【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第24部

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1作者の都合により名無しです
これはえなり2世の数奇な運命を追った奇妙な冒険である。

前スレからの続き、行くぜ!!
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1099058199/

 ≪注≫この物語はフィクションです。実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
      特に漫画家とか。

ルール! それはここに書き込む際の最低限のルールである!
・過去ログを見てストーリーの流れくらいは把握しておく事!
・漫画のキャラをあんまり出すな! ここのメインはあくまで漫画家だ!
・先人の意思をなるべく尊重しよう! 壊すにも壊すルールがあるのさ!
・雑談や感想は本スレで! アンカー付けての遅レスOK!
・展開相談は「したらば」オンリーで! 無論見ないのも自由! 無視されて当然!
・質問は本スレでよし! 先展開の牽制にならぬよう気を遣うのを忘れるな!
・細かい設定や言葉遣いでドジった書き手には極力優しく! 過失だ!決して悪意は無い!
・脊髄反射で罵倒レスをするな! 一呼吸置いて良い部分にも目を向けようぜ!
・わかりやすさは大切だ! 自分の投稿がどの続きなのかアンカーは必ず付けようぜ!
・割り込みはあるものとして考えろ! 即興でそのつど話を書いてるなら尚更だ!
・誤字脱字の訂正は必要最小限にとどめよう! 投稿前に内容確認!!

特殊ルール
・リアル故人の漫画家さんを当スレで扱うと様々な問題が発生する恐れがあります。
 今のところ明確なルールは無く、ケースバイケースなのですが
 誰某を出そうと思っている、若しくは、誰某が登場後にお亡くなりになられた、といった場合
 本スレにSSを貼る前に、したらばに一言お願いします。

↓展開相談、ネタバレ関係はここ「したらば」で
http://jbbs.livedoor.jp/comic/31/
2作者の都合により名無しです:05/01/17 16:14:51 ID:RRJahsnD
過去ログとか
第1部 http://ebi.2ch.net/ymag/kako/1005/10056/1005603546.html
第2部 http://ebi.2ch.net/ymag/kako/1006/10062/1006290865.html
第3部 http://comic.2ch.net/ymag/kako/1008/10088/1008862285.html
第4部 http://comic2.2ch.net/ymag/kako/1022/10224/1022478173.html
第5部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1043128803/
第6部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1050213697/
第7部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1054732518/
第8部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056214706/
第9部A http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056986536/
第9部B http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1057574190/
第10部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1059402962/
第11部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1061047834/
第12部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1062766295/
第13部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1065342319/
第14部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1067586160/
第15部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1070374232/
第16部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1073532393/
第17部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1076777860/
第18部 http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1078322116/
第19部 http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1080831880/
第20部 http://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1084552706/
第21部 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1087978323/
第22部 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1092841463/
第23部 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1099058199/
3作者の都合により名無しです:05/01/17 16:16:15 ID:RRJahsnD
 ■えなり関連サイト■
〜ロマン・ホラー!真紅の秘伝説〜 (〜8部)
http://enari2nd.hp.infoseek.co.jp/
えなりん第2倉庫改装版 (URL変更)
http://www.geocities.jp/enyarino/enarin/enari-house2.html
※「えなり」過去ログ保管サイト。最初期〜初期のストーリーも是非一読を。

E.B.A DATABASE
http://members2.tsukaeru.net/redman/index.html
※「えなり」登場人物等のデータベースサイト。投稿式で追加・更新が行えます。


 ■したらば・えなり関連スレ■
えなりの奇妙な冒険を語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/l100
※展開の相談、連絡等に。※ネタバレ要素を含みます。閲覧にあたっては自己責任で。

冨樫の遺産について語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/l100
※意見や批判等、ネガティブな話題はこちらでお願いします。

冨樫の遺産の登場人物について整理するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1058562255/l100
※登場人物のテンプレを、現状に合わせて推敲したり追加したりするスレです。

えなりの奇妙な冒険 キャラ萌えスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1073916863/l100
※キャラ語りをしたい時はこちら。20部到達記念人気投票の結果が発表されています。
4作者の都合により名無しです:05/01/17 16:17:30 ID:RRJahsnD
           ☆なんとなくそれっぽいあらすじ☆

 時は近未来。忘年会シーズンを迎えた2012年晩秋〜初冬。
漫画家を含めた≪クリエイター≫達が武力や異能力を持ち争いを続ける歴史世界。
冨樫義博の遺産ファイルがエジプトで発見されたのを始まりとして、
一見平凡な少年「えなり二世」はファイルを巡る争いに巻き込まれてしまう。
この時代の漫画業界を表に裏に支配する男・矢吹は兵力獲得のため、
賞金10億を賭けたバトルトーナメント大会を巨大戦艦内で開催する。
えなりは打倒・矢吹を誓い、同志とチームを結成し大会に参戦した。
 しかし歴史の裏には神の手先ゴッドハンド・闇の支配者妖魔王一派・
漫画界の秩序回復を図るも内部分裂が甚だしい評議会・
10年前に東京で大災害を起こした少年とゆかいな仲間たちKIYU・
さらにはゴッドハンドを実質支配する軍師横山のしもべたち十傑集+五虎大将・
軍師の姦計で矢吹の下を離れ結成された狂人軍団最後の大隊など、
フリーキャラ含めて右も左も敵だらけで、なんだかえなりはピンチです。

 予選ブロック決勝進出9チームの交流会≪温泉慰労会≫(鹿児島→別府)は、
漫画家達に新たなる因縁を、九州全土に王蟲の進軍による大破壊をもたらした。
そして避難民救出に奔走するゴッドハンドを潰し、新たな歴史を生み出さんと、
最後の大隊・原潜やまと・妖魔王配下大罪衆などが偶然にも一堂に会し、
鹿児島湾周辺の海域にいたGH軍第3艦隊・≪エリア88≫他を襲撃した。
対するゴッドハンドは≪戦艦ヤマト≫からの指示で≪アルカディア号≫≪オメガ7≫を投入する。
未来を知るらしい、やまと艦長かわぐちの真意は?運命の歯車は狂うのか?

 そしてそれとは全く関係なく、トーナメントは決勝戦の組み合わせが決定。
第一試合でB・ガンガンとD・えなり、第二試合でA・バンチとC・裏御伽が対決する事に。
だがえなりTは主人公以下ほとんどの選手が行方不明!しかも試合形式はサッカー!
藁にもすがる思いだった残留組は、禁断のジョーカー≪7人のあんど≫を受け入れた!!

 試合開始・51レス(※約25分)の時点で【ガンガン(+サンデー) 3-0 えなり】!
続々と≪必殺シュート≫を会得して復帰する、えなり軍団相手にガンサンはどこまで逃げられる?
というか主人公死んでるぞ!?それでいいのか奇妙な冒険・第24部の開幕でございます。 <了>
5王大人:05/01/17 16:18:39 ID:RRJahsnD
それでは始めぃ!!
6作者の都合により名無しです:05/01/17 17:53:14 ID:LUAxxrmc
乙一!
前スレにリンク貼っとくね。
7作者の都合により名無しです:05/01/17 18:04:05 ID:SW83ou/T
ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ新スレー!!

内海「アリガトォオオ」
松山「アリガトオオッ」
加地「サイコーだ〜〜〜〜」
道元「アリガトオオッ」
かみや「アリガト―――ッ」
えなり「アリガトオオッ」
8魁!!餓狼伝 −氣と気−:05/01/17 19:48:51 ID:RRJahsnD,
>前スレ537

     ドカッ!  バキッ!  ガキッ!  ドガッ!

宮下の容赦ない突き、蹴りの嵐が夢枕の肉体をひたすら滅多打ちにしていた。
含み針に仕込まれた毒という卑劣な手段によって左腕を封じられてしまっては、さすがの“闘神”も防戦一方となるしかなかった。
しかも、宮下は夢枕の腕の自由が効かぬ左側の側面に回りこんで、巧妙にもその死角から攻撃を仕掛けているのだった。
「よくも このわしにあれだけの屈辱を味わわせてくれおったなーっ!! その借りはまとめて返させてもらうぞ!!」
そう言いながら、宮下は技術も糞もヘッタくれもない素人のような拳で相手の顔をぶん殴り、存分に痛めつける。
ここに至ってもなぜか武器も使おうとせず、素手でひたすらいたぶるように攻撃を加えている。
今さら情けをかけてやろう、という様子にはとても見えようはずがない陰惨な光景である。
その理由は単に、身をもって味わされた屈辱を晴らすためにはさっさと殺してしまっては気が収まらず、
徹底的にいたぶり尽くして同じ屈辱を味わせなければという、いかにも浅ましい性根からだった。
骨の髄まで悪役根性が身に染みてしまったのだろうか、恐るべきは“鬼酒”の呪縛!!

片腕で顔面をかばうのが精一杯である夢枕。
思わず脇腹のガードが甘くなった隙を突いて、宮下が滑り込ませるような動きで掌底を疾らせる。
そして、夢枕が気づいた時には、重い衝撃を片腹を襲っていた。

「 梁 山 泊 奥 義  掌 羝 破!!」

ただの掌底突きではない。
気功法を会得している宮下の“氣”の力によってその威力は数倍にも跳ね上がっている。
「がはっ!!」
その強烈な一撃を腹部に浴びて、夢枕が思わず吐血しながら片膝を地面につく。
「ダウン――っ!!  いや 空手でいえば一本、とまでいかなくとも技有り、といったところかのう?」
宮下がさんざん虚仮にされた恨みを晴らすかのように、小馬鹿にしたような口調で言う。
「くうっ!!」
すぐさま、夢枕の右の拳が動いた。
やや苦し紛れながらも正拳突きで強引に反撃しようとするが――
9魁!!餓狼伝 −氣と気−:05/01/17 19:52:35 ID:RRJahsnD,
宮下はそれを身軽な動きで避けるや、前に突き出された夢枕の腕に、猿(ましら)のように足を挟んで器用にぶら下がる。
そのままの態勢で掌羝破を今度は相手のドテっ腹にブチ込んだ。

      ド カ ッ

「 梁 山 泊 奥 義  吊 連 掌 羝 破  !!」
1発だけでは終らせず、ぶら下がったままの状態でさらに胸部及び腹部へと掌羝破を次から次へと叩き込ませる!

     ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ダ  ッ

「ぬおっ!!」
夢枕が苦痛にあえぐ間もなく、宮下のトドメの掌羝破が顎先をとらえていた。
      
     バ シ ィ      ダ  ダ  ア  ッ

顎にアッパーカットのような直撃をモロに受け、夢枕は豪快にブッ飛んでコンクリートの瓦礫の中へと体を突っ込ませる羽目となった。

「こんどは間違いなく一本、じゃのう!!」
相手を思う存分叩きのめしたことで気が晴れたのか、宮下がさも勝ち誇ったように大口を開け、意気揚揚と言い放っていた。
そしてすかさず、相手にどれだけの手応えを与えたかその目で確認すべく、間合いを一気に詰め近付いていく。

「ヘッ、ナルホドねェ……。堪能したぜ」
しかしあれほどの直撃を喰らったというのに、夢枕は激しく血を口から垂れ流しつつも立ち上がった。
「フッ タフな奴よ。まだ息があるとは…………!! アバラ骨の数本はたたき折ったというのに……!!」
「さすがはジャンプ五聖人のひとり……やはりただ者じゃあなかったぜい。
 おめェさんが打ったのは単なる掌底じゃねえ……さては“気”を使いやがったな?」
「ほう………おぬしも“氣”を使えるというのか?」
「おいらは格闘小説家というより、もともとはバイオレンス&エロス溢れる伝奇アクション作家なんだぜ。
 さっきは胡散臭ェなんて言っちまったが、実を言えばこういう中国拳法こそが俺の本領ともいえるわけだ。
 ついでだから、おいらの数ある通り名のひとつを教えてやろうか……。“ ミ ス タ ー 仙 人 ”ってえんだよ」
10魁!!餓狼伝 −氣と気−:05/01/17 19:55:30 ID:RRJahsnD,
そう言い終えると、ふいに、夢枕が無言で拳をあげ、腰を落とした。

  K  U  O  O  O  O  ……

はらに溜めていた、息を吐いた。
息吹――
その瞬間に、育ってきた熱気が、夢枕の身体に満ち、張りつめた。
気息を整え、体内の気を、ゆっくりと背骨に沿って上に移動させてゆく。
仙道で言う周天の法であった。

いつの間にか“闘神”がその構えを変えていた。
右足を前に出し、腰を沈めた。
後方の、左足の爪先を床にあて、踵を浮かす。
右手は、掌になって前に出し、宮下の方に向いている。
かろうじて動かすことだけはできた左手は拳を握り、胸のあたり。
流体と円のような流麗な動きで掌を用いて打撃を与える中国拳法の流派・八卦掌を原型とする円空拳の構え――
天地の大きさが、そのまま夢枕の肉体の裡(うち)に見えてくるような構えだった。

「ぬうっ……!! これはまさしく氣を練っている呼吸法……!!」
夢枕の肉体から爆発的に膨れ上がる“気”の圧力が、
宮下だけでなく傍観している馬場にすら背中にぞくり…と疾り抜ける悪寒を感じさせていた。
「ならばわしの“氣”とおぬしの“気”、どちらが上か勝負!!」
それなのに、対抗意識でも燃えてきたのか、悪役ならではの優位に立った奢りゆえか、
よせばいいのに、宮下も掌羝破を打つ構えを見せていた。
夢枕の拳に自身の掌羝破をぶつけて、真正面から打ち破ろうとでもいうのか。
11魁!!餓狼伝 −氣と気−:05/01/17 20:00:24 ID:RRJahsnD,
「ひゅっ」
夢枕の唇から鋭い笛に似た呼気がもれたかと思うと、次の瞬間――

「  吩  !  」

夢枕が掛け声とともに一気に足を踏み込ませ、右掌を猛烈な勢いで宮下の体めがけ突き出していた!

右足の踵を軽くねじりながら地に突いて、地から返ってくる逆まわりの反動を、
くるぶし、すね、膝、太股、脇腹、右肩、肘、拳へと、瞬時に伝えてゆく。
踵で造り出した勁(けい)の力を、“気道”に沿って右拳に集中する。
その“勁”と“気”のパワーを、右の拳に乗せて送り出す――
まさしくその掌の一撃は、巷に云われる円空拳の“発勁”であった――!

対抗するように宮下も同時に掌羝破を打っていた。
2人の掌がぶつかり合い、大気が、一瞬、爆発したようにスパークした。
しかし、その“気”のしぶきは、常人に近い馬場には見えない。
「ぱん!」という、肉が肉を打つ音が耳に届くだけであった。
その音からは、想像もできぬほどの反動で、夢枕の掌ははじき返されていた。
一方、宮下の巨躯(からだ)も大きく後方へと跳ね飛んでいた。
互いに深いダメージが残っていたとはいえ、“気”の力では夢枕の方がやや上回っていたようだ。

「久々にやってみたが、気ン持ちいい〜〜!!
 アリガテェもんだねェ〜若返った肉体ってのは。
 まあ、体調さえ万全だったらもっとブッ飛ばせたかもなァ……」
「ぬううっっ……!!」
相変わらず太い微笑を浮かべ歓喜している夢枕に対し、歯軋りさせながらも翻すようにすぐに体を起き上がらせる宮下。

ここに至ってもなお、両雄相譲らず――
12作者の都合により名無しです:05/01/18 01:05:05 ID:twCKL+8F0
ついに“気”まででたか…
13作者の都合により名無しです:05/01/18 01:08:42 ID:/8R8Xc8Y0
よせばいいのに〜でワラタ
14作者の都合により名無しです:05/01/18 18:06:55 ID:92Kn4Xuj0
宮下を応援してるのに宮下の負ける姿しか思い浮かばないのは何故だ

ガンバレーお約束に負けるなー
15クメタのごとく!:05/01/19 17:08:11 ID:F1wOejwq0
(15部356 他)

激闘続くサッカー。その映像を巨大モニターのひとつに映しながら、
矢吹艦中央部(矢吹の居住区)特別執務室にいる白衣姿の男はカップ麺をすすっていた。

男の頭髪は不自然なまでに整っており、ついつい後ろから引っぺがしたくなるほどだ。
虚ろげな目つきの男──矢吹に呼び戻され、コキ使われている借金男・久米田は、
残務処理を一旦切り上げ、彼の元アシで矢吹の執事のひとり、
畑クンこと漫画家・畑健二郎が仕事の合間にこっそり作ってくれた、
絶妙なタイミングで蓋が開けられたラーメンをホクホクすすっていた。

 「畑くんのお湯加減はいつも最高で嬉しいね!最近は研究所生活で、
 君にちっとも会えなかったからなあ。いやあ、美味い美味い」

いつになく明るい久米田。にこにこと微笑む執事服の畑。
久米田の本当〜〜に数少ない友人のひとりなのだ。

 「うれしいなあ、師匠にそんなに喜んでもらえて〜。
 ボクもここでは知り合いいないし、寂しかったです。おかわりありますからねー」
ヤカンを両手で抱え、ほんわり笑顔の畑くん。フリルのエプロンが眩しい。
貧乏性だが家事は万全で、彼が女性だったら引く手あまただったろう。
しかし畑はふと表情を曇らすと、サッカーの画面を見ながら独り言のように呟いた。
 「・・・師匠」

 「はひはな?(何かな?)」もぐもぐと返事する久米田。
 「・・・小学館と秋田書店が、全面戦争の動きらしいんです」
 「はっへにはらへほけ(勝手にやらせとけ)」返事はつれない。
 「・・・まだ、あなたを追放した小学館をお恨みなさっているのですか?
 もうそんな時代ではないと思います。彼ら漫画家に罪はありません。
 権力の中枢にいる師匠なら、事態を少しは軟化させる事が・・・」
畑の祈るような声は、久米田のヒステリックな声にかき消された。
16クメタのごとく!:05/01/19 17:08:52 ID:F1wOejwq0
 「そーんなこと言われても、どうにもなんねーよ!!
 こっちは身に憶えのない支払いでいっぱいいっぱいなの!!ほっとけよ!!」
 「そうですか・・・」
しょんぼりする畑。かわいい顔立ちに沈痛な影が差す。

──秋田書店の不穏な動きは、久米田の方でも既にチェックしている。
九州全土の被害状況をコンピュータで追っている間に、
“おおよそ不自然なエネルギー”の多数発生が全国区で確認された。
二日ほど前に、秋田が小学館本社に爆撃を加えた情報も入手している。
昨日にDブロックの喫茶店で、板垣がたかしげに聞いたものと同じだ。
矢吹はトーナメント遂行のために、事態がトーナメント参加チームの耳に入るのを恐れ、
あらゆる手段を使って事件の情報流出を防いだのだ。
おかげで久米田が【秋田・宣戦布告】を知ったのはつい先程だったりする。
・・・とはいえ、今の久米田には何の関わりもない、
いや喜ぶべきことなのかも知れなかったのだが。

 「・・・畑くん。君は『神様』を信じるかい?」
久米田らしくない言葉に、きょとんとする畑。混乱したのか、
 「・・・ええと、師匠とネロとパトラッシュが信じてるのなら信じます」
よくわからない返事。

 「こっちの画面を見たまえ」
久米田が机の脇にあるMACのディスプレイを叩き、マウスを動かす。
畑が恐る恐る覗くと、そこには・・・今にももげそうな奇乳をぶら下げた、
限界ギリギリの裸描写で頭を洗う、かつて秋田の危機を救った伝説の≪黒い医師≫漫画の、
ヒロインの幼女の成人バージョンの漫画ページが映っていた。
エロが苦手な微萌え作家の畑は、耳まで真っ赤になってしまう。
 「し、師匠!なんですかこのエロ画像は!
 どこかの同人誌ですか?これって色々ヤバいんじゃあ・・・」
 「商業誌だよ」 「え?」
久米田の小声にびくりと反応する畑。
17クメタのごとく!:05/01/19 17:13:17 ID:F1wOejwq0
 「ケケケ、同人だったらどこも苦労しねーって。
 あれは秋田のオフィシャル漫画だよ。今から7〜8年前の事だが、
 秋田は矢吹政権に抵抗すべく、かつて秋田に連載していた『神様』と呼ばれた漫画家の、
 遺した遺産からエネルギーを抽出し、秋田所属の多くの漫画家に少量ずつ移し替えた。
 『神様』の力を得た漫画家を矢吹・・・様に挑ませるつもりだったのだろう、
 しかし事前に計画を察知した矢吹様は、遺産──著作権を買い取ろうと、
 秋田編集部に莫大な金額を呈示した。それと同時に、
 裏で秋田編集部に様々な圧力をかけたそうだ。遺産エネルギー解放計画はどうやら、
 漫画家と一部の急進派編集が独善的に進めていたようだが、
 上層部は矢吹に屈した・・・現世に『神様』を新たな形で復活させる作戦は、
 漫画化企画終了と同時に立ち消えになったと、
 この矢吹艦データベースには書かれているのだよ。怖い事だな、畑くん」
一気に説明した久米田は、やや冷めたカップ麺のつゆを一気に喉に流した。

 「わかりました。でも、それと今回の事に何の関係が・・・あ、まさか」
 「察しがいいね畑くん。計画は終わっていなかったんだ。
 今でも『神様』の系譜を歪んだ形で受け継いだ、秋田系作家は何人も現役のはずだ。
 全国に発生した謎のエネルギーがその証拠だ。
 特別強いのが今日の午前中、鹿児島湾周辺の海域で確認されているよ。
 あの辺りは何故か地域紛争が起きてるみたいだけど、ともかく。
 そんなトチ狂った奴らを敵に回した小学館は・・・」
言葉を切り、箸でカップの端にへばりつくナルトをはがす久米田。
小さなナルトを口に含み、名残惜しそうな声で。
 「・・・・・・勝てないよ。絶対に」

 「そんな、そこまで知っていて師匠は傍観を決め込むのですか!?
 そんなのおかしいじゃないですか。戦争が始まったらみんな死んじゃうんですよ?
 ボクはそんなの見たくありませんっ!なんとか、なんとかならないんですか!?」
真珠のような涙がポロポロと、畑の純粋無垢な瞳から溢れて床に落ちた。
 「・・・畑くん、ラーメンおかわり」
突き放すような久米田の声が、無機質な執務室に響いた。
18作者の都合により名無しです:05/01/19 17:36:15 ID:NzqLl/xX0
ハヤテキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
イイネイイネー

そして神量産計画。
リアル含め、山賢のそっちでのありがたみは一瞬で無くなったなw
19作者の都合により名無しです:05/01/19 17:40:38 ID:OmhcXUK/0
ついに明らかになるのか!?
死してなお秋田に利用される“神”いわゆる“ゴッド”の全貌が……
20作者の都合により名無しです:05/01/19 17:45:22 ID:yX3MXyHHO
クメタン!矢吹に様付けるの忘れてるYO!!
21作者の都合により名無しです:05/01/19 18:43:04 ID:Qs29gXcL0
>『神様』の系譜を歪んだ形で受け継いだ、秋田系作家
恐ろしいのは、こいつらの半数以上が、えなりスレ未登場の漫画家ということだ
そいつらの中には大御所クラスの奴も混ざってるし、なにげに怖いな秋田
22あの世体験:05/01/19 20:58:21 ID:P5I1OTeT0
(前スレ87,406,579)
「いや・・・・・・あの・・・・・・スミマセン前スレ>406は調子ぶっこいていました。
 これはあの・・・・・・あまりにもないがしろにされてたので性格が変わっちゃって・・・
 ええ本当です、だから・・・それは・・・ちょっと!!・・・IYAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!
 ってあれ?」
長き悪夢から少年・・・えなりが目が覚めるとそこは河原だった。
「もしかしてここは・・・・・・」
そう、いわずと知れた三途の川です。
「僕死んじゃったの!?嘘・・・・・・だよなー。」
三途の川に来たのに妙にさめてるね、えなり。
「ははっ!!だってボクこのスレの主人公だよ!!死ぬわけないじゃん!!!」
いや、あんた死んでるんだよ!!
「まあボクはまだ夢から覚めてないみたいだね。
 そういえば三途の川ってさ川のむこうから懐かしい声に呼ばれて
 そのまま川を渡ったら死んじまうんだよな。」
ぉーい、えなりく〜ん、こっちおいで〜
「って、聞こえてきたよ!?まさか本当に三途の・・・・・・」
とえなりはおそるおそる見てみると
「お〜い、えなりく〜んこっちはいい所だよ〜早くおいで〜」
呼ぶのは頭部のカエルっぽいものをつけた男。それすなわち・・・・・・・・・・・・富沢ひとし。
くりっ(ターン) スタスタスタスタ
「ああっ!!何の躊躇もなく、かえっていかないで!!
 ねえ、俺ココに来てもないがしろなの!!?」
富沢の声も聞かず川とはタダひたすら反対方向に歩き続けるえなりであった。
23あの世体験:05/01/19 20:59:28 ID:P5I1OTeT0
「はっ!!」
声に出して気づくとえなりはスタジアムの中を歩いている、様に思えた。
「白昼夢・・・・・・だったのか?」
夢にしてはどことなく現実味だったし。
「臨死体験っていうやつ・・・・・・・・・」
そう思うとえなりはぞっとした。
今までのことを思い出してもすで記憶にあやふやな事がある。(前スレ>406直前の事とか)
ただある事だけはっきりくっきり覚えていた。富沢の事だ。
「富沢先生・・・ありがとうございます!!
 富沢先生のおかげで元の世界に戻ることができました。
 それと・・・・・・安らかに成仏してください・・・・・・」
えなり感謝の気持ちを込めて天にむかって拝んだ。
「さてと厄払いはこれくらいにして、なんでボク動いてないのに周りが進んでるんだろ?」
その後、えなりは下にいる銀髪に驚くわけだがそれはまた、別のお話。

さて、ちょうどその時間の前後、スタジアム某所のトイレ・・・・・・
「―――って待てえなりくん!!オレはまだ死んでね――――っつの!!! あれ?」
個室トイレの中から復活した富沢くん。
彼はえなりを追いかけて三途の川を渡り戻り、黄泉がえりしたのか?
はたまた今まで気絶していたのがえなりのボケ(?)に反応して突っ込んだのか?
それは今はわからないがトイレで小便してた牧野博幸がその声にたいそう驚いたそうな。
24作者の都合により名無しです:05/01/19 21:54:02 ID:Gaq83IS40
最近トイレネタ多いなあw
25鉄壁(52/180) 前スレ>>593 >>577:05/01/20 01:53:55 ID:/iFGyHFU0
再び金田一の前で『肢曲』に入る今井。
「危険」
ぼそりと呟く糸のような瞳を。果たして、他同様惑わせるのか。
金田一はとりあえず。腹巻から黒光りする銃を取り出し、ゆっくりと分身のひとつに照準。
刹那。
今井が間合いを詰め。金田一が道を空ける。
足を開き、突き出した今井の手刀が緩く空を切った。
直後の隙に。そちらを見もせず。まっすぐ側面に伸ばした腕から、延長上に弾丸が飛ぶ。
狙うは薄ら笑いを浮かべる口蓋。
銃声。跳ね上がる今井の顎。
しゅうう、と、回転する銃弾が。歯に挟み止められ運動を止めていた。
二発目は間に合わない。
今井の右腕が、肉体操作により切れ味鋭い爪を伸ばし、鎌首をもたげる。
吸い込まれるような軌跡。
服を突き破り、肉に食い込んだ。
「―――グゥッ!?」
しかし犠牲者は、金田一ではなく禿頭のむくつけき男。
金田一を庇う位置に突如現れた彼は、別名『ステッキの人』。
致命ではないが、肩に深々と突き刺さる。
それを気遣うより先に。機を逃さない。
伸びきった肘が金田一の左手に捕えられ。『ステッキの人』が消失。
対象を失った血塗れの手首にも、右手が上から添えられて。
肘と手首が関節を固定され、てこで弾かれる。
柔か。今井が逆立ちで、プロペラのように宙を舞う。
「破ッ!!!!!」
避ける術を持たない。その背に叩き込まれる掌打。
「ドン」という、交通事故に似た音。
めいっぱい開いた今井の口から、地雷のように血が噴出す。大地が赤く赤く濡れた。
さらに、弓なりに吹き飛ぶ寸前。金田一の手が追い。奇怪に伸びて片足首をむんず。
吊られた男。
トドメを刺そうというのか。
と、そこで。だらりとしていた今井の左手が動いた。
26鉄壁(53/180):05/01/20 01:55:29 ID:/iFGyHFU0
金田一の視界に飛来する。
どこで拾ったのか。複数の小石。
腰を揺らさず、顔の動きだけで避ける。
追うように。今井のもう一方の足が撓る。
(礫は布石か)
同じく暇してる、金田一の片手が反応。ぶつかる。
(余裕で止めるか♥左手一本で♦)
足と腕の筋力差など、何するものぞ。
とんでもない女だ。
とにかく両足捕まった。
あまりに不利なその体勢のまま。今度は両手指をグラウンドに叩き込む今井。
―――――ッッッ
基点をそこに。
体全体を捻じり、腿から先を旋回。
意表を突かれて。扇風機に飛び込んだ虫のように、金田一の手が離れた。

帰ってくるボール。

藤崎が今井に送ったもの。
カポエラの格好のまま捻じりの飽和を迎え、さらに、勢いを駆って逆回転。
巻き込まれたボールは、中継・猛威を加えてゴールへと弾き出される。
「チ」
金田一の舌打ち。僅かに、仰け反った体勢。
体重(おもさ)も足りない。
止められない。
瞬間。
女体が膨れ上がった。
美しく、桃色交じりの白髪が伸びる。
踏ん張る踵が、芝と土を削り。
真っ直ぐに突き出した両の手の平が、ギリギリゴールラインを割らせない。
「 ♥ 」
今井が土から指を抜き、すこし距離を取って。
27鉄壁(54/180):05/01/20 01:56:26 ID:/iFGyHFU0
どこか恋する瞳。だらだらと漏れる吐血を拭う。
ひゅるりと縮み。
摩擦に灼熱するボールを、再び、ガンガンの仲間たちに送る金田一。
二人の底無しの戦いは続く。


「でも本当に……大丈夫なの?」
たわわな胸でトラップしたボールを、さらに前線に送りながら
傍らの水野に心配そうに語りかけるのは、高橋留美子。
「なにがです?」
こちらは薄っぺらな胸を痛そうにさすりながら、きょとんとした顔の水野英多。
「リック君の相手はともかく……もう1人の方は、あのコ1人だと荷が重い気がするのだけれど……」
最初、何を言われているのか分からない、という表情で。
やがて思い当たった水野が答える。
「―――ああ、金田一さんの事ですか」
「え、ええ」
今度は、留美子が戸惑う。
「大丈夫ですよ」
あっさりと、戦う金田一の方を見もせず。水野は敵陣に向き直った。
「―――『本職』の私たちを差し置いて、彼女が『ガンガン1の銃使い』と呼ばれる理由が、分かりますか?」
唐突な質問に、それでもしばらく考え込んで。留美子は「いいえ」と首を横に振る。
「―――正確には、アレは間違いなんです。―――そう、正確には」
一呼吸。
「―――彼女は、私たちガンガンチームの誰よりも『全て』を上手くやってのける。それだけの『能力』がある。
 ただ、今の彼女の『役割』は代わりが効かないから、だから彼女は今の『位置』にいる。それが真相なんですよ」
驚く留美子を捨て置いて、更に水野は思考を発展させる。
(むしろ、あの『今井』という人が異常です。あの金田一さんと、まともに『戦い』を演じられるなんて)
城平に命じられ、水野は短い時間なりに、ざっとではあるがえなりチームのメンバーを『調査』した。
しかし、あの今井という男のデータだけは、どこからも、欠片ほども見つからなかったのだ。
(これはむしろ、なんらかの、超常的なジャミングがかかっていると見るべきでしょうね)
『全く分からない』というのは、考えようによってはひとつの『成果』だ。
そう。水野の『調査』を潜り抜けるというのは、つまりは『そういう事』―――
28作者の都合により名無しです:05/01/20 02:19:32 ID:Nw1zrp1H0
金田一の強さが恐ろしいことになっている…!
パワーアップしたカムイでもかなわないかも
29作者の都合により名無しです:05/01/20 05:26:01 ID:VPmvDhGO0
なんていうか、トンでもキャラだね
理屈ぬきでなんでもできちゃう
女版ゆでとでもいうべきか
多少の違和感を覚えるけど、戦力の拮抗には役立ってるよね
と、一読者が言ってみる
30冬がはじまるよ:05/01/21 01:11:59 ID:zvfA0O4a0
(前スレ104 10部176 他)

東京某所。
男が2人、場末の喫茶店の片隅で、
吊り下げられた台に乗る古いテレビを見つめていた。
画面には金田一が今井と華麗なる勝負をする姿が映されている。
男たち――ひとりは落ち着いたメガネとスーツ姿の巨漢、ひとりは腹の出た赤ら顔の男。
彼らは無言で向かい合い、遅い昼ごはんを黙々と食べている。
テレビの隣の時計の針は午後2時半近くを差していた。

 「・・・画太郎」
スーツの巨漢が右手でメガネをずり下げながら、
ぼそりと口を開いた。左手には水のコップを持っている。
呼ばれた男は口中にスパゲティを詰め込みながら、突然名を呼ばれて目をひん剥いている。
男――漫☆画太郎は、巨漢――猿渡哲也の次の言葉を、麺で窒息しながら待つ。
なにしろ猿渡の印象は絵に描いたような無骨者。画太郎は2つの意味で息苦しかった。
画太郎の内心には構わず、猿渡は水を舐めながらポツリと話し出した。
 「おまえのヤンジャンの漫画な」

意外な内容に冷汗をかく画太郎。猿渡はかつて“YJ影の支配者”と畏れられた男。
何か不備でもあったのか・・・そもそもオレの漫画読んでたのかYO!!とドキドキしている。
猿渡はテレビを向いたまま言葉を続ける。
 「あの、なんとか金太郎ってやつ?あれや、
 まんま本宮をパロった奴や。あれなあ・・・」
画太郎の心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。

 「・・・めっちゃおもろかったわ。
 今思い出しても噴出しそうやねん。これからも頑張りいや」
ぶっとい指で器用にコップをつまみながら、猿渡が肩でちょっぴり笑う。
おおよそ不似合いな苦笑であった。げっそりと全身で息をする画太郎。

 「なんでーテツ・・・じゃない猿渡っち。ずいぶんご機嫌じゃねー?」
31冬がはじまるよ:05/01/21 01:12:56 ID:zvfA0O4a0
急に馴れ馴れしくなった画太郎に、反論するでもなく小さく頷く猿渡。
確かに彼の表情は、少なくとも昨日≪クリードアイランド≫で見せたものより、
格段に親しみが持てた。鼻柱に真一文字に疾る、古傷も今は自己主張していない。
それはまるで憑き物が落ちたかのような。

―――高橋陽一が、えなりチームの所属で試合に関わっていると、
サッカー前の特番で紹介されていたのを、素直に喜べた自分が嬉しかったのかも知れない。

しかし、陽一の名前から昨夜の島での顛末を思い出し、
同時に己の忌わしき過去――10年前の悪夢――が心の翳りからよみがえるのを感じ、
硬い表情をさらに強張らせる猿渡であった。
 「ヤングジャンプか。何もかも懐かしいわ。あの頃の連中も殆ど土の中やな・・・」

10年前の惨劇。猿渡主催であの日、YJ関係者を集めたパーティを開いていた。
しかし彼自身には当時の細かい事は、なぜかきちんと思い出せない。
そもそも何のパーティだったのか、記録として残っていない。

――10年間。散り散りになった生き残りの仲間たちを捜しもせずただ、
惨劇の主催者・岡本倫への復讐のためだけに研鑚を積んできた日々。
ずいぶんと回り道をしてしまったようだ。
・・・過去を埋めようともがくあまり、今をおろそかにしていた。
なぜあの日を思い出せないのか、考えた事もなかったのだ。
そして岡本倫と自分との≪接点≫も。

 「あの頃のYJってのはならず者の集まりだった。どんな際物が来ようと、
 全てを受け入れる懐はあった。画太郎がええ例や。岡本倫かて、例外やない・・・はずや」
新しく埋めた左眼の義眼がぎょろりと動く。
 「・・・どんなカケラでもええ。あの日を刻んだ物的証拠が欲しい。
 ワシが時折見るあの悪夢――あれは真実の記憶なのか、
 そうでないのか、見極めたいんや・・・」

猿渡の呟きに、スパゲティを踊り食いしながら画太郎が答える。
32冬がはじまるよ:05/01/21 01:13:50 ID:zvfA0O4a0
 「そういえばよー、さっき【矢吹健太朗平和記念館】寄ったろ?
 あすこの矢吹を称える展示物の中でチラッと見たんだけどよ。
 あの日の大爆発、ナントカドライブ?
 どっかの国のミサイルがどーたらって奴。
 それでぶっ壊れた町の破片を、一部リサイクルで矢吹艦に使ってるんだってよ」
 「ほんかま、それ」
思わぬ情報に自然と、テレビから視線を画太郎に移す猿渡。
 「なんかパネルに書いてあったぜぇー。
 どこの場所とかはなかったけどな。まさか今から取りに行くつもりかよ?」
ゲシャシャシャと笑い声を上げる画太郎に対し、猿渡は。
 「そのまさかよ。今から矢吹艦行きの飛行機乗るで。来るか?」
水を一気に飲み干し、伝票を手に持ち立ち上がった。

 「マジ?それはまあいいけどよー。あの行方不明バカはどうすんだ?
 ケータイに電話するっつって消えたままだろ。記念館にも来なかったしよ。
 今頃万引きなんかでお縄ンなっちゃいねーか心配だぜえ〜。それによう」
画太郎が言っているのは、今朝方行動を共にしていた、
当時はマスクを脱いでいた裏御伽副将・にわのの事だ。
彼らは知らないが副将はふたりと離れた後、平野の部下に誘拐されてしまった。
・・・別れも言わず、どこへ消えたやら。トーナメントの抽選会にも出ていなかったし、
もしかして風邪が悪化してのたれ死んでいるかもしれないと、画太郎は危惧するが。

 「いくら頼りない副将かて、さすがにそこまで阿呆は晒さんやろ。
 案外ワシらと入れ違いで記念館寄っとるかもしれへん。
 まあ昨日助けたったんや、今日はええやろ。あとは本宮に任せとき」
幽かに苦笑を浮かべながら、猿渡はレジへと向かい出す。
画太郎は慌てて席を降り、でべそを揺らしながら喫茶店の出口へ向かった。

 「ところであの漫画、本宮は知ってるんかいな?あれの反応が知りたいわ」
 「俺も知りてー(笑)・・・お?雪じゃん。初雪か?飛行機飛ぶうちに急ごうぜえ」
寒風吹きすさぶ喫茶店の外。画太郎が見上げた灰色の空から、
ささやかな冬の贈り物が地上の星たちに届けられた。
33作者の都合により名無しです:05/01/21 01:36:50 ID:zvfA0O4a0
ごめん前スレ(23部)でなく22部104の続きでした
ところで前スレのまとめさん募集しております
34おいら女蛮:05/01/24 15:29:25 ID:Jgh8L9FG0
>27 前スレ478・423 15部330)
さて、フィールド場でアクロバティックな攻防が繰り広げられている頃。
ガンサンベンチにゴロゴロ置かれている、水分補給用の水筒に近づく謎の影があった。
影は大会関係者のユニフォームを、上半身だけ着て下半身を露出させている。
顔には覆面パンティ・股間には素敵おいなり。
そう影はえなりベンチに戻ったあんどの一匹だった!
手にはベンチのものと同じ形のストローつき水筒が3本ある。
ただし中身は超強力下剤入り。どうやら危険な性格のあんどのようだ。
あんどはデンジャラス水筒を紛れ込ませて敵を苦しませる算段。ガンサンぴーんち!と。

 「スタッフさーん!カレー食って喉乾いたんでそれくださーい!」「フォォォ!?」
急に横合いから現れた“カレー魔人”松沢が水筒を一本引ったくり、
あんどが制止する間もなくゴキュゴキュと全部飲み干してしまった!
 「ふはーやはりカレーは辛口に限る・・・もるわぁぁぁぁ!!?」
速っ!!超特急リニアもびっくりの下剤攻撃!!
松沢はトイレに向かう暇もなく芝生の上に倒れ込んでしまった!!
 「フォォ・・・おや、こいつは1号が言ってた、
 カレー好き、いやアベックの敵ではないか。フ、1号の手を煩わす事もない。
 今ここで私がこやつを社会的に成敗してみせよう!むうん!!」

あんどは腰に巻いていた荒縄をほどき、蜘蛛の糸のように両手から発射!
地面でもだえ苦しむ松沢を一気に亀甲縛りし、近くの村枝に気づかれぬよう、
猿ぐつわをかまして控え室の奥へと連れ去っていった。
ベンチ近くに、下剤入りの水筒2個を転がしたまま・・・。


薄暗いガンサン控え室。今ここにいるのはあんどと囚われの松沢だけだ。
 「うごぉ〜ほいへにひはへへぐで〜(うおートイレに行かせてくれー)」
 「残念だなしっとの王よ!正義は我にあり!
 貴様はここでトイレにも行けず、自分の排泄物まみれになって死ぬのだ!!」
 「ぶべらっ!!」悶絶する松沢に追い討ちをかけるあんど。
 「なに、見た目はカレーと大差はない!貴様も喜んで朽ち果てるがいい!!」
35おいら女蛮:05/01/24 15:30:28 ID:Jgh8L9FG0
 「ひっほにふんなほげぇぇーーーー(一緒にすんなボケェーーー)!!!!」
これにはさすがの艦長もブチギレですよ。
おやつ時とは思えぬ暴言に怒り心頭の松沢だが、別のリミットゲージも満タン寸前だ。
『パラッパラッパー』ステージ5の恐怖が今再現されるのか!?
───そこへ突然響き渡る、控え室の扉を開けた謎の人物の声!!
 「何してやがる、この変態野郎ォォォ!!内臓ぶちまけておっ死ねやーーー!!!」

謎の人物は叫ぶと同時に全速であんどの背中に飛び蹴りをかました!
こんなもの避けられる・・・あんどは不敵に笑い扉の方に振り向くが、
そこにある意外な光景に一瞬思考が停止し───鼻っ柱を思いっきり蹴り飛ばされた!
 「なっ・・・おん・・・!?」
鼻血を仮面に染み渡らせながら、あんどは重力を無視したように弧を描いて空を飛ぶ!
あんどはそのまま控え室とグラウンドを繋ぐガラス窓にぶつかり、
防弾仕様の窓だというのに豪快にヒビ割って、外側へと落っこちていった。

ワーワーと集まるスタッフ達を尻目に、謎の人物は不器用な手つきで松沢の拘束を解く。
 「あ・・・あんた、生きていたのか・・・」
顔面蒼白の松沢から意外な言葉。彼の知り合いのようだ。
 「フン、≪ラグナロク≫以来だな。
 運がいいな、ハリーよお。ここは俺が守る。早くトイレ行け」
謎の人はへへん、と鼻の下を人差し指でこする。
その姿は金田一に劣らぬ小柄ながら・・・
本宮ばりのバンカラファッションをまとい長ランの前ボタンを外し、
そこから溢れるたわわな『巨乳』をサラシ一枚で覆い隠すも隠し切れない、
後ろ髪の長いくせっ毛で一見勝ち気な少年のような、美しく逞しい女性であった!

 「ガンガンか、何もかも懐かしいな・・・。大会の噂を聞いて、
 血が騒いでな。この『一本木蛮』様が戦争(ケンカ)の助太刀に来てやったぜ!」
彼女は“女勇者・蛮ちゃん”略して女蛮(スケバン)と呼ばれ、
ガンガン隔週化戦争≪ラグナロク≫を血に染めた伝説の女番長であった!
松沢は色々話を聞きたかったが、1秒後には己の身体の限界を悟り、
彼は光を超えた速さで近くのトイレに駆け出していった。(またトイレオチかYO!)
36作者の都合により名無しです:05/01/24 16:02:04 ID:SFDsslxW0
と思ったら新作キ――テ――タ―――!!!!

もはやジャンキーだなw
37作者の都合により名無しです:05/01/24 16:05:18 ID:Jgh8L9FG0
文章が前スレとリンクしてるYO!w
38ピッチできゅ〜 (55/180):05/01/26 11:44:10 ID:9otyf38f0
>>27

何度目かの攻勢に移ったガンサン陣営。防御に回るえなりイレブン。
一部選手は柴田UMA子の“暴威’S・ラブ”に巻き込まれ、
未だデストローイ中だが気にしない。(なんじゃそりゃ)
珍しく中盤に陣を張っている大和田秀樹が、走る留美子たちに追走しようとするが。
 『むぎゅ』
 「おお!?何か踏んでしまったぞ」
派手なリアクションで驚き制止する大和田のスパイクの下。
・・・背中を思いっきり踏まれたダメージ以上の血反吐にまみれて、
X仮面が瀕死っぽく地面にうつ伏せで倒れ込んでいた。
どうやら前スレからずっとそこにいたらしい。悲惨である。

 「なんだ貴様、まだ死んでいたのか。
 背中の得物で制裁してやりたいところだが、これは秘密兵器だからな。
 よかろう、私があの猛攻を制してくれる。そこで見ておれ!」
大和田はギリッと自軍ゴールポストを睨むと、
全力ダッシュで走り出し一気にディフェンスラインまで下がっていった。


 「・・・ふ、俺も焼きが回ったかね」
口の端から流血を派手にこぼしながら、燃え尽きた印象のX仮面は、
ゴロリと芝生を転がりスタジアムの上空を見つめた。
背中の感触が心地よい。
選手たちの走る音が鼓動となって微かに伝わる。
空には矢吹艦の無骨な屋根。隣には地下闘技場・コロッセオがちらりと見える。

 (最期に・・・お天道様が見たかったぜ・・・。
 俺は疲れた、そう、今ここで俺は・・・ あ え て 寝 る !! さらばだ大和田!!)

心の青空に血塗れの拳を振り上げ、やがてパタリと芝生に落とし。
X仮面はカッコつけながら静かな眠りについた。
39ピッチできゅ〜 (56/180):05/01/26 11:45:43 ID:9otyf38f0
一方えなりサイドのペナルティエリアまで、端を抜けてかっ飛んでいった大和田。
そのスピードに怯まず、一気にドリブルで切り込んでゆく留美子と水野。
ふたりのバックにはカウンター対策で衛藤らが入っている。周囲の乱戦はお構いなしに、
大和田は走ってきたままの勢いで留美子らの前に立ち塞がる!
 「えーいっ!!」かわいい気合声と同時に水野のミドルシュート!
ボールは山なりに、大和田の頭上を越えようとフラフラ跳んでいった。

 「ふははは!!そのか細い身で私に立ち向かうか!!
 ならば来るがいい!海辺で腕に重石を装備して特訓した、
 この私の新・必殺技をお見舞いしてくれる!!とぉーーーーー!!」
地を蹴った大和田は、その場で垂直に飛び上がった!
なんと地上6メートルの位置で、胸でボールをトラップした!
 「なんですって!?」驚愕の声をあげる留美子とガンサン組。
おそるべしジャンプ力、これでユニフォームを脱いで【肉体言語】を始めたらどうなるやら──
しかし次の瞬間、大和田は空中に浮いたままサッカーボールを、
『左手で掴み』バレーボールのように放り投げ、うなりを上げて右腕を振り下ろす!!

 「これが私の【ビーチバレー】の特訓の成果だーーーーーーーー!!!!」

それはクジラを一撃で粉砕する破壊力の─── 必殺サーブ≪ 捕 鯨 砲 (ホエールガン) ≫!!


     ボ  ッ    ──────   ゴオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!


ボールはまるで隕石のように、ピッチ中央に超巨大なクレーターを形成して地面に潜り込んだ!!
インパクトの瞬間、空中にいるはずの矢吹艦で地震観測所に≪震度3≫が計測された!!
この男は果たしてどこまでトンデモ漫画家の高みにのぼりつめるか──しかし───
 「ピピー!大和田選手、ハンドリングで反則です〜」
 「マジ!?サッカーって手は駄目なんだっけ?」「みたいです」審判・山田の無慈悲な声。
結局留美子のフリーキックで試合再開。歪んだ地面は最新鋭ジャッキシステムで復活。
そして陥没地点で寝てたX仮面が、土に埋もれ消息不明になったのは誰も知らない。
40作者の都合により名無しです:05/01/26 19:46:58 ID:CkYqBbTj0
ニ砲使えよ大和田w
41作者の都合により名無しです:05/01/26 22:07:59 ID:59rvJm2T0
島本って団体戦だとホントに役に立たねえなあw
42作者の都合により名無しです:05/01/26 23:44:10 ID:iVZAfN4R0
縦パスばっかで昔の日本代表みたいだな両チーム。
陽一が来たら少しは変わ・・・・・・らない気ガスw
43神、いわゆる……:05/01/29 05:00:32 ID:Rl/1VLf30
>>17 前スレ231・286辺り 15部530他)

 「『神』の復活なんて言ってるけど」
2杯目のラーメン完成を待つ間、すんすん泣いている畑に無機質な声で話しかける久米田。
畑は涙を浮かべながらも、再度火にかけたヤカンへの注意は怠らない。
久米田はモニターに映るサッカーの試合を横目で見ながら話を続けた。

 「・・・古くなった絵画でも修復して元通りにはなるけど、
 それは元の作品とは言えない。別の人が手をつけちゃってるからね。
 まあ、あれはあれでいいと思うけど、漫画家は人であって絵ではない。
 死んでしまえば神も悪魔もないっての。クローニングだかネクロライズだか、
 色々専門用語はあるようだけれど、死者の復活なぞ所詮紛い物だよ。
 一旦肉体が滅びれば、中の人が蘇ろうがなんだろうが、
 それは元の人間とは別の生命体だと私は思ってるよ」
科学者らしい発言と言うべきか。
畑は毛色の違う話題に涙が止まり、不思議そうな顔を青白い顔色の師匠に向けた。

 「畑くん、これは仮説なんだけどね。
 秋田のタカ派が安易に手を出した『神様』という名のオーバーテクノロジー。
 あの計画には恐ろしい穴がある気がするんだよ。
 だから矢吹様も様子見なんかせず、強引に計画を潰したのだろうな」
 「・・・詳しく教えてください、師匠」
握り拳を作った畑が、うつむきかけていた姿勢を正して久米田の瞳を見つめる。

 「相変わらず勉強熱心だな、畑くんは。
 仮説だけどね、『神』の力は各漫画家に少量ずつ渡り、そこで何らかの変化が起こる。
 これはまともなクリエイターなら当然の事・・・いわゆるオリジナリティだな。
 どこぞのパクリ漫画家でも、結局描くのは自分なのだから、
 『神』の力で『神』の作品を原稿に起こしたとしても、それはそいつの作品だ。
 ここまではいい・・・問題は、漫画家には様々なタイプがいるという事だ」
呼吸のため一旦言葉を切る久米田。
ヤカンのお湯が沸騰し、畑が流麗な手つきでカップ麺にお湯を注ぐ。
44神、いわゆる……:05/01/29 05:04:15 ID:Rl/1VLf30
カップの上部にヤカンの蓋が置かれたのを確認し、久米田は話を核心に持ってゆく。
 「『神』の遺産エネルギーなんて空恐ろしいものを、
 もしそれを遺した漫画家が本当に神に等しい存在なのなら、
 果たして人間ごときに扱いきれるのか?そして漫画家の中で培養されたエネルギーが、
 変質し自分たちに害を与えないと言い切れるのか?それより何より・・・」
久米田はマックに映される、先ほどの鹿児島近辺の、
紛争情報を表した衛星通信のグラフを指差す。

 「・・・例えば漫画家のひとりが凶悪な奴で、
 『神』の種子を受け継いだ者達全てから、なんらかの方法で種を奪い、
 『神』の産物を喰らい尽して我が物としたらどうする?
 そいつひとりが『神』に成り代わろうと、味方全てを滅ぼしたらどうする?
 復活させた連中はそれをわかってやっているのか?それとも―――」
息の詰まる思いの畑の喉がごくりと鳴る。

 「―――最初に『神』復活計画を考えた奴が、最初から“それ”を狙っているとしたら―――」

小学館襲撃は、ただの契機作りに過ぎない。
本当の恐怖、本当の惨劇はこれから始まるのだ。何を巻き込むかもわからずに。
・・・久米田は仮説が仮説で終わる事を祈る事にした。
新米の自分にできることはないのだろうかと心を痛めてしまった愛弟子のために。
常々人間性が疑われている久米田という男の、ごく僅かな良心の一片がそうさせた。
2杯目のラーメンは、ほろ苦い味になりそうだ・・・。


一方【『神』復活】の報を別の形で入手した漫画家達もいる。
常世と現世のはざま――――  【見えない学校】。
≪京極堂≫より情報を受け取った者の一人、十二使徒の副長。
闇色の肌の男『濁天使』麻宮騎亜は、何十時間もの間、資料室のよき住人であった。
埃と古い紙まみれの部屋の中、異彩を放つ最新型ノートパソコンの前に陣取っていた。
今は不在の『化け猫』伊藤明弘が、昨日の休暇で人間界をぶらつく間に麻宮用にと買い込んで来たのだ。
近頃は猫も杓子もパソコンですよ、カビ臭い資料だけじゃ限界だ・・・との事らしい。
45神、いわゆる……:05/01/29 05:06:54 ID:Rl/1VLf30
 (どうも我々には不似合いな気がするのだがな)
とは言い出せず、せっかくなのでとネットで漫画家の資料を集めていた麻宮だったが、
“白面”の異変と侵入者の気配を察知して部屋を出、色々あって現在に至る―――


 「『魍魎長』は何を考えているのか今一測りかねるな」
忙しそうに早足で、つかつかと歩いて資料室に戻る麻宮の数歩後ろ、
立ち振る舞いたおやかな杉浦が、柔らかな微笑を浮かべて無言で彼について来る。
新生・藤田は気まぐれを起こしてどこかへ姿を消してしまった。
 「・・・≪狐者異(こわい)≫を憑かせると彼は言ったか。
 妖魔王様に報告をせねばならないが、せっかくだしネットとやらで調べてみよう」
再び魔窟に戻って来た麻宮が、不慣れな手つきでマウスを動かした。

大量の書類にいくつか目を通す杉浦を、生き残りの椅子の一つに腰掛けさせつつ、
麻宮は初心者ガイドブックにある検索サイトを見つけ、早速調査開始。
 「なになに・・・狐者異とは妖怪の名なのか。『怖い』の語源?面白い。
 属性は≪大食の悪食≫―――復活した『神』なる漫画家に、それを、か。ふむ・・・」

何かに気づいた様子の麻宮。
この神=妖魔王様と相討った忌わしき漫画家そのものではない。
かつての藤田のような“分裂体”に近しいのかも知れない。
神の≪力≫と自分の≪意志≫を併せ持つ―――人間。

 「『神』を我が陣営に呼び込む布石か。事態は動き始めた。
 使徒も何名か“戦地”に向かっている・・・私も急がねばなるまい」
 「【三種の神器】をゴッドハンドに先んじて手に入れるのですね」
書類を二つ折りに持った杉浦が、麻宮の意図を察して言葉を送る。

 「その通りだ。【神器】の意味にようやく気がついた。
 あれは『神』をひとところに集めて形作るための道具―――≪オーパーツ(場違いな部品)≫なのだ。
 今回の『神』の復活とはすなわち、漫画家そのものを生き返らせる訳ではない。
 恐らく漫画家の遺した膨大で無尽蔵なエネルギーソースの供給を意味しているんだ・・・」
46神、いわゆる……:05/01/29 05:09:42 ID:Rl/1VLf30
ゴッドハンドが執拗に求め、また妖魔王が執着する謎の存在・三種の神器。
それは『神』形成の材料となる“素質”を持つクリエイターをあらわす単語なのか―――― ?

  ―――同朋を癒し、不浄なものを滅す『鳳凰の翼』―――

     ―――幾度、その身が滅びようとも蘇る『不死鳥の魂』―――

        ―――命亡き者にすら魂を与える神の血を満たした『神の聖杯』―――――

 「・・・もし本当にそうだとしたら、
 ゴッドハンドに楯突く“神様もどき”は、違うルートで作り上げられたいわゆるパチモノか。
 だとしても、もしそいつがどこかで力を得て、万が一神の走狗どもに気に入られ、
 ≪本物≫に祭り上げられたら、よくわからんが危険な事態だな。
 だからこその“狐者異”憑き、なのか?どれもこれも推測の域を出ないが・・・」
虚空を見つめる麻宮はやおらノートパソコンの電源を落とし、
マントをはためかせ椅子から立ち上がる。
十二使徒一の働き者は、疲れを見せぬ様子で、杉浦を部屋に残し静かな廊下へ出た。
扉の中に残った『穢土』杉浦は、崩れかけの山脈の整頓を始めた。


 (・・・捜さねばなるまい。三種の神器・最後の一人を。
 ≪鳳凰≫安西、≪聖杯≫荻野、ふたつをまとめる核が≪炎魂≫・・・
 力の湧き出る源、飛翔する翼、生命を育む奇跡の血、
 それらをひとつに寄せ集めるいれもの――【容器】になれるのは恐らく、
 無限の再生力を持つ不死の存在にしか不可能なのだ。強い弱いは関係ないだろう。
 ・・・本当にそんな漫画家が存在するのだろうか。そして・・・)

妖魔王の許へと向かう麻宮はふと足を止め、一連の思考の最後を口に出して締めくくる。
 「容器に自分の意志は必要ない。そして意思などない方が良い。
 意思が残れば―――苦しむだけだ。無限の焔で常に身を灼かれ、千度死に千一度生き返る。
 それは無間地獄に等しい。せめてそいつの心を、永久の眠りにつかせてやりたいものだ・・・」
彼なりの精一杯の温情だった。麻宮は報告のため、再び廊下を歩き出した。
47作者の都合により名無しです:05/01/29 13:08:58 ID:3bqbs3HN0
不死鳥は該当しそうな漫画家が腐るほどいるからなぁ
炎魂は字のインスピレーションで見た瞬間にX仮面思い出したしw
48作者の都合により名無しです:05/01/29 16:02:32 ID:x3VhtL0P0
しかし、理屈付け上手いな
あんだけ訳分からなかった「神」関連の謎が大分すっきりした
しかも面白くなりそうだし
49作者の都合により名無しです:05/01/29 21:47:06 ID:x/DDHvb50
麻宮って自作品の能力を考えればコンピューター関係はプロ中のプロだと思うが
ビジョネイルの能力とかあるし
50作者の都合により名無しです:05/01/29 22:06:27 ID:Rl/1VLf30
(´ー`).。oO(まあそこら辺は転生前の記憶とスキルが減っているという事で勘弁)
51作者の都合により名無しです:05/01/29 22:31:20 ID:Rl/1VLf30
あ、でも麻宮さんは前大戦は生き残って転生はしてないかも?
使徒の過去編は殆どなかったよね確か。どうなってるんだろあの辺り
52作者の都合により名無しです:05/01/29 23:04:56 ID:X2Xy1nGS0
かえってそこらで売ってるようなPCでは本領発揮できないだけじゃないのか
53作者の都合により名無しです:05/01/30 02:02:15 ID:KHP3P+yV0
つか、自作品の能力軒並み揃えさせたりしたら
どいつもこいつも万能キャラになって禿しくつまらんと思うが
54修羅、反撃:05/01/30 03:47:26 ID:B51rajDx0
>556
板垣は、風の音を聴いていた。
頭上の、桜の梢を揺らして通り過ぎてゆく、準決勝の行われているサッカースタジアムからの風だ。熱い“気”が溶けている。
その熱風に混じって、別の熱を孕んだ匂いが、板垣の鼻孔に届いている。
自分の汗の匂いであった。
今までの闘いでかいた汗ではない。
“修羅”の本性を剥き出した川原と向き合ってから、肌に沸き出してきた汗であった。
五メートルほど前に、川原が立っている。
川原は、両手を胸の前で緩く開く、圓明流の構えをとっている。
あの糸のような細い目が、刃のような鋭い輝きをためて、見開かれている。
しかし、それは左目だけで、右目は紅の筋がたれている。
それでいながら―――川原は嗤っていた。
板垣の内に飼う“鬼”と同等の質量を持つ、“修羅”の笑み。
ぶるりと、板垣の肉体が大きく震えた。
背骨の底のあたりに、何か、蟻が這うようなむず痒さを覚えていた。
その蟻の数が増してゆく。
ぞくぞくとする感覚が、そこから、背骨の上へと育ってゆくのがわかる。
その感覚を、板垣はこらえようとする。
こらえようと歯を喰いしばっても、その感覚は、後から後から、肉の中にふくれあがってくる。
板垣の唇がめくれあがって、そこに、噛み合わせた歯が見えていた。
板垣の唇は、喜悦の表情を浮かべていた。
たまらないものが、こみあげる。
「楽しいな、おい――」
板垣は、自分の肉の緊張を解くように、小さく川原に向かって声をかけた。
いや、自分に向かって声をかけたのかもしれなかった。
「震えてるのかい」
低く川原が言った。
「待ちきれねえんだよ」
板垣が前に出た。
その途端であった。
板垣が前に出るのと同時に、川原の体がわずかに揺れ、そして目の前から消滅した。
55修羅、反撃:05/01/30 03:49:43 ID:B51rajDx0
(なにッ……)
板垣が目を見張った。その鼻先に、川原の、あの笑みが出現していた。
板垣でさえ、一瞬、その姿を見失うほどの速度で、川原がその間合いをつめていた。
ガードをしようとするが、川原の動きの速さが、板垣のそれを上回った。
「破ウッ」
と、板垣が、呼気の塊を吐き出した。
体がくの字に折れ曲がる。
川原の下突き(ボディーアッパー)が、激烈に水月を貫いていた。
先程までとは比較にならない打撃の重さ。
何か、とてつもない変化が、川原の裡に生じていた。
姿見は変わらず、人間性(なかみ)だけが、化物へと変じていた。
(なんだあ、このスピードは!?)
100キロを超える板垣の巨体が、70キロに満たぬ男の一撃で、後退させられていた。
川原が追ってくる。
怒濤の連打が、始まった。左右の拳によるラッシュ。
その拳を、板垣が両腕でブロックしていた。
拳に代わって、川原の左右の蹴りが、連続して板垣を襲った。
頭。
肩。
腹。
脚。
膝。
ほとんどあらゆる人体の部位を川原の足が襲う。
そのほとんどをブロックしながら、板垣は舌を巻いていた。
(これが―――30キロ以上も軽い男の攻撃か!!?)
疾い。
川原の攻撃が、である。
疾くて、重い。
一発ずつが、修羅の殺気がこもった攻撃である。
これか。
これが、川原正敏か。
56修羅、反撃:05/01/30 03:51:20 ID:B51rajDx0
いや、こんなものではないはずだ。
まだ、川原正敏は、隠している――いや、隠してはいない。
この川原は、そういうタイプではない。
隠しているように見えるものがあるとして、単に、川原は、それを使う場合でないから、それを使わないだけなのだ。
知らぬ間に、板垣は後方に退がっている。
退がっているのか、このおれが。
川原に押されているのである。
「じゃっ!」
板垣が、獣の声をあげた。
板垣の右足が、地を蹴っていた。
地を放れた板垣の右足が、川原の腹の前を顎に向かってするすると蛇のように持ち上がっていく。
その蛇の鎌首は、川原の鼻先を天に向かって伸びあがった。
強烈な蹴りであった。
板垣の足が疾り抜けた後には、空気の中に焦臭い条痕が残りそうであった。
そんな一撃を、川原はあの笑みを浮かべたまま、寸前で躱していた。
次の瞬間には、もう川原はその場にいない。
板垣の死角である、右斜め後方に移動している。
神速――否、まさしく修羅の速度。
板垣の軸足に、川原の右のローキックが叩き込まれていた。
ちぎれそうな衝撃。
常人ならば、大腿骨開放性骨折するであろう一撃。
だが、板垣の上体はわずかに揺らぐだけだ。
倒れない。軸足だけで踏みこたえていた。
轟、と鬼の裏拳が、疾る。
川原は頭を沈めて、それを躱していた。
頭上すれすれを奔り抜けていく巨腕に、川原の腕がからみ、肩に担いだ。
肘関節を極めての、一本背負い。
「哈ッ」
投げられる直前に、自ら地を蹴った。
巨体が大きな弧を描いて、投げ飛ばされた。
57修羅、反撃:05/01/30 03:52:15 ID:B51rajDx0
板垣の足が、地につく。
反撃の体勢を整えようとした時には、既に川原は疾風と化していた。
鋭い腰の回転から繰り出された鉤打ち(フック)が、板垣の顔面で爆発する。
30キロ以上も軽い男の、ただの一撃で、板垣の巨体が飛ばされていた。
地面に叩きつけられ、ごろごろと転がる。
「はいいいいっ」
板垣は吼えると、地面に手をつき、水面蹴りを放った。
大きく地を薙ぐような蹴りは、川原にかすりもしない。
後方に逃げた川原を追うように、板垣が地を蹴り、ダッシュした。
それを迎え撃つように、川原の右足が短い弧を描いていた。
その右足を、板垣の両手が捕まえにゆく。
刹那、板垣の頭部が跳ね上がった。
前蹴りである。
ローキックの軌道を描いた右脚が、飛燕の変化を魅せていた。
鼻血を噴き出し、のけぞったところへ、さらに追撃の後ろ回し蹴り。
これは両腕を交差させて防ぐが、地面に轍を刻みながら、体ごと後退させられた。
信じ難い威力。まるで体重差を感じさせない。
獣が、鼻面から強引に潜り込んで来るように、川原が、板垣の間合からさらに近い川原自身の間合に入り込んできた。
入り込んできた時には、右のアッパーが、板垣の顔面に向かってふっ飛んできた。
ただのアッパーではない。右拳の下に、川原の頭が食い込んでいる。
拳を頭で押し上げ、全身のバネを使って板垣の顎を体ごと打ち上げた。
陸奥圓明流「浮嶽」――山をも浮かせるという意の技。
すでに一度、川原が板垣に叩きつけた技である。
だが、これには続きがある。
撹拌された板垣の意識の淵に、もうひとつの拳が滑り込んで来る。
顎先に、連続して2発目の拳が突き刺さっていた。
これこそ、「浮嶽」の完成型。
大きく打ち上げられた板垣の巨体が、垂直に崩落し、地面に顔面から沈んだ。
58作者の都合により名無しです:05/01/30 03:54:20 ID:B51rajDx0
おっと、前スレの556からね。
59作者の都合により名無しです:05/01/30 11:59:36 ID:lMQbfV3r0
ヾ(゚д゚)ノ゛ウォォォォォヾ(゚д゚)ノ゛フガクー
60作者の都合により名無しです:05/01/30 13:15:49 ID:h1zVRBOa0
ようやく川原の反撃開始か。
しかし、板垣も“鬼の形相”をまだ見せていないし、予断を許さない展開だ。
61作者の都合により名無しです:05/01/30 22:01:36 ID:/DEjrwGb0
元々の身体は夢枕のなのに、“鬼の形相”は出せるんだろうか……
62作者の都合により名無しです:05/01/30 22:10:39 ID:NWRm53Dy0
6部の板垣vs夢枕戦のラスト参照
今の板垣の肉体は夢枕ボディ+“鬼の形相”

なにより同じ6部で大和田に対して思いっきり鬼哭拳つかってるし
っていうか、それを普通に受け止めた大和田がスゲェ
63作者の都合により名無しです:05/01/30 23:47:25 ID:h1zVRBOa0
夢枕の肉体ってあくまで媒介みたいなもんで、板垣の魂が乗り移った時点で
生前の身体的特徴やこれまでの鍛錬による肉体の成果も新しい体に引き継がれて、
その結果、見た目はこれまでの板垣のままにパワーアップを果たしている…

と、ご都合主義的な解釈を俺の場合してたんだけど。
夢枕戦の復活後に特にこれまでと姿形が変わったような記述もなかったし。
64作者の都合により名無しです:05/01/30 23:52:20 ID:KyRtiWgV0
まあ細かいことは気にしないと
65第一回ヒロイン杯争奪戦:05/02/01 17:13:37 ID:tZ56hELp0
(前スレ564)
 「ちきしょう、死んでねえって言うのなら証拠見せやがれ!バカヤロォ!」

いつも通りの裏御伽チーム控え室。幽体離脱で中身が抜け殻になってるだけだと、
岡野に説明されても納得いかないらしい裏御伽大将・本宮は、
抜け殻の男──ベンチの上に転がされた副将・にわのの、
覆面を勝手に剥ぎ取りベチベチと頬を何度も叩く。
 「てめえは10年かけて、ようやく俺の“息子”になったばかりじゃねえか!
 それを勝手になんだ!子供が親より先に死ぬなんてのは、
 一番の親不孝なんじゃあ!!このボケがァ!!」
雄々しく咆える本宮に、諦め顔の岡野と真倉。
同じ部屋では客人の佐渡川に対して澤井がなにやら指差して叫んでいる。

 「しりとり術で女に変身だか知らないけどね、
 物語のヒロインと裏御伽紅一点の座は譲れないワケ!
 副将は変態だから敵じゃないけど、あんたは危険なにおいがするわっ。
 あんたをチームに入れるわけにはいかないの。今ここで消えてもらうわお嬢ちゃん!!」
トゲトゲオレンジ球体男は、化粧の濃い顔で佐渡川に宣戦布告する。
何かが、いや全てが間違っているのだが気にする風もない。
 「面白いじゃん。別に入るとも決めてなかったけど、
 そこまで言われたら黙っちゃいられないね。
 挑戦なら受けて立つよ!!んで何を賭ければいいんだい?」
昨日、戦艦無礼ドで西川相手に滾りきった≪大戦鬼≫の血が、
小柄な身の内に再びフツフツと沸き上がる佐渡川。口元には危険な笑みが浮かぶ。
彼女もまた鬼の一匹なのだ───

 「私が負けたらヒロインの座を返上してトコロテン時代に戻るわ!!
 さあルーレットをお引きなさい、早食い出前ゴミ拾い、ダーツに野球拳何でもありよ!!」
 「じゃああたしが勝ったらあんた、語尾に『ニャ』つけるの義務だかんな」
 「何それ!?・・・まあいいわ、その条件呑みましょう。
 先に3勝した方が勝ちね。さあ勝負よ小娘ッ!!」
そして勢いで始まった≪五番勝負≫のルーレットが回された!果たして勝負の方法と行方は・・・?
66作者の都合により名無しです:05/02/04 19:09:19 ID:Ar2PUhr10
矢吹健太朗 VS 阿倍なつみ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1101900261/l50
過疎化したこちらもヨロシク。
67Road to NARUTOYA!!:05/02/05 14:19:04 ID:JWvoY1Nd0
(22部227 9部B117)

昼下がり。川原の愛船≪影船≫は、玄海灘を通過し福岡は博多湾を訪れていた。
港に降りた船員たち(日本TCG連合)は、川原の依頼どおり、不幸にも暗殺された乙一の棺を、
彼の故郷の両親に届けるために、かの地を訪れたのである・・・。

影船には昼前に矢吹艦へ移動しなかった漫画家2名―――
あだち充と桜玉吉が残っていたが、
 「せっかく福岡に来たんだしラーメン食べましょう」
とのあだちの言で、彼らはふたりで船を降りて繁華街に向かった。
しかし福岡を含めた九州地区全体は未だ≪王蟲≫進撃の影響が色濃く残っており、
まるで戦争直後のような焼け野原を、彼らは延々歩く羽目になった。
悪魔ボディの玉吉、自分が空を飛ぼうと思えば飛べることを知らなかったり。

 「いやーあんなにアジ星人が釣れるとは思わなんだ。玄海灘最高!」
影船での予想外の釣果にホクホク顔の玉吉。
 「海釣りいいね。鹿児島ではいまいちだったから僕も楽しかったよ」
同じく顔をほころばせているあだち。
今夜は仲良くなったクルー達とアジフライパーティだね・・・と、
周囲の惨状をものともせず町の中心部へ向かう彼らの前に、
真新しいチラシが何枚も撒かれてコンクリートの廃墟に散らばっていた。
それらにふと気がついたのは玉吉。
 「なんじゃこりゃ?何かの大会の告知かいな」

とんがった爪先で器用に足元の紙をつまみあげる玉吉。
紙には昨日の日付と『料理人ナンバーワン決定戦IN博多』というポップ文字、
手書きのラーメンのイラストが可愛らしく並んでいる。
 「ほー、もう始まってるのか。なんだか楽しそうではないか」
 「でもこんな非常時ですから中止になっているかも知れませんよ。残念ですねえ」
玉吉とあだちがそれぞれ感想を述べると同時、
前方の下り坂からこちらに登ってくる妙な音をふたりは耳にした。
岩つぶてを掻き分けガラガラと、硬い車輪がどんどん近づいてくる―――しかも大量に――――
68Road to NARUTOYA!!:05/02/05 14:20:02 ID:JWvoY1Nd0
危ない予感がしたのでふたりは脇道に逸れ、壁際に姿を隠して坂を確認する。
するとじきにモウモウとした土煙が遠くから現れ、
足元の荒野がビリビリと振動を伝え、そして―――彼らは見た!!


   ……・・・・・・・・ガラガラガラガラガラガラガラガラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ ガ ラ

 
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨


 「「 な、何十台もの食べ物屋の屋台が連なってレースをしている〜〜〜〜〜〜!!? 」」


なんと坂道から勢いよく飛び出してきたのは、
ラーメン屋・おでん屋・弁当屋・カレー屋・クレープ屋・寿司屋・立ち食いそば屋・・・
アイスクリーム屋にお好み焼き屋、たこ焼き屋に串揚げ屋など、
ありとあらゆる日本大衆グルメ食材を網羅した≪屋台≫数十台であった!!
地響きと騒々しい車輪やエンジンの音をあげ、屋台は港の方へと消えていった・・・。


 「なんだなんだ。まさかあれが料理人決定戦じゃああるまいな」
ペッペッと口に入った砂埃を吐きながら、玉吉が呆れた声を出した。
あだちは肩を竦めながら返答する。
 「あんな物騒な屋台じゃ何も食べる気になれませんよ。
 ああいう手合いは放って置きましょう。しかしここらは何もありませんねえ。
 最悪どこかのキャンプで炊き出しを頂く事になりましょうか。ラーメンあるといいな〜」
一応状況は理解しているらしいあだち。それでもラーメンは食べたいらしい。
2人が先ほどの坂道の下り口に差しかかる。すると。
 「あれ?まだ屋台がひとつ残ってるじゃないですか」
シンプルなリヤカー造りのラーメン屋台がひとつ、坂道を登りきれずにヒイコラ言っていた。
 「仕方ねえなー、あだち先生は反対側に回って押し上げておくれ」
69Road to NARUTOYA!!:05/02/05 14:22:03 ID:JWvoY1Nd0
玉吉は屋台を下から押そうと坂道を走り出す。屋台とすれ違いざま、
リヤカーをふらふら引きずる料理人とおぼしき優しげな顔の青年に挨拶した。
 「困った市民を助けるのは地球防衛軍の仕事だからな。お礼はラーメンでいいぞ青年」
 「わっ、あなたたちは誰ですか? でもありがとうございます」
えっちらおっちら、ズンドウ鍋が重々しいリヤカーを3人がかりで坂の頂上に運んだ。

 「ありがとうございます。これはお礼のラーメンです、熱いうちにどうぞ」
それでは遠慮なく・・・とラーメンをすする玉吉とあだち。口に麺を含んだ瞬間!
 「「うわっ!!激うまっ!!こいつはすげーや!!」」
感動した2人は舌をヤケドする勢いでらーめんをすすり始めた。
そう―――彼らの心に“虹”がかかった瞬間だった・・・!!

 「福岡の味ではないけど堪能したよ〜。あんたも料理人レースに参加してるのかね」
爪楊枝をくわえた玉吉が料理人の青年にニヤリと微笑みかける。
 「はい。昨日からここ福岡を舞台に様々な勝負が行われているんです。
 もちろん王蟲がゾロゾロいる中でも試合やってましたよ。選手は猛者ばかりで。
 今は第4レースで、ラジオ体操みたくシートにハンコの指紋をもらい歩く勝負です。
 自分の料理に満足していただけたお客様に押してもらうんですよ」
 「ほー、大変そうだねえ。災害でお客もそれどころじゃなかろうに」
 「そうなんですよね。ただお金はいただきませんので、
 割と喜ばれてるみたいですよ。今は少ない客の奪い合いで皆暴走していますけど・・・。
 それぞれ違う型の指紋を50個集めてゴールに着いた順にポイントが加算されるんです。
 総合ポイントが高い選手が優勝です。あ、よかったらここに指紋いただけますか?」

青年は思い出したようにボール紙のシートと朱肉を取り出す。20個程指紋がついている。
あだちがポチッと指紋を押すが、玉吉は悪魔フィンガーなせいか指紋が不気味な模様になっていた。
 「ま、まあ大丈夫でしょう。ではありがとうございました!失礼します」
ナルトバッヂをつけた青年―――実は一昨日の矢吹艦Dブロック決勝時に突如現れ、
いつの間にか行方不明になった漫画家・馬場民雄その人―――は、にこやかに去っていった。頑張れ馬場。

 「おーい青年〜〜ところでレースはいつまでやるの〜?」「100番勝負で〜す」「多っ!!!」
そう我々の預かり知らぬところで既に、最強の料理漫画家を決める闘いは行われていたのだった!! ←TO BE CONTINUED?
70作者の都合により名無しです:05/02/05 18:48:07 ID:p7VePifR0
始まってたのか!!
71作者の都合により名無しです:05/02/05 19:56:04 ID:ztX5nhBD0
のん気にサッカー見とる場合じゃなくなったぞ、まっつー夫妻!!
72作者の都合により名無しです:05/02/05 23:55:44 ID:SUUusjsH0
何時以来の登場だよ馬場……なつかしすぎるな
ところで料理勝負するために一緒に消えた花咲アキラも、このレースに出てるのかな
73作者の都合により名無しです:05/02/06 00:15:54 ID:qsJdskoi0
でてるんだろう。
きっと某肉汁天才少年や某鉄鍋や某クッキング親父もでてるんだろう。
74作者の都合により名無しです:05/02/06 00:18:40 ID:t+4S7mrs0
ハイール クッキング親父!
75作者の都合により名無しです:05/02/06 00:55:19 ID:3IJrfGaQ0
>66
過疎スレに過疎スレの宣伝なんかしにきても意味は無い罠。
76TRI-GUN:05/02/07 18:23:07 ID:xhzyfD6R0
関連(前スレ346、585、595


「ラ――ヴ・ア―――――ンド・ピ―――――――――――――スだ!!」
 ………………。
 ………………。
 ……チリ……
「―――!」
「……!」
 時同じく、しかし全く異なるそれぞれの場所で、伊藤が、平野がそれに気づいた。
 新谷、広江と向け合う銃口。針のように研ぎ澄まされた緊張感の中で伊藤は気づいた。
 椅子に沈み込み、戦場に溢れる吉報と凶報とが自身の感情を揺らす。その愉悦の中で平野は気づいた。
「戻ってきたか……」
「人間台風が来るぞ。人間台風が来るぞ。こいつは素敵だ。全部台無しだ」
 誰に語るでもなく―――あえて言うならば自分自身に語るように―――それぞれに囁き。
 そして。
 笑った。
「……おそろしいものになってやってきたものだ」
「全く……何てェ顔をしてやがるかな」
「一ッつ残らず救いきるって目をしやがって。ヒトのカタチをしているクセになんてザマだ」
「……まるで我侭で無邪気なガキだ」
「ああ、違いない」
 見えぬ距離で見る、互いの姿。
 聞こえぬ距離で聞く、互いの声。
 伊藤明弘。
 平野耕太。
 そして―――内藤泰弘。
 ―――かつて薄暗がりの円卓で分かれた3人が。
 今、白日の下、燃ゆる戦場で再会した。
77作者の都合により名無しです:05/02/07 20:09:27 ID:xaDpHnWR0
伊藤て化け猫の方か
いよいよ再会か〜
78魁!!餓狼伝 −真剣勝負−:05/02/09 17:47:01 ID:LVvUlE6h0
>11

「宮下くんよ、左腕の自由を奪ったくらいで俺になり替われるとでも思ったかい?」
一向に覇気の衰えぬ気配のみえぬ“闘神”。
片腕を封じられたという不利な状況に立たされながら、その自信は一片も揺らぎはしない。
「ぬううっ……!! 」
一方、相変わらず押され気味であった宮下は、苛立ちの色を浮かばせつつも攻めに出ようとする。
片足立ちに加え、両腕を蟷螂のようにもたげたまま肩の上に突き出す、鶴を思わせるような奇怪な構えを取った。
中国拳法で最古の歴史を誇ると云われる大往生流の構えである。
「大往生流  鳳 鶴 拳 !!」
宮下が叫びながら、片足を跳ね上がらせて疾風のごとく襲いかかった。
それは一見、何の変哲もない飛び蹴りのようにも見える。
が、よく見るとそのつま先には鋭く先を尖らせた一本の匕首(ドス)が仕込まれていた。
今さらとはいえ、ようやく暗黒化した宮下の本領である、武器その他何でもござれのなりふり構わぬ手段に出たのである。
文字通り、その鋭い爪先が夢枕の心臓目がけ一直線に疾る!
だが、夢枕はそれを避けようともしない。

     キ  ン  !

高い金属音がして、匕首が宮下の足からはなれ宙を舞っていた。
突きつけてきた匕首を、横から夢枕の合わさった指2本が叩いていた。
指先に全身の気のパワーをのせてぶつける円空拳の技のひとつ――“寸指破”。
その寸指破で、匕首を根元から叩き折ったのである。
元々、相当の気の使い手なら刀の刃ぐらいならヘシ折るほどの威力があるとはいえ、
常人離れしたスピード、タイミング、パワーがなければできる芸当ではなかった。
79魁!!餓狼伝 −真剣勝負−:05/02/09 17:49:54 ID:LVvUlE6h0
「ぬ ぬうっ…! ならばこれはどうじゃ!  鳥人拳  鶴 嘴 千 本 !!」
どこに隠しもっていたのか、今度は長さ数十センチはあろう極大の針を取り出した。
指と指の間に挟んで握られていた、その針を3本ほどまとめて、素早く夢枕に向けて投げつける。

──鶴嘴千本とは、中国医術三千年の歴史をもつ針療医法を応用した武器である。
各種のツボや神経節を針で打つことにより、筋肉の動きを封じるなど、様々な効果を得られるのだ。

鋭い針は夢枕の腕に向かって疾り、ブシュ…とえぐい音を立てて突き刺さった。
「針の穴を通すが如くおぬしの神経節を貫いた。これで両腕ともに使えまい」
宮下が得意げに言い放った。
だが、見ている馬場の心の中では、妙な不安がよぎっていた。
「さすがに両腕を封じられてしまっては勝負はきまったようなもんだ。けどなんか嫌な予感がするんだよな‥‥」

案の定、その不安は的中した。
夢枕が動かせないはずの右腕に力を込め始める。
すると、腕に刺さっていた千本が内側から筋肉の力により押し出されるように後退していく。
元々皮の下ぐらいの深さまでしか貫けていなかったのか、3本の針はあっさりと抜け落ちてしまった。
「ば 馬鹿な……さ さてはおぬし、氣功闘法の拳砦体功でも使い肉体を鋼鉄と化したのか!?」
「半分くれえは当たりさ。
 あんたの言うとおりおいらの肉体の一部分を鋼鉄の堅さに変える術ってえおがあってねェ。
 ちなみに空海の四殺≠フひとつ金剛拳ってえんだ」

四殺≠ニは、空海が、奈良時代に唐からこの日本に、密教とともに持ち帰った四つの呪法である。
時の朝廷が政敵を倒したり、または政敵を逆に調伏し、権力を維持してゆくために密教の呪的部分が重宝された。
そこで相手を殺すための具体的な道具として用いられたのが、この四殺≠ナあった。
その内のひとつに、己の肉体を鋼鉄の堅さを持ったもの、すなわち金剛と化す法が存在した。
夢枕はその法を使い、自らの腕の部分を鋼並に硬質化させた。
それゆえ、千本が皮膚の下の神経節を貫くには至らなかったのである。
80魁!!餓狼伝 −真剣勝負−:05/02/09 17:58:07 ID:LVvUlE6h0
せっかく見栄もプライドも捨て去ってまで騙し打ちという卑劣な手段まで用い、武器も解禁した。
それなのに自らの劣勢を覆せない現状に、宮下はまさに、ぐうの音も出ないような心境だった。
それもそのはず、自分が武器を使うと同時に夢枕もまた“気”など、リアル格闘技というジャンル以外の能力を解放しているからである。
こと、漫画家をはじめとするクリエイター同士の闘いにとって、各々が創ってきた作品の豊富さは高い重要性を占める。
何故なら、手持ちの作品の幅が広ければ広いほど、その者自身が繰り出すことができるネタも
多彩なものとなり、それだけ戦闘を有利に進めることができるからである。
だとすれば、かつては最強原作者集団・三闘神のひとりに数えられ、
数多くの漫画の原作を担当してきた、目の前にいるこの“漢”。
決して、ただの殴り合いしか能がない空手屋風情などではありえない。
どれだけの計り知れない能力を秘めているのか、言うに及ばぬことではないのか──


「小細工が通用しねェことがワカってきたようだな」
追い詰められている宮下の心中を見抜いたかのように、夢枕が問いかける。
「どうしたい、まさかここまできてお手上げ、ってこともあるめえ。
 おいらの勘が教えやがるぜ。お前ェさんがもっとでけえおもちゃを隠し持ってるってな……」
「ほう、今までのわしが本気でなかったとでも?」
「最初に言ったろうがよう。小細工抜きで本気で闘り合おうってなァ。
 もし、俺をあのとっくりの中に突っ込んで勝ってやろうなんて欲張りしてるならよう、
 そいつは取らぬ狸の皮算用ってやつだ。このおいらには頭から喰われちまう羽目になるぜ」
「フフフ…ハーッハッハッハッハッ……!! そこまで見抜かれておったのか。まさしく貴様の言う通りよ」
夢枕の言葉は核心を突いていたのか、宮下は豪快に高笑いしながら素直にそれを認めた。
しかし、勝負を観念したというわけではなく、その双眸からは闘志の炎は消えてはいない。
むしろ眼の奥から凶悪な、昏(くら)い色の炎がメラメラと燃え上がっている。
81魁!!餓狼伝 −真剣勝負−:05/02/09 18:04:21 ID:LVvUlE6h0
「おぬしほどの男、できるだけ活きの良いままにとっくりに突っ込んでのう、
 そして旨いエキスをこってりと搾りとってやろうと思っていたのだがそうもいっておられぬようだ」
「ケッ、そんな邪な打算に囚われてるから思わぬ不覚をとることになる……」
「その通りじゃった。だが、もはやここに来てわしは悟った! 半端な武器は通用せぬと!
 殺す気でかからねばこちらが殺られる……!! もはや貴様を斬るのに何のためらいはない………!!」
──斬る──この言葉を聞いて夢枕の顔色が変わった。
恐怖感よりも、むしろ期待感の方が勝っている悦びの表情であった。

「馬場よ! 松椿でわしが取り返した“あれ”を貸せ!!」
「し しかし殿下! 本当に良いのですか!?」
「構わん! 死力を尽くさねばこの男は倒せぬ……!! 早く貸さぬか!!」
「へ へい!!」
戸惑いがちだった馬場も、宮下の凄まじい迫力に押されて異を唱えることはできなかった。
荷物入れの中から、鞘に収まったままの長大な日本刀を宮下に投げ渡す。
長さにして七尺(約2m)以上はあろうかというその豪刀を宮下は片手でガッシリと掴んで受け取った。

「こいつはえらい大層な太刀を持ち出してきやがったな。
 まさか余りにも長すぎて抜けねェってことはねえだろうなァ?」
口では冗談をかます夢枕だが、無論、この豪刀がただのハッタリではないことは十二分に想像が付く。
「フッ むしろおぬしこそ己の身を心配した方が良いぞ。これを抜かせたら貴様に万が一の勝ち目はあらぬ!!」

宮下が夢枕の疑問を一笑に付すように、一気に長大な刀身を鞘から抜き放つ!
82魁!!餓狼伝 −真剣勝負−:05/02/09 18:09:38 ID:LVvUlE6h0
そう、この太刀こそ、漫画界ではモンキー・パンチの斬鉄剣に並ぶと云われる天下無双の剛剣──

「この世に斬れぬものはなし………!

   一  文  字  流  斬  岩  剣  ! ! 」

宮下が例の決め台詞と共に、太刀を大上段に構えた!
直後、宮下の闘気が爆発的に膨れ上がり、全身からすさまじい殺気が立ちこめた。
対する夢枕の背に、ぞくりと、電流のようなものが一気に疾る。
それはさらに、首の裏側を通り、脳へ駆け上がり、天へと尽き抜けた。

恐怖!?
いや。
歓喜!?
いや。
その両方だった。

「フフフ この斬岩剣を見て怖気づいておるのか……。さすがに“闘神”でもこればかりは無理もあらぬか……!!」
「へっ、言わせておけば。……おいらからも教えてやるよ。
 空手家の歴史ってのは そのまま───剣を踏み台にしてきた歴史だッ……てことをよう……!!」

邪な打算を捨て、ようやく相手を一撃で斬り捨てる覚悟を決めた宮下。
夢枕も臆することなく、あくまで堂々と受けて立ってやろうという気迫に満ちている。

剣鬼と拳鬼の、まさしく文字通りの“真剣勝負”が今ここに始まったのだった───
83作者の都合により名無しです:05/02/09 18:16:18 ID:koy5Nky00
(人´∀`).☆.。.:*・°真剣勝負キタワァ!!
その剣はもしやとっくりの中の人が9部辺りで装備していた・・・
84作者の都合により名無しです:05/02/09 18:30:13 ID:IcRlt0Mp0
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 先輩!先輩!
 ⊂彡
85作者の都合により名無しです:05/02/10 01:42:08 ID:FyEnQ+og0
おお〜長かった戦いも遂に最終局面か!
どん底だった宮下だが、今回で大分持ち直した気がする
86作者の都合により名無しです:05/02/10 01:44:05 ID:0NuPNZEQ0
そして相変わらず勝率ゼロの強者のエキス
87悪魔超人達の会話:05/02/13 21:50:12 ID:fYisCzY10
20部スレ261、22部スレ127

三好「俺が二つ守らなきゃいけないのか?」
小畑のパーツを前に腕組みして悩む三好。
しょりしょりしょりしょり、空中に浮かぶリンゴが何も無く食べられたかのように消えていく。
??「やっぱり、リンゴはインドアで堂々に限るぜ。」
三好「……大場か、このパーツどうする?」
三好が疑問に思って声をかける。
大場「くくくくく……こういうのはな。こうするんだよ!!」
その言葉と共に、大場がパーツを空中に投げる。
三好「あああああああああああ!大事なパーツがぁぁぁ!」
投げられたパーツは高く高く舞い上がり、やがて流れ星へとなる。
三好「げぇぇぇえええええええ!!」
大場「後は適当な奴を見繕ってくれるだろう。」
三好「そんな適当で良いのか?良いのか?」
大場「俺達が使えてる将軍を誰だと思ってる?『重ければ早く落ちる』ゆで将軍だぞ。」
くくくくっと大場が笑い声を上げる。

とある病院………小畑のパーツを持った青山剛昌がたたずんでいた。
青山「蝶変体あんど!!絶対俺が倒してやるからなあ!!
 留美子さんにあの技を使った貴様はゆるさん!!」
どうでも良いが、留美子をあの技で狙ったのは戸土野である。
まあ本当にどうでも良い事だが。
88作者の都合により名無しです:05/02/13 21:54:58 ID:OAFqNEqh0
これまた別の意味でヤバい奴の手に・・・w
89旅景色のダメ人間ども:05/02/14 00:05:24 ID:EA3U9/Yc0
「おにいさんはどこからきたの」
 不思議だ。まるで、なんの混じり気もない幼子のようだ。
「おにいさんはだれなの」
 なのに、何故、こうまで不安定な気持ちになる。
「おにいさんはおにいさんなの」
 目の前のラッコの声が、俺の心を破壊する――

 異世界で、いがらしだったモノと魂の交流をした男は――

「そこのちゅうこうせいじょしとおぼしきひとー、ぼくとしょうねんまんがばんではかくことがちゅうちょされるような
たのしくもなやましきこういをしないー? じんせいいちごいちえだとおもうよー」
 こんな感じで、あんまり近くにいて欲しくない人になっていたりした。

 
90旅景色のダメ人間どもと佐藤:05/02/14 00:06:37 ID:EA3U9/Yc0

 しかし現状、この病室は異常だった。
 28歳児に限らず、みずしなと天野はなんだかさっきから手を握り、見つめ合っていて、何人たりとも近寄れな
い雰囲気となっていたし、一見まともに見える夕日子も中は馬鹿だしで、ロクなものではない。今、この病室に
いる、唯一まともな漫画家は、どうにも動きようがなかったりした。
 そう――実は、この中にはもう一人漫画家がいたのである。あまりにオーラがなく、半ば一般人扱いで軽傷患
者の病棟に放り込まれた男の名は、佐藤タカヒロ。
(なんだってんだよチキショウ〜〜!! 可愛いコはいたけどなんだかコブ付きになっちまってるし、そもそもい
きなり男が女になったり、頭が可哀想な人が入ってきたり……ええいっ、覚悟をキメろ!)
「あー、そこの変態どもー? もしよろしければ私とサッカー観戦にでもいきませんかー?」
 佐藤は、得体の知れない恐怖に襲われ、声が震えていた。冷や汗を大量に掻き、風邪を引くんじゃねえかと思
われた。
「そこのあまり変態じゃない麗しきお嬢さんは軽傷ですよねー? だったら、問題なく病院を出られるのではない
かなー……と、思われるのですけど如何?」
 『あまり変態じゃない麗しきお嬢さん』とは、天野の事かと思われる。
 佐藤は、何故自分がこのヤバイ人達をサッカー観戦に誘っているのか、頭では理解していなかった。彼の防衛
本能とでもいうものが、勝手に「こうしたほうがよい」と判断したのである。
 要は「一刻も早くこの息の詰る(主に奴らのせいで)病室を出たい」ということだ。
「ええなあ。このちまいTVでは正直物足りん気はしてたし……」
「松葉杖とかあれば、外出とかはなんとかなると思います」
「何言うとんねん。おぶったるわ……な?」
「え……? で、でも、私重いし、それに、恥かしい……」
「大丈夫や、俺に、任させてくれ」
「……はい」
 佐藤は、こんな感じの甘甘トークを聞かされる(自分が言うのはOK)のが何より嫌いだった。吐気がするのだ。思
えば、あの自由人どもが入ってきてから終始こんな具合だった。佐藤にはしんどいだろう。
(は……はやく、でないと、マジ、吐く……!)
 こうして、28歳児らと佐藤は、矢吹の病院を後にした。

 その頃――同じ病院内で、井田ヒロトが出血多量で死の危機に瀕していたことを、当然奴らは知らない。
91作者の都合により名無しです:05/02/14 03:39:01 ID:OstrPKjY0
なんだこのカオス空間(w
佐藤タカヒロって調べてみたら「いっぽん!」の人か
そして井田ヒロトは天才的スリ技能でも修得するのか
92第一回ヒロイン杯争奪戦:05/02/14 11:48:54 ID:razC1Ggf0
 (>>65)              ガラガララ〜〜   ぴたっ

佐渡川「えーっとルーレットが差した対戦方法は・・・へ?≪HIKIKOMORI≫!?何これ!」
澤井 「こんなの混ぜた憶えはないけどやるしかないわー!!お聞きなさいッ魂のソウル!!」

                 ♪ ジャカジャン ジャカジャン ♪

澤井 「♪ 今日は祭典バテレンタイ〜〜ン 老いもジジイも寄っといで〜〜」
佐渡川「それじゃじいさんしか来ねーよ!!」
澤井 「♪ ただしあたいはインフルエンザ〜〜 四日四晩も悶絶死〜〜」
佐渡川「待てー!!じいさん殺す気かッ!?」
澤井 「♪ おかげで連休台無しだーーーーーーーーー!!!!(ジャカジャーン)」
佐渡川「病人は寝てろーーーーーー!!!」

施川 「キェッ キェッ キェ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
    バレンタインデーなど『しっと団(隊長:ハリー松沢)』に潰してもらうがいい!!
    殺シテヤルゥ!! 殺シテヤルゥゥ!!」
佐渡川「お前どっから出てきたんだよ!!」
澤井 「♪ 買い込んだチョコレートがもったいないから配らせろ〜〜」
佐渡川「それ歌い手の性別で意味合いが全然違うな!!」
施川 「フア〜〜泣けるな〜〜 手作りチョコを教室の机に仕込んで自作自演とかも泣けるな〜〜」
澤井 「♪ ただし魔法は尻から出る!!!」
佐渡川「それは別の漫画のセリフだーーー!!!(答:魔法陣グルグル)

施川 「見てやるわ 見てやるわ 魚雷が互いに滅しあうさまを見てやるわ!!」
佐渡川「あっ!もしかしてHIKIKOMORIって施川の漫画ネタ!?んで施川召喚か・・・わかるかよ!!」
澤井 「♪ チョコレートは血汚冷土と書いたり生き血を固めて作るんだZEEEE!!!!」
施川 「フア!?澤井くんの背後にバビロン様みたいな大きさの怖いおっさんが立ってるよ〜逃げて〜!!」
本宮 「まともに対決するつもりがないんなら部屋出てけボケどもがーーーー!!!」
3名 「「 キャー!!ジジイがブチ切れたーーーー♪♪♪ 」」

                     **** しばらくおまちください ****
93第一回ヒロイン杯争奪戦:05/02/14 11:52:15 ID:razC1Ggf0
澤井 「・・・さ、さあ引き分けたところで次はあたしが回す番ね・・・」(ガラガラガラ)
佐渡川「(タンコブさすりながら)追い出された方が楽だったんじゃね?」
施川 「ギャギャギャ!今夜はロゼでお祝いだよ!!」
澤井 「ここよ!対戦方法は・・・水の入った相手のコップに角砂糖を一個ずつ積んで、
   先に水面から出した方が勝ち?えらい地味だなー。とにかくやっちまおうよーもう」
澤井 (古いタイプのラジカセを取り出しスイッチを押す)
   『・・・クールに行こうぜ』
佐渡川「いきなりラジカセ使ってしゃべり始めたー!?意味あんのそれ!?」
澤井 『早くしろ。こっちはホットになりかけているんだ(熱で)』
施川 「君の事情など知った事ではない!ヨゴレ様の前で切腹して詫びたまえ!!」
佐渡川「おまえもわけわからん」

 (合図と共に2人とも角砂糖を喫茶店用のガラスコップに入れ始める。
 砂糖は溶けまくり、ちっとも段が高くならない。しかし徐々に差がつき始める。
 佐渡川の方がナンボか知恵が回るらしく、端に積み上げてるためリードしていた。)

佐渡川「へっ降参するんなら今のうちだぞー」
澤井 『負けはしない。俺の名はそう“トリッキー”澤井COOL啓夫・・・』
佐渡川「2秒で忘れそうな名前だな」
施川 「(なんか言わなきゃ!なんか言わなきゃ!なんか言わなきゃ!!)」
澤井 『左を見ろ→                                          こっちは右だ、まぬけ』
佐渡川「くきぃぃーーーーっ!!騙しやがったなあ!!」
施川 「(フア!?澤井先生が大量のガムシロップをジャバジャバと自分側のコップに!セコいよ〜!!)」

澤井 『・・・リーチだ(ニヤリ)』
佐渡川「うがー!!こんなチマチマした勝負なんざやってられっかー!!
    今からルール変更だ、自分側の水を一気に飲み干せた方が勝ちだからな!!」
澤井 『 COOL!! COOL!! COOL!! COOL!! COOL!! COOL!! COOL!! COOL!! 』
施川 「(フア〜身体に悪そうだな〜。あぶり出し勝負とかに使えばいいのにな〜〜)」

  ※1回戦 HIKIKOMORI勝負≪施川の判定で引き分け≫
  ※2回戦 COOL勝負≪COOLがHOTになってしまい無効試合≫            ←TO BE CONTINUED...
94作者の都合により名無しです:05/02/14 12:15:48 ID:razC1Ggf0
補足

澤井君がガムシロップを大量に突っ込んだのは、
水中の糖分を飽和状態にして角砂糖を溶かさないためです。
というか色々な意味でごめん('A`)サラバ
ゆで将軍……胴体
黒藤田→青山………左手
篠房六郎→藤崎(奪取)……左足
大場つぐみ→平野……頭
??…………腰
三好…………右手
??…………右足

剛昌('A`)
あと2人はまだ出てないよね?
96What’s Michael?:05/02/17 13:44:34 ID:FGMCmlNJ0
 (22部40  10部369・19部142・21部414)
昨晩から今朝にかけての局地的戦闘により、≪評議会≫黒軍基地は壊滅した。
陽が昇りきった今もなお基地跡にて、安彦と石川との闘いは行われている。

連戦に次ぐ連戦の果て力尽き治療を受け眠る、“元ゴッドハンド(雑用)”長谷川。
彼はときた洸一の艦≪リ・ホーム≫医務室で外科手術を施され、今はぐっすり眠っている。
艦は黒軍基地から遠く離れ、小笠原諸島の周辺をゆっくり旋回している。
北へ向かう雪雲を眼下に浮かぶ巨大な艦は、斜めから降る直射日光で金色に輝いて見えた。


             「にゃー」

 (猫か。猫の鳴き声が聴こえるな。
 確認したいが生憎今は、出血が激しかったせいだろう動く事ができん)
長谷川はそれでも猫が気になり、うっすら片目を開けてみる。
包帯だらけの自分の半身がぼんやりと視界に入る。ここはどこだろう?
どこかの病室で寝かされている・・・病室に猫? 長谷川は一瞬だけ自分の眼を疑った。
 (トラ猫だ。大人のトラ猫がこちらを無表情で見ている。恐らくオスだろう。
 不衛生な病室だな、他に人もいないようだが・・・む、猫が近づいてきた)

眉をしかめながらも冷静に思考を進める長谷川の、ベッドのシーツに猫が飛び乗る。
 (お、重い!というかそこは傷口が近いのでは・・・
 あ、踏むな!俺を踏むな!こら!俺の上で毛づくろいを始めるな!)
半泣き状態の長谷川。彼は思わず目を瞑るが、瞼の裏にも猫の真っ黒な瞳が見えている。そして――

    「―――時が来たら挨拶しよう。“今は”まだこの≪姿≫が気に入っている。
     それと馬鹿が空から降って来て失礼した。あれは正式な弟子って訳ではないが、
     責任者ってえ奴か。再会したら1から鍛え直す予定だ。そして・・・“あいつら”を、頼む」


 「・・・猫っ!!?」 ハッとした表情で長谷川が両目をこじ開けるが、
猫はどこにもおらずただ、通風孔の金網が破れ茶色い毛を絡ませているだけだった。
97OURS HOUR -銃手の時間-:05/02/18 19:28:29 ID:2OTlvK6E0
>>76

 携えるは、二挺の銃。対化物用13mm拳銃。
 もはや人類では扱うことさえ不可能なそれですら、彼には余技に過ぎない―――
「ひッ、平野様ッ!どちらへ!?」
 椅子から立ち上がった平野の姿に七三太郎が問いかける。
 肩越しに投げられた言葉に、平野は首だけで振り返ると不思議そうに見つめた。
 まるで1+1の答えを本気で問われたかのように、醒めたような表情になる。
「お前も……わたしのそばにいたのなら"分かれ"」
「は……はいッ!で、ですが……!」
「行ってくる」
 なおも反駁する七三太郎を捨て置いて、平野耕太の姿が場から掻き消えた。


「くっ……」
 全くの至近距離、お互いがお互いに銃口を突きつけあった、俗に言うメキシカンスタンドオフの状態で伊藤が喉を鳴らした。
「クックククククク……」
「先刻から様子がおかしいですわね。何かありましたの?」
「おっといけねェ。堪えきれなくってな」
 自ら諌めるように伊藤は呟くが、その口元はやはり綻ぶ。
「何の話だ」
「ダイナマイトがもう一本♪ってな。……いや、コイツは火種かもな」
「何が起きたのか存じませんが、そちらの方に興味がおありのようですわね」
 穏やかに言いながら、広江は前触れ無く引き金を引いた。
 目の前の銃火よりも遠きに意識を向けるというなら、それは自分を無視していることになる。
 無視されて笑っていられるほど温厚な広江ではない。
「ちぃっ!」
 呻きながら後ろに飛び退る新谷と、笑いながら身を躍らせる伊藤と、後退など一顧だにせず踏み込んでくる広江と。
 銃声と銃火と硝煙が、場の空気を一瞬できな臭いものへと変えた。
98OURS HOUR -銃手の時間-:05/02/18 19:32:54 ID:2OTlvK6E0
 薄暗いコートを纏った伊藤の体が宙を踊る。
 銃に相対する場合、避けるべきは銃弾ではなく、銃口。
 その向きを自らに向けさせないことこそが肝要である。
 その鉄則の染み付いた伊藤の動き。
 一つところに留まらず、壁を跳びはねる伊藤の俊敏さに、広江の銃弾が空を切る。
「一つだけ解せねェんだがな!」
 銃声が巻き起こす喧騒の中で、伊藤が広江に言葉を放った。
「お前さんが、アイツに気付けなかったのは何でだろうな!?」
「何を!」
「ことによると"奴さん"、宗旨替えってェことかも知れねェぜ!!」
「伝えたいのなら……分かるように言いなさいな!」
「悪ィな!性分ってモンだ!今更、変えられそうもねェ!!」
「なら……変わらないまま、死になさい!!」
 喧騒が、その言葉さえ飲み込み―――
 やがて場が再び静寂を取り戻す。
「……」
 立っているのは。
 広江一人。
「……これはどういうことでしょう?……」
 対峙した二人の男たちは何処かへと姿を消していた。
 何処までも軽々しく言葉を吐き続けた伊藤と、それに気取られている間に新谷までもがいない。
「……虚仮にされた?……ア、ハハ……ハハハハハハハハ!」
 取り残された広江の上げる狂気染みた哄笑が、銃煙にまみれた通路に長々と木霊した。

 通路を独り走る伊藤の足音が響く。
「あれはあれで楽しかったンだがな……」
 広江らとの対峙が後ろ髪を引く感触を心中に感じながら、しかし伊藤は淀みない歩調で進む。
 行く先に待つ二人との再会を目指して。
99OURS HOUR -銃手の時間-:05/02/18 19:46:01 ID:2OTlvK6E0
 走る伊藤の視界が不意に開けた。狭い通路が終わり、空が見える。
 そして、その眼前にエリア88の兵士たちと。
 平野が現れた。
「「「―――!」」」
 全くの出会い頭で三者は一瞬虚を突かれたように立ち止まる。
 が、それも所詮、一瞬のこと。
 平野が、伊藤が懐から銃を引き抜いた。
 互いが放つ銃弾は互いの体を紙一重ですり抜け、唯一行動の遅れた棒立ちの兵士たちだけがかわすことが出来ず、無数の銃弾を浴びる―――
 直前、天使の羽根に似た"何か"がそれらを受け止めていた。
「え?……え!?」
 目まぐるしく変化する状況に、全く理解の追いつかない兵士たちに、何処からともなく声が掛かる。
「今からね。ちょっとややこしいことが起こるから……早く他に行くといい」
 その言葉に従ったわけではないのだろうが、―――それとも、眼前の二人の危うさを、混乱する頭で辛うじて判断できたのかもしれない―――兵士たちは恐怖を取り繕う様子もなく我先に駆け出した。
「「……エィンジェル・アーム……」」
 異口同音に、平野と伊藤が呟く。
 その視線は兵士たちに―――いや、その後ろに向けられている。退場する兵士たちとすれ違うように歩み寄ってくる真紅のコートを纏った男に。
 カツン、カツン―――カツン。
 ブーツを鳴らし近付く男の歩みが、止まる。
 平野、伊藤らと三角形の頂点を描くように、静かに相対する。
 二人は無言で、ただ口元に笑みを浮かべ、その男を見守った。
 一方はシニカルな苦笑を。
 もう一方は歓喜に震える冷笑を。
「……久しぶり」
 なんの気負いもなく、内藤泰弘はそう言って、旧友たちに笑いかけた。
 銃撃戦の合図としては、それは余りにも清清しい言葉だった。
100作者の都合により名無しです:05/02/18 20:58:55 ID:sQIT2h170
おお!とうとうガンマン三巨頭が揃い踏みか!!
こっちの戦いも続きが楽しみだが、完全に虚仮にされた形の広江がどう動くかも気になるな
101作者の都合により名無しです:05/02/18 21:05:27 ID:kVgStoWc0
  _  ∩
(; ゚∀゚)彡 内藤!内藤!
 ⊂彡
102OURS HOUR -銃手の時間-:05/02/18 21:34:47 ID:2OTlvK6E0
 対化物用13mm拳銃。
 "ジャッカル"。
 常人を遥かに凌駕する膂力を持ちえた平野にしか扱えぬ、まさしく必殺の弾丸が内藤に迫る。
 その眼前で、内藤のAAが弾丸を何処かへと"持っていく"。
 同時に。
 隙を求めた伊藤の銃口が平野の額に突きつけられ、平野の銃口もまた伊藤に向く。
「はやい」
「お互い様ってェもんだ」
 囁いて。引き金を引く。
 避けようのない距離である。故に弾丸は互いの体に食い込んだ。弾着の勢いが互いを跳ね飛ばす。
 ユラリと、額を撃ち割られた平野が血塗れの笑みを浮かべ立ち上がり。
 磁気情報体"化け猫"である伊藤の体が、撃ち抜かれた胸の大穴を復元させていく。
 視線が、互いの姿を捉え直した。
「「シィッ……!」」
 獣じみた声音で吼え、二人は更に銃弾を撒き散らす。
 それを―――
  パ  ゴ  カ  ン  !!
 名状しがたい音と共に、内藤のAAが再び飲み込んだ。
 すると交差する銃口が同時に内藤を示す。顔も向けずに銃弾だけが正確に放たれ―――
  ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ン ン ッ !!
 内藤の全身から沸き起こる"天使の羽根"がそれらを阻む。
 ……シン……
 場が止まる。
 示し合わせたわけでもないだろうが、インターバルでも取っているかのように三者の銃声が止まった。
「早撃ちの腕(クイックドロウ)は似たり寄ったり」
「このまま続けたら、お互い手詰まりになるとか思わない?」
「それが愉しいんだッツーノ!クックハックハハハッ!!」
「「それ笑ってんの!?」」
 不意に相好を崩し、ダルッダルとした口調で言い、笑う平野に、両側からツッコミが入る。
 使命があり、信念があり、願望がある。
 それが故の対立。共に歩んできた道を歳月が阻む、寒々とした現実を前に。
 だが三者は紛れもなく、今、この瞬間を―――互いに鎬を削る「銃手たちとの時間」を楽しんでいた。
103作者の都合により名無しです:05/02/19 01:10:23 ID:0xdexQTS0
楽しそうだな平野
ってか平野がまともに戦うのってもしかしてこれが初めてじゃ?
104作者の都合により名無しです:05/02/19 01:27:22 ID:gictQ0En0
せいぜいオーバーフロー編の三つ巴ぐらいじゃない?
こっちが本分だろうしとても楽しそう
105放送席より愛を込めて (>>39):05/02/22 23:17:15 ID:tjvLzFhy0
克 『えー、現在グラウンド整備中のため1分ほど試合を中断しております。
  それでは橋口さん。この間におさらいとスレ保守がてら、
  ≪BガンサンチームvsDあんど(えなり)チーム≫の試合を振り返ってみましょう」
橋口『矢吹艦最大トーナメント決勝第一試合は、矢吹(様)の一存でサッカー形式となった。
  ただしルールは非常に大雑把で、“ボールをヒジから下で触るな”ぐらいのものであった。
  今は前半56レス(=約28分)、得点は【B 3‐0 D】となっている。再開時は57レスとなる』

克 『Dチームはこれから続々主力選手が投入(選手交代は無制限)されるみたいですし、
  Bチームのキーパーは鉄壁です。これからますますヒートアップしてゆくと思われます!
  ――さてこれまでの簡単な流れとして、
  開始直後Dチームのあんど7人が壁になって敵陣に突入!
  しかしいつの間にかばら撒かれていた地雷で撃退されます。
  逆にボールを奪われたDチーム、攻め込まれ樋口がシュート!
  これはGK岸本に阻まれ、同時にD主将カムイと乱戦突入します』

橋口『投げられたボールはDの柴田亜美が獲得、だが彼女は見目おぞましい怪物娘に変形した!
  一方カムイとの闘いが激しくなったためか岸本の守り薄く、開始14スレでDが1点先取となる』
克 『その後も柴田UMA子さんの暴走は止まりません!
  スカートの中身の自前炸裂弾で敵も味方も大ダメージ!
  特にX仮面の被害は顕著でした。これ以降現在まで立ち上がれておりません。
  あと、BスローインのボールをDの選手(※えなり)が何やらつぶやきながら邪魔したため、
  彼は柴田選手にミンチにされフィールドの肥料になってしまいました・・・』

橋口『ちなみに観客席は位相の違う別次元の安全地帯から観戦しているので、
  選手どもが必殺シュートでいくらピッチを破壊しようが我々は無事である』
克 『すごい技術ですよね〜。さてその後、安西選手vsゴールを守る巨大ガマなどの、
  周囲の混沌をすり抜け樋口選手が得点します!開始26レス目の事です。
  そしてぼちぼちD主力の参戦情報が流れてまいります。
  そのためかあんど選手たち7人が再び総攻撃をかけてきました!』
橋口『ふん、そこまでして目立ちたいという心がけだけは誉めてやろう』
克 『えーさて、椎名選手が超能力?であんど6人のナイアガラ攻撃を跳ね返します。
  あんど選手は結局1人のみが敵陣深く侵入する事に成功します』
106放送席より愛を込めて:05/02/22 23:18:04 ID:tjvLzFhy0
克 『――この頃なお続くカムイvs岸本は、ダメージの薄い岸本選手の放った八卦六十四掌などで、
  カムイ選手一気に不利に!しかし彼は謎の昏倒から急激に覚醒、
  なんと別のパワーに目覚めたらしく、パワーアップを果たしました!』
橋口『真っ黒になったと思ったら、いきなり爽やか過ぎる笑顔で復活したのだ。
  なんでも睡眠不足で不調だったらしいからな。すっきりできて嬉しかったのだろう』
克 『漫画家も人の子ですからね〜。―――さて試合は、
  再び地雷を発動させようとするガンサンですがこれは失敗します。
  なんといつの間にか地雷源からBサイドのゴール辺りにかけて水が張ってあったのです!
  水はさらに範囲を広げ、B選手に絡みつくかのように動きを邪魔します。
  ここでBの雷句選手が天才モード発動!水を逆に利用し、魔法で作った水の鞭でボールを弾き、
  絶妙の角度計算で無人のDゴールに放り込んだのです!42レス目、ガンサン3点目です』

橋口『さて、カムイ達の方だが一旦水入りとなったようだ。
  Dの正規軍とおぼしき男(※今井)に中断される形でな。仕切り直しという訳だ。
  10人で開始したDチームに2人、今井と藤崎がIN。あんどがひとりOUT。
  それぞれ布陣を建て直し再開。ここから始まる今井の、謎とトリックに満ちた猛攻、
  そして電撃のような足捌きで決めるクライフ・ターン!―――この男、侮れない』
克 『私の脳内データベースにもかからない、底の知れない男ですよ。
  だが真に恐ろしいのはそんな男の放った必殺シュートを難なく止めた、
  Dのキーパー金田一ですよ!!彼女はあの小柄のどこにそんなパワーを秘めているのか!?』

橋口『開始50レス、今井と金田一はボールを持たずして戦闘に入る。
  安西がD陣に攻め込むが、藤崎の変身術に引っかかり敵にパスしてしまう。
  藤崎は今井に返球、金田一有利で進む肉弾戦のさなか今井はカポエラの姿勢でシュートを放つ。
  だが金田一は身体の伸縮が自在なのだろう、身を膨らましボールを止めた・・・』
克 『GKからのボールはBの高橋留美子選手が受け取り、
  他の選手と共に切り上がりました。そこに立ち塞がるのは大和田!彼はなんと、
  サッカーとビーチボールのルールをごっちゃに憶えてしまったらしく、
  ボールをふん捕まえて手でシュートを放ちます!地面は爆発、もちろん反則でBにボールが渡り、
  現在はジャッキで歪んだ芝生がそろそろ直る頃です。いやはや波乱含みですねーこの試合!』
橋口『なおX仮面は現在行方不明、留美子ボールから試合再開となっている。
  フィールドの水は見当たらんので恐らく土が吸収したのだろう。さあ、私達を楽しませろ選手ども!!』
107作者の都合により名無しです:05/02/22 23:20:47 ID:tjvLzFhy0
ビーチボール×
ビーチバレー○
でしたごめん
108作者の都合により名無しです:05/02/23 02:03:40 ID:tVMGBlaF0
矢吹健太朗 VS 阿倍なつみ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1101900261/l50
過疎化したこちらもヨロシク。


109訂正多い(涙:05/02/23 10:54:38 ID:EtFyL/yb0
>105修正 他にもDとBの間違いは多いので注意マジゴメン


これはGK岸本に阻まれ、同時にBチーム主将カムイと乱戦突入します』

橋口『投げられたボールはBの柴田亜美が獲得、だが彼女は見目おぞましい怪物娘に変形した!
  一方カムイとの闘いが激しくなったためか岸本の守り薄く、開始14レスでBが1点先取となる』
110蝶と蛇:05/02/24 00:01:36 ID:USpzK8wP0
23部501より

鋭利で、そして重い刃音が連続する。
時折響く刃金(はがね)同士の激突音。
和月の『無限刃』と、王蛇の『ベノサーベル』。

  ―――― ギイイイン……!!

一際激しく刀身がぶつかり合い、両者の間合いがあく。
その機を見計らっていたように、和月の身体が深く沈みこんだ。

「 倭 刀 術 !  戰  嵐  刀  勢  !!! 」

  ――――ギュバアアアア……!!

深く身を沈めたままの体勢で、和月の身体が独楽のように旋回しながら進撃を開始する。

   ズ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ !!!

死の竜巻へと変じた和月。
文字通り嵐のごとき刃が、仮面ライダーを細切れにせんと侵攻と蹂躙の連斬を繰り出す。
その全てを剣を楯にガードするも、殺し切れない突進力が紫紺の仮面ライダーを追いつめていく。 

「死ね、仮面ライダー!!」

羽撃きで空を切り裂くがごとく、死の蝶が宙空から踊りかかる。
しかし、その一撃は、福地によって群生させられた大木の一本に食い込み、遮られた。
111蝶と蛇:05/02/24 00:02:31 ID:USpzK8wP0

「 破 阿 阿 ッ !! 」

         ――――――――― 斬 ッ ! ! 

天然の要塞すら吹き飛ばす、擬似竜巻。
なかばから細切れに斬砕された木々をまき散らし、死蝶の羽撃きはさらに狂い踊る。
遠心力を活用し移動攻撃する連続斬りが、しかし障害物を斬ったことでわずかに勢いが衰えた。
その一瞬を、悪しき蛇は見逃さない。


  ―――――――――――――――――  ゴ   ァ  ッ  ! !


仮面ライダーの怪物的な脚力が、足場を爆発させ、2メートル近い体重をゼロにする。

「 お お お ッ !!! 」

「 破 阿 阿 ッ !!! 」

 
  ド ッ―――――― ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガ ッ ッ !!!


空中を跳ぶ和月の身体に、王蛇の両足から放たれる十数発の蹴りが叩きこまれた。
目にも止まらぬ連続蹴撃を刀身で防御する和月。その防御の上を駆け上がるかのような、王蛇の嵐脚。
互い大技を仕掛けながらも絶妙の捌きで共に防御しきった両者が着地様、同時のタイミングで渾身の一撃を放つ―――――!!


    ――――― ガ キ イ イ イ イ イ イ イ ィ ィ ィ …… ッ ッ !!!!
112蝶と蛇:05/02/24 00:03:51 ID:USpzK8wP0
雷鳴が劈いたような衝突。
生じた激しい衝撃で、両者が弾き飛んだ。
互いに仰向けに倒れた二人が、ゆらりと起き上がった。
わずかな息継ぎの瞬間。
「なるほど……漫画家の戦いは面白いな。イライラがすっかりなくなった」
仮面で表情は見えないが、この戦いに愉悦を感じている気配は隠しようもない。
「フン♪そいつは良かったな」
軽口を叩きながら、和月は分析する。
強い――。
剣術では格上のはずの自分と、ライダーの身体能力と、そして類い稀なる戦闘センスのみで対等に渡り合っている。
そのうえ、村枝あたりと違い、戦いに全く躊躇いがない。
正直、危険極まりない相手だ。
ならば、決着は早めにつけるのが得策だろう。
刀を握る左手を後ろにひきつけ、相手を照準するように前方に突き出した右手に、刀身を静かにあてがう。
まるで狼が低きから一直線に獲物に向かって飛びかかろうとするかのような構え。

和月究極の刺突技――――片手平突き 『 牙  突 』


     ――――――――――――――――――――――  ド    ウ  !!


必殺の矢と化した和月が、王蛇との間合いを一気に踏破する――!!


                 『 ア ク セ ル ベ ン ト 』 


疾風を突き破る速度に達した和月。
その耳が乾いた機械音声を捉えるのと、和月自身が吹っ飛んだのは寸分の狂いなく同時だった。

113作者の都合により名無しです:05/02/24 00:37:29 ID:8TAJ6ULT0
おお和月がピンチ
王蛇の中の人はかなり手強そうだ
114インターバル:05/02/24 17:43:56 ID:H/WxFi0l0
>>102

 砲撃によるものか、あるいは単なる偶然の誘爆か。
 不意に至近距離で爆発が起こる。
「ウヒョォォォ!」
 その影響をモロ浴びたのは内藤だった。
 大穴が開いた傍らの地面を冷や汗混じりに眺め、おずおずと提案する。
「……あのさ」
「何だ?」
「どうした、内藤の?」
「えーと、もうちょっとこう……安全な場所でやらない?」
「馬鹿を言うな」
「そいつァ、興醒めってモンだ」
 即座に否定される。
「で、でもさぁ、なんつーか、落ち着かないっていうか……そう!楽しめないって思わない?」
「十分愉しい」
「十二分に堪能してるぞ」
「まともなのは俺だけかい……」
 色んなものを棚上げして内藤がうめいた。
 諦めたように嘆息を吐ききると表情を改め、銃把を握り直す。
「さて……」
「それじゃ―――」
「再開だ」
 拘束制御術式三号。
 二号。
 一号。
「―――開放」
 待ちきれぬとでも言いたげに―――
 周囲を埋め尽くすかの如く、蠢く闇が広がった。
115蝶と蛇2:05/02/26 00:02:56 ID:EpGAO39o0
>>112

吹き飛ぶ寸前の刹那―――和月は見た。
王蛇が、ベルトのバックルに装着された『ベントホルダー』から1枚のカードを抜き取り、『ベノバイザ−』のスロットに差し込む―――
その動作が生じた次の刹那には、王蛇の姿は眼前から瞬時に消滅し―――
地面に叩きつけられたところで、ようやく自分が何らかの攻撃を受けた事に気が付いた。
「ゴハッ…!!」
一発や二発ではない。全身に、数え切れないほどの打撃を喰らっていた。
血まみれになった和月が、自身が吐き出した血でさらに紅く染まる。
今、一体、何が起こったのか――――!?

『アクセルベント』
アドベントカードの一種であり、その能力は―――『加速』。
発現後10秒間、全ての動きが通常時の1/1000秒のスピードで行えるという超絶のブーストユニット。
そのスピードたるや、もはや肉眼で追えるものではない。
それが例え人外の身体能力を持つホムンクルスにして、一流の剣客である和月の動体視力であったとしてもだ。

「…久し振りだな…この感じ」
血を何度も吐きながら、和月が苦痛と歓喜がない交ぜになった鬼気迫る笑みを浮かべた

「この痛み!
 この苦しさ!
 ここしばらく忘れていた “ 臨 死 の 恍 惚 ” !! 」

狂気と兇気に満ち満ちて、哄笑する和月。
吐き出す血で全身を真っ赤に染め上げながら狂ったように笑う和月の姿は、まさしく魔人。
そして――
狂い踊る蝶人の羽を千切らんと、魔性の蛇が牙をもたげる。
116蝶と蛇2:05/02/26 00:03:46 ID:ethekQZ+0

 ―――――― 我 ッ !!

中腰状態の和月に、頭部への強烈な蹴りが叩きつけられる。
首から上が持っていかれたか、と錯覚するほどの威力。
和月がさらなる頭血を噴出させながら、またも飛んだ。
飛んだ先の木をヘシ折り、粉砕する木っ端のなかに蹴りこまれる。
倒れた和月の頭を王蛇の手が鷲掴み―――

「――らああああああ!!」

         ド パ ア ア ン …… !!

海面に猛スピードで投げつけた。
ライダーの筋力と、甲板の高さを加味すれば、その衝撃たるや100メートルの高さからコンクリートに叩きつけられたのと同じだ。
和月の痩身は紅い花を咲かせながら、赤黒く燃える海に沈んだように見え―――― 

      

                        ┣¨



              ン



   大  海  が  割  れ  た  。
117蝶と蛇2:05/02/26 00:04:55 ID:ethekQZ+0
聖書に曰く、パロの軍勢から逃げ延びるために海を割ったモーゼの奇跡を再現するかのように―――
大海原の一角に、物理的な亀裂が生じていた。

「―――!?」

さしもの王蛇も、これには我目を疑わずにはおれない。
二つの瀑布と化した海を両脇にしたがえ、しかし威風堂々と歩み寄ってくるのは。
聖者ではなく、生者ですらない、死の淵より蘇りし妖魅にして、魔人。
魔人は、その面を己の魂とは真逆の、純白の闘争服に包んでいた。
「いい漫画家だ。仮面ライダーのパワーを十二分にコントロールしている。だが……」
下卑た笑みを、目深に被った帽子に隠しながら、魔人は言う。

「それだけで、このオレと『シルバースキン』は退けられない」

                   
            ……フッ


「(消え―――


        「 流  星 ・ ブ  ラ  ボ  ー  脚  !! 」



           ド   ギ   ャ    !!!


いきなり、来た。
天空から飛来した隕石にでも衝突されたのかと思った。
圧倒的な飛び蹴りの破壊力をまともに喰らい、王蛇は砕かれた甲板の一部ごと、空母の内部へと墜落させられた。
118作者の都合により名無しです:05/02/26 11:20:32 ID:CR+AjxY60
海割キター!!
119“牙”の包囲網!!:05/02/26 20:10:24 ID:lWXt2dOM0
23部>>475

激浪のごとき衝撃の嵐が吹きすさぶ。
凄まじい真空の暴力の渦中にあって、福地はさながら大海に揉まれる木の葉のように心もとない存在だった。
(ぐあっ・・・こりゃちょっとヤバイっすねえ・・・)
大暮が繰り出してくる"牙"の間合いと破壊力は脅威だった。
"神器"を始めとする福地が持つあらゆる遠距離攻撃能力のどれと比較しても、繰り出す速度、そして飛距離で勝てるものがない。
このまま突っ立っていたのでは一方的になぶり殺しだ。
    セ イ ク -
「" 花 鳥 風 月 " !!!」

福地の背から悪魔のような漆黒の翼が生えた。
飛行神器"花鳥風月"。
神器の中で最速の機動力を誇り、しかも"電光石火"よりも制御しやすい。
ひとまずは空へ逃げて、大暮の技を破る方法を練るつもりだった。
しかし!!

           ド      ン  ッ

「ぎっッ!!(う・・上からっ・・?)」
高速で空中に急上昇した瞬間、福地は真上からの強烈な衝撃に阻まれ、あえなく地表に落下した。
「ファック!よーく見ろ。お前はすでに"檻"に捕らわれている」
無様に墜落した福地を大暮はあざ笑う。
(な・・マジっすか・・あの・・衝撃波が・・)
自分を撃墜した衝撃の正体を確かめようと頭上を見上げ、福地は絶句する。

    "牙"が・・・・

            空 を 切 り 裂 い て る・・・・っ ! !  
120“牙”の包囲網!!:05/02/26 20:45:06 ID:lWXt2dOM0
福地の飛行を阻んだ衝撃の正体は、上空に幾重にも巡らされた衝撃波の残滓。
一度切り裂かれた空気は、いまだに消えぬまま、巨大な"檻"を形作っていた。
地上では大暮の動きに遅れをとり、空中には逃げられない。
これで福地の機動力は完全に封じられた。
そして、少しでも前にスペースを空ければ、"牙"が容赦なく襲ってくる。
まさに八方塞。
しかし、福地は考える。この絶体絶命の状況の打開策を。
(・・そーいえば、この人・・・あの技出す前は必ず走ってたよーな・・・・)
そこで、福地は気づく。
(・・なるほど・・・・あの技は慣性エネルギーを利用してつくってるっすね。
 つまり長く走れば走るほどそれだけデカイ"牙"がつくられて威力も増す・・・・
 だが・・逆を言えば・・・・あの人に走らせなければ・・・・こっちが前に出て距離をつめてしまえば"牙"は出せない!!!)
つまり・・・・唯一の道は・・・・接近戦!!
自分の身体能力は大暮を上回るはず・・・・ならこれでいくしかない!!
そう決断した福地は、"電光石火"に全天界力を集中し、人間の限界を超えた速度で突進した。



121“牙”の包囲網!!:05/02/26 20:45:51 ID:lWXt2dOM0
もちろん、たやすく接近を許すはずもなく、"牙"が迎撃のために飛んでくる。
だが・・・・短い。
(弱いっ!!これなら・・凌げるっすっ!!!)
この一撃を耐えて、大暮に肉薄する・・・・そう考えた福地。
だが、大暮は・・・・自身の技の弱点に気づかないほど馬鹿ではなかった。
            ズ     ン ッ
空間そのものを揺さぶるような踏み込み。
           ビキビキビキビキビキビキビキ
軋む音がここまで聴こえてきそうなほどの歯のかみ締め。
そして、放たれる――――――もうひとつの"牙"!!

     オ ー グ レ
    OH!GREAT
     ブラッディアーマー    オーバー   スキル
    Bloody armor over skill
     ギ ガ ー ス  クロス
    Gigaers Cross ! !

(なっ・・・・二発同時に・・・・っすか!?)
先の一撃にかぶせるように放たれたもうひとつの牙。
二つの牙は、さながら巨大な死の十字架を描いた。
刹那、福地の肉体は磔刑のように十字架に激突し、文字通り大量の血と共に四散した。
122作者の都合により名無しです:05/02/26 21:35:24 ID:ZOyccLWo0
お。
大暮vs福地、ついに決着か?

それともまだここから逆転できる手は残っているのか?
123作者の都合により名無しです:05/02/26 22:28:26 ID:SCm3hY6k0
ヤマト編が動き始めた―――!!!
感動したッがんばれがんばれ
124作者の都合により名無しです:05/02/28 17:01:36 ID:aZnJkMX+O
アクセルは龍騎じゃなくて555だろ
125命懸けの喧嘩:05/02/28 18:41:01 ID:QvLhdkpu0
>>114
 平野の肩口が爆ぜ、漆黒の毛並みの狼が伊藤に踊りかかる。
「お……っとぉ!」
 大きく後退し、立て続けに発砲。
「GYAUNN!」
 銃弾が、狼に幾つもの銃創を穿つ。
 傷口が。
 自ら開いた。
 そこに並ぶのは無数の目。目。目。
 それが嘲った。
「うへぇ……」
 生理的な不快感を覚え、内藤が呻く。
 その内藤にも無数の蝙蝠が迫る。
「くっ!数が―――」
 多すぎる。
 リボルバー一丁では制しきれない。
 内藤は左腕の義手から内臓銃を取り出すと、赤コートの胸に取り付けられたパイプ上の弾層と接続。
 ばら撒かれる銃弾が、蝙蝠の迫る勢いを一瞬殺す。
 不意に。
 叩き落とされ、地で蠢く蝙蝠の傷口が避け、そこからズルリと平野の腕が伸びる。
 ジャッカルを携えて。
「―――っ!!」
 紙一重でその弾丸をかわす。戦慄が背筋を凍らせる感触を無理やり押し殺して、内藤は更に引き金を絞った。
 逃げる内藤と伊藤が。
 背中合わせに追い詰まった。
「「―――!」」
 反射的に、背後の相手に銃を向け合う二人だったが、それぞれ追われるモノに気付き、銃口を巡らせる。
「どうやら奴さん、目一杯愉しむ積もりらしいな!」
「ボクは御免こうむりたいんだけどね!」
「そうも言ってられやしねぇさ!……なぁ内藤の!」
「何!?」
「今だけは、お互い、出し惜しみは無しでいこうや!」
126命懸けの喧嘩:05/02/28 18:43:32 ID:QvLhdkpu0
 部隊の指揮官でも。
 妖魔王の尖兵でもなく。
 アワーズ時代の友人としての、喧嘩。
 たとえそこに命を掛けているとしても。伊藤も、平野もそれを全力で楽しもうとしている。
 ならば自分は?―――
 内藤が自問するうち、伊藤が懐から紙束を取り出した。同時にコートの内側で携帯式のパソコンを立ち上げる。
 ピコッ!
 場にそぐわない軽快な電子音を立てパソコンが起動する。
 発砲は続けながら、片手で器用に紙束のうちの一枚をケーブルで繋ぎ、狼の足元に放り投げた。
 ―――"お札"の効果範囲は四尺(1,2m)。それで四方を囲んでプログラムを実行すれば磁気情報を強制的にフロッピーに封印できる。
 だが一枚だけで起動させれば―――
「こういう真似もできるのさ」
 呟き、エンターキーを叩く。絶叫と共に。
「消去(デリート)!」
 カッ!―――
 お札から沸き起こった閃光が、指向性のある爆発を伴い黒狼の半身を灼いた。
 先刻の爆発よりもなお強い。その威力に内藤が呆然と呟いた。
「……なぁ、それってものっそい危険物なんじゃ」
「けど法にゃ触れねぇ代物だぜ」
「どこが!?」
「明文化されてない以上、違法も合法もねぇ」
「ひでぇ理屈だよ!」
「消去(デリート)!消去(デリート)!消去(デリート)!!」
 内藤のツッコミも何処吹く風と言わんばかりに、立て続けに叫び。
 半身を失いつつも飛び掛ってくる黒狼が、宙を舞う無数の蝙蝠が、更には足元に這いよるムカデの群れが、立て続けの爆発で吹き飛ばされていく。
「もひとつ聞いていいか!?」
「何だ?」
「何で絶叫するんだ!?」
「必殺技だからだ!!」
「……」
 微塵の躊躇もなく言い切った伊藤に、内藤はドン引きになった。
127作者の都合により名無しです:05/02/28 20:31:28 ID:6XFda8aY0
内藤ワラタ
苦労で禿げるぞ
128宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 01:49:58 ID:IMc9pim30
(21部343・472他)


   サルガッソー・・・

    それは この宇宙のどこかにある魔の空間・・・

     迷い込んだが最後 抜け出すことかなわぬ宇宙船(ふね)の墓場!

      そしてそれは そこに棲まう≪魔女≫の仕業だという・・・



島袋「姐さん、今日の野菜の収穫終わりましたよー。茄子が美味そうです」
光原「そう、おつかれさま。全員庇(ひさし)に入りなさい。ヤカンに冷えた麦茶があるわ」
小野「はぁ〜真夏の太陽の下で畑仕事なんていつぶりだっけ?真っ黒けだな俺」
万乗「縁側の風鈴が鳴ってるなあ。そろそろ涼しい風が来ますよ。さて、お茶お茶・・・っと」
島袋「あいつらはどうしてんだ?地下の研究室にこもりっぱなしだが」
光原「相変わらず、行方不明の森さんを捜すための装置いじりよ。アパートの地下は暑いでしょうにね」
万乗「ぷはー!井戸水で冷えた麦茶のラッパ呑みは最高だなあ!」
小野「ぐあ、俺の分は残せよ、コラ!!」



曽田「おおおおおおおおお!!!!(必死の形相で自転車を改造した発電機を回している)」
和郎「やった!レーダー探知機が動き始めたぞ!頑張れ曽田さん!!」
岩明『・・・半径500キロ以内に生体反応はなさそうだ。もうちょっと範囲を広げられないか』
曽田「はぁ、はぁ、へぇ、ふぅ、だ、駄目だ!ペダルが重すぎるッ」
技来「チ、消えてしまったか。この探知機は電気を食いすぎるのが難点なのだな」
和郎「せっかく動かせたのに問題山積だなあ。説明書ひとつ残さない前の住人が悪いんだっ」
岩明『ハセガワという漫画家の忘れ物だったな。矢吹を捜しにこの地をひとり飛び出した男・・・』
技来「そいつが宇宙船でここに戻ってくれば、どれだけありがたいことか・・・ガッデム!」
129宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 01:51:57 ID:IMc9pim30
島袋「―――うまい漬物の苗床になるといいな。あ、ところで姐さん、あいつは?」
光原「“彼”はまだ自室で眠っているわ。スイカの食べすぎよ」
小野「ったくどうしようもねえなぁ。まあいい、昼寝の時間だ!明日も早いからなー」
光原「皆さん、この地での楽しいライフスタイルは、あなた達にかかっているわ。しっかり頼むわね」
万乗「ああ!目指せ、平和な日常!俺たちの真の闘いはこれからだ!!」
小野「じゃあ夕飯までに起こせよ。今夜の食事当番は≪管理人≫だったか?」
島袋「ですよ。じゃあ俺達も愛しの四畳半に帰りますか!」
万乗「よーし、明日のために寝るぞーーー!!」

全員「「寝るぞーーーーーーーーーーっ!!!」」



          ****   ****   ****   ****   ****   ****


              武井 (その日、僕は不思議な夢を見た。

            深い深い海の中で愛弟子キユがつぶやいた「お休み」

                えなり君達のもとに集う仲間達)


 ――― 王子様はやがて 魔王であり眠り姫である愛する者の 心を倒し魂を救うでしょう ―――


                   プ リ ン セ ス  キ ユ

          ****   ****   ****   ****   ****   ****


    武井「 ・・・ なんて・・・  ひどい夢だ・・・・・・ 」
130宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 01:53:41 ID:IMc9pim30
真夏の昼下がり、蒸し暑い四畳半のモルタル部屋の中。
古ぼけた畳の上に無造作に敷かれた布団の上、寝汗を思いっきりかいた武井宏之が、
上半身のみ起き上がり、怖い形相で息を荒くしている。
着ていたランニングシャツが汗で身体に貼りついている。武井はため息をひとつつくと、
ふっと表情をなくして周囲を見渡す。・・・古きよき昭和の香り漂う木造の窓。
砂壁に立てかけられたちゃぶ台。旧式の扇風機。窓ガラスの向こうに見える青空と夏雲。
それらを一通り見渡した武井は首を傾げ、ぽつりと空へつぶやいた。

 「僕は・・・なんでこんな所にいるんだ? こ こ は ど こ だ ? 」


――ドタドタドタ!! ギシギシ・・・。

床張りの板が武井の乱暴な足音に悲鳴を上げる。一階への階段を下りた武井は、
アンティーク同然の黒電話が置かれた廊下を抜けて玄関へ飛び出した。
そこらのつっかけを適当に引っかけ、石畳を踏んで木製の建物の外へと転がり出る。
 「僕は確か光原の修行を終えた後どこかの亜空間に迷い込み、
 そこで幽霊になった小野や万乗と闘って―――その空間の名は確か――――」
カタカタとつっかけの音を響かせ、武井は外の敷地に出て背後を振り返る。
そこには旧態然とした木造モルタルアパート(二階建て)が一軒、ぽつりと建てられていた。
 
「・・・おかしい!確かあいつらと闘った場所は――――宇宙!!
 そうだ、≪宇宙の墓場≫だ!!その名も ≪ サ ル ガ ッ ソー ≫ !!
 しかしここは・・・ 空も土も建物もある、ここはいったい何なんだ?」

武井の質問に答えるかのように、彼の目に一枚の看板が飛び込んできた。
それは筆書きの、どうやらこのアパートの名前が書かれているようで・・・。

 「・・・・・・ さ・る・が・そう。 ――――沙流我荘?
 まさかここは、さ、ささ・・・≪サルガッ荘≫!? 何それ〜〜〜!!?」

武井は予想外の展開に、あんぐりを口を開けたまま暫く呆けてしまった。
131宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 01:55:57 ID:IMc9pim30
 「わけがわからん!とにかくここを出よう!!」
血相を変えた武井が、垣根の間にある下り階段を駆け下りる。
するとなんと、平らな場所だと思っていた土地が急に丸く湾曲した。
この地はいわゆる、ドラゴンボールに登場する直径数十メートルの小さな惑星・
界王星の如き極小サイズの星であった!
いかなる仕組みか超質量なのか、武井は空に転がり落ちることなく、
野菜畑だの宇宙ゴミの集積所だのが広がるごく狭い球体の上をぐるりと一周してしまった。
戻った場所は先ほどのサルガッ荘。この建物の敷地だけは平らに削ってあったのだ・・・。

 「・・・逃げ場はないのか?僕はどうしたらいいんだ?」
武井は悄然とうなだれてしまった。と。

 「武井さん、どうかしましたか?」 「!?」

名を呼ばれ、はっとアパートの方向を見る武井。聞きなれぬ人間の声だった。
 「だ、誰だ!!光原か!?」
 「どうしたんです?そんなに怯えて・・・私です、ここの管理人の≪TAGRO≫です」
そこにはアナログな宇宙服に≪魔女≫のマントや帽子を身につけ、
エプロンを着て大きなホウキを持った・・・貧相で無精ひげのメガネ男がいた。
武井はとりあえず近くにあったタライを投げつけておいた。


 「ひどいじゃないですか武井さん〜!私が何をしたって言うんですかぁ」
 「お前を含むこの世界の全存在を否定したくなっただけだ!大体ここはどこなんだ!!」
 「・・・あれ?そういえばやけに元気ですね。
 そうか、記憶を取り戻したんですね?よかったですね、皆さんにお伝えしなければ・・・」

貧相な男ことTAGROは、両手をポンと打ち鳴らすと、エプロンをなびかせ荘に戻ろうとする。
 「待て!みんなって誰だ?僕の他にもここにいるのか!?ええと」
 「私は漫画家のTAGROです。管理人、またはたぐろう君とでも呼んでください。
 ここは不思議な場所、宇宙を漂流するあらゆるものが、この≪サルガッソー≫に吸い込まれてきます」
 ブラックホールに近い存在なのでしょうか?そして・・・」
132宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 01:57:35 ID:IMc9pim30
「・・・私はいつからかここにいて、数少ない“生きた漂流者(ドリフター)”を回収、
 宇宙に浮かぶこの星とサルガッ荘に住まわせているのです。なぜなら・・・」
TAGROは視線を落とし、丸いメガネの奥の瞳をふっと伏せながら。
 「・・・原因不明ですがサルガッソーからは脱出が恐らく不可能で、このアパートが終の棲家になりますから・・・」


 「・・・み、認めないぞ!僕はまだ、元の世界でやらなきゃいけない事が・・・!!」
顔面蒼白となった武井が、首を何度も横に振る。それに構わず≪管理人≫は話を続ける。
 「ここは6部屋ほどあります。今は人数が多いので何名か相部屋になっています。
 四畳半に台所、押し入れには天袋もあります。バス・トイレは共用で地下に大浴場が・・・」
 「 う る さ い !! 僕は絶対帰るんだーーー!!」
大声で叫びながら、武井はサルガッ荘の中へと消えていった。
TAGROは鼻でため息をつく。さっきまでの青空に少しずつ雨雲が混じってくる。
―――宇宙墓場に流れ着いたガラクタを寄せ集めて構成された、迷い子の終焉の地・サルガッ荘。
墓場のオアシスを包む空気層と、移りゆく天候は全てTAGROの精神と知識から発生させたもの。
性別さえ気になければ・・・それはまさしく魔を操る者≪魔女≫の仕業であった。


 「ドタバタうるせえぞ武井!」「なんだよ〜?昼寝の邪魔するなよー」「死ね!」
 「げっ!お前らは小野、万乗、島袋!あんたら何この地に馴染んでるんだよ!!」
あてもなく廊下を走り回る武井にかけられる声、声、声。
なんでも宇宙で散ったはずの小野達は、この星の地下にあるバイオ施設で肉体を復活させたそうな。

 「ふふ・・・もうスイカを食べ過ぎたら駄目よ武井先生」
 「わあ!!別の部屋には光原まで!!あんた異次元超えられるなら僕を外に連れ出せよ!!」
 「あら、私たちここに一ヶ月いるけど、そんな要望初めて聞いたわよ?第一できないわ」
 「いっ・・・いっかげつ〜〜〜〜〜〜〜!!?」

どうやら武井はサルガッ荘に流れ着いてから一ヶ月間記憶喪失だったらしい。
グラッと来た武井はその拍子に近くにあった地下への階段を見つけた。
気を落としているのだろう、闇に吸い込まれるように降りていった。
そこには大浴場やトイレ、よくわからない研究室がある。中には何名か人間がいた。
133宇宙賃貸でドッキリ:05/03/02 02:09:42 ID:IMc9pim30
 「・・・俺と井上は謎のふすまでこの地に遭難し、しかし森だけどこにもいなかった。
 地球に残っていればいいが、もしこの宇宙墓場を彷徨っているとしたら・・・悲しすぎる」
 『・・・次はハセガワの残した宇宙船の修理と調査をしよう、ワザライ』
 「そうだよ!まだ諦めたら駄目だ!いつかみんなで元の世界に帰ろうよ!!」
 「ああ、岩明。井上。そのつもりだ、いつか絶対にな・・・」
 「ぜ〜〜〜は〜〜〜しばらく休ませてくれ〜〜〜!」
研究室を覗くと会話が、メカニカルな鋼鉄のドアから漏れ聞こえた。そこには何名かの男たち。
主に温泉慰労会に参加した漫画家達だと気づき、武井は安堵する。

どうやら彼らもこの一ヶ月、ずっとサルガッ荘に住んでいたようだ。
小野達とも普通に“おとなりさん”として接しているらしい。
彼ら一行は1階、光原組は2階の、それぞれ2部屋と3部屋
(光原は表面上♀なので1人部屋をもらっている)をうまく使って暮らしている。
ひとり曽田と呼ばれる知らない男がいたが、彼はなんとキャノンボール中に、
何かしらの力(※キユドライブ)でこの世界にすっ飛ばされて来たらしい。
そして別ルートでやって来た組のひとりの消息が目下不明であり、
とりあえずその人を捜すためにあらゆる手段を講じているようだ。

――――やがて武井は連中の会話から、
 ≪時の流れが現世と違う(ここの一ヶ月は元の世界の一ヶ月ではない。たぶん流れが早い)≫
 ≪矢吹を捜して異次元を彷徨う謎の男(※14-15部辺りの長谷川)が幾つか機材を遺している≫
 ≪管理人はホウキに乗り、ヘルメットなしで宇宙を飛べる。宇宙墓場からは出られないっぽい≫
 ≪この土地の植物類も漂着物。またはバイオ動植物。畑は管理人が開墾した≫
 ≪管理人は特殊なFAXで原稿を外世界に送っている。どこかに出口があるのか?宇宙船は故障中≫
など有益な情報が得たが、しかしサルガッソーを抜け出せる算段は今のところない。
光原組は特に焦ることなくサルガッ荘に馴染んでしまい話にならない。

このままではなし崩し的に、武井中心の【ドキッ!男だらけの四畳半生活物語】が始まってしまう。
 「そんなの誰が喜ぶんだ!!僕は絶対帰るんだ!!だって僕には 妻 と 子 供 が い る か ら !! 」
妙な気合を入れると、武井は脱出方法を見つけるため研究室に入ろうと―――
した直前に、記憶喪失中に食べたスイカで壊した腹が再び悪化。共用トイレに長らく篭り、
周囲に迷惑をかけるのであった。果たして彼ら≪サルガッ荘≫入居者の運命やいかに!!   ←TO BE CONTINUED
134作者の都合により名無しです:05/03/02 02:18:30 ID:cmDh4Fmi0
ていうかまだ負けてないよハドラー!




まあ、あの見開きはどんな必殺技より「必殺」だとは思うが・・・orz
135作者の都合により名無しです:05/03/02 02:22:38 ID:cmDh4Fmi0
スマソ大誤爆orz



昔結構お世話になったな>TAGRO
そうか・・・商業誌に来たのか。試しに読んでみるかね。
136作者の都合により名無しです:05/03/02 03:25:32 ID:XikgjmFo0
た、TAGROが来るとは…
いや、好きだよ、さるがっそ。つーか、脱出できるのか?
137作者の都合により名無しです:05/03/02 03:38:34 ID:+PytjvUX0
Gファンはだいぶ前に買うのをやめちまったが、
これ読んでサルガッ荘買おうかなと思った。
138極めつけの漫画家(もののふ):05/03/04 16:10:29 ID:XmnnsE+W0
>55
格闘の鬼が、難攻不落の戦闘要塞が、砂ぼこりを舞い上げて倒れた。
獣の微笑を浮かべながら、それを見下ろす修羅の実力に、観戦する岡村は驚嘆する。

「つ‥‥‥強え〜〜〜〜」

あの小さな体格で、あの怪物を地に這わせるとは。
我ながら、恐ろしい相手と喧嘩したものだと、岡村は思う。
あの精神力、あの気、本当に人ではないのかと思うほどだ。
しかし‥‥これで、あの怪物が終わるとも、また思えなかった。

にわのも、またそれは実感していた。
背筋を這う悪寒が消えない。脳裏を巡る、嫌な予感が振り払えない。
これから恐ろしい事が起こる‥‥根拠もなく、そう確信できた。

川原は構えを解かず、倒れたままの板垣をひたすら睨みつけている。

と――。

三人の視線が交錯する地点に、奇怪なオブジェが生じた。
人影の両足が天を向き、逞しい両腕が地に根を張るように巨体を支える。
板垣が、倒立の形で起き上がっていた。
両手で地を突き放し、一転して、ふわりと音もなく両足で大地に立つ。

たちまち表情を凍りつかせる、にわのと岡村。
ほとばしる殺意を笑みの形に留めたままの川原。
そして――

          “にぃたあ〜〜〜”

悪鬼が、破顔した。
139極めつけの漫画家(もののふ):05/03/04 16:12:51 ID:XmnnsE+W0
板垣の笑みは、快楽殺人者のそれに似ていた。
似ていながら、しかしそのケタが違っていた。
どういう精神構造が、こういう表情を生み出すのだろうか。
笑顔には、その人間の本質が現れるという。
板垣恵介。
修羅の前に立つ、この男もまた、鬼であるということか。

「すばらしい。おまえはやはりホンモノだ」
心底幸福そうに、板垣は言う。
「もし神というものがこの世に存在(いた)のなら、今宵、川原正敏という極めつけの漫画家(もののふ)と引き合わせてくれた幸運を心から感謝したい」
「大げさだな、アンタはいちいち」
わずかに苦笑するように、川原は言う。

「強ェェ男には匂いがある。世界中探したって、これだけの芳香には、そう出逢えるものじゃない」


         ――― オレの好きな芳香(かお)りだ ―――


強者が発するプレッシャーを、この男は“匂い”と表現するのか。
そこにまたひとつ、板垣という人物の獣性を垣間見、にわの達は戦慄する。
満面の笑みを浮かせ続ける板垣の、表情はそのままで、眼だけが異様な光を放った。
「ほんのつまみ喰いのつもりだったンだけどよ。
 こうまでおいしいとよォ。
 こいつはやめられねえ、全部喰っちまおうか」

そして、舌舐めずりするように、板垣は言った。

「待ちきれねえや “蝕” まで」
140極めつけの漫画家(もののふ):05/03/04 16:14:13 ID:XmnnsE+W0

          ―――!?!―――

にわのが、その表情をこれまでとは別種の驚愕に塗り替えた。
板垣は、今、なんといった!?

           ――“蝕”――

にわのが見た、未来に起こるであろう惨劇の名であり、
安西が謎の男から聞いたという意味不明な、しかし尋常ならざる不吉さを連想させるキーワード。
その謎の言葉を、なぜ板垣が知っているのか!?
驚愕のあまり、にわのは状況を忘れて大声を出しそうになる。だが、その刹那!

             ゴ  オ  ッ

川原の肩口で、強烈な爆発に似た衝撃が弾けた。
一瞬で間合いをゼロにした板垣の、凄まじいミドルキックが叩きつけたのだ。
「があっ‥‥」
川原が吼えた。
素足が、地を噛むように踏ん張られた。
川原の位置は、蹴りを受ける前と微動だに変わっていない。
板垣の全力の蹴りを、川原が初めて完全に防いでいた。

             ド  オ

お返しに、川原の右ミドルが、板垣の脇腹に入る。左ハイ。受け止めた板垣が左の顔面突き。捌く。同じく左の顔面突き。捌く。打。蹴。蹴。打。打。

格闘の魔人たちが繰り広げる、互角の打ち合い。
謎を置き去りにし、モンスター同士の死闘は、さらに加速していく。

141作者の都合により名無しです:05/03/04 16:17:44 ID:XmnnsE+W0
>57だった‥‥
142作者の都合により名無しです:05/03/04 17:02:50 ID:vmvuKsMh0
蝕キタワァァ!!
143作者の都合により名無しです:05/03/04 22:16:16 ID:y9FuBbNq0
まだお昼だワァァ!!>今宵
144旅景色ってダメだわ:05/03/05 12:54:15 ID:y/QuuD8B0
「はーい! どいて! どいて下さーい! 危険ですから! 危険ですからッ!!」
 ここはサッカー会場。スピーカーでがなる佐藤タカヒロ。
「特に十代前半の女性は地の果てまで逃げるくらいの意気込みで! お願いします!
危険ですから! 危険ですからァァッ!!」
 誰が危険かなんて、今さら言うまでもない。

「佐藤のお陰で、楽に会場入れたわ」
「いや、俺のお陰じゃなくて、このキch(自主規制)のお陰かと」 
 みずしなは、あまりの人の多さに脂汗を掻いている。彼は何気に太め体型だった。
「あ、ちょうど試合が再開するところみたいですね!」
 ガンサンチーム所属の高橋留美子から試合再開である。再び、会場が歓声に包まれる。
「始まった! やっぱスポーツ観戦はナマに限るのォ!」
「ビールもナマが一番旨いぞ」
「せいこうもなまにかぎるよねー」
「そうやね貞本さん」
 皆気が合った。

 役者は揃い、これからさらなる混沌が予感される。
 えなりチームがやられっ放しで終るわけもなく。
 ガンサンチームがそう容易く敗れるわけもなく。
 これから、誰が参加してくるかも予想しきれない。
 ただ、一つ言えるのは。
 この試合の結果を知り得るのは、神∴ネ外に有り得ないのだということ――
145ローラー大作戦:05/03/06 23:52:51 ID:jdCRtS1n0
>>32 >>46 18部425等)

灰色に染まる午後の東京。空港へと向かうためタクシーを拾おうと、
雪が降り始めた大通りを並んで歩く漫画家2人。猿渡と画太郎である。
 「ところで画太郎。さっき言うたYJの漫画の事やけどな、あれどないしたんや?
 1ヶ月程連載してた思うたら急に休載のお知らせ入ってそれきりやろ。7年前か?」
 「へ!?何言ってんだ!ちゃんと(コピー多用しながら)2年は描いたぜ。乱丁かい?」
 「・・・か、描いとったんか。ほうか、
 ワシはてっきり・・・あれや、なかった事にされたモンやと」
ゲフンゲフンと喉払いをしながらタクシーを目で捜す猿渡。
時を置いて隣の画太郎に向き直る――が、迷子になったか、画太郎の姿は忽然と消えていた。

 「・・・・・・お前がなかった事になってどないすんねん、ボケ」



場所は離れて・・・死者の国≪冥界≫。

未練持つ者達が引き寄せられる悲しみの扉――【怨みの門】の前。
案内人・高橋ツトムが、今も留守なのか居ても黙認なのかは不明だが、
懐かしの幽霊トリオ、小栗・桐山・かずはじめが、
放置されているのをいい事に、まったりくつろいでいる場所。
疫病神の某副将が暴れ回ったせいで少々荒れている。
冥界ガーディアンの天使軍団(武井君の漫画に出てきそうなゴツイの)は異空に帰還している。
 「昨日は散々でしたね」
 「だけど惜しかったなー、もうちょっとで生き返れたのに」
かずと桐山が愚痴りながら、焚き火で沸かしたコーヒーをすすっている。
 「うー・・・俺ちょっと立ちション」
高橋に睨み殺されそうなセリフを吐きながら、相変わらず全裸の小栗が離れた場所に消えた。
しかし5分経っても帰ってこない。かず達は顔を見合わせ苦笑いした。
 「どうしたんでしょうねえ。あ、もしかして・・・桐山先生、
 小栗先生に紙の差し入れに行って下さいませんか?お願いします」
146ローラー大作戦:05/03/06 23:53:27 ID:jdCRtS1n0
かずは一般的に男扱いだが一応女性なのだ。
ちなみに彼女と小栗は矢吹の元部下、藤崎の元同僚である。
 「紙なんてあったか?テント類は漂流して来た奴だけどよー」
バフゥと臭すぎる屁をひりながら桐山が首を傾げる。
 「他の荷を捜しましょうか。しかし臭いというかすっぱいですよ、この周辺・・・」


 (もごもご!何しやがんだ、この真っ黒な兄ちゃんは!
 俺を放せよーコンニャロー尿ぶっかけるぞー!ていうか出させろー!!)
桐山達がテントを漁っている頃、小栗は何者かに背後から口と頭蓋を押さえられていた。
先ほどまで程よい排尿場所を捜し歩き、ようやく立ち止まった直後に襲われたのだ。
バタバタと暴れる小栗の首から下が、いろんな意味で痛々しい。
だがそれは突然止まる。頭蓋を押さえていた方の腕が小栗の首に回り、
三角絞めの要領で頚動脈を絞められ気絶してしまったのだ。

ポタリと地面に落とされる、白目を剥き大口を開けた小栗。
弛んだ膀胱から何やら出てしまっているが、小栗を気絶させた男はしっかり避けている。
男はマントを翻し、彼の右肩にひっそり乗る人面鳥・
高田祐三の相棒タクヒに向かって霊波を送った。彼は現在、任務で人間界に出向いている。

 「小栗かずまたの捕獲に成功。そちらの首尾はどうだ?高田」
 『順調だ。まずは東京でひとり。いずれ矢吹艦にも戻る』
 「わかった。時間がない・・・ゴッドハンドに嗅ぎつけられる前に、
 ひとりでも多く、目ぼしい【ギャグ作家】を≪見えない学校≫に収監してくれ。
 拷問でも人体刻みでも、捕まえた後から好きに実験や調査ができるからな。
 ―――神の持つ不死と再生の力、≪炎魂≫たる漫画家を我々の手で捜すのだ」
 『わかっている』
 「他の使徒にも連絡を出した。手の開いておる者も何名かいるだろう。
 今はお前が頼りだ、高田。それでは急ぎ任務に戻ってくれ。健闘を祈る」

霊波通信は途切れ、マントの男―――妖魔王十二使徒・麻宮騎亜は、
薄雲に包まれた木造りの門をひと目仰ぐと、小栗の頭部をガシリと掴んで足早に去った。
147氷上の死闘(57/180):05/03/07 21:56:18 ID:WS7Jw2mH0
>>39 >>106
沈黙の破られる時は来たる。
刃物のような笛の音が、戦いの再会を告げた。

嚆矢を放ったのは高橋留美子。
彼女の足から放たれた特大のロングフィードが、大きく弧を描いて、えなりチーム陣地に吸い込まれていく。
これを受け取ったのは、正確にボールの落下地点を予測し、スペースに走りこんでいた樋口大輔だ。
そのまま軽快にドリブルで突き進んでいく。
しかし、そこへまたしても『策士』の罠が迫る。

ザバアア!!

芝の下から溢れでるようにわき出す『水』が、再び彼女たちの足を止めようと蠢く。

「くっ!」

狼狽える樋口の姿にほくそ笑みながら、『策士』―藤崎竜は、敵側の『天才』の動向に注意を集中する。
今までのように、相手側も水を操作し、自分との戦いに乗ってくるかと思っていたが…。

「ディオギコル・ギドルク!!!」

『天才』―雷句の戦術は、藤崎の想像の、一歩上をいった。
雷句の全身が輝き、次に渺々と発散され始めたのは、強烈な吹雪であった。
吹雪は、まるでその現象そのものがが意思を持っているかのごとく、
味方であるガンサンチームにはいかなる冷傷も冷障も及ぼさず、
生き物のように蠢く『水』を氷結させた。
サッカーフィールドは、巨大な銀盤と化した。
148氷上の死闘(58/180):05/03/07 21:57:13 ID:WS7Jw2mH0
「な…に…!?」
これには藤崎も呆気にとられた。
確かに、完全に凍り付かせてしまえば、水の驚異はなくなるだろう。
しかし、これでは敵だけでなく、味方の足場にまで影響を及ぼしてしまうではないか。
このような不安定な足場で、力を発揮できるものなど―
そこまで考えたとき、藤崎の視界の隅で、高速でフィールドを駆け抜け始める存在がちらついた。

「!!」
藤崎は『してやられた』という表情を浮かべた。
ボールをドリブルしながら、走る数倍の速度で疾走しているのは、誰あろう樋口。
そして、その両足の底からはそれぞれ、スケート靴のような刃が飛び出しており、氷の上を苦もなく滑走していく。

そういえば、樋口は月刊ジャンプでアイスホッケーの漫画を連載していたとデータにあった。
だが、特に戦闘力も、特殊な技能も持っていないとタカをくくり、放置していたのだ。
藤崎の心の隙―意表を雷句は突いたのだ。
現に、氷上を疾走する樋口を、あんどを始めとするDFは誰ひとり止めることができない。

「疾ッ!!」
すぐさま『打神鞭』を取り出し、樋口の侵攻を阻止せんと、疾風の塊を放った。
しかし、それは横合いから殴りつけるように吹き荒れる、冷気の奔流によって打ち消される。
「オオオオオオオオオオオオオオ!!!」
さらに吹雪と共に、自ら突進してきた雷句の一撃を、とっさに『打神鞭』で防ぐ。
雷句の額から伸びた氷の角に触れた瞬間、『打神鞭』は瞬時に凍り付き、砕け散った。
「お前の相手は俺じゃなかったのか?」
「むうっ…」
雷句の挑発に、藤崎は歯噛みする。

その間にも、樋口はひたすらゴールに突き進んでいく。
149氷上の死闘(59/180):05/03/07 21:58:31 ID:WS7Jw2mH0

  シュ――――z________パアッッ!!

樋口の動きは、一陣の風というしかなかった。
彼女を中心に風が集まり、吹き抜けていく。
澱みのない対流に乗って、運命のごとく、樋口はゴールへと突き進む。
そこへ、運命にさえぎろうとすべく、影が立ちふさがる。
「やあ♥」
「!?」
足場の悪い銀盤の上を、しかも高速で滑る自分に追い縋ったうえで、まるで散歩の途中に会ったかのように声をかけてきた存在があった。
いつの間にか、今井と名乗る奇術師に、樋口は完全にマークされていた。
ついさっきまで、ゴール前で金田一と対峙していたはずが、わずかな時間でここまで戻ってきたというのか。
まるで悪夢のような滑稽さだった。

「君に恨みはないんだけど、このまま点取られっぱなしじゃ役立たずと怒られちゃうんでね♦」
そう言っているうちに今井の姿が、7体に分裂した。
『暗黒妖籠陣』である。
指に刃に等しい殺傷力のトランプを挟み、樋口の全身を細切れにしようとする。
「〜〜ッッ!!」
これだけ囲まれていては、マークを振り切ることは不可能。万事休すかと思えた、そのとき。

   ドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!

新たに出現した、10人近い人影が、今井の分身めがけて同時に拳を撃ったのだ。
その拳は炎をまとっていた。
不意の攻撃に虚を突かれた今井は、顔面に拳を喰らい、分身ともども吹っ飛ばされた。
150氷上の死闘(60/180):05/03/07 21:59:30 ID:WS7Jw2mH0
ズザザ…!!
7人の今井が地に足を踏ん張り、倒れるのをこらえた。
一方、樋口を間一髪で救った影は、一つを残し、後は炎となって霧散した。
『幻炎』。
その遣い手であり、最後に残った影―安西が叫ぶ。

「邪悪竜――『刹那』!!」

安西の呼び掛けに応え、現れたのは単眼の竜・刹那。
その唯一つの眼が開かれるとき、それを見たものは全て炎の餌食となる!!

            ゴ ゴ ン !!!

今井の分身6体は、竜の性質が示す通り、瞬く間に炎上し消滅した。
最後のひとりは、直前に耐火防御を行ったらしく軽傷だが、わずかに隙を見せた。

「今だ、早く行け!」
呆気にとられている樋口を、安西が叱咤する。
我に帰った樋口は、すぐに加速し、今井の横を通過してゴールへの侵攻を再開した。

黒煙を体から噴き上げる今井。両腕を交差して、顔を中心に防御している。
それをじっと見つめたまま構える安西。
やがて、顔を覆っていた腕の向こうから、今井が不吉な微笑を浮かべた。
「仲間を助けに来たのかい?いいコだね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♠」
表情にも口調にも、全くダメージは見受けられない。無論、精神的なダメージも。
「ゴールキーパーのお嬢ちゃんも素晴らしかったけど、君もなかなかイイ♣ウン、合格だ♥」
ぞくり!!
軽い口調とは裏腹な、全身を食い荒らすかのような凄まじい殺気。
対峙した瞬間、安西は蛇の前に立ってしまった蛙の気分を味わっていた。

奇術師・今井。
それは安西にとって今まで出会ったことのない、奇妙で底の知れない”生き物”だった。
151サイヤの魂・・・!:05/03/07 22:37:54 ID:oLj1devd0
(前スレ>>464の続き)
稲田が右腕から生やした「覇者の剣」に凄まじいまでに凝縮された炎のオーラが集っていく!

鳥山(やべぇっ・・・!あいつ、矢吹艦ごとオラを消すつもりだ・・・!!)

今矢吹艦を破壊されれば、慰安会事件に迫る甚大な被害が起こることは目に見えている。
一年経たなければドラゴンボールも使用できない。
となると矢吹艦を救う方法は・・・・ただ一つ。

稲田「くらえ、我が最強の技・・・・・
            
              超  魔  爆  炎  覇!!!!!!」


稲田が「覇者の剣」に凶悪なオーラを宿して突進してくる・・・・!!

鳥山「・・・カラダもってくれよ・・・

          界  王  拳 2  0  倍  だーーーーーーっ!!!!!」
152サイヤの魂・・・!:05/03/07 22:38:29 ID:oLj1devd0
鳥山が稲田の剣を真剣白刃取りのように受け止める!!

稲田「・・むっ・・・無駄なことをっ・・・・!!」
鳥山「でやあああああああっ・・・・!!!」


               カッ・・・・・・!!!!!


凄まじすぎるオーラのせいで、鳥山と稲田の「下」に巨大なクレーターができている。

鳥山「・・へ・・へへっ・・・なんとかこらえちゃったもんね・・・・」
稲田「な、なんて奴だ・・・!超魔爆炎覇を素手で受け止めるとは・・・・!!」

鳥山(やっぱ力(リキ)が落ちてきてるな・・・。奴も体がもってねえんじゃねえか?)

鳥山の読み通りだった。妖魔王から授かった体『だけでは』長時間の竜闘気
(ドラゴニックオーラ)と魔炎気併用は無理があるのである。・・・まあ、普通の体では
1分1秒ともたない訳だが・・・・。

鳥山「今のうちになんとかしねえと、今度はオラの方がまいっちまうな・・へへ・・・」
稲田「くく・・なんとかできると思っているのか?もう一度・・今度は最大級の超魔爆炎覇を
   くらわせて終わりにしてやる!」

稲田が右腕から生やした「覇者の剣」に凄まじいまでに凝縮された炎のオーラが集っていく!
153サイヤの魂・・・!:05/03/07 22:39:32 ID:oLj1devd0
鳥山「・・・荒木・・・おめえの力、貸してもらうぞ!!」
稲田(何かするのか・・・かめはめ波か、それとも元気玉か?どちらにせよ簡単には通じんわ!)

しかし・・・・そのどちらでもなかった。

鳥山は超スピードで突っ込み、稲田の体に右ストレートをくらわせる!
稲田「な・・・!?」

続いて鳥山が、稲田を遥か上空まで蹴り上げる!!

稲田「ぐおおっ・・・やつめっ・・・いったい何を・・・・・・・・!!!」

鳥山「でやああああっ!!!!」

稲田が飛んでくる方向へ超スピードで回り込んでいた鳥山が一気に地面へ叩きつける!!

鳥山「これで最後だーーーーーーーっ!!!!!!!!」

地面へ飛んでいく稲田を追いかける鳥山。
稲田(よ・・・・よけられ・・・・ない・・・!!)


        ス ピ リ ッ ト  オ ブ  サ イ ヤ ン!!!!!!!


落ちゆく稲田に、強烈な一閃をくらわせた・・・・・!!!!
154作者の都合により名無しです:05/03/08 00:04:16 ID:CjuVXr4w0
いい感じで進んでるなあ
これは頑張らねばなるまい
155サイヤの魂・・・!:05/03/09 16:31:37 ID:Jlyu9D0g0
(>>153)
鳥山「はあ・・はあ・・・・やっぱ超サイヤ人で界王拳は無理があったか・・・」
体中が割れるように痛い。ただでさえ、そんなに無理の許される体ではないのだ。

しかし、それはオーラが暴走しつつある稲田の体も同じであった。

あえて同じ条件で闘うのも、鳥山の稲田に対するリスペクトである。

稲田「ぐ・・・ぐぐ・・・・・」
何とか立ち上がる稲田。
鳥山「へへ・・・・やっぱそう簡単に勝たせちゃくれねえか」
しかし、様子が違う。いつの間にか超魔生物ではなく、元の姿に戻っているのだ。

稲田は超魔生物の状態で、鬼酒の事を嗅ぎつけた4人を手早く片付けるつもりだった。
自分の体がまだ完全ではないことを熟知していたからだ。
しかし予期せぬ鳥山との長時間の戦いで竜闘気と魔炎気のバランスが不安定になり、
「スピリット オブ サイヤン」最後の一撃で完全にバランスが崩れたのだ。

稲田「ぐ・・体が不完全とはいえ・・自分自身の力に不覚を取るとは・・・」
鳥山「そうか・・・・そんじゃ、体が完全になればオラを倒せるのか?」
稲田は自信ありげにうなずく。
鳥山「じゃあ、おめえがフルパワーになるまでこの勝負おあずけにしねえか?」
稲田「な、何だと・・・・・!?」
156サイヤの魂・・・!:05/03/09 16:32:12 ID:Jlyu9D0g0
稲田「情けをかけるつもりか・・・・だとしたら構わん、殺せ!!」
鳥山「そんなんじゃねえって。オラもおめえに止めを刺す力はねえ。はっきり言って
   体ボロボロなんだ・・・」
稲田「ではなぜ・・・・・」

鳥山「完璧フルパワーのおめえと闘いてえからさ」

稲田(!!こ、こいつ・・・・・笑っている・・・・!!)
鳥山の顔はまた一つ『楽しみができた』ように笑みがこぼれていた。
稲田「貴様、分かっているのか?今度こそ殺されるのだぞ!!」
鳥山「かもな・・・でもそうなんねえようにオラももっと強くなるさ」

いつの間にか、辺りは静けさを取り戻していた。

鳥山「再生能力も使えなくなっちまってるみてえだから、キズもちゃんと
   治しといたほうがいいぞ」
稲田(甘い奴だ・・・だがやはり強い・・・ジャンプ5聖人には無い『強さ』、
   闘いを楽しむ余裕と自信がある・・・)

稲田は魔空間の奥へと消えていった・・・・・・。

鳥山「もっともっと強くなれ稲田・・・!その強さをオラは

         も う 一 歩 超えてみせる!!!」

そうつぶやくと鳥山は、傷を治すのと状況整理のため、車田の元へ瞬間移動した。
157作者の都合により名無しです:05/03/09 19:01:03 ID:tpizu9PJ0
決着乙!

「スピリットオブサイヤン」って何かと思ってググったらゲーム技だったのか
しかしそれが何で荒木の力を借りることになるんだ?
158作者の都合により名無しです:05/03/09 20:37:39 ID:Jlyu9D0g0
ゲームでバーダックのゲーム技見てからどうしてもえなりに出したかった
のだが、よく考えたらこの技の一連の流れ(荒木発言も含む)、アニメスペ
シャルやゲームやってない人には分かりづらかった。(他の部分で頑張っ
たが) 
 スレ汚しすみませぬ。
159作者の都合により名無しです:05/03/09 20:38:05 ID:vPQ3Ug/s0
たぶん少年誌的友情パワーを借りたんだよ
対象がオニャノコだったらそれはラブパワーなんだよ
160作者の都合により名無しです:05/03/09 21:14:13 ID:tpizu9PJ0
さらに調べてみたら理解できた。自己解決。
要するに、死んだ仲間の想いの力を借りて放つ技だったのか。しかもガード不能。

面白かったし、長らく停滞してた状況を終わらせてくれたので感謝>>158
161NEXTの竜:05/03/10 04:17:39 ID:ScyjhxKC0
エースNEXT。
3部において選手達が殺し合い、早々に消え去ったチーム。
『月影蘭』SUEZEN,『ダイ・ガード』菅野博之、『RUNNER』峰倉由比、
『オーディアンORO』浅井健吾、『ルナシャフト』山口恭史・・・・・全員死んだ。
生き残りは、大会参加前に離散していた者達である。
その者達とは、クラウドゲートでジャバウォックを調査する高屋であり、
蝶・変態と死闘を続けるMEIMUであり、あるいはメガプラスへ行った琴義であり、
エースにて百合+メカ物を描く介錯であった。
そしてもう一人・・・その身の内に、竜を潜ませる女がいた。

クラウドゲート・最高幹部執務室にて、高屋は不意に何者かの気配を感じた。
数瞬の間をおいて・・・正体を突き止める。
“それ”は、左の壁際に居た。居たというよりも、ほぼ同化している。
着ぐるみのように、顔だけを外に出している“それ”は、次に見たとき
すでに人の形に変わっていた。
外見は10代前半。背丈は低く、纏う衣服は陰陽師の導師服を連想させる。

「高屋先生、お久しぶりです」
静かな声を少女が響かせ。
「相変わらず神出鬼没なことだ」
静かな声音で高屋が返した。
「確かに久しぶりだ、巣田君」

その名は、巣田祐里子。あくまで外見だけは少女である。
162作者の都合により名無しです:05/03/10 10:08:01 ID:H2qKQMBH0
謎の新キャラキター!!

あ、すごい懐かしい名前の人だ。(GO WESTの人か)
まだ現役だったのかーちと感動
163作者の都合により名無しです:05/03/10 11:25:11 ID:fALNzPTB0
おー久しぶりに来たらサッカーが動いてる イイヨイイヨー

そして稲田vs鳥山
「矢吹艦ごとオラを消すつもり」てのがすごいな。どんだけデカイと思ってんだw
まあ鳥山は頭わる(ry
164春と修羅:05/03/10 22:28:41 ID:O/ixA6S20
>140
驚嘆すべき展開であった。
板垣と川原。
重量差があまりにも明白な両者。
軽量の70キロに満たない川原が、100キロを超える板垣に真っ向から打ち合いを挑んでいる。
ローキック。
鉤突き。
ハイキック。
鬼の体に突き刺さる。
吼える板垣。
豪打。
豪打。
豪打。
豪打。
修羅の体を打ちのめす。
下がらない。
下がらない、川原。
打ち返す。
打ち返される。
蹴る。
蹴り返す。
蹴り返される。
どちらも一歩も退かない。
すさまじい、光景であった。
目まぐるしく打撃戦を続けながら、どちらもいまだに同じ位置から動いていない。
桜花舞う公園の中央で、獣達は互いに牙を突き立てあう。
吹き荒れる拳風が、花びらを舞上げ。
飛び散る血潮が、桜色を、より朱く染めあげる。
人口的に生み出された、擬似的な春の光景。
誰に決められた運命でもなく、戦いに突入した獣たちが、その渦中で踊る。
彼らは、ひとつの修羅だった。
165春と修羅:05/03/10 22:29:21 ID:O/ixA6S20
究極と呼んでも差し支えない、格闘漫画最高レヴェルの攻防。
その頂きの遠さに驚倒し、その凄絶さに畏怖し、その美しさに戦慄する、にわのと岡村。
鬼たちの描き出す、戦闘の美にいつしか酔いしれる一方で、より川原に近しい二人の脳裏に一抹の不安がもたげる。
(本当に互角なのか。本当にあのパワーを封殺しているのか、川原!?)
他の相手ならともかく、板垣のあの人智を超えたパワーである。
本宮と比べてすら、遜色がないように思えるあのパワーを、本当に川原は封じ切っているのか。
そして、封じていたとして、そこからどうやって決着に持っていくというのか。
板垣は、ただの打撃屋でも、ましてや力一辺倒の獣でもない。
あらゆる格闘技術をその肉体に修めた、正真正銘の達人なのだ。
単純に懐に潜り込めば倒せるという相手ではない。
かと言って、離れて戦う限り、体格で勝る板垣相手に勝ち目はない。
ならば、どうするのか。
と――。
川原が、前に出た。
板垣の死風逆巻くフックをかいくぐり、懐にもぐりこんだ。右拳を突き出す。
パンチでは、ない。拳を押し当てるように突き出した。
虎砲?
いや――
これは、無空――――

   ど  ん。

刹那、重い打撃音がこだました。
強烈な衝撃が、肉体の中心部を貫通したような音。
片方が、飛ばされていた。片方が、元の位置で、拳を突き出した体勢のまま制止していた。
にわのと岡村が、その光景を目にし、思わず身を乗り出した。
舞ったのは川原。
拳を当てた方が、板垣であった。
166春と修羅:05/03/10 22:30:17 ID:O/ixA6S20
飛距離。ゆうに6メートル、いや7メートル。
激突。落下地点のベンチが、乾いた音をたてて破砕された。
強烈に背を打ち付けた川原。
視界が揺れている。
立ち上がろうとする膝が笑う。
その姿を、拳を突き出したままの体勢で、鬼が見据えている。

「なんだ、今のは!?」
川原が、虎砲を、いやおそらく無空波を放ちにいった瞬間、だが飛ばされたのは川原の方だった。
驚愕し、呆気にとられるにわの達。

「―――――寸勁だ」
返事は意外なところから来た。
びくりと振り返ると、二人の背後に、いつから居たのか、和装の男が立っていた。
上品に口ひげをたくわえ、静謐な眼差し。隙のない物腰。
一昔前の、書生のような雰囲気の男である。

「松江名せんせー」
にわのが、男の名を呼んだ。男が、にっこりと笑う。
“哲学する漫画家”松江名俊である。

「別名1インチパンチ。3センチほどの限定された空間で、通常の打撃と同等の威力を爆発させる打撃法。
 古代中国が生み出した、超ベリーショートパンチだ」
何事もなかったように解説を続行させる松江名。
にわの達は、なぜ松江名がここに居るのかなどと尋ねることもせず、解説に聞き入っている。
漫画家としてのキャリアならば、にわのや岡村の方が遥かに上であるはずだが、なぜか松江名の前ではへりくだってしまう。
そうさせるだけの雰囲気――威圧ではない何か――がこの男にはあるようだった。
167春と修羅:05/03/10 22:31:50 ID:O/ixA6S20
「川原先生の“虎砲”や“無空波”は、拳を相手の体に押し当てた状態――つまりゼロ距離から放つ打撃。
 それに対し、板垣先生の放った“寸勁”は、1インチの距離から放たれる打撃。
 つまり、その1インチの差で、川原先生は打ち負けた。いたって単純な理屈だよ。
 ただし、川原先生が万全であれば、その1インチ分を踏み込めたはずだが―――」
やはり、とにわの達は思う。
表面にこそ出さないが、川原の肉体に蓄積されたダメージは相当なものがあるようだ。
いかに陸奥圓明流が、ひとたび戦いの場に立てば体が動くように出来ているとはいえ、ダメージそのものは消せない。
これまでの板垣の攻撃は、確実に川原の骨身を削っていたのだ。
互いに骨肉を削り合わなければ隙がつけないほど、両雄の実力は拮抗しているのだ。
それにしても、とにわの達は思う。
(板垣せんせー……パワーだけじゃない……技術でも川原せんせーに少しも劣らないモン)
これまで、ほとんどその技術を見せないまま戦ってきた板垣。
遂に、そのベールが脱がされる時が来たのだった。

板垣が、おもむろにカンフーシューズを脱ぎ捨てた。
巨大な、そして刃物のように研ぎ澄まされた素足が明らかになる。
それまでの熊が後ろ足だけで立つような重厚な構えから一転、羽毛のように軽快なステップを刻み始める。
重戦車が、軽やかなステップを踏むテクニシャンに変わった。

「この意味がワカるか?」
板垣が言う。
川原は答えない。
ただ嗤うだけだ。あの笑みで。

「グローブを外したんだよ」
板垣も嗤う。
川原の笑みが、さらに深くなった。


168作者の都合により名無しです:05/03/10 22:56:13 ID:W5Drd94N0
(((゚ヮ゚;)))) ガタガタガタ
169作者の都合により名無しです:05/03/10 23:14:49 ID:xgTQ0DRX0
ついに出るか、板垣の中国拳法がッッ!?
170作者の都合により名無しです:05/03/10 23:25:16 ID:W5Drd94N0
もう土器がムネムネですよ。本当どうなっちゃうんだろ。
しかし松江名せんせーはありがたいなあ、驚き役A・Bではフォローしきれないもんなあ
171作者の都合により名無しです:05/03/11 01:03:16 ID:yfj8go1A0
>161
驚異のきぐるみ人間ここに!
つーか、雑誌クラッシャーの二人が揃えば、そりゃ潰れるよなNEXT…w
172NEXTの竜 その2:05/03/11 16:34:19 ID:kFO0R2Ed0
巣田祐里子と高屋良樹。
この雑誌破壊者2人の関係は、深いようで実は浅い。
顔を初めて合わせたのは、NEXT連載陣による巣田の歓迎会の時である。
峰倉の調達した食糧を肴に何度か言葉を交わすうち、2人は互いに同族の匂いを感じ取っていた。
キャプテンを潰し、次々と担当や関係者の負のエネルギーを食らい、
ゴッドハンドの一席にまで名を連ねるようになった高屋。
かたや、同人から出自し、APC、コミックガンマ、ゲーメストと渡り歩いてきた巣田。
図らずもこの2人が揃ってしまったとき、必然的にNEXTの運命は確定したのかもしれない。
巣田の参加より2年強――――
NEXT休刊の報せが通達される。
『鋼鉄天使くるみ実写化』という惨たらしい悪夢を連れて。
当時の連載陣の悲嘆ぶりは言わずもがな、『くるみ』を描いていた介錯など、
「とってもうれしーです」
と、取り繕って笑い、原稿を上げたあたりはまさにプロの鑑だったが、
この二人組が、胸中で魂の悲鳴をあげ、血涙を流し号泣していたのを知る者は少なくない。

しかし、慟哭吹き荒れるNEXTで、唯一狂喜したのは高屋である。
『現連載陣の一部を、少年エース及びその系列雑誌へと引き継いで連載を続行する』という、
救済措置が施されてあっため、自分には一切マイナスが無い。
移籍先が比較的丈夫なエースなのは少し不満があるが、とりたてて大したことではなかった。
そういうわけで、高屋はNEXTの慟哭を嬉々として取り込んだ。
173作者の都合により名無しです:05/03/11 16:46:09 ID:9CFv710G0
高屋黒いよ高屋
174NEXTの竜 その2:05/03/11 16:48:46 ID:kFO0R2Ed0
一方、巣田。
彼女も救済措置に預かった身ではあったが、その内容に心中は陰惨としていた。
曰く、『月刊ASUKAにおいて、前・後編の読みきりを描き最終話とせよ』・・・・・要するに打ち切りである。
(また、こんなオチか・・・)
同人畑から出自し、アニパロコミックス、コミックガンマ、ゲーメストと、
自身打ち切りをくらいながらも渡り歩くうち、いつしかクラッシャーと呼ばれ、
意思とは裏腹に凄まじいまでの業(カルマ)をその背に刻んで、さらに撃墜数を+1。
あまつさえ、打ち切りのファイナルブロー。
最後までやり遂げた作品が、殆どない。
当時の連載作は、かつて打ち切りをくらった物の続編だったために、無念は一際強く。
暗い部屋の隅で、涙すら流せなかった。
「漫画を・・・・描きたいッ・・・・・・!!」
血を吐くように呟く。
激情に、華奢な体が震えた。
175NEXTの竜 その2:05/03/11 17:21:10 ID:kFO0R2Ed0
最高執務室で、持参した弁当を食べながら巣田は思い出す。
(あの後、幸運にも私はASUKAにあらためて迎えてもらった。
 だけど、今の漫画会の現状では、どの勢力もいつ潰れたっておかしくない。
 金輪際にする。絶対に、あんな思いは・・・!!)
能面に近い表情の下で決然と誓う。今度こそ、描き切って見せる。
身の丈ほどもあった弁当は、9割が無くなっていた。

高屋は、眼前の少女を警戒していた。
何をしにきたのかを問おうとした矢先、この少女は弁当を食い始めた。
「すぐに済みますから」
さらりと言って何処からともなく取り出したその“弁当”とやらは、
彼女の身長に匹敵する巨大なイカである。
今現在、巣田の身長は変身した水野英多と同じくらいだが、それでも相当でかい。
さらに異常なのは、そのイカは一つ目なのだ。
単なる単眼ではなく、そのスケールは巣田の頭と同じくらいある。
このバケモノを、どうやってか巣田は完食した。5分もかからぬ速さで。
内心驚きながら、高屋は切り出す。
「さて、何の用・・・・・」
瞬間、巣田が待ったの合図をする。
しばらく口をもごもごと動かし・・・・・・口をあけ、舌を出す。
舌先に乗っていたのは、先刻まで食べていたイカの目玉。しかも傷一つ無い。
唖然とする高屋を尻目に目玉を吐き出し、巣田はひとりごちる。
「目玉はマズい」
(人外<バケモノ>が・・・・・・)
ドン引きになりながら、高屋は毒づいた。
176パクられる者パクる者(61/180):05/03/11 18:54:41 ID:XF9UaaE30
>>150

(……オレの炎術に耐えるほどの妖気……いや、それだけじゃない。なんだ? この、感覚は……)
一歩一歩、霜を踏みしだきながら近付いてくる今井に、安西は無意識にであろう、同じ歩幅を、後ずさる。
「―――あれ? やらないのかい?」
喰い止めるつもりだった。
しかし、こうして相対して改めて感じる、違和感。
自らの漫画家としての生まれに根ざすような、根源的、本能的脅え。
得体が知れないとか、そういう、表向きの底知れなさではない。
なんだろう。この男にだけは、絶対に勝てない――――と、いうより
この男の前に立つと、自分の芯が、毒煙にまかれるように萎え、枯れてゆき、ちっぽけで惨めだった、かつての“パクリ漫画家”が曝け出されるような―――
「?―――ああ、そうか♥ 君“安西信行”君か♦」
ピタリ、と今井は足を止めた。
「あまりに“違う”から、気がつかなかったよ♣」
古い知人の変わりように、意表をつかれたといった感じの、懐かしさ混りのクスクス笑い。
そのスキを突くことすら叶わず、いつしか恐慌を喚起しはじめていた安西は、わずかに、涙すら。
「―――面白い♠」
微妙に息を乱したまま、笑いを止め。じり……と熱気を纏いだす。
「たしか、性は炎術士だったね。―――フフ……せっかくだ、センセイがお手本を見せてあげよう♦」
馬鹿な。
―――何故。何故なんだ。
安西が師匠(センセイ)と呼べる人間は、この世にただ一人、藤田和日朗を置いて他に無い。
なのに、この今井という男が口にする“センセイ”の響きに―――何故、全く違和感を感じない!?
落ちくる螺旋の自問自答に応じはなく。その間にも高まり続ける今井の獄炎のごとき妖気が、試合会場を覆うほどに膨れ上がった。
「……“今のボク”ではコレを完全にコントロールしきれない 加減はできないよ……気の毒だけどね♥」
右腕に宿る、漆黒の蛟のカタチをした、炎。
安西は、それを、間違いなくどこかで見、聞き、知っていた。
なのに、引出しが開かない。鍵が、最後のピースが、当て嵌まらない。
177パクられる者パクる者(62/180):05/03/11 18:55:40 ID:XF9UaaE30

わ か ら な い。

「見えるかい? キミの火遊びとは一味違う“魔”を秘めた、本当の炎術が……」
足元から吹き出す、プレッシャーと、禍々しい殺意そのものを具現化したようなオーラ。
そう。誰より憧れ、誰より焦がれ、いつしかその漫画をパクるようんsyf2ふぁ―――――
脳裏の文字列に、鋭い痛みとともにジャミングと、検閲。
流れのままに刹那思い出したそれは、自覚する間もなく、起き抜けの夢のように儚に消え

「邪王 炎 殺 黒 龍 波 」

は、と我に返った時には遅かった。
今井の右掌より放たれた黒龍が、棒立ちの安西を掠め、観客席の一角に、轟音とともに牙を突き立てたのだ。
例の装置により完全防御が保証されている観客達すら、思わず、一斉に声を裏返す。
外壁が焼き尽くされ、その外の通路が消し飛び、さらにその先の部屋を貫き、次々と、奥の構造をただらせる。
やがて艦を完全に貫通し、遠く、一直線の先に青空を覗かせたところで、ようやくその炎の龍は、何処かへと解放されたようだった。
余波でもって吹き飛ばされた安西が、直径数十メートルはある、縁を焦げさせた穴を背に、どすん、と尻餅をつく。
「おや、外れちゃったね」
アイスの当たりを引けなかった時程度の残念さを滲ませる、今井。
「―――これを“また”パクるも自由♣ そうでない“経験”として、君自身の血肉に加えるも、また自由♥」
呆然と見上げる安西に、にっこりと笑いかけ
「いい漫画家になりなよ♣」
最後にそう言い残すと、興味を失ったかのように、ふい、と踵を返す。
大穴の中ほどでは、位相の違う、不可視の“もうひとつの観客席”に座る者たちが、ずらりと空中に浮いて見えた。
洞に、どこか物悲しい風が、吹く。
そしてその光景と、黒龍波のあまりの凄まじい威力を、ポカンと見やる幾人かの敵・味方。
見渡し、そうでない者―――今井たちが何をしでかそうが黙々と戦い続ける者達、の所、次の戦場に、今井は走り出す。
あっさりと置いていかれた安西の心中を占めていたのは、ただ、この一言だった。

(ダリナンダ、アンタイッタイ・・・・!?)
178魔拳・板垣恵介!!:05/03/11 22:32:16 ID:BKdVWgXB0
>167
「川原は……敗けるかもしれない」
我知らず、岡村は呻きをもらしていた。
ぎくりと表情を強張らせるにわの。
難しい顔のまま腕組みをする松江名。
三人とも、心の底では理解していた。
あの体。
あのパワー。
それだけで川原の修羅をひっぱり出し、その上でなお達人級のテクニックが同居する男。
自分達は勝てるか!?
自分達ならばどう戦う!?
糞。
答えなど出ない。
汗が出るばかりだった。

「拳法家がカンフーシューズを脱ぐという行為。
 ボクサーがグローブを外し、拳をムキ出しにする行為と似る。
 俺が素足になるということは、それほど危険ということだ」
言い終わるのとどちらが早かったか。
板垣の右足がすでに地から跳ね上がっていた。
顔面への前蹴りを、川原がわずかに首を傾げるだけの動作で躱す。
「っ!」
頭を動かせない。板垣が放った蹴り足の指が、川原の髪の毛を掴んでいた。
強引に下へと頭を引き寄せられ、浮き上がってきた膝を叩きこまれる。
鼻血が飛び散り、上向いた川原の視線が泳ぐ。
驚愕の足技だった。
179魔拳・板垣恵介!!:05/03/11 22:33:16 ID:BKdVWgXB0
「ぐはっ…」
血とともに呻きを発する川原。
この一撃が、この流れを決めた。
左ミドル。
かろうじてブロックするが、それでも殺し切れない威力が脇腹に食い込む。
さらに真下から、再び前蹴り。
紙一重で躱すやり方では術中に嵌まる。
ゆえに、ブロックしに行こうとした瞬間、意識が弾けた。
軌道上で飛燕のように旋回した背足が、こめかみを叩いたのだ。
視界が数瞬暗くなり、次の攻撃をまともに受けてしまう。
正拳。右か左か分からない。鼻が潰れた。
流血する川原の顔がさらなる苦悶に歪む。
肝臓を、爪先でモロに蹴り込まれたのだ。
ぐらりと身を折った川原の喉元へ、吸い込まれるように―――

  ざ く っ 。

喉蹴り、である。
まるで拳を形作るかのように固く握り込まれた足指が、盆の窪に突き刺さっている。
吐瀉物の尾を引きながら、川原が仰向けにダウンした。
「げはっ!」
背を打った瞬間、川原が大量の血とゲロをいっぺんに吐き出した。
呼吸器官への決定的なダメージ。呼吸困難を引き起こしている。
瞳が地獄の苦しみの中で彷徨っていた。
もがく川原は、背筋に殺気を感じる。
無我夢中で飛び退くと、一瞬前まで居た位置を板垣の両足が踏み抜いていた。
空中からのスタンプを躱したのだ。
中腰の川原に、追い撃ちの蹴りが入る。
防御ごと蹴り飛ばされた。さらに連蹴り。
連蹴り。連蹴り。連蹴り。
川原は、打たれるままとなった。
180魔拳・板垣恵介!!:05/03/11 22:34:36 ID:BKdVWgXB0
技術を解放した板垣の攻勢は、圧倒的だった。
嵐のような猛攻にさらされた川原は、人間サンドバッグと化していた。
壁際に追い込まれた川原を、防御の上から板垣の拳足がめった打ちにする。
ぴちゃぴちゃと血が飛び散り、地面を、壁を、そして板垣の顔を濡らす。
鬼の貌が、喩えようもない喜悦の表情に歪んでいた。
板垣にとって真の悦びは相手に勝つことではなく、相手を破壊することだ。
立ちふさがった者は例え無力な赤児であろうとも、徹底的に粉砕する。
そのような鬼に容赦という言葉などあるはずがない。
一撃ごとに、川原の肉体は死へと向かっている。
「ぬううっ」
起死回生とばかりに放った、川原の右の鉤突き。
板垣はそれを神速のスウェーバックで躱し、蜂の一刺しのごとき拳を突き刺す。
また意識が吹っ飛んだ。
次に川原の意識が戻ったときには、頭上に板垣の踵があった。
途中の軌道が省略されている。まるで居合いの理想形のように。
ジャブよりも速いと言われる踵落としが、脳天めがけて落ちてきた。
前に一歩踏み込み、頭上で両腕を交差させ受ける。
「がっ」
必殺の一撃を受け止めたはずの川原が、その貌を激痛に歪める。
足だ。
踵落としと見せ掛けて、板垣の軸足が川原の踏み込んだ右足の甲を踏み抜いていた。
多彩にして鋭利。
手技のような多様性を秘める板垣の足技。
まさに魔法の足としか言い様が無い。
千変万化する足指が、川原の道衣の奥襟を掴んだ。
刹那、川原の視界に映る光景が急速に回転した。
足指の力だけで、板垣が川原を投げ飛ばしたのだ。
単純なパワーだけではない。
理合、そして技術が融合した、極めて高度な投げ技であった。
仰向けになった川原の真上から、板垣の足が落とされる。
板垣の踵が、川原の頭を踏み抜こうとしているのだ。
181魔拳・板垣恵介!!:05/03/11 22:36:05 ID:BKdVWgXB0
爆発したように、地面が爆ぜた。
観戦してる驚き役達があわや悲鳴をもらしそうになる。
しかし、川原の頭は踏み抜かれてはいなかった。
寸前で躱していたのだ。
しかし――
 ぎしり、
と川原の首筋で肉が軋む音がした。
板垣の足指が、川原の道衣の襟をとり、首を締め上げているのだ。
腕の何倍もの力を持つ、足による締め技である。
力ずくで弾きかえせるものではない。
川原の顔面が血の気を失い、蒼白になっていく。
しかも、板垣の攻めは、それだけでは終わらなかった。
片方の足で川原の首を締めあげながら、もう片方の足が持ち上がった。
指先が刃物のように揃えられ、ぎらり、とあるはずもない光を放つ。
このまま足拳で顔面の急所を撃ち抜かれれば、さしもの川原とて一撃で絶命する。
だが、その寸前。
川原の手が、首を締めあげている足首をつかんだ。

(無駄だ。足で締めているものを片手ではずせるか!)
(陸奥圓明流……千年にいたる歴史に……)

「敗北の二字は な い 」

ずんっ、と川原の親指が、板垣のアキレス腱を突き破った。
陸奥圓明流「指穿」。
「がっ」
鬼が苦痛の唸りを漏らした。意識と関係なく、締めている足指から力が抜ける。
襟から放れた足指を、川原が握った。
親指と人指し指の2本だった。
 びきり、
と嫌な音がした。
ふたつの指が、根元からヘシ折られた音だった。
182驚き役:05/03/11 22:53:26 ID:hJjMO3VW0
(; ・`д・´) !? (`・д´・ (`・д´・ ;) な、なんだってー!!
今日は久々に更新多いし内容濃いしでビックリだよ
183作者の都合により名無しです:05/03/12 00:19:39 ID:tuA73TIo0
矢吹健太朗 VS 阿倍なつみ
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1101900261/l50
何やら新展開のこちらもヨロシク。


184死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 03:26:02 ID:WuILA7+s0
チャンピオンRED近辺の砂漠に二つの影が現れたのは夕暮れ時の事であった。
熱気に満ちた黄金の大地は天と地の境までも続くかのように果ては無く、それでいて見渡す地形は所々特徴的でどこか趣がある光景であった。
が、しかし、砂漠に現れた二対の瞳は広がる砂漠にではなく、ある一帯を凝固として睨んでいた。
二人は、眼鏡をかけた錆付いた空気を身に纏う鍛えこまれた肉体を持つ、初老の男と、対照的に若々しく、どこか女性のような柔さを感じさせる男であった。
初老の男は、石渡洋司。若い男は、岡田芽武。どちらも先のRED付近にての激闘の末、惜しくも敗れている。
岡田は全身を一刀両断され、石渡は十二使徒に捕えられた。
が、そこは横山配下の中でも精鋭中の精鋭十傑集。
岡田は紙一重で生き延び、肉体を再構築。
石渡は敵の隙を付いてなんとか脱出に成功していたのだ。
といって、彼ら二人満身創痍の上、気力も喪失気味なのは間違いなく、本拠地に一刻も早く帰参すべき所を、彼ら二人が、申し合わせたかのように再びこの地へ戻ってきたのは何故か?
それはやはり、己の敗北を恥じる気持ちもあるし、何より当初の任務をまだ果たしていないという義務感からであろう。
「惨憺なものだな――」
石渡が、錆びた声で呟いた。
彼らの目の前には、飛び散る鮮血で染め抜かれた砂地。
そして、その中心にて打ち捨てられた、二つの死骸。
それらは、かつて由利聡と呼ばれた男と、哲弘と呼ばれた男の変わり果てた姿だった。
そのうちの一つに、岡田が音も無く近寄った。
異様な死体だった。
仁王立ちをして巨大な木刀を大上段に構えた威風堂々たる姿のまま、由利は絶命していた。
左の目蓋の上が横一文字に切り裂かれ、そこから流れ落ちた血液が顔面中に広がっていた。
刃物による斬撃のあとであった。
その他にはどのような傷も見当たらない処からすると、そのたった一つの傷は皮膚を裂き頭蓋を断ち脳まで達しているらしい。
それだけでも凄まじい技量の成しえる業だが、だけでなく、真正面にかっ、と見開かれたその瞳は、今尚己の目前に立ち塞がる誰かを凝視しており自分が死んだことすら知りえた様子も無い。
即ち、彼と相対した何者かは、相手が防御どころか反応もできない速度で尚且つ正確無比な斬撃を持って彼を殺めたというのであろうか―?
185死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 03:27:45 ID:WuILA7+s0
「いや、もしくは、予期せぬ間合いからの一閃、か?」
呻く様なその声には隠しようも無い感嘆と畏れが入り混じっていた。
岡田はついでもう一つの死体の方に向き直った。
こちらの死体は、まさしく惨としか形容し難い凄まじいものであった。
死体の両の腕は根元から切断されており、砂の上に血を撒き散らしながら転がっている。血潮にまみれ、髪の毛をねばつかせ、恐怖によるものか、かっと眼球を剥き出した首はもはや人間のものとは思えないおぞましさを感じさせた。
両腕を切り落とし、木偶人形にした挙句、じっくりと命を絶たれたのであろうか―?
岡田は脳裏を過ぎったその光景の禍々しさに思わず身を震わせた。
何故に、一人は鮮やかに一太刀で殺傷した者が、この男のみにはこのように惨たらしい仕打ちを?
しかし、岡田はその答えを出す前に、現実に引き戻された。
「この男、何故死んだーー?」
硬質な声は真横から。どうやら岡田が思考に没入している間に、石渡のほうも近寄ってきていたらしい。
「何故、とは?」
反射的に問いかけたが、そのときにはもう自らその言葉の意味を自得していた。
そう。今の今までその酸鼻とも残酷とも言えぬ光景に目を奪われて気が付かなかったが、この死体には、あらねばならぬはずのものがない。
186死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 03:29:36 ID:WuILA7+s0
それすなわち、致命傷である。
「ふむ、失血死、とするにはちと死に顔が凄惨過ぎるしな。かといってこれといった傷も無いのも又事実。――妙なことだ」
「うむ。――ともかく、この刀痕の凄まじさ、まさしくあの男の所業に相違あるまい」
「左様。そして、彼奴の秋田書店への怒り今尚溶けぬと見える」
「南條範夫。神代の亡霊の執念、なんともおぞましきものよの――」



 ――南條範夫。その名が世に広まったのは、かの神と妖魔王の大戦においてである。
濃尾地方一帯にて隆盛を誇った虎眼流の創始者にして、濃尾無双と謳われた剣客として知られていた。
本来は、漫画界のものではないが、合戦にて名を成しすという大望を抱き、特別に請うて従軍する。
所属は、秋田書店。
 出陣した数十にも渡る戦場において、百を超える首を刈り取ったが、その間、後方からの特殊な遠距離攻撃による三度受けた掠り傷以外、傷を負うことが無かったといわれる。
 彼が自得した虎眼流には、流れ星と呼ばれる秘剣があるといわれた。
戦場において眼にしたものは無く、ただの噂であるとか、虚栄目当てのはったりであるとか囁かれていた。
 が、彼がその秘剣を天覧するという稀有の機会に恵まれ、その結果、神をして「古今比類なし」と言わしめたことにより、それが実在することと、眼にしたものがいないのは、そのものたちが全て死んでいるのだという至極当然の結論を得ることとなった。
 と、ここまでの話は神代の戦を経験した人間ならば誰もが知る話である。
その後、彼がREDの実験場の地下深くに投獄された事情については余り知られていない。
広く流布されているのは、戦況が膠着状態に陥った夏の極め付けに暑い日に、石川賢を相手に行われた天覧試合。
 そして、その後俄かに狂奔し、秋田書店の社員、所属漫画家併せて十数名を殺傷し、本来死罪と生るべき所を神に惜しまれ投獄されたという、表面上の事実のみである。
 今日という日が、彼の剣鬼に神が科した封印が解けるその日であることを知るのはごく僅かなもののみ。
そして、石渡、岡田の両名の任務は、まさにその事実を知る軍師から命じられた、封印が解けた彼の動向を探る、というものであったのだ。
187死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 03:31:06 ID:WuILA7+s0
彼らは南條の怨恨がいかなるものかは知らない。
 主君はなにやら聞くことを拒むような雰囲気であったし、第一彼ら十傑集はただ任務に忠実に従うことのみを常としておりそのような余念に関心を持たない。
 そんな彼らをして、眼前の惨劇の凄まじさは、その恨みの根源に興味を持たずにはいられないほどのものであったが……。
「ところで、山口貴由はどう動いたのであろうな」
「山口か……奴、何を思ったのかREDの奥深くに足繁く通い、南條の弟子を自任しておったそうだが、気質的にはこのような復讐を認めるとは思えぬな」
「だが、奴の死体は無い」
「であるな。ということは付き従ったか?つらつら考えてみるにあやつには己の意思を殺しても師の意思に従うような古風なマゾ気質があるようにも思えてくるが。――わからぬな」
「うむ」
 二人が思案の渦に沈んだその時、彼らの傍らに悠然とその朽ち果てた姿を晒すRED廃墟ビルの上方から、微かな音が零れた。
 その僅かな音を感知した二人の姿は既にその場からは掻き消えている。
何の遮蔽物も無い砂漠に身を置いて上空から狙われれば深手を負った二人に勝算は無い。
彼らは転がり込むように窓からRED一階に侵入した。
そのまま二手に別れ、追っ手をかく乱しようとした時、真上から朗らかな笑い声が一つ。
静かな廃墟の闇の中に響き渡った。
「おやまあ、生きておられましたか、御二方」
声のした方角、天井を彼らはみやった。
そこには、天井にまるで天地が逆転したかのように逆さに黒い影が伸びていた。
 黒い頭巾で顔を覆い、黒衣に身をつつんで――紛れも無い忍者装束のその影は、彼らと同じく十傑集所属、忍者尼子騒兵衛である。
188死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 03:34:07 ID:WuILA7+s0
「は、は、は、申し訳ない。何せ貴方達二人が敗れ、岡田さんに至っては消滅したとも聞いていたのもので、御二方の姿を眼に留めつい声がでてしまいました。ま、とにかくお二人とも健在で何よりなこと」
 尼子はすうっと反転し、地に降り立った。
そして改めて二人の姿を目前で眼にするや、彼女は眉を顰めた。
「や、や、これは健在という言葉は撤回したほうが良さそうですな。お二人とも酷い傷だ。はよう拠点に戻り体を癒しなされ」
「そうもいかぬ。任を果たさねばならん」
 眼鏡を指でずり上げながら言う石渡に、岡田も肯く。
「任、ははぁ、なるほど――」
 怪訝な顔をした尼子は、しかしすぐに彼らの心中―敗れておめおめ逃げ帰ることを恥とし、せめて任務を遂げてから帰参すべき―を察した。
「とはいえ、やはりその体では如何ともし難いでしょう。拙者も又、貴公らの敗北を聞き、南條範夫の消息を調べるべく、RED内部を探っていましたが、目ぼしい手がかりも無し。
 この上は一旦本拠に戻り乱破を放つ以外は無いと思っていた途上でありますれば――お二方も共に一度帰参しましょう」
「む……わかった」
「仕方あるまいな」
不承不承、という風に頷いた二人にほっとしつつ、彼女はちらと外に残された屍骸をみやった。
 それは、ごく何気ない動作であり強いて理由があったわけではないが、その時、一陣の風が吹くにあたり、尼子はぎょっとしたように声を上げた。
「どうした?」
釣られてそちらを見遣った二人も又、同じく驚愕に顔を歪めた。 
189作者の都合により名無しです:05/03/12 10:01:48 ID:jKOmFQeM0
南條先生の戦歴スゴすぎw
この方ももしかして軍師あたりに「謀ってくれた喃」された口か

最近、少しずつ活気が戻ってきたな
190死闘の果ては次の惨劇への序曲:05/03/12 11:04:29 ID:Bcf+0FK+0
両膝から崩れた体勢のまま絶命した哲弘の死骸に、風が吹き付けるや異変が起こったのだ。
 白い首に、遠目にもわかる黒い筋が浮かび、それが墨汁のように流れると共に、その首が揺れて、地面に転がり落ちた。
 あと――首のない胴から空に、黒い噴水が迸り、そして、雨のような音を立てて、胴が地に崩れ落ちた。

…………

「流れ星!」
誰かが叫び、皆がその意味を理解していた。
切断の後も、その傷跡すら見せず、首を胴に残すその絶技。
虎眼流最大の奥義流れ星であろうこと疑いなし。

――山口貴由、何処に去りや?
――南條範夫、何処に去りや?

由利聡……死亡。
哲弘……死亡。
岡田、石渡、尼子……ゴッドハンド基地に帰参。
山口貴由……?
南條範夫……?
191不条理vs異能:05/03/13 16:32:21 ID:FxnMJubd0
>>121
大暮が放った真空刃の十字架が、福地を直撃する。
福地の全身が真空に飲み込まれて引き裂かれ、粉々になり、体内に残された血液を残らずブチ撒けていく。
「クク・・・カーカカカカッッッッッッ!!!!俺の勝ちだッッッ!!このウンコクズがッッ!!ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラッッッッッッ!!!!!」
自分をコケにし、肉体まで破壊した相手に意趣返しできたことが快感だったのか、大暮は哄笑を爆発させた。
「カカッ、あとはてめーの体を乗っ取ってやる・・だ・・・け・・・!?」
しかし、勝利に浮かれて破顔一笑していた大暮の表情が、みるみる怪訝そうに変化していく。
果たして、その視線の先には・・・?
「なッッッ!?!?!?」
なんと、あろうことか、目の前で粉々にされたはずの福地の肉体が、まるで映像を巻き戻すかのように見る見る間に復元され、再生していくではないか。
そして、再生開始から一秒もかからずに、福地の肉体は完全な再生を完了した。
「バ・・馬鹿な・・・!!こいつ、俺以上の再生能力だとッッ!!?」
和月の“激戦”に匹敵する、まさに完全な再生能力であった。
これはいったい?
「不思議そうっすね。特別に種明かししてあげるっすよ」
自分の健在ぶりを見せ付けるかのように、福地は感情のない薄ら寒い笑みを浮かべながら言う。
「俺は、あんたのあの技を食らう直前、こう言ったっす。
 。 。。 。。 。      。。
『さーいっせいに、俺の体が再生』・・・・ってね。

つまり、俺が使ったのは《“ダジャレ”を“現実”に変える能力》!!
でも、その能力は相手が笑わないと発動しないっす。
あんたなら、勝利を確信した瞬間、馬鹿笑いする可能性が高いと思って、一か八か使ってみたっすよ。
まあ、結果は見てのとおり、賭けは俺の勝ちだったみたいっすけどね」
192不条理vs異能:05/03/13 16:33:56 ID:FxnMJubd0
大暮は苛立ちを隠せなかった。
まさか、そんな下らない発想の能力を持っているなど、誰が予想できる?
しかし、一方で「馬鹿が」とも思った。
あの状況で発動が不確定な能力に頼らざるを得ないということは、福地には再生能力のような類の特性がないことを意味している。
またこれほどの連戦を経ても傷を回復させなかったところを見ると、回復能力の類もないに違いない。
それにくらべて自分には、ホワイテッドヴァンパイアの再生能力がある。
これまでの福地のダメージも一緒に再生してしまったらしいが、長期戦になればこちらが有利。
しかも、自分の“牙の包囲網”に死角はない。そう、戦況は変わってはいないのだ。
そう考えていた大暮だったが、その思考を見透かしたように福地が笑うのを見て、表情を強張らせた。
「走り出す前に、足元見た方がいいっすよ?俺がなんのために、わざわざ長々と能力の説明をしたと思ってるっすか?」
「!!!」
ハッとして足元を見る大暮。そこには、正方形の枠の中に二つの丸い目と、四角く並んだ巨大な歯を持つという、まるで子供の落書きのような怪物の顔の地上絵があった。
なんだか分からんがヤバイ!!
とっさに判断した大暮がエアトレックの機動力で逃げようとする。
しかし、その瞬間、地上絵が真紅に染まったかと思うと、大暮の体が急激に重くなり、地面に押し付けられてしまう。
「な・・・(か・・・体が・・・重い!!?)」
    マッシュ 
「 “唯我独尊” 」

福地がつぶやいた瞬間、地上絵の怪物の口が開き、大暮を飲み込んだ!!
「ごぉあああああ!!?」
危うく全身を粉々に噛み砕かれる寸前、大暮は怪物の中から脱出した。
しかし、両足は砕かれ、肝心要のエアトレックも使い物にならなくなっていた。
「分かったっすか?再生の種明かしをしたのは時間稼ぎのためっす。これでもう、素早い動きも出来ないし、例の真空波も出せないっすね」
「セコイ真似ばっかしやがって、小賢しいウンコクズがあッッ!!!」
激昂した大暮が突き出した右腕を変化させた。
二の腕からいくつもの太い管が生え、膨大な量の空気をとりこんでいき、さらに・・・

            ド      ン  !!!!

大砲口のように変化した手のひらから、とてつもない爆熱が放たれ、福地に叩きつけられた。
193不条理vs異能:05/03/13 16:34:54 ID:FxnMJubd0
「たいていの物質がそうであるように、空気も圧力をかければかけるほど高温になり・・・・やがてプラズマ球を形成します。
 強靭な筋肉で大量の空気をわずか数立方cmにまで圧縮させて撃ち出す必殺技!!
 その温度は実に数万Kに達する・・なんちて・・・・」
自分の別人格を真似るように眼鏡までかけて解説する大暮。その行為は、先ほどの福地の戦法に対する皮肉か。
今度は万が一を考えて、大暮は笑い出しそうになる自分をなんとか抑える。
「フフ・・・」
「!!?」
今の笑い声は自分ではない。
炎上する向こう側から聞こえてきた声に、大暮はまたもや驚愕する。
炎が晴れると、そこには無傷の福地と、そして彼と大暮を結ぶ直線上に、巨大な「腕」が地面から突き出ているのが見えた。
            フード
「こいつは二ツ星神器“威風堂々”。見てのとおり、防御専用の神器っす。その程度の攻撃は通用しないっすよ」
(で、デケェ、あの盾みたいな能力!!!
 だが、いくらなんでも俺のアレを食らって全く無傷なんて、いくらなんでも有りえないはず・・・!!あいつ、今何しやがったんだ!!?)

「 “ 鉄 ” 」

考えている最中に、福地が攻撃してきた。
右腕を超巨大な大砲のような形に変化させ、そこからこれまた青い色をした巨大な砲弾を撃ち出す!!
(ちいっ、なめんな!!その程度の攻撃、かわせねえとでも・・・!!)

      グ   ニ   ャ   ァ 

「!!!!(な・・・曲がっ・・・)」
あろうことか、福地の放った砲弾は、大暮を追尾するようにその軌道を変えた。

      ド   ゴ  オ オ  !!!

「ぐああああぁ!!!」
砲弾の直撃を受けた大暮が、天空高く舞い上げられた。
194不条理vs異能:05/03/13 16:36:08 ID:FxnMJubd0
「これが俺の持つ最強の能力!!
《“理想”を“現実”に変える能力》!!
この能力と神器を併用すれば、“鉄”は“絶対命中する理想の大砲”!!!
“フード”は“絶対に破れない理想の盾”になるっすよ!!
(ただし理想的にできるのは『物体や道具が本来もつ機能』に限定されるんで、“生物”には使えないっすケド)」
「な!?なんだその能力は――――――!!?」
そんな“ぼくのかんがえたさいきょうの力”みたいな能力が、許されるのか!?
すさまじい不条理さに打ちのめされながら、大暮の体はさらにグングンと上に向かって飛び続ける。
                。 。。 。。 。。 。。 。。 。。 。。 。。 
(あれ・・・?なんだ!!?なんでこんな高い所までふっとばされたんだ俺!!?)

             ド   ン  !!!

ワイヤーで吊り上げられたように上昇した先で、大暮の体に強烈な衝撃がぶつかってきた。
大暮が空中にはりめぐらした“牙”の壁である。
「ぐあっ!!!」
自らの技を喰らい、ボロボロになった大暮が地面に墜落した。
「これが《“理想”を“現実”に変える能力》の“レベル2”っす。
                  。 。。 。。 。。 。。 。。 。。 。。 。。
俺の生んだ理想のモノには・・・・触れているモノの重力を変える超能力があるっす!!!
ちなみに、軽くする時、その理想のモノは“青色”に、重くする時は“赤色”になるっす!」
「がはっ・・・(な・・なんてこった・・・こ・・ここまでムチャクチャな能力の持ち主だったとは・・・このガキ・・・)」
「あんたに勝ち目がないことが分かったっすか?それじゃ、そろそろくたばるっす」
そして、福地がとどめの“鉄”を放つ!!
だが、そのとき!!

        ザ  ザ ・・・

大暮の肉体に、異様な変化が生じようとしていた!!
195不条理vs異能:05/03/13 16:37:11 ID:FxnMJubd0

     “地”の門   原始 そして はじめの龍

          我が肉喰らいて我目覚めし
         
       チャクラ  
第一の龍門    
             
赤   輪   土   龍


  ゴ  ガ  ガ  ン   !!!!!


大暮の拳に雷撃が宿った。
獰猛な雷を纏った拳は、まさに雷鳴のごとき爆音を轟かせ、吹っ飛んできた砲弾を木っ端微塵に砕いた。
「!!!!!」
余裕の表情だった福地の顔が、驚愕にひきつった。

     ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ

雷が荒れ狂う渦中で、別人のように変形を遂げた大暮が立っていた。
髪が、腕が、全身が漆黒に染まり、先ほどまでの数倍もの妖気が渦を巻いている。
空気中にあふれる膨大な妖気が、黒龍の姿を象っておぼろげに見えるほどだ。  
その眼差しからはこれまでの狂気とも言える暴力性が消えうせ、どこか透徹とさえ言える静けさすらただよわせている。
大暮が、八つの“龍門”のひとつを解き放ち、本性を顕したのである。
「安心したっすよ、弱い者イジメみたいでテンションあがらなかったっす」
驚いていた福地が、やがてその顔を不遜とも言える壊れた笑みに歪める。
白と黒の魔人の死闘は、最終局面に入ろうとしていた。
196作者の都合により名無しです:05/03/13 17:18:51 ID:iPBNQpdR0
やべぇーーー!
鳥山VS稲田、板垣VS川原に勝るとも劣らぬ面白さ!
俺、個人的に大暮大好きなんで超楽しみ!
しかし、このペースと盛り上がり如何したものか
197作者の都合により名無しです:05/03/13 20:14:34 ID:6Og0IR9z0
ダジャレうまいなー
長き冬もようやっと終わりが見えてきたか・・・
198作者の都合により名無しです:05/03/13 21:29:09 ID:TWV79amr0
どう切り抜けるのかあるいはこのまま決着か?と思われた状況の覆し方が神すぎる
大暮の性格まで考慮にいれた策というのがすごい

ここんところ皆レベル高いぞ
199作者の都合により名無しです:05/03/13 22:19:04 ID:/TlKk4Zn0
うえき、アニメ化するらしいしちょうどタイムリーだなぁ。
いやしかし、決着が予想つかねー。面白すぎる!
200作者の都合により名無しです:05/03/14 02:37:43 ID:cmnQNH/SO
誰か相川有を出してくれないかなーと勝手な事を書いてみる
201作者の都合により名無しです:05/03/14 02:50:53 ID:t5fos4yj0
ググってみた。聖痕のジョカって作品は聞いた事あるなあ。
まあとりあえずリレスレだし自分で書いてみるのも一興かと。
ただどうしても使いこなせないキャラはフェードアウトする運命ですが……
202作者の都合により名無しです:05/03/14 16:00:04 ID:EZF7V3E70
>>146

東京。

猿渡達がタクシーに乗ろうとしていた場所からほど近い空きビルの内部。
麻宮との通信を切った高田祐三は、さっそく次なるターゲットを捜そうと重い腰を上げた。
ふと、自分がさっそく1人捕えた相手の方に目を向ける。
そこで、高田の表情が驚きに変わった。
「なに!?奴はいったいどこへ…!!」
捕縛封印用獣魔『縛妖蜘蛛(フーヤオチチウ)』によって捕えていたはずの画太郎の姿がどこにもない。
慌てて、周囲を見回し、その姿を探ろうとしたとき、高田は頭上から襲いくる殺気!

          ガッシャーッンッッ!!

部屋の隅にでも転がっていたのか、オフィス用のイスが思いきり振り下ろされ、高田の脳天を直撃した。
「ぐぅ……」
全く想定外の強烈な一撃に、頭を押え、苦痛の呻きを漏らした。
真紅の双眸に怒気をたぎらせ、不意打ちしてきた相手を見る。
そこには、劇画調のシリアス顔で怒りをみなぎらせた、全裸のデブ男が立っていた。


     「屋上へ行こうぜ……
              久しぶりに…………
                      キレちまったよ……」


全裸のデブ――画太郎が言った。

203作者の都合により名無しです:05/03/14 16:00:39 ID:EZF7V3E70
「キレた…だと?」
このぐらいの傷は不死人の『无(ウー)』である高田にとって何でもない。
押し殺した口調だが、高田は怒ってはいなかった。
むしろ、とるに足らない相手だと思っていたのが、存外に骨がありそうだと知って少し嬉しそうですらある。

「死ぬほどきれーだ…
      てめーらみてーに一方的にふるまう奴らがよォ」

目を血走らせた表情で、画太郎が凄む。
高田が、興味深そうに鼻で笑った。


屋上。

同じビルの屋上にて、高田と画太郎は対峙した。

「ギャグ漫画家がどれだけ戦えるのか……試してやる」
「ぺっ!」

二人が同時に駆け出した。
204作者の都合により名無しです:05/03/14 16:16:25 ID:h43Vd8v40
( ∀)  °゜
まさかそこが続くとは!!
205NEXTの竜 その3:05/03/14 18:01:31 ID:hbwSK1rS0
>>175
「で、用件は何だ?」
あらためて、高屋は巣田に問う。
「簡単に言えば、ゴッドハンド側に加わりたいんですよ。横山先生に紹介して欲しいんです。
 で、高屋先生にはそこを融通してもらおうかなと」
「何故だ?」
「ASUKAがもしもの時に、助力を請いたいからですよ。
 ASUKAに何かあれば、また漫画が描けなくなりますから。
 勿論、それに見合う働きはします。」
即座に返答が返る。さらに高屋は続けた。
「私を頼った理由は?」
「岡田君も石川先生も捕まらなかったからですよ」
表情は以前、能面のまま。だが、厳とした決意が感じ取れる。
(成る程、な。確かに力はある。言葉も嘘ではないのだろう。
 実際、彼女の能力を上手く使えば、それなりの優位を手に出来る。
 だが、彼女を横山に紹介してやるのは、奴に余計な力を与えかねない。
 そうなってはいささか不味い・・・・・・)
如何するべきか。思考の末、一計を案じる。
「紹介してもいい。だが、条件がある」
「条件?」
「月並みだがね・・・・お手並み拝見、というやつだよ」
指が、机上のコンソールを走る。重厚な音とともに、巣田の背後の壁が上がった。
そこには―――――

「・・・・・ざっと、42、3ってところですか」
この状況でも、未だ表情を崩さず、巣田が呟く。
「惜しいな、44体だ。私の製造(つく)った新型の獣化兵だよ。
 こいつらを全滅させたら、口添えをしよう」
(尤も、そんな気はさらさら無いがね。
 不安の芽は消しておくのに越したことは無い。さようなら、巣田君)
胸中で、高屋は笑う。やれ、と指を鳴らした。
唸りを上げて、獣化兵の群れが、巣田に迫った。
206NEXTの竜 その3:05/03/14 18:46:57 ID:hbwSK1rS0
(まあ、生きてはいないだろうな・・・・)
巣田が群れの中に消えたのを見て、高屋は思う。
(新型は戦闘能力を強化したタイプだ。並みの戦闘力では生き残れない。
 君の着ぐるみは確かに強力だがね―――それだけで切り抜けられる程、甘くは無いよ)
異変が生じたのは、そう思った矢先だった。
「何だ?」
訝しむ高屋。同時に、蛋白質が焼ける匂いが、鼻腔に届く。
はっとして巣田のほうを見ると、獣化兵のうち数体が火達磨になっていた。
のみならず、数回、銀色の光が走った。一拍遅れて、獣化兵達が二つになる。
周囲の獣化兵が切り倒されて生じた群れの中空に、まったくの無傷で巣田はいた。
何処から出したのか、長大な大鎌をその手に携えて。
「あまり舐められるのは、心外ですね」
そう言って右手を群れにかざす。
手の平に火球が5つ生じた。その火球には、簡単な目と口が1つ1つにあった。
それは瞬時に巨大な焔へと変わり、眼前の敵を焼いていく。
「・・・炎舞陣」
声が静かに響く。獣化兵の数割が消し炭に変わった。
振るう大鎌が、向かってくる獣化兵を悉く両断していく。
(見くびっていたな・・・・まさかこれ程までに戦えるとは・・・・)
全滅まで長くは無い。高屋の予想は、数分後現実になった。
「おそ松、とど松、ちょろ松、から松、じゅうし松・・・・・ご苦労」
使い魔である5つの焔を巣田は労う。
「・・・・・赤塚が聞いたら、どんな顔をするだろうな」
憮然として言う高屋に、
「剽窃は、喜劇(コメディ)では娯楽要素ですよ」
悪びれもせず、巣田は返した。
207ガンガンいくさものがたり:05/03/15 02:16:43 ID:I3hqnXQk0
>>35 >>39 >>147

大和田の攻撃でサッカーグラウンドの地面に練りこまれ一体化してしまったX仮面。
ふと意識を取り戻すとそこは身動きの取れない土くれの中。窒息死寸前で。
 (―――い、生き埋めかッ!! 俺はここで独りくたばり、
 新たな生命の礎となるのか!そんな事は俺が許さん! リ テ イ ク だ !! 」
“ぐももももっ!! もきゅっ、もきゅっ”
空気が混じり柔らかくなった土を無理やり手で押し込み、
僅かに手足の動くスペースを作ったX仮面。ここで埋葬されるわけにはいかなかった。
 (俺が死ぬ時は、俺自身が決める!よし、土を掘って地表に戻るぞ!!)
X仮面は酸素が尽きる前に勝負に出た。強引に土を割り込み、モグラのように掘り上がった。


その頃ガンガン控え室では、闘いのニオイに釣られふらりと何処からか現れた、
≪女蛮≫一本木蛮が、開いた窓の外で繰り広げられるサッカーの試合を見つめていた。
 「いいねェ〜俺ぁスポーツは好きだぜ?滾るものがあるからな。
 しかし・・・残念だぜ、マサの奴はやっぱりいねえか。古い連中もほとんどいねえけど。
 カムイなら行方を知ってるかもな。あいつ、また無茶してねえといいけど・・・よ」
蛮の見ている中、突如グラウンドに吹雪が走り、選手の足元に氷が張る。
おおよそサッカーらしくない衝撃の展開だったが、
記憶を辿り始めた今の彼女の心には何も響かなかった。

 (俺の古いダチ、そして相棒。あいつと一緒なら俺はどこまでも、
 血生臭い戦場を駆け抜ける事ができた。マサ―――将臣。
 神崎将臣。もう何年も留守にしている間にまた、どっかふらりと行っちまったかね・・・)
彼女は謎多き≪十傑集≫神崎の、少年キャプテン崩壊事件以前―――
ゼノニクス装甲移植手術を施す前の【人間時代】を知る、数少ないひとりであった・・・。


そしてX仮面は地表20センチ地点まで登ったが、氷の層に行く手を阻まれてしまった。
 (うーっ!息がもう限界だぁぁ!!ええいこの氷はなんだ!!俺の拳で砕いてやるッ!!)
しかし狭苦しい土の中、拳は思うように振るえず一向に地表に戻れなかった。X仮面、ピンチ!!
208作者の都合により名無しです:05/03/15 03:38:40 ID:IwSbGEzC0
ググったが、神崎原作漫画描いたことあんのね蛮。
原作までやってたんだねえあの人。
209作者の都合により名無しです:05/03/15 09:31:56 ID:Di5p5uai0
一緒にラジオもやっちゃう仲らしひ
想像したらちとワラタ
210俺達に明日はない:05/03/16 03:18:07 ID:0VP8B5K90
>181
(こいつ…指をッッ)
板垣の足技、その根幹を為す足指が。
修羅の業(わざ)によって、ヘシ折られた。
太い激痛に貫かれた足を離し、飛び退こうとする板垣。
仰向けの体勢から跳ねるように起き上がった川原が、追うような足刀を繰り出す。
(迅い…ッ)
喉笛への蹴り。板垣は、間一髪でそれを躱す。
くんっ。
千変万化する蹴技は、板垣の専売特許ではない。
蹴り上がった足が引き戻されて、板垣の延髄に叩きこまれた。
「ぐはっ」
板垣が呻いた瞬間、さらに下方からの衝撃。
両足で頭部を挟み込むように、もう一方の足が跳ね上がり、板垣の顔面を直撃したのだ。
川原の攻撃は、そこで終わらない。
十分に板垣の脳を震盪させしめた両足に、さらに万力が込められた。
両足を起点に板垣にぶら下がる体勢になった川原が、大きく身を捻る。
板垣の首が極まり、巨体が宙に浮いた。

  ず し い 。

重々しい地響きとともに、板垣が頭から地に叩きつけられた。
ばしゃっ、と板垣の口から鮮血がほとばしる。
打・極・投が完全一体となった、恐るべき殺人技であった。
今までのダウンに比べ、圧倒的にダメージが深い。
痙攣する板垣を、立ち上がった川原が見下ろす。
ぽつり、と業の名を口にした。

「陸奥圓明流……『斗浪』」
211俺達に明日はない:05/03/16 03:19:21 ID:0VP8B5K90
「ぐうう…」
獣のように唸りながら、板垣が地面に手をつき、立ち上がろうとする。
にわの達は絶句する。今の業……並の者なら首を折られて絶命したであろう殺人業。
それを喰らって、この鬼はなおも立ち上がろうとしているのだ。
川原が、疾った。
板垣の上体が、血を吐き上げて吹っ飛ぶ。
川原のサッカーボールキックが、強烈に板垣の顔面を叩いたのだ。
中腰のままぐらつく板垣の顔面に、さらに川原のローキックが飛ぶ。
蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。
ひたすらにローキックを頭部にブチ込んでいく。
今度は、板垣がサンドバックになる番だった。
さらに、全体重を乗せた右拳。
剥き出しになった喉に、左拳を突き刺す。
血とゲロを吐く板垣。
その口が強制的にかみ合わされる。膝を突き上げた。
今度の衝撃は、下だった。
右膝裏に、川原のローキックが噛みつく。
続いて、左膝裏にもロー。
板垣の両足がそろえられ、体が無防備に正面を向く。
「ひゅっ」
鋭い呼気が、川原の口から放たれ――。
左――右足。
迅い。
蹴り足がほぼ同時に見える迅さ。
双龍脚。
板垣の動きが止まり、巨体が前のめりになっていく。

    ぱ   ん 。

半秒後、何かが爆ぜる音が公園に響き渡った。
212俺達に明日はない:05/03/16 03:20:20 ID:0VP8B5K90
何が起きたのか。
にわの達にも、川原にすらワカラなかったに違いない。
板垣が倒れる寸前、すがりつくように川原の蹴り足を両手で包んだ瞬間――破裂音とともに川原の右足が鮮血を噴き出したのだ。
川原の顔が激痛に歪み、膝をつく。同時に、板垣もまた地面に突っ伏した。
わずかに遅れて、松江名の解説が挟まる。

「“握撃”――――規格外の握力で、掴んだ部位を力任せに挟み潰す。
 ただ握っただけでそれが致命的な必殺技になる――それが板垣恵介という男だ」
「挟み潰す……だと……ハハ…」
もはや言葉もない。
川原の右足は、ふくらはぎの部分が内側から爆ぜたように裂け、剥き出しの筋繊維が見えている。
溢れ出す鮮血が、破れた道衣のズボンをドス黒く染めている。
「あ…ああ……」
にわのの声が震えがる。
取りかえしのつかないダメージを負ってしまった。
あれでは、右足はもう死んだも同然だ。
蹴り技を主戦力とする圓明流にとって、致命とも言える損傷。
悪い予感が現実のものになった。
なのに――だというのに――当の川原――

微笑った。
修羅の笑みではない、心の底からの無邪気な笑み。
その微笑みに、板垣はわずかに面喰らったような顔になる。
「すごいね……やっぱり。板垣さん、すごいよ……あんた。へへ……」
「――――」
「熱いな……熱いよ」

楽しげに呟く川原の全身から、汲めども尽きない闘志が流れ出す。
213俺達に明日はない:05/03/16 03:21:45 ID:0VP8B5K90
川原が、道衣の上着を脱ぎ捨てた。
ほどいた帯を、破裂した右足に巻き付け、きつく縛る。
立ち上がり、ゆっくりと構えた。
その姿を見て、板垣もまた微笑った。
こちらも、獰猛な鬼の表情ではない。
目の前の相手を、尊敬すべき相手と認めた、武人の笑み。侠客としての笑み。
ふらつきながら、立ち上がった。
二人が見つめ合う。
「あんたはやっぱり……俺が今まで出会った敵の中で、最強の男だ」
穏やかな微笑を浮かべたまま。
「つまり……板垣さん、あんたとは……」
二人は抱擁でも交わすかのように、静かに歩み寄る。

「全てをかけて戦わなきゃ……いけない……ってことさ」

打撃音。
というよりも、肉がひしゃげる音。
互いの拳が、互いの顔面に深々とめりこんでいる。
二人の体が同時にはじけ――またぶつかりあう。
“握撃”で潰されたはずの右足が、板垣のこめかみを叩く。
折られたはずの指が、川原の水月に突き刺さる。
夢のような光景だった。
体格のまるで違う両者が、防御もなしに正面から殴り合っている。
にもかかわらず、お互いに一歩も退いていない。
それはまさしく、地上最強の殴り合いであった。
214俺達に明日はない:05/03/16 03:22:30 ID:0VP8B5K90
「ど、どーゆーつもりだ、あの二人!?」
岡村が、大声で叫んだ。
さっきまで紙一重で鎬を削りあう、地上最高レヴェルの攻防を繰り広げていた両者が。
今ではまるで、子供の喧嘩のように、ノーガードで殴り合っている。
にもかかわらず、川原は一歩も後れをとっていない。
もちろん、板垣もである。
二人とも、まるで一歩でも下がったら、自分の負けだとでも言うように。
血がしぶき、肉が潰れ、骨が砕ける音だけが、混声合唱のように響きわたる。
凄惨極まりない死闘。
しかし。
やはり、二人は――微笑っていた。
一撃を交換しあうたびに、お互いの撃が肉体に食い込むたびに、視線が交錯しあうたびに、二人は微笑う。
二人は、すでに拳で語り合う領域に達していた。

“楽しいよなあ”

己が力を、技を、誇りを、魂を、全存在をかけて二人は語り合う。
言葉で語れぬ幾千、幾万、幾億の思いを、たった一撃に乗せて。
目の前の男に勝てれば、命などいらない。明日など必要ない。
失うモノを持たぬ者同士の死闘とは、かくも凄まじいものか。
全てを置き去りにする速度で、二人は加速していく。

そして――

遂に最後の門が開く。
板垣の上半身が盛り上がっていく。
川原の強さが、死闘の悦びが、板垣の鬼を目覚めさせていく。
シャツが引き裂かれていき、背に異形が浮かびあがる。


       鬼  の  形  相    出   現   
215作者の都合により名無しです:05/03/16 03:46:54 ID:QhCQaCKs0
それでも俺は王子の勝利を信じてる!信じてるんだ! 泣いてなんかないやい!。・゚・(ノД`)・゚・。
216作者の都合により名無しです:05/03/16 03:55:59 ID:lLDn4rqF0
ぐわぁなんじゃこのクオリティの高さ!
決着がすごいみたいけど絶対みたくねーよ!勘弁しろよー、こんなの読まされたら
続きが気になって落ち着けないって!!!!
217作者の都合により名無しです:05/03/16 09:58:00 ID:3OWvvZzB0
モルワァァァァァァァ(叫
朝から読むんじゃなかった!まだやりよるかこの2人!!
泣くぞ!つられて副将もめそめそ泣くぞコンチクショーツヅキキニナルヨォー
218解王星の解王さま:05/03/16 10:41:47 ID:APAnpGRk0
>>156
鳥山「ん・・・・?ここはいってえどこだ?」
車田の気をさぐって瞬間移動したはずだが、たどり着いた所はとても
小さな星だった。
鳥山「地球じゃねぇな・・・本当にこんな所に車田がいるのか?」

???「残念じゃがここに車田はおらんぞ」

鳥山「だっ誰だ!?」
声はすれども姿は見えず。そして声は続く。

???「ワシが車田の気を使っておぬしをここ『解王星』へ呼んだのだ」
鳥山「いっ!?か、解王星!?おめえ、いってえ何者だ!!」

???「久しぶりじゃな、鳥山・・・・」

そう言われて振り向くと、そこにいたのは・・・・

鳥山「ああ・・・!!と、鳥嶋さんじゃねえか!!」

鳥山「な、何で鳥嶋さんがこんな所に・・・」
鳥山には何がなんだか分からない。

鳥嶋の話によると、ジャンプ5聖人に殺された後、あの世でいくつかの
業績が認められ、肉体を与えられて新たに「マシリト解王」として
「解王星」で蘇ったのだと言う。
219解王星の解王さま:05/03/16 10:42:22 ID:APAnpGRk0
解王「おぬしをココに呼んだのは・・・おっと、その前におぬしに
   今地球に何が起きているかを話さんとな。」

ここで鳥山は慰労会で起きた数々の事件、闘いのいきさつを聞いたのだが、
詳しく書くと5スレは超えるのでここでは割愛させていただく。

鳥山「そっか、そんなことが・・・。オラ、アラレになってた時ははっきし
   覚えてねえんだよな・・・」
解王「そこで本題じゃがの。おぬし、自分のパワーに体がついていかない
   から、本気で闘うことができない・・・・そうじゃろ?」
鳥山「あ、ああ・・・。すげえなとり・・じゃ無くて解王さま」
解王「なんといってもワシは『解王』と呼ばれてるくらいだからな」

呼んだ覚えは無いが。

解王「そこでだ、肉体も全盛期に戻ったらこれからの闘いがグっと楽に
   なるとは思わんかの?」
鳥山「それはわかんねえけど・・・解王さま、そんなことできんのか?」

マシリト解王は奥からなにか怪しげな薬を出してきた。

解王「ふふふ・・・『若がえり薬』じゃ!マシリトに不可能は無い!」
鳥山(・・・そういえば「Dr,スランプ」でそういうの作ったな・・・)
作ったのはセンベエさんだが。
鳥山「とりあえずコレを飲めば全盛期の体に戻れるのか?」
解王「うむ・・・計算上ではな」

自分にはやるべきことがたくさんある。最後の言葉が少し気になったが、
まあなんとか戻れるのだろう。そう信じたい。
鳥山は一気に薬を飲んだ!
220解王星の解王さま:05/03/16 10:42:55 ID:APAnpGRk0
鳥山「・・・・・・・・ん?」
目の前が明るくなる。どうやら気絶していたらしい。
鳥山「解王さま、オラ全盛期の体に戻ったのか?」
             
解王「ん・・・・まあ・・・戻ったには戻ったが・・・・」

鳥山「あれ?解王さま、急に大きくなってねえか?それになんか体が変な
   感じがすんだけどな・・・ん?」

自分の尻から長いものがのびていることに気がつく。

鳥山「シ・・・・シッポ・・・・?」

マシリト解王が大きめな鏡を持ち出してくる。そこには髪がぼうぼうにはねた
子供が立っていた。

解王「く、薬が強すぎちゃったみたい・・・・」

鳥山「オ・・オラ・・全盛期じゃなくて子供に戻っちまったのか・・・・?」

鳥山はやっと気がついた。
「これ、『Dr,スランプ』のオチだ」と・・・・。
221作者の都合により名無しです:05/03/16 11:04:26 ID:3OWvvZzB0
解王が増えたー!!
この後トリさは美女に手を出しかけた時に薬が切れるのだな(懐
222解王星の解王さま:05/03/16 12:12:05 ID:APAnpGRk0
鳥山「か、解王さま・・・これ、いつ元に戻るんだ?」
解王「わからん」
鳥山「いっ!?わ、わかんねえってどういうことだよ!?」
解王「だって元に戻るの前提に作ってないんだもん・・・」

一応舞空術は使える。力は下がっているが劇的という程ではない。
だが、肝心の超サイヤ人に変身することができない。

鳥山「なあ、解王さま・・これ、かえって弱くなってねえか?」
解王「そうかもしれんが・・・体のダメージはすっかり治った
   ようじゃな」
鳥山「あり?そういえば・・・・」

体が軽い。本気で動いても全然痛くないのだ。

解王「これで元に戻ったら今度こそフルパワーに戻ること
   間違いなしじゃ!」
鳥山「でも、元に戻れるかわかんねえんだろ?」
解王「・・・まあ、なんとかなるじゃろ・・・」
223解王星の解王さま:05/03/16 12:12:37 ID:APAnpGRk0
鳥山「ま、ともかくサンキュー解王さま!また会えて嬉しかったぞ!」

解王「がんばれ・・地球の平和、運命はおぬしら正義漫画家にかかっ
   ておる!・・・それとジャンプ5聖人に会ったら伝えてくれ。
   『おぬしらを封じ込めたワシを許してくれ』とな」

鳥山「けどどうやって帰ったらいいんだ?瞬間移動は使えねえぞ?」

解王「それでは・・・・あの『ヘビの道』を通ってあの世へ戻れ!そこ
   から現世へ帰る手筈を整える!」

よく見てみると上空にヘビのような長い道が伸びている。

鳥山「・・・わかった!」

かくして少年(?)漫画家鳥山明の「ヘビの道」の旅が始まった。
224住めば都のサルガッ荘:05/03/16 13:36:10 ID:3OWvvZzB0
>>133

ここは宇宙の墓場サルガッソー・・・の、
どこかにある小さな星に建つ日本式古アパート≪サルガッ荘≫。
凝縮する空間が加速する時を生むのかどうかは知らないが、
気づけば荘を囲む特殊フィールド内ではそろそろ日が沈もうとしていた。
空を覆う雨雲も切れ、今は楽しいお夕飯の時間であった。

TAG「皆さんお疲れさまです〜。
 今日は武井さんの記憶が戻った記念で、豪華にお刺身をつけましたよー。
 たくさんあるのでいっぱい食べてくださいね〜」
青白い管理人TAGROの呑気な声がサルガッ荘にこだまする。
普段は各人が部屋のガスコンロで食事を作ったりしているが、
白米などの主食類や基本のおかず類は、TAGROが大釜や大鍋で用意してくれる。
煮物は大鍋で大量に煮た方が美味しいのだ。
今夜は長谷川が遺した培養プラントで釣った魚がおかずで、立派なごちそう。
マイお盆を抱えた漫画家達がぞろぞろと、狭い畳部屋から溢れ出た。

武井「くそー、僕のあずかり知らないところで、
 一体どんな四畳半ライフストーリーが展開されていたんだろうか、
 気になって仕方がないけど、聞くのはちょいと怖いな・・・」
神妙な顔つきで、配られたお膳を盆に載せる武井。

光原「ふふ、それは読者の想像にお任せするのが得策ね」
武井「誰だよ読者って・・・」
狭い廊下から食堂に流れる住人たち。
地下の研究室から戻った技来たちも加わり、
渋滞が起き始めている。そのため武井はそれ以上の質問を、
光原に投げかける事はできなかった。
225住めば都のサルガッ荘:05/03/16 13:37:15 ID:3OWvvZzB0
武井「想像に任せろ、と言われても僕が納得できんしなあ。
 あんたらこの一ヶ月何やってたんだ?あー僕の行動は言わんでいいから」

2階の一室にて夕食を食べるは、いわゆる光原組。
かつてひとつの魂のもとに集った伝説のロリ趣味トリオ≪三炉里魂≫、
武井・万乗・小野と、巻き添えくった島袋。
そして武井を導く謎の美女(中身♂)光原。5人は仲良くちゃぶ台を囲む。

小野「何してたかだと?えーと畑耕したり魚育てたり・・・」
万乗「おとなりさん(技来組)の機器類修理を手伝ったり〜」
島袋「たまに漂着する外界の生活用品を回収したり補修したり」
光原「とても充実した一ヶ月だったわ。
 武井先生は憶えていないのね、とても寂しい事だわ」
武井「・・・こんな何もない僻地で無駄な思い出作りして、
 故郷にも帰れず、ひっそり寿命を迎える人生なんか・・・
 僕は絶対認めないからな」

ムスッとした顔で刺身にしょうゆをかける武井。
こうした食材は全て、サルガッ荘での自家製である。
『何もない』場所などない。ひとりむくれる武井には気づかない事。

小野「ケッ、記憶が戻った途端にこれかよ。
 そんな協調性のない事だから三魂合体もうまくいかねえんだよなー。
 お前、こんな小さな共同体で村八分食らってみ?
 しまいにゃ精神的にヤられて自分で腹かっさばくぜボケぇー」
光原「まあまあ・・・あ、そういえば武井先生。
 壊したおなかは大丈夫?よかったら、
 管理人さんに胃薬もらうといいわ。手作りの薬草丸だから苦いけど・・・」
武井「ふん。村八分でも歩いて5分でも勝手にしろよ」
226住めば都のサルガッ荘:05/03/16 13:38:40 ID:3OWvvZzB0
わけのわからん事を言い、以降無口になる武井。
奇妙な空気が流れる食卓に耐えかねたか、ことさら明るく万乗が喋り出す。

万乗「あーそうそう!おとなりの話なんだけどね。
 井上くんの右手にくっついてる岩明さん、あの人凄い本好きでねえ。
 地下にあった山積みの蔵書、読める奴は全部読破しちゃったんだってさ!」
ほー、すげーな、等の声が四畳半間に広がる。
万乗「そしたら岩明さん、ぼさっとしてて井上くんの洋服、
 全部機械油まみれにしちゃったって。んで彼のサイズに合う予備の服が、
 女性用しかなかったから困ってるんだってさ。今は何を着てるんだろ?」
なんでーそりゃーと小野たちがゲラゲラ笑う。
だが・・・シカトしていたはずの武井に異様な眼光が疾った。

武井(井上和郎・・・サンデー屈指のショタ野郎・・・。
 あいつに一度でいいから・・・【女装】をさせたいと、
 慰労会の時からこっそり目をつけていた・・・。
 今の状況からするに彼は今頃─── ・・・ ふ、ふふふ・・・ )
誰にも気づかれぬよう、小さく肩を震わせ、
どす黒ーい笑みを浮かべる武井。
さすが高貴な魂の頂点の一角、かなり危険な男であった。

だが危険な男は他にもいた。武井以上にヤバイそいつは、
今しがた和郎の災難を笑い飛ばしたはずの小野。
小野(井上和郎・・・あいつには素質がある。
 今はダイヤの原石だ。奴をひとめ見たその時から、
 あいつの精神を清楚で可愛らしくかつ淫靡な色に染め上げ、
『ちんこついてるおにゃのこ』の域まで届かせてやると俺は誓った!
 そして今願ってもない好機が訪れた!!三つ指敷いて待っていろ和郎ォォ!!)
227住めば都のサルガッ荘:05/03/16 13:43:15 ID:3OWvvZzB0
小野は心の中でひっそり、暗黒の泥濘の如き粘ついた笑みを浮かべた。
実にデンジャラスな人間関係。そこにはさらに悪魔が潜んでいた。

万乗(もし井上くんが素っ裸でごはんを食べていたらどうしようかな〜。
 ああ隣の住人になりたかったなあ、なんでこっちの部屋なんだろう。
 そうしたらエプロンだけでも着てもらうのにな。
 可愛い男の子はそのままが一番だけれど、何を着ても似合うんだろうな〜。
 オプションで女装なんてのは邪道だけどね。和郎キュンの活け造りハァハァ
 武井くんもさっきまで純朴で可愛かったなー記憶戻らなければよかったのにハァハァ
 やっぱり性の未分化は大切だよな〜隣に遊びに行きたいな〜ハァハァハァ)

万乗は第二次性徴前の女の子が好きだが、
実はそれ以上に男の子が好きだったのだ!!
本人はあまり自覚がないようだが、天然の方が恐ろしいというもの。
小さなちゃぶ台の周囲は、不可視ながら一気に不気味な戦場と化した!
すると直後に隣の部屋の壁から叫び声が!!

和郎『あ、あっつーい!味噌汁こぼしたぁー!』
岩明『お互い不注意だったなカズロウ。しかしどうする、
 このTシャツと短パンまで汚しては、それこそ裸かスカート類で過ごすしかないぞ』

小野「!!」 万乗「!!!」 武井「・・・ッ!!!!」
突如3人が畳から立ち上がり、互いに何かを悟り視線を鋭く交差させた。

小野「・・・和郎はこの俺が育成する。てめえらはお呼びじゃねえ」

万乗「育成だと?いきがるんじゃない。ボクの和キュンは汚させないぞ!」

武井「あんたら邪魔する気か!?彼にフリルのドレスを着させる、 そ こ を 退 け !!」
228住めば都のサルガッ荘:05/03/16 13:44:43 ID:3OWvvZzB0
小野「その段階はまだ早ぇ!」 
万乗「黙れ!こうなりゃ決闘だ!」 
武井「いいだろう表へ出ろ!!」

炉里のタマシイ百まで。3人は各自得物を掴むと、
荘をぐるりと囲む小さな庭へ飛び出した。
光原が大根の味噌汁を飲み終えると同時、
窓の外から激しい破壊音と光芒が入り込んだ。

島袋「いいんですかぁアネゴ?」
光原「自分の心に正直なのは悪い事じゃないわ。
 刺身は痛む前に食べておいてあげましょう」

爆撃のようなうねりの中、サルガッ荘の夜は更けてゆく。
229作者の都合により名無しです:05/03/16 13:45:46 ID:lLDn4rqF0
こっちも色んな意味でクオリティたけーw
蝶ぴーんち井上和郎ww
230作者の都合により名無しです:05/03/16 13:53:21 ID:lLDn4rqF0
書き込んだら続きがあってびびった…割り込まないですんでよかったよ。
231作者の都合により名無しです:05/03/16 14:03:35 ID:APAnpGRk0
>>230スマソ。サルガッ荘の邪魔しなくてよかった・・・
232作者の都合により名無しです:05/03/16 14:13:43 ID:3OWvvZzB0
32行から豪快に溢れてしまって調整が遅れっちまいましたい(ゴメンゴ
233作者の都合により名無しです:05/03/16 14:22:00 ID:3OWvvZzB0
おっとしまった訂正>>227

>すると直後に隣の部屋の壁から叫び声が!! ×
>すると直後に真下の部屋から叫び声が!!  ○ ですゴメン
234作者の都合により名無しです:05/03/16 14:38:43 ID:lLDn4rqF0
つーと>>277 5行目もこーなるんね?

× >ああ隣の住人になりたかったなあ、なんでこっちの部屋なんだろう。
○ >ああ下の住人になりたかったなあ、なんでこっちの部屋なんだろう。
235作者の都合により名無しです:05/03/16 14:44:08 ID:3OWvvZzB0
そうでございます(土下座)
とりあえず腹かっさばいてしまいましょうゲフ
236作者の都合により名無しです:05/03/16 22:12:46 ID:cL3JEmXf0
今日は妙に濃いのばっかだなあw
マシリト解王も時空超えて解説すんの?
237雑誌破壊者、2人:05/03/17 05:47:16 ID:dDLtQviG0
>>206
消し炭、或いは肉塊と化した獣化兵44体の屍骸と焼臭に満たされ、
最高執務室は酸鼻を究める。
「では、宜しくお願いします」
依然無表情のまま、巣田が口を開く。対して高屋、
「ああ、解った。しかし見事なものだ。ここまで早いとは思わなかった」
感慨など感じられない口調で言い、その手が再びコンソールを滑る。
訝しむ巣田。高屋の声は尚続き、
「そうだ巣田君、君の」
会話の途中で消滅。
眼前に拳を、コンソール上に指の残影を視認。
殖装ユニットに身を包んだ高屋の、迅雷の如き拳が瞬間移動さながらに迫っている。
反射はギリギリで追いつき、大鎌の柄で受け止め、しかし軽量な体は衝撃で2メートル半あとずさる。
体勢を直し面を上げると、どういうわけか相手の方が硬直していた。
だが、不審に思う暇は無い。振るう大鎌は真っ直ぐに首を狙う。
寸前で我に返った高屋は身を捻り、二の腕を薄く裂かせてこれを凌ぐ。
同時に部屋のあちこちから響く重低音。
隔壁が降下し、クラウドゲート最上階が隔離された事など、
思考する寸毫の隙も無いままに高屋が再度接近、
右拳を繰り出し、今度は巣田も迎撃する。
238雑誌破壊者、2人:05/03/17 05:48:53 ID:dDLtQviG0
1撃目、大鎌と強殖装甲が摩擦し火花を散らす。
2撃目、初撃と同様。
3撃目、同じく打ち合う音が響き、ガイバーTの額が光る。
回避する巣田の肩をヘッドビームが焼き、拳と光線が崩れた体勢に見舞われる。
横転、ビームが脇腹を掠め焦がし、拳は床を穿つ。
立ち上がり軽く跳躍、空中から全体重を乗せた斬撃の弧が照明を照り返し、
宙に軌跡を浮き彫る4撃目は、激突ではなく風切り音で空気を灼いた。
臥せた身体の真上を鎌は薙ぎ、高屋は貫手に構えて焦げた脇腹に毒牙を定め、
敏捷狡猾に突き出されるそれが、慣性に任せ中空で独楽のように回転した巣田の、
さらに威力を増した斬弧とカチ合い火花が散る。これが5撃目。
反動を利用し、巣田は間合いを広げる。
239雑誌破壊者、2人:05/03/17 15:48:22 ID:Lybf5Xsk0
互いの距離は、目測で約5メートル。
間の空気を殺意が駆け、交差して――――
双方は謀った用に同時に動く。
巣田は肉薄し、横薙ぎに大鎌を振り抜く。
高屋も迎撃の為に拳を繰り出したとき、一瞬その視界が翳った。
先程巣田が吐き出した弁当のなれの果て――目玉――が、
一瞬前に蹴り上げられて高屋の顔に迫っていた。
反応し首を捻って避けた時、視界が鎌の照り返しに満ちる。

6撃目が叩き込まれ、ガイバーTの胸板と肩口を斬撃が駆けて浅くない傷を創り、
並行して耳障りな摩擦音と―――――ぴしり、と異音。鎌にヒビ。
殖装ユニットが嗤った、気がした。
冷や汗が能面を伝うのを自覚する間も無く、既に7撃目に繋げていた。
そして嫌な予感は現実化する。
拳と鎌の交差、その刹那。
その刹那に、ガラスの如くに鎌の刃は砕けた。
もはや8撃目は放たれず、防御の為に掲げた鎌の柄は、
高屋が肘に展開した高周波ブレードで薄い胸と腹ごと断ち切られ、
追い打ちの中段蹴りが焦げた脇腹を正確に刺す。
華奢な体が壁に叩き付けられた。
血反吐が飛ぶ。
悶絶寸前の苦痛が、巣田を灼いた。

240雑誌破壊者、2人:05/03/17 15:50:06 ID:Lybf5Xsk0
その様を見ながら、高屋は一人ほくそ笑む。
凄まじい歓喜が、身の奥から湧き上がっていた。
高屋が見せたほんの一瞬の硬直。
それは、巣田から自分へと流れ込むエネルギーを感じたからだった。
そして自覚する。
雑誌破壊者同士が戦うという事―――――
それは、負のエネルギーを収束させる事に他ならない。
自分達は呼び水だ。意識の有無に関わらず、負の要素を呼び込み、
その力によって雑誌を潰し、担当や連載陣の慟哭を喰らい尽くす。
さらに、破壊者同士で戦い合えば、生き残った一方が相手の背負う力を奪える。
そして、これを応用すれば、恐らくKIYUを凌駕する力を手に出来るはず。
そうなれば、漫画界の頂点に立つ事も夢ではない。
強大な野心に、高屋は薄く笑った。

遠目に見ると、巣田は出血が治まってきている様だった。
一瞥し、胸中で呟く。
(・・・・・胸と腹の重要血管が切断されているはずだ。常人なら致命傷だな。
 流石魔境人、その生命力も人の窺い知るところではない、か)
241雑誌破壊者、2人:05/03/17 15:53:01 ID:Lybf5Xsk0
日本の裏次元、魔境界。その住人達は皆等しく人外の怪物である。
その中でも絶滅寸前の希少種である人竜<インナードラゴン>族、それが巣田の本性だった。
人間の2倍の寿命を持ち、さらに臓物を晒そうと動脈を切ろうと存命可能な生命力を併せ持つ。
そしてその一匹は、今現在血塗れで高屋の目の前にいた。

(人生において、感謝すべき出会いというのは、数えるのが片手で足りる程の稀な物だが、
 この出会いは間違いなくそれだ。
 或いはこの出会いは、破壊者同士が呼び合った為の必然だったのかもしれないが―――――
 まあ、そんな事はこの際どうでもいい)
巣田に向き直る。さらに胸中で言葉を続け、
(私の閃きの契機となり、更には私の力となり、挙句その肉体は実験体としても実に興味深い。
 本当に君に逢えて良かった。
 礼といっては何だが、君の身体は私が責任をもって解剖し、二重螺旋の一本一本まで紐解いてあげよう。
 今こうしていても、楽しみで胸が高鳴る。本当に有難う、巣田君)
ドス黒い微笑が浮かんでいた。
対する巣田は、未だ苦悶に喘ぐだけだった。

242作者の都合により名無しです:05/03/17 16:48:50 ID:JPSEvGNW0
物騒な二人じゃのう
さてどうなるのやら
243作者の都合により名無しです:05/03/17 23:44:22 ID:rM7Ech0o0
巣田えらい善戦してるなぁ。
244作者の都合により名無しです:05/03/17 23:58:44 ID:SRn67E0U0
まあガイバー1しか使ってないしね
245氷上を制する者(63/180):05/03/18 12:57:04 ID:AwAhNzWp0
>>177

安西が今井に絶望的な戦力差を見せつけられていた頃、樋口は敵陣営により深く切り込んでいた。
銀盤の上を、俊足が尾を引いて駆け抜けていく。

「三位一体!ハードゲイ・ディフェンス、フォオオオオオオオオウウウッッッ!!」

疾走する樋口に向かって、三方から地を滑走するように、三人のあんどがトライアングル・アタックを仕掛けてくる。

   バアアア――z__ン!!

この恐るべき合体技を、樋口はジャンプ一番、ボールと共に高く空中を舞うことでかわした!!
「「「なにいっ!?」」」
標的を失った三者は、股間を互いに激突させ、雄として最大級の激痛に貫かれ、意識を暗黒の彼方に追いやった。

これで、ディフェンスのあんど達は全て突破した。
空中に飛んだ樋口が、そのままの体勢から左足を振り抜く。

ボレーシュート!!

    ガッシイイイイッッ!!

「!?!」
しかし、確実に決まると思われたシュートは予期せぬ防壁に阻まれた。
シュートする直前に、何者かがヘディングで、その瞬間のボールを受け止めている。
そいつの額と、樋口の足で、ちょうどボールを挟み込んでいる体勢。

「これ以上、点は入れさせんぞ!!」

その男――大和田がボールの向こうで吼えた。
246氷上を制する者(64/180):05/03/18 12:58:08 ID:AwAhNzWp0
樋口は混乱した。
なぜ、FWとして最前線にいたはずの大和田がゴール前にいる?
真下の一面の氷には、足で踏み抜いた痕がいくつも連なって轍をつくっている。
まさか、氷を踏み砕きながら、ゴール前まで激走してきたというのだろうか。
げに人間離れした脚力であった。
「ぬおおおおおおっっ!!」
「くうっ!」
大和田の常人離れしたパワーが、樋口のシュートを、頭で強引に押し戻す。
樋口の体は空中で弾き飛ばされ、ボールが宙にこぼれる。
(……失敗っ!?)
バランスを崩して落下する樋口と、こぼれ球をクリアしようとする大和田。
そこへ第三の影が切り込む!!
樋口と同じく、スケート靴で氷上を「滑走」してきた影が、身をひねりながらジャンプし――

       ゴ キ ッ !!

「ぬはっ!?」
強烈無比な飛び回し蹴りを、大和田の延髄に叩きつけた!!
「樋口さん!」
「留美子さん!?」
乱入してきたのは、スケート靴を履き、驚異の速度でオーバーラップしてきた留美子だった。
サンデー・フィギュアスケート格闘部門の覇者である彼女にとってもまた、氷上は絶好のステージなのだ。
なぜか格好までフィギュアスケートの衣装になってるのはツッコミ無用だ。
空中に不安定な姿勢で浮く樋口の腕を、留美子が捕まえる。
二人の腕が、がっしりと組み合った。
そして――!!

       ド カ ア ッ !!

留美子に振られ、大きく弧を描いた樋口は、あびせ蹴りの要領でこぼれ球に、踵を叩きつけた!!
十分な加速度をともなったボールは地面にワンバウンドし、ゴールネットを大きく揺らした。
247真の準決勝!!(65/180):05/03/18 12:59:37 ID:AwAhNzWp0
『ゴ・ゴ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ルッッッッッッ!!!!
ガンサンチーム、見事なアクロバティック・コンビネーションで、見事にゴールを決めましたァッッ!!
これでガンサンチームは、なんと4点目ッッ!!
下馬評をくつがえす一方的な展開ッッ、もはやこの試合、見えたかッッ!??』

ヒートアップし絶叫する、実況・克。  
ゴール前では、樋口と留美子が笑顔で手を叩きあい。
一方で、グラウンドには悶絶した三人のあんどと、拳を地面に叩きつけて憤る大和田の姿が見える。
(なんという屈辱……相手の“野生”をあなどりすぎたか……!!)
また、雷句と戦っていた藤崎も、この結果に歯噛みする。
(儂の策を突き破ってくるとは……奴等め、計算外の力を持っておるのお)
今井は、圧倒的劣勢にも鼻歌混じりで、
(フフン、やるじゃないか♥ ま、このぐらいやってくれないと張り合いがないからね♠)
そう心中でほくそ笑む。まるで新しい玩具がどこまで遊べるのか量っているように。

そして、ヒートアップし続ける会場は、もはやガンサンムード一色になっていた。
一方、予想に反して圧倒的劣勢のあんどチームに対しては、一部の観客から口汚いヤジが飛んでくる有り様。
会場をも味方につけたガンサンの攻勢は、もう止まらないのか?
そう思われた、そのときだった。

「うわあ〜……なんかすごい状況ですね。なんかヤジられてるし」
「でもさ、こーいう空気を黙らせたら、気分爽快だと思わない?」
あんどベンチに、二つの影が現れた。
ひとりは、アイシールドで顔を隠した小柄な男――村田。
もうひとりは、サッカーウェアに着替えただけでトレードマークの帽子はそのままな男――許斐。
村田はどこかオドオドと、許斐は会場の雰囲気をむしろ楽しむように不敵な余裕を浮かべていた。
248真の準決勝!!(66/180):05/03/18 13:01:28 ID:AwAhNzWp0
「援軍第二陣か……いよいよ本気ということか?」
グラウンドの中央で、早くも許斐たちの登場に気付いたカムイが、表情を引き締める。
点差は大差とはいえ、油断はできない。
なぜなら向こうにはまだ、天下のサッカー小僧、高橋陽一がいるのだ。
彼ひとりの存在だけで、この点差を逆転される可能性もないとはいえない。
陽一が出てくるまでにどれだけの点差をつけられるかが、ガンサンの勝負所であった。
しかし、援軍の到着が予想以上に早い。
これは展開を急がねばならないか……そうカムイが思った瞬間!!

        ド    ン   !!!!

会場全てを覆い尽くすほどの、とてつもないプレッシャーがガンサン陣営全員にのしかかってきた!!
その凄まじさは、次元を隔てた観客にまで感じとれるほどだったのか、あれほどの歓声もヤジも、瞬時にしてかき消える。
水を打ったように静まる会場。
さらに次の瞬間、目も眩むような黄金の光輝が、会場全体を包みこんだ!!
「うっ!!こ…これはっっ!!」
圧倒的な光量に目を奪われる、会場中の者たち。
荘厳な気が満ち、その熱さにさらされてか、グラウンドを覆っていた氷までもが水にもならぬ間に蒸発していく。
質も量も、桁外れのオーラ。
光の洪水、眩い闇の奥から、ゆっくりと一つのシルエットが浮かびあがってくる。
光の奔流に負けぬ輝きを放つ、黄金の鎧をまとった男の姿が、明らかになる。
「その男」の出現を確認した瞬間、ガンサンチームの全員は戦慄とともに理解した。
これからが――――真の準決勝なのだと。

        
       車  田  正  美    光   臨  !!!!!
249作者の都合により名無しです:05/03/18 13:10:01 ID:rtmr6xGL0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

ていうかちゃんと特訓終わったのか兄貴!?
250作者の都合により名無しです:05/03/18 16:57:41 ID:cdMt3YfJ0
アニ(・∀・)キー!!
251作者の都合により名無しです:05/03/19 00:02:19 ID:ucUtto630
車田はおいしい所で出てくるよなあほんと。
隅っこの方で出るタイミング窺ってるんじゃないかと思うぐらいw
252ハンペン:05/03/19 00:10:02 ID:6EYDf3s/0
>>251
実は2回ほど出るタイミング逃がしてな……ツラかった
253UMAの鼓動(67/180):05/03/19 00:56:25 ID:jN1BpKbL0
全員が車田のプレッシャーに戦慄を抱いている最中。
じゅるり、とUMA子と化した柴田は車田を見つめ、涎を啜っていた。

―――――果たしてどうなるか。
254Aブロックの裏路地から:05/03/19 01:56:46 ID:ucUtto630
Aブロック、市街地から少し離れた薄暗い裏通り。
田辺イエロウは、ふらりといなくなった松江名を探していた。
どうせ、いつものようにどこかの闘争の匂いに惹かれて解説でもしているのだろうが、
現在の状況―小学館と秋田書店との戦争―を考えるに、
一人で放って置くのは危険、と責任感の強いイエロウは思ったのだ。
そもそも、もう少し早くこの事態を知り得ていれば、
松江名から眼を離すようなことは無かったのだろうが……
彼女がその事態を知ったのはいかんせんつい先程、
小学館待機組からの連絡を受けてのことであったので、仕方はあるまい。
裏通りを中心に探索しているのは、
やはり騒動事はそういうきな臭い場所で起こっている確率が高いだろうと考えたからだが、これは完全に外れている。
まあ、白昼堂々公園で決闘する人間がいるというのは良識派の彼女が想像もできないのは致し方あるまい。
――裏通りを、結界を踏み台にして跳びつつ探索する彼女の耳に、つんざくような悲鳴が聞こえた。
そして、その場所に到着した彼女は、眼前の光景に息を飲んだ。
そこには、五人の男がぼろ雑巾のように倒れていた。
血液の混じった嘔吐を撒き散らし、脇腹を押さえながら、ピクピクと全身を痙攣させて、地面に倒れる者。
顔面を原型がわからないほど腫れ上がらせて、電柱にもたれ掛るように失神している者。
そしてその奥――。
暗がりで、白目を剥いた男の胸倉を掴み、血塗れのその顔を容赦なく、ぐしゃ、ぐしゃ、と殴り続ける、一人の男。
255Aブロックの裏路地から:05/03/19 01:58:04 ID:ucUtto630
「(酷い……)」
けくっ、と空唾を飲みつつ、彼女は冷静に状況を分析していた。
倒れている男達は、一様に若く、いかにも性質の悪そうな若者、といった風情である。
そして、彼らの倒れた付近には、手頃に入手できそうな刃物が散乱していた。
「(馬鹿)」
直感的に、彼女は先に仕掛けたのがどちらか、看破した。
恐らくは人気のいない今の時間帯を一人でいる人間をターゲットにして、小銭稼ぎをしようと考えたのだろう。
人が集まる、というのは怖い。
なんとなく、気分が高揚して、集団の優位性というのを感じすぎてしまう。
結果、彼らは竜の目を覗きこんでしまった。
身長は180cmを優に超え、90kはあるだろうその男の堂々たる体躯から噴出す威圧は、
術者である彼女ですら背筋が凍るというのに。
「(とにかく、放ってはおけない)」
一歩、踏み出したその瞬間、ぴたりと男の動きが止まった。
「何か用か、女?」
ぎろり、と彼女の方を向いた男の両眼は、血走り、真っ赤だった。
その眼光に気圧されつつも、田辺は言う。
「事情はなんとなく把握してる。けど、相手は気を失ってるじゃないかい。もう――」
ぐちゃっ!
田辺の言葉を寸断するように、肉が潰れる音が闇を切り裂いた。
256Aブロックの裏路地から:05/03/19 01:59:11 ID:ucUtto630
「――ッッ! 止めなさい、これ以上は本当に死ぬわよ!」
「知るかぁっ! どうなろうが知ったこっちゃねえっ!」
男は夢魔のように立ち上がり、叫んだ。
「熱い、熱いんだよ…火が…」
「火…?」
「火がついたみたいに熱くて熱くてしょうがねえんだよ! いい感じの闘いだったのによう…
 中途半端な所で止められて…火照りが静まらねぇ…火照り冷ますにゃ殴り続けるか女抱くしかねえんだよっ!」
荒い息を吐き、上着を気忙しげに掻き毟りながら男は言った。
男の赤目が田辺を射抜く。
「(人間の眼じゃない)」
ぞっとしたように、ほとんど無意識で彼女は胸の前で片手の印を結んだ。
どうして気が付かなかったのだろうか、彼女は胸中で呻いた。
眼前の男から発せられる、咽返るような濃密な邪気。
「――あんた、妖だね」
男の体がぴたりと止まった。
突如として、己の闘気に萎縮していた女が、別人のように冷えた声を発したからだ。
257Aブロックの裏路地から:05/03/19 02:01:29 ID:ucUtto630
「やるのか、あぁ?」
赤目がそろりと問う。
押さえきれない歓喜を含んだ声で――。
「それが私の仕事だからね」
ぴっ、と胸の前の手の人差し指と中指を天に向かい突き出す。
いつでも結界を放てる状態に、なった。
そのたたずまいには、一分の隙も無い。
ほお…と、赤目の魔人――森川ジョージは吐息を洩らした。
「――名乗りな」
すうっ、と両腕を上げ、オードソックススタイルに構えるその姿には狂気の影もない。
だが、対峙する田辺はそれが、失せたのではなくただ内に潜んだだけであることを感じ取っていた。
背筋に、冷たい汗が垂れ落ちる。
田辺は己を鼓舞するように、叫んだ。

「“結界師”、田辺イエロウ、いざ、参る――!」

結界師と、拳鬼の戦いが、幕を開けた。
258作者の都合により名無しです:05/03/19 12:43:05 ID:6EYDf3s/0
VS真島戦あたりと比べると見る影もない変貌ぶりだ>ジョージ

つーか、イエロウタン無謀だよイエロウタン
259作者の都合により名無しです:05/03/19 12:58:48 ID:GFERdnsK0
しかしこのカード、どういう展開になるんだろう…読めない。
260作者の都合により名無しです:05/03/19 13:05:39 ID:hd+LcZFT0
間違った方向に進みエロ展開にでもなった日にゃあ(後略
261作者の都合により名無しです:05/03/19 13:19:22 ID:6EYDf3s/0
「俺様の種をくれてやる!」とか言い出さんだろうな
262作者の都合により名無しです:05/03/19 13:30:35 ID:FLAmfHrM0
そこで、種ぇ〜種ぇ〜とあの御方の登場ですよw
263その男、変態につき(67/180):05/03/19 20:35:56 ID:cx/i9x+u0
 車田の登場により、少なくとも雰囲気には変化が生じた。
 これまでのガンサン圧倒的優勢の流れが、変わろうとしている――グラウンド上にいる者で、まともな思考
が出来る者は、そう感じていた。
 それはすぐさま観客席にも波及する。四点目で、「勝負あった」という空気が広がっていたが一変。車田正
美という男には、それほどの存在感がある。かつては漫画雑誌の表紙も飾ったほどの男だ。静まる観客席。
皆、次の車田の一挙手一投足を見逃さぬよう、息を呑んで凝視していた――ある一人の男を除いて。

「す……すげぇ……あれだけざわついてた客が、静まり返っちまった。男としての格の違いを感じるぜ……」
 佐藤タカヒロが、そう呟く。
「これは、分からんな。あんどチームにはまだ凄い奴等が控えとる……あの″kエ陽一までおるしな。あい
つが出てきよったら、この試合引っくり返るで」
 事前情報をそこそこ仕入れていたみずしなも、呟く。
「凄い……でも、みずしなさんの方がカッコいい……」
 天野も、そんなどうでもいいことを呟く。それはないだろう。
「あーみてみてーあのみどりのとこにいるこちっちゃくてかわいいよねーあの子のおなかおっきくふくらましたい
なー」
 多分、近くに警官でもいたら現行犯逮捕されそうな勢いのことを大声でほざきやがったのは、貞本。
 「ちっちゃくてかわいい」というのは、恐らくガンサンチームの水野のことだろう。静まり返った会場に、貞本の大
声が響く。客の視線が、一瞬車田から変態に移る。
「頼むからあんまり皆様の関心を惹く様な言動は謹んで下さい!」
 佐藤は涙目で懇願した。が無論貞本は聞いちゃいない。
「ほらあのこだよあのこーいいよねーちっちゃいよねーそそられるよねー」
 貞本の指差す先には、やはりというか何と言うか、水野がいた。成る程、十代前半っぽい。旅景色メンバーの目
線が水野に集中する。計ったか否かは不明、というか、明らかに天然だろうが、その一瞬を逃さず、貞本は飛ぶ。
 言うまでもなく、遥か下方の緑のグラウンドに向かって――

264その男、変態につき(68/180):05/03/19 20:37:43 ID:cx/i9x+u0
 いち早くその気配を察知したのは、水野。まあ、当然だ。全く飾り気のない、純然たる欲望をダイレクトにぶつけら
れている側なのだから。
 そして水野から遅れること数秒。グラウンド上の全ての選手が、異物≠認識するに至る。
「ぼくのこどもをうんでよー!」
 不完全な着地だった。間違いなく、どこかの骨はイっている。それでも、叫んだ。それが、現在の彼にとっては何事
にも代えられない最優先事項なのだろうか。

――矢吹席――
「矢吹様! まずくないすかアレ?」
 矢吹の側近の誰かが言った。
「いんじゃね?」
 この世界の覇者はぞんざいに言い返した。直感があったのだ。『目には目を、歯には歯を、変態には変態を』ガンサ
ンチームには現状でも変態がいる。それも強烈な。しかし、多いに越したことはあるまい。矢吹にとって、このサッカー
はあくまでも「あんどをけちょんけちょんにするだけのもの」だ。

「ぼくはねーちっちゃいこがだいだいだーいすきなの! でねそんなこのおなかがおっきくなったらどんなにかたのしい
だろうなあなんていつもいつもおもってたんだーねえうんでよーいますぐうんでよー!」
 参戦以来、余裕の色を崩すことのほとんどなかった水野が、青ざめている。それもそうだ。どう見ても30近いおっさん
が、自分に向けてセクハラとかでは片付けられないレベルの台詞を吐いている。しかも子供言葉で。水野の今までの人
生において、ここまで精神的に過酷な状況に居合わせた経験は、恐らくあるまい。
 一方車田は、出鼻を挫かれる形となった。多少とはいえ、威勢も衰える。つーかコイツサッカーやんのか!? 内心、
車田は思った。
「これは……好機だ……」
 むくりと、城平が起き上がった。
「あの、変態のお陰で、車田の勢いが少し落ちた……調子に乗らせると厄介だからな……まだ出場していないとは、
いえ……奴は……それでも局面に影響を及ぼす……しかも……あんど達への抑止力にもなり得るかもしれん……
まさに、一石二鳥……そして矢吹は奴をベンチに入れるよう指示するだろう……ふふ、素晴らしい、完璧……だ……」
 ここまで言い切って、城平はまた寝た。

 城平の読み通り、矢吹は貞本のガンサンベンチ入りを命じた。益々混沌としてきたサッカー対決は、まだまだ続く。
265作者の都合により名無しです:05/03/19 20:59:00 ID:hd+LcZFT0
彼氏寝てないでなんとかしろい(´・ω・`)
番号は>>253が短いから>>263とセットでいいよね(内容も)
266作者の都合により名無しです:05/03/20 02:10:11 ID:1x4D4ZAE0
この試合には変態しかいないのかw
またカムイの胃に穴が空きそうな展開だなw
267ファンチル(69/180):05/03/20 09:39:53 ID:ubQg2PHe0
>>264

ピ―――――――――――ッ!!

選手交代を済ませ、緊迫と静寂に強張るグラウンドをひき裂く、試合再開のホイッスル。
同時に、センターサークルのボールに向かうのは。またも、えなりチームのゲームマスター“今井”だ。
(どうしようかな♦)
腰に手を充て、世界を嘗めるように、グラウンドをゆっくりと見回す。
軽薄で節操無し。気まぐれで、嘘吐き。“今井”という男の本質……悪い癖が、出た。
(うーん……なんか……♠)
微妙なやる気のなさ。萎える動機。ほら、もう面子もかなり揃ったみたいだしさ……♣
心中の言い訳にさえ、熱心さはまるでない。
そしてふと、先ほど置きざりにした、腑抜けのような顔でこちらを見ている安西を、目の端に捉えて
(……もう、いいか♣)
猛回転する思考と感性を、ゆっくりと緩めていき、ただ、怠惰にブレーキをかける。
そろそろなんか、飽きてきた。
大体、サッカー(これ)は、今井にとって、必死にやらなくてはならないこと、ではない。
これまでは単に、必死になるのが面白いから、必死だったのだ。
個々の敵と念入りに“楽しむ”こともなく、あっちへ行ったりこっちへ来たり……それがつまらないと感じたのなら、もう、止め時ということだろう。
「……任せるよ♥」
そう言い捨て、ぽへ、と後ろ蹴りで背後の富沢(稲垣)にパス。
「は、はぁ」
気の抜けたような返事を受けて。また、普通に、散策するように、明後日の方向へと歩きだしてしまう。
今度は、ボールが独りでに動くこともなく。
やがて、今井を他所に、背後のボールを中心とした争いに大歓声が轟き。激闘の始まりが、見るまでもなく肌に感じられた。
(さて♦)
試合の中心から少し離れた位置。腕を組み、風景を瞳に映しながら。
これよりは、ただただ楽しい、“個人面談”“コミュニケーション”に入ろうかな、と、悠長に思考。
(ん―――そうだな♠ ―――また、あのお嬢ちゃんに静めてもらおうか♥)
遠い、ガンガンチームのゴール前。お馴染みの、白っぽい、小さな人影を振り返ろうと―――
268ファンチル(70/180):05/03/20 09:40:38 ID:ubQg2PHe0
「?」
その視界を阻むかのように、男が一人。
「誰、かな?」
「…………椎名だ。椎名高志。 対戦チームの選手名くらい、憶えといてくんねーか」
「―――ああ、ごめんね♣ で、その椎名君が何の用? もしかして、ボクと遊んでくれるのかな?」
「本来なら、当然、勘弁してもらうんだが……。アンタは……。
 ……今、殺人鬼と強姦魔を足して、3かけたような眼で、金田一ちゃん見てたぜ。―――自覚、なさそだな」
クスクス、と顎を引いて今井は笑う。
「そりゃ ひどいね♥」
「…………あの子も……アレで、女の子だからな。負担かけすぎるのも」
特殊警棒のように伸ばした『神通棍』に、椎名はありったけの霊力を込める。
「―――どーかと思ってなッッ!!!!」
流し込まれた霊圧に耐えかね鋼の構成を崩した『神通棍』は、一条の光鞭へと変化した。
うねり。たわんで。その先端が、反射的に飛び避けた今井の、頬と髪を一房、切り裂いて抜ける。
「………!」
着地し、傷を触れ、手に付いた血痕を、驚いたように見やる今井。
「…………」
椎名は鞭を操りながら、空いた手にも霊具や札を並べ。さらに足元の影から、異形の“式神”を出現させる。
「―――悪いが、一気にいかせてもらう。アンタは端から全力で潰せと、俺の勘が告げてるんでな」
今井は鉄の味のする掌を、ぺろり、と味わう。
「……それ、いいね♥ ちょっとやる気、出てきたかな……?」
269ファンチル(71/180):05/03/20 09:42:01 ID:ubQg2PHe0
>>177

(わかんねー……わかんねーよ……)

誘導された懊悩に気を取られ。安西信行は、車田の闘気をアテられながらも、いまだ意気軒昂な仲間達に、ただ一人続けずにいた。
(どうなって……どうなってやがる……!?)
拳を、芝生に叩きつける。

それは今井だけが知っている、仕掛け。
加工され、先鋭化された過去の罪。
誰をも恨みようの無い、因果応報。
そしてそれらに押し潰されそうになりながらも。肝心の重みの、袋の中身は分からない。そういう、罠。

(パクる? 炎を? 黒龍波……だと?)
どの断片も、知っているはずなのに、思い当たる節が全く無い。
ただ、結果だけ……“罪悪感”という結果だけが、ぽっかりと心の奥に現れ、安西を苛む。
(奴は、いったい……何者なんだ……?)
そして
(俺はいったい、奴に何をした……?)
この加害意識。
正道にもとれば、戦いの余波で親を無くした少女の涙の誹謗に、ヒーローは決して勝利することが出来ない。
今井の態度からは、到底連想しようもないそのイメージ。しかしその精神風景こそが、先ほどの短い対峙で安西が得た、二人の“関係性”だった。
270安西信行修行変(試合中)(72/180):05/03/20 09:43:30 ID:ubQg2PHe0
『崩』。
呼吸するのと同じくらい、いとも容易に燃え上がらせる炎字。
「………っ!」
なのにその文は、完成する寸前、ふい、とかき消える。
出せなかったわけじゃない。
ただ、高揚がなかった。
誇りも。
自分が拘りぬくと決めたそれとは、全く異質のものになってしまったかのような、違和の真紅。

(―――俺は、これと、このまま共に歩んでいいのだろうか?)

無意識に浮かんだ台詞に、数瞬後、衝撃を受ける。
なんてことを。
か、変えられてしまった。
俺は、あの男の一言に。何故こんな、こんなに。嘘だ。もう、こいつを信じられないなん

 !!! ぐ わ 〜〜〜〜〜〜〜〜 ん !!!

そうして、四つん這いでズームと落ち込む安西の耳元で、銅鑼の轟音が鳴り響く。
弾かれたように仰ぎ見たそこに屹立していたのは、見たことも無いクドイ顔をした、調理服を着た中華なべを持つ男。
(誰?)と思う間もなく、男は喝と眼を見開き、安西にこう告げる。

   「 少 年 よ !!! 」

再び「ぐわ〜ん」と中華なべをおたまで叩く男。どうやらこれが、音の発生源らしい。

「 火 を 恐 れ る な !!!  火 を 支 配 す る の だ 〜〜〜 ッ !!!! 」
271作者の都合により名無しです:05/03/20 13:00:06 ID:0DK065610
火の神様キター!!
あと稲垣と村田はセットで間違えやすい罠
272作者の都合により名無しです:05/03/20 13:18:21 ID:ciongBte0
>>271
ああ!あれかーーー!!
何のネタだか分んなくって頭ひねってたんだよ。ありがとう。
273作者の都合により名無しです:05/03/20 13:26:01 ID:1zJ7td3r0
椎名は女がからむとかっこよくなるなあ
しかも他の連中が「理解不能な生物」としか認識してない金田一を普通に「女の子」あつかいできるところがすごい
274作者の都合により名無しです:05/03/20 14:52:47 ID:5/2Vclza0
この調子でUMA子も女の子扱いしてもらおう。
275ブラック・オア・ホワイツ:05/03/20 18:33:59 ID:1zJ7td3r0
>>195
黒龍と化した大暮。迎え撃つは無垢な白き魔人、腐朽(福地)。
大暮は自身の右拳を腰だめに構え「鍛針功」の発射体勢をとり、腐朽は「鉄」を筒先を突きつける。
二人の距離は、お互いに必殺の間合いだった。
次の瞬間。
大暮の拳からほとばしった“気”が大気中を伝播して一直線に飛ぶ。腐朽の右腕の大砲が火を噴く。
双方の破壊力は両者の中間地点で激突し、大気を震わす余波を残して、対消滅。
すぐさま腐朽は二撃目を放とうとして、
             
ゴ   ン ッ  !!!

「!!!!!」
「鍛針功」の2連撃がヒット!!
腐朽の腹に爆発したような破壊力が激突した。
(な・・・なんて威力っすか!!攻撃が命中する瞬間、腹に天界力を集中して防御しなければ・・・・完全にやられてたっす!!!!)
「・・・でもこっちも負けてないっすよ。俺の理想しだいで、“鉄”は連続発射(こんなコト)もできるっす!!!」

       ドン!! ドン!! ドン!! ドン!! ドン!!

「ぐあぁあああっ!!!」
“絶対命中”を理想とした「鉄」の集中砲火を浴び、今度は大暮が吹っ飛んだ!!
「・・・・!!(くそっ!!!)」
大暮が血を吐きながら立ち上がった。
しかし、腐朽はすでに新たな連射の発射体勢に入っている。
「連射速度は“理想的”な俺の方が上っす!!」
「!!!」
「これで終わりっす!!! “ 鉄 ” !!!」

          ドドドドドドドドドドドドドゥッッッ!!!

“絶対命中”の砲弾が、雨あられと大暮に降り注いだ。
276ブラック・オア・ホワイツ:05/03/20 18:35:49 ID:1zJ7td3r0

          ゴ  オ  オ  オ  オ  オ オ オ オ オ オオオオオ!!! 

獣が吠えるような不気味な唸りをあげて、「鉄」の大群が、大暮を取り囲む。
その真ん中で、今しも大暮ははさみつぶされそうになっていた。
(喰らえ!!!)
どこにも逃げ場はない。勝利を確信する腐朽。
しかし、次の瞬間!!
「!!!?」

             ド ッ パ ア ア ア ア ア !!!

追尾してくる砲弾を「龍眼」の予知によって紙一重でかわし、さらに砲弾同士をぶつけて破壊した!!
「・・・・・・!!!(絶対に命中、粉砕する俺の“鉄”を・・・・・・!!?)」
砲弾の包囲をかわし、大暮が間合いをつめようとする。
が、そのとき。
 
           ブ ワ ア ア ア ア アア 

「何ィィィィィ!!?」
いきなり大暮の体が宙に浮き始め、遥か上空に持ち上がってしまう。
(フフフ・・・甘いっす!“鉄の破片”をかぶったのが運のつきだったっすね!)
腐朽の《“理想”を“現実”に変える能力》のレベル2がまたしても発動した。
そして、大暮が放り上げられた空中には、大暮自身が放った衝撃波の“檻”が!!
(そのままさっきみたいにズタボロになれっす!!)
ほくそ笑む腐朽。だが、大暮はまだあきらめてはいなかった。
                         フォロー・ウインド
「へっ・・・・なんだよ、こんなトコに、こんないい “追い風” があんじゃねーかヨ」

なんと、大暮は自らが作り出した「牙」に乗ったのだ!!
「牙」とは大気を切り裂いた時に起こる衝撃波・・つまり・・・・「 風 」 !!
277ブラック・オア・ホワイツ:05/03/20 18:36:48 ID:1zJ7td3r0

           ゴ   ド   ン  !!!!

予期せぬ天空よりの降臨。
腐朽の眼前で、大暮が地を震わせながら着地した。
右足が、凄まじい衝撃をともなって、大地を踏み抜く。

第一の門 赤龍は“地”
地とは つまり“脚”
地と脚が触れている時 其の力は完全に発動する

それは龍を形(しるし)たものではなく
己から龍となった者が放つにふさわしい拳


        赤  帝  龍  功

                轟  雷  箭  疾  歩  


「が  あ つっ ! ! 」
腐朽の身体の中心部を、大暮の雷撃をまとった拳が貫いた。
(ア・・・・アバラが・・・4・5本喰われたっす・・・)
体の中心部が破壊される音を聞きながら、腐朽は遥か彼方まで吹き飛んでいき、地面を転がった。
立ち上がろうとしても、どうしようもなく膝が震えた。
「なんだたった一発でもう足にきたのか。このウラナリがぁ」

              ゴ   ッ  !!!

大気を劈くような轟音、さらに。
大暮の鉄拳が腐朽の顎を真下から撃ちぬき、突き上げた。
278ブラック・オア・ホワイツ:05/03/20 18:37:48 ID:1zJ7td3r0

            ゴ   ン  ッ  !!

頭のすみにかすかに届く轟音のかけら
胃の中にまで流れ込む鉄の味
そして・・・・
ああこれは 俺が灼けている臭いっす・・・・・

          ド     ン    !!!!

顔面がひしゃげ、後頭部から激突する勢いで、仰向けに地面に叩きのめされた。
ただただ一方的だった。
能力の多彩さ、威力でいけば大暮を上回るはずの腐朽が、しかし何もかも通用しない。
腐朽の胸中は、驚愕と疑問符、そして目の前の男への尽きぬ興味で埋め尽くされた。
これまで「戦闘」という行為に何も感じることはなかった。ただ邪魔なら、これを排除するだけ。相手を人間と認識したことすらない。
しかし、ここにきて、腐朽は初めて思った。自らの全力を振り絞って、目の前の男を・・・・・殺したい!!
「はぁ・・ぜえっ・・・ぜぇ・・・」
痙攣する全身を必死にふるい起こし、腐朽は立ち上がった。その表情を、あの壊れた歓喜の笑みで引きゆがめる。
「まさかここまで追いつめられるとは思わなかったっすよ。だから使うっす・・・

     十  ッ  星  神  器   “ 魔  王 ”   !!! 」

その言葉を腐朽が口にした途端、大気が悲鳴をあげて歪み始めた。
バチバチと空間が帯電し、暗闇に覆いつくされていく。
そして、出現したのは、視界からはみだすほどの超巨大な異形。
既存のあらゆる悪意・負の想念を、全て凝縮し、具現化したような怪物の姿が、顕現した。
「魔王は、使い手の“想い”を力に変える生物神器。その姿形は使い手の持つ“強さ”の象徴(イメージ)!!
 そして、その威力は使い手の“想い”の強さに比例する!!!これが俺の最終兵器っす」
「・・・!!」
腐朽は、心のうちにこれほどの怪物を飼っていたというのか。
そのあまりの巨大さ、そのあまりの異様さに、大暮の表情が青ざめた。
279ブラック・オア・ホワイツ:05/03/20 18:39:07 ID:1zJ7td3r0
「これで今度こそ終わりにするっす!! “ 魔  王 ”ォォォツツツ!!!!」
腐朽の叫びと同時に、魔王が猛スピードで向かってくる。その速度は、とても避けられるものではなかった。
「龍形氣功鍛針功真伝  我  王  双  龍  炎  烈  掌  !!!!」
大暮の突き出された両手から、とてつもない量のエネルギーがほとばしる。
両者の最強技が、中央で大激突した!!
しかし、「魔王」のあまりの巨大さに比べて、大暮の奥義は遥かに劣っていた。
ぐんぐんと重さでおされ、魔王の牙は、大暮に肉薄する。
(ファック!!さすがだぜ、小僧!これがテメェの最強の必殺技・・・か)
一瞬、あたかも観念したかのように両目をつぶる大暮。
「おあああああああああああっっっ!!!」
だが次の瞬間、大暮が咆哮をあげながら、左目の眼帯を外し、両目をあらわにした!!
(たのむ “クレイト”!!この一歩だけでいい おまえもその「檻」から 足を踏み出してくれっ・・・・・・!!)

――この一撃だけ俺に・・・・・力を――――――っ!!!

大暮の肉体を、さらなる「氣」がかけめぐっていく。
そして繰り出される、大暮の限界を超えた究極の奥義!!!


     龍 形 氣 功 鍛 針 功

           四   龍   炎   裂   殲   !!!!!!


超新星の爆発にも匹敵する光芒が、炸裂した。
目もくらむ破壊のなかに、全てが消えていく。残ったものは、お互いの全てを賭けた最後の激突!!

         ブラック・オア・ホワイツ
         決   着   だ   !!!   腐 朽 !!

      刻 ん で や る ぜ     俺 達 の 道 を   !!!
280作者の都合により名無しです:05/03/20 19:34:21 ID:Nfm4VVQD0
うわ、こいつらのカードでこんなに王道で熱い展開になるか!
281作者の都合により名無しです:05/03/20 19:54:32 ID:5/2Vclza0
>>279
ぶつかり合う最大奥義。
そのせめぎあいの果て、先に限界が訪れたのは……

         ぴきっ

――――腐朽の"魔王"だった。

1+1=2。
大暮とクレイトの1は、2に限りなく近い1である腐朽を上回る。
その結果が"魔王"の敗北である。

「く、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

吼える腐朽。
だが、1.9999999999…は決して2には勝てない。
2>1という現実を変えることは誰にも出来ない。

均衡は破れ、ぴしり、ぴしりと"魔王"にヒビは入り続ける。
腐朽一人の"想い"を、大暮とクレイト、二人の"想い"が凌駕する。
そして数瞬の時を置き――――"魔王"は、壊れた!!

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

咆哮を上げ、大暮は"魔王"を貫き「"過去"を"現実"にする能力」―――再び現れた"魔王"に道を塞がれた。


              1では2には勝てない。
              だが2から僅かでも数を引けば1になる。

282作者の都合により名無しです:05/03/20 20:18:41 ID:0Q1Etlzf0
>>271
今更何のネタか理解したーーー!!
うわあ懐かしい、なんか嬉しい!
283作者の都合により名無しです:05/03/20 20:24:28 ID:0DK065610
お役に立てて何より>272>282
しかしグレ福地対決ヤバイマジヤバイ
284作者の都合により名無しです:2005/03/21(月) 13:05:27 ID:m7C8ZJvT0
こうやって見ると、マジでメチャクチャな能力ばっかりだな、福地。
285作者の都合により名無しです:2005/03/21(月) 14:42:33 ID:4t1m35Eh0
衝撃! えなりの奇妙な冒険は月姫のパクリ!?
ttp://f37.aaa.livedoor.jp/~review/matome/log8

ごめん、久々にえなりの奇妙な冒険でググったら面白いネタ見つけたので貼っとく。
286これが松椿のご主人様:2005/03/22(火) 15:02:55 ID:L9IwhyAj0
>>264全スレ96,53315部387,14部320他
車田の登場後、イヤに静かになったスタジアム内。
しかしそんなこと関係なくうるさい箇所があった。
「この試合こいつは凄いぜ!!」
「凄いけど、これ本当にサッカーなの?」
「たしかに・・・・・・」
客席からやたら興奮気味に2ちゃんねるに接続しつつ観戦するまっつーと
客として普通の意見を言う椿あす。
それに同意する漆原友紀。
「なあ、あいつにぎゃふんと言わす方法無いか?」
「知らないっス。それよりさっき出てきた人カッコいいっス」
大和田にさっきから目をつけてる牧野博幸と。
車田にハァハァしてる岩村俊哉。
そして・・・・・・

「ああ、あったあった『漫画家専用席』。」
「こんな所があったんだ。(最初からココに来れば・・・・・・)」
さきほど危険発言をかます貞本のせいでほかの客からの視線を感じるので
さっきの場所よりちょっとフィールドから遠い『漫画家専用席』へ移動してきた佐藤タカヒロご一行。
貞本はもういないし、これで安心して観戦できる。と佐藤はおもった、が
「・・・・・・貞本さんは、一人で大丈夫かしら。」
天野がボソリとつぶやいた。

たしかに頭脳は子供。性欲は人の3倍の貞本の事だ。
今はおとなしく座ってるかもしれんが、そのうち本当に水野さんに襲い掛かるかもしれない。
と、佐藤は思った。しかもこんな観客がたくさん見る前で・・・・・・
「最悪の事態は絶対に避けてたい所や。」
「このままじゃあ、水野さんがかわいそうだもの・・・・・・」
みずしなと天野もこの後のことを想像してしまったようだ。
287これが松椿のご主人様:2005/03/22(火) 15:04:01 ID:L9IwhyAj0
「・・・・・・おし!!うちらもガンガンチームのベンチに行こうかないの!!!」
みずしまがあまりにも大きな声で叫んでしまったので、他の漫画家達が振り返りこちらの様子を見た。
「おいおい、そこさっきから五月蝿いぞ・・・って、お前。別府の松椿にいたチビじゃないか?」
まず始めに声をかけて来たのは牧野だった。
「おお、おまいあん時の魚屋。生きとったのか!!」
「口開くなり酷いな。まあ、実際死にそうだったけどな。」
ハッハッハと軽い笑いを交えて語りはじめた二人。
その二人に佐藤や天野はポカンと見ていただけだが、そこへ一人の女性が近づいてきた。
「あら、魚安の牧野さん、こんにちは。こんな所で奇遇ね。その人たちとはお知り合いなの?」
牧野の商売相手である松椿の女主人・椿あすである。
「あっ、あすさん。こんにちは。いえね、コイツは別府の松椿にいた。従業員ですよ。」
「えっ!こんなに小さいの、家の従業員にいたかしら・・・・・・。」
みずしなは従業員といっても梅さんの復讐計画のために正規の従業員達を隠して、
こっそりと成りすました偽者であり。今のみずしな自身、女主人の疑問の目を前にして
もしかしたらばれるとちゃうんか、と内心びびっていた。
「はじめまして、椿あすさん。あ、私昨日そちらに電話した、バスガイドの天野こずえです。」
「あら、あの時の・・・・・・」
その時であった。謎の人物がワニの如く素早く、そして静かに天野に近付いたのは。
「あなた!!!」
あすの怒声びびったのは、天野の尻に今にも触る様子だったまっつーである。
「って、何天野のケツに触ろうとしとんや!!!」
「いや、ちょっとみんな楽しそうだったもので・・・・・・」
と言いつつ彼の手は天野の尻に触れようとしていた。
「まったく、あなたって人は何時もいつも・・・・・・・・」
まっつーの行動に激怒したみずしな・あすが襲い掛かる。
288これが松椿のご主人様:2005/03/22(火) 15:05:03 ID:L9IwhyAj0
「なあ、ちょっとそこの兄さん。聞きたいことがあるんだが?」
「ん、何だ。」
佐藤がまっつーが襲われてるのを横目に牧野に話しかけてきた。
「あの天野のケツを触ろうとしたやつ何者だ?」
「ああ、まっつー先生ね。松椿旅館の主人だよ。
 といっても実質上の主人はそこの奥さんの椿あすさんだけどな
 あの人はマンガ原作描いたり、2チャンネルに書き込みしたり、
 エロゲーしたり、コスプレ衣装作ったり、フィギュア作ったり
 盗撮したり、女の子追いかけたり、それを倉庫に溜め込んだり、
 あとたまに料理作ったり・・・・・・」
「牧野さん。あまり他言はして欲しくないんだけど。」
佐藤が牧野の後ろに目をやると気絶して白目をむいてるまっつーと、
それに巻き添えを食らったのかみずしなを抱えているあすの姿があった。
「それからここにいる皆も決して他人事しないように!!!わかった!?」
「は・・・はい!!」
あすの威圧感にびびり、思わず返事してしまった佐藤。
だが、この威圧を全く理解できなかったやつがいた!!!
「ねーねー、知ってるあそこの松椿の主人ってさ・・・」
「だから!!言うなって言ってんでしょ!!このバカ!!」
話に参加していなかった漆原に話しかける木村へパンチを決めるあす。
そのそのパンチの切れは鋭く。この日、木村は再び死んだのであった・・・・・・。

そして天野は・・・・・・
「あすさん・・・・・・私を助けるために身を呈して・・・・・・」
その目は恋する乙女だったと後にこれを見ていた岩村は語った。
289作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 15:22:23 ID:b9y83Ugw0
懐かしい設定のオンパレード来たー!!
太彦男に戻ると相変わらずだよ太彦
290作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 16:14:44 ID:zJiHTCJF0
今度は女でしかも夫持ちかよ!


天野が・・・天野がどんどん馬鹿に・・・orz
291作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 16:35:37 ID:b9y83Ugw0
ゐ`
292作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 17:45:51 ID:kxzDbD3S0
初期の審判時代が懐かしい…
293作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 18:45:19 ID:4UaRUOwf0
木村が何の前フリもなく男に戻っててワラタ
しかし、天野の尻軽っぷりが凄いことに。
294作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 19:13:49 ID:YpKvRGFt0
最初は癒し系美少女設定だったのに、いつの間にか天然悪女になりつつあるな
295作者の都合により名無しです:2005/03/22(火) 19:23:04 ID:ua866RhZ0
藤原老師が知ったら泣くぞw
296狂気に中てられたもの(73/180):2005/03/23(水) 13:33:24 ID:pTxM+Mq20
>>264

 貞本は一転して黙りこくっている。
 その眼は、水野しか見えていない。
 その眼には、劣情が溢れている。
 その眼には、今にも爆発寸前の感情がこれでもかと込められている。
 貞本の一部が隆起している。
 それはとても熱く、今にも服を弾き飛ばしそうなほどに、強かった。
 
 彼の異変(在る意味日常)に気付いたものは極々僅かに限られる。
 勿論、今の彼をよく知るみずしな達もそれに含まれている。
 先程の闖入劇から彼を注視していた一部の観客も気付いていた。
 それでも――彼らに、貞本を如何こうする術はない。

「……!!」
 水野は震えた。底知れぬ悪寒が止まない。去来するビジョン。大観衆の前で嬲られる自分の姿。
生身を晒され、突かれ、出される。そして、そして――
――殺してしまおうか
 恐怖から、気持ちは攻めに転じる。殺してしまえば。殺してしまいさえすれば、犯されることもない。
先手を打たねば、犯られるのみだ。
 相手に理性など期待してはいけない。あれは本当に狂っている。きっとタブーなどないのだ。
 水野は今迄、そんな人間がいるとは信じていなかった。城平から聞かされてはいたが、信じること
は出来なかった。『恐れることがまるで何もない人間』が、まさか本当にいるとは。
 彼はきっと。何をしても。どんなことをしても。なんの負い目も持たぬ類の者なのだ。無論、人に後
ろ指を指されることなど、恐ろしくも何ともないのだろう。怖い。水野は怖くて、仕方がない。 
 
297狂気に中てられたもの(74/180):2005/03/23(水) 13:35:12 ID:pTxM+Mq20
 彼女は自らも知らぬ内に、胸から拳銃を取り出し、貞本へと向けていた。その上瞬時に「万一外し
たらまずい」と判断し、ピッチ外へと一目散に走った。そしてトリガーを、引――
――けない。城平が、水野の腕を取り、制したのだ。
「殺しは、まずい……この、大観衆の前ではな……」
「なっ、なんで――」
「他の、連中が……異能力を使って殺しあうのは、何の問題も、ない……何故かと、言えば……それ
が、趣旨、だからだ……しかし……それは……その、黒い、拳銃というものは……あまりに、リアルで、
物騒だ……」
 とても眠そうに、城平は喋っていた。
「でも……それでも、怖いんです! 今迄だって、幾度も修羅場を経験してきたけど、この類の恐怖は
……」
「そう、だろうな……というものの……俺にも、お前の全ての感情は、理解して、やれない……それは……
俺が、男で、お前が、女だからだ……男には……自分が、自分の存在、そのものが……陵辱されるなんて、
感情は……沸かない、からな……女、特有の、感情だ……」
 みずしな達より、一部の観客より強く貞本の狂気を感じ取っていたのは、無論隣にいた城平だ。そして、誰
よりも心中に静かなる怒りを湛えていたのもまた、城平に他ならない。
「選手、交代だ……お前を下げ、貞本を、出す……俺の、隣にいろ……さあ、ボールが、外に出るまで、ピッ
チ内に、いるんだ……」
 城平の、精一杯の言葉だ。水野は、ほんの少し冷静さを取り戻し、頷いた。そして、ピッチに戻った。

 城平は起きていた。激烈な眠気に襲われながらも、必死に起きていた。隣の男から、意識を切らさないように
しながら。
 貞本自身はただ、普段と変わらないようにしているつもりなのだが。
298今、そこにある危機!!(75/180):2005/03/23(水) 13:55:24 ID:VYR7yJQw0
>>270

「!」
今井が体躯を斜めに倒し空けた頭上の空間を、よく見ればウサギに見えないことも無い、しかしその長い耳が『刃物』で構成された異形が、往き過ぎる。
髪を何本か持っていかれ。息を吐く間もなく、次。
側面から、宇宙生物のようなデザインのヘビが雷撃を放ち。
これも、すんでで避ける。
さらにその背中に突き刺さる、毛針の束。痛みに顔をしかめながら、振り払うように拳を振るう。
白い、毛玉のような生き物が、跳んで離れた。
「……ふん “念”によって強化したボクの肉体を“毛”で傷つけるとは……かなり鍛えた霊能力だね 式神、ってやつかい?」
あちこちから血を流し、火傷を負いながらも、その超人的な身のこなしで致命傷だけは避け、笑みを絶やさぬ今井が訊く。
「まさしく」
ひゅん、と風を切る神通棍、いや神通鞭と呼ぶべきか。目にも止まらぬ曲線の動きを、今井も手首をかえし薔薇を変化させた“ローズウィップ”で迎え撃つ。
鞭同士のぶつかりあい。破裂音が周囲で断続的に鳴り、芝生の随所が弾けとんだ。
「ッ!」
しばしの膠着が、再びの、全方位からの式神の攻撃で、また均衡を崩す。
「……上下 左右 正面 背後 あらゆる角度から無数各種の攻撃が貴様を切り刻む……この無限攻撃をかわす事は不可能ッッ!!!」
そのまま渋く決めようとしたらしいが、生来の性格は抑えきれぬようで、「うはははは―――ッ!」と攻撃の勢いに優越の笑いまで乗せてしまう椎名。
どうにもヒーローになりきれぬ男ではあった。
とまれ、入れ替わり立ち代りする式神は全12種類。椎名自身も含めれば、13対1。勝てて当たり前は、事実だ。
「なるほど、たしかに避けるのは難しそう」
だが今井はその不公平を責めるでもなく、椎名の見切りと、遠隔操作―――その制御の腕を称える。
しかし―――
「でも、なら殺しちゃえばいいんだよね―――」
今井がそう呟くのと同時。まず白い毛玉。ヒツジの式神『ハイラ』に、異変が起きた。
地面に花弁のような不気味なシルエットが浮かび、その上の『ハイラ』に花びらが食いつくように閉まり、動きを封じ
『つかまえた』
揶揄するような声。後、
大爆発。
「地下爆弾(マッディボム)」
いつ仕掛けたのか。その地雷とトラバサミを合わせたようなトラップが、戦闘の流れを大きく変える。
式神はスタンド能力と同じ、受けたダメージが召喚者本人にもフィードバックされる。
299今、そこにある危機!!(76/180):2005/03/23(水) 14:00:01 ID:VYR7yJQw0
それによる、椎名の数秒の統率の狂いを見逃さず、
「追跡爆弾(トレースアイ)」
さらに式神と同数の“誘導弾”を出現させ、混乱する、残りの式神を追わせる今井。
そして自らは椎名に向かい、背後で連続する爆炎を振り返りもせず―――
「―――クッ!!」
椎名が腕をふるった。投げつけられた『精霊石』が、今井の前で膨大な輝きを炸裂させる。
(目眩まし―――?)
威力も感じるが、さほどではない。むしろ光に目を灼かれ、椎名の姿を見失ったことが痛い。
(どこに―――)
ひゅ、と微かな風切り音。
襲い来る殺気を追うように神通鞭が迫り、目下の今井を―――真っ二つに切り裂く。
一撃死―――
鞭を下方に振り切った姿勢で、「ニヤ」と椎名が会心の笑みを浮かべる。
だがしかし、椎名のその肩、その頭上に、死んだ筈の今井が忽然と現れて、言う。
「残像だ♥」
ドス。と、軽業師のように椎名に乗った今井が、どこからともなく取り出した剣を、椎名の脳天に無慈悲に突き降ろした。
間違いなく即死―――
「殺気を出せばこちらも構える 目眩ましに乗じた意味が無いね―――」
「それもニセモンだ」
その、今井の背後からした『椎名の声』に、『今井の足元の椎名』がドロリと崩れ去る。
式神『十二神将』のひとつ、『猿』の『マコラ』の変身能力。
(囮!)
今井は慌てて振り向こうとするが、遅い。背中に、図太い衝撃が落ちる。
特大の霊波。吹き飛ぶ体。さらにその軌道をなぞり、サイキックソーサー――霊気を凝縮させた円盤――を、椎名は飛ばす。
途中、空中で勢いを減じ、地面に落ちそうになる今井の体だったが、そのソーサーの追い討ちを受けて、爆裂。
二段目のロケット噴射が始まったスペースシャトルのように、更に吹き飛ばされる。
サッカーの激闘でそこかしこが破壊された、観客席下の壁面が、また一部、今井を受け止め、放射状にヒビを入れ、崩壊。
(こりゃホント……俺がやっといて良かったな……)
割とシリアスに、もうもうたる埃を舞わせる瓦礫をじっと見つめながら、椎名はそう思っていた。
自分だって、正直こんな危なそうな奴とは、やりたかーない。
だがこの今井という男は、水野や留美子、金田一………………………
………………………………一応、柴田も含む、女連中が、いつまでも相手をしていていい男ではない。そういう、直感があったのだ。
あるいは、“これ”に気付いているのは自分だけかもしれない。そうも思う。
自分達の運命を賭けられ、そもそもこのチームの母体でもあるガンガンチームのメンバーは、戦況を他人事として、引いて見ることが出来ない。
また、それ以外のメンバー、安西・雷句・留美子・樋口も、性格的にそれが不可能―――
だが自分だけは、言い方は悪いが、さほど乗り気でないまま、ただの流れでこの試合に参加していた。そして、だからこそ、見えたもの。
(あの男は、ジョーカーだ)
車田や高橋陽一のような、強くはあっても正しくぶつかり合うことの出来る、例えればスペードのAやダイヤのキング―――ある種の、安心感すら持てる相手でなく。
また井上雄彦のような、陽性の、まっすぐな憎悪を持つ者でもない。
補欠も含めたえなりチームの中でただ一人。
あの男だけが、人を、笑いながら、遊び半分で殺せる。だから、常に誰かが抑えていなくてはならない。
あるいは、金田一あたりはそれを理解して―――
沈んでいた思考の海から、ガラ、と破片をどかす音。我に返る。
椎名の推論を証すように、顔に能面のような笑みを貼り付けた今井が、血塗れの片腕をぶら下げながら、起き上がるところ。
―――せめて、残りの、前半の間くらいは、自分が抑えておきたいが。
(……さて)
椎名は待ち、構える。




その頃。グラウンドの一角。
どこからともなくフィールド上に持ち込まれたドイツ製のシステムキッチンに、大火力を友としてひたすらに中華鍋をふるう安西の姿があった。

 ごうん ごうん ジュー ジャッジャッ

「よ〜〜し! うまいぞ!!」
先ほどの謎のクド顔男は、腕を組み、汗をかきかき指示を飛ばし、安西の(料理人としての)成長を促していた。
最初は戸惑い。「なんで俺がそんなこと」とかゆってた安西も、えt……じゃなくて謎のクド顔男の纏う、強引かつ不思議な雰囲気に吊られ。
また、ただただ鍋をふるうという没頭に向いた単純作業のお陰でか、その瞳にとにかく一応、熱い炎を取り戻しつつある。
「おめえ漫画家やめてオレの弟子になれ!」
そんな誘いも、何故か耳に心地よい。
いやホント。それもいいかなーとか思いつつある、安西であった。
301作者の都合により名無しです:2005/03/23(水) 15:23:10 ID:yfOxVOMP0
怖いよー
変態大行進怖いよー
302天然(ナチュラルボーン)悪女?:2005/03/23(水) 20:46:20 ID:y9qDqdst0
>>288 16部278他
「おーい、あいつがフィールドに入ったみたいだぞ。
 お前らなんかやるんじゃなかったのか?」
「何かやるって、いってもなあ・・・・・・」
ガンガンチームのベンチへ行くと言っていたみずしなはまだ気絶中。
木村も何か死亡中で、天野は貞本が出てきたことで脅えてきたのか?
椿あすに寄りかかっている。
ちなみにまっつーはすぐ復活して何かビデオデッキを出している。
「おーい、そこの二人!!ちょっとこっち来て見て、良い物見せてあげるから。」
「なんですかいいものって?」
「いいものは イ イ モ ノ さ (イヒッ)」
佐藤と牧野はそのまっつーのイヤらしい笑顔を目の当たりした。
一方、女性陣(+なぜか岩村)は先ほどの惨劇があった男性陣の場所からちょっと離れた場所に居た。
天野の頭の中はこの時、理性と本能の間で葛藤していた。
(つい怖くて寄りかかちゃったけどこのままずっとそうしてるわけもいかないし、
 けどこうやっていると何だが安心できるみたいで・・・・・・
 だけれどこのまま何も言わないでくっ付いていちゃ変に思われるし、
 やっぱりもう少しこのままでも・・・・・・)
そんな悩んだ表情をした天野をあすは少し困惑しつつも我慢してそのままにしておいた。
そしてその様子を岩村はジーっと見ていたのだ。

 「うおっ!!!」 「こ・・・・・・コイツは痴態だ。」
ふと、男性陣から変な声が聞こえた。
天野は振り返ってその様子をみて絶句した。
まっつー・佐藤・牧野はなんと昨日別府の松椿の女湯で起こったあの
天野にガンサンチームの女性陣がスキンシップと称して
体中あちこちを触りっこしてる映像を見ていたのだ。
「ふっふっふ、あの変な虫に旅館を潰されてしまって、残ってるビデオはこれだけなんだ。」
まっつーは何故か得意げに語っているが天野はいつの間にそんなのが取られていたのがショックだった。
「ちょっと何見ているんですかあなた達!!!」
303天然(ナチュラルボーン)悪女?:2005/03/23(水) 20:47:47 ID:y9qDqdst0
怒りのあまり思わず『スターサファイヤ』を発動させようとした天野。
「おっとこのビデオは俺のプライベートアカウントに既にアップ済みだ。
 これをネット上に張るのとお前が俺を殺すのとどっちが早いかな?」
「っ・・・・・・」「脅しだ・・・」「うん、脅しだ・・・」
『スターサファイヤ』を押し込め黙り始める天野に岩村が声をかけた。
「先ほどあすさんの方ばっか見ている姿が気になってたけど、やっぱりそういう趣味があるみたいっス。
 恥ずかしがる事ないっス。俺はホモだけどその事皆に話してるっス。」
「私はあなたと違います!!あすさん、あの人を止めてください!!」
今度はあすに助けを求めた天野。しかし肝心のあすは天野から既に離れていた。
「・・・・・・あなた・・・・・・私にああしてもらいたい訳・・・・・・」
「ち・・・・・・ちがいます!!!あれはただ遊びのようなもので・・・」
「そんなッ!!てことはあれも遊びだったの!!?」
突如二人の話に割り込んできた女性の声。それは・・・・・・・・・夕日子であった。
「何もかも知りつくした仲だと思ってたのに・・・!!私とのことは遊びだったのよ!!」
「・・・っちょっといいっス?彼女は君に何をしたっス?」
岩村は夕日子に疑惑の顔で疑問をぶつけた。
「そ・・・それは・・・・・・・・・・・・う゛っ言えないわ・・・ッ!!」
   ざわっ ざわっ   ざわっ
夕日子が涙と赤面で語った返答は周囲に(悪い意味で)波紋を広げた。
「きっと天野は人に言えないようなことを彼女にしたっス!!!」
「してないって!!!むしろ、私がされた方で・・・・・・」
「・・・一体何をしたの」
と、先程より1m離れたあすがぼそっと呟いた。
「ち・・・・・・違います。彼女が言ってるのは子供のようなじゃれ合いで・・・」
「そんなッ遊びだったの・・・・・・!?」
「あーもー!!また繰り返さないで!!!」
その時天野はビデオに写っている自分のうれしそうな顔が憎らしく思えた・・・・・・。
304おまけ:2005/03/23(水) 20:48:51 ID:y9qDqdst0
岩村「まっつーさん。筋肉隆々の禿のオヤジが温泉に入っているビデオはないっス?」
松「ねえよ。」
305作者の都合により名無しです:2005/03/23(水) 20:53:47 ID:euVpt8TK0
いや、男湯のカメラに宮下が…ねえだろうなそんなとこには。
306作者の都合により名無しです:2005/03/23(水) 21:23:59 ID:3lz95U/k0
怖いよー
薔薇百合ロリショタおいなりTSその他なんでもありのこのスレが怖いよー
307作者の都合により名無しです:2005/03/23(水) 22:48:15 ID:57e7JdpV0
>>「おめえ漫画家やめてオレの弟子になれ!」

いや、あんたも漫画家でしょ!?
308作者の都合により名無しです:2005/03/24(木) 02:24:58 ID:IPtzXaeo0
椎名が熱いバトルやってる横ですっかりチャーハン職人になっている安西・・・それでいいのかw
309傲りと誇り:2005/03/24(木) 05:28:48 ID:Th/s/53s0
>>241
――――結構な深傷。しかし、致命では無い。十分支えきる事は出来る。
鎮痛の薬符を貼り付け、痛みを緩和しながら巣田は自覚する。
こんな時は、身の内に眠る力やら必殺の奥の手やら心の小宇宙やらが覚醒・発動、或いは燃焼して逆転が始まるものだが、
生憎とそういった都合の良いことが起こるハズも無く、今のままでは座して死を待つという有様。
唯一つ、身に起こったことといえば――――それを奇跡と呼ぶかどうかはさておいて――――、
自身から高屋へと流出する力の流れを、漫然とだが知覚できるようになった、という位だ。
そして高屋はこれを完全に吸収するつもりでいる、という事も理解する。
無論、改善のきっかけにはならなかったが。

(――――どうする?どうやって凌ぐ、いや凌げば良い・・・・・・?)
調息し、思考を現状の打開法へと進めていく。
戦闘は論外。それは先程の剣戟でも自明だ。
相手は一切の大技を使わなかった。徒手空拳に2つ小技を混ぜただけ、それだけで鎌を砕かれこのダメージ。
せめて、ここが魔境ならば最悪でも足か腕を一本頂戴できただろうに。
心中で歯噛みするも後の祭り。自分の甘さを呪いながら、しかし後悔にスライドしかけた思考を引き戻す。
(余計なことは後。闘えないなら逃げの手を考えろ・・・・・)
しかしどう逃げたものか。唯一の出口は隔壁の向こう。
思考の螺旋が再び始まった。
310傲りと誇り:2005/03/24(木) 05:30:26 ID:Th/s/53s0
「圧倒的だな」
と、出し抜けに高屋が口を開いた。血溜まりの中、返事はせず顔だけ上げる。
「蟻と竜・・・・・・とまでは言わないが、蟻と獅子のゲームと言っても過言じゃあない。
 理解しているだろう、君と私の力量差を。だから、私の意図も理解できるね」
落ち着いた口調で、傲慢極まりない科白をさらりと吐く。十中八九その顔は笑っているだろう。
「・・・・・・諦めろ、と?」
「聡いな」
子供に向かって『よく出来ました』と褒める様に答える。さらに続け、
「どうしようもない事、取り返しのつかない事というのは、例外なく絶望的だ。
 享受するのは苦痛だが、同時に安息でもある。得てして諦念から覚悟は生まれるからね。
 残酷だが仕様がない。無理にでも納得して、せめて最期を潔く迎えるべきだ。
 見苦しさを超えて滑稽、いや憐れなものだよ。力が無い者の足掻きというやつは」
言った。この男は言い切った。
巣田の体がびくんと震える。恐怖ではなく、怒りで。
いつか、別府でガンサンメンバーに放った嘲哢。
さらには『諦めて死ね』と、何様のつもりか教え諭すように宣う増上慢。
もはや我慢がならなかった。
この男には、絶対に一矢報いなければ気が済まない。
自らの誇りが怒号を上げる。
軋む身体に力を入れ、血溜りから這い上がる。
乾いた血が、ぺきりと剥がれ落ちる。
双眸に宿る毅然さが、鋼玉の如くに輝く。
「一つ、教えて上げます。こっちのライオンなんて、魔境の蟻の比じゃありませんよ」
「ほう・・・・・・それは興味深い。魔境に行く事があれば、是非とも研究してみたいものだ」
高屋は余裕を滲ませる。
311傲りと誇り:2005/03/24(木) 05:34:01 ID:Th/s/53s0
強殖装甲をを見返し、巣田は続ける。
「もう一つあるんですよ」
その言葉を言い終わるか終わらないかの内に、右手が動く。
注視していた高屋が反応、肉迫し打突を放つその瞬間、右側頭部付近で轟音と爆煙が炸裂する。
これこそが本命。隙を縫って左手が煙玉を放ったのだ。
が、高屋は動じない。
やれやれと、冷静に排煙装置を機動、周囲をスキャンし――――――確認。
左上方、5.3メートルを跳躍飛翔。その飛影にあわせブレードを展開、一気に斬り裂く!
真ッ二つになった影は霞の如くに霧散し、そのまま煙に消えていく。
数拍経過し、生じる違和―――――落ちた音が無い!?
重低音が響く。隔壁の方へと向き直り・・・・・・黒影を確認、ヘッドビームが駆ける。
しかし影は薄らいだ白煙に身を沈めビームを回避、そのまま現れない。
10秒後、濃霧から解放された執務室で高屋が見たのは、
自分の膝近くまで持ち上がった隔壁と、図らずもそこに刻んだ光線の痕。
ブレードで両断し外に出れば、廊下の端から手裏剣・苦無の雨が笑顔の出迎え。
腕を振り払ってこれを撃破、次いで床を蹴って――――――――
突然視覚を席巻する津波に硬直する。
水の巻・水遁。
激流の顎が高屋に迫る――――――
312超獣、最後の咆哮:2005/03/24(木) 16:52:41 ID:IPtzXaeo0
>>281
静寂が支配する空間。
つい数瞬前まで、場を支配していた死闘の轟音は、もうどこにも聴こえない。
地平線だけが広がる灰色の仮想空間に、血にまみれた白い影が立つ。
白い影は、自分の足元に広がる、広大なクレーターをのぞきこんでいる。
その破壊跡の最下層中心部には、黒い影が虫の息で大の字になっている。
「俺の・・・勝ちっす」
荒い息をつきながら言ったのは、白い影――腐朽。
二人分の力を持ってして、なお、この無垢なる怪物はそれを凌駕してみせた。
黒い影――大暮は、腐朽が見下ろす先――力なく這い蹲っている。
明確な、勝敗の図式。
腐朽は、打撃によって変形した顔に、例の壊れた笑みによって喜悦を表現しようと――

瞬間、凍り付いた。

腐朽の背後に、全身に亀裂を入れてなお獰猛に牙を剥く、“龍”の“技影(シャドウ)”が現れている。
一瞬で表情を強張らせた腐朽は、刹那に後方を振り返り――――

          
          猛悪なる獣の双眸を其処に見た

313超獣、最後の咆哮:2005/03/24(木) 16:53:18 ID:IPtzXaeo0

――それは「一瞬の油断」をつかれただけ

                     
          ・・・・・・かもしれない


戦の定石として 
一度 体勢を立て直す必要があったのも事実

・・・・でも・・・・

それだけではない「なにか」

一流の戦闘者のみが持つ「なにか」が

腐朽の体を後ろへと押し下げた

“四龍炎裂殲”と“魔王”の激突により、牙の「檻」が砕け散った今
            セイクー
「空」は、飛行神器“花鳥風月”を持つ、腐朽の独壇場


   ――――だが・・


 
 前 に 出 な い 者 に 勝 利 の 女 神 は 決 し て 微 笑 ま な い ・・・・!!
314超獣、最後の咆哮:2005/03/24(木) 16:54:09 ID:IPtzXaeo0

             ガ  ッ

巨大な手が、空中に舞った腐朽の頭を、鷲掴みにしていた。
「なっ!?」
驚愕する腐朽の瞳には、大暮の底光する双眸が焼き付いている。
(エア・トレックが破壊されたのに・・こんな高くまでっ・・!!??)

「・・ウンコクズ・・・・いや
 
       福  地   翼

           いい・・・・勝負だった」 

そう言った瞬間、影に隠れていた大暮の表情が明らかになる。そこには―――

「だが、おまえにはまだ“一流漫画家”はえーな♥」


―――獰猛さも、狂気も、嘲りもない、まるで少年のような笑みがあった。


その表情に、腐朽は過去最大級の戦慄を感じ――そして同時に口元には微笑を浮かべた。

 
 ―――なんすか・・・・眼帯の兄さん

        アンタもたいがいお調子者のヘタレのくせに―――

315超獣、最後の咆哮:2005/03/24(木) 16:55:00 ID:IPtzXaeo0
世界を貫く轟音の塊。
その音が、自らの脳天が、遥か上空から殺人的加速度をともなって地表に叩きつけられ、頭蓋を砕かれた音だと、腐朽は認識できたであろうか。
彼が、最後の意識のなかで思ったこと。それは―――

 
  ―――メチャクチャ強エ――っす・・・・

               カッコイイっすよ・・・・


――再び静寂が戻る。
戦場の跡に、白い影と入れ代わりに、黒い影が立つ。
しかし、死闘を征した大暮の意識もまた、すでに失われている。

そこに浮かんでいたもの・・・それは・・・・たぶん

この仮想空間における戦いが始まってから、初めて見せた、一人の漫画家としての彼の素顔

   
    その日・・・・

             最後の咆哮が谺する中

   
    超獣の巨大な牙は戦いぬいて・・

             
                誇り高く 折れた


←TO BE CONTINUED
316首相:2005/03/24(木) 17:11:51 ID:Zy9JgUGp0
痛みに耐えてよくがんばった!感動したッ!おめでとうッ!




                         ・・・で、肉体の主導権は・・・?
317作者の都合により名無しです:2005/03/24(木) 17:18:50 ID:1zDX2YzYO
首相キター

やっぱ先に起きた方の勝ちなんかね>主導権
巣田嬢もガンガレ
318作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 00:39:59 ID:BGxMgGUI0
うわああああああああああああ

行き着くところは、やっぱりそこなのか。

ありがとう、大暮。
ありがとう、腐朽。
319作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 00:50:16 ID:92CsdlVe0
いままで「TO BE CONTINUED」がこんなに輝いて見えたことは無い ッ・・・!

「えな奇」名勝負の一つであることは間違いない
320結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 03:35:14 ID:GDol3Sug0
気合の声と同時、田辺はすぐさま結界の成形を行った。
敵との距離は約5メートル。
裏路地は、狭くて真っ直ぐであるが故に、単に拳による攻撃手段しか持たない森川は、突進してくるしかない。
そこまでを見越し、田辺は結界を森川の現在位置より手前に定めた。
しかし――。
そんな田辺の計算を嘲笑うかのように、「方礎」、と紡がれた言葉の律動を、
轟、と空気を焦がすような拳が穿った。

………。

その瞬間田辺が感じたのは、電流でも食らったかのような全身が痺れる様な衝撃であった。
何を、どこに、受けたのか検討も付かない。
結界を仕込もうと、僅かに森川から意識を放した間に、意識が寸断された。
その戦慄すべき記憶だけが、脳裏にへばりついていた。
この間、田辺の意識は致命的な空白の中にあったと言っていいだろう。
しかし結界師として鍛えられた彼女は、本能的に「結」と己を取り囲むように結界を形成していた。
田辺はその結界が軋むような音を聞き、我に返った。
そして、彼女は自分が何を食らったのか、理解した。
結界に阻まれ、彼女の目と鼻の先で止まっているのは、森川ジョージの左の拳。
「左ジャブ――こんな距離から!」
5mの距離から、あの僅かに意識を放した瞬間に踏み込み、左を当てるなど、彼女の常識を超えていた。
ヘビー級の射程距離と、猫科の肉食動物のような鋭い踏み込みによって成せる技である。
321結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 03:36:44 ID:GDol3Sug0
一方、森川ジョージも又、僅かに驚いてた。
一つには、彼の追撃の左を防いだこと。
そして、何より田辺の能力に、である。
「結界、か」
水面のような冷静さで、森川は相手の能力を分析していた。
先程己の足元に現れた光。
あれがその結界とやらの兆候だったとすれば、恐らく少しでも踏み込みが遅れていれば――。
あの時己は見事に目の前の立方体の檻の中に閉じ込められていたであろう。
そして、今、それは逆に彼女自身を守る防護壁と化している。
攻撃手段にも、防護壁にもなる臨機応変な特質。
強度。形成までに要する速度。射程距離。
十分に、一級品であるといっていい。
「なるほど、楽しめそうだな」
密やかに呟き、森川は左拳を引いた。
同時、田辺は己を守る結界を解き放つ。
咄嗟に出した程度の結界では、もう二三発受ければ崩壊することを感じていたからだ。
この間田辺の頭脳は間断無く、次いでの行動に思い巡らされている。
とにかく、距離をとらなければお話にならないと、田辺は痛感した。
己の能力は、近接戦闘に対応する柔軟性を持ちつつも、本来は遠距離型のものである。
近接戦闘のスペシャリスト相手に、その間合いの中で戦うべきではないのは、自明の理であるからだ。
が、そんなことは、相手も百も承知のはずである。
常に拳一つで敵と渡り合ってきた男が、
わざわざ間合いに入ってきた敵を逃すようなへまをやるはずがないだろう。
「(本気ならば、だけどね)」
と、田辺は心中で付け加える。
そう、彼女は気が付いている。
森川ジョージが、明らかに手を抜いていることに――。
先の攻防、本気ならば、左がクリーンヒットした瞬間に右を打っていたはずである。
森川は本来詰めの甘い男では無い。
チャンスと見れば波濤の如くラッシュを繰り出し、相手を仕留める。
それが、此度は一つ、一つ、とまるで品定めをするかのように、左ジャブを打ち込んでいくのみ。
明らかに、田辺は嬲られていた。
322結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 03:38:34 ID:GDol3Sug0
恐らくは己の結界の能力に興味を持ったのであろう、と田辺は推測する。
「(面白い玩具を見つけた、とでも思ってるんでしょうね)」
歯軋りするような屈辱で腸が煮えくり返りそうになる。
森川にとって、田辺など、まな板の上の鯉と変わらぬのだ。
――あっさり壊すのはつまらない。存分に味わって飽きるまでいたぶり抜いてやる。
森川の拳はそう告げていた。
だが、そこに付け入る隙がある。
待つということは、必ず一度はこちらの能力を受ける気だということである。
ならばそこで、相手の予測を凌駕する術を見せてやればいい。
それが可能である、という強固な自負心を彼女は持っている。
ふつふつと、己の内から闘志が湧き上がってくる。
やってやる、私に出来る全てを使って、打ち滅ぼしてやる!
「お、来るか――?」
「あんたの望み通りにね――!」
森川が察知した瞬間には、田辺は既に「結!」と叫んでいた。
先程よりも小規模、森川の上半身のみを囲むように、鋭く疾く結界を形成する。
田辺は、しかし、この結界が形成すらできないことを半ば予見している。
これは誘い。この結界に釣られて繰り出す左を押さえるのが狙いだ。
田辺はまばたきすらせずじっと森川の左の肩と、肘を凝視している。
僅かでも動けば、己の周りを囲むように地に伏せた結界をすぐにでも形成させるつもりだ。
だが、そんな田辺の狙いも虚しく――。
――森川の左は、再度田辺の顔面を打ち抜いた。
乾いた衝撃音が暗闇に響き渡る。
森川の左は、肩も肘も動かさず最短距離を刺し貫く。
すなわち予備動作が無く、感知するなど不可能な代物であった。
ぐらり、と田辺の体が崩れ落ちる。
それを見て、森川の顔に失望が浮かぶ。
――こんなものか。
一瞬、ふうっ、と呆れたように森川が吐息を付く。
その瞬間、前のめりに崩れる田辺の体がぴたりと静止した。
彼女の服の裾から、何かが滑り落ちる。
そしてそれが地面に落ちた瞬間、弾け、猛烈な勢いで白い煙を噴出し始めた!
323結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 03:41:20 ID:GDol3Sug0
「何ィ!」
森川が、田辺の弱々しく崩れ落ちる様が、己を油断させる為の擬態だったと気が付いた時には、最早周囲は煙で覆われていた。
これはまずい、と森川は瞬時に判断し、地を蹴り後ろに跳んだ。
この視界の不確かな状態で、縦横無尽の術者を相手して呑気に同じ場所に止まっている等愚の骨頂である。
バックステップ。
ほとんどつむじ風のような軽快さで瞬く間に煙の外へ脱出。
が、煙の外に出でて、地に足を着けようとしたその時――。
「結」
と、天から厳かな呪音が紡がれ――森川ジョージは立方体の光に囚われた。


 最初から、田辺の作戦は二段構えだった。
森川の左を受け止める、それが不可能だったとすれば、一撃で気を失ったふりをして、相手の油断を誘う。
どちらにせよ、彼女の狙いは、森川に邪魔されることなく、煙幕玉を使うことであった。
そして、それが成功した瞬間、彼女自身は森田戦で見せたトランポリンの柔軟性を持つ結界により、空に飛び上がっていた。
後は煙幕が届かない場所で足場の結界を作り、煙幕が途切れた場所に結界を潜ませ、森川が飛び出してくるのを待つだけというわけだ。
狭い路地裏故、逃げ場は前か、後ろしかない。
二択――しかし田辺は迷う事無く後ろを選んだ。
自分の結界術が、あのような弾力を持つことも、視界の不明瞭な相手には使えないことも、森川は知らぬ。
ならば当然、煙幕玉を使った以上、あの煙の中でも己に対して攻撃可能だと、森川は考えるはずだと思ったからだ。
確実性は無い。が、この圧倒的不利な情勢を覆し、一挙に勝利まで持っていくにはそれしかない。
外れれば、どの道である。
そして、田辺はその賭けに見事に勝った。
324結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 03:43:38 ID:GDol3Sug0
ふう、と濃い疲労の篭もったため息を田辺は吐いた。
森川ジョージを封じる結界は、なんと五重に張り巡らされていた。
これは、相手を取り逃がさない為のものであることもさることながら、それより先、
すなわち「方囲」「方礎」「結」の連鎖により敵を囚えた後――。
それを滅却する文字通り「滅」の段階において、結界一つ分程度の破壊力では到底この怪物は葬れないとの判断による。
田辺は凄い目でこちらを睨み付けている森川を冷たい目で見下ろした。
「――まさか、まさか、だろ? なんでこの俺様が貴様如きにって」
ぴっ、と胸の前で二つの指を天に向けて伸ばす。
「あんたにはわからない。こっちの世界に来た時点であんたの想いは捻じ曲がってる。
 だから、理解させる気も無い。わからないまま――消えな」
「――ッッ!」
その言葉に、弾けるように動く森川の姿を視界に納めながら、田辺イエロウは呪音を発した。

「滅!!」

声と同時、結界が音を立てて崩壊していく。
崩壊に伴う衝撃で、結界の周囲が煙に覆われる。
田辺、その様子を疲労と緊張の混じった汗を額から垂れ流しながら、じっと見守る。
仕留めた、という確信はある。
一つでも妖に致命的なダメージを負わす結界を、一度に五つも使ったのだ。
これは、彼女が重ねて形成できる限度――最大の攻撃である。
勿論多大な力を消費した彼女には、もう一度それを編む力は残されていない。
これで滅却できなければ、もうどうすることもできない――。
その思いが、彼女の神経を張り詰めさせる。
ゆっくりと、田辺はその背に背負った杖を手に取り、その先端に作られた円を、煙の方向に向ける。
「天穴」
その、呪により結界術の残滓と、四散した妖の血肉が吸い取られていく代物だ。
――煙が吸い取られていき、静かな闇が再び辺りを包んでいく。
そして、完全に煙が晴れた。
325結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 04:35:16 ID:GDol3Sug0
「あ…ああっ!」
田辺は驚愕の――悲鳴に近い絶叫を上げた。
煙が晴れたそこには、右の拳を天を突くようにに伸ばした体勢で、赤目の魔人が健在していた。
満身のあらゆる場所に刻まれた傷跡とそこから流れ落ちる鮮血が、
田辺の結界術の爪痕を僅かに残してはいたが、致命的なものでは、無い。
「そんな、馬鹿な――だろ? まさか、私の術で滅ぼされないなんて、か?」
残忍な笑みを浮かべ、赤目が嗤う。

「なかなか――スリルあったぜ」

田辺は答えることが出来ない。
結界の上に棒立ちになり、森川を呆然と見詰るその様はまさに――。
絶望という文字を絵に書いたような姿だった。
326結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 04:37:12 ID:GDol3Sug0
レスアンカー忘れ。
>>241
Aブロックの裏路地からの続きです。
327結界師の「戦い」:2005/03/25(金) 04:38:44 ID:GDol3Sug0
>>241じゃない…>>254だ。
度々すみません。
328作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 17:03:37 ID:1k00QtEb0
ドキドキ
329作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 22:15:56 ID:Oc2N+5yD0
妖魔王勢って、イエロウタンにとって一番相性がいい相手のはずだが
大罪衆が強すぎるせいで、今のところまるで役に立ってない……
このままでは荒川タンに続く、「嬲られ役が似合う女キャラ」になってしまうぞw
330出発:2005/03/25(金) 23:12:08 ID:92CsdlVe0
(>>223)
解王「・・・もう行ってしまうのか?」
鳥山「ああ。今から出発すればの決勝戦には間に合いそうだからな」

鳥山はマシリト解王に背を向けつつ言う。
今日はえなりVSガンサン、明日はバンチVS裏御伽の試合があり、一日の休憩のあと
それぞれ勝ったチーム同士で矢吹トーナメントの決勝戦がある。

解王「えなりチームは苦戦しておる・・・・。決勝にいけるとは限らんぞ?」

下界を見下ろしつつ解王も言う。

鳥山「でも・・・・行かねえ訳にはいかねえ」
解王「そうか。しかしおぬしら、仮にトーナメントに優勝してどうするつもりじゃ?」
331出発:2005/03/25(金) 23:12:40 ID:92CsdlVe0
そういえば最初は板垣を仲間にするため・・矢吹を倒すため参加した矢吹トーナメント。
しかし今は事情が違う。KIYU、ゴッドハンド、妖魔王軍、評議会と新たな敵が
次々出てきて、矢吹だけを見ているわけにはいかなくなった。

それでも。

鳥山「矢吹は止めなきゃなんねえ。きっと・・・・・・・・荒木も同じ事言うさ。
   それが、あいつとオラの約束だからな」
解王「・・・・『あいつ』とはえなり一世か・・・・?」

うなずく鳥山。

解王「・・・・トーナメントが終われば、矢吹は必ず何らかの行動を起こすじゃろう。
   何をしでかすかは分からんが・・・・行って皆を助けてやれ」
鳥山「わかった。いろいろ世話かけてすまねえ、解王様・・・・」

そう言うと、遥か上空のヘビの道に飛び乗り、走っていった。

解王「・・・・そうか・・・・決勝の日はあやつの命日じゃったか」

解王「えなり一世よ・・・・お主の思い、皆に引き継がれておるぞ・・・・」
332作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 23:39:26 ID:ohdrF/xO0
明日は休みじゃないよ〜
23部11より
>今日は準決勝、明日が決勝、そしてあさってが十人衆発表セレモニーと表彰式!

まあこの際ヤブーキの独断で休みに変更してみてもいいけど
(この場合は決勝戦後すぐ表彰式→蝕)
別の伏線ごまかさにゃならん・・・

えなり父との因縁もあるのか、色々絡んでるなあこのシト
333出発:2005/03/25(金) 23:51:01 ID:92CsdlVe0
ぬおおおお失敗した!日程がどうしても見つからなかったから勝手に書いたが失敗した!

「今日は準決勝、明日が決勝、そしてあさってが十人衆発表セレモニーと表彰式」に
訂正しといてほしいっすorz
334作者の都合により名無しです:2005/03/25(金) 23:55:35 ID:ohdrF/xO0
よーしボク未完成の隠しページ捧げちゃうぞー
('∀`)ノhttp://www.geocities.jp/enyarino/enyari/text/q-a.htm
335作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 00:01:15 ID:P7X9EAYB0
>>334
サンキュートーナメント解王様・・・・それ見てから書けばよかったよ・・・
336作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 00:07:56 ID:qTW7OAny0
早く新装倉庫開設しないとなあ(´・ω・`)ゴメンネ
337傲りと誇り:2005/03/26(土) 06:22:20 ID:g9Fq7vO30
>>311
眼前を埋め尽くす鉄砲水。
なまじ隔壁を降ろした為に高まった機密性とこの水量、そして勢いが合わされば、
むべなるかな、その水圧は相応のものとなる。
強殖装甲とて只では済まない。
――――尤も、そう簡単に引っ掛かるタマでもないだろうが。
気怠げに巣田は思う。
その身体の華奢な輪郭から、陽炎のような揺らめきが立ち上る。
揺らめきはは特殊な“気”の鍛錬を積んでいない常人でも視認できるという、奇妙な物であった。
これこそが、先程の執務室での立ち回りを可能にさせた。
魔境に於いてその真価を発揮する、巣田の本来の力。

その名を―――――― 人 竜 < イ ン ナ ー ド ラ ゴ ン >

エネルギーと物質の中間のような存在で、宿主が死なない限り決して死ぬことは無く、
たとえ千万の欠片に斬り散らされてもたちどころに復活する。
加えてその形は千変万化。通常は竜の形をとるのだが、
巣田の場合は魔境でなければ竜形にはならないため、人間界では主に不定形や文字となって活動する。
不定形―――つまりは、どんな隙間からでも侵入できる。
煙幕の中でまずは自分に擬態させて囮とし、高屋を一瞬足止めする。
その間に隔壁に侵入させロックを解除、隔壁を少しだけ上げ横に寝転がって脱出、
10秒後通路の端から迎撃開始、水の巻発動。
大まかな流れはこんなところ。
隔壁の手動ロックは予想内だったが、何より自分の背丈の無さが幸いした。
『散っちゃいってことは便利だね』と、どこかで聞いた言葉を思い出す。
蓋し、名言。
胸中でそう呟いた時には、身を翻し駆け出していた。
靴音は水音に掻き消され、もう聴こえない。

338傲りと誇り:2005/03/26(土) 06:23:21 ID:g9Fq7vO30
目の前には大水。巻き込まれればダメージは深刻。
瞬時にそれだけ判じ、ガイバーTは左胸に手をかけ、躊躇い無くこじ開ける。

貫いてくれるなよ・・・・・・――――――

念を込める。祈りに近かった。
溢れ出す光。
水との距離は髪の毛ほど僅か、後一刹那で完全に埋まる。
しかし、それは永久に埋まることは無く、また挽回も出来なかった。
駆け抜ける光条。
外気に晒した左胸の内部から迸る破壊の滅閃が、その凶悪な熱量を以って獰猛な水の顎を打ち抜き霧散させ、
冗長な胴体を真ッ直ぐに疾駆し切り裂いて巣田の居た位置を通過、そのまま奥の壁を貫く!
それでも滅閃は死なず、通算6枚目の壁に激突、半融解させてやっと停止、クラウドゲートが僅かに揺れた。
胸部粒子砲・メガスマッシャー。
エネルギーを落とし、ピンポイントで発動してもこの威力。
流石はガイバーTの最強の武装。だが強力すぎる故に、使い所もまた限定される。
(クラウドゲートの中で使うことになるとはな・・・・・・)
安堵する。冷や汗が流れた。
それでもみすみす逃がす様な事態にならなかった事は僥倖だった。
6枚目の壁は奇しくも最後の1枚、突き抜ければ外。
そして今は半分融けて内部の配線を露出させていた。
剥き出しのコードから火花が散る。
漏電を防ぐためセキュリティが発動、電流がカットされ最上階が闇に沈む。
次いで損傷配線の遮断が自動で進み終了したところで電源復旧、再度照明が点灯する。
目に映る、数秒前と同じ風景。
巣田の姿は完全に見失った。

339傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/26(土) 06:26:27 ID:g9Fq7vO30
それでも高屋は落ち着いていた。
焦らずセンサーを機動し侵入者の位置を割り出す。
しかし――――違和。程なくして認識する事実に、少なからず驚いた。

「2人だと・・・・・・!?」

我知らず、声が漏れる。
念の為情報管制セクションに通信し、各種監視装置の映像をロードするが結果は同じだった。
巣田と全く同じ容姿と服装、そして同じ傷を負ったもう1人が真下の階を駆け抜けていた。
その体からは揺らめきが立ち昇り、互いを繋いでいた。
人竜の擬態。
噂には聞いていたが実際に見るのは初めてだった。
それでもここまで完璧な模倣をするとは、流石の高屋も思わない。心中、舌を巻く。
と、巣田の映像と目が合った。
瞬間、砂嵐に変わる。
2人の巣田は、いままた隔壁を開き、更に下階へと疾走する。
監視装置を叩き潰して。
高屋の顔から、笑みが失せた。
340作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 09:10:04 ID:jC2LbqAA0
おお、巣田逃げられたか。よかった。
てかメガスマッシャーやっぱりすげーなー。威力落としてあれっすか。
341今、そこにある危機!!(78/180):2005/03/26(土) 11:59:57 ID:Q0DQZCag0
意外と達者な手つきで抜かれた拳銃が立て続けに火を吹いた。神魔にすらダメージを与える魔族製の弾丸。
金属同士の弾き合うような鋭い音。
今井はそれを、薬指から伸ばした『鎖』の円環部分で絡め取るようにして防いでいた。
(―――『鎖』でタマを止めるとは)
驚く椎名。まさしく妙技。鎖の名前は『導く薬指の鎖(ダウンジングチェーン)』。
「―――だが近付かせんッ!!!」
ミドルレンジは椎名の十八番。この距離を維持するため、軽やかなフットワークで接近してくる今井を、起爆の意志を込めた『文殊』で引き離す。
業火爆煙。
(―――見えたね。『爆』か―――宝玉に込めた意思を一文字で表し、力のベクトルを完全に誘導・制御する能力 随分と、便利な力を持っている♠)
見切り。さらに試すように人差し指を伸ばし、存在しない照星と照尺を重ねて、『霊丸』を放つ。
椎名は慌てず騒がず、冷静に『文殊』に『盾』の文字を浮かべ、これに角度をつけて構えた。
斜面を滑り上がるように弾かれた霊気の塊は、遠く、観客席を覆う天蓋を爆散させる。
(能力の応用に際限が無い以上、命を賭して動きを止めねばトドメが刺せない 遊びで接近するには危険すぎる―――)
大気が身動ぎするように震えた。今井がかざした右手刀に、目に見えぬ何かが集束してゆく。
(と、普通の使い手なら思うだろう、ね ふん―――時間稼ぎがみえみえだよ)
椎名のうなじに怖気が走る。
(ッ!?)
        ドラゴンヘッド
     “ 龍 頭 戯 画 ” !!!!

絶対に届かぬ筈の間合いで突き出された今井の揃えた指先に、椎名は一切の迷いを捨ててみずからの身を横あいに投げ出す。

       ドラゴンランス
      “ 牙 突 ” !!!!

ごう、と砲弾でも掠めたかのような耳鳴りに、その判断が誤っていなかった事を、遅れて知る。
「………!?」
転がり、起き上がり、体勢を立て直して霊感を凝らせば。
今井の右腕から、その手が掴む範囲を広げるかのように、大蛇のような影がぼんやりと伸びて、見えた。
ひゅう、と褒めそやす口笛が届く。
「よく避けたね でも♦」
たしかに、安心するのはまだ早かった。見える者には見える、その龍の形が。警戒を強めるコブラのように鎌首をもたげ始めたのだ。
342今、そこにある危機!!(79/180):2005/03/26(土) 12:01:04 ID:Q0DQZCag0
(マジで何者だ!? 戦闘経験の豊富な奴だ。こちらの狙いが一瞬で見抜かれた―――だが、今井なんて名の漫画家に、心当たりは全く無いぞ!?)
吹き降ろす山風のような二撃目が、弧を描いて襲来、かわす椎名の体スレスレで顎を閉ざす。
服の脇腹が千切れて飛ぶ。さらにそのまま円周を完成させて、気付けば、“龍”の胴体に取り囲まれて。
(くッ!?)
区切られた地面を猛スピードで狭めつつ、Φの字の形で頭部が迫る。
椎名は、持ち手が中ほどにある“双『剣』”と変えた『文殊』をつっかえ棒に、人を丸呑みにしそうな巨大な牙が閉じるのを阻む。
少しでも手を緩めれば、次の瞬間には噛み殺されるだろう。
だがその間にも、椎名と龍頭と、今井の右手とを繋ぐ龍の胴体は、着実に“短く”なってきているのだ。
それはどういうことかといえば、つまり、“二人の距離が縮まってきている”。
コンクリートに、岩石の散弾を叩きつけるような轟音。
拳を中て合える間合いに突入した今井が、『龍』を消し、慣性もそのまま、両手両足を使い、水も洩らさぬラッシュをかけたのだ。
椎名が龍に捕まってからここまで、実に二秒半。
ひとかたまりになった二人はそのまま壁面に激突し、もろとも灰色の爆煙に消える。
「……ぐっ……がっ……!」
咽るような悲鳴とともに、今度は、あっさりと人影が戻る。
立っているのが今井、そして、襟足を握られ、引き摺られているのが椎名。
「ま、それなりに楽しめたよ♠」
粗大ゴミのように放り捨てられ、転がる体。
(……なんて……野郎だ……!)
体術で劣るとはいえ、三分の一ほどは自分のガードも間に合った。咄嗟に全身を硬質の『魔装術』で覆いもした。
なのに、このダメージ。骨の二、三本は軽く持っていかれていた。
「努力賞……ってところだね♥」
仰向けで大の字になる椎名に、メトロノームのように人差し指を揺らしながら、今井。
そして、言うだけ言うと、もう興味をなくしたのか、ふいと踵を返し、次に行こうと一歩目を
「―――待てよ」
背後からの声に、色の抜け落ちた瞳で今井が振り返る。
「『そういうタイプ』には見えないけどね♣」
たしかに、死んでも貴様は俺が止める、とか、そういう台詞が実に似合わない男だ。
「―――ま『そういうタイプ』じゃないのは、保証する」
椎名は苦笑し。こんな軽いものすら持ち上げるのが億劫だ、と、言わんばかりの『文殊』を見せつける。漢字が、静かに繋がった。
「―――【専】――?」
343今、そこにある危機!!(80/180):2005/03/26(土) 12:01:52 ID:Q0DQZCag0

1.第一であること。何よりも大切なこと。
2.自分の思うままにすること。

1では意味が分からないし、2では万能に過ぎる。世界を思うが侭確変することが出来る漫画家という人種も、“基本原理”は通常人類となんら変わりない。『みずからの力量を超えた作用はもたらすことが出来ない』。
事実、文殊はただ静かに輝いているのみで、変容のそぶりすら
「!?」
その時今井はようやく気が付いた。
みずからの体が、“縛られたように”動かない事に。
「ハメたぜ」
額から血を流しつつも、不敵に笑う椎名。
「うしろ、見てみな」
その通り、今井が重い首を回して見ると。
背後の地面。先ほど今井と椎名が突っ込んだ瓦礫のひとつに、輝く文殊がちょこんと乗っている。
あれは―――
「―――『糸』?」
『専』同様、それひとつではなんら作用しない宝玉に、一体なんの意味が―――いや、まてよ、『専』、『同様』―――
―――そうか。
絶体絶命の窮地を嬉しそうに笑い。今井は、瞬時に合点のいったそれを言の葉にのせる。
「―――『糸』と『専』、合わせて『縛』か♠」
「―――そう。『縛』にする為必要な最後の『、』は、『糸』と『専』の、間の『点』――――今井、あんた自身てわけ、だ」
全く動けないわけではないが、十重二十重に括られ、重石でも付けられたような感覚。一メートル歩くのにも苦労しそうだ。
ゆらり、と、風の無い日の旗のように、椎名が背筋を伸ばした。

「―――捕獲 完了」
344安西信行修行変(試合中)(81/180):2005/03/26(土) 12:04:18 ID:Q0DQZCag0


「サンキューおやっさん! おもしろいように野菜が揚がるぜ!」
「そうじゃ その調子じゃ!」
既にして息ピッタリなキッチンコンビ。
回鍋肉(ホイコーロー)に青椒肉絲(チンジャオロースー)、エビチリ、マーボーに、酢豚もござる。
練習がてら次々とあがる、それら中華料理。お呼ばれした両チームの補欠は競うようにがっつく。
「……ふむ、ふまい」
「こりわぱまらん」
「フォォオオォオオォオオオッ!!!」
まあ、客の殆どは、試合からハネられたあんど慶周なのだが。そこは差別無しの方向で。
ちなみにこの即席野外中華飯店(試合会場そのものは屋内)は、センターラインと直角に接触するサイドラインをまたぐ位置に作られている為
敵味方の区別無く、さらに試合中の人も、補欠の人も寄っといで仕様となっている。
……と、そこに、見慣れぬ、黒の三つ揃いを喪服のように着こなした男が、ふらりと現れた。
オールバックに垂れ目がアクセントの、その謎の男は、ぶしつけにこう言う。
「チャーハンを貰おうか」
安西は許可を取るようにおやっさんを見る。そして、首肯に、よっしゃ! と挑むように、ゴハンを中華鍋に叩き込んだ……
345作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 13:49:00 ID:jC2LbqAA0
こっちも炒飯一丁(・∀・)ノ
お昼まだなんだ、おなかすいたよw
346作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 18:42:49 ID:3fSK7mUE0
椎名、田辺と小学館の試合巧者が魅せてるねえ。
田辺はねじ伏せられたが、椎名はさてどうかな。
347作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 21:22:08 ID:nnct2PJD0
椎名と、富・・・じゃなくて今井は、能力的にかなり似通ってるから、
戦いが拮抗して面白い!!

田辺vs森川のように、異種対決も良いが、
やっぱり俺は、同ジャンルキャラ同士の
戦いの方が好きだな。
348作者の都合により名無しです:2005/03/26(土) 22:02:44 ID:Akcq/I+70
田辺対森川が拮抗しないのは異種ジャンルとか関係無いと思うがw
まあ基本拮抗した戦いの方がおもろいわな。
349作者の都合により名無しです:2005/03/27(日) 00:15:55 ID:OU9qJN3n0
田辺対森川は、田辺に一人くらい援軍がいればもうちょっといけるかなって感じ。
しかし、椎名かっこいいなぁ・・・この勇姿を味方(の女性陣)が見て無いのがマジかわいそうだw
350作者の都合により名無しです:2005/03/27(日) 12:45:11 ID:dmCOL7A/0
戦闘に全く関係ない特技を身に着けたなあ安西w
このまま試合に参加しないでずっと料理だけ作ってたらちょっとウケルw
351作者の都合により名無しです:2005/03/27(日) 12:53:53 ID:FziOf96z0
このあと安西がどうなるのかひたすら楽しみ
352作者の都合により名無しです:2005/03/27(日) 14:08:16 ID:IyxE1qra0
>>350
いや、これは伏線と見た!
353傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/28(月) 05:54:32 ID:oyVWryiB0
>>339
そこは、一つの埃も落ちていない、だだっ広い直方体。
400ミリの特殊合金壁に密閉され、規則正しく天井に並ぶ照明が、無機質な光をばら撒いている。
平時は静物だけが支配するその空間は、今も変わらず口を閉ざし黙り続ける。
――――――はず、だった。
唐突に紛れ込む異質。
断続的に響く靴音、走る銀閃、散る火花。
「32個!」
口内で短く呟く。
暴威を奮い静寂の口をこじ開けて、蹂躙の嵐は尚も止まない。
1.5秒有る無しの須臾に鉄屑に変じた通算32個目の監視装置を尻目に、
自分の半身もまた25個目を破壊したのを感じながら巣田は33個目に狙いを定める。
跳躍、一閃。
手応えを認識しながら宙に放物線を描き、そのまま地に落ちる寸前でさらに一閃。
壁面に据え付けられた34個目を潰してやっと一息つく。
手にしている得物――豪奢な拵えの長剣――に目を落とした。
(この剣でも、あの装甲は貫けないでしょうね。でも、まだ手は有る)
じわりと瞼を伏せる。深呼吸を繰り返し、瞑目を続ける。
(そろそろ来るはず。あの人が何時までもこんな状況を続けるはずが無い)
後方で隔壁が閉まった。
――――来たか。緩やかに目を開く。
前方に気配。現れた獣化兵は、これまでの相手と一線を画していた。
「・・・・・・エンザイムV」
厳しさを増した瞳で睨む。
対ガイバー戦用獣化兵エンザイムV。
その爪や尾に含まれる分解酵素は強殖装甲を容易く溶解させ、
加えて強大な運動能力と代謝速度を併せ持つように調製されている。
(しかもそれが3体、か。1人では分が悪い・・・・・・人竜を使うしかない)
判断し、人竜に帰還命令を出す。
同時に、エンザイムVが地を蹴った。
354傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/28(月) 05:55:32 ID:oyVWryiB0
エンザイムVはさらに地を蹴り付け、突進の軌道を変えた。
左の1体は壁面で、中央の1体は天井で反射し、そして右の1体はカーブを描いて突進する。
(左は囮、避けた所に中と右が同時に来る)
果たして、左が先に迫る。
(なら・・・・・・)
向き合い、その顔面の正中線上に白刃を投擲する。
命中。頭に剣が生えた。
間髪いれず柄へと跳躍、蹴りを叩き込んで一気に頭蓋を刺し貫く!
脳を潰された獣化兵は勢いのまま壁にぶつかり、それよりも速く残り2体の爪が巣田に迫る。
しかし、あわや引き裂かんという所で爪は静止する。
否、爪だけでなく、その身体さえも。
鞭の様にしならせた尾を繰り出すも、同様に空中で止まる。
エンザイムVの身体は、その形態を網状に変化した人竜に絡め捕られていた。
自在の硬軟から生じる強大な張力は、簡単に引き千切ることはできない。
宙で藻掻く獣化兵を無視して壁の死体から剣を引き抜き、巣田は無造作に一閃、
首が落ちる前に炎を放つ。
死体は瞬時に火の山となり、暫らくすれば炭の山に変わる。
間。
そして――――真横に剣閃。炎が揺れる。
新たに襲撃してきた3体のエンザイムVが、水平切りを飛び上がり回避、そのまま尾撃を放つ。
胸に、頸に、下腹に、湾曲しながら槍尾が迫る。
それらすべてを、剣、或いは体捌きで巣田は躱す。
だが、曲線の一撃が、傷口の鎮痛薬符を千切り飛ばした。
「ッ!!」
瞬時によみがえる痛みに、苦痛の息が漏れる。
鈍る反応。さらに爪撃尾撃が追いすがる。
(ぐうぅッ・・・・・・!)
痛みを堪えて迎え撃つ。
空裂く爪尾と剣が交わり、空舞う火花が百花繚乱と咲き乱れる。
しかし巣田は危惧を感じていた。
捌き、或いは躱して凌ぐも、手数の差は明白。こっちは剣1本だが、相手は爪尾合わせて9つ。
今に防戦一方になってしまう事は予想できた。人竜も介入の糸口を掴めずにいる。
355傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/28(月) 05:56:36 ID:oyVWryiB0
ずきりと痛む胸の傷から、出血が再開する。もはや猶予は無い。
間断なく打ち出される連撃の雨の中、頬を掠めた尾を掴み、渾身の力で引っ張る。
同時に人竜が足を掬った。中央のエンザイムVがバランスを崩され引き倒される。
次いで再び剣を投擲。その柄には人竜が括ってあった。
低位置で放たれた白刃は、右方のエンザイムVに迫る。が、その場で跳躍され当たらない。
その時、柄の延長と化していた人竜が獣化兵に絡みつき、空中から刃の真上へ引き落とした!
心臓を串刺す形となり、そのまま絶命する。残り2体!
と、不意に、目の前が陰った。
左から迫っていた敵が、壁、天井と跳ねて正面から迫っている。
左右の10爪が風を切るよりも速く、巣田は前方へ飛び出し間合いを詰め、
左手に掴んだ槍尾を眼前の腹部へ突き立てる。
強力な分解酵素を含んだ尾は、特殊な保護をされていない肉の鎧を容易く溶かす。
そのまま縦に裂いて内臓を外気に晒し、拳を打ち込みこう叫ぶ。

              「 臓 物 を ブ チ 撒 け ろ ! !――――――なんてね」

左手に火球が5つ燃え上がり、発生した夥しい熱量が一瞬で水分を沸騰させ、各組織を膨張・破裂させる!!
哀れエンザイムV、爆裂四散。
爆ぜ飛ぶ血とモツのシャワーを一身に浴び、さらに前へと駆け抜ける。
残り1体、もはや射程内。
再度使い魔を呼び出し、右の拳に収束。そのまま脳天に叩き込む。
炎に包まれた頭部が崩れていく感触を確かめ、心底からほうと息を吐いた。
肉の焼ける匂いに包まれて、血雨に真っ赤に染められた身体を抱きしめて――――――
安堵の間隙に入り込む痛みに、巣田はようやく気付いた。
尾を掴んだ左手は、皮膚が灼け爛れ、桃色の肉に赤色の血が彩りを添える。胸と腹の傷も、少しばかり開いていた。
「痛ッ・・・ひどいな・・・・・・ガラにも無いコトなんて、するもんじゃない・・・・・・」
愚痴る。とりあえず、動く右手で薬符を貼ろう。
まずは解毒符で分解酵素を中和し、鎮痛・止血・解熱符を貼り付ける。腹の傷も同様。
ついでに造血符も貼っておいた。程なくして雪のように痛みは消え、頬に赤みが増す。。
立ち上がり、懐中を探る。
「さて、と・・・・・・・」
反撃開始だ。天井のカメラを睨みつけた。双眸の輝きは、未だ失せない――――――――
356拳鬼vs結界師−死刑執行:2005/03/28(月) 23:13:46 ID:2zDMUezN0
>>325
足場としていた結界が崩壊し、田辺は地上に降り立つ。
意図してそうした訳ではない。
目の前の妖に対する驚愕、そして恐怖が、結界を維持するだけの集中力を奪っていた。
呆然と立ち尽くす田辺に、森川は獲物を狙う爬虫類のような目つきで言い放つ。

「なんだ? もう終わりかぁ?」

揶揄するようなその声が、田辺の思考を復帰させた。
――落ちつけ。冷静に考えるんだ。
この妖は自分の最大の攻撃――五重の結界による『滅』――に耐え切った。
ダメージは与えたようだが、こちらに再度五重結界を成形する余力はない。
そして……例え余力があったとして、やすやすとそれに捕らえられる相手ではないことは既に証明済み。
つまり、今の自分にこの妖を倒すすべはない、ということになる。
悔しいが、ここは一旦退くべきだね。――

しかし、そう決断し、後方に足を踏み出そうとしたその瞬間。
田辺イエロウの意識は断ち切られた。
田辺の動きを察知した森川が一瞬で間合いを詰め、その拳を彼女のボディに叩き込んだためだ。
突き抜けるような衝撃に遅れて、凄まじい苦痛が田辺を襲う。
「喧嘩売っといて逃げる、ってのはねえだろ?」
だが、崩れ落ちた田辺に森川のその声は届いていない。
激痛で思考は乱され、腹部への強烈な打撃は、嘔吐という身体の反射を呼び起こす。
吐瀉物が否応なく田辺の衣服を汚していく。
それに構わず、森川はうずくまる田辺の髪を掴み、無理やり引き起こす。

「汚ぇな、ゲロまみれだぜ」
田辺が目を開けると、眼前で赤目の魔人――森川がニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべて言った。
「ま、脱がしちまえば問題ねえか」
357拳鬼vs結界師−死刑執行:2005/03/28(月) 23:14:54 ID:2zDMUezN0
苦痛に支配された田辺の意識の中で、僅かに残った冷静な部分が叫ぶ。
奴は勝ちを確信している。隙だらけだ。
今ならば――
「け……」
油断しきった森川、その眼球を狙って小型の結界を成形、即破壊し、視力を奪う。
それが田辺が咄嗟に思いついた起死回生の策だった。
しかし、結界を成形するための呪言、『結(けつ)』。
そして、成形した結界を、取り込んだ対象ごと滅却する『滅(めつ)』。
そのわずか二語を紡ぐ暇すら与えず、森川の拳は田辺の頬を打ち抜いていた。

掴まれていた一房の黒髪を森川の手の中に残し、殴られた勢いのまま田辺は地面に倒れこんだ。
奥歯が折れ、口中に鉄錆のような血の味が広がる。
「まだそんな元気があんのかよ。楽しませてもらえそうだなぁ、え?」
森川はそういうと、田辺の襟元に手をかけ、力任せに服を引き裂いた。
自分の胸元があらわになったことを、視覚ではなく澱んだ空気が触れたことにより知る。
反射的に胸を隠そうとした腕も、力強い男の手にあっさりと押さえ込まれた。
恐怖、怒り、後悔、諦念。
様々な負の感情が、田辺イエロウの心中で渦巻く。
(畜生!)
涙が溢れるのを堪えるために、必死に目を瞑る。
相手の力量を見抜けずに仕掛けた自分。
その未熟さが、これからこの下衆な妖によって蹂躙されるという結果をもたらすのだ。
抵抗することもかなわず、ただ唇を噛みしめる。

――だが、その瞬間はいつまで経ってもやってこなかった。

不審に思い恐る恐る目を開けると、自分の上にのしかかった森川は、あらぬ方向に目を向けていた。
反射的に、その視線の先を追う。
二人から10メートルと離れていない場所に、その男は居た。
358拳鬼vs結界師−死刑執行:2005/03/28(月) 23:16:13 ID:2zDMUezN0
―――まるで、雷がビルを貫き、地表につきささるようにその男はあらわれた。―――

―――そして、彼の目線はどこも見ていなかった。―――


五感と第六感の認識の齟齬が森川ジョージを混乱させていた。
190センチを超えるであろう長身に、だらしなく着崩したスーツ姿。
ポケットに両手を入れて佇む男は全くの無表情。
森川が放つ濃密な殺気、そして狂気に、まるで気付いていないかのようだ。
いや、むしろ呆けているようにすら見える、その様子からはなんら危険なモノは感じられない。
にも関わらず、闇に堕ちたことで以前より更に鋭くなった森川の勘は最大級の警告を発し続けていた。
そして何より――

(いつからそこに居やがった?)
(いくらこの女と『遊ぶ』のに夢中になっていたとはいえ、ここまで接近されて俺が気付かないだと?)

「誰だ?……」
コイツを前にして、女に構っている暇などない。
そう警告する己の勘に従い、森川は田辺から手を離して立ち上がると、男に問う。
男は初めてその視線を森川に向けると、ただ一言、こう名乗った。

「 柴 田 」

と。
359マテリアルなパズル(82/180):2005/03/28(月) 23:32:00 ID:K0d0b6q20
さて椎名が奇跡の大活躍をし、安西が究極の料理人の第一歩を踏み出している頃。
おあつらえ向きの≪変態サッカー≫シリーズでありながら、
今まで活躍どころかロクに出番のない男がいる。

カムイ「――“まだ”か、土塚!」
土塚 「いくらなんでも全体の人数が多すぎますからねえ・・・もうちょっと」
表情を変えずに自分のこめかみをトントントントン、
指でつつきながらフィールド全体を見渡す男。
存在変換し、最強形態<ティトォモード>に身をやつした土塚理弘である。
彼の特技の超記憶力≪仙里算総眼図≫―――
対象のあらゆる情報を取り込み脳内で組み立て、
対象の行動を先読みする、恐ろしいスキル。魔法ではなくモードの特性である。
ただ相手がある程度情報を曝け出してくれるタイプでなければ、
完全発動は難しい。・・・とはいえ完全発動しても、先読み可能時間はせいぜい1分以下だが。

そして土塚は最初に今井を観察対象にしていたのだが、
相手が悪かった。今は対象を切り替え、大和田にロックオン中。
・・・やっぱり相手が悪い気もするが仕方がない。
あっちゃこっちゃへ戦場求め彷徨う大和田を、土塚はこめかみを叩きつつ、
必死に情報を取り込んでいる。――あいつはまた何かをやらかす。
その時に少しでも試合を有利に運ぶために、
敢えて数歩引き、試合全体の流れも含めて危険人物を目で追い回しているのだ。

トントントン――――  土塚の指の動きがだんだん速くなる。
土塚 ( ――――― 来る ――――― )
彼の脳内でいよいよ、全ての情報のパズルがはめ合わされる―――――――寸前!!
モコモコと足元の芝生が盛り上がり土塚の視界を一気に塞いだ!!

X仮面「ぶはぁぁ!!死ぬかと思ったが自力で復帰したぞぉぉーーーーーー!!」
土塚 「・・・なんか一気に思考回路が吹っ飛んだよ・・・」
哀れ土塚、ゾンビのように復活したX仮面のせいで振り出しに戻ってしまった。
まあとりあえず、チャーハン食え。
360作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 00:01:24 ID:/4ewyWK2O
頑張れ土塚!!

あとさりげに口調がアダさんでワロスww
361作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 01:10:35 ID:IVlDt1qQ0
案の定剥かれたかイエロウ……
そして久々にヨクサルの出番がキヤがッタァア―――――ッ!!
362作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 01:21:50 ID:n+kOVrm80
X仮面ふかつキタ━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━ !!!!
土塚は・・・うん、がんがれw
363光速のランナー(83/180):2005/03/29(火) 02:59:51 ID:IVlDt1qQ0
>>267

前半終了間際。FWである樋口大輔は、再び自分のところにボールが送られてくるのを待つ。
今はえなりチーム側の攻撃が続いている。樋口は、自軍がカウンターをかけてくれることを信じて、乱戦を見守る。
ふと、樋口は、現在のボール保持者を見つけた。
平均して体格のいいえなりチームメンバーにあって、その男の小柄な体躯はいやでも目についた。
(確か……富沢ナントカ…言ったような…)
正直、影が薄すぎて忘れていた。野球のときからチームに加わっていたらしいが、ろくな活躍もしていなかった男である。
ぶっちゃけ、どこにいたのかすら覚えていない。
作品も極めてマイナーだ。特筆すべきは、せいぜいあの板垣恵介のアシだったということぐらい。
当然、顔すらも覚えていなかった樋口だが、確かめようとしても富沢の顔はヘルメットで覆われていて定かではない。
(どっちにしても……そんなに警戒する相手でもないか)
ボールをいまだに持っているのがアレなら、すぐにカウンターは成功するだろう。
ほら、そう思ってるそばから、水野たちDFが寄ってきて…………

      ―――――――z_______  
                        ド   ン  ッ  !!!
                        
「!!??」
一陣の疾風が、フィールドの空気を震わせた。
闘争に蠢く者も、サッカーに専念する者も、一瞬一様に目を見張るほどの速度。
それは刃のように地をえぐり、空間を稲妻の形に切り裂いた。
その一瞬の爆発が、ガンサン守備陣に間隙という名の亀裂を生じさせ、その後には一筋の道が続いていた。
その道を、迅雷が駆け抜けていった。
364光速のランナー(84/180):2005/03/29(火) 03:01:16 ID:IVlDt1qQ0



(あの……『鋭い走り』……!!まさか……!!?)
雑魚と認識していた男が見せた、神速。
小柄で頼り無いと思われた体躯は、今や放たれた矢と化して、えなり陣地を貫き進んでいく。
虚を突かれた形になったガンサンDF陣が、自分たちの横をあっさりと抜き去っていった男を、ただちに追い始めた。しかし――
(無駄だわ……縦に抜かれたら―――あのスピードを止める術はない)
水野たちが懸命に、走る男を追い掛ける。しかし、まるで追いつけない。
(私の40ヤード(37メートル)走のタイムが……4秒37……)
ちなみにマリナーズのイチローが盗塁王を取ったときのタイムが、4秒4である。
サッカーで鍛えた樋口の俊足は、まさに音速の脚といっても過言ではない。
(でも壁があるのは、その先だわ――)
人間の限界点――40ヤード走4秒2。一流のプロでも多くはいない。
4秒4が音速の世界ならば―――4秒2は光速の世界。それほどの高い壁がある。
樋口自身も、あの高橋陽一ですら、その壁を超えることは出来なかったのだ。しかし。
(――でも、私はひとりだけ知っている!ジャンプのスポーツ漫画家で、たったひとりだけ、その壁を超えた人間を!!)


         カ  ッ  !!


男の走りは、風を超え、音を超え、閃光と化した。
必死に追い縋ろうとするガンサンDF陣を、絶望的な速度で引き離していく。


 光 速 の 世 界 ――――  

            
          40 ヤ ー ド 走  4  秒  2 
365ゴースト、現る(85/180):2005/03/29(火) 03:03:23 ID:IVlDt1qQ0
えなり陣地を真っ二つに切り裂いた、光速のドリブル。
とうとう迎え撃つは最後の関門だけとなった。
ガンサン鉄壁の守護神――金田一蓮十郎である。
その難攻不落の牙城に、今、新たな挑戦者が立ち向かう!!


     TOMISAWA(?)  V S   KINNDAICHI


金田一が、グォォ…とその大顎を広げて待ち構える。
挑戦者は、その速度をわずかも落とさない。
(急に歩幅縮めて、一歩でジグザグに踏み切る!!)
はたして、挑戦者の肉体は、金田一体内の広大な異空間へと吸い込まれ――――


     ゴ ォ ォ ォ オ ォ ォ ォ オ オ ォ ォ ―――――z________!!


刹那――『煙のように』――挑戦者の姿は消えた。
金田一の背筋を、得体の知れぬ寒気が、刃物のように刺し貫く。


           ザ   ッ  !!


ゴールネットを揺らす音で、我に帰った。
金田一が、珍しく訝しげな表情で真後ろを向くと、そこには果たして一刹那前まで自分の真正面にいた挑戦者と――そしてサッカーボール。
会場中が、壮絶な静寂に叩きこまれた。
366ゴースト、現る(86/180):2005/03/29(火) 03:04:14 ID:IVlDt1qQ0

カムイ「あの金田一が……棒立ちで抜かれただと!?」
土塚「違う……目の前で見れば分かる……あれは人間の曲がり方じゃない」    

1点を返された――――
その事実に、えなり側観客席は歓喜に沸き返り、ガンサン側は呆然と立ち尽くす。
   
金田一「走りながら消えた……?目の前で……霊(ゴースト)みたいに……」
金田一ですら、自分がなぜ抜かれたのか、全く理解できない様子であった。

そのころ、えなり陣地では―――

樋口「 デ ビ ル バ ッ ト ゴ ー ス ト 」

樋口が、確信を得たように呟きを発したところだった。
もはや、疑惑は確信に変わった。
眼前から忽然と消える、光速のランナー。
かつてジャンプにおいて、『究極の走り』を完成させた、唯一の男。
その男の名を、樋口は全身を貫く戦慄に身を震わせながら、口にした。


樋口「 『アイシールド21』  村  田  雄  介 」



      スコア  えなり1 ― 4ガンサン


←TO BE CONTINUED
367作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 03:08:08 ID:IVlDt1qQ0
ごめん、×えなり陣地 ○ガンサン陣地
368作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 03:22:36 ID:GOFtV5+F0
おおなんかスゲーぞ村田


てか、威張ってる稲垣よりこっちのが強かったのか!?
369作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 03:25:06 ID:n+kOVrm80
ホンモノの富沢より活躍してる━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!w
370作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 03:27:23 ID:KV8tziOjO
何気に前半終了近いね
スコアいい感じ
371結界師の「戦い」:2005/03/29(火) 04:13:11 ID:+vlHCkNx0
>>356
その場にいる人間全てが、その異様な男を見、注意を奪われたその時――。
ひゅんっ、と空気を裂く鋭い音を鳴らし、何かが森川の横っ面に飛んできた。
「――!」
森川、瞬間的に、その白い卵のような何かを目の端で捕え、左を放った。
不意の状況にも、瞬時に対応する肉体は流石という他は無いが――しかし、その超反射が、この場合仇となった。
森川の拳が当たった瞬間、それは弾け、粉塵を森川の顔に直撃させた。
その粉を吸い込んだ直後、森川は猛烈に咳き込み、更には痛みで両目を開けていられなくなった。
「―――ケケケ。唐辛子入りの特性目潰しの味はどうだ」
悪魔のような笑い声は直ぐ真横から。
依然として、森川の視界は完全に塞がったままだ。
「ずいぶんと俺様の家来を甚振ってくれやがったなぁ森川…テメエは――殺す」
――まずい。
怖気すら覚える、肌を刺すような冷たい怒りが真横から伝わってくる。
森川の戦士としての天鬢が最大限に発揮されたのはこの時だった。
見えない、と判断したとき森川は見ることを捨てた。
己の、観の力に全てを賭けた。
鋭く体を回し、相手が立っているであろう方向に正面を向く。
そして、本能の赴くままに右のスマッシュを下から魔槍の如く打ち放つ――!
拳に、顎の骨の感触が伝わってくる。
が、その一撃を振り貫くことはできなかった。
インパクトとほぼ同時――下から突き上げるような蹴りが森川の顎を直撃したのだ。
――弾けるように、二人の体が離れる。
「……やるじゃねえか」
蹴りを放った誰かは、忌々しげに呟いた。
事実、これは簡単にできることではない。
目で見ることが出来ないということは、どうにも不安なものなのだ。
特に、このように突発的に視界を奪われた場合なら尚更である。
空気自体を感ずる柴田ヨクサルですら、
両目の視界を奪われてからしばらくの攻防では、山本に一方的に攻められ続けたぐらいだ。
その状況で、森川は自然に反撃した。
己の当て感に絶対の信頼を持っている証拠であった。
372最後の一人:2005/03/29(火) 04:14:11 ID:+vlHCkNx0
この間ようやく、田辺イエロウは目前の入り乱れる事態に追い付いた。
「いつから――あんな場所に」
半ば呆れた様に田辺は言う。
当然であろう、その突然の乱入者が目潰しを投げた―要するに潜んでいた場所はなんと、
裏路地の脇に置かれたゴミ箱の中だったのだ。
「ケケケ、さっきの煙幕の時じゃ。あれはナイスだったぞ家来」
そう言って、“彼女”は笑った。
そう、この仰天すべき奇襲を敢行した者は女だった。
しかも、比類が無い、というべき美少女である。
その姿が目に入った途端、魂ごと吸い取られそうな稀有な美貌
腰よりも長い、癖の無い流れる水のような亜麻色の髪。
綺羅に輝く、琥珀色の瞳。
そのそこに居るだけで裏路地のねばつくような闇さえ消し去ってしまいそうな美貌は、見るものを、まるで天使が舞い降りたように錯覚してしまうであろう―。
……その目尻が凶悪に釣り上がり、唇の端に悪魔のような毒を孕んだ笑みが刻まれてさえ、いなければ。
そう、彼女こそ、スプリガン作戦指揮担当にして自称裏番。
その勝つ為ならそれでいいと云わんばかりのえげつない性情故、当初から積極的にトーナメントに勝ち残る気が無かった皆川亮二に敬遠されて小学館に待機させられていた通称「天使の顔を持つ悪魔」西森博之である。

「というか……私が殴られている間ずっと――」
「細けえことは後じゃ家来! ここで決めるぞ!」
イエロウの指摘を遮る様に叫び、西森は再びカモシカのような脚をしならせ、森川へと疾走する。
何やら釈然としないものを感じつつ、田辺は崩れ落ちた上体を持ち上げる。
「(動けない――でも、結界は作れる!)」
ずたぼろにされ、嘔吐を撒き散らしながらも、田辺イエロウは死んではいなかった。
きっと両目が塞がったまま立ち尽くす森川を睨む。
「ちいっ!」
目潰しを拭う間も無く、再度まだ見ぬ敵が突進してきたことを感じた森川は、裏路地の風景を頭に描き、脚を使い、ビルの壁を背にした。
この期に及んで、先程己の注意を奪ったあの男に後ろから奇襲されてはたまったものではないからだ。
373最後の一人:2005/03/29(火) 04:16:12 ID:+vlHCkNx0
これで、攻め手の攻撃範囲は限られた。
「らぁ!」
気合の声と共に、ストレートに拳が飛んでくる気配を感じ、森川は反射的にカウンターで左拳を繰り出した。
が、その瞬間、西森の拳が止まった。
「(フェイント! 小賢しいっっ)」
気が付いたとしても、こちらが止まることは不可能だった。
目の見えている状態であれば、絶対に犯さないようなミス。
それを引き出した西森が、邪悪に唇の端を釣り上げる。
ふわり、と魔鳥のように西森は飛び上がった。
そして、こちらに襲い来る左腕の肘の辺りを右足で踏む。
瞬間、全体重を片足で森川の左腕に預けた西森は、渾身の膝を森川の顔面向けて繰り出した。
シャイニングウィザード。
そう呼ばれる膝蹴りだが、本来の形は相手の膝に乗り、膝蹴りを放つ技だ。
飛んできた左の肘に乗っかりその技をこなす体さばきと柔軟なセンスは、喧嘩で鍛え上げられた西森ならではである。
――これは、当たる!
状況を具に観察していた田辺は、その一撃の的中を確信した。
しかし――。
膝が顔面を直撃する刹那―森川の上半身が消失した。
何も無い空間を、膝が凪ぐ。
その真下――上半身を背中とほぼ直角に曲がるほど反らした体勢で、森川が笑った。
異様な体勢である。
本来、反撃などできる状態ではない。
だが、西森は己の肌が総毛だつのを感じた。
「(――来る)」
空中で、膝を放った直後。
完全に無防備な西森の体を、真下から森川の拳が襲う。
それは、ストレートともフックともアッパーとも判別できぬ奇妙なパンチだった。
およそボクサーが放つ拳ではない。
ただ、それが凶悪な破壊力を持つことだけは、一目瞭然。
「結!」
森川の拳がヒットする直前に、その声は闇に響き渡った。
その呪音と同時に形成された結界が、西森の体を取り囲み、森川の拳を遮る。
374最後の一人:2005/03/29(火) 04:18:43 ID:+vlHCkNx0
轟音と共に、結界は破砕されたが、
その間断に体勢を立て直した西森が、結界の破砕により勢いの衰えた拳を避けるのは容易であった。
「糞がぁ…小賢しいんだよ」
野獣のように呻く森川。
対照的に後ろに一回転して田辺の隣に戻った西川は喜色を浮かべている。
「あっぶねえ〜ナイス、家来」
「礼を言うならその家来ってのを止めて欲しいんだけど…」
その間、森川は素早く腕で両目を擦るが、視界は戻らない。
「けーっけっけっけ、無駄無駄無駄ぁっ、俺様特性の目潰しは水洗いでもしなきゃぜってー取れねーんだよ。
 ざ〜んね〜んで〜した!」
うわぁ…とその嫌味に満ちた台詞に横にいる田辺も引いてしまう。
この台詞を、この美少女が言うんだからたまったものではないのだ。
予備知識の無い精神薄弱な人間が見たらショックで心神喪失してしまいそうな光景だろう。
――とはいえ、この状況、好機には違いない。
「西森先生、次は、私も攻勢に出ます。何とか動きを止めて下さい」
言いながら、田辺は神経を研ぎ澄ませる。
先程の五層の結界では、滅することはできなかったが、手傷を負わせることはできた。
ならば、攻める箇所を狭めれば、そのパーツは、滅ぼせる。
両手両足頭胴体。
六箇所のパーツを、田辺の目が射抜く。
局部に五層結界は、勿論田辺が実戦で試みるのは初めてだ。
「出来るのか?」
田辺の狙いを察した西森が問う。
問われて、出来ると自信を持って答えることはできない。
だが――。
「やらなければ、駄目なんです。あいつはここで滅ぼさないと、危険過ぎる」
その答えに、西森も頷く。
「そーだな。ま、いいさやってやらあ」
軽く言うその顔はしかし、真剣そのものだった。
375最後の一人:2005/03/29(火) 04:21:21 ID:+vlHCkNx0
西森の役割は重い。
視力を喪失しているとはいえ、あの森川の隙を作り、
もし田辺が失敗した場合には、その代償を真っ先に払わなければならない場所に身を置くことになるのだ。
二人の尋常ならぬ気配を察したのか、森川の顔つきも変わる。
森川は、しばし中空を睨んだ後、ゆっくりと両腕を下ろし、ガードを下げた。
両腕をだらりと足らした一見無防備な構え。
かつて世界戦を16度にも渡り勝利し、「悪魔王子」「狂気のプリンス」等と畏怖されたフェザー級ボクサー、
ナジーム・ハメドが好んだスタイルにそれは良く似ていた。
田辺と西森の二人と森川を分かつ空間が、一触即発の空気を帯び始めた。
が、その時、その不可侵の空間に、ひょいっと、無造作に一人の男が飛び込んできた。
柴田ヨクサル。
突如としてこの場に現れ、先程からこの事態を傍観していた男が不意に動いた。
何をする気だろうか、ただでさえ張り詰めた空気が、更に剣呑さを増す。
だが、ヨクサルは田辺も、西森も、森川ですら見ていなかった。
彼が見ているのは、誰もいない、ねばつくような闇の奥。
「無粋だな」
柴田が低い声で言う。
その声に反応してか、闇の奥から、ゆっくりと音が聞こえてきた。
そう、対峙する三人は気が付かなかったが、その声は数秒前から既にヨクサルの耳に捉えられえていた。
「――呪文?」
田辺が察したその時にはもう、その呪の律動は完成していた。
「魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾(セリエス)・雷の17矢(フルグラリース)!!」
轟音と共に闇から夥しい閃光が放たれ、鮮やかな放物線を描き田辺、西森、ヨクサルの三人に直撃した。
「結!」
反射的に結界を展開し、西森と自らを結界で守るが、前に立つヨクサルは無防備に晒されていた。
だが、合計六発の閃光に打たれたヨクサルは効いた風も無くそこに立っていた。
丹田の辺りに、両の手が地面に垂直に構えられている。
発剄により、苦も無く全ての攻撃を弾き飛ばしたのだ。
376最後の一人:2005/03/29(火) 06:47:26 ID:+vlHCkNx0
「その声、まさか――!」
一人、無傷な森川が、見えぬ目をそちらに向け吼える。
同時に、田辺と西森も又そちらを睨む。
全ての視線を一身に受け、その男は舞台役者のように洒落た足取りで闇の奥から姿を現した。
黒ずくめの男だった。
黒い山高帽子。
黒い外套。
黒い手袋。
黒いブーツ。
一分の隙も無く、闇を塗り付けたように黒で統一された姿から発せられるは、森川と同じく、おぞましき妖の気配。
「誰だ」
西森が問う。
「これは失礼、お嬢さん。私は赤松健と申します。かつての魔界十人集そして今は、大罪集が最後の一人。
 怨恨薄く転生の途中で消え果てた男のしがない代役ですが、ね。以後、お見知りおきを」
闇色の悪魔が、優雅に笑う。
裏路地を隠す闇が、一段と濃さを増していた。


大罪集。
森川ジョージ。
稲田浩司。
三条陸。
高橋ツトム。
夢枕獏。
和月伸宏。
えんどコイチ→赤松健。
377作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 07:24:41 ID:n+kOVrm80
なんかすごい進んでる(;´Д`)ハァハァ
新キャラが敵味方入り混じっていいな。てか赤松かよw
378作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 07:45:06 ID:IVlDt1qQ0
ジョージvsヨクサルという展開だと思ったので、かなり色々と裏をかかれた
西森イイ性格してんなーw
んでもって赤松か……聞くところによると最近はかなりバトル向けのネタを多数習得したらしいからお手並み拝見だな
しかしジョージと赤松って仲悪そうだw
379作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 08:20:00 ID:n18aj7UE0
>>378
いや、前にふつうに麻雀やってた>ジョージと赤松
ああ見えて赤松は意外と友達多い
380作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 10:00:47 ID:sXRd721L0
コイチさようならコイチ
381作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 11:50:18 ID:GOFtV5+F0
赤松…キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)−_)゚∋゚)´Д`)゚ー゚)━━━!!!!
382暗雲もくもく(87/180):2005/03/29(火) 11:54:18 ID:GOFtV5+F0
>>343 >>344
実は椎名は、この上、危険を犯してまで近付く気もなければ、トドメを刺す気もなかった。何故なら、今井の推察したとおり、彼の目的は単なる時間稼ぎだったから。
このまま平穏無事に時が過ぎ、休憩に入ってくれれば、基本、言うことはない。
「フ、発動エネルギーを感知させぬため単一では意味をなさない『文殊』を使い、ワザワザ『位置』を待ったのか♠ フフ、見事、だね♦」
だがどちらにしろ目を切るわけにはいかない。息することを思い出したかのように吐かれた今井の台詞には耳を貸さず、じっと、注意深く伺いつづける。
「―――押し通るのもいいが―――それも無粋だね♦ ―――折角だし『ご褒美』といこうか♣」
手品のように、今井の指先に、一枚のカードがひらめいた。


カチャ・・
出されたチャーハンを一口食べただけでレンゲを置き、垂れ目男は吐き捨てるように言った。
「……やはり馬脚をあらわしたな。なんだこのチャーハンは?」
「えっ?」
「全然パラッとしてない、ベタベタして食べられたものじゃない。いかがです、皆さん……」
親切心でリクエストに答えたというのに。はじめて経験するイチャモンに戸惑う安西の前で、他の客たちにも回されるチャーハンの皿。
やがて上がる声、声、声……その内容は、安西の癒えぬ哀しみを再び誘うものだった。
「……なるほど」
「チャーハンは、飯の一粒一粒がくっつきあっててはいけない。飯粒が十分に油を吸っていて、なおかつ一粒ずつがカラリと仕上がっていなければ」
「飯の一粒ずつが十分に火に炙られて香ばしくなければならないのに。これじゃチャーハンじゃなく西洋のピラフ、それも出来そこないのピラフだ」
「今になってみると、他の料理も平均点にいってるようで、どこかしら抜けているような気がしたが。その理由が今このチャーハンを食べてみてよく分かった」
「落第ですな」
一体何様なのか。突如として料理漫画の審査員集団のようなコメントを口にしだす、あんど&他。さっきまであんなに褒めてたくせに。
「―――いかがですおやじさん? 安西を弁護する余地が有りますか」
垂れ目男の質問に。傍でじっと瞑目し、耐えるように腕を組んでいたおやっさんも唸るように
「う……ぬ……残念ながら皆さんの言われる通り……」
そう同意する。信頼する師匠の、裏切りともとれる台詞。ガピンとショックで仰け反る安西に、トドメ。
「―――聞いた通りだ、このチャーハンは必要条件を満たしていない。チャーハンは炒め物の技術を見るのに最も適した料理だ
 中華料理の基本は炒め物、チャーハンがまともに出来ぬ者は中華料理の基本が出来ないということ、要するに、中華料理のコックとしては失格ということだ!」

   ドォ――――――ン!!!

突き刺すような垂れ目男の人差し指の前で、安西はよろめき、再び土下座するように沈み込んだのだった……
383作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 16:48:06 ID:sXRd721L0
ひでー
384作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 20:29:08 ID:KCa0BMII0
やっぱりキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
385作者の都合により名無しです:2005/03/29(火) 20:39:34 ID:wqo49IZD0
春と共にえらい勢いで投稿が増えているな〜がんばろ
386てんで性悪るーみっく(88/180):2005/03/29(火) 23:48:20 ID:GOFtV5+F0
>>382
   アカンパニー
「 “ 同 行 ” オン !! “ 高 橋 留 美 子 ” !!! 」

その細部こそ読み取れぬもののどうやらトレーディングカードらしい紙片を掲げたまま、今井は高らかにそう叫んだ。
次の瞬間、今井のそして椎名の体が、頭をクレーンに掴まれたかの如く引っ張り上げられ、グラウンド上空を駆け巡る。
しかしそれを『認識』しているのは今井側のみ。椎名は突然放り込まれた事態に、混乱の自覚すらないまま、ただただ目を白黒させる。
そして数瞬後、先ほどまで立っていたグラウンドの、しかし明らかに別の芝生に二人の両足が叩きつけられる。
「!?うわっ!?」
走っていた雷句が、『突如現れた』椎名にぶつかり派手に転ぶ。
自分もよろけ。払うように頭をふり、暫し。ようやく何が起きたのかを知る椎名。
ハッと面をあげると、誰かを探すように、キョロキョロと周囲を
「――てめえッ!?」
すぐさま見つけた今井の姿に、正確には彼の成している所業に、珍しく椎名が、本気の怒声を発した。
「動かないでね♠」
「ごめん……なさい、椎名君……」
片腕を完全に極められ背後に立つ今井の盾にされた、高橋留美子の苦痛に歪む顔。
多少屈折してるとはいえ本質フェミニストの椎名には耐えがたい光景だ。
「……人質、たぁな……『そういうタイプ』には、見えなかったが」
椎名の憎しみに澱む皮肉に
「フフ……フフフ……違うよそれは♦ 誤解だよ、椎名君」
恍惚とした表情で今井が応じる。
そう、人質なんてつまらない真似はしない。苦痛に歪む黒髪巫女の美貌は、まぁ、それなりにそそらないと言えば嘘になるが……。
「説明が要るかな? 同行(アカンパニー)は“瞬間移動”のスペルカード♠ 効力は、半径20メートル以内の人間ともども、好きな街や人のところまで―――」
女の香に喚起された欲情を押さえ込むためか。微妙に潤み、頬染める顔とは裏腹に、冷静な解説を今井は重ねる。
その死角から、留美子を救うため密かに忍び寄っていた雷句が―――
「―――まだ話の途中なんだが まあいいか 君も随分無粋な子だね」
―――どん、と押されて倒れこんできた留美子を受け止め、話途中でそちらに向いた今井の顔を、呆然と見つめる。
(あっさり解放しやがった)
ならやはり、本当に人質のつもりはなかったのだろうか。
椎名はそんなボヤキの最中もけっして無為に過ごさず。
今日幾つめだろうの文殊を生み出し再び双剣と化したそれを掴み一足飛びで横向いている今井の喉元を―――
387てんで性悪るーみっく(88/180):2005/03/29(火) 23:51:05 ID:GOFtV5+F0
「やめてッ!! 椎名君ッ!!!」
パブロフの犬並の条件反射で腕が止まった。
今井の喉笛を掻っ切るのに、あと2/3センチで静止する光の刃。
そのままの格好で、傍らに、雷句とともに半ばへたりこむようにしている留美子を確認する。何故止めたのかと。しかし、彼女はフルフルと首を横に振っていた。
驚きで声も出ない、といった風情、いったいなにを、パクパクと動く唇を読むと―――――― ワ タ シ ジ ャ ナ イ ?
そういえば。先ほどの留美子の声はたしか―――
「どうして? どうしてそんな危ないモノ私に向けるの……椎名君……?」
耳元で、震えるような美声がそう囁いた。
椎名高志という人のパーソナリティを考えれば、そこで咄嗟に剣を引いてしまわなかっただけでも上出来だろう。
呆然と見上げるそこに、二人目の―――――今井の服を着た“高橋留美子”が立っていた。

    ! ?

この場には、誰一人としてマガジン関係者はいないのに、何故か一瞬、マガジン誌面に迷い込んだかのような錯覚。
「――――バ、バ、バ、バッキャロウ!!い、い、い今井てめえ おお俺がそそそんな下らねー手に、ひ、ひ、引っ掛かると」
どもりつつなされた健気な抵抗は、オリジナルに比べると明らかに媚の気が増えた言葉にやんわりと遮られる。
「ねえ椎名君…… 私、なんだかさっきの『縛』の効果の後遺症で……痺れが残ってるみたいなの……よかったら、揉んでくれないかしら……?」
「どどどどこをですかぁ――っ!? ―――っ、違うッ関係ねえッッ!! そう、そうだ俺はてめえを―――ッッ!?」
ああ、何故、何故、乳を寄せて上げてるんですか留美子さん(偽)。
そういえばこいつ今井―――椎名は思う。下の名前が、不明だ。ひょっとして、元から“女の子”だったんじゃ……
「………駄目? 椎名君にしか……頼めないんだけどナ……」
動揺、というよりある種の逃避にも似た希望的観測に素早くつけこむ今井。
―――――最早それは、高橋留美子でもなんでもなかった。
外見こそ完全再現であるし、今井のその能力『模写(コピー)』は、本来記憶も思考もなにもかもを忠実に再現することが出来るものであるが、
しかし、本人にオリジナルに対するリスペクトが欠片も無ければ、結局はそれも役立てられないという意味で無意味。
媚、色、萌、崩、苺、カタカナ語尾やらなんやらの大量投入によりおこなわれる、そう、それは、完全な、人格そのものの二次創作。
だが真に男性の求むるような“理想の女性”とは、男性心理の深奥にこそ、いや、男性心理の深奥にのみ、潜むもの。
最後のトドメは、(架空の)痺れにしどけなく崩おれる今井のこの台詞。
「……ハァハァ……おねがいっ……して……っ してほしいの……!!」

「!!!留美子さんっ!!ぼかあっ ぼかぁも雄雄雄雄ォオ―――ッ!!! ち ち―――ッ  し り―――ッ  フ ト モ モ ――――ッ !!!! 」
388てんで性悪るーみっく(90/180):2005/03/29(火) 23:56:54 ID:GOFtV5+F0
……さて、光景を傍で見ていた高橋留美子(本物)をも卒倒させた、椎名と高橋留美子(偽)の慌ただしい交歓も終わり。
「キス……したくなっちゃった……」
少女のようにはにかむ、上目遣いの今井は事後そうねだった。
先ほどまでのシリアスさ見る影も無い椎名は、ウハウハのデレデレのよっしゃよっしゃ状態なので否も諾もない。
というかあんな大胆なことしといてその後にこんな初々しい反応ってふつう順番逆じゃないスカいや勿論それがそれこそがイイところなんですけどねッッ!?
そっと閉じられる瞳。白皙の顔にかかる長い睫毛の影。雛のように小刻みに震える紅の唇は
(ああ、留美子さんきき綺麗ッス お、おお俺は勝ったッス なんか自分でもよく分からないものに勝ったッス ……いや、負け、たのかな? ま、いいやイタダキマー 

    イ ン ス タ ン ト ラ ヴ ァ ー
  “ 1 8 0 分 の 恋 奴 隷 ”

神聖に交わされる契りのくちづけ。目ン玉を皿のようにして、その、実情的にはある種地獄のような光景を見つめる雷句誠。
今井にのしかかっていた椎名の体から、ずるりと力が抜け落ちる。
(―――まさか毒ッッ!?)
慄然とし、また何故止めなかったのか、という後悔に雷句は囚われかける。
しかし、そのまま邪魔な掛け布団でも剥がすかのようにして立ち上がる今井に、椎名が犬のようにスリ寄る姿に、ひとまず胸をなでおろす。
ガッ、といきなり今井が、椎名の顔を足蹴にした。
「♥ ♥ ♥ ああっあ〜〜〜 もっと、もっとお踏み下さいませ〜〜!!!」
屈辱。しかし何故かそれを大悦びする椎名の姿。またしても度肝を抜かれる雷句は不審を隠さない。椎名高志は、エロくはあっても、そういう歪み方は―――
「―――“180分の恋奴隷(インスタントラヴァー)”ボクにくちびるを奪われた者を、ボクの下僕に変える“念能力”―――」
演技を止め、服を整えながら、今井が披露する解説に、雷句の冷や汗。椎名の顔は、広がる鼻の穴はそのまま、血走っていた眼だけが完全にハート型に変化している。
おまけに「踏むのを止めないでください」とか懇願してるし――――――なんと、なんと恐ろしい能力だ。
「…………そうか、それで留美子さんに化けてあんな……あんな事を……!!!」
「それは―――半分当たりで半分外れ 変身はともかく、別にあそこまでサービスする“必要”はなかったんだ♦ ま あれは……『ご褒美』、だね♥」
……遊んでいた、ということか。
椎名の為に歯噛みする雷句の前で、しかし今井もフラフラとよろめく。
「ああ……そうか♠ 血を、流しすぎたかな」
独白に、キラリと天才の瞳が輝く。そうだ、椎名はけっして無駄死に?したわけではない。ここで自分が続き、こいつを打ち破って供養と―――

ピ――――――――――――――――――――ッ!!!

無情に吹き鳴らされたその笛は、えなりチーム初の得点と、前半の終了を告げるものであった―――
389作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 00:07:58 ID:XQkBNtGN0
しょ、少年漫画だよここは少年漫画板だよっ!そこは越えちゃいけない一線なんじゃないのーーーーー!!


いや笑った笑った。椎名しまらねぇなぁw
390作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 00:08:42 ID:0ODzvWZm0
椎名が腐ったァァァ!!('A`)
前半終了乙華麗
391作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 00:15:19 ID:CfKzYYEj0
あれだけの激闘のオチがこれか(w
前半終了にふさわしい、美しい幕切れだった
椎名、まさに天国から地獄
いや、地獄から天国、か?
392傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/30(水) 05:37:47 ID:KsZHE+8h0
>>355
「エンザイムV、全滅。現在目標はFブロックへと移動中。高屋様、御指示を」
「監視しを続けろ。追手は出さなくて良い、捕捉を怠るな」
「了解」
管制セクションからの入電に、淡々と答えながら、高屋は思考を反芻する。
先の戦闘以降、画像が砂嵐に変えられることは無くなっていた。
(つまり、監視の目を潰す必要が無くなった―――いや、立ち消えたという事か。
 あの停電のゴタゴタを利用して人竜を展開することは出来た。
 しかし予想外に早かったエンザイムの襲撃に、折角の人竜は戻さざるを得ない。
 そして2度同じ手が通じるほど、こちらの監視が甘くない事も認識している)
結構な判断力だ、と冷静に分析を下すが、ならば、と疑問が首をもたげる。
(それを理解していて、何故敵陣の真っ只中を駆け回る・・・・・・?)
何らかの“逃げ”のアクションを、巣田は示していないのだ。
非常口は隔壁で塞いでいるが、人竜を使えば破るのは造作も無い事だろう。
事実、隔壁を破っている。なのに、そのような行動は確認されていない。
(どうして逃げない?一体何がしたいのだ?そもそも、逃げる気があるのか?)
眼前には階段。階下へと走りながら、さらに思考を進めて・・・・・・
ふと、歩が止まる。
何かを踏み砕く感触を足裏が捉えたのだ。
足を上げて見れば鉄屑だった。
天井を見上げると、その半身が惜しげもなく断面から内部を晒している。
見回すと、辺りには同じ物がいくつも存在した。
誰あろう、巣田が破壊した監視装置のなれの果てだ。
立ち止まり、3秒ぴたりと黙考して―――――センサーを起動。
周囲を検索してある事実に気付いた。
(このあたりの装置が、一つ残らず破壊されている・・・・・・?)
目を疑った。
393傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/30(水) 05:38:35 ID:KsZHE+8h0
―――――センサーの異常か?
まず最初に思ったが、首を振って否定する。
ガイバーTのセンサーの正確さは、自身が良く知っている。
喩え地球が滅んでも、自分の能力への信頼だけは決して揺るがない。
それだけの自信が高屋にはあった。
その自信ゆえに、これが現実なのだと認めざるを得ない。
全て。10割。100パーセント。
およそ信じがたい数値。常軌を逸しているとまで思った。
どう考えても、有り得ないのだ。

例えば、俗に言う野生の勘とやらを駆使したとしても、この光景は作り出せないだろう。
なにせ、壁や床に埋め込んだ圧力・熱感知センサーすら破壊されているのだ。
例外無く、その中枢“だけ”を、正確に一撃で刺し貫かれて。
いくら本能的な感覚でも、ここまでの精度を望めるかといえば―――――NOだ。
高屋は断じる。
そこまでご都合主義が通るなら、誰も彼も苦労しない。
勘などというよりも、寧ろこれは――――――
(まるで、最初から知っていたように・・・・・・)
思い至り、そして瞬時に閃きが走り抜ける。
(巣田は最初から知っていた。事前に監視装置の在処を網羅していた。
 彼女が最高執務室に侵入したということを考えるべきだった。
 着ぐるみだけの力じゃない、内部構造を知っていなければ出来ることではない)
まさか、400メートルもあるクラウドゲートのからくりを、
例えその一部でも把握している者が他に居るとは、流石の高屋も思わなかった。
巣田の知性と、自信の侮りに慄然とする。
(落ち着け・・・・・・。ならば彼女は何処へ行くつもりなんだ?
 逃走より優先する事柄とは、一体・・・・・・?)
思考が進まない。
その元凶は、送られた画像の中で、変わらずに走り続けている。
394傲りと誇り〜鬼事編〜:2005/03/30(水) 05:40:01 ID:KsZHE+8h0
刹那。
不可思議な事が起こった。
画像の巣田が、不意に消え失せたのだ。
そして再び現れた。
現存するカメラが映す、最も初めの映像に。
弾かれるようにして、管制セクションに通信する。
「ハッキングを受けている!監視装置の映像は全て偽物だ!!」
「 その通りです 」
静かな声が返って来た。
「巣田君・・・・・・!」
「 急がないと、データが全部消えちゃいますよ 」
「データだと・・・・・!?」
「 ええ、ウイルス仕込みましたから 」
ぴくりと、頬が引き攣るのを感じた。
「私と電脳戦をやろうというのか・・・・・・」
「 言うより先に行動しては如何です?時間が無くなっちゃいますよ 」
そこでぷつりと声は途切れる。同時に本来の回線が復活した。
急ぎ指示を下す。ここで何も出来ないほど、自分の部下は無能ではない。
センサーをフル稼働しながら、高屋も駆け出した。
と、その時。
「 さっき言い忘れた事が有ります 」
天井のスピーカーから、巣田の声が響いた。

              「 あ ま り 図 に 乗 る な よ 」

それは、先の執務室脱出時の言葉の続きだった。
ぎり、と歯を軋らせて高屋は駆ける。
数層階下に下るも、まだ探知圏に巣田はかからない。
395作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 16:19:17 ID:IMt/aCvC0
巣田ってここまで強いっけ?と思ったがそうか、タマ造るような天才科学者と忍者とシスコンパワーがあるんだったな。
そしてまだエクスカリバーが残ってる……案外生き残れるなぁ巣田
396作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 16:39:05 ID:Wb6d0OAF0
どっちも殆ど知らないけれど
けっこうこのシリーズ好き
397作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 17:35:49 ID:4GOHdFBX0
何故毎回ageなのか
398作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 21:32:43 ID:MGzKx6QA0
俺もそれはずっと突っ込みたかった。
399フィオ:2005/03/30(水) 21:48:48 ID:0ODzvWZm0
それは私たちだけの秘密。
400作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 21:51:44 ID:s9SfZCV40
どこへの誤爆か一瞬で気付いた漏れは某板住民。
401作者の都合により名無しです:2005/03/30(水) 21:52:44 ID:0ODzvWZm0
誤爆じゃない( ゚∀゚)ノよぅ!
402作者の都合により名無しです:2005/03/31(木) 22:50:25 ID:tp0zOwCd0
今月ついに平野の殺し方が判明したね。
403作者の都合により名無しです:2005/03/31(木) 23:01:13 ID:lCzRQtaN0
アワーズ出たんかー
見ねば
404第一回ヒロイン杯争奪戦 (>93他):2005/03/31(木) 23:33:41 ID:lCzRQtaN0
中の人がいない状態の副将さんがベンチに転がってる裏御伽控え室。
大将の本宮は青筋を立てながら待機中。たぶんイライラのとばっちりは起きた副将行き。
・・・さてサッカーは前半が終了したというのに、こちらの勝負は一向に決着がつかない、
なんとなくプライドをかけた不毛なヒロイン?対決。審判は施川。ルーレットでポン。

  ※三回戦 大根かつらむき勝負≪途中で包丁の投げ合いになり試合中止≫
  ※七回戦 投げ縄で施川を捕まえる勝負≪怪しげな捕縛術で佐渡川の勝ち≫
  ※十五回戦 カラオケ点数勝負≪「マジカル漫画家澤井ちゃんのテーマ」で機械破壊・澤井の勝ち≫
  ※二十二回戦 手品で「すごいもの」を出す勝負≪両者すごいものを出しすぎて施川気絶・試合中止≫

佐渡川「・・・30戦やって1勝1敗15引き分け13無効試合か・・・あんたやるじゃん」
澤井 「ふん、私と“真拳勝負”して、ここまで耐えきったのは、
   『あいつ』とあんただけよ!私たちいいライバルになれそうね!!」
佐渡川「(ならんでもいいが)あいつって誰だ?」
澤井 「――私も顔や名前を忘れかけてるけど、決して忘れてはいけない男よ。
    いつか・・・再会する事があったら、名前を呼んであげなくちゃいけないの」
佐渡川「変な話だな。まあいいさ勝負の続きと行こうぜ!」
澤井 「ええ!(ああしかし・・・ここで≪あれ≫があれば確実に勝てるのに、
   『あのコ』ったらどこ行っちゃったのかしらー連絡取れないしブツブツ)」
佐渡川「ん?どーしたトンガリ」
澤井 「えっあたしったらボンヤリしてごめんなさい。元アシスタントでね、
   赤丸チームの副隊長だった松井ちゃんって漫画家がいるのよー。
   と言っても変な子だからフラフラしてるわ。結局試合(3部796)に出なかったし。
   あの子がうさんくさいルートから持ってくるスープを血管注射すると・・・
   ううん、なんでもないわ。なんでもないの。ウフフフ」
佐渡川「不気味な笑い方すんなっ!ちゅうかスープなんか直接摂取したら死ぬんじゃ?」
澤井 「無粋なツッコミは彼には効かないわ。さ、勝負の続きよ!!」

  ※三十一回戦 早寝勝負≪双方開始0.93秒で熟睡開始・引き分け≫

澤井・佐渡川「「(ぐーすーぴー)」」
施川 「ギイィィ不毛にもほどがあるわぁ!殺シテヤルゥ!!殺シテヤルゥゥ!!」
405作者の都合により名無しです:2005/03/31(木) 23:43:10 ID:QuU+kSsB0
澤井はあの神の料理を使うつもりかwゴシカァン
406作者の都合により名無しです:2005/03/31(木) 23:59:10 ID:AVHnPovX0
>いつか・・・再会する事があったら、名前を呼んであげなくちゃいけないの

ちとホロリ(つД`)
会えた方がいいんだか悪いんだかだけどな。
407混迷〜裏路地の戦場〜:皇紀2665/04/01(金) 02:48:04 ID:rgJsKbY40
>>376
「へぇ…まさか、まさか、だな、赤松。なんだ、お前も戦い足りなかった口か?」
多分そっちにいるんだろうな、という方向に森川が首だけ向ける。
「ははは、まあそんな所です。これからは一応同士ということになりますので、どうかよろしく。さて――」
如才無く森川に一礼した後、闇色の悪魔は柴田、西森、田辺の方向に視線を移した。
「我々はこれから少々仕事が有りましてね。できればここでお暇させて頂きたいのですがね、どうでしょう?」
「何を――!」
慇懃無礼とでも言おうか、紳士的なようでいて、弄るような口調。
この場の状況そのものを茶化すような言葉に、田辺は激高の声を発しかけた。
が、それは横から向けられた西森の刺すような視線によって止められた。
――安い挑発に乗るんじゃねえよ。
西森の眼はそう言っていた。
「殺気すら隠しもしねえでよくもまあそんな台詞吐けるもんだな。この狸が」
西森の眼が剣呑に光る。
とんでもない美少女なだけに、睨み顔には異様な迫力がある。
赤松は、ふふん、と満足げに笑った。
彼女の言葉は正鵠を得ていたのだ。
死という永遠の停滞から開放され、新たな肢体を与えられた悪魔がその力を行使する機会を逃すはずも無い。
西森の奸智に長けた頭脳は、既にこの目まぐるしく変わる状況を冷静に洞察していた。
赤松健――かつての魔界十人集の実力者で、今の呪文から判断するに魔法による遠距離攻撃を得意とするのだろう。
近距離格闘のスペシャリスト森川ジョージとは、恐らく絶妙なまでにコンビ相性は良い、と見た。
しかし、不幸中の幸いにも森川の眼を潰しているためこの二人の連携は機能しまい。
となると、鍵となるのは赤松が単独でどれ程の力を発揮できるのか、だが。
ここで西森は彼女と田辺の前に立ち、赤松の方を向く大男をちらりと見やる。
柴田ヨクサル。
この男のことは、小学館に待機しつつも大会の情報を収集し続けていた西森は知悉しているが、かといって理解できたわけではない。
その行動、戦闘能力、思考、全てテンション次第で激変し、全く取り止めが無いのだから仕方あるまいが。
その点は赤松も同じなのだろう。
小学館の二人との会話を楽しみつつも、己の魔術を苦も無く弾き飛ばした男の動きを警戒するように鋭い視線を這わせている。
森川は視力を奪われている為、完全に迎撃のみに神経を割いており余程のことが無ければ自分から仕掛けはすまい。
乱雑に、艶やかな髪を掻き毟った後、西森は田辺の耳元に口を寄せた。
408混迷〜裏路地の戦場〜:皇紀2665/04/01(金) 02:51:16 ID:rgJsKbY40
「とりあえずあいつがどう動くか見極めるまで様子見じゃ。こっちに付きそうなら援護しろ」
「……わかりました」
二人のその会話を聞いたのか、はたまた偶然か、その短い会話が終わると同時、赤松が再び口を開いた。
「ところで、君はいったいどうするつもりかね? 戦うというのなら、まあ私は構わないが」
藪にらみで散乱する柴田ヨクサルの視線を強引に捕え、赤松は問う。
柴田、ちょっと空を見上げてから、赤松を見て、笑った。
「テンパってんなー。やる気もう全快、か?」
くつくつと虚ろな笑いが静かな闇に溶けた。
「戦いたくってしょうがない、だろ?――俺も、そうだ」
ヨクサルの両眼が狂気を帯びる。
板垣との闘いを切っ掛けに急速に研ぎ澄まされていった感覚、
そして、高まる勁は、次いでの山本との死闘を経て己にも理解できない領域へと達していた。
――止まっていられない。
静止しているだけで、己の内側から怪物が皮膚を突き破って飛び出てくる映像が頭の中に浮かんでくる。
もっと、
もっと、
もっと、
――戦え、と飢えた怪物が猛り狂っている。
「そうだ……戦わなきゃさ、今」
まるで目前の敵など忘れたかのように独り言を呟くヨクサル。
「なんつーあぶねー野郎だ」
思わず、という風に西森が呟いた。
「……赤松。一応警告しておくがな、そいつはやばいぞ、間違いなく」
森川が、赤松に言葉を投げかける。
「見れば、わかりますよ」
「いいから聞け。今な、眼が見えない分案外その他の感覚が鋭敏になってるんだが……そいつの気配だけ、全く感じねーんだわ。
まるで、空気と同化しているみたいに、な。気ぃ付けろ、下手したら、速攻で冥土に送り返されっぞお前」
「はは、それは怖いですねえ」
おどけて返す赤松の顔は、強張っている。
「――こないのか?」
貫くような言葉は直後。
409混迷〜裏路地の戦場〜:皇紀2665/04/01(金) 02:54:06 ID:rgJsKbY40
はっとして視線を戻すと、ようやく“戻って来た”ヨクサルがこちらを直視していた。
「なら、こちらから、行く」
「え、ちょっ、まっ――」
赤松のストップなど聞くはずも無く、ヨクサルの脚が地を離れる。
刹那、凄まじい衝撃音が空を震わせた。
地を滑るように瞬く間に距離を詰めたヨクサルの右の蹴りが炸裂した音であった。
――飛ぶ。
その場にいる誰もが、その威力の凄まじさに数瞬後に宙を舞う赤松の姿を幻視した。
だが、その瞬間はいつまでもやってこなかった。
「風盾(デクレシオ)」
紡がれた呪文により突き出された右手に展開された魔法障壁が、ヨクサルの蹴りを食い止めていた。
「素晴らしい。私の魔法障壁が悲鳴を上げそうですよ」
恐らくは、先程の慌てた態度も演技だったのだろう。
落ち着いた声でむしろ興味深げにその威力を吟味するように赤松は言う。
ヨクサルが、退く。
その瞬間、淡い光の檻が赤松の体を包む。
「む――? これは……はは、いいタイミングですね、お嬢さん。しかし少々無粋では?」
「喋るな。燗に触るんだよ、あんた」
鋭く状況を見据え、攻防の間断に結界を仕掛けた田辺。
その結界に囚われながらも、赤松は余裕を失わない。
すうっと、黒い手袋に包まれた左手が結界に触れる。
瞬間、田辺の結界は跡形も無く消失した。
「……嘘だ」
形成前に消されたのでも、破壊されたのでもない。
まるで彼女自身が解除したかのと同様の消失に、田辺は驚きを隠せない。
「マジックキャンセル……魔法無効化能力という奴だよお嬢さん。私には放出系の技や術は通用しない」
「うはwwwwwwwでたwwwwwwwwww赤松得意の厨設定」
間髪入れずのその嘲笑は西森のものだ。
何故か少し離れた先で森川が頷いている。
赤松は痛い所を突かれてちょっとショックを受けた。
その一瞬の隙――。
疾、と一陣の空牙と化したヨクサルが赤松の左脚を薙いだ。
410混迷〜裏路地の戦場〜:皇紀2665/04/01(金) 02:55:55 ID:rgJsKbY40
「むうっ――?」
赤松が我に返ったその時にはもう、赤松の左脚は後方にほぼ地面と水平な位置まで跳ね上がっていた。
その足首に、ヨクサルの両の手が蛇のように絡みつく。

ぶちっ、

と靭帯がねじ切られる音が、生々しく鳴った。
「バーカ、格闘漫画家相手に余所見してっからだ」
見えなくとも、何が起こったのかは察したのだろう。
森川が悪態を吐く。
が、赤松とて大罪集として転生した極めつけの悪魔である。
この一瞬。
壮絶な痛みに耐え、間接技を極め膠着状態にあるヨクサルに、掌を向ける。
「魔法の(サギタ)・射手(マギカ)・光の(ウナ)・一矢(ルークス)!」
無詠唱魔法。
威力は無けれど、攻撃の直後に放たれたその呪文は、無防備なヨクサルの腹に直撃した。
刹那、呪文の効果を見届けもせず、赤松は片足で飛んだ。
跳躍ではなく、飛行である。
魔術により中空を鮮やかに飛翔し、拳や脚では届かない場所にて止まる。
「やってくれたな――! 次はこちらがゆくぞ!」
紳士の仮面をかなぐり捨て、悪魔が吼える
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト――
来れ(ケノテートス)・虚空の雷(アストラブサトー)・薙ぎ払え(デ・メート)――」
呪の完成と共に、既に体勢を立て直し、こちらを睨むヨクサルに向かい、赤松が高らかに叫ぶ!

「雷の(デュコス)・斧(テュコス)!!!」

 ド ゴ オ ン ッ ッ !

その雷撃は、まさしく戦斧の一閃の如く煌き、ヨクサルを周囲の空間ごと薙ぎ払った。
ヨクサルの体が宙を舞い、どさっ、と受身も取れず地に叩きつけられる。
411混迷〜裏路地の戦場〜:皇紀2665/04/01(金) 02:57:06 ID:rgJsKbY40
はあ、
はあ、
はあ、と靭帯切断の苦痛に耐えかね、荒い息を吐く赤松がにやりと笑う。
だが――。
「マジかよ」
赤松のデータ収集の為、半ば意識的に状況を傍観していた西森が、呻いた。
壮絶な魔術の一撃を食らったヨクサルが、立ち上がったのだ。
服が所々破れ、そこから血液が滴り落ちていたが、顔色は全く平然としたものだ。
赤松が舌打ちする。
「また、発剄、か。私の呪文に耐えるとは、とんでもない凝縮率なのだろうな。“集気”を治癒や防御に転化するのは攻撃よりも遥かに困難だというのに、君はそれを呼吸でもするのと同じように極当たり前に使っている。恐ろしい男だな、柴田ヨクサル」
感嘆と憎悪の入り混じった声で、言う。

「なるほど、強敵だよ――」

混迷する戦場は、未だ終局の糸口すら見えない。
412鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:19:41 ID:aTeYSc8D0
>124
その場に居合わせた全員の表情が凍った。
否、風に舞う桜さえもが氷結したように急速に地に落ち、その匂いすらかき消えた。
板垣恵介が、川原正敏に背を向けている。
その両手は、天に挑むかのように高くかざされている。
鋼の筋肉が盛りあがり、服を押しやり、破いていく。
禁断の扉が開こうとしている。
広がっていく隙間から見えてくるは異形の姿。

「背中の筋肉が…」
「まるで…」

            ―――― 鬼 の 形 相(かお) の よ う な…………

異様なまでに発達した打撃用筋肉(ヒッティングマッスル)。
筋肉のみで造りあげられた鬼の形相。
誰ともなく口にする、板垣恵介の異名……“鬼(オーガ)”。
その正体が、これである。

「違う…」
今にも泣き出しそうなにわのと岡村の横で、松江名が唖然と呟く。
「筋肉の形態(かたち)が我々と明らかに違う……ッッ」

背面を構成する筋肉が、鬼の貌を造り出す。
それは人類とは、明らかに異なる奇跡の配置。
努力だの、才能だの、そのような人間の尺度で推し量れる次元のシロモノではない。
そう、言うなれば、生まれながらの―――

「天然戦闘形態………ってところか………」

そう呟く修羅の貌には、明らかな冷や汗が伝っていた。
413鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:20:44 ID:aTeYSc8D0
この戦場に居合わせた者は、対戦者である川原を含め、奇しくも全員が格闘漫画家。
ゆえに彼らは、この期におよんでようやく理解した。
板垣の、己以外の強者を絶対に許さぬという傲慢さ、弱者は人ですらないという残虐さは何処から来るのかということを。
百獣の王ライオンは、他の動物達をライバルとは思わない。
全ては餌。
板垣と、その他全格闘技漫画家の構図は、極めてそれと似る。
故の、蛮勇。
それを否定する者は、全て力で黙らせ、押し通る。
“強さ”とは“我侭を押し通す力”。
そう言ってはばからない板垣。
その圧倒的なまでの自意識(エゴイズム)が、板垣の背に鬼を棲まわせたのか。

「始めようぜ…………」

川原が口火を切るように、言った。

「 獅子(ライオン) 対 …………」


                  ――――    餌  !!!  ――――


板垣に比べて、漫画家としてではなく、生命体としてそれほどの格差があることを川原は認識している。
しかし、それで立ち止まるような男ではない。
自分が「餌」であると認識しながら、なおも前進をやめない。
修羅という名の「愚者」
偉大なる愚者は、真正面から、怪物への戦いを挑んだ。
414鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:22:27 ID:aTeYSc8D0
「ちぇぇいっ」
気合い一閃、川原が飛び蹴りを仕掛けた。
両足が空中で消滅し、打撃音だけが連続。
空中三段蹴り。
凄まじい迅さを前に、板垣は防御すらせずに全弾まともに喰らった。
着地様、水月に渾身の中段蹴り。爪先が、刃物のように突き刺さっている。
そこから川原の一方的な猛攻が始まる。
突き、蹴り、肘、膝、ありとあらゆる部位での打突が板垣の全身をめった打ちにしている。
肉を叩く音が、桜舞う公園に響き続ける。
決まる―――!!
にわの達は祈りにも似た心境で、そう叫ぶ。
しかし、次の瞬間―――

   び ち ゃ 。

それまでと明らかに質を異にする、奇怪な音が発生した。
川原が奏でる打撃音ではない。
重く、濡れた、柔らかい何かが、地面に落ちる音。
その音の発生源を見て、にわの達は絶句した。
それは、肉の塊であった。
川原の左腕の二の腕部分が、バターのように抉り取られ、そこから夥しい鮮血が噴き出している。
板垣の手刀が一閃し、川原の腕を音もなく切り裂いたのである。
誰もが、川原でさえ、その攻撃の影すら見切ることはできなかった。
朱に染まった表情を、鬼の微笑に歪めて、板垣が動いた。
そこには、川原の攻撃のダメージなど、欠片も見てはとれない。
板垣の両腕が音もなく消滅する。
刹那、川原の四肢が噴血。
防御に使用した手足の肉が、瞬時にして切り裂かれ、削り飛ばされていく。
その切れ味は、さながら日本刀。
板垣の攻撃は、すでに生物としての極限すら凌駕していた。
415鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:23:37 ID:aTeYSc8D0
「受けが全然通用しないッッッ」
にわのが半狂乱になって叫んだ。
大量の出血により、全身を朱に染めた川原。
その膝が、夥しいダメージによって、がくがくと震えている。
今にも倒れそうな川原に、空気を陽炎のように揺らめかせながら、じりじりと迫りくる鬼の姿。
まさに悪夢としか言い様がない光景であった。
「いかに陸奥圓明流の歴史が深かろうが、しょせんは人間を対象に造られた技術だ……」
絶望が深く滲んだ声で、松江名が言う。
「本気になった板垣は もはや人間(ヒト)の域ではない………」

     ―――― 陸奥圓明流が……否、“武術”が通じない………ッッッッ!?

「冗談じゃねェェッッ」
はじかれたように動く者がいた。
「岡村くんッッ」
にわのの制止を振り切って、突如、岡村が駆け出した。
「武術が、武術がよォォォッッッ」
一直線に、板垣に向かっていく。
「やめろ、岡村ッッ」
「武術が敗けてたまるかァアアアアアッッッ」
川原の制止すら届かない。
一撃で人体の経絡を断ち切る拳が、板垣に飛んだ。
轟音。
何かをひしゃぐ打撃音が轟いたときには、ひとりの人間が地面と平行に宙を飛んでいた。
板垣は、拳を振りきった体制で、変わらぬ位置に立っている。
吹っ飛んだのは、岡村だ。
まさしく砲弾のような速度で殴り飛ばされた岡村は、桜の木々を次々と薙ぎ倒し、公園を突っきり、その外に建つビルの壁面に突き刺さって、ようやく停止した。
びくびくと痙攣する岡村がめりこんだ壁は、ちょうど人体のラインに沿った形状にくり抜かれ、さながらビル全体が岡村の為にしつらえた棺桶のようであった。
416鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:25:10 ID:aTeYSc8D0
現実離れした瞬殺劇を演じながら、板垣は乱入を気にした様子もなかった。
文字通り、蚊ほどの認識すらしていない。
「おおおっ」
怒りの声をあげながら、川原が上段蹴りを放った。
やはり防御をしない板垣の顔面に、背足が深く食い込む。
だが、微動だにしない。
“鬼の形相”を解放した板垣の耐久力は、いつぞやの鬼酒を飲んだ状態の真鍋のそれも凌駕していた。
しかし、川原の一撃は布石。
蹴り脚が下がると同時に、川原が指を2本揃えて、目突きを放った。
閃光にしか見えぬ急所への一撃と交差し、ふひゅっ、という風音が川原の耳を嬲った。

  ぱ ぁ ん 。

拳銃の発射音にも似た甲高い音がこだました。
川原の顔を挟みこむように、板垣の両手が、川原の両耳を叩いていた。
川原が放った目突きは、指先が板垣の目蓋に触れるか触れないかのところで止まっている。
かつて、岡村の生涯を賭した一撃をも退けた、修羅の必殺の貫手。
それが、鬼の反射神経に凌駕された瞬間であった。
板垣の必殺技のひとつ、鼓膜破り。
その衝撃は三半規管を通して、脳にまで達する。
ぼっ、と川原の両耳から、血煙が噴き出した。
両鼓膜の破損は無論、おそらくは脳内出血か。頭蓋骨は無事かなのか。
両耳から血を噴き出させる川原の姿は、頭部を一本の朱槍で貫かれている様にも似ていた。
両目を開けたまま、川原の身体がぐらりと傾き、土下座するように顔面から地面に崩れ落ちた。
流れ落ちる血が、池のように広がり、桜の鏤められた地をさらに紅く染めていった。

417作者の都合により名無しです:皇紀2665/04/01(金) 12:44:05 ID:mVHs2N670
ヨクサルも来たし格闘繋がりの皇紀記念で修羅王子来たら嬉しいなーとか思ってたら
本当に来やがったァァァけどとんでもない事にィィィ!!!
418鬼の形相:皇紀2665/04/01(金) 12:46:50 ID:aTeYSc8D0
アンカーレス間違えた >>214が正しい
419作者の都合により名無しです:皇紀2665/04/01(金) 18:35:04 ID:NzuWTJPK0
       ∩
     ⊂⌒(  _, ,_) < 見ちゃおれん…見ちゃおれんよ…
       `ヽ_つ ⊂ノ
              …王子…王子ィ….

     ⊂⌒(  _, ,_) 
       `ヽ_つ ⊂ノ  zzz…
420作者の都合により名無しです:皇紀2665/04/01(金) 21:15:04 ID:4HqW4Gm50
昨日なんとなくマガジンの増刊読んだら、
マガジン連載陣ではじめの一歩改変リレー漫画やってて面白かった。
そして王子死んでるよ王子
421傲りと誇り〜鬼事編〜:豆つぶドチビ暦2001/04/02(土) 05:32:23 ID:qXDMze8/0
>>394
「あまり図に乗るなよ」
一言告げて回線を遮断。ふう、と息を吐く。
そして、先刻まで声を投げ掛けていたもの――機械猫――を抱えて、再び巣田は走り出した。
この機械猫は、彼女が開発した物だ。
これと同じ物が、先の戦闘場所にも残されている。
エンザイムVを斃した時、戦闘の煽りで傷ついた合金壁から配線を引き出して猫に接続し、
中央コンピュータへのハッキングとデータの奪取、そして全隔壁の開放を敢行したのだった。
結果は成功、ものの見事に高屋は騙された。
さらに高屋が追手を出さなかった事も相まって、
まさに無人の野を行く様にクラウドゲートを駆け抜ける事が出来たのである。
そして今現在――――――

(この奥に・・・・・・あの人が居る)
巣田は、目的地に差し掛かった。
後一息、ここを制する事が出来れば、自分が勝つ。
高屋への一矢、報いる事が出来るのだ。
開け放たれた扉の向こう、無機質な回廊のその奥へ、華奢な体が駆け出した。

時同じくして、そのはるか二十数層上階にて。

見 つ け た ぞ ・・・・・・――――――

高屋が、呟いた。

422傲りと誇り〜鬼事編〜:豆つぶドチビ暦2001/04/02(土) 05:33:23 ID:qXDMze8/0
フル稼働させたセンサー。
その視界に、ひらりと掠める風の小影。
誰であるかは言わずもがな。
影が走り抜けた場所は、その目的を如実に高屋へと告げる。
そこはクラウドゲート中層部にして、最も堅牢な部位の一つ、
実験セクション・レベル4実験室への通路だった。
一際分厚い装甲版に覆われたそこは、つまりそれだけの危険性を秘めた実験体が安置されている。
そして、今この時において、それだけ危険な実験体というのは・・・・・・・・
「皆川か・・・・・・!!」
皆川亮二。
自身の最高傑作。
これから更に実験・分析を行おうとしていたモノ。
それを自分の掌中から奪うという事。
それはまさしく無謀にも等しい行為だ。
そして、よしんばそれが成された時、どれ程までに自分の矜持が悲鳴をあげるか――――――
「舐めた真似をッ!!」
怒号を吐き出す。
駆け出して、しかし足を止める。
現在地と巣田との距離は二十数層、全力でも10分はかかる。
そして10分あれば、巣田が逃げおおせるには充分に過ぎた。
このままでは、間に合わない。焦燥が浮かんだ。
(どうにも時間が無い・・・・・・!)
答えが出ない。時間の出血は続く。歯が軋んだ。
落ち着け、落ち着けと胸中で繰り返し、ふと顔を上げて。
目の前に、策があった。

423傲りと誇り〜鬼事編〜:豆つぶドチビ暦2001/04/02(土) 05:35:34 ID:qXDMze8/0
巣田の疾走は続く。
電光石火の当身で研究員達を薙ぎ倒し、さらに身体は加速する。
下り、駆け抜け、食い破り、奥へ奥へと突き抜ける。
そして―――――
遂に目的の場所――皆川の居る実験場――を視野に捉えた。
その扉は開け放たれ、無機的なベッドの上に、天と四方を強化ガラスに囲まれて、皆川は居た。
およそ50メートルほどの距離。
深呼吸。
大きく吸い、大きく吐いて。
そのまま、一気呵成に駆け出した。
手傷など無いかの様に迅速な走行が、距離を30メートル弱に縮小する。
瞬間。
首筋に悪寒。
咄嗟の事に足がもつれ、巣田は勢いのままに激しく転倒した。
体の節々をぶつけながら、無様に床を転がって、
そして一瞬前に自分の在った位置が、
真ッ直ぐに天地を貫く光柱に貫かれ蒸発したのを、はっきりと瞳に焼き付けた。

考える暇は無い。
反射的に身体を起こし、前方を見ると、何と扉が閉まっていく!
転倒し朦朧となった頭脳を叩き起こすより早く、脇目も振らず巣田は走った。
残り15メートル、中ほどまで閉じている。恐らく、閉じるまで数秒。
「くぅあああっ!」
叫ぶ。意味など無く、ある種、祈りに似ていた。
もはや走るというよりも、水を切る小石の跳躍に近い動きで、さらに速度が増していく。
限界まで緊張した精神が、残り数秒を10倍近い長さに錯覚させる。
全てが停止したような極限の知覚の中、尚も確かなのが自身の鼓動。

残り7、6、5、4、3、2、1・・・・・・
424傲りと誇り〜鬼事編〜:豆つぶドチビ暦2001/04/02(土) 05:37:07 ID:qXDMze8/0

「あと、一歩!!」

残り一歩。扉の向こうまで、後一歩。
反射的に右腕を突き出して――――――
時が、加速した。
ほんの一瞬の安堵が、昂ぶった知覚を急速冷却していく。
故に。
感覚のズレが戸惑いを生み、戸惑いが右腕の反射を遅らせた。
自覚した時は、もはや全てが遅く。
左右から閉じる扉が、その肘に喰らい付いた。
「―――――――――ッ!!!」
悲鳴が言葉にならない。
緩んだ意識の間隙を、苦痛が蝕み浸してゆく。
扉の隙間に左手を差し込み、同時に展開した人竜がその内部に侵入し中枢を破壊する。
内部に煙が上がり、差し込んだ左掌かにかかる圧力が消え失せたその時、
渾身の力で扉の片側をこじ開けた。
「あと、一歩・・・・・・」
荒く息を吐きつつ、右足を踏み出そうとして。

ひとすじの光が、その左肩を貫通した―――――――――
425作者の都合により名無しです:豆つぶドチビ暦2001/04/02(土) 11:50:20 ID:aP3Lo4/l0
あれ、巣田とミナガー知り合いなんだっけ?
426傲りと誇り作者:豆つぶドチビ暦2001年,2005/04/02(土) 16:12:50 ID:4M7Tft010
>>425
いえ、知り合いではないです。
ただ、巣田が下調べした時に、皆川が高屋の所に居るのをたまたま知って、
ならこいつ奪って高屋に一泡吹かせてやろうっていうノリでこうなりました。

勢いだけで、いろいろ抜けてたりしてすんません。
あと、毎回ageなのは、深く考えずに書き込んでただけです。
マズい事があったらゴメンナサイ。
427作者の都合により名無しです:2005/04/02(土) 20:00:24 ID:LYTdUtAu0
(゚∀゚ )ノ へぃ!>>426のお嬢ちゃん(?)!
素朴な疑問があるんで、よかったらこっちで教えておくれ( ゚∀゚)ノよぅ!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/2218-
428傲りと誇り作者:2005/04/02(土) 20:55:33 ID:n3cfYgJr0
>>427
逝ってきました。リンク先有難うございます。
429作者の都合により名無しです:2005/04/02(土) 22:52:44 ID:LYTdUtAu0
ついでに>>3にもリンクあるけど、
冨樫の遺産の登場人物について整理するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1058562255/
に、自分で出した新キャラの説明テンプレ製作もよろしくだよぅ
430作者の都合により名無しです:2005/04/02(土) 22:59:07 ID:aP3Lo4/l0
>>426
おおう、そうでしたか。回答ありがとう。
なんか裏があるのかと思ったのはナイショだw
431作者の都合により名無しです:2005/04/02(土) 23:15:55 ID:tjNN3xdp0
>>429
出た最初の展開が収集してないキャラはテンプレは早いんじゃないか?
全て終わった後なら、こういう状況で登場してこうなりましたよ、とテンプレで説明できるからわかりやすいだろ。
432作者の都合により名無しです:2005/04/02(土) 23:17:54 ID:LYTdUtAu0
なるほど。じゃあそのやうにヨロシクで>>428
433傲りと誇り作者:2005/04/03(日) 01:59:35 ID:RkQkzRd00
>>432
承知!
434傲りと誇り〜対決編〜:2005/04/03(日) 05:18:01 ID:2jhfTg950
>>424
撃たれた―――――
ぐらりと、揺れる。周囲の景色が、やけにゆっくりと後方へ流れていった。
痛みはまだ無い。
後方から放たれた熱線は、巣田の鎖骨を完全に貫いていた。
傷口は炭化していて、出血は見られない。
そこまで思考した時には、既に身体が大地に臥していた。
そして、痛み。
左肩と右腕から走り抜け、ずきりと神経を震わせる。
ぐう、と思わず漏れそうになった呻きを、しかし強靭な忍耐で噛み殺し、巣田は痛めた右手で何とか立ち上がった。
目の前には、皆川。死の静けさで目を閉じている。
そして背中の向こうには、まだ影すら無く、代わりに膨大な圧迫感。
凍て付いた指先が肌を這い回る様な、凄まじい怖気を伴って後方の空間を席巻している。
刹那、足音。

カ ツ ン ・・・

ただの一歩が響いただけで、怖気が倍加する。
自分の心臓が鼓動を早めたのを、じわりと滲む冷や汗とともに巣田は自覚した。
下手に動けない。
右手の剣を、更に強く握り締める。
435傲りと誇り〜対決編〜:2005/04/03(日) 05:18:49 ID:2jhfTg950

カ ツ ン 、 カ ツ ン ・・・・・・

緩やかに迫ってくる。
真綿で首を締めるように、緩慢に死神は歩を進めた。
その距離は、実際に10数メートル有るか無いか。
一歩ごとに増加する殺意。
それがすぐ傍まで来たのを感じて、間髪入れず巣田は言葉を紡いだ。
「無茶をしますね・・・・・・」
「お互い様だ」
止む足音。しかし圧迫は止まない。高屋の声が、倍化させたからだ。

高屋のした事。
ここより二十数層上階で巣田の姿を捉え、その追跡方法を模索していた時、不意に彼が見つけたもの。
それは、クラウドゲートの簡易地図である。
クラウドゲートの職員は、通常各セクションごとに割り振られて勤務している。
無論、各セクション同士は提携しているので、職員たちが直接セクションを巡ることもまま有る。
しかし、クラウドゲートは広い。
そのため道に迷う者が出た為、その対策として各セクションを簡易的な色分けと階層の指標で表した地図を設けている。
そしてそれを見た時、焦りから失念していた事を思い出した。
「そういえば、実験セクションの位置は・・・・・・・ここの真下・・・・・・・!」
閃く。同時に通信が入った。
「高屋様、ウイルスの除去及びデータの奪還・再生、完了しました!
 ですが、ターゲットに実験セクションへ侵入されました。
 現在、セキュリティを稼動させていますが、何分時間が――――――」
「必要ない。セキュリティは皆川の実験室以外全て解除し、私の指示無く稼動させるな。
 ここから三十階層下まで全ての配線を処理しろ。退避勧告も出しておけ。
 後、私と巣田の現在地をリアルタイムで表示しろ」
「は?ですが・・・・・・」
「聴こえないのか?二度は言わんぞ」
「は、はい!了解しました!」
慌しく通信は途絶する。すぐに現在地表示が送られてきた。
436傲りと誇り〜対決編〜:2005/04/03(日) 05:22:46 ID:2jhfTg950
送られてきた表示を、高屋は凝視する。
赤い点で表示される巣田の位置が、
自分の真下からやや後方に離れた所へ来たのを見計らい、そのまま高屋は重力制御を行う。
ふわりと宙に浮き、そのまま90度前方回転。床と平行に向き合った所で、通信が再度入った。
「配線処理及び退避勧告、完了しました!」
「ご苦労。通信は継続、指示を待て」
「了解」
一拍空けて。
高屋は左胸を開け放った。
床を貫き蒸発させ、下へ下へと突き進む破壊の大光。
本日2度目のメガスマッシャーが、クラウドゲートを縦に駆ける!!

一撃目よりも強力な粒子砲。
それはきっちり三十層を貫き、巣田の居場所へと続く縦穴を生み出した。
モニターを見て、案の定生きていた巣田を確認した高屋は、
そのまま実験室の扉を閉めるよう指示を出す。
巣田は扉に右腕を挟まれ、高屋は悠然と縦穴を降りた。
そして、ほんの少し前。
扉を壊し皆川へと近づく巣田を、ヘッドビームで撃ち抜いた。
緩やかに倒れるその身体を眺めながら、傲然と一歩を踏み出し――――――今に至る。
437作者の都合により名無しです:2005/04/03(日) 13:00:44 ID:f6wr17vw0
状況逆転!
しかし三十層を一撃で貫通とは・・・破壊力だけなら文句なしにトップクラスだな
438作者の都合により名無しです:2005/04/03(日) 23:41:53 ID:lAca58gW0
もっとギャグよりの作家だと思ったが…巣田。
439作者の都合により名無しです:2005/04/03(日) 23:57:31 ID:pA7srVHi0
これからだよ。これからw
440作者の都合により名無しです:2005/04/03(日) 23:58:17 ID:4DkSwjuv0
そうなんだw
441傲りと誇り〜神獣覚醒〜:2005/04/04(月) 23:06:42 ID:xhRtnWvF0
>>436

全身の深手と、高屋からの圧迫感で動きのとれない巣田。
そんな彼女に、高屋は手に持った小さな『砂時計』を見せつけながら宣告した。
「楽しい鬼事の時間は、もう終わり。タイムリミットだよ、巣田君。」
砂の落ちきった時計を、くるりと反転させる。
「今からは懺悔とお仕置き、そして絶望の時間だ。」
その砂時計は、高屋が昔から愛用していたものだと、巣田は気付いた。
少なくとも、自分がNEXTで初めて知り合ったときには、高屋はもうそれを持っていた。
常に最先端の超科学を探究する高屋には、およそ似つかわしくない古風(アンティーク)な代物。
それだけに、奇妙に印象に残っていたことを巣田は思い出す。
愛用の品物を掌中でもてあそびながら悪意に満ちた冷笑を浮かべる高屋に、巣田はほぞを噛んだ。
なぜ、巣田に高屋の表情が見えているのか?
それは、高屋がすでに『殖装』を解き、その素顔をさらしているからだ。
均整のとれた長身を包んでいるのは武骨なユニットではなく、瀟洒なスーツ。
端正で物静かなマスクとは裏腹、猫科の肉食獣のように底光する両眼が、少女の姿をした人竜を捕捉している。
(なぜ……、『殖装』を解除した?満身創痍の自分など丸腰でも十分と甘く見ているのか?)
一度はそう思った巣田だが、それが間違いであることにすぐに気付いた。
高屋が浮かべるのは先程までの驕慢な笑みではなく、絶対の自信に裏付けられた策士の笑み。
そして、その視線は巣田ではなく、その後方に注がれていた。
(――まさか!?)
ハッと何か重大な事に気付いたように、巣田が自分の背後を垣間見ようとした瞬間。

    ズ  ン 

一本の光条が、巣田の左大腿部を貫いた。

442傲りと誇り〜神獣覚醒〜:2005/04/04(月) 23:08:33 ID:xhRtnWvF0
エネルギーを極限まで収束したビーム。
高屋のヘッドビームにも匹敵する精度と威力を誇る一撃が、巣田の左太腿を半分ほど炭化させた。
高屋の前に跪く体勢になったという屈辱も、脚を破壊された激痛も今の巣田には二の次だった。
今の一撃は、高屋からのものではない。背後からの一撃だ。
遠くなる意識を必死に繋ぎ止めながら巣田が己の後ろに見たのは、こちらに白煙の立ちのぼる指先を突きつけながら、静かに立つ青年。
それは誰あろう、先程まで白いベッドの上で眠っていた皆川亮二その人。
その姿を見た瞬間、巣田は、自分にとって最悪の事態が起こったのだと悟った。
「――あらためて紹介しよう。」
芝居がかったように勿体付けながら高屋が言う。
「我が最高傑作――」
どこか虚ろな顔をしていた皆川の顔が、笑みの形に引き攣れていく。
顔面には、シワのかわりに、ナノマシン生命特有の傷が走っている。
「滅びの神獣――」
その両目が開かれた。
血走った赤目の中心に、黄金に燃える瞳が光っている。
それは人の目ではない、獣の目であった。

「獣神将(ゾアロード)『 キ マ イ ラ 』 」

巣田の前で、悪魔が笑っていた。 
443けものとうつけもの:2005/04/05(火) 00:38:11 ID:Q3NUerNX0
>>416 他)

桜色の絨毯が少しずつ、赤く黒く染まってゆく。
倒れ臥す川原の全身の損傷は、自ら流す血によって覆われ、
もはや傷と皮膚の区別がつかない。
昼下がりの公園は、板垣の支配する処刑場と化してしまったのか―――


ヒビの這うビル壁に押しつけられたままの、岡村が虚空を見つめてうめく。
 「・・・負けねえ、俺たちが負けるわけがねえ・・・
 だが、だがどうすればいい?どうすれば・・・」


公園には、蒼白になりながらも川原の容体を、遠目で冷静に分析する松江名。
 「複数箇所の骨折に加え・・・左腕と右足を破壊され、
 今度は脳までやられたか。もし彼が次に起き上がる事があれば・・・
 ・・・確実に、殺される!もはや立つべきではない・・・」
かすかに震える松江名の声は、甲高い声にかき消される。
 『――――あの人は!!
 あの格闘家(おとこ)は立つんだ!起ってしまうんだ!
 負けて助かる命より、勝って死ぬ命を取る漫画家なんだ!!』

―――松江名の傍らには、花びらの塊にうずくまっている女の幽霊。
裏御伽控え室に本体を置いたままの、にわのが歯ぎしりしながら叫ぶ。
俯くにわのの眼前には桜の花弁と共に、
ヒラマツミノルの形見となったマスクの切れ端。

 にわのには、どうしてもわからない事がある。
 川原正敏という男は、いったい何を考えて生きているのだろうと。
 聞けば流し、謝れば背を向け、泣けば突き放し、怒れば笑う。
 つかみどころのない・・・
 そのくせこちらの挙動はしっかりつかんでいる、抜け目のない男。
444けものとうつけもの:2005/04/05(火) 00:39:56 ID:Q3NUerNX0
 (だけど今、ボクはなんとなく彼がわかった・・・気がする。
 考えているようで、実は何にも考えていないんだ。
 もちろんそれが全てじゃない・・・だけど、忘れてしまうんだ。いろいろ。
 器は広すぎるほど広いけれど、底にでっかい穴が開いているんだ。
 馬鹿なんだ・・・いや、ボクがただのバカなら、彼は)

 『・・・川原正敏は・・・ただの大馬鹿野郎だ・・・』

布切れにゆっくり手を伸ばし、にわのは胸元でそれを抱きしめながら。
諦めに近い心情で、ぽつりと小さく呟いた。
ため息と共に沸々と、絶望とも悲しみとも違う感情が溢れ出してきた。


両の手の平に返り血を滴らせた板垣が、無言で地面に伏す修羅を見つめる。
ただぼんやりと待っているのだろうか?
この血戦の終結を、または再開を。それとも目に見えぬ何かを・・・。


 『・・・ふんだ。ひどいよ川原せんせー。
 約束したのに。一緒に【世界の真実】を捜すって言ったのに。
 <蝕>からみんなを助けるために、闘ってくれると信じてたのに。
 そしてボクは今夜中に、あなたと試合して勝たねばならなかったのに。
 全部ぜーんぶ放ったらかしで寝ちゃって、どうせ勝手にくたばっちまうんだ。
 相手が世界最強の生物だかなんだか知らないけどさぁ・・・
 楽しむだけ楽しんで、ボクらを置いてきぼりにして』

それは“別次元”に取り残された者の愚痴。
近くて遠い、捉え所のない男に、膨れっ面で投げつける嫌味の小石。

 『これ以上文句を言われたくなかったら・・・ 帰って来い、嘘吐き』

―――睨むように戦場を見上げたにわのは、この先に見た光景を、生涯忘れる事が・・・なかった。
445作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 13:41:11 ID:cUOfSn3G0
皆川覚醒キター!!
てか、絶体絶命だな巣田。どうするどうなる。
446作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 15:58:41 ID:BvFPxZV/0
        _  ∩
      ( ゚∀゚)彡 修羅!修羅!修羅!修羅!
      (  ⊂彡
       |   |
       ...し⌒J
  _,,..-―'"⌒"~ ̄"~⌒゙゙"'''ョ
 ゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ
 T  |   l,_,,/\ ,,/l  |
 ,.-r '"l\,,j  /  |/  L,,,/ 
 ,,/|,/\,/ _,|\_,i_,,,/ / 
 _V\ ,,/\,|  ,,∧,,|_/ 
447鬼哭:2005/04/06(水) 01:36:48 ID:qTZJSgtS0
>444
両腕を天にかざした構えのまま、立ち続ける板垣。
その足元には修羅が倒れ伏し、その体は身じろぎすらしない。
やがて――
板垣が、静かに構えをといた。
それにともない、背の鬼が消える。
無言のまま、板垣は踵を返し、歩き始める。
もはや倒れたままの川原には、一瞥すらくれない。
「――――ッッッ」
残酷な勝敗の図式に、にわのは無念の涙を流す。
松江名は苦みばしった顔をしているが、それでも最悪の事態を回避できたことに一抹の安堵を抱いていた。
鬼が去り行く戦場に、このまま修羅は二度と立つことは無いのか?
そう誰もが思いかけた、そのとき。
板垣が、その歩みを、ぴたりと止めた。
見守る者たちの目が一様に見開かれ、あまりの衝撃に声が出せなくなる。
闘気が、鬼火のごとく立ちのぼりはじめた。
湿り始めていた空気が、再び熱を帯び、震える。
朱い修羅が、立ち上がっていた。

「せ、せんせぇ……」

にわのが涙を流しながら呟く。
やはり生きていた。しかし。
「も…もうやめて……とは言わせてくれないの……」
「――俺は、川原正敏なんだよ……」
川原は自分の身を案ずる仲間を振り返ることもせず、前へ進んでいく。
この男の前に、門がある。
その名は、修羅の門。

448鬼哭:2005/04/06(水) 01:38:12 ID:qTZJSgtS0
「まだ……終わっちゃあいないぜ……」
「ほう……」
修羅の呼び掛けに、闘鬼が応える。
振り返った鬼の視線が、X線のごとく川原の全身を射抜いた。


完全骨折
 右前腕 2
 左前腕 1
 右上腕 1
 左肋骨 2
 下顎骨 1

不完全骨折
 右前腕 1
 左上腕 2
 左右大腿部 各1

裂傷 8
打撲 46

握撃による右下腿部筋肉の破損

脳内出血及び 両鼓膜破損


格闘技というものは突き詰めれば、解剖学に辿り着く。
人体を破壊する術に長けた者とは、人体の構造を知り尽くす者。
その頂点に君臨する板垣の鬼眼は、一瞬で川原のダメージを読み切った。
449鬼哭:2005/04/06(水) 01:39:41 ID:qTZJSgtS0
「まだやらせてくれるというのか……」
板垣の問いに、川原が薄い微笑を返す。
「あまいな…あんた……その気になれば……いつでも俺の頭を踏みつぶせたはずだ」
「ほう……」
あからさまな挑発にも、板垣はどこか愉快そうに笑うだけだ。
「ならテメェと同じだ。相手の力を100%出させなけりゃ、気がすまねえんだろ?
 テメェがその気になりゃ、俺が本気になる前に仕留めるチャンスはあったはずだ」

――にたぁ。
――にぃ。

互いに会心の笑みを見せた。
修羅の笑みを。
悪鬼の笑みを。
それが、最後の血戦の合図だった。

板垣が両手を高く上げていく。
鬼の形相を生む角度よりも高く、天をつかむかのように上へ。
それにあわせ、一度は消えた鬼が再び姿を現す。
背中の形状はそれだけにとどまらず、さらに変化していく。
その光景を見た、にわの達がおののく。

「これは…」
「まるで……ッッ
 泣き顔のような…ッッ」

背中の鬼が哭いている。
これまで板垣に葬られてきた、幾多の漫画家の怨念がはりついているとでも言うのか。
鬼も哭く板垣の最終奥義。
それが、遂に爆発しようとしていた。
450作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 04:13:26 ID:58p/qF8P0
王子ィーーーーーー!!
451作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 06:13:48 ID:oiFDlbAY0
やはり立つかよ・・・・っ!(⊃Д`)
452作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 18:11:45 ID:mi+gTnhZ0
>>203
     ド ガ ・ ギ ガ ッ ッ !!!!

クロスカウンター気味に突き刺さった両者の拳は、その威力を余すとこなく伝え合い、刹那の均衡を経て、また二人を引き離す。
下から抉りこむようなアッパーを喰らった高田は、斜め上、空になって久しい給水タンクに体を突っ込み。画太郎は、ほぼ平行に飛ばされて、屋上の縁で背を強打する。
やがて、自らが空けた穴に手をかけ這い出した高田は、屋上の反対側に、既に起き上がり、痣のできた背中をこちらに向けている、漫☆画太郎の姿を発見。
飛び降り、歩みより、三メートルほどの距離で無防備な背中に問いかける。
「……戦闘中になにを見ている」
「でけえな……おい……。世界はこんなにもデッカイ……」
この建物は、ここいらで一番背が高いらしい。様々なビルヂングに民家の屋根、色とりどりの看板が自己主張しているのが、人の営みとして雄大に見える。
しかし、いきなりなにを言い出すのだろう、この男は。
「いつからこんなんなっちまったんだろうな……俺たちは……」
眺望を瞳にうつし。とっくりから大杯に注いだ液体を飲み干す画太郎。
「俺たちゃ格闘家でもなけりゃテロリストでもない……ええおい 俺たちがなんだったか、言えるかい?アンタ」
「……漫画家、だな」
「そうよ。漫画家よ。 それがどうだい?神だの悪魔だの大会だのとワケのワカランタコ踊りに乗せられちまってよう」
よっこいしょ、と屋上の端から足をぶら下げて、また一杯あおる。
「………下らん語りがしたいだけか? 後ろからとはいえ手加減はせんぞ。 時間も押しているんでな」
「まー そう焦るなって」
とくとくと三杯目を注ぎ、立ち上がり、高田に近付くと、杯を差し出す。
「この景色を眺めながら飲む酒はかくべつだぜ どうだい あんたも一杯 ほれ」
「……ふん。どーせ毒でも入れてあんだろ」
「うっ!!」
おもいっきり図星をつかれた表情をした画太郎は、その後、気まずそうに笑うと、杯の酒をだばだばと地面にこぼす。
「あ、あんたするどいな〜 大抵の奴はこれで死んだ…… そして生き残った奴らも」
今度は、ひょうたんから直接自分の口に流し込む。
一瞬。
噴霧として吐き出された酒が火気を得

「 こ れ で 死 ん だ あ あ あ ――――― っ っ !!!!」

火炎放射となって高田を包み込んだ。
453作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 20:23:00 ID:p8oqudYY0
画太郎やけに格好いいなおいw
454作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 20:29:46 ID:6GERyjze0
妙にシリアスでワラタ
でもこのビルってまさか・・・・

板垣vs川原、またもの悲しい展開になってきたなあ
455おまたせ?ピース電器店:2005/04/07(木) 16:40:00 ID:JsoqqMcW0
(22部343)
矢吹艦内にある商店街のひとつが、妙に騒がしかった。
しかし商店街の住人からすると、この区域はあるひとりの漫画家のおかげで、
お祭り騒ぎのような日常がもはやデフォルトだという・・・。

新沢「う〜、いつになったら野中は修復されるのだ!ヒマなのだ!
  あのおっさん、自分だけスタジアムに乗り込んで無責任なのだ!」
ぶうぶう文句をたてる新沢の周囲に、変態チームの分断した片割れ数名。
『腕のいい技師がいる電器屋さん』が暮らしている、三階建ての店の中で、
狭いスペースを縫うように彼らは野中ロボの修理完成を待っているのだが。

店には大きく、≪ピース電器店≫と名前が掲げられている。
しかし実は肝心の店主──漫画家・能田達規は現在不在。
大のサッカー好きである恰幅のいい、丸メガネのチョビひげオヤジは、
抽選会での決勝戦第一試合の形式発表を、TVで聞いた直後店を飛び出してしまった。
現在お店を仕切るのは、能田が出かけ際に「ワシの代わりだ」と、
造り置いたおおざっぱなデザイン(野中と大差ない)のロボット。
人工知能が能田仕様になっており、やってきた新沢たちに野中の部品を手渡され、
最初のうちはマジメに直していてくれたのだが。

サッカー中継が本格的に始まると、ロボまで試合を見たがってしまう。
なので今度はロボット自身が、自分の分身ロボを制作し、
それらに店を任せてTV観戦を始めてしまった。
そして分身ロボも最初のうちはマジメに→以下ループ。

展示用のTV前は分身の分身の分身の・・・とにかくロボ軍団で埋まりギュウギュウ。
しかもロボ制作中は野中の修理も中断。そんで一台増えるたび店は狭くなる。
一階部分はパンク寸前。どうすりゃええねん!そんな一幕であった。

───新沢側についていた漫画家たちは知らなかった。
あんど捜索組の方は先程【三種の神器適合者捜し】のため、
妖魔王陣営に誘拐されてしまった事を。そして新沢たちにも、魔の手は近づいていた。
456作者の都合により名無しです:2005/04/07(木) 22:18:49 ID:/FxmBbYM0
能田はピースパパか

そして妖魔王軍のギャグ漫画家連続誘拐計画も着々と進行中、と
計画完成の暁には、ものすごい愉快な軍団ができそうだw
457作者の都合により名無しです:2005/04/09(土) 22:32:54 ID:g9RgXUY00
妖魔王陣営って最近の暗躍ぶりとは裏腹に、陣営内の人間関係は一部をのぞくと結構仲良くて楽しそうなイメージがある
ゴッドハンドが水面下で暗闘繰り広げてて、腹に一物飲んでる奴が多いのとは対照的
458作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 01:21:22 ID:kEvSSgOb0
学生さんだからか妙に仲良しだよねー
・・・なんか違うけど
459作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 01:24:10 ID:7YE+hdj/0
別に暗躍ぶりと内部の人間関係は関係ないと思うんだが…
460ルール:2005/04/10(日) 16:13:34 ID:6LVlmhp90
>>315
肉体の所有権を賭けた戦いは、いまだ決着を見てはいなかった。
腐朽は地面に倒れふし、大暮もまた立ったまま意識を失っている。
果たして、先に目覚めるのはどちらなのだろうか・・・。
と、そのとき、ゆっくりと動きだした者がいた。
そいつは血まみれの顔に、笑みを浮かべ、こう言ったのだ。
「九死に一生・・・ってやつ・・・っすねえ」
白い髪、白い顔、白い服、白い笑み。
先に意識を回復させたのは、腐朽であった。
「もう少しタイミングが遅かったら・・・確実に死んでたっすよ」
そう言いながら、腐朽は両手をポケットから出した。
腐朽は、脳天を叩きつけられる直前、《“頭”を“ダイヤモンド”に変える力》によって即死を免れたのだった。
その限定条件は、両手をポケットにつっこんでいる間だけ発動する、というものだ。
ゆえに腐朽はあのとき、一か八か、両手を封じられるリスクを犯しても、頭部を守ることのみに専念した。
それでもダメージが大きく、頭蓋骨に亀裂が入ったうえ、しばらくの間意識を失ってしまっていた。
だが、“魔王”をまともに喰らった大暮にくらべれば、ダメージ量から考えて、先に起き上がる確立はさほど低くはなかったのだ。
そして、腐朽はまたしても賭けに勝った。
思えば、薄氷の上の勝利といえるだろうが、危険なバクチの2つ3つに勝たねば、勝利を見出せないほどに大暮が尋常ならざる強敵だったということである。
「ありがとうっす、眼帯の兄さん。あんたのおかげで、俺はまたひとつ強くなれたっすよ」

      ド ッ ・・・・

立ったまま気絶していた大暮がゴボリと吐血した。
大暮の右肩から左腰のあたりまでを、人間大を超えるほどのサイズの剣が袈裟切りにしていた。
その刀身には柄がなく、腐朽の右腕から直接生えていた。
三ツ星神器“快刀乱麻(ランマ)”である。
「でも、あんたの役目はここまでっす」

      ド     ン  !!!

笑みをそのままにそう言って、腐朽は右手の剣を振りぬいた。大暮の体から噴水のように血がほとばしり、全ての力を失ったように倒れた。
461ルール:2005/04/10(日) 16:14:43 ID:6LVlmhp90
「兄さん、兄ーーさーーん、まだ生きてっすかー?エブリバディハロー!?」
血の池に突っ伏す大暮の顔をペチペチと叩く腐朽。
「ガッ、ゲボ!」
「あ、よかった。まだちゃんと生きてるっす。さすが妖怪!」
血の咳を吐きながら大暮は目を覚まし、それを確認した腐朽は感嘆の声を発した。
「惜しかったっすねー、兄さん。最初の外での戦いは俺の勝ち。次の体の中での戦いはあんたの勝ち。でも、最後の三本目は先に起き上がった俺の勝ちだったっすよ。2対1で俺の勝ち越しっす」
「へっ・・・完敗だよ、コゾー。で、どうした。さっさと俺をバラして自分の体を取り戻せばいいだろーがよ」
己の敗北を認めた大暮が、荒い息をしぼりだすように言った。
すると、腐朽は意外にも首を横に振って笑った。
「いやいや、せっかくガチンコで戦って、熱ーい友情が生まれたことだし、このまま二人一緒に同じ体を使うっすよ」
「!!??」
混濁する意識のなかで、大暮は腐朽の言葉の真意をつかみかねていた。
こいつはいったい、いきなり何を言い出すのだ?
腐朽の顔は言葉とは裏腹に、なんらかの悪意が見てとれた。
そして、腐朽の意図は、次の瞬間に明らかになった!
 。 。。。 。。。
「いただきまーす」

その場にそぐわない脈絡のない言葉が吐き出された場所を見て、大暮は驚愕に目を見開いた。
なんと、腐朽の口が、常人のそれを遥かに超えて、異常なほど大きく開かれていたのだ!!
そして、その光景が、大暮が見た最後の映像になった。

            ズ ギ ュ ウウウウウウウウ ン  !!!!

                   。 。。。 。。
異様な音をたてて、大暮の全身は、腐朽に丸飲みされた!!!
そして大暮の姿は跡形もなく、その場から消え去り、後には「ぺロリン♥」と美味い料理を喰った直後のように満足そうに舌なめずりする腐朽の姿だけがあった。
462ルール:2005/04/10(日) 16:17:21 ID:6LVlmhp90
「これで、俺と兄さんは、いつでも一緒、これがホントの一心同体っすよー。今後ともヨロシク」
この化け物じみた能力は、腐朽が持つ能力のひとつ、“守り人”の力である。
腐朽は相手を飲み込むことによって、その者が持つ能力を自分の物にすることができるのだ。
「さてと・・・ふむふむ・・・さすが兄さんっすねー。今の俺の状況を改善するのに、おあつらえ向きの力を持ってるじゃないっすか」

     ド   ス  ッ !

何を思ったか、いきなり腐朽は手刀を自らの胸に突き刺したのだ。
しかし、腐朽は死ぬどころか、逆に全身の夥しい損傷が見る間に治癒していくではないか!
「“龍掌”・・・その者が持つ自然治癒力を増幅させ、たちどころに負傷や病気を回復させる能力。いい感じっすね、これで体力満タンっす!」
腐朽は満足そうに笑った。
これまで腐朽に欠けていた、回復系の能力。欲していた能力の中でも、かなり強力な部類に入る力が期せずして手に入ったのだから。
「さーて、またひとまわり成長したところで・・・懐かしい外の世界に帰るっす」

そして、場面はエリア88に戻る。
「ふー、やっと帰ってこれたっすよー。やっぱシャバの空気は美味いっす!!」
久しぶりの外の世界を満喫するように、腐朽は伸びをして深呼吸する。
「あれ・・・でも、なんだかずいぶんとさびしくなっちゃったっすね」
ふとあたりを見回してみると、そこには腐朽以外に誰の姿もない。
腐朽が最後に外で見たのは、和月と山賢が戦っている場面であった。
しかし、今は二人の姿はどこにもなく、ただなぎ倒された木々と、一部破壊された甲板が広がっているだけであった。
体内で戦っていた間、王蛇ことMEIMUが乱入した結果、山賢は他の獲物を求めて去り、和月はその王蛇と戦いながら何処かへ移動したことなど、腐朽は知るよしもない。
「困ったっすねー、まーた戦う相手を探さないといけないっすよ。俺の“夢”を叶えるためには、あの眼帯の兄さんみたいな、より強い相手と戦わなきゃいけないっすのに」
しばらく思案する腐朽。
ふいに何かを思いついたように、ぽんと手を叩いた。
「そうだ、こんなときに使う、ぴったりの能力があるじゃないっすか!」
そう言って、腐朽が真下に向けて右手の平を開いた。
「亜神器・・・」

        テ ン ソ ウ
     “ 天  地  創  造 ”  !!!
463ルール:2005/04/10(日) 16:19:20 ID:6LVlmhp90
腐朽の呼びかけに応じて現れたのは、天体観測図の一部を切り取り、そこから八方に奇妙な枝を生やしたような、そんなデザインの道具であった。
一瞬、その神器が光を発し、次いでエリア88全体に異変が起こった!!

その異変は、エリア88に現在存在する、すべての者が感じ取った。
誰もが一瞬、戦いの手を止め、その状況に困惑する。
エリア88が、“変化”していた。
まるで神が、新たに大地を作り変えるように。
ある場所は隆起し、ある場所は沈下し、ある場所はスライドし、ある場所は離れあい、ある場所は組合い、からみあった。

・・・・そして、鳴動が終わると、そこに空母エリア88は無かった。

いや、正確に言えば、その存在としての形が、全く別の物に姿を変えてしまったのだ。
それを外から見たものは、新たに出現した“それ”をどう表現しただろう。
複雑に入り組んだそれは、既存の建築物のあらゆる常識に該当しない。
いくつかの立方体がデタラメに組み合ったようなそれは、子供が適当にブロックを積み上げたような不自然なデザインだった。
重力を考えれば、本来ならたちどころに倒壊するであろう歪極まる建造物は、海から生えた太い4本の柱によって支えられていた。
そう、この建造物は、海面からわずかに浮いた形で存在しているのだ。
それぞれの柱には、A・B・C・Dというアルファベットが刻まれ、それが立つ位置で大まかな場所が分かるようになっている。

「こんなトコっすか」
エリア88の改造を終えた腐朽は、その出来に満足そうにつぶやいた。
「これで、戦う相手を探しやすくなったっすよ。さーて、この異変の正体に気づいて、真っ先に俺を倒しに来るのは誰っすかねー。まー一応、こっちからも動くっすけど」
そう、この建造物は、腐朽自身が戦うためだけに作られた、巨大な闘技場であった。
亜神器“天地創造”の力によって、腐朽はエリア88を自らの望みの形に変化させたのだった。
新たな力を手に入れ、場を整え、腐朽は新たな動きを開始した。
エリア88の状況は、さらに混迷を極めていく。

←TO BE CONTINUED
464作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 17:03:46 ID:kEvSSgOb0
ぎゃあー!
能力喰い福地キタァァァ!!
アニメや続編始まってますます凶悪化してるなこいつは
465作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 19:47:55 ID:xTkc1eSpO
福地どんどん手がつけられなくなるな。面白いから全然おkだが
466作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 20:24:51 ID:tTNiDW/y0
…ま、細かい整合性より勢いということなのかな…。
467作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 20:33:08 ID:ZWyMddRi0
放置展開はどう繋げられようと文句は不可。
書いた二日後とかにまだ複線が残ってる話を強引に繋げたりは個人的には問題外だがな。

今回のはそういう意味じゃ許容範囲。
ただ直前で格好良かっただけに大暮は惜しかった……
468作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 22:12:24 ID:tTNiDW/y0
大暮・腐朽、ともにメチャクチャ格好良かったもんな。

ま、リレー小説だから、これはこれで納得しようってことで。
469作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 22:36:27 ID:xj097UHZ0
大暮はしんだ訳じゃあないし妖怪だから何とかしようと思えばなんとでもなるべ。
しっかし福地は裏主人公呼ばわりできるくらいの成長っぷりだなぁ。面白かった!
470作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 22:38:20 ID:ZWyMddRi0
重要なのは生死の問題じゃないんだが、まあお前はそれでいいや。
471MIX-UP:2005/04/11(月) 02:30:06 ID:qS5vohAt0
>>411
赤松は地上に降り立つと、苦痛に顔を歪めながらも、かがみこんで左足首に手をかざした。
その手から魔力の篭った淡い光が放たれる。
「治癒魔術?」
「ご名答。まあ、あまり得意ではないのだがね」
田辺の呟きに、そう苦笑した赤松だが、数秒後立ち上がると、確かめるように左足のつま先をトントン、と地面に打ち付ける。
それを見た西森が、ひとつ舌打ちする。
(なーにが得意じゃない、だ。アキレス腱完治してんじゃねーか)
攻撃のみならず、強力な回復手段を持つ赤松。思った以上に厄介な相手のようだ。
となれば──

「おい家来、ボケっとしてんじゃねー。あっちがやりあってる間にアイツ片付けるぞ」
そう言って、油断なく構える森川に目を向ける。
「あ、はい」
そう答えた田辺は、下を向いてすこし考えこんだ後、隣に立つ西森に小声でささやきかけた。
「……西森先生、一瞬で構いません。奴の動き、止めてください」
「ヨユーじゃ」
即答すると、西森は森川に向けて駆け出した。
とんっ、と地面を蹴ると、その体が羽のようにふわりと宙に舞う。
ジャンプで一気に距離を詰めると、西森はその勢いのまま空中で回し蹴りを繰り出した。
しかし、森川は西森の動きを、視力を除く五感をフル活用して捉えていた。
(見えないからってそんな大振りが……)
旋風のようなその蹴りを、森川はまるで見えているかのようにあっさりとスウェーで避ける。
「当たるかよ」
そう呟くと、いまだ宙に浮く西森に向けアッパーを放った。
必死に体を逸らし、辛うじてその拳をかわす西森。
しかし、無理な姿勢のせいか、西森は着地の瞬間バランスを崩し、後方にたたらを踏む。
「死ね」
追撃のために森川が一歩踏み出した瞬間、
───パンッ
その足の裏で何かが弾けた。
472MIX-UP:2005/04/11(月) 02:30:40 ID:qS5vohAt0
「結!」
想像外の出来事に、一瞬生まれた隙を見逃さず、田辺が成形した二層の結界が森川を包囲する。
森川が踏んだもの、それは、着地の瞬間に西森が地面に撒いたカンシャク玉だった。
だが、瞬時に動揺から立ち直った森川は、ケラケラと笑う西森を無視して両の拳を繰り出す。
盲滅法放たれた数発の拳の連打(ラッシュ)、二層の結界は、それぞれが一発ずつであっさりと破壊された。
「マジで小賢しいヤツらだ……」
憎々しげに吐き捨てる森川、その頬を冷や汗がつたう。
そして、その森川の様子を伺っていた田辺の口から、無意識のうちに声が漏れる。
「やっぱり……」
「なにがやっぱりか、このボケ。チャンスだったのによ」
いつの間にか側に戻ってきた西森が、ぱん、と田辺の後頭部を叩く。
「で、何がわかった?」
結構な強さで叩かれたせいか、涙目で後頭部をさすっていた田辺に西森が問う。
「奴に結界が通用しない訳じゃない、ってことです」
「通用してねーぞ?」
首を傾げる西森に、そうじゃなくて、と苦笑しつつ、田辺イエロウは考える。
先程から、心のどこかで燻りつづけていた疑問──本当に五重結界の滅却は通用しなかったのか?
自身は対峙することなく、距離を置いて奴のパンチの威力、スピードを冷静に観察することで、その疑問は氷解した。
奴──森川は五重結界の『滅』に耐えた訳ではない。
『滅』の呪言を唱え、その効果が発揮されるまでの一瞬の間に、内部からの打撃で次々と結界を破壊したのだ。
おそらく、先程の五重の結界も、四つまで──あるいは最後のひとつも半ばまで──は破壊されていたのだろう。
そして、もうひとつわかったこと。
視力を失ったせいだろうが、二層しかない結界を破壊した後も、闇雲に連打を続けた森川。
奴は結界の、『滅』の威力を怖れている。
「とにかく、次はあのゲス野郎に痛い目を見せてやれると思います」
田辺は西森に顔を寄せ、即興で立てたその策を耳打ちする。
「西森先生、やってもらえますか?」
危険な役回りを課したせいだろう、心苦しそうにする田辺に、西森はふん、と鼻を鳴らす。
「ひとつ教えておいてやるぞ、家来」
天使のようなその美貌に、悪魔のような笑みを浮かべ、西森は高らかに宣言した。

「俺は強えー、そしてヒキョーだ。───だから俺は無敵だ」
473MIX-UP:2005/04/11(月) 02:32:33 ID:qS5vohAt0
森川とサンデー二人組の攻防を横目で伺いつつ、赤松は舌打ちする。
森川の実力は折紙つき。例え多対一の戦いであろうと、そうそうひけを取るものではない。
但しそれも、万全の状態であれば、の話だ。
如何な森川と言えど、視力を失ったこの状況ではさすがに分が悪い。
援護すべきであり、そのための手段を自分は幾らでも持っている。
それが出来ないのは、数メートル先にいる男──柴田ヨクサルのせいだ。

正直なところ、あの男を前に治癒魔法を使ったことさえ、赤松にとってはとてつもない賭けだった。
アキレス腱断裂は、痛みの中でも最大級。
その激痛を抱えたまま戦い続けるのはあまりに不利、という判断の上での行動だった。
結果的に、断裂したアキレス腱を治癒している間、ヨクサルは仕掛けてこなかった。
赤松は賭けに勝利したことになる。
しかし、そう何度も危険な賭けを繰り返すほど無謀にもなれない。
先程、一瞬の隙を突かれてあっさりと左足を破壊されたという事実が、赤松の行動を掣肘していた。

──とはいえ、こうしてただ突っ立っているワケにもいかない、か……。
内心、そうひとりごちると、赤松は口を開く。

「さて、こちらも続きといこうじゃないか。柴田ヨクサル」

呼びかけを受け、その視線を赤松に定めると、ヨクサルが構えた。
左足を一歩前に踏みだして赤松に対し半身となり、腰を深く落とす。
左手は握りこまず、地を指し示すように前へ、軽く握った右拳は腰に添えるように。

ヨクサルが得意とする、八極拳の構えである。

しかし、それを見た赤松の表情は、恐れとは全く別のもの。
とっておきのイタズラを思いついた子供のような──というには邪悪すぎるが──笑みを貼りつけ、赤松は呪文を唱えた。
474MIX-UP:2005/04/11(月) 02:34:31 ID:qS5vohAt0
「戦いの歌(カントゥス ベラークス)」

一瞬、赤松の全身を魔力の光が包みこみ、光が消えるとともに赤松も構える。
ヨクサルの目が大きく見開かれる。
赤松の構えはヨクサルのそれと同じ───八極拳。

「驚いたかな? 実は私も八極拳士なんだよ」
ミーハーでやっているんだがね、と赤松が嗤う。
「君の正統的な八極拳と、私のミーハー八極拳、どちらが上だろうか……」
赤松は歌うようにヨクサルに語りかける。
「やってみるか? どちらが吹っ飛ぶか」

「……ふざけたこといってるぞ」

この男にしては珍しく、不愉快さをありありと感じさせる口調でヨクサルが応える。

「それをわからせなきゃならないな……」

柴田ヨクサルと赤松健。対峙する二人の八極拳士。
高まる闘気が頂点に達した瞬間、二人は同時に左足を前に踏み出した。
その踏み込み──震脚により、アスファルトに蜘蛛の巣のような亀裂が走る。
まるで鏡に写したかのように、動きをトレースしながら、二人は同じ技を繰り出していた。

体を捻り、背中から相手にぶつかるその技───鉄山靠が激突した。
475作者の都合により名無しです:2005/04/11(月) 03:02:27 ID:6G8M99TN0
西森タンは凶悪美少女で実に私好みですな
赤松氏は色々隠し種が多そうで、どう転ぶか見ものです
476作者の都合により名無しです:2005/04/11(月) 03:09:14 ID:3vxZr0py0
          〆⌒'ヾ、
         γ'《.::::...  'ヽ,
          ミ/'⌒ヽ,::. ヽ
           ヽヽヽ  ヾ,  ヾ,
     _           丿' ..::丿
   ( ゚∀゚)x"⌒''ヽ、⌒ヾ/  .:::/ ヽ    赤松!器用!ミーハー八極拳!
   (|     ...::   Y-.、   ..:::/ ヽ ヽ
    |  イ、     ! :ヽ .:::::/ヽ ヽ ヽ 
    U U `ー=i;;::..   .:ト、 /  )  .)  .)
          ゝ;;::ヽ  :`i  /  /  /   
            >゙::.   .,) /  /  /
       ////:::.  /;ノ / /  /
     ゞヽ、ゝヽ、_/::   /// /
     `ヾミ :: :.  ゙  _/
       `ー--‐''゙~
477その“一撃”:2005/04/11(月) 03:35:52 ID:Yfm0Tkhb0
>474
「うげえええっ!!」
まさに、一撃。
八極拳の打ち合いに負け、呆気なく吹き飛ばされた赤松が悶絶する。
「一つだけ教えてやる…八極とは“大爆発”のことだ…その程度で八極拳士を語るな…」
柴田が立つ地面。
そのコンクリに刻まれた震脚の破壊の爪痕と、赤松の残した些細なそれとが、彼我の威力の絶対的な差を物語っていた。
「はは…遊びが過ぎましたか…やはり貴方相手に接近戦は無謀…」
赤松、ふらふらとした姿で素早く上空に逃げる。
「さてさて、どうしますかねぇ……」
激痛を少しも感じさせぬ声で、赤松が呟く。
と、その時。
盛大な破壊音が、耳を打った。
ちらとそちら、森川ジョージの方に目をやる。
裏路地に聳え立つ、ビルのコンクリの壁の一部が、森川の横殴りの一撃によって見事に崩壊していた。
「おや、やはり――」
と、多少のおかしみを感じつつ、赤松は言う。
「代わりたいですか、森川先生?」
その問いに森川は無言でもって答えた。
突然の破壊行為と対照的な静けさが、なんともいえず不気味である。
「なんとかしろ」
短く、森川が言った。
押し殺したような声音だった。
赤松は、得心したように頷き懐から一枚の呪符を取り出す。
「水妖陣」
紡がれた呪と同時、符が消失し、赤松の背後に、夥しい数の透き通るような手が発現した。
悪魔の視線が、西森と田辺を射抜く。
瞬間――透明の魔手がぐんっ、と伸び、二人に一斉に襲い掛かった。
478その“一撃”:2005/04/11(月) 03:38:08 ID:Yfm0Tkhb0
「やっべ……!」
西森は、焦る声と裏腹に、こちらへ伸び来る手など気にも留めず、顔色を変えて森川の方へ駆けた。
その体に幾多の手が絡みつく寸前、森川の体を覆いそれを阻止したのは、田辺の結界である。
「西森先生、何してるんですか!」
「間抜けッ、俺を守ってる暇があるんならあっちを止めろ!」
あまりにも無防備に――と、田辺には見えた――森川の方へ飛び出した西森を諌める声は、切羽詰った罵声により打ち消された。
あっち、と言われた方向、つまりは森川ジョージがいる方だが、そちらを見て、田辺は固まった。
そこに立つ森川の両の眼を、透明の手が覆っていた。
「OKですか、森川先生?」
田辺が、赤松の狙いに気が付いたと同時、おどけるような声が上から降って来た。
もちろん、赤松である。
森川は、水で濡れた眼を指で擦り、ゆっくりと、眼を見開いた。
「ああ、お前にしては上出来だ。……案外明るかったんだな、ここ」
視界の状態を確かめつつ、低い声で森川が言った。
詰まる所、最初から赤松の狙いは森川の視力の復活にあった。
森川と赤松が言葉のやり取りを最小限に留め、赤松が最初術を西森と田辺に放ったのも、全てはそれを阻止しようとするだろう二人の動きを抑止する為。
その狙いをいち早く見抜き、食い止めようと動いた西森は流石というべきだろうが、その彼女も赤松の魔術に対応することは出来なかった。
ちっ、とこの期に及んで不遜に舌打ちする強かな美少女の姿を、森川は凄い眼で睨む。
己を屈辱的な状況に陥れたその当人が一際だった美貌を持つことすら気が付かぬ程の憤怒がその眼には込められていた。
が、しかし――。
森川は直ぐに視線を外し、別の方向を向いた。
479その“一撃”:2005/04/11(月) 03:38:56 ID:Yfm0Tkhb0
その視線の先――ねばつく闇に溶けるように立つ柴田ヨクサルを見定め、ようやく、赤目の魔人は嗤った。
「またせたか……」
低く、押し殺すような声で森川が呟く。
「少し、な」
ふっ……と吐息のような笑みを口元に浮かせて柴田が答える。
――この男がどう動くかは、この場面に置いても一つの鍵だった。
しかし赤松は、彼が森川ジョージの復活を待つと確信していた。
(気が付いていたよ……私と戦いつつも、君の意識は森川先生に向けられていた)
それは、森川も又感じていたのだろう。
必要以上に赤松に悪罵を投げ掛けたりしたのもその憤りからだ。
そしてそれが爆発したのが、先程の破壊行為。

「「邪魔したら殺すぞ」」

その場の全員に向けて、彼らは同時に言い放った。
空気が凍りつくかのような、冷たい声だった。
480作者の都合により名無しです:2005/04/11(月) 03:47:06 ID:6G8M99TN0
ほうほう
いよいよ本格的に殺し合いですな
楽しみです
481作者の都合により名無しです:2005/04/11(月) 03:53:13 ID:3vxZr0py0
>「うげえええっ!!」

( ; ゚Д゚)<しっかりしろ大罪衆!大罪しゅぅぅぅうっ!!!
482罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:14:13 ID:wyOGOGKJ0
>>126

エリア88の鳴動を、そして変形を、あらゆる戦場にいる者たちが感じ取る。
そう、この三者も例外ではない。
平野「――!?」
内藤「こ…この揺れは!?」
伊藤「何か……またもや珍妙な事態になってきたみてえだな?」
内藤・平野・伊藤明弘のガンマン三巨頭。
終着点の見えない三者の戦いに、新たな一石が投じられた瞬間であった。
背中合わせで立つ内藤と伊藤、それを包囲する形だった平野、この位置関係が変わる。
エリア88の一大変形により、三者の距離が離れ、高低差が生じた。
真っ先に飛び跳ね、空中で平野の位置を確認し、二丁のモーゼルを照準する伊藤。
遅れぬ反応で、ジャッカルを照準し返す平野。
両者の銃口が火を噴くかに見えた刹那、内藤が叫んだ。
「伏せろ――っ!!」

        ――― ヴ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ッ ッ ッ !!

二人のいた空間を断ち割るというよりも、滅し尽くすかのように、鋼鉄の嵐が吹き荒んだ。
いや、それはもはや弾幕というより、弾丸の壁といった方が適切だったかも知れない。

       ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ―――――――オオオオオオオオオオオオッッッッ!!!

「くっくっく…」
火災発生と勘違いするほどのガンスモークの向こうから、笑い声が聴こえた。
平野が発生させた闇は、この瞬間の乱射で切り裂かれていた。
闇が晴れ、再びあらわになった蒼天をバックに、浅黒い肌に金髪が映える美少年が立っていた。
それはたった一点をのぞけば、あまりに場にそぐわないと思えただろう。
ただ一点、その少年の全身から、夥しい数の銃器が張り出していることを除けば―――
483罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:15:01 ID:wyOGOGKJ0
伊藤「――誰だ?」
伊藤が訊く。少年が答える。
??「GUHG−HO−GUNSの7、木葉・ザ・クリオダイバー」
その名に、内藤の表情が変わった。
内藤「君は……」
呆然とつぶやくと、それに気付いた木葉が恭しく跪いて臣下の礼をとる。
木葉「長き眠りからのお目覚め、待ち望んでおりました、内藤様」
どこか難しい顔つきになった内藤の表情には気付かず、木葉はその銃口を伊藤に向ける。
木葉「さあ、命令してください、内藤様。貴方の敵を、消せ、と」
大量の銃器を一斉に照準されて、さしもの伊藤も頭をかく。
どうやって、この大味な相手を攻略しようかと、苦笑しながら思案しているようだった。
突然乱入してきて、戦場をかき乱し、今まで自分が戦っていた相手と銃撃戦を繰り広げようとしている部下。
それへの対処を、内藤が決めかねていると、闇より響く声。
「走狗(いぬ)め」
「――!!」
切り裂かれた闇が、三人の目の前で収束し、人の形をとっていく。
「なるほど、たいした威力だ。しかし走狗では私は倒せない」
闇がわだかまり、それがやがて白い姿をとっていく。
「狗では私を殺せない。化物を打ち倒すのは、いつだって『 人 間 』だ」
たるんだ頬の皮肉を吊り上げて、何とも言えぬ不快な笑みを浮かべる。
木葉の銃弾で穴だらけにされたはずの平野が笑っていた。
木葉「――すごいな。やっぱり吸血鬼の再生能力は尋常じゃない」
感嘆した木葉が、新たな銃を生やし、平野にも銃口を向ける。
新たな乱入者の登場で、戦局が大きく動こうとした、そのとき。
内藤「――木葉、ここは僕ひとりでいい。君は、この艦の人間を、ひとりでも多く助けてやってくれないか」
木葉「――!?」
この申し出は予想だにしていなかったのか、木葉が胡乱な顔をした。
平野は「始まった…」とばかりに少し興ざめしたような表情。
伊藤は、どうとも判別できぬ微妙な態度を示していた。
484罪のカタチ:2005/04/11(月) 22:16:46 ID:wyOGOGKJ0
内藤「この艦の人達は、僕を助けてくれた。恩返しになるかは分からないけど、僕は彼らに報いたい。
   それに、僕はもうできるなら人が死ぬのは見たくない」
自分たちは化物だ。双方がいなくなるまで潰しあい、消え去ればいい。
しかし、人間には死んで欲しくはなかった。
今さら、と言われても仕方ないが、それが目覚めた内藤の願いであり、決意だった。
しかし、命令というよりは嘆願とでもいうべき言葉を、出迎えたのは白けたような一言だった。
木葉「期待外れだぞ、おまえ」
少年の顔には、もはや主人への尊敬の念など欠片も浮かんではいなかった。
かわりに張りついているのは、失望の極みとでも言わんばかりの冷めた表情。
木葉「なんだそりゃ。最低だ。つまらん」
侮蔑もあらわに吐き捨てた。先程、内藤に頭を垂れたときとはまるで反応が異なる。
木葉「俺を始めとする『ミカエルの眼』の連中は、あんたが『世界を真っ平らにしたい』っていうから、その力になるために技を磨いていたのに。
   それが今頃になって、そんなこと言うなんて……興醒めにも程があるな」
内藤「……!!」
自身の最も痛いところを突かれて、内藤は強く歯を噛む。
そう、勝手に漫画界に失望して、自分だけの都合で全てを消そうとして、そしてGUHG−HO−GUNSを破壊者の集団に変えようとしたのは、他ならぬ自分なのだ。
今、目の前に立つ、少年の姿とは裏腹の狂気の具現化。
これは、内藤が生んだ罪、そのなによりの証であった。
木葉「ま、今のは起き抜けで寝惚けてた…ってことにしといてあげるよ」
ズルル…と木葉の身体から、なおも次々と武器が飛び出す。
機関銃が、ロケット砲が、ミサイルが、ありとあらゆる兵器が出現する様は、まさに武器庫。
木葉「さしあたり、この艦ごとまとめて消し飛ばせば、目も覚めるでしょ」
ジャキジャキッ、と全身の武器が、全方位に向けて飛ぶようにセットされた。
あれらが一斉に発射されれば、たしかにエリア88といえども撃沈はまぬがれまい。
内藤「やめろ――――――――――ッッ!!」
絶叫も虚しく、木葉は乱射魔(アッパーシューター)の本性を全開させようとする。
しかし、このとき、まだ誰も気がついていなかった。
4人のガンマンが対峙していた場所。
その付近にて、期せずして二人の魔人同士が死闘を繰り広げていたことを。
485狗と蝶、そして蛇:2005/04/11(月) 22:18:28 ID:wyOGOGKJ0
>>117 

ひとりは、蜻蛉を切って後方に向かって着地した。
禍々しい紫紺の鎧を身に纏った、毒蛇の王――仮面ライダー王蛇。
ひとりは、コツコツと靴音を響かせて、鷹揚に王蛇と対峙した。
銀色のコートを身に纏った、炎の死蝶――和月。
ふいに和月がコート――防護服(メタルジャケット)の武装錬金『シルバースキン』を解除した。
本来の素敵スーツをさらけ出すと、今度は新たな武装錬金を展開させた。(和月は、一度に一つしか武装錬金を発動できない)
視界を覆いつくすほどに展開されたのは、黒死の蝶の大群。
王蛇は、一見優美にも見えるそれらが、どれほどの破壊力を秘めているかを知らない。
しかし、本能によるものか、ただならないものを感じた王蛇は後ろに走り出す。
その方向では内藤・平野・伊藤・木葉が戦っている。
「……無駄だ♪」
全てを破壊する黒色火薬(ブラックパウダー)の武装錬金『ニアデスハピネス』。
それが発動した以上、ターゲットの運命は決まっている。
和月の闘志に呼応して、全ての蝶が着火する。
漆黒の優美な羽に込められた、煉獄の炎が解放される――――!!


   ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――――――――ッッッッッ!!!!!

王蛇が、内藤が、平野が、伊藤が爆炎の中吹き飛んだ。
天空の蒼穹を、黒龍のごとき爆煙が染め上げていく。
「……こういうゴチャゴチャした戦いは、好きじゃないんでね♪」
和月はそう吐き捨て、踵を返した。
噴煙おさまらぬ戦場に、和月の靴音だけが響き、次第に小さくなっていった。
486毒牙:2005/04/11(月) 22:20:52 ID:wyOGOGKJ0
「……いたたたた……」
やがて、煙の中、内藤達が立ち上がる。
一様に浅くはないダメージを負っているが、ただ一人その中に悠然と立っている男がいた。
木葉だ。
『ニアデスハピネス』の大爆発により、身体の半分近くを失いながら、なおも木葉は立っている。
……何かがおかしい。内藤達がそう思ったとき。
「フン」
その後ろにいた影に突き飛ばされた。
内藤「あ……」
その毒々しい紫色の身体……仮面ライダー王蛇。
そのボディは、あれだけの爆発のなかにあって、ほとんど無傷。
王蛇は、爆発の瞬間、自分からもっとも近くにいた木葉を盾代わりに利用したのだった。
木葉「……ひ、ひでえ……人を……盾に……」
王蛇「近くにいた、お前が悪い」
木葉の呪詛にも似た抗議は、その一言で片づけられた。
激昂した木葉はかろうじて残された分の銃器を一斉に王蛇に突きつける。
だがそれよりも早く、王蛇の鉄拳が木葉の身体を跳ね飛ばした。
木葉「がはあっ!」
吹き飛んだ木葉を一瞥し、王蛇はベノバイザーのスロットを開けた。
デッキから抜き取ったカードを表にして入れ、スロットを再び押し込む。
無機質な機械音声が、死神の宣告のごとく、カード名を読み上げた。

 
         『 フ ァ イ ナ ル ベ ン ト 』
487毒牙:2005/04/11(月) 22:33:54 ID:wyOGOGKJ0
彼方より、毒々しい紫色の巨大な蛇が、地を這ってくる。
コブラ型モンスター『ベノスネーカー』。
死の御使いが、鎌首をもたげた。
王蛇も両手を広げてその頭の下を疾走し、間合いに入ったところで空中高く飛び上がり、ベノスネーカーの口の前に躍り出る。
ベノスネーカーの毒息と共に、王蛇は木葉へと飛び掛かった。
木葉「あ……ああ……」
絶望のうめき声を上げ、ヨロヨロとフラつく木葉を、両足で噛み砕くかのような空中からの連続キックが爆発した。
炸裂――――!!
『ファイナルベント』―――― ベ ノ ク ラ ッ シ ュ。
王蛇の蹴りの一発毎に、木葉の肉体が砕けていく。
毒蛇の牙が、哀れな獲物に喰らいつき、肉も骨も噛み千切った。

「う……あ…… あ あ あ あ あ あ あ あ あ あああああああああああ!!!!」

       ――――  ド ッ グ ア ア ア ア ア ッ ッ ッ !!!!

木葉の断末魔の叫びは、爆発音にかき消された。
内藤「お前……なんで、こんな……」
最悪の展開を期せずして回避できたとはいえ、それはそれ。
目の前で理不尽な惨殺劇が行われたことに怒りをあらわにし、王蛇を睨みつける内藤。
王蛇は肩をすくめて答える。

王蛇「ふはははははは! こういうもんなんだろ? 違うのか?」

人ひとりをゴミのように殺しておきながら、魔王のごとき哄笑を響かせる王蛇。
その頭上では、ベノスネーカーが次なる獲物を待ち焦がれるかのように、毒々しい息を吐き出し続けていた。


木葉功一……【死亡】
488作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 00:37:56 ID:HqkjLakl0
…ああ……木葉【追悼】
489作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 01:20:53 ID:AK33Yb2v0
うわ、原作のガイ惨殺シーンの再現か
木葉やっと活躍するかと思ったらむくわれねえ・・・
最後まで広江に喰われっぱなしだったような
490作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 09:33:45 ID:07o0KITK0
最初っから最後までよく分からんトリガーハッピー野郎だったな…

ナムナム…(-人-)
491作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 12:14:19 ID:k2xT97570
キリコ描いてた頃は天才かと思ったもんだが、結局いつの間にか消えちまったしなあ
ろくな見せ場も与えられず死んでいくのはマイナー作家の宿命のようなものか・・・

それはそうと、やっぱり「ミカエル」関係の連中はあくまで破壊者としての内藤をうやまってたんだな
これで、ガンホーの内部分裂はほぼ決定的になったか
492ハーフタイムの熱量:2005/04/12(火) 14:30:33 ID:LwkZ2Riz0
熱戦珍戦入り乱れの前半が終了し、一息つく選手と観客。
4−1――サッカーにおいては、もはや勝負の決しているスコア。
そう、普通のサッカーならば……

「……ハァハァ……!!」
 誰がどう見ても、この試合中に立ち直るとは思うまい。椎名。
「ありゃあ、ダメだな……」
「……ああ……ダメだ……」
 眠気MaxHeartなカムイと城平が、後半に向けての話し合いをしていた。
「まああれはいい……確か、水野に代えて貞本だったな。椎名の代わりは
……俺は彼しかいないと思ってる」
「そう、だな……後半は、恐らく、向こうの主力が勢揃いする……ならば、力
のある者を出さねばなるまい……しかし……」
 二人は、村枝に目を移した。この男を使いたい。しかし――
「椎名の代わりに俺が出る」
 村枝は開口一番そう言った。二人は目を見合わせ、一瞬間の抜けたように
なった。
「しかし……いいのか? その傷で……」
 カムイはそう言うが、村枝はこう切り返した。
「傷? そんなもの、ただ身体にダメージを受けているだけじゃないか。真の
戦士は、何で闘うと思う? この、胸の奥にある熱い塊でだ!」
 村枝は、親指で自らの胸を突き立てる。彼は既に、スイッチが入っていた。
 もう、見てなどはおれない。
「俺を出せ。そうすれば、勝てる――」
「……ああ…………俺は、後半貞本の監視に追われることになると思う……」
 前半終了少し前から、今までと別人のように黙りこくって、狂った眼で水野に
視線を集中させている貞本を横目で見ながら、城平はそう言った。
「カムイと共に、チームを引っ張ってくれ……頼んだ……」 

OUT 水野 → 貞本 IN
    椎名 → 村枝 
493作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 15:47:27 ID:89YmYXqS0
頼りになる本命と、どうにもならない爆弾が一度にキタァッ!
494彼の人が見たもの:2005/04/12(火) 18:10:54 ID:LwkZ2Riz0
――ここは……

             森…………?

「よう、気がついたかい」
 男の声がした。見ると、大柄で顎の大きな男が、何か煮込んでいる。
「……そうか、俺はここで倒れて……別府……」
「驚いたぜ。俺も気がついたら何故かここにいて、そして君が倒れてい
た……俺はうえやま、いや、クッキング親父だ。君は?」
「俺は芦奈野ひとし……そんなことより別府は?」
 芦奈野は、崩壊してゆく別府を見ながら気を失った。勿論、別府の顛末
を知らない。
「自分の目で確かめたらいい。まあ酷い状態だが、とりあえずの危機は脱
したようだ」
 親父はそう言って、ニンジンの煮込み具合を確かめた。
「うむ。オーケーだ! さあ、食べていいぞ」
 鍋そのままを差し出され、芦奈野は戸惑った。中身は肉じゃがのようだ。
材料はどうやって揃えたのだろう。
 芦奈野も、初めて会ったおっさんにいきなり『食え!』と言われても、それは
困る。しかし、余りにも旨そうな匂いをこれでもかと漂わせていたので、身体が
勝手に動いた。
「……うめえな」
「そうか」
 芦奈野の言葉を聞き、親父はニコリと笑った。

495彼の人が見たもの:2005/04/12(火) 18:11:34 ID:LwkZ2Riz0

「実はな……俺はどこか別の場所に居たんだ。なんでかは分からんが、ここと
は違う場所に、だ」
 芦奈野が肉じゃがを一人で平らげてしまうと、親父がそう切り出した。
「そこには、俺の他に、特に特徴のない平凡な男と、上半身裸で話し方のおか
しい男がいた。途中まで一緒だったが……どうやら、彼らは俺とは別の場所に
行ったようだな」
 そのうち一人は、ある出来事により精神が退行(別に言い換えれば、原点に
返ったとも言える)。もう一人は超然ギャグ野郎(書く人の気分や状況によって
女体化)ゆえ、特に変化は生じなかったが。
「彼らもアレを見たのだろうか。アレは、俺には何が何やら分からないモノだっ
た……いや、アレは俺にではなく、貞本にのみ向けられていたような気さえする」
 言うまでもなく、芦奈野にはわけが分からない。
「正直わけが分からんが……“アレ”ってなんだい?」
「アレか? アレはな……いかん、思い出せん。料理しながらなら思い出せるか
もしれん。食うか?」
「それはさすがに……」
 親父の見た“アレ”とは――真実を知る者は、一人。

 話も一段落して、芦奈野が腰を上げる。
「世話になったな。俺はもう行くよ」
「どこへ行くんだ?」
「まあよ、旅の目的も色々あったんだが、やめた。“魔女”のところへ行くつもりだ。
あいつは物事を恐ろしいほどよく知っている。今回の別府の件について色々と、な」
 クッキング親父は、そうか、と言って暫く考え事をしていたが、突然、
「もしよければでいいんだが、俺も付いていっていいか?」
 “アレ”のことも、その魔女に訊けば何か分かるかもしれない。そう思ったのだ。
「あいつは、あまり多くの人が来るのを嫌がるが……命の恩人の言うことには逆らえ
ねえな。構わねえよ。“魔女の家”は、ここから暫く行った森の中だ」
 そう言って、芦奈野は歩き出した。その言葉を受けて、親父もその後を付いてゆく。

 “魔女の家”――彼らはそこで、何を知る。
496作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 23:24:13 ID:HqkjLakl0
肉じゃがの美味しい季節ですね(春)
親父編が不思議な動き。森って久米田が迷子になった所かな
497THE FIGHTING!:2005/04/13(水) 00:36:56 ID:zaH23M8z0
>>479
森川が、壁際から道の真ん中に動く。
柴田、それを見て、僅かに後ろに跳び下がる。
数mの距離を置き、二匹の猛獣が対峙する。
森川、再び両手のガードを上げ、軽くステップを刻み始める。
柴田は構えない。
両手をだらりと下げた体勢のまま、棒立ちで立つ。
「柴田ヨクサル。鷹の団、だったな」
森川が言った。
「技来に聞いてたよ、お前のこと。エアマスターっていうんだって?」
「そうだよ」
切る様な声でヨクサルが答えた。
「空か、空気か、どっちも、か?」
く、く、く、と森川が笑い声を洩らす。
「精々、楽しませてくれよ」
笑いを止めると同時、森川はいきなり踏み込み、左ジャブを放った。
一閃。
肩口から最短距離を真っ直ぐ貫くようなジャブがヨクサルの顔面に迫る。
ヨクサルは、まるで陽炎が揺らめくようにふわりと緩慢ですらある動きでそれを避けた。
先の山本との死闘の果てに、空気の流れを見る力を得たヨクサルの反応速度を持ってすれば、森川の左を回避することですら難しいことではない。
ひゅう、と森川が口笛を吹く。
左ジャブ一つあっさり外された程度で彼は動揺したりしない。
そのまま、時計回りに鮮やかなステップワークを刻みながら、速射砲のようにジャブを繰り出していく。
最小限の動きで回避するヨクサルに矢継ぎ早に拳が迫る。
打つ。
打つ。
打つ。
反撃の余地が無い。
一つ、一つ、と打ちつつ、森川は間断無く動いているからだ。
完璧に避けていたヨクサルの顔を、徐々に徐々に拳が掠り始める。
一撃、これまでで一番の速度のジャブが、ヨクサルの頬を切り裂いた。
498THE FIGHTING!:2005/04/13(水) 00:38:04 ID:zaH23M8z0
鮮血が飛ぶ。
僅かに、ヨクサルの体が止まる。
シッ!
と鋭い呼気を吐き、左を追撃で放つ。
拳が、ヨクサルの鼻先に触れる。
その刹那、ぐるりっ、とヨクサルが体を回転させた。
ちっ、と鼻先を掠め、拳がその空間に深く入り込む。
ヨクサルはそのまま独楽のように回転し、距離を詰める。
その動きは、攻撃に直結していた。
回転の反動を付けた回し蹴りが、強烈な勢いで森川の側頭部を襲う。
食らう寸前に、森川の右腕が間に入る。
腕が痺れそうな衝撃に堪え、足を振り払う。
その勢いに逆らうことなく、ヨクサルが退く。
離れ際。
一己の独楽と化したヨクサルのボディに、地から掬い上げる様な一撃が放たれた。
インパクトの瞬間、ヨクサルが両手を交差させてその拳を受け止める。
ふわり、と体重が消失したように森川の拳と共にヨクサルの体が浮き上がる。
拳が頂点に達した瞬間、とんっ、とヨクサルが両手を離し、後方に回転する。
回転しながら、体を横に捻っている。
真下から捻りの加えられた踵の一撃が、森川の顎に当たった。
爆ぜるように森川の首が後方に跳ね上がった。
意識が吹っ飛びそうな一撃に、だが森川は耐え、即座に後ろに飛んだ。
その脚が地に着いた瞬間――。
森川はバネのような勢いで地を蹴り、前へ踏み込んだ。
退く、そう見せかけての裏を斯いた攻撃だが、しかし――。
踏み込んだその空間から、ヨクサルの姿が消失していた。
驚愕で眼を見開き、周囲を見回す。
いない。
――どこだ?
499THE FIGHTING!:2005/04/13(水) 00:39:23 ID:zaH23M8z0
「森川先生っ――上だ!」
赤松の声を聞き、反射的に空を見上げた彼は見た。
宙を鮮やかに舞う、エアマスターの片足が、己の後頭部に吸い込まれるように消えていくのを。
避けられない。
そう思った瞬間、森川は咄嗟に前に飛んだ。
ごっ、と骨を打つ音と共に、眩暈がしそうな衝撃が脳を揺らす。
が、自分から飛んだお陰でダメージは軽減されている。
立った。
ヨクサルが、すうっ、と薄絹のように地に降り立ったのは、ちょうどその時だった。
じっ、とヨクサルの異様に澄んだ眼が森川を捕えている。
そんなもんか――?
その瞳はそう言っている様に、状況を静観する赤松には感じられた。
「勝てない、ボクシングでは――」
我知らず、赤松は声を洩らしていた。
当初は完璧にヨクサルを封殺するかに思えた森川のボクシングはしかし、ヨクサルの独特の体術により、須らく崩された。
アクセルひと踏み一秒で0kmから500kmまで加速する化物マシーン。
とは、ヨクサルを評した言葉だが、変幻自在、あらゆる角度から雷撃の如く打を撃ち、
相手の打を真綿か、涼風さながらに受け流す体術はまさに天魔の技である。
地に両の足を着け、人間の上半身を殴る事のみを考え生み出された競技の動きでは、到底この男は捕えられぬ、と赤松には見えた。
だが、当の森川に焦りは無い。
その顔面には、きゅっ、と強烈な笑みが刻まれている。
「強いなあ、お前」
たんっ、たんっ、と足踏みをし、ダメージを確認しながら、楽しげに森川が声を掛けた。
500THE FIGHTING!:2005/04/13(水) 00:42:45 ID:zaH23M8z0
「同じ言葉を返す。強いな、お前」
当てられたしな、と裂けた頬に触れて、ヨクサルが心中で付け足した。
だが――と、ヨクサルが言葉を繋ぐ。
「“それ”じゃあもう、今の俺は止められない」
断定的な口調で吐いた言葉は、奇しくも赤松のそれと同じ意を含んでいた。
森川は、眉を顰める。
「待て」
掌で押さえつけるように森川が言う。
「ちょっと待て……“それ”っていうのは、ボクシングのことか?」
「そうだよ」
わかりきった質問に、短い返答。
く、と森川が低い声を洩らした。
笑みか、憤りか本人以外に判別できぬほどの微妙な声音だった。
「まったく、どいつも、こいつも、本当に……」
そろりと呟き、森川はだらりと両腕を下げた。
上体がゆらゆらと不定期に揺れ動く。
先程、田辺と西森二人を相手取った時に見せた構えだった。
その構えを見て、ヨクサルの眼の色が再び危険に変わって行く。
ほとんど前のめりの体勢で顔だけ上げて、森川はその瞳を睨んだ。
「一つ、予言だ。数十秒後、テメエは地を這い蹲って陸に打ち上げられた魚見たいに惨めったらしく悶絶する」
「――いいから、とっととこいよ。やるんだろ、まだ?」
森川の言葉を手で払いのけるようにヨクサルが言う。
興味無さげ、というよりは、早く続きを闘りたいと言わんばかりの苛々がその声には込められていた。
ぎりいっ、と森川、歯を軋ませる。

怒りに燃える赤目と、静謐そのものの澄んだ瞳が、絡み付くように交わる。
――戦いは、未だ序章。
501最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:13:04 ID:D7kU7wio0
>>487

突如として現れた殺人快楽者を、内藤が凄まじい目で睨みつける。
その視線を、王蛇は値踏みするように平然と受け流している。
ベノスネーカーも主と同じく、しばし内藤と視殺戦を繰り広げていたが、間もなくベノスネーカーが仕掛けた。
毒液が、内藤へと吐きかけられる。
強酸のシャワーを、内藤が間一髪といった感でかわした。
床を転がり、起き上がると同時に見た光景に、内藤は顔をしかめた。
床や壁を直撃した毒液は、まるで飴か何かのように鋼鉄製のそれらを溶かし、腐食させた。
「おい、俺にも楽しませろ」
ベノスネーカーの戦いをしばらく眺めていた王蛇、見ているだけでは飽き足らずベノスネーカーを制すると、ベノサーベルを振りかざして内藤に斬りかかった。
迎撃するのは、驚異の早撃ち(クイックドロウ)から、ほぼ同時に放たれた6発の弾丸。
さらに左腕の内臓銃も閃火をほとばしらせる。
迫りくるライダーに殺到する、超速の弾幕。
  キュキュキュキュキュキュンッッ!!
しかし、王蛇は驚異のステップワークで半分をかわし、さらにもう半分は体ごと回転させてからの剣捌きで残らず叩き落とした。
間合いを瞬時につめ、回転の遠心力をそのままに、真一文字の一撃を内藤に見舞った。
  ギャリィンッッ!!
かろうじてリボルバーの銃身が、ベノサーベルを受け止めた。
とてつもない力で押し込んでくる刃を、内藤は左の義手を支えに両腕で押し返す。
激しい鍔迫り合い。
至近距離で、両者は睨み合う。
「……おまえ、何とも思わないのか!? あんなに人間を……あっさり……」
理不尽な殺人者に対する、怒りと憎悪。
内藤の感情の発露を、しかし王蛇は鼻先で嘲笑う。
「……フン、おまえ馬鹿か」
戦いは、イライラを止めるための、唯一の処方箋。
王蛇にとって、戦闘によって失われる生命など、己の快楽のための玩具にすぎない。
たかだか玩具がひとつ壊れたところで、なにほどのことがあろうか。
その玩具が壊れたくらいのことをみっともなく大騒ぎする内藤は、王蛇にとって、理解不能の珍獣だった。
502最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:13:44 ID:D7kU7wio0
「答えろ!!」
自分を嘲笑する王蛇の態度に、内藤が叫ぶ。
王蛇は答える代わりに強烈な一撃で内藤を吹き飛ばした。
胸元を逆袈裟で斬られ、段差から数メートル下の床へと落下し、全身を打ちつける。
防弾も可能にする特殊コートのおかげで致命傷には至らないが、その傷は浅くない。
床に叩きつけられたダメージとあいまって、苦痛に呻く内藤を見下ろしながら、王蛇は恍惚としてつぶやいた。
「……この感じだ……!! これだけで漫画家になった価値は十分にある!!」
王蛇が飛び下りの勢いを乗せた斬撃を、眼下の内藤に向けて振り下ろした。
内藤はそれをかわし、
「ふ・ざ・け・る・なッ!!
リボルバーの銃把を、渾身の力をもって、王蛇の横っ面に叩きこんだ。
ふいの強烈な一撃を喰らい、さしものライダーが吹っ飛び、しりもちをついた。
「おまえ……最低だ! 最低の漫画家だ!! おまえのような奴だけは……絶対に…!!」
仮にも人間ひとりをゴミクズのように殺し、なおも平然としている王蛇に内藤は怒りを隠せない。
「最低か……」
王蛇は内藤の言葉を反芻するようにゆっくりと復唱し、一変して激しく暴力性を剥き出しにし始めた。
「いい加減、その口を閉じろ!!」
激昂しながら、バネ仕掛けのように立ち上がる。
「イラついてきた。……次に死ぬのは……おまえ、だ」
「なに…!?」
内藤に指を突きつけ、死を宣告する王蛇。
しかし、異変はそのときに起こった。
内藤を刺すように指した指がぼやけ、粒子化が始まったのだ。
503最凶ライダー:2005/04/13(水) 02:14:57 ID:D7kU7wio0
「時間切れか……」
ミラーライダーは、旧来のライダーをも超えるスペックを有するかわり、その稼動時間が短い。
長時間の戦闘に向かない王蛇にとって、これ以上の戦闘続行は命の危険にかかわった。
王蛇は戦闘体勢を解くと、内藤に一瞥をくれ、その横を通り過ぎて歩きはじめる。
その先には、絶壁。眼下に、どこまでも続く海が見える。
そこで立ち止まると、王蛇はもう一度だけ内藤たちを振り返り、言った。
「おまえらの顔は覚えた……。次に会うときは、全員……潰す」
とりたてて押し殺した声ではない。気負いも感じられない。
平然と物騒で挑戦的な言葉を投げてくる毒蛇に対し。
内藤は忌々しげに、
平野は実に楽しそうに、
伊藤は状況そのものに苦笑するように、
各々の反応を示した。
王蛇は噛みつくような視線を自ら振り千切ると、そのまま眼下の海へと身を踊らせた。
内藤が駆け出すが、王蛇は海原に吸い込まれる寸前、光を発したかに見えると、波飛沫ひとつ残さずに何処かへと消え去った。
内藤はそれを目でしばらく追ってから、平野達の方を振り向いた。
そこで、その視線は凍りつく。
いまだ漂う煙の中、爆心地には木葉の手首らしき肉片が落ちていた。 
「なんで……なんでなんだ!?」
内藤の無念に満ちた声は、戦場に虚しく響いていた。


「さて……とんだ邪魔がはいったが……続けるかね」
「当然……どっちかが飽きるまでな」
「まだまだ楽しめそうだよ、この余興は」
憤る内藤をよそに、吸血鬼と化け猫が、何度目か、それぞれの愛銃をかまえた。
戦いは、続く。

504作者の都合により名無しです:2005/04/13(水) 12:44:10 ID:GehiCVeZ0
ヨクサルの戦いはトリッキーだから面白いな
板垣や川原は正統派の面白さだけど、ヨクサルは何が飛び出すかわからないビックリ箱的な楽しさがある

王蛇はやけにあっさり帰ったな
まあ外敵ひとりはちゃんと始末してるから最低限の任務は果たしてるのか
505作者の都合により名無しです:2005/04/13(水) 13:59:35 ID:GehiCVeZ0
ジョージって、技来たちがチャンピオンに合流したときはもう死んでなかったっけ

・・・と思って過去ログ読み返してみたら、技来が「親友」と言っていた。やるな
ということは森とも面識あるのかな
506妙子:2005/04/13(水) 16:15:21 ID:Iz4g4gt60
ヽ|・∀・|ノ  森さん元気かしらねぇぇぇぇ
507安西信行修行変(休憩中):2005/04/13(水) 23:44:07 ID:o91s1xcg0
 さて……休憩に入ってしばらく。
 生気が抜け真っ白くなった煤け安西は、目を完全に死んだ魚のモノと化し悄然と佇んでいた。
「……俺はやっぱり駄目なんだ……ダメダメなんだ……」
 聞き取りにくい声で、一人ブツブツ言っている。まるで精神を欠損した廃人の呈だが、それも仕方のないことだろう。
傷ついた心癒す為のヒーリングスペースであり、また心の逃げ場でもあったこの調理場で、
心のカサブタも剥がれぬうちから、再びの駄目出しを直で喰らってしまったのだから。
 そんな、なんか最近やたらと上下幅激しい安西を、しかし、誰一人として見捨てることはない。
これも一種の人徳であろうか。
「少年よ」
 肩に置かれる暖かい手。のろのろと安西はそちらを見る。
「そうしょげるな。少し予定より早くなってしまったが……お前にはまだ、精進を重ね、進むべき道があるのじゃ」
「な、なんですって!?――――そ、それはいったい!?」
 浮かぶ恐れとわずかな希望。
 もうこれ以上傷つきたくない、というヘタレ根性を、一瞬で乗り越える瞬く間の過程をその瞳に認め。
相対するおやっさんもまた、この男を見込んだ自分の眼に狂いはなかったと、力強く頷き返す。
「よいか。ワシは、お前に全てを伝えたわけではない。というより、今までのは基礎中の基礎編だったのじゃ」
「そ、そうだったんですか!」
 自分のダメダメさ加減に道筋つけられ、それなのに、いや、それだからこそ喜色も露わな前のめり安西。
そう。もう彼は自分で努力する切欠を黙って見送ってしまうような、パクリ漫画家ではないのだ。
「では、これからその応用編を教えてくださるのですか?」
 口調というか、なんかキャラ変わってる気もするがとりあえず気にしない。
「うむ。そのつもりだったのだがな……」
 目線を大火力コンロの方にやるおやっさん。つられ、安西もその顔の向きを追う。
そこにあったのは、先ほど散々安西のチャーハンを腐した垂れ目男の勇壮な腕まくり姿。
「あれは……」
「どうやら彼が魅せてくれるらしい」



 いつの間にか調理スペースに入り込んでいた垂れ目は、上着を脱ぐと、勝手に中華なべを掴み、また勝手に銀ボールのゴハンを鍋に叩き込んだ。
開始される、まさに垂れ目・オンステージ。魔法のように、客も含めた周囲の耳目が吸い寄せられ始めた。
 強火。油が回され。水気が跳ね散る。
508安西信行修行変(休憩中):2005/04/13(水) 23:45:46 ID:o91s1xcg0
 いつの間にか調理スペースに入り込んでいた垂れ目は、上着を脱ぐと、勝手に中華なべを掴み、また勝手に銀ボールのゴハンを鍋に叩き込んだ。
開始される、まさに垂れ目・オンステージ。魔法のように、客も含めた周囲の耳目が吸い寄せられ始めた。
 強火。油が回され。水気が跳ね散る。
大胆に舞うなべ、踊る炎、そして炎中を横切るゴハンの塊。
ズゴズゴズゴッ ゴウンゴウンゴウンッ と、ある種バトル漫画にも通じる派手な料理パフォーマンスに、
カウンター向こうの何号だかもわからないあんどが、まずは感嘆のうめきをもらす。
「安西とは比較にならない動作の大きさ……ゴハンが宙に舞い上がっている」
 たしかに、垂れ目のこれをセックスとすれば、安西のそれは湿ったいじけオナニーがいいところである。
「―――俺が見るところあんたはこの強力な炎を御し切っていない!炎の主人になり切っていないんだ!」
 腕を動かしおたまを振るいながら、垂れ目の説教が始まった。
「鍋から放り上げられた飯が空中で炎の上を通り抜ける、そしてその時、炎に直に炙られる。
 それによって余分の油が飛んで、チャーハンの飯はパラリと香ばしくなるんだ!
 鍋の中でイジイジかき回してるだけじゃ、本当のチャーハンはできないんだよ!」
「そ……そうかっ」
ふらふらと近付き、炎に魅了されたような安西の顔が、『正当』を得て熱く照り燃える。
「俺があんたの炒め物に首をかしげたのは、いまひとつシャッキリと仕上がってなかったからだよ!
 炒め物は炎との勝負だ、炎を完全に支配し、使いこなす、そこでこそ初めて美味しい炒め物が出来るんだ!それには強力な炎より、強い心が必要だよ!」
更に安西の心の深奥、精神面の問題点にまで切り込む垂れ目。
一瞬辛そうな表情を浮かべるも、唇を噛み締め、真摯に耳を傾けつづける、安西。
「いつまでも過去の罪に拘泥し、償うことと恐れることを混同しつづける。
 そんな半端なパクリ漫画家根性で、強力な炎を御せる訳がないだろう!? あんたの問題はそこにあるのさ!」
 そう、料理は。いや、この世に存在するありとあらゆる『他要素』は。逃げ場ではなく、そこで何かを掴む為の『場』であるべきなのだ。
すくなくとも、現役で漫画を書いている者は皆――――そうしている。
 最後に、卵を片手で割り、投入し、混ぜ、出来上がったチャーハンを皿に盛りズイと突き出しながら、垂れ目はトドメを口にする。

「――― もうあんたはパクリ漫画家じゃない 、 一 国 一 城 の 主 、 正 統 派 漫 画 家 な ん だ ぜ !!!!」
509安西信行修行変(休憩中):2005/04/13(水) 23:47:03 ID:o91s1xcg0

「!!!!!!」

 どこか心地よい衝撃が全身を貫いた。
がっくりと地に手をついた安西は、しかし、前二回とは明らかに異なる昂ぶりを胸の内に覚える。
「――――そうだったのか……っ 俺は……小心で怯えて……心が縮こまっていた……!
 分かっていた……分かっていたはずなのに。……いざ本物の『被害者』が目の前に来た途端、もう、なんもかんも分からなくなっちまってた……
 償うから許してくれ……俺はどうやったら許してもらえるんだ、って……。
 でもそんな心根じゃ、心と一緒に腕も縮こまってしまうのが当たり前…………炎を御することなんか――――出来るはずがなかったんだよ!」
後に証人語る、その時安西の瞳に、いまだかつてなかった大炎の火種を確かに見た、と。
「よ、ようし……」
垂れ目から、奪うように鍋とおたまを受け取る。

安西信行の、新たなる修行が始まった。
510作者の都合により名無しです:2005/04/14(木) 00:07:00 ID:3bqY+XPM0
使用人根性キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

上手いなあ、本当。
511作者の都合により名無しです:2005/04/14(木) 00:09:35 ID:FolqMCkN0
安西がんばれーー!!

これは元ネタの選択の妙だなw
512作者の都合により名無しです:2005/04/14(木) 00:23:25 ID:n9WhMYzIO
安西どこまで化けるんだ
513安西信行修行変(休憩中):2005/04/14(木) 00:31:56 ID:DRGZxWQc0
すいません。>>382の続きでした。
あと1レス目と2レス目で文章被ってるけど気にしないで…
514第二回十傑集会議:2005/04/14(木) 04:21:41 ID:Gv/TMUx60
>>463
エリア88を己の思うがままに作り変えた福地翼は、獲物を求めてぶらぶらしていた。
「やー中々見つからないっすねー寂しいっすよー」
一人、けらけら狂的に笑いながら、福地は歩く。
その時、福地の携帯の着信音が鳴り響く。
ポケットから取り出し、表示を見る。
福地、そこに書かれた名前を見て、すぐさま電話に出る。

「もしもーし、緊急連絡っすか? 山口隊長」
電話の相手――山口譲司に心持ちしゃきっとした声で問う。
「ああ、まあそうだ。今は、大丈夫かね?」
「そうっすねー」
辺りを見渡す。
敵の気配は、未だ無い。
「OKっすよ。で、何すか?」
「ふむ、実は定例会議の時間でね。差し迫って大丈夫そうなら君にもそこから参加して貰おうと思ったのだよ」
「……はあ、“ここ”で、っすかあ?」
まさか電話一本で参加させられるのだろうか?
多少呆れ気味の表情の福地。
しかし、「ああ、心配は無い。映像はそちらに届けるよ」の言葉と同時。
文字通り風の如く現れた血風連十数名が、瞬く間に彼の目の前に機材を設置していく。
その間実に30秒。
福地翼の前にモニターが設置され、見慣れた十傑集専用会議室の映像が映し出された。

「うっは〜すっげ〜GJ!っすよ血風連の皆さん」
おどけてモニターの前に座り込む彼の周囲は、血風連によって完璧にガードされている。
異変が起これば彼らは肉盾と化し、福地が戦闘態勢を整える為の捨て駒と化すのだ。
515第二回十傑集会議:2005/04/14(木) 04:23:56 ID:Gv/TMUx60
――十傑集会議室。
円形に作られたテーブルに備えられた十の椅子には、福地と入院中の神崎を除く全ての十傑集が集結していた。
そして、中央のモニターには、病室の神埼と、エリア88の福地の二人の映像が届いてる。
「眠い…」
神崎、睡眠中に起され、ベッドの前にモニターを設置されて大分ご立腹である。

「さて、では全員揃った所で定例会議を始めよう」
円の上座に悠然と腰掛け、山口が切り出した。
「まずは、仇敵妖魔王陣営の増強された戦力について、尼子君から報告を聞かせて貰おう」
委細承知、と音も無く席を立ち、尼子が口を開く。
「まあ手っ取り早くいっちゃいましょう。当初、ここ数日の間に死亡したクリエイターの転生者達で結成されたと見られていた十本刀ですが…
 ぶっちゃけ立ち消えになったようですなあ。だいたいにして死んで又甦ろうなんて絶倫の精神力の持ち主なんてそうそういないでしょうし、つらつら考えるに人数が集まらなかったんでしょう。
 今は大罪集とか名乗ってるそうですが…言葉通りとすれば、嫉妬、怠惰、傲慢、強欲、憤怒、暴食、色欲…は、は、枠が三つも減っていますな。
 あ、構成員については手元の資料を御覧あれ」
各々、据え置かれた分厚い資料を捲って行く。

「現在判明しているのは、夢枕獏、三条陸、稲田浩司、森川ジョージ、和月信宏…
 名前だけ並べても厭になってきますがねえ…戦闘データを拝見して頂ければ、その戦力の物凄まじさは理解してもらえるかと。
 死人の怨念とはまっこと厄介なものです喃」
嘆息を含んだ声で締めくくり、尼子は立った時と同様、静かに席に付いた。

「ご苦労…報告の通り、大罪集は今後大きな障害として我らの前に立ち塞がるだろう。――ひょっとしたら、十二使徒よりも。
 まあ、そこが付け目となるやもしれぬが…」
妖然と、密やかに山口は笑った。
その笑みが含む意は、座した誰にも窺い知ることはできない。
516第二回十傑集会議:2005/04/14(木) 04:27:19 ID:Gv/TMUx60
「さて、では次に、REDにて剣鬼、南條範夫監視任務に赴いた二人の報告を聞こうか?」
「は…! そっ、それはっ…」
虚を付かれた様に立ち上がり、言葉を詰まらせる岡田。
座した石渡も、強面に苦渋を滲ませていた。
「はははっ、すまないすまない。事情は聞いている。傷口を広げるような事を言ったのは謝ろう。
 しかし、君たち二人の不甲斐無い働きのお陰で、未だに彼の剣鬼の行方は掴めぬのだ。
 そのことを、よく理解して置きたまえ。――そして、此度の会議の最重要議題も、それに関係したことだ。
 …ふふふ、岡田君いつまでも立っていないで座りたまえ」
その言葉に、操られたかのように岡田が椅子に深く腰掛けたのを見て、山口は再び口を開いた。
「まずは、中央のモニターを見て頂こう」
彼の声と共に、中央のモニターに映像が映し出される。

岡田芽武…「水島誘拐」疲労困憊の水島を容易く捕獲。その後出現した矢吹、戸田両名を撃退し、任務遂行。
     「王捕獲作戦」苦戦する山口を助成。田島と引き分ける。
     「南條範夫監視任務」大昏、哲弘を一蹴するも、戸田に敗北。
               監視どころか出獄を見届けることすらできず。
せがわまさき…「山本賢冶との私戦」…引き分け、しかし山本は自力で生存。
                  せがわは尼子に救出されたことを考えると負けに近い敗北といえる。
       「王捕獲作戦」荒川を吸血中、安西に隙を付かれ重傷。
       「別府探索任務」任を途中で放り出し、手を下すなと命じられていた福地と私戦を行う。引き分け。
山口譲司…「王捕獲作戦」田島、すぎむら二人を相手取り善戦。
     「五虎神回収」任務完了後、斉藤、板垣に挑まれるがどちらも一蹴。
石渡洋司…「王捕獲作戦」田島を奇襲。
     「南條範夫監視任務」田口、大昏に敗北。一時的とはいえ囚われの身となる。
神崎将臣…「王捕獲作戦」高みの見物。
     「別府探索任務」吉崎捕獲の末、情報収集に成功。
             その後鬼岩城にてゆでたまごと無用の戦闘の末敗北する失態はあれど、
             大罪集三条撃退に助勢し、成功する。
鷹氏隆之…「別府消毒作戦」…遂行。その後、冬目を発見、苦も無く勝利するが、駆けつけた藤原に敗北。
福地翼…「エリア88援軍」…到着後、倉田、大昏と相次いで殺害。
517第二回十傑集会議
「と、まあ前回の定例会議後の、スカウト、事務、運営担当の富沢君と、斥侯、探索、
 情報収集担当の尼子君、そして横山様直参からの予備役である富士原君を除く、実働
 要員である七人の戦闘データを並べたわけだが…この意味が、わかるかね?―――古参
 の数人は既に察しているとは思うがね」
「わかんないっすよ〜思わせぶりな言い方止めてびしっとお願いするっす」
異様な緊張…特に古株の者から漂うそれなどそ知らぬ風に、モニターから福地が無邪気に問う。
流石に毒気を抜かれたか、やや妖気の抜けた表情で山口が頷いた。

「では、説明しよう。我ら十傑集は、横山様の手足となりありとあらゆる任をこなさねば為らない。
 それ故に、横山様配下だけでなく、方々から選りすぐり人員をスカウトするわけだが――逆に言えば、だ。
 我々の地位を保つ背景は、有能であるか、そうでないか、それだけなのだよ」
ゆっくりと、言葉の意味が全員に浸透するタイミングを見はからって、山口は立ち上がる。
「このデータを元に、我々全てが査定されるのだ。そして、十傑集として相応しくないと判断された者には…戦って頂く、
 次の十傑集候補と、十傑集の座を賭けて」
会議の場に動揺が走る。
何故か、安全ゾーンに居るはずの富士原が一番動揺していた。

「静粛に」
会議の最初から彫刻のように背筋を伸ばし、ぴくりとも動かなかった富沢が一言。
議席が水で打たれたように静まり返る。
静寂の中、山口は全員の顔を見渡した。
その顔に浮かぶ春風の如き笑みが、たまらなく不気味であった。
全員を見終えた後、山口が口を開いた。
「では、査定の結果を発表しよう――」