【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第24部
大暮・腐朽、ともにメチャクチャ格好良かったもんな。
ま、リレー小説だから、これはこれで納得しようってことで。
大暮はしんだ訳じゃあないし妖怪だから何とかしようと思えばなんとでもなるべ。
しっかし福地は裏主人公呼ばわりできるくらいの成長っぷりだなぁ。面白かった!
重要なのは生死の問題じゃないんだが、まあお前はそれでいいや。
471 :
MIX-UP:2005/04/11(月) 02:30:06 ID:qS5vohAt0
>>411 赤松は地上に降り立つと、苦痛に顔を歪めながらも、かがみこんで左足首に手をかざした。
その手から魔力の篭った淡い光が放たれる。
「治癒魔術?」
「ご名答。まあ、あまり得意ではないのだがね」
田辺の呟きに、そう苦笑した赤松だが、数秒後立ち上がると、確かめるように左足のつま先をトントン、と地面に打ち付ける。
それを見た西森が、ひとつ舌打ちする。
(なーにが得意じゃない、だ。アキレス腱完治してんじゃねーか)
攻撃のみならず、強力な回復手段を持つ赤松。思った以上に厄介な相手のようだ。
となれば──
「おい家来、ボケっとしてんじゃねー。あっちがやりあってる間にアイツ片付けるぞ」
そう言って、油断なく構える森川に目を向ける。
「あ、はい」
そう答えた田辺は、下を向いてすこし考えこんだ後、隣に立つ西森に小声でささやきかけた。
「……西森先生、一瞬で構いません。奴の動き、止めてください」
「ヨユーじゃ」
即答すると、西森は森川に向けて駆け出した。
とんっ、と地面を蹴ると、その体が羽のようにふわりと宙に舞う。
ジャンプで一気に距離を詰めると、西森はその勢いのまま空中で回し蹴りを繰り出した。
しかし、森川は西森の動きを、視力を除く五感をフル活用して捉えていた。
(見えないからってそんな大振りが……)
旋風のようなその蹴りを、森川はまるで見えているかのようにあっさりとスウェーで避ける。
「当たるかよ」
そう呟くと、いまだ宙に浮く西森に向けアッパーを放った。
必死に体を逸らし、辛うじてその拳をかわす西森。
しかし、無理な姿勢のせいか、西森は着地の瞬間バランスを崩し、後方にたたらを踏む。
「死ね」
追撃のために森川が一歩踏み出した瞬間、
───パンッ
その足の裏で何かが弾けた。
472 :
MIX-UP:2005/04/11(月) 02:30:40 ID:qS5vohAt0
「結!」
想像外の出来事に、一瞬生まれた隙を見逃さず、田辺が成形した二層の結界が森川を包囲する。
森川が踏んだもの、それは、着地の瞬間に西森が地面に撒いたカンシャク玉だった。
だが、瞬時に動揺から立ち直った森川は、ケラケラと笑う西森を無視して両の拳を繰り出す。
盲滅法放たれた数発の拳の連打(ラッシュ)、二層の結界は、それぞれが一発ずつであっさりと破壊された。
「マジで小賢しいヤツらだ……」
憎々しげに吐き捨てる森川、その頬を冷や汗がつたう。
そして、その森川の様子を伺っていた田辺の口から、無意識のうちに声が漏れる。
「やっぱり……」
「なにがやっぱりか、このボケ。チャンスだったのによ」
いつの間にか側に戻ってきた西森が、ぱん、と田辺の後頭部を叩く。
「で、何がわかった?」
結構な強さで叩かれたせいか、涙目で後頭部をさすっていた田辺に西森が問う。
「奴に結界が通用しない訳じゃない、ってことです」
「通用してねーぞ?」
首を傾げる西森に、そうじゃなくて、と苦笑しつつ、田辺イエロウは考える。
先程から、心のどこかで燻りつづけていた疑問──本当に五重結界の滅却は通用しなかったのか?
自身は対峙することなく、距離を置いて奴のパンチの威力、スピードを冷静に観察することで、その疑問は氷解した。
奴──森川は五重結界の『滅』に耐えた訳ではない。
『滅』の呪言を唱え、その効果が発揮されるまでの一瞬の間に、内部からの打撃で次々と結界を破壊したのだ。
おそらく、先程の五重の結界も、四つまで──あるいは最後のひとつも半ばまで──は破壊されていたのだろう。
そして、もうひとつわかったこと。
視力を失ったせいだろうが、二層しかない結界を破壊した後も、闇雲に連打を続けた森川。
奴は結界の、『滅』の威力を怖れている。
「とにかく、次はあのゲス野郎に痛い目を見せてやれると思います」
田辺は西森に顔を寄せ、即興で立てたその策を耳打ちする。
「西森先生、やってもらえますか?」
危険な役回りを課したせいだろう、心苦しそうにする田辺に、西森はふん、と鼻を鳴らす。
「ひとつ教えておいてやるぞ、家来」
天使のようなその美貌に、悪魔のような笑みを浮かべ、西森は高らかに宣言した。
「俺は強えー、そしてヒキョーだ。───だから俺は無敵だ」
473 :
MIX-UP:2005/04/11(月) 02:32:33 ID:qS5vohAt0
森川とサンデー二人組の攻防を横目で伺いつつ、赤松は舌打ちする。
森川の実力は折紙つき。例え多対一の戦いであろうと、そうそうひけを取るものではない。
但しそれも、万全の状態であれば、の話だ。
如何な森川と言えど、視力を失ったこの状況ではさすがに分が悪い。
援護すべきであり、そのための手段を自分は幾らでも持っている。
それが出来ないのは、数メートル先にいる男──柴田ヨクサルのせいだ。
正直なところ、あの男を前に治癒魔法を使ったことさえ、赤松にとってはとてつもない賭けだった。
アキレス腱断裂は、痛みの中でも最大級。
その激痛を抱えたまま戦い続けるのはあまりに不利、という判断の上での行動だった。
結果的に、断裂したアキレス腱を治癒している間、ヨクサルは仕掛けてこなかった。
赤松は賭けに勝利したことになる。
しかし、そう何度も危険な賭けを繰り返すほど無謀にもなれない。
先程、一瞬の隙を突かれてあっさりと左足を破壊されたという事実が、赤松の行動を掣肘していた。
──とはいえ、こうしてただ突っ立っているワケにもいかない、か……。
内心、そうひとりごちると、赤松は口を開く。
「さて、こちらも続きといこうじゃないか。柴田ヨクサル」
呼びかけを受け、その視線を赤松に定めると、ヨクサルが構えた。
左足を一歩前に踏みだして赤松に対し半身となり、腰を深く落とす。
左手は握りこまず、地を指し示すように前へ、軽く握った右拳は腰に添えるように。
ヨクサルが得意とする、八極拳の構えである。
しかし、それを見た赤松の表情は、恐れとは全く別のもの。
とっておきのイタズラを思いついた子供のような──というには邪悪すぎるが──笑みを貼りつけ、赤松は呪文を唱えた。
474 :
MIX-UP:2005/04/11(月) 02:34:31 ID:qS5vohAt0
「戦いの歌(カントゥス ベラークス)」
一瞬、赤松の全身を魔力の光が包みこみ、光が消えるとともに赤松も構える。
ヨクサルの目が大きく見開かれる。
赤松の構えはヨクサルのそれと同じ───八極拳。
「驚いたかな? 実は私も八極拳士なんだよ」
ミーハーでやっているんだがね、と赤松が嗤う。
「君の正統的な八極拳と、私のミーハー八極拳、どちらが上だろうか……」
赤松は歌うようにヨクサルに語りかける。
「やってみるか? どちらが吹っ飛ぶか」
「……ふざけたこといってるぞ」
この男にしては珍しく、不愉快さをありありと感じさせる口調でヨクサルが応える。
「それをわからせなきゃならないな……」
柴田ヨクサルと赤松健。対峙する二人の八極拳士。
高まる闘気が頂点に達した瞬間、二人は同時に左足を前に踏み出した。
その踏み込み──震脚により、アスファルトに蜘蛛の巣のような亀裂が走る。
まるで鏡に写したかのように、動きをトレースしながら、二人は同じ技を繰り出していた。
体を捻り、背中から相手にぶつかるその技───鉄山靠が激突した。
西森タンは凶悪美少女で実に私好みですな
赤松氏は色々隠し種が多そうで、どう転ぶか見ものです
〆⌒'ヾ、
γ'《.::::... 'ヽ,
ミ/'⌒ヽ,::. ヽ
ヽヽヽ ヾ, ヾ,
_ 丿' ..::丿
( ゚∀゚)x"⌒''ヽ、⌒ヾ/ .:::/ ヽ 赤松!器用!ミーハー八極拳!
(| ...:: Y-.、 ..:::/ ヽ ヽ
| イ、 ! :ヽ .:::::/ヽ ヽ ヽ
U U `ー=i;;::.. .:ト、 / ) .) .)
ゝ;;::ヽ :`i / / /
>゙::. .,) / / /
////:::. /;ノ / / /
ゞヽ、ゝヽ、_/:: /// /
`ヾミ :: :. ゙ _/
`ー--‐''゙~
477 :
その“一撃”:2005/04/11(月) 03:35:52 ID:Yfm0Tkhb0
>474
「うげえええっ!!」
まさに、一撃。
八極拳の打ち合いに負け、呆気なく吹き飛ばされた赤松が悶絶する。
「一つだけ教えてやる…八極とは“大爆発”のことだ…その程度で八極拳士を語るな…」
柴田が立つ地面。
そのコンクリに刻まれた震脚の破壊の爪痕と、赤松の残した些細なそれとが、彼我の威力の絶対的な差を物語っていた。
「はは…遊びが過ぎましたか…やはり貴方相手に接近戦は無謀…」
赤松、ふらふらとした姿で素早く上空に逃げる。
「さてさて、どうしますかねぇ……」
激痛を少しも感じさせぬ声で、赤松が呟く。
と、その時。
盛大な破壊音が、耳を打った。
ちらとそちら、森川ジョージの方に目をやる。
裏路地に聳え立つ、ビルのコンクリの壁の一部が、森川の横殴りの一撃によって見事に崩壊していた。
「おや、やはり――」
と、多少のおかしみを感じつつ、赤松は言う。
「代わりたいですか、森川先生?」
その問いに森川は無言でもって答えた。
突然の破壊行為と対照的な静けさが、なんともいえず不気味である。
「なんとかしろ」
短く、森川が言った。
押し殺したような声音だった。
赤松は、得心したように頷き懐から一枚の呪符を取り出す。
「水妖陣」
紡がれた呪と同時、符が消失し、赤松の背後に、夥しい数の透き通るような手が発現した。
悪魔の視線が、西森と田辺を射抜く。
瞬間――透明の魔手がぐんっ、と伸び、二人に一斉に襲い掛かった。
478 :
その“一撃”:2005/04/11(月) 03:38:08 ID:Yfm0Tkhb0
「やっべ……!」
西森は、焦る声と裏腹に、こちらへ伸び来る手など気にも留めず、顔色を変えて森川の方へ駆けた。
その体に幾多の手が絡みつく寸前、森川の体を覆いそれを阻止したのは、田辺の結界である。
「西森先生、何してるんですか!」
「間抜けッ、俺を守ってる暇があるんならあっちを止めろ!」
あまりにも無防備に――と、田辺には見えた――森川の方へ飛び出した西森を諌める声は、切羽詰った罵声により打ち消された。
あっち、と言われた方向、つまりは森川ジョージがいる方だが、そちらを見て、田辺は固まった。
そこに立つ森川の両の眼を、透明の手が覆っていた。
「OKですか、森川先生?」
田辺が、赤松の狙いに気が付いたと同時、おどけるような声が上から降って来た。
もちろん、赤松である。
森川は、水で濡れた眼を指で擦り、ゆっくりと、眼を見開いた。
「ああ、お前にしては上出来だ。……案外明るかったんだな、ここ」
視界の状態を確かめつつ、低い声で森川が言った。
詰まる所、最初から赤松の狙いは森川の視力の復活にあった。
森川と赤松が言葉のやり取りを最小限に留め、赤松が最初術を西森と田辺に放ったのも、全てはそれを阻止しようとするだろう二人の動きを抑止する為。
その狙いをいち早く見抜き、食い止めようと動いた西森は流石というべきだろうが、その彼女も赤松の魔術に対応することは出来なかった。
ちっ、とこの期に及んで不遜に舌打ちする強かな美少女の姿を、森川は凄い眼で睨む。
己を屈辱的な状況に陥れたその当人が一際だった美貌を持つことすら気が付かぬ程の憤怒がその眼には込められていた。
が、しかし――。
森川は直ぐに視線を外し、別の方向を向いた。
479 :
その“一撃”:2005/04/11(月) 03:38:56 ID:Yfm0Tkhb0
その視線の先――ねばつく闇に溶けるように立つ柴田ヨクサルを見定め、ようやく、赤目の魔人は嗤った。
「またせたか……」
低く、押し殺すような声で森川が呟く。
「少し、な」
ふっ……と吐息のような笑みを口元に浮かせて柴田が答える。
――この男がどう動くかは、この場面に置いても一つの鍵だった。
しかし赤松は、彼が森川ジョージの復活を待つと確信していた。
(気が付いていたよ……私と戦いつつも、君の意識は森川先生に向けられていた)
それは、森川も又感じていたのだろう。
必要以上に赤松に悪罵を投げ掛けたりしたのもその憤りからだ。
そしてそれが爆発したのが、先程の破壊行為。
「「邪魔したら殺すぞ」」
その場の全員に向けて、彼らは同時に言い放った。
空気が凍りつくかのような、冷たい声だった。
ほうほう
いよいよ本格的に殺し合いですな
楽しみです
>「うげえええっ!!」
( ; ゚Д゚)<しっかりしろ大罪衆!大罪しゅぅぅぅうっ!!!
482 :
罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:14:13 ID:wyOGOGKJ0
>>126 エリア88の鳴動を、そして変形を、あらゆる戦場にいる者たちが感じ取る。
そう、この三者も例外ではない。
平野「――!?」
内藤「こ…この揺れは!?」
伊藤「何か……またもや珍妙な事態になってきたみてえだな?」
内藤・平野・伊藤明弘のガンマン三巨頭。
終着点の見えない三者の戦いに、新たな一石が投じられた瞬間であった。
背中合わせで立つ内藤と伊藤、それを包囲する形だった平野、この位置関係が変わる。
エリア88の一大変形により、三者の距離が離れ、高低差が生じた。
真っ先に飛び跳ね、空中で平野の位置を確認し、二丁のモーゼルを照準する伊藤。
遅れぬ反応で、ジャッカルを照準し返す平野。
両者の銃口が火を噴くかに見えた刹那、内藤が叫んだ。
「伏せろ――っ!!」
――― ヴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ッ ッ ッ !!
二人のいた空間を断ち割るというよりも、滅し尽くすかのように、鋼鉄の嵐が吹き荒んだ。
いや、それはもはや弾幕というより、弾丸の壁といった方が適切だったかも知れない。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ―――――――オオオオオオオオオオオオッッッッ!!!
「くっくっく…」
火災発生と勘違いするほどのガンスモークの向こうから、笑い声が聴こえた。
平野が発生させた闇は、この瞬間の乱射で切り裂かれていた。
闇が晴れ、再びあらわになった蒼天をバックに、浅黒い肌に金髪が映える美少年が立っていた。
それはたった一点をのぞけば、あまりに場にそぐわないと思えただろう。
ただ一点、その少年の全身から、夥しい数の銃器が張り出していることを除けば―――
483 :
罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:15:01 ID:wyOGOGKJ0
伊藤「――誰だ?」
伊藤が訊く。少年が答える。
??「GUHG−HO−GUNSの7、木葉・ザ・クリオダイバー」
その名に、内藤の表情が変わった。
内藤「君は……」
呆然とつぶやくと、それに気付いた木葉が恭しく跪いて臣下の礼をとる。
木葉「長き眠りからのお目覚め、待ち望んでおりました、内藤様」
どこか難しい顔つきになった内藤の表情には気付かず、木葉はその銃口を伊藤に向ける。
木葉「さあ、命令してください、内藤様。貴方の敵を、消せ、と」
大量の銃器を一斉に照準されて、さしもの伊藤も頭をかく。
どうやって、この大味な相手を攻略しようかと、苦笑しながら思案しているようだった。
突然乱入してきて、戦場をかき乱し、今まで自分が戦っていた相手と銃撃戦を繰り広げようとしている部下。
それへの対処を、内藤が決めかねていると、闇より響く声。
「走狗(いぬ)め」
「――!!」
切り裂かれた闇が、三人の目の前で収束し、人の形をとっていく。
「なるほど、たいした威力だ。しかし走狗では私は倒せない」
闇がわだかまり、それがやがて白い姿をとっていく。
「狗では私を殺せない。化物を打ち倒すのは、いつだって『 人 間 』だ」
たるんだ頬の皮肉を吊り上げて、何とも言えぬ不快な笑みを浮かべる。
木葉の銃弾で穴だらけにされたはずの平野が笑っていた。
木葉「――すごいな。やっぱり吸血鬼の再生能力は尋常じゃない」
感嘆した木葉が、新たな銃を生やし、平野にも銃口を向ける。
新たな乱入者の登場で、戦局が大きく動こうとした、そのとき。
内藤「――木葉、ここは僕ひとりでいい。君は、この艦の人間を、ひとりでも多く助けてやってくれないか」
木葉「――!?」
この申し出は予想だにしていなかったのか、木葉が胡乱な顔をした。
平野は「始まった…」とばかりに少し興ざめしたような表情。
伊藤は、どうとも判別できぬ微妙な態度を示していた。
484 :
罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:16:46 ID:wyOGOGKJ0
内藤「この艦の人達は、僕を助けてくれた。恩返しになるかは分からないけど、僕は彼らに報いたい。
それに、僕はもうできるなら人が死ぬのは見たくない」
自分たちは化物だ。双方がいなくなるまで潰しあい、消え去ればいい。
しかし、人間には死んで欲しくはなかった。
今さら、と言われても仕方ないが、それが目覚めた内藤の願いであり、決意だった。
しかし、命令というよりは嘆願とでもいうべき言葉を、出迎えたのは白けたような一言だった。
木葉「期待外れだぞ、おまえ」
少年の顔には、もはや主人への尊敬の念など欠片も浮かんではいなかった。
かわりに張りついているのは、失望の極みとでも言わんばかりの冷めた表情。
木葉「なんだそりゃ。最低だ。つまらん」
侮蔑もあらわに吐き捨てた。先程、内藤に頭を垂れたときとはまるで反応が異なる。
木葉「俺を始めとする『ミカエルの眼』の連中は、あんたが『世界を真っ平らにしたい』っていうから、その力になるために技を磨いていたのに。
それが今頃になって、そんなこと言うなんて……興醒めにも程があるな」
内藤「……!!」
自身の最も痛いところを突かれて、内藤は強く歯を噛む。
そう、勝手に漫画界に失望して、自分だけの都合で全てを消そうとして、そしてGUHG−HO−GUNSを破壊者の集団に変えようとしたのは、他ならぬ自分なのだ。
今、目の前に立つ、少年の姿とは裏腹の狂気の具現化。
これは、内藤が生んだ罪、そのなによりの証であった。
木葉「ま、今のは起き抜けで寝惚けてた…ってことにしといてあげるよ」
ズルル…と木葉の身体から、なおも次々と武器が飛び出す。
機関銃が、ロケット砲が、ミサイルが、ありとあらゆる兵器が出現する様は、まさに武器庫。
木葉「さしあたり、この艦ごとまとめて消し飛ばせば、目も覚めるでしょ」
ジャキジャキッ、と全身の武器が、全方位に向けて飛ぶようにセットされた。
あれらが一斉に発射されれば、たしかにエリア88といえども撃沈はまぬがれまい。
内藤「やめろ――――――――――ッッ!!」
絶叫も虚しく、木葉は乱射魔(アッパーシューター)の本性を全開させようとする。
しかし、このとき、まだ誰も気がついていなかった。
4人のガンマンが対峙していた場所。
その付近にて、期せずして二人の魔人同士が死闘を繰り広げていたことを。
>>117 ひとりは、蜻蛉を切って後方に向かって着地した。
禍々しい紫紺の鎧を身に纏った、毒蛇の王――仮面ライダー王蛇。
ひとりは、コツコツと靴音を響かせて、鷹揚に王蛇と対峙した。
銀色のコートを身に纏った、炎の死蝶――和月。
ふいに和月がコート――防護服(メタルジャケット)の武装錬金『シルバースキン』を解除した。
本来の素敵スーツをさらけ出すと、今度は新たな武装錬金を展開させた。(和月は、一度に一つしか武装錬金を発動できない)
視界を覆いつくすほどに展開されたのは、黒死の蝶の大群。
王蛇は、一見優美にも見えるそれらが、どれほどの破壊力を秘めているかを知らない。
しかし、本能によるものか、ただならないものを感じた王蛇は後ろに走り出す。
その方向では内藤・平野・伊藤・木葉が戦っている。
「……無駄だ♪」
全てを破壊する黒色火薬(ブラックパウダー)の武装錬金『ニアデスハピネス』。
それが発動した以上、ターゲットの運命は決まっている。
和月の闘志に呼応して、全ての蝶が着火する。
漆黒の優美な羽に込められた、煉獄の炎が解放される――――!!
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――――――――ッッッッッ!!!!!
王蛇が、内藤が、平野が、伊藤が爆炎の中吹き飛んだ。
天空の蒼穹を、黒龍のごとき爆煙が染め上げていく。
「……こういうゴチャゴチャした戦いは、好きじゃないんでね♪」
和月はそう吐き捨て、踵を返した。
噴煙おさまらぬ戦場に、和月の靴音だけが響き、次第に小さくなっていった。
486 :
毒牙:2005/04/11(月) 22:20:52 ID:wyOGOGKJ0
「……いたたたた……」
やがて、煙の中、内藤達が立ち上がる。
一様に浅くはないダメージを負っているが、ただ一人その中に悠然と立っている男がいた。
木葉だ。
『ニアデスハピネス』の大爆発により、身体の半分近くを失いながら、なおも木葉は立っている。
……何かがおかしい。内藤達がそう思ったとき。
「フン」
その後ろにいた影に突き飛ばされた。
内藤「あ……」
その毒々しい紫色の身体……仮面ライダー王蛇。
そのボディは、あれだけの爆発のなかにあって、ほとんど無傷。
王蛇は、爆発の瞬間、自分からもっとも近くにいた木葉を盾代わりに利用したのだった。
木葉「……ひ、ひでえ……人を……盾に……」
王蛇「近くにいた、お前が悪い」
木葉の呪詛にも似た抗議は、その一言で片づけられた。
激昂した木葉はかろうじて残された分の銃器を一斉に王蛇に突きつける。
だがそれよりも早く、王蛇の鉄拳が木葉の身体を跳ね飛ばした。
木葉「がはあっ!」
吹き飛んだ木葉を一瞥し、王蛇はベノバイザーのスロットを開けた。
デッキから抜き取ったカードを表にして入れ、スロットを再び押し込む。
無機質な機械音声が、死神の宣告のごとく、カード名を読み上げた。
『 フ ァ イ ナ ル ベ ン ト 』
487 :
毒牙:2005/04/11(月) 22:33:54 ID:wyOGOGKJ0
彼方より、毒々しい紫色の巨大な蛇が、地を這ってくる。
コブラ型モンスター『ベノスネーカー』。
死の御使いが、鎌首をもたげた。
王蛇も両手を広げてその頭の下を疾走し、間合いに入ったところで空中高く飛び上がり、ベノスネーカーの口の前に躍り出る。
ベノスネーカーの毒息と共に、王蛇は木葉へと飛び掛かった。
木葉「あ……ああ……」
絶望のうめき声を上げ、ヨロヨロとフラつく木葉を、両足で噛み砕くかのような空中からの連続キックが爆発した。
炸裂――――!!
『ファイナルベント』―――― ベ ノ ク ラ ッ シ ュ。
王蛇の蹴りの一発毎に、木葉の肉体が砕けていく。
毒蛇の牙が、哀れな獲物に喰らいつき、肉も骨も噛み千切った。
「う……あ…… あ あ あ あ あ あ あ あ あ あああああああああああ!!!!」
―――― ド ッ グ ア ア ア ア ア ッ ッ ッ !!!!
木葉の断末魔の叫びは、爆発音にかき消された。
内藤「お前……なんで、こんな……」
最悪の展開を期せずして回避できたとはいえ、それはそれ。
目の前で理不尽な惨殺劇が行われたことに怒りをあらわにし、王蛇を睨みつける内藤。
王蛇は肩をすくめて答える。
王蛇「ふはははははは! こういうもんなんだろ? 違うのか?」
人ひとりをゴミのように殺しておきながら、魔王のごとき哄笑を響かせる王蛇。
その頭上では、ベノスネーカーが次なる獲物を待ち焦がれるかのように、毒々しい息を吐き出し続けていた。
木葉功一……【死亡】
…ああ……木葉【追悼】
うわ、原作のガイ惨殺シーンの再現か
木葉やっと活躍するかと思ったらむくわれねえ・・・
最後まで広江に喰われっぱなしだったような
最初っから最後までよく分からんトリガーハッピー野郎だったな…
ナムナム…(-人-)
キリコ描いてた頃は天才かと思ったもんだが、結局いつの間にか消えちまったしなあ
ろくな見せ場も与えられず死んでいくのはマイナー作家の宿命のようなものか・・・
それはそうと、やっぱり「ミカエル」関係の連中はあくまで破壊者としての内藤をうやまってたんだな
これで、ガンホーの内部分裂はほぼ決定的になったか
熱戦珍戦入り乱れの前半が終了し、一息つく選手と観客。
4−1――サッカーにおいては、もはや勝負の決しているスコア。
そう、普通のサッカーならば……
「……ハァハァ……!!」
誰がどう見ても、この試合中に立ち直るとは思うまい。椎名。
「ありゃあ、ダメだな……」
「……ああ……ダメだ……」
眠気MaxHeartなカムイと城平が、後半に向けての話し合いをしていた。
「まああれはいい……確か、水野に代えて貞本だったな。椎名の代わりは
……俺は彼しかいないと思ってる」
「そう、だな……後半は、恐らく、向こうの主力が勢揃いする……ならば、力
のある者を出さねばなるまい……しかし……」
二人は、村枝に目を移した。この男を使いたい。しかし――
「椎名の代わりに俺が出る」
村枝は開口一番そう言った。二人は目を見合わせ、一瞬間の抜けたように
なった。
「しかし……いいのか? その傷で……」
カムイはそう言うが、村枝はこう切り返した。
「傷? そんなもの、ただ身体にダメージを受けているだけじゃないか。真の
戦士は、何で闘うと思う? この、胸の奥にある熱い塊でだ!」
村枝は、親指で自らの胸を突き立てる。彼は既に、スイッチが入っていた。
もう、見てなどはおれない。
「俺を出せ。そうすれば、勝てる――」
「……ああ…………俺は、後半貞本の監視に追われることになると思う……」
前半終了少し前から、今までと別人のように黙りこくって、狂った眼で水野に
視線を集中させている貞本を横目で見ながら、城平はそう言った。
「カムイと共に、チームを引っ張ってくれ……頼んだ……」
OUT 水野 → 貞本 IN
椎名 → 村枝
頼りになる本命と、どうにもならない爆弾が一度にキタァッ!
――ここは……
森…………?
「よう、気がついたかい」
男の声がした。見ると、大柄で顎の大きな男が、何か煮込んでいる。
「……そうか、俺はここで倒れて……別府……」
「驚いたぜ。俺も気がついたら何故かここにいて、そして君が倒れてい
た……俺はうえやま、いや、クッキング親父だ。君は?」
「俺は芦奈野ひとし……そんなことより別府は?」
芦奈野は、崩壊してゆく別府を見ながら気を失った。勿論、別府の顛末
を知らない。
「自分の目で確かめたらいい。まあ酷い状態だが、とりあえずの危機は脱
したようだ」
親父はそう言って、ニンジンの煮込み具合を確かめた。
「うむ。オーケーだ! さあ、食べていいぞ」
鍋そのままを差し出され、芦奈野は戸惑った。中身は肉じゃがのようだ。
材料はどうやって揃えたのだろう。
芦奈野も、初めて会ったおっさんにいきなり『食え!』と言われても、それは
困る。しかし、余りにも旨そうな匂いをこれでもかと漂わせていたので、身体が
勝手に動いた。
「……うめえな」
「そうか」
芦奈野の言葉を聞き、親父はニコリと笑った。
「実はな……俺はどこか別の場所に居たんだ。なんでかは分からんが、ここと
は違う場所に、だ」
芦奈野が肉じゃがを一人で平らげてしまうと、親父がそう切り出した。
「そこには、俺の他に、特に特徴のない平凡な男と、上半身裸で話し方のおか
しい男がいた。途中まで一緒だったが……どうやら、彼らは俺とは別の場所に
行ったようだな」
そのうち一人は、ある出来事により精神が退行(別に言い換えれば、原点に
返ったとも言える)。もう一人は超然ギャグ野郎(書く人の気分や状況によって
女体化)ゆえ、特に変化は生じなかったが。
「彼らもアレを見たのだろうか。アレは、俺には何が何やら分からないモノだっ
た……いや、アレは俺にではなく、貞本にのみ向けられていたような気さえする」
言うまでもなく、芦奈野にはわけが分からない。
「正直わけが分からんが……“アレ”ってなんだい?」
「アレか? アレはな……いかん、思い出せん。料理しながらなら思い出せるか
もしれん。食うか?」
「それはさすがに……」
親父の見た“アレ”とは――真実を知る者は、一人。
話も一段落して、芦奈野が腰を上げる。
「世話になったな。俺はもう行くよ」
「どこへ行くんだ?」
「まあよ、旅の目的も色々あったんだが、やめた。“魔女”のところへ行くつもりだ。
あいつは物事を恐ろしいほどよく知っている。今回の別府の件について色々と、な」
クッキング親父は、そうか、と言って暫く考え事をしていたが、突然、
「もしよければでいいんだが、俺も付いていっていいか?」
“アレ”のことも、その魔女に訊けば何か分かるかもしれない。そう思ったのだ。
「あいつは、あまり多くの人が来るのを嫌がるが……命の恩人の言うことには逆らえ
ねえな。構わねえよ。“魔女の家”は、ここから暫く行った森の中だ」
そう言って、芦奈野は歩き出した。その言葉を受けて、親父もその後を付いてゆく。
“魔女の家”――彼らはそこで、何を知る。
肉じゃがの美味しい季節ですね(春)
親父編が不思議な動き。森って久米田が迷子になった所かな
>>479 森川が、壁際から道の真ん中に動く。
柴田、それを見て、僅かに後ろに跳び下がる。
数mの距離を置き、二匹の猛獣が対峙する。
森川、再び両手のガードを上げ、軽くステップを刻み始める。
柴田は構えない。
両手をだらりと下げた体勢のまま、棒立ちで立つ。
「柴田ヨクサル。鷹の団、だったな」
森川が言った。
「技来に聞いてたよ、お前のこと。エアマスターっていうんだって?」
「そうだよ」
切る様な声でヨクサルが答えた。
「空か、空気か、どっちも、か?」
く、く、く、と森川が笑い声を洩らす。
「精々、楽しませてくれよ」
笑いを止めると同時、森川はいきなり踏み込み、左ジャブを放った。
一閃。
肩口から最短距離を真っ直ぐ貫くようなジャブがヨクサルの顔面に迫る。
ヨクサルは、まるで陽炎が揺らめくようにふわりと緩慢ですらある動きでそれを避けた。
先の山本との死闘の果てに、空気の流れを見る力を得たヨクサルの反応速度を持ってすれば、森川の左を回避することですら難しいことではない。
ひゅう、と森川が口笛を吹く。
左ジャブ一つあっさり外された程度で彼は動揺したりしない。
そのまま、時計回りに鮮やかなステップワークを刻みながら、速射砲のようにジャブを繰り出していく。
最小限の動きで回避するヨクサルに矢継ぎ早に拳が迫る。
打つ。
打つ。
打つ。
反撃の余地が無い。
一つ、一つ、と打ちつつ、森川は間断無く動いているからだ。
完璧に避けていたヨクサルの顔を、徐々に徐々に拳が掠り始める。
一撃、これまでで一番の速度のジャブが、ヨクサルの頬を切り裂いた。
鮮血が飛ぶ。
僅かに、ヨクサルの体が止まる。
シッ!
と鋭い呼気を吐き、左を追撃で放つ。
拳が、ヨクサルの鼻先に触れる。
その刹那、ぐるりっ、とヨクサルが体を回転させた。
ちっ、と鼻先を掠め、拳がその空間に深く入り込む。
ヨクサルはそのまま独楽のように回転し、距離を詰める。
その動きは、攻撃に直結していた。
回転の反動を付けた回し蹴りが、強烈な勢いで森川の側頭部を襲う。
食らう寸前に、森川の右腕が間に入る。
腕が痺れそうな衝撃に堪え、足を振り払う。
その勢いに逆らうことなく、ヨクサルが退く。
離れ際。
一己の独楽と化したヨクサルのボディに、地から掬い上げる様な一撃が放たれた。
インパクトの瞬間、ヨクサルが両手を交差させてその拳を受け止める。
ふわり、と体重が消失したように森川の拳と共にヨクサルの体が浮き上がる。
拳が頂点に達した瞬間、とんっ、とヨクサルが両手を離し、後方に回転する。
回転しながら、体を横に捻っている。
真下から捻りの加えられた踵の一撃が、森川の顎に当たった。
爆ぜるように森川の首が後方に跳ね上がった。
意識が吹っ飛びそうな一撃に、だが森川は耐え、即座に後ろに飛んだ。
その脚が地に着いた瞬間――。
森川はバネのような勢いで地を蹴り、前へ踏み込んだ。
退く、そう見せかけての裏を斯いた攻撃だが、しかし――。
踏み込んだその空間から、ヨクサルの姿が消失していた。
驚愕で眼を見開き、周囲を見回す。
いない。
――どこだ?
「森川先生っ――上だ!」
赤松の声を聞き、反射的に空を見上げた彼は見た。
宙を鮮やかに舞う、エアマスターの片足が、己の後頭部に吸い込まれるように消えていくのを。
避けられない。
そう思った瞬間、森川は咄嗟に前に飛んだ。
ごっ、と骨を打つ音と共に、眩暈がしそうな衝撃が脳を揺らす。
が、自分から飛んだお陰でダメージは軽減されている。
立った。
ヨクサルが、すうっ、と薄絹のように地に降り立ったのは、ちょうどその時だった。
じっ、とヨクサルの異様に澄んだ眼が森川を捕えている。
そんなもんか――?
その瞳はそう言っている様に、状況を静観する赤松には感じられた。
「勝てない、ボクシングでは――」
我知らず、赤松は声を洩らしていた。
当初は完璧にヨクサルを封殺するかに思えた森川のボクシングはしかし、ヨクサルの独特の体術により、須らく崩された。
アクセルひと踏み一秒で0kmから500kmまで加速する化物マシーン。
とは、ヨクサルを評した言葉だが、変幻自在、あらゆる角度から雷撃の如く打を撃ち、
相手の打を真綿か、涼風さながらに受け流す体術はまさに天魔の技である。
地に両の足を着け、人間の上半身を殴る事のみを考え生み出された競技の動きでは、到底この男は捕えられぬ、と赤松には見えた。
だが、当の森川に焦りは無い。
その顔面には、きゅっ、と強烈な笑みが刻まれている。
「強いなあ、お前」
たんっ、たんっ、と足踏みをし、ダメージを確認しながら、楽しげに森川が声を掛けた。
「同じ言葉を返す。強いな、お前」
当てられたしな、と裂けた頬に触れて、ヨクサルが心中で付け足した。
だが――と、ヨクサルが言葉を繋ぐ。
「“それ”じゃあもう、今の俺は止められない」
断定的な口調で吐いた言葉は、奇しくも赤松のそれと同じ意を含んでいた。
森川は、眉を顰める。
「待て」
掌で押さえつけるように森川が言う。
「ちょっと待て……“それ”っていうのは、ボクシングのことか?」
「そうだよ」
わかりきった質問に、短い返答。
く、と森川が低い声を洩らした。
笑みか、憤りか本人以外に判別できぬほどの微妙な声音だった。
「まったく、どいつも、こいつも、本当に……」
そろりと呟き、森川はだらりと両腕を下げた。
上体がゆらゆらと不定期に揺れ動く。
先程、田辺と西森二人を相手取った時に見せた構えだった。
その構えを見て、ヨクサルの眼の色が再び危険に変わって行く。
ほとんど前のめりの体勢で顔だけ上げて、森川はその瞳を睨んだ。
「一つ、予言だ。数十秒後、テメエは地を這い蹲って陸に打ち上げられた魚見たいに惨めったらしく悶絶する」
「――いいから、とっととこいよ。やるんだろ、まだ?」
森川の言葉を手で払いのけるようにヨクサルが言う。
興味無さげ、というよりは、早く続きを闘りたいと言わんばかりの苛々がその声には込められていた。
ぎりいっ、と森川、歯を軋ませる。
怒りに燃える赤目と、静謐そのものの澄んだ瞳が、絡み付くように交わる。
――戦いは、未だ序章。
501 :
最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:13:04 ID:D7kU7wio0
>>487 突如として現れた殺人快楽者を、内藤が凄まじい目で睨みつける。
その視線を、王蛇は値踏みするように平然と受け流している。
ベノスネーカーも主と同じく、しばし内藤と視殺戦を繰り広げていたが、間もなくベノスネーカーが仕掛けた。
毒液が、内藤へと吐きかけられる。
強酸のシャワーを、内藤が間一髪といった感でかわした。
床を転がり、起き上がると同時に見た光景に、内藤は顔をしかめた。
床や壁を直撃した毒液は、まるで飴か何かのように鋼鉄製のそれらを溶かし、腐食させた。
「おい、俺にも楽しませろ」
ベノスネーカーの戦いをしばらく眺めていた王蛇、見ているだけでは飽き足らずベノスネーカーを制すると、ベノサーベルを振りかざして内藤に斬りかかった。
迎撃するのは、驚異の早撃ち(クイックドロウ)から、ほぼ同時に放たれた6発の弾丸。
さらに左腕の内臓銃も閃火をほとばしらせる。
迫りくるライダーに殺到する、超速の弾幕。
キュキュキュキュキュキュンッッ!!
しかし、王蛇は驚異のステップワークで半分をかわし、さらにもう半分は体ごと回転させてからの剣捌きで残らず叩き落とした。
間合いを瞬時につめ、回転の遠心力をそのままに、真一文字の一撃を内藤に見舞った。
ギャリィンッッ!!
かろうじてリボルバーの銃身が、ベノサーベルを受け止めた。
とてつもない力で押し込んでくる刃を、内藤は左の義手を支えに両腕で押し返す。
激しい鍔迫り合い。
至近距離で、両者は睨み合う。
「……おまえ、何とも思わないのか!? あんなに人間を……あっさり……」
理不尽な殺人者に対する、怒りと憎悪。
内藤の感情の発露を、しかし王蛇は鼻先で嘲笑う。
「……フン、おまえ馬鹿か」
戦いは、イライラを止めるための、唯一の処方箋。
王蛇にとって、戦闘によって失われる生命など、己の快楽のための玩具にすぎない。
たかだか玩具がひとつ壊れたところで、なにほどのことがあろうか。
その玩具が壊れたくらいのことをみっともなく大騒ぎする内藤は、王蛇にとって、理解不能の珍獣だった。
502 :
最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:13:44 ID:D7kU7wio0
「答えろ!!」
自分を嘲笑する王蛇の態度に、内藤が叫ぶ。
王蛇は答える代わりに強烈な一撃で内藤を吹き飛ばした。
胸元を逆袈裟で斬られ、段差から数メートル下の床へと落下し、全身を打ちつける。
防弾も可能にする特殊コートのおかげで致命傷には至らないが、その傷は浅くない。
床に叩きつけられたダメージとあいまって、苦痛に呻く内藤を見下ろしながら、王蛇は恍惚としてつぶやいた。
「……この感じだ……!! これだけで漫画家になった価値は十分にある!!」
王蛇が飛び下りの勢いを乗せた斬撃を、眼下の内藤に向けて振り下ろした。
内藤はそれをかわし、
「ふ・ざ・け・る・なッ!!
リボルバーの銃把を、渾身の力をもって、王蛇の横っ面に叩きこんだ。
ふいの強烈な一撃を喰らい、さしものライダーが吹っ飛び、しりもちをついた。
「おまえ……最低だ! 最低の漫画家だ!! おまえのような奴だけは……絶対に…!!」
仮にも人間ひとりをゴミクズのように殺し、なおも平然としている王蛇に内藤は怒りを隠せない。
「最低か……」
王蛇は内藤の言葉を反芻するようにゆっくりと復唱し、一変して激しく暴力性を剥き出しにし始めた。
「いい加減、その口を閉じろ!!」
激昂しながら、バネ仕掛けのように立ち上がる。
「イラついてきた。……次に死ぬのは……おまえ、だ」
「なに…!?」
内藤に指を突きつけ、死を宣告する王蛇。
しかし、異変はそのときに起こった。
内藤を刺すように指した指がぼやけ、粒子化が始まったのだ。
503 :
最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:14:57 ID:D7kU7wio0
「時間切れか……」
ミラーライダーは、旧来のライダーをも超えるスペックを有するかわり、その稼動時間が短い。
長時間の戦闘に向かない王蛇にとって、これ以上の戦闘続行は命の危険にかかわった。
王蛇は戦闘体勢を解くと、内藤に一瞥をくれ、その横を通り過ぎて歩きはじめる。
その先には、絶壁。眼下に、どこまでも続く海が見える。
そこで立ち止まると、王蛇はもう一度だけ内藤たちを振り返り、言った。
「おまえらの顔は覚えた……。次に会うときは、全員……潰す」
とりたてて押し殺した声ではない。気負いも感じられない。
平然と物騒で挑戦的な言葉を投げてくる毒蛇に対し。
内藤は忌々しげに、
平野は実に楽しそうに、
伊藤は状況そのものに苦笑するように、
各々の反応を示した。
王蛇は噛みつくような視線を自ら振り千切ると、そのまま眼下の海へと身を踊らせた。
内藤が駆け出すが、王蛇は海原に吸い込まれる寸前、光を発したかに見えると、波飛沫ひとつ残さずに何処かへと消え去った。
内藤はそれを目でしばらく追ってから、平野達の方を振り向いた。
そこで、その視線は凍りつく。
いまだ漂う煙の中、爆心地には木葉の手首らしき肉片が落ちていた。
「なんで……なんでなんだ!?」
内藤の無念に満ちた声は、戦場に虚しく響いていた。
「さて……とんだ邪魔がはいったが……続けるかね」
「当然……どっちかが飽きるまでな」
「まだまだ楽しめそうだよ、この余興は」
憤る内藤をよそに、吸血鬼と化け猫が、何度目か、それぞれの愛銃をかまえた。
戦いは、続く。
ヨクサルの戦いはトリッキーだから面白いな
板垣や川原は正統派の面白さだけど、ヨクサルは何が飛び出すかわからないビックリ箱的な楽しさがある
王蛇はやけにあっさり帰ったな
まあ外敵ひとりはちゃんと始末してるから最低限の任務は果たしてるのか
ジョージって、技来たちがチャンピオンに合流したときはもう死んでなかったっけ
・・・と思って過去ログ読み返してみたら、技来が「親友」と言っていた。やるな
ということは森とも面識あるのかな
506 :
妙子:2005/04/13(水) 16:15:21 ID:Iz4g4gt60
ヽ|・∀・|ノ 森さん元気かしらねぇぇぇぇ
さて……休憩に入ってしばらく。
生気が抜け真っ白くなった煤け安西は、目を完全に死んだ魚のモノと化し悄然と佇んでいた。
「……俺はやっぱり駄目なんだ……ダメダメなんだ……」
聞き取りにくい声で、一人ブツブツ言っている。まるで精神を欠損した廃人の呈だが、それも仕方のないことだろう。
傷ついた心癒す為のヒーリングスペースであり、また心の逃げ場でもあったこの調理場で、
心のカサブタも剥がれぬうちから、再びの駄目出しを直で喰らってしまったのだから。
そんな、なんか最近やたらと上下幅激しい安西を、しかし、誰一人として見捨てることはない。
これも一種の人徳であろうか。
「少年よ」
肩に置かれる暖かい手。のろのろと安西はそちらを見る。
「そうしょげるな。少し予定より早くなってしまったが……お前にはまだ、精進を重ね、進むべき道があるのじゃ」
「な、なんですって!?――――そ、それはいったい!?」
浮かぶ恐れとわずかな希望。
もうこれ以上傷つきたくない、というヘタレ根性を、一瞬で乗り越える瞬く間の過程をその瞳に認め。
相対するおやっさんもまた、この男を見込んだ自分の眼に狂いはなかったと、力強く頷き返す。
「よいか。ワシは、お前に全てを伝えたわけではない。というより、今までのは基礎中の基礎編だったのじゃ」
「そ、そうだったんですか!」
自分のダメダメさ加減に道筋つけられ、それなのに、いや、それだからこそ喜色も露わな前のめり安西。
そう。もう彼は自分で努力する切欠を黙って見送ってしまうような、パクリ漫画家ではないのだ。
「では、これからその応用編を教えてくださるのですか?」
口調というか、なんかキャラ変わってる気もするがとりあえず気にしない。
「うむ。そのつもりだったのだがな……」
目線を大火力コンロの方にやるおやっさん。つられ、安西もその顔の向きを追う。
そこにあったのは、先ほど散々安西のチャーハンを腐した垂れ目男の勇壮な腕まくり姿。
「あれは……」
「どうやら彼が魅せてくれるらしい」
いつの間にか調理スペースに入り込んでいた垂れ目は、上着を脱ぐと、勝手に中華なべを掴み、また勝手に銀ボールのゴハンを鍋に叩き込んだ。
開始される、まさに垂れ目・オンステージ。魔法のように、客も含めた周囲の耳目が吸い寄せられ始めた。
強火。油が回され。水気が跳ね散る。
いつの間にか調理スペースに入り込んでいた垂れ目は、上着を脱ぐと、勝手に中華なべを掴み、また勝手に銀ボールのゴハンを鍋に叩き込んだ。
開始される、まさに垂れ目・オンステージ。魔法のように、客も含めた周囲の耳目が吸い寄せられ始めた。
強火。油が回され。水気が跳ね散る。
大胆に舞うなべ、踊る炎、そして炎中を横切るゴハンの塊。
ズゴズゴズゴッ ゴウンゴウンゴウンッ と、ある種バトル漫画にも通じる派手な料理パフォーマンスに、
カウンター向こうの何号だかもわからないあんどが、まずは感嘆のうめきをもらす。
「安西とは比較にならない動作の大きさ……ゴハンが宙に舞い上がっている」
たしかに、垂れ目のこれをセックスとすれば、安西のそれは湿ったいじけオナニーがいいところである。
「―――俺が見るところあんたはこの強力な炎を御し切っていない!炎の主人になり切っていないんだ!」
腕を動かしおたまを振るいながら、垂れ目の説教が始まった。
「鍋から放り上げられた飯が空中で炎の上を通り抜ける、そしてその時、炎に直に炙られる。
それによって余分の油が飛んで、チャーハンの飯はパラリと香ばしくなるんだ!
鍋の中でイジイジかき回してるだけじゃ、本当のチャーハンはできないんだよ!」
「そ……そうかっ」
ふらふらと近付き、炎に魅了されたような安西の顔が、『正当』を得て熱く照り燃える。
「俺があんたの炒め物に首をかしげたのは、いまひとつシャッキリと仕上がってなかったからだよ!
炒め物は炎との勝負だ、炎を完全に支配し、使いこなす、そこでこそ初めて美味しい炒め物が出来るんだ!それには強力な炎より、強い心が必要だよ!」
更に安西の心の深奥、精神面の問題点にまで切り込む垂れ目。
一瞬辛そうな表情を浮かべるも、唇を噛み締め、真摯に耳を傾けつづける、安西。
「いつまでも過去の罪に拘泥し、償うことと恐れることを混同しつづける。
そんな半端なパクリ漫画家根性で、強力な炎を御せる訳がないだろう!? あんたの問題はそこにあるのさ!」
そう、料理は。いや、この世に存在するありとあらゆる『他要素』は。逃げ場ではなく、そこで何かを掴む為の『場』であるべきなのだ。
すくなくとも、現役で漫画を書いている者は皆――――そうしている。
最後に、卵を片手で割り、投入し、混ぜ、出来上がったチャーハンを皿に盛りズイと突き出しながら、垂れ目はトドメを口にする。
「――― もうあんたはパクリ漫画家じゃない 、 一 国 一 城 の 主 、 正 統 派 漫 画 家 な ん だ ぜ !!!!」
「!!!!!!」
どこか心地よい衝撃が全身を貫いた。
がっくりと地に手をついた安西は、しかし、前二回とは明らかに異なる昂ぶりを胸の内に覚える。
「――――そうだったのか……っ 俺は……小心で怯えて……心が縮こまっていた……!
分かっていた……分かっていたはずなのに。……いざ本物の『被害者』が目の前に来た途端、もう、なんもかんも分からなくなっちまってた……
償うから許してくれ……俺はどうやったら許してもらえるんだ、って……。
でもそんな心根じゃ、心と一緒に腕も縮こまってしまうのが当たり前…………炎を御することなんか――――出来るはずがなかったんだよ!」
後に証人語る、その時安西の瞳に、いまだかつてなかった大炎の火種を確かに見た、と。
「よ、ようし……」
垂れ目から、奪うように鍋とおたまを受け取る。
安西信行の、新たなる修行が始まった。
使用人根性キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
上手いなあ、本当。
安西がんばれーー!!
これは元ネタの選択の妙だなw
安西どこまで化けるんだ
すいません。
>>382の続きでした。
あと1レス目と2レス目で文章被ってるけど気にしないで…
>>463 エリア88を己の思うがままに作り変えた福地翼は、獲物を求めてぶらぶらしていた。
「やー中々見つからないっすねー寂しいっすよー」
一人、けらけら狂的に笑いながら、福地は歩く。
その時、福地の携帯の着信音が鳴り響く。
ポケットから取り出し、表示を見る。
福地、そこに書かれた名前を見て、すぐさま電話に出る。
「もしもーし、緊急連絡っすか? 山口隊長」
電話の相手――山口譲司に心持ちしゃきっとした声で問う。
「ああ、まあそうだ。今は、大丈夫かね?」
「そうっすねー」
辺りを見渡す。
敵の気配は、未だ無い。
「OKっすよ。で、何すか?」
「ふむ、実は定例会議の時間でね。差し迫って大丈夫そうなら君にもそこから参加して貰おうと思ったのだよ」
「……はあ、“ここ”で、っすかあ?」
まさか電話一本で参加させられるのだろうか?
多少呆れ気味の表情の福地。
しかし、「ああ、心配は無い。映像はそちらに届けるよ」の言葉と同時。
文字通り風の如く現れた血風連十数名が、瞬く間に彼の目の前に機材を設置していく。
その間実に30秒。
福地翼の前にモニターが設置され、見慣れた十傑集専用会議室の映像が映し出された。
「うっは〜すっげ〜GJ!っすよ血風連の皆さん」
おどけてモニターの前に座り込む彼の周囲は、血風連によって完璧にガードされている。
異変が起これば彼らは肉盾と化し、福地が戦闘態勢を整える為の捨て駒と化すのだ。
――十傑集会議室。
円形に作られたテーブルに備えられた十の椅子には、福地と入院中の神崎を除く全ての十傑集が集結していた。
そして、中央のモニターには、病室の神埼と、エリア88の福地の二人の映像が届いてる。
「眠い…」
神崎、睡眠中に起され、ベッドの前にモニターを設置されて大分ご立腹である。
「さて、では全員揃った所で定例会議を始めよう」
円の上座に悠然と腰掛け、山口が切り出した。
「まずは、仇敵妖魔王陣営の増強された戦力について、尼子君から報告を聞かせて貰おう」
委細承知、と音も無く席を立ち、尼子が口を開く。
「まあ手っ取り早くいっちゃいましょう。当初、ここ数日の間に死亡したクリエイターの転生者達で結成されたと見られていた十本刀ですが…
ぶっちゃけ立ち消えになったようですなあ。だいたいにして死んで又甦ろうなんて絶倫の精神力の持ち主なんてそうそういないでしょうし、つらつら考えるに人数が集まらなかったんでしょう。
今は大罪集とか名乗ってるそうですが…言葉通りとすれば、嫉妬、怠惰、傲慢、強欲、憤怒、暴食、色欲…は、は、枠が三つも減っていますな。
あ、構成員については手元の資料を御覧あれ」
各々、据え置かれた分厚い資料を捲って行く。
「現在判明しているのは、夢枕獏、三条陸、稲田浩司、森川ジョージ、和月信宏…
名前だけ並べても厭になってきますがねえ…戦闘データを拝見して頂ければ、その戦力の物凄まじさは理解してもらえるかと。
死人の怨念とはまっこと厄介なものです喃」
嘆息を含んだ声で締めくくり、尼子は立った時と同様、静かに席に付いた。
「ご苦労…報告の通り、大罪集は今後大きな障害として我らの前に立ち塞がるだろう。――ひょっとしたら、十二使徒よりも。
まあ、そこが付け目となるやもしれぬが…」
妖然と、密やかに山口は笑った。
その笑みが含む意は、座した誰にも窺い知ることはできない。
「さて、では次に、REDにて剣鬼、南條範夫監視任務に赴いた二人の報告を聞こうか?」
「は…! そっ、それはっ…」
虚を付かれた様に立ち上がり、言葉を詰まらせる岡田。
座した石渡も、強面に苦渋を滲ませていた。
「はははっ、すまないすまない。事情は聞いている。傷口を広げるような事を言ったのは謝ろう。
しかし、君たち二人の不甲斐無い働きのお陰で、未だに彼の剣鬼の行方は掴めぬのだ。
そのことを、よく理解して置きたまえ。――そして、此度の会議の最重要議題も、それに関係したことだ。
…ふふふ、岡田君いつまでも立っていないで座りたまえ」
その言葉に、操られたかのように岡田が椅子に深く腰掛けたのを見て、山口は再び口を開いた。
「まずは、中央のモニターを見て頂こう」
彼の声と共に、中央のモニターに映像が映し出される。
岡田芽武…「水島誘拐」疲労困憊の水島を容易く捕獲。その後出現した矢吹、戸田両名を撃退し、任務遂行。
「王捕獲作戦」苦戦する山口を助成。田島と引き分ける。
「南條範夫監視任務」大昏、哲弘を一蹴するも、戸田に敗北。
監視どころか出獄を見届けることすらできず。
せがわまさき…「山本賢冶との私戦」…引き分け、しかし山本は自力で生存。
せがわは尼子に救出されたことを考えると負けに近い敗北といえる。
「王捕獲作戦」荒川を吸血中、安西に隙を付かれ重傷。
「別府探索任務」任を途中で放り出し、手を下すなと命じられていた福地と私戦を行う。引き分け。
山口譲司…「王捕獲作戦」田島、すぎむら二人を相手取り善戦。
「五虎神回収」任務完了後、斉藤、板垣に挑まれるがどちらも一蹴。
石渡洋司…「王捕獲作戦」田島を奇襲。
「南條範夫監視任務」田口、大昏に敗北。一時的とはいえ囚われの身となる。
神崎将臣…「王捕獲作戦」高みの見物。
「別府探索任務」吉崎捕獲の末、情報収集に成功。
その後鬼岩城にてゆでたまごと無用の戦闘の末敗北する失態はあれど、
大罪集三条撃退に助勢し、成功する。
鷹氏隆之…「別府消毒作戦」…遂行。その後、冬目を発見、苦も無く勝利するが、駆けつけた藤原に敗北。
福地翼…「エリア88援軍」…到着後、倉田、大昏と相次いで殺害。
「と、まあ前回の定例会議後の、スカウト、事務、運営担当の富沢君と、斥侯、探索、
情報収集担当の尼子君、そして横山様直参からの予備役である富士原君を除く、実働
要員である七人の戦闘データを並べたわけだが…この意味が、わかるかね?―――古参
の数人は既に察しているとは思うがね」
「わかんないっすよ〜思わせぶりな言い方止めてびしっとお願いするっす」
異様な緊張…特に古株の者から漂うそれなどそ知らぬ風に、モニターから福地が無邪気に問う。
流石に毒気を抜かれたか、やや妖気の抜けた表情で山口が頷いた。
「では、説明しよう。我ら十傑集は、横山様の手足となりありとあらゆる任をこなさねば為らない。
それ故に、横山様配下だけでなく、方々から選りすぐり人員をスカウトするわけだが――逆に言えば、だ。
我々の地位を保つ背景は、有能であるか、そうでないか、それだけなのだよ」
ゆっくりと、言葉の意味が全員に浸透するタイミングを見はからって、山口は立ち上がる。
「このデータを元に、我々全てが査定されるのだ。そして、十傑集として相応しくないと判断された者には…戦って頂く、
次の十傑集候補と、十傑集の座を賭けて」
会議の場に動揺が走る。
何故か、安全ゾーンに居るはずの富士原が一番動揺していた。
「静粛に」
会議の最初から彫刻のように背筋を伸ばし、ぴくりとも動かなかった富沢が一言。
議席が水で打たれたように静まり返る。
静寂の中、山口は全員の顔を見渡した。
その顔に浮かぶ春風の如き笑みが、たまらなく不気味であった。
全員を見終えた後、山口が口を開いた。
「では、査定の結果を発表しよう――」