【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第25部

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1作者の都合により名無しです
これはえなり2世の数奇な運命を追った奇妙な冒険である。

前スレからの続き、行くぜ!!
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1105945845/

 ≪注≫この物語はフィクションです。実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
      特に漫画家とか。

ルール! それはここに書き込む際の最低限のルールである!
・過去ログを見てストーリーの流れくらいは把握しておく事!
・漫画のキャラをあんまり出すな! ここのメインはあくまで漫画家だ!
・登場人物紹介文は、登場させた人が作ろう!展開が落ち着いたらでいいので整理スレに書こう!
・先人の意思をなるべく尊重しよう! 壊すにも壊すルールがあるのさ!
・雑談や感想は本スレで! アンカー付けての遅レスOK!
・展開相談は「したらば」オンリーで! 無論見ないのも自由! 無視されて当然!
・質問は本スレでよし! 先展開の牽制にならぬよう気を遣うのを忘れるな!
・細かい設定や言葉遣いでドジった書き手には極力優しく! 過失だ!決して悪意は無い!
・脊髄反射で罵倒レスをするな! 一呼吸置いて良い部分にも目を向けようぜ!
・わかりやすさは大切だ! 自分の投稿がどの続きなのかアンカーは必ず付けようぜ!
・割り込みはあるものとして考えろ! 即興でそのつど話を書いてるなら尚更だ!
・誤字脱字の訂正は必要最小限にとどめよう! 投稿前に内容確認!!

特殊ルール
・リアル故人の漫画家さんを当スレで扱うと様々な問題が発生する恐れがあります。
 今のところ明確なルールは無く、ケースバイケースなのですが
 誰某を出そうと思っている、若しくは、誰某が登場後にお亡くなりになられた、といった場合
 本スレにSSを貼る前に、したらばに一言お願いします。

↓展開相談、ネタバレ関係はここ「(旧)したらば」で
http://jbbs.livedoor.jp/comic/31/
その他リンクは>>2-5
2作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 12:26:09 ID:HbjKbtIB0
過去ログとか
第1部 http://ebi.2ch.net/ymag/kako/1005/10056/1005603546.html
第2部 http://ebi.2ch.net/ymag/kako/1006/10062/1006290865.html
第3部 http://comic.2ch.net/ymag/kako/1008/10088/1008862285.html
第4部 http://comic2.2ch.net/ymag/kako/1022/10224/1022478173.html
第5部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1043128803/
第6部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1050213697/
第7部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1054732518/
第8部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056214706/
第9部A ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056986536/
第9部B ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1057574190/
第10部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1059402962/
第11部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1061047834/
第12部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1062766295/
第13部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1065342319/
第14部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1067586160/
第15部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1070374232/
第16部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1073532393/
第17部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1076777860/
第18部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1078322116/
第19部 ttp://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1080831880/
第20部 ttp://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1084552706/
第21部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1087978323/
第22部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1092841463/
第23部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1099058199/
第24部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1105945845/
3作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 12:27:05 ID:HbjKbtIB0
 ■えなり関連サイト■
〜ロマン・ホラー!真紅の秘伝説〜 (〜8部)
http://enari2nd.hp.infoseek.co.jp/
えなりん第2倉庫改装版 (URL変更)
http://www.geocities.jp/enyarino/enarin/enari-house2.html
※「えなり」過去ログ保管サイト。最初期〜初期のストーリーも是非一読を。

えなり用語投稿フォーム【エナリダス】 〜Enari's Data Acquisition System〜
http://www.geocities.jp/enyarino/enyari/wardbook.htm
※第2倉庫・新装版用の企画ページ。作中に登場する用語の解説を募集中。(仮運営ver.)


 ■したらば・えなり関連スレ■
えなりの奇妙な冒険を語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/l100
※展開の相談、連絡等に。※ネタバレ要素を含みます。閲覧にあたっては自己責任で。

冨樫の遺産について語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/l100
※意見や批判等、ネガティブな話題はこちらでお願いします。

冨樫の遺産の登場人物について整理するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1058562255/l100
※登場人物のテンプレを、現状に合わせて推敲したり追加したりするスレです。

えなりの奇妙な冒険 キャラ萌えスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1073916863/l100
※キャラ語りをしたい時はこちら。20部到達記念人気投票の結果が発表されています。
4作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 12:27:55 ID:HbjKbtIB0
         ☆なんとなくそれっぽいあらすじ☆

 時は近未来。忘年会シーズンを迎えた2012年晩秋〜初冬。
漫画家を含めた≪クリエイター≫達が武力や異能力を持ち争いを続ける歴史世界。
冨樫義博の遺産ファイルがエジプトで発見されたのを始まりとして、
一見平凡な少年「えなり二世」はファイルを巡る争いに巻き込まれてしまう。
この時代の漫画業界を表に裏に支配する男・矢吹は兵力獲得のため、
賞金10億を賭けたバトルトーナメント大会を巨大戦艦内で開催する。
えなりは打倒・矢吹を誓い、同志とチームを結成し大会に参戦した。
 しかし歴史の裏には神の手先ゴッドハンド・闇の支配者妖魔王一派・
漫画界の秩序回復を図るも内部分裂が甚だしい評議会・
10年前に東京で大災害を起こした少年とゆかいな仲間たちKIYU・
さらにはゴッドハンドを実質支配する軍師横山のしもべたち十傑集+五虎大将・
軍師の姦計で矢吹の下を離れ結成された狂人軍団最後の大隊など、
フリーキャラ含めて右も左も敵だらけで、なんだかえなりはピンチです。

 予選ブロック決勝進出9チームの交流会≪温泉慰労会≫(鹿児島→別府)は、
漫画家達に新たなる因縁を、九州全土に王蟲の進軍による大破壊をもたらした。
避難民救出のため散開するゴッドハンド軍艦隊のひとつ・空母≪エリア88≫は、
鹿児島湾周辺の海域で、最後の大隊を始めとする混成軍に襲撃を受け壊滅の危機。
偶然居合わせた内藤たちが応戦する中、横山十傑集からの援軍・福地は、
<天地創造>でエリ8そのものを変形させ、新たな戦場の支配者となった。が……。
 一方秋田書店が禁断の技術≪神復活(=遺産エネルギー抽出)計画≫を蘇らせたのを期に、
神エネルギーの制御増幅装置と思しき存在【三種の神器】を巡る動きが活発化。
妖魔王陣営は最後の神器を捜すため“不死身属性”ギャグ作家の集団拉致を敢行する。

 そして本編・矢吹艦トーナメントは、決勝戦準決勝第一試合【サッカー】シリーズ。
B・ガンガンとD・えなりの対決。第二試合はA・バンチ対C・裏御伽の予定。
前半終了し、90レス(※約45分)の時点で【ガンガン(+サンデー) 4-1 えなり】!
試合内容がどんどん暴走する中、仕切り直して両者は再び戦火を散らす。

主人公活躍の予感……は気のせい?毎度おなじみ奇妙な冒険・第25部の開幕です。<了>
5王大人:2005/04/19(火) 12:28:39 ID:HbjKbtIB0
それでは始めぃ!!
6作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 12:52:51 ID:ptEurmSg0
乙!
さあ、今スレは準決勝第二試合ぐらいまで行けるかな?
7作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 15:02:34 ID:HbjKbtIB0
行けるのかね。
そういやヤマト編はまだ正午前なのか?
(サッカーを中心とした現在時刻は午後2時50分前後)
朝7時開戦で3〜4時間は経っていそうだが明確な判断基準が少ないぽ
8作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 18:45:16 ID:u4NkyX1U0
スレ立て乙

前に貼ってあった気がするけどもう一度貼っておく
http://senkisenki.hp.infoseek.co.jp/index.htm

漫画、ゲームの必殺技が詳しく書いてあるサイト
参考にどうぞ
9作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 18:54:01 ID:xym7Hq+Y0


うちも参考に
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~residens/
マロンの最強『漫画作品』決定戦のまとめサイト。
結構な作品のキャラのテンプレがのってます
10作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 18:55:48 ID:50930BqB0
このスレをご覧の皆さんお久しぶりですキユです。それではどうぞキユで「NUMBER >>10
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
              ∧∧ ブラーボー!
            ヽ(゚∀゚)ノ   (´⌒(´
            へ(   )   ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
                >    (´⌒(´⌒;;
 ボールはアミーゴ!  ボールはアミーゴ!  ボールはアミーゴ!
 Live Like Rocket!  Live Like Rocket!  Live Like Rocket!

Hide記念館完成。楽曲だけに留まらず他面にまで行き渡ったあの人のロック。>>1いんですよ武井先生
>>2ゲットでつきぬけろ!!
>>3ゲットはロックだ。(゚∀゚)
告知☆7/22 8/12に弟バンド「スプーンタップ」が>>4日市ケイオスでライブ敢行!
夏の夕方って好き、でも痛みを知らない>>5は嫌い
心を無くしたモラル欠如者の>>6も嫌い
大人であり子供である>>7は優しい漫画が好き
>>8また、いきたいなワールドカップ
>>9 バイバイ
>11 跪け、虫ケラ
>12 毒にも薬にもならねェ
>13 ブチ壊す
>14 死刑
>15 記憶にございません
>16-1000 頭の悪いコメンテーターどもよ
11作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 20:52:15 ID:s8Ot/FQK0
KIYUキタ━━━━━━(´Д`)━━━━━━!!!
12作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 23:34:23 ID:ckIvgEma0
そういやKIYUはどうしてるんだっけ?
13作者の都合により名無しです:2005/04/20(水) 00:16:08 ID:R4E0AGCT0
サッカー見てると思う
14作者の都合により名無しです:2005/04/20(水) 00:55:39 ID:sQceDyE60
そういやキユ自身どころかその一派も最近何の動きもないね
15作者の都合により名無しです:2005/04/20(水) 00:59:48 ID:R4E0AGCT0
やまとでのvs裏御伽編でサイクロプスが「一旦様子見」言われたからかねえ。
キユが気まぐれ起こせばまた何かあるやもしらん
16作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 02:27:27 ID:40u8jI5z0
うーん、丸一日以上投稿無しか。
未だ状況は厳しいな。
17作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 10:41:47 ID:TNUU/v1zO
最初のがきたら一気にいくと思うが・・・・・・
18サルガッ荘風雲録〜和郎のないしょ:2005/04/21(木) 13:07:40 ID:iIz8mR2t0
(前スレ228)

死者と生者の漂着場。ここは“脱出不可能空間”・
宇宙墓場サルガッソー内サルガッ荘。
空間内に流れる独特の時間軸。今はすっかり真夜中で、
電気を消したアパート2階の窓から星々の瞬きが見渡せる。
その星全てが<死>そのものであり、
輪廻する事無く<無>へと続く一本道であり、
決して引っくり返らない砂時計の砂粒に、自分は紛れてしまったのだと、
全身包帯まみれになった武井宏之は、開けた窓の木枠にしなだれ嘆息するのであった。

狭い四畳半間に敷かれた布団から、相部屋の島袋の豪快ないびきが聞こえる。
ひとくくりにされてしまった『光原組』(光原・武井・小野・万乗・島袋)の、
5人の内の、(外見上の)男4人で2つの部屋を使っているが、
そのうち島袋を除いたふたりと趣味の相違から大バトルに発展してしまい、
すったもんだの果て一旦収束した現在も非常に顔を合わせづらい。
夜はあいつらと別室でよかったと、武井は口の端を苦々しくゆがめた。

還る世界のない星たちの冷たい光は、
帰る世界のある武井の心を焦燥に走らせる・・・。

──ふと、庭の方から物音がする。武井は窓から身を乗り出し、
外を一通り見渡して確認するが真っ暗で何もわからない。
 (こんな時間に誰か外にいるのか?泥棒・・・は、ないか。何だろう)
武井は訝しげな顔をして、島袋を踏まないようにしながらそっと部屋を出た。


 (あれは・・・井上和郎!!)
物音を立てずに庭先に出た武井が、思わず声を出しそうになる。
それもそのはず、庭に立ち素足で木刀を素振りしている可愛らしい少年──
和郎は武井が生命と尊厳とあと色々なんやかんやを賭け、
小野や万乗と決闘した原因そのもの。
19サルガッ荘風雲録〜和郎のないしょ:2005/04/21(木) 13:09:09 ID:iIz8mR2t0
そういえばストックがないという衣類はどうしているのかと、
建物の端から覗き込む武井が、星明かりのみの世界に慣れた目で視認する。
和郎の着衣はぶかぶかのシャツのみ・・・大柄な技来の服を借りたようだ。

 (チッ、男性物か。だが下は穿いてないのか短パンか?
 膝上まであらわか・・・これはこれで・・・いや違う!そうじゃない。
 彼はひとりで身体を鍛えているのか。剣さばきを見てみたいな)
他の変態と違ってナンボかまともな武井は我に返ると、
あくまでフレンドリーにアパート脇から姿を現し、和郎に声をかけた。

 「やあ井上、ひとりで特訓か?」
 「あ、武井先生・・・いえひとりじゃありませんよ」
そうか?と首をかしげる武井だが、木刀を降ろした和郎の右手をふと見て理解する。
 『タケイか。元の人格と記憶が回復したそうだな』
声と共に和郎の右手は奇妙に変形し、眼球を浮かばせた。
温泉慰労会で目撃した“寄生獣”岩明均である。

 『お互い災難だったな。私たちは聞いていると思うが、
 別府の騒動に紛れてこの宇宙墓場へ辿り着いてしまった。
 技来と、矢吹艦からワープしたらしい曽田と共に行動している。
 もうひとり森がいたのだが、彼は現在消息不明だ。我々はもちろん、
 元の世界に帰る。しかし森の行方がわからぬままでは・・・動けない』

淡々と語る岩明だが、『決して出られない宇宙墓場・終着点』であるとの、
サルガッ荘管理人TAGROの話を、断言する形で否定する。
その力強さに、死の国の星たちにアテられていた、
武井の胸の内に渦巻く不安感が奇麗に氷解した。

 「そうだな・・・出られるはずだ、きっと、いや絶対に。
 全ての世界はどこかで繋がっている。死によって生が得られるように、
 この地に吸い込まれた存在も、再び吐き出されるに違いない。
 それがどんな形なのかは知らないけれど・・・僕たちは帰る。扉を見つけて」
20サルガッ荘風雲録〜和郎のないしょ:2005/04/21(木) 13:10:13 ID:iIz8mR2t0
武井の空虚な瞳に、僅かばかりに情熱の炎が映し出される。
仲間(?)たちの話を聞くに、ここサルガッ荘の生活はとても楽しいものらしい。
だが──おとぎ話の、竜宮城で夢のような生活を送った浦島太郎とて、
永遠のお祭りより日々の生活と自分の家族を選択したではないか。
全ての日は、いつか終わる。その時に決して後悔しないとは、
この最果ての地にいる限り、武井は言い切る事ができなかったのだ・・・。

 「その意気ですよ武井先生!頑張りましょう。ボクも元の世界に帰ったら、
 やらなくちゃいけない事があるんです。その時のために鍛えているんです」
素振りで上気していた和郎が、さらに語気を強くして言い放った。
 「(・・・あの<鬼>に。理不尽な暴力で青山さんたちを殺したあいつに、
 彼らの無念を叩きつけるために。ボクたちは帰らなくてはならない・・・)」
語ると共に沈痛な瞳で思考を巡らせていた、和郎はふとある事を思い出し、
すっと冷たい表情を見せると同時に武井と心持ち距離を置いた。相手は気づかない。
警戒心。和郎は思い出してしまったのだ。

彼が仇と狙うあの<鬼>が、板垣恵介が。
目の前の男と同じチームの人間だという事実を。
彼を己の実力を試す指針として見るか──
仇敵たる男と“同類”として見るか──  さて───

 『・・・どうした、カズロウ。心拍数が上昇しているぞ』
 「・・・なんでもないさ、岩明さん・・・いやミギーと呼ぶんだったっけ。
 まあいいさ、そうだ武井先生。先生は刀を持っていましたよね。
 ボク最近剣技を覚えたんですよ。少し稽古につきあってくれませんか?
 木刀はもう一振ありますから。よかったら電気もつけますよ」
岩明の声を遮るように、ことさら明るめに武井に話しかける和郎。
彼の真意には気づかない武井。先程の熱意と共に、了承しゆっくり頷いた。
 「電気はまあ、いいや。しかし井上、お前・・・闘えたんだな」
 「<藤田組>は必ず格闘を仕込まれますから。さあ、木刀を。武井先生」
『スプリガン』準隊員・井上和郎。彼はひとりの戦士として、
順調に芽吹きはじめていた。武井はゆっくり、和郎の手から木刀を受け取った。
21作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 18:24:28 ID:/5rqFIOq0
トップバッター乙

25部はサルガッ荘からスタートですか
22作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 18:42:52 ID:nkKMFnZU0
あー井上ってスプリガンだったのね
こいつもオリジナル路線を順調に進んどるなあ良きかな良きかな
23スカッシュ(休憩中):2005/04/21(木) 18:58:50 ID:kdaILR1T0
前スレ492のつづき

ハーフタイム休憩中。
樋口は通路で壁打ちをしていた。簡単に言えば、サッカーボールでやるスカッシュだ。
長くラリーを続けるには精妙なボールコントロールが要求されるが、樋口はリズミカルにボールの応酬を続けている。
しばらくひとりでそれを続けていると。
「壁打ち、まじってもいいか?」
足をとめて、声の方を見るとそこにユニフォーム姿の村枝が立っていた。
さすが本職というべきか、えらくサマになっている。
「あ、どうぞ」
交代でやることになった。
ボールを渡すと、村枝の壁打ちが始まる。
樋口は、お手並み拝見するつもりで、村枝を見ることにした。
サンデーで最強のサッカー漫画家の実力がどの程度のものなのか、興味があった。
ところが、村枝は何回も蹴らないうちに

ポコーーーン

「あた…」
ボールはあさっての方向に行ってしまった。
「次、わたしですね」
失敗したので交代する。
(調子ワルそうかな、やっぱ)
どうやら腕云々以前に、怪我がかなり深刻なのではないかと樋口には思えた。
実際、ユニフォームの下の体は包帯で痛々しく覆われていて、頬も少しこけている。
これで、あの高橋陽一のテクや、村田の爆足、そして何より車田などの猛者たちを相手に渡り合えるのかと心配になる。
内心でそんなことを樋口は考えながらも、しばらく村枝と代りばんこに壁打ちを続けた。
そして、次第に変化がおき始めた。
最初は樋口の方が長くやっていた壁打ちが、次第に村枝も同じだけの時間になっていき。
「これは……なかなか………」
しまいには、いつの間にか、村枝がその壁を独占する形になっていた。
24スカッシュ(休憩中):2005/04/21(木) 19:00:30 ID:kdaILR1T0

 ポ―――――――ン
   ポ―――――――ン
             ポ―――――――ン
           ポ―――――――ン

「ハッ!ハッ!」
ペースが徐々に上がっていく。すでにかなりの速さでボールが飛び交っている。
もうパスというレベルではなく、シュートの域に近い。
(すっかりとりあげられちゃったな……)
樋口も、村枝の本来の技量に感嘆し始めていた。
ジリ…
「ん?(こ…この人……)」
しかし、樋口が驚くのはここからだった。彼女は気づいたのだ。

(徐々に壁に… 近 づ い て…)

ボールは速さを増すばかり。なのに、村枝は壁との距離をじわじわと縮めていたのだ。

        ボウ!
   ダム!   
           ダ  ム !!

「フッ!!フウ―――――ッ!!」
もう、壁までの距離は1メートルもない。
「な…なん…!!」

          ダ   ダ   ダ 
            
           ダ       ン  !!!
25スカッシュ(休憩中):2005/04/21(木) 19:01:38 ID:kdaILR1T0
ボールは、村枝の足裏と壁に挟まれて止まっていた。
村枝の全身から、かなりの量の汗が流れ落ちている。
村枝が見せた一連の動きに、樋口は同じサッカー漫画家としての明確な違いを知った。
(ス…スゴイ…)
ゾク、と寒気すら、樋口は覚えた。
(怪我の影響なんてゼンゼン見えない…なんて人なの……)
その動きのキレのすさまじさは、さすがに往年のサンデーが誇る最強のサッカー漫画家、その健在ぶりを見せ付けるものだった。
(この力が本番で出せれば…)
村枝の技に感動を覚えている樋口。
そこへ、村枝が声をかけた。
「よし、そろそろ時間だな」
すでに呼吸はととのっていた。
樋口が返事をするのにかぶさるように、アナウンスが響いた。

『ご来場の皆様、長らくお待たせいたしました!!これより、準決勝第一試合サッカー対決!!その後半戦を開始します!!』

村枝と樋口は顔を見合わせて、笑った。
「勝って決勝に行くのは俺たちだ。行くぞ!!」
「はい!!」
もう一度、樋口は大きくはっきりと返事した。
二人の蹴球戦士が、緑の戦場に走り出す。

そして、後半戦開始を告げる笛が、高らかに鳴り響いた。


      準決勝第一試合  後  半  戦   開  始
26作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 19:25:05 ID:TNUU/v1zO
村枝SUGEEEE
27作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 21:01:19 ID:a0E/0IGa0
素敵よぉぉ!!!(人´∀`).☆.。.:*・°
28作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 23:19:01 ID:72TYnd/i0
輝いてるぜ村枝
後半の主役はおまえだ!
29暗黒ルートパラダイス:2005/04/22(金) 16:35:26 ID:aOw2q6u00
(前スレ44 23部347)

久米田博士の弟子にして矢吹付きの執事・畑健二郎。
彼はその立場から【小学館vs秋田書店の全面戦争】の詳細を知り、
なんとか無駄な戦争を収められないものかと腐心している。

師・久米田はかつて小学館屈指の天才と呼ばれた男だが、
その性格や読者を選ぶ作風から、保守的な会社である小学館に徐々に疎まれ、
社を追放。その後多くの雑誌で幽霊のように痕跡を残しつつ、
細々と暮らしていた。やがて新雑誌に載せるギャグ作家を求めていた、
当時漫画界の支配途中だった矢吹に拾われ・・・現在に至る。


久米田追放当時、畑は師匠と入れ替わる形で、
小学館にサンデー作家として迎え入れられた。
かの社にもわかっていたのだ。常に出版界の禁忌に挑む挑戦的精神──
<久米田イズム>はサンデーの重要なファクターである事を。
だが必要なのは久米田的要素であって、久米田ではない。
表には出さぬ小学館の意志を、彼ら師弟は知っていた。
久米田は虚ろな瞳で、畑は涙枯れぬ瞳で、
それぞれ別れを告げた・・・。


時が経ち、2人の環境は大きく動いた。
畑が矢吹に仕えているのは、恐らく矢吹の片腕となった久米田の、
違った側面で役に立てまいかと、彼自身が選択したためであった。

そして畑は現在、トーナメント会場のある矢吹艦地下中央区の天蓋部分に設えた、
久米田が残務処理に追われている特別執務室をひとり出て、
天蓋の内部にぐるりと廻らされた回廊を、何やらぶつぶつ言いながら、
無意味にさ迷い歩いている。強化ガラスの壁から真下に、
前半終了直後のサッカースタジアムが見えるが、畑の視界には入らない。
30暗黒ルートパラダイス:2005/04/22(金) 16:36:21 ID:aOw2q6u00
 「本当にボクに出来る事はないのかな・・・。
 小学館側が一方的に潰されるのも辛いけど、下手に介入して、
 泥沼化して戦争が長引くのはもっとよくないんだ」

眼下のコロッセオとの直通エレベータ前の長椅子に座り、
改めて問題に立ち向かう生真面目な漫画家・畑。
 「矢吹様に軍を派遣していただくのが一番確実だけれど、
 まず確実に小学館子会社化は免れないだろうし、あちらが断るだろうな。
 それにトーナメント時期に漫画家の心証を悪くする事件を起こすなと言う、
 以前出した矢吹様の通達をわざと破ったに違いない秋田・・・あれ?もしかしたら、
 こちらの軍を引っ張り出す目的で小学館を・・・いや待て待て待て〜」
何か嫌な結論が出かけ、慌てて思考回路を閉じる。久米田の仮説と符合したのだ。

『秋田の目的は小学館壊滅ではない。この戦争の意味は別の処にある』

彼らは何を狙っている?≪カミサマ≫なる変異原物質を、彼らは如何にするつもりだ?
畑は改めて自分ひとりの手におえる問題でない事を悟り頭を抱える。
と、エレベーターの扉が開き、下界から訪れた人間が降りてきた。
視線を人間に移した畑は目を丸くし、慌てて立ち上がる。
 「わあ!お客様、こちらは一般席ではありませんよ。
 矢吹様のプライベートフロアなんです、お引き取り下さい〜」
 「・・・あれ?ぼくまた道を間違えちゃった?
 おかしいなあ、漫画家専用席があるって聞いたからそこに向かったのに」

 「あ、漫画家様でございましたか。あの辺りややこしいんです。
 客席との次元位相変換ポイントからの、通路を間違えたんですね」
突然の来客に驚いた畑だが冷静に対処する。やってきた『漫画家』は、
野球帽を目深にかぶった小さな少年。手には菓子類とサッカーボール。
 「もー、ぼく迷子ばかりで疲れたよ。しばらくここで休んでいい?」
 「え・・・?うーん、少しならいいかな?こちらの椅子から一緒に試合見ましょうか」
畑はにこりと微笑んで、少年──突き抜けし者キユ──を隣に呼び寄せ座らせた。
31作者の都合により名無しです:2005/04/22(金) 18:42:52 ID:RNXGu47D0
ここでキユとは、なんてこったい!

畑キュンの無事を祈ります・・・
32紅き魔弾:2005/04/22(金) 21:12:47 ID:Q3MH7cR20
痛快な勝利を得た西森は、しかしその場にがくりと片膝を付いた。
「効いたぁ…」
口元に流れる血を拭い、使いものにならなくなった消火器を投げ捨てる。
先の無防備な状態で食らった不意の一撃もさることながら、消火器によってガードした一撃も、
その金属の盾を見事に貫通し、西森の体に多大なダメージを与えていた。
最初の一撃から、ひょっとしたらこうなるかも知れないと怜悧な頭脳で判断していたが、
それよりも不意打ちとはいえ無様に転がされたことへの屈辱の方が勝ったのだ。
報復として、真っ向から叩きのめすだけでなく、倍の屈辱を与えてから葬る辺りは、
性格だろうが、己自身が被る手傷も度外視してそれをやるのだから怖ろしい。
とはいえ――ここまでの深手は予想外。
ちっ、と舌打ちして、上空の敵二人を見る。
互いに牽制しあっているせいか、まだこちらの様子に気が付いていない。
――よし、退こう。
軽やかに即決して、糸に絡め取られ、ぐったりとしている田辺を睨む。
その刺すような視線を感じ取り、田辺が顔を上げたと見るや、すうっと視線を田辺の右腕に流した。
「―――ッッ!」
喪心気味だった田辺の顔がさっと青褪めた――その時には西森は魔風のようにその場から消失している。

その間、地上から発せられた地響きのような音を、上空の二人が感知していなかったわけではない。
ジュリアの糸を上空での移動と攻撃の双方に巧みに射出しながら、隙を見て鋭い爪を繰り出す佐藤と、
それを飄々と避けていきながら打撃を放つ赤松は、その音を聞いて、静止した。
――何が起こった?
同時に去来した疑問を晴らすにはしかし、お互いが邪魔だった。
ここでどちらか一方が視線を下にやれば、その瞬間もう一方が攻撃を加えるのが目に見えている。
二人は、睨みあったまま膠着した。
虚しい時間が流れていく。
―――とりあえず見ますか?
――そうね。
数十秒後、目だけで示し合い、二人は一緒に真下を覗き込んだ。
33紅き魔弾:2005/04/22(金) 21:14:23 ID:Q3MH7cR20
「げっ」
地面にその巨体を横たえた山内の無残な姿を目の当たりにして、佐藤は乙女にあるまじき声を発した。
「おやおや、貴方のパートナー、あっさり負けてしまったようですなあ」
「〜〜〜〜っっ」
横から内腑を抉るような嫌味を言われ、佐藤は顔を紅潮させて、ジュリアの上で地団駄を踏んだ。
「ふむ、それはともかく肝心のお嬢さんはいったい――」
もしやと思い、田辺の方を見たが、そこにもいない。

「逃げた、か? 」
西森が吹き飛ばされたことにより、山内と西森は表路地に近い場所で戦っていた。
逃げるとすれば、確かに容易い。
「はっ……仲間置いて逃げるなんて、少年サンデーも堕ちたもんだねえ!」
「ぴーぴー喚くな、山本の狗如きが」
悔し紛れに嘲笑する佐藤に、真下から貫くような鋭い声。
弾けるようにそちらを見た二人の視界には、それぞれゴミ箱の蓋と、箱が迫っていた。
「ぬっ――!」
「ちいっ!」
 避ける間もなく、何とか腕で払った二人は、
凶悪な笑みを浮かべて新品の消火器のホースをこちらに向ける西森の姿を目の当たりにした。
どうやらごみ箱の中に予備を一つ隠していたらしい。
二人の驚愕の表情を満足げに眺め、すぐさま、彼女は何の躊躇も無くレバーを握る。

――――ブシャアアアッッ!!

猛烈な勢いで己に向けて噴射される粉末を、既に体勢を崩された状態の二人が避けられるわけもない。
「きゃあっ!」
「ぐべえっ!」
もろに食らって、両者殺虫剤吹き掛けられた害虫のように高速悶絶。
上空はもうもうと白い煙に覆われた。
34紅き魔弾:2005/04/22(金) 21:16:32 ID:Q3MH7cR20
最初に抜け出したのは、赤松。
地に降り立ち、先程と同じ要領で水妖陣で顔を拭う。
予想通り、既に視界には西森の姿はない。
ちっと舌打ちして、続けて糸に完璧に囚われていた田辺の方へ。
しかし――。
「ぬうっ」
赤松の口から驚愕の声が漏れる。
糸は解け、中の田辺の姿は消失していた。
しかも、である。
強靭な、田辺の腕力ではどうしようもないはずの糸は、“内側”から強烈な力でもって強引に引き千切られていたのである。
――あの少女のどこにこんな力が?
戦慄のような衝撃により、赤松は一瞬喪心状態に陥った。
その瞬間。
ずぶっと肉を貫く鈍い音が、己の腹から響いた。
「………?」
呆然とした表情で覗き込んだ腹部から、鋭い爪が突き出ている。
「小学館の奴ら二人に逃げられて、何の手土産も無しで退いちゃあ師匠のお仕置きが酷いんでね、あんたには、死んでもらうよ」
後方から、ぞっとするほど冷たい声色で、佐藤が呟く。
晴れた空には既にジュリアの姿はない。
爪を引き抜き、彼女は次なるチャイルドの名を呼ぶ。
「―――デュラン」
現出した鋼鉄の狼の砲身は、深手を負いゆらめく赤松にしっかと向けられている
「ロード=クロームカートリッジ」
静かな怒りに満ちた声音で紡がれた命令と同時に、背に装備された二対の大砲に砲弾が装填される。
「死んじゃえよ、オタク漫画家」
驚愕に顔を歪ませたままの赤松の全身が、轟音と共に放たれた二本の紅い閃光に包まれた。
35死地:2005/04/22(金) 23:34:23 ID:1myhEDL/0
23部429より

 その男の腕は、まるで白昼夢の如く消滅した。
“鋼の錬金術師”荒川弘の目に、照明を照り返す黒金の煌めきが飛び込む。
荒川の腕も新たな錬成を繰り出すべく動いていたが、両手を打ち合わせようとした瞬間、衝撃が襲った。荒川は足払いを食らったように膝をついた。
田口の掌の中の拳銃は、荒川の太股めがけて銃弾を発射していた。
鉛の弾は脚の肉と筋肉を易々と貫き、大腿骨をへし折って、そこで銃弾のパワーを解放する。
神経と血管がずたずたに引き裂かれ、飛び散った血飛沫が焼け爛れた床を叩いた。
「ぐっ…う…」
義肢でない方の脚を正確に撃ち抜かれ、荒川は立て膝をついたまま動けなくなった。
左肩と右脚。
たった2発の銃弾による、重すぎる負傷。出血がひどく、荒川の顔色はすでにチアノーゼを引き起こして紫っぽくなっている。
――そういえば人間は、どのくらいの出血で死に到るのだったろうか?
確か、2000ml――いや、違う、20%だ。
20%で、眠気、意識の混濁、見当識障害、ショック症状――――
「―――人間が失血死するのは、体内の二分の一が失われた時だ」
どうやら、思考が口をついて出ていたらしい――
眠気、意識の混濁、見当識障害――――
御丁寧に教えてくれたのは、これから自分を殺そうとしている張本人だ。
「――しかし送り出す心臓がなければ意味がない。考える頭がなければ、気にもならない」
勝手な事を言っている――
しかし、このままでは間違いなく数秒後に、その台詞は現実になるだろう
次に心臓を潰し、最後には頭を―――
立ちのぼる硝煙越しに、荒川を見る目は無機質そのもの、やはりそこには一切の感情がなかった。
36死地:2005/04/22(金) 23:35:20 ID:1myhEDL/0
死神の銃口が、荒川の頭部をポイントした。
立て膝のまま、動かない荒川。
田口のしなやかな指が、拳銃の引き金を絞ろうとした―――
荒川が立て膝の体勢のまま、左膝部分を露出させたのと、それは同時だった。
義足に内臓されていた、1.5インチカルバリン砲が火炎を噴き上げた。

 ド ド ン !!!

視界に映ることごとくが爆散した。
火炎が荒川の前方をほとんどカバーするようになめつくし、室内が爆煙で満たされる。
「………!!」
砲撃を寸前の跳躍によって回避した田口は、そのままの勢いで壁に張りついた。
損害は皆無だが、視界は最悪だった。
キラ、と何かが白煙の向こうで光った。
飛来してきたのは、ヒョウ(金編に票)のような武器であった。
いわゆる柄のない投げナイフのような刃物。
計5本飛んできたそれらを、しかし田口は躱そうともしなかった。
軌道から見て、自分に当たらないと判断したためである。
果たして軌道計算の通り、全ての刃は、田口の周囲の壁に突きたっただけだった。
そう、田口を囲むように――――

   バ チ イ !!

直後、雷光のような煌めきが田口を包囲した。
「――!!――」
煌めきは五芒星を描き、何の変哲もない壁を生き物のように変化させた。
それは錬成の輝きであった。
壁の一部が、強固な金属のロープへと変形し、田口の痩身を壁に縫いつけた。
37死地:2005/04/22(金) 23:36:15 ID:1myhEDL/0
「――成――功――」
絶え絶えの呼気を漏らしながら、荒川はつぶやいた。
足元には、田口を包囲したものと同じ刃物が同数突き立っており、それらの位置を結ぶように五芒の錬成陣が描かれていた。
通常の錬金術は直接手で触れる必要があるが、これは距離があっても錬成をなし得るように改良された、荒川の新技であった。
最初に撃ったカルバリン砲は、これを成功させるための布石にすぎなかった。
田口の捕獲を確認すると、荒川は傷ついた足を無理矢理稼動させ、強く地を蹴った。
転がるように跳んだ先は、動きを封じた田口の方向ではなく、傷つき倒れている伊藤真美のところであった。
真美を抱えると、床をごろごろと転がりながら、田口とは反対方向の壁にとりついた。
両手を打ち鳴らし、雷光を叩きつける。
壁が光に食い荒らされるかのごとく、破壊された。
穿たれた大穴から、潮の匂い、そして焼けた鉄と肉の臭いが吹き込んでくる。
ぽっかりと空いた向こうに見えるのは、海と空であった。
茫漠たる蒼のなかで、ちらちらと種火が燃えているように見えるのは、破壊され尽くした第三艦隊の、エリア88を除く全ての艦艇が炎上する様だった。
くっ…と荒川が、その美しい柳眉を歪ませたのは、目の前の惨状に対してのものか、それとも自身を貫く激痛か。
真美を両腕で強く抱きかかえ、荒川が壁面の穴から、もろとも身を投げ出した。
「…………!!」
身体に強い加速度と風圧を感じながら、荒川は真っ逆さまに、海面へと落下していった。
蒼い海面に、一瞬、白い飛沫が立ち、それもすぐに消えた。
38死地:2005/04/22(金) 23:38:05 ID:1myhEDL/0
それと前後して、田口の緊縛は純粋な腕力によって千切られていた。
しかし、わずかの差で、二人はすでに眼下の海へと落下していった後であった。
あのとき、捕獲した田口にとどめを刺そうとする素振りを欠片も見せなかった荒川は、正しい判断をしたと言える。
もしも、田口の動きを封じたことに乗じ、安易に近づけば田口の痛烈な逆襲を受けただろうことは想像に難くない。
なにより、今の荒川には、田口の再生力を上回る攻撃力などない以上、とどめを刺すなどどの道無理な話であった。
鋼鉄による緊縛は、あくまで田口を足止めし、逃げる時間を稼ぐための算段にすぎない。
「…………」
しばらく、田口は二人が消えた海を、じっと見ていたが、やがて興味を失ったように踵を返した。
床に散らばったイングラムや、拳銃を回収し、新たな獲物を求めて、その場を後にした。
機械的なまでに規則正しい足音が静かに響き、次第に小さくなっていった。
39死地:2005/04/22(金) 23:39:34 ID:1myhEDL/0
ザバアッ
「はあっ、はあっ、はあっ」
数分後、一度は海に落ちた荒川と真美は、別の箇所からのエリア88再侵入に成功していた。
「伊藤真美っ、しっかりしなさい!」
気を失っている真美に向かって叫ぶが、彼女の意識は戻らない。
そして、荒川は立ち上がろうとし―――
立ち上がれないことを悟った。出血のせいで、意識が混濁しているのかな、とぼんやり考えた。いや――頭を打ったのか?
そんなばかな。これぐらいの傷で立てないなんてわけが――ない私はみんなのところへ戻らねばなら――ないんだから私は真理を見つけなければならないんだから私は彼女と約束したんだから私は――――
身体が起き上がりかけた姿勢から、ぐらりと前へ傾いだ。
荒川は意識を失った。


それからわずかして、気絶した二人の女を包囲する、複数の影が現れていた。
彼らは一様に迷彩服とガスマスクを装備し、手にした自動小銃を油断なく二人に突きつけていた。
その動きは、まごうことなき一流のプロの手練であった。
40作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 01:50:54 ID:XkUFgOvm0
荒川姐さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
41作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 02:39:35 ID:9tZ6YOtV0
てかついにバイオリン弾きと錬金術師が再会!?
42作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 03:18:36 ID:vZ7dJ+Pk0
そういやまだ周辺で孤独にバイオリン弾いてるんだっけあの人(´・ω・`)
43作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 03:43:33 ID:MGCMaRHYO
あの人はこれからもずっと孤独だろうけどな。
44作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 06:14:07 ID:mMTTIpde0
>だが必要なのは久米田的要素であって、久米田ではない。

。・゚・(ノД`)・゚・。

>驚愕に顔を歪ませたままの赤松の全身が、轟音と共に放たれた二本の紅い閃光に包まれた。

!( ̄ロ ̄|||)
45白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:12:22 ID:HsCCFPk10
関連スレ(23部>363)

特設リングの上で睨み合う異形の巨人ふたつ。

方や、黄金の電気騎士“ナイト・オブ・ゴールド”
方や、白銀の悪魔軍団長“ゆで将軍”

将軍「睨み合うばかりではラチがあかんな。そちらに攻め気がないならば、寄ろう」
そう言って、将軍がゆっくりと距離をつめてくる。
遅い、と永野は思った。
体格に見合った鈍重さに、拍子抜けする思いだった。

永野(こいつ…………!!!
   動きは見えるっ、思ったほど大したことないのか!?
   今まで戦ったどの漫画家よりカンタンに動きが見えるっ!!)

だが、それは大いなる誤りであった。
永野は、すぐに自分の認識不足を思い知ることになる。

永野(あれ?あれれっ?
   私の体…どうしたっ? 私の体がゆっくりとしか動かないっ!! なんで、こんなゆっくりとしか動かないっ!!)

普段であれば、音速を超える速度を出せる自分が、将軍の鈍重そうな動きよりもさらに遅く、ビデオのスロー再生のようにしか動けないことに驚愕していた。

永野(私の動きがスローになる!! どうしたっ動け!! 私の体!!)

そして、永野は気付いた。

永野(私は…! あいつより遅い!?)
46白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:13:32 ID:HsCCFPk10
将軍「 地 獄 の メ リ ー ゴ ー ラ ウ ン ド !!!」

バターが溶けるようにゆっくりと動いていた時間が、突然、もとの速さに戻った。


          バ   ウ  ッ   グ イ ン ッ

永野「!!」
うってかわった尋常ならざる将軍の速さに驚愕する永野。

          ギ ュ ン ッ


                 バ   キ   イ  


実剣どころか、それを持つ腕そのものが、吹っ飛ばされた。
KOGの本体は、リングを叩き割った地割れの中に陥没し、実剣を持ったままの腕が、KOGの後方に一拍遅れて突きたった。

永野(は…速すぎる……奴は騎士よりも速く動けるのか……!!!)
ただの一合で、彼我の圧倒的というにも程がある実力差を、永野はまざまざと思い知らされた。
だが一方では、将軍も、永野という男に対し、少なからぬ驚嘆をおぼえていた。

将軍(この男……あの刹那のタイミングに、自分の左腕を盾がわりに、わたしの剣先を変え、首が飛ぶのを防ぐとは……!
   五聖人には及ばぬものの、限りなくそれに近いレベルということか……)
47白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:14:43 ID:HsCCFPk10
将軍「フッ、たったの一合とはいえ、なかなか面白い勝負だった」
満足げに笑い、将軍が倒れている永野に近づいてくる。

??「マスター、敵接近してきます」
永野の操縦をサポートする人工生命、ファティマが永野に呼び掛ける。
永野「むっ…、こうなったら最終手段。バスター砲しかないか」
KOGが、腰に装備してあった、巨大な大砲をつかみ、伸ばした。
長大な大砲を、将軍につきつける。
将軍は立ち止まり、ホウ…、とでも言いたげな顔をした。
永野「ノーマルのバスターランチャーを半分にぶった切った奴だから命中率が悪い!
   オマケにものすごい反動がある
   エネルギーの逆流(リバース)もあるかもしれない!
   過電圧(オーバーロード)には注意するんだよ!」
??「わかりました!」
永野の指示に、ファティマが答える。
ファティマの目まぐるしい演算が始まり、永野に情報が送られてくる。
??「コンタクトを下げます」
対閃光防御用に、KOGのメインカメラを遮光バイザーが覆った。
??「エネルギーチャンバー内で正常に加圧中!
   ライフリング回転開始
   シアーの解放タイミングは私が!
   トリガーはそちらに!」
永野「わかった!」

将軍「なんだか知らんが面白い。受けてやろう」
驚愕すべきことに、バスター砲を照準された将軍は、かわそうという素振りさえ見せずに永野の真正面に立った。
格上の貫目を見せつけるため、格下の攻撃を受け切ろうというのか。
あるいは、それがプロレス漫画家としての、将軍の矜持なのか。

しかし、そこにこそ勝機が存在する。
刹那、小惑星をも破壊し、空間さえ歪める、バスターランチャーの光がほとばしった。
48白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:15:54 ID:HsCCFPk10
永野「  当 た れ え !!  」


         ド   オ  ッ   


腐海に、破壊の光が満ちた。
将軍「ゲェーッ! こ、この威力はッ!!」
余裕を見せていた将軍の顔に、戦慄が浮かんだ。
それほどの破壊力がこめられた、一撃であった。

   
        カ   ッ

             
                  ズ       ッ 


           ド  ド  オ  オ  ン


永野「ううっ!!!」


          ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォ・・・・


巨大なドーム状の爆発が、永野の前方に広がる景色を包んでいた。
それは例えるなら、木星を半分にぶった切って、そこに置いたような、そんな非現実的な光景であった。
地鳴りのような音色を響かせていた爆発は、しだいに恒星がゆっくりと消滅するように、終息していった。
49白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:16:46 ID:HsCCFPk10

永野「大丈夫?」
永野が自分のファティマにねぎらいの言葉をかけてやる。
??「はい、でもこの子は回路の一部がショートしたようです」
永野「やはりまだ改良の余地があるなぁ…」
永野はぼやいた。
永野「しかし何てパワーだ、ケタはずれもいいところだ。
   見てごらん、あそこの空間がひずんだままだよ」
見渡す限りの焼け野原になった腐海の跡地を、嘆くように見つめる永野。
外敵は撃退したものの、結果的に腐海に壊滅的な被害を出してしまった。
永野「もっとも、どっちみち結果は見えてるな…。ゴッドハンドが九州を平定するのは時間の問題だろう。
   KOGが直り次第、僕らも撤収した方が良さそうだ」
そう言って、永野はもう一度、自分が造り出した焼け野原を見る。
永野(将軍の姿はない……さすがに跡形もなく消滅したか。あれは、個人レベルでどうにかできるシロモノじゃない。まさに悪魔の兵器…)
そこまで考えて、その続きを永野はつい口をついて出した。

永野「これに生身で耐えうる存在がいたとすれば……それはホンモノの悪魔だ」


50白銀vs黄金:2005/04/23(土) 23:30:17 ID:HsCCFPk10
同時刻、鹿児島沖……
その海域の空中に、“ホンモノの悪魔”は浮かんでいた。

将軍「バゴアバゴア(注:笑い声)!!
   すさまじき威力よ……この地獄の軍団長を退かせるとは…な」

なんと、この悪魔は、あのバスター砲の雷撃を、“肉のカーテン”による防御でしのぎきったのだ…!
その体は、ところどころ白煙を噴き上げているが、命にかかわる損傷はない。
常識を遥かに超える爆風の衝撃波ゆえ、遠く離れた海上まで吹き飛ばされたものの、この悪魔の生命を消滅させるには到らなかった…!!

将軍「リングアウトの20カウントまでだ。
   さすがのわたしでも、ここから20カウントであのリングに辿り着くのは不可能……
   フッ、将軍ともあろうものが、いっぱい食わされたな」

将軍は自分が試合形式上、敗北したと認識した。
もっとも今から戻れば永野の首をあげることはたやすいが、無粋だと将軍は考えた。

将軍「クックク…、本日のところは見逃してやろう。車田たち以外にも、存外に楽しめる輩はいるようだ」
そう言って、ふと将軍は遠方に目をやった。陸地ではなく、さらに沖に。
そこにはいくつもの黒煙をたちのぼらせた、“ゴッドハンド軍第三艦隊”の無惨な姿。
そのなかで、将軍は見たのだった。
本来、動く戦闘要塞であるはずの巨大空母“エリア88”が、何か別の用途の存在に変形していく光景を。
常人には不可解な変改を、将軍はその正体を見破った。
将軍「ホウ…、人為的に闘場を編み上げるとは……、なかなか面白い奴があそこにはいるようだな」
不条理ともいえる、その光景に、将軍は同類の匂いを感じ取った。
将軍「つくづく楽しませてくれる……、ここまで来たのも何かの縁。行くか、あの闘場を創りあげた張本人に挨拶をしに、な…」

将軍は、かつて“エリア88”であった戦場に向かって、飛行を開始した。
51作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 23:38:35 ID:XkUFgOvm0
ゆで大将軍VS福地の不条理対決かよ(゚Д゚≡゚Д゚)
さすがに格が違いすぎるだろ。次こそ氏ねるぞ。福地蝶逃げてw
52作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 23:39:47 ID:vZ7dJ+Pk0
( д)  ゜ ゜
ゆーでーがーきーたー!!
あいつを倒しに来やがったー!!
永野GJ!!
53作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 07:47:38 ID:m1t6LqoWO
福地VSゆで・・・ワクワク
54分断(91/180):2005/04/24(日) 10:12:58 ID:AR5j1kXg0
>>25 前スレ>>536

今井の溶かし開けた大穴から、透明な風が吹き込んだ。
激戦に散った芝生の細かい緑が、センターラインを挟んで居並んだ両チームのあいだを軽やかに行き過ぎた。
二つの陣営はサッカー経験者を前面に押し出し、また戦闘に特化した者達は眼光で火花を散らしあう。
これから起こることは、ボクシングで例えればノーガードの凄まじい打ち合い。
そう、素人である観客達にすら予期させる、そんな剣呑な雰囲気に

ピ――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!

開始のホイッスルが鳴り響く。
後半は、ガンガンボールでの開始であった。
まずは、自陣中盤に村枝・土塚・樋口のサッカー経験者を下げてパス回しがされる。
カムイと雷句は、柴田と貞本という、味方なんだか敵なんだか分からない者達を抑えつつ、敵陣よりの位置で待機。
そんなサッカー的には定石でも、妙に穏やかな流れで、観客達に少しの拍子抜けを感じさせるガンガンチームに対し
えなりチームもまた動く。
大和田・X仮面・許斐・村田というサッカー及び球技経験者に車田を加えた重量級の攻撃陣が怒涛となってガンガン陣地に押し寄せたのだ。
「きたわね」
自陣最後尾で、仲間達の背中を見ながら留美子が呟く。
「……」
ガンガンサッカー漫画家陣は悠然と待ち受ける。
やがて来た敵たちに、神速のパスワークでけっしてボールを渡さず。
翻弄される彼等が、丁度、カムイたちと村枝たちに挟まれた場所でおたつく一瞬の隙。
「作戦コード1031……いくか」
カムイが、静かに指を立てた。
揃えた人差し指と中指に、集束してゆく闘気の光。
背後のそれに車田が気付くのと、カムイが指をふるったのはほぼ同時。
「危ない!! みんな飛べ―――――っ!!!」
大和田・X仮面・許斐・村田が跳躍し、しかし、叫んだ車田一人が逃げ遅れる。
そしてその目の前で炸裂する超斬撃。
グラウンドに長大な亀裂が入り、次の瞬間には、真っ二つにひき裂かれた大地が千尋の谷を刻む。
「こ、これは……」
55分断(92/180):2005/04/24(日) 10:23:55 ID:AR5j1kXg0
着地したえなり攻撃陣が、振り向いた先の光景に目を見開いた。
センターライン近くで、えなり陣地とガンガン陣地が底無しの谷により完全に分断されているのだ。
これでは、行くことは出来ても、引くことが出来ない。
「車田先生……!」
負傷した今井や、役立たずのあんど、最後の砦藤崎・岸本を除けば、ただ一人自陣に残ったことになる黄金聖闘士の背中を見つめることしかできない仲間たち。
いったいガンガンチームは、この状況をサッカーにどう利用しようというのか。


「……他の者に飛べと言っておきながら自分は飛ばないとは……車田正美ともあろうものが、跳躍力に自信が無いわけでもあるまいに」
向き合うカムイが相手に疑問を投げかける。
「―――フッ 俺まで飛んでいたら、ジャンプ中に第二撃を喰らい、攻撃陣は全滅していただろうからな」
風に前髪を晒しながら世界一「フッ」が似合う漫画家が応える。
「なるほど」
確かに、見てのとおり、藤原カムイの闘気の力は、すでに天変地異レベルにある。
大和田やX仮面はいざしらず、許斐や村田といったスポーツ漫画家が、無防備でその追い討ちを喰らえば一撃でやられてしまう可能性の方が高い。
「しかし―――後悔しますよ」
カムイの左に、指をゴキゴキと鳴らしながらUMA子が現れ。
右には、瞳を狂気に濁らせた貞本が現れる。
ガンガン最強の一角である女傑と暴走まっさかり28歳。
その手綱が、今はじめて緩められたのだ。
そして藤原カムイ。
異様にして強大なる包囲網に、怖じぬ車田のこめかみにも、一筋の汗が伝う。


「ど、どうしましょう!?」
うろたえる村田の肩に、X仮面の手が置かれる。
「落ち着け。ボールはグラウンドの“こちら側”にあるのだ。これは本質好機でもある」
「し、しかし車田先生が……!!」
振り向けば、谷の向こう側で、車田が三人の超人に今にも囲まれんとしている。
「フン、案ずるな。奴がそんな簡単にやられるようなタマか? それより―――」
大和田が指さす先。四角いゴールを守護する者達。村枝・土塚・樋口・留美子・金田一―――
「あれをどう突破するか、まずはそれのみ集中せよ」
56作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 11:57:20 ID:dNtH0wh20
貞本がどう動くか読めないな
57作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 14:43:43 ID:0yIKR/Sj0
いつの間にか復活してたのか、X仮面。
58加速する決戦(93/180):2005/04/24(日) 17:13:00 ID:RB0VIcO90
「しねよお、おっちゃんよおぉぉ」
狂気の28歳が、エヴァンゲリオン初号機をリフトオフ。
紫色の巨人が、プログレッシブナイフで車田をはるか高い位置から貫いた。
しかし、次の瞬間、切り裂かれた車田の姿が消える。
――残像!!
気づいたときには、もう車田は巨大なる人造人間の、さらに頭上の宙を舞っていた。
「早まるな、ここを死に場所とするのは…むしろおまえたちの方かもしれんぞ―――っ!!」
華麗に身を翻した車田が、初号機の無防備な後頭部に向かって、蹴りを繰り出した。
大地をも割る聖闘士の蹴り、たとえATフィールドといえども砕けない保証はない。
ガシッ!!
「――UMA子!!」
直撃の寸前、間に割って入ったUMA子が、相手のふくらはぎを蹴り上げる形で、車田の蹴りを止めていた。
「アイスボンバ――――ッ!!」
「くっ!!」
無数の氷塊が流星群のように、車田を襲った。
空中で交錯し、両者同時に着地。と、車田が膝をついた。
「くっ…UMA子の凍気によって膝に凍傷を受けたか…」
凍気に対して極めて高い耐性を持つ黄金聖衣が見事に凍りついていた。恐るべき、ガンガン最強のナマモノ…もとい女傑。
「右手からイオナズン、左手からベギラゴン…、閃光爆裂…」
「!」
背後から魔法力の集中が伝わり、カムイの魔法が完成したことを車田に教えた。

「 イ オ ラ ゴ ン !!! 」

            ド  ギ  ュ  ゴ  オ  ン  ――――――― !!!!

目もくらむ閃光と爆裂がほとばしり、緑の芝が千切れて爆風に散った。
59加速する決戦(94/180):2005/04/24(日) 17:14:45 ID:RB0VIcO90
「三者同時に必殺技を放つトライアングルアタック! いかに車田正美でもこいつはひとたまりも無いじゃけんのう!!」
UMA子が濃い顔で、ぐふふ、とうなるような笑い声を低く響かせる。
「いや、そうでもないようだ…」
煙が晴れると、そこには予想通りというべきか、五体満足な車田が立っている。
だが、多少は傷を負っていた。浅手ではあるが。緑の芝に、血が一滴、二滴と落ちる。
「さすがはガンガンの精鋭…三人の合わさったパワーはあなどりがたいものよ…」
手の甲でこめかみから流れる血をぬぐう車田。それを見て、カムイは苦笑する。
「やはり並大抵の防御力ではないか…だが、このまま三人で攻め続ければ勝てない相手ではない」
カムイたち三者は、再び、車田に殺到する。
だが、車田は棒立ちのまま、何の動きも見せない。
「どうした車田!! もはや観念したか!!」
三方向から、一斉にカムイたちが襲い来る瞬間。
車田がクワッと両目を見開いた。ゆで将軍と戦った時、自ら潰したはずの目である。
「うっ!! ま…まて、これ以上、車田に近づくな!!」
開眼の刹那、車田の小宇宙が爆発的に膨れ上がったのを感知した、カムイが叫ぶ。
しかし、時すでに遅し。すべては、あまりに遅きに失した。
「なにい!! こ…これは――――――っ!!」

      ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 

カムイたち三人、その周囲の景色が一変していた。
そこには、緑のフィールドも、会場の屋根も、観客の姿も、そして自分たち以外の敵味方のあらゆる選手の姿さえもが忽然と消えていた。
かわりに今、カムイたち三人の視界にはてしなく広がっているもの。
それは、巨大な曼荼羅陣であった――!!

     「     車田正美 最大の奥義!!  

   
          天   舞   宝   輪   !!!! 」
60加速する決戦(95/180):2005/04/24(日) 17:15:55 ID:RB0VIcO90
「すでに知っているように、天舞宝輪は攻防一体の戦陣!!
 この天舞宝輪にかかった以上、もはやおまえたちは攻めることも逃げることも不可能だ!!」
カムイたちは、自分たちが一転して、かつてない危機に陥ったことを知った。
カムイともあろうものが、車田正美の持つ、この無敵奥義の存在を完全に失念していたのだ。
個々の実力差を数による優位で補おうとしたことが、ここにきて完全に裏目に出てしまう形となった。
「むうう…攻めることも逃げることも不可能だと…
われわれは完全に車田の術中にはまってしまったのか…、し…しかし、このままでは……」
このままでは、自分たちに勝機がないことを知り、カムイは蒼白の顔から滝のような汗をしたたらせた。
「そしてカムイよ。この天舞宝輪の力が、今から貴様らの五感を断つ!!」

         カ  カ  カ  ア ッ ―――――――――― !!!!

「 第 一 感  剥  奪  !! 」

車田が腕を振るった瞬間、闇の中に光帯が煌く。
まばゆい光に包まれたカムイたちが、そろって天空高く吹き飛ばされた。



さて一方、視点を変えてガンサン陣地。
「全員、敵DFをブロック! 村田の走るルートを開けろ!」
ここまで来れば、もう隠す必要はなかった。
前半、唯一の得点をえなりチームにもたらした、村田の爆走。
三点という大差をくつがえすためには、速攻がなによりも尊ばれた。
大和田の指示が飛ぶが早いか、えなりオフェンス陣は風のように動いた。
大和田が土塚を、X仮面が留美子を、許斐が樋口を、それぞれ抑えるように。
まるで、本来の攻撃側・防御側が入れ替わったような動き。文字通り、彼らは道をこじ開けた。
61加速する決戦(96/180):2005/04/24(日) 17:17:33 ID:RB0VIcO90
「…これだけブロックがあれば、走れるルートは…」
アイシールド越しに、村田の目が素早くルートを割り出す。分析完了の瞬間には、最初の一歩を踏み切っていた。
その動きは、まさしく稲妻。急ブレーキと爆走の往復ビンタで、無人の野を行くようにえガンサン陣地をかけぬけていく。
師匠である稲垣のように洗練されたステップワークとはまるで違い、練習量にあかせた強引な加減速。これもチェンジオブペースにはちがいない。
(絶対に逆転して、えなりチームの人たちを決勝に連れていく!!)
あとを託された村田は、懸命に走る。しかし、そこに立ちふさがる影。金田一ではない、もうひとつの防御の要。
ボランチ――“舵取り”という意味の、ディフェンシブハーフ。いわばDFの起点。
それを任されているのは、サンデー最高のサッカー漫画家・村枝賢一。

         Mulaeda   V.S.   Mulata

「来る!! デビルバットゴースト…!!」
樋口が村枝に警告を発する。言われるまでもなく、村枝はそれに対し、全神経を集中させていた。
(その走りは確かにすげえよ。超スピードのまっすぐ爆走から、0秒で急カーブしてぶっちぎってくる)
思考は一瞬、村枝が大きく一歩を踏み出し、一気に前に出た。
「うあ、もう来た! この圧力…!」
女の子なみの小兵である村田にとって、長身の村枝から感じるプレッシャーは巨人にも等しかった。
「もう、ここで曲がらないと…」
デビルバットゴースト発動。
刹那、村田は光の亡霊と化し、村枝のディフェンスを突き抜ける。
しかし、次の瞬間、村田の視界に映ったものは、金田一の守るゴールではなく。
村田の見る世界を真っ二つに切り裂くように、伸びた、腕――!!
巨大な津波のごとき圧力が、全てを暗黒に閉ざすように、村田の体を飲み込んだ。
そして、今、村田の目に映るものはゴールマウスではなく、果てしなく高い天井。
彼は抜き去るどころか、逆に仰向けに倒されてしまったのだ。
デビルバットゴースト、敗北の瞬間だった。
62加速する決戦(97/180):2005/04/24(日) 17:19:18 ID:RB0VIcO90
「そんな…バカ…な」
デビルバットゴーストが通じない――現状、最高の突破策があっけなく潰えた。
その事実に、えなりチームに動揺と戦慄は走る。
青天――アメフト用語で、仰向けに倒されることを指すが、これはアメフト選手にとっては最悪の糞屈辱。
前半最大の殊勲者は、一転して敗北者となって、呆然と天を見つめていた。
その視界に、ボールを奪取した、村枝の姿が映る。
(なんてタックルだ…まるで稲垣に倒されたみたいに……この人、本当にサッカー選手!?)
サッカー選手が、ここまで腕の使い方が上手いなど、村田は聞いたこともなかった。
「南米のサッカーはな…腕でやるんだよ。
 トニカク食うためにのし上がろうとする貪欲さが、反則ギリギリまで腕を使わせるんだ」
絶対無敵のはずの必殺技を破り、それが当然とばかりに村枝は言い放った。
「この試合の勝敗は――もう決まった」
村枝が、大きくボールを蹴り、クリアした。
ボールはフィールド中央を分断した千尋の谷を悠々と越え、えなり陣地の空に軌跡を描く。
「いまだ、行け――――っ!!」
村枝の指示、その叫びが空中に消える間もなく、二つの影が空中を走り、ボールに追いついた。
ひとつは、『ゴウ・シュドルク』によって加速し、空中疾走形態になった雷句。
もうひとつは、猫又『雲母(きらら)』にまたがった留美子であった。
このとき、えなりチームの誰もが、初めてガンサンの真意を理解した。
彼らは、点差を守りきろうなどとハナから考えていない。
一点とられても、三点とりかえす、超攻撃型の作戦。
フィールドを分断したのは、このカウンターを仕掛けるためだったのだ。
してやったり、と会心の笑みが、村枝の顔に浮かんでいた。

「ウオオ、行くぞ留美子殿!!」
「ええ、追加点をとりに!リック君!!」
空中で雷句がボールをトラップし、えなり陣地に降り立つ。ついで留美子も。
後半戦は、序盤から予断を許さぬ状況となっていた。
63作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 20:03:37 ID:4f8nNCg80
天舞宝輪は反則すぎだろ。味方の技じゃねえw
64作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 20:12:05 ID:J4qZdz1H0
エヴァ召喚の時点で反則だw
いやあのっけからドキドキさせるべ

>57
前スレ359でゾンビのように甦ってるよ
65作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 22:10:28 ID:Mgqp7l500
後半戦だよな、もう後半戦なんだよなァ。
YOOI_| ̄|○
66作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 22:24:45 ID:4f8nNCg80
YOO1は3レスもあれば2点ぐらいは入れそうな気がする
純粋なサッカー対決だけじゃ何十レスも引っぱれんし、活躍させるに尺が足りないとはあまり思わないけどな
67作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 22:35:27 ID:f6B2JHng0
>>66
本来無茶な数字だがYOO1だとなぜか納得できる俺ガイル>3レス2点
68作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 23:52:44 ID:SAj+vXm50
サッカーで天舞宝輪・・・サッカーで天舞宝輪て・・・

ステキすぎだよ畜生め!!!
69ベストプレイス・ハンターズ:2005/04/26(火) 13:48:03 ID:ZZDsTIld0
(22部247)
後半開始後、サッカーの大熱戦に沸き上がる矢吹艦。その影に潜む不穏な影・・・。

筆吉「データを見つけたぞ柳田。“あれ”の小サイズのものは全て、
  コロッセオに輸送が済んでいるようだ。警備はそこそこだね」
柳田「ほう、矢吹艦データベースのハッキングごくろう筆吉。
  こちらも偽造IDカードの準備ができたぞ、覚悟はいいか?」
東 「いいわけないでしょ!!なんでこんな事に・・・。
  大体矢吹様が既にお戻りになられているのなら、こんなコソコソと、
  身分を隠して地下に潜る必要もないじゃない!馬鹿馬鹿しい」
柳田「甘いな、まゆみ殿。あの矢吹様は影武者の可能性もあるのだぞ?
  それに私と筆吉はどの道お尋ね者。一蓮托生、諦めませい」
東 「あたしはとばっちりじゃないのよ、馬鹿ぁ!!」

矢吹艦の階層に網の目の如く広がる、薄暗い巨大ダクトの中。
評議会黒軍基地を命からがら脱出した、柳田・筆吉・東。
いわゆる『空想科学コンビ+1』は、再起をはかるため行動を開始していた。
修理した円盤を矢吹艦空港の端に停め、観光客に変装して艦に入る。
職場である「久米田研究所(矢吹艦分室/現在は全機能が移り本部扱い)」から、
見知った関係者用の通路に潜入し、何やら企んでいる様子。

元々C決勝戦やその後の素行が悪すぎて収監されていた柳田。
このくらいの悪巧みはお手のものである。
それに黙々とつきあう相方の筆吉は、何を考えているのかわからない。
しかし東はたまたま柳田と同じ収容所にいただけで、
本来こいつらにつきあう義理はないのだが・・・まあ運がないと言うべきか。

柳田「コロッセオ地下にあるらしい『スーパーメカ』の回収に向かうぞ!
  あれは元々私の発明品だからな。島の運営も終えたし矢吹殿に義理は通した。
  メカを手中に納め、建設予定の新天地【秘密基地】に置く攻防用兵器とする!
  そしてはびこる悪党漫画家を倒し、私は世界の英雄となるのだ!わはははは」
久米田(上司)への義理はないのか柳田理科雄。そして彼らは再び姿を消した。
70作者の都合により名無しです:2005/04/26(火) 13:56:32 ID:ZZDsTIld0
表現被り。一行目、
>その裏に潜む不穏な影
とでも脳内変換しておいてください・・・こんなんばっかやぁ

あと矢吹様、黒猫アニメ化って噂ですが本当ですか先生
71“異”次元の戰い!!!(98/180):2005/04/26(火) 23:43:47 ID:uNHbFT5v0
>>60

アッパーカットを食らったような軌跡で上空に吹き飛んだガンガン三人衆は、やがて勢いを失い、地表に叩きつけられた。
山脈のような貞本の横倒しと、その向こうに落下する人間サイズ二人。
その累々たる屍のような姿は、あとはもう一方的に六感が搾取されるばかりの展開が待ち受けるかと思わせるに充分なもの。
しかしなぜかその流麗な眉をひそめ、車田正美は警戒を新たにする。
「むう……まさかあれに反応を間に合わせるとは……!」
その言葉と同時に、カムイと柴田が、貞本の巨体の後ろで何事もなかったかのように起き上がる。
「……聞ける、喋れる、見れる、嗅げる、感じる―――――けんのおぉぉぉっ!!!」
両手をワキワキさせながら元気ハツラツの柴田。
「???バカな……黄金五聖人車田正美が奥義と呼ぶほどの必殺技……しくじりなどあるハズが……???」
こちらは、覚悟していた分だけいぶかしみもまた大きいカムイ。だが彼も、顔をあげ見た先の光景に、その理由をすぐに知ることになる。
そこには天舞宝輪初撃の威力が、赤く輝くフィールドに阻まれ、いまだ、わだかまり続けていたのだ。
「これは―――『ATフィールド(絶対恐怖領域)』ッ!!!! ―――クッションのように!
 し……しかし防御してくれているのは仲間意識ゆえではない……黄金聖闘士の光速に対し、俺の防御命令が速度的に間に合うハズもないッ!
 なのに『貞本義行』ッ! 防御してくれているッ!」

「 ぎ ゃ ――――――― す っ !!! 」

吼える貞本の瞳は、欲情と恐怖に濁りきっている。
「そうか―――『貞本』がじぶんを守るためだッ!『貞本』は天舞宝輪必殺の威力を本能で先読みし、怯えによって防いだのだッ!」
「いやだよ……かんじれなくなるなんて……きもちよくなれなくなるなんていやだよ……!」
聞けばやはりな動機。
しかしそれに、すんでのところで救われたわけだ。
「―――フッ、面白い。 天舞宝輪は確かに“威力”を伝える技では無いが……それでどこまで耐えられるか、試させてもらうぞっ!!!」
しかし車田もまた、よほどの自信があるのか、余裕の態度を崩さない。
カムイたちが、慌てたように守りの構えに入った。
数珠が大きく振るわれる。

「――― 第 二 感 剥 奪 !! 」
72“異”次元の戰い!!!(99/180):2005/04/26(火) 23:47:13 ID:uNHbFT5v0
膨大な輝きがふたたび走り、オレンジ色の障壁が過負荷によって軋みをあげる。
二撃目、三人分、つまり六人分のエネルギーを受けて、早くも、ATフィールドは限界に近づきつつあった。
貞本の顎がカチカチと鳴りだす。
「いやだ……いやだよ……こわれちゃうよう……!」
本能レベルでの欲求が全てである今の貞本にとって、五感の喪失は死の恐怖に勝るものだ。
血管を浮かしながら、押さえ込むようにかざした貞本の両の手の平がぶるぶると震える。
だがカムイ、柴田は、共に、それを助けるどころか、貞本に守られた位置から動くことさえできない。

「――― 第 三 感

「 !!!! い や だ あ あ あ あ ぁ ぁ あ あ ぁ ぁ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ あ あ っ !!!! 」

そして三度振られようとした数珠の音に、貞本の忍耐心が脆くも弾け―――――


   ――――― 反 ・ 転 し た !!!!


絶叫とともにカエルのような格好で飛び上がる貞本。
車田はそれを冷徹に見上げ、その自棄とも言えるような行動を迎え撃とうと

   ゾ ク ク ッ ッ !!!!

しかし、デッサンのいかれた貞本の狂気を示す表情に車田はまさかの回避行動を取らされる。
地響きと共に巨躯が降り立ち。さらにそのまま四つん這いの蜘蛛のような動きで、貞本は間合いを詰めようとシャカシャカ動く。
わけのわからぬ悪寒に従い、獣じみた動作と吐息で迫る貞本を、なんとか引き離そうとする車田。
背中こそ見せないものの、犬のうんこを嫌がる小学生のような車田の逃げっぷりに、最初、カムイたちは、何が起こっているのか、さっぱり分からなかった。

「もういいやもういいやもういいやもういいやもういいや……このおっちゃんでも ……… お と こ の ひ と で も ……… !!!! 」

聞こえた。貞本の独り言。
その意味するところを遅れて理解し、カムイの背筋にも怖気が走る。
73“異”次元の戰い!!!(100/180):2005/04/26(火) 23:49:54 ID:uNHbFT5v0
「そ、そうか。あいつ……!」
あのままの流れで守勢一方に回っていれば、三人の六感は、結局、蹂躙されるしかなかったであろう。
しかしその絶望的ともいえる窮地こそが、貞本の動物的本能を追い込み。結果として、新たな性癖を開花させたのだ。
おそらく、『どうせ奪われるならその前に気持ちよく!』『男とか女とかそんなのにこだわっていられない!』という、開き直りにも似た精神の反転攻勢。
そして皮肉にも、その必死さ変態さこそが、あの車田正美をして怯ませ、逃げに回らせている原因なのだ。
ゴクリ……
チャンスなのに、車田に対する同情的気分も押さえられないカムイ。
たしかに車田は、女顔というか睫毛とかも長くていーい男ではあるが……
そして、ふと、見れば、傍らではUMA子がぶるぶると肩を震わせている。
「――――ハッ!」
そこでカムイはもうひとつの事実に思い至る。
この危機的状況においてすら、柴田は貞本に『女』として見てもらえなかった。
いわば世界が滅亡し、二人きりの状況になってすら『お前なんか要らん』と言われるような屈辱の評価。
同じ男として、貞本の気持ちは痛いほどよく分かるが。しかし柴田にも、なんら罪や落ち度があったわけではない。
「あ、亜美……」
ブ厚い肩肉に手をおき、慰めようとするカムイ。、
ところが真相は、そんなカムイの普通の思いやりを超えて遥か上、高々と全てを飛び越えた上空にあった。
「う、う、う……」
(ラ、ラ、ラ……?)

「―――― ウ マ 子 ☆ 美 ジ ョ ――――――――― ン !!!!! 」

怒号と共に胸を張り、両のマナコをカッと見開く柴田に弾き飛ばされ、カムイがあわれ尻餅をつく。
「―――な?―――な?」
混乱したまま、ぽかんと口を開けたカムイの前で、柴田は貞本×車田をジースト見つめ続ける。
その脳中で展開される8○1的妄想は、彼女の心の中の劇場で飛躍と邪推を繰り返し。
どこをどうすればそうなるのかは分からないが、とにかく↓かく、なった。
74“異”次元の戰い!!!(101/180):2005/04/26(火) 23:54:31 ID:uNHbFT5v0

貞本「車田さーん(はあと) 日本の夜明けだよん……」
車田「アハハー 目にしみんなあ」

薔薇の花と、死んだはずの田丸浩史の大群を背負って、褌一丁で絡み合う車田と貞本(の妄想)。
その脳内光景は、柴田亜美のけっして頑丈ではない堪忍袋の緒をあっという間に千切れさせる。


「 人の男にまた手ェ出しとんのか こ の 御 法 度 野 郎 ――――――― ッ ッ !!!!! 」


腰を落とし跳躍、一瞬で車田と貞本の間に割って入り。車田のお株を奪うような強烈な鉄拳の威力を真上に放つ。
星々の、砕け散る様。

「 ぐ ぎ ゃ ぴ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 っ !!!!(貞本)」

車田・貞本、二人ともが吹き飛んでいるが、その破壊エネルギーの振り分けは車田3:貞本7くらい。
柴田の言う“自分の男”とは、ひょっとして車田を指すのであろうかー?
(いやいやそんなことより)
戦場の様相を見るととてもそうは思えないが、いまだ天舞宝輪の効力は継続中である。
この、二人の異次元人の攻め手により作られた僅かな隙を生かし
色んな意味での地獄絵図から脱する為に、いまこそガンガンチームのリーダーとして動くべき時だ。
(し、しかしどうする!? どうすればこの攻防一体の戦陣を崩せるのだ……!?)
本来的に天舞宝輪は、ATフィールドでおこなうような防御行動はともかく、車田に対する攻撃や逃亡は絶対不可能な技である。
なのにどこからともなく謎のパワーを持ってきて、自由自在に動けたりする貞本や柴田がむしろ異常・特例なのであって、事実、自分にはそんな真似はできていない。
(いや、その出自はともかく“出力”さえあれば、天舞宝輪もけっして不可侵というわけではないということだ……つまり)
車田風に言えば、みずからの小宇宙を高め、第七・第八の感覚に目覚めることで、漫画家は天舞宝輪すら超克することが理論的には可能ということだ。
(しかし……)
仮にもあの車田正美が奥義と呼ぶ技、ビッグ・バンクラスの出力を持ってせねば、これを打ち破ることなど到底かなわないだろう。
(どうしたら……どうやったらそんな力がひねり出せる!?)

焦るカムイの見守る中で、貞本が車田にどばちこーんと弾き飛ばされた……
75作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 00:20:37 ID:G5WVtH1m0
 !? (゚□゚) ←カムイ

大真面目なド変態バトルは反則だぁ
ハライテェー
76作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 01:10:50 ID:3yGsIOS60
貞元の凋落っぷりに泣き笑いw
パワーうpはしてるけどさぁ。なんつーかwwwwハゲワロスww
77作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 01:54:04 ID:RHBbjXG/0
うわ、野郎男に目覚めやがったwwwww
まあでも、夕日子を愛してるんだよな? そうだと言ってよ貞本。
78作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 07:41:48 ID:ULFFyDiG0
貞本…心の異次元から帰ってこれんのかなあ…
79作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 12:32:18 ID:ojigt2VV0
というか貞本他一部キャラはそもそもの性格変化の理由が未だに・・・

もしかして明かされる日は来ないのか?
80作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 15:00:35 ID:3MUpFrhGO
貞本は一応書くつもりある。展開によっては流動的に変わってくけども。
書かなくともそれはそれで面白い。
81作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 15:03:34 ID:QwEYwor40
貞本じゃあ、仕方がないな。
82敵陣突入(102/180):2005/04/27(水) 16:18:28 ID:xSpz3Mfb0
>>62
フィールドを両断した谷によって、ガンサン陣地に大半のメンバーを置き去りにされたえなりチーム。
えなり陣地には、守りの要である藤崎と岸本以外は、まともな戦力がいない状態。
このチャンスに追加点を得ようと、雷句と留美子が走る。
「ゴールは留美子殿に任せる!」
「――分かったわ、リック君」
二手に分かれる。留美子は、岸本の守るゴールへ。
そして、雷句は……今井のもとへ。
雷句は、今井こそ倒すべき最優先目標だと認識していた。ゆえに、ゴールを留美子に任せ、自分は今井の首を獲りにいった。
雷句の狙いに気づいた今井が、苦笑するように、その細い目をさらに糸のように鋭くした。
「――ザケルガ!!」
レーザーのように束ねられた雷が、一直線に今井を襲う。
かわす動きすら見せないで笑う、今井。
直撃する寸前、しかしそれは割り込んできた影に弾き飛ばされた。
「ウヌ!?」
「もう、あと一回を除いて余計な戦いはしたくないんでね。頼んだよ♥」
「――フン、人使いの荒い男じゃのう」
雷句と今井の間に割って入ったのは、『アールマティ』と一体化した、藤崎であった。
「まあよい。雷句誠、前半の借りをまとめて返させてもらうぞ」
「――お主になど用はない、が、邪魔するというのであれば容赦はせぬ!!」
「ほざくではないわ、若造が!!」
雷句と藤崎、最後の戦いが始まった。


一方、留美子もまた、己の敵と対峙していた。
黒瞳に映るのは、ゴールバーに地面と逆さまに立つ岸本の姿だ。
「――また会ったな、姉ちゃん」
「――退け、といっても聞かないわよね」
「分かってるなら聞くなよ。お目当ての相手を奪われちまってタイクツしてたところだ。――楽しませてくれよ、アンタも相当“やる”んだろ?」
悪意と殺意に歪む岸本の顔を、生き物のように“呪印”が蠢く。
そのあまりの醜悪さに、我が身のもうひとつの末路を見出し、留美子は怖気に震えた。
83敵陣突入(103/180):2005/04/27(水) 16:19:50 ID:xSpz3Mfb0
逆さまに立ったままの岸本が、口から粘液の塊のようなものを吐き出した。
両手でこねてから投げつけると、それらは一瞬で視界いっぱいに広がり、留美子に牙をむいた。
「――忍法・蜘蛛巣開!!」
蜘蛛の巣のように広がった糸が、留美子の四肢にからみついた。
「ぐっ!!」
「このまま繭にしてやるよ!!」
留美子の起伏に富んだ肢体を、おぞましい粘糸が包み込んでいく。
屈強な男顔負けの腕力を持つ留美子だが、その糸は柔軟性と、並外れた頑強さを兼ね備え、容易に切れようとしなかった。
(――糸が吸着してくる…この粘着性…
おそらく、彼の特殊な体液に“気”――彼は“チャクラ”と呼んでいたかしら――を混ぜて作ったもの……
しかも…手元から離してなおこの強度…チャクラが糸の中で永続的に流れている。術のレベルの高さが現実離れしているわ………)
岸本の技術の高さに、留美子は驚嘆する。とても、若手漫画家のレベルではない。
やはり、岸本のあらゆる潜在能力は、“呪印”によって完全に開花しているのだった。
(――でも!)
気を集中し、留美子が縛られていた両手を一閃した。
「!!なに!?」
象2頭が引っ張り合っても切れない蜘蛛糸を、あっさりと素手で断ち切った留美子に、岸本は驚きを禁じえない。
「チャクラ…と言ったかしら。でも、“気”と似たようなエネルギーである以上、“気”を流し込むことで、この糸は破壊できるわ」
中国拳法の構えをとり、留美子が崩拳と呼ばれる中段突きを放った。
(ヤバい…!)
写輪眼をもってすら、反応が遅れた。カムイと互角――それ以上かも知れない速さだった。
ゴール脇のフェンスをぶち破り、観客席にたたきこまれた。
砂煙の向こうに岸本が消えたのを見ても、留美子はボールを無人のゴールに蹴りいれようとはしなかった。
(…どういうこと!?)
砂の防御でもなければ、前半のカムイ戦で見せた“八卦掌回天”を使う暇もなかったはず。
にも関わらず、直撃を喰らったはずの岸本は、平然と立ち上がり、煙の奥から悠然と姿を現した。
84作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 17:04:46 ID:QwEYwor40
アールマティってご神像とかいう奴だっけ。
スタンドみたいなの?それともナノマシン?

なんかちゃんと試合になってるのがすごいなサッカー編
85さよなら?久米田先生:2005/04/28(木) 05:47:46 ID:kFaVkxVD0
>>30 前スレ455・549)


     恋が始まるには、

     ほんの少しの

     希望があれば十分です。  


     スタンダール(1783〜1842 仏)


 「この公園、冬なのに桜が咲いているのね。素敵!」
頬をほんのり染め、丈の短いスカートをなびかせ桜公園を歩く美少女。
誰あろう、妖魔王十二使徒の一≪夢魔≫河下水希であった。

彼女は使徒仲間であり親友である小林ゆきと共に、
麻宮に命じられた新しい任務、『不死身属性持ってそうなギャグ作家の拉致』を遂行していた。
ゆきは現在別働で、複数名の漫画家を捕捉しアジト・見えない学校に向かっている。
水希はひとり、新たなターゲットを求めて矢吹艦中央区を捜索していた。

―――桜舞う美しき公園の一角で、“オーガ”と“修羅”の果て無き“死合”が、
行われている事を彼女は知らない。桜に酔ったかのように、
艶っぽく煽情的な表情で、彼女は幻想的な薄桃色のシャワーを浴びていた。
ふと。
水希は桜の木の一本に、不思議な飾り物を見つける。

 太く長い荒縄。枝の下に転がった丸椅子。
 くくられた縄の輪の中に首を収めし、白衣姿の青白男。
 ぶらーりぶらりと桜に混じり、大事な命を散らしてる。
86さよなら?久米田先生:2005/04/28(木) 05:48:45 ID:kFaVkxVD0

 「 ―――――― い け ま せ ん !! 命を粗末にしてはいけませんっ!!」

顔面蒼白になった水希が、空中50センチの時点にぶらさがる、
男の身体を真下へ引っ張る。男の首に巻かれた縄が、
ぎゅっと派手に絞まってしまう。男は声にならない声でジタバタと暴れ出し、
そこで突然ロープが切れて2人はドサリと地面に落下。
男は一命を取りとめる。しかし男は地に伏せ咳き込みながら、
不自然につやつやふさふさな髪の毛を手櫛で整え水希に向き直り――――

 「ゲホッ!ぜーぜー・・・  ・・・ 死 ん だ ら ど ー す る !? 」
 「・・・え?」

喉元を押さえながら怒りの声をぶちまけた。
同じく地面に倒れこんだ水希はキョトンとした顔で男と向き合う。
そう―――彼の名は、久米田康治。
弟子・畑が執務室から出たのをいい事に、ちゃっかり仕事場を抜け出し、
仕事をサボっていたのだった・・・でもなぜに首吊り敢行?
発作であろうか。心の弱い漫画家なのだろうか。
久米田はばつが悪そうに、視線を揺らしながら首に残ったロープをほどきながら。
 「 ―― また、死ねなかった・・・」
ごまかすように呟くが、特に効果はなかったり。

 「なぜ止めたりしたのですか。私はもう疲れました」と久米田。
 「死ぬ気、なかったんですよね☆」と水希。
 「死ぬ気まんま「ですよね〜」したよ!」二人の声が被る。

水希は突如立ち上がり、桜吹雪を浴びるように、
全身を思いきり広げて満面の笑顔を久米田に見せる。
 「――だってこんな素晴らしい冬だけど春の日に、
 自ら命を絶とうなんて人いるわけありません!春・・・それは始まりの季節。
 全てが生まれるこんな日に自ら命を絶つなんて、『桃色植田まさし』が許しませんよ」
87さよなら?久米田先生:2005/04/28(木) 05:51:11 ID:kFaVkxVD0
 「桃色植田まさし?」
怪訝な声を出す久米田。水希はロープの痕跡残る、桜の大木を仰ぎ見る。
 「この一番立派な桜の木のことですよ。私が名付けたんです、今」
やはり桜にアテらてたのか、潤んだ瞳で周囲の桜を指差す水希。
 「ちなみにあの木が桃色小林尽、あの木は桃色樹崎聖、あの木は桃色桜場コハル」
 「ビミョーに統一感がないのですけど。というかなぜまさし」
久米田のツッコミは、薄桃の風に流される。共通点は木偏だろうか。

 「そうだ、あなたのこと何て呼びましょう」
柔らかな微笑みを浮かべながら、久米田に笑いかける水希。
なんで俺こんなところでこんな電波ちゃんとくっちゃべってるの?
サボりの罰?と悩む久米田。水希は構わず、
 「桃色植田まさしにぶら下がっていたから・・・ 桃色おとぼけ課長!
 私、これからあなたのこと桃色課長って呼びます!!」と笑顔。
 「勝手に呼ぶなぁ!つうか元ネタじゃ係長だろうが、なんで台詞変更されてんだよ!」
 「じゃあ桃色スクールランブルの方がいいでしょうか?」
 「そういう問題じゃないだろうがぁー!」
 「だってかっこいいじゃないですかー」
お話にならなかった。

 「そんな、宇宙人を見るような目はよしてくださいよ〜」
ぽわぽわにっこり、久米田を見つめる水希。もしこれが久米田でなく椎名だったら、
とっくの昔にプロポーズしつつ将来の家族設計まで語っているであろう。
そんな魔性の夢魔フェロモンが、しかし久米田に通じるわけもなく。

 「これが同じ『漫画家』だとう!?
 嫌な世の中だ、本当に嫌な世の中だ―――

      絶 望 し た !!   こんな宇宙人を跋扈させる世の中に 絶 望 し た !!

                                            ・・・やっぱり死のう」
再びロープの先を輪っか状にしばり、桜の木(まさし)に引っかけた。
88さよなら?久米田先生:2005/04/28(木) 05:53:09 ID:kFaVkxVD0
久米田の鬱々とした態度とは対照的に、水希はどこまでも明るい。
 「何言ってるんですかぁ。世の中は希望に満ちあふれてるていますよ☆
 課長だって今、身長を伸ばそうとしていたんですよね。
 だいじょうぶです!さっきので5oは伸びましたよ、きっと!」
 「・・・はい?」
さしもの久米田も絶句する。何を言い出すのかこの乳尻ふともも娘。
 「漫画家に限らず、身長を伸ばしたがる人って多いですよねー。
 課長は身長を伸ばそうとする事以外で、何かシュミってあるの?」
いやあのそれはちょっと違うと思うんですけど〜と内心引きまくりの久米田。
しかし質問内容には興味を持ったらしく、
白衣のポケットから謎のトレカ風カードを取り出し水希に見せる。

 「漫画界を含めたあらゆる情報を収集し、飯の種にする事かな?
 趣味とは違うかもしれんがな。たとえば・・・このカードは複数名のイラストで、
 【三国志】の武将たちが描かれている。ゲームセンターの筐体に置いて使うものだ。
 カードのイラスト・・・これは当初あるひとりの有名な漫画家が、
 全キャラ書き下ろす予定だった。しかし、彼が描くにつれ発注先の会社は驚愕する。
 彼はキャラの書き分けができないのだ!彼なりに精一杯やったが、皆同じ顔。
 ついに会社の方が限界を悟り―――
 漫画家が所属する出版社の漫画家数名やイラストレーターを呼び込み、
 表向きクリエイターの合同企画って事でごまかす事になった。
 それがこのカードだ。・・・飯の種には使えずとも、やはりネタ集めはやめられんよ」

誇らしげに語る久米田は、桜色に照らされ普段より断然輝いて見えた。しかし、
 「かっこいいです!課長〜」
 「私が死んだら全データをネットの海に放流すべきか検討中だがな」
基本姿勢は変わらなかった。

ちなみにこの“有名な漫画家”、実は彼らと同じ公園にいるのだが、
この話を蒸し返すと怖そうな予感がするのでノーコメントである。
彼のトラウマ・連載デビュー作に触れた22部141みたく久米田研究所壊滅させかねないし。
それはともかく。
89さよなら?久米田先生:2005/04/28(木) 06:18:37 ID:kFaVkxVD0
 「そうだ、私課長の身長伸ばすの手伝いますよ。これもご縁ですから」
 「余計な事を考えるな!!首ぐらいひとりでくくるわ」
 「手伝わせてください課長!私、思い出したんです。
 漫画家や編集さんが、辛い事があるといつも身長を伸ばそうとする事を。
 私、課長には元気でいてほしいんです、だからお手伝いを」
 「それはもおええっちゅうの!!」

   物事を何でもネガティブにしかとれない 男   物事を何でもポジティブにしかとれない 女  

           ―― 出会ってはいけない2人が 出会ってしまった ――

 「私の事は放っといてくれ!!」
借金まみれの人生を強制的に背負わされた男は、
背中に哀愁を漂わせながらダッシュで桜公園から飛び出した。
 「待って課長ー、その情報網でぜひ私に力を貸してくれませんかぁ〜」
パタパタと頼りなげな足音で走り出し、久米田の後を追う水希。
埃のように舞い踊る、石畳の上の花びらを巻き込みながら。

              * * * * * * * * * *

桜公園とコロッセオを繋ぐ歩行者用通路。
そんな2人とすれ違う、ぞろぞろ歩く数名の漫画家達の列。
肉感的な中にも幼さを残した悪魔チックな美少女に追われる白衣の貧相な男の図を、
入れ違う彼らは目と耳で確認し、世の中色々あるなーと顔を見合わせた。
 「なんだか漫画みてえだな。ところで坊主、
 『あいつら』がいるのは本当にこっちでいんだろうな?」
坊主と呼ばれた長身の男は、手足に神経が通いきってない感じでもたつきながら、
呼んだ相手に首を縦に振り返答した。
 「ええ・・・見えるんです、桜並木と共に―――赤い彫像が。急ぎます!」

Cブロック代表【裏御伽チーム】。総大将・本宮とゆかいな“息子たち”。
憑依中の副将にわのの肉体で走り出す、主人公えなり2世。チームメンバー合流の時は近い。
90作者の都合により名無しです:2005/04/28(木) 06:25:50 ID:JgufGZx30
さっそくこのネタかw
てか、なんか萌えるぞ水希タン
91偽りの少女、深遠を眺める女。:2005/04/28(木) 14:21:36 ID:0HBTtAQl0
前スレ>>303その他

「じゃーんけーん……ぽん!」
 後半が始まったというのに、輪になってじゃんけんしてる連中が、漫画家専用席に居た。
「あかん、アイコや。もう一回な。じゃーんけーん!」
 輪を形成するのは、まっつー夫婦と漆原、それと魚屋とかホモとか旅景色連中。みずしなが音頭
をとっている。
「ぽん!」
 皆、パー。一人、小振りな握り拳を突き出した少女。木村夕日子である。
「あらら」
「つーわけで、買出しよろしゅうな木村〜」
 いい加減なんかツマミが欲しくなってきたのだが、誰も行きたくなかった為にこんなじゃんけんなど
をしていたのだ。じゃんけんの結果、買出し担当は夕日子に決まった。
「じゃあ、行ってくるわ」
 夕日子は席を立ち、各々の希望する食べ物の書かれた紙を握って、スタジアムの外へ出た。
 もし――この時、誰かが夕日子に付き添っていれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。

「みずしなさんとまっつーさんは、ビール……あすさんとこずえちゃんはウーロン茶……佐藤さんはジ
ュースと軟骨、漆原さんは日本酒、牧野さんはマグロ一匹……岩村さんは月刊さぶ……ってこれホモ
雑誌やん……サッカー見る気ないんか?」
 店の集まっている通路で、そんなことをぶつぶつ呟いていた夕日子。そこへ、一人の女性が近
づいてくる。
「もし、可愛らしいお嬢さん」
 その声に気付き、今まで下を向いていた夕日子は顔を上げる。すると、そこには、そこはかとなく気品
を漂わせる女性の姿があった。
「は、はい、なんでしょう」
「私、今サッカーが行われている競技場とやらに参りたいのですけど、何分久しぶりの外界なもので……
すっかり、道に迷ってしまったのです」
92偽りの少女、深遠を眺める女。:2005/04/28(木) 14:22:41 ID:0HBTtAQl0

 女性は、困ったような顔をして微かな笑みを浮かべながらそう言った。その表情からは、人間的な魅力が
溢れている。夕日子は一瞬見惚れた。
「あ、私でよければ案内します! でも、ここまで来たので買い物もしちゃいたいけど……でも、待たせるのも
悪いし……今行きましょ」
 夕日子が精一杯気を使って言葉を組み立てているのを見て、女性はまた僅かに笑う。
「いえいえ。そこまで急ぎではありませんし。私もお買い物を手伝わせていただきますよ」
「え? いえ、そんなん悪いです」
「こんな細腕でも、少しは荷物も持てますわ」

「私の目から見ますと、この店のお魚がこの中では一番鮮度が良好ですね」
「このビールの内部成分バランスが一番味覚に訴え掛ける気がします」
「この軟骨は、いい鶏から採ったものですわね。あくまで、この中では、ですが」
「この日本酒は、よい酒蔵で育まれたものでしょう」
 女性は、ものをじいと見て、次々とカゴに入れていった。夕日子はその目をそっと覗いた。
(この人……何か、違うものを見ている感じする)
 何か違和感があった。彼女の目は人のものとどこか違う。奥まで、見えている。そんな感じがした。
「夕日子さん、あの奥にある店など面白そうですよ」
「あっ、ハイ!」
 もはや、夕日子は完全に主導権を握られていた。

 
93偽りの少女、深遠を眺める女。:2005/04/28(木) 14:23:32 ID:0HBTtAQl0

 彼女に引っ張られて、気付くと、人のいない、薄暗い通りに入っていた。
 さすがに、夕日子も疑問を覚える。
「あの……もう大分、何もないんですけど……」
「私は、杉浦日向子……妖魔王様直属『十二使徒』の一人」
 ぞくり。夕日子は、空気が一変したのを感じ取った。
「欲しいのは、あなたではありません。貴女の奥に眠る、もう一人の――そう『不死』の貴方が欲しい」
「え……? もう一人、って何やの……!?」
 夕日子は、自分が木村太彦であることを、知らない。
「私には、見えるのです。あなたが、大変に愚かしい存在であることを。知らないのですか? 自分が
どれだけ恥ずかしい行為を幾度も繰り返しているのか」
 さらりと。しかし、確実に人の心に傷を負わせる発言。普段はそんなことを言う女性ではない。目的遂行の
為なら――鬼にもなる。
「あなたは生きることも死ぬこともできる。とはいえ、そのどちらも中途半端……真の死を知ることの出来ないあなたは、
果たして本当に生きていると言えるのでしょうかね」
「なんのこと……? なにをいっているのかわからない……!」
「わからないでしょうね。私と共に来れば、それを知ることが出来るかもしれない――と言えば、あなたはどうでしょうね」
 杉浦は、この場に似つかわしくない満面の笑みを浮かべた。
「貴女が愛する殿方は、今、どうしようもない状態となっているでしょう。それも、私と共に来れば、解決するかもしれませ
んわよ」
 夕日子は、ハッとして杉浦を見た。
「私には、見えるのです」
 夕日子は、ふらふらと前に出て、杉浦の手を握った。その目には、涙が溜まっていた。そして、杉浦は、片手で夕日子の
頭をさすり≪見えない学校≫へその姿を暗ました。
 
                    


                       ≪炎魂≫候補・木村太彦――捕獲。

94作者の都合により名無しです:2005/04/28(木) 14:44:38 ID:Q3O+oxPf0
すげー
色々動いてるすげー

ギャグ作家受難の時期だね
95作者の都合により名無しです:2005/04/28(木) 17:14:23 ID:K6+rr77B0
>>84
スタンドに例えるとホワイトアルバムやオアシスみたいな,身にまとうタイプの能力
効果は耐久力が異常に上がったり,炎や水を自在に操れたりいろいろ

それにしても妖魔王陣営がますます愉快になりそうだ
まああそこは一見シリアスで,その実総大将からしてちょっと愉快な外見だからな・・・
96十傑集査定試合:2005/04/29(金) 00:33:51 ID:IuP9bvlA0
前スレ517より

――この十傑集における構成者入れ替えの査定は、山口の言に含まれていた通り、当然此度が初めてではない。
その起源は古く、かの大戦の終戦の際より始まった。
 定期的に行われるのではなく、十傑集内のデータ管理を取り仕切る富沢が十傑集の質が一定ラインを下回っていると判断し、
それを横山が認可することにより実行に移される。
対象は、古参、新参、内輪、外様関係なしで、隊長ですら除外されない。
この査定試合により死亡した者の数は、任務により死傷した者のそれより多いというから、ちょっと厳しすぎる風ではある。
が、組織などという物は、どうのように堅牢に形成され、綺羅な人材を結集していても、時が経つにつれ、ゆるみ、衰え、腐敗する。
こればっかりは避けようが無い。
十傑集とは何か――?
人から問われて明言することはなかれど、彼の軍師は鉈で断ち切るように思っているはずだ。
――それは道具である、と。
十分な働きを成さない道具など、不要、無用の存在でしかない。

 特に、大戦より長らくの安寧は、組織の老朽化を促進させるに十分な毒素を孕んでおり、
悪果を速やかに駆逐する機能が無ければ、現在の苛烈な状況に耐えうる組織を維持する等到底敵わなかったはずだ。
ゴッドハンドに次ぐ歴史を持つ評議会の暗澹たる様相が、それを歴然と物語っている。
――前置きは、これまで。
張り詰めた緊張感に満ちた静寂の中、山口がゆっくりと口を開いた。
「石渡洋司、君が一人目だ」

「―――! ま、待て。石渡の敗北は、俺が」
「岡田、情けは無用ぞ」
 錆を帯びた静かな声が、岡田の言葉を封じた。
石渡はつ、と眼鏡をずり上げ、席を立った。
「今更君に細々と説明する必要もないであろうが」
「わかっております、隊長。我らが怨敵妖魔王の僕を相手取り、
 無様に敗北した私がその地位に相応しいかどうか、疑問を持たれるのも詮無きこと……査定試合、謹んで挑みましょう」
 押し殺した声音で言う石渡の顔面には、幾筋もの血管が浮き出ている。
97十傑集査定試合:2005/04/29(金) 00:35:35 ID:IuP9bvlA0
無表情で取り繕いようも無い凄まじい形相であった。
その心中に渦巻く感情は如何なるものであろうか。
 それは誰にも窺い知ることはできなかった。
ただ、この男ほど十傑集としての役目を、私を排他して一己の機械のように極めて精錬にこなし続けたものもいない。
だからこそ、その任に不適格であると判断される屈辱は常人の比ではないのかもしれない。
 山口は、低温の視線をその凄まじい貌に向けながら、言う。
「では、早速赴いてもらおう――戦いの場へ」
「承知」
 応じたその言葉と同時、石渡の姿は幻のように消え失せた。

―――。
一同、声も無い。
石渡洋司はこの座の中でも古株であり、その功績は数え上げれば切が無い。
それが、あっさりと査定の対象とされた。
こういうものだ、とわかっている古参の十傑集はともかく、新参者はその無残な沙汰に戦慄を禁じえなかった。
(妖魔王の僕……要するに十二使徒、大罪集辺りに負けた奴はあぶねーっぽいな。
 さてさて、俺は大丈夫かねえ。もうちょっとばかりここに居座る気ではいるんだが…)
 神崎は眉を顰め、思案を張り巡らす。
(………)
 せがわは既に一切の思慮を止め、静かに瞑目していた。
この場にて査定の対象となることは最早感受している。
試合に、勝つ。
しかも、圧倒的に勝つ。
この屈辱を晴らし、自らの実力を再び知らしめるにはそれしかあるまい。
凄惨な覚悟を胸に秘め、彼は待つ。
己が名が呼ばれる時を。
(ま〜今回は大丈夫っぽいけど、少しでも不出来な所を見せれば、首…ってことっすよね)
ははは、と福地は笑った。
その笑いに幾許かの恐怖がこびり付く様に含まれていることは、彼自身気が付いてはいない。
98十傑集査定試合:2005/04/29(金) 00:37:45 ID:IuP9bvlA0
「隊長、石渡の相手は誰なんだ? そして試合はどこで行われる」
 重苦しい沈黙の中、岡田が言う。
 彼がこのように同胞の心配をすることができるのは、己の敗北が結果的に石渡を孤立させたという負い目だけでなく、
邪推すれば自分が査定の対象になることは無いと確信しているからでもあろう。
「さて、実は私も今回の相手については詳しくは知らないのだよ。横山様直々のご指名なのでね。
 場所も横山様しか知らぬ。まあそのようなことは瑣末なことだが」
「けっ……石渡が勝てばよし、負けたとしてもそいつが来ればわかることだってか?」
なんて組織だ、と神崎は呻いた。
 元よりそのつもりで入った自分のような人間ならともかく、
腹心にまでこのような酷い扱いをするとは彼ですら想像を超えることだった。
山口は、長きに渡り苦楽を共にした同胞の運命などまるで気にならないかのように、極めて平静な声で、再び議席に沈黙を与えた。
「さて、では次いでの査定対象の発表に移ろう」


 転送された先で、石渡は周囲を警戒しながら見渡していた。
辺りは、ねばっこい闇に包まれていた。
何年も日の光から遠ざけられていたかのような、塵と埃に塗れた陰惨な部屋の中に、彼は転送されていた。
(ここは……RED内部か…?)
 薄暗い闇の中でしかし、彼はその鍛えられた視力を持ってして、この部屋の作りが、チャンピオンRED内部のそれだと一瞬で察知していた。
だが、疑念が彼の心に渦巻く。
(妙ぞ…このような場所、俺は知らぬ)
 REDに所属していた時代から既に十傑集として働いていた彼は、チャンピオンRED内部の構造は全て知り抜いていた。
しかし、その彼をしてこのような部屋はまるで心覚えが無い。
(本棚と…薄汚れた資料…資料室、か?)
99十傑集査定試合:2005/04/29(金) 00:40:25 ID:IuP9bvlA0
「雑誌社には、大抵、不開間(あかずのま)と呼ばれる一室が存在する」
「――!」
 声とほぼ同時、まるで亡霊のように忽然と姿を現したその男は、石渡の右横の本棚から進み出でた。
「それは何らかの秘密に蓋をし、人の立ち入るのを阻止する目的で意識的に拵えられたももあれば、
 不吉な事件の結果、誰もがその場所を忌み、恐れ、自然に立ち入らなくなった場所もある。――この場所の場合は前者だが」
 男は真横を向いたまま、片手に持った書物を棚に置き、石渡の方向へ向き直った。
和装を自然に身に纏う男の左の腕は、途中から消失している。
その男の顔を目の当たりにした石渡は、かっと両眼を見開いた。
(誰だ!)
「己(おれ)の相手は貴様か、石渡洋司」
 石渡の動揺を尻目に、相手の男はあっさりと彼の名を言い当てた。
否、石渡も又、対峙する男の名を知っている。
既に彼はその事に気が付いていた。
対峙する男の顔を別人と錯覚したのはこの暗闇のせいである。
石渡は心中で己にそう言い聞かせた。
「ふ…このような場所に潜んでいたとは…見つからぬも道理であるな」

石渡、眼鏡を指で直し、男の名を呟く。

「山口貴由――」


十傑集査定試合第一試合。
石渡洋司対山口貴由――開始。
100作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 02:07:18 ID:5f5b53ro0
おおっ!

修羅や鬼に劣らぬ武を持ちながら、その総てを道具として顧みぬ
士(さむらい)が来たあっ!!
101作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 02:11:16 ID:ry2x7n670
悟りの域に達してるリストラ候補が泣ける

山口キユタソと石渡さんか、ハードな戦いの予感
102作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 02:35:29 ID:rClYXAZS0
どっちが勝つか予想つかないな。テカテカしながら待つよ!
+   +    ∧_∧  +
       (0゜・∀・) テカテカ
       (0゜∪ ∪ +
       と_)_) +
103作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 12:30:52 ID:O33ArXUb0
面白くなってきた記念貼り

ttp://fileman.n1e.jp/TOP.PHP?mnu=SHOW&ft=1&fid=4-28f5b5k6
104作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 12:32:33 ID:O33ArXUb0
↑えなり・・・じゃなく本家のオープニング
105作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 12:46:38 ID:+bTz8L4D0
……なんで、主題歌がガンダムW?
106作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 14:20:29 ID:ry2x7n670
ああ、だがしかし!画像が重くて61%から一歩も動かないのだよ!

           /\
         //   .\
       / ./      \   /\
     /  /        .\//   .\
   /   ./         \     .\/\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.. ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.. ̄ ̄ ̄ ̄... ̄ ̄
...  ..  ...     ..  .   ..  ..    ..

なんとなくエジプト貼っておきますね。
えなりでflash作るとしたらどんなのがいいかな
107103:2005/04/29(金) 15:21:36 ID:O33ArXUb0
分かってる人も多いと思うけど>>103はガンダムWの主題歌でジョジョを動かした物。

えなりもいつかフラッシュになったらいいですな。
108暗雲(104/180):2005/04/30(土) 10:58:13 ID:/cncMdoM0
>>82
「ザケルガ!!」
雷句の口から発射された雷光が、恐竜をデフォルメしたようなスーツをまとった藤崎に向かって伸びる。
「アールマティ、硬化っ!!」
藤崎が飛んでくる雷に掌を突き出すと、その周囲に薄い膜のような光が発生し、先ほどと同様に雷をはじきかえした。
「フフフ、大地の護神像『アールマティ』の防御壁の前では、その程度の雷なぞ通用せぬのう」
(ウヌウ、なんという防御力……しかし、『大地の』護神像ということは種類があるということか……む、まさか)
アールマティの堅牢さに舌を巻いていた雷句だったが、藤崎の何気ない台詞に糸口を見出す。
「――ジュロン!」
雷句の周辺から巨大な木が飛び出し、蛇のような速さと、槍のような鋭さをもって、藤崎に迫った。
「むうっ!」
藤崎が呻きをあげた瞬間、アールマティの防御壁はあろうことかあっけなく破られ、藤崎の体を打ち据え、巻きついた。
護神像にも相性がある。例えば、植物は大地に強く、炎は水に弱いといった具合に。
藤崎のほんのわずかな台詞の断片から、雷句はその法則を看破していた。
しかし、藤崎。ニヤ、と不適な笑みを浮かべる。
次の瞬間、藤崎の左手が炎を吹き上げ、雷句が放ったツタを全て焼き切った。
アールマティと同じ護神像の力のひとつ、『炎のアシャ』。
「護神像アシャ格闘術奥義―― 火 竜 咆 哮 」
「ぬう!!」
「消し飛べい!!」
藤崎が放つ火竜は瞬く間に、ジュロンの効果を焼き尽くし、うねりをあげて雷句に殺到する。
「炎は水に弱い―― スオウ・ギアクル!!」
対する雷句が放つのは、藤崎の放つ火竜と同等の規模を持つ、膨大な水でつくられた水竜。
全く性質を異にする二つの竜が、二人の中間で激突――するかにみえた、が。
「すまんのう…、さらばじゃ…」
激突の刹那、雷句の耳に届いたのは、なぜか藤崎からのそのような言葉。
不審を感じた雷句の目に、それは次の刹那、驚愕となって飛び込んできた。
気がつけば自分のすぐ足元に転がっている、様々な数式や化学式で埋め尽くされた謎の球体。
そして、その真ん中に刻印された、 『 核 融 合 』 という物騒極まりない三文字。
「何っ!? まさか…」
雷句の叫びが、巨大な爆発音の中に消えた。
109暗雲(105/180):2005/04/30(土) 10:59:22 ID:/cncMdoM0
「宝貝『太極符印』――その能力は『元素』を操ること。
 お主が、水を使ったら自動でこうなるようにセットしておいた。
 H2O(水)が、半径37メートル以内に大量に発生したら、そのH2O(水)を分解して、H(水素)を材料に、3H(三重水素)を作り……
 超 小 規 模 な 核 融 合 を 起こすようにのう」
藤崎が、サッカー場に立ち上ったキノコ雲を見つめながら、つぶやいた。
雷句の姿は、爆発の向こうに消えたままだった。

>>83
(!? 金色の体表…!?)
煙をかきわけて現れた岸本の体から、金色の鎧板のようなものが剥がれ落ち、重い音をたてて地面に転がった。
「…口からだけじゃないようね」
「…フッ、俺の“蜘蛛粘金”は体外に出ると瞬時に硬質化する金属でな…しかも気の類は通さない。
 そして、それは口からだけでなく、体中の汗腺からも分泌できる」
(“気”による攻撃は効かない…そういうこと…)
(この女相手に、まともに接近戦をやるのは、危険だな)
対峙は一瞬、岸本がゴールまで飛びのき、ゴールポストにとりついた。
(ならば…)
指を噛み、その血によって印を結び、蜘蛛の巣に叩きつけた。

「――口寄せの術!!」

ドロン、と煙とともに出現したのは、巨大な大蜘蛛。
「――!」
おぞましき巨体の召喚に、留美子が顔を険しくする。
「――散れ!!」
ざわわわわわ、と留美子に群がったのは、大量の子蜘蛛たち。大蜘蛛が生み出した、大群。
膨大な粘糸が渦を巻いて、留美子に襲い掛かった。
110暗雲(106/180):2005/04/30(土) 11:01:02 ID:/cncMdoM0
(――何て数!!)
糸に縛り上げられる寸前、留美子は真上に跳躍してかわした。
左手の封印を解いて、蜘蛛の大群に向け、かざす。
「―― 風 穴 !!」
留美子の掌に穿たれた穴が、周囲のあらゆるものを吸い上げ始めた。
糸を走らせた子蜘蛛の群れは、ことごとくが、その穴にすぐさま吸い込まれ、消えた。
その光景を見た、岸本が感嘆の唸りをもらす。
(…まだ…あんな能力で、あの包囲網を切り抜けやがるか! あの女の動きを止めるにはどうすればいい?)
一瞬の逡巡、そして即決。
(もう一度、使うしかないか……『状態2』!!)
呪印が、再び岸本の全身を、禍々しく覆い尽くしていく。
もはや人のものでなくなった口から吐き出された粘液は、金色に凝固し、ひとつがえの巨大な弓矢となった。
巣が隅々まで張り巡らせ、隙間のなくなったゴールに、糸によって自らの体を固定し、口でその巨大な弓を引き絞る。
その凶悪な変身ぶりは、留美子をして一瞬、躊躇させるものだが。
留美子のうちに、別の疑問がわいた。
(……たしかに威力だけはすさまじそうな矢……でも、あの技は本来、遠距離狙撃用の技のはず……このような状況で使う技ではないはず)
たとえどれだけの剛弓であろうと、真正面からの矢をかわすなど、留美子には造作もない。
(いったい、彼の目的は……)
「――!!」
岸本の、獲物に狙いを定めた鋭い目。その視線の先にあるものに気づき、留美子は息をのんだ。
その矢が狙う先にあるものは、留美子ではなく、さらにその遥か遠方、フィールドの外――
そこには、中華の――そして炎を操る修行にせいを出す、安西の姿。
留美子以外の人間は、敵味方、そして観客も含めて、誰ひとりそのことに気づいていない。
「 命中精度・100%  破壊力・最大 」
(間に合って――!!)
刹那――
死の矢が、無防備な安西をかばうべく、射線の軌道上に走りこんだ留美子の胸を、深々とえぐり、貫いた――!
111作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 13:55:57 ID:hXkBLC7B0
リックがーーー!!!留美子先生がぁぁぁぁぁーーっ!!
一気にガンサンピンチですよ!
112作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 17:58:44 ID:C1mHOcif0
まあ今まで有利過ぎたからそろそろな…
113作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 22:53:12 ID:FdK9hq+z0
留美子はしょっちゅう重傷負ってるなあ
基本的に不死身という設定のおかげで、これからもヒドイ目に会うんだろーな・・・
114作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 23:55:48 ID:edQ4gbeB0
本当の「ヒドイ目」とは試合に出てるのにちっとも見せ場がもらえないことを言うのさ
それに比べれば留美子の立場なんてチョロイチョロイ


具体的には大和田とか土塚とか許斐とか許斐とか…
115作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 00:21:00 ID:otOU6z3A0
わかっちゃいないっっ…!
本当に「ひどい」っていうのは、試合に出れるはずなのに延々放置されてるってことだっ…!
井上…YOO1…っ
116作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 00:46:52 ID:/1hvG75S0
YOO1とか書いてあるとZOO1を思い出すのだが……。
画太郎先生どうしてるんだろうか?
117作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 01:02:23 ID:KvsHOE5E0
一人雄々しくギャグ狩りに抵抗中。
118作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 01:08:09 ID:dfVzTJ350
伸びてるから来たかと思ったじゃねーかorz
119ベストプレイス・ハンターズ:2005/05/02(月) 16:14:10 ID:qQ57XhO60
>>69 他)
 悪魔将軍編・分割小畑健のパーツ分散表(決勝トーナメント初日午後3時現在)

 ・ゆで将軍……胴体
 ・黒藤田→青山………左手
 ・篠房六郎→藤崎(奪取)……左足
 ・大場つぐみ→平野……頭
 ・??…………腰
 ・三好…………右手
 ・??…………右足

            * * * * * *

 「ふ、我が仕事場とはいえ、矢吹艦セキュリティも存外甘いな。
 漫画的な要素に頼りすぎたため、筆吉の開発した≪科学の壁システム≫により、
 大部分の防衛機能が無効化してしまう。この能力、末恐ろしい。
 そしてスーパーメカを奪取すれば我らに敵はいない!
 ふはははは!これぞ復讐、臥薪嘗胆の時は今ここに結実し私は新世界の神となる!!」
 「なんかえらい大袈裟になってるけど」

サクサクとコロッセオ地下に潜り込んだ、作業着に着替えた柳田と筆吉。
不幸にも片棒をかつがされた東は、スーパーメカ格納庫周辺の見張りだ。
なおスーパーメカとは柳田が開発した、対漫画家用の非常識な機械兵器である!

いつ馬鹿ふたりを警備員に差し出そうか悩む彼女だったが、
柳田は東が裏切るとは片端も思っていない事を彼女は気づいており、
なんとなく罪悪感を感じて、今もぶつぶつ言いながら任務を続けている。

そして柳田たちは程なく、メンテナンス室に置かれたメカ数台を発見した。
 「ほう、あれは18号の『名悶子江代(なもん・ねえよ)』ではないか。
 超能力や魔法のたぐいを無効化する、筆吉のサポート役だ。ぜひ持ち帰ろう」
柳田の視線の先には、プラグで繋がれたスーパーメカ18号。そして・・・
120ベストプレイス・ハンターズ:2005/05/02(月) 16:16:12 ID:qQ57XhO60
 「おや?24号・・・あらゆる誘惑行動を起こし漫画家を骨抜きにする、
 女性型スーパーメカ『女木恒音(めぎ・つねね)』が何かを持っているぞ」
18号の傍には、ひとりの一見地味めな女性が椅子に座っていた。

スーパーメカは後期の型ほど人間タイプが多い。
これは、試作品含め30機程制作されたメカ軍団が、
より技術的に洗練されてきた証。
実際クリードアイランド(9部〜14部)で破壊された1号・
満賀掛内(まんが・かけない)は制御もしづらく、
いかにもロボット然とした、ごつごつかさばるデザインであった。

24号・女木恒音はふと人の気配に気づき、完全自律型の機体を傾かせ、
天井の通風孔から顔を覗かせる、柳田におじぎで挨拶した。

彼女の手には、マネキン人形の部品のような、子供サイズの『右足』。

柳田は部屋中を見渡したのち、手招きで24号を通風孔の真下に呼ぶ。
人差し指を自分の唇に当て“しゃべるな”と釘を刺しながら、
金網を静かに外した柳田が、24号の肩を踏み台に部屋へと降りた。筆吉も続く。

 (小声でしゃべるがな、24号。その足はなんだ?
 そのようなパーツを使用したメカは制作していないと思うのだが)
ぼそぼそとした声を真似しながら返事をする24号。
 (これは矢吹艦内で拾った人間の足です博士。
 どうやら特殊加工により数日間は状態変化しないようです。
 落とし物なら、誰かが拾いに来るかもしれませんね)

 (ほう。まあ遺失物で警備センターに届けるのも面倒だ、
 どこか適当な容器に入れておくがいい。それより仕事だ。
 お前と他数台でこの格納庫から脱出する。使えそうな貯蓄物も持ってだ。
 私と私が認めた者以外の命令は絶対に聞くな。今から計画を練る)
顎に軽く指を当てながら、柳田は格納庫内の物色を始めた。
121粉砕:2005/05/04(水) 00:36:27 ID:JD5TKXTl0
前スレ>449

板垣が、体を大きく捻転。
ぎりり、と異形の筋肉が極限まで撓む。
板垣の背中で慟哭する鬼。
全身に沸き立つ悪鬼が、今その全暴力を解放しようとしている。

凶相の鬼を前にして、川原は動かない。
天をも我が物のように握ろうとする板垣の雄大な構え。
それとは対照的に、川原はその短躯をさらに縮めるように、小さい構え。
肉食獣が獲物にとびかかる直前のように、撓められた四肢に闘争の意思が込められている。

「けええっ」
「ちいっ」

板垣の封印が解き放たれた。
極限まで捻りこんだ筋肉が旋回し、四肢が竜巻と化す。
風圧が、砂埃を巻き上げ、両者の姿を覆い隠した。
激突音。
砂煙が晴れ、にわの達は見た。

川原の体が跳ね飛ばされていた。
竹とんぼのように舞う体から、四方八方に血がばら撒かれる。
公園の土を、板垣の体の上を、赤い筋が走り抜け跡を残していく。

にわの達の眼前で、地面が爆発した。
爆心地の中心部に、川原の肉体が、頭から上半身のなかばまで埋もれていた。
尖塔のように突き出ていた両足が、吊り上げる糸が切れたように、がくんと膝を折り、垂れ下がった。
122粉砕:2005/05/04(水) 00:37:09 ID:JD5TKXTl0
「……嘘だ」
墓穴に突っ込まれたように、無惨な川原の有り様を見て、にわのが放心したようにつぶやく。
それはダムが決壊する直前に近い空気を醸し出していた。
「嘘だああああああ――――っ!!」
堰を切ったように、にわのが絶叫した。
その横で、松江名が喉元からの唸りを漏らす。
「あの出血。おそらくは頭部そのものが粉々に砕け散った。あの拳を前にして如何なる防御手段があろうか――」
悪魔に授かった筋肉で、ただ思いきりブン殴る。
たったそれだけの技だが、スピード・タイミング・破壊力・共に、人智を超える。
つまり――防ぎようがない。
地面に突っ伏し、狂乱するにわのに痛ましい視線を送ると、松江名は板垣を見た。
悪鬼は、牙のごとき拳を振り終えた体勢のまま、凝固したように動かない。
あまりに大きく一撃を繰り出したためか、フォロースルーが大きく、松江名たちに背中を見せている形だ。
「――ぬっ」
小さい、呻くような声が、板垣の喉を震わせた。
「――板垣先生ッ!?」
違和感を覚えた松江名が、そう声をかけた瞬間。
「ぐぬうう―――っ!!」
板垣が、吼えた。
大量の血が、宙にばら撒かれた。
板垣の右腕が、拳から肘にかけて、大きく縦に切り裂かれていた。
裂け目から、どくどくと鮮血がほとばしる。
いったい、何が起こったのか!?
松江名が視線を泳がせ、川原が突き刺さった地面の周辺――そのある一点で止める。
そこにあったのは、地面に転がる、何も納めていない鞘。
松江名は、このとき、すべてを理解した。
123粉砕:2005/05/04(水) 00:38:10 ID:JD5TKXTl0
「――川原先生は、板垣先生の拳を直撃されたのではないっ」
松江名が叫ぶのと、それはどちらが速かっただろうか。
川原が埋まっている地面の一部が、いきなり跳ね上がった。
現れたのは、川原の左腕。
その手には、反りを持った片刃剣――“ニホントウ”が握られている。
「――せ、せんせぇっ!!」
にわのが、さっきとは違う種類の叫びをあげる。
「川原先生は、板垣先生の拳が当たる刹那っ。
 とっさに腰に差したニホントウを抜き取りっ。
 その剛拳の恐るべき破壊力を拡散させ、最小限に弱めたんだっ!!」
松江名の語調が震えている。
「そっ、それじゃあ、あの血しぶきは川原先生の砕けた頭のものじゃなくてっ…ニホントウで裂かれた板垣せんせーの返り血っ!!」
にわのも、自分で言っている言葉が信じられない。
言葉にすれば単純であるが、相手は板垣の最強の拳――“鬼哭拳”である。
本来、影すら見えぬ拳を、見切れるはずがない。
おそらくは、川原も意識的にやったことではないだろう。
死際の瞬間、川原の裡の修羅が、反応した。
勝つためではなく、ただ生きるために。
そして、おそらく板垣が狙ってきたであろう正中線をかばうように、ニホントウを構えさせた。
それは極限の闘いと、川原の奥底に眠る血とかが結実したがゆえの、奇跡。
もう一度やれと言われても、二度とは達することのできぬであろう境地。
その地点に川原はほんの一瞬だけ足を踏み入れた。
それが、この結果であった。

川原の垂れ下がっていた両足が跳ね上がった。
反動をつけ、埋まっていた上半身を抜き取る。
血と泥にまみれながらも、健在な頭部が、物騒な笑みをたたえている。
124粉砕:2005/05/04(水) 00:39:13 ID:JD5TKXTl0
土が舞う。川原の姿が、消えた。
「なにっ!?」
板垣が、狼狽の声をあげる。
川原が、板垣を上回る速度で、その側面に出現していた。
川原が速いのではない。
板垣が遅いのだ。
右腕を切り裂かれたダメージで、板垣の神速は急激なかげりを帯びていた。
結果、相対的な速度で、川原が板垣を超えた。
「だおぉっ」
鬼の左拳が疾る。
修羅は、すり抜けるように前に躱し、懐にもぐりこむ。
右拳を、胸に押し当てた。
「おおお―――っ」
修羅の咆哮。
拳が刹那に震え、あらゆるパワーが拳にのり、打ち出される。
1トンを超える衝撃が、板垣の胸に三つめの陥没を刻む。
(さす……がだ……川原)
常軌を逸する打撃にもかかわらず、板垣は倒れない。
(しかし……今の打撃で、俺は倒せねぇっ)
全パワーを解放し、無防備な川原の頭頂に、拳を振り下ろ――

   ず く ん 。

(なっ!?)
川原がめりこませた拳。
その一点から、波のような力が体全体に広がり、バラバラになるような衝撃。
例えて言うなら、百万匹の蟻が、足元から這い上がる――
「がはっ」
板垣が、激しく喀血し、巨体が大きく揺らめいた。
125粉砕:2005/05/04(水) 00:39:59 ID:JD5TKXTl0
振動波による内部へのパワーの炸裂。
それは鬼の分厚い筋肉をかいくぐり、体内へと浸透して、内臓を破壊。
振動は、脳にまで達し、灰白色に込められた意識すらも十分に震盪せしめた。
(こいつは――とんでもねえ)
刹那のときを、板垣の意識はスローモーションのように感じとっていた。
(あれとヤッたときも――)
木城ゆきと。
(あれとヤッたときも――)
山口貴由。
かつて、自分に敗北をあたえた二人の姿が脳裏に浮かぶ。
(脳へダメージをもらったときは、いつもそうだ――)
両足を、猛烈な蟻走感が駆け巡る。
(こいつらが――――)
(這い上がってきて――――)

( 地 面 が 消 え る )

轟沈。
そう呼ぶにふさわしい勢いで、悪鬼の巨体が崩折れた。
それを見届けた川原もまた吐血し、がくりと膝をつく。
限界はとうに通りこしていた。
もはや闘う力など一欠片も残ってはいない。
鬼の指が動いた。
川原の顔が、にわかに青ざめる。
「ぬうう」
悪鬼が、唸りながら、上体を起こした。
「くく……怖ェ男だな、おめえ。いや……、怖いのは陸奥圓明流…か。なんてぇ技……だい?」
「陸奥圓明流奥義―― “無空波” 」
川原がにっと笑い、答える。板垣もまた、にいっと笑み――
「俺の……敗けだ……」
その言葉を最後に、悪鬼の体は再び力を失い、仰向けに倒れた。
126作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 01:06:29 ID:ZECuyDaM0
+   +
  ∧_∧  +
 (0゜;∀;)   うわぁ熱戦乙〜続き待ってますねワクワクテカテカ
 (0゜∪ ∪ +    .。oO(「死んで勝利」でガチだとオモテタアルヨ)     
 と__)__) +
127Dead or Alive(107/180):2005/05/04(水) 01:08:28 ID:2Vs3Kflr0
>>74
頭から落下する寸前、貞本は空中で体勢を変えると、アクロバティックな動きを披露し、足から大地に降り立った。
地響きの余韻が残る中。クラウチングスタートの溜めで、すぐまた見上げるほどの高さに跳ね上がり、大きな放物線を描く。
千切れかけた腕が癒え、逆回しの再生。
その貞本の、覆い被さるような掴みかかりの両腕が、あと少しで触れるという刹那。車田の光速拳が、もう何度目かも分からない交差で放たれる。

 ――――――― カ カ ッ !!!!!

亜光速の反応が間に合わず。しかしATフィールがさらなる時間を稼ぐ。
ブチ抜かれたそれは、結果、装甲一枚を掠めてゆき過ぎる。
(―――やっかいな)
仕留め損なった。
そして今、思い出した。
この男。
かつての予選、Avsえなりにおいて実力を競い合い。
また、その最中きたした暴走を、両チーム総がかりで押し留めた“あの”貞本義行である。
(……動きが……みるみるよくなっていく!!)
一種の暴走状態なのか。
飛びぬけた学習・進化能力に、ATフィールドと一万二千枚の特殊装甲。
さらに、言うに及ばぬ、驚異的な自己修復能力。
倒せない、殺せないと言う意味では、自分の戦歴の中でもトップクラスの難敵と評価せざるを得ない。
「……おっちゃんこのぼくとひとつになろうよ それはとてもとてもきもちのいいことなんだからさ……」
語りかけられる言葉。冷や汗と共に理解する。スデにこの戦いは「三対一だから不利」というような、そんな次元ではないと。
うふふふと気色悪く笑いながら舌なめずりし、懲りずに延々と繰り返しくる貞本。
何度目かの撥ね退けをしながら、車田正美はとうとう覚悟を決めた。
(このままではいつか犯られる……!!!)
途端昂まる小宇宙。ぐるぐると渦を描く貞本の狂った瞳にも、僅かな怯えが走る。
「見るか……星々の砕け散る様を……!」
大気を鳴動させる意識の集中。車田正美最大最強の必殺技。


「 ギ ャ ラ ク シ ア ン  エ ク ス プ ロ ――― ジ ョ ン !!!!!」
128作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 01:09:41 ID:Np6INh3w0
なんかどっちが負けても
ええええええええええ!?
ってな、不満がつくだけに
作者はやり辛かったろうなぁ、と思いました
お疲れ様
129Dead or Alive(108/180):2005/05/04(水) 01:11:54 ID:2Vs3Kflr0
大銀河を背負い。鳳凰の翼のように広げられた両腕から放出された破壊エネルギーが奔流となり荒れ狂う。
全力。手加減一切なし。
こうなるともう、ATフィールドも糞も無い。
一瞬ですべてを奪われた貞本の体が、無残な姿で舞い上がり。
轟音と共にケツを火口のように晒した姿で落下、二度とは動かなくなる。
「ハァッ……ハァッ……」
しかし、こちらもがっくりと膝をつく車田。
天舞宝輪を展開したままGEを放つなど、やはり無理があったのだ。
やがて、その光景を呆然と見守っていたカムイと、座り込んだまま上目を遣う車田の目が、静かに合った。
「ぐっ……!」
「さあ次だ」
立ち上がり、黄金色の具足を鳴らし、死刑執行の場所まで歩む。
たじろぐカムイの前で、しかし、異変。
「!?」
車田が貞本の横を通りすぎようとしたその時。ピクリとも動かなかった巨体が、骨格を無視して大蛇のように蠢き、のたうったのだ。
まさかの事態に硬直する車田の一瞬の隙を突いて、軟体が、カエルの舌のように素早く、車田の頭に飛び掛る。
「うおぉっ!?」
襲い掛かった顔面に、鋭く巻き付く貞本。やがて、とぐろの継ぎ目が溶けて消え、球状に形が変化する。
鍵付き鉄仮面のごとき頑健さで、車田が揺すろうが殴ろうが小揺るぎもしない。そんな力など、残っているはずがないのに。
「き、貴様、生きて…………いったいなにを!?」
どこが口なのかも分からない、貞本の声が応えた。
『ぼくとひとつにならない?』
「な――――じょ、冗談ではない。――――俺は俺。貴様は貴様だ!!!」
塞がれた視界に、車田の怒声がこもった。
『そお でもだめ、もうおそいよ』
首筋から皮膚が交じり合い。侵食がはじまる。車田の全身に、血管の膨張したようなみみず腫れが走る。
『ぼくのこころをきみにもわけてあげる。このきもち、きみにもわけてあげる』
ヌボリ、と暗闇に、無邪気な笑顔。
『いたいでしょ?こころがいたいでしょ?』
「ぬうう……貴様ぁ―――!! こんな九十年代後半アニメで流行ったような鬱系精神攻撃が、この車田正美に通じると思うなよ――――っ!!!。
闇の中、額に、貞本の侵食によるものではない血管が、くっきりと浮かぶ。
『???さみしいな……きみがよくわからないよ???』
130Dead or Alive(109/180):2005/05/04(水) 01:15:22 ID:2Vs3Kflr0
「とにかく離せ!!! この狂人めが! もっと普通に……正々堂々と戦えんのか!?」
貞本の顔が、皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「これは……ぼくのこころ……くるまだのおっちゃんとひとつになりたい……」
と、周囲に凄まじい速度で膨れ上がる小宇宙を感じ、車田は戦慄を覚える。
『さあ、ぼくといっしょにじゅうまんおくどのかなたやらまでいこうよ……』
思い当たった“自爆”の二文字。
「!?――――や、やめろ!そんなことをすれば二人ともコナゴナに消し飛んで、肉片も残らなくなるぞ!?」
『だから……だめだってば』





             カ ッ !!!!!!!!!!!






次の瞬間、臨界を越えた貞本のコアが圧壊し。同時に、天舞宝輪の大曼荼羅陣がガラスのように罅割れ、飛び散った。




 チ ュ ゴ  ズ ド ド オ ォ ――――――――――――――――――――――――――――― ン ン ン ン !!!!!!!!!!!




グラウンドに突如として出現した、その十字を描く光柱は。
矢吹艦の強化ガラスの天蓋を貫き蒼空に花咲くと、その内に含む、全てを滅ぼした。
131作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 01:27:41 ID:ZECuyDaM0
ウワァー(´ロ`ノ)ノ  iii||| 超破壊光柱 |||iii

こっちはまたエライ事に。

>鍵付き鉄仮面のごとき頑健さで
南野陽子ワロス
132作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 01:35:15 ID:u4Pubw9WO
まあ凄いことに・・・・・・しかし、どっちも死んじゃいないんだろうけどw
133鬼と修羅〜終結〜:2005/05/04(水) 01:49:44 ID:JD5TKXTl0
>125
にわのも松江名も、しゅくとして声もでない。
二人とも最初、あれほどの死闘が終わったということが、にわかに信じられないでいた。
その沈黙が破られたのが、川原がふらりと立ち上がり、こちらに歩み始めたとき。
「見事な闘い……そして、勝利でした、川原先生」
松江名が、言った。
しかし、川原は目を瞑り、首を静かに横に振った。
「引き分けだ。この勝負……」
「?」
「陸奥圓明流は、無手の技だ。それを俺は刀を抜いちまった。いや――抜かさせられた……」
その声に、勝利の喜びはない。
もっとも、元来が勝利の喜びなど決して表には出さない男ではあるが。
川原は、刀を抜いた瞬間、拳の勝負に敗北したのだと悟った。
素手では、板垣の鬼哭拳を躱す術がなかったからこそ、川原の本能は鉄の刃を抜くことを無意識で選択したのだ。
それは、格闘漫画の第一人者を自負する者として、事実上の敗北に等しい。
だが、現実に立っているのもまた、自分であった。
端的に言うならば、試合に負けて、勝負に勝ったというところか。
「陸奥圓明流が、その歴史の中、無手で倒せなかった男は板垣恵介……ただ一人」
川原が続けて言った。
「引き分けだ。勝負はついていない。――そう伝えておいてくれよ」
最後の言葉は、にわのへのものでも、松江名へのものでもなかった。
そのことに気付いたにわの達の顔に緊張が走る。
そのとき、静まりかけていた空気が、再びにわかにざわめきはじめた。
134鬼と修羅〜終結〜:2005/05/04(水) 01:50:40 ID:JD5TKXTl0

        ざ わ ・ ・
                 ざ わ ・ ・

独特の空気をただよわせながら、その男は現れた。
格闘家とも異なる、全く異質な気配。
赤いシャツに、白い髪の壮年の男。
「福本せんせー!?」
にわのが驚いたように、男の名を呼ぶ。 
男――福本は、それを無視し、川原に話しかけた。
「ククク・・・さすが、というべきかな」
手を叩きながら、福本が愉悦と驚きを半分混ぜこぜにしたような笑みを浮かべる。
「やっぱり、あんたが一枚噛んでた…ってわけか」
「クックク・・・・ご明察。まあ、今さら説明するまでもないことだがね」
二人だけの緊迫した空気を作り出す川原と福本。
「え? え? どういうことダス?」
おいてけぼりにされたにわのが、困惑して両者の顔を見比べる。
「なに…簡単なことさ。板垣に、俺の居場所を教えたのは、この福本だ」
はじかれたように、福本の顔を凝視するにわの。
「まあ、そういうことだ・・・」
あっさり肯定する福本。途端、にわのが景色ばんだ。
「なっ…なんのために、そんなっ……」
「――賭けを、面白くするためさ・・・」
激昂しかけたにわのを、福本の言葉が遮った。
「何!?」
「今、行われている準決勝戦、第一試合・・・!
 ガンサンチームは、えなりチームに比較して、個々の質で劣る・・・。
 そのうえ、板垣まで加わっては、ガンサンに勝ち目はまずない・・・つまり、賭けが成立しない・・・っ!!
 だから、そこの川原を利用させてもらったのさ・・・板垣の足止めとしてね・・・」
135鬼と修羅〜終結〜:2005/05/04(水) 01:51:31 ID:JD5TKXTl0
「そんな……っ。それじゃ、福本せんせーが『川原が危ない』…って警告してくれたのは…」
「ククク・・・そいつはもちろん、最悪の事態を考えてのこと・・さ。
 あくまで目的は板垣の足止め・・・それが二人のどちらか、あるいはどちらも死なれでもしたら、それこそ本大会の胴元として、痛すぎる損失だからな・・・」
「つまり、何もかも、あんたが描いた筋書きだったってわけだ」
締めくくるように、川原が言った。
「まあ・・・な。もっとも、正直に告白するが、川原。あんたがここまでやるとは思わなかった。講談社最強の名は伊達ではない・・・というところだな」
福本の讃辞に、川原は肩をすくめただけだった。
ふと周りを見回すと、いつの間にか、公園中を夥しい黒服の集団が包囲している。
「まだ試合終了まで時間がある・・・それまで板垣の身柄は、こちらで保管する」
福本が部下の黒服に命じると、彼らは気絶した板垣を担架に乗せ、運び去っていった。
「治療はいいのかな・・・? 今ならVIPだぜ」
「――フッ。喰えない男だな、あんた」
利用される形になった川原だが、怒ってはいなかった。
それもそのはず。おかげで、川原は、かつてない強敵と、存分に死合うことができたのだから。
「それでは、裏御伽の諸君。君たちの準決勝での活躍を、期待しているよ」
不敵に笑いながら、福本は川原たちに背を向け、去っていった。
いつの間にか、黒服たちもまた、波が引くように一斉に桜舞う公園から姿を消していた。

また、しばしの沈黙。
そして、それを破ったのは。

「バカ!」

この一言だった。
136鬼と修羅〜終結〜:2005/05/04(水) 01:52:32 ID:JD5TKXTl0
「バカ! バカ! バカ! バカ!!」
涙をぼろぼろと零しながら、にわのが川原に罵倒の嵐を叩きつける。
「バカはわかってる。そう、怒るなよ」
「怒るよ! 準決勝がもうすぐだってのに!!
 なのに……なのに……こんなつまらない仕合いで……」
本当はそんなことはどうでもよかった。
本人が納得しているかいないかはともかく、とにかく無事に生きていてくれて。
しかし、いくらなんでも、そんなことを大の男が男に向かって言えるわけがない。
「つまらなくはない。俺は、今日の恐怖と痛みを一生、忘れない。
 あの男は……板垣は、俺が出会ったなかで、間違いなく最強の男だった」
目を瞑り、熾烈な死闘の余韻を噛み締めるように、川原は言う。
「ただ……バカだけどなぁ……俺と同じくらい……」
そう言って、くすりと笑ってもみる。
「で…でも、準決勝は、その体じゃ……」
にわのが、川原の怪我を指摘する。
昨日、一昨日の負傷と比べてみても、遥かにその怪我は重い。
常人ならば立っているどころか、生きているだけでも奇跡だ。
しかし、川原は言う。
「やるさ……、当然……」
「そんな……」
にわのは、もう声もなかった。
「言ったはずだぜ」
ざわり、と空気が震える。

「俺は…この鬼にも勝って、バンチの前に立つ……と」

静まりかけていた獣が、その一瞬、川原の体から鬼火のように沸き立ったかに見えた。

←TO BE CONTINUED
137鬼と修羅〜終結〜:2005/05/04(水) 01:54:23 ID:JD5TKXTl0
以上で、状況終了。
疲れた。
あとは準決勝第二試合あたりまでマターリ待つよ。
138作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 02:16:28 ID:ZECuyDaM0
( ´∀`)         いやいや待ち続けた甲斐がありました。お疲r

( ´∀`|゚Д゚)っ|)  <マコリャアァァキサマハドコノヒロインジャー!フイタゾコラーー!!

( ´∀`|)≡3 ピシャ  eさまです。あとは夢枕vs宮下がほしい所ですね。
139作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 07:56:15 ID:MydKbuHc0
板垣VS川原おわった━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━ !!!
お疲れ様っす!面白かった!
どっちも死なないで良かった・・・いやマジで。福本さりげにおいしいなw
にわの・・・やっぱりヒロイン道邁進か。こうなったら極めてしまえwww

それから車田VS貞元
・・・兄貴ぃぃぃーーーーーーー!!w


早く戻ってきてネw
140作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 13:44:46 ID:uFzDLCot0
板垣敗けちまったか……
川原が勝つとしたら岡村戦以来の「四門」が飛び出ると思ってたが、そこまではいかなかったか。
ともかく、手に汗握る好勝負、お疲れ様でした。
141作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 21:56:18 ID:J7oMUNze0
板垣負け続けだねー
142奇襲:2005/05/04(水) 23:30:55 ID:f/97dqzB0
前スレ500より

森川が、動いた。
先程のような華麗なフットワーク等は使わない。
摺り足でゆったりと、まるで歩くような自然な動きで真っ直ぐに。
それは余りにも無防備で、さり気無い動作だったので、ヨクサルは蹴りの距離になっても、仕掛けることができなかった。
拳の間合いに、入った。
そこで、森川は脚を止めた。
静止。
首をぐっ、と前に伸ばした状態である。
手を伸ばせば当たる距離に、無防備な顔面が晒されている。
無防備といえばヨクサルとて同じである。
棒立ちの体勢で、真上から低い体勢の森川を見下ろす。
見ているだけで息が詰まりそうな緊張感。
突如ふらあっ、と森川は後ろに退いた。
その動きに誘い込まれるように思わず、右足を蹴り出そうとした瞬間――。
ヨクサルのテンプルに、弾丸で撃ち抜かれかのような衝撃が走る。
何だ!
何を、食らった?
痛みと混乱が、彼の頭脳を掻き回す。
テンプルを打ち抜いたのは、森川の左の拳。
完全に力を抜き、しかも後ろに下がろうとした途上。
その状態から、左腕だけがまるで別の生き物のように蠢いた。
信じられない角度と速度の攻撃だった。
感知できないのも当然であろう。
攻撃がこない、誰であろうとそう確信できる状態からの攻撃なのだ。
空気の流れを感じようと、対応することなどできようはずもない。
ヨクサルの体が揺らぐ。
不安定な体勢からの一撃は、精密にヨクサルの急所を刺していたのだ。
持ち直し、顔を上げたその時には、森川は懐に入り込んでいる。
143奇襲:2005/05/04(水) 23:32:32 ID:f/97dqzB0
腹に三発。
抉るような拳を打ち込まれる。
込上げる嘔吐に耐え、振り払うように放った右の蹴りは、空を切る。
逆に、森川の拳がカウンターで顔面を襲ってきた。
ほとんどしゃがみこむように、その拳を避ける。
その動作は反撃に直結していた。
目の前にある、森川の軸足を、ヨクサルが掴む。
掴んだまま一回転し、足首に全身を絡ませる。
だが、極めの体勢に入る前に、森川の脚はヨクサルの身体を振り解いていた。
ふわっ、とヨクサルが宙に投げ出される。
飛び関節をあっさり解かれたが、ヨクサルにとってはそれでも構わなかった。
とにかくあの不利な状況から逃れることが第一であり、端からこのような技が目の前の男に極まるとは思っていなかったのだ。
軽く地を飛び跳ね、方向を修正して立つ。
距離が、開いた。
144奇襲:2005/05/04(水) 23:33:08 ID:f/97dqzB0
(厄介なものだな、関節技とは――)
ファーストコンタクトの奇襲を、その上を行く奇なる技で凌がれた森川が心中で舌打ちする。
あのまま倒したかった、という願望は少なからずあった。
この男を倒すのに最も能率の良い戦法は、空へと飛び上がる前に致命打を与えることだと、今までの戦闘から森川は判断していた。
勿論空へ飛び上がった場合の対応も考えてはいるが、だからといってより易く相手を倒せる好機に――例えその可能性がいかに低くても――手を休める彼ではない。
純粋な闘いの中で彼が考えることはただ一つ――相手を斃すことだけなのだから。
だが、あの想定外の飛び関節、そして何より己の拳を受けても些かも崩れないヨクサルの肉体により、その望みはあっさりと水泡に帰した。
顔面への一撃も、その後のボディへの連打も、全て手加減無しで打った。
(剄による防御がどうとか赤松が言ってたが、それか? 俺の拳が通用しない程のものなのか……)
違う、と一瞬でその脳裏を掠めた考えを森川は打ち消した。
全力で打った。
しかし、それはヨクサルのあの奇抜な動きへの対応の余地を残した上での全力だった。
完璧ではない。
渾身ではない。
ならばどうする?
その問いの答えは、もう胸中に存在している。
(来る――)
横っ飛びに逃げた相手の体勢が整ったと見るや、森川は雑念を綺麗さっぱり消し去った。
145真価(110/180):2005/05/05(木) 23:43:09 ID:dAJsGead0
>>109

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

屹立するキノコ雲を藤崎はどこか達観した表情で見つめている。
「あっけない最期だのう……が、勝負となれば致し方ない……許せ…」
誰に言うともなくつぶやいていたが、途中で言葉が止まる。
「!!…ほう…」
大量の煙がようやく薄れ、晴れてきた。その向こうから現れたのは……
「フー……フー……フー……」
全身を重度の火傷と裂傷で覆われた、雷句の姿――!
食いしばった歯の隙間から激しい動悸が漏れ、血走った目がギラギラとして藤崎を睨んでいる。
「こいつは驚いたのう。核融合の直撃を、生身で受け止めるとはあきれた頑丈さだ。イヤ…」
ボタボタと雷句の体のいたる箇所から出血が止まらないで流れている。
「すでに虫の息だったか……」
「ヌゥウ……!」
悔しげに唸る雷句の耳に、ヒュンヒュンという異様な風切り音が届く。
雷句の周りで、いつのまにか唸りをあげて空を切り裂く、鞭の乱舞。
「せめて、このスーパー宝貝『禁鞭』でオヌシを葬ってやろう」

  ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……!!

「ヌァアアアアアアアアッッ!!」
禁鞭の圧倒的攻撃力は、重傷で満足に動くもままならない雷句をメッタ打ちにする。
打たれ、叩きつけられ、はじきとばされ、緑の芝が雷句の流す血で染まっていく。
もはや反撃の呪文も唱えられないのか、雷句は一方的に打たれまくった。
しかし、雷句の目だけはギラギラしたまま、輝きをいささかも失っていない。
さすがに藤崎、いぶかしむように聞いた。
「…なぜ、ガンガンという本来なら他社のチームのためにそこまでする。オヌシほどの男をそこまで駆り立てるものは何だ?」
聞かれた雷句、にやりといい笑顔を浮かべて答える。
「愚問だ…!ガンガンの者たちは…皆、私の大切な仲間だ!ここでチームが負ければ、その仲間が危機にさらされる……そんなことは断じてさせるわけにはいかぬ!!」
146真価(111/180):2005/05/05(木) 23:43:55 ID:dAJsGead0
「仲間のために戦うか…青いのう。そんな青臭い理想を貫くには力がいる。オヌシにその力があるというなら…証明してみせい!!」
一喝と同時に藤崎の腕が振るわれ、禁鞭が再び意思をもつ無限の蛇と化す。
音速で空気を破りながら襲いくる攻撃を前にして、雷句はぼんやりと昔を思い出す。
自分がまだ駆け出しの新人として、藤田和日郎のもとで修行に励んでいたころを……

 ――まただ、また目を閉じた!どんなことが起こっても、目を閉じるな!!

首をかしげると、その鼻先を鞭の先端がゾッとする速度でかすめていく。

 ――どうした?もうヘバったのか?プロの漫画家はこれくらいなら息切れすらおこさんぞ。

空気の流れさえもが緩慢に感じられる攻防の渦中、脳裏に浮かぶのは、苛酷な修行の日々と、そして師匠・藤田の叱咤の声。

 ――死人になれ、生きようと思うから恐怖が生まれる。初めから死んだものと思っていれば、冷静に攻撃を見極めることができる。

師の教えがよみがえり、不思議と五体に力が満ちてくる。
緩慢だった動きに除々に精彩が戻り、身のこなしが加速していく。

  ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!

禁鞭が当たらなくなってきた。
肉と骨を打ち、血をしぶかせていた鞭は、次第に芝をえぐるだけしか用を為さなくなっていく。
(こやつ……だんだん動きが速く…あれだけの傷を負っていてなぜ!?)
瀕死の雷句をいつまでも倒せないことに、次第に藤崎は焦りを感じ始めていた。
そして、ひときわ鋭い一撃が叩きつけられる。雷句は、それを地面を転がるようにしてかわした。
転がりつつ、両手を藤崎に向けてかざし、叫ぶ……!!

      「 バ ベ ル ガ ・ グ ラ ビ ド ン !!! 」
147真価(112/180):2005/05/05(木) 23:44:39 ID:dAJsGead0
超重力が鉄槌となって、藤崎に叩きつけられた。
あれほど軽やかに敵を襲った禁鞭が、数十倍に重量を増し、芝に押し付けられた。
重力の急激な変化による被害はそれだけに留まらず、藤崎の右腕をもかすめた。
 べキベキベキ……ゴキャ……!!
「が…ああああああぁぁああ!!!」
乾いた音をたてて、右腕がひしゃげ、捩じれ、折れて砕けた。
藤崎の口から激痛の悲鳴がほとばしる。
(な…ぜだ?虫の息のこやつに、なぜこれほどまでの力が……)
全身血塗れ、火傷まみれで、今にも倒れそうに見える重傷の雷句から感じる、くめども尽きない力に、藤崎は戦慄を覚え始めていた。
「く…ぉおおおおお!!ならば、この一撃でとどめを刺してくれるわ!!」
禁鞭を手放した藤崎が、左手で宝貝を持ちかえる。
それは先程、雷句に瀕死のダメージを負わせた、元素を操る宝貝『太極符印』。
「核融合による爆発で、今度こそ跡形もなく、吹き飛べぃぃいいい!!!」
思慮深さと相反するように、どこまでも悪ノリする癖がある藤崎。
その形相はさながら、絶体絶命の善玉に苛烈な攻撃を仕掛けて狂喜する典型的悪玉像そのものだった。

     「 デ ィ オ ガ ・ グ ラ ビ ド ン !!! 」

両者の中間の空中で激突する、全てを消し飛ばす核爆発と、それを飲み込もうとするマイクロブラックホール。
激しく明滅し、押し合う二つの超破壊的エネルギー。しかし、その天秤は……   「で…でかい……ワシが…押しまける……なんという力……!!なぜ…なぜだ……」藤崎は、雷句という男を見誤っていた。
雷句の最大の力。それは巧みに戦術を操る頭脳でも、肉体の頑健さでも、ましてや術の威力でもない……
それは、仲間のために、自分以外の誰かのためになら、どこまでも強くなっていく心の強さ……!!

    ゴ ギ ャ  ア  ア  ア  ア  ア ア ア ア アアアアア !!!!!  

「ぐぁあああああああああああああああああああああ!!!!」  
力の均衡が崩れ、核爆発とマイクロブラックホール、二つの破壊的エネルギーが、まとめて藤崎に炸裂する。
藤崎の断末魔は、巨大な破壊の奔流に飲み込まれて、かき消された。     
148作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 00:06:33 ID:dAJsGead0
フ、フジリュ―――ッ!!

リック、核爆発喰らって生きてんのかよw
149148:2005/05/06(金) 00:10:57 ID:NDvVSbxK0
あれ、IDいっしょだ?
150作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 00:13:49 ID:/SoWn7PG0
(つд・ ) 怪奇千万
151作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 00:42:29 ID:ERjYk34z0
>>148
最近、IDの算出方法か何かが変わったらしくて
IDがカブることが増えてるらしいよ。
大規模OFF板の花束デモスレで一回見たことある。
152作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 01:04:22 ID:DvT1TQ120
>>150
十五郎?
153150:2005/05/06(金) 01:15:36 ID:/SoWn7PG0
ああ、小学館の珍兵器ですか
学園編以外での作者の出番は期待しないで下さいね

ヨクサルvs森川続きマダー?
フジリューは悪役ヅラが良く似合う
154作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 02:10:22 ID:WtZkpcl40
フジリューといい岸本といい、どっちが主人公チームだか分らんのw
155作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 02:22:01 ID:xqNt8qS20
主役級が何故か軒並み排他されてるからな、えなりチーム。
逆にガンサンは異様なまでの増強。
これ全部流れの中での意図無しの現象なんだから凄いな。
…つーかガンガンチームってこんなんばっかだ毎回。
156アウェイキング・デイ:2005/05/06(金) 03:14:43 ID:/SoWn7PG0
>>30 >>130 22部548)

           【集英社地下室】
鳥嶋「荒木と武井が死に、矢吹達は十人衆を再結成するそうだ」

鳥嶋は誰もいない薄気味悪い地下室で一人喋ってた

鳥嶋「荒木とキユが居れば、矢吹なんて恐怖の対象にならなかったはずだ。」
鳥嶋「しかし荒木は何を思ったか自殺、キユは矢吹を征伐しに行ったきり戻ってこない。」
鳥嶋「奴等を復活させるしかないのか?」
鳥嶋「奴等を復活させても完全に我々に従ってくれるとは限らない
   奴等はモンスターだ。」
鳥嶋は自問自答を続ける。
鳥嶋は地下室の内部を進みだし、ホコリが掛かった五体のカプセルを見つけた

鳥嶋「お前達の封印を解く、何もしないで矢吹達に屈するよりかはマシだ」
鳥嶋「ジャンプ黄金の五聖人ッ!車田正美、北条司、原哲夫、宮下あきら、こせきこうじよ!」
鳥嶋はカプセルのロックを外す
鳥嶋「復活した、奴等が」
五人は勢い良くカプセルを破壊し外に出て
鳥嶋「ギャーーーーーーーーーー」
鳥嶋は殺された
車田、北条、原、宮下、こせき「敗北を知りたい。」
五人はバラバラに散って行った

(2部474より)

          ****  ****  ****  ****

畑 「そうなんだ。キユ君は昔の記憶がないんだね。
  でもそんなに気にする事はないよ。大事なのは昔より今だって言うじゃない」
157アウェイキング・デイ:2005/05/06(金) 03:16:46 ID:/SoWn7PG0
サッカー後半スタート後、矢吹艦地下中央区天蓋展望室の廊下。
現在矢吹がサッカー観戦中のプライベートルームの他、久米田が消えた特別執務室や、
執事にメイドといった矢吹付きの従業員詰め所などがある部分。
強化ガラスになった廊下の一部分から足元の試合場を眺めながら、
迷子の少年キユと執事の畑は、お菓子を食べながらサッカー見物していた。

ハーフタイム中に2人は出逢い、同じ椅子に並んで座る頃には、
畑はキユと『おともだち』になっていた。これはキユが大会決勝抽選会直前に、
やはり迷子だった裏御伽副将にわのと出逢っていた事にも原因がある。
にわの以上に無垢でぽわわんな畑の、何の疑いも持たぬ笑顔と、
一緒に試合を見ましょうと言いながら差し出された手。

 ≪ボクとキミとでシェイクハ〜ンドすればトモダチさっ!≫

副将の間抜けた台詞を憶えていたかどうかは不明だが、
ともかく少年はなんとなく畑の手を握り返し、彼らはお互い自己紹介をした。
 「ぼくはキユだよ。知ってる?」
 「あ、えっとごめんなさい。ボク師匠以外の漫画家あまり知らないんです。畑健二郎と言います」
 「そっか・・・そうなんだ。ふうん。ねえ、ポッキー食べる?」
 「うわ〜ありがとうキユ先生」
 「キユでいいよ」
持ち込んだお菓子やジュース類は、2人で仲良く分け合った。

スタジアムのある地点から上空100mの地点。
ここから見えるサッカーグラウンドはとても小さく、人がゴマ粒のよう。
しかしそこは若くてもクリエイター。彼らは後半開始後も、
肉眼でガンサンvsえなりの超絶サッカーを見物している。
客席と違い、同じ次元の位相にあるこの天蓋部分。
芝の上の熱気がダイレクトに伝わり、キユはとても楽しそうな顔。

 「見てキユ君!グラウンドが切り裂かれて崖ができちゃったよ!」
 「あ、あれはエヴァンゲリオンだね。すごいな、あんなのもサッカーするんだ」
158アウェイキング・デイ:2005/05/06(金) 03:17:50 ID:/SoWn7PG0
二転三転する試合場。爆発や破壊光にも事欠かず、お祭り会場のよう。
ニコニコしながらそれらを眺めるキユはふと、ぽつりと小さく呟いた。
 「・・・ぼくもサッカーしたいなあ。
 フットサルでもいいよ。フットサルはいいよね、
 フットサルをやっていると、いやなことが全部忘れられるよ」

足許のサッカーボールを爪先で転がすキユ。
その瞳はどこか寂しく、畑はつい少年に深入りしてしまう。
 「そうだね、嫌な事があったら忘れてしまうのが一番だね。
 ボクはあまりスポーツはやった事がないけど、今度一緒に遊ぼうよ、パーッと!」

えへへーといった顔で後ろ頭を掻きながら笑いかける畑にキユは。
 「・・・だから忘れちゃったのかなあ。
 ぼくは昔の事を全然思い出せないんだ。名前だって他の人に教えてもらったよ。
 ぼくを知ってる人はいる。でもぼくは誰も知らないんだ。
 みんなには言わないけど、それはとてもいやなことなんだ。
 でももし、ぼくが昔を忘れた理由が、ぼくの昔そのものが<嫌な事>だったとしたら。
 それを思い出せないのは当然のことなんだろうな」

淡々と記憶喪失である自身を振り返るキユ。
その言葉に感情らしき成分は、あまり含まれていなかった。
記憶がない以上どこまで推測を重ねても、
あくまでも≪他人事≫なのだろう。
そこまで読みきる事の出来ない、10年前の惨劇を知らない男は、
凡百の受け答えしかできなかった。
 「そうなんだ。キユ君は昔の記憶がないんだね。
 でもそんなに気にする事はないよ。大事なのは昔より今だって言うじゃない」

あっけらかんとした畑の声。思わずきょとんとするキユ。
 「うーん、そうかな。そんなもんなのかなぁ。
 まあ嫌な事を無理して思い出してもしょうがないもんねえ・・・」
得心がいったらしく、キユは何個目かのお菓子袋を開け始めた。
159アウェイキング・デイ:2005/05/06(金) 03:19:49 ID:/SoWn7PG0
 「あ、そういえば従業員詰め所の冷蔵庫にアイスクリームがあるよ。食べる?」
ご馳走になってばかりでは何なのでと、畑が回廊の奥を指差して笑う。
食べるとの返事をしようと口を開けたキユだったが、
廊下にも入るサッカー中継のアナウンスのある一言で、
笑顔だったキユがふっと怪訝な顔つきになり、畑は思わず首を傾げる。
 「どうしたのキユ君?アイスは嫌いだった?」
 「・・・ううん、なんとなくフットサルがしたくなっただけ」
 「?」

きっかけは“解王”克の弁舌。普通の人には特別な意味のない一単語。

 『ピンチだ藤原カムイ!ガンガンの≪NUMBER10≫は果たして究極奥義・天舞宝輪を破れるのか!―――』

       キユの世界が ―――― キユの時間が ――――― 動き始めた。

                      ≪NUMBER10≫

目深に被っている帽子をさらに下げ、額を完全に隠すキユ。
隣で彼を気にかけている畑に愛想をくれてやる余裕もなく。
 「・・・ナンバー・・・10・・・」僅かに唇を動かし言葉を紡ぐ。
2002年5月のある暑い日の、10が0になったあの熱過ぎた一日が、薄靄の向こうに仄見える。

   彼が忘れたのか捨て去ったのか
   そもそも実話なのかさえわからない
   一部の者に≪キユドライブ≫と呼ばれる
   集英社半径10km大爆発事件当日の記憶と記録――

      人間兵器キユ覚醒プログラム 「NUMBER10」 (2部735)

あの日、キユ暴走をその身で止め相討ちになった者・鳥山。
キユ封印ののちそのエネルギーや細胞を利用し現在の地位を築いた者・矢吹。
鳥山はキユ――KIYU――という悪魔誕生の原因でもあるという。(2部560・23部464)
160アウェイキング・デイ:2005/05/06(金) 03:21:36 ID:/SoWn7PG0
そしてもうひとり―――鳥山と最も縁深い漫画編集の長が、実はキユに深く絡んでいる事を、
少年が突如脳に疾った記憶の電流で、記憶として甦らせたのと同時――――




             カ ッ !!!!!!!!!!!




変態貞本と車田が、彼らのちょうど真下で臨界突破し、
十字型の光柱が白い軌跡を残しながら展望室廊下を突き抜けた!!




        ―――――    あ 少しだけ 思い出した    ―――――

  ―――――    ぼくは つきぬけるチカラなんか いらなかったんだ    ―――――

 ―――――    頼まれたんだ このチカラで 集英社をたすけてほしいと    ―――――

      ―――――     違うよ ぼくがほしかったのは    ―――――

          ―――――     ・・・・・・    ―――――




破壊エネルギーと共に押し上げられたうねるような風が、上空へと吹き抜ける。
風は螺旋を描きながら、矢吹艦中央部分にぽっかり開いた十字の巨大な穴から外へと出て行った。
161作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 06:28:24 ID:grAzm6uG0
なんかよう分からんが、とりあえず
>「あ、えっとごめんなさい。ボク師匠以外の漫画家あまり知らないんです。
から妄想した二人の閉鎖的な関係にハァハァしとく。


>>155
てか今いない主役級なんて荒木くらいだろ。
オリジナルメンバーが抜けて助っ人が多いのは両チーム共通。
陽一や今井がいるのにえなりに補強が足りないってこともないだろうし
むしろ、えなりの数人が敵役似合い過ぎなのが問題なんではないだろうか。

これで板垣までいたら完全にえなり悪役だったな・・・
162作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 07:59:00 ID:OCdzyQhU0
個人的には板垣vsUMA子が見たかったような。
163WILD BUNCH:2005/05/06(金) 12:09:28 ID:313PsJYT0
>>136 >>89 2部703他色々)


柔らかな風が公園に戻って来た。
色を失っていた桜の花弁が生気を取り戻しつつある。
悪鬼が去り、賭博師が去った。時の針が再び世界を刻み始めた―――


 「もぉー・・・川原せんせー、そんな身体でどこ行くの?」
ため息をつくような声で、胸に握り拳を置きながら。
 「どこって・・・また寝るのさ。悪ぃかよ」
にわのは眼前の重傷者に話しかけたが、相手は無愛想な顔で眠そうに周囲の木を物色していた。

文字通り全身が鮮血に彩られた姿の川原は、
細い目を腫れたまぶたと乾いてこびりついた血で覆いながら、
だるそうにあくびをひとつすると、手頃な生き残りの桜の根元に座りもたれる。
それは板垣に中断された午睡を再開するものであった。しかし。

 「寝るってあーた・・・  ・・・」
呆れた様子だったにわのの表情が、満足そうな川原の寝顔を見る間に青白く変化する。
満身創痍、剥き出しの裂傷、無数の骨折、内腑の破壊。それらを放置したまま、
すでに寝息を立てはじめている川原の姿に桜散る美しき光景が混じり合い、
それはどこをどう見ても・・・冥土の旅の一里塚。
有名な句が脳内にポックリ浮かんできた。

    願はくは 花の下にて われ死なん
    その如月の 望月のころ (西行法師/小倉百人一首)

 「・・・わぁー!!バカバカ、せんせーのおバカ!
 寝たらダメー!起きろぉー!寝たら死ぬぞぉぉ!!」
慌てて川原のいる木の幹にかけつけるが、そこは悲しい女幽霊(23部483参照)。
ぺしぺしふにゃふにゃ川原の頬を引っぱたくが、相手は全く反応なし。
164WILD BUNCH:2005/05/06(金) 12:10:29 ID:313PsJYT0
 「あーもう起きてよ!川原せんせー目を覚ましてよ!
 起きないと嫌がらせで泣くぞ、もし死んだらあることないこと、
 裏御伽のみんなに話してセンセの人物像を捏造しちまうぞ!
 それでいいのかぁ!起きろバカぁ!
 この自己中!嘘つき!わがまま!ごーまん!むっつり!あとえーっと」
 「うるせぇ!!キンキン響くんだよあんたの声は!!」

・・・明らかに川原とは違う人物の声が、松江名の背後から発せられた。
道着の懐から治療道具を捜していた、松江名が振り向くとそこには。
 「岡村先生!無事でしたか・・・おや」
板垣に一撃で葬られ、ビルの側面にへばりついていた岡村賢二が、
どうやら合流したらしい、裏御伽大将・本宮の左肩を借りてこちらに向かっていた。
 「本宮先生も・・・ちょうどいいところに」

 「おう書生先生か。さっきまで黒服が邪魔して公園に入れなくてよ。
 岡村に聞いたが、あの板垣と川原が仕合ったって?
 護送車みてえなのに、ごつい男が担架で担ぎこまれるのは見たけどよ」
ややぐったりした岡村の身体を引きずりながら、本宮は松江名の傍に到着した。
彼らはC決勝会場の魔の島で、選手と審判だった仲だ。
そして本宮もやはり、なんとなく松江名に対して腰が低い。
不思議なものである。

 「松江名さんよ・・・あいつは、川原はどうなった?」
岡村が不安そうな声を出す。おおよそ彼には似合わぬ声質と表情。
その質問に、松江名は静かな微笑みと、桜の下の眠れる修羅を親指で示した答えた。
 「・・・ハハ、やりやがったかよ。やっぱとんでもねえ男だな・・・」
震え気味の笑みで、瞳孔を光らせながら呟く岡村。
これ以上は声にならず、気が抜けた彼は本宮への負担を増やしてしまう。

 「川原先生の基準では、どうやら引き分けだそうですがね。
 それはともかく・・・彼は良い友人を多数お持ちのようで」
くたびれた岡村を支え直した本宮が、語りながらにこりと微笑む松江名の視線を追うと。
165WILD BUNCH:2005/05/06(金) 12:12:15 ID:313PsJYT0
 「大丈夫か川原!鬼の手ヒーリング最大出力だ、行くぞ真倉!」
頭部から一対の手を飛び出させた岡野が、川原の傷口に鬼の手を当て霊波を送り、
 「ガー!(おうおう色男が台無しじゃねえか。ざまあみろ)」
岡野の首から下の肉体担当の相方・真倉が、悪態をつきながら岡野の補助に回る。

 「ちょっと牛チチ!何図々しくヒロインぶってるワケ!?退きなさいよコンソメ打つから」
先の勝負で使用したドーピングスープ入りの注射器を、川原の内肘に当てる澤井が、
 「コ、コンソメ!?澤井クンそんなけったいなモン捨てなさい!ぺっぺっ」
慌てふためくにわのが川原の肘周辺を、手で払って必死に守っている。

 「こらチビ、まだヒロイン争奪杯引きずってんのか?図々しいのはどっちだよ!」
木の後ろから覗く佐渡川、青筋立てながら澤井の後頭部に全力で膝蹴りし、
 「おい・・・お前らなあ・・・ったく・・・」
あまりの騒がしさに目を覚ました川原が、本気で鬱陶しそうな顔と声で呟いた。

控え室からそのまま飛び出したような光景を見やった本宮は、
 「へっ、どいつもこいつも世話焼きばかりだぜ」
とニヤニヤしながら、歩きの遅い岡村を米俵のように軽々と、
肩へ担ぎ直して一緒に輪の中へ入っていった。


 「むー、人数が多すぎて追い出されたモン」
割を食って人ゴミからはじき出された、役に立たない幽霊娘。
でもまあ川原も何とか助かりそうで、運が良かったなあと思ったが、
そういやそもそもメンバー全員で駆けつけてきて、
どこで情報知ったのかな〜とかぼんやり考えていると、
松江名の隣に“にわのまこと”が突っ立っている。若い男の姿と、マスクを外した素顔で。
 「あれ?わー!ボクがいるー!
 君がいるのにボクがいるー!じゃあボクは誰ー!?」

 「あわわ落ち着いてください先生!ちょっと身体をお借りしてるんです!」
にわのの肉体を一時レンタル中の、えなり二世が叫び声にびくついた。
166WILD BUNCH:2005/05/06(金) 12:13:21 ID:313PsJYT0
 「はー大体事情はつかめましたモン。いいでしょー、
 サッカー用にこの身体、お礼に無料でお貸ししましょう。ただーし!
 1回でもヘマやらかしたら即刻退場&ボディ返却していただきます!
 ボクかて第二試合やらにゃあかんのですから・・・」
緊迫感のない顔でえなりと話すにわの。
2人の間にいた松江名がふとした思いを口にする。
 「そういえば、にわの先生は元バンチ作家でしたよね。
 どうです?相手にとって不足はありませんか」

軽い質問だったが、聞いた先の幽霊は沈痛な面持ちになり。
 「・・・実はあんまりバンチの話は、したくないんですよね。
 原先生達は強いしとってもそんけーしてるけど、
 バンチ自体にはあまりいい思い出がないし・・・それに、
 10年前にバンチが一旦矢吹君の圧力で廃刊した(13部188)時にはもう、
 バンチ主力のいわゆる黄金五聖人は殆ど行方不明になってて、
 何もしてくれなかった・・・」
眉をひそめながら意外な言葉を返してきたので、
松江名とえなりは思わず顔を見合わせた。

 「ボクは2001年創立当初の参加メンバーでしたけど、
 やっぱあのメンツの中では浮いてましたし、力不足ですぐに首になりました。
 その後裏方で支えたり、色々がんばったんですけど・・・
 翌年5月の・・・東京大爆発で、ボクは瀕死の重傷を負い・・・」
徐々に声が細くなるにわの。
やはり当時の記憶に入った亀裂は癒えていないのだ。

 「・・・やっと治った頃には矢吹君支配下の新生バンチになってて、
 それも数年後には気がついたら潰れて・・・みんなは散り散り。
 ボクはあらゆるルートから元バンチ関係者連絡網を作ったけど、
 バンチチームの五聖人たちは、これを必要としてくれるかなって・・・。
 あはは、怖くて未だ、聞けないんですよ。彼らに」
にわのはえなりのズボンから携帯電話を取り出し苦笑いした。
167WILD BUNCH:2005/05/06(金) 12:15:22 ID:313PsJYT0
 「確かに五聖人の方たちってちょっと怖いですよね〜。
 北条先生には大事なもの(冨樫ファイル)を盗まれたし、
 原先生には勢いで手合わせお願いしたらマジで死にかけたし」
えなりは彼ら5人、及び矢吹に殺されたこせきこうじから、
聖人の座を継承した荒木と縁深い男である。主人公特権であろう。

 「強すぎる漫画家は不幸だと、ボクは最近思うようになったモン・・・」
 「そんな面もあるかもしれませんね。そういえば、
 宮下先生が変なお酒で凶悪化して車田先生と千日戦争しましたし。
 僕が助けを呼ぶ間に話が進んだみたいですが結局どうなったやら」
 「・・・ヘ、ヘンなお酒ってぇ・・・まーさーかー」
話し込む間に顔面蒼白、半透明度が増したにわの。
追い討ちをかけるように松江名が。
 「えなり君!そのお酒は不思議なとっくり酒の事だね?
 私は見たのだよ、別府の温泉宿【松椿】にて、あのとっくりが宙に浮き、
 大怪我で危険な状態だった森田先生をたぶらかすところを!」
 「もももも森やんがっ!?ああイヤぁーやーめーてー」
森田はにわのの親友のひとり。幽霊のくせに冷や汗出しまくっている。
 
「そして別府を“鬼岩城”で蹂躪した魔族の一派がその酒を欲しているのです!
 ・・・容器が意志を持ち、力を必要とする者に甘言を呈し魔道に貶め、
 多くの強き者を妖術で捕縛し酒のダシにし、それを呑む者に、
 犠牲者から吸い出したエナジーを与える・・・実に恐ろしい道具です。
 最初にあのとっくりを造り、求めた者は一体誰・・・おや?にわの先生どうしました」
松江名が熱弁を止めると、成仏寸前の幽霊娘が桜花の小山に突っ伏し倒れ込んだ。
 「……ゴメンナサイ…アレモソレモ…ゼンブボクノセイナンデスゥ……」

いわゆる『強者のエキス』の件は、鳥山明に任せたとの話を聞き、
事の原因・にわのは自分の手に余りまくる事変に改めて鬱になってしまう。
 「・・・じゃあ、ボクは自分にできる事をしますね・・・行こうかえなりクン・・・」
言伝とヒラマツの形見を松江名に託し、にわのはえなりの付き添いで、
空知の待つC控え室に戻る事にした。一回だけ川原たちを振り返り、静かに公園を去った。
168作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 13:10:43 ID:5OvmRLL90
にわの追い討ちありすぎwwww
好きだなあ、裏御伽のこーゆー家族っぽい関係。

しかし、ついにキユ本人が表舞台に出る・・・のか?ドキドキ(゚Д゚≡゚Д゚)
169傲りと誇り〜血花狂咲〜:2005/05/06(金) 16:47:16 ID:fabQWnbv0
24部442より

「あ、あの、しゅ、主任!」
「何だ!?どうしたぁ!?」
非常警報の雨の中を、慌しく走り抜ける白衣が二人。
実験セクションから離れた廊下を必死に遁走しながら、片割れが上司に問うた。
「な、なんつーか、ゆ、揺れてまセン?」
「かもな!!」
叫び返す。徐々に消え失せていく余裕は、辛うじて会話できる位には在った。
「まあ、当然だろうよぉ、あんなモン起動させちまってんだからよぉッ!!」
悲鳴に近い二の句。肉体的な疲労は既に知覚の埒外にある。
二人を突き動かすのは、強圧的なストレスのみ。
走らなければ、死ぬ。それを本能で察知しているから。
格下白衣の感じた揺れが、今も猶、背中の向こうで激化しているから。
170傲りと誇り〜血花狂咲〜:2005/05/06(金) 16:48:38 ID:fabQWnbv0

    ズ  ズ  ン

――――――ああ、あれは脊髄にいったな・・・・・・。
醒めた目で、気だるげにそう思った。
空気を駆け鼓膜を震わせる轟音を感じて、ゆるりと構えて。
その全身は再び異形の鎧を殖装していた。
理由はシンプル。
着込んだスーツは、日本円に換算すれば5ケタを楽に超越、6ケタ目が2ないし3という高級品。
さらに自身かなり気に入っている一着のため、
もし汚れでもすれば、精神衛生上非常に好ましくない。空前絶後の危機と言ってもいい。
つまりは―――――今現在、そういった事態が展開していることになる。

    ズ  ズ  ン

金を掛けて拵えた特殊合金の壁や床が、轟音と共に小さな擂り鉢様にひしゃげ、その中央に血痕の赤花を咲かせる。
猛り狂う自慢の神獣が、その豪腕で壁を穿ち、その俊足で床を踏み砕き、その鋭刃で天地を斬り刻む。
その全ての暴威の収束点は、他でもない、たった一人の華奢な少女。
嵐の中の木の葉の如くに、叩き付けられ、切り裂かれ、蹴り飛ばされて壁を撥ねる。
狂った笑みを浮かべる悪魔に、ただ暴力を注がれる少女。
破壊される空間に、骨の破砕と肉の圧壊の協奏曲が添えられる。
もはや最悪趣味の冗談としか思えない。
(或いは、今世紀最凶の悪夢、とでも言った所か)
そうしろと命じたのは自分でありながら、他人事のような調子で淡々と感想を述べる。
下した命令はこれまたシンプル。
『動かなくなるまで攻撃しろ』、ただそれだけ。
凶気の権化と化した皆川が、巣田の頭を摑んで吊るし上げ、そのまま握り潰そうと力を込める。
為すがままの少女は、神経系さえも害され動けない。
そして高屋は、猶も警戒を解かずにいた。
掌の砂時計は、既に半分近く落ちきっている。
171作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 23:16:11 ID:xqNt8qS20
>161
鳥山、荒木、板垣、車田、宮下、尾田がそれぞれ理由はあれどゲーム開始時に抜けてるだろうが。
ガンガンチーム抜けたの渡辺ぐらいだろ?
補強された面子の顔ぶれと抜けた顔ぶれを比べればガンガン有利の状況は明らか。
172作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 23:18:51 ID:/SoWn7PG0
時々でいいから武i
173作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 23:19:03 ID:xqNt8qS20
つーかだからといってそれが全部意図的な状況じゃないことはわかってるし、煽ろうとかそういう気ではない。
なんかそんな感じの書き込みになってしまったので一応。
話自体は楽しんでるんだけど、なんだかなぁ…ってふと思うことがあるだけなんで。
174作者の都合により名無しです:2005/05/07(土) 00:24:07 ID:Ndq9/kGE0
逆境9も映画化だしはっちゃけてくれねぇかな?
175≪NUMBER10≫:2005/05/07(土) 04:58:39 ID:840TXIii0
>>160 他)


KIYUとは破滅を表す忌むべき四文字であり。
KIYUとはある一漫画家の名前<ペンネーム>であり。

KIYUとは10年前に東京の一角を滅ぼした悪魔の名前であり。
KIYUとはその悪魔を崇拝する、突き抜けし者たちの総称である。

そしてKIYUとは、矢吹健太朗が漫画界を牛耳り支配するために、
遺伝子レベルまで研究し利用したエネルギーソースの名でもあった。



              …… …… ……
 


 「・・・ううん・・・」
無限の閃光に目を灼かれ、やっと視力を取り戻したキユ少年が見たものは、
断面が蒸発しはみ出した骨格も残らない、展望台廊下のさっぱりした輪切り図と、
断面の端から見える地上100メートルの世界そして、
廊下の真ん中に座り込む少年を全身で庇うように、
覆い被さった執事服の男の炭化した背中だった。

 「・・・健二郎くん」
キユは自分を抱きしめたまま動かない畑に、抑揚のない声をかける。

 「・・・あ、キ、キユ君・・・だいじょ・・・ぶ・・・?」
 「君の方がよっぽど『だいじょうぶ?』だと思うよ」
畑の痛々しい背中に触れたキユの右手の指は、一本も動かす事が出来ない。
あまりに一瞬だったためか、畑は痛みを感じていないようだ。
176≪NUMBER10≫:2005/05/07(土) 04:59:52 ID:840TXIii0
「えへへ・・・ボクこれでも割と・・・頑丈・・・それより」
力ない笑みを浮かべる畑は、衝撃で帽子が吹き飛ばされたキユの額から、
飛んだ破片で切った傷からの血が伝い落ちている事に気づき、
ぎこちなくポケットからハンカチを出してキユの額を拭こうと腕を伸ばす。
 「・・・いいよ、そんなことしなくても」
畑の意図に気づいたキユは身を硬くして背を仰け反らす。
そして畑を支えていない左手で額を覆い隠す。
しかし肝心の<見せたくないもの>はうまく隠し切れず、
畑はそれに気づいてしまう。
 「あれ・・・キユ君のおでこに・・・<10>って数字が光って・・・」

言われた瞬間、キユは咄嗟に大きく身をよじり畑から離れようとする。
その際畑の焼け焦げた後ろ半分の身体も軋んでしまい、
ボロボロと体組織だったものが背中や足腰から崩れ落ちた。
しまった、と僅かに眉をひそめるキユ。
そんな彼に対し、畑は――――

 「ごめん・・・それが何かわからないけど・・・気にしてるん・・・だ・・・。
 気づかなくてごめ・・・だいじょうぶ・・・かっこいいよ、それ・・・」

今までと変わらない柔らかな笑みで、<10>の文字に人差し指をすっと乗せる。
 「ほら、キユ君・・・ケガをしているよ・・・
 ボクがおまじない・・・してあ・・・げる・・・

  いたいの いたいの とんでけー ・・・☆

 ・・・ほらもう・・・痛く・・・ない・・・」

畑の人差し指がキユの額を下からやさしくなぞり、遥か上空へ痛みを飛ばすモーション。
何をされたのか理解できない、表情の作れないキユ。
そんな少年にもう一度微笑みかけ、畑はそこで力尽く。
糸の切れたあやつり人形のようにくしゃりと廊下に横たわった。
177≪NUMBER10≫:2005/05/07(土) 05:01:23 ID:840TXIii0
彼らのすぐ隣には奈落へ繋がる大穴があり、
今だっていつ足許の廊下部分が崩れ出すかもわからない。
しかしキユは動かなかった。
崩れ落ちた畑の肩を抱えて動かなかった。
なぜ動かないのか、キユは自分にもわからなかった。

 「痛くないよ」
誰に聞かせるでもなく、ぼそりと声を出す少年。
今の<おまじない>は“面白そう”だなと、脳のどこかで考えていた。
痛みを外部に追い出す呪文か何かだろうと認識する。

つきぬけろ。
ツキヌケロ。

キユは物言わぬ畑の背中に手指を押し当て、彼に内包するチカラを呼び覚ます。
指先が白く光り出し、キユは足許から浮き出るような高揚感に包まれる。
そして――――

 「―――いたいのいたいのとんでいけ!
         メディカル・オブ・ラブで  突 き 抜 け ろ  !! 」

暖かく白い光球がキユと畑をゆっくりと包み込み、刹那、
ドシュッと音を立てて建物上方の、青空見える大穴へと飛び去っていった。

光が去った後には、背中の肉が生まれ変わり修復された、
服のみ破損した畑がキユの腕の中ですやすやと眠っていた。

 「・・・こんな使い方も、できるんだ。
 そうか・・・そうだったのか・・・」
自分の手の平をしげしげと眺めながら、キユはふと、
先ほど一瞬だけ取り戻した記憶のパーツを心の内から取り出した。
あるひとりの、眉の細い漫画編集の顔を、ぼんやりとだが思い出したのだ。
178≪NUMBER10≫:2005/05/07(土) 05:02:03 ID:840TXIii0
 「ぼくは漫画を描きたかっただけなんだ。
 だけどぼくには違うチカラばかり増えていくんだ。
 そしてどこかの手術室でぼくは・・・何人もの人に囲まれて・・・
 気がついたら、ぼくの額には数字が浮かんでいた」

熱病にうかされたかのような、キユの独白。
細い細い記憶の糸を、頼りなげに紐解いてゆく。
それはとても危険な行為であった。

 「ぼくは自分がとても怖かった。
 誰かに助けてもらおうと、ジャンプの巻末にメッセージをたくさん込めた。
 でも編集部はそれに気づいて、ほとんど通してくれなかった。
 だけど・・・ひとりだけいたんだ。
 ぼくにジャンプ漫画家として<使命>を与えてくれた人が、いたんだ。
 10年前・・・漫画界の支配を企むひとりの漫画家がいるって。
 そいつが力を得て、世界をねじ曲げるのを防ぐための存在がぼくなんだって。
 そいつを<征伐>するのがぼくの・・・でも」

これ以上は、思い出せない。思い出したくない。
状況から察するに、その使命は現在も果たされていないから。

キユの脳裏に渦巻く奇妙な感情、それは『不安感』というものだと、
少年は知らない。記憶のパーツが無造作に転がっている。しかし、
その欠片ひとつひとつがとてつもなく<重い>なと、
感じたのだろうキユは、やがて無意識に思考回路を閉じていった。
身の保全のためか・・・。

ふと。
静かになった回廊の奥から聞こえる軍靴の音。
白いマントをなびかせ、こちらへ向かってくる軍服姿の男。
腰にサーベルを差し、堂々とした立ち振る舞い。足許には黒い仔猫(クロ=横内)。
男はキユと向かい合う形で足を止め、穏やかな声で語りかけてきた。
179≪NUMBER10≫:2005/05/07(土) 05:03:37 ID:840TXIii0
「久しぶり・・・といっても10日そこそこぶりだな。
 10年分の、冬眠カプセルでの寝心地はどうだったかねと、
 一度聞いてみたかったのだよ。・・・おかえり、キユ」
ふてぶてしくも悠然と声をかけるこの男。誰在ろう――――矢吹健太朗。

 「・・・こんにちわ。
 気にしないでよ、迷子で来ちゃっただけだから。すぐ、帰るよ」

こんこんと眠る畑を身体から引っぺがし、近くの壁にもたれかけさせ。
キユは服の埃を払うと、飛ばされた帽子を拾うためゆっくり立ち上がった。

 「そうか、それは残念だな。実は今からティータイムなのだが、
 そこの畑の淹れた紅茶は美味いぞ。せっかくだ、2人、いや3人と1匹で、
 サッカーを見ながら私の部屋でお茶にしようじゃないか。
 美味しいと評判の店からリンゴのタルトを取り寄せたし―――」

矢吹とキユの間は巨大な穴で隔たれ、2人は8メートルほど離れている。
しかし矢吹はふわりと宙に浮かび、しゃべりながら穴を飛び越え距離を縮めてきた。
空飛ぶ術を知らぬキユ。飛び降りるにはあまりに高すぎる高地。
それを知る矢吹が近づいてくる。再び少年を捕らえ、自軍の補給物資とするために。
―――キユの決断は一瞬だった。銃を撃つように自分の足許を指差し、宣言。
 「 Live Like A Rocket!! ぼくの身体、矢吹艦上空に突き抜けろ!!」

        “   ド    ン   !!   ”
        
空気を圧迫する音のみ回廊に残し、キユは矢吹艦一の高層ビルより上の空にふわりと静止した。
 (ぼくのチカラは多種多様な応用が利くんだ。面白いな。色々試してみよう)
 
 「・・・空に憧れ飛んだ人たちの多くは地に落ち無残に死んだ。
 けどそれは彼らが大人でありコドモであるとゆう事の誇りだ。
 ぼくは自分の意志で空を飛びたい。失った記憶を取り戻し、先に進みたい」
それはこれまで周囲に流されてきた少年の、真の目覚めの瞬間だった。そして矢吹は―――――。
180作者の都合により名無しです:2005/05/07(土) 06:21:30 ID:cHbGSnhp0
久しぶり健様
畑キュンは健気やの

てか、もしかしてKIYU善玉化フラグ?
181作者の都合により名無しです:2005/05/07(土) 07:39:25 ID:54iwP7yt0
いや、もとから知欠が悪だしね、この話。敵対・・・てか対応するほうが善に見えるのはしゃあなかろ。
それに善ったって色々あるよ。例えば妖魔王様だって本人達には『善』だったはず。

でも、このキユはいいなあ。キャラ立ってきたね。
畑キュンがまた萌えるし。いい子だ。
ところで、横内はまだ未改造?w
182作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 02:04:43 ID:NGJtktM70
おいおい、それじゃ知欠先生一人が絶対悪みたいじゃないか
彼もまた信念を持ち自分を正義と信じきっとるアホの一人だぞ
183作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 02:25:48 ID:EPk7TQvT0
まあ今は蒼天袁紹モードだが、昔は只の悪人だったから。
つーか書く人間によって主張や性格が一貫性無いので人格分析とか無理。
184作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 02:29:23 ID:EPk7TQvT0
ああ、ちなみに妖魔王は間違っても「善」ではない。
妖魔王側の何割かはそう思ってるかも知れないが、奴自身は善とか悪とか超越した混沌っていう印象。
強いて言うなら無邪気か。
185作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 02:46:50 ID:NGJtktM70
エトセトラとか見ると、むしろ帰還前の中期知欠先生が一番善良だったような気がする
迷いや、決して簡単に悪と断じられない信念がかいま見えて、なかなか面白かったし
でもあれ時系列でいうと一番最初なんだよな
186死地での遭遇:2005/05/08(日) 03:03:52 ID:J4ORzrn00
関連スレ(>39 23部403より)

荒川弘は、ふと目を覚ました。
その目に、無機質な通路に縁取られるように、血のように赤い空が見えた。
荒川はがばっと体を起こしかけた。途端、体のあちこちに激痛が跳ね、慌てて体をもとに戻した。
それで、自分が、毛布を何枚か重ねて作った簡易な寝床に寝ていることがわかった。
「――お、目が覚めたか」
誰かの声が、すぐそばでした。
荒川はなお荒い自分の息に気づきながらも、声の主を見た。
旅の吟遊詩人のような服装、帽子から溢れる金髪。
かつてのチームメイト、“バイオリン弾き”渡辺道明であった。
「あまり無理をするな。大怪我だからな。――だいぶうなされてたみたいだが、大丈夫か」
荒川はそれにきちんと答える余裕はなく、ただ、首を回して辺りを見た。
荒れ果てた通路だった。荒川が寝ているのは、その通路の壁際の一角であった。
天井は剥き出しで、夕焼けに染まりつつある空が、どこまでも広く見えた。
目覚める前まで空の一番高い場所にあった太陽が、もう西の空に沈み始めている。
「――へんね」
荒川は言った。とにかくそれで、声が出ることがわかった。
「あなたと来世を誓いあって、無理心中した覚えがない」
荒川は半ばぼんやりしたままだったのだが、渡辺は安堵したように息をつき、それから薄い唇をきゅっと曲げて、くく、と笑った。
「“ドクター”がそんな冗談を言うとは、珍しいな。ま、元気ではあるみたいだ。安心した」
それから、荒川の顔を見つめて付け足した。
「あんた、ずっと眠ってたんだぜ。もう――そうだな」
左手首の時計を見た。
「5時間近くになる」
5時間? 5時間。5時間って私はその前に――
荒川は目を見開いた。記憶と現在がかちっと噛み合い、今度こそ完全に目覚めた。
訊くべきことがあった。真っ先に。
「彼女は――伊藤真美は?」
荒川はそこまで言って、ごくっと唾を飲み込んだ。生きているのか?
渡辺が幾分不思議げに荒川を見て、それから、言った。
187死地での遭遇:2005/05/08(日) 03:05:36 ID:J4ORzrn00
「あの占い師みたいな格好した姉ちゃんか。それなら、あっちの方で寝てるぜ」
渡辺が指差した方を見ると、そこに同じような寝床の中で、すやすやと規則正しい寝息をたてる包帯だらけの伊藤真美の姿があった。
荒川は大きく息を吐き出した。自分たちは逃げ切ったのだ。
田口は、自分たちを見失い、追撃を断念したのだ、田口は――
荒川はそれで、また渡辺の顔をばっと見上げた。
「十二使徒の刺客がいるわ」
口調に焦燥感が混じっていた。
「ここはどこなの? なぜ、あなたがいるの? 気をつけないと危ないわ」
渡辺は毛布の外に出た荒川の右手にそっと触れた。
「落ち着け」
それから、訊いた。
「十二使徒って、あれか。かなり昔から、ゴッドハンドとバチバチやり合ってたって連中か。あんたが怪我したのは、そいつなのか?」
荒川は頷いた。
「元々はGUNG-HO-GUNSにいた手練よ。田口雅之っていう。そいつが私達に攻撃してきた」
「そうか――」
渡辺は小さく頷き、それから、続けた。
「ここのことは心配するな。俺たち、ここにはドクターと占い師の姉ちゃんを別にしても30人以上いる。他の連中がきちんと見張ってる」
荒川は眉を持ち上げた。30人?
「誰?」
訊くと同時に、彼らの姿を認識していた。
いたる場所で迷彩服を着込んだ兵士たちが銃を手にしたまま周囲を警戒している。
「“オメガ7”――ゴッドハンドの特殊部隊って、触れ込みの連中さ。暑苦しい奴らだが、腕は信頼できる」
荒川は少し、唇をなめた。渡辺がその表情を見て、言った。
「まあ、あんたにしてみれば、何が何だか分からんだろうが」
言葉を切り、煙草の煙を吐き出した。
「俺にも今の状況が、何が何だか分からん」
188作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 03:09:18 ID:J4ORzrn00
>>183
まあ、そのあたりが自身の作風を反映してるようで、ある意味オモロイ
189作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 03:14:22 ID:SIt759SU0
孤高の戦士キター
ドクターなんて愛称いつぶりだ

>183
ヤブーキ様はあの落ち着かなさがいいね
未だ容姿の描写が出てこないよぅ
190作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 03:26:23 ID:NGJtktM70
(この煙草とか吸って微妙にカッコいいのは誰だ)とか一瞬思ってしまってスマナイ愛の勇者
191雑記:2005/05/08(日) 11:07:57 ID:SIt759SU0
>>186
鹿児島の日の入り時間等を調べてみた。
どうやらこのルートの時刻は午後4時台半ばらしい
何気に一番進んでるー

タイムスケジュール↓

エリ8襲撃:朝7時 内藤復活:9時 荒川脱出:12時近く
エリ8変形も合わせて、平野周辺のメイン組もそろそろ昼近そう
192化け物(113/180):2005/05/08(日) 17:57:01 ID:l47uva2y0
>>110
胸に埋まった金色の矢を引き抜いた。
風穴が空いた胸元から、たちまち夥しい量の血がほとばしる。
留美子が激しく咳き込み、口からもごぼごぼと血を吐き出した。
白かったユニフォームが真っ赤に染まっている。
「フン……何故サンデーの大御所ともあろうアンタが、あんなパクリ漫画家を命がけで守ろうとするのか…? 罠にはめた張本人の俺にも理解できないな」
激しい出血に青ざめ、震えながら、留美子は言う。
「あの子は…いずれ大きな闇を切り開く光になる運命を持っているから……」
岸本はそれを聞いて、はき捨てる。
「何をバカな世迷言を。あんなクズ一人のために投げ出す程度の命なら…! それ相応にさっさと散れ!!」
叫ぶ口から日本刀が飛び出す。岸本が体内に口寄せした『草薙の剣』だ。
――ザン!!
左肩から胸元にかけて、袈裟がけに大きく切り裂かれた。冷たい刃が、女の体に食い込んでいく。
新たな流血の雨が、留美子の全身に降り注いだ。だが、岸本は刃の手ごたえに異変を感じ取る。
「何? 筋肉を硬直させて刃を固定した!?」
激しく動悸を繰り返しながら、留美子は岸本の腕を押さえ込む。
「押さえ込めば、なんとかなると思ったか、ババァ!」
岸本の背中から、一対の異形の翼が生えた。
「だが、残念だったなァ!」
「――!!」
広がった翼が羽ばたき、留美子ごと岸本の体を天蓋近くの高さまで持ち上げた。
「ああ!」
「くたばれや!」

     ――― 表  蓮  華  !!

高高度から、真っ逆さまに錐揉み急降下。竜巻のような捨て身の投げを打たれ、留美子は顔面から地面に激突、叩きつけられた。
193化け物(114/180):2005/05/08(日) 18:19:23 ID:l47uva2y0
「無様な! サンデーの女帝も、今やただの老害か! 笑えらあ!!」
這い蹲る留美子を、岸本が激しく嘲る。
「無様なのは……どちらかしら?」
「なに…?」
血と泥にまみれながら、震える体を無理やり起こすように立ち上がった留美子。
その口から投げつけられた言葉に、岸本が顔を険しくした。
「そんな醜い姿で、ただ荒れ狂う力に酔う……愚かな行為だわ」
そう――それはかつての自分と同じ。
しかし、自分はその地獄から救われた。
その自分が、こうして似たような運命を辿っている男と対峙しているのは、運命だろうか。
「気に入らねえな」
苛立ちながら、岸本が留美子の首をつかみ、片手で吊り上げる。
瞳を閉じて意識を集中し――再び、その瞳を見開いた!!
――キン!!
岸本の双眸に刻まれた、刃のごとき紋様。それが留美子の瞳に飛び込んできた瞬間――世界が色を変えた。
「――!?」
岸本最大の奥義、『万華鏡写輪眼』幻術――“月読”。
術者である岸本が築いた精神世界へ、相手を引きずりこみ、支配する術。
万華の瞳が導く、天壌無窮なる内界の奈落。そこは、空間・時間・質量・万物の理を掌握され、心魂を死滅に導く地獄。
「今から72時間……自分が犯した罪の中を彷徨え」
白と黒が反転した世界に、阿鼻叫喚の地獄が現出した。
留美子がこれまでに殺した者たち、奪った命たち、彼らが受けた苦痛と恐怖、それが一斉に留美子の心身を切り刻み、焼き焦がし、犯しつくし、なぶりまわした。

   ―――ああぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ……!!!

留美子の顔が激痛と恐怖に染まり、ものすさまじい表情を浮かべた。
聞くものの心胆を凍えさせるような、この世のものとも思えない叫びがほとばしる。
びくんびくん、と陸に打ちあがられた魚のように痙攣し、やがて白目を剥いて、がっくりと動かなくなった。
194化け物(115/180):2005/05/08(日) 18:33:18 ID:l47uva2y0
時間にすれば一瞬だが、その一瞬の間に留美子は三日間に及ぶ地獄の虜囚となった。
その筆舌に尽くしがたい魔牢獄は、留美子からあらゆる力を奪い去ってしまったのか。
その目は死んだ魚のそれであり、全身からぐったりと生気が失われている。
「ち、精神崩壊しちまったか。あわよくば、妖怪の血が覚醒するかと思ったが…カムイのときといい、うまくいかねえもんだ」
そうはき捨て、留美子の体を投げ捨てようとした――
「ん!?」
ずん、留美子を吊り上げた腕が重みを増した。
いや、腕だけではなく、体全身が鉛を抱かされたように重い。
腕は下がり、両足は足首まで地面にめりこんでいる。
「なんだ、この陰気な重い“気”は…こ、この俺の腕が持ちあがらん…」
そのとき、留美子の唇がぶつぶつと何かをつぶやいた。岸本が、思わず耳をそばだてる。
「――こんな不幸な気持ちのままでは……」
かっ、と留美子の両目が見開かれた。
「死ねない!!」

                  カッ !!!! 

             「 獅  子  咆  哮  弾  !! 」    

獅子咆哮弾とは!!
不幸で重くなった“気”を空中に放ち、すべてのものを押し潰す必殺技である。
まさしく獅子の咆哮のごとき叫びがほとばしった瞬間、巨大な気柱が、光柱となって天蓋に二つ目の大穴を穿った。

                ド オ オ オ ン !!!!!

天空高く伸びた破壊の奔流は、落星となって、留美子と岸本を包み込んだ。
光芒が炸裂し、内臓に響く地響きが、グラウンドを揺さぶった。
195作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 18:47:07 ID:eVzaRAZd0
獅子咆哮弾!!

ある意味、自滅してるよ岸本w
196化け物(116/180):2005/05/08(日) 18:53:35 ID:l47uva2y0
えなりゴール近くに大きく口を開けたクレーターは、そこかしこから、しゅうしゅうと焦げ臭い湯気を立ち上らせている。
その真ん中に留美子は立っていた。
血みどろの姿は、一瞬、死体かとさえ思わせる。
「が…なんだと、この技……」
地面に埋まった体を引き抜きながら、全身をずたぼろにされた岸本が呻く。
岸本もよもや、留美子に与えた悪夢が、破壊力となって自分にふりかかるとは夢にも思わなかったろう。
その顔には、憤怒と驚愕がはりついている。
「私は『サンデーの女帝』高橋留美子。『人魚の肉』を喰らい、半妖となった不死の女」
震えもない、どこか凛とした声で、留美子が言った。
「長い間、漫画界の最前線に立ち続けた。その戦いは血みどろ。女とはいえ、負けるわけにはいかない」
一歩一歩と岸本に歩み寄る。
―――潜影蛇手!!
岸本の腕から伸びた、幾本もの蛇が留美子の両腕をからめとった。さらに地面に転がる『草薙の剣』を遠隔操作。
「そんな戦いを、私は30年間生き抜いてきた」
背中から、腹にかけて、衝撃。冷たい刃が、留美子の体を貫いていた。ごぼりと留美子が新たな血を吐き出す。
「くっ……なぜ……よけねえ…!?」
しかし、微動だにしない留美子に、岸本は動揺を隠せない。
留美子は答えずに――
―――ドン!!
「 飛 刀 竜 斬 破 !! 」
両の手刀を、岸本の胸板に突き刺し、Vの字を描くように斬り上げた!!
「――がっ!!」
背中の翼はもげ、両肩から胸にかけて引き裂け、血の噴水をあげて岸本は吠えた。

「一世紀ほど早かったわね、坊や」

怖気さえ感じさせるほどの妖しい色気を含む、留美子の声。
その声を最後に、岸本の意識はなくなった。
197作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 20:24:46 ID:SIt759SU0
ババァなんて言うからヽ('A`)ノ
留美子バトル強いよ留美子
198作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 20:33:21 ID:A8T/bbMsO
格が違いすぎたな。
199作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 20:54:16 ID:J4ORzrn00
しかし勝つには勝ったがリックも留美子も重傷すぎでは……
まだ残り時間40分くらいあるのに大丈夫かいな
後半になっていよいよ死闘の様相をていしてきたな
200作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 23:19:18 ID:/J7BxEza0
年齢の事は最大の禁句だよね((((゚Д゚;)))))ガクガクブルブル
しかしさすがの迫力だけも先生。

そーいやエリ8でかっこつけてる愛の勇者様は荒川達にも
治癒魔法使っちゃったのかな?
201作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 01:41:31 ID:QL7deALy0
リックはジオルクがあるから。
即死か術を唱えられないくらい弱ってない限りすぐ治せる。
202獣の牙:2005/05/09(月) 04:02:22 ID:k/3eMRrP0
>>144

斜に構え、彼我の距離を見定め、ヨクサルが地を蹴る。
怪鳥のような跳躍から放たれた膝をダッキングで避け、反撃のアッパーを森川が撃つ。
顎を精確に狙う一撃を、片手でキャッチしたヨクサルはその拳を支点に、身体を捻る。
ぎゅるっ、と空中で螺旋を描き真上から肘。
それを後方にぐにゃりと身体を曲げ避けつつ、森川は更なる打を繰り出す。
烈風の如き攻防は徐々にその激しさを増していく。
拳。
肘。
膝。
爪先。
踵。
五体之全て凶器と化し、右と思えば左、真上からと思えば真下から。
腕、肩、拳、森川の体を軽業師の如くひょうひょうと飛び渡り縦横無尽にヨクサルは打撃を放つ。

それはまさに天魔さながらの絶技だった。
だが、それら全てが先程と異なり、見事に避けられていた。
ブロックやフットワークは使わない。
ノーガード。
上半身だけをぐにゃぐにゃと蠢かし、森川は紙一重で打を回避していく。
 天性の異常なまでの柔軟さ、鍛えこまれ安定した下半身、
どのような角度からの攻撃であろうと対応できるだけの動体視力と反射神経、そして見えない角度からの察知する野獣のような本能。
どれか一つでも欠けていれば、瞬く間にヨクサルの連撃を浴びているだろう。
 だが、その抜き身の刃の上を歩くような危うげな状況において、
森川は汗一つ浮かべることなく、ぞっとするほど冷ややかな目でヨクサルを見据えている。
最初にガチガチのボクシングで攻めたのは、相手の力量を測り、ファイトスタイルを探る為である。
それが通用しないと見るや、森川は直ぐに戦法を変えた。
両腕をだらりと下げ、顔面を晒した構えともいえぬ無防備な立ち姿。
だが、これこそが柴田ヨクサルという異形を前にしての最善であった。
203獣の牙:2005/05/09(月) 04:03:35 ID:k/3eMRrP0
「構え」とは一種固定した形式であり、読んで字の如く、相対する何かに対応したものである。
それは状況によっては自由な体捌きを枠にはめ抑える結果に為りかねない。
異形なまでのヨクサルの動きに円滑に対応するには、むしろ形式によらぬ自由なスタイルこそが重要なのだ。
無論それは、上記したような複数に及ぶ条件を兼ね備えた者のみがなしえる業である。
更に、この構えにはもう一つの意味がある。
上半身のみを殴り合うボクシング技術が身に染付いた森川は、どうしても下半身への警戒が散漫になる。
だからこそ、顔面を晒す、ボディをがら空きにする。
相手にダメージを与える上で、最も効果的なのは頭部への打撃である。
そこを合えて無防備にすることによって脚への攻撃を少しでも減らす。
危険では有るが、ヨクサルのような本能で闘う男に対してこれ程有効な手も無い。
森川の戦法は正しい。

――しかし、それでも尚、圧されているのは森川だった。
時が経つにつれ少しずつ、森川が放つ打撃の数が減っていく。
避けるだけで手一杯になっている。
じわじわと、ヨクサルの打の速度が増している。
嵐のような連打だった。
止まらない。
休まない。
それどころか、一つ、一つと、避けられる度に速度と切れ味が増していく。
柴田ヨクサルは感情を己の中で暴発させる。
その凶悪なスピードで膨れ上がるエネルギーを受け止められるのは、同等のエネルギーだけであろう。
――もう避け切れない。
そう思ってもここで後退することはできない。
ここで一歩でも退けば、たちどころにヨクサルの連打に飲み込まれることが眼に見えている。
ふっとヨクサルの攻撃が一瞬緩んだ。
圧され気味だったこともあり、森川はその隙に食らい付く。
ヨクサルの顔面に右拳を撃とうとした。
204獣の牙:2005/05/09(月) 04:04:52 ID:k/3eMRrP0
その瞬間のことだった。
森川は、軽く宙に飛び上がり、素早く後方に体を捻るヨクサルの姿を見た。
まずいと思っても、右を打つ動きはもう止められなかった。
真下から、空を切り裂く疾さで、何かが迫って来た。
後方横回転と同時に突き上げられたヨクサルの足裏であった。
回転の勢いをつけ繰り出された高速ソバットが、森川の鳩尾を鋭く刺した。

「げふっ」
と森川は唾を吐いて呻いた。
カウンターで食ったその一撃は、彼の鍛え上げられた腹筋でも殺しきれるものでは無かった。
かくん、と森川の膝が落ちる。
倒れそうになる瞬間、歯を食い縛り耐え、下からアッパーを撃つ。
大振りのその拳はあっさり避けられ、左の拳で米神を撃たれた。
眩暈がするほどの衝撃を受け、森川の身体がぐらりと大きく揺らめいた。
そのまま、肩からふらっと死に体と化したかのように、ヨクサルの懐に体重を預けた。
「……?」
攻撃でも、防御でもないその動きに、一瞬ヨクサルの顔に戸惑いの色が浮かぶ。
俯く森川の顔に笑みが刻まれたのはその時だった。

「ようやく、つかまえた……」
背筋を震わせるような声で、森川が呟く。
危険なものを感じたヨクサルが、森川の後頭部に肘を振り下ろす。
肘が当たる――刹那の際に、ヨクサルの肝臓に森川のボディブローが叩き込まれていた。
ごばっ、とヨクサルの咥内から空気の塊が吐き出される。
密着した、拳一つ分程度の隙間しかない合いから放たれたボディブローだった。
常人なら死んだパンチしか打てない――しかし、森川は体の捻りのみで強烈な破壊力をその拳に宿らせることが出来るのだ。
膨大な練習量によって作り上げられた下半身があってこその技である。
ヨクサルの身体がくの字に折れ曲がる。
その隙を逃す筈もなく、真下から魔性の疾さで森川の拳がヨクサルの顎めがけて浮き上がってくる。
205獣の牙:2005/05/09(月) 04:07:25 ID:k/3eMRrP0
が、ヨクサルも又並ではない。
咄嗟に反応し、片手で顎を防ぐ。
迫り来る拳の勢いを吸収し、宙に飛ぶ――そこまで想定しての動きだった。
ヨクサルの掌に森川の拳が捕えられる。
同時にヨクサルが地を蹴る。
ふわりと身体が浮き上がる。
瞬間――ヨクサルの左の耳に、風切り音が聞こえた。
次の瞬間、ヨクサルは頭部に落雷のような衝撃を受けた。
意識が外に弾かれそうになった。
何が起こったのか、考えることすらできない。
――白い牙(ホワイト・ファング)、と呼ばれる超高速のコンビネーションがある。
 上と下からほぼ同時にアッパーと打ち下ろしが叩き込まれるその様が、
獣が人の頭を食い千切るかのようであることから名付けられた技だ。
大口を開けて襲い来る獣の下あごを止めても、上の牙が突き刺さるように――。
206獣の牙:2005/05/09(月) 04:11:18 ID:k/3eMRrP0
アッパーを止めた瞬間、森川の拳がヨクサルの頭部を撃っていたのだ。
耳の裏に直撃したその一撃により、三半規管を揺らされている。
ヨクサルが、ふらつく。
森川はヨクサルの斜め下に滑るように踏み込んでいた。
ひゅごおっと風を薙ぐ音と同時。
完璧な体勢から放たれた、森川の渾身の肝臓打ち(リバー・ブロー)がヨクサルの腹を抉り上げていた。

ぼきっ、めしっ、ぐしゃっ、

人体急所を精確に穿ったその拳は、一撃でヨクサルの肋骨を数本圧し折った。
鉄拳――。
丸太を拳で叩き続けるという凡そボクサーに不必要な異常な修練により研鑽された森川の拳を、マガジンの者たちは恐怖と畏敬を込めてそう呼んでいた。
ヨクサルの口から大量の吐瀉物が吐き出される。
ぐらりとヨクサルの身体が揺らめき、そのまま地面に倒れた。
ぴくぴくと、全身が痙攣している。
森川の予言通りの姿だった。

――暗き闇を、赤目の魔人の満足げな嗤い声が浸した。
それは、奈落の底にまで響き渡るような声であった。
207作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 14:29:56 ID:LXpaEJyi0
ジョージ強ぇー!週マガじゃ最強だろうな・・・
猛者揃いの講談社勢全体でも相当強そう。しかも危険
208作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 18:40:14 ID:KLUgFCKm0
週マガには他に、同格の赤松も思わせぶりレディースのCLAMPも今なにやってんのか魔王の真島も居るじゃないか
・・・・・・まあたしかに・・・あいつら微妙にヘタr(ゲフンゲフン


―――もっりかわ! もっりかわ! ヽ(;゚∀゚)ノ
209作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 21:51:13 ID:lo1ca2pa0
ジョージvs佐木はノーガードで大砲の撃ち合いって感じだったが、こっちはさしずめ真剣での斬り合いだな
どっちもペース奪われたら終わりみたいな対決だし
210錬金術師とバイオリン弾き、会話中:2005/05/09(月) 23:51:41 ID:lo1ca2pa0
>187

「――そちらの事情は理解したわ。でも、同じ組織に二度も誘拐されるなんて、貴方らしいわ。そこのところは信用できる」
「うるせえな! んなとこはどうでもいいだろ!」
荒川が可笑しそうに笑うと、渡辺が思い出したくないものを思い出したとばかりに、唾をまき散らして吠えた。それで、荒川はさらに笑う。
しかし、その笑みもすぐに自分の顔からひくのがわかった。訊くべきことはまだあったのだ。
口を開いた。
「この艦には現時点で――どれくらいの敵勢力がひそんでいるのかしら。誰が戦いに加わっていて、誰が――死んだのか」
渡辺はきゅっと口元を引き締めると、傍らの小物入れから紙片を手にとった。
地図だった。
渡辺が目を走らせ、言った。
「現時点で、この艦に攻め込んできている最大勢力は、平野耕太率いる“最後の大隊”だ。
 これまでに俺達が戦った相手は、全て漫画家ではない兵士。
 しかし、こいつらはただの兵士じゃない。
 “特機隊”――通称“三頭犬(ケルベロス)”と呼ばれた伝説の部隊だ」
荒川は口を開いた。医務室を出た直後、交戦した兵士達と、それを率いるあの大男のことを思い出したのだ。
「特機……」
渡辺が静かに頷いた。
荒川は、片倉の事を少し気にかけていた。
押井守といえば、音に聴こえた歴戦の兵士として名高い。
自分が物心つくかつかないかという前から、クリエイターとして第一線を張ってきた伝説級の戦士だ。
最後に別れてから、随分と時間がたつ。あの押井を相手に、片倉は勝ったのか負けたのか、殺したのか殺されたのか、それともあの後逃げたのか。
不思議と、どれも想像できなかった。ただ、片倉のあのにやっと笑う顔だけが胸に浮かんだ。
211錬金術師とバイオリン弾き、会話中:2005/05/09(月) 23:52:55 ID:lo1ca2pa0
「――もっとも現時点では、こちらが優勢だ。
 戦闘ヘリによる上空からの航空支援、装備の相性、そして何より俺という、あちらにはいない“漫画家”の存在。
 原因は色々とあるが、最大の理由としては―――連中の絶対数の少なさだ」
荒川は、渡辺の説明に意識を戻した。
「――というと?」
荒川は腑に落ちないという顔つきで聞き返す。
襲撃してきた連中は、自分たちが遭遇しただけでも結構な数だったと記憶していたが―――
「こいつはカムイに昔、聞いた話だが――≪旧大戦≫終結後、特機はそのあまりに苛烈な戦闘ぶりから、評議会内部でも疎んじられ、規模を大幅に縮小されたらしい。
 ≪旧大戦≫終結後も、軍備を増強し続けてきたオメガを始めとするゴッドハンドの軍隊に勝る数が、存在するわけがない――。
 おそらく、連中の大部分は、平野が造り出した吸血鬼達で水増しした奴らだろう。 その証拠に、エリア88に元々いた兵士やスタッフ達が、いたるところでグール化していた」
「その特機自体が、吸血鬼化したという可能性は?」
「カムイに聞いた限りじゃ、あり得ない話だな。
 特機は、己の感情を完全に排し、完璧な殺人機械となることを義務づけられた、鉄血の猟犬集団。
 ただ欲望のみを求めるグールや吸血鬼とは、本来なら対極に位置する存在だ。
 そもそも本物と思しき奴らは、他の大多数と比べて、遥かに個々の練度が高かった。正直、戦ってて何度冷や汗をかかされたか……」
「漫画家より――強い?」
「さすがにそれはない――が、本物の連中は連携の際の動きが桁違いに良い。
 もともと“三頭犬”の由来は、スリーマンセルによる死角のない戦闘方法と、その打撃力の驚異にあるからな。
 油断してると、その瞬間に喉元まで喰いつかれるぜ――こんな風にな」
渡辺が、袖をまくった。
そこには、いまだじくじくと血を滲ませている、包帯に巻かれたまだ新しく、生々しい傷痕があった。
212錬金術師とバイオリン弾き、会話中:2005/05/09(月) 23:54:28 ID:lo1ca2pa0
荒川は眉をひそめた。渡辺は、すぐに袖を戻し、傷を隠した。
「でも、そこまで主義が正反対の彼らが、平野達と手を組むかしら?」
「どうだろうな。最後の大隊は、戦争にとりつかれた酔狂連中の集団だ。
 形は違ってても、“血に飢えた”者同士ってのは共通してるのかも知れん。あまり、そのあたりを深く考える必要はないかもな」
荒川は唇をすぼめたが、しかしそれよりも、それで、ここがどこなのかという話が途中になっていたことを思い出した。
それを訊く前に、渡辺が地図を差し出した。
「あんたにも渡しておこう。実は、ここに来てしばらくして、いきなり地形が変わった。
 だから、本来のエリア88の艦内地図は役に立たなくなった。
 こいつは、俺たちがその後で自作した地図だ。現在、判明してる範囲で書き込んである」
荒川が寝ているうちに、そのような事態が起こっているとは、想像もできなかった。
荒川は唇を引き結んだ。片倉も内藤も、それでは、ただでさえ居場所が分からないのが、さらに捜索が困難になった。
もちろん、これまでに死んでいなければ、の話だが。死んでいるわけはない、と思いたかった。
とにかく生きているはずだ、今は、そう信じるほかない。しかし、とにかくじゃあ一体、どうやって合流すればいいのか?
荒川は地図を自分の胸に伏せた。今の状況で無駄に考えをめぐらすのは馬鹿のやることだ。
まず情報だった。それに、自分一人じゃないのなら、何か方法はあるかも知れない。
渡辺の顔を、見上げた。
「あの、渡辺先生、ここ、一体どこ? 私、なんでここに寝てるんだろう」
「正確な場所は分からんが……おそらくは空母の最下層――それも船首に近い場所だろうな。本来の構造から言えば。今は地質調査と哨戒を兼ねて、ここを中心に行動している」
荒川は地図を見て、現在位置を確認した。
213錬金術師とバイオリン弾き、会話中:2005/05/09(月) 23:55:29 ID:lo1ca2pa0
「あんたを哨戒中の連中が見つけたのが、約5時間ほど前だ。
 ひどい怪我だったぜ。新しい銃創にくわえて、元からの傷も開いてた。
 血だらけで、すぐにも死ぬんじゃないかと思ったぜ」
荒川はそれでようやく、自分の上半身を包むものが、巻かれている包帯以外にないことに気づいた。これでは、まるでミイラだ。
「手当てしてくれたのね」
「ああ」渡辺が頷いた。
「銃創と開いた裂傷が、特にひどくてな。かなり目一杯治癒魔法をかけた。
 それでも、完全には治ってない。あんた、短期間に相当無茶してるな」
「――世話かけたわね」
荒川は、少し沈鬱な表情になった。
渡辺の治癒魔法は、カムイのそれと違い、効果と引き換えに渡辺本人の寿命を削る。
そのため、渡辺はよほどのことがない限り、治癒魔法を使うことはない。
「構わねえよ、別に。仲間が――それも女が死にかけてんのに、ちょっとばかりの寿命なんざケチってられねえだろ。それに――」
渡辺は、にたっと笑った。これまで比較的シリアスだったのが、一転して好色そうな嫌らしい笑い顔になっている。
「久しぶりに女のカラダにさわれるなんて、カンドーしちまったぜ。脱がせるのもな」
荒川はそれまでの無表情ぶりが嘘のように、顔中を茹ったように赤面させ、自分で自分の体をかき抱いた。
どこか恨みがましい、それも凄まじい目付きで、渡辺を睨む。
「――う、嘘だ、冗談だってっ! あんたと占い師の姉ちゃんの着替えやら包帯巻くやらは、全部俺たちが救出した、エリア88の女クルーがやった!
 いや、本当だって!! だから、巨大ハンマーを錬成しようとするのは、やめろ!!」 
途端に泡くって弁解する渡辺の姿に、荒川は錬成をやめ、ちょっと笑った。
頭の回転の速さも、意外な心遣いもある一方で、こういうどうしようもない好色さと変態さもまた、渡辺道明らしかった。
214作者の都合により名無しです:2005/05/10(火) 07:42:38 ID:od1v595y0
このふたりのからみも久々だな。
なんだか懐かしい。
頼もしい渡辺を随分長い事見ていなかった気がする(笑
久方ぶりに渡辺道明活躍の予感・・・?
215傲りと誇り〜絶命狂牙〜:2005/05/10(火) 17:52:52 ID:2TrIyDUn0
>>170

ぎしりと、骨の軋む音が鼓膜を震わせる。
万力のような力が五本の指に収束し、巣田の頭蓋を圧迫している。
このままでは、秒毎に増してゆく握力に、ガラクタのように砕かれてしまうのは明白だった。
瞬間。
皆川の右脇腹に剣が叩き込まれた。
その柄に絡みつく人竜が瞬時に網状に変わり、、皆川の全身を呪縛する。
咄嗟のことに、掌の拘束が緩んだ。
それを認識するやいなや、動かない筈の巣田の足が渾身の力で皆川の腕を蹴り上げ、その拘束を完全に解く。
さらに放り投げた煙球が爆裂し、空間を白に染め上げる。
視覚を封じる白煙の中、零れる様に飛び出した影がその掌に火球を展開、
高屋に向かって投擲すると同時、自身も駆け出す。
巣田だ。
新たに苦無を両手に握り、一足飛びに距離を詰める。
人竜を立ち上らせる矮躯が、一陣の風となって高屋に迫る。
その時、高屋と巣田の視線が重なった。
火球の陰に隠れるようにして接近する奇襲を、しかし高屋は完全に把握していたのだ。
(――――ッッ!?)
意図の漏洩を察知し、巣田が目を見開いたのと、
それを見た高屋がマスクの奥で冷然と嗤ったのは殆ど同時だった。
216傲りと誇り〜絶命狂牙〜:2005/05/10(火) 17:53:58 ID:2TrIyDUn0
背筋がぞくりと怖気に震え、嫌な汗が肌を濡らす。
それが死の恐怖であると脳が他人事のように解析した時、
巣田の視界は余りにゆっくりと動いていた。
身動きの取れないほどの緊迫。
張り詰めた殺意に満ちるその世界で、指の一本すら動かす事が出来ない。

ザンッ――――――

刹那、具現した殺意が、体を走りぬけた。
ガイバーTの右肘に聳える高周波ブレードが、左脇腹から右肩へとその軌跡すら残さずに走り抜ける!!
斬撃は巣田の矮躯を深く―――両断しない程度には浅く―――切り裂いていた。
のけぞる巣田の、破れた衣服から覗く白い腹に、真紅の斜線が刻まれる。
完全な致命傷。
人竜の生命力でも支えきる事が出来ないほどの、完全な。
だがその傷は、一滴の血も零さず、
皮膚の張力によって柳葉のように爆ぜ割れ、その内部を晒すこともなかった。
剥き出しの腹を走る傷は、そのまま―――――跡形も無く消えていく。
「やはりな・・・・・・」
高屋が呟く。酷く静かに響いた。
能面のような冷静さが、もはや表層を取り繕う程度しか残っていない巣田は、
服の前面をはだけたまま、屈辱と無力感でぎりと歯噛みする。
高屋は巣田の左足に目を向けた。
皆川に撃ち抜かれ半分ほど炭化していた傷は、いまや髪の毛一本ほどの痕も無い。
「回復魔法とは、恐れ入るよ」
巣田の眼差しに宿る激情が、より一層深まった。
高屋は面白そうにそれを眺める。
217傲りと誇り〜絶命狂牙〜:2005/05/10(火) 17:55:43 ID:2TrIyDUn0
皆川に行なわせた1分強の攻撃の中、高屋の注意は鈍る事が無かった。
巣田が幾度壁に叩き付けられようとも、切り刻まれようとも、常に彼女を観察し続けていた。
そして、ついにそれを見つける。
皆川の負わせた左腿の傷が、消えていたのだ。
それだけでなく、裂けた衣服の隙間から覗く傷さえもが、痕すら残していない。
この事実と、そして巣田の手掛けた作品を思い起こした高屋は、ある事実を類推する。
つまりは、巣田は強力な回復手段を有する、という事である。
巣田の手掛けた作品は、殆どが人と人外とが絡んでいる。
人外、つまりは妖怪や魔物であり、そこにはほぼ魔法の要素が絡んでくる。
故に、巣田が魔法を使えても無理は無い――――――
奇妙な確信とともに高屋は思考する。
そしてその裏付けは、今目の前で展開された。
218傲りと誇り〜絶命狂牙〜:2005/05/10(火) 17:57:55 ID:2TrIyDUn0
(どうすればいい・・・・・・・!!)
巣田は黙考する。
この回復魔法は切り札だった。
薬符よりも迅速で完璧な治癒が行なえるが、魔力が枯渇すれば一切使えなくなる為、
余程の窮地でも無い限りは、最後の最後まで温存しておくべき代物だった。
本来は高屋との決戦を凌ぎ切る為の物だった虎の子は、
皆川というイレギュラーによって使わざるを得なくなってしまった。
なんとか暴威の凌辱を耐え切ったものの、いまや高屋に看破されてしまっている。
最早どうにもならないと、絶望的な思いが鎌首を擡げて来た。
「さて」
声が響く。巣田は顔を上げた。
「正真正銘のチェックメイトだ。君を殺す事にする」
「私が、ただで死ぬと思ってるんですか?この状況で何も出来ないと」 
「その通りだ。君は死ぬ。何も出来ないし、何もさせない。
 君には一矢も報いさせてはやらない」
重ね合わせるように双掌を胸の前に構え、高屋は宣言する。
「手に入れるのは、君の死体と怨嗟の炎で良しとするよ」
掌の間に、激烈な力場が展開する。
「Arrivederci(さようなら)」
ガイバーT重力兵装、プレッシャーカノン。
超重力場が、巣田の矮躯にその牙を誇る――――――!!
219遅れてきた男(117/180):2005/05/10(火) 23:12:51 ID:hMZ2Iezb0
>>147 >>196

2つの超エネルギーによる爆発をまとめて喰らった藤崎は、派手に吹っ飛んで観客席まで投げ込まれた。
それを見届けると、雷句は、芝の上に座ってくつろぐ今井の方に向き直った。
「邪魔者は片付けた。次こそ、お主の番なのだ」
「それはいいけど、僕と比べても、君はちょっと傷つきすぎじゃないか?戦いになるのかな、それで?」
闘志満々の雷句に、今井は冷やかすように言う。しかし、雷句はにっと笑うと、ある呪文を唱えた。
「ジオルク!!」
叫ぶや、雷句の体が光に包まれ、なんと負傷がたちどころに再生・回復していく。
「なるほど♥超回復能力……そんな術まで持ってるとはね。でも、これで君は相当な数の術を使った。“心の力”とやらも、かなり消耗してるんじゃないかい♠」
「手負いのお主ひとり、倒すのに問題はない」
にべもなく言い放ち、雷句が臨戦体勢に移る。
(困ったな♣)
今井は心の中で苦笑する。万全の状態ならば、喜んで戦いたいと思わせる相手だが、今の自分にはそこまでの余裕はない。
雷句と戦えば、自分が待っている“本命”との戦いは断念せざるを得なくなるだろう。
(さて、どうするか)
なにか、戦わずしてこの局面を切り抜ける手段はないかと、周囲を見渡す。――と、その視線が、ある一点で止まった。今井の顔が、にんまりと綻ぶ。
「全く、僕ってヤツはツイてるな♦」
言った瞬間、今井の腕が凄まじい風を巻いた。
雷句が身構えるが、今井の行動は、雷句の予想外のものだった。
今井は、雷句にではなく、真横に向かって拳にまとわせた風を撃ったのだ。
「??」
今井が風の塊を放った、その行く先を見て、雷句はハッと顔を強張らせた。
その方向には、血まみれで地面に突っ伏す留美子の姿があった。
220遅れてきた男(118/180):2005/05/10(火) 23:14:28 ID:hMZ2Iezb0
(やってくれたわね、最後まで…)
地面に這いながら、留美子は歯軋りしたい思いで、すぐ近くに倒れる岸本を睨んだ。
勝つには勝ったが、留美子が負った矢傷・刀傷の深さは、相当なものだった。
常人なら、とっくに出血多量であの世行きだろう。
その上、岸本は最後の最後に、留美子に置き土産をしていった。
倒れる瞬間、留美子の足首を両手でつかみ、そこの腱を“チャクラの解剖刀(メス)”によって切断したのだ。
おかげで、留美子は今、重傷の体とあいまって、満足に立つこともできない状態になっていた。
目の前には、サッカーボールと、無人のゴールがあるというのに。
(とにかく…追加点をとらなければ…)
這うようにして、ボールに近づいていく。
足が使えなくても、頭で押し込めば、阻む者はない――はずだった。
一陣の突風が吹いたのは、そのときだった。
屋内にもかかわらず、凄まじいまでの強風が、横殴り気味に留美子の鼻先を通過していった。


その風は、留美子の身に向けた攻撃ではなかった。
留美子の前にあったボールが、風に巻かれて、あらぬ方向に吹っ飛んでいく。
今井の目的は、これであった。
しかし、それが何を意味するのか分からなかった雷句だが、ボールが飛んでいく方向を見て悟った。
ボールは猛スピードでサイドラインを割り、さらに飛んでいく。
その先に、人影が立っていた。
凄まじい速度で迫るボールを、その影は避けようともせず、逆にそれを天高く蹴り上げた。
真上に飛んだボールが、勢いを失って落ちてくると、影はそれを踏みつけて止めた。
身長の6割を占めるほどに、すらりと長く、逞しい両脚。幅広い肩と、引き締まった胸。
その身を包む、蒼のユニフォームが緑のグラウンドに映え、どこまでも似合っていた。
男の顔に浮かぶ表情は、サッカーフィールドの立てた喜びに満ちあふれ、どこまでも爽やかだった。

高橋陽一、遂にフィールドに立つ。
221作者の都合により名無しです:2005/05/10(火) 23:24:44 ID:IManMM9Y0
愛の勇者キター
すごい高屋キター
そしてYOO1キタァァァァ!!
222作者の都合により名無しです:2005/05/11(水) 00:00:07 ID:AS0zeISO0
ああっ また手をっ

横紙破りもほどほどにな今井
223作者の都合により名無しです:2005/05/11(水) 00:44:57 ID:GXLIZqyY0
巣田、いよいよ絶体絶命だな。
死にたくなければさっさとギャグ(着ぐるみ)モードになるんだ!w

――当然、妖魔王陣営からも狙われることになるけどな……
224作者の都合により名無しです:2005/05/11(水) 01:51:56 ID:cWQKf0mF0
YOO1ついに来たか……!
バカボンド連載再開する井上も来るか?
225放浪者<VAGABOND>:2005/05/11(水) 02:06:01 ID:7APeBElQ0
>>167
 「結局“あの事”板垣せんせーに聞き損ねちゃったなぁ」
道すがらぶつぶつと、呟きながら歩く足つき幽霊にわの♀。
独り言だと思われるが基本的にバカ声なので、連れのえなりに丸聞こえ。
 「あの事って、何ですか?」
 「うげ?いや〜なんでもないったらありませんよぉ?わはは」
全然ごまかせていないが、えなりはスルーする事にした。

温泉慰労会の案内回覧板を回していた人だとは先ほど知ったが、
変なマスクを被っていた人は、マスクの中身も変なのだなと、
えなりは少々気疲れしながらコロッセオの関係者用ゲートをくぐった。

数分後、迷子になってる2人。
気づけばコロッセオ最上階の展望台に来てやんの。
 「しまった!ボク控え室の場所知らないんだったモン」
 「そういうのは早く気づいてくださいよ!」
天然って周囲の人は気苦労するんだな、と痛感するえなり。

 (そういえば別に戻らなくても空知先生放っとけばいいじゃん)
ひどい事を考えながら、えなりは喫煙コーナー近くにあるモニターに視線を移すと、
ハーフタイム終了直前のサッカースタジアムの映像が流れている。
 「あーあ、あっちは楽しそうだなあ・・・。
 僕は本当にメインの話に絡む事ができるんだろうか。
 それにしてもメンバーがぐちゃぐちゃだ。荒木先生を始め、
 尾田先生、武井先生・・・皆どこにいるんだろう。板垣先生はあれだし」
口に出すうちに見えてくるものがある。
このメンツに鳥山を入れた、えなりチーム結成時のメンバーが、
車田ぐらいしか姿を見せない。えなりは4割の寂寥感と、
 (これはチャンスだ!僕という『読者』の存在を漫画家達に見せつけてやる!)
6割のセコ目のやる気に包まれた。と。

 「あれ?あの人どこ消えちゃったんだ?」
226放浪者<VAGABOND>:2005/05/11(水) 02:07:54 ID:7APeBElQ0
幽霊の姿が見えず、自販機周辺を捜すえなり。すると、
 「わー展望台すごいね!えなりチームの特訓場が見えるぞぅ〜」
捜し主は五階屋上のデッキに出て、スタジアムに隣接されている、
小さなグラウンドを指差しはしゃいでいた。
 「本当ですか?にわの先生」
 「あ、陽一せんせーとイノタケ君が・・・うわすげーあれ死ぬってマジ」
 「自分ばっかり楽しんじゃってずるいですよ!何なんですか一体」

その頃、試合前から続いていた陽一のシゴキ―――
いや井上雄彦の試練(23部562)を、にわのは目撃したのである。
これより約10分後、陽一は晴れてフィールドの戦場へ足を踏み入れたわけだが、
果たして井上のGK転向作戦は成功したのか、この当時はわからなかった。

 「―――人は、どこまで人のままで強くなれるのかな?」
ふと、慌てて屋上に出てきたえなりに対して。鉄柵を掴みながら、にわの。
 「どうしたんですか?いきなり真面目な顔で」
 「・・・漫画家はね、漫画だけ描いてればいーんだよ。
 だけど現実は右も左もケンカばっかり。
 漫画家は人に戻れない。いや『なれない』のかなって。
 えなり君、キミはキミのまま強くなってほしい」
 「・・・話が繋がっていませんよ?」
えなりは“掴めない”漫画家に、ただ困惑するしかなかった。
 「いいのよ細かい事はぁ!(ぶー)
 ・・・はぁ〜強者のエキスの奴め、作者の手を離れて好き放題しやがってぇ。
 森やんとかどうなっちゃったんだろ?なんでこー、
 世の中うまくいかない事ばっかりなんだろー」
怒った数秒後には鬱々とヘコみだす忙しない人。放置決定である。

 (空知先生も、もうちょっとリサーチしてから、
 入る体を選べばいいのに。サッカーはできるそうだけど、でもね〜)
ため息のえなりが見守る中、陽一の必殺シュートを食らった井上が、
ゴールのネットを破壊しながら豪快に、後方へと錐揉み状にぶっ飛んでいった。
227放浪者<VAGABOND>:2005/05/11(水) 17:13:24 ID:qyD8SPe60
(21部264)

特訓場での悲喜劇が続く中、えなりは落ち込んで使い物にならない、
にわのの気を紛らわすため明るめの話題を振ってみた。
放置もかわいそうなので。
 「先生、世の中そんな捨てたものじゃありませんって。
 ほら先生のとこのチーム、皆さん仲がいいじゃないですか、
 とても楽しそうですよ?まるで本当の家族みたいです」
笑顔で語ると、言われた方はなんだか照れ臭そうな表情になる。

 「そ、そーかなぁ?
 そう言ってくれるとボク嬉しいなあ。
 みんないい人ばかりだよ、ちょっと偏屈なのも混じってるけど。
 もし優勝したらボクらの事務所大きくするんだー。
 そうして困ってる人たちをいっぱい助けるんだよ。
 本宮せんせーがそうするって。だからボクもガンバるんだー」
子供みたいな喋り口。ネジの外れ具合はともかく、
(乱入組とはいえ)勝ち残るなりの信念があるのだなと、
えなりは裏御伽チームを少し見直した。

そしてふと彼の脳裏にひとりの女性が浮かぶ。
黒く美しい長髪で、けぶるような笑顔の、もう長い事会っていない肉親。

 (姉さん、元気かな)

エアコンでつくられた緩やかな風が少年の頬を撫でる。
青空のない艦内に放たれた、野鳥がのんびり宙を舞っていた。


***

228放浪者<VAGABOND>:2005/05/11(水) 17:15:54 ID:qyD8SPe60
打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた広い部屋。
調度品はお客用の木椅子ひとつのみ。
そこに静かな印象の、ひとりの女性が座っている。
物言わぬまま、両の手を揃えて膝の上に乗せながら。

 「サッカーを、いや、弟さんを見に来たところに悪かったねー。
 後でテレビを持ってくるから勘弁しておくれじゃん」

拳銃を持ち女の前に立つ、尖がった髪型の男。
彼はこめかみから顎のラインにかけて、
マスクのような鉄のガードを直接骨にはめ込んでいる。
奇妙な事にその男の周辺には、男とまったく同じ顔かたちの、20人ほどの集団がいる。
その中で唯一造形の違う、ごくごく地味な男が、
椅子に座る娘に平謝りしながら改めて要件を告げた。
 「すみません。これも矢吹を倒すためなんです。
 現在入院しているリーダーの命令なんです」

女は眉一つ動かさず、瞬きすらしているかどうか。
僅かに瞼を持ち上げたまま、彼女はどこを見ているのか。
再び拳銃を持った男が話しはじめる。
 「俺たちにはリーダーのルートで、矢吹周辺の情報が入るじゃん。(3部571)
 そこでキャッチしたのさ、実は人質だったはずのあんたと矢吹が、
 情で通じ合ってるんじゃないかってな。弟は矢吹の敵なのにな。
 やっぱ男と女って事なのかねー?まあいいさ、なんでもな」

彼らはチャンピオンチームの残党。別府撤収後、
矢吹軍の命令で大会のテレビ中継スタッフをやっていた、余湖軍団と伯林。
そして椅子に座るのは、スタジアム周辺で彼らに捕まったえなり姉であった。

 「あんたのライオンのぬいぐるみ(久保)を返してほしかったら、
 俺たちを手伝うじゃん。どんな手を使ってでも── 矢 吹 を ア ク メ ツ す る !!」
229遅れてきた男(119/180):2005/05/12(木) 10:08:10 ID:dlrP8FG60
>>220
「はっはっは、僕がいない間に相当苦戦したようだね、凡人諸君!!」
ボールがサイドラインを割ったのを見計らい、両チームの選手交代が行われた。
えなりチームは、とうとう駆け付けた2人を中心に、ぐるりと半円を描くように集まっている。
傲慢とも言える高笑いをしているのは、赤い坊主頭の大男・井上雄彦。
呵々大笑する元気さとは裏腹、その全身は生傷だらけで、陽一の“シゴキ”の苛烈さを物語っていた。
「だが、この天才が来たからには、えなりチームの勝利は約束されたも同然。一気に、逆転してやろう、はっはっは!」
傍若無人な物言いに、チームの大半は呆れ、大和田に到っては青筋立ててマジギレ寸前。
いい加減、空気が不穏になりかけたところで、井上の頭をガシッと後ろから伸びた手が鷲掴みにした。
「井上くん、君の役目はGKだろ。点を取るのは君の仕事じゃない」
そう嗜めたのは、えなりチーム最強の切り札・高橋陽一。
口を尖らせる井上だが、陽一に何事か耳元で囁かれ、また機嫌を直す。
「ま、まあ、何もかも、この天才がやってしまっては、君たちの立つ瀬がないからな!ここは、サッカーで最も重要なGKに専念してやろう!!」
陽一、つくづく井上の操縦については完璧であった。
「おまえの“神技”見せてもらうぞ」
「OK」
大和田に対し、陽一は堂々とそう言ってのけた。その言動には、自信が満ちあふれている。
「それにしても……戦闘のせいで、フィールドがかなり荒れてるなァ」
少し悲しげにそう言うと、陽一はスウッと右手を天に掲げた。


一方のガンサンチームは、陽一の出現に、一様にイヤな胸騒ぎを感じていた。
点差は三点。負傷者はえなりチームの方が多い状況。
だというのに、勝利する自分達の姿が、まるで想像できない。
全員が陽一の発するオーラに気圧されていた、そのとき。
フィールド全体が、胎動するかのごとく、揺れた。
230遅れてきた男(119/180):2005/05/12(木) 10:09:05 ID:dlrP8FG60
陽一の登場にざわめいていた観客達の声が、一際高まった。
50分以上もの戦闘により、亀裂が走り、大穴が空き、見るも無惨に荒れ果てたフィールド。
そんなボロボロだったはずのフィールドが、陽一が手をかざしたのが合図だったかのように、瞬く間にビデオ映像を巻き戻しするかのごとく、修復・再生していく。

――高橋陽一は、サッカーフィールドそのものの支配者(マイスター)だというでもいうのか――

審判のフエの音もかき消されんばかりの大声援の中、試合は再開。
えなりチームvsガンサンチーム、その真の意味での攻防が幕をあげた。


231作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 12:35:14 ID:RvoYejng0
いよいよサッカー編本番かー
こっちも頑張らねばなあ
GK転向成功おめ
232作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 17:24:55 ID:qQzNPoHz0
>>218

高屋の双掌に包まれた空間は、その歪みが視認できる程だった。
その歪みが、一直線に自身へと向かってくる。
解き放たれた指向性の重力波が、少女の痩身に牙を突き立てるべく肉迫する。
「くそッ!」
巣田も動いた。
反応は迅速、横っ飛びに跳躍し、全力で体を右に捻った。
瞬間、その左側面を重力波が駆け抜ける。
だが、左肩、左肘、左脇腹、左太腿が、回避が間に合わず僅かに飲み込まれ、
力場に殺ぎ落とされた肉片が瞬時に血粒へと霧散、鉄の臭いが鼻腔をくすぐる。
少しでも被弾面積を減じようとしたのが功を奏し、どうにか致命打だけは避ける事が出来た。
しかし、体はバランスを大きく崩している。
血臭が呼び起こした痛みが神経を揺さぶる中で、
次撃を予想し身を固くするのと同時、巣田は高屋を見上げ、
(えっ!?)
硬直する。
高屋は何もしていなかった。
むしろ、自分とより距離を開くように立ち位置を変えていた。
そして気づく。
相も変わらず余裕の態で、しかしその視線が自分の背後を向いていることに。
(しまった―――――)
不覚だった。
この男がこういう態度を取るときは、相手の喉下には既に手が掛かっているのだ。
一刹那でも速く状況を把握できなければ、手遅れになる。
そして、もはや手遅れだった。
233傲りと誇り〜戮牙蹂躙〜:2005/05/12(木) 17:27:12 ID:qQzNPoHz0

         ド   ス  ッ

あ――――

まず最初に、衝撃。視界が揺れたのが分かった。
次に感じたのは異物感。
自己の中に非自己が強引に入り込む感覚。
冷たい――――何故か冷気が肌を舐めた。膝が笑い、ぐらりと崩れる。
瞳の焦点は、そこで初めて右胸に向かう。

・・・・・・剣が、生えていた。

柄の部分が背中で止まり、刃が正面から突き出ている。
その白刃の文目は知っている。
抜ける様に真ッ直ぐな刃紋、抜群の切れ味、それすら良く知っている。
他でもない、己の剣だ。

「がッ!」
血泡を吐き出す。右胸からも出血がはじまる。
風が吹き抜け、灼熱の苦痛が体を焼く。
自慢の愛剣は背中側から肋骨を断ち、右肺を貫いて、再び肋骨を切り裂き刃を覗かせていた。
(どうして・・・・・・)
どうしてこれがここにあるのか?
その理由は瞬時に理解できた。そして瞬時に証左も示された。
理解に有した思考速度とほぼ同速で、証左が迫撃していたからである。
234傲りと誇り〜戮牙蹂躙〜:2005/05/12(木) 17:28:03 ID:qQzNPoHz0

ザンッ!!

唐突に背を走る斬撃と風切り音。
背中越しに振り返る視界に移るのは、地獄の笑みを浮かべた悪鬼の貌。
振り上げた左腕の延長線上に展開した長大なブレードの切先は真っ赤に濡れ、
無機質な照り返しで光っている。
人竜の拘束を力ずくで引き裂いた皆川が、脚部のARMS“ホワイトラビット”で高速接近、
さらに左腕のARMS“騎士”を展開しその勢いのまま背中を逆袈裟に切り上げたのだ。
視界の隅に、高屋が憐憫の眼差しを向けるのが映る。
口には出さず別れの言葉を紡いだのを、巣田は奇妙に確信した。
一拍遅れて、血流が噴き出す。
飛散する鮮血が、宙を舞ってキラキラと輝き、周囲を紅色と鉄臭で満たし、
それが地に着くよりも速くに皆川の次撃が唸りを上げた。
その右腕のARMS“ジャバウォック”の拳を渾身の力で握り、
強靭な上腕筋が生みだす膂力を一点収束、一気に横薙ぎに振り抜く!!
技ではない、純粋な暴力、その集合。
繰り出された裏拳は、狙い澄ましたかのように巣田の腹部に直撃、
血反吐が中空に尾を引いて放物線を描き、合金壁に矮躯が激突、
その表面をいびつに歪ませると同時、大気が震え轟音が走る!
それでも皆川は拳を引かない。
振りぬいた右腕は天に高々と掲げられ、さながら雷神の奮う槌のように静止していた。
その拳が再度強く握りこまれ、更なる力が蓄積していく。
その態は、暴威に酔い痴れる者の体現の最。
彼が高屋の走狗であり、純粋な戦闘兵器となった事の証だった。
235傲りと誇り〜戮牙蹂躙〜:2005/05/12(木) 17:28:55 ID:qQzNPoHz0
巣田の体が、叩き付けられた反動で一瞬中に浮く。
その須臾の暇、まさに究極のタイミングで鉄槌は打ち出された。
余りにも獰猛で、余りにも凶暴な一撃。
現世に在するあらゆる物を粉砕する、凄絶無比の一撃が、
一直線に大気を切り裂いて、華奢な肢体に撃ち込まれる!

         ゴ   ガ  ア  ッ  !!

クラウドゲートが震えた。
形容しがたい異様なノイズ。
超速で駆け抜ける。
後に残るのは耳障りな静謐。
場に存在する全ては、喪に服したように黙秘権を行使し続ける。
そして―――ぽたりと、雫の落ちる音。
人竜の少女の、その口から零れ落ちる、紅い紅い雫。
その目には幽かな光を残し、されどほぼ全て虚無が席巻する。
背後の壁はズタズタに亀裂が走り、さながら蜘蛛の巣のようだった。
巣田に炸裂した力は彼女自身を通り抜け、背面の合金壁にまで伝播し、
穿ち、引き裂き、その中心に矮躯を嵌め込んだのだった。
236傲りと誇り〜戮牙蹂躙〜:2005/05/12(木) 17:29:48 ID:qQzNPoHz0
罅の糸、その中心の陥没に、象眼細工の如く嵌め込まれた人竜。
直前まで発動し続けた回復魔法の御陰で、未だその生命は尽きていなかった。
しかし既にその魔力は尽きていた。
今は、辛うじて糸を繋いでいるに過ぎない。
触覚、痛覚は機能していない。
嗅覚は血臭で麻痺しきっている。
視覚は七割がた死に絶え、茫漠としか機能していない。
聴覚だけが、なぜか鮮明に音を捉える。
心臓の鼓動。出血の脈音。大気の耳鳴。骨格の軋音。
そして――――――ごとりと装填音。
はっとする。
しかし、甚大に損傷した体が言う事を聞く筈も無い。
どうにか力を振り絞り、首を動かす。
上げた面の双眸に映る世界には、こちらに向けて拳を構える獰悪な神獣。
霞む視界に移るそれは、陽炎の様に揺れて判然としない。
その右拳の真上に聳える、一門の砲塔。
ARMS“ジャバウォック”が砕けた合金壁の破片を砲弾に変え、
こちらに向けて照準を合わせていた。
本能的に感じた危機に表情筋が引き攣るのが解った。
万事休す、絶望的。わけのわからない叫びを心が上げる。
刹那。

   ド ゴ オ ッ !!

砲塔が火を噴いた。
砲声は五度、しかし巣田にはもはや届かない。
着弾と共に全てが爆砕し、圧倒的な破砕と爆風が吹き荒れる。
全てが渦中に飲み込まれて行く――――――
237外道と死神:2005/05/12(木) 17:32:14 ID:J0tnY3uu0
>228

『矢吹をアクメツする』
常人には耳慣れない、この言葉に、沈黙を守っていたえなり姉が初めて反応を示した。
「・・・『アクメツ』・・・よく分からないけど、それは『殺す』ということ・・・?」
「お。お姉さん、ちゃんと口がきけるじゃん。・・・『悪を滅ぼす』から『悪滅』・・・そういう意味じゃん」
銃を突きつけていた余湖のひとりが、言った。
「・・・正義の味方気取り?」
えなり姉が、言葉に感情を込めずに言った。それを批難と受け取ったのか、余湖は苦笑する。
「いやいや、俺達は鬼畜外道の集団として名高いチャンピオン作家じゃん?どんな理由があっても、人殺してる時点で、そいつも悪じゃん。
 だから、俺達も矢吹をアクメツするときは、自分達も死ぬことを前提にやるじゃん」
そこには、自分達の死に対する、ひとかけらの恐怖も感慨もなかった。
この精神性が、チャンピオンの作家である何よりの証だろう。
「ま、いずれにしろ、矢吹はアクメツする。これはもう決定事項。ついでに、俺達の仲間を殺したガンガンとサンデーの連中も」
余湖は、さらに続けた。
「どっちみち、秋田書店と小学館は、もう戦争状態に突入してるみてえじゃん。だから、サンデーの連中も、それとツルんでるガンガンの同人作家どもも、まとめてアクメツしてやるじゃん」
そこで、黙っていたえなり姉が、また口を開いた。
「・・・あなたたちの目的は、それだけ?」
「それだけっつっても、俺達には死活問題じゃん。ヤラられたヤリかえすのは、基本じゃん」
余湖に言われて、えなり姉はまた押し黙る。それを見て、納得したのだと思った余湖が、言う。
「それじゃ、事情が分かったところで、協力してもらうじゃん。・・・でないと、このヌイグルミが・・・」
しゃべり続ける余湖は、このとき見逃していた。
・・・えなり姉の口元に浮かぶ、あるかなしかの小さな表情を。
その濡れたような唇が、短い名をつぶやいた。
「・・・いいわよ、久保」
238外道と死神:2005/05/12(木) 17:33:21 ID:J0tnY3uu0

        ――――  ド  ゴ  ン  ッ  !!

それは、余湖達にとってはまさしく青天の霹靂であり、えなり姉にとっては予定通りの出来事であった。
唐突に、コンクリートの天井が何か凄まじい力によって外側から砕かれ、何者かが部屋の中に飛び込んできたのだ。
「な・・・なにごとじゃん!?」
20体にも及ぶ余湖たちが、突然の緊急事態に動揺する。
もうもうと破壊による砂煙がたちこめる、その向こうに巨大な人影が見えた。
やがて、煙が晴れ、見えてきた影の正体は、ことさらに異様な風体をしていた。
2メートルを超える巨体。
四方八方に放射線状に飛び出した、観覧車を連想させる奇抜なヘアスタイル。
首筋まで伸びた眼帯で右目を覆っている。
そぎ落としたような頬。ギラギラと獣のような輝きを放つ左目。顔中に刻まれた斬傷。
凶相、と言っていい。
「だ・・誰じゃん?誰だか知らないが、逆らうとこのヌイグルミが・・・」
「どうしようが一向に構わねえよ。・・・もうそん中にゃ、誰の魂も入ってねえからな」
意表をつく男の言葉に、余湖たちはさらに困惑する。
「な、なに?それじゃ、おまえは・・!」
「そうだぜ?俺が、久保帯人だ。あいにく、体の修復はすでに完了さ」
凶相の男、その正体は他ならぬ久保だった。
余湖たちが人質として扱っていたライオンのヌイグルミから、久保の魂魄はすでに新しい体へと移されていたのだ。
「な、なんで、それじゃ大人しく俺たちに捕まったじゃん?」
「そいつは、テメエらの目的が知りたかったからだよ。だが、聞くだけ聞いた今となっちゃ、もうテメエらを生かしておく必要はねえんでな」
久保が、その凶相をさらに禍々しく歪めて笑った。
「う、撃て!撃ち殺せ!!」
20体の余湖たちが、一斉に『にゅ〜なんぶ』と書かれた44マグナムを構え、棒立ちの久保に向けて弾丸を乱射した。
239外道と死神:2005/05/12(木) 17:34:31 ID:J0tnY3uu0

        ゴ ギ ギ ギ ギ ン・・・・!!!

蜂の巣になるかと思われた久保だったが、余湖たちの思惑を大きく裏切り、すべての弾丸は異様な金属音をともなって防がれた。
「!?!」
余湖たちが、驚愕に目を見張った。
44マグナムの集中砲火を、久保は右腕だけで止めていたのだ。。
ただしその腕は生身ではなく、何か鋼鉄の鎧のようなものが生身の肉体に直接埋め込まれているというイカれた仕様になっていた。
「悪いが、銃は俺には通用しねえ」
硝煙のまとわりついた右腕を振り払い、ひしゃげた弾丸を床に投げ捨てた。
「散れ」
久保が刀を抜き、自分の目の前で構え、つぶやく。

「 『 千 本 桜 』 」

刀身が消滅し、殺風景な室内に、透き通った桜の花びらが幾枚も乱れ飛んだ。
余湖たちが一瞬、その光景に呆然と見とれる。
だが、次の瞬間・・・!!


         ズ バ バ バ バ バ バ バ バ バ  ・・・・ !!!!


20体あまりもいた余湖たちが、全員同時に、その全身から血の噴水を噴き上げ、細切れにされた。
灰色の壁や床のいたるところに血がふりかかり、凄惨に彩った。
240外道と死神:2005/05/12(木) 17:35:54 ID:J0tnY3uu0
「ひぃゃあああああああああああああっっ!!」
20体もの余湖が一瞬で皆殺しにされた有様に、伯林は甲高い悲鳴をあげた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔に、久保が刀を突きつける。
「あ、あんた正気なのか?僕たちに・・・秋田書店に本気で喧嘩を売ることになるんだぞ!??」
口角泡を飛ばしながら叫ぶ伯林に、久保が見せたのは嘲笑だった。
「・・・正気? ハッ、そんな面倒なモン、最初(ハナ)っから持ってた覚えはねえな!!」
狂気をむき出しにしたまま、久保が伯林に刀を振り下ろそうとした、その瞬間!!


             カ ッ ――――― !!!


輪切りにされた20体の余湖たちの死体が、同時に閃光に包まれる。
「!!!」
本能的に危険を感じ取った久保は、伯林を殺そうとする手を咄嗟に止めると、拘束されているえなり姉のところまで跳躍すると、彼女を抱きかかえ、その場から掻き消えた。
その半秒後、余湖20体分の大爆発が、部屋を粉塵と瓦礫の山へと変えた。

  *****

「まさか、自爆しやがるとはな・・・姉さん、大丈夫かい?」
拘束されていた部屋から、10メートル以上も離れた場所に、えなり姉を抱えたままの久保は立っていた。
『瞬歩』と呼ばれる、超高速移動を可能とする特殊な歩法である。
「もう大丈夫だから、下ろして」
起伏のない平坦な調子でえなり姉が言うと、久保は彼女を静かに立たせた。
「厄介なことになっちゃったわね」
どこか他人事のように、えなり姉がつぶやく。
「秋田の鬼畜外道どもを敵にまわすことになるか・・・目覚ましがわりの運動には手ごろかもな」
喜悦の表情を浮かべながら言う久保の姿は、まさしく死神と呼ぶにふさわしい、禍々しさであった。
241作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 19:17:32 ID:xpvp1VOs0
えなりスレ初期に雑魚だった久保が強くなった!
「ウェッブルールは通じんぞ」って言ってた久保が!

えなり姉(ところで名前なんだろうね)の髪は黒のロングだったのか
242作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 19:26:47 ID:RbJT5Dnh0
ていうかまあ相手がアレだからな。
つくづく増殖だけはするもんじゃないよ。
243作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 20:34:27 ID:VoKiNorKO
増殖=一網打尽
244作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:08:50 ID:syuxgCtV0
井上のキャラわかりやすくていいなーw
245作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:10:06 ID:AofdAA0U0
えなり姉のネーミング問題は最後まで解決されない気がするお

ところで陽一先生が蹴球神と化しているのですが
そして巣田さんルートが怖いよう(((( ;゚Д゚)))
246作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:22:41 ID:syuxgCtV0
えなり(姓)女市(名前)

……女と市を変換して何とかいい名前を作ってみよう。
247作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:30:59 ID:AofdAA0U0
何よその糸色 望先生
248作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:39:14 ID:4FcEEgwT0
>>246
えなり姉(けい)とか女市(めいち)とか?w
249作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 21:53:40 ID:xpvp1VOs0
今はまだ決めないほうがイイのかな・・・
エピローグでえなり二世とともに明かされると面白いのかも
250作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 22:16:03 ID:syuxgCtV0
〜〜〜〜ッッ!?  マジレスうッ!?
251作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 22:18:46 ID:syuxgCtV0
まあ冗談はともかく、別に無くても必要ないし、何かの複線にもなってない所が明かしにくい点だわな。
確かに出すとしたらエピローグが一番しっくり填まりそう。
しかしエピローグw何年先の話なんだろ。
252作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 22:56:40 ID:xpvp1VOs0
>>251
2012年でしょ、やっぱり
253作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 22:59:33 ID:AofdAA0U0
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
254鷹は舞い降りた(120/180):2005/05/13(金) 03:41:12 ID:bt138CPz0
>>230
あんどのスローインで、試合は再開。ボールは早速、高橋陽一へと渡った。
しかし、陽一はいきなり奇妙な行動に出た。
センターサークル内までボールを進めると、そこで中腰のまま動かなくなってしまったのだ。
「何やってんだ貴様、俺達には時間がないんだぞ!」
大和田が怒声を浴びせるが、陽一は素知らぬ顔で、やはり動かぬまま。
(あわてることはない。時間は充分ある。ロスタイムを除いても残り30分はある。
 点差は、“たった”の3点。それだけあれば楽々逆転できる)
陽一の猛禽のような視線が、ガンサンチームを鋭く刺している。

――ぞくり。
ガンサンエリアにて、樋口は背筋に強烈な寒気を感じていた。
現在、ガンサンチームは全員を自軍陣地へと下げる、極端な守備的陣形をとっていた。
重傷の留美子をゴール付近まで下がらせ、雷句も彼女の治療のためにDFに下がった。
ちなみに、現在の両陣営の人数は、双方ともに10人ずつ。
車田と貞本が消滅した分は、2人が帰還する可能性を考え、あえて交代要員を入れていない。
えなりチームはリタイアした岸本が抜け、代わりにあんどの一人が加わった。
陽一と井上が交代した分を含めると、えなりチームでフィールドにいる、あんどは2人ということになる。
――あんどの数など、どうでもいいことだと、ここで気づいた。
閑話休題。
「よし、あたしが行く!!」
動かない陽一に焦れた、樋口。待ち望んだ対戦ということもあり、真っ先に動いた。
「勝負よ、高橋陽一!!」
せまりくる樋口に対し、ここで陽一が動いた。
真正面からの攻撃をかわそうと、フェイント。
そのスピード感あふれる目にも止まらぬ動きに、樋口は度胆を抜かれることになった。
樋口の目には、その一瞬、10人を超す陽一の像が映っていた。
255鷹は舞い降りた(121/180):2005/05/13(金) 03:42:11 ID:bt138CPz0
陽一の絶技の一端、『オーロラフェイント』。
まさに7色の高速分身からなる幻惑の動きは、樋口を実にあっさりと抜き去った。
「――!!」
あまりにも呆気無く、突破されたことに衝撃を受ける樋口。
しかも、驚愕の理由はそれだけではなかった。
ボールが――――無い。
ドリブルする陽一の足元からは、“トモダチ”であるはずのボールが忽然と消えていた。
――陽一は、サッカー選手ではなく魔術師か?
敵、そして味方までもが陽一の謎のプレイに驚きを隠せない。
そんなことはおかまいなしに、ガンサンゴールへ向け、猛然と突き進む陽一。
「ん?」
ペナルティエリア目前まで来たところで、陽一が急停止し、再び中腰になった。
「おっと靴ヒモがほどけちゃったんだな。なにせ、サッカーの試合なんて久しぶりだから」
悠然と靴ヒモを結び直す陽一の様子に、戸惑うガンサンチーム。
「――上だ!!」
ふいに鋭い声が響いた。ガンサンチームGK金田一が、遥か上空を指差している。
「フェイントをかけている間に、いつの間にかボールをあんな上空高く蹴り上げていたんだ」
つられて頭上を振り仰ぐと、天蓋に空いた穴から入り込む日光に重なるように、ボールが舞っている。
それが隙だった。下半身の強靱なバネにより、陽一が天高く跳躍。
否、それは跳躍というよりも、飛翔であった。まさに、翼を広げて大空に羽撃くように。
その圧倒的高さの前に、誰ひとりマークにつける道理はなかった。
陽一が空中でシュート体勢に入る。それを金田一は、細い目をさらに細くして見た。
(逆光。いつの間にか、こんなに太陽がまぶしく…)
上空からの打ち下ろしシュート。
それは、まるで太陽そのものを蹴ったかのような、優雅さに溢れていた。
256鷹は舞い降りた(122/180):2005/05/13(金) 03:43:01 ID:bt138CPz0
輝く太陽光の真只中を、重力加速度をともなった高速シュートが吹っ飛んでくる。
逆光のなかでも、金田一にはシュートの軌跡が見えていた。
得意の口で、これを捕らえに向かう。
しかし、金田一がボールを飲み込もうとする寸前、ボールが急激に曲がった。
「――!!」
曲がった先を追って、懸命に足を伸ばす。気のせいか、いつもの倍以上に長く見える。
ところが、ボールはさらに急激な変化を見せた。
そのシュートは、もう一度曲がったのだ。
まるでボールそのものが意思を持ち、金田一から遠ざかっていくような動き。
二段フライングドライブシュート。
ここまで鋭い回転がボールにかけていたことが、金田一には逆光のために分からなかったのだ。
だが、と金田一は刹那のときのなか、判断する。
ボールがあまりにも変化しすぎたせいか、明らかにゴールできる角度を逸脱してしまっていた。
ゴールマウスから、シュートが逸れていく。これでは、ゴールを割れない。
金田一が、そう確信した、そのとき――

          ギ  ャ  ン

金田一の両目が、見開かれていた。
ゴールを逸れ、その付近の芝に着弾したボールが、通常とは逆の方向――つまりゴールマウスの方向にバウンドしたのだ――!!

        ザ        シ    ャ   ッ     

ガンサンのゴールに、跳弾が深々と突き刺さった。
ゴールネットが大きく撓んでいる間に、陽一が音ひとつ立てぬ着地を決める。
一拍遅れて、ボールがようやく重力に従って芝に落ち、陽一の足元まで転がった。
凍りついた空気のなかで、一人ボールを拾い上げ、こともなげな様子で“トモダチ”に口づけをする陽一であった。
257作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 08:56:38 ID:X5po7Uu90
二点目乙。

ただちょっと今井の援軍直後と内容被りすぎな気が…。
258作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 12:36:54 ID:749qogCt0
陽一エロいよ陽一
259作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 12:49:45 ID:ofUMpaUB0
えなりと荒木が戻ればあんど全消去か…二人とも早く来て!

しかしこのスレって小姑染みたレスが多いみたいですねw
260作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 13:08:33 ID:3c4/bMs60
ナトゥレーザキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

プレイ開始からわずか3レスでもう一点か
やはり役者が違うな
261作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 13:32:40 ID:749qogCt0
>259
いや〜これでも随分緩和された方かとゲフンゲフン
262流星のごとく(123/180):2005/05/14(土) 21:45:17 ID:BUAGWeA80
>>130
陽一がゴールを決めたその時、その上空には貞元の自爆によって宙へと吹き飛んだ車田と
貞元の姿があった。

「さあ、ぼくとひとつになろうよ、くるまだのおっちゃん……」

自身の自爆によってボロボロになりつつも、ゴールドクロスが砕け上半身裸となった車田にまとわり着いていく貞元。
爆発の衝撃で意識を失った車田は抵抗もなく、貞元のなすがままになっていく。
だが、その時。
ついに貞元が一線を越えようとした瞬間、車田の目がカッと見開かれた。

「燃え上がれっ!!俺の小宇宙!!」

かつてない貞操の危機に車田の小宇宙が燃え上がる。
車田の両腕が貞元の体を抱きしめ、その動きを止めると同時に強烈な回転をしつつ
地面へと落下を始めた。

「ペ ガ サ ス ロ ー リ ン グ ク ラ ッ シ ュ  !!」
263流星のごとく(124/180):2005/05/14(土) 22:06:05 ID:BUAGWeA80
流星のごとく回転しながら地面へと落下する車田。
それはまさに流星のごとく美しい放物線を描いていた。
この速度と回転で地面に叩きつけられたのならば、貞元ももはや立ち上がることはできまい。

その時、運命の女神が車田に微笑んだ。
柴田がいた。落下地点に。
そして柴田は見た。半裸で男を抱きかかえて自分に向かって落下してくる車田を。

「スーパーUMA子美ジョン!!」

ただ一緒にいるだけでも薔薇色の妄想へと進化させる美ジョンが普通に見ても、そちら方面へ妄想を
掻き立てられる姿を見たらどうなるか。
その時のことを後に車田はこう語る。
「あの時、奴から感じた小宇宙はビッグバンですら遥かに越えていた……」
と。

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥと滝のように柴田の鼻から鼻血が噴出す。
無限に湧き出る腐女子(おとめ)力を拳に込め、柴田は流星のごとく落下する車田たちを見据えた。

「わしというものがおりながら、男色に走るとは。成敗しちゃるけん!!」

乙 女 ご 法 度 拳 !!

「「ぐはぁ!!」」

柴田の腐女子(おとめ)心のこもった拳が車田たちを捉え、バックに大量の薔薇を迸らせ車田たちが吹っ飛ぶ。
その勢いはものすごく、瞬きする間に車田と貞元の二人は、キランと光る星となった。

その情景はまるで"天に昇る流星のようだった"とのちに試合中におきた、
伝説のひとつと語られるものになったが、それはまた別の話。
264作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 22:47:35 ID:FLTE7ZSu0
志村〜、貞本貞本

兄貴はサッカー編入ってから別の属性がついてしまったお
265作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 22:53:51 ID:BUAGWeA80
>>264
……名前間違えてた、スマソorz
266作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 23:38:30 ID:8jMJdUaB0
運命の女神に微笑まれてこれかw
267黄金の鷹(125/180):2005/05/14(土) 23:59:56 ID:YW2LREJM0
>>256
『え、えなりチーム2点目ェ―――っ!! 試合再開から、わずか1分!! まさにえなりチームの救世主 高橋陽一! その背番号10は伊達じゃない!!』
実況・克が興奮気味にアナウンス。それにつられて、観客席も熱狂する。

城平「芝のバウンドも計算してボールに回転を…しかも鉄壁の防御を誇る金田一に対し、ペナルティエリアの外からゴールするとは…」
≪サッカーの申し子≫とも≪サッカー王≫とも呼ばれる男、高橋陽一。
その“神技”――伝説の一端を、彼らは垣間見た。

だが当の陽一は、皆が唖然とするなか、ひとりボールを引っ掴み、そのまま走ってセンターサークルに置く。
「まだまだこれからだ! 一気に追い付き、逆転するぞ!!」
救世主の激に、えなりチームの闘志が昇竜となって燃え上がった。

土塚「あんなにスゲエ男とは……ぶっちゃけレベルが違いすぎでやがります」
樋口(確かに、そうかもしれない。勝てるかもしれないって、あたし達が持ちかけた自信を、今のシュートで粉砕されてしまった…)
握りしめられた華奢な拳が、ぶるぶると震えている。
樋口(でも…なんだろう、この気持ち…)
村枝がふと樋口の顔を見ると、そこには意外なものがあった。
樋口( わ く わ く す る !)

ピ―――――――――ッ!!

試合再開の笛。ガンサン側のキックオフ。
樋口はバックパスで村枝にボールを預けると、高橋陽一に向かって一直線に走った。
村枝(本来なら、高橋陽一をボールに触れさせるべきじゃない…だが、どうしても高橋陽一と勝負がしたいのか。……面白い、いいだろう)
村枝「それっ、樋口!!」
ふわりと羽のように柔らかなタッチのループパスが、えなり側数名の頭上を越え、樋口へと送られた。
樋口(ありがとう、村枝さん)
自分に送られてくるパスを見て、笑顔を浮かべる樋口。しかし、その表情がすぐに引き締まる。
――そのパスを読んだ陽一が、すでに動き出していた。明らかに、その狙いは、樋口のトラップ際であった。
樋口(ボールの落下を待っていたらやられる!!)
268黄金の鷹(126/180):2005/05/15(日) 00:01:00 ID:3IzyKX+v0
樋口、陽一の狙いを察知、より早い空中でのトラップを敢行。
陽一、樋口の、この動きをも読んでいたのか、樋口とほぼ同時にジャンプ…、そして…

――両者、空中激突!!

樋口「くっ!」 陽一「!!」

吹き飛ばされたのは、樋口の方だった。
肉体の強靱さでは、陽一が樋口を遥かに上回る。
しかし、ハジキとばされたものの空中で体勢を立て直し、見事着地の樋口。これも左右のボディバランスの良さがなせる技か。しかも……

克『ボールはまだ樋口が持っているゥ!!』

吹き飛ばされながらも、その瞬間、樋口はつま先でボールを引っかけ、マイボールにしていた。
樋口(こ…これは…!?)
だが、周囲の驚愕をよそに、樋口は自身の異変に気づいていた。陽一が、ニッと笑う。
樋口(あ…足にしびれが……下半身は徹底的に鍛えこんだのに…さすが高橋陽一。いくらマイボールにしても、こ…これじゃ…)
電極を通されたような強烈な足の痺れに、樋口は立ち上がれない。そこへ、すかさず陽一がつっかけてくる。
だが…足の痺れは、そのときに唐突に止まった。
樋口(あっというまに、しびれが治まった!! ここまでの鍛え方は伊達じゃない!! 行ける!!)
陽一(あの衝撃から、もう回復したのか。やるな、樋口大輔)
驚異的な回復力を見せた樋口、再度陽一に挑む…!!

克『こ…これは、ひ…樋口選手の、このフェイント、この技は…!?』

克の絶叫が響いた瞬間、樋口の姿が陽一の眼前から消滅した。

樋口の『消えるフェイント』――
相手の懐に飛び込む要領で、相手の死角に一気に入り込み、そして素早い切り返しで敵に捕捉される前に抜き去る。
仕掛けられた方からすれば、一瞬消えたように見える。
陽一が、次に気づいたときには、樋口はすでにその真横を通過する寸前であった。
269黄金の鷹(127/180):2005/05/15(日) 00:02:48 ID:3IzyKX+v0
あのサッカー王・高橋陽一をも抜く――樋口がとてつもない快挙を達成するかに見えた――その瞬間。
陽一の体が急激に沈み込み、地面スレスレに平行に後ろへと飛んだ。
これが高橋陽一の――『高速サブマリンディフェンス』だ!!
樋口「えっ」
陽一の長い足が突破寸前の樋口を追い掛け、足払いの要領で襲ってくる。
これをも樋口は、ジャンプ一番、かわす。
しかし、陽一の笑みは消えない。すかさず地面に手をつくと、足を天に突き上げるようにして跳躍した…!!
樋口(何度、抜いても…抜き切れない…!!
   上半身と下半身を巧みに使った、高橋陽一の流れるような、この一連のプレイ)

         ガ   キ イ  ッ

克『ダメだ!! ここでついに捕まったァ〜〜〜〜っ!
  樋口選手は空中に逃げたのが間違いだった! この空は陽一選手の制空権
!  
  黄金の鷹・高橋陽一の前では、樋口大輔はまだヒナドリでしかないのかァ〜〜〜!!』

樋口(くっ、この人を抜き去るのは永遠にムリなのか…)
圧倒的な実力の差を痛感した樋口は、背中からしたたかに地面に撃沈した。
樋口「ぐはっ!」
一方、軽やかな着地を決めた陽一が、いまだに立ち上がれない樋口に向かって言った。
陽一「樋口くん」 樋口「は…はい」
ジャンプが誇る黄金の鷹。その静かな迫力に、樋口は思わず答えていた。
陽一「きみの目標はなんだ。最高のスポーツ漫画家になることか」
一瞬、気圧されていた樋口が、すぐさま「はい!!」と即答する。
それを聞いた陽一は面白そうに笑い、言った。
陽一「だったら、この試合での戦いに必死でついてこい。そうすれば、きみはもっと巧く! そしてもっと強くなれるはずだ」
そう言い捨てると、陽一は踵を返し、ガンサンエリアに切り込んでいく。
いまだ落下の衝撃から回復できず、意識朦朧とする樋口の目に、遠ざかっていく陽一の背中はどこまでも雄大で、そして決して越えられぬ壁として映っていた。
270作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 00:22:59 ID:L79nPAFP0
これだ!俺はこういうのが見たかったんだ!

なんてサッカーらしいサッカー(つ_T)
271作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 02:37:04 ID:PcgX1M+s0
>>270
同感。
ってか、超人系同志があらかた潰しあって、
マトモにサッカーやりそうな人が残ったからね〜。
期待大ですな
272作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 09:43:57 ID:j5hmVCQ60
さすがだな、高橋陽一。
ドラクエフィールドならぬキャプ翼フィールドが張られているかのようだ。
273作者の都合により名無しです:2005/05/15(日) 23:27:18 ID:Yra/UvpJ0
>>272
陽一ワールドってのが本当にあるらしいぞ。(3部の274)
274これね:2005/05/16(月) 07:23:11 ID:fgzWUENa0
274 陽一の「世界」 New! 02/01/29 21:21 ID:X7H7qLg/
高橋「やってくれましたね・・みなさん。決勝まで、画太郎さんぐらいは残ると思って
   いましたが・・意外でしたよ。よくも私の負担を増やしてくれましたね・・・・
   ゆるさん・・・・・・ゆるさんぞーーーーーーーーーー貴様ら!!!!!
   じわじわとなぶり殺しにしてやる!!!!!」
えなり「あ・・・・あああ・・」
尾田 「くっ、どうやら、えなり。我々はとんでもないやつを怒らせてしまったみたいだぞ
    今の奴は、担当ですら制御できないモンスターだ!!」
岸本 「奴の力・・黄金五聖人に匹敵しうるぞ!!」
えなり「そ、そんな・・・」
岸本 「安心しろえなり。俺が出て、できるだけ奴の手の内を探ってやる。後は頼むぞ・・」
東 「第3試合 岸本vs高橋 始め!!」
岸本(見た目はどう見ても強そうではないんだが・・この凄まじいプレッシャー・・・・
   奴の力の上限が読めん・・全力で挑むのみ!!)
  「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
東 「岸本選手、開始早々凄まじいスピードで、高橋選手に斬りかかる!!対する
   高橋選手はまったく動く気配がありません!!」
岸本「この間合い・・もうよけられんぞ!!」
東 「岸本選手の刀が、高橋選手を貫いたーーーー!!」
岸本「勝った・・・のか?」
高橋「その程度の攻撃が、サッカー選手に通用するはずがないだろう」
岸本「な、何!?馬鹿な!!確かに心臓を貫いたはずだぞ!!」
高橋「フフ、貴様の刀が私の心臓を貫く寸前、手で刀の軌道をそらしたのだよ。
  (厳密には反則のはずだが、審判は流した)
岸本「???なぜ手を使うと反則なんだ?いや、そんなことより、軌道をそらしたとしても
   致命傷だったはずだぞ???」
尾田「これがうわさに聞く、陽一ワールドか!!」
高橋「言っただろう・・サッカー選手にそんな攻撃は通じぬと・・今度はこちらの番だ!!
東 「おおと!!高橋選手どこからか、サッカーボールをとりだしたー!!蹴るのか!?
   蹴ったーー!!」
えなり「岸本さん、よけてーーーーーー!!!」
岸本「な!?シュートがオレンジ色にかがや・・・ぐわあああああああああああ!!!」
275作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 11:21:10 ID:eyPvW47z0
>>274
なにこの主人公っぽいえなり。ふざけてるの?
276津波(128/180):2005/05/16(月) 15:13:45 ID:UB1Y/DEx0
>>263 >>269
カムイ「は…速い!!」
中盤に居たカムイとUMA子の2人を、フィールドを稲妻のように切り裂く、ダブル直角フェイントで突破する陽一。
そこへ立ちふさがるのはサンデー最強のサッカー漫画家・村枝賢一。
村枝「俺が守る! 同じサッカー漫画家として…俺がおまえを止める!!」
突破をはかるかに見えた陽一だったが、ここでドリブルを急停止させる。そして……

克『あ〜〜〜〜っと、こ…これはなんというボール捌きだ!? 陽一選手、まるでバスケットボールのように足裏と地面の間でボールをバウンドさせキープしている!!』

村枝「なにィ!?」
陽一「これがホントのドリブル……なんちゃって」
この余興に、さすがの村枝もカチンときた。
村枝「なろっ!」
腕を使った強烈な当たりを仕掛ける村枝。
しかし、陽一はその動きに対して右に動くと同時、ヒールキックによる完璧な股抜きで、これもあっさりと抜き去った。
愕然とする村枝を置き去りにし、陽一の進撃はとまらない。
雷句「ヌウ、最終ラインの我らで止めるぞ!」
激を発する雷句だが、ここで陽一がボールを右サイドに大きく流した。
そこに走りこんできた駿足・村田が、これをすかさずゴール前に折り返す。
陽一の必殺シュートやドリブル突破ばかりに気をとられていたガンサンDFは、ここで裏をかかれる。
陽一は送られてきたセンタリングを、ジャンピングヘッドでオープンスペースに落としたのだ。
この陽一のポストプレイに、猛然と突っ込んでくる男がいた。
許斐だ。
スピードにのったまま、ボールの下にもぐりこむようにスライディング。
さらに、そこからいきなり飛び上がり、シュート…!!
猛特訓の末に編み出した、許斐の『シュート版ドライブB』――
強烈なドライブ回転のかかったシュートが、山なりの鋭い弧を描き、ガンサンゴールに迫る――!!
277津波(129/180):2005/05/16(月) 15:15:20 ID:UB1Y/DEx0
許斐「まだまだだね」
お得意の決め台詞を、ニヤリとふてぶてしい笑みを浮かべながら言い放つ許斐。
金田一「――どっちが?」
しかし、鉄壁キーパー・金田一。ゴールバーぎりぎりのところを狙ったシュートを、ジャンプ一番、完璧にキャッチングする。
許斐「なにィ!?」
やり返すように同じ笑みを返す金田一。
金田一「落ち着け。相手のペースに飲まれるな」
近くのメンバーにそう言い、カウンターを仕掛けるべくゴールキック。
だが、このとき金田一さえ予想だにしなかったことが起きた。
ケリだしたボールを、いきなりその位置の飛び込んできたX仮面が、顔面ブロックしたのだ。
金田一「!?!」
ヒビの入った仮面がさらに破損し、破片を一部まきちらしながら、X仮面は派手に倒れた。
顔面から煙を出して大の字のなるX仮面に、一瞬気をとられる形になった金田一。
だから対処が遅れたのだ。こぼれたボールに、すばやく反応する黒い影に対して。
金田一「……!!」
飛び込んできたのは、誰あろう高橋陽一。
グリュウ、と竜巻のように体を反転させ、シュート体勢。
これは、雷獣シュートに匹敵する『トルネードシュート』のモーション…!
陽一「くらえっ!!」


          ┣¨   ゴ   オ    ッ


超至近距離からの、雷撃のごとき陽一の必殺シュート。
キャッチングでも、パンチングでも、間に合わない。
そして、いつもの幼児体型では、どちらにしろ吹き飛ばされるだけ。
金田一は決断した。
278津波(130/180):2005/05/16(月) 15:16:24 ID:UB1Y/DEx0
金田一「ちィイイ〜〜〜!!」
体型を大人の女性のそれへと変化させる。
成長する骨格、伸びる四肢、広がる髪。
シュートが放たれる瞬間、全体重をかけた渾身のショルダータックル。

      ゴ  オ  キ  ……… メ キ メ キ ッ

生理的嫌悪を起こさせる、不協和音が金田一の体内で響いた。
もっとも防御力の高い肩で受けたにもかかわらず、左腕の骨が粉砕された。
さらに浸透した衝撃は、そのまま金田一の左側の肋骨を一本残らず小枝のようにヘシ折った。
金田一「が…は…」
血泡を吐き出した金田一は、そのままゴールポストまで吹っ飛ばされ、強烈に叩きつけられて倒れた。
金田一(……ちっ…しくじった……このダメージでは動けん)
とっさに大人体型になったのは、金田一の英断だったと言える。
もしも、幼児体型のままで今のボールを受ければ、何の障壁にもならぬまま、ネットにボールごと突き刺さっていただろう。
金田一の捨て身の防御が功をそうし、ボールは弾かれて宙を舞う。
雷句「ヌウウウ!」
そのボールを雷句が、すかさずヘッドでクリアする。だが…
許斐「残念無念、また来週〜〜〜!」
驚異の運動量を誇る許斐が、アクロバティックな動きで、このクリアボールを防いだのだ。
雷句「ヌァ!?」
再び、ボールはゴール前の空中へ。
そこへ、シュートを撃ち終わった体勢から、陽一。
そのまま踏み切り、このボールに体を捻って反転しながら飛びつく。
同時に、このボールには、留美子と土塚が反応していた。
279津波(131/180):2005/05/16(月) 15:17:46 ID:UB1Y/DEx0
空中で、激突する三者。
果たして、シュートが先か、クリアが先か!?

        バ ッ  ゴ  ォ  オ  オ  ッ ッ   

土塚「ぐわっ!」
留美子「うあっ!」

2人は、まるで竜巻に巻き上げられたように天高く吹っ飛び、地面に激突させられた。
そして、きりもみ状に鋭く回転したボールは大きく曲線を描き、ガンサンゴールに突き刺さった…!!

克『噂の超美技・ローリングオーバーヘッド炸裂ぅ〜〜〜〜っ!!
  4対3、えなりチーム、あっという間に1点差までつめよったァ!!』

陽一が華麗に着地を決めた瞬間、地鳴りのような歓声が轟いた。
諸手をあげて喜び、陽一にかけよる、えなりイレブン。
村田「すごい、すごいです、陽一先生! …えっ!?」
そのとき、陽一が見せたパフォーマンスに、会場中が注目した。

克『あ〜〜〜〜〜〜〜っ!
  ゴールをきめた陽一選手、観衆の声援に応えるかのように、天にむけ、人指し指をつきたてた!!
  これは、あと1点に迫ったという意味か、それとも自分がNo1であるという意思表示なのか!!』

同じ≪背番号10≫を背負うカムイは、戦慄する。
見渡せば、樋口・土塚・留美子・金田一はいまだに地面に倒れふしたまま。
高橋陽一、たったひとりの加入により、ことごとく薙ぎ倒される形になったガンサンイレブン。
同点を待たずして、いまや形勢は完全に逆転しつつあった。
  
280作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 15:34:25 ID:3nC5V6rw0
蹴球神の猛撃は終わらないっ!!
コエーメチャコエー
281作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 15:35:17 ID:i6vPHy6H0
司令塔としても某ファンタジスタなんぞとは比べ物にならないなこの方は
なんかあのまま埋没しそうだった許斐まで生かすとは。

サッカー場における対YOO1の絶望感は、むしろゆでのそれに近い・・・!
282作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 21:00:17 ID:cxC7xr6k0
プロレスのゆで、野球の水島、サッカーのYOO1……。
カッコいいなあ。
283作者の都合により名無しです:2005/05/16(月) 22:22:31 ID:MPJoDoUT0
ゆでは路上だろうとリングだろうとやること変わらんからむしろリングから出た時の方が凶悪。
壁にマッスルミレニアムとか路上にビッグベンエッジとかしちゃうし。
284作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 00:12:18 ID:LVW8vJJF0
…そういや、ゆで将軍はどうした!?
285作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 00:15:00 ID:LVW8vJJF0
あ、自己レス。エリ8向かってんのか。
286作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 00:22:09 ID:QvOv61gCO
さりげなく土塚に期待
287作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 00:41:45 ID:/Qg6M9XV0
>>286
ミカゼモードとかエイキモードとかにならんかな
指先が熱くなったら・・・廻せ!!とか
288作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 00:59:46 ID:0ujfCN1q0
硝子の貴公子…。
俺が言えるのはここまでだ…。

そういえば許斐は千葉県あたりのの長者番付にランクインしてたね
一億近く納税してるなんてやるねぇ。本宮より上にランクインしてたな、そういや
289作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 02:19:57 ID:RxBkUQyt0
>>281
YOO1はファンタグラジスタだからな
超絶テク・司令塔としての頭脳にくわえて、なんといってもパワーが半端じゃない
スポーツ漫画のレベルを逸脱してる
290作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 04:14:48 ID:PRKlv06S0
某ファンタジスタの存在を完全に失念していた自分に愕然とした
ここが活躍できる最後の場所だったんじゃないかあいつも…

ドラクエワールドというより知欠空間やゆで理論に近いなこの圧倒ぶりは
291作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 09:15:41 ID:U73yg70EO
陽一SUGEEEEEEEEEE!!!!カッコよすぎだろ陽一ぃ!
292そしてターキーも舞い降りた:2005/05/17(火) 12:20:57 ID:MF9pUBER0
>>279 >>>>227

ついにえなりチームの猛追撃が始まった!!
その圧倒的なプレッシャーに加え、負傷者が一気に増えて、
ますます身動きの取れないガンサンイレブン。
彼らの瞳に映る、まるで誕生直後に歩いて天と地を指差し、
『天上天下唯我独尊』と宣言したお釈迦様に見えたに違いない。
そして、さらなる混乱がじきに判明する事になる。

ガンサンボール、カムイのドリブル。
しかし周りがついてこない。先ほどのビッグウェイブで、
何名も負傷したりダメージを負っているのだ。
中央近くにある、陽一効果で修復されつつある崖の周辺で、
カムイは戦力の半減に怯む事無く、少しでも勝機を見出そうと、
村枝とツートップで敵陣に乗り込むため後方にパスを回すが、
どこからか疾風のように現れた男にインターセプトされてしまった。
 「くっ、ボールを取られたか・・・って、あんなのいたか?」
ボールを奪った男の姿を確認したカムイが首をひねる。

――それは岸本と交代で入った、あんどのひとり。
しかしよく見ると下半身にもきちんとユニフォームを着ており、
顔のマスクも吉崎パンティではなく立派なレスラーマスク。
黒が基調で七面鳥(ターキー)を模した、一部緑色の前髪が飛び出した造型。
格闘向けにシェイプされた、しなやかな筋肉に包まれた長身の男。

どこかで見た、知ってるはずの、しかし誰かはわからない――
気持ち悪さでカムイが混乱する刹那、七面鳥男がセンターサークル上で立ち止まり、
変なヒーローポーズを取って両手を高々と掲げた瞬間!

   ―――――――   ヴ   ン   ッ  …… !!

サークルの半径数メートル内が超高圧の重力空間と化し、芝が丸くめり込んだ!!
293そしてターキーも舞い降りた:2005/05/17(火) 12:22:16 ID:MF9pUBER0
 「彼はあんどさんなのか?・・・はっ!!この光景(え)は、
 試合前に僕たちが見た500円のDVD≪必殺シュートのつくりかた≫!?
 確か製作者は・・・そうだ、謎の漫画家ミスターM!!まさか」
村田が驚愕の表情で見つめる中、あんどのフリをしていた男の足が、
ボール共々虹色の光を放ちながら、一気に宙から蹴り落とされボールを蹴る!

    “ピッ・・・”      ―――ドッゴオオオオオオオオオオン!!!!

―――“サッカーの神様”高橋陽一でもない人間が、
グラウンド中央からシュートなんか届くものか―――
観客の微妙な雰囲気が、しかし瞬時に興奮と歓声が沸き起こる。
光りながらキリモミ回転するボールは弩の如き豪速でガンサンゴールを直撃!!
ボールの軌道をなぞって芝に溝ができ、爆発の轟音が試合場全てを席巻する!
それはサッカーボールというよりは≪バズーカ砲≫の着弾だった。
ついにえなりチームがガンサンに同点で追いついた・・・

ように思えたが、ゴールポストの角っこを歪ませただけで、
得点には至らなかった。蹴った男が指を「惜しいっ」と鳴らす中、
ボールはなんとか立ち上がった金田一がキープ、再びガンサンからの攻撃。

村田が慌てて“黒いあんど”の傍に走って向かう。
 「あ、あなたはミスターMですよね!?
 いきなり何なんですか、続編DVDでも売りつけに来たんですか」
Mと思しき男はニヤリと笑うと、ごにょごにょと村田に耳打ち。
あんぐりと口を開けた村田にMは親指をビシリと立て、
サークルからダバダバと走り去った。

陽一は突然現れた黒あんど・Mの姿を見て、
瞬時に男の正体を察して苦笑する。マスクが違えど中身は同じ。
 「やれやれ、自分の試合はいいのかい?『背番号0』のリベロくん」
彼の広い視界の先では、どこで調達したやらナンバー0を背負った男が、
村田を引き連れてガンサン攻撃陣に、強引に割り込んでいた。
294そしてターキーも舞い降りた:2005/05/17(火) 12:24:33 ID:MF9pUBER0
 「くっ!」カムイとMが1対1でボールの奪い合い。
ボールを介して肉弾戦となるが、僅かな隙を見てMが球を後ろ蹴り。
バックパスか──しかしボールを受けた村田は前方にカウンターで打ち返し、
ダッシュでカムイから外れたMが、弓なりにガンサンゴールへ向かう浮き球を追う。
 「壁パス!?」「ごめんねカムイせんせー!」
2人の声が同時に響き、そして名を呼ばれたカムイが咄嗟に思い出す。
この男はCブロック決勝後、島を脱出する船にいた鳥マスクの──
 「そうか、裏御伽の副将か!!だが何故試合前の彼がここにっ・・・」
はっとして上空を見上げると、サッカー漫画界きっての希少ポジション・
リベロ(センターバックのDF)を務める男が、ゴールポスト前で陽一ばりに宙を舞っていた。

 「ここで同点にして試合を盛り上げるじゃーん!
 決まれ必殺!オーバーヘッドキィィーーーーーーック!!」
遥か空中で照準を合わせ、背中から縦回転でシュートを放・・・とうとしたM。
しかし勢いがつきすぎたかボールをスカし、くるっと上空一回転し──
それに気づかないMは自軍ゴールの方を向いて、落ちてきたボールを撃つ!!
 「いっけぇぇぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

          ド   シ  ュ   ン  ッ  !!!

シューターの気合が移り静電気を帯びたボールが、ガンサンエリアを超え、
えなりエリアを超え、見上げる者の首を痛めるほどの上空をすっとばしながら、
出番がなくてぼんやりしていたGK井上雄彦の横をすり抜けて・・・
えなりゴールにパサリとおさまった。マジで。

  Mのオーバーヘッド自殺点により──  【 ガンサン 5 − 3 えなり 】!!

 (何やってんですか、にわの先生!!いいかげん身体交代してくださいよっ!!)
 (あ、あれぇ〜?懐かしくてつい!ごーめーんー)憑依合体で一体化していた2人。
やっと宿主が交代し、自分の外見に戻り鳥マスクを脱いだえなりが次に見たものは、
彼をものっそい冷たい視線で見つめる、ハブられたあんど軍団であった。涙。
 「? 彼ではないのか。まあいい、次は抜かれん!」カムイが吼え、えなり正式参戦。 NEXT!→
295作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 12:29:16 ID:MF9pUBER0
しまった!数字を忘れていました。
>>292-294で(132-134/180)です・・・
296作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 12:34:47 ID:5WWmFHju0
おーい、YOO1〜〜“殺”していいぞ、この覆面w
297作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 12:43:11 ID:MF9pUBER0
ひでぇw
原作屈指の名シーンなのにぃ〜
298作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 16:45:16 ID:+pay9R6I0
・・・とりあえず、主人公復活おめ。
299作者の都合により名無しです:2005/05/17(火) 21:20:50 ID:pQE+vFOM0
         /   ∠,,_ノ ソ _ ,,.. _)
        /|  '',,((ノ )   ノ (\)  |  <今、覆面殺してきた。リアルで。
        | |     ̄'      ̄ イ   ハァ ハァ
        \| υ     、_/ロロロ)_ ノ         えなりがんがれ超がんがれ
300逆境イレブン:2005/05/18(水) 17:44:24 ID:UsEVGBHb0
>>294 試合再開前)


えなり「わかってますよ!!ますってば!!
 目立ちたい一心で後先考えずに乱入する僕が悪いんですよ!!
 僕の外の人の制御ひとつできない僕が悪いんですよごめんなさい!!
 全面的に外の人が悪くても僕の責任なんですよああそうですよ!!
 残り25分切ってるのに最低3点返さないと勝てないんですよ!!
 全部わかってますからそんなゴミ虫見るみたいな目で僕を見ないでぇぇぇ!!」


陽一パワーで一気に盛り上がった試合がこの体たらく。
彼を囲むえなりイレブンのモチベーションはマイナス値だ。
たまに出番があれば悲惨な主人公えなり2世、
さてこの劣勢をどう返す。
しかし点数の差以上にキツイのが、陽一中心にできあがったマイチーム。
どう見ても自分が一番「足を引っ張ってる人」だ。
自分の名をチームに冠しているのにだ。

どちらのチームも負傷者や行方不明者が出ているが、
相手と比べてのテンションの低さは如何ともし難い。
 「なんでこんな事にぃ〜。これが逆境なのかぁ〜辛いよ〜」

頭を抱えるえなりには、キャプテンマークを腕につけた凛々しい男、
高橋陽一がとてもとても眩しく見えた・・・。

301逆境イレブン:2005/05/18(水) 17:47:57 ID:UsEVGBHb0
一方敵に助けられた形のガンサンイレブン。
しかしボタモチラッキーを素直に喜ぶ雰囲気は見受けられない。
超攻撃的サッカーで押し切れず、気づけば猛禽の爪に蹂躪されている。
疲労の色が隠し切れないカムイは、自陣ベンチの近くに立ち、
芝の上に置いてあるスポーツ飲料のひとつに手を伸ばそうとするが、
それを遮るような高笑いが彼の耳に入り、自然に腕を引っ込めた。

 「ははは!カムイのくせに注意力散漫だな。
 そいつには下剤が入ってるぜ。運の値が下がってるんじゃねーの?
 おかげでハリーの野郎が便所から帰ってこねえのよ」
ドスの効いた女性の声に、カムイの表情がさらに剣呑になる。
 「・・・やはり生きていたか、一本木蛮。
 今日はどうした?神崎は今はいないぞ。血の匂いに惹かれて来たのか」

蛮と呼ばれた小柄な女は、ドリンクのボトルでお手玉をしながら、
射るようなカムイの視線を真っ向から受け止める。
 「積もる話はまた後だ。ほれ笛が鳴っちまうぜ、早く戻れ。
 ・・・なんなら俺が誰かと替わってやってもいい」
蛮は物騒な笑みを浮かべ、学ランの上を脱いで肩にかけた。

 「ただのケンカ屋の出番など、期待しない方がいい。
 特等席で見物していろ。ああ、また敵襲があったら好きに排除してくれ」

冷淡な顔と声でカムイが言い放ち、センターの方へ戻ってゆく。
未だルールブックを手に持つ山田審判の、試合再開の笛が高らかに鳴った。
302作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 21:09:07 ID:3tzgFfEf0
カムイは、ノリが軽薄な奴相手だととことん冷たいな印象があるな
神崎しかり蛮嬢しかり
303作者の都合により名無しです:2005/05/18(水) 21:19:43 ID:w5pe1FsN0
神崎に冷たかったのってファーストコンタクトの混戦時だけじゃなかったか?
鬼岩城ん時は蹴っ飛ばされた過去も忘れてフォローしてくれてたじゃん。
基本は面倒見のいいキャラ。
304作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 14:29:32 ID:jt7BzgpJ0
カムイは良くも悪くも大人だからな。相手によっては対応が冷たく見えることもあるんだろう。
しかしガンガンは女性が頑張るチームだな〜、男共が尻に敷かれるの似合いすぎとも言うが。
305作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 15:33:08 ID:gKJDO8Zb0
ガンサンは女性比率そのものが高いしね、実際の漫画家でも。

しかしえなりチームは若手多いくせに、周囲に女っ気ゼロだなあ。
バンチは三浦絡みが面白かったけど。裏御伽は(ry
306作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 15:34:59 ID:910J6XPY0
カムイは、私闘に酔って大局を見ないタイプは嫌ってる感じだ
神崎への対応が少し柔らかくなったのも、神崎が単なる戦闘狂じゃないと見直してからだったし
要するに極めて常識人ということだな、えなりスレでは稀有な人材だがw
307作者の都合により名無しです:2005/05/19(木) 23:06:11 ID:fWmNEid40
だから苦労するんだなw
納得したよ。
308《魔女》とは――:2005/05/21(土) 11:26:52 ID:jCxllCjH0
 魔女とは、人を越えしもの。
 魔女とは、物事の根を捉えられるもの。
 魔女とは、想いをかたちにするもの。
 魔女とは、思いを馳せるもの。
 魔女とは、大胆なもの。
 魔女とは、慎重なもの。
 魔女とは、虐げられるもの。
 魔女とは、儚いもの。
 魔女とは、優しきもの。
 魔女とは、恐ろしきもの。
 魔女とは、涙を流さぬもの。
 魔女とは、ひとそのものであるもの。
 魔女とは、垣根を要さないもの。
 魔女とは、何も壊さぬもの。
 魔女とは、その物をあるべきかたちに戻すもの。
 魔女とは、心の深遠に無限の闇を抱えるもの。
 魔女とは、光を求めて止まぬもの。
 魔女とは、全てを愛すもの。
 魔女とは、愛さぬもの。
 魔女とは、信じたいもの。
 魔女とは、信じられぬもの。
 魔女とは、食事にうるさいもの。
 魔女とは、何も食べなくても死なぬもの。
 魔女とは、あるもの。
 魔女とは、ないもの。
 魔女とは、全ての相反する要素を総て兼ね備えているもの。
 魔女とは――。

309《魔女》とは――:2005/05/21(土) 11:27:52 ID:jCxllCjH0

「久しぶりだな、芦奈野」
 《魔女》は、口元に微笑みをたたえていた。
 見ているだけで、吸い込まれそうだ。
 クッキング親父は、いつの間にか、その男から目を離せなくなっていた。
「早速おめえに頼みあんだけどよぉ。今回の別府の件、ありゃあ一体……」
「薄っぺらい男」
 魔女が、語りだす。
「人の上に立つ器ではない。呑気な顔で、サッカーなど見ているな。サッカーはなかなか面白い内容
のようだ。おや、怯えが見えるな。どうやら、主催者の男にとって非常に不味い人物が、グラウンドに
いるようだ。あれは、絶対的な存在では決してない。いや、そもそも、この世に絶対的な存在など有り
得ないのかもしれない。総ての存在には、何か一つは堪えられぬものがある。あの男にとっては、そ
れがグラウンド上にいるようだ」
 魔女は、遥か遠くを視ているようだった。その眼は、透明に見えた。
「誰だか知らんが、その主催者……ってのが、今回の惨事を起こした野郎か?」
「誰が何を画策しようとも、結局は当事者の意思が場を動かす。あの程度のものが意のままに
動かせるものではない。多くのケースと同じように、今回の別府は複数の人間の思惑と偶発的要素が
絡み合って起きたものだ」
 芦奈野は、魔女の言葉を聞き、納得した。
 彼を知るもので、彼を疑うものはいない。疑っているのは、彼を頑なに信じようとしないものたちだ。
「一つ、訊いていいか? 何故、男なのに《魔女》なんだ」
 クッキング親父が口を開いた。
「魔女とは、ものを見ることの出来るものの総称。性別は関係ない」
 魔女とは(略)

310《魔女》とは――:2005/05/21(土) 11:28:40 ID:jCxllCjH0


「今度は俺から質問だ。俺が、異世界で見た……」
「ラッコ」
 またも。魔女は、親父の科白を言い切らせることなく、視た。
「きれいな存在だ。なんの穢れもなく、ただその眼は純粋に一人の男を視ている。純粋に、男を飲み込もう
としている。そして、ラッコは見事男を飲み込んだ」
「男とは……一見普通な感じか?」
「そうだ。だが中身はある意味人の象徴といえるだろう。煩悩ではち切れそうだ。理想的な人間のかたちの
一つではある。この男は、大事な記憶や理性等を飲み込まれ、奪われ、制御が効かなくなっているようだ。
このまま放って置けば、取り返しの付かないことになるかもしれない」
 男は今、サッカーで暴走している。
「……もう一人の、いかにも変人臭い男は?」
「見えにくいところにいる。何か遮蔽物で囲み、人目に付かないようにしている。おぼろげに見えるが、校舎の
ようなところだ。姿は……どうやら、男ではない」
 彼女は、捕らえられた。
「俺は、その二人を助けてやりたい」
 親父は、魔女を見据えた。
 魔女は、親父を見据えた。
 魔女は、頷いて、
「サッカーグラウンドにいるほうは、今から数時間後、ここに来ることになる。話はそれからだ」
 魔女は――五十嵐大介は、また微笑んでいた。

311力の限り…!!(135/180):2005/05/23(月) 22:21:48 ID:KTdLj/250
>>131
陽一(……このムードは不味いな)
キャプテン陽一は考える。残り25分もない状況で、2点のビハインド。しかも、チームのテンションは最低値。
不利な戦況で味方もアテにならない、この最悪の局面を打開できるプレイとは……
陽一(ここは単独突破しかない…か)
圧倒的な実力差を見せつけて、相手を意気消沈させ、こちらを逆転ムードに持っていく。ここから再び1点差に持ち込めば、それは可能だ。少々、厳しいがやるしかないだろう。
笛が鳴り、試合再開。
すると同時、ボールを持った陽一は一目散にガンサンゴールに向かっていく。
司令塔でもある陽一を止めない限り、えなりチームの猛攻を止めることはできない。
それが分かっているガンサンチームは、こぞって陽一の前に立ちふさがった。
UMA「ぬぅおおおおおおおおっ!!」
雄叫びをあげながら、ダンプカーのようなタックルを仕掛けるUMA子。

         バ ギ ャ オ オッ

UMA「ぐぶぅううっ!!?」
重戦車とも形容できる鋼の筋肉で覆われた巨体・UMA子を、陽一はテクニックではなく強引にパワーで吹き飛ばした。
陽一の『直線的ドリブル』の威力に、カムイは喉奥で唸る。
カムイ(す…すさまじい。ファンタジスタのテクニックと、グラディエーターのパワーを合わせ持つ男。
    まさしく『ファンタグラジスタ』――フィールドのパーフェクトソルジャー・高橋陽一…!!)
カムイ「しかし! なんとしても俺達がヤツを止めねばならん…!!」
一気に中央突破を狙う陽一に、カムイが踊りかかる。
カムイ「うっ」
陽一の鋭い切り返し。カムイはあっさりと右を抜かれた…かに見えた。
村枝「くらえっ」
しかし、この位置には、すでに村枝が詰めていた。
そう、カムイはこのプレイのために、陽一にわざと右を抜かせたのである。
だが陽一も負けてはいない。ジャンプ一番、村枝のタックルをかわす。
村枝「まだだっ!」
スライディングで突き出した右脚を頭上に跳ね上げ、空中の陽一を狙う。
村枝の2段タックルが、陽一を捕らえる――!
312力の限り…!!(136/180):2005/05/23(月) 22:23:06 ID:KTdLj/250
陽一「うっ」
村枝の2段タックルに、陽一は空中でバランスを崩す。
土塚「テンション、上がってきたぜ――――っ!!」
さらに、そこに土塚の強烈なタックルが突っ込んできた。
しかし…、土塚の体は、むなしく空を切った。
土塚「なにっ!? ボールが……消えた!?」
土塚にはそう見えたボールは、上空を舞っていた。
タックルを仕掛けられた瞬間、陽一は爪先でボールをさらに上へと蹴り上げていたのだ。
一方、陽一は着地から踏み切り、全身を強烈に回転させながら、このボールに飛びつく。
空中でも撃つことが可能なトルネードシュート――『ジャンピングトルネードシュート』…!

DF留美子は、先程の陽一との激突で、vs岸本戦の傷が再び開き、ユニフォームが内側から真っ赤に染まるほどの出血でもはや動けず。
GK金田一は、陽一の『トルネードシュート』に左腕と左肋骨を全損させられ、ギャグ形態に戻れないほどのダメージを負っている。
もう、この必殺シュートを止められる者は、いないのか?

雷句「ヌゥアアアアアアアアッ!!!」
必殺のタイミングに、飛び込んできた者はいた!
咆哮をあげながら、雷句が目を見開き、真っ向から顔面で陽一の必殺シュートをブロックした。
陽一(やる…! だが…まだだ!!)
しかし、そこは“ボールはトモダチ”が信条の高橋陽一。シュートブロックされても、ボールは渡さない。
ボールとともに落下、着地様のシュートを狙おうとしている。
一方、シュートに飛ばされてゴールバーに激突し、落下していく雷句。
だが、その目は、まだ死んではいなかった。
猫科の猛獣が爪を立てるかのように構えられた手が、魔法の光に包まれる。
血だらけの顔を歪ませて、雷句が吼えた……

雷句 「 ラ オ ウ ・ デ ィ バ ウ レ ン !!!! 」
313力の限り…!!(137/180):2005/05/23(月) 22:23:49 ID:KTdLj/250



落下中で無防備な陽一に迫る、黄金の虎。
その巨大さ、そしてそこに秘められた破壊力を感じ取り、陽一の頬に冷たい汗がつたう。
陽一(ダメだ……着地を待っていては防げない…!!)
…である以上、回避の方法はひとつ。空中で、もう一度シュートを撃つしかない。
しかし、今の陽一の体勢では、右足で十分な威力のシュートを撃つことができない。
撃つなら、左足でだ。
それも、かつてないほど思いきり腰をひねらなければならない。
しかも、雷句の攻撃が目前に迫っている状況では、シュートをより急ぐために、なお思いきり腰を回転させる必要がある。
自身の体内に眠る『爆弾』の存在が、ほんの一刹那、陽一の脳裏をかすめる。
だが、それは逡巡を生み出すほどの要素にはならなかった。
陽一が、その黄金の左脚を振り抜く。
『ゴールデンホークショット』――――発進!!

陽一「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
雷句「グ…オォオオオ…オォオオオオオオオオオ!!!」

         ド カ ア ア ア ア ア ア ア ッ ッ !!

空中で激突する、黄金の鷹と虎。
双方、互角かに見えた大激突。
しかし、最終的に勝ったのは――――虎を引き裂いた、鷹の爪…!!

          
              ズ  サ  ア ッ  ―――― !!!


雷句「ヌゥグオオオオオッ!!」
黄金の鷹の爪にかけられた雷句は、必殺シュートごと、ゴールネットを突き破り、背後の壁にボールともども壁にメリこませられた。
314力の限り…!!(138/180):2005/05/23(月) 22:27:56 ID:KTdLj/250
 克『きまったァ!! 黄金の鷹がゴールという獲物をわしづかみだァ!!
   雷句選手、2度目はさすがにシュートブロックできず!! 黄金の鷹の餌食になったァ!!
   金田一選手、さわれずノータッチでゴールイン!!
   陽一選手、たった一人で問答無用のハットトリック達成!! 
   後半24分、えなりチーム再び1点差に追いつく〜〜〜〜〜〜〜っ!!』

キャプテンが見せた華麗なるゴールに、またも燃え上がる、えなりチーム。
あまりにも強力すぎる陽一をまたもとめられず、肩を落として消沈するガンサンチーム。

 克『さすが、エース・高橋陽一。途中出場ながら、試合の流れを完全に変えました。
   敗色濃厚の試合展開でしたが、あっという間に1点差へとチームを導く!
   しかもガンサンチームは負傷者続出で、もはや立っているメンバーは半分以下!
   試合の行方がまったくわからなくなったァ!!』

実況もヒートアップし、観客席の熱気が沸点に達する。
しかし――
この熱狂のなかで、その中心たるエースの肉体に生じた異変に、まだ誰も気がついていなかった。

陽一「くはっ…」
顔中に油汗をしたたらせ、その顔が凄まじい形相に歪んでいる。
激痛を闘志によって、必死に押し殺している顔だ。
その理由――それは、陽一が左腰に抱えた古キズ。
昔から抱えていた爆弾が、先程のシュートで遂に爆発したのだ。
陽一(この痛み、誰にも悟られるな…)
転がるボールを手でつかみ、陽一は激痛をこらえてセンターサークルに向かって走る。
陽一(4−5 まだ1点のビハインド。追いつき、追い越すためには、試合の残り時間1分1秒たりともムダにできない)

陽一「さァ、みんな、あと2点だ!! あと2点取って勝つぞ!!」
全員『おう!!』

意気上がるえなりチーム、追い詰められたガンサンチーム。
共に鷹の翼が折れかけていることを知らぬまま、試合はクライマックスに突入していく。
315作者の都合により名無しです:2005/05/23(月) 22:49:49 ID:3C89Q+Dy0
     __
   ヽ|・A・;|ノ ``) ブンブン  YOO1!! YOO1!! カームーイー!!
   ヽ|  .ヽ彡ノ `)⌒`)     どっちもがんばるのよぉぉぉ
316作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 07:29:32 ID:bR5HyHqf0
えなりチーム            ガンサンチーム

M(えなり):無傷         カムイ:疲労状態
車田:行方不明           村枝:元々怪我持ち
陽一:腰痛             金田一:重傷
X仮面:軽傷?           留美子:重体
大和田:無傷            雷句:重傷?
許斐:無傷             樋口:軽傷?
井上:無傷             土塚:無傷
村田:無傷             貞本:行方不明
藤崎:行方不明           UMA子:無傷
今井:中傷(戦えるのは後ひとり)  安西:チャーハン作るよ
あんど:分からん          衛藤:同上


ガンサン、さりげなく壊滅してないかコレ

317作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 07:34:02 ID:bxWnXAGB0
無傷二人だけかよやべーw
318作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 08:08:42 ID:7zKU8IfG0
まあ、『治せる』キャラが多いのもガンサンだけど、これはすごいね。
治療が追いつかないかも。
319作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 09:09:38 ID:wRo5Z4tB0
まあ雷句の時みたいに単純に持ち技で言うなら、カムイがベホマズン唱えればそれで済むハズなんだけど
…もうMP切れちゃったのかな
320作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 09:13:08 ID:bxWnXAGB0
土塚のWWFとか
321作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 12:05:39 ID:d57muc7O0
どっかのプロレス団体みたいな略し方なのか回復白炎
うまいなあ
322作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 13:06:26 ID:sqXZKFkN0
そうか、カムイMP低いんだ・・・(;´Д`)
せめてこれを差し入れしたいなあ。
つ『エルフの飲み薬』
323作者の都合により名無しです:2005/05/24(火) 15:36:17 ID:F2fVa0ym0
安西と衛藤はいつまでチャーハン作ってんだw

それはそうと陽一にハンデつけるとしたら三杉の心臓病だと思ってたが、リバウールの腰痛とは
結局、万全の陽一はガンサン誰ひとり止められなかったわけで、つくづくサッカーに関しては桁外れだ
324出っ張れ!城平!:2005/05/25(水) 13:04:36 ID:nmx6Jlfn0
「……どうするんです?」
ベンチの陰、横向きの体育座りで試合を眺めていた水野英多は、視線そのままで相方に問いかけた。
「いくらなんでも……アレは無茶苦茶すぎます。なにか手を打つなら、そろそろ始めないと手遅れになりますよ」
究極の恐怖貞本義行が空の彼方に消え。取り戻した落ち着きは、試合の趨勢を冷徹に見極めていた。
いや、この試合における有利不利の流れなど、もはや素人目にも歴然として映る、単純極まりないものであろうが。
「まあ、現実問題、あれを尋常の手段・策でどうこうするなんて、不可能に近い気もしますが………………城平さん?」
ようやく気付く。何故か、さっきから、城平からの応答がまったくないことに。
ベンチ、を振りあおぐ。
「あら?」
居ない。
さっきまでそこに転がっていたマントの背中が、忽然と消え失せている。
「…………?」
再びグラウンドに目をやるが、見当たらない。今になって出陣した、というわけでもなさそうだ。
と、その水野の目が、まだ温もりの残るベンチに、一通の封書を捉えた。
「…………」
開封する。
便箋に並ぶ、文字を辿ることひとしきり。
「ふむ……」
水野英多は、一人、小ぶりな顎をつるりと撫でた。
325無情なる野分の風:2005/05/27(金) 15:46:52 ID:Sx3+m/Y30
関連スレ(>50、>97、前スレ514)

夕日が暮れなずみ、鮮血と炎の戦場がさらに紅く染まり行く。
ここは、エリア88――
十傑集会議に、戦場の只中でモニター越しに参加している腐朽。
自分の査定結果がでるのは、今しばらく先のようである。
欠伸をかみ殺してモニターに食い入っていると、ふと大気が動くのを腐朽と、その周囲を取り囲む血風連たちは感じ取った。
最初はざわめきであった風は、にわかに強くびょうびょうと音をたてて吹き荒び始め、終いには轟々と咆えるようなもの凄まじさになっていく。
「むう・・・こ、これは・・・」
血風連のひとりが呻く。
ともすれば、体ごともっていかれそうな、とてつもない風速だ。
まるで、野分(台風)のごとき、強烈な風。
しかし、沖縄に近いとはいえ、真冬に台風が来るなどというのは考えにくいし、そのような予報はなかった。
しかるに、これは明らかに人為的に引き起こされた風。
風にこめられた膨大な質量を有する殺気が、その事実を証明している。
触れる風にすら、死の予感を感じさせる、この風渦の中心にいるものは如何なる魔人か?
すでに、血風連は臨戦態勢に突入しており、その中心で腐朽も警戒の色を隠せない。
やがて――魔風が吹きつける方向から、奇妙な声が聞こえてきた。
「吹けよ無情の野分の風よ・・・
 天知る・・・
 地知る
 悪魔ぞ知る・・・」
何かの題目のように唱えながら、現れたのは巨影だった。
見上げるような巨体を覆う、白銀の鎧。
それだけで人を殺しかねない、超質量の殺意と威圧感。
そして、重厚な完成度。
「わたしが噂の、地獄の大将軍だぁぁ――――!!」
魔人のなかの魔人が、咆えた。

326無情なる野分の風:2005/05/27(金) 15:48:36 ID:Sx3+m/Y30
ドオッ、と腐朽や血風連の顔中に、滝のごとき汗が流れた。
恐怖を忘れた男、腐朽。
任務のために氷の精神を手に入れた鉄の集団、血風連。
その彼らに、失われし感情を瞬時にして想起させたは、絶望の具象。
奴の名は―――
「か、かかれぇ―――――っ!!」
我にかえった血風連が、一斉に手にしていた多節根を伸ばし、白銀の魔将軍に集中砲火を放つ。
鎖の束は、白銀の巨体をあますところなく縛り上げ、拘束した。
血風連は一瞬にして、自分達全員の死を覚悟していた。
自らがなせることは、腐朽の足止め、ただそれだけと認識してなお。
しかし、その覚悟すら、この魔人の前では甘すぎた。
白銀のボディに、ほんのわずか力が込められただけで、鎖はガラス細工のような脆さで砕け、飛散した。
「漫画家大全集第五巻 車 田 正 美 の テ ー マ !」
将軍が、自らの分厚い胸に大きなカセットテープをセット。
「ライトニングプラズマ――――ッ!!」
一瞬にて数千の煌きが彼らを貫いた――血風連が認識できたのは、それだけだった。
30近い血風連が、わずか一刹那の間に、全身をずたずたに引き裂かれ、その氷の魂を融解させていた。
彼らの決意は、この魔人の前では足止めにすら足りぬ程度の、つまらぬ存在にすぎなかった。
「――横山光輝に仕えし、音に聴こえた血風連・・・しょせんは漫画家にもなれぬ有象無象に過ぎなかったか。この程度の奴らに、わたし本来の力を使うまでもない」
屍を踏みしだきながら、白銀の魔神が歩み寄る。
「・・・悪魔将軍の姿・・・これ、コスプレとかじゃないっすよね?」
一縷の希望にすがる腐朽だが、肌に感じる威圧と絶望感が、乾いた言葉を無情に否定していた。
「だが、貴様は別だ。この闘場を作り上げたのは貴様だな?その力に敬意を表し、我が本来の力で戦ってやろう」
眼光が鈍くたばしり、それだけで腐朽は精神に強烈な衝撃を受ける。
“伝説”との対峙を前に、腐朽が思うことは――――
(か・・・帰りてぇ〜〜っす・・・)
もはやあり得ぬ願いを、心の中で叫んでいた。
327作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 15:50:54 ID:VXj08rzj0
音に聴こえた血風連・・・しょせんは漫画家にもなれぬ有象無象に過ぎなかったか。この程度の奴らに、わたし本来の力を使うまでもない」


うわ…最悪…まあゆでが言いそうな台詞ではあるが。
センスないね。
328作者の都合により名無しです:2005/05/27(金) 17:23:19 ID:97cH74Q50
元ネタあったらどうすんの>327
ぼくはかっこいいと思うけど
329傲りと誇り〜死淵追憶〜:2005/05/27(金) 19:39:12 ID:vIOutUIV0
>>236

さらさらと、水の流れる清音が響く。
水底の小石や砂まで認められるほど透き通った水面に、
雲一つ無い蒼天から降り注ぐ陽光が反射し、宝石の様に輝く。
穏やかに凪ぐ風と、土と草の匂いが周囲を微かに漂っていた。
もし画家か詩人でも居れば、すぐさま筆を取るなり詩吟に耽るなりしたであろう。
それほどの風景の中、二つの影が対峙していた。
影の一つは、巣田だった。
しかしその外見は、人間界で見せる10代前半の少女ではなく、17〜19才の女性の姿である。
つまり、今彼女は魔境界に在しているのだ。
一方の影もまた、女だった。
金糸縫いの貴やかな千早と、目の醒めるほど鮮やかな緋袴の巫女装束をその身に纏い、
服のすそから覗く繊手は雪の色で、恐らくその骨は肌の色よりも更に白いのだろう、とは巣田の感想だ。
彼女が以前、腕を引き千切られた事がある、と言っていたのを思い出たからである。
風に僅かに揺れる髪は、闇で染め抜いたような深い黒。
その頭頂部に生える、水晶のような冷たい輝きの一対の角が、彼女が人ではないことの証だった。
330傲りと誇り〜死淵追憶〜:2005/05/27(金) 19:41:30 ID:vIOutUIV0
突然、沈黙が途切れる。
「どうしても、力を貸しては戴けませんか?」
先に口を開いたのは巣田だった。一拍置いて、女が答える。
「・・・・・・私の現在の力は承知しているでしょう?
 出来る事なんて高が知れている、いいえ、全くの足手纏いと言っても良いわ。
 私よりも力のある、杉崎君たちのほうが余程力になる筈よ」
穏やかな声。しかし韻律は僅かに悲哀を帯びていた。
「もう既に打診はしました。でも・・・・・・」
巣田は俯く。実際ASUKA組の殆どから色好い返事を貰えなかったのだ。
このままでは、また雑誌崩壊による打ち切りの悪夢が繰り返される。
骨身に刻み込んだ打ち切りの恐怖と今の漫画界の現実を鑑みれば、巣田にとっては杞憂では済ます事が出来なかった。
だからこそ、何もせずにはいられなかった。
自らの人脈を可能な限り駆使し、様々な人物へと接触を試みた。
眼前の女もその一人。
かつて、自分と同じくNEXTに在籍していたその女に、一縷の望みを賭けて対峙したのだ。
「今は、一人でも多くの力が必要なんです。
 現状では安定していても、近い将来ASUKAは必ず崩壊してしまう。
 私は、もう二度とNEXTの悪夢を繰り返すわけにはいかないんです」
「それが理由?あの雑誌に貴女がそこまでする事の」
女は瞑目し、問うた。
「ええ」
巣田が返す。その瞳は真っ直ぐ相手の目を見つめていた。
「ASUKAは、私の、私達の職場ですから」
凪いだ風が不意に強く駆け抜ける。
女の黒髪が風になびき、羽のようにふわりと舞い上がった。
その紅唇が微かに動き、言葉を紡いだ。
「ならば、私は――――」
続く声は風に消え、最後まで聞くことができず――――――――巣田の意識は、帰還した。

地獄へ。

331傲りと誇り〜死淵追憶〜:2005/05/27(金) 19:42:12 ID:vIOutUIV0


……………………――――――――――


ゆっくりと、ゆっくりと、意識が覚醒してくる。
それに従い、徐々に、徐々に、視界が開けていく。
網膜に朦朧と映る世界は、徐々に通常の解像度へと研ぎ澄まされてゆく。
が、おかしい。
いつもより格段に速度が遅すぎる。
何事か、と身体を起こそうとして・・・・・・それが出来ないことに気づいた。
(わ、たし、は・・・・・・・・)
そこで初めて現状理解に脳が機能を割いた。
一向に良好にならない靄のかかった視界に代わって、まず取り戻したのは記憶だった。
吼える砲塔、吹き飛ぶ全て。
視聴覚の殆どを爆裂が満たし、その渦中の直中に取り込まれる自分自身と、
そこに一瞬垣間見える、これまでに無いほど悪辣な神獣の笑み。
そして、暗転。
自分で自分の襟を掴み締め上げたくなるくらいの鮮明さで、直前までの記憶が蘇る。
あの後見た魔境の光景は、所謂走馬灯のようなものだろう、とまるで他人事のような適当さで当たりをつける。
そこまで思考の遊びを展開したところで、ようやく己に何が起きているかを考えるに至った。
うつ伏せのまま、視線を右下に向けてみる。
(ああ、やっぱりか・・・・・・)
諦めか、或いは納得か判然としないような思考で、一人ごちる。
右胸に突き刺さった愛刀は、爆発の衝撃で刀身を揺さぶられて、
貫いた肺と胸郭をより深く切り裂き、溢れ出た血液が血溜まりを作り、周囲を真紅に染め上げていた。

332傲りと誇り〜死淵追憶〜:2005/05/27(金) 19:42:48 ID:vIOutUIV0
非道い深手である事は一目瞭然だった。
常人ならば思考する暇も無く悶絶し、十中八九失血死するほどの致命傷である。
しかし苦痛は全くと言って良いほど無かった。
無論、痛くない訳ではない。
痛覚神経の許容量を大幅に超越した激痛のために、かえって何も感じられなくなっているのだ。
機能する頭だけでそれを認識すると同時、笑い出したくなるような衝動が込み上げて来た。
身体はもはや動くどころの話ではない。
辛うじて四肢は付いている様だが、それとて何の解決にもなってはいない。
皆川の放った砲弾は直撃しなかったものの、飛散する破片と五臓を揺るがす衝撃に矮躯がズタズタにされた。
指一本たりとて、動かすのは至難の窮みだ。
灼けるような喉を動かし、気道を通して肺に空気を送る。
が、突然むせた。
気道に絡む肺からの出血が噴き上がり、口腔を満たしていく。
裂けた右肺から漏れ出した空気と出血は、
そのまま胸腔内を満たし無事な左肺を圧迫し更に呼吸を阻害していた。
可憐な唇が盛大に吐き出した生命の紅は、細い頤を濡らして余すところ無く朱に染め、床一面の血溜まりに零れて波紋を広げる。
(こ、れは、もう・・・・・・)
絶え絶えの息のなか、大量出血で蒼白となったその顔は、
もはや這い寄る死の影が――――――死相が素人目にも解るほどだ。
今の巣田は、将に精神だけでその命を繋いでいるだけに過ぎなかった。
333傲りと誇り〜死淵追憶〜:2005/05/27(金) 19:44:06 ID:vIOutUIV0
その時、視界の端に動くものがあった。
瞳を動かし、視界を前に向ける。
そこには巨大な穴が死地との境界さながらに空いており、その先には無機質な照明が灯っていた。
いやに眩しく感じる明かりを瞳孔に入れて、
身体を嵌め込まれた壁の向こうの部屋に吹き飛ばされたことを巣田は理解する。
急に、光が遮られた。
視界を上方に向けると――――ー
(あ―――――)
瞠目する。
そこには、こちらの額に指先を照準する神獣がいた。
巣田の左腿を破壊した死光の矢で、更なる死の影を刻み込み、彼女を完全に絶命させるために。
今猶生命を繋ぐ、精神の中枢を、心の宿る場を焼き尽くすために。


死ねない、生きたい――――――


無意識に、叫んだ。

334S・G・G・K(139/180):2005/05/29(日) 17:11:17 ID:PgUfJNmN0
>>314
「カムイ、司令塔はおまえに任せる」
「………村枝」
ハーフウェイラインに立つ村枝は、同じくその横に立つカムイに言った。
「連中は高橋陽一を中心にゲームメイクしてくる……それと同じチーム形式で戦ってたら勝負にならねえ。だから……」
村枝がカムイに耳打ちする。
「できるか?」
カムイが頷くと、村枝は軽くボールをカムイに渡し、自身はボールを持たずに一気にゴール前まで走った。そして途中で立ち止まった。
「?」 その動きの意図が掴めない、えなりは村枝に手を出しあぐねる。
実力では天地以上の格差があるのだから、えなりにしてみればどの道、意味なく手を出せる相手ではないのだろうが。
「フウウウ!!」
停止した村枝が吼え、全身の筋肉がギシギシと軋むほどに力が充填していく。
一方、ハーフウェイラインでボールを持ったまま動かなかったカムイが、敵が迫るギリギリのところでロングフィードを放った。
「なっ…味方のいないサイドへボールを上げた!?」
驚いたえなりがそう言うのとどっちが早かったか、村枝がはじけとんだ。爆発の勢いにも似た、一瞬の加速。その突然の動きに、えなりDFはひとりも対応できない。
村枝の必殺技――「ピンポイントシュート」である。
高橋陽一すら出し抜いた“奇襲”は、一切の障害なく村枝をフリーのシュート体勢まで導いた――かに見えた。

      「  天    才  !!」            バ    コ   ッ  !!   

叫びとともに、村枝の目の前でボールが、人並み外れて大きな手によってはじかれた。
「な…完全に出し抜いたハズだぜ!!コイツ…俺より早く反応して…」
村枝必殺のタイミングを凌駕したのは、190センチを超える“赤頭”――えなりチームGK井上武彦。

ピ――――――――――――ッ!!

「!!」 だが、そこで審判である山田の笛が鳴った。
「井上選手、ハンドリングです!!」
「なにィ!?なんで反則になるんだよ、キーパーは手を使ってもいいんだろう!!」
「……井上君、それはペナルティエリアの中だけなんだよ……」
ガルル…と獣のような唸りをあげて怒りながら審判に抗議する井上に、陽一は静かに嘆息した。
335S・G・G・K(140/180):2005/05/29(日) 17:38:25 ID:PgUfJNmN0
怒れる井上を、陽一はなだめすかし、なんとか取り押さえた。
いくらこの試合が原則ヴァーリトゥードとはいえ、さすがに審判に逆らえば退場もありうる。
ともあれ、ゴール付近での、絶好のペナルティキックのチャンスを得た、ガンサンチーム。
追加点が喉から手が出るほど欲しい彼らには瓢箪から駒であるが、村枝の顔は険しい。
まさか、公の場で初めて披露するピンポイントシュートに、素人あがりのキーパーが反応するとは思わなかったからだ。
(こいつは……ナメテかかれねえな)
PKを蹴ることになった村枝は、未知のキーパー相手に気を引き締める。
あんなポカをやらかしたにもかかわらず、えなりゴールを守っているのは井上だけであり、壁役は誰ひとりいない。
他のえなりチームメンバーたちは横にのいて、ただ見守っているだけだ。――それほどまでに、この急造キーパーへの信頼が厚いということである。
「フ!!ウ!!ウウ!!」
強く呼気を吐きながら、村枝が渾身をこめてシュート。
強烈な縦回転がかかったシュートは、猛烈な球威を維持しながら、急激に落ちる弾道を描いた。
凄まじい落差を持った、村枝必殺の「ドライブシュート」だった。
必殺の軌道で空を切り裂くボールは、えなりゴールの左下スミに吸い込まれ――――
バシイ!!
横っ飛びした井上の、長いリーチに阻まれ、はじかれた。
「あのスピードであの落差を……を止めた!?」
カムイが呻く。それほどに、井上の反応はすさまじかった。
「へっ、ヨーチン(陽一)のドライブシュートに比べれば、どーってこたねえ!」
不敵にうそぶく井上が体を起こすと、目の前に、まだ浮いたボールに飛びつく影。
「甘いぜ!!」
空中で、浮き球をボレーシュートする村枝。今度は、反対側の右上スミ狙いだ。

          ば      し     い 

「オメーこそな」
電光石火の連続シュートが、軽々と止められた。逆サイドからの遠い横っ飛びを、一瞬で。
その離れ業に、村枝は驚愕を隠せない。
「ハッハッハ、この天才から一人で得点しようなど百年早い!!」
呵呵大笑する井上に、ガンサン側は舌打ちするしかなかった。
336S・G・G・K(141/180):2005/05/29(日) 18:11:02 ID:PgUfJNmN0
――ちが〜〜う!!君はポジショニングができてないから、セーブできないんだ!!何度も同じことを言わせるな!!
――いいか、サッカーってスポーツは、キーパーさえやられなければ、どんなにピンチでも負けることはない!サッカーのエースってのは、キーパーのことなんだ!!
――ゴール前は戦場だ!!自分のゴールは死守しなければならない!!

「へっへ、分かってるぜ、ヨーチン」
チームに合流する前の“シゴキ”を思い出し、井上は自信に満ちた笑みを浮かべていた。

(なんて野郎だ。リーチの長さ、反射神経、とても急造キーパーとは思えねえ。高橋陽一が訓練したとはいえ、とんでもない素人だ)
井上の恐るべき進化を前に、村枝は攻めあぐねていた。どう考えても、ひとつの打点では限界がある。
「村枝さん、あたしも手伝います!」
そこへ駆け込んできたのは、もうひとりのFW樋口。
「ありがてえ!」
再び、ゴール前につめた村枝。その真後ろに、樋口がぴったりとくっつくようにして立つ。
「?」 二人の怪訝な動きに、井上が疑問符を浮かべる。
井上から見て、左側に樋口の顔が出た。そこに気をとられ、井上がポジションを少し左にずらす。
次の瞬間、樋口が逆方向に跳ねた。同時に、村枝も向かって井上から向かって右にボールを蹴りだす。
樋口が、後ろ回し蹴りの要領で、独特のシュート体勢。
――だが。
これもシュート直前に、はじかれた。はじかれたボールが、ゴールマウスを越えて、コーナーキックになる。
(マ…マサカ追いつくなんて…なんて守備範囲なの!?)
(…やっぱりまちがいない…プロのゴールキーパーは…ボールを蹴りこんだ時は同時に一歩目を踏み出してるっていうが……こいつの場合は…スデにボールに追いついている……!!)

「ガンサンからコーナーキックです!!」

山田の宣告と同時に、コーナーキックがえなりゴール前に舞う。
「小細工が通用しないなら直接だ。強引に押し込めっ!!」
村枝と樋口が、空中のボールに飛びつこうとするが――
「おお!!」   バ  ク  ッ  !!
それよりも早く、より高くに飛び上がった井上が、難なく浮きだまをキャッチした。
(あっという間に、この俺や樋口よりも上へ…!こいつは瞬発力が全然違う!!…も…もうどこに…どこに攻めこんだらいいんだ…)
陽一によって、キーパーの才能を開花させられた井上武彦。
不遜なまでに呵呵大笑する、この赤き壁を前にして、ガンサンの攻撃は完全に封じ込められていた。
337S・G・G・K(141/180):2005/05/29(日) 18:19:17 ID:PgUfJNmN0
「スゴイスゴイスゴーイ!!井上先生!!」
井上のスーパープレイに喝采を送る、えなりチームたち。
そこで、陽一は言う。
「ナイスプレイだ、井上君!君こそがえなりチームのS(スーパー)・G(ジーニアス=天才)・G(ゴール)・K(キーパー)だ!!」

どど――――ん!!

「ハッハッハッ、やはり天才!!」

井上、絶好調。
338作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 19:35:44 ID:WAEOGljQ0
意外にも真っ当にキーパーやってるな
フンフンフンディフェンスとか、もっと無茶苦茶なプレイをするかと思ったがw
339作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 20:51:53 ID:oQlsD5Ss0
井上版SGGKキタワァァァ!!
サッカーがんばってるよサッカー

巣田さんとこはいよいよ動くのかなあ
描写細かいんで痛々しいったらありゃしない(´・ x ・`)
340雷のごとく(142/180) :2005/05/29(日) 22:30:08 ID:EekqYKox0
>>337
「えなり!!」
「ごべぇっ!?」

着地と同時にえなりへとボールを投げた井上。
だが、いかんせん勢いが強すぎた。
所詮はサッカーの素人であるえなりがそのパスを受け止められるわけがなく。
結果として、ボールはえなりの顔面を抉るとサイドラインを割った。

「……井上君。次からキッチしたら僕にだけパスをくれ、僕ならどんなパスでも受けてみせる」

と、嘆息しつつも陽一は指示を出した。
シュートからゴールを守るゴールキーパーとしての能力は優れているものの、やはりそこは素人。
流石の陽一でもパスに関しても身につけさせることはできなかった。
バスケットとは違い、サッカーのコートは広い。
そのため短距離ならばともかく、長距離では力の加減などといったことがまだ身についていないのだ。

何はともあれ、再びボールはガンサンチーム。
結果としてサイドラインを割ったものの、飛距離だけは稼いでいたため、ハーフラインのところからの再開である。

スローイングをするのはやはり村枝。
(どうする……どうすればいい。陽一だけではなく、あのキーパーも相手にどうすれば点をとれる?)
パスを投げる相手を探しつつ、考える村枝。
今までどんな状況でも彼は諦めるといったことをしなかった。
だがそんな彼にとってもこの状況に対し絶望が「村枝殿、パスを……私が、いく」
341雷のごとく(143/180) :2005/05/29(日) 22:45:04 ID:EekqYKox0
「雷句……?」
陽一のゴールデンホークショットにより重症を負った雷句。
その彼が今、重症の体を推して村枝の前にいた。
「早く、パスを。私が、まだ動けるうちに」
雷句の体は明らかにまともに動ける状態には見えない。
だが、その目。その目は光を失っていなかった。

「だが雷句。今のお前の体じゃ……」
「今、だからこそ、やらねばならない。私が術を使えるのはおそらく後二回。
あと二回の術を駆使し、確実に一点を取る。そのためには今しかない」

ゾクリと背中に氷を押し付けられたかのような寒気が村枝の背に走った。
(なんて目だ……こいつは、覚悟を決めちまってる)
もうどんな言葉でも雷句を止めることはできないと村枝は確信した。
いや既に覚悟を見た瞬間から止める気はなくなっていた。
すぅと短く息を吸い、吐く。
「わかった……思う存分、やってこい」

スローイング。
そして村枝の手から放たれたボールが雷句の足元に収まった。
342雷のごとく(144/180) :2005/05/29(日) 22:51:36 ID:EekqYKox0
雷句がボールを受け止めた瞬間、試合場の空気が変わった。
それは陽一のようにサッカーそのものを支配するオーラとはまったく違うもの。
言うなれば覚悟を決めたものが発する威圧感。
それが雷句の体から発せられていた。

緊張が走る。
誰も動かない。否、動けない。
一歩でも動けばこの硬直状態を破るきっかけとなる。
そのことを皆、理解していた。
だから動けない。
動けないまま緊張は高まる。
永遠とも、一瞬ともわからない時間。
緊張の糸が極限まで張り詰めていき……

「ファイヤーーーー!!!」

―――――周囲の状況にまったく気づかず料理をしていた安西の声によって破られた。
343作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 23:00:07 ID:X4RlpSVZ0
安西、おいしいよ、安西w
344作者の都合により名無しです:2005/05/29(日) 23:02:22 ID:iC5aFg6T0
  ヽ\VИ      ○-
  //WWヽФ~~~~~~~~
  ヽ(゜∀゜ノノ    ワクワクするぜ!
    .|■|ゝ
    < >
    ~  ~ ヾ
345雷のごとく(145/180) :2005/05/29(日) 23:20:08 ID:EekqYKox0
バネが弾けたかのように雷句へと向かっていくえなり、X仮面、大和田の三人。
だがその三人が雷句へとたどり着くより早く。

「ウルク!!」

呪文は唱えられた。
そして呪文が唱えられた瞬間、雷句の姿が三人の視界から消えた。

「「「なっ!?」」」

ウルク……それは瞬間移動とも見間違うほどの超高速移動術。
静止状態からの急激な速度の変化により、雷句の姿をフィールド状の誰もが見失った。
そう一人を除いて。

一瞬にしてペナルティエリア内まで入り込み、シュートの体勢に入る雷句。
だがその前に立ちふさがる影。
唯一、雷句の動きを完全に見切っていた男、陽一。
そして爆発が起こった。
雷句と陽一。
二人の足がボールを通して交差する。
鈍い音が響いた。
砕けたのは雷句の右足。ヒビが入ったのは陽一の左足。
雷句の足は陽一の足との接触した瞬間に砕けた。
だが砕けても尚振りぬいた足は、陽一の足にもダメージを与え、ボールを前へと毀れさせた。

バランスを崩し、その場に倒れる雷句。
そして痛めた足に若干顔をしかめながらも支障のない動きで毀れダマをクリアーしに向かう陽一。
その瞬間、誰もがボールに注意を払っていなかった。誰もが陽一が確実に毀れダマをクリアーすると思っていた。
そしてそれこそが雷句の狙っていた瞬間だった。
残った心の力を全て注ぎ、最後の術を唱える。

「オラ・ノロジオ!!」
346雷のごとく(146/180) :2005/05/29(日) 23:26:40 ID:EekqYKox0
陽一がボールをクリアーしようとした瞬間、倒れ付した雷句の手からビームが放たれた。
避けるか、それとも耐えてボールをとるか?
二つの選択肢。
(例えどんな術を食らったとしても体勢を崩されはしない!!)
だがその自信がビームに耐えることを陽一に選択させた。
その確固たるサッカー選手としての自信。それが陽一の、そしてえなりチームの明暗を分けた。
衝撃に備え、ビームを浴びる陽一。
その瞬間、体の動きが、いや陽一の全てが"遅くなった"
「な……に……!?」
余裕でボールをクリアーするはずだった足が動きが遅くなったことにより、空をきった。
そして陽一の足を逃れたボールはそのままゴールへと進み―――――

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

完全に予想していなかったことに井上の反応は完全に遅れた。
そして井上の伸ばした手はわずかにボールへと届かず、ボールがゴールへと入った……

(後は、任せたぞ皆……)
―――――ゴールを告げる審判の声をどこか遠くで聞きながら、雷句は全ての力を使い果たし、気を失う。
その顔にはとても満足そうな笑顔が浮かんでいた。
347作者の都合により名無しです:2005/05/30(月) 16:34:05 ID:VVespwmA0
む!再び差が!
しかしまだ勝負はわからないっ!
348作者の都合により名無しです:2005/05/30(月) 18:46:50 ID:0rWOBEZP0
もうここまでくるとガンガンvsえなりなんだかサンデーvsジャンプスポーツなんだか分からんなw
349料理人グルグル(147/180):2005/05/31(火) 13:05:15 ID:pk5o34Ip0
>>342 >>346 前スレ>>509

          料理人“火の章”

火を恐れるべからず! カリッとサクッとそれでいてパラッと!


          カ ッ !!!


安西の瞳に真理司る炎が宿る。火の手は、汗に塗れたその眉にまで届いて毛先を焦がす。
(――――これだ! この動きだッ! オレはついに“火”を支配したッッ!!)

「 フ ァ イ ヤ ―――― !!!! 」

………………………………………………………………………………………………


客全員の前に配膳されたチャーハンの皿からは、いまだ、食欲をそそる湯気が立ち昇っていた。
それぞれが、バラバラに一口めを頬張り、しばし。
やがて、あがる、賞賛の声の数々。
「信じられん……」
「……まさか、これほどの短期間で……」
「いったいどんな魔法を使ったんだ……?」
そして、各々が貪る、食器のカチャカチャという音だけが残る。
しかし、肝心の垂れ目男だけが、いまだ、レンゲを持ったまま動かない。

 ゴ ク リ ………

前掛けを握り締め。緊張に強張った表情で見守る安西。
垂れ目が、動いた。
「…………」
350料理人グルグル(148/180):2005/05/31(火) 13:06:25 ID:pk5o34Ip0
ただ一口を咀嚼する間。
すぐに置かれたレンゲの音が、やけに高く響く。
あんど他が、夢中で次々に喰らう様とは、好対照な反応。
(ああ……やはり駄目なのか……!)
自信があった。自分は生まれ変わった、という自信が。
だがその新しい“自分自身”がどれほどのものか。そこにはまた、別の裁定が下るものだ。

「私はこの男に三千万貸す」

しかし、垂れ目の口から最初に出たのは、そんな言葉だった。
最初、意味がわからない。ぽかんとした沈黙が降り、やがて

「―――よし、私は一千万!」
「私は五百万」
「私は一千五百万出すぞっ!」

他の客たちもが、高値を示す威勢のいい声を続かせる。
呆然とする安西の前で、金額をメモに取っていた垂れ目が、顔を上げ、ニヤリと笑った。
「……さて、皆さんの金額をまとめると一億五千万になった。若い青年が出発点とする店づくりには、これで充分と思うがな」
一秒。二秒。遅れてようやく、理解が届く。
「……先輩方……く、くううっ」
両目を腕で覆い、ごしごしと湧いた涙を擦る安西。
店内には、「よかったなあ」という安堵に弛緩した暖かい空気が流れ。
その心地よいぬるま湯の中で、安西は、新しい人生の夢をみる。
小さくとも賑やかな中華飯店。カウンターの常連と笑いあい。家族連れが大皿から料理を取り分けている。
汗と涙と、誇らしげに高い調理帽。そこには、なんの良心の呵責を感じる必要もなく。ただ、正しい誇りに彩られた真人間としての人生が待って



――――――微かな、うめき。

   ハ ッ !
351料理人グルグル(149/180):2005/05/31(火) 13:09:08 ID:pk5o34Ip0
今まで料理に集中していて気付かなかったそれに、安西はその時、ようやく気がついた。

振り返れば、そこは、血と骨の地獄。
ボールの戻されたセンターサークルに向かう、満身創痍の仲間達。
闘志こそ失っていない。しかし、肩を貸し合っても、遅々として進まぬその歩み。
それを、点差を更に広げられたとは思えぬ、余裕の腕組みで待つえなりチーム。全ては、高橋陽一の存在が故。
(いったい……なんてことだ)
今の今まで、完全に失念していた。すぐそばの光景。


――――ここに、分かたれた、ひとつの“道”があった。

迷いは一瞬。
安西は振り返ると、言葉を躊躇う。

「――――往くのか?」
目を伏せた安西に、垂れ目は率直に問う。
弾かれたように顔を上げる安西。
澄んだ、それでもどことなく残念そうな垂れ目のマナコ。
満足げに微笑む、おやっさんの姿。
見渡せば、どの客も、すこし寂しそうな、わずかに苦笑するような、微細な風情を身に纏って。
「先輩方……」
わかってくれた。なんて、なんて素敵な人たちだろう。わかってくれた……
「先輩方……」
雑誌も、ジャンルも関係無い。
自然な尊敬と感謝の念が、彼等をそう呼ばせていたことを、安西はいまさらながら自覚した。
そして、誰が許そうと“ここ”には二度と戻れぬことも。

「ありがとう……ございます……!」
一度、深々と頭を下げ。そして駆け出す。

戦場へ。
352作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 14:01:10 ID:uNtyzyCu0
そのまま料理人になってしまえばいいのに(黒)
残り時間少ないぞ!働け安西
353作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 22:38:59 ID:7jQeMcRZ0
いくらパワーうpのためとはいえ、チームがこれだけ窮地のなかで、延々とチャーハン作ってただけの安西に誰ひとり文句言わないところがすげえw
ガンサンのメンバーは良い奴らすぎるな
354作者の都合により名無しです:2005/05/31(火) 23:49:14 ID:eoooI2jK0
みんな忘れてただけ、ともいうが。w
355作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 06:44:31 ID:2C364joK0
半分くらいは衛藤の責任だから
356猛獣達の饗宴(150/180):2005/06/01(水) 18:25:10 ID:sl5bbyky0
>>351
陽一「みんな、油断するなよ。点差だけ見れば、まだ、こっちは追いついてもいないんだ」
少し余裕の笑みを浮かべるチームメイトに、陽一が釘を刺す。
実際は、見た目ほど、えなりチームが有利なわけではないのだ。
残りわずかな時間で、2点差。さらには、陽一の腰に抱えた爆弾、左足の骨折。陽一は、必死で激痛をこらえ、隠し続けていた。
村田「……しかし、彼らの粘りはどこから来るんだ……追いつけそうで、追いつけない……」
ガンサンの底力に脅威を覚える村田。
大和田「気付かんのか!!? 奴らはボールを蹴っているのではない。生命そのものを蹴り込んできているのだ!!」
許斐「生命そのもの…?」
大和田「明日の心配をしてどうする。今日、この日、この瞬間に輝けぬ者が  明 日 輝け る は ず が な い ッ !!! 」

ラスト15分、最後の大勝負が始まる。

キックオフと同時に、陽一は走り出した。
相手は、これまでケガ人含めて8人だったのが、安西と衛藤が戻ったことにより、えなりよりひとり多い、10人になった。ゆえに、中央の守りが厚くなっていた。
陽一(ガンサンの守りが中央に集中している。ならば…)
これまで常に中央突破を目指してきた陽一、ここで一転、ボールを左サイドに大きく散らした。
この位置には、左サイドバックの許斐が、大きくオーバーラップしている。
許斐「いけェ、スネイクセンタリング」
急激なカーブのかかったセンタリングが、ゴール前のX仮面に上げられる。
カムイ「つけェ、X仮面のマークだ」
X仮面(点をとるのは俺でなくていい、勝利さえできれば、それで)
強引にシュートにくるかと思われたX仮面、陽一ばりの堅実なポストプレイで下に落とす。陽一の執念が、他のメンバーにも乗り移ったのか。
落とした所にかけこんでくるのは、村田。
その前に立ちふさがるのは、後半開始直後に、村田を完封した村枝。
リベンジマッチ!!
357猛獣達の饗宴(151/180):2005/06/01(水) 18:26:42 ID:sl5bbyky0
腕を大きく広げた、南米仕込のディフェンス。とてつもない圧力で、村枝が潰しにきた。
村田(あんなに特訓したんじゃんか。一歩で歩幅縮めて、スピード落とさないで曲がる走り方…!!)
村枝「何度やっても同じだ! お前の得意なその走りは、俺には通じねえ!!」
村田「!! ダメだ、またこんな速くタックルが…捕まる…!!」
トップスピードに乗る前に、迫ってくる村枝のタックル。またしてもやられる――そう思ったとき。
大和田「貴様は人の受け売りしか使えんのか!! 貴様が本物ならば、貴様だけの輝きを見せてみろ!!」
今日、輝けぬ者が、明日輝けるはずがない――試合再開前の、大和田の言葉がよみがえる。

村田(――追いつめられた体の中から) (今) (噛み合った)

     (稲垣が授けてくれたステップと…)

村枝「捉えた、終わりだ!」
村枝の手が、村田の肩に触れ――――

村田(10年間 走り続けて身に付いた 自分の走りが――――)

            ヴ オ ッ ――――― ギ  ャ  ガ  ウ  !!!!

村枝「…………………………!!!!」

スピン。
回転抜き。
デビルバットゴーストのステップに、刹那、村田はスピンを組み合わせた。
視界から消える上に、もし押さえても回転で抜けていく――言うなれば…

        ハ リ ケ ー ン
        竜   巻  ゴ  ー  ス  ト  !!!

この土壇場で、村田は自分でゴーストを進化させたのだった…!!
358猛獣達の饗宴(152/180):2005/06/01(水) 18:27:39 ID:sl5bbyky0
キーパーと1対1…! 
間にDFはもうひとりもいない。
そう、その時、会場の誰もがそう思った。
――だから、真後ろからの殺気に、反応が遅れた。

「ご法度ォォォォォォォォォォォッッッ!!!」

ごふうう…と鼻息荒く吐き出しながら、恐怖の漢女(おとめ)が、迫っていた。
村枝にスピンを使った分、その0.1秒の遅れが――追いつく隙を与えた。
丸太と形容しても足りぬ太さの剛脚が、村田の無防備な脊髄に突き刺さろうと―――

「やらせはせん!!」

剛脚は、仁王立ちする大和田の土手ッ腹に深々と突き刺さった。
咄嗟の判断で、村田のカバーに大和田が割って入ったのである。
UMA「ぬう…この漢…傷口を使ってワシの足をホールドしちょるけんのう!!」
大和田「我がチームの希望…… や ら せ は せ ん !!!」

         ベ  キ  ッ  !!

UMA「ぐぬうっ……!! 足を……!!」
UMA子の右足が、雑巾を絞ったかのように捻られ、骨が砕けていた。
一方、大和田も、大量の血を噴水のように吐き出した。
村田「お、大和田さん!!!」
大和田「村田、ボールを渡せェッ!!」
大喝に反応し、村田がバックパスを大和田にダイレクトで送った。
大和田「喰らえ、我が渾身のォッッッ!!!」

                            キ ャ ノ ン
        ニ  ラ  イ  カ  ナ  イ     砲      !!!!
359猛獣達の饗宴(153/180):2005/06/01(水) 18:29:14 ID:sl5bbyky0
すさまじい回転のかかった必殺シュートが、大きくホップし、ガンサンゴールに吸い込まれるように飛んでいく。

            ぐ  し  ゃ  っ  !!

シュートは弾かれた。金田一が、超絶の反射神経で止めたのだ。
しかし、彼女の残された右手は、おぞましい破壊音をたてて砕けた。片手で、止めきれる威力ではなかったのだ。
こぼれたボールを、全員の目が追う。そこに走り込んできたのは、前半以来、沈黙を守っていた今井…!
安西「……野郎!!」
今井「……せっかくがんばってるから、ちょっと加勢しよう♠」
ボールに自らの霊力をミックスさせ、振りかぶった右足を叩きつける。

今井「 裂 蹴 紅 球 波 !!! 」

紅色に輝くシュートが轟音をあげて飛ぶ。
だが、それはゴールを狙ったものではなかった。ボールが飛んでいく先には、X仮面が立っている。

X仮面「 低 空 バ イ シ ク ル !!! 」

バイシクルシュートとは、蹴り足と逆の足を一度振り上げ、その反動で蹴り足の速度を倍加させるオーバーヘッドキックの発展形である。
だが、それを撃つには十分な跳躍が必要にもかかわらず、X仮面は胸でシュートを受け、威力を殺さぬままその場で後ろに回転し、バイシクルシュート!
当然、自らの後頭部を殺人的な勢いで地面に打ち付けることになる、諸刃の剣だ。
それを、X仮面は、放った。
だが、さらに驚くべきことに、これさえも本命ではなかった。
二つの必殺シュートの破壊力を内包した、ボールは、オレンジ色に輝いて、逆サイドへ流れる。
左右に振られるガンサンはマークが甘い。
パス回しというよりは究極のシュート回しが、ノーマークの鷹に渡った…!!
360猛獣達の饗宴(154/180):2005/06/01(水) 18:30:38 ID:sl5bbyky0
 「 フ  ァ  イ  ヤ ァ  !! 」

        パ    ア    ア    ア     ン   !!!!!

高速で振動し、炎を噴き上げるファイヤーショット。
必殺シュート3つ分の破壊力と速度がくわわった、究極のシュートが閃光となって瞬き、ポジショニングの暇さえ相手に与えずに、ゴールネットを貫く―――

         バ    キ    イ  ッ ッ  !!!

克『あっと、しかし土塚がナイスセーブだぁぁぁ!!!』
なんと、この究極とも呼べるシュートを、“大魔神・工藤モード”土塚が、スパイクの裏ではじきかえしたのだった……!!
陽一(いや、ボールはまだ生きている…! おれは最後の最後まであきらめない……!!)
吹っ飛ばされる土塚の視界に、空を舞う陽一の姿。
その姿は、陽一とボールが一体となり、その背中に翼が生えたかのようえあった。
複雑な回転で揺れるボールを体全体で優しく包み込み、ボールごとゴールにダイブする、『スカイダイブシュート』だ。
だが、ここにきて陽一の腰の爆弾が、全身を飲み込む激痛という名の火炎を噴出した。
陽一「うっ!!」 ガクリと体勢が崩れ、ボールが陽一のもとからこぼれおちる。
えなりチームに衝撃が伝播するなか、体勢をたてなおした金田一がここぞとばかりに飛び出している。
砕けた手でなお、陽一の体ごと、ボールをはたき落とした。
陽一(強い…彼らは強い……これだけやってもゴールを割れないのか……追いつけないのか……!?)
地面に叩きつけられ、動けなくなった陽一の視界のかたすみに、無情にゴールへの軌道から外れたボール。
―――そのとき、陽一は見た。
天空をはばたく、悪魔の翼の躍動を……!!

40ヤード4秒2の人間砲弾―――――

      デ  ビ  ル  バ  ッ  ト  ダ  イ  ブ  !!!

村田の執念のダイビングヘッドが、ボールごと、ガンサンゴールネットに突き刺さった。
えなりチーム、全員一丸となった、5点目であった。
361作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 19:06:00 ID:PtBKRXrr0
残り時間に関して質問だけど
ロスタイムはありだっけ?
362作者の都合により名無しです:2005/06/01(水) 20:50:54 ID:ipKPxG/N0
両チームともSUGEEEEE!!!!
どちらも全力だ!すさまじいバトルサッカーだ!感動ぅ

>361
ちょっとならアリ
363作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 08:38:25 ID:gHp+dekp0
まさか村田がこんなに活躍するとは思わなかった
試合終盤にきて、みんな等しく見せ場が与えられているな
364作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 09:16:52 ID:ibIY39CR0
藤崎(´Д⊂
365作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 12:58:40 ID:kBRkbBjH0
えなり(゚Д⊂
366作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 16:25:47 ID:2yqorsnN0
藤崎は活躍は・・・あんましてないけど出番あっただけでよくね?
えなりは・・・自殺点だけかよ、おい!
367作者の都合により名無しです:2005/06/02(木) 16:55:10 ID:xJH19z9Q0
血みどろサッカードキドキするぜ!


やったのは「えなり」じゃないしなw>自殺点
368無我(155/180):2005/06/03(金) 19:50:49 ID:7YGyfU/J0
>>360
スコア  えなり 5‐6 ガンサン。

三度、1点差まで追い上げた、えなりチームだったが、ここでまたしても異常事態発生。
大和田・X仮面、両FWが共に、先ほどの波状攻撃の最中で重傷。
さらにチーム猛追撃の立役者であった、陽一の負傷の発覚。
追い上げムードだったチームに重くのしかかる、プレッシャー、そしてそれによる疲労。
――追いつけるのか!?
不安が彼らの胸中をよぎるなか、陽一が喉の奥からしわがれたような声をだした。
「こうなったら、お前が頼りだぞ、許斐」
元チームのキャプテン、いや現時点でもキャプテンである男に呼ばれ、汗を拭っていた許斐がまじまじと陽一を見た。
「もう後半も残り13分だ。これ以上、温存する必要はないだろう。Cブロック決勝で手に入れた“力”、今使わないで、いつ使う?」
しばらく、きょとんとしていた許斐が、にやりと笑った。疲労は明らかだが、それを感じさせない、あくまで不敵な笑みだ。
「Is that so?(わかったよ) Well,Whatevre you say.(そうさせてもらう)」
端正な唇が、流暢な英語を紡いだと思うと、いきなり許斐の全身が強い光に包まれた!!
まばゆいオーラを放つ許斐に、会場中がどよめいた。


「見ろ、アレはなんだ!?」
ガンサン陣地にて、安西が許斐の発光現象を見つけ、大きな声を出す。
「アレはたしか、Cブロック決勝戦で奴が見せた現象――よく分からんが警戒するべきだ」
カムイが、そう言って視線を険しくする。
「――蓮、腕は大丈夫なのか?」
「パンチングだけなら、なんとか」
口を使って、折れた右の指を一本一本、強引に折りたたみ、無理矢理に拳を作っていた。左腕は折れてしまって使い物にならないからだ。
安西は、それを痛ましげな目で見た。
「これ以上、金田一に負担をかけないために、俺たちフィールドプレイヤー全員でゴールを守りぬく。そのためには、攻撃しかない」
村枝の言葉に、全員がうなずく。
「いくぞ、村枝。俺たちの二人で、前線までボールを運ぶ」
「おう、カムイ」
試合再開直後、ガンサンの黄金コンビが速攻を仕掛けた。
369無我(156/180):2005/06/03(金) 19:51:41 ID:7YGyfU/J0
カムイと村枝が、ワンツーで薄くなったえなりチームの中盤を突破していく。
無論、カムイも村枝も疲労困憊のはずだが、二人ともそのプレイには疲れを感じさせないものがあった。
しかし――二人がペナルティエリア近くまで来るや、その進撃が阻まれた。
村枝からカムイへのパスを、許斐がすばやい出足でカットしたのだ。
(なに……こいつ、一瞬で俺たちに接近した?馬鹿な、接近される寸前まで気づきもしないとは!)
さらに驚愕すべきことに、ボールを奪った許斐は、すでにハーフウェイラインを越えてガンサンエリアにまで侵入していた。
『あっと、これは…縮地法!
 沖縄武術などで、相手に悟られず接近する方法!
 地面を蹴って走るのではなく、地球の引力――つまり自然落下をつかって、むしろ早く歩く。
 そうすることによって、初動が全く相手から見えず頭の位置が変わらないので、一瞬で至近距離まで接近されたような錯覚を起こさせる!!』
克の解説が大音声で炸裂し、許斐のハイテンションもあいまって会場が熱狂した。
「縮地は前後の動きにしか使えないはずよ!前方をふさげば、惑わされないわ!」
開く傷をも省みず、留美子が真正面からタックルを仕掛ける。
そして、留美子の蹴り足は、何も蹴ることはなかった。
「えっ!?」
留美子の目の前から、許斐が消失していた。
許斐は、留美子の横を一瞬ですりぬけていたのだ。
「許斐は…片足で立っても両足と同様の生活が出来る程のバランス感覚の持ち主だ。
 縮地法の横移動は、筋肉を別々に働かせる事の出来る人間でしか可能じゃない。まず常人には不可能。
 だが重心の取り方が人間離れしている、許斐の究極のバランス感覚が… 全 て の 方 向 へ の 縮 地 法 を 可 能 に す る 」
縦横無尽の縮地法により、なすすべなく許斐に突破を許してしまうガンサン。
今まで地味なチームプレイに徹して目立たなかった許斐が、ここにきて剥き出した牙に、彼らは完全に虚をつかれた。
残るは二人。ひとりはキーパーの金田一だが、それをフォローするために、“大魔神・工藤モード”の土塚が実質、もうひとりのゴールキーパーとして守りについている。
ゴール前で、許斐がくるりと背を向けた。
許斐の後ろからは、大和田・陽一・村田・ついでにえなり、の4人がフォローに走りこんでいる。
これは、許斐が軽く蹴りだし、後方で待ち受ける4人のうちの誰かがシュートを撃つという作戦か。
(……誰が撃とうとも、俺が止める)
土塚が気を集中する。
許斐が大きく振りかぶって、ボールを蹴りだした。
370無我(157/180):2005/06/03(金) 19:53:10 ID:7YGyfU/J0
それは、土塚の想定の範囲外の攻撃だった。
許斐は軽く蹴りだすのではなく、横に大きく蹴りだしたのだ。
しかも、それはパスではなかった、シュート。
許斐はゴールに背を向けたまま、しかしボールは大きく弧を描き、ガンサンゴールに肉薄した。
許斐の、“ブーメランスネイク”シュート版。
「しまった!」
鋭い弧を描くこのシュートを、金田一が右のパンチングで弾いた。砕けているはずの拳だが、激痛をおくびにも出さない。
はじかれたシュートは、大きく横に飛び、コーナーキックになると思われた――――
ところが、予想に反して、そのボールはまるで吸いよせられるように、許斐の方へと舞い戻っていく。
「 手 塚 ゾ ー ン !??」
許斐の絶技、“手塚ゾーン”。自らの方へとボールを呼び寄せる様は、“ボールはトモダチ”を彷彿とさせるプレイだった。
吸い寄せられるボールにダッシュする許斐が、その勢いを乗せて左足による強烈なシュートを放った!
まるでシュートの瞬間、ボールが爆発したかのような破壊力。
『 ダ ッ シ ュ 波 動 球 !! 』
克の叫びをかき消すような轟音をあげて、今度は金田一の左側にシュートの矢が飛ぶ。
『あっと、しかし土塚選手、またしてもナイスセーブだ!』
ゴールポストをひしゃぐほどの威力を、土塚は右足で蹴り返した。見事なセービング。
倍加した速度のボールは、そのまま許斐の脇をすりぬけ――
『だが、許斐選手、これにスライディングで追いついた!』
――なかった。スライディングから起き上がるバネを使って、今度は全身を強烈にひねってのシュート。
バウンドしたボールが相手の顔面に向かって跳ね返る、“ツイストスピンショット”だ。
正式なキーパーでない土塚は、足を真上まで撥ね上げ、かろうじてこれをも弾き返した。
しかし、不安定な体勢になった土塚の頭上を、黒い影が覆った。
すでに、許斐が天高く跳躍し、腰を思い切りひねりながら、打ち下ろしぎみにシュート体勢にはいっていた。

            ズ   バ   ア   ッ  

『ゴ〜〜〜〜〜〜ル!! “無我の境地”に達した許斐選手、まさかのスーパープレイ炸裂ぅ〜〜!! えなりチーム、待望の同点ゴールです!!』
「You still have lots more work on…(まだまだだね)」
克の絶叫と、許斐の決め台詞。
ふたつが、ガンサン陣営に、重い現実となって、のしかかった。
371作者の都合により名無しです:2005/06/03(金) 20:43:46 ID:QDLHY0Q/0
無我キター!

こいつのトンデモっぷりはそろそろバトル漫画家にも通用するな
372作者の都合により名無しです:2005/06/03(金) 21:03:08 ID:zMpyy05R0
いよいよ同点!さあどうなる!
ところでえなr
373作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 00:22:12 ID:OpObRmGS0
136 マロン名無しさん sage New! 2005/05/30(月) 04:11:35 ID:???
うろ覚えだが、ハヤテのごとく!の畑健ニ郎の日記より。

師匠の久米田康治はあの自虐キャラからは想像できない太っ腹。
アシを高くてオサレな洋服や、古着をガンガンアシに与え、
ホテル代や旅行費など、費用全部自分持ちでトルコやギリシャの島に旅行に連れて行く男。
畑が「いい場所ですね〜。また来たいですね〜」と言ったところ、
久米田「今度は自分のお金で自分の漫画のスタッフを連れて来な」
それを支えに畑は頑張ってきたらしい。

ただ、久米田ヲタには微妙にイメージダウンにもなりそうな話w
374作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 00:31:20 ID:28cOutUc0
ここ数年のテニスは別の意味で神の領域に達してるな
アニメだとスマッシュでコートが消し飛んだり、手塚ゾーンで恐竜が絶滅したり、もう何が何やら……

>>373
意外だw
しかし仲良いな、この師弟
375驚異!!羅門衆集結!!:2005/06/04(土) 11:18:33 ID:vsc0A5j20
>>93>>263 他
「ったく、どこまでほっつき歩いてんだ、あいつ!!?」
観客席の牧野が愚痴り始めた。
「流石にこれは遅すぎるっス。」
「どうしたんや、あいつ?」
「まあ、そのうち帰ってくるかと・・・・・・」
カッ カッ カッ
「お、噂をすれば、やっと来た・・・・・・」
「ハァハァハァハァ」
そこには頭に兜を被ったあごひげの男が汗を大量に流して息を切らせながら立っていた。
「「だれだー、このおっさん!!?」」
皆がそう思いボーゼンすると兜の男が先に口を開けた
「あっ!!これはこれは岩村さんと牧野さんじゃないですかっ」
「おお、くぼたさんっス。」
くぼたまこと、ポプラ集団・羅門衆の一人にしていがらしの下で世界征服を狙う悪の幹部なのである。
「いや偶然ですね。こんな所で会うなんて、私懸賞でチケット当てて見に来たんです。
ところでいがらし先生今どこに居るか知ってますか?(注:この男は世界征服を企んでます)」
「いがらし先生?俺たちも今朝から見てないんだが・・・。」
「まいったな〜どこ行ったんだろう?
 あ、そういえば家に鍵してきたかな?(注:この男は世界征服を企んでます)」
「ねえ、さっきから持ってるその袋・・・」
と天野はくぼたが持っている大きな袋を指差した。
「ああ、この袋ですか?さっきそこの道で拾ったんで警察に届けようと・・・(注:このry)」
「ちょ、ちょっと中身を見してみや!!」
と、みずしながくぼたから袋を奪い取り中身を出し始めた。
「ビール、ウーロン茶、ジュース、軟骨、日本酒、マグロ・・・・・・
 間違ごうない、これ夕日子の買ったもんや」
「ちょっと待つっス!!俺の頼んだものがないっス!!?」
「ホモ雑誌なんて誰が買うか!?ともかく荷物が残された状況から察して夕日子は誘拐されたに間違ごうない!!!」
『ななな、なんだって!!!』
観客席にどよめく(お約束の)声。
376驚異!!羅門衆集結!!:2005/06/04(土) 11:20:46 ID:vsc0A5j20
「ゆゆゆ・・・誘拐だ何て、そんな酷い事誰が・・・・・・言っておきますけど私じゃないですよ。」
物凄く取り乱し発言するくぼた(注:こry)。
「まあ、誘拐して直に証拠もってココに来るバカはおらんやろ。
 夕日子・・・今頃どんな目に合わされているやら・・・・・・」
その時、牧野博幸の脳細胞が急激に動き始めた。

『今頃どんな目に合わされているやら』・・・ではもう一度物事の成り行きを振り返ってみよう。
 ――――第一章 木村夕日子の場合。
 『彼女はうら若き女性であり、何等かの目的を持った悪人に連れ去られた。』
 『ならばその先に待っている運命とは?』
 
 『す け べ え な拷問』

 『拷問』 『痴態』
「グオオオオオオォォォォォォォォォォ〜〜〜〜〜
 拷問だーッ!痴態だーっ!!ちっくしょー独り占めは許さんぞっ!!俺にも見せろ〜〜〜〜〜」
「な・・・・・・なんだなんだーっ!?」
夕日子がさらわれた事により、エロパワーが充満し、エロ狼と化した牧野に皆はビビリまくった。
「お・・・俺は・・・」
「如何したの、あなた?」
まっつーも突如体が震えだしてた。
「俺はそのシチュエーション味わいて〜〜〜ウオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」
まっつー(エロゲーマニア)もエロ狼と化してしまい牧野と共に四つん這いで吼えまくっている。
「あー恥ずかしいですよ、二人ともお止めなさい。こっちまで恥ずかしく成っちゃうって!」
「ガウガウガウ!!」
「バウバウバウ!!」
二人を諭そうしたくぼた(注:ry)。しかし二人は完全に獣化してしまい、話しを全く聞いていない。
「うーむ、これはかなりの重傷っス。全く男の性ってヤツかっス?ネ♪佐藤さん♪」
「何故俺に同意を求める?」
そしてこの時誰も気付かなかった、もう一人のエロ狂狼がすぐ側で復活した事を・・・・・・
「・・・・・・やっぱ、おにゃの子のほうがいいや。」
377作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 11:56:50 ID:sf5NCBGy0
相変わらずエロ路線だなあw
くぼたまことってあまり覚えてないけどギャグ王にもいなかった?
378作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 12:11:31 ID:28cOutUc0
羅門衆って変態しかいないのかw
狂気の長が早逝してしまって今、こいつらの暴走を誰がとめる
379作者の都合により名無しです:2005/06/04(土) 12:34:51 ID:S+abC40cO
ていうか旅景色が絡むと大多数が変態化するのは気のせいですか気のせいですね。
380不条理対決!!:2005/06/05(日) 19:08:16 ID:gJtu/A2X0
>326

「どうした、若造〜〜〜〜っ!怖気づいたか〜〜〜〜っ!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!びびってるワケにもいかねえっす!こうなったら、イクとこまでイってやるっすよ!」
重量感たっぷりに近寄ってくる、ゆで将軍に腐朽が先制の攻撃をしかける。
「 “ 鉄 ” 」
木を媒介に、大砲形の神器を生み出し、巨大な砲弾を発射。
この“鉄”は、腐朽の《“理想”を“現実”に変える力》により、“絶対命中”と“絶対粉砕”を理想とすることで、反則じみた性能を有している。
しかも、それを連続発射。
まさしく“不条理”というしかない、この攻撃を、【不条理の支配者】ゆで将軍は、笑って出迎えた。
「カーカカカカッ!何かと思えば、玉遊びかっ!!」
その巨体におよそ似合わぬ身軽さで跳躍し、高速で吹っ飛んでくる砲弾のひとつをサッカーボールよろしく蹴り飛ばした―!
「!!!?」

     ドゴオッ ドガアッ ゴッオオオオン―――――ッ!!

将軍が蹴り飛ばした弾は、他の砲弾とぶつかりあい、次々と連鎖的に玉突き衝突を繰り返し、あろうことか全弾が腐朽の方へ戻ってきた―!!
「ガアアァアアァアアアッ!!!!」
ひとつひとつが凄まじい威力を持つ“鉄”の連続弾を自ら喰らい、腐朽は血を巻いて派手に吹っ飛ばされた。
「う・・嘘っす・・“絶対粉砕”の“鉄”を素足で蹴り返した・・・!!!
それに全部の砲弾をまるでビリヤードでもやるかのように全部計算して・・・!!!」
「カラカラカラ、なにをこの程度で驚いている。自分の技が跳ね返されたのが、そんなに意外かぁ〜〜っ!?」
高笑いする将軍を前に、腐朽は実感する。
自分が、“伝説”と戦っているのだという事実を。
「なら遠慮はしないっすよ!“百鬼夜行(ピック)”!!!」
今度はドリルのような神器を生み出す腐朽。
鋭く回転する切っ先が、ゆで将軍に向かって伸びる――!
381不条理対決!!:2005/06/05(日) 19:09:02 ID:gJtu/A2X0
「ビッグタスク――――――――ッ!」
 
 ズ  バ ッ !

「!!!!!」
ゆで将軍が頭部から伸ばしたマンモスの牙“ビッグタスク”が、腐朽の“百鬼夜行”をところてんにように切り裂いた。
「理想化したはずの神器が!!?」
“不条理”の極みともいうべき、《“理想”を“現実”に変える力》。
しかし、それすらこの【不条理の支配者】は問答無用で破壊するというのか。
「くっ!!なら・・・“唯我独尊(マッシュ)”っす!!」
今度は巨大な大顎を呼び出し、将軍のビッグタスクを、引き裂かれている“百鬼夜行”ごと噛み付かせた。
「っしゃあっす!!!」
「グロロ、なにを喜んでいる〜〜っ!」
ビッグタスクに噛み付かれた将軍、なんと首の力だけで“唯我独尊”を持ち上げた。
すると、2本のビッグタスクに、もう一本の角がくわわり、それら合計三本がまるで刃物のようになった。
「アバランチャー・クラッシュ!」

  バ  コ ン !!

「あぁ!!!!」
三本の角が“唯我独尊”をガッチリと挟み込み、三等分に切り裂いた―!
「ぐっ・・・ならこれはどうっすか!

        十 ッ 星 神 器  “ 魔  王 ” !!!!  」

腐朽最強の攻撃手段、“魔王”。
祈りにも似た思いを込めて、腐朽は悪魔の形をした生物砲弾を放った―!!
382不条理対決!!:2005/06/05(日) 19:09:52 ID:gJtu/A2X0
「グヘヘヘ・・・こいつはカワイイものを出してくれるじゃねえか!」
自分と比べて、遥かに圧倒的に巨大な“魔王”の威容を見ても、ゆで将軍の余裕は全く変わらない。
漆黒の翼をはためかせ、ねじくれた角を中心に巨体の全てを破壊力と化して、迫り来る。
「護夢拳伸長脚!!」
腕組みしたままの将軍の両足が、ゴムのようにギュ―ンと伸びた。
“魔王”の突進を、長くなった両足でまたぐようにかわすと、その両足をあろうことか“魔王”の頭部に該当する部分にからめた。
そのまま、逆向きに肩車するような体勢をとり、“魔王”の後ろ足に当たる部分をつかんだ。
「な・・なにをするつもりっすか〜〜っ!?」
その直後に展開された光景は、腐朽の想像を絶した。
「 3 D ク ラ ッ シ ュ !!! 」

   バ  キ  ャ  ア  !!!!

「ゲェ―――――――――――――!!」
なんと、ゆで将軍は“魔王”の巨体そのものを強引に折り曲げ、腹を真っ二つに引きちぎってしまったのだ―!!
(か・・・勝てねえ・・・っす)
自分の最強技が、あろうことかプロレス技で破壊されるとは。
前代未聞の離れ業を見せ付けられた腐朽は、はっきりと次元の違いを実感した。
無意識のうちに後ずさる腐朽に、ゆで将軍はにやりと悪意に満ちた笑みを向ける。
「カーカカ、逃がすか!阿修羅面“冷血”〜〜〜っ!」
今までデスマスクに覆われていた将軍の顔が、冷え冷えとした両眼だけが光る冷血面へと変化した。

「 竜 巻 地 獄―――っ!」
383不条理対決!!:2005/06/05(日) 19:10:34 ID:gJtu/A2X0
ゆで将軍が6本の腕を素早いモーションで振ると竜巻が起こった。
「くっ・・・そぉ―――っ!!!」
猛然とこちらに向かってくるトルネードを、腐朽は全神器を出すことで防ごうとした。
しかし、圧倒的な暴風は、神器を文字通り根こそぎ吹っ飛ばした。
「うわああああああっ!!!」
そして、腐朽の体も、竜巻に飲み込まれ、舞い上がっていく。
「ヴィルタリオート遺伝子(ジェネティック)―――――ッ!」
空中で戦闘ヘリコプターに変形した将軍が、空中で腐朽を捕らえる。
「シベリアンタルラーナ!」

ズババババ!!

「ぐわぁあああぁあ――っ!!!」
戦闘ヘリのプロペラが刃と化して、腐朽の背中の肉をえぐる地獄絵図!
「フロッガ――――ッ遺伝子――――ッ!」
今度はロシアの空軍を代表する戦闘機MIG‐23フロッガーに変化した。
両翼で腐朽の腋の下を捕らえてさらに上昇し、そのまま真っ逆さまに錐揉み飛行で落下する。
フロッガー戦闘機ボディが、下降しながら元のゆで将軍の姿へと戻っていく。

「 ザ ・ タービュレンス――――――――――――――ッ !!!! 」

そして、驚天動地の必殺技で、腐朽の脳天を地面に叩きつけた――っ!

「ゴヘェ――――ッ!!」

回転の勢いで、激突した腐朽の体がもう一度、浮き上がり、血ヘドを吐いて血の海に沈んだ。
384作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 19:22:40 ID:4tGW9roI0
腐朽いいいい!!
385作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 19:29:02 ID:loGa/T1z0
そんなああああああああああ!!
386作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 20:00:53 ID:TRFkh+cX0
腐朽もっとがんばれ(ノ∀`)
387作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 20:12:32 ID:7tG8JIO/0
ここで久米田のコメント
    ↓
388作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 20:15:31 ID:uNzPEtR30
さすが将軍!
評議会の査定を待つまでもないなw
389作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 20:23:31 ID:TRFkh+cX0
    ↑
糸色望しますた久米田先生
390作者の都合により名無しです:2005/06/05(日) 23:31:45 ID:1zNUvGXR0
やべえ一方的に蹂躙される腐朽すげえスッキリするw
391作者の都合により名無しです:2005/06/06(月) 17:29:34 ID:gWJIZkit0
>>333

皆川の突きつける指先に、死神が集っていく。
照準は巣田の額。寸分違わぬ絶命位置をポイントしている。
その正体は、猫の額ほどの狭隘な一点に位相を揃えた光を緊密に収束、
激烈に高まったエネルギーを伴い光速で駆け抜ける熱線。
現実においては最高速度を誇る冥府の死光が指先に宿っていくのを、
血溜まりに沈む少女の虚ろな瞳ははっきりと認じていた。
魔に魅入られたかのように焦点を逸らす事ができず、いつの間にか巣田は呼吸を停めていた。
電気系統を潰された暗がりの中での永遠とも思える膠着は、実際一秒も無かった。
しかし、ついに終わりは訪れる。
解き放たれた光条は、大気を灼いて死地の闇を裂き、一直線に巣田の額へ突き刺さり――――――

その直前で、動きを止めた。

392傲りと誇り〜妖幻歌姫〜:2005/06/06(月) 17:31:46 ID:gWJIZkit0


        ………み  か………る……る……  …

                   
異変は、既に起こっていた。
厳密には、血溜りの中で覚醒したその時から。
余りにも微細で、余りにも稀薄な違和。
風の耳鳴りのように幽かで茫洋としたそれが、一つの歌だと悟ったのは――――――

死光を遮る水の紗幕が、己の身を包む今だった。

同時に湧き立つ、特異な感覚。
堰き止められた水が溢れ出すように、何かが躯の内からせり上がってくる。
暴れ、のたうち、吼え猛る。
喩えるならば、どうしようもないほどの嘔吐感だった。
そして、不意に嗅覚が捕らえた、風の匂い。
巣田はその匂いをよく知っていた。
人間界には決して存在しない匂い。半身の故郷の匂い。
それは、魔境の風だった。
途端、失っていた五感が急速に修復されていく。
現実に思考が帰還し、苦痛が身体を焼く。
そして、声。

『くたばってる場合じゃねえだろ、祐里子!さっさと起きろ!!』

生涯の相棒の、軽口が響いた。
393傲りと誇り〜妖幻歌姫〜:2005/06/06(月) 17:32:30 ID:gWJIZkit0
それは、巣田の身体から湧き上がる陽炎のようだった。
しかし、それは視ることも触れることも出来るものだった。
縁まで満ちた甕から零れ出る水の様に周囲に溢れ、それは形を成していく。
在り得る筈の無い光景、それが起こっている事を巣田は自覚する。
何故起きたのかすらも理解している。
感謝の想いが、胸中に吹き荒れ、雫となって頬を濡らした。
耳鳴りと思っていたノイズは、今や脳裏に鮮明な声として響いていた。


      ――― 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の

              われても末に 逢はんとぞ思ふ ―――


****

崇徳院の歌。
再びの縁を願う歌。
女がその歌を詠むとき、それは離れた次元を繋ぐ力を秘めていた。
詠み終え、女は瞑目する。
女は、巣田が死の淵の夢で見た人物と同じだった。
金糸の千早に緋の袴、雪の肌に無明の髪、そして一対の角。
NEXTの歌姫、あやかしの女。
その名は、片山愁。
魔境の風に、その髪がなびいた。
394内臓が無いぞう(ないぞう):2005/06/06(月) 18:59:10 ID:9PsGYK9p0
>>383

全身の力を振り絞りカウント9でやっと立ち上がった腐朽だったが、最早立っているのがやっとという有様だった。
そんな状態の腐腐にも容赦なく止めを刺そうとするゆで将軍。
そのとき、腐朽がゆで将軍に向かって鋭く叫んだ。

「内臓がないぞう!!!!!」
395不死身のゆで将軍:2005/06/06(月) 23:22:35 ID:ryZkOWjM0
>>394
将軍「うわははははははははははははっ!それがどうした!」
そう言って、ゆで将軍が笑い出す。
『ダジャレを現実に変える能力』を発動させようとする福地。
だが将軍は先に自らの体を割って自らの中身を福地に見せる。
福地「げー内臓が無い!」
元から内蔵が無ければ、内臓をなくしようが無い。
将軍「ではこちらから行かせてもらうぞ!」
福地(こうなったら………)
将軍「地獄の凱旋門!」グワシャッ!「忍法蜘蛛糸縛り!」メシゥ!「ナスティギムレット!」ドシュ!
続いて福地と共に将軍は高く飛び上がり、姿形を変える!
将軍「  馬  式  誉  れ  落  と  し  !!  」ズギャギャーン!
地面に叩きつけられた福地がよろよろと立ち上がる。
将軍「ほう、なかなかだな…」
福地「それほど効いてないっす」
服をバリアーに変える力で耐え抜いたのだ。
将軍「なかなかの耐久力だ……だが精神力の方はどうかな?」
そう言うと、将軍の体が巨大な便器へと変化していく。
将軍「貴様の精神力をこの臭く濁った糞尿の魔境で試してやろう!」
396再開直前:2005/06/06(月) 23:28:48 ID:VvwOZxlI0
>>370

「くそォオオッ!!!」

 ドガッ!!!

双方共に続出する負傷者たちが試合再開までのひとときを休む野戦病院のごときフィールドの中心。
格好よく帰還したまでは良かったものの、現状まるで役に立っていない我が身が悔しくてしかたがないのか、安西は、拳を地面に叩きつける。
「傷ついた皆があんなにも頑張っているというのに……俺は一体なにをやってるんだっ!?」
とうとう同点にされてしまった。なんら皆の力になることも出来ぬまま。
あの料理修行で掴んだ手ごたえは、まさか、儚い錯覚だったとでもいうのだろうか。
「……今は後悔する時間さえ惜しい。 とにかく、立て」
他に比べ外傷こそ少ないものの、体力的な限界はとうの昔に超えてしまっている藤原カムイが、それでも安西の腕を引き、無理矢理に立ち上がらせる。
「もはや守りを固めてばかりもいられんか……」
ほんの少し、ほんの少しだけ嬉しそうな、こちらは最初から爆弾抱えの村枝賢一。

「ていうか安西君…… は ね  は え て る よ 」

これはウルトラマンから姿を戻したハヤタ隊員のように、「おーい」とか手を振りつつ白々しく帰還した衛藤ヒロユキの言……………羽?
「あっ」
ほんとだ。羽、生えてる。



「あれは……!!!」
遠く離れたえなりゴール。井上雄彦はどこか見覚えのある炎の翼に思い当たると、次の瞬間背筋に戦慄を走らせた。
「まずいっ、誰か奴を止めろっ! あれは―――」
忘れもしない別府『松椿』。傷つき倒れた全ての者たちを癒した片翼の不死鳥。
井上自身も含む瀕死の命を救ったその効果の程は、文字通り、体に克明に記憶されている。
(ここでガンガンに全回復などされたら―――!!!)
大和田、X仮面、陽一は重傷。車田と藤崎は重傷の上に行方不明。
無傷のガンガンチームに対し、十全に実力を発揮出来る者が許斐と村田だけとなってしまえば、形勢は一気にガンガンチームに傾くだろう。
397再開直前:2005/06/06(月) 23:43:14 ID:VvwOZxlI0
「――――くっ!?――――間に合わん――――!!!」



安西が意識した途端、健やかにその全長を伸ばした片羽は、火の粉を飛ばしつつも豪快な炎の渦を巻く。
荘厳とも華麗とも呼べる絶景の中で、再生の炎が体に届くのを身動ぎひとつせず、ただ待つガンガンチーム。
そして、井上の警告を受けたえなりチームは。それなのに、誰一人として飛び出すことさえ出来ない。
あまりに神々しい光景、というのもあるが。その煌びやかな黄金は、とっさに"敵"と認識するには、穏やかすぎ、そして優しすぎたのだ。
呆然と見上げ、美しさに見蕩れるその一億総観衆の中。
しかし、なにをも意に介することなく、すみやかに、動く男がただ一人。

「―――― 邪王炎殺煉獄焦 」

横あいから飛び込み。えぐり込むように連続で放たれた拳が、安西の脇腹を集中して捉え、骨肉を焼き焦がす。
痛覚を刺激する鈍い音が閑静に轟き。
二つの陣営の中心。
丁度、線路の両側で待つ二組の人塊の前で、踏み切りのド真ん中に立っていた人間がそのまま特急列車にでも吹き飛ばされるような
そんな、一瞬の人体消失。
腰を不自然に折り曲げられた安西の姿は。
崩れ落ちる轟音に振り向いた皆に、瓦礫に埋もれた無残な松明として再認される。

「くくく……キミはカワイイなぁ♥ ダメだよ そんな隙だらけで突っ立ってちゃあ♣ 」

能面の笑顔をはり付けたまま、火達磨の安西にゆっくりと近付いてゆく男、今井。
悲鳴も歓声もない強張った空気を割り裂き、緊張感の無い声だけを、周囲にだらだらと垂れ流す。
「折角のクライマックスだ ここで全回復なんて萎える真似はしちゃダメダメ♦ 僕だってちゃんとガマンしてるんだからね♠ 」
立ち止まり、しゃら、と抜き出した両刃の刀を構える。
傍からはいまだ油脂の尽きぬただの焼死体にしか見えないが。どうやら今井は、それでも安西がまだ生きている、という前提で対応するつもりのようだ。

「さあ はじめよう 僕達には時間が無い♠ 」

瓦礫と炎の斑に向かい、今井がそう言い終わるのと同時に。背後で、試合再開のホイッスルが鳴り響く。
398作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 00:15:34 ID:6GOobomW0
どいつも飛ばしてやがる・・・!!
ゆでワラタ

しかし片山愁って巣田さん同様ものっそい懐かしい名前なんですけど
何描いてた人だったっけか
399作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 01:40:43 ID:P9ZN70LO0
この間本屋でドラゴンフィスト見たなぁ。まだやってるんだと思った・・・<片山愁
400Gの悲劇:2005/06/07(火) 12:20:55 ID:cunrN0540
>>34

矢吹艦・どこかの食糧庫。木の板に無造作に敷かれた毛布の上で田辺は目覚めた。
 「・・・いつのまに眠っていたのかしら?それにここは・・・」

薄暗い空間の中、彼女は上半身だけ起き上がり壁にもたれる。
どうやら誰かとここに逃げ込んだようだと悟る。ぼんやりと前後の記憶を辿るが、
それを遮るように騒々しい声が部屋に飛び込んできた。
 「あー風呂入りてー!臭ぇー!
 やっぱ新品のごみ箱にしときゃよかったぜー!ムキー」

甲高い女の声に眉をひそめる田辺だが、すぐに相手が西森だと気づく。
そういえば裏路地伝いに松江名を捜していたはずなのに、
いつの間にやら敵味方入り混じった大乱闘を演じていたのだ。
田辺は自分の身体に綺麗に巻かれた包帯を視認し、鼻で小さくため息をつく。
 (本当この人は、いつもどこから沸いて来るんだろう・・・)
コンビニの袋を持った西森を、ちらりと横目で見て壁に深くもたれかかった。

一方、割と深手である自身の怪我をおくびにも出さない西森は、
根っからのバカ明るい笑い声でしゃべりながら、
コンビニで買った品を床に置く。包帯や消毒液に混じって、
ジュースやポテチがコンクリの地面に彩りを添える。
 「おー起きたか?ったくよー、俺様がいなけりゃ今ごろどうなってたやら。
 ケガが治ったらまたシゴいてやっから、これ食って早く元気なれ。ほれほれ」
にこやかな顔でケケケと歯を見せて笑う“絶世の美女”は、
その容姿に似合わぬ野卑な荒っぽさで、無造作にお茶のペットボトルを田辺に放り投げた。

彼女(?)流の気遣いに苦笑する田辺は、ボトルを「結界で」ふわりと受け取る。
空中に小さく生成された透明の立方体。彼女のお家芸であり、
彼女を束縛していた魔の糸から逃れられた要因である。
出現位置や形状、硬軟をかなり自在に操れるそれを、田辺は糸の束の『内側』に生成し、
強固で鋭利な棒状に変形させて何本も結成し、糸の内部から組織ごと引きちぎったのだ。
401Gの悲劇:2005/06/07(火) 12:22:12 ID:cunrN0540
あまり結界を張る霊力が強くない田辺は、経験的にピンポイントの攻防が鍛えられる。
そこを大雑把だが冷徹で他者をコキ使うのが巧い、
<サンデー特殊部隊スプリガン>司令塔・西森に見込まれているようだった。

ちびちびとお茶を飲む田辺と、わき腹を軽くさすりながら、
コンビニおにぎりを美味そうにほおばる西森。
 「・・・で、西森先生。これからどうするのですか?」
 「あー?どうするってとりあえず風呂入りてえけどさー、もぐもぐ。
 そういや、あのお前襲ったバカ連中ウザイから電話しといたぜ。
 騒動が収まったらまず銭湯行こ銭湯。臭くてかなわん。むぐむぐ」
 「電話?編集部にですか?」
田辺の質問に、もむもむと米を咀嚼しながら西森が答えた。
 「矢吹軍にだよ。てめえら人数だけ揃えてサボってねーで、
 矢吹サマの敷地内で暴れてる馬鹿ども逮捕しろよこの給料ドロボー!ってよ」

 「あきれた。いくら軍隊でも、一般人と変わりないじゃない。巻き込むの?」
 「いんだよアイツらはそれが仕事なんだから。
 赤松どもが本気でヤバかったら、ビビッて勝手に逃げるだろ。
 あとは野となれ山となれーってか?・・・そこまで責任負えっかよ。矢吹の軍だべ?」
どこかふて腐れたような西森の声だが、瞳は怜悧な輝きを見せていた。
無為に人間を殺させる性格ではない。恐らく既に何か手を打ってあるはずだと田辺は思う。

 (・・・でもそれは私の買いかぶりかもしれないけど。
 どの道すぐに戦場に戻る羽目になりそうね。人がいいんだか悪いんだか・・・)
視線を食糧庫の壁隅に向けながら思考をまとめる田辺。
―――しかし運悪く、彼女は視界の端を走る<黒い影>を・・・見てしまったのだ。
クールビューティ田辺イエロウ細大の弱点、それは≪G≫の名を冠する巨大なる茶羽虫。
 「・・・〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!!
 いやああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

・・・西森の次のミッションは、食糧庫を縦横無尽に駆け回るGの退治と、
戦闘力ゼロになりぐったりした田辺を連れてGの出なさそうな隠れ家を捜す事であった。無念。
402作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 12:29:43 ID:2vLH9iaL0
ドラゴンフィストもう終わっちゃったらしいよ。
403作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 14:08:56 ID:0lth2wiO0
巣田やら片山やら、書く方も凄いと思うが、わかるお前らも凄いな。
404作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 14:11:04 ID:cunrN0540
彼女らに親しみのある世代って確実にあるよね
んでファンロードとか読んでたと思うの
405空も飛べるはず:2005/06/07(火) 15:51:48 ID:cunrN0540
>>179


 冬の青空。
 遠い遠い海。
 それらを覆う戦艦。
 甲板に建てられたビル郡。
 
 全てがぼくの周りにある。

 きれいだなあ。
 こんなに綺麗な景色を見たのは初めてだ。

 たぶん。



 「Live Like A Rocket!!」

空を飛ぶ少年キユ。矢吹艦上空を、跳ね馬のように直線で移動する。
さすがに<突き抜ける力>では、細かい制御がしづらいらしい。
しかし傍目危なっかしいが、キユは持ち前のセンスで徐々に力の調節を覚えていく。
巨大戦艦の数百メートル上で、逆さまになって頭部の先を見上げるキユ。
彼の視線の向こうでは、透明な屋根のない解放部分にそびえ立つ、
数千ものビルの群れが針天井のように見えている。
シューズに包まれた足が踏むのは無限の青い絨毯。
強張ったままだった唇の端が、ほんの少しだけ緩められる。
天地のひっくり返った世界には、少年を束縛するものは何一つなかった。
しかし・・・彼の“自由”も長くは続かなかった。

 「楽しそうだな、キユ。私もダンスパーティに混ぜてはくれんかな」
406空も飛べるはず:2005/06/07(火) 15:52:55 ID:cunrN0540
 「・・・矢吹・・・」
乾燥した声に若干の嫌気を混ぜながら、キユは声の主の名前を呼ぶ。
キユは知っている。たった今自分と同じ位置に浮かび上がってきた軍服の男が、
かつて少年に内在する未知のエネルギーを利用するため、
彼をカプセルで眠りにつかせたまま、10年もの間囲い込んでいたことを。
聞いた話であり、ぼんやり記憶している事でもある。
宙に浮く矢吹を目の前にして、キユの心中は計り知れない。
ただ口に出した言葉は、淡々とした調子に似合わぬ物騒なものであった。

 「空はいいねえ。ぼくとても気に入ったよ。
 ここ、ぼくの場所にしたいんだけど。
 そうだ、このでっかい船、よかったらぼくにちょうだい?」

小さくにこりと笑うキユ。おもちゃをねだる子供のように。

 「・・・それは困ったものだ。
 あいにくこの戦艦は私の所有なんでな。そしてこの艦の上下の空と海も、
 当然私のものなのだよ、キユ。まあ“代価”を支払ってくれるのなら、
 考えない事もないかな?なにしろ君のおかげで―――」
言葉を切り、サーベルを抜く矢吹。
白いマントが、潮風の混じった上昇気流と矢吹の気を受けて大きくはためく。
鋭利な刃の先端を、視線の先で青空を泳ぐ少年の<額>に向ける。
遠目でも光って見える、額に描かれた<ナンバー10>。

 「君の血肉を、体組織の全てを、遺伝子情報を、未だ解明しきれない能力を、
 この10年間でとことん研究し、その成果でこの矢吹艦が完成したのだからな。
 君の分身を培養し、この巨大戦艦を浮かばせる<核>としたのさ。
 言わばこの艦は・・・キユ、君の子供だ。ありがとう。
 だから早く帰って来なさい。今度はもっといいベッドを用意するよ。艦の心臓部に」

諭すような矢吹の声には、多分に憐憫の成分が含まれていた。
微笑み合う、矢吹とキユ。目を合わせた瞬間、2人の心に極寒の地の如き冷風と雷光が疾った。
407作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 18:27:27 ID:NnFLZ1E00
こんなとこでぶつけちゃって大丈夫なのか
ドキドキワクワクハラハーラ
408作者の都合により名無しです:2005/06/07(火) 23:50:13 ID:mvXD+fuB0
いかに今の矢吹が絶頂モードといえども、キユ相手では格が違いすぎるのでは……なんでこんな余裕なんだ矢吹は
409作者の都合により名無しです:2005/06/08(水) 00:07:10 ID:NnFLZ1E00
色んな意味で矢吹とキユはほぼ同レベルだと思うが
410去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:13:21 ID:MHvSH9QM0
>>144
森川ジョージが笑っている。
相手が倒れているとはいえ、闘いの最中に笑うなどかつての森川ならば決してしなかっただろう。
そんな暇があれば、己自身の呼吸を整え、倒れる相手のダメージのほどを探ることに全身系を集中させていた。
だが、今甦り地に立つ男も、ただ笑っているわけではない。
笑いながら、彼の目はじっと倒れ伏すヨクサルの体を見据えていた。
闇雲に攻めかからないのも、相手が間接技を巧みに使ったという事実から判断してのことだ。
恐らくは、寝技もできる。
ならば、いくら一撃を加えた直後とはいえ、追撃を加えるのは思わぬ不覚を取る結果に繋がりかねない――。
そのような冷静な判断の裏に、ヨクサルのトリッキーな技への警戒の感情があることは、彼自身気が付いては無い。
森川ジョージは、骨の髄まで努力型の人間である。
だからこそ、天才や奇才の煌びやかな光芒に過敏なのだ。
自分自身に欠如したものへの本能的な畏れ――そればかりは、転生したところで抜けきらぬものらしい。

「こない、か」
森川の笑いがぴたりと止まった。
ほぼ同時に、すっとヨクサルが立ち上がった。
「来てくれれば、バキバキにしてやったのにな」
淡々とした声でヨクサルが言った。
ダウンした、そう見せかけて追撃を誘っていたのだ、とヨクサルは言外で告げる。
同時にそれは、完璧な一撃を与えたという森川の確信をも嘲笑う発言であった。
しかし、森川はその挑発には応じない。
すぐさま両腕を挙げ、構えを取る。
ヒットマンスタイル。
左腕が振り子のように左右に揺れ動く。
タイミングを図りもせず、無造作にフリッカージャブを森川は撃ち出した。
ヨクサルが頭を振り、それを避ける――。
瞬間、ヨクサルの頭が後方に吹き飛ぶように仰け反った。
避けたと思ったその拳が軌道を変え、ヨクサルの顔面を撃ったのだ。
グローブではなく、素の拳で、しなる鞭のように放たれたジャブは、容易く皮膚を切り裂く。
411去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:14:54 ID:MHvSH9QM0
まさしく死神の鎌、の呼び名に相応しい変則のジャブが続けざまにヨクサルの顔面に襲い来る。
数撃、続けざまに顔面に入った。
鋭い刃物の切れ味と、鈍器の重みを兼ね備えた左拳がヨクサルの皮膚を切り裂き、頭蓋を軋ませる。
死神の鎌の猛威からヨクサルは逃れることもできず、彼の顔は無残に赤く染め上がっていく。
先程までのヨクサルならば、あっさり外して宙から反撃に移っただろう。
ボディへの渾身の鉄拳は、ヨクサルの翼を一撃で捥ぎ取っていた。
彼の挑発的な言葉は、効いていないとアピールする為のものだったが、森川にはそのような舌演は通用しない。己の鍛え上げた拳へ絶対の信頼がある故に。

森川ジョージは敵が変幻自在の体術を使うと認識した瞬間から、その動きを封じることだけを考えていた。
ハメドスタイルも、接近戦も、立体的に動くヨクサルが両足を地に着けた瞬間に密着しボディを撃つ機を捉えるその目的の為の行為。
ヨクサルの驚異的な爆発力により予想以上の不覚を取ったが、結果は変わらない。
そして、動きを封じたと見れば、即座にジャブによる遠距離からの攻撃に移行する。
両の拳による攻撃しか持たない森川にとって、手足を踊るように繰り出すヨクサルだからこそ、アウトボクシングは危険だった。
今の鈍重なヨクサル相手ならば、何の危険も無い、むしろ接近戦の方がこういう感性で闘う相手には危険である、とそこまで森川は計算している。
じわじわと、精神と肉体を削り隙あらば右の大砲で止めを刺す。
今、死神の鎌で敵を切り刻みながら、冷徹そのものの瞳でヨクサルを観察し森川はその機をじっと窺っている。

転生後直ぐの、狂気に身を委ねてそれ故に幾度も手痛い反撃を被り、結局決着が付かなかった佐木戦(勿論佐木の超人的なタフさがあってこそだが)から鑑みれば、
およそ別人のように理詰めの戦法――しかしこれこそが森川ジョージの本来の姿と言っていい。
今の彼は、相手が弱っているからと言って無駄口を叩いたり、油断をすることは決して無いだろう。
柴田ヨクサルという強敵と相対すことにより、徐々に彼の中に純度の高いボクサーの感性が甦ってきているのだ――狂気はそのままに。
にたぁ、と薄気味悪い音が聞こえてきそうな笑みが口元に浮かんでいるのがその証拠。
そしてそのどちらも、ヨクサルを斃すということに全精力を費やしている彼は意識していない。
412去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:16:30 ID:MHvSH9QM0
理合と狂気。
科学(サイエンス)と暴力(バイオレンス)、と呼び変えてもいい。
懸け離れた場所にある二つが、彼の内で矛盾無く融合しつつある。

――強い。
と、朦朧とした意識の中でヨクサルが思う。
今までに闘ったことの無いタイプの相手だった。
ゆでたまごも、山本英夫も、あの板垣恵介ですら、彼自身と同じく本能のままに闘うという点で共通していた。
目の前の男は違う。
勝つ――その為の最善の法を、己の持つ技術の全てを用い、全身全霊を鋭い錐と化して相手を斃す。
こんな奴もいるのか、と無邪気な子供のような新鮮な驚きがある。

この追い詰められた状況にこのような感情が浮かぶ辺り、やはり彼は尋常ではない。
といって余裕があるわけでもない。
ただ、森川の戦法に対して、彼が出来ることは既に一つしかない。
である以上あれこれと切羽詰った思惑を張り巡らせるのは、はっきりいって無駄、とあっさり思っているだけだ。
一つ――そう、彼がこの状況で狙うことは只一つ。
――敵が制空権に入った瞬間に、撃つ。
それだけのことだ。
しかし、森川の恐るべき所はそれを気配から察して、制空権より外からのジャブを止めない所だ。
こうなってくると、どうしようもない。
かといってこのままむざむざやられる気は勿論無い。

(俺は、負けない――)
あの男の前に、板垣恵介の前に再び立つまで、負けることは出来ない。
己の最大の剄の一撃に耐えられたその時から彼は硬く決めている。
故に、ヨクサルは腹を括った。
この状況を打ち破る為。
最小限の防御すらやめ、顔面を晒したまま、一歩前に踏み出した。
――刹那、森川の拳が顔面に直撃する。
ぐらっ、とヨクサルの身体が大きく揺らいだ。
413去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:17:41 ID:MHvSH9QM0
――勝機!
拳から伝わる十分な感触が、彼にそう告げる。
ヨクサルの身体が揺らぎ、頭が低く傾いたその時には、森川は右を構えている。

打ち下ろしの右(チョッピングライト)――!!
どん、と重い音が鳴り響く。
心中の咆哮と共に振り下ろされた鉄の拳が、完璧にヨクサルの米神を撃ち抜いた音である。
血と、汗がぱあっ、と爆発的な衝撃により飛び散った。
――!!
拳を撃った瞬間、しかし森川は己の致命的なミスを悟っていた。
彼は見た。
ヨクサルの、飢えた獣が待ち侘びた獲物を捕えたような熱を帯びた眼を。
地面の強烈な悲鳴を、刹那の時に森川は聞いた。

――衝撃。

森川の肢体が吹き飛んだ。
裏路地を出て表通りの電信棒に叩きつけられるまで、まさに一瞬の出来事であった。
八極拳。
震脚と同時に繰り出された猛る虎の如き掌の一撃。
その破壊力は、既に実証済みである。
森川の右の一撃を合えて受けることにより、ヨクサルは一撃を繰り出す隙を掴んだのだ。
無論、こんなものは作戦とはいえない。
それをやってのけるヨクサルの不退転の意思と、爆発力を森川は再び見誤った。
電信棒が、二つに圧し折れ、森川の口から血が吹き出す。
反撃の好機――しかし、同時にヨクサルの口から嫌な声が零れ落ちた。
ヨクサルは繰り出した右手を抱えて蹲る。
414去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:19:33 ID:MHvSH9QM0
あの一瞬、森川は反射的にヨクサルの掌を肘で防いでいたのだ。
エルボーブロック。
硬く、尖った肘に、掌を思い切り突き立てた、その代償は如何程か――苦痛に顔を歪めるヨクサルの顔を見れば察するに余りある。
(手首が、折れた、か――)
反撃など考えられる状態ではなかった。
にも関わらず、咄嗟にこのような反撃をしてみせる。
――ヨクサルは、今ようやく、目の前の魔人に、恐怖を感じた。
(負けん――しかし…)
込上げる感情を振り払うように立ち、ヨクサルは敵を見据える。
(――負けん!)

「う…あ…」
呻き声を発しつつ、痛みに耐えて森川が立つ。
直撃を避け、逆にヨクサルの手首を破壊したエルボーブロックにより致命的な破壊は免れた。
意識して行なったのか、本能的になのか、彼自身にもわからない。
技術とは極限まで突き詰めるとそういう場所に行き着く。
が、左腕の感覚はまるでない。
受身を取る暇も無くコンクリに背中からぶち当たり、内臓も損傷があるかもしれない。
だが、そんな肉体的な損傷より、深い傷を彼は負った。
あれだけ複線を張り巡らし、快心の一撃を加えたその瞬間に、
狙ったように反撃――しかも彼が今まで受けたことの無い凄まじい一撃を被ったのだ。
415去来する恐怖:2005/06/08(水) 00:21:41 ID:MHvSH9QM0
――何をやっても通じないのではないか。
そんな考えが重く圧し掛かってくるのだ。
しかし、彼は闘志を失うことは無い。
闘う――ただそれだけの為に甦った彼の執念は揺らぎはすれど、消え去りはしない。
体の真芯に、しっかりと腰を下ろしている。

――森川ジョージは、逃げない。
例え何をやっても通じなくても、己が朽ち果てるその時まで、錐と化し敵を貫く。

ヨクサルが、一歩、一歩と噛み締めるように歩き、裏通りを出る。
それを、車道を通して反対側の歩道で、森川がじっと見詰める。
辺りには誰もいない。
準決勝の試合を見る為に、市街地のほとんどの人間が会場に詰め掛けているからだ。

――強い風が、静寂の街を吹き抜けた。

終わりの時が、迫っている――。
416史上最悪の戦い:2005/06/08(水) 02:23:52 ID:+tsHKGAh0
>>395
巨大な便器へと変化したゆで将軍に、まるで何かに魅せられたかのよう
に引き寄せられる腐朽。頭から便器に顔を突っ込み…、

「口を…四次元空間の出入り口に…変える能力!」
ゲロゲロゲロゲロ!…と口から大量の汚泥を吐き出した。
「…これで……便器は詰まったっす…!」

「それはどうかな?」
ゆで将軍はいつの間にか、ラバーカップを手にしていた。
たちまち吸い出される汚泥、絶望に染まった表情の腐朽。

「勝てない…勝てないっす……もう負けっす。
 せめて…冥土の土産に、肉のカーテンを生で見させてほしいっす…」
417史上最悪の戦い:2005/06/08(水) 02:27:03 ID:+tsHKGAh0
「グォッフォッフォ、なら見るがいい!」
余裕の表情で肉のカーテンの体勢を取るゆで将軍。

「…あ、右足でウンコ踏んでるっす」

「ゲェー!」
ゆで将軍がとっさに右足を上げた瞬間、腐朽は高らかに言い放った。

 「 相 手 を メ ガ ネ 好 き に 変 え る 能 力 ! 」

相手をメガネ好きに変える能力。
メガネを人質(?)に相手を操れる、洗脳系能力である。
発動の条件は、相手にブリッ子ポーズを取らせること。

肉のカーテンの体勢のまま右足を上げてしまったゆで将軍のポーズは、
まさしくブリッ子ポーズのそれであった。
418作者の都合により名無しです:2005/06/08(水) 02:34:38 ID:5b0VrWmI0
裏路地キター!!どちらもピーンチ
メガネ好きキタァァ!!っていうか汚ねぇぇぇ('A`)
419作者の都合により名無しです:2005/06/08(水) 07:55:29 ID:E8qAaA4M0
ほんと無茶苦茶だなw
傍から見たらギャグにしか見えんだろう。
420傲りと誇り〜人竜励起〜:2005/06/08(水) 17:12:52 ID:Cyh4BoRa0
>>393

空気が変わった。
それは、常人にとっては、場の空気が僅かに変じた程度の微細な違和。
しかし、今なお血の泉に沈む巣田祐里子にとっては、劇的と言って良い程の変化である。
自分の腹腔に直に手を入れられハラワタを掻き回されるような、
或いは興奮剤でも一服盛られたのか、臓腑どもが勝手気ままに踊り狂い、派手な宴会を繰り広げているような、凄まじい嘔吐感。
今や開放のときを迎えた己の力が、一刻も早く外に出せと、身の内で叫んでいるのだ。
片山愁の歌は二つの世界を、魔境界と人間界を繋いでいた。
魔境の風が流入し、クラウドゲート・実験セクションの一室に満ちる。
つまりそれは、現在巣田の在る場所周辺が、限定的にではあるが魔境になった、ということである。
そして魔境ならば、巣田の実力は完全に発揮される。
そう、魔境生物の力が。
421傲りと誇り〜人竜励起〜:2005/06/08(水) 17:13:42 ID:Cyh4BoRa0
背中に手を回し、軽く呻きながら剣を抜く。
そして、緩やかに伸びをするように、力を解き放ってゆく。
身体が突き破られるような感覚を調息でいなしながら、治癒の力を解放する。
全身を余す所無く包み込む穏やかな熱が細胞を活性化し、傷ついた組織の悉くを修復・再生していく。
巣田の持つ第三の回復手段、ヒーリング。
回復魔法のよりも治療速度は若干劣るが、
魔力の限界を気にしなくても良いことから、主要な回復手段として巣田は使っていた。
と、
『青竜!!』
相棒が叫んだ。
同時に二条の輝線が走り、暗がりの闇を切り裂いた。
輝線はそのまま水の紗幕に突き刺さり、その表面を沸騰蒸発させ貫通し、巣田の顔面へ到達する。
しかし、収束した光を分散吸収され、
更に熱量までも非殺傷域にまで殺ぎ落とされた熱線は単なるレーザーポインタに過ぎない。
だが、一瞬巣田の目を眩ませる事は成功した。
反射的に目を閉じ、開いた次の光景。
それは迫撃する獣神将の拳。
天より降る瀑布と化して、巣田の視界を席巻する!!
打ち下ろされた豪拳が頭部に精確に命中し、頭蓋を砕き脳漿をブチ撒けるその寸前、

              ジ   ッ

金属質のノイズが、空気を灼いた。
皆川の身体は宙を舞い、血の飛沫で弧を描きながら後方へ飛び、激突した棚がいびつにひしゃげた。
その厚い胸板が真一文字にばくりと爆ぜ割れ、白い肋骨と赤い肉が空気に晒されている。
シワ代わりの傷の走る貌が驚愕に歪み、剥き出しの敵意が眼に宿る。
見据える視線が捉える凶行の犯人は、巣田の身体から溢れ出す陽炎のような触手。
ゆらゆらと揺れるそいつが、超速度で皆川を鞭の様に打ち据え、吹き飛ばしたのだ。

422傲りと誇り〜人竜励起〜:2005/06/08(水) 17:14:47 ID:Cyh4BoRa0
起き上がり、皆川はARMS“騎士”の展開と同時に地を蹴った。
胸の傷の修復と並行し、一足飛びに間合いを詰める。
次の標的は、己を斬った触手。
巣田を殺す前に、その障害の排除を選んだのだ。
左腕を水平に一閃。
その延長たる長大なブレードが触手に食いつき、宿る慣性が断ち切ろうと刃先に収束し―――――

              ギ   ヂ   ィ   ッ   !

斬れない。
最強硬度の“騎士”の刃が、強靭な抵抗に遮られ一切通らない。
さながら弾力に富むゴムの塊に刀の峰で切り込むような手応えだった。
皆川が驚愕に一瞬停止する。
が、触手がゆっくりと湾曲していくのを見るや否や、すぐさまARMS“ホワイトラビット”を起動させた。
瞬時に脚部が変形し、姿を変えていく。
触手が戦闘体勢をとったのを察知したのだ。
両脚に展開したARMSの噴出する圧縮空気によってゼロから音速まで一瞬で加速、一気に距離を稼ぐ。
巨大な負荷が体を圧迫し、視界が同時に前方に流れて――――――


              「遅えんだよ、手前は!! 欠伸で欠伸が殺せちまうぜ!!!」


嘲笑が耳元に響いた。
振り向く場所には、先刻切りつけた触手が―――否、もはや触手ではなかった。
それは、“ホワイトラビット”すら凌ぐ超絶のスピードで迫る、一匹の竜。
皆川が眼を見開いたのと同時、その体が大きく傾いで天地が逆転、慣性のままに床に激突し派手に転がった。
竜の長大な胴体が両脚に巻きつき、万力のような力で引き倒したのだった。

423傲りと誇り〜人竜励起〜:2005/06/08(水) 17:16:03 ID:Cyh4BoRa0
皆川がバランスを崩し、床を砕きながら転がっていくのを視界に収めながら、
血溜まりに手をついて巣田は身を起こした。
先程までの嘔吐感――“魔境酔い”はすっかり治まっていた。
受けた深手も九割方が完治していたが、僅かに身体は軋む様だった。
手を握り、そして開く運動を何度か繰り返す。
『どうしたよ?調子が悪いんなら俺が代わってやろうか?』
「大丈夫よ、どうってこと無いわ。
 それに、あんたに代わったらロクな事ないでしょ、黒竜」
軽口に応える。相棒はフンと顔を反らした。

人竜<インナードラゴン>、黒竜。
巣田がその身の内に宿す五頭の人竜のうちの一匹である。
クラウドゲートが魔境と繋がっている今だからこそ、
人竜は竜の姿を取り会話し、また固有の力を存分に発揮することが出来る。
黒竜は巣田にも比肩する知謀を有し、巣田の意識が無い場合には代わりに身体を占有し操作する。
その特性ゆえに、他の四頭を差し置いてリーダー格となっている。
他の四頭は、それぞれ青竜、紅竜、緑竜、地竜。
彼らもまた、強力な戦闘能力を有している。
424傲りと誇り〜人竜励起〜:2005/06/08(水) 17:18:11 ID:Cyh4BoRa0
「それよりも、また起き上がって来たわ。相当なタフさね」
半ば芥に変わった机や椅子を押し退け、皆川が立ち上がる。
血走った目が、暗がりの中でもはっきりと解った。
その右腕が突き出され、拳の直上には砲塔が聳える。
次の刹那、ARMS“ジャバウォック”が巣田を照準し、一拍の間もおかずに火を噴く!
砲声は三度、弾丸は真っ直ぐに巣田に向かい、命中寸前で、

   ガ ガ ガ ッ !!

停止する。
超音速の刃と化す刃物人竜、緑竜が砲弾の悉くを絡め取り、粉々に切り刻んでいた。
「紅竜!!」
叫んだ直後、紅蓮の火球が空を奔る。
その身を炎で形成する紅竜の、鋼すら融かす火焔だった。
低空で発現した灼熱が、掬い上げるように迫っていた“ジャバウォック”の拳に炸裂、
前腕を瞬時に溶融させ、更に貫通して“ホワイトラビット”の右脚までも気化させた!
焼かれた腕の断面はごっそりと球面に抉れ、融けたARMSの飛沫が散り、空気に冷やされ床に落ちる。
長さが足りない右腕は、そのまま虚しく空を切った。
腕を全力で振りぬいた為に無防備になったその胴へ、加速する緑竜が体当たりを叩き込む。
大気の裂ける音が、それぞれの鼓膜を震わせる。
天舞う皆川。
高屋の施術で痛覚を封じられ、
戦闘以外の思考を抑制されたその思考が次に捕捉したものは――――――


轟然と追い縋る、赫く耀く焦熱の牙。



425作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 03:16:44 ID:ub+W4set0
地形効果、凄まじいな…洗脳されたロボットじゃ勝てないよ、皆川!
つーか、高屋はいつまで傍観してるつもりだ?

NEXTを崩壊させた滅びの力、同類じゃないと倒せないんだろ!?
426作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 10:19:41 ID:xrSmTDhV0
ゆでVS福地を書き手が実にノリノリで書いていると思われる点についてww
427作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 12:37:33 ID:6jlxczs30
ええ話やないですか
428作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 16:04:29 ID:ywMTbzjX0
>>425
ミナガー、まだ人間形態だから余裕なんじゃね
ハンプティダンプティとかバンダースナッチとか起動し始めたら本格的にヤバイ
まあそうなったらクラウドゲート崩壊の危険があるので、別の意味で焦るかも知れないがw
429作者の都合により名無しです:2005/06/09(木) 23:18:27 ID:ZVl9PouH0
しかし、巣田やジョージのシリアスなシーンの後に、
「内臓がないぞう」や「巨大な便器へと変化したゆで将軍」等の
ギャグが突然2回連続で入ったものだから、
凄まじくズッコけたぞ!!
430希有<KIYU>:2005/06/10(金) 15:48:52 ID:bQU9hxWU0
>>406他)

ここ矢吹艦は県一個分──数千平方キロメートル規模を誇る、
超巨大空中要塞である。前方・・・艦首から大きく、
A〜Dの4ブロックに分けられた縦長の戦艦で、
ブロック間は長大な鉄の壁と大小のゲートで隔たれ、
非常時には壁の開閉部分が完全に閉じて関門に早変わりする。
分割開閉式の透明ドームに覆われた艦内のブロック間移動は、
甲板上の高速道や甲板下を繋ぐ地下鉄、
各ブロック内にある空港から出ている移動用ヘリや小型飛行機などで行う。

戦艦の中央に位置するB・Cブロック間のゲートの中心部には広場があり、
艦で一番高いセントラルタワー「ターミナル」が併設されている。
矢吹艦で最も背の高い建物部分であり、
地上から来る観光客の目印・一番の目玉。
真下には現在トーナメント準決勝が行われている地下中央区があり、
最寄りのB・C空港から大会を観に来た観光客(B空港はブロックごと閉鎖中)は、
ターミナル内のエレベーターから降りて地下区へと向かい、
コロッセオやスタジアム周辺に連なる商業区域を大いに賑やかす。

矢吹軍は大会期間中、多くの人員を民間人の警備に費やしているが、
大会もいよいよ佳境であり、今日はこれまでで最も人口密度が高かった。

艦首にあるA空港はすり鉢状にデザインされた艦内最大の空港で、
矢吹空軍基地と民間空港を兼ねているが、昨夜より突然、
「新別府市(仮)」が置かれたため民間機の受け入れを軍が制限している。

艦尾にあるD空港には、矢吹艦着水時に開かれる、
ゲートから海伝いに入艦するフェリーや漁船用の港があり、
唯一地上部分と接点を持っている。浮遊システムを持つ新式の漁船も、
矢吹艦航空時は巨大プールと化す港に置かれる。
ここも先日の「警察署爆破事件」の余波で警備が厳しい。
431希有<KIYU>:2005/06/10(金) 15:50:27 ID:bQU9hxWU0
殆どの観光客が回され割を食ったC空港は大混雑、
臨時で軍も出動している。そして某所からの通報で、
Aブロック等で頻発する漫画家の乱闘を鎮圧するため、
残り少ない兵が総動員され、現在矢吹軍は艦内にくまなく散らばっている。

そんなクソ忙しい矢吹軍のもとに、さらなる困った連絡が届いた。

 『先程から地下中央区から真上にいくつも、
 エネルギーの束が飛んで甲板部をぶち破るので困る。
 幸いこれまで穴の開いた地点は人の居ない場所だったが、
 もしターミナルにでも当たったら、人的被害は免れない。
 地下区の観客を収納している時空位相の範囲を切り替えるなり、
 ターミナルの民間人を別の道に誘導するなりしたいので、
 矢吹様に許可をいただきたいのだが・・・』

との、普段矢吹艦を運営する1クルーよりの要請である。
矢吹艦のソフトウェアを地道に支えている人たちにとっては、
この手のお祭りはただの暴動予備軍にしか見えないのかもしれない。
ともかく現場を確認するためターミナル周辺に駆けつける矢吹軍。
果たしてそこには、車田やら留美子やらが開けた地獄の大穴たちがあった。

 「・・・これでよく死人が出なかったな」
兵士たちは穴を見渡して呆れながら、
ターミナルの麓・セントラル広場周辺に黄色いロープを張る。
これだけ忙しくては、ボーナスのひとつぐらい上層部に要求せねばなるまい。
新別府市では兵員の殺害事件が起きた(佐木)と聞き、
精神的にもだいぶ疲れている。通信班のひとりがふと、
先程の要請を思い出し矢吹のいる天蓋展望室にラインを繋ぐが応答がない。

 「あれ?そういや展望室ってここの真下じゃあ」
小型通信機を手に持った兵士が、
大穴をそっと覗き込むと、底に小さくサッカー場が見えた。
432希有<KIYU>:2005/06/10(金) 15:54:10 ID:bQU9hxWU0
貫通した穴の中心にそういえば色々あったなあと思い出した兵士。
「矢吹様」の私室執務室諸々、奇麗さっぱり消えている。
 「・・・矢吹様どこー?死ぬならボーナス払ってから死ん・・・」
忠誠心のカケラもない兵士の小さな呼び声は、
上官の大きな叫び声でかき消された。

 「お、おい!おまえたち空を見ろー!!
 矢吹様が、矢吹様が空中で何者かと戦闘をしておられるぞ!!
 分析班は敵を調べろ!!種類によっては警戒レベルを上げろ!! 
 衝撃波からのバリアを居住区に張らせろ!!
 あとは民間人の避難と誘導を〜
 マスコミどもの追い出しを〜〜
 矢吹様と通信を〜〜〜なんやらかんやら」
仕事量の多さにテンパり気味だった現場は、いよいよもって混乱した。


こうした裏方の苦労に気づくはずもない、
矢吹軍総統・矢吹健太朗は、自身の名を冠した艦の上空で、
“補給物資”キユに剣の切先を向け、静かに宣告する。

 「・・・あの日、10年前、この私を『征伐』しきれなかった時、
 暴走するお前を止めようとした鳥山明と相打ち、
 私の眼前で倒れ伏した時、お前の運命は決まったのだ。
 道具や兵器として利用され搾取され骨の髄まで研究され、
 挙げ句集英社新社屋の地下に封印された、生きた核兵器よ。
 ・・・今更“核廃棄物”として処理されたいか?
 嫌なら降れ。出がらしでないお前には、まだ使い道があるのだから。
 なにしろ名前からして“希有種”だものなあ、キユよ」

つまらない駄洒落を言えるほどに余裕たっぷりのこの男。
なぜ腫れ物的存在のキユに対してこうも高圧的な態度を取れるのか。
その自信はどこから来るのか。矢吹はただ薄く微笑むのみ。
433希有<KIYU>:2005/06/10(金) 15:56:58 ID:bQU9hxWU0
 「・・・矢吹。君はあの日の事を、
 どこまで記憶しているのかな。教えてとは言わないけどさ。
 自分の力で取り戻すから。だから変に焚き付けないでよ」

変わらぬ無表情で答えるキユ。彼は知らない。
実は矢吹自身もあの日の記憶が完全ではない事を。

──消し飛んだ記憶、残らぬ記録。

それが何を意味するのか。果たしてあの<運命の5月>に、
正しく何が起こったのか。当時を完全に繋ぎ止める物的証拠を、
この10年で誰ひとりとして見つけられなかった事を。
それを悟らせぬ矢吹はなおもキユに語りかける。
 
 「はは、あまり今の私に逆らおうとか思わぬ方がいいぞ、キユ。
 10年もの間、超級の危険物を、いくら寝かしつけてあるからと、
 そのままの状態で放置する間抜けがいるものか。
 君に細工をさせてもらったよ。何をどこにどうしたかは、企業秘密だがね」

真実か否か。キユ少年に判断できる材料はない。
少年は返事の代わりに、彼の足下に建っているターミナルを指差した。
 「その細工っていうのがぼくをどうにかするのと、
 人がいっぱい入ったビルが宇宙へ突き抜けるのと、どっちが先かなあ?」

剣呑な空気が、広い矢吹艦上空を徐々に支配する。しかし。
 「キユ、それは脅迫のつもりかな?本当にそんな事をしたら、
 畑がどう思うかな。彼の事だ、恐らく泣くだろう・・・『キユ』お前のためにな」
 「・・・彼が『ぼく』のために?なんで?わからないなあ」
静かに言葉を紡ぐ矢吹。大きく首を傾げるキユ。

 「やれやれ、人心を一から説明する趣味は私にないぞ。
 そしてお前の脅しを頭から信じる脳もない。・・・さてこれからどうする、キユ?」
434真の力は沈黙の奥深く!!:2005/06/12(日) 15:58:23 ID:DQS6INkS0
>417

「グムゥ〜〜〜〜・・・な、なんだ、この胸の高鳴りは〜〜〜〜!!?」
満身創痍の腐朽に、ゆで将軍はとどめの拳を振り下ろすことができない。
わけもなく動悸が高まり、どうしても攻撃を躊躇してしまう。
目の前の対象に対する愛しさともいうべき感情が募り、破壊することができない。
「くっくく・・・かかったっす・・・俺の奥の手《“相手”を“メガネ好き”に変える能力》!!」
分類としては洗脳系に属する、この能力。
数ある腐朽の能力の中でも、クリアすべき限定条件が最も厳しいが、一度発動すればその効果は絶大。そう、たとえ相手が、ゆで将軍だったとしても。
すでに、ゆで将軍は、腐朽の額部分にかけられた眼鏡の虜になっている。
今のゆで将軍は、眼鏡の為ならどんなことでもする、まさしく眼鏡の奴隷―!
「これで勝負は決まったも同然っす。さあ!! この眼鏡を折られたくなかったら、自爆するっす―――!!!」
眼鏡を手にとり、へし折る素振りを見せる腐朽。眼鏡を人質にとる戦法。問答無用に卑怯極まりない手段であるが、もはや腐朽に形振り構う余裕はない。
もとより、勝つことが腐朽の至上命題だ。禁断の暗黒面に足を踏み入れ、修羅の世界に舞い戻ったときから、腐朽には勝ち続けるほか、未来も存在価値すらもないのだから。
一方、ゆで将軍は腐朽の戦法を卑怯とは露ほども思ってはいない。
むしろ、無秩序・無軌道・無慈悲の修羅道を歩む将軍の方が、外道の先輩でもある。
だが、腐朽の戦法の是非はどうあれ、ゆで将軍の危機には違いなかった。
「――フッ、やられたよ、ボウズ。わたしの負けだ」
意外にも、ゆで将軍はあっさりと腐朽の軍門に下る意を表明した。
これには、腐朽もいささか拍子抜けだが、それだけ眼鏡好きの能力が強大などだと解釈した。
「トアタアーッ!」
その巨体からは想像もつかない跳躍力で、将軍が天高く舞い上がった。
そして、空中で上下逆になり、脳天から真っ逆さまに、ものすごいスピードで地表に落下していく。
「見よ―――ッ!これが、ゆで将軍の死に様だ――――――――ッ!!」          

            ド  コ  オ  オ  オ  !!!

すさまじい地響きをたてて、ゆで将軍の頭が地面に串刺しとなった――!!
435真の力は沈黙の奥深く!!:2005/06/12(日) 15:59:42 ID:DQS6INkS0
「フー・・・ハハハ・・・俺に勝負を挑むなんて百万年早かったってことっすね!!!」
乾いた笑い声をあげる腐朽。台詞とは裏腹、その顔は九死に一生どころか、万死に一生を得たといった戦々恐々とした有様である。
沸き起こった恐怖をぬぐいさるように、ひきつった笑みを浮かべ続ける腐朽。
―――その顔が、再び恐怖に彩られたのは、そのときだった。
「フフフ・・・これをただの自爆だと思うか」
ぎょっとして腐朽の前で、頭を地面に突き刺したままの将軍が笑っていた。

         ビシッ・・・メリバリメリバリ・・・!!

「ゲ―――ッ、ゆで将軍の突き刺さっている部分を境に、足場が割れ始めた――――ッ!!」
ゆで将軍が地面に激突したショックで、足場の地面に亀裂が生じ、崩壊し始めたのである。
「九ツ星神器“花鳥風月(セイクー)”!!!」
背から一対の黒翼を生やして飛翔。足場の崩壊から、すんでのところで脱出する。
「くっ・・・まさか、あんな方法で攻撃してくるなんて・・・でも間一髪っすよ・・」
眼鏡を左手で握り締めたまま、眼下の崩壊した足場を見やる。
そこで、さらなる戦慄が腐朽の背筋を走った。
「き・・・消えた、ゆで将軍が・・・!?」
なんと、ゆで将軍は忽然と姿を消してしまっていて、全く気配すらつかめなかった。
「漫画家としてはトップクラスの大型な体格を持つ将軍が、一瞬のうちに姿を消してしまうなんて、そ・・・そんなバカなこと・・・」
焦燥にかられ、全方位をくまなく見渡す腐朽。しかし、ゆで将軍の姿は杳として知れない。

          ボ   ン   ッ !!

突然、虚空にカマイタチのような残像が閃き、腐朽の左腕を斬り飛ばした。
緩やかに放物線を描き、自分の肉体から分離して遠ざかっていく、眼鏡を握ったままの左手。
その腕を、虚空に現れた機影が、軽くキャッチする。
それはまぎれもなく、会心の笑みを浮かべる、ゆで将軍の姿。
腐朽の眼は、その刹那の光景をスローモーションのように目に焼き付けて離さなかった。
436真の力は沈黙の奥深く!!:2005/06/12(日) 16:00:38 ID:DQS6INkS0
「う・・わああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
片方の腕の肘から先を失い、腐朽があらん限りの声をあげて絶叫する。
「ンンンン。いい声だ!実にいい響きだ・・・その絶叫を・・・聞きたかったぞ小僧!」
斬り飛ばした腐朽の左手を弄びながら、ゆで将軍が愉快げに高笑いする。
青ざめた顔の腐朽は、ゆで将軍の今の姿を見て、なぜ自分が将軍の姿を見失ったのか理解する。
ゆで将軍の姿は、いわゆるステルス戦闘機のそれであった。
曲面を使わず、ダイヤモンドのカットのように平面だけで構成されたボディデザインは、レーダー波をくらっても来た方向に電波を発射させずに横方向や斜め後ろにそらす機能が特徴なのだ。
戦場においても一切悟られることなく、いつの間にやら敵陣の心臓部まで入り、静かに破壊していくところから、ステルスは“姿なき沈黙のジェット”と恐れられている。
「グフフフ、小僧。我が愛しの眼鏡は、確かにいただいたぜ〜〜〜!」
腐朽の左手から、握られていた眼鏡だけを抜き取ると、もはや必要ない左腕はゴミのように投げ捨てた。
そして、眼鏡を自らかけると、なんとその眼鏡がズブズブとゆで将軍の顔面に沈み、一体化していく。
「カーカカカ、これでもう誰もわたしと眼鏡を離れ離れとすることはできない!!」
「あ・・・ああ〜〜〜」
自分の置かれた事態の深刻さを突きつけられ、愕然とする腐朽。その目の前から、将軍は再び消滅する。
ズ バ バ バ バ バ バ バ ・・・!!
「あぐあああああっ!!!」
“赤き死の飛行機(ママリオート)”と化した将軍の猛攻に、腐朽は全身をズタズタに切り裂かれていく。
“花鳥風月”の片翼をも切り落とされ、血の尾を引きながら腐朽が力つきたように落下していく。
「練磨膝骨錠!」
ゆで将軍の両膝の皮膚を突き破り、骨が飛び出した。
逆さ状態で降下していく腐朽の両脚を、将軍の両膝から開放されている骨が、まるで鍵のようにロックした。
「う・・・動けないっす〜〜〜〜っ」
この技は、阿修羅地獄芸のひとつ・・・

「阿修羅稲綱落とし―――!」

冷酷無比なる転落技が、腐朽を襲った――!!
437ダブルノックアウト:2005/06/12(日) 16:53:14 ID:Zxj+bHlI0
>>436
「口を四次元の出入り口に変える能力ーーーーー!!!っす」

阿修羅稲綱落としで落下中の腐朽の口から無数の眼鏡が迸った。

「ごぶぅ!?」
大量の眼鏡を砕き床に頭をめり込ませる腐朽。
そして
「がはぁっ!!!!!」
大量の愛する眼鏡(約1000個)を自らの手で砕いてしまったことに甚大なる精神ショックを受け、吐血して気絶するゆで将軍。
腐朽は頭を床から引っこ抜くと、道具紋から出した契約書にゆで将軍の親指を押し付け血判を押させると、最後の力を振り絞って懐から
"キユ人形"を取り出し、"模型を本物にする能力"で本物に変えて意識を失った。
更に阿修羅稲綱落としの威力によってエリア88の一角が崩れ、完全に気絶したゆで将軍と腐朽を乗せて海へと落下し、漂流を始めた。

この二大不条理の両雄の激突、エリア88の上に残ったのは腐朽の能力によって人形から本物になった"キユ"だけだった。
438作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 22:42:36 ID:PQsVXQfQ0
なんだとーーーーーまさかのダブルKOだとぉーーーーー!!!
439作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 22:57:33 ID:SPO/0yP10
あまり、書かれたものに文句は言いたくないんだが・・・・
正直>>437のZxj+bHlI0はやりすぎだろ・・・・
440作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 23:40:37 ID:OX4Zbq7Z0
いくらなんでも、荒木と車田が二人がかりでも倒せなかった将軍と、福地がダブルKOってのはなあ……
ヤムチャがベジットに勝つくらいあり得ねえ
441作者の都合により名無しです:2005/06/12(日) 23:42:14 ID:O0RVeX9B0
こうしてだんだん…
442作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:07:22 ID:f7VlpPKK0
何を今更。
福地とゆでが闘うなんてシチュでしかも書き手がぶつ切りで投下してる時点でこうなることは眼に見えてたよ。
全部書き終えて一気に投下するしか対策法は無い。
443作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:09:09 ID:EDUVhjO10
シチュ出した奴が悪いってことですか
444作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:19:31 ID:f7VlpPKK0
結果はそう。
こんな嫌な空気になることは、福地の今までの結末見りゃ子供でも予想が付くだろうにな。
445作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:52:18 ID:KSX12ezAO
ガチでやれば確実に将軍が勝ってただろ。
だからこそ腐朽もリスクの高い洗脳つかうしかなかったんだし。
腐朽の度をこしたトンデモっぷりと、将軍の慢心がこの結果の原因だとオモ。
446作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:52:40 ID:KSX12ezAO
ガチでやれば確実に将軍が勝ってただろ。
だからこそ腐朽もリスクの高い洗脳つかうしかなかったんだし。
腐朽の度をこしたトンデモっぷりと、将軍の慢心がこの結果の原因だとオモ。
447作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:53:59 ID:KSX12ezAO
連投スマン。
448作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:58:29 ID:f7VlpPKK0
本人降臨か。
違うなら違うで相当痛いが。
449作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 00:59:15 ID:TTdP/fcx0
>>444
いやあ、ここまで書いてあってこうなるとは普通は思わんだろう。
さすがにあそこまで言われれば地雷部分に気がついてくれているだろうと思ってたよ。
450作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:05:55 ID:f7VlpPKK0
その普通では起こり得ないどんでん返しや瞬殺が今まで三度繰り返されてるわけだが。
どうもさっきから数スレ前のことをあっさり記憶から忘却できる素敵な人が多いようで。
反論するのもアホらしい。やっぱ絡むべきではなかったな。取り巻きからして空気が違うわ。
451作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:07:37 ID:OA5SnHC90
ま、明らかに荒らしっぽい奴は無視すりゃいいだけと思われ。

だいたいなんでキユ人形を出して本物にする必要があるのか、説得力のかけらもない。
腐朽に出来る出来ないの前に、流れぶったぎりすぎ。
452作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:08:31 ID:EDUVhjO10
そろそろここも終焉か
453作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:12:37 ID:uJyi9Q/60
いやいやまだ頑張るよ
福地はすっかりババ扱いだのう
そして今スレはキユだらけだ
ワールドカップが近いからか
454作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:16:08 ID:pOmYAYVFO
まあ福地関連がアレなだけで全体的には良好な状態と思いますが。
455作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:18:23 ID:f7VlpPKK0
つかID:EDUVhjO10=ID:O0RVeX9B0=荒らしっていう。
福地如きに終わらせられて堪るかっていう。
サッカー最近めちゃいい感じなのに。
456作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:22:33 ID:uJyi9Q/60
長くなるようだったら旧したらばでお願いしたいところ>福地関連話
サッカー編の懸念は主人公の活躍だけかねとか言ってみる
457作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:26:17 ID:EDUVhjO10
>>455
何でそんなに絡んで来るんだよ
ここでやることじゃないと暗に言ってたのに。
458作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 01:36:27 ID:T7Xs8yQkO
キユ人形で遊ばなきゃ本物にならない希ガス…
描写省いただけでつか?
459作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 02:01:59 ID:wu+fP6N70
もう流石に>>437は「なかったこと」にしていいんじゃないか?
夢オチか妄想オチにでもしとこうや。
460作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 02:02:52 ID:wu+fP6N70
ああごめん、旧したらば逝ってくる。
461作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 02:09:13 ID:uJyi9Q/60
ノシ
「やっかいもの2名隔離」オチで
ゆで1号vsヨクサルを思い出した。
カムイが寝不足だった事しか憶えてナスw
462作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 06:47:13 ID:+Ejba8Dh0
いっそ今後は全部したらばで話し合ってから投稿するようにしたらどうだろ?
463作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 07:27:49 ID:GFo4QoUJ0
さすがにそれはどうかと思う。
464ふくちくん、ハイ!:2005/06/13(月) 13:24:51 ID:fFnzsnRI0
>>437
鹿児島の海を漂流する巨大ブロック(元エリ8)に横たわる漫画家ふたり。
どちらも気持ちよく寝込んでいるが、現在の自分たちの状況など知る由もない。
さて、左腕を失いながらも、なんとか猛将の攻撃から生き延びれた腐朽。
次に敵が起き上がった時のための仕込みも忘れない周到ぶりは、
さすが戦闘能力に依らず横山十傑集に入隊できただけはある。
しかし暗黒面に身を落とす前の『福地翼』は、人として決定的な弱点を持っていた事を、
果たして幾人が覚えていようか?

腐朽(ふふふ・・・むにゃむにゃ。波の音が耳に心地よいっす。
  基地に切り札のキユ人形を置いて来たっす。どうせ邪魔な連中は誰も彼も、
  排除する予定だったのであとはキユに任せるっす。
  噂どおりの男だといいっすね。そしてゆで将軍に契約書を書かせるのにも成功したっす。
  左腕がないので完全な発動は無理っすが後で適当になんとかするっす。
  ちなみに両手の平にある道具紋って紋章、右手に道具左手に効果(属性)のマークがあり、
  それの組み合わせで最近覚えた「職能力」が使えるっすこれ説明っす。
  この契約書に名前を書かれハンコを押された相手にダメージの肩代わりをさせられるっす。
  でもそういえば名前はゆで将軍にしておいたけどこれって正式名称なんすかね?
  ちゃんとした名前じゃないと効果がない気がしないでもないっすけどまあ何とかなるっす。
  しかし息継ぎもしないでここまで自分トークができるって夢の中って便利っすね〜。
  あれでもなぜか息苦しくなってきたっす〜嫌っすねえ俺を寝かせてくださいっす。
  気のせいか切られた左腕が塩水に晒されたような痛みを伴っているっす・・・。
  ていうか段々身体が寒くなって視界も暗く閉ざされて来たっす・・・。
  風邪だろうからこの仕事が終わったら速攻温泉休暇を取るっす・・・。
  そういや秘湯メモノートはどこへ閉まったっけか・・・捜してこなくちゃっす・・・。
  ふふ・・・それにしても・・・ふふふ・・・。
  あのゆで将軍と相討ちっす・・・大金星っす・・・めでたいっすねえ・・・。(ブクブク)」

そう、福地翼はツメの甘い男。そして限りなく幸せな腐れ脳みその男。
寝こける間にブロックの端から海へ転がり落ちた彼は、嬉しそうな表情を顔に貼りつかせたまま、
静かに南海の底へと沈んでいった。 ☆今日の運勢:大凶。サメに注意。 福地翼→消息不明(デッドリストかも)
465作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 14:11:19 ID:fFnzsnRI0
↑なんか本筋に変更あったら好きに没ってくださいね。
そういえば夢オチ抜きで完全削除って3部や4部ぐらいにはあったね
466作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 15:20:42 ID:5eidmFNo0
荒木夢落ち編は結構感動したけどな
467作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 15:33:26 ID:+Ejba8Dh0
ちょっと遅いが
>>440
これはヤムチャが数学のテストでベジットに勝ったようなもんだろ。
468作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 16:04:12 ID:fFnzsnRI0
>>466
なんだっけそれ
気になるぞ。何部?
469作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 17:37:38 ID:rhFnrFqm0
>>467
つーか不条理対決だの二大不条理だの煽っといて今更そんな言い訳も無いだろ。
フォローのつもりかしれんが、傍で見てても腐朽厨ちょっと必死すぎ。
上で二重投稿してる奴もそうだが、どうしたってありえん戦果を確保するより先に、腐朽の生命の心配をしなさいよ。
好きな人間が上手いことフォローしてやらんと、こいつ本当に抹殺されかねんぞ。
470作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 18:05:19 ID:+Ejba8Dh0
>>469
リレーなんだから別にそれでもいいだろ>腐朽抹殺
つか煽りがすごいだけで実際の実力はゆで>>>>>(越えられない壁)>>>>>腐朽にしか見えない。
腐朽の攻撃じゃ、ゆで将軍は気絶どころか傷一つ負ってないっつーか何一つ通用してない。
唯一通用したのが問題になってる「自らの手で眼鏡を壊してしまって精神的ダメージで気絶」だけ。
471作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 18:15:01 ID:rhFnrFqm0
九割方将軍の押せ押せムードなんだから最後相打ちになっても気にすんなってか?
あのなあ・・・・・・も、いいやorz
472作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 18:34:20 ID:+Ejba8Dh0
>>471
どーも言いたい事が食い違ってるなぁ……
最後相打ちがどうこうってんじゃなく、最後のあれは効いてもおかしくないって意味なんだが。
473作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 18:35:39 ID:uJyi9Q/60
 ε==ヾ(´ロ`)ノ愚痴スレ→http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/
474絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:40:58 ID:2Vm0bvGF0
>437

少しの間、海を漂流した福地は、エリア88の別の区画に流れ着いた。
現在のエリア88は、いくつものキューブ型の区画が連結したような、形容しがたい形状をしている。
「げふあっ・・・げほっ・・・ごほっ」
芋虫が這いずるような動きで、血の道を作りながら、福地がずりずりと海から這い上がる。
ゴロリと仰向けになったところで、もう指一本すら動かせぬ有り様になった。
左腕を失い、全身を翼によって幾重にも切り刻まれ、さらに常人なら即死ものの投げを何度も喰らった。
福地がここまで将軍の猛攻に耐えられたのは、自身の耐久力にくわえて、体内に取り込んだ大暮のエネルギーがあるからだった。
ホワイテッド・ヴァンパイアである大暮の生命力を吸収していなければ、福地はとっくの昔に三途の川の向こう岸に辿り着いている。
大暮から奪い取った『龍掌』によって回復を試みたくても、身じろぎひとつ出来ぬ身ではそれすらもままならない。
「・・・そ・・それにしても・・・将軍は・・・どうなったっ・・・すか・・・?」
かすれた声でつぶやく福地。
そこに思いも寄らぬ声がかかったのは、そのときだ。

「・・・呼んだか?」

「!!!」
反応したのは、福地の意識だけだった。
ズドン、と胸元に下ろされた二十文におよぶ巨大な足が、メキメキと福地の肋骨を軋ませる。
「・・・・・!!!」
ビクン、と痙攣し、新たな血を吐き上げる福地。
それを冷厳に見下ろしているのは、白銀の鎧を纏った、絶望という名の巨人。
475絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:43:28 ID:2Vm0bvGF0
「何やら、色々と小細工をしてくれたようだな、小僧」
福地の肋骨を小枝のようにヘシ折り、踏みにじる将軍の姿からは、心身ともに一切の損耗すら感じられない。
(・・・ば・・馬鹿な・・・眼鏡破壊の衝撃から・・・もう立ち直った・・・とでも言う・・・すっか・・・それに契約書・・・)
「・・・『忍法・人形うつせみの術』・・・と言ってな。
 あのとき、『阿修羅稲綱落とし』によって愛しの眼鏡を破壊してしまったオレさまは、素早く別の足場に避難し、かねてから用意してあった人形(鶏の血袋入り)を貴様の近くに放り投げたというわけよ」
つまり、福地が血判状を押した将軍は、そのときすでに偽物にスリ変わっていた。
福地が反撃防止のためにとった処置は、ゆで将軍に完全に見破られていたというわけである。
「ひとえに、小僧がどんな切り札を持っているか、それが気になっての処置だったが・・・まさか“キユ”の複製を生み出すとは・・・期待通りなかなかに面白い事をしてくれるわ。
 複製とはいえ、それなりの“力”があるだろう“キユ”を生け捕りにして持ち帰れば、矢吹様もさぞかしお喜びになろう。
 物見遊山のつもりで来たが、良い手土産が出来そうじゃて、グォッフォッフォッフォ!」
喜色満面の笑みに相好を歪める将軍。福地が絶望する様を、心の底から楽しんでいる。
「・・・さて、そうと決まれば貴様には、もはや用はない。
 意外性はともかく、実力の程は期待外れどころのレベルではなかったことだしな」
パワー・スピード・戦術の全てにおいて、こうまで上手を行かれては、福地には反論のしようもない。もとより、それだけの体力も無かったが。

「漫画家の強さは己の力だけではない――今まで戦った者達の力もあらわす。
 貴様の弱さを見ると、お前の戦った相手は――― 

             『 ク ズ 』 ば か り だ   」
476絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:44:43 ID:2Vm0bvGF0
――そのとき。
全くの『虚無』だった、福地の精神の奥底で、ある作用が働いた。

それは、大暮と戦ったときに芽生えかけた感情に少し似ていた。
あのときも、大暮に対する畏敬をかすかに芽生えさせながらも、それを遥かに上回る自身の膨大な虚無感に、その感情はすぐさま押しつぶされた。
それゆえ、尊敬すべき対戦相手にさらなる凌辱的暴力をくわえ、あげくの果てに単なる自分の力の一部として利用するという『愚行』を選んでしまった。

だが、完全に失われたと思われていた、大暮との死闘が生んだ、かすかな感情の萌芽。
『腐朽』になる以前の、本来の『福地』が余すところなく持っていた人間的な感情が、燃え尽きる寸前の熾火のように精神世界の片隅で燻っていた心が。
渺茫たる虚無――青白き暗闇の中で、小さいけれども、しかし、確かな炎となって静かに燃え始めたのであった。

今度は『敬意』ではなく、一度はそれを抱いた相手への、許されざるべき侮辱を行った者への『怒り』となって――

「・・・『クズ』なんて言うな・・・っす」

「ん〜〜?」
ゆで将軍は、自身が踏みつけている骸同然の肉体に、かすかな違和を感じた。
踏みにじられ、今しも消え果てようとしている生命が、除々に強く脈動し始めていることに気づいた。

「あの兄さんは・・・スゲエ人だったっす・・・俺なんて及びもつかないほどに・・・強かった・・・」

福地が、将軍の足に手をかけた。重量感に満ちた巨脚を、震える片手だけで押し退けようとする。

「俺が『クズ』なのは事実っす・・・俺は本当にどうしようもない男っす・・・けど・・・」

それまで指一本すら動かせなかった手に力がこもり、将軍の足を持ち上げた。

「お前に、あの人を笑う権利はねえっ!!!っす」
477絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:46:03 ID:2Vm0bvGF0
「ゲェーッ、貴様!その体のどこに、まだそんな力が・・・!」
初めて、将軍の心にさざ波ほどの揺れが生じた。
自分の殺人メニューフルコースをあれだけ喰らい、なおも立ち上がってくるとは。

ヨロヨロと立ち上がった福地には、わずかながらも確かな変化が生じていた。
老人のように真っ白だった髪に少しずつ黒の色素が戻り始め、ガラス玉のように虚ろだった瞳には人間らしい意思の光がかすかに宿りつつあった。
その福地が、顎が外れるのではないかと思うほどに大口を開け、一人の人間を吐き出した。
――先の戦いで、『守人』の能力で吸収した、大暮維人である。
福地から吐き出されたことで、肉体を得た大暮は、損傷ひとつないまま眠っている状態だった。

「・・・・・!!!」
大暮を吐き出した瞬間、福地の全身に凄まじい激痛が走った。
出血量がさらに増し、全身が蒼白になる。細胞のひとつひとつが崩壊していくような、尋常ならざる苦しみであった。
その有り様を見た将軍が、得心したようにニヤリと笑う。

「なるほどな。貴様の耐久力は、その男を吸収していた事が原因のひとつか。
 それにしても、自身の命綱でもある存在を切り離すとは、いよいよ狂ったか?」
揶揄するように笑う将軍に、福地は弱々しいが、しかし確かな闘志を込めて言い放つ。
「目が・・・覚めただけ・・・っすよ。これからは誰かを殺すために戦うんじゃない・・・」
千切れた左腕に、手ぬぐいを巻き付けながら、続ける。

「間違っちまった罪を償うために・・・もっと有意義なことのために・・・戦う!!!・・っす」
478絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:47:11 ID:2Vm0bvGF0
「ゴーホホホ、ゴミクズのような心根の持ち主かと思っていたが、どうしてなかなかの“熱”を持っているではないか、小僧」
若き咆哮を聴いた将軍は、楽しそうに笑っている。
「だが、小僧。そんな主張をしてみたところで、少年漫画的展開が常にまかり通るほど、ここは甘い世界ではないぞ。
 正義だの、悪行だのは関係なく――――
 真剣勝負とは、常に“覚悟という魂の熱量”が強い方が、勝つのだ!」
将軍が、6本の腕を生やし、さらにその全てに剣を装備する。
「貴様の五体をバラバラに解体し、今度こそ鮫の餌に変えてやるわ!!」
6振りの凶刃を振りかざし、将軍がつっかけてくる。
「ブーメランカッター × 6 !!!」
≪“手ぬぐい”を“鉄”に変える能力≫によって作った、鋼鉄のブーメランを投げつける。
「戻れ!!!」
将軍に切り払われる寸前で、ブーメランカッターが、ただの手ぬぐいに戻り、
「鉄になれ!!!」
6本それぞれの刃に巻き付くや、再び鉄に変化、
「そして、“レベル2”っす!!!」
ガチイッ!
「!!」
6本の刃に巻き付いた鉄は、“レベル2”の能力によって“超磁力を帯び、互いに引き寄せられあって固まった。
一瞬、将軍の動きが止まった隙に、福地が跳躍した。
左腕に巻き付けておいた手ぬぐいを鉄に変え、渾身の力を込めて将軍の頭頂に振り下ろす。
「重力+オレの力+超磁力っす!!!どんな固い防御でも叩き割るっすよ!!」
将軍の6本腕を封じた磁力鉄によって引き寄せられている、鋼鉄の左には凄まじい加速がついている。
このタイミングでは、かわす術はないように見えたが、
「ハーハハハ」
いきなり、将軍が笑い出した。
(な・・・何がおかしいっすか!?)
いぶかしむ福地に、将軍が言う。
「貴様は、磁気についての重大な特徴をひとつ忘れているようだな。
 磁気(マグネット)パワーは引きつけあうパワーだけじゃないんだぜ!!」
次の瞬間、将軍の体から強力な磁気が発射された。
479絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:58:11 ID:2Vm0bvGF0
将軍と福地の間で、2つの磁気がぶつかり合い、バネのような形になった。
そのとき、福地は初めて、己の失敗に気づいた。

磁石が引きつけあうのは、S極とN極・・・つまり互いに異なる極を向けあった時。
しかし・・・もしもN極とN極というように、同じ極が向き合えば・・・・・・!!

「マグネット・パワー反発!!」

バウ――――ン!!

「うわああっ!」
命中直前、福地は磁気のバネによって弾かれた。
同極から発射された磁気は反発しあう。
ゆで将軍は、自分のマグネット・パワーを、福地の“超磁力”と同調させることで、反発のパワーを生み出し、福地の一撃を阻止したのだった。
磁気嵐に巻かれて、空中に舞い上がった福地を、将軍がツームストンドライバーに抱え込む。

「磁気嵐ドライバ―――――っ!!」

 ズ  シ  イ  ッ !!

地面に串刺しにされ、福地の割れた頭頂から噴き出した血が、ドクドクと広がっていく。

(ダ・・・ダメ・・・っすか・・・最後の手段さえも・・・まるで通用しなかった・・・っす・・)

今度こそ、福地の体内から、あらゆる力が抜け落ちていった。
480絶望の中の光:2005/06/13(月) 18:59:16 ID:2Vm0bvGF0
「グフォフォフォ、雑魚の割には手こずらせおって。
 だが、ここまでの健闘に敬意を表し、最後は我が最大最強の必殺技(フェイバリット)で葬ってやろう」
そう言って、将軍が、血ダルマの福地をリバース・フルネルソンに極める。
ゆで将軍奥義中の奥義、『地獄の断頭台』の入り方。
(この世には・・何をやっても・・・ひっくり返っても勝てん相手がいるってこと・・・すか・・・)
死の淵を彷徨う中、福地の意識の断片は絶望と悔恨、無念に埋め尽くされていた。
(俺は・・・・俺は・・・・誰になに一つ・・・・なにも残せずにっ・・・・!!
 俺がここにいた証すら、残せずに――――)
「ちっ・・・く・・しょ・・・う・・・・っす・・・」
そして、ゆで将軍がその体勢のまま、竜巻のごとく回転を開始しようとした、まさにそのとき。
「むっ!?」
福地と向かい合わせに組んでいる形の将軍は、その福地の背後に、いつの間にか立つ人影を見た。

「よく・・・がんばった・・・動くなよ福地」

       ズ  ッ  !!

福地の背中に、静かに押し当てられた掌。
地にしっかりと根ざした両足から、全身を経由して増幅された“気”が、その掌に一点集中――――


      心  意  六  合

      大  鵬  展  翅  通  背  拳   !!!!
481絶望の中の光:2005/06/13(月) 19:00:49 ID:2Vm0bvGF0
        ┣¨     
                ン  ッ   !!!

 
まるでレーザー砲の乱射のような、“勁”の一撃は、直接触れていた福地の肉体は一切傷つけずに、その向こう側に立っていた将軍の肉体のみに叩きつけられた。
「ぐむうっ!!?」
まさかの伏兵からの一撃を、技に入る直前だった将軍は防御も回避もしようがなく、モロに喰らって、その巨体を後退させられた。
「・・・にっ・・・兄さん・・・・・・!!?」
おそるおそる振り向いた福地は、自分の背後に立つ者の姿を見て、絶句した。
それは誰あろう、自分が残虐な方法で打ち倒し、一度は吸収し、しかし最終的には解放した、大暮維人であった。

 ズ ガ ッ !!

返答は、拳だった。
裏拳をまともに横っ面に喰らった福地は、もんどりうって大暮の後方に倒れる。
「・・・そこまでの大怪我じゃ、『龍掌』でも、完全回復までには少し時間がかかる。完治するまで、そこで大人しく寝てろ」
背中越しに、大暮が言う。福地は、唖然として、その背中を見つめていた。
「マグレとはいえ俺に勝った野郎が、井戸の底で潰れたカエルみてーなツラしやがって!!
 ま・・ムリもねーけどなァ。こんな辛気臭え海の上でウジウジしてりゃ、気も滅入るわ」
まだ事態が飲み込めていない福地に、大暮は一方的に言う。
「この天才の戦いをよーく見てな。凡人のオメーに教えてやんよ」
福地にそう言うと。
大暮は、自分の前方――瓦礫をガラガラと押し退けて立ち上がってくる将軍を睨みつけた。
両腕の筋肉が張りつめ、袖が内側から引き裂かれる。
「妖魔王 十二使徒のひとり。 “双拳(ダブルインパクト)” 大暮維人――――」
純粋な凶器と化した両拳を、十字に交差させた、独特の構えをとる。

「 推 (おして)  参 (まいる) 」 
482作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 19:19:32 ID:BLEitOVq0
か・・・神展開キタ・・・(T∀T)
福地が格好良く見えるのは俺だけじゃないはずだ・・・
483作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 19:25:49 ID:uJyi9Q/60
一番美味しいのはグレタンだけどね。゚(゚´Д`゚)゜。神キター蝶感動
484作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 19:51:37 ID:r0Ka0JSm0
こうつなげるか。鳥肌もんだこりゃ・・・
485作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 21:42:45 ID:W40UsN5r0
うわ、めちゃくちゃ熱い展開じゃないか。
とうとうクリーンな温泉好きの福地が戻ってきたか。
もう外道展開に頭を痛ませる必要もないのか!
486作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 21:46:33 ID:W40UsN5r0
そして……大暮復活…キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
487作者の都合により名無しです:2005/06/13(月) 23:11:14 ID:0qDDOMG80
でもコレって、ゴッドハンドと妖魔王の勢力の初の共闘だよね?(たぶん)
あとにいろいろ尾を引きそうな感じ・・・

だがそれがいい!!
488作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 00:07:10 ID:Gp6kgIAq0
グレかっけーー!
俺はグレを斬られた腕から復活させようかとも思ってたけど
福地をいかしたマジ神展開だな
GJです!!
489作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 00:55:57 ID:xA5FCuLL0
しかし福地はグレと共闘したことが知れたら、ゴッドハンドにもう居られないのでは
十二使徒に負けただけで古参の石渡が査定対象になるくらいだから、新参の福地は・・・
490作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 01:15:29 ID:0x5Qngx70
話題に出すならちゃんと読んでやれよw
思いっきり実力主義で主義思想関係無しやんあの組織。
491作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 02:11:24 ID:QzMXt20p0
やっぱ将軍には熱き血潮の兄弟たちを阻む圧倒的壁役が似合うな。
492衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(158/180):2005/06/14(火) 02:17:54 ID:QzMXt20p0
>>397
「な……なんだあれは? 何を描いてるんだ? おいこら止めろっ!!!」
ガンサン攻撃陣の中央に立つ、頭身の低い見かけ子供のような男。
今まで、まるで目立った動きを見せなかった……というかさっきまでグラウンドに居なかったよなアイツ!? な彼、名を衛藤ヒロユキという。
「やめろコラッ!」
手にもったアヤシゲなデザインの杖で、センターサークルに星と瞳を意匠化したような不気味な魔方陣を刻む動き。
それを取り押さえようと駆け出すのは、えなりチームはあんどとえなり2世の二人だ。
「――――ぎゃっ!?」
「うおっ……だ、駄目だ! 中に入れない!」
しかし、外界と衛藤が踊る魔方陣内とを隔てる境界に差し掛かった途端、彼らの体を電撃が襲う。
弾かれ、痺れた顎で歯噛みするその前で、ついに魔方陣は完成する。
地響きが、スタジアムを大いに揺らす。


 ヴ ォ オ ォ ォ ォ ……………… ず  う ぅ ぅ ん ん !!!!!!


「ひ……ひえぇっ!? なんだコリャ!?」
「おおおおお……落ち着けっ!!!」
見上げると首が痛くなるほどに高く、聳え立つのは異形の魔神。
芝の地面から魔方陣の形に沿い、舞台装置のようにせり上がり現れたそいつは
足の長い独楽のような独特のデザインの円周に『瞳』を並べ、辺りに散らばる『敵』を睥睨、照準すると
強大な魔力を威容に添えて蓄えながらグラウンドの中心にそそり立つ。
衛藤ヒロユキ奥の手の一つ。イカヅチの魔神『ベームベーム』の召喚であった。

「 放 て ッ !!!」


   カ ッ !!!!!!!!


魔神の上から衛藤が号令するのと同時に、十近い単眼が一斉に、立て続けに火を噴いた。
493衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(159/180):2005/06/14(火) 02:21:12 ID:QzMXt20p0
全方位をくまなく埋め尽くすジグザグの光条は、当たるを幸い、周囲の場所という場所で大爆発をおこす。

 ボンッ!! ドガッ!! ドカンッ!! ドゴ―――ンッ!! ボカッ!! ズドン!! ドカ―――ンッ!!

「―――ぎゃっ!?」「げっ!?」「ぐおっ!?」
逃げ遅れたえなりチームの幾人かが火柱に飲み込まれ。そして……
「―――おいっ!?」「ぎゃっ!?」「うぼぁっ!?」
『全方位』なので、当然後方の味方、ガンサンチームの幾人かもが共に吹き飛ばされる。
「―――し、しまった!?」
額を押さえる衛藤。せっかく活躍の時が来たというのに、どうやらいきなり術の選択を間違ったようだ。
(ちぃっ……この場合指向性に長けた『音』の魔神サイレンにしておくべきだったか……!!!)
親指を噛む。その耳に届く、仲間からのかすかな悲鳴。
「それはいいから早く止めろこのボ――――(ドガ――――ンッ!!)ぐぎゃ――――っ!?」
「………………お、おい!もういい! もういいぞ!」
気まずい沈黙を経て、べしべしべしと『ベームベーム』の頭を叩く衛藤。
が、しかし、イカヅチの魔神からは全く反応が返ってこない。
「……お、おいこら!言うことを聞け! もういいって言ってるだろ!」
更にごんごんごんと杖で殴るが、魔神には、砲撃の手を緩める気配すらない。
「――――な、なんてことだ。ぼ、暴走してやがる……ひょっとして……術に……失敗した?」
タラーリと垂れる一筋の汗。既に周囲からは悲鳴すら届かなくなっており。ただ爆発の音だけが延々と繰り返されている。―――――いや
「ぬぅおおおおおおおぅっ!!!!!!」

 ズガ――――ン!!!! ドガッシャァァァァッ!!!! ズゴ―――――ン!!!!!

怒号と共に、衝撃と揺れが衛藤を襲う。
悲鳴をあげて魔神にしがみつく彼が見下ろした先では。一人の漢が、大木のような魔神の『幹』に、見事なフルスイングで『釘バット』を叩きつけていた。
腹からは滝のような血をダラダラと流し、また体中の皮膚をケロイドの痛々しさで覆いながら。
しかし漢は森一番の大木に挑む樵のように、何度も何度も何度でもフルスイングを繰りかえす。手傷など、まるで全く存在しないかのように。
えーと。あれは。たしか。
「……大和田秀樹?」
やがて、信じ難いことが起こった。
魔神を支える、その巨大な一本足に、僅かに亀裂が走ったのだ。
494衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(160/180):2005/06/14(火) 02:25:11 ID:QzMXt20p0
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」

 ドゴ―――――ン!!!! ガシ――――――――ン!!!!! ズガッシャ――――――――ッッ!!!!!!

一穴を穿たれた堤防のように、その小さな罅はどんどんと長さを伸ばし。
やがて、辿り着く崩壊の刻。


     ボ キ ッ


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ド ドォオォ―――――――――――――――――――――ンンンンッ!!!!!!!

ありうべからざる『折れ音』の後、バランスを取り戻そうとユラユラと揺れ、あがき虚しく結局倒れ伏す巨大な魔神。
そして、力使い果たして倒れる大和田の脳天には、トドメとばかりに魔神の一部がゴスンと落ちる。
大地に衛藤を投げ出した『ベームベーム』は、透けてゆらぐと、そのまま異界へと溶け、消えた。
「むむむむ……」
顔を上げ、強打した腰をさすりながら、いまだ爆煙も落ち着きを見せない視界の悪いグラウンドを見渡す衛藤。
そこかしこで「うー」とか「むー」とかいう声とともに人の起き上がる気配がした。
流石にどいつもこいつも歴戦の兵。あれだけの無差別集中爆撃を受けてなお、誰も致命のダメージを負ってはいないらしい。
「…………」
ひゅー…ぽてん、コロコロ…
傍らに、煤で汚れたボールが落ちる。
それを、数秒じっと見て。

(――――― 今 し か な い !!!!)

衛藤は、握った拳に決意を誓う。
あと何秒持つかも分からないが、フィールドのほとんどの人間は意識朦朧として試合どころではない筈。
全面は、芝を抉られた大穴と土ぼこりで、おあつらえむきに見通しが悪い。
そう。今なら、今ならひょっとして――――!
衛藤は、土ぼこりに薄っすらと見える人と人の間を縫い、一人こそこそ目立たぬよう目立たぬようドリブルを開始した。
495作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 02:38:13 ID:7inEA5T20
おお、コソドロ勇者の本領発揮ですか?
496作者の都合により名無しです:2005/06/14(火) 03:12:15 ID:XGC5+8+00
そうか、そういえばあの勇者様の本業は盗賊だったっけw
497福地死す:2005/06/15(水) 21:59:23 ID:jpRMeuJP0
>>481
(兄さん……)
ゆでへと立ち向かう大暮の背中を憧憬の瞳で福地は見つめていた。
(やっぱあんた格好いいっす。最高っすよ……)
そんなことを考えながらゆっくりと体が倒れていく。
全身から力が、いや生命が落ちた。
もう自分には寿命が残ってはいないのだと福地は自覚した。
"理想を現実に変える能力"を多用しすぎたのだ。
能力の使用による副作用を消すことはできた。
だが副作用を消し、寿命を戻す前に能力を使いすぎたのだ。
いまさら副作用を消そうとしても、もはや寿命はゼロでそんな時間は残っていない。
(ああ、できるならゆで将軍と兄さんのバトルの決着まで生きていたかったっすねぇ……)
それを最後に福地の意識は闇に沈んだ。

福地翼→死亡
498作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 22:19:52 ID:05x2WB4+0
龍掌で回復中だっつーの、荒らしマジウザ

以下、何事もなかったように再開
      ↓  ↓  ↓ 
499福地:2005/06/15(水) 22:39:36 ID:9NOqg2Uu0
 (うはー嫌な夢っすねえ・・・。とにかく早く回復するっす俺!)
500作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 23:53:18 ID:2NVQCeeV0
何か流れがわからんが龍掌で回復中なのか?
一応そんな描写は見当たらないが
501作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 23:56:45 ID:jDqhnc0z0
502作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 23:56:52 ID:2NVQCeeV0
あ、誤解を招くような書き方をした、スマン
龍掌って体に触れてないと発動しないんでしょ?
グレは後で手当てすっから今は寝とけ、という意味で
福地をほうっておいているのではないかなぁ
という疑問だから
503作者の都合により名無しです:2005/06/15(水) 23:58:14 ID:05x2WB4+0
いきなり福地をブン殴る→その直後に龍掌云々の台詞、の流れから龍掌を入れたと見るのが妥当でしょ
504作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 00:08:48 ID:s7o594I40
龍掌ってリジェネみたいな便利効果だっけ?
触ってない状態でも回復?
悪い、水虫は治せないってことしか記憶に残ってないわ
505作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 02:30:36 ID:JsvrmFSa0
>>504
龍掌はぶん殴っただけでもOK
506作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 09:39:17 ID:xbqqjW3s0
龍掌じゃ能力の制限で減った寿命は回復しないんじゃね?
(理想を現実には一度使用するごとに一年寿命が減る)
507作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 09:56:22 ID:pqkbvK3x0
寿命減る制約は原作の中でも特別に付随されていたルールだから、
全能力を普通に使えるえなり版福地には関係ないんじゃないかなあと
508作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 12:09:27 ID:xbqqjW3s0
あれは「理想を現実に変える能力」の限定条件だからなくすってのはなぁ。
本編ラストでロベルトの寿命は神様が戻してたから、寿命は減るが後で治せばOKって形の方がよくね?
一回の戦闘で「理想を現実に変える能力」はそれほど多発はできないという制限にもなるし。
509作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 12:56:28 ID:pqkbvK3x0
その場合誰が福地の寿命預かったり治したりしてくれるんだ?
軍師か隊長ならアリだけど・・・そこらは巧くSSに紛れ込ませればいいかな。
福地の設定ヤヤコシス
510作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 17:54:07 ID:PNidJ8vJ0
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/

何度も出されてるのにここで議論を続ける奴らは頭がおかしいのだろうか?
福地信者は碌でもねーなあ本当に…。
511作者の都合により名無しです:2005/06/16(木) 18:03:59 ID:q3DrrUZy0
まあまあ
512裏御伽よもやま話2:2005/06/17(金) 16:59:52 ID:5JDGMrIp0
>>165 >293)

 (情けねえな・・・俺。一撃かよ。
 あいつは板垣に勝っちまうしよ・・・このままじゃ、
 あいつとさらに差がつけられちまう・・・ちくしょう)

鹿児島の温泉宿以来、何度目かの治療室送りになった男が、
白いベッドの上でぐったりしながら、悔しそうに拳を握る。左腕には点滴の管。
男の隻眼には小さなテレビと、そこに映る、彼が好きなサッカーの試合が見える。
彼──裏御伽チーム・岡村賢二は、沸々と上がる内面の悔しさを、
声に出さずとも抑えきれず、睨むような瞳でテレビ観戦している。

あいつ、とはもちろん同チームのライバル・川原の事だ。
裏御伽の殲滅を企む某勢力から送り込まれた捨て駒の刺客──
それが昨日までの岡村の肩書きであった。
試合場の島での葛藤の果て岡村は裏御伽=本宮を選び、
刺客抹殺のため裏御伽を出奔した川原と対決。
敗北後全ての誤解を解き、一旦死亡。

運良く蘇生するも左眼を始め身体をいくつか損傷し、
驚異の再生力も覚醒頼りでおぼつかない。
あの一戦は岡村にとってあまりに犠牲が大きすぎたのだ。
岡村は結果に満足しているが、今度は純粋な<勝負>を川原と行いたい。
そのためにも全盛時に近い体調を取り戻したいと思っていたのだが・・・。

 (俺はバンチだの大会だのは、実際どうでもいいんだ。
 本宮さんを守りたい。川原にガチで勝ちたい。そのためにも、
 俺はもっと強くならなきゃいけねえのに・・・このざまか)

紅く燃えるたてがみのような長髪を枕に埋もれさせため息をつく岡村。
こんな弱気になっているところを、目下の標的(お邪魔虫)・
副将にわのに見つかって慰められた日にゃ本気でヘコむな、などと考える。
513裏御伽よもやま話2:2005/06/17(金) 17:00:42 ID:5JDGMrIp0
 (そういやあのバカ副将どこ行ったんだ?
 誰かに聞くの忘れてた・・・まあ実際どうでもいいし・・・って、
 いけねえ!バカから目を離すと川原に嫌味言われるんだった!
 中身ガキのお守りなんざ金輪際・・・あん?)
眉をしかめる岡村が、ふと見た先のテレビ画面に異様な光景。

何やらけったいなレスラーマスクの男が、グラウンド中央で光っている。
男がシュートを放つとボールはミサイル発射の軌道でゴールポストの端を破壊!
会場を騒然とさせた。男の体格やおちゃらけた挙動で瞬時に正体を察した、
岡村の細っこい堪忍袋の緒が瞬時に断ち切られた。

 「あああーー!!あんの野郎!!何勝手に他チームの試合出てんだよ!!
 お前自分の立場わかってんのか?こっちの試合やれるのかよ!!
 ていうかサッカーかよ!!なんだよ俺だってやりてえよ羨ましいわボケ!!
 もう許せねー!!とっとと身体治してバカを実力でクビにしてやらぁちきしょー!!」

キレる岡村は私怨だらけのセリフを叫ぶと、
ベッドのシーツをはねのけコロッセオ内部の医務室を飛び出した。
何もそこまで嫌わなくても。しかし元気が出たのは良い事である。


 「岡野ー!!俺にも川原みてえに治癒してく・・・げっ」
点滴を引きずりながらC控え室に帰った岡村が見たのは、
ドザエモンのように大の字で床マットに転がる岡野と真倉。

 「岡村・・・無理・・・か、川原の治療で、
 霊力使い過ぎた・・・試合まで・・・寝る・・・すまん・・・」
 「ガー(てめえもおとなしく寝てろ岡村どアホ)」
やがて2人ともぱったり倒れ、そのままグースカ寝込んでしまう。
岡村は呆れた顔になるが、肝心の川原の姿が見えない事に気づく。
控え室にいる人間は岡野たちの他に本宮・佐渡川・空知・施川。
4人は床にあぐらをかいて、仲良くカードゲーム?に興じている。
514裏御伽よもやま話2:2005/06/17(金) 17:01:26 ID:5JDGMrIp0
 「あれ、知らねえ客が増えてら。佐渡川は馴染んでやがんなあ。
 なあ本宮さん、川原はどこに・・・ ・・・」
かけた声を一瞬で呑み込んだ岡村。彼の顔が赤くなったり青くなったりした。
4人がやっているのは・・・賭け金つきの花札だったのだ。
 (やべえ!誰だよ本宮さんにふっかけたの!!
 あれ大マジじゃねーか、負けたらぜってー暴れるっつの!!)
慌てる岡村をよそに、4人の周囲の空気はいよいよ燃え上がる。
 「来やがれオラァ!!」「ムキー!!」「やべー俺マジやべー」「ギイイイイイ」
普段だったら岡野かにわのが止めるのだが今日は無理。
岡村はのちの惨劇を思い、いたたまれなくなって控え室をそっと抜け出した。


 「・・・だから川原はどこだっつうの。
 くそ、あそこで奴らを止められねえのが俺の限界か?」
点滴を転がしながらトボトボと廊下を歩く岡村。
ふと気配がして横の壁を見ると、澤井が不気味な雰囲気の美男子と会話している。
声をかけようと思ったが、何やら真面目に話し込んでいるのでパスし、
岡村はひとりで思い当たる場所に向かう事にした。通りすがりに、
 「………から、とびっきりの『謎』にありつけるはずよ。お願いね松井ちゃん」
 「しかしゾウリムシの貴様が我が輩に持ち込む依頼とは思えんご馳走だ………」
などといった奇妙な会話が岡村の鼓膜を軽くなぞって行った。

 (騒々しいのを嫌うあいつが行きそうな場所はいくつかあるが、
 さすがに今はコロッセオからは出ていねえだろ・・・出てたら殺す)
ぶつくさ言いながら病室のスリッパを鳴らして歩く岡村は次に、
公衆電話の傍に立つ松江名審判を発見した。
 「松江名さんか、何やってんだ?」

 「やあ岡村先生無理はいけませんな。実は連れの者に黙って、
 こちらに来てしまったので連絡を取っていたところでね。
 どうやら向こうでも色々あったらしく、私は行かねばなりません。
 先生にこれをお渡しします。“彼”が戻られたら返してあげてください」
515裏御伽よもやま話2:2005/06/17(金) 17:02:17 ID:5JDGMrIp0
松江名が懐から出したのは、赤黒くくすんだ布切れ。
どこかで見た気がする岡村だったが、咄嗟に思い出せない。
 「・・・彼って誰だ?つか川原どこか知らねえスか?」
とりあえず布を受け取りつつ、質問する岡村に松江名が答える。
 「ああ、川原先生なら今は・・・」



 「おい。怪我人がいちいちうろつくな。
 あんた実は、もしかしなくても人付き合い苦手だろ」

ようやく見つけた川原は案の定、人の居ない場所にいた。
コロッセオ屋上。見物客はまず来ない、スタジアムが見える場所の反対方面。
広いベンチにひとり寝転がる包帯まみれの小柄な男。
岡村が声をかけても返事は一向に返ってこない。
ムカッと来た岡村は、そっと近づき相手の反応がないのを確かめると、

 “ ヒュッ… ”

不意打ちの右拳を男の額に向かって落とす。

 “ がごん ”

プラスチックのベンチが悲鳴を上げる。
一瞬前まであった男の頭部が───ベンチに乗ったまま僅かに横へずれたのだ。
そして男・・・川原は、細い瞳を限界まで細め、ぐっすり眠っているではないか。
 「うぎー!寝たまま俺のパンチを避けるな!嫌味な奴め!
 もう嫌だ!なんで俺ばっかこんな思いせにゃならんのだ!!」

ようやく人の気配に気づいた川原がゆっくり起き上がって周囲を見ると、
隣に並ぶ別のベンチで岡村が、ふて腐れながら点滴付きで横たわっていた。
516裏御伽よもやま話2:2005/06/17(金) 17:03:31 ID:5JDGMrIp0

 「岡村、そんなところで寝ていたら風邪引くぜ」
 「うるせえ!ほっとけよ!てめえもだろうが!!」

そもそもへたばって医務室で寝込んでいた人間が、
流浪の果てに何をやっているのやら。岡村は自身の不甲斐なさが倍増し、
起き上がる気力も無くしてしまう。大きな声もどこか空回りだ。
川原はベンチに腰掛けたまま、先程大穴が開いた天井をのんびり眺めている。

板垣との血戦が彼の内部に熱として残っている。
しかし口には出さない。怪我の回復程度も気にしていない。
岡村も話し相手の内面を聞き出す性格ではないし、
第一自分の事で精一杯、それどころではない。
かつて因縁深かった格闘家2人は先程以来無言のまま、
何をするでもなく静かな時を過ごす。
スタジアムで何度も起こる歓声やどよめきも、ここでは小さなBGMでしかない。

静寂を終わらせたのは川原の方からだった。
 「・・・片目だけで生活する修行でもしていたなら別だが、
 今のお前さんじゃ日常も不便だろ。今から残る右目を鍛えるか、
 義眼かそれに代わるものでも使えばいい。岡野辺りに相談しろ」

 「・・・てめえで引っこ抜いておいて、よく言うぜ」
嫌そうな声で寝ながら返事をする岡村だが、
内心かなり焦っていた。島での決闘以来、妙に船酔いみたいな、
内臓からの気持ち悪さが抜けない原因にたった今行き当たったのだ。

 (俺って実はもしかして・・・)
副将の事を笑えない、ライト級な脳みその持ち主なんだろうかと頭を抱える岡村。
バンチとの試合を間近に控え、裏御伽チームはどこか気が抜けていた。
果たして彼らメンバーは無事に気合を取り戻し、
優勝候補の強豪に全力で挑めるのだろうか───?    ←TO BE CONTINUED
517作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 21:40:25 ID:/5+1a7gj0
岡村……
518嵐を駆る者:2005/06/17(金) 23:22:12 ID:5LA58hmI0
>492

(ああ、できるならゆで将軍と兄さんのバトルの決着まで生きていたかったっすねぇ……)
それを最後に福地の意識は闇に沈んだ。

福地翼→死――


           ┣¨  ガ  ア  ア ッ  !!!


「はいっ、はいっ、はいっ、はいっ、回想(トリップ)バスタードロップ!!!」


     キ ュ ル ルル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドカッ・・


なにやら自分が美しくひっそりと死ぬ様を夢と現の狭間で見ていた福地は、大暮のツッコミというには凄まじすぎるドロップキックを喰らい、錐揉みして壁に突っ込んだ。

「――ったく、なあにが『ああ、できるなら――』・・・だ? ふざけろ!!
 さんざん好き勝手絶頂にやっておいて、今さらテメェだけ静かにくたばろうなんてムシが良いにもホドがありすぎんだろ!?」

なかば本気で三途の川を渡りかけてる福地に、大暮が容赦なく畳み掛ける。

「だいたい、今テメーに死なれたりしたら、俺が困ンだろーが!?
 今っから、目の前に立ってるバケモンと、たった二人で死ぬ気でバトらなきゃならねーってのによ!!」
519嵐を駆る者:2005/06/17(金) 23:23:41 ID:5LA58hmI0
「・・・え?
 なんで、俺も頭数に入ってるっすか?
 そもそも、俺はゴッドハンドの十傑集で、兄さんは妖魔王の十二使徒。
 本来なら不倶戴天の敵同士っすよ・・・共闘なんてコトできるワケ・・」

福地が、いかにももっともなコトを言う。
いくら十傑集が実力至上主義、その他の思想性は問わない集団とはいえ、前大戦以来の仇敵一味とつるんだりすれば、問題にならないハズがない。
主義思想以前の次元である。
ゴッドハンドはまがりなりにも規律のある組織であって、無法者の集団ではないのだから。

「あ―――
 あ―――
 そこなんだよなァ・・
 そろいもそろって、なんつーか最近の連中は頭固えっつーか、弱ぇっつーか。
 せっかく少年漫画的王道展開なのによォ・・やれ組織だとか理念だとか罪だとか、小難しい理屈コネて、自分をカタにはめて引きこもりやがって」

しかし、大暮は、そんな事情などおかまいなしであった。
呆れて、どこか小馬鹿にしたように言う。

「どうせ、テメーラ凡俗共は、やれることなんか限られてんだからよ。
 たまにはツルんで戦(や)んのも、悪かねえぞ?」


(・・・兄さんって・・・もしかして、すっげえ馬鹿なんじゃ・・・・)


大暮の超絶俺様理論に目眩すら覚えながら、福地は羨望の目で彼を見ている自分に気づいてはいなかった。
520嵐を駆る者:2005/06/17(金) 23:25:04 ID:5LA58hmI0
(ほう・・・ブッ壊したか・・・“カタ”を・・・)

大暮と福地のドタバタなやり取りを呆れ半分で見ていた将軍だったが、ここに来て風向きが変わりつつあるコトに気づいていた。
大暮の思考は、将軍にとって奇妙な親近感さえ覚える種類のものであった。
組織の紛争も、個人の思惑も、ついでに倫理観もおかまいなし。
まるで
『そりゃ、テメーラが勝手に決めたルールだろ』
と言って、はばからない。

  超  々  我  流  (ウルトラマイペース) !!!

(しかし、それこそが、我々が忘れかけている、我らの本当の姿!!)


今の大暮は、まさしく全てをブッ壊す風――――

 
  “ 嵐 を 駆 る 者 (ストーム・ライダー) ” !!
521嵐を駆る者:2005/06/17(金) 23:26:46 ID:5LA58hmI0
「・・・しょうがねえっす・・本当はさっさと死んで、あっちの世界でのんびり温泉にでも浸かってたかったっすのに・・・」

先程、大暮に施された『龍掌』の一撃により、いくらか負傷が回復しつつある福地が、しぶしぶと言った体で立ち上がった。

「・・・・おう・・足引っぱんなよ、火傷野郎」

いつの間にか、福地の顔面に、間欠泉を浴びてこしらえた火傷が、再び浮かび上がっていた。その上から、やはりトレードマークだった、手ぬぐいを巻き付ける。


    「 「  そ ん じ ゃ    ま   」 」 


   パ  ア  ア  ン ! 

                   ガッ  ガッ  ゴン ゴン


お互いに掌を大きく打ち合わせ、拳を軽くぶつけ合い――――


             ザ         ン   !!! 


肩を並べ、同時に『くたばりやがれ』を意味するサインを、ゆで将軍に向けて突き立て、そして異口同音に叫ぶ。


         「 「  ブ   ッ   殺  !!!  」 」  


 
        異  色  コ ン ビ 結 成 ――――― !!
522作者の都合により名無しです:2005/06/17(金) 23:29:59 ID:AWSRI6iY0
おお、俺も次はそのシーンがいいなあと思ってた所を見事に…かっけー。
感涙ッ!!!
523作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 01:10:34 ID:jx429XUb0
イイヨイイヨー
524作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 04:16:58 ID:vlrwr6Ok0
ようやく話がマトモに動きだしたか・・・こうじゃないとな。

最強厨キャラなぞ10週打ち切りにも値しない――弱いからこそ魅力的!!
525作者の都合により名無しです:2005/06/18(土) 09:05:34 ID:jx429XUb0
えーそれって岡村k(ry
526錬金術師とバイオリン弾き、会話中2:2005/06/18(土) 23:23:19 ID:idJb+aqb0
>213

「ほらよ」
と、渡辺が水の入ったコップを手渡してくれた。ちょうど喉がカラカラだった。
受け取って、首を持ち上げ、飲んだ。嚥下するとき、首の傷が痛んで顔を歪めた。しかし、全部飲み干した。
「ぜいたく言うようで悪いけど」
コップを返しながら言った。
「もうちょっと大量に飲んだ方がよさそう。それと――何か、鎮痛剤みたいなものがあったらくれないかしら。なんでもいい。気休めになる」
渡辺が頷いた。
「わかった、用意する」
荒川はちょっと唇を拭い、それから、また訊いた。
「でも、よく私を助けてくれたわね。彼らはゴッドハンド直属の部隊でしょう。私は彼らにとって敵かも知れないのに」
渡辺は首を振った。
「アンタは、一応“客人”らしいからな。客人を自分達の庭で死なせるのは、名折れなんだろう。それと――」
渡辺が少し笑って言った。
「アンタだったからな。他の連中が否っつっても、無理やり納得させたさ」
 ということは――渡辺もまた、ガンガンの仲間としての付き合いを、多少は意味あるものと考えてくれたということだろうか。だが、荒川は、もう一つの方の推測を口に出した。
「ということは――内心では反対してる人もいるのね、やっぱり」
「そりゃ、当り前だ。建前はともかく、ゴッドハンドの内部事情は複雑だ。巨大組織ゆえに、右手がやってることを左手が知らない、なんて事はザラだし、様々な思惑が渦を巻いてるのが現実だ。
 ――特に、ゴッドハンドは、組織の長クラスの大物が、何人もひしめいてる、巨獣の群れ。隙あらば、他を追い落とそうと考える輩も、一人や二人じゃねえだろうよ。上でさえそうなんだから、下の事情なんて推して知るべし。まさに―――伏魔殿だ」
荒川は、視線を落とした。
527錬金術師とバイオリン弾き、会話中2:2005/06/18(土) 23:24:03 ID:idJb+aqb0

   「私たちが倒そうとしているのは、あくまで一部の腐敗した漫画家だけです。
    剽窃や、安易な人気取りに終始し、漫画の本質を見誤った、
    腐った認識を持つ漫画家を一掃し、真に志しある作家だけの社会を作る…
    そのような社会こそ、漫画界のあるべき姿だと、私は思っています。」


昨日のBブロックにおける争乱のとき。(※15部)
横山十傑集のひとり、富沢順と名乗る男は、確かにそう言った。
荒川は、その言葉を完全には信用していなかった。
富沢順が嘘をつくような人間とは、荒川には思えない。
だが、彼と同じ十傑集――せがわまさきや、山口譲司といった者たちは、『神に異を唱える者』として、荒川を平然と抹殺しようとしたのだ。
同じ主を頂く者達の間にさえ、これほどの思想の違いがあるのだ。
いわんや、複数の大幹部で構成されている、ゴッドハンド全軍の思想は、渡辺の言うが如く、まさに伏魔殿。形のない迷宮であろう。
これは大組織としての宿命、そして逃れざる腐敗への道程なのか。
それとも……“その混乱すら、意図的に利用しようとしている者がいるのか”。

そこまで考えて、荒川は首を振った。
また憶測だけで物事を考えようとしている。
そんな事よりも、今はなにより、この最悪の状況を脱する事が先決なのだ。

「ところで、聞かせろよ」
渡辺が、言った。
「なんで、あの【GUNG-HO-GUNS】のひとりだった女と、あんたが一緒にいた? 他の連中とも一緒なのか? もしかして?」
荒川はとりあえず頷き、詳しい事情について説明した。
片倉との共闘、【ミカエルの眼】の存在、内藤を助け出したあらまし、そして現在に至るまでを――
528錬金術師とバイオリン弾き、会話中2:2005/06/18(土) 23:24:59 ID:idJb+aqb0
「――【GUNG-HO-GUNS】……その頭と、ほんとに一緒にいたのか?」
渡辺が、眉をひそめた。
無理もない、渡辺は【GUNG-HO-GUNS】とは殺しあったり、調教されそうになったり、とかく嫌な認識しかないのだから。
荒川は、すぐに渡辺の質問の意味を察した。
「あの内藤という男は、根っからの悪党ではないわ。彼は、私を助けてくれた。
 私が今生きてここにいるのは、彼のおかげでもある。
 確かに、彼の企ては、非道なものであったかもしれない。許されないことかもしれない。でもね――」
勢い込んで続けた。
「この世に償えない罪なんて、無いのよ、きっと。
 私は知ってるわ。一度は闇に囚われても、仲間の助けで、そして自らの意思で、その呪縛を断ち切り、光に目覚めた人達がいることを」
そう呟く荒川の脳裏には、黄金に輝く炎を纏う男と、荘厳な煌めきを帯びた雷を従える少年の姿が映っていた。
「はっきり言って、俺にはにわかには信じがたいが、その内藤とやらの事は。――が、しかし、だ」
渡辺は、帽子のつばをいじりながら言った。
「とりあえず、話が通じない相手では、なさそうだ。一度、腹を割って話を聞いてみる価値はあるかも知れん。現況じゃ、敵は少ない方がいいからな」
そう言ってから、渡辺はしばし、荒川の顔を見やった。
「それにしても――“ドクター”が、そんなに情に厚い女だとは、知らなかった。
 いや、薄々気づいてはいたが、以前のあんたはそういう感情をほとんど表に出さなかったからな。以前は、どこか達観してて、何にしてもムカつくぐらい冷静な女ってイメージだったが」
不意打ち気味に、昔の自分との差異を指摘され、荒川が少し顔を赤らめた。
「そ、そうね。馬鹿みたいに前向きな人達ばかりと接してたから、なんだか感情を抑えてるのが馬鹿らしくなっちゃったのかもね」
そう言って微笑む荒川に、渡辺は嬉しさを感じると同時に、どこかで疎外感を味わっていた。
自分の預かり知らぬところで、目まぐるしく変化していく状況。
移り変わっていく、人間関係の構図。
そして――いつの間にか、自分の知らぬ誰かに影響を受け、変わっていくかつての仲間達。それも、おそらくは良い方向へ。
嫌がおうでも感じてしまう、自分の存在に関係なく、物事が進んでいく事に対する、どうしようもない苛立ち、無力感。
流れ、循環していく運命のなかに、自分の存在は無い――――
529対話終了、状況開始:2005/06/18(土) 23:28:20 ID:idJb+aqb0
馬鹿馬鹿しい――ふと我に返った渡辺は、表情を隠すように帽子を目深にかぶりなおした。
餓鬼か、俺は――――これでは、まるで学芸会の演劇で、自分だけが役をもらえないと、駄々をこねる子供ではないか。
ただ状況に流され、何もしてこなかったのは自分なのだ。
これまで、必死に運命に抗おうと、歯を食いしばってここまで歩んできた仲間達と、自分ごときを同列に語る方がおかしい。
かすかに自嘲の笑みを浮かべ、渡辺は立ち上がった。

「長話、しすぎたな。そろそろ飯にしよう。いつ戦いが始まるか、分からない。食えるときに食って、精をつけとかないとな」
「そうね、ありがたいわ」
荒川が、言った。
襟足からのぞく金髪を揺らしながら、渡辺が近くで飯の支度をしている兵士の方へと歩いていく。
それを見送ると、荒川は息をつき、また寝床に体を横たえた。
そうやって動いただけで、肩の傷がぎりっと痛みを突き上げてきた。
上空で、バタバタと軍用ヘリのローター音が響いているのも、その痛みに拍車をかけていた。
こればかりは仕方ない、贅沢は言えない、とため息をつき、あきらめかけた荒川の耳に、もはや耳なれた異音が届いてきた。

ローター音が途絶えたのが先か、上空をホバリングしていた軍用ヘリが、ことごとく黒炎を噴き上げ、爆裂四散した。

荒川の顔から血がひいた。
襲撃か――それにしては、全く生物の気配を感じなかった――とにかく、何かとてつもなく異常なことになっている!
今や、周囲の空気全てが戦場のそれへと変じ、その場のあらゆる者が――【オメガ7】も、そして渡辺も、そして荒川も――全ての思考が等しく戦闘に突入してゆく。

冷徹で、異常な空気のなか、その戦場に存在する全ての者が、“それ”を聴いた。


           ―――― “歌” ―――― を。
530作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 01:32:33 ID:pK7sUqsX0
ついにヤツがくるのか!?
531決意(161/180):2005/06/19(日) 07:11:47 ID:XPSj1JIp0
>>494
息することすらはばかられる隠密行動。無音と神速を両立する訓練された足取りは、さらに蹴音ひとつ立てぬよう足の甲にボールを吸いつけ
(中略)
なんとか誰にも見つからずにゴール前まで接近した衛藤ではあったが、そこで思わぬ出迎えを受けることとなる。
『ベームベーム』から距離が離れていたため一人ダメージの少なかった井上雄彦が、正眼に日本刀を備え、ゴールポストを一分の隙もなく剣結界で埋め尽くしていたのだ。
「…………」
無言のままゆっくりと足取りを緩めた衛藤もまた、流れるような動作で剣を抜き払う。そして

うおおおおおおお わああああ

だああああああ あああ

とおおおおお

右手、左手の両刃の剣と、尻に挟んだ三本目の剣。
異様な三刀流を備えて跳躍すると、鼻の穴からお子様ランチサイズの旗を出したり安っぽい造花を出したりしつつ、見かけによらぬ鋭い斬撃を立て続けに見舞う。

 ガ イ ―――― ン ッ !!!!

ひとしきり、死線の上で力量を計りあった後。一際強く鋼と鋼をぶつかり合わせ、いったん距離を取る。
「―――見たか!これぞゴチンコ流剣法、笑わせてスキをつく……『おもろうてやがてダメージ』だ!!」
へっぴり腰で体の側面を晒す独特の構えのまま見栄を切る衛藤。
井上がクスリともしていない事実は軽やかに受け流すことにしたらしい。
(しかし駄目だなコリャ)
半ば以上分かり切っていたことではあるが、『剣士』としての井上は衛藤の遥か格上のようであった。
GKとして井上が一定以上は移動できないことが、単純な『剣術試合』としてはその実力差を埋めてくれるのだが、これでは、肝心要のゴールを割ることが出来そうもない。
「うーむ」
考え込みながらもじりじりと後じさる。ちなみにボールは、ケツに差した剣の腹の上に曲芸のように乗せたままだ。
(そろそろ後ろから敵味方揃って押し寄せてくる頃だろうしなあ)
焦る。困る。
と、睨みあう井上の目線が、ふい、と、横にずらされた。
隙というほどの隙では無いが、それをテコとしてなんとかゴールをこじ開けようと踏み込む衛藤の耳にも、ひとつ、抜け出してきた背後からのそれが聞こえる。
532決意(162/180):2005/06/19(日) 07:17:15 ID:XPSj1JIp0
(足音……もうきたか。敵か、それとも味方かな)
答えは、相対する井上の瞳の、燃え盛るが如き怒りの色が教えてくれた。
(……あーゆー目は味方には向けんね)

(俺らに向けるにしても強すぎる。一択だな)

「 衛 藤 く ん  合 わ せ て っ !!!!!」

背後で地を蹴る音。予想通りの声が、頭上を軽々と飛び越えてゆく。

「 高 橋  留 美 子ッッッ  !!!!!」

井上が、留美子が振り下ろした刃にやはり白刃で応じる。
因縁が一瞬の火花となり二人の眼前で散った。
(……しかし……彼女、一番重傷じゃなかったっけか……?)
結構冷静な衛藤。剣を戻しサポートのため再び杖を動かしながらも、首をひねる。
そう、実は、両チーム中最も重い傷を負っていた高橋留美子は、
今まで、こちらも井上同様『ベームベーム』の攻撃を殆ど受けずに済んでいたGK金田一の元で、なけなしMPを使った回復呪文治療を受け続けていたのだ。
災い転じて福と成すというのか。それが終了するのとほぼ同時に、衛藤の『ベームベーム』による爆撃が終了したため
体を痺れさせた両チームの間を無傷で通り抜けてこられた、という訳。
そして、これが千載一遇の好機であると正しく理解していた高橋留美子は、ここに、ひとつの決意を抱いて来ていた。

「――――さ ァ  か か っ て き な さ い ! 井 上 雄 彦 !!」

先ほどの衛藤と井上のように一度離れ、挑発を重ねる留美子。
自らのかつての罪業を忘れたかのようなその不遜な態度に、井上のこめかみににょろにょろと青い蛇がのたうつ。
(……)
衛藤は、その留美子の挑発が何を狙って成されたものかを一瞬の内に悟った。
彼女とて、井上が自分にどんな感情を抱いているか、そしてその感情を何故抱くに至ったかを、忘れたわけではあるまい。
むしろ表面上軽々にそう見せぬだけで、あるいは井上以上に、『過去』を辛く、そして重く背負っている筈。
なのに、それでも、というより、それだからこそ、『GK井上雄彦』に対する『揺さぶり』としてこれ以上のものはないと
そういう判断なのだろう。
533決意(163/180):2005/06/19(日) 07:21:42 ID:XPSj1JIp0
そして、その狙いどおり、「ふんぬー」と白目に炎を宿し今にも飛び掛ろうとする井上。
衛藤は機を逃がすまいと尻筋に力を入れる。尻剣が、乗せたボールを弾くようにループシュートとして放つ。
更に、足元で完成した魔方陣が炎の追尾弾をはじき出し。井上の、狭まる視界を更に狭く焼こうと襲い掛かる。


井上雄彦はこの時、衛藤や留美子の狙いに完全に乗せられていたわけではなかった。
いや、正確には偶然が彼を救ったのだが。それに重ねることのできる『ある追憶』が彼に冷静さを――――『信念』を取り戻させた。

以下回想

車田が置いていった小型TVを捧げ持ち、二人して懸命に選手用通路を駆けていた。
早く、一秒でも早く合流するために。
「岸本君もやられた……!」
わざわざ言われなくとも同じ画面を見ている。
怨敵高橋留美子にくだされた、チームメイト岸本斉史の無残にくずおれる姿。
ぎり、と奥歯を噛む井上をちらりと見て、陽一は密かに嘆息する。
「やはり……忘れられないかい?」
何を、今更。
首肯すら返さず、前だけを見つめ続ける。
「…………」
カンカンカンと薄暗い廊下にスパイクのぶつかる音だけがはね返る。
「…………」
長い沈黙の後に来たのは、一切の虚飾奇麗事を排した紛れも無い『事実』の宣告。
「でも『バトル』では、君は、何をやっても彼女には勝てないと思うよ」


分かっていた。
そんなことは分かり切っていた。
漫画家として積み重ねてきた歴史。格。持ち技の展開範囲。etc、etc……
それこそ、『つけ込む』か、自分の結界『バスケットコート』にでも引き込まぬ限り、
『サンデーの女帝』に自分が勝利できる確率など、本来限りなくゼロに近いということ。
だが
534決意(164/180):2005/06/19(日) 07:23:39 ID:XPSj1JIp0
「ヨーちんに、何が分かる……!!!」
だん、と踏み込む足を留めず、しかし一際高く踏み鳴らしながら、うつむいた顔を影に隠す。
そう、そんなことは分かり切っている。だが、そんな事は究極、もうまるで関係がないのだ。
かつて率いたチームメイトの無念を晴らすため、やりたいかやりたくないかではなく『やらなくてはならない』こと。
常の無謀さと、常に無い悲壮さを併せたようなその頑なな態度に、前方の出口、四角く切り取られた光に向いたまま、陽一はそれでも最後にこう言った。
「ならせめて、自分らしさを失わず、ね」

回想から戻る。

真っ赤に染まる視界に映る、明瞭な三択問題。
人一人を完全に飲み込むほどの、強力な火炎攻撃。
隙をさらし、ここへ刺して来いと言わんばかりの『サンデーの女帝』の態度。
そして、バスケでいうスリーポイントシュートのような綺麗な放物線を描く、白黒の文様鮮やかなサッカーボール。
避けるか。突っ込むか。それとも


『残念ながら、君は必殺シュートを身に着ける才能がないようだ』


(ゴール前の得点感覚。奴等のそれは天性だ。オレには無い)


『でも『バトル』では君は、何をやっても彼女に勝てないと思うよ』


(――――オレの負けなのか イヤそうじゃねぇ)


「 う お お お お お お ――――― っ !!!!」


高く。そして速い溜め。
535決意(165/180):2005/06/19(日) 07:28:07 ID:XPSj1JIp0


(うちには点を取れる奴が居る。 オレが30点も40点も取る必要も――――直接、高橋留美子に『勝つ』必要も無い!!!!)


『ああ、今の俺たちに最も必要なのは攻撃力以上に、頼れるキーパーの存在だ。
 この状況下で、優秀なキーパーはまさに救世主的存在!
 そして、この中で、俺たちの守護神になりうるのは、バスケで鍛えた能力を持つ、君しかいない!!』

頼りにされ、期待され、必要とされて預けられたスポーツマンの信頼。
ここで拳骨でこの女をイワしたとして、その一撃は自分らしさと胸を張れる『復讐』なのか。


(――――オレが駄目でもあいつらがいる!!! あいつらの才能を発揮させてやればいい!!!! そのために体を張れるのはオレしかいない!!!)






留美子の刃を肩で受け、衛藤の火炎攻撃に全身を焼かれながら、自らは刃を手放した井上の手には、しっかりと、サッカーボールが握られていた。

(おそらく、現段階でオレは高橋留美子に負ける)

だが

(えなりチームは負けんぞ―――)

仇を討つチャンスを捨てることも、自らを傷つけることも厭わず、ただ、ゴールを守ることだけを選んだ井上が
呆然とする留美子と衛藤の前で、特大のパントを放つ。

中盤では、両チームのメンバーが徐々に復活しつつあった。
536作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 12:45:05 ID:FfHjsbSV0
男前だなあ…井上。
私的MAX時の橋本戦を超えそうだ。
537作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 14:48:31 ID:FU9R4Pg90
>オレが30点も40点も取る必要も無い

原作通りの台詞なんだが、さりげなく井上のアホっぷりを表現しててワロタw
538戦闘直前:2005/06/19(日) 21:36:13 ID:FfHjsbSV0
>>521
「ほう…面白いことになってるじゃないか」
「――!!」
声と同時――ゆで将軍と福地、大暮、睨み合う双方の間の空間に上空から風を巻いて一人の男が降り立った。
悪魔のように、黒い翼を背から生やした男だった。
その筋肉はゴリラ、牙は狼、瞳は原始の獣性を帯びぎらつき、2m以上はあろうかと思われる体躯に闘争のエネルギーが満ち溢れていた。

「げーっ! あ、あんた…じゃなくて貴方様は!」
「――永井豪、ゴッドハンド」
福地の悲鳴にも似た叫びを、ゆで将軍が深沈たる声音で引き続いだ。
にっ、と強烈な笑みをもって、彼らの反応に永井は答える。
「ゆでたまご、貴様が吹っ飛んできた時から楽しくなりそうだなと注目していたら、案の定だ。
 しかも相対するのは十傑集と――十二使徒」
野獣の瞳が大暮の方に向けられる。
「ああ? 何いきなり現れてがん付けてんだテメエ?」
怖いもの知らずか、単に阿呆なのか、永井の視線を真っ向から受け止め、大暮は言う。
阿呆は阿呆でもたいしたもんである。
「ちょっ! やばっ! だっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
福地必死。
慌てて大暮を押し戻し、とんでもない勢いで謝りまくる。
「(やばい、やばい、マジやばい)」
 だいたいにして十傑集なのに妖魔王サイドと手を組んでいるというその事実だけで結構危険だと思っていたのに、
よりにもよってTOPに目撃されたのだ。
自分は無事ではすまないだろう――そして何より。
「(わかってないと思うけど、あんたが一番危険なんすよ兄さん!)」
妖魔王はゴッドハンド最大の敵である。
確かに、永井に狙われる可能性が最も高いのは十二使徒である大暮であろう。
大暮自身当然そんなことはわかってる。
しかし――。
「何びびってんだぼけェ!」
真上から、ごつ、と拳骨を福地の頭頂部に振り下ろす。
539戦闘直前:2005/06/19(日) 21:38:48 ID:FfHjsbSV0
「痛いっ、何するんすか兄さん!」
「うるせえ!」
頭を抑えて抗議する福地に、大暮は唾がかかる距離まで顔を寄せる。
「わかってんのかお前! 俺らは今からゆでたまごの糞野郎と闘うんだろうが! 
 ああっ? 永井程度にびびっててあいつに勝てると思ってんのか!」
「――! あ、兄さん」
福地は雷鳴に打たれたような衝撃を受けた。
言ってることは結構無茶である。
だが、その言葉には真実大暮の貫き通す意思が篭っているのだ。
「はっはっはっ! 本当に面白いなお前ら」
びくっ、と福地が振り向く。
「福地、と言ったな。俺は別にテメエらをどうこうしようと思ってるわけじゃない。
 ただ、この勝負を見物しにきただけだ」
「え、そうなんすか?」
拍子抜けしたような福地の言葉に、永井は肯く。
そう、彼もまた面白ければなんでもいい類の人間であり、組織間抗争など二の次なのだ。
「横山にしても、十二使徒とちょっと馴れ合った程度でいちいち目くじらは立てぬだろうさ、
 その程度で処罰されるなら高屋などどうなるか」
「へ…高屋様?」
高屋良樹の造反について、永井は本能的に察し始めていた。
そして、己が察したことは、その遥かに前にあのいけ好かない軍師は感知していることを、長年の経験から永井は知悉している。
では何故何もせず放っているのか、彼には理解できないし、又どうでもいいことであった。
540戦闘直前:2005/06/19(日) 21:40:12 ID:FfHjsbSV0
永井の福地への言葉は全く裏付けの無いことだが、正鵠は得ている。
仇敵十二使徒と手を組んだ――これを知れば、確かに古参の十傑集の中には、あるいは憤りを覚え、憎悪を抱くかも知れない。
だが、それによって福地が叱責を浴びることは無い。
なぜなら、それらは全て感情に過ぎないからだ。
感情が組織を動かす部分は、普通、ひょっとすれば論理や利害を超える。
が、十傑集は普通の組織ではない。
統率する山口も、組織の運営者富沢も、彼の軍師に長年仕えることにより、感情を切り離して物事を考える術を身に着けている。
 であるからこそ、忠烈たる石渡をあっさりと査定にかけ、
しかもその相手にかつて十傑集二名を殺傷した山口貴由をその相手に選ぶような真似ができるのだ。
福地翼が十二使徒と共闘したというその事実を、事実だけで両断するような感情的な裁決を彼らはしない。
肝要なのは、福地が真実十二使徒と手を結んだのか、十傑集に叛意を持っているのか。
そしてそれら二つより遥かに重要なのは、彼がその地位に相応しい働きを成せるかどうかである。
そして調べれば福地が通じたのは、十二使徒ではなく大暮一個人であり、十傑集に対する叛意によるものではないことはわかる。
となると、問題になるのは彼の能力である。
果たして一度共闘した相手や、その輩と闘えるのか――こればっかりは懐疑的である。
しかし、戦士として使えないと判断されても、彼がその座を脅かされることは無いだろう。
元々、彼はその戦闘能力ではなく、別の才能を評価されて十傑集にスカウトされたのだから。
以上、余談。

「見物、ふん、私は三人がかりで来てもらっても構わないのだがな」
それまで、突如現れた永井を警戒していたゆで将軍が口を開いた。
「茶番は終わりだ。再開しようじゃないか」
常人の太腿ほどありそうな両腕を広げ、ゆで将軍が戦闘態勢に入る。
それを見て、福地と大暮も又構えを取る。
「まあ、待ちな」
一触即発の空気の中、永井が言った。
「「なんだ! 」」
またまた出鼻を挫かれ、将軍と大暮が同時に切れる。
「このままじゃあ、面白くない。あっさりゆでが勝って終わりだろうからな」
「ふうむ、確かに」
「な」
反論しようとする大暮の口を後ろから福地が両手で塞いだ。
541戦闘直前:2005/06/19(日) 21:41:49 ID:FfHjsbSV0
「そこで、だ」
ぱちん、と永井が指を鳴らす。
瞬間、彼らの真横の空間が、撓んだ。
そして、次の瞬間には、その何も存在しなかった空間に、プロレスのリングが現れた。
「…どういう手品だ」
顔色一つ(マスクだけど)変えずに問うゆで将軍だが、しかしその声音にわずかな驚きが混じる。
「錬金術だ」
「錬金術…?」
「異次元から引っ張ってきたエネルギーで、無から有を作り出す術。
 と言ってもお前らにわかるかねえ。まあ要するに、俺が頭の中に思い描いた物を現実化する力ってことだ」
「ふん、そんなことはどうでもいい、それで、リングなんざこさえてどうする気だ」
福地を振り解き、再びその頭に拳骨を加えた大暮が問う。
「どうでもいいんすか…とんでもないと思うんすけど」
頭を抱えてしゃがむ福地が呟く。
彼自身、それに十分対抗できるとんでもない能力を持っているわけだが。
「二対一のハンディキャップマッチ、3カウント、ループブレイク有り、というのはどうだ?」
「はあ?」
「ギブアップは無しか?」
「ちょっ、お前ら」
「兄さん、口出さないで!」
どうやら自分たちに有利な方向に話が進んでいるらしいことを察した福地が大暮を止める。
「ああ、決着はどちらかの死か、3カウントのみだ。そして、3カウントで負けた方は、この場から去る」
「なるほど…まあ、超人レスラーでもない小童共に私が3カウント負けを喫することなどあり得ぬが――」
たっ、とその巨体に似合わぬ軽やかな跳躍を見せ、ゆで将軍がリングに降り立つ。
「久々にリングの上での勝負というのも一興よ! 」
「けっ、誰がプロレスなんかやるかよ! 真っ当に叩き潰してやらあ!」
三度拳骨を振り下ろした大暮が、颯爽とリングに飛ぶ。
遅れて福地がエプロンを登りリングに入る。
リング上には、いつのまにか覆面の十傑集が中央に立っていた。
「レフェリーはそいつだ、精々楽しませてくれよ」
永井の楽しげな声は、既にリング上の三人には聞こえていない。
戦いは、もう始まっているのだ。
542作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 21:47:38 ID:fqs4pL1p0
超展開キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
まっとうなプロレスになるメンツじゃないけど妙に期待
543作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 22:01:27 ID:qEumaN7S0
>覆面の十傑集

誰だw
おまえら会議してたんじゃなったのかw
544作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 22:12:17 ID:FfHjsbSV0
しまったあー!!!
覆面の十傑集×
覆面の血風連○
545作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 22:29:11 ID:pK7sUqsX0
いいねえこの展開w

全然関係ないけど近頃ウルトラジャンプ連載陣がスゴイ。
もし今の連載陣でチーム組んでたらどうなってたろうってくらいスゴイ
546作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 22:42:41 ID:FXYQD5vJ0
ああ、荒木もハギーも大暮も弐瓶も揃ったし
俺としては文句無いな
弐瓶活躍させたくなってきた
547作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 22:55:59 ID:FfHjsbSV0
弐瓶って恐竜消滅させた人だよな、あれかなり笑えたから今でも覚えてるw
なんか凄い兵器持ってるんだっけ。
548作者の都合により名無しです:2005/06/19(日) 23:12:57 ID:qEumaN7S0
ウルジャンか…個人的には、佐藤大輔&伊藤女史コンビに期待してる
549夏とサルガッ荘と私:2005/06/22(水) 14:12:27 ID:zt8z/2BD0
>>20

宇宙の墓場サルガッ荘で、武井が記憶を取り戻してより数日。
現世より数倍速い時の流れを住人たちが実感する事はなく、
のんびりと、または急ぎながらそれぞれの生活を送っている。

武井との特訓により、戦士としての成長期に、
本格的に突入した井上和郎は昼間を技来たちと森の捜索に充て、
夜を修行時間に費やしている。そのため、
休息が圧倒的に足りなくなってしまい、目の下にくまができてしまう。
それでも、周囲の気遣いをやんわりとかわしながら、
自分を急き立てるように頑張る和郎であったが。

この日、サルガッ荘管理人TAGROは気分が燃えモードらしく、
彼の魔力で真夏の季節に調整されている荘周辺は快晴の酷暑であった。
昼が近い中、育てている夏野菜たちが枯れないように、
くそ暑さをこらえ必死に水を撒く島袋たちの話を聞き、
和郎は普段篭る地下の研究室から、ひとり抜け出し畑へ手伝いに向かった。

 「うひゃー!暑いぜー!水が気持ちええ〜」
畑に伸ばしたホースを真上に向け、トマトや茄子の枝と並びながら、
セルフでシャワーのように水を浴びている島袋。
 「あっテメーずりーぞ!俺も混ぜろ」「僕も僕も〜」
野菜の葉っぱを押し避けながら、シャワーの恩恵に与ろうとする小野と万乗。
植物たちの間の狭い通路に3人も集まり醜い争い。足下の畑の土が踏み荒らされ、
ぐしゃぐしゃになってしまう。抑え役の光原と武井が別行動のため、収拾がつかないのだ。

 「うわ!先生たち、何やってるんですか!!」
そこへ走って駆けつける和郎。大きいTシャツが汗で身体にまとわりついている。
水と泥まみれのアホ3名に向かって叫ぶ。
 「野菜たちに迷惑です、どっかヨソでやってくだ・・・(ずるっ)〜〜〜!?」
和郎は足場の泥に足をすくわれ、走ってきた勢いで背中から地面に倒れた。
550夏とサルガッ荘と私:2005/06/22(水) 14:13:45 ID:zt8z/2BD0
 「おい井上!大丈夫かよ!」
本能で瞬時に駆け寄る小野。小柄な和郎を抱きかかえようと腕を伸ばし、
そこで異変に気づく。和郎は倒れたまま目を瞑り動こうとしない。
 「井上?おい井上!後頭部打ちやがったな、大丈夫かよ!?」
 「ええー!?和きゅん気絶しちゃったの?よしここは僕が・・・あっ!」
下心つきで近づいてきた万乗だが、意識を失った和郎の顔が、
見る間に青ざめてゆくのを見て瞬時に頬を強張らせた。
万乗がとっさに周囲を見渡すと、記憶通りの場所にそれはあった。
・・・和郎が倒れた場所、頭部の位置には運悪くシャベルなどの農具が置いてあり、
和郎は尖った鉄の部分に頭から落下してしまっていたのだ。
 「まずいよ!打ち所が悪かったんだ。
 和きゅーん起きてよ和きゅん!!死なないでー!!」
手を口元に当てて情けない声を出す万乗。涙を浮かべて和郎を見つめる。

 「こ、こういうのってヘタに動かすとマズイんしょ?
 どうすんだよ、地下のメカどもの中に移動型の治療機械あったっけ?」
ホースの水を止めてやってきた島袋が冷静に意見を出すが、
 「バーコード!どっかに末尾が回復機能の番号入ったバーコードねえかコラ!?」
焦って話を聞かない小野と、おろおろするばかりの万乗には届かない。
 「ああもう!!とにかく落ち着けよアンタらは!!
 そういや管理人は魔法使いなんだろ?誰か呼んでこいよ!!
 おい和郎先生しっかりしろ、目を覚ませってばさ!!」
青筋を立てて怒る島袋。平和なサルガッ荘は一瞬にして修羅場となった。


  ***


 『すまない、カズロウ。昼寝をしていたようだ。
 ・・・?ここはカズロウの意識下ではないか。お前も眠っているのか』

 『・・・ミギー?あれ、ボクいつから寝ちゃってたの?』
551夏とサルガッ荘と私:2005/06/22(水) 14:15:03 ID:zt8z/2BD0
 『私も把握していない。近頃寝不足なのでな。
 カズロウも疲労が溜まっていたのだろう。しばらく睡眠を摂取するといい』
 『そんなヒマないんだけどなー。
 つか畑を手伝いに行ったはずなんだけど、おかしいな。日射病かなあ』
 『それはまずいな。やはり恒常的に休憩をしなければ却って作業効率が──』
 『夢の中でまでお説教されたくないよー』

 『どうしたカズロウ。起きないのか』
 『・・・うーん、一生懸命目を開けてるんだけど、瞼がちっとも動かない』
 『ふむ。私には外界の声が聞こえるが、緊急事態のようだ。
 どうやらお前は転倒時に脳を損傷したらしい。一刻を争う事態だそうだ』
 『一刻って・・・それ死んじゃうって事!?
 駄目だってそんな、僕は絶対向こうの世界に帰るんだっ!!
 何とかできないかいミギー!!』
 『・・・方法はある。様々な危険をともなうが、な』
 『頼むよ!どんなに危険でも、何もせず死ぬよりは幾倍もマシだ』
 『わかった。・・・では精神を落ち着かせろ。私が“導く”』
 『信じてるよミギー・・・岩明さん』


 ***


 「ああっ、和郎さんが意識を取り戻しましたよ先生方!」
険しい顔で畑にひざまずき和郎の顔を覗き込んでいた、
魔女コスプレにエプロン姿のTAGROが、全身泥まみれで喜びの声を上げる。
よかったよかったと賑わう周辺のギャラリー、きょとんとして上半身を起こす和郎。
彼はこの後治療のためアパートに担ぎ込まれた際、額に謎の≪玉≫が浮かんだ事を知る。

玉の出現は岩明の体細胞との融合が進んだ証であり、新たなる能力の目覚め。
それがやがて和郎たちに大いなる転機をもたらす事を、今は誰も知らない。
552作者の都合により名無しです:2005/06/22(水) 17:39:40 ID:3zeIj0TY0
この路線微妙に楽しみなんだよなあ。
他がバトルばっかだから、雰囲気が変わっていい。
553作者の都合により名無しです:2005/06/22(水) 22:21:18 ID:cagZPgzD0
同意。
永遠のモラトリアムでのんびりやってて欲しいところ。

…よくよく考えるとアレな光景だけどな。

> 魔女コスプレにエプロン姿のTAGRO
554作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 10:51:15 ID:CYCC1mRm0
新スレ近いのに
なにやら冬頃のローペースになってきてるね
テスト期間だっけ?
555柳田君の念力珍作戦!:2005/06/24(金) 16:59:51 ID:CYCC1mRm0
>>376 >>120

 「・・・・・・やっぱ、おにゃの子のほうがいいや。」

狂乱する変態どもの群れの中、三匹目の狼が誕生していた!
先程まで軟体チックだった男はどこからか忽然と現れ徐々に肉体を形成し──
ぷちっ。
 「む?何やら踏んでしまったが、まあいい。ここはどこだ?」
男はコロッセオ地下の格納庫から裏ルートで脱出してきた柳田理科雄に踏まれて死んだ。
まあまた生き返る事もあるだろう。都合で。

 「今、変な音がしませんでした?」
キョロキョロと客席を見渡す椿。ふと見ると科学者風の男2名と数体のロボが、
牧野たち一行が移動して開いていた席に「運良く空いていてよかったな」
などと言いながらどっかりと座ってしまう。
いつのまにここに?科学者たちはロボ使いのクリエイターなのか?
なんか雰囲気うさんくさくない?というかそこの席開いてませんよ?
椿は牧野たちにいつ言おうか考えながら、突如現れた珍奇な軍団を見つめた。
すると科学者風の男のひとりとばっちり目が合ってしまう。柳田だ。
 「なんだ?ご婦人。何か御用かな」
 「え?あ、あの〜。そこの席は私たちが座っていまして」
 「何をおっしゃる、現在利用しておられん以上私が活用しているまで」
 「そういう問題じゃありません!それに端が空いていますよ、
 盗らなくても座れるじゃないですか。マナー違反です」

ここは漫画家などのクリエイター専用席であるため、
そう人数がいるわけではなく、前方中央から外れればいくらでも空いていた。
しかし柳田はこの場を脱出経路のひとつとしか見ておらず、
『木は森に隠せ』の原理でわざと観客の塊の中にいるらしく、
首を横に振るばかりで頑として動こうとしない。
椿は呆れて、まだ暴れているエロ狼どもを現世に呼び戻す事にした。
 「あなた!牧野先生!バカばかりしてないで正気に返りなさい!」
556柳田君の念力珍作戦!:2005/06/24(金) 17:01:05 ID:CYCC1mRm0
しかし狼連中は相変わらず妄想の月夜にフィーバー中。
とばっちりのくぼたやみずしなが牧野たちに石や紙コップを投げつけている。
何やってんだか・・・と額を押さえる椿の脳裏にふとよぎる疑惑。
 「・・・もしかしてこの怪しい人たち、
 夕日子ちゃんを誘拐したド外道かその仲間!?あ、あなた!!皆さん!!」
 「なんやてー!?エロい誘拐犯が夕日子を人質に客席奪ったやて!?」
 「何っス!?そのエロい白衣姿の男が愛する俺を誘拐しに来たっス!?」
 「ガウガウバウバウ!!(エロエロな科学者がエロ攻撃でおかみさんをも篭絡!?)」
 「・・・何の話だ何の」

柳田が異様なノリに気づきツッコミを入れた頃にはもう遅く、
彼の周囲には夕日子騒動で血液沸騰中の漫画家達がずらりと壁を作り、
柳田包囲網を完成させている。「夕日子を返せ!エロの子一匹通さねえぜ!」
女性陣は様子見だが、やはり囲むように柳田と筆吉を注視している。

相手の勘違いから来るピンチを涼しい顔で受け流す柳田。
 「ふはは。わけがわからんが、貴様らが私の敵となるというならばよかろう、
 我がスーパーメカの錆としてくれる!ゆけ24号よ!!」
呼ばれて席から立ち上がる女性型アンドロイド。
見た目とても地味な彼女が、取り出したメガネを装着してのち一言。
 「今日から担当になりました女木です。
 さっそくですが親睦を兼ねて取材旅行へ行きませんか?
 取材費は編集部持ちです。北海道でジンギスカン食べましょう」
24号こと女木は名刺を取り出し周囲の漫画家たちに配る。
彼らは脳裏に疑問符を浮かばせながらも、慣習でつい名刺をいただいてしまう。

 (いいぞ24号!その名刺は特殊パルス発生装置なのだ!
 漫画家が装置の放つ周波を長時間浴びると、連中が普段気合で抑えておる、
 『漫画家をやめたくなる感情』が剥き出しになるのだ!くたばれ稿料泥棒ども!!)
興奮する柳田がギラついた目で包囲網を見渡すと、
さっそく何名か引っ掛かり、女木のススキノトークを聞いてうずうずしている。
果たして柳田のいやらしい攻撃に変態どもは耐えられるのか? (つづくのこれ?)
557最凶料理人、登場!!:2005/06/24(金) 20:31:44 ID:Kzkm6h3f0
24部69より

漫画界最大のイベント・矢吹艦最大トーナメント。
その空前の祭りの裏で、さりげなく開催されている、もうひとつの戦いがあった。

『料理人ナンバーワン決定戦』

史上空前の屋台レースである。
それゆえに、出場者は多く、なかば荒野と化した九州を舞台に熾烈な生存競争が繰り広げられていた。
そんな過酷なレースのなかで、彼もまた戦っているひとり――――

「いらっしゃいませー」
ナルトバッジをつけたバンダナを巻いた青年が、屋台で大勢の客にラーメンを振舞っている。
数多くの客を相手に、たったひとりで料理を行っているが、その手際の見事さは次々と客をさばいていく。
青年が振舞っているラーメンは、『サンマーメン』と呼ばれるものである。

――『サンマーメン』
正式名を、生石馬湯麺(サンマートンミェン)。
モヤシを主な具とする野菜あんかけスープメン。
『生石馬(サンマー)』は『手早く調理した生きのいいシャキシャキとした食感の具』という意味。

「美味えっ!」
「ごちそうさまー」
「ありがとうございましたー」
口々にあがる、客が舌鼓を打つ歓喜の声。

野菜のあんかけは保温力に優れ、メンやスープがいつまでも温かく食べられる。
メンにトロリとからむ野菜の旨味とモヤシのシャキシャキとした歯ごたえは、このラーメンの最大の特徴。
冬場の寒空の下、屋台で食べるにはまさにうってつけのラーメンなのである。
大盛況も当然のことといえた。
558最凶料理人、登場!!:2005/06/24(金) 20:32:41 ID:Kzkm6h3f0
「おいっ、あの店見てみろよっ。すげーペースで客が入ってるぜ」
「あれがここんとこ好調な、馬場民雄の『ナルトヤ』だよ!」
「あの調子なら、このレースも持っていかれんじゃねーの?」
今回のレースは、7番レースであり、その内容は『客数勝負』。
『ナルトヤ』――馬場は、あだち・玉吉と分かれてからも、快進撃を続けていた。
現状では、優勝候補のひとりに数えられる好調ぶりである。
客だけでなく、近くで同じく屋台を開いている他の参加者達も、『ナルトヤ』に注目していた。

「でも『ナルトヤ』だけじゃね―――あっちの店も人が多いぜ」
そう、快進撃を続けているのは、『ナルトヤ』だけではなかった。
『ナルトヤ』と道路をはさんだ向かい側に立つ、もうひとつのラーメン屋台。

―――『喜喜』―――

このたった一文字をのれんに掲げた、この屋台は、最初は『ナルトヤ』とほとんど同じ長さの行列をつくっていた。
しかし、勝負が始まってから数刻、行列の長さでは今や完全に『ナルトヤ』が圧倒していた。
こう書くと、馬場の立場ならば、ここは喜ぶべきところだと思ってしまうだろう。
ところが、そうではないことは、馬場の焦りの表情が、何よりも顕著に告げていた。

ザッザザザザザザザザザ―――――!!

「おお――っ、湯切り無限大!」
『喜喜』に集まる客たちが一斉に歓声をあげる。
その調理場に立つ男の、すさまじいまでのメン上げのスピード。
7つ、8つといった数の器を、男は舞うように次々と盛り付けていた。
そう『喜喜』の行列はが短くなったのは客が減ったからではなく、それだけ一度にたくさんの客をさばいているからだったのだ。
一方の『ナルトヤ』は、メンとスープの他に具の調理の手間がある分どうしても時間がかかる。
『客数勝負』の最大の要諦は、味だけではなく、客を大量にさばく技術。
そこにおいて、『ナルトヤ』は、『喜喜』の足元にも及んではいなかった!
559最凶料理人、登場!!:2005/06/24(金) 20:33:31 ID:Kzkm6h3f0
「うんめえええええ!!」
『喜喜』の客たちが、絶叫する。
今や、完全に圧倒される形となった、『ナルトヤ』。
そして、12番レース終了を告げるアナウンスがこだました。

「競技終了――――!!
 現時点で、最大客数をさばいたのは――――『喜喜』!!
 よって、12番レースの勝者は、『喜喜』と認定されました――――!!」

その瞬間、馬場の膝がガックリと落ちた。
ここへ来て、初めての完全敗北。
それも同じ『ラーメン』というジャンルにおいて。
ショックを隠しきれない馬場の耳に、追い討ちをかけるようにけたたましい笑い声が響いた。

「カ――カッカッカッカッ!悪いなあ、アンタの活躍をストップさせちまって」

笑い声の主は、異様に目つきの悪い男であった。
好青年然とした外見の馬場と並ぶと、一層その外見の凶悪さが際立つ。
男は頭に『喜喜』のマークを描いたバンダナをしていた。
言うまでもなく、屋台『喜喜』の主である。
いかにもこちらをあざ笑うような態度の男に、馬場は立ち上がって向かい合った。
その顔には、悔しさ以上に、目の前の男がどれほどの実力の持ち主なのかという疑問がはりついている。
すると、馬場の表情を察した男は、ニヤリと笑って言った。
「フフン、負けたことに納得してない――ってツラだな?なら、一流の片鱗って奴を味わわせてやるよ」
男は屋台に戻ると、すぐさま一杯のラーメンを持って、それを馬場に差し出した。

男が差し出したのは、『東京ラーメン』――
細麺、またはちぢれ麺の上にチャーシュー・ネギ・玉子・メンマなど具をたっぷり載せ、しょうゆをベースにしたあっさり味のスープが特徴のラーメンである。
560最凶料理人、登場!!:2005/06/24(金) 20:34:18 ID:Kzkm6h3f0
(これが、この人の作ったラーメン……一見すると、どこにでもある普通のラーメンに見えるけど……)
そう思いつつ、一口すすった馬場。

    ド  ン ッ !!

(こ…これは……!!)
その瞬間、馬場の全身を雷撃が走った。
食欲を麻薬のように誘う強烈な芳香。
そして、鮮烈で濃厚な旨味、それでいて清水のごとくさわやかなのどごし。
素晴らしいスープの味が、しっかりとしたグルテンのメンにからみつき、この世のものとも思えぬ美味を作り出している。
(レベルが違いすぎる……!!特に、このスープ!!こんな味が存在するなんて……この香り、そしてこの旨味の正体はいったいなんだ!?)
腕組みをしながら、『喜喜』の男が、驚愕する馬場に対し、見下したような笑いを浮かべている。
「そんなに知りたければ特別に教えてやろう。そのスープの秘密は、『ブーケ・ガルニ』だ!」
(……『ブーケ・ガルニ』!?)
ラーメンが専門の馬場には、聞き覚えのない言葉であった。
「『ブーケ・ガルニ』は、タイムやベイリーフ、パセリ・セロリ等の香草を組み合わせたもの――スープや煮込み料理に使われる。
 セージは消化を助け、セイボリーは弱った胃を整える。バジルは神経疲労を癒してくれて、フェンネルは魚臭さを取り除く。
 ローレル・クローブ・ペパーミント―――料理によって組み合わせをかえて、より高度な風味を出せるように使うものだ」
「ハーブはフランス料理の手法……それをラーメンに!?」
「ハッ、俺の魔法に国境はないんでな!」
高らかに男は笑う。
一方で、馬場はまだ疑問を抱いていた。
「ただ――こんな香りが普通のコンソメで出せるわけがない。そしてこの旨み――まさに魔法だ。これはいったい!?」
「フフン、どうやら少しは味がわかるらしいな」
馬場の疑問をうけて、『喜喜』の男はさらに得意げな笑みを浮かべた。
そして、言った。
「使った魔法は―――― 『ダブル・コンソメ』!!」
561最凶料理人、登場!!:2005/06/24(金) 20:35:36 ID:Kzkm6h3f0
「ダブル・コンソメ!?」
聞きなれない言葉に戸惑う馬場に、『喜喜』の男は再びスープを差し出した。
手に持った瞬間、鼻腔を刺激する馥郁たる香り。
たまらずすすりあげると、素晴らしく深い味、トロリと滑らかな食感がノドをくだりおりていく。
「そもそもコンソメは、フランス料理人パリッシーが肉や魚介類・野菜を煮込んだものを漉して客に出したものが始まりだ。
 しかし、その素晴らしい旨味を出すためには、料理人は数十時間におよぶアク取りと見張りに苦しまねばならない。
 そして、さらにその上をゆくのがダブル・コンソメだ!
 一度作ったスープに、さらに同じ材料をいれ、同じことを繰り返す!
 アク取りと沸騰させないために見張り続ける。
それはもはや、人間の根性や忍耐力を超えた技法――料理中に倒れる奴も出るほどだ!
だがそうして完成したスープは桁違いの旨味と濃厚な香りを放つようになる。
もちろんブーケ・ガルニ――ハーブもより艶やかに強い香りを持つようになる。
特に俺のブーケ・ガルニは、二十種のハーブを混ぜた特別製――お前らが目を回すほどに香るのも当然なんだよ!」
明かされた、男の『魔法』――その驚嘆すべき正体に、馬場はハンマーで殴られたような衝撃を味わった。
「美味しさってのは、料理の奥底から湧き出してくるもの…プロの料理人はそのために素材の旨味を引き出すことに心を配り、技術をつくす…
 サンマーメンのようなうすっぺらな旨味に旨味を重ねていくようなやり方は、俺に言わせれば素人料理だ。
 これでわかったろう――おまえと俺では、料理人としてのレベルが違いすぎるってことが!!」
馬場が、土下座でもするかのように、地面にうずくまった。
完全なる敗北――いまだかつてない圧倒的な敗北感に、馬場はこっぴどく打ちのめされていた。
そんな馬場の姿を見届けた男は、もはや興味を失くしたように勝ち誇った哄笑を響かせながら、去っていった。

「俺の名は、西 条 真 二 !!
 また逢おうぜ、三流の料理人さんよ!
  カーカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ!!」

かつてチャンピオンに君臨した最凶の料理漫画家・西条真二。
現チャンピオンを代表する料理漫画家・馬場民雄の胸に、決して消えぬ屈辱を刻みこんだ男との、これが初めての出逢いであった。
562作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 20:54:16 ID:tIBggkNO0
先生!7番レースか12番レースかわかりません!
でもすごい人キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!
563作者の都合により名無しです:2005/06/24(金) 23:55:21 ID:pZNrGN950
西条キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!

ジャンにさんざんこき下ろされてる太陽の絵が脳裏にまざまざと浮かんでテラワロスw
564作者の都合により名無しです:2005/06/25(土) 04:38:13 ID:RsoLgx/M0
そういや西条はD−17描いてるね。
565作者の都合により名無しです:2005/06/25(土) 22:43:27 ID:/dkh988t0
つーか、西条、屋台ラーメンのしたごしらえに一体何時間かけてるんだぁっ!?

まぁ試合形式が屋台ラーメンなだけで、経営する訳じゃないから構わないのか・・・
566et cetera <エトセトラ>:2005/06/28(火) 15:31:19 ID:2fiY9xTw0
>>240 >>433
チャンピオン勢に捕まり、派手な脱出劇を演じた久保とえなり姉。
“美女と野獣”としか見えない男女2名は、追っ手に注意しながら、
サッカーの試合が映るモニターが見えるオープンカフェにいた。
試合場からずいぶん離れてしまったが未だ矢吹艦内に留まっているのだ。
 「・・・ネエさん、これからどうするんで」
人間関係から複雑な立場にあり、しかし恩義のためかえなり姉に黙々と付き従う久保が、
紅茶を飲みながら試合を見ている彼女に声をかける。姉の視線の先、
先刻から警備が厳しいCブロック繁華街に点在するテレビモニターの中では、
ようやく選手として参加できたのに一向にまともな活躍をしない彼女の弟が、
目まぐるしく動く戦況に必死についてゆく姿が、画面端にちょっぴり映っている。
 「弟に渡したいものがあるの。でも、なかなか逢えないものね」
紅茶をテーブルに置きながら、えなり姉は小さく微笑んだ。

 「渡すもの?何なら俺が・・・って、あいつにそんな義理はねえな。
 それに、ネエさん自身はこれからどうしたいんだ?弟とか抜きにして」
淡々とした言葉の端に、心配の成分を僅かに含ませる久保。
 「そうね、まずは秋田書店の動向を見て、それから」
 「そうじゃなくってよ・・・ほら、もっとあるだろ。その、あれだ。
 全部片がついて、する事がなくなったら、どうしたいかって奴だよ」
何故かしどろもどろになる久保。いかつい外見に似合わぬ気遣いである。
そして聞かれた方の娘は、薄い微笑をさらに曇らせながら、
視線をモニターから外して再び持ったティーカップの、
琥珀色の液体のゆらめきに向けた。人間としての幸せに縁遠く、
クリエイターに近しい者として、運命の奔流の一部として生きてきた娘。
えなり姉が向かう先、必ず波乱が起こる。彼女はそれを知っている・・・。

カフェから死角になっている場所に、艦内一の高層ビルがある。
摩天楼の中でも一際目立つ建築物の空近く。睨み合うは突き抜けし少年と、
多くの人間・多くのクリエイターを巻き込む荒々しき奔流の中心、矢吹。
矢吹とえなり姉の向かう道は、弟を挟んで完全に袂を分っている。
2人の歩む道が再び重なる時などが、果たして有るのだろうか──彼らにも、わからない。
567作者の都合により名無しです:2005/06/28(火) 15:56:24 ID:JZrPQb2w0
蝶久し振りに姉キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

ついでに久保もキタ(゚∀゚)wwwwwなんだ、フラグ立てようってのかw
568作者の都合により名無しです:2005/06/28(火) 16:16:28 ID:2fiY9xTw0
えー(゚∀゚)
569再戦(166/180):2005/06/29(水) 18:30:34 ID:a77X2wYS0
>>397
「……いつまで、そうしているつもりだい?」
フィールドの片隅、瓦礫の中で揺らめく人間大の松明に向かって、今井が言う。
『邪王炎殺煉獄焦』をまともに喰らった安西は、それっきり微動だにしていない。
「まさか、あの程度の炎で消し炭になってしまうほどヤワじゃないだろ? ガッカリさせないで欲しいな♠」
挑発するように続ける。しかし、返ってくるのは沈黙のみ。さすがに、今井がいぶかしみ始めた。
「――!? まさか…?」
妖気を叩きつけ、目の前に詰まれた瓦礫を吹き飛ばした。
果たして、その下に燃えていた人間の形をした炎が、その瞬間跡形もなく消え去った。
(――幻炎!!)
すでに、その松明は安西本人とすりかわっていたのだ。
(安西は!? どこだ!?)
――ぞくり。
むずがゆいような寒気に、つられて左方向を見ると、そこに走る影。

            ゴ  ッ !!

左頬に衝撃。
打撃の熱だけではない、炎をともなった一撃。
(……やられた♥ 熱い拳だ♣)
咄嗟に芯を外したというのに、吹っ飛んだ。
(……前半のときとはまるで違う、相当に練りこまれた炎……死ぬほどやってきたってわけか♦)
自分の顔面がどうなっているのか、あまり考えないことにした。おそらくは顔の皮膚の一部が炭化しているだろうが。
膝が落ちたところへ、向かって右方向からのサッカーボールキック。
右腕を上げてガードしようとして――それができないことに気づいた。
(そうか…椎名君との戦いのときにやっちゃったんだっけ)

            み し り !!

存外に重い、いい蹴りだった。
瞬間、視界が激しく揺さぶられ、頭から突っ込むように今井はもんどりうって倒れた。
570再戦(167/180):2005/06/29(水) 18:31:58 ID:a77X2wYS0
バウンドする今井の視界に、安西がすべりこんでくる。
両手の間に生じる、夥しい数の火球。それをいっぺんに、今井の腹に集中砲火した。

        ド ゴ ゴ ゴ ゴ !!

さらに大きく跳ね上がり、炎を巻きながらゴロゴロと転がった。
白煙をブスブスと全身から吹き上げながら、しかし今井はすぐに起き上がる。
「やれやれ、服がボロボロになってしまった♠」
焼け焦げて炭クズになった服の下から出てきたのは、傷だらけの隆々たる体躯。
「すげえ傷だらけだな。百戦錬磨ってやつか?」
「安西君、それは違う。これは修行中に自ら負った傷だよ。敵につけられた傷などひとつもない――今まではね♣」
安西に対して、今井は言ってのける。実際のところは、この試合だけで相当なダメージをもらってしまったが。
「……さて♠」
今井の全身から霊気が流出し、それらが夥しい数の霊気弾となる。

「裂蹴紫炎弾!!」

霊気弾の包囲網が、安西を四方八方から襲いくるが。

「同時龍――――砕羽、崩!!」

火玉の崩、炎の刃・砕羽の特性が合わさり、斬り砕く無数の炎刃と化した。
裂蹴紫炎弾の霊気弾が、全て斬り砕かれ、さらに――
ボンッ、と異音をたてて、今井の上がらない右腕が斬り飛ばされた。
今井は飛ばされながら、自分の腕をキャッチし、安西と距離をとった。
「――くだらねえ余裕見せてんなよ。まだ修行の成果はほとんど出してないぜ」
ギン、と強烈な眼光を、安西は今井に叩きつける。
「うーん、そうだな――――♦」
一方、くるくると自分の千切れた右腕をもてあそんでいる今井。その気配が、にわかに変わる。
右腕の千切れた肉の部分を、むしゃりと噛み千切りながら、今井が怖気の走るような笑みを浮かべて言った。
「ちょっとやる気、出てきたかな……?」
571作者の都合により名無しです:2005/06/29(水) 21:13:54 ID:l6kqtHII0
キタヨキタヨー
時間的に後半最後の攻防近いしどっちも頑張れ
572作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 00:00:57 ID:rOFZIkDv0
オラオラオラ 保守
573作者の都合により名無しです:2005/07/03(日) 00:04:45 ID:fUd6vxUn0
悪いね〜
ネタ仕入れてるから待っててね
574マスター・ドールガン・マスター:2005/07/04(月) 16:26:59 ID:nRMbM1eS0
>>240

 『人質作戦失敗 姉逃亡 追跡中』

簡単な内容のメールが、鈴木ダイの入院する部屋にある携帯電話に届けられた。
ダイは一発芸大会以来の全身包帯姿でベッドでグッスリ寝込んでいた。
着信音に気づいたらしく、気だるそうに瞼を開けるダイの瞳に、
ベッドに隣接する窓のガラスが映る。・・・その瞬間、奇妙な現象がダイに起きた。

 「よっこらしょ。どれメールは・・・うーん、余湖君失敗しちゃったかぁ。
 ダイを起こすの悪いから『僕が』返事を送っておいてあげるね!」
ダイではない人間の声が、“ガラスに映るダイ”から発せられている。
・・・いやすでに鈴木ダイは鏡裏になく、そこには独特な戦闘服を着た逆立つ金髪の、
鼻柱に疾る横薙ぎの傷を持つ謎の男がにこやかな顔で映っていた。

ガラスの中の男がベッドで上半身を起こした時、まるで操り糸で吊られたように、
ダイも同じ姿勢で身を起こしたのだ。意識を半濁させたまま。
男は「ガラスに映る」携帯電話を取り、ダイの身体も「本物の」携帯を持つ。
そして男は余湖に『了解。一旦捕獲は諦め尾行のみに切り替えてください。
定期的に連絡下さい』と返信メールを送り、一息ついて携帯を置く。と。
 「コラァァァで〜〜ぐ〜〜ちぃ〜〜〜!出口竜正〜〜〜!!
 俺に取り憑くのは仕方がないが、勝手に俺を操るなと言ってるだろォー!?」
顔の包帯をブチブチもぎながら、ご立腹中のダイがガラスに映る男に吼える。
出口と呼ばれた男は悪びれる様子もなく、朗らかな笑みを返す。

 「あはははーごめんごめーん。だってせっかく『鏡』があるもんで。
 僕の『操影術』を君にかけるには、僕が君を視界に入れなくちゃならないからね。
 しかもダイは普段わざわざ鏡を避けるし、いざ操ってもちっともうまく動かないし。
 僕の術は心が純粋じゃないと完璧にはかからないんだよねー」
 「出口お前それマジ・・・いや本気でケンカ売ってねえ?」
極道漫画のチンピラっぽくガンを飛ばすダイ。
端から見れば、しゃべる幽霊が住んでる窓ガラスに因縁つけてる危ない人だ。
575マスター・ドールガン・マスター:2005/07/04(月) 16:30:24 ID:nRMbM1eS0
鈴木ダイを操る出口竜正なる男。彼はいくつかの大手雑誌社を渡り歩き、
チャンピオン作家となりダイ達の仲間になった。<ドールガン>なる通称を持つ。
しかし他社や矢吹軍と争うだけの秋田の方針に反し、出口はその先を──
戦争に荷担せず居場所をなくした流浪の漫画家が寄せ合って暮らす夢の雑誌社・
通称“移民の国”建立を夢見た、希代の大泥棒であり催眠術師だった。

ある日出口の思想を知った何者かに、出口は暗殺されてしまったが、
その際偶然傍にいたダイに最期の力で乗り移り、彼らは2人で1人となった。
・・・しかし出口は鏡などの映るものがないと発現できないのをいい事に、
ダイは普段なるべく反射物から身を遠ざけ、気楽な独り身生活を送っている。
出口の方も霊体のためか一日20時間の睡眠が必要らしく、
彼らが顔を合わせる事はめったになかった。
それでも出口は時折巧い事ダイの身体を使いこなし、PC携帯その他を駆使して、
裏で様々な情報を入手しダイや余湖達に渡している。
今回のえなり姉の情報や以前からの矢吹身辺情報も、出口の調査によるものだった。
 「これがホントの出口調査♪なーんちゃって」
 「窓のカーテン全部閉めてくれってナースさんに頼んでいいか?」
 「やだ☆ それにしてもダイはなんでいつも包帯まみれなんだい?
 野球場でも温泉でもボロボロじゃないか。身体は大事にしようよー」
 「いきなり世話女房モードに入るな。でもなんでお前、
 今になって矢吹暗殺にこだわるんだ?あれだけ戦争を嫌っていたお前がよ・・・」
 「・・・・・・」
迷惑なほど明るく振る舞っていた出口が、ダイの質問でふっと暗い顔になる。

 「・・・ダイ、僕には『友達』が多い。それだけさ」
 「わけわからん。俺には友達がいないとでも言いたいのか?トイレ篭るぞコラ」
 「なんでもいーからしばらく身体借りるよっ!ケータイ使うね〜」
 「また勝手な・・・だから嫌なんだこいつは〜っ痛てててケガ痛ぇ!寝てやれよな!」
出口はダイの義手を操りメールを打ち始める。動く腕に引っ張られ、
ダイを覆う全身の包帯が軋んで打撲や裂傷に響きまくる。もちろん痛いのはダイだけだ。
───そう、影の薄いチャンピオンチーム主将には、もうひとつの影が存在した。
漫画界に根を張る情報通の憑依霊・出口竜正。2つの影が交わる時、王者の道に新たな風が・・・吹く。
576作者の都合により名無しです:2005/07/05(火) 01:01:54 ID:NCZQDqJk0
ドールガンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
最近チャンピオンの中でも、ドールガンが面白くなってきた俺がいるwwwww

そしてダイも久々wwww
577作者の都合により名無しです:2005/07/05(火) 01:28:40 ID:nerLMsOe0
最近ダイ先生お気に入りなんだ・・・
ガンマス迷走の果て打ち切りだけどナー(つ∀`)
578作者の都合により名無しです:2005/07/06(水) 13:42:45 ID:KVBtyimx0
ダイは打ち切りが決まらないと本気になりませんから
こいつもそろそろあの陣営からスカウトがくるな
579作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 10:47:55 ID:hQrEAa8L0
MGM最終回読んだ
全米が泣いた

来週には人戻るかな・・?
580剣問答(168/180):2005/07/07(木) 18:26:44 ID:JEmTbLNE0
>>570
「では、一見『迷い』を断ち切ったように見える安西君を――――試してみる、かな♠」
世間話の口調のままで、居合のように踏み込み、左手だけで抜いた刃を横薙ぎに払う今井。
置いてけぼりにされた『右腕』と『鞘』が地面に落ちるより速く、
安西は、背筋を真っ直ぐに伸ばした体操選手のようなスピンジャンプで、観客席を隔てるフェンスの上に着地、余裕を持って相手を見下す。
空ぶった型を解き、見上げて、剣の先端を今井は突きつける。
               クエストクラス
「――――歓迎しよう♣ようこそ 支配者級へ♥ 裏成りで『アガった』気分はどうだい? 『世界』がくっきりと浮かんですら視えるだろう――――」
安西に外傷はほとんど見あたらなかった。先ほどの『煉獄焦』も、手ごたえそのものは確実にあったため
おそらく瓦礫に埋まる直前に入れ替わったと見る。それでも、その結果が脇腹をすこし痛そうに擦っているだけ、というのはやはり
「…………」
耐火能力というより、炎術士としての『全て』がレベルアップした実感。恩人達への感謝の念を、拳に握りしめる安西。
そして、そのまま黙って手甲から火の刃を生やすと、同じく、追ってフェンスの上に降り立った今井に、一瞬で詰め寄り切っ先を合わせる。
拮抗する、存在の力。怯えは、もうない。
「――――『支配』は目的じゃない、手段だ、俺は『あいつら』に認めてもらわなくちゃならなかった。
 そうして試されなきゃ駄目なだけの――――駄目駄目駄目駄目駄目人間だった――――こうして認めてもらった後は『仲間』に、戻るさ」
凝縮された熱量が今井の業物の鋼鉄を徐々に溶かし、刃を、ひく。
至近でおこる陽炎に、鍔迫り合いは不利と見てか。今井は押して離れると、安西の追撃と一合、二合
「――――正解だ♥ キミは統べる者ではなく繋ぐ者 どれほど階梯を積もうと、本質だけは変えてはならない♦」
フェンスの幅は十cmあるかないか。だがそこを、全く顧みることなく今井はスムーズに後ろに歩く。
端にきて。苦し紛れのように『砕羽』に赤熱させられた鉄を突く。安西の前髪が触れて、ジュッと音をたてて落ち、数秒、嫌な匂いを漂わす。
「――――問いの2♥ キミのかつて行為の『被害者』が今、キミの最も大切なモノを傷つけようとしている♣
 キミは、全くエラソーなことが言える立場ではないが――――さてどうする♠」
およそ考えられる、ありとあらゆる角度から、千変の刺突が安西を囲う。
あるものは弾きあるものは避けまたあるものは皮一枚を許すことでなんとかそれらを捌くが、忙しすぎて考え事する暇など、とても見出せないよう見える。
なのに、安西の返答は、ほぼノータイム。
「『ふざけるなよ馬鹿野郎』!!! だ――――それはそれとして土下座もすべきっスかね……」
「――――頼みごとをされたら♠ 相手が悪くもなく、また自分も間違っていない場合は♣ 
 キミに本来、まっすぐに戦う『資格』すら、あると思うのかい♦ キミはボクが『悪』だから戦えるのかい♠ そうではないだろう?」
そう、『今井』は、少なくとも今この試合で。知を尽くし、相手の心理の間隙を縫うような戦い方はしても、『悪』と断じられるどれほどの行為もしてはいない。
ひしひしと怖気をふるうほどに感じる『トリック』の気配は、残念ながら正統なる理由とは呼ず、思い込みに近いものだ。
眉一つ動かさずに――――安西は悩む。
581剣問答(169/180):2005/07/07(木) 18:30:13 ID:JEmTbLNE0
「…………わかんねー……オレ、本っ当にバカだからよ……」
「…………」
「それでも――――足りない頭で山程よ、ず――――っと考えて…………あんたに関してだけなら――――とりあえずの答えを出した」
最早、赤熱した鉄の棒としか呼べぬシロモノに成り果てた今井の剣と、刃と呼ぶより牙と呼んだ方がしっくりくる安西の炎剣。
刀匠が鉄を鍛える際のような空の高い高いところへ昇る金属音が連なり
火の粉の華が、マスト上で危なっかしく一騎打ちする海賊のような二人の周囲で次から次に咲き誇る。
「――――俺は、今の状況こそを『どちらが悪いということもなく、罪滅ぼしの為に頼みごとを聞いている』状況、と思う。
 戯れの剣に付き合い。説破と作麼生に、頭フル回転させて付き合う。――――それが、あんたの望み、なんだろ?」
きょん、とリスのような目をして、後、爆発的な狂笑が今井から迸った。
上半身を激しく揺らし不安定な足場からはいまにも落ちそうになっているのに、剣戟を続ける技術に全く曇りが伺えぬことは、流石と言って良いものなのか。
「ッハッハッハッハ―――――ッッハッハッハッハッハッハァ―――――ッッッハッハッハッハッハァ―――――ッッ!!!!
 ……ウッフフッ……ウフフフ……フフ…………ふゥ〜〜〜〜ぅ…………ま、正解にしといてあげやう♦
 ……いやいや、というよりそれがほぼ唯一の切り返し、屁理屈の余地だね♥ お見事♠ ボクの負けだよ、負け♥」
双方、一撃一撃がとてつもなく重い。
腕全体で支えている自分はともかく、片手で柄を握って戦う今井は、手が痺れたりはしないのだろうか、と、ふと呑気にいぶかしむ安西。
「そう、そいつは安易に『答え』を出せるようなことじゃない♠ キミが、元はどういう人間であるか、とか、今どういう人間であるか、に関わりなくね♣
 ――――というより、『世界』イチの『全知』でさえ、決まりきった定型の『正しい答え』など、定めようが無い類の『問い』だ♠
 ケースバイケースすぎて、できる前準備といえば、『覚悟』を培うような『訓練』をするのが……」
ぶつぶつと、最後の方はほぼ独り言。
それと、剣を交わしつつも、そのまま今井が沈みこむのでは、とほんの少し疑った次の瞬間、今までで最大最速の一撃が繰り出される。
その衝撃でポッキリと中ほどから折れた愛用の剣に未練一つ残さず、体勢を狂わせた安西から跳び退って再び距離を置く今井。
階段状の観客席、外周を覆う背の高い外周フェンスの縁に辿り着き、厳かに、空気を、変質させる。
「時間も押している――――そろそろいくかhearts;」
韻を踏む、預言のような声。

「片手に 『薄絹』」
「心に 『綴じ蓋』」
「唇に 『ヒロイン』」

今井を覆う魔炎の妖気。集束してゆくそれらが、剣の折られた箇所から黒々と『何か』を伸ばす。

「 『 勇 者 』 に ―――――― 『 火 の 剣 』 を 」
582作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 21:44:50 ID:nEUJYegG0
安西キタコレ!!
ジュリー流行ってるのかな
583作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 22:35:43 ID:yKRvnG/00
登場キャラのなかに、ジュリーに傾倒してる人が最低二人はいますからね
584作者の都合により名無しです:2005/07/12(火) 22:12:23 ID:tUGtTCoI0
歌いながら蹴る人と挨拶がわりに使う人か
585作者の都合により名無しです:2005/07/12(火) 22:56:26 ID:hUOKKVvw0
人板ー
479kbぐらい行ったら新スレ立てていい?
今から短いの書く予定なんだけれども
586作者の都合により名無しです:2005/07/12(火) 22:58:15 ID:tUGtTCoI0
たのんます
587作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 22:42:54 ID:MU3VixYC0
ちょっと遅くなりそう・・・
先に書く人いましたらどーぞ
588死を生きる古城の中で:2005/07/16(土) 15:46:03 ID:iKmmkXRL0
>>93 >85他)



 冥府の空。
 見えない学校。



 「着きましたよ、夕日子さん」
柔らかな物腰の女性の声で瞼を開ける夕日子。
先ほどまでサッカースタジアムに居たはずが如何なる妖術か。
彼女は己の状況を確かめるため四方を見渡す。

中天には紫雲垂れ込める魔界の空があり、
足許から前方には、不気味なツタが覆い茂る石造りの古城らしき建物があり、
傍らには和服姿の杉浦日向子が微笑を浮かべて佇立しており、
古城の奥からはざわざわと、
得体の知れないさざめき声が伝わってくる。

一通り夕日子が状況を確認したのを見計らい、
彼女の背を軽く包み込み古城へと誘う杉浦。素直に従う夕日子。
古城―――城の形をした、巨大なる魔物―――見えない学校。
冥府の主・妖魔王の寝床であり、
使徒たちの学び舎である古き洋城は、
無機物の中に生命と自我を持つと言われており、
闇の狭間の住人を温かく包み込み静かに見守っている。

霞みがかった城が建っている場所は、
城と一体化した崩れかけの大岩の上。
夕日子は岩の端から崖下を眺めてみたかったが、
杉浦が待っているのでやめた。
589死を生きる古城の中で:2005/07/16(土) 15:46:36 ID:iKmmkXRL0
下には海があるのか、それとも無限の奈落があるのか、
もしかしたら古いアニメ映画みたいに空中に浮いているのか。
気にはなったが確かめる時間はなさそうだ。

 「行きましょう夕日子さん」
静かに促され、呼ばれた娘は俯きながら芝を踏みしめ、
やがて2人は並んで古城の門をくぐった。



 「ようこそ、見えない学校へ」
夕日子を最初に出迎えたのは、麻宮。彼は優雅な挙動で客人を迎え入れる。
だが直後に城内のホールから奇声が発せられ、
麻宮は心底疲れた顔で眉間にシワを寄せた。

 「うおおーカワイイ女の子が来たぜぇー!」
 「よーねえちゃんカレシいんのー?」
 「年いくつ?」
 「処女?」
無遠慮に質問を飛ばして来る、むっさい男たち。
あんど捜索組や電器店にいたはずの新沢組―――ごっそり誘拐されたギャグ作家たちだ。
彼らは皆囚人服のような、シンプルな白い服を着せられている。

 「うっさいわお前ら!黙ってわしの説明を聞け!」
ぺっぺっとツバを吐くように牽制する、彼らの前でふんぞる小林ゆき。
金田一を超える小柄がゆえか、声が地面から聞こえるかのよう。
手に書類を持っており、床に体育座りする漫画家たちの前をツカツカ行き来する。

そして夕日子にも白い服が手渡される。
戸惑いながらも別室でそれに着替えた後、
床座りの男たちとは離れた、壁近くの椅子に着席させられた。
ゆきが書類を見ながら改めて1から『説明』を始めた。
590死を生きる古城の中で:2005/07/16(土) 15:47:24 ID:iKmmkXRL0
 「オホン。あー、よいか?近頃地上は何かと物騒じゃ。
 特に漫画家にとって辛い時代である。そこへとどめを刺すように、
 全漫画家に感染し宿主を殺してしまう恐ろしいウィルスが生まれたのじゃ!」

ごくりと唾を飲む音が古城のホールに響く。
夕日子も胸の前で拳を握り、動揺する自分を抑えた。

 「だが安心するのじゃ漫画家ども。お前らは我が王城に選ばれたのよ。
 我らが開発した氷室の棺──
 コールドスリープ装置と言った方が通じ良いな。
 お前らはウィルスの来ないこの異界の城で、眠りに就き時を待て。
 有効な治療法が見つかれば起こしてやる。
 もう一度言う。お前らは選ばれし者たちじゃ。誇りを持って棺に入るがよい」

ゆきが厳然と言葉を進めるごとに、
ざわついた空間が奇妙な熱気を帯びだした。
<よくわからないが彼らは自分たちを助けてくれるらしい>
ゆきの言葉を譜面通り受け止めた漫画家たちが、
互いを見合わせ強張った笑顔を交わす。
そんな彼らを暖かく微笑んで見守る麻宮以下古城の住人たち。

 (そんな話、聞いてない。おかしいわ、何か裏があるはずよ。
 でも・・・従わなければ、貞本さんは助からない?私はどうすれば)

動揺する夕日子の肩に、傍らに立つ杉浦の手が置かれる。
 「大丈夫ですよ。これは彼らを言いくるめる<嘘>です。
 あなたたちは棺の中で眠っている間、ウィルス消滅のための“素体”になります」
 「・・・素体、って?」
 「何かを生み出す素となる身体の事です。別の意味もありますけど。
 あなたはただ、棺の中で愛する人の夢を見ればいい。
 その力が最終的に、全てを救うエナジーとなるのですよ・・・」
591死を生きる古城の中で:2005/07/16(土) 15:48:14 ID:iKmmkXRL0
氷室の棺――やや旧世代的な意匠に呪術的紋様を施されたカプセルが、
壁一面にずらりと埋め込まれた巨大なフロアに案内される漫画家たち。
杉浦に背中をさすられながら、夕日子もそこに移動する。

人ひとり眠るスペースのあるカプセルが壁奥から引き出され、
おずおすと横たわる夕日子。そんな彼女の手を包むように握る杉浦。
まるで母と娘かと、錯覚するような光景。
 「ここで眠れば私の力が治療パワーに変換されて、貞本さんを助けられるのですね」
 「ええ、これはそういう装置です。醒めぬ夢の中に、
 新たな命を生み出します。さあ、おやすみなさい・・・良い夢を」

夕日子が目を閉じ、杉浦がその場を離れる。
透明な蓋がゆっくり下りて、カプセルを完全に密閉する。
同時にカプセルは再び壁の中に押し込まれ、容器内に特殊な催眠煙が射出された。
意識を手放す前、瞼の裏で最後に彼女が見たものは・・・。

 ウィルス。治療。選ばれし者。全ては<嘘>と言いましたが、
 どこまでが<嘘>なのですか。私は本当にあなたたちを信じていいのですか。
 そして私自身の存在すら<嘘>だとしたら、私はどうしたらいいのでしょう。
 教えてください。貞本さん。



 「皆ご苦労。これで捕らえた素体は10数名ほどか。河下はどうした?
 時間がないな、とりあえず次の段階『拷問実験』に入る。
 ・・・不死に近い肉体を持つ者が、棺の機能で強制的に悪夢を見せられ続け、
 精神的に死を迎えた時、果たしてどう変化するのかデータが必要だ。
 【三種の神器】最後の一つ。神の核<炎魂>は、必ず我らの手中に収めてくれる」

こうして古城に囚われた眠り姫。悪魔のいばらを切り裂き、待ち人は果たして現れるのか・・・。

          →→→えなりの奇妙な冒険・第26部に続く→→→
592作者の都合により名無しです:2005/07/16(土) 15:52:05 ID:iKmmkXRL0
遅くなりました・・・
新スレ立ててみます。ダメだったら夜にでも別の方試してみてください。
テンプレはhttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/3903-3909です
来週には今スレまとめ作っておきますね
593作者の都合により名無しです:2005/07/16(土) 16:01:54 ID:iKmmkXRL0
ダメでした('A`)
テンプレに3916に書いた変更部分の追加をお願いします
他の方々新スレヨロ・・・
594作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 00:41:56 ID:Ego542wy0
俺も無理だった
頼むぜ、誰か〜
595作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 04:29:58 ID:dSz3O5A10
ひゃっほー、初めてスレ立てしたぜ!テンプレありでした!
まちがってないよね?

リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第26部 
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1121541845/
596作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 06:53:33 ID:CZwfTYKQO
ヒャッホー>2以降の天ぷらを上の指示に従って訂正しつつ次スレに貼ってくれー(笑)
携帯からじゃ_
597作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 06:58:34 ID:CZwfTYKQO
ごめんうまく更新できてないだけだった(笑)
テンプレ完璧!乙!!
598作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 10:04:12 ID:KLvEtztp0
>>595
乙!GJ!
599作者の都合により名無しです:2005/07/18(月) 00:10:32 ID:m/2POJdr0
よし、このスレのまとめ頑張るぞ!
でも落ちるの恐いから保守
600作者の都合により名無しです:2005/07/19(火) 03:24:28 ID:adOumqr80
保守600!
601作者の都合により名無しです:2005/07/20(水) 09:31:04 ID:gZTTrcvo0
鋭意制作中!
602作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 11:16:40 ID:pjyODgTQ0
今日〜明日にはできるかな?保守
60325部まとめ(1/5):2005/07/22(金) 00:17:47 ID:hgIJRTis0
           ◆えなりの奇妙な冒険・25部まとめ◆

克 『もっと実況の仕事ください!!こんばんわ克・亜樹です。
  25部終了という事で、毎度恒例の専ブラ専用まとめコーナーを、
  やらさせていただきます。さてキリのいい数字ですが何部まで行くんでしょうね。
  このスレにお客様や書き手様がおられる限り、私どもも頑張らせていただきます。
  それでは張り切って参りましょう!!えなりスレ25部ハイライトです!!』

 ●トーナメント・サッカー編

スカッシュ(休憩中) ―――――――― >23 >24 >25

分断(91-92/180) ――――――――― >54 >55
加速する決戦(93-97/180) ―――――  >58 >59 >60 >61 >62
“異”次元の戰い!!!(98-101/180) ― >71 >72 >73 >74

敵陣突入(102-103/180) ―――――― >82 >83
暗雲(104-106/180) ―――――――― >108 >109 >110

Dead or Alive(107-109/180) ――――  >127 >129 >130
真価(110-112/180) ―――――――― >145 >146 >147

化け物(113-116/180) ――――――― >192 >193 >194 >196
遅れてきた男(117-119/180) ――――  >219 >220 >229>230
鷹は舞い降りた(120-122/180) ―――  >254 >255 >256

流星のごとく(123-124/180) ――――― >262 >263

黄金の鷹(125-127/180) ―――――― >267 >268 >269
津波(128-131/180) ―――――――― >276 >277 >278 >279
そしてターキーも舞い降りた(132-134/180) 
              ――――――― >292 >293 >294
60425部まとめ(2/5):2005/07/22(金) 00:18:49 ID:hgIJRTis0

逆境イレブン ――――――――――  >300 >301
出っ張れ!城平! ―――――――― >324


力の限り…!!(135-138/180) ――― >311 >312 >313 >314
S・G・G・K(139-141/180) ―――――  >334 >335 >336>337
雷のごとく(142-146/180)  ―――――  >340 >341 >342 >345 >346

料理人グルグル(147-149/180) ――― >349 >350 >351
猛獣達の饗宴(150-154/180) ―――― >356 >357 >358 >359 >360
無我(155-157/180) ―――――――― >368 >369 >370


再開直前 ―――――――――――― >396 >397


衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(158-160/180)
             ―――――――― >492 >493 >494   
決意(161-165/180) ―――――――― >531 >532 >533 >534 >535
再戦(166-167/180) ―――――――― >569 >570
剣問答(168-169/180) ――――――― >580 >581


 ●KIYU編

暗黒ルートパラダイス  ――――――― >29 >30

アウェイキング・デイ ―――――――― >156 >157 >158 >159 >160
≪NUMBER10≫  ―――――――――  >175 >176 >177 >178 >179
空も飛べるはず  ―――――――――  >405 >406
希有<KIYU>  ―――――――――― >430 >431 >432 >433
60525部まとめ(3/5):2005/07/22(金) 00:19:42 ID:hgIJRTis0
 ●神器争奪編〜サッカー場の変態たち

ベストプレイス・ハンターズ ―――――  >69(訂正>70) >119 >120

さよなら?久米田先生 ――――――― >85 >86 >87 >88 >89

偽りの少女、深遠を眺める女。 ―――  >91 >92 >93

《魔女》とは―― ―――――――――  >308 >309 >310

驚異!!羅門衆集結!! ――――――――  >375 >376
柳田君の念力珍作戦! ――――――  >555 >556

死を生きる古城の中で ――――――― >588 >589 >590 >591


 ●Aブロック裏路地乱闘編

紅き魔弾 ―――――――――――― >32 >33 >34

奇襲 ―――――――――――――― >142 >143 >144
獣の牙 ――――――――――――― >202 >203 >204 >205 >206

Gの悲劇 ―――――――――――― >400 >401

去来する恐怖 ―――――――――― >410 >411 >412 >413 >414 >415


 ●格闘家頂上血戦編

粉砕  ―――――――――――――  >121 >122 >123 >124 >125
鬼と修羅〜終結〜 ―――――――― >133 >134 >135 >136
60625部まとめ(4/5):2005/07/22(金) 00:20:39 ID:hgIJRTis0

WILD BUNCH ――――――――――― >163 >164 >165 >166 >167

裏御伽よもやま話2 ――――――――  >512 >513 >514 >515 >516


 ●放浪〜えなり姉弟編

放浪者<VAGABOND>  ――――――― >225 >226 >227 >228
外道と死神  ―――――――――――  >237 >238 >239 >240

et cetera <エトセトラ> ―――――――  >566

マスター・ドールガン・マスター ―――― >574 >575


 ●遥かなる地のイベント編

サルガッ荘風雲録〜和郎のないしょ ― >18 >19 >20
夏とサルガッ荘と私 ―――――――― >549 >550 >551

最凶料理人、登場!! ――――――  >557 >558 >559 >560 >561


 ●東京・クラウドゲート編

傲りと誇り〜血花狂咲〜 ――――― >169 >170
      〜絶命狂牙〜 ――――― >215 >216 >217 >218
      〜戮牙蹂躙〜 ――――― >233 >234 >235 >236
      〜死淵追憶〜 ――――― >329 >330 >331 >332 >333
      〜妖幻歌姫〜 ――――― >391 >392 >393
      〜人竜励起〜 ――――― >420 >421 >422 >423 >424
60725部まとめ(5/5):2005/07/22(金) 00:22:38 ID:hgIJRTis0
 ●鹿児島湾・エリア88紛争編

(荒川・渡辺※夕方)
死地 ――――――――――――― >35 >36 >37 >38 >39
死地での遭遇 ――――――――― >186 >187
錬金術師とバイオリン弾き、会話中  >210 >211 >212 >213
錬金術師とバイオリン弾き、会話中2 >526 >527 >528
対話終了、状況開始 ―――――― >529


(福地&十傑集〜vsゆで※お昼前後〜)
白銀vs黄金 ―――――――――― >45 >46 >47 >48 >49 >50

十傑集査定試合 ―――――――― >96 >97 >98 >99

無情なる野分の風 ―――――――  >325 >326
不条理対決!! ―――――――― >380 >381 >382 >383
内臓が無いぞう(ないぞう) ――――  >394
不死身のゆで将軍 ――――――― >395
史上最悪の戦い ―――――――― >416 >417
真の力は沈黙の奥深く!! ―――  >434 >435 >436
ダブルノックアウト ―――――――  >437
ふくちくん、ハイ! ―――――――  >464

絶望の中の光 ――――――――― >474 >475 >476 >477 >478 >479 >480 >481
福地死す ――――――――――― >497
嵐を駆る者 ――――――――――  >518 >519 >520 >521
戦闘直前 ――――――――――― >538 >539 >540 >541 (訂正>544)

克 『今回は以上です!続きは26部http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1121541845/
  にてお楽しみください!!(ピックアップ>603>604>605>606>607)それではまた〜克でした〜』
橋口『おのれ克解王・・・私にも仕事を残さんか!8点減点だ!!』     ←TO BE CONTINUED...
608作者の都合により名無しです:2005/07/22(金) 00:51:12 ID:Z/K7owCu0
まとめ乙。
ここが抜けてますよ つ

衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(160/180) 492-494
609作者の都合により名無しです:2005/07/22(金) 00:54:07 ID:hgIJRTis0
衛藤・ザ・ドルフィン(´∀`)(158-160/180)
             ―――――――― >492 >493 >494

む?>>604これじゃまずかった?
さては494だけ微妙に顔が違うとか
610作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 15:53:41 ID:mcxkdKdr0
ああああ杉浦さんが亡くなられてしまったぁぁぁ
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050725-00000011-yom-soci
まだお若かったのにガンだなんて・・・
611作者の都合により名無しです
けっこう容量余ってるなあ