ジャンプキャラ・バトルロワイアル PART3

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351動き出す計画:2005/11/16(水) 22:59:37 ID:izDX+pSG0
「わしが初めに説明した、この亜空間のことは覚えているな?」
「うん、確か主催者達に都合のいい世界だって」
「そうじゃ。だが、こんな広大で複雑な設定の亜空間を一人で作れると思うか?」
「…と言うと?」
「わしがここに来る前、星矢という少年と出会った。そのことはもう話したな?そのペガサスの聖衣の持ち主だ。
 その少年がわしに言ったのだ、この世界からはハーデスの力が感じられる、と」

ダイは俄かに体が硬直する。ハーデスといえばバーン達と一緒にいた、あの黒衣の男!
ならばこの世界、亜空間を作ったのはあいつなのか?

「だが、星矢はこうも言った。この世界からはハーデス以外の力も感じられる、と」
…ダイは直感する。きっとバーンだ。あの大魔王はきっと禁呪法を用いてこの亜空間を生み出したんだ。
そしてあの得体の知れない、ハーデスと名乗る者と協力してこの世界を作り出したのだと。

「…この際、誰と誰がこの世界を作ったのかは重要ではない。重要なのは二人、いや複数でこの世界を作り上げたことだ」
「…でも、二人でならより凄い世界、二人だからこそこんな世界を作り出せたんじゃないの?」
太公望はしたり顔でにやける。あぁ、きっと何か閃いたのだとダイは確信する。少し前まであのにやけた顔が怖かったのに。
今では安心さえ覚える。

「共同作業というのはより品質の高いものを生み出すが、反面思いも寄らぬ欠陥を生み出すこともあるのだよダイ。
 例えばわしら二人で砂山を作るとしよう。ダイ、おぬしも自分の山を作ってみよ」
訳の分からぬままに太公望の言うとおりに自分の前に小さな砂山を作る。太公望も同等の山を作ったようだ。

「この二つの砂山を合わせればどうなるか、よく見ておくのだ」
身を乗り出してダイの砂山を奪い、太公望は自身の砂山にそれをぶつけると、より大きな砂山が出来上がった。
…しかし出来上がった砂山は合わさる前の砂山に比べると形が歪み、汚く見え、またところどころポロポロと
砂が崩れて下に流れている。大きさでは劣る個人で作った砂山だが、完成度が高いの個人で作った砂山であるのは一目瞭然である。
352動き出す計画:2005/11/16(水) 23:00:04 ID:izDX+pSG0
「この砂山と一緒なのだ、この世界は。この世界の力は強大だろうが、複数で作り上げたかぎりどこかに必ず綻び、
 …きっとこの亜空間にも何か欠陥があるはず。何かのひずみ、亀裂のような…どのような形でそれが現れるかは分からぬが。
 もしかしたら、そのひずみから脱出できるかもしれん」
「…でも、それをどうやって見つけるの?ただでさえこの世界は広いんだよ?
 何人いたって見つからない気がするよ」
「…それに関しては安心せよ。それを見つけるため、既にターちゃんが動いておるよ」
ダイは首を傾げる。ターちゃんが?そういえばさっき太公望がターちゃんに何か頼みごとをしていたけど…
…そういやあのときも動物の言葉で話していたような気がする…。

「ダイ、このことはくれぐれも動物の言語以外で話すでないぞ。…主催者達に気付かれてはならぬ。
 あくまでこの案は脱出のための能力を持つ人間と会えなかったときの策だ。もしものときに
 ひずみやら亀裂やらを修復されていてはどうしようもないからのう」
ダイはこの策が主催者達に漏れたときのことを想像して背筋を凍らせる。もしそうなったら全てが水の泡だ。
主催者達に勘付かれないために、太公望がわざわざ暗号の試験と称して動物の言葉でこの計画を話したのもそのためだ。
全ては主催者達の隙をつくために。

「分かったよ太公望、でも公主さんはどうするの?」
「今しばらくは伝えないでよい。おぬしとターちゃんが公主に言葉を教えるのだ。伝えるのはそれからで構わん。
 そしてダイよ、今までの話はあくまでわしが推測した結果、仮定の話だ。何も確証は無いし、外れていてもおかしくは無い。
 ……忘れるでないぞ」
そういうと太公望は動物の言葉での会話を切り上げ、ダイとともに公主の側に歩み寄り、腰を落とす。

「太公望…試験は終わったのか?」
「あぁ、終わったぞ公主。ダイとなら安心してトランシーバーで通信できるわい」
公主は穏やかな口調で問う。どうやら二人が全く別の話をしていたことには気付いていないようだ。
それを見てダイはチクリと胸が痛む。騙しているわけではないが、大事なことを黙っている…
罪の意識から思わず本当のことを言いそうになるが、笑顔で問いに答える太公望の顔見て、踏みとどまる。
…病気で苦しんでる公主さんにこれ以上負担をかけたくないんだろうな…あなたは本当に優しい人だよ太公望…。
「残り二つのトランシーバーだが、これのうち一つは純粋にわしらの脱出計画に手を貸してくれる人に渡そうと思っておる。
 …そして最後の一つは…この世界から脱出可能な能力を持つ人間に渡すつもりだ」
353動き出す計画:2005/11/16(水) 23:01:17 ID:izDX+pSG0
太公望が長い話を遂に終える。と同時に公主とダイがせつなく、辛そうに顔を曇らせる。
彼らにはわかっていたのだ。この話の終わりは脱出への長い道程の始まりであるとともに太公望との別れであると。

「…それじゃわしはもう行く。時間が惜しいのでな。まず最初に富樫と合流し、ターちゃんをそちらに戻したら
 そのまま徳島から和歌山へ泳いで渡り、東を目指すつもりだ」
そこまで言うと、太公望はだるそうにため息をつく。
「…はぁ、富樫のあほを説得するのが大変だわい…どうしたものか」
珍しく弱気な太公望。まぁ無理もない。富樫本人のためとはいえ、わざと冷たく当たったあとにどの面下げて会いに行けばよいのやら。
素直におぬしのために辛く当たった、と言えばいいのだが、変なところで不器用な太公望は決して言わないだろう。

「…大丈夫だよ」
ダイの一言があたりに響く。いや、一番強く響いたのは太公望の心だろう。
「ここまで一緒に来たんだよ?ならきっと分かってるよ、富樫さんだって。
 太公望の変なところも良いところも。それが仲間ってもんでしょ?」
ダイは思い出す。ポップ達のことを。彼らは今まで辛い冒険を共に切り抜け、苦楽を共にしてきた大事な仲間である。
ポップ達のことなら、言葉に出さなくても何を言いたいのか分かる。それは仲間だから。
だからきっと、太公望と富樫さんも仲直りできるだろう。ライディンを見ながらも逃げずにここまで一緒に来たのだから。

「まぁ会えばなんとかなるか。……ダイ、感謝するぞ」
顔を隠すように背中を向け、ぶっきらぼうに答える太公望。恐らく照れ隠しであろう。太公望らしいと言えばらしいのだが。
ダイも公主もそんな不器用な太公望の態度を見て我慢できずにクスクスと笑いを漏らす。
「えぇい、笑いたければ笑え!それじゃわしはもう行く!」
太公望は大声でそう捨て吐くと、その場から逃げ出すが如く走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。

「…行っちゃったね。もう少しちゃんとした別れをしたかったのに」
「あやつはそういうのを嫌う。しんみりとした空気が苦手な男なんじゃよ太公望は。
 今のことはまた会えたときに文句の一つや二つでも言ってやればいい。太公望は感動的な再会というものより、そういうのを好むからな」
ダイと公主は太公望が走り去った方角を静かに見つめる。見つめた先の風景に太公望の幻影が何度も現れては消える。
二人は祈り、目を瞑る。今度この目に映るのは幻影ではなく、本物の太公望、幻影と同じく笑顔の太公望であることを。
流れる風と共に目を開くと、最早幻影は二度と現れなかった。
354動き出す計画:2005/11/16(水) 23:03:26 ID:izDX+pSG0

ガサ ゴソ ガサ ゴソ

民家の中から物音が響く。しばらくその音が響いたあと、二人の男が玄関から姿を現す。
「…あいつの言うとおり、無いかもしれねえな…」
そう呟くのは富樫。太公望と半ば喧嘩別れをして飛び出してきたが、今は少々の後悔の念を感じていた。
「諦めるのはまだ早いのだ。他の民家も探そう」
そう慰めるのはターちゃん。彼も共に竜吉公主のために御香を探していたのだ。

二人は今、太公望達と然程離れていない、小さな村に立ち寄っていた。
一軒一軒、御香を探してみるのだが、簡単には見つからない。一軒二軒三軒と探すうちにもしや本当にないのではという考えが脳裏を過ぎる。
そんな考えが浮かぶたびに頭を左右に振って、必死に否定する。そしてまたそんな考えが浮かばぬうちに次の家に入って探す。
それの繰り返しであった。

「富樫、しばらく探してみて、何も見つからなかったら一度戻ってみようじゃないか。彼らも心配する」
「…分かっているけどよぉ…」
ターちゃんの提案に富樫はバツの悪そうな顔をする。富樫もそうしたいのは山々だが、なんせ喧嘩腰に飛び出したのは自身だ。
何も収穫がないとなれば合わす顔も面子も立たない。そしてなにより…
「…ターちゃんよ、あの馬鹿、太公望のやつは俺と自由にするためにあんな悪態ついたに違いねえ。
 なのに俺はそれに気付かずあいつを軽蔑して、殴っちまった。…どの面下げて会えばいいんだよ」
「いいじゃないか、会うだけで。会って仲直りするなり喧嘩するなり、なるようになるのだ」

会う。その言葉にターちゃんはもう二度と会うことの出来ない仲間を思い出す。
ヂェーン、ペドロ、アナベベ…皆の顔を思い出すと自然と思い出まで蘇ってくる。サバンナの熱い風とともに。
「…すまねえ、ターちゃん、俺のせいで辛いことを思い出させちまって」
富樫はターちゃんに詫びる。ターちゃんの眼差しが散っていった仲間達のことを見つめていたことに気付いたから。
…富樫自身もは剣桃太郎を失ったとき、同じような眼差しをしていたから分かったのだろう。
俺は仲間の一人を失っただけで胸が張り裂けそうだった。なら、ターちゃんはそれ以上の…
「ターちゃん、あんたは強ええな。俺は一人仲間を失っただけで辛かったのに、あんたは…」
「それは違うよ富樫」
355動き出す計画:2005/11/16(水) 23:03:51 ID:izDX+pSG0
富樫はターちゃんを慰めるつもりで言った言葉をターちゃんは優しく声で否定する。
「私も仲間を失ってとても辛い。だけど富樫も仲間を失った。それは同じ悲しみだよ。どっちがより辛いなんておかしいことだ
 失った仲間の数で悲しみの大きさが決まるなんて」
ターちゃんはまたさっきと同じ眼差しで空を見上げる。そう、瞼の裏にもう会うことの出来ない仲間を思い浮かべて。
「確かに仲間を失ったことは辛い。けれど、私は思い出すんだ。彼らの生きていた姿を。アフリカのサバンナを走り回っていた彼らを」
私に言葉を教えてくれて、一緒に暮らしたヂェーン。今でも私が作った日よけの傘の下で本を読んでる姿が目に浮かぶ。
私を慕ってあの日、弟子入りしたペドロ。いつか戦ったときは思ったよ。強くなったな…ペドロ、って…。
私のライバルだったアナベベ。金持ちになったのはいいけど奥さんにはいつも尻に敷かれていたよな…いつもそれを見て笑ったっけ。

「もう会えないが、感じることは出来る。彼らの生きた残り香を」
そう、ターちゃんの体、心には染み付いているのだ。彼らの生きた証の残り香が、思い出となって。
「彼らの魂は、彼らが愛した地に還ってくる。そう、アフリカに。だから私はここで死ぬ訳にはいかないのだ。
 私は必ずアフリカに帰って彼らの愛したアフリカと動物達を守る。それが彼らの残り香でもあるから」

ターちゃんは未だ空を見上げている。きっと遠いアフリカのサバンナと動物達を思い出しているのだろう。
富樫はそんなターちゃんを見上げ、考える。愛した地に還ってくる、か…。
「富樫、君の仲間もきっと還ってくる。君らが愛した地に。だからまた会えるさ」
「…へ、慰めるつもりでいったのに、逆に慰められちまったな・・・」
桃、お前の愛した地なんざあそこしかねえよな…だから待ってるぜ。お前が還ってくるのを。
桜咲く男塾の校庭でな…皆と一緒に。

「…さぁ、次の家を探すのだ。その間に考えておけばいいのだ。どうなって仲直りするのかを」
「へ、分かってるよ。あのねーちゃんのためにお香を見つけてあの馬鹿たれ太公望につきつけてやるぜ。
 無いと分かりゃ、あいつに当り散らしてやればいいしな」
「やれやれ…富樫も素直じゃないのだ…」
会うだけでいいじゃないか。その言葉に富樫は救われた気がした。そうだよな、会えるときに会っとかなええとな。
とりあえず戻ったらあいつに一言謝っておくか…殴っちまってすまねえ、って
富樫が顔をあげるとそこにはターちゃんのいつもの笑顔があった。ターちゃんはもう当分は空を見上げることはない。
ターちゃんが今度空を見上げるときは太陽がまぶしく照らすアフリカの大地でだろう。あのサバンナの空に浮かぶ彼らを見つめるために。
356動き出す計画:2005/11/16(水) 23:04:18 ID:izDX+pSG0
「…そういやよターちゃん、太公望に頼まれたことって一体なんなんだよ」
「ふふふ、それは私と太公望との秘密なのだ。聞いちゃ駄目なのだ」
「…なんだよ、おめえもあいつと同じ秘密主義か」
「太公望に口止めされているのだ。すまん」
それを聞き、富樫は拗ねてしまったようだ。顔をプイっと背けるとさっさと次の民家に入ってしまった。

「(太公望・・・思ったより時間がかかりそうだ。この四国には思ったより鳥や動物が少ない。)」
ターちゃんは太公望の頼みごとを既に実行していた。ターちゃんは歩きながら鳥達や動物たちにあることを頼み、それを聞いた動物たちは
次々と仲間の動物に伝える。ターちゃんはそれが全国の動物に伝わるのを待っているのだ。
だが、さっきターちゃんが言ったとおり、この世界には動物が少ない。よってその伝達の遅れを恐れていた。

「(太公望に頼まれたあれ…そう、動物達にこの世界を徹底的に調べさせるのはどれぐらいかかるか予想もつかないな)」
そう、太公望がターちゃんに頼んだのは鳥や動物たちを使った、この世界の調査であった。
太公望も鳥の言葉を話せるが、あくまで会話だけ。この計画に必要なのは動物と心を通わすことのできる人物。
つまりこの計画を実行できるのはターちゃんだけある。勿論この計画を秘密にしたのは主催者達に気づかれぬため。

「(太公望は言った、この世界にはどこかにおかしいところがあってもおかしくない、と。それさえ見つかれば…)」
太公望が頼んだことはそれだけではない。この世界はどれくらいの規模か、海の向こうには何もないのか、地図に載っていない島や
施設は存在していないか、この世界にいる監視者の発見、おかしな風景は無いか、
知りうる限りの敵味方、これまであった人物の位置の把握、とにかく多くのことを調べてほしいとのこと。
だがそれらを全て調べるためには多くの動物が必要。だからターちゃんはこの四国の動物を通じて全国の動物達にそれを伝えているのだ。
「(動物達に指令を出すために私はこの四国を動くことは出来ない。エテ吉、無事でいてくれよ)」
357動き出す計画:2005/11/16(水) 23:04:38 ID:izDX+pSG0
太公望はダイ達と別れてからニョホホホオ〜と奇声発しながら走り続けていた。が、そろそろ限界の模様。
ぜえぜえと息を切らして、近くの木陰に入ると先程の奇声を発していた男とは思えないほど真剣な顔つきをしていた。
「(ダイ、公主、すまんな…わしはまだ話してないことあるのだ)」
太公望は目を瞑り、先程別れたばかりの者達に心の中で謝罪する。
「(あやよくば、この世界から脱出できたとしても、待っているのは彼奴ら、そう主催者どもとの戦い…そうなれば勝ち目はあるまい)」
そもそもこのような大人数をこの世界に連れ込むことが出来た時点で主催者>参加者の力関係は目に見えている。
元の世界に戻れば参加者たちの力の制限がはずれ、元の実力を発揮できるが、その分わしらの中にも力の格差が発生し、
戦えるものと戦えないものが現れてしまう。…そして後者が圧倒的に多くなるのも明白。後者をかばって戦う時点で敗北は必死。
後者を見捨てて戦うとしても、戦えるものが少ない前者ではやはり敗北という結果はは避けられないだろう…。

「(ふっふっふ、ならば策は一つ。…やつらをこの世界に引きずり込む!)」
そう、主催者といえど、この世界に入ってしまえば奴らも同様に力の制限が働くだろう。
そうなればこっちのもの。先程の問題は全て解決され、こっちは数で押せる!

「(・・・まぁ、その策を実行しようにも方法が思いつかぬのでどうしようもないが…
  これからじっくり考えるかのう…ターちゃんから報告があれば何か思いつくかもしれんが)

太公望は思考に一区切り入れると立ち上がり、木陰から出ると歩き出す。
「(どっちにしろ仲間は必要だ。今は仲間を増やすことに専念するかのう。…さっさと富樫と合流するか)」
358動き出す計画:2005/11/16(水) 23:05:10 ID:izDX+pSG0
【香川県、瀬戸大橋付近の小山の森/午前】

【ダイ@ダイの大冒険】
[状態]健康、MP微消費
[装備]出刃包丁
[道具]:荷物一式(水残り半分) トランシーバー
:公主の荷物一式
:ペガサスの聖衣@聖闘士星矢
[思考]1:ダムに行き、四国を死守
2:公主を守る
3:ポップ・マァムを探す
【竜吉公主@封神演義】
[状態]疲労進行中
[装備]青雲剣@封神演義
[道具]アバンの書@ダイの大冒険
[思考]1:ダムに行き四国を死守
2:呪文の取得

【香川県、瀬戸大橋付近の山中/午前】

【太公望@封神演義】
[状態]健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)
[装備]:五光石@封神演義
:トランシーバー×3
:鼻栓
[思考]1:富樫と合流
2:バキの取得を試みる
3:ゲームの脱出
359動き出す計画:2005/11/16(水) 23:07:26 ID:izDX+pSG0
【香川県中央部 小さな村/午前】

【チーム名=富樫とお守り】
【富樫源次@魁!男塾】
[状態]健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)
:爆砕符×2
:鼻栓
[思考]1:公主のために仏壇屋を探して香を持って帰る
2:太公望との仲直り
3:男塾の仲間を探す
【ターちゃん@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]健康
[道具]:荷物一式
:恥ずかしい染みのついた本@ジャングルの王者ターちゃん
[思考]1:富樫に付いていく
2:太公望からの頼み事の実行

備考 全国の動物達に伝わるのは少々時間がかかります。
360動き出す計画(修正):2005/11/17(木) 01:14:58 ID:72bxaOMh0
>>350 の下から5行目から上を下記のように訂正します。
361動き出す計画(修正):2005/11/17(木) 01:15:53 ID:72bxaOMh0
ダイは己の拳に自然と力が篭るのを感じる。状況は何も変わっていない。脱出方法も見つかっていない。
しかしこの人の話を何故か心に安心を覚えてしまう。…まるで…アバン先生のようだ。
公主さんが無条件で信頼するこの人、なんとなく理由が分かる気がする…。
「そして、このトランシーバーを使用する際、暗号として動物の言葉を使用するように。
 通常の暗号だと解読されるやもしれんからのう。ターちゃんが戻って来次第、各自動物の言葉を彼から学ぶように。
 …出来れば、わしもターちゃんに動物の言葉を教えてもらってから、打ち合わせをしたかったのだが」
「あの…太公望」
ダイが自信なさげに太公望を呼ぶ。
「どうしたダイよ」
「俺、今までモンスターに囲まれて生きてきたから魔物の言葉は分かるんだ。会話も出来るし。俺でよかったら教えようか?
 …動物や魔物たちの言語って結構感覚的なものだし、コツさえ掴めれば太公望は頭もいいから、すぐに覚えられるよ」
「よいよい、是非とも頼む。そのコツとやらを早速教えてくれ」
勇者ダイによる道士太公望への授業がはじまる。が、傍から見ると少年が青年にモノを教えている姿は大変滑稽である。
公主はその図に思わず引き出しそうになるが、なんとか耐えると、自身もその勉強会に参加すべく、横からすっと覗いてみるが
大変難しく、思わず頭を抱えてしまう。そんな公主を尻目に太公望は慣れない手つきで一生懸命説明する、ダイの動物語の説明を
全く苦に思わず、すらすら頭に入っている模様。さすが太公望、私とは頭のつくりが違う、と感嘆する公主。
ちなみに太公望はIQこそはっきり出されていないが、風に舞う54枚のトランプを一瞬で全てを覚え、
神経衰弱をパーフェクトでクリアした男である(正確には敵にイカサマをされ、パーフェクトにはならなかったが)
362動き出す計画(修正):2005/11/17(木) 01:16:29 ID:72bxaOMh0

ダイの授業が始まってから数十分、ダイの驚きの声と共にその授業は終わりを告げる。
一瞬で脱落し、そのすぐ横で終わるのをまどろみながら静かに待っていた公主は、その声に驚き、何事か、と問う。
「だって、公主さん!太公望はもう覚えちゃったんだよ!コツと基本的なことを教えただけなのに…。」
「けけけ、とは言ってもまだ言葉もたどたどしいがのう。まぁ一応会話はなんとかできるわい」
太公望はダイの授業で教えてもらったメモをくしゃくしゃに握りつぶすと、それを飲み込む。
「ダイ、テストとして何か簡単な問題を出してみてくれ」
「う〜ん…と、ならこれを訳してみて。ウボアーガーワンワン」
「むう…お前の母ちゃんでべそ・・・って何を言わせるのじゃダイ!」
「あははは、さっき濃い顔にされたお返しだよ!」
太公望とダイが無邪気にじゃれある姿を見て、微笑を浮かべる公主。いつまでもこの時間が続けばいいのに…

「ではダイよ、次は10分間動物の言葉で会話する。これが出来ればわしに問題はないであろう。
そういうと太公望とダイは動物の言葉で会話を始める。公主から見ればガーガーやらバーバーなんたらかんたらと
訳の分からない言葉で喋るあほがいるようにしか見えない。太公望が相手だとさらにそう見える。
363動き出す計画(修正):2005/11/17(木) 01:17:27 ID:72bxaOMh0
それに加えて352の

>…そういやあのときも動物の言葉で話していたような気がする…。

の一文を削除します。お騒がせしました。
宮城県の海岸線よりの道。そこから少し外れた森の中で二人の男が対峙していた。

「・・・戦う気はない。といっても無駄なようだな」
「へへへっ、そーゆーこと、お前と戦う方が面白そーだからな。怪我しているとこ悪ぃが」

ブチャラティは考える。
(オレは失敗したのか、そして晴子は・・・だが悔やむことはいつでもできる
今はこの危機を乗り切きることだ
事実はどうあれ、この状況を見られては説得は難しいだろう。
逃げることはたやすいが・・・・やむをえんな)

「オレはブローノ・ブチャラティ。名を聞いておこう」
「おう、オレはニンジャマスター・ガラ。ガラでいーよ」

(この目の前の大男『ガラ』、相当の手だれのようだが、けして生かしておくわけにはいかない。
もしガラがこの状況を他の参加者に話せば、オレはいっそう不利な立場になるだろう。
ここは多少のリスクを背負ってもこのガラを始末しておくべきだ。)

「おっ、やる気になったか?」
「ニンジャというのは聞いたことがある。確かこの国の隠密部隊だったな」
「ンなコトより丸腰のようだが大丈夫なのかぁ?」
「お互い闇に生きる者だ。覚悟はいいな?オレはできてる」
「おいおい冗談だろ。とても同業者には見えねー」

じりじりと近づく両者の間合い

「オレはガンダムより強えーぜ」
こいつぁモノホンだ。斬魄刀を構えながらガラは思った。
(おもしれー、相当な修羅場をくぐってきてるな。しかし片腕で丸腰のくせに自信満々に間合いを詰めてきやがる。
こりゃあ何かあるな・・・。「あの技」で様子を見るか・・・)
「おらぁーー、『魔神(人)剣』!!」

ガラの必殺技『魔神(人)剣』。高速で剣を振るうことで衝撃波を奔らせ、対象を切断する技。衝撃波のスピードは音速を超える。

「ちょっと手加減したぜー。これで終わりってこたぁねーよなぁ」

それでも至近距離、見てから避けることなど不可能だし、ましてや生身の人間がガードできるわけ無い。しかし―!

「なにぃ!!?、ブチャラティが消えた?」

衝撃波が当たる寸前、ブチャラティは忽然と姿を消していた。
目標を失った衝撃波は、轟音とともに一瞬前まで彼がいた場所の大地をえぐり、そのまま大木に命中してなぎ倒した。
どこからか声が聞こえる。

「・・・『魔神(人)剣』か、スゴイ威力だ。まともに食らったらまず助からないな」
「なにっ、地下から!!」
「スティッキィ・フィンガーズッ!!」

ありえない方向。
地面からの攻撃がガラに襲いかかる。なぜだと思う前に体が反応し、かろうじて右腕で攻撃をガードした。

「ふー、あぶねぇあぶねぇ。おめぇ地面に潜れんのか。ひょっとしてその体から出てる『ロボット?』みてーのの能力か、」
「・・・『スタンド』だ。見えるとは驚いたな。それにしても『勘』のイイヤツだ・・・、ジッパーから吹き込んでくる風の動きに感づいたか。しかもなかなか『素早い』動きだ・・・しかし、ガードしたな・・・」

次の瞬間、ガラは信じられないものを見た。

「少々でかいが、まぁそのうち慣れるだろう。おまえの右腕をいただいた。」
「なにーー、オッ、オレの右腕がねぇ?」
「おれの『スティッキィ・フィンガーズ』の能力はジッパーのところで別なもの同士を接続することができる。」
「オレの腕が〜〜〜〜、てってめェ・・・
だ、だが、わかったぜぇ。あそこの死体に首輪が無かった理由が。
そのなんだ『スタンド』か?ジッパーみてーな能力で首輪を外したのか。
だが、どーゆーわけかもう一人の方はしくじって・・・、結局そのザマってわけだ」

「・・・『失敗』して『そのザマ』、か・・・、その通りだ・・・オレは・・」

ふと視線を逸らすブチャラティ。
その一瞬の隙を突きガラは落としていた斬魄刀を拾い、間合いを離した。

ガラは考える。
(腕が取られちまったがどうせまた生えてくる。しかし解ってきたぜぇ。やべぇのはあの「スタンド」っつーヤツだ。
特に「拳」には絶対に触れちゃいけねー。ジッパーみてぇのでオレの右腕のように切り離されちまう。
狙うのは本体だ。動きでわかったが本体は生身の人間と大差ねぇ。)
 
「どーやらマジで殺りあう事になりそーだな!」
「オレの『スティッキィ・フィンガーズ』は近距離型の『スタンド』だ。接近戦は望むところだ。」

  斬魄刀を左手に持ち替え、構え直すガラ。
  『スティッキィ・フィンガーズ』を出すブチャラティ。
  
「スタンドの右腕は復活しねぇみてぇだなー。お互い利き腕を無くしたってことで、もう手加減はしねぇぜー!」
「手加減していただと・・・?強がりを言うな・・・」

  張り詰める空気。

「アリアリアリアリアリアリアリアリィィィ!!」
「うおおおりや――――ーーーーーーーーー!!(いやアリアリはねぇだろ・・)」
一そのころー
「おい友情マン!何だあのでけぇ音は」
「すごい音だった。ガラ君が何者かと戦っているのか・・・」
「なんかスゲーヤな予感がするぜ!オレは行くからな」
「ちょっと待て桑原君。あ〜いっちゃった。・・・僕は少し遅れて行こう。(あの単純バカ)」


「ばっ、ばかな。『スティッキィ・フィンガーズ』の攻撃が当たらない!?」
「へっへー、なかなかのスピードだが、もう見切ったぜぇ」
「こ・・・こいつは!!このパワーとスピードは・・・!!!」

スティッキィ・フィンガーズの攻撃を全て紙一重でかわすガラ。
一方ブチャラティはなんとか致命傷は避けているものの全身に無数の傷を負っていた。

「ぬんっ」
「ぐはっ」
  
ガラの膝蹴りが、もろにはみぞおちに入り、ブチャラティは吹っ飛んだ。

「くっ、『スティッキィ・フィンガーズ』!!」
「おっ、ま〜た地面にもぐったかぁ〜」

地中を移動しながらブチャラティは焦っていた。
(まっ、まずい、ガラという男、利き腕を失いながらこれ程までの強さとは。
勝てない、例え両手が無事だったとしても!
ここは一旦土中に潜み・・・・)

「そっこだぁ〜。魔神(人)剣!!」
(ハッタリだ!地上から地面の中が見えるわけが無い!!)

しかしその思いもむなしく衝撃波は正確に地中に隠れるブチャラティに命中した。
ブチャラティの体を真空刃が容赦なく切り裂き、石や土片が体の中に食い込んだ。
「ぐっはぁぁ、ば、ばかな・・・」
・・・ぐぅぅ・・・!動くか体・・・?
・・・わき腹が裂けている、左足と右肩も重症だ・・・
・・・しかし、まだ動く・・・、何とか致命傷は免れたのか・・
・・・まともに命中したのに、まだ動けるのは、土中だから威力が弱まったのか。
・・・しかも片手で、利き腕ではなかったから・・・

「隠れても気配でわかるぜぇ。まだ死んじゃいねぇよな。出てきなよ」

(け、気配か・・・『姿』を隠すことができないというのなら、仕方が無い・・・)
やむをえず地上に姿を現すブチャラティ。
(・・・・・こ、この男、純粋に強い。小細工がまったく通用しない・・・)

「大分きつそぉだな。観念するかぁ〜、ってそんな目つきじゃねぇな」

(・・・じ、事態はますます悪化している・・・こうなったら、不確定要素も大きいが・・・「あれ」を・・・・)
 (ま〜だ何かやってきそ〜だな〜、厄介なことになる前に止めを刺すかぁ?よしっ)

「うおおおお〜〜〜!!こーゆー手負いが一番怖ぇからな〜、一気に決めるぜーっ・・・!

『忍法七ツ身分身の術』!!!」

「―!!!!」
目の前の光景にブチャラティは自分の目を疑った。
「バ、バカな・・・!これは一体・・ガラが6人、いや7人か!」
「ははははははは・・・」

突如7人に増えたガラが、あっという間にブチャラティを取り囲んだ。
さらに全員が一糸乱れぬ動きで一斉に斬魄刀を構える。

「しまった!囲まれたッ」
「なかなか面白かったぜブローノ・ブチャラティ。その力に敬意を表し我が奥義によって応えよう、忍者の剣を受けられるか!!?」
「ぶっ、『分身の術』だと!それに、こ、この感じは先程の『魔神(人)剣』以上の・・・」
「地面に逃げても無駄だぜー、このあたり一面丸ごとかーるく削り取ってやるからよ〜」

大地が震えだした。ガラの体にかつてないほどの力があふれる。

(ほ、『本体』は一つの筈だ。いや『本体』がわかっても、おそらく『魔神(人)剣』以上のスピードと威力であろうこの技を、避け切れるのか?命中したら間違いなく死ぬッ!地下に逃げても、そこを狙われる!だ、だが、どうする、一体こいつをどうしろというのだ!?)

―その時、さらなる事態がブチャラティをおそった―

ガサガサガサッ!

「おーーい、ガラーっ!さっきの音は何だー!!?大丈夫かー」
「しっ、桑原君!声が大きいよ!」

茂みの奥から二つの声。おそらく後1,2分でこちらのほうへ来るのだろう。
   
「馬鹿なーッ!!ガラには仲間がいたのか!!?」
(最悪の事態だ!追い詰められ、名前も顔も能力も全てばれた。そして新手ッ。最早・・・逃げることも・・・・。)

「あいつら・・・、待ってろって言ったのになぁ」
今にも振り下ろそうとしていた斬魄刀をいったん止め、ガラは一瞬、声のした方角に注意を向けた。
   
(・・・晴子、・・・オレは・・・)
【宮城県、道から少し外れた森の中/午前】

【友情マン@ラッキーマン】
 [状態]:健康
 [装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)
 [道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ。
 [思考]:1.本当は来たくなかったが桑原に引っ張られる形で様子を見に来た。
     2.強い者と友達になる。ヨーコ優先。
     3.最後の一人になる。

【桑原和馬名@幽遊白書】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1.戦闘音が聞こえたので様子を見に行く。
     2.ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
     3.ゲームを脱出する。

【ガラ@バスタード】
 [状態]:右腕がブチャラティに奪われる。ただし再生中。まだまだ余裕。満腹
 [装備]:斬魄刀
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費、水無し)
 [思考]:1.ブチャラティとの戦いを楽しみ、勝利する。
     2.とりあえず友情マンについて行き、ラッキーマンのラッキーを拝んでみる。
     3.脱出と優勝、面白そうな方に乗る。  

【ブローノ・ブチャラティ@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:ガラの右腕をジッパーで固定した。ただし、スタンドの右腕は復旧不能。
     全身に無数の裂傷。さらに左足を引きずり、右肩、わき腹にも深い傷。
 [装備]:なし
 [道具]:支給品一式 スーパー・エイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考]:1 晴子・・・オレは・・・
371動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:41:32 ID:72bxaOMh0
「そう、その通りだ公主。その十絶陣と酷似しておる。この世界は。…規模は比較にならんがな」
「つまり太公望、この世界は主催者達が作り出した亜空間だと言うのじゃな。
 だとすると、十天君と同じように主催者達もこの世界にいると・・・?」
「…いや、わしはいないと思う。この世界が如何に自分の思い通りにできるとはいえ、この世界にいる限り
 自身も少なからずその制約を受けるだろうし、何より参加者がいる中にいるより外にいるほうがより安全だからのう」
太公望は一息つくと、さらに続ける。

「さらに言えば、こんな広大で複雑な設定の亜空間を一人で作れると思えない」
「…と言うと?」
「わしがここに来る前、星矢という少年と出会った。そのことはもう話したな?そのペガサスの聖衣の持ち主だ。
 その少年がわしに言ったのだ、この世界からはハーデスの力が感じられる、と」

ダイは俄かに体が硬直する。ハーデスといえばバーン達と一緒にいた、あの黒衣の男!
ならばこの世界、亜空間を作ったのはあいつなのか?

「だが、星矢はこうも言った。この世界からはハーデス以外の力も感じられる、と」
…ダイは直感する。きっとバーンだ。あの大魔王はきっと禁呪法を用いてこの亜空間を生み出したんだ。
そしてあの得体の知れない、ハーデスと名乗る者と協力してこの世界を作り出したのだと。
ただでさえ強大な力を持つバーンに加えて、同等の力を持つものが力を貸したとなると…この世界から脱出なんて無理だ。

「…わしらは砂山に埋められた蟻と一緒だ。主催者どもの許しが無ければ出ることもできん」

沈黙が辺りを支配する。せっかく見えかけた希望がまた深い霧の中に隠れてしまったような気持ちになり、
ダイは複雑な気持ちになり、肩を落として落ち込むが、それを見透かしてか公主がダイを抱き寄せる。
公主の突然の行動に慌てふためき、公主から漂ってくる良い匂いと肌から伝わってくる温かさに触れて赤面するが
この純潔の仙女が持つ静かで穏やかな空気に触れ、次第に心安らかな気持ちになっていた。

「…コホンコホン、それでは話を続けるぞ」
ダイが一通り元気を取り戻したのを見て、太公望はわざとらしく咳をして話を続ける。
このわざとらしさも太公望のやさしさだろう。
372動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:42:40 ID:72bxaOMh0
「では次に、これからの計画について話そう」
太公望の一言でダイと公主は顔色を変える。ここからの話はこれからの行動の一切を決めるだけではなく
自分達の、いやこのゲームに巻き込まれた人たちの運命さえ決めかねない。
この考えは少々傲慢なのかもしれない。たかが数人に何が出来るのだろうか。しかしやるからにはそれぐらいの
気概が無ければきっと出来るものも出来なくなってしまう。だから傲慢だと言われても構わない。
その決意の重圧から皆の顔が自然と重く、苦しいものになっていった。

「まずダイ、おぬしにこれを渡しておこう」
太公望は鞄からホイホイカプセルを取り出すとボタンを押し軽く投げると、ぼわんと音をたてて煙が舞い上がった。
土埃とともに白い煙が辺りを包み、その煙が消えると太公望の手に4つのトランシーバーがあった。

「太公望、それは・・・一体なんなの?」
「これは一種の無線通信機、早い話がこれさえあれば遠くにいても話が出来るのだ」
太公望はトランシーバーの一つをダイに渡すと、説明書をダイに渡す。どうやら太公望はもう操作方法を覚えたらしい。
「壊したり、なくしたりするでないぞダイ。わしらとおぬしらを繋ぐ唯一のものとなるのだからな」
ダイは腫れ物を扱うが如く慎重に扱う、が、なんともその様は頼りない。まぁ無理も無いだろう。
ダイは生まれてこの方、このような機械の類は見たことも触れたことも無いのだから。
それを見て公主はダイからひょいっとトランシーバーを取り上げる。その様子はまるで子供からおもちゃを取り上げる母のようだ。

「それと、これも渡しておこう」
太公望は鞄の中からアバンの書を取り出すと、今度はそれを公主に渡す。
公主は疑問に思う。渡すのなら持ち主であるダイにではないのか?それを何故私に……?
「わし程度ならバギの取得がせいぜいだろうが、公主、崑崙一の力を誇るおぬしならより高度な呪文も取得できるはず。
 大丈夫、わしが保障する。といっても何も根拠はないがな。にょほほほほほ」
この男の笑顔を見ると、無条件で信頼してしまう。本人も根拠は無いといっているのに。
相変わらず不思議な男じゃ…太公望…。

373動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:43:16 ID:72bxaOMh0
「本題に入ろう。これからはこのトランシーバーを使用して組織的行動をとるぞ。ダイ、公主、おぬしらはここに留まりこの四国を死守せよ」
「…私のせいでここを動けないのは分かるが、なぜこの島を死守する必要があるのじゃ?」
「それはな公主よ、これからこの四国を中心に活動し、対主催者達の拠点としてするためじゃよ」
公主は思わず声を上げて驚く。この殺し合いの世界で対主催という考えは常にあったのだが、拠点という考えは全く無かったからだ。
確かに太公望は組織的行動をとると言った。ならば活動の拠点は必要。だが何故この四国なのだろうか?
公主はその問いを太公望にぶつけて、答えを待った。

「わしがいの一番にこの四国を目指したのは複数の理由があったのだ。
 一つは組織的行動をとるために早い段階で頭数が必要だったこと。
 二つめは悪意を持つ誰かがこの四国やってきて支配する前に、なんとしてでもこの島を安全なものにしておくためだった。
 活動の拠点にするのなら安全は絶対条件だからのう」

太公望は一息つくと、話を続ける。
「だからダイ、公主、おぬしらにはこの島を死守して欲しい。この上にあるダムからなら島全体を見渡せるだろうし
 目の利くダイとターちゃんがいれば侵入者がいてもすぐに発見できるだろう。幸い、この島は海に囲まれている。
 進入路は限られているし、もしわしらのように海を泳いで渡ってきたとしても体力は消耗しているだろうから
 迎撃もたやすいであろう」
「…太公望はどうするの?」
「わしはこれから東に向かう。そして仲間を探す予定だ。仲間が見つかり次第こちらに送る。わしがその者達を見極めてからな。
 勿論そのときはこのトランシーバーを使ってそのことをおぬしらに伝える。その者たちの特徴を伝えておれば
 おぬしらが敵と勘違いして攻撃するのも防げるしのう」

ダイは己の拳に自然と力が篭るのを感じる。状況は何も変わっていない。脱出方法も見つかっていない。
しかしこの人の話を何故か心に安心を覚えてしまう。…まるで…アバン先生のようだ。
公主さんが無条件で信頼するこの人、なんとなく理由が分かる気がする…。

「そして、このトランシーバーを使用する際、用件を纏めて簡潔に使用するように。
 どこぞの誰かに盗み聞きされているやもしれんからのう。ターちゃんが戻って来次第、その旨を伝えておくように」

ダイと公主が首を縦に振り、頷く。ここまで来ると否応無しに気分が高揚してくる。
例えこの世界が難攻不落であろうと、必ず攻略して脱出してみせる!そしてバーンたちを倒す!
と、息巻く二人だが、ここで思わぬ冷や水をかけられることになる。
374動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:44:01 ID:72bxaOMh0
「…とまぁ、ここらで一息つくか。休憩休憩〜」
そういうと太公望は近くの木陰に行き、寝そべる。お菓子でもあれば間違いなく食うぐらいの勢いだ。
その太公望の言動に対して、ダイは口を尖らせ、不満を露わにする。公主はというとやれやれといった感じだが、至って冷静である。
そんな公主を見てダイは、なんとか不満を胸にしまると、今まで太公望が言ったことを自分なりに整理をはじめた。

そんなこんなで30分以上経つと、太公望は起き上がり、ダイのもとに近寄ってきた。
ダイは話を再会するのかと胸を躍らせるが、当の太公望の口から出た言葉は…

「暇だから棒倒しするぞ」

…とのこと。ダイは呆れてモノが言えなくなり首を横に振って断るが、すると太公望が子供のようにやろうやろうと喚き散らす始末。
その様が見るに耐えなく、仕方が無いので遊びに興じるダイ。公主も見てみぬ振り。

「どうせするなら規模のでかいのをしたいのう〜。よし、ダイよ、お互いまず出来る限り大きい砂山を作るぞ」
ハイハイと言って適当に流すダイ。そんなやる気の無いダイに比べて太公望はまるで子供のようにウキウキしている。
ここにきて、また太公望という人物が分からなくなってきたダイは思わずため息を漏らす。
こんなことをするのなら少しでもこれからのことを話し合えばいいのに…。

そうこうしているうちにダイはボールぐらいの大きさの砂山を完成させる。なんだかんだいってもダイも子供。
作っているうちに対抗心が芽生え、負けてなるものかと熱心に砂山を作っていたようだ。
が、しかし、さしもの勇者ダイも相手が悪かった模様。太公望はダイのより一回り大きい砂山を完成させていた。
「ぐっふっふっふ、他愛も無い。わしの力の証であるこの砂山にひれ伏すがいい!」
「…くっそ〜!」
いつのまにか砂山の大きさ対決? になっていたようだが、その勝敗は太公望に軍配が上がったようだ。
勇者に軍師が勝った、といえば響きは良いが、傍から見ると小さな子供に勝って自慢げに威張る中学生の図にしか見えない。

「…ふっふっふ、では本勝負にいくとするか。ダイよ、おぬしの砂山をわしのに合体させるのだ」
「わかったよ…もう…」

しぶしぶ応じるダイ。その胸中は最早不満だらけである。こんなのどうでもいいから早く話を再開しようよ!
…さっきはこの世界をこの砂山で例えていたぐらいなのに、それがなんで棒倒しに…。
375動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:51:32 ID:72bxaOMh0
「ダイよ、なにやら不満そうな顔をしているが、そんなに負けたのが悔しいのか?うん〜?」
「なんだよもう…棒倒しじゃ絶対負けないからね!」
ズザザザとダイは自分の砂山を動かすと、太公望の砂山にぶつけた。するとダイの膝まで届きそうな砂山が完成した。

「かーっかっかっか、これぐらいのサイズでないとやる気が出んわい!」
一人張り切る太公望。もうどうにでもなれ、な雰囲気すら感じられるダイを放っておいて、
太公望は先ほどまで教鞭としてしようしていた枝を巨大な砂山の頂点に突き刺す。その様はまさに圧巻である。

「…しかしまぁ、おぬしの砂山と合わせて大きくなったのはいいが、途端にもろくなったのう…」
ダイはそう言われて初めて砂山をじっと見つめる。出来上がった砂山は合わさる前の砂山に比べると形が歪み、汚く見え、
またところどころポロポロと砂が崩れて下に流れている。
大きさでは劣る個人で作った砂山だが、完成度が高いの個人で作った砂山であるのは一目瞭然である。

「まったく…これでは勝手にトンネルでも出来そうだわい」
…トンネル?中には何もいないのに…変なことを……待てよ。
そういやさっきこの世界を砂山に例えていたっけ…まさか…いや、考えすぎかな。

「もしこの中に虫がいたら、勝手に出てくるぞ。このもろさだったら」
…!!! 間違いない、太公望は何かを伝えようとしている!太公望はさっきこの世界を砂山、そして僕らをこの砂山の中にいる蟻と例えた…。
さらに、今、この砂山の中に虫がいれば、勝手に出てくると…つまり僕らはこの世界から脱出できると伝えたいんだ!
…でもなんでだろう…さっきは主催者の許しが無ければ出られない、っていったのに…。
ダイは思案に暮れる。先ほどまでは面白くない顔をしていたダイだが、太公望が何かを伝えようとしていることが分かった今、
その顔つきは必死の形相であった。

「ダイよ、そんなに怖い顔をするでない、たかが棒倒しではないか」
「…!? ははは、そうだね、もっと気楽にいくよ」
ダイはそういわれると必死に平静を装った。そうだ、ここで必死な顔をしたら太公望が何かを伝えようとしていることがばれてしまう。
それだけは避けなくてはならない。…そうか、太公望がわざわざ話し合いを中断して、時間を置いてからこんな遊びをする振りをしたのは
なにかを伝えるためだったのか。俺がもっとしっかりしていればその意図に早く気づけたかもしれないのに…。
…後悔なんてする暇はない、今は一刻も早く気づかなければ…太公望が伝えたいことに。
376動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:52:06 ID:72bxaOMh0
そして遂に棒倒しが始まる。先攻は太公望。太公望は奇声を発しながら砂山の底辺部分の砂をごっそりもっていく。
ダイも棒が倒れないように砂をもっていくが、心あらずといった状況であった。

思い出せ、この砂山が完成するまでにあった出来事を…きっとその中にヒントが隠されているはずだ。
太公望がこの世界から脱出できると言ったが…それはなぜだ? …砂山がもろくなったから。
それじゃなんでもろくなったんだ…?

ダイがひらすらその答えを探している間も棒倒しは続いている。気がつけばもう棒を支えている砂もわずか。
今度はダイの番である。しかしその手は震えている。ゲームへの焦燥ではなく、答えが見つからない焦りから。

なんでこの砂山、世界がもろくなったんだ?…考えろ、考えろ俺…太公望のことだ、きっと答えも既に示しているはず。

「あんだけ大きかった砂山もあとこんだけだのう。せっかく二人で作ったのに」
…そうだ!!! 二人で作ったからだ!二人の山を合わせたとき、途端にもろくなったって太公望が…。
そして、この棒倒しの前に太公望は、この世界は複数によって作られた世界だと…
つまりこの世界もこの砂山と一緒で、複数で作られたからきっとどこかがもろくなっているって太公望は伝えたかったんだ!
そのもろくなったところを見つけて何とかすれば…出られる、と!

ダイはその震える手でわずかに残っている砂を取り除く…棒は未だ立ったままだ。
「残念だけどこのゲーム、俺の勝ちだよ。見つけちゃった、いや、分かったんだ。この棒倒しの必勝法が」
そう高らかに宣言するダイ。もちろん、棒倒しの必勝法なんて嘘っぱちである。ダイが伝えたかったのは…真意が伝わったということ。
それを聞き、太公望はにやっと笑う。まるで勝ち誇ったように。…どうやら伝わったようだ。

「ならばこれで決着をつけてやろう、ダイ!」
太公望はこれ以上ないほど砂をもっていこうとする。その眼差しは本気にこの棒倒しに興じているように見える。
役者顔負けの演技力である。この演技力があったからこそダイに伝えることができたのだろう。
…そして太公望の両手に砂が入り込み…
377動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:54:08 ID:72bxaOMh0
「…ふう、負けてしまったのう…」
太公望がポツリとつぶやく。あのあと、勢いよく砂をかき出したが、案の定、勢い余って指が棒にあたり、倒れてしまったのだ。
敗北した太公望の姿からは哀愁の念すら感じられる…これも演技なのだろうか…
ダイには太公望が本当に悔しがっているようにしか見えない。

「…ふう、今度機会があればターちゃんとやるとするかのう…。
 ダイ、先程必勝法があるといったが、決してターちゃんには言うでないぞ。わしに勝ち目がなくなるからな!」
…分かったよ太公望、ターちゃんに伝えればいいんだね。この世界から脱出できる可能性があることを。

「太公望…棒倒しとやらは終わったのか?」
「あぁ、終わったぞ公主。ダイにしてやられたわ。今に見ておれダイ…」
公主は穏やかな口調で問う。どうやら二人が全く別の意図を持ってしていたことには気付いていないようだ。
それを見てダイはチクリと胸が痛む。騙しているわけではないが、大事なことを黙っている…
罪の意識から思わず本当のことを言いそうになるが、笑顔で問いに答える太公望の顔見て、踏みとどまる。
…病気で苦しんでる公主さんにこれ以上負担をかけたくないんだろうな…あなたは本当に優しい人だよ太公望…。
「さて、今更感があるのだが、この残り二つのトランシーバー、
 これのうち一つは純粋にわしらの脱出計画に手を貸してくれる人に渡そうと思っておる。
 …そして最後の一つは…この世界から脱出可能な能力を持つ人間に渡すつもりだ。以上、これにて計画の段取りは終わりだ」

太公望が話を遂に終える。と同時に公主とダイがせつなく、辛そうに顔を曇らせる。
彼らにはわかっていたのだ。この話の終わりは脱出への長い道程の始まりであるとともに太公望との別れであると。

「…それじゃわしはもう行く。時間が惜しいのでな。まず最初に富樫と合流し、ターちゃんをそちらに戻したら
 そのまま徳島から和歌山へ泳いで渡り、東を目指すつもりだ」
そこまで言うと、太公望はだるそうにため息をつく。
「…はぁ、富樫のあほを説得するのが大変だわい…どうしたものか」
珍しく弱気な太公望。まぁ無理もない。富樫本人のためとはいえ、わざと冷たく当たったあとにどの面下げて会いに行けばよいのやら。
素直におぬしのために辛く当たった、と言えばいいのだが、変なところで不器用な太公望は決して言わないだろう。
378動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:54:32 ID:72bxaOMh0

「…大丈夫だよ」
ダイの一言があたりに響く。いや、一番強く響いたのは太公望の心だろう。
「ここまで一緒に来たんだよ?ならきっと分かってるよ、富樫さんだって。
 太公望の変なところも良いところも。それが仲間ってもんでしょ?」
ダイは思い出す。ポップ達のことを。彼らは今まで辛い冒険を共に切り抜け、苦楽を共にしてきた大事な仲間である。
ポップ達のことなら、言葉に出さなくても何を言いたいのか分かる。それは仲間だから。
だからきっと、太公望と富樫さんも仲直りできるだろう。ライディンを見ながらも逃げずにここまで一緒に来たのだから。

「まぁ会えばなんとかなるか。……ダイ、感謝するぞ」
顔を隠すように背中を向け、ぶっきらぼうに答える太公望。恐らく照れ隠しであろう。太公望らしいと言えばらしいのだが。
ダイも公主もそんな不器用な太公望の態度を見て我慢できずにクスクスと笑いを漏らす。
「えぇい、笑いたければ笑え!それじゃわしはもう行く!」
太公望は大声でそう捨て吐くと、その場から逃げ出すが如く走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。

「…行っちゃったね。もう少しちゃんとした別れをしたかったのに」
「あやつはそういうのを嫌う。しんみりとした空気が苦手な男なんじゃよ太公望は。
 今のことはまた会えたときに文句の一つや二つでも言ってやればいい。太公望は感動的な再会というものより、そういうのを好むからな」
ダイと公主は太公望が走り去った方角を静かに見つめる。見つめた先の風景に太公望の幻影が何度も現れては消える。
二人は祈り、目を瞑る。今度この目に映るのは幻影ではなく、本物の太公望、幻影と同じく笑顔の太公望であることを。
流れる風と共に目を開くと、最早幻影は二度と現れなかった。
379動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:56:18 ID:72bxaOMh0
>>354-355
飛ばします
380動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:57:15 ID:72bxaOMh0
「…そういやよターちゃん、太公望に頼まれたことって一体なんなんだよ」
「ふふふ、それは私と太公望との秘密なのだ。聞いちゃ駄目なのだ」
「…なんだよ、おめえもあいつと同じ秘密主義か」
「太公望に口止めされているのだ。すまん」
それを聞き、富樫は拗ねてしまったようだ。顔をプイっと背けるとさっさと次の民家に入ってしまった。

「(太公望・・・思ったより時間がかかりそうだ。この四国には思ったより鳥や動物が少ない。)」
ターちゃんは太公望の頼みごとを既に実行していた。ターちゃんは歩きながら鳥達や動物たちにあることを頼み、それを聞いた動物たちは
次々と仲間の動物に伝える。ターちゃんはそれが全国の動物に伝わるのを待っているのだ。
だが、さっきターちゃんが言ったとおり、この世界には動物が少ない。よってその伝達の遅れを恐れていた。

「(太公望に頼まれたあれ…そう、動物達にこの世界を徹底的に調べさせるのはどれぐらいかかるか予想もつかないな)」
そう、太公望がターちゃんに頼んだのは鳥や動物たちを使った、この世界の調査であった。
この計画に必要なのは動物と心を通わすことのできる人物。つまりこの計画を実行できるのはターちゃんだけある。
勿論この計画を秘密にしたのは主催者達に気づかれぬため。

「(太公望は言った、この世界にはどこかにおかしいところあるかもしれない、と。それさえ見つかれば…)」
太公望が頼んだことはそれだけではない。この世界はどれくらいの規模か、海の向こうには何もないのか、地図に載っていない島や
施設は存在していないか、この世界にいる監視者の発見、おかしな風景は無いか、
知りうる限りの敵味方、これまであった人物の位置の把握、とにかく多くのことを調べてほしいとのこと。
だがそれらを全て調べるためには多くの動物が必要。だからターちゃんはこの四国の動物を通じて全国の動物達にそれを伝えているのだ。
「(動物達に指令を出すために私はこの四国を動くことは出来ない。エテ吉、無事でいてくれよ)」
381動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:57:46 ID:72bxaOMh0
太公望はダイ達と別れてからニョホホホオ〜と奇声発しながら走り続けていた。が、そろそろ限界の模様。
ぜえぜえと息を切らして、近くの木陰に入ると先程の奇声を発していた男とは思えないほど真剣な顔つきをしていた。
「(ダイ、公主、すまんな…わしはまだ話してないことあるのだ)」
太公望は目を瞑り、先程別れたばかりの者達に心の中で謝罪する。
「(あやよくば、この世界から脱出できたとしても、待っているのは彼奴ら、そう主催者どもとの戦い…そうなれば勝ち目はあるまい)」
そもそもこのような大人数をこの世界に連れ込むことが出来た時点で主催者>参加者の力関係は目に見えている。
元の世界に戻れば参加者たちの力の制限がはずれ、元の実力を発揮できるが、その分わしらの中にも力の格差が発生し、
戦えるものと戦えないものが現れてしまう。…そして後者が圧倒的に多くなるのも明白。後者をかばって戦う時点で敗北は必死。
後者を見捨てて戦うとしても、戦えるものが少ない前者ではやはり敗北という結果はは避けられないだろう…。

「(ふっふっふ、ならば策は一つ。…やつらをこの世界に引きずり込む!)」
そう、主催者といえど、この世界に入ってしまえば奴らも同様に力の制限が働くだろう。
そうなればこっちのもの。先程の問題は全て解決され、こっちは数で押せる!

「(・・・まぁ、その策を実行しようにも方法が思いつかぬのでどうしようもないが…
  これからじっくり考えるかのう…ターちゃんから報告があれば何か思いつくかもしれんが)」

「(…それに、毎回、ダイのときのようにカモフラージュしながら伝えるのは手間がかかりすぎる。
  今回は運よく伝わったが…次は伝わるとは限らん。…なにか他の伝達手段を考える必要があるな。
  …テレパシーが使える者や、心を読むことが出来るアイテムでもあればいいのだが…都合が良すぎるか。
  暗号など露骨な物は主催者達に間違いなく疑われるからあまり使用したくないが…考えてみるか)」

太公望は思考に一区切り入れると立ち上がり、木陰から出ると歩き出す。
「(どっちにしろ仲間は必要だ。今は仲間を増やすことに専念するかのう。…さっさと富樫と合流するか)」
382動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:59:37 ID:72bxaOMh0

【香川県、瀬戸大橋付近の小山の森/午前】

【ダイ@ダイの大冒険】
[状態]健康、MP微消費
[装備]出刃包丁
[道具]:荷物一式(水残り半分) トランシーバー
:公主の荷物一式
:ペガサスの聖衣@聖闘士星矢
[思考]1:ダムに行き、四国を死守
2:ターちゃんに脱出の可能性があることを伝える
3:公主を守る
4:ポップ・マァムを探す
【竜吉公主@封神演義】
[状態]疲労進行中
[装備]青雲剣@封神演義
[道具]アバンの書@ダイの大冒険
[思考]1:ダムに行き四国を死守
2:呪文の取得

【香川県、瀬戸大橋付近の山中/午前】

【太公望@封神演義】
[状態]健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)
[装備]:五光石@封神演義
:トランシーバー×3
:鼻栓
[思考]1:富樫と合流
2:バキの取得を試みる
3:新たな伝達手段を見つける。
383動き出す計画(修正2):2005/11/17(木) 18:59:58 ID:72bxaOMh0
【香川県中央部 小さな村/午前】

【チーム名=富樫とお守り】
【富樫源次@魁!男塾】
[状態]健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)
:爆砕符×2
:鼻栓
[思考]1:公主のために仏壇屋を探して香を持って帰る
2:太公望との仲直り
3:男塾の仲間を探す
【ターちゃん@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]健康
[道具]:荷物一式
:恥ずかしい染みのついた本@ジャングルの王者ターちゃん
[思考]1:富樫に付いていく
2:太公望からの頼み事の実行

備考 全国の動物達に伝わるのは少々時間がかかります。
384彼の星が蒼く輝くとき1/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:16:06 ID:awCddcyE0
真崎杏子は、戸惑っていた。
突然、現れた男――クロロ・ルシルフルを前にして。
一見、温和な、多少カッコいい事を除けば、普通の男のように思える。
けれども、先程も同じように思えた女(ロビン)に道具一式を奪われたのだ。簡単に信頼は出来ない。
どちらかと言えば自分でも気丈だと思っている杏子だけれど、固まってしまっていた。
敵なのか味方なのか、味方を装った敵なのか――

「やあ、お嬢さ」
「何が目的なの? 
 私、貴方の役に立つようなもの、何も持ってないわ」

盗られちゃったんだもの、とクロロの言葉を遮って言い放つ。言って「あっちゃあ」と口元を押さえつけた。
相手の出方を待つつもりが、余程焦ってしまっていたようだ。
ほら、出鼻を挫かれた男も不審な顔を――

「それはそれは、大変だったんだ?
 オレもね、見たことのない場所に無理矢理つれてこられて、どうしようかなって」

予想を裏切って微笑んでいたのだ、目の前の男は。
385彼の星が蒼く輝くとき2/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:17:28 ID:awCddcyE0
「何暢気なこと言ってるのよ!」

焦燥しきっている自分に比べ、目の前の男と言えば、まるで落ち着き払っているのだ。

「ここが如何いう場所だか知っているの?
 殺し合いよ、殺し合いさせられているのよ、私たち!
 私はそういうつもりはないけれど、中にはこのゲームに乗っちゃった人もいるんだから!」

この男は未ださしたる危険にも遭遇していないに違いない。でなければこのような太平楽な台詞が吐ける筈もなかった。
自分と言えば、つい先刻荷物は奪われ、放送によって友人の、城之内の死を―― そうだった。
確認するまでもなかったことを、口に出してしまい、また、心に黒い闇が迫る。言い寄る気力も、削がれる。


少女の狼狽に合わせて、面持ちを同情するような表情にシフトさせながら
クロロ・ルシルフルは心の中でほくそ笑んでいた。
近くに感じられた二組のオーラの内、小さな方に先に接触したのには、幾つかの理由があったが、
最も大きな理由は、
もう一組と接触する前に、可能な限り『無力な』ものと行動を共にしていると言う事実が欲しかったからである。
このゲームは便宜上戦闘ゲームではあるけれども、参加者の多くが初めから殺人鬼・戦闘狂の類ではないようだ。
それは最初の刻に『主催者』に歯向かった少年の存在を見ても分かるし、
また、目の前に居るようなか弱い少女が参加させられていると言う点を見ても明らかだ。
386彼の星が蒼く輝くとき3/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:19:29 ID:awCddcyE0
ならばこそ、この少女にも使いようはある。

『無力な少女と行動している自分』は一見、ゲームに乗っているようには思われまい。
クロロの能力――盗賊の極意(ハンターズ・スキル)は、どの局面に対しても酷く有用なものではあるが、
無闇に相手を殺し続けるわけにもいかぬという枷がある。『"生きている"相手の能力を盗む』ものだからだ。
対象と接触し、殺さずに其の相手と別れねばならない。ならば、この少女を使える場面も生じてくる。

――精精、利用してやるさ。

内心の高揚を漏らさぬようにしながら、人好きのする笑顔を浮かべた。怯え続ける少女の、心を溶かすために。

「まあ、まあ。そう慌てていてはオレも何が何だか分からないよ。
 オレは、君を殺すつもりはないし。
 俺が分かるのは、君が如何やら荷物を失っているということだけだ。
 其の辺りの話も詳しく聞きたいし、ところで、」

"お腹空かない?"と言いかけたところで、自分を見る少女の瞳が凍り付いてしまっていることに気づいた。
自分を見る――? 否、少女は、自分の後ろの茂みに釘点けになっている。言葉も失って。
ガサ、と踏み分けるような、音がした。何者かが現れたような、そんな音。大きさから言って、唯の動物ではなかった。

――もう一組の方、ね。案外早かったな。出来ればこの娘と、もう少し親交を深めておきたかったが。

気づいているのは自分だけかと思っていたが、相手の方も何か"凝"に類する探知手段を持ち得ているのかもしれないな。
そう思わせるほど、発見されるのが早かった。確かに、少女との接触を決めてからは、"凝"を絶っていたが――
387彼の星が蒼く輝くとき4/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:21:33 ID:awCddcyE0
「何をそんなに驚いた目をしているんだい?
 誰か、オレの後ろの方に――?、大丈夫、驚くことはないさ」

現れるのは、このゲームの中で手を組んでる奴等だ。突然攻撃してくることはないし、交渉も可能な筈。
"無力な"少女と行動を共にしている自分には、少なからず油断する筈だ――
全てが自分の思う通り、巧くいっているのを感じながら、クロロは後ろを振り向く。
然し、其の目に映ったのは、


予想を遥かに超えた巨大な影。筋骨隆々とした一つの巨漢。
世界に名を轟かせる幻影旅団の盟主として、有数の実力者を自負するクロロでさえ、
刹那、足の震えるを止めることの出来ぬ―― 
それは"男"に生まれたならば、仕方ないことなのかもしれなかった。
誰もが一度は憧れ、誰もが夢破れる、理想の猛者像。最も単純(シンプル)な『最強』の形が、そこにあった。

「一人は男か。ならば何者かは問わぬ。
 この拳王の拳によって冥府に送られる事を誇りと思うがいいわ!」

現れた拳王――ラオウは、二名の前に威風堂々と佇めば、クロロの出方を静かに伺う。
背を向けた相手に、不意を撃つなどの卑怯はけして行わぬ。相手は、クロロ一人のみ。
震える杏子の姿など、初めから眼中にさえなかった。
388彼の星が蒼く輝くとき5/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:24:44 ID:awCddcyE0
「……下がって。相手はオレにしか、興味がないようだ」

涙目の杏子を手で制止しながら、クロロは自分の運の無さを呪った。
3人を見つけたからと言って"凝"を絶ってしまったこと。"円"程の探知能力がないことは、分かっていたのに。
少女を囮にして逃走する、と言う方法もないではないが、敵は杏子のことを気に掛けてさえいない。
背を向けた途端、貫かれて、死ぬ。―― ぞくりとした、予感。

クロロ自身も格闘技術にある程度の自信はあるが、目の前の男は―― 桁が違い過ぎる。
対峙したまま"予知眼(ヴィジョン・アイ)"で予測する全ての行動が、後一歩の所で、自分の死に繋がる。
相打ちで良いのならば、手段は幾らでもあるかもしれん。
けれど、このゲームでは"生き残らなければ"、敗北なのだ。

――未来が見えるってのは、良い事ばかりじゃないんだな

考えれば考えるほど、苦笑が漏れた。
正面切って戦いを挑むのは、得策ではないな。ならば、如何する?
389彼の星が蒼く輝くとき6/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:26:05 ID:awCddcyE0
「逃れ得ぬ自らの死を悟ったか」

構えたまま動かぬ、否、動けぬクロロを見遣れば、口元を歪めた拳王は高く、指を天に向けて伸ばした。

「ウヌには北斗七星の脇に輝く、あの星が見えているのだろう?」

「…………答える必要はない」

――"容易に相手の問い掛けには返答してはならない"
似た"ルール"を持つクロロならば、当然の選択だ。指し示された空さえ、見ることはなかった。
ただ、代わりの言葉を、短く返した。

「アンタの言う星の有無は判らないけれども、オレには別のものが見えている。
 いつでもオレを殺せると、余裕綽々のようだが―― 出来れば構えた方がいい。直ぐにな」

こめかみに人差し指を挿す仕草、挑発するように見せ付けて、クロロは時を待った。
"自分が見た光景が確実に生じる時"を。

「フハハハハハハ!吼えるわ、一介の羽虫風情が!
 ならばせめてもの情け、一撃をもってして粉砕してくれ――ぬ!?」


拳王の言葉は最期まで言葉にならぬ。瞬時、屈強な上体を包み込む青色の輝きと衝撃。
横合いから撃ち出された光の塊―― 霊丸(レイガン)の強襲だった。
390彼の星が蒼く輝くとき7/7 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:27:11 ID:awCddcyE0
「やったか、幽助!?」
「いや、まだわからねえ」

トレインの逸(はや)る言葉に、光の残滓の残る指を鎮めながら、幽助は肯定も否定も出来ずに居る。
先刻感じた僅かな気配を頼りに向かった先には、三名の人間が対峙していた。
片方は青年と少女。片方は、筋肉の塊のような巨漢。正に一触即発、尋常ならぬ雰囲気だった。

――あの肉の塊の方がゲームに乗ったんじゃねえ? 

そう言い出したのはどちらだったかを、幽助は覚えてはいなかった。どちらにせよ、オレの意見に遠からず、だ。
"か弱い少女を守るために、青年が立ち向かっている" そうとしか思えない光景。
ならばやるべきことは一つ、考えるよりも早く、幽助の指先は輝き始めていたワケで――

「よもや伏兵めが潜んでいるとは、不覚を取ったわ」

立ち込める土煙の向こうに、依然変わらぬラオウの姿がある。
身にまとう強大な闘気は、撃ちだされた霊気の威力を軽減し、其の幾らかを無効化する。
全身に激しい痛みを覚えるものの、仕掛けた戦いを放棄するせねばならぬの手負いではなかった。

ならば、闘技続行に支障なし。
多少、場に放られたコマが増えただけのこと。
全てを粉砕する拳を握り締め、拳王は不敵な笑みを浮かべた。

少女と、盗賊と、拳王と、探偵達と。
運命に翻弄される彼らの対峙する空。
北斗七世の傍らに、誰のものか――、蒼星が瞬いた。
391彼の星が蒼く輝くとき ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:29:02 ID:awCddcyE0
【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]左腕に軽傷
[装備]ウルスラグナ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾二発)
[道具]荷物一式
[思考]1:スヴェン、イヴ、リンスを探す
2:幽助に協力する
3:ゲームからの脱出
4:目の前の事態に対処

【浦飯幽助
@幽遊白書】
[状態]健康(頭部軽ダメージはほぼ完治)
[装備]新・無敵鉄甲(右腕用)@るろうに剣心
[道具]荷物一式
[思考]1:桑原、飛影を探す
2:トレインな協力する
3:ゲームからの脱出
4:目の前の事態に対処

【真崎杏子@遊戯王】
[状態]歩き疲れ
[道具]無し
[思考]1:ロビンを追う
2:遊戯、海馬を探す
3:ゲームを脱出
4:ラオウの出現に困惑
392彼の星が蒼く輝くとき ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:29:40 ID:awCddcyE0
【クロロ・ルシルフル@ハンター×ハンター】
[状態]:健康
[道具]荷物一式(支給品不明)
[思考]能力、アイテム、情報などを盗む
   1:ラオウの襲撃から逃れる
   2:霊丸(レイガン)を盗む
   3:可能ならば杏子を利用
[盗賊の極意]:予見眼(ヴィジョン・アイ)

【ラオウ@北斗の拳】
 [状態]:胸元を負傷
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式 不明
 [思考]:1.いずれ江田島平八と決着をつける
     2.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)
     3.目前の事態に対処。打倒する。

393彼の星が蒼く輝くとき 修正 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:37:27 ID:awCddcyE0
状態修正です。

【栃木県/午前】

【トレイン・ハートネット@BLACK CAT】
[状態]左腕に軽傷
[装備]ウルスラグナ@BLACK CAT(バズーカ砲。残弾二発)
[道具]荷物一式
[思考]
1:ラオウに襲われている二名を救出
2:スヴェン、イヴ、リンスを探す
3:幽助に協力する
4:ゲームからの脱出

【浦飯幽助
@幽遊白書】
[状態]健康(頭部軽ダメージはほぼ完治)
    本日の霊丸の残弾2/4
[装備]新・無敵鉄甲(右腕用)@るろうに剣心
[道具]荷物一式
[思考]
1:ラオウに襲われている二名を救出
2:桑原、飛影を探す
2:トレインな協力する
4:ゲームからの脱出
394彼の星が蒼く輝くとき 修正 ◆ErG3fI.u3U :2005/11/17(木) 21:39:12 ID:awCddcyE0
【真崎杏子@遊戯王】
[状態]歩き疲れ/ラオウの出現に困惑
[道具]無し
[思考]1:ロビンを追う
2:遊戯、海馬を探す
3:ゲームを脱出

【クロロ・ルシルフル@ハンター×ハンター】
[状態]:健康
[道具]荷物一式(支給品不明)
[思考]能力、アイテム、情報などを盗む
   1:ラオウの襲撃から逃れる
   2:霊丸(レイガン)を盗む
   3:可能ならば杏子を利用
[盗賊の極意]:予見眼(ヴィジョン・アイ)

【ラオウ@北斗の拳】
 [状態]:胸元を負傷/霊丸による多少のダメージ(闘気で軽減)
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式 不明
 [思考]:
1.目の前の事態に対処、打倒する。
2.いずれ江田島平八と決着をつける
3.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)
395ポップ・ウソップ冒険記:2005/11/17(木) 23:18:33 ID:GwHY1ewEO

冒険を再開しますか?


>はい
 いいえ


ピッ


【AM5:54/鹿児島県川内(せんだい)、某日用品店内】


「なあ……ここ、本当に店なのか?なんで商品がこんなに少ないんだ?」
「表にデカい看板掲げてるじゃねぇか、間違いねえよ」

広い店内に一歩一歩奥へと足を進めながら物色している二人。
本来、ところ狭しと商品が陳列されているはずだったと思われる陳列棚はガランとしていて所々にぽつり、ぽつり、とたわいも無いガラクタ同然の日用品が寂しく配置されているだけである。

「う〜ん…主催者のやつらの手下が全部盗んでったんじゃねえのか?」
「手下…ねぇ。だったらもっと荒らされてる筈じゃないのか?床とかはきれいなもんだぞ?」

ゴミ一つ落ちていない床を見渡して首を捻るポップ。

「ん〜…ま、いいじゃねえか!考えてる時間がもったいねえよ。ほらほら!見てみろよこれなんか!(サランラップ)」
「ん?何だそれ?」
「ウオッホンッ!…これはどんな砲弾だろうが槍の一突きだろうが、…こうやって広げれば跳ね返すことが出来る!名付けて『ウソップ・バリ〜ア』だッ!!」
「メラ」
「うっウワッ!?何すんだ!!?熱ちっ!!!燃やすな〜っ!!!」
396ポップ・ウソップ冒険記:2005/11/17(木) 23:20:13 ID:GwHY1ewEO




【AM6:12/鹿児島県川内、某日用品店従業員控え室】

「…最悪だ…」
「18人か、確かに最悪だな…。ウソップも俺も仲間がみんな無事だったのが唯一の救いか…」

朝の放送を聞き終わるやいなや青ざめた顔でボソリとそう呟いたウソップに、ポップは眉を寄せて苛立ちを押さえているかのような低い声で返す。

「確かにそうなんだけどよ……違うんだ、違う『最悪』なんだ」
「ん?…どういう意味だ?」
「こんな短時間の内に…あのルフィと互角に戦ったって聞いてた能力者が死んじまったんだ…!」
「能力者?ウソップの言ってた例の『悪魔の実』ってやつか?」
「ああ。…楽観過ぎたかもしれねえ。ルフィもロビンも簡単に死ぬ訳が無え、って…。オレの勝手な思い込みだったみてぇだ…」
「……」

ポップは鉛筆を固く握りしめて目を瞑り歯を食いしばるウソップのその様子に言葉を飲み込む。

「……」
「そうだな。俺も…そうだったかもしれない。ダイも、マァムも、俺みたいなドジとは違って簡単にやられたりしない、って…でも…」

先ほどの放送が真実であれば、自身の危惧している大きな不安であるフレイザードはまだ生きている。
過去に戦った当時の強さのままならばフレイザードなどに現在の自分たちは負ける要素は無い。しかし…
397ポップ・ウソップ冒険記:2005/11/17(木) 23:23:21 ID:GwHY1ewEO


「なあウソップ、例の材料…集まったか?」
「ん?いや、まだなんとも言えねぇよ。金属の類がいまいち集まらなかったし、おり……何だった?そんな聞いた事無いモンもどこにもありそうもないしなぁ…」
「そうか…」

ポップは考える。
自分たちには武器が無い。
あの名工、ロン・ベルクに作ってもらった自分の杖が無い。
最初の広間で見たダイも剣が奪われていた。
オリハルコンとまではいかなくとも、それなりに良い金属さえ手に入れば…もしかしたら武器が作れるかもしれない。
最初に集められたあれだけの人数の参加者、彼らの中にもしかしたら自分たちに合った武器を作れるほどの技量を持つ者がいるかもしれない。
ウソップには…

「……ん?何だ?」
…きっと無理だ。

「おい!ちょっと待て!何だその悲しげな目は!馬鹿にしてんのかぁッ!!」
「あ、いや、そんな事ねえよ。頼りにしてるぜ、相棒」
「ん?ガッハッハッ!おう!任せとけ任せとけぃっ!この天才の名を欲しいままにし!海の芸術家とさえ言われ!絶賛さr〜〜〜」



絶対無理だ。
398作者の都合により名無しです:2005/11/17(木) 23:24:35 ID:eY6orvnB0
支援
399ポップ・ウソップ冒険記:2005/11/17(木) 23:24:40 ID:GwHY1ewEO



【AM7:26/鹿児島県出水(いずみ)、某一軒家】

「…よっ…と!」
「どうだった?床の下や屋根裏なんか探して、収穫あったのか?」
「まあまあ!慌てるな慌てるな!全く、この世界の家はスゲエなぁ。見た事の無い構造してやがるぜ。ま、大体の基本的なトコはオレの世界とおんなじみたいだけどな」
「へえ…ウソップって大工仕事もできるのか?詳しいもんだな」
「オレは狙撃手だ!ったく、みんなオレの事大工扱いしやがる!」
「違うのかよ?」

そのウソップの顔をのぞき見て笑顔を向けるポップ。
しかしウソップはどこか不満げに少し顔をしかめる。

「まあそれは置いといて…」
「ん?」
「……やっぱ変だぜこの世界。どう見たってこの家、新築って見た目じゃねえのに…屋根裏なんかきれいなもんだし」
「こまめに手入れしてたんじゃないのか?」
「ありえねえって。屋根裏だぞ?埃が溜まって汚れてるのが普通なのに…チリ一つ無かった」

汚れ一つ無い手のひらをポップに向ける。

「そうか…。確かに変だな」
「…ま、そのおかげで良い材料はいろいろ手に入ったぜ。時間が惜しいからな、早速始めるとすっか」
「時間はどれくらい掛かりそうなんだよ?」
「よいしょっ…と!う〜ん…そうだなぁ、何とか昼前には終わらせるよう努力はするぜ」
「昼前か、長いな…」

放送があってから、仲間の身を案じる不安の気持ちはどんどん重なる一方である。
400ポップ・ウソップ冒険記

ウソップの提案であるとはいえ、移動の時間を大きく削られてしまう事にポップは不安を隠せず…マァムたちを探したい気持ちが膨らむ今、その『昼前まで』との宣告を受けて深いため息を吐く。

「…なあ、やっぱやめにして…出発しないか?」
「えっ?」
「別に俺は武器なんて無くても戦えるし、こんな事してる間にも…」
「信じろ」
「………え?」

不意に言葉を挟まれ、ポップは目をキョトンとさせてキッチンテーブルの上に座って作業の準備を続けているままのウソップに視線を向ける。

「オレは会った事無えからポップの仲間の事詳しくは知らねえ。でも、仲間なんだろ?お前の」
「…ああ」
「その…ダイとマァムってのは、すげぇ強いんだろ?」
「ああ」
「だったら信じろ。自分の仲間の強さを。オレはルフィとロビンの事を信じてる。あいつらに会えた時のために、今のオレに出来る事全てを完璧にやっておくだけだ」
「……」

ポップの方には顔を向けず、淡々と言葉を続ける。

「…じゃなきゃ、あいつらに合わせる顔がねえよ」
「………」
「それが……仲間ってもんだろ?」

そこで初めてポップの顔を見る。
その表情は…自信に満ちた笑顔。

「…そうだな…分かった。悪かったな」
「ま、力を蓄えとくんだな。ゆっくり飯食えるのも今の内だけかもしれねぇからな」