な力〜:2006/02/18(土) 23:07:33 ID:W0RDsR+B0

『ヒャッハァ――――――ッ!!』

 叫びを上げ、標的に向かい一直線に空中を舞う髑髏の死神。
 修正不可能な空中での移動。
 それは戦闘においてそれは格好の的となりうる。
 イラ立ちの頂点に達した魔人が撃墜の構えを取る。

『――――プッ!』

 小石が弾丸の勢いで、死神の口から吐き出された。
 眼球を狙って放たれた弾丸は目蓋を裂く。
 その一瞬の隙を突き、空中から重力と共に死神の肘が振り下ろされた。
 魔人の額に衝撃が突き刺さる。
 耐え切れず魔人はたららを踏み、その場に尻を付く。
 そして打たれた額から血が流れ、目を汚す。
 一方、舞い降りた死神は痛んだ足では着地もままならず、ゴロゴロと地面を転がる。
 その勢いを無理やりに両腕で止め、四つん這いに構え舌を舐めずる。やはりその姿は獣の様。

「今のオレに……近づくんじゃねえ…………ッ!」
 血を拭いながら、立ち上がった魔人は吐き出すように言葉を吐いた。

『やなこった。つれねぇ事言うなよ。
 遊ぼうぜ。ヒャハッハハハハッ!』
 遊ぶように、唄うように。
 楽しげに声を上げ、半面髑髏の死神が笑う。

 笑う髑髏の死神と痛みに喘ぐ魔人が対峙する。

 死神が被る髑髏の仮面。
 それは、辺りの霊圧を取り込み、徐々に肥大してゆく。
 その大きさは、もはや顔の半分を覆い隠そうとしていた。
【茨城県中部の森/午後〜夕方】

【浦飯幽助@幽遊白書】
【状態】魔族化、全身激痛、額から流血。
【装備】無し
【道具】荷物一式
【思考】目の前の二人を対処する。

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】虚化、両膝破壊 (名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック愛染かは知らない)
【装備】髑髏の仮面(半面)、シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.目の前の男を殺す。
    2.一護に戦い方を教えてやる。

【いちご100%@真中淳平】
【状態】気絶、顔にダメージ大、手首捻挫
【装備】無し
【道具】無し
【思考】1.苺を助ける。
    2.知り合いとの合流
    3.東京を目指す
183武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:31:52 ID:WK8Bl/FV0

斗貴子さん……!


大阪の街を進む一人の少年。彼の頭に存在するのは、自分の愛する人のことのみ。
ある衝撃に錯乱した武藤カズキはその時、大切な彼女を守ることしか考えていなかった。

(斗貴子さん、今助けにいくから……!)

思い人の名を頭に浮かべ、ゆっくりとした足取りでカズキは進む。
町の外に広がる草原が見えてきた頃、彼の耳に自分の名を呼ぶ声が飛び込んできた。


「カズキちゃぁ〜ん、待ってぇ〜ん」


場違いな艶っぽい声が響きわたる。これは先程までこの少年と行動を共にしていた者の声だ。
しかしカズキはそれを認識してかしなくてか、そのまま黙々と歩き続けた。

(あらあら、カズキちゃんったら。わらわの声が聞こえてないのかしらん)
妲己は緊張感なく苦笑をこぼす。
しかしカズキがまだ自分の手駒と成りうる存在だ、ということを彼女は一瞬で理解する。
そう判断したのは、カズキが歩いているということから。
もしもカズキがよく考えた上で離脱したのならば、きっと一心不乱に走っていくだろう。
走っていってしまえば、ここから遠く離れてしまえば、妲己や遊戯という自分を縛り付ける者と決別できる。
斗貴子とかいう女のもとへ直ぐにでも行くことができる。

しかし彼の歩みはゆっくりとしている。それはなぜか。
答えは簡単。彼は綿密な考えの上で動いている訳ではないのだ。衝動的な行動に違いない。
そうならば説得は難しくない。説得までのヴィジョンはもうできている。
184武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:33:49 ID:WK8Bl/FV0

「カズキちゃん!」
走って近づきカズキの後ろから抱きつく妲己。妲己はぽろぽろと涙を流し、カズキの背中にしがみつく。
斗貴子のことばかりを考えていたカズキも、それには流石に反応を示した。
「妲己さん……」
「カズキちゃん、大事な人を失ったんでしょうん?放送で聞いたわん…」

だっきちゃんの説得テク其の一・純情少年にはベタな演出を。
だっきちゃんの説得テク其の二・感情的になっている人間には再度事実を認識させることが有効。

「妲己さん、オレ…!」
「辛いのはよ〜く分かるわぁん…。仲間が心配だっていうのも分かるわん。
でもねん、わらわや遊戯ちゃんのことも忘れないでほしいのん。わらわ達も…貴方の仲間なのよん!」

悲しみを漏らそうとしたカズキに対し、妲己はそれへの理解を示し、更に自分達を強調する。
それに対してカズキははっとしたような表情を見せる。

だっきちゃんの説得テク其の三・他人の悲しみには共感しているようにすること。
だっきちゃんの説得テク其の四・大切な物を持つ人間には、その大切な物と自分をダブらせるべし。

巧みな演技や話術をこなす妲己にとって、カズキ一人の心を操ることなどさして難しいことではない。
妲己の思案通り、この純情な少年は落ち着きを取り戻しつつあった。
185武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:34:48 ID:WK8Bl/FV0

「ねぇん、カズキちゃん。戻りましょうん。遊戯ちゃんも心配してるわぁん」
「妲己さん…、どうすればいいんだろう、オレ…」
「大丈夫よぉん、カズキちゃんのお友達はわらわのお友達。一緒に…助けに行きましょうん」

妲己はカズキを抱きしめる。その姿は無限大の慈愛の大母さながら。
無論その優しさは偽りであるが、底なしのお人好しであるカズキがそんなことに気付くはずがない。

(楽勝ねぇん。カズキちゃんってば、単純なんだからぁん)
自分の考え通りに事が進み、心の中で喜悦する妲己。
あとの心配はミサが遊戯を上手いことなだめてくれるかどうか。
カズキの説得が予想以上に簡単で時間も余ったからこちらから行ってもよいが―――――





海馬くんが……?


大阪の街に一人の少年が崩れ落ちた。悲しみという重石が少年にのしかかる。
その眼に力は無く、呆然としている。

(相棒!しっかりしろ!)

少年武藤遊戯の持つもう一人の人格。
彼もまた悲しみをその心に受けていたが、自分以上に苦しむ相棒を励ますため己は悲痛に耐えていた。
186武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:37:33 ID:WK8Bl/FV0


放送が流れたとき、遊戯は突如姿を消した妲己を探していた。
ほんの十数分間であったが、仲間と離れた遊戯は巨大な不安を抱えていた。
皆どこかへ行ってしまったのではないのかと。役立たずな自分は見捨てられてしまったのではないのかと。
勿論もう一人の遊戯はそんな事はないと励ましてはいたが、心の何処かで妲己を疑っていた彼の激励はやや力に欠けていた。

(妲己さん、一体どこに行っちゃったの?)
そんな心に暗雲が立ちこめてきた所に訪れたライバルの訃報。
心が弱っていた遊戯にとって、この報せはあまりにも酷であった。

虚ろな瞳に映るのは何なのであろうか。
過去の栄光――城之内や海馬と戦い抜いたペガサス島やバトルシティでの決闘の数々――か。
現在の絶望――その城之内も海馬もこの世界で死んでいった。そして自分も…――か。
いずれにせよ、今の遊戯の心は暗い闇にとらわれていた。
187武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:38:36 ID:WK8Bl/FV0

(海馬……、まさかお前まで犠牲になるなんて……)

もう一人の遊戯は自分の無力さを歯痒く感じていた。
ゲームが得意なことがこの世界でどれほど役に立つであろうか。この殺し合いの舞台で何の足しになるというのか。
何も出来ない不甲斐無い己との葛藤に苦しむ。

カズキは俺たちを守ろうとするだろう。そのとき俺には何ができる?
妲己を信頼すべきだろうか。裏切られたらどうすればいい?

口惜しい。誰かに頼らなければ仲間を助けることもできない自分が。
恨めしい。仲間の命を奪う世界に送り込んだあの主催者たちが。

主催者たちを思い出せば、今度は怒りが込み上げてくる。
あの下卑た嘲りが、頭の中で何度も繰り返される。


(『殺人ゲーム』だと!?ふざけやがって……、……)
奴等の言葉に憤慨するもう一人の遊戯。しかしそこで『殺人ゲーム』というフレーズが頭に残った。
そして更にその中の『ゲーム』という単語が抽出された―――

188武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:39:55 ID:WK8Bl/FV0

(…相棒。杏子はまだ生きてるんだぜ)
裏の遊戯が表の遊戯に再び話し掛ける。
表の彼はいまだ放心状態で、もう一人の声が届いていてはいなかった。
しかし裏の彼は、相棒のために話し続ける。

(もう一度言うぜ、相棒。 杏子はまだ生きている。
いや、それだけじゃない。元の世界には本田くんも獏良もじいちゃんも居るんだ。まだ望みを捨てるには早すぎる)
闇遊戯はその声が相棒に届くことを信じて、淡々と話し続ける。
彼の思いが通じたのか、表の彼は自分の仲間たちの顔を思い浮かべ始めた。

(杏子もきっと不安でいるだろうな…。本田くんたちは僕達のこと心配してくれてるのかな…)

表の遊戯は友の顔を思い浮かべる。真っ暗だった彼の心にわずかだが再び光が差し始めた。
裏の遊戯は畳み掛けるように励ましの声を掛ける。

(ああ、皆俺たちを待っているに決まってる。俺たちはまだ立ち止まっちゃいけないんだ)
(でも、僕たちに何が出来るの?こんな世界で一体何が?)

簡単には晴れない心の厚い雲。それはすなわち無能な自分に対する劣等感。
裏の遊戯もそれに苦悩していた。しかしそれの答え――答えと言うには頼りないものかもしれないが――を見つけるためのキーワード。その鍵を彼は相棒に投げかけた。


(あの下衆どもはこれを『殺人ゲーム』、と言ってたよな、相棒。そう、『ゲーム』だ。
これが『ゲーム』だと言うんならこれは俺たちの専門、他の誰よりも俺たちに分がある分野だ。違うか?)

他の者が聞けば何と愚かしい発想だと笑うかもしれない。
だがゲームの達人である彼にとってはこの言葉がどれほど自信に繋がるものであろうか。
その考えを支えにして、彼は相棒を励まし続ける。
189武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:41:51 ID:WK8Bl/FV0

(『ゲーム』と言っても、難易度はベリーハード、その上誰一人仲間を失ってはいけないという縛りつきだ。
こんなゲームをクリアできるのは俺たちしか居ないだろう)

裏の遊戯が提示する自分達の持つ可能性。それに対し表の遊戯も光を取り戻し始める。
なぜならゲームは彼にとっても誇りであったから。

(俺たちの『結束』を持ってすれば、どんな困難だって乗り越えられる!
そしてこんなアンフェアなゲームをふっかけてきやがった主催者どもを『闇のゲーム』で裁いてやろうぜ!)

もしその身があれば、息を乱しているに違いないほどの裏の遊戯の激励。
自分が相棒に出来るのはここまで。あとは相棒次第だ。



ありがとう、もう一人の僕…

表の遊戯は立ち上がり前を見据えた。そこには誰も居なかったが、その視線は確実にあるものを捕えていた。
そのあるものとは『自信』。
再び輝きを含んだ彼の瞳には勇気と希望が生まれていた。
その光にもう一人の彼も気付き、その彼も光を帯び始める。

(さあ、みんなのもとへ行こうぜ。俺たちがみんなを助けるんだ)
(うん。足手まといになってる暇なんてないものね)

二人の心は一人の足並みで歩き始めた。希望を持って、仲間を求めて。

190武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:43:03 ID:WK8Bl/FV0
裏の遊戯は内心――と言っても心だけの存在でしかないが――相棒が再び立ち上がれたことにほっとしていた。
しかし、彼が話したことは正直言って無謀すぎる話である。ただ唯一可能性があるとすればそれは『闇のゲーム』。
これで少しでも殺人者たちを抑制できれば良いが、そのとき相棒はやはり自分を不甲斐無いと感じてしまうのではないか。
裏の彼は新たな不安を抱え始めていた。

だがこれは杞憂であった。表の遊戯ももう一人の自分の真意には気付いていた。
即ち彼は自分を立ち直らせるために支離滅裂な話を展開しているのだと。
けれども杏子たちへの思い、そして彼の優しさが遊戯の表の心を奮わせた。
目を閉じれば、親友と宿敵の姿が甦る。彼等の死の辛さは今は耐えるしかない。そう仲間の『結束』を信じて。


しばらくして大阪の街の外が見えてきた。
そこには妲己とカズキの姿があった。不安を払い除けたからであろうか、この時遊戯は少しも迷わず二人のもとへ辿り着いた。
「遊戯ちゃん!」
妲己は急に遊戯を抱きしめ慰めた。
この時妲己は遊戯がミサと一緒に居ないことが気になったが、ここでそれを尋ねたりでもしたら自分の心配が演技とばれかねない。
だから、今は下手な詮索はせず、とにかく彼を慰める。これが彼女の考えであった、が。
「妲己さん、僕なら大丈夫。今は名古屋へ行くのが先決でしょ」
遊戯は早朝の様子とは異なり、自信に満ちていた。
191武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:44:16 ID:WK8Bl/FV0

妲己は正直拍子抜けではあったが、彼が立ち直っているのならそれに越したことはない。
(あの子もどうしようかしらねん。まあ、向こうが約束守れなかっただけのこと。そんなに気にすることじゃないわよねぇん)
ミサとの約束は無かったこととして、彼女は気持ちを切り替えた。


カズキは遊戯を見て、錯乱していた自分を心の中で戒めた。
『善でも悪でも、最後まで貫き通せた信念に偽りなどは何一つない』
キャプテン・ブラボーはきっと己の信念を曲げず、誰かを守り殉したに決まっている。
ここでオレが二人を置いて行ってしまえば、それは一人でも多くの人を守るという信念を曲げることになる。
斗貴子さんなら大丈夫だ。今オレがすべきは、二人と共にに趙公明を追うこと。


そして妲己と、心を新たにした二人――正確には三人か――の武藤は大阪の街を後にした。
意味は違えぞ目的は同じ。打倒趙公明を掲げ、名古屋を目指す。

192武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:45:00 ID:WK8Bl/FV0

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「ユウギ〜ん。どこにいるの〜?」(ひっそり)
マーダーを恐れた女性の声が大阪の街に聞こえる。
(その辺にいるって言ってたのに……どこにも居ないじゃない!ホント、どこに居るのよ〜(T△T))
半べそをかいた顔のミサ。すると、ぐうぅう〜、と恥ずかしい音がした。

(そー言えば、朝のあれっきりご飯食べてないんだっけ)
その場にへたっ、と座り込み、彼女はデイバックを漁りだした。
中には城之内少年が残したコッペパン。何やら罪悪感が湧き上がる。
「あとにしよ…」
ボソっとそう呟き、ミサは立ち上がる。そうして人探しを再開した。

「ユウギ〜ん。ホントにどこにいるの〜?」(ひっそり)
既に破棄された約束のために彼女は大阪を歩き回る。
探し人、武藤遊戯がもうここに居ないとは知らず。愛する人、夜神月と会えるわけもなく。
193武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:46:28 ID:WK8Bl/FV0

【妲己ちゃんと愉快な武藤達】
【大阪府・街の外/日中(一日目・午後一時半ごろ)】

【蘇妲己@封神演義】
 [状態]健康
 [装備]打神鞭@封神演義  魔甲拳@ダイの大冒険
 [道具]荷物一式(一食分消費)  黒の章&霊界テレビ@幽遊白書
 [思考]1:名古屋へ向かう
 2:仲間と武器を集める
 3:本性発覚を防ぎたいが、バレたとしても可能なら説得して協力を求める
 4:ゲームを脱出。可能なら仲間も脱出させるが不可能なら見捨てる

【武藤カズキ@武装練金】
 [状態]健康
 [装備]ドラゴンキラー@ダイの大冒険
 [道具]荷物一式(一食分消費)
 [思考]1:名古屋へ向かう
 2:仲間と武器を集める(斗貴子・杏子を優先)
 2:妲己と遊戯を守る
 3:蝶野攻爵に会い、状況次第では相手になる
 4:ゲームから脱出し元の世界へ帰る

【武藤遊戯@遊戯王】
 [状態]健康
 [装備]無し
 [道具]荷物一式(一食分消費)
 [思考]1:名古屋へ向かう
 2:ゲームを脱出するため仲間を探す(斗貴子・杏子を優先)
 3:ゲームから脱出し元の世界へ帰る
 [闇遊戯の思考]:妲己の警戒を続けるが、妲己が善人ならばと希望を抱いている。また『闇のゲーム』執行を考えている
194武藤復活! ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/19(日) 23:47:44 ID:WK8Bl/FV0

【大阪府・市街地/日中(一日目・午後一時半ごろ)】

【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]重度の疲労
 [装備]核鉄XLIV(44)@武装練金
 [道具]荷物一式
 [思考]1:遊戯を探してダッキの元へ連れていく
 2:夜神月と合流
 3:夜神月の望むように行動
195崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 07:54:59 ID:ZBJQbHnn0
麦わらの少年が、伸ばす。その、矛となる腕を。
麦わらの少年が、放つ。目の前の、倒すべき『悪』に向けて。

「ゴムゴムのぉ――――――銃〈ピストル〉!!」

ルフィの拳は、ピッコロに向けて放たれる。
その、ゴムの反動を利用した技の威力。それは、ピッコロの予想をはるかに上回る攻撃力。

「ぬぅっ!?」

派手な衝撃音を伴いながらも、ピッコロはルフィの拳の銃弾を受け止める。
見た目にもきちんとした防御だったが、ゴムの技の長所は、一撃の威力だけにあらず。

「ゴムゴムの――――――銃乱打〈ガトリング〉!!!」

二撃目は、連撃。
攻撃の手を休めぬルフィは、ピストルの一撃を防がれた直後にはもう、ピッコロの間合いに移動。
至近距離から、今度は両腕による拳の雨を降らせる。

「くぅ……なめるなぁぁ!」

拳の連打に防御を徹するピッコロだったが、本来、彼のバトルスタイルに防御は似合わない。
目にも留まらぬ連撃のわずかな隙間をつき、ルフィを上空に蹴り上げる。

「ぐあっ……!! ……ッゴムゴムの――――スタンプ!!」

攻撃途中に入れられた蹴りに、一瞬ひるむルフィだったが、それでも攻撃の手を休めない。
瞬時に上空で体制を立て直し、真下に位置する敵に向けて、足を伸ばし、踏みつける。
196崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 07:55:52 ID:ZBJQbHnn0
しかし、この攻撃は直線的すぎた。
空から降ってきた伸びる足を掴み、ピッコロは、そのまま山林の木めがけてルフィを投げ飛ばす。
常人なら直撃――しかし、ゴムの身体を持つルフィには、その予想される結果が適用されない。
木にぶつかる直前、ルフィは両の腕を伸ばし、それぞれ別の木を掴み取る。
伸びきった両腕は、ピッコロに投げ飛ばされた衝撃を和らげ、直撃するはずだった木には、ルフィの足がそっと着地する。
この時点で伸びきった両腕には、元に戻ろうとする力が生まれる。そして直撃するはずだった木はあたかもクッションのように働き、ルフィを押し戻す。
反動が生まれ、投げ飛ばされた地点まで戻ろうとするルフィの身体。この時点で両腕を外せば、どうなるか。
それは――パチンコの要領。

「ゴムゴムのぉぉぉぉぉ……」

大勢の敵を蹴散らしたり、敵船に突っ込む時などに使用される、ルフィ必殺の肉弾砲。

「――ロケットォォォォォ!!」

標的は――ピッコロ。
そのスピードといえば、まさに弾丸の如し。
さすがのピッコロも、これには反応することができず、弾丸となったルフィの体当たりを全身で受け止めてしまう。
防御として受け止めたのではなく、攻撃として食らってしまったのだ。

「――がっはぁあぁ!?」

衝撃で吹き飛ぶピッコロ。
完全に甘く見ていた麦わらの少年に、大魔王はダウンを強いられたのだった。
197崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 07:56:27 ID:ZBJQbHnn0
地面に身体を転がすピッコロ。その光景をあざ笑っていたのは、彼と協力関係にあるはずの、フレイザードだった。
(ヒャハハハハハ! やるじゃねぇか、あいつ! こりゃあひょっとしたらひょっとするか?)
決して口には出さず、笑うのはあくまで内心のみ。
自分が苦汁を嘗めさせられたピッコロ。そのピッコロが、自分の前で初めて醜態を晒した。
笑いが止まらない。そして、さらに期待してしまう。
(あの小僧なら……もしかしたらピッコロに、『前世の実』を使わせるくらいはできるかもなぁ)
ルフィ対ピッコロ。フレイザードにとっては、別にどちらが勝っても問題ではない。
ベストは相打ちだが、重要なのは、ピッコロが疲弊すること。
よもやピッコロがあんな少年に負けるなどということはないだろうが、この戦いで傷を負ってくれれば、出し抜ける確率がぐっと上がる。
万が一ピッコロが負けたとしても、ルフィのほうも無傷で済むはずはない。もしそうなったら、自分が引導を渡してやればいいだけのこと。
ひょっとしたら、戦闘後、この場に立っているのはフレイザードだけかもしれない。
そう考えると、笑いが止まらなかった。

そして、フレイザードの機嫌が上々な理由は、もう一つあった。
それは、フレイザードが新たに手に入れた、この『パンツァーファウスト』という武器。
フレイザードの足元に転がるエテ吉……正確には、『エテ吉だったもの』から回収したものである。
『エテ吉だったもの』は、いまや完全に黒こげの姿。微かに残ったその形状から、チンパンジーの焼死体であるとわかる。

この黒こげになったエテ吉こそ、ルフィが戦っている理由。
仲間を無残に燃やし、支給品を奪い、極悪な笑いを轟かせた二人。
その瞬間、ピッコロとフレイザードは、ルフィの敵となったのだ。
198崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 07:57:18 ID:ZBJQbHnn0
フレイザードが心の中であざ笑っていることなどお構いなしに、ピッコロは戦闘を続ける。
倒された身体を起こし、自分に地を嘗めさせた少年に、殺気を放つ。

このときピッコロは、ルフィに対してあの少年……孫悟空と同質の印象を感じていた。
小さい身体ながら、大魔王の身に傷を与えた憎き仇敵。正義感などというものを掲げ、仲間の死に激怒した、『悪』を許さぬ者。
この少年は、明らかに孫悟空と同じタイプの人間。その事実が、ピッコロを振るわせた。
加えて彼の実力。伸びる手足を使った、柔軟で不規則、それでいて確実な打撃力を秘めたバトルスタイル。
決して雑魚とは呼べない相手。このまま本気で片付けてしまってもいいが、それではあまりにもったいない。
ルフィの存在はピッコロの戦闘意欲を増加させ、同時に、ピッコロの遊び心をくすぐった。
戦闘狂としての性か、ピッコロは、ルフィとの戦いを楽しんでいたのだ。

(お……?)
観戦に徹していたフレイザードが、一人の存在に気づいた。
戦闘に参加せず、自分と同じように傍観に徹している、一人の少女の存在に。

彼女は、ルフィのもう一人の仲間、イヴ。
イヴはフレイザードと同じように傍観していたが、なにも戦闘をする気がなかったわけではない。
むしろ仲間に加勢したかった。しかし、自分の身体が、自分の本能が、それを拒む。
目の前の、ルフィとピッコロの、あまりの次元の違いに。

イヴとて、トレインとスヴェンという二人の掃除屋の仲間として、数々の悪人と戦ってきた。
『道士〈タオシー〉』と呼ばれる異能力者との戦闘にも勝利したことのある実力者でさえある。
だが、目の前の戦闘は違う。明らかに、自分が経験してきた戦いとは別物。
ただでさえ疲労している自分が、加勢などできるはずがない。
それに、もしまた無茶に敵に向かっていったりなどしてしまったら――

(ルフィさんも……ゆきめさんみたいに!)

それだけは、絶対に避けたかった。
もう、仲間を犠牲になどしたくない。

「よう、嬢ちゃん」
199崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:15:38 ID:ZBJQbHnn0
ゾクリッ

(え……?)
イヴが背後に感じたのは、寒気。
狂気と殺気、両方を含んだ存在の気配を、感じた。

「あ……」
振り返り、目にしたのは異形の化け物。
炎と氷に包まれた極悪顔の大男。
――エテ吉を燃やした、張本人。
その瞬間、イヴは恐怖に支配され、身体を動かせなくなっていた。

「おいおい、そんなに怖がらなくていいんだぜ。俺様は優しいからなぁ」
顔全体に、「嘘」という文字がにじみ出た笑顔。
イヴは、異能力を扱う殺人鬼と相対しても怖がらなかった。
イヴは、自分より何倍も巨大な恐竜を前にしても怖がらなかった。
だが、今は、確実に、

(――怖い!)

そう感じていた。
「そうだ、なんなら嬢ちゃんに選ばせてやろうじゃねぇか。あの猿みたいに炎に焼かれて死ぬか? それとも氷付けにされて死ぬか? それとも……仲間の武器の威力でも試させてくれるか?」
そう言い、フレイザードは、イヴにパンツァーファウストの銃口を向ける。
イヴに、確実な死を与えんと――
200崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:16:31 ID:ZBJQbHnn0
空に、二つの巨体が影を作った。
それはちょうど、フレイザードの右斜め上あたり。
先端になにかを突き出した、槍のようなシルエット。
それは、無慈悲な悪に向かって放たれる。

「――ゲギャッ!?」

フレイザードの顔面にあたり、それを吹き飛ばしたものは、とび蹴り。
その足を鎧の鉄鋼に包んだ、悪などには防げぬ、鋼のとび蹴り。

イヴの目に映ったのは、鎧に身を包んだ、謎の人物。
いや……スヴェンが買ってくれた本で読んだことがある。
こういう場面で現れるのは…………

「貴様の優しさなどいらん。少女に優しさを振りまくのは、いつの時代も我々のような存在と決まっている」

――――ヒーロー。
201崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:18:10 ID:ZBJQbHnn0
「な、なんだてめぇは!?」
突然湧いて出た鎧の男。不覚にも、その男にとび蹴りを食らったことを理解し、フレイザードは怒りに震える。

「ヒーローさ。おまえみたいな悪党を退治するためのな」

「――!?」
フレイザードが前方の鎧に気にとられいる間、背後にはさらなる大男が。
巨大な身体に角を生やした男。咄嗟にその男から身を離し、フレイザードは二人のヒーローに挟まれる形となる。

「く……なんなんだてめぇらは!? そいつの仲間か!?」

「いいや初対面だ」
答えるは角の大男、バッファローマン。

「ただ、震える少女と、蔓延る悪党を見過ごせない、それだけだ」
答えるは鎧の男、世直しマン。

「……ヒーローが、助けに来た」
突然現れた助っ人。イヴは、呆然とその二人を見ていた。

対峙する二対一。世直しマンがフレイザードに問う。
「北海道で人々を殺して回っていたというのは貴様だな?」
「ほっかいど〜? ああ、禁止エリアになったところか。ヒャハハハ! そうだな、あそこじゃたしか五人は殺したぜ!」
「五人だと!?(ルキアの言っていたやつの他に、三人も犠牲になったってのか)」
「ヒャハハッ、なんだおまえら? もしかして誰かの仇討ちか? 生憎だが、どいつもこいつも雑魚だったんで顔は覚えてねぇぜぇ!」
「なに、思い出す必要なんてねぇぜ」
「ああ貴様はここで倒す。この、私たち二人がな!」
フレイザードが働いてきた暴挙の数々を再確認し、世直しマンとバッファローマンは、改めて構える。
目の前の外道を滅さんがために――
202崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:19:09 ID:ZBJQbHnn0
戦場からは少し離れたところ。戦場を見渡しやすい山林の影で、ルキアとボンチューは様子を見ていた。
「あいつか?」
「ああ……確かに私を襲った、炎と氷の化け物だ」
二人は、世直しマンとバッファローマンとの約束どおり、戦闘には手を出さず、ここで傍観することに決めた。
勝負が決するまで顔は出さない。そして、もし万が一二人が敗北したときは――

「……あんま心配すんなよルキア。あの二人は簡単には死なない。言ってただろう?」
「わかっておる。貴様こそ、自分の実力を考えて、ちゃんと自重しておるのだぞ」
「……ああ、わかってらぁ」
ボンチューの言葉は、意外にも素直だった。
攻めるつもりはないが、異形の敵を目の前にし、本当に臆してしまったのだろうか?
と、ルキアは考える。

もちろん、ボンチューは臆してなどいない。
ああいう化け物との戦いなら、既に魔界で体験した。
力関係はともかく、いまさら姿で恐怖を感じることなどありえない。
彼が動かないのは、自分の実力をちゃんと自覚しているから。
あの二人を勝利に導き、ルキアを護るためには、自分は手出ししない。
それがベストだと、わかっているから。

(認めたくなんて……ねぇがな)
ただ見ているだけなのに、否、ただ見ているだけだからこそ、ボンチューは歯痒さを感じた。
203崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:19:53 ID:ZBJQbHnn0
ピッコロと激闘を繰り広げるルフィの心境は、唯一つ。

――あいつらが許せない。

エテ吉を燃やし、仲間の死を笑った、非道な敵。
なにより仲間の存在を大切にするルフィは、ピッコロとフレイザードの行いに大きな怒りを燃やしていた。
それは、彼に空腹を忘れさせるほどに。

「ゴムゴムのぉぉぉ……」

空腹など関係ない。怒りが、彼を突き動かす。

「――――槍ぃぃぃぃぃぃ!!!」

その名のとおり、槍のように突き出されたルフィの足が、ピッコロを襲う。
しかし、本人も自覚がないうちに空腹の影響が出てしまっているのか、その足はやすやすとピッコロに掴まれてしまう。

「ふん、あま……」

そのまま地面に叩きつけようとしたが、やめた。
理由は、視界に映った二人の存在。

(――あやつらは!!)

なにを思ったか、ピッコロはルフィをそのままの体制で投げ飛ばした。
二人のヒーローに挟まれた、フレイザードめがけて――
204崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:27:42 ID:ZBJQbHnn0
「――グヘッ!?」
「!?」

世直しマン、バッファローマン、フレイザード、三者が睨み合う中、フレイザードに向けてなにかが投げ込まれた。
「いてて……」
それは、麦わら帽子をかぶった少年。先ほどまでピッコロと戦っていたはずの。
「ん? なんだぁおまえら!? あいつらの仲間か!?」
突然投げ飛ばされ、起きたら見知らぬ男たちに挟まれていることに気づいたルフィは、再度身構える。
対峙する人数が四人に増え、さらにもう一人。

「久しいな、おまえたち」
現れたのは、ルフィを投げ飛ばした張本人、ピッコロ大魔王。
「緑肌の男……!? まさか、標的が二人いっぺんに現れるとはな」
「いや、バッファローマンよ。よもやこの二人……」
まさかの敵増加に驚きを隠せぬ二人のヒーローだったが、世直しマンはこのタイミングでのピッコロ大魔王登場に、一つの仮定を立てる。
その仮定は、次に出たピッコロの言葉で仮定ではなくなった。
「フレイザードよ、いつまで寝ている! 貴様の仕事が回ってきたぞ!!」
(ちっ……わざわざ俺に向かって投げつけたくせに、よく言うぜ)
フレイザードに命令口調で話すピッコロ。世直しマンたちですら知らなかった、炎と氷の化け物の名前が明らかになると同時に、答えは出た。
「まさかこいつら……」
「同盟か、もしくは主従関係か……どちらにせよ、仲間同士であることは間違いないようだ」
ルキアを襲った敵とボンチューを襲った敵。奇しくも、追っていた二人が同時に現れた。
しかも、協力関係を結んで。

「二人いっぺんとは厄介だが……ちょうどこっちも二人、問題ねぇ」
「うむ。むしろ好都合だ。マーダー二人、ここで同時に潰すことができるのだからな」
二対二。
それぞれ向き合う悪のパーティーとヒーローチーム。
その間では、ゴムの少年が一人この状況に流されていた。
「??? わけわかんねぇけど、あいつらはおっさんたちの敵なのか?」
「おうよ! 麦わらの少年、ここは俺たちに任せて、あの嬢ちゃんとどっかに隠れてな!」
戦闘を任せるように勧めるバッファローマンの言葉に対し、ルフィの返答は、
205崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:28:16 ID:ZBJQbHnn0
「ふざけんな!!」
あまりにもはっきりとした、「NO!」だった。
「あいつらは俺の仲間を焼きやがったんだ! ぶっ飛ばさなきゃ気がすまねぇ! おっさんたちこそどいてろ!!」
「な……おいおい、あいつらの強さがわかんねぇのか? いいからどっか隠れてろって……」
「い、や、だ!」
「ぐ、ぐぬ……」
威勢よく拒否を示すルフィに、バッファローマンは圧倒されていた。
「バッファローマンよ、今は言い争いをしている暇はない。その少年が引かぬというのなら、我々がカバーするしかなかろう」
「お、おう。そうだな」
結局、ルフィを加えたまま、三人の正義は悪に立ち向かう。

対して悪のパーティーの場合、戦闘に関する主導権は、ピッコロが完全に握っていた。
「フレイザードよ、貴様はあの麦わらの小僧の相手をしろ。私は少々、あの二人に貸しがあるのでな」
「け、わぁったよ」
フレイザードの本心としては、無駄に体力を消耗することは裂けたかったのだが、この場面では仕方がない。
考えてみれば、あのまま二人を相手にするよりは、一人を相手にするほうが楽でもある。

「貴様ら、殺す前に名前くらいは訊いてやろう!」
ピッコロの自信満々な口調に、それぞれが名乗りを上げる。

「私の名は世直しマン! 悪の手から宇宙を守るヒーローだ!!」
「俺の名はバッファローマン! てめぇらみてぇな悪党は見過ごせなぇ、正義超人だ!!」
「俺の名前はルフィ!! 海賊王になる男だ!!!」

「よかろう! 貴様らの名前、確かに刻んだ! 最後に、このピッコロ大魔王の手にかかることを光栄に思え!!」

険しい山の中、山林を越えた崖際で、正義と悪が対立する。
その力が、ぶつかり合う。
最後に立っているのは、誰か――――
206崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:28:46 ID:ZBJQbHnn0
【山形県南部・山中の崖付近/夕方】

【モンキー・D・ルフィ@ONEPIECE】
[状態]:空腹(怒りによって忘れています)
:わき腹、他数箇所に軽いダメージ
[装備]なし
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、ピッコロ、フレイザードをぶっ飛ばす。
2、悟空・自分と猿とイヴの仲間・食料を探す。
3、悟空を一発ぶん殴る。

【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:胸に刺し傷の重傷(応急処置済み。血は止まっている)
:貧血
[装備]いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]無し
[思考]1、戦いの場から離れる。
2、トレイン・スヴェン・月との合流。
3、ゲームの破壊。

【フレイザード@ダイの大冒険】
 [状態]若干の疲労。成長期。傷は核鉄で常時ヒーリング。
 [装備]霧露乾坤網@封神演義 火竜ヒョウ@封神演義 核鉄LXI@武装錬金、パンツァーファウスト(100mm弾×4)@ドラゴンボール
 [道具]支給品一式 ・遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王 
 [思考]1、ルフィの相手をするが、無理はしない。
    2、体力を回復させる。
    3、隙あらばピッコロを倒す
    4、優勝してバーン様から勝利の栄光を
207崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:30:03 ID:ZBJQbHnn0
ピッコロ@ドラゴンボール】
 [状態]:若干の疲労、腹部にダメージ
 [装備]:なし
 [道具]:荷物一式 前世の実@幽遊白書
 [思考]:1、世直しマン、バッファローマンを殺す。
     2、フレイザードを利用してゲームに乗る。とりあえず南下。
     3、残り人数が10人以下になったら同盟解除。バッファローマン、悟空を優先。
     4、最終的に主催者を殺す。(フレイザードには秘密)

【世直しマン@とってもラッキーマン】
[状態]健康
[装備]:世直しマンの鎧@ラッキーマン
    :読心マシーン@ラッキーマン
[道具]荷物一式
[思考]:1、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    2、関東方面へ移動。
    3、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    4、ゲームから脱出し主催者を倒す。

【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式
[思考]:1、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    2、関東方面へ移動。
    3、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    4、ゲームから脱出し主催者を倒す。
208崖っぷちの正義と悪〈中編〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 08:31:27 ID:ZBJQbHnn0
【山形県南部・山林/夕方】

【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]ダメージ中、重度の疲労
[装備]なし
[道具]荷物一式、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
    2、ルキアを守る。
    3、もっと強くなる。
    4、これ以上、誰にも負けない。
    5、ゲームから脱出。

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:弱冠の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式 ・遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]:1、世直しマン、バッファローマンの戦いには参加しない。
    2、黒崎一護、武藤遊戯(カードの使用方法を知る者)を探す。
    3、とりあえず関東方面へ移動。
    4、ゲームから脱出。

【エテ吉@ジャングルの王者ターちゃん 死亡確認】
【残り83人】
209Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 17:49:16 ID:MQnsbCw40

「――臓物(ハラワタ)をな」
森の中で力強い言葉が響く。その言葉は、殺意をも孕み、その場にいた四人の人間に届く。
友情マン。
桑原和真。
夜神 月。
そして、声を発した津村斗貴子自身にも。
210Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 17:49:51 ID:MQnsbCw40
「―――――なんだ、てめえら?」
最初に口を開いたのは桑原和真。突然の事態に緊張しながらも、斗貴子達を睨み付けている。
「三度は言わない。――――武器を持っているなら地面に放れ」
斗貴子は威圧的な態度で言うが、その目は桑原を見ていない。視界に入れるは、異形の生物。
頭部がハート状。胸には【友情】などと書かれた紙が貼ってある。
サイズは人間と同じだが、服装は・・・全身タイツ?
蝶野公爵?
「貴様―――――ホムンクルスか?」
声をかけられた友情マンは、一瞬不可解そうな表情を見せ、「何のことか分からない」と返した。
返しつつも、彼は思考する。

(彼らは――――威嚇してきた、ということはゲームには乗っていない、か?)
今にも目の前の二人に飛び掛っていきそうな桑原を左手で制しながら、友情マンは計算する。
目の前の者に、自分の【友達】たる資格があるかどうか。
(散弾銃・・・後ろの青年は斧を持っている。あまり力は強そうではないが)
(そして、女の方はさらに剣を持っているな・・・。戦闘経験も豊富そうだ)
「桑原君、とりあえず武器を捨てよう、ここで逆らうのは得策じゃあない。そこの女の子、えっと・・・」
「津村だ」
「津村さん、私たちは君達と争うつもりはない、武器は桑原君の持っている刀一振りだけだ」
いって、すぐ隣にいる桑原に「いざとなればカードを使う」と小声で伝え、武器を捨てるように促す。
桑原は、渋々ながらも斬魄刀を地面に落とす。
「これでいいかい?じゃあ、僕と友だ」
「次に質問をさせてもらう」
211Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 17:50:32 ID:MQnsbCw40
次々に威圧的な発言を取る少女に、ついに桑原がキレた。
「おい・・・いきなり出てきてなんなんだテメエは?」
先ほど友情マンに向けていた怒りの矛先を少女に変え、戦闘態勢に入ろうとする。
たとえ斬魄刀がなくても、自分には霊剣というとっておきの武器がある。
友情マンもカードを持っているし、負けることはないだろう。
頭に血が上っている桑原は、目の前の少女に最後通告を――――。
「ゲームに乗ってんのか?じゃあ、さっさとかかって」
「私達はゲームに乗っていない。そして、今から行う質問は君の命に関わる物だ、黙って聞いていてくれ」
少女は落ち着いた声でこういうと、一泊おいてこう言った。
「もう一人の貴様、その桑原という男を何故殺そうとしていた?」




――――――――沈黙。
212Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 17:51:42 ID:MQnsbCw40

その瞬間、友情マンは一瞬思考を止めてしまった。
(―――――!!見られていたか。だが、まだ言い訳は)
とっさに言い訳を出そうとする。
だが。
「ふざけんな!!!!!!」
森中に響き渡るは桑原の怒声。
(しまった、コイツは単細胞!津村の言い分をあっさり真に受けて―――)
「こいつは俺の仲間だ!そんな事する訳ねえだろうが!!」
(――――そっちに働いてくれたか)
「・・・だが現に、その者は背を向けた君に駆け寄り、貫手を―――」
津村が桑原とは対照的に冷静に事実を告げようとすると、その度桑原が感情的に批判する。
それがしばらく続いた後、考えを整理して話に割り込む。
「あの・・・津村さん。私は、桑原くんを引き止めようとしたんだ」
「・・・どういうことだ?」
―――――どうやら、上手くいきそうだ。
友情マンは決して表に出さない笑顔を心の中で浮かべ、自分達の今までの経緯を語り始めた。
213Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 18:05:40 ID:MQnsbCw40
「つまり、そのガラという君達の仲間がブチャラティという男に殺され、ブチャラティを追うかどうかで揉めていた、と」
一通り説明を終えると、斗貴子も納得したのか、表情を緩める。
「ああ、で、俺は敵討ちに行きたいんだが、こいつは俺が死んじまうのを怖がってな。どうしても行きたくないって言うから、俺一人で行こうとしてたんだ」
「面目ない・・・でも、本当に怖いんだ。また仲間を失うのが」
神妙そうな表情を作って俯く友情マン。
それを見て、桑原が気にするな、と友情マンの背中をばしばし叩く。
場の空気が幾分和んだのを見計らったのか、今までずっと成り行きを見守っていた月が明るい調子で提案した。
「じゃあ、こういうのはどうでしょう?友情マンさんは僕達と一緒に来る、桑原さんはガラさんの敵を討ちに行った後、どこかで落ち合う、というのは?」
「ライト君、それでは桑原さんがあまりにも危険だ。どうせ落ち合うならみんなで一緒に・・・」
斗貴子が異論を唱えたが、桑原は「俺は一人で大丈夫だ」と言い張るので、結局月の提案どうりに別れる事になった。

「じゃあ、桑原さん、午後六時までに名古屋城に来てください」
月が落ち合う場所を伝え、別れる間際。
「ちょっと待て。何で敬語なんだ?」
斬魄刀を拾った桑原は些細な疑問を漏らした。
「え?年上でしょう?」
月が不思議そうな声を上げる。
「・・・・・・お前ら、歳いくつ?」
「私は高校の・・・何年になるのかな、実際は」
「僕はついこの間大学に入ったばかりだから、19歳ですね」
「私はちょっと君達の常識じゃ測れない年齢だね」
各々が自分の年齢を告白しているのを聞いて、桑原は何故か気まずそうだ。
「桑原さんはお幾つなんです?」
月は、少なくとも自分よりは年上だろう、との確信を持って質問した。しかし。
「・・・中学生だ」


――――――沈黙。二度目の沈黙。
214Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 18:08:55 ID:MQnsbCw40

閑話休題。

桑原と別れた後、斗貴子たちは大して会話もせずに、黙々と森の中を進んでいた。それぞれ、思惑を巡らせながら。

斗貴子は考える。

(仲間を失うのが怖いだと?馬鹿な。あの、貫手につなぐ動作は、一流の戦士のそれだった。動作の迷いの無さからみて、覚悟が出来ていないなんて事はありえない)
(ならばなぜ仲間の敵を討とうとしない?簡単だ、最初から友情マンはガラを仲間だと思っていなかった。恐らく桑原(くん?)も、利用する、道具程度にしか)
だが、もし本当にそういう考えの持ち主なら、手元に置いておいたほうが安全だ。放っておけばカズキが魔手にかかる恐れも(微弱だが)ある。こちらにはあまり頼りにならないが月もいる。2対1なら、無謀なことはしまい。
そう斗貴子は結論付けた。今も、前を歩く友情マンには最大限の注意を払っている。

友情マンは考える。

(何とか誤魔化せたが、斗貴子さんも月くんも頭はいいようだ。桑原君と同じに考えているとミスを犯すかもしれない。慎重にいかなきゃ)
(それにしても、斗貴子さんがいうケンシロウ君とやらは相当強いらしい、会うのが楽しみだなぁ。さあて、こいつらをどう使うか・・・)

友情マンは、新たな【友達】の利用法をひたすら考えていた。

夜神月は考える。

(この友情マンとか言う化け物・・・僕と同じだ。何かを隠し、大きな事を成し遂げようとしている。目を見た瞬間そう感じた。僕と同類の存在なら、ミサと同じく、いやそれ以上に役に立たせる事ができるかもしれない。
津村斗貴子の目を盗んで、一度確かめてみるか・・・)

夜神月はポケットの中で無意識に子供用の下着を強く握り締めながら、歪んだ笑顔を必死でこらえていた。

複雑な空気を纏い、三人のBlack stomachr は森の中を進み続ける。ただ、黙々と。
215Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 18:11:13 ID:MQnsbCw40
【福島県南西部/日中】
【桑原和真@幽遊白書】
 [状態]:健康。怒りと悲しみ。ブチャラティのいる位置がなんとなく分かる。
 [装備]:斬魄刀
 [道具]:荷物一式
 [思考]: 
1:ブチャラティを追跡、怒りに燃えている。ガラの仇をとる。
2:ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
3:ゲームを脱出する。
4:山側へ
216Black color stomach 〜 encounter 〜 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/20(月) 18:11:55 ID:MQnsbCw40
【福島県南西部/日中】
【Black stomachrs】
【友情マン@ラッキーマン】
 [状態]:健康
 [装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
 [道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
 [思考]:
1.斗貴子達を利用する。
2.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
3.最後の一人になる。
【津村斗貴子@武装練金】
[状態]健康
[装備]:ダイの剣@ダイの大冒険
:ショットガン
:リーダーバッチ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:荷物一式(食料・水、四人分)
:ワルサーP38
[思考]
1:人を探す(カズキ・ブラボー・ダイの情報を持つ者を優先)
2:ゲームに乗った冷酷な者を倒す
3:午後六時までには名古屋城に戻る
4:友情マンを警戒
【夜神 月(ライト)@DEATH NOTE】
[状態]健康
[装備]真空の斧@ダイの大冒険
[道具]荷物三式 (三食分を消費) 子供用の下着
[思考]1:トキコに同行。利用する。
   2:弥海砂の探索 。南下。
   3:使えそうな人物との接触
   4:竜崎(L)を始末し、ゲームから生き残る
5:斗貴子の目を盗んで友情マンと接触したい
備考:トキコとライトは友情マンの所持品を現在のところ知りません。
217 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:44:30 ID:ZBJQbHnn0
ヒーロー+正義超人+海賊 VS 大魔王+炎氷将軍

皆、独特の肩書きを持つ戦士。
その戦士たちの決闘――否、命を懸けた――死闘。

「よ(4)、な(7)、」

世直しマンの体が、光に包まれる。
悪を打ち砕く、閃光が衝撃波が――

「お(押)ぉぉぉぉぉし!!」

放たれた。
標的は、大魔王を名乗る緑肌の男――ピッコロ。

「――ちぃぃ!」
格闘戦オンリーかと思われた、世直しマンからのエネルギー放出攻撃。
ピッコロの咄嗟の反応は、これをギリギリで避けることしかできなかった。

世直しマンの放ったエネルギー波は、ピッコロを捉えることができずに奥の山林をなぎ払う。
ギリギリで直撃を避けたピッコロだったが、地面を転がり、体勢を崩してしまう。
一対一なら立て直す暇もあろうが、この戦いは違う。

「――うらぁ!」
この戦いは、ピッコロにとって一対二。
体勢を瞬時に立て直せず、片膝をついた状態で襲ってきたのは、バッファローマンの腕。
1000万の超人パワーを誇る、豪腕によるラリアットが迫る――!

「ぐはぁっっ!!?」
直撃。パワーにものをいわせたその衝撃は、ピッコロの身体を安々と弾き飛ばした。
再び地を転がるピッコロ。その大魔王に、容赦ないさらなる追撃が――
218崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:45:18 ID:ZBJQbHnn0
「――よ!」
転がった体勢から起き上がろうとするピッコロに向けて放たれる、世直しマンの拳。
しかし、ピッコロはこれをいとも容易く掴み取る。

「――な!」
一撃目は、フェイント。
本命は、未だ座り込んだままのピッコロの眼前に迫っていた――世直しマンの脚部。

「な、がぁぁぁっ!!?」
気づいたときには、もう手遅れ。
世直しマンの蹴りはピッコロの顎を直撃し、上空に跳ね上げる。
そして、休む間も与えず次なる連撃。
同時に飛び上がった世直しマンによる、空中――

「――おしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
――回し蹴り!

その全体で一秒にも満たない連撃が、ピッコロを地に叩きつける。

「――――が、はぁっ……!!」
フレイザードが見たら、押さえきれずに爆笑しそうな光景。
仮にも大魔王を名乗ったピッコロは、世直しマンの攻撃によって血反吐を吐いたのだった。
(ば……かな! この、このピッコロ大魔王が……こんなやつらに!?)
世直しマンの、予想をはるかに超える実力。
バッファローマンの、自分を越えるパワー。
全ての力が、ピッコロの予想を上回った。
219崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:45:56 ID:ZBJQbHnn0
二人から必死に距離を取り、なんとか体勢を整えるピッコロ。
その心中は、激しく乱れていた。
認めたくない事実を、認めたくなければいけない、今の状況を嘆いた。
(こやつらは……強い! さっきの麦わらの小僧などより! ……とても二人いっぺんに相手をすることは)
思いかけて、閉じた。
それだけは、認めてはいけない。仮に一対二といえど、大魔王が敗北を認めることなど、あってはならないのだ!
(そうだ……私の真の力は、こんなものではない! 大魔王の真の力の前では、こやつらとて小虫同然!!)

「クク、ククク……ハァァーーーーハッッハァァァァァ!!!」
ピッコロは笑う。全てを揺るがす、大魔王の大笑い。

そんなピッコロを、二人のヒーローは珍妙に思っていた。
「なんだぁ!? 突然笑い出すたぁ、どこまでおかしなヤローなんだ?」
「気をつけろ、バッファローマン。あいつの目……まだ狂気は消えてはいない!」
無論、バッファローマンとて油断などしていない。
肌で感じたピッコロの強さは、彼が戦ってきた数々の超人にも劣らない。
だが……彼と、世直しマンと一緒ならば、負ける気がしない。
バッファローマンは、世直しマンを信頼できるタッグパートナーに迎え、確かな希望を感じていた。
彼や、キン肉マンら他の正義超人と一緒ならば……必ず勝てる! こんな、非道なゲームを主催したやつらにも――

「ククク……」
ピッコロの笑いは、依然として止まらない。
懐から、なにやら怪しい小瓶を取り出し、その蓋を開ける動作の最中も。
世直しマンとバッファローマンには、それが『絶望』への引き金だとはいうこともわからず――
220崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:47:14 ID:ZBJQbHnn0
「ヒャハハハハハァァァッ! マヒャドォ!!」
フレイザードの放つ極大氷結呪文。それは、気高く生い茂る山林の内部を、容赦なく凍結させる。
その中にまぎれる、標的を狙って。

「あぶねぇだろうが、こんにゃろー!」
「なに!?」
フレイザードの標的――ゴム人間のルフィは、マヒャドを放った方向とは、真逆の位置から姿を見せた。
すなわち、フレイザードの後方。振り向いたそのときには、ルフィの攻撃が――

「ゴムゴムの……銃〈ピストル〉!!」
「グアァァッ!?」

振り向き見せたその顔面に、ルフィの拳が激突。
防御が叶わず、フレイザードはその身体をぶっ飛ばされた。

ルフィ対フレイザード。
彼らが戦う場は、深く生い茂った、ジャングルのような山林。
ピッコロに言われたとおり、ルフィのみの相手をするため、ここに連れ込むことに成功したフレイザードだったが……
正直、ここを戦場に選んだのは失敗だった。
その理由は、この周りの木々。
高く聳える木々は、敵の姿を隠し、攻撃の邪魔をする。それは本来、双方に言えることのはずなのだが、
フレイザードの相手……ルフィは、このフィールドを有効活用していた。
腕や足を、時には首までを器用に伸ばし、木の間を駆け抜けている
そう、まるで本物の『猿』のように。
221崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:51:27 ID:ZBJQbHnn0
「ゴムゴムのぉぉぉ……」

ルフィは、右腕をぐるぐると木に巻きつけ固定。そして、地から身体を離す。
ゴム独特の反動が生まれ、螺旋階段を上るように上空に巻き上がったルフィは、再びフレイザードめがけて、攻撃を仕掛ける。

「……鞭ィィィィィ!!!」

空から、鞭のように撓るその蹴りを、

「――ゲッ、」
浴びせ――

「アアアアアアアッッッ――――!!?」
ぶっ飛ばした。

ルフィの、伸びる身体と、『戻る力』。
この山林内では、それが十分に発揮できる。
もっともルフィ自身、この戦法は考えてではなく、本能でやっているのだが。
――まさに、『モンキー』・D・ルフィ。

対してフレイザードのほうは、焦りを見せ始めていた。
度重なる攻撃に、体はボロボロ。疲労も回復しきっていない。
適当にあしらうつもりだった相手に、予想外の苦戦。
フレイザードの脳裏に、『敗北』の二文字が浮かびかけ――
「オレ様が負ける……ハッ、冗談じゃねぇ」
――即座にかき消した。
フレイザードが欲するのは、常に『勝利』の二文字のみ。
バーン様から、『勝利』の栄光を掴み取るため……負けは許されない。
「いつまでも……好き勝手にやらせてると思うなよぉ……!!」
またもや姿を消した敵に、フレイザードは言葉を送る。
死を与える、呪文を。
222崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:52:05 ID:ZBJQbHnn0
「メラゾーマァァァァ!!!」

――魔法の力で形成された、紅蓮の劫火。
ターゲットは、姿の見えぬルフィ……ではなく、前方の木。
メラゾーマの一撃を、抵抗することなどできるはずもなく、木は燃える。
一瞬で赤く染まり、その赤は、両隣の木へ。その木の赤も、さらに隣の木へ。次へ次へと、伝染していく。
炎は……フレイザードの前方一帯に燃え広がった。

山火事。それこそが、フレイザードの狙い。
ここは草木の密集地。この火が山全体に燃え広がれば、ここにいるものは皆、ただではすまない。
今戦っているルフィも、崖際で戦っているピッコロも。
もちろんこの炎では、氷の半身を持つフレイザードも、戦える状況ではない。
いや、なにも無理に戦う必要などないのだ。放っておけば、あの麦わらの少年もいずれ焼け死ぬ。
他の者が火事に気を取られている、その間に自分は……

「ヒャハハハ、ヒャーーーハハハハハハハハハハァァァァ!!!」

そう、彼が考えた最善の勝利策は……「逃げるが勝ち」だったのだ。
もともと、この場には敵しかいない。いっぺんに死んでくれるなら、好都合。
フレイザードの、あまりにも外道な笑いが轟く。

「ヒャハ……?」
その中、フレイザードは見た。
炎に燃える木々の渦中、涼しげな顔で立つ、麦わらの少年の姿を。
ルフィの周りには、確かに炎が燃え盛っている。身を置いていれば、火傷は必至。
なのに、ルフィは涼しい顔で、その、真っ直ぐな瞳をフレイザードに向け。
223崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:53:26 ID:ZBJQbHnn0
(な……なんだこいつ。なんなんだ、その顔は、その、目はよぉ!?)
フレイザードが動揺したのは、一瞬。
そのときは、行動なし。

「ゴムゴム……」

(……?)
次の一瞬、フレイザードは気づいた。ルフィの腕が、両方とも後方に伸びきっていることに。
そのときも、行動なし。

「ゴムゴムの……」

(……!)
そのまた次の一瞬、フレイザードは感じた。確かな、嫌な予感を。
同時に、見た。ルフィの涼しい顔の中に、確かに燃え上がる、炎の宿った瞳を。
そのとき、初めて体がピクリと動いた。

    そ し て 、 次 の 一 瞬 。

(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)



 「―――――バズゥーーーーーカァァァァァァ!!!!」


放たれたのは、ルフィ必殺の、『ゴムゴムゴムゴムのバズーカ』。
大きく伸ばした反動を利用し、両腕を相手に叩きつける。
その反動が生む『戻る』力は、時間にして、まさに一瞬。
気づいた時には、すでにフレイザードの身体に――
224崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:54:23 ID:ZBJQbHnn0
数々の一瞬を重ね、放たれた一撃――フレイザードは、ルフィの攻撃に対応できなかった。
この炎の中、構うことなく攻撃してきたという意外さもあるが、なによりルフィが見せた不思議な威圧感。
それによって生まれた数々の無駄な一瞬が、フレイザードの逃げる隙を殺した。
まるで、自分の時が止められたように感じたのだ。

フレイザードを捕らえたルフィの腕が、伸びる。
どことも知らない山の中を、どことも知らない果てめがけて。
フレイザードの後方に位置していた、まだ燃えていない木々はその障害となるが、

――ルフィの腕が伸びる、フレイザードが木にぶつかる、破壊。
――ルフィの腕が伸びる、フレイザードが木にぶつかる、破壊。
――ルフィの腕が伸びる、フレイザードが木にぶつかる、破壊。

この、繰り返し。
その衝撃は全てフレイザードの身体に移り、確実なダメージへと昇華されていく。


やがて、木を破壊する感触がなくなり、伸びた腕が戻ってきた。
戻ってきた手のひらに、フレイザードという存在はない。
確認すると、ルフィの前方には、無残に折られ、散らばる木々の残骸が広がっていた。
そのずっと先、どこまで見据えても、炎と氷の化け物の姿はなかった――
225崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:54:54 ID:ZBJQbHnn0
山形県のとある山から、濛々と煙が立ちのぼる。
その内部では、炎で赤く染まる山林、悲鳴を上げる小動物の姿。
しかし、この山の一箇所だけ……南側の崖際だけは、唯一静寂に包まれていた。
ほんの、一秒ほどだったが。

「――グワアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!!?」

静寂を破ったのは、普段決して叫びなど上げない、男の悲鳴。

「!? ――バッファロォーーーマァァーーーーン!!?」

悲鳴を上げたのは、角を生やした大男――バッファローマン。
その名を叫んだのは、鎧の男――世直しマン。

「ククク……」

笑ったのは、大魔王――否、『真』大魔王ピッコロ。

その光景は、唐突、衝撃、無残。

何気なく取り出した小瓶。それに入っていた木の実。それを飲み込むピッコロ。
跳ね上がった邪気。加速する大魔王。繰り出された手刀。貫かれる鋼の肉体。

ピッコロの腕は、分厚いバッファローマンの身体をいとも容易く貫いていたのだ。
傍らの世直しマンがその事実に気づき、次の動作に移ろうとしたその瞬間も、真大魔王の脅威はとまらない。
「ふん」
至近距離からの――爆力魔波による追い討ち。
ドンッ、という爆発音と共に、バッファローマンの身体は、大きく後方に吹き飛ばされた。
226崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:57:28 ID:ZBJQbHnn0
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
突如迫る、世直しマン。
目の前でバッファローマンがやられたことに逆上するかのような叫びを上げ、ピッコロに攻撃を仕掛ける。
「はっ!!」
拳、次いで蹴り、拳、次いで蹴り、蹴り、次いで拳、拳、拳、蹴り、蹴り、拳……
本気の力を注いだ、怒涛のラッシュをかける。
しかし、そのラッシュでは……ピッコロを圧倒することはできない。
「ふん! は! ハァ!!」
世直しマンの超スピードによる攻撃は、全てピッコロに捌かれる。
二人のスピードはまったく同じ。どちらかが攻めれば、どちらかが守る。攻撃と防御のせめぎ合い。
そのせめぎ会いは、片方のスピードがわずかに上回ったとき……崩れる。
手数が一つ増した、その腕で繰り出すは――攻撃。

「かあぁぁっ!!!」
速度で勝り、確実な一撃を相手に与えたのはピッコロ。
せめぎ合っていた両者の身体が離れ、世直しマンが弾かれる。
しかし、その入ったかどうか微妙な一撃のみでは、世直しマンは下せない。
「よ(4)!」
距離の出た二人の間、世直しマンは即座に必殺技の発動を――
「遅いわノロマがぁぁ!!!」
世直しマンが右手に四本の指を立てる仕草の途中、ピッコロはそれより速く、先制する。
速攻の……爆力魔波!
手に凝縮されたエネルギーは世直しマンの『よなおし波』よりも一足速く、破壊を生む。

爆破、爆撃、爆煙。
ピッコロの手から放たれた破壊のエネルギーは、世直しマンの周囲一帯を吹き飛ばした。
閃光の跡に生まれた爆煙は、世直しマンの身体を覆い隠す。
彼がどうなったか、視覚で確認することはできないが、結果は誰にでも予想できる。
破壊のエネルギーの直撃を受け、その身体は見るも無残に粉々になった。
227崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 21:59:44 ID:ZBJQbHnn0
――だろう。 常 人 な ら ば。

「くおおおおおおおお!!」
爆煙の中から飛び出したのは、土埃を被った程度の鎧の姿。
世を正すヒーローは……世直しマンは、これしきの爆発では死なない。
「なにぃ――!!?」
完全に勝利を確信していたピッコロ。
煙から飛び出し、突進してきた世直しマンに、反応できない。

「――ハァ、!!」
世直しマン、気合の一撃。
防御を許さぬ電光石火のパンチは、ピッコロの腹へと深く、深くめり込み――
「アァ!!」
――殴り飛ばす!!!
「ぐほうっ!?」
が、それはピッコロの執念か、二、三歩後ずさりした程度で踏みとどまる。
すぐにでもカウンターを送り込みたいが、衝撃の反動で、身体が言うことをきかない。
『真』大魔王となった身体で、初めて受けた大ダメージ。

「――――避けろォォォォォォ、世直しマぁぁぁぁぁぁぁぁン!!!」
「――!!?」
轟く回避の合図。
その頼れる声質を瞬時に耳にし、言われたとおりその場から離れる世直しマン。
一方ピッコロは、回避反応ができなかった。
その声が、先ほど殺したはずのバッファローマンのものだったから。
228崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:00:38 ID:ZBJQbHnn0
「な……」
ピッコロが見たのは、巨木。
近くの山林に生えるものの中でも、一際大きな巨木。
その巨木が、牛角の大男に持ち上げられ、放り投げられ、今、ピッコロの眼前に――!
「……にぃぃぃ!!?」
なんという無茶苦茶な攻撃。
バッファローマンのパワーだからこそ成せる、巨木の投擲。
この体積が圧し掛かったら、ただでは済まない。その堆積ゆえ、避けることもできない。
――世直しマンとの戦いで、ピッコロはいつの間にか崖の渕まで追いやられていたから。
逃げ場を失った以上、防ぐ方法は――破壊のみ!

「おのれ死にぞこないがぁっっ!!」
怒りの爆力魔波。
大空を飛んできた巨木は爆破、粉塵となり、ピッコロの頭上に降り注ぐ。
と、ピッコロが上の方に気を取られている隙に、それは、飛び出した。
「ぬ?」
ピッコロの身体に、ぶつかった。
「な?」
ピッコロの身体を、押し出した。
「ん!」
ピッコロの身体を、落とした。
「だ」
足場のない、崖下へと。
「!!?」
自分の身体、もろとも。
「――」
――――イヴが。
229崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:01:35 ID:ZBJQbHnn0
ピッコロとイヴの身体が、転落していく。高い山から、地表へと。
いったい何メートルあるのかは、予想がつかない。
明白なのは、落ちればただでは済まないということ。
常人なら即死――大魔王クラスの者でも、生きていられるかどうか。

「――――バカめ!」
その言葉は、一緒に転落したイヴに向かって吐き捨てる。
自分の身を犠牲にした苦肉の策だったのだろうが、生憎ピッコロには飛行手段がある。
こんな空中に落とされても、すぐに身体を制御することが可能なのだ。
「――!?」
と、ピッコロはまた見た。
自分の眼前に迫る、先ほどの巨木よりは小さいが、衝撃的な印象を与える物体を。
それは、ハンマー。工具に使用するものではなく、武器として使えるような……壊す、潰すという言葉のために作られたような、巨大ハンマー。
そのハンマーは、一緒に落下中のイヴの頭部に繋がっている。
ピッコロは知らない。これがイヴの持つ、能力であるということも。
これが、彼女渾身の、変身〈トランス〉であるということも。

――ドゴンッ!!!

それは、ピッコロが空中制御するより速く。
イヴの髪を変化させたハンマーは、ピッコロの身体を、
「がっ……あ……」
文字通り、叩き、落とした。
山のふもと、地上まで――

ピッコロのいち早い落下を確認し、イヴは次の行動に移る。
このままでは自分も落ちてしまう。だが、彼女もピッコロと同じように飛行手段を持つ。
それは変身〈トランス〉能力を使った、翼の構築。
ハンマーがピッコロに当たったすぐさま、髪の変身〈トランス〉を解き、天使のような純白の翼を――
230崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:02:15 ID:ZBJQbHnn0
(――――できない!!?)

それは疲労のせいか。イヴは先ほどの変身〈トランス〉で力を使い果たし、翼を作り上げることができなかった。
翼がなければ、飛べない。飛べなければ、あとはただ落ちるのみ。
落ちたら――――死ぬ。

(―――――――――スヴェン!)

瞬間、頭に浮かんだのは大切な仲間。
イヴはまだ、再会していない。
一緒に戦い、一緒に暮らした大切な仲間――トレイン――スヴェン――リンス――誰とも。

(助けて――――!!)

上にはヒーローがいる。助けを呼べば、助けてくれるだろうか?
しかし、イヴのか細い声では、崖の上まで届くはずもなく――

「――イヴぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

聞こえたのは、仲間の声。
スヴェンでも、トレインでも、リンスでもなく。
この世界で出会った、仲間の声。
月でも、ゆきめでも、エテ吉でもなく。

(――ルフィさん!)

なによりも仲間を大事にする、海賊、モンキー・D・ルフィの声。

天から伸ばされたそのゴムの腕は、イヴに向けてぐんぐんと。

イヴはその救いの腕を――仲間の腕を――――
231崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:03:14 ID:ZBJQbHnn0
――――しっかりと、手に掴んだ。


山全体に、炎が広がる。
崖付近の周りの山林も、紅蓮の赤で染まりきる。
燃え猛る山林の隅、崖の際で、ルキアとボンチューは寄り添い呼びかける。
胸に、大きな傷をつけた、バッファローマンに。
「バッファローマン!」
「……ばかやろう。なに涙なんて流してやがる。この山が燃えてんのがわかんねぇのか?」
「馬鹿はあんただろうが! いいからあんま喋んな! 無理したら死ぬぞ!!」
「へっ……どうせ俺はもう長くもたねぇよ。それより、早く山を下りな……」
バッファローマンの命は風前の灯。
貫かれた胸は重要な器官を激しく損傷し、爆力魔波によるダメージは、腰の辺りを黒焦げにしていた。

「……バッファローマン」
倒れるバッファローマンの傍に現れたのは、戦いを終わらせた世直しマン。
その口調は平静を装っていたが、中では感情が激動していたのは、本人しか知らない。
「よう世直しマン、あいつは倒せたか……?」
「わからん。崖から転落したようだが、あやつなら生きていてもおかしくはない」
「そうか……まあ、次があるさ。今回は、運が悪かったと思え……ぐっ!」
痛みに苦しみだすバッファローマン。もはや、喋るのも限界のようだ。
が、それでも彼の口は止まらない。

「……ボンチュー、俺の分も、ルキアのこと守ってやれよ」
「……わかってる」
ボンチューは、悔しさを噛み締める。

「ルキア、一応言っておくが、これはおまえのせいじゃねぇぞ。俺よりあいつが強かった、それだけだ」
「……うむ」
ルキアは、悔しさを噛み締める。
232崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:05:55 ID:ZBJQbHnn0
「世直しマン……おまえとは一度、タッグを組んでリングに上がりたかったんだがな」
「上がってやるさ。おまえが生きていれば、必ずな」
世直しマンは、悔しさを噛み締める。

「へっ……無茶を言いやがる……そろそろ炎がやべぇ、さっさといきな」
バッファローマンの言葉は、俺を置いていけ、ということ。
そんな苦渋の選択、ここにいる三人がすんなり受け入れられるはずがなかった。


「あきらめんな」
そう言い放ったのは、さっきまでフレイザードと戦っていた麦わらの少年。
世直しマン以外が苦しげな顔を浮かべる中、『船長』という立場にあるルフィも冷静を保っていた。

「おい、おまえ。なんか食いもんあるか?」
ルフィが問いかけたのは、ボンチュー。
「……」
ボンチューはなにも言わず、自分の食料の中から適当に、一本のバナナを取り出す。
(……猿)
そのバナナが、黒焦げになってしまったエテ吉を連想させる。
ルフィはもらったバナナを皮ごと口に放り込み、飲み込む。
そして、おもむろにバッファローマンに近寄ると、

「……お、おい!?」
その巨体を、軽々と背負い、持ち上げた。
ルフィの見かけからは想像できないパワーに、驚く一同だが、さらに驚いたのは、
「角のおっさんは、あのピッコロとかいうヤツをぶっ飛ばしてくれた。そんなおっさんを、置いてくわけねぇだろ」
誰もがあきらめかけていたことを――
「おっさんは俺の仲間だ。絶対に助ける」
軽々と、やる、と言ってのけたのだ。

「鎧のおっさんはイヴを頼む。おまえは……猿を」
それぞれ世直しマンにイヴ、ボンチューにエテ吉の亡骸を託し、一行は下山を始める。
233崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:08:44 ID:ZBJQbHnn0
バッファローマンの意識は、ルフィの背中で揺れていた。

(キン肉マン……ラーメンマン……ウォーズマン……)

思うは、仲間の超人と、

(世直しマン……ルキア……ボンチュー……それに、ルフィとイヴ、か……)

新たな、『正義』の志を持つ仲間。

(これだけ、『正義』の志を持つ奴らがいるんだ……たとえピッコロが生きていようが、たとえ主催者達が強大だろうが)


期待は、大きく膨れ上がり、弾ける。

(やってくれるさ……こいつらなら)


頼もしい仲間の背の中で、バッファローマンの意識は、途絶えた。

主催者打倒への、確かな感触を掴み取り――
234崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:09:32 ID:ZBJQbHnn0
「――ぐぅ……おのれ、おのれ! 世直しマンにバッファローマン、それにあの忌々しい小娘め!」
崖から落下し、ふもとの森に落ちたピッコロのダメージは、重症だった。
それでもなんとか生を拾い、かろうじて意識を保っている。これも大魔王の生命力が成せる業か。
「やつら……今度あったら生かしてはおかん! この大魔王が……こんどこそ殺してやる!」
その殺気は崖の上に向けて。と、そこで山が燃えていることに気づいた。
「む……フレイザードのヤツの仕業か? なんと無茶なことを……まあいい、早いところあの馬鹿と合流を……」
言いかけたところで、考える。

(――いや……このままヤツと合流するのはまずいか……もしヤツが健在ならば、必ず私を襲ってくる)
ピッコロは思い出す。フレイザードと同盟を結んだ直後の出来事を……
(――ヤツは間違いなくこの私の寝首をかこうとしている。今の私の状態を見られたらまずいか)
世直しマン、バッファローマンとの戦いで、ピッコロの身体は重傷の傷を負ってしまった。
今の状態では、フレイザード相手でも勝つことはできないだろう。
(――それに、ヤツが敗北しているということも考えられる)
ルフィはなかなかの実力だった。万が一、というのも十分考えられる。
(――ぐふっ、まあいい。とりあえずは休息を取らねば、まともに戦えん。もうじき放送も流れる。フレイザードを探すのはそれからでも遅くなかろう)

行動方針を決め、ピッコロは歩き出す。
どこか休めるところを求めて。その心に憎き仇敵を殺す様を思い浮かべながら。
今回の戦いで『前世の実』の確かな威力もわかった。
世直しマンは自分を凌ぐほどの強敵だったが、『前世の実』を使えば決して勝てない相手ではない。
バッファローマン、イヴという邪魔者がいなければ、世直しマンも殺せていたかもしれない。
……実際のところ、世直しマンとピッコロの力は五分といってしまって問題ないが、ピッコロは確実に自分が上であると信じていた。
『前世の実』が与えてくれた確かな力に、ピッコロの自信は膨れ上がっていたのだ。

次こそは、我に勝利を。次こそは、奴らに死を。
ピッコロは、ふらつく重い足取りで、傷つきながらも笑いながら、夕闇に消えていった――
235崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:11:08 ID:ZBJQbHnn0
ルフィに吹き飛ばされたフレイザードは、まだ生きていた。
が、その身体はところどころに砕け、ひび割れ、意識はなくなっていた。
それでもフレイザードは生きている。
山火事で、ルフィたちやピッコロが死ぬ様を思い浮かべながら。

「ヒャハ…………は、は」

意識を失っているはずのその身で、不気味に笑う。
炎と氷の化け物が、次に目を覚ますのはいつか――


【山形県南部・山中(山火事)/夕方】

【モンキー・D・ルフィ@ONEPIECE】
[状態]:空腹
:わき腹、他数箇所に軽いダメージ、両腕を初め、全身数箇所に火傷
[装備]バッファローマン
[道具]荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、バッファローマンを助ける。
2、下山する。
3、悟空・自分と猿とイヴの仲間・食料を探す。
4、悟空を一発ぶん殴る。

【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:胸に刺し傷の重傷(応急処置済み。血は止まっている)、重度の疲労、世直しマンに背負われている
:貧血
[装備]いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]無し
[思考]1、下山する。
2、トレイン・スヴェン・月との合流。
3、ゲームの破壊。
236崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:11:58 ID:ZBJQbHnn0
【世直しマン@とってもラッキーマン】
[状態]中程度のダメージ、重度の疲労
[装備]:世直しマンの鎧@ラッキーマン、読心マシーン@ラッキーマン、イヴ
[道具]荷物一式
[思考]:1、下山する。
    2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    3、関東方面へ移動。
    4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    5、ゲームから脱出し主催者を倒す。

【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし】
[状態]ダメージ中、重度の疲労
[装備]なし
[道具]荷物一式(食料バナナ一本消費)、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢、エテ吉の焼死体
[思考]:1、下山する。
    2、結局なにもできなかった自分に無力感。
    3、ルキアを守る。
    4、もっと強くなる。
    5、これ以上、誰にも負けない。
    6、ゲームから脱出。

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:弱冠の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式 ・遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]:1、下山する。
    2、黒崎一護、武藤遊戯(カードの使用方法を知る者)を探す。
    3、とりあえず関東方面へ移動。
    4、ゲームから脱出。
237崖っぷちの正義と悪〈後半〉 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/20(月) 22:14:19 ID:ZBJQbHnn0
【山形県南部・山のふもと(東側)/夕方】

【フレイザード@ダイの大冒険】
 [状態]気絶、腹部を中心に身体全体にダメージ大。重度の疲労。成長期。傷は核鉄で常時ヒーリング。
 [装備]霧露乾坤網@封神演義 火竜ヒョウ@封神演義 核鉄LXI@武装錬金、パンツァーファウスト(100mm弾×4)@ドラゴンボール
 [道具]支給品一式 ・遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王 
 [思考]1、気絶中。
    2、体力を回復させる。
    3、隙あらばピッコロを倒す
    4、優勝してバーン様から勝利の栄光を

【山形県南部・山のふもと(南側)/夕方】

【ピッコロ@ドラゴンボール】
 [状態]:重度の疲労、身体全体にダメージ大
 [装備]:なし
 [道具]:荷物一式 前世の実@幽遊白書
 [思考]:1、休息ののち、放送でフレイザードの生死を確認。
       生きているようなら、傷が癒えてから捜索。
     2、世直しマン、バッファローマン、イヴを殺す。
     3、フレイザードを利用してゲームに乗る。とりあえず南下。
     4、残り人数が10人以下になったら同盟解除。悟空を優先。
     5、最終的に主催者を殺す。(フレイザードには秘密)


【バッファローマン@キン肉マン 死亡確認】
【残り82人】

※夕方ごろ(17:30〜18:00の放送直前)山形県南部の山で、大規模な山火事が起こりました。
※ピッコロ、フレイザードは、ルキアとボンチューの存在に気づいていません。
※全員、まだバッファローマンの死には気づいていません。
238心 1/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:17:59 ID:3a4OpEHD0
D・Sは走っていた。
森を抜け、平野を駆け、琵琶湖の湖を通りすぎ、大阪を目指して走っていた。
あの胸に傷を持つ男は追ってきてはいない。少なくとも後方に気配は無い。
(撒いたか……だがちぃっとキツくなってきたな)
あの男、D・Sは名前を知らなかったがケンシロウとの戦いで魔力を大分消耗してしまった。
このままアビゲイルのいるという福井県に向かってもいいが、やはり不安はある。
(今のままじゃ使える呪文は後一、二回ってところか。
 馬鹿ならこのまま突っ込むだろうが、超天才たる俺様は無理せず機を待って休息を取るべきだな)
時間が経てばアビゲイルが移動してしまう恐れもあるが、敵との遭遇を考えると慎重にならざるを得ない。
(ま、俺様が負けるわけはねぇがな。だが呪いがある以上念を入れておくべきってことだ)
大阪には市街地がある。人が訪れる危険性も高いが身を隠すにはうってつけの場所でもある。
そう判断し、D・Sは大阪へと足を踏み入れた。
市街地を進み、潜伏に適した民家を探す。するとほどなく途中で道端にて倒れている女性を発見した。
「フン、死体か?」
何か有用なアイテムでも持っているかと近付き、様子を見てみる。
ザックには武器は何も入っていなかったが女性にはまだ息があった。
D・Sはニヤリ、と笑う。
「くっくっく、どうやら俺様にも運が廻ってきやがったようだな……」
D・Sはその女性、姉崎まもりを抱え上げると近くの民家へと入っていった。


セナがいじめられている
大勢の身体の大きい男達に囲まれ、暴行を加えられている。
男達は下卑た笑みを浮かべ、楽しそうにセナに暴行を加える。
セナは泣きながら助けを求めていた。
その世界に音はない。セナの声も聞こえない。
だがまもりにはハッキリと判った。
『助けて! まもり姉ちゃん!』
セナは自分に助けを求めているのだ。

――助けなきゃ、助けなきゃ、わたしがセナを助けなきゃ!
239心 2/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:18:49 ID:3a4OpEHD0
『セナを! いじめないで!!』
駆け寄ろうとするが、まもりの手足は鎖によって石壁に拘束されていた。
まもりは何とか抜け出そうと身体を捻ったり、鎖を引っ張ったりするが一向に鎖は解けない。
そうこうしているうちに男達は今度は武器を持ち始めた。
金属バットで、バールのようなもので、角材でセナを打ちつける。
セナは血を吐きながら叫んでいた。聞こえはしない。それでも何かを叫びながら手を伸ばした。
『セナをいじめないで!』
まもりは必死に鎖を揺らす。
身をよじり、血が出るほどに手錠を壁に打ち付けても自由になることは出来なかった。
『どうして私には力が無いの? 私はセナを助けなきゃいけないのにどうして!?
 力が欲しい、セナを護る力が。この身体がどうなってもいい。心なんて失ってもいい。
 命だって捨ててもいい。セナを、セナだけを護る力が欲しい……!』

――― セナ! ―――


ハッと、まもりは眼を覚ました。
目の前には銀髪の男がまもりに四つん這いにのしかかっている。
「ハァッハァッハッハ…」
「えっ?」
犬のように舌を出し、よだれを垂らしている男を見てまもりは生理的嫌悪感から悲鳴を上げた。
「きゃぁっ!」
バシーンとこ気味良い音を立ててまもりの平手が決まり、D・Sは頭から民家の床に突っ伏す。
「ぐお、いきなり何しやがる!」
「こっちのセリフです!」
ふと気がつくと自分の制服は前を肌蹴けさせられ、ブラが露わになっている。
(まさか?)
最悪の場合を連想し、慌てて胸を隠しながら身体に異常が無いか調べる。
(ホ、どうやらまだ何もされてないみたい)
安堵し、キッとまもりはD・Sを睨みつける。
「ち、いいところで眼を覚ましやがって……どうせ俺のモンになるってのによ」
立ち上がり、忌々しそうな顔で近付いてくるD・Sにまもりは蒼ざめた。
240心 3/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:19:23 ID:3a4OpEHD0
確かにこれだけの大男相手に抵抗する術は自分には無い。
武器は、と荷物を探そうとしてまもりは少年に全て奪われてしまったことを思い出した。
場所は民家の一室。自分が居るのは部屋の隅にある小さなベッド。
窓はD・Sの後ろ側に一つだけ。入り口は右手側にあるがそこに辿りつくにはD・Sの脇を通らねばならない。
逃げ場が無い。まもりは絶望感に支配される。
(私はここでこの男に弄ばれて、殺されてしまうの?)
身体が恐怖に震えだし、涙が溢れてくる。
(私には何の力も無い。セナを助けたいのに……私には…ッ)
この身体がどうなってもいい、力が欲しい。私には無い力……が……。
ふと気付く。
(この人は、力を持っているのかしら……私には無い力を)
「あの、私は姉崎まもりです。あなたは……なんというのですか?」
突然質問してきたまもりに怪訝な顔をしながらもD・Sは答えた。
「あん? 俺様は魔導王ダーク・シュナイダー様よ。
 いずれ全世界を支配し、全ての女が俺のハーレムに入ることになる。そう、お前もだ…ククク」
「強い……んですか?」
D・Sはそれを聞くと一度俯き、低く笑声を漏らすと徐々に声を高め大笑いした。
「ぎゃーーーはっはっはっはっはっはっは! 俺様が強いかだと!?
 ぶぅわかぁめぇー! この宇宙に俺様より強い奴は存在せん!!
 この超絶美形主人公の大噴火的スーパーウルトラダイナミックわんだふりゃむぁジックに
 かかれば、どんな強大な雑魚だろうと一ミリ秒で消し炭にしてやることができる!!
 そう、首輪さえ外れりゃぁあの主催者どもも俺様の魔力で皆殺しにすることが超、可能!」
いきなり高笑いしながら自賛を始めたD・Sにまもりは全身をドン引きさせていた。
「あ、あの……」
「クックック、あのゴブリンどもめぇ〜〜このダーク・シュナイダー様にこれだけのことしてくれたんだ。
 ただじゃすまさねぇ〜〜、首を刎ねた後串刺しにして口に餡子詰めてやるぞぉ〜〜。
 おやッさん秘伝のタレに漬け込んだ後 弱火で炙りながら
 三人で仲良くだんご三兄弟を合唱させてやるぅ〜〜クックックックックック」

(な、何が何だか良くわからないけれど、とにかく凄い自信だわ……)

ひとしきり哄笑を上げたあとD・Sは自分の世界から戻り、まもりの目の前でニヤリと笑う。
241心 3/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:20:01 ID:3a4OpEHD0
「それで? 俺様の強さを知ってどうしようってんだ?
 ククク、その打算的な眼。このダーク・シュナイダー様を利用する気マンマンてな顔だぜ」
D・Sの指摘に図星をさされ、まもりはグッと言葉に詰まる。
それでもギュッと拳を握り締め、D・Sに対する怖れを振り払って声を絞り出した。
「取引です。私はあなたに弄ばれるくらいならこの場で舌を噛みます。
 でも、私の願いを聞き入れてくれるなら私は……」
言いよどみ、キュッと目を瞑る。しかし決意を胸中で反芻し、言葉を続けた。
(この身体がどうなってもいい、心を失ったっていい、セナを……護るんだから!)
「私は、あなたの物になってもいいです。抵抗も自害もしません。
 私には何の力も無いけれど……いえ、無いからこそ私はあなたの力が欲しい。
 この身を捧げる代わりに、あなたの力を私に下さい」
まもりの決意の瞳をD・Sはニヤニヤしながら見つめる。
「ククク、い〜い眼だ。何が目的かはしらねぇが気に入ったぜ。
 まもりっつったか。……いいだろう、俺様が力を貸してやる。
 気にいらねぇ奴を殺すんだって、人探しだって協力してやる。ここの脱出だってな。
 つーわけで、まずは手付けを頂こうか?」
D・Sはまもりの顎に手をやるとクイっと上に持ち上げた。
これから何をされるのか悟ったまもりはギュッと眼を瞑りその時を待つ。
(セナのために、セナのために、セナのために、セナのために……)
D・Sの顔が近付き、その唇がまもりの唇に触れる―――その瞬間。

ドシュウッ!

突然、D・Sの身体が蒸気とともに発光した。
「え? な、何!?」
「う゛ーーーぞ!? あれってまだ有効だったの? まーじぇー!!?」
まもりは驚き、光と共に縮まっていくD・Sを呆然と見つめていた。

ちょいーーーん

やがて発光が収まり、その場に佇んでいたのは……ぶかぶかのローブに身を沈めた少年だった。
「え? ……え?」
242心 5/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:22:36 ID:3a4OpEHD0
まもりはまだ事態が把握できない。
黒く短い髪に大きくつぶらな黒い瞳。見た目は10歳前後といったところだろうか。
少年は眠そうに目をこすると周りをキョロキョロと見渡した。
まるで今気付いたかのようにまもりの姿を認めると彼は口を開いた。
「ねーヨーコさんはー?」
(ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?)
まもりはまだ事態が把握できなかった。


かつて、ゴーレム・ウォーという大戦争を引き起こし全世界を恐怖に陥れた魔導王ダーク・シュナイダー。
彼は英雄ラーズ王子との戦いにて死亡するが、死の前に古の秘術によって転生を試みたという。
それを察知した大神官ジオはダーク・シュナイダーの転生先を捜し当て、赤子の内に
ダーク・シュナイダーを封印した。
その赤子の成長した姿こそが今まもりの目の前にいる少年、ルーシェ・レンレン(17)である。
美の女神イーノ・マータの力による封印を解くには処女の接吻が必要であり、
また逆に再び封印をする場合にも処女の接吻が必要となる。
D・Sは何度も封印を解かれる内に封印の効力が弱まり、自力で封印を解くことも出来るようになっていた。
ルーシェになることも少なくなり、彼は封印の呪法が処女の接吻であることなど綺麗サッパリ
忘れ去っていたのだった。


しかしそんなことなど何一つ知らないまもりは目の前の事態に困惑していた。
(あのシュナイダーさんは一体何処へ行ってしまったの? この子供は一体何?)
「あ、あのボク? お名前は、なんていうの?」
ルーシェはまもりのほうを不思議そうに見た後、ニッコリと笑って答えた。
「ボクはルーシェ・レンレン。17歳だよ」
(わ、私と同じ年!?)
これにはさすがに驚愕する。
見た目にはどうしても10歳くらいにしか見えない。
何とか事態を把握しようと今度は別の質問を試みる。
「あの、さっきのダーク・シュナイダーさんは何処へ行ったのか知らない?」
ルーシェは俯いてう〜んと唸り、顔を上げるとふるふると首を横に振った。
243心 6/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:25:17 ID:3a4OpEHD0
「そう」
まもりはガックリと項垂れた。
決死の覚悟をして取引をしたのに、これでは何の意味もない。
こうしている間にもセナは危険な目に遭っているかもしれないのに自分にはどうすることもできないのだ。
殺して、殺して、セナの為に殺し続けなければならないのに……!
哀しくなってまもりの瞳から涙が零れ落ちる。すると何処からかしゃくりあげる声が聞こえてきた。
「ヒッ、ヒック……ヒ、ひえ〜〜ん」
顔を上げると目の前でルーシェが顔をくしゃくしゃにして泣いている。
わけがわからず何故泣いているのか尋ねようとした時、ルーシェはまもりに縋り付いてきた。
「ねぇ、何で泣いているの? お腹痛いの? ひっく、ヨーコさんなら治してあげられるんだけど
 ボクは、ひっ、なんにもできないの、ごめんね。ねぇ、泣かないで……」
どうやらまもりが泣いているのを見て貰い泣きしたらしい。
(私を、心配してくれたの?)
それを悟った時、まもりはたまらなくなりルーシェを抱きしめた。
「ごめんね。何でもないの……ごめんね」
この世界に堕とされて初めて向けられた純粋な心にまもりは泣いた。
涙が溢れて止まらなかった。
(……殺す? こんな何も知らない子供も? そんな、そんなこと許されるはずがない)
子供の時のセナが脳裏に浮かぶ。何の打算もなく純粋にまもりを信じきった瞳。
その姿がルーシェ・レンレンに重なる。
(私は全ての罪を受け入れることを覚悟した。セナの為に全ての罰を受け入れることを覚悟した。
 セナに嫌われてもいい。憎まれてもいい。セナが生きていればそれだけで……でも。
 こんな無垢な子供まで殺すなんて……)
それは正に悪魔の所業。
ルーシェによって人の温もりを思い出し、それがどれほど取り返しのつかない事かとてもよく理解できる。
自分は人を幾人も殺し既に、その手は血塗れ、心は冷え切っていた。
その心をルーシェは再び人の温もりで包んでくれたのだ。それはまもりの心をどれだけ救ったことだろう。

(ありがとう、思い出させてくれて)

まもりはルーシェの頬に手を触れ、優しく撫でた。
ルーシェは「んー」と猫のように気持ちよさげに頬をまもりの手にこすりつける。
244心 7/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:26:02 ID:3a4OpEHD0
それをまもりはとても愛しいと感じた。

(るーしぇくんを殺すことはまさに悪魔の仕業……だったら、だったら私は……)

ポロポロとまもりは涙を零す。
ルーシェの頬に触れていた手を徐々に下げ、その首筋に触れる。
(だったら……)
















――――――――――――――――――私は悪魔でいい



両手をルーシェの首にやり、渾身の力を込めて首を絞める。

「けはっ」

「ごめんね」
245心 8/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:26:49 ID:3a4OpEHD0

まもりは謝りながら強く頚動脈を締め付けていく。
ルーシェは一瞬で締め落とされ、気絶した。

「そしてありがとう。一瞬でも人の温もりを思い出させてくれて。
 本当に嬉しかった……でもごめんね」

更に強く、強く、力を込める。
ルーシェの身体がビクンと痙攣する。
それきり、ルーシェは二度と動かなかった。
まもりはルーシェの身体を横たえ、しばらくうずくまっていた。


……そして、フラリと立ち上がるとD・Sの荷物を自分の荷物へと入れて部屋を出た。
後ろは、振り向かなかった。

(セナの為なら、私はなんにでもなる……)
強い決意を胸に再燃させて……彼女は力強く地面を踏みしめた。

【姉崎まもり@アイシールド21】
 [状態]:殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)
     以前よりも強い決意。
 [装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT
 [道具]:アノアロの杖@キン肉マン 高性能時限爆弾
     荷物一式×3、食料四人分(それぞれ食料、水は二日分消費)
 [思考]:1、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
     2、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。

【ダーク・シュナイダー@バスタード 死亡確認】
【残り81人】

※ダーク・シュナイダーはルーシェ・レンレンの姿で死亡しています。
246心 8/8 ◆zOP8kJd6Ys :2006/02/20(月) 22:44:52 ID:3a4OpEHD0
場所書いてなかった……( ´д`)

【大阪・市街地 /夕方】
【姉崎まもり@アイシールド21】
 [状態]:殴打による頭痛、腹痛。右腕関節に痛み。(痛みは大分引いてきている)
     以前よりも強い決意。
 [装備]:装飾銃ハーディス@BLACK CAT アノアロの杖@キン肉マン
 [道具]:高性能時限爆弾
     荷物一式×3、食料四人分(それぞれ食料、水は二日分消費)
 [思考]:1、セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)。
     2、セナ以外の全員を殺害し、最後に自害。
247奸な瞳 ◆Jx3pJVKBwI :2006/02/20(月) 23:55:09 ID:MMT5vmIAO
秋田県の上空を鴉が舞う。
木々の間を潜り抜け、影も舞う
それは影。力を欲する、唯の影―――

雪を被った杉の木々をしならせながら、唯唯南へと跳躍していたソレは
急に着地点を杉の木から地面へと変える

ドゴォォンッ…!!

力が制限されているとはいえ妖怪である飛影の全力の拳だ。
邪炎を纏ったその拳は表面の雪を容易に蒸発させ、むき出しとなった地面には巨大なクレーターが残された
「糞っ…!」
(この程度の力では勝てない…ピッコロにも…幽助にも…)
飛影はその拳が本来の調子ではないことに苛立ちながらも、確実に在る獲物の存在に感謝していた
言葉には出さないまでも、彼らのことを考えている間は忘れられた。あの忌まわしい雪女の事は
「ふん…」

影は多くを語らない。影は多くを想わない。影は多くを望まない。
強ければ戦う。強ければ倒す。強ければ殺す。
微々たる反省と甚大な信念をそのよこしまな眼に宿し、再び影は跳躍した
248奸な瞳 ◆Jx3pJVKBwI :2006/02/20(月) 23:55:56 ID:MMT5vmIAO
あてもなく彷徨う飛影は、いつしか新潟県南部まで足を運んでいた。
(邪眼の能力も制限されてやがる…これではかなり接近してからでないと敵を把握できそうにないな)
幸か不幸か、制限された眼により彼は誰に出会うこともなく南下し続けることになった
「そろそろ放送か…」
飛影は独り、木の上より放送を待つ

【新潟県南部・樹林/夕方】

【飛影@幽遊白書】
 [状態]若干疲労
 [装備]マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
 [道具]荷物一式、燐火円レキ刀@幽遊白書
 [思考]1、強いやつを倒す
    2、幽助と決着を付ける
    3、氷泪石を見つけだす
>>202の部分を修正。

戦場からは少し離れたところ。戦場を見渡しやすい山林の影で、ルキアとボンチューは様子を見ていた。
「あいつか?」
「ああ……確かに私を襲った、炎と氷の化け物だ」
二人は、世直しマンとバッファローマンとの約束どおり、戦闘には手を出さず、ここで傍観することに決めた。
勝負が決するまで顔は出さない。そして、もし万が一二人が敗北したときは――

「……あんま心配すんなよルキア。あの二人は簡単には死なない。言ってただろう?」
「わかっておる。……しかし、彼らは武器も持たずに行ってしまったが、大丈夫なのか?」
ルキアの手元には、戦いの邪魔になるというので置いていかれた、世直しマンとバッファローマンの荷物がある。
死神とて虚との戦いの際は、斬魄刀を用いる。だが、、彼らは丸腰で向かっていった。
「武器ったって、こっちにはろくなもんがねーだろうが。心配しねーでも大丈夫だろ、あの二人なら」
ボンチューの言うとおり、彼らの武器は鍛え抜かれた肉体。武器など不要なのだ。
「……うむ、そうだな。貴様こそ、自分の実力を考えて、ちゃんと自重しておるのだぞ」
「……ああ、わかってらぁ」
ボンチューの言葉は、意外にも素直だった。
攻めるつもりはないが、異形の敵を目の前にし、本当に臆してしまったのだろうか?
と、ルキアは考える。

もちろん、ボンチューは臆してなどいない。
ああいう化け物との戦いなら、既に魔界で体験した。
力関係はともかく、いまさら姿で恐怖を感じることなどありえない。
彼が動かないのは、自分の実力をちゃんと自覚しているから。
あの二人を勝利に導き、ルキアを護るためには、自分は手出ししない。
それがベストだと、わかっているから。

(認めたくなんて……ねぇがな)
ただ見ているだけなのに、否、ただ見ているだけだからこそ、ボンチューは歯痒さを感じた。
>>207の世直しマンとバッファローマンの状態表の部分を修正。

【世直しマン@とってもラッキーマン】
[状態]健康
[装備]:世直しマンの鎧@ラッキーマン     
[道具]荷物一式、読心マシーン@ラッキーマン(全てルキアに預けています)
[思考]:1、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    2、関東方面へ移動。
    3、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    4、ゲームから脱出し主催者を倒す。

【バッファローマン@キン肉マン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式(全てルキアに預けています)
[思考]:1、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    2、関東方面へ移動。
    3、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    4、ゲームから脱出し主催者を倒す。
>>236の世直しマンとルキアの状態表の部分を修正。

【世直しマン@とってもラッキーマン】
[状態]中程度のダメージ、重度の疲労
[装備]:世直しマンの鎧@ラッキーマン、イヴ
[道具]荷物一式、読心マシーン@ラッキーマン
[思考]:1、下山する。
    2、ピッコロ、フレイザードを倒す(ルキア、ボンチューの安全を優先)。
    3、関東方面へ移動。
    4、ラッキーマン、黒崎一護、武藤遊戯を探す。
    5、ゲームから脱出し主催者を倒す。

【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:弱冠の疲労、右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム 残弾21発@City Hunter
[道具]:荷物一式、バッファローマンの荷物一式、遊戯王カード(青眼の白龍・次の0時まで使用不可)@遊戯王
[思考]:1、下山する。
    2、黒崎一護、武藤遊戯(カードの使用方法を知る者)を探す。
    3、とりあえず関東方面へ移動。
    4、ゲームから脱出。
252キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:31:29 ID:aaotP6eU0
「くっそ……マジかよ……」

姉崎まもりのもとを離れたあと、キルアは適当な木陰で休息を取っていた。
本当ならすぐにでもゴンを探しに行きたいのだが、そういうわけにもいかない。
原因は、まもりにくらったナイフの一撃。
ただのナイフではない。0.1mgで鯨でも動けなくするほどの強力な毒が仕込んである、殺人鬼愛用のナイフ。
そのナイフの傷は、キルアの身体に毒を浸透させ、苦しめている。

(はは……なさけねー。オレが毒に苦しむなんて、何年ぶりかな……)
ゾルディック家で一流の暗殺者となるため、キルアが幼少の頃から受けてきた様々な訓練。
中でも、毒や電撃に耐え、耐性を強化する訓練は相当ハードなものだった。
だが、それだけに得たものも大きい。
電撃に耐え切ったおかげで、キルアはオーラを電気に変化させる念能力をマスターし、毒には完璧といえるまでの耐性をつけられた。
そのキルアが、今は毒に苦しんでいる。
中期型ベンズナイフの毒。噂には聞いていたが、これほどまでに強力なものだったとは。

(アホだなオレ……さっさと毒抜きなりなんなりしときゃあよかった)
それは、完璧すぎる毒耐性を過信したがゆえの結果。
キメラアントの毒も全く効果がなかったキルアの身体が、たかが殺人鬼如きが作った毒に苦しめられるとは。
いや、もしかしたら、この苦しみはこの世界にかせられた、変な制限のせいかもしれない。
ここに来て何度か念能力を使ったが、どうにも調子が悪い。
もしや、自分の身体の毒に対する耐性も、念と同じようになにか制限を受けているのだろうか……?
結論は出ないが、今後もあまり過信しすぎることはできないだろう。

(とりあえずなんとかしないと……ん? まてよ……毒……?)
253キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:32:01 ID:aaotP6eU0
そこで、キルアはなにかに気づき、おもむろにデイバックの中をあさり始める。
中から取り出したのは、一丁の銃と弾丸。
先ほど、危険な思考を持つまもりから没収した魔弾銃である。
デザインは変わっているが、それは、たしかに銃と呼べる立派な武器。
毒に苦しみだす少し前、その使い方を確認しているとき、この銃が興味深い効果を持っていることがわかった。

「キアリー……解毒効果のある弾丸ね……」

俄かには信じがたい話だった。人を殺めるために作られたはずの弾丸に、解毒の効果があるなど。
しかし、キルア自身が持つ特殊能力、『念』の存在を考えれば、決してありえない話ではない。
解毒効果のある弾丸を作り出す……具現化系。弾丸に解毒効果を持たせる……強化系。
念能力でも、十分創造できるものだった。

「手持ちの少ない道具で処置するとなると面倒だし……これが一番手っ取り早いか」

自分に銃を向ける、というのは抵抗があったが、これで楽になるなら万々歳だ。
キルアはキアリー弾を込めた魔弾銃を、自分に向ける。
そして、その引き金を――
254キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:32:31 ID:aaotP6eU0
――旦那ぁ、そんな急ぐことねぇんじゃねぇか? せめて傷を治療してからでも……
「なにを言っている飛刀よ。事態は一刻を争うのだ」

適当な川で簡単な傷の洗浄を済ませたラーメンマンは、まだ傷の癒えぬその身体で、走り回っていた。
自分にこれほどまでの深手を追わせた奴……趙公明を野放しにしないためにも、一刻も早く太公望を探さねば。
当てなどなかったが、それでも動かずにはいられない。
こうしている今も、趙公明が新たな者を手にかけているかもしれない。
一刻も早く……一度趙公明を倒したという仙道、太公望を探し出す。
そして、その太公望と協力し趙公明を倒す。
それが、今のラーメンマンの使命。

「……!」
――しかしなぁ旦那。いくらなんでもその傷じゃあ……
「静かに。黙っていろ飛刀」
なにかに気づいたラーメンマンが、小さな声で飛刀の口をふさぐ。

ラーメンマンの視界の先。そこには、木陰に腰掛ける一人の少年。
その手には銃が握られており、その銃口は少年自身の身体に向けられている。
(……まさか!!)
気配を殺していたラーメンマンだったが、少年のその動作を見て、思わず飛び出した。

「待て! はやまるな少年――!!!」

ラーメンマンの制止もむなしく、自分に向けて、少年は引き金を――引いた。
255キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:33:29 ID:aaotP6eU0
木陰の下で、二つの馬鹿笑いが木霊する……

「だははははははははははははっ!!」
――ひゃーひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!!

「……笑ってくれるな少年。飛刀、おまえもだ」

笑っているのは、キルアと飛刀。顔を隠すように背けているのは、ラーメンマン。
話は数分前。
ラーメンマンは、キルアがキアリー弾で毒の治療をしようとしたところを止めようとした。
その光景が――まるで自殺を謀ろうとしているように見えたから。

キルアと飛刀は、そのラーメンマンの勘違いに、爆笑していたのだ。
しかし、ラーメンマンの勘違いも当然といえば当然。
見た目は普通な少年が、殺人ゲームの舞台で、自分に銃口を向けているのだ。
なにをしようかなど、明白ではないか。
それでも勘違いは勘違い。ラーメンマンは恥ずかしい気持ちでいたたまれなかった。

「しかし、毒を治療する弾丸とは。なんとも摩訶不思議なものが支給されているのだな」
「オレはおっさんの持ってるその刀のほうが摩訶不思議だと思うけど」
「ふむ。確かにそうだな」
――おいおい旦那、そりゃあねえだろ。

自殺をしようとしていると勘違いをし、わざわざそれを止めに入ったラーメンマン。
そのことだけで、ラーメンマンがキルアに敵意を持っていないのは明白だった。
256キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:35:54 ID:aaotP6eU0
その後、それぞれを敵ではないと認識した両者は、情報交換に躍り出ることにした。
それぞれがゲームに乗っていないことの確認。それぞれの当面の目的の確認。
キルアは友を、ラーメンマンは仲間と姿も知らぬ参加者を探しているという。

「太公望? おっさん、太公望を探してるのか?」
「知っているのか!?」
運のいいことに、キルアはラーメンマンの探し人、太公望と面識があった。
そしてさらに運のいいことに、彼が今どこにいるのかも知っているという。

「太公望なら、四国に渡るとか言ってたぜ。あとそうだな……人外語を話せる奴を探して欲しいとかいってたな」
「四国……それに人外語とな……」
キルアとラーメンマンの視線が一瞬、喋る刀に向く。

――おい、言っておくが俺は獣の言葉なんてわかんねぇぞ!?

とにもかくにも、太公望は四国にいるという。
ならばラーメンマンの行動方針は決まった。明確な目的地を定めたいま、一刻も早くここを発たねば。

「おっさんが西へ行くなら、オレは東の方を探してみようかな」
「一人で大丈夫か? なんならこの飛刀を渡してもいいが……」
――じょ、冗談だろ旦那ぁ!?

今さらラーメンマンのもとを離れるのは嫌だという飛刀。
そんな飛刀を尻目に、キルアは素っ気ない言葉を返した。

「別にいいよ。荷物は少ないほうが動きやすいしさ。それに」

その瞬間。
一瞬、キルアが消えた。
257キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:37:55 ID:aaotP6eU0
「オレ、おっさんが心配するほど弱くないぜ?」
「――!!」
消えたと思ったキルアは、一瞬でラーメンマンの背後に移動していた。
瞬時に後ろを取られ、ラーメンマンが反応して振り向くが……

「つーわけで、飛刀だっけ。それいらないから」
「そ、そうか」
気のせいだろうか。
この少年……キルアから、一瞬嫌な寒気を感じたのは。

「おっさんの仲間、正義超人だっけ? 額に文字の入った奴と、牛の角を生やした大男と、黒尽くめの無愛想な奴ね。遭ったらおっさんのこと伝えとくよ」
「よろしく頼む。キルアの友達の名はゴンだったな。私も見かけたら伝えておこう」
「おっけー。お互い、探し人が見つかるといいね。んじゃ」
もう用はないといった感じに、キルアはそっけなくその場を去っていった。
友人、ゴンを探すため東へ――


「……」
キルアがすんなり立ち去ったあと、ラーメンマンはしばしその場を動けなかった。
思うは、さっきの一連の出来事。

(深手を負っている身とはいえ、この私がああも容易く背後を取られるとは……)
キルアが只者ではないことは、あの一瞬でわかった。
いや、今はそんなことよりも。

(もし、彼に殺意があったら……殺されていた)
ラーメンマンは、キルアが元暗殺者であることなど知らない。
だから、キルアがそんなことをするはずはないとは思っていたが……
もし、あれがキルアではなく趙公明のような、『ゲームに乗った者』であったならばどうか。
258キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:38:31 ID:aaotP6eU0
――旦那? おーい旦那。なに考え込んでんだよ? 居場所がわかったんならさっさと行こうぜ。
「……ああ、そうだな。時は一刻を争う」

飛刀に急かされ、ラーメンマンは再び動き出す。
太公望を探すため、四国へ向けて。
そう、時は一刻を争うのだ。
一秒たりとも、趙公明を野放しにしておくわけにはいかない。

(……だが、私自身はどうだ? このままで、本当にいいのか?)
ラーメンマンは、趙公明に負けた。
それでもなんとか生きながらえ、今度は一度趙公明を倒したという、太公望を頼ろうとしている。
傷だらけの身体を引きずりながら。
相手に殺意がなかったとはいえ、安々背後を取られるような身で。

(もしまた、趙公明ほどの実力者に遭遇したらどうなる? 私は……戦えるか?)
おそらく、無理だ。この身体では、瞬殺されるのがオチ。
それをわかってはいるが、趙公明のことを考えれば、休んでいる暇などない。

(ならば……趙公明ほどの実力者が、弱者を襲っている場面に遭遇したら?)
正義超人としては、見過ごせないシチュエーション。
だが、もし今そんな場面に遭遇したら、助けることなどできないだろう。

(私自身……もっと強くならねばだめということか)
自力で、趙公明に勝てるような力を――
259キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:39:12 ID:aaotP6eU0
ラーメンマンと分かれたキルアは、一人東へ向かっていた。

(しかしすげーなあの弾丸。毒があっという間に消えちまったよ)
もはやその身体にベンズナイフの毒は残っておらず、足取りは軽い。

そして、歩きながら考えるは、先ほどであったラーメンマンのこと。
(それにしても、正義超人ねぇ……そんな正義の味方みたいなのまでいるのか)
キン肉マンにバッファローマン、ウォーズマン、そしてラーメンマン。
ラーメンマンの話では、いずれも相当の実力者だという。

(参加者は愛染みたいな奴ばっかじゃないってことか)
正義超人。もし主催者達との戦いになれば、彼らも重要な戦力になるかもしれない。
全員が本当にラーメンマンと同じ思想かはわからないが、なんにしても味方が多いのはいいことだ。

(ゴンのやつも……正義超人みたいな考えの奴と一緒ならいいんだけど。なんとなく気が合いそうだし)
弱者を見過ごせないところなどそっくりだ。

ラーメンマンとの出会いは、キルアにちょっとした希望を持たせた。
愛染、大蛇丸、まもり。このゲームには、ああいう危険人物ばかりではないのだと。
260キルアとラーメンマンと飛刀と ◆kOZX7S8gY. :2006/02/21(火) 19:40:07 ID:aaotP6eU0
【大阪/午後】

【ラーメンマン@キン肉マン】
 [状態]:左腕裂傷 後背部打撲 重度の疲労
 [装備]:飛刀@封神演義
 [道具]:荷物一式・髪飾りの欠片(※)
 [思考]:1.四国へ向かい、太公望を探す。
     2.ゴンを見かけたら、キルアのことを伝える。
     3.弱き者を助ける。(危害を加える者、殺人者に対しては容赦しない)
     4.3を実行するため、力を求める。
     5.正義超人を探す。
     6.ゲームの破壊。
※神楽の髪飾りの欠片を持っている理由は以下の通り。
  ・形見として少女の仲間、家族に届けるため
  ・殺人犯を見つける手がかりにするため


【キルア@HUNTER×HUNTER】
 [状態]:少々のダメージ、イルミの呪縛から解放(恐怖心がなくなり戦闘力若干アップ )(頭部の血は止まりました)
 [装備]:なし
 [道具]:爆砕符×3@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、
     クライスト@BLACK CAT、魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×1 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1
     焦げた首輪、荷物一式 (食料1/8消費)
 [思考]:1、東の方でゴンを探す。
     2、太公望、正義超人を見かけたら、ラーメンマンのことを伝える。
     3、人殺しはしない。ただし、明らかな敵対心を持つ者にはそれなりに対応。
>>260
キルアの状態表を修正。

【キルア@HUNTER×HUNTER】
 [状態]:少々のダメージ、イルミの呪縛から解放(恐怖心がなくなり戦闘力若干アップ )(頭部の血は止まりました)
 [装備]:なし
 [道具]:爆砕符×3@NARUTO、魔弾銃@ダイの大冒険、中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、
     クライスト@BLACK CAT、魔弾銃専用の弾丸@ダイの大冒険:空の魔弾×7 ヒャダルコ×2 ベホイミ×1
     焦げた首輪、荷物一式 (食料1/8消費)
 [思考]:1、東の方でゴンを探す。
     2、太公望、正義超人を見かけたら、ラーメンマンのことを伝える。
     3、人殺しはしない。ただし、明らかな敵対心を持つ者にはそれなりに対応。
262言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:28:57 ID:QQiSyDcP0
(…あまりに深く眠っていたのか…)

 愕然とした思いと共に、夢から覚めたのは、男、藍染惣右介。既に、陽は傾き初め、辺りを鮮血のような緋へと
染め上げている。この遊戯に相応しい、美しい光景だ、と、しばし藍染は魅入りそうになる…が。

 覚醒した藍染が真っ先に行った行動は、時計を確かめることではない。辺りを警戒することでもない。
真っ先に行ったのは、自分の斬魄刀の検分。何故なら。自分の能力、完全催眠は、斬魄刀が解放されているときしか
効力を発しないため。そして、危惧通り、自分の刀は既に解放状態を保っていなかった。

(制限か…少し甘く見ていたようだな)

 次に行ったこと。それは、自分の首輪を確かめること。主催者がもし、監視していたとしたら、確実に完全催眠は効力を
発揮したはず。そして、自分の気絶と同時に、完全催眠の効果は解ける…つまり、主催者を謀にかけようとしたことが、
図らずとも露見してしまったことになる。ならば、制裁があるのでは…と考えた上での行動。

 だが、首輪は未だ、藍染の首筋に冷たい感触を伝えるだけで、何の異常も発してはいなかった。

(この制限下では、少し計画を見直す必要があるな…)
263言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:30:59 ID:QQiSyDcP0

 藍染の計画では、自身の斬魄刀、鏡花水月が大きな役割を果たしている。しかし、この忌々しい制限というもの。
これがあるために、この時点で、今までの計画は練り直ねばなるまい。僥倖なコトに、太公望に鏡花水月を見せることには
成功した。つまり、今後、太公望は自分が鏡花水月を解放するだけで、好きなとき、望むものを、如何様にでも誤認させることが出来る。

(その、解放が難点だな…。この舞台、現在の私の体調では、解放状態を持続させうるのは、精々数秒が限度…しかも、数秒も解放すれば、
 確実に私が行動不能に陥る。卍解は論外。恐らく、解放と同時に衰弱して死ぬだろう。まぁ、数秒もあれば、充分にコトは足りるが…)

 あの時太公望を殺さなかった理由は、鏡花水月の支配下に彼を置くため、ただそれだけ。殺そうと思えば、態々斬魄刀を解放せずとも
一瞬で首を刎ねればよかっただけのこと。それだけの実力差は、ある。そう、藍染は踏んでいる。

 厄介なのは、太公望自身よりも、彼の人望。そして、仲間。太公望自身の戦闘力ではなく、彼によって統率された戦力。ならば、
太公望自身を支配することによって、それら全てを有効活用できる…そう予測していたのだが。

(今、私は生きている…ならば、体力を回復させることが最優先だな)

 まずはそこから。そう結論付けると、藍染は静かにその場を後にした。瞬歩ではなく、歩いて、だが。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
264言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:31:56 ID:QQiSyDcP0

「ユウギ〜ん。どこよぉ〜?(半泣き)」(ひっそり)

 陽も暮れ始めている大阪の街。独り、消沈して歩くは、女性、弥海砂。
その背に「ショボーン」という擬音を負っているかのように見えるのは、決して気のせいではあるまい。
…有り体に言うならば、ションボリ…というか、ポツネン…というか、そのような形容が誂えたかのように似合うだろう。

 月のために。月の役に立つために。そのための力を手に入れるために。
ただ、それだけの願いを胸に、今にも折れそうな心と、棒になってしまった足を引き摺りながら大阪の街を彷徨うものの、既に居ない人物が見つかるわけも無く。

「ユウギ〜ん、どこ〜?」

 ただただ、弥は歩き続ける。若干の苛立ちと、多くの惨めさと、溢れんばかりの月への愛を共にして。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
265言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:32:42 ID:QQiSyDcP0

 (ふむ…狛村君は、もしかしたら、このリカントという種族なのではないかな?)
 今、藍染が居るのは、裏路地にある、寂れた眼鏡屋。先の惨劇の場所から、程よく距離をおいた地点。
そこで、体力の回復を図ると同時に、自分の支給品、アバンの書を読み込んでいた。その姿、まさに貪るように。

 現在、彼の髪型はオールバックではない。先程、気を失っている間に、乱れてしまったから。
 現在、彼は眼鏡をかけている。それは、丁度、書籍を読み込む用があったのに加え、そこが眼鏡屋であったから。
 つまり、現在の彼は、護廷十三隊、五番隊隊長であったときの姿。

 (剣八あたりは何人か斬ったのか…未だ、放送では名前を呼ばれては居ないが)

 去来するのは、かつての同僚の姿。ただ、そこには何の感慨も無い。

 (しかし、読み込めば読み込むほど、この書籍は興味深い…涅あたりは泣いて喜ぶだろうな…)

 (この「どたまかなづち」という武器…一体何を考えて作られたものなのか…斬魄刀を解放して、こんな姿になったら、自殺ものだな…
  吉良君あたりには似合いそうな気もするが。卍解、土下座王侘助…といった名前だろうか…?)

 (ふむ…この魔法の聖水といったものを使うと、魔力を回復することが出来るのか…便利だな
  技術開発室の連中も、このようなものを作ってくれたら、随分助かったのだが)

 (いや、この遊戯は実に素晴らしいよ、実に)

 時折、短く論評を加えながら、鋭い瞳でページを繰る藍染。その姿は、端からみると―――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
266言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:33:45 ID:QQiSyDcP0

 (何アレ…?お忍びの○流スターがカタログショッピングでもしてるの?)

 先に、相手の姿を見つけたのは、信じられないことに、海砂。制限、負傷、疲労…そして、アバンの書への果てることなき興味。
そして、一般人に過ぎない、それ故に何の威圧感も力も持ち合わせない海砂。それらが合わさって起こった遭遇。
だが、一見穏やかそうな風貌の藍染は、海砂の警戒心をそこまで呼び起こすことは無かった。

(いつでも逃げられるように、距離を置いて…と。ユーギんのことを知っているのか聞いてみよう〜っと)

 空元気を振り絞り。女優仕込の営業スマイルを疲れ果てた貌に貼り付けて。そこで、藍染がユウギ、と呟いたのを耳にする。
実際はまったく別の文脈で紡がれた言葉なのだが、それを吟味する余裕は今の海砂には無く―――

「お 前 か ! ! !」

 それが、彼らの最初の邂逅。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
267言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:34:20 ID:QQiSyDcP0

「おや、可愛らしいお嬢さんだね。私の名は藍染惣右介。君の名前を教えてくれないか?」
「藍染…?ユウギんじゃないの?て、全然違〜うっ!!」
「質問に質問を返すのはあまり感心しないね。…おっと、君の支給品と能力も教えて欲しいけど、いいかな?」

 二人の会話の糸口はこう。藍染が聞き出したのは、弥海砂の名前、体力を回復させるという、支給品、核鉄。
彼女の出身。そして、弥海砂がどれだけ青年、夜神月を崇拝しているのかということ。実際はアレだが。

 藍染は考える。この娘はどことなく、自分の副官であった少女に似ている、と。ならば、操りやすいことこの上ない。
修正を迫られていた計画、この駒を存分に利用させてもらおうではないか、と。

「唐突で悪いが、弥君はこのゲームから脱出する方法に興味は無いかな?」

 藍染は語りかける。あくまで、紳士的に。

「だっしゅつぅ〜?!そんなこと出来るの?!」

 海砂は、明らかな疑いを面に出して。それは、藍染の予想のうち。その中でも、最上級の反応。

「あぁ…見てごらん」

 徐に刀を持ち上げると、それで手近な壁を突く。と。

「…―――ウソ―――」

 音も無く、壁が崩れ。見慣れた、日常の光景がその場に広がった。一瞬の間、だが。
そのまま、藍染が崩折れるかのように膝をつく。…鏡花水月を使った反動で。
268言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:34:53 ID:QQiSyDcP0
「え、閉じちゃった?!なんで?!」

 鏡花水月を維持できるのは長くは無い。必要最小限の解放で、目の前の少女に希望を与える、というのが藍染の計画。
百万言の言葉を弄するよりも、実際に現世の幻覚を見せることで、彼女の信頼を獲得する。

「…恥ずかしい話だが、今の私はかなり疲れていてね…これだけ維持するので精一杯なんだ…
 太公望という者との戦闘など、様々なことがあってね…だが、心配することはない」

 いつの間にか、藍染は跪いた姿勢から立ち上がり、海砂の目前に移動していた。
壊れ物を扱うかのように、海砂の頭に手を置くと、続ける。

「だから、少し、その核鉄というものを貸してくれないか?それで傷を癒したいんだ…そうして、出来る限りの人を連れて、
 この遊戯から脱出をしよう。勿論、弥君の大切な人も一緒に…」

 歌うように、染み込むように。藍染の言葉は海砂の脳裏を侵していく…

「だから、キミは、少し休んでから、出来るだけ多くの人を連れて、琵琶湖に向ってくれたまえ」

 その言葉に、真実はどれだけあるのか…?

(脱出…できる?月と一緒に?それなら力なんてなくてもいい?帰れれば、デスノートであのオバケもやっつけられる?)

 もはや、海砂に抗う気は微塵も無く。疑いは砂塵のように流れ去り―

流れた疑いの後には、ただ虚偽のみが拡がる。
269言葉は流れ、 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:36:38 ID:QQiSyDcP0

【大阪府市街地/1日目・夕方】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:周囲を警戒しつつ睡眠。わき腹に軽い負傷・骨一本にひび・中〜重度の疲労、MP極少量。(盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ 核鉄XLIV(44)@武装練金
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2 フリーザ様推奨極上たこ焼き三箱
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手を求めている。
   4 計画の実行

【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]重度の疲労
 [装備] なし
 [道具]荷物一式
 [思考]1:琵琶湖へ人を集める。ただし、夜神月が最優先。
 2:夜神月と合流
 3:夜神月の望むように行動
270269の状態表修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/21(火) 23:39:59 ID:QQiSyDcP0

【大阪府市街地/1日目・夕方】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:周囲を警戒しつつ睡眠。わき腹に軽い負傷・骨一本にひび・中〜重度の疲労、MP極少量。(盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ 核鉄XLIV(44)@武装練金
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手を求めている。
   4 計画の実行

【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]重度の疲労
 [装備] なし
 [道具]荷物一式
 [思考]1:琵琶湖へ人を集める。ただし、夜神月が最優先。
 2:夜神月と合流
 3:夜神月の望むように行動
271”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:19:24 ID:2v7beXaV0
(…気を、失っていたのか…)

 愕然とした思いと共に、夢から覚めたのは、男、藍染惣右介。既に、陽は傾き初め、辺りを鮮血のような緋へと
染め上げている。この遊戯に相応しい、美しい光景だ、と、しばし藍染は魅入りそうになる…が。

 覚醒した藍染が真っ先に行った行動は、時計を確かめることではない。辺りを警戒することでもない。
真っ先に行ったのは、自分の斬魄刀の検分。何故なら。自分の能力、完全催眠は、斬魄刀が解放されているときしか
効力を発しないため。そして、危惧通り、自分の刀は既に解放状態を保っていなかった。

(制限か…少し甘く見ていたようだな)

 まさか、ここまで制限というものが厳しいとは考えていなかった。今まで、自分が斬魄刀を使用してきた経験から、
発動に体力は消費しても、維持にまで、体力を消費し続けるとは予想外だ。予定外の熟睡、そして。

 次に行ったこと。それは、自分の首輪を確かめること。主催者がもし、監視していたとしたら、確実に完全催眠は効力を
発揮したはず。そして、自分の気絶と同時に、完全催眠の効果は解ける…つまり、主催者を謀にかけようとしたことが、
図らずも、それが露見してしまったことになる。ならば、制裁があるのでは…と考えた上での行動。
解放が解けるという事態、今までは露ほども思わなかった危機に、知らず冷たい汗が背中を流れる。

 だが、首輪は未だ、藍染の首筋に冷たい感触を伝えるだけで、何の異常も発してはいなかった。

(この制限下では、少し計画を見直す必要があるな…)

 藍染の計画では、自身の斬魄刀、鏡花水月が大きな役割を果たしている。しかし、この忌々しい制限というもの。
これがあるために、この時点で、今までの計画は練り直ねばなるまい。僥倖なコトに、太公望に鏡花水月を見せることには
成功した。つまり、今後、太公望は自分が鏡花水月を解放するだけで、好きなとき、望むものを、如何様にでも誤認させることが出来る。

(その、解放が難点だな…。先程の状態でも、これだけの疲労…この舞台、現在の私の体調では、解放状態を持続させうるのは、精々数秒が限度だな。
 しかも、数秒も解放すれば、確実に私が行動不能に陥る。卍解は論外。恐らく、解放と同時に衰弱して死ぬだろう。まぁ、数秒もあれば、充分にコトは足りるが…)
272”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:20:27 ID:2v7beXaV0
 あの時太公望を殺さなかった理由は、鏡花水月の支配下に彼を置くため、ただそれだけ。殺そうと思えば、態々斬魄刀を解放せずとも
一瞬で首を刎ねればよかっただけのこと。それだけの実力差は、ある。そう、藍染は踏んでいる。

 厄介なのは、太公望自身よりも、彼の人望。そして、仲間。太公望自身の戦闘力ではなく、彼によって統率された戦力。ならば、
太公望自身を支配することによって、それら全てを有効活用できる…そう予測していたのだが。

(今、私は生きている…ならば、琵琶湖での計画を実現させることが最優先か)

 まずはそこから。そう結論付けると、藍染は静かにその場を後にした。瞬歩ではなく、歩いて、だが。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ユウギ〜ん。どこよぉ〜?(半泣き)」(ひっそり)

 陽も暮れ始めている大阪の街。独り、消沈して歩くは、女性、弥海砂。
その背に「ショボーン」という擬音を負っているかのように見えるのは、決して気のせいではあるまい。
…有り体に言うならば、ションボリ…というか、ポツネン…というか、そのような形容が誂えたかのように似合うだろう。

 月のために。月の役に立つために。そのための力を手に入れるために。
ただ、それだけの願いを胸に、今にも折れそうな心と、棒になってしまった足を引き摺りながら大阪の街を彷徨うものの、既に居ない人物が見つかるわけも無く。

「ユウギ〜ん、どこ〜?」

 ただただ、弥は歩き続ける。若干の苛立ちと、多くの惨めさと、溢れんばかりの月への愛を共にして。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
273”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:23:55 ID:2v7beXaV0

 (ふむ…狛村君は、もしかしたら、このリカントという種族なのではないかな?)
 今、藍染が居るのは、裏路地にある、寂れた眼鏡屋。先の惨劇の場所から、程よく距離をおいた地点。
そこで、体力の回復を図ると同時に、自分の支給品、アバンの書を読み込んでいた。その姿、まさに貪るように。

 現在、彼の髪型はオールバックではない。先程、気を失っている間に、乱れてしまったから。
 現在、彼は眼鏡をかけている。それは、丁度、書籍を読み込む用があったのに加え、そこが眼鏡屋であったから。
 つまり、現在の彼は、護廷十三隊、五番隊隊長であったときの姿。

 (剣八あたりは何人か斬ったのか…未だ、放送では名前を呼ばれては居ないが)

 去来するのは、かつての同僚の姿。ただ、そこには何の感慨も無い。
ただ、この書物を読んで、徒然なるままに連想されてくるものが脳裏をよぎる…というだけのこと

 (しかし、読み込めば読み込むほど、この書籍は興味深い…涅あたりは泣いて喜ぶだろうな…)

 (この「どたまかなづち」という武器…一体何を考えて作られたものなのか…斬魄刀を解放して、こんな姿になったら、自殺ものだな…
  吉良君あたりには似合いそうな気もするが。卍解、土下座王侘助…といった名前だろうか…?)

 (ふむ…この魔法の聖水といったものを使うと、魔力を回復することが出来るのか…便利だな
  技術開発室の連中も、このようなものを作ってくれたら、随分助かったのだが)

 (いや、この遊戯は実に素晴らしいよ、実に)

 時折、短く論評を加えながら、鋭い瞳でページを繰る藍染。その姿は、端からみると―――

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
274”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:25:47 ID:2v7beXaV0
 (何アレ…?お忍びの○流スターがカタログショッピングでもしてるの?)

 先に、相手の姿を見つけたのは、信じられないことに、海砂。制限、負傷、疲労…そして、アバンの書への果てることなき興味。
そして、一般人に過ぎない、それ故に何の威圧感も力も持ち合わせない海砂。それらが合わさって起こった遭遇。
だが、一見穏やかそうな風貌の藍染は、海砂の警戒心をそこまで呼び起こすことは無かった。

(いつでも逃げられるように、距離を置いて…と。ユーギんのことを知っているのか聞いてみよう〜っと)

 空元気を振り絞り。女優仕込の営業スマイルを疲れ果てた貌に貼り付けて。そこで、藍染がユウギ、らしき言葉を呟いた。
実際はまったく別の文脈で紡がれた言葉なのだが、それを吟味する余裕は今の海砂には無く―――

「ユウギんのこと知ってるの?!」

 それが、彼らの最初の邂逅。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おや、可愛らしいお嬢さんだね。残念ながら、そのユウギンという名は知らないが…。私の名は藍染惣右介。君の名前を教えてくれないか?」
「知らない?本当?て、今、確かにユウギっていったじゃない!!」
「質問に質問を返すのはあまり感心しないね。今は、この殺人遊戯とやらを考察していたから…それを耳に挟んだのかな?
 …おっと、君の支給品と能力も教えて欲しいけど、いいかい?」

 二人の会話の糸口はこう。藍染が聞き出したのは、弥海砂の名前、傷を癒してくれるという、支給品、核鉄。
彼女の出身。そして、弥海砂がどれだけ青年、夜神月を崇拝しているのかということ。実際はアレだが。

 藍染は考える。盲目的なまでの崇拝。この娘はどことなく、自分の副官であった少女に似ている、と。ならば、操りやすいことこの上ない。
修正を迫られていた計画、この駒を存分に利用させてもらおうではないか。

「唐突で悪いが、弥君はこのゲームから脱出する方法に興味は無いかな?」
 藍染は語りかける。あくまで、紳士的に。

「だっしゅつぅ〜?!そんなこと出来るの?!」
 海砂は、明らかな疑いを面に出して。それは、藍染の予想のうち。その中でも、最上級の反応。
275”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:27:15 ID:2v7beXaV0
「あぁ…見てごらん」

 徐に刀を持ち上げると、それで手近な壁を突く。と。

「…―――ウソ―――」

 音も無く、壁が崩れ。見慣れた、日常の光景がその場に広がった。一瞬の間、だが。
海砂の網膜には、懐かしい現代の町並みと雑踏が確かに焼き付けられ…そして、その映像は消失する。まるで、スクリーンに映る残像のように。
見ると、藍染が崩折れるかのように膝をついていた。…鏡花水月を使った反動で。

「え、閉じちゃった?!なんで?!」

 鏡花水月を維持できるのは長くは無い。必要最小限の解放で、目の前の少女に希望を与える、というのが藍染の計画。
百万言の言葉を弄するよりも、一瞬であろうと実際に現世の幻覚を見せることで、彼女の信頼を獲得する。
必要なのは、ただ、平和な世界を見たという感覚、ただそれだけ。故に、細かい判別をさせる必要は無く、幻覚は一瞬。
何より必要なのは、(例え、幻覚であろうと)その目で脱出方法を目撃した人間が居ること。それにより、この少女から脱出の計画を
聞いたものも、確かな希望を抱いて琵琶湖に来るだろう。太公望に、脱出を目論む輩にどれだけのカリスマがあろうとも。
確かな希望、現実の力は、何より、強い。ならば、太公望に劣らぬ信頼を築きあげることも、充分に可能。それを使い、太公望のカリスマに打撃を与えることも。
現状を鑑みた上での布石の一手。体力の消費以上の効果は、十二分に見込むことが出来るだろう。

「…恥ずかしい話だが、今の私はかなり疲れていてね…これだけ維持するので精一杯なんだ…
 太公望という者との戦闘など、様々なことがあってね…だが、心配することはない」
276”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:28:29 ID:2v7beXaV0
 いつの間にか、藍染は跪いた姿勢から立ち上がり、海砂の目前に移動していた。
壊れ物を扱うかのように、海砂の頭に手を置くと、続ける。

「だから、少し、その核鉄というものを貸してくれないか?それで傷を癒したいんだ…そうして、出来る限りの人を連れて、
 この遊戯から脱出をしよう。勿論、弥君の大切な人も一緒に…」

 歌うように、染み込むように。藍染の言葉は海砂の脳裏を侵していく…

「だから、キミは、少し休んでから、出来るだけ多くの人を連れて、琵琶湖に向ってくれたまえ」

 その言葉に、真実はどれだけあるのか…?

(脱出…できる?月と一緒に?それなら力なんてなくてもいい?帰れれば、デスノートであのオバケもやっつけられる?)

 もはや、海砂に抗う気は微塵も無く。疑いは砂塵のように流れ去り―

流れた疑いの後には、ただ虚偽のみが拡がる。
277”言葉は流れ、”修正 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 01:29:26 ID:2v7beXaV0
【大阪府市街地/1日目・夕方】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:わき腹に軽い負傷・骨一本にひび・中〜重度の疲労、MP極少量。(盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ 核鉄XLIV(44)@武装練金
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手を求めている。
   4 計画の実行

【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]重度の疲労
 [装備] なし
 [道具]荷物一式
 [思考]1:琵琶湖へ人を集める。ただし、夜神月が最優先。
 2:夜神月と合流
 3:夜神月の望むように行動
278 ◆HKNE1iTG9I :2006/02/22(水) 02:18:10 ID:2v7beXaV0
262〜277までは無効です
279流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 19:55:58 ID:moxDAneg0
「(あの流れからいえばここら辺りに流れ着いてもおかしくはないはずだが…)」

ウェイバーに跨り、海岸線沿いに走行する太公望。
ここは三重県のとある海水浴場。太公望は富樫の死に大きなショックを受けていたが
心身とも疲れ果てた体にムチを入れ、この海水浴場にきていた。
そこまでしてこの浜辺を目指した理由は…

「(船は先程確認した。ならばここにわしの荷物も流れ着いているはず…)」

そう、この浜辺に来た理由、それは荷物を探すためだった。
正確に言えば、その中に入っている、トランシーバーを探しに来たのだ。
あのトランシーバーは防水加工使用の優れ物だったが、この急な潮流に流され、長時間水に浸かっているとなれば話は別だ。
長時間水に浸かっていては、所詮機械。漏電を起こして使用不可になってもおかしくはない。
少しでも水に浸かっている時間を少なくするため、急いでここを目指したのだ。

「(あれがなくとも計画を少し下方修正するだけで済む。だが、皆にいらぬ心配をかけてしまう)」

自分達の身の安否を心配しているだろう竜吉公主たちの姿が脳裏に過ぎる。
ともかくトランシーバーが無ければ話が続かない。
いざ自分のバッグを求めてひたすら海岸線を走る。数多ある流木を避けながら。

「…!」

太公望の瞳に映るのは、今では懐かしくすら思える、自分のデイバック。
肩に下げている亡き富樫のデイバックと何一つ変わらないはずなのに、同じ物とは思えない錯覚を覚えるくらいである。
デイバックに近づくと太公望はウェイバーの速度を減速し、降りると駆け足で半開きのバッグを海から引き上げる。

「食料は流されたようだが…トランシーバーは残っておる。三つとも無事使用出来れば言う事無しなのだが…」

早速トランシーバーを取り出し、水を切る太公望。
出来るだけ優しく水を切り、まだ少しだけ湿っている自分の衣服でトランシーバーを拭くと
一つずつ電源を入れ、ダイとの交信を試みる。
280流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 19:57:25 ID:moxDAneg0
「…駄目か、電源すら入らん。次を…」

大方予想していたのだが、やはり目の前で望んではいない結果を突きつけられると少々辛い。
沈む気持ちを払拭するかのように二つ目のトランシーバーを手に取り、スイッチを入れる。
今度のトランシーバーは電源が入るものの、肝心の通信機能が破損しており、結局は使えなかった。

「むう…これで最後か…頼む…!」

神様仏様元始天尊様!
正に神頼みの胸中で電源を入れる太公望。消え入りそうな細い指に強い想いとなけなしの力を込め。


…………………………………


「駄目か…」

落胆の想いを顔には出さなかったが明らかに声は沈んでいた。
目標の物は手に入れたが目的は果たせず。正に本末転倒である。
しばしの間太公望は呆けていたがここは浜辺。視界が開けた場所であるため非常に危険だ。
気持ちを切り替えるようにトランシーバーをバッグに戻し、それをウェイバーに積むと
ウェイバーごとホイホイカプセルに収容し、近場のシャワー室に駆け込んだ。
ここなら容易に見つかることは無い。

「これで定時連絡は無理…ならばダイ達から連絡用の鳥類が送られてくるはず」

太公望は不慮の事態、主に連絡の要であるトランシーバーが使えなくなった場合を想定してダイ達に指示を与えていた。
放送の2時間前まで定時連絡が無かった場合、ターちゃんに頼んで鳥類を太公望に飛ばす手筈になっているのだ。
トランシーバーに比べて情報伝達の速度はどうしても低下してしまうが、連絡を取れないよりはマシである。
281流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 19:58:07 ID:moxDAneg0
「しかし…公主たちにはいらぬ心配をかけてしまうのう…」

太公望が懸念するのは、自分達が不慮の事態に見舞われたことを知ったダイ達が太公望達を助けようとして
四国を飛び出そうとするかもしれないということ。
純粋な心を持つターちゃんやダイのことだ、仲間の身に危険が襲い掛かろうとしていることを知れば
命に代えても助け出そうとするはず。むやみに動けば彼らの命も危ない。時が来るまで四国に留まっていて欲しい。
冷静沈着な竜吉公主なら自分の意図を汲んでダイとターちゃんを諭してくれるはず。
しかしそれでも竜吉公主にも要らぬ心配をかけてしまうことは否めない。

「とにかく、伝書鳩さえ届けば”わしら”の無事は伝えられる…」

太公望と富樫の馬鹿コンビは無事である。太公望はそう伝えるつもりである。
嘘をついてもあと数時間であの放送が流れ、すぐばれることは間違いない。
それでも太公望は嘘までつき、富樫の死が放送されるそのときまで隠そうとしている。

「わしが伝えたいのは絶望ではない、希望なのだ。
 ダイ達には出来るだけ明るい笑顔でいて欲しい……」

富樫の死によってダイ達に伝わるのは絶望と悲しみ。
彼らにそんな顔をさせたくない。いつかは悲しみに染まるであろう彼らの笑顔をそのままにしておきたい。
出来るだけ、少しでも悲しみと絶望から彼らを遠ざけていたい。
それが太公望の嘘の理由。

「彼奴等には笑顔がよく似合う…今、悲しむのはわし一人でいい…なぁ富樫よ…」

馬鹿で図体がでかく、煩く感じるほどの大声で常に場を明るくしていた富樫。
そんな男なら自分の死によって仲間が悲しみ、涙を流すことを喜ぶはずが無い。
今、皆に彼の死を伝え、いや、太公望自身が涙を流すことは彼に対する裏切りに相当するだろう。

「そうだな富樫…泣くのは後でも出来る。今は出来ることを精一杯やるとするか」
282流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 19:59:16 ID:moxDAneg0
太公望はシャワー室のロッカールームに座り込むと思考を切り替え、昼の放送について考察を巡らし始める。

「(朝の放送では見知らぬ仲間と組んだ故に裏切られて死んだという主旨の放送を行い、
  昼の放送では信頼できる同じ世界の仲間が変わった…つまりゲームに乗ったということか。
  どちらも不安を煽り、信じられるのは自分しかいない、助かるには優勝するしかないと言わんばかりだ……)」 

太公望は更に思考を重ねる。この放送を行う主催者達の真意は?
主催者達がゲームを楽しむためにわざわざ不安を煽る放送をしている可能性もあるが、どうしてもそれだけとは思えない。
このゲームが完全にお遊びならもっと直接的に手を下してゲームを円滑に進めているはず。
言葉だけでなく、仲間が殺されるシーンを放送するなり、何人、何十人の人格をコントロールして積極的に殺し合わせたり、
忠実な部下を送り込んでそいつらに人数を減らさせる、等もっと効率的な方法がある。
それなのに彼奴等は今のところ言葉だけで不安を煽っている。まるで参加者の意思で殺し合わせるのが目的のように。

「ハーデスにバーン…彼奴等の目的は地上征服のはず…」
星矢とダイから話を聞いたところ、細かい部分を省くとどちらも地上征服という共通の目的を持っていることが分かった。
フリーザに関しては情報が無いため、考察に加えないが恐らく似たような目的を持っていることだろう。
ここで問題にすべき事柄は、地上征服という目的を持っていながら何故このようなゲームを開いたということ。

ハーデス・バーン・フリーザ、この三人の関係は協力関係になってまだ日が浅い、もしくは希薄な関係だと考えられる。
星矢はバーンとフリーザ、ダイはハーデスとフリーザを見たことも無いことからもそれは明確だ。
ダイの世界ではダイ達は今バーン達魔王軍に対して攻勢を強め、最後の居城、バーンバレスにまで乗り込む勢いなのに
他の二人は姿も見せていない。
特にハーデスに至っては、星矢達と対峙し、ライバルであるアテナという神に劣勢を強いられ、結果敗北したというのに
他の二人は姿を見せていない。
密接、堅固な関係であれば仲間に危機が迫っていると知ればなんらかの援護策を打ち出すはず。
利害関係で成り立っている同盟であっても、貸しを作ることによってより優位に立てると考え、同じことをするはずだ。
では何故援助をしなかったのか? 答えはつい先日に成立した希薄な同盟関係だからだろう。

日が浅く、希薄な同盟関係……ここまではなんの疑問もない。
ここで問題になってくるのは先程挙げた、本来の目的を差し置いて、このゲームを開いたこと。
同盟を組むのは勿論自分にとって利になるから。ならば何故このゲームを開く前に
お互いの世界の目的を果たそうとしない?これだけ巨大な力を持つものが3人もいれば、地上征服はより容易に行えるはず。
283流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:02:22 ID:moxDAneg0
・最近成立した同盟で自分の目的を差し置いてこのゲームを開催

主催者達の背後関係を推察し、浮かんできた奇妙な事実。
情報を整理すれば整理するほど奇天烈で納得しがたい結果が浮き彫りになってくる。
だが、どんなに奇妙で理解しがたい問題でも答えは必ず用意されているもの。
太公望は合っているかどうかも定かではない、自分なりのその答えを作り上げていた。

「全く…わしには主催者どもの目的がさっぱり分からん…お手上げじゃ…」
(つまり…参加者の自発的な殺し合いが終わったときに生じる何かが、本来の目的をより充実したものにする、
 といったところか…全くふざけておる…)

これが今持ち合わせている情報で洗い出した精一杯の答え。

太公望は立ち上がるとバッグを背負い、窓から辺りを見回し誰もいないことを確認すると駆け足でシャワールームを後にする。
主催者達の大まかな目的が推測できた今、これ以上この件について頭を悩ますことは無い。
既に出た答えを再度洗いなおしてもこれ以上の答えは出ないだろう。
新しい情報を入手したときに改めて考えればいい。太公望は走りながら思考を切り替え、別件を考え出した。

「これからどうするかのう…どこに行けばいいのやら…とりあえず東に向かうとするか…」
(これから向かうは東…だが、ただふらふらと東に向かう訳ではない)

太公望は先程から独り言、無駄な呟きを繰り返しながらその胸中では全く違う、
ひたすら事態をなんとかしようとする思考を繰り返している。
盗聴と監視があると考えられるこの状況で、自分が何かに気付いた、何かを企てていることを感付かれてはならない。
この状況なら誰しも脱出を模索する。それは露見しても構わない。
だが、その内情は決して暴露してはならない。色々画策するが答えが見つからず右往左往するしかない無能者。
そう相手に思わせることが出来れば細かい監視も多少緩み、その隙に手痛いしっぺ返しが出来る可能性も出てくる。
そのためにも出来るだけ無能だと思わせたいのだ。
284流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:03:22 ID:moxDAneg0
「東京に行けば人もいるだろう…」
(わしが如何に考えようともそれは所詮机上の空論。状況証拠で固めた土台の無い考察に過ぎん。
 少しでも足場を固めるためには確固たる証拠が必要。しかし易々と目的のものは手に入らん。
 …泥に沈んだ一握りの金を探すようなもの…ならば、その泥を拭っていけばいい)

太公望は一人山中を駆けながらその首に架けられた狂気の証、爆弾入りの首輪を擦る。

(餅は餅屋…首輪の解除のことはその道のプロに任せるべき。わしがあーだこーだ言うことはない。
 わしが脱出の方法を模索しているのと同じように首輪をなんとかしようとする者がいるはず。
 ならば…わしがするべきことは…監視方法の特定)

盗聴と監視。優先して解除すべきは後者、と太公望は考えたのだ。
盗聴だけならば以前考えたように色々と利用しているのだが監視だけはどうにもならない。
筆談も行動も制限され、結局は主催者の手のひらで舞うことになる。
主催者達の裏をかくにはこの問題を早急に対処することが何より大事なのだ。
ならば盗聴はどうか?これも監視に劣ることの無い重要な要素。
盗聴は首輪で行われているはず。決して取り外されることの無い首輪に内臓されているなら
簡単に盗聴を防ぐことは出来ないし、力づくで排除すれば爆発して死ぬのが目に見えている。
だが現物が目の前にある時点で監視と違ってより排除は容易で可能。
首輪の構造が分かり、取り外すことが出来ればそれは盗聴を阻止することにもなるのだ。
勿論周囲に盗聴器みたいなものを仕掛けている可能性もあるが
一番身近に声を捕らえることの出来るであろう首輪を排除できればあとはなんとでもなる。
機械に詳しくなく、フリーである太公望だからこそ監視方法を特定する道を選んだのだ。

(特定というよりも絞込みじゃな…全く監視方法が分からぬ現状じゃ虱潰しで特定するほかない)

1 姿を隠して参加者に一人づつ付いて監視
2 遥か上空から監視
3 木や岩、建築物に監視装置を取り付けて監視
4 その他
285流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:04:28 ID:moxDAneg0
(…といったところか…そして目指すは…)

―――――静岡県の富士山。

山の麓は樹海で囲まれ、中ごろから山頂にかけて雪に囲まれている富士山。
ここならば如何にに姿が見えなくても樹海で見失わないように接近し、雪によってその足跡が露呈されるはず。
足が無い、浮遊しているタイプでも一面白銀の世界であれば正体は掴める。
姿は見えないだろうが、その存在は消すことはできないはず。
存在しているものに付きまとう影。これが必ずあるはずである。
全てを溶かす真っ白な世界でも薄い黒色の影はさぞ目立つことであろう。

富士山を目指すのは項目の1だけためではない。2のためでもある。
富士山はこの日本で最も高い場所。遥か上空にあるかもしれない監視装置を見つけるにはここしかない。
最も、肉眼で見つかるとは思えないだろうからあくまで肉眼で確認できるかどうかを確かめるに過ぎないのだが。

「さて…ここの山道なら障害物もないし、見つかりにくい…」

太公望はポケットからカプセルを取り出すと、先程収納したウェイバーを取り出した。
ウェイバーは騒音も少なく、乗り物としては優れているものだったが
所詮は乗り物。足場の悪いところでは乗れないのだ。搭乗するなら道が舗装されている場所に行けばいいのだが
姿は筒抜け、見つけてくださいと言っているようなものである。
人を見つけた場合、その人間性が分かるまで監視する方針を取っている限りそのような場所に行くことはできない。
しかし山道なら周囲を見下ろす形になり、姿は隠れ、走行も出来る。一石二鳥である。

「しかし…この血は本当に本物なのだろうか…」

ウェイバーに染み付き、こびり付いている乾き果てた血。誰であろう、藍染の血である。
あのとき、確かに太公望はアクセルを全開にし、藍染を弾き飛ばした。
そのとき生じた衝撃、離散する手足、舞う赤い血。どれも本物であった。
藍染の死はもはや確実である。しかし、太公望の疑念は払拭できない。
286流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:05:02 ID:moxDAneg0
「このウェイバーは軽い…いくら最大速度まで加速したからといって、五体をバラバラに出来るとは…」

だが、目の前にある血は本物。残ったかすかな匂いも血そのものである。
ここで藍染は生きていると断定するのは早計ではないか?
太公望は自問自答を繰り返す。多少違和感が残るが現状を冷静に考えれば藍染の死は間違いない。
だが、理屈ではない、太公望の漠然とした疑念は払拭できない。

以前仲間の楊ゼンが経験した幻術、宝貝神の見えざる手ですら視覚を惑わすのが精一杯。
視覚だけに留まらず、五感の全てを奪うことの出来る幻術があるものだろうか。
だが、太公望はその可能性が高いと推測する。
藍染はマヌーサを唱え、逃げ出したことがある。加えてあのアバンの書には呪文とはイメージが大事と書かれていた。
ゲーム開始6時間も経たずにマヌーサを取得できたのは…やつが幻術の類に優れていたから。
そう太公望は考えたのだ。

「もし五感を奪われた状態ならあやつの前に立つことは死を意味する…。
 ……考えすぎか。杞憂であればいいのだが…」

太公望はウェイバーに跨ると、山道から小さく映る船を見下ろす。
287流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:06:30 ID:moxDAneg0
脳裏に過ぎるのは先程まで生きていた馬鹿の姿。ゲーム開始直後から喧嘩を繰り返し、常に行動を共にした仲間。
少しからかうだけで激昂し、容赦なくげんこつを繰り出す男。
そのくせ人一倍人情家で、周囲の目も気にせず一人突っ走るあいつ。


―――――通り過ぎた人々


富樫源次との思い出はろくな物がなかった。痛い思い出ばかり。融通が利かず、怒りっぽい頑固者。
だが…それでも楽しかった。


―――――幸福だったむかし……そこには強く引きつける力がある


「全く…おぬしはげんこつしか能の無い馬鹿だったのう…」


―――――だが…わしは……


「スープーより凶悪なツッコミだったが…悪くは無かったぞ」


風は動き出す。確固たる決意と温かい優しさを全ての人に届けるために。
288流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:07:03 ID:moxDAneg0







―――――それでも…前に進もう






289流れ行く風 ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 20:08:52 ID:moxDAneg0
【三重県 山道/1日目夕方】

【太公望@封神演義】
状態:やや疲労。 完全催眠(大阪の交差点に藍染の死体)
道具:荷物一式(食料1/8消費)・五光石@封神演義・鼻栓 ウェイバー@ワンピース
   トランシーバー×3(故障のため使用不可)
思考: 1.富士山を目指す。
    2.バギの取得を試みる
    3.新たな伝達手段を見つける
290流れ行く風(修正) ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 22:54:36 ID:moxDAneg0
>>285の次を修正

―――――静岡県の富士山
     ↓
―――――山梨県の富士山

>>285の下から5行目〜286の下2行まで以下の通りに修正。
291流れ行く風(修正) ◆GzTOgasiCM :2006/02/22(水) 22:55:36 ID:moxDAneg0
「しかし…あの血は本当に本物なのだろうか…」

ウェイバーに染み付き、こびり付いている乾き果てた血。人を跳ね飛ばしたことで負ったボディの傷。
あるべきはずの痕跡が全て消え去っていた。
あのとき、確かに太公望はアクセルを全開にし、藍染を弾き飛ばした。
そのとき生じた衝撃、離散する手足、舞う赤い血。どれも本物。
藍染の死はもはや確実である。しかし、太公望の疑念は払拭できない。

「このウェイバーは軽い…いくら最大速度まで加速したからといって、五体をバラバラに出来るとは…」

本来目の前にあるはずの血と傷。それが無い事で藍染が生きていると断定するのは早計ではないか?
太公望は自問自答を繰り返す。太公望自身の目で確認し、自身の手で藍染を轢いたのだ。
多少違和感が残るが現状を冷静に考えれば藍染の死は間違いない。
だが、理屈ではない、太公望の漠然とした疑念は払拭できないでいる。

以前仲間の楊ゼンが経験した幻術、宝貝神の見えざる手ですら視覚を惑わすのが精一杯。
視覚だけに留まらず、五感の全てを奪うことの出来る幻術があるものだろうか。
だが、太公望はその可能性が高いと推測する。
藍染はマヌーサを唱え、逃げ出したことがある。加えてあのアバンの書には呪文とはイメージが大事と書かれていた。
ゲーム開始6時間も経たずにマヌーサを取得できたのは…やつが幻術の類に優れていたから。
そう太公望は考えたのだ。

「もし五感を奪われた状態ならあやつの前に立つことは死を意味する…。
 ……考えすぎか。杞憂であればいいのだが…」
292獣、本州へ ◆XksB4AwhxU :2006/02/23(木) 00:48:03 ID:kfZx3zRd0
福岡市街。ビル屋上。
ナルトの姿をした尾獣・九尾は久しぶりの「外」の空気を楽しんでいた。
十数年前、木の葉の里で赤ん坊であったナルトの体内へ封印されて以来、虎視眈々と「本体」の乗っ取りを
画策してきたが、まさか、このような状況で自由の身になれるとは思いも寄らぬ幸運であった。
「見慣れぬ国よのォ・・・」
暴れ足りぬ。九尾の本能が疼き、静かな街並みをすぐにでも破壊したい衝動にかられる。
しかし、昔のように欲のままに荒れ狂えば力はすぐに尽きる。

破壊欲を満たすために獲物を探す必要あり。
九尾はすでにナルトの五感を通じて事の成り行きは掴んでいた。
先ほど見つけた死体――――全身タイツが戻らねば、まもなく仲間の悪趣味マスクが来るだろう。
この爪で八つ裂きにする光景を想像し、九尾は笑んだ。

ごごおお

楽しい空想に耽る途中で、腹が大きな音を立てる。
「・・・フン、人間の器は不便でならんの。少し動けばこれかよ」
メシの時間とするか。

封印されていた頃は、人柱力であるナルトが空腹になればすぐに補給を行い、腹を満たしていたため
深刻な飢餓に苛まされることはなかった。
が、こうして「外」に出でて動けば、空腹は予想外に九尾を責める。
食欲という破壊とは別の衝動であった。

面倒であったが、肝心の器が動けなくなっては厄介。
九尾は乱暴に荷物を開き食料を貪る。足りぬ。それに味気ない。粗末な食料に苛立ちが増した。

空きっ腹を抱えた九尾はビルの間を抜け、風のような足どりでトンネルへ――――
餌場へと向かう。
293獣、本州へ ◆XksB4AwhxU :2006/02/23(木) 00:50:34 ID:kfZx3zRd0
目指すはすでに死した妖弧玉藻のチャクラの尾。
奇妙なことに、この化物からは、砂の里の人柱力我愛羅に封じ込められていた一尾よりも
自分のチャクラに近い、懐かしさを感じる。
これを取り込めば消費した分のチャクラの回復ができるだろう。
腹が鳴る。かつて感じたことのない飢餓が玉藻の尾を求めている。九尾は唾を飲み込んだ。

トンネル内部には、薄暗い内壁や地面に血を撒き散らし、倒れている人間と妖弧、惨たらしい2つの死体。
そのひとつから立ち昇る、金色の妖気。

「これだ・・・わしが喰いたかったのはこれだ・・・」
口から溢れた唾を、赤い舌がべろりと拭う。
九尾は喉を鳴らし、にんまりと嬉しそうに笑んだ。

かつて玉藻が九尾の試練に打ち勝ち、最高位の九尾から賜った一尾であり
強力な妖力の源となっている。しかし、持ち主を失った今となっては、存在は薄まり消え入りそうな様相だった。

九尾はまず、玉藻の眼に突き刺さる木片を引き抜き、血に濡れ、てらてら光る尖った先で死体の胸腹を
切り裂く。生暖かい体内に残るは金色の尾の形をした高密度の妖気。九尾の瞳が歓喜に輝いた。
たまらず手をのばし、その美しい尾を、千切った血肉と共に、餓鬼のように口に運ぶ。
(美味い・・・美味い・・・!!)
九尾は喉を鳴らして、一心不乱に口を動かした。先の戦いで失った以上のパワーが補充されていく。
鮮烈な血の味が口内に広がり、くちゃくちゃと、もの噛む音が暗闇に響いた。
肉の欠片が胃の府に入るごとに腹が温まり、器の空腹が満たされる。
食事がこんなに心躍るものだとは知らず。九尾はしきりに興奮した。

294獣、本州へ ◆XksB4AwhxU :2006/02/23(木) 00:55:06 ID:kfZx3zRd0
見る間に両手や歯牙が赤く染まり、滴る血が服を汚す。
(それにしてもこやつ・・・一時的にとはいえ、わしを封印するとは腹立たしいが、たいした奴)
パキっ・・・ゴキっ・・・
尾を奪われ、次第に人の姿を失っていく玉藻を食みながら九尾が呟く。
術者が死ねば効力を失う封印もある。玉藻が緊急で施したのはそれであった。
三代目火影。自雷也。木の葉の忍び共の他に自分を封印できる者が存在するとは、考えても見なかった事態である。
「厄介だの・・・」
制限のかかったこの世界では全力でチャクラを引き出しても、せいぜい15%。
他の参加者にも同様の制限が科されていると見て間違いない・・・が、主催者と戦うことを視野に入れれば
情勢は圧倒的に不利。

「フン、ならば」
九尾はこうも考える。
(・・・この忌々しい封印を解ける奴を探すまでよ)

主催者が施した制限を取り払える術者。三代目火影以上の術の使い手を捜す。
この玉藻と名乗った妖弧に近しい者なれば、可能ではなかろうか。
そして彼の者が同属ならば――――騙し、利用した後で、腹から尾を引きづり出し我が糧にしてやろう。

空腹を満たすことがこれほど心地いい行為だとは思いもよらず。
九尾は恍惚の表情で次の獲物へ向けて思いを馳せる。
脳裏に浮かぶは薄桃色の髪の少女。

「サクラ、といったか、あの小娘」

普段ならば中忍ごとき何の利用価値もない上に、憎き木の葉の忍びである。
しかし彼女は卓越した医療忍術の使い手、五代目火影の直弟子。すぐ殺すには惜しい。
九尾は汚れた指をべろりと嘗めた。
295獣、本州へ ◆XksB4AwhxU :2006/02/23(木) 01:02:42 ID:kfZx3zRd0
あの娘がいれば戦闘で怪我を負ったとしても無条件で我が傷―――ナルトの傷を癒すだろう。
仲間を信じきるあの瞳ならばチャクラ尽きるまで自分を守ろうとするだろう。
殺すのは、それからで充分。
主催者を殺す前の非常の食料としてもよい。

「くくく・・・」

同属の味を存分に味わい終わった九尾は満足そうに立ち上がった。

「さあって・・・腹も溜まったし、そろそろ出発するってばよ♪」

さすがに血に塗れた服では怪しまれるだろうな、九尾は道を外れ、清水を求めんと山へと入る。
足どりは軽く、獲物を求めて表情は歓喜に満ちている。

地を這う草木に点々と赤い足跡を残しながら。
296獣、本州へ ◆XksB4AwhxU :2006/02/23(木) 01:04:04 ID:kfZx3zRd0
【山口県/(1日目)夕方】

【うずまきナルト@NARUTO】
 [状態]:九尾の意思
 [装備]:無し
 [道具]:支給品一式(食料と水を消費済み)
     ゴールドフェザー&シルバーフェザー(各5本ずつ)@ダイの大冒険
     フォーク5本、ソーイングセット、ロープ、半透明ゴミ袋10枚入り1パック
 [思考] 1、身体を洗う。
     2、サクラ、シカマル、玉藻の仲間を探し、可能なら利用。不可能なら殺害。
     3、術者に能力制限を解かせる。
     4、優勝後、主催者を殺害する
[備考] (ナルトの精神は九尾の部屋で眠っています。肉体的に瀕死、
またはナルトが外部から精神的に最大級の衝撃を受けると一時的に九尾と人格が入れ替わります)

*玉藻の封印は、玉藻の死亡と、九尾のチャクラの一部によって解除されたと言う見解です。
 そのため、今のナルト(九尾)はナルトのチャクラ+九尾のチャクラ15%程度のチャクラが上限です。
 ただし、九尾のチャクラも使いこなせます。
 あと、九尾は基本的にナルトの口調で喋ります。

*一輝、ヒソカの荷物は福岡市街に放置されたままです。
297 ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 07:15:35 ID:3b+46OSc0
東京の市街地。ビルの屋上にて、仲間となる人物がいないか、辺りを伺う雷電。
周囲を伺う最中、突如として、着ている中華服の一番上の紐が千切れる。

「むぅ……これは不吉な……」

「周の時代、勇敢な戦士として知られた鄭李萬(ていり・まん)は、優れた占い師でもあった。
彼は戦争に赴く際には、必ず紐のついた奇妙な靴を履いていたが、その紐の状態により、
遠く離れた味方の生死を知ったという。
そのため古代中国では、衣類等に付着した紐類が自然と切れることを、
身内の不幸の知らせと考え、忌み嫌った。
このような紐類を『縁』と呼んだが、現代日本でも使用される『縁が切れる』という言葉は、
元来、親しき者との死別を意味していた。」

 民明書房刊『中華占い大全〜これを知らなきゃアンタ地獄に落ちるわよ〜』より

「まさか……シカマル殿の身に……何かが……?」

シカマルの身を案じる雷電。もはや居ても立っても居られない。
その身体は、自然と北へと向かっていた。
298 ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 07:19:13 ID:3b+46OSc0
【東京都(中心部市街地)/午後】

【雷電@魁!!男塾】
 [状態]:健康
 [装備]:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費)
 [思考]1:シカマルを探す
 2:知り合いとの合流(うずまきナルト、春野サクラ含む)
299 ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 07:47:21 ID:3b+46OSc0
すみません>>297
「もはや居ても立っても居られない。」
の部分は削除します。
300守る思い、まもる狂気 ◆pPNFkZfD2c :2006/02/24(金) 10:30:34 ID:enSvUABu0
歩き続けて早数時間。
途中休みつつ、また警戒しながら動いていたためそれほど多くの距離を移動していたわけではなかったが、
それまで誰一人敵と会わなかったのは幸運だったといえるかもしれない。
剣心一行は狂気の男、志々尾その人から逃れた後北へ北へと進んでいた。
剣心の探し人はもういない。

(剣は凶器、剣術は殺人術)

「それが真実であったとしても・・・、拙者は薫殿の甘っちょろい戯言のほうが好きでゴザったよ・・・」
剣心は昔のことを思い出していた。
薫殿を殺した殺人者がこの世界のどこかにいる。
だけど・・・
今は、今だけはせめて・・・手の届く人を守りたい。
それで許してもらえるとは思わない。
だけど今だけは・・・。

己の目の前にいる二人の少年。
今は、この少年たちだけは守りたい。剣心はそう思っていた。
301守る思い、まもる狂気 ◆pPNFkZfD2c :2006/02/24(金) 10:31:05 ID:enSvUABu0
鳥取にさしかかった時のことだった。
少し休めるところを探していたとき前を進む二人の少年が立ち止まった。
「ひ、ひどい・・・」
それは、見た瞬間にわかる「死体」であった。
そこには、無残に死体を晒されている石崎の姿があった。
「こんな子供まで・・・うおぉぉぉぉぉ!!!」
剣心が吼えた。
こらえようのない怒りが剣心の内奥に広がっていく。
「何故こんな少年が殺されなければならんのでゴザルか!こんな少年が・・・薫殿が・・・」
セナはそんな剣心に声をかけることができなかった。

少しして蛭魔が倉庫にあったスコップらしきものを持ってきた。
その表情からは何を考えているかは読み取れなかった。
いたって普通の表情。
冷静な表情。

「・・・埋葬してやるんだろ?」

そういって剣心にスコップを渡した

「あぁ・・・そうでゴザルな」

剣心は何故か救われたような気がした。
何故だか心の中の怒りが和らいだような気がする。
そしてこの二人を命に代えても守ろうと思った。
302守る思い、まもる狂気 ◆pPNFkZfD2c :2006/02/24(金) 10:31:41 ID:enSvUABu0
しばらくして、
「そろそろいくでござるか」
そういって石崎の居た場所を後にする。
「セナ殿の姉上を探しにいこう。こんな状況ではいつ殺人者に狙われるかわからないでゴザルからな。」
そういって三人は更に北上していく。
「ちっ、糞マネがどこいってやがんだ?手間かけさせやがって」

(まもり姉ちゃん、どうか無事でいてね・・・必ず助けにいくから)

セナは知らない。
己が守ろうとしている相手が、自分のために今も新たな殺人を犯していることを。
未だ両者が出会うことはない。
303守る思い、まもる狂気 ◆pPNFkZfD2c :2006/02/24(金) 10:34:49 ID:enSvUABu0
【鳥取県/午後】

【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】身体の至る所に軽度の裂傷、胸元に傷、軽度の疲労、精神中度の不安定
【装備】刀の鞘
【道具】荷物一式
【思考】1.姉崎まもりを護る(神谷薫を殺害した存在を屠る)
    2.小早川瀬那、 蛭魔妖一を護る(襲撃者は屠る)
    3.力なき弱き人々を護る(殺人者は屠る)
4.人は斬らない(敵は屠る)
   (括弧内は、抜刀斎としての思考ですが、今はあまり強制力はありません)

【小早川瀬那@アイシールド21】
 [状態]:健康
 [装備]:特になし
 [道具]:支給品一式 野営用具一式(支給品に含まれる食糧、2/3消費)
 [思考]:1.姉崎との合流
     2.これ以上、誰も欠けさせない

【蛭魔妖一@アイシールド21】
 [状態]:右肩骨折、夷腕坊操作の訓練のため疲労
 [装備]:無し
 [道具]:支給品一式
 [思考]:1.姉崎との合流。
     2.東京へ向う
304三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 11:52:13 ID:3b+46OSc0
「さあ、幽助さん達を探すんでしょう?行きましょ!」
杏子は笑顔で言った。
この笑顔は、もちろん・・・空元気。
先ほどまで泣きじゃくる彼女を、ずっと抱きすくめてトレインには、そのことがよく分かっている。
しかし、これ以上言葉も手もかけることはしなかった。
彼女は自分の力で歩き出した。前に進み始めた。たとえそれが無理にあっても、そのことを尊重したのだ。
(こんなところでへこたれていたら、城之内や海馬君に叱られちゃうよね・・・。
トレイン君達や遊戯と一緒に、絶対脱出して見せるからね。見ててね・・・。)
杏子は心の中で、城之内と海馬にひっそりと誓った。

トレインはそんな杏子の後姿を見守る。
どこか、かつて心を許した少女に似た雰囲気を持つ、この少女を。

(今度こそ、彼女を守ってみせる。)

トレインも心の中で、かつて心を許した少女――サヤにひっそりと誓った。
305三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 11:53:22 ID:3b+46OSc0
ゴンは走る。ひたすら走る。目にうっすらと涙を浮かべながら。
(・・・シカマル君・・・・・・。)
また助けられなかった。自分の未熟さの故に。
せめて、この仙豆を雷電に届けるという、シカマルとの誓いを守らなければ。
ひたすら走る。シカマルの想いを乗せ、東京に向かって。

桃白白は追う。思ったよりダメージが大きい。仙豆を食べれば、この怪我も回復するのだろうが、
この身体ではゴンに追いつけそうもない。
しかしそこは熟練した殺し屋。ゴンを追いながらも考える。周りを観察する。
もっとも効率よく、もっとも確実に、仙豆を手に入れる手段はないか。

――その時、森から一人の少女が出てくるのを見つけた。
306三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 11:54:52 ID:3b+46OSc0
「ククク、ついとるわい・・・」
桃白白はその少女、杏子をつかもうとする。
が、咄嗟に後ろの男、トレインが反応する。
トレインはすぐさま、桃白白にウルスラグナを向け、もう一方の手で杏子をつかむ・・・・・・
つかもうとしたが、右腕がない!そう、先ほどの戦闘で、右腕を失っていたのだった。
すぐさまウルスラグナを投げ捨て、左腕で杏子を取り返そうとする。この間わずか数秒。
しかし、その数秒が命取りだった。桃白白もプロの殺し屋、そのわずかな隙を逃さない。
トレインの右肩に蹴りをくわえ、そのまま杏子の首の根元をつかむ。
そのまま林に蹴り飛ばされるトレイン。何が起きたのか、わけもわからぬまま、
見知らぬ男に自由を奪われる杏子。

「おい・・・そこのガキ。止まれ。止まらなければ・・・この女を・・・殺す。」
このガキは甘い。こんな無関係な女でも、殺すと脅せば言うことを聞く。
それが先ほどの戦いにおいての、桃白白の読みだった。

「くっ・・・。」
ゴンは立ち止まり、こちらを振り返る。悔しそうな目でこちらをにらむ。
(思ったとおりだ・・・、馬鹿め・・・。)
内心、桃白白はほくそ笑んでいた。
307三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 11:56:51 ID:3b+46OSc0
「分かったか?この女を殺したくなければ、まずこちらの林に移動しろ。」
と、トレインの倒れている林を指差す。これは、敵を一度に視界に入れるため。
そして新たな敵が突然現れる可能性があるのは林。ここを押えるため。
他三方は平原で見晴らしも良い。
殺し屋桃白白には、もう油断はない。
子供に二度も辛酸をなめさせられている経験が、彼をさらに用心深くした。
ゴンは悔しさに手を震わしながら、これに従う。
「ククク・・・もう分かっておるな?この女を殺したくなければ・・・仙豆をよこせ・・・!!!」
こぶしを握り締めるゴン。ゴンに決断がせまられる・・・。
308三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:01:57 ID:3b+46OSc0
「おいっ、どういうことだ、こりゃあ?その娘は関係ねーだろ!」
硬直状態の二人の間に入ったのは、トレインだった。
「おっと・・・動くなよ・・・?動いてもこの女を殺すぞ・・・もちろんそっちのガキもだ。」
すぐさま動きを止めるトレイン。
「ああ、動かねーから、どういうことなのか説明してくれよ。」
「フンッ、そこのガキが仙豆を渡さなければ、この女を殺す。それだけだ。」
「だからなんでその娘が・・・」
「・・・それだけだ・・・!!」
桃白白が指に少しだけ力を込める。
「うっ・・・」杏子が苦しそうにうめく。
それを見てトレインは言葉を止める。
(なんかよくわからねーけど、すごいアイテムをこの子が持ってて、
それをこのオッサンが奪おうとしてるみたいだな・・・。
幸いこの子は人の命を大事にするようだ。
頼めば、そのアイテムを杏子のために渡してくれるかもしれない。
しかし、このオッサンはゲームに乗った殺人者のようだ。
しかも、かなり腕の立つ。そんな男に、すごいアイテムを渡してしまってよいのか・・・?
すぐ俺達も殺されるのでは・・・?)
309三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:04:21 ID:3b+46OSc0
そんなことを考えながら、横目でその子供を見ると、
何か目で合図をしたような気がした。何か作戦があるのか?
子供はポケットに手を入れたまま、何かつぶやいている。「・・・最初はグー・・・」

「さあ、そのポケットに入れている物を早く出せ・・・。20数えるうちに出さなければ・・・」
「こんな男の言うこと聞くことないよ!私のことなんてどうでもいいから、やっちゃって・・・!」
突然杏子が叫びだした。
「何を・・・この女・・・!!」
杏子の足は震えている。しかし、精一杯の勇気を振り絞る。
こんな馬鹿なゲームを止めるために。殺人者を止めるために。
それが、城之内との、海馬との誓いの内容だった。
310三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:06:14 ID:3b+46OSc0
人質は殺してしまっては価値がない。
この女を殺してしまっては、仙豆も手に入らないし、ガキと男にやられてしまう可能性もある。
しかし人質をおとなしくさせなければ、これも人質としての価値がない。
桃白白の注意は一瞬、杏子に向いた。

――その一瞬を二人は見逃さなかった。

   「ジャンケン 

                   パー」

ゴンの手のひらから、念弾が飛び出す。
今までに念能力を消費している上、「最初はグー」をこっそりとやっていたため、
威力は低いものだったが、ゴンの必殺技がパンチだけだと思っていた桃白白は不意を突かれる。
311三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:07:28 ID:3b+46OSc0
あわせてトレインが飛び出す。アッパーで桃白白の腕をはじき、すぐさま杏子を抱える。
「早く、その子を!」
叫びながらゴンは桃白白の足止めをすべく、殴りかかる。
しかし、桃白白もそれなりにダメージを負っていたが、ゴンの体力・念能力も相当に低下していた。
ジャンケンでなければ、ゴンの攻撃はそうそう通用しない。
左手一本で流され、蹴り倒される。

「――おのれぇぇぇ!!!この桃白白様をこけにしおって!!!!!」
杏子に向けて指先を突き出し、あのかけ声を発生する。

          「どどん波!!!!!」

先ほどに比べればずいぶん威力は低下しているが、それでも人を殺すには十分な光線。
その瞬間、トレインは杏子を包み込むように倒れた。
どどん波はトレインに命中し、爆発する。トレインはゆっくりと倒れた。
312三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:09:16 ID:3b+46OSc0
(くっ・・・ここまでか・・・仙豆はまたにするか・・・)
3人の注意がどどん波に向かってる間に、桃白白は逃げ出した。

「トレイン君・・・!トレイン君・・・!」
泣きながら杏子は叫ぶ。
「・・・杏子・・・は・・・無事・・・か・・・?」
「私はいいの!大丈夫!でもトレイン君が・・・!」
「・・・そうか・・・よかった・・・な。」
(今度は守れたぜ、サヤ・・・。スヴェン、姫っち、幽助、あとは頼んだぜ・・・。)
杏子とゴンの涙に囲まれながらも、トレインの死に顔は笑顔だった・・・。
313三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:14:16 ID:3b+46OSc0
【茨城県/午後】

【ゴン・フリークス@HUNTER×HUNTER】
[状態]:念能力ほとんど消耗
:左わき腹・肋骨に深いダメージ
[道具]:荷物一式(食料一食分消費)
:仙豆@DRAGONBALL(一粒)
:シカマルの荷物一式(食料一食分消費)
:テニスボール@テニスの王子様(残り2球)
[思考]1:少女を守る
2:仙豆を持って東京の雷電に合流
3:キルアを探す

【真崎杏子@遊戯王】
[状態]健康
[道具]なし
[思考]1:遊戯他仲間と合流
   2:ロビンに会う
   3:殺人者を止める
314三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:18:23 ID:3b+46OSc0
【桃白白@DRAGONBALL】
[状態]:気ほとんど消耗
:腹部・内臓に深刻なダメージ、右腕にダメージ
:疲労大
[道具]:荷物一式(食料二人分、一食分消費)
:ジャギのショットガン@北斗の拳(残弾20)
:脇差し
[思考]1:体力、気を回復のため、逃亡
2:ゴンから仙豆を奪い取る
3:参加者や孫悟空を殺して優勝し、主催者から褒美をもらう

【トレイン・ハートネット@BLACK CAT 死亡確認】
【残り80人】
315三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:32:47 ID:3b+46OSc0
>>310
訂正します。

最後の行「ゴンの必殺技がパンチだけだと思っていた」を削除します。
316三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 12:37:45 ID:3b+46OSc0
>>304
たびたびすみませんが、また訂正します

4行目
「ずっと抱きすくめて」→「ずっと抱きすくめていた」

6行目
「たとえそれが無理にあっても」→「たとえそれが無理に、であっても、」
317三つの誓い ◆f9snfTF/yQ :2006/02/24(金) 17:45:22 ID:3b+46OSc0
>>304-316は無効です
318死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 06:51:09 ID:vmHDqPnI0
大阪のとあるレストラン。

一人の少女が、もふもふとコッペパンを食べている。
(人間、食欲を前にすると罪悪感なんて消えちゃうもん!ミサは悪くないっ!)
自分の身代わりになって死んだ城之内の残したコッペパンを頬張りながら、ミサは10人は座れるであろうテーブルで一人誰にも聞こえない言い訳をしていた。
遊戯という者を妲己というモデル系の超・美女に探すように頼まれてからどれほど時間が過ぎたことか。
「大体、何でレストランに御飯がないの!?責任者出てこーい!!」
冗談気味に言ってから、もしあの角の生えた化け物(死神の目には“フリーザ”と名が映っていた)がひょっこり出てきたらどうしようと思い、思わず身震いする。
「ふう、お腹も一杯になったし、ユウギんを探しにいこっと………その前に」
コッペパンを食べ終わったミサは、水を補給しようと厨房に立ち寄った。
蛇口をひねる。
水は出ない。
「……節約、しないとね」
食料が島内にないことは京都の時点で知っていたが、まさか水すらないとは。
「はあ………ラ〜イ〜ト〜!早く会いたーい!」
愛する男の名を呼びながら、ミサは店を飛び出した。
319死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 06:52:32 ID:vmHDqPnI0
>>318を無効にして

放送4時間前。

大阪のとあるレストラン。

一人の少女が、もふもふとコッペパンを食べている。
(人間、食欲を前にすると罪悪感なんて消えちゃうもん!ミサは悪くないっ!)
自分の身代わりになって死んだ城之内の残したコッペパンを頬張りながら、ミサは10人は座れるであろうテーブルで一人誰にも聞こえない言い訳をしていた。
遊戯という者を妲己というモデル系の超・美女に探すように頼まれてからどれほど時間が過ぎたことか。
「大体、何でレストランに御飯がないの!?責任者出てこーい!!」
冗談気味に言ってから、もしあの角の生えた化け物(死神の目には“フリーザ”と名が映っていた)がひょっこり出てきたらどうしようと思い、思わず身震いする。
「ふう、お腹も一杯になったし、ユウギんを探しにいこっと………その前に」
コッペパンを食べ終わったミサは、水を補給しようと厨房に立ち寄った。
蛇口をひねる。
水は出ない。
「……節約、しないとね」
食料が島内にないことは京都の時点で知っていたが、まさか水すらないとは。
「はあ………ラ〜イ〜ト〜!早く会いたーい!」
愛する男の名を呼びながら、ミサは店を飛び出した。
320死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 06:53:27 ID:vmHDqPnI0
放送2時間50分前。

大阪のとあるたこ焼き屋。

(………………………)
一人の男が、眠りについている。薄く、浅い眠りに。
周囲に警戒を怠らず、それでいて頭は休ませている。
手元には、店内で見つけた大量の紙類。(壁紙を剥がしたもの含む。)
男が眠りに着く前、予期できる一つの事態に対応するために弱った体を酷使して見つけた道具。
今のところこの道具の恩恵に与っていないのは幸か不幸か。

男、藍染惣右介はいまだ眠りに――――――ガララララ。
と。
ガラス戸が開く音がして―――――。
眠りから、醒めた。
321死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 06:54:14 ID:vmHDqPnI0
放送3時間50分前。

ミサは、ひたすら大阪の町を散策していた。
「ユウギ〜ん。何処ー?」
空しく街に響く声。
余りに長い時間探し続けた為か、徐々にミサは無神経かつ大胆になっていた。
「ユ〜〜〜ウ〜〜〜〜ギ〜〜〜〜ん!!!!」
チョウコウメイのような危険人物に見つかるかもとかそういうことは一切考えていないような声で叫ぶミサ。
しかしその危険を伴う大声にすら何の反応も無い。
(むうー。まさか、もう妲己に会って、大阪を出てたりして)
不吉な予想が脳裏をよぎる。
「ま、まさかね。会ってたら迎えに来てくれるだろうし」
天文学的に希望的な観測を行い、歩き続けるミサ。大声を出したせいか体力が予想以上に擦り減っている。

「ちょっと休

ドォォォォォォォォン!!

もうかな、わっ!?」

遠くから爆音が響く。どの方角からかはわからない、しかしそれはミサの恐怖心を再び駆り立てるには十分だった。
(やっばー、静かに探そっと………)
こそこそ移動しだしたミサは、期せずして爆音の発生源の方向に向かっていた。
322死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:17:35 ID:vmHDqPnI0
放送3時間10分前。

(も、もう駄目………)
休みもとらず(途中色々な店を覗きはしたが)歩き続けたミサの体力は限界に近づいていた。
(一旦帰ろうかな………妲己とも、会った場所から離れないって約束したし)
実際は妲己は「離れない」とは明言していないのだが、黒の章のインパクトでミサはそこまで確認しなかった。
黒の章。
(駄目駄目、それでもし妲己が合流した後あっさりユウギんを見つけちゃったら、あの強くなれるビデオがもらえないかもじゃん!)
あれを手に入れられなかったら本末転倒だ。愛する月を守る事が自分にとっての最高の幸せ。その為には力が必要。最もここから出られるなら話は別だが。
交差点が見えてきた。
「よーし、ちょっと探す方向変えてみよう!」
ミサは気を取り直し、自分から見て右手の方向にくるりと体の向きを変える。

死神の眼の視界に映る。

道の真ん中に―――――――。

名前の見えない、人影が。弐つ。
323死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:18:12 ID:vmHDqPnI0
放送2時間50分前。

「え?」

腹から槍を生やし、ほんの少し驚いたような表情の死体。
頭がなくなり、誰なのか判別すらできない死体。

そして前者の首は――――――。

「きゃあああっ!?」

あるべき場所から離れ、足元からほんの少し驚いたような表情でミサを見上げている。

(な、何よ!?何でこんな……え?)
後ずさったミサは、二人の首輪がなくなっていることに気づく。
それが意味するのは、この二人が死んだ後、この場に現れた者がいるという事。
現に、足元に転がる男の首は、この場には見当たらない獲物で引き裂かれている。乱雑に。
ミサは踵を返すと、脱兎のごとく駆け出した。その場に残してある二つの荷物にも気づかず。
(やばいやばいやばいやばいやばい!あんな事ができる奴がいるなんて……)
ミサも元の世界でデスノートによる殺人を犯したことはあるし、自分の死を受け入れた経験さえある。
だが、あのような惨たらしい死体を見たことは無かった。吐き気がこみ上げてくる。まさか、チョウコウメイに殺されたであろう城之内もあんなふうに……!
(何でもいいから、建物の中で休もう!)
ミサは、通りで一番目に付く蛸の装飾が施してある建物のガラス戸を開けた。

―――――ガララララ。
324死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:18:47 ID:vmHDqPnI0
放送2時間30分前。

たこ焼き屋に不似合いなカウンターにミサは座り、ぐでっと体を倒している。
(ふう、少しは落ち着いたかも)
ミサは水筒を取り出して少し水を飲んだ。
「…………おトイレ行きたくなっちゃった。あるかな?」
店内を見回すと、【この先御手洗】と機械的な文字で書かれた張り紙の横に細長い通路。
「………水出ないんだよね。………………外でするよりましだけど」
ミサはアイドルである自分との葛藤に何とか勝利し、通路を進んだ。右手に紳士用トイレ、正面に食材倉庫、左手に婦人用トイレ。



実況のHさん「不適切な表現が予測されますので一時描写をカットします」



「あー、すっきりした♪」
ミサは満悦の表情でトイレから出てきた。
予想に反してトイレの中には汲み置き式で水が溜めており(明らかに飲めるようなモノではなかったが)、何とかアイドルとしての威厳は保てた、といったような表情で。
ふと、左手にある部屋を見る。
「………食材倉庫かー。どうせ何も無いだろうけど、一応覗いてみようかな」
中から人の気配はしない。
ドアノブに手をかけ、回す。
ドアを押し、壁にあたるすれすれのところまで押し切る。
そして部屋に半歩入ったところで―――――。後ろから。
頭に、硬いもの――銃?があてられて。

「喋れば殺す。ゆっくり振り向いて、僕の指示に従ったほうがいい」
325死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:20:12 ID:vmHDqPnI0
(………本気だ。殺される。ライト。もう会えないの?)
ミサは恐怖のあまり身動きすらできない。それをみて何を思ったか、男は、「ああ」と言って頭に突きつけていた物を下げる。
「悪いね、驚かせたかい?こちらを向いてくれるかな?言うとおりにしてくれれば危害は加えないよ」
優しい声。だが、この状況ではそれは恐怖に値する。
ミサは意を決して振り向くと、そこには柔和な表情の男。指を銃のように形作っている。
「いき」
「喋らないでくれ、と言ったがね」
相手の外見とハッタリに少し安心して罵声を浴びせようとしたミサの声は空しく掻き消される。
よく見ると腰に帯びている刀に手をやっている。
(………………じゃあどうやって意思表示しろって言うのよ!)
「ああ、何か言いたいことがあったらこれに書いてくれ。ただしとても小さな文字でね」
男は紙をミサに手渡す。
ミサは急いで鉛筆を出し、"いきなり何すんのよ!!!"と走り書きして男に示した。
「ああ、説明しないとね。………とりあえず、部屋に入ろうか」

「まあ、こんなところかな、私の話は」
男の名前は藍染惣右介というらしい。ミサはこれまで聞いた話を整理して紙に書き綴り、床に置く。

"まず、あなたはこのゲームから抜け出る方法を知っている"
「そう」
"それを行うために、できるだけたくさんの人を集めたい。だけど、せっかく集めた仲間が殺された"
「ああ」
"その仲間は、外で死んでた人の内、頭を吹き飛ばされてた人"
「そうだ、もう片方の男から僕を守るために命を落とした。その後、僕は片方の男の連れに傷を負わされて休んでいた」
"その時、敵をやり過ごすために自分の持つ五感をパーフェクトに催眠しちゃう能力を使って、監視があるとすれば同時にあの主催者達にも催眠をかけようとした"
「していれば、の話だがね。もしそうなら絶対に成功する。していなければ比較的安全に事が運べる」
"自信あるのね………もし主催者にぜんぜん効いてなかったらどうするの?"
「それはない。僕の能力は絶対だ。相手が誰であろうと、どんな状況であろうと効果は変わらない」
326死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:21:18 ID:vmHDqPnI0
藍染の過信とも言える自信にミサは少し不安を覚えたが、同時に頼もしいとも感じた。どこか月に似ている雰囲気もあるし、脱出方法なんて眉唾物だったが、妙に信じられた。それが妄信だとは思わず、続けて質問する。
"で、私を脅した理由だけど、ミサだけ筆談してるのに関係あるの?"
この文章を見ると、藍染はミサの後ろに回り、ミサの手をとって耳元で囁く。
(ここからはもし盗聴しかなかったときのことを考えて僕も筆談する)

ご名答。五感を支配すると言っただろう?僕の能力に堕ちた者は幻覚に対して疑問を抱く事すら困難になる。故に、今幻覚にかかっている者にとって僕はバラバラの死体で、外に転がっている。本来の私の姿も声も認識できはしない。だが
君が僕と会話していると、流石に変だと思われてしまうかも知れないからね。監視があるとすれば、今君はここで一人何かを書いているようにしか映っていないだろう。それもこうして顔に近づけないと読めないような何かを、ね
藍染はそう書いてミサの眼前に紙を運ぶ。
ミサはそれを読むと、「ふむふむ」と自分の書いた文に納得したかのような声を出し。

なるほど、納得納得。ところで、その脱出方法に制限人数はあるの?
「ある」
藍染はミサから離れると簡潔に言い放った。
「もし一緒に脱出したい人がいるなら、その人だけを探して連れてきたまえ。他の人に伝えると君達が脱出できなくなるかもしれない」
………わかった。なんかちょっと罪悪感だけど、ライトだけ探してくる
「そうかい、じゃあ次の放送まではここで休むといい。この核鉄にも、もう少しお世話になりたいしね」
脇腹を押さえて話していた彼にミサが自分と月を脱出させてくれる、と言う条件で貸した核鉄を見せながら優しい笑顔で言う藍染。
327死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:29:31 ID:V/N27VlD0
うん、ところで
ミサは、最初に藍染の顔を見た時から気になっていたことを紙に綴った。
あなたの支給品って、もしかして名前を書くとその人を殺せるノート?


藍染は興味深そうな顔をして、「なんだい、それは?」とミサに尋ねた。

違うの?
あからさまに残念そうな顔で、藍染の顔を見るミサ。
「何故それを僕が持っていると?」
ミサは少し言葉に詰まったような素振りを見せ、「秘密よ?」と囁いて紙に文を書き始めた。
自分が今まで月にしか明かしたことの無い秘密を。脱出への希望を与えてくれた男に向けて。
328死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:33:52 ID:V/N27VlD0
放送30分前。

「――――――面白い」
食材倉庫の一角で藍染が漏らした言葉には二つの意味がある。

一つ目はデスノートという信じがたい効果を持つアイテムへの興味。
キメラの翼ほど有用ではないし、自分の趣味にも合わないが、それらを差し引いても十分手にする価値はある道具だ。

二つ目は、そのアイテムの存在する世界そのもの。デスノートを使った犯罪(ミサは裁きと呼んでいたが)が社会問題になっているらしい。
現世でそんな噂を聞いたことはないし、ミサから聞き出した彼女の能力、【死神の眼】(顔を見た相手の寿命と名前がわかる。ただしここでは寿命は見えないらしいが)。
それを彼女に与えた存在【死神】。
人間大の化物然とした風貌を持つ生き物。
それらの寿命と名前もミサには見えないというが。
それは元の世界で【死神】だった自分にも適応された。(デスノートを所有している人物の寿命はミサの眼でも見えないらしく、ここでは誰の寿命も見えないのでルールが変わったと思い名前も見えない自分に期待をかけてみたらしい)

(我々【死神】とは形状が明らかに違う。狛村君のような例外もいるにはいるが、寧ろヴァストローデ級の虚が死神を騙っていると考えた方がまだましだ。だが連中はそんな無意味なことはしまい)
(つまり、だ。アバンの書の世界や趙公明の世界のような完全な異世界だけではなく、我々の世界に酷似した世界もある、ということか)

ほんの少しの歴史のずれで生まれるパラレルワールドと言ったところか。

「――――――面白い、実に面白い」
再び言葉を漏らし、天を仰ぐ。その死神の眼には小汚い天井など映らない。映るのは、自分が立つべく天の座。そして、全てを蹂躙し、その座に立つ自身の姿のみ。
「私が天に立つ」
藍染はそう呟くと、小さな寝息を立てるミサを愛おしげにみて、来る放送を待った。
329死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 07:36:19 ID:V/N27VlD0
【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・午後・5時半】

【藍染惣右介@ブリーチ】
状態:周囲を警戒。骨のダメージはほぼ完治・中度の疲労、MP5%程度。(戦闘ほぼ不能・盤古幡使用不可)
装備:雪走り@ワンピース・斬魄刀@ブリーチ 核鉄XLIV(44)@武装練金
道具:荷物一式二個(一つは食料二人分 1/8消費)・盤古幡@封神演技 ・首輪×2
思考:1 夜まで体力回復に努める
   2 琵琶湖へ向かう
   3 出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害。特にキメラの翼、ルーラの使い手、デスノートを求めている。
   4 計画の実行
5 次の放送で実験の結果を検分、その後行動方針を決める。

備考:大蛇丸が持っていた荷物のうち2つは、二人が同士討ちになった、と後できた参加者に思わせるために現場に残してあります。
主催者に能力が通じたかどうかは不明。 ただ藍染はほぼ確信しています。ミサには雪走り、斬魄刀以外の道具(特に首輪)は秘密。
脱出方法における人数の限界をミサに騙ったのは、自分の真意を知るものに接触させず確実にモルモットにするためです。

【弥海砂@DEATHNOTE】
 [状態]中度の疲労、睡眠中
 [装備]なし
 [道具]荷物一式
 [思考] 1:藍染と別れた後夜神月と合流し、藍染の事を伝え、共に脱出する。
 2:夜神月の望むように行動
3:遊戯を探してダッキの元へ連れていく(ほぼ自分の中で無かったことに)
330死神の眼×4 ◆2XEqsKa.CM :2006/02/25(土) 19:52:46 ID:y3n8o3c00
>>328
放送30分前。を→まもなく三度目の凶報が始まる。に変更。
さらに
>>329
【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・午後・5時半】 を
【大阪府市街地(たこ焼き屋、食材倉庫)/1日目・夕方・放送前】 に変更します。

「お、おい。大丈夫なのか?」

岩陰に隠れる鼻の長〜い男が、怯えながら声をかける。
彼の名はウソップ。海賊団の狙撃手を務めており、更に嘘つきであるという青年だ。
そして彼の首にかかっている蒼い宝石、賢者のアクアマリン。それには知性溢れる友人を得る力があるというが……


ウソップの言葉に対して、蝶々仮面の男は言葉ではない方法で返事をする。
『静かにしていろ 奴らにばれる』
空中に黒い粉末が文字を綴る。それを見るとウソップは口を閉じ岩陰から覗くのみとなった。

(さて……、やはりどう見ても継ぎ目は見つからんな。分解するには厄介だな…)
銀色の首輪を弄り思案する男は、パピヨンと名を変えた錬金術師にしてホムンクルスという存在。
彼は主催者たちに装着された首輪爆弾を解析しようと、死者のそれを回収し観察していた。
しかし予想をはるかに越える精密な外装であり、第一段階の『解体』から苦戦していた。

(もう日も暮れてしまう。夜になれば解体は難しくなる……)
紅く染まり始めた西の空に目を向けるパピヨン。
このまま明日の夜明けまで待つのは、妥協。それは己のプライドの敗北となる。
(少々荒っぽい方法でいくか……)

パピヨンの解析はてこずっている様子だ。
このまま暗くなればもっと時間はかかるだろう。と言うことは、まだまだここカゴシマに残る確率は高い。
陰でこっそりとほくそ笑むウソップ。
自分のあのテキトーな考えも、ポップが目覚めるまで考察を巡らすと、真剣に言っていた。
幸い(こんな言い方は不謹慎だが)未だポップが目覚める様子はない。
このままの調子ならホンシューとかいう方に行くこともないかもしれない………


するとパピヨンがおい、と自分を呼ぶ。そこには…
『解体できたぞ』
「なにぃ―――っ!?」

ウソップの大声に、不快そうな目を返すパピヨン。ウソップは急いでパピヨンの側に行き、彼の手元を覗き込む。
そこには鈍く輝く首輪が、蹄鉄のような形で転がっていた。
「どうやったんだ?」
ウソップは少し悲しげな声でパピヨンに訊ねた。
「いや、何もしてないが……」『これを見つけて観察している内に、空洞部があることに気付いてな。
                   そこに爆弾がある可能性は低いと踏んで、そこを強引に割って開いてみた』

口では主催者にばれぬよう適当な返事をし、武装錬金で事の真相を明かすパピヨン。
「へー、そう…」
ウソップは半ば投げやりに相槌を打つ。

パピヨンは明るいうちに、とすぐさま解析を始めた。
(なるほど……。盗聴器は全部で…十個か。丁度36度ごと等間隔に設置されてるな)
極小のマイクを一つつまみ、光に当てて充分に観察する。そして彼は軽く唸りながらそれを吟味する。
マイクは小指の爪ぐらいのサイズ。感度は上等に違いないし、発信機も内蔵されている様子だ。
それは彼の世界の文明から言えば、はるか高度。錬金術に精通する彼にとっても、なかなかよく出来ていると感心するほどの完成度であった。

(さて、これが例の爆弾か……)
彼は爆弾らしきものを注意深く観察し始めた。勿論配線を傷つけた瞬間に、ドカン!、ということもあり得る。
配線には手を触れぬようにして、爆弾を撫でたり、突付いたりするパピヨン。
(とりあえずは唯の『蝶小型蝶高性能爆弾』といったところか…。これは俺の想像の範疇だな)

更にパピヨンの視線は配線をさかのぼって行く。黄色いラインは首輪の内側の裏――首輪内部で最も首に近いところ――に繋がっている。そこにはセンサーらしきものが。
彼の推測では、それは参加者の脈拍や体温などを感知する『生死判断機』。
非常に薄型だが、これもまた精巧な作りであることが一見にして察することができた。
またもう一つの赤いラインは、別の装置に連結している。こちらは……
(主催者どもが遠隔爆破の際に使用するか、もしくは禁止区域内での爆破に用いるか。恐らくは両方だろうな)
外部からの指令の受信機の存在を確認するパピヨン。これも彼の想定内であった。だが。

首輪の要素は、『爆弾』『盗聴器』『発信機』『センサー』『受信機』だけと予測していた彼。
しかし、それに加えて異彩を放つ『謎の筒』。機械的ではないのに、これにもご丁寧に受信機が接続されている。
一体これは何のためにあるのだろうか?

「おい、ウソップ。これを見ろ」
横柄な口調でパピヨンが呼ぶ。何だか意気消沈といったムードのウソップは、ふらふらと彼のもとへ再び近づく。
「な〜に〜?」
やるせなさそうにウソップがやって来る。
そんな彼に対してパピヨンは先程の『謎の筒』を差し向ける。
そして黒色火薬で本音を伝える。
『これが何かわかるか?』
この筒が自分の知らない世界の概念のものだとすれば、餅は餅屋。異世界の住人に聞くのが一番手っ取り早い。
しかし、ウソップはさっぱりわからない、と言いたげな表情。
(期待外れか…)
パピヨンは首輪を手元に戻し、再度考察を開始した。


(首輪の解体が終わっちまった時はひやっとしたが、まだまだ調べねぇといけねぇみたいだな)
パピヨンがまた自分を背にして、分析を始めたのを見て希望を取り戻すウソップ。
彼の目的は少しでも長くこの安全地帯に居続けること。
ポップも気絶したままだ。まだツキはこちらにある!


「………。!! おい、ウソップ!大丈夫か!?」
「なにぃ―――っ!?」


再び大声をあげるウソップ。その視線の先には緑色の衣を纏った大魔道士ポップが。
「何だよ、大声なんか出して…。あっ!さっきの仮面男はどうしたんだ!?」
ポップは途端に周囲を警戒し始める。彼は岩陰に隠されていたので、すぐにはパピヨンに気付かなかったのか。

きょろきょろと周りに気を配るポップ。
彼は岩を挟んだ向こうに居るパピヨンにはまだ気付いていない様子。
そんな頼りない相棒を見てウソップは軽くため息をつく。そして馬鹿なことを考えていた、とちょっぴり寂しくなった。
だが仕方がない、として彼は重い口を開き始めた。(実際にはメモ書きでだが)
『あのな、実はかくかくしかじかで―――……』



パピヨンもポップに気付き二人の元へやって来た。
説明を受けたポップではあったが、一度戦闘を交えたからであろうか、未だに釈然としない表情を作っていた。
ウソップはウソップで一触即発とならないか不安そうにしている。

「説明は受けたようだな」『首輪に関することは全てコレで伝える』
「ああ。で、どうだったんだ、例のそれは」
むすっとした口調でポップは答える。勿論重要な部分は隠して、だ。

「俺はお前等が気に入ったから戦う気はもうない」『解体には成功したがよく分からないものがある』
そう示しながらパピヨンは先程の『謎の筒』を差し出した。

「今後は一緒に行動するつもりだ」『完全に俺の専門外でな もしかしてお前等が知っているかもと思ったんだが』
筒をわたされたポップはそれをじっくり観察し始めた。
別にパピヨンを心から信頼したわけではなかったが、首輪がバーン達と戦うとしたら非常に大きな問題となるのは事実。
それを捨て置くことは出来ないし、ここに解体したパーツがあるのなら見ても損はない。

「………もしかして」
あることを閃いたポップはウソップが説明したときのように、メモにペンを走らせた。
『魔弾銃、っていう物があるんだけど、それは弾丸に呪文を詰めて発射するんだ。
 もし首輪の製作にバーンが一枚噛んでいるなら、これにも呪文が詰まってるかもしれない』
ポップは更にイオという爆裂系の呪文の存在を明らかにした。

パピヨンはこれを読み、二アデスハピネスを操作する。
『成る程 これには爆破の魔法が詰まっている
     そして魔法的な方法による解除に対して反応する と言いたいんだな』

それを見たウソップも何か閃いたのかペンを執った。
『俺の世界には“ダイアル”っていう熱とか光とかを貯める貝殻があるんだ。
 その筒にも、何なのかは分からねぇけど首輪の動力源が詰められてるんじゃないか』

汚い字で殴り書くウソップ。
それ等の案を見たパピヨンは、自分も思いつかなかった二人の発案に少々驚き、そして喜んだ。
頼りなさそうな長鼻の男も、悪趣味な真緑服の男も自分の思った以上に頭が回るらしい。
それから更に三人の筆談首輪会議は進んでいった。

『動力源だとしたらおそらく電気だな』
『それを解除すれば爆弾も停まるかもしれない』
『いや、それはトラップでその配線を切ったらドカンとかもあるんじゃないか』
『じゃあこの筒はセキュリティシステムか』
『それどころかこっちが本命かもしれんぞ。爆弾はフェイクで魔法爆弾という可能性も』
『なんにしても魔法関係であることは間違いないだろ?』
『多分そうだと思うけど。でも俺じゃ解除できる自信はないぜ』
『下手なことはしないほうがいい』
『俺たちの知識じゃ力不足は否めない。もっと魔法に精通した人間が必要だな』 etc。。。


わずか十分足らずの筆談で様々な案が飛び交った三人の会議。
とりあえず、現状では情報が少ないので更なる解析、そして専門家を探す。
これが今後の行動方針となった。

いつのまにか、というかこの会議の間に三人の間にあった不信感は取り除かれていた。
おそらく共通の目的と彼等の有する『知恵者』の感覚がそれを成したのであろう。

「ところで、パピヨン。さっきの話なんだけど……」
「ああ、沖縄の話なら今からする。ちょうどもうすぐ放送だ」『今から話すのは全て盗聴を承知のうえでのものだ』
パピヨンの言葉と文字に対し二人は身構える。
そしてパピヨンは主催者の真意を暴くための持論を展開し始めた。


「まず、本当に主催者どもが沖縄に居るとしよう。
 もしそうであれば、このゲームが始まってからのエリア封鎖で九州が二度選ばれている説明がつく。
 そして、あと少しで行われる三度めの放送でも九州地方、それも熊本か鹿児島が制限されるに違いない。
 何故ならば、こんなところにまだ参加者が残っているのだからな。一刻も早くここから追い出すだろう」

説明を聞き、ふむふむと相槌を打つ二人。

「逆に沖縄が全然関係なく、無意味に除外されたのだとしよう。
 その場合、次も九州が封鎖されたらば、それは流石におかしい。
 奴らはこのゲームのカンフル剤としてこのエリア制限を設けたのだから、もっと人の多い区域を封鎖するはずだ。
 だから次の放送での封鎖区域が関東・近畿などの重要地点だとすれば、奴らが沖縄にいる可能性は皆無となるわけだ」 

ここでポップがはっとした表情をみせる。やや遅れてウソップも同様の反応をする。

(そうか、主催者がこの話を盗聴していることはまぎれもない事実。
奴らがオキナワに居るのなら、できるだけ俺たちをここから遠ざけようとするはず。
そうするには俺たちがその考えを失うように制限エリアを指定しなければならない。
即ち!カントー・キンキが封鎖されたとしたら、それは奴らがオキナワに居ることを意味する!)

(もしオキナワに居ることが証明されたときは、俺がテキトーことを言ってここに残ればいい。
そうすりゃ、激戦区に行かないちょうど良い言い訳になる。
もしキューシューに孤立しても、ポップが言ってた瞬間移動魔法で助けに来てもらえるから大丈夫だ)


(二人とも理解したようだな。余計な説明が省けて非常によろしい。
さてと、もし次の放送でこの近辺が封鎖されたとしたら、おそらく奴らは純粋に俺たちを本州に移動させたいということだ。
そうなれば当面の目的が首輪の件だけに絞られるだけだな)

パピヨンの説明が終わる頃には、もう西の水平線は紅すら霞み、闇に染まりつつあった。
黄昏のなかで彼等はこれからの共通意思――打倒主催者――を確認しあった。


主催者たちに反旗を翻す三人の賢者達。
蒼き宝石―賢者のアクアマリン―に引き寄せられたのか、それともそれが彼等の性なのか。
いづれにせよ、彼等はその智謀をもって次の放送を待つのみである。


【鹿児島県南部/夕方(放送直前)】
【蒼玉の賢者たち】
 [共通思考]1:次の放送を聞いて主催者たちの居場所を推理する
     2:魔法等に詳しい人物を探す

【ウソップ@ワンピース】
 [状態]健康
 [装備]賢者のアクアマリン@ハンター×ハンター
   いびつなパチンコ(特製チクチク星×5、石数個) 大量の輪ゴム
 [道具]荷物一式(食料・水、残り3/4)
   死者への往復葉書@ハンター×ハンター 手作りの作品や集めたガラクタなどの数々
 [思考]1:できる限り鹿児島に滞在する
   2:アイテムを信じて仲間を探す
   3:ルフィ・ロビン・ポップの仲間との合流

【ポップ@ダイの大冒険】
 [状態]健康 (MP中量消費)
 [装備]魔封環@幽遊白書 ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用)
 [道具]荷物一式(食料・水、残り3/4)
 [思考]1:脱出・首輪解除の鍵を探す
   2:ダイ・マァム・ウソップの仲間との合流
   3:フレイザードを早めに倒す

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]中程度の疲労
 [装備]核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス大〜中量消費)
 [道具]荷物二式分(食糧二食分消費) 解体済みの首輪
 [思考]1:放送を待つ
    2:知り合いとの合流 ポップ、ウソップと行動

備考:『謎の筒』の正体は今後の作者さんにお任せします
340 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/26(日) 17:28:34 ID:H2qTB1oU0
>>331-339は無効です
341悪魔始動 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/26(日) 23:04:22 ID:NcUzXv5l0
扉を開け、外界に出る。
黒のメタリックボディが夕日に照らされ、

ウォーズマンが、笑う。

その、黒の顔面に浮かぶ目と口。
人間では表現できないような喜びの表情で、

ウォーズマンが、笑う。

「ウォーズマン……」
ウォーズマンが出てきた扉の奥。
小屋の中から、彼の名を呼ぶ声が木霊する。

「いいかなウォーズマン? そろそろ日も暮れる。日が暮れれば、夜がやってくる。わかるかね?」
「…………」
ウォーズマンから返事はない。
顔を縦にも横にも振らず、ただただその声を耳に入れることしかしない。
笑顔を浮かべたまま、無言。
だが、その無言には『肯定』という意味がある。
それは、声の主も承知していること。
342悪魔始動 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/26(日) 23:04:54 ID:NcUzXv5l0
「では再度確認しよう。ウォーズマン、君がやるべきことはなにかな?」
その問に、今度ばかりは無言ではなく、言葉を使って反応を示す。
「……コロス」
「殺してはだめだ。君が狩るのは、『生きたままの獲物』だ。ではその獲物をどうする?」
「……ツレテクル」
「そうだ。君は『生きたままの獲物』をここにつれてくる。このDIOの目の前に」
声の主――DIOは静かに、落ち着いた声で命じる。
ウォーズマンに、自分自身のための『人間捕獲』を。

「……DIOのために!」

DIOとの出会いは、ウォーズマンに様々なものをもたらした。
『安心感』
『覚悟』
『自由』
『笑顔』
『氷の精神』
そしてなにより、この殺人ゲームの最中、正義超人でありながら人を殺してしまった哀れなウォーズマンに、DIOは『許し』をくれた。
自分の全てを受け入れ、自分を認め、道を示してくれた。
そんな恩人ともいえるDIOに、ウォーズマンがしてやれることといえばなにか。

それは、DIOに従うこと。
正義超人の心を忘れ、『氷の精神』に支配された彼の行動心理は、全てがDIOの手中。
そんなDIOが、ウォーズマンに命じたのは、『人間の捕獲』。
世界には、もうじき夜が訪れる。DIOが行動を再開する夜が。
だが、DIOは重症の身。完全に活動を再開するには、決定的に足りないものが一つある。
DIOが欲するもの――血。
この傷を癒すためには、他の参加者の血が必要。
だからウォーズマンに頼んだ。血の調達を――もとい、『人間の捕獲』を。
夜が訪れて、すぐにでも行動が再開できるように。ウォーズマンに、自分の下に人間を連れてくるよう頼んだのだ。
343悪魔始動 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/26(日) 23:05:25 ID:NcUzXv5l0
二人の関係は、言うならば悪の親玉とその子分か。
はたまた、飢えたハンターとその猟犬か。
もしくは、おつかいを命じた母親とその子供か。

ウォーズマンは、人間を狩り、DIOの下につれてくる。
DIOは、ウォーズマンの帰りを待つ。
さしずめ、狩った人間は食料。ウォーズマンはおつかいに行く子供。DIOは帰りを待つ母。帰ってくる頃には、夕食時といったところだろうか。
やはり、母親と子供の関係が一番近しいか。

「いい子だウォーズマン。では…………ん?」
ふと、扉の外の気配が消えていることに気づいた。

「ア…………アアアアアアアアアアアァァアアアアアァァアアアアアアアアアア!」

その後、小屋からいくらか離れた地点で発された、奇怪な雄叫び。
それは、野に放たれた正義超人ウォーズマン……だった存在のもの。
今は、『氷の精神』に支配された、ただの哀れなロボ超人。

その奇声に、DIOは思わず微笑する。
「フフフ……気の早い奴だ」
今は、もうしばらくここで待機。
母はただ、食事の支度をしておつかいに行った子供の帰りを待つのみ。

とりあえずは、あと数分で告げられるであろう放送に耳を傾けて……
344悪魔始動 ◆kOZX7S8gY. :2006/02/26(日) 23:06:04 ID:NcUzXv5l0
【愛知県と長野県の境(山中の廃屋)/夕方(放送直前)】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:右肘部から先を損失、腹部に貫通傷(出血は止まっている)
 [装備]:忍具セット(手裏剣×9)
 [道具]:荷物一式(食料(果物)を少し消費)、
 [思考]:1、ウォーズマンの帰りを待つ。
     2、参加者の血を吸い傷を癒す。
     3、悪のカリスマ。ウォーズマンを利用する。
 [備考]:廃屋の周囲の血痕は消してあります。

【愛知県と長野県の境/夕方(放送直前)】

【ウォーズマン@キン肉マン】
[状態]精神不安定
[装備]燃焼砲(バーンバズーカ)@ワンピース
[道具]無し(荷物一式はトイレ内に放置)
[思考]1、DIOのため、人間を捕獲しつれてくる。
   2、DIOに対する恐怖/氷の精神
   3、DIOに従う。
345 十  ◆Ksf.g7hkYU :2006/02/27(月) 10:19:24 ID:siNuLL330
巨躯の男がゆったりとした足取りで、しかし集中力を途切れさすことなく歩いていた。
黒い和服を身に纏うその姿、江田島平八である。

真中淳平と黒崎一護から周辺に怪我人などがいないか確認してくれと切に言われ、その他人を気遣う男
意気や良し!と承諾して早数時間。しかし人の気配は一向になかった。

千葉の住宅街、家の中に怪我人が隠れているやもしれぬ。一つ一つ覗き込むが、誰もいない。
縮小された日本であるため家の数は大して多くもなかったが、彼はその全てを虱潰しに覗き込んでいく。
「誰かおらんかー!」
江田島のような男が大声で叫べば、たとえ誰かがいたとしても隠れてしまうに違いない。しかし彼にその
考えがないのも当然といえば当然であった。
江田島平八は男塾塾長、逃げも隠れもしない漢の中の漢である。

そしてこの間二度目の放送が。
「14人の若人の命が奪われたとは実にけしからん!」
読み上げられた死者が全員江田島より年下であるとは限らないが、こういった発言が実によく似合う。真
中、一護の二人のような、未来を負うべき若者の命が消えていったという事実を思うだけで、彼の教育人
のしての、否、漢としての感情が大きく揺さぶられた。
「富樫、雷電、わしはお前たちを信じておるぞ」
『仲間』が以前の『仲間』とは違うかもしれない、そんなフリーザの言葉には微塵も動じず、塾生たちの武
運を祈る。第二放送の前後、富樫は徳島にて竜吉公主のための香を探しており、江田島の期待に背か
ぬ意志のもと行動をしていた。

その後、富樫が江田島に希望を託し死んだことを、このときの彼が知る由もない。

(ふむ、ここには誰もおらんようだな。あの二人のもとへ帰るか)
真中と一護の両氏と別れた場所へ、スピードは変えず堂々と足を戻す。両腕を袖の下で組みながら、そ
の威厳を辺りに撒き散らすかのように。
346 十  ◆Ksf.g7hkYU :2006/02/27(月) 10:20:00 ID:siNuLL330


しかし。
「何故おらん!」
埼玉から千葉にかけてを細かく調べ、江田島が元の場所に戻ってきた頃、あるべき場所に二人の姿はな
かった。真中たちは『周辺』を調べてくれるよう江田島に言ったのであり、まさか千葉を一周、しかもあそこ
まで周到に調べてくるとは思いも寄らなかったのだ。
しかしそこは漢・江田島平八。彼にとっての『周辺』とは千葉まででもまだ狭い。そして流れる時間も常人
より遥かに雄大(悪く言うと緩慢)なのである。
一時埼玉・東京・千葉の県境にいた彼らと会うこともできず、不運にもすれ違ってしまった江田島は、しば
し思案に暮れた後再び歩き始めた。




何となくむず痒さを覚えて立ち止まる。

「わしが男塾塾長、江田島平八であーる!!」

何時間も出さずにいた決まり文句を吐けて、すっきり。周りに敵がいるかもしれぬと危惧することのないそ
の度胸や良し!どこからかそんな声が聞こえた気がした。

実はこの大声でアミバが覚醒したということを、江田島は未だ知らずにいる。アミバもまた、自分を起こし
たのが憎き江田島の大声だとは気付きもしなかったが。





347 十  ◆Ksf.g7hkYU :2006/02/27(月) 10:20:34 ID:siNuLL330
タタタッ、雷電はその軽身を翻しながら駆けてゆく。入り組んだ東京の街を下に見下ろし、ビルとビルの間
を飛び越えて。常人には不可能なこの行為も、男塾三面拳随一の体術を持つ彼には造作もないことで
あった。
(シカマル殿・・・!)
風に揺れる紐のほどけた中華服。確証のない不安ではあったが、古今東西数々の知識を持つ雷電に
とって、その不安は曖昧なものではないように思われた。
このとき、少ない時間をともに過ごしたシカマルだけでなく、男塾の仲間・富樫源次までもがその身を呈し
て戦いに挑み、命を落としている。彼の不安は紛れもない現実だ。
「むぅ!?」
しかし、ここで彼にも思いの寄らぬ奇跡が起こる。

着地したとあるマンションの屋上、
凹凸のある壁に手を付いた際、擦れて出血した親指が描いた一つの形。

「こ、これは・・・」


 “ 十 ”

中国秦の時代、始皇帝の迫害を受けた儒学者たちは、元いた場所からの逃亡を余儀なくされる。今まで
交流のあった儒学者仲間とも離れねばならず、彼らは大いに嘆き悲しみ合った。彼らは別れる際、互いに
『─』と『│』を交差させたものを竹板に書き、交換したという。「今は離れても、互いの道は必ず交わる」、
このような思いがそこには込められていた。
このことより、『十』という形は、遠く離れた者たちが再度交わるという意を持ち、現代でも吉兆の形として
家の門などに飾られている。なお、十字路で接触事故が多いのは、互いの道があまりに交わり過ぎた為
と考えられる。

 民明書房刊『中国吉兆紋章辞典』より


348 十  ◆Ksf.g7hkYU :2006/02/27(月) 10:21:08 ID:siNuLL330
自らの血が描いたその形に少し見入ると、雷電はふとマンションの下を覗き込んだ。
そこにあるのはあまりによく知る和服姿。


「塾長!!!」
何事にも動じぬ拳法使いの雷電ではあったが、このときばかりは心臓の高鳴りを抑えきれない。




「わしが男塾塾長、江田島平八である!!その声、雷電か!?」

確かな再会がそこに。
大声に痺れるこの感触が、あまりに懐かしかった。
349 十  ◆Ksf.g7hkYU :2006/02/27(月) 10:29:33 ID:siNuLL330
【東京都(千葉県の県境付近)/夕方】

【江田島平八@魁!!男塾】
状態:健康
装備:無し
道具:荷物一式・支給品不明
思考:1、「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
      (雷電と合流する)
    2、「日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり」
      (真中淳平と黒崎一護を探す)

【雷電@魁!!男塾】
状態:健康
装備:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
思考:1、江田島平八塾長と合流する
     2、シカマルを探す
     3、知り合い(シカマルの知り合い含む)との合流
350Fobidden Lover ◆h5ZaLoePKU :2006/02/27(月) 17:49:07 ID:SamvswR80
雷電が腰を捩らせて、立ち上がり粘液を滲ませている。
江田島の高ぶりに自分のそれを擦りつけた。
江田島の唇からも熱い吐息が漏れる。その唇を褐色の胸の上で固く尖っている
雷電の乳首に這わせた。
「…ふっ…く…」
くすぐったさに精液が体を捩ったと同時に、江田島はその場所に歯をたてた。
噛み千切りたくなる誘惑を押さえ、歯列をずらすようにして、そっと刺激する。
そして、小さな突起を愛撫し続けながら、悶えるように下腹を打っている
二つの固まりを束ねて握りしめた。

微かな恐怖と激しい興奮が雷電の体を仰け反らせていた。
「…ぁ…っ」
自分のものではない感触に雷電の背筋に震えが走った。
手足が痺れるように動かない。
351Fobidden Lover ◆h5ZaLoePKU :2006/02/27(月) 17:52:22 ID:SamvswR80
江田島は燃えるような息を漏らしながら、手の中のそれを
確かめるように揉みしだいていたが、ゆっくりとしごき始めた。
二つの高ぶりを攻め上げる手の巧みな動きと、
時折激しく脈打つ江田島の雄芯の熱さに
雷電の下腹の奥が爛れたように熱くなる。
雷電は羞恥から懸命に声を噛み殺し、胸の上を愛撫し続けている江田島を
抱き締めていた。

そして・・・江田島平八は、絶頂のまま死んでいった。
352作者の都合により名無しです:2006/02/27(月) 17:53:17 ID:e8ABgKCC0
すぐ調子に乗るアホは困る
353Fobidden Lover ◆h5ZaLoePKU :2006/02/27(月) 17:54:56 ID:SamvswR80
【雷電@魁!!男塾】
状態:逝ってる
装備:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
思考:1、江田島平八塾長と○○する
     2、シカマルを探す
     3、知り合い(シカマルの知り合い含む)との合流

[江田島平八@死亡確認]
残り80人
鬱蒼とした林の中に降りた陰。
サラリとさせた髪を襟元で切り揃えた一人の男。ブローノ・ブチャラティ。
木の葉擦れの音にさえ気を遣りながら一時の休息を取る。微かに聞こえる鳥の声。獣の息遣い。
シューッ。――紛れて消える"ジッパー"を閉じる音。同時に走る痛みには、眉を僅かに顰めただけだった。
男を包み込む独特のファッション。肩口、袖口、身体の彼方此方に備え付けられた数々のジッパー。
然しながら、この瞬間男が閉じたのは服を飾るためのジッパーでは"なかった"。
――"開いた傷口を閉じる為のジッパー"
ブチャラティの精神のヴィジョン、"スティッキー・フィンガーズ"。
異形のペルソナを持つ彼の分身(スタンド)の拳に触れた物には、自由自在にジッパーを取り付けることが出来る。
ブチャラティに与えられた能力。矢でこの身を貫いたときから。目覚めた能力。
スタンドの拳が身体に触れ、傷口を塞ぐごとに、衣装だけでなく、身体にまで目に見えるジッパーが増えていく。
そう、目に見える―― 傷口の応急処置を終えたブチャラティは、小さく、小さく呟いた。

「ガラには俺のスタンドが"見えていた"。
 ヤツは優れた暗殺者ではあるが、スタンド使いでは"ない"
 理由は今の段階では分からないが、けれども、俺の知っているものとは"細かな部分で違っている"。
 ――スタンドの"ルール"」

本来ならば、スタンド使いでなければ、スタンドを見る事も不可能だ。けれど、この場所では、其のルールが適用されぬ。
傷口を閉じたジッパーも、"或いは他人からも見えるかもしれない"――見た目の不自然は、怪しまれる原因となる。
万全には万全を期し、傷口は服で隠し、其れでも隠せぬ傷の上には布を巻いた。
全ての準備が整ったのを確認し、立ち上がる。
松島の海辺を抜け、南に向かった先に現れた小さな林は、神秘的な静けさに包まれていた。

――唯、一点、眼前に立ち塞がる少年の姿を除いては。

「ブローノ・ブチャラティだな。ちょっとツラ貸して貰うぜ」
紺の学ランを肩に載せた、長身の少年。開いた腹元には、ぎっちりとさらしが巻き付けられている。
肩口に乱暴に抱えあげただけの、長い長い日本刀――この日本刀に、ブチャラティは、見覚えがあった。
掌を顔の高さに広げて、微かに鼻を鳴らす。腰さえを持ち上げずに座ったまま。
顔の端々に余裕さえ覗かせて、静かに少年を睨み返した。

「ツラ、ね。随分と、遠まわしな言い方をする。ジャパニーズ・ヤクザの"ギリとニンジョー"か?
 何にしろ"オレ達"ならそう言う事は言わない。唯、任務を遂行する」

さらしに日本刀。現れた少年に、ブチャラティは遠く噂に聞く日本の"ヤクザ"の印象を得た。
対して自分は、胸に情熱を抱くイタリアン・ギャング。どちらも無頼者であることには、変わりなかった。
視線を交わした二者の間に緊張が走る。
言葉を一方的に投げかけるブチャラティに対して、般若の如き表情を固めた少年――桑原和馬の返答は、無かった。
握り締める刀は斬魄刀。今となっては仲間の、無念を抱いて死んだガラの唯一の形見。掌に力と熱が、篭る。

「アンタ、相当に"怖い顔"をしているぜ?―― 強い怒りを感じる。何をしにきたとは"聞けない"な。
 まあ、"職業柄"、そう言う目をした輩に付け狙われるのは、"仕事の一環"ではあるんだがね」

「一つだけ確認しとくぜ」

沈黙を保っていた桑原が口を開く。依然としてブチャラティの言葉には、答えない。
桑原和馬にとって、ブチャラティは完全なる殺人者。霊視による確証もある。言葉を交わす必要は本来皆無。
けれどだからこその最終確認だ。
静かに燃える憤怒の引き金を、全てを破壊する復讐の留め金を、相手の言葉で解き放つために。

「ブチャラティ。ガラを殺したのは、アンタだな」
ギャングにとっては予測された名前。少年の抱える白刃を見た瞬間に連想された男の名前。
頷く必要はなかった。知らぬ振りを通す道もあったろう。余計な争いを、諍いは避けて走るのが賢者の道。
けれど、ブチャラティは賢者ではなかった。――情熱を秘めたイタリアン・ギャング。
自らの罪をを否定することは、"誇り高く散って行った男の魂"を侮辱することになる。故に、短く、答えた。

「ああ。俺だ。否定はしない」

肯定の言葉が、戦闘開始の合図。


----------------------------------------------------------------------------------------------
「スティッキー・フィンガーズ!!!!」
力任せに振るわれた斬魄刀の一撃――ギャングを真一文字に両断する筈だった、必殺の一撃は、
突如虚空から現れた異形の戦士の拳に撃ち払われ、予想だにしなかった軌道を描く。
途端、――ドグッ!
僅かに上体を崩し、開いた腹に向けてブチャラティ本体が放った前蹴りを受けて、吹き飛ばされる桑原の身体。
けれど、所詮人間の前蹴り。霊力を腹に纏えば耐えれる程度の攻撃だ。長身を屈めた姿勢のまま、ギャングを睨み付け叫んだ。


「ちッ。御仲間かよ……。喧嘩はタイマンが華、ってェのもガイジンにゃあ理解できねェ精神なのかね!
 つくづく貴様みてえな姑息な野郎に殺られたガラが浮かばれねェぜ!!」


ブチャラティを守るように立ち塞がる異形の戦士――、
瞳もなく何処か機械的な"スタンド"の立ち姿は、桑原和馬が良く知る妖怪の其れとも、また異なっていた。
感じるのは霊力のようで、霊力とは異なる何か。理解したのはあの戦士の恐るべき怪力と速度。
人間レベルの動体視力しか持たぬ桑原がスティッキー・フィンガーズの拳を回避出来たのは、
類稀なる霊感と、失われたスタンドの腕のためだった。あの高速の拳を連続で撃たれれば、回避しきるのは――不可能。
ブチャラティとスティッキー・フィンガーズは並ぶように立ち、地に伏せ掛けた桑原を見下ろした。


「文句と愚痴を聞くだけで良いのならば、早く済ませろ。オレはとても"忙しい"が、ちょっぴりの"慈悲はある"。
 そのまま立ち上がらなければ、傍を通り抜けさせて貰う。ガラとは違って、"殺す必要のない男"だからな」
「野郎ぉッ!」
挑発の言葉に頭に血を上らせ、ブチャラティに、"スタンド"に向かって突進する。
横から薙ぐように切り払った斬魄刀も然し、直線的過ぎる軌道――、的確に撃ち出されたスタンドの拳が、先程の光景を再現する。
斬魄刀の軌道を脇に逸らし、直後にブチャラティの脚が、容赦なく腹を蹴り上げる。先程と同じ箇所、桑原は苦痛に顔を歪め――

「ぐぼ……、あ……


 ……なんて、なァァ!」

苦しむ素振りを見せたのも束の間、舌を出しながら眼前のブチャラティを睨む。
斬魄刀が逸らされるのは予想された事態。ブチャラティは知るまい。自分の武器が、目に見える日本刀の他に、在る事を!
空手の筈の左掌に、意識を集中させれば生みだされる、霊気の刃――


「油断したな、ブチャラティ!伸びろ、霊剣ッッ!」
「…………!?」

言葉と同時、ブチャラティの身体に向けて金色の刃が伸びる!霊気を練って作り出す桑原の必殺の刃、霊剣!
密接したこの至近距離、如何に高速の"拳"を持っていようとも、避ける事は不可能。
衝き伸ばされた殺意の刃は、コンマ以下の刹那の間に、ギャングの身体に到達し、そのまま――


ざ ぐん!


                             ブチャラティの上半身と下半身を、真っ二つに引き裂いた。
――――ジジジジジジ

「な………、んだとぉぉぅ!?」
目前で生じた事態を目にしては、流石の桑原和馬も声を荒げずには居られなかった。
走る剣閃はギャングの身体を分断し、確実な死を与えた筈だった。
けれど、ならば今目の前で起こっている異様な現実は如何に説明するのが望ましい?


殺した筈のブチャラティは"生きていて"、何時の間にか自分の両手首から先が、"斬り落とされていた"



そもそもが最初からおかしかった。両断したのに鮮血は飛び散らなかった。切断したのに悲鳴は上がらなかった。
――何より、其の切れ目。
不可思議な、銀色めいた、生き物の歯のような、金属の連なりが、切断面に沿うように並んでいる。

「"ジッパー"で身体に切れ目を"入れておいた"
 貴様の武器……"日本刀"は片腕で扱うようには、作られていない。あのガラでさえ"両手で扱っていた"からな。
 逆の手に何かあると"思っていた"」

――――ジジジジジジ
ブチャラティの声、ジッパーの閉じる音。
下半身から切り離した筈のギャングの上半身は、静かに、けれど確実に元の人間の形に繋ぎ合わされていく。
桑原の失われた腕にも、ジッパー。真下に視線を流せば、剣を握ったまま転がる腕にもジッパー。
狐に抓まれたような釈然としない気持ちを払い除けるように、桑原は叫び声を上げた。
「うおおおおおおお……ッ!
 貴様、ブチャラティぃ!俺の身体に、一体全体何をしやがったぁッ!?」
「手癖の悪い腕には少し、"黙って貰った"だけさ。
 素直にオレの質問に答えれば、身体は元に戻してやる」

澄ました顔で要求を突きつけるブチャラティの腹を蹴りつけようと、桑原が乱暴に脚を振り上げる。
ドゴゥ!然し、桑原の攻撃はギャングに到達することはなかった。
ボディーガードのように傍に控えたスタンドの拳を合わせられれば、桑原の視界はぐらりと歪む――
「な……」

たった"其れだけ"で、桑原の足は身体を支えることは出来なくなった。"ジッパー"が膝から腿にかけて走っていた。
完全に地面に膝を突く姿勢になった桑原を見下ろし、ギャングの声が響く。


「貴様のために言っておくが、これ以上は抵抗するな。"ジッパー"でバラバラになりたくなければな……。

 聞きたいのは"仲間"のことだ。
 仲間の能力、構成、ゲームに乗っている人間かどうか、支給武器―― 全て答えて貰う」


――――ジジジジジジ
武器は奪われ、立つことも適わない。完全なる敗北、其れでも"仲間"のことを話すわけには行かなかった。
桑原の心中を知ってか知らずか、ブチャラティは言葉を続けた。
振るわれるスティッキーフィンガーズの拳と共に、桑原に刻まれるジッパーの数が、徐々に増えていく。



「答えろよ。

 "質問"は既に、"拷問"に変わっているんだぜ」
【福島県北/午後】

【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:ガラの右腕をジッパーで固定した。ただし、スタンドの右腕は復旧不能。
     全身に無数の裂傷。とりあえずジッパーで応急処置をした。致命傷ではないがかなりの重症。
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式 スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考]:
1『主催者』は必ず倒す。そのために『仲間』を集め、『首輪』の解除方法も見つける。
2 死者の分まで『生きる覚悟』『も』決めた。
3 桑原和馬に「質問」する。可能ならば、殺害する必要はないと考えている。

【桑原和真@幽遊白書】
 [状態]:"ジッパー"により、両腕手首から先、右足膝から下が分断された。
      他にも身体に数々のジッパーをつけられている。
      怒りと悲しみ。ブチャラティのいる位置がなんとなく分かる。
 [装備]:斬魄刀(腕と一緒に転がっている)
 [道具]:荷物一式
 [思考]: 
1:ブチャラティを追跡、怒りに燃えている。ガラの仇をとる。
2:ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
3:ゲームを脱出する。
4:死んでも仲間のことは喋らない。
362狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:15:01 ID:HfuiSTDe0
ゴンは、その走りを止めない。
――止まれ!
ゴンは、その進行をやめない。
――進むな!
ゴンは……
――シカマル君ッ……!
必死に、自分の思考とシカマルの言葉を葛藤させながら。

脳裏によぎるは、カイトの最後の姿。
突然の奇襲、切断されたカイトの腕、なにもできなかった自分。
そのときの光景が鮮明に蘇り、たった今の状況と重なる。
桃白白から逃げ、シカマルの荷物を託され、雷電という人物の下に届ける。
与えられた使命の代償は、シカマルの身。
ゴンは、それを絶対に遂行させなければならない。
ほんのちょっとの間とはいえ、共に戦った仲間の思いを叶えるため。
非常の決断をしなくてはいけないことなど、わかっていた。
わかっていた。わかっていた。わかっていた。

わかっているはずなのに、ゴンの足は止まった。
(オレは……)
自分は、馬鹿なことをしている。自分は、シカマルの願いを踏みにじっている。
(でもオレは……)
ハンターとしても、失格だと思う。これしきの非情に、耐えられないのだから。
(シカマル君を……)
カイトという前例があることもあったが、それよりなによりも、
(……助けたいんだ!)
それが、『ゴン』という少年だったから――
363狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:15:33 ID:HfuiSTDe0
「まさか、自分から舞い戻ってくるとはな」
逃げようと思えば逃げれてたかもしれない。シカマルの頼みも、達成できたかもしれない。
それなのに、いつの間にか足は逆の道を辿っていた。
まだ微かに焼け焦げた臭いのする森の中、再び相対するは、一流の殺し屋。
「……シカマル君は……どうした」
ゴンが発する、静かな言葉。ゴンは、なんのために道を逆走したのか。
それは、桃白白を食い止めていたシカマルを助けたかったから。
カイトのような目に、あわせたくなかったから。
そんなゴンの思いをぶち壊す存在が、今、目の前に。
「ふん、あの小僧なら私が殺した」
桃白白の口から、そう、短く発せられた。
「なかなかしぶとかったがな」
桃白白の言葉が、ゴンに重く圧し掛かる。
「心配するな。貴様もすぐに同じところに送ってやる」

「シカマル君が……死んだ?」
――また、助けられなかった?
「シカマル君が……死んだ?」
――カイトのときと、一緒だ。
「シカマル君が……死んだ?」
――オレが、すぐ引き返していたら。
「シカマル君が……死んだ?」
――オレは……また、助けられなかった?

「……」
(ふん、よほどショックのようだな)
桃白白は、先の戦闘でこの少年の実力というものを認めていた。
だが今はどうだ。仲間の死に動揺し、ただ言霊を繰り返しながら呆然。やがて言葉すらなくしてしまった。
目の前の獲物は、今いったいどんな心境なのか。
(そんなもの簡単だ。『絶望』と『恐怖』。この二つのみ)
棒立ちの姿がその証拠。仲間が死んだことを知って、もはや戦闘意欲は皆無。
絶望に支配され、あとは殺されるのを待つのみ。桃白白はそう考えていた。
364狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:16:12 ID:HfuiSTDe0
しかし、それはあくまで『弱者』に適用される考え。
情に熱く、それなりの実力を持ち合わせている者なら、その怒りで復讐してくるだろう。
ゴンはそんな兆候こそ見せなかったが、明らかに後者のタイプ。
それを、桃白白はすぐ知ることになる。

「――――――――!!」

それは、声にならない叫び。
シカマルの死に悲しみ、また救えなかった不甲斐ない自分に嘆き、殺した桃白白に怒り、
ゴンは、叫んだ。

そして、異変が起きた。
(な……!?)
それは、夢か幻か。
『凝』を使えないはずの桃白白でもはっきりと見える、ゴンの周りの空気の変化。
それは、流れ出るようなオーラの光。それも、先の戦闘がなかったことに思えるような莫大な量。
それを見て、桃白白は感じた。以前孫悟空と戦ったときにも感じた、嫌な予感を。
プロの殺し屋としての直感。人間としての防衛本能。その両方が、プライドの高い殺し屋に「逃げろ」と訴えかけてくる。
(逃げる? 獲物が目の前にいるのにか? 馬鹿な)
桃白白が選んだのは、プロの殺し屋として当然の選択。
たかが嫌な予感如きで、こんな小僧から逃げ出すなど、問題外もいいところだ。
(そんなに嫌な予感がするなら、さっさと殺してしまえばいいではないか)
内心は冷静なように見えたが、このとき桃白白は酷く焦っていた。
気を消耗していることなど考慮せず、攻撃手段に自分が持つ一番頼りになる必殺技を選択させるぐらいに。
なにが彼をここまで焦らせたのか。それは、彼自身が気づかぬうちに感じていた『恐怖』の仕業も知れない。
365狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:16:50 ID:HfuiSTDe0
「どどんぱ!!」
思い立ったら速攻で。
桃白白の指先から放出された必殺の一撃は、目の前の不気味な獲物に伸びていく。
狙いは人体の中心部分、心臓付近。直撃すればその威力に貫通、絶命。防ぐことは叶わず、命を拾うなら、避けるしか手はないだろう。
しかし、ゴンは桃白白の予想に反して微動だにしなかった。
その姿は、都合がいいように解釈するなら、あきらめ。どどん波の一撃に自信を持っていた桃白白も、そう思った。
と、ここでゴンが防御の構えを見せる。しかしそれは、両手の平を重ね合わせ、前に突き出しただけのあまりに貧弱な盾。
もちろん、桃白白のどどんぱは、ゴンの薄い手の平など簡単に貫通してしまうだろう。
だが……

「硬」

その一言で、ゴンの防御力は一変する。
溢れ出るオーラが瞬時に手の平に集中、ゴンの手の盾を覆っていく。
見るからに無謀といえる、お粗末な防御。『硬』を知らない桃白白から見ればそのとおりだった。
しかし、どどん波がゴンの手の平の盾に直撃した、そのとき。桃白白は驚愕する。
「――――なぁにぃ!?」
手の平もろとも貫通し、ゴンを貫くかと思われたどどん波は、あまりにも予想外の結果に。
直線状に伸び続けたどどん波はその激突で貫通――ではなく拡散。
四方八方に分散し、その一つは地面にぶつかり土煙を上げる。
(馬鹿な! ……どどん波があれしきのことで防がれたのか!?)
ゴンの身体は、土煙に隠され確認することができない。
だが、もしも土煙が晴れたときゴンが変わらず立っていれば、そういうことになる。

一点にオーラを凝縮し、その全てを防御に回す、念能力の使った防御法『硬』。
それは、使い手しだいではバズーカ砲の一撃すら無傷で済ませることができる。
疲弊した桃白白の放つどどん波など、今のゴンの『硬』にかかれば、防げないものでもない。
それを、桃白白は知らない。
366狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:23:58 ID:HfuiSTDe0
「最初はグー」
土煙が晴れ、次第にゴンが姿を見せる。
このときの桃白白は、追い討ちよりもまず、制止の確認を優先させた。
どどん波の直撃を受け、無傷でいられるはずなどないと思っていたから。
「じゃん……けん……」
しかし、姿を見せたゴンは桃白白の予想を裏切り、立ったままだった。
それも、腰を深く落とし、右手拳を左手で握りながらの、溜めの姿勢で。
その構えを、桃白白は知っている。先の戦闘で知ったばかり。
だが、気づいたときにはもう遅い。

「パーーーーーーーー!」

ゴンが大きく開いた右手拳。そこから放出されるオーラの衝撃波。
その規模は、直線状に細く伸びるどどん波とは違い、巨大な岩でさえ覆い隠す、紙で包み込むような大きさ。
わずかに横に避けようとした桃白白だが、これを避けるには動作が足りなかった。
「ぐ……ふぉあああああああああ!!?」
衝撃で後方に吹き飛ぶ桃白白。彼は哀れに回りながら空中に舞い、真後ろの木に激突した。
「がっ……ぐ……」
それでも意識を保てていたのは、執念のおかげか。
桃白白は一度、孫悟空という少年に敗北をきしている。目の前の獲物、ゴンは、孫悟空ほどとは言わずとも、かなり幼い。
また子供に負けるなど、桃白白のプライドが許さないのだ。たとえ、どんな理由があろうとも。

転がり痛みを訴える身体を執念で動かし、桃白白はなんとか立ち上がる。
しかしそれにはかなりの時間を要した。いつの間にかゴンは桃白白の目の前に立ち、敵意をむき出しにした目で睨みつけていた。
(ひ……)
その、威圧感。
信じられないことに、桃白白は恐怖していることを自覚してしまった。
プライドも一時忘れ、孫悟空と同じような小僧に、不覚にも恐怖してしまったのだ。
367狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:24:30 ID:HfuiSTDe0
「もう、人殺しはしないって約束しろ」
――とどめの一撃がくる!
そう覚悟した桃白白だったが、ゴンは彼に信じられない言葉をかけていた。
(な……に……)
この瞬間、この言葉で、桃白白は悟った。

この小僧――――あまい。
先ほどの桃白白には、攻撃をくらい木に激突、そこから起き上がるという、決定的な隙が生じていた。
それなのにゴンといったら、ただ近づくだけで追い討ちをかけたりもしない。
さらに、先ほどの言葉。
もうゴン自身にもとどめを刺すほどの力が残っていないのか……いや、違う。
(こいつには、私を殺す気がない。こいつは、人を殺せないあまちゃんだ!)
おそらくは、このゲームにも乗っていないのだろう。
桃白白に戦いを仕掛けたのは、ただ仲間のピンチを救いたかったがため。
これほどの力を持っているにも関わらず、ゴンは殺人という行為とは、無縁の参加者なのだ。
――そう、桃白白は確信した。
――確信した上で、桃白白は一つの手段に出る。
――そのために、プライドも甘んじて捨てよう。

「わかった! もう人殺しはしないと誓う! だから、だからどうか許してくれぇぇ!!」
泣きださん勢いで懇願する桃白白。
人を殺せないお人よしなど、これだけでイチコロ。
あとは、隙をついて殺せばいい。
――そんな、悪党の常套手段ともいえる桃白白の反撃の策。

「よかった。それなら……」
368狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:25:31 ID:HfuiSTDe0
(ふん! まんまと引っ掛かりおったは!!)
勝機がきた! と意気込む桃白白だが、彼は知らない。
――こういった手段を用いた悪党には、必ず決められた結末が訪れることを。

「ぶっとばすだけですむ」

「え……?」
ゴンの軽い一言。桃白白の一瞬の反応。
桃白白が見誤ったのは、一点。
ゴンは確かに人を殺せないあまさを持っていたが、悪党を許すあまさは持ち合わせていない。
その一点を見誤り、桃白白は顔面を歪めながら宙を飛ぶ。
シカマルの無念が込められた、その拳で――




桃白白撃退後、ゴンが取る行動は決まっていた。
シカマルに言われたとおり東京へ向かい、雷電という人物に仙豆を届ける。
それは、シカマルたっての希望。彼はもう死んでしまったが、ならばなおさらこの任務は遂行しなければならない。
過酷なハンター試験を突破した、プロのハンターであるゴンにとっては、朝飯前な任務。
しかし、彼の歩みは遅い。

(ちょっと……無理しすぎちゃったかな……?)
喋ることすら辛くなっている。
ゴンのオーラは、桃白白との一戦目で大多量消費してしまった。本来なら、満足に念が使える状態ではないほどに。
それでもゴンが桃白白との二戦目で念を使えたのは、シカマルの死が原因。
あまりにも無力だった自分。カイトのときと同じ過ちを犯してしまった自分。シカマルを殺した桃白白。
シカマルの死に関する様々な要素が重なり、それは怒りと同時にゴンのオーラを絞り出していた。
その規模といったら、制御などできるものでもなく。怒りのままに放出しすぎたオーラは、ゴンの身体を動かせなくするほどの疲労をもたらした。
それでもゴンは歩みを止めなかった。ハンターとして、託された者として、シカマルの思いを届けるため。
369狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:26:35 ID:HfuiSTDe0
もう一〜二時間は歩いただろうか。
ゴンが目指す東京は未だ見えてこず、歩みは遅くなる一方。
(届けなきゃ……仙豆を……シカマル君の……仲間に)
ゴンの頭に、仙豆を使う、という考えはなかった。
あれだけ傷ついていたシカマルが使わず、命までかけて守った重要アイテム。
それを、容易く使うことなどできはしない。
自分の体力を信じ、一刻も早く仙豆を……

(あ……)
ふと、
(……れ?)
歩みが、止まった。


(はは……参ったな、もう動けないや)
桃白白戦に力を使いすぎた。失った体力は戻ってこなく、歩き続けた無理がたたって減る一方。
地に倒れこんでしまったゴンは、その意識すらも失い始めていた。

(ごめん……シカマル君……仙豆届けるの……ちょっと遅くなる)
倒れてもなお、ゴンに仙豆を使用する意思はない。
無謀な力の放出が招いた己の失態を嘆きながら、今は目を閉じる。

(動けるようになったら、すぐ東京に行くから……ごめん、おやすみ)
今は体力を回復させることに努めよう。
悔しいが、今の自分ではそれしか仙豆を届ける方法がない。

今は亡きシカマルに謝罪しながら、ゴンは一時、身を休める――
370狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:27:31 ID:HfuiSTDe0
 
『ゴン! おいゴン!』

(え……?)

意識を閉じようとした矢先、聞こえてきたのは友達の声。

『なにこんなところで寝てんだよ。風邪引くぞ』

(キルア……なんで……?)

うっすら明けられた目から見えるのは、ぼぅっとした、幻影のような友達の姿。

『まったくしょうがねーなゴンは。そうだ風邪ひかねーようにオレがこれで……』

友達が、自分のためになにかを取り出そうとしている。
毛布でもかけてくれるのだろうか?

(キルア……キルアだ……はは、キルア……キルア……?)

遠のく意識のなかで見た友達の優しさは、本物。
では、このぼぅっとした姿しか映さない視覚が訴える異常はなんなのか。
 
371狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:32:30 ID:HfuiSTDe0

 
(キルア……?)


『これこれ。これさえあれば風邪なんてひく心配ねーぜ』



 チャキッ



(……………………え?)




 ドンッ



 
372狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:33:07 ID:HfuiSTDe0
「くくく……楽になれたかぁ? あの世じゃ風邪をひく心配なんてないからなぁ。せいぜい感謝しろよぉ、このアミバ様に」

男の足元に転がるのは、彼の持つ銃で額を撃ちぬかれた、少年の死体。
そして男の正体は……少年が生前まで、大切な友達と勘違いしていた――天才アミバ。

「目覚めて早々、こんな絶好の獲物に出会えるとは……天はやはり天才の味方か? しかしこのガキ、ろくなものを持っていないな」
アミバが少年の死体から物色したのは、二人分の荷物と、支給品と思わしきボール球と、一粒の豆。「ちっ、はずれか」とアミバがなんの気なしにその豆を口に放り込む。
するとどうだ。

「うおお!?」

アミバの身体が、急に活力を取り戻していくではないか。
しかも一瞬。江田島戦で受けたダメージも完全に癒え、その予想外の効果に、アミバは歓喜の咆哮をあげた。

「っふふ……ふははははは〜!! いい! やはり時代はアミバ様のもののようだな!」

強力な武器は得られなかったが、大きな収穫を得られた。
この分なら、江田島に復讐する日もそう遠くない。
いや、むしろ今すぐでもいい。今、ツキは天才アミバの下にある。
アミバの笑いが止まらない。

少年の死体はその場に放置され、アミバは去る。次なる参加者を殺すため。そして、江田島に復讐するため。


あとに残されたのは、額を撃ち抜かれた少年の死体。
自分の身を投売り、一心不乱に仲間の思いを届けようとした健気な少年に、この殺人ゲームの現実はかくも冷たく、非情な結末を与えた。
373狩人の意思は、非情の舞台で爆発し ◆kOZX7S8gY. :2006/02/28(火) 13:36:47 ID:HfuiSTDe0
【茨城県/林/夕方】

【桃白白@DRAGONBALL】
 [状態]:気絶。気の消費大
    :顔面・腹部・内臓に深刻なダメージ
    :重度の疲労
 [道具]:荷物一式(食料二人分、一食分消費)
    :ジャギのショットガン@北斗の拳(残弾20)
    :脇差し
 [思考]1:無理はしないが、可能ならゴンを追い仙豆を奪う
2:参加者や孫悟空を殺して優勝し、主催者から褒美をもらう


【埼玉県/夕方】

【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:健康(仙豆により回復)
 [装備]:ニューナンブ@こちら葛飾区亀有公園前派出所
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)、ゴンの荷物一式(食料一食分消費) 、シカマルの荷物一式(食料一食分消費)
    :テニスボール@テニスの王子様(残り2球)
 [思考]:1、皆殺し
     2、(可能なら)江田島にも復讐する

 [備考]
※アミバは第二回目の放送を聞き逃したため、死者、死者数等の情報を持ちません


【ゴン・フリークス@HUNTER×HUNTER 死亡確認】
【残り80人】
374作者の都合により名無しです:2006/02/28(火) 15:30:37 ID:TMoa41rl0
>>350-353は無効です
375乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:29:22 ID:XUlsO4cF0



孫悟空は走る。走る走る走る。山中をひたすら走る。


得体の知れぬ何か。
それが彼を追いかける。それが彼を追い立てる。

普段の天真爛漫な面影はどこにもなく。
今の彼の心は死神に取り憑かれたように、絶望していて。紊乱していて。


彼は胸中で何度も自問自答していた。


――オラは一体どうしちまったんだ。
  オラは一体どうすりゃいいんだ。
  オラは一体どうなっちまうんだ。―――


それはまるで呪文を唱えるようで。
もし心の中を覗けるのならば、それはきっと、凄惨且つ残酷な光景だろう。

「うわぁあぁぁああぁあぁあっ!!」

絶叫は心の苦痛の鎮静剤のつもりなのか。
それとも己の無意識下の贖罪なのか。

しかし、今は走るだけ―――――
376乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:30:20 ID:XUlsO4cF0

     ・
     ・
     ・
     ・

大空翼は駆ける。駆ける駆ける。木々の間を駆けて行く。


彼が追うのは孫悟空。あの謎の男、孫悟空。
彼に不可解な点があっても、あの身体能力は捨てがたい。

そして何より………友のため。
共に球を蹴った戦友の、今は亡き誇れる戦友の情報を得るために。


彼は駆ける。未来のチームメイトを追って。かつてのチームメイトの影を追って。



それにしても何故二人がこんなことになっているのか、これでは誰も分からないだろう。
彼等の身に何があったのか。
それを説明するには、2時間ほど時を遡らなければならない――――――――――――――――


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


二度目の放送がもうすぐ聞こえるといった頃合。
彼は二人の男と向かい合っていた。
学ランを着た大柄な青年、空条承太郎。サッカーをこよなく愛する少年、大空翼。
悟空は自分でも何が起きたのかは分からなかったが、二人を傷つけたという事実だけ認識していた。
377乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:31:29 ID:XUlsO4cF0

「す、すまねえっ!本当に悪かったっ!」
詫びを入れる悟空。額を地面にこすり付ける勢いで頭を下げる。
翼はそれをチラチラ見つつ、承太郎の腕を心配する。

正直なところ、翼は悟空の豹変ぶりに困惑していた。
しかし承太郎の骨折の応急処置をしていた姿の一生懸命さは、どうみても本物。
その時からの彼にはそれまでの邪悪な雰囲気が感じられなかった。
そう、彼は僕等とのプレイの中で、ルールお構いなしのラフプレイヤーから優良フェアプレイヤーに生まれ変わったんだ!
と言いたいところであったが、そんな上手い話がそうそうあるとは思えない。
彼がなぜこうなったのかを聞きたい、そうしてから自分のイレヴンに加わって欲しい。そう思っていた。

承太郎も翼の考え(前者のみだが)とほぼ一緒であった。
自分をはるかに越える実力者が戦闘を仕掛けてきたことは非常に『危険』なことだ。
悟空が再び急変し、襲い掛かってこないとは限らない。
重要なのは『結果』だけではなく、『過程』も、である。
彼の冷静な判断力は、厄介なクレイジーを抱えていても正確に作動していた。


「さて、悟空。一体どういうことなのか…、てめえが俺達を襲ってきた理由を……話してもらおうじゃねえか」
承太郎が『凄み』を利かして、悟空に疑問をぶつける。
その姿は怪我人とは思えないほど堂々としていて、負い目のある人間ならきっと全てをゲロしてしまうだろう。
378乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:32:58 ID:XUlsO4cF0

だが悟空は自分に何が起きたのか、それを理解していなかった。
何故自分が二人を襲撃したのか分からない。ただただ罪悪感だけがある。
とは言っても彼等もそれでは納得するまい。
とにかく自分の身に起きたことを全て話そう。もしかしたら彼等が原因を閃くかもしれない。

そうして悟空は重たい口を開き始めた。
「オラはこの世界に来て――――………」


承太郎はその話の中から再度、DIOの存在を確認する。そしてまたその危険性を。
(DIOの『肉の芽』かと思っていたが、そうではないらしいな。
       なら、吸血鬼化……愚問だな。これだけ日光を浴びていて吸血鬼なわけが無い…。
                              DIOは悟空の件に関係無いということか?)
思考をめぐらせる承太郎。しかし結論には至らず。

(へえ〜、そのルフィ君もすばらしい選手になるだろうな!手足が自由自在に伸びるならGKがいいかな?)
………翼の考えにもはや言うことはあるまい。

そして悟空の話は続く。


「―――……。それで何だか気分悪ぃまま起きちまってよ。それで……。 ? ?
 あれっ?何でだ?やっぱりこの辺からよく思い出せねえ……。どうしちまったんだ?」
379乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:33:49 ID:XUlsO4cF0
  
悟空の頭上で疑問符が踊りだす。
ここからどうしても記憶が思い出せない。
もどかしい。ここで何だかとても大変なことが起きた気がしてならない。

承太郎も翼もここで思案が停止してしまう。
しかし承太郎はこの時何か決定的な事態が発生したのだと推察する。
その事態とは。それが最も重要な『過程』に違いない。

そして承太郎が悟空に詰め寄ろうとしたとき、二度目の放送が始まった………



フリーザの嫌らしい響きの声が脳を揺らす。非常に不愉快な気分になる。

『……と思います。ハーデスさん、よろしいですか?……』

ここで頭中の声がハーデスの重厚なものに切り替わる。
この冥府の香りの漂う旋律が、脱落者の名を淡々と読み上げ始めた。


『――…馬瀬人、日向小次郎、桜木花道、三井寿…――』


日向小次郎の名に翼は慟哭する。その嘆きはやはり少年のそれ。
しかしここで悟空にも異変が起きた。
380乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:35:14 ID:XUlsO4cF0

(……桜木花道……)

聞き覚えのある名。だが何処で聞いたのか。何者の名なのか。それは分からない。
必死で記憶を辿る悟空。

(オラはこいつの名前をぜってえどこかで聞いている! どこだ?どこだ?どこだ?どこでだ!?)

心で叫ぶ悟空。
すでに放送などは聞いてはいない。
何とかして、この者と自分の接点を探らなければ。
そうしなければならない。そんな気がしてならない。

そして孫悟空は、わずかな光明を発見する。


ざあざあと深夜のテレビの砂嵐のように、光景が甦る。
それは本来なら見るだけで、聞くだけで気分が悪くなるもの。
しかし悟空はそれに噛り付いて、その不明瞭な音声記憶を、その不鮮明な映像記憶を確認する。
ここに自分にとってすごく重要な何かがある。

そこに絶望的事実があるとは知らず、悟空は真実に辿り付いた。
381乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:37:36 ID:XUlsO4cF0
・…・…・…・…・……・……・………・…………・…………・………・………・………・……・……・…・…・

 酷く痛む頭
                   笑顔を振り撒くルフィ


「地球人?ふ、その通り!地球規模の天才、桜木花道とは私の事だ。覚えておきたまえ!」


    血に染まるユニフォーム          
                                       倒れる赤髪
          「悟空っ!!?何すんだよ!!?やめろぉっ!!!!」


  激昂するルフィ
                             ショットガンを構える青年

 「な…!?化け物野…郎…!!!」
                     
               落ちていく青年の首           

                             「なんでだよっっ!!?悟空ーーッッ!!!!」
     鮮血   
                   
          苦痛に顔をゆがめるルフィ                           
                          騒ぎ喚くエテ吉 
  「ウキーー!!!(訳:ルフィーーッ!!!)」                                  


                  ――――オラが殺した――――

・…・…・…・…・……・……・………・…………・…………・………・………・………・……・……・…・…・
382乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:38:15 ID:XUlsO4cF0

その真実はあまりにも惨憺たる物であった。

(オ、オラは一体……)

自分がやったとは思えない残忍な行為。しかし認めざるを得ない暴戻な行為。

『桜木花道』

オラはこの男を殺したんだ。
無抵抗のこの男を。問答無用で。何のためらいもなく。

『桜木花道』

オラはこの男を殺した。
その仲間も殺した。無慈悲に、無意味に。



己の罪、一時的に抹消した記憶を認識した瞬間、悟空は急に自分が恐ろしくなった。
(オラは人を殺しちまった。殺しちまうような奴なんだ)

その恐怖は、暗黒に似てて。夜が昼を呑み込むかのようで。
その恐怖は、深淵に似てて。少しでも気を抜いたら堕ちていってしまいそうで。
383乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:38:54 ID:XUlsO4cF0

そして意識はリアルへ還る。
眼前には二人の『地球人』。二人とも自分を見ている。
その眼には非難と畏怖が込められている気がする。そんな気がしてしまう。


(見ねえでくれ!そんな目で見ねえでくれ!

 そんな目で見られたら、オラは、オラは、オレは………)


「 殺 し た く な っ ち ま う だ ろ ? 」


背筋が凍るとは、このような感覚なのだと悟空は知った。
今、自分が吐き出した言葉を留めようとしてか。自分の口を慌てて押さえる。
幸いか、二人はこの呟きに気付かなかったようだ。
ただ一つ分かることは。

このままでは二人とも殺してしまう。




「う、う、うわぁああぁあぁぁぁああぁ!!!」

突如大声で叫びだす悟空。
頭を両手で抱え、一言で言えば『発狂』したように見える。

流石の承太郎も一驚を喫させられ、翼も呆然とそれを見ている。
384乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:39:47 ID:XUlsO4cF0

「悟空くん!どうしたんだい!?」
翼が悟空を心配し、近寄る。

「オラに触るなぁっ!」
両手をぶんぶん振り回し、翼を近づけまいとする。
その手のパワーが充分な凶器であることは分かっていたため、翼は尻餅をつくようにしてそれを避けた。

(このままでは!このままでは!)

「うわああぁぁあぁぁあぁあぁっ!!」
悟空は再び叫び声をあげる。
そして近くに転がっていた自分の荷物を引っつかみ、無我夢中で走りだした。

(一人にならねえと、駄目だ!
 誰かと一緒にいたら、そいつを…殺しちまう!)

恐ろしさにかられて、逃げるように駆けだす悟空。
その恐ろしさとは、無論誰かに傷付けられることではない。誰かを傷付けることである。


一人になりたいという一心で孫悟空はそこを離脱した。
385乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:40:34 ID:XUlsO4cF0

しかし、そうは問屋が卸さなかった。

「待てえぇっ!!」
翼も起き上がり、荷物を掴んで悟空を追いかけて行ったのであった。
先の戦闘を見れば、あの男が自分を軽く凌駕する能力を持っている――即ち足が速い――ことは当然分かるはず。
それでも、見込んだチームメイトのためなら追いかけていくのが現在の『大空翼』。
またの名を『サッカー狂』。

「追うなっ!翼! ここに戻れっ!!」
勿論承太郎がそんなことを許すわけもない。
だが、左腕を負傷し、森の中を走るには少々不便なその状況。まずは声で停止を促した。

「大丈夫だよー!すぐに戻るよー!」
無駄であった。承太郎の言葉に対し振り向きもせず、遠ざかっていく。

やれやれ、面倒なことになったぜ。
承太郎は一度冷静に考えを練り直す。
まず、翼はなぜか妙に山歩きが上手い。そして自分は腕を骨折しており、追いつくのは難しいだろう。
そして翼は磁石を見ずに走っていっている。
よしんば悟空に追い付き連れ戻しても、ここの位置が分かる道理がない。
それに加え、あのクレイジーならばいつまでも追い続ける可能性もある。
刹那に状況判断を行い、最良の手立てを考案する承太郎。

スタープラチナの目を通して翼の位置を視認する。
そしてその方向に向かって、声を張り上げた。
386乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:41:41 ID:XUlsO4cF0

「つばさぁっ!6時までに東京タワーだっ!そこで合流するぞっ!!」

もともと東京を目指していたのだし、あの翼でも東京なら分かるだろう。
東京を目指す人間ならば多いだろうから、途中で仲間に出会う可能性もある。
唯一の不安は、同様に東京を目指すマーダーたちだが、彼のバッグには禁鞭が入っている。
スタープラチナのパワーでも千切れなかったあれ(翼と出会ったあと試したのだ)ならば、
暴漢の襲撃があっても撃退は不可能ではあるまい。

どんどん小さくなっていく翼の背中。
一時の離別。そう思い、承太郎は自分の荷物を拾い、東京を目指し歩き出した。


歩き出したのであった、がここで承太郎はある事に気付いた。そのある事とは、非常に重要なこと。

「あいつらっ、俺の荷物を持っていきやがったっ!」

落ち着いて調べれば残されたデイバッグは孫悟空のもの。
もしかしら、全員で入れ替えがあったかもしれない。
翼のデイバッグが自分のものだとすれば、中身は翼のものとさして変わらない。それは『いい』。
一番『やばい』のは悟空のが翼のであること。中に入っているのはあの『禁鞭』だ。
あの狂人が『禁鞭』を振るえば、『危険』であることは間違いない。

「やれやれだぜ」

かくして空条承太郎は大空翼を追い、歩き始めたのであった。
387乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:42:26 ID:XUlsO4cF0

    ・
    ・
    ・

一方大空翼は、無論自分がデイバッグを間違えたことになど気付かず孫悟空を追っていた。
彼が思うは、孫悟空という名の新選手獲得。ではあったが、それだけではない。

(彼は、多分だけど日向君の名前が呼ばれた辺りからおかしくなった。
 きっと、日向君のことで何か知っているに違いない!)

そう、彼は混乱していたが、悟空の挙動に気付いていた。
そして、日向小次郎の情報を得るためにも、孫悟空を追っていたのだ。

(JOJO君も最後に応援してくれてた。
 エースの仕事はメンバーの期待に応えること。JOJO君、絶対に悟空君を連れて戻るからね)

ああ、なんて事なのか。
鬱蒼とした山中。走りながらで聞き取りも不正確。仕方が無いといえば仕方が無いことだ。
とは言え、ここまで自分の都合よく勘違いするだろうか。
正直書いている自分でもおかしいだろう、と言いたくなってくる。
とりあえず聞き間違えたのではなく、聞き取れなかったのだと脳内補完をして頂きたい。
原作ではここまで変な奴じゃなかったはず。ってか、もっと普通だったろう!?
これもそれも全部“クレイジー翼”のせいだ。もとい没スレの人のせいだ!

すいません……取り乱しました。

とにもかくにも、こうして話は本章の序文へと繋がる――――――


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
388乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:43:34 ID:XUlsO4cF0

孫悟空は走る。大空翼も走る。


前者は己の抱える恐怖。大憂。暗黒。混沌。
それらから逃げるため。

(走っているうちは、自分の意思で走っているうちは大丈夫だ。
 その間は、誰も殺したりする心配はねえ。
 でも、もし止まっちまったら………オラはどうなっちまうか分からねぇ!)

再び、否、先程から何度も繰り返すその問いが彼の心中を駆け巡る。


――オラは一体どうしちまったんだ。
  オラは一体どうすりゃいいんだ。
  オラは一体どうなっちまうんだ。―――

      ・
      ・
      ・
そして後者は、己の見つめる未来。栄光。理想。光輝。
それらを手にするため。


ところでここで一つ余談を挟ませていただきたい。
389乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:45:12 ID:XUlsO4cF0

みなさんは『リングワンデルンク』という現象を知っているだろうか。
これはドイツ語で、日本語だと環状彷徨という。
この現象は、登山などで濃霧の中、目標物が無いとまっすぐに進めず、ぐるぐる輪のように歩いてしまうものだ。
普段の生活でも、目を瞑るとまっすぐ歩くのは難しい。
一度地面に直線を引いて、その上を目を閉じて歩いてみて欲しい。
個人差はあれど、ある程度の速度を出していれば線から外れて立っていることだろう。

なぜ、こんな話を挟んだのか。聡明なみなさんならばもうお分かりだろう。

そう、二人は既に、全然関係無いところにいた!

最初は北東へ向かっていたが、翼は南東にずれて進み始め、
悟空に至っては、北西から南西へと進路を曲げていた。
確かに悟空は野生児。翼も山篭りが得意ではあったが、指針無しではどこへ行くか分かった物ではない。
そして現在、孫悟空は新潟から富山をいく海岸線を。翼は福島の南部にいた。
390乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:45:52 ID:XUlsO4cF0


孫悟空は走る。走る走る走る。海岸をひたすら走る。

未だ本性の知れぬ『狂気』を抱いて。
それを恐れて。それを持て余して。それを忌み嫌って。


走る走る。今は走る。力の限り走る。
走る走る。今は走れる。走れる間は走るだけ。



しかし、立ち止まったその時は………
                 ………何が起こるか分からない。




          本日の『空』模様をお伝えします。
          夕方から夜にかけ『落ち着いた空』が東北から関東へ
          南下する模様。また東北では小さな『狂』が停滞するで
          しょう。蹴球の苦手な住人は気をつけて下さい。

          そして北陸地方では、今年最大級の『狂気』が『暴風』
          を伴い空を覆うでしょう。この『狂気』は明朝を過ぎても
          本州を襲う可能性があります。危険ですので周辺住人の
          皆様は対策を心がけて下さい。
391乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:49:12 ID:XUlsO4cF0

【石川県・南西部・海沿いの道/1日目・午後】

【孫悟空@ドラゴンボール】
 [状態]疲労中 顎骨を負傷(ヒビは入っていない) 出血多量 各部位裂傷(以上応急処置済)
    精神的に衰弱(危険度大) 
 [装備]フリーザ軍の戦闘スーツ@ドラゴンボール
 [道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
    承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 
      翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
 [思考]走り続ける

【カカロットの思考】時が来る、もう間も無くだ…


【福島県・南部/1日目・午後】

【大空翼@キャプテン翼】
 [状態]疲労中〜大 精神的にやはりやや壊れ気味
 [装備]拾った石ころ一つ
 [道具]不明(承太郎か翼のどちらかのもの)
    承太郎の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 
      翼の場合:荷物一式(水・食料一食分消費) ボールペン数本 禁鞭@封神演義
 [思考]1:悟空に追いつき、日向の情報を得る。そしてチームに迎える
    2:1を達成次第、承太郎のもとへ戻る(群馬県に居ると思っている)
    3:仲間を11人集める
    4:東京へ向かう(もしかしたら忘れているかもしれない)
    5:主催者を倒す
392乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:49:46 ID:XUlsO4cF0

【群馬県・湯檜曽川付近/1日目・放送直後】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]疲労 肩、胸部に打撲、左腕骨折(以上応急処置済み)
 [装備]無し
 [道具]荷物一式(食料二食分 水少量消費) 双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢(回収しました)
 [思考]1:翼を追いかける(とりあえず北東へ)
    2:6時までに東京タワーへ行く
    3:バーンの情報を得るべくダイを捜す
    4:主催者を倒す
 [備考]:翼は東京へ来るものだと思っています
393乱→狂【みだれのちくるい】 ◆jcasZ9x.B2 :2006/02/28(火) 21:54:50 ID:XUlsO4cF0
>>392を修正


【群馬県・湯檜曽川付近/1日目・放送直後】

【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]疲労 肩、胸部に打撲、左腕骨折(以上応急処置済み)
 [装備]無し
 [道具]荷物一式(食料二食分 水少量消費) 双子座の黄金聖衣@聖闘士星矢(回収しました)
    らっきょ(二つ消費)@とっても!ラッキーマン
 [思考]1:翼を追いかける(とりあえず北東へ)
    2:6時までに東京タワーへ行く
    3:バーンの情報を得るべくダイを捜す
    4:主催者を倒す
 [備考]:翼は東京へ来るものだと思っています
394ずっと二人で・・・ ◆.rGwmhDsT2 :2006/03/01(水) 16:12:00 ID:tlWIbikc0
江田島平八と雷電は、二人で北の崖で話していた。

江田島「良かった。無事だったのね電君」
雷電「最後に平八に会いたかったわ」
江田島「あなたと一緒なら何も怖くない」
雷電「あたしもよ」
その時、近くで人の気配がした。
江田島「いこっか、電君」
雷電「あたしたち、永遠にいっしょよ」
二人は抱き合って崖下に飛び降りた。

暫し後、崖上にただずむアミバの歯茎は青白かった。
395ずっと二人で・・・ ◆.rGwmhDsT2 :2006/03/01(水) 16:15:29 ID:tlWIbikc0
【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:健康(仙豆により回復)
 [装備]:ニューナンブ@こちら葛飾区亀有公園前派出所
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)、ゴンの荷物一式(食料一食分消費) 、シカマルの荷物一式(食料一食分消費)
    :テニスボール@テニスの王子様(残り2球)
 [思考]:1、皆殺し
     2、二人を見守る

【雷電@魁!男塾 死亡確認】
【江田島平八@魁!男塾 死亡確認】
残り78人
396作者の都合により名無しです:2006/03/01(水) 16:28:33 ID:CgDCA6Hu0
>>394-395は当然無効です
荒地に二人の男が立っている。
何処までも続く荒地。精神世界。
『――――という訳でだ、あんたはどう思う?あいつの【覚悟】について』
片方の男が尋ねる。その印象は全身すべからく白。白い服。
≪――――私は、一護が生き残る為の道を示す。その【覚悟】に偽りが無いのなら、力を貸そう≫
片方の男が答える。その印象は全身すべからく黒。黒い服。
『あいつは自ら力を望んであんたを掴んだのさ。だが、あいつは今のままじゃ戦えねぇ、だから俺が代わりに戦って遣るのさ。あいつは死なせねえよ、約束だ』
≪・・・いいだろう≫
『おお?随分あっさりだな。まあ良いさ。俺も下手な芝居売った甲斐があるってもんだ』
≪?≫
『いや、こっちの話さ。卍解は使えないんだな?』
≪・・・ああ、あの世界では私が具象化することは出来ない≫
『ま、卍解なんてしたらほんとにあいつの体は壊れちまうけどな。じゃあ、いくぜ』
白い印象を持った男が消える。
黒い印象の男は考える。
≪恐らく、奴は一護を騙して私を握らせたのだろう≫
あちらの世界は見えないが、ここに一護が来ないことからも、それは容易に想像できる。
≪だが―――それでも≫
一護が生き残れる可能性が高まるのは間違いない。
≪一護・・・出来れば、自分の意思で戦って欲しいが・・・生き延びろ。私を恨んでも構わない≫
黒い印象の男は、目を閉じた。
話の時間軸は前後するが。

『ヒャーハッハッハァ!』
木霊するは半面が髑髏仮面に覆われた男の快楽に嗤う声。
「うおおおおおおあああっ!!!」
木魂するは全身に紋様を宿す魔人の激痛に耐える声。
その合声、霊魂すら震える共鳴音を生み出して。
半面髑髏は両の手で跳ね上がり。
紋様魔人は両の足で飛び上がる。
半面髑髏と、紋様魔人が空にて交錯する。
半面髑髏が持つはバックから取り出した鉛筆二本。
紋様魔人は己の拳で。
魔人の皮を裂き。
髑髏の腕をいなし。
魔人の腹を目掛けて突き。
髑髏の体を投げ飛ばし。
魔人の右眼を狙って片一本を投擲し。
それを左手でしっかとつかむ。

互いに致命の傷は負わず、牽制程度の攻撃を交し合う。
『わかるかぁ、一護!足なんざ関係ねぇ、霊圧きっちり制御すりゃあ!』
半面髑髏は叫び、死神特有の遁走、【瞬歩】を使って超速で紋様魔人の背後に回り。
『斬月が無くてもこの位は・・・!?』
もう一つの鉛筆を紋様魔人に衝きたてようとした瞬間、腹部に三発の拳打が打ち込まれる。
『ごっ・・・・・・』
20m程吹き飛ばされ、しかし空中でバク転することで何とか足で着地する。メギリ、と鈍い音。
「ぐうう、くそっ!調子乗ってんじゃねえぞてめぇ!近づくなっていってんだろうが!俺は今手加減できねえんだよ!」
頭を押さえながら紋様魔人は叫ぶ。

それを聴いて
にたり
と哂う半面髑髏。
『手加減できねえだぁ?それでこんなもんかよ?』
半面髑髏は挑発の言葉をかける。
『ぜんぜん痛くねぇぜぇ?大層な格好してるわりにゃあ実力が伴ってねえんじゃねえかぁ?』
一度ならず、二度までも。
『ハッハッハッハッハァ!もしかしてビビッてんじゃねえのかてめぇ?』
二度ならず、三度までも。

その言葉は。

元不良で元霊界探偵、現妖怪の紋様魔人の。

「・・・・・・あぁ?」

バトル野郎の血に、火をつけた。

無論その血は頭に上り――――。

「言ってくれんじゃねえか、てめえ」
紋様魔人、いや完全に闘る気になった男、浦飯幽助は全力で半面髑髏に突貫する。
『おおっ!?』
自分の瞬歩にも引けをとらないスピードで突っ込んできた幽助に驚くも、ぶつかる刹那前に回転して回避する半面髑髏。

ざざざざざざ、とブレーキをかける音は幽助を直視していない半面髑髏にも届き。
『やればできんじゃねえか!』
後ろを向いて言った瞬間―――――。


特大の光の塊が眼の前に。


そして耳には特大の爆音が響き―――――。
《・・・・・・鬼道か?いや違うな》
咄嗟に瞬歩で回避した(脇腹に軽傷を負ったが)半面髑髏は、先程の攻撃を分析している。
半面髑髏が視線を動かすと、そこには光の弾の軌道に沿って薙ぎ倒された大木が。
《こんな隠し玉があるんじゃ、武器なしじゃ流石にやばいな。ここは煙幕に捲かれてる今の内に逃げるか》
土埃によって擬似的に造られた煙幕の中で半面髑髏は瞬歩で移動しようとして――――――。

「苺くーん!大丈夫か!」

気絶していたはずの真中淳平の声。本来守るべき仲間の声。それが聞こえた瞬間。

《莫迦野郎!こっちの居場所が―――》
「真中!ここから離れろ!俺も後から追う!」
黒崎一護は、髑髏の仮面を引き剥がして叫んだ。

煙幕晴れて。
一人その場に残された浦飯幽助。座り込み、彼にしてはかなり長い時間自分が行った行為を思い返していた。
(この体どうなってんだ?)
元来の彼の言葉で考える。体全身を襲う激痛は既に消え。肉体の急激な変化に伴う不安定な精神状態も先程の戦闘、というか挑発による怒りで結果的に幾分和らいでいる。
だがこの紋様は異常だ。見ていて自分でも気持ち悪くなる。
(これ元に戻せるんだろうな?こんな格好で螢子の前に出て行ったら・・・割と平気そうだな、あいつなら)
と、どうでもいい事に意識を逸らしつつ、さっきの連中の事を思い出す。
考えてみれば、半面髑髏と先程大声をあげた奴は倒れている自分を介抱しようと近づいて来たのではなかったか?
いまいち記憶がはっきりしていないが。
(もしそうなら素直に謝ってもいいんだが・・・あの髑髏野郎はどうも気にいらねえ)
自身の内にある凶暴な魔族の闘争本能とは別に、幽助は半面髑髏に妙な不快感を覚えていた。
「ん?」
ふと見るとその象徴である仮面が地面に転がっている。
「さっきの奴が落としたのか・・・届けるついでに、ゆっくり話を聞いてみるか」
仮面を拾ってバックにいれ、「ま、ちまちま考えてんのは性にあわねえ」と結論を出し。
浦飯幽助は真実を知るために一護が向かった方向に歩を進めた。
仮面が消えていくことには全く気づかず。
《おいおい、俺を引っ込めといて何だその様はよ?》
(うるせえ・・・お前なんか俺は呼んでねえし、必要ともしてねえ)
森の中で一つの大木に身を寄せ、俯く一人の少年。だが、その実際は一人と一人。傍らには一つの仮面。
《痛ぇか?痛ぇだろ?てめぇのちんけな覚悟じゃあ痛みは全然とれねえだろ?》
(何が・・・言いたいんだ?)
捨てたはずの仮面をみながら、心中で問う少年。視界には墓穴を掘る仲間の姿。
《何を躊躇してんだって、言ってんだよ。死にたくねえだろ?こんなとこじゃ、死にたくねえだろ?》
(死にたくは――――ねえさ。でも、お前にも頼りたくねえ)
ひゃははははは、と、自分にしか聞こえない哂い声。
《でもよ、一護。てめえ、このままじゃ死ぬぜ?ここまでは瞬歩も使えたかも知れねえが、もうてめえじゃ無理だ》
(・・・・・・黙れ。俺は、真中を護る。江田島のおっさんも、ルキアも)
事実、少年の足には絶えぬ激痛が在り。なけなしの霊力もほとんど使い切り。
《あの男にそのうち見つかってよぉ、真中って奴ごと殺されるぜぇ?》
(・・・その時は、俺があいつを食い止めるさ)
それでも、その決意に偽りは無く。だが―――――。
《おいおい、何言ってんだ?今のてめえがあいつを一瞬でも足止めできると思ってんのか?》
(・・・・・・・・・)
現実は残酷だ。この少年には、一人で敵に近づくことすらできない。護るどころか、足手まとい。
《護る、だぁ?てめえみたいに無力な奴が何言ってんだ?【敵ならば】【殺す】【殺したければ】【斬る】【斬りたければ】【刃】》
(・・・違う、俺は誰も殺したくなんかねぇ。ただ、仲間を護りたいだけだ)
《じゃあ、こうさ。護りたければ、力。力が無ければ、武器。武器も無ければ――――》
(お前は・・・ださねえ)
《出すさ。お前が力を望んだら、お前は無意識に俺を表に出す。何故なら、お前は弱いからな。お前は弱い》
弱い、弱い、弱い、弱いと少年の頭に反響する。悪意が、無限に反響する。
《いくら意地を張っても、殺し合いをしてるってことは、生きたいならいつか誰かを殺さないといけないって事だぜ?》
《それは多く見積もって98人殺すのも、自分の他の最後の一人を殺すのも何も変わらないんだぜ?お前はあの真中って奴を最後まで護り続けて、自分は自殺でもするのか?できねえよなぁ》
少年は自分の首輪に意識を移し、答える。
(じゃあ、主催者を倒す。俺一人じゃ無理でも――――)
《ほらな?【主催者を倒す】と来た。【倒す】じゃねえだろ?【殺す】だ。だからてめえは覚悟が足りねえ、って言ってるんだよ》
(・・・・・・)
《覚悟さえすれば、そのうち運は回ってくる。そら、そこのバックを見てみな》
少年は仲間から「見てて」と放られたバックに視線を移す。その距離約1メートル。放られた時のショックで中身が露出していて――――。
そこに、一本の特徴の無い刀。

≪一護、何を迷う?≫

心に届く、懐かしい、頼れる男の声。

こちらに背を向けた、長身の黒衣。
皆さんおはようございます真中淳平です。
なにやらものっそい大きな音が聞こえて目が覚めると、鼻血と耳血とあとその他血で息ができないぐらい血が出てました。
あわてて鼻血を止めながら周りを見回すと、もくもく煙が上がっていたので、やばい遂に火事がここまで来たかと焦りましたが、煙の正体は土埃でした。
とりあえず苺君と助けてあげようとしたのにいきなり攻撃してきた全身刺青の怖い人を探したけど煙と薄暗闇でよく見えなかったので、「苺くーん!大丈夫か!」と叫んでみたところ、なんと苺君はおれにこの場を離れろと言ってきたのです。
ということはおれがいると邪魔になるのだろうと思い、何も言わずに無理して必死に走りました。
どの位走ったでしょうか、県一つ分ぐらいは走ったでしょう。ぜえぜえいいながら大木に寄りかかり、薄暗闇の中あの拳王の人が出てこないかどうか心配で辺りを見回しましたが、ゴツイ人はいませんでした。ありがとう神様!ありがとうおれの女神!
でも空を見上げると北斗七星は見えないのに何故かその隣の星は見えました。怖いです。
とりあえず休もうと思って腰を下ろすと何か硬いものにお尻があたったので石かと思ったら人でした。
あわてて謝りましたが返事がありません。それもそのはず、彼は死んでいたのです。反射的に飛び上がってすいませんすいませんと無意味に謝った後、墓を作ってあげることにしました。弱いおれにはこれくらいのことしかできないと思ったからです。
穴を掘っている途中、彼のバッグが見つかりました。後で必要な物だけ抜いて墓標代わりにしようと思い、とりあえず脇に置いておきました。
作業が70%ぐらい進んだ頃、苺君がボロボロの様子で現れました。
どうやって刺青の男から逃げてきたのか、と聞くと、何故か追ってこなかった、今のうちに逃げるぞと言って、おれを急かしました。
墓を作っていると言うと、手伝ってくれようとしましたが、あまりにも満身創痍だったので(人のことは言えませんが)軽く応急措置をして休んでもらいました。おれは作業を急ぎます。
しばらくして、大体墓穴作りが終わって後は彼を埋めるだけになった時、【がさっ】と音がして、30m程先の木の影に――――。
あの、刺青の男がいて―――――
男は笑っていて――――
そして、おれは―――――
死を覚悟して―――――
後ろから苺君の気配を感じ――――
振り向きました。最後に、苺君にお礼を言いたくて。
そして、おれは――――――――
最後に、何もわからなくなりました。
≪一護、何を迷う?≫
その声を聞いた俺、黒崎一護の目には、幻覚だろうか、後ろを向いた斬月のおっさんが見えている。
(おっさん・・・俺は・・・)
≪覚悟しろ。以前も言ったはずだ。「護りたいのならば」「死なせない」それは、護りたい者を殺すという明確な意思が無くては只の虚言だ≫
(・・・俺は、人を殺したくなんかない)
≪だが、自分が死ぬのもいやだろう。お前の家族、お前の仲間、お前の好敵手。そして、お前の運命。それら全てに背を向けて、お前は死を選ぶのか?≫

その時、真中の近くにあの男の影が見えて。
(・・・お・・・れ・・・は)
≪信じろ。お前は一人で戦っていない。俺がいる≫
無意識に、護る力を求める俺の手が斬魄刀に伸びる。
≪力を求め、俺を掴め!名を叫べ!我が名は―――!≫
刀を掴み――――俺は叫んだ。
「――――斬月!」
刀は一瞬で形を変える。鍔も鞘も無い、巨大で無骨な刀。
そのとき、おっさんが振り向いて。
振り向いたおっさんの貌は――――。
俺の顔で。
白黒反転した、俺の目で。
俺を見つめ。
瞬間、仮面が俺の貌に飛びつき。

声が。
おっさんの声ではなく。
俺の、声が、俺の口から。

『――――人違いさ、一護』

意識が途切れかけ。
霊圧を体が勝手に制御して、滑るように動き。
真中に近づき。

振り向いた真中を
真中の体を

真中の腹を

真中の命を

俺の
俺の手が

俺の剣が

俺の力が

――――――――斬り抜いた。
時間軸の歯車はここで合致し。

「い・・・ちごくん?」
血が吹き出る。先程まで彼が流していた血とはまるで違う種類の血が。
肉が飛び散る。ビチャビチャビチャと、地面に抉られた細かい肉片が。
それ以上何も考えられず、真中淳平は地に斃れる。
『ハハハハッ!いいねぇいいねぇ!手に馴染む!斬り心地もいい!斬月さんよ、約束はきっちり守るぜ』
ぶんぶんと斬月を振り、血を払う黒崎一護―――半面髑髏。
『しかし、ちょっとばかり浅かったみてえだな、試し斬りを邪魔するたぁ一護の野郎も中々頑張るじゃねえか。ま、もうしばらくは出てこれねえだろうがな。』
小さい声でか細く呻く淳平を見ながら、半面髑髏は止めを刺そうと。

刀を振り上げ――。


「なにしてやがるっ!」

『―――ああ?』

浦飯幽助に、阻止された。
「てめえ・・・なにやってんだ?そいつはおまえの仲間じゃねえのか?」
幽助は斬月の腹を両手で押さえながら、度し難いような目で半面髑髏を見つめる。
『いやぁ?俺の仲間じゃぁねえさ。 こいつ の仲間だ』
自分を親指で指差し、不敵に顔を歪める。
それを見て、幽助は全てを理解した。 自分の持っていたはずの髑髏の仮面がいつの間にかなくなっている。
そしてその仮面は奴の貌に。

――――――憑依型妖怪。

霊界探偵としての活動中、何度か戦った事もある。
それが、恐らくは自分との戦闘のショックで出てきてしまったらしい。
「じゃあ・・・おれがけじめをつけねえとな」
なんとしても憑依している妖怪を倒し、斃れて死に掛けてる奴も死なせない。
それが・・・俺の義務!

「おい――――妖怪。俺は、霊界探偵浦飯幽助だ。テメエを殺す」

決意したらその意思はダイヤモンドより硬く。人間――――便座上、人間と呼ぼう、浦飯幽助は、即決着をつけるべく、刀ごと半面髑髏を投げ飛ばす。
『ハハッ!さっきとは違うぜ、ウラメシさんよお!』
服を裂いて刀に結び、ぐるぐると振り回しながら半面髑髏が言う。
幽助も跳躍し、妖気を込めた拳を叩き込もうとする。
だが――――振り回していた刀で攻撃してくるとばかり思っていた半面髑髏は。
大木に刀を突き刺し、遠心力を利用して回転し。
拳の行き場をなくした幽助に、一回転したところで刀を離し――――横から、組み付いた。
そして、幽助がとっさに体を捻り、拳が届く範囲に半面髑髏を入れる遥か前に。
半面髑髏は幽助の髪を掴み、引き抜いた。
「・・・っつ・・・!」
声にならない声を上げる幽助。
『ヒャーハッハッハァ!もういっちょう!』
続けて指で目を抉ろうとする半面髑髏。
だが。
「・・・なんてな!」
蹴り飛ばされる。自分が飛んできた方向へ。
空中で敵に動きを奪われる。それは何を招く?

――――狙い撃ち。

「霊丸!」

光の弾は真っ直ぐ飛び・・・半面髑髏の表情を引きつらせ―――。

直撃した。
シャハルの鏡に。
胸に仕込んでいたその鏡は、全ての魔法を反射する。だがその効果はこの場合あまり意味を成さない。
霊的な物には、鏡に深く関係する物が多い。だからなのかはしれないが―――。

霊丸は、過去一度鏡に跳ね返されていた。

自分が放った霊丸が自分に迫る。驚愕は一瞬、幽助は即座に霊丸をもう一発放ち、相殺する。
二つの霊丸が混ざり合って誘爆する。
この機を図って半面髑髏は襲い掛かってくるだろう。
身構える幽助。
(・・・?)
舞い上げられた土埃が治まっても、一向に半面髑髏は現れない。
よく見ると・・・半面髑髏は、木の下で膝を突き、血を吐いている。その木には刀が刺さり、結ばれた着物の一部がゆらゆらと風でなびいている。
立ち上がっても手が届く位置ではない。
(そうか、霊丸の衝撃自体は受け止められなくて―――?)
ふと、半面髑髏と、瀕死の重体の少年の他に、もう一人の人影を見る。死体。あれは――ヒソカ!?
先の放送で呼ばれなかった戦友の死体。状況から考えて、自分を殺した男の仕業とも考えられるが・・・。
「おい!その男はてめぇが殺したのか!?」
この半面髑髏は自分の宿主の仲間さえ殺した。ありえない可能性でもない。
『ああ・・・こいつか。・・・そうだ』
半面髑髏は鉛筆を取り出し、勢いよくヒソカの頭に突き刺す。禍々しい笑顔で。
「て・・・めえっ!」
地面が爆ぜたかと思うような踏み込みで半面髑髏に接近して―――幽助は―――。
立ち止まる。宿主ごと殴ると危ないと判断したからか?
それもあった。
過去形。それが意味するものは・・・。
『嘘だよ、莫迦野郎』
幽助の背中から刀が突き出ている。木の上から引き吊りおろされた、異形の刀が。
「ば・・・かな・・・刀に・・・手が届く訳・・・ウギァァァァァァッ!」
その言葉は一瞬で幽助の背後に回った半面髑髏の、心臓を凶刃で捏ね繰り回す行為によって、芝居ではない絶叫に変わる。
『種明かし、するとだな。こういうこった』
半面髑髏は、幽助に、心臓から引き抜いた異形の刀を示す。

異形の刀。

裂かれた着物の一部。

そして―――――。

「俺の―――髪?」
足まで届く長髪を、2重3重に結わえ付け。着物の一部に。

『はははははっ!いいねぇ、その貌!ま、もう見れねえんだけどな』

半面髑髏は幽助を蹴り飛ばすと、その場を立ち去ろうとする。

1歩。

2歩。

『おっ・・・と。【覚悟】を忘れるとこだった』
半面髑髏は、芋虫のように呻いている真中淳平のところに戻り、『あばよ、人間』と言い放って・・・。
刀を振りかぶったところで。

後ろから、霊気の塊に打ち抜かれた。


信じられないというような貌で振り向いた半面髑髏の眼に映るのは。立ち上がって指を組み、こちらを見る男。

「へへ・・・最後の一発、効いただろ?」
『なん・・・・・・だ?テメエは?何で心臓を潰されて・・・』
「わからねえ、よ。生きてるもんは―――しょうがねえ。なら、決めたことをやるだけだ」

男は、半面髑髏の足元で呻いている少年と、体を乗っ取られている少年を救おうと、慎重に半面髑髏に近づく。

だが、その行動は半面髑髏が倒れる事によって。

『月―――』

半面髑髏の持つ異形の刀が共に倒れることによって。

『―――牙』

「アガッ・・・」

『天―――』

その刀が呻いていた少年の喉を貫くことによって。

『―――衝』

その刀から黒い衝撃が奔ることによって、全て、零に帰した。

そうして。

その場には、生きている者はいなくなった。


いなくなった。心を取り戻した魔人は血の海に溺れ。

いなくなった。詐欺師は元より死んでいて。

いなくなった。死兆の少年は喉を裂かれて。

いなくなった。半面髑髏は仮面を取らぬまま。

そして誰も、いなくなった。


それから。

血が流れ、肉が腐り、骨は突き出し、魂すらも見当たらず。

それでもそこに、放送は流れた。
【栃木県/夕方】

【いちご100%@真中淳平 死亡確認】
【黒崎一護@BLEACH 死亡確認】
【浦飯幽助@幽遊白書 死亡確認】

【残り77人】


備考:シャハルの鏡@ダイの大冒険、斬魄刀@BLEACH (一護の衣服の一部+幽助の頭髪が結び付けられている。斬月は解除)
、荷物一式4つが放置されています。

【備考:クロロは何故斬魄刀を使用しなかったのか?】
戦闘中:斬魄刀は両手で使う必要があり、盗賊の極意との併用は出来なかった。またクロロは幽助の霊丸、スヴェンの予見眼を盗もうと言う明確な意思がある。
その他:クロロは杏子等に接触する際『情報』を得ようとしていた。【迷走の交錯】での描写から、一般人を装う狙いがある。
414眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:03:31 ID:VSeKUWnL0
大小様々に分解された肉の破片が、辺り一面に飛び散っている。
刀を握り締めたままの右腕。静かに横たわる左腕。くの字に折れ曲がった右脚、左脚。
中央にどんと塔のように聳え立つ胴体。自由気ままに転がる様は、一つの悪趣味な華のようだと思えた。
――他人事のように。"自分の身体であるのに"。

「自分は死なないと思っているわけではないようだな。"正解"だ。
 スティッキー・フィンガーズの能力を解除すれば、貴様の身体は、本当の意味で"バラバラ"になる」
「はっ。……殺すならさっさと殺せえ。
 ガラと一緒に待っててやんよ、ブチャラティぃ。地獄は怖ぇえぞーぅ」

ブチャラティが桑原和馬へ与えた"拷問"。体中に刻み込んだ"ジッパーは"時が経つごとに、少年の身体を分断する。
不可思議なことに痛みを感じることはなかった。それどころか切り離された各部の感覚も残っている。
動かそうと思えば手を開いたり閉じたりすることも出来るし、多分、己の能力――霊剣を生み出すことも可能な筈。
けれど、勿論、ブチャラティも其の事は理解しているのか、"腕"は早々に遠くに蹴り飛ばし、万が一の隙も与えてくれなかった。

「……何されたって俺ぁ喋らねーぞ」

脚も腕もバラバラにされた姿を晒してさえ、桑原和馬は頑として口を割るつもりはなかった。
ブチャラティが欲するのは"仲間"の情報。名前、能力、外見、そして支給武器。
出会ったばかりの友情マンには容易く明かした自分の情報すらも、今は何としても漏らさなかった。
或いは、北風と太陽。冷たい風を吹き付ければ吹き付けるほど、旅人は心の扉を閉ざしていく。


長い長い"静寂"が与えられていた。
四肢をバラバラにされたままの状態で、寒空の下に放置される。
"何をされるか"も"何時死ぬか"も伝えられぬままの"沈黙"。この沈黙こそが拷問だ。
"沈黙"は相手に"想像"させる。次には何をされるのか、いつ殺されるのか、どのように殺されるのか。
鎖の様に連なる"想像"が生むのに勝る"恐怖"は存在しない。故に、人は沈黙を極度に避けたがる。
殴られるだけならば、傷つけられるならば、幾らでも耐え切れる自信はあった。
けれども、この静寂は。この沈黙は。何より――桑原を見据えるギャングの"瞳"は。
確かな"覚悟"を秘めた、"哀しい"瞳を、長く睨み続けることは、桑原には出来なかった。
ちッと舌を鳴らし、顔ごと目を逸らした。
415眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:05:09 ID:VSeKUWnL0
どれほどの時間が経っただろうか。
半刻か、其の倍か。徐々に陽は傾き、夜の闇の足音が聞こえてくる。
殺意を露に対峙する二人にしてみれば永遠に間に感じられるほどの、僅かの時間。
先に口を開いたのは、少年の方であった。
"怒り"は未だ、心の内に、燻っている。けれど、聞かねばならぬことを、思い出していた。

「……何故、ガラを殺した。ブチャラティ。
 アンタは意味もなく、人を殺すようなヤツじゃねえ。俺の勘、だがな」

ガラを殺害したブチャラティ。自分を容赦なくバラバラに分解したブチャラティ。
行動だけを見れば、眼前の人物は完全に悪人と見なすべき人物の筈だ。けれど、其れ以上に良く判らない部分が沢山あった。
何故、ガラを殺害したのか。何故、自分を生かしたままにするのか。
ジッパーの能力は何なのか。逸れたままの知り合い――例えば、幽助のことを知っているのか。
『ブチャラティを見つけ次第殺害する』
ガラの死と直面して以来、凝り固まったままだった桑原の思考。
殺人者の言葉など耳に入らなかった。最初から聞く気などなかった。けれど、今は違う。
桑原和真は長い"沈黙"を与えられて初めて、ブチャラティの話を"聞きたいと思ったのだ"。

用心深く桑原の荷物を開き、中身を検分していたブチャラティは、桑原の言葉を聞き、静かに目を閉じる。
自らの首輪に指を掛ければ感じられる冷たい感触が、自らの犯した最初の罪を、まざまざと思い出させた。

「オレが殺したのは、ガラだけではない。
 晴子と言う、アンタと同じぐらいの、日本人の少女……彼女の命も、オレが奪った。
 
 ガラは死んだ晴子の傍に佇むオレを見た。避けられる筈の闘いだった。
 ただ、想像以上に、ガラは腕が立ち過ぎた。"倒さなければ闘いを止められない程に"」

「……同じ事を聞くぜ。何故、その、晴子って女の子を殺したんだ、ブチャラティ。
 理由如何によっちゃあ、俺もガラと同じだ。死んでもテメエをゆるさねえ」
416眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:06:12 ID:VSeKUWnL0
問い掛ける桑原の声も、少しずつ落ち着きを取り戻していく。研ぎ澄ました刃は、より切れ味を増すように。
答える前にブチャラティは、触れたままの首輪を、軽く握り締め、喉を上げて指し示した。

「首輪だ。或いは、外せるかもしれないと思った。
 生き物を生きたまま"分断"することさえ可能な、"スティッキー・フィンガーズ"ならば。
 晴子はオレに全てを任せ……死んだ。オレが殺した」

ジーッ。自嘲気味に口元を歪めれば、右腕に走るジッパーを開く。
繋いでいたガラの右腕が根元から外れ、覗くのは――無残にも焼け焦げたブチャラティ自身の傷口。
凄惨な光景に、ごくりと唾を飲み込む桑原の目の前に、ぼんっと、投げられたのは借り物の腕。
「スティッキー・フィンガーズ!」
腕が地に付く瞬間、不意にスタンド――"傍に立つもの"の拳が風を切って、唸る。少年の眼前へと。瞳は、閉じなかった。
千切れ掛けた首元に走っていたジッパーの歯が、ジジジジジと音を立て動き始め――…


――……桑原の首を再び、繋ぎ合わせる。

「……どーいうことだ。ブチャラティ」

失われた腕を庇いながら、既に背を向けたギャングにに、少年は怪訝に問い掛けた。
脚も。腕も。静かに、徐々に、繋がれていく。

「"沈黙"をアンタの回答と見なした。少なくとも"アンタには仲間が居る"。
 一匹狼は、仲間を"庇う"必要はないからな。"俺の前に二度と現れるな"――それで十分だ。

 ……転がってるのはガラの腕だ。丁重に葬ってやってくれ。オレにはその資格は、ない」

少年には仲間が居る。少女の死を、仲間の死を悲しむことの出来る少年の、仲間。
自分との道は交わることは無かったが、彼らは彼らの正しい道を歩むだろう。
"覚悟"の先に、意味のある何かを遺すだろう。ならば、其れでいい。ブチャラティは、振り向かなかった。
417眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:08:02 ID:VSeKUWnL0
「そういうことじゃねえ!」

声を荒げ、桑原は叫んだ。

「仲間が居ると分かってなお、何故俺を殺さねえ。
 テメエの能力は知っちまったんだぜ。ネタがばれちまえば、安っぽい手品じゃねえか!
 ……仲間を連れてまた俺達が追ってきたらどうするつもりだ?
 大人しく殺されるつもりか? はんっ、馬鹿云ってんじゃねえ!」

叫びながらも、桑原自身も自分が何を言ってるのか、良く分からずに居た。
自分はブチャラティを殺しに来た筈なのに。相手は憎き憎き、ガラを、少女を殺した殺人鬼であるのに。
唯、瞳が――ブチャラティの、晴子の、ガラの事を語るときの哀しい瞳が、止められない何かを、言葉を、吐き出させた。

「オレは……二人の人間を"殺した"。
 『正しい』思ったからやったんだ……後悔はない。
 晴子も、ガラも。覚悟の末に"死んで行った"。オレは彼らの覚悟を、遺志を引き継がなければならない。
 こんな世界とは言え、オレはオレの信じられる道を、歩いていたい。
 『主催者は倒す』だが、『奴等の思惑通りになるのも癪に障る』――……名は何だ?」
「……桑原和真、だ」
「カズマ。
 さっきおまえの目の中に、ダイアモンドのように固い決意を持つ『気高さ』を見た。
 仲間の事は死んでもゲロしねえ、って言う硬い覚悟だ。
 保身のためにペラペラ仲間を売るようなゲス野郎なら生かしちゃおけなかった。

 "仲間をつれて来る"ってなら、"最初から"そうすれば良かった筈だ。
 しかし敢えてそうしなかった。仲間を傷つけたくなかったからだ。
 おまえ自身が"追ってくる事"はあっても、"仲間を連れて来る"事はない」

理由を言い放てば背を向けたまま、ギャングは進み出す。高い空の向こう、何処かに潜む主催者を目指して。
418眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:15:56 ID:VSeKUWnL0
砂に汚れた少年の顔はくしゃくしゃに歪み、力一杯に歯を食い縛った。
勝手な野郎だ。仲間?仲間だって?――テメエが殺したんじゃねえか!
何を言われようと許すことは出来ない。自分は、そんなに容易くは出来ていない。芽生えた怒りは、正しいものである筈。
けれど――、其の一方で。どうしようもなく、ブチャラティと言う人物に、惹かれている自分を、桑原は感じ取っていた。

「ブチャラティ……テメエのやっちまったことは、確かに、許されることじゃねえし、俺はゆるさねえ!
 だがなあ、……思い出しちまったんだよお、
 ガラの満足そうな、顔を! 我が生涯に一片の悔いなし!ってな死に顔を!」

首根っこを掴みあげてでも唾を飛ばしてやりたいが、今は未だ繋がり掛けの両手両腕。
芋虫のように地面を這いながら、桑原は、ギャングのふくらはぎに噛みついた。

「この場で殺す気がねえってのなら……
 ……今すぐだ、今すぐ俺の手足を元通りにしろ」
「もう一度やりたいっていうのか?抵抗させて貰うぜ」

依然、闘う気が失われていないと言うのならば、其れでも構わなかった。
スタンドの拳が、ゆっくりとファイティング・ポーズをとり始め……、桑原が静止の声を上げた


「違う!
 
 ……ブチャラティ、やっぱテメエは危険なヤツだ。誰を殺しちまうかわかりゃしねえ。
 だから、俺がテメエを"見張っといて"やるぜ。
 罪も無い人間を殺そうとしやがったら、後ろからぶッ殺してやらあ!
 この桑原和真様がなぁっ!」
419眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:17:42 ID:VSeKUWnL0
意外な言葉だった。ブチャラティにも、桑原自身にも予想外の言葉。
殺人者を泳がせたまま同行する復讐者。復讐者に背を任せる殺人者。
僅かでもギャングの中に悪を感じたら、即座に敵に回り惨殺するとの意思表明。
ブチャラティは受ける必要はなかった。芋虫の桑原を振り払って、先を急ぐだけで良かった。
けれど、――……鼻を一つ鳴らし、
「好きにしろ」
感情の読めぬ鉄面皮のまま、頷いた。
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420眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:18:34 ID:VSeKUWnL0

「これからどうするんだ、ブチャラティ」

繋ぎ合わされた身体。担ぎ直された斬魄刀。沈む夕日を遠くに感じながら、桑原和真は問い掛けた。
仲間との集合場所――名古屋のことは、今は伏せてある。未だブチャラティのことは完全には信用していないからだ。
6時になれば次の放送もある。目的地に着かずとも自分の無事は、伝わるだろうと考えていた。

「科学者を探す。工学的な知識を多少なりとも持っている人間。首輪の解析を行える人間だ。
 この首輪は、スティッキー・フィンガーズを用いても切断してはずすことは不可能。
 しかし、外装にジッパーを取り付けて"中を覗くこと"は出来る――安全に」

再び繋ぎ合せたガラの右腕を押さえながら、ブチャラティは遠くを眺めている。
継ぎ目のない首輪に、継ぎ目を作り、安全に開くことが出来るのは、恐らくは自分の能力だけだ。
ガラも、桑原も、自分も。誰にも負けない強さを持っていようと、首輪がある限り『運命』から逃れることは出来ない。
外すことの出来る人間を、探さなければならない。先ずは、其れからだ。

迫る小波の音を聞きながら、ブチャラティは『長くは生きられないな』と思っていた。
負った傷もある。ゲームに乗ってしまった強力な暗殺者達も居るだろう。中には、自分のようなスタンド使いも居るかもしれない。
けれどそのどれもが『死の予感』とは大きくかけ離れて感じられた。満足の良く死に方は出来ないだろうな、とも思った。


誰もが眠れる奴隷だ。
揺れる小波のように、些細な事で崩れ、消えていくのだ。
けれど。小さな波が連なって、やがては海の流れを形成することをブチャラティは知っている。
自分達がこれから歩む苦難の道には、確かな意味がある。
潰された小波が合わさって更に大きな波を作り出すように。人の遺志は誰かに引き継がれていく。
ガラの強さが。晴子の優しさが。自分の覚悟が。
何処かの誰かに「希望」として伝わっていくような――――


大いなる意味の始まりであることを、ブチャラティは祈った。
421眠れる奴隷達  ◆HDPVxzPQog :2006/03/05(日) 07:22:01 ID:VSeKUWnL0
【福島県北/夕方】

【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:ガラの右腕をジッパーで固定した。ただし、スタンドの右腕は、精神が回復すれば戻るかもしれない。
     全身に無数の裂傷。とりあえずジッパーで応急処置をした。致命傷ではないがかなりの重症。
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式 スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考]:
1『主催者』は必ず倒す。そのために『仲間』を集め、『首輪』の解除方法も見つける。
2 死者の分まで『生きる覚悟』『も』決めた。
3 『科学者』を探す。

【桑原和真@幽遊白書】
 [状態]:少しの疲労。
 [装備]:斬魄刀
 [道具]:荷物一式
 [思考]: 
1:ブチャラティを監視する。
2:ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
3:ゲームを脱出する。
422終わりなき愛 ◆.EcQrmwzsA :2006/03/05(日) 16:45:49 ID:hETLHPwC0
このゲームの優勝候補最右翼は伊達臣人。
だからわたしは最期まで伊達を追っていって、最後の最後に
伊達を後ろから撃てばいいんじゃない? あったまいい〜♪

そう考えた江田島平八は伊達が雷電に耳打ちしたのをこっそり盗み聞きして
雷電よりも先に南の端に辿り着き、それからずっと伊達をこっそりと尾行していた。
彼は既にこのゲーム参加を免除された身でありつつ、
不幸にも塾生からの誘いにのこのこ乗ってしまったのであった。
彼が目の前で誰かを殺しても、私には止められないじゃない。
危ないね、そんなの。可愛くないし。
いつかのトーナメントで暴れてるのも止められなかったしね。
今も、すぐ下の茂みの中にいる伊達を見張りながら、鏡を覗き込みうっとりと煙草をふかす。
…ああ、私ってなんて可愛いんだろう。
めっちゃイケてるがな。桃なんて所詮ガキだガキ。
でも富樫もほしいよね、なんて言っても私、可愛い物大好きだからさ。
ロリコンとか言わないでよね、やっぱり可愛い物はみんな好きでしょ。
423終わりなき愛 ◆.EcQrmwzsA :2006/03/05(日) 16:48:15 ID:hETLHPwC0
移動をはじめた伊達を追って江田島も動き出した。
あと10分くらいでこの辺一帯は禁止エリアに指定される。
休憩所のトイレに入っていく伊達を見て口に手を当て笑いを噛み殺す江田島。
立ちション写真をネットに晒される心配もないだろうに、うふふ。
だ・て・く・ん・は・あ・と
でも長いな〜〜、立ち入り禁止エリアになっちゃうじゃん?
伊達は未だに出てこない。
…………んも〜〜〜〜〜〜〜!!!
我慢できず覗いたトイレはなんと無人、
見回すとはるか遠くに伊達の姿が木々の間に見え隠れ。
え、え、だって、それって一体?
鳴り響く爆発音に振り返ることなく、伊達は時計に目を落とした。
午後5時ジャストから、秒針が7秒を超えていくところだった。
424追走〜剣八とキン肉マン〜 ◆kOZX7S8gY. :2006/03/05(日) 20:47:39 ID:1u6qfgSe0
更木剣八は、夷腕坊の上から空を眺めていた。
目に映る空は快晴。思わずここがどんなところか忘れてしまいそうな、気持ちのいい空だった。
もっとも、それを見る剣八は空になんの感情も抱いていなかったが。

夷腕坊の上で佇む更木剣八は、今一人きり。
さっきまで……といっても、かれこれ一時間半前くらいになるだろうか。剣八と戦っていたキン肉マンの姿も、そこにはなかった。
二人の戦いを観戦していたはずの、志々雄とたけしの姿も。
それにいち早く気づいたキン肉マンは、剣八を置いてどこかへ行ってしまったのだ。
おそらくは、行方知らずとなったたけしを探しに行ったのだろう。

「いーん! たけすぃがどこにもいーん!」
と、やっとキン肉マンが戻ってきたようだ。
剣八は夷腕坊の上から降り、キン肉マンを出迎える。

「おお剣八、たけすぃ戻っておらんか!? そこら辺を探し回ってきたんじゃが、どこにも居んのじゃ!」
「アホかテメーは、おまえの連れがどこに行ったかなんて、ちょっと考えりゃあわかるだろうが」
「な、なぬぃ!? はっ! そういえばおまえの連れもおらんではないか! まさか…………誘拐か!?」
今さら志々雄の不在に気づき、うろたえるキン肉マン。
たけしはキン肉マンが先に本州へ行けといっても、待つと言った。そんなたけしが、キン肉マンに黙って先に行ったとは考えにくい。
ならば、無理やり連れ去られた可能性が高い。

「こうしちゃおれん! 剣八、ワシらも早く行くぞ!」
「断る」
「な、なななんだとぉ!? 勝負はワシが勝ったんだから、仲間に……」
「俺は断ると言ったはずだ。テメーみたいな甘っちょろいヤツと行動してたら、好きに闘れねーからな」
剣八が望むのは、強者との戦い。
それは、キン肉マンの得意とする『試合』ではなく、互いの生死をかけた『死合い』。
剣八にとって、生きるか死ぬかが勝敗の分かれ目であり、それこそが戦いの醍醐味なのだ。
425追走〜剣八とキン肉マン〜 ◆kOZX7S8gY. :2006/03/05(日) 20:48:29 ID:1u6qfgSe0
「むう……たしかに人を殺すのを黙ってみておくわけにいかんが……」
戦いに対する考えが真逆のキン肉マンと行動しては、剣八が真に望む戦いはできない。

「志々雄とたけしはたぶん本州へ行ったんだろう。追うならテメー一人で追うんだな」
「ワシを一人にする気か!? って剣八、おまえはどうする気じゃ?」
「そうだな……」
キン肉マンと行動しない、つまり本州に渡らないとなると、残された道は二つしかない。
九州に残るか、四国に渡るか。しかし四国側に面した大分と宮崎は、すでに禁止エリアに指定されてしまっている。
ここ福岡から四国に渡るとなると、海を泳ぐか一度本州に渡るしかない。
かといって、九州に残るのもどうだろうか。時刻はゲーム開始からすでに数時間が経過した。
未だこんな日本列島の端の地域に留まっても、強者との戦いは望めそうにない。
残っていたとして、参加者が減る時期を見計らっている小物か、臆病者くらいだろう。
残された選択肢の悪さに、剣八は思わず黙りこくってしまう。

「……」
「ほ〜れみたことか! 悩んでる暇があったら、さっさとワシと一緒に本州へ向かえぇい!」
「……っち、仕方がねぇか」
剣八は妥協し、キン肉マンの言葉を受け入れた。
と、思いきや、

「だがな」
拒絶の意味を込め、剣八がキン肉マンにムラサメブレードの切っ先を向ける。
「キン肉マン、言っとくが俺はテメーにも負けたとは思ってねぇ。俺にとって『負ける』ってことは『死ぬ』ってことだからな」
「剣八……」
「テメーとはいずれ決着をつける。殺すか殺されるかの、真の決着をな。次に会ったとき……今度こそ殺す気でこなけりゃ死ぬぜ」
剣八の言葉はハッタリなどではなかった。実際、剣八はさっきのキン肉マンとの戦いでは大したダメージを受けていない。
剣八の実力は命を懸けた『死合い』でこそ真の力を発揮し、その上での死こそ、真の敗北と言える。
命を懸けてないキン肉マンの『試合』など、剣八にとっては温すぎる。
426追走〜剣八とキン肉マン〜 ◆kOZX7S8gY. :2006/03/05(日) 20:49:30 ID:1u6qfgSe0
「……わかった。おぬしの言うとおり、次に闘うときは全力を尽くそう。じゃが、やはり殺しはしない。おぬしを戦えぬまでボコボコにした上で、今度こそ無理やりにでも仲間に引き込ませてもらう」
「上等だ。やれるもんならやってみな」
再戦を約束し、今は刀を納める。
次に刀を抜くときは、本当の意味での『勝負』の時であることを願って。

「じゃあなキン肉マン。それまで死ぬんじゃねぇぞ」
「それはワシのセリフじゃい」
「へっ、言いやがる…………あばよ」
キン肉マンに別れを告げ、その場を離れる剣八。
遠ざかってゆく剣八の姿を見ながら、キン肉マンは思う。

(更木剣八……おもしろい男じゃ。残虐超人のような殺気と冷酷さを待ちながら、正義超人のような真っ直ぐな志も持っとる)
キン肉マンが戦ってきた、数々の超人たち。その中には、敵だった者から信頼できる仲間になった者も多くいる。
剣八も、今度戦えば仲間に引き込むことができるかもしれない。
そうなってくれれば、なんとも心強い。

(……ん? そういえば、結局剣八はどこへ向かったんじゃ?)
剣八が去ってから気づいた。
彼が向かった先、彼が望む強者のいる舞台、彼が向かった方向に位置するそこは、
「あ、本州か」
キン肉マンが向かうべき場所もまた、本州。

 ………………

「お、置いていかれたぁぁぁぁぁぁ!?」

夷腕坊の傍ら、キン肉マンのまぬけな声が轟いた。
427追走〜剣八とキン肉マン〜 ◆kOZX7S8gY. :2006/03/05(日) 20:50:48 ID:1u6qfgSe0
夕方に差し掛かった頃。
早くも本州、山口県に渡った剣八は、思う。
(志々雄のやろう……)
それは、戦いの約束をしながら勝手に先へ行ってしまった、志々雄のこと。
どうせ彼とは互いの獲物が見つかるまでの関係。別れることはさして問題ではない。
彼が本州へ向かったというならば、必ずどこかで再会する。志々雄自身も獲物を見つけ、万全の体制で戦える状態で。
しかし、それにたけしを連れて行った理由がわからない。わざわざ戦いの邪魔になるような子供を連れ、志々雄はなにを企んでいるのか。

(まあ、そんなことはどうだっていい。キン肉マンに志々雄。どっちも次に会ったときが、本気で闘れるときってわけだ)
そのときは必ず来る。だから、無理に志々雄を追う必要はない。
それよりも、今は戦いを求める。
死神の走りは、速い――



少し遅れて、
剣八、たけし、志々雄を追うキン肉マンは、福岡県を脱出しようとしていた。
「おのれ剣八めぇ! ワシと一緒に行くのが嫌だからって、先に行きおってぇえ!!」
目的地は同じはずなのに、剣八は自分を置いて先に行ってしまった。
いち早く本州に渡り、新たな戦いを求めているのかもしれない。命を懸けた、戦いを。
もし剣八がその気なら、見過ごすわけにもいかない。かといって、たけしも放っておくわけにはいかない。

「ええい、今は悩むのはやめじゃぁ! 細い日本、真っ直ぐ進めばそのうちどっちか会う!」
優先すべきはたけしの方だが、もしそれまでに剣八に追いついたら、無理やりにでも同行させてやる!

キン肉マンが次に遭遇するのは、戦いに飢えた死神か、さらわれた少年か。
九州と本州を繋ぐ鉄橋を爆走するなか、すぐ近くの海底トンネルのほうに、たけしと志々雄が通った形跡があることには気づかず――
428追走〜剣八とキン肉マン〜 ◆kOZX7S8gY. :2006/03/05(日) 20:54:32 ID:1u6qfgSe0
【福岡〜山口間/鉄橋/夕方】

【キン肉スグル@キン肉マン】
 [状態]:軽度の疲労
 [装備]:なし
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1、更木を追い、今度こそ仲間にする。
     2、たけし、志々雄を追う。
     3、ゴン蔵の仇を取る。
     4、仲間を探す(バッファ、ウォーズ、ラーメン、ボンチュー、マミー)


【山口県/夕方】

【更木剣八@BLEACH】
 [状態]:軽度の疲労。股関節、両肩の軽い炎症、全身に軽度の列傷
 [装備]:ムラサメブレード@BASTARD!
 [道具]:荷物一式、サッカーボール@キャプテン翼
 [思考]:1、本州で新たな強者と戦う。
     2、志々雄、キン肉マン、ヒソカらと決着をつける。
     3、キン肉マンの仲間になる気はない。
429たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:51:24 ID:y+fe6n8q0

名古屋駅。
時間が時間ならば無数の人が押し寄せるはずのこの場所は、異常と言えるほどに閑散としていた。
照明が灯されず薄暗い構内。喧騒を追放した静かな空間。
自動券売機も自動改札機も、自動とは名ばかりとなり本来の職務を放棄している。
あまりにも整然としたその場は、異質な雰囲気を漂わせていた。

この無人の名古屋駅に佇むある一人の男。
彼の名はL。いや、これが本名ではないことは明白なのだが、我々には知る由もないことだ。
ここではやはりLと呼ぶことにしよう。

「ムーンフェイス……」
Lが唱えるは、命を賭して自分を生かしてくれた仲間の名。

Lは別に格闘の専門家でもなければ高名な武道家でもない。
しかしあの趙公明という男がこの世界でも屈指の実力者であることぐらいは分かる。
また、ムーンフェイスは核金なるものがあっても奴に勝利はありえないと言った。そして、今闘いに赴いた彼はその対抗策たる道具を持っていない。
これらを総合すれば、ムーンフェイスの行く末は容易に想像できる。

更に彼が唱えるは、胸中で唱えるは、生き別れた仲間の名。

(洋一くんは……どうなったろうか…)
430たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:52:00 ID:y+fe6n8q0

『世界最高の頭脳』と称されるL。
あの状況下でムーンフェイスは自分を逃がすため、デスノートの事、追手内洋一の事を一手に引き受けてくれた。
デスノートの処分方法はいくらでもあった。と言うより、趙公明があれの存在を知って放っておくはずがないのだ。
故にノートは放置しておいても、高い確率で処分されただろう。
しかし、問題は追手内洋一の事。
趙公明は“キラ”などの犯罪者と異なり、罪の発覚を恐れていない。よって、交渉で彼を制するのは非常に困難極める。
そしてムーンフェイスなどの実力者との戦闘に飢えている。肝心なのはこの戦闘という点だ。
一見洋一は何の才覚も持たない凡庸な少年。趙公明が彼に『華麗』な戦闘を期待するとは思えない。
だから、奴をやり過ごすには、何もしない――下手な説得で挑発せずただ無能を装う――のが一番なのだ。
だが、洋一が奴の前で動揺し、ラッキーマンのことを話してしまえば事態は急変する。
趙公明が『運』のみで収める勝利を善しとするか、否か。この一点に賭けられる。
そして彼の悪運、不運ぶりを考えると……彼にとって良い未来はないだろう。

ただしこの推測には大きな穴がある。勿論Lはそれに気付いていたし、それを最も危惧していた。
それは追手内少年の裏切り。
趙公明の現在の目的は自分の排除。それに協力して、見逃してもらうということもあり得る。
彼には名古屋駅に向かいそこから沖縄を目指すと言ってある。
趙公明が沖縄まで来る可能性は低いだろうが、駅までなら足をのばしてもおかしくない。

Lは思考しながら、無人の改札機を素通りして、プラットホームまでやってきた。
開けているホームは周囲から目立ちすぎる。先の奇襲を考えても、ボーっと立っているのは危険。
出来るだけ物陰に隠れるようにして、Lは電車をと洋一を待った。

(さて、下り電車は……あと十五分ですか。これを逃すと今日はもうあと一本しかありませんね…)
431たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:52:42 ID:y+fe6n8q0
電車は一度乗ってしまえばその間は動く要塞。一人で放浪するよりは安全だ。
狙撃やジャックまがいの襲撃もあるだろうが、その危険はどんな状況、条件でも等しく存在する。
電車の中で屈みこんで隠れていれば、外から発見されずに済むし、無人の電車を狙撃する馬鹿がいるとも思えない。
もしも強行的に乗り込まれても、車両を切り離すことで離脱できよう。
何よりリターン―沖縄への早急な到着―を得るには、リスク―不可避の環境での襲来―も必要。

Lは電車の利用をほぼ確実に決定していた。

一番危険なのは、すでに乗客がいる場合。
マーダーが乗っていれば、自分の身は保障されないわけだが。

逆に乗っていなければ、先程の理論が展開できる。
静岡駅をまず最初に目指さなかったのは、実は探索で静岡駅が見つからなかったからなのだ。
静岡駅は東海道新幹線も通る主要な駅なのだが、それがなかった。
おそらくこの世界の路線は、日本の縮小コピーではないのだろう。あまり複雑にすると、おいそれとエリアを封鎖できないからだ。
電車に乗ったまま成す術無く禁止エリアに突入では、主催者たちも興が醒めるのだろう。
そして名古屋には案の定駅があった。
駅の数が減らせれている上で、下り方面の鉄道だと、ここが上方に最短距離の地点である可能性は高い。
ここで他人=殺戮者と乗り合さなければ、大阪まで一直線に行けるだろう。
そこから先は更に安全。大阪まで到達した人々が次に目指すのは、東京。
正反対を目指すわけであるから、一層他人と乗り合わせる確率は下がる。

残りの不安要素は、洋一のアンラッキーだけなのだが……
432たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:53:18 ID:y+fe6n8q0

     ぽっぽ〜

ここで汽笛と共に機関車が到着する。
「蒸気機関車でしたか……」
ちょっとした意外さに、少々驚くL。

『停車時間は五分間となっております。駆け込み乗車はお止めください』

なんだかテキトーなアナウンスが流れる。
無機質な合成音声。電気は流れていないはずなので、これも主催者たちの不思議な力か。
納得しがたいものだが、認めるほかない。

(誰も乗っていませんね……)

そ〜っと車内を確認するL。罠が仕掛けられている可能性もある。
神経を研ぎ澄まして、車内の安全を点検する。点検の上でとりあえずは罠の類は無いことを確認する。

(とりあえずは大丈夫そうですね。あとは彼だけです)


そうして四分程の時間が経過した。

非常に長く感じられたその四分間、Lは車内で洋一を待っていた。
別に洋一を見捨てるという手も無いわけではない。しかし彼を見捨てれば『完全勝利』は二度と口に出来ない。
只待つばかりのLであったが……
433たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:54:08 ID:y+fe6n8q0


「逃げる気かい!?エラルド・コイル・ドヌーブ君!?」

高らかに響く趙公明の声が。
目をやると反対側のホームに仁王立ちの趙公明、とその影に追手内洋一が。

(予測してなかったわけではありませんが……仕方ありませんね)

洋一は酷く怯えており、ぷるぷる震えてLを見ている。
彼が恐れているのは、傍らの趙公明ではない。彼の恐れの対象は、Lの放つ侮蔑の眼差しである。
別に軽蔑の意思を込めて洋一を見ているわけではないが、疑心暗鬼の彼が深読みするのも無理はない。
そして趙公明は一歩前に進み、演説の如く語り始める。

「主であるムーンフェイス君を置いて逃げるとは……従者としては失格だよ」
「別に彼と私の関係は主従関係ではありませ…」
「シャーラップ!!言い訳は聞きたくないよ!
 さあ、シェイクスピアの悲劇を再現するように!彼を追って命を絶ちたまえ!」

趙公明は傘の石突をLに向ける。そしてLに鋼の弾を降り注いだ。


「  !!    ………?」

降り注いだ、はずだっのだが。Lは無傷。趙公明も不思議そうにしている。

「弾切れ……か」
Lにとっては幸運にも。趙公明にとっては不運にも。
マシンガン傘はこの肝心な場面で吐き出す弾丸を失ってしまった。
434たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:55:01 ID:y+fe6n8q0

「う、う、うわああぁあぁあああぁっ」

ここで洋一が列車に向かって走り出す。彼とて殺人者の傍に居たくはないのだ。
確かに彼の協力をすれば今は安全。しかし彼をそう信用してよいものかは考え物である。
弾切れで趙公明が油断したこの瞬間しか逃げるチャンスはない。
殺人鬼と裏切り者。選ぶなら後者、とでも判断したのであろう。

「逃げる気かい、洋一君!?君も全く……愚かだね!」
しかし趙公明が逃がすはずもなく。
短くして隠し持っていた如意棒を勢いよく伸長させて、洋一の背中を激しく打つ。
「いてえっ!」
背中を強く打たれ、転倒する洋一。その上から趙公明が片足で踏みつけて洋一を押さえ込む。
さらに伸びる如意棒はLの心臓を襲おうとする。

万事休すか。そうLが思った瞬間。

        ジリリリリリリリリリリリリリリリリ

扉が閉まり、機関車が動き始めた。
またしてもLにとっては幸運にも。趙公明にとっては不運にも。
如意棒は壁を一旦突き破ったために勢いが弱まったために、更に車両が動いたために照準がずれたために、
Lは咄嗟の反射神経でそれを回避することができた。

完全に扉は閉まり、機関車は汽笛を再び鳴らす。そしてゆっくりと加速を始める。

「洋一君!」
Lは洋一の名を呼ぶ。その洋一は趙公明に押さえ込まれて身動きできない。
すると、Lのすぐ傍に突き刺さっていた如意棒が縮み始めた。
趙公明が如意棒を戻したのだ。
435たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:55:39 ID:y+fe6n8q0
汽笛が三度鳴り響き、機関車は車輪の回転を早める。

趙公明は洋一を放って線路に飛び出し、機関車の後方へ如意棒を改めて伸ばす。
しかし車両はカーブにさしかかり、如意棒の攻撃を間一髪で回避する。
かくしてLを乗せた機関車は、追撃を受けることなく無事趙公明からの逃亡に成功した。


がたんがたん、がたんがたん。

一人きりの車内でLは安堵して崩れるように座り込む。
「助かりましたね……」
Lは安堵の言葉を呟く。その言葉に相槌を打つ者は誰もなく。
そして、置き去りにしてしまった洋一のことを考える。
裏切られた事実。しかし並の精神ではそうならないほうがおかしいのだ。
彼との信頼関係を築くことを怠ったのもまた事実。
一方的に非難することは極めて非生産的。

今すべきことは、自分をここまで逃がしてくれたムーンフェイスの命と洋一の不運のためにも、生き延びる事。
そしてこのゲームをいち早く中断させること。


(申し訳ありません……。でもどうか生き延びてください。必ず…このゲームを中断させてみせます)

Lはたった一人で、その強い正義の意志をさらに強固なものとした。

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「さてと、どういうつもりか説明してもらおうかな?洋一君」
436たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:56:18 ID:y+fe6n8q0

名古屋駅では趙公明が怒りの表情で洋一を問い詰めていた。
ついさっき、命の保障と交換条件で彼を召使いとして雇ったばかりだというのに。
自分を信用していない人間を傍におくのは、危険。彼の無能さを考慮すれば、正確に言うと、不快。

「僕のような高貴でエレガントな貴公子に仕えるということは、非常に名誉なことだというのに……嘆かわしいね」
洋一は趙公明の怒りに対して完全に怯え切り、土下座の姿勢で這いつくばったまま。
そして「許して、許して」と懇願するばかり。

「何にも言えないね、君の愚かさには」
趙公明は洋一をなじる。別に弱者をいじめる趣味はない。
しかし、このような臆病者に裏切られたことは非常にプライドを損ねることであった。

「ご、ごめんなさい……、どう…か、許してく、ください」
謝り続ける洋一。涙を浮かべて、声を震わせて、唯々謝ることしかできない。
必死で、頭を下げ、額や髪の毛は土埃で汚れている。
終いには趙公明の足にしがみ付く始末。

「やめたまえ!
 ……君にはほとほと呆れたよ。ここまで愚かだとはね。プライドも無いのかい?」

それに対する適切な返事はなく、彼はただ「許して」と言うだけ。

「……もう、君との関係は無しにしよう。
 哀れな庶民に慈悲を与えたつもりだったが、君がそれすら惜しいぐらい人物だと分かったよ。
 君に一切の興味はないし、先程の荷物も全部君にあげよう。
 そのかわり、僕の目の前に二度と現れないこと。   ………いいね?」

趙公明はこの愚かで惨めで哀れな少年に、見切りをつける。
洋一は遂に何も言わなくなり、鼻水をすする音しか聞こえなくなる。

「僕はいまから富士山を見に行く。くれぐれも、もう僕の前に現れないでくれたまえ」
437たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:56:58 ID:y+fe6n8q0

洋一と関わり、ラーメンマンとの戦闘で昂ぶった気持ちも、ムーンフェイスとの戦闘で味わった喜びも失せてしまった。
残ったのは不快感のみ。
この気持ちを癒すには、ビューティフルな光景しかない。
京都で拝借した観光パンフレットにあったのは、夕焼けを受ける霊峰富士の美しさ。
その写真では、大自然の山吹色が湖面を鏡のように扱って富士の山を彩っていた。
写真ではなく、この目で見たいと心から思ったあの光景。
あれ以外に今の自分を慰めてくれるものはないだろう。

趙公明は如意棒を地面に突き、富士山の方向を確認する。
洋一にはもう一切反応を示さず、お得意のあの方法で早々にその場を立ち去った。

「アディオス!名古屋!そしていざ!Mtフジヤーマ!」

段々と小さくなっていく趙公明の姿と声。彼は北東の空に消えていった。




残された洋一少年。
謝る相手は去ったのに、未だに頭を下げたまま。
闘わずして、趙公明を退けられたのだからこれはラッキーなのかもしれない。

しかし追手内洋一はこれがラッキーだとは思えていなかった。
何だか心にぽっかり隙間が空いた気分。
虚無感に襲われ、自分の無力さを覚えて、卑小さを恨んで、臆病さに呆れて。
そして意味の無い言葉――こう言わないと、自分の馬鹿さ加減が嫌になるのだろう――をボソリと呟いた。

「俺って……ついてねー」

438たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/05(日) 22:57:47 ID:y+fe6n8q0

【愛知県/午後 下り電車の中】

【L(竜崎)@デスノート】
[状態]:右肩銃創
[道具]:無し
[思考]:1・沖縄を目指し、途中で参加者のグループを探索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除
    2・出来るだけ人材とアイテムを引き込む
    3・沖縄の存在の確認
    4・ゲームの出来るだけ早い中断

【愛知県/午後 名古屋駅】
   
【追手内洋一@とっても!ラッキーマン】
[状態]:右腕骨折 左ふくらはぎ火傷と銃創 背中打撲 疲労
[道具]:荷物一式×2(食料少し消費) 護送車(ガソリン無し、バッテリー切れ、ドアロック故障) @DEATHNOTE
    双眼鏡
[思考]:1・茫然自失
    2・死にたくない

【愛知県/午後 北東部郊外】

【趙公明@封神演義】
[状態]:中度の疲労 全身各位に小ダメージ
[道具]:荷物一式×2(一食分消費)如意棒@DRAGON BALL 神楽の仕込み傘(弾切れ)@銀魂
[思考]:1・夕暮れの富士山を観光しにいく
    2・ディズニーランドでラーメンマンを待って煌びやかに闘う。
    3・エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキ、ラーメンマンを優先。
    4・脱出派の抹殺
439たらい回しの不運 ◆jcasZ9x.B2 :2006/03/06(月) 00:00:55 ID:bwj74nh10
>>438のL状態表  修正します

【愛知県/午後 下り電車の中】

【L(竜崎)@デスノート】
[状態]:右肩銃創  負傷による疲労
[道具]:デスノートの切れ端(書き込める余白は約二人分)@DEATHNOTE
[思考]:1・沖縄を目指し、途中で参加者のグループを探索。合流し、ステルスマーダーが居れば其れを排除
    2・出来るだけ人材とアイテムを引き込む
    3・沖縄の存在の確認
    4・ゲームの出来るだけ早い中断

備考:極力デスノートは使いたくないと思っています
440掃除屋達の慕情【中篇】:2006/03/06(月) 00:55:42 ID:LgcRiZy70
「これが勝浦の那智の滝・日光の華厳の滝とともに日本三大瀑布の一つである、袋田の滝ね。
 ・・・綺麗だわ」
 茨城県久慈郡大子町、日本三大瀑布の一つである袋田の滝。
 その大胆な奔流と一様でない繊細な流れを下流から見上げ、
 考古学者であるロビンは内なる思いを自分の言霊に乗せずにはいられなかった。
「やけに詳しいな」
「・・・これを読んだだけよ」
 ロビンの吐露した言葉に驚嘆と賛美を重ねつつも、傍にいた男が肩を並べる。
 するとロビンは一枚の紙切れを差し出した。
「なるほど。これなら一目散に逃げても各地の名所を頼りに場所が特定できるってわけか」
 男がロビンから受け取った紙切れを開き、覗き込む。
「へえ。別名『四度の滝』とも呼ばれてるのか。
 滝の流れが4段に落下するからそう呼ばれてるわけだな」
 シルクハットにタキシードをエレガントに着込んだ男が、
 “観光案内”と書かれた紙切れを下流で覗き込むという
 なんとも混沌とした雰囲気を醸し出している間に、ロビンはさっさとその場を跡にした。

 一拍おいて、男は顔を上げ、微笑みと共に木にもたれ掛かる。
 いつものようにタバコをくわえようとして、タバコがないことにきずく。
 バツの悪そうに頭をかきながらも、やはりその漢――スヴェンは笑っていた。

「待ってるぜ、相棒」
441掃除屋達の慕情【中篇】
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 ロビンとスヴェンが袋田の滝に到着するまでの間に、二つの事が起こっていた。
 ひとつは追跡途中に一度スヴェンがロビンを完全に見失ったこと。
 (その間ロビンは駅前で観光案内×2get)
 そしてもうひとつは・・・・・・・

「ねえ、トレイン君・・・」「ん?」
「何にも見えないよ」
 所変わって、トレイン、杏子。杏子の調子もある程度まで回復し二人で昼食をとっている時
 驚異的な視力を持つトレインは南方から駆けてくる女性を見つけた。
 そのトレインが対象をはっきりと確認できない距離であるのに、
 一般人の杏子には影も形も見えるはずがなかった
「おっかしいなあ。向こうから女の人っぽいのが走ってきてるように見えんだけど」
「トレイン君、視力は?」
「ん?確か・・・両方6.0だったと思うぜ♪」
「・・・どこの原住民よ」
 二人が他愛もない会話をしているうちに、人影は二つになり、そのシルエットは大きく、
 鮮明になっていった。
「ん?あの白い帽子は・・・・」
 次第に杏子にも凝視できる距離まで二人は近ずいてくる。なんせ二人とも走っているのだ
「ん?あの女(ひと)は・・・・」
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