【2次】漫画SS総合スレへようこそpart23【創作】

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 園田はシコルスキーの手から鍵の束をぶん取って、足取りも軽く愛しの我が
家へ帰ってしまった。
「ソノダー! 待てコラー! 死刑囚ー! メシー!」
 今は正午をちょっと過ぎたあたりだった。シコルスキーへの食事の支給は園
田の仕事だが、その園田は昼食のことなどケロリと忘れていた。シコルスキー
が泣いても喚いても、園田は戻ってこなかった。家に帰って風呂に入ってビー
ルを呑んで、あとは寝るだけなのだろう。
 シコルスキーは騒ぎ疲れてその場にへたり込んで、力のない目で天井を見上
げた。ところどころにこびりついた天井の染みが、なんだか死刑囚の顔に見え
る。ドリアン、ドイル、柳、スペック、ピロシキ。喉を鳴らしてピロシキに伸
ばしかけた手を、シコルスキーはぎゅっと握りしめた。
「オレは諦めん! こんなことでは諦めんぞ!」
 大擂台賽で優勝するまで死ぬ訳にはいかない。シコルスキーの目が再び強く
輝き始めた。勢いよく立ち上がり、老夫婦の部屋にノックもせずに押し入った。

「あー、食った」
 シコルスキーが部屋を出たのと同時に、内側から鍵を閉める音がした。老夫
婦が激しく言い争う声が聞こえるが、そんなのシコルスキーには全然関係ない。
ともかくこれで腹は満ちた。あとは大擂台賽出場のためのメンツ集めだ。
「さて、どうしようか」
 シコルスキーは壁にもたれかかって、口にくわえた爪楊枝を上下に揺らしな
がら考えた。死刑囚がダメならば、別の筋から人を集めてもいい。真っ先に思
い当たるのは地下闘技場で闘ったジャックとガイアだが、連絡先が分からない。
プロレスラーの猪狩完至とも面識があるが、ちょっと実力的に心許ない。さっ
きの老夫婦に声をかけてもいいが、彼らは自分のことをあまり好きではないよ
うだ。
「うーん」
 考えれば考えるほど知り合いが少ない。やはり最凶死刑囚の五人組がベスト
メンバーに違いなかった。シコルスキーはスペックの監房をちらりと見た。
「まあ、いないよりはマシか」
 シコルスキーはあまり気乗りのしない顔で、監房の扉に手をかけた。