【2次】漫画SS総合スレへようこそpart23【創作】

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1作者の都合により名無しです

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレや現在の連載作品は>>2以降テンプレで

前スレ
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart22【創作】
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1104585872/
まとめサイト 
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
2過去スレ:05/02/01 02:46:07 ID:W2z3DyDE0
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/01.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 2
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/02.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 3
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/03.htm
俺たちでオリジナルストーリーをつくろうぜ
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/04.htm
「バキ」等の漫画SSスレPart 5
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/05.htm
バキスレだよ!! SS集合! Part 6
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/06.htm
バキ小説スレ Part7
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/07.htm
【総合】バキスレへようこそ Part 8【SSスレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/08.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart9【スレ】 (「少年漫画板」移転)
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/09.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart10【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/10.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart11【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/11.htm
3過去スレ:05/02/01 02:47:23 ID:W2z3DyDE0
【バキ】漫画SSスレへようこそpart12【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/12.htm
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart13【SS】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/13.htm
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart14【SS】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/14.htm
【バキ】漫画ネタ2次創作SS総合スレP-15【ドラえもん】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/15.htm
【2次】漫画ネタSS総合スレ16【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/16.htm
【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/17.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart18【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/18.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart19【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/19.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart20【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/20.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart21【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/21.htm
4連載作品:05/02/01 02:49:09 ID:W2z3DyDE0
※ほぼ連載開始・復活順 ( )内は作者名 リンク先は第一話がほとんど

ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
4×5・AoB(ユル氏)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/4x5/1-1.htm
  http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/yuru/03-1.htm
ラーメンマン青年記(パオ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ra-men/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dio/01.htm
空手小公子愚地克己(メカタラちゃん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mekatara/01.htm
5連載作品:05/02/01 02:50:30 ID:W2z3DyDE0
上/輪廻転生 中/帰ってきたドラえもん外伝 下/オーガのリング(草薙氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/rinnne/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kaedora/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kusanagi/o-01.htm
のび太と大ローマ(名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ro-ma/00.htm
虹のかなた(ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
蟲師(ゲロ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/gero/01.htm
オムニバスSS劇場(バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
しけい荘物語・番外編(サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sikei/extra-01.htm
上/ギャグSS日和 下/殺人鬼とオーガの鬼事(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/02-1.htm
忍者の証(青ぴー氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/aopi/01.htm
6ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/01 02:53:44 ID:W2z3DyDE0
ごきげんよう、皆様。
ちょうど投下しようとしたところ、どなたもスレを立てられないようなので私が立てさせていただきました。
初スレ立てなのですごく緊張しました。不備があったら申し訳ありません。

夜にでも、続きを投下させていただきたいと思います。
それでは。
7作者の都合により名無しです:05/02/01 09:46:07 ID:OW9zg/910
ミドリさん乙ですー。
今自分が立てようと思ったんですが、ミドリさんが立てられれて
ちょっとびっくりしたw
夜のSS投下、楽しみにしております。
8作者の都合により名無しです:05/02/01 11:07:42 ID:vyVv+nodO
>バレ氏
完全に壊れてるなブルマ。
俺がベジータならこんな女ぜったい嫌だ。

>青ぴー氏
ガラかっけぇ。
呪文をあっさり回避するシーンが特にイイ。

>ミドリ氏
スレ立ておつ〜

夜も期待してます。
9殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/01 11:24:23 ID:U1LOqW1V0
深夜。
人識は大型のバイクに乗って(当然殺した相手の私物であった)アメリカの田舎町の道路を走っていた。
誰もいない道を走りながら、つらつらと益体のないことを考える。
今ごろ日本ではどんな曲が流行っているのだろうかとか、何か甘いものでも食べたいとか、どうでもいいことで
あったり、あるいは今ごろ零崎の連中、ことさら出来立てのあの妹は死んだ兄貴の敵討ちに大忙しだろうか、
などなど、多種多様であった。
「かはは・・・あの<欠陥製品>ならこんな感情、<戯言だよ>なんて放り投げちまうんだろうな・・・」
呟きながら前方に目を遣ると―――
一人の男が、進行方向ど真ん中に立っていた。このまま進めば、間違いなく轢いてしまうだろう。
「まあいいや。相手の方がどいてくれるだろ。どかなくても死ぬだけだし」
即断即決。人識はスピードを上げて男に突っ込み―――そして、その男は避けようともしなかった。
それどころか、真っ向からバイクを両手で受け止めていた。
「な・・・!?」
さすがの人識も呆然とその男を見つめる。その男はニイっと笑って言い放った。
「てめえが―――零崎か?」
「――――――!」
人識は瞬時にバイクから飛び降りて、反射的とすら言えないほどに素早くナイフを取り出し、男と向かい合う。
その瞬間、恐ろしいほどの戦慄が人識を襲った。目の前の男から放たれる圧倒的な人外感が精神をキシキシと
締め上げる。この感覚を―――人識は知っていた。
かつてたった一人だけ、これと同じ感覚を人識に味わわせた<人類最強の請負人>―――
男の放つ威圧感は、嫌が応にもそれを思い出させる。
「てめえは・・・誰だ?」
「範馬勇次郎サ」
その問いに答えたのは別の声だった。声の方向に目を向けると、いつ現れたのか、凄まじいほどの筋肉を纏った
男がいた。しかしその男の事よりも人識にとって重要なことは、範馬勇次郎という名前だった。
それは、戦闘能力の世界において<彼女>と対を成すほどの名前である。
「・・・<地上最強の生物>・・・か・・・」
「知ってるんなら話は早え」
10殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/01 11:25:42 ID:U1LOqW1V0
男―――勇次郎は凄絶な鬼の笑顔を浮かべる。
「最近退屈しててなあ・・・いい遊び相手が出来たぜ」
「・・・遊び相手、だと?零崎相手で、か?」
人識は呆けたように言う。その言葉が勇次郎の本音だというならば、はっきり言ってイカレている。
退屈だから、なんて理由で零崎に敵対しようなど―――狂っているにもほどがある。
「・・・そりゃあ傑作すぎるなあ・・・。それで、そっちの外人さんはなんなんだ?」
「私はただの案内人で見届け人サ。それと、勇次郎がキミを倒した後で、キミが生きてルようなら、キミを捕まえテ
刑務所へと送ル。―――ビスケット・オリバというのガ私の名前サ。裏社会じゃソコソコ有名なつもりだガ?」
「オリバ・・・<地上最自由><ミスター・アンチェイン>か。・・・全く、今夜はどうなってやがんだ。超有名人の
お二人さんの御出座しとはよ。サインでも貰っとくかねえ?」
軽口を叩きながらも、目線は勇次郎から離せない。この男の前で一瞬でも隙を見せれば、即座に自分の人生は終わって
しまうだろう。
「で?その地上最強様が俺と直々に遊んでくれるってのか?」
勇次郎は笑いながら答える。
「精々楽しませろよ・・・殺人鬼」
言い終わるのを待たずに勇次郎は人識に向けて一瞬で距離を詰め、大砲の如き拳を叩き込む。大抵の相手はこれで
終わるところだったが、人識はそれを紙一重で回避した。それが出来るのも人識の持つ人類最速の運動能力あっての
ことだったが―――はっきり言って、接近戦では圧倒的に不利だ。
しかしながら人識は―――それでも笑っている。これほどまでの窮地で、なお彼は笑う―――
「かはは・・・あんた、本気で俺と殺り合うつもりだな?OKOK、ここまで熱烈なラブコールを受けたんだ。
応えてやんなきゃ男がすたる。俺は殺人鬼であんたはオーガだ。鬼は鬼同士、共に喰らって友喰いだ。全身全霊で
殺しあおう。それじゃあ――――――

殺して解(バラ)して並べて揃えて―――晒してやるよ」
11殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/01 11:26:55 ID:U1LOqW1V0
そして人識は勇次郎からおよそ3メートルの距離にまで近づき―――
その瞬間、勇次郎は身体に何かが纏わり付くような感覚に驚愕の表情を浮かべる。
「ぬうっ!?」
勇次郎は即座に飛び退くが―――腕、脚、そして胴体に、致命傷とまではいかないものの、何かに切り刻まれたかの
ようなダメージを受けた。
「ひゅう・・・さすが地上最強なんて名乗るだけはあんな。今のは絶好のタイミングだったってのに、
その程度の怪我で済ますかよ」
人識は軽口を叩きつつ、冷静さを取り戻していた。相手は自分の攻撃でダメージを受けた。最強とはいえ、決して
不死身ではないのだ。
攻撃が効くのならば―――勝機がないわけではない。
だが―――次の勇次郎の言葉に、人識は再び顔色を失くす。
「ふん―――なるほど。<曲弦糸>か」
「―――!?」
まさか・・・今の動きだけで、見破ったのか!?
「曲弦糸・・・極細の糸を指先の動きだけで自在に操り、それはさながら蜘蛛の糸のように相手に巻き付き、
そして速度と摩擦によって一瞬でバラバラにすることも可能。達人なら数十メートル離れた相手をあっさり
殺してのけるそうだが、てめえのは精々数メートルってとこだな」
「・・・・・・」
「今ので決められねえのは失敗だったな・・・タネさえ分かりゃあこんなもん、幼稚園児のお遊戯だ」
「・・・・・・」
「信じられねえならもう一度やってみな・・・大サービスで、喰らってやる」
「・・・・・・ちっ」
挑発だと分かっていながら、人識は再び<曲弦糸>を放つ。
そして勇次郎は―――それを避けようとすらしなかった。
12サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/01 11:30:13 ID:U1LOqW1V0
投下完了です。

ミドリさん、スレ立て乙であります。
SSも楽しみにしております。

曲弦糸の説明は戯言本編に比べるとかなり適当です(汗)
13作者の都合により名無しです:05/02/01 11:37:21 ID:8v++zyGqO
サマサ乙
14サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/01 11:38:56 ID:U1LOqW1V0
今戯言を読んで確認したら、<曲弦糸>じゃなくて<曲絃糸>でした・・・。
投下前に確認しとけよ、自分・・・OTL
ごめんなさい。
15サマサ ◆y5fw1CKbDY :05/02/01 11:41:15 ID:U1LOqW1V0
そして人識は勇次郎からおよそ3メートルの距離にまで近づき―――
その瞬間、勇次郎は身体に何かが纏わり付くような感覚に驚愕の表情を浮かべる。
「ぬうっ!?」
勇次郎は即座に飛び退くが―――腕、脚、そして胴体に、致命傷とまではいかないものの、何かに切り刻まれたかの
ようなダメージを受けた。
「ひゅう・・・さすが地上最強なんて名乗るだけはあんな。今のは絶好のタイミングだったってのに、
その程度の怪我で済ますかよ」
人識は軽口を叩きつつ、冷静さを取り戻していた。相手は自分の攻撃でダメージを受けた。最強とはいえ、決して
不死身ではないのだ。
攻撃が効くのならば―――勝機がないわけではない。
だが―――次の勇次郎の言葉に、人識は再び顔色を失くす。
「ふん―――なるほど。<曲絃糸>か」
「―――!?」
まさか・・・今の動きだけで、見破ったのか!?
「曲絃糸・・・極細の糸を指先の動きだけで自在に操り、それはさながら蜘蛛の糸のように相手に巻き付き、
そして速度と摩擦によって一瞬でバラバラにすることも可能。達人なら数十メートル離れた相手をあっさり
殺してのけるそうだが、てめえのは精々数メートルってとこだな」
「・・・・・・」
「今ので決められねえのは失敗だったな・・・タネさえ分かりゃあこんなもん、幼稚園児のお遊戯だ」
「・・・・・・」
「信じられねえならもう一度やってみな・・・大サービスで、喰らってやる」
「・・・・・・ちっ」
挑発だと分かっていながら、人識は再び<曲絃糸>を放つ。
そして勇次郎は―――それを避けようとすらしなかった。
16サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/01 11:42:55 ID:U1LOqW1V0
>11の改正版を一応投下しようと思ったら、なんか変なトリップに・・・
どこまで馬鹿やれば気が済むんだ・・・情けない。
17作者の都合により名無しです:05/02/01 14:56:39 ID:A36KEKht0
まずは1さんことミドリさん、スレ立てお疲れ様です。

>バレさん
ああ、心にヘビを飼ってるなブルマ。恐ろしいw

>青ぴ氏
バスタード北ー!ガラ一番好きです。頑張って下さい

>サマサ氏
むう、戯言知らんが面白い。勇次郎苦戦しそうですな。
18忍者の証:05/02/01 16:39:27 ID:XFMWlGOu0
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/aopi/01.htm


こいつ、ひょっとして拾いモン?

目の前をズンズン歩いていく巨漢を舐め回すように見ながら、アタシはそう思った。
ニンジャ。
ああ、なんて甘美にして勇壮にしてイカサマ臭い(笑)響きなのかしら。
魔法使いや戦士などのポピュラーなクラスとは違い、ニンジャは情報が隠されている。
断片的な噂しかアタシは知らない。ただ、その実力に関しては疑う余地はないらしい
戦士以上の戦闘能力を誇り、盗賊以上に素早く、騎士以上に剣技に長ける。
しかも、「忍術」という魔法とは系統の違う技術を使いこなす。

その上にマスター。上級職ってヤツ。並のニンジャより格上。
おそらく、想像を絶する戦闘能力を持っているに違い無いったら違い無い。そうに決めた。
その証拠にさっき、天才魔法使いのアタシの超高等呪文を避けているし。
こいつなら、ひょっとしてひょっとするかも。あの、私たちの怨敵の、アイツを……。

アタシは営業用のスマイルで『ガラ』と名乗るニンジャへと媚を売る事にした。
19忍者の証:05/02/01 16:40:56 ID:XFMWlGOu0
まぁ〜だまとわり付いてきやがる。この『メイ』とか言うハーフエルフ。

追い払うのも面倒だから放っておいたが、そろそろウザったくなって来た。
「あ〜。おめえ、そろそろおウチに帰んな。親が心配してるぜ」
メイはニコニコと笑いながら首を振る。どうあってもまとわり付くらしい。
やがてメイは、オレにとって痛いところを突いて来やがった。
「ね、何処行くのガラ? その前に、ここが何処だかわかってる?」
「……初対面で呼び捨てかい。ん、そうだ、ここは何処だ?」
「ダメ。教えてあげない。その代わり、ウチに来てくれたら教えてあげる」
「ウゼえな」

オレは勝手についてくる嬢ちゃんと供に、小一時間ほど野道を歩いた。
おかしい。洞窟を出てから奥深い森の風景が続いていたが、その景色が一向に変わらない。
いや、まるで同じ場所をグルグルと彷徨っているようだ。
遭難? 一瞬そう思ったが、忍の訓練を積んできたオレが迷うことなどありえねえ。

オレはケツを掻きながら、少し苦笑してメイに言った。
「やれやれ、オレの負けだお嬢ちゃん。森全体に、魔法の結界を張ってあるらしいな」
「そ。来るしかないの、アタシと。そうそう、アタシを呼ぶ時はお嬢ちゃんはダメ。
 『メイ』って呼んで。呼び捨てでいいわ。アタシもアンタを呼び捨てにするから」
「へいへい、わかったわかったお嬢ちゃん」
「な〜んも分かってないじゃないっ」

おかしなハーフエルフの嬢ちゃんとしばらく道を供にする事になった。
仕方ねえな。森全体を張り巡らされた結界を自分一人で抜けるのは、結構ホネだ。
それにここが何処か、忍者砦までどのくらい離れているのかも知らなきゃならねえ。
性格的に深く考えるのは苦手なので、オレは気楽にコイツの村へと行く事にした。
20忍者の証:05/02/01 16:41:55 ID:XFMWlGOu0
見込み違いだったか……。

アタシは愕然としながらも、営業スマイルを崩さずに失望していた。
まず、隙だらけ。ガラはさっきから一歩前をずんずん歩いているけど、背中ガラ空き。
アタシがその気になって呪文を唱えたら、真っ黒焦げになる事間違いナシ。
そして、下品。もうケツや股間を掻いたり、欠伸を連発して口の端にヨダレ付いてたり。
レディの前というのにまったくお構いナシ。ダメだこりゃ。使えねえ。

しかし突然、ガラは止まった。アタシは息を呑んだ。
右手には鬱蒼とした深い森林が広がり、左手にはまっすぐと小道が伸びている。
「ふーん、そーなんだー。この辺かー」
ガラはのんびりと間の抜けた声を出しながら、まっすぐに手を伸ばす。右手の森林の方へ。
森林の光景は波紋を広げたように波打ち、ガラの手は空間へと呑み込まれる。
「当たり、みてーだな」
至極当然といった物言い。そして今度は体全体を森林の風景の中へと投げ出した。
ガラが一歩踏み出した途端、瞬く間に森林は消えまっすぐな道が現れる。

「にゃ、にゃんで分かったのよ、ここに村への入り口があるって事!?」
「おめーの視線がここらに来てから急に忙しなくなったからな。そこでこの別れ道。
 そりゃここに入り口があるって言ってるようなモンだ」

信じられない。幻影を易々と見破ったのもそうだけど、アタシの視線を探ったたなんて。
え、アンタはアタシの前を歩いたまま、一度も後ろを振り返らなかったけど?
「ま、忍者のアジトにもよくあるしな。アリガチってやつだな」
やはりアタシの見る目は間違っていなかった。
曇っていた笑顔がまた輝く。そのアタシの顔を見て、ガラは笑って言った。
「おめー、エルフにしちゃ珍しくまったく落ち着きねえな」    ……やかましいわ。
21忍者の証:05/02/01 16:43:52 ID:XFMWlGOu0
どうやら、オレの勘は当たり迷い道を抜け出たらしい。

しばらく先に集落が見える。メイの村だろう。あそこへ行けば何か情報があるはず。
おそらく、メイの振る舞いからして情報と引換えに、なにかさせられるんだろうが……。
ま、そんときゃそん時だ。行きゃあどうにかなる。必然的に足が速くなる。
メイが必死に追いすがる。が、オレの足がピタリと止まる。妙な気配に気付いたからだ。

数匹の魔の臭い。メイも気付いたようだ。魔は次第に姿を現し始めた。
この世のモノじゃねえな。違う世界から現界に迷った魔物の臭いだ。
魔物ははっきり姿を現した。成る程、レイス(邪霊)とスペクター(幻霊)か。
まあ、こいつらはどうでもいい。問題は、嬢ちゃんの方だ。オレは後ろを振り返り聞いた。
「オイオイ、エルフの魔法結界に守られている村に、何でこんな連中が出るんだよ?」

メイは答えない。もじもじと口篭り、視線を逸らす。ガキが先生に怒られた時の表情。
それだけで充分だった。罠に仕掛けたんじゃなきゃ別にいい。
多分、メイがオレを必死で村に呼ぼうとしたのは、こいつらが関係する事だろう。

オレは背なにある愛刀、ムラサメ・ブレードの柄に手をかける。
しかし、その前にお嬢ちゃんが呪文で邪霊たちに攻撃をけし掛けちまった。

おいおい……。本当に後先考えねえガキだな。まるであのバカみたいだ。
22忍者の証:05/02/01 16:45:26 ID:XFMWlGOu0
あー、もー。
何で村の入り口に到着早々、こいつらがお出迎えするのよ。もっと後でいいのに。
ガラはアタシを不審気に見る。そりゃそうでしょう。いきなり来た村で敵に遭遇。
罠を仕掛けたと思われても仕方ない。あー、もーどうすりゃいいのやら。

アタシはガラの視線を外し、レイスたちに呪文を唱え始める。
せめて、敵じゃないという事くらい分かって貰わねば、コイツの力を借りられない。
石化呪文・タラスに続くとっておきの呪文ナンバー2を詠唱し、レイスに放った。
「タイ・ト・ロー 光弾よ敵を撃て 鋼雷破弾(アンセム)!!」
アタシの放ったマジック・ミサイルはレイス目掛け飛んで行き……全弾外れた。
「あ、あれ、あれれれれ?」

「さっきの石化呪文はまあまあだったが、ありゃマグレだったかい」
ガラはそう言ってやれやれ、といった表情で頭を掻いた。
レイスとスペクターはアタシ目掛けて飛び掛って来る。パニクりまくるアタシ。
ガラは背中の刀をすらっと鞘から引き抜いた。アタシはこんな時なのに見惚れてしまう。
さっきまでの、隙だらけの雰囲気はまるで無い。

まるで、大昔の伝承にある獣王「トラ」のような闘気に包まれていた。
23忍者の証:05/02/01 16:46:22 ID:XFMWlGOu0
あの大きな刀を抜いた瞬間、ガラの体中から空気を弾くような殺気が漲り放出される。
そしてその刀。刀身はまるで氷結しているようにキラキラと妖しく光り、
不気味な底知れない切れ味と、吸い込まれるような不思議な美しさを物語っている。
明らかに、アタシたちが知る剣とは違う輝き。

ガラが一瞬でアタシとレイスたちの間に割り込んだ。は、速ーい。何時の間に?
「お嬢ちゃんは危ねえからちょっと離れて待ってな」
ガラはそう言って刀を構えた。アタシがヒイヒイ言いながら引き摺ってた大きな刀を、
まるで小枝のように軽く扱う。まあエルフはあんまり力無いけど、チョッとムカつく。

あ。アタシは後退りながらある事に気付いた。ダメだ、このままじゃ。アタシは叫んだ。
「ね、ねえガラ、その剣じゃダメだよっ。そいつら幽玄体だから、並の武器じゃ
 ダメージを与えられないよ!」
そうなんだ。こいつらは現世の怪物じゃないから、強力な魔法か祝福された武器で無いと
倒す事は出来ない。アタシはもう一度、呪文の詠唱の準備に入ろうとした。
でも、ガラはフッと鼻で笑った。不細工な顔がほんの少しだけハンサムに見えた。
「いいから黙って見てな。このムラサメは、並じゃねえよ」

全部で6匹の悪霊たちが一気に襲い掛かってきた。ガラの右手がふっと消えた。
人間より遥かに視力の高いエルフの目でも、剣閃が振り終えてから僅かに見える程度。
ちゃき、とガラは余裕気に刀を鞘に収めていた。そしてアタシにニカッと笑って言った。
「終わったぜ。じゃ、ちゃっちゃとおめえの村へ行こうや。腹減った」
アタシはポカン、として目の前の光景を確かめた。6匹の悪霊が、全て霧散していた。
すっげえ。こりゃほんっっっとうに掘り出しモンだ。嬉々として立ち上がったアタシ。
すると、目の前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「素晴らしい腕ですね。そしてその剣も。その剣、妖刀ムラサメとお見受けします。
 名のある剣士にしか扱えない、旧世界の伝説の武器の一つですね」
24青ぴー:05/02/01 16:55:36 ID:XFMWlGOu0
一人称じゃなくて普通の書き方で書けば良かったですね。
ガラ視点はともかくメイ視点が非常に書き辛いしオタ臭い…。
25青ぴー:05/02/01 16:59:50 ID:XFMWlGOu0
あ、しまった。タイトル忘れてた。
第弐話 ガラとメイ    です。
26しけい荘物語・番外編:05/02/01 19:02:49 ID:XdZWRV1R0
第十話前スレ>>549
27しけい荘物語・番外編:05/02/01 19:04:23 ID:XdZWRV1R0
最終話「出会いと別れ」

 水蒸気が黄河を打ち破るという大金星。シコルスキーは成し遂げてしまった。
 しかし、シコルスキー本人に喜びはない。間近にて四千年と対面し、その心は折られて
いた。彼を包むのは勝利という現実ではなく、ただならぬ敗北感だけであった。
「フォッフォッ……見事であった。まさか、烈を倒してのけるとは……」
 気絶している烈を担ぎ上げ、劉海王がシコルスキーを称賛する。
「いや、俺の敗けだ。昨日までは四千年など、中国拳法を神秘化するための誇張に過ぎな
いと思っていた。だが、そうではなかった。そもそも毒がなければ、今頃ここに立ってい
るのは烈海王だったはずだ……」
「一度決着した試合に対し、仮定は意味を成さぬ。君は誇っていい。烈もこの敗北を通じ、
さらなる高みへと上ることじゃろう」
 シコルスキーは苦笑いすると、オリバたちの下へ戻っていく。
「オイオイ、ナニ辛気臭イ顔シテンダヨッ! 似合ワネェゾッ!」
 スペックが励ます。すると、シコルスキーに少しだけ明るさが灯った。柳とドリアンも、
拍手をしながら声を掛ける。
「私も猛毒と名を冠せられましたが、今やシコルスキーさんの方が相応しいかもしれませ
んな」
「君には時々驚かされる……。フフフ、私もうかうかしてられんよ」
 さらにオリバも、相変わらずの暑苦しい笑顔を浮かべて待っていた。
「ブラボー、シコルスキー! 本当は祝福のハグといきたいが、残念ながら君に触れてし
まうと毒に侵されてしまうからな」
 シコルスキーは心底ほっとした。
「その代わり、ドイルが君に贈り物があるそうだ」
 彼の後ろには、ドイルが嬉しそうに立っていた。一体何をくれるというのか。
「いつもの五倍だ。受け取ってくれ」
「え……ッ! ちょッ……! 一応怪我人なんだが──!」
 強烈な閃光とともに、高熱を宿した火柱がドイルから発射された。紅蓮の炎に祝福され
たシコルスキーは、悲鳴にも似た歓声を上げる。いや、やはり単なる悲鳴かもしれない。
 ウェルダンに焼き上がった英雄。彼の勝利は、人々の記憶に強く刻み込まれた。ちなみ
に、火柱が与えた恐怖によって、シコルスキーはまたも毒を裏返させて無害となった。
28しけい荘物語・番外編:05/02/01 19:05:09 ID:XdZWRV1R0
 やがて、迎えのヘリコプターが到着する。たった二泊三日だったが、何ヶ月も滞在した
ように感慨深い。
 シコルスキーが寂と握手を交わす。
「もし道場を建てたら、一番弟子にしてくれよ」
「烈さんを倒した身体能力、体内に眠らせた猛毒……。しけい荘でもっとも恐ろしいのは、
実はシコルスキー君かもしれないな。でも、入門は許さんぞ」
 サムワン海王も、奇跡を起こしたシコルスキーに希望を見出していた。
「たとえミミズでも、コブラになれるのだな。いつか私も、コブラに化けてみせるよ」
 ヘリコプターに乗り込む六人。海王たちは機体が地平線の彼方へ消え去るまで、彼らを
見守り続けた。さらば、破天荒なゲストたちよ。

 一方その頃、皆に忘れ去られた範海王は、屋内にて未だに幻覚と対峙していた。
「なるほど、火星人か。だが、火星という低重力下で組み立てられた技術体系は、いかに
も不自然……。私も中国を代表し、いや地球を代表して立ち合おう。……いや、貴様は火
星人ではないッ! はみ出している耳毛、金星人だなッ! フフフ、あやうく罠に掛かる
ところだったよ。……ワケ分かんねェ」
 李によると、これがあと二日も続くのだ。果たして、彼は現実に戻ってこれるのだろう
か。仮想ファイトはまだ始まったばかりである。

 ヘリコプターは遠く山奥を離れ、住宅街やビルが見受けられるようになる。
「面白い奴らだったな。また会いたいものだ」
 オリバがぼそりと呟く。五人も全く同じ感想を抱いていたのか、大きく頷いた。出会い
あれば、別れあり──人生の途上における大原則を、六人は噛み締めていた。
「さぁ、もう都内に入った。また、いつもの日常が始まるぞ」
 ──いざ、懐かしきしけい荘へ。
29しけい荘物語・番外編:05/02/01 19:06:30 ID:XdZWRV1R0
 それから一ヶ月が経過した。住民たちの頭からも、海王寺での思い出が薄まりつつある
時期であった。そんな昼下がり。
 ドリアンがしけい荘へと、息を切らして駆け込んできた。本来はペテンで夕方までは帰
って来ないはず。
「近所に新しいアパートが出来たんだッ! みんな、今すぐ来てくれッ!」
 別に珍しいことでもない。しかし、ドリアンの態度は明らかに尋常ではない。仕方なく、
五人はドリアンを先導させアパート見物に向かう。
 およそ住宅地に相応しくない、中華を模したであろう建造物。そこにある真新しい看板
には──コーポ海王──信じられぬ五文字。
 オリバは口笛を吹いた。
 スペックは大声で笑った。
 柳は黙ったまま冷や汗を流した。
 ドイルは短く悲鳴を上げた。
 シコルスキーは思わず失禁した。
 「コーポ海王」に入居予定である住民は、やはり彼ら十一名だった。中から現れたのは、
今日からアパート管理人となった劉海王。
「フォッフォッ……また会えるとはな」
 別れあれば、出会いあり──人生の途上における大原則に、六人は打ちひしがれた。

 近くに海王が越してきたことを受け、彼らの生活にも少々変化が起こる。
 まず、毎日のように訪ねてくる海王が二人。寂海王と烈海王である。寂は何度断られて
もスカウトにやって来る。また、烈はシコルスキーを好敵手と認め、昼夜問わず立ち合い
を挑んでくる。現時点で両者の戦績は、シコルスキーの一勝七十六敗となっている。
 にわかに騒がしくなったアパート周辺を、嬉しそうに眺めるオリバ。人生、どんな出会
いがあるか分からないものだ。
「これだから、大家は止められねぇ」
 オリバの頭上には、さわやかな青空が広がっていた。

                             お わ り
30サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/01 19:08:55 ID:XdZWRV1R0
「しけい荘物語・番外編」これにて完結です。
五話くらいで終わらすはずが、烈やら李やら寂やらで二倍になってしまいました。
前作で海王軍団はライバルアパートとして登場する予定だったので、
晴れて番外編にて復活、となりました。
もしかすると、最終章もやるかも分かりません。

郭海皇は指摘もありましたが、実は前作で出ちゃったので出せませんでした。
消力とかいいネタだったんですが……。

あと、「ジャブ」がわりと好評で良かったです。というか、ほっとしてます。

これからも何かとお世話になると思います。
ご愛読ありがとうございました。
31蟲 ソコヨナノカ:05/02/01 22:15:22 ID:ofcPoxf70
一つ空けます。

 
32蟲 ソコヨナノカ:05/02/01 22:16:11 ID:ofcPoxf70

 僕という存在が、今日消える。
 病気ではない。中になにかがあるのだ。異物≠ェあるのだ。
 それは僕の中を駆けずり回る。姿形、性質の分からない何か――
 恐らく、それは、地球が誕生し、今に至るまで、全く存在が確認されていなかった何か≠ネのではないだろうか。
 僕が変調を覚えたのは、あの時だ。

「ねえ、まだ早いと思う……濡れてないし」
「心配すんなよ、そのうち滑らかになるって」
 あの時――僕は、当時付き合っていた女と一緒だった。
「そのうちって、乾いてると凄く痛いんだよ。だから、やめ……っ!!」
「だいじょぶだろ? 多少キツ……ッ!!」
 この時、首筋の辺りを激痛が襲った。僕の思考は瞬間何処かへ吹き飛び、口からは、痛みに耐え切れずうめきが
漏れる。何かが、体の中を駆け回っている――その時、既にそう思っていた。
「くっ……!! いてえ……いてえよぉ……」
「痛いのは……こっちだっての!」
 女に張り倒され、首筋の痛みは消えた。それと同時に頬に張られた衝撃が走った訳だが、それは最初の痛みとは
比較しようも無いものであった。
 これ以降、原因不明の痛みに襲われる際には、自分で自分の頬をばしんと張るのが常となった。これをすると、痛
みが消え失せるのだ。今思えば、衝撃で中の何かが驚いて、止まるからなのかもしれない。
 余談ではあるが、女とはほどなくして別れた。
33蟲 ソコヨナノカ:05/02/01 22:17:29 ID:ofcPoxf70

 その後、僕は病院めぐりを始めた。この痛みは何なのか、気にならないわけがなかったからだ。
 しかし、どこに行こうとも、どんなに評判のいい所へ行こうとも、それがなんなのかは分からずじまいだった。痛みの
箇所のレントゲン写真を見ても、何もおかしいものが写らないのである。これでは、医者も健康体だというしかない。C
Tスキャンなどでも結果は同じだった。
 それでも僕は、これが病気だと思いたかった。この頃には、心の深層では確信していたのだ。これは病気ではないと。
愚かしいとは思うが、僕は所詮人間だった。希望的観測に拠って生きたい。明らかに誤ったその思いが、僕に医学書を
読ませた。
 勿論、何も分からなかった。収穫といえば、僕の脳味噌が「これは病気ではない」とはっきり認識したことくらいだ。だっ
て、痛みが次々と転移し、尚且つ前の痛みの箇所がまるで何事も無かったかのようになり、その上に衝撃を与えると痛
みが失せる病など、存在するはずがないのだから。

 医学書を読み終えた次の日から、恐怖が始まる。
 忘れている。昨日読んだはずの医学書の中身をきれいさっぱり忘れていたのだ。
 それだけではない。家の住所、自分の携帯の番号、学校の名前、前の女の名前――何から何まで、思い出せなくなっ
ていた。
 今、かろうじて覚えているのは、医学書を読み終えたのは昨日だということだ。

34蟲 ソコヨナノカ:05/02/01 22:18:25 ID:ofcPoxf70

 そして、日付が変わる直前、僕は、恐ろしい答えに巡りついてしまった。
 忘れてゆく、すべて。痛みは三日前が最後だったが、それも三分もすれば忘却の彼方だろう。
 その前に、結論に辿り着こう。体内の異物は、僕の中枢に潜り込んだのだ。そして、大事な色々なものを喰っていった。
 記憶。それは、人をかたちづくるもの。それを全て喰らう――それこそが、人の崩壊を意味する。
 記憶を喰われつくされた時、僕という人間は何処かへ消え失せるのだろう。
 姿形は残るだろう。だが、それは容れ物がただ世界に放って置かれているだけに過ぎず、人間と呼ぶには心許ないもの
だと、思う。
 ただ、心臓が動いているだけ。何をするでも、思うでもない、ただのいきもの。
 それは、人間か?
 違う。人間は自我だ。自我こそ人間なのだ。
 僕は僕が消え失せるまで叫び続ける。人間は自我だ! 自我こそ人間なのだ! 人間は自我だ! 自我こそ

「良平ちゃん、起きてる?」
 母親が、息子の部屋の戸を叩く。勝手に入るのは、許されていなかったのだ。
「何か、熱心にやっているみたいね。お夜食作ってきたわ、開けて頂戴」
 戸の先からは、何も反応がない。
「良平ちゃん? まだ、起きているんでしょ? 良平ちゃん?」
 戸の先の、ひとのかたちをしたものは、何の反応も示さなかった。まるで、精巧に出来た人形のようだった。
35ゲロ ◆yU2EA54AkY :05/02/01 22:23:34 ID:ofcPoxf70
これで連載してたらどうなったかな。やばかったな。普通に蟲師書いてて本当に良かった。

というわけで、気分転換に書いてみました。タイトルは、適当です。一応蟲師のSSなのですが(体内の何か≠ェ蟲な
わけですが、そもそも蟲師のいない世界という設定なので、蟲だと分かるわけがありません)言わなきゃ絶対分かんない
ですね。読者の事を考慮していない駄作です。
ちょっと蟲師のほうが詰っている(珍しく終わりまで話が出来ているんですが、どう文章にしようかと……)んで、鬱積した
気分を晴らそうと思って書いたら、何か毒を吐き出すようなものになってしまいました。
個人的にちょい忙しくなってきたので、蟲師の次回がどうなるかは状況次第です。明日かもしれないし、五日後かもしれ
ない。纏まったらすぐ書きますので。

前スレ493
なんか、俺はバッドエンド好きな気がしてきました。今そういう気分なだけかも分かりませんが。
でも、藤子F先生とA先生なら、A先生の方が好きだしなあ。やっぱそうなのか。

>>494
最終話で孤独に……見てないから分かりませんが、ブレイドでしょうか? 

>>500
ネタはあるものではなく、そのうち出てくるものです。きっと。
ちなみに、次々回の蟲師は、風の話。それ以降は未定。

>>ミドリさん
新スレ立て乙です。

次は蟲師で。今回の影響は微塵も残しません。
36作者の都合により名無しです:05/02/01 22:25:30 ID:8v++zyGqO
投げ出します。
もう無理です。ごめんなさい。
37作者の都合により名無しです:05/02/01 23:01:51 ID:cmRPhVYD0
スタートダッシュから快調ですね。ミドリさんスレ立てお疲れ様です。

>殺人鬼とオーガの鬼事
戯言は知らないですが、この殺人鬼は強そうだな。勇次郎とオリバを前にして
格落ちしてない。しかし、ラストはやはり勇次郎か。鬼の顔が出るのか?

>忍者の証
ガラ物語は期待出来ますね。バスタで一番キャラ立ってると思う。大好き。
2人の視点を交互に、というのも面白いですね。ガラ強くてかっちょえー。

>しけいそう番外編
むう、好きな作品が終わるというのはこうも寂しいものなのか。悲しいな。
この面子本当に可愛くて好きだった。特にシコルは主役してました。乙です。

>蟲師
最初の会話の書き出しでエロかと思ったw蟲師にエロは似合わんですね。
忘れて終わる話ですか。少し怖いショートでしたね。本連載楽しみにしてます。


うーん、各職人さん絶好調で嬉しいけど、やっぱりしけい荘の最終回がショック。
もう2、3回続くと思ってた。でもサナダムシ氏、まだ何か書いてくれそうですね。
是非お願いします。楽しませてくれてありがとう。お疲れ様でした。
38ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/02 00:02:34 ID:W2z3DyDE0
ごきげんよう、皆様。前スレ305からの続きです。



校門へと続く小径まで来ても、白薔薇姉妹の姿は見当たらなかった。
小径のマリア様像へのお祈りを欠かさない志摩子さんが、裏門から帰るはずはないし。もうバスに乗ってしまったかもしれない。
(明日返そう)
急ぐことじゃないし。握りしめていた志摩子さんの腕時計をスカートのポケットにしまう。
(ジュネさんと斗貴子さんはどこにいるんだろう)
ここに来るまでに会わなかったということは、校舎の方にいるのだろうか。
来た道を逆へ辿ろうとし、祐巳はふと足を止めた。
ついでと言ってはなんだけど、ここまで来たのだからマリア様へお祈りをしていこう。
帰りにもここを通るからまたするのだけれど。お祈りなんて何度してもいいことだし。それになにより、この小径のマリア様像を前にしたら
そうせずにはいられない。習慣とは恐ろしいモノである。
マリア様の正面に立って、数秒ほど見つめ合う。
『今日も清く正しく過ごせますように』
一年生の時はそうお祈りをしていたっけ。
あれから二年経った今、祐巳がマリア様にお祈りしたいことは。瞳子のこと。由乃達山百合会のみんなのこと。そして…。
「お〜い、祐巳ちゃ〜ん!」
名を呼ばれぐるりと周囲を見渡すと、フェンスの向こう側からひらひらと手を振る聖様の姿が見えた。
蔦の絡まるフェンスの向こうは、リリアン女子大学だ。
「よっと」
かけ声と共に聖様の長い足がひらりと境界線を飛び越える。
「聖様。ごきげんよう」
「はいはい、ごきげんよ〜」
高等部にいらっしゃる頃から変わりないおちゃらけた挨拶は健在のようだ。
「祐巳ちゃん、今帰り?あれ、でも鞄持ってないね?」
「あ、私はまだ薔薇の館に用があって…」
「え〜残念〜。せっかく祐巳ちゃんと遊べると思ったのにぃ」
あまり残念がっていないような口調で、聖様が笑う。…聖様と出会ってから随分経つけど、祐巳には未だに、聖様の言葉がどこまでが本気で
どこまでが冗談なのかわからない。もちろん、そういうところも含めて「大好き」なお人なのだけれど。
39虹のかなた:05/02/02 00:05:59 ID:HK+hN3Io0
「でしたら、薔薇の館までいらっしゃいます?由乃と瞳子もいますし…お客様もいらっしゃいますけど」
「瞳子って、あの電動ドリルちゃんか。祐巳ちゃんの妹の。去年の学園祭の時に祐巳ちゃんとよろしくやっていた」
「よ、よろしくって…」
人聞きの悪い。確かに、山百合会主催の劇の準備に遅刻してまで、瞳子を連れ回したのは事実だけど。
あのころはまだ、祐巳は瞳子と姉妹ではなかったし。勘ぐられるほどのことをした憶えはないと断言できる。
「聖様はどうしてここへ?」
「祐巳ちゃんを探しに行こうとして運良く会えたところ」
祐巳を探しに?何か探されるほどの用事があっただろうか。訝しげに首を傾げた祐巳を見て、聖様はニヤリと笑った。
「…祐巳ちゃん」
「はい?」
視線をあげると、聖様の瞳がまっすぐに祐巳を捕らえていた。
意外と言っては失礼だけど、やっぱり意外な聖様の真剣な眼差しに、不覚にも動悸が激しくなる。
先程から祐巳の髪を弄んでいた聖様の綺麗な指が、そっと、祐巳の頬に触れる。
「せっ聖様?」
このくらいのことで動揺してどもってしまう自分の幼さがちょっと恨めしい。聖様の整ったお顔がゆっくりと祐巳を覗き込み、近づいてくる。
「今朝、言い忘れてたんだけど…」
頬に触れていた聖様の手が、顎に移動し、祐巳の顔を上向かせる。空いていたはずのもう片方の手は、いつのまにか祐巳の肩を抱いている。
…やけに手慣れている様に思えるのは祐巳の気のせいだろうか。
(ちょ、ちょっと待って――――)
この状況、と言うか体勢には憶えがある。
あれは、二年前の三月。聖様達の卒業式の前日、夕暮れの三年藤組の教室で。
『卒業されていく聖様に何かしたい』と申し出た祐巳に、『んじゃ、お口にちゅ〜でもしてもらおうかな』などとのたまって祐巳を抱きしめた
あの時と同じ様な体勢。
(これはもしかして…まずいんじゃないだろうか)
だって、聖様のお顔が、もうすぐ目の前にある。
このまま距離を縮めたら…非常に危険なことになってしまう。なにより、うっかり聖様のお顔に見とれてしまって防御を忘れかけている自分がいる。
まずい。非常にまずい。
(しっかりしろ!福沢祐巳!)
「せっ…聖様…!」
なんとか制止の声を出す。ちょっと声が裏返ったのは気にしないことにする。
「誕生日、おめでとう」
返ってきたのは、そんな言葉だった。
40虹のかなた:05/02/02 00:08:52 ID:HK+hN3Io0
思わず瞑ってしまっていた瞳を恐る恐る開くと、聖様が笑っている。
手に、何か冷たい感覚がする。見てみると、祐巳の手には缶ジュースが押しつけられていた。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、プレゼント。祐巳ちゃんがお暇だったらお茶くらいご馳走したいけど、忙しそうだしね」
「………ありがとう…ございます…」
「いやいや。季節柄、缶汁粉はなかったからこれで勘弁ちょ〜だい」
そう言う聖様の笑顔がやけに楽しそうで。――――また、やられた。からかわれたんだ。
怒りよりも脱力してしまう。ただプレゼントをくれるだけなら、あの密着した動作は必要ないはずなのに。
複雑な思いで聖様を見上げると、
「な〜に?やっぱりちゅ〜もプレゼントしたほうがよかった?」
などとのたまった。…やっぱり、確信犯だったらしい。
「…マリア様の前なのに、ですか?」
祐巳は別に敬虔なクリスチャンというわけではないけど、マリア様の前でこういう冗談はありなのだろうか。
そんな気持ちと、聖様を責める気持ちを声に滲ませる。
祐巳の言葉に、聖様はちょっと驚いたように瞳を大きくした。ちらりとマリア様像へ視線をやった聖様がちょっと自嘲気味に笑う。
「…私はまだマリア様に勝てないのか」
「へ?」
意味不明な言葉に困惑する祐巳を見て、聖様はふっ…、と微笑んだ。祐巳の頭をポンポンと叩く。
「祐巳ちゃんにまで言われるとは思ってなかったからちょっと驚いただけだよ。…ああ、気にしないで。こっちの話だから」
背伸びをしながらそう言った聖様は、祐巳のよく知っている笑顔だった。
「さ〜て。祐巳ちゃんには振られちゃったし、そろそろ帰りますか」
「あ、でしたらお送りいたします。…校門までですけれど」
「大丈夫。それには及びません。……祐巳ちゃん」
祐巳から三歩ほど先へ進んでいた聖様が振り返った。
「気を付けなね。そう言う私自身も何をどう気をつけろ、と具体的に言えないんだけど…。今朝のバスの事と言い、なんか嫌
な予感がするから」
そう言う聖様は珍しくまじめな表情をしていて。
『良くないことが起こる気がするの』と言っていた志摩子さんの姿と重なって、祐巳は「やっぱり姉妹なんだな」と見当違いな感心
をしてしまった。
41虹のかなた:05/02/02 00:12:05 ID:HK+hN3Io0
「じゃ、またね〜」
「ごきげんよう、お気をつけて!」
祐巳の声に、聖様が後ろ姿のまま手を振る。
…校門を出られるまでお見送りをしよう。
そう思って足を揃えた祐巳と、校門へ向かう聖様の間に、突然一人の少女が現れた。
(……え)
一瞬前まで、そこには誰もいなかったはずなのに。彼女は一体いつからそこにいたのだろう。いや、いつ現れたのだろう。
(まさか、幽霊?)
でも、見慣れた制服と二つに結われた亜麻色の髪は確かに祐巳の数メートル先に存在している。影もちゃんとある。
…一年生だろうか。なせだか、そういう印象を持った。
祐巳に背を向けた彼女が、唐突に腕を上げる。

――――――――ドシュッ

微かに聞こえた、鈍い音。
腕をおろしたその少女が、ゆっくりと振り返る。顔だけではなくきちんと体全体で振り返った彼女は、少しはにかんだように微笑んだ。
「ごきげんよう。紅薔薇さま」
「……」
祐巳は、返事をすることが出来なかった。
祐巳の視線は少女を通り越して、ある一点で固定されてしまっている。
前にいたはずの聖様の姿が見当たらない。いつのまにか校門を出られてしまったのだろうか。
(あれ…なに…?)
――――校門の手前に何かが落ちている。
(……違う)
落ちているんじゃなくて。――――倒れている?誰が?
薔薇の館で感じた悪寒が、警報となって祐巳の頭に鳴り響く。
「……え……?」
転んだのならすぐに起きあがるはずなのに。その人は俯せに倒れ伏したまま身動き一つしない。
「……聖様……?」
まさか。そんなはずはない。だって、聖様は笑っていたもの。つい今まで。
42虹のかなた:05/02/02 00:13:14 ID:HK+hN3Io0
「驚かせてしまったみたいで、ごめんなさい」
「え?」
わずかに頬を染めながら、恥ずかしそうに少女が祐巳に声をかけた。
「だってあの方、紅薔薇さまにベタベタしすぎなのですもの。ですから、私、どうしても許せなくって。だから…」
目の前の少女の言葉の意味が、理解できない。彼女は何を言っているんだろう。
「殺しちゃおう、って思ったんです」
そう言って、彼女は微笑んだ。恥ずかしそうに。
(何を言っているの…?)
彼女が何を言っているのか、全く理解できない。
ふらふらする足を無理に動かし、祐巳は足を踏み出した。
少女とすれ違うときに何かを言われたような気がしたけど、その言葉は祐巳の頭の中までは届かなかった。
雨など降っていないのに、倒れ伏したその体の下から何かのシミがアスファルトに広がっていく。

『愛しているよ、祐巳ちゃん』

不意に、聖様の声が脳裏を過ぎった。
卒業の餞別を祐巳から受け取った聖様の、あの言葉。
それを「縁起でもない」なんて思う余裕は、祐巳にはなかった。

『君とじゃれ合っているのは、本当に幸せだった。祐巳ちゃんになりたい、って私は何度か思ったよ』

うつぶせに倒れている聖様と。
祐巳に追いつき何かを話しかけてくる少女と。
辺りを照らす夕日と、アスファルトの広がる染みと。
全てが非現実的で。
祐巳は悲鳴を上げる事も忘れ、その場に立ちつくすことしかできなかった――――………。
43ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/02 00:14:06 ID:HK+hN3Io0
今回はここまでです。
それでは、ごきげんよう。
44作者の都合により名無しです:05/02/02 01:03:13 ID:JVbTj5dX0
ほのぼのから急展開ですね
目が離せません
祐巳の運命は?聖様の生死は?
次回がすごい気になります…ッ
45作者の都合により名無しです:05/02/02 01:48:40 ID:wDmHSpSr0
>サマサさま
戯言未読派ですので<彼女>とか分からない言葉が出てくるのが辛い。週末にでもブクオフで
読んでみようかな‥
零崎は糸使いですか。下のバスタSSを読んだ後に鬼事を読みましたので、どうしてもマカピー
が連想されてしまう‥
でも勇次郎にとっては糸技も児戯ですか。
どう対応するかは次回に持ち越されましたが、何だが早くも零崎に敗北フラグが立ったような
気がします。

>青ぴー
ガラはバスタードの中で一番人間臭いキャラなだけに、SSにはしやすい人材ですね。
例えて言うならDBのヤムチャみたいに。
半エルフのメイは鬼道衆並の使い手‥‥と思えば、そうでもないようですね。
(古代語魔法を使えるから、地の魔力は高そうですが)
バスタ世界では余り無いタイプのキャラだけに、ガラとのコンビの行き先が
ちょっと楽しみです。
46作者の都合により名無しです:05/02/02 01:49:24 ID:wDmHSpSr0

>サナダムシさま
完結おつかれ&おめでとうございます〜。
もう1,2話続くと思っていましたので、急な終了が少し残念でした。
最終回の展開とオリバの最後の台詞は、何だか「優&美」を思い出しますね。
ほんわかムードで良かったです。(他がブラックだったので余計に)

>ゲロさま
確かに『蟲師』とは全然違うSSですね。
やっぱり完全に解決するわけではないにしろ、蟲師の存在って結構重要ですね。
やはり蟲師がいてこその『蟲師』。
あ、今回の話もホラーちっくで好きですよ。
本編の合間にまた別の『蟲』の話を書いてくださると嬉しいです。


>ミドリさま
前半のやや百合モードから、地獄変モードの後半。
これまでずっと祐巳パートでは平和な学園が舞台だっただけに、凄い引き込まれる
展開でした。
ところで沙織お嬢の夢には、この場面は出てこなかったのでしょうか。
知っていれば祐巳を一人にさせないでしょうし。
47作者の都合により名無しです:05/02/02 07:44:31 ID:U3c571bb0
聖さまが死んでたらさすがにミドリさんを見限るかもしれん・・・
どうかケロッとした顔で起き上がってくれ(泣き)
48作者の都合により名無しです:05/02/02 11:18:17 ID:ObTNf3YD0
しけい荘終わったかー。この愉快な仲間たち大好きだったので残念だ。
でもまた最終章か新作を書いてくれそうなので、我慢するか。
青ぴーさんやサマサさんの新作も始まってくれたし、ゲロさんも好調だし。
しかし、ミドリさんの作品は急にどうなったんだw転調が激しすぎる。
49作者の都合により名無しです:05/02/02 15:55:58 ID:wE8B/0ct0
>ミドリさま
スレ立て&力作乙。しかしまさかこの作品の雰囲気で死人が出そうになる展開になるとは
思わなかった。次回はある意味作品の分岐点ですね。

1日遅くなりましたがサナダムシさん、お疲れ様でした。
この作品大好きでした。次回の新作長編を期待しております。
50作者の都合により名無しです:05/02/02 16:39:38 ID:mJB6yGdW0
>サマサさん
戯言読者にとってはニヤリとさせられる展開だなあ。
勇次郎が曲絃糸を破る方法って、もしかして戯言原作で請負人が使ったアレか?

>ミドリさん
聖さま死んじゃヤダー。°(ToT)°。
この後の展開予想
1.祐巳が核鉄か聖衣を使って覚醒するよ
2.斗貴子さんとジュネが駆けつけるよ
3.キャプテンブラボーか黄金聖闘士が助けてくれるよ
4.やられる。現実は非常である
お願いだから4はやめてね・・・
51作者の都合により名無しです:05/02/02 19:49:30 ID:BUWft5J10
バキ・バスタード・蟲師・聖闘士聖矢と、原作で好きな作品の
良SSが沢山読めて嬉しいなあ。
戯言とマリ見ては知らないけど、知らなくても十分楽しめますな。


あと、完結サナダムシさんお疲れでがんす。復帰をお待ちしてるでがんすよ。
(ドラクエ8のヤンガス風)
前話
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/2-09.htm

ドラえもん、のび太、リルルの3人は鉄人兵団と対峙していた。
兵団の司令官であるフレイザードは、リルルの姿にわずかに動揺を見せた。
「むぅ・・・!?リルル!?」
どうやらリルルの存在は彼ら鉄人兵団にとっても意外だったらしい。
「リルル、なぜ、お前がここにいる・・・?」

ドラえもんとのび太はリルルの方を振り向いた。
「リルル・・・あいつらはいったい・・・?」
「以前言った兵団の不穏分子、フレイザードよ。まさか、こんなに早く、
地球に目をつけていたなんて・・・フレイザード、指令はどうしたの!?」
「ああ、あいつなら今ごろメカトピアで無残に転がってるよ。」
一瞬、ザワリとリルルの髪の毛が逆立つ。
「・・・・“壊し”・・・たの・・・?」

ただならぬリルルの様子に、のび太は恐る恐る尋ねた。
「リルル、指令って・・・?」
「覚えてない?かつてこの地球に押し寄せ、あなたたちを襲った鉄人兵団の
総司令のことよ。だけど、生まれ変わった彼は・・・平和を愛する崇高なロボット
だった。決して、あなたたちの敵ではなかったわ。」
「・・・あいつが地球を襲った・・・?あの腰抜けが・・・?
生まれ変わっただのなんだの、何を言ってるのか理解しかねるな。」
口を挟むフレイザードにドラえもんが鋭く問いかけた。
「なぜ、キスギーに手を貸す!? なぜ僕たちの前に立ちふさがる!?」
「なるべく、キスギーの敵は我々の手で消して“恩”を売っておかねばな。」
「“恩”? へぇ?意外と人間らしい考え方をするんだな。」
ドラえもんの挑発にも、フレイザードは淡々と答えた。
「違うな。その“人間らしい考え方”とやらを我々は利用しているだけにすぎん。
人間とは不思議な生き物だな。どんなに優れた頭脳を持っていても“恩を返す”
などといった非合理的な本能を捨て切れない。精神的に“負い目”なる感情を抱き、
どこかで必ず取引において譲歩する。たとえそれが、キスギーほどの男でもな。」

「取引?キスギーと?ハッ・・・!?まさか・・・扇動の首謀者がキスギー!?
そんな。なぜ、キスギーがメカトピアの存在を・・・!?」
「扇動?リルルよ。それは、我々がやつに踊らされているとでも言うのかな?
違うな。私がやつを利用しているのだ。もっとも・・・クックック・・・
やつもまた同じ事を思っているのだろうがな・・・・」
「・・・・・リルル・・・。」
「・・・なに?ドラえもんさん。」
ドラえもんは真剣な面持ちで、リルルに話しかけた。
「リルルは・・・あいつらの仲間では決して――――ないんだね。」
「ド、ドラえもん!? そんなわけないじゃないか!だって・・・」
抗議の声をあげるのび太を手で制し、やはり真剣な面持ちでリルルは答えた。
「・・・・違うわ。同胞ではある。だけど・・・狂ってしまった彼らを
止める術を私は・・・・」

ドラえもんは、優しい笑みを浮かべて、片目をウインクしてみせた。
「僕らはキミが生まれ変わった天使だと信じている。だろ?のび太くん。」
「も、ももも、もちろんだよ!」

「ドラえもんさん・・・・。のび太さん・・・・!」
「リルル・・・」
信じてくれた。この極限の状況で・・・。機械の体のはずのリルルの――――
リルルの目からうっすらと、美しく透き通った水のようなものが流れ出した。
空気中のわずかな水分が、たまたま――リルルの瞳で凝固したのであろうか。
それは、ひょっとすれば物理的な現象ではなかったのかもしれない。
フレイザードの目が冷たく輝いた。
「リルル・・・。どうやら貴様は、我々とは合い入れぬらしいな・・・!」
どうやら今までは、リルルの動向を探っていただけだったようである。
冷たい機械の瞳に怪しい攻撃色が灯る。空間にさらなる緊張が走った。

のび太とリルルが警戒を強める中、しかしドラえもんだけは動じていなかった。
「リルル。ごめん。あいつら全部倒しちゃってもかまわないかい?」
「・・・・!?」
リルルは、一瞬ピクンと体を振るわせた。
「・・・・・いいわ。大丈夫。覚悟はできてたから・・・」
「リルル・・・・」

「・・・!? フ、フハハハハハハハハハハハハハハ!! 倒す!?
見知らぬポンコツロボットと人間、そしてリルルよ。お前たちが、この我々を!?」
3人を完全に見下しきったフレイザードの哄笑をドラえもんの冷静なセリフが遮った。
「何を笑っている?僕たちの目的は、このメインコンピューターの破壊なんだよ?」
「だろうな。だからこそ我々がこうやって・・・ん?」
ドラえもん、のび太、リルルは不敵に笑った。
フレイザードは笑みの理由をようやく悟り、機械らしからぬ動揺を見せた。
「・・・ハッ!?まさか・・・!バカな・・・!お前たち・・・やめろ・・・!!」
「やめないよーだ!“強力うちわ風神”!」
のび太がうちわを扇ぐと、強烈な突風が室内を荒れ狂い、兵団の動きを一瞬だけ止めた。
「く・・・おのれ、こしゃくなマネを!!」
「この“爆弾”で!お前たちをコンピュータールームごと吹き飛ばす!!」
間髪いれずにドラえもんは、兵団の中心に“ソレ”を投げ込んだ。
兵団はとっさに対応できない。――――――見た目はただの小型の爆弾なのだが、
本来、かつて戦った海底鬼岩城を司る機神ポセイドンを滅ぼすために使用するはずだった
ほどの強力無比な兵器である。その爆発力たるや、筆舌に尽くしがたいものがある。

3人は素早く扉の外に脱出し、扉を閉めた。

――――――そして・・・要塞がゆらいだ。
凄まじい爆撃音が響き、コンピュータールームは・・・破壊された。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

要塞内部から轟音が響いた。もちろんドラえもんたちがコンピューター
ルームを破壊したためである。戦闘中の反乱軍も、悪魔兵たちも皆、要塞を
振り向いた。と、突然、要塞中部から下部にかけて点在する扉らしきものが、
グニョリと空間を歪ませ、いっせいに開き始める。コンピューターの制御を
失ったためであろう。バンホーは、力強い笑みを浮かべてそれを見やった。
「やったな。ドラえもんくんたち。」

余裕を失くした悪魔たちは、あわてて要塞内へ引き返そうと、初めて焦りを
見せ始めた。しかし、勢い込むバンホーら反乱軍がそれを許さない。
「要塞内部への増援は認めない!絶対にここで食い止めて見せる!」」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ちょうどそのころ、4人手をつないで高速で飛ぶパーマン軍団の、その前方に、
元帝国であった異形の空間、すなわち魔界の全景が見えてきた。4人はしばし、
唖然としてその不可思議な光景を眺めていた。パー子が最初に口を開く。
「あ、あれは・・・!?」
「なんや、ちょっと見んうちにえらい様がわりしてまんなぁ。」
ちょっとどころではないのだが、パーやんは相変わらずマイペースを貫いている。
「はぁ、魔土のオッサンもえらいもん作りはったもんやな。もう一体は
バイキンマンはんやな。相手してる小さなロボットは味方なんやろか。」
恐らくパパンダー、ダダンダン、ザンダクロスのことを言っているのだろう。
「ははぁ、あれが、ロードはんの言ってはった鉄人兵団やな。なるほど、
ありゃあ強そうでんなぁ。反乱軍のあの少人数じゃ厳しいでっしゃろ。」

冷静に状況を検証しているパーやんに続いて、今度は1号が叫んだ。
「パーやん!なんか知んないけど、要塞の扉が開いてる!
チャンスだ。飛び込んで頭を仕留めよう!」
1号は興奮して、飛び出した。しかし、それをパーやんが制止する。
「待ちなはれ!1号はん!」

「今、一生懸命に戦ってはる竜人さんたちを見殺しにする気でっか?」
「だからこそ、頭を潰して、一刻も早く戦いを終わらせるんじゃないか!」
「そやけど、あの人らは、ホンマに人数が少ないんや。そんな悠長なこと
してたら、とても持ち堪えられまへんで!」
「それじゃ、どうしたらいいんだよ!?」
「なぁに。パー子はんの大好きなことすればいいんや。」
「・・・?」
「私の好きなこと?お料理かしら?お裁縫かしら?ひょっとして生け花?」

「こうするんや!」
そう言うや、猛威を奮う鉄の大軍団めがけて、パーやんは特攻した。
その強力な拳の一振りで、鉄の兵士数体を吹き飛ばす。
1号とブービーは頷いた。
「なるほど、パー子の大好きな“大暴れ”すればいいってわけね。」
「ま、失礼しちゃうわ。・・・でも、確かにワタクシ、大好きですわよ。
お・お・あ・ば・れ! オホホホホホ!」
「うわっ、怖っ!」
「ウッキィ〜・・・!」
パー子は1号とブービーも震え上がるような、世にも恐ろしい凶悪な笑顔で、
パーやんに続いて鉄の兵士たちに踊りかかっていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

突如復活したパーマン軍団が、鉄人兵団の規則正しい隊列をズタズタに
切り裂いていく。その活躍を目の当たりにし、ジャムおじさんの瞳が輝いた。
「おお、頼もしい味方が増えたようだ。希望の光が見えてきたぞ。」
希望に満ちた表情で戦況を見つめるジャムおじさん一行であった。

その隣で、ドキンちゃんは憤慨していた。
「何よ。あの4人!なんで先にしょくぱんマン様助けにいかないのよ!!
もう、あったまきたわ!こうなったら、私が助けに行くわ!
待ってて、しょくぱんマン様ぁ――――――――――――――っ!!」
しびれを切らしたドキンちゃんは、ドキンUFOに乗って飛び立った。
もの凄い勢いである。

「ああっ!?ドキンちゃん!?」
「行ってしまったわね。・・・大丈夫かしら・・・?」
「クゥーン・・・」
心配そうに見つめるジャムおじさんたちを尻目に、
赤いドキンUFOは猛スピードで、ダダンダンに向って突進していった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
59ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/02 20:17:54 ID:CNsb09b30
今回分終了です。もちろん、フレイザードはこのままじゃ終わりません。
新スレ移行早いですねぇ。前スレでは2回くらいしか更新してないような・・・

サナダムシ様、連載終了お疲れ様でした。さりげに「コーポオーガ編」など
期待しております。ジャックがvsホームレス編とかぶってしまいますが。
このまま終わってしまうには、あまりにもったいないキャラが目白押しなのでぜひ。

青ぴー様、バスタ好きなので、とてつもなく楽しみにしてますよー。
バスタードSSは一度チャレンジしようと思って書いてみたのですが、あまりの難しさ
と自身の力不足で即挫折。でも青ぴー様は上手いこと描かれてますねー。お見事です。
60作者の都合により名無しです:05/02/02 20:24:55 ID:BUWft5J10
うみにんさんキター!
俺の大好きなパーマン一家が大活躍で嬉しい。
パーやんが特に好きだ。
61AnotherAttraction BC:05/02/02 21:17:37 ID:JvuaFHzc0
前スレ498から
――――――三日後。早朝。

『…この倒壊により、死者は最大九百人超と予想され、この内に各国の首脳が含まれると思われます。次に、犠牲者の身元…』
「しかし、何度見ても凄いな。そう思わないか、二人とも?」
或る町の宿の一室。連日テレビを賑わすそのニュースを見ながらスヴェンはトレイン・リンスに意見を求める。
しかし二人はそれ所ではなかった。
「…判る訳……無いじゃない!! 答えて欲し…けりゃ放しな…さいよ!!!!」
ギロチン・チョークと言うプロレス技を知っているだろうか。首を脇に抱え込むようにし、相手の首を締め上げる技だ。
スヴェンは器用に右にトレイン、左にリンスで締め上げていた。
「なあに、これは二百万イェンを無駄に使い込んでくれた二人への俺からの賞賛だ。有難く受け取れ」
前髪に隠れて青筋が浮かんでいる………詰まるところ、モーレツに怒っていた。
「……いいかお前等、ウチの家計は年がら年中火の車なんだ。にも関わらず相方は馬車馬みたいに喰うし、
 泥棒女は『自分の部屋は最低でもスイート』とか抜かすし、その上両方大浪費家ときやがった」
言葉が出てくる毎に両腕がキリキリと絞まっていく。流石のリンスもスヴェンの腕を叩き始めた。
「ギ、ギブ! ギブだって!! 大体、コレってアンタの紳士道に…反するんじゃないの!!?」
「リンス……俺が初代より尊敬する二代目が傲慢な女に対してこう言ってる。
 まず青年期に『許せねえ、美人なだけに怒りがこみ上げるぜ』、そして壮年期に『もう女とは思わん!』とな」
石仮面を被った美形の波紋戦士の如く容赦しない。
「だから俺はギブアップを認めない。今まで食べたパンの枚数を数えない様に、無慈悲に殺るッ!!!」
微妙に支配フェチの吸血鬼な気持ちで吼えた。
そんなこんなでレフェリー姿のイヴが試合終了のタイミングを見計らう中、アルトの絶叫がますます部屋に響き渡る。

ところで、トレインが随分前からタップを止めている事には誰一人気付かなかった。
62AnotherAttraction BC:05/02/02 21:18:29 ID:JvuaFHzc0
―――クロノス本部。午前の終わり時。

セフィリア=アークスは自分専用の練武場の中に、身体にタイトに密着するトレーニングウェアを纏い、居た。
電気を敢えて落とした闇の中、目を黒布で封じ、手には握りだけ細い素振り用の鉄柱。
物音一つ無い中、不意に彼女の周囲から微かな音。何かが高速で飛んできた。
低く唸る様切れ味鋭い呼気。そして彼女の手には重すぎるであろう鉄柱が飛来する何かを悉く叩き落す。
クレー射撃用の的だった。
撃てば簡単に壊れるが、当たれば骨折ぐらいは免れない。全自動且つランダム、しかも極消音で射出していた。
視界を完全に封じ、聴覚の余地を僅かに残す事によって正解の選択が困難になる。"読み"の鍛練だった。

―――二・三十分が経過しただろうか。
足元にはおびただしい破片が散らばり、当のセフィリアには汗も息の乱れも皆無。
そこで指を鳴らすと周囲の複射光が灯り、射出も止んだ。
その時、壁に据え付けられた対話型通話機から呼び出し音。黒布を解きながら通話ボタンを押した。
『セフィリア』
現れたベルゼーは、顔も声も一段と渋い。
『三日前のサミット襲撃の件だが……』
「クリードが深く関わっているのでしょう?」
予想が付いていたのだろう、手も無く言葉尻を奪い取った。
『…近隣の人間から証言も取れた、間違いなく奴の仕業だ。従って長老会は、この事を星の使徒の宣戦布告と判断した』
「……妥当ですね」
今この世界を回しているのは紛れも無くクロノス、然るに世界の首脳陣は身内なのだ。ならばもう星の使徒に人権は無い。
『例の道についても新しい案が検討されている。対抗手段として大量破壊兵器の使用も有り得るそうだ』
「また、大きく出たものですね」
『爆発物無しでビルを崩せば、誰でもそうする』
クリードの道の力は予想を超えて強大だった。個人の武が兵器の域に及ぶばかりか、奴の場合はそこに悪魔の頭脳と
磐石のカリスマが存在する。ならばこの判断を『石橋の叩き過ぎ』と見るものはいまい。
『後の事は追って報告する。今の所はこれだけだ、では』
「ええ、ご苦労様でした」
通話が切れると、またしても静寂。しかしそれを、何かが少しずつこじ開ける。
63AnotherAttraction BC:05/02/02 21:19:14 ID:JvuaFHzc0
セフィリアの含み笑いだった。
無数の負の感情に爛れ切った笑みは、普段の彼女からは想像も付かないほど毒々しい。
そしてそれは、周囲に刃を撒き散らすような哄笑へと変わる。
「……この程度ですか、クリード。この程度でクロノスに、クロノナンバーズに! 何よりこの私に!! …刃向かおうとは笑わせる」
手に携えた鉄柱を、意外にも軽々と真上に放り上げる。
「………貴方が生き延びる道は、私に会わない以外に有り得ない」
回転しながら落ちてきた鉄柱が床に着く寸前、
「覇ァッ!!」
回転の中心を後ろ回し蹴りが正確に蹴り込んだ。鉄柱は床と平行に飛び、縦一直線のまま壁に激しく突き刺さる。
「……早く会いたい物ですね」
蹴りの体勢を維持したまま、セフィリアは昏く呟いた。


――――深夜。とある高級ホテル。

クリードは眼下に広がる宝石の海の様な夜景を見下ろしながら、赤ワインのグラスを傾ける。
その目には何も映らない。感慨も無ければ大事を成した達成感さえ無い。さりとて虚ろとも違う。―――僅かな安堵、それだけだ。
「…シキかい?」
その言葉に呼応するように、闇から染み出るかのごとく矮躯が現れる。
「……貴様の云った通り、生き残った道士全てを召集した―――…が、だ」
同志の言葉は僅かな怒気と疑問を含んでいた。
「貴様、この三日間連絡も入れずに何処で何をしていた?」
対してクリードは事も無げに一言、

「―――ああ、散歩」
64AnotherAttraction BC:05/02/02 21:35:18 ID:JvuaFHzc0
NBです。
これで第五話「些事」は終了、第六話「無残」を乞う、ご期待!


と、いきたい所ですが、ちょっとした発表があります。
待ってて下さる方々に申し訳無いのですが、長めに休ませて頂きます。
今年中には復帰できるでしょうが、二ヶ月三ヶ月は余裕でかかります。
俺個人の事だけに、本当に済みません。
しかし、かつて出した公約、
「遅くなる事は有っても、投げ出しだけは絶対にやらない」
を破る気はこれっぽっちも有りません……だって、書きたい話いっぱい有るし!
と言うわけで、ちょいと長めの休暇を頂きます。
今回はここまで、SEE YOU AGAIN!!
65作者の都合により名無しです:05/02/02 21:46:19 ID:ZyyT7XXMO
お疲れさまですNBさん。
でも残念だなぁ。仕方ないとはいえ、長い休みになりそうで。
元気な赤ちゃんを産んでくださいね。そしてまた念密な戦闘描写を見せてくださいね。
66ふら〜り:05/02/02 22:07:27 ID:Z+T4i1AB0
>>1さん(ミドリさん)
おつ華麗様です。このテンプレの厚さ&熱さがバキスレの好調ぶりを
示してますよねぇ。今スレも賑やかになりそうで嬉しいです。

>>バレさん
ド、ドス黒い。読んでて「え? じゃ赤ちゃんはもう……」と思ったら双子。双子だから
できた判別法。この時スープになった子の怨念が、後々トランクスに災いを……なんて
ストーリーも浮かびます。あと、社の跡取りとしても不適切判定される彼も密かに哀れ也。

>>青ぴーさん
バスタードですか。初期しか読んでませんが、ガラは好きです。主人公がアレでしたから、
いい兄貴キャラに見えました。青ぴーさんのSSは彼のそんなところがよく出てて(レディ
の前でお構いなし、が良い感じ)、しかもちゃんと強い。これからの活躍にも期待です。

>>サマサさん
相変わらず人命を、というか殺人を綿毛のように軽く考えてる思考回路。怖くてむしろ
心地よいです。鋼線使いは太古の昔より数多の作品に出てますが、勇次郎がどう破るか? 
あと人識の思考を勇次郎がどう感じ断じるか(あるいは賛同するか)も観てみたいです。

>>サナダムシさん
シコルの毒、どう始末をつけるのかと思ってましたが、再裏返りとは。で案の定、一勝
七十六敗……寂のことといい、いろんな意味でスーパースターマンを彷彿と。ボコられ、
名勝負を演じ、辛勝し祝福を受け焼かれて失禁。賑やかで華やかで可愛い彼が好きです。

>>ゲロさん(仰る通り、ブレイドです。最終回だけなら555より上、と私は思いました)
今度は「じわじわ記憶喪失」ですか〜。ほんとにいろいろ、独特というか異質な怖いもの
を出してきますな。確かにA先生テイストですよこれ。あるいは筒井康隆か。血みどろ
激痛ものとはまた一味違う怖いもの見たさで引き付けられます。次も楽しみにしてますっ。
67ふら〜り:05/02/02 22:08:08 ID:Z+T4i1AB0
>>ミドリさん
>「…マリア様の前なのに、ですか?」
不覚にも気づきませんでした。そういえばキリスト教って同性愛を……今更ながら、深い
学園ですな。で、急転直下というかまさかの展開。これはもう、否応なしに巻き込まれ
決定ということに。祐巳のこれからの動揺と困惑、そしてそこから何を感じどう動くか?

>>うみにんさん
ドラえもんが、ここまで会話でキメてるのは珍しいですね。のび太やジャイアンなら、
原作でもSSでも見かけますけど。外に目を転じれば、復活のパーマンチームを柱に、
一気に形勢逆転ムードですね。そんな中、私は密かにドキンちゃんに注目してますが。

>>NBさん
あぁやっぱり、スヴェン最高。ここ数回クリードのこと褒めまくってて何ですが、モロに
ツボで好み。とはいえやはり極強なクリードを、「この程度」と断じてしまうセフィリア
姐さん。クリードとの火花はさぞ……と、待ち望んでおりますよっ。お早いご復帰を! 
68蟲師 奥に棲む生:05/02/02 23:24:57 ID:6MmdmdK00
ひとつ空けて。今回は川と石の話の予定だったのですが、それは次以降ということでどうか。
今書きたいと思うものを書くことが、作品にとっては最も良いと思いますので……
69蟲師 奥に棲む生:05/02/02 23:25:47 ID:6MmdmdK00

「マズったな……やはり、あそこで宿をとっておいた方が良かったか」
 白髪で緑色の目をした男が、山道で一人迷っていた。
「引き返そうにも、この悪道……さて、どうしたもんか」
「どなたか、いるのですか?」
 白髪の男――ギンコは、不意の声のした方を見る。女性が立っていた。
「あら、その木箱……あなたは、蟲師の方ですか?」
「ああ、そうだ。実は寝床が定まらず困っている。もし、家が近くにあるのなら、一夜でいいから凌がせてもらえ
ればありがたいんだが」
 女性は、勿論構いませんが……と言い、こう続けた。
「出来たらでいいのですが、私の息子を看て頂けませんか?」

70蟲師 奥に棲む生:05/02/02 23:26:58 ID:6MmdmdK00

 家は、道から横にそれた森の中にあった。
「で、どんな具合なんだ?」
 ギンコは、子供の症状を知ろうと、母親に質問した。
「看て、頂けるのですか?」
「恩を受けるんだ、返さないわけにはいかないだろ。それにこれは……少し看ただけだが、どうやら蟲が関わっ
ている。医家には見せたんだろうが、処置無しと言われたろう」
「ええ……よくお分かりですね」
「まあ、大半の者は蟲師より先に医家に診せるからね。それで、医家が投げた患者が蟲師に回って来るのさ。今
までも何度かあった事だ」
 ギンコは、特に表情も変えずに言った。
「……この子は、生まれてから一度も自ら動くということをしないのです。はいはいもしなかったし、立ち上がったり
も……本当に、一度も、微かにも、動かないのです。動く部分といえば、顔くらいです。目や、口、それに鼻など……」
「成程。それは人錆≠セな」
「ひと、さび?」
「人錆は、その名の通りヒトの体を、まるで全身が錆びてしまったかのように動かなくさせる蟲だ。小賢しいことに、他
人との意思疎通の為、顔の部分部分は動かせるようにしているようだがな」
 ギンコは、続ける。
「この蟲は、直接宿主に憑く訳ではない。まずある人間の体内に入り込み、その子供が生まれるときに、そちらに移る
のだ。そして、性質を表に出し始める。人錆は、ヒトの食する草に潜み、口の中から体内に入り込む。あんたもこの山
の山菜を食べているだろう。運が悪いことに、この辺に人錆の棲家があったんだな」
「私の体の中に、いた」
「何故、最初に入った人間の体内で大人しくしているのかは分からないが、蟲なぞ分からんことがほとんどだ」
 蟲は、決して理解できぬモノ。理解したとヒトが思い込んだときが一番恐ろしい。それで痛い目にあった者を、俺は
大勢知っている。ギンコは、そう言った。
 そして、布団で眠っている少年に目をやった。齢5、6の子供。生まれてから一度も体を動かせていない、もしかした
ら、これからもずっとその体を動かすことは無いかもしれない、子供。
 ギンコは知っていた。この蟲の対処法を。それ故に、鬱々とした気持ちになった。
 この蟲は、凄惨を極める。それは主に子の親側にとって。そしてその片鱗は、今だ現れていない。いつ、兆候が出だ
すか。気が抜けない仕事になりそうだと、ギンコは思った。
71蟲師 奥に棲む生:05/02/02 23:28:31 ID:6MmdmdK00
1回目は、まあ導入で。次回はこの蟲の真の恐ろしさを。予定変えちゃってすいません。

しかし、前回の『蟲』はもっと時間と精神的余裕があれば、もっとよく出来たかもなあ。段々と、順を追って記憶が欠落し
てゆく様を詳細に書きたかったのですが。

あと、関係全く無いが『ダービージョッキー』最高。

>>37
バリバリエロですが、このスレは言うまでもなく少年漫画板にありますし、あまり直接的に詳細に描写するのもアレかな
と思ったので、台詞で想像を喚起させる程度に止めました。まあ、こんなの書いちゃう時点で喚起もクソも無いですが。
エロ方面に寄りがちなのは悪い癖なのですが、さすがに飽きました。なのでしばらくは大丈夫かと思います。


>>46
もしギンコいなかったら、原作も含めてホラー一直線ですからねw
まあ、無理矢理ハッピーエンドにも出来るとは思います。ただ、それは三流ハリウッド映画の如きご都合ハッピーエンドと
なってしまうでしょう。そうなるくらいなら、俺はバッドエンドにします。
蟲は……気が向いたら、ということで。

>>66
当てずっぽうでしたが、当たりましたか。朝起きられないからなあ……
しかし、自作品のことですけど、最後の方の良平(三秒で決めた名前)の独白は確かにA先生っぽいなあ。
オチもなんかまんま。独特のものを書こうとするも、結局他者に似てしまうのですな。まあ、二次創作という時点で
「誰にも似ない、自分独自のもの」を作るなんてなんだそらって感じですが。

次回もそのうち。では。
72作者の都合により名無しです:05/02/02 23:31:46 ID:INKH5Ml70
お疲れ様です。
コメントからも、溢れる職人魂を感じさせますね。
全編におぞましさが漂う。
73作者の都合により名無しです:05/02/03 00:05:29 ID:F+E3WOrS0
3行目で落とすなよ
74作者の都合により名無しです:05/02/03 00:30:42 ID:KeuJkyB50
>うみにん氏
え?フレイザードもう終わり?
前口上だけ長くて本番がしょぼいって、三流悪役‥‥
‥‥と思ってたら、コメントで復活宣言。
もっと オ・オ・ア・バ・レ してほしかったので、ひと安心。


>NB氏
セフィリアが怖い。
女王様の風格ですね。
あとクリードにとっては前回までの騒ぎは散歩ですか。
まあ確かに剣を一閃した以外は歩いていただけですから、確かに「散歩」なのかも。
まさに歩いた後はペンペン草一本生えない、戦慄の散歩でした。
次回まで長い休みになりそうですが、待ってますので投げ出さないで下さいね。


>ゲロ氏
今回は『蟲師』ですね。
動けなくなった子供って元に戻っても筋肉とか大丈夫なんだろうか‥‥
ギンコの口調といい、今回も安易なハッピーエンドは無さそうですね。
75帰って来たドラえもん外伝:05/02/03 02:30:02 ID:U/jzSzHr0
のび太とジャイアンの決闘が第二ラウンドへ入った頃、二人がいる空き地
を見つめる影があった。陰の主は小さく、青い体をしていた。
「のび太君。」ドラえもんは呟いた。
これでのび太が勝っても負けても自分は去らなければならない。
土産話の一つになるだろうか?のび太は自分が手を貸す事で幾度となく助かった。
だがそれも今日で最後なのだ。ドラの目には涙が滲んでいた
ロボットなのでちゃんとした涙ではないのだが、目にゴミが入ると水がでる
機能があるらしい。
「よぉ・・・。」誰かが呟いた。
ドラえもんは振り向いた。この時間帯は誰も通りそうにない。では誰が・・・?
もしかしたら・・。
「元気そうじゃねぇか。青ダヌキよ。」
いつもは怒って抗議するドラえもんだったがこの時ばかりは唖然とした。
目の前に立っている男。巨漢で赤毛。その男の名は範馬勇次郎。
「なぜここに!?」ドラえもんは叫んだ。
「逃げおおせると思ったか。お前達の匂いを辿ることなど簡単だ。」
ドラえもんはうなだれた。ジャイアンに勝ったとしてもこの男に勝つなどと。
無理に決まってる。
「安心しろ。見物に来ただけだ。ただのガキの喧嘩じゃねぇからな。」
勇次郎の顔はにやけていた。
76帰って来たドラえもん外伝:05/02/03 04:07:10 ID:U/jzSzHr0
後悔しな。このジャイアン様に殴らせた事をな!」
「いいから。早く。」
言葉通り拳を強く握り喧嘩パンチを何発も放つジャイアン。
そしてそれをガードするのび太。
「ガードだと!そんな小細工などぉぉ!!」
今度は蹴りを放つジャイアン。喧嘩キックがのび太を襲う。
だがそれも腕のみでガードするのび太。彼の腕には青アザが出来始めていた。
ジャイアンは苛ついていた。どれほど殴られようがこいつはまだ立っている。
「とどめだぁー!」
片腕だけでのび太の襟首を掴み持ち上げるジャイアン。体重が違いすぎるので
のび太の体重など全く負担にならないのだ。
「むん!」 
のび太の体は宙を舞い地面へと落ちた。気絶しているのかどうかはわからない。
だが多少のダメージがある事は確かである。
「立つなよ!」
だがジャイアンの言葉に逆らうかの様にのび太は起き上がった。
ウッという声を漏らし一歩後ずさるジャイアン。そしてそれを楽しそうに見る勇次郎。
「ぬるいよ。君に勝てなければドラえもんが未来に帰れないんだ。」
ジャイアンにゆっくりと近づくのび太。そして構えをとるジャイアン。
「こんにゃろう!」ジャイアンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
拳を振り上げのび太に突進するジャイアン。そしてようやく構えをとるのび太。
ジャイアンはのび太の顔面にパンチを入れようとしていた。だがその拳は
届かなかった。ジャイアンは何かが空気を裂く音を聞いた直後、体が倒れるのを感じた。
「何!?」
77帰って来たドラえもん外伝:05/02/03 04:08:25 ID:U/jzSzHr0
ジャイアンは気が動転していた。ありえない。自分が尻餅を突くなどと。
この拳と蹴りで幾多の相手を負かしてきたのだ。
「はぁはぁ。勝負はこれからだぜ!のび太!」ジャイアンが叫ぶ。
「もう息が切れている。次が最後の攻撃だな?」のび太が淡々と言う。
よく見るとのび太は眼鏡をしていなかった。さっき投げられた時に吹っ飛ばれたのだろう。
「お前こそ膝が笑ってるぜ?」ジャイアンがせせら笑うように言う。
ジャイアンの言葉が終わるか終わらないかの内にのび太がジャイアンに突進した。
「あの筋肉は!」ドラえもんが叫んだ。
ジャイアンに突進したのび太の背中いや全身の筋肉が盛り上がっていたのだ。
それはダンベルトレーニングなどで鍛え上げられた筋肉ではなかった。
まさしく戦場で戦闘により鍛え上げられた筋肉の様にも見れた。
「それだけではない。」勇次郎が真剣な顔をして言う。
「え・・?四人?」ジャイアンが呟いた。
自分の目の前でのび太が四人に分裂した。まるで分身の術を使ったかの様に。
直後、ジャイアンは首を鷲掴みにされた様な感触を覚えた。
「いつの間に後ろに!?」ドラえもんが叫んだ。
「かっ!」
掛け声と同時に後ろに体重を掛けるのび太。そしてジャイアンの体も後ろに傾いていく。
無理に抵抗すれば首の骨が折れる。
「うおぉぉぉ!!!」
遂にジャイアンの体が地面に叩きつけられ、ジャイアンは後頭部を強打した。
「ウッ・・・・」ジャイアンが唸った。
無言でジャイアンから離れるのび太。だが彼はジャイアンに目を背けなかった。
「陸奥圓明流 四門 朱雀。」のび太が呟いた。
78帰って来たドラえもん外伝:05/02/03 04:09:51 ID:U/jzSzHr0
ドラえもんは思い出していた。あの時、逃げ出した後、別の世界に行った。そしてドラ達は
陸奥九十九という男の子と出会った。ケンシン=マエダという男と戦う予定らしい。
ドラは相手の技術をコピーする道具をもう一つ出した。つまり今ののび太は
範馬勇次郎の身体能力と陸奥九十九の技術を持っている.
「これは決闘であり試合だ。殺し合いじゃない。」のび太は呟いた。
一分程のび太はそこにたたずんでいた。ジャイアンは気絶している。
既に決着はついているのだ。のび太の勝ちという形で。
ではなぜ立っているのか?
「うう・・・。」
呻き声はジャイアンの口から漏れていた。どうやら気がついたらしい。
身を起こすジャイアン。そしてのび太の体を睨み付ける。
「のび太ぁぁぁ!!!!続きだぁ!」
身動き一つしないのび太。そして異変に気付いたかの様に構えを解くジャイアン。
「負けたのか・・・。最初で最後だ!覚えてろ!」
走って空き地を抜けていくジャイアン。そしてそれを見送るのび太。
「終わったぁ。」
呟くと同時に尻餅をつくのび太。
「のび太君!」
駆け寄るドラえもん。そしてそれを涙を流しながら見るのび太。
「僕のぉぉ、勝ちだ!」
のび太は片腕を高々と挙げ、空を見上げた。
風が無く雲も無い日だったせいか綺麗な星空であった。

79帰って来たドラえもん外伝:05/02/03 04:10:38 ID:U/jzSzHr0
都合により少し間が空いてしまいました。すみません。
80作者の都合により名無しです:05/02/03 08:59:26 ID:oj58u4ft0
出来杉と蟲師は大好きだ。
出木杉はいかにも映画的な賑やかさと明るさ・迫力があるし
蟲師は物語の後ろに漂う儚さとか哀しさとかが気に入っている。

ああ、でもNBさん長期欠場か。この作品も大好きなのに。
どうか早く復帰して下さいな。
あとドラ外伝いきなり九十九が出てきてワラタw突然すぎだろw
81作者の都合により名無しです:05/02/03 12:10:10 ID:EDTHw/d30
うーむ。
お気に入りの蟲師は週2、3回くらい更新してくれて、
俺にとって神漫画のバスタ(但し14巻まで)の期待の連載始まって、
実力者のうみにんさんやサマサさんやミドリさんは相変わらず面白い。
草薙さんもすっげえ腕上げてるしな。今回は飛躍しすぎだが。w

でもサナダムシさんの連載終了に続き、NBさんも長期欠場か。
悲喜こもごものバキスレ。お二人とも早く復活してくだせえ。
82作者の都合により名無しです:05/02/03 12:37:12 ID:wCJ3HhGj0
感想つけようがないくらいのラッシュだねw
83作者の都合により名無しです:05/02/03 15:51:06 ID:RLdfJdNo0
>>78
この作品だけ適当に読み流してるからわからんかったけど、九十九って今までに出てきてたか?
84作者の都合により名無しです:05/02/03 20:00:50 ID:wiciT5G+0
出てきてない。
まあその辺が草薙氏のフレキシブルなところでいいよ。

バスタSS読んでみたら結構面白くていいな。確かにオタ臭いが。
でもバスタというよりスレイヤーズっぽいな。
>>52-58続き

「・・・・いてててて・・・大丈夫か? のび太、リルル・・・」
「う〜ん。なんとか。リルルは・・・?」
「私も・・・なんとか・・・・。」
まだ、煙やまないコンピュータールームの前で、ドラえもん、のび太、リルルの
3人はお互いの無事を確かめ合っていた。あたりは真っ黒にすすけ、3人と部屋
とを区切っていた扉はもう跡形もない。

「うわあ、扉消し飛んじゃってるねぇ。」
「“痴漢撃退バリヤー”に“完全防音耳栓”・・・どっちも壊れてる。」
「“ヒラリマント”もボロボロだ。こりゃあ、ホントギリギリだったみたいだね。」
見れば、あたりには黒こげたぼろきれのようなものや、壊れた機械が散乱している。
どうやら爆発から身を守るために使用した秘密道具のなれの果てらしい。

「うへぇ。だけど壁そのものには傷一つないや。」
確かに、あれだけの大爆発を引き起こしながら、壁には傷もへこみも見当たらない。
やはり、黒くすすけて鉄くずと化した無数の兵団のロボットたちが転がっている。
そのあまりにも無残な光景に、同胞であるリルルの心は痛んだ。しかし―――――
感傷に浸る間もないまま、兵団の残骸の山の中から、彼らを弾き飛ばすかのように
立ち上がる者がいた。リルルは驚愕し、後ずさった。ドラとのび太も同様である。

鈍く重厚に輝くメタルブラックの装甲は、爆発の粉塵の中にあってなお色あせない。
らんらんと不気味に輝く両の眼は、人の・・・いや、生物の放つそれではない。
その者はあれほどの大爆発を受けてなお、全くの無傷で、そこに立っていたのだ。

ドラえもん、のび太、リルル。3人のちっぽけな存在の、その脅える表情を見据え
ながら、その者――――――鉄人兵団首領・フレイザードは声を荒らげ、宣言した。
「貴様等、よくもこれだけのことをしでかしてくれたな!・・・許さんぞ!」
小型爆弾の威力を最も良く知るドラえもんは、信じられなかった。
「バカな!なんであれだけの大爆発の中を無事なんだ・・・!?」

「ふん。私のこの体を覆う金属は、一兵卒ごときのそれとは違う。」
フレイザードは、言いながら両手に掴んだ兵団の残骸を放り捨てた。
「クックック・・・こいつらという便利な盾もいたことだしな。」
そのセリフにリルルが怒りを露に、無防備につめよった。
「フレイザード!仲間を盾にするなんて・・・!」
「その仲間を吹き飛ばしてくれたのは誰だったかな?リルル。」
「そ、それは・・・・」
「人間に迎合したか。ゴミのような存在に味方するメカトピアの恥さらしめ!」

リルルはのび太たちを手で制し、たった一人フレイザードに立ち向かった。しかし、
「のび太さん、逃げ・・・キャァッ・・・!」
フレイザードが右手で振り払っただけで、あっさり吹き飛ばされ、壁に激突する。
ロボットとしてのスペックが違いすぎるのだ。まるで相手にならない。
リルルが吹き飛ばされた、その瞬間に、のび太は、銃を放っていた。
「瞬間接着銃!」
強力な接着剤を射出する、この銃の特性ならば、装甲の頑丈さは関係ない。
当たれば、いかにフレイザードといえど、無事にはすまないはずである。が。
「無駄だ。」
フレイザードは、もはや動かない兵士の体を容赦なく盾に使い、攻撃を防いだ。
速い。しかし、突き抜けて速いというわけではない。動作に無駄が全くないのだ。
頑強、冷徹、正確、合理。機械生命体としての特性を最大限に利している。
今いる3人の中に、接近戦でこれほどの化け物と戦える者など一人もいない。しかし、
銃火器の類は、あまりにも頑強な鋼のよろいの前には、ほとんど効果がないだろう。
頼みの瞬間接着銃も、“盾”がまだ、たくさん転がっている状況では効果は薄い。
しかし、わずかのチャンスを狙って状況を打破するべく、のび太は撃ちまくった。
「のび太!接着銃は乱射するな。このままじゃ当たらない。いざ、当てるチャンスが
来たときに弾切れになることは避けるんだ!」
「わ、わかった!・・・うわぁっ!」
フレイザードの放つ怪光線が、かろうじて身をよじったのび太の頬をかすめる。
光線は背後に転がっていた兵団の一体に直撃し、その体を瞬時にして燃え上がらせた。
凄まじい威力である。凍りつくのび太とリルルにフレイザードは冷たく告げた。
「逃げても無駄だ。貴様等が力尽きるまで、何発でも打ち込んでやる。」
そう告げるや、怪光線をさらに数発打ち込んでくるフレイザード。恐らくは、
彼らの逃げ道を削るべく、動きを誘導するための計算づくの攻撃である。
いつのまにか、のび太たちは逃げ場のない位置へと追い詰められつつあった。

「ダメだ。あんなのずっとは、かわし続けられないよ!」
「クッ・・・だけど、どうやったらあいつを止めることができるんだ?
あの固い外殻に通用する武器なんて・・・」
「外がダメなら内から破壊するしかないよ!どこかに隙はきっと・・・!」
のび太の声に、離れた位置で倒れ伏していたリルルが、反応した。
「無理よ!指令クラスの装甲に隙間なんて・・・」
「・・・ハッ!?まてよ?“内”か!」
しかしリルルの呟きを遮り、ドラえもんは叫んだ。のび太の苦し紛れの発言に活路を
見出したのだ。かすかな閃きを頼りに行動を決行する。迷っている時間などない。
「こうなったら、あれを使うしかない。これを見ろ!フレイザード!!」
ドラえもんは、ポケットから一枚の紙切れを取り出した。
「・・・・・?」
フレイザードはいぶかしげにそれを眺めた。なんの変哲もないただの紙きれである。
「それが人間の扱う、紙とかいうやつか。だが、それがいったいどうしたというのだ?」
だが、ドラえもんは質問には答えず、不敵な笑みを形作って言葉をつないだ。
「情報は全てデータとして瞬時にやり取りできる、あんたたち鉄人兵団にとっては、
こんな紙に書かれた情報なんてものは人間の愚かさの象徴でしかないのかもしれないな。」
「フレイザード!中身を見たな?これはのび太が命をかけてママに隠し続けている・・・
“0点の答案”だ!!」
「な、なんだって―――!?」
のび太の体を戦慄が走り抜けた。髪の毛が逆立つ。
床にはいつくばっていたリルルがようやく身を起こし、のび太に問う。
「の、のび太くん・・・“レイテンノトウアン”って・・・いったい・・・?」
「え、えーと、その、リ、リルルは知らない方がいいよ。」
のび太はあわててごまかした。
その間にも、ドラえもんは次なる道具を手にしている。箱型の奇妙な機械だ。
「そしてこれは、“ペーパーレーダー”。重要書類を探し出す高性能レーダーだ。」
「・・・・・・?」

「この答案そのものは、たわいもないものだ。だけど、僕とのび太はこれを
ママから死守するべく“重要機密書類”としてペーパーレーダーに登録した。」
「それがどうしたというのだ・・・!くだらん時間稼ぎはやめろ!
今、止めをさしてやる・・・!」
フレイザードの右腕が巨大なバルカン砲へと変化する。先の光線の破壊力から、その
威力が尋常なものではないことは容易に想像できる。完全に止めを刺しに来ている。
のび太は、覚悟を決め、思わず目を瞑って祈った。――――――――が。
「もう遅い!」
先に動いたのは、ドラえもんであった。ドラえもんは、既にポケットから、一丁の
長い黒光りする銃を取り出していた。
「この銃は、“重要機密書類”として指定されたものは、いかなる状態にあっても
絶対に処分する道具だ。つまり、お前の体の中のメモリーチップは・・・」
「バカな!そんな理不尽な道具がこの世に存在するはずが・・・!!」
フレイザードは、吼え、右腕を振り上げた。無駄なあがきを見せる下等ロボット、
ドラえもんの息の根を止めるべく。が、そのセリフを言い終えることすらなく―――――

「“秘密書類やきすて銃”」
鈍い爆裂音が響き、フレイザードは内部から立ち上る業火に包まれ―――――
―――――そして、無残にも崩れ落ちた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
命からがら、ようやくフレイザードを止めて安堵する3人の耳に、階下から複数の
足音が聞こえてきた。足音は、かなりのスピードで近づいてくる。
「敵兵か!?」
「さすがに、集まってくるよね。」
うんざりしながらも敵襲に備えて、のび太は銃を構え直した。しかし、
それは敵兵ではなかった。これほど緊迫した状況にあっても安堵するに足る、
聞きなれた仲間たちの声。
「ドラえもん!のび太!無事か!?」
「さっきの大爆発はいったい・・・?」
「よかった。無事にコンピュータを破壊できたのね!」
ドラえもん、のび太、リルルは笑顔でその声の主たちを出迎えた。
「ジャイアン!しずちゃん!きり丸!よかった。無事だったんだね!?」
「そのきり丸が背負ってるのが、出木杉くんなのかい?」
ジャイアンたちは、予定通り一人の人間を救出して、のび太たちに追いついてきたのだ。
しかし、それは出木杉くんではなかった。二組はお互いにことの経緯を簡潔に話した。

フレイザードら鉄人兵団との死闘を経てメインコンピューターの破壊に成功したこと。
げんごろうを倒して、謎の老人と出会ったこと。その言葉を信じれば、出木杉は最上階に
いるということ。
「じゃあ、急がなくちゃ出木杉のやつが心配だ。」
「鉄人兵団が関わってるのなら、たったあれだけの人数とも思えない。恐らく大多数は
反乱軍の殲滅へ・・・。バンホーさんたちのことも心配だ。急ごう!」

終結した6人は、コンピュータールームから最上階へと続くであろう螺旋階段を駆け上った。
途中、数人の衛兵らしき者と出くわしたが、彼らに侵入者を迎撃する意思はないようである。
奇妙に思いながらも6人は走り続けた。頂上を目指して。そして、6人は衛兵たちに攻撃の
意思がなかった理由を知った。永遠とも思える長い長い螺旋階段を昇り切った、その先には
―――――まだ幼い6人の勇者たちにさえ、容赦のない死の予感をつきつける――――――
圧倒的な存在感を携えて立ちはだかる漆黒の死神の姿が―――――――――存った!
92ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/03 22:49:52 ID:OkFbt1580
今回分終了です。& 221〜230「鉄鬼編」終了。

一応、フレイザードは自分の脳内ではかなり強い設定ではあります。
ここはドラが強すぎたと言うことで、どうかひとつ・・・
はい。「鉄の鬼」とはもちろん、ドラえもんのことです。(結果的に)
93作者の都合により名無しです:05/02/04 00:00:28 ID:iSTtl8T4O
94作者の都合により名無しです:05/02/04 05:30:11 ID:EQj9v0MR0
展開早いな。6人集結したところで
ついに真打ギラーミン登場ですか。楽しみです。
95作者の都合により名無しです:05/02/04 14:11:04 ID:26dYN9Rj0
ドラは反則級の強さですからね本来w
しかし、相手も反則級のギラーミンが残ってるからな。
本当にいよいよラストが近いって感じだ。寂しいな…
96作者の都合により名無しです:05/02/04 22:16:05 ID:v3A+I00M0
うみにん氏、展開スピーディなのは嬉しいけど
本当に後数回で終わりそうだな。ギラーミン頑張れ。
97作者の都合により名無しです:05/02/04 22:39:22 ID:KGtmES/e0
秘密書類焼き捨て銃と言えば、この道具が出てきた話しは結構面白かったな。
最後にスネオとスネママが吹っ飛んでるとことか。
98作者の都合により名無しです:05/02/04 23:28:12 ID:FFY9Q6KVO
あれって、確か百点の答案だったっけ? 懐かしいな。

しかし、しけい荘、黒猫、出木杉と終了or休止が続くな。
特にうみにん氏のは長期連載だっただけに寂しくなりそうだな。
99作者の都合により名無しです:05/02/05 01:29:29 ID:tL8fm7D/0
一気に4本くらい来るかと思うと
2日来なかったりするね、最近。

まだ2、3ヶ月は大丈夫だと思うけど、
終了ラッシュが続くと危ないかなあ。
100作者の都合により名無しです:05/02/05 02:26:39 ID:2RmB6QYw0
100get
101作者の都合により名無しです:05/02/05 15:42:29 ID:tL8fm7D/0
ユル氏は進路の事ケリついたのだろうか?早く復活してね。
今日当たりブラックキング氏あたり来そうだな間隔的に。あげとこう。
102ふら〜り:05/02/05 19:24:54 ID:FZgRisPd0
>>ゲロさん
今回はとりあえず、全身不随から始まっておりますな。顔だけしか動かせない、とは
また辛そう。で治療は、親側にとって凄惨……でも片鱗とか兆候とか言ってるところを
みると、本格始動前に治療することも可能っぽい。ギンコと蟲の勝負、になりそうですね。

>>草薙さん
眼鏡外れたのび太、というとつまり、目が33になってるわけで。それで朱雀。笑えるん
だか何なんだか、異様な光景です。ともあれ圓明流奥義でKOされたジャイアン、生きてて
何より。あと京サマ勝ち台詞してるのび太、勇次郎が舌なめずりして見てそう。どうなる?

>>うみにんさん
この戦いは本当に「あ〜、あったあったそういう道具!」が多く、その使い方もひと捻り
してて、楽しいです。今回のやきすて銃なんか、私の記憶では二〜三コマぐらいしか出て
ない道具のはず。ん〜懐かしい。で状況が落ち着いたところで、真打登場! 手に汗です。
>>85-91続き

ドラえもんたち破壊班が、爆弾で鉄人兵団を吹き飛ばし、
メインコンピュータ破壊の重大任務を成し遂げた、その瞬間―――――
反乱軍の新拠点に、女性陣の歓声が響いた。女性陣とはもちろん、
ドラミ、ワンダー・ガール、ローの3人である。

ドラミの目の前の空間に、時空間へと続く小さな黒い穴が開いている。
「タイムホールが開いたわ!」
「それじゃあ・・・!」
「うん。お兄ちゃんたち成功したみたい!」
「キャー!やったわ!」
「みんな、準備はいいわね?さっそく、出発するわよ!」
ローとワンダー・ガールは、勢い込んでドラミの元へと集結した。

―――――その時である。
「へぇ〜、そういうわけ・・・ね。」
乱暴な音を立て、勢いよく拠点の扉が開いた。3人は、ハッとしてそちらの
方向を見やる。そこには一人の少年のシルエットがあった。逆光の中でも、
彼の口元に意地の悪い笑みが浮かんでいることだけは雰囲気で伝わってくる。
さらに、その背後には数人の悪魔の兵士の姿も見えていた。

ドラミは彼の名を知っていた。のび太たちの元クラスメイトであり、
現帝国幹部のうちの一人である。
「ズル木さん・・・!?なんで、ここが!?」
「あんたたち反乱軍は、なかなか結束が固くて慎重だ。スパイを捕らえても
決して口を割ろうとしない。これまで、なかなか居場所が判明しなかったんだが、
拠点を移動させたのが裏目に出たね。帝国で新たに開発された新式のレーダーに
かすっていたよ。ほんのわずかだけどね。」
ズイと前に出てヤリをかまえる悪魔兵士たち。ヤリの穂先に魔力が収束し始める。
「さぁ、お前たち、あいつらを焼き尽くしてしまえ!」
しかし、ドラミの反応は素早かった。メガホン型の奇妙な形の銃を兵士たちに
向かって照射する。
「"武器よさらば灯"!」
「え?」
間の抜けた声を漏らすズル木の横で、悪魔の持つヤリがやたら長いネギやらゴボウ
やら、ヤマイモやらに変わっていく。続いて狼狽する兵士たちの体が浮き上がった。
お互い頭をぶつけ合って、あっさりとその場に昏倒する。ドラミの秘密道具の次は、
ブルドーザーをも持ち上げる、ワンダー・ガールのテレキネシスである。
「ワ、ワンダー・ガールか!クソッ、裏切り者め!」
ワンダー・ガールはまだ超能力の構えを解いていない。いつでもズル木を仕留め
られる体勢を整えている。

「フ、フフフ、なぁに。はじめからこんなやつらアテになんかし、してないさ。」
ズル木は露骨に動揺を見せながらも強がっている。なにか切り札を持っているの
だろう。あいかわらずのズル賢い笑みで一本のドリンクを取り出した。
「クックック・・・。“悪魔の実”って知ってるかい?知らないだろうね。
肉体を人知の限界を超えて強化してくれる、悪魔の秘薬さ。このドリンクを
飲んだが最後、ボクの体は無敵の超人と化す。お前等なんか一捻りだ。」
メキメキと不気味な音を立てて、ズル木の肉体が変化し始めた。が。
「あれ?」
変化はすぐに治まった。ズル木の体は何も変わっていないように見える。
ズル木は、目に見えて狼狽し始めた。
「な、なんで?」
「フフ、あなたが悪魔の実を持っていることは、もう予想がついていたの。」
ニヤリと微笑んでワンダー・ガールは、ズル木に告げる。
「残念ながら“部分テレポート”で、そのお薬だけ、どこかへ移させてもらったわ。」
「・・・へ?ど、どこかって・・?」
「さぁ?」

「おじゃ――――――!?」
隣の部屋から幼い子供の悲鳴が聞こえた。
「まろの・・・まろの麗しい色白すべすべおもち肌が・・・かくも暑苦しい・・・」
ワンダー・ガールはそちらの壁の方を見やり、呟いた。
「・・・・・おじゃる丸くんに行っちゃったみたいね・・・」

ズガ―――――ン!
派手な音を立てながら、隣の部屋から壁を砕いて巨大な拳が突き出してきた。
「まっちょ☆おじゃる丸パーンチ!!」
「げふぅっ!」
壁をぶち破って現れた放送禁止なくらいマッチョなおじゃる丸の豪腕がうなった。
ズル木はなすすべなく宙に舞い、落ちてきたところをドラミに止めを刺された。
「痴漢撃退バリアー!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!」
ドラミの周囲に生まれた、強力な電磁波のドームに激突し、ズル木はこんがり
ウェルダンに焼かれてしまった。その横で、(顔以外)変わり果てた姿になって
しまったおじゃる丸が、さめざめと泣いている。

「ま、まろの麗しい、あんなにもかわゆかった体が・・・体が・・・
このように暑苦しい姿になってしもうた・・・・。」
おじゃる丸は、マッチョな体になっても唯一変わらぬ、つぶらな瞳で泣いた。
泣き崩れた。そのまま、傷心のあまり昏倒してしまった。が、悪魔の実が体質に
合わなかったのか、おじゃる丸はあっさりと元に戻ってしまった。よかったね。
「か、かわいい・・・♪」
その泣き疲れ、目に涙を浮かべながら安らかに眠る雅な寝姿を見たズル木は、
これまでの自身の生涯で一番の穏やかな表情で、その場に力尽きたという・・・
「ふぅ。これで全員倒したみたいね。」
伸びている悪魔の兵士たちとズル木を見渡して、ドラミとワンダー・ガールは
一息ついた。
「おじゃる丸くんには秘密にしといてあげるか。悪魔の実のこと。」
「可哀想に。あの様子じゃ、しばらく夢でうなされるかもしれないわね。」
涙を浮かべて眠るおじゃる丸の姿に、少々後ろめたい気持ちを覚えながら呟く
ワンダー・ガールに、ドラミも同調して頷いた。―――――その時――――

油断する2人の背後で、ズル木の眼が光った。
――――いや、ズル木ではない。ズル木の体を借りた何者か―――――

ズル木の肉体から何者かが、這い出てきた。最初に気付いた者は、ローである。
人ならざる者。不気味な亡霊のような・・・いや、その姿は亡霊そのものである。
ローの思考は、ドラミとワンダー・ガールに知らせるべく、肉体に命令を発す。
しかし、それが、肉体に届くよりはるか遠い段階で――――その指令は止まった。
動けない。意識ははっきりしている。が、指先ひとつですらピクリとも動かない。
恐怖と焦燥だけが脳裏を埋め尽くす中、ローは見た。亡霊の存在に気付き、
振り向いたドラミとワンダー・ガールが、恐怖に見開かれた表情のまま、
冷たい石の像へと変化する瞬間を―――――――――――。

―――――ホーッホッホッホ―――――――

ズル木とおじゃる丸までも石化させ、亡霊は不気味に勝ち誇った笑いをその場に
残し、さらなる獲物を求め、アジトの地下へと降りていく。アジトに残った者たち
全てを葬りさる気なのだろう。ドラミたちの他に残る者は、先の戦いで怪我を負い
残らざるを得なかった兵士たち数人と、志願して集まった介護の竜人女性が数名。
そして―――――隠し小部屋で一人、葛藤を続ける少年――――――――

―――――骨川スネオ。わずかにそれだけであった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
107ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/05 23:15:34 ID:IxWMtaRl0
今回分終了です。ギラーミンじゃなくてすみません。
しかし、いつもと比べて、ずいぶん作品が少ないような・・・
108作者の都合により名無しです:05/02/05 23:32:58 ID:yfIDFHxR0
3日連続の連投おつです。
まあ、ギラーミンは横綱ですから最後でしょうね。
スネ夫なんかいいなあ。
109蟲師 奥に棲む生:05/02/06 01:46:47 ID:TgjpaGDf0
>>70より続き。

110蟲師 奥に棲む生:05/02/06 01:47:39 ID:TgjpaGDf0

 一夜が明け、東の空が白みはじめる。
「ん、うん……」
 少年の母は、目覚めと共に奇妙な感覚を覚えた。何故、自分が柱に固く縛り付けられているのだ。
「これは……!? 一体、どういうことなの……?」
 母は、自分のことは置いてまず息子の方に目を遣った。この家族は、現代で言う『母子家庭』である。
それゆえ、母子の結び付きは、他の親子のそれより強い。この母親にとっては、息子が傷つくことは即
ち、自らも傷つくと同じことなのだろう。彼女は、子と自分が同じ存在だと思っているのかもしれない。
 母の目には、息子の傍らにあぐらを掻いて座っている蟲師が映っていた。
「あなたね? 私を柱に縛って……何をしようと言うの!?」
「アンタは耐えられん。故にそうした」
 ギンコは、背中からそう答えた。
「何に、耐えられないというの? もう覚悟は出来ている、私は――」
「人錆≠ヘ――」
 母親の声を掻き消そうとするかのように、ギンコは語り出した。
「まず、第一段階で宿主の動きをほぼ止める。まあ、見たとおりだな。だが、これはほんの前触れに過ぎ
ない。見ろ、これが第二段階の始まりだ」
 ギンコは、母親の方に体を向け、閉じていた右手を開いた。その中には、一枚の葉があった。
「先刻、これがアンタの子供の口から出てきた。この葉がなんなのかは分からんが、恐らく、アンタがかつ
て食べた野草だろう。そういったものに人錆が付いているとは、昨日言ったな――これが宿主の体から吐
き出された時から、例外なく第二段階に突入する」 
「……どうなるというの」
「……時が早まる。肉体の、精神の、な。つまり急速に成長し、老いる。そして、最後には老衰で逝く」
111蟲師 奥に棲む生:05/02/06 01:48:18 ID:TgjpaGDf0
 ギンコは、とつとつと語る。
「第二段階の進行は、異様なほどに早い。およそ半月で終わりまで行く……と、推測されている」
「……すいそく?」
 母親は、どこか遠くを見ている。それがどこかは、本人にも分かっていない。どこか、遠く、だ。
「先達の記録は、途中で途切れてしまっている。何故かは分からん。が、穏やかじゃあない自体があったと
見るが妥当だろうさ。なんせ、親にとっちゃあこれほど残酷なことはそうあるまい。自分らの子が、自分らより
早く年老いた姿となるのだから」
 ……この子が、しぬ?
「だから、済まないが、そうさせてもらった。アンタにとっちゃあ一人息子、唯一の家族だろう。そして、情も深い。
それゆえ、極限となった時何をするか読めん」
 ……わたしが、しぬ?
「半月の間に、俺も色々考えてみる。だから……心が休まることはないだろうが、俺に任せてくれ」
 ……いやだ、いやだ。わたしと、あのこは――

 数日が過ぎ、子は見違えるほど体が『長く』なった。しかし生まれてから寝たきりのその体に筋肉はなく、骨もま
た薄く、不用意に踏んでしまおうものなら、容易く砕けてしまうであろう代物であった。
 ギンコは、夜を徹して文献などを漁り、手がかりを掴もうとしていた。しかし、それでも人錆の効果的な対処法を
発見するには至らず、もはや文献のみで見つけるのは不可能に思われた。
「……そもそも、最後どうなるか分からない蟲など、何も分かっていないと同じことだな。せめて、進行を遅く出来
れば……しかし、あのひ弱い体に薬は禁物だし……」
 その時、子の寝ている部屋からどたと音がした。あの部屋には、母親が。
 ギンコは、すぐさま襖を開け、部屋へと急ぐ。中には、寝静まる無精髭を生やした子と、その子に向けて刃物を
突き刺さんとしている母があった。
「やめろっ」
「放してっ! どうせ、助からないのなら、一緒に、死の国へ、行くのよ。そう、私と、この子は、同じ。なら、死ぬ時
も、一緒。それが、自然」
「違う。子は、親より後に死ぬのが自然なんだ。この子はまだ死んじゃいないし、アンタだってまだ死ぬ時期ではない」
 ギンコはそう言いながら、母が手に握り締めている刃物に目を遣った。母親の近くに置き忘れていたものだ。
(しまったな……くそ、徹夜続きで注意力も散漫になってるか?)
 母も子も、ギンコもまた極限に近付きつつあった。

112ゲロ ◆yU2EA54AkY :05/02/06 01:50:31 ID:TgjpaGDf0
どん底近くまで来ましたねえ。次で終るわけですが、救いはありますよ。一応。

しかし、ここ最近ただ面白いだけじゃなくて、何か読んだ人の心にズドンと衝撃を与えるモノも書きたいなと思うように
なりました。やっぱ、立て続けにいい漫画を読んでるから、そのせいでしょうかね。
一番心にダイレクトに響く表現方法は漫画だってのは確信してます。

>>72
素人の戯言ですんでw

>>74
筋肉とか考えてませんでした。有難うございます。
今回の終わり方は、ある意味究極に安易かも分からないが、ここまで書いちゃ仕方がない。

>>80
そんなん、出てますかね? 自分じゃ分からないや。

>>81
いいときもあれば悪いときもある。何事もそれだけは変わりませんね。

>>102
俺の書くギンコは負けてばっかです。書く度書く度漆原さん(『蟲師』作者)の凄さを思い知らされてしまう。

では。
113作者の都合により名無しです:05/02/06 05:03:42 ID:U6CwQ6ZtO
愛してるよ、ミ・ド・リ
114作者の都合により名無しです:05/02/06 17:24:06 ID:LVSq6QJlO
確かに全盛期に比べれば減っているけど、このくらいが普通だと思う。
今夜あたりバスタ続き来ないかな。
115作者の都合により名無しです:05/02/06 18:27:05 ID:0WMqyBqx0
うみにんさん、ゲロさんお疲れ様です。

>うみにんさん
他のメンバーが大活躍している中で、壊れるか立ち上がるかの選択を強いられるスネ夫。
こいつが物語のカギになってほしいな。のびた以上に人間くさくて弱い所がすき。

>ゲロさん
ギンコは本当はあったかい人間ですが(人間か?w)やる事はえげつないですよねえ。
原作でもSSでも。最近ちょっと救いの無い話多いんで、出来ればハッピーエンドで。


まあ、こんなに連載作あって不満いったらあかんわなw
その内、パオさんやVSさん、ユルにローマさんも帰ってくると思うし。
116殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/06 20:41:36 ID:7nTkL0UN0
>11より

―――勝った!
人識は<曲絃糸>が勇次郎を確かに捕らえたのを確認し、ニヤリとほくそ笑む。これで奴はもう逃げられない。
あとは糸を操り、奴をバラバラにすれば―――
だが、指に力を込めようとした瞬間、人識の身体は何かもの凄い力に引っ張られるかのように宙に舞っていた。
「な―――!?」
なんとか受身を取って無様に頭から落下することだけは避けたものの、何が起きたのかはまるで分からない。
「どうした?軽ーく引っ張ってやっただけだぜ?」
「―――引っ張った、だと?」
呆然とする人識と、余裕の笑みを浮かべる勇次郎。
「ああ。糸が俺の身体に巻きつく一瞬―――そのタイミングでそれを引っ掴んで、力任せに引っ張ってやったのさ」
あっさりと言い切る勇次郎だが、はっきり言ってメチャクチャな行動だ。そもそも、曲絃糸とは触れれば切れる刃物
も同然なのだ。それを掴んで思い切り力任せに引っ張る。言葉にすればそれだけだが、下手をすれば自分の指が
落ちてしまうだろう。そんな作戦ともいえない行動をあっさり行い、成功させるとは―――
「・・・いや、それが出来るからこその地上最強か」
人識はふらふらと立ち上がり、自嘲気味に笑う。
「ふん―――こんな玩具を使わずにかかってこいよ。まさかこれで終わりってんじゃ、見込み違いもいいとこだぜ」
「かはは―――まさか、だな」
人識はタクティカルベストの内側に手を突っ込み、細身のナイフを両手に構え、そのまま勇次郎に肉薄する。
防御はまるで考えず、回避と攻撃だけに全神経を注ぎ込む。
迎え撃つ勇次郎の鬼の拳。常人なら軌道も見ることが出来ない速度で打ち込まれる一撃が、極限まで発揮された
人識の集中力によって紙一重でかわされ、同時に突き出した腕に無数の刃物傷が刻まれる。
勇次郎は歯を剥き出して笑い、さらに凄まじい勢いで連打を叩き込むが、人識はその全てを悉くかわして勇次郎の
身体を傷付けていく。
明らかに人識が押している―――だが、勇次郎は心底楽しそうに笑い、反面人識の顔には汗がじっとりと流れていた。
それだけを見れば、勇次郎が圧倒的に優位に立っているかのようだ。
人識は焦燥を浮かべて勇次郎から距離を取り、勇次郎に問い掛ける。
117殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/06 20:42:28 ID:7nTkL0UN0
「なあ・・・一つ聞いていいかい?」
「なんだ?」
「あんた・・・そんなに闘うのが好きなのかよ?切られようが死のうがどうでもいいってのか?」
勇次郎はククっと笑い、答えた。
「寝惚けたこと言うんじゃねえよ。好きだのなんだのってレベルじゃねえ・・・俺にとっちゃ、闘いこそが
全てだ。他にゃあ何もいらねえってぐらいにな」
「・・・・・・」
「てめえだって似たようなモンだろうが―――てめえだって人殺しが楽しくてしょうがねえんじゃないのか?
だから殺人なんてやってんじゃねえのか?それと同じだ」
「・・・そりゃあちょっと違うな。俺は別に殺人は楽しくない―――別に嫌いでもねえけどな」
人識は淡々と言った。
「あんたは零崎を殺人愛好者の集まりだとでも思ってんのかもしれねえが―――俺の知る限り、<殺人が好き>
だなんて奴は零崎にゃあいなかった。中には殺人なんて真っ平だ、なんて言ってた阿呆だっていた。
あいつらは<そうであるように>人を殺す。もちろん―――俺だってな。だから俺にゃあ、あんたの気持ちは
分からないよ。闘いが好きだ、なんて気持ちはな。俺にとって殺人とは―――常に俺の側にあるもんなんだ。
好きとかなんだじゃねえんだよ、嫌でもソイツと一緒に生きてかなきゃならない」
「・・・そうかい。じゃあやっぱ、俺と似たようなもんだな。俺にとっても闘いは、常に俺の側にあるもんだ。
てめえの側に常に殺人が張り付いてるように、な。ソイツを楽しいと思うかどうでもいいと思うかだけが、
俺とてめえとの違いだ―――そして」
勇次郎は両手を上げて、くるりと人識に背中を見せる。その背中の筋肉が恐ろしい勢いで盛り上がっていく。
「―――楽しい時間も、これで終わりだ」
その瞬間、勇次郎の服の背中の部分が盛り上がった筋肉によって弾け飛ぶ。
そして―――人識は見た。
勇次郎の背中に浮かぶ―――<鬼の貌>を。
118サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/06 20:44:00 ID:7nTkL0UN0
投下完了。
今回は2レス分しか投下出来なかった・・・
次回決着の予定です。
119作者の都合により名無しです:05/02/06 21:16:37 ID:nRj+ODPZ0
・出来杉
ギラーミン出なかったですね。でも、ワンダーガールが大活躍したからいいか。

・蟲師
子供を親が殺すシーンは見たくないな。ギンコ、たまには上手く蟲払ってくれw

・オーガの鬼事
ああ、鬼の貌が出てしまった。人識ご臨終か。これって次回終了ですか?寂しいな。
120犬と猫:05/02/07 01:58:18 ID:4TOrt3Co0
追憶

 遠い昔、まだ文明が未成熟だった時代──優秀な二匹の犬と猫があった。
 犬は野心家で好戦的、地球上の支配者たる人間を駆逐せんと息巻いていた。対して、猫
は温厚で楽観的、打倒よりも和平を好む性格であった。対極な性質を持つ二匹だが、不思
議と仲は良かった。
 二匹は幾度も苦難を乗り越え、幾度となく称賛を浴びてきた。
 しかし、溶岩と草原が同時に存在することなどあり得ない。ついに、犬と猫は決定的な
対立を迎えることとなる。
「僕らは共に武術を極めた仲だが、やはり武力で人間を駆逐するのは難しい。だから、僕
は都へ出て権力を勝ち取り、合法的に人間どもを制圧しようと思う。ぜひ、協力してくれ
ないか」
 犬の誘いに対し、猫はゆっくりと首を振った。
「すまない。僕は君が好きだけど、人間と争う気持ちにもなれない……」
「な、何故だ! 君がいれば、五十年は計画が早まるというのに!」
 強行に迫る犬だが、猫は信念を曲げなかった。温和だが、心に根ざすものは犬に劣らず
頑強なのだ。
「やりたいのなら、一人でやってくれ。それに、僕は神から啓示を受けたんだ。聖地にて
武神として生きろ、とね……。僕はこの啓示に従うつもりだ」
 犬は説得が不可能だと悟った。
「そうか……。じゃあ、僕たちは明日でお別れだな」
 いつも一緒に寝ていた二匹だが、今日だけはその気になれなかった。
121犬と猫:05/02/07 01:59:18 ID:4TOrt3Co0
 次の朝、犬は猫に水瓶を手渡す。別れの手土産とのことだ。
「中に入っている液体は……?」
「君は武神になるのだろう。これは、僕の故郷に伝わる体内にある潜在能力を引き出して
くれる水さ。昨晩、急いで取ってきたんだ」
「いいのかい。こんなものを……」
「いいさ。君とは、もう二度と会うことはないかもしれない。それに、僕には必要のない
ものだ」
 犬が微笑む。猫は涙をこぼした。溢れんばかりの友情が込められた水瓶を手に、猫は犬
に別れを告げた。去っていく背中。
「ふふふ、さようなら。永遠にね……」
 猫の耳に届かぬよう、犬もそっと別れを告げた。

 犬が渡した液体の正体。それは、丹精込めて調合された猛毒であった。能力を引き出す
力などあるわけがない。自分を裏切った猫を、犬はどうしても許せなかった。そこで制裁
のために、怨念を込めた贈り物を考え出したのだ。
 しかし、犬には一つ誤算があった。猫の自分に対する信頼が、余りにも強かったことだ。
猫は液体の効能を全く疑わず、そのため自ら飲むことをしなかった。代わりに、自分を訪
ねてきた武道家に与えようと決めたのだ。
「これを飲むが良い。おぬしに眠れる力を引き出してくれるだろう……」
「あ、ありがとうございます!」
 初めての客に、それを飲ませる。すると、猛毒は効能に忠実に従って、武道家をいとも
あっさり絶命させた。猫は驚く。
「しっかりしろ! ……死んでる。何ということだ……!」
 猫は丁重に男を葬ると、悲劇をもたらした要因を考えた。しかし、犬を疑うことだけは
なかった。猫にとって、犬との友情は絶対だったからだ。
「潜在能力を引き出すなど、簡単に出来ることではない。きっと、高いレベルの武道家で
なければ、耐えられぬような毒物なのだろう」
 強引な解釈だった。心のどこかでは、犬に毒を盛られたと疑った部分もあったのかもし
れない。だが、猫はそれを認めずに、逃避を選択した。あの友情を嘘だと認めてしまった
ら、今までの人生が全て崩れ去るような気がしたのだ。
 その後も、何人もの武道家がこれを飲んだが、生還出来たものは一人もなかった。
122犬と猫:05/02/07 02:00:02 ID:4TOrt3Co0
 一方、犬は持ち前の才気を生かし、順調に出世を重ねていった。
 友であった猫のような温和な皮を被り、一般市民たちに自分をアピールした。もちろん、
公に出来ない仕事とも両立させている。大金を積んで人を操ったり、政敵を暗殺するなど
は日常茶飯事だった。
 常に細心の注意を払い、大胆な施策を実行し、ついに犬は最高権力の座に上り詰めた。
 すなわち、国王となったのである。
 しかし、彼は余りにも疲弊していた。本心を出せぬ不満、油断出来ぬ日々、多すぎる対
立者。頂点に達したものの、もはや彼に野心は残されていなかった。あったとしても、気
力がなかっただろう。
 獣人や野獣を優遇し、徹底的に人間を弾圧する。もちろん、反乱は起こるだろう。だが、
犬はきちんと力を蓄えていた。青写真も出来上がっていた。下書きした線を、あとはなぞ
るだけで良かった。が、その気力が沸かない。
 結局、犬は絵に描いたような平凡かつ日和見な国王に成り下がってしまった。
123犬と猫:05/02/07 02:00:41 ID:4TOrt3Co0
 ──ここで、目が覚める。武術の聖地、カリン塔最上部。
「昔の夢を見ておったか……」
 背伸びをするカリン。下界を覗き見られる彼は、親友だった犬がどうなったのかも全て
知っていた。唯一存じえないのは、水瓶に入った液体の正体のみ。彼はいつしか、この液
体を「超神水」と名付けていた。危険そうな名前にすることで、安易なチャレンジャーを
生み出させないためだった。そして、この件についてもようやく彼の中で決着がつくこと
となる──本物であったと。
 つい半年前、苦肉の策として与えた超神水が、初めて犬が説明した効能を示したのだ。
液体を飲んだ少年(名は孫悟空という)が、引き出されたパワーで見事にピッコロ大魔王
を打ち倒すという快挙。カリンは喜んだ。邪悪が滅んだことも嬉しいが、何より七百年以
上にわたる友情が、ここに証明されたのだから。
「……本物じゃったんじゃな。ありがとうよ、おぬしのおかげで世界は救われた」
 カリンは水瓶を犬と見立て、頭を下げた。
「ほんの少しでも疑ったわしを許して欲しい。だから、今日わしは──」
 超神水を飲む。本物と分かったからではない。耐え切る自信があるわけでもない。ただ、
償いたかった。過去、超神水を飲んで耐え切れずに亡くなった若者たちへ。一瞬でも疑っ
てしまった、かつての親友へ。
 カリンは瓶からコップへと少量を注ぐと、ぐいと飲み干した。
124サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/07 02:02:10 ID:4TOrt3Co0
お久しぶりで……もないですね。
原作との整合性が少々(かなり)不安ですが、次回へ続く。
125おなら:05/02/07 10:04:36 ID:Kaz3A4LAO
おなら
126ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/07 10:24:40 ID:CV+ywsUI0



前話>>103-106
127作者の都合により名無しです:05/02/07 10:24:52 ID:y71mGCtM0
携帯ユーザーってロクな奴がいないな
―――こんな絶望的な状況下でも、能天気な特攻精神を発揮できるような野蛮な
やつらなんて、デリケートな僕には合わないんだよね―――――
スネオは、いまだ一人地下の隠し小部屋に潜んでいた。明かりもない、薄暗い、
閉めきった小部屋に一人きりである。当然、様々な思いが頭をよぎる。

食料は確保してある。戦いが終わるまで、ここを出るつもりはなかった。たとえ、
どんな説得を受けようとも、戦いの結果がどうであろうとも。しかし―――――
さきほど、一瞬ではあるが上の方で、なにやら女性3人の歓声があがっていた。
かと思えば、突如乱闘でも起こったかのような喧騒。そして、今は嘘のように、
シーンと鎮まりかえっている。一体、何が起こったのか・・・。

――歓声は、女の子同士のたわいもない雑談から生まれた、別にどうということも
ないものなのかもしれない。しかし、その後の喧騒。ケンカ?まさかな。じゃあ、
ひょっとして敵襲?そうだよな。相手の軍事力を考えれば今まで見つからなかった
ことの方がおかしいくらいだ。――いや、あの歓声は、まさかドラえもんたちが
コンピュータの破壊に成功したのか!?そして、そのまま救助を求めに出発した?
そ、それなら、いくらなんでも、ぼくを呼びにくらい、く、来るよな。―――ぼ、
ぼく・・・忘れられた?いや、さっきの喧騒を考えると、やっぱり敵襲か――――

一人、閉じこもっていては、どうしても悪い方に考えが向いてしまう。しかし、
この場合、スネオの考えは当たっていた。
「ああ・・・こんなとこにまで敵襲だなんて・・・ドラミちゃんのことだから
大丈夫とは思うけど・・・」
あまりの静けさが気になって、ついにスネオは周囲の様子を伺うことにした。
「"どこでものぞき穴”」
壁や扉の向こうの様子がわかる道具である。マジックミラーのように、向こうから
こちらは見えない。道具をみんなで振り分けた際にポケットに入れたままになって
いたのだ。スネオはそっと、のぞき穴を覗きこみ――――――硬直した。
ちょうどスネオの潜む小部屋のまん前を、不気味な亡霊が通りすぎていったのだ。
怨念がまとわりついて歩いているような真っ白い化物。髪の毛がまるで蛇のように
不気味にうねっている。いや、よく見ればその髪の毛の一本一本は全て、蛇その
ものである。人外の者であることは、現実主義者のスネオにも認めざるを得ない。
「な、なな、なんだ!?あいつは・・・!?幽霊!?亡霊!?」
スネオは焦った。冷や汗をダラダラ流しながら、不安げに呟く。
「ド、ドラミちゃんたち、今のやつにやられちゃったのかな。」
喧騒。そして鎮まりかえったアジトの様子。悪い予感はしだいに確信に近いものへと
変わって行く。いてもたってもいられず、スネオは部屋を飛び出した。

「ドラミちゃん!ローさん!ワンダー・ガール!?」
3人は冷たい石像と化していた。月のない地底世界では決して解けることのない呪い。

―――――ホーッホッホッホ―――――――

階下から不気味な笑い声が聞こえてくる。"あいつ”だ。スネオは部屋の隅に置かれた
ベッドの下に身を隠して、様子を伺った。亡霊は、キョロキョロと周囲を確認して、
ドラミたちの側の空間に浮かんだ小さな黒い穴の中へと消えていった。

あの黒い穴はおそらく―――――タイムホール。
そうか。ドラえもんものび太もジャイアンも、自分の仕事を果たしたんだな・・・。

あの亡霊はいったい、何者なのか。
「あいつ・・・ひょっとして、のび太たちが言ってた・・・
メデューサ・・・じゃない・・・メジューサとかいうやつか?」

「そうか。やつの目的は、時空間の独占。やつらにとっても切り札である時空間を、
僕等に使わせるわけにはいかないんだ!」
スネオは、気付いた。―――ということは――時空間とのつながりはここにしかない。
ならば、時空間へと飛び込んでもなお、やつはきっと、ここからそう遠くない場所に
潜んで、様子を伺っているはずである。時空間を使おうとするものを抹消するために。

いや、ひょっとしたら、またここに戻ってくるかもしれない。どうする?
それまでにやつを倒す準備を―――――だけど、メジューサ対策の秘密道具は、
全部ドラミちゃんの四次元ポケットの中だ。何か、使える道具は残ってないのか。
131作者の都合により名無しです:05/02/07 10:28:16 ID:C2IY9LV1O
サナダムシさん乙
前にもカリンの話を書いてましたよね。
あの時は虎になったカリンが国王になるという話でしたが、今回はどうなんだろう。
スネオは急いでドラえもんが置いていった大量の道具の中から物色し始めた。
スネオはまだ、気付いていなかった。既に自分は戦いを恐れていないことに。
度重なる冒険は、やはりスネオを成長させていたのだ。

“勇気”と“勇敢”。それは、似て非なるものである。

勇敢とは、裏を返せば、それは単なる無謀、無鉄砲、命知らずの愚鈍とも言える。
待ち受ける危険を鑑みず、果敢に挑む勇敢さは、人に勇気を与える事は出来るかも
しれない。しかし、それは本人自身の勇気とは違う。

悪く言えば、ジャイアンのそれは「蛮勇」、のび太の持つそれもまた「能天気」と
言い換えることができる。しずかのそれは「母性」、出木杉のそれは「自信・確信」
であろう。それらは、スネオにはない、かけがえのない魅力であり、"力”である。
だが、スネオもまた、彼らには持ちえない優れた力を持っているのだ。

スネオは自身の無力さと周囲の者たちの持つ“勇敢さ”に甘えていたのかもしれない。
自分の“力”を過小評価するあまり、心の奥底に眠る“自分だけの力”に気付いて
いなかったのだろう。だが、狼は目覚めた。ゆっくりと、心に大きな力が満ちてくる。
自分より大きな存在だったドラミとワンダー・ガールの窮地に、スネオの心の奥底に
押し込められていた“勇気”は自然、自立の道を選んだのだ。

待ち受ける危険の“意味”を知り、己の無力さ、無謀さを知り、悩み、考え抜き、
その上でなお、立ち上がる心。それが勇気なのである。生来の勇敢なる者には決して
持ちえない心。臆病だからこそ、誰よりも強い勇気が生れる。

スネオは来たるべきメジューサとの対決を睨み、虚空に叫んだ。
「ば、化物め!く、来るなら・・コヒッ!!」
声が裏返った。前言撤回。やはり相当、怖がっているようである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
133ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/07 10:34:25 ID:CV+ywsUI0
今回分終了です。

「狼は目覚めた」は、正直言いすぎました。(ムシャクシャして書いた。
今は反省してる。)でも訂正はしません。なんか顔の形とか狼っぽいですし。
短いですが深い意味のないとある理由で、ここで区切らせていただきます。
134作者の都合により名無しです:05/02/07 11:45:14 ID:dljeVlPM0
出木杉乙。スネオがかっこよすぎると思ってたらオチがありましたかw
このままスネオらしく戦ってくれることを期待してます。
ギラーミンにメジューサとラスボス間近って感じですね。

>>114
最近人少ないと思ってたけどマロンの板自体人が少ないねえ。
平日の午前中とはいえスレ順の変動がなさすぎる。
前からこんなんだったっけ?
135作者の都合により名無しです:05/02/07 14:27:50 ID:D+/nRdqh0
お疲れ様です。>ゲロさん・サマサさん・サナダムシさん・うみにんさん

>蟲師
ゲロさん得意の救いのないラストか?と思ったら、なんか違うみたいですね。
次回の決着編くらいは親子とギンコの笑顔が見たいですな。

>殺人鬼とオーガの鬼事
やっぱりオーガが最後に笑うのかwまあ、糸位じゃ勇次郎は縛れませんわな。
最後は人識に華々しくかっこよく散ってほしいなw

>犬と猫
最初読んだとき、流れ星銀か何かと思ったw相変わらず凝ったつくりですな、
ジャブの時といい。カリンさま、次回は活躍するのですかね?

>出木杉
スネ夫はある意味2ちゃんねらに似てるかもな。引きこもってる割には
プライド高いwでも、ついにスネ夫が活躍しそうな雰囲気!
136作者の都合により名無しです:05/02/07 15:10:12 ID:NuJAeSkT0
そうかそうか。悟空が力を身につけたのはサイヤ人の超回復か。
137作者の都合により名無しです:05/02/07 15:21:09 ID:BihHs+QY0
>>134
某所と間違えてるようだが、ここはマロンじゃないぞ
138ふら〜り:05/02/07 19:04:56 ID:ZTBkosfm0
>>うみにんさん
マッチョおじゃる丸……それはそれである種の可愛さがあるような。本人は嫌がってる
ようですが。そして、遂にスポットを浴びたスネオ! 彼だけの勇気、ってなかなか筋が
通りつつカッコいい。ここで一気に女の子たちを救ったりして名誉挽回、となるかっ!?

>>ゲロさん
老衰で死んでしまう病気、って書くと何だか矛盾した表現ですな。見てる内にどんどん
老いていく我が子の姿……確かに、親にとっては耐えられない光景かも。記録がない、と
いうのが鍵になりそうな感じですが、ギンコもそうなってしまう(記録を残せない)のか?

>>サマサさん
勇次郎が、見込み違い(というほどのものでもないですが)して、素直にそのまま流した
のが意外。天内みたいな哲学ぶち壊しとかするかと。で人識は汗かいてますが、鬼の貌を
見せられたってことはそれなりに認められた様子。でも次回は、負けるか逃げるか……。

>>サナダムシさん
うまい! こういうタイプの二次創作作品は、「ああなるほど」の部分がハマるかどうか
がポイントですけど、これはほんと、膝を打ちました。確かに犬と猫。確かに悟空はあの
時、苦しんでた。しかも最後に、想像を掻き立てるオチまでついてて。面白かったです!
139作者の都合により名無しです:05/02/07 19:10:51 ID:t5KEyN6Z0
>>138
おまえやっぱり流し読みしてるだろ。
ユルだけならともかく、他のやつにもするんならもうやめろよ。
140作者の都合により名無しです:05/02/07 19:15:46 ID:BihHs+QY0
流し読みでもしなきゃ全作品に平等の行数で感想書くなんてことはできんから。
内容のつまったSSもそうでないSSも平等に書くなんてことはね。
だったら書くなって話だが、そこはふら〜りだからしょうがない。
141作者の都合により名無しです:05/02/07 20:06:42 ID:SlPxpbXF0
今までの膨大な作品量に慣れたせいか作品数が減ってきた今、
どっと読み疲れが襲ってきたのはオレだけか?
142作者の都合により名無しです:05/02/07 21:27:37 ID:Kaz3A4LAO
俺も2、3作しか読んでないよ。
全部は
143犬と猫:05/02/07 21:54:29 ID:JYs04P/U0
変貌

 超神水が胃に達すると同時に、カリンは想像を絶する不快感と痛みに襲われた。
「ぐおおっ! こ、これ程とは……どうりで死人が出るわけじゃ……」
 涙を流し、血を吐き、声を吐き、尿を漏らし、全身を掻き毟る。これだけやっても、超
神水による激痛はごまかせない。いかに策を弄しても、毒は無情に中核を突いてくる。
「ガアアアアッ!」
 叫び声を上げつつ、カリンは猛省する。今まで、自分はこんな毒液を他人に飲ませてい
たのか。とうに涙は枯れ果てたのに、カリンは泣いていた。
「わしは、どっちに行くのかのう……。いや……地獄じゃろうな……」
 五時間にも及ぶ毒との果し合い──ついに、カリンが力尽きた。
144犬と猫:05/02/07 21:55:10 ID:JYs04P/U0
 ちょうど同時刻、スカイカーを駆る剣士が一人。着流しに長髪、少々太り気味な彼の名
はヤジロベー。カリン塔を目指している。
「……やれやれ、金がなくなっちまった。また、カリンの奴に仙豆をもらうかぁ……」
 時速は二百キロ以上。風を切り、雲を突き抜け、ヤジロベーは空腹を満たすために飛ん
でいく。
 やがて、深い森林が眼下に見渡せる地域に辿り着く。ここまで来れば、もうすぐである。
地平線に立っている細い棒──カリン塔。地上何千メートルもの高度を誇る聖地。
「よっしゃあ!」
 ヤジロベーが一気にハンドルを切る。スカイカーは垂直に向きを変え、上昇する。
 まもなく、頂上に到着。もっとも、さらに上へ一本の棒切れが伸びているが、これは神
の神殿へ通ずる如意棒。ヤジロベーには関係ないものだ。
「また仙豆をもらいに──うわっ!」
 最上部では、カリンが青白い顔で倒れていた。駆け寄るヤジロベー。
「お、おいっ! どうしたんだよ!」
「うぅ……」
「そうだ! ……水だ、これを飲め!」
 持参していた水筒をカリンへと押し込む。これに反応し、カリンが水を飲み始める。ほ
っと一息つくヤジロベー。
「ふう、一体どうしたってんだ」
「いや……何でもない。しかし、どうやら耐え切ったようじゃな」
「耐え切った?」
 ヤジロベーの問いに答えず、カリンが笑い出す。楽しさや、哀しさに起因したものでは
ない。狂っている。紛れもない狂気による笑い声。
「我が親友よ……わしが間違っていた。今からでも間に合うだろうか、いや間に合わせる。
未完成となったおぬしの野望、わしが完成させてやるッ!」
145犬と猫:05/02/07 21:56:01 ID:JYs04P/U0
 空に吼えると、今度はヤジロベーへ振り返るカリン。
「ヤジロベー、わしをキングキャッスルへ連れて行け!」
「……は?」
 ヤジロベーが呆けた返事しか返せないのも当然だ。余りに唐突すぎる。何よりも意図が
読めない。犯罪に似た、危険な香りを感じ取れた。
「耳が遠いか! おぬしの乗り物で、わしをキングキャッスルに連れて行けと命令してい
るのじゃよ!」
 つい先日までのカリンではない。温和さは消え失せ、狂気だけが肉体からは発散されて
いる。まるで、別人にでも入れ替わったかのように。倒れていたことと何か関係があるの
か。あれこれと、推理を巡らせるヤジロベー。
 すると、カリンが苛立ちを怒号として吐き出す。
「早くせんかァッ!」
「は、はいィッ!」
 一喝にて心を折られた。
 彼を押しのけ、カリンは後部座席にふんぞり返る。もう、どうにでもなれ──半ばヤケ
クソ気味に、ヤジロベーはスカイカーを発進させた。
146犬と猫:05/02/07 21:57:10 ID:JYs04P/U0
 ──すでにカリンの心は壊れていた。
 超神水には奇跡的に打ち勝ったものの、神経系に重大な損傷が残されていた。強くなっ
たわけではない。ただ、毒によって精神を病んでしまっただけだ。
 孫悟空が超神水によってパワーアップを果たしたのも、彼が内に眠らせるサイヤ人の血
によるもの。戦闘民族ゆえの屈強な遺伝子により、毒の影響はさほど受けない。さらに、
サイヤ人には死の淵より救われると、身体能力が飛躍的に向上するという特質がある。悟
空にも、この力が働いただけのことであった。
「キングキャッスルなんか行って、どうすんだよ……」
 ヤジロベーが操縦しながら尋ねる。
「国王に会う」
 絶句。会って何をするのかまでは、とても怖くて突っ込めなかった。カリンも必要以上
に話そうとはせず、沈黙を保ったまま空の旅が続く。
147サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/07 22:00:06 ID:JYs04P/U0
>>123より。
以前書いた「猛虎誕生」のリメイク(?)のようなストーリーとなっています。
ちなみにカリンは好きなキャラであります。
次回へ続く。
148作者の都合により名無しです:05/02/07 22:34:26 ID:nhX2B1Kb0
>サナダムシ
今の犬では猫に瞬殺でしょうね。自業自得ですが。
前の話では「国王になった」の一言で終わりましたが、
今回はその先まで話は続くのでしょうか?
悟空とかも出てくるのかな?


>出木杉
最後の台詞がいいですね。
スネオの等身大が活きている感じで。
考えてみれば、大長編ではスネオが一番小学生らしい小学生なんですよね。
(原作のスネオみたいなのはあまり見ませんが)

149作者の都合により名無しです:05/02/07 23:23:30 ID:MUr7UkXWO
サナダムシさんやパオさんのを見て、自分も死刑囚編リメイクを書きたくなってしまった…。どうしよう、入試近いのに。
150作者の都合により名無しです:05/02/07 23:37:42 ID:Kaz3A4LAO
書け
151作者の都合により名無しです:05/02/07 23:58:40 ID:F9MFmWcB0
タイトルの犬って国王のことか!
猫の仙人、犬の王様、かたつむりの神様。変な世界だなw
152作者の都合により名無しです:05/02/08 00:40:03 ID:FfJvrg6j0
サナダムシさんはいつも発想がすごいなあ。
前のジャブといい、今度の狂ったカリンさまといい。

あと、俺はふら〜りさんの感想も作品のひとつとして
楽しんで読んでる。

>>149
勉強の気晴らし程度になるなら是非書いて欲しい。
でも、やっぱり入試が成功してからでいいんでない?
153蟲師 奥に棲む生:05/02/08 19:38:43 ID:tRxmhAOg0
>>111から続き

154蟲師 奥に棲む生:05/02/08 19:39:42 ID:tRxmhAOg0

 日が昇る。日が沈む。そしてまた日が昇り、沈む。
 初め少年だった子は、今にも消えゆきそうな老人と化していた。
 より厳重に縛られた母は、常識を遥かに超える速度で年老いてゆく息子をただただ眺めているほか無かった。
時にはうわ言を漏らし、精神に重大な障りが出ているのが伝わってくる。
 そしてギンコは、知り合いの蟲師に文を書き、情報を手繰り寄せようと必死だった。だが、およそ全容の知れて
いない蟲の祓い方など知る者はおらず、いよいよ人錆£イ査は暗礁に乗り上げた。
 これは、恐らく助からん。
 ならば、せめて……せめて、人錆の対処法を見つけ、それを記そう。それが、少年に対するせめてもの報いに
なる筈だ。
 こんな非情で無力な結論に行き着いてしまった己に、ギンコは憤った。しかし、仕方がない。未知のモノへの対
処法など、そう易々と見つかる訳も無い。先達も、数多の蟲との遭遇の末、必死に編み出してきたのだから。そう
思う己も、どこかには在った。
 しかし、ギンコの性分からすれば、後者は納得ならないものでしかなく、その弱い思いを打ち消そうとするかのご
とく、勢いをつけ、立ち上がった。
 もう、時間はないだろう。少年の老衰による死は、まず間違いなく今日の日没前。刻一刻と、目に見えて老いてゆ
く。命の灯が、確実に萎んでゆく。
 人間は、弱い生物だ。だが、同時に強い生物でもある。全ては心持ち次第。今のギンコは、どちらに向いているだ
ろうか。

155蟲師 奥に棲む生:05/02/08 19:40:41 ID:tRxmhAOg0

 少年は、眠っていた。老人の成りとなってからは、一度も起きていない。
「そうだわ、あなたが、きたから、こうなったのよ」
 母は、微かな声でそう呟く。
「あなたがこなければ、きっと、この子は普通にしていたのよ」
「……」
 ギンコは心中で、母の言葉を否定していた。違う。それは、たまたまなのだ、と。だが、今の母親の精神状態では、
そう口にすることは憚られる。これ以上、子を愛する優しい母親が崩れてゆくのを見るのは、耐え難く、また忍びない。
 もう一刻の猶予もない。何か、何かないか。そういえば、第二段階に移る時に出た草があった。あれは、どこから出
たのだろう。
(……決まっている、胃だ。あれは、食用の山菜。胃から出ていると見るのが普通だ)
 しかし、それがどうしたというのだ。試しにギンコは少年(今更ながら、老人以外の何者でもないが)の胃の辺りを擦っ
てみたが、何の変化もない。
 そして、胸の辺りに手を当てる。とくん、とくんと、今はまだ心臓が脈打っている。もうすぐ、これが止まる。
 ギンコは、ふと考えた。人は、いや、生物はいつか必ず死ぬ。たとえ、どんなにその人が生命に溢れているように見え
たとしても。
 ずっとじっとしていて、いつまででもその状態を保っていられそうな、例えば亀などでも、いつかは、心臓が止まり、死ぬ。
 だが、何故、ほんの数日前まで少年だった人間が、老衰で死ななくてはならないのか。いつか、とは言うが、不慮の事故
でもない限り、それ相応に長い時を要するものではないか。不条理じゃないか、と。
 しかし、答えは簡単だ。ギンコは、過去幾度も同じ答えに辿り着いてきた。
 全ては、蟲というモノが、確かにこの世に在るから――
 己が心中の葛藤に対する、とりあえずの答えをみつけたところで、ギンコの意識は落ちた。

156蟲師 奥に棲む生:05/02/08 19:41:40 ID:tRxmhAOg0

 それから、どれ程の時が経ったことか。
 ギンコは、意識を取り戻し、顔を上げる。そして、見る。すぐには理解の出来ない、これは夢ではないかと思う、光景を。
 ギンコの眼前には、数日前の姿をした少年と、それを優しく抱き締める少年の母親。
「……なんだ、これは」
「ああ、ギンコさん! 見て下さい、息子が、息子が……動いて……」
 これは、どういうことなのか。何故、老人となっていた少年が、元の成りをして、存在しているのか。何故、生きているのか。
何故――少年と、母親は満面の笑みを浮かべているのか?
 困惑するギンコは、手に何か乾いた質感の物が握られている事に気が付く。それは、少年が吐き出した、あの山菜だった。
それを見て、憔悴しきった顔で、笑った。

 
 ギンコは、数日振りに踏みしめる道の感覚を、懐かしく思いながら歩いた。
 手に握られていた山菜を見たときに、全てが分かった気がした。何故、急速に老化し、そして元に戻るのか。そして、何故
その瞬間を見ることが叶わないのか。ギンコは、手中の山菜に向かって呟く。
「子の時を一時的に早め、親との結び付きを強めようって腹か? そして、速効性の催眠効果のある煙を出し、秘密を保持
しようとする……まあ、これが当たってるかはわからんし、お前さんらの事は、漠然と理解するしかないんだがよ。なぁ……
人錆よ?」

 山菜の裏側で、人錆はまるで物言わぬ貝と化していた。

157ゲロ ◆yU2EA54AkY :05/02/08 19:42:58 ID:tRxmhAOg0
あー、こんがらがった。纏まってるようで纏まりきってないですね。
人錆は、山菜とくっ付いて体内を脱出してたわけです。と、補足説明。まあ、本来補足なんていれちゃダメなんですが。
次回は、なんか疲れたので、まったりとした内容のを書きたいです。というわけで次回『転がる石』

>>115
まあ、ハッピーエンドっちゃハッピーエンドですよね。多分。

>>119
まあ、こんなワケわかんねぇ存在を理解しようなんてのは、なかなかに難しいわけで。
なんで子供の時間を早めるのかわかんねぇし。でも、それが(わかんないのが)蟲かなあと。そう考えて今回の話は出来ました。

>>135
三人とも笑ってますよ。ギンコの笑いだけ素直な笑いじゃないですがw

>>138
なんで記録に残ってないかというと、多分、昔の蟲師が「狐かなんかに化かされた」とでも思ってしまったから?
理由は、色々考えられますが。

なんで、人錆が体から抜けた時点で動けるようにならなかったのか。それは多分、ずっと止まってた体は弱っていて、すぐに動か
せる状態になかったから、とか……なんか苦しいな。あるいは、本人が「体を動かす」ということを忘れていたか。

色々疑問は残りますが、とにかく完結。では次回、また。
158作者の都合により名無しです:05/02/08 21:50:12 ID:okcyUMxdO
蟲氏乙
159ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/08 22:04:26 ID:46qmaao50
>>128-132続き
ダダンダンはしょくぱんマンを追い詰め始めていた。
「ナ――――ハッハッハ♪そーれ、もうひといきだ♪さよなら、しょくぱんマンくん♪」
さすがに疲れの見えてきたしょくぱんマンに対して、バイキンマンはノリノリである。
ふと、しょくぱんマンの後ろを見やれば、遠くから迫ってくる謎の赤い飛行物体。
「ん?あれ?あのこっちに迫ってくる赤いものは、ひょっとして・・・?」
コクピットの隣にまで近づいてきたのは、予想通りの人物ドキンちゃんである。

「あっ!?ドキンちゃん!?」
「ちょっと、バイキンマン! あんたバイキンマンの分際で、なーにしょくぱんマン様
のこと、いじめてんのよ!」
「そ、そんなこと言われたって・・・」
「ちょっと、中に入れて。」
「へ?」
「中に入れてって言ってんのよ!」

しぶるバイキンマンを脅して、無理矢理乗りこんできたドキンちゃん。コクピットを
一目見るなり、いつもの好奇心(ただし、飽きっぽい)が湧いてきてしまったらしい。
「私にも操縦させて。」
「え?ドキンちゃん。これけっこう難しいから・・・」
「なによ、バイキンマン。わたしに逆らうの?」
「う・・・」

「えい!」
「あー、ドキンちゃんそのボタンは!?」
コクピット内にバイキンマンの悲鳴ともつかぬ叫びがこだました。
しょくぱんマンと対峙していたはずのダダンダンが、クルリと向きを変えて鉄人兵団の
方へと拳を突き出した。パーマンにキリキリ舞いさせられていた鉄人兵団の中心部に
突然、ミサイルを発射。なんの前触れもなかった予期せぬ仲間からの攻撃に、パーマン
軍団に乱された兵団の鉄壁の足並みがさらに崩れていく。
「えい!」
「ぎゃぁー!八方斎さまー!」
ようやくはりきって戦線に踊り出た空飛ぶドクタケ忍者部隊、壊滅。

「えい!」
「うわぁー!」
悪魔の一小隊、壊滅。

ドキンちゃんの楽しげな掛け声と共に、帝国の兵力がじわじわと削られていく。
恐るべき赤い小悪魔である。

「おのれぇー、バイキンマン!何をしておる!」
突然の惨状を見かねた魔土が怒りの声をあげた。ドキンちゃんのムチャクチャな操縦で、
帝国はかなりの打撃を受けてしまったようである。

「ね?もう満足したでしょ?代わってくんない?」
「う〜ん、どうしよっかなぁ〜。もうしょくぱんマン様をいじめない?」
「はい、いじめないです。絶対いじめないから、もう返して・・・」
「じゃあ、返してあげてもいいわ。」
半泣きのバイキンマンは、心底ホッとした。しかし次の瞬間、なにげないドキン
ちゃんの行動に、さらなる恐怖にさらされることになる。

「あら?この宝箱みたいなの何かしら?」
「あ、それダメ。それだけは絶対開けちゃダメだかんね。ドキンちゃん!」
「なによう。わかった。ロードさんにもらった宝石か何か隠してるんでしょ。
一人だけズルーい。バイキンマン!」
「いや、あんた、そんなとこに宝石なんて隠してるわけないでしょーが!」
「あら?なに?このハート。なにかのスイッチかしら?」
「だから、やめてって。それ危ないから、ホントやめて・・・。」
「うっさいわねー!えい!」
押した。ポチッと。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
見れば、バイキンマンは、口をアゴが床につくほど、アングリ開けて固まっている。
本来黒いはずの顔と体が、真っ青に変化したその様は、まるでムンクの叫びである。
冷や汗が滝のようだ。ただならぬ様子に、さすがのドキンちゃんもマズいことを
したと思ったのか、無理に明るく振舞ったつくり笑顔とかわいこぶったポーズで、
バイキンマンを覗き込んだ。
「キャハハ。どうしたの?バイキンマン。その顔おもしろ――い♪」
「・・・ドキンちゃん。ソレ・・・自爆スイッチ・・・。」
「へ?」
コクピット内を、白い冷たい風が通りぬけた。

「えっと、あー・・・んーと・・・。じゃっ♪あとはよろしくね♪バイキンマン。」
「えっ?あっ?そんなズルい。ドキンちゃん。ちょっと待って!ねぇってば!」
コクピットを開いて、ドキンちゃんは一人、UFOでしれっと脱出してしまった。
操縦席の一部がパカッと開き、小さなヤシの木が現れた。同じく小さなブタが現れて、
ヤシの木をよじ登る。てっぺんまで辿りついたブタはなにやら機械的に口走った。
「ブタモオダテリャ木ニ登ル。ガー」

ドカ――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!
ベタな爆発音を轟かせ、地底世界にドクロ雲がポッコリと浮かび上がった。
雲の中から、バイキンマンが吹き飛んでいく。

「バイバイキ―――・・・あれ?」
いつもどおり吹き飛んでいくかと思いきや、バイキンマンは足首をつかまれて、
その場に引き止められた。その掴んでいる手の主は、しょくぱんマンである。
「逃しませんよ。バイキンマン。さ、アンパンマンたちの居場所はどこです?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
163ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/08 22:12:36 ID:46qmaao50
今回分終了。(勇気編)

メジューサというか居残り組の動向はどうしても必要だったため、
ワンクッションおいてしまいました。次からは「決闘編」です。
タイトル通りようやくギラーミン登場です。よろしくお願いします。
164作者の都合により名無しです:05/02/08 22:27:55 ID:okcyUMxdO
膿みにん乙
165作者の都合により名無しです:05/02/08 23:54:56 ID:z5UuCzzi0
ところでここはマイナー漫画もありなのかな?
もちろん商業誌だけどさ。
166作者の都合により名無しです:05/02/09 00:01:15 ID:A0wrAY//O
>165
ありだろ、漫画SS総合だし。
意外に知ってる人沢山いるかもよ。
167作者の都合により名無しです:05/02/09 00:06:48 ID:Zt63uRK40
そうなのか、回答感謝。
…よし、短編考えてみるかな。
168犬と猫:05/02/09 00:36:26 ID:BhK5Kct/0
蘇生

 キングキャッスル城下町──かつては西の都ほどではないが、王座の足下ということも
あり比較的栄えていた都市である。
 半年前にピッコロ大魔王によって大破されたが、各地から支援団が駆けつけ復興は順調
に行われている。粉々になったキングキャッスルも、めでたく建て直された。王立防衛軍
も新たに編成され、ようやく人々が落ち着きを取り戻した頃であった。
「ふふふ、なかなか大きい街じゃな」
 ここに住む市民たちは、スカイカーという文明の利器によって暗雲が迫っていることを
知らない。
「ほら、あれがキングキャッスルだ」
「よし、もっと近づくのじゃ」
「これ以上は無理だぜ。ピッコロの件もあるし、下手すりゃ撃ち落されちまうよ」
「そうか……。ならば、仕方ない」
 ヤジロベーがほっとしたのも束の間、カリンは座席を立ち跳躍した。驚異的な瞬発力は、
ものの数秒でカリンをキングキャッスルへと到達させる。
「あのバカ……。あんな目立つやり方したら、俺がやべぇだろうがッ!」
 不安は的中した。駐屯する防衛軍によりヤジロベーは敵と見なされ、砲撃が開始された。
剣術には覚えがあるが、マシンの操縦は人並みであるヤジロベー。いとも簡単に撃墜され
てしまった。
 しかし、たかが砲弾で死ぬヤジロベーではない。素早く脱出し、市街へと駆け込む。軍
隊の動体視力では、この一連の動作は追えなかったであろう。
「ったく、最悪な日だぜ……」
 路地裏に逃げ込んだヤジロベーは、墜落して遠くで煙を上げているスカイカーを想像し
ていた──せっかく中古で安い物を手に入れたのに。
169犬と猫:05/02/09 00:37:25 ID:BhK5Kct/0
 一方、キングキャッスルでは、実に七百年ぶりの再会が果たされていた。
 王室にて、犬と猫が対峙する。国王を守るはずの衛兵は、すでにカリンによって気絶さ
せられていた。
「な、何だね……君は?」
 眼鏡を触りながら、国王はカリンに問い掛けた。忘れてしまったのか。いや、彼の計画
ではカリンはとっくの昔に死んでいる。そのため、覚えておく必要すらなかったのだ。
「わしじゃよ。昔はよく二人で修行や悪党退治をしたもんじゃなぁ」
「あっ……!」
 ここで国王は全てを思い出す。まさか、生き延びていたとは。今になって、何をしに来
たというのか。疑惑を口に出そうとするが、上手く言葉にならない。
「驚いたようじゃな。だが、過去などどうでもいいのじゃ。わしはカリンであり、おぬし
は国王じゃ。昔の名前なんぞ捨ててしまおう」
「カ、カリンって……」
 未開拓地区に、確かそんな地名があったような気がする。国王が世界地図を思い浮かべ
ていると、カリンが切り出した。
「ずっと眺めておったよ。あれだけ野心に燃えておったおぬしが、今やこぉ〜んな平和な
王様になっておろうとはな」
「ふっ、そんな皮肉を言いに来たのではあるまい……?」
 本当は私が渡した毒液への報復だろう。喉まで出掛かった台詞を、国王は慌てて封じ込
める。
「察しがええのう。もちろん、おぬしの王としての半生を否定するつもりはない。わしは
おぬしの手伝いをしに来たんじゃよ」
「衛兵として働きたいのか? それとも大臣か……?」
 およそ的外れな返答に、カリンはいささか呆れた。
「そうではない。人を排し、動物による新国家を築く。数百年前におぬしが掲げた理想を、
今こそ実現させるのじゃッ!」
 紛れもなく本気だ。カリンが放つ狂気を感じ取り、国王からは冷えた汗を流れていた。
170犬と猫:05/02/09 00:38:35 ID:BhK5Kct/0
 まもなく、下の階から衛兵らが駆けつけてきた。ドアを蹴破り、拳銃でカリンを威嚇す
る兵士たち。だが、カリンから余裕は消えない。
「国王、ご無事ですかッ!」
「おい、そこの! 動いたら発砲するッ! 大人しく捕まるんだ!」
 じりじりと近寄る若き衛兵たち。
「ふっふっふ、こんな頼りない部下ではおぬしも落ち着くまい。こいつらが百人束になろ
うが、どんな武器を用いようが、わしには勝てんよ」
 ──カリンが消えた。
 代わりに、王室に吹く穏やかな風。風に触れたと感じた兵士から、次々に倒されていく。
カリンの動きを把握出来たのは、国王だけであった。
「速い……」

 五分と経たぬうちに、城内の防衛軍は全滅した。消えていたカリンが、再び国王の前に
姿を現す。
「おぬしに免じて、命までは奪っておらん。どうじゃ、わしの力は……?」
「……強くなったな。私とコンビを組んでいた頃とは、次元が違うよ……」
「ふっふっふ、おぬしとて修行は欠かしていなかったはず。さっきもいったが、わしは知
っているぞ。おぬしが理想のために、夜な夜な一人で特訓をしていたこともなッ!」
 先程よりもスピードを上げ、カリンが国王へ正拳突きを見舞う。反射的に、国王もその
拳を受け止めていた。それも──右手だけで。
「流石じゃな」
「ハハ……そいつはどうも」
 照れ笑いしつつ、国王は右手に痺れを覚えた。久々に味わった感覚だ。平和にどっぷり
浸かっていた国王に、痛みを引き金として過去が洪水となって押し寄せる。
「オオオオオッ! カリンよ……私は嬉しいぞッ! 相変わらず世を牛耳る人間どもに、
七百年分の苦しみを味わわせてくれるわッ!」
171犬と猫:05/02/09 00:39:46 ID:BhK5Kct/0
 草食なる仮面を被った肉食獣は永き空白を経て、真なる肉食獣へと生まれ変わった。背
広を脱ぎ去り、ネクタイを破り捨て、ワイシャツを引き裂き、半裸となる。
「近くにテレビ局がある。今の時代、やはり人々に意志を伝える手っ取り早い方法はマス
コミだろう。向かうぞ」
「そう来なくてはのう」
 国王とカリンは、とりあえずの目的地をテレビ局と定めた。

 外見に似合わぬ身のこなしで、キングキャッスルへと走るヤジロベー。もちろん、カリン
にスカイカーを弁償させるためだ。
「あの野郎、五十万ゼニーもした俺の宝を……許せんっ!」
 先ほどは迫力に圧倒されたが、冷静に考えるとヤジロベーはカリンよりも強い。強行に催
促してでも、あの大損を取り返さねば。
 キングキャッスル正門。兵隊らが見回っているはずだが、何故か不気味なまでに静まり返
っている。人の気配が全くない。
「ここで待つか……」
 道路にどっかりと腰を下ろし、カリンを待ち伏せることにする。それから五分後、城内か
ら二つの影が現れた。カリンと──国王であった。
 仙人と国王というあり得ない組み合わせに、戸惑うヤジロベー。
「おいおい……マジかよ」
「おう、ヤジロベー。来ておったか」
「いや、来てたっつーか……」
 スカイカーの件など、すっかり頭から抜け落ちてしまった。しかも、国王はヤジロベーに
対し甚大な殺気を放っている。
「人間か……。殺すのか、カリンよ」
「いや、こいつはわしの友人でのう。ここまで乗り物を運転してくれたのも、実はこのヤジ
ロベーなんじゃ」
 ヒト一人を殺すか否か、まるで日常会話のようにやり取りされている。一対一ならば、ま
ず勝てる。が、二人を同時に相手するとなると、まず勝てない。優れた本能で、戦力分析を
行うヤジロベー。
 抜刀するか迷っているヤジロベーに、カリンが不敵に切り出す。
「ヤジロベーよ、仲間にならんか?」
172サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/09 00:45:54 ID:BhK5Kct/0
>>146より。
犬と猫、再開。
不幸にもヤジロベーも巻き込まれ、次回へ続きます。
173作者の都合により名無しです:05/02/09 01:53:01 ID:XzE8ZiRh0
小説で読むとかっこいいけれど、マンガにするとギャグっぽい>犬と猫のやり取り
しかし、てっきりカリンにボコボコにされると思ってたのに、違う展開になりましたな。
174作者の都合により名無しです:05/02/09 01:56:18 ID:UptJbzcx0
うみにんさん、ゲロさん、サナダムシさん、乙です。
2月はこの3人で回してるような感じですねw

>出木杉
ドキンちゃん強しw バイキンマンいいところなし。
この物語は女性最強ですね。

>蟲師
ハッピーエンドでよかった。これで母親が
溺愛しすぎるようになっても困りもんですけど。

>犬と猫
短編かと思ってたら長編になりそうで嬉しい。
でも国王の面影全くないなw
175    :05/02/09 03:47:02 ID:f1mRlaCy0
バレさんトコのGAZA氏のドラゴンボール小説、何だかおもしろくね?
176作者の都合により名無しです:05/02/09 04:41:46 ID:Z+mIm4q/0
ああ。滑稽で面白いな。あの文章本気で書いてるんだろうか?
名前「」だし効果音書いてるし、実際ムタじゃないかと疑ったよ。
177作者の都合により名無しです:05/02/09 11:42:25 ID:RPcO0ais0
>>175
作者による宣伝か単なる晒しageかしらんが乙。
あんな程度のもんヤムスレでもゴロゴロあったわ
178作者の都合により名無しです:05/02/09 12:08:02 ID:J8v74CDT0
蟲師はハッピーエンドが意外に思えるほど
最近ゲロ氏の作品はブルーなラストが多かったが、今回はハッピーでいいな

あと個人的にギラーミンには負けて欲しくないな・・
179作者の都合により名無しです:05/02/09 12:17:33 ID:rQisqb+c0
ギラーミンがなんでこんな持ち上げられてんだ・・・?
スペック的には銃の腕が凄いだけの普通の人間だろ。
ドラの道具使えば楽勝。
180空手小公子愚地克己:05/02/09 14:25:11 ID:igarrhQ10
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mekatara/06.htmより
「へ、なにをいきがってやがる。コレが目にはいらねえってか〜」
パンチパーマとペドロが対峙している。ペドロは中腰の姿勢で間合いをとっていた。
対するパンチパーマは、スタンガンをちらつかせながらペドロに対してる。
「・・・・・・」
「け、ビビッてんじゃねーよ・・・」
シュッ!
パンチパーマが言いかけた瞬間、ペドロの弾丸タックルが炸裂した。簡単にテイクダウンを取る。
「ぬふふ〜。これからボクの華麗な寝技を味あわせてや・・・あれ?」
「・・・・・・」
最初のペドロのタックルですでに勝負は決まっていた。所詮街のチンピラに過ぎないパンチパーマは
タックルを切る技術など当然持っていない。つまり、ペドロのタックルが当たった時にそのまま
地面に後頭部を強打し、昏倒してしまったのだ。
「ナンか・・・あっけないナリね・・・」
181空手小公子愚地克己:05/02/09 14:25:52 ID:igarrhQ10
一方、小日向はロン毛と対峙していた。
「・・・・・・」
「おいどうしたぁ!!びびってんのかぁぉぉ!!!?」
いささか常軌を逸しているロン毛の若者に対して、小日向はファイティングポーズを取る。
「ハッタリかましてんじゃぁねぇよおおぅっっ!!ぁあ!!コラァぁ!!!」
めちゃくちゃにスタンガンを振り回すロン毛。小日向は冷静にその動きを見ていた。
そして―――――――――
「ッッ!!」
ッゴ!!っと、鈍い音が辺りに響く。
上段廻し蹴り。
美しく洗練されたその蹴りは、確実にロン毛の側頭部を捕らえていた。
「ふう・・・・」
倒れたロン毛を見つつ、小日向は小さく呼吸を整える。
見れば、ペドロが既に一人倒したようだ。
「ペドロは大丈夫っと・・・・そうだ!南さん!」
南の方に振り向いた小日向は、マサオと対峙している南の後姿を見た、と同時に、
南とマサオに近づく一人の影を見た。
「あれは・・・・?」
182空手小公子愚地克己:05/02/09 14:26:47 ID:igarrhQ10
小日向、ペドロの二人がそれぞれの相手を倒したのを見たマサオは、意外にもまったく動揺
した素振りを見せなかった。
(むう・・・こいつはかなり場慣れしているヤツだな・・・)
冷静にマサオを分析する南。
突然、マサオは腰の後の方に手を伸ばした。
「喧嘩ってのはよう・・・」
初めて声を発したマサオの声は、酷く低音で、掠れていた。
「勝たないと意味がねえ・・・」
喋りながら、ゆっくりとした動作で腰から取り出した物は、刃渡り30センチはあろうかというナイフだった。
いや、ナイフというより鉈に近いものであった。
ゆっくりと南に近づく。
「こいつ・・・ッ!」
南は、ナイフの大きさに驚愕しつつも、マサオの所作にためらいというものがないのに恐怖していた。
普通、人は相手を傷つけようとする際には、大なり小なりためらいの雰囲気という物が出ている。
南も自身の経験からそれを良く知っていた。
しかしこのマサオという男にはそのためらいの雰囲気という物が一切感じられなかった。
(こいつは・・・ためらいもなく俺を切るつもりか・・・!)
そう考えた刹那、いきなりマサオが加速した。
183空手小公子愚地克己:05/02/09 14:29:58 ID:igarrhQ10
「うお!」
横一線に払われたマサオの斬撃を、かろうじてかわす南。
マサオはゆっくりと獲物をいたぶる肉食獣のように、緩慢な動作で南の方に向き直る。
その表情は狂気に満ちていた。
このあまりにも異常ともいえるマサオに対して、小日向達は迂闊に動けなかった。
(くそ!このままじゃ殺される・・・なにか武器のようなものはないか・・・)
「・・・ん?」
南は自分のズボンのポケットに入っているある物を取り出した。
今日の稽古の際に、才蔵からもらった苦無であった。
「これは・・・ないよりましだが・・・しかたない!」
苦無を構える南。
鉈を構えるマサオ。
二人は互いにお互いをけん制し、動けないでいた。
南はマサオがためらいもなく人を切れるやつだと知って、迂闊に動けない。
一方のマサオも、南が苦無を構える姿を見て素人じゃないことを知り、警戒して動かない。
膠着状態に陥った二人を動かしたのは、互いの攻めによるものではなく――――
一人の男であった。

「兄ちゃん達、光っているもんしまいな」
184メカタラちゃん@sazaesan:05/02/09 14:37:09 ID:igarrhQ10
皆さんお久しぶりです。もう殆どの方は忘れていると思いますが。
以前に投下したときに、「またすぐ投下します」みたいなこと言ってましたが、
結局SSを投下できずにだらだらと日にちが過ぎました。
ほんとすいませんでした。

>>サマサさん
神界お疲れ様でした。ボクも「戯言シリーズ」は大好きなので、新しくはじまった
SSは正直面白すぎです。個人的には哀川さんとオーガの戦いが読みたいです。
185作者の都合により名無しです:05/02/09 16:11:32 ID:BNSGat3A0
メカタラちゃん復活おめ!
正直あきらめていたので嬉しいよ。
個人的にペドロが好きなので活躍させて欲しいな。
186作者の都合により名無しです:05/02/09 16:26:39 ID:9hUJdMvzO
メタカラ氏、トリップつけようとしたのか?
サザエさんwwwwwwwwwwwwwww
187作者の都合により名無しです:05/02/09 17:59:29 ID:BNSGat3A0
>メカタラちゃん
トリップは小文字の#の後に自分のキーワードね。
ドンマイ。
188ふら〜り:05/02/09 20:46:13 ID:N1cnKSvL0
>>サナダムシさん
冷静に考えたらカリンより強い、のに迫力に押されたりしてるヤジロベーが楽しい。結局
国王の悪事は暴かれぬまま二匹が組んでしまいましたが、この流れだとヤジロベーが阻止
してくれそうですね。原作でも、何だかんだで悟空を何度も救ってますし、もしかしたら。

>>ゲロさん
蟲にもいろんなヤツがいる、と。この人錆の手段と効能は、ドラえもんの「ありがたみ
解り機」を思い出しました。親と子の結びつきもですけど、こんな経験をしたら怠惰な
生活は送らなくなりそう。時間の大切さを思い知って。……ふと己を省みてしまいます。

>>うみにんさん
賑やか可愛いドキンちゃん。バイキンマンには悪いけど、ほんっとに幼女らしい言動が
ぷりてぃです。そのぷりてぃの被害が、シャレになってないのがまた何とも。でトドメに
タイムボカンな自爆。つーかなぜ自爆ボタンがある。今回は、隅から隅まで笑えましたっ。

>>メカタラちゃん
おひさです。いろいろご都合もありましょうから、気にしないで書ける時に書いて下さい。
さて一気に来ましたねバキチーム! 鉈のマサオは「バキ」の最初の方に出てた武器使い
チームのリーダー格ですね。そして……ここで、空手をするのも女々しいとか言うか彼?

>>149
152さんと同じく。勉強の妨げにならず、気分転換になる、という程度ならぜひとも
お願いしますっ。……あと152さん。勿体無きお言葉、恐悦至極にございます。

>>167
ふっ。マイナー云々に関しては、言える立場ではないですが……どぞ、お気軽に。
お待ちしておりますぞ。
189五 ◆89aIROQ50M :05/02/09 20:48:46 ID:paLp39WxO
結局、書いてしまいました。大量にUPするので40分程かかるかもしれません。では「バキ外伝・デスゲーム」…ご賞味下さい。
190バキ外伝「デス・ゲーム」第一話:05/02/09 20:52:38 ID:paLp39WxO
最大トーナメント開催から一年経ったある平日の昼。バキは憂鬱と期待が混じった複雑な気分で、校内の廊下を歩いて居た。
昼休みに突然(それも校長室に)、呼び出された為だ。
呼び出した人間は徳川光成。先の最大トーナメントの開催者であり、東京ドーム地下闘技場の主であり日本政財界の影のトップであり、バキとは旧知の仲の老人である。
校長室でテーブルを挟み向かい会う二人。
先に口を開いたのはバキだ。
「なんだよ、ジッちゃん。神妙な顔しちゃって。それより学校なんかに来たら俺の正体…」
「バキよ。」光成がバキの文句を遮った。
191作者の都合により名無しです:05/02/09 20:54:29 ID:1tBDqhnw0
あ、もういいや。底が知れた。
192バキ外伝「デス・ゲーム」第一話:05/02/09 20:54:50 ID:paLp39WxO
「ジッちゃん、話がよく見えないんだけど…」
やや間を開けて光成が答える。「バキよ、つい最近死刑囚脱獄のニュースがあったな?彼ら5人は全員が闇世界の無敗者。東京に向かうと言い残していると言う事は、恐らくお前達地下のファイターを狙ってくるじゃろう。」
「それだけでは無い。更に脱獄の報せと同時期に、『敗北を知るために、東京に向かう』と周囲に言い残し、あるいはワシに連絡して来た者達が居る。」
バキが呆れた様に呟く。「まだ居るの?二人?三人?」
光成が首をゆっくりと振り、息を吸い込む。
「ええか、バキ。その数…」
バキが唾を飲む。

「15人。先の死刑囚と合わせ20人の負け知らずの怪物が、東京に来るんじゃ…!!」
193外伝第二話「アメリカ・ウィリアム」:05/02/09 20:59:18 ID:paLp39WxO
「この国で…俺に勝てる奴は居ないのかなぁ、カール?」
ロサンゼルスの超高級マンションの一室。黒スーツ姿で金髪を立てた中年の男が、窓の外に広がる夜景を見ながら呟いた。
カールと呼ばれた男が笑って答える。「大統領なら勝てますよ。軍を動かせば。」
金髪の男ーウィリアムーは残念そうに言う。「駄目だ。軍が出てくる前に殺せる。」
ウィリアムは、いわゆるマフィアのボス、カールはその腹心。
武闘派ではあるが組織規模は小さい。
本人も160cmほどの小柄で体格も普通。ではその自信はどこから来るのか? それは彼の下半身、特に足だ。
尋常では無い太さの足。
カールは、二週間ほど前にテキサスの敵対組織のバーで彼に屠られた用心棒を思い出していた。(数百戦無敗とか言ってたあのバカ、悲惨だったな。)
そのバカ、リチャード・フィルスはウィリアムのたった一発の蹴りで首をへし折られ、人生の幕を下ろした。
「期待できる奴は知ってるんだがね、居場所が絶海の孤島、潜水艦の中、ハント三昧で連絡の付かない奴。」
「全員がシャバで会えそうに無い。」
ウィリアムが悲しそうに付け加えた。
「組織はお前にくれてやる。俺は東京へ行くよ。敗北を…知るために。」
194外伝第三話「イラク・ムハル」:05/02/09 21:03:24 ID:paLp39WxO
「…ぉい……おい!聞いてるのか!?」
野戦服を着た髭面の男が、同じく野戦服を着た青年を叱る。「我々、第十六旅団の精鋭による東京都庁・国会自爆テロ計画。どれ程重要な任務かわかっているのか?
わかってるならさっきの作戦計画を全て言ってみろ!」
ターバンを巻いた別の男がなだめる。「まぁ、彼もまだ若いんだ。決死の作戦前だから思うところもあるんだろう。」
申し訳無さそうに黙り込む青年。
ターバンの男が続けた。「彼なら本番でもきっちり働くさ。何せ『神の右腕』を持つ男だ。
あの米軍戦車の砲身をねじ曲げ、米兵を素手で肉片にする怪力。君らも見ただろう。」
その青年は黙り込んだままだ。顔は二十代といった所。パーマの掛かった短髪の好青年だ…顔だけなら。
異様な体格だった。右上半身、肩から右手までが異様に太く大きい。
普通の左上半身と比べると腕は四倍、指の太さは三倍も違う。
青年がやっと口を開いた。「爆破は中止させます。僕は敗北を知りたい。敗北を知る前に貴方達の都合で自爆死するわけにはいきません。
言っても聞いてくれないでしょうから、僕は貴方達を殺してから行きます。」
異形の腕力が命を叩き潰した。
195外伝第四話「ドイツ・アドルフ」:05/02/09 21:07:11 ID:paLp39WxO
薄暗い廃ホテルのホール。そこに設置された壇上で一人の黒いレザーコートの男が演説している。
演説が終わると、「ハイルメイザー・ジークライヒ!」と演説に聴き入っていた聴衆達が連呼した。
側近らしき若い女性が男を労う。
「見事な演説でした、総統。第三帝国の再建も遠くはありませんね。」
「あぁ…」二十代後半に見える、金髪でオールバックの『総統』が答える。
奇妙なカリスマ性を漂わせる『総統』に似た格好をした、ホールにぎゅうぎゅう詰めの集団……。
つまるところ、彼らはドイツ国内の単なるネオナチの一派である。
しかし、ドイツ政府はそうは見ていなかった。彼らは危険過ぎたのだ。
今や議員や軍高官の一部にまで、この『総統』の信者が現れ始めていた。
このまま放っておけば、国家転覆やナチス復活が冗談の類では無くなってしまう。
196外伝第四話「ドイツ・アドルフ2」:05/02/09 21:09:28 ID:paLp39WxO
首相は遂に軍を動かす事に踏み切った。
…聴衆の興奮醒めやらぬ中、『総統』が再びマイクを手に叫ぶ。「帝国再建の礎となる英雄達よ!
昨日、私の見た夢に前世での側近達が現れて告げた!!
『貴方は、この先いかなる争いにも敗れません。
しかし今日本の東京に行けば敗北という物を知る事が出来るでしょう。
この機を逃せば貴方は一生敗北を味わえません』
…私は日本へ行く、敗れる為にっ!!」荒唐無稽な話だ。しかし誰も反論一つしない。
それは『総統』の異常なカリスマ性の為せる業であった。
が、次の瞬間静寂は破られる。憲兵隊の突入だ。
五人の兵が壇上の『総統』を取り押さえようとした刹那、三人の兵が首から鮮血を吹き出し倒れた。
残り2人も発砲する間も無く、『総統』の手にいつの間にか握られた奇妙な刃物で瞬殺されていた。その数日後、自称『総統』アドルフ・メイザーは狂信者の助けで日本へ密入国を行う。
197外伝第五話「中国・幽鬼」:05/02/09 21:11:58 ID:paLp39WxO
中国拳法の生ける伝説・郭海王。彼は今、人生でかつて遭遇した事の無い怪物と戦闘していた。
「お主の話は聞いとるよ。国内の海王を潰して回る男…儂で最後なんじゃろ?」
対峙する男は2mを超える巨漢。ボサボサの黒髪の長髪。ボロボロの薄汚い衣服。
その背後には郭の息子の春成、助っ人の龍 書文の2人が血まみれで倒れている。
(バケモノめ。) 郭は心中で毒づく。(龍の貫手を喰らって尚、平然としておる。)
「ヒイイィィッ!!」悲鳴にも似た声で郭が再び仕掛ける。『消力』ー攻防に応用できる郭の奥義ーを使用した打撃が男に次々と炸裂する。
拳、膝、肘が男の体に吸い込まれるようにめり込んでいく。
しかし男は悠然と歩を進め…郭の胸ぐらを掴み持ち上げた。
「離さんかぁっ!!」郭が男の首・顔面に猛烈な消力打撃を集中する。
鮮血が飛び散り、男の体が揺らいだ。
198外伝第五話「中国・幽鬼2」:05/02/09 21:14:44 ID:paLp39WxO
(好機っ!こやつは後少しで倒れる!)郭は心中で確信した。だが、郭の確信は都合の良い『期待』であった。
郭が更にラッシュを掛ける。「ごぶぅっ」と郭の口から声が漏れ、次いで鮮血が滴った。
老人は中国黒社会・拳法界で『幽鬼』と呼ばれ畏怖されるこの怪物を甘く見過ぎていた。
郭の左胸を男の右手が貫いている。
(ぬ、貫手か…!!)140歳の老人の意識は彼の人生と共に、闇に沈んでいった。
郭の遺骸を床に放り投げた男は、貫手の傷を抑えながら、龍を見る。
「お前の方が…マシだったな。…この国には…失望した…。」そう呟き、男は立ち去っった。
199作者の都合により名無しです:05/02/09 21:15:09 ID:9hUJdMvzO
チョソなんかに点入れられるなよな日本代表よ。
こんなことをこのスレで言うと怒られるかな。スレ違いは抜きにして。
200外伝第六話「ブラジル・ジェフ」:05/02/09 21:18:55 ID:paLp39WxO
ブラジルの秘境、森林地帯の奥地を野生児・ズールが駆ける。
野生の勘で彼は危機を感じ取っていた。生命の危機を。
あらゆる猛獣を素手で仕留め、最大トーナメントでは不意打ちとはいえバキを倒した実力者。
その彼が、今まで感じた事の無い危険を感じたのだ。
一族の暮らす村に着いた彼が遭遇したのは、不気味な静寂と4WDのオフロード仕様車一台。
ズールは車を一瞥すると村の奥へ進んだ。
村の若者達が倒れている。全員ピクリともしない。
呆然と立ち尽くす彼の背後、村の木造家屋の陰から男が現れた。
身長は190前後、すらりとした体型でスキンヘッドの若い黒人だ。
「やぁ、会いたかったよ。まずは自己紹介だな。ジェフ・クライズってもんだ。」
201外伝第六話「ブラジル・ジェフ2」:05/02/09 21:20:50 ID:paLp39WxO
ズールが身構え、目の前の男を分析する。
腕と足が異様に長い。腕は膝まであった。この男、打撃系か?
ズールの思考をあざ笑うように男が走りだす。
前方ではなく後方へ、逃げ出したのだ。ズールも追う。
男が車の前で立ち止まり、トランクを開ける。胴着姿の男が力なく横たわっていた。
ジェフが男を引きずり出し、男の手足を拘束していた手錠を外す。
「起きろ」ジェフが男に蹴りを入れ、男が呻き声を上げてよろよろと起き上がる。
男の顔を見て、ズールが驚きを露わにする。あの大会の出場者。ブラジリアン柔術のセルジオ・シルバだ。
シルバが立ち上がるのを見届けジェフが口を開く。「2対1だ。来な、クズ共。」
202外伝第六話「ブラジル・ジェフ3」:05/02/09 21:22:57 ID:paLp39WxO
その言葉と同時にズールが弾かれたように襲い掛かる。
数秒遅れてシルバも足へタックルを掛けるために突っ込む。
ジェフがボクシングの構えで高速のジャブを放つ。
長い腕から放たれる連打がズールの突進を阻んだ。
シルバが隙を突き懐へタックルを仕掛ける。
……倒れない、微動だにしない。しがみつくシルバの頭にジェフの肘が落ちる。
鮮血を吹いてシルバが崩れ落ちた。
ジェフが顔を上げると、ズールが既に目前に迫りテレフォン気味に右拳を振り上げていた。
しかしバックステップで距離を取られ、ズールの顔面に槍のようなカウンターの左が突き刺さり、ズールはふっ飛ばされる。
突如ジェフの腕に重量が掛かる。
腕ひしぎ逆十字をシルバがぶら下がった格好で決めている。
シルバの感情は憤怒一色だった。(この野郎、素人の分際で俺をクズだと?このまま腕をブチ折ってやる。腕だけじゃねぇ…全身の骨をへし折って此処に埋めてやる!!)
シルバが腕に力を込めた瞬間、ゴキン、ズルリという鳥肌の立つ音が響いた。
203作者の都合により名無しです:05/02/09 21:23:32 ID:RPcO0ais0
>バキ外伝「デス・ゲーム」
携帯厨なので荒らし決定
204外伝第六話「ブラジル・ジェフ4」:05/02/09 21:24:41 ID:paLp39WxO
極めていた腕が抜けたのだ。蛇のようにズルリと。
(ならば足はどうだ!?)
足に組み付こうとしたシルバの動きが止まる。
(…なぜ顔がある?しかも逆さに。)
それが致命的なミスだった。逆立ちの体勢から繰り出されたジェフの三連撃の蹴りがシルバのこめかみ・顎・鼻骨を砕いた。
ややあって、ズールが最後の力を振り絞って立ち上がる。ジェフはまだ去っていない。
石を握りしめ、背後からジェフに忍び寄る。
ズールが笑みを浮かべた。(もう少しで…殺れる)そこで突然ジェフが振り返った。
その瞬間、ジェフの手から放たれた何かがズールの喉を貫く。
太い、先の尖った木の枝だった。
血を吐いて痙攣するズールにジェフが皮肉っぽく呟く。「文明人に狩られちゃ野生児失格だな?」
2人の遺骸を草むらに投げ捨てた後、ジェフは邪悪な笑顔を浮かべながらアクセルを踏み込んだ。
レイキャビクの小さな空手道場の一室。
二人の男が電気も付けず、暗い部屋でテレビを見入っていた。
一人は50代半ばといった所だろうか?
身長は160程度しか無いが、太く大きいがっしりとした体格だ。
隣に居るのは若く、痩せ型の青年。
青年が口を開く。「先生、この人と闘う為に日本へ?」
先生と呼ばれた男、パトリック・ルスキンは感慨深げに答える。
「あぁ、この『武神』なら私に敗北を与えてくれそうな気がするんだよ。」
ビデオが終了すると、パトリックは用意していた旅行カバンを持ち、弟子の青年に『もしもの事が有ったら、道場を頼む』と告げて道場を後にした。
残された青年は師の言葉を思い返し、苦笑した。
(アレを倒せる人に…『もしも』は無いだろ。)
その視線の先には、かつて勇二郎やジャックが仕留めた物と同サイズの白熊の剥製が鎮座していた。
206外伝第八話「ロシア・プルシコフ」:05/02/09 21:30:12 ID:paLp39WxO
「クソォッ……!!」『ガッシャァァン!』
ロシア・死刑囚シコルスキー脱獄事件対策本部の一室。
痩せぎすの初老の男、KGB元長官バレンチン・ソコロフが花瓶を壁に投げつけた。
「なぜ、彼の確保に失敗したのですか!!」
中年の部下が平謝りしている。「も、申し訳有りません!まさか彼までも…同じ行動を取るなんて…」
ソコロフの怒りは収まらない。「KGB最強にして最凶のエージェント…彼までも敵に回るとは…!!」
部下が釈明する。「で、ですが。こちらも元KGBのトップクラスの三名を、彼に半強制的に本任務に就かせる為に送ったのです。」
ソコロフが怒鳴り散らす。「全員殺害されてしまったではないですかっ!!」
手元の資料を見やりソコロフが嘆く。「プルシコフ。あなたまでが…」
資料には40代前半で短髪、獰猛な顔つきの露人の写真。
身長176cm体重74kg。その他彼の功績や経歴が記載されていた。
最後の特記欄には、《最重要危険人物》と赤字で大きく書かれていた。
207外伝第九話「日本・唐沢 争銘」:05/02/09 21:32:43 ID:paLp39WxO
横浜のある廃ビルの屋上。一目で暴走族と分かる少年達がずらりと円を組み集まっていた。
百人は超えるだろうか。その巨大な円の中央で二人の死闘が繰り広げられている。
いや、正確には『いた』。死闘は開始から10分経った今は単なるリンチと化していた。
二人の内、片方は柴 千春。もう片方は唐沢 争銘という巨漢だ。
少年達は二つの勢力に分かれていた。柴 千春率いる『巌駄無』と争銘の率いる超武闘派の少数精鋭『魔神銃』。
長期化した抗争を、双方の頭二人で決着を着ける事になったわけである。
5分前までは、柴千春の一方的な攻勢だった。開始直後のドロップキックを皮切りに千春の怒涛のラッシュが続いた。
ところが、5分間ラッシュを受け続けた争銘に突然千春の攻撃が当たらなくなった。
208外伝第九話「日本・唐沢 争銘2」:05/02/09 21:34:41 ID:paLp39WxO
争銘が千春の攻撃を全てかわし、カウンターを叩きこむ。
2分もすると千春の攻撃は無くなった。争銘が千春の攻撃を全て封殺しているのだ。
パンチを出そうとすれば支点の肩を打って止め、蹴りを出そうとすれば膝や腰を打って止め、頭突きを出そうとすれば頭をアッパーで跳ね上げ止める。
芸術的な絶技だ。ただの一発も外す事無く、争銘の打撃が千春を破壊していく。
仲間達の悲痛な声も空しく千春は崩れ落ちた。
争銘が千春を引きずり起こし、問い掛ける。
「なぁ。テメエあのボクサーのマイケルに柔道の畑中と闘った事があんだって?
そりゃ本当か?」
千春が力無く呟く。「嘘は…言わねえよ。
東京ドームの…地下に行け…そこなら、半端じゃなく強ぇ奴らと闘える…。」
争銘が構成員達に呼び掛ける。『この抗争はコレで終わりだ…行くぞ。』
209五 ◆89aIROQ50M :05/02/09 21:36:15 ID:paLp39WxO
すいません。まだ時間が掛かります。
もうしばらくお待ち下さい…。
210外伝第十話『イタリア・…』:05/02/09 21:38:47 ID:paLp39WxO
イタリア・シチリア島。プールを備えた大豪邸の一室で『商談』が行われていた。
大理石のテーブルを挟み、高級そうな革のソファーに身を沈めた二人の男が向かい合う。
片方はすらりとした体型の金髪の青年。もう片方は屋敷の主のようだ。
30分を過ぎた頃、『商談』が成立し2人は固い握手を交わした。
屋敷の主が青年に話し掛ける。「面白いビデオを手に入れたんだ。商談成立の記念に観ようじゃないか。」
それは最大トーナメントのビデオだった。
何者かが、無断で撮影し裏ルートで流出させたのだ。
政財界や裏社会の極一部の大物にのみ出回ったこのビデオは、暗にこの人物の地位を示していた。
ビデオを見終わった後、男が獰猛な笑みを浮かべ言い放つ。「実はね、私はこいつらと一戦交えようと思っているんだ。
敗北を知る為にね。」
211外伝第十話『イタリア・…2』:05/02/09 21:40:11 ID:paLp39WxO
屋敷の主、フランチェスコ・レオーネは198cm、120kgの筋肉質の体を乗り出し、言葉を続けた。「私はね、生まれてこの方、43年間敗けた事が無いんだよ。」
彼は、生まれつきの剛力と巧みな戦略でナイフ・ナックル・マチェット・拳銃・機関銃を持ち襲い掛かる相手に勝利してきた。
その結果、彼は30代にしてマフィアの本場シチリア島のトップに立った。
本当なら彼はこんな『商談』なんか放ってすぐにでも東京に飛びたかった。
しかし、これが終われば二週間は予定に空白が出来る。
それに、けじめとして仕事はきっちり終わらせなければ部下に示しがつかない。
そんな事を考えていた彼の思考を、血相を変え部屋に飛び込んできた部下が遮った。
不機嫌そうにレオーネが「どうした?」と一言。「ドン!警察です!奴ら特殊部隊を投入してきました!」
212外伝第十話『イタリア・…3』:05/02/09 21:41:49 ID:paLp39WxO
「何だと?金はきっちり握らせてあっただろうが。」
「しかし、現に今奇襲を受けているんです!!ドン・レオーネ、ここは一旦避難して下さい!」
話している間にも外や屋敷の何処かの銃撃戦の音や怒号が響き渡る。
苦虫を噛み潰した様な表情でレオーネが立ち上がった。
「おい、アンタも…」レオーネの言葉を銃声が寸断した。
金髪の青年がレオーネの部下を射殺したのだ。
(こいつ、警察の犬か!!)レオーネが怒りを露わにし、剛腕の右を放つ。
巨大な拳が青年の端正な顔を破壊するかに思われた刹那、青年の腕が一瞬拳をかすめ、レオーネは宙で一回転した。
青年の手が宙を舞うレオーネの顎を捕らえ、大理石のテーブルの角に頭から叩き落とす。
どす黒い血をカーペットに広げ、二、三度レオーネは痙攣すると絶命した。
銃撃戦が特殊部隊の勝利に終わり、その影の主役である金髪の青年はとっくに自宅へ戻っていた。
青年は受話器を手にとり、仕事の結果報告をしている。
受話器の向こうからは中年男性と思われる声で、
「彼との癒着がマスコミに漏れていた様でな。ご苦労だった。」
「いえ…意外に楽でしたよ。」
「また頼むよ。グレゴリオ君。」
180前後、細身で金の長髪の青年・グレゴリオは屋敷から持ってきたテープを見ながら呟く。
「無敗…?あの程度で?」レオーネの台詞を苦笑しながら、荷造りを始める。
その翌日、イタリア警察の懐刀は「敗北を知りに行く」と、意味不明な休暇届けを出しイタリアを離れた。
214外伝第十話『オランダ・ジョアン』:05/02/09 21:45:20 ID:paLp39WxO
クライ・ベイビーの異名を持つ怪物、サクラは旅行でオランダを訪れた。
様々な観光名所を回りつつも、ちょくちょく格闘技関連のイベントにも訪れる。
サクラが執事ウォーケンとよく行くのは、やはりプロレス。
サクラが見た試合で最も印象深かったもの、それはある会場で見た大型レスラー対決だった。
悪役のレスラーが善玉役を片手で、それも軽々と持ち上げたのだ。
その後は結局、ショービジネスの性質上善玉役が勝ったのだが…。
サクラの超感覚は見抜いていた。悪役の男は真剣勝負ならば…恐らく自分と同等の実力を持つ。
そしてサクラはもう一つの事を見抜いていた。
観光四日目。別荘に戻ったサクラはウォーケンに、「今夜客が一人来る。どんな無礼者でも、構わず部屋に通してくれ。」と頼んだ。
215外伝第十話『オランダ・ジョアン2』:05/02/09 21:47:19 ID:paLp39WxO
ウォーケンは訝りつつも、サクラの指示に従う事にした。
それから一時間もしない内に、サクラの予言は的中する。
サクラ邸を訪れた男は、普段サクラが迎える客とは明らかに異なっていた。
2mを越える筋肉隆々の巨漢。
赤のシャツに膝までカットしたジーンズ、派手な金のネックレスを着けたアフロヘアーの男。
年齢は20代後半といった所だ。しかし、大男なら見慣れている。雇い主はあのサクラなのだ。
ウォーケンは怯む事無く、予言通りにサクラと面会を望む男を部屋へ案内した。

超感覚で『客』の来室を捉えたサクラが口を開く。
「やはり君か、来ると思ったよ。用件を聞こう。」

「リアルファイトで敗北を教えてもらいたい。」アフロの男が野太い声で答えた。
サクラは微笑みながら「ほぅ、どこで知りたい?」と聞く。
アフロの男が間髪入れず答える。「この場でだ。」
216外伝第十話『オランダ・ジョアン3』:05/02/09 21:48:58 ID:paLp39WxO
サクラがサングラスを外し、空洞の眼が現れた。
ウォーケンを一瞥し、「外してくれ」と言うと、アフロの男に向き直る。
両者の間に空間を歪める程の殺気が放たれる。
「名前を聞いておこうか。」
アフロの男が問いに答える。「ジョアン。ジョアン・ルドヴィクスだ。」
「覚えておこう。」サクラの一言が、凄惨な死闘の開始させる合図になった。

ーーー40分後、震える声で救急隊を呼ぶウォーケンの姿が有った。
通報を受け、駆けつけた隊員達が見たものは…。
この世の地獄。広い応接間は壁も家具も床も天井も破壊され、床には肉片と大量の血。
そして瀕死の重傷を負って倒れている、2人の大男であった。
217外伝第十話『オランダ・ジョアン4』:05/02/09 21:51:45 ID:paLp39WxO
それから五ヶ月後、未だ入院中のサクラの元に、見舞いの客が訪れた。
「やぁ…君か。」病室に訪れた大男、ジョアンだ。
「結局、私では敗北を教えられなかったな。」
ジョアンが問い掛ける。「アンタの勝ちだ。なぜトドメを刺さなかった?」
「君が倒れた直後、私も限界でね。倒れてしまったんだよ。刺せなかったんだ。ところで…左手は?」
「神経が傷ついてたから、切断して義手にしたよ。」

ジョアンはサクラにより、左手を粉砕骨折させられていたのだ。

「なる程。今私と君が再戦すれば、君が確実に勝つでしょう。
それは実質的な私のの敗北であり、君の勝利です。」
サクラが続ける。「回復力・手を切断した決断力。それも実力の内ですよ。」
ウォーケンが、例のビデオテープを渡す。
「日本の東京へ行きなさい。きっと、望みは叶うはずです。」
ジョアンが無言で病室を立ち去る。
…立ち止まり、右手でスナップを作った。
サクラもスナップを作り、ウォーケンはとっさに耳を塞いだ。
『バッチィィンッ!!』爆音が大気を震わせる。
それは、サクラの餞別であり、ジョアンの礼であった。
218外伝第十二話『イギリス・シーザー』:05/02/09 21:56:23 ID:paLp39WxO
小国を買い取れる程の巨万の富。首相でさえひれ伏す圧倒的な権力。
理想的な体型、整った顔。天才的な頭脳。その全てを彼は30代前半で持ち合わせ、手にしていた。
誰もが羨む満ち足りた人生。いかなる争いにも負けた事は無い。
その男シーザー・クワイツの人生を狂わせたのは、例のテープだった。
バキやジャック、独歩達の闘いは彼の精神に稲妻のような衝撃をもたらす。
(こ、こんな人間が…この世に…?)
栄光を極めた男は、次いで強烈な衝動に襲われる。
(彼らと闘いたい!敗北を知りたい!!…自分流のやり方で…!)
世界的大企業、シーザー社を一代で興した、バキ達とは違う意味での『怪物』。
彼は即座に役員達に、経営権の一時的移行を行い日本へ渡った。
ブリザードが吹き荒れる、極寒地帯。
ある研究施設を、はるばるメキシコから一人の客が訪ねていた。
意識が無いのだろうか?雪を全身に纏ったまま、机に老人が突っ伏している。
客の…身長はギリギリ170といった所、分厚い防寒着の上からでもわかる程体格の良い男が老人の前に立っている。
男は老人に一方的に話し掛ける。「なぁ、博士。俺はとても感謝してる。アンタに会わなかったら、
俺は10年経った今でもうだつの上がらねぇ、ゴミみたいな人生を送るチンピラだった筈だ。」

『博士』は何も答えない。「…あれから10年。俺は強くなったよ。途方も無く、強く。」
「今じゃ、どんな奴だって俺に手出しはできねぇ。誇りと喜びに満ちた無敵の人生だ。」
男の目から涙が溢れ出す。
「なぁ…せっかく報告に来たのによ、なんでくたばっちまってるんだ……?」
ここはカナダの、かつてジャックにドーピングした博士の住まいだった。
それは神の悪戯だったのだろうか?
突然の暴風が施設内に吹き荒れ、凍りついた棚から一つのファイルが落ちた。
ブライアンがそのファイルを拾い上げ、中を見る。…何かのランク付けのようだ。
そこにはジョン博士が、今までに手がけてきた『作品』達の名前が羅列されている。
(当然俺が…)ほくそ笑むブライアンの表情が、突如憤怒の形相に変貌した。
ランクのトップに有ったのは、『ジャック・ハンマー』。彼は2位だった。
「どういう事だジジイッ!!」絶叫するも博士は答えない。
彼は懐から銃を取り出し、遺体に全弾を叩き込んだ。
片っ端から書類を調べ、血管を顔面に浮かせたブライアンが呟く。「…俺が最高傑作だって事…認めさせてやるよ…!!」
「俺が…」彼が両手の指をカキンと鳴らす。「最強だ。」全身から服を突き破り、刃が飛び出した。
憤怒の鬼、ブライアン・ケイオス。彼の頭はジャックを追い、東京へ向かう事に占有されていた。
221外伝第十四話『日本・黒石 秋月』:05/02/09 22:02:39 ID:paLp39WxO
北海道のある道立病院の一室。一人の老人が懸命に闘っていた。
ある武道の達人である、この老人。名を黒石 秋月(くろいし しゅうげつ)。
闘っている相手は死。それも老衰による、逃れられない死だ。
数少ない弟子達が師の最期を看取るため、駆けつけていた。
走馬灯、三途の川、人が死の間際に見る夢とも幻影ともつかぬものの中で、黒い壁と対峙していた。
高く分厚い壁が、老人を押し潰さんと迫ってくる。
迫りくる壁が老人の体を押し潰し始める。肋骨が悲鳴を上げ、枯れ木のような四肢が悲鳴を上げる。
世界中を飛び回り、武者修行では生涯負けなしの達人も、諦観の念に捕らわれていた。
(仕方ない、寿命なんじゃ。生き物の定めという事か。)
222外伝第十四話『日本・黒石 秋月2』:05/02/09 22:04:29 ID:paLp39WxO
(…嫌だ!!儂はまだ負ける所か、互角に闘れる相手と出会った事すらない!!)
老人が壁を押し返す。
(死ぬなら…戦の場で死にたいっ!!)
壁が崩れ去り、光が老人を包む。
呆然とする弟子達と医師、危篤状態の師が突然起き上がったのだ。
呆気にとられる周囲を気にも留めず、ベッドから降りて立ち上がる。
背は190はあるだろう、細い、枯れ木のような四肢が異様な風体を醸し出す。
「心配させたな、退院だ。帰るぞ。」
「は!?」「い、いや…黒石先生…頭。」
綺麗に剃り上げられた老人の頭には、いつの間にかうっすらと髪が生えていた。
223外伝第十五話『インド・グルカ』:05/02/09 22:06:06 ID:paLp39WxO
インド・デリーの、中心部に存在する巨大な神殿のような建造物。
その内部の廊下を5人の法衣を纏った男達が歩いていた。
足早に歩きながら、慌てた様子で何か言い争っている。
「消えた!?いくら『神』とはいえ…!」
「本当です!儀式の最中に…突然、黒い穴が部屋に現れて…その中に消えたんです!」
「それを黙って見てたのか!?」
「止めようとはしました!ですが、急に真っ直ぐ歩けなくなって…。」
「行き先は?何か言ってなかったか?」
「東へ…『敗れ去る為・あるいは天罰を下す為に日本の東京へ行く』と。」
「どういう事だ…」
その頃、一人の痩せた小柄な老人が帽子とサングラスで変装し、東京行きの便に乗りこんでいた。
『神』、グルカ・シャカールの荷物には例のテープが入っていた。
マリアは驚きと、怒り、悲しみ、その他様々な感情を顔に出さないように心を砕いた。
マネージャーとして彼に就いて四年、何も望まず不服も口に出さず仕事をこなして来た相方。
その相方の彼が、突然「日本に行きたい」と言い出したのだ。
スケジュールには2日しか余白が無い。
その上、彼は「戻って来ないかもしれない」とのたまった。
三時間に渡る口論の末、折れたのはマリアだった。
「…わかったわ、ポール。オーナーには私から話しておきます。」
彼はIDカードを置いて、その場を去った。
マリアが口論をした部屋を出て、廊下に備えつけられたエレベーターに乗り込んだ。
階選択のボタンの脇、細い隙間に先程の物とは別のカードを差し込む。
『B10F』と、パネルに表示されエレベーターが独特の浮遊感を伴い動き出した。
エレベーターを降り、左右にいくつもあるドアを無視して真っ直ぐに歩く。
…そこはまるで、古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる場所であった。
ここが、ポールの職場である。
中央の闘技場は光成の持つそれよりも、五倍は広い。
その分、観客席は半分程度しか無かった。
客を厳選する必要があるからだ。

ここのオーナー、実は光成の闘技場の常連客なのだ。
そこの闘いに感銘を受けたオーナーは、自分も同じ、いやそれ以上の物を造りたいと考えた。
その結果…ここは更に過激なルールとなった。『飛び道具と乗り物以外は全て有り』
つまり日本のルールに、鈍器や刃物の使用を加えたものだ。
8年前に完成して以来、ここは膨大な死と狂気、快楽と金を生み出してきた。
過激なルールゆえ、3試合に3〜4人は死ぬ。
勝ち抜き制の為、チャンプは二度防衛できれば奇跡と言えた。

…しかし、4年前に異変が起きた。
試合開始と同時に、一人の少年が乱入し、選手二人を殺害したのだ。
一人の獲物は大型の斧。もう一人はなんとチェーンソーだった。
その二人を、乱入した少年はあろうことか素手で葬り去った。
本来なら即射殺される暴挙だったが、圧倒的な強さを認められ、特例的に正式ファイターになった。
その少年、当時14歳のポール・ザヴィアーはそれから四年後の今に至るまで…
『素手』で無敗のチャンプに君臨し続ける。

「無事に…帰ってきてね…」マリアが闘技場の虚空を見つめ、呟く。
その言葉が聞こえたかのように、若干18歳、紺色の長髪の168cmの小柄な青年はビルを一度振り返り…
立ち去った。
227五 ◆89aIROQ50M :05/02/09 22:13:59 ID:paLp39WxO
UP第一弾終了です。
途中で話数がおかしくなってしまった事、大量の駄文でお目汚しをした事をお詫び致します。
228作者の都合により名無しです:05/02/09 22:22:11 ID:rQisqb+c0
五氏おつかれ。
ところでこいつらってオリキャラか?元ネタあるのか?

それと2レス分、下手すれば3レス分くらいは1レスにおさまるはず。
30行くらいまでなら字数規制には引っかからないから、次はその辺りも考慮してくれ。
頑張ってくだされ。
229作者の都合により名無しです:05/02/09 22:43:34 ID:XzE8ZiRh0
大量投下乙。
189の前おきの書き込みが無ければ荒し扱いされかねない程の量ですね。
しかし、なぜ携帯なんでしょうか?
230青ぴー:05/02/09 22:56:40 ID:LwZ3IlJ70
五さんお疲れ様でした。
最初は色々と戸惑うと思いますが、次第に慣れてくると思います。
入試大変だと思いますが、勉強の合間に完結目指して頑張って下さい。

『忍びの証』第参話を投下致します。>>23の続きです。
231忍びの証:05/02/09 22:57:47 ID:LwZ3IlJ70
第参話 エルフの村

「素晴らしい腕ですね。そしてその剣も。その剣、妖刀ムラサメとお見受けします。
 名のある剣士にしか扱えない、旧世界の伝説の武器の一つですね」

オレは声のした方を振り返った。少しの驚きとともに、だ。
眼前には、たおやかに司祭のローブを纏った眉目秀麗なダークエルフの女がいた。
薄い珈琲色をした肌に真っ赤な髪。耳は鋭く尖がり、細やかな体に豊満な胸。
切れ上がった目には柔らかで知性的な光が宿っている。
ぺっぴん揃いのエルフの女の中でも、かなり上物に位置するイイ女だろう。
あいつなら、確実にほっとかねえハズだ。あの腐れ外道の魔法使いなら……。

が、オレが驚いたのはその美貌じゃねえ。
まるで気配を察知出来なかった。もし敵ならば、斬られていたかも知れねえ。
少しこの村を見くびっていた。いや、エルフという種族をだ。
オレは、自分の少ない知識からエルフの情報を引っ張り出してみた。


エルフ。
森の民と呼ばれ、人間族より華奢だがやや身長が高い。
一般的なエルフは肉体的には少し人間より弱えが、知力・魔力・法力は極めて高い。
亜人類の中で最も神や精霊と感応する能力が高いからだ。

敏捷性、器用さ、反射神経、視力・聴力、魔法耐性。
どれを取っても人間とは比較にならないほど高いレベルにある。
魔法使いや法術師だけでなく、強力な魔法戦士やアーチャーを生み出す万能の種族。

『至高の種族』と呼ばれる人類種の中の頂点の存在。それがエルフだ。
はてさてそんなご立派な連中が、迷子の忍者にどんなお願いをするのやら……。
232忍びの証:05/02/09 23:00:14 ID:LwZ3IlJ70
ガラの奴、村長(むらおさ)様を見てぼーとしてる。

あんまり綺麗だから見惚れたのかな? アタシはガキ扱いなのに。ちょっとムカつく。
村長様はムラサメだかムラムラだかって言う、ガラのバカデカい刀を褒めた後、
微笑みながら言葉を続けた。アタシは村長様のあの優雅な微笑が好きだ。

「その妖刀を扱えるのは超一流の剣士のみ。我々が待ち望んだ方が現れたようですね。
 ようやく、やっと。 ……ですが、一度だけ試させて頂きます」
ああ、あれか。うん、今までの人たちみんなこれで脱落してんだよね。
でも今度はきっと大丈夫。なんたって天下のニンジャ。しかもマスターだもの。

「試される覚えはねえがな。オレはちゃっちゃと自分チに帰りてえだけなんだよ」
ガラはほっぺを右の人差し指でカリカリ掻きながら、呑気に答えた。
ちょっと待って、アタシの頼みをほっぽっといて帰っちゃう気?
村長様はその言葉を聞きニコリ、と笑った。あ、ダメ。この笑顔は合図なの、アレの。

「バーク・ヒール・セイボー・ラン・フューソ…光爆炸裂衝(スキッド・ロア)!」

うう、出てしまった。村長様の最強スペル・スキッドロア。
ショートレンジから魔力を思いっきり掌に溜めて放つ光と炎を伴った衝撃波。
今まで何人これで、『候補』をオシャカにしてきたことやら……。

アタシは呪文炸裂の瞬間、両手で目を覆った。すっごい衝撃音が鳴り響く。
爆発の数秒後、そッ〜と目を開けて状況を確認する。地面に大きな穴ボコが開いてる。
やっぱり、ダメか……。
アタシはきょろきょろ黒コゲであろうガラの体を探す。早くヒーリングしてあげないと…。

あっ。アタシは思わず声を上げた。ガラが、いた。
いつの間にか村長様の後ろに回りこんで、抜いた大きな刀を村長様の首元に当てている。
すっげ。あんな一瞬で、後ろ回って刀抜いて……。
233忍びの証:05/02/09 23:01:42 ID:LwZ3IlJ70
オレはエルフの女にムラサメの切っ先をピタリと着けたまま、油断なく聞いた。

「お客の出迎えにしちゃあ、えれえ物騒だなコラ」
少し力を込める。ツ、と女の肌から血が流れた。女はこの期に及んで微笑んで言った。
「大したものです。この距離から、あの呪文を回避してなお反撃に転ずるとは」
「ソイツはもう二度と喰らいたくねえんだよ」
エデ・イーのリッチーと一戦交えたときの事を思い出しながらオレは応えた。

しかし、この緊迫した場面で場違いな声がピーピー響き渡る。
「村長様に何してんのよ無礼者! さっさと刀を降ろしなさいよスケベッ」

「オイ、いきなり呪文カマしといてどっちが無礼者だよっ。それにスケベってなんだ」
オレはメイを怒鳴りつけた。小生意気なハーフエルフはまだギャンギャン喚いている。
「失礼を致しました。刀を降ろし、私のお話を聞いて頂けないでしょうか?
 それにきっと、貴方がこの地を抜ける為にも必要なお話です」

ぬけぬけとまあ。オレは苦笑しながらムラサメを鞘に収める。
「私の名はケイト。ダークエルフの村の司祭、そして長を務めさせて頂いております。
 まずはお話は、私たちの村に着いてからにて……」
そう言ってケイトはオレたちを先導するように歩き出した。
喰えねえな。なんだかんだで主導権を自然に取ってやがる。後姿にもまったく隙は無え。

「ヘッヘー。村長様ってすっごい美人でしょう?」
………。ケイトとは正反対に、全身全てが隙の塊のようなお嬢ちゃんが問い掛けて来た。

234忍びの証:05/02/09 23:03:46 ID:LwZ3IlJ70
アタシの住処、我が愛しの村についに到着ぅ〜!

ガラは辺りを見回している。いろんな所に目配せしながら、油断無く歩いている。
むぅ。ウドの大木って言葉があるけど、コイツはやっぱり違うみたい。
なんとなく分かって来た。ふらふら歩いているようで、全身で廻りの様子を感じてるんだ。

「おいおい、クソ辛気くせー村だな、嬢ちゃん」
ガラがケツ掻きながら無遠慮に口にした。カッと来て必殺呪文を詠唱しようかと思うアタシ。
が、それは悔しいけど当たっている。
村のみんなは突然来た大男を歓迎する風も無く、家影からコソコソ遠巻きに見るばかり。
村長様が微笑みながらガラの言葉を肯定する。
「この村…。いえ、ダークエルフは歴史的に迫害と敗走を繰り返してきた種族。
 メイのように、明るく生きられればいいのですが」

アタシはガラに向けて胸を張った。ガラはアホ面をしていたけど、気付いたように言った。
「随分と綺麗なモン付けているじゃねえか、おめえ」
ほんっとに失礼なヤツだ。アタシの美乳をシカトしてペンダントに興味持ちやがった。
でも、ほんの少しだけ嬉しい。このペンダントはアタシの宝物なのだ。
「いいでしょ。このラピスラゼリ、長老様にもらったんだ」
「不思議なモンだな。色がコロコロ変わりやがる。ま、今は宝石より喰いモンが先だ」
……コイツに美を見る目を期待したアタシが馬鹿だった。

村長様の家の前に着く。
村長様はアタシたちの方を振り返り、静かにこう言った。
「お客様。ご空腹でいらっしゃるでしょうが、しばらくエルフとダークエルフの
 歴史のお話に付き合って頂けないでしょうか。その上でお願いがございます。
…メイ。申し訳ないけど、私がお客様とお話をしている間、席を外していて」

釈然としないけど、長老様には逆らえない。アタシは不承不承だけど従った。
でも長老様、あんな野獣みたいなヤツと一緒にいて大丈夫かなあ?
235作者の都合により名無しです:05/02/09 23:06:20 ID:LwZ3IlJ70
メカタラちゃん氏、お帰りなさい!
空手小公子小日向は原作から好きなので復活は嬉しいです。
応援していますので、ご自分のペースで是非完結させて下さい。

今週中にもう一回くらい投下出来るといいな。
236五 ◆89aIROQ50M :05/02/10 01:40:34 ID:3dgORLIiO
228さん、確かに234と番号が付くの話は、全てまとめられる物でした。
以後気を付けます。ご忠告、感謝です。


>元ネタ
イメージモデルならあります。
ムハルはバイオ2のG第一形態(片腕がデカい)。唐沢争銘は漫画『TWO突風!』の梁。
ジェフは元NBAのマイケル・ジョーダンと『はじめの一歩』の間柴(手長)。シーザーは『ARMS』のキース・グリーン。
その他のキャラ名も含め設定等は全てオリジナルです。

229さん、恥ずかしながらパソ無しの携帯ねらーだからです。
青ぴーさん、ありがとう御座います。
合間にちまちまと作っていきます。青ぴーさんも、お身体に気を付けて頑張って下さい。
237作者の都合により名無しです:05/02/10 02:03:17 ID:9Vtm/X0e0
五さん気長に頑張れ。しかし携帯からなんて、大変だな・・
238作者の都合により名無しです:05/02/10 02:43:06 ID:ZSUF/I+D0
メカタラちゃん復帰おめ。
しかし相変わらず主役のカツミンは影が薄いなw
小日向や南に完全に食われとるw

五氏、携帯からお疲れ様です。
設定オリジナルは大変だろうけど投げ出さず頑張って。

青ピー氏はガラとメイの二面からの書き方が上手いね。
メイはオリキャラだろうけどちゃんと読んでて楽しい。
ガラはやっぱりいいね。大変期待してる作品なので頑張って下さい。
239オーガのリング:05/02/10 08:26:45 ID:+6CHkXI50
「このガキ、どうやら催眠術をかけられていたようだぜ。ディオとかいう奴に出会った事しか知らないみてぇだ。」
眉間に皺を寄せながら喋る勇次郎。そしてオドオドしながら勇次郎達を見上げるポコという少年。
「この子をどうするかではなくディオを倒す方法を考えるのが先決だと思います。」
ジョナサンが冷静な口調で言う。そしてそれを無視するかの様に丘の上を見るツェペリ。
「日は没した。そして現れたようだ。真打ちが。」
ツェペリの目が細くなり、腕が胸の辺りまで上がる。ジョナサンもツェペリが見ている方向を見た。
「ふはははは!!日は没した!お前達の生命が没する時もな!」
古城を背にして立っている存在。吸血鬼、ディオであった。
ジョナサンは体温が上昇するのを感じていた。以前は友であり一緒に暮らしていた存在。
今は父の仇であり倒さなければならない敵である。
ツェペリは波紋の力で丘の上へと飛び上がった。
「お前と会うのは初めてだがあえて言おう。とうとう会えたな!ディオ!」
「ふ!この腹の傷!お前の生命エネルギーで治癒するとしよう!」
コォォォ。波紋が体内に流れる音がし始めた。吸血鬼にとって波紋というのは
天敵である。太陽と同じ波長のエネルギーだからだ。
「山吹色の波紋疾走!」
叫びながらディオへ飛び掛るツェペリ。そしてツェペリの拳を掌だけで止めようとするディオ。
240オーガのリング:05/02/10 08:28:40 ID:+6CHkXI50
「愚かな!終わりだ!」勝ち誇った様に言うツェペリ。
ツェペリの拳はディオの手に掴まれていた。吸血鬼の握力をもってすれば容易に粉砕される。
だが波紋が流れていれば話は別である。叩き落そうが握り潰そうが波紋は相手の体に流れる。
「何ッ!?」
ディオを除くその場の全員があっけに取られていた。波紋を流しているはずなのにまったく変化がない。
「ふ・・・俺は水分を自在に操る事が出来る。この様に人間の腕から水分を気化させる事もな!」
ツェペリは自分の腕が凍り付いている光景を信じる事が出来なかった。だがこれは現実だった。
「ぐぉぉぉ!動かん!」
何とか右腕を動かそうともがくツェペリ。だが右腕はピクリとも動かない。
「終わりだ!」
思いっきり拳を振り上げツェペリの顔面を狙うディオ。
だがその拳は止められた。
241オーガのリング:05/02/10 08:30:11 ID:+6CHkXI50
「貴様・・・・この俺の拳を止めるとは。」
「ほう・・・美味そうな事を言うぜ。だがもっと大切な事に気付けよ。」
「大切な事だと?・・・何!?」
ディオは驚愕した。つい先刻まで自分の腕のはずだった右腕の自由が利かない。
全く動かないのだ。つまり気化冷凍法が使えない。
「ふ・・ちょっと勉強不足だった様だな。」勇次郎が勝ち誇った様に言う。
「ぐぉぉぉ!今やられる訳にはいかんのだ!」
「逃がさんぞ!ディオーー!!」
叫ぶと同時に飛び上がり手刀を構えるジョナサン。その手には高密度の波紋が集中していた。
「止めだ!」
手刀をディオへと振り下ろすジョナサン。そしてローをディオの脚へと放つ勇次郎。
だがジョナサンの手刀はディオの頭では無く右腕へと当たった。
ディオが地面を蹴り丘を崩壊させたのだ。
「うわっ!」
5メートル下の地面へと落ちていくジョナサンとツェペリ。勇次郎は空中の岩を蹴り一足先に着地していた。
「ごほっ!」
地面に叩きつけられ血を吐くツェペリ。波紋法で回復しているとはいえ老体にはきついのだ。
「大丈夫ですか!?」
ツェペリへと駆け寄るジョナサン。
「ふっ。一対一じゃきついってか。不本意だがアレを使わせてもらおう。小僧、水筒をよこせ。」
勇次郎の気迫に押され水筒を差し出すポコ。
「あのジジイの真似は嫌だが・・使えるな!」
242オーガのリング:05/02/10 08:31:46 ID:+6CHkXI50
今回の投稿はこれで終わりです。
243作者の都合により名無しです:05/02/10 09:58:57 ID:GpLdAjou0
>五 ◆89aIROQ50M
レス数だけ数えた。33だか32くらい。
244作者の都合により名無しです:05/02/10 11:15:19 ID:7i0Om+V8O
バイト前に覗いたけど、昨日は凄いな。
携帯から書き込んだ人、その労力にまず敬服するよ。頑張ってくれ。
でも正直、マンキに行った方が楽だと思うのだが。
245殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/10 14:20:22 ID:/TkIZrVv0
>117より

それは―――まさに<鬼>だった。鍛え抜かれた異形の筋肉が作り出す、鬼の貌だ。
「俺にコレを出させるとは大したもんだ、小僧。さすがは零崎ってとこか・・・」
勇次郎は、笑う。その笑みは―――まさに鬼と呼ぶに相応しい。
「・・・・・・・・・・・・」
人識は―――何も言わない。何も語らず、ナイフを構え――――――
「・・・っつあああああああああああああああああっっっ!!!」
叫びながら、勇次郎に向かう。
まだだ。まだ、勝負は分からない。あんな膨れ上がった筋肉では、スピードは明らかに落ちてしまうだろう。
そこを突けば―――
そこまで考えた瞬間、人識は腹に核爆発の如き衝撃を受けた。その衝撃に耐え切れず、小柄な身体が宙を舞う。
数十メートルぶっ飛んだところで、今度は受身も取れず、無様に地面に転がる。
「が・・・はっ・・・!」
そんな、馬鹿な―――人識は驚愕した。あれほど筋肉が膨れ上がった状態だというのに、動きが鈍るどころか
―――それどころか、先程までより三割増し以上で疾い。
まるで、人間の身体の構造を無視した動きだ。
「―――――――――――っつ!」
そうこう考えているうちに、勇次郎は悠然と人識の前に立った。そして、拳を振り上げる―――
俺は、ここで死ぬのか・・・人識は、思う。それだけは、いけない、と。
自分がこいつに殺されたなら、零崎一賊は、この範馬勇次郎を敵とみなし、全力で報復を行うだろう。
そうなれば―――零崎は、破滅だ。残る二十数人全員でかかっても、こいつを殺せるとは思えない。
こんな、どう足掻いても殺せそうもないような相手にだけは、死んでも殺されるわけにはいかない。
零崎の連中を―――死なせるけにはいかない。
そんな風に思う自分を、人識は嘲笑う。結局はそういうことか―――この俺も、零崎の連中と、根っ子の所では
同じ―――なのか。
家族のためなら全力を尽くす、家族のことにしか全力を出さない―――そんな連中と。
「ずああっ!」
人識は振り下ろされた勇次郎の拳を奇跡的なタイミングでかわし、死に物狂いでナイフを振り回す。
狙いなど付ける暇もない。とにかく当たるを幸い、切りまくる。
だが―――
246殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/10 14:21:33 ID:/TkIZrVv0
人識の右腕が、止まる。勇次郎が目にも止まらぬ動きで、人識の腕を掴んだのだ。
次の瞬間、右腕はあっけなく折られた。
「――――――!」
だが、それでも。それでも、人識は止まらない。残った左腕だけに全身の力を込め、勇次郎の心臓目掛けてナイフを
突き出し―――それすらも、止められた。そして当然の如く、折られる左腕。
さすがに人識の動きが止まり―――しかしそれでも勇次郎の動きは止まらなかった。
勇次郎は両の腕を高々と上げる。後ろから見れば、背中の鬼が哭いているように見えただろう。
そして勇次郎の渾身の一撃が、人識の顔面に叩きつけられた。
先程よりもさらに派手に吹っ飛び―――人識はついに動けなくなった。
「・・・・・・かはは・・・こりゃあ・・・まいったなあ・・・」
ここまでボロボロにされてもまだ意識があるというのが、自分でも驚きだ。だがもう―――何も出来ない。
どこもかしこも痛みすぎて―――逆に気持ちよく感じるぐらいだ。
視界に勇次郎が映った。止めを刺すつもりだろうか。正直、もうどうでもいい気がした。
眠い。ひたすら眠い。
「―――ここまで、だな」
「・・・あん?」
「てめえを殺せば、零崎全員相手にしなくちゃならねえ―――まあ、それはそれで楽しいだろうが、正直な話、
てめえ一人喰うのにもこの有様だからな―――今のところは、この辺で手打ちとするぜ―――今のところは、な」
「・・・かはは、勝手に喧嘩売ってきて、勝手に手打ちたあ・・・素敵な性格してるぜ」
「ふん・・・おう、オリバ。こいつを連れて行くんだろ?さっさと連れてって治療くらいしてやるんだな」
勇次郎は電柱にもたれて観戦していたオリバに声をかけ、そのまま歩き去ろうとする。
それを、人識は最後の意識を振り絞って呼び止めた。
「なあ・・・オーガさんよ。あんた・・・<死色の真紅>って知ってるかい?」
「―――哀川潤。人類最強の請負人、か。人類最強―――俺を差し置いて最強を名乗ってる、鼻持ちならねえ女だろ」
「俺はそいつと戦ったことが、ある・・・」
「ほう・・・そりゃあ大したもんだ。よく生きてられたな」
「しかし、地上最強のあんたと、あの人類最強―――どっちが強いのかね」
「・・・てめえ、何が言いたいんだ?」
「京都―――京都に、行ってみなよ」
247殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/10 14:22:28 ID:/TkIZrVv0
「京都、だと?」
「ああ。京都にゃあとんでもねえ欠陥製品としか言い様のない奴がいて、な。・・・そいつは哀川潤のマブダチだから、
ちょっかい出せば、あの赤女も出てくるだろ・・・あの女、身内にゃあとことん甘いらしいからな・・・」
「その欠陥製品とやらは京都のどこにいやがる」
「わざわざ教えなくても、京都にさえいきゃ勝手にあいつに引き寄せられるさ。あいつ、あんたみたいな変態を
引き寄せる天才だから、な・・・」
「・・・そうかい。じゃあちょっくら、京都に行くとするか」
「オイオイ、勇次郎。ホントにセッカチな奴だナ・・・」
オリバが呆れた様子で口を挟んだが、勇次郎はふふん、と鼻を鳴らして歩き出し―――
不意に足を止めて人識に問い掛けた。
「そういやお前、名前は何ていうんだ?」
「・・・人識だよ。零崎、人識・・・」
「そうか・・・覚えといてやるよ、零崎人識」
そして―――範馬勇次郎は去っていった。
「・・・かはは」
人識は意味もなく笑った。これほどの目に会ったというのに、実に楽しい気分だった。
あんな男がいるというのなら―――この世も割と捨てたものではないかもしれない。
こんな楽しい気分は、本当に久しぶりだ。
そんな人識に。オリバは問うた。
「―――キミは、どういうツモリなのかネ?勇次郎と哀川潤をぶつけさせよう、などト」
「・・・さあ、なんであんなこと言っちまったんだろ?自分でもよく分かんねえや」
「・・・そうかイ」
オリバはそれだけ言って、それきり黙りこんだ。どうやら人識への理解を放棄してしまったらしいが、
懸命な判断だと人識自身思った。
自分でもよく分かんねえ、というのはまさしく自分の本心だ。こんな訳の分からない奴は、自分以外には
一人ぐらいしかいないだろう。
「全く因果な人生だよな、欠陥製品」
人識は誰にともなく呟き―――そのまま目を閉じた。
このまま死んでもいいかもしれない。そんな風にさえ思えた。
248サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/10 14:25:49 ID:/TkIZrVv0
投下完了。
戯言知らない人はついていけてないんじゃないかと心配しつつも、次回最終回。

>メカタラちゃんさん
復活おめでとうございます。
戯言シリーズ好きで、しかも僕のSSを面白いと言ってくれて感激です。
これからも頑張ってください!
249作者の都合により名無しです:05/02/10 17:30:07 ID:1cPKC+O00
>忍者の証(タイトル間違ってますよw)
ガラシブいな。視点が毎回変わるのも斬新でいい。DSとかアビゲイルとかは出ないのかな?
村人から勇者が依頼されるというのはRPGの王道ですね。このSSに慶雲鬼忍剣出るかな?

>オーガのリング
勇次郎が強いな・・。ディオ相手に余裕かましてる。流石は勇次郎というべきか。
しかし原作の感動シーン、ツェペリ死亡&ジョナサンパワーアップはどうするのだろう?

>殺人鬼とオーガの鬼事
さすがに鬼出たら勇次郎圧勝ですか。まあ、相手はまだ人間の域ですものねw
最終回は人類最強と戦うのかな?次で終わりは寂しいな。戯言知りませんでしたが、楽しみましたよ。
250作者の都合により名無しです:05/02/10 21:09:44 ID:fdnAfRye0
>忍者の証
1部と2部の間の空白の2年を描いた話らしいから、DSとアビは出ないだろうね
DSは黄泉の眠りの真最中だし、アビも着ぐるみの中で療養中の時期だから

>殺人鬼とオーガの鬼事
おお、遂にやるのかあの二人が!…と思ったら次回最終回か…
決着まではいかないかな、ちょっとでもやり合ってるとこ見てみたいが
人類最強は素手で電車止めるからな……勇次郎は地震止める?けど
251作者の都合により名無しです:05/02/10 22:48:57 ID:PHMPbfUz0
私もバスタSS書いてみようかな‥‥今スグではないけど。
252作者の都合により名無しです:05/02/10 23:06:14 ID:3qVFWklY0
サナダムシさんとメカタラちゃんが帰ってきて、
青ぴーさんや五さんが新作書いてくれたと思ったら
サマサさん次回最終回か。寂しいな。

>>251
バスタは大好きなんでぜひ。
>>159-162

ドキンちゃんの活躍(?)でズタズタに乱された鉄人兵団の様相を見定め、
パーやんはみなに叫んだ。
「よっしゃ、これならなんとか持つやろ!1号はん!パー子はん!ブービーはん!
そろそろ、突入しまっせー!用意はよろしな!」
「おう!パーやん!まってたよ!」
「わたしもバッチリよ!」「ウッキー♪」
力拳をつくって応えるパーマン軍団。意気上がる4人を前に―――――

『そうはいかんぞ。パーマンども!』
宙を舞うパーマンたちの同じ目線の先に、巨大な影が立ちふさがった。
もちろん、パーマンたちは全員その名を知っている。全員が同時に、その名を叫ぶ。
彼らの宿敵であり、巨大ロボットを操る、狂気の科学者――――――
『魔土災炎!!』
遠くに、パパンダーを食いとめていた小さなロボット、ザンダクロスがヒザをついて
停止している。ついにエネルギーが切れたのか、それともやられてしまったのか・・・
パーマン軍団は素早く旋回し、パパンダーを取り囲んだ。再び、戦闘が始まる。
パーマンとパパンダー。二つの大きな力は、同時に間合いを狭め――――衝突した!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『なんだって!?アンパンマンとカレーパンマンはあの巨大ロボットの中にいる!?』
しょくぱんマン、ジャムおじさん、バタコさん、チーズはいっせいに口を揃えて叫んだ。
「パパンダーのエネルギーが足りなくて動かせないとか言ってたから、オレ様、あいつ
らを引き渡してやったんだ。あいつらの顔はエネルギーの塊みたいなもんだからな。」
バイキンマンは爆発の衝撃で目を回し、もうろうとしながらも、パパンダーを指差した。

「大丈夫。アンパンマンたちはそんなにヤワではない。きっと無事でいるはずだ!」
「逆に言えば、あいつさえやっつけちゃえば復活するってわけね♪」「アン!」
3人は常に前向きである。が、その見解は恐らくは正しいのだろう。
「ではすまないが、しょくぱんマン。頼んだよ。我々はいつでも彼らの新しい顔を運べ
るよう準備しておくよ。」

見ればパパンダーは現在、パーマン4人組と交戦中である。
しょくぱんマンはそちらを見据え、穏やかな笑顔で呟いた。そして、軽やかに飛び立つ。
「では、パーマンさんたちと共闘ってわけですね。それでは、行ってまいります!」
純白のマントを華麗に翻し、この世で最も優しい戦士は再び戦地へと舞い戻った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふむ、山田先生。状況は幾分、マシになってきたようですね。」
「だが、まだまだ不利な状況に変わりはないわい。全く、ドクタケのやつらめ。
やっかいなことをしてくれおって。」
戦場からわずかに離れた死角に陣取るジャムおじさん一行のさらに離れた森の影に
数人の不審な者たちがいた。その正体は――――忍術学園からドクタケの城を経て、
この地底帝国に潜入した、山田伝蔵、土井半助、戸部新左衛門の3教諭である。

「さて、利吉くんからの報告を待つまでもなく、どちらが我等にとって敵となるか
だけは、ハッキリしてしまったわけですが・・・どうしますかな。」
「ええ。そうですね。でも戸部先生。ホントは、あの少数勢力の方の指揮官と
戦いたかったんじゃないですか?」
「む?確かに、一武人として一度お手合わせしてみたい腕の者ではありますな。」
剣豪・戸部と土井半助が、軽い口調で会話を交わしている。

そのさらに背後から、二人の少年が声をかけた。先の3人と同じく忍び装束に身を
包み、メガネをかけたソバカスの少年と、もう一人は小太りの少年である。
「先生、きり丸は?」
「これだけ、敵味方入り乱れている戦場ではなんとも言い難いが・・・」
「一応、気をつけてはいたんだが・・・見当たらなかったのう。」
「少数勢力、“反乱軍”は、子供だけの隠密部隊を送り込んだとか。ひょっとしたら
きり丸もその中に・・・。」
「じゃあ、早く助けにいかなきゃ!」
「待てい。乱太郎!」
「本格的に動くのは、学園長先生たちの援軍の到着を待ってからだ。」
「お前たち忍たまを除けば、我々は利吉くんを含めてもわずかに4人だけだ。
今は、こうやって敵の陣を乱しながら、情報を集めるのが精一杯。お前たち。
今の段階では・・・きり丸のことは忘れろ。」
『!?』
普段は温厚で、生徒思いの山田伝蔵と土井半助の思いもかけぬ冷徹な言葉に、
乱太郎、しんべえは目を剥いて噛みついた。
「先生!きり丸を見捨てるんですか!?」
「乱太郎。しんべえ。忍びとは、常に感情を殺し、冷徹に徹する必要があるのだ。
きり丸一人の救助のために、忍術学園全体、ひいては地上の人民全てを犠牲にする
わけにはいかんのだ。」
「でも・・・!」
「乱太郎よ。忍びとは非情なる生き物。もしも、きり丸の身に不幸があるならば、
それは、巻き込まれたきり丸に非があるのだ。」
山田伝蔵の冷徹な対応に、乱太郎としんべえは返す言葉を失い、黙り込んだ。
いつもならば、厳しいながらも生徒を守ってくれる良き先生であるはずの山田伝蔵と
土井半助両教師なのだが今回ばかりは様子が違う。そう。これは演習でもなんでもない。
本物の戦なのだ。忍らしからぬ不用意さで自ら巻き込まれたのはきり丸本人である。
まだ敵の情報の把握すら完璧ではない今、その救出は優先すべき事項では決してない。

かつて戦忍びとして、数多の戦場を駆け抜けた歴戦の忍者・山田伝蔵は厳しい眼で
戦況を睨む。その厳しい視線の先には、漆黒の要塞の威容があった―――――

きり丸は、自分と同じ5人の小さな戦士たちと共に、あまりにも巨大な敵――――――
――“魔王”の元へとただひたすらに走り続けていた。――――――そして、出会った。
魔の王へと続く道のりの――――――最後にして最大の難関と――――――――
出会い、そして凍りつくような緊張の中、決死の形相で対峙していた――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ただならぬ気配にきり丸とリルル、仮面の老人は、言葉もなくただ交互に見つめていた。
目の前の男と4人の小さな仲間とを。4人の仲間―――ドラえもん、のび太、ジャイアン、
しずかは、愕然と立ちつくしていた。彼らの脳裏に、銀河の果ての遠い、遠い惑星での
苛酷な戦いの記憶が甦る。だが、それらの記憶を共有しないきり丸とリルルにも、4人の
表情の意味は――――その全てではないにしろ――――理解できた。体のあらゆる機能を
圧迫されているような錯覚を覚える。彼らは気付いていただろうか。――――彼ら自身、
その表情はまるで、蛇に睨まれた蛙。天敵に追い詰められた獲物のような、怯え切った
表情であったことを――――――

目の前に立ちはだかる漆黒の男。長身痩躯。幽鬼のように青白い肌。真っ白い長髪。
テンガロンハット、光沢の薄い皮製のジャケット―――全身を包む全てを黒一色に統一
された、闇の深淵から這い出してきたかのような不気味で重厚な佇まい。痩躯ではあるが、
その肩幅の広いシルエットはしなやかな強靭さを感じさせる。
――――――違う。

これまでの敵は、どんなに強くとも必ずどこかに大きな隙があった。
ゆえに、力の劣る彼らでも、勇気とあきらめない心と、ほんの少しの機転だけで
なんとか打ち倒してこれたのだ。しかし―――――――

油断、慢心、目の前に立つその男には、そういったものは一片も見受けられない。
あるいは、その身体能力だけならば、規格外の化け物であるげんごろうや、強靭な
機械の体を持つフレイザードほどではないのかもしれない。みな、過去それぞれに、
それなりの修羅場をくぐってきた少年たちである。そのただならぬ威圧感の意味は、
当然、充分に理解していた。空間を窒息しそうなほどに、重い空気が支配する。

その均衡を最初に破ったのは、のび太だった。
「ギ、ギラーミン・・・! なんでこんなところに・・・!?」
そう。彼はその男を知っている。忘れるはずもない―――――遠くコーヤコーヤの星。
銀河の果てで出会った、最初にして最強の敵、ギラーミンのことを・・・!

その声にギラーミンは口の端をニヤリと歪め、薄く笑った。
「あの日以来、お前を倒すことだけを考え生きてきた。銀河の果ての惑星、
この地球でお前を見つけたときは歓喜のあまり震えがとまらなかったほどだ・・・!」

ドラえもんが叫んだ。
「だ、だけど、地球は・・・お前のいる星系の10倍の重力なんだぞ!
体が持つはずがない!お前はこの地球でなぜ、そんな平然としていられるんだ?」
それは、質問というよりも、まるで恐怖を振り払おうとするかのごとく。
しかし、ギラーミンは冷静に答えた。やはり、薄い笑みを浮かべたままで。
「フ・・・この星の重力には随分苦労した。適応するためトレーニングを重ねた。
――――――戦闘において、なんの支障もないほどに!」
ガシャアッ・・・!

その時、背後から凄絶な足音が鳴り響いた。
その機械の眼の片方は無残にひび割れ、まるで朽ち果てた亡霊のような姿。
鉄人兵団首領、フレイザード将軍である。
「貴様等ぁああ!リルルゥウウ・・・!許さん!絶対に許さぬぞ・・・・」
「フレイザード!?」
「こんなときに・・・! まだ、動けたのか・・・・!?」

「殺す・・・!殺してやる・・・!!」
冷徹な機械の体に血なまぐさい生身の狂気を漲らせ、フレイザードは最後の力を
振り絞って、6人の戦士に襲いかかった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「邪魔だ・・・!」
ギラーミンの静かな呟きと共に、銃声がたった一つだけ・・・空間になり響いた。
そう。銃声はたった一つだけ―――――。しかし―――――
立ちすくむフレイザードのその頑丈な鋼鉄の体の両のヒジ、ヒザ、そして頭部が――――――
全く同時に吹き飛ばされた――――――――――!

「同時に・・・5発・・・・いや、6発・・・・!?」
そう。吹き飛ばされて転がる頭部の中心には、やはり弾丸がめり込んでひび割れている。

「す、凄ぇ・・・!」
「あんな頑丈そうなやつを・・・一発で・・・・!」
「いや、一発じゃない・・・!」
その場にいる中で、その神業に気付いていた者は、どうやらのび太だけのようであった。
他のみんなには炸裂弾のようなもので一撃で破壊したように見えているらしい。
刹那――――――幾筋もの光が空を切り裂いた。
ドラえもんが。ジャイアンが。リルルが。きり丸が。苦悶のうめきを発する間すらなく、
バタバタと倒れていく。たった一人。のび太だけを残して・・・!

「み、みんな・・・!?」

「安心しろ。威力は最小に抑えてある。この勝負が終わるころには全員気がつくだろう・・・。」
フレイザードを撃った銃とは違う。今、ギラーミンが手に持つ銃は通常のピストルではなく・・・
のび太がかつて持っていたショックガンと同じものだった!
「それは・・・?」
カラン・・・!
のび太の声に答えるかわりに別のショックガンをのび太の足元に転がすギラーミン。
「貴様からの預かりものだ。同じ獲物。同じ条件でやろう・・!」

「無理だ。無理だよ・・・。勝てるわけがない・・・!」
ギラーミンの圧倒的な迫力の前に、のび太の足はガクガクと震え、
腰が砕け立っているのがやっとの様相である。

たしかにかつて一度は倒した相手かもしれない。しかし、あのときは、
地球で育ったのび太とその10分の1の重力で育ったギラーミン。
環境の違いによる圧倒的な身体能力の差のおかげでかろうじて勝てたに過ぎない。
この地球の重力に慣れ、同じ条件になった今ではまともな勝負になるとは思えない。
いや、のび太どころか地球上の超一流の殺し屋ですら、勝てるかどうか・・・。

だが、そんなことなどおかまいなしにギラーミンは告げる。いや、吼える!
「ただし!貴様だけは別だ。・・・今・・・ショックガンの威力を・・・・最大にした!
お前も殺すつもりでかかってくるがいい。命をかけた決闘だ・・・!!」
261ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/10 23:34:17 ID:nFIxrk1z0
今回分終了です。
262作者の都合により名無しです:05/02/10 23:51:04 ID:3qVFWklY0
>10分の1の重力で育ったギラーミン
逆サイヤ人だなw

しかし、ついに最強の男の本格始動で最終局面突入か。
やはりのび太との因縁の決着へ…。
でもこの大作も現スレ中で終わりそうだな。寂しい。
263作者の都合により名無しです:05/02/11 00:52:38 ID:ye/JaeSZ0
うみにんさんお疲れ様です。
やはりギラーミンは他の敵とは格が違いますね。
のび太の勇気と主役らしさが次回あたり爆発しそうですね。
264輪廻転生 最終章:05/02/11 01:55:50 ID:IydnXvie0
ヤムチャが精神と時の部屋の中に入ってから元の世界で半年が過ぎた。
冬から夏へと季節は変わっていた。天下一武道会は例年の様に大きく宣伝され
巨額の投資をするスポンサーが多数あった。ブルマの会社、カプセルコーポレーションも
その一つだった。
「ふぅ。」
ここはカプセルコーポのトレーニングルーム。ブルマの娘、ブラは汗を流していた。
子供の部とは言え年齢的には19歳までだ。相当の実力者も来るだろう。
ブラが実力者と認めているのはパンとウーブだけだ。彼ら以外は気にする程の相手ではない。タオルで体を拭き、部屋から出る。
「あ、お父さん出ないの?今回の大会。」父親の姿を見つけたブラが尋ねる。
「あんな茶番など俺は興味はない。お前達だけで出ていろ。」
そっけない返事をすると部屋から出て行くベジータ。そしてそれを見送るブラ。
「孫悟空さんがいなくなってからずーっとあの調子なのよねぇ。はぁ。」


  「ウーブ君。パン。悟天。悟飯。明日はがんばるんだべ。」チチが言う。
  「明日の為に長い間鍛錬を続けてきました。今なら仲間以外に負ける相手など
いません。」悟飯が自信たっぷりに言う。
久々に豪華な食事にあり付いたかの様に嬉々として飯を口に運ぶウーブ。そして
いつもの調子で食事をする悟天とパン。チチにはわかっていた。表面上では平静を装っていても心は明日の事でいっぱいだ。
「そうかい。今夜はたんとお食べ。」
265輪廻転生 最終章:05/02/11 01:56:56 ID:IydnXvie0
そして当日――――――
観客席は賑やかだった。数千人は収容できるであろう会場が人で埋め尽くされていたのだ。
チケットは数ヶ月前から取り合いになっておりダフ屋も多数いた。
開門から数十分後、予選が行われた。第一段階はパンチ力のテストである。そして第二次段階は実際にリング上での試合である。もちろん悟飯達は難なく突破し、第二次段階へと身を進めた。
「おい、あれヤムチャじぇねぇか。」誰かが声をあげた。
孫悟飯達が一斉にその方向を見る。彼らの目の前にはヤムチャが立っていた。
オレンジ色の拳法着に青い靴。頬に十字傷。
「いまさら何しに来たんだ?」見物人の亀仙人が言う。
それは悟飯達も同感だった。ヤムチャはとうの昔に現役を引退したはずなのだ。
ブルマの家に居候になっていた人間に武術ができるはずがない。何より彼らの頭の中で
ヤムチャはヘタレだった。
「次の試合は僕とヤムチャさんですね。」ウーブが言った。
「じゃあ結果は見なくてもわかるな。」クリリンが言う。
ヤムチャに背を向けて歩き出すクリリン達。そしてそれを睨み付けるヤムチャ。
「ヤムチャさん。僕は勝ちますから。」
明らかにヤムチャを侮蔑する言葉を発しながらヤムチャの靴の踵を蹴るウーブ。
そして予選が始まった。
予選第一戦 ウーブVS ヤムチャ
266輪廻転生 最終章:05/02/11 02:00:00 ID:IydnXvie0
観客の歓声は高まっていた。名も無き戦士と優勝候補のウーブの戦いである。
「始めっ!」審判が機械的に叫ぶ。
「いくよ・・・ヤムチャさん。」
一歩踏み込み蹴りを放つウーブ。そしてそれを片手だけで受け流すヤムチャ。
「だっ!」
ウーブが手を開きヤムチャに向ける。そこから気弾が発射されるはずだった。
だがそれは出なかった。焦って何度も手を開いたり閉じたりしながら声を出す
ウーブ。
「そんな!」
絶叫するウーブ。そしてそれを冷たい目でみつめるヤムチャ。
「気が出せないなんて!こうなったらぁー!」
ウーブは空を飛ぼうとした。だが出来なかった。体から気を放つだけだから
ジャンプはしなくても体は自然に浮く。だがそれが出来ない。
「悪あがきは止すんだな・・・。」
ゆっくりと片足を上げるヤムチャ。そして慌ててガードをするウーブ。
「この技で終わらせよう。狼牙風々拳!」
拳、手刀、肘、掌底がウーブを襲う。そしてガードを割られ血を噴きながら
すっ飛んでいくウーブの体。
「勝負あり!勝者、ヤムチャ選手!」
267輪廻転生 最終章:05/02/11 02:02:08 ID:IydnXvie0
今回の投稿はこれで終わりです。
268バキ外伝デス・ゲーム第十七話:05/02/11 05:13:54 ID:N5RWtnJ9O
光成がバキの通う高校を訪れた二日後の深夜。
光成は後楽園地下闘技場へ向かっていた。
闘技場の管理を任せておいた部下から、「複数の不審者が侵入」との報告を受けた為だ。
専用エレベーターを使い、地下フロアへ降りた光成が見たものは、惨たらしい警備達の死体だった。
選手専用廊下を通り、白虎の方角から光成が闘技場の中心へ歩を進める。
至る所に転がる死体をまたぎながら、一歩一歩、歩き続けた。
恐怖が無いわけでは無い。むしろ今すぐ屋敷へ逃げ帰りってしまいたい位だ。
しかし、彼の中に流れる幾多の強者達の闘いを見つめ続けて来た徳川の『血』が、それを許さなかった。
(…『血』が告げておる。強者を求めるなら、今日この場をおいて他には無いっ。)気が遠くなる程の道のりの果て、闘技場へたどり着いた。

5人の男が睨みあっている。殺気とも妖気ともつかぬ物を発しながら睨み合う男達。
最凶死刑囚、スペック・ドリアン・シコルスキー・ドイル・柳 龍光の5人だ。
死刑囚達は視線と互いに向ける警戒の内、ほんの一割程を光成に向けた。
それだけでも、あの『鬼』以外に味わわされた事の無い恐怖感を光成に与えるには十分だった。

一分程経ち、ドリアンが重苦しい沈黙を破った。
「誰だね、君は?死にたく無いなら出ていきたまえ。」無論光成に対しての言葉だ。

「ほぅ?あれだけ殺しといて年寄りは見逃すのかい?」シコルスキーだ。
スペックが次いで「ハハッ、アンタズイブン甘インダナ。」と笑う。

途端に、先程とは比べものにならない程の危険なオーラが充満し始めた。

既にシコルは拳を一本拳の形にし、スペックは人差し指と中指を突き出させた独特の拳をつくっている。
ドリアンは、ポケットの中の何かを握りしめているようだ。
柳は体を奇妙に脱力させ、ドイルは全ての指に力を掛けている。臨戦態勢だ。

光成の脳内では生存本能からの警報が全開で鳴り響いていた。
269バキ外伝デス・ゲーム第十七話:05/02/11 05:19:34 ID:N5RWtnJ9O
(まずい、止めさせなければ。)
わざとらしく咳払いをして、ドリアンに答える。「儂はここの持ち主じゃ。君達がなぜ、どうやってここを知り訪れたのかを聞くつもりは無い。」

僅かではあるが、濃密で危険なオーラが薄らいだのを感じて、少し安心した光成は続ける。
「聞くところによると君達は全員、敗北を知りたがっているそうじゃないか。」
「儂がプレゼントしよう。敗北を。」
「プッ!」スペックが吹き出した。「アンタニプレゼントサレンデモ…」
スペックの言葉が止まった。

空だった観客席にいつのまにか、アフロの巨漢・ジョアンが座っていたのだ。

示し合わせたかのように、選手・観客専用の通路からジェフやパトリック、幽鬼、ポール達の15人が現れる。
「出揃ったのう。」光成が恐怖と興奮を押し殺した声で言った。
「君達に敗北を教える者達が、もうすぐここへやってくる!」中央へ集まった20人へ叫ぶ様に呼び掛ける。
「後十分でいい!頼むから共食いは待ってくれんか!」

「仕方ねぇな」「期待できるんだろうね?」「糞、めんどくせぇっ。」
何だかんだ言いつつも、全員光成の指示に従う。

(……………遅い!)もう8分が過ぎた。光成の背中を冷や汗が伝い、4倍に膨れ上がった人数からは息が苦しくなる程の殺気が噴出し始める。
観客専用の入り口から足音が聞こえ、全員の視線が集中する。

「噂には聞いてたけどよぉ、オイラ始めて来たぜ。」
「予想以上に立派な所ですね。ウチにも造りませんか、館長?」
北辰館の長、松尾 象山とNO.2姫川 勉だ。

次いで反対側の入り口から渋川を先頭に、バキ、烈、花山、独歩、克巳が入ってきた。
「久しぶりじゃの、柳。」
「じっちゃん…眠いんだけど。」
「よお、克己と烈も連れてきたぜ。」

「どうでもいいから…もっと早く来てくれんかのう?寿命が5年は縮んだわい。」光成が泣きそうな顔で呟いた。
270五 ◆89aIROQ50M :05/02/11 05:24:24 ID:N5RWtnJ9O
徹夜勉強明けの、早朝UPでした。
ちなみに当方、ネットカフェや漫画喫茶にはまるで縁の無いド田舎在住です……orz
271作者の都合により名無しです:05/02/11 11:37:05 ID:KYxZvihh0
>うみにんさん
ギラーミンは扱いいいな。出てくると場面が引き締まる感じがするいいキャラだ。
フレイザードかませ乙。ジャイアンのときも思ったが、のび太どうやって勝つんだ?
しかしいいところで引きますねw

>五さん
携帯から書いてるの?そのわりに文章ちゃんとしてるね。誤字もないし読みやすい。
まだ序章のようだしこれからに期待。登場人数多い上に携帯じゃ大変だろうけど頑張って。
15人の敵は知らないやつばっかだけど全部オリキャラかな?
272作者の都合により名無しです:05/02/11 12:59:40 ID:6RjPTZuN0
出来杉も輪廻もいよいよ終わりっぽいな。寂しいぜ。
五さんは携帯から書いている割には構成がしっかりしてて好感持てる。
前回の鬼投稿は少しビビッたがw
273作者の都合により名無しです:05/02/11 13:32:30 ID:ABrfUrUp0
五さん、15人全部オリジナルだとしたら、
ちょっと修正した方がいいと思うよ。
274五 ◆89aIROQ50M :05/02/11 14:56:53 ID:N5RWtnJ9O
271さん、272さんありがとうこざいます。
読んでいただいてとても嬉しいです。

273さん、具体的にはどの辺りでしょうか?
275作者の都合により名無しです:05/02/11 15:13:49 ID:ABrfUrUp0
いや、オリジナルが出過ぎなのは良くないっつー事。
せめて半分くらいにしておいた方がいいと思う。
量が多くてざっとしか読んでいないので、的外れな意見だったらすまん。
276五 ◆89aIROQ50M :05/02/11 16:00:20 ID:N5RWtnJ9O
うーん…愛着があるので、個人的には削りたくないんですが。(;-д-)

じゃあ、オリキャラ達から早い段階で優先的に消えていくようにします。
277介錯人:05/02/11 16:50:23 ID:2XujcOcy0
 ネクストチャレンジャー

 プロローグ

 月明かりが冴える閑静な住宅街、屋敷前でジャグワーから二人の女性が降りたった。
 一人は英国製のスーツをきめた淑女、金髪と褐色の肌というミスマッチさから西洋人と南アジア系の混血と思
われた。
 もう一人は黄色の軍服ミニスカートというコスプレイヤーまがいの格好をしている。彼女の場合存在自体が場
所とミスマッチだ
「30分後は入ってこい」
 淑女はコスプレ女にそういい残し屋敷の門をくぐる。残されたコスプレ女は月と睨めっこしながら、時々時計
を確認して待った。10分、20分、ついに言われた30分の経過を確認し門の取っ手を手に取る・・・・が開
かない。閂が掛かっている様だ。
(まいったなー、壊す訳にもいかないし・・・・まあいいや、夜中だし跳んでいけば)
 意を決して助走もつけずに跳躍した。壁は2メートルを越えていたがそんなもの問題にならなかった。てっぺ
んをつかむまでもなく敷地内に進入できた。が――――
「ようこそ、歓迎するぜお嬢ちゃん♪」
 ざっと見渡したところ屈強そうな黒服が数十人! すっかり囲まれていた。
 日本くんだりまできていきなり戦闘状態になるとは・・・・コスプレ女は出張の幸先が心配になった。
278介錯人:05/02/11 16:51:03 ID:2XujcOcy0
 ここはかの水戸光圀公11代目の子孫、徳川光成の屋敷である。
 徳川邸は光成が経済界の重鎮なので普段から警備が厳しいが今夜は特別に警戒が厳しい。
 それもそのはず、大英帝国の貴族の当主と押しも押されぬVIPであったからである。しかも妙齢の女性だ。
「我が国有数の格闘者であるジョイント・フェチ、ローランド・イスタスが練習生扱いされる地下闘技場で私の
部下を鍛えてもらいたい。殺しても死なない輩ゆえ、いきなりA級ランカーとぶつけてもらっても結構」
 英国貴族はいつもの鉄面皮の表情で要請する。息にミントに混じって煙草の臭いがまじっていた。
 浅黒い肌が南方アジア系の流れを組むのか金髪とのミスマッチが魅力をかもしだしている。
面白くなってきた、光成は笑みを必死で噛み潰す。部下を参戦させるという本人の前で対戦カードの事を考え
楽しむなど不謹慎すぎる。彼女の戦いは一国の命運をも左右しかねない。
「いいじゃろ、参戦受け入れよう。ただし、卿の部下は実力が未知数ゆえ現在受けている試験合格が条件じゃ」
「では合格、という事で」
 云うが早いか勢いよく障子が開け放たれ、いかにもアレな格好のブロンド女性が苦笑いで仁王立ちしていた。
「ちょっと徳川さん! これって新手の歓迎ですか!?」
 彼女の両脇から見える庭園には徳川家の選りすぐりの使い手達が転がされているのが分かった。
279介錯人:05/02/11 16:51:50 ID:2XujcOcy0
 公式には東京ドームの地下は2階までとなっている。
 だが本当は違うのだ。ドーム建造時にさる財界人が資金の援助と引き換えにちょっとした、いやとんでもな
いイタズラをしかけたのだ。秘密裏に地下6階に作られた地下闘技場、ここでは武器の使用以外あらゆる技の使
用が認められる。例え目突き、金的攻撃さえも――――
 ここに集まる闘士は求道者や表のルールの規制上本気で戦えない者、暗黒社会出身者など多種に渡るが共通す
るのはひとつ『地上最強』の4文字を求める者である事。もっとも噂では超人と呼ばれる格闘者が正義と悪行に
れて殺しあうリアルファイトがあると聞くが定かではないが。
 新たなる闘士、古株のベテランなどいずれも高度な技量の激突、そしてブチ撒けられる血飛沫の末、ついにフ
ァイナルとなる。
「いかがですかなヘルシング卿。素手の闘争においてここ地下闘技場のレベルは他の追従を許しはしませんぞ。
死に損ないごときダース単位で葬る猛者ばかり、吸血鬼の底力を解放する事なんぞ・・・・」
「ミスタートクガワ、声が大きいですよ・・・・!」
 興奮したうっかり機密を漏らしそうになりたしなめられた光成はワザとらしく咳払いをする。
「・・・・あーコホン、ところでファイナルはうちの刃牙とヘルシング卿の部下の試合でしたな。その、なんだ」
「全てが計画通りといくかは神のみぞ知る、と言ったところですか」
 ヘルシング卿、本名インテグラル・フォルブンケ・ウィンゲート・ヘルシングは思わず十字架を握り締めた。
280介錯人:05/02/11 16:52:34 ID:2XujcOcy0
選手控室の机の上はミートパイと紅茶が置かれている。
 ファイナリスト、セラス・ヴィクトリアは意を決して切り分けられたミートパイを手に取り齧る。
 胃の底から込み上げる吐き気を押さえ紅茶で無理やり喉へと流し込む。涙が込み上げてきた。
(もう人でなくなっているのは分かっていたいたけど・・・・)
人外の者、闇の眷属となった我が身は普通の食物を受けつけない。唯一の食物は人の血肉だけ。
 もちろん血液の持ち合わせはある。彼女が所属する組織から支給されているがどうしても飲むには抵抗がある
のだ。人の心を持って闇にを置いた者として――――
 血液のパックを手に取りじっと見る。
飲まねば人外の者とて衰弱し、いつかは滅びるだろう。血の渇望と普通の食卓、闇の眷属となった我が身と人
間だったころへの未練、それらがグルグルと胸の内で渦巻く。そして――――

 ビシャア!

 壁に赤い花が咲いた。同時にドックする音が聞こえる。
『セラス選手、時間です』
 自分を呼びにきた小坊主の声が彼女を現実へと呼び戻した。
281介錯人:05/02/11 16:53:14 ID:2XujcOcy0
いつもなら空のタッパーが塔になる程おじやを食べるのに半分も食べていない。
 バナナや梅干はそれぞれ一個づつ、コーラにいたっては炭酸抜きすらしていない。
 範馬刃牙17歳、彼は猛毒に侵されている。最凶死刑囚のひとり、柳龍光の毒手をまともに食らったのだ。
 はちきれんばかりだった筋肉はそげ落ち、容貌は幽鬼の様にやせ細っている。
 そばには彼の恋人松本梢枝と好敵手、烈海王が心配そうに見守る。
「対戦者セラス・ヴィクトリア。所謂吸血鬼、その毒牙で同族を増やす闇の眷属だ。参加者名簿にヤツの名を見
てどこかで当たってくれればと思っていたが・・・・本当に運がいい。」
 自嘲気味に笑う刃牙。もう何も喉を通らないらしい
「ハハ・・・・どこをどう見るとそういう結論になるのかな? 吸血鬼ってだけでも十分すぎる脅威なのに・・
・・その上更に毒牙・・・・」
「範馬刃牙の目覚めにかける!」
 烈は大マジである。この半病人を本気で戦わせるつもりである。
「・・・・・・・・ねぇよ」
 さきまで黙っていた梢枝が何か言っている。刃牙と烈、二人の視線が彼女に注がれる。
 顔は伏せたまま梢枝がたちあがった。
「調子こいてんじゃねぇよッッ!!」
 ツカツカと烈へと歩む梢枝。
「目覚めにかけるなんて・・・・って、させるかそんなことッッ!」
 梢枝の拳が烈の顔面を捉えるが必死の拳と蹴りの連撃も鼻血さえ出せない。
「おまえらの好きになんかさせるかッ!」
 素人のデタラメら攻撃――――烈は防がない、防げない。自分達のやろうとしている行為は伸るか反るかの、
刃牙の命をチップにした大博打なのだから。
282介錯人:05/02/11 16:53:55 ID:2XujcOcy0
泣きながら烈を連打する梢枝を止めたのは刃牙だった。包む様に抱きしめ囁く。
「もういい。もう・・・・十分だ」
 梢枝を離し闘技場へと向かう刃牙の背は死刑囚二人を圧倒した面影は無くあまりに小さい。
 セコンドとして二人は刃牙を追う。闘技場の歓声が聞こえ始めてきた。選手がゲートをくぐった先へは誰の助
けも受けられない修羅場、梢枝は祈る、刃牙の試合と、そして猛毒への勝利を。
(勇気を・・・・もらった!!!)
 観客の歓声にどよめきが混じっているのが感じられた。毒に犯された身体は筋肉が落ちまるで別人の様である。
 これは賭けだ。自分の命を賭けた、生きるか死ぬの博打に打って出る。二度と負けないと夜叉猿に誓って以来
幾度負けたか? だからこそ決定的な敗北、“死”を迎えるわけにはいかない、梢枝のためにも。
「負けるかよ」
 自分に言い聞かせるかの様に呟く。ふと“最愛に比べれば最強なんて・・・・”というセリフが浮かんだ。
『白虎の方角、セラス・ヴィクトリア!』
 照明の明るさで暗がりと化した対面ゲートに人影が見える。ミニスカートの戦闘服に身を包んだ金髪の女性、
セラス・ヴィクトリアがゲートをくぐって入場してきた。
283介錯人:05/02/11 16:55:58 ID:2XujcOcy0
『これは異色の対決だ! 挑戦者はドーム地下闘技場始まって以来の女性闘士、負傷が癒えていないとはいえ範
馬刃牙相手にどう対抗できるのか〜〜〜〜!!』
 熱を込めて実況するアナウンサーだが歓声はセラスの入場で止まっている。それを無視するがごとくさらに実
況を続けるが闘技場の沈黙は変わらない。
「ふ、ふざけるなッッ! 神聖な闘技場を何だと思ってんだ!!」
 沈黙はとある観客の罵声で破られた。
「腐女子め! 有明に帰れッッ!!」
「乳と生足を強調しやがって、女相撲と間違えてんじゃねえのかゴラァ!?」
「刃牙! かまうこたぁねえヤッちまえ!!」
「コスプレするならビックサイト行けよ! ギャハハハハ」
 罵声が侮蔑を呼び口汚い野次が飛び交った。刃牙がデビュー当時にやったパフォーマンスでもここまで罵声は
飛ばなかった。険悪な雰囲気を打破できずにいたセラスは最前列のインテグラをチラッと見た。いつもの仏頂面
で無言、自分で何とかしろと、いう事だろうか。
「あ、あの〜私、とりあえずチョップしか使いませんから・・・・」
 半病人の対戦相手をきずかってチョップのみ発言をしてみた。それを聞いた刃牙の口元が緩む。
「別に気ィつかってもらわなくてもいいけど・・・・まあ好きにしなよ」
 収まらない罵声の中、二人は元の位置につく。響く太鼓の音が試合開始を告げた。
「始めぃっっ!」
284介錯人:05/02/11 16:56:40 ID:2XujcOcy0
試合開始と同時にセラスが駆けた。
肩口を狙った唐竹割りが迫り、刃牙が横に避けると同時に下から突き上げる様にタックルを決め抱えあげ投げ捨
てる――――と見せかけて地面に下ろした。
「仕切り直しだ」
 距離を取る刃牙。駆けたセラスは再び手刀を、今度は袈裟がけ、水平斬りと連打で迫るが全てテレフォンであり
掠りもしない。隙を狙ってショートジャブがセラスにヒットするが毒のせいか牽制にもならない。
試合は一見、確実に命中させる刃牙優勢に見えた。しかし打撃を気にせず常に前進するセラスが刃牙を壁際へと
追い詰めている。壁まであと三歩の距離でセラスが腰を落とし顎を目がけて掌底が天を突く! 次の瞬間、セラス
の身体は宙を舞っていた。
 掌底の瞬間、刃牙は腕を取り捻りを加えたのだ。本部以蔵に柔術の手解きを受け、渋川剛気の試合をまじかで見
た彼にとって筋力の落ちた今、最も有効な技といえるだろう。
 セラスが叩きつけられ、頑丈な壁は無残にも粉砕された。
「チョップしか使わないと、言っといてコンビネーションで掌打か。たしかに嘘は言ってないけど」
 刃牙は見た、壁の破片でついたセラスの傷がもう治りかけているのを。こっちは息が上がりかけてる、いつもな
らウォームアップでしかないのものを。
285介錯人:05/02/11 16:58:38 ID:2XujcOcy0
 刺さった破片を抜き傷を見ると再生が始まっている。法儀済み武器でなかったので回復も早い。
(え? 今の、何これジュージュツ?)
 吸血鬼に生まれ変わり強靭な肉体を得たが格闘技の経験は逮捕術くらいしか無い、その肉体を支える吸血行為
を彼女は拒否している。吸血鬼とはいえ闘技者との差は目に見える程ではない。まして相手が地下闘技場戦士と
なれば。
 立ち上りファイティングポーズを取った。右手を前に出し拳を握った。
「ごめんなさい、あなたをなめてました。今から封印を解きます」
 パパン、とジャブの二連撃。吸血鬼になり瞬発力が強化されている分下手なボクサーより速い。
(でも克己さんとは比べれられない。)
 さらにワンツー攻撃に前蹴り、裏券が続くがことごとく避け、あるいは受け流した。
 セラスの連撃は間を置かず今度は刃牙のむこうをはる浴びせ蹴り。全て見える、拳や蹴りの初動作から軌道、
さらにはパンツの色までハッキリと。毒に犯された体は消耗が激しい。試合が長引けば刃牙の不利は確実、隙を
うかがい必殺の一撃を食らわせなければ彼に勝利は無い。
(もう少し、もう少しだ・・・・)
 前蹴りの連打から左ジャブに移行し重心がセラスの左半身に傾く。ジャブを紙一重で避け右の拳を脇に、左足
に力を込めて。身を屈め顔面を狙うセラスの右ストレートをしのぐ。髪が何本か犠牲になった。
 両者の身体が交差し、刃牙渾身の一撃がガラ空きのボディに叩き込まれる!
 今ここに、必殺の剛体術が炸裂した
 ボディに強烈な一撃を食らいよろめき、まだ倒れず後ろに数歩下がるセラス。
「もういっちょう!」
 本家本物、刃牙の浴びせ蹴りが頭部をえぐる。鮮血の噴射と共にセラスの意識は飛んだ。
286介錯人:05/02/11 16:59:33 ID:2XujcOcy0
 真っ黒な空間、何も見えない奇妙な風景。
 決して不快でない、ドス黒い何かが胸の奥から沸いてく感じ。以前にも経験した恍惚感。
 コロセ、コワセ、クダケ、チギレ、サケ、クラエ――――
 破壊衝動が自分を支配していく。

「ガアアアアアア――――!!!!」
 試合の流れが一気に変わった。咆哮と同時にセラスのラッシュ、パンチの乱打が刃牙を襲う。
 テレフォンぎみの攻撃を刃牙は食らいまくった。全く避けられない。
(さっきのジャブとは・・・・)
 ボディブローが決まり身体が跳ね上がらせ、後頭部に鉄槌が振り下ろされた。
(スピードも破壊力もダンチだ・・・・)
 地べたに叩きつけられた刃牙、ほのかな土の味が口内に広がった。
 髪がむんずと掴まれ、その細腕からは想像できない力で理やり立ち上がらされるとセラスの顔があった。
 赤い瞳、凶悪な笑顔、そしてやたら目立つ犬歯が存在をアピールしている。
 すぐさまショートアッパーの反撃が見舞うも軽くさばかれ首筋に刃が走る感触がした。
 熱い息は耳元をくすぐる。吸血鬼の顎が刃牙を捕食した瞬間であった。
287介錯人:05/02/11 17:00:43 ID:2XujcOcy0
『あ――――とセラス選手噛みつきだ!! ちょっと羨ましいと思ってしまう私は不純でしょか!』
 逆境からの反撃にセラスに罵声を浴びせていた観客も盛り上がっている。
 振りほどこうと脇腹やこめかみに連打するも焼け石に水、急速い力が抜けていく。
(おいおいマジか・・・・女に噛みつかれるのは二度目だよ)
 どこぞの地下プロレスのチャンプが“種類を問わず体内からモノを排出するのは快感”といったらしいが血液
も例外でな無い様だ。血液を抜かれる快感に刃牙酔いかかっていた。

 心地いい。
 脇腹やこめかみを殴打する感触も今はただのマッサージでしかない。
 口内は生暖かい血液の味わいが広がり例えるならばそう、豪華なワイン――――
 ・・・・? ワイン? ワインの比喩するものは・・・・!
「〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
 刃牙の身体が宙を舞った。牙を離したセラス無造作に放り投げたのだ。
 そして嘔吐し、血の混じった吐瀉物を撒き散らした。
叩きつけられたのが土で受身を取ったのが激突の衝撃自体は抑えたが、蓄積されたダメージがそれを上回っ
ていた。意識を奮わせえ目を開けると烈と、そして梢枝の顔が映った。

 最前列の観客の中に特に目立つわけでなないが異様な雰囲気を放つ者がいた。
 50がらみで伸ばし放題の髪、無精ひげでしょぼくれた容貌の中年だ。
「おう花田、今夜は待ちに望んだチャンピオンに挑戦できるかもしれんぞ」
 中年は隣にいる日に焼けた青年に声をかけた。
「いきなり何だよ親父? 乱入でもするのかよ」
「そのまさかだよ」
 隣の青年と会話しつつも中年の双眸はファイナリストの戦いから離れようとはしなかった。

「いよいよじゃな」
「ですね、我らの策謀が吉と出るか凶と出るか・・・・」
 光成とインテグラ、二人の仕掛け人は固唾を飲んで勝負の行方を見守ってた。
288介錯人:05/02/11 17:02:05 ID:2XujcOcy0
 ゲートまで投げ飛ばされた刃牙に梢枝が駆け寄る。
 満身創痍としか形容できない闘士がそこにいた。
 膝をつき頬を涙に濡らして、梢枝は刃牙を見下ろしていた。
 触れる事はできない。その瞬間刃牙の負けが宣告されるから。
「刃牙くん・・・・」
 ポタリ 一滴の涙が闘士の顔に落ちた。
「変わっちゃったね・・・・あんなに太かった腕も・・・・あんなに逞しかった・・・・脚も・・・・鋼の身体
も・・・・全部・・・・変わっちゃったね・・・・でも・・・・」
 グスン、と鼻を啜る
「ちっとも変わってない」
 熱い、熱い涙がボロボロと止めなくこぼれ出す。頬を伝わり刃牙の顔へと次々と落ちていく。
 ドクン
 一瞬胸が力強く鼓動した
 ドクン
 再度強く鼓動する。内に秘めたパワーが抑えられたマグマの様に噴き出そうとする。
 ドクン
 奇跡が起きた。膝を折りかけた闘士が閉じかけた目と見開き、今立ち上がったのだ!
 理論上は低確率ではあるがありうる話である。しかし頭では分かっていても目の前で起こっている奇跡に烈海
王は驚愕し立ち尽くした
「毒が・・・・裏返るッッ!」
289介錯人:05/02/11 17:03:04 ID:2XujcOcy0
真っ赤な嘔吐が闘技場の土を染めていく。
 試合前に食べたミートパイが消化しかけて吐瀉物をグロテスクに飾っている
 気管に入り込んだ吐瀉物が咳き込みを繰り返えさせる。
(吸血鬼になったのは理解していたはずなのに・・・・)
 咳き込みながら気配を感じた。顔を上げるとさっき自分が放り投げた男が立ち尽くしている。
「ゴメン、待たせたね・・・・さァ、すぐに」
ファイティングポーズをとる刃牙。相変わらず痩せこけた容貌をしているがその目は生気に満ち溢れ、状況を
楽しんでいる様だ。
 呼吸を整えセラスは立ち上がった。情けない様をゴマ化すため二、三度咳払いをする
「毒素が消えた、それは確かなようね。自然毒と吸血鬼の感染力の二つの毒素が君の体内の何か、闘争心によっ
て分泌された脳内麻薬・・・・あるいは後ろの恋人が流した涙にもたらされた精神的高揚。そしてその昂ぶりか
ら生まれた何かが作用した・・・・あるいはそれら全てが君の体内で合わさって化学反応を起こしスパーク」
 ポリポリと後頭部をかく刃牙。
「ん〜頭ァあんまりよくないんで・・・・つ〜かイギリス英語だし。言葉による説明ではさっぱりなんだけど、た
だ・・・・身体がね・・・・・あんたをヤッちゃえって・・・・」
 刃牙の微笑と勝利宣言と言える台詞にセラスはカチンときた。
「楽しい事言ってくれるじゃない・・・・ならそれを証明してみせてッッ!」
 地面を蹴ると同時に右ジャブ、がこれはフェイントでメインの左の貫手が喉を狙う。
「もらったァッッ!」
 セラスと刃牙がぶつかった。貫手に合わせたカウンター、破壊されたのはセラスの右手の方だった。
 次の瞬間、セラスの身体は浮いた。
290介錯人:05/02/11 17:04:18 ID:2XujcOcy0
 セラスが我を忘れたのは刹那であったが、その刹那で十分あった。
 刃牙渾身のアッパーカットが見事に炸裂、首が反り返り僅かであるが身体が宙に浮いた。
 続いて左フックがテンプルを狙う、がそれが炸裂する事は無かった。左拳は一寸で止められた。先のアッパー
カットですでにセラスの意識は飛んでいたのである。膝から崩れ落ち、うつ伏せに地面に倒れるセラス。左手が
何かを掴もうと宙を彷徨うがやがてそれも崩れた。
『勝負あり!! 勝者、範馬刃牙!!』
 アナウンサーが刃牙の勝利を宣言しすると観客が口々に刃牙の勝利を称える言葉を叫んだ。敗北したセラスに
もジョンブル魂見せてもらった、おまえはコミケットではないホンモノ闘士だ、と試合前の罵声とは打って変わっ
て賞賛の声がかけられた。
 小坊主によって担架に乗せられ退場するセラスを刃牙は一瞥する。
(セラス・ビクトリアさん。理由は何であれ動機はどうであれ・・・・俺が今こうして立っていられるのはあなた
のおかげです。以前にも増して力強く立っていられるのはあなたのおかげです)
 闘技場を背にしゲートに戻る刃牙を梢枝と烈が迎えた
「サンキュー」
死の淵から舞い戻ってきた闘士は愛しき女性に笑顔で話しかける。
「心配、したんだぞ・・・・」
グスン、と涙ぐむ梢枝。嬉しいはずなのに涙が次々と溢れてくる。
「ホラやっぱり・・・・変わってない」
 愛しい男に梢枝は抱きついた。
291介錯人:05/02/11 17:05:22 ID:2XujcOcy0
テーブルいっぱいに並べられた料理、料理、料理。どれもが美味そうな香りを放っている。
 試合前のおじやや梅干はとっくに食い尽くし、試合での消耗はこの位軽く完食しろ、と言わんばかりだ。
「・・・・多分くるとは思ってたけどよ」
 これらは刃牙を完全復活するため全て烈が調理したものだ。この男、どうやって試合前からこれだけの量を仕
込み、そして短時間で調理したのか?
「食うんだ」
 ぶっきら棒に食えという烈に対し楽しげに微笑む刃牙。
「・・・・ん? どうした」
「いやアンタさ、ほん・・・・っと優しいのな」
 カァ
 色黒の顔が人目で判るくらい真っ赤にそまり、烈はつい目をそらした。
「・・・・食うんだ」
 用意した料理も短時間で食い尽くしてしまうだろう。烈はデザート代わりの砂糖水を壷に注ぎ始めた。
292介錯人:05/02/11 17:06:14 ID:2XujcOcy0
 刃牙が復活を果たそうとしている一方、セラスはたどたどしく廊下を歩んでいた。
 付き添いを断って医務室を出たが傷の再生が覚束ない。法儀済みの武器でもフリークスの打撃でもない、人間
の放ったアッパーカットであるにもかかわらず気絶から覚めたのは医務室で治療中の出来事だった。
(インテグラ様の顔に泥を塗っちゃったかなぁ)
 ヘルシング機関でセラスを知る者は『婦警』または『お嬢ちゃん』と呼ぶ。ちゃんと本名で呼んでくれるのは
執事のウォルターくらいである。傭兵達はともかく、誰もがセラスを半人前の吸血鬼扱いなワケだ。
 控え室の前まで来ると煙の香りが鼻腔をくすぐった。ドアを開けるとインテグラが葉巻を噴かしている。
「遅かったな」
 隅にある消化用バケツに吸いかけの葉巻が投げ捨てられた。
「で、敗因は何だと考える?」
「・・・・血の吸入を・・・・拒否したからです」
「・・・・判ればよい」
 インテグラの手が出しっぱなしのナイフに伸びた。試合前の昂ぶりからしまうのを忘れていた物だ。おもむろ
に握られたナイフがインテグラの左手の人差し指に突き立てられた。白手袋が赤く染まり血が垂れてくる程流血している。
「インテグラ様!?」
 セラスは主君の自傷行為に思わず声を上げた。
「おっと、指を切ってしまった。バイキンが入ったら大変だ、舐めてくれ」
「でも、あの・・・・」
「命令だ、なめろ」
 命令、と言われてしかたなくセラスは目前に差し出された指先に舌を這せた。少々ヤニ臭かったが構わず指舐
めを続ける。
「正真正銘処女の血だぞ。たっぷり味わえ」
 すでにインテグラの声など聞こえない程セラスは血に陶酔している。
 唾液が糸を引き淫靡に床へと垂れていった。
293介錯人:05/02/11 17:08:02 ID:2XujcOcy0
 エピローグ

違和感はバイザーの男が屋敷に潜入したときから感じていた。
 第一に気配が少なすぎる。ここはアイルランド共和軍のアジトと思われSASの精鋭8人が強襲したが10分
後『化物だぁ!』の通信を最後に連絡を絶った。内半分がグール化しとしても20体近い吸血鬼がいるはずであ
る。それが半分以下、現在も気配が減り続けている。全て2階大広間から発されているのでは地下に向かった手
下の戦果で無いのは明らかだった。
(強大な殺気・・・・アンデルセンとも違う。これは楽しめそうだ)
 バイザーの男が階段を上がる間にも気配は減り大広間の前まで来た時には2体だけとなった。
 扉を開けてバイザーの男は見た。上半身裸の東洋人が素手でグールを粉砕した瞬間を。その東洋人の背筋に奇
妙な顔が浮かんでいるのを。
「おめぇさん・・・・いい匂がするなぁ。吸血鬼だな?」
 東洋人が振り返った。恐ろしげな笑顔は凶暴な肉食獣を連想させる。
「東京でおめぇさんの同族の試合を見て、そそられていた。イギリスに来れば化物共と戦えると思っていたがこ
んな雑魚相手じゃアフリカの猛獣の方が歯ごたえがあったぜ。だがおめぇさんは違う様だな、匂いで判る」
 ククク、と笑うバイザーの男。笑いはやがて高笑いへと変貌する。
「クク・・・・クッハハハハ――――! スバラシイ! 長く生きてみるものだ! 只の人間が、素手で、吸血
鬼と殺り合おうなどと! しかもグール相手とはいえそれを実行して見せた! スバラシイぞヒューマン!」
 笑い声はまるで屋敷中に響かせるがごとくだった。ひとしきり笑うとバイザーの男は大口径拳銃を抜き放ち放
り出した。
「失礼したミスター、その挑戦承ろう。オレの名はアーカード、ヘルシング機関のゴミ処理係りだ。ミスター、
アンタは?」
「範馬勇次郎だ」
「・・・・ほう、アンタが地上最強の生物か。面白い」
「感謝、食うぜ」
 言うが早いか、吸血鬼と地上最強の生物の二人は同時に動いた。
 屋敷の外で待機していた傭兵ベルナドットはその瞬間をこう語る。究極の殺気が辺りを包んだと・・・・。

294介錯人:05/02/11 17:13:31 ID:2XujcOcy0
以上です。
どうも貼り付けの段階で行が狂って読みにくいかもしれませんが。
ヘルシングキャラは本格的に参戦していなかったので毒vs吸血鬼の感染力=範馬刃牙復活ッッ!で
書いてみました。
295作者の都合により名無しです:05/02/11 20:31:43 ID:q43LzcBI0
>五さん
一通り読んで、中には面白そうなキャラもいるけど、15人ってのはいくらなんでも多すぎかな
こういう二次創作では、オリキャラはよっぽど設定しっかり作りこんで慎重に描かないと、なかなか読者を納得させられないから
15人もいるとキャラ立てするだけでも一苦労だと思うよ
個人的には先を楽しみにしてるよ
とりあえず、サクラと戦った義手の男・右腕が異様にデカい男・老衰寸前の達人・ブラジルの強化版天内みたいな男の4人に期待してる

>介錯人さん
ヘルシングは初めてだな
結構面白かったんだけど、もう終わり?
いきなり脈絡場面転換してると思ったら、エピローグって書いてあるから面喰らった
296作者の都合により名無しです:05/02/11 22:06:28 ID:msObgAuV0
>五さん
オリキャラを出すんだったらこの二つだけは守った方がいい(守らないと顰蹙を買う可能性大)
1. オリキャラを明らかに贔屓しない
2. 原作キャラ(特に主役・レギュラークラス)をオリキャラの踏み台にしない

この2つを無視してるせいで恐ろしいほど寒いことになってるSSが多いから気を付けて
297作者の都合により名無しです:05/02/11 22:35:24 ID:s29pPWst0
介錯人割り合いに面白かった。
しかしプロローグと書いてあったので
連載を予想していたが読みきりでちょっと肩透かしw
298作者の都合により名無しです:05/02/11 23:27:10 ID:ABrfUrUp0
五さん、オリキャラの活躍は、書いている本人は超楽しいけれど、読んでいる側は
超つまらなくなるので(場合にもよりますが)、気をつけて。
むやみにヘタレにする必要はありませんが、最終的には原作キャラを立たせる役回り
にした方がいいと思います。

携帯からの続き、期待してます。

>介錯人さん
大量投稿乙です。ヘルシングは久しぶりですね。
>烈はデザート代わりの砂糖水を壷に注ぎ始めた
原作通りのはずなのに、妙に笑いました。

ところで
>もっとも噂では超人と呼ばれる格闘者が正義と悪行に
>れて殺しあうリアルファイトがあると聞くが定かではないが
ここの文章、文字抜けですか? 他も誤字が多いような……
299犬と猫:05/02/11 23:46:58 ID:+Nl92JLP0
伝播

 可愛らしい猫の外見に、膨大な半生を隠し持つカリン。今回は、そこへさらに狂気がトッ
ピングされている。ヤジロベーでなくとも、一歩退くことを選ぶだろう。
「おいおい、何を怯えておる。仲間に誘っただけじゃというのに……」
「仲間って……。どうせ、ろくでもないこと考えてんだろ?」
「ろくでもない、か。おぬしの立場からすれば、あるいはそうかも知れんのう」
 あえて、はぐらかすように応じるカリン。が、いきなり核心を突く。
「わしは国王とともに、人類を追いやり獣が支配する世の中を築くつもりじゃ。本来ならば、
おぬしも排斥すべきじゃが……わしはおぬしを認めている。仲間に入るというなら、入れて
やっても良い。いわば特権じゃ」
 勧誘、ではなく脅迫。もし断れば、二人が放っている殺気が具現化するだろう。
 逃亡も考えた。しかし、この二人がどんな切り札を持っているかも分からない。このまま、
彼らを放っておくことへの不安もあった。
「……仲間になるよ」
 ヤジロベーは服従した。本心ではないが、ここで逆らうのは得策ではないと悟ったのだ。

 テレビ局へ向かう三人。街中にいる市民たちは半裸にもかかわらず、国王とすれ違うとほ
ぼ例外なくお辞儀をしてくる。が、国王当人は顔をしかめている。
「彼らは私を尊敬しているのではない。私が手に入れた“国王”という権力にひれ伏してい
るだけなのだ。獣人に対する差別は未だ根強い。もし私が王でも何でもなければ、冷ややか
な視線を浴びせられたかもしれないな」
 確かに、都市部での獣人の人口は年々減少傾向にある。地方へ移住する者や、野に帰って
いく者が多いのだ。やはり、人間中心の生活様式に馴染めなかったり、不当な扱いを受けた
ことが原因になっている。
300犬と猫:05/02/11 23:48:32 ID:+Nl92JLP0
 高視聴率を誇るニュース番組。ユーモアセンス溢れる男性キャスターと、色気たっぷりの
女性キャスター。このコンビに加え、敏腕プロデューサーによる巧みなる番組構成。キング
キャッスル城下町のテレビ局にて、今日も絶賛放映中である。
 世界各地の話題が掘り当てられ、掘り下げられ、円滑に伝えられていく。
「……では、続いてのニュースです」
 これまで何度も繰り返されたフレーズ。が、異変は突如としてやって来る。
「な、何を……ぐわっ!」
 スタジオに配置されているガードマンが倒された。このニュース番組は、たまにジョーク
として生放送中に事故が発生したという演出を行うが、今回はそうではなかった。
「こ、国王様! どうなされたんですかっ!」
 男性キャスターが叫ぶ。ガードマンを倒したのは、まさしく国王陛下その人であった。
「安心したまえ。殺してはおらんよ。まずは、宣戦布告をせねばならんからな」
「えっ……。今はニュース中なんですが」
「うるさい」
 国王は非情にも、男性キャスターの右腕をへし折った。これまで築き上げてきたイメージ
を、全て帳消しにするような叫び声が上がる。
「……やれやれ。君も折られたくなくば、早く出て行きたまえ」
 国王に促され、女性キャスターも悲鳴とともに逃げていく。残ったのは、カリンによって
逃走を阻止された哀れなカメラマン数名。
「よし、全てのカメラを私に向けろ。これから重大な発表を行う」
 こうして番組は犬と猫によって乗っ取られ、国王によるワンマンショーへと切り替えられ
た。
301犬と猫:05/02/11 23:49:48 ID:+Nl92JLP0
「こんにちは、国民の皆さん。私はこれより人類を徹底的に叩き潰すつもりです。とりあえ
ず、城下町に住む人々には犠牲になってもらいましょう。……このように」
 国王は泣き叫んでいる男性キャスターを、カメラの近くに放り投げた。
「……さて、本題に入りましょう」
 ここで、穏やかな口調が突如として変貌する。
「全国に散らばる親愛なる獣人に野獣たちよ! もう我慢する必要はない、悪いようにはし
ない! 私とともに、人類から地上の支配権を勝ち取ろうではないか! 君たちには闘争す
る権利がある! もし、私と組んだならば……」
 カメラを意識しつつ、国王は近くの壁へ拳を打ちつける。壁はまるで豆腐のように砕け散
り、直径数メートルの大穴が出来上がった。
 皆が知っている暴君とも名君ともかけ離れた、凡人の姿はそこにはなかった。
「必ず勝てる、と約束しよう……!」
 正義と悪徳を兼ね備えた、王者のみに許された笑み。
「武器や弾薬はこちらで用意してある。全てを開始するのは一週間後……! 人類に代わり
覇者となるべく戦う気概のある者は、キングキャッスルへ集まってくれッ! 諸君らの賢明
かつ勇気ある判断を期待する」
 満足そうに微笑むカリン。呆然とするヤジロベー。

 ──スタジオ内には、静寂だけが残った。
302作者の都合により名無しです:05/02/11 23:52:04 ID:iTm9UMNm0
>>276
紹介シーンでの力の注ぎ具合から判断して
オリキャラを減らしたり早めに消したりする必要は感じない。
無理に原作キャラを立てる必要もない。
二次創作では原作に依存できる「キャラ立て」の部分を
自分で1からやることになるわけだからしんどいが
妥協せず力を発揮してほしい。
303サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/11 23:53:49 ID:+Nl92JLP0
>>127より。
もう少し演説に迫力を出したかったですが、簡潔に済ませました。
続きます。
304五 ◆89aIROQ50M :05/02/11 23:53:57 ID:N5RWtnJ9O
皆さん、ご忠告身に染みいります。

自己満作品にならないように(既になりつつあるかも知れませんが)
一、「贔屓しない」
二、「むしろオリキャラを原作キャラの踏み台に」
を心がけていきます。
演出上、二を守れない場面も多々ありますが、最終的には上の方針に沿った展開にしていきます。

では、「特命係長〜」を見ながらの深夜の投稿を開始いたします。
305バキ外伝「デス・ゲーム」第十八話:05/02/12 00:02:51 ID:N5RWtnJ9O
選手専用入口、青龍の方角から丹波文七とグレート巽、鞍馬彦一が歩いてくる。
「ほぉ〜、面白そうな連中じゃねぇか。」
「猪狩から聞いてはいたが……実在するとはな。」「すっげぇぇー!俺、ここに移籍しちゃおっかな?」
(あと…もう一人、奴は来るかどうか?)
中央に集まった光成の揃えたメンバーと、無敗者達が向かい合う。既に双方の戦力分析と視殺戦が始まっていた。
(…やはり奴は来んか……)光成が思考を打ち切り、口を開く。「ルールは前田光世方式を…」

「ルールだ?ふざけてんのか!?」ブライアンだ。
「従う気は毛頭無い。好きな場所・時間・手段でやらせてもらう。」ドイルが続く。
象山が豪快に笑う。「ガッハッハッハ!!徳川さん、そういう事だ。…ルール無し。こいつぁもう始まってんだよ。」
象山の言葉の直後、バキの背後の朱雀の方角から、光成の言う『奴』が現れた。
長身の金の短髪の男。バキの異母兄にして最大トーナメント2位の強者、ジャック・ハンマーだ。

光成が呆れる。「ジャック…お主も遅刻か。来ないかとヒヤヒヤしたぞい。」
ジャックを知る者は全員呆気に取られていた。(身長が…伸びてる!?)
天才医師・紅葉の施した『骨延長手術』延長手術』の成果なのだが、バキを含め全員は知る由も無い。

ジャックは疑問を投げかける視線も気にせず一言。『渋滞でね。』
そのジャックを凄まじい形相で見つめるブライアン。
(ジャック!?…まさかあのデカブツがジャック・ハンマーか?どうする、今ここで殺っちまうか?)
その思考を横に立つ、柳が遮った。
「いささかそちらは人数が少ないようだが…」

光成が満面の笑みで返す。「君達は嫌でも目立つし、行動次第で恨みも買うじゃろ。」
「足りない分は自分で探せ、と。」「そういう事じゃ。」
「それじゃ…解散しますか。」「ここで乱闘も味気ないしな。」
誰ともなく言い、数人が帰りだした…。その時。
306バキ外伝「デス・ゲーム」第十八話:05/02/12 00:12:55 ID:ENpdC+DuO
「ゲェェェ…ウッ…カハッ」奇妙な声を出し、ドリアンがうずくまった。全員がドリアンを見る。
口からは、胃液のような液体を垂らしていた。

克己と独歩が笑う。「腹でも壊したのかな、親父?」「へっ、死刑囚が食中毒か?ざまぁねぇな。」

ドリアンが口元に手をやり何かを吐き出した。ピンのついたモスグリーンの丸い物体。
大きな指がそれを包み、周りにはその正体がわからない。

突然ドリアンが立ちあがり、ピンを抜いたそれ……手榴弾を中央へ高く投げた。

…ふと、ドリアンは奇妙な事に気づいた。周りに誰もいない。その理由由に気づくまで、1秒程の時間を有した。

宙を舞う手榴弾が、3個。自分の投げたのは1個。

既に全員が闘技場の柵の影に退避、あるいは選手専用の入り口から奥の廊下へ全力疾走していた。
ドリアンも慌てて柵を飛び越える。しかし無情にも、着地し終える前に強力な爆風と炎、大量の破片が彼を襲った。

その30分後、宿泊先のホテルへ歩く小柄な老人、『神』グルカ・シャカール。

急に立ち止まり、後ろを振り返った。「ミスター・トクガワの言った通りだね。早くも部外者の登場か。」

全身から焼けつく熱風の様な闘気を迸らせた、『鬼』が立っていた。
「地上最強の生物…ユージロー・ハンマか。早くも会えるとは驚いたよ。」
「全員喰いごたえはありそうだが……、お前は別格だ。」
「普通の相手が『料理』なら、お前からはいわば『珍味』みてぇな匂いがする。」
平静を装いながらも、勇次郎は強い頭痛と平衡感覚の狂いを感じていた。

「来たまえ……。天罰を下してあげよう。」
「この俺に天罰だと。…面白ぇっ!!喰うぜ!!!」
アスファルトが抉れる程の脚力で、一瞬にして距離を詰める。鬼の右フックが、間一髪でかわすグルカの下唇と皮膚を削り飛ばした。
神速の右のハイキックが、首を吹き飛ばさんと続けざまに襲った。
307十八話・続き:05/02/12 00:20:48 ID:ENpdC+DuO
日本刀並みの切れ味を持つ手刀を、背を屈めた体勢の所へ振り下ろす。これも、グルカの右肩の表皮を僅かに削いだだけだ。

(何故だ?何故当たらない?それにこの頭痛……気が散ってしょうがねぇ。)

勇次郎の連撃が、荒れ狂う竜巻のように間断なく襲い掛かる。
直撃こそしないものの、一撃必殺の威力だ。一発当たればケリは着く。
戦況は勇次郎の圧倒的な優勢だ。グルカは攻撃すら繰り出せない。
強烈なめまい、頭痛をこらえながら渾身の左ストレートを放つ。しかし、当たらない。狙った位置に誤差を生じるのだ。
開始直後はミリ単位だったのが、今や数十センチの誤差を生じてしまっている。それどころか、独りでに前のめりに転倒してしまった。
(なんだ!?俺の体に何が起きてやがる!?)

グルカがその隙を待ち望んだかのように、笑みを浮かべ、勇次郎の後頭部に手をあてた。
「…ッガァァァァッッ!!!」
勇次郎の絶叫が響き渡る。勇次郎の視界は赤一色となった。
頭痛はまるで、麻酔無しで切開した頭に濃硫酸を流しこまれるような物になっている。
手をはねのけて、立ち上がる勇次郎。耳、目、鼻から夥しい血が流れていた。

いつの間にか勇次郎の周りを無数のケガ人達が取り達が取り囲んでいる。
一斉に襲い掛かる彼らをなぎ倒すが、際限なく増え続ける。
(……こいつら、見覚えがあるぞ。)彼らは、過去に勇次郎が倒した武道家や兵士達であった。
(夢でも見てるのか?それに、あのジジイは…)

視線を移した先、道路の真ん中に立ち薄笑いを浮かべるグルカ。(現実みてぇだな、とにかくアイツを仕留めりゃ…)

ガードレールを飛び越えた勇次郎を閃光が包み込む。
凄まじい衝突音と共に、4トントラックに対向車線へ跳ね飛ばされる。
挙げ句、更に対向車のタンクローリーに跳ねられ、5m程転がった所で勇次郎は大の字の姿勢で動かなくなった。

歩道橋の上から、グルカは一部始終を見届けると、満足そうに帰路へ着いた。

2分後、立ち上がった鬼はトラック・タンクローリーと通りすがりの乗用車の計26台を廃車にして、闇へ消えた。
308五 ◆89aIROQ50M :05/02/12 00:23:45 ID:ENpdC+DuO
投稿完了です。改行が多すぎて急遽削りながら投稿した為、ずいぶん時間が掛かってしまいました。

今後とも、感想・注意・ご指導の程、よろしくお願いいたします。
309作者の都合により名無しです:05/02/12 01:23:15 ID:WQB8GZDJ0
五さん、お疲れ
いきなり勇次郎不覚?まあ、この程度じゃ死なんだろうけどw

つーか凄い人数だが、ちゃんと描ききれるか?
今までのケースだと大人数の作品ほど、序盤は勢いがあっていいが、長編カテゴリに入るあたりから纏めきれなくなって失速し、投げ出しというパターンだからなあ
そこんとこが、ちょっと心配ながらも、続きを待ってます
310作者の都合により名無しです:05/02/12 02:31:27 ID:N3KLetIJ0
トラックに跳ねられても2分で復活かw
311作者の都合により名無しです:05/02/12 08:03:27 ID:FqMjPF3u0
>犬と猫
初回から考えると今の展開は考えられないな。革命か。
ヤジロベーすきなのでどう動くか楽しみだ。


ところで五氏、お疲れですが受験は大丈夫か?
312僕電波ですか?:05/02/12 14:41:46 ID:rvm6G4O40
前書きすみません。
タイトルは「もしもWJキャラとその作家達が1つのクラスにいたら」です。
主人公は女子高校生、WJ高校に通っています。
主人公のクラスにはさまざまなWJキャラとその作家達がいます。
登・下校中、プライベートでも彼らに会います。
以前週刊少年漫画板にあった、もしもジャンプ作家が1つのクラスだったら
みたいな名前のスレを思い出してもらえればわかりやすいです。
その主人公の学校での様子を含めた1日を書いたものです。
それでは、どうぞ。こいつ誰だろう?と思ったら一番最後のレスを見てください。
313僕電波ですか?:05/02/12 14:43:45 ID:rvm6G4O40
6:30、起床。
7:30、玄関にNナが迎えにきていた。
     鍵がかかってないからって勝手に入ってくるな。
8:10、電車でたまに痴漢される。誰かと思ったらT樫君じゃん。
     志村似の顔のとおりだな。そういえば夜道でこいつにあって、
     変態だと思って大声で叫んだ事もあったっけ。
8:20、登校中。1人はマングース、1人はやたらイケメン、
     年中毎日マフラーしてくる奴が2人もいる。
8:30、教室に着く。ゴムゴムのピストル!とか言いながら
     遅刻しそうだからって校門から腕伸ばして入ってくる奴がいる。
     むかつくから麦わら帽子を窓の向こうに放り投げるとマジギレする。
8:35、HRでL君が尿検査にひっかかる。糖がでたそうだ。
8:40、K保君が遅刻してくる。教師を教員と呼ぶ彼だ。注意されると、
     「黙れ。校則も教員もクソくらえ。俺がいやだといっている。」
     逆ギレする。やれやれだぜ。
8:50、授業が始まる。あれ?T樫君は?今日も無断欠席?
     さっき電車にいたのに。まあいつものことか。
     また担任から電話入れられて
     電話発明した奴ぶっ殺すとか言うんだろうなあ。
314僕電波ですか?:05/02/12 14:44:52 ID:rvm6G4O40
9:50、物理の授業がはじまる。M氷君がずっと授業中寝てる。
     Y吹君が出された宿題の回答を盗み見ている。苦手だからって。
     対照的にO田君は誰がなんと言おうと傑作だ。とかほざいてる。
10:50、英語の授業が始まる。M氷君はずっと授業中寝てる。
      K保君がオサレだと言い得意そうだが成績はよくないらしい。
      E前君はテニスの時だけ英語が話せるらしい。
      L君は成績優秀だけど毎時間コーヒーを机の上に置いておくのは
      いけねーないけねーよ。
11:50、体育の時間。
      W月君がぜいぜいしている。それを見てK斐君が
      COOLがHOTになっちまったぜとかいってる。
12:40、昼休み。A木君が校舎裏で栽培しているトマトを見に行った。
      私にも頂戴。パンティーあげるから。
      A本君がパンおいしいねんとつぶやいている。
      U澤君が弁当を忘れたらしい。ガッデムを連呼している。
      Y神君が誰もいない後ろに向かって話しかけている。
      M氷君が心霊写真を見てニヤニヤしている。
      I護君が突然黒装束になってどこかに駆けていく。
      Aレン君も黒いコートはおってどこかに駆けていく。
      2人ともたまに流血して帰ってくる。それ以外は帰ってこない。
315僕電波ですか?:05/02/12 14:46:54 ID:rvm6G4O40
1:30、現代文の授業が始まる。M氷君は(ry
     最近A本君がなんか違う人のような気がする。
     U澤君のアナコンダが暴れ出した。
     偏差値の低い事するな。ていうかアナコンダもってくるな。
     常識なんてフォーゲットエブリシングか。
     スタンガンダンスさせるぞ。
2:30、数学の授業が始まる。Y吹君、四則計算間違ってる。
     よくみりゃ女性用のシャツ着てんじゃん。コンマのふり方も違うよ。
3:40、放課後。噂によるとまたA君とKユ君が退学になるらしい。
     教室の隅にK治君がいる。〜陰の薄さにドッキリ〜
     S井君がK保君にいやいやつきあわされている。
     Kユ君が先生達に話しかけても無視されている。
     Nルト君の影分身が補習に出ている。
4:00、帰り道テニス部と野球部の寿司屋にあう。
     たまたま部活が休みらしい。お前ら普段いつ家の手伝いしてんの?
5:00、帰宅。
6:10、宗教の勧誘がくる。アバル信徒ですから、といって断った。
6:20、おつかいを頼まれ近所のスーパーにでかける。
     D元君がうちの裏で倒れている。ママー!うちの裏でD元がー!
7:10、夕食。
11:00就寝。
316僕電波ですか?:05/02/12 14:51:39 ID:rvm6G4O40
わかりにくいネタの解説をしておきます。
Nナ…今週号のムヒョとロージーの魔法律相談所参照。
T樫…本当に夜道で変態だと思われ、大声を出されたことがある。
イケメン…ゲドーのこと L…デスノートのL M氷…ムヒョ
O田…誰がなんと言おうとこの漫画は傑作だ。
   と巻末コメントで言ったことがある
E前…越前 Y神…夜神 A…東

ところで意味わかります?わかりません?
わからなかったら殴ってください。
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/mona/1073502477/l50
317作者の都合により名無しです:05/02/12 19:18:11 ID:ab8vIavyO
なんだかなあ。
余りにマニアック過ぎて何も反応できない。
煽りでなく、他の類似スレに書き込んだ方が良い反応くれると思うよ。
(そういうスレがあるのかどうか知らないが)
318作者の都合により名無しです:05/02/12 19:36:31 ID:agN1yzRRO
他にスレがないからここにしたんです。ジャンプ総合スレの方がいいですかね。
マニアック…orz
そうだよどうせ俺はオタクだよ。
319ふら〜り:05/02/12 20:00:31 ID:n0NSkt1o0
>>五さん
さすがに全員を一気には把握しきれませんが、全員、描写に手を抜いてないのは凄いです。
展開も、いきなりの勇次郎敗北などナカナカ意表突かれましたし。はたしてこれから先、
私はこのオリキャラ群の誰を好きになるのか? が楽しみです。五さん、お気張りやす。

>>青ぴーさん
視点切り替えが自然で、作品の情報がスムーズに流れ込んでくる感じです。あと、前にも
言いましたが、メイのガラ評が女の子らしいというか、元気に可愛くて良いです。話は
いよいよ本題、って流れですが、メイとガラの掛け合いをもっともっと見たいですね。

>>草薙さん
・オーガのリング
予想に反して、ディオがなかなか善戦してますな。あの勇次郎が波紋まで使えてるのに。
とはいえ、やはり旗色は悪い。ここからタルカスたちを呼んでも、どこまで戦えるか?
・輪廻転生
登場人物全員、プラス地の文にまでも情け容赦なく、ボコボコに言われていると思ったら、
渋くキメてくれましたねぇ。らしくない程に。ギャラリーの、特にブルマの反応や如何に。

>>サマサさん
勇次郎の、勇次郎らしい、小細工ではない強さがよく出てますね。とにかくこちらの攻撃
は通じず、勇次郎からの攻撃は単純なものでも致命傷を喰らってしまう。戯言知らない人、
な私は、「人類最強」な、しかも女性を、勇次郎がどう叩き潰すのかを楽しみにしてます。

>>うみにんさん
言われてみれば確かに。のび太たちは歴戦の勇士、でも乱太郎たちは……と。本来なら、
のび太たちの方こそ普通の小学生なんですけどねえ。で、その「普通の小学生」の前に
立つ、最強の敵。ハンデはなし、敵意と殺意は満タン、技量もハンパじゃない。どうする?
320ふら〜り:05/02/12 20:02:07 ID:n0NSkt1o0
>>介錯人さん
セラスに浴びせかけられた罵声が笑えました。地下闘技場の観客の中にも、結構こういう
人種は多いのかも、と思ったり。刃牙とセラスの戦いも読み応えありましたが、エピローグ
部分の余韻、原作のいい部分が出てると思います。この調子で次もぜひ、期待してますっ。

>>サナダムシさん
国王、やってることが初代ピッコロそのもの。考えてみたらカリンの方は毒の作用による
ものですけど、国王は今の状態が地な訳で。こいつを国王にしたのは問題あるぞ、有権者
諸君。さて次回、原作の獣人キャラたちが集合し……ってそんな数いないか。どうなる?
321作者の都合により名無しです:05/02/12 20:10:12 ID:N3KLetIJ0
>>318
ジャンプ総合スレの方がいいのかどうかも分かりません。
まだネタのストックがあるなら、独自でスレ立てした方がいいかも?
322ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/12 20:24:15 ID:yYzJi6IQ0
>>253-260続き
あのフレイザードの頑強な装甲。兵団を盾にされたとはいえ、自分には貫けなかった。
それをあんなにも鮮やかに。あっさりと。完膚なきまでに破壊する男、ギラーミン。
幼いころ、漠然と思い描き、恐れてきた幻影が、今、ピタリと、目の前の漆黒の男に
重なって見える。幻影の名は―――――――“死神”――――――――!

勝ち目はない。足がすくみ、まともに動ける状態ではない。
その時―――――ふいに、のび太の視界に傷ついた一人の少女の姿が目に入った。
傷つき、ボロボロにすすけた体を床にこすりつけ、ピクリとも動かない少女、リルル。

リルル――― 強くて、気高くて、ちょっぴり世間知らずな女の子。思いがけない再会を
果たした今度の戦いでは、リルルの勇気と優しさに何度も助けられてきた。

わずかに視線をずらせば、そこにはやはりズタボロになって倒れ伏すジャイアンの姿が
あった。いつも、のび太をいじめるガキ大将。理不尽な乱暴ぶりに何度も泣かされたっけ。
だけど、あいつの男気と勇敢さは、いざという時には、いつもみんなを引っ張ってくれた。
ひょっとしたら僕は、憧れてたのかもしれないな。あんな風になりたい・・・って。

ドラえもん、いつもいつも口うるさいやつだけど、一番身近にいて、一番大切な友達。
また、家に帰れたら、いっしょに遊んで、いっしょにドラ焼きを食べて、ときには
ケンカもしたりするかもしれないけど、ずっといっしょにいれたらいいな。

きり丸。会ったばかりだけど、なんだか憎めないやつ。忍者のたまごっていうんだから、
僕なんかよりずっと大変な世界で生きてきてるんだろうな。そんな風には見えないけど。

そして―――しずかちゃん。いつも誰にでも優しい、でものび太にとっては特別な存在。
しずちゃんに出会えたことは、僕にとって一番の幸福だったのかもしれない。

今はこの場にいないけど――――――スネオ、出木杉、優しいママ、パパ、学校の先生、
ドラミちゃん―――みんな僕なんかより勇気があって、強くて、賢くて――――――――

そう。みんな大切な――――――大切な――――――――
それは、ほんの一瞬にすぎなかったのだろう。しかし想いは巡る。涌きあがる力と共に。
今、戦える者は、のび太一人しかいない。弱音は吐けない。あきらめは許されない。
みんなを守りたい・・。守りぬきたい。ふいにのび太の震えが止まった。

のび太は、静かに手袋を脱ぎ捨てた。獲物はショックガン。
この軽さならば、素手でも同様に使いこなせる。ならば―――――
――――ならば、わずかの触感が勝敗を分ける刹那の瞬間を――――――!

凛として見据える。倒すべき敵。宿敵。ギラーミンを!
その決意を秘めた瞳に、ギラーミンもまた歓喜のうずきを抑えきれずにいた。
のび太のオーラの変化に大きく笑みを浮かべ――――――――

―――――歓喜の絶頂。そしてその“うずき”は極限の集中へと変わる。
その狂気の瞳には、もはやのび太以外のものは何一つ写っていない。
お互いの瞳がお互いを永遠に写し合い、瞳の中に両者は幾人生まれたのであろうか。
勝負の瞬間まで。凍りついたように動かない空間。永遠とも思える静寂。

大気のわずかな揺らぎ、立ち昇る見えない業火。その全てが知っていた。
決着は一瞬でつくということを。

そして静かに、静かに決着はついた――――――――!
―――――その瞬間。
のび太の気力、集中力はかつてないほどに研ぎ澄まされていた。張り詰めた
1本の鋼の糸のごとく。触れれば斬れるほどに研磨されたナイフのごとく。
決してギラーミンの迫力に気圧されることなく。

しかし、のび太はその時の中を動けない。いや、動くことさえできなかった。
ギラーミンのスピード、そして精神は、極限に達したのび太のそれをも大きく
凌駕していたのだ。あるいは、その瞬間、神をも超えていたのかもしれない。

のび太が決して動くことのできない時間の中を――――――――――
―――――――ギラーミンの右手がホルスターにかかる――――――――――抜く。

静寂は決して壊れない。時は動き出さない。そして永遠の沈黙は続く・・・
ただし、それは・・・ギラーミンだけの時間。ギラーミンだけに許された静寂。
ギラーミンだけが手に入れた永遠―――――――――――

ニヤリ・・・!
銃をおろし、壮絶な笑みを浮かべながら、ギラーミンは最後の言葉を紡いだ。
「ノビ太・・・。今度は・・・オレの勝ち・・・だ・・・な・・・・!」

のび太の体がゆっくりと沈んだ。その瞳孔は恐怖に見開かれたまま凍りつき、
その場に両膝を落とす。力なく両腕を、そして頭を垂れ、のび太の“時”は
完全に静止した。
静かに――――静かに崩れ落ちてゆく――――――
最後に一言、一言だけを発して――――――
鈍く重い音を響かせて――――――
――――――“死神”ギラーミンは――――その場に――――――力尽きた。

大量の冷や汗とともにのび太の時が動き出す。無意識にその場から
身を起こそうとするが、再び足が震えその場にへたり込む。顔面は蒼白なままだ。
全く動けなかった・・・。あの一瞬・・・確実に死を覚悟した・・・。
なのに、なぜ・・・?

ふと、なにかに導かれるようにのび太の視線がある一点を向いた。
倒れた仲間たちのいる方向――――その場所に――――――――――――!

「・・・リ、リルル!?」

そう。両手でショックガンを構え、発砲した姿勢そのままに固まっている少女。
――――――以前、のび太に教わった理想の射撃フォームそのままに―――――――!

決闘の刹那の瞬間、二人の集中が極限に高まったその時を狙って――――――
リルルの一撃がギラーミンを襲ったのだ!
「わたしはロボットだから・・・あのくらいのショックでは気絶までには
至らなかったの。・・・ごめんね。決闘の邪魔しちゃって。」
リルルがペロリと舌を出す。
しかし、そのいたづらっぽい表情とはうらはらに撃たれた影響はやはりあったのか、
それとも極限の緊張からなのか立っているのもやっとの様子である。

「なにを言うんだ。ありがとう。助かったよ!リルル!」

気絶していた皆がようやく目を覚ます。のび太を取り囲み一時の歓喜。そして、
希望。勇気。自信。それらに満ちた笑顔で意気揚揚と次の扉を開き飛び出していく。

のび太は一人その場に足を止め――――――
静かに倒れ伏したままのギラーミンを見やり、ポソリと呟いた。
「・・・ごめんね。もう・・・いくよ。」
はっきりと、言葉には出さない。しかし、想いはその場に残る。

――――――ギラーミン。強敵だった。とてもじゃないけど僕一人でかなうような
相手じゃなかった。キミは・・・間違いなく宇宙一のガンマンだったよ―――――――
328作者の都合により名無しです:05/02/12 20:37:10 ID:agN1yzRRO
>>321
リンクするくらいならいいでしょう。あそこ雑談スレですし。
スレはできなくもないですが人が集まってくれないとすぐに落ちるでしょう。やめておきます。
329ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/12 20:52:16 ID:yYzJi6IQ0
今回分終了です。

ギラーミンとのび太。ついに決着してしまいました。このギラーミンというキャラ、
思った以上に好きだという方がおられたようで、結末に納得いかない方も多いかと
思いますが、僕自身は、決闘ではギラーミンはのび太に勝利した、と思っています。
といって、のび太にとってもこれはもちろん勝利です。そう思って頂ければ幸いです。

実はこの戦い、のび太とリルルのバカップル書いてるころに同時進行で7割方くらい
書き上げていたものです。流れの大筋はそのころのまんまです。ようやくのお披露目。
このまま「のび太たちの戦いはまだまだこれからだ!」とか「プリンセス・キスギー」
といった感じで終わりたい気分ですが、そうもいかないのでもうちょっと頑張ります。
が、疲れたので少し休憩を・・・少し間が開くと思います。申し訳ありません。

というか、ラスボス戦前にもう回想モード使っちゃった
330作者の都合により名無しです:05/02/12 21:52:30 ID:Ak9YbUuh0
乙!ついに決着ですね!
>結末に納得いかない方も多いかと思いますが、
いやいやいや、ギラーミンかっこよかったですよ。
一瞬ギラーミンが勝ったのかと思ったし。
さすがにバッドエンドは無理でしたかw
だけどギラーミンは最後までかっこよかったので
大 満 足 です!

>>328
SSスレでやりたいなら他の職人さんのうP中や作品投下直後は
余計なレスはなるべく控えた方がいいよ。失礼にあたる。
331作者の都合により名無しです:05/02/12 22:21:39 ID:0ok4SG7q0
>うみにん
久しぶりに見てみたけど、相変わらずあの人の影響受けっぱなんだな。
臨機応変というべきか、狡いというべきか。ま、がんばれや。
332作者の都合により名無しです:05/02/12 22:30:50 ID:bt5CI3t80
ギラーミンが去ったか。
いよいよラスボス戦・エンディングへ一直線ですな・・。
寂しい。
333五 ◆89aIROQ50M :05/02/12 23:39:59 ID:ENpdC+DuO
就寝前の4UPします。

試験二週間前の為、少しペースを落とす事にしました。

>>309さん、心配を実現させないように気を付けます。

>>310さん、勇次郎補正って奴です(笑)。

>>311さん、ご心配頂き有難うございます。投稿頻度を減らす事にしました。

ふら〜りさん、大先輩にコメントを頂けるとは…。
ややビビり気味です。

うみにんさん、ドラえもんはあまりわかりませんが、緊迫感・緊張感がリアルに伝わる戦闘描写で手に汗をかいて携帯落しかけました。見習いたいです。
334バキ外伝デス・ゲーム第十九話 :05/02/12 23:42:41 ID:ENpdC+DuO
翌日の夜……バキは公園で恋人の梢とデートを満喫していた。(…そろそろ梢ちゃんの門限ってトコだなぁ。)
呑気な事を考えながら、広い国立公園の並木道を出口へ向かい歩いていた。

バキ達から40m程離れた、別の道をバキ達と平行に歩く男…。スーツを着こなした、顔面に大きな刀傷を付けた巨漢。
日本一の喧嘩師・花山 薫だ。
10秒程歩いた所で、花山の目の前で、突如巨大な影が右の植え込みから飛び出し、反対の植え込みへ消えた。

胸騒ぎを感じ、植え込みをかき分けて影を追う。
先ほどまで、バキ達が歩いていた道に出た。

周囲へ視線を泳がせ、先ほどの影を探す。…居た。バキ達の約6m後方、ボロボロのジャージに身を包んだ禿頭の巨人。死刑囚・スペックだ。

ゆっくりと、確実にバキ達との距離を詰めるスペック。その後を追って花山が猛然と歩を進める。

スペックがバキ達まで後2mに迫り、その顔面が醜悪な笑みへ変貌した。
(サァ、ボーイヨ。ワタシヲタノシマセテクレ。)
突如、巨人の顔面に口を塞ぐようにして、巨大な手が覆い被さった。
顔面にめり込む程の握力が、ガッチリと捕らえて離さない。
そのまま引きずられるようにして、手の主・花山にスペックは連れ去られ、公園の闇へ消えていった。

先程、花山が出てきた植え込みの辺りまで来ると、花山がやっと手を放す。
「プハァッ!…ハッ…ハッ…アンタダッタカイ。ナルホド、アンタデモイイカナ。コウイウヤリ方…嫌イジャ…」

(洗礼ヲクライナ、ボウヤ。)会話の主導権を握り、突然に不意打ちの上段蹴りを繰り出……そうとしたスペック。

「あんたの尾行の相手、俺じゃなかったのかな?」

その背後の闇から浮き上がる様に、白い特攻服にパンチパーマの巨漢、千春を破壊した男・唐沢 争銘が現れた。
「そうだ…だが、コイツを放ってはおけなくなった。」花山がスペックを見やる。
「ハハハハ!イイネ、両手ニ花ッテ奴ダナ。」
335第十九話・続き :05/02/12 23:55:13 ID:ENpdC+DuO
「ジャパニーズマフィア、その禿は俺が予約済みだ。」

声の方向へ花山が振り向くと、街灯の脇に、黒いスーツに身を包み金髪を逆立てた欧米人が立っていた。
男が三人に近づくと、異様な足の太さがズボンの上からでも見て取れた。「オマエ…アノ時ノボウヤカ。」

男、ウィリアムが楽しそうに「17年振り…かな?まさか出てきたとはな。」と返す。何かしらの因縁が有るらしい。

争銘が苛立たしげに「どうすんだ?タッグマッチでもやんのかよ?」若干の沈黙。突然、スペックが「ソウダ!コレデ決メヨウゼ!」と言った。
目を閉じてポケットから何かを取り出し、三人に見せる。…缶コーヒー大の円筒形の物体。三人が目をこらして注目する。

次の瞬間、強烈な閃光が三人の目を貫いた。
閃光手榴弾。警視庁の留置場を拠点にするスペックが、勝手に持ち出してきたものだ。
体を丸めた争銘と、直立したまま動かない花山とウィリアム。完全に視力を失っている。

電撃的な速さでスペックが動いた。争銘の顔面に強烈な前蹴りを叩き込む。
鼻骨を潰され、前歯三本をへし折られた争銘が仰向けに倒れこんだ。
それと同時にポケットに両手を突っ込み、何かを取り出した。
張り手のような形でその何かを花山とウィリアムの口内に叩き込む。
更にスペックは、棒立ちの二人の下顎目掛け、両手でアッパーを同時に見舞った。

公園に、日常生活とは余りにかけ離れた、轟音が響き渡った。

………スペックは混乱していた。今の奇襲でニ人は確実に仕留めた。
残った特攻服の男にも大ダメージ必至のタイミングで蹴りを入れた。…筈なのに。
立っている、三人とも。花山は頬肉が吹き飛び、口内が露わになった凄惨な顔でこちらを見据える。
ウィリアムは「俺も昔、よくやったもんだよ。」と喋りながら笑う。
その足元には、アッパーを食らう瞬間に吐き出した弾丸が転がっている。
争銘は鼻と口から血を溢れさせ、悪鬼のような顔でスペックを睨みつけている。
『ヒイッ……ッ』かすれるような声を上げ(本心から怯えていたわけでは無い、演技だ)、スペックが争銘に右のテレフォンパンチを放つ。

次の瞬間、顔面に花山の右拳。
水月へ争銘の左ストレート。腹へウィリアムの右ミドルが叩き込まれ、スペックは植え込みの遥か奥へと吹っ飛ばされた。
336第二十話:05/02/13 00:06:43 ID:c6NqCKqhO
植え込みの奥から、凄まじい重量物の落下音が響いた。
ウィリアムが、音を頼りにスペックの落下地点へ、植え込みを掻き分け消えていく。

…向かい合う花山と争銘。どちらもまだ、完全に視力は回復していない。粗いモザイクが掛かったようにしか、相手が見えていなかった。

「千春をやったのは…てめえなんだな?」煙を吐き出しながら、花山の声が響く。
鼻血を袖で拭きながら争銘が答えた。「ああ……話にもならなかったぜ?どうしてあんな雑魚が、あんな凄ぇ場所…」
争銘の侮辱を断ち切る様に、花山の大振りの右パンチが顔面にめり込んだ。
拳を顔の肉に埋めたまま、腕を振り抜く。大量の血と歯を撒き散らしながら、紙人形の様に争銘が吹っ飛んだ。

無言で歩みより、髪を掴んで倒れた争銘を引きずり起こす。
(…な、なんだ!?首から上が…もげちまったみたいだ…!)

その困惑をよそに、左のボディアッパーが突き刺さる。
「ガッ…オェェ!!」血と吐寫物を撒き散らしながら、苦しむ争銘。
その頭を、低空を這うような右アッパーが跳ね上げた。
強制的に噛み合わされた歯が、衝撃に耐えきれずに次々と砕ける。
余りの威力に、争銘の体が真上にふわりと40cm程浮き上がる。
すぐに足が地に着き、踏み堪える争銘の顔面を右フックが襲った。左の奥歯を砕かれ、真横を向いたまま争銘が膝を着く。

胸ぐらを掴み、争銘を持ち上げる様に立たせる。ここでやっと花山が口を開いた。「まだやるかい。」
失った歯の隙間から空気を漏らしながら、力なく悪態をつく。「…触んじゃねぇ……糞ヤクザが…。」
ダメ押しの右が、潰れた鼻骨を顔面に埋没させ、顎を外す。4m程ゴロゴロと転がってうつ伏せに倒れ込み…、ピクリともしなくなった。

花山がその場から動かずに、繰り返す。「まだやるかい。」
その言葉が引き金になったのだろうか。争銘の中で、『何か』が起動した。
「…ほれはらはほんはんは。ふほやふは(これからが本番だ。糞ヤクザ)」その言葉と共に争銘がフラフラと立ち上がり、歩き出す。
射程圏に侵入した争銘に、驚異的な破壊力を持った拳が襲い掛かった。大量の鼻血が飛び散り、仰向けに倒れかかる。

その血の主は、花山だった。
337第二十話続き:05/02/13 00:14:17 ID:c6NqCKqhO
「え?なんで総長の事なんか聞きたがるんスか?……まぁいいや、天下の徳川グループの頼みだ。
あの人ね、見た目通り力は強いんですよ、それもかなり。でも総長の強さの秘密はそれだけじゃあない。
たまにね、良い勝負をする奴が出てくるんス。途中までは総長、ボコボコにやられるんですよ。
でも、いきなり相手のパンチとかが全っ然、当たらなくなるんです。
本人が言うには「『スイッチ』みてぇのが入る感覚がする」って。そうなると、「全てが物凄いスローに見える」らしいんですよ。
だから、格闘技をやった事ないのに、『相手の攻撃を全部かわしてカウンターを入れる』
なんて事が出来るらしいんですけど………ありえないっスよね、普通。人間か?って話っスよ。
まぁ…実際に何度も見てるんスけど。あっ、どこ行くんスか?おーい!」

一方的、余りに一方的すぎる闘いだった。花山が拳を振るう、カウンターが入る。その繰り返し。

花山の拳のスピードが落ち、威力が落ち、とうとう手が出なくなった。例の封殺だ。関節部や支点を打ち、相手の全ての攻撃を封じる絶技。
争銘の繰り出す打撃音のみが、夜の公園に木霊する。
…五分は経っただろうか?……遂に花山が、崩れ落ちた。

「ふははれ、ふほやほう。(くたばれ、糞野郎。)」顔面を破壊され尽くした争銘が、花山の頭を踏み潰さんと、右足を振り上げる。
その時だ。スローで映像が流れ続ける争銘の脳に、猛烈な激痛が走った。
倒れた花山が、自分の左足を両手で挟み込むように握っている。
ゆっくりと左足のふくらはぎの辺りが膨らみ始め……破裂した。

「ひびっ、はひゃあああぁぁ!!」その外見には、凡そ似つかわしく無い悲鳴を上げて争銘が倒れ込む。花山の超握力が成せる技…握撃だ。

争銘の右足を捕まえて、破裂させる。出鱈目に花山を殴りつける争銘。
もはやカウンターを狙う余裕も無い。それにも構わず左腕を捕らえて、握撃。
鬼の形相で、殴られたまま右腕を捕らえて…握撃。
最早、抵抗する術を失った争銘を立ち上がり、見下ろす花山。
「…まだ……やるかい?」「…ふへろ。ふほやふは。(失せろ。糞ヤクザ。)」
「良い…根性だ…」巨大な拳が、争銘の顔面に振り下ろされる。肉が潰れ、血が飛び散る音。

決着を告げる音だった。
338五 ◆89aIROQ50M :05/02/13 00:19:04 ID:c6NqCKqhO
UP終了しました。改行減らしに時間が掛かりすぎ…。orz
次回からは、貼る前に原稿から改行を減らしておきます。

おやすみなさい。
339バレ ◆sssssssDAo :05/02/13 00:42:31 ID:4yJTFDQ80
>五様
連日の投稿、乙を通り越して嬉しいの一言です。
オリキャラ達、全員キャラ立ってますね。争銘のクソ生意気な性格は結構好きです。
次回はウィリアムvsスペックですか。その尋常ではない太さの足から、どんな技が出るのか
楽しみです。(あと、2人の因縁とかも)

あと事後連絡ですが、五様のSSをサイトへ保管した際、第1〜16話までをプロローグとして
まとめて保管という形を取らせて頂きました。
(1話辺りの字数が少ないことと、1〜16話でプロローグとしての一つの話であると判断した為)
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/5/01.htm
五様の方で要望がある場合は対応致しますのでご連絡ください。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/movie/3830/
(↑サイトBBS携帯用)
340作者の都合により名無しです:05/02/13 00:42:51 ID:PHvARCeN0
がんばれ。一回ごとに良くなってるぞ。
でも受験はしっかりパスして落とすなよ。
341犬と猫:05/02/13 00:49:17 ID:5veuY/QN0
逃避
 
 放送効果は絶大であった。世界各地で獣人や野獣らが呼応した。元々人間に比べ、彼らは
高い凶暴性と闘争本能を秘めている。テレビの中で仲間であり頂点でもある国王に、あれ程
の熱弁をされては体を動かさないわけにはいかなかった。
 また、成功した社会生活を営んでいた獣人らにも影響は及んでいく。ピッコロ大魔王の脅
威から解放されたばかりの国民に降り注ぐ、新たな災厄。しかも、元凶は獣人たる国王であ
る。人と獣との関係に小さな溝や、あるいは大きな亀裂が生まれるのは当然のことだった。
 人類に敵意を持つ者、ただ単に暴れたい者、王命だからと従う者、環境や信念は十人十色
だが、目的地は共通している。キングキャッスル。
 犬と猫は、莫大な兵力を手にしつつあった。
 そして、キングキャッスル城下町でも悲劇は起こる──王立防衛軍、全滅。

 放映後、防衛軍は即座にテレビ局を包囲していた。司令部が、国王は何者かに脅されてい
ると判断したためである。しかし、予想に反して国王は局内から無事に現れた。
「おお、ご無事でしたか! ところで、さっきの演説は一体……?」
「今日までご苦労だった。私を守るため、今まで尽くしてくれた君たちに礼がしたい」
「礼……ですか?」
「うむ、もう私は守られる必要がない。それを他ならぬ君たちで証明したいのだ」
 ──国王が消えた。
 大地を駆けるような怪音が響き、次々に兵士が殺されていく。首が飛び、顔が弾け、胴が
切り裂かれ、心臓を抉り取られる。
 いかなる作戦や兵器とて、姿が見えぬ敵には意味を成さない。防衛軍はわずか十五分足ら
ずで壊滅させられた。
342犬と猫:05/02/13 00:50:03 ID:5veuY/QN0
 スタジオでは、カリンとヤジロベーが二人きりとなっていた。
「おい、カリン! あんな狂った野郎と手を組んで、どうするつもりなんだよ! いい加減、
目を覚ませ!」
「なんじゃ、わしらの仲間になるんじゃなかったのか?」
「あんなの嘘に決まってんだろ。今、あの国王は外に出てる。一対一なら……俺が勝つぜ」
 刀を抜き、闘気をあらわにするヤジロベー。だが、カリンから余裕は消えない。
「おぬしがわしに勝つ? 笑わせるわ……超神水でパワーアップを果たしたわしに、おぬし
如きが勝てると思うかッ!」
 激昂したカリンが低姿勢にて、一気に突っ込む。ヤジロベーも絶妙なタイミングで拳を合
わせるが、手応えがない。すり抜けた。
「ざ、残像……!」
「こっちじゃよ!」
 ヤジロベーの後頭部に、カリンの空中蹴りがクリーンヒット。もちろん、これは序の口だ。
洗練された手技足技が入り乱れ、容赦なく打ち込まれる。リーチこそ短いが、一撃一撃に平
均的な武道家を軽々と昏倒させる威力が秘められている。
「フハハハ、ヤジロベー! これが、わしの実力じゃッ!」
 が、連打を受けながらもヤジロベーが反撃する。カリンの水月に、日本刀が深くめり込ん
だ。峰打ちであった。
「ぐはァッ!」
 派手に床を転げるカリン。どうにか起き上がるが、一呼吸とて容易ならない状態だ。
「ぐっ……くくっ! な、何故じゃ!」
「おめぇの攻撃は軽いんだよ。これでも、頑丈さには自信があるからな」
 ずんずんとヤジロベーが近寄る。歩数を合わせるように、カリンが後退する。だが、すぐ
さま壁際に追い詰められた。
「おい、どうすんだよ。まだやんのか、降参すんのか」
「……どちらもお断りじゃよ」
 カリンは口元を吊り上げた。同時に、ヤジロベーに背後から忍び寄る強烈な殺気。
343犬と猫:05/02/13 00:52:15 ID:5veuY/QN0
 ──髪の毛が舞った。
 国王が放った飛び蹴りが、ヤジロベーの髪を刈り取ったのだ。
「ちいィッ!」
 間合いを外し、刀を構えるヤジロベー。対して、国王は怒気に満ちた表情で仁王立ちして
いる。
「やはり、殺しておくべきだったか。我が親友に手を出した罪、よもや償い切れるものでは
ない! 行くぞ、カリン!」
「ふむ、そうじゃな。残念じゃよ、ヤジロベー……」
 国王が眼鏡を外し、怒りに任せて握り潰す。それを合図に、ほぼ同時に踏み込む二人。
「くそっ! もうどうなっても知んねぇぞ!」
 ヤジロベーは刀を鞘へと納める。予測しにくく、なおかつ最速を誇る剣技である“居合い”
にて迎え撃つ覚悟だ。
「くくく、甘い……!」
 ヤジロベーの視界に、透明な破片群が流れ込んできた。破片は眼球に突き刺さり、一時的
に視力が封鎖される。
「くわっ!」
 破片の正体は眼鏡。動きを止めてしまったヤジロベーに、二匹の猛獣が飛び掛かる。
 カリンは顔面へ二連蹴りを浴びせ、国王は迷わず金的を蹴り上げる。
「おうっ! ち、ちょっと待っ──!」
 股間を押さえ、脂汗を滴らせるヤジロベー。だが、二人が待つはずもなく──ヤジロベー
は打たれるがままのサンドバッグと化す。
「ひいィィィィッ! こ、殺されてたまっかよ!」
 ついにヤジロベーが、背を丸めたままスタジオから逃げ出した。かなり打ち込まれたはず
なのに、二人が追いつけぬスピードで駆け抜ける。思わず感心する国王。
「まだ、あんな力が残ってたのか……。まぁいい、キングキャッスルに戻ろう」
344犬と猫:05/02/13 00:53:04 ID:5veuY/QN0
 再びキングキャッスル──中庭にはすでに、城下町に住む獣人たちが集まっていた。
 リーダー格であろうライオンの獣人が、国王に一礼する。
「来てくれたか、君たちは正しい選択をした」
「えぇ、俺たちはずっと待ってました。憎き人間を打ち倒す日を……!」
「しかし、よく妨害に遭わなかったな」
「城下町はもはや殆どゴーストタウンですよ。人間どもはさっさと逃げ出してます」
 確かに、スタジオからキャッスルへ戻る途上、人の気配がまるでなかった。自動車やスカ
イカーなどで、早々に町から脱出してしまったのだろう。
「ところで、武器などは準備してあると聞きましたが?」
「うむ、そうだった」
 周りを見渡すと、国王はとある場所を掘り始めた。一メートルほど掘ると、そこにはスイ
ッチがひっそりと隠されていた。
「よし、まだあったか」
 スイッチを押す──と、スイッチ部分がスライドし、地下への小さな通路が現れた。
「これが、私の秘密基地だ。まずは、私とカリンで入る」
 
 通路を下ると、巨大な武器庫が一面に広がっていた。刀剣から重火器まで、古今東西のあ
らゆる武具が揃っている。膨大な時間を掛けて収集された、野望の結晶。
「国王になってから、狂ったように地下室を造り上げ、狂ったように武器を集め続けた。誰
にも見つからぬように、誰にも悟られぬように……」
「す、すごいのう……。じゃが、これだけあればピッコロにも勝てぬまでも、それなりに戦
えたのでは……?」
 ピッコロ襲来時の不甲斐なさを、カリンが問いただす。
「いや、ピッコロと出会った時、私に衝撃が走った。あの圧倒的存在感、圧倒的戦力……!
野望を実行する気力も失われていた私は、こいつが世界を滅ぼしてくれるならそれで良いと
思いさえした。もし君が来なければ、ここは永遠に封印されたままだったろう」
「そうか……」
 二人は見つめ合い、どちらともなく笑い合った。
 世界中に宣言し、軍隊をも全滅させた以上、もはや後には退けない。強い決心と、哀しみ
が含蓄されたやり取りであった。
345サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/13 01:00:21 ID:5veuY/QN0
>>301より。
国王が暴走してます。色んな意味で。
爆力魔波で消し飛ばずに済んだ地下室。実にツイてる。
次回へ続く。
346作者の都合により名無しです:05/02/13 01:01:47 ID:PHvARCeN0
むう、革命家にして狂信者の犬とそれを支える猫。
なんかドラゴンボールというよりハンターみたいな展開ですな。
こいつら2匹の通った後にはぺんぺん草も生えなさそうだ。
347作者の都合により名無しです:05/02/13 01:44:32 ID:GtCMXWXU0
>うみにんさん
GJ!漫画やアニメでは出せないような活字独特の緊迫感がありました。
ドラえもんでここまで熱い戦いができるなんてギラーミンとのび太だけですよ。
でも今回自分が一番感心したのはこれ。
>――――――以前、のび太に教わった理想の射撃フォームそのままに―――――――!
くぅ〜!このタイミングでそこまで戻りますかwちょっと震えた。お見事です。
読み続けてよかったと思った瞬間でした。バカップル強しw
これじゃギラーミンが負けてもしょうがないですね。

>五さん
こちらも熱い。花山はスカッとさせてくれるいい男だ。
勇次郎始めやられた連中の復讐劇に期待。千春の再登場もあるかな?
それからいろいろ言われてるけど、二次創作なんだから
オリキャラ贔屓でもなんでも好きなように書くのが一番だと思う。

>サナダムシさん
ヤジロベーがちょっとかっこいい。
カリンと国王じゃピッコロの後の敵としては弱すぎると思ってたら
ピッコロ以上の脅威になったようですね。だとすればヤジロベーだけじゃ
心もとないからこの後やっぱり悟空たちも絡んでくるのかな。
ヤジロベーに主役になって欲しいなあ。
348作者の都合により名無しです:05/02/13 02:03:37 ID:FwVN05wV0
乙ー
最近うみにん氏とサナダムシ氏いつもいっしょに現れるね。
五氏も毎日更新お疲れ様。がんばれ
349作者の都合により名無しです:05/02/13 02:48:38 ID:k76vOyrN0
ピッコロ戦後・(おそらく)マジュニア戦前って事は
原作では悟空は神殿で監禁修行中。
クリ・ヤム・天・チャオは
修行のためカリン塔に向かってる頃か。
350帰って来たドラえもん外伝:05/02/13 10:50:57 ID:x7W/j3sN0
ジャイアンに勝利した直後、のび太は暫く空を見上げていた。自分は勝ったのだ。最初で
最後かも知れない。だけど今は勝利の美酒に酔いしれよう。友が何の心残りもなく
去る事が出来るのだ。
「くくく・・・・お涙頂戴のシーンらしいが・・・俺様には美味そうな餌が二匹・・。」
「え!?」
振り向くのび太。そして彼は体から冷や汗が流れるのを感じていた。圧倒的な恐怖。
先程の戦闘とは比べ物にならない程の緊張感。その原因は範馬勇次郎という男。
「パーマンとやら!隠れているな!出て来い!」
「パーマンって?誰?」のび太がドラに訪ねる。
ドラは答えない。
突如、カミナリさんの家の屋根に黒い影が現れた。月を背に立つシルエットは後ろ光を放っているように見えた。
「バレていたのか。」影の主は言った。
ふわっと空を舞い空き地に降り立つ主。赤いマントが翻り体を隠す。
「バレていたのか・・。音を立てずに近づいたつもりだったんだがね。」パーマンが言う。
「俺は一度出会った相手の気配を忘れはしない。お前の匂いがプンプンしたんでな。」勇次郎が言う。
両者の間に静寂が生まれた。互いに相手を睨み付ける。
「だっ!」
パーマンが突っかけ踏み込みハイを放つ。そしてそれをまともに受ける勇次郎。
「馬鹿なっ!」ドラが叫ぶ。
パーマンメットは被った者の力を666倍に引き出す道具である。攻撃をまともに食らえば間違いなく死ぬ。
「え・・・。」パーマンは呻いた。
勇次郎の体が空中で縦にグルグルと回転している。そして脚から着地する勇次郎。
351帰って来たドラえもん外伝:05/02/13 10:52:38 ID:x7W/j3sN0
「そんなものか?お前の力は。」勇次郎がせせら笑いながら言う。
「おぉぉぉ!」
叫びながらパンチを放つパーマン。顔が汗ばんでおり全力である事は明白である。
「勇次郎さん!危ない!」ドラが目を覆いながら叫ぶ。
パーマンの脳の中に倒れこむ勇次郎の姿が浮かんだ。このパンチを食らって立っている人間など
いるはずがない。この勝負、自分の勝ちだ。
突如、勇次郎の姿がパーマンの目の前から消えた。忽然とである。
「遅すぎるぜ。ウドンデを使わせて貰った。」
パーマンの後ろ側から声が聞こえた。後ろを振り向く前にパーマンは頭に衝撃を覚えた。
パーマンメットを来ているからダメージはさほどない。だが心配が一つだけあった。
パーマンメットの耐久度はどれくらいかはわからない。頑丈である事は知っている。
だがこの男なら壊しかねない。
「正中線を一切ずらさずに動く。それがウドンデ。相手は無謀な攻撃をするしかなくカウンターに負ける。」
得意そうに話す勇次郎。そして歯軋りをしながらそれを聞くパーマン。
「これならどうだぁ!」
俊足で踏み込むパーマン。そしてワンツーからの右ハイ。それはコンマ一秒もかからぬ程の神速。
352帰って来たドラえもん外伝:05/02/13 10:53:28 ID:x7W/j3sN0
「ぐばぁっ・・・。」
パーマンは頭に三回衝撃を覚えた。コンマ一秒にも満たない世界でのカウンター。それをこの男はやってのけた。
「パワーでダメならスピードか。こっちもそうさせてもらった。鞭打でな。所詮は女・子供の護身程度にしかならんが。」
「お前を元の世界に帰さなくてはならない!」
「ふん。次でフィニッシュだぜ!」
勇次郎の筋肉が膨れ上がり服が破ける。そして現れたモノ-ーーーーそれは”鬼の貌”と呼ぶのにふさわしいモノであった。
パーマンは自分の喉がゴクリと音を立てるのを聞いていた。全てのモノがスローに見える世界で唯一の例外が
目の前にいる男、範馬勇次郎であろう。パーマンメットが砕ければ自分はただの人間。だがカウンターを狙えば
勝てる。唯一の策がそれだ。賭けるしかない。
353帰って来たドラえもん外伝:05/02/13 10:55:24 ID:x7W/j3sN0
今回の投稿はこれで終わりです。

今回自分で書いててやはりパーマンメットを被る事によりパワーアップの方が
自然だなぁと思いました。次回、映画版のび太を描きたいと思います。
354作者の都合により名無しです:05/02/13 12:58:03 ID:4KChAh7L0
映画版のび太といえば男気の塊だからな。がんがれ
355殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/13 19:56:01 ID:DILWUqFS0
>247より

深夜の京都タワー・展望室。
本来なら誰もいないはずのその時間、その場所で、一組の男女が向かい合っていた。
一人は<地上最強の生物>範馬勇次郎。そしてもう一人は、<赤い>としか言い様のない女だった。
真紅のスーツ、真紅の髪、真紅の唇。芸術品の如く整った美貌は、恐ろしいまでの目付きの悪さと、
全身から発する威圧感を差し引いてさえその輝きを損ねることはなかった。
「てめえが<死色の真紅>―――哀川潤だな?」
問い掛ける勇次郎の背中には、既に<鬼の貌>が浮かんでいた。<彼女>を相手に、力の温存など在り得ない。
最初から全力でかからねば、敗北は必至―――
勇次郎をしてそう予感―――いや、確信させるほどの圧倒感が、彼女にはあった。
そして彼女は勇次郎の問いに対し、肯定のかわりに皮肉げな笑みを浮かべる。
「そういうてめえは<オーガ>―――範馬勇次郎、か」
<真紅>は勇次郎の威圧感をまるで意に介さずに、一歩進む。二人の間の距離が、少し縮まった。
勇次郎は近づく彼女を前に、身震いする。恐怖ではない。それは、歓喜だ。
生まれて初めて出会う、自分と同等、あるいはそれ以上の力量を持った敵―――それを前に、勇次郎は
未だかつてない昂ぶりを覚えた。
彼女が、語りかける。
「あたしと殺りあうために、随分大暴れしてくれたみてーじゃねーか。つうかそもそも、何で京都に現れて、
いーたんにちょっかいかけようなんて思いやがったんだ?」
「零崎人識って野郎にアメリカで会ってな。そいつが<京都にいる欠陥製品に手を出せば、真紅が現れる>みてえな
ことを言いやがったのさ」
はっ、と<真紅>は呆れたように笑う。
「人識くん、ねえ・・・。あいつ、そんなこと言いやがったのか。本当、クソガキだぜ」
「ああ、あの欠陥製品と合わせて、どっちもクソガキだ。だが俺は、奴らに感謝している。奴らのおかげで、今こうして―――<死色>と向かい合っている」
「はん。感謝、ねえ・・・。存分感謝しな。あの世で、な」
挑発的な<真紅>に、勇次郎は一歩近づく。距離が縮まるごとに、昂ぶりが強くなっていく。
356殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/13 19:56:46 ID:DILWUqFS0
勇次郎は、確信していた。この女を倒した時、その時こそ、自分は真の最強となる、と。
二人は無言で歩を進め―――互いに手の届く位置にまで近づいた。
「俺は―――てめえを殺すために、生まれたのかもしれん」
「そうかい―――だったらもう、問答無用だ。殺して解して並べて揃えて晒せるもんなら、
殺して解して並べて揃えて晒してみろよ」
言い終わる前に、勇次郎の一撃が<真紅>の腹を抉る。確かな手応えに勇次郎は会心の笑みを浮かべ―――
次の瞬間、大砲の玉のように吹き飛ばされた。
勇次郎は空中で体勢を整えて着地し、<真紅>を睨みつける。
「は―――さすがに最強のあたしを差し置いて<地上最強の生物>なんて名乗るだけはあんな。大したパンチだよ。
威力も速度も、な。だが―――あたしを倒すにゃあ、ちいっと足りねえな」
<真紅>は微笑し、勇次郎を見据える。勇次郎は顔を歪め―――
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
力の限り、叫ぶ。
憤怒、屈辱、戦慄、そして―――
最強の敵に会えた、悦びを込めて。
長い永い叫びが終わり―――勇次郎は<真紅>目掛けて弾丸の如き速度で突進する。
<真紅>は勇次郎を真っ向から打ち倒すべく、待ち受ける。

―――この二人の闘いにおいて、どのような攻防がなされたのか、知るものはいない。
ただ翌朝になって、瓦礫と化した京都タワーが残されていただけだった。
357殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/13 19:57:30 ID:DILWUqFS0
<真紅>と勇次郎が激突したちょうどその時、アメリカ・アリゾナ州の刑務所前に、一組の男女がいた。
男の方は麦藁帽子に袖無しのシャツ、よれよれのズボンにボロボロのサンダル、首にはタオルと、まるで田舎の
海岸で焼きそばでも売っていそうな風貌の青年だった。
しかしながら、その手にしている異様な物体―――釘も本体も全て鉛で作られた特注釘バット―――が、その
朴訥なイメージを掻き消している。
彼の名は零崎軋識(きししき)―――彼の持つ釘バットは<愚神礼賛(シームレスバイアス)>と呼ばれ、また
彼自身もその名で呼ばれる。
「まったく人識の奴、ロクな事をしないっちゃ。よりによって範馬勇次郎とやり合うたあ、何を考えてるのか、
理解に苦しむっちゃよ。なあ、お前もそう思わないっちゃか?」
どこかのアニメヒロインのような口調(キャラ作り)で傍らの女に話を振った。
軋識に話し掛けられた女―――というよりも少女は、にっこりと笑う。
彼女の名は、零崎舞織(まいおり)。
セーラー服にニット帽、両の手には手首から先を隠すような手袋を嵌めている。軋識に比べれば随分文化的な服装
だったが、その手に握られているものは負けず劣らず馬鹿馬鹿しい。
それは、大鋏だった。まるでどこぞのホラーゲームの怪人が持っていそうな巨大な鋏を、彼女は大事そうに
持っていた。
その鋏の名は<自殺志願(マインドレンデル)>―――彼女の、そして人識の<兄>もまた―――生前は、
その名で呼ばれていた。
「うふふ・・・まあ、文句を言いつつも助けにいくところが素敵じゃないですか。家族なんですから、ちょっとの
不始末は笑って許してあげましょうよ―――それに」
舞織の笑みが、不意に変質する。年頃の少女らしい笑みから、禍々しい<殺人鬼>の笑みに。
「どこにいたって、やることは一緒―――ですよ、軋識さん」
「まあ―――その通りだっちゃ」
軋識は同意し、呟く。
「それじゃあ―――零崎を始めるちゃ」
358殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/13 19:58:16 ID:DILWUqFS0
そのころ人識は独房に寝転んで、汚い天井を眺めていた。
未だに顔面は包帯だらけだし、両腕には重いギプスが嵌められていて、指くらいしか動かない。腹だって、
つい先日まで内臓破裂によって深刻な状態だった。冗談抜きで生死の境を彷徨ったと言っていい。
「死んでもいい・・・って思った割にゃあ、俺もいい加減しぶといよなあ・・・」
かはは、と人識は笑う。
冷たい独房に入れられたことは、特に堪えていないらしい。
遠くの方で何やら悲鳴が上がっているのにも気付いていたが、特に気にしない。
―――しばらくして、人識の独房の前に一組の男女が現れた。その二人の手にした凶器は、
べっとりと血と肉に濡れている。
おそらくは看守、警備員、そしてそこにいただけの囚人たちを容赦なく殺戮したのだろう。
そして男は看守から手に入れたのであろう鍵で人識のいる独房の扉を開ける。
人識は起き上がり、悠々と扉を通って脱獄した。
「よお―――シームレスバイアスの大将に、おねえちゃんか。久しぶりだなあ」
「・・・他に何か言うべきことはないっちゃか?」
「ちょっと老けた?」
「・・・もういい。お前と話してると疲れるっちゃ。ほれ、これでも着るっちゃ」
軋識ははあーっと溜息をつき、人識の私服を渡す。刑務所を家捜しした時に見つけておいたものだ。
「お、サンキュ。・・・よし、ちゃんとナイフも揃ってるな」
舞織はくすくすと笑う。
「相変わらずですね、人識くん。元気そうで何よりです」
「この格好を見て元気だなんて、そりゃあ皮肉かい?」
かはは、と人識は笑うだけだ。そう―――彼はいつでも笑っている。
「まあとにかく助けにきてやったんだから、精々感謝するっちゃ。あとは脱出するだけ―――」
「ソレはいけないナ」
突如響いた声に、三人は振り返る。そこには筋骨隆々とした黒人男性―――ビスケット・オリバが立っていた。
359殺人鬼とオーガの鬼事:05/02/13 19:58:59 ID:DILWUqFS0
「悪いガ、脱獄ハ認めていなイ。すぐに牢に戻ってもらウ―――今度は、三人一緒にネ」
オリバは余裕で語る。殺人鬼三人を前にして、まるで萎縮した様子がない。
「ふん―――あんたがこのムショの主・・・<地上最自由>ビスケット・オリバっちゃね」
「そういうキミはそのバットから見て―――シームレスバイアス、カ。こりゃあ骨が折れそうだゼ」
くっくっとオリバは笑う。そんなオリバを見て、舞織が言う。
「軋識さん、人識くん―――あの人は、人識くんの<敵>ですよね?」
彼女は―――<自殺志願>を構える。
「だったら―――わたしの敵ですね」
「そういうことっちゃ」
軋識も<愚神礼賛>を構える。
「かはは・・・これもまた、傑作だなあ」
人識はタクティカルベストからナイフを取り出す。
「サア―――来ナ、殺人鬼ドモ」
オリバは三人に宣告する。そして―――舞織の言葉を最後に、この物語は閉じられる。

「零崎を―――開始します」
360サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/13 20:08:00 ID:DILWUqFS0
投下完了。

戯言知らない人は勇次郎が<彼女>に押され気味なのが気に入らないかも・・・。
けれど<彼女>は戯言シリーズにおいては男塾における塾長、福本作品におけるアカギ、そしてバキにおける
勇次郎的な存在なので、このような書き方になりました。
作中描写だけなら、勇次郎を超えているのではないかとも思っています
(電車を素手で止める、ショットガンの零距離射撃を腹筋で受け止める、人が死ぬほどの電流を受けて
平然としている、とにかく訳の分からん速度で動く、など)。

それはそうと今回の話だけでは訳が分からない部分が多いと思いますが、実は
<京都編>とでもいうべき短編をしばらくしたら書くつもりです。
そこで京都で何があったのか、<彼女>との決着は、などを書くつもりです。
それでは。
361作者の都合により名無しです:05/02/13 20:12:01 ID:4yJTFDQ80
完結乙!
原作知らないけれど、台詞の一つ一つに重みがある感じですねえ。
哀川潤は知りませんが、サマサさんの話を聞く分には完全に
人外キャラだったんですね。
ともかくお疲れ様でした。
次はギャグ日和ですね!
362作者の都合により名無しです:05/02/13 21:18:21 ID:OAFqNEqh0
サマサ氏、完結おめ!
勇次郎は、例の新宿・戸山住宅ばりに怪物しか住んで無いアパートに襲撃でもかけたんだろうか
いーちゃんの事だからきっとさぞかしヒドイメに合っちゃったんだろうなあw
363蟲師 流れ続く:05/02/13 23:09:09 ID:NGih43hD0

 川縁を辿って歩いていたら、男と会った。

「あんた蟲師か」
「そうだ」
 白髪の男と、いかにも旅人、という体をした男。
 二人は川原に座り、休憩がてら話し込んでいる。
「しかしお前さん、何だってこんなへんぴな所歩いてるんだ。普通旅人なら、この上の整った道を行くもんだが。
何か、探し物でもしてんのか」
 白髪が、そう旅人に尋ねる。
「ああ……この川の水の匂いがさ、俺の村と同じなんだ――まあ、これ人に言うと、笑われるんだがよ」
「川の……匂い?」
 白髪の眉がぴくりと動く。
「そう。ほら、見えるかな……川のそこら辺り、色がそこだけ違わないか? 他の部分は、普通の水と同じように
透明なのに、そこだけ色が違っている……赤く濁ってたり、緑色だったり、まちまちだけど」
 白髪は、旅人の指差した辺りに視線を向ける。
 成る程、確かに、あの辺だけ色が違う。あれは、あの類は――
「――あんた、あれが見えるってことは妖質が強い性質なんだな」
「妖質?」
「妖質とは、生物なら誰もが生まれながらに持っているモノ。しかし、大抵の場合それは微細で、普通にしていれば
一生気付くことのないモノかもしれない。何らかのきっかけにより、突然強くなったり弱くなったりもする。これが強い
と……まあ、色々あるんだが、たとえば蟲≠ェ見えたりするな」
「蟲……?」
「この世とあの世の中間、とも言うべき存在だ。あるんだか、ないのだか。それすらもおぼろなモノ――だが、確かに
存在はしている。お前さんが今見ていたモノがそれだ」
364蟲師 流れ続く:05/02/13 23:10:15 ID:NGih43hD0

 白髪がそこまで言って、暫しの静寂が場を支配する。音の発生源といえば、流れる川くらいのもの。
「……ふうん……あれが、蟲なのか。知らなかったな。思い返せば、俺には確かに見えるのに、周りの人間は誰も見
えてない、なんてことが何度かあったもんだが……へえ、あれが」
「おいおい。そんな体験してたのに、自分が見てたモンが蟲だって気付かなかったのか」
「仕方ないだろ……俺には縁がないものだって、どっかで思い込んでたんだからさ」
 そう言って、旅人はねっ転がる。
「あの蟲は環蟲≠チてんだ。川で自らを形成し、流れに乗って、そして海に出る。そこからは自分から動き始める。
川に戻り、生まれた場所に戻ろうとするんだ。ちょうど、魚の鮭のようにな」
 白髪は、続ける。
「奴らは匂いを出す。生まれた川の匂いだ。この蟲は、お前の村の近辺で生まれ出たモノだろうな」
「やたらと懐かしい匂いがしたんだ……自然と、足が吸い寄せられてしまった。理屈じゃない」
 旅人は、そう言った。

「お前よ……これ、追い続けるんだろ。俺も同行していいか?」
 止まっていた蟲が動き出し、旅人も再び歩き出す。白髪が背後から、そう話しかけた。
「そりゃ構わないが、大丈夫なのか? 蟲師の仕事に障りはないのか」
「別に。蟲師ってのは、その気になりゃ延々と暇こいてても問題ないモンだからな」
「なんだそりゃ。いい加減なもんだな」
「逆にいやあ、その気にならないと延々と暇のとれない仕事、と言えないこともない、か?」
「誰に尋ねてんだ」
 白髪と――ギンコと旅人の小旅行が始まる。

365蟲師 流れ続く:05/02/13 23:11:16 ID:NGih43hD0
息抜きに軽い内容のものを書こうと思ったんです。でも、それが一番難しい……なんでか悩みました。
これは次回完結です。『小旅行』ですので。


>>174
ハッピーはハッピーですが、どこか納まり悪い感じしますね。

>>178
作者の精神状態とか趣味嗜好は作品にダイレクトに反映されるものみたいです。個人差はあるでしょうが。
女の好みとかね。

>>188
時間過ぎるの早いっす……無駄に過ぎているんじゃないと思いたいもんですが。


なんか、台詞が多いな……まあ、次回。
366作者の都合により名無しです:05/02/13 23:33:55 ID:VLyOdU0m0
ザクマダー?
367作者の都合により名無しです:05/02/13 23:47:35 ID:eEW7HQo10
サマサ氏完結乙&お疲れ様。
また楽しいお話を連載してくださる事を期待しております。

ゲロ氏、新シリーズですか。
なぞの老人はこれからレギュラー化するのかな?
次回完結ですか。まだ序章って感じですが、完全なるショートですね。
368作者の都合により名無しです:05/02/14 00:59:32 ID:tPTVTB6H0
ゲロ氏おつかれさんです。
蟲師は何回か読んだだけですが、
SSに出てくる環蟲とかはゲロ氏のオリジナルですか?


あと、サマサさん完結おめでとうございます。
原作は知りませんが勇次郎好きなので楽しみました。
369作者の都合により名無しです:05/02/14 01:23:22 ID:lBgjXhZhO
もうだめぽ
370作者の都合により名無しです:05/02/14 01:24:42 ID:lBgjXhZhO
>>369
いや、まだだ!バキスレマンセー!!
371犬と猫:05/02/14 02:03:31 ID:8/jX7Aru0
交錯

 辛くもスタジオから逃げおおせたヤジロベーは、カリン塔を目指し疾走していた。
 カリンは超神水でパワーアップを果たした、と言っていた。結果的にはヤジロベーに及ば
なかったが、超神水を飲んだことだけは確かなようだ。ならば、あの豹変も納得がいく。強
さと引き換えに、心を病んでしまったとしか考えられない。
「カリン塔行けば、何か分かるかもしれねぇ」
 聖地カリンまで、果たして何キロあるのだろうか。友を救うため、真実を知るため、ヤジ
ロベーはひたすら大地を走り続ける。
372犬と猫:05/02/14 02:05:52 ID:8/jX7Aru0
 一方、天界・神の神殿──カリン塔ですら及ばぬ、遥か天空に浮かぶ神聖なる住処。
 神は危惧していた。自らが信頼して武神に任命し、地上界でもっとも神に近い存在であっ
たカリンの暴走。もし彼と旧友である国王との野望が成就すれば、ピッコロ大魔王の二代目
が成長するのを待つまでもなく、地上の秩序は崩壊する。世界的な大戦争が巻き起こるのは
間違いないだろう。
「まさか、カリンが……。こんなことになるとは……」
 地上のことに、神が直接手を下すことは許されない。修行中の悟空を送り出せば解決は簡
単だが、彼にそんな時間を与える余裕はない。来たるピッコロとの決戦まで、あと二年半し
かないのだ。
 頭を抱えて悩める神に、側近であるミスター・ポポが近づく。
「孫悟空はどうじゃ……?」
「疲れ果てて寝てます。神様、カリンの件ですか?」
「うむ、久々に下界を見たら、すでに手遅れじゃった。だからと言って、わしやお前が出る
わけにもいくまい」
「はい、それはいけません。歴代の神様、ずっと守ってきました」
「ふむ……」
 神は英断を迫られる。王をも超える権力者として、平和を導く者として。
「……やはり、地上のことは地上の者に委ねるしかあるまいか」
 見守る者としての解決策──神は見出していた。
373犬と猫:05/02/14 02:07:41 ID:8/jX7Aru0
 全国に放たれた狂気の放映から半日、とっくに日は没したというのに続々と獣人らが集結
する。すでに数は一万を超えていた。
 キングキャッスル最上階から、国王が嬉しそうに眺める。
「城下町から人が消えたのは好都合だったな。食料は当分大丈夫だろう。あとは、奪いなが
ら進軍すれば良い」
「しかし、少しくらいは攻めてくる人間もあるかと思ったがのう」
「私は政策として、王立防衛軍以外の軍隊を許していない。東西南北の都にいるのは、それ
ぞれの地域を守るので精一杯の無能な警察組織だけだ。攻めてくるはずもなかろう」
「それも狙いか?」
「まぁな。レッドリボンが健在だった頃なら、奴らが一番の脅威になったろうが、幸い何者
かに滅ぼされている。ありがたいことだ」
 勇者たる国王を称える地上からの歓声を肴に、犬と猫はワインを酌み交わす。

 翌朝になっても、状況は変わらなかった。キャッスル周辺を埋め尽くすほどの同志たち。
 数が増すたび、国王が的確な指示を送る。獣人らを市内に区分けし、地下武器庫や防衛軍
本部から武器を一つずつ授ける。
 いきなり素人に武器など手渡していいのか、という意見も出た。だが、武器は敵を打ち倒
すだけでなく、使命感と連帯感を植えつけるのに効果的であった。事実、「一週間も待てな
い」と息巻く過激派たちは、武器を与えられると途端に大人しくなった。革命軍の一員とし
ての自覚が芽生えたためだろう。
374犬と猫:05/02/14 02:09:12 ID:8/jX7Aru0
 決行日に備え、キャッスル内で進む作戦会議。円卓に座るのは国王とカリン、優秀と認め
られた獣人が数名である。
 しかし、軍勢が現在進行形の志望制である以上、細かい作戦は意味を成さない。この会議
での主題は、どのような進軍コースを取るかであった。東西南北をまとめて叩くか、あるい
は各個撃破に出るか。
 会議は長引いた。が、他の都には警察以外に戦える組織が存在しない、また人間にむやみ
に時間を与えると対策を立てられる恐れがある、などの理由により同時侵攻案が採決された。
次々に参加者が席を立つ中、国王がカリンに依頼をする。
「カリン、君は武神として多くの武道家と接してきたのだろう?」
「少なくとも、おぬしよりはな」
「培われた君の眼力を見込んで、志願者から強そうな者を何人か連れてきてくれないか」
「……どうする気じゃ?」
「武道家というものは侮れない。ピッコロ大魔王を倒した少年しかり、下手すると警察より
も脅威になる連中かもしれん──」
 ピッコロ大魔王と孫悟空の決闘を、少しだけではあるが観戦した国王は思い知った。常識
を超える力を手に入れた、武術家というものの恐ろしさを。手は打っておかねばならない。
「──だからこそ、我々も常識外れの“怪物”を使役せねばならない。頼む」
「分かった、任せてくれ」
 武神カリンは猛者を求め、今や獣人が支配する城下町へと消えていった。
375サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/14 02:14:06 ID:8/jX7Aru0
>>344より。
ヤジロベーは活躍します。
オイシイところ持ってくのが、こいつの役目ですから。
この物語でもオイシイかは定かではありませんが……。
376作者の都合により名無しです:05/02/14 11:13:36 ID:u++Fz6Ja0
>ゲロさん
今回はライトなお話ですね。前回が少し重いお話だったので、
全体の構成的にうまいと思います。白髪は重要キャラかな?

>サナダムシさん
猫まっしぐらですね。悟空はこの話に出そうにないか。残念。
でも、なにやら新たな武道家が出そうですな。ヤジロベー?
377作者の都合により名無しです:05/02/14 11:22:11 ID:lBgjXhZhO
サナダムシさん、ゲロさんはよく更新してくれて嬉しいなあ。
でもみゅうさん、田辺さん、誇り高き希望さんはどうしたんだろう。
あとスチールさんもご無沙汰だなあ。
378ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 11:44:50 ID:M9J+5JFd0
ごきげんよう、皆様。>>42からの続きです。



隣を走っていたジュネの足が唐突に止まり、斗貴子は振り返った。
「どうした?」
「沙織お嬢様の小宇宙が急に大きくなった。…なにか、あったようだ」
表情を硬くしたジュネが小さく答える。
コスモ、という単語の意味がわからなかったが、ジュネの表情が驚くほど真剣だったので斗貴子は黙って彼女を見守る。
斗貴子は今、ジュネと共に学園内を走っている最中だった。
逃げたホムンクルスがまだ学園内にいるとは思えなかったが、念のために見回っているのだ。
…きっと、彼女の戦闘能力は自分よりも上だろう。それは認めざるをえない。
だが…ホムンクルスは錬金術以外の力では倒せない。
ダメージを与えることは出来るが、致命傷はどんな力を持ってしても与えることは出来ない。
錬金術には錬金術でしか対抗できないのだ。
なのでこの上級生には先に薔薇の館まで戻るように進言したのだが。
『あんた一人だと死んじゃいそうだ』
という不愉快な理由で却下されてしまった。
反論できない自分が悔しい。……先程の戦いで、不覚にも助けられたのは事実だ。
そういえば助けてもらった礼をまだ言っていかった、と思い至る。
(……信奉者かとも思ったが…私に危害を加える様子はないし…)
信奉者とはホムンクルスに忠誠を誓い、財力や知力や人材などを提供する人間のことだ。
城戸沙織と、彼女を護衛するジュネをそうではないかと疑っていたのだが…。
この分だと、それはどうやら杞憂に終わりそうだ。
彼女達が信奉者だったらとっくに自分は殺されている。
そんなチャンスは何度もあったのだから。
だが…信奉者でないとすると様々な疑問が残る。
…一体、彼女は何者なのだろう。
人間離れした運動能力といい、先程斗貴子を助けた鞭といい、普通の人間ではないことは明白だ。
城戸沙織の護衛ということだったが、本当にそれだけなのだろか。
大体、城戸沙織自体もまだまだ胡散臭い。
379ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 11:46:02 ID:M9J+5JFd0
「…沙織お嬢様が薔薇の館から離れている。…こちらだ」
険しい表情でそう言い捨てたジュネが、突然走り出した。
一瞬迷い、斗貴子もその後を追う。
(なぜ、彼女は城戸沙織の居場所がわかるのだろう)
また一つ疑問が生まれる。
(なっ…?!)
考え事をしながらも、目を離したつもりはなかった。
なのにジュネの姿が見えない。――――見失った?まさか…。すぐ前にいたはずなのに?
(…彼女も城戸沙織と同じような力を持っているのか…?)
土曜日に体験した衝撃的な力の存在を思い出す。
困惑して足を止めた斗貴子は、しかしまたすぐに走り出した。
遙か前方に、日に反射する金色の髪が見えたのだ。
…やっぱり、彼女は普通の人間じゃない。……速すぎる。
花壇を曲がり、校門へと続く小径に出る。
――――校門の手前には、三人の生徒がいる。
立っているのが一人。座り込んでいるのが二人。
いや。…座り込んでいる二人の間にもう一人、倒れている人間がいる。全員で四人だ。
距離を縮めるにつれ、その光景がはっきりしてくる。
駆け寄ったジュネが、座り込んでいる二人をかばうように立ちはだかる。
座り込んでいるのは…城戸沙織と……紅薔薇さま?なぜここに?。
仰向けに横たえられている人物には見覚えがない。
制服を着ていないし、少なくとも女子高生ではないだろう。
そしてもう一人。
夕日を背に、立っている少女は。
二つに結った亜麻色の髪。
すでに散った二体のホムンクルスと……同じ…顔…?!
それを確認した瞬間、斗貴子の脚は勢いよく地面を蹴っていた。
制服を突き破ったバルキリースカートが、四本の刃を閃かせる。
(――――今度こそ…逃しはしない!!)
380ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 11:47:57 ID:M9J+5JFd0
斗貴子の殺気を一心に受け、少女は薄く微笑んだ。
「今はあなたの相手をする気分じゃありませんの」
四方向からの鎌を綺麗に避けて見せた少女は、斗貴子の後ろへと視線を向ける。
「ごきげんよう、紅薔薇さま。またお会いしましょう」
さらに斗貴子が繰り出した二撃目もかわされる。
(コイツ…強い…!!)
多分、先程の二体よりも高い戦闘能力を持っている。なのに体の変化がないということは。……まさか。
「貴様…人型か…!」
動植物の細胞を基盤として造られるホムンクルスには、寄生した人間の精神は残らない。
だが人間の細胞を基盤として造られたホムンクルスは…寄生した人間の精神を残したまま超人的な力を持つことになる。
それを人型ホムンクルスと呼ぶ。地上で最も、不老不死に近い存在だ。
だが、その不老不死は何人もの人間の命を喰うことによって成される。
斗貴子の言葉に、少女は微笑みだけを返した。
そして踵を返し校外へと走り出る。
「逃がすか!」
「待ちな!」
追おうとする斗貴子の前に、ジュネが飛び出す。
「どけっ!」
アレを殺さなくては…また、人が殺される…!
少女への殺気をそのままジュネへ向ける。
だが斗貴子の迫力に怯むことなく、ジュネは彼女を怒鳴りつけた。
「頭を冷やせ、バカ!その格好のまま外に出る気か?!錬金術の存在を大勢に知られても良いのか?!」
「……っ」
一気に捲したてられ、斗貴子は足を止めた。
「…機会はまたある。アイツが人を喰う気ならとっくにそうしているだろう。そうしなかったのにはきっと、何か理由があるはずだ。
…武装練金を解除しな。状況を整理して体勢を立て直した方が良い」
落ち着いたジュネの声に、斗貴子の頭が急激に冷えていく。
錬金術の存在は隠さなくてはいけない。
知られれば、それだけ多くの人を戦いに巻き込むことになる。
(チャンスはまだある…)
一度ギュッと目を閉じ、小さく息を吐き出す。
握りしめた拳を解き、斗貴子は大人しく武装練金を解除し核鉄に戻した。
381ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 11:48:38 ID:M9J+5JFd0
その斗貴子の様子を見て少し微笑んだジュネは、城戸沙織の前に跪いた。
「お怪我はありませんか?沙織お嬢様。…紅薔薇さまも」
「ええ。大丈夫です。……紅薔薇さま」
横たえられている人物の胸上に掌をかざしていた城戸沙織が、紅薔薇さまに視線を向けた。
「この方の傷は塞ぎました。もう大丈夫です」
城戸沙織の言葉に、呆然と俯いていた紅薔薇さまが顔を上げる。
「…本当に…?」
少し掠れていたその声があまりにも儚げで、斗貴子の胸にも痛みが走る。
(巻き込んでしまった…)
逃げたあの少女はホムンクルスだ。
それを目撃した紅薔薇さまと城戸沙織は、間違いなくホムンクルスの食事の対象になるはずだ。
こうなる前に、全てのカタを付けたかったのに…。
「…よかった…聖様…」
横たえられている人物の無事を確認したのだろう。
その人の手を握りながら、紅薔薇さまがぽろぽろと涙をこぼしていた。
「何が起きたのか…話していただけますか…?」
遠慮がちに声をかけた斗貴子へ、紅薔薇さまが視線を向ける。
涙が溢れるその瞳に、また、斗貴子の胸が痛んだ。
382ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 11:49:33 ID:M9J+5JFd0
今回はここまでです。
連続投稿規制があるので続きは今夜にでも。

それでは、ごきげんよう。
383作者の都合により名無しです:05/02/14 12:50:09 ID:u++Fz6Ja0
ごきげんよう、ミドリ様。
前回からの急展開、やはり紅薔薇様が悲しんでいますね。
ハードな展開に拍車が掛かりそうな今晩の更新を期待して待ってます。
384作者の都合により名無しです:05/02/14 12:56:46 ID:lBgjXhZhO
ミドリさん






























385作者の都合により名無しです:05/02/14 15:20:08 ID:tPTVTB6H0
サナダムシさん
国王ヤバいことになってますねw神様えらい無責任だな。
暴走を止めるのはやはり勇者ヤジロベーか。

ミドリさん
さすがアテナは偉大ですね。敵のホムンクルスがいよいよ
動き始めましたか。夜の更新も期待してます。
386作者の都合により名無しです:05/02/14 15:41:02 ID:aX2UHWXc0
そこは−否−
その星は全てが闇に覆われ・・・天空には稲妻が走り・・・海は枯れ・・・罅割れた大地は赤銅色のマグマに侵されていた。
そして今にも崩壊せんとするその世界に存在するはただ二人、
全ての生命の存在が許されない、その死の星から・・・神をも超越する存在から唯一例外が認められた。
たった二人の超戦士のみである。
「この時を待っていた、貴様と思う存分戦えるこの時をな・・・」
「サイヤ人の猿が、どうあってもこのフリーザと決着をつけたいらしいな」
雷鳴が轟く中互いの全てを否定するべく極限を超えた二人の戦いは遂に最終局面へと−・・・・ピ!!

−プツン−

「あーーー!何すんだよ梢江ちゃんッ!!今最高にいいトコだったのにさ〜」
それまで十数分間無言で魅入られるようにしてそれを見つめていた青年はまるで何かの呪いが解けたかの様に喚き散らした。
右手にはあらかじめ炭酸が抜いてあるのか全く気泡が見当たらないコカコーラのペットボトルを握り締めている。
「何すんだよ・・・じゃないわよ!!最高にいいトコってもう何回もみてるでしょ?おんなじアニメばっかり毎朝毎朝・・・」
梢江と呼ばれた青年と同年代であろう彼女が高校の制服に身を包みながら叱りつける様に負けじと青年に言い返した。
右手には事の発端であろうTVのリモコンを青年に向け振りかざしている。



美しい朝靄の光が漂う中チュンチュンと小鳥の泣き声が囀る・・・と同時に二人の男女の怒声も囀るここは松本家。
中国某所で行われた大擂台賽なる100年に一度の武道大会も無事終了し日本に帰国した後。
範馬刃牙は恋人でありかつ下宿先の娘である松本梢江の家に頻繁にお邪魔する様になっていた。
「別にいいじゃないかッッッ!!それに梢江ちゃんが怒る事でもないだろ!?」
たかがアニメの鑑賞を邪魔されただけで珍しく憤慨する刃牙、
梢江にとってはいい歳した自分の彼氏が朝っぱらからアニメを見るためだけに(ついでに飯もたかりに)自宅の居間を占領し大音量でドラゴンボールなぞ視聴しているのだから十分怒る理由にはなっているだろう。
しかしながら範馬刃牙らしからぬ似つかわしくない光景である。
387386:05/02/14 15:45:50 ID:aX2UHWXc0
ああーーーーー!!
すみません上げてしまいましたTT

バキSSサイトからリンクを辿った初投稿だったんですが・・・ショッパナからやってしまいました。申し訳ないです。
上げといてなんですがお目汚ししないよう頑張りましたのでよければ見てやって下さい。
388Z戦士への入門:05/02/14 15:55:55 ID:aX2UHWXc0
386です。本当は↑の反応を見てから続きを投下する予定だったんですがちょっとでもsageなきゃいかんと思いましたので・・・
不躾ながらタイトルもつけさせて頂きました。それではどうぞ。


なにせこの範馬刃牙という男実践的な格闘技にまつわる事以外ほとんど興味が無い−否−無かった筈だしそれ以外に能も無い男である。
少なくとも彼を知る者は皆口を揃えてそう言うだろう、まぁ彼を知る者といってもほとんどがそんな連中ばっかりなのだが・・・
事実彼が持っている家電製品も実生活に最低限必要なものしか揃っていない目に付くのは炊飯ジャーくらいなものである。
株価情報にも世界情勢にもことさら興味が無いバキにとってテレビなど無用の長物だったし娯楽一辺倒であるビデオDVDはもちろんスーパーファミコンもやった事が無けりゃプレステ2なぞもはや異次元の存在である、そもそもテレビがないと無理だし・・・
とにかく炊飯ジャー以外に他に買い揃える必要も無ければ買い揃える金も無い現代人して何か間違った範馬刃牙であったが帰国直後は違っていた。
まるで厳守されたスケジュールをこなすかのごとく毎日のように松本家に来訪し居間のテレビを使いドラゴンボールに集中する刃牙。
これには彼の最も身近にいる存在、松本梢江もさすがに困惑した・・・・・が
「全く・・・これも大事な早朝トレーニングのひとつだってのにさ」
そう刃牙とて世界的に大ヒットを起こしたドラゴンボールZを単なる娯楽として見ていたワケでは無かったのだ何故なら−
「ねえバキ君・・・言わなくてもいずれ分かってくれる事だろうと思って今まであえて言わなかったけど」
ブツブツふてくされながら再びTVの電源を入れ直す刃牙の様子を見て梢江は諭す様に口を挟んだ。
「・・・・・なんだよ?改まって」
画面に映し出されるドラゴンボールに全意識を集中したいバキは
「言わなくていい事なら一生言うな」
・・・と本当は言いたかったのだが後が怖いのでやめといた。下宿先の大家さんには逆らえない。
「バキ君と一緒に中国に行ってから色々と信じられないモノを確かに私も見てきたわ。
人の顔がトマトの皮の様に剥かれるだの、黒人ボディビルダーが人間をスクラップにするだの、
毒と毒がぶつかり合ってありえない程スパークしてその毒が裏返ったからついでに治っちゃいましただの、
あ、これはバキ君の事なんだけど」
本人を目の前にして分かりきった事をいちいち説明するなと言いたげな姿勢で聞く刃牙
「他にも100歳を超える筋肉ムキムキのお爺さんがいるだけでもビックリなのにそれを超える140歳の妖怪ジジイだの、
あまつさえその妖怪ジジイがコンクリートの壁を完全粉砕するだの、更にはそれに対抗しようとした馬鹿が何を思ったか拳で地面にクレーター作るだの、あ、これはバキ君のお父さんの事なんだけど」
だからいちいち説明するなと、お前親父がここにいたらぶっ殺されっぞ!
神出鬼没の勇次郎に聞き耳立てられてたら正直たまらんので
「・・・・要するに何が言いたいんだよ?」
表情こそ表に出さなかったものの刃牙は内心慌てふためいて会話の修正を試みた。この女は調子付かせるとロクな事を喋らない。
そんなバキを見てこずえは軽く溜め息は吐いてから答えた
「でもねバキ君・・・いくらなんでも『カメハメ波』を撃つのは無理だと思うのよ」
389ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 20:56:57 ID:M9J+5JFd0
>>Z戦士への入門様
途中かとも思いましたが、最後の投稿から数時間あいていますので申し訳ありませんが
私の続きを投下させていただきます。
割り込む形になってしまってごめんなさい。


>>381からの続きです。
390虹のかなた:05/02/14 20:58:39 ID:M9J+5JFd0
『何が起きたのか…話していただけますか…?』

そう問われ、ようやく祐巳も現状を把握することに思い至った。
頭の中の時間を巻き戻し、目の前で起こった出来事を整理する。

――――何が、起きたのか。

そう聞かれても、正直なところ…。
「…私にも…なにがなんだか…」
全くわからなかった。

マリア様像の前で聖様と会って。お話をして。
それから…突然女の子が現れて…聖様が倒れられた。
聖様は背中から血を流していて…夢かと思ったのに、その血はすごく温かくて。
どのくらいの時間そうしていたのかはわからないけど、気が付いたら沙織ちゃんがいた。
祐巳の隣に座り込んだ沙織ちゃんが聖様を仰向けに横たえる。
色素の薄い髪に縁取られた聖様のお顔は、真っ白で血の気が全く感じられなかった。
沙織ちゃんが聖様の胸上に掌をかざす。
考える力を失った祐巳は、ただその様子を見ていることしかできなかった。
瞬く間にその場の温度が上がる。
春の柔風の様な空気が、祐巳達を包む。
『…聖様…』
ようやく出せた声に、沙織ちゃんがこちらを向いた。
『死なせはしません。大丈夫です』
そう言う沙織ちゃんはいつもの微笑みを消していたけど、声はとても柔らかくて。
沙織ちゃんがなぜそう言えるのか。
沙織ちゃんは聖様に何をしようとしているのか。
全くわからなかったけど、祐巳は沙織ちゃんの言葉にしがみついた。
そうしないと、どうしていいのかわからなかった。
391虹のかなた:05/02/14 21:00:39 ID:M9J+5JFd0
『…何をなさっていますの?』

はっきりと怒りを含んだ強い言葉が頭上から降った。
先程祐巳に話しかけた少女が、祐巳達を見下ろしている。
『まだ死んでいない様でしたら…とどめをささせてくださらない?』
沙織ちゃんへと強い敵意を向け、その子ははっきりと言う。
先程祐巳に挨拶をしてくれた時とはまるで別人のような、怒りの表情。
一字一句、聞き間違いのないくらいはっきりした口調だったけど、祐巳にはやっぱり…彼女が何を言っているのかわからなかった。
『本当は…こういう風に手出しをするのはやめようと思っていたのですけれど…』
視線を聖様に向けたまま、沙織ちゃんが口を開く。
その子の問いに答えると言うよりも、独り言のような、静かな口調だった。
『人間が蒔いた種は人間で刈る…。それが、一番望ましい形です』
聖様を包んでいた暖かい空気が祐巳を巻き込み、更に熱を増す。
柔風は強風になり、沙織ちゃんの長い髪を巻き上げる。
『けれど…目の前で人が傷つくのを黙ってみていることはどうしてもできないのです…』
顔を上げ、その子に視線を向けた沙織ちゃんはとても悲しそうな表情をしていた。
(――――ああ…)
祐巳には、はっきりとわかった。
この熱も、風も、沙織ちゃんから生まれているのだ。
沙織ちゃんは、何か目に見えない力で聖様を救おうとしている――――。
そう確信し、祐巳は聖様の手を握りしめた。
(聖様…聖様…)
お願い。死なないで。生きていて。また笑って。聖様。聖様。――――死なないで…。
お祈りをするように、聖様の右手を両手に包み込む。
聖様に祐巳の命をわけられるなら、すぐにそうして欲しいと切実に思った。
『できれば、あなたもそうなる前に救って差し上げられればよかったのですけれど…』
少女にそう言いながら、沙織ちゃんが何かの力をさらに強める。
空気が熱い。
木の葉は全く動いていないのに、この場にだけ嵐のような風が吹き荒れる。
392虹のかなた:05/02/14 21:02:18 ID:M9J+5JFd0
『…言っている意味がわかりませんわ』
少女はその熱が苦手なのか、祐巳達から一歩遠のいた。
先程祐巳に見せた、はにかんだ笑顔をすっかり消し去った彼女は眉間に皺を寄せる。
きつく沙織ちゃんを睨む。
『私と紅薔薇さまの仲を邪魔されるようでしたら…沙織さん、あなたも…』
彼女が右腕を持ち上げる。
その瞬間、祐巳の視界は見慣れた深い色に遮られた。
祐巳達を背にかばうように立っていたのは、金色の髪の下級生…ジュネさん、だった。

そして――――。

気が付いたら斗貴子さんもこの場にいて。
聖様の傷がふさがっていて、しっかり呼吸をされているのも確認して。
祐巳が把握している現状なんてこのくらいだ。
両手に包んだ聖様の手を、強く握りしめる。
「よかった…聖様…」
……倒れ伏した聖様を目の前にした時、目の前が真っ暗になった。
本当に、心臓も、時間も、全てが止まってしまったようだった。
――――よかった。
本当に、無事で良かった…。
何が起きたのかは全くわからないけど、聖様が生きているのならそれでいい…。
自分でも気が付かないうちに、祐巳の頬には涙が流れ落ちていた。
「…紅薔薇さま」
沙織ちゃんに呼ばれ、祐巳は視線を向けた。
微笑みを消したままの沙織ちゃんは、今まで見たこともないような真剣な瞳をしていた。
「紅薔薇さまには、二つ、選択肢があります」
静かだけれど反論を許さない口調で、沙織ちゃんが続ける。

「一つは、今起きたことを全て忘れて、今まで通りの日常を過ごされるか――――」
393虹のかなた:05/02/14 21:03:07 ID:M9J+5JFd0
呼吸をすることも許されないような緊迫した空気に包まれる。
ゴクリ、と小さく祐巳の喉が鳴った。

「――――何が起きたのかを知り、私たちと秘密を共有するか、です」

そう告げた沙織ちゃんは、この世の人とは思えないほどの神々しさを纏っていた。
「…秘密?」
その単語に、土曜日に見てしまったあの光景が脳裏に甦る。
沙織ちゃんと、ジュネさんと斗貴子さんが突然消えてしまった、あの光景。
「もし全てを忘れると仰るのでしたら、このようなことを二度と起こさせません。お望みでしたら、記憶を消して差し上げます」
…記憶を消す?
祐巳の記憶を?今目の前で起きたことを?……どうやって?
「もし…知りたいと仰るのでしたら…」
沙織ちゃんは、そこで少し間をおいた。
「黄薔薇さまや白薔薇さま、乃梨子様…もちろん瞳子様にも秘密にしてくださる覚悟があるのでしたら、お教え致しますわ。紅薔薇
さまがお知りになりたいことを全て」

――――秘密。

由乃にも志摩子さんにも乃梨子ちゃんにも……瞳子にも。
少しの間迷い……、祐巳は大きく深呼吸をした。
「……知りたい」
出来る限りしっかりとした声を出す。
「何が起きたのかを知って…もう二度と、起こらないようにしたい」
もう二度と、大切な人が倒れる光景なんて見たくない。
祐巳に何が出来るのかはわからないけど、何もしないでいることはできない。
良いのか悪いのかはわからないけれど…それが、福沢祐巳なのだ。
祐巳の視線を受け止めた沙織ちゃんは、小さくため息をついた後、淡く微笑んだ。
「わかりました…。お話し致しますわ。私とジュネと、斗貴子さんのことを」

祐巳が不思議な新入生達の秘密を知る決意をした、四月のある日。
夕日と、マリア様だけが私達を見ていた。
394ミドリ ◆5k4Bd86fvo :05/02/14 21:07:50 ID:M9J+5JFd0
今回はここまでです。

私のSSには関係ない話になりますが、遅ればせながら「バキ」を読みました。
勇次郎氏は凄いですね。と言いますか、無茶苦茶ですね。
たくさんの作品に登場しているわけがよくわかりました。

それでは、ごきげんよう。
395作者の都合により名無しです:05/02/14 21:10:52 ID:P5sNDEGJ0
GJ!
やはり腐ってもアテナは偉大ですね。
ここで祐巳ちゃんが仲間になったということは、こっからは
他の薔薇さまの登場は減りそうですね。
396作者の都合により名無しです:05/02/14 21:16:25 ID:jY86VDNN0
ミドリさん、GJ!
秘密を共有するか―のくだり、
なんとなくクロスボーンガンダムを思い起こしました
武装錬金サイド、聖闘士星矢サイド、マリみてサイドが手繰り寄せられましたね
事件の顛末がどうなるのか、非常にたのしみです!

Z戦士への入門さん
常識人の範疇にいる梢江ちゃんとなんでも格闘思考のバキのバカップル
実にたのしみです
どう転がるのかはわかりませんが、期待させていただきます
397作者の都合により名無しです:05/02/14 21:19:59 ID:jY86VDNN0
そういえば小宇宙によるヒーリングってアニメだとアイオリアもつかってたような…
生傷の絶えない聖闘士には必須の技能なんでしょうね
それでも瀕死の人間を蘇生させるあたり、女神の底知れなさを感じさせてくれます

連投失敬
398忍者の証:05/02/14 21:26:49 ID:ZcXBNIkA0
第四話 歴史譚・前編 >>234の続き

ケイトと名乗るダークエルフの長の館は清潔だが薄暗く、辛気臭い雰囲気が漂っていた。
オレも夜目が利くが、ダークエルフの暗視能力はケタが違う。
この程度の明度でも、こいつらにとっちゃ昼日中と差して変わらねえのだろう。
一番奥の、普段は呪術か交神術でも行っているだろう部屋に通され、座るのを促された。

魔術のアイテムがゴロゴロと転がってやがる。
蝙蝠や蜥蜴などの皮膜、オークなどの骨、怪しげな液体、不気味に光る宝石類……。
トコトン胡散臭せえが……。まあ、オタオタしても仕方ねえ。
オレはどっかりと拵えの良いソファに体を預け、ケイトの言葉を待った。

「あの慌て者のメイもやるものです。最上の『候補』をここにお連れするとは。
 どうぞ御気を安くして私の話を聞いて下さいまし。ニンジャマスター、ガラ様」
「名を名乗った覚えはねえがな。お嬢ちゃんから聞いたのかい」
「有名ですから、貴方は。魔導王ダーク・シュナイダーの四天王の一角。
 かの魔操兵戦争において、4つの王国の軍勢を相手に常に最前線にいたお方」
「へっへ。そりゃどうも」

オレは一応テレた振りをして笑う。ケイトは相変わらず魅惑の微笑みを浮かべている。
ケイトとオレの間には、銀の燭台が置かれ魔道用の蝋燭に火が灯されている。
煙がふんわりと長く軌跡を描き、幻惑的な雰囲気だ。
どうもいけねえ。この女と逢ってからこっち、ずっとあちらさんのペースだ。

399忍者の証:05/02/14 21:28:03 ID:ZcXBNIkA0
「で、なんのようだい? とっととこの森抜けて家に帰りたいんだよ、オレ」
「ならばなおの事、依頼を引き受けて頂かなければなりませんね。良かった」
「おいおい。オレがンなもん引き受けるギリなんてねえだろよ」
「いえ。この森は抜けられません。今のままでは決して。ここは、牢獄なのです」
「どういう事だい。オレはつまんねー駆け引きは苦手なんだよ」
「フフ。貴方は磊落な方。小手先の駆け引きなど通じないと分かっております。
 ここは先ほども申し上げた通り、牢獄なのです。『死魔の王』……の。
 その者を倒さぬ限り、この広大な森より貴方は抜け出すことは出来ません」

やっべえな。嫌な予感ばかり良く当たりやがる。
どうやらぶっちゃけ、オレにその何とかってのを退治させようってハラらしい。
オレは呆気にとられ思わずエルフの姉ちゃんに噛み付いた。
「ざけんなって。その物騒な名のヤツと、オレがドンパチしないといけねえのか?」

ケイトは相変わらず静かに微笑んでいる。
が、その笑みに僅かに翳りが走ったのを、オレは見逃さなかった。少し大人しくする。
「この出会いを運命と取るか、ただの通りすがりと取るか。私は運命と思います」
「どう考えても通りすがりのニンジャだろうが、オレは」

ケイトはニコニコと笑いながらオレを見詰め返している。オレがごねてるみてーだ。
が、やがて笑みが消え真顔になり、柔らかくも隙の無い口調で語り出した。
400忍者の証:05/02/14 21:28:57 ID:ZcXBNIkA0
「死魔の王…。かつてエルフの中のエルフ、根源種グレイエルフの一人であった男。
 魔道に堕する前は、その名をン=ヴォスと呼ばれていました。
 ン=ヴォスは眠りにつく前、その強大な魔力でこの広大な森に呪いを掛けたのです。
 不帰にして不出の呪いを。この森に一度堕ちた者は、外界に出る事は叶いません。
 ン=ヴォスその者を倒し、呪いを打破せぬ限りは」

くわー、嫌な予感はどんどん増大していきやがる。オレは思いっきり嫌な顔をして尋ねた。
「するってえと何かい、ここは魔術で封印されてる閉ざされた場所かい」
「はい。仰る通りです」
こんな質問にそんなとびきりの笑顔で、何が「はい」だ。
しかしケイトは笑みをすぐ収めると、諦観と苦渋の入り混じった顔でオレに言った。

「少し長いお話になるやも知れません。ですが譚(かた)らせて頂けないでしょうか。
 祝福されしエルフと呪われたダークエルフの、永きに渡る因縁譚を」

オレは頷く。ケイトには有無を言わせぬ迫力があったからだ。そして彼女は譚り始めた。
朗々と、まるで千夜一夜の物語のように、訥々と。
401忍者の証:05/02/14 21:30:56 ID:ZcXBNIkA0
エルフの歴史の断片をかじると、白き驕りと黒き迷いの味が致します。
とある識者はその味を至高の美味と賞賛し、とある賢人はオークすら口を付けぬ
腐り濁った下卑た味と斬って落とします。
歴史というのは確かに起きた真実であり、また事実ではあるのですが、
観察者の目により、語り部の譚りにより、万華鏡のように意味合いを変えて参ります。

私の譚る歴史もまた、ダークエルフから見た独り善がりの世迷言やも知れません。
ですが、やはり歴史は譚り伝えていくものだと思います。
たとえそれが、己の一族の恥辱にまみれた無様な迷走を曝すものであるとしても。

世で『法の最高守護者』と呼ばれし、神に最も近い存在から悲劇は始まります。
その者たち……。『エウロペアの十賢者』は400年前に戯れに思い立ちました。
人類を超えし人類。全てのヒト型の生物の頂点に立つ存在をこの手で生成しようと。

神は泥から人類を創りたもうた。
だが我々は旧世界の魔法を用い、神が創りし人間を超えし存在を創り出して見せよう。
その時、我々は…。エウロペアの十賢者は神と並び、凌駕する存在になるだろう。

彼らは狂いました。己の妄想と自己満足に。
そして彼らには厄介な事に、その妄想を具現化する能力があったのです。
彼らの狂気はやがて世界を闇で包み、旧世界を滅ぼす邪神の創造にまで至ります。
が、今は我々エルフの歴史のお話。邪神の話はいずれの機会に譲りましょう。

十賢者たちは最初のエルフ、グレイエルフの呼ばれる存在を創り出しました。
狂気は現実となり、神以外に赦されるはず無い生命の創造を成し得てしまったのです。
そして旧世界が滅びるまで、彼らは次々と生物を創造して行きました。
竜族、亜人類族、鬼族、妖精族、果ては魔霊の類まで……。
今この世に生きるものの人類以外は全て、彼らによって創り出されたものと聞きます。
そう、貴方たち人間以外の存在は。
402忍者の証:05/02/14 21:32:39 ID:ZcXBNIkA0
十賢者たちは旧世界が滅びた後、自らを改造しました。
至高の人類種である、彼らが創り出したエルフへと姿を変え、不朽の命を得たのです。
そしてしばらく眠りに付きました。旧世界が滅びた責任など、露とも感じる事無く……。


生み出された第一世代のエルフ…。根源種『グレイエルフ』は高い能力を使い、
その豊潤なる魔法能力と知力にて社会を築き上げていきました。
生殖能力は高くは無いエルフですが、その寿命はそれまでの人類と比較になりません。
エルフは誕生以来400年経ちますが、未だ寿命で死んだ者はいないのです!
少しずつ、ですか確実に人口は増え、社会は大きくなり文化は発達して行きました。
そう、飛躍的に発展していきました。……身分制度を生み出してしまうほどに。

十賢者が去りし後、十数年後。
グレイエルフから神聖王家と呼ばれる、エルフの身分社会の頂点の一族が誕生しました。
王家の統制の元、エルフの社会は大きく大きく発展していきました。
その他を圧倒する能力で、200年前には貴方方の領地……。
中央メタリオンにまで一族の支配範囲は広がっていきました。

王家はその頃、4つに分かれていました。分裂ではなく、血統が枝分かれをしたのです。
エルフ族神聖四親皇家は共に協力し、永久に大いなる繁栄に祝福されると思われました。

あの男……。
グレイエルフの異端児、王族の反逆者、一族至上最強の魔導士、暗黒に魅入られし者…。
クルスデルト・アルスメータ・ン=ヴォスが内戦を起こすまでは。
403青ぴー:05/02/14 21:37:50 ID:ZcXBNIkA0
ミドリさんお疲れさまっす。
ミドリさんの直後は一番プレッシャーがかかるなw

メイとかン=ヴォスとかはオリジナルキャラですが、
(話の設定上、どうしてもオリキャラになってしまう)
エルフの歴史とかは原作に沿ってます。

しかしSSは改行規制・投稿規制との戦いですな…。
404作者の都合により名無しです:05/02/14 21:40:05 ID:8Nwp0mKK0
>>403
パオ氏乙。
ところでなんでしょっちゅう名前変えるの?
他の作品投げ出したと思われたくないから?
405ふら〜り:05/02/14 22:07:21 ID:Kymqab6h0
>>うみにんさん
どちらの魅力も損ねず、どちら贔屓にも角を立てず、といって内容をあやふやにはせず、
きっちり「決着」はついている。感動というより感心しました、今回は。さすがの職人芸
です! あと、のび太がジャイアンに憧れ、ってありそうでなかったですね。なんかいい。

>>五さん
ウィリアムが、花山とは全く違う方法でスペックの奇襲をかわしたのが良かったです。対
スペック戦も楽しみ。もう一組の方は……誰が相手でも、花山は花山ですなぁ。五さん、
原作キャラの使い方もちゃんと上手いですよ。刃牙や烈たちとオリキャラズの戦いも期待!

>>サナダムシさん
国王がピッコロみたいだと前回言いましたが、防衛軍を壊滅させる様は「寄生獣」の後藤
のよう。と思ったら眼鏡の破片をさりげなく使う辺りは「バキ」の死刑囚たちを彷彿と。
そんな凶悪っぷりにもめげず走ってるヤジロベー、かっこいい。友を救うため、頑張れ!

>>草薙さん
勇次郎、戦いの内容は思いっきり主人公サイドですねこれ。圧倒的な力で押してくる相手
に対して、技で打ち勝つという。でも、完全に悪役な立場。ここでのび太が勝ったりした
ら、いわゆる師匠越えになりますが、さすがに無理でしょうし。誰が勇次郎を止める?

>>サマサさん
隅から隅まで、自信と狂気と緊張感と血の臭いが溢れてて……要するにどちらの戦いも、
思いっっきり気になってしまいますよっ。というわけでリクエスト。京都で何があった
のか、は書いて下さるそうですが、できればオリバの方も見てみたいです。なにとぞ。
406ふら〜り:05/02/14 22:08:52 ID:Kymqab6h0
>>ゲロさん
ふるさとの川の匂い。また随分と、のどかな響きの言葉ですねぇ。これで次回完結という
ことは、今回はこのまま、のどかにいくのでしょうか? だとしたら「難しい」のは解り
ますよ。私もオリジナル小説を書いたりしてますが、バトルのないのが一番難しいです。

>>ミドリさん
一般人が、一般でない空間に踏み込んでしまった困惑と恐怖。伝わってきました、祐巳
の気持ち。そうやって同調させられただけに、最後の決断は読んでてリキ入りました
よっ。一方、斗貴子のジュネに対する劣等感は痛々しい。乗り越えて欲しいところです。

>>Z戦士さん(←名乗ってくださると嬉しいです)
そういえば今までなかった、「可愛い刃牙」。格闘バカで、だから世間知らずで、故に
ふとしたきっかけでテレビに、しかもアニメにハマり、そしたらかめはめ波に憧れて……
いいなぁこれ。タイトルから察するに、いくとこまでいきそうですし。楽しみですっ。 

>>青ぴーさん
ガラのガラっパチ口調から一転、>>401からは一気に重厚で荘厳で。つくづくこの作品は、
切り替えが凄いです。文体のレパートリーの多さ、私も見習いたい。でも読んでて、ガラ
には悪いけど彼の手に負える規模の事態ではなさそうな……大丈夫かニンジャマスター?
407犬と猫:05/02/15 01:07:07 ID:CnsRUbZZ0
絶頂

 夜も近くなり、放送から一日余りが経過する。キングキャッスルを訪れる野獣や獣人も、
だんだんと減り始める頃であった。
 王室をノックする音。国王が返答すると、丁寧にドアが開かれた。カリンである。
「カリンか。どうだった?」
「ふむ、見込みのある者を連れてきたぞ」
「ほう……三人か。では、簡単に自己紹介をしてもらおうか」
 怪獣、忍者犬、軍人虎。いずれも、一癖ありそうな顔立ちをしている。
「ギランだ。こないだぶっ殺されちまってよ。思い出すだけで腹立ってくるから、暴れた
くなったんだ」
「シ、シュウと申します。とある一味で働いてたんですが、あのニュースを見てここへ来
ました」
「俺はイエロー。レッドリボンでは大佐まで上り詰めた。いい働きが出来ると思うぜ」
 国王が只者ではないことを知ってか、偽りのない自己紹介が行われる。国王も、満足そ
うに微笑む。
「ふっふっふ、気に入った!」
 いきなり、国王は彼らを殴りつけた。あえなく失神した三人を見て、カリンもつい語気
を荒くしてしまう。
「おい、気絶させてどうする!」
「なかなかの素材だよ……。が、このままでは使えないのも事実。ちょっとした改造を施
してやらねばなるまい」
 国王は机の引き出しから、注射器を取り出した。中に入っているのは、淡い紫色をした
およそ正体が知れぬ液体。
「これを使えば、彼らは強くなれる……」
 混濁した輝きを帯びる液体は針を通し、均等に彼らへと侵入していった。
408作者の都合により名無しです:05/02/15 01:07:41 ID:Ycp77hLV0
ミドリさん青ぴーさんお疲れさまです。
アテナの包むような愛と、エルフの雄大な語りに引き込まれました。
409犬と猫:05/02/15 01:08:19 ID:CnsRUbZZ0
 異変は早くも起こり出す。失神したはずのシュウとイエローが、ゆっくりと息を吐きな
がら立ち上がったのだ。さらに、特筆すべきは彼らの肉体。血管が太く浮き出し、バラン
スを保ったまま膨張している。この光景に、思わずカリンも目を丸くする。
 数分後、ギランにも同様の変化が訪れる。その巨体ゆえ、液体が吸収されるのが二人よ
りも遅れたためだろう。
「カリンよ、どうだね」
「どういうことじゃ……。ま、まるで化物じゃ……!」
「若い頃、私は強さを欲していた。そのため、優秀な科学者をさらい、例の地下室にて薬
品を研究させたのだ。もちろん、開発が終わったら殺したがね。ところが、出来上がった
のはいいのだが……」
「だが……?」
「副作用が大きすぎた。強くはなれるが、体への負担が並大抵ではなく、心はまるで空洞
と化してしまう。いや、副作用ではないな。心がからっぽになるからこそ、大幅なパワー
アップが望めるのだ……!」
 強靭な肉体と、無心とを同時に手にすることが出来る薬品。しかし、国王が無心になっ
ては話にならない。結局、この液体も武器庫と同じく、封印されるしかなかったのである。
「超神水と似たようなものか……」
 感心してカリンが呟く。初めて耳にする単語に、国王はすかさず反応する。
「チョウシンスイ?」
「かつて、おぬしがわしにくれた潜在能力を引き出す液体のことじゃよ。昨日、わしも飲
んだんじゃ」
「ち、ちょっと待て! カリン、あれを飲んでいたのか……しかも昨日だと!」
 表情を崩す国王。再会した時、毒液について咎めぬことを疑問に思っていたが、まさか
直前に飲んでいたとは。ここで、国王はようやく悟った。

 ──キミガ今ニナッテ、私ニ協力スル理由ヲ。
410犬と猫:05/02/15 01:09:26 ID:CnsRUbZZ0
 殺してしまうか。忠実な怪物と、莫大な支持者を手に入れた今、いつ元に戻るとも分か
らぬカリンを脇に添えておく必要はない。
 だが、彼がいなければ再び野望を燃やすこともなかった。恐らく、死ぬまで平凡な王と
して、限りなく虚構に近い現実を歩まなければならなかった。ならば、カリンが元に戻る
可能性を断つまで。
「ギラン、イエロー、シュウ! そこにいる猫を取り押さえろ!」
 命令に従い、三人はカリンを押さえつけた。今や彼らはカリンと腕力だけならば互角以
上、指先一つ動かすことすらままならない。
「な、何をする気じゃっ!」
「我々の友情を永遠のものとすべく、君にも怪物になってもらう」
 生ける標本と化したカリンへと、注射針が冷酷に迫る。
「ゆ、友情じゃと……? こんな真似せずとも──!」
 叫び声は届かない。針は血管に突き刺さり、液体が注入される。カリンはぐったりと倒
れた。
「すまんな。たとえ親友であろうとも、危険因子は抑えておくが王の定め。ちなみに……。
君に渡したチョウシンスイとやらは、ただの猛毒だったんだよ」
 せめてもの手向けとして放たれた真実──果たしてカリンに届いたのだろうか。

 やがて、カリンが立ち上がる。温厚な武神でもなく、毒に病んだ狂猫でもなく、ただた
だ王に従う人智を超えた怪物として。
「フハハハハ……! 野望達成は近いッ!」
 自らは労することなく、国王は強大な怪物四頭を手中に収めた。
「フハハハハハハハハハッ! ハッハッハッハッハ……!」
 ──もはや身内には、彼を止められる者はいなくなった。
411サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/15 01:12:20 ID:CnsRUbZZ0
>>374より。
いっぱいいっぱいの人選ですいません……。
「そういやあいつ、月行っちゃったんだっけ」ってのが候補にいました。
次回へ続く。
412作者の都合により名無しです:05/02/15 02:00:47 ID:ZzU/ALP90
ギラン、イエロー、シュウか。
また本当にいっぱいいっぱいの人選ですなw
シュウってピラフ一味の犬だよね?白鷺拳?
413Z戦士 ◆YvMQSqnLNo :05/02/15 04:32:17 ID:QxA90XUZ0
Z戦士への入門を書いた386です。適当なハンドルが思いつかなかったのでそのままZ戦士と名乗らせて頂きますです。
Z戦士への入門は一応続き物(と決めました)なので出来上がり次第近い内に投下させて頂きます。

>>ミドリさん
ぬお・・・・すみません、まだ途中なんですが後のコメントを付けるのすっかり忘れてました。
まだスレの空気を把握しきれてなかったので・・・どうぞご容赦下さいです。
マリア様は未読なのですがアテナやトキコさんは大好きなので楽しみにしてますよ^^

>>396さん
なんだか最近バキがDBの世界になってきてるなと思い描いてしまったSSです。
先の事はまだほとんど何も考えてない状態なので僕にもどう転がるか分かりませんw
まぁクスリと笑って頂ける様な作品に仕上がればいいなと思っております。

>>ふら〜りさん
背中に付けてるマークはオーガは笑わせて頂きましたよ^^
正直アレを見てから「Z戦士への入門」を作ろうと思った初志の作品です。
なので・・・なんか見覚えある表現だなーとか似たような表現だなーとか、
思う箇所がもしかしたら有るかもしれないしこれから出てくるかもしれませんが、
その時は「こいつは俺様の事をリスペクトしてるんだな」と笑って勘弁してやって下さい、お願いします。
414作者の都合により名無しです:05/02/15 11:17:45 ID:h+EFCf4EO
別に感想は義務付けられてないから。
作者は作品だけあげてても全然OK。
415作者の都合により名無しです:05/02/15 16:06:40 ID:UheRLR2i0
>>サマサ氏
亀レスだが「殺人鬼とオーガの鬼事」読みました。
戯言とバキはかなり新鮮ですね。続きはいーちゃんと勇次郎の絡みか。
いくらいーちゃんの戯言でも勇次郎は厳しいでしょw
戯言とバキの世界観のつながりも書いてくれるといいな。
例えば徳川光成は四神一鏡の世界の住民なのか玖渚機関の人間なのかとか。
期待してます。
416作者の都合により名無しです:05/02/15 23:43:22 ID:YILJS2AA0
今日はこなそうだな
あげとこう
417犬と猫:05/02/16 01:09:02 ID:fMMbhuyq0
決起

 夜明け──睡眠をも忘れて走り続けたヤジロベー。ようやく聖地カリンへと到着する。
「や、やっと着いた……」
 だが、カリンを守護する戦士であるボラとウパが、それぞれ槍と斧を持ってテントから
起き出してくる。うろたえるヤジロベー。
「何者だ!」
「父上、待って! その人は悟空さんの友達だよ!」
「……む、君だったか」
 ほっと一息。ここで食料を恵んでもらい、仮眠を取らせてもらおう。だが、ヤジロベー
は浮かんだこれらの思惑を打ち消す。休んでいる暇などないのだ。
「またカリン塔へ登りたいんだ、上へ投げてくれ! 時間がねぇ!」
 ヤジロベーらしからぬ真剣な眼差しに、ボラも温かい笑顔で応じる。
「分かった。協力しよう」
 ボラはヤジロベーを担ぎ上げ、全力で垂直に投げ飛ばした。十メートル、二十メートル、
五十メートル、百メートル、ヤジロベーが塔に掴まる。ここからは、自力で登らなければ
ならない。
「あのバカ、世話焼かせやがって……うおおおっ!」
 眠気と疲労を強引に抑えつけ、ヤジロベーが再びカリン塔に挑む。独特の彫刻が施され
た塔を、手足だけで器用に登っていく。全ては豹変した友を救うために。
 しかし、勢いだけで踏破出来るほど、この塔は甘くない。二千メートルを越えた地点で、
ヤジロベーにどっと疲れが押し寄せる。
「や、やべぇ……!」
 集中力の低下と大量の汗により、手が滑った。それは奈落への旅路を意味する。
「う、うおおおおおっ!」
 刹那で抜刀し、塔へと突き刺す。愛刀のおかげで落ちずに済んだ。どうにか、九死に一
生を得ることが出来た。
「ふぅ、危ねぇ……。少しちびっちまったぜ」
 気を取り直し、再出発。少々の油断で命を落とすほど、この男は甘くない。
418犬と猫:05/02/16 01:09:49 ID:fMMbhuyq0
 正午過ぎ、ついにヤジロベーは最上部に辿り着く。普段はカリンが住んでいるが、今は
誰もいない。
「ひ、ひとまず仙豆を……」
 壺に入っている仙豆をわし掴みにし、無造作に口へと放り込む。常人ならば一粒でおよ
そ一週分の食料になるが、彼にとってはこれが適量なのだ。
「おっしゃあ! 回復したぜ!」
 空腹も、眠気も、疲労も、一片たりとも残さずに全快した。
 次にやるべきは、超神水についての調査だ。これ見よがしに床にある水瓶から、一滴だ
け指に付けるヤジロベー。そして、覚悟を決めて舐める。すると、猛烈な不快感と激痛が
ヤジロベーを襲った。
「ぐわぁっ! やっぱ死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬッ!」
 慌てて吐き出し、どうにか難を逃れたヤジロベー。今度は、似合わぬ推理モードへと頭
を切り替える。
「こんな所にあるってことは、あいつがこれを飲んだのは間違いないな。じゃあ、今度は
これがどう作用したかを考えねぇと……」
 ──十五分経過。名探偵ヤジロベーが導き出した結論はこうだった。
「分かるわけねぇだろうがッ! ボケッ!」
 腹いせに、ヤジロベーはまたも仙豆を十粒ほど口に含んだ。
「これで、味が良けりゃ最高なんだがな……」
 満腹になった腹を叩いていると、ふとヤジロベーが閃く。
 カリンが狂猫に変貌した原因を、超神水に求めるとするならば──仙豆ならば、治療出
来るのではないのか。カリンをカリンへと戻せるのではないか。
「そ、そうか……これしかねぇよな。そうと決まれば、さっさとキングキャッスルに戻ら
ねぇと!」
 希望は仙豆にこそ存在した。手持ちの袋に仙豆を数粒入れて、ヤジロベーが外へ駆け出
す。が、下には雲が広がっていた。
「やっちまった……。誰か助けてぇぇぇぇ!」
 無残にも落ちていくヤジロベー。下へ、下へ、下へ、下へ、速度は増していく。
419犬と猫:05/02/16 01:11:10 ID:fMMbhuyq0
 ヤジロベーが落下している頃、東の都近郊に、四人の武道家が集結していた。クリリン、
ヤムチャ、天津飯、餃子。彼らが集まった理由は、全員一致している。
「みんなも、神様からお告げをもらったのか? ここへ集まれって」
 クリリンの問い掛けに、ヤムチャと天津飯が答える。
「あぁ、そうだ。いきなり頭の中に声が響いてよ、びっくりしたぜ」
「俺と餃子もそうだ。キングキャッスルに行って、野望を食い止めて欲しいとのことだ」
 地上に関与することを許されぬ神。その神が見出した解決策とは、心技体を併せ持つ武
道家に、地上を託すことであった。もちろん、強制ではない。クリリンたちには断る権利
も与えられた。しかし、彼らは神に従う道を選んだのだ。
「これまで、何度も世界を救ってきた悟空は今はいない……。だからこそ、今度は俺たち
があいつの留守を守ろう!」
 勇ましく拳を振り上げるクリリン。他の三人とて、情熱と正義感では負けていない。
「よく言ったぜ、クリリン。これも修行になるかもしれないしな」
「世界が混乱すれば、天下一武道会もなくなってしまう。孫と再戦するためにも、俺は正
義のために戦ってみせる」
「天さん、僕も頑張るよ!」
 四人は手を合わせ、誓い合った。王都に寄生する汚れた武神と王者は、武道家の手で叩
きのめす。
420犬と猫:05/02/16 01:12:55 ID:fMMbhuyq0
 とある廃屋──ここでも騒ぎが起こっていた。
「ピラフ様、大変です!」
「どうした、ついに世界征服を達成したか! よくやったぞ!」
「いえ、シュウが家出しました」
「そりゃ大変だ!」
 ピラフ一味。あらゆる手段で世界征服を企む、どこか憎めぬ悪党たち。ピラフ、シュウ、
マイ、奇怪な三名によって構成されている。数々の策略により財産を使い切ってしまった
彼らは、現在は廃屋での貧乏暮らしを余儀なくされていた。
 失敗と敗北ばかりのピラフ一味だが、彼らの絆は本物である──はずだった。
 忍者犬シュウが、以下の書き置きを残して失踪してしまったのだ。
「ピラフ様、マイ、ごめんなさい。僕も犬である以上、国王とともに戦いたい。だからも
う、ここにはいられません。今まで本当にありがとうございました。さようなら」
 わなわなと打ち震えるピラフ。乱暴に紙を破り捨て、マイに命令する。
「今すぐシュウを連れ戻すぞ! ピラフマシンで出撃する!」
「は、はいっ!」
 ドラゴンボール争奪戦、あと一歩で失敗。
 孫悟空との対決、あっけなく敗北。
 電子ジャー解放、単なる駒扱い。
 これまで、悪事は成功しないという法則を身を以って証明し続けてきたピラフ一味。こ
とごとく敗退してきたピラフ一味。だが、今度ばかりは失敗は許されない。
 ──世界征服よりも優先すべき任務“シュウお持ち帰り大作戦”発令。
421サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/16 01:20:41 ID:fMMbhuyq0
>>409より。
そしてキングキャッスルへ──続く。
422作者の都合により名無しです:05/02/16 01:25:14 ID:dDZ2Jriu0
サナダムシさん、一気呵成の投稿ですね。ありがたい。
しかしいよいよ雑魚オールスターが集結ですね。
悟空やベジータは出ないのかな?
でも結構好きなピラフが活躍しそうでうれしいな。
423作者の都合により名無しです:05/02/16 07:04:12 ID:IqqIzWEL0
男狼さんは出てこないのだろうか…
けっこう気になります
424ブラックキング ◆vI/qld5Tcg :05/02/16 08:57:42 ID:H6F8ziVa0
今月中に、何度か更新できると思います。
いつもいつも間が空いてしまって申し訳ありません。
425作者の都合により名無しです:05/02/16 11:56:38 ID:QITxwhhmO
この時期はみんな忙しそうだね。
マイペースで頑張ってくだされ。
ところで、飛影はアレで終わりですか?
426作者の都合により名無しです:05/02/16 18:27:36 ID:cdkvjapT0
おお、ブラキンさん待ってますよ。

サナダムシさん、ヤムチャをこのSSでくらい活躍させてあげて下さいw
427作者の都合により名無しです:05/02/16 20:10:15 ID:em4K5OSc0
ブラキンさんお帰りなさい。
楽しみに待っていますよ。

サナダムシさんもサマサさんも頑張ってくれるし、5さんとかZ戦士さんみたいな新人も来るし、
これでザクさんが復帰すれば完璧。
428Z戦士への入門:05/02/16 20:51:04 ID:z1Eo22+C0
中国から帰国した後の刃牙はどことなく覇気が失せていた。
改めて確認させられた範馬勇次郎の途方も無い強さ。
日々全力で鍛え上げ駆け足で父に近づいているつもりだったが、
勇次郎はそんな息子などお構いなしに自分を上回る速度で遥か彼方を走っている。
彼は決して止まる事はないだろうし、ましてや息子が追いつくまで待つ事などありえない。
自分がいくら追いかけても父親には一生追いつけないのでは?
日米連合軍対中国連合軍大将戦・・・郭海皇と戦う勇次郎を見てふとそんな思考が頭をよぎってしまったのだ。
それからの刃牙は自らが定めたトレーニングスケジュールこそこなすものの、それ以上の事をしなくなった。
地下闘技場にも顔を出さなくなり幼少の頃から体に刻め込んだ習慣に従いただ体を動かすだけの毎日。
後退こそしなかったものの刃牙の歩みはそこで止まってしまった。
そんな刃牙を見て恋人である梢江も最初の内はそれはそれでいいのかもしれないと思った。
自らを痛めつけ痛めつけられ、そこにあるのが死だと分かっていても止まろうとしなかった最愛の人
これを機に戦う事を止めてくれたら・・・・
しかし目標を見失ってしまったかのようで日々上の空の恋人を見るとどうにも忍びない。
戦って欲しくはないが、どうにか元気づけてあげられないものだろうか?
そう思った梢江は刃牙にあるプレゼントを渡す事にした。
物の価値を全く知らない刃牙にブランド物の服や時計を渡してもあまり喜ばないだろうしそんな物は無意味だ。
そもそも今まで格闘技以外にトンと趣味が無かった男。
ならば何を渡せば今一番良いか?
悩んだ末彼女は、
「刃牙君も男の子なんだし・・・」
これが女の子が渡すプレゼントかと、我ながら呆れたが、
少年の様な彼ならきっと熱を持ってくれるに違いない。
まぁ少なくとも暇つぶしくらいにはなるだろうし。
(それに世間知らずの彼ならきっと見た事ないはず。)
一人思う梢江の前には合わせると結構な重量になるであろう書籍の山が積まれていた。
そう・・・彼女も女の子ながらかつて夢中になっていた。

コミックス版ドラゴンボール(全42巻)

後に彼女は範馬刃牙という男にこんなプレゼントをしてしまった事を激しく後悔する。
429Z戦士への入門:05/02/16 20:55:31 ID:z1Eo22+C0




「無理って・・・どういう意味だよ?」
刃牙は思わず画面から目を離し一直線に視線を梢江に向けた。
ちなみにブラウン管の中ではちょうどフリーザが輪切りにされたトコロである。
「本当に出来る事ならこんな事は言いたくなかったんだけど・・・」

『かめはめ波』を撃つのは無理

仮にも高校生の男子に対して言う言葉ではない―が、梢江は刃牙の精神年齢を知っているのだ。
「そりゃあね、私も夢があるのは素敵だと思うし、それに向かって努力するのはとても素晴らしい事だわ。
それでもやっぱり人間には出来る事と出来ない事があって刃牙君は・・・・・」
と梢江がどう言葉を紡ごうか迷っている途中いきなり刃牙がクスクス笑い出した。
「梢江ちゃん・・・それマジで言ってんの?」
刃牙は口に溜め込んだ空気をプププと噴出しつつ。
「バッカ・・・『かめはめ波』なんてそんな技、本気で考えてる訳ないだろ」
「?・・・・違うの?」
ならなぜ?
彼女の頭の中は疑問符でいっぱいだ。
普段からリアルシャドーが出来るほど妄想癖の強い範馬刃牙。
内容をメモに取るほどドラゴンボールに熱中する範馬刃牙。
暇さえ有れば「はぁぁぁぁ〜っ!!」と中腰になって雄叫びを上げる範馬刃牙
もはや『かめはめ波』を撃とうとしているとしか思えない。
「全く・・・『かめはめ波』だなんて失礼しちゃうよな」
まさか本当に単なるアニオタにでも成り下がってしまったのだろうか?
・・・いや事実もう成り下がっているも同然なのだが。
430Z戦士への入門:05/02/16 20:56:51 ID:z1Eo22+C0
「大体『かめはめ波』程度で勇次郎を倒せるかよ」
「は?」
「『かめはめ波』なんてヤムチャにだって使える技なんだぜ?そんなんであの親父をどうにか出来る訳ないだろ!
まぁ牽制くらいにはなるかもしれないけれど、やっぱり決め手としては欠けるよな。」
どうやら今までの梢江の声は刃牙には全く届いていなかったらしい
「理想を言えば元気玉で完全消滅させてやりたいトコだけどこれは気を集めるのに時間がかかりすぎるし、
それよりも俺としては一撃必殺の気円斬や魔貫光殺砲あたりが・・・」
あっけに取られる梢江を尻目にどうすれば憎っくき勇次郎を討ち取れるか(ドラゴンボールの技を使って)
あくまでも真面目に、だが嬉々として語り出す刃牙
他人を無視して自分の好きな事だけ一方的に喋る典型的オタの症状である。
「ちょっ・・・ちょっと待って刃牙君ッ!!」
完全に自分に世界に入ってる刃牙をなんとか引き戻そうとする梢江。
「・・・あくまでも仮定の話でしょ?まさか本気で言ってないわよね?
ドラゴンボールは空想の世界なのよ、分かってる!?」
「人がリアルに・・・リアルに思い描く事は実現するんだッ!!」
梢江の意見を力の限り否定する刃牙、端から見ると単なる駄々っ子だ。
「無理に決まってるでしょ!大体ッ・・・ってもうこんな時間じゃん!」
見れば既に午前8時を過ぎている。
「学校に遅れちゃう!」
慌てて家を出る梢江、それを見送る刃牙、当然サボリである。
・・・・・・・
「バカヤローー!!」

一人残された居間には大音量の野沢雅子ボイスが鳴り響いていた。
431Z戦士 ◆YvMQSqnLNo :05/02/16 21:02:18 ID:z1Eo22+C0
以上で今回の投下終了です。
今までバキと梢江だけしか出てなかったので、次回あたり新しくキャラを出したいと思います。

>>バレ様
まとめサイトに加えていただいてありがとうございます。
脱字の修正までさせてしまいホントすみません><
432作者の都合により名無しです:05/02/16 21:08:17 ID:HRkfDvYn0
hlhjlhjh
433ふら〜り:05/02/16 21:17:30 ID:xvKLD3fe0
>>サナダムシさん
ヤジロベー、今回は何だか健気。友情に燃えて突っ走り、彼らしく賑やかにバカもやって、
その全てはカリンの為に。ピラフ一味の方も友情燃えしてくれそう(でもこちらは女性も
いますね一応)ですし、楽しみです。クリリンたちを差し置いて、活躍せよヤジ&ピラ!

>>Z戦士さん
純粋、純真、無垢、無邪気。あぁもう可愛いぞ刃牙。梢江ちゃんも、そんな彼氏のことを
考えてのプレゼント選定が非常に宜しい。……よからぬ想像をした我が身が恥ずかしい。
次回、他キャラがこのノリでどんな風に出てくるのか、わきわきして待っておりますっ。

>>ブラックキングさん
む、心強いお言葉。御力作、期待しておりまするぞ。
434忍者の証:05/02/16 22:09:31 ID:C1UHh77p0
第五話 歴史譚・後編 >>402の続き

クルスデルト・アルスメータ・ン=ヴォス。
呪われしその忌み名。かつては祝福されしエルフ族神聖四親皇家の第三位王位継承者。
その豊穣なる才能を善き方向に使えば、恐らくは英雄となったであろうその男。
ですがその男は、選ばれし根源種・グレイエルフの中でも、更に選ばれようとしました。

即ち、己とそれ以外。能力者である己と、無能なるそれ以外の存在。

誇り高きその男は、『第三位』王位継承者というのが耐えられなかったのです。
彼は声高に叫びました。王位は正当なる血筋の中で、最も有能な者に与えるべきだ、と。
彼の意見は間違いではありません。
その比類なき能力を善きに使えば、恐らく上位継承者たちも喜んで王座を譲ったでしょう。

しかし、残念ながら彼は邪悪でした。否、稀に見るエゴイストだったのです。
高潔でありながらも比較的温和な種族であるエルフ。
だが、滅多にいない有害な存在。それがクルスデルト・アルスメータ・ン=ヴォス。
彼は研究に没頭していました。優秀な自分自身の力を、超絶の域へ高めるために。

ご存知の通り、高度な魔術には触媒が必要とされます。
それは例えば猛禽の目玉であったり、魔物の骨であったり、魔を帯びた宝玉であったり。
しかしながらン=ヴォスは禁忌まで犯して己の力を高めようと致しました。

魔道の触媒を、エルフの肉体自身にまで求めてしまったのです!
435忍者の証:05/02/16 22:11:38 ID:C1UHh77p0
日毎夜毎に消えていくエルフの子供たち。
王家は戸惑い、そして厳しく街を監視し消失事件を解決しようと砕心致しました。
しかしそれでも消えていく、エルフの幼子たち。
王家は確信しました。これだけの警戒の中、事を為せる存在は唯一人のみである、と。
即ちエルフ最高の魔導士、クルスデルト・アルスメータ・ン=ヴォス。

しかし彼は王族の権力者であり最強者。確たる証拠もなく手出しは出来ません。
王家は論議しました。この邪悪、このままにしておいて良いのか、と。
結論は王家よりの放逐。ン=ヴォス一族を神聖四親皇家より外し、権力を失墜させる事。
だがその余りに遅き決定が下される頃、ン=ヴォスは高笑いをしておりました。
その魔力が遂にエルフの究極の域に達していたのです。

ン=ヴォスは魔法使いとしてだけではなく、幻術士、召還士、死霊使いとしても超一流。
更にそれに加え、兼ねてよりの研究していた暗黒魔術が完成しつつありました。
魔界の神、地獄の魔王と契約を結び、地上に措ける現人神として君臨しようとしたのです。

ン=ヴォスは完全に暗黒面に染まりました。
日々、エルフの子供の生贄は増え続け、エルフの都市にはン=ヴォスの召還した
魑魅魍魎の類が跋扈し、都市に生きる人心は欝色に染まり始めました。
そして少しずつ、ン=ヴォスの肉体は黒く染まり始めました。彼の心のように、黒く。
彼だけではなく、彼に追従するン=ヴォス王族の一派たちの肉体も、です。

暗黒魔術の邪悪な意志と、子供を連れ去られたエルフの親たちの呪い。
この2つが相乗し、ン=ヴォスとその親派たちの肉体は黒く染まったのです。

これが私たちダークエルフ一族の、呪われし誕生の真実です。
436忍者の証:05/02/16 22:13:21 ID:C1UHh77p0
『相も変わらず恥知らずな連中よ。我を、己が小さな尺度で測りよるか』
ン=ヴォスは笑いました。王族からの放逐の達しを聞き、声を挙げて笑いました。
『大体、王権とは継ぐ物でなく奪う物。どれ、あの痴れ者どもに思い知らせてやるか』

ン=ヴォスは立ちました。彼は善良な英雄でなく、邪悪な革命家である事を選んだのです。
エルフの歴史を揺るがす、史上唯一の内戦が幕を開けました。
武装闘争。力による王座の略奪。邪悪な魔道師が選んだ、余りにも当たり前の選択肢。
彼にはカリスマ性もありました。
己の王族一派だけではなく、一般の市民すら多く彼につく者が続出致しました。
彼の下に付いた者はすべからく、肌が闇色に染まっていきました。

王族への、宣戦布告は強烈でした。王宮への激烈な雷の一閃。
記録によるとその一撃で、エルフ200人ほどが死に絶えたと聞きます。
ン=ヴォス一族が敵対し、神聖三親皇家となった王族は一致協力し、これを退けようと
果敢にン=ヴォス一族を迎撃致しました。

しかし、余りにもン=ヴォスとその他のエルフでは魔法の力が違い過ぎました。
徐々に、神聖三親皇家は劣勢になり、敗北寸前まで追いやられました。
ン=ヴォスは笑いました。そして宣言を致しました。
『惰弱なり偽りの王家の者たち。我こそが王。いや、この世の神なり』

しかしその時、ある一人のエルフがエウロペアの十賢者の聖地を訪れていました。
遥かなる天空の王宮、キング・クリムゾン・グローリーに。
強大なるン=ヴォスを倒す事の出来る、伝説の武器を手に入れる為に。
437忍者の証:05/02/16 22:14:25 ID:C1UHh77p0
『我々の創造物にしか過ぎぬ土塊ごときが神とは、片腹痛いわ』
エウロペアの十賢者たちは哂い、相手にしようとしませんでした。
十賢者を前にしたエルフの魔法剣士・コドンはその威風に怯えましたが、事は重大です。
十年も十賢者に頼み込むコドンに遂に聖者たちは折れ、彼に伝説の剣を与えました。

その剣の六尺一寸の刀身は絶えず結露し、振れば霧風を起こしました。
そしてその真髄は、刃が魔を滅する破魔の妖力を秘めている事にあったのです。
その伝説の剣は、後に人々の間にこう膾炙される事になります。
『妖刀 ムラサメ・ブレード』 ……と。

あと一歩。もう僅か。ン=ヴォスは勝利を確信しながらそう呟きました。
悪の革命者は王族の半数をその手で殺め、エルフの歴史を塗り替えようとしていました。
内戦が勃発してから十数年たち、ダークエルフたちの勝利は動かないものと思われました。
その頃から、エルフたちからこう彼は呼ばれ始めました。 ……『死魔の王』、と。

反逆から20年後。遂に、内戦の決着が付く時が訪れました。
ン=ヴォスがとうとう、エルフ王の目の前に立ったのです。ン=ヴォスは笑いました。
『金箔の玉座に恥知らずにも座り続けし偽りの王よ、神の裁きの時は来たれり』
王は観念し、死を覚悟しました。ですがその時です。

キング・クリムゾン・グローリーより帰還せし、エルフ族随一の魔法剣士・コドンが
死魔の王の前に立ち塞がりました。妖刀ムラサメ・ブレードを腰に携えて。

438忍者の証:05/02/16 22:15:49 ID:C1UHh77p0
『小賢しき餓鬼が。死にたくなくばそこをどけ。我の目的は偽りの王なり』

ン=ヴォスは猛り、激烈なる火炎呪文や雷撃をコドンに浴びせ掛けました。
が、コドンは既に死を覚悟しておりました。
生半可な攻撃ではン=ヴォスを倒す事など不可能。通ずるはその一撃のみ。
ガラ様もご存知でしょう? その妖刀の現在の持ち主であるならば。

コドンの命は、妖刀に喰われました。それと引き換えに、必殺の剣が放たれました。
ン=ヴォスの喉元へ、一直線に衝撃波が奔ります。完璧にそれは極まりました。
ですが恐るべきは究極の魔道師ン=ヴォス。
彼はその致命の一撃の瞬間、全魔力を集中し、その剣に耐え切ったのです。
コドンはその一撃の後、永久の眠りにつきました。
が、ン=ヴォスもまた、死を逃れただけで、甚大な傷を受け、その場から逃げ出しました。

形勢は逆転しました。ン=ヴォスのいないダークエルフの集団など、首の無い竜も同じ。
神聖三親皇家の率いるエルフの正規軍の前に、忽ち駆逐される事となりました。
20年に渡る、エルフ一族唯一最大の内戦はこうして幕を閉じました。
ですが、この戦いで得た物は何もありません。
版図の半分以上を占めていたエルフ一族の領地は激減し、その組織もまた瓦解しました。

呪われしダークエルフたちは散り散りとなり、今日まで隠れながら生きていく定め。
では、あのン=ヴォスは? 勇者コドンの一撃により命を落としたのでしょうか?
いえ、彼は生きていました。痛みに狂いし魔王となりて。
439忍者の証:05/02/16 22:16:59 ID:C1UHh77p0
ン=ヴォスの傷は治りませんでした。いかなる治療魔法でも、いかなる秘薬でも。
コドンの命を転じた一撃は、それほどの執念で彼を斬ったのです。
ン=ヴォスは100年以上も狂いました。あらゆる破壊を繰り返し、種を撒き散らして。
破壊衝動と快楽行為にて、傷の痛みを紛らわせようとしたのです。
ですが、それは無駄でした。痛みは日々増すばかり。彼は苦しみました。

ですが、たったひとつ最高の治療法を思いついたのです。それは、時。
自らに強力な睡眠魔法を掛け、同時に強力な治療魔法を掛けて数十年眠る。
この眠りが醒めた後、俺は完全に傷も癒え、またこの世の神として復活する。

彼はピラミッドを造り、その中で魔法羊水に浸りながら眠りにつく事にしました。
ピラミッドの入り口は特別な呪法で封印をする。侵入者が眠りを妨げないように。
更に、その入り口の呪法自体を4つの宝玉で守護させる。いわば二重の結界。
そして宝玉は俺の召還した守護獣に守らせよう。
如何なる者も神である俺の眠りを邪魔はさせはしない。

俺は、眠る。この傷が癒えるまで。俺は、眠る。神として目覚めるまで。
俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。
俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る。俺は、眠る………。


そしてン=ヴォスの眠りより30年後の今日。ガラ様、あなたが現れました。
奇しくも、勇者コドンと同じくムラサメ・ブレードを携えて。
これが運命と云わずして、なんと申しましょうか?
440忍者の証:05/02/16 22:20:57 ID:C1UHh77p0
40秒規制に知らぬ間になってたか。30秒でも嫌なのに。どんどん連投者には辛くなりますな。

昔語りは一話で収めたかったな。読んでみると冗長が過ぎる。人物の動きが無いから。
動きをつける事もできるけど、そうするとまた1話いるし。難しい。語り部口調は好きだけども。
441作者の都合により名無しです:05/02/16 22:33:23 ID:Dm57Y3sS0
442作者の都合により名無しです:05/02/16 22:34:29 ID:Dm57Y3sS0
うわあ・・・
誤爆です、すいません。
443作者の都合により名無しです:05/02/17 00:09:32 ID:1DybCkhrO

ミドリさんの後なら良かったのに。
つか、絵板使おうよ。久々にまとめサイトに行ったが、あまりにも寂しいぞ。
444蟲師 流れ続く:05/02/17 00:11:00 ID:1gowP7HQ0
>>364から続く

445蟲師 流れ続く:05/02/17 00:12:04 ID:1gowP7HQ0

 環蟲は実にゆるやかだった。
「ああ、また止まるのかよ」
 旅人は、もう厭きた、と言い放ち天を仰いだ。対してギンコは心なしか嬉しそうである。
「俺は構わんけどな。こうして立ち止まって周囲の風景を見るのも悪かない」
 ギンコと旅人が出会ったときから、まだ一里(約4km)も進んでいない。止まっては少し進み、また止まっては
少し進み、また――その繰り返しだった。
「そりゃ、アンタは楽しいだろうがな」
 旅人は地面に尻を付き、ギンコを見据えて言う。
「俺は、もう何ヶ月もこうしてんだ。さすがに嫌になるぞ。景色ったって、どこも大して変わらないし」
 確かに、旅人の言うように変わり映えのしない景色である。見えるのは、森の緑と透明な川の水。あとは青い空
白い雲、といったところだろう。
「変わり続けるものなら、そこにあるだろ」
 ギンコはそう言って、環蟲を指差す。環蟲は、一刻ごとに色を変える。赤、青、黄、緑、橙……どういった意図かは
知れない。意図などはないのかもしれない。なぜなら、アレは蟲なのだから。
「それで足りぬなら、故郷の香りがあるだろう。お前にとっても、故郷は他の人間と同じように自分にとっての重要な
位置を占めてるんだろ? 昔の色々な思い出をゆっくりと反芻しながら、過ごすのもいいと思うがな。それは大事な
ことだと思うし、羨ましいとも思う。故郷を思える人間は、幸せだな」
 ギンコには、幼少の頃の記憶が欠けている。
「……ないんだ」
 ギンコの話をただ黙って聴いていた旅人がぽつりと漏らした一言。それはこう続く。
「ないんだ……故郷の、村の、記憶が」
「……なんだって?」
 突然の旅人の告白。ギンコは、驚いた顔をして言った。
「正確には……俺は、両親の都合で早々に居を移したんだ。だから、記憶を作る暇もなかった、といったほうがいい
か。だが……匂いだ」
「匂い……この、環蟲が発する――頭が冴え冴えとする、花の香りか?」
446蟲師 流れ続く:05/02/17 00:13:10 ID:1gowP7HQ0
「この匂いは、覚えてる。あの頃、野山に遊びに出る度に、体中包まれたこの匂い……俺には薄い故郷だけど、匂い
を嗅いだ瞬間、忘れていた風景が少し見えたような気がしたんだ」
 記憶とは、それ単体で在るのではない。様々な感覚が相まって、絡み合って作り上げられるものなのだ。例えば、
ほんの数日程度滞在していた観光地の記憶が、まるで昨日までそこに居たかのように鮮明に思い出せるのは、その
場所に何らかの、自らを惹き付けて止まぬものが存在するからこそだろう。旅人にとってそれは『匂い』だったのだ。
 匂いが、眠っていた記憶を呼び起こした。

「長く過ごした土地には、いい思い出が沢山ある。俺にとっては、越した先がそれだ。だけど、生まれた地もそれと同じ
くらい大事だ。たとえ記憶がなくとも」
 ギンコはこの時、旅人が何故彼にとって退屈極まりない旅を続けているのか、いや、続けざるをえないのかを理解し
た。
 彼は、恐らく故郷の場所を知らないのだ。だから、環蟲について行かざるをえない。旅人などをしているからには、彼
はもっと自由に歩き回りたい性質の人物である筈なのに、ゆるゆるとした蟲の足取りに合わせて進まなければならない。
その苛々たるや、相当なものだろう。しかし、それでも知りたいのだろう。故郷を。生まれた地を――
「成る程な……やはり、お前さんは幸せなヤツだよ。故郷を知る機会に巡り会えたんだからな」
 ギンコは、本当に、本音でそう言った。
「なら、環蟲が故郷に辿り着くその前に、出来るだけ多く匂いを嗅いでおくことだ。そうすれば、さらに深く記憶に潜れる。
記憶とは、貴重なモンだ。特にお前さんはその場所の『今』を知らない。『今』と『昔』は、似ているようで違うもの。『今』の
自分は『今』のものしか見られない。『昔』の自分が見た『昔』は、二度と見ることは叶わないのだから」
「?」
 大人になった旅人が、子供の頃見た風景を見ても、同じ気持ちになることはない。時間はそういう残酷なものなのだ。
ギンコが言おうとしたことは、そういうことだ。

447蟲師 流れ続く:05/02/17 00:14:34 ID:1gowP7HQ0

 それから幾月と経ち、遂にギンコと旅人は、旅の終着点――旅人の故郷に辿り着いた。
 川原から外は一面、白い花が咲き誇り、環蟲と同じ匂いがそこら中に嫌というほど漂う。
「ああ……!! ここだ、ここで俺は子供の頃、その頃の友達と一緒になってかけっこしたりして……」
 当初、喜びに満ちていた旅人の表情が、曇る。
「どうした?」
 ギンコが尋ねる。
「…俺は、遠い所に来ちまったな……もう、昔には戻れない。俺も変わってしまったし、勿論周りも――」
「寂しいか?」
「少しはな。でも……それが、俺が生きてる証なんだろうなって、思う」
 旅人の顔は一転、晴れやかなものとなっていた。それに合わせるように、環蟲に変化が起こる。川の、環蟲の部分だけ
がぶくぶくと泡立ち、やがて空に浮かぶ。それは水蒸気の現象と似ているように見えた。環蟲は、気体のようになってもな
お、色を変え続ける。赤、青、黄、緑――
「なんだ、これ……?」
 旅人は空を仰ぎ、驚嘆の相を浮かべ、言う。
「環蟲は、循環する蟲だ。雨雲に紛れ、雨に混ざって地表に降り、やがて川に辿り着く。奴らは川以外では生きる術をもた
ないから、必然的にそうなるわけだ。そして、そこからはお前が見てきたとおり。川を流れ、天に昇ってゆく。また降り、流れ、
昇る――奴らはそうして、永久的に続いてゆく」
「……すごいな」
「何事も同じだ。全ては、循環している」
「ああ、そうだな」
 旅人は、ギンコの言葉に深く頷いた。

448蟲師 流れ続く:05/02/17 00:15:37 ID:1gowP7HQ0
『流れ続く』完です。今回は、『蟲師』結構書いてきましたけど、初めて70点くれてやれる出来かなあと勝手に思ってます。
後半は。

これで『蟲師』も折り返し。残り半分になりました。次回は台風の話。

>>367
描写を疎かにした罰ですね……そりゃ、白髪とかじゃあ老人と思われても仕方ないです。反省してます。
今回読めば分かりますが、ギンコです。マジごめんなさい。
今回は二回完結でしたけど、こうしたほうが締まりはいいかもしれません。

>>368
全部オリジナルです。が、なんか似てるのもあります。今回のは、原作にもいないタイプと思いますが。
ちなみに「たまきむし」と読みます。

>>376
まあ、気分によって内容の重さとかは変わる傾向がありますね。それだけ、俺が安定していないということでしょう。
あと白髪は(上記参照)

>>406
今回も、やたら時間かかりました……こんなのに4時間ですよ、情けない。
でも、それなりに納得はできる内容になったと自分では思います。


しかし、凄い作品量だなあ……前はもっと多かったのだから恐ろしい。
では次回。そのうち。
449作者の都合により名無しです:05/02/17 08:42:36 ID:pFnBIvgU0
>忍者の証
語りべから物語が語られるのは新しい切り口ですね。でもやたら強そうなンボス。
こんな奴にガラは勝てるのか?ムラサメのエピソードとかよかった。

>蟲師
今回は今までになくw爽やかな幕切れでしたね。主役・ギンコの飄々とした感じが
より一層好感を持てるような終わり方でした。次章も期待してます。
450作者の都合により名無しです:05/02/17 10:31:27 ID:VmJ9An8m0

>Z戦士さん
最期の「バカヤロー!」の台詞は上手いですね。
バキも天然バカでいい感じです。
梢江のプレゼントが発端だったとは。
もしこれが「バスタード!!」だったなら、毎朝「ザーザード ザーザード…」とか
呪文の詠唱をしているバキがいたわけですね。


>青ぴーさん
今回の話、クライマックスに向けての伏線でしょうか。
ヴォスのエピソードは、何となく指輪物語を思い出しましたね。もっともこっちの主人公は強者ですけれど。
コドンがどっかで出てくることを期待しています。
ところで、原作途中から読んでいないのですが、エルフも作中に(ネイ以外に)出て来ているのですか?


>ゲロさん
本当に珍しいくらいハッピーエンドですね。
てっきり故郷は……かと思ってました。
今と昔で感じ方が違うというのは何となく分かりますね。
この間2年ぶりに実家に戻りましたが、ちょうどこんな感覚でした。
(記憶には違いないけれど、どこか違和感を感じるような)

451作者の都合により名無しです:05/02/17 14:24:30 ID:27lho0ec0
>エルフも作中に(ネイ以外に)出て来ているのですか?

最近エルフの皇女様たちが出てきた。
でも天使とか悪魔とかが出て来てからは読む価値は無いよ。
クソだから。萩原の最大の武器の絵も手抜きになってるし。
15巻くらいまではすごく面白かったけどね。


好きな忍者と蟲師が好調で嬉しいな。
忍者はこの静かな展開から、呪文がガンガンでる展開を期待。
蟲師は今回のエンディングすごくいいなあ。ほのぼのしたよ。
452作者の都合により名無しです:05/02/17 15:33:46 ID:1DybCkhrO
五さんは今夜くらいに来るかな?
文章は荒いけど、割と面白い展開だったから、同じ携帯ユーザーとして期待してる。
でも、よく携帯であれだけの文章打てるもんだ。
453作者の都合により名無しです:05/02/17 18:34:13 ID:/4KrSNhTO
田辺さん最近来ないな。前にも投げ出し歴あるから、少し心配。
454作者の都合により名無しです:05/02/17 18:38:21 ID:ZeREyG/h0
   ↓     ↓    ↓      ↓       ↓      ↓     ↓      ↓
 バレ うみにん・NB ザク・ミドリ サマサ    五     草薙    パオ   投げ出し連中         
  ∧∧      ∧∧    ∧∧      ∧∧   ┃::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  ∧||∧
∩・∀・)    (・∀・)  ∩・∀・)   (・∀・)∩....┃::: ∧∧::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(  ⌒ヽ
 ヽ  ⊃ノ  / ⊃⊃ ヽ  ⊃ノ  /⊃  / ... ┃:::('д` )::::::::::::∧ ∧::::::::::::::::::::::::::::::::::: ∪  ノ
  ヽ  )つ〜(  (    ヽ  )つ〜( ヽノ ......┃:::と  ヽ::::::::: ('д` )::::::(   )⌒ヽ;:::::::::: ∪∪
  (/     (/(/'    (/     し^ J  .....┃:::⊂,,_UO〜:::(∩∩ ):::::|/.|/uと  )〜:::::::::::::::  
"""""""""""""""""""""""""""""""""""""".↑""""""""""""""""""""""""""""""""""""
∩( ・ω・)∩ (゚д゚) (・∀・)(゚∀゚) (´-`) (´・ω・`) ('A`) (・A・) ( ´,_ゝ`)プッ (-_-) (ノ∀`)アチャー 

            高い           まあまあ             低い


あくまで俺の個人的意見なんで反論は多々あるかと
455作者の都合により名無しです:05/02/17 19:24:17 ID:vd0BB/x+0
語ろうぜスレだけでなくここにも貼ったのか。
どうしようもないなこの馬鹿は。

荒らしはスルーで何事もなかったように再開な
          ↓
456作者の都合により名無しです:05/02/17 19:38:17 ID:vd0BB/x+0
>Z戦士氏
最後の野沢雅子ボイスに笑った。刃牙は本当に影響受けやすい単純なバカだなw

>青ピー氏
今回もエルフの歴史の悲惨さが美味く語られたな。ガラがどう解決していくのか。

>ゲロ氏
今と昔の合わせ鏡だな。ギンコ、今回は本当に台詞が素晴らしい。仙人みたいだ。

457作者の都合により名無しです:05/02/17 21:17:21 ID:nrFgv+cs0
>454
ひええ・・・これ語ろうスレに貼ったの俺だ。ここに転載されるとは。
ギャグのつもりだったんだがマジすまん。
458作者の都合により名無しです:05/02/17 22:40:36 ID:Mljaf3OD0

今回の蟲師は今までの中で一番ギンコがギンコらしくて良かった。
終わり方も原作の蟲師に遜色ないレベルだな。「全ては、循環している」の台詞がいいね。

バスタードも次回以降の複線らしいものが詰まってて良かった。
でも四天王で一番格下で弱いガラが主人公か。アビゲイル好きな俺はアビのSSが良かった。
459作者の都合により名無しです:05/02/18 00:59:09 ID:Hef20zuw0
ガラは確かに四天王で一番弱いと思うけど、一番人気あるよね。
俺も一番好き。SSも楽しみにしてる。他の四天王も好きだけど。

ところでここ最近IDの末尾がほとんどゼロかオーの気がするんだけどなぜだ?
460作者の都合により名無しです:05/02/18 09:39:26 ID:ZlMQNTvh0
そうかな?ネイとアビゲイルはそこまで強くないと思うけどな。
ガラとネイが本気でやりあえばガラが勝つと思うし。
カルス以外はいいとこ同格でしょ。一番好きなのはアビだけどね。
461ギャグSS日和:05/02/18 10:45:38 ID:qEbgocJD0
第二話「神界セルフパロディ10番勝負+後書き」
※拙作「のび太の神界大活劇」を読んでないとどこで笑えばいいのか分からない恐れがあります。

その一 もしも作者がヤマジュンだったら
のび太が見知らぬ部屋で目を覚ますと、ドアが開いて、一人の男性が姿を見せた。
(ウホッ、いい男・・・!)
そう思っていると男は突然のび太の目の前で学生服を脱ぎ始めた・・・!
「やらないか」
いい男に弱いのび太は(以下自主規制)

その二 人間失格・零崎のび識
「ほら、糸をこうやってこうやって・・・」
のび太が巧みに糸を操ると、それはプリムラの身体に巻きつき、一瞬でバラバラにした。
「・・・あちゃあ、間違えて曲絃糸を使っちゃったよ。ゴメンゴメン」
サマサのコメント「西尾維新大好き!」

その三 ドラえもんは肝心な時にしくじる
ドラえもんたちがのび太を見つけた時、のび太は大蛇に襲われていた。
「スモールライト!」
その瞬間、蛇の大きさが数十倍になった。
「しまった!これはビッグライトだ!」
462ギャグSS日和:05/02/18 10:46:43 ID:qEbgocJD0
その四 マネージメント
「プリムラを連れて行くって・・・どういうことなんです!」
「これを見てください」
アザミが差し出した紙にはこう書いてあった。
<メンバー大募集!身長150センチ前後の可愛い子求む!詳しくはアイドルプロダクション××まで>
「今はチビっ子ブーム。流行にのっとりましょう」
「プリムラはそんじょそこらの子とは違うからねえ・・・コレがかかるよ?」
「稟さんがマネージャー始めちゃったー(ガビーン)!」

その五 マネージメント2
「ボクを・・・どうするつもりなの?」
「ククク・・・これを見ろ!」
グロキシニアが(以下同文)
<スタイルに自信のあるあなた、セクシーアイドルになってみませんか?オーディション受付中!>
「え〜、でもお、ボクそんなに自信ないよお〜(クネクネ)」
「明らかに乗り気だー(ガビーン)!」

その六 その目的は
テレビにはアザミの姿が映し出されていた。
「我々の目的はただ一つ・・・」
世界中が固唾を飲んで見守った。
「一日車掌さんになることです!」
ズデーン(ズッこけた音)

その七 虚弱体質
そこにはいつの間に現れたのか、アザミが立っていた。
彼女はいつもの白衣姿ではなく、血のように真っ赤な服を着込んでいる。その手には、細長い棒のようなもの―――
それには点滴と輸血用血液が繋がれている。
「ゲホッゲホッ・・・よくも・・・ゲホッ、やってくれましたね・・・ゲボオ、そ、それでは地獄を・・・
ゲホッ、始め、ましょう・・・ゲホッ!」
「いや、あんたの方が地獄に落ちそうですから、残念!虚弱体質斬り!」
463ギャグSS日和:05/02/18 10:47:38 ID:qEbgocJD0
その八 すごいよ!稟さん第二部地獄校長ジゴック編
「フフフ・・これがグランゾンです。さあ、行きますよ!」
アザミは思い切り力んだ。そして・・・
「・・・動かねえぞ、どうなってんだ?」
ドラえもんが道具で様子を探ってみた。
「・・・死にました」
その場の全員が顔を見合わせ、次の瞬間何もしてないのに何故かボロボロになったのび太たちが
狂ったような歓声を挙げた。
「勝った・・・!」
稟の目には美しい涙が溢れていた。

その九 腹黒い女
「・・・何しに来たんですか。あなたの手で、私を殺しにでも?」
「違うわ」
しずかはそれを否定し、言った。
「あたしの出番が全然ないから、見せ場を作りに来たに決まってるじゃない!」
「・・・・・・」
アザミ、さらなる人間不信へ。

その十 手紙
「アザミからの手紙だ・・・読んでみな」
<私はこれから先も、自分がしたことを後悔することは恐らくないでしょう。しかし、いつか―――ほんの少しの確立ですが、
後悔することがあるかもしれません。あの時死んでいたら、きっとその僅かな可能性も無くなっていました。
だから―――あなたたちが助けてくれたことを、感謝します。ほんの僅かでも―――可能性を示してくれた事に>
「・・・アザミ・・・」
ふと稟がしずかの方を見ると、文面が目に入った。それにはこう書いてあった。
<コマネチ>
「ええ〜〜〜っ!?これでなんであの三行に!?」
464ギャグSS日和:05/02/18 10:48:21 ID:qEbgocJD0
後書き
いやいやいやいや、とうとう終わりました<神界大活劇>!
半年にも渡って続いた連載をこうして終わらせることが出来たのも、暖かい応援を送ってくださった
みなさんのおかげDEATH!・・・ん?誰かが肩を叩いてる。
そこにはハブられた登場人物たちがいた。
「あの・・・私たちの出番は?」
・・・それでは最後にご挨拶。
本作品をご愛読してくださった皆様。感想を書いてくださった皆様。
このような至らぬSSを見守ってくださり、まことにありがとうございました!
「聞いてないーーー(ガビーン)!」
465作者の都合により名無しです:05/02/18 10:50:35 ID:GW1/MU1L0
>>459

304 名前:マロン名無しさん 投稿日:05/02/10 09:26:24 ???
>>303
IDの末尾が「0」だとパソコン、「O」だと携帯。


やっぱあっち見てない住民もいるんじゃん
466サマサ ◆2NA38J2XJM :05/02/18 10:51:06 ID:qEbgocJD0
投下完了。
神界本編じゃとても書けなかったネタです。マサルさんネタ多し。
いつかは鬼事の京都編も書きますが、しばらくはギャグを書きたい気分。
467作者の都合により名無しです:05/02/18 11:57:39 ID:CTbkpeGoO
サマサさん、深海はそれなりに好きだったけど…
ギャグはやめたほうがいいのでは?
468作者の都合により名無しです:05/02/18 14:32:19 ID:HCH1FMVL0
俺は結構楽しめましたよ。
でも、神界の後半部分に感動した一人としては
作者自ら作品をパロディとするのはどうかとw
469ふら〜り:05/02/18 20:00:42 ID:4qWIeLON0
>>青ぴーさん
「ジョジョ」のカーズみたいですねン=ヴォス。にしても読めば読むほど、掛け値なしに
大魔王。実力も邪悪さも凄い。でもこういうのと、今のところまだコメディなガラ&メイ
が激突、というのはなかなかに燃えます。で道中、いろいろあって二人は……と。楽しみ。

>>ゲロさん
いいですね、こういうのも。故郷を彷彿とさせるもの、が「匂い」というのはなんとなく
解ります。山なら土と木(私はこれですね)、海なら潮風、町なら人いきれ、とか。さて、
ほのぼのがあり、重く暗いのもありのこの物語も後半戦ですか。まだまだ期待してますぞ。

>>サマサさん
アザミの、本編とのギャップが可愛いです。何だか、NG集みたいなノリで読めましたよ。
なので浮かんだイメージは「お疲れ様〜!」してる一同。ゲーム「獣王記」の如く。まあ、
本編終了直後ならちょっとアレかとも思いますが、これぐらい時間を置けば良いかと。
470五 ◆89aIROQ50M :05/02/18 20:24:56 ID:Pxtbnf9/O
久しぶりに5つ投下します。
某予備校の直前講習で、外泊しておりました。



>>339 おぉ!自分のSSがまとめサイトに!その上、添削と見やすい様に編集までっ!!
亀レスながらバレさんありがとうございます。光栄の至りです。
>>340 さんありがとうございます。合格しないとSS以前の問題ですからね。
頑張ります。
471バキ外伝デス・ゲーム第二十一話:05/02/18 20:28:31 ID:Pxtbnf9/O
花山と争銘の戦闘開始より同時期。
ウィリアムが、スペックの落下地点へ向かっていた。

落下した際の音と、僅かな視力を便りに探すが……いない。
腰まである高さの植え込みを、丹念に探すがどこにもスペックは見当たらない。
(まさか…逃げたのか?あれだけのダメージを喰らって?)ウィリアムの心に、焦りと不安が染み込み始める。

足に、何かが当たった。枝を払いのけて目をこらしてそれを見た。
ボロボロのジャージに包まれた足。(…何だ、いるんじゃねぇか。)思わずほくそ笑む。
いつ不意打ちを仕掛けられても先手を取れるように、警戒しつつ上半身を隠す枝を払う。

(……誰だこいつ?)スペックでは無い。どこにでも居そうな中年の日本人男性だ。
首を奇妙にねじ曲げられ、口から血を流したそれが、スペックのジャージを着て倒れている。
それを確認した瞬間、背後からペキペキッと枝が折れる音がし、次いで視点が異様に高くなった。
状況を飲み込めぬまま、視界が逆さまになり、高速で流れた。
ゴシャアッ!!と凄まじい音がし、ウィリアムの頭から背中にかけて衝撃、そして激痛が走る。
プロレスのパワーボムのような技だった。「カッ……カハッ…」肺から無理やり空気を絞り出され、呻く。
その腹に強烈な蹴りが入り、枝をへし折りながら蹴り転がされた。
痛む体に鞭を打ち、追撃が来る前に立ち上がる。…しかし、スペックの姿は見当たらない。
30秒程が経過し、突然背後の枝葉が音を立てた。とっさに右ローを放つ。軌道上の枝葉が綺麗に消滅するような蹴りだった。
しかし、手応えは無い。背後に殺気を感じ即座に身を屈める。その頭上を轟音と共に拳が通り過ぎた。
(この…ペテン師がぁっ!!)
怒りを込めた渾身のローを振り向き様に放つ。鞭のような打撃音が空気を裂き、「グッ…!!」低い悲鳴を漏らして、その背後の影…スペックが膝をついた。
風切り音と共に、その顔面に革靴がめり込み鼻血を飛び散らせた。
「ブハァッ!!」喘ぐスペックの腹へ、先のお返しとばかりに爪先が刺さる。強靭な腹筋さえ意味を為さぬ威力だった。
うずくまるスペックの背中へ、常人の背骨なら一撃でへし折る踵落としが叩き込まれた。
余りの威力に、悲鳴や呻き声も上げる事が出来ずに、次々と高破壊力の蹴りが叩き込まれていく。
472バキ外伝第二十一話続き:05/02/18 20:30:48 ID:Pxtbnf9/O
「どうだい?あの頃とは桁違いの威力だろうっ!?」うずくまったスペックを蹴り続けながらウィリアムが問う。
無論スペックに答える余裕は無い。いや、この状態こそが何よりの答えだった。
「終わりにしようか。」ひとしきり蹴り続けた後に呟くと、サッカーボールキックを顔面へ見舞い、仰向けに倒れさせる。
そして天高く右足を振り上げ……『倒す』為では無く『殺す』為に。死神の鎌が生命を刈り取るよう様に、喉へ踵が振り下ろされた。
その瞬間、スペックの眼に光が宿った。一瞬の内に跳ね起きて、その踵を右肩と腕で受け止める。
痺れる様な衝撃と痛みにも構わず、一気に振り上げた。

バランスを崩し、転倒するウィリアム。受け止めた右足の足首を掴んで持ち上げ、逆さ吊りの頭部へ左のショートアッパーを放つ。
同時に、ウィリアムも体を捻って自由な左足で胸部へ膝を叩き込む。
お互いの攻撃がカウンターとなり、スペックの手が緩んで両者が倒れ込んだ。
比較的ダメージの総量が軽かったウィリアムが、若干早く起き上がり、バックステップで距離を取った。
次いでスペックがゆっくりと起き上がる。その顔面は血に濡れて狂気の笑みを浮かべていた。
「嬉シイネェ。アノボウヤガココマデ化ケルナンテ。」
そう呟くと、腹部が異常に膨らみ始めた。
(俺ノ繰リ出ス無呼吸連打。ソノ蹴リガ通ジルカドウカ…)両の拳を天に向けて、中指を出した奇妙な握りを作り身構える。
(試シテミナッ!!!)そう心中で叫び、スペックが仕掛けた。しかし、無呼吸連打は肉を叩く鈍い音と共に不発に終わった。
狙いすましたカウンターのローが脚を直撃し、一撃の元に転倒させたのだ。
「17年間、鍛えてきただけだと思ったかい?」
ウィリアムが凄まじい脚力で跳躍し、全体重を乗せたストンピングを腹へ叩き込んだ。
口から吐寫物と血を溢れさせて、白目を剥いて痙攣するスペック。
それを見下ろし呟く。「あんたの得意技も調査済みだよ。」
(呆気ねぇな……殺すまでもねぇ。)失望を露わにした顔で、スペックを置き去りにして植え込みを抜け出す。
「警察に通報でもしときゃ、引き取りにくるだろ。」そう一人ごちると、公衆電話からスペックの件を通報した。
473バキ外伝第二十ニ話:05/02/18 20:33:11 ID:Pxtbnf9/O
通報はしたものの、「死刑囚の件だけで無く、他の連中の件でも忙しくて人手が足りない。
到着までに少し時間が掛かる」と言われてしまった。
(…俺も警察に素性がバレるとマズい。少しの間だけ見張って警察が来たら帰るかな。)
ベンチに腰掛けて煙草をふかす。(あれから17年か…。あの禿は人間なのか?全く外見が変わってねぇ。)

……17年前。ウィリアムはマフィアの三下。唯の使い走りだった。
生来の異常な脚力でケンカは負けなしだったが、それだけでやっていける世界では無い。
いつ光が見えるともわからない日常。それがある日崩れ去った。
組織の所有するナイトクラブやアジト等の物件が次々に襲撃され、用心棒や店員、客に至るまで皆殺しにされる事件が起こった。
驚くべきは、それがたった一人の怪物的な大男が素手で為したという事だった。
精鋭部隊を投入するも、健闘空しく次々と潰され、最後の一件を残すのみとなる。
迎撃に大量の人員と銃器を投入し、もはや軍隊の駐屯地と化したアジト。
そこにはやはり、ウィリアムの姿もあった。……そして怪物…スペックが訪れる。
信じられない光景だった。素手で軍隊並みの武装をしたマフィア達が虐殺されたのだ。
ある者は果敢に立ち向かい、またある者は逃げ出した。結果、殆どが死んだか、怯えて背を丸めて隅で震えていた。
そして唯一残ったウィリアムとスペックが闘った。
…その結末は、決着がつく前に州の軍と警官隊にアジトが包囲されるという形で終わる。
弱りきった組織は一網打尽にされ、スペックはその10年後に逮捕、死刑判決を受けた。
一人逃げ延びたウィリアムは、単身で組織を興し…自らを鍛え続けた。
あの時の決着を着ける為に。武装したマフィア達でさえ歯が立たない怪物を倒す為に。
修練を続け天性の能力に磨きを掛け、怪物の情報を調べ尽くした。
(あんなバケモノが大人しく檻に入ってるワケがねぇ。いつか必ず奴は出て来る…。)

…5、6分が経った頃。植え込みから音が響いた。
474バキ外伝第二十ニ話続き:05/02/18 20:35:40 ID:Pxtbnf9/O
ベンチから立ち上がり身構える。(あの野郎、まだ動けるのか!?)
…植え込みからスペックがのっそりと顔を出す。
上半身は裸で下には先程の囮にした一般人から奪った白のスウェット。
どういうわけか、体が一回り大きくなり全身に太い血管が浮き出ている。
「『硬気功』ト『バンプ・アップ』ッテ奴サ、ボウヤ」
困惑するウィリアムを嘲笑うように喋るスペック。

バンプ・アップとは脳などの血流を全身に回して身体機能を強化する技術。
硬気功は、特殊な呼吸法と修練で気を体に送り、身体、特に防御機能を高める技術だ。
無論、その場ですぐに出来るものではないが、この怪物はそれをこなしてみせた。

「モウ蹴リハ通用シネエゼ、ボウヤ。」そう言って無呼吸連打の構えを取るスペック。
2人の距離は3m強。ウィリアムの脳は凄まじい速度で対応を考え出していた。
もし本当ならローでは止められない。上半身への一撃を当てる必要がある。
もしブラフなら?つまり、こちらが上半身へハイを出した隙を狙い、低空タックルで間合いを詰めて来たら。
脚力には自信が有るが、耐久力、特に上半身はバキ達地下のファイターには遠く及ばない。
接近されラッシュを掛けられる、それは死を意味していた。
「行クゼボウヤッ!!」アスファルトの床にひびを生じさせる程の踏み込みで、スペックが駆けた。
蹴りが届くギリギリの距離で、スペックが身を屈める。(やはりブラフかっ!)既にそこを狙って必殺のローが飛んでいた。
しかし、渾身の一撃は空振りに終わる。スペックの居た空間には影しか無い。
とっさに顔を上げた所に、巨大な丸太のごとき膝がめり込んだ。
凄まじい力と慣性で、仰向けに押し倒される。痛みとダメージで砕けた意識を組み立て直す。
…自分の体にスペックが馬乗りになり、膝で脚をロックしている。更にこちらの両腕はしっかり押さえつけられていた。
…『耐えられる様に見せつける』・『瞬時に巨体を飛ばす』その為の身体強化技術だった。
スペックが邪悪その物といった会心の笑みを浮かべた。
そこからの唯一の攻撃手段、頭突きが何度も何度も振り下ろされた。
それはウィリアムが絶命しても尚、止むことは無かった。
475バキ外伝第二十三話:05/02/18 20:38:28 ID:Pxtbnf9/O
花山が去った後。争銘が振動と全身、特に顔を走る激痛に目を覚ました。
救急隊員らしき人物達が、自分を担架に乗せている。
(そうか…俺ぁ負けちまったんだな。)
不思議な感覚だった。怒りや悔しさよりも爽やかな開放感が心を占めていた。
この怪我で生きているという事は、恐らく花山はすぐに救急車を呼んだのだろう。
担架からストレッチャーに乗せられて、車内後部へ運ばれる。
救急隊員達がアクセルを踏み込んだ………しかし、なぜか車が動かない。
一人がドアを開け、外を見た。半裸で血まみれの巨人が、車の後部を持ち上げている。

「ひっ」隊員が短く悲鳴を上げると同時に、巨人が車を力づくでひっくり返し、横転させた。
轟音と共にストレッチャーから車内の壁に叩きつけられ、争銘が喘ぐ。
誰も状況を飲み込めないまま、割れた窓やこじ開けられたドアから次々と隊員達が引っ張りだされる。
その度に肉が裂ける音や、血の滴る音、小さな悲鳴が聞こえてきた。
突然後部ドアが開いて、入れ墨に彩られた手に争銘は引きずり出された。
手足を握撃で破壊され、身動きがとれない争銘を巨人・スペックが見下ろしていた。
「随分ヤラレタネ、ボウヤ?」スペックが問い掛けるも、争銘は顎が外れていて喋れない。
「コノ様子ダト、アノボウヤハモウ帰ッタカ…。マァ良イ。」一方的に話し続けるスペック。
「アイツガ気ニナルンダロウ?チョット待ッテナ。」
そう言うと血の匂いを振りまきながら、闇へ消えていった。
その間、争銘はただ横たわっていた。手足の自由が利かない為、反撃も逃避も出来ないのだ。
2分もしない内にスペックは戻ってきた。右手には顔面の潰れたウィリアム、左手には拳銃。
通報で駆けつけた警官から奪った物だ。
「やぁ久しぶり!君があの世で寂しくないように、負け犬同士僕もついててあげるよ!」
スペックが、声色を真似て遺体を腹話術のようにガクガク揺らしている。
この世で最も醜悪な腹話術だった。
「俺ハ借リヲキッチリ返ス主義ナンダ。無論君ニモネ。」
言い終えると遺体を争銘の隣へ放り投げ、拳銃を争銘の口に突っ込んだ。
「グッドラック」夜の公園に幾度か銃声が響いた。
476五 ◆89aIROQ50M :05/02/18 20:43:14 ID:Pxtbnf9/O
投下終了です。またしばらく間が空きますがご了承下さい。

尚、スペックの過去は外伝さんの『スペック外伝』をオマージュさせて頂きました。
ご不満があれば、削除依頼を出してくだされば訂正して再アップ致します。

サマサさん、お疲れさまでした。
477作者の都合により名無しです:05/02/18 21:15:34 ID:sQIT2h170
五さん、乙!
スペックの怪物ぶりが際立つ戦いだった
私見だがどの書き手が書いても、スペックは他の死刑囚より頭ひとつ抜けてる気がする
やっぱ原作で唯一本当に強かった死刑囚だからだろうな
478蟲師 虚仮風:05/02/18 21:29:49 ID:a0NT0yzA0
ひとつ空けます。

479蟲師 虚仮風:05/02/18 21:30:34 ID:a0NT0yzA0

「こりゃなんだ……?」
 山を包む、大風。
 それは、圧倒的な迫力で見る者を威圧する。「あそこにはいけない」「近付いてはいけない」――そう、人の
危機意識を煽り立てる。人を、ざわつかせる。
 それは、蟲師ギンコもまた同様。例外ではない。

 ギンコは麓の茶屋に居た。風を見て、引き返してきたのである。
 なけなしの金をはたき、蕎麦を頼む。その間に周りの客を見渡す。明らかに地元の人間ではない者達で、
溢れかえっていた。彼らも恐らく、件の大風を見て尻込みしたクチだろう。
「この店は大繁盛だな」
 ギンコは、ぼそりと呟いた。
「有難い事よ」
 ギンコの背後から、声がした。店の娘らしい。彼女はギンコの机に蕎麦を置き、その後こう続ける。
「あの風で困ってる人達には悪いけど、店は潤うし言うことないわ。ウチは山の向こうから仕入れはしてないから、
品切れになることもないし」
「大した商魂だな」
 ギンコは、娘を見てそう言った。実際、運の良い店だ。
480蟲師 虚仮風:05/02/18 21:31:20 ID:a0NT0yzA0

「まあ、こんなことあんまり大きな声で言っちゃあマズいんだけどさ。ウチで働いてる女のコが、あの風で困ったこ
とになっちゃってるみたいだから」
「困ったこと?」
「そのコの弟がね、大風の中に入っちゃったんだって。それから、音沙汰がない……って、あんなのの中で生きて
るとは思えないけど。まだ、ちっちゃい男の子だったらしいんだけどねぇ」
 娘は、さらっと明るく、まるで昨日食べた美味しい夕食の話をするが如く語った。
 ギンコは、娘の話から疑問を覚えた。子供が、あの風の中に……?
 もしや――
「なあ、その娘にちょっと会わせてくれんか?」
「仕事が終った後なら大丈夫だと思うけど……何、襲う気?」
 この女は、仕事中だってのにこんなに長く客と喋ってても良い物なんだろうか、とギンコは思った。
「……まだ確信は持てないが、俺の範疇かもしれない。弟のことを訊きたい」
 そして、ギンコはこう続けた。
「悪いな、あんまり繁盛しなくなっちまうかもしれん」

 日が西の空に落ちる頃。
「お待たせしました!」
 若い娘が、ギンコの待つ店の外に出てくる。相当に焦っていたのか、息が荒くなっている。
 それだけ、弟のことを思っているということか。
「正直、諦めかけてたんです。まさか、弟を救えるかもしれないなんて……」
 
481蟲師 虚仮風:05/02/18 21:32:29 ID:a0NT0yzA0

 二人は、店の外に置いてある長椅子に腰掛けた。
 しかし、弟を救うとか言った覚えはないのだが。まあ、どうせあの女が勝手に話をデカくしただけだろうし、
救える可能性は実際高いしいいか。ギンコはとりあえずそんな感じで納得しておいた。
「弟のことを詳しく教えて欲しい」
「弟は……私の弟は、とにかく気が強く見せようとするんです。本当は臆病なのに、私の前では妙に気を張
る子でした。きっと、自分の弱い面を私に見せたくなくて、そうしていたんです」
 彼女は涙を流し、そして、あの日の事を語った。
「あの日、私達はたまたまあの風の近くを通る道で家に帰ろうとしていたんです――」

――おねえちゃん、凄い風だね。
「そうね。近付いちゃダメよ。危ないわ」
――…見ていてよ、おねえちゃん。
「あッ! ダメっ、そっちにいっちゃ――」

「…バカ、本当にバカよ、あの子。なんで、あんなこと……」
 溢れ出す熱い涙はとめどなく。嗚咽が、漏れる。
「……弟は、すうっと中に入っていったかね?」
 ギンコは、静かな声で娘に尋ねた。
「ええ……本当に、何の抵抗もなく、まるで吸い込まれるように――」 
 ギンコの中の疑問が氷解し、確信だけが残る。
「それが本当なら……弟は無事だろう」
「えっ!? ほ、本当に……!?」
 娘の驚きと喜びの入り混じった声に頷いた後、
「蟲だよ」
 そう、言った。

482ゲロ ◆yU2EA54AkY :05/02/18 21:34:18 ID:a0NT0yzA0
読み切り書きたいなあ。シリアス、エロ変態ギャグ、共に。
なんか、ここ数日調子が良いような気がします。

>>449
今回も疑いようのないハッピーエンドになる予定。というか、バッドになりようがない。

>>450
気持ちにズレが生じるんですよね。ああ、あの頃と俺の心の動き方が違うなあ。とか思って。
なんか寂しい感じなんです。

>>451
ちょっと終りあっさり過ぎたかなあ……と心配だったのですが、安心しました。

>>456
ギンコの超然さを表現しようと心掛けました。

>>458
あらゆるものは繋がっている、という前提で物事を考えているので、そういう台詞が出てくるのでしょう。

>>469
俺の場合はゲームだったりします。マリオ、ドラゴンバスター、赤い長靴をはいた猫、鉄道王、バルーンファイト…
幼少の頃の記憶は、これらのゲームと結びついています。ヘンなガキ。あ、あとタートルズ。悪魔くん。

ではまた。今週中には。
483作者の都合により名無しです:05/02/18 23:11:13 ID:Lay5Sp4d0
ゲロさん絶好調だな。
早くも新省スタートか。今度もハッピーエンドという事で期待しております。
やはり辛い終わり方より幸せに終わる方がいいからね、SSの中でくらい。
484Z戦士への入門:05/02/19 08:45:26 ID:bsZbSQzo0
「押忍!」「押忍!」
周囲からそんな掛け声が烈火の如く響き渡っている。
早朝トレーニングの一環であるアニメ鑑賞を終えた刃牙は(あくまでもトレーニング)
これまたトレーニングの一環なのだろうか神心会館本部道場を訪れていた。
トランクス一枚で背中にはどこで仕入れたのか巨大な亀の甲羅を背負っている。

白、緑、茶、黒、様々な帯の色が目に付くがその稽古風景は実に統率されたモノである。
突き、蹴り、手刀、帯の色に関係無く皆鮮やかに技を繰り出していた。
流石は門下100万人と言われる神心会である、だが彼が求めているモノはここには無かった。
(あるいはヒントの一つでも・・・と思ったんだけど、無駄足だったか)
そんな物思いにふける刃牙を誰もが興味深そうにチラチラ見ている。
・・・が、皆話しかけるドコロか近づこうとさえしない。
当然である。
亀の甲羅を背負いトランクス一枚で正座しながらブツブツ文句を言っている。
そんな変態には誰も近づきたくない・・・一人の物好きを除いて、
485Z戦士への入門:05/02/19 08:46:29 ID:bsZbSQzo0
「よっ!久しぶりじゃねえかよチャンプ、最近は闘技場にも顔を出さねえし心配してたんだぜ」
神心会のデンジャラスライオンこと加藤清澄だった。
ズケズケ距離を縮めてくる加藤、心なしか不機嫌な面持ちになる刃牙。
「っつーか、なんだぁ?そのドでかい亀の甲羅は?なんか変な宗教でも始めたのか?」
ある意味的を得ている加藤の質問だが、まったく答えようとしない。
「まぁいいや、せっかく来たんだしよ、見学なんかしてねえで少しヤってけばいいや」
言いながら刃牙の肩にポンと手を置く加藤、鬱陶しそうに払いのける刃牙。
「エネルギー弾が無い、舞空術が無い、残像拳が無い、以上の理由で君らはZ戦士として不完全だッッ」
「・・・はぁ?」
開口一番ワケの分からない事をのたまう刃牙、そのまま道場を後にする。
「お、おい!人がせっかく誘ってやってんのにZ戦士ってなんだそりゃッ!?ちょ・・・待てコラ!」
後ろでキレ気味の加藤が何やら吼えているが、刃牙は相手にしない。
(・・・やっぱりあの人しかいないかなぁ)
そう思った彼は次なる目的に向け再び足を動かした。



486Z戦士への入門:05/02/19 08:47:18 ID:bsZbSQzo0
「で・・・・私の元を訪ねて来たというワケか」
神心会から相変わらず変質者チックなスタイルで刃牙はその男と対面していた。
かの最大トーナメント準決勝戦で刃牙に惜敗したものの烈士(英雄)と称えられる程の武術家、烈海王である。
心なしか若干迷惑そうだ。
「烈さんは中国人だからドラゴンボールだって知ってるはずだし、かめはめ波はもちろん気功砲だって出せるでしょ?」
さも当然と言わんばかりの勢いで問い詰める刃牙
確かにドラゴンボールは中国でも知られているが日本や欧米に比べてさほどメジャーではないし、
当然『かめはめ波』や『気功砲』を出せる中国人なんていやしない。
「かめはめ波というか・・・
まぁそういう気功の類については我が国でも医術等に取り入れられてるし、君よりかは幾分詳しいつもりだが・・・」
烈はゴホンと一つ咳払いをしてから
「だからといって君が納得いくような答えはとても出せんと思うぞ?」
っていうかなんで私がこんな事を説明しなければならんのだ?
そう思いつつもそんな事はおくびにも出さない烈海王、相変わらず出来た人間である。
「それと私も一応ドラゴンボールなる物は知ってはいるが・・・」
この烈海王という男、武術の腕はもちろん実直で義にあふれる正に「漢」と書いて「おとこ」と読むような出来た人物ではあるが
「中国人だからって事とは全然まったくこれっぽっちも関係ないからなッ!!」
愛する母国のため故郷に対するほんの僅かな偏見をも許さない堅物でもある。
487Z戦士への入門:05/02/19 08:48:11 ID:bsZbSQzo0
「そもそも普通に考えて無理だろう?手からビーム出すとか・・・気功とかもうそういうレベルではないぞ」
第一そんな殺人技が使えるなら貴様の様な妄想小僧に遅れをとるかよ!・・・という言葉はグっとこらえる海王。
「・・・憧れる気持ちは分かるが、もっと現実的に考えたまえ」
「ドラゴンボールは現実(リアル)じゃない・・・そんな風に考えてた時期が俺にもありました(アニメにハマるまで)」
「ありましたって・・・まぁどう思おうと君の自由ではあるがな、私にはそんな芸当は不可能だぞ」
「でも俺が知る限りそれに一番近いのは烈さんなんですよ、中国人だし」
あくまでも烈が中国人である事にこだわる刃牙
「それに太陽拳も使ってたじゃないですかッ!?」
どうやら彼は烈が克己戦で見せた目潰し攻撃を太陽拳だと思い込んでるようだ。
「だから中国は関係無いと言ってるだろ!それにあれは太陽拳じゃない!そもそも中国拳法にはそんな技は存在しない!
少なくとも私が学んだ白林寺ではな!」
しつこく食い下がる刃牙に、いい加減キレそうになる烈。
しかし刃牙は特に動じる様子も無く、というか何か悟った様な表情をして答えた。
「成る程ね・・・」
488Z戦士 ◆YvMQSqnLNo :05/02/19 08:56:47 ID:bsZbSQzo0
投下終了!
ギャグ寄りのSSなのでもうちょっとテンポよくサクサク書きたいんですが、どうにも難しいモノです。
場面描写がクドくなりがち。

>>ふら〜りさん
今のトコロ思い込みの激しい刃牙君に常識人が突っ込みを入れるというスタンスで書いております。
梢江のプレゼントを渡す描写は正直いらんかなとも思ったんですが、後の展開に必要と思いちょっと強引に入れてみました。

>>450さん
もし彼がドラゴンボールではなくバスタードに嵌っていたのなら考古学あたりを真面目に勉強してたと思います。
「古代の魔法文明を復活させるんだ〜!」とか言って^^

>>456さん
個人的に最後の野沢雅子ボイスはもうちょっと上手く使いたかったんですけどね、最初から考えてたネタだけに。

>>青ぴーさん
忍者の証途中からしか読んでなかったので最初から読ませて頂きました。
メイとガラの絡みがいい感じで面白いです。というかメイ可愛すぎ!
ン=ヴォスとガラがこれからどう対決するのか今から楽しみです^^
489帰って来たドラえもん外伝:05/02/19 11:14:45 ID:ADnwxgAn0
パーマンは焦りを感じていた。パワーが伴う攻撃ではスピードが落ちる。だが目の前の男の場合は
別なのだ。パワーが伴う攻撃でも十二分にスピードが伴っている。
「怖気づいたか?」勇次郎がパーマンを挑発する。
冬の始まりだから気温は低い。この夜中に決闘なのは酔狂かもしれない。しかも気温で体が冷える
筈なのに逆に火照っている。
勇次郎の背中には”鬼の貌”と呼ばれる筋肉が出現していた。
「のび太君・・・。」意を決した様にドラがのび太に話しかける。
既にのび太からは相手の能力をコピーする道具を外した。つまり今は普段の野比のび太である。
「わかってる。チャンスは一度きりだ。」
先に突っかけたのはパーマンだった。最高速度で踏み込み、突きを放つ。そして上段蹴りを入れる。
先刻のコンビネーションよりも速い。
「むん!」
そしてストレート。どんな格闘家でもこの距離からは外せない。パーマンは思った。この鬼を倒すのは
自分であると。自分以外この鬼に勝てる者等この世に存在しない。
だがパーマンの確信は失望へと変わった。手ごたえが全く無い。それもそのはずだった。
勇次郎は既に目の前にはいなかったのだから。馬鹿な。パーマンは焦った。自分が踏み込んでから0.01秒もかかってはいない。
例えガードしたとしても絶対にダメージは受ける。
490帰って来たドラえもん外伝:05/02/19 11:16:07 ID:ADnwxgAn0
「超一流同士の戦闘はコンマ一秒を争うもの!お前の攻撃など序の口ですら無い!」勇次郎が叫ぶ。
「へぇ、そうかい。随分と親切なんだな。後一発付き合ってもらおうか!」パーマンが負けじと叫ぶ。
コンビネーションでは無く一発。その一発だけが勝敗の鍵を握る。
「うぉぉぉ!!」
踏み込むと同時に拳を握りストレートを放つパーマン。そしてそれをハイキックで迎え撃とうとする勇次郎。
異変はその時起こった。パーマンの踏み込むスピードが神速にまで上がったのだ。つまり勇次郎のハイキックに対してパーマンが
カウンターを放った事になる。当たればの話であるが。
パーマンの目には全てがスローに見えていた。自分の拳が勇次郎の鳩尾に近づくのを。
「ぐがっ!?」
突如、パーマンは頭に衝撃を覚えた。何故だ。自分は確実にカウンターを当てた筈なのに。
「ふははは!!若造が!なぜ俺がハイキックを放ったか教えてやろうか!お前のカウンターをぶちかましで迎え撃つ為だ!」
パーマンの意識は遠のいていった。自分が立っているのか寝ているのかすらわからない。終わるのか。自分の生命が・・。
ズドン。
491帰って来たドラえもん外伝:05/02/19 11:17:20 ID:ADnwxgAn0
パーマンは確かにその音を聞いた。銃声?誰が?
「予想もしなかったぜぇー。こんな場所で銃とは!」
呻き声を上げながら倒れる勇次郎。
「やった・・・。」
銃声の主はのび太であった。パーマンが倒れた直後に勇次郎をショック銃型麻酔銃で撃ったのだ。
勇次郎はスースー寝息を立てて寝ている。
「さあ、ドラえもん。今の内にもしもボックスで!」のび太が叫ぶ。
数分後、勇次郎の体はバキ世界へと送られた。
492帰って来たドラえもん外伝:05/02/19 11:18:00 ID:ADnwxgAn0
今回の投稿はこれで終わりです。
493ぬるぽ:05/02/19 12:51:42 ID:JxeKggujO
ぬるぽ
494作者の都合により名無しです:05/02/19 16:36:18 ID:JxeKggujO
>>493
ガッ
495作者の都合により名無しです:05/02/19 19:37:52 ID:9ZGe0qNF0
ねるぽ
前話
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/2-12.htm

ついに帝国の切り札とも言える存在、“死神”ギラーミンをも打ち倒した一行は、
魔王の御前へと続く最後の道であろう―――――長い長い螺旋階段を駆け昇っていた。

「ハァ、ハァ、みんなぁ〜。待ってよぅ〜」
明らかにみんなに引き離されているのび太が、息も絶え絶えに叫ぶ。のび太のひ弱は
いつものことながら、ドラえもんやジャイアンがあきれたように声をかける。
「だらしないぞ、のび太!」
「お前、ホントにあのギラーミンと戦ったのか?」
「そんなこと言ったって・・・」
「がんばれ。階段を昇りきったら、“ケロンパス”で回復させてやるから。」
そう言いながら、ドラえもんは、カエル模様のサロンパスをのび太に見せた。
魔王との戦いではのび太の存在が最大のカギとなる。確実に万全の体調で臨ませてやる
必要があるのだ。そのあたりは万全を期してある。が、当ののび太本人があまりにも
頼りないため、みな不安は隠せない。ジャイアンは、もう一度念入りに声をかけた。
「全く、きり丸なんてお前と体格変わんないのに、じいさん一人背負って平気な顔して
んだぞ。もうちょっとしっかりしてくれよ。」

いびつに歪んだ空間。要塞の見取り図から考えても、不自然なほどに長い道のりである。
「しっかし・・・さっきの階段もそうだったけど・・・魔王のやつはよっぽど“螺旋”が
好きなんだな。」
「だけど―――――長い! まるで空間が歪められてるみたいだ。」
「まさか、このまま永遠にループするなんてこたぁないよな・・・」
「大丈夫だと思うよ。それに時空系秘密道具が復活した今、それならそれで手はあるし。
ん?そうこう言ってるうちに―――――――ほら、もうすぐ階段が終わりそうだぞ。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コ――――――――――――――――――――――――――――…ン・・・

静寂と―――――無と――――――――――
荘厳なる最後の扉を開くと、そこにはただひらすらに真っ白く広いだけの空間があった。
6人の小さな戦士たちと、仮面の老人はその場に立ち尽くす。遠くに玉座が見える。
この真っ白い空間にそこだけが、奇妙に、不自然に、豪壮な細工が施されている。
その御前に静かに立つ者。待ちうけるもの。その姿は、遠くからでも判別できた。が。
彼らは慎重に歩を進め―――――――ようやく確信した。
『で、出木杉くん!?』
そこには、轟然たる王者の風格。神々しいメタリックブルーを基調とし、やはり
不自然なほどに美麗な細工を施された神秘的な鎧と真紅のマントに身を包んだ――――
彼らの仲間であり大切な友であるはずの―――――出木杉英才の姿が在った。

「やあ、よく来たね。みんな。」
穏やかな、いつもと――――そう。今まで日常の中で見せていたものとなんら変わらぬ
笑顔で、彼はドラえもんたちを迎えた。
「騒ぎに乗じて、地下牢を脱出したんだ。なんとかここまで辿りついたんだけど、
ここはもぬけのからさ。一体キスギーはどこにいったんだろう・・・」
大げさに芝居がかったしぐさで出木杉は――――出木杉の形をした何者かが言葉を紡ぎ出す。
それを切り裂いたのはジャイアンの怒声であった。
「つまんねぇ芝居なんかしてんじゃねぇぞ!」
ジャイアンが険悪な形相でうなる。続いてドラえもんが叫んだ。
「キスギー!お前の正体はわかっているんだ!出木杉くんの肉体を欲していることも!いや、
“欲していた”と言うべきか・・・!アーサー・“D”キスギー!いや――――――――――」
ここでようやく全員が声を揃えた。声高に凛として叫ぶ。
『“魔王”!!』
「・・・・・・・・なるほど。気付いていたか。ククク・・・
確かにこの者の肉体は私が支配させてもらったよ。ククク・・・・・・」
出木杉の形をした“ソレ”は次第に邪気を帯び、凶悪な形相へと変わっていく。
『クククク・・・クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
一行は後ずさった。目の前にいる人物は、確かに出木杉の姿そのままである。しかし、
その笑いは突然、彼らの知る出木杉とはかけ離れた下卑で野蛮で尊大な哄笑へと変化した。
「野郎!ついに本性を現しやがったな!」

『さすがに一度はこの私を打ち倒しただけのことはある。ここまで辿りついたことは
誉めてやろう。』
「へん!余裕ぶっこいてたって無駄だぜ!またぶっ倒してやるぜ!」
ジャイアンは不敵な笑みを浮かべて、挑発する。が―――――――――
『確かに。ここまで辿りついたお前たちならば、我を――――――――――
―――強大だったはずの魔力の大半を失った、今の我ならば打ち倒せるやもしれんな。」
「な、なに!?」
魔王は尊大な口調は変わらぬまま、しかし、その挑発をあっさりと肯定して見せた。
ジャイアン及び一行は、思わぬ返答にかえって警戒を強め、さらに後ずさった。
魔王は冷静であった。お互いの有する“力”と状況をあくまでも客観的に分析している。

『今の私はかつて魔界で貴様らと対峙した時ほどに強大な魔力を有してはいない。
“魔法”に代わる力、“科学”の力もいまだ不完全なままだ。だが――――――――
時空間は我が手に掌握した。我の忠実なる腹心、メジューサによって―――――――!
我は打ち倒されてもなお、幾度でも甦る。この戦い、お前たちには始めから一片の勝機も
なかったのだ! ワハハハハハハハハハハハハハハハ―――――――――!』
「バカ笑いするのは、少し早いんじゃないか? メジューサの対策ならこちらも立てている。
今ごろきっとドラミが―――――――――――・・・なっ!?」
突如、空間にあるビジョンが映し出された。それは安全な場所に移動させたはずの新拠点の
映像。恐らくは復活した時空間への入り口である黒い穴が開いているその前で、誰よりも頼れ
るはずの万能ロボット、ドラミが、ワンダー・ガールが、ローが石の像となって固まっている。
『ホログラムだ。今の私の魔力でもこのくらいの芸当はできる。――――感想はどうかな?
これは嘘やまやかしではない。メジューサの意識を通じて送られてきた現実の映像だ。』
「ド、ドラミちゃん!?」
「そんな・・・あのドラミちゃんがやられちゃったのかよ!?」
ドラも、のび太も、ジャイアンも、しずかも、ドラミをよく知る者の全てが凍りついた。

『ワハハハハハハハハハハハ!“ドラミ”か。その者も覚えているぞ。あの忌々しい黄色い
小ダヌキめが!だが、いかに対策を練ろうとも、やつには勝てぬ。勝てぬ理由があるのだ!』
さらに魔王の哄笑と演説は続く。
『やつは元を正せば、“我と同じく”“神”たる存在なのだから――――――――!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔王の腹心―――――時空の波をも泳ぐことのできる恐るべき魔物―――――メジューサ。
その正体は不明ながらも、ドラとドラミは一応の考えられる限りの対策は練ってきてある。
タイムホールに設置されたチューリップ型のタイムマシンには、「なんでも操縦機」が。
その頭頂部には、採取された魔界の瘴気を探知するアンテナが、予め取り付けられている。
これによって、メジューサが時空間へと逃げ込んだ際、その足取りを追う事も可能なはず。

タイムマシンの前面の窓ガラスは外からはただの鏡にしか見えないマジックミラーに張り
替えられていた。ただし、石化対策に効果があるかどうか定かではない上に、本体の強度が
大幅に低下するというデメリットを抱えている。

手鏡、置き鏡。スネオはうろ覚えの不確かな神話を頼りに、全身にそこら中にあった鏡を
貼りつけて、タイムホールの前を右往左往していた。武装のつもりなのである。
「よ、よーし!行くぞ!メジューサをやっつけるんだ!」
自分を鼓舞するように叫びながら、震える足を一歩前に踏み出―――――――せない!
決心しては躊躇する。もう幾度めだろう。実は先程からこれの繰り返しばかりなのである。
戦う決心をしたはいいものの、いざこちらから攻めるとなると、なかなか思いきりがつか
ない。いざ、今度こそ、とばかりにスネオは再びタイムホールへと向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

暗く冷たい時空の狭間に潜み、メジューサは一部始終を見続けていた。繊細で臆病な心ゆえ
に、ただじっと隠し部屋に隠れ潜む少年スネオ。メジューサほどの者が気付かなかったわけが
ない。しかし、メジューサは思い出しかけいた。その幽鬼のような肉体の奥に封じられし、
忌まわしい、そして同時に何よりも美しい大切な記憶。

どれだけ時空の波を泳ごうとも――――――決して辿りつけぬ遥けき彼方――――――
そう。意識は―――遠い遠い―――――神話の時代へ――――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
501ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/19 21:37:06 ID:34N5+ZuT0
今回分終了です。次回からは、ある物語をベースにメジューサ編です。
といっても次回で終わりですけど。

五様、感想どうもです。しかし、オリキャラだけで15人ですか。
それ+バキキャラ多数。これだけ人数多いと大変だと思いますが
(しかも携帯!)頑張ってください。僕自身は、携帯のメールは
めんどくさくて最近返信もスルー気味なくらいなので、その労力は
想像を絶します。個人的には克巳に大活躍して欲しいかな。
噂の勇次郎にいきなり不覚をとらせたじいさんも気になります。
502忍者の証:05/02/19 22:42:04 ID:bsZ0yF7Y0
うみにんさんごめんなさい、出なきゃいけないんで投下します。
>>439の続き。しかしもう次スレが近いですね。早いな・・。
503忍者の証:05/02/19 22:43:00 ID:bsZ0yF7Y0
第六話 出発 >>439の続き

ダークエルフの深い森にも白々と寂光が差し込み、夜が明けた事を告げてくれる。
オレは夜通し、ケイトの昔話に付き合っちまったらしい。半分位は聞き流していたが。
微かな陽光がケイトの頬を照らし、ゾクリとする美貌を浮かび上がらせた。
ケイトは譚り終えたようだ。オレを見てニコリと笑った。

「はーん、要はそいつをブッた斬ななきゃいけねえんだろ? オレがここを出るには」
ケイトは心持ち申し訳なさそうに頷いた。どこまで本音かわかりゃしないが。
「ええ。ここより森の中心部に向かうと、拓けた砂漠に出ます。その中心部にある
 ピラミッド。そこにいるン=ヴォスを目醒めさせ倒さぬ限り、貴方はここを出れません」
「んー? そんなアブねえ奴、起きる前に叩っ斬りゃいいんじゃね?」
「あの……、私の話、ちゃんと聞いて頂きました?」

少しガッカリした表情のケイト。要約すると話はこうらしい。
ン=ヴォスは、この森全体に呪法による不帰の魔法を掛けている。
そして奴のねぐらを守る為に、4つの宝玉による結界が敷かれている。
奴に近づくにはその宝玉を叩き壊し、結界を解いた後でピラミッドに乗り込む。
だが、4つの結界を壊しピラミッドの入り口の封印を解けば、奴はお目覚めする、と。

「メンドーな長話じゃなくて、そーやってまとめりゃいいんだよ」
「ハア、申し訳ございません」
ケイトは首を竦めて謝った。大抵エルフは高慢と思ってたが、まあ色々いるもんだ。
ネイやこの森で出会ったお嬢ちゃんなら、逆ギレして噛み付いてくるところだ。
504忍者の証:05/02/19 22:44:07 ID:bsZ0yF7Y0
「あんたらにしたらそんな奴ほっときゃいいんじゃねーの、まだしばらく寝てるんだろ?」
まあ、ごく当然のオレの疑問だろう。だがケイトは顔を曇らせてそれを否定した。
「そうは参りません。ガラ様もご覧になったでしょう、村の周りに漂う死霊を」
そういえば、森でお嬢ちゃんが奮戦してたな。まったく戦いになってなかったが。
「今はまだ良いのです。死霊程度である内には。ですが、ン=ヴォスの眠りが
 浅くなるにつれ、その暗黒の妖気に引き寄せられ強力なアンデッドや邪霊が
 この地を蹂躙するでしょう。ドラゴンゾンビ、魔精霊(スピリット)……」

な〜るほど。
確かに、この村には妖気が満ち溢れている。それは全部そいつのせいなのかい。
「ここでン=ヴォスと一戦交え、彼を倒して生き残りに掛けるか…。
 それとも緩慢に滅びていくか。その択一なのです。そして私は、後者に賭けた」
「そこで、たまたま通りがかったこの迷子のニンジャに目を付けたってワケね」
「とんでもない、迷子だなんて。伝説に語られた剣を持った、希望の勇者様です」

ケイトは再度魅力的に微笑む。オレは良いように言い包められているだけかい。
「伝説の魔導王、ダークシュナイダー様の四天王の一角、ニンジャマスター・ガラ。
 これ以上無いほどの、ン=ヴォスを倒す為の『候補』です。
 是非とも、お力添えをお願いします。ン=ヴォスが完全に覚醒する前に」
「やれやれ」

オレは頭を掻いて自己問答する。
が、どうやらこの胡散臭い森を脱出するにゃ、どうしてもそいつを避けられないらしい。
「わーったよ、仕方ねえ。したらこの村で腕利きの魔法使いを貸してくれ。
 オレじゃあ、魔法封印(ウィザード・ロック)は解けねえ。道もわからねえしな」
三度、微笑むケイト。しかし何か、猛烈に嫌な予感がする。彼女はこう言った。
「ええ、承知しております。メイを、ご同行させましょう」
505忍者の証:05/02/19 22:45:20 ID:bsZ0yF7Y0
「おいおい、本気かよ? あの嬢ちゃんの魔法の腕はもう見たぜ。足手まとい以下だ」
オレは呆れと怒りの入り混じった声で吼えた。本気でそいつ倒す気、あんのか?
「メイは、中級の魔法までは精霊契約を終えております。そんな無能ではありませんよ」
ケイトは言った。オレの目から思いっきり視線を外しながら。
「おいおい。あんなノーコンの魔法使い初めて見たぜ。アンタでいいじゃねえか」

ケイトは溜め息をひとつついて、諦観染みた表情で言う。
「私は、死霊からこの村を守る為、ここより離れる事は出来ません。
 それにこの村に今、私とメイしか魔法を使える者はおりません。恐れているのです。
 皆、昔のエルフ同士の戦争の記憶の傷口がクッキリと残っている為に。
 そして最大の理由は……。メイでないと、ダメなのです。最後の封印を解くのに」

ケイトの表情が変わる。只事で無い事を告白する前の表情。しんみりと彼女は言った。
「最後の、彼が眠るピラミッドの入り口の封印は、並の魔法解除では解けません。
 ン=ヴォス以外の者には本来、解く事の出来ぬ封印。解く鍵は、血なのです。
 即ち、解錠の鍵はメイ自身。 ……ン=ヴォスの娘である、メイの」

生温い風が頬を撫でた。静寂が魔法部屋内に満ち、オレはしばし言葉を失った。
やがて彼女は、懺悔でもするかのように呟いた。
「メイは昔、ン=ヴォスが撒き散らした種から生まれし私生児……。
 呪われしダークエルフから生まれた、母親も知らぬ悲しきバスタード……」
506忍者の証:05/02/19 22:46:12 ID:bsZ0yF7Y0
メイは、ン=ヴォスがコドンの一刀により痛みに狂った後に、その痛みを忘れる為に
快楽を求め、種族を超え犯しまくった時に出来た娘らしい。そして生後すぐ捨てられた。

「嬢ちゃんは、知っているのかい。その事を」
「いいえ。ですがメイは、自分の出生の事について触れようとはしません。
 それどころか、彼女を拾った私を、母と思って慕ってくれているようです」 

沈黙がまた過ぎる。あのバカみたいに明るい娘に、そんな秘密が隠されているとは。
「お気をつけて下さい、ガラ様。宝玉には強力な守護獣もいますし、何よりン=ヴォス。
 全盛期のその力は、ダーク・シュナイダー様すら上回るやも知れません。
 痛みが完全に癒えぬ今でも、目覚めれば超一級以下という事は無いでしょう」

まるで無理に話題を変えようとするように、ケイトは言った。オレもそれに合わせた。
「こえーこえー。まー、あのゲスはますます強くなってやがるがな。
 でも、そんな奴相手に、嬢ちゃんは大丈夫かい。庇えるかどうかわからねえぜ」
「大丈夫…。とは言えません。ですが、メイには対ン=ヴォス用に、とっておきの
 呪文を契約させております。超上級の、呪文を」

ぼそり、とケイトはその呪文の名を言った。オレは顔をしかめてケイトに言う。
「おい、そんな呪文あの嬢ちゃんが扱える訳ねえだろう。それどころか、
 嬢ちゃんの肉体の方が呪文の威力に耐えられねえぜ」
ケイトはしばし沈黙した後、ボソリと言った。オレはその言葉に瞬間、頭に血が上った。

「メイ一人の命で、ダークエルフの村全体が助かるのです。それも仕方ないでしょう」
507忍者の証:05/02/19 22:47:39 ID:bsZ0yF7Y0
「……てめえ」
オレの肉体から思わず殺気と闘気が噴出す。ケイトはそれに気づかぬよう続ける。
「彼女の名、『メイ』とは……。エルフの古語で、『ない・存在しない』という意味。
 死魔の王の血を引く娘がいなくなったとて、この村に何も影響はありません」
ケイトは言葉に感情を交える事無く、事務的に言った。オレは激する。

「するってえとおい。オメエがあの娘を今まで育てたのは、その呪文を打つ為の
 捨て石のためかい。嬢ちゃんを道具としてずっと見てたのかい」
「……当初は、そのつもりでおりました」
ケイトは無表情を崩し、フッと笑った。寂しさと愛情の入り混じったような顔だった。
「ですが、次第に…。メイの明るさは、この村に無くてはならぬ物になっていきました。
 この村は牢獄のような物。ン=ヴォスの魔力に森ごと封印された。
 そんな場所で、あの娘の明るさはどれほど村人の支えとなってきた事か」

ケイトの目にうっすらと涙が浮かぶ。オレは何も言えなくなった。
「私と村人は、自分たちの魔力をほとんど、ある道具に注ぎ込みました。
 メイが、その呪文を撃ってもちゃんと耐えて、この村に生きて帰れるように。
 メイの肉体の代わりに、その道具が呪文の触媒となるように」
「それが、あのペンダントかい」
「さすが、茫洋としておられても本質は見逃しませんね」

お世辞とは分かりつつも少し面映い。オレの肉体から殺気も既に消えている。
「あのラピスラゼリには、この村の希望とメイへの思いが詰まっております。
 それにしてもガラ様、ありがとうございます。メイの為に、怒ってくれて」
オレはテレながら横を向いてボソリ、と独り言を言った。

「昔から、弱えんだよ。ダークエルフの、しかもハーフにはな」
508忍者の証:05/02/19 22:48:33 ID:bsZ0yF7Y0
一日タップリ休んで、腹いっぱいメシ喰って寝た。そして次の日の明朝。
ダークエルフの村人全員がオレとメイを送る為に村の入り口にいた。
ケイトが近づき、オレに声を掛けてきた。

「メイを、宜しくお願いします。どうぞご武運がありますよう。
 ……呪われた黒き肌のエルフの願いが、天に通じるかは分かりませんが」
「オレはなまっ白い肌より、珈琲色のその肌の方がよほど魅力感じるがな」
珍しく気の利いた台詞を言ったらしい。ケイトは顔を赤らめてメイの元へ行った。

「じゃあ村長様、頑張って行ってきまーす」
「ハイ、気を付けていってらっしゃい。ガラ様の言い付けを良く守るのですよ」
「はーいっ」
子供の遠足かよ。だがその嬢ちゃんとケイトのやり取りを見て、少し安心する。
どうやら、メイは疎外される事無く、本当に村で大事にされているらしい。
村人が心配そうにメイに声を掛ける。オレに何人もメイを頼むと懇願してきた。

後ろ髪を引かれるように村を後にする嬢ちゃん。何度も後ろを振り返りながら。
やがて村が見えなくなると、嬢ちゃんがオレに偉そうに言ってきた。
「一気にン=ヴォスを倒して、村に平和を取り戻すわよ。モタモタしたらおいてくから。
 んで、まずは第一の宝玉のありかまで、しゅっぱ〜つ!!」

……どうやら、お守りはしばらく続くらしい。
509忍者の証:05/02/19 22:53:50 ID:bsZ0yF7Y0
第一部終了なんで、ちょっと間が空きます。
510グラップラー野比:05/02/19 23:27:00 ID:nKCypvdr0
〜ドラえもんが、未来に変えるという。野比は安心してドラえもんが未来に帰れるように、凶狂ジャイアンに、単身闘いを挑む!〜

「夜の空き地に小学生二人……勝負でしょう」
 のび太は、街灯がに照らされた部分に、すっと進み出た。
 驚愕に眼を見開いたのか、ジャイアンは動きを止めた。
 それにしても、ジャイアンが夢遊病だったとは。のび太とて、驚きを隠せなかった。
「〜〜〜〜〜〜ッ! 俺の秘密を知るとはッ! 生かしちゃおけねえッ!」
 前傾姿勢をとったと同時に、ジャイアンがのび太目掛けて突進する。
「ダヴァイッ!」
 絶叫するのび太。ついに、二人の決戦の幕が切って落とされた。
511グラップラー野比:05/02/19 23:36:11 ID:nKCypvdr0
 ジャイアンの、まるでトラックが暴走したかのごとく突進を、のび太は紙一重でかわす。
「たけし君……これは痛いよ」
 ゆらり、とまるで全身の骨がなくなったかのように、のび太は緩慢な動作になる。
「鞭打!?」
 いつの間にか、二人の戦いを見ていたスネ夫が叫ぶ。
 バチィンッ!
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」
 想定外の激痛に顔を歪め悲鳴にならない悲鳴を上げるジャイアン。
(勝った〜〜〜ッ!!)
 勝利を確信するのび太。だが、大木の幹のようなジャイアンが、のび太の足を掴んでいた。
 何をするつもりだ、まさか、握ッ――
 パアン
「……痛ってぇ」
 呆然と、どこか他人事のように呟くのび太。あまりの痛みに、判断力が低下してしまったのだろう。
 だが、ジャイアンも鞭打の直撃を受け傷を負っている。
512作者の都合により名無しです:05/02/20 00:11:17 ID:Db3WfymL0
出木杉も忍者も大変面白かったが、>>510-511は何だ?
続くのか?始まりも脈絡ないし、終わりも尻切れっぽいし。
513作者の都合により名無しです:05/02/20 01:00:27 ID:j+WiuRHd0
出来杉がもうすぐ終わりそうで、ガラもしばらく開くのか。
好きなのが無くなっていくのが寂しいな。格闘大戦が戻ってくるから、いいか。
514作者の都合により名無しです:05/02/20 03:14:02 ID:C/+XBAKS0
ごめん。本当にごめん。今日は無理だ。
515犬と猫:05/02/20 15:11:40 ID:Cw4UoZSv0
開戦

 城下町に、残酷なほど鮮やかな朝日が照らし出される。放送終了から数え、二度目とな
る朝が訪れた。
 この地にもはや人などなく、五十万を超える獣人と野獣のみが生息する。
 鼓動と吐息だけが取り残された、無にも等しい静寂。キングキャッスルを中心に、市街
は死に絶えたように沈黙を保っていた。
 十一月九日──奇しくも忌まわしきピッコロ記念日から、ちょうど六ヵ月後。
 逃れらぬ運命なのか、キングキャッスルは再び戦場と化ける。

 街を広々と見渡せる丘に立つ、神に認められた戦士たち。
「まるで人影がないな。一夜にして住人が消え去ってしまったかのようだ。どうも、嫌な
予感がしやがるぜ……」
 猛禽とて裸足で逃げ出すであろう視力で、天津飯が城下町を探索する。が、芳しい成果
は得られなかった。罠かも知れないが、自ら足を踏み入れるしかない。
「好都合じゃねぇか。どっちにしろ一般人とは戦うつもりはないし、待ち伏せされてても
俺たちなら振り切れるさ」
 不安を掻き消そうと、勝ち気に笑うヤムチャ。さらにクリリンも柔らかく主張する。
「そうだよ、天津飯。どんな罠があっても、それを乗り越えるのが俺たち武道家だろ?」
「ふっ、確かにな……。俺は少し及び腰になっていたらしい」
 天津飯にも笑みが戻る。悟空はどんな卑劣な敵であろうと、正面からぶつかり合って制
してきた。刃物や弓矢、拳銃であろうとも堂々と素手で受けて立つ。武道家とは、そうい
うものなのだ。
516犬と猫:05/02/20 15:12:31 ID:Cw4UoZSv0
 いざ攻め込まんと、城下町に近寄るクリリンたち。だが、遠くから派手なジェット音が
舞い込む。舌打ちするヤムチャ。
「ちっ、ミサイルでも撃ってきたか!」
 さっと振り返ると、白鳥を模した奇怪な飛行船が空に浮かんでいた。
「あ、あれは……?」
「どうやら、革命軍ではなさそうだぞ」
 飛行船は彼らの頭上を越え、空から城下町に侵入していく。すると、いきなり砲弾の嵐
による洗礼を浴び、飛行船は破壊された。力なく落下していく哀れな白鳥。
「おいおい、撃墜されちまったぞ。やっぱり罠だったのか」
「……あの飛行船にゃ悪いが、チャンスは今しかない。キャッスルに乗り込もう!」
 クリリンを中心に、戦士たちも全速にて街へ入り込む。戦いは始まった。

 飛行船の乗組員は、ピラフとマイであった。慌てて残骸から脱出するが、すでに五十人
を超す獣人たちに囲まれていた。
「間抜けな奴らだ。そろそろ、人間の中にも攻め込んでくるバカが出てくるっていう国王
様の読みは当たったな」
 各々が配布された武器を手に、殺気を匂わせている。
「ち、ちょっと待て! 我々はただ単に観光にやって来た田舎者なのだ、なぁマイ?」
「……そっ、そうですわピラフ様! そんな我々をいきなり処刑するなんて、あんまりで
はないかと……」
 獣人らはしばし話し合い、ピラフたちに告げた。
「おめでとう、助けてやるよ。お前たちをキングキャッスルに連行する。ククク、もっと
ひどい殺され方をするだけかもしれんがな……」
 青ざめるピラフとマイ。口八丁で命こそ延びたが、さらなる地獄への扉が開かれただけ
であった。
517犬と猫:05/02/20 15:13:26 ID:Cw4UoZSv0
 市街地では、戦士たちが奮戦していた。荒れ狂う大軍勢を物ともせず、キングキャッス
ルへひた走る。
「くっそ、あいつら何者だ!」
「誰か止めろォ!」
「化物かよ……ピストルが効かねぇ!」
 弾丸を喰らっても、刃物で刺されても、鍛え抜かれた五体には傷一つ付かない。もはや
多勢など、彼らには意味を成さなかった。

 最上階にて、もちろん国王も戦況を拝見していた。城に迫りつつある超人たちを目の当
たりにして、なおも不敵な笑みを浮かべる。
「ついに来たか……。カリン、イエロー、ギラン、シュウ、待たせたな」
 心を失った怪物がついに始動する。彼ら飛車と角さえあれば、歩などいくら取られよう
と王将は守れる。
「イエローとギランは、城内にて奴らを待ち伏せろ。カリンとシュウは、ここで私を護衛
するのだ。いいか、命を惜しむでないぞ。命を大切にするのは、私だけで充分だ」
 命令が下される。ギランとイエローは忠実に、王室から出兵していった。すると、彼ら
と入れ替わりに獣人が入ってきた。
「不届き者を捕えたので、連行して参りました。煮るなり焼くなり、お好みに調理して下
さいませ」
 乱暴に突き倒される、ピラフとマイ。すかさず、命乞いをしようとピラフが顔を上げる。
だが、そんな思考など全て吹っ飛ばされる衝撃を味わう。
 ──シュウが立っていた。
 体格こそ変化しているが、勘違いなどではない。涙を流しピラフはシュウに詰め寄る。
「シュウ、こんな所にいたのか! 我々と帰ろう、世界征服はこれからなのだ!」
「……死ネ」
 か細い声とともに、左アッパーが炸裂した。真上に吹き飛び、上半身が丸ごと天井にめ
り込むピラフ。
「ハッハッハ、知り合いだったのか。もっとも、すでにシュウ君は私のボディガードだが
ね。……しかも、とびきりのな」
 得意げに、高笑いする国王。絆をも断ち切る支配力、これこそが国王たる所以なのだ。
518犬と猫:05/02/20 15:16:15 ID:Cw4UoZSv0
 猛攻を突破し、キングキャッスルに突入するクリリンたち。あとは、首魁である国王と
カリンを倒せば全てが終わる。
 だが、野に放たれた怪物が門番として立ち塞がる。ギランとイエローだ。
「グルグルガムデ殺シテヤルゼ……グヘヘヘ」
「キサマラ、ココデ死ヌンダヨ」
 殺気は上々だが、まるで声に抑揚がない。
 クリリンとヤムチャはギランを知っている。が、かつての天下一武道会でのギランでは
ないことは彼らでなくとも見抜けたであろう。体格も、眼光も、恐らく強さも、まるで別
人なのだから。
「危ない、ヤムチャさん!」
 クリリンが叫ぶ。と、ヤムチャがギランに横っ面へと張り手を決められていた。軽々と
数十メートルは体が吹き飛ばされる。
 イエローも動く。低姿勢での踏み込みで一気に間合いを詰め、宙に浮く餃子を蹴り上げ
る。地面へと倒れる餃子。
「イキナリ二匹カ……チョロイナ」
「おのれ、よくも餃子を!」
 反射的に天津飯がストレートを放つが、イエローはあっさりと片手で防御する。
「ヤレヤレ、コンナパンチシカ打テナイノカ?」
「……くっ!」
 ヤムチャを倒したギランも、すぐさまクリリンに爪と牙で猛撃を浴びせる。鮮血が飛び
散る。手足で受けても、裂傷は避けられない。
「グハハ、ドウシタ!」
「ちっきしょう!」
「サテ、グルグルガムを味ワッテモラオウカ」
 ギランが吐き出したガム状の粘液が、クリリンを絡め取る。
「し、しまった!」
「モウ一丁!」
 二重に巻かれるグルグルガム。クリリンは上下から完全に拘束されてしまった。体の自
由が全く利かず、しかも空気は入らない。いわば小さな密室。
「苦シミナガラ、窒息シテ死ンデイケ……グヒヒヒ」
 地球上で有数のトップファイターである四人だが、早くも苦境に立たされた。
519サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/20 15:21:56 ID:Cw4UoZSv0
>>420より。
男狼さん(拳法三十段)はナンパに大忙しなので出ません。
次回へ続く。
520テンプレ1:05/02/20 15:44:22 ID:ib67pClW0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart24【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇
SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレや現在の連載作品は>>2以降テンプレで
前スレ
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart23【創作】
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1107193485/
まとめサイト 
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
521テンプレ2:05/02/20 16:00:09 ID:ib67pClW0
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/01.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 2
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/02.html
俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ 3
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/03.htm
俺たちでオリジナルストーリーをつくろうぜ
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/04.htm
「バキ」等の漫画SSスレPart 5
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/05.htm
バキスレだよ!! SS集合! Part 6
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/06.htm
バキ小説スレ Part7
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/07.htm
【総合】バキスレへようこそ Part 8【SSスレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/08.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart9【スレ】 (「少年漫画板」移転)
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/09.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart10【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/10.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart11【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/11.htm
【バキ】漫画SSスレへようこそpart12【スレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/12.htm

522テンプレ3:05/02/20 16:00:52 ID:ib67pClW0
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart13【SS】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/13.htm
【総合】漫画SSスレへいらっしゃいpart14【SS】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/14.htm
【バキ】漫画ネタ2次創作SS総合スレP-15【ドラえもん】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/15.htm
【2次】漫画ネタSS総合スレ16【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/16.htm
【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/17.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart18【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/18.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart19【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/19.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart20【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/20.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart21【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/21.htm
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart22【創作】
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/22.htm

523テンプレ3:05/02/20 16:03:17 ID:ib67pClW0
ドラえもんの麻雀教室(VS氏)
 http://park14.wakwak.com/~usobare/dora/gateway.html
ドラえもん のび太の地底出来杉帝国(うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/01.htm
4×5・AoB(ユル氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/4x5/1-1.htm
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/yuru/03-1.htm
ラーメンマン青年記(パオ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ra-men/01.htm
ザク(ザク氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/zaku/01-raou.htm
超格闘士大戦(ブラックキング氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tyo-kakuto/01.htm
ディオの世界(殺助氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dio/01.htm
空手小公子愚地克己(メカタラちゃん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/mekatara/01.htm
上/輪廻転生 中/帰ってきたドラえもん外伝 下/オーガのリング(草薙氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/rinnne/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/kaedora/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/kusanagi/o-01.htm
524テンプレ4:05/02/20 16:04:14 ID:ib67pClW0
のび太と大ローマ(名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/ro-ma/00.htm
虹のかなた(ミドリ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/01.htm
蟲師(ゲロ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/gero/01.htm
オムニバスSS劇場(バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/bare/16.htm
ギャグSS日和 下/殺人鬼とオーガの鬼事(サマサ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/01.htm
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/samasa/02-1.htm
忍者の証(青ぴー氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/aopi/01.htm
『犬と猫』(サナダムシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/sanada/06-1.htm
バキ外伝 デスゲーム(五氏)
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1107193485/192
Z戦士への入門(Z戦士氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/z-fighter/01.htm
525テンプレ作ったやつ:05/02/20 16:12:00 ID:ib67pClW0
大体、あっていると思いますが。
NB氏のブラックキャットはご本人が最低3ヶ月は休載するという事で外しました。
サマサ氏の鬼事は、とりあえず終わってますが
「京都編」が近々連載されるという事で入れておきました。

2ヶ月以上空いてても、本人の存在と連載の意思が認められる場合は入れてます。
ユル氏は微妙ですが、今回は入れました。

五氏の「バキ外伝デスゲーム」については、まとめサイトのプロローグへリンクすると
介錯人氏の「ネクストレンジャー」(完結済)へ行ってしまうので現スレへのリンクを
張りました。

もう、過去ログは要らないかも知れませんね。サイトあるし。
多分、2レスで収まるのは今回が限界。
526作者の都合により名無しです:05/02/20 16:20:04 ID:+tlTem5b0
こんにちわ。ぜひ私のページにアクセスしてくださ。 お薦め 日記・はなげぬき・ゲーム
 などなど感想もよろしくお願いしますm(__)http://www.freepe.com/i.cgi?yuukimann

527作者の都合により名無しです:05/02/20 17:27:37 ID:EUFmESUa0
>>525
うん。過去ログは要らないと思う。
528作者の都合により名無しです:05/02/20 21:14:29 ID:j+WiuRHd0
>出木杉帝国
いよいよラスボスのキスギー戦かと思いきや、腹心のメジューサがいましたか。
もう少し楽しませてくれそうですね。やはり、最後の決戦のキーマンはスネ夫なのか?
>忍者の証
ガラがシブいですね。メイにネイを重ね合わせてるところとか。メイも重い過去が
あったのですね。ラストへの福泉かな。最後の出発の時のメイがやたら可愛いかったw
>犬と猫
やはりヤムチャはまっさきにやられたかw予想通りというか、期待通りというか。
でも、ギランとか強いですね。原作では大して強くなかったのに。国王の力すごいな。

>>525
俺も過去ログはいらないと思います。次スレは470〜480KBくらいで移行ですかね?
529作者の都合により名無しです:05/02/21 07:43:50 ID:pMZ/oo/y0
最近、またこのスレが生協で嬉しいなあ。
新人さんたちも頑張ってるし格闘大戦やローマも復活しそうだけど、
VSさんはマジで大丈夫なんだろうか。
530作者の都合により名無しです:05/02/21 18:12:01 ID:QvxjwYQE0
過去スレがあってもいいんじゃないかな?
投下されたSSに対しての感想を読むのも面白いと思ふ
531ドラえもんの麻雀教室:05/02/21 18:26:03 ID:1A8xyn5JO
いやあ、ちょいと事情があって当分書けないのであります。
気長に待ってくださいです。ま、
532作者の都合により名無しです:05/02/21 19:03:26 ID:Olw2IzO0O
「過去ログは、まとめサイトを参照して下さい」
の一文をテンプレに入れれば大丈夫じゃないかな?
533作者の都合により名無しです:05/02/21 21:04:27 ID:IHQsWUVu0
>>530
過去ログはまとめサイトで見れるからあえてここのテンプレに載せる必要は無いんじゃないかっつうことよ
534ふら〜り:05/02/21 21:08:47 ID:N3YBf2180
>>五さん
スペック大活躍っっ! あの笑顔での頭突き連打による惨殺、死体を使っての腹話術と
いったスペックらしい狂気があり、硬気功・バンプで「ちゃんと天才」ぶりも出てて。
本っっ当に、期待をどどんと上回る出来栄えです。面白かった&嬉しかったですよっ! 

>>ゲロさん
冒頭を見ると、「珍しく、精神的というより物理的に大物っぽい?」と思ったのですが。
随分ギンコ、余裕ありますね。こうなると、予想が外れて苦戦してしまう様を見たく
なってしまったり。あとゲロさんの好きなゲーム、メジャーとマイナー入り乱れてますな。

>>Z戦士さん
可愛くて愛しくて。持ち帰りたくなりますね、この刃牙は。「Z戦士術」が使えるように
なって、空飛んで喜ぶ顔が見たい……いや、それができずに右往左往してる姿が魅力……
とか。仰る通り周りが常識人なだけに、ヘンっぷり=可愛さが際立ってて。好きですっ。

>>草薙さん
そうきましたか。正に「予想もしなかったぜぇ」です。確かに、素ののび太で勇次郎に
有効打を与えられる(かもしれない)スキルといえばそれしかありませんね。さて、この
結末、このケリのつけ方をのび太自身がどう感じるか。一応師匠ですしね。次回注目です。

>>うみにんさん
ラスボスとご対面。長かった冒険もいよいよクライマックスですね。そんな中、改めて
のび太はのび太(射撃以外は頼りない)だと再確認。ギラーミンに続く壁、メジューサの
打開はスネオにかかってそうですが、こちらもまだ頼りなさげで。頑張れ小学生たちっ。
535ふら〜り:05/02/21 21:09:50 ID:N3YBf2180
>>青ぴーさん
読んでて、ケイトへの印象が、見事に上下しました。けどそれより、やっぱりさすがの
主人公、ガラがカッコいいです。人情厚く、サラリと洒落た台詞も出てきて。こうなると、
普段の私の好みとはズレますが、原作とは完全パラレルってことでネイと結ばれて欲しい。

>>サナダムシさん
いやはは。今回の感想は「クリリンたちにゃ悪いが、(ヤジロベーが活躍するには)今
しかない」です。国王の邪悪ぶりがどんどん前面に出て、ピラフたちも早々にピンチな今、
今ならばヤジロベー独壇場! と手に汗と期待を握っております。……活躍、しますよね?

>>さて
次スレの季節ですか。今回はまた、いつにも増してペースが早いような気が。スレが活況
な証拠ですね。嬉しいです。
自分語りになりますが……仕事が鬼のような事態になり、睡眠時間も乏しく、体調も少々
アレな今、ここに来るのは本当に、心の温泉旅館です。布団で寝るのと同じくらいに。
職人の皆様、そしてバレさん。多分私と同じように感じている方は大勢おられると思い
ますので、どうかこれからも宜しくお願いします。
私も時間ができれば、また感想書き以外の貢献(つまりSS書き)をさせて頂きますので。
……いえ、次こそはメジャー作品でいきます。はい。一応。予定では。
536犬と猫:05/02/21 22:36:56 ID:7sN41lFF0
苛烈

 グルグルガムに閉じ込められたクリリン。いくら力を込めても、ガムが破れる気配すら
ない。力めば力むほど、酸素を消費してしまい呼吸が苦しくなる。
「足掻ケ、足掻ケ……。寿命ハソノ分、短クナッチマウガナ」
「くっそぉ……!」
 強化されたギランに比例して、グルグルガムも耐久力が桁外れに上がっている。
「せめて……」
 窮地に立つクリリンに、亀仙流最強の技が浮かび上がる。
「せめて、かめはめ波が使えれば……!」
 手足が固められては、かめはめ波は撃てない。視界が徐々に薄暗くなっていく。酸素が
絶望的に足りないのだ。タンバリンに殺された時に似た脱力感が忍び寄る。
「ここで終わりかよ……。ちくしょう、悟空……」
 うっすらと目を瞑るクリリン。と、突然グルグルガムが爆発を起こした。焼け焦げるガ
ムから、すかさずクリリンが脱出する。大きく深呼吸をし、どうにか一命を取り留めた。
「ヤ、ヤムチャさん!」
「さっきはクリリンが叫んでくれたおかげで、体を硬直させてダメージを軽減出来た。こ
れはほんのお返しだぜ」
 クリリンを救ったのはヤムチャであった。かめはめ波を放ち、グルグルガムを破壊した
のである。
「ここからが本番だぜ、クリリン」
「ありがとう、ヤムチャさん!」
 亀仙流タッグ、復活。ギランも指を鳴らし、さらに殺気を研ぎ澄ませる。
「生キテイタカ……。マァ、アレデ終ワリジャ物足リネェシナ」
537犬と猫:05/02/21 22:37:41 ID:7sN41lFF0
 一方、天津飯はイエローと五分の攻防を展開していた。
 互いに音速を超えた技を応酬し、いったん間合いを外す。
「どどん波ッ!」
 指から放たれる、一点に凝縮されたエネルギー波。頬にかすりつつ、イエローも危なげ
なく避ける──小休止。
「どうやら、ほぼ互角だな……」
「格闘技デハナ。ダガ、コノ俺ハアイニク軍人ナンダヨ」
 イエローはスプレー式の催涙ガスを取り出し、天津飯に吹っ掛けた。
「ぐわっ! ……くそっ、眼をやられたか」
 さらに手榴弾のピンを外し、天津飯の口へと強引に詰め込む。即座に起きる大爆発。た
とえ天津飯でも、口の中では助からない。
「俺ハアラユル武器ヲ携帯シテイル……。軍人タル者、素手デ闘争スルナド恥ズカシクテ
ヤッテラレンゼ」
 だが、硝煙に紛れる闘気は未だ残存している。
「ホウ、マダヤレルノカ……?」
 天津飯は生きていた。倒れていた餃子が念力で、間一髪にて手榴弾を口から出したのだ。
「助かったぞ、餃子。危うく死ぬところだった……」
「チッ、ソコノガキノ仕業カ……。ナラバ、先ニ殺シテオクベキダナッ!」
 餃子へと特大の銃を向けるイエロー。が、天津飯が銃身を掴み、まるで割り箸のように
へし折った。
「餃子には手を出すな……。ここからは俺一人でやる、文句はあるまい」
「フン、モウ一度喰ライテェラシイナ」
 またも催涙スプレーを取り出すが、手刀で叩き落とされる。さらにアッパーから、首を
狙ったハイキックでの追い打ち。思いがけぬ逆襲に、イエローがダウンを奪われる。
「本気でやれば今ので殺せたが、手加減してある。どんどん武器を使うといい。俺は全て
を粉砕し、貴様を打ち倒してやるッ!」
 手榴弾によるダメージを感じさせず、仁王立ちする天津飯。たじろくイエロー。
「後悔サセテヤルゼ……クソ野郎ガッ!」
538犬と猫:05/02/21 22:39:00 ID:7sN41lFF0
 地上で始まった決戦を、鋭敏に感じ取る国王。
「ギランとイエローめ、派手にやっているな。さて、こちらも盛り上がってきた」
 王室では、ピラフがシュウに痛めつけられていた。死なぬよう急所を外し、なおかつピ
ラフには強烈すぎる打撃が与えられる。
「ピ、ピラフ様……もうお止め下さい!」
「うるさい、お前は下がっていろ! シ、シュウよ、私を覚えておらんのか……!」
「覚エテナイ」
 ピラフの右肩に、鉄槌が振り下ろされる。骨が粉々に砕け散った。
「ぐぎゃあッ!」
 本来なら泣き叫んでいるであろう痛みにも屈せず、ピラフは説得を止めない。消え入り
そうな声で、一途にシュウへと呼びかける。
「ともに笑い、ともに泣いた日々……思い出すのだ。また、世界征服を──!」
 蹴りが入る。天井へ激突し、床に墜落し、再び天井近くまで浮かび上がる。しかも、舌
を噛み切ってしまった。ピラフの口から血が溢れ出す。
「ピラフ様ッ!」
 マイが駆け寄ろうとするが、国王に髪の毛を掴まれる。
「……あぐっ!」
「やれやれ、邪魔をするんじゃない。彼は人類に対する最高のプロモーションとなる。見
せしめとしてな」
 髪を乱雑に掴まれたまま、マイが投げ飛ばされる。彼女は壁に激突し、動かなくなって
しまう。国王の手には、数十本もの毛が握られていた。
 シュウに次ぎ、マイまでも奪われた。舌が失われても、声にならぬ悲痛な叫びを轟かせ
るピラフ。弱者への支配という麻薬に、国王は酔いしれていた。
「ますます盛り上がってきたな。カリンよ、ちゃんと撮っておけよ」
 シュウと同じく生気を帯びぬ顔つきで、カメラで撮影するカリン。ピラフが無残に打ち
のめされる光景が、克明に記録される。
539サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :05/02/21 22:41:42 ID:7sN41lFF0
>>518より。
そろそろ次スレですか。
ここは本当に面白いですね。

……ああっ、醤油がキーボードに!
「大擂台賽だとお!」
 文字の形のブロックを吐き出したみないな声で叫んで、シコルスキーは新聞
紙を真っ二つに引き裂いた。刑務所の薄暗い廊下にはシコルスキーと園田警部
の他には誰の姿もない。シコルスキーは破った新聞にもう一度じっくり目を通
して、そして園田に尋ねた。
「大擂台賽の記事なんてどこにも載ってないぞ」
「そんな昔の新聞には載っとらん。たった今、中国でやっとるんだ」
 シコルスキーが破いたのは読むための新聞ではなく、掛け布団替わりの古新
聞だった。最凶死刑囚として名高いシコルスキーには警察官のファンも多く、
刑務所内でもVIP級の待遇を受けていたのだが、地下闘技場で雑魚のガイア相
手に醜態をさらした罰で特別監房を追い出され、今は廊下で寝泊りをしている。
薄い新聞紙にくるまってスンスン泣いていたところに園田がやってきて、中国
で大擂台賽という百年に一度の格闘大会が開催されているという話を聞いた。
「オレも出るぞ!」
 シコルスキーは涙を拭いて立ち上がった。敗北を知りたくてやってきた日本
で何度も何度も敗北を味わい、シコルスキーは敗北がすっかり大嫌いになって
いた。今はひたすら勝利の美酒に酔い痴れたい。そんなシコルスキーの願いを
見透かしたかのように、園田はケツをかいていた手をズボンから抜いてシコル
スキーの鼻先に近づけた。
「臭くない! いいからオレも大擂台賽に混ぜろ!」
 シコルスキーは園田の手を邪険に振り払って懇願した。しかし無情にも園田
の答えはノーだった。
「ダメ。だってお前死刑囚だもん」
 もっともな話だった。園田は自分の手の平をじっと見つめて、そして匂いを
嗅いでみた。
「臭いじゃん」
「どっちでもいい! その死刑囚を廊下にほっぽり出して知らん顔を決め込ん
でいるのはどこのどいつだ!」
 これまたもっともな話だった。見事に切り返されて、園田は苦笑いを浮かべ
ている。シコルスキーはここがチャンスとみて、もう一つお願いをした。
「大擂台賽で優勝したら、オレを自由の身にしてくれ!」
 園田は考えた。こんなバカチンが猛者ぞろいの大擂台賽で優勝できる訳がな
い。万が一優勝したところで、シコルスキーの身柄はロシアの管理下にあるの
だから日本の警察には何の権限もない。だから自分たちが釈放してやっても、
ロシアに帰ったら速攻で死刑になるだろう。それですべては丸く収まる。
「えーよ。中国行っといで」
「いえー!」
 大喜びで外に出ようとしたシコルスキーを、園田が呼び止めた。
「そういえばな。大擂台賽、今は五対五の対抗戦をやっとるらしいぞ。どうす
んの?」
「五人?」
 シコルスキーは立ち止まってしばし考え、ゆっくりと園田を振り返った。そ
の貌には邪悪な笑みが浮かんでいる。
「ソノダよ。本当に大擂台賽に参加してもいいんだな?」
「えーよ」
「だったら! 最凶死刑囚の残り四人、今すぐ外に出してもらおうか!」
「えーよ」
「本当にいいのか! あらゆる国のあらゆる人々に災厄をふりまいた凶悪犯罪
者を、いっぺんに五人も野に放つことになるんだぞ!」
「えーよ」
 えーよの大盤振る舞いに、逆にシコルスキーの方がたじろいだ。園田はポケ
ットから鍵の束を取り出してシコルスキーに渡した。
「自分で鍵開けて、テキトーに連れ出してえーよ」
 園田、怒涛の太っ腹!
全五話。

>>531
復活待ってます。がんばって下さい。
543作者の都合により名無しです:05/02/22 07:46:44 ID:31rDTPo20
>犬と猫
クリリンを助けて活躍するヤムチャに違和感を感じるのは、俺の心が汚れているせいだろうかw
ピラフが原作と違い子分思いの男気あるキャラでいいですな。犬国王、悪役振りがいいですね。

>ヘルニア戦隊ダッチョリアン
おお、新連載ですか。既存の職人さんかな?新人さんだとなお嬉しいが。ふざけたタイトルだw
シコルスキーのわがままの通しっぷりがいいですな。死刑囚5人対中国軍か日米連合か。楽しみだ。

でもなんとなくVSさんに似てるねダッチョリアン。本人コメント見ると違うみたいだけど。
次スレはあと一本か二本くらいでかな?

544ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/22 16:37:25 ID:MULVlJzV0
>>496-500続き
かつて私には強く気高い二人の姉がいた。長女ステンニュウ、次女ドウリュアレ。
我等3人の女神を称し、ゴルゴン3姉妹と呼ぶものもいた。
末っ子である私の名はメジューサ――――呼ばれ名は――――――“支配する女”

何故か。力では不死身の姉たちには遠く及ばない私が、
何故に、そのような名を冠されたのか。何故に――――――――――――
何故に。それは、この神の世界においてさえ、並ぶ者のなき美貌ゆえに―――――――

つややかな長い黒髪。透き通るように澄んだ瞳。ほんのり桃色に上気した美しい肌。
そう――――――かつて私は美しく可憐な少女神であった。

数多の神々。その全てが私に恋をした。その美貌は、オリンポス12神の長、
全知全能たる偉大なるデウスさえも虜となり、恋焦がれるほどであった。

神々は私を数々の興事に誘い、我が物にしようと試みた。
私は、数々の興事を心から楽しみ――――しかしただ、それだけだった。
言い寄ってくる男たちにこちらが関心を抱く事は一切なかった。

ただ、ただ私は楽しかった。言い寄る男どもをかどわかしては、突き放し、
淡い期待を抱かせては、深い落胆の湖に沈めることが――――――
大神デウスでさえも、この力なき少女神の奔放な心を射止めることはできなかった。

私はそれがどれほどに罪深いことであったのか―――――――それすらも気付かぬ
愚かな女であったのだ―――――――――――――――

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は恋に落ちた。
愛するものの名は――――――オリンポス12神が一人、海神クラーケン。

年のころは私と同い年くらいだろうか。まだあどけない面影を残す少年である。
暗く冷たい海の底で、何をするでもなく、ただじっとうずくまっている。
私は問うた。
「なぜ、このようなところで一人いるのでしょう」
少年は答えた。
「海の神である私が、他の場所にいる理由があるでしょうか」
私は、この少年に興味を抱いた。
この凍りつくような孤独の中にあっても、悠然と動かない彼が、偉大に見えた。
これまでに出会ってきた数多の神々よりも。大神デウスよりも何よりも。

私は、次の日も、また次の日も、海へと潜った。
クラーケンに会いたい、その一心で。

ある日、クラーケンは、かねてより心に抱いていた疑問を口に出した。
「なぜ、あなたはかような冷たく暗い水の底へと毎晩訪れるのであろうか。
あなたは美しい。その美貌を持ってすれば、かような所へ来ずとも望むがままの
幸せを手に入れられましょうに。」
私は答えを探した。そして、ようやく気付いた。
私が今、この悲しい少年に対して抱いている奇妙な、不可思議な気持ちの正体に。
「あなたはこの孤独な海にいつも一人でおられる。それは何故か。あなたはこう
おっしゃいました。海の神であるあなたが他のどこに居るものでしょう――――と。
それならば、あなたの孤独を紛らわすため、ただそれだけのために、私はずっと
おそばにおりましょう。そう。永久に―――――――――」

毎晩のように彼のそばにいるうちに、私は偉大に思えていた彼の、その内面は繊細で
臆病なだけの、か弱く気弱な少年であることに気付いていた。しかし幻滅はしなかった。
私は彼のその繊細さ、臆病さにこそ惹かれていたのだから。
私が毎晩クラーケンの元を訪れていることは、当然私に言い寄っていた神々の耳にも
伝わっていた。嫉妬に狂った偉大なる全能神デウスは、クラーケンと私の仲を切り裂いた。
愛しい人、海神クラーケンと海の老神ネーレウスの娘であるアンフィトリムとの結婚を
強引に取り決めたのだ。

気弱で繊細で臆病なクラーケン。可哀想なクラーケン。
全能神たるデウスに逆らうことなどできるはずがない。
あの暴君に逆らえばどういうことになるか、12神である彼が知らないはずがない。
優しいクラーケンは私への気遣いを見せながらもデウスにだけは逆らえなかった。

早やかにことは進められ、瞬くうちにクラーケンとアンフィトリムの結婚式の日が
やって来た。式を執り行う、女神アテナの神殿に数多の神々が集った。私もまた神殿に
呼び出されていた。これもまた、デウスによる見せしめのような意味合いなのだろう。
しかし、海の老神ネーレウスの娘ならば、私などよりもずっとクラーケンに釣り合って
いる。わたしは彼さえ幸せになってくれるならば――――――心からそう願っていた。

それなのに―――――――ああ、それなのになぜ――――――――――――――?
あなたは、偉大なるデウスの命に背いてまで私のことを――――――――――?

そう。式の始まる直前になって、彼は意を決して私の元へと駆けつけてくれたのだ。

「クラーケン。あなたは私がたとえ醜い顔の女であったとしても私を愛してくれましたか?」
「私があなた以外の誰を愛するというのだ。」
力強く答えるクラーケンはいつもよりたくましく思えた。私とクラーケンは―――――
神聖なるアテナの神殿で、禁じられた熱いくちづけを交わしたのだ。

しかし、なんと間の悪いことであろうか。その様をだれあろう、クラーケンの婚約者である
アンフィトリムに見つかってしまったのだ。私への嫉妬と憎悪にその小さな肩を震わせながら、
アンフィトリムは神殿の主であるアテナへと密告したのだった。

「神殿を汚した罪は重い。醜い顔が望みか。ならばその望み、かなえてやろう!」
アテナは普段の優しい顔からは考えられない邪悪で、いびつで、歪んだ笑みを形作って
みせた。アテナもまたメジューサの美貌に嫉妬していた女神のうちの一人だったのだ。
大神デウスらの怒りを恐れて、手出しできなかった嫉妬の対象に、公然と罰則を与える
口実ができたのだ。嬉々としてアテナは憎き美しきメジューサに呪いの魔法をかけた。

「ああっ・・・!」
激痛に思わず悲鳴をあげながら、私は悟った。私の顔が醜く焼け爛れてしまった
ことを。もう私の顔は、姿は、もとの姿とはほど遠い、醜い、醜い化物でしかない。
誰もがうらやんでいたその長くつややかな髪の毛は無数の醜悪な蛇へと姿を変えた。
しかも、あろうことか、他ならぬ最愛の人、クラーケンを威嚇しているではないか。
愛しい愛しいクラーケン。繊細で臆病なクラーケンは、きっと私の姿を見て怯えて
いるに違いない。涙が溢れて止まらなかった。悲しくて悲しくて悲しくて。

絶望にうちひしがれ、涙に濡れる私を、二人の女神が嘲笑った。
「ホホホ、醜い醜いメジューサ。哀れな醜女。そなたの顔は二度と男を寄りつかせぬ。
そなたの顔を見た者は、全て生きたまま石の像となってしまう呪いをかけた。」
「見たものを石に変えてしまうほどに、醜い顔。ホホホホホホホ。ああ、楽しい。
こんなに楽しいことなんて、これまでにあったかしら?ホホホホホホホホホホホホ」

両手で顔を隠し、跪いて動けない私の側で二人の女神の嘲りが鳴り止まない。
嘲りは、ピタリとやんだ。嘲りのせいで気付かなかったのか。その者の接近に。
気が付けば、地を這う視線の端に、見慣れた者の足元が見える。恐る恐る視線を
上に向けたその先には―――――――――――愛しい人の変わらぬ微笑みがあった。
繊細で臆病なはずのあなたが、私への恐怖を微塵も感じさせない穏やかな表情で、
私のこの醜悪な顔を見つめている。私は泣きじゃくりながら訴えた。
「もう・・・やめて・・・。見ないで。あなたが石になっちゃう・・・!」
「やめるものか。私にとってあなたは―――――――あなたの心は永遠に美しいままだ。
さきほどあなたは私にこう問いかけましたね。私がたとえ醜い顔の女であったとしても
愛してくれましたか?と。私はキミの問いにこう答えた。私があなた以外の誰を愛する
というのだ――――――――――――――――と。このまま永遠にデウスの言いなりに、
愛しい人と会えない運命ならば、誰よりも愛しいキミのこの美しい顔を、この目に焼き
付けて――――――――私は永遠の眠りにつこう。それもまた悪くない運命だ。」
涙がさらにあふれる。涙がさらにあふれる。愛しい人の顔がかすんで見えなくなる。
そう。彼は、あの臆病だったはずのクラーケンが、自らが生きたまま石になる恐怖を
乗り越えて、ただ悠然と、真に悠然と、暖かい笑顔で自分のこの醜く変貌した顔を、
以前となんら変わらぬ愛を持って見つめてくれているのだ。

――――――――そして彼は物言わぬ石となった。

それからどれほどの年月を経たのであろう。気の遠くなるような長い時の間に、
愛する人は砂となり、そして消えていった。塵の中から宇宙と呼ばれるものが生まれ、
人が生まれ、愛が生まれ―――――――――――私だけが愛を失った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なぜ、今そんなことを思い出すのだろう。
ちっぽけで脆弱な人間を石と化すことに抵抗などない。
偉大なる―――のために。偉大なる―――のために。偉大なる―――のために。
偉大なる―――の望みを邪魔する脆弱な小虫ども。
私は神の愛をもって、その全てを屠ろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

少年の身に貼りつけられた無数の鏡。愚かな――――――――
かつて神であった私に、そのようなものの何が役に立つものか――――――――

メジューサは、タイムホールをするりと飛び出した。自然、スネオと至近距離での
鉢合わせとなる。スネオの動きが止まる。恐怖にすくんでいるのだろう。無理もない。
この私の醜悪極まりない姿。人の身で耐えられるものではない。強く睨みすえる。
石化の呪いをこの臆病で哀れなる少年に与えん。しかし――――――――
「キ、キミは・・・!?」
スネオの肉体に変化は起こらなかった。いや、身の毛もよだつ醜悪なる怪物と遭遇した
というのに、その表情は恐怖すら感じていない。ただ、わずかに驚きと戸惑いの表情だけ
を見せ、何か幻でも見るかのような目でメジューサを見つめている。

―――む?バカな――――なぜ、石とならぬ?我が呪いは――――呪いは――――――・・・

メジューサはようやく気がついた。スネオの体中に貼りつけられた無数の鏡。
そこには醜い化物や怪物の姿など、一つとして映し出されてはいない。何故―――――?
呪いは永遠のものではなかったのだろうか。宇宙開闢が幾度となく繰り返される
ほどの永き永き時を経て―――――今、偶然にこの時をもって解けたというのか――――
―――――封じられていた太古の記憶が――――今、確かに甦った。完全に―――――

つややかな長い黒髪。透き通るように澄んだ瞳。ほんのり桃色に上気した美しい肌。
「私は全てを思い出しました。」
麗しく、神々しく輝く、この世のものとも思えぬほどに美しいその――――――――――
――――“少女”は、思わず見惚れているスネオに、優しく語り始めた。
「少年よ。安心してください。“怪物”メジューサはもう、この世に存在しません。」
「へ・・・?そ、そうなの?」
「詳しい理由は後でお話することにしましょう。そう。真実を―――包み隠さずに・・・。
ですが、今は時間がありません。そして、今の私の力では彼女たちを救うこともできません。」
そう言って、美しい“少女”は、石と化したドラミたちを見やった。深い哀しみの表情で。

再び少女はまっすぐにスネオを見据えた。やはり透き通るように美しい、真摯な瞳で。
「あなたの大いなる勇気をもって、私を連れていってはもらえぬでしょうか―――――
我が愛しき人―――――クラーケンによく似た少年よ―――――――――――――」
「ク、クラーケン?なんだかわかんないけど、連れてけって・・・ど、どこに・・・!?」
「“ある者”のいる場所へ――――――」
メジューサの瞳にこもる意思の力は、その強さを増して、スネオの心に響き渡った。
「その者は今、あなたと、あなたの大切な仲間たちと戦っているはずです。そう。
・・・堕ちた大神、“魔王デウス”のもとへ――――――――――――」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
553ドラえもん のび太の地底出木杉帝国:05/02/22 16:56:01 ID:MULVlJzV0
今回分終了です。強引な展開で申し訳ない。
でもこれちゃんとやると、この話だけですんごい長くなりそう・・・
メデューサのたぶんわりと有名な伝承っぽい話の中で一番好きなやつを
元にしています。あんまりうまくアレンジしきれてませんが・・・
単なる“怪物”としてのメデューサ物語はあまり好きじゃなかったので。
スネオは結局何もしてないような・・・

>サナダムシ様
僕のキーボードにもオロナミンCが・・・!
554作者の都合により名無しです:05/02/22 17:05:38 ID:13rKxG0u0
みんなキーボードにこぼしまくりだね。
555作者の都合により名無しです:05/02/22 17:28:11 ID:I21TKadQ0
次スレよろ↓
556念仏鯛:05/02/22 19:06:31 ID:KT50nHJ2O
ザク3はどうしたんだろう。田部3も。
557作者の都合により名無しです:05/02/22 19:16:56 ID:7OhxpU1P0
>犬と猫
おお、舞をかばうピラフが男らしいと思ったらその後が悲惨ですな。
このころの天津飯はさすがにヤムチャたちより1ランク上ですね。

>ダッチョリアン
確かにVSさんに似てるけどよりシュールな作風ですね。
園田ってこんなとぼけたキャラだったっけ?

>出木杉帝国
これはメジューサまでドラチーム入りか?魔王も大変だ。
しかしその魔王はかなりの大物のようですね。楽しみです。

>>555
確信犯臭いけどSS投下直後なんだからもう少し様子みなよ。
>>541
 しばらく呆然としていたシコルスキーだがやがて気を取り直して、まずはド
リアンの監房の扉を開けた。
「ドリアーン!」
 ドリアンはいなかった。ドリアンは海王という中国武術界の偉い人でもある
ため、大擂台賽参加のためにすでに中国へ行っていた。
「ドイルー!」
 ドイルの監房にも誰もいなかった。崖下の洞穴でビバーク中にオリバに捕縛
されたドイルであったが、毒に冒されてばっちいのでオリバがゴミと一緒に捨
ててしまったらしい。
「ヤ・ナーギ!」
 柳龍光の監房の床には、どす黒い色をした右手が転がっていた。柳本人の姿
は見えない。園田によると、消息を絶った柳を捜索中に発見した右手だそうだ。
ためしに鑑定したら柳の毒手と判明したため、柳の独房に放り込んである。毎
日水と肥料をたっぷり与えているので、じきに立派な柳が生えてくるという。
「シコルスキー!」
 自分のいた監房も覗いてみた。当然もぬけの空かと思いきや、見知らぬ老夫
婦がちゃぶ台を囲んでご飯を食べていた。いまは民間用の貸し部屋になってい
るらしい。老夫婦は茶碗を持ったまま、シコルスキーを怪訝な目で見つめてい
る。シコルスキーは黙って扉を閉めた。
「スペーック!」
 齢九十七歳のスペックは見る影もなく衰弱して、自力で歩くことすらままな
らないでいた。枯木のような細い体を監房の固いベッドに横たえ、顔だけ曲げ
てシコルスキーの方を見ている。半開きの口からヨダレを垂らしながら呻いた。
「………ウ………」
 シコルスキーはみなまで聞かずに扉を閉めて、鍵をかけて隙間を溶接で密閉
して扉にお経を書いて封印を施した。そして園田に食ってかかった。
「誰もいねーじゃねーか! どうなってんだ!」
「変なじいさんばあさんとスペックはいたじゃん」
「あんなもんはいた内に入らん! 今すぐ死刑囚を四人連れてこい!」
「そこまで面倒見きれん。ワシャ帰る」
 園田はシコルスキーの手から鍵の束をぶん取って、足取りも軽く愛しの我が
家へ帰ってしまった。
「ソノダー! 待てコラー! 死刑囚ー! メシー!」
 今は正午をちょっと過ぎたあたりだった。シコルスキーへの食事の支給は園
田の仕事だが、その園田は昼食のことなどケロリと忘れていた。シコルスキー
が泣いても喚いても、園田は戻ってこなかった。家に帰って風呂に入ってビー
ルを呑んで、あとは寝るだけなのだろう。
 シコルスキーは騒ぎ疲れてその場にへたり込んで、力のない目で天井を見上
げた。ところどころにこびりついた天井の染みが、なんだか死刑囚の顔に見え
る。ドリアン、ドイル、柳、スペック、ピロシキ。喉を鳴らしてピロシキに伸
ばしかけた手を、シコルスキーはぎゅっと握りしめた。
「オレは諦めん! こんなことでは諦めんぞ!」
 大擂台賽で優勝するまで死ぬ訳にはいかない。シコルスキーの目が再び強く
輝き始めた。勢いよく立ち上がり、老夫婦の部屋にノックもせずに押し入った。

「あー、食った」
 シコルスキーが部屋を出たのと同時に、内側から鍵を閉める音がした。老夫
婦が激しく言い争う声が聞こえるが、そんなのシコルスキーには全然関係ない。
ともかくこれで腹は満ちた。あとは大擂台賽出場のためのメンツ集めだ。
「さて、どうしようか」
 シコルスキーは壁にもたれかかって、口にくわえた爪楊枝を上下に揺らしな
がら考えた。死刑囚がダメならば、別の筋から人を集めてもいい。真っ先に思
い当たるのは地下闘技場で闘ったジャックとガイアだが、連絡先が分からない。
プロレスラーの猪狩完至とも面識があるが、ちょっと実力的に心許ない。さっ
きの老夫婦に声をかけてもいいが、彼らは自分のことをあまり好きではないよ
うだ。
「うーん」
 考えれば考えるほど知り合いが少ない。やはり最凶死刑囚の五人組がベスト
メンバーに違いなかった。シコルスキーはスペックの監房をちらりと見た。
「まあ、いないよりはマシか」
 シコルスキーはあまり気乗りのしない顔で、監房の扉に手をかけた。
つづく。
561作者の都合により名無しです:05/02/22 22:21:07 ID:9p+HcC5h0
>出来杉
元はギリシア神話でしたっけ?今回は詩的な表現でしたね。スネ夫意外と美味しい役回りだなw
最終決戦前に、もう1、2エピソードありそうな感じですね。

>カラオケ戦隊ウタヒロバー
うーん、1話2話ともみたけどなんかVSさんぽいね。しかし死刑囚が寄るとシコルが主役に
なるのはバキスレのお約束か。しかし毎度なんでタイトル変えるんだよw



とりあえずもう480KBだから次スレ立ててみるよ。
562作者の都合により名無しです:05/02/22 22:23:14 ID:REXE+tFM0
いいんじゃない?
立ててちょーだい。
563作者の都合により名無しです:05/02/22 22:29:03 ID:9p+HcC5h0
すみません、駄目でした・・
一週間くらい前には立てれたのに。
564新スレの1:05/02/22 23:20:42 ID:Ag9nb1zd0
立てたよ。職人諸氏移動よろ。過去ログは割愛した。


【2次】漫画SS総合スレへようこそpart24【創作】
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1109081660/l50
565新スレの1:05/02/22 23:26:42 ID:Ag9nb1zd0
感想こっちにかいとこ。

うみにんさん、神話を題材にした構想見事です。出来れば引き伸ばしてくださいw
名無しさん、死刑囚好きだから擂台賽楽しみ。でもシコが一番実力心許ないだろw

あ、名無しさんの作品はテンプレで前回の浣腸戦隊モッコリアンとかそんなんにしました。
てかタイトルくらい固定にしてくれ。
566カラオケ戦隊ウタヒロバー:05/02/22 23:43:12 ID:ItcJY/hO0
>>565
新スレ立てお疲れ様です。
あと三回で完結なんですけど、もうタイトル変えないほうがいいですか?
567作者の都合により名無しです:05/02/22 23:50:35 ID:Ag9nb1zd0
いや、別にいいんですけど、新スレのテンプレどうしようかと悩んだだけですよw
お気を悪くしたらすみません。
568カラオケ戦隊ウタヒロバー:05/02/23 00:00:27 ID:k5JuwKWj0
>>567
了解です。次回のタイトルは「なんだ戦隊コノヤロー」になる予定です。
569ふら〜り:05/02/24 22:10:06 ID:zIiD4vJN0
>>サナダムシさん
地味に戦ってるクリリンたち、何だかこのまま勝ってしまいそうで不安。ヤジロベーの
見せ場や如何に。そしてピラフたちサイドは、あの賑やかなピラフたちが……と、三枚目
キャラだからこそヒドさが際立ってますね。きっと来る「再会」シーンが待ち遠しいっ。

>>戦隊さん(←何卒御名前所望也)
完璧に明確に堂々と、シコルが主役ですね。しけい荘といい、人気者だシコル。他の四人
中、スペックだけ存在してるのは個人的に期待してますが、でもこういう状態。活躍でき
るのかどうか? 足りないメンツはどうする? いろいろ気になる次回、待っております。

>>うみにんさん
クラーケン、いい男だっ! 愛の奇跡で呪いが解けて、メジューサと幸せに……とならな
かったのがまた何とも、悲劇の英雄で。で確かにスネオは何もしてませんが、クラーケン
と似てるというのが気になりますね。このまま同行して、後々スネオと何かある、とか?
570作者の都合により名無しです
保守