【2次】漫画SS総合スレへようこそpart23【創作】
「大擂台賽だとお!」
文字の形のブロックを吐き出したみないな声で叫んで、シコルスキーは新聞
紙を真っ二つに引き裂いた。刑務所の薄暗い廊下にはシコルスキーと園田警部
の他には誰の姿もない。シコルスキーは破った新聞にもう一度じっくり目を通
して、そして園田に尋ねた。
「大擂台賽の記事なんてどこにも載ってないぞ」
「そんな昔の新聞には載っとらん。たった今、中国でやっとるんだ」
シコルスキーが破いたのは読むための新聞ではなく、掛け布団替わりの古新
聞だった。最凶死刑囚として名高いシコルスキーには警察官のファンも多く、
刑務所内でもVIP級の待遇を受けていたのだが、地下闘技場で雑魚のガイア相
手に醜態をさらした罰で特別監房を追い出され、今は廊下で寝泊りをしている。
薄い新聞紙にくるまってスンスン泣いていたところに園田がやってきて、中国
で大擂台賽という百年に一度の格闘大会が開催されているという話を聞いた。
「オレも出るぞ!」
シコルスキーは涙を拭いて立ち上がった。敗北を知りたくてやってきた日本
で何度も何度も敗北を味わい、シコルスキーは敗北がすっかり大嫌いになって
いた。今はひたすら勝利の美酒に酔い痴れたい。そんなシコルスキーの願いを
見透かしたかのように、園田はケツをかいていた手をズボンから抜いてシコル
スキーの鼻先に近づけた。
「臭くない! いいからオレも大擂台賽に混ぜろ!」
シコルスキーは園田の手を邪険に振り払って懇願した。しかし無情にも園田
の答えはノーだった。
「ダメ。だってお前死刑囚だもん」
もっともな話だった。園田は自分の手の平をじっと見つめて、そして匂いを
嗅いでみた。
「臭いじゃん」
「どっちでもいい! その死刑囚を廊下にほっぽり出して知らん顔を決め込ん
でいるのはどこのどいつだ!」
これまたもっともな話だった。見事に切り返されて、園田は苦笑いを浮かべ
ている。シコルスキーはここがチャンスとみて、もう一つお願いをした。